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イミテーションエゴイストのようです
1
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:29:15 ID:KPq1WsYo0
百物語のようです2022参加作品
.,、
(i,)
|_|
9
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:34:13 ID:KPq1WsYo0
それを言うなら私だってアンタみたいなパッチリ二重になりたかった。っていうのは言わないでおいた。私にもプライドがあるのだ。
彼女の「私みたいになりたい」というのは何かの比喩とかではなかった。
その日から気付くと私と同じものを身につけている。
最初は盗られたのかと思ったけど自分のものはそっくりそのままある。
ペンケース、シャーペン、ノート、文房具はあらかた同じものになっていた。
靴下やヘアアクセも同じになっていく。新しいものを買うと次の日には同じものを身につけている。
そうなると他の友達も気付き始め、「可愛いね、お揃いなんだ?」などとくすくすヒソヒソ笑うのだ。
不愉快でしかない。
+++
10
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:34:35 ID:KPq1WsYo0
学校に着くまでの間、彼女だけが一方的に話していた。
やれ私の髪型が可愛いだの、やれ私の靴が可愛いだの。
( ‘∀‘)「私欲しいんだよね、あれ。キュートちゃん一緒に行かない?」
o川*゚ー゚)o「………」
( ‘∀‘)「あれ、何か都合悪かったかな?」
o川*゚ー゚)o「…なんか、さ」
( ‘∀‘)「うん」
(そんな話し方だったっけ?)
11
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:35:03 ID:KPq1WsYo0
言おうとして、止めた。
彼女は訛りがあった、筈だ。方言のような話し言葉をしていたと思うが、今は普通の話し方をしている。
o川*゚ー゚)o(まさか、話し方まで"真似"なんて…しないよね)
o川*゚ー゚)o「……なんでもない」
( ‘∀‘)「ふふっ、変なのぉ」
o川*゚ー゚)o「……」
( ‘∀‘)「あ、先生来たから席に行くね!」
o川*゚ー゚)o(誰も呼び止めてないし)
小さな違和感。でも流石に、という気持ちから深追いはしたくなかった。
12
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:35:25 ID:KPq1WsYo0
授業中視線を感じた。絶対振り向かないでやる。どうせあいつだ。
窓を見る。反射した教室で、案の定彼女が私を見ている。
文房具を全部折ってしまいたい。見てんなよ、と言ってやりたい。
わかってる、そんなことしたら私が『変な子』になってしまうのだ。
あいつが私の"真似"に飽きるのを待つしかない。
o川*゚ー゚)o(……でももし)
───もし、全部真似され尽くしたら、どうなるんだろう?
ふと考えてしまった疑問に寒気が走った。
そんなこと、死んでもごめんだ。
13
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:36:08 ID:KPq1WsYo0
休憩時間も、お昼も、帰り道でさえもまとわりついてくる。
部活に入っておけば良かった。……いや、どうせそれも"真似"されるか。
他の子たちは悪い子ではない。変に気を遣って、2人にしてくれる。
2人して避けられている、とは絶対に思いたくない。
重たいものを脚にぶら下げているような気持ちで下校する。
( ‘∀‘)「キュートちゃん!今朝話してたお店行かない?」
o川*゚ー゚)o「えー…今日はそういう気分じゃない」
これは本音だった。どこか行くにしたってこいつと行くのは嫌だ。
そんな気持ちが強かったから、そう言った。
( ‘∀‘)「そういう気分って何?」
珍しく彼女が強い語気をした。「そっかぁ」と軽く流されるものだと思っていたので面食らう。
14
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:36:44 ID:KPq1WsYo0
o川*゚ー゚)o「え、……寄り道したくないって、気分だけど」
( ‘∀‘)「先週は他の子と寄り道してたよね?今日は行きたくない気分ってどうして?学校で嫌なことあった?お金が無いない?生理きた?早く帰りたい?どういう理由で『そういう気分じゃない』の?」
( ‘∀‘)「教えて?」
o川;*゚ー゚)o「はぁ…?」
意味がわからない。どうしてそこまで知りたいのか。
いや、意味は、わからないわけではない。うっすら気付いている。
でも知らないフリをしたい。
15
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:37:10 ID:KPq1WsYo0
o川;*゚ー゚)o(こいつ本当に、私の"真似"し尽くす気なの…?)
o川*゚ー゚)o「……別に理由なんて無いよ。何、駄目なの?意味わかんない」
( ‘∀‘)「……」
( ‘∀‘)「ダメじゃ無いよお!具合悪いのかなって心配になっただけ!大丈夫なら良いんだ!」
ニッコリ笑われても吐き気しかしない。
気のせいなら良かった。
しかし一度目につくとそうとしか思えない。
16
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:37:42 ID:KPq1WsYo0
( ‘∀‘)「あっはは、面白いね」
o川*゚ー゚)o(…笑い方…)
( ∩∀‘)「んー、眠いなあ」
o川*゚ー゚)o(……癖…)
彼女の持ち物だけではなく、仕草までもが私のモノと同じになってきている気がする。
o川*゚ー゚)o(…気持ち、悪い)
言ってはなんだが、彼女はまるきり真逆の人間だ。
私は一重、向こうは二重。ストレートヘアーと癖っ毛。バレエで培った背筋と猫背。
似ているのは背丈くらい。
これを全て同じになんか出来るわけがない。
17
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:38:11 ID:KPq1WsYo0
──筈だ。
また家の前で待っていた彼女の顔を見てヒュ、と変な呼吸をしてしまった。
o川*゚ー゚)o「な、ん…」
( ‘∀‘)「あっ、おはようキュートちゃん!」
( ‘∀‘)「ね、一重にしてみたの、ネットでいっぱいやり方調べてさぁー。元々二重だったんだけどキュートちゃんみたいな可愛い一重にしたくて!」
o川*゚ー゚)o「意味、わかんない……」
( ‘∀‘)「え?」
o川*゚ー゚)o「当てつけ?私、一重がコンプレックスで…」
( ‘∀‘)「そうだったの!?じゃあ、そのうちアイプチとかする予定だった?」
o川*゚ー゚)o「……」
( ‘∀‘)「えー!じゃあそのままにしておけば良かったかなぁ失敗しちゃったー」
o川*゚ー゚)o「なに、それ……」
わかっていた。わかってはいたが、今日改めて理解した。
彼女は、おかしい。
世の中二重に憧れる人間がどれほどいるのかわからないが、二重にするメイク術はいくらでもある。私は一通りやって1番いい方法を試している。
それでもむくみがひどい日などは二重になりきらず、憂鬱な気分になる。
あれだけぱっちりな目をしていたのに、何をしたのか彼女の目は腫れぼったかった。
18
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:38:41 ID:KPq1WsYo0
( ‘∀‘)「あれキュートちゃん、腕怪我したの?」
o川*゚ー゚)o「……ぶつけただけだよ」
( ‘∀‘)「ふーん」
( ‘∀‘)ゴシャッ
o川*゚ー゚)o「!?」
( ‘∀‘)「あいたた」
( ‘∀‘)「あは、一緒だね!」
昨日の夜、不注意で腕をぶつけた。あざができた。なんてこと無い話。
聞いた人間が速攻で壁に腕をぶつけるなんて、思うわけがない。
19
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:39:55 ID:KPq1WsYo0
o川;*゚ー゚)o(何なの…気持ち悪い)
思わず目を逸らしてしまう。すると、嫌なものが目に入って、まさか、と口からこぼれた。
o川*゚ー゚)o「え、」
o川*゚ー゚)o「ねえ、それ、その靴」
( ‘∀‘)「そうなの!やーーっと見つけたんだー!キュートちゃんの靴!」
私が、私が気に入っている靴。探して探して探して、やっと手に入れた、私だけの靴。
オーダーメイドの一足のはずで、同じものなんて頼まない限りは手に入らない。
汚されたと思った。
それだけは同じにならないから、靴だけは絶対大丈夫だろうと思っていたのだ。
私の、大事な宝物を汚された。
o川*゚ー゚)o「……」
20
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:40:33 ID:KPq1WsYo0
「あっ、キューちゃんノートありがとう!」
o川*゚ー゚)o「え、あれ、貸してたっけ?」
「え?あ、ごめっ、違った!キューちゃんじゃなかった!」
o川*゚ー゚)o「……」
「ごめんね、2人似てるからさ…」
こういうことが増えてきた。
似てるって何?私は私だよ、あいつはあいつだし。
全然違う。違うよ。
21
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:41:03 ID:KPq1WsYo0
声をかけられる前にさっさと学校から立ち去って、次の日もいつもより早い時間に家を出た。
出来るだけ一緒にいくなかった。
学校に来れば、それも無理な話なのだけど。
「キュートちゃん!」
o川*゚ー゚)o(無視してやろうかな…)
o川*゚ー゚)o「えっ」
22
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:41:25 ID:KPq1WsYo0
o川 ‘∀‘)o「キュートちゃん!」
o川*゚ー゚)o「髪…」
o川 ‘∀‘)o「あ、気付いた?ストパーかけてみたの!」
o川 ‘∀‘)o「私、キュートちゃん大好きだから、憧れだから!」
23
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:41:47 ID:KPq1WsYo0
「ねえ、見てあの子たち…」
「え、双子?違うよね」
「やばw」
o川*゚ー゚)o「……」
o川 ‘∀‘)o「あ、どこ行くの?待ってよー」
どこでも良かった。
人の目につきたくない。
私と、私じゃあないものが並んでるところを見られたくない。
24
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:42:11 ID:KPq1WsYo0
o川 ‘∀‘)o「屋上初めて来たー!」
o川*゚ー゚)o「ねえ」
o川 ‘∀‘)o「なぁに?」
o川*゚ー゚)o「気持ち悪いよ、アンタ」
o川 ‘∀‘)o「そうなの?そう思うんだ?キュートちゃんは!そっかぁ、そうなんだぁ、覚えとかなきゃ」
髪型もヘアアクセもメイクもアクセもシャツも靴下も靴も全部真似された。
私のものだった。私は、私のものなのに。
25
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:42:38 ID:KPq1WsYo0
o川*゚ー゚)o「…もう、無理」
o川 ‘∀‘)o「もう、無理?」
o川*゚ー゚)o「真似しないで」
o川 ‘∀‘)o「真似してないよ」
o川 ‘∀‘)o「鏡だと思ってよ。鏡は自分の真似してるわけじゃないでしょ?」
26
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:43:01 ID:KPq1WsYo0
気味が悪いというよりは気持ちが悪かった。
吐き気がする。反吐が出る。気持ち悪い。
そう言えば、彼女も同じになるのかな。
──そんなわけない、彼女は私じゃない。
私じゃないんだってば。
o川*゚ー゚)o(話通じない…)
o川*゚ー゚)o(意味わかんない、疲れた)
疲れた、疲れた、疲れた疲れた疲れた疲れた疲れた疲れた!
もう嫌だ。どんどんどんどん侵蝕されていく。どんどん私が持っていかれる。
好きなものも全部全部全部。
27
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:43:35 ID:KPq1WsYo0
o川* - )o(私が死ねばこの子も死ぬのかな)
"真似"をするんでしょう?
私の鏡だというのなんでしょう?
じゃあ、アンタも、アンタが、××
.
28
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:44:05 ID:KPq1WsYo0
柵を乗り越えて、そのまま踏み出した。
o川 ‘∀‘)o「あっ!」
何で?鏡なら、同じように落ちなよ。
身を乗り出してこっちを見てるだけなんて、なんで
なんで嬉しそうな顔してるの、なんで
29
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:44:32 ID:KPq1WsYo0
「ああ、やっといなくってくれた!ありがとう、私これすっごく欲しかったんだ!」
.
30
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:44:56 ID:KPq1WsYo0
私にそっくりな私が笑っていた。違う、私はあんなんじゃない。私は、私なのに。
どんぐしゃ、なんてひどい音が耳に届いたような、そのまま響いただけのような、それすらも、もう、わからなかった。
だってもう周りは静かで、世界が冷たくなっている。
赤いものが目の端に見えた。周りも全部、赤になっていく。
私に似た女が、いや、彼女が上で笑っている。
「あーあ、そんな真っ赤な服、あたし似合わないのにね」
31
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:45:26 ID:KPq1WsYo0
(
)
i フッ
|_|
32
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:48:23 ID:tA9ezZy20
乙乙
ちょっとずつ気色悪さが増してく感じ好き
33
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:49:50 ID:CnnbFmPY0
オツ
34
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 19:56:22 ID:uXNmvFWA0
嫌な女あるあるが冗談じゃなくホラーに…乙
35
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:59:12 ID:4Y6OKCK.0
おつ
これが霊じゃないという恐怖
36
:
名無しさん
:2022/08/17(水) 11:26:33 ID:4wCCcpWk0
乙
これは気持ち悪い女だねぇ
37
:
名無しさん
:2022/08/18(木) 22:07:41 ID:SpZR31pE0
乙乙
読み進めるほど呼吸が浅くなった…怖い…
38
:
名無しさん
:2022/08/27(土) 16:36:36 ID:6LieMqSw0
乙
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