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('A`)と( ^ω^)は異世界で絆と出会うようです

278名無しさん:2018/07/27(金) 21:53:22 ID:ODOo7f.g0

ペニサスはそう言って背を向けた、その進みにもはや迷いもなく、
歩む先にはエクストら同郷のものたちと、ツンの下にいた兵達が集う。

( 凸)「大将」

('、`*川「ええ、それで見えた?」

( 凸)「案の定、今回は道がてらに合流しちまってるみたいだ」

<_プー゚)フ「ま、いくら陣形組んでたってこうなっちまえばなぁ」

('、`*川「前回は意図的に避けられてたようだけど、今度は逃がさないように、ね」

<_プー゚)フ「おうよ、野郎共、説得コマンド忘れんなよ!」

( 凸)( 凸)( 凸)「「「「「おー!!!」」」」」


こうして船を中心とした、防衛のための陣が敷かれた。


そう、こうまで大胆な策を講じておきながら、何故か拠点攻略に踏み込むことなく、
遠方より迫る集団を待ち受けるように、彼らは足を止めた。

城砦内に未だ残る一部のものたちは、そんな異様さに困惑を示しつつも、
じきに到着するであろう本隊を待つことを選んだ。

ゆえに、警戒も薄く、あっさりとその場へたどり着いた者が居た。

279名無しさん:2018/07/27(金) 21:54:00 ID:ODOo7f.g0



ξ゚⊿゚)ξ「見張りもつけないとは、無用心ではないか?」


いくつもの天窓から明かりが差し込む空間、その奥に、
目下を眺めながら佇む姿へ、ツンは軽い口調で問いかけた。

( ФωФ)「はは、先日も入り込まれたばかりでな、他の者にも言われたよ」

( ФωФ)「だが不要なのだ、ここは神である我が居城、余分なものは必要がない」

ξ゚⊿゚)ξ「余分……人間を、そう称するか」

( ФωФ)「ふむ、ところで一人か?」

ξ゚⊿゚)ξ「ああ、今のところな」

( ФωФ)「何をしに来た?」

ξ゚ー゚)ξ「わかりきった事に答える必要があるのか?」

( ФωФ)「そうであるな」

ツンは手にした水晶剣を地に突き立てる。
同じように、ロマネスクも黒線纏う大剣を突き刺した。



踏み込んだのは、ほぼ同時だった。





……………。

280名無しさん:2018/07/27(金) 21:55:27 ID:ODOo7f.g0

ほどなくして、追いついた本隊との戦いが始まった。

人が次から次へと押し寄せてくる、その様はまさに津波のよう。
文字通り、門から船とつづく街道は人で埋め尽くされていく。


ノパ⊿゚)「我に続け!!」

「「「オオオオオオオオオオオオオオオオ」」」


<_プー゚)フ「よし、やるぜ!」

('、`*川「日陽の人間たちは、どのあたり?」

(;凸)「まだ、見えないっす!」

('、`*川「仕方ないわね、今は……!」

('、`*川「皆、声を張りなさい、剣の誓いを今こそ!!」

<_プД゚)フ( 凸)「「「「応!!!」」」」


そして集団が、更に大きな集団に呑み込まれていく。


だが潰されはしない、一度は収縮しかけた形は、
すぐに押し返すように広がりを見せた。

そればかりか、楕円に広がる互いの境界線より奥地、
戦線より後方に、どこからか接続による攻撃が飛来する。

見れば巨大船の甲板や、胴体にはいくつもの珠が取り付けられており、
それぞれ配置した人々が後方より、前線の支援を開始したのだ。

281名無しさん:2018/07/27(金) 21:56:10 ID:ODOo7f.g0

こうして崩れかけた前線は、しかし更に後方から第二第三の波が迫る、
波状攻撃と、三次元からの攻防、戦場はこうして消耗だけがつづく膠着状態となった。


雄叫びと、悲鳴が響く。

金属音と、割れ音が連なる。

轟音と、爆音がそれらを覆う。


川;゚ -゚)「………っ」

川 ゚ -゚)(………これが、戦場、か)

川  - )(わかっては……いた、のに)

そんな音は船内にも届いていた、クーは身を抱くように小さくなりながら、
震える身体に止まれと念じる、あまりにも、自分が場違いであると思う。

今も外では殺し合いが行われている。

顔でも出そうものなら、その瞬間に火に焼かれ、雷に撃たれるかもしれない。
しかし何より恐ろしいのは、状況がわからない事だ。

今甲板に響いた足音は、果たしてどちらの物なのか。

聞こえる喧騒が一つの残酷な結果による物ではないか、想像するだけで恐ろしい。

こんな世界に身を投じられる者たちの、なんと勇敢なことか。

祈るように目を閉じる、しかし震えは止まらない。

282名無しさん:2018/07/27(金) 21:58:06 ID:ODOo7f.g0

どれほど時間が流れたのだろう。

その間、どれだけの音があっただろう。

幾度と無く響くそれら一つ一つが、誰か一人の結末だったのかもしれない。

やがて必死に握り締めていた手のひらに、刺すような痛みが走る、
思わず手放した物が床を転がっていく、すぐには動けず、目でそれを追いかけた。


力を込めすぎて、刃で切ったのかと思ったが、しかしすぐに違うと知る。


川;゚ -゚)「……なんだ……光って…?」

剣の欠片は、これまで見たこともないほど赤い光を強め、
陽炎をもまとうほどに、その熱量も高めていた。

その原因が何であるか、何が起きているのか、思い当たるのはただ一つ。


川 ゚ -゚)「……あ、ぁ、まさか、これは…っ」

川 ゚ー゚)「………お前、なのか?」


「ドクオ」



………………。

283名無しさん:2018/07/27(金) 21:59:48 ID:ODOo7f.g0

( 凸)「あ!」

「あ、お前ら…!?」

<_プー゚)フ「お、やっと見つけたぞ!」

均衡を保つ戦場の最中に、しかし動き回る遊撃隊があった。
ペニサス率いる日陽と湖鏡の混在する兵達だ。

彼らは戦地を駆けながら、ある集団を探していた。
その目的は、同郷の者たちの誤解を解くために。

「くそ、本気で、お前ら!!」

<_プー゚)フ「居たぞ大将!!」

('、`*川「ええ、聞きなさい日陽の者達!!」

「え、ペニサス……さん!?」

「どうして…なんであんたまでそっちに!!」

('、`*川「事情は後で伝える、今は、戦いをやめなさい!!」

('、`*川「我が国の神具をもつ彼らは、私たちを裏切ってなどいなかった」

('、`*川「全ては仕組まれた事だったのよ!」

「何を…何を言ってるんです!?」

「だってそもそも、ペニサスさん、あんたがそう言って…!」

284名無しさん:2018/07/27(金) 22:01:46 ID:ODOo7f.g0

「そうだ、巫女さまのお二人を、あんな……許される事じゃない!!」

('、`*川「違う、違うわ……巫女さまを手にかけたのは………」

('、`*川「私、この私が、あのロマネクスの配下に操られて犯したこと!!」

('、`*川「……とにかく、真実はもうじきにわかる!」

('、`*川「今は戦いをやめなさい、これ以上……こんな戦いで命を捨てては駄目!!」

必死の懇願に、少なくとも戦意は失った日陽の人間たちではあったが、
しかし困惑の色がつよく、どうしたらいいのかと戸惑うばかり、

と、そんな中に一人、ペニサスへ歩み寄る者が居た。

「……俺、あいつらと、宴会で騒いだり、色々、話したりしたよ」

「正直言って……悪い奴らには、思えなかった」

<_プー゚)フ「ああ、俺もそう思う」

( 凸)「少なくとも、友人を平気で傷つけられるような連中じゃないよな」

('、`*川「あなた自身は、どう見えていたの、彼らのことを」

「……………」

「エクスト、ペニサスの大将、俺は……俺たちは、騙されていたのか?」

<_プ -゚)フ「そうだ、裏切っていたのは……お前ら……いや、俺たちの方、だ」

285名無しさん:2018/07/27(金) 22:02:12 ID:ODOo7f.g0

「……本当のこと、話してくれるんだよな?」

('、`*川「その為に、私たちはここに居るのよ」

「…………」

「わかった、どうすればいい?」

('、`*川「まずは同郷の者達すべてに伝えなさい、剣を捨てよと」

('、`*川「他の皆も、まだ信じなくてもいい、だけど真実はじきに明かされる、今は戦いをやめなさい」

カランと、いくつもの剣が地に落ちる音が連なった。
そんな姿に、ペニサスは笑みを浮かべ、頷いた。

<_プー゚)フ「ん? なんだあれ……」

と、そんな折、エクストは遠方に砂煙を引く影を見た。
遠目にも、普通の陸船とは思えないような速度で向かってくる。

( 凸)「増援か…? まだ来る?」

<_プー゚)フ「いやでも一隻…しかも、変だぞ、何かに引かれて…?」

( 凸)「つか、こっち来るぞ!!」

('、`*川「いえあの船、ヒルトのものよ、紋章がある」

<_プー゚)フ「ヒルトから!? ってーことは……」

('、`*川「ええ、きっと――――」

286名無しさん:2018/07/27(金) 22:02:58 ID:ODOo7f.g0

そして四本足で駆ける大きな生物に引かれた船が、勢いそのままに戦場へと飛び込んだ。

生物と船はしかし怯むことなく駆け抜ける、突然の奇襲に敵味方問わず飛び退く人によって、
一本の道が整形され、やがて到達点、巨大船へと突っ込んでいった。


ノハ;゚⊿゚)「な、何だ!?」

(*‘ω‘ *)「ポヒヒヒィィィーーーン!!!!!」

「ひ、ひえええ!?」

「ちょ、ぶつかるお!!?」

馬がその場で旋回しつつ急停止、後を引かれた陸船は勢いを止めることなく、
ついには振り回されるような形で、巨大船へと衝突し、事故を起こした。

ひしゃげた船が大きく傾き、ひっくり返った。

しかし寸での所で飛び降りた影が二つ。

甲板に立つショボンは、その一部始終に苦笑を浮かべた。

(´・ω・`)「何をやってるんだか」

相当な勢いからの着地にも関わらず、難なく立ち上がる二人の姿がある。
下で歓待を受けているが、すぐにこちらを見るなり下部の入り口へ、

そして、甲板の扉が勢いよく開かれた。

(;'A`)「ごめんショボン、遅くなった!」

(´・ω・`)「うん、大丈夫だよ、それよりまた会えてよかった」

('A`)「と、そっか、心配かけた、でももう大丈夫だから」

(´・ω・`)「そうみたいだね、なんだか見違えたよ」

287名無しさん:2018/07/27(金) 22:04:52 ID:ODOo7f.g0

('A`)「クーは? 来てるって聞いたけど」

(´・ω・`)「船内に居るよ、会ってくかい?」

('A`)「ん……いや、今はまだ」

('A`)「クーもきっと、自分の意思でここに居るんだろうから」

('A`)「全部終わらせてから、ゆっくりと会いに行くさ」

(´・ω・`)「そうか、うん、でも来た事は伝えておくよ」

(;^ω^)「その……ええと、ショボン?」

(´・ω・`)「………」

( ^ω^)「ごめん……今更って思うかもしれないけど、だけど、僕も、もう一度…」

(´・ω・`)「ああ、本当に今更だよ、言ったろ、君の事なんか信じちゃいないって」

( ^ω^)「……それでも、僕も決めたんだ、もうn」

(´・ω・`)「君みたいな考え無しの大馬鹿者が、何もかも諦めて来ないなんて、思っちゃいないさ」

(;^ω^)「にげな………え?」

('A`)「馬車用の道具、ショボンが用意させてたんだろ?」

(´・ω・`)「ああ、ブーンを追いかけて来てたの知ってたからね」

(;^ω^)「………な、なんだお、それ」

288名無しさん:2018/07/27(金) 22:05:18 ID:ODOo7f.g0

(´・ω・`)「それにしたって遅い、ドクオの方は事情がわかるけど君はダメダメだね」

(;^ω^)「ひ、贔屓が、ここまで来て尚贔屓が酷い!」

(´・ω・`)「遅刻の罰としてほら」

言って、指すのは最上部、彼の王が居る場所。

(´・ω・`)「決着をつけてきなよ、今度こそね」

(  ω )「―――――」

( ^ω^)b「がってん承知!」

(´・ω・`)「ドクオも、悪いけど、道を作ってあげてくれるかい?」

('A`)「道を……ああ、わかった」

(´・ω・`)「ちなみに今回の狙いは聞いてるよね?」

(;^ω^)「一応……でも、何時の間にそんなこと進めてたんだお」

(´・ω・`)「子供の喧嘩じゃないんだから、争いの間にだって政策は進むさ、当然だろ」

(´・ω・`)「とは言え、ヒルトっていう国に属しているからこそではあるけどね」

何にせよ、じきに人の戦いは終わる、この戦争はそういうものだと。

(´・ω・`)「というわけで、頼んだよ二人とも」

(´・ω・`)「ああそうだ、あとこれが終わったら、ご飯でも食べに行こうか」

( ^ω^)「おお、行く行く!」

289名無しさん:2018/07/27(金) 22:07:08 ID:ODOo7f.g0

('A`)「飯か…何なら俺作ろうか」

(;´・ω・`)「え、ドクオって料理できたの?」

('∀`)「今ならすげーうまいもんできるぞ、お墨付きだよ」

(;^ω^)「それって……記憶の?」

('A`)「ああ、あの人の生きた証、皆にも、知ってほしいんだ」

( ^ω^)「そりゃ楽しみが増えたお、どんなのだろう」

('A`)「ギンギーとか」

(;^ω^)「ギンギー?」

(´・ω・`)「いいけど、男の手料理を楽しみにするとはこれいかに」

(´・ω・`)「……ま、そんな感じでよろしく」

( ^ω^)「うぃ、そんじゃ、行ってくるとしますか!!」

('A`)「ああ、今度こそ…終わらせよう!」

言って、二人は甲板から下へと伸びるスロープに手をかけ、一気に降下。
かけられた声に応えながら、人並みを抜けて駆けていく。

城砦へ続く道も、すでに人が壁となっている。
けれど、もはや管理者としてもある種の到達点へ達した二人。

ただの一瞬とて、止められる者は居なかった。

290名無しさん:2018/07/27(金) 22:08:22 ID:ODOo7f.g0

そして城砦の入り口へと、あっという間にたどり着いた。
だがそこは重厚な石の扉によって閉ざされている。

二人はそこで一度立ち止まった。

後ろからは、王の下へと向かう二人を止めるべく、また人の群れが押し寄せる。
けれど見向きもしないまま、一人は赤い剣の輝きを強め、もう一人が風を起こす。

次いで、耳をつんざく爆裂音と共に、石の扉は文字通り爆発した。

吹き飛ばされた瓦礫が、長く宙を泳いで地を抉りながら落ちる。
残された扉だった箇所は、ところどころ未だ赤熱し、黒煙を立ち上らせた。

(;^ω^)「相変わらずトンデモ火力だお…!」

('A`)「……よし、道は開いたぞ、行ってくれブーン」

(;^ω^)「へ? ドクオは?」

('A`)「俺はここに残るよ、邪魔されないように、あいつら止めておくからさ」

言って、ドクオは再びこちらへ向かってくる人波を見る。


確かにここで止めなければ、王の下へ向かっても止められてしまう、
それにそんな状況下で奴とまもとにやり合えるとも思えない。


言い分は正しい、だが。

291名無しさん:2018/07/27(金) 22:09:44 ID:ODOo7f.g0

(;^ω^)「そんな、一人じゃ…!」

言いかけて、もう何度も見たあの威力を思う。
あれなら確かに、とは思うが、それでも。

( ^^ω)『むしろお前が居たんじゃ邪魔になるだけだろ』

( ^^ω)『それに、気付いていないのか、船から降りた時もそうだったが』

( ^^ω)『ドクオの奴……今のお前の本気の動きに、ついてきているんだぞ』

それも、息も切らさず。

神具によって人外の力を得ている内藤に対し、ドクオの持つ神具にはそういった能力はない。
しかし、今はもう一つ、その腰にはもう一本の剣が下げられている。

紫色の水晶剣、人の血を吸い、かつて赤く染まっていた呪いの剣だ。

その忌むべく力によって蘇ったドクオは、その恩恵を未だ得たまま、
自覚も無く、常人を遥かに越える体力を身に付けていた。

加えてあの炎の剣だ、もはや囲まれた程度で遅れを取ることはないだろう。

しかし内藤が思うのは、その心配だけではなく。


(;^ω^)「いいのかお、だって、ドクオにとっても、あいつは……」

('A`)「正直なとこ、一緒に行っても、足を引っ張っちまうよ」

('A`)「わかるんだ、一度は相手をして、そして……傍で、見ていたから」

(;^ω^)「だけど…っ」

292名無しさん:2018/07/27(金) 22:10:35 ID:ODOo7f.g0

('A`)「それに、いいんだ、俺はもう……恨みだとか、憎しみでこの剣は振るわない」

('A`)「そう、決めたんだ」

('A`)「お前だって、そうだろ?」

( ^ω^)「………!」

('A`)「だから俺の願いも、お前に託す、そして今は、よく聞くこの言葉を言うよ」

('∀`)「ここは、俺に任せて先に行け」

( ^ω^)「……ずるい、それ、僕だって言ってみたいのに」

('∀`)「だろ?」

( ^ω^)「うん、だけど、託されたお」

('A`)「ああ、頼んだ」

入り口の方からも、爆発の音を聞きつけて人が姿を見せた。
ドクオはその方向へと火柱を飛ばす、合間には道がある、

もはや言葉もなく、互いに頷き、内藤は友が作った道を駆けた。

そして再び、あの日も歩んだ通路を走る。


同じ目的を。


違う想いで。


白銀に輝く剣を手に、その先を目指した。

293名無しさん:2018/07/27(金) 22:12:59 ID:ODOo7f.g0

('A`)「さて、と……」

右手には折られながらも、その輝きを失わない赤い剣。
左手には彼の生き方を象徴するような、今は空っぽの紫晶剣。

どちらも勝手に受け継いだだけの、借り物の力。
けれどその思い出は今も、確かにこの胸に宿る。

例えるならば、それは光、いつでも道を示してくれる輝き。

どんな暗闇の最中でも、どんな景色が見えても、どんな険しい道であっても、
進むべき道を照らしてくれる光、だからもう、二度と迷わないで進める。

そう、思える。

迫る人波を見据え、剣を構えてドクオは言う。

('A`)「俺たちの狙いは、敵将ロマネスクただ一人!!」

('A`)「この先へは、誰も通さない…!」

輝く赤い剣を一振り。

半円を描いた炎の道が、集団とドクオを隔てるように広がった。
駆けてくる群れは、突然燃え広がった熱に足を止める。

どよめきが起こる、その原因は燃え続ける炎の、その輝きにあった。

何故なら炎は、見たことのないような、幻想的なまでに蒼い光を放っているから。


('A`)「命が惜しければこの線を越えるな、さもなくば、この破壊の剣……炎の風が相手だ!」

294名無しさん:2018/07/27(金) 22:14:22 ID:ODOo7f.g0

伝え聞くその管理者の名、そして先の石扉を一撃で消し飛ばした力。

怯む者は少なくなかったが、すぐに怒声が飛ぶ。

それでも、相手は一人だと。

進めという声に押されるようにして、人波は炎を乗り越え、再び駆ける。

中には異様な形の武器を手にした者も居る、あれも管理者なのだろう。

虹の輝きを放つ剣、光刃を纏う槍など見るからに特別な代物もあった。
更には珠を手にする者たちも大勢居る、それら全てが今、ドクオに向かってくる。

不思議と恐れはなかった。

それよりも、むしろ、今も心の奥底から湧き上がってくるものが。
ドクオの足を死地とも見えるその先、前へと進ませた。
力が漲る、魂が燃える、心のマグマが迸る。


('A`)「今の俺は…!」


(,,゚Д゚) ミ,,゚Д゚彡( ・∀・)( ´∀`)


(#'A`)「負ける気がしない…!!」


雄々と叫び、いつしか眩く輝く光剣を振るう。

黒煙を内包する爆炎がばら撒かれ、呼吸するだけで喉を焼くほどの熱流が起きた。
ドクオを中心に発生したその熱によって、周囲の石はドロドロに溶けて流れ始める。

295名無しさん:2018/07/27(金) 22:16:17 ID:ODOo7f.g0

空間が歪む、黒煙があちらこちで立ち昇る。

肌を焦がすような熱風に当てられた集団には、尻餅をついて後退する姿もあった。

同時に、どうなってるんだと疑問が沸く。

それほどの被害を出しながら、中心に立つドクオはまるで何事もなかったように、
光り輝く剣を携え、今尚熱風を纏いながら、集団に向けて更に一歩を踏み出した。

そして進むたびに、歩いた跡が赤熱していく。


化物と、誰とも無く呟いた。


現に歩みを止めないドクオの姿は、熱でぐにゃぐにゃに歪む背景と相成って異様なものとなっている。


「ひ、引くな! 押せ、行け行け!!!」

勇気によるものか脅えからくるものか、そんな声に応え、集団が行動を開始する。
珠を構える姿がある、それに続いて突撃すべく剣を構えるものが居た。

次いで、一斉に接続の力がドクオ目掛けて放たれた。

突風が砂塵を巻き上げ、数え切れない火球が飛来し、雷が散らばり地をも焦がす。


だが、それらは一つたりとも彼の下へ到達しない。

まるで見えない何かに守られているように、何らかの圧力が近づくだけで炎が爆ぜる。
黒煙纏う炎が幾度も広がり、中空で発生した爆発によって全てが掻き消されてしまう。

296名無しさん:2018/07/27(金) 22:19:05 ID:ODOo7f.g0

更に進む。

そこへ一人、駆けてくる姿がある。

光刃を纏う槍を持つ人間だった、周囲には同じような輝きを放つ光球が浮かび、
槍の一振りに合わせ、ドクオに向かっていくつかの光が尾を引いて飛翔する。

だが先と同様に、近づくだけで光は爆発に飲み込まれ消滅した。

予想はしていたが、男は戸惑いを隠せない、
その隙をつくように、ドクオは距離を詰めていた。

「な、早い…!?」

('A`)「神具…こんな物があるから…」

防御すべく槍を構える男に向けて、もはや太陽と見紛うほどの輝きを放つ剣を振るう。

衝突は、もはや音にすらならなかった。

男は握る手のひらに感じた強烈な痛みに手を離す。
二つに分かれた槍が、断面を融解させながら地を転がる。

「そんな―――馬鹿な!!?」

('A`)「消えろ…!」

そして転がった槍へと剣をかざす。

発光。

突然のことに目が眩み、再び視界に入ってきたのは、
原型を留めないほどにドロドロに溶けた槍だった物の姿だった。

297名無しさん:2018/07/27(金) 22:21:19 ID:ODOo7f.g0

あまりの事態に、男はその場で固まった。

そんな隙だらけの身体を、ドクオは蹴り飛ばした。
軽く数メートルは吹き飛ばされ、集団にその姿が止められる。

戦慄に、最早動けないのは蹴飛ばされた者だけはなかった。
一体目の前で何が起きているのか、理解できずにざわめきが起こる。


そしてそんな合間に、再び蒼い炎による線が敷かれた。



('A`)「もう一度だけ言う、命が惜しい者は、この線を決して越えない事だ!!」



そしてそんな光景を、巨大船から眺める者たちが居た。
あまりの光景に、防衛にまわる事すら忘れ見入ってしまう。

(;凸)「なにあれぇ……こわぁ」

(;凸)「もうあいつ一人でいいんじゃないかな」

ノパ⊿゚)「お前たち、余所見をするな!」

(;凸)「あ、サーセン!」

(´・ω・`)「………」

ノパ⊿゚)「…あれがVIPの炎の風か、一国を滅ぼす力というのも伊達ではないな」

(´・ω・`)「いえ、きっとあれは、その伝説を上回るものですよ、それも遥かに……」

298名無しさん:2018/07/27(金) 22:22:07 ID:ODOo7f.g0

ノパ⊿゚)「それでどうする、今こそ好機と見るが?」

(´・ω・`)「いえ、まだですよ、後は……」

言って、見据えるは砦の最上部。

このまま行けば地上は目論見どおり、残る問題は神を名乗るあの男。

先ほど見たように、神具をも消滅させる程の力をもつレーヴァテイン、
その剣でさえ、奴のもつ神具には及ばなかった。

そんな剣を持つ男が、あの時の内藤以上の力を持つというのだ。

恐らく、今の戦局とて奴が出てきたその瞬間に一転する。

裸の王とし、世界の意識を変える事ができたとして、全てが無意味になるかもしれない、
ゆえに残るはロマネスクという最大の難問を、どうするのか。

この点において、ショボンは考えることをやめた。

そしてただ、一人に託すことを決めていた。

これは賭けになる、そう知りながらも。

様々な事実と、要素が教えている、あの二人の関係性。
おそらく唯一対抗できるのは、その友人だけだと、不思議なことに確信をもち。

(´・ω・`)(ここまで道を作ったんだ、意地でも何とかしてもらうよ)

友の名を心で呼びかけながら、その場所を見つめていた。






…………。

299名無しさん:2018/07/27(金) 22:24:15 ID:ODOo7f.g0

あれだけの人数を揃える敵の親玉、そのラスボスが住まう居城にしては、
いっそ不気味なまでに人の気配がしない、思えば以前の潜入の際もそうだった。

それゆえに逃亡ができたのだと、今更ながら知った。

そうして、いくつものランプが描く、多重の影を引き連れて内藤は走る。

だが、それにしても静かすぎる。

聞けばツンが一人で足止めに向かっているはず。
にも関わらずこの静寂。
少なくとも今も戦いが続いているとは思えない。

( ^ω^)「………」

嫌な予感が、おそらくは確信なのだろうと思う。
そもそもが無謀な作戦だ、あの男を一人で相手にするなど不可能だ。

自分がもっと早く来ていれば、いやそもそも、馬鹿な行動さえしていなければ。

口惜しさに歯噛みし、それでも先を急いだ。

やがて、その場所の入り口が見えた。

飛び込んでいく。

いくつもの天窓から差し込む光が美しい大広間。

そこにいくつも、無数の傷痕が刻まれている。

300名無しさん:2018/07/27(金) 22:26:12 ID:ODOo7f.g0

恐らくは剣戟の跡なのだろう、至るところに見えるそれが、激戦の後を思わせる。

だがそれ以上に、正面、その最奥に二つの人影がある。

目を凝らし、ようやく見えたその先には。














思わず声を失うような光景が、広がっていた。






                      つづく。

301名無しさん:2018/07/27(金) 22:28:04 ID:oe0A9Qos0
おつおつ

302名無しさん:2018/07/27(金) 22:36:16 ID:ODOo7f.g0
おしまい、実際のところドクオ君が本気出せば城ごと焼き殺せるけどそこはご愛嬌。
いやあ今まで無力な子だったり空気だったりしたけど、しょうがないね、
魔力つきないめぐみんみたいな状態だし、作中最強キャラは本当に扱いが難しい。

というわけで次回は12ヶ「極限一閃」事実上の最終話、あとはエピローグ。
土日の間に89%くらいの確率で投下するかもしれないし、ないかもしれない。

303名無しさん:2018/07/27(金) 22:50:53 ID:3TYdgo1I0
おつ

未完だった作品が戻ってくるとうれしいね
それが好きな作品だったら尚更だ

304 ◆QksyqzmdbE:2018/07/28(土) 10:22:00 ID:hKDJBMdM0
乙です。
私、RPBと言うブーン系RPGの製作をしているものです。
よろしければこちらの作品の使用許可を頂けないでしょうか?お返事頂ければ幸いです。

305名無しさん:2018/07/29(日) 17:58:48 ID:W2IAUIy60
使用許可いうてもトリ無くしたから、今こうして書いてるのも続き書いてるのも本人かなんてわからないし
権利なんてないんだから好きにしていいと思いますよ。

まあしいて言うなら、これに出てくるのって基本技名も武器も元ネタありきだから、
この作品のというてもなんていうか、なんていうかですね。

306 ◆QksyqzmdbE:2018/07/30(月) 08:03:32 ID:lcK6gcSo0

なるほど把握です。
お返事ありがとうございます〜

307名無しさん:2018/07/30(月) 18:06:38 ID:EyjdF6r60
まさかの続き来てたのか!?
全部読み直してきたわ!

308名無しさん:2018/08/03(金) 19:14:40 ID:odiXiEFk0
ようやく過去作読み返しも含め読み終えたぜ・・・
ほんっとドックンがかっこよくて最高だわ

次回最終回か・・・なんだろうな、ずっと見たかったはずなのに今はすごく見たくないわ・・・

309名無しさん:2018/08/08(水) 19:50:30 ID:747n7cEA0
11%をすり抜けてまた5年後とかやめろよぉぉお?!

310名無しさん:2018/08/08(水) 19:52:40 ID:M3.TJHpU0
>>309
何月の土日とは言ってないよな?

311名無しさん:2018/08/09(木) 00:31:21 ID:OoHTyhqk0
モチベが足りない、どうして書く側は続きを知っているんだろう
知らなければ気になって続きを書こうと思うのに、世は不条理である

312名無しさん:2018/08/16(木) 01:17:37 ID:/F8oanmY0
まだかしら

313名無しさん:2018/08/20(月) 18:32:53 ID:mUoFvK1k0
今だ!
うおおおお最終話とはいったけどエピローグのほうはまだ書いてない最終話の投下行っけえええ!!

314名無しさん:2018/08/20(月) 18:33:15 ID:mUoFvK1k0

終話「極限一閃」



外に出張った部位につながる大窓を逆光に、その一つが振り返る。
影はゆっくりと内藤の方へと向き、手にした物を掲げる。

ξ゚⊿゚)ξ「遅かったな」

そして湯気が立つティーカップに口をつけた。
優雅に午前のお茶をたしなむ姿だった。

あまりにも想像の斜め下をゆく光景に、内藤は思わず固まってしまう。

(;゚ω゚)「な……なっ」

( ФωФ)「どうした、呆然として?」

ξ゚⊿゚)ξ「そうだぞ、お前もどうだ、この飲み物は中々だぞ」

( ФωФ)「ふはは、当然であろう、我が口にするものぞ」

(#゚ω゚)「いや何しとんじゃーーーい!!!」

ξ゚⊿゚)ξ「茶だ」

(#゚ω゚)「それは見ればわかるお、ていうか見たまんまか!」

ξ゚⊿゚)ξ「わめくな、何が言いたいんだ」

(;゚ω゚)「だから何で、ツン、おま、だって時間稼ぎをって…!」

ξ゚⊿゚)ξ「ああ、無論挑んだとも、そして敗れた」

315名無しさん:2018/08/20(月) 18:33:48 ID:mUoFvK1k0

( ^ω^)「……それで?」

ξ゚⊿゚)ξ「ああ、それで仕方なく、こうしてお茶を頂くことになったのだ」

( ^ω^)「意味がわからないんだけど」

( ФωФ)「何、この余興を楽しむのにちょうどよい手合いであったのだ」

( ^ω^)「……余興?」

( ФωФ)「そうだ、お前も見るがよい」

様々な覚悟の上にやってきたはずがこの始末。
しばし二人を交互に見やり、やがて観念するように内藤は歩み寄った。

石造りのテーブルが鎮座するテラスに出れば、先ほどまでの薄暗さから一変、
陽光に目を細めながら、内藤はロマネスクが示したものを見る。

黒煙と、赤く染まる大地が覗く戦場の風景だった。

(;゚ω゚)「あれって……ドクオ…? ドクオがやってるのかお?」

もはやそこに、争いは存在しなかった。

内藤を追いかけようとしていた者たちは、軒並み足止めをくらい。
船を中心とした戦いにまで影響を及ぼしたのか、あるいはペニサスたちの説得が上手くいったのか、
わからないが、そこかしこで文字通りの火花が散るものの、明らかに数は少なく、小競り合いとも取れる程度。

しかし終わった訳では無い、あくまで膠着状態に陥っているだけだ。
何か切欠があれば、それはすぐにでも崩壊する。

316名無しさん:2018/08/20(月) 18:34:23 ID:mUoFvK1k0

そう、良くも、悪くも。

( ФωФ)「うむ、見事であるな」

( ^ω^)「……何が、だお」

( ФωФ)「幾度もの試練を越えた、美しくも儚い、人の命の輝き」

( ФωФ)「それが、この光景を造ったのだ」

(  ω )「……」

( ФωФ)「鍵の担い手は、あらゆる惑いを捨て去り、真なる管理者となった」

( ФωФ)「数千年の時を経ても成しえなかった偉業だ、見事である」

(# ω )「……お前が…」

(#゚ω゚)「お前が、それを言うんじゃ……っ…くそ!」

激情に駆られそうになるのを堪え、内藤は壁を殴りつけた。
何よりも、その言葉をその通りだと受け入れてしまう自分に気がついて。

ξ゚⊿゚)ξ「ふん……それで貴様はどうするつもりだロマネスク王」

( ФωФ)「うむ、そろそろ頃合か」

( ФωФ)「神の力というものを、下々の者達に教えてやらねばな」

ξ゚⊿゚)ξ「ほう…」

(;^ω^)「…っ!」

317名無しさん:2018/08/20(月) 18:35:21 ID:mUoFvK1k0

ロマネスクは、ゆっくりとした動作で大剣を振るう。
内藤もすぐさま相手取るため構えを取るが、ツンの声は続く。

ξ゚⊿゚)ξ「だが、最早手遅れだな」

( ФωФ)「?」

ξ゚⊿゚)ξ「此方が何の考えもなしに来たとでも?」

( ФωФ)「ああ――――」

(;^ω^)「そ、そうだお、今頃もう」

( ФωФ)「王国と双国の同時発起の件だな?」

(;^ω^)「っ……な!?」

( ФωФ)「珠と交易の要となる二国が同時に真実を語り」

( ФωФ)「各国へ秘密裏に行われた書文と合わせ、国交会議の場を造る事で戦争を締結させる」

( ФωФ)「その為に消耗戦を選び、誘き寄せるように国へ篭った、いわば全てが時を稼ぐ為の事」

( ФωФ)「今頃世界は混乱の渦中であろうな、最早、この戦場の勝敗すら無意味」

( ФωФ)「誓賢の担い手の画策であろう?」

ξ゚⊿゚)ξ「……知っていたのか」

( ФωФ)「知らぬはずがあるまい? うむ、こちらも見事であるな」

( ФωФ)「流石は賢たる者、戦争というもの…いや、その歴史すら熟知していると見える」

ξ゚⊿゚)ξ「そこまで分かっていて、何もしなかったのか? 何故だ?」

318名無しさん:2018/08/20(月) 18:36:20 ID:mUoFvK1k0

( ФωФ)「言ったであろう、人の輝きだ、我はそれを否定せぬ」

( ФωФ)「抗うことは罪ではない、そこにあるのはただ、乗り越えるか、潰れるかだ」

( ФωФ)「そして彼らは越えて見せた、この光景こそがその証明であろう」

( ^ω^)「……なんだ」

内藤は思う。

敵意は未だある、だがこの話が、物言いが、先ほどまでの状況と合致した。

つまり既に、戦う意思をなくしている。

戦争は既に、話し合いという次のステージへ向かっていて、
ロマネスクという男はそれを理解している、ゆえの行為なのだと。

かつて同じ名で過ごした時に感じた、理解のある人物だと。

許す許さないではなく、少なくとも分かり合おうとできる。

それなら、と。

いつしか内藤は剣を下げていた。

( ФωФ)「では、行くとしよう」

( ^ω^)「……」

どうあるべきなのかは分からない、だけど、これでひとまず終わるなら。
内藤は歩き始めた姿を、複雑な思いを込めながら見送った。

ロマネスクは何も言わず、出口へ向かう。

319名無しさん:2018/08/20(月) 18:36:47 ID:mUoFvK1k0

ξ゚⊿゚)ξ「……太陽の、何をしている?」

(;^ω^)「何って?」

ξ゚⊿゚)ξ「何を突っ立っている、お前は、奴を止めに来たのではないのか?」

(;^ω^)「そう…だけど、これで、あの戦いが止まるなら……」

ξ-⊿-)ξ「愚か者が、言葉に惑わされおって」

(;^ω^)「…え?」

( ^^ω)(……思い出せ、その前に奴は何と言った?)


問われ、背筋を走る冷たさに促されるように内藤は彼の背を追った。
そして駆けながら名を呼び、名の主はそこで立ち止まる。


( ФωФ)「どうした?」

(;^ω^)「……どこに、何しに行く気だお?」

( ФωФ)「言ったであろう?」

( ФωФ)「神の力というものを教えにいくと」

(#^ω^)「…だから、それがどういう意味かって言ってんだお!!」

( ФωФ)「痴れた事、我に反目する者達を、これより皆殺しとするのだ」

(  ω )「っ……―――」

320名無しさん:2018/08/20(月) 18:37:33 ID:mUoFvK1k0

( ФωФ)「如何な策を講じたところで、真実の語り部無くしては意味もあるまい」

( ФωФ)「誓賢も、詰めが甘いという所か、いや、人間にしてはよく働いておるがな」

( ФωФ)「そもそも彼奴ならば、相手を虐殺する手段など幾らでも講じられたろうに」

( ФωФ)「あれだけ人を弄んでいながら、そうせんとは不思議よの?」


(#゚ω゚)「…!!!!!」


( ゚ω゚)「…っ」


( ‐ω‐)「………」


(  ω )「………っ、…………ふーーーーー」


( ФωФ)「む?」


( ^ω^)「違う……」


( ^ω^)「ショボは、この戦争に巻き込まれた人を、少しでも助けたいと思ってるから」


( ^ω^)「敵も味方も関係なく、生きるために、これからを、未来を目指すそのために」


( ^ω^)「僕を信じてくれたんだお」

321名無しさん:2018/08/20(月) 18:38:22 ID:mUoFvK1k0

ロマネスクを追い抜き、扉の前に立ち。

思う。

怒りに呑まれてはいけない、激情のままに戦えば、
それは自分さえも見失う、それだけは繰り返してはならない。

ドクオ、彼の心の強さには未だ届かないままだけれど、
憎しみや、怒りだけで力を振るわないと言った、彼の言葉に倣って。

成すべきを成す、その為に。

…だけど許せない。
怒声を張り上げてしまいたい。
だけど許されない。


だから、と。



( ^ω^)「……ええと、こういう時、なんだったかな」

( ^ω^)「仇をとるときには……そう」


剣を、切っ先を向け。


( ^ω^)「僕の名は内藤ホライゾン」


( ^ω^)「僕らを助け、救ってくれた亡き英雄達の名誉のために」

( ^ω^)「僕をここまで導いてくれた、友の絆に、信頼に応えるために」

( `ω´)「お前が神を名乗るなら、あるべき場所へ、あの世に送ってやる!!」


決意を、高らかに叫んだ。

322名無しさん:2018/08/20(月) 18:38:51 ID:mUoFvK1k0

( ФωФ)「お前もまた、人として立ち向かおうと言うのだな」

( ФωФ)「ならばよかろう、足掻いてみせよ、欠けし我が半身よ」

( ФωФ)「……それで? お前はどうする、再び挑むか?」

ξ゚⊿゚)ξ「む…」

( ФωФ)「二人でも構わんぞ」

と、ロマネスクは振り向き、テラスに佇んだままのツンへと声をかける。
しかしツンは首だけを小さく横へ振り、自分は既に負けた身であると告げた。

ξ-⊿-)ξ「口惜しいが、私ではそこの太陽にすら及ぶまい」

(;^ω^)「ツン……」

ξ゚⊿゚)ξ「だから代わりに見届けさせてもらう、この戦争の終結を」

( ФωФ)「そうか、うむ、許そう、しかと見届けよ」

ロマネスクが黒剣を振るい、地を掠めた切っ先に火花が散る。
構えれば、いくつかの黒い線が浮かび上がり、空間を歪ませた。

( ^^ω)『来るぞ』

頭に響いてくる声、内藤は小さく頷き、剣を両手に構えなおす。
差し込む光は弱い、しかし刀身は鋭く、白銀の輝きを携えている。

心臓の鼓動が、やけに大きく聞こえていた。

323名無しさん:2018/08/20(月) 18:39:30 ID:mUoFvK1k0

ξ゚⊿゚)ξ「…ああ、そうさせてもらおう」

言って、ツンは手にしていたカップを放る。

小さく弧を描きながら、回転し、やがて地に落ちる。
パリンとした割れ音に、すぐさま剣戟の音が重なった。

ツンはその姿を目で追いかけるが、秒に行われる攻防の苛烈さに、
やがて嫌気がさしたのか目を伏せため息をついた。

ξ-⊿-)ξ(……まったく腹立たしいことだ)

視線を下げた間にも、耳には連続した音が響いてくる。

子供がお遊びにカップを叩くような、ふざけた剣戟音。

しかしかと思えば、金属音が止み、風切り音だけが鳴る瞬間がある。
見れば互いに、高速の一閃に対して身をひねり、屈み、迫る剣を避けていた。

(;^ω^)「―――……っ」

( ФωФ)「……む」

行動の読み合いすら見て取れず、その速度はただひたすらに、馬鹿げていた。

だが、そんな凄まじさの中にあって、しかし疑問が浮かぶ。
互角の戦いが未だ続いている、ように見える。

ξ゚⊿゚)ξ(……何故、神具を、能力を使わない?)

ひたすら速度を上げていく内藤に対し、ロマネスクはただ合わせるばかり、
聞いた話では、あの黒い大剣には強化の類の能力はない、
つまりロマネスクは、元々の身体能力だけで戦っているということ。

324名無しさん:2018/08/20(月) 18:40:23 ID:mUoFvK1k0

そしてそれは、対峙する内藤自身が一番に理解していた。

(; ω )(……こ、の…!!!)

手加減されている。

いや、相手にされていない。
相手をしているだけで、していない。

一度距離を取った。

剣は届く、速度も劣っていない、むしろ得物の差で僅かながら上回る。
とはいえ同じ理由から、こちらもあの大剣をいなすので精一杯だった。

( ФωФ)「ふむ……やはり、この程度か」

(;^ω^)「…っ」

( ^ω^ω)「『そう言う割には、てこずってるじゃないか?』」

(;^ω^)(何を…! てかなんかこれ久しぶりっ!)

( ФωФ)「うむ、では少しばかり手を抜くことをやめよう」

(;^ω^)「む…っ」

( ФωФ)「ではゆくぞ、これで終わるような真似はしてくれるでないぞ?」

言うなり、ロマネスクが地を蹴り、大剣を打ち下ろす。
内藤がその行動に反応できたのは、頭上に刀身が落ちる寸前だった。

咄嗟に地面を転がるようにして、ギリギリ避けきった。
しかしそれだけ、反撃など考える暇もなかった。

325名無しさん:2018/08/20(月) 18:41:20 ID:mUoFvK1k0

目では追えた、それが限界だった。


(;゚ω゚)(な、なんだ今のは…!!)

( ФωФ)「さあ立ち上がるがよい、もう一度だ」

言われるがまま、内藤は剣を支えに立ち上がる、
しかし正面、ロマネスクの姿が、その距離が瞬く間に詰められ。

横、薙ぎ払いの一閃。

避ける、暇はない。

受けるべく剣を振るう。

金属音、だが均衡は生まれることなく、押し込まれる。
それも当然、圧倒的速度を乗せた一撃は、同様の威力をも見せた。

内藤は地を蹴り、圧に身を任せるように投げ出し、大剣に振り回されるようにして、
吹き飛ばされ、幾度か地面を転がって、やがて壁に衝突することで停止した。

ξ-⊿-)ξ「………」

(;゚ω゚)「ぐっ……う」

(;゚ω゚)「そんな……こ、ここまで…?」

( ;^^ω)『差があるのか…!?』

( ФωФ)「何を驚いている、当然であろう」

(;^ω^)「ま、まだだ…!」

(#^ω^)「瀬川、もっと力を…! サンバースト!!」

326名無しさん:2018/08/20(月) 18:42:54 ID:mUoFvK1k0

( ФωФ)「無駄だ、そんなバラバラな意思で、神化などできるものか」

(;^ω^)「…っ」

( ФωФ)「剣と一体と成り、蓄えた力を身に宿す、それがその剣の本質だ」

( ФωФ)「だがお前は、恐れている、そればかりか距離を置こうとしている」

(;^ω^)「そんな、こと…!」

( ФωФ)「先ほども奴の人格が浮き出ていたな、一体となっていればああはならぬ」

( ^^ω)『………』

(;^ω^)「っ……!!」

( ФωФ)「能力だけの話ではない、己が手足とすべき剣を恐れ、感情にすら躊躇する」

( ФωФ)「そのような弱き心で、力を制する事なぞ、できるものか」

違うと言いたかった、しかし言葉の通り、湧き上がる力は微々たる物で、
先ほどまでとそう変わらず、頭にはどこか遠く、彼の声が響いていた。

( ФωФ)「…もう、諦めよ、内藤ホライゾン」

(;^ω^)「……だ、誰が! ふざけんなお!!」

( ФωФ)「真価も出せず、出した所で自我も保てず、そもそもが無謀なのだ」

(;^ω^)「………」

( ФωФ)「ここまでを歩んだ命の輝きは、素晴らしい物であった、それでよかろう?」

(  ω )「……………」

( ФωФ)「我と共に来るも良し、去りたければ去れ」

327名無しさん:2018/08/20(月) 18:43:33 ID:mUoFvK1k0

( ФωФ)「あるいは……お前達、みな、もとの世界に帰してやる事もできる」

(  ω )「……そんなこと、できるのかお」

( ФωФ)「何、簡単な話よ、召還者を殺せばよいのだ」

( ^ω^)「はっ……聞いた僕がバカだったお」

( ^^ω)『……だが内藤、奴の……言うとおりだ』

(;^ω^)(……お前も、さっきから何を言ってんだお!)

( ^^ω)『このままでは、無理だ、だから……』

( ^ω^)(それは嫌だって言ったお……)

( #^^ω)『状況を見ろ! もうそんな場合じゃ…!!』

(#゚ω゚)「焦って状況が見えてないのはお前の方だ瀬川!」

( ФωФ)「む?」

ξ;゚⊿゚)ξ「…!?」

(;^^ω)『な、何を…!』

(#゚ω゚)(お前を消すだって? そもそもお前、どうやって消せってんだお!?)

(#゚ω゚)(僕が願えば消えるとでも思ってるのか? それならお前、とっくに消えてるだろ!)

(;^^ω)『っ!!』

( ゚ω゚)(この場所で、僕はお前に消えろと言った、でもお前は居るじゃないか)

328名無しさん:2018/08/20(月) 18:45:21 ID:mUoFvK1k0

(  ω )(そうした所で、消えたのは繋がり、力だけだ)

(  ω )(今この場で、また戦う力を失くせってのかお…!)

(;^^ω)『………あ、ああ…そう、だな』

(;^^ω)『……すまん』

(  ω )「いいお…だけど、もう、わかったお」

( ФωФ)「相談は終わりか?」

( ^ω^)「ここからさ」

(  ω )「…………瀬川」

(  ω )「覚悟、決めろ、僕は決めたぞ」

(;^^ω)『…お前…!!』


もう、やるしかない。

それ以外の手はない。

内藤は目を閉じ、剣を構える。

思い出せと。

自分を失ったあの日、それでも尋常ならざる力を感じたあの感覚を。
自分を失ったその間、当然のようにその力を制し戦ったあの感覚を。

目を閉じているのに、周囲の様子が理解できる。

全身の存在がわからなくなるほど、手足が軽くなる。

けれど感触は、感覚は鋭く、額から頬にかけて熱が走る。
手足にも痺れのような、軋むような感覚、体格すらも書き換えて。

329名無しさん:2018/08/20(月) 18:46:36 ID:mUoFvK1k0

( メω-)「……」


ξ;゚⊿゚)ξ「あれは……」

( ФωФ)「愚かな……同じ事だとわからんのか」

(#メωФ)「同じかどうか、確かめてみろ!!」

言葉と同時に、その場に砂埃だけを残して、内藤の姿が掻き消えた。

次いで重厚な金属音がロマネスクの振るう剣との間で響く。

(#メωФ)「…は、あっ!!」

( ФωФ)「ほう…」

大剣が反対方向へと弾かれる、その隙を逃すまいと追撃の一閃、
ロマネスクはスウェーのような動作でそれを避けた。

更に着地と同時に身を回し、遠心力も加えての連斬、
そして今度は、互いの剣が中空でぶつかりあい、弾きあう。


弾きあった剣線は距離を取り、また衝突する。


一度、二度、と今度は奇妙な間を置いて、音と閃光が弾ける。


まるで空中でぶつかりあうボールのように、
瞬間的な衝突が、その回数を速めながら続いていく。


(#メωФ)「見える…動ける…! そうだ、これなら…!!」

( ФωФ)「うむ、確かにこれは我に匹敵する力よ」

( ФωФ)「だがいつまで持つかな」

330名無しさん:2018/08/20(月) 18:47:56 ID:mUoFvK1k0

(#メωФ)「……そんなもの」

(#メωФ)「お前を、ぶっ倒すまでだ!!!」


激しい金属音は、石造りの空間によく反響し包んでいく。
もはや居るだけで鼓膜を叩かれ苦痛を感じる場となった。

しかしツンは平然としたまま、その戦いの様子を眺めていた。

どれだけぶつかり合ったのだろう、やがて変化が起きた。

( メωФ)「…」

ξ゚⊿゚)ξ(止まった?)

(;メωФ)「っ…!!」

弾かれ距離を取った内藤の動きが、僅かな間ではあるが停止したのだ。
それも、どこか不思議そうに、周囲を伺いながら。

すぐに行動を再開したものの、徐々に、その頻度があがっていく。


(;メωФ)「く、そ……また…っ!」

頭を振るう、しかし頭にかかる靄のようなものは晴れない。
先ほどから時折、内藤は踏み出す理由を見失いそうになっていた。


原因はわかっている。


覚悟の上だった。

331名無しさん:2018/08/20(月) 18:49:08 ID:mUoFvK1k0

だからその前に、と。


けれど、すべての力を振り絞ろうとする、その度に。


(#メωФ)「でやあああああああああああああああああ!!!!!!」

(;ФωФ)「……むっ…!!」


その度に、欠けていく。

自分が欠けていく。

もう、友人がつけてくれた呼び名も思い出せない。

それを恐ろしいと思う自分すら、見失ってしまった。

けど、わかっている、わかっていた、だから今回は大丈夫。


(;ФωФ)「くっ……何故、まだ戦う、どうなるか分かっているのか?」


自分はどうなっても、ロマネスクを倒す。
そう、それだけを、ただ忘れないよう願い続けた。

そしてもう少し、もう少しで届く。

現に奴にも疲れが見える、力が上回る瞬間もある。

先ほども剣を押し切り、体を掠めた。

次で決める、それで駄目だならその次で、今度こそ。

死ぬ訳では無いのだ、一度は帰る事が出来た、
ならもう一度、すぐには無理でも、何時の日か。

何のために、倒さなければならないのかも、もうわからないけれど。

希望の為なのだから、大丈夫だと。

332名無しさん:2018/08/20(月) 18:50:40 ID:mUoFvK1k0

更に剣を振るう。




誤算だったのは。




未だ倒しきれないほど、ロマネスクの底が見えない事と。



( ФωФ)「このままでは、記憶や人格では済まぬ、廃人となろう」


( ФωФ)「それでは、あまりにも惨めであるな……仕方が無い」


( ФωФ)「侵断の剣、世界を分かつ銛よ」



ここまで、未だ神具を使用していなかったという、現実。


( ФωФ)「我が前にその力を示すがよい!」


そして、大剣からおびただしい数の黒い線があふれ出した。
ロマネスクを中心に、それらは一度広がり天井や床に張り付いては蠢く。

(;メωФ)「う…うわっ!?」

ξ;゚⊿゚)ξ「なん……だ、これは!?」

黒線の隙間から覗く向こうの景色は、すべてがズレて、歪んでいる。
まるで、割れて散らばったガラスに映りこむ世界のよう。

333名無しさん:2018/08/20(月) 18:51:25 ID:mUoFvK1k0

次いで、広がった黒線が今度は収束を始め、大剣に纏わりついていく。

ロマネスクは一度、剣を振る。

何の力も込めていない、軽い所作だった。

そんな剣線をなぞる様に、複数の黒線が飛び、壁に張り付いた。
瞬間、その境目ともいえる箇所が上下左右にずれた。

もう一度、返す刃で同じ剣線がなぞられる。

傍目に見れば、ただ剣を上下に振っただけ。

たったそれだけの動作で、城砦の重厚な石壁と天井の一角が切り抜かれ、
瓦礫となった石が崩れ、大きな穴が開いてその一角に陽が差した。


( ФωФ)「さて…」

ロマネスクは対する相手を改めて見据え、踏み出す。
対する内藤は、思わず後退、あとずさりして距離を取ってしまう。

あの結果を見て、壁を斬るだけだなど思えない。

もしもあの線が人体に触れ、剣を振るえば、距離すら関係なく、
恐らくは当然のように、あの瓦礫と同じ末路を辿るだろう。

どうすればいい、どうすれば、そう思う間もなく。

( ФωФ)

ロマネスクが、目の前に立っていた。
今度は、何の挙動も見えなかった。

しいて言うなら足元に剣を向けた程度のこと。

334名無しさん:2018/08/20(月) 18:53:15 ID:mUoFvK1k0

だがもっとおかしな事実に気付く、ロマネスクは先の位置から移動していない。
つまり移動しているのは、内藤自身のほう、ということ。

(;メωФ)「……は?」

( ФωФ)「慌てるな、お前との間の世界を、空間を断っただけのこと」

(;メωФ)「く、空…間…? な、なに、言って…」

そして、動揺し後ずさる内藤が手にした剣へと、大剣が突きつけられた。
同時に渦巻く黒線が伸びゆき、白銀の刀身へと巻き付いていく。

不味い、反射的に身を引くが、それも遅く。

キン、と澄んだ音を響かせながら、折れた剣が地面に向かい、
切っ先を小さく地面に差し込んでから、カランと倒れた。

根元から折られた刀身が、みるみる輝きを失っていくのを、
内藤は震える体を止められないまま、呆然と眺めていた。

(;メωФ)「あ…あ、あ……そ、んな……」

自分の手に残る部分も、すぐにくすんだ色となり、
刃こぼれがいくつも生まれ、更に崩れていく。


( ФωФ)「我が半身よ、せめて人のまま、眠るがよい」

( ФωФ)「お前は神である我に最後まで抗い、立ち向かったのだと、誇りながら」

(;メωФ)「……う、うう…っ」

ロマネスクが、ゆっくりと剣を持ち上げていく。
それはまるで、断頭台の刃のよう。

335名無しさん:2018/08/20(月) 18:55:17 ID:mUoFvK1k0

ξ゚⊿゚)ξ「……なるほどな」

ツンは遠巻きに眺めながら、思う。

あれが、奴の求めた力、あれだけ神具を集めて尚、求めた神具。
ロマネスクという男の身体能力に加えて、あの理不尽そのものといえる能力の剣。

成程、神を名乗るのも伊達ではないと。

もはやこの世界に、あの男に敵う者は存在しないのだと、理解しながら。


ξ゚⊿゚)ξ(……だが)


ξ゚⊿゚)ξ「気に入らんな」


ξ#゚⊿゚)ξ「……太陽、いや、内藤ホライゾン!!!」


( ФωФ)「む?」

(;メω )「……え、な、いとう…?」


ξ#゚⊿゚)ξ「貴様は、いったい何をしに来た、こんな結末でいいのか!」

ξ#゚⊿゚)ξ「その身を捧げた英雄達の名誉と、お前が言ったのだぞ!」

ξ#゚⊿゚)ξ「それがその様は何だ! それで、お前は向こうで会った者たちに何と言うつもりだ!!」

(;メω )「う……く、で、でも……もう」

ξ#゚⊿゚)ξ「同じ事を繰り返し、何も果たせず、無気力に殺されるつもりか、恥を知れ!!」

ξ#゚⊿゚)ξ「死ぬなら、その前に、せめて最後まで彼らに誇れるよう、抗ってみせろ!!」

336名無しさん:2018/08/20(月) 18:58:24 ID:mUoFvK1k0

叫びと共に、割れ音が響いた。
音の正体は、ツンが握っていた水晶剣の砕けた音だった。


(;メω )「…これは…」


そして、内藤の目の前に、先ほど砕けたはずの水晶剣が浮かんでいた。


ξ゚⊿゚)ξ「月鏡アロンダイト、私の命と共に、お前に預ける!!」

ξ゚⊿゚)ξ「剣が必要なら、それを使え!」

ξ゚⊿゚)ξ「そしてそれでもお前が敗北し、息絶えたなら、返してもらおう」

ξ゚ー゚)ξ「その後は、私も命を賭ける、安心して死ね」

(;メω )「命って…」

ξ゚⊿゚)ξ「元より時間稼ぎが目的、それを果たすだけだ」

(  ω )「………」

ξ゚⊿゚)ξ「さあ、剣を取れ! 初めて相対したあの頃と違うというのなら、見せてみろ!!」

(  ω )「……ああ」

なんてことだと、笑みを浮かべて内藤は顔を上げた。

安心して、戦って死ね、そんな、あまりにも雑で、乱暴な言葉に、
これほどまでに勇気を得て、そして力が沸くのを感じてしまうなんて。

( ^ω^)「ああっ……遠慮なく借りるお! ツン!!」

337名無しさん:2018/08/20(月) 18:59:29 ID:mUoFvK1k0

( ФωФ)「………そうか、ここで、お前がその剣を手にするか、そう…か」

( ФωФ)「…ふ」

(#^ω^)「ロマネスク、お前の言う人間の、最後の輝きってやつを…!!」

(*ФωФ)「ふふ、はははっ、面白い!! いいだろう…!!」


(#^ω^)「みせ――――――――――――」


浮かぶ剣を握り、両手に剣を携えて、頭上の剣に視線を向けて、
内藤は立ち上がりながら、迎え撃つべく剣を。





























         今。

338名無しさん:2018/08/20(月) 19:01:16 ID:mUoFvK1k0



         その瞬間。














         刃を失った剣と。





         刃を生み出す剣が。












         その手に、握られた。

339名無しさん:2018/08/20(月) 19:02:01 ID:mUoFvK1k0


『内藤』



声がした。



 ( ^ω^) ……?




『約束の……今がその時だ』




 (;^ω^) 何言ってるんだお、はせが…



 ( ^ω^)……



 ( ^ω^) はせがわ……?




ふと思う、何をしていたのだろう。

精々、まばたきをした、ほんの一瞬視界が暗くなって。


そして。


そして?

340名無しさん:2018/08/20(月) 19:05:30 ID:mUoFvK1k0

『ああ、俺の名はハセガワ』



『理解したんだ、すべて、思い出したんだよ、内藤』



『俺が誰で、そして何故、お前だったのかも』


 ( ^ω^) 僕であった理由…?


『ああ、悠久の時の中、もはやどちらが俺だったのかも定かではなくなってしまったが』


 ( ^ω^) どちら…ってどういう意味だお


『だが確かなのは、俺と奴がかつて同じ、一人の人間として、この剣を手に戦ったこと』


 ( ^ω^) 奴……?


『続く戦乱に心折れ、欠けた刃と共に二つに分かれたモノ』


『故にこの剣は、今も管理者と繋がっている、故に他の誰も、この剣を手にすることはできない』


『はずだった』



 (;^ω^) ちょっと話が難しくてよくわからんお! ちょっと、いい加減姿を…!

341名無しさん:2018/08/20(月) 19:07:27 ID:mUoFvK1k0

『そう』


振り向いた先に、彼は居た。
その姿に、内藤は凍りついた。



( ^ω^)『違う世界から、もう一人の自分がやってくる、その日までは』



 (;゚ω゚) …ハセ…ガワ……? え、その、顔…は…



( ^ω^)『そうだ、奴も言ったろう、半身と』


( ^ω^)『そう、奴は、ロマネスクという男は……』


( ^ω^)『かつての俺自身、そして、同時に、俺は―――お前だ、内藤ホライゾン』


( ^ω^)『違う世界に存在し、更に同じ時間軸に存在する、本来出会うはずの無い存在、それが』


 (;^ω^) もう一人の…異世界、僕…?


( ^ω^)『そうだ、それゆえに、お前はこの剣に選ばれた』

( ^ω^)『いや、既に、管理者となっていた』


( ^ω^)『この―――――成王剣のな』

342名無しさん:2018/08/20(月) 19:08:46 ID:mUoFvK1k0

 (;^ω^) その……せいおうけん、って、何だお、太陽の剣…ガラティン、じゃないのかお?



( ^ω^)『それは分かたれた時につけられた仮の名だ』


( ^ω^)『失われた刃の輝きを、光を求める剣として』


( ^ω^)『そしてもう片方、折れた刃は時を経て別の形となった』


( ^ω^)『自らの帰る場所を探すように、刃を生み出し続けながら』


( ^ω^)『そして今、それらは一つとなった』



 (;^ω^) それが……成王剣…?



( ^ω^)『そうだ、選定の意思によって手にする事ができる剣』


( ^ω^)『手にしたその人間を、王とする剣』



( ^ω^)『名を、成王剣コールブランド』



( ^ω^)『お前は意思の台座よりこの剣を引き抜いた』


( ^ω^)『これで、今度こそ正真正銘、お前はこの剣の、成王の管理者となった』

343名無しさん:2018/08/20(月) 19:11:49 ID:mUoFvK1k0

 (;^ω^)……それって…ハセガワ、お前は…


( ^ω^)『俺は、かつて剣と一体となった、その残滓に過ぎない』


( ^ω^)『真の管理者が生まれ、剣と一つとなったなら、消え往くが定めよ』


 (  ω ) そんな……


( ^ω^)『……やれやれだ』


( ^ω^)『お前なぁ、忘れてないか? お前たちは、神具をこの世界からなくすのが目標だろ』


( ^ω^)『ならどのみち、これが終わったらお別れなんだ、何を悲しむことがある?』


 (;^ω^)それは……でも、そんな急すぎるお


( ^ω^)『……ああ、でもまあ、この意思がある限り、お前の戦いを見守っているから』


( ^ω^)『もう、こうして合間見えることはなくても、それは絶対だ、ここに居る、見ているから』


( ^ω^)『だから、最後に見せてくれ、お前が打ち勝つ、その先を、お前のこれからってやつをさ』

344名無しさん:2018/08/20(月) 19:13:44 ID:mUoFvK1k0

 (  ω )………


 ( ^ω^)わかったお、どのみち消える、それが、お前の……望みなら



( ^ω^)「今すぐに…!」





(#^ω^)「――――て、やるおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」



両手には、いつしか一振りの剣が握られている。


金色の柄と、眩い金色の刀身が輝く剣だった。

振り下ろされる黒い大剣に、黄金の剣が重なった。

ぶつかりあった剣戟が、押し合う形で止まる。


体勢を見れば圧倒的不利であるはずの内藤だが、押し負ける気配は無く。

頭上にて交差する剣の向こう、対するロマネスクを見据えた。


( ФωФ)「その輝き…この力…まさに、かつての我が神具」

( ^ω^)「そうだ、かつてお前が切り捨てた、そして、その剣に対抗できる唯一のものだお」

( ФωФ)「どうかな、いかな神具とて……このエアの前では!」

345名無しさん:2018/08/20(月) 19:15:30 ID:mUoFvK1k0

距離をとるロマネスクと、それを追う内藤、
その間にも幾度かの剣戟が繰り返された。

しかし先ほどまでとは様子が違う。

弾かれながら、ようやく防いでいた大剣の一撃を、
今は体制もそのまま、ついには片手で捌いてみせている。

そんな姿に、ロマネスクはついに攻撃の手を止めた。


( ФωФ)「…そうであったな、衝撃すらも、取り込んでしまう、それが」

( ^ω^)「ああ、ハセガワが教えてくれた、この剣の本当の力を…!」

太陽と呼ばれていた頃の、光を吸収して力に変える能力とは、
いわば本来の能力の、こぼれだす様なほんの一滴でしかなかった。


この、黄金の聖剣がもつ本来の能力は、吸収。


王たる者が他者から富を奪う事で大きく、強くなるように、
この剣もまた、他者の力を奪うことで王たる抜き手に力を与える。


あの雪国の闘技場の舞台で、剣が打ち砕かれるほどの威力を受けた事で不完全に発現し、
衝撃自体を取り込み、わが身の力と変えて彼の女王を打ち倒したように。

あるいは戦場で、敵対する者が放つ雷を取り込んだように。


力となるエネルギーを、質量の有無に関係なく吸収し、己が力とする。


戦えば戦うほど、剣にダメージを与えれば与えるほど、
どこまでも強く、無限進化を促す究極のカウンター能力をもつ神具。

それが神具たるコールブランド、その真価であり。

ハセガワと、そしてショボンが内藤ならばと託した理由。

346名無しさん:2018/08/20(月) 19:16:45 ID:mUoFvK1k0

( ФωФ)「だが、空間、そして事象すらも断ち切る、このエアの前ではどうだ…!」

(;^ω^)「っ…!?」

黄金の剣に、蠢く黒線がふたたび絡み付いていく。

振りほどこうとするも、質量もなく、ただのホログラムのような存在は、
引き剥がすことも、能力によって吸収することもできない。

見れば刀身は、絡みついた箇所からズレが徐々に大きく。


( ФωФ)「神は二人と要らぬ、これ以上力を高める前に……消えよ!」


ロマネスクが剣を振るう。


(#^ω^)「いや、いいや…! 僕は、僕らは……もう折れたりしない! するもんか!!」


内藤は迷うことなく前に踏み出し、受けるべく剣を眼前に。


瞬間。


衝撃が、圧力となって空間を満たす。
火薬の炸裂音にも似た音が響いた。

347名無しさん:2018/08/20(月) 19:21:04 ID:mUoFvK1k0

(  ω )「………」

(  ω )「………うぅ」


( ФωФ)「……まさか、な」

( ФωФ)「驚いたぞ、よもや、この世界を裂く力までも……」


たしかに、あの黒線は防ぐ術がない、あの割断も不可視の現象ゆえ避ける術も無い。
だが、剣が折られるその瞬間は、その一瞬だけは、確かに、世界をも裂くという『衝撃』が発生する。

故に今、内藤が剣から感じているのは、まさに究極の力。

そして放たれる剣は。


(#メω゚)「う、ああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」


極限まで高められた、一閃となる。


昂ぶる力を抑えきれず放ったそれは、ただ虚空を切り裂くだけの結果となった。

しかし斜めの剣線は、天井から床までを真っ直ぐに刻み、幾度かの砂埃と地鳴りの音を響かせ、
その空間のおよそ半分が文字通りに切り取られ、ゆっくりと落ちていった。

見れば、下は一階層分まるまる切り取られており、二階層の半ばまで覗いている。


そして地上では、突如として、最上部が真っ二つに断たれる異常を目撃し、
どよめきが広がっていく、見れば大穴が斜めに空いている、そんな突然の異変と、
落ちてきた巨大な瓦礫に動揺する声が上がっていた。

348名無しさん:2018/08/20(月) 19:23:27 ID:mUoFvK1k0

ξ;゚⊿゚)ξ「……き、斬った、のか、城ごと…!」

(;メω゚)「っ…づ、う」

( ФωФ)「く、くく……いいぞ、久しく感じていなかった感覚だ」

( ФωФ)「流石は我が半身……我が全力で相手をするに相応しき者よ!」

(;メω゚)「ふー…う、ううう…!!!」

( ФωФ)「どうした、何を堪えている、神化の力を解き放ってみよ」

( ФωФ)「そして挑んでくるがよい、かつて神々を制し世界を救ったこの我に!!」

(;メω゚)「うる、さい…! 僕は、お前と同じになんか……ならない…!」

(#゚ω゚)「なってたまるか! 僕は、人間として、お前を……倒す!!!」

(#゚ω゚)「そうだ、今度こそ……本当の、究極進化を…!!!」

額から浮かんでいた、赤い腫れが引いていく。

神化の証と言わんばかりに浮かんでいたその痕が、中心、内藤の目に向かって。
代わりに、その黒い瞳の色を、鮮烈なまでの赤い輝きに変えて。


(#^ω^)「行くぞ、ロマネスク…! 千年越しの決着を、ここでつけてやる!!!」

( ФωФ)「フフ、フハハハ!! いいだろう、受けて立つぞ人間!!!」


どちらともなく駆け出し、最初の斬りあい、その一撃で、砦の最上部は崩壊した。
下の階層へ崩れ落ちる瓦礫の上、ツンは外を見る。


ξ-⊿゚)ξ「やれやれ、見物人のことも考えてほしいものだ」

349名無しさん:2018/08/20(月) 19:24:18 ID:mUoFvK1k0

二人は宙に投げ出され、落ちていく。
その過程でまた斬り合って、また離れた。



( ФωФ)「下で待っているぞ」


ロマネスクは宙を切る、黒い歪が生まれるや否や、その姿が掻き消えた。
姿を探せば、地上の岩場、その一角から内藤を見上げている。


(;^ω^)「くそっ…ズルい…!」

(#^ω^)「エアロバリア、オン…!!」

その場所へ向けて、渦巻く風の道を造れば、
砂を巻き上げ、茶色い巨大な竜巻が生まれ両者の姿を覆い隠す。


続けざまに起きた城砦の崩壊と、巨大竜巻の発生。

既に収まりかけていた戦場は、それで完全に停戦状態と化した。
代わりに場はひたすら騒然とし、あちらこちらで混乱が起きている。




(;'A`)「おわわっ、また瓦礫が! 石が!」

(;'A`)「って……あれは…ブーンか!?」

350名無しさん:2018/08/20(月) 19:25:08 ID:mUoFvK1k0

('、`*川「あれは……」

<_フ;゚Д゚)フ「オイオイオイ、今度は何だ、どうなってんだ!?」

( 凸)「あの竜巻さー、見覚えあるわ」

( 凸)「俺もだ、あんまりいい思い出じゃねーけどな」





(´・ω・`)「やれやれ、ちゃんと働いてるみたいだね」

川;゚ -゚)「……な、なんだ、まさか、空で戦ってるのか…?」

(´・ω・`)「いやぁ、落ちてるだけでしょ」

(*'ω' *) 「ポヒヒィーーーン!!!」




( - -)「ほんとにアレ、大丈夫なの?」

ノパー゚)「問題ないわよ、この私が見込んだ子なのだから」

lw´‐ _‐ノv「だから心配なんだけど…」

lw´‐ _‐ノv「ていうか、もう仮面取ってもいいよね、いい加減邪魔だよ」

ノハ;゚⊿゚)「取ってから言うな」

351名無しさん:2018/08/20(月) 19:26:17 ID:mUoFvK1k0

やがて竜巻は舞い上がった砂だけを残して消えた。



視界の悪い空間に、音だけが遠く響く。


地鳴りのような音が響いては大地が揺れる。


見れば他の城砦がまた一つ、ひび割れながら崩壊する。


辺りの岩肌に謎の線が走れば、それらは歪に砕かれて崩れていく。


当初は近づいて様子を伺おうとした者も居たが、そんな彼らの近く、大きな岩山が三つほど、
見えない力により、まとめて切り崩された事で身の危険を察したのか、すぐに逃げ出した。


気付けば、誰もが争いを忘れてその光景を眺めていた。

一体何が起きているのか、何が暴れたらこうまで、
あれほどあった、切り立った岩山の群れが更地となってしまうのか。


と、その時。


砂埃の中から二つの影が飛び出した。

352名無しさん:2018/08/20(月) 19:27:35 ID:mUoFvK1k0

( ФωФ)「むん…!!」

一つは束ねられた黒い線を鞭のようにしならせ、その跡を追うように斬撃を放つ。
大岩や瓦礫を砕き割りながら、鋭利な線がもう一つの影へと伸びる。

そして地面を割る線が、黄金の剣を構える姿にぶつかると、
破裂音だけを残して霧散し、互いの間に綺麗な亀裂を生んだ。


(#゚ω゚)「うおりゃあ!!」


お返しと言わんばかりに、黄金の剣が、離れた相手に向かって振るわれる。
直線だった亀裂が大きく幅を広げ、見えない衝撃に吹き飛ばされるように進んでいく。

合間に存在した大岩は、その衝撃で砕け散り、砂埃をさらに巻き上げる。


そして互いに地を蹴り、衝突する。


それだけで、凄まじい衝撃が周囲に発せられ、地は陥没し、瓦礫の山がまた崩れていく。
山を消し飛ばすほどの力が反発し合う結果だ、遠巻きに居ても尚、圧だけで人が尻餅をついた。


( ФωФ)「……よくぞ、ここまで」

( ^ω^)「……」

ロマネスクは息を切らしながら、眼前の内藤を見る。
対する内藤は息も乱さず、ただ、周りの様子を見ていた。

353名無しさん:2018/08/20(月) 19:28:51 ID:mUoFvK1k0

( ^ω^)「…僕の力なんて、無いようなもんだお」

( ФωФ)「だが結果的に、お前は我をも凌ぐほどの神化を果たした」

( ФωФ)「最後に忠告しよう、今、ここで我を討てば、お前は不幸になる」

( ФωФ)「これほどの力を見せ付けたのだ、人のまま、人として生きる事などできぬ」

( ФωФ)「恐れ、妬み、やがてその悪意がお前を殺す、かつての、我が半身のようにな」

( ^ω^)「……」


しばし固まっていると、どこからか野次めいた声が聞こえてくる。


行け、やれ、負けるな等の声援から、何してんだ、さぼるな、とブーイングまで。
聞き覚えのある声ばかり、なんだかにやけてしまう。


けれどその反面、そんな声が聞こえてしまうほどに、不気味なまでの静寂がそこにあった。


( ФωФ)「現に見ろ、周囲の目を、誰もがお前に畏怖の目を向ける」

( ФωФ)「友の存在とて、今は救いになろう、だがもし、それを失くしたならば、どうだ」

( ФωФ)「お前は、永遠の孤独を背負うことになる」

(  ω )「………」

( ФωФ)「必要なのだ、信仰されるべき神が、絶対の存在が…!」

354名無しさん:2018/08/20(月) 19:30:13 ID:mUoFvK1k0

( ФωФ)「見よ、世界は今、試練に直面し、一つとなろうとしている」

( ФωФ)「今が好機なのだ、我か、お前でも良い、絶対の力をもつ者が君臨するのだ」

( ФωФ)「全ての者が神を信仰し、その神が統治する世界、これこそあるべき平和の形だ」

( ^ω^)「まるで、お前がそう仕向けたみたいな言い草だお」

( ФωФ)「無論そうではない、あくまでこれは、お前たちがたどり着いた結果だ」

( ФωФ)「だからこそ、これが最後の選択肢となる」

( ФωФ)「内藤ホライゾン、我が半身よ、もう一度、我と共に歩まぬか」

( ^ω^)「んー……」


( ^ω^)「悪いけど、話が難しくてよく聞いてなかったお」

( ^ω^)「まあ、なんせ友達にも言われるくらいだから、考えなしの大馬鹿者だって」

( ^ω^)「実際、本当に、そうだな…って、思うことばかりでさ……」

( ^ω^)「僕の考えなんて、きっとろくでもない事にしかならないって、思うんだお」

( ^ω^)「…だから僕は、ただそいつの為に、そいつの言うとおりにしようって思ってるんだお」

( ^ω^)「そしてお前は、そいつの考える世界にとって、邪魔なんだお」

( ^ω^)「だからお前を倒すよ、理由も、大義も関係ない、あとの事なんて、全部丸投げだお」

355名無しさん:2018/08/20(月) 19:30:49 ID:mUoFvK1k0

( ФωФ)「そうか」

返事を聞き、ロマネスクは小さく頷いた。

口惜しさや無念は感じられない、ただただ、受け入れるように。


そして空を眺めている。


雲ひとつ無い快晴の空は、こんな殺し合いの場とは不釣合いに青く、綺麗だった。
ドクオの言うように、完全な悪は存在しないのかもしれない。

目の前の男にも、きっと計り知れない何かがあったのだろう。
ハセガワの、僅かな記憶と想いが確かなら、彼は千の年を越えた存在。

人の理で測れるものではないのだろう。


だが、それでも許されないとも思う、罪は、やはり罪なのだから。
容赦はしないと、決意を新たに見据える空に、異様なものが浮かんだ。


(;゚ω゚)「…は?」


青空に、黒い線が走っている。


山の彼方から続くそれは、向かう地平線の彼方まで伸びていた。
そして線の出所は、目の前に立つ男が掲げる大剣から発せられている。


(;゚ω゚)「何を…おま!?」

356名無しさん:2018/08/20(月) 19:31:54 ID:mUoFvK1k0

( ФωФ)「ふ、ならば、神殺しがどういうものかも、教えてやろう」

( ФωФ)「世を統べる神を殺すという事は、世界を導く光が消えるという事」

( ФωФ)「その責を、どう果たす、人間よ!!」

(;゚ω゚)「てめ、やめろこの…!!!」

( ФωФ)「もう遅い!!」


すぐさま駆け出すが、ロマネスクの掲げる剣はすでに振り下ろされ。
剣線を止める事はできず、大剣が地に突き立った。

その両腕を切り落とすが、ロマネスクは笑みを浮かべたまま空を見る。

空に走る線を中心に、亀裂が広がっていく。

青空が、堕ちていく。

ひび割れるように、剥がれ落ちるように。


(;゚ω゚)「あ、あ…っ、こ、んな…! 嘘、だお…!?」

( ФωФ)「は、ハハ、フハハハハハハハハハ!!!!!!!!」

(#゚ω゚)「ろ、マネスクぅ……お前ぇ…っ!!!」

( ФωФ)「これぞ、最後の試練……」

357名無しさん:2018/08/20(月) 19:32:41 ID:mUoFvK1k0

内藤は剣を振るう。


その首が数度回転しながら、血を撒き散らし、落ちていく。

生首は、それでも言葉を続けた。


「見事、越えてみせよ」

(#゚ω゚)「くっ……こ、この、やろ…!!」

血の海に沈む姿を、影が覆っていく。

空の落下は勢いを増して、その向こう、一切の明かりの無い常闇が広がっていた。
その闇が広がるにつれ、地上も影で覆われて、夜がくる。

しかし月も、星も存在しない夜空はただ、どこまでも黒く。

影から逃れようと人が最後の明かりに群がっていく。

悲鳴と、苦悶が、世界に満ちていく。

もはや敵も味方も無い。

争いのない世界が訪れようとしている。


  ゚ω゚)「みえ…ない……全部、消えて、いく」


遠い空から、何もなくなっていく。

地平線も、山も、境が無い、一面の黒。

世界が、闇に閉ざされていく。

人が小さな灯りを焚いて、光を見出さんとする。

しかしこの暗闇は影ではない、そのせいなのか、
光は一切広がらず、小さな点にしかならず辺りを照らさない。

悲鳴がまた、響いてくる。

358名無しさん:2018/08/20(月) 19:37:59 ID:c.a5104g0
ロマの凄い悪あがき

359名無しさん:2018/08/20(月) 19:51:21 ID:mUoFvK1k0



   ω )「僕が…僕が…もっと早く」


      「僕の、せいで…」


あんな、余計な話などするべきでは無かった。
勝機と見た瞬間に、迷わず首を跳ねてしまうべきだったのだ。

甘さが、決意の弱さが、この結果を招いた。

果たしてこの規模はどれほどの物なのだろう。
この周囲だけ、そんな可愛いものである筈が無い。

ともすれば世界中、すべてが闇の中。

光の無い、永遠の世界。


     「さ、むい……」


     「ちがう、こんな、こんな世界にするために、戦ってきたんじゃ……」


最後の最後で、またしても、失くしてしまった。
それもこんな規模で、もう、どうしたって償えない。



     「…僕のせいで……」


     「ごめん……ごめんなさい……ジョルジュさん、僕は、結局……!!」

360名無しさん:2018/08/20(月) 19:52:56 ID:mUoFvK1k0

何もない世界でひざまづき、いつしか剣をも落としていた。
カラン、カランと音が鳴り、いつしか足音が側で聞こえた。



     「ブーン、大丈夫だ、あとは俺が…」



     「………え、ドク、オ…?」



俯いていたから、そして光が広がらないから気がつかなかったけれど、
ふりむけば、光る線をもつ誰かの影が立っていた。



     「ああ、言ったろ、ここは、任せろって」



そこは、気付かなかったけれど、城砦前。
最後にドクオと別れた場所だった。

361名無しさん:2018/08/20(月) 19:54:09 ID:mUoFvK1k0

     「だ、だけど……もう、こんな…」


     「ずっとさ、考えてたんだ」


     「世界を焼くって、どういう事だろうって」


     「世界中に火をつける事なのか、焼き払う事なのか」


     「でもそれって、単に地上にあるものを焼いてるだけだよな」


     「だからさ、世界を焼くってのは……きっと」



光の柱が、闇を貫くように天へと昇っていく。
どこまでも、どこまでも高く、空をも突き破るように、どこまでも。



     「太陽だよ、太陽なんだ、世界を焼くって」


     「いつだって俺たちを、世界を、焼き焦がしながら」


     「そして、照らしてくれるもの」

362名無しさん:2018/08/20(月) 19:55:23 ID:mUoFvK1k0

輝く柱が闇夜にかかる姿を、今、世界中の人間が見つめていた。
自分の姿さえ見えない世界で、それは紛れも無い希望であるが故。




     「こいつはさ、そんなのと同じ事ができるんだって、すごいよな」


     「だから、もうこの剣は、破壊の剣でも、災いの杖でもない」


     「もう、誰にも呼ばせない、こいつは……今この時から、世界を照らす永遠の光」


     「永光の剣」





(♯'A`)「レーヴァテインだっ!!!!」




光の柱が闇を斬り裂いていく、まるでカーテンを開くようにして、
輝きのあとに眩しいほどの青空が追従していく。


更にその後を追いかけるように、地上の影が消えていく。


地上と、そして再び現れた空の太陽、二つの光が世界を満たす。


どよめき、そして、一斉に歓喜の声が溢れる。


天へと昇った光の柱は、小さな粒子になって空を流れ、消える事無く振り続ける。


それはまさに、奇跡と呼ぶに相応しい光景だった。

363名無しさん:2018/08/20(月) 20:00:05 ID:mUoFvK1k0

( ;ω;)「あ、ああ、まぶ、まぶしい…! 眩しい!?」

(;'A`)「よお、って……おま、なんだその目、真っ赤だぞ!?」

( ;ω;)「……ひかりが……戻って……あぅ、あ」

(;'A`)「てか、そんな、泣くなよ……まったく、どっかの誰かさんみたいだ」

( ;ω;)「だっで、だっでもう、だめだど…!!」

( ;ω;)「ありがとうドクオ、ありがとうだおーーーー!!!!」

(;'A`)「お、おい…! あーもう、締まらないなぁ!」

( ;ω;)「うわああああああああああん!よかった、よかったよおおお!!!」

(;'A`)「それより! それよりもさ! ブーン、終わったんなら、俺たち行かなきゃいけないとこあるだろ!」

( ^ω;)「え? あ、ああっ」

( ^ω^)「そうだお、報告しに行かなきゃ!!」

('A`)「ああ! 行こうぜ!!」

( ^ω^)「ようし、ぽっぽちゃんやーーーーい!!!!」

(;'A`)「そんな金色雲呼ぶみたいな……」

(*‘ω‘ *) 「ぽヒヒヒィィィィン!!!!!」

(;'A`)(来てるし……)

( ^ω^)「何度も悪いけど、ヒルトまでお願いしたいんだお」


(*‘ω‘ *) 「おっけー!!」


(;^ω^)(;'A`)「「!!!!!?????」」

364名無しさん:2018/08/20(月) 20:01:19 ID:mUoFvK1k0

そしてそんな様子を、遠巻きに眺める姿があった。
巨大船の上、小さくて、声も聞こえないけれど何やら楽しそうだ。


川 ゚ -゚)「混ざりたいんじゃないのか?」

(´・ω・`)「…そっちこそ、会いたいんじゃないの?」

川 ゚ー゚)「ふふ、ああ、だけどすべき事がある、今がそうだろう?」

(´・ω・`)「うん、今以上のタイミングは無いね」

(´・ω・`)「スピーカーの用意は?」

( 凸)「アイ、サー!」

(´・ω・`)「それじゃあ、これがファイナルフェーズだ、みんな、頼んだよ」

「「「「おおーーーー」」」」



そして元、戦場の最中では、敵も味方も入り乱れたまま、
暗闇そして解放という混乱にのまれ、しゃがみこんだ姿ばかりが見える。



ノパ⊿゚)「終わったのね…本当に」

('、`*川「けど、結果的には、勝ち負けではなく完全に戦意の喪失による停戦…」

365名無しさん:2018/08/20(月) 20:03:14 ID:mUoFvK1k0

('、`*川「まるで……まるで、こうする事が目的だったような……」

ノパ⊿゚)「承知の上の…手のひらの上だとでも? 趣味が悪いぞ、そういう思考は」

ノパ⊿゚)「我々は立ち向かい、目標を達成した、今はそれを尊ぶべきだ」

<_プー゚)フ「そうそう、考えすぎてもしょうがないって」

('、`*川「あなたは本当に考えたほうがいいと思うわ」

( 凸)「あの暗闇の中でもなんか、平気そうだったよなこいつ」

<_プー゚)フ「え、なんで、結構落ち着く感じだったじゃん?」

( 凸)「なんやこいつこわ……」

lw´‐ _‐ノv「これで、これからはうちも外交国家の仲間入りかぁ、照れるや」

ノハ;゚ー゚)「……何が?」


『ザザーーーーーザ』


『 の戦場に るすべて   に聞いて   い 』


ノパー゚)「始まった、では、ご拝聴するとしましょうか」

lw´‐ _‐ノv「そうだねぇ」

366名無しさん:2018/08/20(月) 20:05:11 ID:mUoFvK1k0

『凄惨な戦いに先の暗闇、さぞ疲労しきっている事と思うが、なんて、言っても』


『姿も見えない人間の言葉など不審だったな』


『まず名乗らせて欲しい、私は、今は亡きVIPの王族だった』


『今こうしてこの場を借りて語っているのは、この場の全ての人に、聞くだけでいい、聞いてほしいことがあるから』


『今ここに居るのは、とても強い、勇気をもった人たちだから』



(´・ω・`)「相変わらず下から目線な演説だなぁ」

( 凸)「えー、それがいいのに」

(´・ω・`)「王族言ってるんだから、多少威厳ってのも…」

( 凸)「それに可愛いし」

( 凸)「それな」

(´・ω・`)「彼氏持ちだけどね」

367名無しさん:2018/08/20(月) 20:05:52 ID:mUoFvK1k0

『私には、恐ろしくて立つ事もできない場所に居る、それは、本当にすごいと、心から思う』


『ここには、世界に伝わっている通り、逆賊から世界を守るため、正義の心で立ち上がった人も居ると思う』


『愛国心で戦う人も、譲れない何かのために戦う人も、あるいは、何らかの…恨みの下に』


『そしてきっと、どうしてこの争いが起きたのか、それすら知らないままの人も居るだろう』


『私は今、この戦争が何故起きたのか、それを、伝えたく、ここまで来た』




(;^ω^)「これ……クー、だお?」

('A`)「ああ、そうだよ」

(;^ω^)「よかった、のかお? 何も、言わないで…」

('A`)「大丈夫だよ、ブーンは知らないだろうけど」

('A`)「あれ、行動力すっごいから、常に支えなきゃいけないほど、弱くないさ」

(;^ω^)「そ、そうなの…? いや、でもなぁ…」

('A`)(聞こえますか、ギコさん、しぃさん、つーさん)

('A`)(彼女が、自分の足で進んで、自分が戦うべき場所に立ってます)

('A`)(強く、なったでしょう、フッサールさんも、安心して、聞いてあげてください)

368名無しさん:2018/08/20(月) 20:06:55 ID:mUoFvK1k0

『私の知る真実を』


『あなた達の知る真実と、照らし合わせるために』


『信じろとは言わない、ただ、まずは話を聞いて欲しい』


『そしてできれば、問いかけて欲しい』


『よくも、という憎しみの前に』


『どうして、という問いに答える機会を私達に与えてほしい』




川 ゚ -゚)「……ふー」


心臓が早鐘を打つ、マイクが拾わない事が不思議なほど強く、
しかし大丈夫だ、頭はまだちゃんと回っている。

次の言葉を紡ぎながら、ふと視線を泳がせる。


一隻の船が、何かの動物にひかれて走っていく。


その船から、こちらを見ている誰かと、目が合ったような気がした。


手を差しだし指先で泳がせた。


どこへ行くのか知らないが、まったく酷い話だ、人が頑張っているのに。
無視してどこかへ、また、行ってしまうなんて、どうかしている。

思いながら、その行為が信頼の証なのだと、ただ依存していた過去の自分が叱咤する。

だからせめて、次に会ったらそう、まずひっぱたいてやろう、そう思いながら。

369名無しさん:2018/08/20(月) 20:08:02 ID:mUoFvK1k0

『呪われた神具を利用して、湖鏡という国を脅し』


『ロマネスクの支配下にあった人間の暗躍により』


『結果……私達を迎えてくれた、あの心優しい巫女たちが犠牲となってしまった』


『今でも、悔やみきれない事だ、原因だ真実だと語ったところで、私達の行動の結果である事は変わらない』


『その事に不審を抱いた事が、彼の湖鏡国の管理者が私達の下へつく発端と』




<_プー゚)フ「………」

「それが……今のが、真実だってのか!?」

('、`*川「…そうよ、まだ、私の体にはあの時の傷痕があるわ、見たい?」

「い、いや、そんなのは……」

<_プー゚)フ「なんだよ、信じられないのか?」

「そういうわけじゃ……いや…そう、だな」

「信じ……たく、ないのかもな」

「……ああ、俺も、それだな」

<_プ -゚)フ「お前ら…」

370名無しさん:2018/08/20(月) 20:09:14 ID:njAXIGSk0
支援

371名無しさん:2018/08/20(月) 20:09:39 ID:mUoFvK1k0

「だってよ…それ、信じたら、俺……なんて事を…」

「必死に身体張ってくれたあいつらに……俺たちは……」

('、`*川「……それについては、私も同じよ」

('、`*川「エクスト達、そして渋沢、彼らが居なければ、きっと、もっと取り返しのつかない事をしていたわ」

('、`*川「押し潰されそうな気持ちも、真っ直ぐに彼らを見れない気持ちもよくわかる…」

('、`*川「でも、罪の意識から目を背けてはダメ、それでは前を向けなくなってしまう」

('、`*川「ちゃんと後悔して、悔やみながら進むの、そして自分にできること、一緒に考えましょう?」


<_プー゚)フ「………」

( 凸)「何、ニヤニヤして、トマト食べたいの?」

<_プД゚)フ「次Mって書いて渡したらおこだからな!!」

( 凸)「ところで、ツンさんどこに居るんだろう」

<_フ;゚ー゚)フ「あ、そういえば……まさかまだあの城ん中か?」

(;凸)「めっちゃ崩れてんだけど、え、大丈夫なの、あれ?」

(;凸)「いや、そもそも、足止めに一人で行ったんだろ…?」

(;凸)「ああ、あんな、山を荒野にしちまうような化物と相手に……」

( 凸)「………いや、無理じゃね、今度ばかりは」

<_プ -゚)フ「ツンの兄貴……ちくしょう、人の事カービィ扱いして、自分が星になってどうすんだよ…!」

(;凸)「どうか安らかに……」

372名無しさん:2018/08/20(月) 20:11:26 ID:mUoFvK1k0







『人を操る神具を使うものを相手に、己が仲間を守るために単身』


『月鏡の管理者、彼の存在なくして私達はありえなかった、彼こそ英雄であると』




「へくしっ」



ξ゚⊿゚)ξ「……なんか、背中がかゆくなるな」

ξ゚⊿゚)ξ「ていうかここ埃っぽくていかん」

ξ゚⊿゚)ξ「さっきからくしゃみが……」

ξ;゚⊿゚)ξ「ふぇ…」

ξ゚⊿゚)ξ「止まった、くそ、早く出口を探さんと……」


ξ#゚⊿゚)ξ「ええい、通路はどこだ! 目印くらい用意しろ!」

373名無しさん:2018/08/20(月) 20:12:14 ID:mUoFvK1k0

………。







しばし時は流れ、ここはヒルトの街から少し離れた山間の広場。

石碑が立ち並ぶその場所で、両手を組んだまま目を閉じる少女の姿があった。
晴れ間は覗けど、まだ降った雪は新しく、獣の歩いた跡すら存在しない。

吐息は白く、雪が煌く世界はまだまだ寒さだけを伝えている。


从 ゚∀从「……な、なあ…さすがに、身体壊すって、な、宿に戻ろうぜ?」

ζ(゚ー゚*ζ「いえ、私は大丈夫です、ハインさんこそ付き合わなくていいんですよ」

从;゚∀从「そう言われてもなぁ……またあんなのがあったら、怖いし」

ζ(゚ー゚*ζ「あのいきなり真っ暗になったの……なん、だったんでしょうね?」

从;゚∀从「うーん…異常気象…じゃないよな、流石に…」

从 ゚∀从「ま、晴れたからいいけどさ」


「ィ ン」


从;゚∀从「ん…なんか今聞こえたか?」

ζ(゚ー゚*ζ「えっ、どんなですか?」

从 ゚∀从「なんか、鳴き声みたいな…」

374名無しさん:2018/08/20(月) 20:12:54 ID:mUoFvK1k0

「ヒヒヒィィン」




ζ(゚ー゚;ζ「っ!」

从;゚∀从「これって、あん時の…!? まさか…!」



山道に足跡を残して駆ける二人の先には、あの時の馬と、
ボロボロになった船、そしてその上で手をふる、あの二人の姿。

そして笑顔で、親指を立てるジェスチャーが、その結末を教えていた。











( ^ω^)

('∀`)


从*゚∀从

ζ(;ー;*ζ

375名無しさん:2018/08/20(月) 20:14:25 ID:mUoFvK1k0

泣き笑いのような声が、何度も何度も上がっては山間をこだまする。
彼らは奥へと進んでいった、目的地は、とある石碑。

直接、まず第一に伝えなくてはならないと、そう思っていたから。



英雄を目指し、英雄にはなれなかった少年と。


復讐を誓い、復讐を果たせなかった少年は。



しかし、とても満足そうな笑顔に涙をためて、最後に感謝を告げた。




ここまでこれた。




あなたに出会えた、おかげです、と。




遠く空へ、響いていた。






                




                                          next to epilogue、、、、、、l

376名無しさん:2018/08/20(月) 20:24:16 ID:mUoFvK1k0
あとは後日談ことエピローグと、読む必要が無いというか、読もうと考えたらあかん物、そんな自己満足の二本立て。

いやあ終わった終わった、詰まる話がエア対エクスカリバーがやりたかっただけの10年前の妄想でした。
でも素直に主人公にエクスカリバーってのもつまらないから、伏線で隠すのやってみようと思ったけど技術が足りないオチ。
そして思ったより書くことが無い、お疲れでした、ではまた次が正真正銘最後です。

377名無しさん:2018/08/20(月) 21:07:39 ID:sljEb2HY0
乙!復活してくれて本当に嬉しかった!!
エピローグも楽しみにしてるからな!

378名無しさん:2018/08/20(月) 22:24:42 ID:2W/xy6xk0
乙!!!完結本当にありがとうアイシテル

379名無しさん:2018/08/20(月) 22:26:09 ID:txXHxzC20
そうか……もう完結か……!

380名無しさん:2018/08/20(月) 23:45:26 ID:njAXIGSk0
お疲れ様!最後まで見届けるぞ

381名無しさん:2018/08/21(火) 01:16:50 ID:80p9wXCE0
乙!本当に乙!
最終話も変わらずの熱量で嬉しかった!ちょっと泣いたぜ!

382名無しさん:2018/08/21(火) 11:36:32 ID:bdBls2Rs0

復活そして完結おめでとう
本当に嬉しい

383名無しさん:2018/08/21(火) 23:06:18 ID:MRqI3W720
終わっちゃうのか……お疲れ様
エピローグ来たら読み返すぞ

384名無しさん:2018/08/22(水) 13:57:25 ID:/t.11heQ0
乙でした!
次回作のご予定があれば聞きたいです

385 ◆6Ugj38o7Xg:2018/08/22(水) 17:59:58 ID:5yZYcoEU0
とり見つけたというか辞書復旧できたわ、これでもう一々コピペせんで済むのです……。

そして今日か明日には投下できそうですよ。


そして次回作ね、まず現行が終わってないからなぁ……
特に文猫とあとスタドラ元ネタのやつ、話を考えててとても楽しかったから書きたい。

ただしいて言うなら、いい加減バトルのない女の子可愛いだけのを書きたい感。
具体的には昔書いたエロゲ的なノリのやつ、あれで、ちょっと書きたいお話があるといえばある。

386名無しさん:2018/08/22(水) 18:23:25 ID:LPcqpkEo0
全部書け

387名無しさん:2018/08/22(水) 21:05:59 ID:V8aKdRfw0
文猫の続きとか、そんなん読みたいに決まってますやん……

388名無しさん:2018/08/22(水) 21:16:42 ID:Ro4hPqDA0
そういや文猫は続き書き掛けだよね
したらばのブーン系のどっかにスレあったはず

389名無しさん:2018/08/22(水) 22:18:11 ID:7IH89o8w0
スタドラ元ネタのやつって何?

390 ◆6Ugj38o7Xg:2018/08/22(水) 22:47:12 ID:5yZYcoEU0

 エピローグ 「遠く離れていても」






(´・ω・`)「やっぱりだ、やっぱりこうなった………」



書類の山が詰まれたデスクの上を見ながら、ショボンは愚痴るように呟いた。
その背後には兄者さんが目を光らせ、そんな動向を見守っている。


( ´_ゝ`)「まだ言ってるのかい?」

(´・ω・`)「何度だって言いますよ、こんな若造をいつまでこんな政策の場に置く気ですか?」

( ´_ゝ`)「そうだなぁ……君がもってる知識が枯れるまで、かな」

(´・ω・`)「労働基準というものがありましてね」

( ´_ゝ`)「でも君、捕虜だし」


人が、世界の終わりを見たあの日。

いつしか終末の戦いと呼ばれるようになった、あの戦争から半年も過ぎたころ。

クーが行った演説は、やがて討論の場となり半信半疑ながらも連合国側は、
王が討たれたこともあってか、降伏を宣言し、戦場は終わりを迎えた。

391 ◆6Ugj38o7Xg:2018/08/22(水) 22:47:41 ID:5yZYcoEU0

そして流石兄弟が結託し、双国と王国の連合からの離反と彼の王への糾弾。

これにより、戦争の勝者と敗者が決まる事になる、と誰もが思った。


だが同時に、ヒルト本国からも全面的な降伏が発表される事になる。


これはショボンも知らなかった事らしく、酷く動揺していた。

彼は勝者として君臨した後、自らの首を刎ねる事で決着を考えていたらしく、
そうなる事を見越したヒート女王が、自ら先に下していた命令だった。

その結果。

勝者なき戦争に残されたのは、第三勢力となった双国と王国。


そして、各国の代表を集め、初の世界会議が行われた。


そして二人の王は、戦争の主犯格と思われる人物等をまず捕虜とし、
各国に対し、傘下ではなく、共和国としての参加を求めることを発表した。

強制ではないが、参加するなら補助を約束すると条件をつけて。

共に目論んでいたエッダ、ヒルトはすぐにそれを了承。

指導者を失くしたルファウスも混乱の中それを受諾。

振り回された結果、国力を衰えさせた日陽と湖鏡も同様に。

392 ◆6Ugj38o7Xg:2018/08/22(水) 22:48:35 ID:5yZYcoEU0

そして、一番の問題になると思われていた神教国に関しては、
意外にも王自らが参加し、協力したいと申し出てきた。


こうして、どの国も傷を抱えながら、新しい世界が始まった。


しかし、なにせ初めての試み、長きに渡る大混乱が予想された。


だが、いくつもの約束事からなる条約の形成や、共通通貨の製造から交易産業等、
次から次へと革新的な意見が提出されるにつれ、むしろ安定化の道を辿り始める。

時代は少しずつ、力とはまた違う国力を求める流れが生まれつつあった。

そしてそうなれば、一体誰がこのような知識を発信しているのか、当然の疑問となった。


当初こそ隠されてはいたものの、復興に悩むとある地域で起きた、
『お湯が沸いてるのに何で温泉事業しないんですか?』事件から露呈する事になる。


以来、要はショボンは、あらゆる場所から知識を求められるようになっていた。


(;´・ω・`)「それなら尚、条例を! 頑張って用意したでしょう!? ちゃんと読みました!?」

( ´_ゝ`)「ああ勿論だ、だから問題ないだろう、最低限の人権は遵守している」

393 ◆6Ugj38o7Xg:2018/08/22(水) 22:49:18 ID:5yZYcoEU0

(;´・ω・`)「くっ……やはり戦犯としてあの時に処刑されていれば…っ」

( ´_ゝ`)「馬鹿な事言ってないで、街道工事のだけでも早急に確認してくれるかい?」

( ´_ゝ`)「明日にはまた、神教へと向かうんだろう?」

(´・ω・`)「……そう、ですね、不本意ながら」

( ´_ゝ`)「先方はとても楽しみにしているそうだよ」

(´・ω・`)「はぁ……そうなんでしょうね、でも僕、ちょっと苦手で…」

( ´_ゝ`)「君は特にもてなされてると聞いたけど?」

(;´・ω・`)「いや、まあ……なんていうか、親切の押し売りが凄いっていうか…」

(;´・ω・`)「あれが何度も他国を侵略しようとした王様とは思えないです」

( ´_ゝ`)「条約にあった宗教の自由ってのがきいたかな、それと何より……」

( ´_ゝ`)「あの日の、光の柱を見て人生観が変わってしまったそうだからね」

( ´_ゝ`)「気持ちはわかるよ、私も今でも思い出せる」

( ´_ゝ`)「絶望の闇を切り裂く光と、天を覆うほどに降り注いだ光の流星群」

( ´_ゝ`)「世界の創生と共に、生まれ変わったような気分にさせてくれたよ」

(´・ω・`)「……本人に聞かせたい話です」

394 ◆6Ugj38o7Xg:2018/08/22(水) 22:50:07 ID:5yZYcoEU0

二人、海が覗く窓の外を眺めながら、あの輝きに思いを馳せる。
しかしそんな平穏を裂くように、いくつかの足音が響いて扉が一気に開かれた。

(´<_` )「ショボン君、ちょっち相談したいんだが」

从;゚∀从「ま、待て、こっちが先だ、ショボン! 積荷がまだ来てないみたいだぞ!」

(=゚ω゚)ノ「あの、街道の件はどうなってますかよぅ?」

lw´‐ _‐ノv「ねえ、魚、さ・か・な、ちょっと高いと思わない? 思うよね? あとお米? お米は?」

从・∀・ノ!リ「ひまなのじゃ! あそびにきたのじゃ!!」

川#д川「待ておぬし等、ショボン様に迷惑をかけるでない! ええい許さんぞ!!」










(´・ω・`)「あ、そういえば、あのバカまだ来てないんですかね、もう出航予定日も近いってのに」


(;´_ゝ`)「うん? あ、ああ、そうだね、まだみたいだよ」

(;´_ゝ`)(……日に日にスルーちからが上がってるな…)

395 ◆6Ugj38o7Xg:2018/08/22(水) 22:54:04 ID:5yZYcoEU0

…………。



深い渓谷と、白で埋め尽くされた山々が立ち並ぶ合間に、大歓声が起こる場所があった。

かつて国の王を決める闘技場だったその場所は、今は賞金と名誉だけを求め、
あるいはその戦いの熱気にあてられた者たちで今日も賑わい、大盛況となっている。

ノパー゚)「あ、母者さん……? 今までどちらに?」

 @@@
@#_、_@
  (  ノ`)「ん、まあちょっとさね、それより今日は話があって来たんだよ」

ノパー゚)「なにかしら?」

 @@@
@#_、_@
  (  ノ`)「そろそろ、この国を出ようと思っている、お別れだよヒート」

ノパ⊿゚)「………あ」

ノハ-⊿-)「……………」

ノパー゚)「そんな気は、してました」

 @@@
@#_、_@
  (  ノ`)「アンタも、もう王女さまじゃない訳だし、お役御免ってところさな」

396 ◆6Ugj38o7Xg:2018/08/22(水) 22:54:51 ID:5yZYcoEU0

ヒルトと言う国は、共和国加入の際に王制を廃した。

代々受け継いできた文化を捨てようと言うのだ、当然、王直轄のものたちの反対は大きなものだったが、
ヒートはそういった事を悪しき妄執だと一喝し、新たな形を模索し始めたのだった。


ノパ⊿゚)「………最後に、聞いても?」

 @@@
@#_、_@
  (  ノ`)「なんだい、聞くだけならいいよ」

ノパ⊿゚)「……あの日、クマちゃんに襲われたあの時」

ノパ⊿゚)「母者さんがその場に居たのは、偶然ですか?」

 @@@
@#_、_@
  (  ノ`)「ハッ、他にどんな理由があるってんだい」

ノパ⊿゚)「いえ、ただ……」

ノパー゚)「知ってましたか? 赤い髪は、私の家系の人間が代々生まれもつ特徴なんですよ」

397 ◆6Ugj38o7Xg:2018/08/22(水) 22:55:36 ID:5yZYcoEU0

ノパー゚)「そして、この闘技場の創始者は、とても、とても強い、赤い髪の女性だったそうです」

 @@@
@#_、_@
  (  ノ`)「ふーん、そう、そりゃ知らなかったよ」

ノパー゚)「そうですか」

 @@@
@#_、_@
  (  ノ`)「ああ、話は終わりかい? それならもう行くよ」

ノハ-⊿-)「…これまでの事、感謝します、どうかお元気で」


 @@@
@#_、_@
  (  ノ`)「ああ、まあ気にするんじゃないよ、すべて、そう、全部、ただの偶然さ」


言って、背中を見せたまま手を上げて、母者は去っていく。
ヒートはその、赤い髪の姿が見えなくなるまで、見送り続けた。

398 ◆6Ugj38o7Xg:2018/08/22(水) 22:56:09 ID:5yZYcoEU0

………。


ヒルトの王制廃止に対して、城内でこそ荒れに荒れていたが、
反面、住まう人たちはおよそ歓迎ムードである。

特にその要因となっているのは、そうなれば例の婚姻も無効となること。
そしてもう一つ、あの戦争で彼らの士気を高めるもう一つの要因となった彼女が。

クーという女性が、ヒートと共に、この地で新たな政策を学びたいと申し出たこと。

指導者が統治する国ではなく、条約の下、個人が己を確立して生きる都。

それが彼女たちが目指す、あらたなヒルトの形となっており、
そもそもが自立した国民性をもつこの国では、すんなりと受け入れられた。

そうして街には、新たな区ができあがった。

法や、人、そして街そのものを管理するための、要は役所のようなもの。
それらが並ぶ区画は、行政区とされ、民意の元に召集された人たちが集っている。


そんな行政区の一角。


川 ゚ -゚)「本当はショボンに私も習いたかったが……あれではな」


川 ゚ -゚)「あとドクオ、ご飯おかわり」

(;'A`)「ちょっと食べすぎじゃない?」

399 ◆6Ugj38o7Xg:2018/08/22(水) 22:57:29 ID:5yZYcoEU0

二人はそこで暮らしていた。

クーが座る食卓には詰まれたお皿と、美味しさが香る料理の品が並んでいる。
そんな彼女へ、エプロン姿でしゃもじを片手にドクオが近づいた。


人を、世界を救う光をもたらした英雄は、近頃めっきり主夫業が板についてきている。


川 ゚ -゚)「仕方が無いんだ……考えるという事は、その分エネルギーが必要なんだ…」

川 ゚ -゚)「あとご飯が美味しいのがいけない……くそう、なんてことだ…」

川 ゚ -゚)「にくいっ、ご飯が、おいしいのが……ああっ!はしが止まらない!」

('A`)「はいはい、でも本当に、いい加減ふと」

川 ゚ - )「――――――」

('A`)ヒッ

('A`)(でも気のせいか……最近、おなかまわりが少し……?)

川 ゚ -゚)「さーて、これ食べたらまた缶詰だな、ヒートのところに行かないと」

('A`)「夕飯は遅いほうがいい?」

川 ゚ -゚)「いや、しばらく要らないな、言ったろ、缶詰って」

400 ◆6Ugj38o7Xg:2018/08/22(水) 23:00:06 ID:5yZYcoEU0

(;'A`)「え?」

川 ゚ -゚)「あー、だからしばらく家にも帰れないなー、もう数ヶ月はだめかもなー」

川 ゚ -゚)「帰らない間に、ドクオが長めの旅に出ていたとしても、わからないかもなーぁ」


('A`)「………………………」


川 ゚ー゚)「…行きたいんだろう? 彼と一緒に、見てみたいんだろう?」

('A`)「クー…」

川 ゚ー゚)「ドクオ、私のために、自分を殺すようなことはしないでくれ」

川 ゚ー゚)「そうしたい事は、ちゃんと言って教えてくれ」

川 ゚ー゚)「私も、したい事は、ちゃんと言うから」

川;゚ -゚)「そしたら、ちゃんと聞いて……あげ……あ、げ……」

川 ゚ -゚)「……何もかも、は、無理かも、だけどなっ」

川 ゚ -゚)「だからな」

('∀`)「……ありがとう」

401 ◆6Ugj38o7Xg:2018/08/22(水) 23:02:19 ID:5yZYcoEU0

('A`)「ああ、俺、あいつと行きたい」

('A`)「この世界を、もう一度、ちゃんと……真っ直ぐに、見てみたい」

('A`)「そしてもっと広い世界に、出会いたいんだ」

川 ゚ー゚)「ああ、いってらっしゃい、私は……待ってるから、いつだって」

('A`)「うん、いってきます」

川 ゚ -゚)「だから最後に」


言って、クーが両手を差し出した。


(;'A`)「ああ……おかわり? ちょっとまって」

川 ゚ -゚)「違うぞ」

川*  - )「その、抱きしめて、ほしい……な」

ああ、これはもう、一生勝てないな、と思いながら、ドクオはその手を取った。
身を寄せ合いながら、惜しみながら、それでも、まだ見ぬ何かを求めて。

そしてクーは思う、帰ってくる頃には、きっと、
もっと大きくなっているだろう箇所に、彼はどう反応するのだろう、と。

402 ◆6Ugj38o7Xg:2018/08/22(水) 23:03:34 ID:5yZYcoEU0

………。





「………あんた、何者なんだ?」


J(;'ー`)し「見ての通り、ただの孤児のお世話をする者ですけど……」

「それにしちゃ、世論に通じすぎだろ……こんな場所で、なぜそんなことまで知ってる?」

J(;'ー`)し「ええと、そういうの、詳しい知り合いが居るもので」

J( 'ー`)し「あ、今もちょうど外に……」

旅人風の男と話す女が、表の庭を覗いた。

しかしそこには、子供が一人、棒切れを持って遊んでいるだけ。
先ほどまで、子供と一緒になって振り回していた人間の姿がない。

代わりに、一人の女性が立っていた。

この国で、彼女を知らぬものは居ない、女は慌てて外へ出た。


J(;'ー`)し「あ、あの! 何か御用でしょうか?」

('、`*川「いえ、人を探していて、ここに来てると聞いたのだけど」

403 ◆6Ugj38o7Xg:2018/08/22(水) 23:04:28 ID:5yZYcoEU0

マト*・д・)メ「兄ちゃんならさっき、変なのつれた人といそいでいっちゃった」

('、`*川「変なの……顔の細長い、大きな動物?」

マト*・д・)メ「そう、それ!」

J(;'ー`)し「あらあら、忙しないのね、来たばかりで」

マト*・д・)メ「なんか、ひづけ、まちがえた、とか言ってた」

J(;'ー`)し「あの、それで、あの子が何か……」

('、`*川「いえ、まさにその日付を伝えにきたのだけれど」

('ー`*川「ふふ、相変わらずみたいね」



………。









(#´・ω・`)「遅い」

404 ◆6Ugj38o7Xg:2018/08/22(水) 23:06:02 ID:5yZYcoEU0

ζ(゚ー゚;ζ「…あ、ははは」

(;'A`)「まさか、まだ来てないとは思わなかったよ…」


双国、その船着場に今、たくさんの人が群がっている。


海上には、かつて戦場を駆けたあの巨大陸船が、本来の名を現す姿となって浮かんでいた。

今も船内と地上を行き来する姿はあるが、積荷などは大部分が完了し、
あとは乗り込むだけとなっている、とはいえ、それもほぼ済んでいる。

なら何かを待つのかと言えば、航海に必要な要員ではなく、
行楽観光気分でいるだけの、お客様である。


(#`・ω・´)「こっちがど・れ・だ・け・忙しい中準備したと思ってんだあの野郎……!!」

ショボンがその辺に転がっていた樽を蹴り飛ばした。
普段感情を顕にしない彼の荒れた姿に、周囲は困惑を示す。

「うおおっーーぐああーーーーざけんなぁあああああ!!!」


(;'A`)「俺、あんなショボンの奴はじめて見たかも……」

ζ(゚、゚;ζ「い、意外な一面、ですね」

(´<_`;)「……いや、多分、日ごろのストレスが……ほら、だからやりすぎだって、兄者?」

(;´_ゝ`)「う、うーん……申し訳ない」

405 ◆6Ugj38o7Xg:2018/08/22(水) 23:06:58 ID:5yZYcoEU0

/ ,' 3 「デレや、ワシらは先に乗船させてもらおうかの」

ζ(゚ー゚;ζ「えっ……あ、そう、ですね……」


船にかけられた階段を上る、デレはふと振り返る。
高所から見る町並みは、見慣れたはずが新鮮に思えた。

そしてそんな中に、その姿を見つけた。

ζ(゚ー゚*ζ「あっ、来ましたよ!」


馬に引かれる船の上から、たどり着くなり慌てた様子で駆けてくる数人の姿があった。


(;^ω^)「ありがとうワカン、ぽっぽちゃん! 助かったお!!」

ξ゚⊿゚)ξ「世話になった」

<_プー゚)フ「支払いはツケでヨロ!」


( ><)「気をつけて、無事を祈るよ」

(*‘ω‘ *) 「ぽヒヒィィィィん!!」

406 ◆6Ugj38o7Xg:2018/08/22(水) 23:07:59 ID:5yZYcoEU0




船着場を走り、雑踏を抜け、そして内藤は。




(;^ω^)「みんな久しぶり、ごめん、遅れちゃっt―――」
(#´・ω・`)「見つけたぞ死ねえええええええええええええええええ!!!!!」
(;゚ω゚)「死ね!? ショボ!? ちょ、飛び蹴りぃ!!??」









「ぎゃああああああああああ」





歓迎の蹴りを受け、ショボンもろとも海に落ちた。

407 ◆6Ugj38o7Xg:2018/08/22(水) 23:08:51 ID:5yZYcoEU0

そんな姿に呆れる者、心配する者、笑う者、反応は様々。
けれど、それはもう、これ以上ないほど、平和な時間そのもので。


(;゚ω゚)「ぷはっ、え、なになになに!? 何で!? どういうこと!?」

(;´・ω・`)「冷たっ……はっ……僕は何を………」


ζ(゚ー゚;ζ「ブーン!? だ、大丈夫!?」

ξ゚⊿゚)ξ「何をしてるんだ?」

<_プー゚)フ「変わった挨拶だな、やめてね?」

(´<_` )「兄者」

(;´_ゝ`)「……休みを、あげるよ、うん、ちゃんと」

从 ゚∀从「というわけで、今度は海だ、よろしくな」

ξ-⊿゚)ξ「まあ、ほどほどにな」

<_プー゚)フ「捕虜はつらいぜ」


知る者は一部とは言え、世界を救ったドクオは特例として、
捕虜として双国でお世話になっている者たちは、それぞれ仕事が与えられている。

408 ◆6Ugj38o7Xg:2018/08/22(水) 23:10:00 ID:5yZYcoEU0

そして、特に体力ばかりが取り得の彼らに与えられているのは、測量の旅だった。

世界をより狭めるため、街道工事の都合のために、改めて地図をつくるための旅である。


今回こうして集められたのは、更に、世界を知るための行為だ。


これまで、ひとつなぎの大陸を旅してきたが、この海上の船が示すとおり、
外洋にはおそらく、他の、外の大陸というのも存在している。


今回の遠征は、その第一歩。


たくさんの国と、たくさんの人が手を取り合い進められた計画。

内藤達はそれに乗り込み、世界を見るため、新しい旅に出ようとしていた。


(´・ω・`)「…? なんで僕、海の中に居たんだろう?」

(;^ω^)「こっちが聞きたいお……」

(´・ω・`)「まあいいか、それより早く乗りなよ、もう出航時刻は過ぎてるんだから」

( ´_ゝ`)「その前に、渡しておこうか」

(´<_` )「そうだな、内藤君?」

409 ◆6Ugj38o7Xg:2018/08/22(水) 23:11:22 ID:5yZYcoEU0

( ^ω^)「はい?」

(´<_` )「これを、君に貸し出そう」

(;゚ω゚)「……っ!? これ、え、なんで!??」


差し出されたのは、捕虜として連行された際に回収されたはずの、黄金の剣。

当初の目的どおり、神具はすべて集められ、あの日。

すべて消滅させるという宣言の後、各代表が見守る中、永光の力によって消された筈だった。

現に内藤も、光の柱がもう一度空にかかるのを見ていた。

もう二度と、目にすることはないと思っていた、その剣が目の前にある。


(;゚ω゚)「ど、どうして、いや、なんで今僕に…?!」


(´・ω・`)「実は、まだ神具は残ってるんだよ、三つだけね」


一つは、まだ存在するかもしれない神具を消滅させる必要がある事から、レーヴァテインを。

もう一つは、物質としての剣は消えても、再びあの触れられない姿となった、フレイを。

そしてもう一つは、本当に、どうにもならない脅威が迫った場合を考え、コールブランドを。


そんな理由もあり、世に称されることの無い英雄たちの武器を、せめて称えようと、
各国の代表が持つ鍵を使わなければ、解錠される事の無い場所で、保管されている。

410 ◆6Ugj38o7Xg:2018/08/22(水) 23:12:54 ID:5yZYcoEU0

それが今、内藤の手に再び渡された。


( ´_ゝ`)「初の外界調査だ、何があるかわからない」

(´<_` )「もしもの時があったら、迷わず頼むぜ?」


内藤は受け取ると、目を閉じる。

意識を深く、手の先へ、剣のなかへ。



声は――――――聞こえない。



(  ω )「…………ああ、行こう、瀬川…約束、したもんな」



けれど。




『見ているから』




その言葉を、誰より、何より、信じている。


絶対に、忘れない。

411 ◆6Ugj38o7Xg:2018/08/22(水) 23:16:40 ID:5yZYcoEU0

生きる力を、戦う力をくれた。



そして、いつだって、すぐ側で見ていてくれた。



どれほど救いだっただろう、どれほど信頼を寄せたのだろう。




この想いは、届いていたのだろうか。


ちゃんと、届いてくれたのだろうか。



ずっと言えなかったけれど、ありがとう。




だから。





( ;ω;)「一緒に、行こう、これからを、見に行こう――――!!」

412 ◆6Ugj38o7Xg:2018/08/22(水) 23:17:05 ID:5yZYcoEU0



帆を全開に広げた船が、今ゆっくりと動き出す。



広い世界の、更に広い世界へ。



これまでとは、違う世界へ。





また、新しい、異世界に出会う、そのために。










                                       ――― 完 ―――

413名無しさん:2018/08/22(水) 23:21:44 ID:Ro4hPqDA0
おつおつ
だいぶ駆け足感があったな

414 ◆6Ugj38o7Xg:2018/08/22(水) 23:35:46 ID:5yZYcoEU0
おしまい、あとおまけパートがあるけど、これは本当に面白くもなければ本編とも関係ない、
しかも物理的に読める文章じゃないという本格的な自己満足なので、これが間違いなく完結。

ていうかうわ完結したよこれ、10年越しって何、意味わかんない怖い。
でも何が怖いってそんな経ってるの? 感覚は去年くらいなんだけど。
だから駆け足にもなるよ、もう終わらせたい一心で書いてるもの。

でもどうだろう、膨らませ方が難しいというか、なんか冗長になっちゃうんだよね。
とはいえ、ブーンとロマの決戦は確かに本当は最低でも倍以上あったけどほぼカット。

反省すべくは書きあがって読み返す、推敲の類をしないからながらと変わらない、
おかげで投下したあと見返すと、誤字どころか、あれ、これ伝わらなくない?というのが多々。

あと母者のAAは二度と使いたくない、貼るの大変行間空くの二重苦。

415 ◆6Ugj38o7Xg:2018/08/22(水) 23:42:38 ID:5yZYcoEU0

あとこれ書き途中のね。
ちなみに止まってる理由はどちらも書くネタの都合上、やむなくバトルが入るため。
そうでないと書けない内容だから、そしてそのせいで止まる本末転倒振り。

あとエロゲ的云々は春が来るたび戸惑うってやつだけど。
あらかじめ言っておくますが、書いたらシュールちゃんのお話になるよ。


スタドラのやつ
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/13029/1448986400/l50
文猫
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/13029/1406141031/l50

416名無しさん:2018/08/23(木) 00:24:28 ID:aG0noFfk0
良く完結させてくれました。長ーい間待ってたんだぜ
ありがとう最高に面白かったお疲れ様です
最大限の乙!

417名無しさん:2018/08/23(木) 00:30:10 ID:33XDcCN20
ほんとによくもまあ10年も待たせやがって

この作品が真剣にブーン系を読むようになったきっかけで、俺の厨二の原典だ
今でもレーヴァテインっていう文字列を見ると無条件で興奮するぐらいこの作品に影響を受けた
本当にブーン系で一番好きな作品だ!完結ありがとう!作者に最大級の乙を!

418名無しさん:2018/08/25(土) 13:44:11 ID:OqAKy/XM0
乙!
最後まで読めたことに感謝

419名無しさん:2018/08/29(水) 10:12:16 ID:VR0cAgoI0
このハゲ作者!一緒に浴場で欲情してあんなにも盛り上がってた俺たちをこんなに待たせやがって・・・
ホントに完結おめでとう!
そして惜しみ無い乙です!

文猫も失禁する程楽しみしてる

420名無しさん:2018/08/31(金) 15:39:49 ID:62nhnDYE0
祝! 完結! 作者さんありがとー! フラッシュ!

駆け足ぎみ? 完結させることが肝要だからもーまんたい。

……しっかしよくもまあ9年? 10年? も待たせてくれちゃってこの野郎。10代も20代になったんだよね、それ一番言われておるから。ずっと待ってたんだからなっ! 完結に気づかない人多そうだから、大陸編もしくは番外編も投稿してくれてもええんやで?

421名無しさん:2018/09/02(日) 19:38:52 ID:Q0orJsQ20
今気づいたぜーついに終わってしまったか!
長らくおつかれやで!
質問なんだけど、結局3人はこっちの世界に残る事を選択したって事なんだよね?

422 ◆6Ugj38o7Xg:2018/09/08(土) 00:11:51 ID:vft7PlxM0
>>421


一言で返せるけど、ちょっと語らせてもらいますね。


書く上でほんとうに昔から考えてること?いや決めてることがありましてね。
何て言ったらいいのか、登場人物が本当にそれを自分で考えての行動や発言かどうか、と言いますか。
だからそいつの感情とか心がわからないと書けなくて、無理に書くとすごく嫌な気分になるんですね。

一時期スランプ云々言ってた頃があったんだけど、要はまさにそれ、何考えてるのかわからないのに、
ストーリー進めるために無理に進めたから書いてて読んでて苦痛だった。

とは言え結末だけは何気に決めてから進めてるので、問題なのはキャラの想いをどうやってその結末、結論にさせるか。
例えばフサ、まず殺すことありきで始まるわけで、しかし凄い英雄みたいなイメージに反するキャラにしたかったから、
あんな性格、でも英雄として死ぬ必要がある、さてこいつをどうやって殺そうと考えるじゃないですか。

まずは戦場に引きずり出す、これは無理矢理でもいいし、友情で納得もできる。
怖いことを繰り返すための勇気も必要、強がりでも頼られることと、特別であることへの優越感でまだ継続。
でもそれだけで自分を犠牲にしてまで行動できるか、わからなかった、無意識に人助けってのじゃ納得できない。

というわけで責任をもたせて、精神的に追い込んで、そこからの解放でようやく決意する、で納得できたんですね。

ただその結論に至らせるためだけに、あんなに話数が必要になったんですね。
遠い昔にも書いたけど、ドクオ異世界はあんなに長引かせるつもりなかったんですよ。
だから本当に、キャラクターの心とか、行動はほんとに気を使うというか、わたくしの趣味ですのね。
だから春とまのときにキャラがいいと言われたのはいやあ認められてるみたいで嬉しいお言葉でしたなぁうへへ。


というわけで長々と書いたけど質問に答えると、わかりません。

いや本当に、それなりの話数を、人生のほんの一部を書いてきたけど、まだ帰りたいのか、それがわからない。

423名無しさん:2018/09/08(土) 00:33:44 ID:rhZKHjJU0
>>422
なんか言わんとしていることは分かるな…
本当に本人がそう考えて言って、行動しているかっていう一抹の不安というか。

そんな中で完結してくれて本当にありがとう。心からの乙。
俺も何か書いてみようかな。

424 ◆6Ugj38o7Xg:2018/09/08(土) 03:08:07 ID:vft7PlxM0
>423
想像が一致した時の気分の良さは山頂で見る朝焼けのそれだし、
それを書き起こせてる時の高揚感はべらぼうだよ、創作はいいよねいい。

425名無しさん:2018/09/09(日) 23:09:04 ID:dGjQkg.Q0
大陸編期待してる

426 ◆6Ugj38o7Xg:2018/09/10(月) 20:45:20 ID:KFstdl0.0
>>425
もうこれ以上異世界を書く気ないのでー
代わりに書いてくれてもいいのでー

427名無しさん:2018/10/13(土) 22:20:10 ID:tf00oJKI0
最高に好きだった作品が10年ぶりに完結してるだと........。

泣けた

428名無しさん:2021/10/21(木) 02:00:36 ID:74hKUypw0
フサの弟がブーンと知った記念カキコ


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