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( ・∀・)救出の魔法使いたちのようです
774
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:25:12 ID:6GLMRu4E0
( ´∀`)あんまりモナたちは花が咲いてる並木を歩いたことがないモナ
川д川枯れてるか、緑に染まってるかですものね…
川ー川なんだろう…普段花が咲くのを待っている時とは、また違った楽しさがありますね。こういう時間は
川д川あ、モナー君!
モナーは踊るように駆け出して、サダコはそれを慌てて追いかけた。
( ´∀`)むふふ!春になればこの辺の並木がばーーーっと桃色に染まるモナ!
枯木道の中、サダコの前で大きく両手を広げ子供っぽくモナーは笑った。
葉っぱの一つも付いていないけれど、サダコの目の前に広がる世界はとても華やかだった。
( ´∀`)…だから来年もそのまた来年もモナはキミと季節を楽しみたいモナ
川ー川ええ。叶うことなら、ずっと
「手紙とかじゃなくて自然にそういうこと言えば良いんだよ」と聞き慣れた声が脳に響いて、モナーは少し赤面した。
775
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:25:55 ID:6GLMRu4E0
( ・∀・)よ
lw´‐ _‐ノvおっす
失踪事件の調査を終えた帰りに、モララーは少女の後ろ姿へ声をかけた。
大家族で知られる魔法使いの名門、スナール家の長女シュルルド・ライスィ・スナールとは赤ん坊の頃からの付き合いがあった。
モララーがまだ1番隊の隊員だった頃、副官を務めシィを支えていたのがこの子の兄で休暇中はよく家に招かれていたのだ。
目を閉じても、昨日のことのように思い出せる。
自分に兄妹がいたらこんな感じだろうかと、とても幸せな心地がしたのを覚えていた。
lw´‐ _‐ノvモラちゃんが街をぶらつくなんて珍しいね
( ・∀・)あ。もしかしてキミ、サボってると思ってる?
lw´‐ _‐ノvちがうんか
( ・∀・)ちがうんだなあ。今はね、探偵ゴッコやってるんだ
776
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:27:11 ID:6GLMRu4E0
lw´‐ _‐ノvたんてーごっこ?
( ・∀・)そ。『時間探偵モララー 謎の失踪事件を追え!』ってカーンジ
lw´‐ _‐ノvそのわりには一人じゃんよ
少女はチッチッと舌打ちしながら顔の前で人差し指を振った。
lw´‐ _‐ノvたんてーさんには話をでっかく動かす助手さんが必要なんだぜ、ボクぅ?
( ・∀・)あのねキミ。こんな真っ昼間からうろついてアカデミーはどうした?
lw´‐ _‐ノvおっとみなまで言うなぃ。おめぇさんのサポート役、このワトシュンくんがつかまつってしんぜよう
777
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:27:54 ID:6GLMRu4E0
どどん、と効果音を口に出してからシュールは胸を張った。
そのままモララーは時間を止めて背後に回り、シュールの背中をぐいと押し出す。
( ・∀・)助手クンにはまずアカデミーを調査してもらおうか
lw´‐ _‐ノvあら〜お兄さんちょっとつれないんじゃなくって〜
( ・∀・)ガクセーはガクセーらしくですよ
lw´‐ _‐ノvモラちゃんもあんまし学校行ってないくせにぃ
モララーは有無を言わさずシュールを担ぎ上げて運ぶ。
lw´‐ _‐ノvおんぎゃー!はなせロリコンー!
(;・∀・)わかったわかった洒落にならん!降ろすから!
778
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:28:37 ID:6GLMRu4E0
( ・∀・)なんで行きたくないのさ?
lw´‐ _‐ノvだーってさ。つまんねえべよ、やーんぴ
詳しい理由には触れなかったが、なんとなくモララーにはわかっていた。余裕ぶった物言いから感じる痛々しさがあまり他人とは思えなかったからだ。
もし自分が同じ立場だったら、どういう風に反骨心を育むだろう。
死にに行くためにお勉強するなんて馬鹿馬鹿しい、そう思うのだろうか。
( ・∀・)妙にぼかす若人の言葉 宙に浮かぶ「どうしたものか」
lw´‐ _‐ノvいいかオレたちはマブダチ 今めんどくせえ話はナシ いざ火の中水の中つけ回し いいぜ付き合ってやるぜ謎探し
( ・∀・)よー
lw´‐ _‐ノvせいほー
( ・∀・)…まあ、つまんないことも色々めんどくさい事もあるだろうけどさ
lw´‐ _‐ノvうむ。たいくつとアカデミーは主婦の敵である
( ・∀・)一個だけね、学校生活を楽しむためのちょっとした方法があるんだ。おバカさんを釣る方法。…落とすって方が正しいかな?
lw´‐ _‐ノvけっ、落とせる武器があるんなら是非ともほしいぜ
口を尖らせ、気を紛らわすように足を揺らす少女を見て、モララーは懐かしむように微笑んだ。
779
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:29:46 ID:6GLMRu4E0
( ・∀・)…ま、そいつはまた今度教えるとしてさ、とりあえず。のほほんとしてカラッとしたヤツ狙って話しかけてみなよ。キミの世界の中で、うんと眩しいヤツ!
lw´‐ _‐ノv…いるかなー、そんなの
( ・∀・)きっと居るさ。すぐに一人また一人と友達も出来る。6歳で人生に冷めた視線を向けるのは早すぎるよ、その前に一度周りを見渡してみなさい
lw´‐ _‐ノvむう ちっちゃい頃からひねくれ野郎だった男の台詞はタメになるな
( ・∀・)だろ?僕は反面教師としてはこれ以上ないほど優秀だぞ、ふふん
ぴょんとシュールがベンチを降りて、モララーに向き直った。
lw´‐ _‐ノvちょっと兄さんぽかったぜ、おモラの旦那よ
( ・∀・)…ああはなれないさ
表情が明るくなったシュールとは対照的に、モララーは苦々しい笑顔を浮かべた。
780
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:31:54 ID:6GLMRu4E0
( ・∀・)…ちょっとアカデミーに戻る前にさ。これ見てくんない?
モララーは地図を広げて差し出した。シュールが不思議そうにそれを覗き込む。
lw´‐ _‐ノvボス、こりゃなんでえ?事件の手がかりかい?
( ・∀・)…いや、事件に関しちゃだいたいの見当はついてるんだがね。どうしても分からない所がある
lw´‐ _‐ノvなんざんすか
( ・∀・)シューちゃんはこれをどうなぞる?
lw´‐ _‐ノvふむ…
( ・∀・)お子様の独創的な視点からヒントが欲しいんだ
lw´‐ _‐ノvあんまアテクシに純真さを期待しないでくんなましよ
781
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:32:57 ID:6GLMRu4E0
lw´‐ _‐ノv炊きたて刑事に言わしてもらうとだな、こいつは一本の線とかじゃあないね
モララーは興味深そうな手つきで黙って次の言葉を待った。
lw´‐ _‐ノvあちしには根っことか、トーナメント表みたいに見える
( ・∀・)失踪者集めて何を賭けて戦うってんだ
lw´‐ _‐ノvさあ?ほれ、なぞってみ?2番目に出てきたヤツが勝ちだよ
( ・∀・)ええと、こいつとこいつがかち合うだろ?んで、Bブロックは……
途中でモララーはその指を動かすのをやめた。
( ・∀・)やーめぴ。別に誰が勝とうったって行き着く先は一緒じゃんよ
lw´‐ _‐ノvそ、一緒だよ。決勝の部隊はここかな。それともここかしらん
782
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:33:43 ID:6GLMRu4E0
( ・∀・)…んん?シューちゃん、そこに置いた指、まっすぐ上に動かしてみて!
lw´‐ _‐ノvん〜?むふふ。町外れに広い野原があるだけだぜ
( ・∀・)そいつだ…ありがとうシューちゃん!キミはとてもとても優秀な助手だよ!
モララーは思わずシュールの手を強く握った。
lw*´‐ _‐ノvんへへ、なんかわからんがサンキュ。根元見っけたかい?
( ・∀・)ああ。とても助かったよ…このお礼は必ずするからね!
lw*´‐ _‐ノv気長に待ってるぜブラザー。頑張ってね
( ・∀・)…うん、頑張ってくるさ。キミもね!
783
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:34:36 ID:6GLMRu4E0
モララーはサダコの実家の花屋を訪れていた。
少し屋上のカフェを見上げてみる。上の階にも下の階にも客は一人もいないようだ。
大きな影を作っている大樹が、なんとなくおぞましく見えた。
「あら、いらっしゃい大魔導師様」
( ・∀・)こんにちは。少しこちらに用がありまして
「何か?」
( ・∀・)……アカシアってあります?
サダコの母が花を包んでいる間に、モララーは店内の花々を見ていた。
ない。
探しているものがない。
失踪者達の部屋にほのかに漂っていた異形の花の香り。
僅かに落ちていた銀色の花びら。
これに気づいた時、モララーの胸を恐ろしい想像と重苦しい感情が支配した。
それでもモララーは足を動かさずにはいられなかった。
シィが自分一人にこの事件を任せてくれたことを、強く強く感謝した。
784
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:35:16 ID:6GLMRu4E0
( ・∀・)あ、苗もいただけますか
花束を受け取って、モララーはサダコの母に伝えた。
「ありがとうございます、合わせて1786オツです」
( ・∀・)どうも。ところで、この店は銀色の薔薇は取り扱ってないんですか?
「銀色の薔薇?さあ…」
( ・∀・)…サダコさんの胸に挿した花が増えていたのを見ましてね
「何処かから摘んできたのでしょう…銀色の薔薇が欲しいのですか?」
( ・∀・)まあ、一応。色々と調べたいこともありますから
モララーは彼女の足元を見た。ロングスカートの下から長い長い蔦が、奥へと続いている。
モララーは顔を顰め、鋭くサダコの母を睨んだ。
「それでしたら、こちらに」
彼女は振り返り、モララーの前に一輪の薔薇を出した。
その袖口から銀色の蔦が勢いよく伸び、モララーに襲いかかった。
785
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:35:55 ID:6GLMRu4E0
( ・∀・)時の大魔導師、モーラ・モラール・マタリウスが命じる。時よ、止まれ
冷や汗ひとつかかず、その襲撃を予想していたかのようにモララーは唱えた。
銀色の蔦はモララーの眼前で停止し、サダコの母は笑顔のままその動きを止めた。
( ・∀・)……さて
モララーは店の奥まで進んだ。足元から伸びた蔦が、床を突き破り埋まっている。サダコの母はこの影に居る魔物の端末のひとつに成り果ててしまったのだろう。
( ・∀・)とりあえずこいつは貰っておくよ
モララーは銀色の薔薇を取り、懐にしまいこんだ。
このままこの女性を生かしておくわけにはいかない。
拘束する手段も、助け出す手段も自分は持ち合わせてはいない。
魔物として扱い、討滅するほかに手段はなかった。
モララーはアサピーから貰った火属性の魔力が詰まった爆弾を取り出した。
ピンを抜き、宙へ放り投げる。
時間が動き出した後、この店の全てが炎の中に消えていくのだろう。
あくまでも、事故として周囲の目には映るのだろう。
モララーは静かに店を去り、充分に離れてから魔法を解いた。
786
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:36:40 ID:6GLMRu4E0
モナーとサダコはあてもなくぶらぶらと歩いていた。
初めて出会った時も、こうして歩いていたと思う。
なんとなくアカデミーの前を通りかかったり、無意識に思い出を振り返るようなコースになっていた。
その終着点はサダコの家の花屋だった。
あの日のように夕暮れ時の景色を楽しんで、他愛もない話でこの一日を締めくくるつもりだった。
何もかもが焼け落ちていた。
思い出の場所も、綺麗な花々も、全て。
モナーは呆然と立ち尽くした。
サダコはわなわなと震えだし、静かに呟いた。
川;д川お、お母さんの薔薇…
川;д川お母さんの薔薇の声、聞こえなくなっちゃった…
(;´∀`)…サダコ?
その言葉に違和感を抱き、モナーはふと振り向いた。
サダコの姿はその場から忽然と消えていた。
(;´∀`)……何が、何で、何モナ………?
787
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:37:35 ID:6GLMRu4E0
軽い足取りでアカデミーを出たシュルルド・ライスィ・スナールの後ろを、一人の男性の影が追っていた。
シュールもそれに気がついていないわけではない。足を早めて歩いていく。
lw´‐ _‐ノvあちしこっちだから。ばいばい
「バイバイ!」
隣を歩いていた少女が元気に手を振った。シュールも嬉しそうに振り返し、また歩きだした。
カツ、カツ、カツ。
足音はゆっくりと近くなる。
振り向きざまにシュールは手のひらほどの大きさの石を生成して投げつけた。
手応えはなく、地面にカラカラと転がる音がする。
「貴方は幸福ですか?」
lw´‐ _‐ノvぼちぼちでんな
突然現れた男を見上げながら、シュールは不敵に呟いた。
788
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:39:06 ID:6GLMRu4E0
「自らの心を偽ってはいけませんよ」
lw´‐ _‐ノvおっちゃん経験薄いんだね。いい女には嘘がつきものって言うじゃん?
「けれど、もう貴方は自分を偽る必要はありません。寂しいという感情もいずれ捨て去る事が出来ますよ、これを使えば…」
そう微笑んで、銀色の花を男が差し出す。
lw´‐ _‐ノvわりいんだけどさ、お友達なら間に合ってんのよね。今日も一人できたしさ
男が口の中から蔦を伸ばす。シュールは驚いて、後ろへ尻餅をついた。
( ・∀・)汝の時よ、止まれ
lw´‐ _‐ノvひ〜。おせーよモラちゃん、か弱い少女がやられちったらどうすんのさ
( ・∀・)本当にごめんよ。重ねてキミを囮に使うような真似をしたことも謝る
モララーはナイフを蔦に突き立て、力いっぱい引きちぎった。
止まったままの男を殴打し、組み伏せる。
789
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:39:59 ID:6GLMRu4E0
( ・∀・)シューちゃん。火、出せる?
lw´‐ _‐ノvあんまし得意じゃないぜ。ちっちゃいやつしか出せないかも
( ・∀・)チラつかせておいて。時よ、動き出せ
「き、貴様…!先程の魔法使いか……!」
( ・∀・)やっぱりある程度情報を共有してるんだな。答えろよ、“お前”はどこにいる?言わなきゃ燃やす
「ハハハハハ!無駄だ。私達は増え続ける、既にこの国全体に広がって…」
ぷつりと糸が切れたように、男は白目を剥いて一切の動きを止めた。身体から這い出た蔦が、するすると地面に潜っていく。
モララーは舌打ちをした。
lw´‐ _‐ノvモラちゃん…
( ・∀・)大丈夫。キミは僕が家まで送っていくから
( ・∀・)ちゃんと、守り抜いてみせるから
790
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:41:09 ID:6GLMRu4E0
4番隊の隊舎にシィ、モナー、アサピーは集められた。
遅れて入室してきたフィレンクトを見るなり、モララーは深々と頭を下げた。
( ・∀・)申し訳ございませんでした、フィレンクト・シェフェルトン…私はやむを得ず、貴方の奥様を殺害しました
(;‘_L’)………まず話を、聞かせてくれないか
フィレンクトの纏う穏やかな空気が一気にひりつくのをその場にいる全員が感じ取った。
モララーも、彼の顔を見上げずともそれがわかった。
(-@∀@)とりあえず解析結果の方に移らせてもらおうか?
アサピーが席を立つ。重々しい空気の中で、そのぶれなさは救いだった。
(-@∀@)モナー。サダコはこの銀色の薔薇を何と言っていた?
( ´∀`)……サダコに勇気をくれる存在、胸に挿していると自分の想いにとても正直になれる気がする、そう言っていたモナ
モナーは枯れ果てた心の地平から水を一滴絞り出すように答えた。
791
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:42:13 ID:6GLMRu4E0
(-@∀@)…自分の想いに正直にね。間違っちゃいないよ、こいつの匂いを嗅ぐとある程度の多幸感が得られる。麻薬や自白剤などにも転用できるだろうね、雄弁は銀ってやつさ
アサピーがトントンと銀色の薔薇を密閉したケースを叩く。辺りを包んだ沈黙はどす黒く、輝かしいものではなかった。
( ´∀`)……サダコとモナは
(-@∀@)それに浮かされていただけだよ。申し訳ないが一応説明はついてしまうんだ
(-@∀@)雄弁になる、多幸感を得る、正直になる…あくまでそれは効果ではなく事象に過ぎない。こいつの本質は感情の固定化さ
(-@∀@)モララーも被害者の自宅を回って、その残り香を嗅いだだろう?ならわかるはずだ
( ・∀・)・・・・・・
モララーは息を飲んだ。
792
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:44:07 ID:6GLMRu4E0
(-@∀@)一つの目的のために、疑念、後ろめたさ、その他諸々…そういった感情は薔薇の香りに全て削ぎ落とされる。キミで言うと、「事件の謎を突き止めたい」といったところかな
( ・∀・)…ああ。だから僕は躊躇いもなくフィレンクトさんの妻を殺せた
(#‘_L’)……モララー君、キミは!
(-@∀@)おっと待った!僕の話はまだ終わっちゃいないぞ!
(‘_L’)…失礼した。続けてくれたまえ
(-@∀@)要するに、洗脳向きなのさ。躊躇い、戸惑い、恐怖、それらのマイナスな感情を削ぎ落とされた人間は、それによって得た成功を「薔薇のおかげだ」と信じ込むようになる。そうなってからはトントン拍子に中毒状態に陥るわけだ
(-@∀@)銀色の薔薇も、匂いを嗅いだ人間から吸い上げた負の感情を得てそれを「本体」に捧げる。そして完全に使用者が魅入られた後は、その身体に入り込んで端末を作るのさ。さらに薔薇を配らせるためにね
(*゚ー゚)…この世に存在しちゃいけないものね
(‘_L’)…妻は
(-@∀@)完全に魅入られたクチさ。“花のおかげで生きている”のではなく“花のために生かされている”ってわけ
淡々と告げるアサピーに、フィレンクトは頭を抱えた。
793
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:45:13 ID:6GLMRu4E0
( ´∀`)…おかしいモナ
静かにモナーが声を漏らした。
( ´∀`)だって筋が通らんモナ
( ´∀`)だってサダコは9年間もあの花と共に居たモナ
( ´∀`)9年間もモナと文通してたモナ、あの言葉が全部嘘なわけないモナ、9年間無事だったモナ
(-@∀@)…抉るようだが、君が過ごしてきたのはどうしようもなく虚構の時間で、どうしようもなく真実だったんだ
(-@∀@)彼女が紡いできた言葉は、本心だよ。そして君が育んできたものもまた真実だ
(-@∀@)モナー。彼女がお前を疑ったことがあったか?彼女と喧嘩したことが、お前…一度でもあったか?
( ´∀`)……………ないモナ
794
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:46:10 ID:6GLMRu4E0
( ・∀・)…もういいだろう、アサピー。結論を出してくれ、何故サダコは無事だった?
(-@∀@)それなんだがね。彼女の中毒症状は、ほぼ初期状態に近いものだったんだ。そうじゃなきゃ、モナーの言う通り筋が通らない
(*゚ー゚)初期状態?
(-@∀@)……彼女の願いによるものだろうな
(-@∀@)薔薇は精神力の弱い人間や、軽薄な奴、深い悲しみを背負った人間を狙う傾向にあるようでね。そういう連中の方が転がしやすいんだろう
(-@∀@)…フィレンクト。サダコはいつから銀色の薔薇を胸に挿していた?
(‘_L’)…ずっと、ずっと幼い頃。7歳だ。よく覚えている…アカデミーに入学したいと、私に頼み込んできた時の強い眼を…
(-@∀@)最初の願いはそれだったろうな。そしてそれが叶い、サダコは薔薇を好いた。そこからが問題だった
(;´∀`)……モナのせいだ
(-@∀@)そう。初めて彼女は恋を覚えた。が、もともとの引っ込み思案な性格が幸いしたんだろうさ
795
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:47:35 ID:6GLMRu4E0
(-@∀@)サダコは薔薇とモナーを重ね合わせて、憧れ、愛し、「遠くから見ているだけでいい」と願った。それじゃあ薔薇も叶えようがない。見ているだけで欠片もアクションを起こせないんだからな
( ・∀・)…その後に、特例卒業か
(-@∀@)そうだ。再び彼女の生命の歯車は動き出した。そして彼女はひたむきに筆を取り、明るくモナーと笑いあい、僅かな時間でも充分に愛を育み、自分の魔力の限界なんかお構いなしの全力を出し切って試験中に倒れ、数年間をアカデミーで過ごした
(-@∀@)彼女の願いは、精神的にも実力的にもモナーの隣に立てる人間になること。それだけが彼女を長い間奮い立たせ、守り抜いてきたんだ
(;‘_L’)だ、だが卒業して、魔法局入りして、副官になってしまっては…!
(-@∀@)……願いは叶った。その納得が、彼女の中に生まれたんだろう
796
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:50:04 ID:6GLMRu4E0
( ´∀`)悪ふざけも大概にしろモナ
モナーは不愉快さをあらわにして席を立った。
( ´∀`)モララーも、アサピーも、シィまで…ドッキリにしては手が込みすぎるモナ
(-@∀@)モナー、サダコは…
(# ´д`)不愉快なことを言うなァ!!
(#-@д@)現実はもっと不愉快だっ!!
アサピーはモナーの胸ぐらを掴み上げた。瞳に悲痛の色を浮かべながら、モナーは歯を食いしばってアサピーを睨みつけた。
達観していて、鋭いモナーらしくない癇癪だった。いや、むしろ彼は自らの犯した罪に呑まれて自壊してしまいそうなほどに現実を理解している。
アサピーとモララーは、それを読み取れてしまっていた。
(-@∀@)…クソっ
アサピーは静かに彼の身体を降ろした。
(# ´д`)ウソだ!ウソだあっ!!ウソだああああっ!!
力いっぱい叫んでいた。
そう言い聞かせたかったのだ。そう信じたかったのだ。
アサピーも、モララーも、立ちすくむフィレンクトも、シィですら。それを止めることはしなかった。
叫びながらモナーは4番隊の隊舎から走り去った。
友人達と、否定した事実だけをそこに残して。
797
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:50:59 ID:6GLMRu4E0
いない。
3番隊の隊舎にも。
どこにもサダコの姿がない。
それでも探さずにはいられなかった。
強く、強く、サダコに会いたいと願った。
息切れを起こし、その場に立ち止まる。
脇に置いた感情が、ふと蘇る。
( ´∀`)昨日、サダコのやつ来なかったモナ
( ´∀`)花の世話してたとか、よく覚えてないとか
( ´∀`)…全部、全部
( ´∀`)モナが欲したからモナか?
( ´∀`)でも……
唇を噛み締めたまま、しばらく動くことができなかった。
( ・∀・)でも、人を愛する事が罪なんて間違ってる
(-@∀@)というよりか、だ。愛する気持ちを罪に変えてしまう存在こそが救いがたい傲慢であり、この世に存在しちゃあいけないものさ
( ´∀`)……モララー、アサピー
(-@∀@)…行こう、モナー・マエモゼム。ヤツの根元は僕らが知っている
( ・∀・)まだ彼女が魅入られて日が浅いなら…救える道はあるはずなんだ
798
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:52:18 ID:6GLMRu4E0
辿り着いたそこには銀色の世界があった。
花園の中で、その姿を見つける事は容易かった。
( ´∀`)……綺麗モナ
自然と、モナーはそう口に出していた。
やっと会えた。
とても嬉しかった。
けれど、身体中から湧き上がるそれはこのむせ返るような花の香りによって植え付けられたもの。
違う。
(# ∀ )おれはここから、お前を引きずり出しに来たんだ
.
799
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:53:29 ID:6GLMRu4E0
川ー川あ、モナー君!
川ー川ほら、見てモナー君!ここには私の友達がいっぱいいるんです!
川ー川すごく綺麗ですよね…切り取ってしまいたいくらい…
川ー川ねえモナー君。ここに居ると、寂しい事なんてない…寒いことなんてないんです。あなたと私が溶け合ってみんなで一つの心を使うんですよ?
(# ∀ )……なあ。わかってるか?それ、結局一人ぼっちなんだよ
川ー川…?それはおかしいです。ここは楽園です、みんなが笑顔になれるんです!私、こんなに清々しい気分は初めて!
(# ∀ )じゃあお前には今のおれが笑顔に見えるのか?
川ー川見えますよ!いつも通りの、優しい優しい私のモナー君!
.
800
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:55:21 ID:6GLMRu4E0
(# ∀ )…サダコをそれ以上汚すんじゃねえ
(# ∀ )……人間ってのは誰だって寂しいもんなんだよ。けどな、寂しいことだって、悲しいことだって……いくら嫌いでも、いくら憎くても…大切なものなんだよ
(# ∀ )いくら寒くたって、いくら拒絶されたって…いくらすれ違ったって…おれはもっと知りたいんだ、もっと触れたいんだ、もっと感じたいんだ、もっとわかりたいんだ
(# ∀ )だからおれは、サダコと、モララーと、アサピーと契約したんだ。勝手に第三者が破棄するのは許さねえ
川д川…モナー、君
(# ∀ )…すぐ助けてやるから待ってろ。とっとと出て来いブサイク花。氷漬けにしてチリも残さず粉々にしてやる
801
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:56:54 ID:6GLMRu4E0
( ∀ )
( ´∀`)・・・・・・
( ・∀・)…目が覚めたか?
苦々しい顔で、モララーがモナーの顔を覗き込んだ。
まだ視界がぼやけているし、ひどく頭痛がする。
身体がやけに重い。
それが魔力切れによるものだと、ぼんやりとモナーは理解した。
(-@∀@)花の魔物のいた場所は念入りに焼き払っておいた。再生することもないだろう
( ´∀`)……サダコは?
(-@∀@)…生命に別状はない。心臓も動いている。だが、あれはもう無理だろう
( ´∀`)…何が
(;・∀・)サダコの腕。そこに茨が巻き付いて食い込んでるんだよ…助けた時には、何も反応がなかった
(-@∀@)無理に茨を取り除くと、死亡する可能性すらあるからな…
(;・∀・)シィ様も治療を試みたけれど…心だけは、どうしようもないんだ
(# ∀ )
( ´∀`)
( ´∀`)
802
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:58:19 ID:6GLMRu4E0
むくりとモナーは身体を起こし、横たわったサダコを見た。
長い黒髪と、白い肌の、変わりないサダコ・イーベル・シェフェルトンだ。
モナーは懐から、一輪の銀色の薔薇を出した。
(;-@∀@)な……!?
モナーはそれを憎々しげに見つめた。そして顔に近づけて、ゆっくりと匂いを嗅いだ。
(;・∀・)お、お前それ…なんで…
( ´∀`)サダコがくれたやつモナ
(;・∀・)そうじゃない!なんでそいつを持ってるんだ!そいつは、そいつは…!サダコを!キミを殺したんだぞ!?
( ´∀`)だからこいつも消えてなくなるモナ。んあ
モナーは大きく口を開け、薔薇を放り込むと数回咀嚼してごくりと飲み込んだ。
803
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:58:56 ID:6GLMRu4E0
(;・∀・)バカーーーーーっ!!!!!
(;-@∀@)狂ったか!?その痛みは分からなくもないが吐き出せ、今すぐ吐き出せ!!
( ´∀`)?こんなもんどうせ排泄される運命モナ
モナーはきょとんとした顔で呟いた。
( ´∀`)モナはサダコと対等でいたいモナ
( ´∀`)来年も、そのまた来年もサダコと生きるモナ
(;・∀・)・・・・・・
(;-@∀@)・・・・・・
放り投げるようにモナーがぽつりと呟いた。
今のモナーに、二人が語れる言葉はなかった。
沈黙がその事実をモララーとアサピーに突きつけた。
モナーは逃げたのだ。
まるで見ていられず、アサピーの目にじわりと涙がこみ上げた。
モララーはただ、唇を噛んで静かにモナーを見つめていた。
804
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:00:52 ID:6GLMRu4E0
( ´∀`)むふ、むふ、むふふふ…
項垂れながらモナーが静かに笑いだし、モララーは眉をひそめた。
いつの間にか顔中をぐしゃぐしゃにして泣いていたアサピーも、ぎょっとして振り向いた。
( ´∀`)モナはなんともないモナ
( ・∀・)……………………ウソつくなよ
( ´∀`)ウソじゃないモナよーん。いつだってモナは正直モナ
( ´∀`)アサピー
空虚な笑みをモナーが浮かべる。
(-@∀@)な、なんだい…ぐすっ
( ´∀`)……人体実験でもなんでもしてサダコを助けろ。被検体はおれがいる
その瞳から二人は静かな闘志を感じ取った。
絶望から逃げてなどいない。飲み込んだ薔薇によって、その感情を取り除かれただけなのかもしれない。
それでも、その瞬間にモララーとアサピーが見たのは誰より強い奇跡の子、モナー・マエモゼムの姿だった。
やはりモナーなのだ。僕達のモナーなのだと。
二人は思わずモナーの身体に抱きついて泣き続けた。
805
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:02:10 ID:6GLMRu4E0
赤い日を映して川が流れていく。
26歳となったモナー・マエモゼムは、ただ虚ろにそれを眺めていた。
透明で、純粋で、透き通った川を。
水面を滑る花束を見た。誰かの夢が破れたのだろうか。それとも誰かに手向ける花なのだろうか。
そんなことを橋の手すりにもたれかかりながら考えていた。
( ´∀`)…厄災戦が始まるってのに、明日にはシベリア行きだっていうのに
( ´∀`)花の香りなど、忘れてしまえ。モナー・マエモゼム…
モナーは片手に持ったアカシアの花束を、宙へ放り投げた。
魂の不死。それを信じて、8年待ったのだ。
川に落ちたアカシアの花束は、先程の花束を追いかけるように流れていく。
悲しみが身体を支配しようとした。けれどモナーの心はそれすら凍らせて、モナーの平静を保たせた。
806
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:03:19 ID:6GLMRu4E0
( ´∀`)……寒いモナ
音もなく誰かが背後に歩み寄った。
気配には気付いていたけれど、それもどうでもよかった。
/ ゚、。 /モナー君
( ´∀`)…その呼び方やめろモナ
背に刺さる声に振り向かず応える。声の主は男でも女でもない。霧の厄災、ダイオードだ。
/ ゚、。 /少し暇になってね。フィレンクト・シェフェルトンは保険としてソウサクの地に私を残しておきたいようだ
( ´∀`)どうせ戦闘向きでもないんだからシベリアについてきたって役に立たんモナ
手すりに乗せた両腕に顔を伏せて言う。
ダイオードもその隣へ立ち、もたれかかって川の流れを見つめた。
/ ゚、。 /私だってシベリアには頼まれても行きたくないね。ただ、霧の中で一人隠れているのも退屈だ
( ´∀`)…それであれを見たモナ?
/ ゚、。 /責められる謂れはないよ。誰だってあんなものを見れば気になるさ…部屋に氷漬けにされた女性が居たらな
807
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:03:54 ID:6GLMRu4E0
/ ゚、。 /シラネーヨにも聞いてみたがね
(;´ー`)『シラネーヨ!!いやマジで!!あんなクソおっかねえもん隊長に聞けるわけないでしょ!?絶対開けちゃいけねえ蓋だって!!』
/ ゚、。 /とのこと
( ´∀`)…だって話す必要がないモナ
/ ゚、。 /それで、もっとキミという人間を理解するためにあの子に触れたんだ。いい収穫だったよ
/ ゚、。 /キミはどうも極端だった。初めて出逢った時も、シベリアに着いてからも……
/ ゚、。 /キミはぶれないんじゃない。最初から凍りついていたんじゃない。上手くその薔薇を利用して、傾き過ぎないように冷めたままで生きていたんだ
/ ゚、。 /納得がいった所でどうというわけでもないがね
808
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:04:56 ID:6GLMRu4E0
( ´∀`)お節介な神様にひとつ聞きたい事があるモナ
/ ゚、。 /ほう?
ダイオードが不敵に笑った。
( ´∀`)お前が入り込めるのは、心の中モナ
( ´∀`)モナは心を閉ざしきって、お前に勝ったモナ
( ´∀`)……サダコの心は生きてるモナか?
/ ゚、。 /答える必要はない。私が知っている事実が全てだから
モナーは橋の下へ飛び降りた。ばしゃんと水が跳ねる前に、モナーは魔法靴で浮いたまま水面を凍りつかせて走った。走って、走って、放り投げた花束を拾い上げ抱きしめた。
809
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:05:51 ID:6GLMRu4E0
/ ゚、。 /…いつもキミを見ている。キミが眠りから覚めて、汗だくでこちらを見るたびに嬉しくも悔しく思う。そう笑っていた
/ ゚、。 /キミが凍らせてくれたおかげで、キミが生きているおかげで私も生きているのだと
ダイオードは、遠くにいるモナーの姿を眺めながらひとりごちた。
/ ゚、。 /私は傍観者であり、代弁者に過ぎない
/ ゚、。 /だからこれは、サダコの花だ。モナー・マエモゼム……
凍結を解かれた川に、ダイオードは赤い薔薇を投げ込んだ。
水に濡れたモナーの横を、花束を強く抱きしめたモナーの横を、ただ5本の赤い薔薇が流れていく。
810
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:06:40 ID:6GLMRu4E0
『救出の魔法使いたちのようです』
その16
『止まって、散って、溶けて、砕け散る』
811
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:07:14 ID:6GLMRu4E0
ニガティタ島では、静かに火山の厄災が時を待つように立ち上がっていた。
5匹の凶鳥の厄災はソウサク、シベリア魔法局の混成軍により全て討滅された。
「フィレンクト隊長!凶鳥の厄災の巣を確認、我らは無事全ての卵を破壊しました!」
魔竜兵器ドラグーンに乗った隊員達が、喜び勇んでフィレンクトの元へ駆けつけた。
(‘_L’)よし…!念には念をと探させてはいたが…これで後顧の憂いを断てたわけだ…!
(‘_L’)君たちはすぐに海へ開いた闇の門の中へ。もはや我々が出来るのは去ることだけだ!
「はい!」
ふう、と額の汗をフィレンクトは拭った。
既に大多数のソウサク人とシベリア人は撤退を果たしている。残っているのは大魔導師と副官たち、そして…
(‘_L’)生き残れよ、ドクオくん…みんな…!
812
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:07:47 ID:6GLMRu4E0
(;'A`)いつまで走ってもキュート隊長が見つからねえ!クソぉっ!!
(;^ω^)走ってるのぼくだけだお!!!!
(;'A`)くそっ、どうする………火山の厄災が目覚める前に、俺は……!
(;^ω^)だからキミの下にはぼくがいるんだお!!黙って任せておけお!!
怒声と共にブーンはその豪脚で駆け抜けた。
時間がない。焦りが二人を包んでいた。
雄叫びを上げて走り抜けるブーンの上を、2つの影が必死に追いかけて行く。
魔竜の飛行速度すら超えて、ブーンはひたすらに走る。
走る。
走る。
走る。
(°、°;川ナイトーくん!!ドックン!!止まって!!
(;°ω°)おおおおっ!?また急に!!!!
止まる。
813
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:08:27 ID:6GLMRu4E0
(;´・_ゝ・`)早く乗ってください!追われているのでしょう!?
(;'A`)追われてるっつーか、追ってんだよ、今
(;'∀`)でも、まあ、二人とも生きててくれてたのはスゲー嬉しい
魔竜と箒に乗った二人を見上げながらドクオは笑った。ペニサスはにっと白い歯を見せVサインで返し、デミタスは横目に大きく息を吐いた。
(´・_ゝ・`)私達も同じ気持ちですよ、ドクオ。それで、厄災は?
('A`)俺たちの真下
('、`*川そーじゃなくて!さっきドックン達を追いかけてたヤマアラシだかハリネズミ!
( ^ω^)…お?
('A`)ああ、それなら…
背中からちょこんと降りて、ドクオがブーンと顔を見合わせた。
( b^ω^)bぼくたちで倒しましたおーー!!
(b'A`)bそゆことーーーーーー!!!
「やっりぃ!」とペニサスが声を上げた。そもそも鉄針の厄災を見ていないデミタスは理解が追いつかないままぽかんと口を開けている。
814
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:09:06 ID:6GLMRu4E0
(´・_ゝ・`)ええと……海月、汚泥、鉄針。一人で厄災キルマーク3体ですか。バケモンですね
('A`)まあ俺だって厄災だし。というかそいつらは基本的に誰かに支えられてなんとか倒せたようなもんだろ?俺一人でなんとかなったやつなんて一匹もいないぜ
(´・_ゝ・`)胸を張りなさい。褒賞モノですよ、厄災特別手当にさらにボーナス加算!一生遊んで暮らせます!
(*'A`)でへへへへ、そう?そう?困っちゃうな〜
(´・_ゝ・`)ああ、困る必要はありませんよ、あなたの給料全部復興費になってますから。よかったですね
('、`*川あ、そっか。タダ働きだもんね
('A`)あんたはそういうヤツだよ……………………
(´・_ゝ・`)まあ魔法局にいる人間、だいたい遊ぶ暇なんかないんですけどね…特に今の情勢では
('A`)励ましになってねえ………………………
肩を落としたドクオの隣で、ブーンがわなわなと震えた。
(;°ω°)ど、ドドド、ドクオが、や、やく、厄災………?
('、`*川あーそっち言ってなかったかー
('A`)めんどくせえな今更…………
815
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:10:05 ID:6GLMRu4E0
('A`)とりあえずキュート隊長を探してくれ。今は満足に動けないはずなんだ
(´・_ゝ・`)…手強かったようですね
('A`)まあな…二、三度死を覚悟したレベルだよ
('、`*川ナイトーくんは私と戻ろうか
( ^ω^)ほえ?まだぼく走り回っただけですお
(´・_ゝ・`)充分です。よくドクオを守ってくれましたね
('、`*川遠慮しないの、撤退命令も出てるからさ。副官と大魔導師は残るみたいだけど
(´・_ゝ・`)そういうわけです。まだ働けますね?
('A`)ああ。モララーは?
(´・_ゝ・`)戦っていますよ、まだ…自分と
816
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:10:40 ID:6GLMRu4E0
その時、デミタスとペニサスの間を光が通り抜けた。
(;^ω^)な……!?
(;'A`)厄災の攻撃か!?
(´・_ゝ・`)あー、いや。アレは………
从;'ー'从キュートちゃん!!!キュートちゃんを呼ぶ声がしたァーーーーーーーーッ!!!!!!!
叫び声と共に、その姿は遠ざかっていく。
ワタナベだ。驚くべき速さで魔竜に乗ったワタナベが駆け抜けたのだ。
デミタスは目を閉じ困ったように肩をすくめてペニサスを見た。
('、`*川ワタナベさん…あんな感じだったっけ……
(´・_ゝ・`)酒入るとああですよ。今は極限状態で5割増しみたいですけど
817
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:11:44 ID:6GLMRu4E0
('、`*川……心配、ないかな?
(´・_ゝ・`)なさそうですね。あなたがたも撤退を急いでください
('、`*川おっけ。デミタスさんも死んじゃダメだよ
(´・_ゝ・`)そうそう死にません、ソウサクに山程仕事が残ってますから。あーでもそうなると死んだほうがマシな気もします…?あれ?ん?おや?
('、`;川隊長ォーーーー!もうデミタスさん感覚ぶっ壊れすぎて混乱してるよ隊長!
(´・_ゝ・`)冗談です。ドクオくんもついてますし。やり残した事が沢山あるのは確かですけど
(´・_ゝ・`)9m お行きなさい!まだまだ仕事があなたを待っていますよ!!
('、`*川なんだろうこの素直に「ええ!」と言えない台詞は
('A`)マジで働きすぎでぶっ壊れてるんだよ、こいつは…
818
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:12:28 ID:6GLMRu4E0
ロマキング1号はただ無言で立ちすくんでいた。
火山の厄災の上にまだ魔法使いたちがいる可能性がある以上、迂闊な攻撃はできない。
モララーはドクオ達の救援に向かったようだ。
島は静まりかえっていた。
(-@∀@)…そろそろだろうな
あの火の鳥はいずれ来る。もはや武器など残っていない、徒手空拳のみの戦いを強いられるだろう。
だが、アサピエーラ・ガデライトは科学者である前に魔法使いだ。
それを教えてくれたのが他ならぬモララーだったことも、アサピーのコンプレックスを刺激した。
(-@∀@)……僕は、勝つ。アサピエーラ・ガデライトとして、おまえに勝つ………
819
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:13:20 ID:6GLMRu4E0
ロマキング2号はあぐらをかいていた。
巨鯨の厄災の真上で。
いくら破壊してもまるでびくともせずに厄災が前進するため、アサピーと合流してから今後を考えることにしたのだ。
(-@∀@)ニュッケン!!何をやっている!?
( ^ν^)リラックスしてまーす
(#-@∀@)そんなことは聞いていない!!!
怒鳴り声に「おーこわ」とヤマサキに視線を移す。ワタル・ヤマサキは困り果てるばかりであった。
(; ^^)巨鯨の厄災、連れてきちゃいました!とりあえず指示くださいね!!
(#-@∀@)「連れてきちゃいました」じゃないが!!?すぐに上陸して態勢を立て直せ!
その時、火山の厄災が目を覚まして雄叫びを上げた。
文字通りに島の半分が震え、その声は全ての魔法使いたちに響き渡った。
820
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:14:07 ID:6GLMRu4E0
(;・∀・)くそっ、とうとう目覚めたか!ドクオは!?
(´・_ゝ・`)『モララー様、デミタスです』
モララーの乗った魔竜にデミタスからの通信が入った。
( ・∀・)デミさん!ドクオはどうした!?
('A`)『無事だ!しかし入れ違いになったらしいな、すまん!』
( ・∀・)いや、安心したよ。僕もすぐ戻る…!?
轟音を上げて火山が噴火する。
岩石の弾丸がモララーの頭上を舞った。
(;・∀・)攻撃開始というわけか……!
821
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:14:45 ID:6GLMRu4E0
从;'ー'从キュートちゃんっ!!もう、本当に何処に行ったのかなあ〜!!?キュートちゃん!!!!!
从;'ー'从っ、やばい…攻撃始まっちゃった…!
だん、と地面を荒々しく蹴って森の中から小さな影が飛び出した。
川 ゚ 々゚)クルウちゃん岩石ホームランダービー!!!!!!!!!!!そらぁっ!!!!!!!
大剣を振り回し降り注ぐ岩石を砕き、現れたのはキュート・クルットル・スナールだ。
鉄の魔力で作られた義足が強靭なパワーと自由自在に空を舞うスピードを与え、その鬼気迫る勢いはさらに加速した。
从;'ー'从キュートちゃん!?
川*゚ 々゚)いえーいワタナベ!みてみて!新しいクツ!いる!?ほしい!?ほしい!?おそろいしたい!?だったらすぐに用意してあげる!!
从;'ー'从間に合ってる!空は今無理だよ、今は海へ向かって逃げよう!?
川 ゚ 々゚)…サマーシーズン到来?
从;'ー'从何が!?
o川*゚ー゚)o…まあいいや。みんな逃げてるんでしょ?ドクオ君たちは…
从;'ー'从無事に回収されてたよ!
822
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:15:28 ID:6GLMRu4E0
(;^^)うわああああ火山の厄災こっち狙って来てますよ!?避けてくださいね!?避けてくださいね!!!?
( ^ν^)俺らってか、俺らが座ってるバハムートじゃねーかな
(;^^)どちらにせよリラックスしてる場合じゃないですって!!いつまであぐらかいてるんですか!!
( ^ν^)ケッセラ〜セラ
(;^^)飛び込んでえええええええ!!!早く!!海に!!海に!!!!!
( ^ν^)飛び込むんなら一人で飛び込めー
騒ぎ立てるヤマサキをぴしゃりと切り捨てたニュッケンに、ヤマサキは目を丸くした。
823
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:16:07 ID:6GLMRu4E0
(;^^)あ、あの…ニュッケンさん?ほんと何するつもりなんですか…?
( ^ν^)あ?んー。今はなんもしねえ。俺はここで見届けたいものがある
( ^ν^)なあ…まだ何も見せてねえだろ?巨鯨の厄災、バハムート・ディザスター。…お前の本気をさ
不敵にニュッケンが口の端を吊り上げる。
酷く濁ったニュッケンの瞳が輝いている。それだけでヤマサキはこの状況の異様さを肌で感じ取った。
(;^^)(い、一度は生き残れはしたけど…このままこの人についていくと死ぬよりヤバい何かが待ってる気がする…)
(;^^)(だってこの人の笑い方…神や悪魔や厄災より恐ろしいんだもの…)
824
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:17:16 ID:6GLMRu4E0
アサピーは目を疑った。
迫る巨鯨の厄災の姿は、明らかに人工物のそれだ。
巨大な戦艦から生えた異形の手足。ぎょろぎょろと動く無数の目は、レーダーと照準器の役割も果たしているらしい。
確かにそれは、人の叡智の結晶じみた佇まいをしているかもしれない。立ち上がり手を叩いて、これこそ魔科学の神秘だと、ある人種は喜ぶかもしれない。
現にニュッケンはそれに心を奪われていた。
だが、アサピーにとってそれは見たくもない“果て”だった。
おぞましい、嫌だ、あれが?
あれが自分が人生の全てを尽くした魔科学の果てだというのか。あんなものが。
アサピーは嫌悪感に眉をひそめ、ぎりぎりと歯を食いしばった。
825
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:17:55 ID:6GLMRu4E0
( ´∀`)来たモナね
(;´ー`)あ、あれが今日目覚めるってバハムート!?いやいやいやいや、あれ船じゃないすか船ェ!
( ´∀`)…先にだいたいお前が言ってくれるからいちいち驚かなくて済むモナねー
( ´∀`)さて、あれも凶鳥と同じ移動できる厄災……フィレンクトさんはどうするモナか…?
从'ー'从『こちらワタナベ、キュートちゃ…隊長を確保しましたー!』
lw´‐ _‐ノvっし。もう火山の厄災の上にいるヤツいないね
(´<_` )・・・・・・
( ´_ゝ`)やるか、弟者よ
(´<_` )ずいぶんと待たされたからな。3分でケリをつけるさ
腕を組んでオトジャが声を張り上げた。
(´<_` )フィレンクト・シェフェルトン!!ここにいる全てのソウサクの大魔導師達を撤退させろ!
(;‘_L’)『か、構わないが…君たちはどうするつもりだ!?』
( ´_ゝ`)これから起こる戦いのスケールは違うのだよ。いつまでもソウサク人の番ではないということさ
(´<_` )…まあ、そういうわけで。頼む
826
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:18:53 ID:6GLMRu4E0
ミ;゚Д゚彡ふざけんな!シベリア人だけで正気じゃないぜ!
(´<_` )出来るだけ厄災の数は減らしておきたい。安心しろ、無理なら無理でケツまくって帰る
(,,゚Д゚)…俺もフサギコと同意見だ。それならなおさら俺たちの力は必要になる
( ´_ゝ`)チッチッチッ…
(´<_` )悪いな。ソウサク人のどの兄弟よりも、ヴィップ人のどの兄弟よりも、シベリアの無数の同胞達よりも、俺たち兄弟は出来が違う
( ´_ゝ`)流石なんだよな、俺ら
言っている意味が分からない、と怪訝な目を向けるギコ達にニヤリと口を歪めてオトジャは魔竜から飛び降りた。
(´<_` )シベリア流格闘術、変身の法。翠樹弟者
緑色の光がオトジャの周囲をゆらめく。
身体中の細胞が激しくうごめき、肥大化していく。
高く、高く。脚はたくましい大樹となり、棍棒のように膨れ上がった腕の筋肉は鋭い巨人の剣へと形を変えていく。
827
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:19:52 ID:6GLMRu4E0
激しい地響きと共に、それは降り立った。
(‘_L’)えっ……ええ………?
<ヽ;`∀´>ニダァ!?
( ´ー`)…俺まだ酔っ払ってる?
('A`)マジで?
| ^o^ |ほええ
(#゚;;-゚)…………アレは、なんだ?
ミ#゚Д゚彡ふざけんな!!!!!!!どう鍛えたらなれるッてんだよあんなんよォ!!!!!!!!
(,,゚Д゚)……なるほど、流石だ
川 ゚ 々゚)おおおおおおーーーーー!!!!!!あれ見てワタナベ!!あれ!!
( ^ν^)うわスゲ
(-@∀@)………!?!!???!!?!?!
lw´‐ _‐ノv驚きモモノキ短小の木っちゅーやつだね
(´・_ゝ・`)ウソでしょ?
( ・∀・)まさしく驚愕だな…700メートル級の巨人なんて……確かにスケールが違う。違いすぎるや…
( ´∀`)だから巨神見ても動じてなかったモナね
( ´_ゝ`)まっ、そんな感じ
(´<_` )…ふっ
828
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:20:52 ID:6GLMRu4E0
(´<_` )だからさっさと逃げろと言うんだ。巻き添え食っても俺は知らんぞ
オトジャはむんずと火山の厄災を下から抱え上げた。
島の半分を、軽々と巨鯨の厄災へ向けて投げようとしているのだ。
今のオトジャにとってもはや火山の厄災はノロマな亀を超えて鈍器でしかなかった。
( ^ν^)あ。これさ…やばくね?
(;^^)おっっっっっっっっっっっっっっっそいんですよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
( ^ν^)…チッ。脱出カプセルしゃっしゅつー。目標地点は闇の門で
(;^^)ちょっ、せめて脱出するってもっと早く言ってくださいね心の準備がちょっア゛ア゛ーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!
( ^ν^)いやあすんませんね皆さん。俺らお先で。残ったロマキング2号は自爆しまーっす
829
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:21:44 ID:6GLMRu4E0
(-@∀@)バカどもが……僕は逃げやしない。あれを…あそこに存在させておくわけにはいかない……!
頭上で大きな爆発が起こったが、巨鯨の厄災はまるで気にせずエネルギーを集中し始めた。
仕掛けてくる前に潰す。
オトジャと巨鯨の厄災は、まったく同じ目つきで睨み合った。
その時、巨大な火の玉がオトジャの身体に飛び込んだ。
凄まじい衝撃と共に、島が落ちる。
(´<_` )むぐっ……!
( ゚∋゚)偽神、滅ぶべし…!
(;‘_L’)でででで出たァーーーーっ!!魔法局、全員撤退ーーーーっ!!!!!巨鯨と火山ともう共倒れを願うしかないよ!!!!!
(#-@∀@)来たか!!クックルゥァァァ!!!!!!
lw´‐ _‐ノvうんまあ、来ると思ってたよ。いるだけでメーター振り切ってるもんね
(#゚;;-゚)言ってる場合か。我々も撤退するぞ
830
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:22:35 ID:6GLMRu4E0
( ・∀・)…僕は、残る
lw´‐ _‐ノv…モラちゃん?
( ・∀・)…シンガリってやつさ。オトジャさんの魔力が切れて身動き出来なくなった時、誰が回収するんだ?それにアサピーのバカもクックルに掴みかかってる
( ・∀・)全力を尽くすよ。みんなで生き残って帰るためにね
モララーは自信たっぷりに微笑んでみせた。
('A`)なあ、嘘や妙な演出はナシだぜ
| ^o^ |たいちょう
(´・_ゝ・`)その「みんな」に、貴方は含まれてますよね?
( ・∀・)当たり前さ。やれるだけの事をやってから僕も逃げる。信じてよ
( ´ー`)あらかた飛び込みましたぜ、隊長!隊長?
( ´∀`)モララー
( ・∀・)わかってる。僕らは3人じゃなきゃな
( ´∀`)モナモナ
831
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:23:32 ID:6GLMRu4E0
(´<_` )(残り時間は少ない……数を減らすのが先決だ、だったら……)
(´<_` )ふんッッ!!
オトジャはもう一度火山の厄災を持ち上げ、天に掲げた。
そのまま勢いよく、火山の厄災の身体を膝で真っ二つにへし折ったのだ。
圧倒的な暴力の前に為す術もなく蹂躪され火山の厄災は悲鳴を上げた。
( ´_ゝ`)その咄嗟の判断…流石すぎるな。おせんべいかよ
( ´_ゝ`)…!?弟者、そいつをそのまま投げろ!巨鯨の厄災が攻撃してくるぞ!!
(´<_` )むッ!?
オトジャはアニジャの声に一瞬反応が遅れた。
巨鯨の厄災は大きくそのおぞましい口を開き、その目はどこか勝利を確信したかのように嗤っていた。
( ゚∋゚)………!!!!!!!
(-@∀@)な……何をする気だ…?
クックルが巨神の手を振りほどき、目の前に炎の防壁を張った。
何かが来る。
クックルすら恐れる何かが。
アサピーは震える手でロマキングの光波防壁を展開させた。
モナーとモララーは高く上昇し、アサピーの頭上に回った。
832
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:24:40 ID:6GLMRu4E0
光が走った。
白い、量感に溢れた光と熱の塊が広がって、こちらに襲いかかるのをモララー、モナー、アサピー、アニジャ、オトジャは見た。
それはこの世の何よりも圧倒的で、衝撃的な光景だった。
それが恐るべきスピードで近づいてきた瞬間、オトジャは巨大化を解除した。
投げ込まれた火山の厄災は彼らの盾となったが、瞬時にその姿を消滅させた。
その光が過ぎ去った後、彼らが目にしたのはクックルが血反吐を吐いて倒れる姿だった。
自らの行き着く先。
生命を創造するという人間の力を超えた技術の果てに、人はいつか神を造り出す。機械仕掛けの神を。
それは紛れもなく禁忌への道であり、その道の出発点に立ってしまったという罪がアサピーにはあった。
その罪に対して突きつけられた罰が、魔科学の果てが、厄災という姿で海を裂いて、大きな脚を生やして上陸してくる。
(-@∀@)…………くっそおおおおおおおおっ!!!!!!
アサピーは髪を掻きむしった。それは自分の人生そのものが粉々に破壊された瞬間だった。
833
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:25:40 ID:6GLMRu4E0
(;´_ゝ`)弟者!
蒼竜に姿を変えたアニジャが、オトジャを咥えた。
(´<_`;)すまん……あれだけもったいつけておいて…身体が動かん、筋肉という筋肉が痛みを上げている……こりゃあマジに3ヶ月は寝たきりになりそうだ兄者…
(;´_ゝ`)バカ野郎ソウサク人の前だからって見栄張っていつもより200メートル大きくなったりするからだ!ただでさえお前の変身の法は負荷が大きいのに!
( ´_ゝ`)……じゃなくて、よくやった。火山の厄災を殺れただけでも充分だ。帰ろう、シベリアへ…
(;´∀`)アサピー、モナたちも撤退するモナ!
(-@∀@)…ダメだ
(;・∀・)確かにクックルに固執する気持ちはわかる!けど!けど今は意地より生命だ!逃げなくちゃならないんだよ!!
(#-@∀@)ダメだ、ダメだぁっ!!!僕から意地を取ったら、それこそ何が残ると言うんだね!!?!!?
(;´∀`)今更プライドの話モナか!?お前にはまだ未来が残るモナ!残さなきゃあいけないモナ!!
834
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:26:22 ID:6GLMRu4E0
モナーが声を張り上げている。
その横でモララーの脳裏をあの声がよぎった。
あの目が。
あの目が再びこちらを見ている。
( <●><●>)『どう歴史が変わろうと、死ぬ順番も、死ぬ人間も、変わりません』
( <●><●>)『アサピエーラ・ガデライトは、死ぬ』
(;・∀・)
( <●><●>)『で?モーラ・モラール・マタリウス。あなたはどう止めますか?いや、そもそも』
( <●><●>)『止める気があるのですか?』
(;・∀・)!
( <◎><◎>)『偽善者のあなたが、誰よりも自分本位のあなたが…』
( <◎><◎>)『できませんよね。人の器に収まったあなたは、非力で、脆く、そして、醜い。誰も救うことなどできない……!それが運命………!!』
835
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:26:58 ID:6GLMRu4E0
モララーは激しく首を振って、巨神ロマキングを見据えた。
( ・∀・)まったくどいつもこいつも…好き勝手な事ばかり…
( ・∀・)…人の生き方を光だ影だ当たり外れだ仕組まれた運命だとか言うヤツにロクな奴は居ないんだよなあ!
( ・∀・)…最初から決められた運命なんてあるもんか
(#・∀・)僕を誰だと思ってる!?僕は!君と同じ!!アカデミー472期生のモーラ・モラール・マタリウスだぞ!!!
(#・∀・)ふざけるな、アサピエーラ・ガデライト!!
(#・∀・)僕たち3人の進んできた道の果てが!こんな終わりで良いはずがあるまい!?
(-@∀@)…!
836
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:27:39 ID:6GLMRu4E0
辛うじて自分とアサピーを結んでいた細い糸が、アサピー自身の決意によってぷっつりと音を立てて切れたのはわかっていた。
それでもモララーは諦めずに手を伸ばし、糸を手繰り寄せた。その身が穢れようと、そうせずにはいられなかった。
(# ´∀`)アサピー!
(# ´∀`)死者を振り向かせたいのなら、奴らが羨むほど眩しく生きてみせろモナ!
(-@∀@)ふ…フハハハ、ハハハハハハハハハハ……!
(#-@∀@)見くびるな、モーラ・モラール・マタリウス!モナー・マエモゼム!僕はシィなんかの仇を討つために死ぬつもりはない!!
(#-@∀@)キミたちは目先の恐怖で本質を見失っているようだな!ヤツは海と陸を制する力がある!たとえどれほど離れた距離からでも、僕達を攻撃できる力がある!
(#-@∀@)なんの変哲もなく過ぎゆく日常が、予測や防壁の準備なんてする暇もなく不可視の攻撃で消滅させられるかもしれないんだぞ!!?
(;・∀・)………………!
(;´∀`)…っ
837
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:28:34 ID:6GLMRu4E0
(#-@∀@)あそこに!!あんなものを残しておくわけにはいかないんだよ!!!
(#-@∀@)僕は僕自身のために!あいつを否定しなければならない!たとえ時代がいずれ僕を追い越したとしてもだ!!
(#-@∀@)僕は魔術核を使う!使うべき時は、今しかないんだよ!!
(;´∀`)魔術核!?
(;・∀・)バカな、アレは全て闇に葬られたはずじゃ………!
モララーはハッと見上げた。そうだ。何故忘れていたのだろうか。いくらデータを処分したところで、設計者の頭から取り除く事は不可能だと。
最初からアサピーは厄災を葬って死ぬつもりでここに来ていた。いや……
( ・∀・)…おまえ、最初から僕らに反対される事を予想した上で…厄災どもを倒して全部抱えて死ぬために魔術核を製作したのか………
838
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:29:25 ID:6GLMRu4E0
(#-@∀@)僕は魔科学と共に生き、魔科学と共に死ぬ!今更なんのためらいがあろうか!?ハハハハハ…!!
(# ・∀・)答えろっ!アサピー!!ディはどうなる!?
(;-@∀@)……!ディは!ディの家族は、僕じゃない!スナールの小娘どもだ!!
(# ・∀・)アサピー!!!!!おまえは!!おまえは……!!
(# ・∀・)おまえはあいつの親なんだぞ!!
([-@∀@)ぬうっ……!?
(# ・∀・)今すぐそこから出るんだ!キミが生きる道はなんとしてでも僕が作る!早く!!
(-@∀@)ふっ…ふふ、ははははは…!他人の敷いた道を歩むことの何が面白いものか、モララー!!
(-@∀@)……でも、ありがとう。起動したよ、1分後には全てが消し飛ぶ
839
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:30:47 ID:6GLMRu4E0
(-@∀@)僕に残された出来ることといえば、君たちを全力で生かすことくらいだ
(-@∀@)フフ、ハハハハハ…ヨダメ・ラタデ……デタラメダヨ、だったか?キミらしい馬鹿馬鹿しい呪文だ
(-@∀@)風よ、彼らを居るべき場所へ
ロマキングが掌をモララー達の前に突き出した。
フィレンクトが撤退した後も、闇の門は開き続けている。だが、それは少しずつ小さくなっていた。フィレンクトの魔力で維持し続けるには限界が来ていたのだ。
巨神の掌から生じた突風が、モララー達を吹き飛ばした。
(;´∀`)アサピー!!
(# ・∀・)………っ
風の中で、モララーは時間を停止させた。
(;´∀`)モララー!!おまえ、止め……!
(;´∀`)待っ、モナも……!モララァァーーッ!!
モナーの背後から、黒く大きな影が伸びた。
それは腕を形作り、モナーの身体を掴んで吸い込んだ。
(# ・∀・)アサピーッ!!!!!
840
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:31:31 ID:6GLMRu4E0
クックルは膝をついたままだ。
アサピーは上陸してきた巨鯨の厄災にしがみつき、押さえつけた。
だが、巨鯨の厄災もまた再びあの光を放たんとエネルギーを集中している。
アサピーはそれをまじまじと見ていた。
アサピーの眼鏡に、数字が反射していく。
20、19、18…
(-@∀@)(バハムートが何処から来たのか、誰が造った存在なのか、それら全てがまとめて海の底へ沈む)
(-@∀@)(残った連中は惜しがるだろうが、それだけ想像の翼を羽ばたかせる余地もある)
(-@∀@)(せいぜい「わからない」ということ、不確かな未来、見えない絆…それを愛おしく思うことだよ)
『アサピエーラ』
(-@∀@)(…なんだろうなあ)
『アサピエーラ・ガデライト』
(-@∀@)(ひどく騒がしくて、不満もあったし…不甲斐なさを感じる時や、劣等感を感じる時もあった)
(-@∀@)(けど、不思議と、今とても満足している自分がいる)
841
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:32:25 ID:6GLMRu4E0
「アサピー!!おい、アサピー!!操縦席を開けろ!!」
(-@∀@)…僕はキミになんかなれないとずっと思っていたのになあ
(-@∀@)今頃になって初めて理解してしまうところが、それを快感と感じてしまうところが……僕の愚かしさというべきか
『目をお開けなさい、アサピエーラ』
(-@∀@)しっかり見据えているさ
(-@∀@)なあ、モララー、モナー。キミたちは知っていたかもしれないが、僕らはずっと同じだったんだ。ずっと、ずっと、時間をかけてそれぞれの命を問いかけ続けていたわけだ
(-@∀@)キミたちと出会わなければそんな風には変われなかったのにな。だのに僕は僕の事を何も知らなかったくせに、一丁前にね
(-@ー@)でもな
(-@∀@)知ったかぶりで損をした人生だったとは思わないさ、僕は
842
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:33:04 ID:6GLMRu4E0
(-@∀@)ふふ、ふふふ…僕は勝ったんだ。この3人の中で!このアサピエーラ・ガデライトが!『答え』に1番乗りで到達した!無脳な諸君らはせいぜい長いこと長いこと悩みぬけば良いのさ!
『アサピエーラ』
「アサピー!!!」
(-@∀@)ハーーーーッハッハッハッハッハッハッ!!!!!!ハーーーーーーーッハッハッハッハッハッハ………!!!!!!!!
.
843
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:33:28 ID:6GLMRu4E0
.
844
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:33:59 ID:6GLMRu4E0
全てがかき消えた。
戦場は爆心地となり、野太い虹の柱が雲を貫いた。
それは魔力でできた膨大なエネルギー。
シベリアの平原でそれを見ていた魔法使いと魔闘家たちは、戦いの終息を悟らざるを得なかった。
最後に闇の門から出てきたのはモナーだった。
呆然としたまま、「モララーとアサピーは?」という問いに首を振っていた。
あの暖かな日々への郷愁が、狂気が、憧憬が、執念が、歓喜の声が、影が。全て、全てあの虹の光の中へと消えていった。
845
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:35:21 ID:6GLMRu4E0
虹の柱が消えて、モナーは一人闇の門へ入り込んだ。
同行は禁じた。自分一人だけで行くと、そう睨みつけたモナーの目をフィレンクトは止める事は出来なかった。
闇の門が閉じかけていた時、何かしたかとモナーは問いただした。
ドクオが咄嗟に回復と闇の門の維持を手伝ってくれたのだとフィレンクトは語った。
それで納得したわけではなかった。
( ´∀`)………サダコ
( ´∀`)なぜおれを生かした?
( ´∀`)……わかってるよ。キミが生きている限り、おれはまだ死んじゃいけないんだ
( ´∀`)そう願ったんだものな
846
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:35:56 ID:6GLMRu4E0
モナーは魔法靴で浮き、空から島全体を見回した。
全てが静かだった。ただ、大きな変化があった。
痕跡がない。
抉れた山、割れた大地、燃え落ちた森…戦いの痕跡が、欠片もない。
厄災戦が始まるずっと前に、時間が巻き戻ったかのように。
不気味なほど、島は元の状態を保っていた。
海にも陸にも厄災の姿はない。奴らは完全に蒸発したのだろうか?
モナーはふわりと着地した。
そして自分が立っている場所の景色が、モララーの果たした最後の仕事だったと理解した。
( ・∀・)『これでノーカンさ』
そんな呑気な声が、モナーの耳元で囁いた。
無論幻聴だと、モナーは理解していた。
847
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:36:41 ID:6GLMRu4E0
( ・∀・)『ああそうか、君が例の奇跡の子モナーか』
( ´∀`)…お前も同じモナか?
( ・∀・)『けどそうなると僕にはお仲間がいなくなってしまうな。今のアカデミーに特殊属性持ちは僕らだけだというのに』
( ´∀`)…そうモナ!モナとキミは、おんなじ仲間モナ!
( -∀-)『そうだね。…羨ましいよ、キミみたいな生き方は』
( ´∀`)
( ´∀`)ちげえモナ
(;・∀・)『そうだ、そうだったんだよ!僕が勝手にキミに抱いていたシンパシー!それをキミは利用してまるでもう一人の自分と話しているような気分に浸らせる言葉を並べて!僕を弄んだんだな!!』
( ´∀`)そうでもしないとお前はいつまでもモナと自分を別枠に置いたままグズグズしてるだけモナ
( ´∀`)『むふふふ。嘘は「心があったかくなったことがない」くらいモナ』
( ´∀`)これ大嘘モナ
848
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:37:52 ID:6GLMRu4E0
( ・∀・)『たとえ残ったとしてもたった1年弱だろ?そんな心配はいらないさ。すぐにまた一緒に居られるよ、モナー・マエモゼムなら』
( ´∀`)お前にとってたった1年でもモナにとっては長い長い1年モナ
( ・∀・)『僕だって魔法局に行けば、もっと自分の可能性が開けると思うんだ』
( ´∀`)モナたちといる時間に満足してないモナか?
( ・∀・)『つくづく思うんだが、君ほど並び立った時に安心するやつは居ない。けれど僕と君が背中合わせで戦えるかって言ったらきっとそれはノーなんだ』
( ・∀・)『そうなった場合、多分足手まといになって先に死ぬのは僕なんだよ。君の強さに甘えちゃって全力出しきれないからさ』
( ´∀`)お前でかくなっても何にも変わってないモナ
( ・∀・)『僕がやられたら困るから、身を挺してでも守らないといけないって危機感を抱くくらいにほどほどに弱くて、僕にもこいつが欠けたらまずいって思わせてくれるような強みがあるヤツ』
( ´∀`)モナにそんな思考がないと本気で思ってるモナか?
849
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:38:36 ID:6GLMRu4E0
( ・∀・)『まあ一応ね。花言葉は他にもいろいろあったはずなんだけど、そこんところは忘れちゃったんだ』
( ´∀`)うそつけアホ
( ・∀・)『アカシアとかどうかな。花言葉は「魂の不死」ステキだろ?』
( ´∀`)「友情」もすてきモナ
( ´∀`)魂の不死か。モナは信じてなんかいなかったモナ
( ´∀`)でもお前が格好つけのロマンチストで
( ´∀`)ベストマンだなんだって言ってたら妙に本気出して馬鹿正直に信じ込んで薦めてくれたから
( ´∀`)モナにも良いことあったモナ
( ・∀・)『…人に言えない理由でもさ。あまり独りで悩まないで欲しいんだよ、モナー・マエモゼム』
( ´∀`)
( ´∀`)モナは
( ´∀`)そんな格好つけて抱え込んでブーメランよく刺さるアホのお前だから契約したモナ
850
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:39:38 ID:6GLMRu4E0
(-@∀@)『天才の僕を助けて感謝の言葉でも貰いたかったか!?ハハハハ、残念!僕は一人でも生きていけるのさ!君たちが出せるような発想が僕に出来ないわけはないだろう?ハハハハハハ!』
( ´∀`)おもしれえ〜
(-@∀@)『フン!モナー・マエモゼム、氷の魔法使いねえ!だが僕の方がもっと凄くて、偉大だとも!何故か?氷は炎に勝てない!!サルでもわかるだろ!?はーーーっはっはっはっはっは!』
( ´∀`)おもしれ〜
(-@∀@)『ふむ、シィ・ニャイッキーの最短卒業記録が破られる可能性もあるな。それでは困る、僕の偉業が霞むじゃないか』
( ´∀`)…そういうヤツだからお前好きモナ
(#-@∀@)『ば、馬鹿だと!?言うに事欠いてモナー!!君は天才たるこの僕を!馬鹿と言ったのかい!!?』
( ´∀`)お前は本当に今までの人生で初めて見るタイプのバカモナ
(-@∀@)『透明で、純粋で、水晶ォ!?これが!?ははははははは!!』
( ´∀`)よーくわかってるモナねー
(-@∀@)『キミは僕と同じ天才なのだから!はーーーーっはっはっはっ!』
( ´∀`)そ。おんなじモナ
851
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:40:55 ID:6GLMRu4E0
(-@∀@)『……魔法術式ね。やはり壁があるということか…天才と、凡人には……』
( ´∀`)そういうお前嫌いモナ
(-@∀@)『フハハハハハハハハ!!時代は魔科学が切り開くのさ!僕の、そう僕の魔科学が!』
( ´∀`)そう。その鬱陶しいのがお前モナ
(;-@∀@)『き、君は客人に唾を吐きかける癖でもあるのかい!?直した方がいい!直した方がいいぞ!!』
( ´∀`)ペッペッ
(-@∀@)『な、なんだい…ぐす』
( ´∀`)モナはモナの代わりに泣いてくれるヤツが好きモナ
(-@∀@)『ふふ、うふふふ…ああ、紹介するよ。僕が生み出した人造生命体第1号ディだ。美しいだろう?』
( ´∀`)ちげえモナ
( ´∀`)お前そんなんじゃねえモナ
852
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:41:56 ID:6GLMRu4E0
(#-@∀@)『……………ああ、そうだよ、僕は凡人さ。愛する人と並び立つ事も出来ない、君の背中に一生追い縋るだけの凡人だ!どうして引き止める!?どうして言葉にする、どうしてタガを外させてくれない!!せめて狂人にでもなれれば僕は凡人以外の何かになれたはずなのに!!』
( ´∀`)そういうお前本当マジで嫌いモナ
( ´∀`)凡人とか天才とかじゃなくてお前はアサピエーラ・ガデライト。それでいいモナ
(;-@∀@)『なあ、頼むよ、モララー…時の魔法使いだろ?巻き戻してくれよ…そうだ、17年前がいい。あの時が一番楽しかった…』
( ´∀`)そこに関しちゃ異論ねえモナ
(#-@∀@)『見くびるな、モーラ・モラール・マタリウス!モナー・マエモゼム!僕はシィなんかの仇を討つために死ぬつもりはない!!』
( ´∀`)うそつけバカ
( ´∀`)そもそもお前を見くびったことなんか
( ´∀`)けっこうあるけど
( ´∀`)…やっぱモナお前のこと心の底から嫌いモナ
( ´∀`)死ななきゃ治らないレベルのバカでもモナはバカ野郎のお前でよかったモナ
853
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:42:57 ID:6GLMRu4E0
『モナー』
『モナー!』
『モナー君』
( ´∀`)まったく…みんな本当に……
( ´∀`)文句の一つも言う暇もなく……
( ´∀`)…みんな嘘つき野郎モナ
( ´∀`)けど、ずっと言わなかったのもモナには違いないモナ
モナーは目の辺りに何か暖かいものがじんわりと広がる感触を覚えた。
ぽた、ぽた、と何かがモナーの手に触れた。
拭った指を舐めてみる。
しょっぱかった。
854
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:43:46 ID:6GLMRu4E0
ああ、自分は泣いているのか。
泣けるのか。
意識した瞬間、一気に目に涙が溢れる。
モナーの身体を包んだ熱は、怒りへと変わって絶望ごとその身を焼き尽くした。
ああ、サダコが死にかけた時にも、自分は泣けなかったのに。どうしてこんな時に溢れるのだ。
気にしないようにしてきた数々の悔やみが溢れ出して、心の氷を溶かしていく。
薔薇のせいだ。
全て。
悔しげに地面を叩き、その土を掻き抱く。
そうしたところでモララーも、アサピーも、そこにはいない。
( ∀ )……寒い
暫く嗚咽を止める事が出来なかった。
855
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:45:27 ID:6GLMRu4E0
(´・_ゝ・`)ニガティタ島、厄災討滅作戦…死亡者数、2700名。ソウサクとシベリアの総力戦ですから…数字としては、奇跡的です
(´・_ゝ・`)討滅された厄災はレイヴン5体、ポーキュパイン、ボルケーノ、バハムート、クックル。結論から言うと、全てです
(´・_ゝ・`)後半2体はまだ不確定ですが…海にバハムートの残骸が多数浮いているのが確認されてます
(´・_ゝ・`)再生されても困るので、そちらはモナー様に凍結処理を後程
デミタスの声が冷たく会議室に響く。
憮然とした表情で、ただ淡々と結果を告げていく。
最も4番隊の人間らしい不器用な生真面目さは、それを率いる隊長が居なくなっても変わらなかった。
その姿にシュールは泣き腫らした目で無言の非難をぶつけた。
けれどデミタス・モリオカウルは曲げなかった。曲げられなかった。
それが自分の生き方であり、4番隊の副官らしいあり方だからとデミタスは言い聞かせた。
フィレンクトはデミタスの報告にただ頷いた。頷くほかなかった。
856
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:46:15 ID:6GLMRu4E0
驚くほど静かだった。
発言する事が罪悪であるかのような空気が辺りを包んでいた。
しかし黙っていても、沈黙はその喪失を物語るばかりだ。
周りをきょろきょろと見渡しながらそっと小さく挙手して、ニダーが口を開いた。
<ヽ`∀´>…魂の重さは21グラムだとかなんとか、大昔のヤブ医者は言ったらしいニダ
<ヽ`∀´>確かに島の全ての厄災を討滅したことは喜ばしいことニダ。けど数字で命はくくれないニダ
<ヽ`∀´>モーラ・モラール・マタリウスとアサピエーラ・ガデライトの魂がそんな軽いわけないニダからな!
視線が一斉にニダーへ注がれた。
それはここにいる全員が沈黙する事で目を背けていた事実を改めて突きつける行為だった。
遅かれ早かれ誰かが切り出さなければならないことだ。
その憎まれ役を、ニダーは買って出たのだ。
<ヽ`∀´>屍を乗り越えることは、忘れることでも目を背ける事でもないニダ…それだけニダ
857
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:47:48 ID:6GLMRu4E0
lw´‐ _‐ノv…あたし達、いつまで生きていられるんだろう。9体も厄災ぶっ殺したってさ、これで終わりじゃないんだよね
両手を組んで俯き、シュールが呟いた。
(‘_L’)『これより先の物語に光はない』
(‘_L’)『時計の針は折れ、ただ暮れなずむ夕日の姿だけが汝の瞳に映るだろう』…
(‘_L’)第二部の書き出しとしては些か悪趣味だな…
(‘_L’)私より若い連中ばかりが去っていく…私に、私に何が出来ただろうか…
フィレンクトの声は、その場に耐え難いやるせなさを与えた。彼の瞳は、必死に涙を堪えているように見えた。
858
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:49:34 ID:6GLMRu4E0
( ´∀`)ここに居ると気分が沈むモナ
( ´ー`)隊長……?
また暫くの沈黙を破り、モナーが席を立った。
( ´∀`)フィレンクトさん
いつものモナーの柔和な笑みはなかった。
泣くのに疲れ切った、乾いた笑みだけだ。
( ´∀`)折れたのは長い針だけモナ
(‘_L’)モナー君…
( ´∀`)急いで回れなくても、進めないとモナ達はどうにもできんモナ
そう告げると、モナーは毅然とした態度で歩き退室した。
それを見て一人、また一人と彼らは席を立ち、歩みだした。
続く
859
:
名無しさん
:2022/01/29(土) 16:00:59 ID:uhrddVNo0
乙
内容が濃厚過ぎて何も言えねえ
860
:
名無しさん
:2022/01/29(土) 16:35:25 ID:BiHe6G.k0
嘘でしょ……
861
:
名無しさん
:2022/01/29(土) 20:54:47 ID:IkT1NqQQ0
こういう鬱と絶望が取り巻く物語、正直大好物です
862
:
名無しさん
:2022/01/30(日) 17:13:01 ID:O15mexc.0
乙
モナー…
863
:
名無しさん
:2022/02/01(火) 19:40:02 ID:tJ/Lp3ns0
続きが気になる…
支援
https://downloadx.getuploader.com/g/3%7Cboonnews/228/%E6%95%91%E5%87%BA2.jpg
864
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/02/01(火) 20:32:36 ID:NZ.U48Uk0
>>863
ありがとうございます…ありがとうございます…
気長にお待ち下さいませ。
背景色が……たまりませんね…好き
865
:
名無しさん
:2022/02/06(日) 11:22:26 ID:TEYrM.Yw0
モナーが好きすぎる
866
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/02/09(水) 21:23:19 ID:f5lyWG5s0
4番隊の隊舎に秒針の音だけが響いていた。
ぼやき声も聞こえず、ただ静かに、ペンを走らせる音だけが響いている。
コーヒーを入れてきたペニサスの姿に一瞥もせず、デミタスは黙々と机の上に積み上げられた書類と格闘していた。
(´・_ゝ・`)・・・・・・
('、`*川…はぁ
ふと、大きくため息が漏れた。
音を立てないようにカップを皿に置く。
ペニサスは窓の外の景色を見た。雲一つなく、ひどく爽やかで、煩わしいくらいの青さが遠く遠く広がっている。
867
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/02/09(水) 21:24:32 ID:f5lyWG5s0
ぐう、と大きく腹が鳴った。2日前からペニサスの喉を通ったのはコーヒーだけだ。
咀嚼というプロセスを踏まずに済むのが今の自分にとってはありがたかったから。
食べるという行為は生きている者にこそ出来る行為なのだが、今何かを噛み締めると口中に泥が詰まって息が出来なくなるような恐怖心があった。
('、`*川…あ、今の音聞いた?
デミタスは沈黙で答えた。
('、`*川…そ
日が陰った。
荒唐無稽、支離滅裂、無理難題を自分達に押しつけながら賑やかな罵声、ぼやき、皮肉の中をけらけらと笑っていた男の姿がそこには無かった。
変わりゆく窓の外の景色が彼の痕跡を全て持ち去ろうとしている、そんな気がした。
慣れきってしまったのかもしれない。
几帳面に働き続ける秒針の動きとデミタスの姿が重なって奇妙な違和感をペニサスの胸の中に作る。
('、`*川・・・・・・
何かを言いかけるように口を開いて、また唇を噛むように閉じる。
喉が乾けばコーヒーを飲み、出すものは出し、また机に向かい、脚を揺らしたり。そうするのにも飽きてぼんやりと椅子を回し、また何かを言おうとしてやめる。その繰り返し。
868
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/02/09(水) 21:25:28 ID:f5lyWG5s0
張り詰めた空気とひどく脱力した空気が、見えない一つの壁を挟んで充満していた。
しばらくしてドアの開く音が沈黙を破り、ペニサスは振り向いた。
('A`)ただいま
| ^o^ |ただいまかえりました
('、`*川ん、おかえり。結果は?
ドクオはただ首を振り、ブームは遠くを見つめた。
('A`)…ここに戻りゃ案外ひょっこり居るんじゃないかって話してたんだがな
| ^o^ |わたしたちのどりょくをむだにして ごくろうさんとわらいとばしてくるのだろうなとおもっていたのですが
('、`*川ざんねん。私ももしかしたら二人が連れて帰って来るんじゃないかと思ってたんだけどさ
| ^o^ |…きのうもみつからなかったので だめもとではありましたけど
('A`)……チッ
4番隊隊長、モーラ・モラール・マタリウスは死んだ。
.
869
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/02/09(水) 21:26:07 ID:f5lyWG5s0
『救出の魔法使いたちのようです』
その17
『残響の魔法使いたちのようです』
870
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/02/09(水) 21:27:34 ID:f5lyWG5s0
(´・_ゝ・`)…揃いましたね。少し話があります
それは2日ぶりにデミタス・モリオカウルが発した言葉だった。ペンを動かす手を止め立ち上がり、ただまっすぐに三人の表情を見つめていた。
(´・_ゝ・`)昨日ロマネスク王から通達がありました。4番隊は解散、デミタス・モリオカウル、ドクオ・マンドリューク・テネブリスは2番隊へ。ペニサ・スイートゥは5番隊、ブーム・ソヤナルカは6番隊へ編成されます
(°、°;川はァ!?
| ^o^ |どういうことですか?
(´・_ゝ・`)どういうことも何も命令です
('A`)…そうじゃねえ。1番隊はシィ様が死んだ後もギコを隊長代理に置いてそのままなんだぜ?どうして俺たちがここを去らなきゃならないんだよ
(´・_ゝ・`)事情が違うんです。1番隊に限らず他の隊は大人数ですし、そもそも魔物や厄災の討伐を主としていますから
(´・_ゝ・`)モララー様の居なくなった4番隊に価値はないということです。元々我々の生産力はモララー様の時魔法ありきのものでしたからね
(´・_ゝ・`)種類にもよりますが…魔法術式は一つ完成させるまでに早くて10年、長くて50年以上かかります。実質的に新しいものはもう作れないんですよ
871
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/02/09(水) 21:28:08 ID:f5lyWG5s0
デミタスの答えはこれ以上ないほど冷たく、正しかった。
ドクオは苦々しく唇を噛み、ブームは遠くを見つめ、ペニサスは憤りを隠さず拳をきゅっと握りしめて呟いた。
('、`#川…それでハイそうですねって答えたのあんたは
(´・_ゝ・`)まあ、これ以上ここに居てもお互いもたれすぎるだけですし我々としてもありがたい話です。これからは別々の場所で、フラットな関係に戻るだけですよ
(´・_ゝ・`)…それに周期表にはここしばらくしばらく新しい厄災が目覚める記述もないですから。我々にはまたゼロから歩き出すチャンスが与えられたということです
(´・_ゝ・`)わかりましたか?
| ^o^ |すぐにわかりましたとはいえません
('A`)…お前はありがたい機会かもしれねえけどな。俺たちにはこれっぽっちも嬉しかねえよ
('A`)…いや、まだそもそも嬉しい嬉しくないって整理がつけらんねえ
872
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/02/09(水) 21:29:27 ID:f5lyWG5s0
(´・_ゝ・`)いいですか?私はこれ以上ここを悲劇の稽古場にするつもりはありません。そうなるよりは、いっそのこと全て取っ払って前を向く道の方が私にとっても、あなた方にとっても都合が良いんです
(´・_ゝ・`)モーラ・モラール・マタリウスは死んだ。死んでしまった
('、`#川…………!
('A`)・・・・・・
| ^o^ |?
デミタスはブームに歩み寄り、力強くその肩を掴んだ。
(´・_ゝ・`)目を背けるな
| ^o^ |
(´・_ゝ・`)…彼は自分が主役だと気づかず演出家と勘違いし続けたまま亡くなった。それも好き放題に、我々の台詞を踏みにじってね。最後まで身勝手なクソ上司だ
(´・_ゝ・`)…こんな台詞を吐いている時点であの人の掌の上なのかもしれませんが。観客なら観客らしく石でも投げ込んでやりたい気持ちですけれど、ぶつける相手も見つからないとくればどうしようもない…
(´・_ゝ・`)……ペニサスさん、ドクオ、ブームくん。荷物は早めに片付けておいてください。では
そう告げてデミタスはつかつかと靴音を響かせ退室した。
873
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◆vkc4xj2v7k
:2022/02/09(水) 21:30:15 ID:f5lyWG5s0
('A`)…過去に縋るより問題はこれからだ、そりゃあわからないでもねえけど
('A`)一人欠けただけでこんな風になっちまうんじゃ、俺たちもだらしがなくていけねえ…
| ^o^ |なさけないですねドクオ
('A`)お前も含めて言ってんだぜ、お前も…
| ^o^ |?わたしはつよいこですよ
('A`)ムリすんな
('、`*川じきにソウサク国のほとんどがああなる。時魔法が使えないなら、復興作業だって今までみたいに手早くいかなくなるからね…
('、`#川でも、それとここが無くなっていい理由は結びつかないよ…!でしょう!?
机を叩きペニサスが声を震わせ二人を睨んだ。
ブームは先程掴まれた肩が妙に重たい気がして、ぼんやりとした表情でさすっていた。
('A`)…そこんところは、俺もそう思うけどさ。あいつはあいつなりにもがいてるんだよ。付き合いが一番長いのはデミタスだしな
('、`#川…だったら尚更じゃないかな。……………私、行ってくるから!
(;'A`)あ、おい……!
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