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それは砕けし無貌の太陽のようです

2 ◆HQdQA3Ajro:2021/10/16(土) 00:00:58 ID:jePDeZ3M0
               一

「照出麗奈、二五歳です! デレって呼んでください!」

デレ? ……ああ、『てるい“でれ”いな』か。
……絶対呼ばねぇ。編集長の高良が連れてきた新しい担当の、
そのきんきんと甲高い声を耳障りに感じながら俺はそう、固く誓った。
絶対呼ばねぇ。

「……ニュッ先生?」

「高良」

「はいはい先生、なんでございましょう?」

軽薄で無遠慮な、気色の悪い猫なで声。したら出版の高良。
こいつの声を聞くと、いつでも吐き気が止まらなくなる。

「いらないと、言った」

「えぇえぇ、それはもちろん存じ上げておりますとも。
 しかし余計な雑事を取り払い、先生のために執筆環境を整えるのも私共の仕事でございまして。
 ましてや最近先生は、些か筆の進みが鈍っているとお聞きしましたから。
 ……いえいえもちろん、先生の原稿を頂けるなら私共、いつまででもお待ちする心積もりでございますが」

「判ってる」

判っているさ。
お前らが俺のことを、金を生む鶏程度にしか思っちゃいないことくらい。

「えぇえぇもちろん、先生のことは信じておりますとも。
 ですのでこの照出は私共のほんの気持ち、家政婦にでも出前代わりにでも好きなようにお使い頂ければ。
 なに、こう見えて照出は優秀な編集ですよ。なにより若くてエネルギッシュですしね」

手を揉みながら、高良が側へと寄ってくる。思わず身体が引く。
しかしそれを追跡するように、高良は自らの頭を俺の耳元へ接近させてきた。

「それにほら、先生だって女の子の方がやる気でますでしょ」

ささやくように耳の奥へと流し込まれた卑俗な文言。視界が隅に捉えしにやけた口の端。
……下劣。余りにも。本当に気持ち悪い。所作の全てが耐え難い。
勢い身体をよじり切って、背中で拒絶を明示する。乾いた笑いが、背中を打った。
ああそうさ、面倒だとでもなんとでも思っていればいい。それで丁度、お互い様だ。


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