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('A`)デイドリーム・アンプリファーのようです

1 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 14:31:48 ID:sGgHmx0c0
ラノブンピック参加作品。
【閲覧注意】の絵を使用しております。
本文中、極端に過激な表現はありませんがご注意ください。

64 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 15:38:14 ID:sGgHmx0c0
※※※

('A`)「……」

朝、学生でごった返す電車に揺られながら学校へと向かっていた。
夏休み明けで、いつもの風景、いつもの騒めき、いつもの空間が戻ってきた。

夏休み中は、ずっとツンとメッセージのやり取りをしていた。
そして時々2人で遊んだ。
彼女の都合でそんなにガッツリと遊ぶことは無かったが、以前より距離は近づいたように思える。

ただ、俺は昨日からひどく寝不足だった。

夏休み前から、妄想をしていた。
夏休みに、妄想は悪化した。
そして今、夏休みが終わりを迎え、妄想はさらに激化している。

今見ている風景が、白昼夢のように思えてきている。

俺は、もうどうにもならんのかもしれんと思った。

『ご乗車ありがとうございます。次は、拝成、拝成です。お出口は進行方向に向かって右側です』

ホームに降りると、相変わらずの日差しが俺を突き刺した。
8月も末とはいえ、まだ夏の暑さを保っている。

65 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 15:39:10 ID:sGgHmx0c0
「きゃー! やだー!」

イヤホン越しに聞こえる女子生徒たちの声。
夏休みが明けて久々に出会った友人と楽しくおしゃべりしているのだろう。
ただ、ちょっと騒ぎ過ぎだ。
聴いていた音楽を突き抜けてくるボリュームの声は、流石に大きすぎる。

「あはは、マジでー!?」

発してくれた声のおかげで、主を見つけるのは容易だった。
俺のすぐ近く、左斜め後ろにその集団はいた。
「うるせえ」と言うつもりは無いが、顔だけでも拝んでやろうと振り返ろうとしたその時だった。

( ・∀・)「おはよう」

モララーに肩を叩かれ、挨拶をされた。
叩かれるのと同時に後ろを振り返ったものだから、なんだか凄い驚いたみたいになってしまった。
振り向かれたモララーも驚いていた。

(;・∀・)「うわぁ!」

(;・∀・)「ビックリした! 何で叩かれるの分かったわけ!?」

(;'A`)「あ、いや、うん、ちょっと」

(;'A`)「タイミングの問題で」

66 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 15:40:12 ID:sGgHmx0c0
(;・∀・)「タイミングー?」

('A`)「そう、ちょっと間が悪かっただけ」

( ・∀・)「まぁ別にいいんだけどさ……」

「モララーちゃん!」

そんなやり取りをしていると、後ろからモララーを呼ぶ声が聞こえた。
俺とモララーは思わず一緒に振り向く。

o川*゚ー゚)o「やほやほー」

( ・∀・)「あれ、キュートじゃないか」

o川*゚ー゚)o「いえーい! キューちゃん復帰でーす!」

その声の主は、例の女衒だった。停学になっていたわりに、元気そうだ。
キュートは後ろからモララーの隣へと移動してきた。

67 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 15:41:13 ID:sGgHmx0c0
( ・∀・)「もう出れるのか」

o川*゚ー゚)o「まぁね、夏休み前でよかったーって」

o川*'ー`)o「でも停学期間分、夏休みに学校行かなくちゃいけなくてさー、超めんどかったよ」

o川*゚ー゚)o「停学には二度となりたくないね、うん」

( ・∀・)「でも結局今もやってるんだろ?」

o川*゚ー゚)o「えへへ」

( ・∀・)「えへへじゃない。次バレたら退学だぞ、多分」

o川*゚ー゚)o「大丈夫だよぉ、健全なお付き合いにシフトしたからさ! もうあんな失敗はしないって!」

( ・∀・)「全く、色々と信じられんよ。あんな事になったのにまだ続けられる根性に頭が下がるね」

o川*゚ー゚)o「モララーちゃん辛辣〜」

o川*'ー`)o「でもやってみたら色々とおいしいことが多すぎてやめられないんだコレが」

68 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 15:41:57 ID:sGgHmx0c0
o川*゚ー゚)o「ところで、この方はモララーちゃんのお友達?」

( ・∀・)「ん、そうだよ、友達」

('A`)「ども……」

キュートは俺の方を覗き込むようにして見てきた。
彼女の方を向いていた俺と目が合う。
年齢よりも若干幼い見た目の彼女は、単純に可愛く見えた。

o川*゚ー゚)o「お兄さん、お名前は?」

('A`)「……毒田独男。みんなからはドクオって呼ばれてる」

o川*゚ー゚)o「なるほどー! ドクオ君……ドクオ君?」

o川*゚ー゚)o「あ、これがドクオ君か!」

('A`)「え?」

o川*゚ー゚)o「前にツンちゃんが教えてくれたからさー!」

o川*゚ー゚)o「仲のいいお友達がいるって!」

キュートはにっこりと笑ってこちらを見つめ返してきた。
こういったところが、おじさま方にウケる要素になっているんだろうなと、勝手に納得した。

69 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 15:42:55 ID:sGgHmx0c0
('A`)「へぇ、ツンとも知り合いなんだ」

( ・∀・)「ほおー、結構付き合い幅広いんだな」

o川*゚ー゚)o「えへへ、そりゃあもうツンちゃんとはね」

o川* - )o「すっごい仲良しなの」

俺は何故かゾッとした。
一瞬、ほんの一瞬だが、彼女の先ほどまで醸し出していた可愛さが消えた。
そして、彼女の表情も笑顔から真顔になっていたのを見逃さなかった。

( ・∀・)「へえ、そうなのか。じゃあ今度ドクオと一緒に遊んだら?」

気づいていないのか、モララーは先ほどと同じ感じでキュートに接している。

o川*゚ー゚)o「えー! いいのー!? じゃあ今度そうしよっかな!」

o川*゚ー゚)o「ドクオ君、よろしくね」

('A`)「え、ああ、うん」

そう言ってまた笑うキュート。
俺は、先ほどの表情が脳裏に焼き付いて離れなかった。
そして、彼女に底知れない恐怖感を抱いていた。

70 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 15:43:46 ID:sGgHmx0c0
※※※

('A`)「……」

( ・∀・)「ドクオちゃん、なんか今日は静かだね」

今日も屋上は静かだった。
外の香りも、吹き付ける風も、もう秋へと移行し始めている感じがしていて、
照り付ける日差しも夏の全盛期に比べていくらか柔らかい日差しだった。

そして俺たちも柵に寄りかかりながら、相変わらず紫煙をくゆらせていたのだった。

('A`)「ん、ああ、スマン」

('A`)「ちょっと考えごとしてた」

( ・∀・)「ツンちゃんの事か?」

('A`)「いや、違……くない」

( ・∀・)「おお?」

71 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 15:45:21 ID:sGgHmx0c0
('A`)「ツン、最近なんか、うわの空な感じでさぁ……」

('A`)「話しててもなんかボーっとしてて……」

('A`)「メッセージもたまによく分かんない返事してくるし……」

( ・∀・)「……何か惚気聞かされてるみたいでイライラしてきた」

モララーは口に含んだ煙を一気に俺へと吹き出してきた。
とにかく煙い。煙が目に染みる。

(;'A`)「なんだよ、聞いたのはモララーだろ」

( ・∀・)「つーかなに、それで付き合ってないの? マジ?」

(;'A`)「そ、そうだよ! それがどうかしたか!」

( ・∀・)「かぁーっ! お前!」

( ・∀・)「もうさ、ガバッとやっちまえよ」

夢の中ではもうとっくにやってるよ、という言葉を飲み込む。

72 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 15:47:01 ID:sGgHmx0c0
(;'A`)「うっせーな! 未だにツンに顔合わせる度胸も無い奴に言われたくねー!!」

(;・∀・)「俺が行かないのは気まずいからです〜! 別に度胸がないからじゃないです〜!」

('A`)「もう結構前の話なんだから、大丈夫だろ」

('A`)「つーかツンも会いたがってるよ」

(;・∀・)「何でだよ、俺別に面識ないだろ」

('A`)「話してる時に『あの逃げた人、モララーはどうしてるの』って結構聞かれるんだぞ」

(;・∀・)「バリバリ逃げた人で認識されてんじゃねーか」

(;'A`)「当たり前だろ、今んとこそれしか認識する要素ねえもん」

( ・∀・)「でもまぁ……いい加減会ってみてもいいかなって気はしてる」

( ・∀・)「なんだかんだでドクオの友達だし。顔合わせくらいはしてみたいよな」

73 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 15:47:44 ID:sGgHmx0c0
('A`)「それなら今日来たらいいじゃん」

( ・∀・)「今日も行くのか?」

('A`)「おう、そろそろ行こうと思ってたところだった」

( ・∀・)「そうか……じゃあ気が向いたら行くよ」

('A`)「気が向いたら、じゃなくて必ず来いよ。待ってる」

そう言うと俺はモララーの肩をポンポンと叩いて、屋上を後にした。
風がひときわ強く吹く。遠くから吹奏楽部の演奏が聞こえる。
そして夏も終わりかけの空気が身体を包んだ。

74 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 15:48:41 ID:sGgHmx0c0
※※※

特別棟は相変わらず静かだった。
俺は4階まで上がってきて、廊下の突き当りに向かって歩いていた。

そしていつもの古びた引き戸の前に来た時、部屋の中から声が聞こえてきた。
ツンかと思ったが、よくよく聞くとどうも違う女性の声のようだ。

おやおや? と俺は下種な思考を繰り広げる。

モララーからヤリ部屋であることを教えられ、ここに通い始めて幾日が経っただろう。
変な話だが、ついに引き当ててしまったかという、ある種の感動でいっぱいになった。
この部屋のあるべき姿(と、いうのも変な話だが)を見ることが出来るのだと思うと、何だか感慨深い。

俺は引き戸を音をさせないように少し開ける。
普通に開けると盛大に音が鳴るこの扉だが、ちょっとしたコツをつかめば普通に開くようになる。
少し手前に寄せるようにしながら、気持ち扉を持ち上げる感じで引く。コレがコツだ。

隙間から中を覗く。部屋の真ん中に人影が2人分見えた。
確認するために、俺は最大限集中する。すると、見慣れた人物がそこにいた。

75 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 15:49:41 ID:sGgHmx0c0
ξ゚⊿゚)ξ「何よ、こんなとこに連れてきて」

ツンだった。慌ててもう一人の姿を確認する。
一緒にいたのは例の停学女子、キュートだった。

o川*゚ー゚)o「えへへ、ちょうどいい場所かなって」

ξ゚⊿゚)ξ「私に何かするつもり?」

o川*゚ー゚)o「そんなこと無いよぉ〜」

ξ゚⊿゚)ξ「この前からずっと送ってきてたメッセージ読む限り、そうは思えないわね」

そう言ってスマートフォンの画面を見せつけるツン。
流石にここからでは何が書いてあるかは見えないが。さらに2人は話を続ける。

o川*゚ー゚)o「もう、ツンちゃん分かってるくせに」

ξ゚⊿゚)ξ「……何よ」

76 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 15:50:41 ID:sGgHmx0c0
o川* - )o「うちらのグループ、裏切ったのツンちゃんでしょ?」

ξ゚⊿゚)ξ「!」

o川*゚ー゚)o「おかしいと思ったんだ〜、今まで細々とやってたのにツンちゃんが入ってからバレるって」

ξ゚⊿゚)ξ「何? 単にバレて停学になったからって、私が原因だって?」

ξ゚⊿゚)ξ「そんなのただの言いがかりじゃない」

キュートが言う『うちらのグループ』。
おそらく、あの日モララーが言っていたパパ活のグループ。
それにツンが入ってた、らしい。

o川*゚ー゚)o「ブーン」

ξ゚⊿゚)ξ「え?」

o川*゚ー゚)o「ブーンさんに説得されたんだってね?」

77 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 15:51:35 ID:sGgHmx0c0
ξ゚⊿゚)ξ「なんであなたがその事を……」

o川*゚ー゚)o「ツンちゃんのお客さんで〜、ある程度回数会ってて〜」

o川*゚ー゚)o「そんで密告があったと思われる日の周辺で会ってる人! って括りで探したんだぁ」

o川*゚ー゚)o「そしたらブーンさんがヒットしたってわけ!」

o川*'ー`)o「こういう時、グループで色々管理してる良さが分かるよねえ」

ξ゚⊿゚)ξ「……」

o川*゚ー゚)o「でねでね、ブーンさんを私が直々にお誘いしたの! 一緒に遊びませんかって!」

o川*゚ー゚)o「最初ね、ツンちゃんの事全然喋ってくれなかった」

o川*゚ー゚)o「でもでも〜無料で『オプション』付けてあげるって言ったら、コロッと話してくれたの!」

ξ;゚⊿゚)ξ「嘘よ……そんなの嘘……」

78 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 15:52:44 ID:sGgHmx0c0
ツンの声は若干震えていた。
構わずキュートは話を続ける。それはとても嬉しそうに。

o川*゚ー゚)o「ブーンさんにそそのかされて私らの事をチクったことも〜」

o川*゚ー゚)o「そしてツンちゃんがブーンさんとお付き合いしてるって事も!」

o川*゚ー゚)o「あ、そうそう、しっかりヤってる事も教えてくれた〜!」

o川*゚ー゚)o「ちゃーんと話してくれたから、私もちゃーんとオプション付けてあげたよ? すっごい喜んでくれた!」

ξ;゚⊿゚)ξ「嘘だ!! あの人がそんな事するはずない!! 言うはずない!!」

o川*゚ー゚)o「ダメだよ、事実を認めなきゃ!」

そう言ってスマートフォンの画面を見せつけるキュート。
こちらからは見えないが、おそらくそこには決定的な何かが写っていたのだろう。
それを見たツンが、膝から崩れ落ちた。

79 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 15:53:43 ID:sGgHmx0c0
o川*゚ー゚)o「高校生ってブランドに魅力を感じるだけの変態さんなんだ、ブーンさんは!」

o川*゚ー゚)o「それに上手い事丸められちゃったんだねえ〜可哀そう!」

ξ ⊿ )ξ「違う……あの人は……あの人は……」

o川*゚ー゚)o「残念だったね、あの人にとっては無料の相手くらいにしか思われてないよ」

ξ;⊿;)ξ「うっ……うう……」

o川*゚ー゚)o「辛い? 悲しい? 全部自分がしたこと、跳ね返ってきちゃったね?」

o川*゚ー゚)o「私をコケにするからこんな事になったんだよ〜? 分かってるかな?」

そう言ってツンの顔を下から覗き込むキュート。
その笑みは最早、可愛さよりも邪悪な精神が溢れ出ているように見えた。

80 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 15:54:37 ID:sGgHmx0c0
o川*゚ー゚)o「そうだ! 私が身体を使った分、ツンちゃんにも使ってもらわなきゃ不公平だよね!」

o川*゚ー゚)o「お相手は……じゃあそこで覗いている貴方!」

ツンの方から引き戸へくるりと振り返ったキュート。
隙間から覗いていた俺と目が合った。
そしてキュートが歩み寄ってくる。最早逃げられない。

o川*゚ー゚)o「ダメだよ〜覗くならもっとバレないようにしなきゃ!」

そう言ってキュートは甲高い音を響かせながら引き戸を思いっきり開けた。
俺は情けなく、その場に突っ立っている事しかできなかった。

81 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 15:55:56 ID:sGgHmx0c0
o川*゚ー゚)o「あ! 誰かと思えばドクオ君か!」

('A`)「……よお」

o川*゚ー゚)o「最初から見てたよね! 話の流れは分かったかな〜?」

('A`)「……バレてたのか」

o川*゚ー゚)o「問い詰めようとしたら何か雰囲気がしたからさ、入口の方、チラッと気づかれない程度に見たんだ」

o川*゚ー゚)o「そしたら隙間あいてるんだもん! ちゃんと閉めたはずなのにね!」

o川*゚ー゚)o「やっぱやってる事柄、そういうとこには気をつけてるからね!」

そう言って乱雑に扉を閉めるキュート。
今度は若干開いたままだが、彼女は気にしていないようだった。

('A`)「そんな堂々と言えるもんでも無いと思うけどな」

o川*゚ー゚)o「えへへ」

o川*゚ー゚)o「では! これからツンちゃんにはドクオ君と一つになってもらいまーす!」

('A`)「……バカ言えよ」

82 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 15:57:04 ID:sGgHmx0c0
o川* - )o「やるしか選択肢は無いんだよ」

真顔に戻ったキュートからは殺気に近い雰囲気が滲み出ている。
最初に感じた、幼い見た目から感じる可愛さは消え去っていた。

('A`)「もう十分だろ。これ以上はやり過ぎだ」

o川*゚ー゚)o「残念、決めるのは私なんだな〜」

('A`)「選択肢は俺にだってある」

o川*゚ー゚)o「じゃあ先生にやってた事チクって、私も仕返ししちゃおうかな〜」

o川*゚ー゚)o「あ、私の怖い知り合い達に襲ってもらうっていうのもありだな!」

o川*゚ー゚)o「と、今一瞬考えただけでも2つ私はやれる事があるよ!」

('A`)「……やれるもんならやってみろ、俺が守る」

o川*゚ー゚)o「カーッコイイ! いいけど、守るのは無理かな!」

o川*゚ー゚)o「知り合いは結構武闘派だからね! それに多勢に無勢で殺されちゃうかも!」

(;'A`)「ちっ……」

o川*゚ー゚)o「別に、今言ってること全部冗談だと思ってくれてもいいよ! あとで泣いても知らないけど! アハハ!」

幼い見た目と同じように、無邪気に笑う彼女。
けれど言っている事は邪悪そのものだ。
俺はどうすればいいか、無い頭を必死に回転させながら考えている。

83 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 15:58:01 ID:sGgHmx0c0
('A`)「分かった、こうしよう。身体を使ったんだよな? じゃあ俺が買ったことにするんだ。キュートのことを」

o川*゚ー゚)o「ほほー?」

('A`)「相場通りの金を払う、それでいいだろ?」

o川*゚ー゚)o「じゃあ、あたしが100万って言ったらそれ払ってくれんの?」

('A`)「……払う。何なら誓約書を書いてもいい」

o川*゚ー゚)o「よく考えたね! 偉いぞドクオ!」

o川* - )o「でも、金なんて要らない」

雰囲気が完全に切り替わった。
彼女は先ほどから滲ませる程度だった、憎悪あるいは悪意の感情をむき出しにしてきた。

o川* - )o「私ね、コケにされた事にムカついてんの……私のプライドも何もかもズタズタよ」

o川* - )o「金なんていくらでも貢がせられるんだから、どーでもいい」

o川*゚ー゚)o「ただ、壊れるのが見たいだけなの。裏切者がね」

唯一の逃げ場も潰された。
他に何かがあるはずだ。考えろ、考えろ、俺。

84 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 15:59:06 ID:sGgHmx0c0
o川*゚ー゚)o「さ、どーすんの? 今あんたがヤって全て収めるか、それとも逃げてぶっ壊されるのがお望みか」

(;'A`)「……」

ξ゚⊿゚)ξ「……もういいよ、ドクオ」

(;'A`)「ツン?」

ξ゚⊿゚)ξ「もうこれ以上、考えなくていいよ……」

そう言いながらこっちに歩み寄ってくる彼女。
彼女の手は制服のファスナーにかけられていた。

o川*゚ー゚)o「流石ツンちゃん! 話が早いなぁ!」

o川*゚ー゚)o「ちゃんとヤるからには全裸でよろしくね」

(;'A`)「バカ! 止めろ!」

ξ゚⊿゚)ξ「私のせいだから……私が責任取らなくちゃ……」

セーラー服の上着が脱ぎ捨てられる。
続けざまにスカートに手を伸ばすツン。

85 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 16:00:26 ID:sGgHmx0c0
(;'A`)「ツンのせいなんかじゃない!」

ξ゚⊿゚)ξ「もう私……どうでもいい……」

スルリと、スカートが足元に落ちた。
彼女はピンク色の下着姿でその場に立っていた。
新雪のように白い肌も、傷一つ無い細い脚も、全てがさらけ出されていた。
今まで、妄想の中でしかなかった光景が眼前に、ある。

ξ゚⊿゚)ξ「……全部私が悪いの……」

彼女は手を後ろに回し、ブラジャーのホックへ手をかける。
俺は思わずその手を止めた。

(;'A`)「やめろ、いいか、落ち着け」

(;'A`)「こんなの普通じゃない。どうかしてる」

o川*゚ー゚)o「あれれ? 止めちゃうの? いいの?」

o川*゚ー゚)o「じゃあ、帰り道に『お友達』呼んでもいいかなぁ!」

o川*゚ー゚)o「哀れツンちゃん、無残に犯され人格崩壊! なーんてね! アハハ!」

(;'A`)「……クソッ!」

o川*゚ー゚)o「だから、残された選択肢は無いんだって」

そう言って俺がツンを止めた手をゆっくりと引きはがすキュート。
抵抗することもできないこの状況が、激しく歯がゆい。

86 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 16:01:26 ID:sGgHmx0c0
ツンは俺の手が離れるのを目で追った後ホックを外し、ブラジャーを脱いだ。
抜けるように白い乳房に、小さな乳輪と乳首が見えた。

(;'A`)「もう……止めてくれ……」

そして外した手をそのまま下のショーツに持っていき、ツンは一気に脱いだ。
今まで布一枚で隠されていた彼女の秘部が晒される。
俺は、思わず目をそらす。
これは妄想の中の出来事でであってほしいと願った。願う事しかできなかった。

ξ゚⊿゚)ξ「ドクオ、ごめんね、私この前嘘ついちゃったね」

ξ゚⊿゚)ξ「あの日、私、出かけてたんだ、ブーンさんと一緒に」

(;'A`)「もういい、それ以上言うんじゃない」

ξ゚⊿゚)ξ「それでね、私は使われちゃったの」

ξ゚ー゚)ξ「そしてこの有り様。笑っちゃうよね」

87 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 16:02:16 ID:sGgHmx0c0
o川*゚ー゚)o「本当面白いよ! ヤるだけヤって最終的に裏切られちゃうところ最高!」

('A`)「……やめろ」

ξ゚⊿゚)ξ「私を好きな人なんてどこにもいないんだ」

('A`)「……」

ξ゚⊿゚)ξ「だから、もういいの」

そしていつでもどうぞと言わんばかりに構えた彼女。
これでは、いつぞやに見た夢と一緒だ。
妄想が記憶に変わってしまうなんて、そんな事あってはいけない。いけないんだ。

('A`)「俺……俺は……」

('A`)「……ツンの事、好きだぞ」

('A`)「何があっても……」

俺は全てを脱いだ彼女に歩み寄り、そして抱きしめた。
彼女の身体は、妄想の中よりもずっと、ずっと、柔らかかった。
そして、いつもの彼女の匂いがした。心臓の鼓動が聞こえる。

ξ゚⊿゚)ξ「……うん……」

o川*゚ー゚)o「きゃー! いちゃいちゃしちゃってー! こんなタイミングで青春しちゃってるねえ!」

o川*゚ー゚)o「でも残念でした! ここにヒーローでも来ない限り、君たちは逃げられないの!」

88 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 16:03:08 ID:sGgHmx0c0
こうして時間を稼ぐこと以外、何も出来ない自分が酷く情けない。
頼む、誰でもいい。この状況を少しでも打開させてくれ。

そう思った
その瞬間だった。

入口の引き戸がいつもの大きな音を立てて開いたのは。

( ・∀・)「じゃあ、止めてもらおっかな」

その戸を開けた主は、モララーだった。
スマートフォンを構えながらこちらへと近寄ってくるモララー。

( ・∀・)「今までの一連の流れ、全部動画に取らせてもらった」

そう言うと画面をタッチしたモララー。
保存完了といったところだろうか。

89 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 16:04:19 ID:sGgHmx0c0
o川*゚ー゚)o「あらぁ、モララーちゃんいたの!」

( ・∀・)「キュート、これはまずいんじゃないか」

( ・∀・)「やってる事は完全に脅迫と強要だ。これを先生が見たらどう思うかな?」

o川*゚ー゚)o「うーん、次は無いって言われたから退学かな!」

( ・∀・)「俺は今、お前の急所を握った」

( ・∀・)「お前が今、引き下がればこれはここだけに留めておいてやる」

( ・∀・)「ただし、引く気がないなら話は別だ。今すぐにでもこれを然るべきところへ持っていく」

o川*゚ー゚)o「……ここでやめてもいいけど、私のお友達がツンちゃんを迎えに行くよ?」

o川*゚ー゚)o「ツンちゃんだけじゃないなぁ、まずい動画を撮ったモララーちゃんも標的だ」

90 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 16:05:26 ID:sGgHmx0c0
( ・∀・)「やれるもんならやってみろ、そのまずい動画は警察にまで行くぞ」

( ・∀・)「学内じゃもう済まされない、お前は裁かれるんだ」

o川*゚ー゚)o「それは困るなぁ……」

キュートは顎を手でさすり、考えているような仕草を見せた。
そしてしばらくしてから、手をポンっと叩くと、ニッコリと笑ってこちらの方を向いた。

o川*゚ー゚)o「運が良かったねお2人さん! 今日のところは見逃してあげる!」

o川*゚ー゚)o「モララーちゃんが来ちゃったのが私の運の尽きだったかなぁ。残念残念」

そう言うと、キュートは笑いながら部屋を出ていった。
出ていく最中も、彼女はご機嫌そうな笑顔が絶えなかった。
あれは悪魔の笑みだ。そう思った。

91 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 16:06:40 ID:sGgHmx0c0
そして部屋の中に俺たち3人だけになった瞬間。
堰を切ったようにツンが泣き出した。抱き着いていた俺をさらにギュッと引き寄せ、泣いていた。
モララーも安心したのか、その場にしゃがみこんで両手で顔を覆っていた。
俺もふうと一息ついた。何とか、最悪の事態は回避できた。

('A`)「モララー……来てくれてたんだな」

( ・∀・)「そりゃあお前にああ言われたら来るしかねーだろ」

両手で顔を覆ったままモララーは言った。

( ・∀・)「結構迷ったよ、来るのは。でも結果として正解だった事に俺はホッとしてる」

('A`)「誘っておいて……本当に良かった……」

相変わらずツンは泣きじゃくっている。
俺は背中をさすってやった。

92 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 16:07:49 ID:sGgHmx0c0
('A`)「……なあ、いつから見てたんだ?」

( ・∀・)「ツンちゃんが下着姿になり始めたタイミングくらいからだ」

( ・∀・)「尋常じゃない雰囲気を感じて、中途半端に開いてた隙間から中を覗いたんだ」

( ・∀・)「そしたらご覧の通りさ。ツンちゃんが脱ぎ始めるまでは何も出来なかった」

('A`)「と、いう事は最初から動画を撮っていたって言ってたのは嘘だったのか」

( ・∀・)「ああ、あの場でとっさに思いついた嘘だよ。だからテンパってスマホ構えたまま突入なんてしたんだ」

顔を上げ、その場に立ち上がるモララー。
微笑を浮かべていたが、若干の疲労がにじんでいるように見えた。

('A`)「モララー、ツンをどうにかしてやろうぜ」

('A`)「ちょっとこのままじゃマズい」

( ・∀・)「おう、そうだな……全く目のやり場に困るぜ……」

93 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 16:08:53 ID:sGgHmx0c0
モララーは散らばっていた下着やら制服やらを集める。俺はツンを優しく離す。
そして部屋の隅に連れていくと、自分らをブラインドにして着替えさせる。
着替えが終わった彼女はまだ泣いていた。俺は、それを眺める事しか出来なかった。
こんな時どうしたらいいかなんて、俺にはさっぱり分からなかった。

ξ゚⊿゚)ξ「あの……モララーさん、助けてくれてありがとう……」

( ・∀・)「俺が来たのは運が良かっただけだ、礼を言うならドクオに言ってやれ」

ξ゚⊿゚)ξ「うん……」

ξ゚⊿゚)ξ「……ドクオ、ありがとう」

('A`)「何事も無くて本当に良かった……何も出来なくてごめん」

ξ゚⊿゚)ξ「ううん……私、嘘ついたんだ……本当にごめん」

('A`)「……気にすんなよ」

ξ゚⊿゚)ξ「……私のせいだ……」

94 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 16:09:48 ID:sGgHmx0c0
そう言うとツンは俺に抱き着いて、また泣いていた。
胸元に顔を埋めて泣いているツンの頭を、少し撫でた。
しばらくそうしていると、部屋の隅でこちらを眺めていたモララーがこちらへとやってきた。

( ・∀・)「……ツンちゃんが落ち着いたら、帰れ、な?」

( ・∀・)「俺は先に帰らせてもらうわ。挨拶はまた今度な」

('A`)「ありがとう……本当に助かった……」

( ・∀・)「また明日」

そして俺の肩をポンと叩くと、彼は手をヒラヒラと振って去っていった。
今日は本当に助けられた。彼が来てくれなかったら、今頃どうなっていただろうか?
想像するだけでも恐ろしい。

95 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 16:10:58 ID:sGgHmx0c0
モララーが帰って少し経つと、ツンは少し落ち着いた。
泣き腫らした目は、赤くなっていた。

ξ゚⊿゚)ξ「……あのね」

('A`)「ん?」

ツンは鼻をすすりながら、俺の顔を見つめている。
彼女の吐息がかかるほど、その距離は近い。

ξ゚⊿゚)ξ「ありがとね、好きって言ってくれて」

ξ゚⊿゚)ξ「嘘だとしても、とても嬉しかった」

('A`)「……俺はいつも本心で話してるよ」

('A`)「あの言葉だって嘘じゃない。本当だよ」

('A`)「その……なんだ、色々あったのは分かった。けど」

96 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 16:11:57 ID:sGgHmx0c0
ξ゚⊿゚)ξ「嬉しい。嬉しいよドクオ」

ξ゚⊿゚)ξ「でもね、ちょっと待ってほしいの」

('A`)「……?」

ξ゚⊿゚)ξ「本当に色々あったんだ、私」

ξ゚⊿゚)ξ「最低な事もした。それにブーンさんとの関係もどうにかしなきゃいけない」

ξ゚⊿゚)ξ「だから……ちょっと待ってほしい」

ξ゚⊿゚)ξ「自分でやったことに、ちゃんとけりをつけてくるから」

('A`)「……うん」

ξ゚⊿゚)ξ「ごめんね……ありがと」

そう言って、ツンは俺の唇に唇を重ねた。
どれくらいの時間だったのだろう、俺にとっては永遠にも感じられるような時間だった。
そして、唇というのは、これほどまでに柔らかいものなのかと思った。

97 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 16:13:23 ID:sGgHmx0c0
※※※

あの日以降、ヤリ部屋に行く事は無くなった。
もう行っても、ツンはそこに来ないから。

ついでに言うとあの日以降、メッセージも音信不通だ。
既読こそつくものの、返信は帰ってこない。
同じ学年だから、時折見かける事はある。
けれど話しかける勇気は無くて、見かけてはその姿を見送っていた。

あれは、いや、全ては白昼夢だったのではないだろうか。
妄想と寝不足が見せた幻覚。

ポケットからタバコを取り出したが、中身は無かった。
切れたのに買い忘れていた事に気が付いた俺は、大きなため息を吐いてうつむいた。

その瞬間、甲高い音を立てながら、屋上入り口ドアが開いた。

( ・∀・)「おいーっす」

相変わらずの感じで、モララーが入ってきた。
そしてゆっくりと俺の隣へとやってきて、柵へともたれかかる。

98 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 16:14:17 ID:sGgHmx0c0
( ・∀・)「火ィくれるか?」

('A`)「いい加減自分のライター使え」

( ・∀・)「そんなつれない事言うなよ」

俺はポケットからライターを取り出し、銜えているタバコに火を点けてやる。
そうすると、満足そうにそれを吸い出すのだった。

( ・∀・)「吸わねえの?」

('A`)「弾切れだ」

( ・∀・)「俺の吸うか?」

('A`)「いや……いいや」

( ・∀・)「相変わらずツンちゃんは反応なしか?」

('A`)「……ああ、一切返事も返ってこねえ」

( ・∀・)「でも本人は元気そうなんだろ? 一応」

('A`)「たまに見かける時はな」

( ・∀・)「そっかあ」

99 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 16:16:11 ID:sGgHmx0c0
銜えていたタバコを右手に持つと、空を見上げるモララー。
そしてフッと煙を吐き出した。

('A`)「今思うと、あれは体のいい断りだったのかもしれねえ」

( ・∀・)「そんな事あるか。あんな状況で振り絞っていった一言をそんな無下にするかね?」

('A`)「異常事態だったからこそ、言葉が薄っぺらく聞こえたんじゃねえかって……」

('A`)「あと、言ったはいいけど帰って冷静になってみたら……みたいなさあ」

(;・∀・)「ネガティブ! ネガティブすぎるよ!」

('A`)「だってよ……全然返信も何も来ないんだぜ?」

('A`)「むしろ告白がどうこうより、嫌われたんじゃないかを心配しなきゃいけないんじゃ……」

(;・∀・)「やめろやめろ、完全に思考が負の連鎖だ」

( ・∀・)「一旦落ち着いて、深呼吸しろ、な?」

('A`)「はぁ……全くうんざりする……」

('A`)「他でもない自分自身に……」

肩を上下させて深呼吸をする。
けれど、俺の頭の中はスッキリすることなく、ずっとモヤモヤが溜まりっぱなしだった。

100 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 16:17:17 ID:sGgHmx0c0
( ・∀・)「やっぱりよ、何か起きねえとこうなっちまうんだよ」

( ・∀・)「脳みそ刺激する何かがよ」

('A`)「ああ、よく分かるわ」

( ・∀・)「学校は相変わらずだしな」

('A`)「何かこう……面白いことは無いもんかね」

風が吹く。もう真夏のような熱気を帯びることのないそれは、ずいぶんとカラッとしている。
モララーが、一つ大きなあくびをした。

('A`)「……帰るか」

( ・∀・)「……だなあ、帰るか」

2人そろって寄りかかっていた身体を起こして、近くへ適当に放り投げていたカバンを各々拾い上げる。
モララーもタバコを消し、いつものように排水溝へと投げ捨てた。

そして出口へ向かおうとしたその瞬間。屋上の扉が開いた。

101 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 16:18:04 ID:sGgHmx0c0
ξ゚⊿゚)ξ「いた」

('A`)「……!」

( ・∀・)「……あらあら」

モララーは俺の背中を強く一叩きすると、出口の前に立つツンの脇を通り抜け出ていった。
ツンはモララーに何か言おうとしたのか、後を目で追いかけていたが、話しかけなかった。
そして屋上には、俺とツンの2人だけになった。

ξ゚⊿゚)ξ「久しぶり、元気してた?」

('A`)「……どうしてここに?」

ξ゚⊿゚)ξ「だって前から屋上でたむろってるって言ってたじゃない」

('A`)「そうじゃなくて」

ξ゚⊿゚)ξ「連絡しなかった件なら悪かったと思ってる」

ξ゚⊿゚)ξ「一切合切が片付くまで連絡とるのは止めておこうと思ったの」

ξ゚⊿゚)ξ「万が一、何かに巻き込まれた時に迷惑をかけないようにね」

102 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 16:19:06 ID:sGgHmx0c0
('A`)「……すげー心配したんだぞ」

ξ゚⊿゚)ξ「だからごめんって言ってるじゃない」

('A`)「でもここに来たって事は片付いたんだな?」

ξ゚⊿゚)ξ「うん、大体の事は」

('A`)「そりゃあよかった、安心したよ」

丁度、風が強く吹く。
開け放った扉の前で立っていた彼女のスカートと、金色の髪が揺れた。

ξ゚⊿゚)ξ「ねえ、ドクオ」

('A`)「なんだよ」

ξ゚⊿゚)ξ「……この前私に言ってくれた事、あれって本当なんだよね」

('A`)「何で嘘をつく必要がある? 俺はツンが好きだよ」

これだけは自信を持って言える。
あの時出た言葉は、嘘偽りない自分の言葉だ。

103 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 16:20:24 ID:sGgHmx0c0
ξ゚⊿゚)ξ「……私ね、あれは傷つけないための嘘じゃないかってずっと思ってたの」

ξ゚⊿゚)ξ「あんなみっともない姿を晒した私を、傷つけないために言ってくれたんじゃないかって」

('A`)「そんな事ない。あれは正真正銘自分の言葉だ」

ξ゚⊿゚)ξ「そっか……それなら私もちゃんと答えなきゃダメよね」

ひとつ息を吐くツン。
今まで俯き加減だったツンがこちらを向いた。

ξ゚⊿゚)ξ「あのね、本当にドクオには感謝してる」

ξ゚⊿゚)ξ「この前助けてもらった事もそうだし、色々聞いてくれたりしてさ」

104 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 16:21:13 ID:sGgHmx0c0
ξ゚⊿゚)ξ「心の中に好意もずっとあった。けど、私は他の人と付き合ってた。あのブーンさんとね」

ξ゚⊿゚)ξ「でも、いいもんじゃなかったわ。結果もご存じだと思うけど」

そう言って自嘲気味な笑みを浮かべる彼女。
髪をかき上げて耳に掛ける。

ξ゚⊿゚)ξ「そして別れて、私思ったの」

ξ゚⊿゚)ξ「こんな私がドクオと付き合う資格なんて無いって」

('A`)「どうしてそんな事言うんだよ」

ξ゚⊿゚)ξ「だって付き合ってた人と別れたから、すぐに乗り換えるみたいなものよ」

ξ゚⊿゚)ξ「そんなのって最低じゃない」

ξ゚⊿゚)ξ「私もどうかしてるわよね」

('A`)「……」

105 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 16:22:21 ID:sGgHmx0c0
ξ゚⊿゚)ξ「私嘘もついたわ……それに……」

('A`)「もういいよ」

俺はツンを抱き寄せる。
驚きで彼女は一瞬身体をこわばらせたが、すぐに俺に身を預けてきた。

('A`)「これでいいんだ」

ξ゚⊿゚)ξ「……そういうのカッコいいけど、絶対損するからね」

('A`)「損するのは慣れてるよ」

ξ゚⊿゚)ξ「バカ」

ξ゚⊿゚)ξ「……タバコの臭いがするよ」

('A`)「……ごめん」

彼女は俺の胸へともたれ、そしてより一層強く俺の事を抱きしめた。
俺もそれに呼応するように、しっかりと彼女を引き寄せた。

ハッピーエンドに見える景色にも、先には闇が待っている。
何もかもこれで全ておしまいとは言えないだろう。
闇の深さに怯えながら、それでも覗き込む事にしたのだから。

けれど以前よりも、面白い事は増えるはずだ。
いつも見ていた妄想よりも、ずっと。

106 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 16:23:20 ID:sGgHmx0c0
相変わらず俺は17歳で、高校の屋上にいた。

晩夏の青空を見上げた。
肌で感じる空気は秋めいていて、夏は通り過ぎていったのだと感じた。

ベッドの上で抱いた妄想は、記憶へと変わった。
コントロール不能の気持ちはぶっ壊された。
あの子の本当も、嘘も、俺は知らない。

けれど、俺と彼女はここにいる。それだけで十分だろう。

この白昼夢はまだ続く。
きっと、さらに増幅されて続いていく。



ああ、彼女の匂いがする。



.

107 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 16:24:06 ID:sGgHmx0c0




('A`)デイドリーム・アンプリファーのようです 終



.

108 ◆Bze4.HgeAQ:2020/05/03(日) 16:24:41 ID:sGgHmx0c0
使用イラスト:No.106です。
素敵なイラストをありがとうございました!

109名無しさん:2020/05/03(日) 18:52:45 ID:9M5dLa.g0
おつです。

110名無しさん:2020/05/04(月) 12:54:50 ID:akHwfhmg0
乙!

111 ◆S/V.fhvKrE:2020/05/07(木) 00:14:28 ID:U6rSJNMc0
【投下期間終了のお知らせ】

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112名無しさん:2020/05/08(金) 10:12:19 ID:N4PrPGN20


113名無しさん:2020/05/16(土) 11:24:40 ID:1XIGlzm20

退屈でなんの代わり映えもしない日常に飽き飽きする屋上で始まって、その日常が確かに壊れてキュートやらなにやらの形の定まらない不安に晒された屋上で終わっててのがよかったな


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