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Ammo→Re!!のようです

798名無しさん:2021/05/24(月) 20:05:21 ID:ABQkjzkI0
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憎しみと復讐の炎は時間が経つにつれて強くなる。
消したいのならば、すぐに、そして完膚なきまでに消し去るしかない。
でなければ、いつか必ずその炎がお前の身を焼き尽くすだろう。

                            ――シチリアン・“アンラキッキー”・ルチアーノ

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September 15th PM 00:09

ヴィンスの治安を守るカラヴィニエリの行動力は迅速で、その連携力は目を見張るものがあった。
汚水の一滴が真水に落ちた瞬間、その水は汚水となる、という言葉は治安維持と事件発生後の対応の重要性についてカラヴィニエリが掲げている標語だ。
その標語がただの看板ではないことは、街中に現れた青い制服姿のカラヴィニエリと、すぐに編成された対応班の装備が物語っている。
洋上迷彩の施されたソルダットが構えるブルパップ式のライフルの銃身下にはグレネードランチャーが取り付けられ、銃爪に指が添えられていた。

いつでも発砲が出来る状態であると威嚇しつつ、彼らカラヴィニエリが本気で動き出したのだと、無言の内に誰しもが悟ったのであった。
市長、シチリアン・“アンラキッキー”・ルチアーノの命令によって、民間人は屋内へと追いやられ、あらゆる例外なく外出の制限がかけられた。
“レモンズ”は路地という路地を走り回り、市長の命令を厳守させた。
これは彼が経験した“ヴィンスの厄災”の再来を想定した動きで、市長に就任後、初めて発令された厳戒態勢だった。

観光客たちも最寄りの施設に隔離され、街中を歩くのはレモンズかカラヴィニエリだけとなっていた。
発令から僅か5分ほどのことにも関わらず、その厳戒態勢はほぼ完璧な状態を保っている。
完璧ではない理由には、二人の男が関わっていた。

(;=゚д゚)「くっそ、また足止めとか冗談じゃねぇラギ」

(;゙゚_ゞ゚)「お前といるとほんと退屈しないな」

トラギコ・マウンテンライトとオサム・ブッテロはカラヴィニエリが市長に連絡をした直後、トラックが停まる場所へと走っていた。
数百メートル走ったところで武装したカラヴィニエリによって他の観光客同様に最寄りの安宿に詰め込まれたが、二人は監視の目を掻い潜って建物の屋上から屋上へと移動を続けていた。
彼らの努力の甲斐も有り、残り一キロまでのところに来ていたが、すでに渡れる屋上は目の前になく、二人の眼下にはカラヴィニエリが立っていた。

( ゙゚_ゞ゚)「なぁ、何であいつらに説明しなかったんだ?」

(=゚д゚)「しても無駄だからだよ。
    ここの連中の行動はトップダウンラギ。
    部外者の言葉なんて聞く方がおかしいラギ」

( ゙゚_ゞ゚)「それもそうだな」

街の治安は街の矜持そのものだ。
例えジュスティア警察の人間であろうとも、契約関係にない街にとっては部外者でしかない。
部外者の言葉はあまりにも遠い物なのだ。
逆を言えば、上の人間がよほどの馬鹿でない限り、命令の統率が取れている優秀な組織とも言える。

799名無しさん:2021/05/24(月) 20:05:59 ID:ABQkjzkI0
( ゙゚_ゞ゚)「この様子だと、しばらくここに足止めか?」

(=゚д゚)「どれだけ足止め食らうか分からないのが痛いラギね。
    俺たちは足を借りてる身ラギ。
    ポットラックたちに強行突破してくれ、なんて言えねぇラギよ」

トラギコたちの素性に気づいているとしても、ポットラック・ポイフル達を巻き込むのはあまりにも筋違いというものだ。
これまでの恩があるため、彼ら相手に力での脅迫は好ましくない。
運送業者である以上は街のルールによって配送が遅れる、ということは常に可能性の中に織り込まれている。
この街での騒ぎも、彼らにとってはある意味で予定の内であるため、強行突破という手段に賛同するとは考えられない。

( ゙゚_ゞ゚)「なら、こっからはこっちで行くしかないな」

(=゚д゚)「あぁ、それも選択肢の一つラギ」

( ゙゚_ゞ゚)「他に選択肢があるのか?」

(=゚д゚)「この街がどう動くのか、少し気になってな。
    自由に動けるまで待つってのも一つの手ラギ」

( ゙゚_ゞ゚)「おいおい、それじゃあ」

身を乗り出しそうになるオサムの目の前に手を出し、トラギコは言った。

(=゚д゚)「まぁ待てよストーカー野郎。
    デレシアがこの街にいる可能性は大いにあるし、何より、まだ出発していない可能性もあるだろ?
    なら、先を急がなくてもいいラギ」

( ゙゚_ゞ゚)「確かにそうだな……」

実際のところ、デレシア達はこの街をすでに出発しているとトラギコは考えていた。
ティンバーランドの人間がトラギコたちに捕捉されている以上、デレシアによる追撃はなかったのだ。
彼女が本気を出せば氷結機能を持った棺桶を使われる前に決着はついていただろう。
そうしなかった理由があると考えれば、自ずと、デレシアの次の行動が読める。

追いかけたいという気持ちもあるが、それ以上に、トラギコはこの街でティンカーベルが起こした火がどのような結果を導くのかが気になっていた。
これまでに見てきた街の行く末はいずれも内藤財団の介入による決着が多かった。
恐らく、今回ヴィンスの騒動もそれが目的なのだろう。
街という街に介入し、影響力を高めることの企業的なメリットは当然分かるが、テロリズム的な観点からのメリットがあまり見出せなかった。

(=゚д゚)「とりあえず、ここからどうやって下に降りるかだな」

( ゙゚_ゞ゚)「降りないのも一つの手だが、どうする?」

(=゚д゚)「屋根にいつまでも張り付いてるわけにもいかねぇラギ。
    だったらいっそ――」

――そう言いかけた時、二人は同時に頭上を見上げ、躊躇うことなく屋根から飛び降りた。

J川=V=>

800名無しさん:2021/05/24(月) 20:06:20 ID:ABQkjzkI0
屋根を突き破って一階まで落ちて行った強化外骨格は、皮肉にも、ヴィンスの家屋と同じく白い塗装で統一されていた。

(;=゚д゚)「くっそ、来たラギ!!」

路地に着地すると同時に二人は街の北側に向けて走り出していた。
走りながら背後に目を向けると、家屋の壁が吹き飛び、白い棺桶が姿を現した。

J川=V=>

細身の骨格と装甲は一面が霜で覆われ、排気口らしき場所からは白い煙が放出されている。
腰を中心としてスカートのように何かが展開しているが、体中から放出される靄がその姿を隠していた。
頭部装甲の僅かな隙間から覗き見えたカメラが青白い輝きを放ったかと思った次の瞬間には、その姿は靄の中に包まれて消えていた。

(;゙゚_ゞ゚)「見たことねぇ棺桶だ」

(;=゚д゚)「間違いなくコンセプト・シリーズラギね。
    飛び道具がなさそうなのが救いラギ」

加えて、移動速度の遅さも彼らにとっては幸運だった。
随伴歩兵がいなければ逃げ切るのは容易い。

([∴-〓-]『いたぞ!!』

警笛と怒号が二人の正面から聞こえてきたと思った時には、すでに三機のソルダットが銃を構えていた。
遮蔽物の少ない路地を走っていた二人は身を屈めつつ、カラヴィニエリ達の間をすり抜ける。
その直後に銃声が響いたが、それはすぐに止んだ。

([∴-〓-]『何?!』

〔Ⅲ゚[::|::]゚〕

靄の奥から群青色のジョン・ドゥが現れ、ソルダットと交戦を始めたのである。
棺桶同士の肉弾戦であればジョン・ドゥの拳はソルダットの装甲内部に多大なダメージを与えることが出来る。
ライフルの内側に入り込まれたソルダットは瞬く間に組み伏せられ、至近距離から殴打され、沈黙した。
直後に飛び退った反応は、間違いなく次に起こり得る事象を想定していたからだろう。

明らかに戦闘慣れした動きだった。

([∴-〓-]『ポイントD4で交戦中!!
       カローネファミリーのジョン・ドゥがいるぞ!!』

発砲されたジョン・ドゥは頭部を庇いつつ、靄の奥へと後退する。
先ほどのカラヴィニエリ達の言葉を考えるに、靄は赤外線カメラを欺くほどの低温であり、その奥に逃げ込まれたら見つけ出すのは困難だろう。

([∴-〓-]『叩き伏せろ、ねじ伏せろ!!』

号令をかけたソルダットが発砲しつつ、手榴弾を放り投げる。
制圧射撃は靄に向けて集中的に放たれるが、一発も反撃がない。

( ゙゚_ゞ゚)「イルトリア式の掛け声だな」

801名無しさん:2021/05/24(月) 20:06:47 ID:ABQkjzkI0
(=゚д゚)「そりゃあイルトリアが近いから、あいつらのブートキャンプを受けたってことだろうな。
    とにかく、この隙に逃げるラギ!!」

([∴-〓-]『おい、そこの民間人!!
       急いで避難しろ!!』

(=゚д゚)「言われなくてもそうするラギ!!」

逃げようとするトラギコたちの前に、新たなソルダットが現れ、手近な家屋内へと強引に誘導される。
どうやら二人は避難が遅れた、とみなされたようだった。
二人が押し込められた家屋は無人だったが、二人はすぐに裏口を目指して走り出した。
その直後、壁を破壊してジョン・ドゥが姿を現す。

〔Ⅲ゚[::|::]゚〕『お前たちのせいで、カローネファミリーはお終いだ!!』

( ゙゚_ゞ゚)「うるっせぇなぁ!!」

(=゚д゚)「しつこいぐらいそのファミリー名を強調するラギね!!
    不自然ラギよ!!
    もうちっと演技力を気にしろラギ!!」

飛び散る破片から頭を守りつつ、二人は再び街の中を駆け抜けるのだった。
そして、二人のすぐ目の前で異変が唐突に訪れた。
“ヴィンスの雪解け”において、正にこの瞬間が大きな分岐点となったのは言うまでもない。
極低温の靄が街を蹂躙していく中。

(;=゚д゚)「……あいつ、まさか」

カラヴィニエリのソルダットでさえ突撃を躊躇し、後退する中。
一人の男が腕を組んでその靄を見据えていた。
大地を震わせるような低い声で呟く。

「来たぜ、糞尼」

男は赤い十字の描かれた銀色のコンテナを背負っていた。
身に着けたダークブルーのスーツは筋骨隆々とした肉体を抑え込めず、今にも張り裂けそうだ。
獅子の鬣のように髪を後ろに流す髪は白髪の混じったこげ茶色で、好戦的な眼を靄に向けている姿は、獲物を前にした獣のそれ。
エメラルドグリーンの瞳に、臆した様子はない。

それどころか、嗜虐的な笑みさえ浮かべている。
だが。
彼の背負うそれは、戦闘用の棺桶ではない。
それは――

       It's not what stands in front of you.  It's who stands beside you.
ミ,,゚Д゚彡『お前の前に立つ物の名前ではない。 これはお前の傍に立つ者の名前だ』

802名無しさん:2021/05/24(月) 20:07:14 ID:ABQkjzkI0
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Ammo→Re!!のようです
Ammo for Remnant!!編

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洲洲洲洲洲ハハ┴。s'´ ̄ ̄ ` s。 |H | ̄| ̄|:i{0八 i|ノ 圦 ||/|/^f=-s。|::| ||Y⌒Y^fハ/゙'iト.----
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第九章【remnant of hatred-憎しみの断片-】

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同日 PM05:48

(∪´ω`)「おー、大きな工場……」

ブーンが左手側に広がる工場群に感動の声を上げたのは、正に、ストーンウォールの街並みが見えた時だった。
一面に広がる配管と巨大な煙突は、ストーンウォールの周囲を取り囲む街の象徴そのものだった。
暮れ始めた紫色の空の下、その工場群に灯る無数の明かりはある種の生命を思わせる。
“蜂の巣街”と呼ばれる同性愛者の楽園は、精密な機械の量産を生業とする街で、工業が主な産業だ。

ある意味ではジュスティアよりも厳格な街で、差別と外圧に対しては徹底的な交戦姿勢を見せている。
彼の後ろでヒート・オロラ・レッドウィングも同様に驚きの声を上げた。

ノパ⊿゚)「でけぇな……!!
     初めて見たよ、あんな工場」

ジュスティアの街を取り囲む壁とは違い、ストーンウォールを取り囲むのは大小様々な配管だ。
まるで血管のようにも見えるそれは、全てが街の中を循環するように設計されたもので、一切の無駄がない。
夕日が配管を照らし、黒と赤に彩られたそれは幻想的な姿をしていた。

803名無しさん:2021/05/24(月) 20:07:35 ID:ABQkjzkI0
ζ(゚ー゚*ζ「街全体で使う工場の一部で、あれほど大きなものはそうないわね」

工場を目の端で眺めつつ、デレシアはそう言った。

(∪´ω`)「街全体で使うんですかお?」

ζ(゚ー゚*ζ「えぇ、あの街は特定の企業を持たないの。
       その代わりに、街全体で工場を経営して、製造をしているのよ」

ノパ⊿゚)「へぇ、それは知らなかったな。
    ストーンウォールは工業の街なのか」

ζ(゚ー゚*ζ「えぇ、主にラヴニカの下請けね。
      依頼を受けて量産をするんだけど、上等な物を作るのよ」

ノパ⊿゚)「なーるほどね」

(∪´ω`)「みんな仲良しなんですかお?」

ζ(゚ー゚*ζ「そうね、他者の干渉を嫌う反面、他者には干渉しないのがあの街の流儀よ。
      だから優しくもあって、厳しくもあるわね」

(∪´ω`)「おー、難しいですおね」

ζ(゚ー゚*ζ「下手なことをしなければそうでもないわよ。
      ただ、あの街に干渉すれば街が総出で対応することになるの。
      だから蜂の巣、って名前がついたの」

かつて、同性愛を忌避する十字教がストーンウォールに派兵したことがあった。
曰く、神の作りたもうた人間性に対する紛れもない反逆である、と。
意気込んで攻め込んだセントラスの先兵たちはもれなく殺され、撃退されたのである。
以来、どこの組織もストーンウォールに対してだけは不可侵の立場を保ってきた。

(∪´ω`)゛「なるほどー」

ノパ⊿゚)「しっかし、でかいな……」

街一つが工場としての役割を果たしているその姿は壮観であり、それが地上に出ているのは稀有だ。

(∪´ω`)「ストーンウォールは何が美味しいんですかお?」

ζ(゚ー゚*ζ「そうねぇ、これといって名物はないけれど……
      強いて言うなら、ハチミツかしら」

工場の一角に偶然作られたミツバチの巣が発端となり、工場勤務をする人間が副業として養蜂家を務めているのである。
ハチミツの美味さを決定し得るのは蜜の原料であり、その品質向上のため、彼らは工場の至る所で多様な花を栽培しているのだ。
故に街の外観とは裏腹に街には花が咲き乱れ、見事な景観が広がっている。
しかし、本腰を入れた専門家ではないため、本業の養蜂家が作るハチミツにはいくらか見劣りしてしまう。

ノパ⊿゚)「珍しい名物だな」

804名無しさん:2021/05/24(月) 20:08:17 ID:ABQkjzkI0
ζ(゚ー゚*ζ「といっても、そこまで美味しいというわけでも売りにしているわけでもないのよ。
      観光客を呼び込む必要がない街だから、そういう部分での差別化はないのよ」

(∪´ω`)「おー、食べ物以外で人が来るんですかお?」

ζ(゚ー゚*ζ「えぇ、ストーンウォールは特別なの。
      街の存在自体が観光資源だから、食べ物や景色を気にしなくていいのよ」

工業を営んでいるのは外部との接触が最小限で済むため。
観光客を呼び寄せる真似をしないのは、不穏分子が街に入り込むのを防ぐためだ。
同性愛者以外の人間も住んでいるが、同性愛に対する理解のある人間しかいない。

ノパ⊿゚)「なーるほどね」

セントラスを退けるだけの抵抗力があるというだけでも、ストーンウォールは一部の人間達にとっては聖域としての魅力が強いのだ。
やがて、ストーンウォールの工場群がバックミラーの点となり、彼らの前には荒野と海だけが広がる。
ディが言葉を発したのは、それから少ししてのことだった。

(#゚;;-゚)『デレシア、後方約2キロの位置を堅持したまま追跡してくる車輌があります。
   車列を形成しており、一定の距離を保ち続けているため、脅威である可能性があります』

ζ(゚ー゚*ζ「あら、やっぱり?」

街を出てから尾行されていることは気づいていたが、仕掛けてくるとしたらもう間もなくだろう。
そろそろ野営地を定め、テントの設営をしなければならない時間だった。
命を狙うのならば夕闇に乗じるのが常だ。

ノパ⊿゚)「追剥ってわけじゃなさそうだな」

ζ(゚ー゚*ζ「そうね、多分ティンバーランドの人間でしょうね。
      私が対応するから、二人で先にテントを張っていてくれる?」

ノパ⊿゚)「あたしもリハビリがてら相手したいんだけど、まぁ、任せるよ。
    晩飯、あたしが作っていいか?」

(∪´ω`)「僕も手伝いますお!」

ブーンはテントの設営も料理の補助も、すっかりと身についていた。
味付けに関してはまだ学びの途中ではあるが、日に日に味を覚え、それを再現する方法も学んでいるところだ。
その学習の途中経過を邪魔する輩は排除しなければならない。

ζ(゚ー゚*ζ「えぇ、お願いするわ。
      ディ、二人をよろしく。
      呼んだから迎えに来てくれるかしら?」

(#゚;;-゚)『分かりました。
    お気をつけて』

デレシアはその場でディを停め、ハンドルをヒートに任せた。
ヘルメットを脱ぎ、頭を振って髪の毛を風になびかせる。

805名無しさん:2021/05/24(月) 20:08:43 ID:ABQkjzkI0
ノパ⊿゚)「よっしゃ、あたしが運転するのは久しぶりだな。
    よろしく頼むよ、ディ」

(#゚;;-゚)『はい、お任せください』

ディのハンドルポジション、ホイールベースがヒートの好みに合わせて可変する。
静かなディのエンジン音が遠ざかるのと対照的に、デレシアの視線の先に見えるヘッドライトの光が近づいてくる。
デレシアの目には、その車輌から明確な敵意と悪意が映っていた。

ζ(゚ー゚*ζ「……」

両脇に提げたデザートイーグルを抜き放ち、構える。
車輌は二台、否、三台。
ピックアップトラックの荷台にはすでに装着を終えた棺桶が六機。
減速の様子も見せない点を考慮すると、車輛事態に高性能爆薬を積んでいる可能性が高い。

車列を一列に保ったまま走り、前を走る車輌が後続の盾になるように配慮がされていた。
こちらが貫通力の極めて高いライフルを持ち歩いていないことを想定しての布陣だ。
しかし、デレシアにとってそれは大した問題ではない。
右手のデザートイーグルを構え、銃爪を引く。

先頭を走っていたピックアップトラックが爆散し、荷台に乗っていた棺桶が宙に舞う。
後続車輛は素早く両側に散り、荷台から棺桶が飛び降りる。
デレシアと襲撃者の距離は優に500メートル。
その距離を完全に無視して、着地した白い装甲の棺桶がデレシアをめがけて一気に肉薄する。

巨体に似合わぬ速度で一瞬の内に目前に迫ったのは、白いジョン・ドゥ。
高周波刀を構え、デレシアに切りかかる。
十分すぎるほどの速度があるため、膂力は必要ない。

〔欒゚[::|::]゚〕『死ねっ……!!』

ζ(゚ー゚*ζ「甘いわね」

直線的な軌道で放たれた攻撃を紙一重のところで回避した時には、両者の決着はついていた。
接近に合わせて発砲されたデザートイーグルの凶弾に吸い込まれるようにして接近したジョン・ドゥは、そのまま頭部を破砕され、デレシアの背後で転倒する。
遅れてデレシアの髪を風が撫でた。
夕闇に紛れきれない五機のジョン・ドゥはピックアップトラックの荷台に捕まり、車輛を盾に左右から迫っていた。

両手のデザートイーグルで運転手を射殺し、次いで、エンジンブロックを破壊。
推進力を失ったピックアップトラックの影から、一気に棺桶が姿を現す。
既に距離は双方の顔が認識できるほどに縮まっていたが、デレシアは焦ることなく一歩前に足を踏み出していた。

〔欒゚[::|::]゚〕

対象を殺すという一点で言えば、物量は時に質を凌駕することがある。
前後左右、そして直上。
デレシアの逃げ道の全てを塞ぐ形で接近したジョン・ドゥの判断にミスはなかった。

ζ(゚、゚*ζ「……はぁ」

806名無しさん:2021/05/24(月) 20:09:04 ID:ABQkjzkI0
しかし相手はデレシアだった。
一見して連携が取れた攻撃の弱点を瞬時に見抜き、行動に移す。
身にまとっていたローブを翻し、視界を一気に奪い去る。
直後、それまで彼女がいた場所を四つの刃が通り過ぎた。

彼女の前から迫っていたジョン・ドゥは至近距離から胸を撃ち抜かれ、心臓と共にバッテリーを破壊された。
死体と化したジョン・ドゥが勢いをそのままに仲間たちに激突し、貴重な奇襲の機会が失われる。
直後に見せた彼らの即応力は大したものだった。
四人になった不利を補うため、陣形を取るのではなく、各自での対応に移行したのである。

連携力を期待できない以上はそうする以外の手立てがない相手だと認識し、選択したのは事前の情報と実際のデレシアの実力を見ての判断だろう。
優秀な訓練を受けた証拠だった。
選択した武器はいずれも高周波刀。
それはある意味では正解であり、不正解でもあった。

デレシアが着ていたローブの対弾性能を知っていれば、彼女がそれを脱ぎ捨てたことを好機と捉え、銃を使用したことだろう。
遠距離から攻撃をしていれば、彼らの寿命が数秒伸びたことは間違いない。
最も、銃を使ったところでデレシアと彼らとの実力差は圧倒的なまでに離れているため、些事でしかない。
疑問の余地のない実力差を感じたまま死ぬのであれば、近接戦闘の方が僅かではあるが人道的な死を迎えられる。

彼らの本能が潔く戦って死ぬことを選んでいたのであれば、それは正解だった。

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ζ(゚、゚*ζ「……」

807名無しさん:2021/05/24(月) 20:09:33 ID:ABQkjzkI0
デザートイーグルが咆哮を上げ、二人の命を一瞬で奪った。
しかし、それは彼らにとっては計算の内だったのだろう。
発砲によって遊底が引ききった状態の銃は、次弾を装填することはおろか、銃爪を引くことさえ叶わない。
それは時間にして一秒にも満たない隙であり、襲撃者にとって最後になるかもしれない好機だった。

デレシアが両手に構える拳銃は、転じて、彼女の攻撃手段だ。
味方の命を犠牲に生み出した一瞬ともいえる時間に、二機がデレシアの懐に潜り込む。
左右同時の挟撃。
大振りの一撃は間違いなくデレシアを殺傷可能な範囲に収めることだろう。

〔欒゚[::|::]゚〕『もらった!!』

文句のない踏み込み。
非の付け所のないタイミング。
彼らにできる最良の行動は、だがしかし、デレシアには届かなかった。

ζ(゚、゚*ζ「残念ね」

彼らが挟撃を仕掛けてくることは彼女の想定した展開であり、対応は既に考えられていた。
一般的な人間の反応として、次の瞬間に訪れるであろう死に立ち向かうためには相当な胆力がいる。
挟撃における突破.は、襲撃者の想定している攻撃の動線を掻い潜ることにある。
殺そうとしている対象が後退することはあっても、前進することは無いという心理的な死角。

デレシアは地を這うほどに低い姿勢で駆け、一瞬の内に二機の後方に回り込んだ。
彼らの努力に免じ、後頭部を撃ち抜いて一撃で殺した。
薬莢が地面に落ち、硝煙を風が運ぶ。
夕日は水平線に沈みつつあり、星空と月が空に浮かぶ。

襲撃者の最後の一人が夕日を背に現れたのは、デレシアがデザートイーグルをホルスターに戻した時だった。

〔欒(0)ш(0)〕

艶のない黒色の装甲は通常のそれとは全く異なり、歪に盛り上がっている。
一目でキー・ボーイのカスタム機と分かるそれは、静かに身を屈め、疾駆した。
ヘルメットに刻印されている金色のエンブレムは、紛うことなきティンバーランドのそれだ。
デレシアはそれを見て、迎え撃つため、走り出した。

〔欒(0)ш(0)〕

ζ(゚、゚*ζ「追加装甲とは考えたわね」

足元に転がっていた高周波刀を掴み、デレシアはそれを投擲した。
キー・ボーイは避けるわけでも、それを防ぐのでもなく、自らの胸で受け止めた。
爆発と同時に上空に高周波刀が飛び上がり、それがただの追加装甲でないことを物語った。
爆発反応装甲。

ζ(゚、゚*ζ「ちっ……!!」

808名無しさん:2021/05/24(月) 20:10:59 ID:ABQkjzkI0
この一連の戦闘で、初めてデレシアは苛立ちを露わにした。
衝撃に対して衝撃で対抗するという発想の装甲は、デレシアの持つ武器を全て封殺するだけの力があった。
現代ではまだ一部でしか復元していないと思っていた過去の技術をここで投入してくるという点は、彼女の予想を裏切っていた。
相手はただの棺桶持ちではない。

死ぬことが前提で情報を収集するための先兵だ。
こちらがどのように対処するのかを記録し、仲間に伝えるための捨て駒。
最初から生還を期待されていない人間は、それこそ何もかもを失う覚悟がある。
薬物や信仰で強化された人間は、時に野良犬をもしのぐ厄介さを見せつける。

テントの準備に遅れるのも癪だが、夕飯に遅れることになれば更に気分が悪くなる。
近接戦闘は分が悪いことを察したが、すでに両者の距離はそれ以外の戦闘を許すものではなくなっていた。

〔欒(0)ш(0)〕『きゃおらっ!!』

ζ(゚、゚*ζ

大振りの回し蹴りを、デレシアは余裕をもって身を引くことで回避。
続く右ストレートからの左ジャブを避け、疎かになっている脚部への足払いを放つ。
デレシアの倍以上の重量があるキー・ボーイは呆気なく空中で一回転し、頭から地面に落ちる。
その隙に後退し、デレシアはデザートイーグルの弾倉を交換した。

ζ(゚、゚*ζ「あなた、楽に死ねると思わない事ね」

それが、デレシアに対して襲撃を仕掛けた哀れな男が聞いた最後の声だった。
転倒した状態から身を起こすのに要したのは一秒弱。
デレシアが二発撃ったのは、それよりも早かった。
一発目の銃弾はキー・ボーイのヘルメットに命中し、頭をのけぞらせ、二発目が頭部の爆発反応装甲を起爆させた。

それは使用者の命を救うための機能だったが、同時に、使用者の意識を混濁させる諸刃の剣でもあった。
意識を取り戻すために要する時間が男にとっては何よりも恐ろしい時間であることは言うまでもない。
幸か不幸か、男の鼓膜は爆発によって破られ、耳障りな耳鳴りだけが脳髄を震わせている。

〔欒(0)ш(0)〕『くっ、何がっ……!?』

爆発反応装甲は一か所につき一度だけしか働かない。
そのため、同じ個所への強力な攻撃に対しての対応能力はない。

ζ(゚、゚*ζ「本当に迷惑な人ね」

銃弾がデレシアの意図した通りに進み、狙い通りに爆発反応装甲を剥離させていく。
破壊と引き換えに、装甲で緩和しきれない衝撃を受け入れるのは生身の人間だ。
例え鍛えていたとしても、所詮はキー・ボーイ。
薄い装甲が吸収する衝撃などたかが知れている。

関節部を徹底的に狙い撃ち、意図的に爆発反応装甲を起動させる。
衝撃で腕が曲がったところに、追い打ちをする形で爆発が起こる。
脚部が最初に破壊され、次いで両腕。
最初に高周波刀を弾いた胸部から肩を貫通し、バッテリーが破壊された。

809名無しさん:2021/05/24(月) 20:11:55 ID:ABQkjzkI0
瞬く間に自由を奪われた男は悶絶し、絶叫するが、その声さえ自分には聞こえない。
顔から地面に倒れ込み、向きを変えることも出来ない。
背中に向けて容赦なくデレシアは発砲し、起爆させていく。
衝撃を受けて体が持ち上がり、新たな爆発で地面に叩きつけられるたびに男の悲鳴と呻き声が爆音の中に混じる。

なぶり殺しにするのであれば別の手段があるが、デレシアの目的は別にあった。
威力偵察じみたことを目的としているのであれば、こちらの姿や行動を記録するための装備が備わっているはずだ。
この男の目的は記録することであって、デレシアを排除することは最初から考えられていないのだ。
体のどこかにカメラと記録媒体が残っている可能性があるため、それを破壊することがデレシアの狙いだった。

爆発反応装甲の特製上、その上にカメラを取り付けることは出来ない。
ならば、カメラは後付けされた物ではなく、最初から使用している物を流用するはずだ。
カメラに次いで重要なのは記録媒体。
それはカメラを破壊されたとしても、決して破壊されてはならない重要な物だ。

強化外骨格の中で最堅牢の部位は胸部、頭部、そして背部の三か所に限られる。
爆発反応装甲による衝撃で記録が破損しないようにするためには、必然、背部に限定される。
デレシアは男が動けなくなった男からバッテリーを取り外し、それを放り捨て、デザートイーグルで撃ち抜き、爆散させた。
露出した背面装甲を一瞥し、頭部から伸びるケーブルの先にある背骨を守る装甲をはぎ取る。

バッテリーを奪われ、最後の要である装甲を失った棺桶は、最早ただの拘束具と化す。
そして、ケーブルの先に通じていた個所に記録媒体を見つけた。

ζ(゚、゚*ζ「……やっぱりね」

それを踏み潰し、他に保存されているものがないか調べたところ、後頭部にもう一つの保存媒体があった。

ζ(゚、゚*ζ

そこでデレシアは確信した。
相手の狙い、そして、その執念の背景を。
使用されていた保存媒体はそれ一つで大きな街を一年間潤わせ得るほどの物だった。
例え内藤財団とはいえ、決して安い出費ではない。

それを捨て駒に託すということは、それだけ追い詰められているか、あるいは、別の目的があるのだろう。
無論、心当たりはあった。
ティンバーランドを率いる人間は、デレシアの知る人間と同じ思考回路をしている。
ましてや、過去の経験を生かした行動をしている点を考えれば、恐らくは現代でデレシアの事を熟知している人間なのだろう。

しかし作戦立案はさておいて、それを指揮する人間はデレシアのことをまだ図っている段階のようにも思えた。

ζ(゚、゚*ζ「三分あげる。 祈るならその間にどうぞ」

後頭部をそっと撫でるようにして自爆スイッチを強制的に入れ、その場を立ち去った。
何も知らない男はその場で何事かを叫び、そして、誰もいない無人の荒野で爆散したのであった。

810名無しさん:2021/05/24(月) 20:14:00 ID:ABQkjzkI0
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同日 同時刻

ヴィンスで起こった騒動は沈静化し、諸悪の根源とされたカローネファミリーは抵抗の後にカラヴィニエリによって鎮圧された。
街は損害を受けた建物の修復や被害者へのケアに負われ、残党による治安の悪化を危惧し、武装したカラヴィニエリが各所に立っている。
トラギコたちを乗せた運送業者たちは、タルキールでの遅れと合わせてこれ以上の遅延は望ましくないと判断し、予定よりも早く出発していた。
最小限の休憩を挟めば最小限の遅延で済む算段が立ったため、彼らはこれから過酷な道のりとなる。

極低温の領域を発生させていた棺桶は突如として現れた男によって撃退され、トラギコたちが街を出る直前まで見つかっていない。
しかし、その代わりに奇妙なものが発見された。
鋭利な刃物で切断された女の右足の指五本だ。
それが誰の物かは分からないままだった。

少し想像力を働かせれば、それがトラギコたちを襲った女の物であることは明白だ。
そして、女の体が欠損していた理由と今回の一件は無関係とは思えない。

(=゚д゚)「……」

海に沈んでゆく夕日を眺めながら、トラギコはヴィンスでの出来事を思い返していた。
街は平穏を取り戻したが、信頼の回復にはかなりの時間を要するはずだ。
カローネファミリーの仕業として処理されることで、街は一刻も早い復興の道を取ることが出来る。
内藤財団がヴィンスへの介入を成功させる為に仕組んだことだとすれば、極めて円滑に物事が進んだことだろう。

街の実質的な支配をするのではなく、あくまでも助力に徹するその姿勢は、彼らの本音を上手に隠蔽することに成功していた。
慈善事業のように見えるが、経済を齧ったことのある人間であれば、長期的な目で利益を得るための布石だと考えるだろう。
それさえも目くらましだと考えるのは、トラギコのように疑い深い人間だけだ。

( ゙゚_ゞ゚)「あのおっさん、何者だったんだ?」

街を出てから無言だった車内の静寂を破ったのは、ホットドッグを頬張りながら発したオサムの声だった。
溜息交じりに、トラギコが答える。

(=゚д゚)「俺の記憶が確かなら、あのおっさんはイルトリアの市長ラギ。
    “戦争王”フサ・エクスプローラー」

811名無しさん:2021/05/24(月) 20:15:12 ID:ABQkjzkI0
( ゙゚_ゞ゚)「……マジかよ、あのおっさんが“戦争王”か。
    握手してもらえばよかったな」

軽口をたたくオサムとは対照的に、運転手のポットラック・ポイフルが驚きの声を上げる。

从´_ゝ从「マジかよ、あの“戦争王”がヴィンスに?!
     ヨルロッパ地方で一番会いたくない男だな」

(=゚д゚)「いいのかよ、納品先だろ?」

从´_ゝ从「あくまでも会社同士の話だから、俺には関係ないさ。
     しっかし、よくヴィンスは無事だったな。
     焼野原にされなかったのは気まぐれか何かか」

七年前、ヴォルコスグラード区が一晩で焦土と化したことは誇張されてなどいない事実だ。
世界最強の市長は誰かと問われれば、例え離れた街の子供でさえ、その名を口にすることだろう。
それが伝説の類でないことは、今日、トラギコは目の前で確認した。

(=゚д゚)「あのおっさん、“オンリー・ザ・ブレイブ”を使って勝ったラギ。
    棺桶を使ってたら、そうなってもおかしくなかったかもしれないラギね」

オンリー・ザ・ブレイブは戦闘用の強化外骨格、いわゆる棺桶ではない。
災害救助用の強化外骨格であり、潤っている街の消防署などに配備されている物だ。
あらゆる自然災害と立ち向かい、人命を救助することにのみ特化したそれは、コードの入力を行えば誰でも起動することが可能な特性を持っている。
装甲は戦闘用のそれと比べて薄く、筋力の補助も心もとない。

しかし、温度がその機能を停止させることは無い。
極寒の土地でも、灼熱の大地でも、業火の中でさえも圧倒的な断熱構造が使用者を守り抜き、活動を維持させる。
専用の高周波刀もまた、温度や環境に関係なく使用できる性能を持っている。

( ゙゚_ゞ゚)「オンリー・ザ・ブレイブなら、まぁ理にかなった話だわな」

(=゚д゚)「理にかなったからって、撃退できる方がおかしいラギ」

从´_ゝ从「あんたらからしてもおかしいのか」

(=゚д゚)「分かりやすく言うなら同じ車でも軽トラとスポーツカーとじゃ用途が全然違うだろ?
    それと同じラギ。
    あいつは軽トラでスポーツカーに勝ったラギよ。
    確かに相性がいい部分があったにしても、それを実行するってのはよっぽどラギ。

    向こうが素手でこっちが棺桶を使っていたとしても、俺は遠慮したい相手ラギね」

( ゙゚_ゞ゚)「同感だな。
     一発だって撃たれたら終わりなのにやりやがったんだ。
     正気じゃねぇよ」

从´_ゝ从「ま、何かあった時はあんたらの腕に期待してるよ。
     この辺りは“ハイエナ”が出るからな」

812名無しさん:2021/05/24(月) 20:16:10 ID:ABQkjzkI0
十字教とは異なる宗教の過激派で、資金を調達するために追剥まがいの事を行う。
襲われれば骨さえも残らない。
それ故にハイエナの名で忌避され、輸送業の人間が警戒している存在でもある。

(=゚д゚)「犬程度なら任せろラギ」

( ゙゚_ゞ゚)「あぁ、チンピラ程度なら簡単にぶっ飛ばしてやるさ」

从´_ゝ从「助かるよ。
     この辺りじゃ、地雷を使って足止めされた隙に襲われるからな」

(=゚д゚)「待て、地雷があるんなら車列を組んで走ってたら……」

从´_ゝ从「あぁ、そりゃそう思うだろうさ。
     だから俺たちの車には金属探知機が積んであるんだ。
     簡単な機械だが、道路に埋め込まれている爆弾なら見つけてくれるのさ。
     自動操縦補助装置もあるから、ブレーキも連動して自動で動くって話だ」

(=゚д゚)「なるほどね、安心したラギ」

从´_ゝ从「だから急ブレーキがあった時には――」

ポットラックの言葉を肯定するかのように、急ブレーキがかかった。
十台からなる車列が停車し、コンテナに取り付けられているライトが一斉に周囲を照らし出す。

从´_ゝ从「――何かがあったってことさ」

(=゚д゚)「みたいラギね。
    行くラギよ」

( ゙゚_ゞ゚)「俺とお前、どっちが疫病神なのか今度話し合おうや」

夜はまだ始まったばかり。
トラギコとオサムはヴィンスでくすねたブルパップ式のライフルを構え、棹桿操作を行った。

813名無しさん:2021/05/24(月) 20:17:10 ID:ABQkjzkI0
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同日 同時刻

ハインリッヒ・ヒムラー・トリッペンは激痛と屈辱の中、ベッドの上で涙を流して悶絶していた。
一年に体の部位を一か所奪われ続けると考えていたが、その法則性が今日破られた。
左目、左足中指、右乳房、右耳、肛門、左薬指、そして右足小指が奪われ、そして今日で右足の指全てが切り落とされた。
抵抗は無意味だった。

備えてきたつもりの全ての技術がねじ伏せられ、強化外骨格による優位性さえも無視した実力でハインリッヒは敗北した。
フサ・エクスプローラーという男は圧倒的な実力差でハインリッヒを押し倒し、強化外骨格を無力化、そして獣の毛皮を剥ぐように奪い去った。
傷口はハインリッヒが作り出した極低温の産物で無理矢理に止血された。
こちらが目的を達したとしても、受けた傷と屈辱が癒えるわけではない。

从;゚∀从「くそっ……くそっ……!!」

凌辱されるよりも耐えがたい屈辱。
無力感の中で奪われるという経験は、彼女の中で克服すべき事柄であると何度も言い聞かせ、セラピーも行った。
だが克服は出来なかった。
圧倒的な力量の差は、何よりも心を折り、彼女の心を凌辱した。

思い返したところで自分にできることなど何一つなかったと、そう思わせるほどの差。
疑念の余地を抱かせない程の差は、彼女の全てを否定した。
わざと逃がされたハインリッヒはニョルロックへと避難する途中の街へ立ち寄り、内藤財団の息のかかった病院に運び込まれていた。
足の指は失われたままだったが、傷口を凍結させて止血が施されていた為、欠損以外に肉体的な問題はなかった。

止血を施したのはハインリッヒではなく、彼女を害した人間が行った物だった。

从;゚∀从「あの野郎、あの野郎……!!」

814名無しさん:2021/05/24(月) 20:17:31 ID:ABQkjzkI0
包帯で巻かれた足を押さえながら、ハインリッヒは苦虫を潰したような顔を浮かべる。

从;゚∀从「くそぉっ……」

どれだけ強く恨んだとしても、己の力でどうしようもないことがよく分かっているだけに、想いは何度も同じ場所で回り続ける。
彼女が初めてティンバーランドの一員として行った仕事が、今もこうして引きずっているのだ。
引き受けた仕事は簡単だった。
誘拐と脅迫。

そして仕事の結果、ハインリッヒは失い続ける人生が始まった。
トラウマとして植え付けられ、一生消えることのない腫瘍のように彼女は苛まれ続ける。

ξ゚⊿゚)ξ「同志ハインリッヒ、災難でしたね」

病室に現れた西川・ツンディエレ・ホライゾンからの声も、今のハインリッヒには皮肉にしか聞こえない。
足を撃たれた彼女も同じ病院に運び込まれており、程度の差はあれど、境遇は同じだった。
何度戦いを想定し、殺しを経験しても、フサ・エクスプローラーに勝てる未来が見えない。
そうである以上、ハインリッヒは奪われ続けるしかないことを、今一度思い知らされたのである。

だが、戦闘力を見込まれたハインリッヒと組織の重鎮であるツンディエレでは役割が違う。
今は己の無事さえも憎かった。
生存してしまったという屈辱。
そして、生存させられたという現実。

何度思い返したところで、ハインリッヒの気持ちが落ち着くわけではない。
彼女自身が克服すべき問題であり、それは、七年前から今も変わらずに続いていることだった。

从;゚∀从「……」

睨みつけるようにしてツンディエレを見たハインリッヒの態度は、決して褒められたものではない。
しかし彼女はその非礼を気にした様子もなく、ハインリッヒの元に歩み寄り、ベッドに腰かけた。
その仕草は足を撃たれたとはとても思わせない、優雅さと気品に満ちていた。

ξ゚⊿゚)ξ「貴女のおかげでまた一歩、我々の夢に向けて進みました。
      あと少しです。
      貴女の犠牲は決して無駄にはなりません。
      その痛みがやがて世界を変えるのです」

まるで駄々をこねる子供をあやすような優しい言葉が紡ぎ出され、ハインリッヒは途端に毒気を抜かれた。
果たして彼女の言葉が本心か否かは分からないが、一つだけ断言できることがある。
世界を変えるという気持ちにおいて、同じ志を持つハインリッヒ以上に彼女はその夢に執着しているという点だ。
今回の一件がその夢にどこまでの影響を及ぼすのかは彼女には分かりかねたが、少なくとも、ツンディエレの言葉の重みは理解できた。

从;゚∀从「是非……そうしてください……同志ツンディエレ……」

ξ゚⊿゚)ξ「朗報です。
      セントラスとヴィンスに我々の根が入り込みました。
      これでヨルロッパ地方の攻略が容易になりました」

从;゚∀从「それは……本当ですか?」

815名無しさん:2021/05/24(月) 20:17:55 ID:ABQkjzkI0
確かに、ハインリッヒは手応えを感じていた。
彼女が行ったのは極めて原始的な陽動だったが、現場に居合わせた人間のおかげで事態の収束よりも拡大が勝ったのである。
船乗りたちの発言力を奪い、内輪で争うための火種を用意した。
小さな火はすぐさま燃え広がり、ハインリッヒたちの行動によって拡大し、大きな傷を街に残すことに成功した。

危惧していたのはその炎がどこまで引火し、どのような結果を導くかだった。
作戦半ばで退場することになったハインリッヒには、ヴィンスの市長たちが愚かであることを願うしかなかった。
その願いが叶ったのだとしたら、彼女の努力に意味が生まれる。

ξ゚⊿゚)ξ「えぇ、事実です。
      特にヴィンスでの働きがなければ、あの街での歩みは成功しなかった。
      私の期待以上の働きです」

その瞬間、ハインリッヒの目から涙があふれ出した。
先ほどまでの悔しさと痛みによる涙ではなく、感動故の涙だった。
失った体の部位など一瞬にしてどうでもよくなり、全てが報われた心地だった。

从 ;∀从「よ……よかった……」

ξ゚⊿゚)ξ「さぁ、夕食にしましょう。
     私は赤ワインとステーキを夕食にいただこうと思っているのですが、一緒にどうですか、同志ハインリッヒ?」

涙をぬぐい、赤らんだ顔でハインリッヒは首肯しながら言った。

从 ゚∀从「はい、喜んで。
      同志ツンディエレ」

例え奪われる日々が続くとしても、彼女の命が続く限り、彼女は走り続ける。
幸いなことに、自分がすぐに殺されないことは良く分かっていた。
彼女が激怒させたフサ・エクスプローラーとは、そういう男なのだ。

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816名無しさん:2021/05/24(月) 20:18:22 ID:ABQkjzkI0
同日 PM06:23

荒野に張ったタープの下で、ヒート・オロラ・レッドウィングとブーンは夕食の準備を始めていた。
ヴィンスで買った鮮魚を使った一品料理と、トマトのスープをブーンが用意する間にヒートはテントの設営を終え、彼の手伝いをしていた。
ディはデレシアの呼びかけに応じて走り去り、二人はしりとりをしながら準備を進め、デレシアの帰りを待っている。
食べ物の名前だけという制限を設けたしりとりは、二人の語彙力の違いを程よく埋め合わせていた。

ノパ⊿゚)「バジル」

(∪´ω`)「る、る…… ルッコラ」

焚火に薪をくべ、ヒートは少し考えを巡らせる。
木が爆ぜる音が静かに二人の間に流れる。
ややあって、ヒートは口を開いた。

ノパ⊿゚)「ライチ」

(∪´ω`)「チャーシュー」

ブーンは生魚の切り身をレモン汁とオリーブオイルを混ぜた液に浸し、胡椒とちぎったバジルを散らす。
バーナーの上で煮立つ鍋にはコンソメとトマトソース、そして一口大の白身魚が入っている。
刃物を使う作業はヒートが手を貸しつつ、出来る限りブーンに体験させようと試みたため、魚の大きさは均一ではない。
それでも、彼の腕は格段に上達していた。

焦げ付かないよう、ブーンは時折鍋の中をかき混ぜた。

ノパ⊿゚)「ゆ、ゆ、かぁ…… ゆず」

(∪´ω`)「ズッキーニ」

ノパ⊿゚)「ニンニク」

ヒートはナイフで細く刻んだニンニクをオリーブオイルと少量の塩でさっと炒め、それを鍋の中に入れた。
ニンニクの香ばしい匂いが食欲を刺激する。
フライパンに残ったオイルとニンニクをちぎったパンで拭い取り、ブーンの口元に差し出した。
ブーンはヒートの手からパンを食べ、幸せそうに頬を緩めた。

(∪´ω`)「く、クルミ」

ノパ⊿゚)「ミルクイ」

(∪´ω`)「いか」

ノパ⊿゚)「貝柱」

ヴィンスの市場で魚介類を見て回った影響からか、海産物が続いた。
実際に市場で試食をしながら現物を見たこともあって、ブーンの記憶にしっかりと残されているのだろう。
特にブーンが気に入っていたのが、噛み応えのあるイカの干物だった。
料理に使う際には酒などに浸して柔らかくするのだが、彼はそれをそのまま美味しそうに食い千切り、咀嚼するのだ。

817名無しさん:2021/05/24(月) 20:19:10 ID:ABQkjzkI0
(∪´ω`)「ら、ラード」

その名前がブーンの口から出た瞬間、ヒートは信じられないものを見るような目で彼を見た。

ノハ;゚⊿゚)「……ブーン、ラード食べるのか?」

ヒートの常識の中では、ラードは食材というよりも調味料の分類だった。
ブーンは不思議そうに小首を傾げてみせる。

(∪´ω`)「お、食べ物じゃないんですかお?」

ノハ;゚⊿゚)「まぁ、好きな奴はいるかもしれないな、世界は広いから」

(∪´ω`)「前に、ディが教えてくれたんですお。
      ラーメンの上にラードを乗っけて食べる習慣が、えーっと、ホールバイトの方にあるって」

ノハ;゚⊿゚)「食うのか、油を……!!」

(∪´ω`)「ラードって、油なんですかお?」

ノパ⊿゚)「豚の油のことだよ。
    ほら、豚肉を焼くと油が凄い出て、白く固まってるだろ?
    あれだ」

彼らが野営で食事を作る際、豚バラを使った料理をすることが多々あった。
夏場でも夜になれば気温が下がるため、鍋に残った油が白く固まることがよくある。
それを次の料理に使うことはあったが、直接食べることはなかった。

:;(∪;´ω`);:「あれをた、食べるんですかお……?」

ノハ;゚⊿゚)「デレシアとディが帰ってきたら訊いてみような」

その後、二人は夕日が沈み、星空が頭上に広がるのを眺めた。
デレシアとディの帰りを、紅茶を飲みつつ待つことにしたがその前に、招かれざる客が現れた。

(∪´ω`)「……知らない人の匂いがしますお」

ノパ⊿゚)「そうだな、嫌な気配がするな。
     ブーン、火の番を任せていいか?」

(∪´ω`)「はいですお」

ノパー゚)「丁度いいリハビリになるかもな。
     何かあったら呼ぶんだぞ」

上着を脱ぎ、代わりにローブを身にまとう。
ローブの下で両手は慣れた手つきで腋に提げたホルスターからベレッタを抜き、安全装置を解除していた。
ヒートはキャンプ地から離れた場所に訪問者を誘導するため、あえて無防備を装って荒野を歩き出す。
それから少しして、彼女の予想を裏切ることなく闇の中から二つの人影が正面から現れた。

818名無しさん:2021/05/24(月) 20:20:13 ID:ABQkjzkI0
皮のコートを着た男たちは人の良さそうな口調と表情で話しかけてきたが、隠し切れない悪意は、依然として放たれ続けている。

|゚レ_゚*州「よぅ、そこでキャンプしてるんだろ?
     俺たちも一緒にいいか?」

ノパ⊿゚)「いや、遠慮してくれ」

逆光でヒートの表情が見えていないのか、男は話を続けた。
仮に表情が見えていたのであれば、暴勇か無謀のどちらかだ。

( 0"ゞ0)「はははっ!! はっきり言うじゃねぇか!!
      そうつれない事言わないでよ、俺たちと楽しもうぜ。
      酒ならあるんだ、とびっきり上等なのがさ」

ノパ⊿゚)「お前らがいると楽しめねぇんだよ」

( 0"ゞ0)「そう言わずにさ、ちょっとお話しようぜ。
      同じ旅人だろ?」

ノパ⊿゚)「旅してるんなら、どうして乗り物がどこにもねぇんだ?
    歩いてきた、ってわけじゃねぇだろ。
    その割にはソールが減ってねぇ」

|゚レ_゚*州「ひゅー、まるで名探偵だな。
     ……俺たちもよ、無理矢理ってのは好きじゃねぇんだ。
     どうせならお互いその方がいいだろ?」

( 0"ゞ0)「ガキは俺が可愛がっておいてやるからよ」

下卑た言葉と悪意がヒートに投げかける。
その口調と手慣れた動きは、彼らがこれまでに同じことを何度も繰り返し、成功させてきたことを物語っている。

ノパ⊿゚)「あの子の教育に悪そうだから心から遠慮するよ。
    失せな、今すぐ」

|゚レ_゚*州「そんなこと言っちゃ――」

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819名無しさん:2021/05/24(月) 20:20:42 ID:ABQkjzkI0
ヒートの右手が一閃し、男は喉を押さえてその場に膝を突いた。
右手のベレッタM93Rの銃剣が男の喉を切り裂き、酸素の補給を奪ったのである。
呆然とするもう一人の男が武器を取り出す間もなく、左手のベレッタの銃剣が喉を切り裂いた。
血が噴き出すが、その鮮血を浴びない位置にヒートは移動を完了させている。

ノパ⊿゚)「流石にちっと遅くなったな」

銃剣についた血を振り払い、瀕死の男のジャケットで拭い取った。

ノパ⊿゚)「相手を間違えたな」

それだけ言って、ヒートはブーンの所に戻った。
焚火を眺めていたブーンはヒートが近づいてくるのに気づくと、嬉しそうに笑みを浮かべて彼女を出迎えた。

(∪´ω`)「お帰りなさいですお」

ノパー゚)「あぁ、ただいま」

(∪´ω`)「けがとか、してないですかお?」

ノパー゚)「大丈夫、万事問題なしさ」

そう言った直後、遠くの方で爆発音が響いた。
更に銃声が響き、二人は反射的に音の方を見る。
それがデレシアによるものなのか、それとも別の人間が原因なのかは分からない。

ノパ⊿゚)「……」

(∪´ω`)「おー、デレシアさんの銃の音はしないですお」

ノパ⊿゚)「じゃあ違うか。
     しかし、この辺りは割と物騒だな」

地方の特性もあるのだろうが、場所柄がそうなのだろう。
荒野は野盗にとって絶好の狩場だ。
見晴らしのよさ、隠れ場の多さ。
拠点を設ければ後は狩りをするかのように獲物を待ち伏せ、機会を見て襲うことが出来る。

今回ヒートたちを襲おうとした人間も、恐らくはどこかに待ち伏せ用の拠点を設けていたのだろう。
旅人を襲うよりも輸送団を襲ったほうが儲けはいいだろうが、最近の輸送業者は武装と装備を充実させているために、それが難しくなったのかもしれない。
今しがたヒートたちの耳に届いた爆発音と銃声も、輸送業者と野盗の争いである可能性は十分に高い。

(∪´ω`)「おー。 あっ、ディの音がしますお」

ノパー゚)「そりゃよかった。
    飯も準備できてるし、丁度いいタイミングだな」

820名無しさん:2021/05/24(月) 20:21:23 ID:ABQkjzkI0
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  '==三三三ニ===-       __  ノニア'’    /
   '.                 ∠三三ヲニ/       /
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海沿いを走っていたトラギコたちの一団が二度目の襲撃を受けた時、彼らの状況は良い物とは言い難かった。
対車両用の地雷を探知して停車したところ、RPG-7が先頭車に撃ち込まれた。
前輪が破壊され、身動きが取れない中、周囲の暗がりから武装した男たちが姿を現し、たちまち取り囲まれた。
それはトラギコとオサムが飛び出すよりも早く、そして統率された動きだった。

運転席に向けて躊躇いなく銃撃が行われたが、防弾ガラスのおかげで無事に済んだ。
しかし、身動きは完全に封じ込まれていた。

(=゚д゚)「ちっ、面倒ラギね」

( ゙゚_ゞ゚)「プロだな。 数も武装も、さっきのとは違うぞ」

从;´_ゝ从「やべぇな……」

流石のポットラックも、冷や汗を流している。
統率の取れた相手は厄介だが、それ以上に厄介なのは武装の充実だ。
海辺の荒野という環境下でも確実に動作するAK47の改修型であるAKMを持っていた。
資金が豊富にあり、尚且つ、それを装備の充実に使う発想は、優秀な指揮者がいる証だ。

(=゚д゚)「まぁどうにかするしかないラギ。
    ライフル借りるラギよ」

それぞれのトラックには万一に備え、ショットガンとライフルが積まれていることを聞いていたトラギコは、一切の躊躇なくそれを使うことにした。
緊急事態に巻き込まれることに慣れていない人間は、例え緊急事態だとしても、己の矜持を優先してしまう傾向がある。
例えば他者に頼るべき時に頼らなかったり、緊急時にのみ使用が許可されている武器の使用を躊躇ったりするのも、よくある話なのだ。
床下の空間から取り出したライフルケースには、一挺のライフルと拳銃、そしてその予備弾倉が二つずつ収まっていた。

(=゚д゚)「H&KのG36CとUSPラギか。
    おっ、しかも暗視装置もついてるラギね」

( ゙゚_ゞ゚)「いい銃使ってるんだな」

821名無しさん:2021/05/24(月) 20:21:53 ID:ABQkjzkI0
トラギコはオサムにG36Cを手渡し、自分はUSPを手に取った。
自分の持つM8000との互換性はないが、ないよりかは遥かにいいと考えたのだ。
オサムは自分の銃を持ち歩いておらず、ヴィンスで手に入れたライフルは既に弾を使い果たしていた。
殺し屋というだけあり、彼は武器の扱いに長けていた。

トラギコはライフルの扱いにはオサムほど長けておらず、どちらかと言えば拳銃の方が性に合っていた。

从´_ゝ从「イルトリアからの支給品だよ。
      どうにか出来るのか、この状況」

(=゚д゚)「するしかないラギよ。
    で、トラックから外に出る手段を教えてほしいラギ」

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                 气  `¨′    ヾ|!   .
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               rf 、 \          /
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               ∨                 f
                \               l
                     \          ∧
                   |`ヽ         \
                   |   \         \
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二人はほぼ同時に弾倉を入れ、遊底を引いて初弾を薬室に送り込む。
無線機を通じ、ポットラックの仲間たちの間で決して扉を開かないようにと念押しがされる。

( ゙゚_ゞ゚)「あるんだろ、出る方法」

822名無しさん:2021/05/24(月) 20:22:18 ID:ABQkjzkI0
从´_ゝ从「……あんたらだけが頼りだから、この際出し惜しみは出来ないな。
     後ろの床だ。
     そこから外に出られる」

(=゚д゚)「おっしゃ。
    ほれ、これを持ってるラギ」

装填を終えたUSPをデコッキングし、ポットラックに手渡す。

从´_ゝ从「お?」

(=゚д゚)「万が一の時、自分の身は自分で守らなきゃならねぇラギ。
    俺には俺の銃があるラギ。
    ……おい、行くラギよ」

( ゙゚_ゞ゚)「さて、死なない程度に頑張るか」

オサムが先に顔を床の下に出して安全を確認し、それから音もなく車外に出た。
その後に続き、トラギコがアタッシェケースを持って外に出る。
二人は無言のまま、どのようにこの状況を打破するかを考え、相手の規模と位置を探ることにした。
既に車内から大まかな位置と人数は把握しており、死角にいる人間の把握が急務だった。

人数は二十人弱。
各車両の前後に一人ずつ配備され、数人が周囲を哨戒している。
二人の車輌は先頭から三番目に位置している。
互いに逆の方向を見て、哨戒している人数を数え、無言で伝え合う。

最低でも五人はいることが分かり、最初に仕留めるべき人間の選出を行うことにした。
車輌の後方に立つ男に目をつけ、オサムが始末をすることになった。
コンテナの下を静かに這い、動きを止める。
残り2メートルもない距離にまで接近し得たのは、彼の技量の高さを物語っていた。

だがそこまでだ。
これ以上進めば姿を晒すことになり、オサムの存在が露呈することになる。

( ゙゚_ゞ゚)

トラギコの小さな危惧を感じ取ったのか、あるいは、挑発する目的なのか、彼はトラギコを見て挑戦的な笑みを浮かべた。
そして、一瞬の内にオサムが動いた。
飛び出すと同時に抱き着くようにして男の腰から拳銃を奪い取り、そのまま胴体に向けて発砲した。
発砲の度に男は口から血を吐き出し、体を震わせた。

一瞬の内に始まった異常事態に、すぐ近くにいた男がAKMで射撃を始めた。
だがオサムは抱えた男を盾にしたまま接近しつつ、拳銃を発砲。
顔を撃たれた男が倒れ、周囲の殺気がオサムに集中する。
オサムはすかさずライフルを構え、応戦を始めた。

823名無しさん:2021/05/24(月) 20:23:15 ID:ABQkjzkI0
好機はこの一瞬にかかっていると判断したトラギコも、コンテナの下から這い出て、オサムに向かう男たちを撃ち始める。
夜間ということもあって双方の銃弾は明後日の方向に飛び、当たる気配がない。
そしてオサムの銃撃に合わせてか、それまで周囲を明るく照らしていた照明の類が一気に消えた。
更に、月に雲がかかり、辺りが暗闇に包まれる。

相手が暗視装置でも持ち出さない限り、殺し合いの条件としては悪くない。
星明かりの下で響く怒号と銃声。
耳元を掠め飛ぶ銃弾の音。
発砲炎を頼りにトラギコは姿勢を低くして移動し、男を羽交い絞めにした。

声を出せないように首を強く締めたままコンテナの影に移動し、首の骨を折って殺した。
男の死体から防弾チョッキとAKMを奪い取り、戦闘に参加する。
少なくとも背中から撃たれることを避けるため、トラギコの移動はコンテナを中心としてのものだった。
AKMの命中精度は決して高いとは言えず、オサムの持つG36には暗視装置を兼ねた照準器が付いており、この状況では鬼に金棒といったところだ。

正確な射撃によって続々と死体が増える中、トラギコの関心は敵の装備にあった。
敵に指揮官がいるとしたら、保険として棺桶を持ち出している可能性が非常に高い。
その直感はすぐに当たった。

『そして願わくは、朽ち果て潰えたこの名も無き躰が、国家の礎とならん事を!!』

暗闇の中、ジョン・ドゥの起動コードが入力されたのを、トラギコははっきりと聞き取った。

(=゚д゚)『これが俺の転職だ』

静かにブリッツのコードを入力し、トラギコは高周波刀を肩に乗せるようにして構え、疾駆した。
ジョン・ドゥの起動には十秒ほどの時間がかかる。
声を聞いてトラギコが駆け寄る方が早い。
岩陰に浮かぶ直線的な影を見て、トラギコは短く息を吐いて腹筋に力を込めた。

コンテナが開き、中からジョン・ドゥが姿を現す。
高周波刀のスイッチを入れ、トラギコは一気にそれを振り下ろす。

〔Ⅲ゚[::|::] 〕『なめた真似しやがっ――』

824名無しさん:2021/05/24(月) 20:23:39 ID:ABQkjzkI0
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               .\      ゞ、  、   |i  /
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(=゚д゚)「……って!!」

甲高い悲鳴のような音が高周波刀とジョン・ドゥの間で響く。
ヘルメットを切り裂き、その下にある人間の頭部を両断した。
男は立ったまま即死し、ジョン・ドゥはその場で動きを止めた。
月にかかっていた雲が風に流れ、輸送団を照らす。

(=゚д゚)「後二人ラギね」

その二人もオサムの射撃ですぐに倒れ、銃声が止んだ。

825名無しさん:2021/05/24(月) 20:24:10 ID:ABQkjzkI0
( ゙゚_ゞ゚)「終わったぞ」

オサムはそう言って、鹵獲したAKMで死体の頭に一発ずつ銃弾を撃ち込み始めた。
まだ微かに息のあった野盗は何かを言う間もなく絶命し、死体を装っていた野盗は命乞いをしながら殺された。

(=゚д゚)「だといいラギね。
    さっさとこの場からずらかるラギ」

( ゙゚_ゞ゚)「とにかくタイヤの様子だな。
    とりあえず俺が周りを見ておくから、そっちは頼む」

(=゚д゚)「ちっ、仕方ねぇラギね」

先頭の車輌に向かい、被害を確認する。
タイヤは根元から吹き飛び、シャフトが破損していた。
運転席の扉を叩き、声をかける。

(=゚д゚)「シャフトが吹っ飛んでるラギ。
    どうするラギ?」

「仕方ねぇ、切り離そう。
なぁに、タイヤはまだあるから自走はできるし、牽引してもらうさ」

大型のコンテナを運ぶトラックには複数のタイヤが備わっており、一本が破損したとしても走行することが可能だ。
バランスが崩れ、場合によってはバーストする可能性もあるが、イルトリアまでの道であれば持つという算段なのだろう。
プロの意見がそうなのであれば、トラギコはそれに従うだけだ。

(=゚д゚)「分かったラギ」

「ただ、シャフトが吹っ飛んで事故にならないように調節したいんだが、出来るか?」

(=゚д゚)「切り落とすんならやるラギよ」

「それでいいや、頼む」

それからトラギコはシャフトを切り落とし、トラックの動きに問題がないかを確認する手伝いを始めた。
死体から武器と弾薬を回収していたオサムが戻ってくる頃には、車列の変更も済み、安全な経路の確認も完了していた。
トラックに乗り込まず、オサムはトラギコをコンテナの影に連れて行った。
何か内密の話があるのだと察し、トラギコは彼の言葉を待った。

( ゙゚_ゞ゚)「おい、一つ分かったぞ」

(=゚д゚)「何ラギ?」

( ゙゚_ゞ゚)「……こいつを見ろ」

そう言ってオサムがトラギコに見せたのは、トラギコが両断したジョン・ドゥのヘルメットだ。
両目についているはずのカメラの内、左目の物がケーブルを残して無くなっている。

(=゚д゚)「……どういうことラギ?」

826名無しさん:2021/05/24(月) 20:24:38 ID:ABQkjzkI0
( ゙゚_ゞ゚)「お前が斬るよりも早いか、それか同時にこいつは左目を撃たれたってことだ。
    それだけじゃない。
    俺の銃以外で撃ち殺された死体がいくつも転がってた。
    回り込んでどうにかしようとしてた連中も向こうの方に転がってたが、そもそも俺はそっちに行ってない」

確かに、たった二人であの人数を相手に生き延びたのはいささか話が上手すぎるとは思っていた。
特に、奇襲に際して控えさせているはずの後詰めが現れなかったのは奇妙とさえ思えた。
装備を充実させるだけの脳みそがありながら、極めて重要な部分を見落としているとは思えない。
別の誰かがトラギコらを陰ながら援護していたのであれば、この結果も納得が出来る。

(=゚д゚)「つまり、俺たち以外の誰かもこいつらを殺したって事ラギか?」

( ゙゚_ゞ゚)「棺桶の目玉を撃ち抜くバカげた技量があるやつに心当たりはあるか?
     他の死体の弾痕を見ても、大口径のライフルなのは間違いない」

少なくとも強化外骨格の装甲を撃ち抜けるだけの物が使われたのは間違いない。
通常のライフル弾ではカメラ部分を破壊することは出来ない。

(=゚д゚)「何人か心当たりはあるが、ここにいるとは思えないラギね。
    第一、手を貸される理由もないラギよ」

トラギコが真っ先に思い浮かべたのはデレシアだった。
だが彼女が手を貸すとは思えない。
手を貸しても利益がないだけでなく、彼女にとってオサムは数少ない殺し損なった証言者だ。
この場で殺されたほうが彼女にとってはメリットが大きい。

しかし、トラギコたちがまるで気づかない間に狙撃を行える人間が果たしてどれだけいるのだろうか。

( ゙゚_ゞ゚)「……このコンテナ、何を運んでるか少し気にしたほうがいいかもな」

(=゚д゚)「ポットラック達が中身を知るはずがないラギ。
    ラヴニカからイルトリアに運ぶってことは、よほどの物ラギ」

荷を運ぶ人間達の鉄則として、積み荷は決して覗き見てはならないというものがある。
それは信頼に通じる物であり、双方の命を守るための鉄則だ。

(=゚д゚)「……待てよ、もう一人心当たりが出てきたラギ」

( ゙゚_ゞ゚)「奇遇だな、多分俺も同じ奴の顔を思い浮かべてる。
     フサ・エクスプローラーだろ?」

(=゚д゚)「“戦争王”が自分の荷物を守るため、ってんなら分かるラギね。
    まぁいい、とにかくさっさとここから退散するラギよ」

827名無しさん:2021/05/24(月) 20:24:59 ID:ABQkjzkI0
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 ⌒ァ:. :.{:/ハ           i   `¨/¨ノイヽ:. :. : \          同日
  / 7人' ∧        }     / / }:. :ト <⌒         同時刻
   / :イ 、 ',        '       / イ:.从
      |: ハ:ム    -   、    ' イ: /
     :/ i:. i 、    こ     イ:. :.|\
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トラギコが野盗を撃退し、デレシアがヒートたちと合流した頃、その南側では別の事態が動き始めていた。
フートデンバーで列車を乗り換えたアサピー・ポストマンとニダー・スベヌはニョルロックに向かう列車の中で、夕食を終え、食後酒を飲んでいた。
スノー・ピアサーなどの高速列車とは比較にならない程の速度ではあったが、その代わりにコンパートメントの中ではゆったりとした時間が流れている。
予定では後三日後にはニョルロックに到着するとのことだ。

(-@∀@)「ぷはー!!」

高い度数の透明のアルコールを喉の奥に流し込み、アサピーは深い溜息を吐いた。
ジュスティアからフートデンバー、そして今度はニョルロックを目指しての旅は一切の休憩がなく、ようやく一息つけた実感が彼の全身をアルコールと共に駆け巡る。
ブドウから作られた食後酒と共にアサピーはマスカットを食し、それまで食べていた濃い味付けの料理の存在を口の中から消し去る。

(-@∀@)「美味しいですね、このお酒」

小さなグラスは一口で空になり、アサピーは追加で酒をそこに注ぎ足す。
揺れる列車の中でも彼は器用にグラスのギリギリまで注ぎ、零れない内に飲み干し、すかさず皿に盛られたマスカットを食べた。

<ヽ`∀´>「そうニダね」

一方のニダーは少量の酒と共にマスカットを口に含み、咀嚼し、酒と果物の組み合わせを味わった。
瑞々しいマスカットは皮を食べられるだけでなく、種も入っていない種類のため、そのまま飲み込むことが出来た。
同じ酒と果物を前にしても、双方の摂取の方法はまるで逆だった。

<ヽ`∀´>「アサピーはニョルロックに行ったことないニダか?」

(-@∀@)「話は聞いたことはあるんですが、機会がなかったもので」

経済都市ニョルロック。
内藤財団の所有する街であるとともに、世界経済の中枢でもある。
ラヴニカが製造によって経済を変えているのに対し、ニョルロックは企業同士のやり取りによって経済を変えている。
ラヴニカで復元、あるいは開発された品が商品として世界に流通するためにはニョルロックを経由することになる。

むしろ、世界中に売りさばかれる品でニョルロックに関わらない品は存在しない。
ジュスティア警察で支給されている武器や制服でさえも、ニョルロックを拠点にする企業を経由しているのである。
ニョルロックなしに経済を語ることは出来ない。

828名無しさん:2021/05/24(月) 20:25:50 ID:ABQkjzkI0
<ヽ`∀´>「だったら結構楽しめると思うニダよ。
      カメラの新作なんかも、どこよりも早く店に並ぶニダ」

(-@∀@)「なるほどですね。
      でも、僕は支給してもらったカメラで十分ですよ。
      むしろ十分すぎるぐらいです」

<ヽ`∀´>「レンズもあるニダよ」

(-@∀@)「……レンズ、ですか」

<ヽ`∀´>「今支給されてるのはどんなレンズニダ?」

(-@∀@)「望遠のやつと、普通のやつですね。
      あ、普通って言っても近距離も遠距離もいけるやつですよ」

<ヽ`∀´>「広角レンズとか欲しくないニダ?」

(-@∀@)「そ、そりゃあ欲しいですが」

<ヽ`∀´>「フィルターとか色々あるニダよ」

(;-@∀@)「ほ、欲しいですけど……」

困惑するアサピーを見て、ニダーは笑みを浮かべた。
グラスを口に付け、小さく喉を鳴らす。

<ヽ`∀´>「はははっ、大丈夫ニダよ。
      経費は結構もらってるから、カメラの部品も買っていいニダ。
      本当はラヴニカで買いたいけど、ニョルロックに卸されたほうが安くて済むニダ」

(-@∀@)「そ、そういうことなんですね」

<ヽ`∀´>「まぁ、せっかくの旅だから楽しんでいくニダ」

確かに旅ではあるが、確実に裏のある旅だった。
ニョルロックに向かうことをジュスティア市長、フォックス・ジャラン・スリウァヤに直接言い渡されたが、アサピーはその詳細を聞いていなかった。
恐らくニダーは聞いているのだろうが、詳細の分からない旅というよりも、目的を知らされない行軍に近い物がある。
これからの旅について思いを巡らせたとき、扉の外側から声が聞こえてきた。

「……まいったな、どうする?」

「乗客リストにはあるが、だが……」

<ヽ`∀´>「……ちょっと外を見てくるニダ」

気付いたのはニダーも同様だったが、行動は彼の方が早かった。
彼は言葉とほぼ同時に扉を開いていた。
流石はジュスティア警察の人間だ。

829名無しさん:2021/05/24(月) 20:26:11 ID:ABQkjzkI0
<ヽ`∀´>「どうしたニダ?」

乗務員の青い制服を着た男が二人、コンパートメントの前で困り顔をしていた。

「あ、いえ……」

何事もない、と言おうとした乗務員よりも先に口を開く人間がいた。

「うえーん!!」

大きな鳴き声を上げる少女を見て、ニダーは目を丸くした。
まるでそれまで堰き止められていた涙が一気に流れ出たように、泣き声と共に車輌中に響き渡る。

<ヽ`∀´>「……子供?」

「あぁ、いえ、お気になさらず」

<ヽ`∀´>「子供が泣いていたら気になるのが大人ニダ。
      何か手助けできるかもしれないならなおさらニダよ」

ニダーは懐から警察の身分証を取り出し、乗務員に見せた。
それはある意味、世界中で通用する一つの信頼の形をしており、列車に関わる人間であれば、知らないはずがない。
観念したかのように乗務員は溜息を吐いた。
それから吐き出すようにして、現状を語り始めた。

「乗車券もあるし、乗員名簿にもあるんですが、実は同行者がいないってことが分かりまして。
この手紙が枕元にあって、それを読んでからこんな状態でしてね……」

手紙を受け取り、それに目を通す。

<ヽ`∀´>「“一人でニョルロックに行け。 俺は後から行く”、か。
      ……ふむ、これだけで判断するに、一人で旅行を出来るか試したかったニダね」

「ただねぇ、どうやらこの子が寝ている間に列車に乗せたみたいなんですよ」

830名無しさん:2021/05/24(月) 20:26:40 ID:ABQkjzkI0
<ヽ`∀´>「そりゃ、ちょっと乱暴ニダね。
     ウリはニダー・スベヌっていうニダ。
     ジュスティア警察の人間だから、怖がらなくていいニダよ。
     お嬢さん、お名前を教えてもらえるニダか?」






すると、少女が嗚咽しながら言葉を発した。






l从;∀;ノ!リ人「イモジャ、イモジャ・スコッチグレインなのじゃ……」






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Ammo→Re!!のようです
Ammo for Remnant!!編

第九章【remnant of hatred-憎しみの断片-】 了

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831名無しさん:2021/05/24(月) 20:27:21 ID:ABQkjzkI0
これにて今回の投下はお終いです
次回でRemnant編は終わりになる予定です

質問、指摘、感想などあれば幸いです

832名無しさん:2021/05/24(月) 20:36:32 ID:YSAWbIcE0
乙乙乙

833名無しさん:2021/05/24(月) 22:37:46 ID:DV16/bT.0
>>830
生きてやがったのかイモジャ

834名無しさん:2021/05/25(火) 17:34:01 ID:opOTdkQM0
フサギコついに来たか…!
融解された娘はどうなったんだろう…

835名無しさん:2021/05/25(火) 17:37:45 ID:opOTdkQM0
融解じゃねえ誘拐だ…展開的に冗談にもならないぜ

836名無しさん:2021/05/25(火) 18:48:51 ID:HmW/GSO60
>>833
口が悪くなってたわ
生きていたのかの間違い

837名無しさん:2021/05/25(火) 19:09:22 ID:yY2wLM0s0
>>834
既に本編に登場して、デレシア一行とも接触しておりますよ!
詳しくは↓
http://ammore.blog.fc2.com/blog-entry-16.html

838名無しさん:2021/05/25(火) 20:48:51 ID:HmW/GSO60
>>837
マジかよ!
彼女がフサの娘で彼に助けられてたのか!

839名無しさん:2021/05/25(火) 22:53:14 ID:YU4o6ySI0
おつ!
やっぱフサはミセリが原因でぶっちぎれてるのかな
この上なくかっこいい登場だったわ
そして妹者は無事でいて…

840名無しさん:2021/05/25(火) 23:05:11 ID:p5YDHCYs0
トラギコが途中転職してワロタ

841名無しさん:2021/05/29(土) 00:00:38 ID:10mbvwp.0
>>840の意味最初分かんなかったけど、>>823の(=゚д゚)『これが俺の転職だ』って事指してんのに気が付いて草生え散らかした


あと>>807の挟撃における突破.は、の"."は誤字かな?

842名無しさん:2021/05/29(土) 06:23:17 ID:K7QnGV.c0
>>841
ホットペッパーのCMになってるwww


まとめの方でご指摘いただいた2点修正いたしました、ありがとうございます

843名無しさん:2021/05/29(土) 08:06:29 ID:cTmN8Q1c0
>>841
転職そういうことか!
笑ったわ
お巡りさんから何に転職したのか!

844名無しさん:2021/06/23(水) 12:35:53 ID:Ci7c4zIA0
>>799
>追いかけたいという気持ちもあるが、それ以上に、トラギコはこの街でティンカーベルが起こした火がどのような結果を導くのかが気になっていた。
これってティンカーベルじゃなくてティンバーランド?

845名無しさん:2021/06/23(水) 19:23:02 ID:DZ/mcXA.0
>>844
とんだとばっちりやん!!

ティンバーランドの誤字です!!
もう

846名無しさん:2021/06/26(土) 20:33:08 ID:T0q9FfQo0
明日VIPで皆さんにお会いできるように頑張ります

847名無しさん:2021/06/27(日) 19:44:45 ID:RibqLfAc0
間に合ったのでVIPで投下しています

Ammo→Re!!のようですζ(゚ー゚*ζ
https://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1624790612/

848名無しさん:2021/06/28(月) 18:43:53 ID:GrGR9ifo0
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あらゆる断片は、必ず他の断片と結びつけることが出来る。
人も、想いも。
まるで磁石のように惹かれ合い、結びつき、形を成すのである。

                        ―――エブリン・イワゴン著【因果と収束】より抜粋

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September 16th AM07:39

昏睡状態から覚めたその男は数秒の間虚空を見つめたかと思うと、絶叫した。
怒号。
悲鳴。
怨嗟と悲哀の込められた憤怒の叫び声は、カントリーデンバー唯一の病院中の窓を震わせ、眠っていた患者を叩き起こした。

( ;_ゝ;)「ああああああああああああああああああ!!」

両手と片足を失い、更には片耳を失ったアニー・スコッチグレインは文字通り発狂していた。
自由の効かない体を必死に動かし、起き上がろうとするも、激痛とカテーテルが彼の動きを制限する。
男の看護師が押さえつけ、その間に彼の腕に鎮静剤が注射される。

( ;_ゝ;)「おおっ……おああっ……!!」

看護師たちが不安そうな目で見守る中、彼の運ばれた病室に現れた訪問者が涼しい顔で言った。

「後は私が見るから、皆さんは仕事に戻ってください」

狂乱していたアニーの背筋が凍った。
その声の主は非情な精神の持ち主であり、同時に、組織の中でも高位の立場にある人間だ。
看護師たちが部屋からいなくなり、扉が閉まったのを確認してから、キュート・ウルヴァリンは話を続けた。

o川*゚ー゚)o「災難だったな、同志アニー」

( ;_ゝ;)「ひっ……!!」

ティンバーランドには性質的に暗殺に長けた女性が多くいるが、その中でもキュートは別格だ。
声帯模写によって対象を油断させ、懐に入り込み、一瞬の間に音もなく即死させる技術は比類がない。
この場に現れたことによってアニーが想像したのは、組織にとっての足手まといを処分することだった。
彼女の手にかかれば確かに苦痛なく殺されることもあるかもしれないが、逆に、相手を即死させない際の場所で痛めつけることも可能だということだ。

o川*゚ー゚)o「そう怯えないでほしいな。
       せっかくジュスティアからこっちに来たのにその反応は流石に傷つく」

( ;_ゝ;)「な、何の用ですか?」

849名無しさん:2021/06/28(月) 18:46:35 ID:GrGR9ifo0
o川*゚ー゚)o「定期報告が途絶えたから、と言っても信じないだろうね。
       ……酷い目にあったな」

声色は優しげだった。
目も優しげだった。
だが、目の奥には微塵も優しさはなかった。

o川*゚-゚)o「どこの誰だ、こんなことをしたのは」

( ;_ゝ;)「ギコです……」

まともに機能しない喉を使って、アニーはその仇の名前を口にした。

o川*゚-゚)o「ギコ・ブローガン、いや、ギコ・カスケードレンジか……
       なるほど、魔女の置き土産というわけか」

( ;_ゝ;)「オットーは、オットーは……?」

o川*゚-゚)o「……残念だが、同志オットーは死んだ。
       我々の方で葬儀を執り行った。
       妹さん、イモジャさんだったな。
       彼女に関する情報は何もない」

( ;_ゝ;)「ううっ……」

o川*゚-゚)o「言い換えれば、まだ殺されていない可能性があるということだ。
       ギコという男は、ああ見えて甘い人間だからな。
       奴がイルトリア軍を抜けた理由は子供が絡んでいる。
       お前がそうやって悲嘆にくれるのを、奴は狙っているだけだろうな」

それが気休めの言葉でないことは、アニーにはすぐに分かった。
このキュートという女は、気休めの為にこれだけ言葉を並べるような性格をしていない。
彼女は組織の目的達成のためには非情であり続けるだけの覚悟と素質があり、例え同じ志を持つ仲間であっても、合理的でないと判断すれば容赦はしない。

o川*゚-゚)o「我々の歩みは、我々の覚悟そのものだ。
       家族を失った痛みを持つ同志は大勢いる。
       お前だけが特別なわけじゃない」

そう。
この言葉が、キュートの本音だ。
そして、アニーが思い出さなければならない言葉でもあった。
彼ら兄弟がティンバーランドに加わったのは、世界を変えるためだ。

暴力と不条理に満ちた世界のルールを変えるため、覚悟を決めて組織の一員となった。
オットーが死んだことは事実だ。
しかし、イモジャについてはまだ生きている可能性がある。
それだけでも彼はまだ救われていると言える。

組織の中には、ショボン・パドローネのように家族を全員失った人間もいる。
そうした思いをする人間がこの世界からいなくなる為にこそ、彼らは命を懸けているのだと、アニーは思い出した。

850名無しさん:2021/06/28(月) 18:48:01 ID:GrGR9ifo0
( う_ゝ;)「す、すみません……」

o川*゚-゚)o「別にお前を責めているわけじゃない。
       だが忘れるな、我々の歩みを」

涙を袖で拭い、アニーは赤らんだ目でキュートを見た。

( ´_ゝ`)「はい、我々の歩みは世界のため……
     世界が大樹となるために」

o川*゚ー゚)o「それでいい、同志アニー。
       そして朗報だ。
       間もなく我々の歩みが最終段階に移行する。
       セントラス、ヴィンスに我々の根が入り込んだ。

       残る障害はイルトリアとジュスティアだけだが、それは予定通りだ」

( ´_ゝ`)「もうそこまで来たのですか、我々の歩みは」

予定通りに“正義の歩み”が進むことで、彼らの念願が現実のものとなるのに必要な条件が揃っていく。
カントリーデンバーでアニーたちが行った実験も、そうした歩みの一つだった。
世界中の定められた街で彼らが実行する歩みは一見すれば関係性のないものに見えるが、その実、全てが根深い部分で繋がっている計画の一端なのだ。

o川*゚ー゚)o「そうだ。
       多くの犠牲の果てに、我々の悲願が形となる。
       世界は大きく変わる。
       力など、世界を動かすにはあまりに時代遅れだ。

       ひとまず、お前は私と一緒にストラットバームに来い。
       その後でニョルロックだ」

ティンバーランドが秘密裏に所有する孤立した地区、ストラットバーム。
それは“正義の歩み”が終わり、世界が変わる新たな歩みが始まる土地の名前。
世界再生の始まりとなる、ティンバーランドの拠点の名前である。

851名無しさん:2021/06/28(月) 18:48:42 ID:GrGR9ifo0
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        ≧s。._    ‘,:. ;: :.__//} \_//>''"
            ≧s。._ マ//////// リ     /
                ≧s。._-‐=≦    /           同日 同時刻
                    ≧s。.___/
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ニョルロック行の列車内での朝食は、クラフト山脈を目前に停車した列車内でとることになった。
ニダー・スベヌとアサピー・ポストマンは焼かれたばかりのトーストにバターをたっぷりと塗り、齧り付いた。
トーストの表面の小さなかけらが皿の上に飛び散り、彼らの口の周りにバターが付くが、気にせずに食事が続けられる。
食堂車では控えめな音楽が流れ、食器が触れ合う音や、サラダにフォークが突き立てられる音、そして人々の談笑が混ざり合う。

<ヽ`∀´>「うん、やっぱりトーストは焼き立てなら大抵美味いニダね」

(-@∀@)「厚みがあって、こりゃいいトーストですね」

その二人の傍で、俯き加減でサラダを口に運ぶ少女がいた。

l从・∀・ノ!リ人「……」

イモジャ・スコッチグレインと名乗った少女は泣きはらした目をこすりながら、無言で食事を進める。
サラダとオレンジジュースのみという食事は、彼女の年齢から考えればあまりにもか細い物だった。

<ヽ`∀´>「むむ、このソーセージも美味いニダね」

(-@∀@)「皮がパリッとしていて、こりゃあビールが欲しくなりますね」

二人は彼女の異変に気付いており、また、事情を知らない関係ではなかった。
だからこそ二人はあえて触れず、彼女が自ら克服する機会を待っていた。
昨日、二人と共にニョルロックまでの道中を過ごすことに同意したイモジャだったが、心に負った傷は一夜明けただけでは埋まる物ではない。

(-@∀@)「確か食事は無制限なんですよね?」

<ヽ`∀´>「そうニダ。 好きなものを好きなだけ食べていいニダよ」

(-@∀@)ノ「すみませーん、ビールをジョッキで1つお願いします」

勢い良く手を上げ、アサピーは給仕係に注文をした。
離れた痛場所でそれを聞き咎めた給仕係は頷き、一分もしない内に並々と注がれたビールを持ってきた。

852名無しさん:2021/06/28(月) 18:49:35 ID:GrGR9ifo0
(-@∀@)「うえっへっへっへ」

アサピーはわざとらしく声を出し、ビールに口をつけた。
喉を鳴らして半分ほど飲み、ため込んだ鬱憤を吐き出すかのように、声を出した。

(-@∀@)「かはぁぁぁっぁ!!」

<ヽ`∀´>「朝から酒なんて、あんまり感心しないニダよ」

(-@∀@)「そうは言っても、連結作業が終わるまでは動けないんだし、いいじゃないですか」

フートデンバーからニョルロックに行くためには、クラフト山脈の最南端を通過することになる。
クラフト山脈の中でも標高が低く、天候も安定していることもあって通常の列車での通過が可能な数少ない道である。
しかし、そのためにはやはりトルクが必要になるため、二台の列車を連結してそれを確保しなければならない。
彼らは今、クラフト山脈を越えるために後続の列車と連結するのを待っている状態だった。

<ヽ`∀´>「子供が見ているニダ、ちょっとは遠慮するニダよ」

(-@∀@)「うーん、まぁ、頼んじゃったからいいじゃないですか!!」

ニダーが言い出したこととはいえ、アサピーは正直イモジャと共にニョルロックに向かうことに不安があった。
子供嫌いというわけではなかったが、子供と共に進むことに対してメリットが見出せないのだ。
巨大な組織の影を掴むためには危険な橋を渡らなければならない。
しかし、子供がいるだけでそれが困難になる状況はいくらでもある。

情が移ればそれだけ動きが鈍くなる。
そのため、アサピーは出来るだけこの少女に情を抱かないよう、あまり関心を向けないことに決めていた。
対して、ニダーはジュスティア人らしく彼女に対して誠意をもって対応している。
離れたコンパートメントにいる少女を起こしに行ったり、こうして食事に誘ったりと、彼女が孤独を感じないように努めていた。

これが“正義”を代弁する人間の在り方なのだと思うのと同時に、トラギコの生き方とは違った姿にアサピーは面白さを感じざるを得なかった。

<ヽ`∀´>=3「全く、しかたないニダね。
       おっ、そろそろ連結が始まるニダよ」

溜息を途中で切り上げたニダーが、車窓から列車の後方を見た。
釣られてアサピーも身を乗り出してその光景をファインダーに捉える。
それはアサピーたちの乗る列車と同じ形をしており、違いは正面に掲げられた数字だけだ。

(-@∀@)「同じ型なんですね」

<ヽ`∀´>「そうニダ。 この車輛はエライジャクレイグの中でもトルクのあるやつだから、山越えをするような時に使われるニダよ。
      その代わり速度は出ないニダ」

(-@∀@)「適材適所って奴ですね」

シャッターを切り、肉薄する車輌を連続してカメラに収める。

l从・∀・ノ!リ人「……カメラ」

853名無しさん:2021/06/28(月) 18:50:05 ID:GrGR9ifo0
(-@∀@)「そうですよ」

l从・∀・ノ!リ人「フィルムを巻かないで撮ってたのじゃ」

(-@∀@)「ふふふ、これはデータに写真を保存するカメラなんですよ。
      ほら、こうやって撮ったのが見返せるんです」

撮影したばかりの列車の写真をモニターに写し、イモジャに見せる。
コマ送りにして見せると、彼女の目が好奇の色に染まるのが見えた。

l从・∀・ノ!リ人「凄いのじゃ」

(-@∀@)「試しに撮ってみますか?
      フィルムじゃないから何度でも撮り直しが出来るんですよ」

『これより連結を行います。
連結に伴い衝撃が生じますので、お気を付けください』

アナウンスの通りに衝撃が車輌全体を揺らしたが、ジョッキのビールに小さな波が立つ程度だった。
改めてアサピーはカメラをイモジャに手渡し、使い方を簡単に教えた。

l从・∀・ノ!リ人「おおー、凄いのじゃ!!」
つ【::◎:】⊂

車窓越しに風景を撮り、車内を写真に収める。
アサピーとニダーも撮影され、イモジャは食べかけの食事も撮影した。
その姿はかつて自分がカメラを初めて手にした時のそれと同じであり、懐かしさを覚えた。

(-@∀@)「近くの物を取る時は、フォーカスを変えないと駄目ですよ」

l从・∀・ノ!リ人「フォーカス? どうやるのじゃ?」

(-@∀@)「それはですね、こうやって……」

そして手近な物を撮影し、次にイモジャは遠距離の物を撮影することに興味を抱き始めた。
望遠機能の使い方を教えた時、再びアナウンスが入った。

『これよりニョルロックに向け、クラフト山脈を通過いたします。
道中は車窓と外部に通じる扉を全てロックいたします。
お客様の安全と定刻通りの運行のため、ご理解の程お願いいたします』

食堂車で開いていた車窓が一斉に降り、鍵のかかる音がした。

l从・∀・ノ!リ人「おお、凄いのじゃ!!」

ゆっくりと列車が前進を始め、徐々に加速していく。
進行方向に見える白い山脈が近づき、イモジャはシャッターを切る。
大きなカーブに差し掛かった時、アサピーは何の気なしに話しかけた。

(-@∀@)「今なら後ろの車輌を撮影できますよ」

854名無しさん:2021/06/28(月) 18:50:31 ID:GrGR9ifo0
l从・∀・ノ!リ人「おおっ、本当なのじゃ!!」

車輌がカーブに沿って弧を描くことで、側面を見ることが出来るのだ。
夢中でシャッターを切り、次々と風景を切り取っていく。

l从・∀・ノ!リ人「撮ったのはどうやって見られるのじゃ?」

(-@∀@)「ここのボタンをこうして……こうやるんですよ」

ボタン操作をし、イモジャが連写した写真を見ていく。

(-@∀@)「で、ここをこうクルクルさせるとズームができるんです」

何気のない写真。
丁度、弓なりになった時に離れた車輌の側面が目視できるようになった時の一枚。
選んだ写真が拡大され、車窓の向こうにいる人間の顔が見えてきた。
そこにあったのは男の顔だった。

笑みを浮かべるわけでも、怒っているわけでもない、無表情の男。
だがその目は、ファインダー越しにでもこちらを睨みつけているのではないかと思わせるほどの迫力があった。
まるで刃のように鋭く、美しさすら覚える眼光だった。
思わず息を飲み、別の写真に切り替える。

(-@∀@)「……おっ、クラフト山脈が上手に撮れていますね」

l从・∀・ノ!リ人「やったのじゃ!!」

(-@∀@)「ニョルロックに着いたら3枚だけ、好きな写真を現像してあげますよ。
      なので、一旦いらない物は削除しましょう。
      そうしないとたくさん撮れないですからね」

二人で相談しながら写真を削除している間、ニダーの視線は車窓の向こう側に向けられていた。
視線の先に何があるのか、アサピーには分かりかねるが、どうしても先ほどの写真の男の顔が頭に浮かんでしまう。
まるで凶暴な獣に茂みから覗かれているのを見つけてしまったような、極めて不安な気持ちになる。

(,,゚Д゚)

アサピーの本能が男の写っている写真を削除させなかったのは、本能のどこかでその男と自分とに何かしらのつながりを見出したからなのだろう。
断片的な何かを――

855名無しさん:2021/06/28(月) 18:51:41 ID:GrGR9ifo0
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Ammo→Re!!のようです
Ammo for Remnant!!編

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  .`マ   ̄ f≧z    \:::ー、    {   .!   /::::::/: :     __,.. -=  ̄ ア
  ヾミ    乂zツ`''- 、 : :\::::',   〉  {   ./::/: : : _,,. -=弋z_ツ´   /
    ヾミ=--   _  \ミ、 ヾ .ノ、 __ ,乂__/: : : :/´  __   ..z彡
      `  ̄ ̄ ` : : : `ミ 、: : . `ヽ /´     /´ ̄ : : : :=-  ´
              ` : : : : : : :. } .Y     .: : : ´
                ヽ: : : : :          .: ;
                  `: : :       ,:
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第十章【Ammo for Remnant!!-断片の銃弾-】

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September 17th PM07:15

やや大きめに切ったニンニク、たっぷりのオリーブオイル、厚めのベーコンと少々の塩コショウ。
それを炒めるだけで食欲を増進させる香ばしい香りが立ち上る。

ノパー゚)「久しぶりにこれだけ長い間運転したけど、やっぱりディはすげぇな。
     全然疲れないよ」

ヒート・オロラ・レッドウィングはバーナーの上のフライパンをゆすって食材を混ぜ、ベーコンの表面がきつね色になるように火を通す。

ζ(゚ー゚*ζ「ふふっ、あの子は乗り手の癖に合わせてくれるからね。
      とっても賢くて優しいのよ」

デレシアは焚火の中からアルミホイルで包んだバゲットを取り出し、皿の上に乗せる。

(∪´ω`)「ディは何でもできるんですおね」

サラダ用のレタスを千切って皿に盛り付けつつ、ブーンはテントの傍に駐車された大型バイク、ディを見た。
今はエンジンを切っているため、ディは彼らの会話を聞いてはいるが、求められない限りは返答をしないことになっている。

ζ(゚ー゚*ζ「ふふっ、ブーンちゃんもその内何でもできるようになるわよ」

(∪*´ω`)「おー」

ヒートはフライパンをローテーブルの真ん中に置き、デレシアはバゲットを切り分けた物をその傍に置く。

856名無しさん:2021/06/28(月) 18:54:31 ID:GrGR9ifo0
ノパー゚)「さぁ、冷めない内に食っちまおう」

(∪*´ω`)「美味しそうな匂いですお……!!」

ζ(゚ー゚*ζ「きっと美味しいわよ。
      いただきます」

(∪*´ω`)「いただきます」

ノパー゚)「いただきます」

そして、食事が始まった。
バゲットの上にまだ熱いオリーブオイルとベーコン、そしてニンニクを乗せ、齧り付く。
塩味、仄かな甘味、そして香ばしさが一気に口内に広がる。
ベーコンは表面が上品に焼け、サクサクとした食感が味わい深さを奏でている。

(∪*´ω`)「美味しいですお!!」

ノパー゚)「そりゃよかった。
     毎日は飽きるけど、時々食べたくなるんだ。
     その内酒が飲めるようになれば、これだけでも十分な肴になる」

ζ(゚ー゚*ζ「シンプルだけど、それがいいわね」

サラダの上にかけてもドレッシングとして十分にその役割を果たせるため、彼らの食事はヒートの作った炒め物が中心となった。
育ち盛りのブーンには量が少ないため、ヒートはフライパンに新たなオリーブオイルを追加し、ヴィンスで買っていた魚介類を調理した。
氷で保冷はしていたが、魚介類は日持ちがしない。
魚の切り身とエビをたっぷりのオリーブオイルで煮詰め、アヒージョを作る。

最後はフライパンに残ったオリーブオイルをバゲットで拭い取り、余さず食べきることが出来た。
野外で食事を作る際、どれだけ不要な物を生み出さないか、それがかなり大切なことになる。

(∪*´ω`)「ごちそうさまでしたお」

ζ(゚ー゚*ζ「ごちそうさま、美味しかったわ」

ノパー゚)「ごちそうさま。
     まぁ、たまにはこんな料理もいいな」

ζ(゚ー゚*ζ「ブーンちゃん、お茶飲む?」

(∪´ω`)「はいですお!」

焚火の傍で温めていた容器からお湯をカップに注ぎ、そこに茶葉を入れる。
一瞬でほうじ茶の得も言われぬ香りが漂い、ブーンの目が輝く。
しかし味がまだ染み出ないことを知る彼は、両手の指を温めるようにしてそれを握る。

ζ(゚ー゚*ζ「私達はお酒にしましょうか」

ノパー゚)「いいな、バーボンでも飲むか」

857名無しさん:2021/06/28(月) 18:55:10 ID:GrGR9ifo0
小さなボトルを取り出し、その中身をショットグラスに注ぐ。
舐めるように少しずつ口に運び、二人はその豊潤な風味に満足げに息を吐いた。

ノパ⊿゚)「ふぅ……あともう少しでイルトリアか」

ζ(゚ー゚*ζ「このまま行けば、そうね、明日の夜には着くわね」

彼らは“鉄の都”と呼ばれるアンカレイジを通過し、イルトリアまでもう間もなくという距離にいた。
夜になると気温は非常に低くなり、焚火に当たらなければ瞬く間に体温が奪われるほどの場所だった。
ほうじ茶が飲み頃だと匂いで悟ったブーンは茶葉を口にしないように口をすぼめ、少しずつ飲んでいく。

(∪´ω`)「イルトリアも寒いんですかお?」

ζ(゚ー゚*ζ「もうちょっと進むとそこまで寒くないんだけど、そうね、ちょっと肌寒く感じるかもね」

ノパ⊿゚)「イルトリアで市長に会うんだろ?
    知り合い……なんだよな」

ζ(゚ー゚*ζ「そうね、昔からの友人よ。
       一応トソンに伝言を頼んでいたけど、私も話をしないといけないと思ってね。
       それにブーンちゃんに会いたいって思っているだろうからね」

(∪´ω`)「お? どうして僕に?」

ζ(゚ー゚*ζ「ミセリのお父さんなのよ。
      ニクラメンであの子を助けたでしょう?
      きっとお礼が言いたくて今もうずうずしているはずよ」

海上都市ニクラメンにおいて、ブーンは意図せず彼の娘であるミセリを助けた。
結果としてその経験は彼をより一層強くし、貴重な経験を積むことに繋がった。
イルトリア二将軍の“左の大槌”、トソン・エディ・バウアーにも認められるほどの強さを得た。

(∪´ω`)「おー、どんな人なんですかお?」

ζ(゚ー゚*ζ「そうねぇ……多分、ブーンちゃんがこれまでに会ったことのない種類の人ね。
       豪快な人で、義理人情に厚い人よ」

(∪´ω`)「義理ニンジョー」

ζ(゚ー゚*ζ「人として大切な感情ってことよ。
      後はそうね、奥さんに頭が上がらない可愛い一面もあるのよ」

ノパ⊿゚)「イルトリアの市長って、あたしが聞いた話だと代々、力で決めるんだろ?
     その市長が怖がるって、相当な奥さんなんだな」

ζ(゚ー゚*ζ「というよりも、フサが惚れ込んだ人だから強く言えないのもあるわね。
      それとあの街の市長の決め方はもうちょっと面白いの。
      市長になるにはまず従軍経験と士官の経験、それと戦場での貢献が必須条件なの。
      それを満たしたうえで、市長戦があるのよ」

858名無しさん:2021/06/28(月) 18:55:58 ID:GrGR9ifo0
ノパ⊿゚)「……戦?」

(∪´ω`)「……戦?」

二人は揃ってデレシアが口にした言葉に反応し、互いに顔を見合い、それからデレシアを見た。

ζ(゚ー゚*ζ「戦うのよ、市長に立候補した人同士で。
      負けたらその部下になるの。
      ちなみに、決勝戦は現市長との戦いね」

ノハ;゚⊿゚)「スポーツ感覚なのかよ」

ζ(゚ー゚*ζ「あの街を束ねるっていうのは、実力がなければ無理なの。
      世襲やらコネなんていうのは、あの街では意味がないからね」

戦争を生業とする職業人が多いイルトリアでは、世襲とコネはまるで意味をなさない。
戦場に派遣される際にも親の職業などは一切考慮されることもなければ、その後の待遇にも影響はない。
実力主義の街で市長をするためには、実力を示すほかないのである。

ζ(゚ー゚*ζ「実際に会ったほうがよく分かるわ。
      百聞は一見に如かず、ってね」

ノパ⊿゚)「確かにな。
    なぁ、イルトリアの飯は何が美味いんだ?」

ζ(゚ー゚*ζ「そうねぇ……屋台料理がお勧めね」

(∪´ω`)「おー、どんな料理があるんですかお?」

ζ(゚ー゚*ζ「何でもあるわ。
      串焼き、サンドイッチ、変わった物だと串に刺したピクルスなんていうのもあるわよ。
      ピザも美味しいわね、食べ歩きしやすいように丸まったやつなの」

ノパ⊿゚)「屋台料理か……やっぱ、何か理由があるのか?」

ζ(゚ー゚*ζ「屋台同士で争うからよ。
       屋台料理は美味しくなければ人が来ないから、みんな必死に研究して味を高め合っているの。
       店を構えているところに比べて競争率が高いから、美味しい所だけが生き延びるようになっているのよ」

イルトリアの料理人が掲げる標語は“料理は勝負”であるとまで言わしめるほど、街の中にある飲食店の競合は非常に激しい。
それだけに、店を構えていられるのはよほどの実力がある古参か、あるいは新参の店だけなのである。
その競争の激しさはホールバイトをも凌ぐほどで、新作の実験的な販売の場としてイルトリアが密かに選ばれることが多い。
フードトラックが路肩に多く停まり、食事時になると一斉に呼び込みが始まる様は壮観そのものだ。

ノパ⊿゚)「なーるほどね。
    “武人の都”は料理の世界にも健在ってことか」

ζ(゚ー゚*ζ「安売り合戦になりやすいから、その辺りは制限があるけど基本は自由ね。
      私のお気に入りのお店も、今残っているかどうか分からないのが残念なところね」

859名無しさん:2021/06/28(月) 18:57:16 ID:GrGR9ifo0
(∪´ω`)「おー」

ほうじ茶を口に含み、ブーンは白い息を吐いた。
星空を見上げ、物思いにふけるようにして口をつぐみ、ややあって口を開いた。

(∪´ω`)「ギコさんもイルトリアの人ですおね?」

ζ(゚ー゚*ζ「そうね」

(∪´ω`)「イルトリアで会えるといいなー」

ζ(゚ー゚*ζ「少し寄り道するだろうけど、あの男ならイルトリアに立ち寄るわよ、必ずね」

デレシアの言葉は慰めでも、ましてや直感によるものではなかった。
彼女は確信を持っていた。
復讐に燃える男は、間違いなくイルトリアに足を運ぶと。

(∪´ω`)「おー、また会ってお話したいですお」

ノパ⊿゚)「ブーンとあいつは同じ先生に習ったんだもんな」

“魔女”と呼ばれたペニサス・ノースフェイスの事実上最後の教え子であるブーンにとって、ギコは同じ師を持つ関係にある。
彼からしか聞けない話や、彼としかできない話もあるのだろう。

ζ(゚ー゚*ζ「あのペニーが認めるってことは、二人はどこか似ているのかもしれないわね」

ノパ⊿゚)「デレシアはギコと面識なかったのか?」

ζ(゚ー゚*ζ「そうね、ほとんどないわね。
       あったかもしれないけど、面識というほどでもないはずよ」

ペニサスからも彼の存在について聞いたことはなく、噂にも聞いたことはない。
それだけ目立たずに生きてきたにも関わらず、あれだけの技量を有しているのは正直なところ、あまりにも意外だった。
早い段階で戦場から身を引いたのだとしたら、デレシアの中で得心のいくものがあった。

(∪´ω`)「お…… ペニおばーちゃんのこと、ちょっと聞きたいですお」

ζ(゚ー゚*ζ「それならイルトリアの軍人に話を聞いて、それから彼の話を聞くのがいいわね。
      イルトリア軍でペニーのことを知らない人はいないわ。
      特に、海兵隊の人間の上層部はみんな彼女の教えを受けていたし、狙撃手に至っては必ずその影響があるはずよ」

ノパ⊿゚)「そんなに凄い人だったのか」

ζ(゚ー゚*ζ「えぇ、世界で一番の狙撃手だったわ。
      私よりも軍の人間がよく知っているのは確かよ。
      そうね……退役軍人の会があるから、それに顔を出してみるのもいいかもね」

(∪´ω`)「僕、そんなところに行っていいんですかお?」

860名無しさん:2021/06/28(月) 18:58:02 ID:GrGR9ifo0
ζ(゚ー゚*ζ「ペニーの最後の教え子だって分かれば、みんなブーンちゃんを大歓迎するはずよ。
      むしろブーンちゃんが質問攻めにあうかもね」

ブーンの目が好奇心に輝いた。

(∪*´ω`)「お……上手に答えられるかな……」

ζ(゚ー゚*ζ「ふふっ、大丈夫よ」

ノパー゚)「あぁ、ブーンなら可愛がってもらえるさ」

退役軍人の集いにおいても、ペニサスの名は絶対だ。
彼女が命を落とした際の年齢を考えれば、その場に彼女の影響を受けた人間は大勢いる。
ペニサスがブーンに教えきれなかったことを、彼女の教え子たちが伝えたがるのは間違いなかった。
イルトリアに行けば銃器の種類も豊富にあるため、ブーンが自らの身を守るための術と道具を見つけることが出来るだろう。

その際、ペニサスの最後の教え子というレッテルがあれば、優れた指導員がブーンに技術を教えるだろう。
既にブーンは格闘技術についてロウガ・ウォルフスキンの指導を受け、その才能を育んでいる。
出会った頃から体重は増え続け、骨格も以前よりも大きくなっている。
元から膂力も同年代の子供よりも優れていたが、今は更に成長しているのが分かる。

(∪´ω`)「デレシアさん、今日はどんなお話を聞かせてくれるんですかお?」

ζ(゚ー゚*ζ「そうねぇ、それじゃあせっかくだから、山のお話でもしましょうか。
      クラフト山脈にまつわるお話よ」

ノパ⊿゚)「おっ、あたしもそれ気になるな」

ζ(゚ー゚*ζ「クラフト山脈には毎年、たくさんの登山家が登頂しようとするけど、未だに1人も成功していないの」

ノパ⊿゚)「そうなのか?
     あたしはてっきり、もう踏破されたもんだと思ってたよ」

(∪´ω`)「僕もです」

ζ(゚ー゚*ζ「クラフト山脈には有名な2つの山頂があるの。
       1つは既に踏破されている“ヒラリー”。
       そしてもう一つ、未踏峰の山頂“カムイ”。
       このカムイはあまりにも険しい道だから、人が踏破するのは無理だって言われているの。

       今からするのは、その踏破に生身で挑んだ人のお話よ」

ヒートは琥珀色の液体を一口含む。

ノパ⊿゚)「……マジか」

登山の世界においても、強化外骨格の力は絶大なものがある。
酸素ボンベを含んだ道具の運搬もそうだが、何よりも人間の膂力をはるかに超えた力で山を征服することが出来る。
岩のように硬い雪の表面にピッケルを突き立てるのは造作もない話で、未開拓の登山ルートを作り上げることさえも可能だ。
そのため、素人でも名立たる名峰を踏破することが容易となるのである。

861名無しさん:2021/06/28(月) 18:59:09 ID:GrGR9ifo0
しかしそこに登山の醍醐味はないため、大抵の場合は登山客に同行する現地人が荷物の運搬による負荷を軽減するために用いる程度となった。
現代では未踏峰の山を探す方が難しいが、世界を隔てる巨大な山脈に、まだ存在しているというのが驚きだろう。

ノパ⊿゚)「人が踏破できないって、よっぽどなんだろうな。
    確か、踏破のジャンルってのが補助の有無であったよな?」

ζ(゚ー゚*ζ「えぇ、強化外骨格を使った場合と、そうでない場合ね。
       カムイはね、どっちの分類でも未踏峰なのよ」

(∪´ω`)「おー」

ζ(゚ー゚*ζ「挑戦したのはロブ・クラークという男性でね……」

それからデレシアは彼の経歴を含め、話を始めた。
俗に言う“神隠し”と呼ばれる大量行方不明事故に発展した、クラフト山脈に関連する中で最悪の事故の話だ。
類を見ない強力な嵐に見舞われ、猛吹雪と雪崩が登山隊を襲ったのである。
しかし、希望のある話でもあった。

ζ(゚ー゚*ζ「……彼以外の遺体は全て見つかったの。
      でも、先頭を進んでいた彼だけはまだ見つかっていないのよ」

ノパ⊿゚)「ってことは、ひょっとしたら山頂に着いたかもしれないってことか」

(∪´ω`)「おー!!」

ζ(゚ー゚*ζ「最後の無線でも、彼は帰れなくても山頂を目指すと言っていたようね。
      だからもしかしたら、頂上に着いたのかもしれないわね」

彼の生死は不明のままだ。
死んだとされているが、滑落死なのか、それとも凍死したのかも定かではない。
死体がない以上、彼はカムイの登頂に成功した可能性のある唯一の人間なのだ。

ζ(゚ー゚*ζ「さ、ブーンちゃんはもうそろそろ寝ましょうか」

(∪´ω`)「はいですおー」

無論、ロブは死んだと考えるのが自然だ。
登頂に成功せず、道半ばで死んだ可能性もある。
しかし登山家たちは彼の死を希望に変え、今でも語り継いでいる。
歯を磨き、ブーンはテントに戻った。

ノパ⊿゚)「……ボブって奴は、何で山を登ったんだろうな」

ζ(゚ー゚*ζ「昔の人の言葉を使うなら、そこに山があるから、なんでしょうね」

デレシアとヒートはほとんど同時にバーボンを口に含み、飲み込んだ。
その一口でショットグラスの中身は奇麗に飲み干された。

ノパ⊿゚)「分かるような、分からないような話だな。
    さて、あたしはブーンと一緒に寝てくるよ」

862名無しさん:2021/06/28(月) 19:00:13 ID:GrGR9ifo0
ζ(゚ー゚*ζ「分かったわ。
       私は火の後始末とかしておくから、ブーンちゃんの事お願いね」

ヒートも歯を磨き、ブーンの後を追ってテントに入る。
二人分の寝息が聞こえてくる頃、焚火が全て灰となる様を眺めていたデレシアは静かに星空を見上げ、溜息を吐いた。
巨大な月と圧倒的なまでの星が、デレシアを見下ろしている。

ζ(゚ー゚*ζ「……」

デレシアは声を出さずに言葉を発したが、それが何を意味しているのか、見届けたのは遥か遠方にいる一人だけ。
高倍率の光学式スコープで彼女たちを眺めていた人間だけなのであった。

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863名無しさん:2021/06/28(月) 19:00:51 ID:GrGR9ifo0
September 18th PM04:54

トラギコ・マウンテンライトたちを乗せたトラックの一団は、いよいよイルトリアを視界に収めるところにまで来ていた。
先頭を走るのは、目的地までの最後の誘導係となったポットラック・ポイフルの運転するトラックだ。
トラギコとオサム・ブッテロはもう間もなくこの旅が終わることを実感していたが、決して油断はしていなかった。
イルトリアの影響の強い地域に足を踏み入れているとは言っても、“ハイエナ”がいないとは限らない。

(=゚д゚)「ここから見ても、しかし、イルトリアってでかいラギね」

( ゙゚_ゞ゚)「そりゃ、ヨルロッパ地方で一番だからな。
     ところでよ、経費は後どれくらい残ってるんだ?」

(=゚д゚)「ヤなこと訊くラギね。
    後500ドルぐらいしかないラギよ」

(;゙゚_ゞ゚)「おいおい、最初はいくらだったんだよ」

(=゚д゚)「1500ドルラギ。
    俺一人なら十分だったラギ、俺一人ならな」

主に消費したのは食費だった。
トラックが停まる度に二人は大量に買い込み、一気に食べた。
この旅が過酷な物になる可能性は十分に考えられたため、本能的に栄養を蓄えようとした行動の結果だ。

(;゙゚_ゞ゚)「お前が俺を連れ出したんだろうが!!」

(=゚д゚)「別に嫌味も何も言ってないラギよ?
    ってことは何か後ろめたい事でもあるラギか、あぁ?」

(;゙゚_ゞ゚)「ちっ、ヤな奴だ」

从´_ゝ从「仲いいな、あんたら」

(=゚д゚)「まぁな、利害が一致してる間は仲良しラギ」

( ゙゚_ゞ゚)「一致しなくなったら後は知らねぇけどな」

从´_ゝ从「ははっ、やっぱり仲いいな」

心なしかポットラックも終着点が近づいていることに心躍っている様だ。
カップに入った冷めたコーヒーを飲み、ポットラックは深い溜息を吐いた。
感傷に浸るように、ポットラックは小さな声で言った。

从´_ゝ从「あと少しであんたらともお別れか」

(=゚д゚)「そうラギね。
    凄い助かったラギよ、ありがとラギ」

( ゙゚_ゞ゚)「男だけの旅も悪くなかったな。
    楽しかったよ」

864名無しさん:2021/06/28(月) 19:02:47 ID:GrGR9ifo0
从´_ゝ从「俺も楽しかったよ。
      あんたらを乗せて正解だった」

水平線に夕日が近づいていく姿を眺め、ポットラックは視線を合わせない。
感傷的な気分になっているのだろうか。

(=゚д゚)「そう言ってもらえるとうれしいラギね。
    でも感傷に浸るのは、イルトリアに着いてからにするラギ」

从´_ゝ从「あぁ、そりゃそうさ。
     俺たちも荷物がちゃんと到着して受け取り印をもらうまでは、安心できないからな。
     イルトリアに着いたら一杯奢らせてくれよ」

(=゚д゚)「そりゃ楽しみラギ。
    あの街の店、知ってるラギか?」

从´_ゝ从「フードトラックがわんさと停まってるんだ。
     広い公園の傍で飲むのが美味いんだ」

( ゙゚_ゞ゚)「屋台飲みか、いいな」

(=゚д゚)「でも寒くねぇのか?」

从´_ゝ从「その寒さも美味さの一つになるんだ。
     任せろって、もう何回もそうやって飲んでるが、一度だって外れはないんだ」

(=゚д゚)「なら任せるラギよ」

トラギコは黄金色からオレンジ色に変わりゆく夕日を眺め、そう言って無言になった。
イルトリアについて、トラギコがジュスティアで習ったことはあまりにも多い。
それはジュスティアとの違い、忌むべき点についての教育だった。
しかしながら、彼が刑事となって多くの情報を知るにつれ、その意味は変化していくことになった。

ジュスティアはイルトリアのことが大好きなのだ。
常に敵視し、常に意識し、常に比肩しようとしているのだ。
法を重んじるジュスティアと力を重んじるイルトリアは水と油の関係だが、それ以上に互いのことを信頼し、認めているのである。
最も顕著なのが軍だ。

お互いに最も警戒すべき相手として意識し合っている様は、好敵手そのものである。
彼にとって、イルトリアへの訪問は大きな意味を持つ物だった。

(=゚д゚)「……」

全ての始まりはデレシアだった。
彼があの事件に関わろうと思わなければ、ここまで動くことは無かっただろう。
モスカウの一員として仕事をこなす中で、いつしか難事件を望むようになってしまった彼にとって、彼女の存在は極めて大きな変化をもたらした。
まるで予想のできない行動と、その正体。

865名無しさん:2021/06/28(月) 19:03:29 ID:GrGR9ifo0
果たしてどこまで迫れるのか、それが彼にとっては重要なことだった。
先んじてイルトリアに到着することが出来れば、デレシアの動きを監視し続けることが出来る。
そして、彼女の本質、あるいは目的が見えてくるかもしれない。
だが目下の目的は、ティンバーランドという組織の狙いを知ることにある。

デレシアは知っている風だったが、トラギコにはまだ大枠でしか推測が出来ていない。
世界中の街を繋げる根幹として内藤財団を位置させ、その果てに何を狙っているのか。
金や権力の類でないことは確かだが、そうなると、いよいよもって答えが出せない。

( ゙゚_ゞ゚)「まーたこいつは難しいこと考えてやがるのか」

从´_ゝ从「仕事の癖なんだろうな」

( ゙゚_ゞ゚)「死ぬまで働く気かよ、やだやだ」

トラギコは物思いにふけりながらも、二人の会話は聞いていた。
オサムの嫌味に対して反応するのも面倒であるため、そのまま夕日を見つめ、イルトリアでの行動を考えることにした。

从´_ゝ从「まぁ、俺も仕事の癖ってのがあるからな、分かるよ。
     一か所に留まるのが苦手でな、一日以上同じ場所にいると腹が壊れるんだ」

( ゙゚_ゞ゚)「根っからの運び屋なんだな」

从´_ゝ从「あぁ、天職だと思ってるよ。
     それに、俺は一人が好きなんだ。
     会社勤めなんて、俺には向いてないのさ」

( ゙゚_ゞ゚)「そんなんじゃ恋人もいないだろ、寂しくないのか?」

从´_ゝ从「こんな仕事してるとな、恋人なんていらないんだよ」

( ゙゚_ゞ゚)「ふーん、ますます天職だな。
    そういや今更なんだけどよ、どっかの企業と契約してるのか?」

それについてはトラギコも気になっていることだった。
これで内藤財団とのつながりが分かれば、あまり気分のいい話ではなくなってしまう。

从´_ゝ从「いいや、俺らはフリーランスだよ。
      企業と契約する運び屋なんて、正直俺には合わないんだ。
      好きに休憩も出来ないし、運ぶ先も選り好みできないからな」

( ゙゚_ゞ゚)「よく食っていけるな。
    運び屋って、大抵企業に依頼しているもんだと思ってた」

从´_ゝ从「あぁ、そうだな。
     だけどな、その分こっちは運ぶ荷物に責任を持つっていう信頼があるんだ。
     絶対に荷を見ない、契約の変更はしない、詮索をしない、ってルールさ。
     企業人なら、その辺を忘れて欲に走るからな。

     ラヴニカに関わる運び屋はまずほとんどがフリーランスだよ」

866名無しさん:2021/06/28(月) 19:03:50 ID:GrGR9ifo0
( ゙゚_ゞ゚)「まぁ、情報が流れる心配もないもんな。
     内藤財団以外の企業にとっちゃ、結構な問題になるもんなんだな」

夕日が水平線に迫る中。
眼前の地平線に、垂直に聳え立つ人工物の山が見えてくる。

(=゚д゚)「……あれか」

( ゙゚_ゞ゚)「……でけぇ」

イルトリアに続く道にはすでに多くの車が列を成しており、軽い渋滞が起こっているように見えた。
片道三車線の道に合流し、ポットラックは右端の車線に移動した。
すると、車の流れが途端に緩やかな物となった。

从´_ゝ从「イルトリアだと、貨物車優先の車線があるんだ。
      だから渋滞は比較的しにくい。
      合流するところだけだな」

(=゚д゚)「流石に大都市、色々考えてあるラギね。
    タルキールも見習うといいラギ」

从´_ゝ从「だが、この道路の幅が広いのは別に交通の便のためだけじゃないのさ。
     イルトリア軍の戦車なんかが使うから、頑丈に舗装されてるし、幅が広いんだ」

(=゚д゚)「なーるほどね」

目の前に迫るビルに見下ろされながら、トラックの一団はイルトリアへと到着した。

867名無しさん:2021/06/28(月) 19:04:33 ID:GrGR9ifo0
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同日 PM 06:11

イルトリアに続く車のテールライトの列が淀みなく進む中、デレシア一行を乗せたディはバイク用に設けられた車線を走っていた。
軍事都市として名高いイルトリアではあるが、ヨルロッパ地方を巡る旅行客にとっては観光地としても知られている。
街に大挙するフードトラックの群れもそうだが、何より治安の良さが最大の理由だ。
警察組織として軍人が街の治安を維持し、その徹底した治安維持の方法は過激なものになる場合がある。

しかしそれは、ルールを破った場合に限る話だ。
ジュスティアもイルトリアもルールを守らせるという点については同じであり、異なるのはその守らせ方だ。
イルトリアの警告は一度だけで、その警告を無視した場合、実力行使となる。

868名無しさん:2021/06/28(月) 19:07:43 ID:GrGR9ifo0
ζ(゚ー゚*ζ「さぁ、もうすぐよ」

(∪*´ω`)「すっごいワクワクしますお……!」

バイカーたちの間に並んで走る間、ブーンの視線は周囲の光景に注がれ続けている。
紫色の空の中、目の前に広がる眩い街並みと車列の組み合わせは、確かに魅力的だ。
高層ビルが立ち並ぶイルトリアに吸い込まれるようにして、数百の車輌が列を成して進む。
心躍らせているのはヒートも同様だった。

ノパー゚)「こりゃ壮観だな、しかし」

ζ(゚ー゚*ζ「えぇ、黄昏時の空と車列の景色はそう見られないからね。
      でもね、街の中はもっと壮観よ」

(∪*´ω`)「オセアンみたいに大きな街ですおね!!」

ζ(゚ー゚*ζ「そうね、海沿いというのも同じね。
       ジュスティアの時は全然街を見られなかったけど、ここでならゆっくり観光も出来るわ」

正面に見えていた建物を見上げなければならない距離にまで迫ると、ブーンは感動で声を失った。

(∪*´ω`)「わわっ……」

ビルはまるで木々のようにひしめき合いながら聳え立ち、どの建物からも人工の光が溢れている。
頭上に煌めく星々がそのまま地上に落ちてきたかのような輝きに満ちる街。
“武人の都”として知られる軍事都市、イルトリア。

ζ(゚ー゚*ζ「さぁ、イルトリアに到着よ」

869名無しさん:2021/06/28(月) 19:08:46 ID:GrGR9ifo0
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眩いビルの間を駆け抜け、三人の旅人を乗せたバイクがイルトリアに到着した。
ネオンの輝く街には多くの車が行き交い、フードトラックがそこかしこに停まっている。
漂う香りはそのどれもが食欲をそそる物ばかりで、ブーンの尻尾は左右に激しく揺れていた。

(∪*´ω`)「いい匂いがしますお……」

ζ(゚ー゚*ζ「夜とお昼は特に稼ぎ時だからね。
       フードトラックは匂いでお客さんを呼ぶものなの。
       多分、ホールバイトの次に食事については期待していいかもしれないわね」

870名無しさん:2021/06/28(月) 19:09:46 ID:GrGR9ifo0
信号で止まった時に、ヒートが提案をした。

ノパ⊿゚)「まずは飯にするか?」

確かに空腹もいい感じになっている上に、この香りをかげばそう考えるだろう。
そうしたいところだが、まずはやるべきことがあった。

ζ(゚ー゚*ζ「その前に泊まる場所をどうにかしないとね。
       そうじゃないとお酒が飲めないもの」

ノパ⊿゚)「確かにな。 どこかのモーテルか?」

ζ(゚ー゚*ζ「ふふっ、当てがあるのよ。
      だからそのためにも、まずは市長のところに行きましょう」

再び走り出し、街の目抜き通りを西に進む。
二階建ての白い建物が見えてきたとき、ヒートとブーンの二人は同時に反応を示した。

(∪´ω`)「……お」

ノパ⊿゚)「……あれか」

広大な敷地を囲む背の高い鉄柵。
随所に建てられた監視塔。
そして何よりも、その敷地内と外に立つ灰色の迷彩服を着た軍人の放つ雰囲気は、紛れもなく重要な拠点を守る人間のそれだった。

ζ(゚ー゚*ζ「えぇ、市長の邸宅よ」

迷うことなく唯一の車輌の出入り口に向かうと、すぐに四人の軍人に取り囲まれた。
全員がデレシアから適度な距離を保ちつつ、安全装置の解除されたライフルをいつでも構えられるように抱えている。
顔全体を覆う目出し帽を被っているのは表情を悟られないようにするのと同時に、誰が担当者になっているのかを知られないようにするための工夫だ。
階級章の外された迷彩服もまた、素性を隠すという目的があってのもの。

鉄柵の前に立つ男が、一歩前に出た。

(::0::0::)「要件は?」

デレシアはバイザーを上げずに、その質問に答えた。

ζ(゚ー゚*ζ「市長に会いに来たの」

(::0::0::)「アポイントは?」

ζ(゚ー゚*ζ「ないわよ、“立ち寄っただけ”だもの。
      コードDE4862。
      これでいいかしら?」

デレシアがその言葉を口にした瞬間、全員がライフルの銃把から手を放し、直立不動の状態で敬礼をした。
それはまるで、素行の悪い生徒が唯一恐れる教師の逆鱗に触れた時の様に素早い反応だった。

871名無しさん:2021/06/28(月) 19:11:09 ID:GrGR9ifo0
(::0::0::)「大変失礼いたしました。
     どうぞ、お通りください」

重厚な鉄柵が稼働し、中へと案内された。
そこでようやくデレシアはバイザーを上げ、男に笑みを投げかけた。

ζ(゚ー゚*ζ「ご苦労様。 ……随分大人になったわね、キース・バルク」

(::0::0::)「……っ光栄です、デレシア様!!」

芝生の間に設けられた道を通り、ディをライトアップされた建物の前に停める。

ζ(゚ー゚*ζ「地形情報収集状態で待っていてくれる?」

(#゚;;-゚)『かしこまりました』

三人はバイクから降り、ヘルメットをそれぞれの場所にかける。
ヘルメットを外した時、否が応でもブーンの耳が露呈する。
普段はデレシアがさりげなくそれを隠すのが旅の中でのルールだったが、今回はそれをしなかった。
不思議そうな顔でデレシアをヒートが見る。

ζ(゚ー゚*ζ「この街なら大丈夫よ。
      ロウガを見たでしょう?
      イルトリアでは、実力さえあれば容姿なんて関係ないの」

(∪´ω`)「ししょーですかお?」

ζ(゚ー゚*ζ「えぇ、ひょっとしたら会いに来てくれるかもしれないわね」

(∪*´ω`)「やたー」

帽子を被ったブーンの手をヒートとデレシアが握る。
扉に手をかけ、デレシアは少し考え、一歩引いた。
ブーンはそれよりも少し先に動き、最後にヒートも事態を察して一歩後退した。
その直後、扉が勢いよく内側に向けて開いた。

ζ(゚ー゚*ζ「お久しぶり、ミセリ」

ミセ*゚ー゚)リ「お久しぶりです、デレシアさん!!
      ブーン、久しぶり!!」

そこには白いワンピースを着たミセリ・エクスプローラーが立っていた。
そう。
両眼を見開き、両手を開いて、両足で立つ彼女が。

(∪*´ω`)「ミセリ!!」

ミセリの身に起きている異変をまるで気にせず、ブーンはミセリと抱擁を交わした。
以前はブーンよりも身長の低かったミセリも、年相応の背丈となり、ブーンを胸元に抱きしめられるようになっている。

872名無しさん:2021/06/28(月) 19:12:41 ID:GrGR9ifo0
(∪*´ω`)「ぎぅー」

ミセ*゚ー゚)リ「もー!! 会いたかったよー!!」

(∪*´ω`)「ぼくもー!!」

年の近い姉弟、あるいは親友のように二人は再会を喜び合っている。

ノパ⊿゚)「……強化外骨格か?」

小さな声でデレシアに向けて呟いたヒートの言葉を、彼女は首肯しつつ、その答えを口にした。

ζ(゚ー゚*ζ「“バイセンテニアル・マン”ね。
       欠損した部位を補うことを目的にした福祉目的の強化外骨格よ」

軍事用の強化外骨格が大量に生み出される中、その技術を戦闘以外の目的に転化したものの最たる例がこれだ。
使用者の体格に合わせて自動で調節される四肢、そして視覚と聴覚の補助。
一度使用すれば再利用が出来ない反面、使用者の成長に合わせて最適化し続けるという特徴がある。
バッテリーがない代わりに、人体が発する微量な電気などを利用するため、人体との接続が必須となるものだ。

現存する物はほとんどないが、稀に未使用の物が発見されるか復元されることがある。

ミセ*゚ー゚)リ「お父さんもブーン達に会いたがってたの!!」

そう言ってブーンを抱きしめたまま、ミセリは振り返った。
そこには獅子の鬣のような髪をした、筋骨隆々とした壮年の偉丈夫が現れていた。
ポロシャツの下に見える浅黒い肌には無数の傷が刻まれ、服を押し上げるほどの筋肉が物理的な力を物語っている。

ミ,,゚Д゚彡「よう、お前がブーンか」

ずい、とブーンの前に歩み出たのはフサ・エクスプローラ。
“戦争王”の渾名で恐れられる、イルトリアの市長。
世界最強の市長、その人だ。
だがブーンはエメラルドグリーンの鋭い眼光を前にしても、まるで怯むことなく対応して見せた。

軍人ならば知らぬ者のいない猛者である彼の視線や雰囲気でさえ、ブーンには慣れた物なのだ。

(∪´ω`)「お、そうですお」

ミ,,^Д^彡「娘を助けてくれたようで、礼を言いたかったんだ。
      ありがとうな、ブーン。
      俺はフサ、フサ・エクスプローラだ」

屈んで差し出された右手を、ブーンは自然と握り返していた。

ミ,,゚Д゚彡「……いい手だ、苦労を知る割りに、暴力を知らない手だな」

ブーンの手を両手で握り、フサは満足げに頷いた。
それは子供に対して向ける視線ではなく、戦友、あるいは尊敬する一人の人間に対して向ける眼差しだった。
それからデレシアを見て、彼は笑みを浮かべた。

873名無しさん:2021/06/28(月) 19:13:03 ID:GrGR9ifo0
ミ,,゚Д゚彡「久しぶりだな、デレシア。
     元気だったか?」

ζ(゚ー゚*ζ「お陰様で。
      貴方も相変わらずね、フサ。
      奥さんは元気かしら」

ミ,,゚Д゚彡「あぁ、元気だよ。
     今丁度晩飯の支度をしていてな、さ、入ってくれ」

ミセ*゚ー゚)リ「行こっ、ブーン!!」

(∪*´ω`)「お!!」

子供二人は手をつないで建物の奥へと走り出し、残された大人たちはそれを笑顔で見送りながら後へと続いた。
建物の中には美術品の類はなく、下に敷かれている毛足の長い灰色の絨毯と暖色系の照明が厳かな雰囲気を作り出している。
最低限の調度品は市長の品格をそのまま反映している様だ。

ミ,,゚Д゚彡「そっちのお嬢さんの話も聞いているよ、よろしく」

ノパ⊿゚)「あぁ、よろしく。
     ヒート・オロラ・レッドウィング、ヒートでいい」

三人は立ち止まり、ヒートとフサのどちらともなく右手を差し出して握手を交わした。

ミ,,゚Д゚彡「あの“レオン”が、こんなに若い女だとはな。
     デレシアの友人なら、あんたは俺にとっての大切な客人だ。
     俺のことはフサでいい」

ノパー゚)「そりゃどうも、フサ」

ミ,,゚Д゚彡「……さて、色々と話は聞いている。
     随分と面倒なことになっているな」

フサはその場で立ち止まり、話を始めた。
デレシアは小さな溜息と共に答える。

ζ(゚、゚*ζ「ほんと、いい迷惑よ。
      どう、フサの方でも何か情報はある?」

ミ,,゚Д゚彡「あぁ、俺が毎年ボコボコにしてる女がいるんだが、そいつも組織の一味だな。
      それと、ヴィンスとセントラスに内藤財団の介入が決定した。
      主要な街にはほぼ奴らが介入したことになるな」

ζ(゚、゚*ζ「その後の動きが分からないのだけど、ラヴニカはどう?」

ミ,,゚Д゚彡「ほぼ確定だな。
     何せ生き残ったギルドマスターが少なすぎる。
     連中の動きが最近になって活発化してるのが気になるが、あんたの影響か?」

874名無しさん:2021/06/28(月) 19:13:45 ID:GrGR9ifo0
ζ(゚、゚*ζ「いいえ、水面下で進めて、それが表面化してきたのね。
      内藤財団なんていうものが経済の中核に居座っても、私は特に気にしなかったわ」

内藤財団の設立は古く、また、その目的が統一国家の設立であることを見抜くのは不可能だった。
彼らは極めて計算高く、そして執念深く、静かに計画を進めていたのである。
これまでデレシアが知る限り、彼らの手段は啓蒙活動に近い物があったが、今回の場合はより効果のある経済の面からの統一だった。
世界中に根を張り巡らせ、養分を得て、機を窺い続けていたのだ。

費やした時間と労力は途方もないものがあるが、何よりも、そのアプローチがこれまでにないものだったことが、デレシアの中で気になっている点だった。
彼らは学習をしている。
これまでの失敗を、デレシアに潰されてきた夢を分析し、今回に活かしてきた。
極めて長期的な計画であり、気づいた時にはもはや止めることは不可能に近い状態にある。

ミ,,゚Д゚彡「隠れ蓑にするにゃ、最適だったってことだな。
      オアシズ、ニクラメンの件を聞いて確信したよ。
      連中、そろそろ本命の動きを見せてくる」

ζ(゚、゚*ζ「えぇ、そうでしょうね。
      奴らはニューソクを集めているみたいだったんだけど、その辺りの心当たりはある?」

複数の街で彼らはニューソクと呼ばれる物を回収していた。
セントラスにもニューソクはあるが、恐らく、それ以外の目的もあって介入を決めたのだろう。
世界最大の宗教の総本山となると、その影響力は計り知れない。

ミ,,゚Д゚彡「うちの街にもニューソクはあるが、特にないな。
     発電装置なんか集めてどうするつもりなんだ」

ζ(゚、゚*ζ「考えられるのは二つね。
      一つはエネルギーを必要とする何かを動かすため。
      もう一つはエネルギーの流れを牛耳りたいから、ね」

ミ,,゚Д゚彡「なら前者だな。
     発電設備を持っている街にとっちゃ、ニューソクなんて無用の長物だ」

ζ(゚、゚*ζ「何か心当たりは?」

ミ,,゚Д゚彡「あんたにないのに、俺にあるはずがねぇよ。
     ともあれ、ニクラメンで報告を受けてからニョルロック方面に兵を出してる。
     異変があればすぐに報告が来るようにしてある」

ζ(゚ー゚*ζ「流石ね、フサ」

ミ,,゚Д゚彡「なぁに、約束は守るさ」

ノパ⊿゚)「随分詳しいんだな」

ミ,,゚Д゚彡「あぁ、イルトリアの市長は代々――といってもある事件以降だが――連中の存在を引き継いでいるからな。
      名前や目的を知ったのはデレシアがきっかけだけどな」

875名無しさん:2021/06/28(月) 19:14:48 ID:GrGR9ifo0
ζ(゚ー゚*ζ「“デイジー紛争”よ。
       ペニーがジュスティアとティンカーベルでやりあった時ね」

ノハ;゚⊿゚)「その時にはもうあったのか」

ζ(゚ー゚*ζ「えぇ、むしろデイジー紛争も奴らの差し金だったのよね。
      これはジュスティアも知っている事実よ」

ミ,,゚Д゚彡「連中はどうだが知らんが、ウチは備えている。
      ま、フォックスのことだから大丈夫だろうさ。
      この話はここでしまいにして、飯にしよう。
      嫁の飯はイルトリアで一番美味いんだ」

フサに案内され、二人は食堂へと向かった。
近づくにつれ漂ってくる得も言われぬ香りに、ヒートの頬が緩む。
焼けたチーズの香り中に含まれた仄かな甘い香りと、胡椒の気配。

ノパー゚)「すっげぇいい匂いだな」

ミ,,゚Д゚彡「今日はデレシア達が来ると思ってな、得意料理を振る舞ってもらうことにしたんだ。
     イモのグラタンだ。
     スライスしたイモとチーズを重ねただけなんだがな、これが美味くて白ワインによく合う」

食堂には小さなテーブルが8つ並び、それぞれに6人が座れるようになっている。
どの席も人で埋まっていたが、帽子を取ったブーンとミセリの席にはまだ空が4つあった。
席に座るのは性別も人種もバラバラだが、皆一様に洋上迷彩を身にまとい、しっかりとした体つきをしているという共通点がある。
紛れもなく軍人である。

ノパー゚)「まさに飯時だったんだな」

ミ,,゚Д゚彡「ちとむさ苦しいかもしれんが、そこは我慢してくれ。
     訓練を終えたやつらにしっかりと飯を食わせるのが、俺の軍の習わしなんだ」

ノパー゚)「賑やかな食卓も悪くないからな、気にならないさ」

ブーン達の席の前に、白いエプロンをした若い女性が立ち、ブーンとミセリに微笑みを向けている。
栗毛色の肩にかからない程のショートカットの髪。
透き通った空色の目は目尻が垂れ下がり、優しげな印象を与える。
頭に見えるのは、先の丸い獣の耳。

臀部のあたりから見えているのは、柔らかそうな毛に覆われた尻尾だ。

ィ∩ハリ∩,
从´ヮ`从ト「あっ、やっと来た」

ζ(゚ー゚*ζ「チハル、久しぶり。
      元気そうね」

876名無しさん:2021/06/28(月) 19:15:49 ID:GrGR9ifo0
ィ∩ハリ∩,
从´ヮ`从ト「お久しぶりですね、デレシア。
       お陰様で元気してますよ。
       そちらのお姉さんがヒートさんですかね。
       ブーン君からお話を聞いていたところなんですよ」

ノパ⊿゚)「おっ、何て紹介したんだ?」

ドレッシングのかかったサラダを頬張っていたブーンは飲み込むと、少しだけ気恥ずかしそうに答えた。

(∪*´ω`)「優しくてかっこいい人だって言いましたお」

ノパー゚)「嬉しい事言ってくれるなぁ、ブーンは」

ィ∩ハリ∩,
从´ヮ`从ト「私はチハル・ランバージャック。
      ミセリの母です。
      娘がお世話になりました」

ノパー゚)「いや、あたしは何もしてないよ。
    あの時頑張ったのは間違いなくブーンだよ」

ィ∩ハリ∩,
从´ヮ`从ト「そんなブーン君を育てたのですから、ヒートさんにお世話になったのに変わりはありませんよ。
      大した料理ではありませんが、ぜひ冷めない内にお食べください」

ノパー゚)「あぁ、せっかくだからいただくよ」

ζ(゚ー゚*ζ「冷めない内に食べましょ」

ミ,,゚Д゚彡「よっしゃ、飯だ!!」

三人は席に着き、配膳されたグラタンとトマトのコンソメ―スープ、ボウルに盛られたサラダ、そして硬めのパンの夕食を始めた。
確かに豪勢な夕食とは言えないが、その味は贅沢な味がした。
ジャガイモを薄くスライスしたものが複数の層になり、間に挟まれた生クリームと一体となったチーズと胡椒の生み出す味は、旨味の結晶体と化している。
塩気とチーズの甘味が合わさった味は、疲れた体に適度な塩分と満足感を与えてくれた。

興味深いのはその食感だ。
薄切りにされているが、幾重にも重なったことによって食感は損なわれるどころか向上さえしている。
絶妙な火加減によって上部と下部は柔らかく、中心部には歯応えが残されている。
最上部にある焦げ目のついたチーズが若干の苦みと香ばしさを与え、一品の料理にも関わらず、複数の料理を一度に口にしているかのような贅沢さが口に広がる。

グラスに注がれた白ワインを口にすると、その香りに鮮やかさが加わる。
程よく冷やされたワインの絶妙な酸味が後味をすっきりとしたものにする。

ノパー゚)「ん!! これ美味いな!!」

パンに乗せて口に運びかけていたブーンが嬉々として賛同する。

(∪*´ω`)「ですおね!! すっごい美味しいですお!!」

877名無しさん:2021/06/28(月) 19:16:20 ID:GrGR9ifo0
ζ(゚ー゚*ζ「前よりも腕を上げたんじゃない、チハル」

ィ∩ハリ∩,
从´ヮ`从ト「ふふん、ちょっとホールバイトに潜入した時に料理の勉強したんですよ」

ζ(゚ー゚*ζ「それはいい練習になったわね」

クルトンの浮くコンソメ―スープを一口飲むと、ヒートが唸った。

ノパー゚)「スープも美味い。
    コンソメも違うけど、やっぱりトマトの旨味か?」

ィ∩ハリ∩,
从´ヮ`从ト「ふふん、コンソメとトマトは相性がいいんですよ。
      おかわりもありますから、どんどん食べてくださいね」

チハルも食事を始め、それから1時間もすると、用意された食事は余すことなく食堂にいた人間達の胃袋に収められた。
迷彩服の軍人たちはチハルの元に来て敬礼と共に感謝の言葉を口にし、それから食器を片付け、あるいは机の掃除を始めた。

(∪*´ω`)「ふぃー、ごちそうさまでしたおー」

ノパー゚)「お世辞抜きに美味かったよ」

ィ∩ハリ∩,
从´ヮ`从ト「へへん、そうでしょうそうでしょう」

胸を張って得意げな顔を浮かべるチハルの表情は少女そのものだ。
しかし、耳付きである彼女の実年齢とその見かけは一致しているわけではない。
二十代前半の若々しい姿だが、その実、フサと歳の差はほとんどない。

ミ,,゚Д゚彡「さて、この後はどうする予定なんだ?」

ζ(゚ー゚*ζ「ひとまず宿を探そうと思っているんだけど、いい所知らないかしら?」

ミ,,゚Д゚彡「バイクが停められて、安全で、ってなると基地の居住区が一番だな。
     ゲスト用のコテージがあるから、そこを使うか?」

ζ(゚ー゚*ζ「そうさせてもらおうかしら」

ミ,,゚Д゚彡「遠慮なく使ってくれ。
     そこまでの案内を……おい、シャキン、頼めるか?」

声をかけられたのは、クルーカットにした白髪の男だった。
振り返った男の顔には深い皺が幾つも刻まれ、肌は日に焼けてチョコレート色になっている。
フサよりも年上のその男は、無表情ではあったが、不愛想ではなかった。
僅かに口の端を動かして笑みを浮かべると、低い声で答えた。

(`・ω・´)「えぇ、勿論」

だがその男の顔を見た時、ヒートが狼狽した風な声を上げた。

878名無しさん:2021/06/28(月) 19:16:42 ID:GrGR9ifo0
ノハ;゚⊿゚)「え……」

(`・ω・´)「……ほぅ、オセアンで会った女か。
      まだ生きているとは、大したものだな」

ノハ;゚⊿゚)「じいさん、あんたこんなとこで何してんだ?」

ミ,,゚Д゚彡「何だ、知り合いなのか?」

(`・ω・´)「以前、気まぐれで戦い方を教えたことがあるぐらいです。
     まさかここで会うことになるとは」

ζ(゚ー゚*ζ「へぇ、シャキンが人に教えるなんて珍しいわね。
      でも合点がいったわ。
      ヒートの戦い方、確かにシャキンっぽいもの」

ノハ;゚⊿゚)「確かにイルトリアの人間ってのは聞いてたけどさ、じいさん、軍人だったのか」

(`・ω・´)「ははっ、そこまで驚かれるとはな。
      この歳でも、まだ軍人だよ」

その人物こそ、イルトリア二将軍の一人。
“右の大斧”の異名を持つ老練の海軍大将。

(`・ω・´)「海軍大将のシャキン・ラルフローレンだ、よろしく」

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879名無しさん:2021/06/28(月) 19:18:07 ID:GrGR9ifo0
同日 PM08:57

夜の九時が近いというのに、イルトリアにあるセントラルパーク公園は大勢の人で賑わっていた。
フードトラックの明かりが公園に列を作り、人々が並び、食事と酒を楽しむ様子はまるで祭りの様だ。

(=゚д゚)「いや、何食ってもうめぇラギな!!」

( ゙゚_ゞ゚)「この酒も美味いし、いや、恐れ入ったよ」

从´_ゝ从「はははっ、気に入ってくれたなら何よりだよ!!」

運び屋としてイルトリアに荷を下ろしたトラック運転手とトラギコたちは、芝生の上に敷いたシートの上でささやかな宴会を開いていた。
ポットラック達が勧める食事と酒に舌鼓を打ち、長かった旅を振り返っていた。
半月ほど一緒に旅をすれば、流石に生まれる感情というものもある。
彼らトラック運転手たちは翌日には出発し、新たな荷を運びに行かなければならないため、今夜が彼らにとって最後の夜になる。

( ゙゚_ゞ゚)「思ってたよりも自由な街なんだな、イルトリアって」

(,,゚,_ア゚)「だろ? イメージはお堅いが、来てみりゃなんてことないのさ。
     だけどな、よーく見てみな。
     公園にゴミが落ちてないだろ?」

( ゙゚_ゞ゚)「言われてみれば確かにな」

(,,゚,_ア゚)「ゴミの放置は結構な罰則があってな、うっかり破れば大変なことになるのさ」

从´_ゝ从「まぁルールさえ守ればいい観光地なんだけどな。
     その辺はジュスティアも同じだな」

ポットラックは巨大な紙コップに注がれたビールを呷り、げっぷと溜息を同時に吐いた。
串にささった豚肉を頬張り、トラギコもビールを呷る。

(=゚д゚)「げふっ、確かにな。
    そういや、イルトリアは検問をしないラギね」

从´_ゝ从「基本的にはスルーされるけど、まぁ、それで生き延びた犯罪者は聞いたことがないな」

(=゚д゚)「治安維持はいいってわけラギね」

ジュスティアは法律と警察によって治安の維持を行うが、イルトリアの治安維持組織は軍隊だ。
軍人は警官と違って容赦がない。
特に、イルトリアの軍人ともなれば犯罪者は悪夢を見ることだろう。
噂話でトラギコが聞いたところによれば、街の中に入り込んだ逃亡犯は軍人の訓練がてら捕らえられる、あるいは殺されるとのことだ。

( ゙゚_ゞ゚)「……ふーん」

果たしてオサムがこの街でどのような立場にいるのか、トラギコには分からないことだ。
彼が殺し屋として名を馳せ、その延長線上でイルトリアに危険視されているのであれば、捕まっても仕方がない。

( ゙゚_ゞ゚)「そういや、俺たちの宿って決めたのか?」

880名無しさん:2021/06/28(月) 19:19:24 ID:GrGR9ifo0
(=゚д゚)「あ? 何言ってるラギ?
    これから安い所とバイト先を探すラギよ」

( ゙゚_ゞ゚)「お前こそ何言ってんだ。
     金はまだあるんだろ?」

(=゚д゚)「何日ここに残るか分からない以上、金が必要ラギ。
    手前の食い扶持は手前で稼ぐラギ」

(;゙゚_ゞ゚)「おいおい、随分と乱暴だな」

(=゚д゚)「仕方ねぇラギ。
    たまにゃ働くのも悪くないラギよ」

情報収集をするには街の中に溶け込むのが一番だ。
いつこの街に到着するかも分からないデレシア一行を見つけるならば、長期戦を予想したほうがいい。

从´_ゝ从「泊まるならいい場所を知ってるが、バイト先は知らねぇな。
      でもあんたらぐらいの腕があれば、どっかのバーで用心棒として雇ってもらえるかもしれないな」

(=゚д゚)「泊まる場所だけ聞くことにするラギよ」

从´_ゝ从「タルコフストリートにある“レモナーダ”ってバーだ。
     あんまり知られてないけど、あそこの上はモーテルになってるのさ」

それからトラギコたちは旅を振り返り、笑い話を続けた。
そして一時間ほどが経過すると、公園から次第に人が姿を消していく。
フードトラックの明かりも減り、夜が深まったことを実感する。

(=゚д゚)「それじゃ、俺たちはもう行くラギ」

( ゙゚_ゞ゚)「元気でな」

从´_ゝ从「……あぁ、じゃあな。
     あんたらも元気でな」

右手を差し出したポットラックの手をトラギコが握り、そのまま軽く抱擁を交わす。
オサムも同様に握手と抱擁を交わした。

(=゚д゚)「楽しかったラギよ」

( ゙゚_ゞ゚)「じゃあな」

感傷はなかった。
道中で会い、ヒッチハイクに成功し、いくつかの修羅場を共にしたというだけの関係だ。
別れは必ず訪れることを知っていた二人は、涙も別れを惜しむ言葉も口にすることはしない。
しかし、もしポットラックに何かがあれば、二人は無条件で手助けをする覚悟があった。

二人は食事で出たごみをゴミ箱に捨て、イルトリアの街を歩き始めた。
街の明かりは若干落ち着いているが、道路を走る車の数も眩いネオンの明かりも、依然として煌々と灯っている。

881名無しさん:2021/06/28(月) 19:20:33 ID:GrGR9ifo0
(=゚д゚)「お前、何かイルトリア人に恨みを買うことした記憶あるラギか?」

( ゙゚_ゞ゚)「どうだろうな。
    お前は今までに捕まえた犯罪者の出自を、いちいち覚えてるのか?」

(=゚д゚)「やなこと言うラギね。
    とりあえず、トラブルになるようだったら俺はお前を見捨てるラギよ」

( ゙゚_ゞ゚)「そりゃ俺のセリフだ。
    デレシアを見つけるまでの関係だからな」

オサムの言う通りだった。
二人の関係はデレシアを見つけるまでの協力関係でしかない。
どちらかにとって不要と断じることになれば、捨てるのは当然のことだ。
デレシアの関連した事件の貴重な生き証人だが、この際、オサムを切り捨てたとしても仕方がないというのがトラギコの考えだった。

(=゚д゚)「見つけたらどうするつもりラギ?」

( ゙゚_ゞ゚)「んなもん決まってるだろ、告白するんだよ」

(=゚д゚)「……は?」

( ゙゚_ゞ゚)「俺はあいつに一目惚れしたんだ。
     強い女だ、惚れ甲斐があるってもんだ」

(=゚д゚)「頭の中を一度医者に診てもらうことを勧めるラギ」

( ゙゚_ゞ゚)「美人で強い女だ、嫌いな男なんているもんかよ」

(=゚д゚)「ま、好きにしてくれラギ」

標識を頼りに通りを進み、店名の書かれた大小様々な看板に目を向ける。
レモナーダという文字を見つけた時、時刻は十時半に迫っていた。
木製の扉を押し開くと、そこには薄暗い空間が広がっていた。
カウンター式のバーには客が二人、そしてバーテンダーが一人いる。

バーテンダーは長い金髪を後ろで束ねた三十ほどの女だった。
女はグラスを磨きながら、今まさに店に入ってきた二人に視線と笑顔を向け、静かに言った。

|゚ノ ^∀^)「いらっしゃい」

(=゚д゚)「ここでモーテルをやってるって聞いたラギ」

|゚ノ ^∀^)「えぇ、やっていますよ。
      でもその前に、一杯飲みませんか?」

(=゚д゚)「そうしたいんだが、あんまり金がないラギよ」

|゚ノ ^∀^)「私の奢りです。
      こうしてこの店で会えたのも何かの縁ですから」

882名無しさん:2021/06/28(月) 19:21:53 ID:GrGR9ifo0
( ゙゚_ゞ゚)「じゃあウィスキーをストレートで頼む、銘柄は任せる」

(=゚д゚)「手前は少し遠慮するラギ」

|゚ノ ^∀^)「ふふっ、立ち話もなんですから、どうぞこちらへ」

言われた通りに二人はカウンター席に着き、自然と出されたおしぼりで手を拭いた。

(=゚д゚)「じゃあ俺は何か軽めのカクテルを頼むラギ」

( ゙゚_ゞ゚)「へぇ、あんたもカクテルなんて洒落たもん飲むんだな」

(=゚д゚)「深酒したら明日起きれないラギよ」

( ゙゚_ゞ゚)「お前が起こしてくれるって知ってるからな、大丈夫だ」

(=゚д゚)「絶対に起こさねぇラギ。
    久しぶりのちゃんとしたベッドで寝られるんだ、何で寝起きに不愉快にならなきゃならないラギ」

|゚ノ ^∀^)「じゃあまず、そちらのお兄さんに。
      ジェイムソンのストレートです」

オサムの前に置かれたグラスに、バーテンダーはボトルからダブルの量を注ぐ。
僅かに波打つ琥珀色の液体に、オサムは口を噤んだ。

( ゙゚_ゞ゚)「俺の大好きな銘柄だ」

|゚ノ ^∀^)「それは良かった」

(=゚д゚)「凄いラギね」

|゚ノ ^∀^)「ふふっ、さて、そちらの傷のあるお兄さんは……
      ジン・フィズはいかがですか?」

トラギコは一瞬言葉を失いかけ、そして、バーテンダーに対して興味を抱いた。

(=゚д゚)「驚いた、俺の好きなやつラギ。
    ……なぁ、バーテンさん、質問してもいいラギか?」

|゚ノ ^∀^)「はい、どうぞ」

(=゚д゚)「あんた、俺たちを知ってるラギね?」

その言葉に、バーテンダーは意外な反応を示した。
オサムは気にせずジェイムソンを飲んでいるように見えるが、その実、グラス越しに女のことを油断なく見ていた。

|゚ノ ^∀^)「どうしてそう思うんですか?」

883名無しさん:2021/06/28(月) 19:23:22 ID:GrGR9ifo0
(=゚д゚)「こいつの好みを当てたのが仮に偶然だとして、俺の好きなカクテルを当てたのは偶然じゃないラギ。
    俺はこれまでに3度しかこれを飲んだことがないラギ。
    しかも、イルトリアとは別の場所ラギ」

|゚ノ ^∀^)「ふふっ、ちょっと悪戯が過ぎましたね。
      えぇ、我々はあなた方をよく存じ上げておりますよ。
      “虎”と“葬儀屋”の組み合わせなんて、それはもう目立ちますから」

(=゚д゚)「あんた、何者ラギ?」

|゚ノ ^∀^)「初めまして、私、レモナ・クランクアップといいます。
      以後、お見知りおきを」

( ゙゚_ゞ゚)「おう、よろしく」

(=゚д゚)「ってことは、イルトリアに来た時から目をつけられてたのか」

|゚ノ ^∀^)「いいえ、その前からです。
      “ハイエナ”との戦闘、お見事でしたね。
      普通なら逃げ出すところですよ」

(=゚д゚)「見てたのか」

|゚ノ ^∀^)「私ではありませんが、話に聞いております。
      届けていただいた荷物は非常に大切な物だったので、ぜひお礼を言いたかったのです」

(=゚д゚)「俺たちの素性まで調べ上げるってことは、感謝以外にも警戒の意味があるんだろ?
    本音は何ラギ?」

|゚ノ ^∀^)「本音、ですか。
      それは私の口からは申し上げられません」

(=゚д゚)「へっ、そうだろうよ」

次の瞬間、トラギコは背筋に氷でできた剣を突き付けられた心地がした。
一瞬で命の危険を感じ取ったが、すでに彼の行動が手遅れだということまでも理解してしまった。
全ては一瞬。
オサムでさえも、衝撃を表情に出してしまっている。

( ФωФ)「本音を知りたいか、刑事」

同じカウンター席に座っていたのも忘れてしまうほどに気配を消していたのは、黄金瞳を持つ六十代後半の男だった。
瞼の上から負った深い爪痕のような傷、歳を感じさせつつも、一切の威厳を失わない存在感。
先ほどまでの気配の薄さは完全に失われ、今、目の前にいるのが肉食獣の類であることをトラギコは本能で察する。
そしてその気配、その姿はトラギコの記憶の中に焼き付いていた。

(;=゚д゚)「あんた、どっかで見たことあるラギ……
    オアシズだ、オアシズで見たことあるラギ!!」

884名無しさん:2021/06/28(月) 19:23:53 ID:GrGR9ifo0
( ФωФ)「流石だな、刑事。
       その観察眼、流石はモスカウの人間だ」

(=゚д゚)「お世辞はいらないラギ。
    何で俺を監視してたラギ?」

( ФωФ)「はははっ、威勢が良いな。
       いいだろう、本音を教えてやる。
       お前に一度会ってみたかったのだよ、“虎”と呼ばれる刑事に」

(=゚д゚)「イルトリア向けにPRした記憶はないラギよ」

( ФωФ)「だからこそだ。
       “CAL21号事件”以降、我々の諜報部はお前をジュスティアの中でも優先度の高い監視対象に設定した。
       ジュスティア警察の人間でありながら、警官らしからぬお前の動きは予測がつかないからな。
       我々の脅威となりうるかもしれないという名目の元、お前を監視させていたのだよ」

(=゚д゚)「ってことは、あんたは結構な役職にいるって事ラギね。
    どこぞの軍属の人間ラギか?」

( ФωФ)「ロマネスク・O・スモークジャンパー、“ビーストマスター”と言えば分かるか?」

その名前は勿論だが、異名も合わせれば、知らないはずがなかった。
ジュスティア警察、あるいは群に属する人間であれば嫌でも覚えさせられる名前である。
前イルトリア市長が残したジュスティア軍への傷跡は、決して秘匿しきれるものではない。
渾名は彼が率いた耳付きの精鋭部隊に所以し、その実力と成果を知らない軍人はいない。

(=゚д゚)「こんなところで前市長に会えるとは思ってなかったラギ」

( ФωФ)「本題に入ろう。
       何をしに来た?」

(=゚д゚)「安心しろ、あんたらの街で捕り物をするつもりはないラギ。
    今のところはな」

( ФωФ)「一緒にいる殺し屋はなんだ?」

(=゚д゚)「ごく潰しラギ」

( ゙゚_ゞ゚)「おい、誰がごく潰しだって?
    俺は――」

( ФωФ)「ビルから落ちて生き延びた殺し屋だろう?
       運がよかったな」

( ゙゚_ゞ゚)「……ちっ」

流石に力量の差を見抜き、己を抑え込むだけの理性がオサムには備わっている様だった。

( ФωФ)「大方、人探しだろう?」

885名無しさん:2021/06/28(月) 19:24:13 ID:GrGR9ifo0
(=゚д゚)「だとしたら?」

( ФωФ)「一つだけ警告をしてやろう。
       ここで死なれてもつまらないからな。
       深入りはするな、今はな」

それが何を意味しているのか、トラギコには凡そのことでしか推測できなかった。
デレシアのことを言っているのか、それともティンバーランドの事を言っているのか。
それは全て想像でしか処理が出来ない言い回しだった。

(=゚д゚)「嫌だと言ったら?」

( ФωФ)「警告だと言っただろう?
       それ以上は自分で考えるんだな」

|゚ノ ^∀^)「さぁ、お話はその辺にしてお酒をお楽しみください。
      薬なんて一切入れていませんから」

(=゚д゚)「この状況で飲めってか」

( ゙゚_ゞ゚)「もう一杯ぐらい奢ってくれないか?
     今の話で味が分からなくなっちまった」

オサムの言葉に、トラギコは深い溜息を吐いた。
既に彼らはイルトリアの中にいるのだ。
ここでどのような抵抗をしようとも、最早逃げ切るのは不可能。
ならば、どこまで踊ることが出来るのか、それを試す以外に彼らに出来ることは無い。

カクテルグラスを掴み、一気に中身を飲み干す。

(=゚д゚)「……俺も、酒が蒸発しちまったラギ」

|゚ノ ^∀^)「では、同じのをもう一杯でよろしいですか?」

トラギコにとってイルトリアで初めて過ごす夜は彼の想像以上に過激なものになったが、決して無意味なものではなくなった。
少なくとも、イルトリアの元最高権力者との接触に成功しただけでも収穫だった。
デレシアがこの街にすでに来ている、あるいは来る可能性が高いということも、ロマネスクの発言から推測が出来た。
後はただ、彼女を見つけ次第今後の行動を遠目に監視しつつ、ティンバーランドの動きに注意するだけである。

( ФωФ)「ところで、個人的な質問をいいか?」

(=゚д゚)「何ラギ?」

( ФωФ)「お前のような一匹狼が、何故警察をやっているのだ?」

幾度も尋ねられ、答えてきた質問。
恐らく、ロマネスクはその答えをトラギコの口から直接聞きたいがために、その質問をしたのだろう。
意地の悪い笑顔を浮かべ、トラギコはかつて世界最強だった市長に向けて、いつもと変わらない口調で答えたのであった。

(=゚д゚)「これが俺の天職なんだよ」

886名無しさん:2021/06/28(月) 19:25:51 ID:VZiyChZI0
おっ

887名無しさん:2021/06/28(月) 19:25:57 ID:GrGR9ifo0
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Ammo→Re!!のようです
                                   Ammo for Remnant!!編
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:::::::::::/l:::::://.::::∠三ニミ/〃:/ }:} /.::/ 〃.:::::;ィ::/ /.://.::∠三7.:://.:::::/ :|::::::/
::::::::/ィ|::::〃.:/     /.::/ニニ/.:://'.::::::/// イ::〃/_/_/.://.:::::/. : :}:::/
::: /  |::::::/^ー― --,'∠..___  }:://.:::/ /'/ !::/  ,..ィ,/.://.:;ィチ}: : :,':/
:;イ  |:::/ft====={'ェェェェミ、ヽ.}〃/  / ,ィェ|/ -t''´’ノ.::〃.;</ /ヽ:/'´.: :
 |  {/  ゙ミヽ    廴_i!ノ,ィ ` }::/   ,ハ ^ミtl'    ̄/.::; イ / /
 |  '   ヾtニニ====彡'   ,'/     |::{    `ー=ニ// ,'/ /
 |                      |::{         ´  ,'´,厶
                           |:ム          /イ
ヽ{ ===三三三ニ===-             |ニム        /
\'.                          |三ム     /
  '==三三三ニ===-       __  ノニア'’    /
   '.                 ∠三三ヲニ/       /
第十章【Ammo for Remnant!!-断片の銃弾-】 了
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888名無しさん:2021/06/28(月) 19:28:26 ID:GrGR9ifo0
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我らの歩みは根を張るような速度だ。
しかし、その歩みは根を張るように深く、強く、そして広い。
根の一つを失ったとしても我らの歩みは止まることは無い。
そう。

全ては、世界が大樹となる為に。

                                ――とある遺跡で発見された文献より

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September 20th AM08:17

ニョルロックには1日に100本以上の列車が到着し、一度に数千人単位の乗り降りがある。
遠方から来た列車が到着し、長旅を終えた人間が一斉に巨大な駅のホームからニョルロックの街へと繰り出していく。
ニョルロックのほぼ中心にある駅は商業施設の入ったビルと一体化され、駅から降りた人間がすぐに買い物に行けるように設計されている。
街の中を走る地下鉄もその駅に入っており、正にニョルロックを走る列車にとっては心臓そのものだ。

(-@∀@)「迷路みたいですね、こりゃあ」

列車から降りてきたばかりのアサピー・ポストマンは、目の前に広がる巨大な空間と縦横無尽に走る階段や渡り廊下を見て、心からの感想を口にした。
ニダー・スベヌは荷物の入ったキャリーバッグの上に腰かけ、落ち着き払った態度でそれに答えた。

<ヽ`∀´>「初見で迷わない人はいないニダよ」

(-@∀@)「でしょうねー」

l从・∀・ノ!リ人「……うー」

アサピーの服の裾をつまんだまま、イモジャ・スコッチグレインは何か言いたげに唸り声をあげた。
カントリーデンバー

<ヽ`∀´>「イモジャはどうするニダ?
      勿論、駅の外までは連れていくニダよ」

l从・∀・ノ!リ人「えっと、一緒にハハジャのところまで送ってほしいのじゃ……」

<ヽ`∀´>「うーん、場所によるニダね。
      なんていう建物ニダ?」

l从・∀・ノ!リ人「フィンガーファイブって会社なのじゃ、それしか知らないのじゃ……」

ニダーとアサピーは顔を見合わせ、頷いた。

<ヽ`∀´>「いいニダよ」

889名無しさん:2021/06/28(月) 19:28:47 ID:GrGR9ifo0
(-@∀@)「乗り掛かった舟ですからね、一緒に行きましょう!!」

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                脚本・監督・総指揮・原案【ID:KrI9Lnn70】

     総合プロデューサー・アソシエイトプロデューサー・制作担当【ID:KrI9Lnn70】

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同日 某時刻

ニョルロックの街には飲食店は勿論、衣類、医療、娯楽、ありとあらゆるものが揃っている。
経済活動の中心地であるが故に、その出店数は世界最大だ。
新作の商品の売れ行きを確認するために、世界で最も早く新作が発表されるのも、ニョルロックを置いて他にはない。
試作段階のものは当然ながら、ラヴニカだが、そこで製品化が決定した物がニョルロックに来るのである。

世界中から絶えずビジネスマンたちが訪れるため、長期から短期の滞在が可能なホテルが至る所に存在する。
そのホテルで提供されるアメニティや食事もまた、この街に出店をしている企業の新商品であることは決して珍しくない。
その中にある中流ホテルの最上階にある一室を、その日から長期の滞在で利用する男がいた。
ホテルの人間は彼がビジネスでこの街に来たのではないと見抜いていたが、その目的までは分からなかった。

観光客にしては荷物が少なすぎるが、ホテルには時折そうした目的不明の客が来ることがある。
そのため、ホテルの誰もが男の存在に対して大した疑問を抱くことは無かった。
男は寡黙で、そして礼儀正しかった。
チェックイン後、男は部屋の中に持ち込んだ荷物を広げ、窓の下に広がる光景を眺めた。

それからすぐに、街で一番の高層ビルに目を向けた。
複数のビルが身を寄せ合うようにして立つ、異質な一角。
街の市長、あるいは街の管理人、もしくは街の支配者。
内藤財団に属する会社のビル群であり、男がこの街に来た目的そのものでもあった。

(,,゚Д゚)「……」

ギコ・カスケードレンジはライフルスコープを手に取り、ビル群を見た。
超高倍率の光学照準器は、離れた場所に建つビルのガラスの向こうにいる人間の顔を認識できるほどの性能があった。
複数の企業の看板が並ぶ中に、彼は目的の建物を見つけ出した。
そこには“フィンガーファイブ”と書かれており、彼の標的の一人が今まさにガラスの向こうに姿を現したところだった。

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           編集・録音・テキストエフェクトデザイン【ID:KrI9Lnn70】

      撮影監督・美術監督・美術設定・ビジュアルコーディネート【ID:KrI9Lnn70】

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890名無しさん:2021/06/28(月) 19:29:08 ID:GrGR9ifo0
同日 某時刻

ニョルロックの内藤財団本社ビル地下駐車場に、一台のSUVが到着した。
ドアを開けて降りてきた五人の男女の顔にはまだ若干の疲労の色が残されているが、それ以上に無事に到着できたことに対する安堵の色が強く出ている。
彼らは道中、最小限の休憩だけを取り、ジュスティアからニョルロックまでの無謀ともいえる移動を完遂させたのである。
ジュスティア警察の影響力のないヴェガに立ち寄り、そこで協力者の手を借りてケガ人の治療と療養を行った。

それから移動に必要な金や道具を手に入れ、クラフト山脈の麓にある極秘のトンネルを使用し、通常ではありえない程の速さでニョルロックに到着し得たのだ。

('A`)「はぁ……」

ドクオ・バンズは溜息を吐いたが、その溜息は己が為した結果に満足しての物だった。
彼は囚われていた四人の仲間を救い、無事にこうしてニョルロックにまで運ぶことが出来た。
仲間たちは誰もが重傷を負っていたが、ヴェガで受けた治療によって発見当初よりも回復をしていた。
自力で歩く四人の仲間は、迎えに来た看護師たちに付き添われながらビルの中に入っていく。

事前に人払いの済まされていた為、彼らの姿は誰にも見られていなかった。
唯一ほぼ無傷だったドクオは、報告のためにビルの中に入ろうとした。
その彼を、背後から呼び止める存在がいた。

( ゚д゚ )「同志ドクオ・バンズ」

禿頭の偉丈夫、“鉄の男”、ミルナ・G・ホーキンス。
元イルトリア軍人が発する威圧感は出会ってから一切変わらず、常にドクオは背中にナイフを突き立てられているような錯覚に陥る。

(;'A`)「同志ミルナ、一体どうしました?」

( ゚д゚ )「正直、お前のことはオアシズとティンカーベルの時に失望したが、今回はお手柄だ。
     それを伝えたかった」

(;'A`)「き、恐縮です!!」

果たしてドクオの力で彼らを救えたのかと言われれば、それは違う。
彼らが解き放たれたのはフォックス・ジャラン・スリウァヤと救出した四人の内一人が取引をしたからであり、ドクオはそれを早急に伝えなければならない。
ドクオはただ、与えられた骨を持ち帰ってきただけに過ぎないのだ。
しかしこの時、ドクオはそれを言い出せなかった。

彼の中にある小さな矜持が口を噤ませ、ミルナからの言葉を素直に受け止めさせた。
裏切り者も助けてしまったかもしれないという負い目が、それを後押ししたのだろう。
ヴェガにいる間、ドクオは可能な限り彼らの行動を見張っていたが、彼が気づくような違和感はなかった。
取引の真偽さえ分からないドクオにとって、この情報を複数の人間に話すのはリスクが高いと感じていた。

(;'A`)「ところで、同志西川・リーガル・ホライゾンはおりますか?
   至急報告したいことが」

( ゚д゚ )「社長室にいるはずだが」

(;'A`)「あ、ありがとうございます……!!」

エレベーターに向かうドクオの背に、ミルナは短く告げた。

891名無しさん:2021/06/28(月) 19:29:30 ID:GrGR9ifo0
( ゚д゚ )「報告が終わったら、すぐに移動できる用意をしておけ。
     計画の実行が近い。
     ストラットバームに3日後だ」

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     総作画監督・脳内キャラクターデザイン・グラフィックデザイン【ID:KrI9Lnn70】

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同日 同時刻

ストラットバームに向かう交通手段は陸路、あるいは空路しかない。
陸路で行くには険しい岩山の間に偽装されたトンネルを使い、クラフト山脈の西側に向かうことになる。
正確な道のりを進まなければたちまち地雷原へと招かれ、爆殺されることになる。
道のりを知るのはティンバーランドに所属する人間の中でも、限られた人間だけだ。

マドラス・モララーはその限られた人間の内の一人だった。

( ・∀・)「それで、そろそろ理由を聞かせてもらえませんか?」

ハンドルを片手で操作しながら、モララーは助手席の女に目を向けずに質問をした。
女は張り付いた笑顔を一切崩さずに言った。

( *´艸`)「乙女の秘密ですっ」

( ・∀・)「モーガンさん、我々はもう仲間ですよ?
     隠す必要はないでしょうに」

モーガン・コーラはクスクスと笑い声を発し、それから、モララーを見た。

( *´艸`)「なら、どうして私のことは同志、って呼んでくれないんですか?」

( ・∀・)「同志かどうか、それさえも分からないからですよ。
     あなたは何故、ティンバーランドに参加するのですか」

( *´艸`)「じゃあ、まずは同志モララーが教えてくださいよぉ」

モララーは空いた手でドリンクホルダーからコーヒーの入った紙コップを取り、口に運んだ。
セントラスで見せたモーガンの交渉術や外堀の埋め方は、モララーの想像以上の物だった。
十字教という世界最大の宗教組織の中枢に根を張れたのは、彼女の功績があってこそのものだ。

( ・∀・)「……私は、もともとは神父でしてね。
     多くの人を救うために、この道を選んだのですよ」

僅かの沈黙を間に挟み、モーガンが答える。

( *´艸`)「私は、この世界の仕組みが嫌いなんです。
     知っていますか? 今こうしている間にも飢餓で死んだり、奴隷として売られる子供がいるんです。
     救うためには仕組みを変えるしかないんです」

892名無しさん:2021/06/28(月) 19:30:08 ID:GrGR9ifo0
( ・∀・)「なるほどね。
     あなたの何が買われて組織に呼ばれたのかは知りませんが、改めてよろしくお願いしますよ。
     同志モーガン」

( *´艸`)「はいっ! よろしくお願いしますね、同志モララー!」

握手をしようと手を伸ばしかけた時、二人の視線がバックミラーに向けられた。
背後に一台の車が現れたことに、その時二人は同時に気が付いたのであった。

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            撮影・演出・音響・衣装・演技指導・編集【ID:KrI9Lnn70】

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同日 同時刻

深い、到底光の届くことのない深海。
そこに一隻の原子力潜水艦がいた。
現代に復元されたことさえ公表されないその原子力潜水艦には、金色の大樹のモチーフが描かれており、どこかの組織に属する艦であることを物語っている。
ベルリナー海の海底を進む“レッド・オクトーバー”の中では、奇妙な光景が繰り広げられていた。

( <●><●>)

(’e’)

ワカッテマス・ロンウルフとイーディン・S・ジョーンズの二人の男が机を挟んで一枚のモニターを見つめ合い、そして笑みを浮かべている。

从'ー'从「……気持ち悪いんですけど」

(´・ω・`)「さっきから何をしているんだ、君たちは」

ワタナベ・ビルケンシュトックとショボン・パドローネの言葉を聞いて、男二人は深い溜息を吐いた。
その溜息は明らかに落胆したものであり、ワカッテマスは白けた目を二人に向け、そしてジョーンズは舌打ちをした。

(’e’)「ちっ、これだから」

( <●><●>)「風情がないのでしょうかね、あなたたちは」

从'ー'从「風情よりも何よりも、さっきから何をニヤニヤ2人でやっているのかしら?」

(’e’)「深海だよ、深海。
   ほらっ、見たまえ、この暗さ!!
   うん、この暗さがちょうどいいねぇ!!」

( <●><●>)「博士、こっちの方に何か動いているのがいますよ」

(’e’)「いやぁ、いいねぇ!!
   深海にはロマンがあるよ!!」

893名無しさん:2021/06/28(月) 19:30:32 ID:GrGR9ifo0
(;´・ω・`)「真っ暗で何も見えないのですが」

(’e’)「君には心の目がないのかね?
   少年の目だよ、少年の目」

从'ー'从「私、女なんですけど」

( <●><●>)「はぁ……博士、もういくつかライトを点けてやってもらえますか?」

(’e’)「うむ、君が言うんならそうしよう」

ジョーンズは立ち上がり、モニターの上に指を滑らせた。
アイコンが現れ、ジョーンズはライトのアイコンに触れる。
そして、モニターの向こうに見える世界の正体が露わになった。

(;´・ω・`)「なっ……!!」

从;'-'从「えっ……!?」

894名無しさん:2021/06/28(月) 19:32:53 ID:GrGR9ifo0
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   }i:i:| | | | | :| :| | | | | _| | | | | | | | | | |::|:|        冂          .|::::: |: / "´ /   |: :|
   }i:i:| |_| |_|::l__| |_| | |:::|_| |_| |_| |_| |_|┤|:|    | ̄ ̄:: :|    ___,|::::: |/‐=ニ/¨ニ‐:L. ┬i
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   }i:i:i| |_| |_|::|_]::|_| |_[::|_| |_| |_| |_| | |^'| |:|     | :::::::::::: |  ┌‐:i: : : : : : |: /-=ニ/¨ニ‐ _..:i´:
┌─{i:i:i| | | | |::| |::| | | |::| | | | | | | | | | | |:|,_ ┌L__:::::::::::|┌┘: :i: : : : : : |/ "´ /´"'ー=_`'|: :

         二人は同時に驚きの声を上げ、モニターの向こうを食い入るように見た。
                     そこには多くの直線があった。
                     そこには多くの垂直があった。
                    それは、紛れもない人工物の名残。

‐‐‐‐{i:i:| |丁|└r‐‐TT´--┴__|┬┼┤ | /:::::::_广"''ー‐‐-v゛|::::::::|==|===|===|===|===|=|
¨¨""{i:i:| |¦|::::|_____| |T丁「「__|⊥┘::|  | |:|::::::::|_____|:::|::::::::|==|===|===|===|===|=
─--ヘi:i| |::|::|:::|─‐」 |ニ二「--ーrf「「l|  |/:|::::::::|_____>::|::::::::|==|===|===|===|===|=
─--Ji:i| |¦|:::|:::::::└n-‐-|‐‐r┼nT|'' | |::::::::| ̄ ̄广「|¨¨{ :|::::::::|==|===|===|===|===|=|: :|
…─{i:i:| |:::ノ:/:::::::::::ノ'|:::: └Л | | |:|:|  |_⊥--r¬¬TニニT冖宀─=ニ」_==:|===|===|===|=|
 ̄¨¨}i:i:| | { |{ ̄\:|  |::n:::「|::「| | |_l:|  | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|==|===|===|===|=|: :|
¨¨""j{i:i| | { |个r¬゙| .:|_| |_| |_| |_|_|:l |  |二二二二二二二二二二二二|==|===|===|===|=|: :|
二丁」i:i:| | { | | | | | |  | | | | | | | |:| | |  |┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴|==|===|===|===|=| |
二二二¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨/\:::| |_| |_l |_| |  |┬┬┬┬┬┬┬┬‐へ┬┬‐|==|===|===|===|=|

               深海の世界に広がっていたのは、明らかに街の残骸だった。

 |: |_,|‐|¨¨¨ |::::::/:::::::|/|::| |_|_|| ̄ ̄ ̄ ̄し'^^¨l|T冖ヒノ_‘,:::/∧ : : : : : :゙i,  \ ^  ......
 |¨| :| :| : : : |/|: : :/|/|/:::::::|_口__j__l|└:/ :/⌒\::/∧ : : : : : :゙i,    ....::::::::::
 |: |_,|-|_ : |: : |/:/[/ : : : :,.---ミ::::: : : ____,l|:::::::| |:::::::::| |',::::::/ ̄ ̄/ニ7  .....::::::::::::
 ̄ ̄ ̄/「| |/[/::/: : :__{´'ー‐‐'`}:_: :i| ̄: l|::::::::\`ニ´/:∧/__/__/.......:::::::::::::::::::::::
: :.:.:./|ミ|:|:| |/|::/: : : // ̄.:.:|:::::::   |/l i| ::::: l|ニ=-‐┯¬冖ニ匚厂广T冖\_rf冖冖冖冖
: /::::::|: :|:|:| |:::/: : :.:.://::    |:::::::   |:::|i|:::::::::|:::::|::::|:::|::::::|:::/ニ{:::| ̄|¨辷冖¬|:|TTTTT

             制作協力【全てのブーン系読者・作者の皆さん】

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895名無しさん:2021/06/28(月) 19:33:52 ID:GrGR9ifo0
同日 某時刻

内藤財団が作り上げた多目的実験設備、ストラットバームはティンバーランドの拠点であり、始点でもあった。
聳え立つクラフト山脈を利用してその内側に作られた設備は、現代の中でも最高水準のもので、世に流通していない数々の兵器が生み出されている。
地下深くに作られた実験場には巨大な兵器の残骸ともとれるものが幾つも並び、青いツナギを着た作業員たちが工具を手に作業を行っていた。

「どうだ、調子は」

無精ひげを生やした作業員の一人が、同僚に向けて声をかける。
同僚は人一人が入ることのできる狭い空間から身を出すことなく、声だけで返答をした。

「えぇ、修復は問題なさそうです。
明日には行けそうです」

「そりゃよかった。
明後日には同志ジョーンズが来るそうだから、稼働テストが出来るな」

「外傷が少なかったのが幸いしましたね。
……しっかし、これだけデカいのをよく運び出せましたね」

「海の近くだったからな、バラシて分散して陸と海の両方で運んだらしい。
まぁその影響で結構デザインが変わったみたいだが、性能は向上したはずだ。
装備を作るのに相当苦労したみたいだが、それだけの価値があるってことだな」

「確かに。 我々の夢を掲げるにはこれぐらいの物が必要ですからね」

男はその狭い空間から這い出して、改めて自分が修理を手掛けた兵器を仰ぎ見る。

896名無しさん:2021/06/28(月) 19:34:14 ID:GrGR9ifo0
                    “ハート・ロッカー”
                    「棺   桶 、か」

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                    Ammo→Re!!のようです
                 Ammo for Remnant!!編 Epilogue
                                        
        |)__((/二二二二二二二二二二二二二二二二二)
       Foro_. -/ r┐ =iT三l ̄ ̄ ̄|i_r-、___........r‐-、
       |)=ニ}_./| ̄|ー| ̄ ̄レ(Oj`i ̄ ̄日 ━┷╋ ̄|i ___ ̄ ̄))
         ̄フ |丁天了ト'´'´  | |ニ二二l----、_ / |―‐' ̄ ̄
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  Lニ!=^(¨l ̄ ̄ト. ....l 「」,,...「」_ 〉 .>、_/  ̄`'ーァ=ニ二ヽ
      j゙'T''T'ヘム.-┴‐―=―‐'‐、\ ム、  .../      ヾ
    il ̄`'┴ニ‐'´`ヽ.         .i. \ `'ー‐'        li
   く li、  / ‐'''jl  }l:.  「~「~「~「~ヽ   l     「~「~「~「~「《
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897名無しさん:2021/06/28(月) 19:34:47 ID:GrGR9ifo0
これにて今回の投下とRemnant!!編はお終いとなります

質問、指摘、感想などあれば幸いです


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