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切り落とされた首の話

1 ◆nu89KoW33w:2021/10/23(土) 21:57:20 ID:S/RA0zHE0
刑死者の多い夏だった。
長い干魃が各地を襲い、飢えと乾きは人々を凶行へと駆り立てた。

( ゚д゚ ) 「名はホライゾン、生まれは西の漁村……で間違い無いな。今日はお前が最後だ」

( ^ω^) 「……」

( ゚д゚ ) 「しかし、強姦殺人とは馬鹿な真似をしたものだな」

( ゚д゚ ) 「盗みに入った家の娘に見つかり、居直り強盗か。そこで観念しておけば死なずに済んだ物を」

( ^ω^) 「……僕は」

盗み、奪い、犯し、殺す。
そして凶行には相応の報いが与えられる。
それらは全てこの時代において最早ありふれた、日常的な営みとなっていた。

ありふれた、余りにありふれた――――

( ^ω^) 「僕は、誰も殺してないお」

( ゚д゚ ) 「ああ、そうかも知れんな」

( ^ω^) 「彼女を殺した人間を僕は見た」

( ^ω^) 「蛇のような目の、背の高い男。僕はそいつに陥れられたんだお」

( ゚д゚ ) 「……諦めろ。抵抗しても苦しみが続くだけだ」

( ^ω^) 「……」

( ^ω^) 「許さない。死んでも許さないお」

そう、この男のように無実の罪で囚えられ、真犯人への強い怨念を抱いたまま命を落とすことも、
この時代では実にありふれた「悲劇」である。

間もなく、執行官の手によって男の首は刎ねられた。

2名無しさん:2021/10/23(土) 21:57:55 ID:S/RA0zHE0
.



    〃⌒ ヽ
   /   rノ                 切り落とされた首の話
  Ο Ο_)  ......,,,,,,(  ω )


             .

3名無しさん:2021/10/23(土) 21:59:57 ID:S/RA0zHE0
【執行官と放蕩息子の話】

端的に言うと、遊び過ぎて金が無かった。

フォックスは生来の浪費家であり、計画性を著しく欠いた楽天家である。
酒を買い、女を買い、女を喜ばすための贅沢品を買い漁る。
干魃によりあらゆる物の値段が上がった後も振舞いが正されることはなかった。

結果、名家と呼ばれる実家からの決して少なくない仕送りも使い果たし、
日々の食事にも事欠くほどに彼の懐事情は困窮を極めていた。
そんな彼にとって、古い友人からの突然の呼び出しは喜ぶべき出来事だった。

爪'ー`) (これで次回の仕送りまで持たせられるな)

相手も決して裕福な身の上ではないが、それでも自分は招待される側である。
軽い食事と一、二杯の酒を望んだとしても責められることは無いだろう。
あわよくば数日分の食事代を借りることもできるかもしれない。
打算に満ちた腹の中を隠そうともせず、フォックスは友人宅のドアを叩いた。

( ゚д゚ ) 「……ああ、来てくれたか」

爪'ー`) 「お招きに預かり感謝するよ、ミルナ。本当なら手土産の一つでも持ってくればよかったんだが」

( ゚д゚ ) 「思ってもいないことを言わなくていい」

( ゚д゚ ) 「まあ、上がってくれ。飯も酒も普段より上等なやつを用意してある」

爪*'ー`) 「そうかい? 悪いな、へへ」

もしもフォックスがもう少し思慮深い人間であれば、
この妙に物分りの良い友人に対して警戒の念を抱いていただろう。
しかし、彼の性分がそれを許さない。彼の心は既に晩餐の皿の上にあった。

4名無しさん:2021/10/23(土) 22:03:20 ID:S/RA0zHE0
フォックスは遠慮の欠片もなく食事を、酒を消費する。
そんな彼を咎めることもなく、ミルナは空いた盃に酒を注ぎ続ける。

爪*'ー`) 「いやあ、実を言うと金欠で困ってたんだよ」

( ゚д゚ ) 「仕送りはどうしたんだ?」

爪*'ー`) 「んなもん使っちまったよ。キレイな姉ちゃんと仲良くするためにな」

( ゚д゚ ) 「女遊びも程々にしておけよ……ほら、酒が空だぞ」

爪*'ー`) 「おっと、ありがとよ。でもまあ女遊びはやめられねえよ」

爪*'ー`) 「こないだも首と腰が細い良い女に会ってな、実家の馬車の話をしたら乗ってみたいって言うもんだから」

爪*'ー`) 「俺はすかさず、馬車もいいが目の前の馬に乗る気はないか?って返したんだよ」

( ゚д゚ ) 「馬……なるほど、馬の話を……」

爪*'ー`) 「ああ、もちろんこの馬ってのは俺のことでな……」

( ゚д゚ ) 「いや、説明は大丈夫だ。それはそうと、お前は馬車を操れたよな?」

爪*'ー`) 「うん? ああ、実家じゃ基本的に御者任せだったが、嗜み程度にはいけるぞ?」

爪*'ー`) 「なんなら乗せてやろうか。酒の礼くらいするさ」

( ゚д゚ ) 「……」

( ゚д゚ ) 「言ったな?」

爪;'ー`) 「え?」

突然、ミルナは仏頂面を強張らせ、前のめりになってフォックスの顔を覗き込む。
気圧されたフォックスの瞳から視線を逸らさず、「言ったよな?」ともう一言。


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