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Desperado Chariots
1
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/03/28(日) 22:38:02 ID:1hwLgNFI0
新連載です。よろしくお願いします
573
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/01/05(日) 17:44:10 ID:xsbgfEYE0
―――――
―――
―
(´・ω・`)「……」
(´・_ゝ・`)「……」
徳雄が勤務している参羽鴉グループ飲食店『OHANAMI』の休憩室にて、二人の視線はホログラムディスプレイに釘付けだった
それは緊急で行われた記者会見であり、長机には徳雄、文彦とそれぞれ関わり深い人物が着席していた
『この度、ハヤテのチャリオッツジャパンカップ参加にあたり、年内の芸能活動縮小のご報告をさせて頂きます』
スーツに身を包んだ猫山 義古が、決意を漲らせた面持ちで立ち上がり発表すると、記者のどよめきとフラッシュの羽ばたきが辺りに満ちた
猫田は暫く、会場が落ち着くのを待ってから、予めまとめてきた原稿に目を落とす
両隣には、メンバーの高岡波音。そして、徳雄の親友にして『標的』である獏良 良樹の姿があった
(´・ω・`)「奴らもとうとう宣戦布告か。引く手数多の大人気アイドル様が、良くスケジュールを合わせたもんだ」
(´・_ゝ・`)「それが、我々と会う以前から計画的に進められていたようです。ここ半年ほどのライブ活動や俳優業は極端に少ない。あまり時間を食わない収録やミニイベントで回してたみたいです」
(´・ω・`)「勝良祭もその一環か。規模は大きめとはいえ、ローカルな祭だからな。ちょうど良かったのかもしれねえ」
574
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/01/05(日) 17:45:43 ID:xsbgfEYE0
『ジャパンカップの目標は?』
『無論、優勝のみです』
若い記者の質問に、猫山は毅然と返答する。画面越しでもわかるくらい、会場の熱気が伝わってくる
今や日本を代表するイケメンアイドルグループの、『最も過酷なeスポーツ』グランプリ参戦
日本中の興味を表すように、ネットニュースの記事数は瞬く間に膨れ上がっていく
『それはつまり、『クワイエット』の三連覇を阻むという事ですが、自信の程は?』
『小心者の僕以外は、勝つ気満々です』
ドッと笑い声が上がった
575
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/01/05(日) 17:46:35 ID:xsbgfEYE0
『冗談はさておき、クワイエットの連覇阻止は、今年出場する全てのチームの悲願でしょう。僭越ながら、彼らを代表してクワイエットに宣言致します』
『首を洗って待っていろ、と』
笑いは瞬く間に感嘆へと変わる。最年長リーダーなだけあって、話術の緩急の付け方が絶妙だった
性格、人柄、ルックス共に厄介オタクデブと血が繋がっているとは思えない。アレは一族の負の遺伝子を一身に引き受けて誕生した哀れな醜い豚なんじゃないかと本八は訝しんだ
(´・_ゝ・`)「大きく出ましたね」
(´・ω・`)「上の指示なんじゃねえの?猫山は謙虚な野郎だった。本心じゃ胸を借りるつもりで挑むってとこだろ」
(´・_ゝ・`)「しかし、他二人はそうでもなさそうですね」
『ガンナーの高岡さん。ジャパンカップへの想いをお聞かせ願えますか?』
『えー?オレは正直、二人ほど経験も熱意もあるわけじゃないんだけどさぁ〜』
猫山は渋い顔を、獏良は呆れたように苦笑いを浮かべた
『でもよ、やるからには全力を尽くすぜ!!オレァ負けんのが大っ嫌いだからな!!クワイエットだかクインテットだか知らねえけど、全員ぶっ潰してやらぁ!!』
(´・ω・`)「アツいねぇ。女にモテんのも頷けるぜ」
(´・_ゝ・`)「それに、ガンナーとしての腕も確かのようですね。愛砲は『2hand』。二箇所の同時攻撃が可能の変則主砲です」
(´・ω・`)「上下に重なった二つの砲を、それぞれ別の方向へと向けて発射出来る代物か。あの嬢ちゃん、単純そうに見えて器用なモン使うじゃねーか」
576
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/01/05(日) 17:49:32 ID:xsbgfEYE0
『ジョッキーの獏良さんに質問です。ズバリ、ジャパンカップ参戦候補の中で最も注目しているチームは?』
『……』
『……あの、獏良さん?』
獏良はすぐには答えず、カメラの向こう側を見透かすようにジッと見つめる
それはまるで、『今、自分を見ているであろう誰か』に向けて挑発をしているかのようであった
『ふふ、ごめんなさい。本番までのお楽しみってことで』
獏良は口元に人差し指を立て、質問した記者にウインクを放つ
『魔性』という言葉が似合うイケメン仕草である。とてもゲロ以下顔面の腐れ暴力ブサイクの親友とは思えなかった
(´^ω^`)「煽るねぇ〜。ブサイクの野郎、これを見たらきっと燃え上がるぜ」
(´・_ゝ・`)「思いがけない燃料投下ですね」
(´・ω・`)「ま、ブスに限った話じゃなさそうだがな」
チャリオッツのプレイ人口が多いとはいえ、ジャパンカップ参戦の報告を大々的にするチームは滅多にいない
時折、ハヤテのような芸能人が番組の一環として発表することもあるが、その殆どが予選の高い壁を越えられずに消えていく
だが、ハヤテには『実績』があった。昨年十月に行われた配信者最強決定戦『ライバーズ・ライバルズ』にて、ジャパンカップ常連のプロチーム『NOOD(ノード)』を下し、優勝を果たしている
その勝利は素人目から見ても偶然の賜物では決して無く、確固たる実力を万人へと示したのだ
勢いづいたハヤテはその後も大小問わずチャリオッツの大会へと参戦し、全て勝利を飾っている。デビュー以来無敗という称号を抱えたまま、ジャパンカップへと挑むのだ
(´・ω・`)「これで、今年のジャパンカップは二つの伝説が鬩ぎ合う形になった」
最強王者、『クワイエット』のジャパンカップ三連覇か
新進気鋭、『ハヤテ』の無敗優勝か
(´^ω^`)「ぶっ壊し甲斐のある舞台じゃねえか!!ガハハ!!」
(´・_ゝ・`)「ええ、そのようで」
この二つの偉業を阻むのも、また『偉業』である
二人は、彼らと同じく挑もうとせん年末の大舞台に、これまでにない大きな嵐を予感した
577
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/01/05(日) 17:50:19 ID:xsbgfEYE0
斯くして、ハヤテの参戦発表は
( ,,^Д^)「……」
(-_-)「どうしたの?」
( ,,^Д^)「こいつが……」
日本中に犇めく数多の強豪たちの
_
( ∀ )「おいおい、これって完全に俺のこと言ってやがんな」
胸中に抑え込んでいた野望の炎を
ζ( ー *ζ「お姉ちゃん。図らずも、アイドル頂上決戦になりそうだね」
『大炎』へと昇華させたのであった
( _ゝ )「は?ミセ×トソこそ正義だが?」
( <_ )「トソ×ミセだろ殺すぞカス」
578
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/01/05(日) 17:50:43 ID:xsbgfEYE0
だが、残念なことに
(;'A`)「ハァッ、ハァッ!!」
(# ゚ω゚ )「スピンにハンドル持っていかれてんじゃねえお!!回転が止まったらキチッと固定して真っすぐ走るんだお!!ちょっとブレただけで後隙狩られるお!!」
(;'A`)「はい!!スワセン!!」
『ハヤテ』が送った果たし状は、山奥で更に過酷な修練に励む二人には届かなかった
579
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/01/05(日) 17:53:43 ID:xsbgfEYE0
―――――
―――
―
♪Gonna Fly Now
https://www.youtube.com/watch?v=LOyHMftfbGA
木本と高梨が帰宅し、合宿も残すところ一週間となった。追い込みの時期である
(;'A`)「有効射程!!遮蔽意識!!」
午前中は、それぞれ合宿前半と同じトレーニングメニューをこなす。徳雄は、文彦のアドバイス(ほぼ罵倒)を意識してプロチームのゴーストデータとの対戦である
文彦の無遠慮な改善点の指摘は、徳雄が会得しようとしている『守りの走り』への明確な指針となり、今となっては漠然とした焦りも消え失せた
未だゴール出来た試しは無いが、日に日に到達地点は伸びていく。その度に徳雄は、かつて学生時代に味わった成長の悦びを噛み締めていた
(;^ω^)「フーッ、フーッ!!」
文彦の水中ウォーキングも、上下共に着衣した状態で行われた。五十分のウォーキングを、十五分ずつ休憩を挟んで3セット
始まった当初は毎日のように文句を溢していた文彦も、推しに認知されるという大いなる目標を得たことで、歯を食いしばって励むようになった
(´・_・`)「トラーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーインハーーーーーーーーーーーードナーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーウ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
その間、小練は指導しつつすっごく歌った
580
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/01/05(日) 17:55:13 ID:xsbgfEYE0
午後からは実機を使った訓練である。これは主に、徳雄の操縦技術のチェックと、スピンミキサーへの慣れが目的だ
(#^ω^)「正面から左右45°まではジョッキーの操縦で照準を合わすんだお!!ピッタリ止めなくてもいいけど、絶対に砲口が相手を捉えるようにするんだお!!」
(;'A`)「はい!!!!!!!!!!!!!!!」
徳雄は真面目な男である。暴力に躊躇いこそないが、自分に非がある分には、豚の言う事すらも素直に聞く
固定砲の不便さに文句を溢さず、頭上から怒鳴りつけるチームメイトに逆らわず、指摘されればすぐさま修正を行う
文彦と反りが合わなかった蟒蛇のメンバーとの違いは、『己は取るに足らない素人である』という謙虚な姿勢。その姿勢こそが、徳雄の目覚ましい成長の後押しとなっていた
(#^ω^)「オッケエナイスゥ!!!!!!!!!今の感覚忘れんじゃねーお!!!!!!!!!」
(;'A`)「はい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
文彦もまた、徳雄の成長に伴い、態度を変えていく。最初こそダメ出し(罵倒)が殆どを占めていたが、思い通りの動きをすればすかさず褒めた
これはかつてチャリオッツを始めたての頃、キャプテンの位置から教示してくれた従兄の名残であった。最も、彼は罵倒など一度もしなかったが
悪しきは叱咤し、良ければ褒める。このメリハリを、性格ゴミクソッタレデブが弁えていたのは、小練にとっても嬉しい誤算だった
(´・_・`)「イッツソォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーウハーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーード!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
そら歌も指導もめっちゃ盛り上がった
581
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/01/05(日) 17:56:02 ID:xsbgfEYE0
(´・_・`)「トライーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンハーーーーーーーーーーーーーーーーーーーードナーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーウ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
(#^ω^)「気が散るお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
(;´・_・`)「アッハイ」
豚が初めて正論をかました記念すべき瞬間であった
582
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/01/05(日) 17:57:14 ID:xsbgfEYE0
休養日も、車両構築やアビリティについて話し合った
( ^ω^)「アビリティは1〜3までのコストがあって、最大で『5コスト』まで積み込めるお。コストが低ければ短いCTで使いまわせるけど効果は小さく、逆に高ければ絶大な効果の代償に多くのCTを要するお」
('A`)「スピンミキサーのコストが『1』ってことは、残り全部を1コスで埋めたりも出来んのか」
( ^ω^)「そういうチームも無くはないけど、ゴッチャになるから推奨されてないお。大抵はバランスの良い『122編成』か『113編成』に分けられるお」
('A`)「違いは?」
( ^ω^)「122編成は生存重視型だお。ミドルコストのアビリティで道中のステージギミック攻略に重きを置いてるお。初心者から上級者まで、万人に好まれる編成だお」
( ^ω^)「113編成はスパート重視型。終盤に高コストアビリティで勝負を決めるガチガチの上級者編成だお。道中の障害を低コスアビリティだけで突破する実力あっての編成とも言えるお」
('A`)「なるほどなぁ」
( ^ω^)「どのチームも一つは『固定アビリティ』があるけど、残りは自由枠として大会ごとに組み替えたりするお。そうしないと、毎回手の内を明かしながらプレイすることになるから不利なんだお」
('A`)「ってなると、ここでも初参加の俺達が有利な条件になるのか」
( ^ω^)「そうだお。固定枠も自由枠も明かされてないチームは、有名な強豪と比べて底が知れないダークホースになり得るんだお」
スピンミキサーを軸にして、他アビリティと組み合わせたシナジー考察
文彦にとってはやり慣れた作戦会議だったが、チャリオッツを始めて間もない徳雄にとっては
('A`)「おもしれえな……」
プレイする以外でのゲームの面白さに触れる新鮮な体験となった
583
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/01/05(日) 17:58:10 ID:xsbgfEYE0
そうして、あっという間に時は過ぎ、迎えた八月三十日―――――
(´・_・`)「……」
翌日には帰宅する為、今日が実質の合宿最終日である。小練はいつも通りの四時に起床し、手早く身支度を整えた
繁忙期ピークの八月であるが、盆を過ぎれば客足は徐々に落ち着きを見せる。終盤には学校の新学期再開間近ということもあり、賑やかだった宿舎がシーズンオフの静けさを取り戻すのも珍しくはない
来月の半ばには例年通り『得意先』が利用しに来るが、今月最後の客は徳雄と文彦を残すのみとなった
水とシリアルバーだけの簡単な朝食を済ませると、登山口に続く玄関へと足早に向かう。そこには既に
('A`)「おはようございます」
( ^ω^)「おっせーお」
小練よりも早く集合した二人が、準備運動に勤しんでいた
(´・_・`)「やる気は十分のようだな」
合宿の総決算が、人知れず始まった
584
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/01/05(日) 17:59:12 ID:xsbgfEYE0
(´・_・`)「文彦。初日の苦痛、忘れてねえよな?」
( ^ω^)「ハッハッハッ、先生。僕を見くびって貰っちゃ困るお」
文彦はその場で軽く足踏みをする。自前のジャージの腹回りには幾分か余裕が出来ており、文彦は生まれて初めて『紐』を結んでいた
( ^ω^)「鍛えに鍛え抜いた僕の足腰、見せてやりますお」
(´・_・`)「期待してるぞ。徳雄、先に行け」
('A`)「了解っす。文彦、後でな」
徳雄にとっては、山登りは二日置きのルーティンワークだった。最後の一回を噛み締めるように、ゆったりと駆け出す
(´・_・`)「速度は気にするな。肝心なのはやり遂げることだ。出来るな?」
( ^ω^)「はいですお!!」
(´・_・`)「良い返事だ。そんじゃあ、出発するぞ」
歩み始めた文彦のペースに合わせて、小練は後ろをついていく。標高およそ700メートル。登り降り合わせて往復で8キロ前後の道のりだ
小練や徳雄にとっては、身体を温める程度のアップに過ぎないが、運動慣れしていない者なら翌日の筋肉痛は免れない
(;^ω^)「フッ、フッ……」
早くも汗ばみ始めているが、呼吸は一定で刻まれ、足取りもしっかりしている。水中ウォーキングの成果は、文彦が言った通り『足腰』に表れていた
585
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/01/05(日) 18:00:13 ID:xsbgfEYE0
格闘技にせよ球技にせよ、スポーツの要は下半身にある。ダイエットに効果的な『有酸素運動』にも、足腰は重要な役割を持つ
ダイエット初心者が陥りがちなのが、『三日坊主』だ。それは運動の辛さも勿論関わってくるが、急な運動によって関節を痛めるのも原因の一つである
回復をを待っている間に運動が億劫になり、ダイエットが続かないという悪循環へと陥ってしまうのだ
(´・_・`)「……」
文彦は、グダグダ言いつつもサボる事なく最終日を迎えた。しかし、ダイエットが今日で終わるワケではない。本番の大晦日まで継続しなければならないのだ
水中ウォーキングの目的は、『劇的なダイエット』ではなく、『土台』作り。しっかりした足腰で、挫けることなく運動を楽しめるように
口だけではなく、自らの足で理想を追い求められるように。いつか望みを叶えられるように。小練なりの後押しを込めた鍛錬だった
(;^ω^)「フッ、フッ……先生……」
(´・_・`)「あんだ?」
(;^ω^)「打ち上げは、盛大に頼みますお」
一皮剥けて逞しくなった生徒の姿を真っ先に拝められるのは、指導者としての喜びの一つである
(´・_・`)「抜かせクソガキ。精々ぶっ倒れるんじゃねえぞ」
(;^ω^)「なんのこれしきですお!!」
初日の山頂で泣き言を溢していた文彦は、誰の手も借りず自分の力で八キロの山道を踏破したのであった―――――
586
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/01/05(日) 18:00:58 ID:xsbgfEYE0
山頂にて
(#^ω^)「ドラゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」
(´・_・`)「お前ロッキー4観た????????」
587
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/01/05(日) 18:03:02 ID:xsbgfEYE0
―――――
―――
―
(´・_・`)「総仕上げだ。お前ら二人でプロチームのゴーストデータと対戦して、ベストスコアを叩き出せ」
チャリオッツ実機を使った最終試験。総勢17チームのプロとの模擬戦である
('A`)「マスター帯じゃないんすか?」
(´・_・`)「オメーどっちがしんどいよ?」
('A`)「全然ゴーストデータっすね。狩られる速度がダンチっすよ」
(´・_・`)「そういうこった。これまでと違うのは、俺がキャプテンとして乗り込む。指示はしねえが、任意のタイミングでスピンミキサーは使ってやる」
( ^ω^)「本番環境に近い状況でやれるってことかお。とっくんこれワンチャンあるで」
('A`)「ワンチャンじゃ困んだよ」
指の骨をパキと鳴らすと、徳雄は真っ先に筐体へと乗り込んだ
('A`)「圧勝で締めようぜ」
( ^ω^)「抜かせ素人。精々ぶっ倒れるんじゃねえお」
(´・_・`)「オイ」
予想外のタイミングで辱められた
588
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/01/05(日) 18:03:48 ID:xsbgfEYE0
ゲーム設定は本番と同じ4ステージ。小練の重量分の装甲は軽減された為、練習時より耐久値は下がる
('A`)「フゥー……」
( ^ω^)「とっくん」
ハンドルを握り、緊張を深い息と共に吐きだした徳雄へ、銃座から声が掛けられる
( ^ω^)「今日はミスろうがポカろうが気に食わなかろうが何も言わないお。好きにブチかませばいいお」
('A`)「いいのか?」
( ^ω^)「そろそろ僕も、『勝ち馬』が恋しくなってきたんだお」
徳雄は合宿の大半を、『守りの走り』の習得に努めた。しかし、本来得意とするのは『攻めの走り』である
ねぐらでプレイする最後のゲームを、小練は『総仕上げ』と呼んだ。ジョッキーたる徳雄に求められるのは生来の凶暴性と、ここで培ったチャリオッツの技術
その二つをブレンドして初めて、ジョッキーの『持ち味』が生まれる。徳雄は背後に控える『二人の師匠』に、親指を立てた
('A`)「舌噛むんじゃねえぞ」
スタートシグナルが鳴る。ゲート解放と共に、徳雄はペダルに力を込めた
589
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/01/05(日) 18:05:05 ID:xsbgfEYE0
(;´・_・`)そ「うおっほ!!」
小練が徳雄の走りを体感するのは今日が初めてである。鍛え上げられた体幹と、フルハーネスによる補助があるとはいえ、荒っぽいスタートダッシュに思わず腰を落とした
抑え込んでいた攻めっ気の解放。少々先走り過ぎかと思いきや、速度自体は抑え目だった。攻撃方法は『チャージ』だけではないのを、キチンと理解している証明だ
(#^ω[◎]「敵位置10、2!!射程圏内!!先生!!10撃破後にスピン!!」
(´・_・`)「はいよ!!」
徳雄は取舵を切り、左斜め前方の車体へと砲口を向ける
(#^ω[◎]「今!!」
文彦は『発射前』に合図を出した。小練が合図を聞いてアビリティの実行に移るまでの一秒にも満たない時の中で、『四連射』を放つ
(;´・_・`)「マジかッ……!!」
アビリティ、『スピンミキサー』の発動。車体は右回転を行う。120°でピタリと止められるような器用なアビリティではない
視界がぐるりと回って、2時方向に位置する敵車体も、残像を伴って通過しようとする。文彦にとっては、『止まって見えた』
(#^ω[◎]「っし!!」
残り二連射を叩きこみ、車体は360°回って12時の方向へと向き直る
6shooterに撃ち抜かれ、宙を舞った二つの車体は、ほぼ同時に地へと落ちた
完全な破壊こそ出来なかったが、足を止めるには十二分の半壊状態である。もし本番であるならば、勝利は奇跡が起きない限り絶望的な状態と言えた
(;'A`)「ッ、ラァ!!」
慣性に引っ張られないようハンドルを引き戻し、ひっくり返る二車両の間を走り抜けた
(;´・_・`)「たまげたな……」
僅か1ステージ目で2ヒットである。精密な早撃ちもそうだが、驚くべきは『弾の配分』である
左の車両は右と比べて、厚く装甲を載せていたのだ。文彦は有効打に必要なダメージ量を瞬時に見抜き、実践した
今の一瞬だけで、文彦がどれだけ6shooterと向き合って来たのかがよくわかる。この才能をみすみす逃したプロ団体がいるなど、信じられない程だった
590
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/01/05(日) 18:06:49 ID:xsbgfEYE0
(´・_・`)「だが……」
これがマスター帯なら難なく走り抜けていただろう。相手は『プロ』である
重装甲の車体からは黒く濃い『靄』が立ち上り、もう一方の車両からは激しい火花が飛び散り始めた
(´・_・`)「カウンターアビリティ『呪怨』に、耐久値が半分以下になると一定時間バフが乗る『フラッシュポイント』。薮を突いて蛇を起こしちまったな」
チャリオッツの『悪霊』と、導火線に火についた『爆弾』が、徳雄達の背中を同時に追い駆ける
本来、小練のいるキャプテンが他のポジションに警告せねばならない立場だが、今はあくまでスピンミキサーを使うだけの助っ人である
(´・_・`)「呪怨の『悪霊』に捕まりゃ車両重量を一定時間三割り増し。フラッシュポイントはそれこそ絡みつくネズミ花火みてーに食いついてくる。さぁ、どうする?」
(;'A`)「フッ、フッ……」
文彦のアドバイスの一つに、『サイドミラーの常時確認』がある。自動車の運転にも言えるが、後方にも気を配らねばならない
ミラーには、猛追する黒い影と尻に火がついたような車両の姿が写っている。このまま体力を温存して走っていては直に追い付かれるのは目に見えていた
(;'A`)「文彦!!」
(;^ω^)「残り15秒!!」
6shooterの弱点は固定砲だけではない。六発分の再装填に、30秒もの時間を要する。早撃ち、配分共に申し分無かったが、『反撃』を考慮せず撃ち尽くしたのは迂闊であった
比較対象として、単発の高火力主砲の装填速度が平均10秒前後。軽火力なら3秒を下回る。この余りにも長すぎるリロードタイムは、ガンナー界隈から6shooterという選択肢を除外するのには十分な理由となった
591
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/01/05(日) 18:09:27 ID:xsbgfEYE0
(;'A`)「く……!!」
牽制砲撃で放たれた砲弾が側面装甲を掠め、再びミラーに目を向ける。靄よりも車両の方が速度は早く、次第に近づいてくる
全力で逃げ切ってもいいが、猛追がどれほどの時間続くかわからぬ以上、鬼ごっこに余計な体力を使えない
(;'A`)「だったら……!!」
車両の位置を敵車両正面へと移動させ、ブレーキを握る。急停車した車体の尻に、『爆弾』は容赦なく噛み付いた
(;'A`)「スピン全開!!」
(´・_・`)「正解っ……!!」
スピンミキサーのCTは6shooterのリロードタイムを大きく下回る。問題なく使用可能だった
車両はすぐさま回転し、衝突により半壊した後部装甲ごと接触した敵車両を弾き飛ばす。飛ばした先には、遅れて追いついた『怨霊』の姿
(´・_・`)「フゥー!!お見事!!」
怨霊は突如飛んできた見当違いの『憑き先』へと吸い込まれる。アビリティによって勢い付いていた車両も、三割増の重量は無視出来ない
徳雄は回転の終了を待たずにペダルを踏み込み、機を逃すことなく距離を離す。ミラー越しに、小さくなっていく敵車両。火花は既に消えていた
592
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/01/05(日) 18:10:15 ID:xsbgfEYE0
( ^ω^)「ナイスプレイだお!!」
(;'∀`)「お粗末さん!!」
視界のブレを気合いで抑え込む。平然としている文彦は最初からスピンミキサーへの『耐性』があった
三半規管は訓練によって鍛えられる箇所である。目が回る原因は、身体の回転に対して視界のブレを無くそうとする『眼振』という作用によるものである
ぐるぐると回った後にピタリと止まっても、しばらく視界が動き続けているのは、視界は静止したという脳の処理と眼球の動きにラグが発生する為に起こる現象だ
つまりこのラグさえ無くせば、眼振の発生は抑えられ、方向感覚に影響することなくプレイを続行出来る。フィギュアスケーターが激しいスピンを繰り出した後に平然と競技を続けられるのも、日常的な訓練の賜物である
文彦は訓練をしたわけではないが、チャリオッツプレイヤーとして激しくブレる視界の中で正確な早撃ちを行ってきた
『見て』から『撃つ』までの脳の処理速度は群を抜いており、これは眼振の抑え込みにも絶大な効力を発揮した。ここでも、文彦の天性の才が光ったのである
(;'∀`)「理屈はわかるけどよっ……」
徳雄には築き上げた強靭なフィジカルがあったが、特別な才を持たぬ男だった
こればかりは回数をこなさねば身につかない。幾つか目が回らない『コツ』も教わったが、それでも多少マシ程度だ
今のは後隙も狩られずに済んだが、本番ではどう転ぶかわからない。合宿期間中に解決できなかった大きな課題が残った
(´・_・`)「……」
小練は徳雄のフォローを大きく評価した。合宿前半では、力任せに突っ込んで体力と耐久値を大きく削る荒々しさが目立っていたが
追走する車両の装填の隙を突いた接近と、アビリティのパワーを使った撃退。この一月で、徳雄は着実にジョッキーのテクニックを身につけている
文彦に関しても、まだ改善の余地があるのを知れたのも良かった。自身の才能と6shooterの性能に、若干だが信を置きすぎている
今のようにジョッキーとキャプテンのフォローで立て直せなくもないが、自分の尻は自分で拭けるに越したことは無い
(´・_・`)「……」
まだまだ面倒を見てやりたいが、彼らには彼らの、ねぐらにはねぐらの日常があり、残念ながら交わることは無い
(´・_・`)「さぁさぁもっと気合入れて行け!!最後に俺を仰天させてみろや!!」
悪路でがたつく車上で、小練は一足早く訪れた寂しさを鼓舞でかき消した
593
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/01/05(日) 18:11:07 ID:xsbgfEYE0
続く第二、第三ステージも、ステージギミックに救われつつ辛くも突破。車両耐久値は残り三割程度で、最終ステージへと突入した
二チームの先行を許しているが、リードはさほど取られてはいない。残った脚次第だが、勝ちの目は残っている。しかし――――
(;'A゚)「ハァッ!!ハァッ!!」
肝心の『脚』は、誰の目に見ても限界を迎えていた
(;^ω^)「射程圏……いや」
砲撃による妨害も可能だが、今の徳雄は砲撃により生じる衝撃でバランスを崩しかねない。終盤で一度崩れたジョッキーが立ち直るのは困難であると、経験者たる文彦は理解していた
チャリオッツが世界一過酷なeスポーツたる由縁がここにある。『プロ』とも呼ばれる実力者同士の対戦は、より高い次元の技術と、限界以上の体力を要する
ましてや、今の相手は人ではなく『AI』である。判断力や戦術の応用こそ人より一歩劣るが、『疲れ』を知らない。即ち、体力切れによる『諦め』も無い
(;'A゚)「ハァッ!!ハァッ!!」
『気力』が尽きれば、勝敗は決する。チャリオッツこそ初めて間もないが、かつて身を置いていた勝負の世界と共通する事実
徐々に距離を離される先行車両の姿は、気力だけで前に進む徳雄の心に容赦なく斧を入れていった
(´・_・`)「……徳雄ォ!!」
(;'A゚)そ「ッ!!」
小練が筐体に乗り込んだのは、合宿の成果を確かめる他にもう一つ理由があった。ジョッキーの『必殺技』。その伝授の為に、キャプテンの座に座らねばならなかった
特別な技能も、専用のアビリティも、アイテムもトレジャーも用いない。必要なのは強靭な心と身体だけ。幸いにも、徳雄には二つとも備わっていた
594
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/01/05(日) 18:13:44 ID:xsbgfEYE0
(´・_・`)「弾も万策も尽きようが、お前さえ諦めなけりゃ勝負はわからねえ!!最後にチームの希望となるのは、チャリオッツの『原動力』たるジョッキーの、最も重要な役割だ!!」
(;'A゚)「ハァッ、お、応ッ!!」
キャプテンの『操作盤』には、アビリティ、アイテム、トレジャーの使用パネルの他に、各装甲及び主砲のパージパネルがある
必要に応じて装甲を外し、車両の軽量化や後続の妨害として使用する。小練は、無事な装甲をギリギリまで残していた
通常、スパート時にはこれらを全て排除する。最終ステージともなれば、砲撃によるダメージケアよりもゴールによる勝利が優先される為だ
足枷を外すことで、変速ギアの無いチャリオッツで唯一の『ギアチェンジ』が可能となる。キャプテン不在の練習を続けた徳雄にとって、初めて体験する『基礎テクニック』だった
(´・_・`)「お前の野望に役立てやがれ!!これが最後に贈る……」
(#´・_・`)「俺からの餞別だァ!!!!!!!」
全装甲と主砲の一斉パージ。重量から解き放たれた足裏のペダルが、嘘のように軽くなる
('A゚)「」
この瞬間、重さに耐え忍んできた肉体は『錯覚』を起こす。疲労で限界を迎えようとしていた筈が、負荷が軽くなったことで『まだいける』と認識するのだ
同時に、苦痛から解き放たれた頭からも脳内麻薬が弾け出る。この二つの作用が、徳雄の身体の『ギア』をトップへと切り替えた
595
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/01/05(日) 18:14:59 ID:xsbgfEYE0
(#'A゚)「ガァアアアアアアアアアアアアア ア ア ア ア ア ア ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !」
(;^ω^)そ「う、おっ!?」
仰け反るほどの急加速。前方車両との距離はみるみるうちに縮まっていく
徳雄に満ちる『解放感』は、内に抑えていた暴力性を曝け出す。これが最後、ここが勝負所。残った全てを脚に込めて加速する
(;´・_・`)「ハハ!!すげえなオイ!!」
小練には、徳雄は必ずこの必殺技を一発でモノにするだろうという期待があった。そして彼は今、『期待以上』の暴力的スパートを見せた
それはまさに、万人が今年のジャパンカップに望む『三連覇の偉業』を、『無敗優勝の夢』を、無慈悲に叩き潰す『鬼の走り』だった
(;^ω^)「残り、一つ!!」
猛烈な勢いで追い上げ、二番手に躍り出る。ゴールラインは目視圏内。先頭車両との距離も瞬く間に縮まっていく
(#'A゚)「アアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」
トップスピードは維持したまま、先頭車両の背を追い抜こうとしたその時―――――
596
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/01/05(日) 18:16:34 ID:xsbgfEYE0
(;^ω゚ )そ「しまっ……!!」
文彦だけが、瞬時に先頭車両の違和感に気付いた。『装甲を全て残していた』のである
スパートの際、装甲は足枷となる。後続が主砲を棄てて追い上げてきたのなら、猶更残しておく必要は無くなる
『終盤で勝負を決める、装甲を利用したアビリティ』。今となっては遺物にも等しいが、かつて『禁忌』とされるほどの高威力を誇った切り札がある
(;^ω゚ )「『ショットパーj
先頭に最も接近した瞬間、装甲が一斉に『手榴弾』のように弾ける。鋼鉄の礫は身軽になった自車両を容赦なく食い破り、操縦席は横転する
(;'A゚)そ「ぐっ……!!」
(;^ω^)そ「ッ……」
残った耐久値は蝋燭の灯火を吹き消すかのように呆気なく尽き、ディスプレイ上に『BREAK』と映し出される
呆然とする二人に見向きもせず、『アンラ・マンユ』のゴーストは、悠々とゴールラインを切った
(;'A゚)「……」
(;^ω^)「……」
暫し、起こった現実を受け入れられずにいたが
(;'A゚)・'.。゜「ガホッ!!ゲホッ!!ゼハァーッ、ゼハァーッ!!」
魔法が切れた徳雄の息が再び荒れだしたところで、ようやく『負けた』という実感に襲われたのであった
597
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/01/05(日) 18:17:27 ID:xsbgfEYE0
―――――
―――
―
(´・_・`)「文彦、先に降りろ。運び出す」
(;^ω^)「お……お願いしますお」
小練は慰めも励ましもせず、淡々とやるべきことをこなす。徳雄は自分の足で筐体を出るどころか、ハーネスを外すことも出来ないほど消耗していた
そんな相方を不安気に振り返りつつ、文彦は一足先に筐体を降りる。すると、ゆっくりとしたわざとらしい拍手が彼を出迎えた
_人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人_
> (´^ω^`)「負け犬ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
ドクズである
( ^ω^)「……」
(´^ω^`)そ「あれ!!!!!!!!!!?????????思ってた反応と違う!!!!!!!!!!」
(;´・_ゝ・`)「でしょうよ……」
その隣には、腹心であるハゲの姿もある。今の文彦には、オッサン共との再会に嫌悪を示す気力も無かった
598
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/01/05(日) 18:18:16 ID:xsbgfEYE0
( ^ω^)「迎えに来たのかお……今更」
(´・ω・`)「いんや?短い夏休みってやつさ。働きづめだったからよ」
クズにしては珍しく、飲み物とタオルを自ら手渡す。拒否する意味もないと、文彦は素直に受け取った
本八は、文彦がミセリフェスの約束を反故にされて見苦しく喚くと予想していたが、今の敗北は推しに会えなかった事すら凌駕するほど堪えたらしい
やがて、筐体から小練に支えられて徳雄も出てくる。彼もまた、ねぐらに来訪した二人の姿に大したリアクションもせず、息を切らすだけだった
(´・_・`)「酸素だ。吸え」
(;'A`)「ハァー、ハァー……」
手渡された携帯酸素を吸うが、染み入る感覚は皆無だった。最後の最後で、師に報いる機会を逃してしまったのだ。不甲斐なさが胸を締め付けた
( ^ω^)「……ごめん。もっと早く気付くべきだったお」
(;'A`)「ングッ、ハァー、ハァー……」
文彦の謝罪に言葉では返せず、徳雄はただ首を振るだけだった。落ち込む二人の姿を、クズはなんと―――――
(´^ω^`)「めっちゃ落ち込んでてウケる〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!」
指さして笑った
599
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/01/05(日) 18:19:18 ID:xsbgfEYE0
(#^ω^)「何が可笑しいんだお!!」
(´・ω・`)「可笑しいだろ。これ練習だぜ?負けも失敗もして当たり前だろうが。お前ら毎度毎度落ち込む気か?感受性が豊かで羨ましいな。クソみてえな恋愛リアリティ番組でも泣けるんじゃねえの?」
文彦は激昂したが、本八の煽りに何も言い返せなかった。『ぐうの音も出ないほどの正論』だったからだ
(´・ω・`)「途中からだが、合宿の成果はしかと見せて貰った。お前らを喜ばすようなことなんざ口が裂けても言いたかねえが、正直たまげたぜ」
(;'A`)「ハァー、ハァー……」
(´^ω^`)「まぁ最後に残った相手がアンラ・マンユだったら仕方ねえよ!!アレね、俺の推しなんすよwwwwwwwww」
およそ一ヶ月ぶりに湧き出すクズへの殺意に、徳雄は不覚にも懐かしさを感じてしまった
(´・ω・`)「失敗や敗北にしょげるなたぁ言わねえよ。ただ、成し遂げた事にも目を向けろ。そら見ろよ、今の試合」
本八は観客用ディスプレイを指す。二人が到達した地点が、赤い点滅として示されている
二人は負けた。それは覆しようのない事実だ。だが―――――
(´・ω・`)「お前らは、強豪の亡霊相手にここまで立ち回ったんじゃねえか」
プロチームを相手にゴール寸前まで到達したのも、紛れもなく二人が『成し遂げた事実』であった
600
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/01/05(日) 18:20:40 ID:xsbgfEYE0
(;'A`)「フゥー…………慰めのつもりか?」
( ^ω^)「アンタに言われなくてもわかってるお」
いつもの調子を取り戻した二人に向かって、本八は鼻を鳴らす
(´・ω・`)「当然!!本番でこんなポカやらかしやがったらタダじゃおかねえ!!だが今日は、合宿をやり遂げた事に免じて目を瞑ってやらぁ!!」
本八は最後に「薄汚ねえガキ共が」と余計な一言を付け足し、その場を後にする
二人は珍しく励ましてくれたのかなと懐柔されかけたが、その一言で吹き飛んだ。そして後で埋めると決めた
(´・_ゝ・`)「ああ見えて、相当嬉しいんだよ。許してやってくれとは言わないが、半殺し程度に収めてやってくれ」
ハゲも励ませや
('A`)「ハン……あのクズの援助あっての合宿でしたからね。今回だけは見逃してやりますよ」
(;´・_・`)「上司だよな?」
高梨の再就職は本当に上手くいったのか不安になった
(´・_ゝ・`)「さて、今日は我々の休みでもあるんだけど、二人を労いに来たんだ。小練さんにも協力してもらってね」
( ^ω^)「え!!!!!??????お触りOKのコンパニオンのおねーちゃんが!!!!!!?????」
(´・_ゝ・`)「そんなわけねーだろバブル期のオッサンかテメーは」
そんなわけなかった
601
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/01/05(日) 18:21:32 ID:xsbgfEYE0
―――――
―――
―
ヽiリ,,゚ヮ゚ノi「どぉぞぉ〜」
( *^ω^)「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」
コンパニオンこそ呼ばれなかったが、本八の差し入れであるアンドロイドケータリングサービスと、性癖を犠牲にとんでもない料理の腕を持つ調理師による盛大な打ち上げが開催された
(;'A`)「つか……やり過ぎじゃねっすか……?」
(´・_・`)「俺もこの規模の差し入れは初めてだよ……」
ねぐらの食堂ではマグロ解体ショーに握りたての寿司、揚げたて天ぷらに焼きたてステーキと、ホテルビュッフェさながらのご馳走が立ち並ぶ
クズハゲブスデブの四人とねぐら従業員四人、それとここ最近頻繁に見る高身長和装美女ともう一人足して計十人だけのささやかな……結構おるやんけ。とは言え、個人で行う規模のパーティーでは無かった
/ ゚、。 /「今日何のお祭り?」
イ从゚ -゚ノi、「何のお祭りなんでしょうね……」
602
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/01/05(日) 18:22:21 ID:xsbgfEYE0
(´・ω・`)「あれーーーーーーーーーー????????大桜堂の??????????」
/ ゚、。 /「あら社長さん!!奇遇やわぁ!!」
イ从゚ -゚ノi、「知り合い?」
/ ゚、。 /「ほら、例のチャリオッツ筐体。アレ買うてくれたお客なんよぉ」
(´^ω^`)「ここで会ったのも何かの縁だし後日しっぽり食事d / ゚、。 /「いやや」うほー京都人らしからぬ直球拒否効く〜」
イ从;゚ -゚ノi、「詩音!!鈴アレ売っちゃったって!!」
(;´・_・`)そ「ハァ!?捨てろっつったろ!!中に何詰まってたのか忘れたのか!?」
(´・ω・`)「『詰まってた』???????????????????」
/ ゚、。 /「綺麗にしたし憑きもんも落ちたんやから勿体無いやないの」
(´・ω・`)「え……恐……」
めちゃくちゃ裏がありそうだが、もう一カ月近く乗り回してるので既に手遅れだった
603
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/01/05(日) 18:24:22 ID:xsbgfEYE0
( ^ω^)<ドリュリュリュリュリュリュズゴオオオオオオオオオオオオシュボボボボボ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ヽiリ,,゚ヮ゚ノi「ほらもっと食べて食べて♪」
( ^ω^)<カーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!ジュッポジュッポジュッポォォォォォォジュルルルルルルルルルルジュッジュジュウウウウウウウウウウウウウ!!!!!!!!!!!!!!!!!!レロレロレロレロ!!!!!!!!!!!!!!!!!!
今日ばかりは無礼講と、小練と本八から許可が出たので、文彦はここぞとばかりに飯を食いまくった。豚のカービィである
徳雄はと言うと、体力を使い切ったことであまり食が進まず、一人離れた場所で飲み物を傾けながらしみじみとねぐらでの生活を振り返っていた
('A`)「……」
i!iiリ゚ ヮ゚ノル「名残惜しいですか?」
('A`)「そりゃあ、まぁ……だけど、ずっと居るわけにもいかねえし」
i!iiリ゚ ヮ゚ノル「『素晴らしい時はやがて去り行き、今は別れを惜しみながら』ですねぇ」
('A`)「ハハ、そんな大層なもんでも……」
(;'A`)そ「アンタ誰!!!!!!!!!!!!!????????????」
ここでようやく徳雄は尻を浮き上がらせた
i!iiリ゚ ヮ゚ノル「いやぁ、久しぶりにご飯食べに来たらめっちゃ豪勢で驚いちゃいましたよぉ。寿司アンドロイドマジ???????どうなってんですこれ???????」
脂滴るようなトロマグロ・スシ。神出鬼没のチャンネーは一度に二つ食べた
i!iiリ゚ 〜゚ノル「ふぉふぉふぉんふぉふぉふぉふぉふぉふぉふぉ?んほほふぉふぉ?」
(;'A`)「飲み込んでから喋……いや、アンタ前にどこかで……」
i!iiリ゚ ヮ゚ノル「ングッ、その節はどーも。いい試合、見させて頂きましたぁ」
604
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/01/05(日) 18:26:09 ID:xsbgfEYE0
およそ二か月前。ゲームセンターで騒ぎになった時、助け舟を寄越した女性だった
あの日と同じく、親しい間柄の友人のような馴れ馴れしさで近づき、ヌルリと会話を滑り込ませてきた
何より恐ろしいのは、『この場にいる全員が、女の存在に対して何の反応も示していない』。得体の知れない不気味さに、徳雄は思わず生唾を飲み込んだ
(;'A`)「幽霊か妖怪の類か?」
i!iiリ゚ ヮ゚ノルそ「わぁ、鋭い!!実はぬらりひょんの孫なんですよ!!」
(;'A`)「何かのタイトルっぽい出生だな。俺に用か?」
i!iiリ゚ ヮ゚ノル「用があるのはもう少し先かもしれませんねぇ。ワタクシ、こういうモノです」
差し出された名刺には、『フリージャーナリスト 青葉 青花』と、職業と名前らしき文字列が記されていた
(;'A`)「あおば……あおばな?」
i!iiリ゚ ヮ゚ノル「読みにくいですよねぇ。読み方は『あおば せいか』と申します」
(;'A`)「ああ……そんで、ジャーナリストってこたぁ……」
マスコミに良い思い出があると答える者は少ない。彼らは多くの場合、『不幸』や『訃報』、または『不祥事』などを好む
徳雄も過去に獏良絡みのコメントを頂戴しようと目論むジャーナリストに自宅周辺をうろつかれたことがある。悪評こそ広められなかったが、あの粘り腰にはうんざりしたものだ
(;'A`)「オッサンのスキャンダルでも訊きに来たのか?言っとくが、記事にしようがどうせ金の力でねじ伏せられるぞ?」
i!iiリ゚ ヮ゚ノル「承知してますよぉ。大潮一族がどれだけ同僚を泣かせたかご存じですか?」
(;'A`)「いやそんなあるの?」
i!iiリ゚ ヮ゚ノル「親の代から数えたら広辞苑が出来ますよ」
(;'A`)「うわ……クソの一族……」
でもこういうのが政治とか牛耳るんだろうなと思った
605
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/01/05(日) 18:28:48 ID:xsbgfEYE0
i!iiリ゚ ヮ゚ノル「まぁ今日はご挨拶だけで。いずれお話を伺うこともあるでしょう」
(;'A`)「はぁ……」
青葉は空になった皿を手に立ち上がり、軽く会釈をした
i!iiリ゚ ヮ゚ノル「ジャパンカップ、期待してますよぉ。『流星』と『鬼追』の直接対決を」
(;'A`)「は……?ちょっと待て!!」
意味深に言い残して去ろうとした彼女を止めようと立ち上がるが、瞬きの間に霞のように消えていた
見回して探したが、その姿はどこにもない。狐につままれたような気分で、徳雄は力なく席に戻った
(;'A`)「どこ行きやがった……」
残された名刺だけが、彼女が確かにここに居たという証明だった
(,,゚-゚)「探しても無駄だよ」
(;'A`)そ「うおっ!?」
またもや音もなく近づいていた少女に、再び尻を浮かす。鳴らないんですかって?尻が勝手に鳴るわけねえだろ頭可笑しいんじゃねえのお前
(;'A`)「お前、知ってんのか?」
脂が滴るようなトロマグロ・スシ。儀杜は、一度に一つ食べた
(,,゚〜゚)「ふぉんふぉふぉんふぉんふぉふぉおふぉふぉ。ふぉうふぉうふぉ」
(;'A`)「食ってから喋れ」
606
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/01/05(日) 18:29:58 ID:xsbgfEYE0
(,,゚-゚)「ングッ、図々しく人の家に上がってはプライバシーを根掘り葉掘り聞いてくるクソ女」
(;'A`)「怖っ……めちゃくちゃ言うじゃん……」
(,,゚-゚)「人の触れられたくない所を無遠慮に抉ってくる奴なんて好きになれるわけなくない?先生は甘いから好き勝手させてるけどさぁ」
(;'A`)「ああ……まぁ……」
『今お前そういう奴が出した金で飯食ってるけど』とは言わなかった
(,,゚-゚)「アレの正体が知りたかったら、チャリオッツ関係の記事を読めばわかるよ。興味あればだけどね」
('A`)「……」
まさかと思い、小っ恥ずかしくてロクに読んでないゲーセン時の記事を検索する
確認すべきは中身ではなく、記事を書いた『記者』の名前。予想通り、文末に『青葉 青花』と名前が記されていた
('A`)「なるほどね……」
(,,゚-゚)「気をつけた方がいいよ。良いも悪いも全部記事にされるから。特に『お友達』は口が軽そうだし」
(;'A`)「肝に銘じておくよ……」
607
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/01/05(日) 18:30:44 ID:xsbgfEYE0
('A`)「それよりお前、どうして気にかけてくれたんだ?」
(,,゚-゚)「んー?」
('A`)「ここに来た当初は歓迎されてねえようだったからよ」
(,,゚-゚)「野暮だね」
('A`)「理由のない善意は信用しないタチでね」
(,,゚-゚)「ふぅん。まぁ、強いて言うなら、友達がお世話になってるお礼ってとこかな」
('A`)「高梨さんか」
高梨は以前ねぐらに助けられたと言っていたが、具体的な話までは聞かなかった
彼女が何に巻き込まれて、どう救われたのかは、特異な能などもたない徳雄には想像もつかないが
少なくとも、徳雄が知る今の彼女とねぐらとの良好な関係を見るに、ハッピーエンドを迎えられたのだけは察せられる
('A`)「前言撤回するわ」
(,,゚-゚)「何が?」
('A`)「俺と違って、良い人間だよオメーは」
友を想い、他者を思いやる人間の性格が『終わっている』筈がない。徳雄は珍しく素直な気持ちを吐露したが
(,,;゚-゚)「え……気持ち悪……」
('∀`)「ハハ、このクソガキが」
『思っていたほど上等な人間では無かった』儀杜には届かなかった
608
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/01/05(日) 18:31:19 ID:xsbgfEYE0
宴会は夜を通して行われ、ねぐらの灯は夜明けまで尽きることは無かった
(´;ω;`)「ダッwwwwwwwwwwwwwwwwハッハッハッハwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwチンポwwwwwwwwwwwwwww」
i!iiリ; ヮ;ノル「ヒッwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwチンwwwwwwwwwwwwチンポwwwwwwwwwwwwwwww」
(´;_ゝ;`)「アアーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!アアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」
イ从゚∀゚ノi、「アッwwwwwwwwwwwwwwハッハッハwwwwwwwwwwwww見て詩音wwwwwwwwでっかいバーコードwwwwwwwwwww」
/ ;、. /「なんぼなんwwwwwwwwwwwwwwwオッサンなんぼなんwwwwwwwwwwwwwww」
( ゚ω゚ )<ウオ……シュ……ゴポォ……マウスウォッシング……
ヽiリ,,゚ヮ゚ノi「まだいける♪まだいける♪」
そう、地獄絵図であった
(,,;゚-゚)「どうすんのこれ」
(;´・_・`)「どうすんだろうな……」
(;'A`)「……」
後に、ねぐら史上最も混沌とした宴会として長らく語り継がれる一夜であった
609
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/01/05(日) 18:36:58 ID:xsbgfEYE0
―――――
―――
―
(´・ω・`)「いやぁ、お騒がせして申し訳ない」
(;´・_・`)「ええ……まぁ……そうですね……」
たった数時間眠っただけですっかり素面に戻った本八が深々と頭を下げる。酒に溺れてチンポチンポと騒いでいたオッサンと同一人物とは思えなかった
(´・_ゝ・`)「ケータリングの撤収、終わりました。いつでも出れますよ」
(;´・_・`)「ああ……はい……」
同じく盛岡も、シャキッとした顔つきで手早く片付けを済ませていた。ケータリングサービスは、校庭を傍若無人に占拠する参羽鴉所有のオート操縦ヘリに納まっている
始めて目の当たりにする規模の移動手段に、小練は『金ってのは誰を好むのかわからん』と困惑を隠しきれなかった
( ゚ω゚ )「ウプ……リバウンド王桜木……」
(;'A`)「意味ちげえだろ」
はちきれんばかりに飯を食わされた文彦と、その豚の荷物も肩代わりして連れ添う徳雄も宿舎から現れる
徳雄は一度、名残惜しそうに宿舎を振り返り、礼をするように会釈をした
(´・_・`)「忘れもんねえか?」
( ゚ω゚ )「オヨメサン……」
(´・_・`)「寝ぼけてんのか???????」
豚は寝言を鳴いた
610
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/01/05(日) 18:38:06 ID:xsbgfEYE0
('A`)「小練さん」
(´・_・`)「おう、他の連中が見送りに来なくてすまねえな」
正午を回っても夢から醒めない女性陣に、小練は小さく溜息を吐く。徳雄は気にせず「よろしくお伝えください」と返したが、豚は露骨に残念がった
( ゚ω゚ )「ジャパンカップ……ミ……ウッ……」
(;´・_・`)「お前この後ヘリ乗って帰るんだけどいけそう???????」
約束されたオチはすぐそこまで迫っていた
(´・_・`)「文彦、帰った後も運動続けろよ。たまにはサボってもいいが、理想の実現は継続した先にしか待ってない。しっかりやれ」
( ゚ω゚ )「フゥ……ブィ、ブヒッ……ブヒッ!!」
(´・_・`)「よし」
良くなかった。この時、文彦はゲロを抑えるので精いっぱいで話を湾曲していた
【(´・_・`)「ジャパンカップを優勝したら、三人を嫁にくれてやる。しっかりやれ」】
( ゚ω゚ )そ「!!!!!!!!!!!!!!」
耳腐ってんのか?
611
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/01/05(日) 18:39:47 ID:xsbgfEYE0
(´・_・`)「徳雄」
('A`)「はい」
二人は暫く見つめ合った後、固く握手を交わした
無言の中に込められた感謝と期待は、言葉にするまでもなく互いに伝わっていた
(´・_・`)「元気でな」
('A`)「小練さんも」
短く別れを告げ、四人はヘリへと乗り込む。ローターが回り、小練は巻き上がる砂埃に目を細めた
(´・_ゝ・`)「飛ぶよ」
操縦席に座る盛岡の合図と共に、機体はゆっくりと浮かび上がる。徳雄と文彦は、窓越しから徐々に遠ざかる『ねぐら』を眺めていた
('A`)「……おい、文彦」
( ゚ω゚ )「ブヒ?」
徳雄が宿舎の職員居住区の方向を指す。そこには
(,,~-~)ノシ
イ从~ -~ノi、 zzz……
ヽiリ,,~ヮ~ノiノシ
窓辺からねぐらの三人娘が、半分眠ったままの見送りをしていた
('∀`)「ハハ……大方、ヘリの音がうるさくて起きちまったってとこか」
( ゚ω゚ )「お……」
('∀`)「文彦?」
612
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/01/05(日) 18:40:45 ID:xsbgfEYE0
<オロロロロロロロロオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオウ!!!!!!!!!!!!
<うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおやりやがったこいつ!!!!!!!!!!!
<くっっっっっっっっっっせえええええええええええええええええ!!!!!!!!!おいもう捨てようぜ!!!!!!!!
<アンドロイドだけは死守しろおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!
(;´・_・`)「あーあー……」
約束されたオチが炸裂するヘリを眩しそうに見上げながら、小練もまた名残惜しそうに手を振った
暑さがしぶとく残る八月三十一日。徳雄と文彦の、少し奇怪な夏合宿は終わりを迎えたのであった―――――
613
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/01/05(日) 18:42:06 ID:xsbgfEYE0
次回予告
(´^ω^`)「普通に最悪の締めだったな。一カ月振りにぶっ殺そうかと思ったぜ」
(;´・_ゝ・`)「本人だけの非ではないと思いますけどね……」
(´・ω・`)「それはそうと、いよいよ予選が目前に迫ったな。決めなきゃいけねえことが山積みだ」
(´・_ゝ・`)「エントリーにはチーム名が必要ですからね。候補はあるんですか?」
(´^ω^`)「そらぁもうおめえセンス爆発のチーム名が頭ん中にあるぜ!!『ゴロゴロ』だ!!」
(´・_ゝ・`)「は?」
(´^ω^`)「暗雲の到来を告げる音をそのままチーム名にしたのさ!!悪党にはピッタリの名前だろ!!」
(´・_ゝ・`)「終わってる」
(´^ω^`)「終わってないよ」
(´・_ゝ・`)「黙れクズが!!頭腐ってんのかチンカス野郎!!チーム名は二人の意見も聞いた上で決定しましょう」
(´・ω・`)「あいつらにまともなネーミングセンスがあると思うか?」
(´・_ゝ・`)「お前よりマシだろ。次回、『Desperado Chariots』第九話。『予選へ向けて』」
(´・ω・`)「俺……あいつらより酷いの……?」
(´・_ゝ・`)「ああいえ、それは蓋を開けてみない事にはどうにも言えませんが」
(´;ω;`)「オロロロローーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!プライドが著しく傷ついたよーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!!!!!!!」
(´・_ゝ・`)「泣くなよ……気持ち悪ぃ……」
614
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/01/05(日) 18:42:29 ID:xsbgfEYE0
.
615
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/01/05(日) 18:43:54 ID:xsbgfEYE0
九月中旬、ねぐらにて
i!iiリ゚ ヮ゚ノル「こんちわー」
イ从゚ -゚ノi、「あら珍しい。正面玄関から来るなんてね」
i!iiリ゚ ヮ゚ノル「オフィシャルの仕事ですからねぇ。今回はコソコソする必要はありませんから」
イ从゚ -゚ノi、「いつもその調子なら、しずくも少しは警戒を解くんじゃない?」
i!iiリ゚ ヮ゚ノル「なーんであんな嫌われてるんですかねえ?」
イ从゚ -゚ノi、「自分の胸に訊いてみたら……」
青葉は首に掛けた一眼レフを下ろし、事務室備え付けのコーヒーメーカーにポーションを差し込む
勝手知ったる振舞いに、銀は手元の小説から目を離さずに「私のも」と催促した
i!iiリ゚ ヮ゚ノル「しっかし、どういう風の吹き回しだったんですかぁ?」
イ从゚ -゚ノi、「何がよ?」
i!iiリ゚ ヮ゚ノル「あの『二人」ですよぉ。ねぐらは既に専属契約してらっしゃるじゃないですか」
銀の机にアイスコーヒーと、ガムシロップが五つ置かれる。彼女はそれを残らずグラスに注ぎ込み、ストローでかき混ぜた
イ从゚ -゚ノi、「場所の提供だけで、指導までは含まれてはいないからね。あいつが誰の面倒見ようと勝手でしょう?」
i!iiリ゚ ヮ゚ノル「にしたって、『我々』と無関係の人間を指導するとは思ってませんでしたよ。見込みがあったってことですかぁ?」
616
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/01/05(日) 18:45:15 ID:xsbgfEYE0
イ从゚ -゚ノi、「あのね」
青葉はマグカップに口を付け、思わず目を剥いた。『唇が貼り付くほど』、キンキンに冷えていたからだ
イ从゚ -゚ノi、「アンタは自分の仕事だけやってりゃいいの。私らの腹を探ろうってんなら、力づくでも追い出すわよ」
銀の指先が、マグカップから青葉へと向いた。表情こそ本から離れていなかったが、凍てつくような視線だけは青葉を射抜いていた
i!iiリ;゚ ヮ゚ノル「あはは〜、失敬失敬。職業病ですかねぇ」
イ从゚ -゚ノi、「馬鹿を治す病院でも探したらどう?」
i!iiリ;゚ ヮ゚ノル「そ、そうします。おっと!!」
外から微かなエンジン音が耳に届き、青葉はマグカップを置いてカメラを手に取る
i!iiリ;゚ ヮ゚ノル「お仕事の時間です!!それじゃ、失礼しましたぁ!!」
そして、ふざけた敬礼を残してそそくさと事務室を後にするのであった
イ从゚ -゚ノi、「ハァ……アレより、ボウヤの方がマシだったかしら……」
残暑を感じさせない程に肌寒くなった事務所の中、ボソリと独り言ちて甘ったるいアイスコーヒーを啜ったのであった
617
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/01/05(日) 18:47:29 ID:xsbgfEYE0
ねぐらでは数年前から『固定客』が付いている。チャリオッツ関連の設備は比較的最近設置された物で、本来なら一般に開放はされない
使用するにはまず、ねぐら管理人である小練ではなく、持ち主である『固定客』へ許可を貰わねばならないのだ
しかし今日まで、外部客から設備の使用許可の申請は一度もない。そもそも、ねぐらにチャリオッツ設備が置いてあることは秘匿とされているのだ
では何故、徳雄と文彦は使用できたのか。それは真っ先に本八が『固定客』へと掛け合った為である。そして、豊富な資金源と諜報力を持つ本八自身すら
i!iiリ゚ ヮ゚ノル「来た来た♪」
『固定客』へ掛け合うまで、『ねぐらを利用するプロチーム』の存在を知らなかったのである
i!iiリ゚ ヮ゚ノル「こんちわ!!」
(,,゚-゚)「うわ……」
校庭に停まったバスから、真っ先に降りた儀杜に愛想を振りまくが、返って来たのは露骨に嫌そうな表情
小さな前座を大して気にせず、続き降り立って来る利用者へ挨拶と共にシャッターを切る
晴天のように明るく振舞う青葉とは裏腹に、出てくる者は皆、まるでこれから戦地にでも赴くかのように固く緊張した面持ちであった
最後に、運転手である小練を残して降りてきた『三名』を除いて、だが
i!iiリ゚ ヮ゚ノル「どもども恐縮ですぅ!!今回の密着取材を担当します青葉 青花です!!早速一言お願いします!!」
三名は、答えることなく無言で宿舎へと向かう。ほぼ専属と言っていいほど取材をしてきた青葉であるが、彼らはどの記者に対しても一貫してこの態度であった
618
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/01/05(日) 18:49:46 ID:xsbgfEYE0
i!iiリ゚ ヮ゚ノル「いやぁ、相変わらずかっこいいですねぇ」
青葉は一つも堪えた様子もなく、後ろ姿へシャッターを切る。そこに、バスのエンジンを切った小練も降り立った
(´・_・`)「見習いてえよ。お前のその無神経さ」
i!iiリ゚ ヮ゚ノル「宜しければ爪の垢でも差し上げましょうか?」
(´・_・`)「今は結構」
i!iiリ゚ ヮ゚ノル「いやぁしかし、小練先生も人が悪い」
(´・_・`)「あ?」
青葉はカメラを降ろすと、グリンと首を捻って小練の顔を覗き込んだ
i!iiリ゚ ヮ゚ノル「『トップ・ギア専属合宿場』の主でありながら、余所のチームの指導もするなんて、浮気性も良い所ですよ」
腹の奥底を見透かさんと、クレバスの底のように黒く沈んだ眼に深く覗かれるが、小練はなんてことない様にフンと鼻を鳴らした
(´・_・`)「知るかよ。こっちは商売でやってんだ。浮気もクソもあるか」
i!iiリ゚ ヮ゚ノル「おやおや、薄情なことで」
いつもと同じく揺さぶりが通用しないと確認すると、青葉は肩をすかせて踵を返した
619
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/01/05(日) 18:50:18 ID:xsbgfEYE0
i!iiリ゚ ヮ゚ノル「それじゃあ、間近でたっ〜ぷり堪能させて貰いましょうかね。トップ・ギア歴代最強チーム、『クワイエット』を」
.
620
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/01/05(日) 18:53:13 ID:xsbgfEYE0
終わりです。お疲れ様でした
豚が変な所に拉致されたせいで一年半も更新が空きました
621
:
名無しさん
:2025/01/05(日) 21:43:17 ID:c9wCR5.U0
ずっと待ってた乙!めちゃ面白かった!
622
:
名無しさん
:2025/01/06(月) 08:33:53 ID:iI9Lsz4E0
あんたの新作をずっと待ってたんだよ!!!
623
:
名無しさん
:2025/01/06(月) 20:29:23 ID:zmyWV4ZA0
おつ!待ってた!
正直あっちの話はよくわからなかったからこっちの更新お願いします!!
624
:
名無しさん
:2025/01/08(水) 00:08:36 ID:760aWHQU0
乙!ハイカロリーなストーリー!最高やで!!第9話も待ち遠しいで!!
625
:
名無しさん
:2025/02/03(月) 00:10:34 ID:VsPa/Dk20
やっと続きが読めたぜ!!!!
裏の話もこっちの話も面白かった!!!!
9話も楽しみに待ってる!!!!!
626
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/05/01(木) 22:25:44 ID:iz.ZN/1Y0
(´・ω・`)「いい天気だな」
(´・_ゝ・`)「……」
車のフロントガラスから覗く空は、陽の光を遮る分厚く黒い雲に覆われており
雨こそ降ってはいないが、時折遠くから『ゴロゴロ』と雷の唸り声が聞こえてくる
世界の終わりを感じさせるような天候を、本八は昔から『良い天気』と呼んだ
(´・_ゝ・`)「そうですね」
雷雨降り注ぐ悪天候ではなく、あくまでも『曇天』が、彼好みの空模様
盛岡は出会って間もない学生時代、本八にそのワケを訊いた事があった
(´ ω `)「『デカくて、黒くて、恐ぇからだ』」
目にしたものが畏怖し、嫌悪し、身構える。最も身近で、分かりやすい『予兆のシンボル』
彼が好んだのは、災い『そのもの』ではなく、災いから連想する『不吉なイメージ』の方だった
『一目置く』という慣用句があるが、何も優秀な者だけに対して使われるわけではない
身震いするような『恐ろしい存在』もまた、人智を超える強大な力を秘めているのだから
出会ってから二十年以上経った今でも、本八は『黒い雲』に心を奪われたままなのだ
(´・_ゝ・`)「……」
だからと言って、『ゴロゴロ』とかいうクソダサいチーム名を容認するわけにはいかなかった
627
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/05/01(木) 22:26:15 ID:iz.ZN/1Y0
第八話
『予選へ向けて』
.
628
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/05/01(木) 22:27:30 ID:iz.ZN/1Y0
('A`)「ひでえ空模様っすね」
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「こりゃ今日は閑古鳥が鳴くな」
徳雄が勤務する参羽鴉グループの茶房『OHANAMI』店舗では、顔面崩壊組の二人が取り留めのない会話をしながら開店準備を進めていた
デジタル化社会と言えども、御足労頂く必要がある飲食サービス業は、大なり小なり天候で売上が左右される
嵐がそこまで迫っていて、お友達とお茶をしようとする命知らずはごく少数だろう
徳雄が勤務するOHANAMIも、今日ばかりはバイトを休ませ、店長である榊原と2オペで回す運びとなった。接客業にあるまじき顔面土砂崩れコンビである。この店潰れるんとちゃうんか?
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「暇な内に出来ることやっとくかぁ〜……」
とは言え、雇われの身には気楽な一日となるのは目に見えていた。客が来ようと来なかろうと給与は支給されるのだ
根が真面目で真摯に仕事へ向き合う徳雄も、緊張感のある空模様とは裏腹に、少しだけ気を抜かして業務に取り組んでいた
('A`)「お……?」
それ故に、営業開始前に鳴ったドアベルの音色に面食らってしまう
この悪天候である。開店前と言えども店先で待たしては何が起こるかわからない。足早く対応に向かうとそこには
(´^ω^`)「精を出せ!!!!!!!!!!!!」
雷に打たれて死んでも一向に構わないゴミカスのツラがあった
('A`)「塩持ってくるわ」
(´^ω^`)「雇い主追い払おうとすんな」
629
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/05/01(木) 22:29:14 ID:iz.ZN/1Y0
黒雲はついに豪雨と雷を、存分に下界へと吐き散らかし始める
厳かな店内BGMも、時折けたたましく鳴り響く雷鳴によって遮られた。そんな中
('A`)「そんで……」
小上がりの長机に六つの湯呑を並べた徳雄は、テーブル席の椅子を引き寄せて着席する。揃いたるは
(´・ω・`)
(´・_ゝ・`)
本八、盛岡のオッサン組
⌒*リ;´・-・リ
(;@з@)
高梨、木本の合宿応援組
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ
顔面パズル
(; ω )
豚
といった、いつもの面子であった
630
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/05/01(木) 22:31:24 ID:iz.ZN/1Y0
('A`)「今日は何の集まりだ?」
(´・ω・`)「仕事の話でこのウルトラ役立たずのクソオタクデブを同席させると思うのか?ちょっとは頭使えよ」
('A`)「俺らは勤務時間中だっつの」
(´・_ゝ・`)「すまないね。全員揃って集まれる機会も中々無いもんで」
確かに、合宿を終えて一週間ほど経ったが、いまだに合同練習を行えていない
贅沢に時間を使えた夏の期間とは違い、秋が訪れればそれぞれの仕事や学業が待っている。本八はそのスケジュール調整に少しの時間を要求した
(´・ω・`)「この天気だ。客も来ねえだろうよ。榊原、今日は貸切ってことにしちまえ。利用料は払う」
|;;;;|;,'っノVi ,ココつ「わ、わかりました。暖簾下ろしてきます」
('A`)「木本と高梨さんはどうして?」
⌒*リ;´=-=リ 「社長さん達が急に迎えに来て説明も無いままここに……時間外手当出すって事しか聞かされて無いです」
(;@з@)「拙者も同じく。そもそも、社員ではござらぬぞ」
(´^ω^`)「俺らチームじゃん!!!!!!!!!!!!」
(;'A`)「あのなぁ……」
従業員とオタクである。職権濫用も甚だしかった
631
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/05/01(木) 22:34:48 ID:iz.ZN/1Y0
(´・_ゝ・`)「あながち無関係でもないよ。これから練習の関係上、徳雄くんのシフトは不規則になるからね。大会まで、榊原くんと高梨さんにはサポートを頼みたいんだ」
(´・ω・`)「バイトもこの一夏で精鋭になるまで育成したからな。仕事に関しちゃ何の憂いもねえよ」
('A`)「手厚いこって……」
合宿で不在だった一カ月、なんと社長直々にヘルプに入っていたと聞いている。暇なん?
職場復帰時の店長の顔面ときたら、安堵と解放感で逆に整っていたのだ。どのような『育成』をしていたのか、想像に難く無い
('A`)「すみません高梨さん。面倒をかけます」
⌒*リ;´・-・リ 「いえいえ!!乗り掛かった船ですし、私も出来る限り応援しますよ!!」
(´^ω^`)「時間外手当!!!!!!!!!!!!!!」
⌒*リ;´・-・リ 「社長さんもこう仰ってますんで」
深々と頭を下げた徳雄に、高梨は慌てた様子で両手を振った
徳雄は彼女や木本のような善い人間が本八のようなクズに良いように扱われる世の中は間違っていると、危うく義憤に駆られてぶっ殺しそうになった
(´・ω・`)「王太郎にはデ・ブ・の・面・倒!!!!!!!!!!と、車体構築や有力候補チームの情報収集に力を貸して貰いたい。豚のお世話に一番慣れてるからな」
(;@з@)「はぁ……微力ではありますが、お力添えになれるなら幸いにござる」
(´^ω^`)「ぬぅん!!!!!!!時間外手当ーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!」
(;@з@)「金で何でも解決出来ると思ったら大間違いですぞ!!!!!!!!」
オタク・正論パンチが出た
632
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/05/01(木) 22:35:34 ID:iz.ZN/1Y0
('A`)「文彦は……」
(; ω )「」
静かで大変結構だが、不気味なほどにグロッキーだった。しかし、顔色が悪いわけではなく、単純な疲労の蓄積に見えた
('A`)「夜ふかしでもしたのか?」
(; ω )「お姉ちゃんが……」
('A`)「は?」
(;@з@)「ダイエットは順調のようでござるな」
(´^ω^`)「小練の先生様様だぜ」
('A`)「は???????」
全くもって意味不明だった
633
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/05/01(木) 22:37:19 ID:iz.ZN/1Y0
(´・ω・`)「まぁそれは後で説明……豚なんてどうでもいいか。とにかく、残り二ヶ月は計画的に行くぞ。合同練習日及びミーティングのスケジュールだ。全員目を通しておけ」
それぞれのi-ringに転送されたスケジュール表を確認する。合同練習は火、木と土日祝
平日は19時から21時まで。土日は9時から12時。二時間の昼休憩を挟んで14時から17時
これは学生である文彦の生活スケジュールに合わせてあった。不登校とは言え、授業はリモートで受けている為だ
『まるで部活動だな』と、徳雄は高校時代、親友と過ごした二年と半年を懐かしんだ
|;;;;|;,'っノVi ,ココつ「お待たせいたしました……」
榊原はおずおずと、団子が乗った大皿を手に戻ってくる
(´^ω^`)「気が利くじゃねえか榊原ァーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!!!」
|;;;;|;,'っノVi ,ココつそ「ヒエッ!?恐れ入ります!!」
('A`)「なんで叫ぶ」
(´・_ゝ・`)「榊原くんも確認してくれ。前々から相談していた通り、徳雄くんは年始まで土日祝はシフトに入れない」
|;;;;|;,'っノVi ,ココつ「あっはい、問題ないです」
('A`)「こういうのってまず本人に話通すと思うんすけど」
これまでの強引なやり方よりだいぶマシで麻痺していたが、承諾無しに勝手に話を進めるのも社会人的に相当アレであった
634
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/05/01(木) 22:38:40 ID:iz.ZN/1Y0
(´・ω・`)「肉体トレーニングに関しては、お前は自分の裁量で取り組め。小練先生の下で学んだ事を無碍にするような真似すんじゃねえぞ」
('A`)「言われるまでもねえよ」
(´・ω・`)「夏前は言ってもわかんなかったから小練先生に預けたんだが????????????????????」
ブスは黙った
(´・ω・`)「ゴミ人間が!!あと日曜午後はジムトレーナーとの面談とマッサージを受けてもらう。連絡先も送っとくから身体に異変があるようならすぐに相談しろ」
チャリオッツに置ける『アスリート』の部分を担う徳雄が本番までに最も忌避しなければならないのが『怪我』である
ゲーム理解、技術の取得、スタミナの強化を差し置いても、まずは身体のケアを最優先に置く。これは小練からの師事でもあり、本八が前々から危惧していたリスクでもあった
('A`)「はぁ……了解……」
その自覚が無く、これまで向こう見ずに無茶なトレーニングをした過去
ポーカーブサフェイスに努めてはいるが、自覚後は恥ずかしくて堪らなかった
(´・ω・`)「担当は九十九トレーナーだ。トレーニングメニューは俺と彼に共有するように。何を主体に鍛えるつもりだ?」
('A`)「水泳による全身運動。筋トレは現状維持程度に留める」
(´・ω・`)「少しはマシなオツムになったようで安心したよ」
('A`)「お陰さんでな。クソ野郎」
とてもじゃないが、チームメイトとは思えない殺伐としたやり取りに、盛岡を除くサポーター達は喉を鳴らした
635
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/05/01(木) 22:40:30 ID:iz.ZN/1Y0
(´・ω・`)「それでは、ジャパンカップについての説明に移ろうか。デミー頼む」
(´・_ゝ・`)「はい」
張り詰めた緊張感など物ともせず、加齢臭共は粛々と会議を進行する
盛岡はi-ringのOfficeアプリを立ち上げ、壁へと投影。本日からジャパンカップまでのスケジュール表が映し出さた
(´・_ゝ・`)「予選は11月から、各土日祝を使って開催される。参加チームは6ブロックに分けられ、それぞれ3チームが決勝に進出できる」
(´・_ゝ・`)「去年の参加数を例にすれば、1ブロックあたり凡そ5000チーム。それを18チーム毎に分けて勝ち抜き戦を行なっていく」
|;;;;|;,'っノVi ,ココつ「こうして見るとめちゃくちゃ多いよな……」
⌒*リ´・-・リ 「これって一斉に行われるワケじゃないんですよね?」
(´・_ゝ・`)「当然、各ブロック毎に週替わりで開催されるよ。それに、全国のチャリオッツ施設を全て予選の為に回すから、最寄りから参加出来るんだ」
('A`)「オンラインって事っすか?」
(´・_ゝ・`)「その通り。予選は通常のプレイと同じような感覚で行えるはずだよ」
636
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/05/01(木) 22:42:04 ID:iz.ZN/1Y0
('A`)「ブロックに地区は関係あるんすか?」
(´・ω・`)「オンラインっつったろ。全国どこでもリアルタイムで対戦が行えるってのに、わざわざ地方で分ける必要があるか?」
('A`)「それも……そうか」
(´・_ゝ・`)「話を戻すよ。予選は最大で三回戦まで行われる。一、二回戦は上位2チームまでが通過し、三回戦では上位3チームが決勝に進出する」
('A`)「えーと、つまり……」
(;@з@)「5000を18で割るとおよそ277試合。勝ち抜け出来るのは二位まででござるから、ここで556チームまで絞られるであります」
('A`)「おお、結構ガッツリいくな……て事は、二回戦終了時で大体60チームが残るのか」
(;@з@)「三回戦は残った全チームによるレース、あるいはバトロワで、上位3チームを決めるのでござる」
(;'A`)「そんな規模のゲームもあるんだな……」
(´・ω・`)「大会限定だがな。通常プレイなら最大で36チームだ」
637
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/05/01(木) 22:45:05 ID:iz.ZN/1Y0
('A`)「それで、予選のルールは?」
(´・_ゝ・`)「数が数だからね。チャリオッツ黎明期は4、5ステージのレースもやってたみたいだけど、一回戦はショートコースで手早く振いにかけてるよ」
('A`)「それだと、ラビット有利になるんじゃねっすか?」
(´・ω・`)「レースかバトロワかは開始直前になるまでわかんねえ。この辺りは運も絡むだろうな」
(´・_ゝ・`)「バトロワルールだと、ステージが狭くなるんだ。本来、時間経過と共に行動可能範囲を狭めていくものだけど、これも回転数を意識して短時間で終わるようにしている。二回戦からステージのボリュームは増えるよ」
軽装甲で先行策に特化したラビットタイプは、走行距離が短くなればなるほど有利となる
しかしその反面、勝利条件が『ラスト・ワン』に限られるバトロワルールの場合、その軽装甲が仇となる
ラビットと対極に位置する『タートル』ならば、これと真反対の相性となる
ジャパンカップは長距離レースのグランプリだ。『蠱毒』のようなバトロワルール大会とは違い、走行と攻撃の『総合力』が求められる
上記二つの要素に加え、望むルールを掴む『ツキ』を持つ強豪だけが、本戦へと駒を進められるのだ
638
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/05/01(木) 22:47:30 ID:iz.ZN/1Y0
('A`)「となると、本戦は必然的にオーソドックス寄りの『ホース』『バッファロー』が多くなるのか」
(´・ω・`)「狩りする『兎』もいりゃ、走れる『亀』もいる。その考えはチャリオッツを甘く見過ぎだルーキー」
ジャパンカップはプロアマ混合の大会であるが、やはりプロチームの決勝進出率は段違いに高い
とりわけ、プロ団体の中でもジャパンカップ常連ともなれば、看板を背負っているにも等しい
高いプライドと、それに比例する高い実力は、ルール不利程度の小石に躓くようなものでは無かった
(´・_ゝ・`)「三回戦は木本くんも言った通り、残ったチームで大規模なゲームを行い、上位3チームが決勝進出を獲得する。レースにせよバトロワにせよ、最大規模のステージで行われる。長丁場は必至だね」
('A`)「少なくとも、本戦出場18チーム中、2チームとはここで顔見知りになるってワケだ」
(´・ω・`)「この予選三回戦で気をつけなきゃならねえことがある」
('A`)「なんだ?特殊ルールでもあんのか?」
(´・ω・`)「『チーミング』だよ」
ソロプレイ前提の対戦ゲームで、複数人が結託してゲームを有利に運ぶ行為を『チーミング』と呼ぶ
デジタルゲームに限らず、麻雀やカードなどのアナログボードゲームでも『イカサマ』に該当する行為だが、チャリオッツに置いては線引きが曖昧である
例えば、利害一致による『一時的な共闘』は黙認されているが、特定のチームを最後まで援護し、勝利に貢献する所謂『キャリー行為』については禁止とされている
しかし、どこまでが共闘でどこからがキャリーであるかは、AIと公認レフェリーによるジャッジに委ねられており、反則スレスレのグレーなチーミングは後を絶たない
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◆L6OaR8HKlk
:2025/05/01(木) 22:49:29 ID:iz.ZN/1Y0
(´・ω・`)「勝ち上がっていく度に、同じプロ団体のチームがマッチングする確率も上がるからな。有力候補をそれとなく援護して名を挙げようと目論む中堅プロ団体は少なくねえよ」
(;@з@)「過去には、あの最古にして最強のプロ団体『トップ・ギア』のチームも、チーミングギリギリのプレイをしていた例もありますぞ」
('A`)「プライドがお高いこって」
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「それって失格になったりしないんですか?流石に露骨過ぎるんじゃ……」
(´・ω・`)「別につきっきりで介護する必要はねえんだよ。ある程度目星をつけたチームを徹底的にマークするだけでも、どえれえ援護になるんだからな。それに、必ずしも同じプロ団体だけがチーミングに加担するワケじゃねえ」
|;;;;|;,'っノVi ,ココつ「ど、どういう事ですか?」
(´・ω・`)「そもそも、十数年前から対策の一環として『同団体から出場できるのは3チームのみ』という大会ルールが課せられたんだ。表面上はチーミングが減ったかに見えたが……」
('A`)「擬態する連中が増えた、か?」
(´・ω・`)「その通りだ。名が知られてない下部団体や、プロ候補生で構成されたチームを送り込む所は少なくねえ。兇弾しようにも、上手いこと隠蔽されててな。ネットじゃ荒れる話題一位の問題だよ」
⌒*リ;´・-・リ 「それなら、尚更問題解決の手立てを講じるべきなんじゃ……」
(´・ω・`)「それはそうなんだがな。さっき榊原が言ったように、露骨であればあるほど、そのプロ団体は立場を失うってこったよ」
640
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/05/01(木) 22:52:19 ID:iz.ZN/1Y0
個人で行うゲームならいざ知らず、ジャパンカップほどの大規模な大会になると、予選であれ多くの大衆の目が向けられる
高い実力を認められた『プロ』には面目があり、それをプレイで丸潰しするわけにはいかない
ましてや『チーミング』などと言った卑怯極まりない行為など以ての外である
(´・ω・`)「プロってのはスポンサーがいてナンボだからな。衆目環視の中でズルがバレた日にゃ、干されるのは目に見えてる」
('A`)「裏を返せば、『観客にすら気づかせないほど、イカサマに長けてる連中』がいるかもしれねえってことか?」
(´・ω・`)「その通りだ。王太郎、対策はあるか?」
(;@з@)そ「えっ!?あ、ええと……そうですな。そもそも、大潮氏のチームは無名でござる故、プロ団体にマークされる可能性は低いと思いますぞ」
(´・ω・`)「そうだな」
(;@з@)「その上で対策を講じるのであれば……ううむ、やはり目立たないのが一番手っ取り早いと思いますぞ。レースにせよバトロワにせよ、『キル数』は勝利条件ではござらん故」
レースなら先着、バトロワなら『生存』が勝利条件となる。チャリオッツにおける攻撃はあくまでも障害の排除及び撃退の手段であり、必ず達成しなければならない要素ではない
目立つ行為は控え、接敵を避け、隠密を基本としたゲーム運びを行う。考えうる中で、真っ先に行き着く作戦である
(´・ω・`)「徳雄、どうだ?」
('A`)「同意しかねる」
しかし、徳雄は別の観点から対策を考えていた
641
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/05/01(木) 22:53:43 ID:iz.ZN/1Y0
(;@з@)「何故ですかな?」
('A`)「もっと手っ取り早い方法があるからだ。皆殺しにすればいい」
⌒*リ;´・-・リ 「それだと更にマークが強くなるんじゃ……」
('A`)「半端にやればそうでしょうね。ですが、徹底的に叩けば『避けるようになる』んすよ」
本八は喉奥で面白げにクツクツと笑って団子に手を伸ばした
(´^ω^`)「やっぱ喧嘩慣れしてる奴ァ、理解が早ぇな」
『クワイエット』や『バジリスク』といった、ジャパンカップ常連が難なく決勝進出が出来るのは、多少の妨害など物ともしない高い実力があるからだ
そもそも、衆目環視の前で出来る妨害には限度があり、そもそもの頭数も三回戦まで残っているか怪しい
決勝進出は上位三組以内に入れば良い。限られたリソースを使うなら、より『蹴落としやすい所』に注ぎ込むべきなのだ
642
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/05/01(木) 22:56:31 ID:iz.ZN/1Y0
('A`)「文彦の射撃スキルと『スピンミキサー』の組み合わせは、一対多でこそ最大の効力を発揮する。もしバトロワルールで三回戦を迎えたのなら、出し惜しみせず殺し尽くすべきってのが俺の見解かな」
(;@з@)「うむむ……一理ありますが、ジョッキーたる徳雄氏のスタミナも考慮すべきではござらんか?」
('A`)「ま、それは今、考えることじゃねえ。とにかく、『そういうこともある』ってのは頭に入れたよ」
徳雄は話を切り上げつつも、予選三回戦の懸念は『避けては通れないもの』であると認識していた
本八はクズであるが、先見の明がある男だ。無視できるような些細な脅威であるなら、わざわざ口に出しはしない
そもそも、此方は『元プロ』だった文彦を、ひいては『6shooter』という象徴的なリボルバー砲を抱えているのだ。プロチームには及ばないものの、アマチュアの中では悪目立ちする部類に入るだろう
('A`)(つまり、暗に『備えろ』と伝えたかったワケか)
夏合宿を終え、チャリオッツ選手としての実力は目に見えて上がった。しかしそれを周りに公言した所で、プロの威光を得られるはずも無い
決勝までに相見える対戦チームは、プロアマ問わず日本一の栄冠を狙う強豪達だ。これからどう足掻こうとも、ぽっと出のチームなど見くびられるのは目に見えている
徳雄のやり方は口で言うのは簡単ではあるが、たったの『一試合』で並み居る相手チームを理解らせねばならないのだ
('∀`)(愉しみだ)
そしてそれは、徳雄が最も得意とする事であった
643
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/05/01(木) 23:00:41 ID:iz.ZN/1Y0
(´・_ゝ・`)「それでは、予選突破後のスケジュールに移るよ」
決勝戦は12月31日の大晦日だが、開催までの期間中に関連イベントに参加しなければならない
11月末から広報の為の撮影に参加。メディアの注目度によっては、雑誌やテレビ、ネット配信の取材にも応じる必要がある
決勝戦の一週間前には大会に関する説明会と記者会見に参加。その後は運営主催の立食パーティーにて対戦チームとの顔合わせがある
前日の30日には会場近くのホテルへと赴き、21時から翌朝まで指定された客室にて待機を命じられる
ここまで説明を受けた徳雄の表情は、先ほどとは打って変わって
(;'A`)「だっっっっっっっっっっっっる……」
死ぬほどめんどくさそうだった
644
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/05/01(木) 23:04:22 ID:iz.ZN/1Y0
(´・_ゝ・`)「ボスが悪い意味、いや最悪な意味で知名度が高いから、取材機会は結構多いと思うよ。ただ、全て受ける必要は無いから断ってくれて構わない。どうせ全部コレが引き受ける」
(´^ω^`)「おお!!!!!!!!クソほど荒らしたらぁ!!!!!!!!!」
(;'A`)「よくそれで経営が務まるな……まぁ、そうしてくれると助かるが……」
⌒*リ´・-・リ 「クワイエットみたく顔を隠してみるのはどうですか?」
(´・ω・`)「蟒蛇との一件でツラが割れてっからな。下手に隠しても面倒事が増えるだけだ」
('A`)「想像はつくな……」
(;@з@)「文彦氏は?」
(´・_ゝ・`)「ぜっっっっっっっっっっっっっっっっっっっったいに受けさせねえよ?」
(´・ω・`)「こういうガキが一番メディアに出しちゃいけねえだろ」
木本は親友への信頼の無さに何か言い返そうとしたものの、反論の余地が全く無かった
|;;;;|;,'っノVi ,ココつ「従業員が出場するとなると、この店にも注目が集まるのでは?その場合の対応はどうすればいいのでしょうか?」
(´・_ゝ・`)「うーん、徳雄くんには出来る限り裏方に回って貰おう。よしんばパパラッチや迷惑系配信者のような連中が出てきたんなら、金と権力の出番だ」
(´^ω^`)「一族揃って路頭に迷わすぞーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」
⌒*リ;´・-・リ 「そんな邪悪の宣言あります??????」
('A`)「ああ……そうか、そう来る可能性も……」
⌒*リ´・-・リ 「え?何か気になることでも?」
('A`)「いえ、個人的な都合なんで」
徳雄の『個人的な都合』により、OHANAMIは一時的な危機を迎えるのだが、それはまた別の話であった
645
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/05/01(木) 23:09:57 ID:iz.ZN/1Y0
(´・_ゝ・`)「ま、軽く説明はしたけど、結局は予選突破しないと発生しない面倒だから、みんな心構えだけしておいてほしい。此方も営業に差し障るような問題は、優先して解決するようにするよ」
(´・ω・`)「予選突破は確定だが????????」
(´・_ゝ・`)「そうですか。では、続いて本戦について説明するよ」
ジャパンカップ本戦は4〜5ステージを走り抜くサバイバルレース戦であり、走行距離は120〜160kmである
一般のアーケードプレイの平均距離が20kmほど。長距離のレースを行う際は、筐体の貸切予約をしなければならない
実在のレースと比較対象に挙げると、世界最高峰のロードレース『ツール・ド・フランス』の一日の走行距離は200km。これを四時間程度で走り抜く
一見、短い距離のように思えるが、チャリオッツにおいては路面状況の極端な変化と、相手チームやNPCの妨害がある為、長丁場になるケースが多い
車速は一般的なロードバイクよりも速めに設定されているが、これらは現実のロードレースを遥かに凌ぐ過酷さの要因となっている
('A`)「ステージ数によって距離が異なるんすか?」
(´・_ゝ・`)「ステージ数よりコース距離が影響してくるかな。ショート、ミドル、ロングコースがどれくらい割合で配置されているかによるね」
(´^ω^`)「5ステージ全部ロングコースだった時は傑作だったな!!決着と初日の出が同時だったんだぜ!!」
(;'A`)「何時間走らせんだよ……」
(;@з@)「『サンライトの夜明け』でござるな。チャリオッツ史に語り継がれる伝説の一つでござる」
ドーハの悲劇とかそんな感じのやつがチャリオッツにもあった
646
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/05/01(木) 23:10:59 ID:iz.ZN/1Y0
(´・_ゝ・`)「そこまで極端なのは流石に無いと思うけど、ここ数年は4ステが続いていたから、そろそろ5ステージになるかもね」
('A`)「それっていつ頃わかるんすか?」
(´・_ゝ・`)「一週間前に公式発表される。記者会見と同じタイミングだね」
('A`)「それだと体力方面は打つ手がなさそうっすね……」
⌒*リ´・-・リ 「どっちが好都合なんですか?」
(´・ω・`)「作戦によるな。ステージが一つ増えるってことは、『ショップ』の使用機会と『トレジャー』の獲得チャンスが一つ増えるってこった」
(;@з@)「チャリオッツの基本戦術四種の他に、アイテムで立ち回る『ドラキャット』がいるでござる。そういうチームにとっては少々有利でありますな」
⌒*リ´・-・リ 「ドラ猫?」
(;@з@)「国民的アニメから着想を得ておりますぞ」
⌒*リ;´・-・リ 「ああ、猫型ロボットからなんだ……」
647
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/05/01(木) 23:14:31 ID:iz.ZN/1Y0
(´・ω・`)「だがまぁ、キャットに限らず、アイテムはどのチームも使うからな。観客ウケも考慮すりゃ5ステージの方が盛り上がるだろうよ」
('A`)「逆に4ステだと、フィジカルがある方が有利なのか?」
(´・ω・`)「距離による。逃げに振り切ったゴリゴリのラビットなら、誰にも捕まらず一位って例もなくは無い」
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「NOOD(ノード)が一度それで優勝しましたよね?」
(´・ω・`)「ありゃマッチング運も絡んだがな。今の有力チームが台頭する前だったし」
('A`)「ノード?」
(´・ω・`)「日本で一番有名なラビットチームだよ。正式名称は『ネイキッド・オッキイ・オッパイ・ダイスキー』だ」
('A`)「は?」
(´・ω・`)「そういう名前のチームがマジで居るんだよ拳を握んな」
(´・_ゝ・`)「メディアだと略されてNOODと表記されるんだ」
('A`)「なんでその名前が通ったんだよ……」
(´^ω^`)「マn(´・_ゝ・`)「殺すぞ」なんでもない」
安定のチンポクズであった
648
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/05/01(木) 23:16:32 ID:iz.ZN/1Y0
(´・ω・`)「っつっても、逃げ切り勝ちはめちゃくちゃに運が絡む。コース距離や路面状況、NPCとの遭遇率が噛み合いに噛み合って初めて達成される勝利だ。放っといても自滅する方が多い」
(;@з@)「所謂、『ロマン勝ち』ですな。しかし目を惹く分、大逃げのチームには固定ファンも多いでござる」
('A`)「博打戦法か。好かねえな」
(´・ω・`)「まとめると、ステージ数による有利不利は、よほど極端じゃ無い限り影響を及ぼさねえってこった」
(´・_ゝ・`)「車体構築や戦術についても、尖らせるより『丸く』した方が無難かな。最も、文彦くんがいるだけで、尖らせる他ないんだけどね」
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「このデブ、そんなに扱いづらいのか?」
('A`)「どうっすかね。俺は文彦としか組んでねえから、比べられねっす」
(´・ω・`)「それで良い。初心者ってのは刷り込みがし易いのが一番の利点だ。下手に齧ってっと制約が多すぎて不満が募る。才能だけはあったデブが蟒蛇でやってけなかった一因だろうな」
旋回性能を持つ主砲に慣れ親しんだ者にとって、『固定砲』の運用はこれまでの定石をひっくり返すほどの操縦技術を要求される
蟒蛇にも腕利のジョッキーは数多く在籍していたが、その殆どが固定砲の扱いに精通していなかった
対し、徳雄はロードバイクの経験こそあれど、チャリオッツに関しては全くの未経験者である
言わば、何物にも染まっていない『下地』の状態であり、『文彦専属機』として作り上げるにはうってつけの人材であった
(´・ω・`)「まぁ……素行と性格が原因の大半を占めてんだろうが……」
とは言え、文彦自身が謙虚で協力的で好印象で肥っておらず社交的でかつ臭いオタクでなければ、古巣で幾らでも日の目を浴びる機会はあった筈である
(; ω )「うーんうーん……」
性格がゴミカスが故に招いた事態である。悔い改めろや
649
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/05/01(木) 23:22:06 ID:iz.ZN/1Y0
(´・ω・`)「予選突破から本番までに必要な準備と対策は、ステージよりも参戦チームの情報収集が要になるだろうな。王太郎、お前ならどう進める?」
(;@з@)「ふむ……拙者ならまず参戦チームの実績をザッと洗いますな。獲得タイトルだけでも、そのチームが何を得意としているかが見えてくるでござる」
(;@з@)「極端な例だと、蟒蛇はバトロワルールが得意。先ほど挙げられたNOODなら、短距離のスプリント戦の勝率が抜群に高い。これだけでも、取れる対策はいくつか考えつきますぞ」
('A`)「個々に対策を講じるってことか?本戦は17チームが相手なんだろ?間に合わねえんじゃねえの?」
(;@з@)「別に全てにおいてガッチガチの対策を取る必要はござらん。例えばNOODであれば、スピード重視故に、装甲と火力を限界まで削っておられる。つまり、撃破される心配はほぼ無いに等しいでありますぞ」
⌒*リ´・-・リ 「でも、火力は無いと言ってもアイテムとかで対抗されるんじゃないの?」
(;@з@)「それは先ほど大潮氏が仰ったように、どのチームにも言えることで対策の重要度を左右する要素ではござらん。そこで次に調べるべき点は、『生存率』でござる。宇都宮氏、何故だかわかりますかな?」
('A`)「えーと……終盤になるにつれ、生き残ってるチームとかち合う可能性が高くなるから、か?」
(;@з@)「ご名答でござる。チャリオッツのコースは、ステージが進むにつれて竜頭蛇尾となっていくでござる。レースを進めるにつれ、おのずとマッチする相手というのは絞られるでござる」
(´・ω・`)「『クワイエット』『バジリスク』は、ほぼ確実として……『SASUGA×FAMILY』『パーダラ・ブギ』『A to Z』あたりは固いだろうな」
(;@з@)「ここで実績の話に戻るでござる。終盤まで生き残る地力があるチームは、フィニッシャーに繋がる行動が読みやすいのでござる。大会によって変えてくることも多いでござるが、過去のデータからある程度の傾向は見て取れますぞ」
('A`)「なるほどな……傾向が見て取れりゃ、対策もしやすいと」
合宿の総まとめとして挑んだラストゲーム。記憶に新しい敗北を思い返す
限界超えのラストスパート。最後の一車両に王手をかけた瞬間、『ショット・パージ』というアビリティによって惜敗を喫した
『既知』と『無知』では、埋め難い大きな溝がある。これは徳雄が夏に得た収穫の一つであった
650
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/05/01(木) 23:23:06 ID:iz.ZN/1Y0
(;@з@)「こんなところでいかがでござるか大潮氏?」
(´・ω・`)「上等だよ。早速で悪いが、有力候補チームの調査を頼めるか?十月後半までには用意して欲しい」
(;@з@)「お安い御用でござる」
ホンマに優秀なオタクだった
(´・ω・`)「再三言うが、車体構築やアビリティについては今後の練習で煮詰めていく。意見や要望は思いつく限り全て共有しろ」
('A`)「わかった」
(´・_ゝ・`)「お店の営業に関する事は僕の方に連絡してくれ。本戦後の事も備えとく必要がありそうだしね」
|;;;;|;,'っノVi ,ココつ「は、はい。了解です」
(´・_ゝ・`)「さて、今日の本題はここからなんだが……」
⌒*リ;´・-・リ そ「むぐ!?」
話が終わったと油断していた高梨は、口に含んだ団子を思わず喉に詰まらせそうになった
(;´・_ゝ・`)「ああ、すまない。楽にしてくれていいよ。此方の我儘に付き合わせているんだからね」
⌒*リ;´・-・リ 「でも時間外手当貰ってるんで……」
(;´・_ゝ・`)「クズが勝手にやってる事なんだから、もっと要求してもいいんだよ」
('A`)「こんなん利用するだけしてから見捨てればいいんすから」
(´^ω^`)「もしかして俺のこと何言っても傷つかない唐変木だと思ってる???????」
('A`)「できる限り苦しみ抜いて死ねばいいのにと思ってる」
(´^ω^`)「お前その覚悟あんだな??????????お??????????」
651
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/05/01(木) 23:23:52 ID:iz.ZN/1Y0
(´・_ゝ・`)「実は早急に決めなければならない事があってね。今から皆でチーム名を考えてもらう」
('A`)「チーム名だぁ?何でそんなもん今日中に?」
(´・ω・`)「ジャパンカップのエントリーに必要なんだよ。締切が迫ってんだ」
('A`)「んなもんそっちで適当に決めとけや……」
本八以外のメンバーが、徳雄へ信じられないものを見る目を向けた。アメイジング・ブスだからかな?
|;;;;|;,'っノVi ,ココつ「お前マジで言ってる?」
⌒*リ;´・-・リ 「関わっとかないと後で絶対後悔しますって!!」
(;@з@)「左様ですぞ宇都宮氏。チーム名は最も重要な象徴でござる。決して軽んじてはいけませぬぞ」
(;'A`)「お、おう……」
非難轟々だった
(´^ω^`)「ブスもこう言ってる事だしさぁ!!俺の考えたチーム名でいいだろ!!」
(´・_ゝ・`)「良いわけねーだろ殺すぞドブクズ」
(;'A`)「そんな酷ぇの?」
(;@з@)「さ、さしあたり、大潮氏のチーム名を聞かせて頂いてよろしいか?」
(´^ω^`)「おお!!よく聞きやがれ俺が長年温めてきた乾坤一擲のチーム名!!」
652
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/05/01(木) 23:25:44 ID:iz.ZN/1Y0
_人人人人人人人人_
> 【ゴロゴロ】 <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
ホログラムと共に発表された乾坤一擲のチーム名に
('A`)「何これ」
ブスは理解が追いつかず
(´・_ゝ・`)「ハァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」
ハゲはクソデカ溜息を吐き
(;@з@)「……」
⌒*リ;´・-・リ 「……」
木本と高梨は絶句し
|;;;;|;,'っノVi ,ココつ「えーっと……」
榊原は何とかフォローを絞り出そうと頭をフル回転させ
( ^ω^)「ダッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッサ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!やっぱ人間性がゴミのガキジジイはネーミングセンスも終わってんすねぇwwwwwwwwwよくこのクソダサゴミチーム名をドヤ顔発表できたもんだおwwwwwwwwww僕なら恥ずかしくて死んじゃうおーーーーーーーーーーーーんwwwwwwwwww」
豚性がゴミのデブはここぞとばかりに鳴き叫いた
653
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/05/01(木) 23:26:25 ID:iz.ZN/1Y0
三日);^ω゚ )<ギャャアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!????????
(;@з@)そ「文彦氏ーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」
全力で投げつけられた湯呑により、再び豚は沈黙した
(´・ω・`)「殺すわ……」
(´・_ゝ・`)「気持ちは痛いほどわかりますが、来年まで堪えていただけませんか?」
(;'A`)「……」
あの物腰柔らかで聡明かつ良心的な従兄と、お人好しかつ社交的な親友がいて何故、こんな残念で醜悪な臭い豚が出来上がったのか。徳雄は常々疑問に感じていた
654
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/05/01(木) 23:27:00 ID:iz.ZN/1Y0
(´・_ゝ・`)「とまぁ、ご覧の有り様さ。これでもクズに一任できるかい徳雄くん?」
('A`)「俺が間違ってました」
(´・ω・`)「なんだァ……てめぇ……」 ☆クズ、キレた!!
|;;;;|;,'っノVi ,ココつ「そ、その、モチーフとかって、お聞かせ願えますか?」
(´^ω^`)「よぉ聞いた榊原!!!!!!!!!!こらぁアレよ!!!!!!!!雷雲が鳴らす稲妻の音をそのまま名前にしたんだ!!!!!!!!不穏だろ!!!!!!!!」
|;;;;|;,'っノVi ,ココつそ「は、はい!!仰る通りでございます!!」
⌒*リ;´・-・リ 「店長」
('A`)「もっと他にあんだろ……」
655
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/05/01(木) 23:28:32 ID:iz.ZN/1Y0
(´・_ゝ・`)「そういう事で、皆の知恵を拝借したいのさ。少なくとも、これ以上酷い名前にはならないだろうし、気軽に考えてくれよ」
⌒*リ;´・-・リ 「うーん、そう言われてもなぁ……」
(;@з@)「責任重大でござるな……」
(´・_ゝ・`)「難しく考えなくていいよ。社長のモチーフをもっと別の言い回しにするとか、三人のイメージをそのまま言語化するとか。直感で発表してくれて構わない。挙げられた中で一番いいものを多数決で決めようか」
(;'A`)「あー、マジか……名前、名前ね……」
盛岡はホワイトボードアプリに切り替え、『思いついた人は挙手を』と発言を促す。すぐさま二人が勢いよく手を挙げた
(´^ω^`)ノ「はいはいはいはいはい!!!!!!!!!!!!!!!!」
( ^ω^)ノ「はいはいはいはいはい!!!!!!!!!!!!!!!!」
クズと豚である
(#´・_ゝ・`)「ハァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
地球が割れるほどクッッッッッッッッッッッソデッッッッッッッッッッッッカ溜息が出た
656
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/05/01(木) 23:30:51 ID:iz.ZN/1Y0
( ^ω^)「お望み通りすぐに挙手してやったのにその態度はなんだお?黙ってチームのエースたる僕の案を採用すりゃいいんだお」
(´・ω・`)「『ゴロゴロ』を採用してりゃこんな気苦労背負わんでも良かったんだよ。テメーで撒いた種だろ?キレんのはお門違いじゃないですか〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜??????????」
(#´ ゚_ゝ゚ `)「このクソカス共がぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
(;@з@)「盛岡氏!!店内でござる!!店内でござる!!」
(;'A`)「デミさん落ち着けって!!後で半殺しにしとくから!!」
(;@з@)「宇都宮氏?????????????」
暴力に一切の躊躇いが無い徳雄が羽交い絞めにして止めるほどのマジギレである。エコーズACT3の妨害でスイッチ押せなかった吉良吉影くらい叫んでた
(#´ ゚_ゝ゚ `)「早く言えやゴミ共……どうせ採用されねえカスネームをよ……」
( ^ω^)「そんなんわからんくない????????多数決って言ったのもう忘れたのかお?????記憶容量がダチョウクラスじゃねーかおwwwwwwwww早いのは生え際の後退だけでいいっつーのwwwwwwwwwwwwwwwww」
(´・ω・`)「あのさぁ、仕事に私情持ち込むのやめてくんねえかなぁ。キミ社会人何年目?いつまで経っても成長できねんならそう言ってくれや。優しくしてやるからよ」
('A`)「もうやっちゃっていいすわ」
(;@з@)そ「宇都宮氏!!!!!!!!!???????」
徳雄は怒れるハゲを解き放った
657
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/05/01(木) 23:31:23 ID:iz.ZN/1Y0
(´・_ゝ・`)「さて、仕切りなおそうか」
(´メ)ω(メ`)「はい」
( メ)ω(メ)「はいですお」
|;;;;|;,'っノVi ,ココつ「……」
榊原は真に従うべき相手は誰かを今になってようやく理解したのだった
658
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/05/01(木) 23:32:32 ID:iz.ZN/1Y0
(´・_ゝ・`)「ゴミカス共以外に案がある者は?」
⌒*リ´・-・リ 「それなんですけど盛岡さん。参考にしたいですし、一度お二人の案も聞いてみたいんですが」
(;@з@)「そうでござるな。それに一方的に爪はじきにすれば、後々軋轢が生じるもの。満場一致で納得できるチーム名を、皆で考えましょうぞ」
(;´・_ゝ・`)「うむむ……」
年下の方が大人の対応をしているではないか。盛岡はクズと豚のダブルカスにつられて頭に血が昇った自分を大いに恥じた
(;´・_ゝ・`)「わかったよ……二人に免じて、聞くだけ聞いてやるよ」
(´メ)ω(メ`)「年下に諭されんのダッッッッッッッッッッッサ。面目丸潰れじゃねーか。スルースキル無い奴はこれだから困るわ」
( メ)ω(メ)「上から目線なのが気に食わないお。何を譲歩してやってる感出してんだお?身の程を弁えたらどうなんすかwwwwwwwwww」
(´・_ゝ・`)「榊原くん、悪いけど台所から一番デカい刃物持って来てくれるかい?」
(´メ)ω(メ`)「まぁ幾つになっても恥を知って成長するのは立派だよな。俺も学ばせて貰ったわ」
( メ)ω(メ)「許し合うってのは人間という知的生命体にだけが出来る崇高な行為と思うんですお。ここは一つ、水に流しませんか?きっと更により良い関係を築けますから」
(;'A`)「……」
救えねえなって思った
659
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/05/01(木) 23:35:09 ID:iz.ZN/1Y0
(´^ω^`) チーム名フルコースメニュー
・前菜(オードブル) 大鳴
・スープ 団子三男子(だんごさんだんご)
・魚料理 仏千切(ぶっちぎり)
・肉料理 暗黒喰(あんこくう)
・主菜(メイン) ゴロゴロ
・サラダ ネオトマト
・デザート 蝗害
・ドリンク 大潮光輪隊
( ^ω^) チーム名フルコースメニュー
・前菜(オードブル) ミセリ爆走夢歌
・スープ ミンミンドライブ
・魚料理 エターナル・ミセリ・ラヴァーズ
・肉料理 BOON
・主菜(メイン) Revolver SIX
・サラダ ネオトマト
・デザート 文彦の6shooter ch
・ドリンク Magnum Knight
('A`)「じゃあネオトマトで決定ってことで」
(´・ω・`)「いやいやいやいや」
( ^ω^)「いやいやいやいや」
('A`)「だったらふざけてんじゃねえよ殺すぞ」
660
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/05/01(木) 23:36:54 ID:iz.ZN/1Y0
(´・_ゝ・`)「よくもまぁ……こんなに思いつくもんだ。参考になるかい?」
⌒*リ´・-・リ 「いやぁ…………」
いやぁだった
('A`)「いんじゃねっすか?」 ※どうでも
|;;;;|;,'っノVi ,ココつ「おいおい投げやりになるなよ」
(´・_ゝ・`)「パッと見ただけでも、それぞれに良い点と悪い点があるのがわかるよね。木本くん、答えてみるかい?」
('A`)「めっちゃ木本に振るじゃん」
(;@з@)「ええと、そうですな……大潮氏はモチーフがわかりやすく、洒落が利いておられますな。特に和菓子モチーフの名は面白い試みでござる」
(´^ω^`)「だっるぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」
クズは調子に乗った
(;@з@)「しかし、ワードセンスが前時代的でござる。洒落は利いておられるが、ウケは悪いでしょうぞ」
(´・ω・`) スン……
( ^ω^)「ブフォwwwwwwwwwwwwwwwwwwww化石みてーなネーミングセンスだってことだおwwwwwwwwww名前の節々から加齢臭がするおwwwwwwwwww臭っ!!!!!!!目に沁みるおーーーーーーーーんwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
クズは静かになって豚が嗤った
661
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/05/01(木) 23:37:47 ID:iz.ZN/1Y0
(;@з@)「文彦氏は英語を使ったスタイリッシュな名前が目を惹きますぞ。洋楽のタイトルのようでカッコいいでござるな」
( ^ω^)「っかーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!僕のオシャレセンスが出ちゃったおーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」
豚が煽られて木に登った
(;@з@)「ですが、余りにも『我』が前に出過ぎでござる……日本は出る杭を打つ国民性。一人だけをフューチャーした名前は、アンチの温床になりかねませんぞ」
( ^ω^) スン……
(´^ω^`)「モテねえ理由が詰まってんなぁーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!あ、どうせ家畜だから早々に去勢されるか!!!!!!!!!どっちにせよモテる意味もなかったな!!!!!!!!!!!!良かったなぁデブ!!!!!!!!!モテなくて!!!!!!!!!!!!」
豚が静かになってクズが騒いだ
662
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/05/01(木) 23:38:47 ID:iz.ZN/1Y0
(´・_ゝ・`)「うん、概ね僕と同意見だね。以上を踏まえて、考えてみてくれ」
('A`)「あー、その、無難なので良いって事すか?」
(´・_ゝ・`)「それが一番丸いだろうね」
('A`)「だったら参羽鴉で良いと思うんすけど。ちょうど三人だし」
(´・_ゝ・`)「宣伝になっちゃうからね……参羽鴉グループがスポンサーのプロ団体ならまだしも、今回は完全に社長の個人チームだから……」
(´^ω^`)「だから燃えるんだルォォ?????????」
('A`)「ドクセッ」
(´^ω^`)「お前めんどくせえっつったか???????」
⌒*リ´・-・リ 「英語の方がカッコいいかな?」
(;@з@)「うーん……ですが、漢字のカッコよさも捨てがたいでござるな……」
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「雷……雲……うーん」
663
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/05/01(木) 23:39:59 ID:iz.ZN/1Y0
各々、頭を捻らせること数十分。ホワイトボードアプリには、チーム名候補がズラリとならんだ
・MAD RAVEN
・ドゥルガー
・ファイヤーワークス
・御華見衆
・ALL HOPE IS GONE
・KILL them ALL
・Believer
・アウトサイダー
・Mess
・ワードレス
・Black Sheep
・3 dot
・モースト・デンジャラス・トリオ
・ザ・マシンガンズ
・ジョン・ドゥズ
・ゴッドセレクテッド
・ヘル・ミッショネルズ
・超人血盟軍
('A`)「思いつくもんだな……」
( ^ω^)「キン肉マンのコンビ名挙げ始めた段階で止めとくべきだったのでは?」
(;@з@)「楽しくなって来ちゃった故、致し方なかったでござる」
22世紀でもキン肉マンは大人気であった
(´・ω・`)「しかし、なんで一番最初に思いついたのがモースト・デンジャラス・コンビだったんだ?」
⌒*リ´・-・リ 「へへ、推しなもんで……」
火付け役は高梨であった。彼女はウルフマン推しである。四十年近くフェイバリットが合掌ひねりだった超人である
そしてジェロニモも推しであった。四十年近くフェイバリットが雄叫びだった超人である
彼女の友人であり、徳雄と文彦の指導者でもある敏感乳首こと小練 詩音は、そんな彼女のオタク趣味についてこう語っている
「めっちゃ早口やったわ」と
664
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/05/01(木) 23:41:30 ID:iz.ZN/1Y0
('A`)「店長も結構挙げましたよね」
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「つっても、洋楽のタイトルをパクっただけなんだけどな」
( ^ω^)「スタンドですかお?」
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「スタンドだったら『THEMATTEKUDASAI』って言うっつーの」
(´・ω・`)「もっとあるだろ他に」
|;;;;|;,'っノVi ,ココつ「え……チョコレイト・ディスコですか?」
(´・ω・`)「もっとあるだろ他に」
22世紀でもジョジョは大人気だった。もっとあるだろ他に
(´・_ゝ・`)「では、一度振いにかけようか」
⌒*リ´・-・リ そ「第21回超人オリンピック ザ・ビックファイト予選一回戦超人ふるい落とし……!?」
(;´・_ゝ・`)「オタクが増えた……」
オタクは何にでも関連付けるのであった
665
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/05/01(木) 23:42:20 ID:iz.ZN/1Y0
('A`)「何か方法あんすか?」
(´・_ゝ・`)「特別な事はしないよ。チャリオッツのチーム登録フォームに全部ぶち込むだけさ。重複があれば弾かれる」
('A`)「ほーん」
盛岡はチャリオッツオフィシャルサイトを立ち上げると、挙げられた候補をまとめてフォームへと入力する
するとすぐさま、登録可能な名前が反映された
・Black Sheep
('A`)「……これだけすか?」
(´・_ゝ・`)「みたいだね」
⌒*リ´・-・リ 「これって確か……」
その場の視線が、名前の発案者へと一斉に注がれる
|;;;;|;,'っノVi ,ココつ「ウッソだろオイ」
当の本人は、信じられないと言った面持ちで口角を痙攣させた
666
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/05/01(木) 23:43:24 ID:iz.ZN/1Y0
(´・ω・`)「榊原ァ……」
|;;;;|;,'っノVi ,ココつ「もも、申し訳ございません!!お気に召さないのであれば……」
(´・ω・`)「名前の由来を聞かせろや」
榊原は息を飲んだ。口調こそぶっきらぼうだが声色は穏やか。しかし眼光は、研いだばかりの刃物のように鋭い
おふざけ無しで真剣に本質を見極めようとする姿勢。榊原だけでなく、この場にいる者の背筋は自然と正された
('A`)「お茶うま……」
( ^ω^)「団子うま……」
正せや
667
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/05/01(木) 23:47:28 ID:iz.ZN/1Y0
|;;;;|;,'っノVi ,ココつ「ええと、その…………」
店の外では、雷雨が勢いを増し、耳を塞ぎたくなるようなけたたましい雷鳴と閃光を振り撒いている
榊原は暫く口籠もっていたが、観念して言葉を紡ぎ始めた
|;;;;|;,'っノVi ,ココつ「ふ……古い洋楽のタイトルから拝借したもんですが、この名前だけには幾つか意味があります」
(´・ω・`)「ほう」
|;;;;|;,'っノVi ,ココつ「か、海外では『黒い羊』は厄介者や異端者のスラングとして使われています。羊ってのは白毛が基本で、その群れに一つ黒いのが混じってれば、わ、悪目立ちするからです」
(´・ω・`)「……それで?」
|;;;;|;,'っノVi ,ココつ「で、ですが見方を変えれば、黒い羊ってのは、集団に染まらない、特出した存在とも言えます。言わば、『只者じゃない』って事です」
('A`)(めっちゃ考えとる)
( ^ω^)(めっちゃ考えとる)
|;;;;|;,'っノVi ,ココつ「社長の、も、求めているヒールイメージに近いと考えました……それと」
(´・ω・`)「それと?」
668
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/05/01(木) 23:48:13 ID:iz.ZN/1Y0
|;;;;|;,'っノVi ,ココつ「見た目が『雷雲』に、一番近い動物なんじゃないか、と……」
(´-ω-`)「榊原ァ…………」
|;;;;|;,'っノVi ,ココつそ「ヒィッ!?も、申し訳ございません!!浅はかでした!!すいません!!」
(´-ω-`)「『気に入った』」
|;;;;|;,'っノVi ,ココつ「へ……?」
(´・ω・`)「デミ―」
(´・_ゝ・`)「承知しました」
全員の了承を得ないまま、盛岡はチーム名『Black Sheep』を登録した
しかしそこに異議を唱える者は、一人だけであった
|;;;;|;,'っノVi ,ココつ「待ってください!!そんな簡単に……」
(´・ω・`)「いや、これがいい。『しっくりくる』。お前らはどうだ?」
('A`)「落とし所としては申し分ねえんじゃねえの。オッサンの要望にも応えて、尚且つ字面が良い」
( ^ω^)「ま、僕の次の次くらいにセンスがあると認めてやってもいいお」
なんだこの豚
669
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/05/01(木) 23:49:11 ID:iz.ZN/1Y0
|;;;;|;,'っノVi ,ココつ「い……良いんですか?俺なんかが思いついた名前で……」
(´・ω・`)「重要なのはフィーリングだ。それに、言った筈だぜ?『俺らはチーム』だってな」
|;;;;|;,'っノVi ,ココつ「ッ……!!」
(´^ω^`)「誇れや榊原ァ!!!!!!!お前が名付けたチームは、チャリオッツ界の伝説になるんだからなぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
|;;;;|;,'っノVi ,ココつ「は、はいッ!!」
('A`)「……」
このクズがどうして経営者として成り立っているのか。邪悪なやり口の一端を垣間見た気がしたが
『まぁ本人が喜んでるならどうでも良いか……』と、徳雄は胸の内に仕舞うことにした
(;^ω^)「カルトってこういう手口……」
('A`)「口に出すなや」
あの文彦ですら引いてた
670
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/05/01(木) 23:50:39 ID:iz.ZN/1Y0
(´・_ゝ・`)「エントリー完了です。これで後には引けませんよ」
(´^ω^`)「ガハハハハハ!!!!!!聞いたかガキ共!!!!!!!恥を晒すような真似は出来なくなったってこった!!!!!!!」
('A`)「だとよ文彦……」
( ^ω^)「僕の足を引っ張んじゃねーおオッサン」
('A`)「俺の足も引っ張んじゃねーぞ」
(´^ω^`)「何このガキ共?」
友情も絆もない三人組の、今は誰も知らない『悪名』の誕生を呪うかのように、雷鳴が鳴り響く
本八の耳にはそれが、祝福のラッパの音に聴こえたのであった
671
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/05/01(木) 23:56:32 ID:iz.ZN/1Y0
―――――
―――
―
Dorothy - Black Sheep
https://www.youtube.com/watch?v=5zBUlhcRyWw
(´・ω・`)「始めるぞ」
合同練習では、主に本八が所有する中古のチャリオッツ筐体にて構築探求の為の反復プレイを行なった。実戦は週に二日、みっちりと行う
秋になってようやく合流したキャプテンの本八は、操縦と砲撃に関して言及することはせず、夏の間に培った二人のプレイに自身が合わせる方法を選択
アビリティも、キャプテンが主体となる強力なフェイバリットでは無く、二人の動きのサポートとなる物を探す事にした
文彦の射撃力に徳雄の凶暴性は、手を加えるまでもなく強力な武器である。一発逆転の切り札を使うよりも、少しでも長く双方の実力が発揮できる方が強いと考えたのだ
(´・ω・`)「クイックリロードは重いか?」
( ^ω^)「3コスは重いお。リロ速を一時的に上げるならアイテムでも互換できるから、車体の軌道補助に振った方がいいお」
あの犬猿ならぬ豚猿(とんえん)の仲である本八と文彦が、チャリオッツに関しては建設的に会話していた
(´・ω・`)「悪路の時はブレーキ気ぃ使え!!ひっくり返んぞ!!」
(;'A`)「わり」
舵を握る徳雄には、夏合宿の走行データを参考に、苦手な路面を繰り返し走行させた。ジョッキーの能力は、車体構築に大いに関係する
得意を伸ばす尖ったカスタムか、苦手を補う丸いカスタムか。どちらが活きるかは、乗り手によって違ってくる
徳雄がこれまで操縦した車体は、あくまでトレーニングの為に負荷を増したものである。つまり、ここからはジョッキーとしての適性を見極め、最適解を見つけ出す時間であった
672
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/05/01(木) 23:59:44 ID:iz.ZN/1Y0
また、各々の体力強化及びダイエットも継続
<がんばれ♡がんばれ♡
(;*^ω^)「ハァハァ!!!!!!!ブヒッ!!ブフヒッ!!」
(;ФωФ)「My Son……」
文彦は、自宅で行えるエクササイズプログラムを、朝と夜に一時間ずつ行なった。気持ち悪っ
美少女トレーナーと一緒に楽しく運動が出来る『あねトレ 〜おうちであまあまエクササイズ〜』である。オタクは二次元のエロを絡ませないと運動ができない可哀想な生き物なのだ
これは文彦の運動へのモチベーション維持の為、敏感乳首こと小練 詩音が本八へと提案したゲームアプリである。むせ返るほどのオタク臭いタイトルとは裏腹に、非常に優れたトレーニングメニューが組まれている
これがV豚非モテキモオタの文彦の下半身に大ヒットし、消費カロリーごとに解放されるスケベなご褒美要素も相まって、合宿時とは比べ物にならないほど運動にやる気を漲らせていた。股間も漲らせていた
因みに、初回のチームミーティング時にグロッキーだったのは、夜通しでこれをプレイした後、何がとは言わんが五回も慰めていたからである。ガンナーとしての才能は、ひょっとしたら神様がこの気持ち悪い豚へ与えた哀れみなのかもしれなかった
(;ФωФ)「Jesus……」
この見苦しい息子の姿に、父の内藤 六馬は孫の顔を拝むのを早々に諦めたという。賢明な判断である
少子化は刻一刻と国力を蝕んでいくのであった
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