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( ^ω^)文戟のブーンのようです[3ページ目]
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――逃げる。
村の戒律では、夜に村を彷徨くことは禁止されていたはずだ。
そして恐らくはそれを破れば処刑は免れないだろう。
それを通訳も知っているはずで、それを天秤にかけてもなお、
此処からの逃走のほうが重いのだろう。
俺自身も、自分の精神に起こっていた視野狭窄に対して
恐怖を感じ始めていた。
噛まれた中指、嗅がされた分泌物、頬に塗られた香料、口にした肉。
どれもが俺の内部をいびつに歪まさせる要因足り得る。
それらに囲まれた環境に居たことにすらここまで気づけもしなかった。
死ぬことよりも、自分が自分でなくなっていくような
存在の上書きとも言うべきその感覚に、俺は慄いていた。
決めてからの行動は早かった。
荷物をまとめ、ホルスターにしまいっぱなしだった拳銃を軽く点検し、装弾する。
目立つような白のシャツから、暗闇に紛れるための黒い麻シャツに着替える。
俺は入り口の簾の隙間から広場の方を見る。
幸いと言って良いのか、それとも村人全員が律儀に戒律を守っているのかは分からなかったが、
周囲に人の気配は無かった。
肩越しに通訳を見ると、先程までの死に体とはうって変わって、
目を爛々と血走らせ、獣のような浅い呼吸をしてこちらを見ていた。
向こうが頷くのを確認して、俺は外へ飛び出そうとする。
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