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( ・∀・)救出の魔法使いたちのようです
1
:
名無しさん
:2021/11/07(日) 17:58:55 ID:TYdx1/KM0
( ・∀・)テキパキ…
( ・∀・)あーそこ、呪文コードはシタラバ語じゃなく旧ニチャン語に直してね。魔力の収束時間の短縮に繋がるから
('、`*川はい…あの…
(´・_ゝ・`)粉末状にしたマンドラゴラでも15秒以上放置すると再生しますから凍結解除したらすぐ魔法陣の中へ吸わせてくださいね
( ・∀・)納期は気にしなくても大丈夫だから、僕の時魔法でどうにかなるしさ
| ^o^ |こころづよいじょうしたちだ
(´・_ゝ・`)みんなで力を合わせる、そうでもしないとこの世界では生きていけないんですから
('、`*;川あのっ!
( ・∀・)みんな今日が終わるまで、元気に働こうねっ☆
(´^_ゝ^`)元気に働きましょうね!
('、`*;川いい加減休みをください!!!!
(´・_ゝ・`)なにそれ
( ・∀・)しらなあい
713
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/21(金) 01:12:04 ID:RIPkZPH60
(-@∀@)ぶわはははははははーーっ!!
( ・∀・)サイテーだぞ今のおまえ
下品な声をあげてアサピーは屋上で笑い転げた。その手には花柄の白い便箋が握られている。
パンをかじりながらモララーはそれを奪い返すと、呆れた目でアサピーを一瞥し、同じ目つきで便箋に視線を移し、今度は軽蔑を含みつつアサピーを見た。
( ・∀・)『あなたが好きです。静かだけれどとても暖かい、太陽のようなその佇まい。いつも何より一番深い所を見つめていたその眼差し。他の誰にも見えないものが、あなたの瞳には映っていた』
(-@∀@)ヒィ…!!アハハハ、ハハハハハ…!!
淡々と読み上げるモララー、狂ったように笑い続けるアサピー。それを聞きながらモナーは静かにかぶりを振った。
714
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/21(金) 01:12:39 ID:RIPkZPH60
( ・∀・)『他の幼稚で下品な男の子とはまるで違う、』
( ・∀・)チラッ
(-@∀@)ひーっ、ひーっ…!!おなかいたい、おなかいたい…!!
( ・∀・)…『ぶれることのない自分だけの確固たる世界を持っている、透明で、純粋で、澱みのない水晶のような双眸の男の子。叶うならばその爛々と輝く真実の鏡の中に私の姿を映して欲しいと、いつもため息を漏らしてしまいます』
( ・∀・)長いなあこれ…5枚くらい続いてる。かいつまんでラストあたりから行こう
( ・∀・)『…そんな広くて自由な世界が私にも欲しいと、あなたと出会って初めてそう思えたのです。あなたの事を考えるだけで胸がはち切れそうになります。けれどあなたがこのアカデミーから去ると聞き、ちっぽけな勇気を振り絞ってこの手紙を書きました。明日の放課後、校舎裏で待っています』
( ・∀・)…『モナー・マエモゼムくんへ』
(-@∀@)だははははははははははははははは!!!!!!!透明で、純粋で、水晶ォ!?これが!?ははははははは!!
( ・∀・)…こんな笑われて悔しくないのかキミは
( ´∀`)だってそれ同姓同名の他人宛モナ
( ・∀・)君たちなあ。僕だってこの一節一節に共感したり納得してるわけじゃないが、それにしたってひどすぎるよ
715
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/21(金) 01:14:32 ID:RIPkZPH60
( ・∀・)健気じゃないか。想いを秘め続けるのをやめて、キミを繋ぎ止めようと、触れようとしてくれてるんだぜ?なかなか居ないぞそんな奴は
( ´∀`)でも大魔導師にスカウトされたら嫌でも離れることになるモナ
(-@∀@)はぁ…はぁ…はは。うん、良いと思うよ僕は、美しい文だと思う。だがその想いを向ける対象がな
口元に手を当てながらアサピーが言う。
普段から小馬鹿にしたりされたりを繰り返している彼にしてみれば綴られた文章とモナモナ言う本人を重ね合わせると可笑しく感じるのもわからなくもないが。
ちょっとツボに入りすぎだろうと二人は呆れた。
( ´∀`)モナもこのモナー・マエモゼムなる人物に会ってみたいモナ
寝転がったまま、モナーがこともなげに言う。
長く息を吐いてモララーは鋭く目を細めた。
( ・∀・)あのな。アカデミーを卒業するのだって普通は18歳なんだぞ?キミは気楽かもしれないけど、彼女にとっては数年モノの別離なんだ
( ´∀`)モナの苦手なタイプは眼鏡の女の子とコンタクトの女の子と裸眼の女の子と目隠れの女の子モナ
(-@∀@)そんなんでどうやって生きてくつもりだキミは
( ・∀・)やれやれ。「面倒」の4文字をこれだけまどろっこしく言うかね、フツー?
( ´∀`)モニャ〜
716
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/21(金) 01:16:57 ID:RIPkZPH60
( ・∀・)なんでそう嫌がるのさ。君を好いてくれてるのに
( ´∀`)理由はいろいろあるモナ
( ´∀`)ひとつ。その手紙、4回くらい“奇跡の子”ってワード使われてるモナ
( ´∀`)ひとつ。そもそも相手から名乗らない時点でモナが望むような付き合い方はできんモナ
(-@∀@)それは恥じらいってやつさ。あえて一日置くのも自分の気持ちを落ち着かせるためだろうね
( ´∀`)そんな子の都合の良い幻想に合わせてやる気なんて起きんモナ
( ・∀・)一度くらい歩み寄ってやりなよ。彼女なりの一歩なんだからさ
( ´∀`)逆に聞くけどなんでそんな必死にモナとその子の世話焼くモナ?
( ・∀・)キミがいつか僕にそうしたからさ
( ´∀`)むう。それ言われたら弱いモナ
717
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/21(金) 01:17:31 ID:RIPkZPH60
( ・∀・)愛の天使モーラ・モラール・マタリウス。悪かないだろ?
目を閉じ、両手をぱたぱたと揺らして舞い降りる天使のポーズをとる。確かにモララーの見た目なら天使だと言われてもそう違和感は無いが、動きがどうも間抜けだ。
( ´∀`)天使様、お節介焼く前にその弓矢で自分の恋人探せモナ
( ・∀・)ふふ。もし明日すっぽかしたら僕がぶつからな!
(-@∀@)僕もキミの頬をぶとう、モナー。君は今この僕より女の子にモテているというのにそれを面倒がるなど我慢ならないからね!
( ´∀`)やっぱ面白がってるモナね?
(-@∀@)なかなかこういう立場に回れる事がないからなんてそんな事あるわけないだろう、なあ?
( ・∀・)なー?
意地の悪い先輩達のコンビネーションにモナーは苦笑いを浮かべた。
718
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/21(金) 01:19:13 ID:RIPkZPH60
『救出の魔法使いたちのようです』
その15
『薄氷の上のぼくら』
719
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/21(金) 01:23:13 ID:RIPkZPH60
雨がざあざあと降りしきる。慌てて箒を飛ばす生徒たちの姿が空に浮かんでいる。
誰もが通り雨だと思っていたが、意外に長引くもので鬱々とした黒い雲がアカデミーを覆っている。
(-@∀@)モナーは?
( ・∀・)教室や下校する連中の中を探したけどいなかった。案外差出人にはハッピーエンドが用意されてるかもね
ハハハ、と笑うモララーの後ろでアサピーは顎に指を当てて考え込んだ。
(-@∀@)だがなあ、モナーだぞ?手紙をあんなに面倒がってたモナーだぞ?
( ・∀・)この雨で相手が日を改めて告白しようと諦めたとしても、それでもずぶ濡れで待ち続けてるだろうね。文句言うためだけに
(-@∀@)そして翌日意を決して現れた彼女へニコニコしながらさらに文句を言うわけだ。むごい話だよ
( ・∀・)…『校舎裏で待っています』とは書いてたが、ウチ旧校舎もあるよね?
(-@∀@)差出人も気付いて頭抱えてるかもな
720
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/21(金) 01:23:53 ID:RIPkZPH60
脚が「もう回れ右して帰ろう」と語りかけてきたような気がした。傘もささずに長いこと待ち続けて頭がぼーっとしてきたのだろうか。
乗り気じゃあなかった。
むしろ生まれて初めて知ったレベルの強い苛立ちを感じたほどだった。
けれどここまで来たら何かしらの文句を言ってやらないと、濡れた甲斐が無い。
そんな美しい9歳の少年はこの世に存在しないこと。
モナー・マエモゼムはある一点を除けば、みんなと同じ普通の男の子で、その瞳は透明な水晶でもなければそう純粋でもないこと。
極端な美化や理想化が身動きを取れなくして、ずっとモナーを独りにしてきたこと。
モナーにとっての世界は誰もが同じ時間の中に存在しているこの色鮮やかな景色ただ一つで、自分だけの世界なんてものはむしろ捨ててしまいたいものだということ。
ばっさりと切り捨て、雨と差出人とモララーとアサピーに打たれてやるつもりだったのに、待てども待てども来る気配はない。
( ´∀`)…寒いモナ
額に落ちた雨粒が頬を伝って首筋に流れていく。
癖毛の髪型がひどく濡れてぺたりとまっすぐになっている。
いつも以上に身体が冷えきっていた。
この寒さは苦手だった。頭から爪先から、全ての冷気がせり上がって心臓に到達してしまいそうな。
寒いのはさみしいから嫌いだ。
こんな風に濡れなくても、元からそうだったかもしれない。それはそれで余計に嫌だなとモナーはゆっくり目を閉じて思った。
721
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/21(金) 01:24:42 ID:RIPkZPH60
( ´∀`)…モナ?
ふいに頭上の雨が止んでモナーが顔を上げると、白い傘を持った少女が立っていた。
鉛色の空に顔の上半分まで覆う長い黒髪、真っ白なとんがり帽子と肌のコントラスト。同じ年齢の子よりは少々高い方の背丈、胸ポケットに挿した銀色の薔薇。
いかにも内気そうな、幸薄そうな雰囲気。一目でこの少女が手紙の差出人だとモナーはわかった。
川;д川あ、あの…ごめんなさい!
( ´∀`)
少女は傘を持った手をまっすぐに伸ばしたままぺこりと頭を下げ、前兆の無い動作に呆気にとられたモナーは魚のようにぱくぱくと口を開けてしまった。
川;д川一旦家に戻って傘を二つ持って来たんです!きっとモナー君傘を用意してないだろうから…!
( ´∀`)…見ればわかるモナ
出鼻をくじかれた、とモナーは思った。
内気そうだなんてとんでもない。一撃で昏倒させられるようなパワーがこの少女にはある。それも無自覚に発現するものだ。
事実、待っている間につらつらと並べ立てた言葉はモナーの頭から何処かへ消え去ってしまった。打算を滲ませないまっすぐな真心故に、なおさらペースを掴みかねてしまう。
722
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/21(金) 01:25:40 ID:RIPkZPH60
川д川モナー君…手紙、読んでくれましたか?
( ´∀`)じゃなきゃここに居ないモナ
( ´∀`)君だってモナが来なくても二つ傘持ってここで待ってるつもりだったモナ
( ´∀`)そういう信頼は嫌いじゃないモナ
少女の顔がわずかにほころんだように見えた。
それを見てモナーも、少し、ほんの少しだけ自然に笑えた。
川д川モナー君!
( ´∀`)待った
決然とした声に被せるようにモナーが制した。
内心、動揺を残してはいたがもともと相手がどんな人間であれ、自分の答えははっきりしていたのだ。
( ´∀`)君はモナのことを知らんモナ。モナは君の名前すら知らんモナ
( ´∀`)互いにフェアな条件じゃなきゃ契約は交わせんモナ
723
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/21(金) 01:26:23 ID:RIPkZPH60
「それ、やめとけって」と聞き慣れた声が雨音にまぎれて響いた気がした。ある程度対等である関係は9歳の少年の中で形成されてきた絶対の価値観だった。
川д川あ、あの…
( ´∀`)だから今日は一緒に帰るだけモナ
申し訳無さそうに頭を下げた少女の手を握りモナーははにかんだ。
川д川わ、私…サダコ・イーベル・シェフェルトンと言います
( ´∀`)ありがとう。モナはモナー・マエモゼムモナ
724
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/21(金) 01:28:05 ID:RIPkZPH60
サダコ・イーベル・シェフェルトンはこの天気が好きだ。
大きくこうもり傘を開いて歩けば、すれ違う人の顔を気にする事も無い。サダコには人の視線は雨より痛かった。
傘の縁からぽたぽた落ちる水滴を見るのも楽しかった。
好き好んで大雨の中を散歩する人はあまり居ないかもしれないけど、サダコにとってこの天気は久しぶりの絶好の散歩日和と言えた。
ただ、その日の帰り道だけは違った。
傘の下から見える世界にモナーが居る。
時に笑いあい、時にむっとしたり。色々な事を話した。自分の魔法、好きな色、食べ物、音楽、得意なこと、趣味、いろいろ。
歳の近い人と話すことがあまり上手ではないサダコでも、音楽に合わせ相手の手を取って踊るようにすらすらと言葉を紡ぐことができた。
隣で心地よい雨音を共有する存在が居ること。
それはとても幸福で、天にも昇るような心地だった。
( ´∀`)へー、同い年だったモナか
川д川ええ。でもあまりそんな気はしないでしょう?
見た目や背丈じゃなく、性格や魔法使いとしての実力の事を言いたいのだとモナーは察した。
確かに少し頼りなさげな印象は受けるが、しばらく話してみて分かった事もある。
( ´∀`)そんなことないモナ
川д川…そうですか?
( ´∀`)サダコは思ったよりはっきり物事言うし、芯があるモナ
725
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/21(金) 01:28:33 ID:RIPkZPH60
他人の嘘を見抜くのに長けているモナーでも、話していてあまり違和感を覚えない人物は久しぶりだった。
なまじアサピエーラ・ガデライトのように「バカ」のカテゴリーに入らない、まっさらな人。
そうでない人間が好きじゃないわけではないが、モナーの世界を染める色の中ではまったく新しい色だった。
川ー川それは…きっとこの銀色の薔薇のおかげです、これが私に勇気をくれるから…
愛おしそうにサダコが胸に手を当てる。
( ´∀`)モニャ?
川ー川これをつけている時、私は自分の想いにとても正直になれる気がするんです。美しく、高潔で…茎まで銀色で、どこか信念すら感じさせるような花。誰かによく似てる気がして
( ´∀`)
( ´∀`)誰モナかね〜
川д川ふふっ、誰でしょうか…
726
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/21(金) 01:29:27 ID:RIPkZPH60
「「サダコ・イーベル・シェフェルトン〜!!!?」」
翌日、モララーとアサピーは顔を見合わせ声をあげた。
(;・∀・)ぼ、ボリュームには気をつけようアサピー
(;-@∀@)君こそ廊下で大きな声を上げるんじゃない!他人の色恋沙汰だぞ!?
( ´∀`)そんな驚くことモナか?
深々と考え込む二人にモナーはのほほんと返した。
(;・∀・)ん〜…いや、それほどかと言われればそうでもないんだが…ん〜…お似合いと言えばお似合いだけど…
( ´∀`)モニャ?
(-@∀@)なんというか、まだはかりかねているんだよ。君の未来を祝福したものか…
( ´∀`)非モテのひがみじゃなさそうモナね。なんかあるモナ?
727
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/21(金) 01:30:46 ID:RIPkZPH60
( ・∀・)いいかい?サダコは闇の大魔導師、フィレンクト・シェフェルトンの娘なんだ。数十年ぶりに産まれた闇属性の子、その上長い長いソウサクの歴史でも初めての特殊属性が遺伝した例なんだよ
( ´∀`)へー。そういえば昨日闇属性が得意って言ってたモナね
(;-@∀@)き、君…気がつかなかったのか?本当に?
( ´∀`)モナはサダコを知りたいモナ。サダコの血統にはあんまし興味ないモナ
(;-@∀@)君ってやつは…鋭い癖にどっかとぼけた奴だとは思っていたが…ここまで不甲斐ない脳みそをしていたか…?
自分の事のように深刻な表情でアサピーは頭を抱えうんうんと唸ってしまった。
( ・∀・)そういう割り切り良いとこ、ある意味尊敬するがね。彼女も産まれに振り回されてるクチだよ
( ´∀`)モナ…
728
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/21(金) 01:31:49 ID:RIPkZPH60
(-@∀@)適性は闇で固定。僕には及ばないにしろそれだけでも天才と呼ばれるには充分だが…彼女には魔力が足りないんだ。本人の闘争心の無さというかな…比較的攻撃に特化した闇属性では致命的と言っていい
( ・∀・)アカデミーを卒業してからは魔法局に行かず実家の花屋を継ぐだろうと噂も立ってる。彼女をよく知る人は喜んでその背中を押すだろう。だが、「フィレンクトの娘」という肩書きは降ろせない
( ´∀`)
( ・∀・)…何も知らないくせに好き放題に言うヤツが、山程いたんだろうな
( ´∀`)
( ・∀・)……やな話だよね
729
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/21(金) 01:33:02 ID:RIPkZPH60
( ・∀・)うーん…憶測なんだが、フィレンクトのおじさんは彼女をそういう世界から遠ざけたかったんじゃないかな。そうでなくとも将来的には戦場に出させることになるし…
( ・∀・)だから親として最初はアカデミーには入れようとしなかった。2年前にここへ入学してきたってことは、彼女自身がそういう道を選んだってことだけど…
( ´∀`)
( ・∀・)ウンとかスンとか言えよ
( ´∀`)ウン スン
( ・∀・)キミなあ…
( ´∀`)…きっと親でも勝手に自分の世界を狭める存在が我慢ならなかっただけの話モナ
( ´∀`)娘として生まれた事を誇りに思えるような尊敬できる親なら、なおさら
( ´∀`)じゃなきゃあんなに楽しそうに自分の魔法の話はしないモナ
( ・∀・)・・・・・・
730
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/21(金) 01:34:26 ID:RIPkZPH60
(-@∀@)ともかくだ、本人の気持ちがどうあれ今のままではキミとサダコ・イーベル・シェフェルトンは別れてしまう運命にある。実力が違うんだ
(-@∀@)キミが特例卒業を一旦蹴ればどうとでもなるんだろうが…そういうわけにもいかんだろうね。キミは僕と同じ天才なのだから!はーーーーっはっはっはっ!
( ´∀`)はァ〜〜〜〜。今それ心底どうでもいいモナ
( ・∀・)みんなで一緒に行けばいいんじゃないかな。だって父親が大魔導師なんだしちょっとお願いすれ
( ´∀`)サダコはそんなヤツじゃないモナ
( ・∀・)…ごめん。失言だった
( ´∀`)サダコもモララーと同じ、モナととっても近くて遠いヤツモナ
( ´∀`)モナの世界の中の誰より不思議な絵の具モナ
(-@∀@)…なんというか君の人生は、独創的な絵を思い描いてるんだな。一度見てみたいよ
( ´∀`)変な色の絵の具の代表がなんかいってら
(#-@∀@)にゃにおう!!!????
731
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/21(金) 01:35:19 ID:RIPkZPH60
( ´∀`)むふ。やだな〜〜褒め言葉モナよ〜
(#-@∀@)僕はほのかに悪意を感じたんだがね?
( ´∀`)モナモナ
( ´∀`)…むふ、むふふ、むふふふふ!モララーも、アサピーも、サダコも!みんな色とりどりモナ!契約した甲斐があったモナ!
( ・∀・)契約うんぬんってまーだ言ってたのか……
(-@∀@)契約?何の話だね?
(;・∀・)…ん?待て、ちょっと待て。モナー、キミ…サダコへの返事にも僕に言ったそれと同じようなこと言ったか?
( ´∀`)言ったモナ
(;・∀・)…………あのなあ〜〜〜。お前さあ……ほんっと………おまえ…………
( ´∀`)モナモナ
( ・∀・)どこの世界にあなたが好きですって言われて契約がどうだの代償がどうだの悪魔みたいな返しで応えるヤツがいるんだよ…………
( ´∀`)モニャ〜
モララーは額に手を当てて、大きくため息を吐いた。
732
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/21(金) 01:37:26 ID:RIPkZPH60
花屋と聞いて「今どきか」とモナーは思わないでもなかった。土の魔法に長けた人間ならその場で手からポンと花の一輪くらい出せる時代で花屋。
あまりそういった店に足を運んだ経験のないモナーにとって、それは想像もつかない世界だった。
繁盛するものなのだろうか?どんな雰囲気なんだろう?そんな事を考えていたら、授業なんてあっという間に過ぎていった。
一応モララーに花屋とはどんな所かとそれとなく聞いてみたが、彼はにやつきながら
( ・∀・)そりゃあキミ、花を売る所だろ
なんて求めていない答えを返すだけだった。
うきうきとした様子で、箒に乗った男が花束を抱えてすぐ横を駆けて行く。何か一世一代の勝負が彼にはあるのだろう。
だったら散らさぬようにスピードを落としたらどうかとも思ったが、モナーが注意する暇もなくその背中は過ぎ去って行った。
( ´∀`)プロポーズする時ハゲた花束渡す気モナか、あれ…
733
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/21(金) 01:38:49 ID:RIPkZPH60
遠目に見ていても、なんとなく繁盛する理由はよくわかった。
名前を特に知らないモナーでも、陳列されているそれが春、夏、秋、冬の花であることは分かった。魔力で枯れない加工でもしているのだろうか?2階建てで屋上はカフェになっているようだ。
憩いの場としての側面が大きいのだろう。確かにここでしばらく過ごしていたら、自分も「ちょっと買ってみてもいいかな」なんて思ってしまうかもしれない。
店からすぐ出た所ではサダコが子供達を集めて影絵劇を披露している。胸に挿した銀色の薔薇が、なんだかモナーにはこそばゆかった。
( ´∀`)攻撃特化なんてアサピーはとんだ知ったかぶり野郎モナ
( ´∀`)特殊属性でもああいう生き方はできるモナ
( ´∀`)…あ。あー…………そっか
なんとなく、ほんの一瞬、頭をよぎったそれが、モナーにとって初めて得た温かいものだった。
出会った時にほんの僅かに感じたその想いが、言葉になってモナーの頭の中に現れた。
綺麗だ。
そう感じて思わず微笑んでしまう時点で、もう勝敗は決まったようなものなのだろう。
そんな柄にもなく浮ついた自分がどうしようもなく面白く感じるのだから、きっとモララーやアサピーが今の自分の表情を見たら爆笑するのだろう。
( ´∀`)…それも悪くないモナ
少し頭を掻いて、人懐っこい笑みでモナーはしばらくサダコを眺めていた。
734
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/21(金) 01:39:48 ID:RIPkZPH60
( ´∀`)こんにちはモナ
川ー川モナー君。遠くで何かこそこそしてるからいつ来るのかなって思いましたよ
( ´∀`)バレてたモナか
川ー川ふふ。わかりますよ、モナー君の気配くらい。この薔薇が教えてくれますから
その声に一瞬の間を置いてモナーはサダコから視線を転じ、陳列されている花々を見た。
( ´∀`)売り物じゃないモナね、それ
川д川ええ。私の花…私の、大切な友達です
( ´∀`)
この花は彼女にとってどれほど大きな存在なのだろう。今もその姿は自分と重ねられているのだろうか。
花に嫉妬するのも馬鹿らしい話だとモナーはしばらくぼうっと店内を眺めた。
735
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/21(金) 01:40:34 ID:RIPkZPH60
ほどなくしてモナーは屋上のカフェへ通された。林檎のジュースを持ってきた従業員の女性が、何か嬉しそうに「ごゆっくり」とウインクしていたので母親か姉かは判断しかねるものの軽く会釈を返しておいた。
中央にそびえる大樹を囲むように配置されたテーブル。自然を感じながらくつろぐための空間なのだろうと理解はしたが、夕焼けに染まる葉は癒やしと言うよりはなんだか物悲しいものがある。
初めて訪れた花屋の感想だとか、少し気になった花の説明だとか、他愛ない話でひとしきり盛り上がった後。
話題が途切れたほんの少しの間に、思いきって切り出すようにサダコが顔を上げた。
川д川…もう明日なんですね
( ´∀`)モニャ?
川д川ほら、大魔導師様が来る日。モナー君は魔法局へ行くんでしょう?
( ´∀`)あんまし行くとは考えてないモナ。声をかけられるかもわからんし…モナはまだ9歳だし、まだ経験不足な面も否めないモナ。だから残るつもりモナ
川ー川嘘。モナー君、行く気なんですよね
憮然とした表情のモナーをサダコがじっと見据えた。
思うように言葉が繋げず、モナーは目を伏せて押し黙った。そんなことは初めてだったし、嘘を見抜くことはあっても見抜かれる経験は無かったモナーにとって痛烈な一撃だった。
736
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/21(金) 01:42:22 ID:RIPkZPH60
( ´∀`)…なんで嘘だとわかるモナ?
川д川え?だってモナー君、わかりやすいし…無意識かもしれないけど、結構嘘ついたり誤魔化す時はサイン出してますよ?
川д川今の話だと「もにゃ〜」とか適当なこと言ったり
( ´∀`)金輪際言わんモナ
川;д川えっどうして 私結構かわいくて好きですよそれ
( ´∀`)言わん
川ー川…うれしかったですよ、残るつもりだって言ってくれたの
川д川でも私、負けませんから。あなたにも、自分にも
( ´∀`)…がんばれ
こうやって顔を合わせて話すことで、自分の事を見抜けるようになったのだろうか。
それともあのラブレターを綴った時から彼女は自分の姿を捉えていたのだろうか。
サダコと話をするようになってからは、「初めて」に戸惑う事が多い。
心臓が熱くなったり、冷たくなったり。その先が喜びであれ悲しみであれ人それぞれだが、誰でも最初は“落ちていくもの”なのだと説いた母の言葉をなんとなくモナーは思い出した。
そう言われると、今の自分は靴も履かずに真っ逆さまと表現するべきだろうか。
その目に映った自分の知らない世界は燃えるように真っ赤で、どこかいつもと違う寂しさを滲ませていた。
737
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/21(金) 01:43:16 ID:RIPkZPH60
(‘_L’)…今の君の実力なら、シィくんを凌ぐ天才足り得るかもしれんな。雪のように柔らかく、氷柱のように鋭い君の目は充分に戦士の目をしている
(‘_L’)歓迎するよ、モナー・マエモゼム君
( ´∀`)光栄ですモナ
フィレンクトががっしりとした手をモナーの肩に置いた。
なるべく平静を装ったが、190センチを越すフィレンクトの巨躯は学年イチの低身長のモナーには「でかくて黒くて何か顔みたいなのがある面白い木が何か優しく語りかけている」としか思えず、あまりの身長差のせいで思わずこみ上げてくる笑いを堪えるのに苦労した。
(‘_L’)…次、サダコ・イーベル。前へ
川д川はい…!
堂々とした足取りでサダコが前へ出た。その姿にモナーは、まっすぐな期待の眼差しを向けた。
738
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/21(金) 01:44:17 ID:RIPkZPH60
目の前にはただ一人を追い、ただ一人を求めて、ほんの僅かな時間の中で勇気をその手に掴んだ少女の姿がある。フィレンクトはしばらく家に戻っていない間に何があったのだろうと冷や汗を浮かべたが、すぐさま大魔導師としての顔へ戻そうと眉を寄せた。
川д川…フィレンクト・シェフェルトン
(‘_L’)何だね、サダコ・イーベル?始めるなら早く…
川д川私、魔法局へ行きます
サダコの足元から無数の影が伸びた。芸術的な影絵芝居だろうと周りの人間は予想したが、モナーとフィレンクトは違った。
影たちは空を踊り、太陽の光に当てられても消えることなく、高く、高く伸び続けた。その一本一本の線が重なった時、フィレンクトは後ずさった。
(;‘_L’)腕……!?
影で出来た巨大な腕が、猛烈な勢いでフィレンクトに向かって襲いかかった。
咄嗟にフィレンクトはそれを躱し、「それまで」と制止の声を上げた。
しかしサダコは影を、いや、手を天へと伸ばし続けた。太陽を掴もうとするかのように、もっと高く、もっと前へ!
川д川……と、れた、わた、し……の………
(;‘_L’)サダコっ!!
(;´∀`)…!
ぷっつりと糸が切れたように、そのままサダコの身体は地面へと倒れてしまった。
739
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/21(金) 01:45:38 ID:RIPkZPH60
3番隊の隊舎で、氷の大魔導師モナー・マエモゼム18歳は黒い花の形のブローチを握りしめていた。
自分の隊長としての日々が今日ここから始まるのだと。
心臓が高鳴り、柄にもなくそわそわとしてしまう。髪は決まっているかな、ボタンのかけ間違いなんてしてないよな、マントに着られている感じはしてないかな。早く来ないかな、早く来ないかなと。
足音が聞こえる。モナーは誰にともなく咳払いをして、立ち上がった。
( ・∀・)よ
( ´∀`)お前かよモナ
ほとんど落胆していない、というかすでに予想していたような口ぶりでモナーは再び腰掛けた。
( ・∀・)だって僕んとこも出来たてホヤホヤなんだよ。ヒマなの
( ・∀・)それにさ。数年ぶりの友人に会うんだぜ?喜ばしい場には同席したくなっちゃうのさ。ほら
モララーが柔和な笑みを浮かべてドアを指差す。
トン、トン、と間を置いて響くノックの音。
モナーは再び立ち上がった。
740
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/21(金) 01:46:46 ID:RIPkZPH60
(-@∀@)やあ、失礼するよモナー
( ´∀`)ペッ
モナーが吐きかけた唾をアサピーは無駄に華麗な動きで躱した。
(;-@∀@)き、君は客人に唾を吐きかける癖でもあるのかい!?直した方がいい!直した方がいいぞ!!
( ´∀`)お前だけモナ。というかきょうび天丼なんかでウケんモナ、帰れ
モララーがクククと低い笑い声を立てた。
( ・∀・)…やっぱり面白いね、こういうキミを見るのは。ほら、今度こそ主役の登場だぞ
741
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/21(金) 01:48:10 ID:RIPkZPH60
川д川失礼します
( ´∀`)そんなかしこまった挨拶はいらんモナ
川ー川一応、形式的に
川ー川…ふふ、あまり変わってませんね
( ´∀`)君の強さと美しさもあまり変わってないモナ
川ー川口説き文句もお上手になったんですね
( ´∀`)文通してたら自然とそういう言葉使いになるモナ
凛とした長い黒髪の女性の姿は笑うとあの頃のあどけなさが浮かんできて、それがモナーにはとても嬉しかった。
緊張しながらもぴしっと背筋を伸ばして、彼女は言った。
川д川今日より3番隊副官として配属されました、サダコ・イーベル・シェフェルトンです
その胸に挿した銀色の薔薇は、4本に増えていた。
続く
742
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/21(金) 01:51:36 ID:RIPkZPH60
>>1
その1 ( ・∀・)
>>30
その2 (*゚ー゚)('A`)
>>79
その3 ( ・∀・)lw´‐ _‐ノv/('A`)(‘_L’)
>>156
その4 ( ´∀`) / ゚、。 /
>>197
その5 ( ´∀`)( ´_ゝ`)(´<_` )
>>263
その6 (-@∀@)( ^ω^)
>>314
その7 (`・ω・´)
>>368
その8 | ^o^ |(#゚;;-゚)
>>421
その9 ミ,,゚Д゚彡('A`)
>>480
その10 ( ・∀・)lw´‐ _‐ノv
>>517
その11 ( ・∀・)(´・_ゝ・`)
>>556
その12 ('A`)('、`*川( ^ω^)o川*゚ー゚)o
>>613
その13 ( ・∀・)( ´∀`)(-@∀@)
>>652
その14 (-@∀@)
>>704
その15( ´∀`)
743
:
名無しさん
:2022/01/21(金) 04:53:16 ID:hPMvdKeM0
おつおつ
でも今の副官はシラネーヨなんだよなぁ
この後サダコがどうなったのか気になる……
744
:
名無しさん
:2022/01/22(土) 22:02:51 ID:LhLaT7YM0
乙です
何もかも不穏すぎる…
745
:
名無しさん
:2022/01/24(月) 00:36:39 ID:4R/EURho0
甘酸っぱいけど、サダコどうなっちゃうの…
続きが気になる、乙!
746
:
名無しさん
:2022/01/24(月) 00:42:25 ID:kqAOKQxM0
乙
もう今からつら
747
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 13:59:23 ID:6GLMRu4E0
魔法をかけられてしまったのかもしれない。
呼ばれるごとに、僕の中の強さが持っていかれそうな、少しずつ溶けていくような、そんな気がする。
心の中に流れ込んできた何かが熱い渦を作っていくようで、辺りの景色までもが優しく光りだすようで。
僕の名前を呼ぶこの人は、毎日顔を合わせるこの人の心は、本物なのか?と疑う気持ちが少しずつ崩れていく。
君と出会ってから、君以外に対しても、僕はなにかと鈍くなっている気がする。
でも、それも悪くないかなと感じたんだ。
探していた暖かさ。探していた優しい響き。
魔法だろうとかまわない。
もしそうだとしても一生解けなくていいと、今は強く思うんだ。
748
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:00:36 ID:6GLMRu4E0
( ・∀・)…君のセンスってさ
( ´∀`)サダコの影響モナ
( ・∀・)いや、うん。だろうね
4番隊の隊舎でモララーが便箋を片手に笑う。
部屋の天井から吊り下げられたランプの炎が不規則に揺れ動く。時刻は夜の十一時を回っていた。
テーブルの上に並びきらずに床にまで転がっている空き瓶は次の日処理が大変そうだ。
弱い癖に良く飲む眼鏡は向かいのソファに寝転がり、戴き物の熊のぬいぐるみにカレンだのミレーヌだの数秒ごとに呼び方を変えながら頬を擦りつけぼそぼそ語りかけている。
持って帰らせて処分しようとモララーは思った。
749
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:01:23 ID:6GLMRu4E0
( ´∀`)で〜?
( ・∀・)なんだよ
( ´∀`)むふふ、どう思うモナ〜?
並んで座ったモナーがぐいぐいと二、三度身体を寄せて、唐突にしたためた文の感想を聞いてきた。ジュースしか飲んでいないのに、随分と上機嫌な様子だ。
モララーは半分ほど残った酒を飲み干して、まっすぐにモナーへ向き直った。
( ・∀・)僕は文字じゃあなくてちゃんと君の言葉で伝えた方が良いと思うよ
( ・∀・)サダコさんへのプロポーズなんだからさ
750
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:02:21 ID:6GLMRu4E0
( ・∀・)というかだな、ひとつ。原稿にしたってこりゃよくわかんないよ。もっと気取らずにありのままの気持ちを聞かせる方が君には似合ってる
( ´∀`)ありのままね〜〜〜〜
( ・∀・)なんだいその目…
( ´∀`)べつに〜〜〜〜〜〜〜〜〜
( ・∀・)ふたつ。さっきからモナ抜けてるぞ
“嘘つきのモララー”が真人間ぶった台詞を吐くのはそんなに可笑しいことだろうか。いつもならばっさりと切り捨ててくるモナーはただにやにやとこちらを覗き込むだけだ。
何故だか嫌いになれないその仕草。とっくに見飽きたその表情が今日はなんとももどかしく、モララーは考え込むように指先で顎をつまんだ。
( ・∀・)…それと、みっつ。どこの世界にプロポーズを手紙で済まそうとするおバカがいるんだよ…手渡す気でもないんだろ?
( ´∀`)3番隊の自分の机にそっと置いておくモナ
( ・∀・)僕がサダコさんだったら手に取って読んだとしても「わかんね…」って顔するね。そして真相を知ったら「ふざけてんのか」ってひっぱたく
751
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:03:28 ID:6GLMRu4E0
( ´∀`)だって今更真正面から「結婚しよう!」とか言うのもなんか…どうすればいいかわからんモナ
珍しいモナーの弱音にモララーは目を丸くした。
「サダコはそんな女性じゃない」と返ってくるのを予想していたからだ。
そう言い返さないということは、口に出さずともモナーの中でサダコの存在は揺るぎないものに昇華されていることを雄弁に物語っていた。
( ・∀・)…今更というか飛ばしすぎなんだよな。卒業してからずーっと文通で、再会してから1ヶ月で結婚?フィレンクトさん感情追いつかなくてショック死しちゃうよ
( ´∀`)モナもサダコも9年待ったモナ
( ・∀・)お互いずっと一途なのは良いことだよ。そういう関係、羨ましいとすら思う…けどなあ、うーん…言われてみりゃ早いんだか遅いんだかなんだけどな…
752
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:04:13 ID:6GLMRu4E0
( ´∀`)なんとかしろモナ、ベストマン
(;・∀・)べ、ベストマン?僕がかい?いくらなんでも飛躍しすぎじゃないかな
( ´∀`)モララーしかおらんモナ
思わず目を大きく開いたモララーよりも、モナーの瞳の方がよほど戸惑いの色に染まっている。
それを分からないモララーでもなかった。
彼にとって9年間の月日は昨日のことのように新鮮で、まだその初心な気持ちに折り合いをつけきれていないのだ。
( ´∀`)息子か娘が産まれたらモララーに名前をつけてもらうつもりでいるモナ
( ・∀・)手順を無視して先にやりたい事やりたい事あれこれ論じない方が良いと思うんだけどね、ぼかあ
( ´∀`)だから手順やノウハウはモララーに考えてもらうモナ
( ・∀・)あのな。僕だっていない歴年齢の身なんだぞ?
( ´∀`)でもモララーしかおらんモナ
( ・∀・)…いや、うん。ありがとう。やるとなれば精一杯やらせてもらうし君たちのことはいつも応援しているよ
( ・∀・)けどね?全力で支えたいとは思うが、僕にだってはっきり言いたい事はある。手紙は絶対やめろ
753
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:05:36 ID:6GLMRu4E0
( ´∀`)だって気恥ずかしいモナ
( ・∀・)僕に言わせりゃさっきの文章のがよっぽど気恥ずかしいよ。9年の付き合いなんだろ?遠慮はキミが最も嫌がるものじゃないか
( ・∀・)詩をつけるのはサダコ、音色を奏でるのはキミ。それがちょうどいいのさ。慣れないことしてヘマする必要はない
( ´∀`)モニャ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜………
困ったように眉を下げて指差すと、モナーは仰向けにソファへ寝転がりじたばたと赤ん坊が喚くような動きで駄々をこねた。
( ・∀・)そんなんだから変に格好つけるのが似合わないんだって……あっ、おい蹴るな蹴るな
( ´∀`)げしげし
( ・∀・)18歳児だな〜
754
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:06:46 ID:6GLMRu4E0
冬の寒さに身を縮こませながらカツカツと靴音を鳴らして、魔法局の廊下をフィレンクトは歩いていた。
長い魔物の討伐遠征を終え、娘の所へ顔を出そうと思っていたのだ。
もちろん理由はそれだけではない。フィレンクトが会いたい人間はもう一人居た。モナー・マエモゼムだ。
あの時、僅かな魔力を使い果たして倒れた娘を保健室まで運ぶ役を買って出たのはモナーだった。
大魔導師として私情で試験を切り上げるわけにもいかず、すぐに側へ居られなかったことをフィレンクトは強く後悔した。
その場に居合わせていながら後からのこのこ出てきて心配するような表情を見せるなど父親の風上にも置けない男だと誹りを受けることも覚悟していた。
保健室でモナーは静かにサダコの手を握っていた。
彼はこれといってフィレンクトを非難せず、ただこちらを見上げて一言「ごめんなさい」と頭を下げるだけだった。
その時フィレンクトはなんとなくサダコを奮い立たせた力の正体を悟り、彼を自分が率いる2番隊へと招くことを決意した。
なんてことはない理由だった。ただ、こちらを見上げる少年の瞳に大樹の苗木を見たのだ。
それが娘をこの強く残酷な日差しから守ってくれるなら、それはとてもありがたいことだと空に願ったのを今も覚えている。
755
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:07:42 ID:6GLMRu4E0
(‘_L’)モナー君。大魔導師就任おめでとう
( ´∀`)ありがとうモナ
対面した二人の前に紅茶を差し出して、サダコがちらりとこちらを見た。
フィレンクトが「あ…」と声を漏らしたが、サダコは気にもせずすたすたと別室へ去ってしまった。
(;‘_L’)あはは……無理もないか……父親としては何も残してやれないまま大人にしてしまったからなあ…
紅茶を一口飲んで、がっくりと肩を落とす。
フィレンクト・シェフェルトン率いる2番隊は家庭どころか魔法局に戻って来ることすら稀であった。
( ´∀`)…あの子は仕事に真面目なだけモナ。モララーやアサピーが来ても彼女は間に入らないモナ
(‘_L’)そうかい?…ははは。似なくて良い所ばかり似るものだ…
( ´∀`)そうモナか?
力なく苦笑して頭を掻くフィレンクトを、モナーはきょとんとしたまま見つめた。
756
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:08:39 ID:6GLMRu4E0
( ´∀`)彼女の目標の中にモナが居たことは確かモナ。けどそのもっと先にはフィレンクトさんの姿があったはずモナ
( ´∀`)貴方が父親としてサダコに残せたものがあるとするなら誇りと憧れだと思うモナ
人懐っこい笑顔を浮かべたまま「違うモナ?」とモナーは小首を傾げる。
何かに納得したように、感嘆したように頷きを繰り返すフィレンクトを見てその顔にますます穏やかな笑みが広がった。
思い出したようにモナーは席を立ち、棚から一つの酒瓶を持ち出した。
(‘_L’)…君、昼間からかい?
( ´∀`)モララーから貰ったやつモナ
( ´∀`)こちらからも生還を祝わせてもらうモナ。どうぞ
(‘_L’)どうも。君はどうかね
( ´∀`)モナはまだ18モナよ?
(‘_L’)ソウサクじゃ禁止されていないさ。シベリアやヴィップは知らんがね
二人は無言で紅茶を空にした。
カチャ、とティーカップを置く音が同時に響き、ほどなくして行儀の悪い大人の遊びが始まった。
757
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:09:57 ID:6GLMRu4E0
(‘_L’)…サダコとは上手くやれているかね?あの子はどうも引っ込み思案な所があるから…
モナーから返ってきたのは異国の言葉を聞いたような困惑の顔だけだ。
サダコのそういった一面をモナーはあまり見たことがないのだろう。
( ´∀`)むしろ積極的に何かと世話焼いてもらって助かってるモナ
(‘_L’)ふふ、そうか…特別、というやつかな
( ´∀`)そんなとこモナ
(‘_L’)幸せ者だな。娘も、君も……
( ´∀`)話していかんモナ?
(;‘_L’)はは…いや、それなんだが。数年と顔を合わせていない父親がだ。自分の上司と長々と何を話しているやらと思えば、出てくるなり赤ら顔で絡んできたら娘はどう思うだろうね?
( ´∀`)フィレンクト隊長が格好つかないのはデフォルトモナ。気にする必要なし
(‘_L’)…君、やっぱり変わらないなあ
758
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:10:40 ID:6GLMRu4E0
執務室を出てすぐにフィレンクトはきょろきょろとあたりを見回し、長い黒髪の女性を見つけて駆け寄った。
(‘_L’)しょ、書類なら私が持とう。その量は一度では無理があるよ
川д川…私の仕事ですから
すっと細い手のひらがフィレンクトを制止した。
視線と視線が真正面でかち合う。どうも他人行儀な会話の切り出し方になってしまい、フィレンクトは神妙な顔をした。
辛うじて眼を合わせて話していられるのは小さな小さな救いではあったが、そもそもにしてそれが精一杯な己の小心さが惨めだった。
(;‘_L’)モナー君とは仲良くやれているかい?
川д川
川ー川ええ。とても…満たされた日々を送っていますよ
(‘_L’)ふふ…それはよいことだよ、サダコ。隊長と部下達が互いに強く結びついてこそ、良き隊を育む…結局のところ人は法や制度ではなく人に仕えて生きるものさ。信頼や運命と言い換えても差し支えはないがね
川д川…運命、ですか
サダコはすたすたと背中でそっけなく応え、書類を置いた。
759
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:11:38 ID:6GLMRu4E0
ぼうっと立ちすくみながら、どうすればいいのかときまりの悪い顔をする。
取っ掛かりは不発。回りくどい言い回しは届かず。上手くわかりやすい言葉を探そうにも見つからない。
親子の会話というものはこんなに難しいものだっただろうか?
何歳か若返って、初心な学生に戻ったような気持ちだ。それでいて幼さに身を任せてあれこれと目につくものに興味を示す娘に振り回されているような。
副官サダコ・イーベル・シェフェルトンの姿と娘であるサダコの姿が重なり合って、ぼやけて映る。
フィレンクトは少し目を擦った。
川д川あの、お父さん。これ
一輪の花をサダコがフィレンクトへ差し出した。
(‘_L’)薔薇か。おまえは銀色の薔薇が昔から好きだったな
川д川ええ。そのお酒、モナー君からもらったんでしょう?私からも帰還祝いに
川д川その薔薇は幸福を運んでくれますから
(‘_L’)…ありがたくいただいておくよ。君のこれからの幸福が、私の一番の幸福だ
760
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:12:17 ID:6GLMRu4E0
( ФωФ)ふむ、失踪?
(*゚ー゚)はい、魔法局でもここ数ヶ月で14名ほど。市民も含めると…
( ФωФ)…魔物か?
(*゚ー゚)その可能性が大きいかと、ロマネスク王
( ФωФ)調査に関してはそちらに任せる、シィ・ニャイッキー
( ФωФ)一刻も早く事態の終息を急ぐべし
(*゚ー゚)…謹んで拝命いたします
761
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:12:58 ID:6GLMRu4E0
(*゚ー゚)とは言ったものの…手がかりなんてないのが現状なんだよねー……あーーもーーー
食堂では四方八方からの話し声が互いに干渉し騒がしく自分達の領域を守っている。おかげでシィも序列1位の大魔導師の仮面を容易く脱ぎ捨てる事ができた。
ストローに口をつけたまま、モーラ・モラール・マタリウスは「で、僕にどうしろと」と言いたげな視線を送っている。
( ・∀・)要するにたらい回しにするために僕を呼びつけたってことだろ
(*゚ー゚)無視は出来ないけれど、1番隊も忙しいから…あなただって身にしみてわかってるはずよ
( ・∀・)そりゃあまあ、そうだけどもさ
762
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:13:44 ID:6GLMRu4E0
(*゚ー゚)…あなた、そうやって日がな一日だらけるのが隊長の仕事じゃないでしょう?
( ・∀・)そうでもないよ?こう見えて結構素材の回収にあれこれ足を運んでるんだ。あと生ゴミとかも拾ってる
(*゚ー゚)例の魔法術式ね
( ・∀・)そ。擬似的に特殊属性を再現するための混ぜ物が重要なのさ、僕にも正解がわからんから困ってるんだけどね
(*゚ー゚)ああ、だからあなたちょっと臭いんだ
( ・∀・)え、そう?
モララーは袖を嗅いだ。
( ・∀・)でもまあ、僕も暇か暇でないかで言えば前者の身だ。探偵ごっこに付き合いましょう
他人事のようにモララーが呟き、シィは大きくため息を吐いた。魔物がじわじわと爪を立てて忍び寄っている現状に対して呑気すぎる。
無論、1番隊にも失踪者は出ている。まだ部隊の編成もしていないモララーにはこの不安がわからないのだ。
シイはまじまじとモララーの顔を見た。
(*゚ー゚)ねえ、マタリウス。貴方じゃないでしょうね?
( ・∀・)そりゃあ僕は魔法局の連中から人さらいとは呼ばれてますけど
( ・∀・)でも魔法陣が爆発したりして結局みんな逃げてっちゃうんだよなー
(*゚ー゚)多分貴方の隊舎の異臭も原因よ
( ・∀・)臭くなったのはゴミ集め始めた最近からだよ
763
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:14:55 ID:6GLMRu4E0
( ・∀・)…どうも魔法局から失踪した連中は所属や住まいがばらけてるな
1番隊の隊舎でぱらぱらと書類に目を通しながら、モララーが呟いた。
(*゚ー゚)そうね。何かしら共通点を探してはいるんだけど…
( ・∀・)そもそもの出発点がどの隊の人間なのかが重要だね。便宜上、僕らは一応の影に「魔物」という形を捉えてはいるが…それだって確かじゃない
(*゚ー゚)身も蓋も底もないことを言えば、まだ何にも掴んでないのよね…
(*゚ー゚)…魔法局でも失踪者や無断で脱隊する者は毎年出てはいるから、何をもって最初とするのかすら不確定なのよ
( ・∀・)仕方ないさ。こんな仕事だもの、気が滅入る奴だって出てくる
764
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:15:22 ID:6GLMRu4E0
( ・∀・)地図か何かあるかい
(*゚ー゚)王都ファイナリの?
( ・∀・)うん。印をつけたいんだ、できる方法は試しておきたい
(*゚ー゚)ええ、用意するわ
乗り気になれば、ぐいぐいと引っ張って行くのがモララーという男だった。その姿に追いつこうとする事をやめればそのまま勝手に何処かへ行ってしまいそうなほど。
(*゚ー゚)…だからこうしてるんだけど
( ・∀・)何がだい?
(*゚ー゚)ううん、なんでもない
765
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:16:25 ID:6GLMRu4E0
( ・∀・)丸をつけたはいいけど、どれをどう繋ぐかだよなあ
( ・∀・)魔法局を中心とするパターンか、魔法局も含めて一本の道とするべきか…それ以外にもあるし…うーん…全部間違ってるかもしれないし
( ・∀・)聞き込みに行くにしても、どっから手をつけたもんかね
独り言ちて、モララーは王都ファイナリを歩く。
こうして街に来るのも久しぶりだ。
まばらな昼下りの冬の人波にモララーは目を細める。
地図をつーっとなぞって考えてはみるものの、ヒントらしきものは見つからない。
ぼんやりと立ち止まり手を頭の後ろで組みながら辺りを見つめていると、見慣れた顔が目についた。
( ・∀・)よっ
( ´∀`)モララー。何やってるモナ?
( ・∀・)探偵ゴッコ。モナーは?
( ´∀`)ベストマンに言われた通り段階を踏むことにしたモナ
むふん、と腰に手を当て鼻息ひとつ。胸を張っていつものように悪戯っぽく笑いモナーは応えた。
要するにこれからデートということだろう。
( ・∀・)お熱いじゃん。羨まし〜な〜
( ´∀`)モナモナ
( ・∀・)ニコヤカ
766
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:17:14 ID:6GLMRu4E0
( ´∀`)ふぅ〜〜〜〜〜〜ン………失踪事件ねえ
( ・∀・)キミんとこは?
( ´∀`)まあ1人2人長いこと来てないヤツや辞めてったヤツはいるモナ
( ・∀・)ちょーっと僕らは去る者追わず思考を改めた方が良いかもしれないね
( ´∀`)かモナ
( ・∀・)お、変則パターン…!
( ´∀`)そういう時もあるモナ
767
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:18:12 ID:6GLMRu4E0
モララーは身震いした。自分でもこの寒さは耐え難いと思うのだから、普段からよく寒い寒いと言うモナーは相当だろう。
ちらりと隣に数時間立っているモナーを見た。彼は寒がるそぶりも見せず、マネキンのようにぴくりとも動かず、ただ、じっと遠くを見ていた。
その時モララーは、彼が体感的な寒さではなく心の寒さと戦っているのだと静かに感じ取った。
( ´∀`)・・・・・・
( ・∀・)・・・・・・
( ´∀`)・・・・・・・・・
( -∀-)…なあ、モナー。人間っていろいろあるよな
( ´∀`)?
( ・∀・)笑って、泣いて。泣いて笑って…
( ・∀・)人の気も知らないでこの野郎と頭に来るかと思えば、知らない内に自分が他人を傷つけていることを知って、悔やんでも後の祭り…とかさ
( ・∀・)僕にだって恥じ入る気持ちが無いわけじゃないよ。気づくのはいつもしばらく経ってからなのが、僕のどうしようもない所だけど
768
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:18:46 ID:6GLMRu4E0
( ・∀・)モナー。僕は今から「お前が言うな」の極地を言うぞ
( ´∀`)…ばっちこい。ひっぱたいてやるモナ
( ・∀・)ありがと
( ・∀・)…人に言えない理由でもさ。あまり独りで悩まないで欲しいんだよ、モナー・マエモゼム
呆気にとられたような顔をした後、ぷす、と空気が漏れ、モナーは白い歯を見せ弾けるように大笑いした。
( ´∀`)ぷっ、むふ……むふふふふふ、むふ、んふぅッ…!!ごめ、モララー…ツボった…ひぃ…ふふふふ…!
( ・∀・)あー、うん。自分でもどうかと思う
( ´∀`)むふふふ…今までで一番おもしれえモナ!モーナモナモナモナモナモナモナ!
( ・∀・)そりゃどうも
769
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:19:50 ID:6GLMRu4E0
しばらくモナーは一人笑い続けていた。
沈む夕日の寂しさが少しでもまぎれたなら、それでいいのだとモララーは目を閉じて思う。
( ´∀`)モナは別にサダコが来るだ来ないだで悩み嘆いてるわけじゃないモナ
( ´∀`)遅いなって待ち疲れてるだけモナ
( ・∀・)ふふ。あのサダコさんだものな
( ´∀`)あの時みたく開口一番謝罪なんかしようものなら露骨に頰膨らませて15分くらい拗ねたフリしてやるモナ
( ・∀・)ナンギなことするなあ
( ・∀・)…キミ、時々甘え上手なんだか下手なんだかわかんない時があるよ
( ´∀`)フツー
( ・∀・)フツー?
( ´∀`)うん。モナはフツーの男の子モナ
( ・∀・)そっか…ま、その…なんだ。……しりとりでもして待ってる時間潰すかい?
( ´∀`)ぷっ、くく、むふふふ………大の大人が2人並んで時間潰しにしりとりモナか?
( ・∀・)ふっ、ふふ…いや、ごめん。なんとなくパッと思い浮かんだからつい…我ながら幼稚過ぎたかもしれないな…
770
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:20:53 ID:6GLMRu4E0
( ´∀`)むふふ、正直でよろしい。いいモナよ、受けて立つモナ
( ・∀・)なんだか申し訳ないな
( ´∀`)何も遠慮することはないモナ。モナ達の間に
( ・∀・)ニコヤカ
( ´∀`)身体、冷えてないモナか?
( ・∀・)勝手に提案しておいてなんだがだいぶ話が変わるんだけど、いい?
( ´∀`)いいだろう
( ・∀・)うん
モナーは両手を上げてガッツポーズをした。
771
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:21:40 ID:6GLMRu4E0
( ・∀・)…ちょっと考えてたんだけどさ。プロポーズの話
( ´∀`)お、ベストマーン
( ・∀・)気に入ったのかその呼び方。…それでね、プレゼントに花を送るのはどうかと思うんだ
( ´∀`)何の花モナ?
( ・∀・)アカシアとかどうかな。花言葉は「魂の不死」ステキだろ?
( ´∀`)縁起でもねえモナ
モナーは照れ臭そうにそっぽを向いた。
( ・∀・)そうかなあ。こんな世界に生きてる僕らだからこそじゃないかな
( ´∀`)モララーはそんなもん信じてるモナ?
( ・∀・)まあ一応ね。花言葉は他にもいろいろあったはずなんだけど、そこんところは忘れちゃったんだ
( ´∀`)…とりあえず候補には入れておくモナ
後日モナーは存分にむくれた。
772
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:22:55 ID:6GLMRu4E0
( ´∀`)ぶう
机の上に顎を乗っけたままモナーは見るからに不機嫌です、というオーラを出していた。
こうして毎日顔を合わせるのだから一日くらい会えなくても、なんて考えて気持ちに整理はつけたが、それでも少しサダコをからかってやらないと気が済まなかった。
( ´∀`)昨日何やってたモナ?
川д川あ…はい。いろいろ立て込んでてあまり覚えてないんですけど、実家で花のお世話を…
( ´∀`)んー、実家の手伝いじゃしょうがないモナ
( ´∀`)…きーめた。今日みんな休みモナ
モナーは軽く椅子を一回転させると、少し上擦った声で立ち上がった。
川;д川えっ?あの、3番隊はお昼から戦闘訓練が
( ´∀`)そんなんいつでもいいモナ
昨日が駄目なら今日でいいのだ。今日が駄目なら明日。
一日一日をそう急ぐこともない。まだ自分と彼女にはたっぷりと時間があるのだから。
少し強引な誘いでモナーはサダコを連れ出した。
773
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:24:00 ID:6GLMRu4E0
サダコは灰色のマフラーを巻いていた。今日買ったばかりのものだが、不思議と普段のモノトーンの服装と良く溶け込んでいた。
川ー川…もう少ししたら春が来ますね
( ´∀`)それ使う期間、少しだけになりそうモナね
川ー川いいんです。また来年寒くなってきたら使いますから
サダコは愛おしげに首元を触った。モナーの胸はじんわりと暖かかった。
( ´∀`)…初めて会った時は夏だったモナ。大きくなって会った時は冬だったモナ
川д川あ…そっか、私達まだ春と秋を一緒に刻んでいないんですね
( ´∀`)なんなら夏も満足に過ごせたとは言えんモナ。ほんのちょっとの間だけだったし
774
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:25:12 ID:6GLMRu4E0
( ´∀`)あんまりモナたちは花が咲いてる並木を歩いたことがないモナ
川д川枯れてるか、緑に染まってるかですものね…
川ー川なんだろう…普段花が咲くのを待っている時とは、また違った楽しさがありますね。こういう時間は
川д川あ、モナー君!
モナーは踊るように駆け出して、サダコはそれを慌てて追いかけた。
( ´∀`)むふふ!春になればこの辺の並木がばーーーっと桃色に染まるモナ!
枯木道の中、サダコの前で大きく両手を広げ子供っぽくモナーは笑った。
葉っぱの一つも付いていないけれど、サダコの目の前に広がる世界はとても華やかだった。
( ´∀`)…だから来年もそのまた来年もモナはキミと季節を楽しみたいモナ
川ー川ええ。叶うことなら、ずっと
「手紙とかじゃなくて自然にそういうこと言えば良いんだよ」と聞き慣れた声が脳に響いて、モナーは少し赤面した。
775
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:25:55 ID:6GLMRu4E0
( ・∀・)よ
lw´‐ _‐ノvおっす
失踪事件の調査を終えた帰りに、モララーは少女の後ろ姿へ声をかけた。
大家族で知られる魔法使いの名門、スナール家の長女シュルルド・ライスィ・スナールとは赤ん坊の頃からの付き合いがあった。
モララーがまだ1番隊の隊員だった頃、副官を務めシィを支えていたのがこの子の兄で休暇中はよく家に招かれていたのだ。
目を閉じても、昨日のことのように思い出せる。
自分に兄妹がいたらこんな感じだろうかと、とても幸せな心地がしたのを覚えていた。
lw´‐ _‐ノvモラちゃんが街をぶらつくなんて珍しいね
( ・∀・)あ。もしかしてキミ、サボってると思ってる?
lw´‐ _‐ノvちがうんか
( ・∀・)ちがうんだなあ。今はね、探偵ゴッコやってるんだ
776
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:27:11 ID:6GLMRu4E0
lw´‐ _‐ノvたんてーごっこ?
( ・∀・)そ。『時間探偵モララー 謎の失踪事件を追え!』ってカーンジ
lw´‐ _‐ノvそのわりには一人じゃんよ
少女はチッチッと舌打ちしながら顔の前で人差し指を振った。
lw´‐ _‐ノvたんてーさんには話をでっかく動かす助手さんが必要なんだぜ、ボクぅ?
( ・∀・)あのねキミ。こんな真っ昼間からうろついてアカデミーはどうした?
lw´‐ _‐ノvおっとみなまで言うなぃ。おめぇさんのサポート役、このワトシュンくんがつかまつってしんぜよう
777
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:27:54 ID:6GLMRu4E0
どどん、と効果音を口に出してからシュールは胸を張った。
そのままモララーは時間を止めて背後に回り、シュールの背中をぐいと押し出す。
( ・∀・)助手クンにはまずアカデミーを調査してもらおうか
lw´‐ _‐ノvあら〜お兄さんちょっとつれないんじゃなくって〜
( ・∀・)ガクセーはガクセーらしくですよ
lw´‐ _‐ノvモラちゃんもあんまし学校行ってないくせにぃ
モララーは有無を言わさずシュールを担ぎ上げて運ぶ。
lw´‐ _‐ノvおんぎゃー!はなせロリコンー!
(;・∀・)わかったわかった洒落にならん!降ろすから!
778
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:28:37 ID:6GLMRu4E0
( ・∀・)なんで行きたくないのさ?
lw´‐ _‐ノvだーってさ。つまんねえべよ、やーんぴ
詳しい理由には触れなかったが、なんとなくモララーにはわかっていた。余裕ぶった物言いから感じる痛々しさがあまり他人とは思えなかったからだ。
もし自分が同じ立場だったら、どういう風に反骨心を育むだろう。
死にに行くためにお勉強するなんて馬鹿馬鹿しい、そう思うのだろうか。
( ・∀・)妙にぼかす若人の言葉 宙に浮かぶ「どうしたものか」
lw´‐ _‐ノvいいかオレたちはマブダチ 今めんどくせえ話はナシ いざ火の中水の中つけ回し いいぜ付き合ってやるぜ謎探し
( ・∀・)よー
lw´‐ _‐ノvせいほー
( ・∀・)…まあ、つまんないことも色々めんどくさい事もあるだろうけどさ
lw´‐ _‐ノvうむ。たいくつとアカデミーは主婦の敵である
( ・∀・)一個だけね、学校生活を楽しむためのちょっとした方法があるんだ。おバカさんを釣る方法。…落とすって方が正しいかな?
lw´‐ _‐ノvけっ、落とせる武器があるんなら是非ともほしいぜ
口を尖らせ、気を紛らわすように足を揺らす少女を見て、モララーは懐かしむように微笑んだ。
779
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:29:46 ID:6GLMRu4E0
( ・∀・)…ま、そいつはまた今度教えるとしてさ、とりあえず。のほほんとしてカラッとしたヤツ狙って話しかけてみなよ。キミの世界の中で、うんと眩しいヤツ!
lw´‐ _‐ノv…いるかなー、そんなの
( ・∀・)きっと居るさ。すぐに一人また一人と友達も出来る。6歳で人生に冷めた視線を向けるのは早すぎるよ、その前に一度周りを見渡してみなさい
lw´‐ _‐ノvむう ちっちゃい頃からひねくれ野郎だった男の台詞はタメになるな
( ・∀・)だろ?僕は反面教師としてはこれ以上ないほど優秀だぞ、ふふん
ぴょんとシュールがベンチを降りて、モララーに向き直った。
lw´‐ _‐ノvちょっと兄さんぽかったぜ、おモラの旦那よ
( ・∀・)…ああはなれないさ
表情が明るくなったシュールとは対照的に、モララーは苦々しい笑顔を浮かべた。
780
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:31:54 ID:6GLMRu4E0
( ・∀・)…ちょっとアカデミーに戻る前にさ。これ見てくんない?
モララーは地図を広げて差し出した。シュールが不思議そうにそれを覗き込む。
lw´‐ _‐ノvボス、こりゃなんでえ?事件の手がかりかい?
( ・∀・)…いや、事件に関しちゃだいたいの見当はついてるんだがね。どうしても分からない所がある
lw´‐ _‐ノvなんざんすか
( ・∀・)シューちゃんはこれをどうなぞる?
lw´‐ _‐ノvふむ…
( ・∀・)お子様の独創的な視点からヒントが欲しいんだ
lw´‐ _‐ノvあんまアテクシに純真さを期待しないでくんなましよ
781
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:32:57 ID:6GLMRu4E0
lw´‐ _‐ノv炊きたて刑事に言わしてもらうとだな、こいつは一本の線とかじゃあないね
モララーは興味深そうな手つきで黙って次の言葉を待った。
lw´‐ _‐ノvあちしには根っことか、トーナメント表みたいに見える
( ・∀・)失踪者集めて何を賭けて戦うってんだ
lw´‐ _‐ノvさあ?ほれ、なぞってみ?2番目に出てきたヤツが勝ちだよ
( ・∀・)ええと、こいつとこいつがかち合うだろ?んで、Bブロックは……
途中でモララーはその指を動かすのをやめた。
( ・∀・)やーめぴ。別に誰が勝とうったって行き着く先は一緒じゃんよ
lw´‐ _‐ノvそ、一緒だよ。決勝の部隊はここかな。それともここかしらん
782
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:33:43 ID:6GLMRu4E0
( ・∀・)…んん?シューちゃん、そこに置いた指、まっすぐ上に動かしてみて!
lw´‐ _‐ノvん〜?むふふ。町外れに広い野原があるだけだぜ
( ・∀・)そいつだ…ありがとうシューちゃん!キミはとてもとても優秀な助手だよ!
モララーは思わずシュールの手を強く握った。
lw*´‐ _‐ノvんへへ、なんかわからんがサンキュ。根元見っけたかい?
( ・∀・)ああ。とても助かったよ…このお礼は必ずするからね!
lw*´‐ _‐ノv気長に待ってるぜブラザー。頑張ってね
( ・∀・)…うん、頑張ってくるさ。キミもね!
783
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:34:36 ID:6GLMRu4E0
モララーはサダコの実家の花屋を訪れていた。
少し屋上のカフェを見上げてみる。上の階にも下の階にも客は一人もいないようだ。
大きな影を作っている大樹が、なんとなくおぞましく見えた。
「あら、いらっしゃい大魔導師様」
( ・∀・)こんにちは。少しこちらに用がありまして
「何か?」
( ・∀・)……アカシアってあります?
サダコの母が花を包んでいる間に、モララーは店内の花々を見ていた。
ない。
探しているものがない。
失踪者達の部屋にほのかに漂っていた異形の花の香り。
僅かに落ちていた銀色の花びら。
これに気づいた時、モララーの胸を恐ろしい想像と重苦しい感情が支配した。
それでもモララーは足を動かさずにはいられなかった。
シィが自分一人にこの事件を任せてくれたことを、強く強く感謝した。
784
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:35:16 ID:6GLMRu4E0
( ・∀・)あ、苗もいただけますか
花束を受け取って、モララーはサダコの母に伝えた。
「ありがとうございます、合わせて1786オツです」
( ・∀・)どうも。ところで、この店は銀色の薔薇は取り扱ってないんですか?
「銀色の薔薇?さあ…」
( ・∀・)…サダコさんの胸に挿した花が増えていたのを見ましてね
「何処かから摘んできたのでしょう…銀色の薔薇が欲しいのですか?」
( ・∀・)まあ、一応。色々と調べたいこともありますから
モララーは彼女の足元を見た。ロングスカートの下から長い長い蔦が、奥へと続いている。
モララーは顔を顰め、鋭くサダコの母を睨んだ。
「それでしたら、こちらに」
彼女は振り返り、モララーの前に一輪の薔薇を出した。
その袖口から銀色の蔦が勢いよく伸び、モララーに襲いかかった。
785
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:35:55 ID:6GLMRu4E0
( ・∀・)時の大魔導師、モーラ・モラール・マタリウスが命じる。時よ、止まれ
冷や汗ひとつかかず、その襲撃を予想していたかのようにモララーは唱えた。
銀色の蔦はモララーの眼前で停止し、サダコの母は笑顔のままその動きを止めた。
( ・∀・)……さて
モララーは店の奥まで進んだ。足元から伸びた蔦が、床を突き破り埋まっている。サダコの母はこの影に居る魔物の端末のひとつに成り果ててしまったのだろう。
( ・∀・)とりあえずこいつは貰っておくよ
モララーは銀色の薔薇を取り、懐にしまいこんだ。
このままこの女性を生かしておくわけにはいかない。
拘束する手段も、助け出す手段も自分は持ち合わせてはいない。
魔物として扱い、討滅するほかに手段はなかった。
モララーはアサピーから貰った火属性の魔力が詰まった爆弾を取り出した。
ピンを抜き、宙へ放り投げる。
時間が動き出した後、この店の全てが炎の中に消えていくのだろう。
あくまでも、事故として周囲の目には映るのだろう。
モララーは静かに店を去り、充分に離れてから魔法を解いた。
786
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:36:40 ID:6GLMRu4E0
モナーとサダコはあてもなくぶらぶらと歩いていた。
初めて出会った時も、こうして歩いていたと思う。
なんとなくアカデミーの前を通りかかったり、無意識に思い出を振り返るようなコースになっていた。
その終着点はサダコの家の花屋だった。
あの日のように夕暮れ時の景色を楽しんで、他愛もない話でこの一日を締めくくるつもりだった。
何もかもが焼け落ちていた。
思い出の場所も、綺麗な花々も、全て。
モナーは呆然と立ち尽くした。
サダコはわなわなと震えだし、静かに呟いた。
川;д川お、お母さんの薔薇…
川;д川お母さんの薔薇の声、聞こえなくなっちゃった…
(;´∀`)…サダコ?
その言葉に違和感を抱き、モナーはふと振り向いた。
サダコの姿はその場から忽然と消えていた。
(;´∀`)……何が、何で、何モナ………?
787
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:37:35 ID:6GLMRu4E0
軽い足取りでアカデミーを出たシュルルド・ライスィ・スナールの後ろを、一人の男性の影が追っていた。
シュールもそれに気がついていないわけではない。足を早めて歩いていく。
lw´‐ _‐ノvあちしこっちだから。ばいばい
「バイバイ!」
隣を歩いていた少女が元気に手を振った。シュールも嬉しそうに振り返し、また歩きだした。
カツ、カツ、カツ。
足音はゆっくりと近くなる。
振り向きざまにシュールは手のひらほどの大きさの石を生成して投げつけた。
手応えはなく、地面にカラカラと転がる音がする。
「貴方は幸福ですか?」
lw´‐ _‐ノvぼちぼちでんな
突然現れた男を見上げながら、シュールは不敵に呟いた。
788
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:39:06 ID:6GLMRu4E0
「自らの心を偽ってはいけませんよ」
lw´‐ _‐ノvおっちゃん経験薄いんだね。いい女には嘘がつきものって言うじゃん?
「けれど、もう貴方は自分を偽る必要はありません。寂しいという感情もいずれ捨て去る事が出来ますよ、これを使えば…」
そう微笑んで、銀色の花を男が差し出す。
lw´‐ _‐ノvわりいんだけどさ、お友達なら間に合ってんのよね。今日も一人できたしさ
男が口の中から蔦を伸ばす。シュールは驚いて、後ろへ尻餅をついた。
( ・∀・)汝の時よ、止まれ
lw´‐ _‐ノvひ〜。おせーよモラちゃん、か弱い少女がやられちったらどうすんのさ
( ・∀・)本当にごめんよ。重ねてキミを囮に使うような真似をしたことも謝る
モララーはナイフを蔦に突き立て、力いっぱい引きちぎった。
止まったままの男を殴打し、組み伏せる。
789
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:39:59 ID:6GLMRu4E0
( ・∀・)シューちゃん。火、出せる?
lw´‐ _‐ノvあんまし得意じゃないぜ。ちっちゃいやつしか出せないかも
( ・∀・)チラつかせておいて。時よ、動き出せ
「き、貴様…!先程の魔法使いか……!」
( ・∀・)やっぱりある程度情報を共有してるんだな。答えろよ、“お前”はどこにいる?言わなきゃ燃やす
「ハハハハハ!無駄だ。私達は増え続ける、既にこの国全体に広がって…」
ぷつりと糸が切れたように、男は白目を剥いて一切の動きを止めた。身体から這い出た蔦が、するすると地面に潜っていく。
モララーは舌打ちをした。
lw´‐ _‐ノvモラちゃん…
( ・∀・)大丈夫。キミは僕が家まで送っていくから
( ・∀・)ちゃんと、守り抜いてみせるから
790
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:41:09 ID:6GLMRu4E0
4番隊の隊舎にシィ、モナー、アサピーは集められた。
遅れて入室してきたフィレンクトを見るなり、モララーは深々と頭を下げた。
( ・∀・)申し訳ございませんでした、フィレンクト・シェフェルトン…私はやむを得ず、貴方の奥様を殺害しました
(;‘_L’)………まず話を、聞かせてくれないか
フィレンクトの纏う穏やかな空気が一気にひりつくのをその場にいる全員が感じ取った。
モララーも、彼の顔を見上げずともそれがわかった。
(-@∀@)とりあえず解析結果の方に移らせてもらおうか?
アサピーが席を立つ。重々しい空気の中で、そのぶれなさは救いだった。
(-@∀@)モナー。サダコはこの銀色の薔薇を何と言っていた?
( ´∀`)……サダコに勇気をくれる存在、胸に挿していると自分の想いにとても正直になれる気がする、そう言っていたモナ
モナーは枯れ果てた心の地平から水を一滴絞り出すように答えた。
791
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:42:13 ID:6GLMRu4E0
(-@∀@)…自分の想いに正直にね。間違っちゃいないよ、こいつの匂いを嗅ぐとある程度の多幸感が得られる。麻薬や自白剤などにも転用できるだろうね、雄弁は銀ってやつさ
アサピーがトントンと銀色の薔薇を密閉したケースを叩く。辺りを包んだ沈黙はどす黒く、輝かしいものではなかった。
( ´∀`)……サダコとモナは
(-@∀@)それに浮かされていただけだよ。申し訳ないが一応説明はついてしまうんだ
(-@∀@)雄弁になる、多幸感を得る、正直になる…あくまでそれは効果ではなく事象に過ぎない。こいつの本質は感情の固定化さ
(-@∀@)モララーも被害者の自宅を回って、その残り香を嗅いだだろう?ならわかるはずだ
( ・∀・)・・・・・・
モララーは息を飲んだ。
792
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:44:07 ID:6GLMRu4E0
(-@∀@)一つの目的のために、疑念、後ろめたさ、その他諸々…そういった感情は薔薇の香りに全て削ぎ落とされる。キミで言うと、「事件の謎を突き止めたい」といったところかな
( ・∀・)…ああ。だから僕は躊躇いもなくフィレンクトさんの妻を殺せた
(#‘_L’)……モララー君、キミは!
(-@∀@)おっと待った!僕の話はまだ終わっちゃいないぞ!
(‘_L’)…失礼した。続けてくれたまえ
(-@∀@)要するに、洗脳向きなのさ。躊躇い、戸惑い、恐怖、それらのマイナスな感情を削ぎ落とされた人間は、それによって得た成功を「薔薇のおかげだ」と信じ込むようになる。そうなってからはトントン拍子に中毒状態に陥るわけだ
(-@∀@)銀色の薔薇も、匂いを嗅いだ人間から吸い上げた負の感情を得てそれを「本体」に捧げる。そして完全に使用者が魅入られた後は、その身体に入り込んで端末を作るのさ。さらに薔薇を配らせるためにね
(*゚ー゚)…この世に存在しちゃいけないものね
(‘_L’)…妻は
(-@∀@)完全に魅入られたクチさ。“花のおかげで生きている”のではなく“花のために生かされている”ってわけ
淡々と告げるアサピーに、フィレンクトは頭を抱えた。
793
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:45:13 ID:6GLMRu4E0
( ´∀`)…おかしいモナ
静かにモナーが声を漏らした。
( ´∀`)だって筋が通らんモナ
( ´∀`)だってサダコは9年間もあの花と共に居たモナ
( ´∀`)9年間もモナと文通してたモナ、あの言葉が全部嘘なわけないモナ、9年間無事だったモナ
(-@∀@)…抉るようだが、君が過ごしてきたのはどうしようもなく虚構の時間で、どうしようもなく真実だったんだ
(-@∀@)彼女が紡いできた言葉は、本心だよ。そして君が育んできたものもまた真実だ
(-@∀@)モナー。彼女がお前を疑ったことがあったか?彼女と喧嘩したことが、お前…一度でもあったか?
( ´∀`)……………ないモナ
794
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:46:10 ID:6GLMRu4E0
( ・∀・)…もういいだろう、アサピー。結論を出してくれ、何故サダコは無事だった?
(-@∀@)それなんだがね。彼女の中毒症状は、ほぼ初期状態に近いものだったんだ。そうじゃなきゃ、モナーの言う通り筋が通らない
(*゚ー゚)初期状態?
(-@∀@)……彼女の願いによるものだろうな
(-@∀@)薔薇は精神力の弱い人間や、軽薄な奴、深い悲しみを背負った人間を狙う傾向にあるようでね。そういう連中の方が転がしやすいんだろう
(-@∀@)…フィレンクト。サダコはいつから銀色の薔薇を胸に挿していた?
(‘_L’)…ずっと、ずっと幼い頃。7歳だ。よく覚えている…アカデミーに入学したいと、私に頼み込んできた時の強い眼を…
(-@∀@)最初の願いはそれだったろうな。そしてそれが叶い、サダコは薔薇を好いた。そこからが問題だった
(;´∀`)……モナのせいだ
(-@∀@)そう。初めて彼女は恋を覚えた。が、もともとの引っ込み思案な性格が幸いしたんだろうさ
795
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:47:35 ID:6GLMRu4E0
(-@∀@)サダコは薔薇とモナーを重ね合わせて、憧れ、愛し、「遠くから見ているだけでいい」と願った。それじゃあ薔薇も叶えようがない。見ているだけで欠片もアクションを起こせないんだからな
( ・∀・)…その後に、特例卒業か
(-@∀@)そうだ。再び彼女の生命の歯車は動き出した。そして彼女はひたむきに筆を取り、明るくモナーと笑いあい、僅かな時間でも充分に愛を育み、自分の魔力の限界なんかお構いなしの全力を出し切って試験中に倒れ、数年間をアカデミーで過ごした
(-@∀@)彼女の願いは、精神的にも実力的にもモナーの隣に立てる人間になること。それだけが彼女を長い間奮い立たせ、守り抜いてきたんだ
(;‘_L’)だ、だが卒業して、魔法局入りして、副官になってしまっては…!
(-@∀@)……願いは叶った。その納得が、彼女の中に生まれたんだろう
796
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:50:04 ID:6GLMRu4E0
( ´∀`)悪ふざけも大概にしろモナ
モナーは不愉快さをあらわにして席を立った。
( ´∀`)モララーも、アサピーも、シィまで…ドッキリにしては手が込みすぎるモナ
(-@∀@)モナー、サダコは…
(# ´д`)不愉快なことを言うなァ!!
(#-@д@)現実はもっと不愉快だっ!!
アサピーはモナーの胸ぐらを掴み上げた。瞳に悲痛の色を浮かべながら、モナーは歯を食いしばってアサピーを睨みつけた。
達観していて、鋭いモナーらしくない癇癪だった。いや、むしろ彼は自らの犯した罪に呑まれて自壊してしまいそうなほどに現実を理解している。
アサピーとモララーは、それを読み取れてしまっていた。
(-@∀@)…クソっ
アサピーは静かに彼の身体を降ろした。
(# ´д`)ウソだ!ウソだあっ!!ウソだああああっ!!
力いっぱい叫んでいた。
そう言い聞かせたかったのだ。そう信じたかったのだ。
アサピーも、モララーも、立ちすくむフィレンクトも、シィですら。それを止めることはしなかった。
叫びながらモナーは4番隊の隊舎から走り去った。
友人達と、否定した事実だけをそこに残して。
797
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:50:59 ID:6GLMRu4E0
いない。
3番隊の隊舎にも。
どこにもサダコの姿がない。
それでも探さずにはいられなかった。
強く、強く、サダコに会いたいと願った。
息切れを起こし、その場に立ち止まる。
脇に置いた感情が、ふと蘇る。
( ´∀`)昨日、サダコのやつ来なかったモナ
( ´∀`)花の世話してたとか、よく覚えてないとか
( ´∀`)…全部、全部
( ´∀`)モナが欲したからモナか?
( ´∀`)でも……
唇を噛み締めたまま、しばらく動くことができなかった。
( ・∀・)でも、人を愛する事が罪なんて間違ってる
(-@∀@)というよりか、だ。愛する気持ちを罪に変えてしまう存在こそが救いがたい傲慢であり、この世に存在しちゃあいけないものさ
( ´∀`)……モララー、アサピー
(-@∀@)…行こう、モナー・マエモゼム。ヤツの根元は僕らが知っている
( ・∀・)まだ彼女が魅入られて日が浅いなら…救える道はあるはずなんだ
798
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:52:18 ID:6GLMRu4E0
辿り着いたそこには銀色の世界があった。
花園の中で、その姿を見つける事は容易かった。
( ´∀`)……綺麗モナ
自然と、モナーはそう口に出していた。
やっと会えた。
とても嬉しかった。
けれど、身体中から湧き上がるそれはこのむせ返るような花の香りによって植え付けられたもの。
違う。
(# ∀ )おれはここから、お前を引きずり出しに来たんだ
.
799
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:53:29 ID:6GLMRu4E0
川ー川あ、モナー君!
川ー川ほら、見てモナー君!ここには私の友達がいっぱいいるんです!
川ー川すごく綺麗ですよね…切り取ってしまいたいくらい…
川ー川ねえモナー君。ここに居ると、寂しい事なんてない…寒いことなんてないんです。あなたと私が溶け合ってみんなで一つの心を使うんですよ?
(# ∀ )……なあ。わかってるか?それ、結局一人ぼっちなんだよ
川ー川…?それはおかしいです。ここは楽園です、みんなが笑顔になれるんです!私、こんなに清々しい気分は初めて!
(# ∀ )じゃあお前には今のおれが笑顔に見えるのか?
川ー川見えますよ!いつも通りの、優しい優しい私のモナー君!
.
800
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:55:21 ID:6GLMRu4E0
(# ∀ )…サダコをそれ以上汚すんじゃねえ
(# ∀ )……人間ってのは誰だって寂しいもんなんだよ。けどな、寂しいことだって、悲しいことだって……いくら嫌いでも、いくら憎くても…大切なものなんだよ
(# ∀ )いくら寒くたって、いくら拒絶されたって…いくらすれ違ったって…おれはもっと知りたいんだ、もっと触れたいんだ、もっと感じたいんだ、もっとわかりたいんだ
(# ∀ )だからおれは、サダコと、モララーと、アサピーと契約したんだ。勝手に第三者が破棄するのは許さねえ
川д川…モナー、君
(# ∀ )…すぐ助けてやるから待ってろ。とっとと出て来いブサイク花。氷漬けにしてチリも残さず粉々にしてやる
801
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:56:54 ID:6GLMRu4E0
( ∀ )
( ´∀`)・・・・・・
( ・∀・)…目が覚めたか?
苦々しい顔で、モララーがモナーの顔を覗き込んだ。
まだ視界がぼやけているし、ひどく頭痛がする。
身体がやけに重い。
それが魔力切れによるものだと、ぼんやりとモナーは理解した。
(-@∀@)花の魔物のいた場所は念入りに焼き払っておいた。再生することもないだろう
( ´∀`)……サダコは?
(-@∀@)…生命に別状はない。心臓も動いている。だが、あれはもう無理だろう
( ´∀`)…何が
(;・∀・)サダコの腕。そこに茨が巻き付いて食い込んでるんだよ…助けた時には、何も反応がなかった
(-@∀@)無理に茨を取り除くと、死亡する可能性すらあるからな…
(;・∀・)シィ様も治療を試みたけれど…心だけは、どうしようもないんだ
(# ∀ )
( ´∀`)
( ´∀`)
802
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:58:19 ID:6GLMRu4E0
むくりとモナーは身体を起こし、横たわったサダコを見た。
長い黒髪と、白い肌の、変わりないサダコ・イーベル・シェフェルトンだ。
モナーは懐から、一輪の銀色の薔薇を出した。
(;-@∀@)な……!?
モナーはそれを憎々しげに見つめた。そして顔に近づけて、ゆっくりと匂いを嗅いだ。
(;・∀・)お、お前それ…なんで…
( ´∀`)サダコがくれたやつモナ
(;・∀・)そうじゃない!なんでそいつを持ってるんだ!そいつは、そいつは…!サダコを!キミを殺したんだぞ!?
( ´∀`)だからこいつも消えてなくなるモナ。んあ
モナーは大きく口を開け、薔薇を放り込むと数回咀嚼してごくりと飲み込んだ。
803
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 14:58:56 ID:6GLMRu4E0
(;・∀・)バカーーーーーっ!!!!!
(;-@∀@)狂ったか!?その痛みは分からなくもないが吐き出せ、今すぐ吐き出せ!!
( ´∀`)?こんなもんどうせ排泄される運命モナ
モナーはきょとんとした顔で呟いた。
( ´∀`)モナはサダコと対等でいたいモナ
( ´∀`)来年も、そのまた来年もサダコと生きるモナ
(;・∀・)・・・・・・
(;-@∀@)・・・・・・
放り投げるようにモナーがぽつりと呟いた。
今のモナーに、二人が語れる言葉はなかった。
沈黙がその事実をモララーとアサピーに突きつけた。
モナーは逃げたのだ。
まるで見ていられず、アサピーの目にじわりと涙がこみ上げた。
モララーはただ、唇を噛んで静かにモナーを見つめていた。
804
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:00:52 ID:6GLMRu4E0
( ´∀`)むふ、むふ、むふふふ…
項垂れながらモナーが静かに笑いだし、モララーは眉をひそめた。
いつの間にか顔中をぐしゃぐしゃにして泣いていたアサピーも、ぎょっとして振り向いた。
( ´∀`)モナはなんともないモナ
( ・∀・)……………………ウソつくなよ
( ´∀`)ウソじゃないモナよーん。いつだってモナは正直モナ
( ´∀`)アサピー
空虚な笑みをモナーが浮かべる。
(-@∀@)な、なんだい…ぐすっ
( ´∀`)……人体実験でもなんでもしてサダコを助けろ。被検体はおれがいる
その瞳から二人は静かな闘志を感じ取った。
絶望から逃げてなどいない。飲み込んだ薔薇によって、その感情を取り除かれただけなのかもしれない。
それでも、その瞬間にモララーとアサピーが見たのは誰より強い奇跡の子、モナー・マエモゼムの姿だった。
やはりモナーなのだ。僕達のモナーなのだと。
二人は思わずモナーの身体に抱きついて泣き続けた。
805
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:02:10 ID:6GLMRu4E0
赤い日を映して川が流れていく。
26歳となったモナー・マエモゼムは、ただ虚ろにそれを眺めていた。
透明で、純粋で、透き通った川を。
水面を滑る花束を見た。誰かの夢が破れたのだろうか。それとも誰かに手向ける花なのだろうか。
そんなことを橋の手すりにもたれかかりながら考えていた。
( ´∀`)…厄災戦が始まるってのに、明日にはシベリア行きだっていうのに
( ´∀`)花の香りなど、忘れてしまえ。モナー・マエモゼム…
モナーは片手に持ったアカシアの花束を、宙へ放り投げた。
魂の不死。それを信じて、8年待ったのだ。
川に落ちたアカシアの花束は、先程の花束を追いかけるように流れていく。
悲しみが身体を支配しようとした。けれどモナーの心はそれすら凍らせて、モナーの平静を保たせた。
806
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:03:19 ID:6GLMRu4E0
( ´∀`)……寒いモナ
音もなく誰かが背後に歩み寄った。
気配には気付いていたけれど、それもどうでもよかった。
/ ゚、。 /モナー君
( ´∀`)…その呼び方やめろモナ
背に刺さる声に振り向かず応える。声の主は男でも女でもない。霧の厄災、ダイオードだ。
/ ゚、。 /少し暇になってね。フィレンクト・シェフェルトンは保険としてソウサクの地に私を残しておきたいようだ
( ´∀`)どうせ戦闘向きでもないんだからシベリアについてきたって役に立たんモナ
手すりに乗せた両腕に顔を伏せて言う。
ダイオードもその隣へ立ち、もたれかかって川の流れを見つめた。
/ ゚、。 /私だってシベリアには頼まれても行きたくないね。ただ、霧の中で一人隠れているのも退屈だ
( ´∀`)…それであれを見たモナ?
/ ゚、。 /責められる謂れはないよ。誰だってあんなものを見れば気になるさ…部屋に氷漬けにされた女性が居たらな
807
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:03:54 ID:6GLMRu4E0
/ ゚、。 /シラネーヨにも聞いてみたがね
(;´ー`)『シラネーヨ!!いやマジで!!あんなクソおっかねえもん隊長に聞けるわけないでしょ!?絶対開けちゃいけねえ蓋だって!!』
/ ゚、。 /とのこと
( ´∀`)…だって話す必要がないモナ
/ ゚、。 /それで、もっとキミという人間を理解するためにあの子に触れたんだ。いい収穫だったよ
/ ゚、。 /キミはどうも極端だった。初めて出逢った時も、シベリアに着いてからも……
/ ゚、。 /キミはぶれないんじゃない。最初から凍りついていたんじゃない。上手くその薔薇を利用して、傾き過ぎないように冷めたままで生きていたんだ
/ ゚、。 /納得がいった所でどうというわけでもないがね
808
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:04:56 ID:6GLMRu4E0
( ´∀`)お節介な神様にひとつ聞きたい事があるモナ
/ ゚、。 /ほう?
ダイオードが不敵に笑った。
( ´∀`)お前が入り込めるのは、心の中モナ
( ´∀`)モナは心を閉ざしきって、お前に勝ったモナ
( ´∀`)……サダコの心は生きてるモナか?
/ ゚、。 /答える必要はない。私が知っている事実が全てだから
モナーは橋の下へ飛び降りた。ばしゃんと水が跳ねる前に、モナーは魔法靴で浮いたまま水面を凍りつかせて走った。走って、走って、放り投げた花束を拾い上げ抱きしめた。
809
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:05:51 ID:6GLMRu4E0
/ ゚、。 /…いつもキミを見ている。キミが眠りから覚めて、汗だくでこちらを見るたびに嬉しくも悔しく思う。そう笑っていた
/ ゚、。 /キミが凍らせてくれたおかげで、キミが生きているおかげで私も生きているのだと
ダイオードは、遠くにいるモナーの姿を眺めながらひとりごちた。
/ ゚、。 /私は傍観者であり、代弁者に過ぎない
/ ゚、。 /だからこれは、サダコの花だ。モナー・マエモゼム……
凍結を解かれた川に、ダイオードは赤い薔薇を投げ込んだ。
水に濡れたモナーの横を、花束を強く抱きしめたモナーの横を、ただ5本の赤い薔薇が流れていく。
810
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:06:40 ID:6GLMRu4E0
『救出の魔法使いたちのようです』
その16
『止まって、散って、溶けて、砕け散る』
811
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:07:14 ID:6GLMRu4E0
ニガティタ島では、静かに火山の厄災が時を待つように立ち上がっていた。
5匹の凶鳥の厄災はソウサク、シベリア魔法局の混成軍により全て討滅された。
「フィレンクト隊長!凶鳥の厄災の巣を確認、我らは無事全ての卵を破壊しました!」
魔竜兵器ドラグーンに乗った隊員達が、喜び勇んでフィレンクトの元へ駆けつけた。
(‘_L’)よし…!念には念をと探させてはいたが…これで後顧の憂いを断てたわけだ…!
(‘_L’)君たちはすぐに海へ開いた闇の門の中へ。もはや我々が出来るのは去ることだけだ!
「はい!」
ふう、と額の汗をフィレンクトは拭った。
既に大多数のソウサク人とシベリア人は撤退を果たしている。残っているのは大魔導師と副官たち、そして…
(‘_L’)生き残れよ、ドクオくん…みんな…!
812
:
◆vkc4xj2v7k
:2022/01/29(土) 15:07:47 ID:6GLMRu4E0
(;'A`)いつまで走ってもキュート隊長が見つからねえ!クソぉっ!!
(;^ω^)走ってるのぼくだけだお!!!!
(;'A`)くそっ、どうする………火山の厄災が目覚める前に、俺は……!
(;^ω^)だからキミの下にはぼくがいるんだお!!黙って任せておけお!!
怒声と共にブーンはその豪脚で駆け抜けた。
時間がない。焦りが二人を包んでいた。
雄叫びを上げて走り抜けるブーンの上を、2つの影が必死に追いかけて行く。
魔竜の飛行速度すら超えて、ブーンはひたすらに走る。
走る。
走る。
走る。
(°、°;川ナイトーくん!!ドックン!!止まって!!
(;°ω°)おおおおっ!?また急に!!!!
止まる。
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