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( ^ω^)文戟のブーンのようです[2ページ目]
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≪とりあえずこれだけ分かっていれば万事OKなQ&A≫
Q.ここってどんなスレ?
A.お題に沿った作品を指定期間内に投下
投票と批評、感想を経て切磋琢磨するスレ
Q.投票って?
A.1位、2位とピックアップを選ぶ
1位→2pt 2位→1pt で集計され、合計数が多い生徒が優勝
Q.参加したい!
A.投票は誰でもウェルカム
生徒になりたいなら>>4にいないAAとトリップを名前欄に書いて入学を宣言してレッツ投下
Q.投票って絶対しないとダメ?
A.一応は任意
しかし作品を投下した生徒は投票をしないと獲得ptが、-1になるので注意
Q.お題はどう決まるの?
A.前回優勝が決める。
その日のうちに優勝が宣言しなかった場合、2位→3位とお題と期間決めの権利が譲渡されていく
Q.使いたいAAが既に使われてる
A.後述の「文戟」を参照
詳しいルールは>>2-9を参照してください!
また雰囲気を知りたい方は
前スレ
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1531744456/
へGO!!
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Chapter 4
Lazarus
-死に至る病-
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夕食を待つその人は、悩ましげな吐息を口にした。
夜が明ければ、姉妹の手には縄が掛けられるだろう。
そうなれば、己の勝ちである。
様々な偶然によって、その人の無罪は証明された。
最初は考えなしに実行したというのに、天は味方を付けてくださったのだろう。
その人は感謝の気持ちを述べたくなり、
礼拝堂へ向かった。
朝な夕な祈りを捧げられていたそこに、
かつての神聖さはない。
後継問題によって心をすり減らした子爵は、やがて信仰さえも諦めるようになったのだ。
よって堂内は、静々とした埃の臭いに満ちていた。
ロザリオ
花冠数珠を手繰るその人が、祈りを捧げようとした時だった。
カラン、
と、軽やかな落鉄の音。
それは、小さな刃物が滑り落ちた音にも似ている。
背筋から、ほつほつと汗が滲み出た。
( 、 トソン「昔から、」
凛と通る声の背後で、扉が閉ざされる。
( 、 トソン「寂れた祈りの場には、悪霊が出入りしやすいとか」
するはずのない声に、
その人はようやく振り向いた。
(゚、゚トソン「手入れが行き届いた教会では、
良き隣人が沢山集うようにね」
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( 、 ;*川「トソーナ・エピフィルム……!」
花冠数珠を胸に抱き、ペネロペ・ブッシュは呟いた。
トソンの足元には、捨てたはずの郵便庖丁が煌めいていた。
不釣り合いな優雅さでそれを拾う女中は、ニコと微笑んだ。
(^、^トソン「ダメじゃないですか。
勝手に人の物を盗るなんて」
はく、はく、と空気が喉に張り付く婦人は、ろくに言葉が返せない。
(^、^トソン「簡単なことですよ。
秘密は大抵身近に置いて管理するか、
興味のない所へ仕舞うものです」
あるいは、と一段と低くなる声。
(゚、゚トソン「自分の嫌う人物に、擦りつけてしまうか」
ゾッとする婦人の額に、汗が伝う。
( 、 ;*川「いつから、」
気付いていたの、という言葉は出なかった。
悪童じみた笑みとともに、トソンは口を開く。
(^、^トソン「いやはや、難儀な事件でしたね」
しかしその笑みは、真顔に戻る
(゚、゚トソン「最初に違和感を感じたのは、
喫茶中のあなたの言動でした」
失せ物をした婦人に、ロミスは自分も探すと申し出た。
しかし彼女は、彼の気遣いを辞退した。
(゚、゚トソン「あなたは庖丁を失くしてなんかいなかった。
でも失くしたと言うことで、
子爵殺しの容疑から逃れようとしたのです」
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当時警察が採用していた捜査方法は、目星を
付けた人間を尋問し、裏を取るのが主流であった。
容疑者に入らなければ、まず捕まることがない。
そう考えたブッシュ婦人は、
犯行前から無実を喧伝していたのだ。
(゚、゚トソン「さらにあなたの場合は狡猾で、
ほとぼりが冷めた頃に、これをクーの
荷物に返すおつもりだったのでしょう?」
さすれば警察の調査が長引いても、
無実の女中を犯人に仕立て上げられる。
(゚、゚トソン「だからあなたは、これを盗んだ」
( 、 ;*川「……」
半年がかりの計画を暴かれた婦人の唇は、ひどく蒼かった。
スープ
(゚、゚トソン「石の煮汁という民話をご存知ですか?」
反応のない彼女を気にせず、トソンは口を開く。
(゚、゚トソン「貧しい旅人がある村で食事を頼むも、断られてしまう。
そこで彼は路傍の石を手にとって、
おいしい汁物が出来ると村人を誘った。
興味を惹かれた村人たちは、旅人に言われるがまま、
様々な材料を持ち寄って、石の入った鍋に入れた。
そして気付けば、豪華でおいしい料理が出来たのです」
つまり、とトソンは笑う。
(^、^トソン「この事件も、それと同じだったのです」
前掛けを漁る彼女は、牛酪箆と黒い石を取り出した。
薄ぼけた春の星々に照らされ、それらは控えめに光を放つ。
-
(゚、゚トソン「瑪瑙は、微細な水晶の粒が沈殿して出来た石だそうですね」
彼女の言う通り、両者は石英という物質から出来ている。
しかし同じ分子構造を繰り返し構築した
石英の結晶が、水晶と呼ばれているのだ。
一方瑪瑙は、それらの小さな粒から出来ている。
結晶と沈殿の違いは、見た目ではっきりと区別することが出来る。
分子間で密に結び付いた水晶は、光をよく通す。
まれに色を取り込むこともあるが、それでもなお透明に輝く。
瑪瑙には、その透明性がない。
沈殿は結晶と違い、物質間での結合に法則がない。
よって瑪瑙には、無数の小さな孔が空いている。
(゚、゚トソン「ゆえに染め剤に浸け置くと、瑪瑙はその色を吸い上げます」
石を掲げる少女は、チラと婦人を見る。
(゚、゚トソン「蓬の煮汁に鉄を加えると、このような色合いになるそうですね」
長々と続く講義を、婦人は聞き流すよう努めていた。
しかしその実、彼女の耳はしっかりと内容を捉えていた。
(゚、゚トソン「己が持ち物を捨て去ったと思ったクーは、
サンドレア嬢を貶めることにしました」
それが、例の占いである。
-
(゚、゚トソン「蓬って凄いんですよ。
昔から魔除けの道具としてつかわれていたんです」
でも、と言葉は続く。
(゚、゚トソン「墓場にある蓬を摘んではいけないのです。
何故って、先ほどの教会と同じ理屈です」
魔に対する斥力と招来は、表裏一体の硬貨である。
きちんとした手順を踏まなくてはならないのは、
不完全な儀式によって望まぬ客を呼び寄せてしまうからだ。
しかしクーは、釜の中に石を密かに忍ばせて、意図的に儀式を欠いた。
(゚、゚トソン「ゴミ捨て場で摘んだ蓬に、細かく砕いた墓石。
これだけ揃えて、何も起こらないわけがないでしょう?」
かくして不完全な魔術によって呼び出されたのは、最も身近な死霊であった。
(゚、゚トソン「つまり二人が儀式を行った時点で、
とうに子爵は殺されていたのです」
( 、 ;*川「お待ちなさい」
引きつり笑いの婦人は、人を食った声を上げる。
( 、 ;*川「そんな出鱈目の儀式が、
一体何の証拠になるというの」
付き合っていられないというように、婦人は半歩進む。
が、同じく前へ出たトソンに、彼女は気圧された。
-
(゚、゚トソン「まあまあ、すぐに分かります」
焦る婦人を差し置いて、トソンは続ける。
冥府を覗いたサンドレアは、悲鳴を上げた。
(゚、゚トソン「当然ですよね。未来の結婚相手が
自分の父親だなんて、ゾッとしますもの」
令嬢の嘆きと共に、牛酪箆は釜の中へと落ちた。
かろうじて作動していた儀式は、ここで崩壊する。
おそらく令嬢は気絶し、クーはその手当に追われていたのだろう。
今朝方の倉庫の臭いは、片付ける暇のなかった釜を隠していたからなのだ。
(゚、゚トソン「さて、ここで不思議な事が起こります」
儀式の終了後、瑪瑙と箆は、子爵の部屋へと転移した。
(゚、゚トソン「もしくは儀式によって惹きつけられた死霊が、
対価として道具を得たのかもしれません」
祀る、願う、祟る。
いずれにしても、儀式を行う時には贄が必要になる。
よって箆と瑪瑙を得た何かは、静々と引き下がった。
ただし贄の受領は、物質の完全な消失を指すわけではない。
与える、または貰う行為そのものが呪術的な価値を発揮するからだ。
(゚、゚トソン「しかし急に物が落ちたとしたら、相応の音がするでしょうね」
子爵の部屋を物色していた執事は、さぞ肝を冷やしたに違いない。
(゚、゚トソン「驚いたロミス氏は、花瓶にぶつかりました」
そして、花瓶は床へと叩きつけられた。
-
( 、 ;*川「彼は、子爵の死に気付かなかったの?」
(^、^トソン「ええ。
だって、鼻が詰まっていますから」
慌てた彼は、思わず鍵を閉めてしまった。
(゚、゚トソン「何故かといえば、花瓶を割った事も、
印鑑を盗みに部屋へと入った事にも、
気付かれたくなかったからです」
( 、 ;*川「最初は鍵が掛かっていなかったのに?」
(゚、゚トソン「酒乱の所為にしようとしたのでしょう。
彼はいつも泥酔させられていましたから」
子爵の携行便器には、吐瀉物が入っていた。
飲酒量を考えれば不思議ではないのだが、
さらに酔いを促進させるものがある。
(゚、゚トソン「阿片丁幾です」
ノエル婦人の機転により、サンドレア嬢の
貞操は、半ば守られていた。
食事や酒に混入されたそれは、子爵に深い眠りを齎した。
その一方で、彼は酷い中毒にも見舞われていた。
-
(゚、゚トソン「じゃなきゃ娘の哀願を利用して、
ヤろうだなんて思いませんよ」
( 、 ;*川「……」
花冠数珠を握る婦人の手は、ぶるぶると震えている。
それを認めていながらも、トソンは言葉を止めない。
(゚、゚トソン「わたしが屋根裏へ行く前に、
貴女は子爵の部屋を出ていましたね」
( 、 ;*川「……」
(゚、゚トソン「あの時すでに、貴女は子爵を殺したのでしょう」
( 、 ;*川「……」
(゚、゚トソン「そしてそのまま、自分の部屋へと帰ってしまった」
つまり彼女は、普段とは逆の順に訪問をしたのだ。
(゚、゚トソン「貴女が書いたとされる手紙も、同じ仕組みでした」
手紙を書いていたという『不在の証明』も、
実は自分宛に送られてきた手紙だったのだ。
(゚、゚トソン「だから貴女は、手紙を観察される事を嫌った」
その意図に気付いていれば、事件は
もっと早く解決していただろう。
悔やむ一方で、トソンは容赦なく追い詰める。
-
(゚、゚トソン「晩餐の前に、怒鳴られていたのは貴女でしたね?」
( 、 ;*川「……そうよ」
ようやく認めた婦人に、トソンは、笑みを零した。
(^、^トソン「自首する気になりましたか?」
( 、 ;*川「……」
黙する婦人に、しかし選択肢はない。
拒絶すれば、神出鬼没の女中は勝手に言いふらすことだろう。
( 、 *川「……する、わ」
熟考の末に出た色のない声に、
トソンは口角を釣り上げる。
(^、^トソン「良かった〜〜。
じゃあ、早速行きましょうっ!」
能天気な女中は、不用心に背を向けた。
二歩、三歩と進む後ろから、
さかさかと婦人は距離を詰めた。
響く靴音は存外に大きく、
( 、 トソン「かハっ……!?」
腰帯子を抜く音をかき消した。
トソンはジタバタと藻搔く。
首にしっかりと巻きついた絹は、
堅牢に細首を締め上げた。
( 、 *川(ここでっ!
終われるものか……!)
鬼気迫る形相で、婦人は叫ぶ。
( 、 *川(だって、社交界よ!?)
麗しき令嬢を社交界に送り出せば、
数多の男が彼女の手を引くことだろう。
そこで由緒正しき男と結ばれれば、
婦人の未来は安泰に違いなかった。
( 、 *川「誰も彼も、私の邪魔をして……!」
-
――トラヴィスもまた、その一人であった。
長々と彼女を怒鳴りつけた彼は、最後にこう言った。
( ゚ω゚)「彼奴に社交性など要らぬ。
あんな恥晒しを外に出すものか」
('、`;*川「お待ちください、旦那様」
必死に謝る婦人に、子爵は鼻を鳴らす。
( ゚ω゚)「世継ぎなら心配など要らぬ。
ツンには、儂の子を孕んでもらう」
('、`;*川「なっ――!」
( ^ω^)「どうせ彼奴は、儂の血は引いていないだろう。
阿婆擦れのデレシアが抱えた、他人の種なのだから」
瞬間、婦人の脳裏には様々な感情が渦巻いた。
教育に腐心した意味の無さや、親しかった友人への侮辱、
卑しい男に対する嫌悪と怒り。
そして、デレシアとの約束を守れない不甲斐さ。
( 、 ;*川(殺してやる……!)
再沸する激情に身を任せ、婦人は絞首する。
( 、 ;*川(大丈夫)
一度上手く行ったのだから、と彼女は橋を架ける。
( 、 ;*川(自殺に見せかければいい)
細い石橋に、彼女は賭ける。
( 、 ;*川(早く――っ!)
神に背を向けながら、淑女は祈る。
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( p トソン「ゴパっ――」
水っぽい音が、堂内に響く。
小さな体が、一度跳ね、土嚢のような重みへと変わる。
( 、 ;*川「やっ、た……?」
腰帯子を手放すと、肉が鈍く音を立てた。
はぁ、はぁ、と肩で息をする淑女は、冷たい床へと座り込む。
( 、 ;*川(殺した……)
一握の罪悪が湧き、婦人は慌てて穴を埋める。
それでもなお、息が戻ることはない。
( 、 ;*川「落ち着け……」
言い聞かせるように、婦人は呟いた。
が、
ニチャ、
と、口の中で、何かが粘ついた。
( 、 *川「へ……?」
それは、血だった。
( 、 *川「厭だわ……」
食い縛るうちに、出血したのだろうか?
怪訝に思う婦人は、唾液とともに飲み下そうとした。
( 、 *川「……あれ?」
口の中は、乾燥していた。
水を探る舌は、みるみるうちに硬直していく。
ブッシュ婦人は、悲鳴を上げた。
そのはずだった。
しかし肝心の喉は、きつく『何か』に戒められていた。
混乱する彼女は、涙ぐましい努力を続けるも、筋は動かない。
ふと、彼女は赤を視認した。
薄絹のようなそれは、細かな水の粒だった。
しっとりと濡れそぼる全身は、猛烈な寒さと置き換わる。
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「やれ、やれ」
感電じみた痙攣を繰り返す婦人は、聞き慣れた声に襲われる。
「まさかここまで大莫迦だったとは」
呆れ果てる女に、少女の面影はない。
「どうしてわたしが、看破出来たのだと思います?」
内から響く声は、くつくつと笑いをこぼす。
「ずっと見ていたからですよ」
あなたのことも、彼女のことも。
「闇のあるところに、魔は潜むものですよ」
一体いつから、どこまで。
「だって妹の為だもの」
そうよね、と言い聞かせ、
「うん、いいでしょう」
一方的に納得し、頬が吊り上がる。
「あなたに、わたしの記号をお譲りします」
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内から響く声は、速やかに血を吸い上げる。
「永く続くこの命」
存在の濃度を高める女に、
「されど、赦されることのない甦り」
女は、名前が無い事に気付く。
「さぁ、どうぞ」
もはや自分が何者であったのか、もう彼女には分からない。
その代わり、唯一の妹を思い出す。
「ああ、ミセリ」
呟く女は、礼拝堂を後にした。
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――執事の部屋では、未だ使用人たちが揉めていた。
(゚A゚* )「だから、どういう事なんや」
£;°ゞ°)「そうは言ったって、私にも分かりませんよ」
しらを切る執事に、ノエル婦人は紙を突きつける。
(゚A゚#*)「自分、書いてある字も読めないんか!」
『送金証明書』には、愛い女の名が踊っている。
しかし、ロミスも認めるわけにいかない。
川 ゚ -゚)「騙していたんですよね……?」
£;°ゞ°)「だから、違うんだって!」
否定を繰り返す執事は、スンと鼻をすすった。
£;°ゞ°)(あれ、)
その鼻腔の奥で、ツンと血の臭いがした。
£;°ゞ°)「え、」
鼻を擦る彼に、二人は怪訝な顔をする。
(゚A゚* )「なんや?」
次に異変に気付いたのは、婦人であった。
(゚A゚;*)「おい、」
ツツ、
と、執事の鼻から血が垂れる。
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「こんばんは」
暗闇の向こうで、声がする。
(゚A゚;*)「ペネロペ……?」
聞き覚えのある声だった。
川; ゚ -゚)「違う」
聞き覚えのない声だった。
「手癖が悪くって、ごめんなさいね」
声は、何かを投げ捨てた。
「親愛なる友人に、お返しするわ」
£;°ゞ°)「ま、待て」
闇へと駆けるロミスは、べしゃりと床を転がった。
「『お触り』は別料金だって、ご存知でしょう?」
クスと笑う声は、直ちに遠ざかる。
呆然とする三人は、ふと気付く。
(゚A゚;*)「な、なん……」
プツプツと浮く鳥肌と、背筋に氷柱を仕込まれたような寒気。
それを認めた途端に、使用人はへたり込む。
ただし唯一、クーは立ち尽くしていた。
川 ゚ -゚)「これは……」
若草色の布に包まれた中には、
川 ゚ -゚)「お婆様……」
黒い鞘に、燻んだ銀の刃。
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間違いなくそれは、奪われた形見であった。
川 ゚ -゚)(守ってくれたんだ)
クラリスの直感は、当たっていた。
もっとも、正確に言えば、元に戻ったのに過ぎなかった。
魔術の世界において、重要視される象徴物がある。
ゴブレット ワンド アダーストーン
水の杯、炎の杖、地の石。
アサメイソード
そして、風の小刀。
攻撃は、最大の防御であり、
この小刀もまた、例外ではない。
しかし、強力な力を発揮出来るのは、
四元素全てが揃っている場合に限る。
ペネロペの策により、均衡を欠いた
それは、逆に魔を呼び込んだ――。
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――夜魔は、閂を外すことなく、扉をすり抜けた。
霧状の体は、腐りかけの扉から水分を奪う。
それがトドメとなったのか、扉は音を立てて倒れた。
部屋の中では、変わらず闇が渦巻いている。
「ミセリ」
柔らかく、ぎこちなく、女は呼びかける。
ミセ* ー )リ「トソン……?」
体を起こす妹は、ケヘンと咳をする。
その呼気に、女は混ざる。
肺を犯す瘴気の数々を、女は優しく掻き上げた。
「逃げましょう」
妹の手を取り、女は外へ飛び出した。
廊下の向こうでは、弱々しい生気と
退魔の力が滾っていた。
ミセ* ー )リ「トソンでしょう?」
「ええ」
でも、と女は返す。
('、` 川「トソンでは、なくなってしまいました」
蒼白の婦人は、忌々しく呟いた。
――吸血鬼の本分は、赤黒い液体とされている。
ぶよぶよとしたそれは、日光や刺激にはいたく弱い。
それを守る重要な砦となるのが、肉体であった。
されど住み心地の良い城には、維持費がかかる。
すなわち、生き血だ。
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――あの晩。
彼女は、子爵の血を拝借しに部屋を訪れた。
月経中のミセリから血を吸えば、忽ち死に至る。
ゆえに気兼ねしない相手を前に、彼女は食事を取ろうとした。
('、` 川「抜かりましたね」
食事にあり付けなかった女は、
絞首によってその肉体を捨てた。
新たな肉体は豊富な血を蓄えていたし、
喰らうには丁度いい相手であった。
('、` 川「ごめんなさい」
吸血鬼は、邸を駆け抜ける。
強靭な風が吹き、それは玄関の扉を押し開けた。
外へ出た女は、一跳躍した。
つられて妹は、ぐんと空へと踊り出る。
慣性に従おうとする妹を、女は抱き上げた。
二人は、空を飛んでいた。
('、` 川「貴女の好きな『トソン』を守れなかった」
別物に変じたと信じる夜魔は、恐るべき速度で飛ぶ。
ミセ*゚ー゚)リ「――そんなことないよ」
寒風を切り裂く女は、一瞬躊躇した。
('、` 川「でも、」
ミセ*゚ー゚)リ「だって偽物だったら、一人で逃げてたよ。
だけど、貴女はわたしを迎えに来てくれた」
実態のない霧を、妹は抱きしめる。
ミセ*゚ー゚)リ「貴女はちゃんとトソンだよ。
トソンを守ってくれたんだ」
( 、 川(ああ――)
己にはない血の脈動を感じ、トソンは想う。
( 、 川(紛れもなく、『此れ』がわたしなのだ)
腹の底から歓喜が滲む感触に、吸血鬼は、救われた。
-
Epilogue
Ever Before
-そして夜は降りてくる-
,
-
――如何なる場合でも、基督教は自殺を強く禁じている。
どのような苦しみがあっても、それは神が与えた試練であるし、
御子もまた、その人を救うために祈りを捧げている。
自殺は、それらの愛を否定する行いなのである。
神に見放されたから死ぬのではなく、
神を見放したから貴女は死ぬのだ。
ゆえに、信ずることを止めてはならない――。
学のない子供でも、それだけは親から学ぶことが出来た。
ミセ* ー )リ(だけど、そんな事言われても、辛いよ)
真夜中の倫敦橋で、少女は川を眺めていた。
三日間も稼ぎのない彼女は、ひどくお腹が空いていた。
それをあざ笑うかのように、足の隙間から水音が響く。
裸足の彼女は、湿った生温かさを実感する。
それは、経血であった。
初めての出血に驚いた彼女は、
同じく娼婦である母に問うた。
「それ、赤ん坊が産めるようになったって事だよ」
そんな事も知らないのか、という母は忌々しそうに呟いた。
出血は約一週間続くので、その間は客を取ることも出来ない。
収入が途絶えてしまうのだから、無理もない。
少女は納得するも、おぞましいと感じてもいた。
ミセ* ー )リ(お母さんになったら、子供を可愛がりたいと思ってた)
-
病で死んだ姉妹に、安価で売られた兄弟。
かつては十人いたという兄弟も、今や少女のみ。
ミセ* ー )リ(仲良く暮らせたらって、思ってた)
しかし、少女は初めて気が付いた。
妊娠を避ける術は、ない。
出来てしまったら、それを活用してなんとか暮らしていくしかないのだと。
ミセ* ー )リ(わたしもいつか、お母さんになっちゃうんだ)
母の母も、そのまた母も、おそらく同じように生計を立てていた。
そしていよいよ自分も、その系譜を引き継ぐこととなった。
ミセ* ー )リ「そんなの、いやだよ……」
眼下に広がる川は、黒く淀んでいる。
橋から真っ逆さまに飛び降りれば、死ねるに違いなかった。
ミセ* ー )リ(神さま、おゆるしください)
拙い祈りを込めて、少女は上体を乗り出した。
-
――が、
「待ちなさいな」
上空より、声がした。
驚いた彼女は、尻餅をついた。
ミセ*;゚ー゚)リ「なっ、――!」
欄干に着地する少女は、冷えた視線を送る。
(゚、゚トソン「自殺はお勧め出来ません」
ミセ*;゚ー゚)リ「はぁ?」
(^、^トソン「何故なら、わたしもかつてはそうだったから」
ミセ*;゚ー゚)リ「失敗したってこと?」
(゚、゚トソン「半分正解」
ミセ#゚Д゚)リ「ふざけないで」
回りくどい説明に、少女は苛立ちを
隠せないが、相手は調子を崩さない。
(゚、゚トソン「わたし、こう見えて吸血鬼なのです」
ミセ#゚ー゚)リ「はぁ?」
(^、^トソン「さぁさ、どうぞご笑覧あれ」
面食らう少女の前で、人を食った笑みが薄らぐ。
ミセ*;゚ー゚)リ「え……?」
闇に溶け込んだ輪郭は、細かな煙となって、宙を漂った。
奇妙な煙は、からかうように少女へ絡みつく。
瞬間、冬かと見紛うほどに体が冷える。
ミセ; ー )リ「ヒッ……!」
刺繍の目をほぐすように、毛穴が立った。
歯を鳴らして震える少女の耳元で、煙は囁く。
-
「どうです、おぞましいものでしょう」
返事の出来ない少女に代わり、それは答える。
「わたしもあなたと同じ、娼婦でしたの。
それである日、嫌になって死んでみたんです。
そうしたら、再び目を覚ましてしまったのです」
気がつけば、目の前には蒼ざめた夜魔がいた。
少女は力なく座り込み、己の肩を抱きしめていた。
(゚、゚トソン「わたしね、自分が
何者なのかも分かってないんです」
――肉体は、ただの器に過ぎない。
人格と魂は同義であり、死後に
救われるのも、自我の中枢を担う魂のみ。
約束された復活の中に、当然肉体は含まれていない。
さて、吸血鬼とは何者なのか。
答えは明快ではない。
神を拒んだ人間の魂は、何処へと
消えていくのか、誰も知らないからだ。
ゆえに動き回る死体とは、非常に恐ろしい存在だ。
人格を持たない器が、どうして今、人格を得ているのか。
一体何者の手によって、人格は与えられたのか。
ゆえに孤独な夜魔は、忠告したのだ――。
(゚、゚トソン「かつての記憶が蘇っても、それは今のわたしではないのです」
それは、硝子製の陳列棚越しに
宝石を見ているようなものだ、と彼女は言う。
(゚、゚トソン「皮肉なものでしょう?
成ってから初めて前の方が
よっぽどマシだったと気付くなんて」
退治されるまで、彼女の永い夜は続く。
そして退治されたとて、
それは神の許しが与えられるわけではない。
待ち受けているのは、完全なる消滅だ。
-
(^、^トソン「でも、逆に言えばわたしがいることは、
神が存在している証なのかもしれません」
だから、と夜魔は目を細める。
(゚、゚トソン「精々、貴女も生きることね」
嘲るような笑みを見せ、夜魔は背を向けた時だった。
ミセ*゚ー゚)リ「ま、待って……」
青銅のような足にしがみつき、少女は懇願する。
ミセ*;゚ー゚)リ「それなら、わたしの血を飲んでくれませんかっ?」
(゚、゚トソン「……正気?」
ミセ*;゚ー゚)リ「だって、こんな所に居たくないんだもの」
(゚、゚トソン「……」
一択しか持ち得ていなかった夜魔は、ふと気付く。
硝子の向こうに阻まれた宝石と、少女はよく似ていた。
喉から手が出るほど羨んでいた存在が、目の前にいる。
(゚、゚トソン(わたしは、『其れ』になれない)
けれども、と言葉は続く。
(゚、゚トソン(わたしは、欲しい)
『わたし』が歩むはずだった人生を歩む少女を、吸血鬼は欲した――。
-
――――――。
――――。
――。
('、` 川「次は、何処に行きましょう」
ミセ*゚ー゚)リ「何処へだっていいわ」
委ねられた選択肢に、霧は笑う。
つられて、少女も笑った。
――はるか下を流れる川の滸で、一つの灯りが消えた。
けれども二人にとって、そんな事は些細だった。
霧深い夜は、まだまだ続きそうだった。
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赤き瑪瑙は喪に服すようです
了
.
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(´・_ゝ・`)「長々と占領して悪かったね」
(´・_ゝ・`)「僕はもう寝るよ……」
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('A`) 残り22レスじゃ足りないんで
('A`) 俺は次スレで投下するわ
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1536071497/
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爪'ー`)y‐ 「今のオレには描き出せない、世界観だった」
爪'ー`)y‐ 「投下、お疲れ様です」
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すごすぎおつ
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从 ゚∀从 「これ感想期間3日じゃ足りなくないか」
从 ゚∀从 「週末まで伸ばしてほしいぜ」
从 ゚∀从 「デミタスもドクオも乙」
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おはようございます!
投票期間のお知らせを致します! 各自ご確認ください!
【第三回品評会投票期間】
『2018年9月5日0時00分〜2018年9月9日21時00分』
ご要望通り、投票受付期間を少し長めに設定しました!
投票は以下の次スレにお願いします。
( ^ω^)文戟のブーンのようです[3ページ目]
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1536071497/
また、大変申し訳ないのですが、先述の通り今私のネット環境がスマホのみなため、
今回の参加作品一覧を作成するのが難しい状況です。
どなたか代わりに書き込んで頂ければ幸いです。
投票期間終了の日曜日にはパソコン使用できる環境が整うので、どうか宜しくお願い致します。
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トリ忘れてました
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>>546
( ^ω^) ◆DD/QFCGk1c
ξ゚⊿゚)ξ〈 デジモン騎士マゾデブ稲荷アマテラス&ビックリドッキリファンイラスト!)のようです
>>586
爪'ー`)y‐[文戟中] ◆IIES/YYkzQ
黄泉鏡
>>618
从 ゚∀从[文戟中] ◆ogHcBy0QF6
引っ越しのようです
>>653
ζ(゚ー゚*ζ ◆ob8ijO4RO6
八月の待ち人のようです
>>674
('(゚∀゚∩ ◆lDflfAeUwE
川 ゚ -゚)鈴の音が聞こえるようです
>>698
(・∀ ・) ◆evfltpoFGo
( ^ω^)は零感のようです
>>734
(-@∀@) ◆q5Dei.01W6
8割生活のようです
>>756
( ´_ゝ`) ◆GmbTh14.y.
('A`)のヘソは名産地のようです
>>784
o川*゚ー゚)o ◆r65.OITGFA
( ^ω^)冷たい掌のようです
>>808
(´・_ゝ・`) ◆lqtlYOyuz2
赤き瑪瑙は喪に服すようです
次スレ>>15
('A`) ◆0x1QfovbEQ
紙魚のようです
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1536071497/15-77
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(´・_ゝ・`)「取り急ぎまとめてみた」
(´・_ゝ・`)「ミスがあったら申し訳ない」
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( ^ω^)「やっと読み終えた!乙だお!」
(;^ω^)「こんなクオリティの高いゴシックサスペンスホラーが飛び出してくるとは思ってなかったお……マジで脱帽だお」
( ^ω^)「作品レス番まとめも乙だお!」
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( ^ω^)「タイムカプセル埋めるおー」
【第一回参加作品(全15作品)】
(・∀ ・) ◆evfltpoFGo
ζ(゚ー゚*ζ人魚がいた岬のようです( ^ω^)
('(゚∀゚∩ ◆lDflfAeUwE
川 ゚ -゚)海へと走るとある夏の日のようです('A`)
(-@∀@) ◆q5Dei.01W6
| ^o^ | こちらの海は狭いようです | ^o^ |
从 ゚∀从 ◆ogHcBy0QF6
コップ一杯の海のようです
J( 'ー`)し ◆nL4PVlGg8I
J( 'ー`)し 海に行きたくないようです
ζ(゚ー゚*ζ ◆ob8ijO4RO6
川 ー )ローレライのようです
( "ゞ) ◆x4POrpflHM
シー、のようです
(-_-) ◆q/W4ByA50w
('A`)毒島太朗物語のようです
(*゚ー゚) ◆4hjDojWtys
( ・∀・)幽霊のようです
( ´_ゝ`) ◆GmbTh14.y.
(*^ー^)花嫁は思い出に沈むようです
( ^ω^) ◆DD/QFCGk1c
バカと無人島のようです
(´・_ゝ・`) ◆lqtlYOyuz2
誰も要らないようです
('A`) ◆0x1QfovbEQ
从 ゚∀从は海を探しているようです
爪'ー`)y‐ ◆IIES/YYkzQ
かくれんぼ
('、`*川 ◆tKLHNhuUIo
川°-°)ヤマモヨウのようです
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【第二回参加作品一覧(全14作品)】
ζ(゚ー゚*ζ ◆ob8ijO4RO6
ξ ゚⊿゚)ξどこでも、いっしょ。のようです(^ω^ )
('、`*川 ◆tKLHNhuUIo
夕やけ小やけのようです
(-@∀@) ◆q5Dei.01W6
銀河ワルダーのわるだくみのようです
( "ゞ) ◆x4POrpflHM
僕らは空を飛べないようです
从 ゚∀从 ◆ogHcBy0QF6
スーパーノヴァのようです
(・∀ ・) ◆evfltpoFGo
川 ゚ -゚)は地面を踏みしめるようです
(-_-) ◆q/W4ByA50w
川 ゚ -゚)空の家族作りのようです
('(゚∀゚∩ ◆lDflfAeUwE
空(から)のようです
総帥(仮) ◆IxnXYH/4Y2
ξ゚⊿゚)ξ津出さんに関する"10"のこと。のようです
( ^ω^) ◆DD/QFCGk1c
(、∀,)空に落ちるようです
(´・_ゝ・`) ◆lqtlYOyuz2
Subliminally Lyric Leading & Readingのようです
( ´_ゝ`) ◆GmbTh14.y.
彗星のようです
J( 'ー`)し◆nL4PVlGg8I
〜天空城は果てしないようです〜
o川*゚ー゚)o ◆r65.OITGFA
空のタンクのようです
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【第三回参加作品(全11作品)】
( ^ω^) ◆DD/QFCGk1c
ξ゚⊿゚)ξ〈 デジモン騎士マゾデブ稲荷アマテラス&ビックリドッキリファンイラスト!)のようです
爪'ー`)y‐ ◆IIES/YYkzQ
黄泉鏡
从 ゚∀从 ◆ogHcBy0QF6
引っ越しのようです
ζ(゚ー゚*ζ ◆ob8ijO4RO6
八月の待ち人のようです
('(゚∀゚∩ ◆lDflfAeUwE
川 ゚ -゚)鈴の音が聞こえるようです
(・∀ ・) ◆evfltpoFGo
( ^ω^)は零感のようです
(-@∀@) ◆q5Dei.01W6
8割生活のようです
( ´_ゝ`) ◆GmbTh14.y.
('A`)のヘソは名産地のようです
o川*゚ー゚)o ◆r65.OITGFA
( ^ω^)冷たい掌のようです
(´・_ゝ・`) ◆lqtlYOyuz2
赤き瑪瑙は喪に服すようです
('A`) ◆0x1QfovbEQ
紙魚のようです
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(・∀ ・)「おきづきいただけただろうか……」
(・∀ ・)「そう」
(・∀ ・)「回をおうごとにさくひんがへっているのです」
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( ^ω^)「全部で39作品!」
( ^ω^),,「この数字だけでも盛り上がりが手に取るように分かるお」
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>>991
( ^ω^)シ-ッ
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('A`) 最後まで残ってた奴が真の強者ということだな?
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(・∀ ・)「まあげんさくでも行事ごとにせいとへってるからな」
(・∀ ・)「強きもののみが生きのこる」
(・∀ ・)「これぞじゃく、じゃくにく」
(・∀ ・)「やきにくてーしょく??」
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( ^ω^)「ドクオちゃん退学取り止める〜????」
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('A`) いや、今別れの挨拶を書いてる
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从 ゚∀从 「……ごめんな、ドクオ」
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(;^ω^)「おっお……」
( ^ω^)「けどそれもブンゲキだお」
( ^ω^),,「涙を呑んで別れの時を待つお」
(#^ω^)「けど勝ち逃げとかドクオの癖にカッコよくてムカつくお!」
(#^ω^)「ぶごー!」
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1000ならドクオ復活
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