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('A`)デイドリーム・アンプリファーのようです
1
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 14:31:48 ID:sGgHmx0c0
ラノブンピック参加作品。
【閲覧注意】の絵を使用しております。
本文中、極端に過激な表現はありませんがご注意ください。
2
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 14:32:59 ID:sGgHmx0c0
放課後。
俺は17歳で、高校の屋上にいた。
柵にもたれかかり、さてこれからどうしようかと、青空を見上げ積雲を眺めているところだった。
吹き付ける風が俺を包む。ああ、夏の匂いがする。
半端に頭が良くて、半端に行儀が良い男子と女子が集まっている学校。
いわゆる普通が極まったような、そんな感じ。
それがこの拝成高等学校だ。
俺は学ランのポケットからタバコを取り出す。手に取り銜え、火を点ける。流れる煙が顔にかかった。
臭いが付いてバレちまうなぁなんて少し思いながら、ニヤリと笑う俺。
何故笑ったかは、自分でも分からんのである。
3
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 14:33:35 ID:sGgHmx0c0
('A`)デイドリーム・アンプリファーのようです
.
4
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 14:34:39 ID:sGgHmx0c0
( ・∀・)「いよぉ、ドクオちゃん」
キキィと甲高い音を立てながら開く、屋上入り口の古ぼけた引き戸のドア。
そこから出てきたのは俺の悪友、モララーだった。
彼はゆっくりと、柵にもたれている俺に近づいてくる。
('A`)「おっす」
( ・∀・)「また吸ってんのか?」
('A`)「お前も人の事言えた義理じゃねえだろ」
( ・∀・)「モナー先生が泣くな……火ィ貰っていいか」
('A`)「おう」
彼は俺の隣で同じように柵にもたれかかった。
モララーが銜えたタバコに、持っていたライターで火を点けてやる。
彼は「サンキュ」と短くお礼を言うと、満足そうにそれを吸っていた。
5
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 14:35:33 ID:sGgHmx0c0
( ・∀・)「調子はどうよ」
('A`)「相変わらずだよ」
そう言って頭をポリポリと掻く俺。
もたれていた柵から身体を起こし、グッと伸びをした。
('A`)「相変わらずつまんねーな」
( ・∀・)「同感同感」
俺は吸いかけのタバコをポロッと落とし、足の裏でもみ消す。
吸い殻は排水溝めがけて蹴り飛ばした。
('A`)「何かこう……面白い事は無いもんかね」
また風が吹く。俺たちを包むそれは、じんわりとした湿り気と熱を帯びていた。
6
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 14:36:20 ID:sGgHmx0c0
( ・∀・)「面白い事かは知らんけど、停学食らったやつが出たって話があるぜ」
('A`)「ほーう」
( ・∀・)「なんだよ、つまんなそうに聞きやがって」
('A`)「いいや、興味津々だぜ?」
('A`)「こんな普通極まりない学校で停学騒ぎを起こすなんて、中々無い事だからな」
( ・∀・)「だよなぁ? 俺もビックリしてるところだ」
('A`)「で、誰なんだよ、それをやった奴は」
( ・∀・)「C組の砂尾久子。キュートって言った方が分かるか?」
('A`)「あのいつも騒がしい奴」
( ・∀・)「そう、そいつ」
7
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 14:37:04 ID:sGgHmx0c0
('A`)「やかましすぎて停学にでもなったか」
( ・∀・)「それならいいんだけど……結構エグい事やってたらしいんだよね」
('A`)「エグい事?」
( ・∀・)「簡単に言っちゃえば女衒かな」
('A`)「ぜ、ぜげん……もうちょっと簡単に言ってくれ」
( ・∀・)「要するに男に女紹介して金貰ってたの」
('A`)「……こんなとこでタバコ吸ってんのが小さな事に思えてくるな」
そう言って最近切ったばかりの髪をいじる俺。
短すぎるとも思ったが、今の季節にはちょうど良かった。
8
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 14:38:06 ID:sGgHmx0c0
( ・∀・)「やってた事はパパ活女子の斡旋だったらしいんだけど」
パパ活とは女性が、経済的に余裕のあるおっさんと、当たり障りのない交際を通じて、
若い女性と一緒に過ごす体験を提供し、その対価としてお小遣いを得る活動の事を指すらしい。
まぁ、ライトな援助交際みたいなものだ。
( ・∀・)「まぁ凄かったらしい。名簿作って誰が誰のお客さんで……とか全部管理してたらしい。キュートが」
('A`)「でもそれって普通にしてたら分からなそうなもんじゃん。なんだってバレて停学までいったんだ」
( ・∀・)「どうやら誰かが学校に密告したんだと」
('A`)「密告?」
( ・∀・)「そう、キュートを中心としてグループを作ってたらしいんだけど……どうやらどっかから漏れたらしい」
('A`)「なるほど」
( ・∀・)「加えて全員につけてたっていう『オプション』もバラされた」
('A`)「……まさかとは思うが……」
9
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 14:38:43 ID:sGgHmx0c0
( ・∀・)「そう、端的に言えば」
モララーは一呼吸置いた。
( ・∀・)「……身体を売ってた」
('A`)「なるほど、そりゃー学校側としても見逃せねぇな」
( ・∀・)「うん。結局キュート本人に直接問いただして、停学処分だと」
('A`)「で、何でそんな細かく事件の詳細をお前が知ってんの?」
( -∀・)「本人が無念そうに喋ってたからね」
( ・∀・)「1年の時同じクラスで仲良かったからメッセージでちょくちょくやり取りしててさ……」
('A`)「なるほどな」
俺はまた柵にもたれかかり、2本目のタバコに手を伸ばそうとしたが、やめた。
隣のモララーはタバコを銜えたまま、どこか遠くを眺めてた。
10
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 14:39:51 ID:sGgHmx0c0
( ・∀・)「意外なもんだ。こんな学校にもヤバい事してる奴っているんだな」
('A`)「普通だからこそ居るのかもしれん」
( ・∀・)「と、言うと?」
('A`)「普通の学校で、平々凡々な学生生活を送るのにも飽きて、刺激が欲しくなる……」
('A`)「イレギュラーなことをしたくなるから、そういう事に手を出す」
( ・∀・)「そんなもんかね」
('A`)「そんなもんだろ。多分」
('A`)「現に俺らがそうだしな」
( ・∀・)「言えてる」
そう言ってモララーはタバコを手すりで揉み消すと、吸い殻を蹴っ飛ばす。
それはスーッと屋上を転がっていき、見事に排水溝の中へと入ったのだった。
( ・∀・)「そんじゃあどっか行きますかぁ」
('A`)「どっかって……どこによ」
( ・∀・)「そりゃあ……どっかよ」
俺は彼の後について屋上を後にした。
遠くから聞こえる運動部の声、そして何処からか聴こえてくる吹奏楽の音が耳に入る。
それらは何故か俺の感傷を刺激して、止まらんのであった。
11
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 14:40:50 ID:sGgHmx0c0
※※※
( ・∀・)「そうだ、ヤリ部屋見に行ってみねえ?」
屋上から普通棟4階への階段を下りている途中、モララーがボソリと言った。
俺は思わず立ち止まって振り向く。モララーの顔を見ると、ニヤニヤとした笑みを浮かべていた。
('A`)「ヤリ部屋ってなんだよ」
( ・∀・)「そりゃあもう、名前の通りよ」
('A`)「爛れすぎだろ。つーかそんなん何処にあるんだよ」
( ・∀・)「特別棟だよ」
('A`)「はあ」
( ・∀・)「ほら、あそこって人が少ないじゃん」
( ・∀・)「だから校内デートするときに人気のスポットなんだけど……」
( ・∀・)「気持ちが盛り上がっちゃってどっかの部屋でイチャコラしたくなっちゃうと」
( ・∀・)「その時によく使われるのがその部屋らしい」
12
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 14:41:46 ID:sGgHmx0c0
('A`)「ほぉー……んで、特別棟のどこにあんの」
( ・∀・)「おっ、ドクオ君も知りたい! むっつりスケベだねえ!」
(;'A`)「そこまで聞いたら知りたくもなるだろ!」
( ・∀・)「まま、そういう事にしておきましょ」
( ・∀・)「特別棟4階、廊下の突き当りにある『音楽準備室』だよ」
('A`)「特別棟か……」
( ・∀・)「とりあえず行ってみようぜ」
俺たちは今いる普通棟の4階から2階へ降り、連絡通路を通って、特別棟へ向かった。
普通棟と同じく4階建ての特別棟は、理科実験室や音楽室など、特殊な用途の教室ばかりが揃っている。
('A`)「でもよ、特別棟って大体物置みたいな部屋ばっかじゃないか?」
( ・∀・)「だと思うだろ? でも『音楽準備室』は事情が違ってね……」
13
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 14:42:54 ID:sGgHmx0c0
( ・∀・)「最近、うちの学校の音楽室新しくなったじゃん?」
('A`)「ああ、大改装してたな」
去年末、うちの学校のOBである音楽家が多額の寄付をしたらしい。
その際音楽室の改装をしてほしいというお願いがあったらしく、それに従う形で大規模な改装が進められた。
古ぼけていた音楽室は一変し、真新しく、スペースを多大に確保した場所になった。
( ・∀・)「その時、音楽準備室に置いてたものを半分くらい音楽室に移したらしい」
( ・∀・)「だから少し遊べるくらいのスペースがあるんだと」
('A`)「なるほど」
そして2階から4階へとまた上がり、廊下の突き当りまで進む。
そこには古びた引き戸があり、教室名は『音楽準備室』と書いてあった。
('A`)「……静かだな」
( ・∀・)「ああ、静かだ」
('A`)「カップルは?」
( ・∀・)「……いないな」
('A`)「帰るか」
(;・∀・)「ま、待て!! もしかしたら中で静かにイチャついてるかもしれん!!」
('A`)「無いな」
14
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 14:43:50 ID:sGgHmx0c0
そう言って俺が扉に背を向けて帰ろうとした時だった。
鋭く歪んだ音が、俺の背中を突き刺したのは。
(;・∀・)「おおっ? ギターの音?」
('A`)「……なんだろうな?」
俺たちは音楽準備室の引き戸を少し開けて中を覗いた。
すると、そこにはエレキギターを構えた女子生徒の姿があった。
ピョンピョンと軽く跳ねながら演奏する彼女。セーラー服のスカーフが、同じように揺れていた。
彼女が弾いていたのはムスタングだった。
鮮やかな赤色のボディと、そこへ斜めに引かれたクリーム色のレーシング・ストライプ。
ローズウッドの指板、そしてボディの色と合わせた赤いヘッドが特徴的なギターだ。
15
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 14:44:41 ID:sGgHmx0c0
ξ゚⊿゚)ξ
大きな茶色の瞳に少しふっくらとした桃色の唇、そしてカールした綺麗な金色の髪。
制服の裾から覗く色素の薄い肌。スラっと伸びた脚。程よい大きさの胸。
ギターを弾いていた彼女は素敵で、全てが、最高だった。
窓から差し込む光によって、ライトアップされている彼女は、まるで夢まぼろしのようだ。
(*・∀・)「おおっ……! か、可愛い……!」
('A`)「うん、可愛い」
(*・∀・)「おい、ドクオちゃん行って来いよ」
(;'A`)「えー」
( ・∀・)「ここで出会ったのも何かの運命っつう事で、何とか引き込めんか」
('A`)「無理だろー……」
小声でヒソヒソと感想を述べあいながら覗いていた俺達。
するとギターを弾いていた彼女の視線が、突然引き戸の方へと向けられた。
隙間から覗いていた俺と目が合う。
('A`)「あ」
( ・∀・)「あ?」
彼女はギターをスタンドに置くと真っ直ぐにこちらの方へとやってきた。
そして俺らが逃げる間もなく、軋んだ音を響かせながら入口の引き戸を開けたのだった。
16
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 14:45:32 ID:sGgHmx0c0
ξ゚⊿゚)ξ「……何してるんですか?」
(;'A`)「あ、いや、その、なぁモララー」
(;・∀・)「ははは、どうも、こんにちは」
ξ゚⊿゚)ξ「……」
( ・∀・)「ドクオ」
('A`)「ん?」
( ・∀・)「あとは任せた」
('A`)「は?」
そう言うとモララーは脱兎のごとく走り去っていった。
別にやましい事をしたわけでは無いのだから、堂々としてればいいのに何故逃げるのか。
おかげさまで残された俺の立場がすこぶる悪くなった。
17
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 14:46:36 ID:sGgHmx0c0
ξ゚⊿゚)ξ「覗きですか?」
('A`)「いや、違うんだ。断じて違う」
考えろ、考えろ、俺。
俺は無い頭をフル回転させる。
そうだ、言い訳なんかする必要はないんじゃないか?
むしろ、この部屋を使ってること自体がおかしいのでは?
俺は強気にそこを責めることにした。
('A`)「逆に問うが、こんな部屋で何してたんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「何って、見ての通り練習ですけど」
('A`)「こんなところでか!」
('A`)「こんな……音楽準備室でか!」
ξ゚⊿゚)ξ「部室は先輩たちが使ってて使えないから」
ξ゚⊿゚)ξ「それに、軽音楽部が備品のある音楽準備室に出入りするのはダメですか?」
('A`)「ううっ……!」
これ以上無いカウンターを貰ってしまった。
考えろ、考えるんだ。まだ何かあるだろ。
18
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 14:47:26 ID:sGgHmx0c0
ξ゚⊿゚)ξ「あなたこそどう見ても不審者だけど、なんでこんな所にいるの?」
怪訝そうな表情を浮かべ、こちらを見つめてくる彼女。
俺は必死に言葉を振り絞る。
('A`)「俺は……その……」
('A`)「そう、先生に頼まれて!」
ξ゚⊿゚)ξ「先生に頼まれてヤリ部屋の様子を見に来たの?」
('A`)「そう! 先生に頼まれてヤリ部屋を見に来ました!」
('A`)「……あれ?」
ξ゚ー゚)ξ「ぷっ」
俺が見事に釣られたのを見て、堰を切ったように笑い出した彼女。
あまりにも大笑いするものだから、俺の顔は恥ずかしさで多分真っ赤になっていたと思う。
19
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 14:48:29 ID:sGgHmx0c0
ξ*゚⊿゚)ξ「あー可笑しい」
('A`)「酷い、そんな釣り方はあまりに酷い」
ξ*゚⊿゚)ξ「ごめんなさい、あまりにもしどろもどろだったから、つい」
('A`)「……悪かったよ、覗き見してたんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「ヤリ部屋観察に来て、丁度人がいたから見てたんでしょ?」
ξ゚⊿゚)ξ「最初から分かってたわよ、そんな事」
('A`)「ご名答。ぐうの音も出ねえや」
ξ゚⊿゚)ξ「面白い人ね、あなた。名前は?」
('A`)「ドクオ。毒田 独男(どくだ どくお)」
ξ゚⊿゚)ξ「私は津田 玲(つだ れい)、みんなツンって呼ぶわ」
ξ゚ー゚)ξ「よろしくね、ドクオ君」
そう言って差し出された右手を、俺は迷わず握り返した。
彼女の指は細くて、華奢で、それでいて滑らかだった。
20
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 14:49:24 ID:sGgHmx0c0
それからツンと色んな事を話した。そしてしょうもない事で笑った。
本当にどうでもいい事ばかり話したので、よく覚えていないことも多いが、
けれど彼女が同学年だという事、そして母親が日本人、父親が北欧人のハーフであるという事が分かった。
帰り道も大体一緒だったので、途中楽器店に寄ってツンの買い物に付き合った。
彼女は黄色い袋に入った弦を2袋とピックを5枚買って、そしてちょっとだけ試奏していた。
俺はギターを眺めながら、その吊られている量とつけられた値段に「はぁー」と何とも言えない声を出して徘徊していたのは覚えている。
ξ゚⊿゚)ξ「ピック、よく無くしちゃうの」
買い物終わり、彼女はそう言って微笑んでいた。
その笑顔は柔和かつ印象的で、とても素敵だった。
帰宅した俺は部屋に帰ると制服を脱ぎ、部屋着へと着替え、俺はベッドへと寝転がった。
そして今日一日の出来事を振り返る。
色々な体験が脳を駆け巡るが、やはり一番の出来事はツンとの出来事だ。
('A`)「……可愛かったな……」
魅力がいっぱいの彼女は、それを俺の目の前でいっぱい振り撒いてくる。
そんな中を俺が耐えるなんて、出来るはずがない。
俺は彼女に取り込まれてしまった。
一目惚れとはこういう事をいうのだなと、他人事のように考えながらボーっと天井を眺めていた。
('A`)「いいなぁ……彼女……」
いつの間にか俺は眠っていた。
それはあまりに突然の眠りで、気絶みたいな睡眠だった。
21
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 14:50:05 ID:sGgHmx0c0
※※※
('A`)「ん……?」
俺は例のヤリ部屋に居た。窓からは鮮やかすぎるくらいオレンジ色の夕日が差し込んでいる。
整然と並べられたドラムセット、左右均等に配置されたアンプ。
そして真ん中に立っている女子生徒。
セーラー服姿の彼女はキャンディアップル・レッドのムスタングを構えて待っていた。
あれは……ツンだ。
ξ゚⊿゚)ξ「ねぇドクオ」
('A`)「なんだい」
ξ゚⊿゚)ξ「好きよ、大好きなの」
そういってギターを鳴らす彼女。
何度も何度も、彼女はそれを鳴らし続けた。
ξ゚⊿゚)ξ「あなたの事が、好き」
残響音が響く中、彼女はギターをスタンドに置いた。
そして俺の方へと近寄ってくる。
22
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 14:50:55 ID:sGgHmx0c0
ξ゚⊿゚)ξ「今日だってこうしたかった」
そう言ってギュッと俺のことを抱きしめてくる彼女。
伝わる温もり、彼女の呼吸、そして柔らかさ。
彼女の全てが分かってしまうような、そんな感覚に陥った。
('A`)「どうしたよ、いきなり……」
そう言いながらも俺も彼女のことを抱きしめ返す。
心臓の鼓動が聞こえるくらい近くに引き寄せる。
今にも触れそうなくらい顔が近づく。
するとどうだ。彼女がサラサラと砂のように溶けていくではないか。
ξ ⊿゚)ξ「好きよ……ドクオ……大好き……」
彼女の身体は、足の先から徐々に崩れていき、気が付けば顔だけが残っていた。
ξ ⊿ )ξ「愛してる……」
その顔もすぐに崩れ落ち、後には彼女の残骸である砂だけが残った。
俺はその砂をすくい上げる。
手の隙間から零れ落ち、風に吹かれて消えていくそれを見て、俺はただ空しいと思った。
23
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 14:51:51 ID:sGgHmx0c0
('A`)「はっ」
そして唐突に目が覚める。
時計を見るともうすでに夜中の2時を回っていた。
酷い夢だった。
今日出会ったばかりなのに、夢の中とは言えこんな妄想をしてしまった俺は、アホなのかもしれない。
ハンガーに掛けていた学生服の内ポケットから、持っていたタバコを取り出すと、俺はベランダに出た。
そしてタバコを一本銜え、火を点けて軽く一服する。
時折吹き付ける生ぬるい夜風に身体を包まれながら、俺は一つ大きなため息をつくのだった。
24
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 14:52:44 ID:sGgHmx0c0
※※※
( ・∀・)「おはようドクオちゃん」
朝、学校へ向かう電車に揺られていると、後ろにモララーがいた。
相変わらず前髪をうっとおしそうにかき上げている。
('A`)「おはよう……裏切者め」
俺は耳に付けたイヤホンを外しながら挨拶を返す。
イヤホンからはボーカルのシャウトが少し聞こえていた。
電車内はそれなりに混みあっていたが、身動きが取れないといったほどでは無かった。
通学中の学生だらけで、騒がしくはあったが。
(;・∀・)「い、嫌だなぁ! 裏切者なんて言い方は!」
('A`)「あの場で見捨てて逃げた奴を、裏切者と言わずして何と言う」
25
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 14:53:50 ID:sGgHmx0c0
(;・∀・)「面倒くさそうだったから、ちょっとあの場所から離脱しただけだよ」
('A`)「それを逃げたって言うんじゃねえのか」
(;・∀・)「そうとも言うね、アハハ」
('A`)「何事も無かったから良かったけどよ……」
( ・∀・)「でも、よくよく考えたら逃げる必要無かったな」
( ・∀・)「別に着替えを覗き見したわけじゃないし、ただギター弾いてる姿見てただけだし」
('A`)「今更……」
( ・∀・)「で、どうなの? あの子」
('A`)「何が」
26
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 14:54:32 ID:sGgHmx0c0
( ・∀・)「あの子と話したんでしょ? どんな感じよ」
('A`)「酷い女だった。俺はもてあそばれた」
( ・∀・)「ほぉー」
('A`)「……冗談抜きで言うと、いい奴だったよ、割とな」
( ・∀・)「割と?」
('A`)「うん、割と」
『ご乗車ありがとうございます。次は、拝成、拝成です。お出口は進行方向に向かって右側です』
車内にアナウンスが響く。次の停車駅はうちの学校の最寄り駅だ。
('A`)「降りるか」
( ・∀・)「あ、うん」
停車する電車、開くドア。
降りると夏の日差しが俺たちに降り注ぐ。それと同時に蒸し暑い空気が身体を包む。
そしてこう思うのだ。「あ、夏だな」と。
27
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 14:55:35 ID:sGgHmx0c0
俺は背中のバックパックを背負いなおし、額に浮かんだ汗を拭った。
目の前に見える通学路の坂道は、険しい。
('A`)「さしあたってだな」
( ・∀・)「おう、どうした」
('A`)「何かデカい事してえなと思いまして」
( ・∀・)「デカい事?」
('A`)「例えば……うーむ、例えば……」
('A`)「ギターヒーロー!」
( ・∀・)「おーそりゃ凄え、世界を救ってくれよ」
('A`)「まず金貯めるところから始めないとな」
( ・∀・)「だな」
28
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 14:56:22 ID:sGgHmx0c0
('A`)「あーあ! こんな時支援してくれるパパがいたらなあ!」
( ・∀・)「パパ活でもするか?」
('A`)「女装して?」
( ・∀・)「一部の変態さんにはウケそう」
('A`)「嫌だなぁ、それ」
( ・∀・)「うん、やめとけやめとけ」
('A`)「バイトでもするかなあ」
( ・∀・)「そっちのがよっぽど健全よ」
そんなことを話してるうちに、坂を上り切った俺たちは校門の前に着いていた。
空を見上げると、相変わらず抜けるような青空が広がっていた。遠くからは電車の音が聞こえる。
夏はもうやってきている。
俺たちがくだらないことを話している間に。
29
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 14:57:55 ID:sGgHmx0c0
※※※
ある日の放課後、いつも通り俺たちは屋上にいた。
吸いかけの煙草の灰が、風に吹かれてフワフワと飛んで行った。
( ・∀・)「今日どうするよ、帰るか」
('A`)「いや、俺寄るとこあるからよ」
( ・∀・)「またヤリ部屋か?」
('A`)「ああ」
( ・∀・)「ドクオちゃんも隅に置けないね」
('A`)「仲良くなったんだ、話くらいしてもいいだろ」
( ・∀・)「仲良きことは良い事ですよ」
('A`)「お前も来てもいいんだぞ」
( ・∀・)「それは……嫌かな……」
30
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 14:58:47 ID:sGgHmx0c0
('A`)「なんでよ」
( ・∀・)「ほら、俺逃げたから。気まずいというかさ」
('A`)「そうか?」
( ・∀・)「だからさ、俺はいいよ。お土産話だけ聞かせてくれ」
そう言ってモララーは吸っていたタバコを揉み消し、吸い殻を排水溝に投げ捨てると、手をひらひらと振りながら屋上から出ていった。
('A`)「全く、そんな気にすること無いのに」
俺もモララーに続くように屋上を後にする。
そして俺は今日もヤリ部屋に向かっていた。
ツンと出会ってからというもの、放課後、暇ならここに来ている。
すると大体ツンも来るので、演奏を聴きながら雑談をする。最早それが日課になっていた。
31
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 14:59:28 ID:sGgHmx0c0
音楽準備室の引き戸を開けると、やはり既にツンがいた。
足元のエフェクターをいじって音を調整している。
('A`)「おっす」
ξ゚⊿゚)ξ「こんにちは。相変わらずタバコ臭いわね」
(;'A`)「えっ、そうか? そんなに臭う?」
ξ゚⊿゚)ξ「別に? ちょっと言ってみただけ」
(;'A`)「やめてくれよ……」
ξ゚⊿゚)ξ「どこで吸ってんの?」
('A`)「ん、ああ屋上」
32
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:00:14 ID:sGgHmx0c0
ξ゚⊿゚)ξ「入れたっけ、あそこ」
('A`)「いや、いつも鍵外して入ってるよ。1177で開くんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「タバコと合わせて2アウトってとこね」
('A`)「3アウトじゃないからセーフ」
ξ゚⊿゚)ξ「でもタバコを吸うのは止めたら? 今どき流行らないわよ」
('A`)「これは小さな反逆だから。止められんよ」
ξ゚⊿゚)ξ「反逆? 何に?」
('A`)「平凡な毎日」
ξ゚⊿゚)ξ「本当面白い事言うよね、ドクオって」
そう言ってアンプのボリュームを調整しながら、軽くギターを鳴らすツン。
準備が完了したのか、小さく「よし」と彼女はつぶやいた。
33
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:01:11 ID:sGgHmx0c0
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあドクオ、何から聴きたい?」
('A`)「ん……じゃあ『Drifting Girl』がいいな」
ξ゚⊿゚)ξ「オッケー、じゃあ行くね」
一呼吸おいて、彼女はギターを掻き鳴らし始めた。音の塊が、聴く人を突き刺す。
熾烈な狂騒と爆発力。それが『Drifting Girl』という曲だ。
そして『Drifting Girl』の演奏が終わると、そのまま次の曲のリフへと続いていく。
途切れることのない演奏が、ひたすら続いた。
ξ゚⊿゚)ξ「つっかれたぁ」
今彼女が練習している曲の数々を何回聴いただろうか。
ギターの弦が切れた事で、演奏は終わった。
気が付けば窓からはオレンジ色の夕日が差し込んでいた。
('A`)「大分やったな」
ξ゚⊿゚)ξ「でもいっぱい弾けて楽しかったな」
そう言って彼女はペグを回しながら切れた弦を取り外し始めた。
差し込む夕方の光が彼女のスカートから伸びる白い脚とギターのボディに反射してまぶしい。
34
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:01:51 ID:sGgHmx0c0
ξ゚⊿゚)ξ「ドクオってさあ、結構詳しいよね、音楽とか楽器の事」
('A`)「そうか? 人並みだと思うけどな」
ξ゚⊿゚)ξ「普通の人は私の弾いてるギターがムスタングとか分からないよ」
('A`)「音楽はよく聴くからさ、バンドについて調べたりするんだ」
('A`)「そん時にこのギターはこういう種類なんだって知ったりするからさ」
ξ゚⊿゚)ξ「知識が蓄えられているわけね」
('A`)「そう言う事」
俺はカバンからコーラを取り出し、飲む。
ツンは取り外した弦をグルグルと輪にしていた。
35
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:02:51 ID:sGgHmx0c0
('A`)「バンドと言えばさ、ツンはバンドで練習しないのか?」
ξ゚⊿゚)ξ「うん、だって皆やる気ないんだもん」
('A`)「そうなのか」
ξ゚⊿゚)ξ「ちょっと集まってパッと練習して終わりって日ばっかり。本当嫌になっちゃう」
ξ゚⊿゚)ξ「だから私は自分で練習スペースを見つけてずっとやってるの」
('A`)「それがここって訳ね」
ξ゚⊿゚)ξ「ま、ヤリ部屋なんて噂されてるから覗きに来る人も多いんだけど」
ξ゚⊿゚)ξ「どっかの誰かさんみたいにね」
(;'A`)「あ、謝っただろ! ごめんって!」
ξ゚⊿゚)ξ「あはは、ごめんごめん」
36
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:03:31 ID:sGgHmx0c0
ξ゚⊿゚)ξ「でもね、最近このヤリ部屋に新しい噂がたってるの、知ってる?」
('A`)「何だ?」
ξ゚⊿゚)ξ「『あのヤリ部屋の主がいる』っていう噂」
('A`)「……もしかしてそれって……」
ξ゚⊿゚)ξ「私とドクオの事でしょうね、間違いなく」
('A`)「まぁ……そうだろうなぁ」
ξ゚⊿゚)ξ「私と出るとこ誰かに見つかったら、勘違いされちゃうかもね」
('A`)「そうかな?」
ξ゚⊿゚)ξ「私は別に勘違いされてもいいけどね」
そう言って妖艶な笑みを浮かべ、こちらを見つめる彼女。
俺はその言葉と表情に思わずドキッとしてしまった。合わせた視線を、思わず逸らす。
興奮なのか何なのか。俺の胸が高鳴る。
37
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:04:36 ID:sGgHmx0c0
(;'A`)「そ、それにしてもさぁ! ツン、よくそのギター買えたよな!」
俺はこのドキドキに耐えられず、唐突に話をそらしてしまう。
('A`)「最近なんだろ? 買ったの」
ξ゚⊿゚)ξ「うん、結構大変だったけどね。友達から割のいいバイト紹介してもらえたから助かったわ」
('A`)「なんのバイトしたんだ?」
ξ゚⊿゚)ξ「それはトップシークレット」
ξ゚⊿゚)ξ「色々特殊だから、そのバイト」
('A`)「そう言われるとますます気になりますなあ」
ξ゚ー゚)ξ「ふふっ、秘密は女を美しくするのだよドクオくん」
ツンはそう言って右手の人差し指を立て、自らの桃色のくちびるに近づけた。
何だかもうその仕草だけで、俺にとっては、たまらんのであった。
38
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:05:33 ID:sGgHmx0c0
※※※
ξ゚⊿゚)ξ「ねえドクオ」
演奏の手を止め、俺に話しかけてくるツン。
座って聴いていた俺は突然の事に少し驚き、彼女を見上げた。
('A`)「何だよ」
ξ゚⊿゚)ξ「演奏してるだけなんて不健全じゃないかしら」
そう言うと彼女はギターを床に置いた。いつもの彼女では考えられないような、雑な置き方だった。
そして彼女は俺の目の前にしゃがみこみ、顔を見つめてきた。
('A`)「へ……?」
ξ゚⊿゚)ξ「だってヤリ部屋にいるのよ」
ξ゚⊿゚)ξ「健全な思春期の男子と女子なら……」
俺の首に腕をまわし、顔を近づけてくるツン。
その彼女の顔が、眼前へとどんどん迫ってきた。
(;'A`)「おい、どうしたっていうんだよ」
ξ゚⊿゚)ξ「もっとくっつくべきなのよ」
(;'A`)「おい」
ξ゚⊿゚)ξ「そう、こんな風に……」
そして唇が触れ合いかけたその瞬間、俺は現実世界に戻ってきた。
ベッドの上に寝転ぶ俺は相変わらず1人で、ボンヤリとしながら口を広げて天井を見上げていた。
39
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:06:35 ID:sGgHmx0c0
('A`)「はぁぁぁ……」
この妄想はある休日の午後の事だった。
俺はまた一人、部屋で悶々としていた。ここ数日、ツンのことが頭から離れない。
彼女に全てを支配されているような感覚で、何か変な感じだ。
しかもそれが健全な方向ならまだ良かった。
けれどいかがわしい方向での妄想で頭がいっぱいなのだ。
そう、言うなれば常に白昼夢あるいは妄想を見ているような、そんな感じ。
思春期特有と言ってしまえばそれまでなのかもしれない。
しかし一体俺はいったいどうしてしまったのだろう。
ベッドに座りながらその溢れ出る気持ちを抑えていると、テーブルの上に置いていたスマートフォンが鳴った。
画面を見ると、「茂等勇樹」と書かれていた。モララーの本名である。
俺は一つ溜め息を吐いて、スマホへと手を伸ばした。
('A`)「もしもし」
( ・∀・)「おっ! ドクオ暇してるか?」
('A`)「ああ、暇だよ。暇すぎて持て余してたよ」
色々な意味でな。と脳内で付け足す。
( ・∀・)「そいつは何よりだ」
('A`)「で、何?」
40
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:07:54 ID:sGgHmx0c0
( ・∀・)「今駅前にいるんだけど来ない?」
('A`)「なんだよ、唐突に」
( ・∀・)「いやさ、単純に暇なんだ」
( ・∀・)「ぶらぶらするにしても誰か居てくれた方が楽しいなって……」
('A`)「なるほどね……いいよ、行くよ」
唐突なお誘いに俺は一瞬悩んだが、結局二つ返事でOKしてしまった。
( ・∀・)「本当か! じゃあいつもの『ビッグ・ノイズ』の前で待ってるわ」
そう言って電話は切れた。
とりあえず部屋着から着替えた俺は、適当にスマートフォンと財布をポケットに突っ込んで、家を出た。
うちの家から中心部の駅前までは近い。歩いて10分くらいで着く。
あまり立地で得してるなと感じることは無いのだが、こういう時は便利だなと思う。
スマートフォンにつないだイヤホンから流れる曲を聴きながら歩いていると、すぐに目的地へと到着した。
41
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:09:03 ID:sGgHmx0c0
( ・∀・)「よう、ドクオ」
待ち合わせ場所にいたモララーの姿もすぐに見つかった。
( ・∀・)「今電話しようと思ってた」
('A`)「待たせたな」
街は夕暮れ。
いろんな人が行き交う中を、俺たちはただ彷徨っていた。
カラオケでもいくか? なんて話にもなったが、結局俺たちはふらつく事を選んだ。
なんだかんだで、ダラダラとしているこの時間が一番気楽で、心地よかったから。
( ・∀・)「どっかでコーヒーでも飲むか?」
('A`)「だな、いい考えだ」
そう言って店を探していたその時、すれ違った女性になんだか見知った感覚がした。
俺はとっさに振り返り、後姿を見る。
42
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:10:48 ID:sGgHmx0c0
('A`)「ん?」
( ・∀・)「どうした?」
綺麗な金色のカールした髪、そしてあのスラッとした体形。
あまり見慣れない私服姿だが、その姿はツンに見えた。
その彼女の隣にはスーツ姿の男性が歩いていた。
話す際に見える顔から察するに、30代かそれより上の男性といったところだろうか。
一緒に歩いているだけなのに、何だか彼らの間には怪しさが漂っている。
それが傍目からも分かる程度の違和感が、あの2人にはあった。
('A`)「あれ……ツンじゃねえかなぁ……」
( ・∀・)「どれよ」
('A`)「あれよ」
俺は先程すれ違った2人の背中を指さした。
43
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:11:46 ID:sGgHmx0c0
('A`)「……なぁ、あの2人さ、なんか変じゃねえ?」
( ・∀・)「確かに何か……変というか……なんというか……」
('A`)「そうだよな、そう見えるよな」
( ・∀・)「親父さんとかじゃねーよな?」
('A`)「ツンの親父は北欧の人だ」
( ・∀・)「じゃあ違うなあれは」
('A`)「まあいいや、行こうぜモララー」
( ・∀・)「……そうだ」
('A`)「あ?」
( ・∀・)「後つけようぜ、あの2人の」
('A`)「はあ?」
( ・∀・)「だってよ、あれ例のツンちゃん? なんだろ?」
('A`)「断定は出来ねえよ、雰囲気で判断しただけだ」
( ・∀・)「それなら尚更いいじゃないか。ちょっとした探偵ごっこだよ」
( ・∀・)「後をつけて本人か判断する、そんでどこに行ったか見届ける」
44
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:12:39 ID:sGgHmx0c0
('A`)「それ見つかったら今度こそ面倒くせえぞ」
('A`)「ストーカーか変質者のやることだ」
( ・∀・)「うっせうっせ、暇なんだ、やろうぜ!」
そういってモララーは勝手に2人をつけ始める。
俺は最後までためらっていたが、結局モララーの後を追った。
追跡対象の2人は案外ゆっくり歩くので、着いていくのは楽だった。
おそらく、ぎこちない会話をしながら、互いの歩調を探りつつ歩いているからなのだろう。
俺達はポケットに手を突っ込み、少しうつむき加減でジッとその後を追っていた。
('A`)「(この通りは……)」
彼女たちは今いる「拝成通り」をゆっくりと抜け、路地裏を通り「潮見通り」へと歩き出た。
ここ、「潮見通り」はいわゆる風俗街だ。高校生が普通来るような場所では、無い。
45
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:13:53 ID:sGgHmx0c0
( ・∀・)「おいおい、ドクオちゃんよ、ヤベー事になってきたな」
モララーが近寄り話しかけてきた。
別に普通に話してもバレ無さそうな距離だが、やはりやってる事をやましく感じているからだからだろう。
自然と会話は小声になっていた。
('A`)「確かにヤベー事だな」
( ・∀・)「もうヤる事確定みたいなもんだろ」
( ・∀・)「どうだ? あれ、ツンちゃんか?」
('A`)「……分かんねー。歩き方とか雰囲気はそれっぽい」
( ・∀・)「それにしてもすげえ所に来ちまったな」
('A`)「潮見通りなんて来るの俺初めてだよ」
( ・∀・)「俺も中学の時に先輩と来た以来」
('A`)「……何しに来たんだ?」
( ・∀・)「不良が多かったからさ、その頃。度胸試しで歩いてたよ」
('A`)「はぁ〜やってんねえ……」
46
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:14:45 ID:sGgHmx0c0
( ・∀・)「おっ……あの路地入っていったよ」
('A`)「あの路地ってどこ繋がってんの?」
( ・∀・)「ラブホ街」
('A`)「……」
怪しげな雰囲気を醸し出す男女2人。
向かうのはラブホ街。やる事と言えば1つに決まってる。
( ・∀・)「入るとこまで見送ろうぜ」
('A`)「ここ来たらもう何しに来たか分かるようなもんだろ」
( ・∀・)「バカお前、浮気調査でも入るとこまでチェックしてようやく完了なんだぞ」
('A`)「俺らは調査してんのか?」
( ・∀・)「いいから行くぞおい」
(;'A`)「いてて! 引っ張るなよ!」
47
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:16:00 ID:sGgHmx0c0
完全に楽しんでいるモララーに腕を引かれ、俺はラブホ街へと足を踏み入れる。
何か、悪いとこへ足を踏み入れている気がした。夕方の人通りは、だいぶ少なかったが。
( ・∀・)「見ろよ」
そう言って追っている2人を顎で指すモララー。
2人はどこのホテルに入るか、ついに決めたようだ。俺たちは立ち止まり、自販機の陰に隠れながら覗く。
( ・∀・)「あのホテルなら、入る瞬間この位置からはっきり横顔が見える」
( ・∀・)「よーく見とけよ」
('A`)「……やっぱ俺、見たくない」
(;・∀・)「バカお前、ここまで来てそれは無いだろ!」
('A`)「だってよ、ここでその現場抑えて何か得あるか?」
('A`)「何とも言えない気持ちになるだけだ」
( ・∀・)「そりゃあお前が知ってる相手かもしれないからな」
( ・∀・)「惚れてる相手なら尚更しっかり見とけ」
('A`)「……けど」
( ・∀・)「おい、見ろ入るぞ!」
48
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:17:06 ID:sGgHmx0c0
躊躇することなく、ホテルへと入っていったあの2人。
女性の横顔が見えたのは一瞬だった。けれど、俺には見えた。
間違いなく、ハッキリと。
( ・∀・)「……どうだった?」
('A`)「……別人だったよ」
( ・∀・)「本当に?」
('A`)「本当に」
(;・∀・)「まぁーじか! ここまで追ってきたのに結局別人かよ!」
('A`)「満足したか?」
(;・∀・)「尾行は楽しかったけど、結果には満足できてねえ!」
('A`)「そんなにスキャンダルが好きか」
('A`)「……まぁいいや、帰ろうぜ」
( ・∀・)「……あーつまんねー!」
( ・∀・)「もっと! 刺激が! 欲しいなあ!」
そう言ってジタバタしているモララーをなだめ、
俺たちは来た道をまた戻り、拝成通りのカフェで一服した後に解散した。
49
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:18:16 ID:sGgHmx0c0
帰り道、俺はあのホテルへ入っていく姿を頭の中で何度もリピートしていた。
真正面から金髪の彼女を見た訳じゃない。
けれども何度も見た、何度も妄想したあの顔。
あれは、おそらく……。
俺はいったいどうすればいいのか、分からなかった。
これも全て妄想の中ならば良かったのに。
しかし、これは現実だ。まるで白昼夢のような、現実だ。
家に着いた俺は、親から「ご飯だよ」と言われたのも聞かずに、自分の部屋へ向かった。
そしてベッドに仰向けに倒れ込む。
この混沌として濁り切った感情を何と言えばいいんだろう。
そして、このやり場のない気持ちを、どこに向けたらいいんだろう。
俺はベッドを拳で叩く。
1回、2回、3回、4回。
何の解決にもならないことは分かってる。
けれども何かに自分の溢れ出る感情をぶつけないとダメになってしまいそうな気がした。
俺は両手で顔を覆った。
意識が、いつの間にか微睡みの中へと落ちていくのを感じた。
50
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:19:59 ID:sGgHmx0c0
※※※
夏の夕暮れ時に、俺とツンは例のヤリ部屋にいた。
彼女は制服姿、俺は部屋着姿のいびつな空間だった。
ギターサウンドだけが流れる空間。時折挟まるブレイクによる静けさ。
そして目の前でピョンピョンと跳ねながら演奏する彼女。夕日がその金髪に反射して少しまぶしい。
俺にとってその空間は、その全てが心地よかった。
ξ゚⊿゚)ξ「疲れたわ」
そう言ってギターを置く彼女。
向き合った俺たち。何故かお互いに見つめ合っている。
ξ゚⊿゚)ξ「ねえドクオ」
先に口を開いたのは彼女の方からだった。
ξ゚⊿゚)ξ「この前ね、私身体を売ったの」
ξ゚⊿゚)ξ「1回、5万円で。友達から紹介してもらったお客さんだったんだけどね」
ξ゚⊿゚)ξ「なんていうか、凄く、空しかった」
51
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:20:52 ID:sGgHmx0c0
('A`)「……お前は何がしたいんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「だからね、ドクオ」
ξ゚⊿゚)ξ「この空しさも、そしてしょうもない事をした私の悲しみも含めて」
('A`)「俺にこんな夢を見させて、一体」
ξ゚⊿゚)ξ「抱いて」
そう言って自ら上の制服を、少し捲り上げる。
そして、自らブラジャーのホックを外した。
いつでもどうぞと言わんばかりに構えた彼女を押し倒し、俺は覆いかぶさっていた。
そして俺は泣いていた。
泣きながら彼女の制服をめくった。
ピンク色のブラジャーが彼女の胸を被っていた。
それを無理やり上に捲り上げる。
片方の乳房があらわになり、それを俺は揉みしだく。
それはとても柔らかで、この世のモノとは思えないような感触に思えた。
「あっ」と、小さく声を上げたのが聞こえる。
彼女は、切ないような、感じているような、色々なものが混ざり合った表情をしていた。
https://res.cloudinary.com/boonnovel2020/image/upload/v1588208802/106_cjc5b5.png
.
52
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:22:44 ID:sGgHmx0c0
隠れているもう片方も露出させる。
白磁のような肌の彼女の乳房は、美しかった。
俺は右手で乳房を揉みながら左手を彼女の下半身に移動させていた。
太ももから尻へと撫でつける手は移動し、そして彼女の秘部へと手は向かう。
下着の上からでも、湿り気を感じるくらい、濡れている。
俺はそれを感じた瞬間、彼女の下着をはぎ取ろうとした。
彼女は腰を浮かせて、脱がしやすいようにしてくれた。
そして、俺によって彼女の下半身も晒されてしまった。
彼女の華奢な身体、全てを俺の手で汚す。触る、弄る、入れる。
絡め合った二人の身体は体液でドロドロに汚れ、そして混ざり合う。
妄想の彼女でしか無いなんてわかっている。
それでも急速に伸びる衝動、そして激情が迸った。
俺はまだ泣いていた。
ただひたすらに、泣いていた。
53
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:23:30 ID:sGgHmx0c0
※※※
( ・∀・)「でさ、そこでモナー先生がブチ切れちゃってさ」
('A`)「ほお」
あの日から、1週間ほど経って、俺はいつもと変わらずに過ごしていた。
朝、学校に来て、昼は寝ながら授業をこなし、放課後は屋上へとやってきている。
屋上入口のダイヤルキーは1177。それもずっと変わらない。
( ・∀・)「それでもうアイツの頭にドバってかかっちゃって」
('A`)「へえ」
( ・∀・)「……ドクオちゃん、大丈夫か?」
('A`)「……」
(;・∀・)「おーい……」
('A`)「え? ああ、ごめんごめん」
( ・∀・)「何かこの間から変だぞ、お前」
(;'A`)「そ、そうか? 俺はいつも通りだけどな」
54
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:24:18 ID:sGgHmx0c0
( ・∀・)「いーや、絶対変だね」
( ・∀・)「いつもならもっとツッコミが飛んでくるのに、ずっとうわの空じゃないか」
( ・∀・)「せっかく色々ツッコミどころのある話持ってきてるのに!」
そう言って笑うモララー。
俺はとてもじゃないが笑う気になれなかった。引きつった笑いすら出なかった。
それもこれも、全て先日の一件のせいだ。
( ・∀・)「おいおい……本当にどうしたんだよ」
( ・∀・)「身体の調子でも悪いのか?」
('A`)「……いや、大丈夫。心配させて悪いな」
( ・∀・)「ならいいけどよ……心配だぜ」
55
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:25:18 ID:sGgHmx0c0
( ・∀・)「最近俺と一緒に帰ってばっかでヤリ部屋にも行ってねえし」
( ・∀・)「なんかツンちゃんとあったのか?」
あの日以来、俺はあの部屋に顔を出していなかった。
何だか、顔を合わせるのが怖かったのだ。会った時、俺はどうにかしてしまいそうで。
('A`)「……いや、何も無い。単純に足が向かなかっただけだ」
( ・∀・)「じゃあよ、今日は行ったらどうだ?」
('A`)「どうしてさ」
( ・∀・)「そりゃあお前、急に来なくなったら心配の一つや二つ向こうもするだろ」
('A`)「そうかな」
( ・∀・)「そうだよ! 少なくとも俺がツンちゃんの立場ならそう思うね!」
('A`)「……じゃあ……」
( ・∀・)「おう、行ってこい。そして抱きしめて離れられなくなってこい」
そしてモララーは俺の右肩を押し、出口へと向かわせた。
俺はその押された勢いのまま歩き荷物を拾うと、あの部屋へ向かった。
俺は今、どんな表情をしているだろう。
そして、俺はどうしてしまうのだろう。
それは、もう、分からんのである。
56
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:26:49 ID:sGgHmx0c0
※※※
特別棟、4階、廊下の突き当り。
古びた引き戸を音を立てながら開ける。中にはやっぱりツンがいた。
ξ゚⊿゚)ξ「久しぶりね」
そう言って制服の胸元をパタパタとさせるツン。
何てことない一連の動作も、今の俺にはすごく魅力的に見える。
('A`)「久しぶりって、せいぜい1週間くらいだぜ」
ξ゚⊿゚)ξ「私にとっては結構長く感じたわ」
シールドをアンプに差し込み、電源を入れる。
ボリュームのツマミを上げてジャランとギターを鳴らす彼女。
('A`)「で、今日は何してたんだ?」
ξ゚⊿゚)ξ「『Candy Paint』のアルペジオ部分をもう少し詰めたくて」
ξ゚⊿゚)ξ「何かちょっと詰まっちゃうときがあって……それ以外でも……」
('A`)「まず弾いてみたらどうだ? 録音しておいてやるよ」
自信を持たせてあげることが大事だなと思った俺は、とりあえず弾かせてみることにした。
そしてその演奏を録音して、彼女に聞かせる。
57
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:27:51 ID:sGgHmx0c0
ξ゚⊿゚)ξ「ここ、なんかちょっと怪しくない?」
('A`)「いや、ちゃんと音出てるよ、全然怪しくない」
ξ゚⊿゚)ξ「……何か毎回悪いわね、私の個人練習に付き合わせちゃってるみたいで」
('A`)「いや別に……気にしてないよ……」
ξ゚⊿゚)ξ「それにいつも私がドクオに質問してばっかだし、飽きちゃったかなって思ってたの」
('A`)「そんなこと無いよ、毎回楽しく聞いてるし答えてる」
ξ゚⊿゚)ξ「そう?」
('A`)「……まぁたまにはこっちからも話したいかな」
ξ゚⊿゚)ξ「あら。じゃあ、こうしましょ。今日はドクオが私へ質問する」
('A`)「おお、いいねえ」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ、どうぞ。何でもいいわよ」
俺は彼女に本当のことを聞きたくてたまらなかった。
あの子のホントを。あの子の嘘を。俺は知らない。
58
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:28:49 ID:sGgHmx0c0
('A`)「じゃあ聞く」
ξ゚⊿゚)ξ「どーぞ」
('A`)「1週間前、潮見通りで何してた?」
一瞬の沈黙。
アンプから流れるノイズだけが、部屋に響く。
ξ゚⊿゚)ξ「1週間前? どうしたの、いきなり」
('A`)「答えてくれるんだろ?」
少し威圧的に彼女に詰め寄る。
それを見て彼女は少し引いたように感じた。
ξ゚⊿゚)ξ「……私は家でずっとギター弾いてた」
('A`)「嘘ついちゃダメだ」
ξ゚⊿゚)ξ「はあ?」
59
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:29:35 ID:sGgHmx0c0
('A`)「夕方、潮見通りを男と歩いてたよな」
ξ゚⊿゚)ξ「!」
('A`)「ラブホ街の方に歩いて行ったのまでは見たけど」
ξ゚⊿゚)ξ「……人違いよ」
('A`)「俺はあんなに綺麗な横顔と金髪の持ち主を他に知らない」
ξ゚⊿゚)ξ「そんなの証拠にならないじゃない」
('A`)「……俺は事実を知りたいだけなんだ」
('A`)「なあ、頼むよ、本当のことを言ってくれよ」
ξ゚⊿゚)ξ「私は本当に何も……」
('A`)「頼むよ、なあ、頼むって」
60
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:31:28 ID:sGgHmx0c0
そう言いながら徐々にツンへにじり寄る俺。
彼女は俺の圧に押されるように、徐々に後ずさりする。
そして壁際へと彼女を追い詰めるところまできた。
俺の頬を何かがツゥと伝った。いつの間にか、目から涙が溢れ出ていた。
俺はそれを拭うことなく話し続ける。
('A`)「じゃないと俺、どうにかしちまいそうなんだ」
左手で彼女の顔の脇の壁を叩く。ドンっと鈍い音が部屋の中に響いた。
ξ;゚⊿゚)ξ「ドクオ、やめて、怖いよ……」
('A`)「怖い? この俺が?」
ξ;゚⊿゚)ξ「やめよ、ね、いつもみたいにゆっくり話そう?」
('A`)「もう抑えきれないんだ、色々と」
ξ;゚⊿゚)ξ「どうしたの? お願い、やめて……」
('A`)「……どうしても答えてくれないのか」
('A`)「俺は、もうダメなんだ」
61
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:32:13 ID:sGgHmx0c0
('A`)「ツン、頼む」
('A`)「ハッキリと、本当の事を言ってくれ」
壁に付けていた左手で彼女の肩を掴み、壁に押し付けた。
彼女の顔には明らかに恐怖の色が浮かんでいる。
ξ;゚⊿゚)ξ「私じゃない! 信じて! 本当!」
ξ;゚⊿゚)ξ「最近はずっと『Candy Paint』のアルペジオの練習してた」
ξ;゚⊿゚)ξ「バイトも無かったから、ずっと家にいた」
('A`)「……」
ξ;゚⊿゚)ξ「証拠なんて残ってないから、信じてもらえないかもだけど」
('A`)「……分かった」
62
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:34:15 ID:sGgHmx0c0
俺は掴んでいた手をほどき、彼女から離れた。
怯え切っていた彼女の表情が、少しホッとしたように変わった。
ξ゚⊿゚)ξ「信じてくれるの?」
('A`)「俺は……本当のことを言ってくれと頼んだ」
('A`)「それで、言ってくれたなら本当なんだろうって」
ξ゚⊿゚)ξ「……怖かった」
('A`)「……ごめん」
ξ゚⊿゚)ξ「なんで、そんなに私かどうか知りたがったの?」
その問いに、すぐさま答えることは出来なかった。
63
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:35:48 ID:sGgHmx0c0
('A`)「……見かけた時雰囲気が変だったし……心配だったから……」
俺は嘘をついた。
あれは確かにツンだった。その確証が欲しくて、俺は暴走した。
しかし、それを正直に言ったところで証拠が無い。
このまま問い詰めたとしても、メリットも一切無いし、彼女が言っている以上、それを信じることしかできない。
そう考えた時、俺はフッと冷静に戻った。まるで先ほどまでの暴走が嘘みたいに。
そして俺は真相に迫ることを諦めたのだ。
ξ゚⊿゚)ξ「あそこまで詰め寄られると、ちょっと怖いよ」
('A`)「本当にごめん」
ξ゚⊿゚)ξ「でも、そこまで心配してくれるのは嬉しい」
ξ゚⊿゚)ξ「ありがとね」
そう言うと彼女はギターを地面に置き、歩み寄ってきたかと思うと、俺を抱きしめた。
急な出来事に俺の脳内は理解が追い付かず、何が起きたのか、事態を整理するまで少々かかった。
(;'A`)「あ、いや、どういたしまして……?」
ξ゚⊿゚)ξ「……バカなんだから」
彼女はそう耳元でささやくと、スッと俺から離れた。
俺は感じた感触も匂いも、全て覚えておこうと、必死に脳みそに刻み込んでいたが、いまいち上手くいかなかった。
けれど、ただ一つ理解できたことがある。これは夢ではないという事だ。
64
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:38:14 ID:sGgHmx0c0
※※※
('A`)「……」
朝、学生でごった返す電車に揺られながら学校へと向かっていた。
夏休み明けで、いつもの風景、いつもの騒めき、いつもの空間が戻ってきた。
夏休み中は、ずっとツンとメッセージのやり取りをしていた。
そして時々2人で遊んだ。
彼女の都合でそんなにガッツリと遊ぶことは無かったが、以前より距離は近づいたように思える。
ただ、俺は昨日からひどく寝不足だった。
夏休み前から、妄想をしていた。
夏休みに、妄想は悪化した。
そして今、夏休みが終わりを迎え、妄想はさらに激化している。
今見ている風景が、白昼夢のように思えてきている。
俺は、もうどうにもならんのかもしれんと思った。
『ご乗車ありがとうございます。次は、拝成、拝成です。お出口は進行方向に向かって右側です』
ホームに降りると、相変わらずの日差しが俺を突き刺した。
8月も末とはいえ、まだ夏の暑さを保っている。
65
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:39:10 ID:sGgHmx0c0
「きゃー! やだー!」
イヤホン越しに聞こえる女子生徒たちの声。
夏休みが明けて久々に出会った友人と楽しくおしゃべりしているのだろう。
ただ、ちょっと騒ぎ過ぎだ。
聴いていた音楽を突き抜けてくるボリュームの声は、流石に大きすぎる。
「あはは、マジでー!?」
発してくれた声のおかげで、主を見つけるのは容易だった。
俺のすぐ近く、左斜め後ろにその集団はいた。
「うるせえ」と言うつもりは無いが、顔だけでも拝んでやろうと振り返ろうとしたその時だった。
( ・∀・)「おはよう」
モララーに肩を叩かれ、挨拶をされた。
叩かれるのと同時に後ろを振り返ったものだから、なんだか凄い驚いたみたいになってしまった。
振り向かれたモララーも驚いていた。
(;・∀・)「うわぁ!」
(;・∀・)「ビックリした! 何で叩かれるの分かったわけ!?」
(;'A`)「あ、いや、うん、ちょっと」
(;'A`)「タイミングの問題で」
66
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:40:12 ID:sGgHmx0c0
(;・∀・)「タイミングー?」
('A`)「そう、ちょっと間が悪かっただけ」
( ・∀・)「まぁ別にいいんだけどさ……」
「モララーちゃん!」
そんなやり取りをしていると、後ろからモララーを呼ぶ声が聞こえた。
俺とモララーは思わず一緒に振り向く。
o川*゚ー゚)o「やほやほー」
( ・∀・)「あれ、キュートじゃないか」
o川*゚ー゚)o「いえーい! キューちゃん復帰でーす!」
その声の主は、例の女衒だった。停学になっていたわりに、元気そうだ。
キュートは後ろからモララーの隣へと移動してきた。
67
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:41:13 ID:sGgHmx0c0
( ・∀・)「もう出れるのか」
o川*゚ー゚)o「まぁね、夏休み前でよかったーって」
o川*'ー`)o「でも停学期間分、夏休みに学校行かなくちゃいけなくてさー、超めんどかったよ」
o川*゚ー゚)o「停学には二度となりたくないね、うん」
( ・∀・)「でも結局今もやってるんだろ?」
o川*゚ー゚)o「えへへ」
( ・∀・)「えへへじゃない。次バレたら退学だぞ、多分」
o川*゚ー゚)o「大丈夫だよぉ、健全なお付き合いにシフトしたからさ! もうあんな失敗はしないって!」
( ・∀・)「全く、色々と信じられんよ。あんな事になったのにまだ続けられる根性に頭が下がるね」
o川*゚ー゚)o「モララーちゃん辛辣〜」
o川*'ー`)o「でもやってみたら色々とおいしいことが多すぎてやめられないんだコレが」
68
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:41:57 ID:sGgHmx0c0
o川*゚ー゚)o「ところで、この方はモララーちゃんのお友達?」
( ・∀・)「ん、そうだよ、友達」
('A`)「ども……」
キュートは俺の方を覗き込むようにして見てきた。
彼女の方を向いていた俺と目が合う。
年齢よりも若干幼い見た目の彼女は、単純に可愛く見えた。
o川*゚ー゚)o「お兄さん、お名前は?」
('A`)「……毒田独男。みんなからはドクオって呼ばれてる」
o川*゚ー゚)o「なるほどー! ドクオ君……ドクオ君?」
o川*゚ー゚)o「あ、これがドクオ君か!」
('A`)「え?」
o川*゚ー゚)o「前にツンちゃんが教えてくれたからさー!」
o川*゚ー゚)o「仲のいいお友達がいるって!」
キュートはにっこりと笑ってこちらを見つめ返してきた。
こういったところが、おじさま方にウケる要素になっているんだろうなと、勝手に納得した。
69
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:42:55 ID:sGgHmx0c0
('A`)「へぇ、ツンとも知り合いなんだ」
( ・∀・)「ほおー、結構付き合い幅広いんだな」
o川*゚ー゚)o「えへへ、そりゃあもうツンちゃんとはね」
o川* - )o「すっごい仲良しなの」
俺は何故かゾッとした。
一瞬、ほんの一瞬だが、彼女の先ほどまで醸し出していた可愛さが消えた。
そして、彼女の表情も笑顔から真顔になっていたのを見逃さなかった。
( ・∀・)「へえ、そうなのか。じゃあ今度ドクオと一緒に遊んだら?」
気づいていないのか、モララーは先ほどと同じ感じでキュートに接している。
o川*゚ー゚)o「えー! いいのー!? じゃあ今度そうしよっかな!」
o川*゚ー゚)o「ドクオ君、よろしくね」
('A`)「え、ああ、うん」
そう言ってまた笑うキュート。
俺は、先ほどの表情が脳裏に焼き付いて離れなかった。
そして、彼女に底知れない恐怖感を抱いていた。
70
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:43:46 ID:sGgHmx0c0
※※※
('A`)「……」
( ・∀・)「ドクオちゃん、なんか今日は静かだね」
今日も屋上は静かだった。
外の香りも、吹き付ける風も、もう秋へと移行し始めている感じがしていて、
照り付ける日差しも夏の全盛期に比べていくらか柔らかい日差しだった。
そして俺たちも柵に寄りかかりながら、相変わらず紫煙をくゆらせていたのだった。
('A`)「ん、ああ、スマン」
('A`)「ちょっと考えごとしてた」
( ・∀・)「ツンちゃんの事か?」
('A`)「いや、違……くない」
( ・∀・)「おお?」
71
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:45:21 ID:sGgHmx0c0
('A`)「ツン、最近なんか、うわの空な感じでさぁ……」
('A`)「話しててもなんかボーっとしてて……」
('A`)「メッセージもたまによく分かんない返事してくるし……」
( ・∀・)「……何か惚気聞かされてるみたいでイライラしてきた」
モララーは口に含んだ煙を一気に俺へと吹き出してきた。
とにかく煙い。煙が目に染みる。
(;'A`)「なんだよ、聞いたのはモララーだろ」
( ・∀・)「つーかなに、それで付き合ってないの? マジ?」
(;'A`)「そ、そうだよ! それがどうかしたか!」
( ・∀・)「かぁーっ! お前!」
( ・∀・)「もうさ、ガバッとやっちまえよ」
夢の中ではもうとっくにやってるよ、という言葉を飲み込む。
72
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:47:01 ID:sGgHmx0c0
(;'A`)「うっせーな! 未だにツンに顔合わせる度胸も無い奴に言われたくねー!!」
(;・∀・)「俺が行かないのは気まずいからです〜! 別に度胸がないからじゃないです〜!」
('A`)「もう結構前の話なんだから、大丈夫だろ」
('A`)「つーかツンも会いたがってるよ」
(;・∀・)「何でだよ、俺別に面識ないだろ」
('A`)「話してる時に『あの逃げた人、モララーはどうしてるの』って結構聞かれるんだぞ」
(;・∀・)「バリバリ逃げた人で認識されてんじゃねーか」
(;'A`)「当たり前だろ、今んとこそれしか認識する要素ねえもん」
( ・∀・)「でもまぁ……いい加減会ってみてもいいかなって気はしてる」
( ・∀・)「なんだかんだでドクオの友達だし。顔合わせくらいはしてみたいよな」
73
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:47:44 ID:sGgHmx0c0
('A`)「それなら今日来たらいいじゃん」
( ・∀・)「今日も行くのか?」
('A`)「おう、そろそろ行こうと思ってたところだった」
( ・∀・)「そうか……じゃあ気が向いたら行くよ」
('A`)「気が向いたら、じゃなくて必ず来いよ。待ってる」
そう言うと俺はモララーの肩をポンポンと叩いて、屋上を後にした。
風がひときわ強く吹く。遠くから吹奏楽部の演奏が聞こえる。
そして夏も終わりかけの空気が身体を包んだ。
74
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:48:41 ID:sGgHmx0c0
※※※
特別棟は相変わらず静かだった。
俺は4階まで上がってきて、廊下の突き当りに向かって歩いていた。
そしていつもの古びた引き戸の前に来た時、部屋の中から声が聞こえてきた。
ツンかと思ったが、よくよく聞くとどうも違う女性の声のようだ。
おやおや? と俺は下種な思考を繰り広げる。
モララーからヤリ部屋であることを教えられ、ここに通い始めて幾日が経っただろう。
変な話だが、ついに引き当ててしまったかという、ある種の感動でいっぱいになった。
この部屋のあるべき姿(と、いうのも変な話だが)を見ることが出来るのだと思うと、何だか感慨深い。
俺は引き戸を音をさせないように少し開ける。
普通に開けると盛大に音が鳴るこの扉だが、ちょっとしたコツをつかめば普通に開くようになる。
少し手前に寄せるようにしながら、気持ち扉を持ち上げる感じで引く。コレがコツだ。
隙間から中を覗く。部屋の真ん中に人影が2人分見えた。
確認するために、俺は最大限集中する。すると、見慣れた人物がそこにいた。
75
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:49:41 ID:sGgHmx0c0
ξ゚⊿゚)ξ「何よ、こんなとこに連れてきて」
ツンだった。慌ててもう一人の姿を確認する。
一緒にいたのは例の停学女子、キュートだった。
o川*゚ー゚)o「えへへ、ちょうどいい場所かなって」
ξ゚⊿゚)ξ「私に何かするつもり?」
o川*゚ー゚)o「そんなこと無いよぉ〜」
ξ゚⊿゚)ξ「この前からずっと送ってきてたメッセージ読む限り、そうは思えないわね」
そう言ってスマートフォンの画面を見せつけるツン。
流石にここからでは何が書いてあるかは見えないが。さらに2人は話を続ける。
o川*゚ー゚)o「もう、ツンちゃん分かってるくせに」
ξ゚⊿゚)ξ「……何よ」
76
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:50:41 ID:sGgHmx0c0
o川* - )o「うちらのグループ、裏切ったのツンちゃんでしょ?」
ξ゚⊿゚)ξ「!」
o川*゚ー゚)o「おかしいと思ったんだ〜、今まで細々とやってたのにツンちゃんが入ってからバレるって」
ξ゚⊿゚)ξ「何? 単にバレて停学になったからって、私が原因だって?」
ξ゚⊿゚)ξ「そんなのただの言いがかりじゃない」
キュートが言う『うちらのグループ』。
おそらく、あの日モララーが言っていたパパ活のグループ。
それにツンが入ってた、らしい。
o川*゚ー゚)o「ブーン」
ξ゚⊿゚)ξ「え?」
o川*゚ー゚)o「ブーンさんに説得されたんだってね?」
77
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:51:35 ID:sGgHmx0c0
ξ゚⊿゚)ξ「なんであなたがその事を……」
o川*゚ー゚)o「ツンちゃんのお客さんで〜、ある程度回数会ってて〜」
o川*゚ー゚)o「そんで密告があったと思われる日の周辺で会ってる人! って括りで探したんだぁ」
o川*゚ー゚)o「そしたらブーンさんがヒットしたってわけ!」
o川*'ー`)o「こういう時、グループで色々管理してる良さが分かるよねえ」
ξ゚⊿゚)ξ「……」
o川*゚ー゚)o「でねでね、ブーンさんを私が直々にお誘いしたの! 一緒に遊びませんかって!」
o川*゚ー゚)o「最初ね、ツンちゃんの事全然喋ってくれなかった」
o川*゚ー゚)o「でもでも〜無料で『オプション』付けてあげるって言ったら、コロッと話してくれたの!」
ξ;゚⊿゚)ξ「嘘よ……そんなの嘘……」
78
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:52:44 ID:sGgHmx0c0
ツンの声は若干震えていた。
構わずキュートは話を続ける。それはとても嬉しそうに。
o川*゚ー゚)o「ブーンさんにそそのかされて私らの事をチクったことも〜」
o川*゚ー゚)o「そしてツンちゃんがブーンさんとお付き合いしてるって事も!」
o川*゚ー゚)o「あ、そうそう、しっかりヤってる事も教えてくれた〜!」
o川*゚ー゚)o「ちゃーんと話してくれたから、私もちゃーんとオプション付けてあげたよ? すっごい喜んでくれた!」
ξ;゚⊿゚)ξ「嘘だ!! あの人がそんな事するはずない!! 言うはずない!!」
o川*゚ー゚)o「ダメだよ、事実を認めなきゃ!」
そう言ってスマートフォンの画面を見せつけるキュート。
こちらからは見えないが、おそらくそこには決定的な何かが写っていたのだろう。
それを見たツンが、膝から崩れ落ちた。
79
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:53:43 ID:sGgHmx0c0
o川*゚ー゚)o「高校生ってブランドに魅力を感じるだけの変態さんなんだ、ブーンさんは!」
o川*゚ー゚)o「それに上手い事丸められちゃったんだねえ〜可哀そう!」
ξ ⊿ )ξ「違う……あの人は……あの人は……」
o川*゚ー゚)o「残念だったね、あの人にとっては無料の相手くらいにしか思われてないよ」
ξ;⊿;)ξ「うっ……うう……」
o川*゚ー゚)o「辛い? 悲しい? 全部自分がしたこと、跳ね返ってきちゃったね?」
o川*゚ー゚)o「私をコケにするからこんな事になったんだよ〜? 分かってるかな?」
そう言ってツンの顔を下から覗き込むキュート。
その笑みは最早、可愛さよりも邪悪な精神が溢れ出ているように見えた。
80
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:54:37 ID:sGgHmx0c0
o川*゚ー゚)o「そうだ! 私が身体を使った分、ツンちゃんにも使ってもらわなきゃ不公平だよね!」
o川*゚ー゚)o「お相手は……じゃあそこで覗いている貴方!」
ツンの方から引き戸へくるりと振り返ったキュート。
隙間から覗いていた俺と目が合った。
そしてキュートが歩み寄ってくる。最早逃げられない。
o川*゚ー゚)o「ダメだよ〜覗くならもっとバレないようにしなきゃ!」
そう言ってキュートは甲高い音を響かせながら引き戸を思いっきり開けた。
俺は情けなく、その場に突っ立っている事しかできなかった。
81
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:55:56 ID:sGgHmx0c0
o川*゚ー゚)o「あ! 誰かと思えばドクオ君か!」
('A`)「……よお」
o川*゚ー゚)o「最初から見てたよね! 話の流れは分かったかな〜?」
('A`)「……バレてたのか」
o川*゚ー゚)o「問い詰めようとしたら何か雰囲気がしたからさ、入口の方、チラッと気づかれない程度に見たんだ」
o川*゚ー゚)o「そしたら隙間あいてるんだもん! ちゃんと閉めたはずなのにね!」
o川*゚ー゚)o「やっぱやってる事柄、そういうとこには気をつけてるからね!」
そう言って乱雑に扉を閉めるキュート。
今度は若干開いたままだが、彼女は気にしていないようだった。
('A`)「そんな堂々と言えるもんでも無いと思うけどな」
o川*゚ー゚)o「えへへ」
o川*゚ー゚)o「では! これからツンちゃんにはドクオ君と一つになってもらいまーす!」
('A`)「……バカ言えよ」
82
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:57:04 ID:sGgHmx0c0
o川* - )o「やるしか選択肢は無いんだよ」
真顔に戻ったキュートからは殺気に近い雰囲気が滲み出ている。
最初に感じた、幼い見た目から感じる可愛さは消え去っていた。
('A`)「もう十分だろ。これ以上はやり過ぎだ」
o川*゚ー゚)o「残念、決めるのは私なんだな〜」
('A`)「選択肢は俺にだってある」
o川*゚ー゚)o「じゃあ先生にやってた事チクって、私も仕返ししちゃおうかな〜」
o川*゚ー゚)o「あ、私の怖い知り合い達に襲ってもらうっていうのもありだな!」
o川*゚ー゚)o「と、今一瞬考えただけでも2つ私はやれる事があるよ!」
('A`)「……やれるもんならやってみろ、俺が守る」
o川*゚ー゚)o「カーッコイイ! いいけど、守るのは無理かな!」
o川*゚ー゚)o「知り合いは結構武闘派だからね! それに多勢に無勢で殺されちゃうかも!」
(;'A`)「ちっ……」
o川*゚ー゚)o「別に、今言ってること全部冗談だと思ってくれてもいいよ! あとで泣いても知らないけど! アハハ!」
幼い見た目と同じように、無邪気に笑う彼女。
けれど言っている事は邪悪そのものだ。
俺はどうすればいいか、無い頭を必死に回転させながら考えている。
83
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:58:01 ID:sGgHmx0c0
('A`)「分かった、こうしよう。身体を使ったんだよな? じゃあ俺が買ったことにするんだ。キュートのことを」
o川*゚ー゚)o「ほほー?」
('A`)「相場通りの金を払う、それでいいだろ?」
o川*゚ー゚)o「じゃあ、あたしが100万って言ったらそれ払ってくれんの?」
('A`)「……払う。何なら誓約書を書いてもいい」
o川*゚ー゚)o「よく考えたね! 偉いぞドクオ!」
o川* - )o「でも、金なんて要らない」
雰囲気が完全に切り替わった。
彼女は先ほどから滲ませる程度だった、憎悪あるいは悪意の感情をむき出しにしてきた。
o川* - )o「私ね、コケにされた事にムカついてんの……私のプライドも何もかもズタズタよ」
o川* - )o「金なんていくらでも貢がせられるんだから、どーでもいい」
o川*゚ー゚)o「ただ、壊れるのが見たいだけなの。裏切者がね」
唯一の逃げ場も潰された。
他に何かがあるはずだ。考えろ、考えろ、俺。
84
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 15:59:06 ID:sGgHmx0c0
o川*゚ー゚)o「さ、どーすんの? 今あんたがヤって全て収めるか、それとも逃げてぶっ壊されるのがお望みか」
(;'A`)「……」
ξ゚⊿゚)ξ「……もういいよ、ドクオ」
(;'A`)「ツン?」
ξ゚⊿゚)ξ「もうこれ以上、考えなくていいよ……」
そう言いながらこっちに歩み寄ってくる彼女。
彼女の手は制服のファスナーにかけられていた。
o川*゚ー゚)o「流石ツンちゃん! 話が早いなぁ!」
o川*゚ー゚)o「ちゃんとヤるからには全裸でよろしくね」
(;'A`)「バカ! 止めろ!」
ξ゚⊿゚)ξ「私のせいだから……私が責任取らなくちゃ……」
セーラー服の上着が脱ぎ捨てられる。
続けざまにスカートに手を伸ばすツン。
85
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 16:00:26 ID:sGgHmx0c0
(;'A`)「ツンのせいなんかじゃない!」
ξ゚⊿゚)ξ「もう私……どうでもいい……」
スルリと、スカートが足元に落ちた。
彼女はピンク色の下着姿でその場に立っていた。
新雪のように白い肌も、傷一つ無い細い脚も、全てがさらけ出されていた。
今まで、妄想の中でしかなかった光景が眼前に、ある。
ξ゚⊿゚)ξ「……全部私が悪いの……」
彼女は手を後ろに回し、ブラジャーのホックへ手をかける。
俺は思わずその手を止めた。
(;'A`)「やめろ、いいか、落ち着け」
(;'A`)「こんなの普通じゃない。どうかしてる」
o川*゚ー゚)o「あれれ? 止めちゃうの? いいの?」
o川*゚ー゚)o「じゃあ、帰り道に『お友達』呼んでもいいかなぁ!」
o川*゚ー゚)o「哀れツンちゃん、無残に犯され人格崩壊! なーんてね! アハハ!」
(;'A`)「……クソッ!」
o川*゚ー゚)o「だから、残された選択肢は無いんだって」
そう言って俺がツンを止めた手をゆっくりと引きはがすキュート。
抵抗することもできないこの状況が、激しく歯がゆい。
86
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 16:01:26 ID:sGgHmx0c0
ツンは俺の手が離れるのを目で追った後ホックを外し、ブラジャーを脱いだ。
抜けるように白い乳房に、小さな乳輪と乳首が見えた。
(;'A`)「もう……止めてくれ……」
そして外した手をそのまま下のショーツに持っていき、ツンは一気に脱いだ。
今まで布一枚で隠されていた彼女の秘部が晒される。
俺は、思わず目をそらす。
これは妄想の中の出来事でであってほしいと願った。願う事しかできなかった。
ξ゚⊿゚)ξ「ドクオ、ごめんね、私この前嘘ついちゃったね」
ξ゚⊿゚)ξ「あの日、私、出かけてたんだ、ブーンさんと一緒に」
(;'A`)「もういい、それ以上言うんじゃない」
ξ゚⊿゚)ξ「それでね、私は使われちゃったの」
ξ゚ー゚)ξ「そしてこの有り様。笑っちゃうよね」
87
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 16:02:16 ID:sGgHmx0c0
o川*゚ー゚)o「本当面白いよ! ヤるだけヤって最終的に裏切られちゃうところ最高!」
('A`)「……やめろ」
ξ゚⊿゚)ξ「私を好きな人なんてどこにもいないんだ」
('A`)「……」
ξ゚⊿゚)ξ「だから、もういいの」
そしていつでもどうぞと言わんばかりに構えた彼女。
これでは、いつぞやに見た夢と一緒だ。
妄想が記憶に変わってしまうなんて、そんな事あってはいけない。いけないんだ。
('A`)「俺……俺は……」
('A`)「……ツンの事、好きだぞ」
('A`)「何があっても……」
俺は全てを脱いだ彼女に歩み寄り、そして抱きしめた。
彼女の身体は、妄想の中よりもずっと、ずっと、柔らかかった。
そして、いつもの彼女の匂いがした。心臓の鼓動が聞こえる。
ξ゚⊿゚)ξ「……うん……」
o川*゚ー゚)o「きゃー! いちゃいちゃしちゃってー! こんなタイミングで青春しちゃってるねえ!」
o川*゚ー゚)o「でも残念でした! ここにヒーローでも来ない限り、君たちは逃げられないの!」
88
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 16:03:08 ID:sGgHmx0c0
こうして時間を稼ぐこと以外、何も出来ない自分が酷く情けない。
頼む、誰でもいい。この状況を少しでも打開させてくれ。
そう思った
その瞬間だった。
入口の引き戸がいつもの大きな音を立てて開いたのは。
( ・∀・)「じゃあ、止めてもらおっかな」
その戸を開けた主は、モララーだった。
スマートフォンを構えながらこちらへと近寄ってくるモララー。
( ・∀・)「今までの一連の流れ、全部動画に取らせてもらった」
そう言うと画面をタッチしたモララー。
保存完了といったところだろうか。
89
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 16:04:19 ID:sGgHmx0c0
o川*゚ー゚)o「あらぁ、モララーちゃんいたの!」
( ・∀・)「キュート、これはまずいんじゃないか」
( ・∀・)「やってる事は完全に脅迫と強要だ。これを先生が見たらどう思うかな?」
o川*゚ー゚)o「うーん、次は無いって言われたから退学かな!」
( ・∀・)「俺は今、お前の急所を握った」
( ・∀・)「お前が今、引き下がればこれはここだけに留めておいてやる」
( ・∀・)「ただし、引く気がないなら話は別だ。今すぐにでもこれを然るべきところへ持っていく」
o川*゚ー゚)o「……ここでやめてもいいけど、私のお友達がツンちゃんを迎えに行くよ?」
o川*゚ー゚)o「ツンちゃんだけじゃないなぁ、まずい動画を撮ったモララーちゃんも標的だ」
90
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 16:05:26 ID:sGgHmx0c0
( ・∀・)「やれるもんならやってみろ、そのまずい動画は警察にまで行くぞ」
( ・∀・)「学内じゃもう済まされない、お前は裁かれるんだ」
o川*゚ー゚)o「それは困るなぁ……」
キュートは顎を手でさすり、考えているような仕草を見せた。
そしてしばらくしてから、手をポンっと叩くと、ニッコリと笑ってこちらの方を向いた。
o川*゚ー゚)o「運が良かったねお2人さん! 今日のところは見逃してあげる!」
o川*゚ー゚)o「モララーちゃんが来ちゃったのが私の運の尽きだったかなぁ。残念残念」
そう言うと、キュートは笑いながら部屋を出ていった。
出ていく最中も、彼女はご機嫌そうな笑顔が絶えなかった。
あれは悪魔の笑みだ。そう思った。
91
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 16:06:40 ID:sGgHmx0c0
そして部屋の中に俺たち3人だけになった瞬間。
堰を切ったようにツンが泣き出した。抱き着いていた俺をさらにギュッと引き寄せ、泣いていた。
モララーも安心したのか、その場にしゃがみこんで両手で顔を覆っていた。
俺もふうと一息ついた。何とか、最悪の事態は回避できた。
('A`)「モララー……来てくれてたんだな」
( ・∀・)「そりゃあお前にああ言われたら来るしかねーだろ」
両手で顔を覆ったままモララーは言った。
( ・∀・)「結構迷ったよ、来るのは。でも結果として正解だった事に俺はホッとしてる」
('A`)「誘っておいて……本当に良かった……」
相変わらずツンは泣きじゃくっている。
俺は背中をさすってやった。
92
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 16:07:49 ID:sGgHmx0c0
('A`)「……なあ、いつから見てたんだ?」
( ・∀・)「ツンちゃんが下着姿になり始めたタイミングくらいからだ」
( ・∀・)「尋常じゃない雰囲気を感じて、中途半端に開いてた隙間から中を覗いたんだ」
( ・∀・)「そしたらご覧の通りさ。ツンちゃんが脱ぎ始めるまでは何も出来なかった」
('A`)「と、いう事は最初から動画を撮っていたって言ってたのは嘘だったのか」
( ・∀・)「ああ、あの場でとっさに思いついた嘘だよ。だからテンパってスマホ構えたまま突入なんてしたんだ」
顔を上げ、その場に立ち上がるモララー。
微笑を浮かべていたが、若干の疲労がにじんでいるように見えた。
('A`)「モララー、ツンをどうにかしてやろうぜ」
('A`)「ちょっとこのままじゃマズい」
( ・∀・)「おう、そうだな……全く目のやり場に困るぜ……」
93
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 16:08:53 ID:sGgHmx0c0
モララーは散らばっていた下着やら制服やらを集める。俺はツンを優しく離す。
そして部屋の隅に連れていくと、自分らをブラインドにして着替えさせる。
着替えが終わった彼女はまだ泣いていた。俺は、それを眺める事しか出来なかった。
こんな時どうしたらいいかなんて、俺にはさっぱり分からなかった。
ξ゚⊿゚)ξ「あの……モララーさん、助けてくれてありがとう……」
( ・∀・)「俺が来たのは運が良かっただけだ、礼を言うならドクオに言ってやれ」
ξ゚⊿゚)ξ「うん……」
ξ゚⊿゚)ξ「……ドクオ、ありがとう」
('A`)「何事も無くて本当に良かった……何も出来なくてごめん」
ξ゚⊿゚)ξ「ううん……私、嘘ついたんだ……本当にごめん」
('A`)「……気にすんなよ」
ξ゚⊿゚)ξ「……私のせいだ……」
94
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 16:09:48 ID:sGgHmx0c0
そう言うとツンは俺に抱き着いて、また泣いていた。
胸元に顔を埋めて泣いているツンの頭を、少し撫でた。
しばらくそうしていると、部屋の隅でこちらを眺めていたモララーがこちらへとやってきた。
( ・∀・)「……ツンちゃんが落ち着いたら、帰れ、な?」
( ・∀・)「俺は先に帰らせてもらうわ。挨拶はまた今度な」
('A`)「ありがとう……本当に助かった……」
( ・∀・)「また明日」
そして俺の肩をポンと叩くと、彼は手をヒラヒラと振って去っていった。
今日は本当に助けられた。彼が来てくれなかったら、今頃どうなっていただろうか?
想像するだけでも恐ろしい。
95
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 16:10:58 ID:sGgHmx0c0
モララーが帰って少し経つと、ツンは少し落ち着いた。
泣き腫らした目は、赤くなっていた。
ξ゚⊿゚)ξ「……あのね」
('A`)「ん?」
ツンは鼻をすすりながら、俺の顔を見つめている。
彼女の吐息がかかるほど、その距離は近い。
ξ゚⊿゚)ξ「ありがとね、好きって言ってくれて」
ξ゚⊿゚)ξ「嘘だとしても、とても嬉しかった」
('A`)「……俺はいつも本心で話してるよ」
('A`)「あの言葉だって嘘じゃない。本当だよ」
('A`)「その……なんだ、色々あったのは分かった。けど」
96
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 16:11:57 ID:sGgHmx0c0
ξ゚⊿゚)ξ「嬉しい。嬉しいよドクオ」
ξ゚⊿゚)ξ「でもね、ちょっと待ってほしいの」
('A`)「……?」
ξ゚⊿゚)ξ「本当に色々あったんだ、私」
ξ゚⊿゚)ξ「最低な事もした。それにブーンさんとの関係もどうにかしなきゃいけない」
ξ゚⊿゚)ξ「だから……ちょっと待ってほしい」
ξ゚⊿゚)ξ「自分でやったことに、ちゃんとけりをつけてくるから」
('A`)「……うん」
ξ゚⊿゚)ξ「ごめんね……ありがと」
そう言って、ツンは俺の唇に唇を重ねた。
どれくらいの時間だったのだろう、俺にとっては永遠にも感じられるような時間だった。
そして、唇というのは、これほどまでに柔らかいものなのかと思った。
97
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 16:13:23 ID:sGgHmx0c0
※※※
あの日以降、ヤリ部屋に行く事は無くなった。
もう行っても、ツンはそこに来ないから。
ついでに言うとあの日以降、メッセージも音信不通だ。
既読こそつくものの、返信は帰ってこない。
同じ学年だから、時折見かける事はある。
けれど話しかける勇気は無くて、見かけてはその姿を見送っていた。
あれは、いや、全ては白昼夢だったのではないだろうか。
妄想と寝不足が見せた幻覚。
ポケットからタバコを取り出したが、中身は無かった。
切れたのに買い忘れていた事に気が付いた俺は、大きなため息を吐いてうつむいた。
その瞬間、甲高い音を立てながら、屋上入り口ドアが開いた。
( ・∀・)「おいーっす」
相変わらずの感じで、モララーが入ってきた。
そしてゆっくりと俺の隣へとやってきて、柵へともたれかかる。
98
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 16:14:17 ID:sGgHmx0c0
( ・∀・)「火ィくれるか?」
('A`)「いい加減自分のライター使え」
( ・∀・)「そんなつれない事言うなよ」
俺はポケットからライターを取り出し、銜えているタバコに火を点けてやる。
そうすると、満足そうにそれを吸い出すのだった。
( ・∀・)「吸わねえの?」
('A`)「弾切れだ」
( ・∀・)「俺の吸うか?」
('A`)「いや……いいや」
( ・∀・)「相変わらずツンちゃんは反応なしか?」
('A`)「……ああ、一切返事も返ってこねえ」
( ・∀・)「でも本人は元気そうなんだろ? 一応」
('A`)「たまに見かける時はな」
( ・∀・)「そっかあ」
99
:
◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 16:16:11 ID:sGgHmx0c0
銜えていたタバコを右手に持つと、空を見上げるモララー。
そしてフッと煙を吐き出した。
('A`)「今思うと、あれは体のいい断りだったのかもしれねえ」
( ・∀・)「そんな事あるか。あんな状況で振り絞っていった一言をそんな無下にするかね?」
('A`)「異常事態だったからこそ、言葉が薄っぺらく聞こえたんじゃねえかって……」
('A`)「あと、言ったはいいけど帰って冷静になってみたら……みたいなさあ」
(;・∀・)「ネガティブ! ネガティブすぎるよ!」
('A`)「だってよ……全然返信も何も来ないんだぜ?」
('A`)「むしろ告白がどうこうより、嫌われたんじゃないかを心配しなきゃいけないんじゃ……」
(;・∀・)「やめろやめろ、完全に思考が負の連鎖だ」
( ・∀・)「一旦落ち着いて、深呼吸しろ、な?」
('A`)「はぁ……全くうんざりする……」
('A`)「他でもない自分自身に……」
肩を上下させて深呼吸をする。
けれど、俺の頭の中はスッキリすることなく、ずっとモヤモヤが溜まりっぱなしだった。
100
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◆Bze4.HgeAQ
:2020/05/03(日) 16:17:17 ID:sGgHmx0c0
( ・∀・)「やっぱりよ、何か起きねえとこうなっちまうんだよ」
( ・∀・)「脳みそ刺激する何かがよ」
('A`)「ああ、よく分かるわ」
( ・∀・)「学校は相変わらずだしな」
('A`)「何かこう……面白いことは無いもんかね」
風が吹く。もう真夏のような熱気を帯びることのないそれは、ずいぶんとカラッとしている。
モララーが、一つ大きなあくびをした。
('A`)「……帰るか」
( ・∀・)「……だなあ、帰るか」
2人そろって寄りかかっていた身体を起こして、近くへ適当に放り投げていたカバンを各々拾い上げる。
モララーもタバコを消し、いつものように排水溝へと投げ捨てた。
そして出口へ向かおうとしたその瞬間。屋上の扉が開いた。
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