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( ^ω^)百物語のようです2022( ω )
230
:
名無しさん
:2022/08/13(土) 20:46:07 ID:QB79BDyI0
( ´_ゝ`)「例えばだ、もし自分の母親が亡くなったとして70歳、80歳の姿を思い浮かべるか?」
(,,゚Д゚)「いや、ないだろうな」
( ・∀・)「だね」
( ´_ゝ`)「もし今俺が死んだとして、思い浮かべるときは今の俺の姿だろう?」
_
( ゚∀゚)「生きてたらこうだろうな、なんて思うときもあるんじゃねーの?」
( ´_ゝ`)「だとしても基本は死ぬ前の姿を思い浮かべるだろう」
( ´_ゝ`)「でも例外もある……周囲も、多分本人も、常に成長した姿で想像する場合がな」
_
( ゚∀゚)「例外ねぇ……」
( ・∀・)「なんだろ、あるかなそんなの」
(,,゚Д゚)「……双子、だろ」
( ´_ゝ`)「そうだ、双子だ」
( ´_ゝ`)「俺たちは双子だったんだが弟は死産にされたんだ」
( ´_ゝ`)「だからジョルジュが弟のことを知らないのは当たり前だ」
231
:
名無しさん
:2022/08/13(土) 20:50:10 ID:QB79BDyI0
(,,゚Д゚)「死産にされた……って、殺されたみたいな言い方するな」
( ´_ゝ`)「ああ殺されたんだ、母親にな」
( ´_ゝ`)「ま、簡単に説明すると2人とも育てる金がなかったんだな」
( ・∀・)「それなら普通は中絶とかするんじゃないの?」
( ´_ゝ`)「住んでたのが田舎の方だったからな、跡取りに男を産まないとってやつだ」
( ´_ゝ`)「出産も病院じゃなく実家に産婆を呼んでだ、だからそういうことができた」
_
( ゚∀゚)「……」
( ・∀・)「……」
(,,゚Д゚)「……」
( ´_ゝ`)「なんの話かよく分かんない感じになっちゃったな、ここらで締めようか」
( ´_ゝ`)「双子だからか、家族で俺だけ弟が見えたんだ」
( ´_ゝ`)「俺はいつも弟と遊んでた、田舎だし同い年の子供なんていなかったからな」
( ´_ゝ`)「少しお金に余裕ができてこっちに引っ越してきた、もちろん弟もついてきた」
( ´_ゝ`)「母親は俺が弟と話したり体を貸したりするのすごく嫌がってた、だから高校入学と同時に追い出されたんだ」
( ´_ゝ`)「で、まあ今も弟と暮らしてるってわけだ」
( ´_ゝ`)「成長する幽霊の話をするつもりがとっ散らかっちゃったな」
( ´_ゝ`)「でもまあこんな感じで俺の話は終わりだ」
( ´_ゝ`)「一応幽霊の話だしOKだろ?」
232
:
名無しさん
:2022/08/13(土) 20:52:07 ID:QB79BDyI0
_
( ゚∀゚)「……作り話、なんだよな?」
( ´_ゝ`)「どうだろうな」
( ・∀・)「一人暮らしか聞いたときに含みあったのってそういうこと?」
( ´_ゝ`)「そうだな」
(,,゚Д゚)「怖い話じゃない、って言わなかったか……?」
( ´_ゝ`)「怖くなんてないよ、俺は兄だからな」
_
( ゚∀゚)「……体を貸したりって言ったよな」
_
( ゚∀゚)「お前……兄者だよな?」
( ´_ゝ`)「ああ、今は兄者だよ」
( ´_ゝ`)「それじゃあジョルジュ、俺はもう行くぞ」
( ´_ゝ`)「一個話したしもういいよな?」
_
( ゚∀゚)「あ、ああ」
( ´_ゝ`)「それじゃおまえら、またな」
( ´_ゝ`)「おっとそうだ、ろうそく吹き消さなきゃいけないんだったか」
233
:
名無しさん
:2022/08/13(土) 20:52:45 ID:QB79BDyI0
(
)
i フッ
|_|
234
:
名無しさん
:2022/08/13(土) 20:55:14 ID:QB79BDyI0
以上です、ありがとうございました
235
:
名無しさん
:2022/08/13(土) 20:56:51 ID:hp.I8Ltw0
水子の霊って成長するって言うよな……
さらりと不気味ですごく好きだ、乙乙
236
:
名無しさん
:2022/08/13(土) 21:59:54 ID:Z6r3NYcY0
おつおつ
237
:
名無しさん
:2022/08/13(土) 22:39:36 ID:qZ9sNMvs0
31本目 (,,゚Д゚)君と巡った夏祭りのようです
.,、
(i,)
|_|
238
:
名無しさん
:2022/08/13(土) 22:39:59 ID:qZ9sNMvs0
「ねぇ、聞こえる? 今日はお祭りの日だよ」
(,,-Д-)「ああ。よく聞こえるよ。楽しそうな声が聞こえてくる」
「うん。みんないい笑顔で会場に向かってるよ。お祭りが楽しみなんだね」
(,,-Д-)「懐かしいな。俺たちも昔二人で行ったなぁ」
「……そうだね。二人で行ったんだったね」
(,,-Д-)「あの日のことは今でも覚えてるよ」
(,,-Д-)「しぃ…お前はどうだ? 」
「……勿論覚えてるよ。いろんな所を巡ったね」
.
239
:
名無しさん
:2022/08/13(土) 22:40:31 ID:qZ9sNMvs0
(;,゚Д゚)「うおお……凄い人だかりだ。しぃ! 大丈夫か? 」
(*゚ー゚)「大丈夫。ありがとギコ君」
(,,^Д^)つ「そっか。でも、心配だから、ほら! 」
(*^ー^)「うん! 」
(,,゚Д゚)「おう。そうだ」
(,,゚ー゚)「浴衣似合ってるぞ」
(*^ー^)「えへへ。ありがと。これ気に入ってるんだぁ」
「実はあの日の浴衣、今日も着てるんだよ?」
(,,-Д-)「そうなのか? 見れないのが残念だなぁ……」
(,,-Д-)「薄い桃色の浴衣、だったな。控えめな色合いがしぃらしくてよく似合ってたよ」
「……もう! ちゃんと覚えてないじゃない! 私が着てるのは薄い赤色の浴衣だったでしょ! 」
「しばらく色見てなかったから分からなくなっちゃったの? 」
(;,-Д-)「あれ? そうだったか? 印象的だったから間違えるはずないんだけどな……」
「まあいいよ。最初は……どこに行ったっけ? 」
(,,-Д-)「それは覚えてる。やっぱ祭りと言えばって事で射的に行ったんだよ」
「そうだったね。ギコ君頑張って景品とってくれなたんだよね」
.
240
:
名無しさん
:2022/08/13(土) 22:41:05 ID:qZ9sNMvs0
(,,゚Д゚)「っしゃあ祭りと言えば射的! しぃ! どれが欲しい? 狙ってみるぞ!! 」
(*゚ー゚)「えーっと……じゃあ、あれ!」
(,,゚Д゚)「猫のぬいぐるみだな? 任せておけ!!」
(,,^Д^)「ほら! とれたぞ! 」
(*゚ー゚)「すごーい!! ギコ君上手だね!! 」
(,,^Д^)「はっはっは! まっざっとこんなもんよ! 」
(,,゚Д゚)「こいつはプレゼントだ」
(*^ー^)「ありがと! 大事にするね!! 」
「あのぬいぐるみは、今でも部屋にあるよ」
(,,-Д-)「おっそうなのか? そいつは嬉しいな」
「あのにっこり笑ってる顔が好きで、見るたびに優しい気持ちになれるんだ」
(,,-Д-)「んん? 俺がとったのは微笑んでる猫だったはずだが? 」
「……やだなあギコ君ったら他のと勘違いしてるんじゃないの? 」
(,,-Д-)「そうだったかなぁ……? 」
「そうそう。それで次に、二人でかき氷を食べたんだよね。」
(,,-Д-)「ああ! 食べた食べた! 」
.
241
:
名無しさん
:2022/08/13(土) 22:41:41 ID:qZ9sNMvs0
(,,*゚Д゚)「しぃ! かき氷あるぞ! かき氷!! 」
(*^ー^)「いいね! 食べよ食べよ! 」
(,,゚Д゚)「何にするか決めたか? 」
(*゚ー゚)「うん! 私はね……」
(,,-Д-)「懐かしいな、俺はメロンを選んで、しぃはイチゴを選んだんだったな」
「そうだね。二人してがっつき過ぎて頭痛くなったっけね」
(,,-Д-)「あの日は暑かったし人も多かったからつい、な」
「だからこそ余計においしく感じるんだけどね」
「で、次に金魚すくいだっけ?」
(,,-Д-)「ああ。どっちが多くすくえるかで勝負したっけな」
「ギコ君たらムキになってたね」
(,,-Д-)「いや、ムキになってたのはしぃの方だろ」
「……そうだっけ?」
(,,-Д-)「ああ。そのあとが大変だったからよく覚えてる」
.
242
:
名無しさん
:2022/08/13(土) 22:42:09 ID:qZ9sNMvs0
(*゚^゚)「むー」
(;,゚Д゚)「悪かったって! な! 機嫌直してくれって! なっ! 」
(゚-゚*)「ぷぃっ!」
「なんで怒ったんだっけ……? 」
(,,-Д-)「あんまりにもお前が下手過ぎてな、調子に乗ってからかい過ぎてそしたらへそ曲げられた」
(,,-Д-)「まあ、若気の至りってやつで」
「……どうやって私、機嫌治したんだっけ?」
(,,-Д-)「んん? お前そんな事も忘れちゃったのか? 」
「……ゴメン」
(,,-Д-)「まあいいけどさ」
(,,-Д-)「あの時は」
.
243
:
名無しさん
:2022/08/13(土) 22:42:33 ID:qZ9sNMvs0
(;,゚Д゚)「えっと……」
(,,゚Д゚)「あっ! あれは! 」
(,,゚Д゚)「しぃ! ちょっと待っててくれ! 」
(*゚-゚)「ん」
(,,゚Д゚)「ほら! 」
(*゚-゚)「これは? 」
(,,゚Д゚)「祭りの前に言ってたろ?」
(,,゚Д゚)「りんご飴、食べてみたいって」
(*゚ー゚)「覚えてたんだ」
(,,^Д^)「あたり前だろ? 二人で祭り巡るの楽しみにしてたんだから、しぃが何を楽しみにしてるのかもちゃんと覚えてるさ」
(*^ー^)「じゃあ許してあげよう」
(,,^Д^)「へへっ! ありがとよ! 」
.
244
:
名無しさん
:2022/08/13(土) 22:44:22 ID:qZ9sNMvs0
(,,-Д-)「とこんな感じだったな」
(,,-Д-)「どうだ。思い出したか? 」
「うん。そう、だったね……」
(,,-Д-)「そのあともいろんな所を巡ってさ、楽しんだよなぁ」
(,,-Д-)「それで最後に……」
「あっ。そろそろ時間だよ」
(,,-Д-)「そうか、もうそんな時間か」
「ほら、聞こえる? 」
(,,-Д-)「ああ。よく聞こえるよ」
(,,-Д-)「今はもう見ることは出来ないけど、祭りの最後といえばやっぱり花火だよな」
(,,-Д-)「あの時も二人で花火を見たっけか」
(,,-Д-)「二人きりになれる場所に行って見てたっけな」
.
(*゚ー゚)「わぁー! 綺麗だねぇ……! 」
(,,゚Д゚)「ああ! 凄いなぁ……! 」
(*゚ー゚)「あっ……終わっちゃった……」
(,,゚Д゚)「終わっちゃったな……」
(*゚ー゚)「……」
(,,゚Д゚)「……」
245
:
名無しさん
:2022/08/13(土) 22:45:46 ID:qZ9sNMvs0
(,,゚Д゚)「なぁ、しぃ」
(*゚ー゚)「なぁに? 」
(*゚ (゚,, )
(,,゚Д゚)「好きだ」
(*゚ー゚)「私もだよ。ギコ君」
.
「あの時はビックリしたなぁ」
(,,-Д-)「まあ、気分が盛り上がってたから、つい、な」
(,,-Д-)「まあ恋人同士なんだからいいかなって」
「ふふ。そうだね。恋人同士だからいいよね」
「ねぇギコ君」
(,,-Д-)「ん?」
(,,- ( )
「好きだよ」
(,,-Д-)「俺もだよ。しぃ」
.
246
:
名無しさん
:2022/08/13(土) 22:46:29 ID:qZ9sNMvs0
「逆なら良かったのに」
思わずそんな言葉が口から零れ落ちていた。
私には双子の妹がいる。
何をするにも一緒だったし、好きになる物も人も一緒だった。
だから、妹が選ばれていたのは…………許せなかった。
(*^ー^)「と、言うことでー!! 」
(,,^Д^)「俺たち、付き合うことになりました!! 」
その言葉を理解するのに少しだけ時間が掛かった。
だけど内心の動揺を必死で押し隠し、何とか笑顔を作り出す。
(*゚∀゚)「へぇ〜よかったじゃないのさ」
そんな心にもないことを無理やり口にする。
その言葉を聞いた二人は私の内心なんてわかるはずも無く、額面通り受け取ってくる。
(*^ー^)「ありがとーお姉ちゃん! 色々相談に乗って貰ったおかげだよー! 」
だらしない笑顔を浮かべるこの女が私と血のつながっていることに吐き気を覚える。
何故、こいつなんだ? 顔で選んだとしたなら私だって同じ顔だ。選ばれない訳がない。
(,,^Д^)「そうだったのか。子どもの頃からの付き合いだったがそんな事されてるなんて知らなかったぞ」
そう。私たちは子どもの頃からの付き合いだ。
周りの人たちは私たちの見分けつけられず間違える事が多かったが、彼だけは間違えることは無かった。
いつも私を見てくれていた。
私だけを見てくれていた。
……そのはずだったのに
何故だ?
(,,^Д^)(^ー^*)
何故彼は私を見ていない?
247
:
名無しさん
:2022/08/13(土) 22:47:40 ID:qZ9sNMvs0
何故私と同じ顔をした女がそこにいる……?
そこに居て良いのは私だけのはずなのに………
(* ∀ )
.
あれからどのくらい日が経ったのだろうか。
毎日のように妹から惚気という名の自慢話を聞かされる。
彼がどうだっただの、彼とどうしただの、毎日毎日………!
そのたびに私の心の中に黒い感情がため込まれていく。
それをどうするべきなのか、持て余す日々が続いていた。
そんなある日のこと
(*゚ー゚)「ねぇお姉ちゃん。知ってる? 今日はお祭りやってるんだって! 」
部屋でくつろいでいる私に能天気に声をかけてくる。
祭りがどうしたというのだ。全く興味がないが無視をするとうるさくなるので返事をする。
(*゚∀゚)「ん〜? 知らなかったな。どこでやってるのさ? 」
(*゚ー゚)「すぐ近くでやってるんだよ! 」
(*^ー^)「実はギコ君に誘われててねー? お姉ちゃんも一緒に行かない? 」
一瞬だけ言葉に詰まる。
この女は私に見せびらかしたいのか?
私から奪った男を自慢したいのか?
怒りで叫びたくなる気持ちを必死で押さえいつも通りの笑顔を作る。
(*゚∀゚)「いんや。やめておくよ」
(*゚∀゚)「せっかくの祭り二人で楽しんできな」
(*゚-゚)「えー残念。一緒に行きたかったな〜」
ぶつぶつと文句を言いながらも、浴衣を引っ張り出してくる。
248
:
名無しさん
:2022/08/13(土) 22:48:13 ID:qZ9sNMvs0
私とお揃いで勝ってもらった薄い桃色の浴衣。
あまり派手な色は好まない妹らしい選択だ。
その浴衣に身を包み、玄関へと歩いていく。
玄関まで見送ってやると、突然振り返り
(*^ー^)「気が変わったらお姉ちゃんも来てね! 待ってるから」
(*゚∀゚)「………ん。まあ、気が向いたらね」
(*^ー)「じゃ、いってきっまーす! 」
その後ろ姿を見送り部屋へと戻る。
.
………浴衣、か。
私の浴衣は薄い赤色。
それなりに目立つ色だけど、私服でいるよりかは目立たないのかも、しれない。
.
妹より少し遅れて家を出る。
祭りの会場は教えてもらっているので分かっている。
……行ったところで何になるのだろう。
また嫌な思いをするだけじゃないのか……?
それでも足は私の意志とは関係なく、動いてしまう。
そして、私の目は二人を見つけてしまう。
私の、耳は、二人の声を聞いてしまう。
249
:
名無しさん
:2022/08/13(土) 22:49:20 ID:qZ9sNMvs0
(;,゚Д゚)「うおお……凄い人だかりだ。しぃ! 大丈夫か? 」
(*゚ー゚)「大丈夫。ありがとギコ君」
(,,^Д^)つ「そっか。でも、心配だから、ほら! 」
(*^ー^)「うん! 」
(,,゚Д゚)「おう。そうだ」
(,,゚ー゚)「浴衣似合ってるぞ」
(*^ー^)「えへへ。ありがと。これ気に入ってるんだぁ」
私が先に選んでその色違いを選んだだけなのに、何が気に入っているだ。
(,,゚Д゚)「っしゃあ祭りと言えば射的! しぃ! どれが欲しい? 狙ってみるぞ!! 」
(*゚ー゚)「えーっと……じゃあ、あれ!」
(,,゚Д゚)「猫のぬいぐるみだな? 任せておけ!!」
(,,^Д^)「ほら! とれたぞ! 」
(*゚ー゚)「すごーい!! ギコ君上手だね!! 」
(,,^Д^)「はっはっは! まっざっとこんなもんよ! 」
(,,゚Д゚)「こいつはプレゼントだ」
(*^ー^)「ありがと! 大事にするね!! 」
彼に媚びて物をねだり一方的に貰うなんて浅ましい女だ。
私なら一緒にやって互いの景品を交換するのに
二人がいた射的屋に寄り景品を撃ち落とす。
私が手に入れたのはにっこりと笑っている猫のぬいぐるみ。
彼の笑顔に似ているから思わず狙ってしまった。
手に入れた景品を落とさないように大事に抱え込み、二人に気が付かれないように後ろをついて行く。
250
:
名無しさん
:2022/08/13(土) 22:49:57 ID:qZ9sNMvs0
(,,*゚Д゚)「しぃ! かき氷あるぞ! かき氷!! 」
(*^ー^)「いいね! 食べよ食べよ! 」
(,,゚Д゚)「何にするか決めたか? 」
(*゚ー゚)「うん! 私はね……」
私と妹の味の好みは似ている。
だから選ぶものの予想はついた。
だけど、今そんな物を食べる気はならない。
笑いあう二人の顔を見て、また黒いものが溜まっていく
(*゚^゚)「むー」
(;,゚Д゚)「悪かったって! な! 機嫌直してくれって! なっ! 」
(゚-゚*)「ぷぃっ!」
なんて自分勝手な女何だろう
私だったら彼をあんな風に困らせたりしない。
彼なりに楽しませようとしているのにその気持ちに気付こうともせず、怒り始めるなんて。
やっぱり彼に相応しいのは私の方なんだ。
(;,゚Д゚)「えっと……」
(,,゚Д゚)「あっ! あれは! 」
(,,゚Д゚)「しぃ! ちょっと待っててくれ! 」
(*゚-゚)「ん」
.
251
:
名無しさん
:2022/08/13(土) 22:50:46 ID:qZ9sNMvs0
(,,゚Д゚)「ほら! 」
(*゚-゚)「これは? 」
(,,゚Д゚)「祭りの前に言ってたろ?」
(,,゚Д゚)「りんご飴、食べてみたいって」
(*゚ー゚)「覚えてたんだ」
(,,^Д^)「あたり前だろ? 二人で祭り巡るの楽しみにしてたんだから、しぃが何を楽しみにしてるのかもちゃんと覚えてるさ」
(*^ー^)「じゃあ許してあげよう」
(,,^Д^)「へへっ! ありがとよ! 」
何上から目線で言ってるんだこの女は
勝手に怒り、一人で盛り上がり、彼を困らせるな。
本当に自分の事しか考えていない女だな。
二人が人の少ない場所へと歩いていく。
大きな音が鳴り響き上を見上げると、花火が上がっていた。
(*゚ー゚)「わぁー! 綺麗だねぇ……! 」
(,,゚Д゚)「ああ! 凄いなぁ……! 」
花火を流れながらも歩きを止めはしていない。
どこまで歩いていくのかと思いながらも、二人の後ろついて行く。
前と上しか見ていないから私に気が付かない。
(*゚ー゚)「あっ……終わっちゃった……」
(,,゚Д゚)「終わっちゃったな……」
(*゚ー゚)「……」
(,,゚Д゚)「……」
花火が終わったあと二人が黙って見つめて合う。
252
:
名無しさん
:2022/08/13(土) 22:51:25 ID:qZ9sNMvs0
(,,゚Д゚)「なぁ、しぃ」
(*゚ー゚)「なぁに? 」
彼の方から妹へと近づいていく。
……やめて。
だけれど止められる訳もなく、二人の距離が近づいていく
(*゚ (゚,, )
(,,゚Д゚)「好きだ」
(*゚ー゚)「私もだよ。ギコ君」
(* ∀ ).
穢された。彼が、穢された
あの女によって
彼から求めるように仕向けていたんだ。
自分から手を出さずに、狙い続けてたんだ。
…………許せない
あんな女は彼には必要ない。
本当に必要なのは私なんだ。
私があそこにいるべきなんだ。
あの、女じゃなくて、ワタシガ
処分しなきゃ。
これ以上彼が穢されないうちに
253
:
名無しさん
:2022/08/13(土) 22:52:02 ID:qZ9sNMvs0
(,,;Д;)「どうして……どうしてこんなことに……! 」
病院のベッドの上で涙を流しながらうずくまる彼の背を優しくなでる。
不幸にも私と彼の家族が事故に巻き込まれてしまった。
生き残ったのは私と彼だけ。そんな事実を受け止めきれない彼は涙を流し続ける。
事故の後遺症か、彼の目は見えなくなってしまっていた。
(* ∀ )「大丈夫だよギコ君。悲しまないで。私は生きてるから」
光を映さない彼の目がこちらを見つめる。
止まらない涙を流しながらそれでも口を開く。
(,,;Д;)「ありがとう……」
(,,;Д;)「しぃ」
254
:
名無しさん
:2022/08/13(土) 22:52:48 ID:qZ9sNMvs0
そう。死んだのはしぃの姉"つー"だ。
今、彼のそばにいるのは"しぃ"なのだ。
(* ∀ )「うん。私達しかいなくなっちゃったけど、これから支えあって生きて行こうね……? 」
(*゚∀゚)「ギコ君」
――――――あれから数年ほど経った。
目の見えない事に苦労はしているようだったが、それでも必死で生きようとしている。
死んだみんなの分まで長生きするんだ。と微笑みながら言っていた。
そうだね。私達が幸せにならなきゃね
時間があれば思い出話に花を咲かせる。
いつも彼は居なくなった人を慈しむに笑っているが、そんな奴らのことなんてどうでもいい。
今、私が彼にそばにいる。彼に愛されている。それだけでいい。
夏になると、二人で窓辺で寄り添い語り合う。
間違った思い出を正しい思い出になるように、毎年毎年……
花火が上がれば終わりの合図。
(* ∀ )「ねぇギコ君」
(,,-Д-)「ん?」
(,,- ( )
.
255
:
名無しさん
:2022/08/13(土) 22:53:10 ID:qZ9sNMvs0
(* ∀ )「好きだよ」
(,,-Д-)「俺もだよ。しぃ」
ああ、今年も祭りの日が巡ってくる。
256
:
名無しさん
:2022/08/13(土) 22:53:32 ID:qZ9sNMvs0
(
)
i フッ
|_|
お題
祭り
「逆なら良かったのに」
ここまでお付き合いいただきありがとうございました
257
:
名無しさん
:2022/08/13(土) 23:01:41 ID:9wI0PAI.0
>>256
すばらしい
258
:
名無しさん
:2022/08/13(土) 23:07:34 ID:w.10lm.Y0
うああ、なんというか悍ましいな
幽霊ものが好きだったがこういうのもアリだな
259
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 01:13:32 ID:BkEJtHww0
32本目
信じたくないようです
.,、
(i,)
|_|
260
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 01:14:18 ID:BkEJtHww0
ξ゚⊿゚)ξ「ブーン、起きてる?」
問いかける声に目を覚ます
聞き慣れた幼馴染の声だ
( つω^)「ツン、かお? 久しぶりだおね、こんな時間にどうしたんだお?」
眠い目を擦りながら答える
ツンは昔から思いつくままに行動するところがある
夜中に起こされるのも慣れたものだ
ξ゚⊿゚)ξ「ちょっと聞きたいことがあって」
そんなことで起こしたのかと思う反面、この程度でよかったとも思う
一週間前の「今から登山をしよう」と言われたのに比べればなんでもない
まあ登山は断った訳だがツンはひとりで向かったらしい、メールにそう書いてあった
( ^ω^)「何を聞きたいんだお?」
優しい声音で答える
ツンがひとりで登山へ行ったと知ってから、今の今までひどく心配だった
あの不安感は堪ったものではない、質問に答えるだけで解決するならそれがいい
261
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 01:14:53 ID:BkEJtHww0
ξ゚⊿゚)ξ「ブーンは……幽霊って信じる?」
これまた唐突な話だ
もしや登山に行った際にでも何かを見たのだろうか
いや、ツンのことだ、きっと単なる好奇心だろう
( ^ω^)「僕は信じてないお」
しっかりと強めの口調で答える
今から心霊スポットへ行こうというのだけは御免被る
ξ゚⊿゚)ξ「何があっても……何を見ても、信じない……?」
いつもと様子が違う、気が、する?
本当に何かおかしなものを見たのか?
もしかして、いや、まさか、そんな筈はない
( ^ω^)「僕は、信じないお」
262
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 01:15:49 ID:BkEJtHww0
ξ-⊿-)ξ「……そう……信じるって言ってほしかったな」
ξ゚ー゚)ξ「……私、ブーンのこと好きだったんだよ」
何故ここで告白をする
何故、過去形で……
(;^ω^)「ぼ、僕もツンのこと好きだお……ずっと前から好きだお!」
ξ゚ー゚)ξ「……うん、知ってた」
ξ゚ー゚)ξ「……嬉しかった……そして、ごめんね」
なんで謝る
変な冗談はやめてくれ……
ξ-⊿-)ξ「私も女だから、人には……好きな人にはこんな姿見られたくなかったんだけど」
ξ゚⊿゚)ξ「でもこのままじゃ……私が見つからないままじゃ、ブーンが進めなくなっちゃうもんね」
(;^ω^)「ツン、何を言ってるんだお……意味が、わからないお……」
263
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 01:16:30 ID:BkEJtHww0
ξ゚ー゚)ξ「……ブーン、元気でね」
そう言ってツンは消えた
空気に溶けていくみたいに
僕は幽霊なんて信じない
ツンはきっとまた何処かへ出かけたのだろう
ツンはいつも思いつきで行動するから
だから僕は信じない
( ;ω;)「僕は幽霊なんて信じないお……」
264
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 01:17:31 ID:BkEJtHww0
(
)
i フッ
|_|
265
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 01:53:11 ID:7Rb7Qd3A0
>>259
この短さと最低限の情報ですべてが分かってしまった…好きだ
266
:
◆Wm6SmQ7Jsw
:2022/08/14(日) 17:49:19 ID:wqsnqapE0
皆様お疲れ様です、まもなく最終日の投下開始時刻になります。
最後までよろしくお願いします。
267
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 18:41:00 ID:O0oz36TE0
33本目
川д川 事故住人のようです 川 ゚ -゚)
.,、
(i,)
|_|
268
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 18:42:24 ID:O0oz36TE0
× × ×
事故物件【じこぶっけん】
・広義には(中略)何らかの原因で前居住者が死亡した経歴のあるものをいう。
・事故物件として扱われる物件としては、以下のようなケースが上げられる。
殺人、傷害致死(中略)などの刑事事件に該当しうる事柄で死者の出た物件。
(Wikipediaより引用)
× × ×
269
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 18:43:43 ID:O0oz36TE0
駅から徒歩約二十五分。
途中にはコンビニがあり、飲み屋もあり、街灯は少ないけれどお店のお蔭で夜遅くでもそこそこ明るい住宅街。
ゴミのポイ捨てとそれを注意する看板がやたらとある。
訂正。『あった』。今はどうだか知らないので。
ああ、コンビニはまだあるみたい。同じ店舗かは分からないけれど、ビニール袋のロゴマークが一緒。
一人暮らしの味方になってくれる安いスーパーとコインランドリーが五分ほどの距離にある。
時折大声を出している人がいるけれど治安は悪くない。特別親切でも物騒でもなく、到って平凡。
訂正。『基本的には平凡』。平凡でない時があったので。三年前、当事者はわたし。
道路沿いに建った築十数年の二階建てアパートはくすんだピンク色の外観で決してオシャレとは言えない。
所々が薄汚れたピンク色はダサいと言うより不気味さがある。
けれど、田舎から出てきた身にはどこか見慣れたような、安心まではいかなくても気張らなくて丁度良い。
訂正。『丁度良かった』。今はもう、外観を見る事もないので。
一階につき三部屋。道路側に急な角度の階段が一つ。
わたしの部屋は二階の一番奥。二〇三号室。逃げ道のないどん詰まり。
そう。ここはわたしの部屋。
だから後から来た人を追い出す権利がある。そうでしょう?
.
270
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 18:45:09 ID:O0oz36TE0
玄関入ってすぐ右手の扉がお風呂場。脱衣所はないけれど一人暮らしだから問題はない。
彼女もそう。わたしと同じ、女の一人暮らし。
二ヶ月と二十一日前に入居してから、わたしの時にはなかったドアチェーンを一度も使わない女。
鍵をかけない時もある。そんな時はドアを開けてやる。
彼女はたまにしか気付かないから、大抵わたしが閉める。バン! としこたま強く締めてやる。
それで彼女は鍵を閉め忘れた事に気付く。どういう育ち方をしたのかしら。
それでいて強くなった音にはなんとも思っていない。建てつけが悪いとか、そういう事も思っていない様子。
間取りは変わっていないけれど設備は三年前からちょっとずつ変わっている。
どうにかしてこの部屋に価値を持たせたいみたい。不動産会社の人が内見の時によく言っていた。
「このお部屋は他の部屋に比べて設備が新しく」どうのこうの。そして家賃が安いのね。
でもわたしの事をどこかから聞きつけて、契約はされなかった。わたしって地味に知名度があるらしい。
この女が来るまでは。
バランス釜から給湯器に変わり、小さな鏡と洗面台が設置されたお風呂場。
シャワーと蛇口は片方ずつしか使えないみたい。
川 ∩-∩) パシャ パシャ
彼女は蛇口でぬるま湯を作って顔を洗っている。長い髪を下ろしたまま洗っているからビチャビチャに濡れている。
だらしのない女なのだ。
くたびれた部屋着に水が滴ってもまるで気にしていない。いつもだ。
川 ∩-∩) パシャ パシャ
彼女の背後に立つ。彼女は気付かない。
いつも、いつも、気付かない。
いつも。
赤い印のついたハンドルを閉める。蛇口から出るのは冷たい水に変わる。
271
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 18:46:31 ID:O0oz36TE0
川 ∩-∩)「ん……また水になったな」
彼女が顔を上げる。そこには鏡がある。鏡にはわたしが映っている。
彼女が鏡に映る。顔の水滴を手で払い、目を開ける。
川д川 川 ゚ -゚)
川д川 川∩゚ -゚)「あ、まだ泡が残ってる」
川д川 川 ∩-∩)「なんでこんなに顔洗うの下手なんだろう……」パシャ パシャ
――鈍感女!
――今日も気付かない!
彼女が顔を下げたまま、置き場所がなくてシャワーヘッドに乗せたタオルに手を伸ばす。
わたしはそのタオルを落とす。
触れてもいないのにも関わらず、自分で落としたのだと思って、彼女は拾おうと屈む。
川 ゚ -゚)「……ん?」
洗面台の排水溝に気付く。
彼女はシャワーしか浴びない。浴びたあとは必ず浴槽洗剤のスプレーをしてシャワーで流す。だらしなくて鈍感のくせに綺麗好きな女。
夜から朝にかけてすっかり乾いた浴槽の排水溝に、髪の毛。
排水溝の中から這いずった、触手みたいな髪の毛。
川 ゚ -゚)「また流しっぱぐれてる。まったくもう、昨日の私は」ジャー
タオルを拾うと、切り替えレバーを蛇口からシャワーにして、彼女は何事もなく髪の毛を流す。顔を拭く。
――そんなわけないじゃない!
――昨日、指差し確認していたじゃない!
――流しきれなかった毛量ではないじゃない!
.
272
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 18:48:42 ID:O0oz36TE0
川 ゚ -゚)「あれ……でも量が……」ジャー
川 ゚ -゚)
川; ゚ -゚)「まさか、いよいよ、十円ハゲが……?」ジャー
――どうせならそのくらいに気を病んでしまえ!
――どうして認識との違いを、違和感を、怖いと、思わないの!
川 + -+)そ「あぶぶっ。ぶわっ、うわわ」ザアアアアッ ガタガタッ
蛇口を思いっきり捻ってやって、勢い良く水を吹き出したシャワーが暴れる。
暴れて彼女の手から離れ、彼女が水浸しになる。間抜けな声を出して水浸しになる。
――ざまあみろ!
川 + -+)「うう……参った……」
川 ゚ -゚)「あ、でも寝癖直ったのでは? どうせ着替えるんだし結果オーライか。オッケー」
――もう!
――もう! もう!
――今日もまた気付かない! 気にさえしない!
――怖がってさっさと出ていけば良いのに!
川 ゚ -゚)「パンツまで濡れちゃったな。全部着替えるなら、夜入らないで朝シャンにすれば良かったなー」
全裸になって、お風呂場から彼女が出ていく。
中途半端に開いたままのドアを閉めた。バン! ドアの小窓が揺れた。
「うひゃあ、びっくりした」と彼女が平坦な声で言うのが聞こえる。
――もっと怖がれ!
――事故物件でおかしな事が起きているんだから!
川#皿川 ギリギリギリ 川 ゚ -゚)「ドライヤー腕疲れるぅ〜、早く乾け〜」ブォー
――気付けってば!
.
273
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 18:50:24 ID:O0oz36TE0
× × ×
事故住人【じこじゅうにん】
・造語。
・事故物件(前述)に住み、心霊現象を体験しながらもそれに全く気付く事なく日常生活を送っている入居者。
・認識して無視しているわけではなく、たんにマジで気付いていない場合を言う。
・作中にこの言葉は出てこない。
× × ×
274
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 18:51:49 ID:O0oz36TE0
わたしは三年前に殺された。
思い出せない事が多い。名前は思い出せない。思い出そうとすると酷く不安定な気持ちになる。
良くない感情なのが分かる。幽霊の具合が悪くなるとどうなるのだろう。怨霊化? 悪霊化?
地縛霊って時点でろくなものではなくなったのだという自覚は、一応ある。
わたしには恨みが渦巻いている。
殺されたのを憶えている。詳しくは思い出せないけれど。
わたしは三年前、田舎から出てきた。田舎と言っても県内ではある。
それでも山があって田んぼがあって、蛙やトンボがやたらといて、都心部に憧れを持って育つには十分な田舎だった。
美容師になりたかった。
でも将来性が不安だと両親は許可してくれなかった。
だから高校卒業後はすぐに就職して、働きながら貯金をして、親を説得して、社会人五年目の時に渋々だけれど納得してもらえた。
わたしが真面目に頑張っていたからと、金銭面で多少の援助をしてくれるとまで言ってもらえた。
働きながら入学準備を進めた。都心部の美容学科のある専門学校。三年制の昼間部。
学校の最寄りではなかったけれど、家賃と利便性を兼ね備えたのがこのアパートだった。
思っていたよりも泥臭い地道な授業も、夜間帯のバイトも、一人暮らしも辛かった。辛くて、楽しかった。
このあたりは大雑把でもきちんと思い出せる。
わたしは青春と言って過言ではないその生活を満足に送る事が出来ずに殺された。半年は過ごせただろうか。
どうして殺されたのかは憶えていない。
しかし殺されたのだ。
思い出そうとすると頭と首とお腹が痛むような感覚があるから、死因に関係があるのだと思う。
本当に痛いわけではないだろうに。
この二〇三号室はわたしの部屋。
死んでからの方が長く住んでいる。
だから他の誰も住まわせない。
その気持ちが何かに通じて、わたしは心霊現象を引き起こせるようになった。
275
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 18:53:37 ID:O0oz36TE0
その平穏が崩されたのが二ヶ月と二十一日前。
不動産会社のノッポが彼女を連れてきた。
「駅近とはいかないけど便利な場所ですね」
「そうだよ。内装だってもう、綺麗過ぎるくらいなんだから」
「事故物件と言わなければ良いのに」
「だから、殺人だと告知義務があるんだって言っただろ。
わりと大きいニュースだったから調べれば出るし、下手に隠してバレるのがまずい」
「三年前は昔のようだし最近のようですからねぇ」
「広めの2Kでこの立地でこの家賃は、かなり破格なんだけどねえ」
そんな会話から、キッチンと洋室の引き戸が開いた音がした。
静かな足音が二人分歩いてきて、わたしのいる洋室、『わたしの寝室』の戸を引いた。
彼女はわたしよりも短い長髪だった。胸までの綺麗な黒髪。切れ毛が一本も見えなかった。
(´・_ゝ・`)「クー、一時避難ついでにちょっとだけ住んでくれない? ずっとでも良いけど。
さっきも言ったけど、間に一人挟んだら告知義務もなくなるんだよ。
この物件はなんの問題もございませんって事で」
ノッポが顔の前で両手を合わせ、頼み込んでいた。
川 ゚ -゚)「そんな大ごとに構えなくてもと、私は思うんだけれど」
そう言いながら、彼女がクロゼットの中を覗いていた。
わたしの時は押入れだった。わたしの荷物はもうない。物色されているようで気分が悪かった。
(´・_ゝ・`)「頭のおかしい手紙と盗撮写真は大ごとなんだよ、能天気」
川 ゚ -゚)「警察に相談したじゃないですか」
.
276
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 18:55:50 ID:O0oz36TE0
(´・_ゝ・`)「相談してても手紙が来てたって話だろう。無意味じゃあないにしろ、万全じゃない。それで万事が安全なら世の中はもっと平穏」
川 ゚ -゚)「おじさん、言い方がSNS権力叩きマンみたい」
(´・_ゝ・`)「喩えがピンとこない。
友達のお腹にいる時から知ってる子がストーカーに殺されました、なんてニュース見たくないだけですけど」
それから何がどうなったのか、分からないけれど。
彼女はわたしの部屋に引っ越してきた。『わたしの寝室』を彼女も寝室にした。
ベッドではなく簀の子敷きの布団だったけれど、寝具の位置は同じだった。
× × ×
彼女は二十五歳。今のわたしよりほんの少し年上。もしかしたら同い年かもしれない。
どうやら今は働いていない。職場でストーカー被害に遭って退職したらしい。
ノッポとの会話や家族との電話で漏れ聞くには、退職後は姿は見ないものの家に手紙が届くようになったと。
ストーカーから雲隠れした先がわたしの部屋。
それなのに彼女はそれを重く受け止めていない。鍵を閉め忘れるのがその証拠。神経を疑う。
押し入られた女の末路が分からないなら頭が弱い。
――?
頭と首とお腹が痛い。これ以上考えるのはやめた方が良いみたい。
277
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 18:57:21 ID:O0oz36TE0
彼女がコーヒーを飲んで本を読んでいるとスマートフォンが鳴った。
マグカップの中身を不自然に揺らしていたのに気付きもしない。
揺らし過ぎて縁から零れたのに、「零しちゃった」ですませてしまう。
川д川
川 ゚ -゚)]「あ、おじさん。こんにちは。元気ですよ。
心霊現象は今週もないですよ。はい……ああ、でもやっぱり水道の調子が悪いのかもしれないです。
私は気にならないけど、ほら、前にも言ったお風呂場の……そう、急に水になっちゃうって」
――心霊現象だよ!
――扉が勝手に開いて、勝手に閉じて、物が移動もしてるんだよ!
――鈍感女が気にも留めないだけで!
ブワア 从川#д川从 アアアッ
パン! ラップ音。
ズズズ 从川#д川从 ズズ 川 ゚ -゚)]「音? 家鳴りですよ。じゃなきゃお隣さんが踊っているか」
川 ゚ -゚)]「今はいないって……え、なんでおじさんがお隣さんのスケジュール把握して……
ああ、契約の時に。なるほど。パン屋さんだからあんまり会わないのか」
――心霊現象だってば!
パン! パン! パン! 立て続けにラップ音。
从川#д川从 川 ゚ -゚)]「あれ、でも音が……なんか近いな……」
川 ゚ -゚)]「あ、そういえば近所の公園で花火やるんですって。子供会の催しとかって。それの空砲かも。
あるじゃないですか、そういうの。窓、開けていたから近かったのかも」ガラガラ パチン
――ああ……この女は……どうした事かしら……
.
278
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 18:58:54 ID:O0oz36TE0
窓の鍵はかけたけれどカーテンが中途半端に開いたまま。二階とはいえ、窓は隣の戸建ての二階と向かい合っている。
戸建てがカーテンを閉めているからのぞかれないけれど、この女はとことん馬鹿だから気にもしていない。
わたしはこんな事なかったのに。
川д川 シュルル...
川 ゚ -゚)]「チラシをね、お隣さんに貰ったんですよ。うちのお店も出すんですよとかって」
川 ゚ -゚)]「ああー、分かってきた。うちのお店ってパン屋さんって事ですね。
興味なさ過ぎる、って……別にそんなつもりもないですけど。タイミングを逃しただけです」
川 ゚ -゚)]「うわ。言いましたね? じゃあ私は今からお隣さんが働いてるパン屋さんに行ってやりますよ。
おじさんと違って時間がたぁーっぷりあるものですから」
彼女が出かけた。引きこもる性分ではないようで、よく散歩に出かける。外出時にはきちんと鍵をかける。
ささやかな家具がある部屋にわたし一人きり。一人暮らしの時を思い出す。
わたしは飲みかけのコーヒーをテーブルに置きっぱなしにはしなかったけれど。
ストーカーはこのアパートには来ていない。
家族と、親の友達で不動産会社のノッポにしか新しい住所は教えていないからだろう。
近所のお店のチラシと各請求書以外にポストに投函はない。
279
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:02:37 ID:O0oz36TE0
彼女が出かけて少しか暫くしてから。時間間隔はもうよく分からない。
ガチャガチャと、ドアノブが揺すられた。
ガチャガチャ。ガン。
扉が開かないのを分かっていて、回りきらないドアノブがガチ、ガチ、と何度も首を捻られる。
首が痛くなる。苦しくなる。
ガン、ガン、ガン。バン!
扉が開かないのを分かっているのに、扉が引かれて、強く叩き戻される。
頭が痛くなる。怖い。
お腹が痛い。
バン! バン! バン! バン! バン!
一際強い音が五回鳴らされて、音はしなくなった。
::川д川::
こわい。
わたしはわるくないのに、ごめんなさいがあたまをしめる。
ごめんなさい。やめてください。いやです。やだ。
カタン、と音がした。
厚みを感じる投函は嫌な音だった。
× × ×
280
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:03:50 ID:O0oz36TE0
川д川 川 ゚ -゚)] テテテ..
流石に彼女の表情が暗かった。スマートフォンを耳に当てている。
投函されていたのはストーカーからの手紙だった。いよいよ住処が知られてしまったのだ。
鉢合わせなかったのは不幸中の幸いかもしれない。投函されてから彼女が帰ってくるまでに、外は暗くなっていたから。
テーブルにはストーカーから寄越された、淡い桃色の可愛い和紙の手紙が広げられている。
香水でも振ってあるのか甘ったるいにおいがする。おぞましい。
手紙は五枚はあるだろうか。癖は強いけれどバランスの良い綺麗な字にゾッとする。
その字がびっしりと、便箋の余白以外に整列しているのが、蛆虫が蠢いているように見える。
そのくせきちんと読めるのが気持ち悪い。
川 ゚ -゚)]「……あ、おじさん。メッセージ見てくれました?」
彼女の声が暗い。そういう神経は持ち合わせていたのね。
川 ゚ -゚)]「警察……っていうか、交番に連絡をして、見回りをしてくれるって話にはなりました。
さっきまで来てくれていて、今日は遅いから正式な書類は明日、明るくなってから出しましょうって……」
川 ゚ -゚)]「そう、昼間電話したあとすぐに出かけて……パン屋さん行って、そのまま散歩っていうかうろちょろして……
カフェ、行ったんですよ。パフェ頼もうか悩んで、食べたんですけど」
川; ゚ヮ゚)]「もしパフェ頼まなかったら、鉢合わせてたのかなって思っちゃって。
はは、ははは〜……はは、は……わ、笑いごとにしてくださいよ……」
.
281
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:05:10 ID:O0oz36TE0
川 ゚ -゚)]「あー……まあ、そういう事なので、もしかしたらまた引っ越しかも、みたいな」
出ていくのなら好都合。
でも、能天気な鈍感女でもこんな風に落ち込んでいる姿を見ると落ち着かない。
わたしが何をしたってなんとも気付かなかったくせに。
川 ゚ -゚)]「お隣さんに? ああ、そうですね。一応メモ入れておきます。
えっと……こういう事情なので、変な人を見たら通報してくださいって感じの事を伝えれば良いんですよね」
ノッポと電話をしながら、彼女はお隣さんへ出すお知らせ事項をメモした。
電話が終わるとストーカー被害のこと、そいつからまた手紙が投函された事などをルーズリーフに清書した。
声は暗いだけだったけれど、手紙を書く手は随分と震えていた。
そのお手紙をお隣のポストに投函してきた時の速さときたら。一瞬ってこれの事ね、という感じがした。
折角買ってきたパンは食べる気がしなくなってしまったみたいで、放置されている。
外からは公園で上がった花火の音がする。
× × ×
282
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:06:33 ID:O0oz36TE0
真夜中。
最近は蒸し暑いというので窓を網戸にして寝ていた彼女も、今日は家中の戸締りを二度も三度も確認して布団に入った。
眠れているかは分からない。
手も足もブランケットの中に窮屈にしまい込んで芋虫になっている。繭かしら。頭のてっぺんがかろうじて見える。
彼女も怯える事があるのか。心臓に毛が生えていると思っていたのに。
ふと、気のせいかと思った。
気のせいかと思って無視したのに、気のせいではなかった。
廊下を歩く音がする。
足音がお隣を通り過ぎてこの部屋の前にやってきた。
不穏な音がする。
ガッ、ガッ、ガッ。
硬い物で硬い物がぶたれる音。
例えば、鉄製の扉が鉄製の鈍器のようなもので殴られているとか。
ガッガッガッガッ。
ガコ。ガコッ。ゴリッ。
バヂンッ!
鉄がひしゃげて跳ねる音。
.
283
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:08:01 ID:O0oz36TE0
バヂンッ!
バヂンッ!
凶悪な音に彼女の繭が震え、のそりと顔を出した。こんな音がしても機敏に動かないの?
暗い室内で、彼女の肌がぼんやりと白い。恐怖で体が動かせないのかも。いつものふてぶてしさが嘘みたいにか細い。
物音を立てないようにそろり、と四つん這いになって寝室の戸に耳をつける。耳をそばだてなくても鉄はひしゃげている。
ノッポに電話をかけるなら早く動かないと。スマートフォンは隣の洋室に置いてある。様子を伺っている場合ではない。
恐怖は人を愚かにするのね。
ギュヂ。
金属の磨り合わさって潰れる音。
ギュヂヂヂヂヂ。ギギギギギ。
バギッ。
ジャリ、とすり足。
川; ゚ -゚)「あ……ドアチェーン、あ、あ、どうしよう……」
――普段しない事って咄嗟に出来ないのよ。冷静なつもりなだけで、動転してるんだもの
.
284
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:10:42 ID:O0oz36TE0
「クーさん……クーさん、お邪魔します。こんばんは。ぼくです。お久しぶりです」
静かで息荒い男の声だった。
ストーカーはすり足で室内に入ってくる。彼女は腰を抜かしたみたいで動けない。肩が震えている。
「急にお引越しされたので、ぼくびっくりしちゃいました。言ってくれればお手伝いしたのになって思って、ほら、ぼく車持ってるじゃ
ないですか。クーさんにも写真見せたじゃないですか。クーさんに助手席に乗ってほしいですって言ったら機会があればって言
ってくれたから、ぼくすごく楽しみになっちゃって。予定が合わなくてまだ乗ってもらってないんですけど、外に停めてるんで、も
う時間は遅いけど今からどうでしょう。ドライブですよ。ナイトドライブ。朝の海とかどうです。クーさん退職してからまだ無職でしょ
う。実はぼくもあのあとなんか周りが色々言ってきて、よく分からないんですけど、なんかすごく嫌な事ばっかり言われちゃって
辞めたんですよ。だからぼくら時間いっぱいあるじゃないですか。県外とか行っちゃうのもどうですか。あ、そうそう、車、あの色、
ピンク、クーさんってピンク好きじゃないですか。ですよね。ピンクの付箋使ってて一番減ってるなって見てて、そうしたらほらぼ
くにピンクの付箋でメモくれたじゃないですか。ピンク好きなクーさんすごく可愛いなって。やっぱり女の子ってそうなんだなって思って」
「クーさん、ここが寝室ですか」
「い、いきなり寝室に入っても良いんですか? き、緊張しちゃうな……」
戸の前に男が立っている。声が近い。気配がそこにある。
彼女はすっかり青ざめて、震えきってしまって動けない。
わたしはどうしたら良いんだろう。
川д川 :川!! ゚ -゚):
.
285
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:12:02 ID:O0oz36TE0
わたしには関係ないのに、これから起こるだろう事が分かって、怖い。
死ぬほど恐ろしい事が漠然と脳内を占領していく。わたしはこの恐怖に身に覚えがある。
戸が引かれた。
あんまりに暗くてストーカーの顔は見えない。見たくもない。
手にはローマ字の「J」に似た鈍器が握られていた。バールの実物を見たのは初めて。
「わ! え、えへへ……クーさん、そんな、な、なんか、それ、あれみたいな。三つ指ついてみたいな。お、奥さんっていうか……ふ、へへ」
:川!! ゚ -゚):「あ、あの……」
「へへ……へ、えへ。い、良いんですか? ぼく、お風呂入ってないんですけど」
:川!! ゚ -゚):「か、かえって、帰ってもらえませんか」
――あなたって本当にどういう神経をしているの
――言って帰る奴はバールで扉をこじ開けない。当たり前じゃない
「クーさん、クーさん、ぼくら、なんていうか、遠回りしちゃいましたけど」
:川!! ゚ -゚):「え、え、なにを」
「一緒にいないと駄目ですよね」
やめろ。
やめろ。
身の毛がよだつ。腹立たしい。怖い。許さない。
ストーカーが屈むと彼女は身を捩った。体勢を崩して倒れる。ストーカーが彼女の足首を掴む。
引き寄せて、開いた両足の間ににじり寄って。両手をついて覆い被さって。
やめろ。
やめろ。
やめろ。
286
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:13:35 ID:O0oz36TE0
彼女は抵抗する。男がバールを床にたたきつける。彼女の名前を呼んで、彼女が強ばる。
男が彼女の体に触れて、裾の捲れたお腹を撫でて、頭を下げる。
彼女の呼吸が浅い。
やめろ。助けてください。いやです。やめてください。ごめんなさい。助けて。
誰か。
誰もいない。
わたしの時は誰も助けてくれなかった。
誰も助けてくれなかったからわたしは頭を沢山そこら中に叩きつけられて体中を沢山ぶたれて水をかけられて服を奪われていやです
やだあ熱湯もかけられて髪を引っ張られて毟られて食べさせられて切られてごめんなさいもうやめてください痛くないところなんてどこ
もなくなってもまだ痛くされて血が出て歯が折れて嫌で嫌で堪らなかったのに誰も助けてくれなくてゆるしてくださいころしてください首
を絞められて沢山絞められてそれだときもちがいいだとかしにたいちばしっためがきばんだはがねんまくがしにたいわたしにねんえき
をべちゃべちゃぬりたくられて首が。
誰か。誰か。誰か。
誰もいない。
わたしは死んだ。彼女も。
違う。
わたしの時にわたしはわたししかいなかったけれど今は違う。
わたしがいる。
彼女の時には、今は、ここに、わたしがいる。
287
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:15:07 ID:O0oz36TE0
わたしに恥辱が行われた部屋が誰かに渡るなど、死んでも死にきれない。
わたしの目の前で同じ事が行われるなんて許さない。
ここは死後でも『わたしの部屋』。
だから後から来た人を追い出す権利がある。そうでしょう?
それってつまり、部屋に出た害を排するのには殺して良いって事でしょう?
ズル... 从川д川从 ズル...ズル...
髪の毛が伸びる。一本一本が指ほども繊細に言う事を利く。
床を這うわたしの髪が、鈍感な彼女には今だって見えないだろう。今は見えなくても良い。
ストーカーの首に髪を巻きつけて上半身を引っ張り上げる。首と顎が一直線になるまで髪の毛を巻きつけ、締め上げる。
髪の毛が肉に食い込む。
声も上げられず息も満足に吸えないだろう。
知ってるよ。わたしには経験があるから。
ストーカーがわたしの髪を千切ろうと首を掻くけれどわたしに触れられず、自分の首の皮膚を引っ掻く。
肉が抉れてもなお、がりがりと爪を立てる。間抜けめ。
釣り糸が手足に食い込む感触を知っているか。
縛りつけられて剃刀で体の表面を撫でられた感覚を知っているか。
熱湯をかけられ爛れた皮膚がくっつくんだよ。
折られて変形した骨をまた成形されるんだよ。
歯抜けに奉仕させたいんだってよ。
消化出来ない髪を吐き戻しては何度も口につっこまれるんだよ。
わたしは沢山、沢山、知っているよ。
288
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:17:00 ID:O0oz36TE0
――痛いだろう。痛いんだよ
――お前が傷付けられる事が苦痛だって知らないから教えてあげる
――安らかに死ぬな
ストーカーの息が漏れる音も鬱陶しい。髪の毛を口の中に入れて舌を巻き上げる。
ずるずると、ずるずるずると。
大口いっぱいに髪の束を差し込んで食道を下らせる。隙間を埋める。隙間もないのに埋める。
口が裂ければ良い。ごぽ、とストーカーがえずく。
どうしてやろう。もっと酷い事を。さっさと殺してはあげられない。
折れる直前まで首を捻ってあげようか。目を髪の毛の一筋で擦ってあげようか。爪を。
まずは彼女から引き離そう。
川 - )「ハッ……ハッ……カヒュッ」ゲホッ
ストーカーの首を吊り上げて体を浮かせた時、彼女が咳き込んだ。呼吸が浅かったから、過呼吸気味だったのかもしれない。
不意に。
彼女と目が合った。
気のせい?
川 - ) ゲホッ ゲホッ
川 ゚ -゚)ノ「だ、だめだよ……そんなこと、しちゃあ……」
从川д川从
焦点の合ってない目で、わたしに向かって手を伸ばす。
なんて、なんて、なんて! 怯えていたくせに!
今までわたしを見た事なんてなかったくせに!
――どこまで能天気なの!
「わ、わあー!!」
女の声。ごんっ。鈍い音。
289
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:18:45 ID:O0oz36TE0
川д川そ
驚いて、髪のほどけた男が床に転がった。
残念ながら生きている。
川 ゚ -゚) 「ん、う……?」
('、`*;川ゝ・`)「大丈夫ですか!? あいや、だっ、大丈夫じゃないですよね! 気持ち的には!」
('、`*;川ゝ・`)「いえ、そりゃあ大丈夫な方が良いんですけれども! あっ、もう一発やっときましょうか!?」
川 ゚ -゚) 「あ……あれ、お隣さん」
('、`*;川ゝ・`)「伊藤ですう!」
フライパンを構えたお隣の伊藤さんが、震えた大声を出した。
× × ×
290
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:21:02 ID:O0oz36TE0
川д川
川 ゚ -゚)「先日は本当にありがとうございました」
('、`*川「いえ。もっと早く帰れていたらって思います」
川 ゚ -゚)「勇ましかったです。フライパン」
(∩、∩*;川「あっ、や……武器になりそうって、咄嗟に思ったんだと思いますぅ……」
川д川
後日。伊藤さんのお部屋。
真夜中にパトカーの赤ランプがアパートを彩り、ストーカーは警察に連行された。
時間帯のためか彼女と伊藤さんは『わたしの部屋』で簡単な事情聴取を受けた。
震える彼女に、パニックになりながらも伊藤さんはついていてくれた。伊藤さんも震えていた。
「日が昇ってから改めて警察にお越しいただき詳しい話を」聞きたいと言って、警察はいなくなった。
玄関扉がバールでこじ開けられていたからか婦人警官が念のためにと警護に残されたけれど、伊藤さんは彼女に言った。
('、`*川ゝ・`)「うちに来てください。あたし、一人じゃ震えちゃいそうだから」
優しい人だった。
翌日、警察でどんな話をしたのか、わたしには分からない。戻って来た二人は仲が良くなっていた。
.
291
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:22:54 ID:O0oz36TE0
これは今まで気付かなかったのだけれど、わたしは少しの外出が出来た。
屋根裏で繋がっているからか、壁伝いにという事か。伊藤さんにお呼ばれされた彼女と一緒に、わたしは伊藤さんのお部屋にいた。
伊藤さんはあの時間に帰ってきたという話だった。花火大会の後片付けがあったらしい。
『わたしの部屋』の扉が開いている気がしたけれど、玄関ランプが消えていたから初めは気のせいかと思った。
伊藤さんは帰宅したらポストを確認するのが習慣なので、彼女のルーズリーフの手紙に気付いた。
その場で読んでくれた。玄関扉の引っかかりを、ただごとではないと気付いてくれた。
結果がフライパンで強打、である。
わたしが絞め殺さんばかりにストーカーに巻きつけた髪は、謎の赤い爛れとなっていたとの事だ。
部屋の使い方は同じでも、間取りを反転させた室内は少し新鮮だった。
リビングにした洋室にはセピア色のラグマットとローテーブルがあった。手触りが良いと彼女が撫で回す。神経を疑う。
気にした様子もない伊藤さんも少し変わった人だと思った。のんびりしていると言えば聞こえは良いだろうか。
紅茶とお菓子が出された。お菓子はわざわざお皿に盛りつけられている。こういうところは彼女と随分違う。
口をつけて、彼女がふっと笑った。
川 ゚ -゚)「いや、そういえば、フライパンの前もすごかったです」
('、`*川「前?」
川 ゚ -゚)「ほら、すごい形相であの男を睨んでいたから。その……今にも、って感じで」
('、`*川「え、えぇ? あたしそんな顔してました?」
川 ゚ -゚)「私、ろくに近所付き合いしてないのに。
あんなに真剣になって助けていただいて、本当にありがとうございました」
深々と頭を下げる。
伊藤さんが顔を真っ赤にして照れて、いえいえだとか手を振る。二人が顔を見合わせて、笑い合う。
292
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:24:14 ID:O0oz36TE0
彼女が見た、「すごい形相で」ストーカーを「睨んでいた」「今にも、って感じ」の人は。
川д川
――わたしだよ
スマートフォンから着信音がした。彼女のだった。
川 ゚ -゚)「あ、ごめんなさい、おじさんです。出ても良いですか?」
('、`*川「どうぞ、どうぞ」
川 ゚ -゚)]「すみません。……もしもし。うん、うん……」
伊藤さんは紅茶を飲んで、ビスケットを頬張る。勤め先のベーカリーの商品だという。
わたしは伊藤さんをじっと見る。伊藤さんもわたしが見えていない。
あの夜、伊藤さんの後ろにべったり張りついていたものが今は見えない。
部屋を見回してもどこにも見えない。幽霊でも気が昂っていると見間違いを起こすのかしら。
川 ゚ -゚)]「ああ、それは本当にそう……あ、丁度……ちょっと待ってください」
川 ゚ -゚)「伊藤さん、あの、すいません。いいですか」
('、`*川「んぐ? んっん……はい、なんですか?」モゴモゴ
川 ゚ -゚)「すみません。おじさんってここの不動産屋さんなんですが、伊藤さんにお礼がしたいって電話で。
背の高い……多分、内見とか一緒に来てたんじゃないかと思うんです。盛岡って男の人なんですけど」
('、`*川「あぁ! はい、はい。盛岡さん。へぇー、おじさんなんですかぁ」
川 ゚ -゚)「あ、知り合いのおじさんって意味ですけどね。親の友達で。
ええっと、それで、もし伊藤さんが嫌でなければ、呼んでも大丈夫ですか……? 今日、仕事休みだとかで」
('、`*川「はい、勿論。大丈夫ですよ。元気かなって心配されてるんですよ。
優しいんですよね、盛岡さん。あたしの契約の時も親切にしてくれましたし。私もお礼したいです」
川 ゚ -゚)]「ありがとうございます。じゃあそう伝えますね。
おじさん……え、なんか声おかしくないですか。気のせい? はぁ……ああ、それで……」
.
293
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:25:32 ID:O0oz36TE0
べったり張りついていた。後ろから抱きしめているみたいに。重なるみたいに。
あれは不動産会社のノッポに似ていたように見えた。彼女のおじさん。
似ていたというよりも、寧ろ。
川 ゚ -゚)「なんだか、やたらと張りきった声で気持ち悪かったです」
('、`*;川「そんな言い方しなくても」
川 ゚ -゚)σ「ところで、ずっと気になっていたんですが、あそこの壁」
彼女が洋室の壁を指差す。もう一つの洋室の正面に構えた壁。
壁掛けの観葉植物で隠されているけど、隠しきれていないその場所に、濃い灰色の染みがある。
川 ゚ -゚)「あれ、なんですか?」
('、`*川「あれねぇ、なんなのか分からないんですよ。壁紙張ってもああなって。
でも壁自体はなんの問題もなくて。もう隠しちゃえって感じで」
伊藤さんが観葉植物を外した。
縦に長い、横にはそれほど広がっていない奇妙な染み。
人影のようだな、と思ったのはわたしだけのようだった。
という事はおそらく、気付いたのはわたしだけだ。
あれはきっと良くない染みだ。
善悪までは分からないけれど、あんなにはっきり見えるのは並みの感情ではないはず。
良くない事が起こりえる、可能性のある染み。
294
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:26:59 ID:O0oz36TE0
川 ゚ -゚)「あ、ちょっと閃いた」パシャー
('、`*川「なんです?」
川 ゚ -゚)「こう……こんな感じに落書きしてみると……」カキカキ
川 ゚ -゚)「はは。見てください、おじさんに見えません?」
('、`*川「あっ。ふふっ。やだぁ、それっぽく見えちゃうじゃないですかぁ」
きゃっきゃと楽しそうに二人が笑う。
笑いごとで済めば良いなと私は思う。
川д川
片や『わたしの部屋』に住んでおいて。
片やえげつない生霊に張り憑かれていて。
こんなに暢気で楽しそうに生きているのだから。
――鈍感女達!
.
295
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:27:57 ID:O0oz36TE0
(
)
i フッ
|_|
川д川 事故住人のようです 川 ゚ -゚)
おしまい
296
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:29:18 ID:YeLHJsAA0
34本目
( "ゞ) インスタント幽霊のようです
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1660472333/
.,、
(i,)
|_|
297
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:29:40 ID:D7TH73Kk0
乙! 面白!!!
298
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:30:30 ID:2CISpq160
おつ!
めっちゃ面白くて夢中で読んだ
299
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:30:32 ID:NT5wljfw0
35本目
イミテーションエゴイストのようです
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1660472955/l30
.,、
(i,)
|_|
300
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:46:22 ID:NT5wljfw0
イミテーションエゴイストのようです
(
)
i フッ
|_|
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1660472955/l30
301
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:52:15 ID:b7ET38320
これいいな、すごくおもしろかった!
302
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:56:44 ID:YeLHJsAA0
(
)
i フッ
|_|
( "ゞ) インスタント幽霊のようです
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1660472333/
303
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:13:08 ID:X5HIFUYU0
36本目
('A`)副音声つきホラースポットのようです
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1660478997/l30
.,、
(i,)
|_|
304
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:38:05 ID:StE5vQfU0
37本目、いきます
305
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:38:46 ID:StE5vQfU0
(´・ω・`)心象漢字のようです
.,、
(i,)
|_|
306
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:40:00 ID:StE5vQfU0
(焦;^ω^)「やっちゃったお! 算数の宿題をまだやってなかったお! 忘れてたお……」
ξ怒゚⊿゚)ξ「ちょっとブーン! アンタまた宿題やってないの!? これで何度目よ!」
(悲´ω`)「おーん……。昨日はどうしても見たいテレビがあったからつい……」
ξ怒゚⊿゚)ξ「言い訳は後! 休み時間の内にさっさと終わらせないと先生から怒られるわよ!」
(悩;^ω^)「うう……。でもこの辺りはブーン苦手で時間かかっちゃうお……。間に合わないお……」
ξ呆゚⊿゚)ξ「もう、仕方がないわね。私が教えてあげるから、一緒にやりましょ」
(嬉*^ω^)「ほんとかお! ツンありがとうお!」
ξ恥*゚⊿゚)ξ「べ、別にアンタのためにやるんじゃないわよ! アンタが先生に怒られると時間の無駄になるだけだから!」
(´・ω・`)「……」
307
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:41:24 ID:StE5vQfU0
(´・ω・`)(ブーンとツンは相変わらずだなあ。まあ『漢字』がコロコロ替わっていくのは見ていて楽しいけど)
自分の席に座って頬杖をつきながら、ぼくはブーンとツンのやり取りを眺めていた。
うちのクラスでは見馴れた光景だ。何だっけ、こういうの。確か、「夫婦漫才」と言うんだったかな。
(苦;^ω^)「おーんやっぱり難しいお!」
ξ楽*゚⊿゚)ξ「口じゃなくて手を動かしなさい! 私だって暇じゃないんだからね!」
口では不満を言っているツンだけど、ブーンと何かをしている時のツンはとても楽しそうだ。なんてったって『顔に書いている』からね。
そうだ。
ぼくは人の感情が読める。
その人の今考えている気持ちが、顔に漢字として浮かび上がってくるのが見えるんだ。
308
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:42:55 ID:StE5vQfU0
この不思議な力に目覚めたのは三日前。
ぼくが校庭で友だちと野球をしていた時のことだ。
ぼくはジョルジュの打ち上げたフライをキャッチしようとして―――。
~~(´・ω・`)「オーライオーライ」
フラフラ
Ω
(´>ω<`) ボカッ
_
(;゚∀゚)「あっ!」
(;'A`)「大丈夫か、ショボン!」
(´>ω<`) キュゥ…
ボールを取り損ねてしまって頭を打っちゃったんだ。
気を失ったぼくは呼ばれた先生に背負われて保健室へ運ばれたんだけど、まあすぐに気がついた。
「ショボン君、大丈夫? 気持ち悪かったりしない?」
(´・ω・`)「平気です。ちょっと頭がヒリヒリするけど」
その後保健室で少し休んだけど、問題なさそうということですぐにクラスに戻れた。
ジョルジュはぼくに謝ってきたけど、ぼくが下手くそなだけだったから、むしろぼくの方から謝った。
それからは普通に授業を受けて、家に帰った。
帰ったらお母さんが心配そうな顔で頭のことを聞いてきた。学校から連絡が来ていたみたいだ。
ぼくは全然平気だと答えた。実際お母さんに聞かれるまでそのことを忘れていたくらいだったしね。
だけどその日の夜、もう眠ろうかなと思っていた時に、一瞬だけズキリと頭に痛みが走った。
「何だろう、頭をぶつけたせいかな」とちょっとだけ不安になったけど、寝たらきっと治るよねと思って、気にせず眠った。
その次の日からだった。
人の顔に、漢字が浮かぶようになったのは。
309
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:44:47 ID:StE5vQfU0
始めは、みんながぼくを驚かそうと自分で顔に漢字を書き込んでいるんだと思った。
でも、見る人見る人みんな漢字が顔についているし、他の人に言ったって「え? そんなのついてないよ」って言われるだけだった。
そこでようやく、この漢字はぼくにしか見えないものなんだと気がついた。
川楽д川「ねえねえペニちゃん知ってる……? 隣の県で起きてる、若い女の人が何人も行方不明になってる事件……」
('、`*川「あー、そう言えば朝のニュースでそんなのあったかも?」
それから、その漢字をじっと見ていると、どうやらそれはその人が今考えている気持ちが漢字となって顔に出てくることが分かった。
つまりぼくは、人の気持ちが簡単に読めるようになったってことだ。
川楽д川「きっと犯人は同じ人だよ……。何人もの女の人を捕まえて閉じ込めているんだ……。フフフ……」
('、`引*川「貞ちゃんは本当にそういう話好きねー……」
これって、つまりは超能力ってやつだよね。
何だか漫画の主人公になったみたいでワクワクする。
まあ漫画みたいな派手な魔法とかじゃないけど……。それでも他の人には出来ないことが出来るっていうのは、とても楽しい。
川楽д川「こういうのって、実は身近なところに犯人が潜んでたりするのよね……。平凡な日常を送りながら、裏では……みたいな」
('、`怖*川「うへえ、止めてよねホント。何だか怖くなってきちゃうじゃん」
(´・ω・`)(この力に目覚めてから、初めて知れたこともある。例えば……)
ぼくはなんとなく覗き見ていた隣の席の女子ふたりから目を離し、教室の一角を見た。
310
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:45:43 ID:StE5vQfU0
(寂^Д^)「うぇーいビロードぉ。お前はいつもテンション低いなぁ〜。もっとアゲていかねーと人生つまんねーよ?」
(焦><)「あ、プギャーくん……。い、いやぼくは……」
(寂^Д^)「え、なになに? 声小さくて聞こえないって〜。もっと腹から声出してけよ〜」
( <●><●>)「ビロード、こっちへ来て下さい」
(寂^Д^)「お?」
(安心><)「あ、ワカッテマスくん」
( <●><●>)「それじゃ失礼しますよ」
(寂^Д^)「……」
(寂^Д^)「……なんだよ」
(´・ω・`)「……」
いつもクラスのみんなにだる絡みしてくるプギャーくんだけど、どうも寂しさからそんなことをしていたようだった。
ホントはみんなと友だちになりたいけど、上手な話し方が分からないだけだったのかな……。
ぼくも彼のことはそんなに好きではなかったんだけど、今度からはもっと話してみてもいいのかもしれないと思った。
311
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:47:08 ID:StE5vQfU0
(´・ω・`)(他にも……)
(好*゚ー゚)「あ、ギコくん……」
(好,,゚Д゚)「……なんだよ」
(好*゚ー゚)「あの、これ。私が家を出るときに、ギコくんのお母さんから渡されたの」
(,,゚Д゚)「水筒?」
(好*゚ー゚)「ギコくんが忘れていったから、持っていってちょうだいってお願いされて……」
(恥,,゚Д゚)「……別に俺の机に置いとけばいいだろ。わざわざ手渡ししなくても。外ではあんまり話しかけんなって言ってるだろ」
(悲*゚ー゚)「あ……、うん……。ごめんなさい……」
(恥,,゚Д゚)「……俺、友だちと遊ぶ約束してるから」
(*゚ー゚)「あっ」
(悲*゚ー゚)「……」
(´・ω・`)(なるほどなるほど……)
ギコとしぃさんは家が隣同士のいわゆる幼なじみってやつだ。
ギコはだいぶしぃさんにそっけない態度でいることが多いけど……。こうして見ると両想いであることが分かる。
ギコは恥ずかしがってるだけなのだ。流石にもうちょっと素直になったらいいと思うけど、まあこれはあんまり、ぼくはちょっかいを出さない方がよさそうだ。
312
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:48:12 ID:StE5vQfU0
そんな訳で、ぼくはみんなが秘密にしていることや、表に出していない気持ちとかが全てお見通しなんだ。
もしかしたら、あんまりよくないことなのかも……と少し思うけど。
まあ、「あの子って実はこうなんだよ」みたいに他の人に言いふらさなきゃ大丈夫だよね。
(*´・ω・`)(ふふふ)
それにぼくだけが知っているっていう、なんていうか、優越感?みたいな気持ちになれて、とっても楽しいんだ。
(´・ω・`)(…………でも)
でも、実は楽しいだけじゃない。人の気持ちが読めるようになって、ちょっと気になることも出来たんだ。
それが―――
('、`*川「あ、先生だ」
(´・ω・`)「!」
( ・∀・)「みんな、おはよう。今日もいい天気だね」
(´・ω・`)(……モララー先生)
ぼくらのクラスの担任の、モララー先生。
ぼくは今、この人のことが分からなくなってきている。
313
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:49:51 ID:StE5vQfU0
('、`好*川「はぁ〜モララー先生、今日もイケメン……。好き……」
川д川「相変わらずペニちゃんは先生のこと大好きだね」
('、`好*川「そりゃそーよ。顔が良いのはもちろんだし、手足も長くてスタイルも完璧。しかも噂では実家が超お金持ちで土地をゴロゴロ持ってるんだとか。
もうパーフェクトよパーフェクト」
川憧д川「でもそうだね。私みたいなのでも優しくお話ししてくれるし。いい先生だよね」
('、`推*川「だよね〜。はぁ……、もう無理。まじ尊い」
(´・ω・`)「……」
小声で話す女子ふたりの会話を聞いて、ぼくも考える。
確かにモララー先生は人気がある。ぼくもどちらかと言えば好きな方だった。
でも、今は。
(嘘・∀・)「うん。今日も欠席の人はいないね。みんなの元気な顔が見られて先生も嬉しいです」
(嘘・∀・)「最近は気温もどんどん上がってきているから、外で遊ぶときは気を付けようね」
(嘘・∀・)「いつも言っててウンザリしちゃうかもしれないけど、こまめに水を飲むのを忘れないように。
さ、そしたら授業を始めるよ」
(;´・ω・`)(ずっと……ずっとだ。モララー先生は、ずっと嘘をついている)
314
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:52:28 ID:StE5vQfU0
普通の人たちは、いつも漢字が顔に出てきているわけじゃない。
何かに集中している時だったり、ぼーっとしている時には、顔に漢字が見えないってこともあるんだ。
それに、ほとんどの人は漢字が次々と変わっていく。漢字なんてとてもたくさんの種類があるんだから、ちょっとした感情の変化で入れ替わっていくのは当然なのかもしれない。
でもモララー先生は違う。ずっと『嘘』という漢字が顔に貼り付いている。
ずっと。話している時も、黙っている時も、歩いている時も、給食を食べている時も、ずっと。
他の漢字には絶対に変わらない。ずっと『嘘』なんだ。
(;´・ω・`)(先生は……。ずっと、何の『嘘』をついているんだろう……?)
先生は嘘をついている。でもぼくに分かるのはそれだけだ。その中身はまるで分からない。
それが、よりいっそうの不気味さを感じてしまうんだ。
この事は他の人には話せない。だって、何の嘘かも分からないのに、ただ先生が嘘をついているって言い回っても、きっとみんな相手にしないだろう。
逆にぼくが嘘つき扱いされてしまうかもしれない。
(;´・ω・`)(どうしたら、いいのかな……? 放っておくことしかできない? でも、見て見ぬふりをし続けるには、あまりにも不気味で……)
ぼくはここ数日、ずっと悩んでいた。
優しいと思っていた先生が、実はこんなにもおかしいんだなんて―――。
(嘘・∀・)「ショボンくん? どうしたの?」
(;´・ω・`)「っ! うわあ!」
気がつくと目の前に『嘘』の漢字―――いや、モララー先生が立っていた。
どうやら先生はぼくにずっと呼び掛けていたらしい。考え事をしていてまるで聞こえていなかった。
315
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:52:51 ID:StE5vQfU0
('A`)「ははっ、どうしたんだよショボン。寝てたんじゃねーの?」
_
( ゚∀゚)「いやでもずっと目を開けていたぜ。それで寝てたんならめっちゃ器用www」
友だちから冷やかされるが、ぼくはそれどころじゃなかった。
『嘘』の漢字が目の前にアップになった瞬間、本当に心臓が止まるかと思った。まだバクバクと心臓が鳴っている。
(嘘・∀・)「こら、茶化さないよ。大丈夫、ショボンくん? もしかして、具合悪いとか?」
(;´・ω・`)「あっ……い、いえ。平気です。ちょっとぼーっとしてただけです。すみません……」
(嘘・∀・)「……? そう? なら、いいけど。もし体の調子が良くなかったら、我慢しないで言ってね」
そう言って、先生は教壇へと戻っていった。授業が再開されるようだ。
(;´・ω・`)(い、いけないいけない。ぼーっとしすぎちゃった。先生を怪しんでいることがバレちゃうとマズイ。落ち着かないと)
(嘘・∀・)「…………」
(´・ω・`)(ん?)
(嘘・∀・)「はーい、そしたら教科書の108ページを開いてねー」
(´・ω・`)(今、先生……。こっちを見てた?)
いやまあ様子のおかしい生徒がいるんだったら注目するのは当たり前だ。
先生の謎はひとまず置いといて、今はしっかりと授業を聞こう。
.
316
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:55:19 ID:StE5vQfU0
そして、その日の授業も終わって。
(嘘・∀・)「はーい。そしたら起立。さようなら。また明日元気に登校しましょう」
「「「さよーなら!」」」
_
(遊゚∀゚)「よっしゃ終わったー。おーいショボン、今日これから遊ばねー?」
(´・ω・`)「あーうん。ゴメン、今日はもう家に帰るよ」
_
(遊゚∀゚)「んーそっか。じゃまた明日なー」
(´・ω・`)「うん、バイバイ」
(´・ω・`)(なんだか今日は疲れちゃった。早く家に帰ってゆっくりしよう)
そう思って帰り支度をしていた、ぼくの元に。
(嘘・∀・)「ショボンくん」
(;´・ω・`)「! せ、先生……」
モララー先生が話しかけてきた。
(嘘・∀・)「…………」
(;´・ω・`)「……? あ、あの……?」
と思ったら、先生は何も言わずにじっとこちらの顔を見ている。
何だろう。何かあるんだろうか。なんでもいいけど、何故かちょっと怖さを感じてしまう。
317
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:56:01 ID:StE5vQfU0
(嘘・∀・)「……ああ、ゴメン。そう言えばショボンくんは、数日前に頭をぶつけて保健室へ行ったよね?」
(;´・ω・`)「え? あ、ハイ……。そうですけど……」
(嘘・∀・)「その時のケガは……」
そこまで言って、先生はこちらにニュッと顔を近づけてきて。
(疑・∀・)「―――大丈夫?」
(;´・ω・`)「!!」
『嘘』の漢字が、変わった。初めて。
(;´・ω・`)「も、もう大丈夫です! さようなら!」
先生の顔があまりにも恐ろしく見えて、ぼくは逃げるように教室から飛び出した。
急いで靴箱まで行って校門を出て、走って家まで帰る。
(;´・ω・`)(あの漢字、あの漢字は……。そう、『疑う』って漢字だ。先生は、ぼくを疑っている?)
何を疑っているのか。
先生は何を隠しているのか。
何もかも分からず、ぼくは息を切らしながら全速力で家まで走っていった。
.
318
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:57:09 ID:StE5vQfU0
あれから数日がたった。
あいかわらず先生の顔には『嘘』がついている。
それに、時々じっと、ぼくの方を見ているようなことが何回かあった。
ぼくの気のせいかもしれないけど……。
不安は日に日に大きくなる。でも誰にも話せない。
ぼくはこのことをどう解決したらいいか分からなかった。
(´・ω・`)「はあ……」
今日の授業も終わり、帰り支度をする。
最近は何だか遊ぶ気にもなれず、ずっと真っ直ぐ家に帰っている。
今日もそのまま帰ろうとしたんだけど―――。
(嘘・∀・)「ショボンくん」
(;´・ω・`)「! 先生……」
数日前と同じように、モララー先生がぼくに話しかけてきた。
今日は、なんだろう……。
(嘘・∀・)「ゴメンね。もう帰ろうとしてたと思うんだけど……。少しだけ、時間いいかな?」
319
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:57:32 ID:StE5vQfU0
(;´・ω・`)「え……?」
(嘘・∀・)「ええと、そうだな……。今から十分後に、職員室に来てくれないかな? ちょっとだけでいいから、先生とお話ししよう」
(;´・ω・`)「は、話ですか?」
(嘘・∀・)「うん。何だか、最近のショボンくん、様子がちょっとおかしい気がするから。もし悩みとかあったら聞くよ?」
(;´・ω・`)「え、えっと。い、いえ、別に悩みなんてないです」
(嘘・∀・)「まあまあ。無くてもいいからちょっとだけ。ね? そんなに時間取らせないからさ」
(;´・ω・`)「……」
どうしよう。
正直に言えばイヤだ。
でもだからといって、いつまでもこのまま逃げられるとも思えない。
それだったら、とりあえず当たり障りのない話だけでもしておいた方が良いのかもしれない。
(;´・ω・`)「わ、わかり、ました。ちょっとだけなら……」
(嘘・∀・)「ありがとう! じゃあ、十分後ね。待ってるよ」
教室から出ていく先生の後ろ姿をただ黙って見送る。
本当に……、これで良かったのかな?
何だか、自分は間違えたことを言ってしまったのではないかと、今さらだけど思ってしまった。
320
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:58:50 ID:StE5vQfU0
とは言えそのまま黙って帰ってしまうわけにもいかず、ぼくは言われた通り十分後に職員室に行った。
(´・ω・`)「失礼します」
声をかけて中に入ると、職員室にはモララー先生ひとりだけしかいなかった。
先生は机のPCで何かの作業をしているようだった。
(嘘・∀・)「あ! ショボンくん! ゴメン、せっかく来てもらって悪いんだけど、ちょっと今すぐしないといけない仕事が出来ちゃって!」
忙しそうに手を動かしている先生。
あれ? もしかして、今日はこのまま帰れそう?
そんな期待が一瞬心に浮かんだけど、すぐにそれは消えていった。
(嘘・∀・)「三階の視聴覚室、分かるよね? そこでお話ししたいから、先に行って待っててもらえる?」
(´・ω・`)「え……? 視聴覚室、ですか? でも、あそこっていつも鍵がかかってるはずじゃ―――」
(嘘・∀・)「うん。でも今は開いてるから。ゴメンね、すぐに行くから」
(´・ω・`)「あ、はい……」
忙しそうな先生にこれ以上話しかけるのは悪い気がしたので、ぼくは職員室を出て視聴覚室へ向かった。
向かっている最中、ぼくは不思議に思っていた。
(´・ω・`)(なんでわざわざ視聴覚室に行くのかな? そのまま職員室で話せばいいのに)
視聴覚室の前に立つ。ドアに手を掛けると確かに鍵は開いていて、ぼくは中に入ることができた。
(´・ω・`)(鍵、先生が開けたのかな? 始めからここで話すつもりだった?)
視聴覚室の中には当然誰もいない。この部屋は普通の教室の二倍の広さがあるから、余計に寂しさを感じてしまう。
部屋の中はずらっと机と椅子が並んでいた。特に理由はないけど部屋の真ん中の席に座って先生を待つことにした。
.
321
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:59:58 ID:StE5vQfU0
カチ、カチと時計の音だけが部屋の中に響いている。
外は次第に夕日の色に染まりつつあった。
(´・ω・`)(遅いな、先生)
すぐに来るから、と言っていたが、あれからもう一時間はゆうに過ぎている。
流石に遅すぎじゃないかな? 一度職員室へ戻った方がいいかもしれない。
そう思い始めたころ。
カチャリ、と静かにドアノブが回る音が聞こえた。
(嘘・∀・)「ゴメンね、本当にゴメン。ずいぶんと遅くなっちゃった」
先生がこちらへゆっくりと近付いてくる。
カツ、カツと靴の鳴る音が部屋中に響いていた。
先生はぼくの隣の席に腰かけると、こちらの顔を見てニッコリと笑った。
(嘘・∀・)「今日はありがとうね。急なお願いして、しかもずっと待たせちゃって」
整った顔。大人なのにまるでぼくらと同じ子どものような笑顔。
きっとそれは多くの人を安心させる表情なんだと思う。
だけどぼくにはそう思えない。『嘘』の字が、ハッキリと浮かび上がっているから。
322
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:01:03 ID:StE5vQfU0
(;´・ω・`)「……」
(嘘・∀・)「……ふふ。ええと、そしたら何から話そうかな」
先生は穏やかな表情を崩さない。
それでも、何故だろう。部屋の中の空気が、ざらざらしているような気がする。
(嘘・∀・)「……もう一度聞くけど、本当に悩みとかないかい? 先生、なんだって聞くよ?」
(;´・ω・`)「……」
悩み。
さっきはとっさに無いって答えたけど、今の状況に悩んでいるのは確かだ。
しかし、まさか本人を目の前にして「悩みの原因は先生です」なんて言えるはずもない。
(;´・ω・`)「いえ……。ない、です」
だからこう答えるしかない。
だけど先生はじっとこっちの目を見つめてきて。
(嘘・∀・)「いや。ある」
(;´・ω・`)「!?」
(嘘・∀・)「ショボンくん、君は悩んでいるよ。他でもない、僕のことについて悩んでいる」
(;´・ω・`)「! なんで……?」
(嘘・∀・)「ふふふ、分かるよ。生徒のことなら。だって僕は先生だからね」
(;´・ω・`)「……」
(嘘・∀・)「さあ、話してみてよ。大丈夫。先生、何を言われたって怒ったりしない。約束する」
バレている。全部バレていたんだ。
どうしよう。どうしたらいいのかな。
先生は……怒らないと約束した。その『嘘』を貼り付けた顔で約束した。
それでも、もう……。ぼくは逃げられない。
323
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:01:40 ID:StE5vQfU0
(;´・ω・`)「……………………あ、あの」
(嘘・∀・)「うん」
(;´・ω・`)「せ、先生は……どうして…………」
(嘘・∀・)「なにかな?」
(;´・ω・`)「ずっと『嘘』をついているんですか?」
324
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:02:15 ID:StE5vQfU0
( ・∀・)
(;´・ω・`)(あ、れ……? 消えて……)
.
325
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:02:43 ID:StE5vQfU0
(殺・∀・)
(;´・ω・`)「ひいぃっっ!!!」
.
326
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:03:45 ID:StE5vQfU0
次の瞬間、先生は何処から出したのか、太いロープを取り出して、ぼくの首に巻き付けてきた。
(;´・ω・`)「えっ」
先生はロープを両手で力いっぱい引っ張った。
ぼくの首が締め上げられる。
(;´ ω `)「ごひゅぅ!」
喉に残っていた空気が追い出される。
ギリギリとロープがしなっている。
ぼくの足は地面を離れ、宙吊りになった。
(;´ ω `)「……っ! ぎ、……!」
先生がくるりと回転した。ぼくの体も回り、ぼくと先生で背中を合わせる体勢になる。
ぼくは先生に背負われるような形になり、さらに締め付ける力が強くなった。
(;´ ω `)「……、…………!」
そして―――。
ごきり、と。
全身に響き渡るような鈍い音が、確かにぼくの耳に聞こえた。
327
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:05:12 ID:StE5vQfU0
音が聞こえて―――たぶん、ぼくの首の骨が折れた音なんだろう―――その後も、先生はロープを引っ張る力を緩めなかった。
しっかり、しっかりと入念に。
ぼくの体がだらりとぶらさがるままになってから、およそ二分後。
ようやく先生は力を解き、ぼくは机の上に倒れ込んだ。
「ふう……」
ずっと力を込めていたからか、先生の息は上がっていた。
先生はしばらく深呼吸を繰り返してから。
「よし」
ぼくの体をひっくり返して、ぼくの顔を見た。
「…………」
じっと、じっと見ている。
なにかを確認するかのように、じっと。
そうしてしばらく無言でぼくを見つめた後。
「なんでだろうね」
誰に言うでもなく、呟いた。
328
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:06:13 ID:StE5vQfU0
「どうしてバレたんだろう……? 僕の嘘は、両親や爺様にすら見抜けなかったのに」
先生はひとり、声を出す。
話し相手なんてどこにもいない。
この場には、先生と、ぼくの死体しかいないんだから。
「でも、こうなった以上しかたがない。いつものように、山に連れていこう」
先生は部屋の後方にある掃除道具入れのロッカーの前まで行き、中から大きなバッグを取り出した。
チャックを開き、ぼくの死体をバッグの中へと詰め込む。
「爺様から貰ったあの山は何もないけれど、だからこそ埋めるにはちょうどいい。毎回助かってるよ」
毎回?
先生は何度もぼくのような死体を山に埋めているんだろうか。
そこでぼくはふと思い出した。ぼくの隣の席の、女子ふたりの会話を。
『こういうのって、実は身近なところに犯人が潜んでたりするのよね』
329
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:06:56 ID:StE5vQfU0
「ああ、それにしても」
「やむを得ないとはいえ、まさか自分の生徒を手に掛けることになるなんて―――」
バッグのチャックが少し開いている。
その隙間から先生の顔が見えた。
だから、ひとまずこれだけは言っておこうと思う。
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