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ξ゚⊿゚)ξツンちゃん夜を往くようです
1
:
名無しさん
:2020/10/14(水) 17:28:46 ID:YvZFQxxU0
タクシー
(゚」゚)ノ
ノ|ミ|
」L
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
_/ ̄ ̄\_
└-○--○-┘=3
459
:
名無しさん
:2021/08/10(火) 23:01:37 ID:q9XV82ww0
川д川「とりあえずエクストには連絡を入れとく。
ミセリもあっちに合流してきて、明日の朝には全部終わらせといて」
ミセ*゚ー゚)リ
ミセ*゚ー゚)リ「山ごと焼いてもいいのよね?」
川д川「あのねミセリ、地上には犯罪という概念が――」
瞬間、2人は会話を切って同じ方向に目を見張った。
o川;*゚ー゚)o「……えっ?」
そこに居たのは素直キュートで、彼女は突然向けられた視線にひどく驚いている様子だった。
o川;*゚ー゚)o「……あの、えっと、今どんな感じですかね……?」
素直キュートはへりくだって尋ね、貞子とミセリの顔色をそれぞれ窺った。
彼女の質問には貞子が答えた。
川д川「こっちの用は終わったわ。治療なら順番にやってくから」
o川*゚ー゚)o「分かりました。なら向こうの2人も運んで来ますね」
どこか安心したように頬を緩め、キュートはくるりと身を翻した。
今朝の魔王軍襲撃から一貫して無傷の体。
この期に及んでなお万全を保つ彼女の背中を、ミセリはどこか口惜しそうに眺めていた。
ミセ*゚ー゚)リ「……今更だけど、全員本気でやらせた方がよかったかもね」
川д川「なに言ってるの。殺し合いなんかさせたらお嬢様に嫌われるわよ?」
ミセ*゚ー゚)リ
川; д川「……ちょっと」
ミセ*´ー`)リ「それじゃあ自分は現場に戻りますんで……」
貞子の追求をはぐらかし、ミセリは逃げるように去っていった。
.
460
:
名無しさん
:2021/08/10(火) 23:03:46 ID:q9XV82ww0
(´・_ゝ・`)「いやぁ〜素直四天王は強敵でしたね」
面倒な話が済んだのを見計らい、盛岡はツンを持ったままこっそりと近づいてきた(図1)。
それを横目に捉えたまま、貞子は通信用の魔術を組み立てて方々に連絡を入れる。
ハインの居場所はこれで知れ渡った。魔王軍はすぐにでも彼を捕らえるだろう。
川д川「盛岡、あなたも仕事に戻りなさい。傷は十分癒えてるでしょうに」
(´・_ゝ・`)「俺はいつでも仕事中だよ。見たことないだろ? 俺がスーツ着てないとこ」
川д川「報酬に見合うだけの働きをしなさいって話よ。私の話し相手があなたの仕事?」
(´・_ゝ・`)「舞台裏が主戦場なもんで。振ってくれれば仕事はするからさ、勘弁して」
川д川「……だったらお嬢様をそこに寝かせて。素直四天王にも拘束を」
(´・_ゝ・`)「わぁい雑務だ〜」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
∧_∧
,-―――――(´・_ゝ・`)
《rcノー―――-、〉 ⌒ヽ
ξ ξ | ヽ \
(´⊿`) | l \ \
U U) l ヽ \ \
v-v l、 l レへ__)
/ | |
/ | |
/ | .|
( .| |
\.| |、_
l l )
__/ l| l
(___ノ_/
(図1:ツンを持ったままこっそりと近づいてきた盛岡)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
.
461
:
名無しさん
:2021/08/10(火) 23:05:49 ID:q9XV82ww0
川д川(これは……)
デミタスが適当なところにツンを寝かせると、貞子はすぐに彼女の治療を開始した。
しかし、ひしゃげた右腕から四肢の端まで異常は見当たらず、貞子はすとんと拍子抜けした。
戦闘中に見受けられた謎の回復が効いたのだろう。以前までの負傷に比べれば、傷は浅かった。
川д川(いや、ていうかこれ殆どミセリの物理ダメージなんじゃ……)
貞子は自分を魔力を調整し、ツンの赤色の魔力に性質を寄せていった。
そうしてツンの手を握り、輸血の要領で彼女に魔力を分け与えていく。
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ・`)「なあ貞子、それが済んだら次はあいつを治してくれよ」
川д川「……その注文ってなにか意味ある?」
順に治すと言った通り、貞子は素直四天王を含めた全員に治療を施すつもりだった。
盛岡が視線を送っている素直シュールも例外ではないし、彼の注文は余計なものでしかなかった。
lw;´ _ ノv
(´・_ゝ・`)「大した話じゃない。ただちょっと財布の事を聞きたいだけだ」
盛岡はポケットから財布を出して答える。
(´・_ゝ・`)「ほら、俺って仁義を重んじるタイプだろ?
拾ってくれた手前、礼を欠くわけにもいかねえじゃん」
川д川「……分かったわよ。そうする」
彼の言動に思うところがあったのだろう。貞子はすんなりと注文を聞き入れた。
ハインの一件に火が点いたのも彼の働きがあってこそだ。敵対しない限り、行動を縛る理由もない。
川д川「なんでもいいけど、次は上手くやるのよ」
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ・`)「任せてくれって。俺は毎回そう思ってるから」
貞子からの思わせぶりな忠告。
盛岡は禁酒禁煙のプロのように軽口を返した。
.
462
:
名無しさん
:2021/08/10(火) 23:15:51 ID:q9XV82ww0
#1
>>2-65
#2
>>74-117
#3
>>122-160
#4
>>169-212
#5-1
>>231-266
>>271-289
#5-2
>>294-324
#5-3
>>330-363
#5-4
>>371-416
#5-5
>>422-461
妖精円卓領域に時間を取られて少し遅れました 許されよ許されよ
次回投下は今月末で、その次は10月になると思います
463
:
名無しさん
:2021/08/10(火) 23:36:34 ID:cJ6b8Bjg0
乙だす
464
:
名無しさん
:2021/08/11(水) 16:33:26 ID:EC906xQw0
大人たちの思惑がわからんねぇ
465
:
名無しさん
:2021/08/16(月) 14:38:21 ID:QQuh5jjc0
ツンちゃん成長してるー!
相変わらず面白い、乙です
466
:
名無しさん
:2021/08/22(日) 21:15:32 ID:xk5v7xNI0
乙!ツンちゃんが超真面目なバトルできるようになってて凄い
467
:
◆gFPbblEHlQ
:2021/08/30(月) 04:10:02 ID:je6Z08Ao0
≪1≫
朝霧漂う明朝4時。
素直四天王から引き出された情報のもと、魔王軍は一晩かけて対象を山の中腹へと追い込んでいた。
夜明けが先か決着が先か、それを決める自由さえもハインリッヒには残されていなかった。
<_プー゚)フ「観念しな。老いぼれにしちゃよくやったと思うぜ」
体躯の端々に雷鳴を纏う魔物、エクストプラズマンは満面の笑みで称賛を述べた。
バキバキの金髪に魔王軍規定軍服の襟を立てたそのビジュアル、紛うことなき厨二病の体現である。
<_プー゚)フ「人間の小細工ってのは存外おもしれえな。
いい経験をさせてもらった礼だ。殺さねえからもう諦めろよ」
从;゚∀从「……おいブーン。この程度でもう息切れか?」
(; ´ω`)「そ、そんなこと言われても……」
楽しげに微笑むエクストから数十メートル離れた木々の陰。
ハインとブーンはそこで肩を貸し合いながら、満身創痍の体を急ピッチで休めていた。
一夜を終えて万策を使い果たし、もはや正面切っての決着以外に活路を開けない窮地。
対魔物を熟知しているハインであっても、これを無傷でひっくり返すことはほぼ不可能だった。
彼らを追うのは魔王軍の選抜戦力。その頭数は百を超え、エクストの後ろに一人残らず健在のまま。
多勢による緩やかな圧倒、統率された数の暴力。
一切の予断なく自分達を包囲する魔王軍を相手に、ハインリッヒは最後の勝負を仕掛けようとしていた。
(; ´ω`)「おじいちゃん、これもう勝ち目ないと思うお……」
从;゚∀从「……だったら1人で逃げやがれ。俺は死んでもここを切り抜けるぞ」
(; ´ω`)「死んだら意味ないお。今まで仲良くできてたんだから一回落ち着いて……」
从;゚∀从「あーもーうっせえな! お前いつからそんな甘チョロになりやがった!?」
( ^ω^)
(^ω^)
.
468
:
名無しさん
:2021/08/30(月) 04:13:02 ID:je6Z08Ao0
<_プー゚)フ「……投降してくる気配なし。決着がお望みか」スッ
聞こえるようにあえて声に出し、エクストは適当な方角に片手を突き出して見せた。
彼の雷撃をもろに受ければ、いかに鍛えた人間であってもそれだけで戦闘不能に陥ってしまう。
ただ何気なく片手を突き出しただけに見えようと、ハインは彼の煽動に乗らざるを得なかった。
从#゚∀从「――どこ見てやがる!」
<_プー゚)フ !
死角からの不意打ちを気取った瞬間、エクストは振り向きざまに片腕を振り上げていた。
ハインの刀をそれで受け止め、ようやくまともに攻め込んできた彼に歓喜の視線を投げかける。
<_#プー゚)フ(期待を裏切らねえ奴は好きだぜ――!)
もうやるしかないという予定調和の正面衝突。
エクストは心底嬉しそうに笑みを浮かべ、それと同時に魔力のボルテージを数倍に引き上げた。
<_プー゚)フ「――雷を落とす。避けろよ、現魔戦争の生き残り」
从;゚∀从「ブーン! 絶対にタイミング間違えんなよ!!」
噛み合わない会話の直後、朝霧を伝って周囲に雷鳴が炸裂する。
そして周囲の水分が一気に蒸発した瞬間、真白の閃光が2人の影を消し飛ばした。
.
469
:
名無しさん
:2021/08/30(月) 04:17:38 ID:je6Z08Ao0
ミセ;*゚ー゚)リ「あーもーまた雷、もっと静かにやりなさいよ……」
一方その頃、遠く離れた山中から戦場を眺めていたミセリは巨大な閃光が山を呑むのを目視していた。
デカすぎる落雷の音に耳朶を打たれ、激しい耳鳴りに脳を貫かれる。
ミセリは押し潰すように両耳を塞ぎ、顔を歪めて戦場を見回した。
ミセ;*゚ー゚)リ「……はいはい、あそこに居ましたよ。
ハインリッヒは健在です。戦争経験者はやはり違いますね」
( <●><●>)「加減したのでしょう。彼はあれでも律儀ですから、殺すなと言えば命令は守ります」
ミセリの背後には燕尾服を着込んだ長身の魔物が佇んでいた。
異様に青白い肌と暗黒が渦巻く瞳。
振る舞いこそ丁寧でも、彼の風貌は間違いなく異形のそれだった。
ミセ*゚ー゚)リ「そうですかねえ。私には遊んでるように見えますけど」
( <●><●>)「成果が十分であれば過程はどうでも。
とは言っても、当初の予定を死ぬほどオーバーしているのも事実ですが」
――魔王軍総指揮官、異名を『魔眼のワカッテマス』。
今回彼は現魔王ロマネスクの特命を受け、魔王城ツンの試験相手として地上に来ていた。
話の流れでその任務は立ち消えたものの、もし実際に戦っていればツンに未来は無かった。
詰みポイントである。
.
470
:
名無しさん
:2021/08/30(月) 04:28:07 ID:je6Z08Ao0
( <●><●>)「そういえば、そちらの試験はどうなりましたか」
暇潰しの雑談がてら、ワカッテマスが他愛なく話を切り出す。
そのときミセリは彼からの視線を強く感じ取り、背を向けたままぎゅっと肩を縮こめてしまった。
魔眼の、と称されるだけあって彼の双眸には稀有な能力が宿っている。
魔眼の射程は視界全域。その名実にも嘘はなく、宇宙からなら地球全体をも標的にできるほどだ。
とてもつよく、強い。
ミセ*゚ー゚)リ「……無事に終わりましたよ。お嬢様が勝ちました」
仲間相手に取る態度ではないと理解していても、死に直結する視線など本能が受け入れない。
恐怖や反骨心もなしに自然と体が反応してしまう辺り、さしものミセリもワカッテマスを格上と認めていた。
――それがワカッテマスという魔物の立ち位置。
そして、魔王が本気でツンを連れ戻そうとしている事の証左だった。
( <●><●>)「順調であれば何よりです。魔王様への土産話も心配なさそうですね」
ミセ*゚ー゚)リ「記録もあるので好きなように審査してください。
今のままでも最低限の実力はあると思いますよ」
ミセ*゚ー゚)リ
ミセ;*´ー`)リ「……だってのに、魔王様もやる事が極端なのよ。
話が変わったからいいものを、あんた相手じゃ今頃どうなってたか……」
彼の視線に狼狽えた自分を誤魔化そうとしてか、ミセリは口調を崩して小言を垂れ流した。
魔王軍において2人はほとんど同期であり、これくらいの不躾はユーモアの範疇だった。
同期にはまだ棺桶死オサムという魔物も居るのだが、彼の出番は最終章まで一切ない。
.
471
:
名無しさん
:2021/08/30(月) 04:29:32 ID:je6Z08Ao0
ミセ*゚ー゚)リ「……あ、また動きが」
ミセリがそう言って顔を上げた直後、視線の先で凄まじい爆発が起こった。
真っ赤な火の手が空に立ち上り、黒い煙がすっごいモクモクしている。
だがエクストにしては規模が小さい。ハインが何かをしたのだと、ミセリはすぐに勘付いていた。
( <●><●>)「一杯食わされた、といった感じでしょうか」
黒煙がモクモクしている辺りに目を向けて、ワカッテマスは魔眼の力を行使した。
瞬間、爆発による火事のすべてが彼の瞬きひとつで一掃され、鎮火する。
やろうと思えばこれでハインを捕まえる事も可能だったが、本来の任務ではないので手柄は取らない。
( <●><●>)「あなたも向こうでハインの相手をしてきて下さい。
これ以上は時間の無駄です。エクストが遊びだす前に決着を」
ミセ*゚ー゚)リ「……ご自分で済ませた方が早いのでは?」
( <●><●>)
( <●><●>)「失礼ながら――今のあなたは少々肥えて見える。
動ける時に動いておきなさい。地上の暮らしは我々には緩慢すぎる」
ミセ;*´ー`)リ「うわぁ本当に失礼。ちょっと目潰ししていいですか」
( <●><●>)「御冗談を。昔ならまだしも、今のあなたでは――」
ミセ*゚ー゚)リ
ミセリは静かに振り返り、言葉を遮るようにワカッテマスの魔眼をじいっと見つめた。
彼も応えてミセリを見るが、彼女を煽ってしまった自分の非を認め、あっさりと魔眼を閉じて見せた。
( <─><─>)「ミセリ、任務を最優先でお願いします」
ミセ*゚ー゚)リ「……分かってますとも。行ってきます」
.
472
:
名無しさん
:2021/08/30(月) 04:37:11 ID:je6Z08Ao0
――ハイン捕獲のために動員された魔王軍100名以上のうち、最終的に7名が戦闘不能。
ハイン、エクストプラズマン、ミセリ3名による大規模戦闘を支援した約20名が重軽傷を負って戦線離脱。
その後内藤ホライゾンが逃亡を図るも、ワカッテマスの助力もあって魔王軍は対象の捕獲に成功する。
内藤ホライゾンを気絶させ、強制的に激化能力を解くとハインの戦闘能力は著しく激減。
能力により復元されていた武器防具類と全盛期の肉体を失うが、彼は以降も変わりなく戦闘を続行した。
ツンの試験終了から半日以上が経過した翌朝8時。
ハインはすっかり力尽き、内藤ホライゾンと一緒にその身柄を拘束された。
.
473
:
名無しさん
:2021/08/30(月) 04:38:50 ID:je6Z08Ao0
≪2≫
〜学校 放課後〜
ξ゚⊿゚)ξ「そこで私はやったったのよ」
ξ゚⊿゚)ξ「オラァ! はい、一発ダウン(笑)なのだわ」
「そうなんだ、すごいね!」
('A`)「……そろそろ帰ろうず」
ξ゚⊿゚)ξ「うるさいわねドクオ。魔王降誕の序章を語ってるんだから邪魔しないでよ」
('A`)「序章の自慢話だけで数日経ってまつが……」
試験が終わって数日後。かくして私は普段の生活に戻っていた。
いつも通りに学校に行き、まゆちゃん相手に試験結果を語り聞かせる毎日をエンジョイ中である。
ちなみに私は健康そのもの。心身ともに傷は癒えていた。でもやっぱり長期休暇がほしい。
('A`)「いいから今日は帰ろうって。用事もあんだから」
ξ゚⊿゚)ξ「なんだと私は魔王城だぞ。すこぶる失礼なドクオだな貴様」
('A`)「まゆちゃんもマジでごめんな。眼輪筋ピクピクさせるレベルでストレス溜めさせて」
馴れ馴れしくまゆちゃんを気にかけるドクオ。やめろ私の友達だぞ馴れ馴れしくするな。
しかしまゆちゃんが眼輪筋をピクピクさせてたのは本当で、心なしか笑顔も引きつって見えた。
「あはは、でも大丈夫だよ。3回目以降ほぼ聞いてないし」
ξ゚⊿゚)ξ !?
('A`)「驚くことじゃねえよ。普通3回も序章繰り返したら飽きるっての」
ξ;゚⊿゚)ξ「そんなありえない! 5回目からは神アレンジまで加えてたというのに……!」
(;'A`)「飽きてアレンジ加えてる辺りで罪を自覚しろって。むしろよく4周目まで駆け抜けたな」
ξ;´⊿`)ξ「次からは来場者特典(よく喋る!ツンちゃんミニカー)をプレゼント……」
(;'A`)「しょうもないとこで粘りづよい……」
.
474
:
名無しさん
:2021/08/30(月) 04:39:48 ID:je6Z08Ao0
そんな感じで私の日常が普段通りになった一方、嬉しい誤算がひとつだけあった。
ξ゚⊿゚)ξ「今日は特別に試作段階のツンちゃんミニカーをプレゼント。
つ凸つ 全120種類+シークレット3種をがんばって揃えよう」
゚ ゚
(;'A`)「いやお前、そんな馬鹿げた生産能力を持った奴がどこに……」
(; ´ω`)「あの、ツンちゃんミニカーの納品に参りました……」ソロリ
つ凸と
゚ ゚
('A`)
ξ゚⊿゚)ξ「あ、それまゆちゃんに渡してあげて」
(; ´ω`)「はい……」
('A`)
('A`)「お前、まさかこんな苦行に激化能力を……?」
(; ´ω`)「いや普通に手作業」
('A`)「そっちのがキツいよ」
ξ゚⊿゚)ξ「いや〜人件費が安くて助かるのだわ」
どういう訳だか、魔王軍に捕まっていた内藤くんが突然の恩赦を受けたのである。
もしこれが試験突破のご褒美なら嬉しい限り。ミセリさんにボコられた甲斐もあるというものだ。
ξ゚⊿゚)ξ「それじゃあ私達は帰るのだわ。
まゆちゃんそれプイプイ鳴るからね。よろしくね」
「はい」
ξ゚⊿゚)ξ「えっ冷たい」
('A`)「モルカーのパチもんを押し売りするからだよ」
ξ゚⊿゚)ξ「そんな……」
終わりだ
.
475
:
名無しさん
:2021/08/30(月) 04:40:35 ID:je6Z08Ao0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
かくして学校を出た私達はハインさんの屋敷に向かっていた。
なんか試験結果とか諸々教えてくれるらしい。さっき言ってた用事とはその事だった。
ξ゚⊿゚)ξ「えーどうしようインタビューとかされちゃったら。今ちくわしか持ってないのだわ」
('A`)「俺からは『いつかやると思ってました』って言ってやるよ」
( ^ω^)「昔から変な人でした。アニメもよく見てたし……」
ξ゚⊿゚)ξ「被告の古い知人は語る――じゃないのよ殴るわよ」
('A`)「だったら今日のメンツをよく考えろ。そして頼むから落ち着いてくれ……」
屋敷に着くなりチャイムを鳴らしてドカドカ侵入していく私達。
庭の方から話し声が聞こえてくる。そっちに行くと見知った顔が勢揃いしていた。
テテーン
川 ゚ -゚) ´‐ _‐ノパ⊿゚)*゚ー゚)o
ミ.三三)三三)三三)三三)
し_)_)_)_) _)_)_)_)
ξ゚⊿゚)ξ「素直四天王がギチギチに詰めて並べられている」
しかも処刑寸前といった風情で地面に座らされている。
生きた心地はしてないだろうな、と一目で伝わってくる悲痛さがすごかった。
.
476
:
名無しさん
:2021/08/30(月) 04:45:23 ID:je6Z08Ao0
ミセ*゚ー゚)リ「まったく、遅いですよお嬢様」
ξ゚⊿゚)ξ「すまぬ」
ミセ*゚ー゚)リ「これで色々決まるんですからね。ちょっとは緊張してください」
( <●><●>) ジロッ
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「アッ(蚊のような悲鳴)」
いつメンに加え、今日はミセリさんの後ろにヤバいのが控えていた。
私はすぐさま顔をそらした。死にたくないので急いで体裁を整えていく。
ミセ*゚ー゚)リ「彼については知ってますよね。魔眼の御方ですよ」
ξ;゚⊿゚)ξ「どどどどうしてあんな大物が!!!?!」
ミセ*゚ー゚)リ「ほんとは彼が試験相手だったんですよ。見たかったなぁ2人が戦ってるとこ……」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ; ⊿ )ξ(――戦っとったら死んどるんじゃい!!)
目ぢからヤバめの彼はワカッテマスさんという激ヤバ魔物だった。
魔王軍最上位の実力を備える例外戦力。なんかもうインフレの擬人化みたいな存在である。
私のパパとも親交があり、時には魔王の右腕として動くこともあったりするらしい。
とにかく間違いなく私より強く、試験なんかに駆り出していい人材ではないのである。
ξ;゚⊿゚)ξ「ごごごごきげんうるわしう」
( <●><●>)「はい、お久し振りです」
死物狂いで声をかけるとワカッテマスさんは遠巻きから会釈をしてくれた。
私も目を細めて辛うじて彼を見遣り、同じように会釈を返した。
彼の視界に入ってる時点でもうめちゃくちゃに危険である。生きた心地がしなさすぎる。
.
477
:
名無しさん
:2021/08/30(月) 04:47:26 ID:je6Z08Ao0
__
( ̄ (´・_ゝ・`) ) 「いいからさぁー、揃ったんなら話を進めようぜ」
``ヽ /⌒ヽ,-、
ヽ__,,/⌒i__ノ バァーン
(_)
とぼけた野次に振り返ってみると、縁側に転がり死ぬほど寛いでいる盛岡と目が合った。
ワカッテマスさんの前であんな態度を取れる盛岡に逆に驚く。彼には心が無いのだと思った。
(´・_ゝ・`)「どうせ説明回だろ? 話は短く、内容はハッキリよろしくな」
川д川「だったら態度を直しなさい。あなたの立場はドクオと大差ないんだからね」
彼の傍らに立つ貞子さんが甲斐甲斐しく注意を挟む。
いいぞ貞子さんもっと正論を述べてくれ。一緒に常識が機能する世界を目指そう。
(´・_ゝ・`)「話を聞くだけなんだから横でいいだろ。縦がそんなに偉えのかよ」
お前はちょっと黙れ。
ミセ*゚ー゚)リ「……まぁとりあえず、最初に試験の結果を」
ξ゚⊿゚)ξ「うん」
ミセ*゚ー゚)リ「ワカッテマスさんの方から聞いといてください」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ;゚⊿゚)ξ「――えっ!? そこブン投げるの!?」
ミセ*゚ー゚)リ「2人で話したいそうですよ。我々はあっちで待ってますのでごゆっくり」
('A`)「ツン、骨は拾うから安心して逝ってこい」
( ^ω^)「きっと合格してるから大丈夫だお!」
ミセリさんがドクオ達を連れて縁側の方に引いていく。
それを見るなり貞子さんも身を引いてしまい、私はこの場で一番怖い存在との対峙を余儀なくされた。
川 ゚ -゚)(残された我々はなにを……)
ノパ⊿゚)(黙って待つしかないんじゃ……)
.
478
:
名無しさん
:2021/08/30(月) 04:50:23 ID:je6Z08Ao0
( <●><●>)
ξ;゚⊿゚)ξ ヒェェ
噂に名高い彼の魔眼、その視界に収まっていると思うと足が竦んで仕方がなかった。
しかし先日の試験では一応勝利を収めたのだ。そう悪いことにはならない筈だ、と切実に願う。
( <●><●>)「試験の記録は見せてもらいました。
なんというか、随分と慌ただしい戦いをされていましたね」
ξ゚⊿゚)ξ「ごめんなさい」
私は即謝った。
――弱点を利用され、武器を奪われ、シュール戦に至っては完敗同然の一幕さえあった始末。
結果的には勝てたものの、私の右腕を治した例の謎回復が無ければ戦況は大きく違っていたはず。
かくして実力で勝ったとは到底言えないのだから、彼の皮肉染みた見立てにも文句は言えなかった。
あと単純にワカッテマスさんの機嫌を損ねたくなかった。
物理でちょこまかするしかない私ではどうあっても彼には逆らえない。
もし怒られたら本当に泣いてしまう。ここは誠実な対応に徹して切り抜けるしかないのだ。
( <●><●>)「では試験で使っていたマントを見せてもらえますか。少し興味があります」
ξ;゚⊿゚)ξ「……えっ、マフラーじゃなくて?」
( <●><●>)「あっちは別に。まだ未完成のようですし」
ξ゚⊿゚)ξ(渾身の赤マフラーなのにな……)ショボヌ
私はいそいそと魔力をこねてマントを作った。
緊張してかなり手間取ったが、また失敗してウサちゃんにならなかったのでよかった。
黒いマントを彼に差し出し、私はやや大袈裟に引き下がった。
ξ;゚⊿゚)ξ「あの、ダメ出しだったら優しい言葉でお願いします……」
( <●><●>)
ξ;´⊿`)ξ(……表情が無さすぎて怖い……)
.
479
:
名無しさん
:2021/08/30(月) 04:52:52 ID:je6Z08Ao0
( <●><●>)「……これは、やはり制御装置ですか」バサッ
程なくすると、ワカッテマスさんはマントを広げながら自信げに呟いた。
これの仔細は魔物には分からないはずだが、彼の慧眼もまたすごいものだった。
現に一目で役割を見抜かれている。私はマントの仕様を少しだけ明かすことにした。
ξ;゚⊿゚)ξ「見ての通り、それは大して複雑なものではないのだわ。
魔力を編んで作っただけの、ほんとにただの黒いマントで……」
( <●><●>)「そうですね。年頃の魔物なら誰でも作れます。
しかし気になったのは用途と中の構造です。教えてもらえますか」
ξ;゚⊿゚)ξ「……えっと、それの構造は人間の知恵にすごく依存してるのだわ。
私もあんまり分かってないけど、なんとか力学とか色々……」
( <●><●>)
( <●><●>)「ハインリッヒに教えられたのでしょう。隠さず言いなさい」
ξ;゚⊿゚)ξ ヒェェ
人間風情に頼りおって的な原理主義に配慮して言葉を濁したのだが、思いっきり逆効果だった。
死にたくないので全部話そう。誠実にならねば。私はハインさんの受け売りを急いで語り始めた。
ξ;゚⊿゚)ξ「な、なんかそれ、風とかを上手に掴める構造らしいのよね。
ハインさんから聞いた話だと、それは舵とかブレーキみたいに使うとのことで……」
――かねてより、私のノーコンっぷりは致命的な問題であった。
しかしハインさんが教えてくれた『空気力学』の概念は、その問題をかなり改善に導いてくれたのだ。
制御装置という見立てもその通りだ。私にはない機能を持つもの、それがこのマントの正体だった。
.
480
:
名無しさん
:2021/08/30(月) 04:55:35 ID:je6Z08Ao0
ξ゚⊿゚)ξ「揚力が〜抗力が〜ダウンフォースが〜」
つ と
ハインさん曰く、揚力とかを適切に利用すれば貧弱な人間でも強い力を制御できるらしい。
たとえば飛行機やフォーミュラカーといったものは魔物に匹敵するパワーを持つが、
人間は力学というものを広く活用し、そういう身に余るパワーを平然と使いこなして日々を過ごしている。
――私がハインさんから教わったのはまさしくその文脈。
力なき者がより強大な力を制御する術を、彼は私に『空気力学』という形で教えてくれたのである。
( <●><●>)
ξ;゚⊿゚)ξ(ちゃんと聞いてるなら相槌くらい欲しいのだわ……!!)
私はこのマントを操作することで空気力学の恩恵を受け、要するにスムーズに動けるようになった。
ちょっと力んでパンチを出しても、マントをいい感じに動かせば間接的に精度と威力を調整できる。
これに関する最大のネックは『マントを適切に動かし続ける』という部分だが、
マントの向きや形状を変えるだけで苦手な魔力制御をカバーできるなら安い買い物だ。
技術的には基礎の塊。習得コストに対するリターンは高効率と言うほかない。
――他力本願おおいに結構。楽して強くなれるなら何だっていい。
私は私の努力を見限り、多様な他力とつながることで自身の弱点を埋め合わせたのである。
ξ゚⊿゚)ξ「つまりそういうことです」
( <●><●>)「完全に理解しました」
そして今ので完全に理解してくれたらしい。
私もあんまり分かっていないので彼の理解力には心底感謝であった。
(´・_ゝ・`)「……なるほど、あのマントはいわゆるエアロパーツみたいな装備なのか。
根本的な力の強弱はさておき、全体の流れをまとめて最終的にバランスを取るという発想。
進化の為に火や雷といった強大なエネルギーと共存してきた人間ならではの考えだな」
盛岡の説明台詞がココイチで光る。
いいぞ盛岡、もっと輝け。
.
481
:
名無しさん
:2021/08/30(月) 05:00:38 ID:je6Z08Ao0
( <●><●>)「彼らがこういった形で力を制御するのは知っていましたが、いや面白い。
あらゆる力と感覚的な付き合いをしている我々とは最初からアプローチが違う」
やや早口に言いながらワカッテマスさんがマントを返してくる。
私はそれを受け取って、今のくだりにほんのりとした手応えを感じていた。
ワカッテマスさんの反応が妙にオタクっぽく見えたからである。
でも面白いなら少しは顔色を変えてほしかった。冷静になるとやっぱり怖い。
ξ;゚⊿゚)ξ「か、鑑定やいかに」
( <●><●>)「……そうですね、ハインリッヒを生かす理由がひとつ増えました。
お嬢様の特訓に関しては真剣だったようですね。成果もあったと」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ;゚⊿゚)ξ(……生かす理由って、これ下手な対応してたらハインさん死んでた……?)
だが、裏を返せばハインさんはまだ生きているという事である。
思わぬタイミングで吉報が舞い込んできた。だったらここは勇気を出してもう少し立ち入ってみよう。
ワカッテマスさんへの恐怖を押し殺しつつ、私はさりげなく今の話題を掘り下げにかかった。
ξ;゚⊿゚)ξ「そういえばその、ハインさんって今どこに……?」
( <●><●>)「彼なら魔界に送りましたよ。逃げ出せないよう厳重に監視しています」
ξ゚⊿゚)ξ「ああ〜」
ああ〜もう魔界か。
ごめんハインさん、それは詰みです。
.
482
:
名無しさん
:2021/08/30(月) 05:00:58 ID:je6Z08Ao0
( <●><●>)「さておき、試験の結果についてですが」
ξ;゚⊿゚)ξ「あっえっはい」
急に本題が出てきて驚く私。
居住まいを正し、必死の思いでワカッテマスさんの瞳を捉える。
( <●><●>)「……個人的には魔界にお戻りになるべきだと考えます。
ハインや勇者軍の事もあります。せめて半年、魔界に戻られてはいかがですか」
ξ;゚⊿゚)ξ
ξ;゚⊿゚)ξ「それは、個人的には、でしょう? 形式的にはどうだったのかしら」
死を覚悟して強めに聞き返すと、ワカッテマスさんは分かりやすく目をそらして返事を出し渋った。
だが数秒と続かない。彼は小さく息を吐き、調子を戻してから私に答えた。
( <●><●>)「もちろん合格ですよ。勝ったんですから、そこは絶対です」
ξ;゚⊿゚)ξ「……ほんとに?」
( <●><●>)「ほんとです。ハインの件が無ければ、なんて私が言うと思いますか?」
ξ;゚⊿゚)ξ
合格。
私の人生にほぼ存在しなかった2文字が明示され、肩の力がふっと抜け落ちる。
.
483
:
名無しさん
:2021/08/30(月) 05:01:41 ID:je6Z08Ao0
( <●><●>)「――ですがお忘れなく。結果はどうあれ厳戒態勢は変わりません。
地上での暮らしはそのままでも、勇者軍の件が落ち着くまでは護衛を付けます」
( <●><●>)「今後ともじっくりと鍛錬に励んで下さい。
今のままでは赤点回避がやっとですから、思い上がらぬよう」
ξ;´⊿`)ξ「思い上がりね、それは重々分かっているのだわ……」
嬉しさのあまり限界になったかと思えば、今度は重苦しい疲労感がどっと湧き上がってきた。
みんなの期待を裏切らずに済んだのなら――という自己肯定感に欠けた喜びで熱が冷めていく。
とにかく試験は合格とのこと。それに関して彼が二言を付け足すことは無かった。
ξ;゚⊿゚)ξ「……あの、ちょっといいかしら」
( <●><●>)「はい。なにかご質問ですか」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚ー゚)ξ「……いえ、わざわざこっちに来てくれてありがとう。それだけ」
なので、私もあえて二言を述べるような真似はしなかった。
.
484
:
名無しさん
:2021/08/30(月) 05:02:35 ID:je6Z08Ao0
≪3≫
ξ゚⊿゚)ξ「勝ったわ」
('A`)「嘘乙。もうちょい笑えるの頼むわ」
ξ゚⊿゚)ξ
('A`)
ξ゚⊿゚)ξ
γ/ γ⌒ヽ (゚A゚;) ヴェッ…
/ | 、 イ(⌒ ⌒ヽ
.l | l } )ヽ 、_、_, \ \
{ | l、 ´⌒ヽ-'巛( / /
.\ | T ''' ――‐‐'^ (、_ノ
.| | / // /
ミセ;*゚ー゚)リ「――お嬢様、マジでもう本当におめでとうございます!!」
ミセ;*´ー`)リ「一時は私の教育方針が間違っているのかと己を疑う日もありましたが(ry」
試験の結果を報告してみて、一番必死で喜んでくれたのはミセリさんだった。
手のかかる魔王城ツンで申し訳ない。もうゴールしていいよね……。
ミセ*゚ー゚)リ「やはり強靭な肉体こそが正義! 今後ともよろしくお願いします!」
ξ゚⊿゚)ξ「ありがとう。でも今後のトレーニングは自分で考えるから大丈夫なのだわ」
ミセ*゚ー゚)リ
ミセ;*゚ー゚)リ「は、反抗期をば……!?」
ξ゚⊿゚)ξ「窓ガラスを割って回るなどしたい」
.
485
:
名無しさん
:2021/08/30(月) 05:03:19 ID:je6Z08Ao0
(´・_ゝ・`)「あーはいはいおめでとう。俺は最初から信じてたよ」ペチペチペチペチ
相変わらず縁側で寝てる盛岡が心にもない称賛を送ってくる。
ぺちぺちぺちぺちと適当に太ももを叩いて拍手してるのがシンプルに腹立たしい。
おててとおててを合わせるくらいやってほしかった。
(´・_ゝ・`)「よーしどんどん話を進めておくれ。次は素直四天王の処遇についてか?」
川; д川「……帰りにケーキ買っていきましょうね、お嬢様」
話を急かす盛岡を横目に見つつ、申し訳程度に断りを入れてから貞子さんが前に出てくる。
そういえば居たな素直四天王。一場面にキャラが集中すると話題が渋滞して困る。
川д川「彼女達なんですけど、盛岡の進言でこっちに引き込もうという流れになっています。
利用価値は色々あると思いますが、どうされますか?」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「え、別にいらないけど」
川д川「なら処刑ですが」
ξ゚⊿゚)ξ「2択が極端なんな」
(´・_ゝ・`)(即答すんのもどうなんだよ)
.
486
:
名無しさん
:2021/08/30(月) 05:05:27 ID:je6Z08Ao0
(´・_ゝ・`)「なんだよなんだよ、俺がポケットマネーで雇う分には構わないだろ?
女友達を一気に4人。しかも仕事の付き合いだ、お前が気負う必要はない」
ξ;゚⊿゚)ξ「友達を金でって……バカじゃないの!?
あのね、友情ってのはお金じゃ買えないものなのよ!?」
人の心をなんだと思っているんだ。
私は盛岡を叱責した。
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ・`)「ところでお前、俺がやった財布はどうしたんだ?」
ξ゚⊿゚)ξ「えっ」
なぜ今その話題が出てくるのだ。
嫌なタイミングで重箱の隅をつつく盛岡はやはり陰湿だと思った。
(´・_ゝ・`)「どうなんだよ」
ξ;゚⊿゚)ξ「……カ、カラオケで落としました」
嘘をついても仕方がないと思い、私は正直に白状した。
彼に対して誠実になる必要はないのだが、事が事だけにやむをえない。
(´・_ゝ・`)「本当にか? 奪われたとか、なんか取り引きがあったとかじゃなく?」
ξ;゚⊿゚)ξ「はい」
(´・_ゝ・`)「普通に? なんの捻りもなく?」
ξ;´⊿`)ξ
(´・_ゝ・`)
冷たい視線に重い無言。
あれだけ口達者な盛岡が今までになく言葉を失っていて、流石に私も負い目を感じてきた。
(´・_ゝ・`)「……で、その財布をたまたま素直四天王に拾われたと」
ξ゚⊿゚)ξ「えっそうなの」
(´・_ゝ・`)「そうだよ」
そうらしかった。
.
487
:
名無しさん
:2021/08/30(月) 05:07:44 ID:je6Z08Ao0
(´・_ゝ・`)「そんで財布の中身だが、もちろん素直四天王が綺麗に使い切ってた。
口座も含めりゃ1000万以上はあったと思うが、さて、これはどういう意味だろうな?」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「うーんとね、わかんない」
(´・_ゝ・`)「お前にお小遣いをやるのはいいんだよ。日本円なんて魔物には大して価値ないしな。
うちの議会もそれくらいの予算は下ろしてくれてる。財布を落としたのも別にいい」
(´・_ゝ・`)「でもな、『財布を落としました、それが敵の軍資金になりました』ってのは問題になる。
分かるか? こんな間抜けな話はな、やろうと思えばいくらでも枝葉が付くんだよ」
ξ゚⊿゚)ξ「わかんないて」
(´・_ゝ・`)
(´^_ゝ^`)「あ〜あ! 用途不明の1000万円を上にどうやって説明しようかな!
素直四天王を雇った事にすれば誤魔化せるけど、それが無理ならどうしようかな!」
(´^_ゝ^`)「財布を落とした、それをたまたま敵に拾われたなんて信じてもらえるのカナ!?
むしろ敵との癒着を疑われて立場が悪くなりそう! 議会にも色んな派閥があるしなぁ!」
(´^_ゝ^`)「どうにか埋め合わせないと政治的に面倒そうだけどいいのかなぁ!
まぁ俺が揉み消せばいいんだけど、頼まれてもない不正で手を汚すのは嫌だなぁ!」
ξ゚⊿゚)ξワカラヌ
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ・`)「俺が敵になるかも」
ξ;゚⊿゚)ξ「――昨日の敵は今日の友、素直四天王とは今からズッ友です!!!!」
(´^_ゝ^`)「う〜〜〜ん大変よろしい! それしか聞きたくなかった!」
友情とか金とかさ、そういう話じゃないんだよな。
人間関係っていうのはもっとこう、もっとなんか手遅れになってから良し悪しが分かるんだよな。
始まんなきゃ何も分からない。最初から他人を取捨しようだなんて最低の発想だ。
たとえ傷つくことになっても構わない。私はずっとそうしてきたのだ。本当である。
.
488
:
名無しさん
:2021/08/30(月) 05:10:37 ID:je6Z08Ao0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
盛岡のゴリ押しに負けた後、私は貞子さんに呼び寄せられて小声で話しかけられていた。
川д川「実のところ、最初に彼女達を庇ったのは盛岡なんですよ」ヒソヒソ
ξ゚⊿゚)ξ「えーそれは嘘でしょw」
川д川「さっきのゴタゴタも最初は言ってませんでしたし、間違いなく何かあります」
貞子さんの話によると、なんとあの盛岡が率先して人間を庇ったというのである。
日和見主義者のコウモリ野郎が人間に化けたのが盛岡だろうに、正味信じられない話だった。
というか、こっちの話を疑われても貞子さんに記憶を見てもらえば一発で解消できるではないか。
さっきは彼に気圧されたが、そもそも貞子さんが居れば大抵の問題は何とかなるのだ。
他にも女衒として素直四天王を売り飛ばすなどできるはずだし、さっきの一幕はどうにも杜撰である。
何かあると言われると、まぁ確かに何かあるんだろうなと思わなくもなかった。
川д川「別にこっちも処刑とかするつもりはなかったんですよ。
それでも一応記憶の消去をと思ってたところ、そうする前に食い気味に止められて」
ξ;゚⊿゚)ξ「なんぞそれ……やっぱ議会絡み?」
川д川「可能性は高いです。少なくとも彼には別の目的があると思うべきでしょう。
彼は試験突破のサポートとして来てる訳ですから、それが済んだ今何をするのか……」
ξ;´⊿`)ξ「……言いたいことは分かったのだわ。
みんなの立場も分かってるから、私は何も言わないのだわ」
川д川「はい。ご迷惑にならない範囲で動いてみます」
魔王軍政治戦略議会の盛岡。魔導宮廷所属の貞子さん。魔王の右腕であるワカッテマスさん。
ミセリさんはまた別としても、私の周りには実に多様な立場と考えがある。
ドクオにしたって龍族の掟には従っているし、私にだって個人的な思いがある。
ξ;´⊿`)ξ
この多様性に対して繊細な立ち回りを求められる感じ、魔界に居た頃のストレスが甦るようだった。
.
489
:
名無しさん
:2021/08/30(月) 05:13:17 ID:je6Z08Ao0
≡┌( ^ω^)┘「ツーーーーン!!!」ドテドテ
ξ゚⊿゚)ξ「ええいあデブが突っ込んできた」
そのとき内藤くんが突然私達のところに飛び込んできた。
呼び捨てを許す仲でもない筈だが、ここ最近の彼の人懐っこい雰囲気はやけに子供っぽい。
恐らくハインさんが捕まったせいで気が触れたのだろう。そっとしておこう。
川д川
ξ゚⊿゚)ξ”
お気をつけて、と視線を送ってくる貞子さんに軽く頷いて応える。
ひとまず面倒事は後回しにして、私は内藤くんにツッコミを入れることにした。
ξ゚⊿゚)ξ「内藤くん、ぶつかり稽古なら柱にやった方がいいと思うのだわ」
(; ^ω^)「全然違うお! 確かにツンは柱みたいな体型してるけどそんな失礼な真似はしないお!」
ξ゚⊿゚)ξ「体型でイジった私が悪かった。私にだって曲線はあるぞ」
( ^ω^)「マジで!? 触らせてほしいお!」
急にスケベだなお前。
.
490
:
名無しさん
:2021/08/30(月) 05:15:43 ID:je6Z08Ao0
ヘ(* ^ω^)ノ「とにかく試験合格おめでとうだお!
早速どっか遊びに行こうお! 祝勝会とかやりたいお!」
ξ;゚⊿゚)ξ「ええ〜そんな急な……」
ミセ*゚ー゚)リ「別にいいですよ。今日は私も付き合いますから」
('A`)「意向を無視して付き合わされる俺も居るぞ」
ξ;゚⊿゚)ξ
ξ;´⊿`)ξ「ええ〜……」
いつメンがぞろぞろと出揃ってきてなんかもうわちゃわちゃ感がすごい。
だが私が気後れするのも仕方がなかった。今の私はどちらかというと疲れているのだ。
今日まで溜め込んできた疲労がどっと溢れてきた感じで体が重い。
このプレッシャーが半端に残った感じの胃もたれ、1回自分で整理しないと絶対に片付かない。
要するに1人になりたい。帰って寝たい。今の私は帰って寝たいマンだった。
ミセ*゚ー゚)リ「だったら今日は健康ランドにでも行きます? 各自適当に過ごす感じで」
ξ;´⊿`)ξ「健康ランドって、なにその絶妙に惹かれる提案は……」
とは思うが、なまじ善意が相手なので「行かなくてよくねえか?」とは少し言いにくい。
ああ〜流される。もうこれ流れで行くんだろうなと諦めのように悟ってしまう。
でも健康ランドならいいかという気持ちもちょっとあった。健康ランドだしな。
ミセ*゚ー゚)リ「貞子、あっちの素直ズも連れてくけどいいわよね?」
川д川「大丈夫よ。変なことしたら内蔵全部爆発して死ぬよう制約掛けてるから」
川 ゚ -゚)「――えっ?」
川;゚ -゚)「おい待て貴様! 今なにか物騒なことを言ったな!?」
ノハ;゚⊿゚)「やめとけねーちゃん! 逆らったらここで爆破されちまうよ!」
o川*゚-゚)o「……健康ランドって何?」
lw´‐ _‐ノv「お風呂屋さん。エロくない方の」
インフォームドコンセントの欠如を感じる。
.
491
:
名無しさん
:2021/08/30(月) 05:16:15 ID:je6Z08Ao0
ミセ*゚ー゚)リ「お嬢様もそれでいいですか?」
ξ゚⊿゚)ξ「いいよ」
⊂( ^ω^)「よーし! それじゃあみんなで健康ランドだお!」
( と)
/ >
かくしてみんなで健康ランドに行った。
素直四天王とも裸の付き合いを経てそれなりに仲良くなった。
まゆちゃんも誘えばよかったなぁ。
.
492
:
名無しさん
:2021/08/30(月) 05:17:20 ID:je6Z08Ao0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
(´・_ゝ・`)「お前、けっきょく最後まで言わなかったな」
川д川「……どれを?」
ツンちゃん御一行が去った後、残された2人は短く言葉を交わしていた。
ハインの屋敷は貞子によって十分な結界が施されている。
ここで何を話そうと、秘密が外に漏れる事はなかった。
(´・_ゝ・`)「妖刀首絶ちの洗脳についてだよ。
自分があの刀の影響を受けてたって話、あいつ知らないだろ?」
川д川「……知らなくていいでしょ。教えたところで話が拗れるだけよ」
(´・_ゝ・`)「内藤ホライゾンや毛利まゆについても同じか?
従者のくせして不誠実な対処をするんだな。おお怖い」
川д川「余計な情報はシャットアウトする。世話役としては当然の仕事」
(´・_ゝ・`)「よく言うぜ、恣意的な情報操作だろうが。俺の仕事と大差ねえぞ」
ハインリッヒを捕らえてすぐ、貞子はハインの記憶を探って一連の情報を抜き出していた。
彼の来歴と目的、妖刀によって洗脳を施した対象などはとっくに確認済み。
しかしそれらの情報は魔王城ツンには一切伝わっておらず、つまり完全にハブられていた。
ツンが必要以上に人間に肩入れしていた訳。
内藤ホライゾンのキャラがいまいち安定しなかった理由。
一般人の毛利まゆがハインの手駒に使われていた事実。
妖刀云々を話してしまえば以上の事柄が一挙に片付くのだが、貞子はあくまでそれを隠した。
彼女は、魔王城ツンに行動の動機を与えたくなかったのだ。
(´・_ゝ・`)「――ま、もう手遅れだと思うけどな」
そんな彼女の思惑を知ってか知らずか、盛岡はまた主語曖昧な台詞を空に投げた。
貞子は彼を一瞥し、事務的に言い返す。
.
493
:
名無しさん
:2021/08/30(月) 05:19:23 ID:je6Z08Ao0
川д川「妖刀の影響が特に強かった彼にも即死レベルの制約は課してあるわよ。
怪しい動きをしたら大量の魔力が体に流れ込んで木っ端微塵。血の一滴も残らない」
(´・_ゝ・`)「で、内藤ホライゾンの記憶は見たのか? どうだったよ」
盛岡は食い気味に追及した。
川д川「それも異常なし。汚れ仕事に巻き込まれてて同情したくらい」
(´・_ゝ・`)「行動に一貫性はあったか? 全部の行動、ハインを理由に説明できるか?」
川; д川「……概ねそうだと思うけど妙に食いつくわね。今度は情報収集が仕事なの?」
(´・_ゝ・`)
(;´-_ゝ-`)
彼は項垂れ、己を戒めるように強く口をつぐんだ。
数秒を経て、彼はすぐ元に戻った。
(´・_ゝ・`)「まぁそんなとこ。素直四天王を引き込んだのも手遅れに対する備えだよ」
(´・_ゝ・`)「勇者軍には居場所がバレてる訳だしな。いつ行動を起こされたって不思議じゃない。
ツンを名指しで『あいつは魔物です』って喧伝される可能性もゼロとは言えないだろ?」
川д川「そうなったら魔界に連れ帰るだけよ。仕方なくね」
(´・_ゝ・`)「……へえ、そおなんだぁ」
勇者軍を放置していれば遠からずツンの日常は崩壊する。
そんな分かりきっている未来に対し、彼女は対策もせず『仕方なく』で済ませようとしている。
盛岡は、貞子という一個人の狙いはそこにあるのだと推察した。
( <●><●>)
(´・_ゝ・`)
そして次に、ここまですっかり存在感を消していたワカッテマスに一瞥を送る。
魔王の意向に従う彼は 『魔王城ツンを魔界に連れ帰りたい』 と明け透けに明言していた。
敵への対処に集中するべく、せめて一時でもツンを盤外に移したいというのが現場の本心なのだろう。
貞子はツンの味方だが、敵の侵攻を危惧してその考えに同調したとしても不思議ではない。
合理的な判断だ。それが彼女の役割なのだろうと、盛岡は暗に事情を悟っていた。
.
494
:
名無しさん
:2021/08/30(月) 05:20:55 ID:je6Z08Ao0
(´・_ゝ・`)(……かといって、貞子の魔術は万能じゃあない。
俺の記憶を読みきれてないのがいい証拠だ。内藤ホライゾンも要注意のままか)
(´・_ゝ・`)(ここまで話が拗れるならいっそ全部見抜いてくれた方が早いんだけどな。
そうなりゃ俺も清々しく元の予定に戻れるものを……)
狂いまくった予定を惜しみながら、盛岡は先日見つけた手掛かりの事を思い返した。
巡り巡って自分のもとに帰ってきたエルメスの長財布、その中にあった他愛のないメモ。
彼はメモの内容を頭に浮かべ、今後の身の振り方をどうするべきか考え始めた。
(´・_ゝ・`)(メモに書かれていた文言はひとつ、『誰も死なせるな』)
(´・_ゝ・`)(……どこにあんだよ、そんなルート)
孤立無援、ヒント皆無での一発勝負を強いられる盛岡デミタス。
行き先不明の片道切符は、彼を鈍行列車に乗せて次の舞台へと送り出していた。
.
495
:
名無しさん
:2021/08/30(月) 05:22:53 ID:je6Z08Ao0
≪4≫
〜健康ランド〜
ξ゚⊿゚)ξ「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙」
マッサージチェアに全身の筋肉をめちゃくちゃにほぐされ始め、30分が経過していた。
諸々の経過を省いて言うと、今の私は健康ランドの女と言っても差し支えない有り様だった。
気持ちいいのは当たり前。甘い快楽の中でくつくつと煮え続ける喜びは決して私を逃さない。
これが終わったら次は足のマッサージをしてもらおう。それも済んだら次はメシを食おう。
ミセ;*゚ー゚)リ「お嬢様、流石にそろそろ帰りませんと……」
ξ゚⊿゚)ξ「もういいの。私はここで怠惰を貪るのよ」
こちらの健康ランドはなんと24時間営業である。
しかもエロくない方のエステとか仮眠スペースとか色々あって従業員の態度もよい。帰りたくない。
ミセ;*゚ー゚)リ「ダメですって! 明日の学校はどうなさるんですか!?」
ξ゚⊿゚)ξ「1日くらいサボっても大丈夫なのだわ」
ミセ;*゚ー゚)リ「ダメだ、快楽に弱すぎる……」
ゆるゆるモードに火を点けたのはミセリさんなのだ、私は悪くない。
もうこのまま健康ランド巡りに人生を費やすのも吝かではないな。いつか魔界にもテルマエを作ろう。
.
496
:
名無しさん
:2021/08/30(月) 05:26:32 ID:je6Z08Ao0
川;゚ -゚)「……あの、我々はもう帰っていいだろうか。
というか私以外は先に帰らせたんだが……」
そんな折、低頭平身でやってきた素直クールがミセリさんに声をかけてきた。
帰り支度も済んでいるのか、彼女は既にコスプレ用学生バッグを小脇に抱えていた。
夜はまだまだこれからだというのに何という体たらくだ。寂しいからもっと居てほしい。
ミセ;*゚ー゚)リ「あーうん、いいわよ全然。日付も変わっちゃってるしね」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ;゚⊿゚)ξ「え待って、日付が!?」
ミセ;*゚ー゚)リ「いやもうクソ夜中ですって! だから何度も帰りましょうって!」
時計を見ると時刻は深夜3時。名実ともにクソ夜中だった。
仮眠スペースに行ったきりドクオと内藤くんが帰ってこないのはそういう理屈だったか。
あいつら私を放ってガチ寝してやがるな。
ξ;゚⊿゚)ξ「えー帰んないでよクーちゃん! 爛れた恋バナとかないの!?」
川;゚ -゚)「こっちにも都合があるんだよ。あとクーちゃん呼びはやめてくれ距離感が狂う」
クールは腰に手を当てて黒髪をなびかせた。
相変わらずのコスプレ制服姿、しかし風呂上がりだと妙に色っぽく見える。
この人と裸の付き合いをしたのか。男子中学生基準の感動がぐっと込み上げてくるな。
ミセ;*゚ー゚)リ「ほらほらお嬢様も帰りますよ! 荷物取ってきますから、はい、ロッカーの鍵!」
ξ;´⊿`)ξ「ウグゥー! とんだ失楽園なのだわ……」
クソ深夜だしみんなお開きムードだし、私も諦めてミセリさんにロッカーの鍵を明け渡した。
それを受け取るやいなや、彼女は瞬時に踵を返してロッカーの方へと駆けていった。
あと数分もしたらマッサージチェアともお別れである。とてもつらい。
.
497
:
名無しさん
:2021/08/30(月) 05:28:37 ID:je6Z08Ao0
ξ;゚⊿゚)ξ「あ゙あ゙あ゙帰りたくないのだわ……」
川;゚ -゚)「散々エンジョイしただろうが。お前けっこう貧乏性だな……」
素直四天王の長女らしく小言を並べる素直クール。
私はそれを真摯に受け止め、強い決意をもってマッサージチェアを脱出した。
ξ;゚⊿゚)ξ「あ゙あ゙あ゙でも帰りたくない!!」
川 ゚ -゚)「ああそう。じゃあ私は帰るから。また明日、朝一番で顔を合わせよう」
クールはそう言ってバッグをまさぐり、中からビー玉付きのストラップを取り出した。
そのビー玉は、彼女と初めて戦った時にも見かけた謎アイテムにそっくりだった。
ξ゚⊿゚)ξ「……ねぇそれ、周囲に結界を張るヤツ?」
私は少し警戒して彼女に尋ねた。
裸を見せあった手前こんなに早く裏切るとは思えないが、とりあえずシリアスぶってみる。
川 ゚ -゚)「勘違いするな。これはまた別のヤツだ。
移動用のアイテムというか、こいつを割ると瞬間移動できるんだよ」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「なんでそんなもん人間ごときが……」
想像してない答えがきて、私はまたしても人間見下しムーブを漏らしてしまった。
結界とか瞬間移動とか、私にもできないスゴ技をビー玉なんかで実現しないでほしかった。
ワザップか、ワザップで調べればいいのか。
.
498
:
名無しさん
:2021/08/30(月) 05:30:16 ID:je6Z08Ao0
ξ;-⊿゚)ξ「……そのビー玉、貞子さんに渡したらすごい喜ぶと思うわよ。
私が言っても説得力無いけど、魔術的には絶対に一級品だし……」
川 ゚ -゚)「そうでもないって。これの移動先は一箇所だけだし、大して便利じゃないぞ」
彼女はビー玉をつまみ指先で転がして見せた。
あれを割ったら一瞬でテレポートできるのだろうか。便利の基準が違いすぎて吐きそうだった。
川 ゚ -゚)「まぁ媚びを売る必要が出てきたら考えるよ。じゃあまたな」
ξ゚⊿゚)ξ「うむ」
彼女はそのまま指先に力を入れ、パキ、と音を立ててビー玉を砕いた。
それと同時にビー玉から溢れ出す異様な魔力。
彼女の姿はすぐさまその魔力に取り囲まれ、一瞬にして私の視界から消え――
.
499
:
名無しさん
:2021/08/30(月) 05:34:28 ID:je6Z08Ao0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ミセ*゚ー゚)リ「お嬢様〜、支度が済みましたよ〜」
( ´ω`)「んお……眠いお……」スピスピ
(;'A`)「起きろ内藤。帰んねえと」
数分経って支度を終えると、ミセリは仮眠スペースに居たドクオ達を連れてツンのもとに戻ってきた。
しかしツンが座っていたマッサージチェアはもぬけの殻で、目の届く範囲にも彼女の姿はなかった。
ミセ*゚ー゚)リ
ミセ*゚ー゚)リ「ドクオ、今すぐお嬢様を探すわよ」
('A`)「――ちょいミセリさん、あれ」
2人はほぼ同時に言い、それぞれが発見した緊急事態に表情を曇らせていた。
ツンを最優先とするミセリはドクオを無視して話を進めようとしたが、
( ^ω^)「……勇者軍」
内藤ホライゾンの無視できぬ独り言が聞こえ、ミセリは咄嗟に彼らの視線を後追いした。
ミセ;*゚ー゚)リ「……ちょっと、これって」
そうして彼女は壁際の大型テレビに目を奪われ、その直後、アナウンサーの語りに耳を疑った。
.
500
:
名無しさん
:2021/08/30(月) 05:35:23 ID:je6Z08Ao0
|~二二二二二二二~| 『――繰り返します。臨時ニュースです』
| | | |
| | | | 『特例外来生物、通称魔物の現存が都内で確認されました』
| | | |
|_二二二二二二二 ,,| 『これを受け、政府は先ほど当該地域への自衛隊派遣を閣議決定しました』
|二二二二二二二二|
| [::=====:::○:]...| 『マニー防衛大臣は閣議後の会見で「すべて金で解決する」と述べ――』
|二二二二二二二二|
.
501
:
名無しさん
:2021/08/30(月) 05:35:46 ID:je6Z08Ao0
#06 幕間 〜群盲撫ツン〜
.
502
:
名無しさん
:2021/08/30(月) 05:37:19 ID:je6Z08Ao0
#1
>>2-65
#2
>>74-117
#3
>>122-160
#4
>>169-212
#5-1
>>231-266
>>271-289
#5-2
>>294-324
#5-3
>>330-363
#5-4
>>371-416
#5-5
>>422-461
#6
>>467-501
今回でAルートの序盤が終わりました
次回投下は10〜11月になりそうです 2年目もぼんぼる!(^ω^)
503
:
名無しさん
:2021/08/30(月) 08:09:45 ID:k6hZdaiA0
乙乙
504
:
名無しさん
:2021/08/30(月) 21:09:00 ID:oH7qdkuY0
うおー投下早くて嬉しいおつ!
内藤の性格もハインが妖刀で改造してたってこと?
やべえな妖刀
次も楽しみに待ってます
505
:
名無しさん
:2021/08/31(火) 18:43:14 ID:nXM1egM.0
安定した更新で助かる
ツンちゃんが心配だ
506
:
◆gFPbblEHlQ
:2021/11/05(金) 15:47:57 ID:vOUx5rwE0
お待たせしました。今月13日くらいに7話目を投下します
突然こんなこと言ってごめんね。
でも本当です。
次回ちょっとだけ考察を要するので気をつけて
それがやんだら少しだけ間をおいて、戦争が始まります
よろしくお願いします
>>503
ありがとうございます!
>>504
実際そうだと思っている人達と、そうじゃない人達が居ます!フクザツ!
>>505
すまない…
507
:
名無しさん
:2021/11/05(金) 16:00:36 ID:McInbeeo0
うおわ〜〜〜〜たのしみだ〜〜〜〜〜〜
508
:
名無しさん
:2021/11/05(金) 22:18:46 ID:f6b5XDtE0
よっしゃ、生きる理由が増えたぜ
509
:
名無しさん
:2021/11/13(土) 00:09:32 ID:5UWcgKYM0
今日追いついたので近日中に投下あるっぽい発言に歓喜
全裸待機するわ
510
:
◆gFPbblEHlQ
:2021/11/16(火) 23:52:07 ID:lQcTlYWQ0
≪1≫
川 ゚ -゚)「――……っと」スタッ
健康ランドの景色が消えて、視界のすべてが薄暗く塗り替わる。
素直クールは静まり返った周囲にさっと目を配り、テレポートの成功を事実として確認した。
山小屋のように粗野な室内。暖炉の火種は残っているが、窓を見遣るに夜更けの頃合い。
先に帰った素直四天王達も彼女を待たずに床についたのだろう。部屋に人気はなく――
\川 ゚ -゚)/ 「よ〜し私もさっさと寝、」
ξ゚⊿゚)ξ
川 ゚ -゚)「る、」
――部屋に人気はなく。
ξ;゚⊿゚)ξ「ここisどこ」
否、その声は素直クールのマブダチ、魔王城ツンではないか。
クールは視界の隅にあったツンを改めて直視すると、数度瞬きを繰り返し、露骨に眉をひそめて見せた。
_,
川;゚ -゚)「……ああ?」
ξ゚⊿゚)ξ(お前なんで居んのという視線キツいキツすぎる)
さっき健康ランドで別れたはずの2人。
それが相変わらず顔を突き合わせている現実、双方にとって等しく意味不明だった。
状況への理解が及ばず、合わせ鏡のように動かない2人。しばし沈黙が流れていった。
.
511
:
名無しさん
:2021/11/16(火) 23:54:04 ID:lQcTlYWQ0
川;゚ -゚)
ξ;゚⊿゚)ξ
川;゚ -゚)「いや、お前なんで居るんだ?」
ξ;゚⊿゚)ξ「こっちが聞きたいのだわ」
川;゚ -゚)
川; - )「……いや待て、一旦ここで待て。私では無理だ。家主を呼んでくる」
クールは片手で目元を覆い、そのままツンを置き去りにして部屋を出ていった。
かくして数分後、彼女はオイルランプを携えて部屋に戻ってきた。
('、`*川
――見知らぬ女性を、ひとり引き連れて。
.
512
:
名無しさん
:2021/11/17(水) 00:01:35 ID:pFrDK2CI0
川;゚ -゚)「ほらあれですよアレ。師匠にも見えてますよね?」
('、`*川「うーん、確かに居るねえ」
ξ゚⊿゚)ξ(扱いが心霊現象)
ボリュームのある黒の長髪を腰下まで伸ばした大人の風体。
着ている衣服はもろにパジャマ(水玉)だが、低めの声に飾らない素振りが相まって幼くは見えない。
どこか気が抜けた大人。彼女を一目で評するならば、これが最も端的な第一印象になるだろう。
ξ;゚⊿゚)ξ(……えっ?)
しかし、そういう無難な第一印象はあくまで一目に基づくもの。
彼女は素直クールが『師匠』と呼んだ人物なのだ。その実力はとても気になる。
だからツンも安易には印象を定めず、興味本位で彼女の実力を見定めようとしたのだが――
ξ;゚⊿゚)ξ(こ、この人……!)
レベル
ξ;゚⊿゚)ξ(私のパパとか、ワカッテマスさんとか、そういう領域に居るのだわ……!)
――結果、ツンの内から引き出されたのは最上級の比喩であった。
ツンの父親である現魔王のレベルとは、即ち『測定不能』を意味する天上の領域。
今ある物差しではこれ以上は測れない。いずれ自分も到達するはずの雲の上。
('、`*川「いや〜ほんとに実物なんだねえ。まさかそっちから来るとは思ってなかったよ、マジで」
そんなところに生身の人間が、これまた突拍子もなくエントリーしてきた衝撃たるやとてもすごい。
そう簡単に飲み込めるものではない。いかな自分の見立てと言えど、信じられなかった。
川 ゚ -゚)「これどうしましょう。私のテレポートに巻き込まれたんですかね」
('、`*川「だろうねえ。不慮の事故でもない、まさかの正規入場だ」フムフム
息を呑んで立ち尽くすツンを肴に推察を進めるパジャマの彼女。
やがてその推察も落着したのか、彼女はツンの前に立って背筋を伸ばし、得意げに深く頷いていた。
('、`*川「いやー、クールもまた珍しいお客さんを連れてきたね。
初めましてを2度言う相手、めちゃくちゃ久し振りだ」
ξ;゚⊿゚)ξ「……?」
川 ゚ -゚)「ああ、独り言は気にしないでくれ。話が拗れる」
.
513
:
名無しさん
:2021/11/17(水) 00:03:14 ID:pFrDK2CI0
('、`*川「――はい、こんにちは。そっちの時間だとこんばんは?
ついでにおはようとおやすみ。そして何より初めまして」
('、`*川「よく来たね、また会えて嬉しいよ」
ξ゚⊿゚)ξ
_,
ξ;゚⊿゚)ξ「は、はじめまして……?」
優しい声色で発せられた挨拶全部盛りみたいな言葉の羅列。
ツンはその中から最も無難なやつを選び、恭しく繰り返した。
.
514
:
名無しさん
:2021/11/17(水) 00:06:12 ID:haZuTTNw0
来てるじゃん!
515
:
名無しさん
:2021/11/17(水) 00:15:40 ID:pFrDK2CI0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
川 ゚ -゚)「そんじゃ私はこれで。おやすみなさい」
('、`*川「はいはい。今日もおつかれ〜」
暖炉の薪がパチパチと燃える中、素直クールは我先にと部屋を後にした。
面倒臭いしもう寝たいんだよ。彼女の去り際の視線はツンを無言で突き放していた。
ξ゚⊿゚)ξ Help me.....
('、`*川「それじゃあ早速、質問があれば」
残された2人は暖炉前のソファにそれぞれ座っていた。
ソファの間には小さなテーブルが置かれており、心ばかりの水と焼き菓子が用意されている。
ツンは焼き菓子(かなり焦げているクッキー)を1枚かじり、今一度現状を整理しつつ言葉を選んだ。
ξ;゚⊿゚)ξ「……あの、じゃあ名前から。私は」
('、`*川「魔王城ツンでしょ。それは知ってる」
彼女は言葉尻を横取りしてほくそ笑み、切れ長の垂れ目でツンを覗き込んだ。
出鼻を挫かれたツンは萎縮して目を細める。助けを求める気持ちがより強くなっていた。
('、`*川「あなた、『テストで0点にならないため』に名前から書くタイプでしょ?
『普通そうするから』って理由じゃなくてね。人間関係も狭く深くって感じかな?」
ξ;゚⊿゚)ξ
('、`*川「あ、そんで私は伊藤ペニサスね。先周はどうも」
一方的に話を広げ、彼女は肘掛けに乗せた腕をくるりと翻した。
そのまま「おはよう!朝4時に何してるんだい?」めいた姿勢になり、質問を続けるよう静かにツンを促す。
ツンはめげずに続けた。
.
516
:
名無しさん
:2021/11/17(水) 00:24:10 ID:pFrDK2CI0
ξ;゚⊿゚)ξ「えっと、……私達って会ったことないわよね?
どうしてそんな顔見知りみたいな、でも初見とも取れる感じで喋るの?」
('、`*川「……あーそこから。まぁそうだよね、あー」
ペニサスと名乗った女性は優柔に呟いて頬杖をついた。
それから少し唸って見せて、遠くを見つめながら口を開く。
('、`*川「なんてーか、私ってそれが両立するタイプなんだよね。
深層干渉防御の副作用って言い方もできるけど、まぁ聞き流すのが無難だと思うよ」
_,
ξ;゚⊿゚)ξ シンソ…カンショ…?
ツッコミどころが多いな。さては誘い受けか?
先程の印象が無ければ間違いなくそう言っていたツン、ここもぐっと堪えた。
ξ;゚⊿゚)ξ「あの、だったらもう本題なんだけど、私ここから帰れるのよね?
なんか流れでこうしてるけど、正直さっさと帰りたいのだわ……」
ツンは身を乗り出してペニサスに尋ねる。彼女が事を急く理由は健康ランドに居るミセリ達だった。
向こうからすれば突然ツンが消えたようなもの。無用な心配をかけて大事になっても困るのだ。
色んな意味で早く帰りたい。面倒事に直面したツンは大体いつも帰りたがっている。
ξ;゚⊿゚)ξ「あとなんていうか、事と次第によっては素直四天王の内臓も爆発しちゃうのよ。
結構のんびりしちゃったし、すぐ帰れるなら急ぎたいんだけど……」
('、`*川「あーあの内臓のやつ? あの術式なら適当にイジっといたから問題なし。
今の仕様でも血を吹いて胃がひっくり返る程度には痛いけどね。まぁいいでしょ」
ξ;゚⊿゚)ξ
ξ;-⊿-)ξ「いいからとにかく帰らせて。みんなを心配させたくないのだわ」
貞子の魔術をイジったとか、気になる部分も全力で聞き流していく。
ツンはコップの水を一気に飲み干すと、あえて無作法に立ち上がって結論を確言した。
ξ;゚⊿゚)ξ「はいごちそうさま! もう帰るのだわ!」
('、`*川「えーほんとにもういいの? 聞けば色々答えるのに」
ξ;゚⊿゚)ξ「とにかく素直四天王の知り合いなんでしょ?
それだけ分かってれば別にいいのだわ。機会があればまた今度、ゆっくり話しましょう」
.
517
:
名無しさん
:2021/11/17(水) 00:36:16 ID:pFrDK2CI0
('、`*川
('、`*川「だったら逆に質問があるんだけどさ」
途端、ペニサスは声を強めて別の話題に入ろうとした。
言外に込められた強かな意図――これに付き合わなければ絶対に帰さない。
ξ;-⊿-)ξ「……どうぞ」
ツンは甘んじて彼女の話を受け入れ、小さな嘆息と共にそう応えた。
('、`*川「急いでるのにありがとね。じゃあ聞くけどさ、その右腕ってどうしたのかな?」
彼女はツンの右腕を指差して、それからあえて数秒の間を作った。
薄暗い気迫。それがぴたりと首筋に張りつく。
ツンは右腕を隠すように身を捩り、弱々しく表情を曇らせた。
ξ;゚⊿゚)ξ「……な、なんで今、それを」
('、`*川「誘導尋問だよ。だって話してくれないんだもん、あなたが本当に聞きたがってる事」
ξ;゚⊿゚)ξ「本当、って……そんなん……」
右腕と聞いて、なにより先に思い出されたのは試験中の出来事だった。
━━━━━━━━━━
lw´‐ _‐ノv「すまんね」
ξ;゚⊿゚)ξ
━━━━━━━━━━
あのとき、素直シュールによって完全に破壊されたツンの右腕。
そしてその腕は意味不明な過程を経て完治、かくしてツンは勝利を収めるのだが――。
実際のところ、件の謎回復について分かっている事は何もない。
後日貞子が詳しい調査を行う予定だが、あれについての説明は、今は誰にもできなかった。
だからそもそも『他人に聞く』という発想がなかった。ペニサスの意図はあまりに唐突だった。
.
518
:
名無しさん
:2021/11/17(水) 00:43:16 ID:pFrDK2CI0
ξ;゚⊿゚)ξ「……答えたいけど、分からないのだわ。
気がついたら治ってて。そのうち調べる予定なんだけど……」
('、`*川「またまたぁ、分からないって事はないでしょう。
なにか予兆があったはずだよ。こじつけでもいいから考えてみて」
ξ;゚⊿゚)ξ「あの、ペニサスさんは答えを知ってるの?」
('、`*川「私は知らないよ。知ることもないだろうし」
ξ;゚⊿゚)ξ
━━━━━━━━
. _ ∩
レヘヽ| |
(・x・)
”c( uu} ,,ノミ入
丿 ノ
´~~~
━━━━━━━━
ξ;-⊿-)ξ「……でも私、治癒魔術なんて使えないのだわ」
('、`*川「だったら別の方法で元に戻ったのかも? ほら、ちょっと考えてみようよ。
別の腕と交換したとか、時間を進めたり戻したりとか、なんかあるでしょ?」
ξ;´⊿`)ξ「いや無いでしょなのだわ。そんなんもっとできんが……」
('、`*川「可能性の話なんだから気楽にいこうよ。結果としてその腕は治っているんだから。
ほらあれ、マインドマップとかってやつ? ヒューリスティクスも無駄じゃないよ」
ξ;´⊿`)ξ「いやぁ、だからって今ここで掘り下げなくても……」
('、`*川「……あー、答えしか知りたくない感じ? 現代っ子だね〜」
というか、今こっちには貞子という魔術関連の大御所が居る。
そんな相手が身近に居るなら、ここでどういった考察をしても最終的には的を外してしまうのだ。
なのでとりあえず安静にして、後日ちゃんとした医者に診てもらって、それから考える。
謎回復も一旦 『そういうものだから』 で片付けといて、なんかもう、そんな感じだった。
.
519
:
名無しさん
:2021/11/17(水) 00:48:39 ID:pFrDK2CI0
('、`*川「とはいえ、流石にそこまで消極的だとちょっと心配かな」
('、`*川「再現、再走、再生、再会、……あいつの狙いは再命名だっけか。
装われた形式的無知の読解、その外側にある点はまだ結べないか……」
ξ゚⊿゚)ξ「そう……ですね」
ツンは全てを理解したような真剣さで頷いた。
実際のところ何も理解していない。大体いつもそう。
('、`*川「ツンちゃんはどう思う? けっこう厳しいスタートでしょ」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「絶好調を100とするなら40、……いや35ってところですね」
('、`*;川「……ああ、そう」
.
520
:
名無しさん
:2021/11/17(水) 00:53:30 ID:pFrDK2CI0
('、`*川「あーそうだ、そっちの盛岡とはどのくらい腹割って話してるの?
それ次第では私の動きも変わってくるんだけど……」
続いての質問には聞き馴染みのある名前が含まれていた。
どこか既視感のあるペニサスの言動が彼の名前と結びつき、「ああ〜なるほどね」となるツン。
ξ゚⊿゚)ξ(でも……)
でもあいつと腹を割って話す機会など一度でもあっただろうか。いや無い。
誰彼構わず煙に巻いて好き放題してるオッサン相手にそんな殊勝なことするか? いやしない。
ξ゚⊿゚)ξ「ははは」
結果、ツンは笑って誤魔化すしかなかった。
('、`*川「……なるほどね、オッケー分かった。
そっちとの距離感は掴めたよ、もう引き止めない」
そう言いながらペニサスは悠長に立ち上がり、部屋のドアに向かってパチンと指を鳴らした。
たったそれだけの動作を終えると、彼女は素直に道を譲り、片手を広げてツンを振り返った。
('、`*川「はいどうぞ、出口はこちらです。健康ランドのトイレに繋げといたよ。
向こうも2分くらいは経ってるけどいい? 一応時間も合わせとく?」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ;゚⊿゚)ξ「えっ、繋げたってなに、別々の空間を!?」
('、`*川「うん」
Σξ;゚⊿゚)ξ「指パッチンだけで!?」
('、`*川「なしでもできるよ。やり方知りたい?」
ξ゚⊿゚)ξ「えーめっちゃ気になるんですけd……」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ;-⊿-)ξ「――いや帰る! 今はとにかく帰るのだわ!」
正直めちゃくちゃ気になる。しかしツンは頑なに帰りを急いだ。とてもえらい。
ただでさえ現状は意味不明なのだ。『そういうものだから』を多用しなければキリがない。
ここで盛岡の名前が出てくるのもかなり縁起が悪い。ツンは早く帰って寝たかった。
.
521
:
名無しさん
:2021/11/17(水) 00:57:32 ID:pFrDK2CI0
≪2≫
ξ;´⊿`)ξ「うう〜……これ絶対まともな帰宅ルートじゃないのだわ……」
帰りのドアを開け放つと、その向こうには視界のすべてを塗り潰す暗闇が広がっていた。
健康ランドに続いているとは到底思えない異様な有様。ツンも人並みに二の足を踏んでいた。
そんなツンを励まそうと、ペニサスは何食わぬ顔で彼女の肩を揉みほぐした。
('、`*川「これ慣れると結構楽しいんだよ? こないだなんてダークライとかゲットできたし」
ξ;゚⊿゚)ξ「それ万歩計持ってないと詰まない?」
('、`*川「まぁ変なことしなければ大丈夫だって。
ツンちゃん■■■■の■■とか持ってないでしょ?」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ、持ってないけ――」
ξ;゚⊿゚)ξ「……え? いまなんて言っ」
('ー`*川「なら大丈夫だよ死にゃしないから! ほら元気出してこ!」
ξ;゚⊿゚)ξ
('、`*川
ξ;゚⊿゚)ξ「あ、はい」
ペニサスとの対話を諦めたツンは暗闇に手を突っ込み、続けて数歩、ゆっくりと前に進んだ。
.
522
:
名無しさん
:2021/11/17(水) 00:59:42 ID:pFrDK2CI0
('、`*川「あーそうそう。そんな感じでいけば大体オッケーだから」
ξ;゚⊿゚)ξ「んなこと言っても光すらな――い……ッ!」
――暗闇に踏み込んだ直後、ぐわんと体が傾く感覚に襲われて足を止める。
三半規管が異常をきたしている。平衡感覚が一気に崩壊した。
ツンは遠心力を伴う錯覚に大きくよろめき、その場で千鳥足を踏んで頭を抱えた。
ξ; ⊿゚)ξ(この空間、やっぱりまともじゃ……!)
肢体を引き千切らんほどの浮遊感が四方八方に暴れ回り、体の感覚が端から蒸発していく。
しかし不思議と倒れはしない。ツン自身でもそれが奇妙で、五感の混乱はさらに悪化した。
ξ; ⊿゚)ξ …
ξ゚⊿゚)ξ(あっダメだ吐く)オロロロロ
船酔いと陸酔いと高山病と減圧症が同時に襲ってくるような即死攻撃。
ツンは真顔で嘔吐を終えると、やや青ざめた表情で背後のペニサスを振り返った。
('、`*川
ξ;゚⊿゚)ξハァ…ハァ…
('ー`*川「あっ忘れてたんだけどさ、ついでに伝言頼んでいいかな?」
ξ;゚⊿゚)ξ(こっちのゲロは無視か、強いな……)ハァハァ
部屋の中から柔らかい声をかけてくるペニサス。
彼女はゆっくりドアを閉めながら、残った話題を手短にツンに伝えていった。
.
523
:
名無しさん
:2021/11/17(水) 01:05:33 ID:pFrDK2CI0
('、`*川「――唐揚げどうも。約束は守ってるよ、って。
あなたの知ってる盛岡に伝えといてくれればいいから」
('、`*川「あとそれ、ガンガン進めば意外と楽になるから安心してね。
トンネルを抜けると健康ランドだった的な着地するからさ」
ξ; ⊿゚)ξ(そんな雪国的イントロで済む異常じゃねえのだわ……!)
('、`*川「そんじゃあね。また会えたらよろしく〜」
ぱたん、と軽い音を立てて閉じるドア。
そうしてツンは完璧な真っ暗闇に取り残され、もう自分の体の輪郭さえ捉えることはできなかった。
ξ;-⊿-)ξ「……ふぅ、はあ……」
ξ;゚⊿゚)ξ(こんなゲームのバグみたいなとこ、早く出ないと絶対ヤバいのだわ……)テクテク
口元を拭って立ち直り、荒れ狂う五感を宥めつつ前進を再開するツン。
彼女は既に方向感覚さえ失いかけていたが、なすべきことはすべて、彼女の細胞が記憶していた。
.
524
:
名無しさん
:2021/11/17(水) 01:06:04 ID:pFrDK2CI0
┌───────────────┐
│ │
│ ┌─────────┐ │
└──┼─────────┼──┘
│ ┌─────┐ │
└─┼─────┼─┘
└─────┘
┌───┐
└───┘
┌─┐
└─┘
□
.
525
:
名無しさん
:2021/11/17(水) 01:06:34 ID:pFrDK2CI0
#07 幕間 〜逃亡暦201X年の断片〜
.
526
:
名無しさん
:2021/11/17(水) 01:07:28 ID:pFrDK2CI0
≪?≫
――荒野の最中に、3人の少女が打ち捨てられていた。
辛うじて人間の形状を保つそれらは、たった数分前まで素直四天王として動いていたものだった。
そして間もなく絶命に至る。魔王城ツンはそんな彼女達を眺め、しかし一切の情動に至らなかった。
自分でやったという自負が感情に蓋をしている。
苦しみはない。もう慣れたものだった。
.
527
:
名無しさん
:2021/11/17(水) 01:14:19 ID:pFrDK2CI0
(´・_ゝ・`)「……お疲れさま。流石は魔王の娘だよ、あっさり終わらせやがった」ザッ
(´・_ゝ・`)「まぁ魔物が本気でやりゃこうなるわな。苦戦する方がおかしいか」
音を立て、あからさまに歩み寄ってきた盛岡デミタスがタオルを投げる。
ツンは一目もくれずにそれを掴み取り、自分の顔に飛び散っていた返り血の塊をざっと拭き取った。
(´・_ゝ・`)「って、なんだよ殺しきってないのかよ。
お前なあ、こういう甘さで味方が死ぬんだからな。気をつけろよな」
ξ゚⊿゚)ξ「……まだ使えると思ったのよ。
人間の駒は貴重でしょ。あとは任せるのだわ」
(´・_ゝ・`)「そうやってまた要らないものを増やす。おめー健康器具とか無駄にするタイプだろ。
使い道を考える身にもなってほしいね。処分も手間だしさぁ」
ξ-⊿-)ξ「そうね。あなたを信頼しているのだわ」
ツンは慣れた口振りで言い返し、赤黒くなったタオルを地面に投げ捨てた。
.
528
:
名無しさん
:2021/11/17(水) 01:14:42 ID:pFrDK2CI0
#'01 整合世界、決定論、Cosmos new version
.
529
:
名無しさん
:2021/11/17(水) 01:15:39 ID:pFrDK2CI0
ζ(゚ー゚*ζ
ζ(゚-゚*ζ「……出来損ない。これなら生け捕りで……」
どこか遠くに聞こえる声には嘲笑の意図すらなく。
女の瞳はただ冷淡に、今の私を単なるモノとして見つめていた。
ξ; ⊿ )ξ(わたし、まさか……)クラッ
意識が遠のく。死の実感が五体の感覚を薄めていく。
視界がボヤけて暗闇が滲む。
いつしか、私の体は地面に横たわっていた。
そして、私は――……
.
530
:
名無しさん
:2021/11/17(水) 01:17:32 ID:pFrDK2CI0
「――大丈夫ですか、お嬢様」
ξ; ⊿ )ξ
薄れゆく意識の中、聞き慣れた声が私のことを呼んでいる。
閉じかけた瞳に映る朧気な後ろ姿。
::::ミセ*:::ー゚)リ::::
深緑の魔力に覆われたその人は――ミセリさん以外の誰でもなかった。
ξ; ⊿゚)ξ(ミセリ、さん……)
ミセ*゚ー゚)リ「……間に合ったとは言えない感じですね。
でも安心して下さい。すぐに助けが来ますから」
――ミセリさんだ。ミセリさんが助けに来てくれていた。
満身創痍の体でも、たったそれだけの事実が元気をくれる。
心ばかりの感謝を込めて、私は精一杯の笑みを作った。
ミセ*゚ー゚)リ「なにも心配はいりませんよ。敵は私が片付けておきます」
そう言って優しい笑顔を返してくれるミセリさん。
私はそれですっかり安心してしまって、なんの不安も無いままに、すとんと意識を失ってしまった。
.
531
:
名無しさん
:2021/11/17(水) 01:18:08 ID:pFrDK2CI0
――間違いだった。
この時、私はどうあっても立ち上がるべきだった。
爪'ー`)「……デレ、そいつの相手は骨が折れるぞ」
爪'ー`)「私がやろう。少し下がっていなさい」
.
532
:
名無しさん
:2021/11/17(水) 01:18:31 ID:pFrDK2CI0
≪??≫
.
533
:
名無しさん
:2021/11/17(水) 01:19:47 ID:pFrDK2CI0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
川д川「……申し訳、ありません」
(´・_ゝ・`)「いやほら、貞子もお前を助けるので手一杯だったんだよ。分かるだろ?」
雁首を揃えていながら、2人が何を言っているのか意味が分からなかった。
(´・_ゝ・`)「貞子の魔力だけじゃミセリの命までは救えなかった。
お前が死ぬかミセリが死ぬか、ミセリは後者を選んでいったよ」
(´・_ゝ・`)「あの晩は俺もドクオも戦闘後で魔力は枯れてたし、いやぁ完全に想定外だよ。
敵の主力がいきなり登場するなんて、いったいどういう事だろうな??????」
(´・_ゝ・`)「あーあ、誰かがほんの少し、フォックスを足止めしてればなぁ……」
(´・_ゝ・`)「ハインなら、できたと思うんだけどなぁ……」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ、ミセリさんは私のために死んだって言うの?」
(´・_ゝ・`)「うん」
彼は必要以上の答えを言わなかった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
.
534
:
名無しさん
:2021/11/17(水) 01:20:09 ID:pFrDK2CI0
≪???≫
.
535
:
名無しさん
:2021/11/17(水) 01:20:45 ID:pFrDK2CI0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
川; -゚)「……どうにも、話が違うな……」
ξ゚⊿゚)ξ
川; - )「……そうか。私達は、化け物のエサに……」
.
536
:
名無しさん
:2021/11/17(水) 01:22:20 ID:pFrDK2CI0
――ああ、なんで人間なんかに気を遣ってたんだろう。
こんな簡単に壊れるものを守ろうだなんて、私に出来るわけなかったのに。
諦めたらすごい身軽になれちゃったな。戦いやすいし、すごい解放感。
そうか、できるんだからやればよかったんだ。こんな簡単なこと、もっと早く気付けばよかった。
ξ゚⊿゚)ξ(魔力制御、貞子さんが付きっきりで教えてくれたの。
今なら大丈夫なのだわ。大丈夫、これからもっと『できるようになる』――)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
.
537
:
名無しさん
:2021/11/17(水) 01:22:42 ID:pFrDK2CI0
≪????≫
.
538
:
名無しさん
:2021/11/17(水) 01:25:03 ID:pFrDK2CI0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ノパ⊿゚)「……ああ、やっぱりお前がねーちゃんの仇か」
素直ヒートが独りごちて、私を睨む。
ノパ⊿゚)「決めた。殺害禁止のルールガン無視して殺しにいく。いいよな?」
o川*゚-゚)o「それでいいよ。どうせ敵地のど真ん中だし」
lw´‐ _‐ノv「……向こうは最初からそのつもりだよ。やらなきゃ殺される」
ξ ⊿ )ξ
――被害者ぶるなよ。
私は私を殺しに来たヤツを返り討ちにしただけだ。
そうしなければまた奪われる。だから私はできるようになったのだ。
私はただ普通に、人を倣って生きていただけなのに。
仇だなんて、私は、私はそんなものになりたかったわけじゃ――
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
.
539
:
名無しさん
:2021/11/17(水) 01:25:34 ID:pFrDK2CI0
≪?????≫
.
540
:
名無しさん
:2021/11/17(水) 01:26:56 ID:pFrDK2CI0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
(´・_ゝ・`)「ハインリッヒなら処刑されたよ」
ある日突然、恩人だった人の死を告げられた。
(´・_ゝ・`)「いや〜なんせ全部あいつのせいだからな。
お前の居場所が敵にバレたのも、結果ミセリが死んだのも、何もかも」
(´・_ゝ・`)「あいつ、お前を育てて私利私欲に使う計画なんか立ててたんだぜ?
最低だよな。やっぱり人間なんて信用できねえよな俺もそう思うよ」
(´・_ゝ・`)「あとついでに吉報。お前はもう自由の身だ。試験もなにもオールクリアだってさ」
ξ゚⊿゚)ξ
(´・_ゝ・`)「人殺しにも躊躇がなく、自衛するだけの実力も十分と上が認めてくれたんだ」
(´^_ゝ^`)b「いやぁ本当によかったね! すこぶる順調じゃーん!」
ξ゚⊿゚)ξ「……そう。よかったわね」
試験の結果が合格だろうと、私の心に大した感慨は湧いてこなかった。
ただ単に、まだ怒っていていいのだと、そう思った。
.
541
:
名無しさん
:2021/11/17(水) 01:31:53 ID:pFrDK2CI0
(´^_ゝ^`)
(´・_ゝ・`)「んで、お前はこれからどうやって生きていくんだ?
地上の暮らしは確かに続けられるけど、お前もう人間ごっこに興味ねえだろ?」
ξ゚⊿゚)ξ
(´・_ゝ・`)「……なあ魔王城ツン、本音を言えよ。遠慮するな。俺を上手く使えって」
(´・_ゝ・`)「もちろん代価は頂戴するが、信頼関係にはギブアンドテイクも必要だろ?」
(´・_ゝ・`)「お前の気持ちはよく分かる。ミセリの仇を討ちたいんだよな。
俺も同じ気持ちだしな。毎晩怒りに打ち震えてんだ。全身プルプルで困るよ」
ξ゚⊿゚)ξ
私にはそれが悪魔の囁きに聞こえたが、
悪魔って魔物の親戚みたいなものだし、まぁいいかと思った。
ξ゚⊿゚)ξ「その場合、私はあなたに何を返せばいいの?」
(´・_ゝ・`)
不意に、悪魔が少しだけ表情を強張らせた気がした。
.
542
:
名無しさん
:2021/11/17(水) 01:33:25 ID:pFrDK2CI0
(´・_ゝ・`)「よし、交渉成立だな? まぁ安心しろ。取り立ては今すぐじゃない。
遠い遠い未来、お前がもっと強くなってから、キッチリとな」
(´・_ゝ・`)「お前はただ、俺達が思ったとおりに強くなればいい。
裸の王にはさせねえよ。お前につくのは勇ましいチビの――7人の仕立て屋だからよ」
ξ゚⊿゚)ξ「……あなた、意外と童話好きだったのね」
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ・`)「べつに。ただの一般教養だよ」
.
543
:
名無しさん
:2021/11/17(水) 01:37:28 ID:pFrDK2CI0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
――それから私は盛岡の言うとおりに強くなって、
攻めてきた勇者軍を返り討ちにして、
敵の拠点を潰して回って、その道行きでも沢山の人間を殺して、
私はずっと怒ったまま、言われるがままにそれを繰り返して、
でも、繰り返せなくなっても私はまだ怒っていて、
最後に句点を打ったのはいつだろう、
なんて、ミセリさんと話した最後の夜を思い出しながら、
すべての戦いを終えた私は魔界でひとり、
どこかで忘れてしまった『まる』の書き方を思い出そうとして、
気が遠くなるような長い時間を、
物語のない静かな時間を、
ξ ⊿ )ξ
ただひたすらに、
現実的に浪費し続けて、
なにも続かない世界を、
ずっと、
続けて――
.
544
:
名無しさん
:2021/11/17(水) 01:38:09 ID:pFrDK2CI0
≪業務連絡:4周目の世界が完結しました≫
.
545
:
名無しさん
:2021/11/17(水) 01:40:16 ID:pFrDK2CI0
― -_ ̄― -_ ̄― -_ ̄― -_-_ ̄ ̄― -_ ̄― ― -_ ̄― -_ ̄― -_ ̄― -_ ̄
__―_____ ̄ ̄ ̄ ̄‐― ̄ ̄―‐―― ___ ̄ ̄――― ___―― ̄ ̄___ ̄
―― ̄ ̄___ ̄―===━___ ̄― ―――― ==  ̄―― ̄ ̄___ ̄―=
__―_____ ̄ ̄ ̄ ̄‐― ―――― ==  ̄ ̄ ̄ ――_―― ̄___ ̄
___―===―___ ―――― ==  ̄ ̄ ̄ ― ̄―‐―― ___―‐――
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【リザルト:4周目】
≪ ξ゚⊿゚)ξ / 魔王城ツン ≫
魔王化習得後、王座の九人を全員倒し、勇者軍を壊滅させた
併せてフォックスが死亡しているため、Bルートには突入できない
以降の展開は存在せず、彼女の物語はどこにも続かなかった
【戦闘方法】 [身体強化:SS] [魔力成形:A] [魔術:B+]
【基礎能力】 [パワー:A] [スピード:A]
[スタミナ:S] [コントロール:SS]
【備考補足】 魔王化と魔力成形を駆使して戦うインファイター
Aルート単体で実現しうる理想的な育成個体
盛岡デミタスのかんがえたさいきょうのつんちゃん
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ̄―――― ==  ̄ ̄ ̄ ̄_――_━ ̄ ̄ ――_―― ̄___ ̄―=‐――‐―― _
___―===―___ ―――― ==  ̄ ̄ ̄ ――_―― ̄ ̄―‐―― _
__―_____ ̄ ̄ ̄ ̄‐― ―――― ==  ̄ ̄ ̄ ――_―― ̄___ ̄―
 ̄___ ̄―===━___ ̄― ==  ̄ ̄ ̄ ――_――__―_____ ̄ ̄ ̄ ̄‐―
___―===―_― ==  ̄ ̄ ̄ ――_―― ̄ ̄―‐―― ___ ――_― ―
―――― ==  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ―― __――_━ ̄ ̄ ――_―― ̄___ ̄―=
.
546
:
名無しさん
:2021/11/17(水) 01:41:36 ID:pFrDK2CI0
― -_ ̄― -_ ̄― -_ ̄― -_-_ ̄ ̄― -_ ̄― ― -_ ̄― -_ ̄― -_ ̄― -_ ̄
__―___ ̄ ̄ ̄ ̄‐― ̄ ̄―‐―― ___ ̄ ̄――― ___―― ̄ ̄___ ̄
__―____ ̄ ̄ ̄ ̄‐― ―――― ==  ̄ ̄ ̄ ――_―― ̄___ ̄―
___===―___ ―――― ==  ̄ ̄ ̄ ― ̄―‐―― ___―‐―
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇◆ 次周特典 ◆◇
この物語は完結した。パーフェクトAAがやってくる。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ̄――― ==  ̄ ̄ ̄ ̄_――_━ ̄ ̄ ――_―― ̄___ ̄―=――‐―― _
___―===―___ ―――― ==  ̄ ̄ ̄ ――_―― ̄ ̄―‐―― _
―――― ==  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ―― __――_━ ̄ ̄ ――_―― ̄___ ̄
.
547
:
名無しさん
:2021/11/17(水) 01:41:58 ID:pFrDK2CI0
┌───────────────┐
│ │
│ ┌─────────┐ │
└──┼─────────┼──┘
│ ┌─────┐ │
└─┼─────┼─┘
└─────┘
┌───┐
└───┘
┌─┐
└─┘
□
.
548
:
名無しさん
:2021/11/17(水) 01:42:57 ID:pFrDK2CI0
≪3≫
――気がつくと、私はトイレの個室に突っ立っていた。
ξ゚⊿゚)ξ …
ξ;゚⊿゚)ξ(あっ、マジでこんな着地するんだ)
ペニサスが言っていた通り、なんかふわっとした感じでテレポートが完了したっぽい。
私はすぐさまトイレを出ていき、元居た場所へと小走りで向かった。
ミセ;*゚ー゚)リ「……あっ、お嬢様!」
で、マッサージチェアのコーナーにはやっぱりミセリさんが居た。
落ち着かない様子で私を出迎えてくれた彼女を前に、なんだか無性に感動を覚えてしまう。
ξ;゚⊿゚)ξ「ごめんなさいミセリさん! かくかくしかじか!」
ミセ*゚ー゚)リ「それは仕方ないですね……」
トイレで踏ん張りすぎて恥ずかしかったので気配を消していた、という体で失踪を誤魔化す私。
さっきの出来事は話が拗れそうなので伏せておく。あと単純に説明が無理、見なかったことにしよう。
.
549
:
名無しさん
:2021/11/17(水) 01:45:04 ID:pFrDK2CI0
ミセ*゚ー゚)リ「それでは急いで帰りましょうか。
明日からまた忙しそうなので……」
ξ;´⊿`)ξ「そうね。私も今ので凄い疲れちゃった」
ミセ;*゚ー゚)リ「ああ、そんな大物が相手だったんですか。
お腹の調子が怪しいならもう少しごゆっくり……」
ξ;゚⊿゚)ξ「いや大物っていうか、なんかまた複雑なのが出てきたというか」
ミセ*゚ー゚)リ
ミセ;*゚Д゚)リ「――複雑なのが!? お腹の調子は大丈夫なんですか!?」
トイレで踏ん張った事にしたせいでコントになっちゃったな。
これ以上は会話が下品になりそうなので、私はドクオ達に話しかけて流れを変えた。
ξ゚⊿゚)ξ「2人とも、もう帰るのだわ」
('A`)「……分かってるよ」
( ^ω^)「おっおっ」
ちなみにこの野郎共は私が戻ったというのに深夜のテレビに釘付けであった。
どうせエロい番組を見ていたのだろう。仕方のない奴らだ。
,_
('A`;)「……どうすんだよコレ……」テクテク
やたら難しそうな顔で振り向いたドクオが早足に先行する。
私達もすぐに後を追い、トコトコと家に帰った。
.
550
:
名無しさん
:2021/11/17(水) 01:45:25 ID:pFrDK2CI0
___________________________
━━√━━━━━━━━━━━━━━━━━#━━━━━━#━━
 ̄ ̄
次回 【インナーゲーム編】 に続く
______
━━━#━━━━━#━━━━━━━━━━#━━━√━━━━━
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
.
551
:
名無しさん
:2021/11/17(水) 01:46:39 ID:pFrDK2CI0
| ロ :
| 口 ・
 ̄ ̄ ̄ ̄ ゚ ロ ・
・ : 。 口
ロ ロ
・
口 ゚ ロ []
。
・ ロ ・ : ロ 口 []
□ ・
[] | ̄| 口
。 口  ̄ 。
_
( ゚∀゚) ・ ・ ・
( )
| |
し ⌒J
|
\ __ /
_ (m) _ピコーン
|ミ|
/ .`´ \
_
( ゚∀゚) あっ! これ俺と会う前の話か!?
( )
| |
し ⌒J
〜おわり〜
.
552
:
名無しさん
:2021/11/17(水) 01:51:53 ID:pFrDK2CI0
#01
>>2-65
#02
>>74-117
#03
>>122-160
#04
>>169-212
#05-1
>>231-266
>>271-289
#05-2
>>294-324
#05-3
>>330-363
#05-4
>>371-416
#05-5
>>422-461
#06
>>467-501
#07
>>510-551
今回のイメソンはbinariaの「reino blanco」という曲です
短編祭音楽部門、重度イメソン厨なのに参加できなかったYO…(^ω^)
次回投下は年内です
日時を決めてる余裕は無さそうなので、隙間を見つけて適当に投下しておきます
>>507
やった〜〜〜〜〜〜〜〜ネ!!(^o^)
>>508
作者もツンちゃん投下を生きる理由にしているよ!(激重)
>>509
そう言ってもらえて嬉しいです!また置き去りにするね!
>>514
来たよ〜〜〜〜〜〜〜〜(^^o)
553
:
名無しさん
:2021/11/17(水) 02:11:19 ID:pFrDK2CI0
スレも折り返したのでツンちゃんまとめを再掲しておきます
1〜3周目(クールライターさん)
http://coollighter.blog.fc2.com/blog-entry-439.html
4周目以降
https://gekitetunchan.blog.fc2.com/blog-entry-25.html
554
:
名無しさん
:2021/11/17(水) 22:37:36 ID:sWruafis0
おつ!!
途中置き去りになった気がするけど次も楽しみに待ってます!!
555
:
名無しさん
:2021/11/17(水) 23:15:42 ID:haZuTTNw0
ほんと面白い
556
:
名無しさん
:2021/11/17(水) 23:27:05 ID:3BZd.crY0
乙
557
:
名無しさん
:2021/11/18(木) 21:13:20 ID:qsGEz2b20
乙
パーフェクトAAとの絡みが気になるな
558
:
名無しさん
:2021/11/20(土) 18:50:31 ID:zb7aQffo0
>そのまま「おはよう!朝4時に何してるんだい?」めいた姿勢になり、質問を続けるよう静かにツンを促す。
ここ好き
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