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('A`)デイドリーム・アンプリファーのようです

100 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 16:17:17 ID:sGgHmx0c0
( ・∀・)「やっぱりよ、何か起きねえとこうなっちまうんだよ」

( ・∀・)「脳みそ刺激する何かがよ」

('A`)「ああ、よく分かるわ」

( ・∀・)「学校は相変わらずだしな」

('A`)「何かこう……面白いことは無いもんかね」

風が吹く。もう真夏のような熱気を帯びることのないそれは、ずいぶんとカラッとしている。
モララーが、一つ大きなあくびをした。

('A`)「……帰るか」

( ・∀・)「……だなあ、帰るか」

2人そろって寄りかかっていた身体を起こして、近くへ適当に放り投げていたカバンを各々拾い上げる。
モララーもタバコを消し、いつものように排水溝へと投げ捨てた。

そして出口へ向かおうとしたその瞬間。屋上の扉が開いた。

101 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 16:18:04 ID:sGgHmx0c0
ξ゚⊿゚)ξ「いた」

('A`)「……!」

( ・∀・)「……あらあら」

モララーは俺の背中を強く一叩きすると、出口の前に立つツンの脇を通り抜け出ていった。
ツンはモララーに何か言おうとしたのか、後を目で追いかけていたが、話しかけなかった。
そして屋上には、俺とツンの2人だけになった。

ξ゚⊿゚)ξ「久しぶり、元気してた?」

('A`)「……どうしてここに?」

ξ゚⊿゚)ξ「だって前から屋上でたむろってるって言ってたじゃない」

('A`)「そうじゃなくて」

ξ゚⊿゚)ξ「連絡しなかった件なら悪かったと思ってる」

ξ゚⊿゚)ξ「一切合切が片付くまで連絡とるのは止めておこうと思ったの」

ξ゚⊿゚)ξ「万が一、何かに巻き込まれた時に迷惑をかけないようにね」

102 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 16:19:06 ID:sGgHmx0c0
('A`)「……すげー心配したんだぞ」

ξ゚⊿゚)ξ「だからごめんって言ってるじゃない」

('A`)「でもここに来たって事は片付いたんだな?」

ξ゚⊿゚)ξ「うん、大体の事は」

('A`)「そりゃあよかった、安心したよ」

丁度、風が強く吹く。
開け放った扉の前で立っていた彼女のスカートと、金色の髪が揺れた。

ξ゚⊿゚)ξ「ねえ、ドクオ」

('A`)「なんだよ」

ξ゚⊿゚)ξ「……この前私に言ってくれた事、あれって本当なんだよね」

('A`)「何で嘘をつく必要がある? 俺はツンが好きだよ」

これだけは自信を持って言える。
あの時出た言葉は、嘘偽りない自分の言葉だ。

103 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 16:20:24 ID:sGgHmx0c0
ξ゚⊿゚)ξ「……私ね、あれは傷つけないための嘘じゃないかってずっと思ってたの」

ξ゚⊿゚)ξ「あんなみっともない姿を晒した私を、傷つけないために言ってくれたんじゃないかって」

('A`)「そんな事ない。あれは正真正銘自分の言葉だ」

ξ゚⊿゚)ξ「そっか……それなら私もちゃんと答えなきゃダメよね」

ひとつ息を吐くツン。
今まで俯き加減だったツンがこちらを向いた。

ξ゚⊿゚)ξ「あのね、本当にドクオには感謝してる」

ξ゚⊿゚)ξ「この前助けてもらった事もそうだし、色々聞いてくれたりしてさ」

104 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 16:21:13 ID:sGgHmx0c0
ξ゚⊿゚)ξ「心の中に好意もずっとあった。けど、私は他の人と付き合ってた。あのブーンさんとね」

ξ゚⊿゚)ξ「でも、いいもんじゃなかったわ。結果もご存じだと思うけど」

そう言って自嘲気味な笑みを浮かべる彼女。
髪をかき上げて耳に掛ける。

ξ゚⊿゚)ξ「そして別れて、私思ったの」

ξ゚⊿゚)ξ「こんな私がドクオと付き合う資格なんて無いって」

('A`)「どうしてそんな事言うんだよ」

ξ゚⊿゚)ξ「だって付き合ってた人と別れたから、すぐに乗り換えるみたいなものよ」

ξ゚⊿゚)ξ「そんなのって最低じゃない」

ξ゚⊿゚)ξ「私もどうかしてるわよね」

('A`)「……」

105 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 16:22:21 ID:sGgHmx0c0
ξ゚⊿゚)ξ「私嘘もついたわ……それに……」

('A`)「もういいよ」

俺はツンを抱き寄せる。
驚きで彼女は一瞬身体をこわばらせたが、すぐに俺に身を預けてきた。

('A`)「これでいいんだ」

ξ゚⊿゚)ξ「……そういうのカッコいいけど、絶対損するからね」

('A`)「損するのは慣れてるよ」

ξ゚⊿゚)ξ「バカ」

ξ゚⊿゚)ξ「……タバコの臭いがするよ」

('A`)「……ごめん」

彼女は俺の胸へともたれ、そしてより一層強く俺の事を抱きしめた。
俺もそれに呼応するように、しっかりと彼女を引き寄せた。

ハッピーエンドに見える景色にも、先には闇が待っている。
何もかもこれで全ておしまいとは言えないだろう。
闇の深さに怯えながら、それでも覗き込む事にしたのだから。

けれど以前よりも、面白い事は増えるはずだ。
いつも見ていた妄想よりも、ずっと。

106 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 16:23:20 ID:sGgHmx0c0
相変わらず俺は17歳で、高校の屋上にいた。

晩夏の青空を見上げた。
肌で感じる空気は秋めいていて、夏は通り過ぎていったのだと感じた。

ベッドの上で抱いた妄想は、記憶へと変わった。
コントロール不能の気持ちはぶっ壊された。
あの子の本当も、嘘も、俺は知らない。

けれど、俺と彼女はここにいる。それだけで十分だろう。

この白昼夢はまだ続く。
きっと、さらに増幅されて続いていく。



ああ、彼女の匂いがする。



.

107 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 16:24:06 ID:sGgHmx0c0




('A`)デイドリーム・アンプリファーのようです 終



.

108 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 16:24:41 ID:sGgHmx0c0
使用イラスト:No.106です。
素敵なイラストをありがとうございました!

109名無しさん:2020/05/03(日) 18:52:45 ID:9M5dLa.g0
おつです。

110名無しさん:2020/05/04(月) 12:54:50 ID:akHwfhmg0
乙!

111 ◆S/V.fhvKrE:2020/05/07(木) 00:14:28 ID:U6rSJNMc0
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112名無しさん:2020/05/08(金) 10:12:19 ID:N4PrPGN20


113名無しさん:2020/05/16(土) 11:24:40 ID:1XIGlzm20

退屈でなんの代わり映えもしない日常に飽き飽きする屋上で始まって、その日常が確かに壊れてキュートやらなにやらの形の定まらない不安に晒された屋上で終わっててのがよかったな


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