したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |
レス数が900を超えています。1000を超えると投稿できなくなるよ。

( ^ω^)運命と戦う仮面ライダーのようです part2

6 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 10:43:18 ID:o/sMbQ2Y0

J('ー`)し 剣藤カーチャン
 ブーンの母親。
 仕事ばかりで家庭を省みない夫のロマネスクに悩まされ、ブーンが小学4年生の頃に離婚を決意する。
 ブーンを女手一つで育ててきたが、ブーンが中学生に上がった時に重い病気を患ってしまう。
 それから入退院を繰り返し、現在では何十度目かの入院をしている。


(-_-) 引田ヒッキー
 20歳。スーパーマーケット『 VIP 』のブーンの後輩。
 軽いノリが特徴で、常にブーンにちょっかいを出している。


*(‘‘)* 沢近ヘリカル
 23歳。スーパーマーケット『 VIP 』のブーンの同僚。
 周囲を見れる頼れるお姉さん的存在。
 職場の中では一番にブーンを気遣い、その気遣いが結果的にブーンを仮面ライダーに集中させた。


(゜д゜@  新谷田おばさん
 スーパーマーケット『 VIP 』のパートのおばさん。
 店長であるニダーを本当に嫌っている。


<ヽ`∀´> 羽矛ニダー
 ブーンが働くスーパーマーケット『 VIP 』の店長。
 店長であるにも関わらず現場の社員・パートの声をほぼ聞かず本部の言いなりであるため、信頼はゼロ。

7 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 10:50:02 ID:o/sMbQ2Y0
――――――――――――【 アンデッド 】――――――――――――

ミ,,゚Д゚彡・ミ,,▼Д▼彡 府坂 / ミ,,゚王゚彡 ピーコックアンデッド
 年齢不詳。外見30歳半ば。
 黒いレザーのロングコートが特徴的な全身黒ずくめの男。サングラスを常にしている。
 正体はダイヤスートのカテゴリーJで、上級アンデッド。クジャクの祖。
 再び始まった古の戦いの真実にいち早く気付き、仮面ライダーを利用して有利に進めようと画策する。

( \品/) スパイダーアンデッド
 ♣スートのカテゴリーA。蜘蛛の祖。
 自身の適合者を探し求め、蜘蛛の子を吐き出し続けている。。
 上級アンデッド達とは違い人間に擬態は出来ないが、人間の言葉を流暢に話す程の高い頭脳を持つ。
 適合者を探す目的は明かさず、行動は謎に包まれている。

8 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 10:51:42 ID:o/sMbQ2Y0






 OP ♪Round ZERO〜BLADE BRAVE - https://www.youtube.com/watch?v=VnF4eLXsDT8





.

9 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 10:52:43 ID:o/sMbQ2Y0





          【 第15話 〜摘まれた紅い花〜 】




.

10 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 10:53:21 ID:o/sMbQ2Y0


 ライオンアンデッドを封印し、カテゴリーAの反応があった山へと到着したブレイド。
 先刻までカリスやギャレンが争っていた橋の上でブルースペイダーから降りるが、誰もいない。
 此処に来るまでの間、サーチャーから反応が消えた事で怪しんではいたが。


( OwO)「どうなってるんだお…?全員の反応が急になくなったなんて…」


 周囲を見渡しても、何もない。あるのは戦った痕跡だけ。
 何もない事を承知の上で橋の柵から身を乗り出し、橋の下を見下ろす。


( OwO)「あるわけないお…」

( OwO)「…ん?」


 橋の下から目を背けようとした時だった。
 木々が生い茂って底がよく見えない中で、人の姿を見たような気がした。
 もう一度視線を橋の下に戻すと、其処には……


( OwO)「やっぱり人だ!何であんなところに…」
 

 高過ぎて誰かまでは把握出来ないが、人が倒れているのは確かだ。
 人里離れた山の中、木々が生い茂り川の流れるような場所で誰かが通るとも思えない。

11 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 10:53:51 ID:o/sMbQ2Y0


( OwO)「あそこまでどうやって行けばいいんだお…!」


 助けたいが、下まで降りる方法を知らない。
 きっと降る道を走れば辿り着くのだろうが、その道すら知る訳もなく。
 モタモタすれば、倒れている人の命に危機が迫るかもしれない、いっそ此処から飛び降りてしまえば…。

 もしかしたら、ブレイドのスーツのおかげでケガは免れる可能性はある。


( ; OwO)「……いやいや、無理だお…死ぬお。変身してたって痛いもんは痛いし」

( OwO)「余程身体がガチガチに頑丈じゃないと――」





( OwO)「……いや待てよ。もしかすると、あれを使えば!」


 ある方法が閃いた。
 左手でホルスターに収納されているブレイラウザーを逆手に掴み持ち上げトレイを展開すると、一枚のカードを選択。
 

( OwO)「こいつの力、前に実証済みだお」


 ブレイドが手にしたカード、"♠7のMETAL"だ。
 豹のアンデッドと戦った際に初使用したが、このカードは身体を硬質化させ防御性能を高める力を秘めている。
 要するに、このカードを使って極めて頑丈な身体になる事によって、落下時のダメージを無にしようとする算段だ。

12 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 10:54:33 ID:o/sMbQ2Y0


( OwO)「アンデッドと戦う以外で使う事になるとは…っしょ、と」


    《-♠7 METAL-》


 カードをラウズしたブレイドの身体が、鋼のような銀色に染色。
 日の光に晒され、鋼の身体が光を反射している。

 そして、再び橋の柵に手を掛けた。


::(( ; OwO))::「……ふうー、ふうー……」


 身体が硬質化したのは理解しているが、いざ飛び降りようと思うと恐怖が凄まじい。
 落ち着かせるように深呼吸を何度もするが、バクバクと鼓動が収まる事はない。
 両足もガクガクと震えている。


::(( ; OwO))::「……だめだだめだ!こんな事でビビんなお!こんなもんは勢いでっ――」


 意を決して片足を柵に掛け飛び降りる体勢を作ろうとした、その時だった。



 柵に掛けた片足が滑り、そのまま頭から――



( ; OwO)「ぎゃあああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!!!!!!」

13 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 10:55:20 ID:o/sMbQ2Y0


 足を滑らせ脳天から落下し、青々とした木々を突き抜け頭から地面へと刺さった。
 ブレイドのスーツの重さに加え、高い位置からの落下。
 土の地面に埋まるには十分な勢いと重さが乗っていた。
 逆さまの状態で埋まっている状態、よく例えられる時に言われるのは”犬神家”だ。


\  / 「………」
  ̄ ̄

( ; OwO)「ぶはっ!!」


 強引に身体を抜いた瞬間、地面の土が水飛沫のように豪快に飛散した。
 

( ; OwO)「し…死ぬかと思ったお……メタルの力すげえお…」


 身体に付着した土を簡単に払い落とす。
 "♠7 METAL"の力のおかげで、普通であれば即死である落下から何のケガも痛みも無い状態だ。
 だが高所から落下する恐怖だけは凌げなかった様子で、心臓の鼓動は加速していた。

 一人で悶絶しているブレイドのすぐそばには、橋の上から発見した人が倒れている。
 事の目的を思い出し、変身を解き急いで人のもとに駆け寄った。


( ^ω^)「大丈夫ですか!?」

( ^ω^)「……え……?」


 倒れている人に近付いて、ようやく気付いた。
 見覚えのある服。長い黒髪。見るからに女性である姿形。
 

( ^ω^)「まさか……!」


 うつ伏せに倒れている身体を仰向けにさせる事で、その疑念は確信へと変わった。



川  - )

14 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 10:55:52 ID:o/sMbQ2Y0


( ^ω^)「クーさん……!!」


 倒れていたのは、探していたはずの……アンデッドである、クーだった。
 両目を伏せていて呼び掛けにも応じない。意識を失っている。
 一瞬だが、身体を支えている手を離してしまいそうになった。


( ^ω^)「……これ、もしかして緑色の…アンデッドの、血なのかお…」


 クーの口端、そして手から流れ出る緑色の液体。
 アンデッドと戦う中で何度もアンデッドが血を流すところを目の当たりにしてきたブーンには、すぐ把握出来た。
 そして、クーが本当にアンデッドである事実を改めて実感する。


( ; ^ω^)(…今、封印しようと思えば出来るかもしれないお…)


 ブレイバックルを持ち、クーとバックル交互に視線を向ける。
 
 アンデッドは全て封印しなければならない、その事実は変わらない。
 クーは強敵だが、今この瞬間は無抵抗だ。やろうと思えばやれる状況。

 だが、頭に浮かぶショボンや渡辺の悲しそうな顔が、その使命感を邪魔している。
 


( ^ω^)(僕は……!)




 ブレイバックルをギリギリと力強く握り締め、ブーンは立ち上がった。



.

15 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 10:56:20 ID:o/sMbQ2Y0




 ―――――



.

16 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 10:56:44 ID:o/sMbQ2Y0


 クーを気絶までに追い込んだ張本人であるモララーと府坂は、アジトへと戻っていた。
 結局カテゴリーAはモララーの追跡を振り切り、取り逃がしたようだ。


( -□-)


 今は、溶液に浸かり精神を落ち着かせ力を蓄えている。
 府坂は自身の椅子に座り、溶液に浸かるモララーをサングラス越しに眺めていた。


ミ,,▼Д▼彡「カテゴリーAは見失ったが……まぁいい。菱谷のお陰で邪魔な奴を鎮める事が出来た」

「府坂さん!」


 静かな部屋に、白衣の男が慌てた様子で飛び入って来た。
 府坂の名を呼ぶ声が、喧しく部屋中に響き渡る。
 返事をする事なく、府坂は白衣の男の方へと視線のみを向けた。
 

「例の男ですが、見つけました!」

ミ,,▼Д▼彡「…そうか、見つけたか」

「はい、今こちらにお連れ――うわっ!?」

ミ,,▼Д▼彡「!?」


 白衣の男が何者かによって退かされ、話は遮られた。
 府坂の前には、白衣の男に代わり別の人物が立っている。

17 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 10:57:10 ID:o/sMbQ2Y0


「お前が俺を探していたという奴か」

ミ,,▼Д▼彡「そうだ、どうしても君に会いたくてね」

「悪いが、アンデッドに会いたい何て思われるような悪趣味な事はしていない」


 男は、府坂を前にして動じる様子はない。
 それだけではない。何故か府坂がアンデッドである事実を把握している。


ミ,,▼Д▼彡「いいや、君の事は全部知っているよ。君は仮面ライダーになりたかったんだろう?」

ミ,,▼Д▼彡「ギャレンにもなれず、ブレイドにもなれなかった君は…ライダーへの執念を捨て切れてないはずだ」

「………」


 その言葉に反応し、男は鋭い目で府坂を睨みつける。


ミ,,▼Д▼彡「そう怖い顔をするな、俺はそんな君を見込んでいるんだ。
         君なら……ブレイドやギャレンなどに負けない…いや、誰にも勝ち続ける最強のライダーになれる」

ミ,,▼Д▼彡「俺が作る究極のライダー……その力を君に授けたいと思っている。
         どうかな?悪い話ではない…むしろ、君の目は今輝いているように見えるが?」


 男の目を真っ直ぐ見つめる府坂。
 府坂を睨んでいる目、その奥に喜びを見出していた。


「……ライダーになれなかった男が、最強のライダーか」

 
 そして――男の口が、ニヤリと怪しく緩んだ。


(,,  )「……ふっ、面白い」


.

18 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 10:57:47 ID:o/sMbQ2Y0




 ―――――



.

1915話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 10:58:19 ID:o/sMbQ2Y0


 山の中にある、ボロボロな小さな一軒家。
 人が住んでいそうな雰囲気もあり生活感を醸し出しているが、住人がいる様子はない。
 
 山の中と言っても、人里がない訳ではなかった。
 きちんと車道もあり、ぽつぽつと家や店、古臭い田舎特有のコンビニなどが建ち並んでいる。
 それでもこの一軒家は、人の住んでいる場所からは離れていた。

 ボロボロな一軒家の近くには、ブーンの愛用車であるブルースペイダーが。



( ^ω^)「っしょ……と」

 
 コンビニ袋を持ったブーンが、草の生えきった道なき道を歩く。
 一軒家の前に着くと、ガラガラと戸を開け家の中に入った。


( ^ω^)「ふう〜」


 家の中も酷く老朽化していて、木で出来た柱や床が所々破損している。
 中には小さな囲炉裏があり、火が優しく灯っていた。

 そして、囲炉裏の隣には薄い布を被り眠っている人の姿が――。



川 - -)


.

2015話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 10:58:46 ID:o/sMbQ2Y0


 人の住んでいない場所だと思っているからか、家の中に上がるのに靴を脱いでいない。
 コンビニ袋を静かに置き、囲炉裏のそばで眠り続けるクーの顔を、そっと覗き込んだ。


( ^ω^)「……まだ起きないか」

( ^ω^)「意外と優しい寝顔してるお……」

川 ゚ -゚)パチッ 「黙れ」

Σ( ; ゚ω゚)「どぅおおああぁああっ!?!?」


 前触れもなく目を開き、早々口を開き出した。
 驚いたブーンは飛び跳ね後退りするが、火の灯っている囲炉裏に片手を突っ込んでしまう。


( ; ゚ω゚)「あっっちい!!!あちいっ!!」

川;゚ -゚)「ぐっ……」


 悶えるブーンをよそ目に、身体中に走る痛みを堪えながらゆっくりと上半身を起こす。
 ふと、コートを着ていない事に気付く。
 右腕に目をやると、傷口には簡単な処置が施されていた。

 周囲を見渡し、此処が何処だか分からない様子。


( ; ^ω^)「あっちぃ…!あああ…」


 少なからず、ブーンに助けられた事だけは察したようだ。


.

2115話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 10:59:33 ID:o/sMbQ2Y0


川 ゚ -゚)「何故私を助けた…?」

( ; ^ω^)「えっ?何でって……ちょっと待ってお、あーやべえマジで火傷したかも…」

川 ゚ -゚)「早く答えろ。私の正体を知っておきながら…何の真似だ」

( ^ω^)「……僕にだってよく分からない!クーさんを助けた事が正しいのか悪いのか…」


 バケツに汲まれた水に手を浸しているブーンの顔が、水面に映る。
 自分でも分かった。霧がかっているような、パッとしない表情をしている。
 仮面ライダーとしての自分、それに矛盾している自分に挟まれひどく思い悩まされていた。


( ^ω^)「クーさん、家出したんでしょ?ショボンさんの家から」

川 ゚ -゚)「……聞いたのか」

( ´ω`)「ショボンさん…学校行く前のあまねちゃん、凄く混乱して焦って、悲しんでたお。
       あまねちゃん、クーさんがいないと嫌だって泣きじゃくってたお。慰めてるショボンさんの事、見てられなかった…」

川 ゚ -゚)「………」

( ´ω`)「もう自分でも何が正しいのか分からないんだお!でも、二人の悲しむ顔見たら……体が勝手に動いてた」

( ^ω^)「それに……二人へのクーさんの愛情が、本物だって分かってるから。
       クーさんがアンデッドでも、あの二人を大事に思ってる事を知ってるから…!」

( ^ω^)「……僕、実はクーさんが作ってくれてたからあげの味が、一番好きなんだお」

川  - )「………」


 ブーンの言葉に、クーの強張った表情が切なさを帯びた表情へと変わったような気がした。

 家を出たと言ってもまだ一日も経っていないが、頭にはショボンや渡辺の事ばかり。
 今、自分がアンデッドである事をこれ程疎ましく思った事もない。
 こんな風になってしまったのは、いつからだろうか……。

2215話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:00:29 ID:o/sMbQ2Y0


( ^ω^)「とにかく、休んだら二人のもとへ帰ってくれお」

川;゚ -゚)「……余計なお世話だ、私は一人で…っうう…!」


 ブーンの優しさを突っぱね、無理に起き上がろうとするが身体が言う事を聞かない。
 大きく動こうとすれば痛みに襲われ、意地を張り切る事も出来なかった。


( ^ω^)「ちょ、そんな体で無理すんなお!今は休んでなきゃ駄目だお」


 バケツの水から手を抜き急いでクーのもとに駆け寄ると、両肩に手を添え身体を支えた。
 コンビニの袋に手を伸ばし、中に入っているパンやコーヒーを取り出すとクーにそれらを差し出す。


( ^ω^)っ∩「これ…家を出たんじゃ何も食べてないだろうと思って。
         ショボンさん家の朝食はよくパンとコーヒーだ、って聞いたから」

川 ゚ -゚)「………」

( ^ω^)「……あー、ごめんお。好みが分からないからたまごサンドとか適当だけど…。
      薬とか知識なくて効いてるか分からないけど、アンデッドの身体にも効くものかお…?」


 差し出された物を、虚ろ気な目で見つめる。
 ショボンと渡辺以外の人間に…アンデッドである事を理解している人間から受ける優しさに戸惑っていた。


川 ゚ -゚)「……食べる」
  っ∩c


 ブーンと目を合わぬまま不器用に発した一言。たまごサンドの袋を慣れた手付きで開け、一口かぶりつく。
 ショボン達と食べるパンに比べれば大した味ではないが、今は何故か満足している。

2315話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:01:23 ID:o/sMbQ2Y0


川 ゚〜゚) モグモグ
  っ∩c

( ^ω^)「はぁ…よかったお」


 無言で食べ続けるクーを見て、ホッとしてしまっている自分がいる。
 ライダーの使命など忘れて、今この瞬間を求めてしまっている自分が――。


 その時、ガラガラという戸の開く音が聞こえてきた。
 

( ^ω^)「えっ」


 まさか開けられるとは思っていなかった。
 開く音がしただけで焦り、本能的にやばいと感じた。怒られると思った。
 だが、視線を向けた先にいたのは……


川 ゚ -゚)「……!」

『!?』

( ^ω^)「アッ……アンデッド!?」

2415話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:01:48 ID:o/sMbQ2Y0


 戸を開けて現れたのは、人ではなくアンデッドだった。

 首に掛けるようにして生えた羽毛、長く伸びた口吻。
 両腕両脚には、羽根のようなヒレが生えていて、毒々しい見た目は毒蛾に見えなくもない。
 


川;゚ -゚)「うぐっ…!」

( ^ω^)「僕が行くから、クーさんは此処に居て!変身!」


 動こうとするクーを阻止すると、早々にブレイバックルを装着。
 広くはない室内でハンドルを引き、ゲートを放出させた。


    【 -♠TURN UP- 】


『シイイイィ……ッ!!』

( OwO)「待て!」


 変身したブレイドが迫ると、毒蛾のアンデッドは一度だけ飛び跳ね逃走。
 開けっ放しとなった戸を抜け外へと出る。周囲を見渡すが、アンデッドの姿はない。
 アンデッド自身が攻撃を仕掛けてもない為、アンデッドサーチャーには引っ掛からない。


( OwO)「サーチャーはまだ反応しないか…クソッ、何処に逃げた!?」


 ふと、目線を上へと向け生い茂る木を見渡す。
 すると、先程目にした羽根のようなヒレが木の陰から覗いていた。
 高い木の上に隠れるようにして、毒蛾のアンデッドはそこに居たのだ。


( OwO)「居たお…!おいお前!降りて来いお!!」


 人が登るには少し高過ぎる木、足を掛けるような枝も生えていない。
 ブレイドスーツの性能で、一度の跳躍で届く高さではある。
 だが、常人には無理という固定概念がその発想を妨げていた。

2515話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:02:25 ID:o/sMbQ2Y0


『シイイイ……!』

( #OwO)「降りて来いっつってんだお!!この……ッ!」


 木の上から降りず、ただ首を横に振っている毒蛾のアンデッド。
 しびれを切らし、木を蹴り付けようとした時だった。


「やめて!!!」


 甲高い声が、木の生い茂る場に響き渡った。
 声のする方へと視線を向けると、一人の少女が駆け寄ってきている。


( OwO)「ちょ、駄目だ!危ないから来ちゃ駄目だお!!」


 ブレイドの制止も聞かず近付いてくる少女。
 すると、その少女はブレイドと木の間に割って入り……弱々しくも精一杯の力でブレイドを押し退けた。


(#゚;;-゚)「やめて!!モスをいじめないで!!!」

( OwO)「へ……?」


 ブレイドに向かい両手を広げ仁王立ちする少女。
 少女が着ている服は少々ボロボロで、髪もボサボサ。親元で生活しているとは思えない。
 少女が立ちはだかった瞬間、降りる気配を見せなかった毒蛾のアンデッドが軽やかに地上へと飛び降りた。
 そして、仁王立ちする少女の傍に寄り添うように立つ。


( #OwO)「お前…ッ!!」
 

 少女を人質に取られたと思い込み、アンデッドに激昂するブレイドだったが……


(#゚;;-゚)「やめてって言ってるでしょ!?私の友達を、モスをいじめないでよ!!」

2615話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:03:01 ID:o/sMbQ2Y0


( OwO)「え……」


 少女はブレイドに助けを求めるどころか、激昂するブレイドを阻止しようとしている。
 いや、阻止というより、守ろうとしていると言った方が正しい。
 先程から毒蛾のアンデッドを"モス"と呼んでいるだけでなく、あろうことかアンデッドを"友達"と呼んでいるのだ。


( OwO)「ちょ…ちょっと待つお、そのアンデッドは――」

(#゚;;-゚)「モス!」

( ; OwO)「え…うん、えっと…モスは友達?でも、そのモスはとても凶暴な――」

(#゚;;-゚)「凶暴じゃないもん!モスは私と一緒に暮らしてる友達だもん!ねー、モス!」

『……ハ、イ』


 毒蛾のアンデッドは少女に向かい、おぼつかなくはあるが人の言葉で返事をした。
 見るところ府坂のような上級アンデッドにも見えない。
 にも関わらず、アンデッドが人の言葉を話した事実に驚きを隠せないブレイド。


Σ( OwO)「えっ…!アンデッドが、人の言葉で返事を……!」

(#゚;;-゚)「だからモスだってば! モ ス !!」

( ; OwO)「あ、ハイ……」

(#゚;;-゚)「……お兄さん、何なの?」


 まだ信用は出来ないが、毒蛾のアンデッド……モスに敵意はない。
 その事を確認すると、ブレイドは変身を解除。人としての姿を少女に見せた。

2715話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:03:52 ID:o/sMbQ2Y0


(#゚;;-゚)「えっ!?すごい!今の何!?」

( ^ω^)「えーと……ちょっと待ってね、順番に説明するからひとまずあの家の中に入ろうお」
 

 何から説明していいのか、何から聞けばいいのか、軽い混乱を引き起こしている。
 クーが未だ居るボロボロの家を指差し提案するブーンだが、驚きの答えを聞く事になる。


(#゚;;-゚)「それ私とモスのお家だよ?」

( ^ω^)「え?」

(#゚;;-゚)「私とモスで、一緒に暮らしてるの」


 空き家だと思っていたボロボロの家が少女の家だった事実。
 だが、それ以上にこのボロボロの家に二人で住んでいるという事実に驚いた。


( ^ω^)「ちょっと待って、お父さんお母さんは?」

(#゚;;-゚)「いるよ。でも遠くに行かなきゃならなくて、いつか迎えに来るからって…私を此処に置いてったの」

( ^ω^)「………」


 言葉も出ない。人として信じられないような話だ。
 話を聞いただけで、少女の両親の言っている事が嘘だと分かるような内容。
 家の中を見たからこそ分かるが、とても子供一人で住むような場所でもないのに。


(#゚;;-゚)「お兄さん、もうモスの事いじめないならお家入ってもいいよ」

『………』

( ^ω^)「……うん、わかったお」


 アンデッドに表情の変化などなく、顔を見たところでどんな気持ちなのか把握する事は到底出来ない。
 根拠もないが、本当に敵意が無いのかも。と思い始めていた。

2815話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:04:31 ID:o/sMbQ2Y0


(#゚;;-゚)「じゃあいいよ、来て」

( ^ω^)「あ…ごめんお、てっきり人がいないと思って。実はちょっと入っちゃったんだお…」

(#゚;;-゚)「そうなの?でもいいよ、盗むものとかないもん」


 冷静にそう答えてしまう少女がとても可哀想に見える。
 自分が住んでいる場所には、人が惹かれるような物が何一つ無い事を理解しているように聞こえた。

 少女とモスの後ろに着き、少女の家の中へと戻るブーン。
 囲炉裏の側で寝ていたクーが、上半身を起こしてこちらを睨むような目で見ていた。


川 ゚ -゚)「………」

(#゚;;-゚)「お兄さんのカノジョ?」

( ; ^ω^)「ぶっ!!ちっ、違うお!彼女はちょっとケガをしてるから……少し寝かせてあげてほしいお」

(#゚;;-゚)「そうなの?いいよ」


 家の中へと上がり、囲炉裏を囲むようにして少女とモスは座る。
 クーが先程から睨みを効かせている相手はモス。どうやら、クーとモスが何か会話をしているようだ。


『―――、――…!』

川 ゚ -゚)「……どうやら敵意は無いようだな」

( ^ω^)「分かるのかお?」

川 ゚ -゚)「同じアンデッドだからな、私は」

( ^ω^)「…お、おん」

2915話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:05:15 ID:o/sMbQ2Y0


( ^ω^)「君、名前はなんていうんだお?」

(#゚;;-゚)「でぃだよ」

( ^ω^)「でぃちゃん…でぃちゃんは両親と離れていつから此処に?」

(#゚;;-゚)「うーん…4ヶ月前くらいからかな?」

( ^ω^)「4ヶ月前……」

(#゚;;-゚)「でももう慣れちゃった。食べ物とかは近所のおばちゃんとかが持ってきてくれるの」

(#゚;;-゚)「あ、モスがいる事はみんなには内緒だよ」


 淡々と質問に答えるでぃ。怯える様子も哀しげな様子も感じられない。
 見たところ9歳前後に見える少女は、たったの4ヶ月で人柄が変わってしまったのか。
 それとも、元々そういう教育を受けてきたのか。
 どちらにしろ、この現状はとても許されるべきものではない。

 すると、意外な事にクーが少女に声を掛け始めた。


川 ゚ -゚)「……でぃちゃん、怖くないのかい?そのお友達の事」

(#゚;;-゚)「怖くないよ!モスとはちょっと前に会ったの、凄く傷だらけだったからお家で休ませてあげたの。
     最初はちょっと怖かったけど、モスすごく優しくしてくれて。私が言葉を教えてあげたりしてるの!」

川 ゚ -゚)「言葉を…?」

(#゚;;-゚)「モス、おはようございます!」

『……オ、オハヨウゴ、ザイマス』

( ^ω^)「うわ…!マジだ…」

川 ゚ -゚)「………」


 カタコトではあるが、しっかりと日本語で発音出来ている。
 クーのモスを見る目付きが変わった。
 警戒心が剥き出しになっていたが、今ではそれが和らいでいる。戸惑っているようにも見えるが。

3015話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:06:04 ID:o/sMbQ2Y0


川 ゚ -゚)《…お前、この子の事をどう思ってるんだ?》


 クーがモスに向け、意思を通して話し始めた。


《――僕は、この人間の子を愛してしまっている。アンデッドでありながら…》

川 ゚ -゚)《何故だ?何故、人間を…》

《僕は元々戦いを望まない。我々が封印を解かれた時点で、僕はすぐに身を隠した。
 だが…アンデッドとしての気配を感知され何度も襲われた。この地に辿り着いた時、この人間の子が助けてくれたのだ》

《何故かは分からないが…分かっている事は、僕は人間の愛を知ってしまったのだ。
 このまま戦いから身を潜めていたい。封印されるべきなのだろうが…この子と離れたいとも思わない》

川 ゚ -゚)《………》


 モスの話を自分と重ねてしまう程、境遇が似ていた。
 アンデッドでありながら、人間の愛情を知ってしまった自分。
 何故?と聞かれて答えられる程、アンデッドにとっては簡単は事ではない。
 そして、渡辺よりも小さな少女に対しても、渡辺の影を重ねて見てしまっている自分がいる。

 押し殺していたはずの感情が暴発し、寂しさが溢れる。
 ショボンや渡辺のもとへ今すぐ帰りたい。バーボンハウスに戻りたい。
 会いたいという気持ちが止め処なく押し寄せ、胸が苦しい。


川 ゚ -゚)(今更、あそこへは帰れない……)
 
川 ゚ -゚)「……でぃちゃん、お願いがあるんだけど。いいかな?」

(#゚;;-゚)「なに?」





川 ゚ -゚)「私を、此処に住まわせて欲しい」

3115話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:06:36 ID:o/sMbQ2Y0


( ^ω^)「えっ」

(#゚;;-゚)「いいよ?」

( ; ^ω^)「ええええええっ!?そんな簡単に!?」


 クーからの予想外な発言。易く受けるでぃにも驚く。
 

( ^ω^)「ちょ、ちょっと待っておクーさん!あまねちゃん達のもとに――」

川 ゚ -゚)「バーボンハウスには帰らない。私が居れば迷惑が掛かる」

( ^ω^)「そんな……」

(#゚;;-゚)「本当にいいの??待ってる人いるんじゃないの?」

川 ゚ -゚)「……いいんだ。私に、あっちは向いてない」


 身体に掛けられた布を退かし、畳んであるコートを広げ羽織った。
 まだ痛みが残るのか、ゆっくりとだが起き上がれるまでには回復したようだ。

 アンデッドは不死身。封印する以外にその命を断つ事は不可能。
 どれだけの重傷を負っても、回復も人間の数倍早いという訳だ。


川 ゚ -゚)「でぃちゃん、ちょっとモスとこのお兄さんと三人で話してもいいかな?」

( ^ω^)「ぼ、僕も?」

(#゚;;-゚)「モスと?お話できるの?」

川 ゚ -゚)「ああ……まぁ、少しな」

(#゚;;-゚)「いいよ、モス行っておいで」

『ハ、イ』

3215話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:07:51 ID:o/sMbQ2Y0


 ブーンとクー、モスは家の外へ出ると、でぃに聞こえないように家との距離を取った。
 木に凭れ掛かり腕を組むクーに対し、ブーンとモスはクーを不思議そうに見ている。


川 ゚ -゚)『お前、隠してる事があるだろう』

『………』

川 ゚ -゚)『あの子の両親……本当に生きてるのか?』


 モスに向け唐突に質問を投げ掛けた。
 しかもその内容は、でぃの両親について。

 クーの質問に対して、モスは重たそうに口を開いた。


『……アンデッドの戦いに巻き込まれ、命を落とした。僕と、カテゴリーQとの争いにだ』

川 ゚ -゚)『……やはりな』

( ^ω^)「何を話してるんだお?」

川 ゚ -゚)「…でぃの両親は死んでる、このアンデッドと別のアンデッドの争いに巻き込まれて」

( ^ω^)「ええ…!?」


 予想もしなかった。
 でぃは、ただ両親に捨てられたものだとばかり思っていただけにその衝撃は大きい。
 モスは肩を落としうつむいている、落ち込んでいるのだろうか。


『隠したかった訳ではない…伝える術が無いのだ。人間と意思を通わせる事はとても難題だ』

『いつかの日…この周辺で、僕はカテゴリーQに襲われた。当然逃げようとした。
 だが、その時とある人間の家族が巻き添えを食らってしまい…あの子の両親は、そこの棲家に子を押しやった。
 守ったのだ、あの子の両親は自らの命と引き換えに…あの子を』

『あのカテゴリーQはとても残虐だ、自ら人間を襲う真似はしないようだが…。
 自分にとって邪魔な者は、何者であれ排除する。そういう気質の持ち主だ』

3315話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:08:28 ID:o/sMbQ2Y0


川 ゚ -゚)『そうか……』

『そんな残酷な事実も知らないで、あの子は本当に待ち続けている』

川 ゚ -゚)「…両親があの子を庇って死んだ、あの子はその事を知らないらしい」

( ^ω^)「そんな……4ヶ月もこんなところで待ち続けてるのかお……」

川 ゚ -゚)「こいつは他のアンデッドとは違い平和的だが、アンデッドが人の子をどうこう出来るものでもない。
     上級であれば人に擬態出来るかもしれないが…こいつなりに、してやれる事はしてやっている」

( ^ω^)「……まぁ、そうかもしれないお」

『だから、僕は人の言葉を覚えようとしている。そうすれば意思の疎通が出来るはずだ』


 事は想像していた以上に重たかった。
 アンデッドでありながら人間への優しさを見せるモス、モスの声に真剣に耳を傾けるクー。
 ブーンは、クーとモスを重ねて見ていた。


( ^ω^)(クーさんも、口では色々言うけど人を襲ったりはしないし。むしろでぃちゃんには優しくしている…。
       このアンデッドも人は襲わないどころか、戦いを避けてでぃちゃんと暮らしている…)

( ^ω^)(もしかして……アンデッドの中にも、心優しいアンデッドがいるって事かお?だとしたら、クーさんも……)
 

 ブーンの中で、アンデッドという既成概念が崩れ掛かっている。
 元々アンデッドは人を襲い、府坂のように己の欲望の為に動く絶対的な悪という概念が植えつけられていた。
 ライダーになった以上、どんなアンデッドも全て封印するという使命感にも。
 その為に、クーがアンデッドだと知った時は酷く憤怒した。
 
 だが、クーの人間らしさを知り、今こうしてモスの優しさを目の当たりにし、その概念に疑問を抱き始めている。
 
 全てのアンデッドが、人間の敵に成り得る訳では無いのではないか。と。


.

3415話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:09:04 ID:o/sMbQ2Y0



川 ゚ -゚)『私もお前と同じだ、人間の愛情を知ってしまった。これが私にとって何を意味しているのかは分からない。
      でも……とても心地が良いものだと感じてしまうんだ』

川 ゚ -゚)『お前達に危害を加えようなどとは思わないから安心しろ。お前が私とやると言うのなら話は別だが』

『そんな事はしない、したくもない。……そろそろ戻ろう、長いとあの子が心配する』

川 ゚ -゚)「…そうだな、戻るか」

( ^ω^)「おっ、うん」


 クー達に釣られ、でぃの家へと戻ろうとした時。
 ポケットに入っているスマホが振動し、着信を報せ始めた。


( ^ω^)「あっ、先行っててくれお」


 ポケットからスマホを取り出し、呼出人の名前を確認する。
 着信はドクオからだった。
 二人へ挨拶をすると、ブーンは一人その場に残り着信を取った。



( ^ω^)ロ 「おいすー」

「ブーン…!!たっ、助けてくれ…!!」

( ^ω^)ロ 「どうした!?」


 スマホの向こうから聞こえたドクオの声は小さく、震えている。
 その様子から、アンデッドに襲われているのではないか。と予測は出来た。

 ドクオの答えを聞く前に、ブーンの横をクーが駆け足で通り抜ける。



川 ゚ -゚)「カテゴリーAだ…!」
 
.

3515話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:10:00 ID:o/sMbQ2Y0


( ^ω^)ロ 「カテゴリーA……もしかして、あの時の!?」

「頼む早く来てくれ…!!このままじゃ殺され…ッうわあああ!!」

( ^ω^)ロ 「ドクオ??ドクオ!?!?」


 ドクオの断末魔を最後に声は聞こえなくなった。切れてない電話がより不安を煽る。
 ブーンの横を通り過ぎていったクーは、いち早くカテゴリーAの気配を感じ取ったのだろう。
 しかし、まだ絶好調とまでは行かず、身体にズキンッと痛みが走りその場に転倒してしまう。


川;゚ -゚)「うぐっ…!」

( ^ω^)「クーさん…!クーさんは此処に居てお、僕が行くから!!」

川;゚ -゚)「………」

(#゚;;-゚)「どうしたの?大丈夫?」


 騒ぎを聞きつけてきたのか、家の中からでぃとモスが出てきた。
 倒れているクーのもとに駆けつけては、モスがクーの身体を支え起こす。


( ^ω^)「二人とも、そのお姉さんの事見ててお!僕ちょっと急ぐから!!」


 二人にクーを託し、一人ブルースペイダーのもとへと駆け出す。
 バイクに乗りヘルメットを被ると、急いでドクオの元へと走らせた。






「…へぇ〜、此処に居たんだカリス。しかも此処あの下級もいるじゃん」


 ブーンと入れ替わりで、パンク系の派手な格好をした若い女が木の陰に現れた。
 耳につけたピアスを揺らし、真っ赤に塗られた唇から紅い舌を覗かせる。


(*゚∀゚)「アヒャヒャ、良い事思いついちゃった〜♪」


.

3615話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:10:23 ID:o/sMbQ2Y0




 ―――――



.

3715話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:10:47 ID:o/sMbQ2Y0


 ――街中を颯爽と走る、紅いレッドランバス。 
 カテゴリーAが出現した事を聞き、モララーも同じくドクオのもとへと向かっていた。

 数時間前にカリスに邪魔をされ、二度も取り逃がしてしまっている。
 今度こそは、と。カテゴリーA封印に燃えていた。


( ・∀・)(カテゴリーA…今度こそ俺が必ず!)


 すると、対向車線から一台の見慣れた車が通りかかった。


( ・∀・)(あの車は……)

「モララー!!」


 疑問を持ったと同時に、聞き慣れたよく通る声がモララーの耳に届いた。
 それと同時にレッドランバスを停め、見慣れた車から降りた人物が車通りの無い道を横断してきた。


( ・∀・)「ヒート……」

ノパ⊿゚)「はぁ、はぁ…よかった。やっと会えた……電話しても出てくれないし、心配したんだ」


 酷くモララーへの怒りを見せたヒートだったが、未だに気遣う気持ちを抱いていた。
 ようやく会えたからか、ヒートは息を切らしながらも笑顔でヘルメットのシールド越しにモララーを見つめている。

 そんなヒートの笑顔が眩しすぎるのか、気まずいのか。すぐに視線を逸らしてしまう。


( ・∀・)「……俺の事はもう忘れてくれ」


 アクセルを踏もうとした瞬間、レッドランバスの行く手を遮るようにヒートが前に出た。

3815話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:11:25 ID:o/sMbQ2Y0


ノパ⊿゚)「ま、待って!君に話さなきゃならない事がある!」

ノパ⊿゚)「君が浸かってる溶液だが……あれはとても危険だ!」

( ・∀・)「危険……?」


 肩に下げているショルダーバッグから、数枚の書類を取り出しモララーへと差し出した。


ノパ⊿゚)「調べてもらったんだ。君の浸かってる溶液…その植物は、"シュルトケスナー藻"と言うらしい。
     既に絶滅したはずの植物らしいけど、その植物は中枢神経を刺激して…今の君のように闘争本能を増幅させる」

ノパ⊿゚)「だけど、それは一時的なものだ。シュルトケスナー藻の成分は強過ぎる。
     強過ぎて…それを使い続ければ、やがて神経や細胞が破壊されてしまうんだ!」

( ・∀・)「……!」


 初めて聞かされる話に、モララーの表情は一変。
 戸惑いを隠せず狼狽えている。


ノパ⊿゚)「君、ずっと身体がボロボロになるって悩んでたんだろ…?
     こんな事してたら本当にボロボロになる!だからもう、やめてくれ…!」


 話が事実なら、ボロボロにならない為の力を得たはずなのに、その力によってボロボロになってしまう。
 モララーにとっては、行くも退くも地獄という状況。
 ヒートは、モララーがほんの少し目が覚めてくれたように見えたが、


( ・∀・)「………悪いけど、俺は今満足している」

ノパ⊿゚)「え……?」


 モララーからの答えは、ヒートの訴えを全て拒むようなものだった。
 身体がボロボロになってしまうのに、満足……言葉の意味は分からないし、分かりたくもなかった。

3915話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:12:17 ID:o/sMbQ2Y0


( ・∀・)「あの溶液に浸かって力を得る…そして戦うと、俺は全てを忘れられるんだ。
      戦える自分が嬉しくて、もっともっと力が欲しい。もっと戦いたいって思える!」

( ・∀・)「誰にも負けない力…もっと強くなって、誰よりも強くなりたい!
       そう思えば思う程、戦える事が喜びになって…俺の全身に漲るんだ!」


 目を見開きながら嬉々として話す様は、既に常軌を逸している。
 まるで、薬物依存に陥ってしまった人間のように。


ノパ⊿゚)「それが一体なんなんだ!?君は死んでしまうかもしれないんだぞ!?」

( ・∀・)「……俺は、大きく生きたいと思うようになった。俺の強さを誰からも認められて、俺は――」

ノハ ⊿ )「違う!!!!」

( ・∀・)「!!」


 全力で出した大声が、モララーの話を遮った。
 

ノパ⊿゚)「違う……そんな生き方じゃなくていい、誰にも認められなくたっていいじゃないか!
     君は君だよ…モララーはモララーなんだ。強くなくたってモララーの良いところ、私はたくさん知ってる!」

ノパ⊿゚)「それに……私は、道端の花みたいにひっそりとでいい。そんな風に…君と生きていきたいんだ」

ノパ⊿゚)「君と…二人で…!」

( ・∀・)「………俺、と……?」


 ヒートの言葉に、心が大きく動かされた。
 ようやく、自分が力に溺れてしまっていた事を思い出させる。
 ヒートを守る為に得た力のはずなのに、いつの間にかただ力を振るう化物と化していた。
 
 そう、気付いたはずなのに。
 
 それでも――力を失えば、ヒートを守る事も出来ない。

4015話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:12:58 ID:o/sMbQ2Y0


( ・∀・)「………ごめん、生き方が違ってしまったんだ。もう一緒には生きられない」


 手渡された書類を撒き散らし、今度こそアクセルを踏んだ。
 目の前のヒートを、迷いを振り切るように。


ノパ⊿゚)「わっ!待ってモララー!モララー!!」


 寸前で身を翻し、衝突を避けた。
 走り去って行くモララーの背中を見つめながら精一杯名前を叫ぶが、その声は届かない。
 
 
ノパ⊿゚)「……モララー……」


 足元に書類が散らばった中、遠くなっていく背中を見つめ続ける。
 すっかりと変わってしまったと思っていた。でも、そうじゃなかった。
 本当のモララーはまだ居て、今は本当の姿を覆いつくしてしまう程の力に溺れてしまっている。
 
 これだけの事を言われても、モララーへの気持ちを捨てる事は出来なかった。

 足元の散らばった書類を一枚一枚広い上げ、寂しそうに車へと戻るヒート。








 ――その様子を物陰で見つめる、黒い影。


ミ,,▼Д▼彡「あの女は………邪魔だな」


.

4115話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:13:40 ID:o/sMbQ2Y0


 ――――――
 ――――
 ――


 クー達のもとを離れ、ドクオの助けに向かっているブーンは山を下り街中へと戻って来た。
 具体的な場所は、イヤホンでのツンとの通話で知らされている。


( ^ω^)「後少ししたら着くお……ドクオ、頼むから必死で逃げててくれお!」


 ブルースペイダーを走らせている中で、T字の道路へと出た。
 すると、T字の道路から合流してきた赤いバイクが一台、ブーンの前へと着いた。

 よく見なくても分かる。
 この赤いバイクはレッドランバスで、乗っているのは……モララーだ。


( ^ω^)「モララーさん!!」

( ・∀・)「………」


 背後の存在に気が付くが、返事も反応もしない。
 カテゴリーAのもとへとただひたすらにレッドランバスを走らせるだけ。

 
( ^ω^)「もしかして、モララーさんもカテゴリーAの反応を辿って…?」


 カテゴリーAの反応がある度にモララーは必ず現れていた。
 モララーの裏切りを受けて以来接触が無かったが、今此処に来てようやく遭遇する事が出来た。
 だが、ブーンは喜びはしない。抱いているのは警戒心だけ。


( ^ω^)「僕の親友の命がかかってるんだ、変な真似したら許さないお…!!」

4215話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:14:15 ID:o/sMbQ2Y0


 その時、モララーとブーンの間に割って入るようにして頭上から何かが現れた。
 青と金の優雅な羽を羽ばたかせ、颯爽と出現。
 右手に持った黒い剣を振りかざし、接近するブルースペイダーに向けて振り下ろした。


( ^ω^)「なんだっ!?」

ミ,,゚王゚彡『菱谷の邪魔をするな!!』

( ; ^ω^)「うわぁああっ!?!?」


 剣撃を受けたブルースペイダーのバランスを崩し、ブーンは道路上に転倒。
 身体を道路に強く打ち付け、そのまま流れに抵抗出来ず転がった。


( ; ^ω^)「ううっ……ぐ、お前ェ……!」

ミ,,゚王゚彡『カテゴリーAは渡さん、あれは菱谷の物であり俺の物だ』

( ; ^ω^)「ふざけんなお…!お前の所為でモララーさんは……!!」


 じっくりと時間を掛けさせられ、仇敵となった府坂。このアンデッドの仕業で何度も掻き乱されてきた。
 モララーが裏切りに至ったのも、この男が手を回した所為だ。
 
 痛みなどに構っている暇はなく、無理矢理身体を叩き起こす。
 ポーチからブレイバックルとカテゴリーAのカードを取り出し、腰に装着。
 前回は完敗を喫した相手に、再び戦いを挑んだ。


( ^ω^)ψ「変身!」
    /

    【 -♠TURN UP- 】


 府坂が炎球を放ったが、被弾する前にゲートを放出する事で炎球を打ち消す事に成功。
 ブレイラウザーを左手で逆手に引き抜き右手に持ち直す。
 互いに詰め寄り距離を埋めると、剣と剣を激しく打ち合った。

4315話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:14:53 ID:o/sMbQ2Y0


( OwO)「ぐぐぐ……ッ!!」

ミ,,゚王゚彡『ふん、全く…雑魚の相手は張り合いがない!』

( ; OwO)「あうっ!?」


 鍔迫り合いになった剣と剣。
 府坂が力任せにブレイラウザーを振り払い、ブレイドの胸にまずは一太刀。
 余裕綽々な府坂。挑発的な言葉を述べながら、軽々と黒い剣を振るい続ける。


( ; OwO)「くそォ…!上級アンデッドは…こんなに強いのかお……ッ!!」

ミ,,゚王゚彡『俺が強い、そう言いたいところだが……貴様が弱いだけだ!』

( ; OwO)「ぐううぅ!!」


 剣の打ち合いの中で、府坂の放った炎球が直撃。
 府坂の追撃は止まらない。
 吹き飛ばされ地面に倒れるブレイドを囲むようにして、羽根の投擲刃が展開。


ミ,,゚王゚彡『ふんっ!!』

 
 立ち上がった瞬間、府坂が拳を握ったと同時に囲んだ投擲刃が一斉放射。ブレイドを串刺しにした。


( ; OwO)「うわあぁあああっ!!!」


 回避不可能かつカードを使う間もない攻撃に、ただ晒されるしかなかった。
 投擲刃の攻撃を受けたブレイドは、悲鳴を上げながら再び転倒。


( ; OwO)「ああ"ぁ"っ………、……?」


 途端、フッと気配が消えるのを肌で感じる。
 顔を上げると、其処にいたはずの府坂がいない。


( ; OwO)「……クソッ、時間稼ぎかお……!!」


.

4415話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:15:48 ID:o/sMbQ2Y0


 ブレイドの言葉通り、府坂の行動はあくまで時間稼ぎでしかなかった。
 モララーを一人でカテゴリーAのもとへ向かわせる為、行く手を防ぎに来たという訳だ。

 そして、その通りモララーは単身カテゴリーAのもとへと辿り着いた。
 辿り着いた場所には、カテゴリーAとそれに襲われてるであろうドクオの姿があった。
 だが、カテゴリーAはドクオに手を出してはいない。
 それどころか、何かを語りかけている。


( \品/)『キサマ、力ヲ欲シイト思ワナイカ?』

(;'A`)「な……何言ってんだ……!?」

( \品/)『俺ニハ見エル…キサマノ心ニ染ミ込ンダ、暗闇ガ見エルゾ…!』

(;'A`)「もうやめてくれよぉっ!!何で俺なんだよ!!俺は強くなんかない!!!」

( \品/)『俺ヲ求メロ…!俺ハキサマノ"力"トナリ、ソノ暗闇ニ住ミ着イテヤロウ!』

(;'A`)「訳わかんねぇって…!!襲う気ないなら来るんじゃねえ!!」


( ・∀・)「カテゴリーA!!」

( \品/)『………フッ、時ハ来タ』

(;'A`)「ひっ……うわああぁああっ!!」


 モララーの声に反応し振り向いた隙をついて、ドクオは懸命に走り出す。
 ドクオに語りかけていたカテゴリーAはほくそ笑み、ドクオを追跡しようとはしない。
 ギャレンバックルを装着し、戦いに望もうとしているモララーに向き合っている。


( ・∀・)「今度こそ逃がさない…覚悟しろ!!」

o( ・∀・)「変身!!」



    【 -♦TURN UP- 】

4515話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:16:32 ID:o/sMbQ2Y0


 ゲートを通過しギャレンへと変身。
 そのまま走り接近を試みるが、カテゴリーAは蜘蛛の糸を発射してそれを迎撃する。

 その攻撃を見抜いていたのか、咄嗟にギャレンラウザーを引き抜くと右に受け身を取りながら銃撃。
 ギャレンの攻撃を許してしまったカテゴリーAに、何発もの銃弾が浴びせられる。


( \品/)『グウゥッ……フフ、クハハハハ…!来イ…!』

( OMO)「今度こそ俺の手で、貴様を倒す!!」


 ギャレンラウザーを右手に持ったまま接近戦に挑んだ。
 腕を横に振り切ったカテゴリーAの攻撃をひらりと避け、打撃の後すぐに銃撃を放つ。
 カテゴリーAの重たそうな身体から繰り出される素早い攻撃。
 それらを全て防ぎ続け、カウンターに打撃・銃撃を打ち込んで行く。

 
( \品/)『ウウ"ゥア"ア"ァッ!!……グフッ!』

( OMO)(手応えはある…このまま攻め込めば、俺はこいつを封印出来る!)


 着実に追い込んでいる手応えを掴んでいた。
 幾度か戦い、カテゴリーAの動きを把握しているからだろうか。
 初戦は苦戦気味だったが、今となっては圧倒している。

 それ程までに、ギャレンの力は倍増しているというのか。



 だが……カテゴリーAは、心の中で笑い続けている。

4615話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:17:01 ID:o/sMbQ2Y0


( OMO)「一気に片を付ける!」

( \品/)『ウアア"ア"ァア"アッッ!!!』


 がむしゃらに走り、突っ込み始めるカテゴリーA。
 ギャレンラウザーのオープントレイを展開し、一枚のカードを選択し素早くラウズする。
 カテゴリーAはこの間、ワイヤーで阻止しようとはしない。


     《-♦3 BULLET-》


( OMO)「来い!!」


 ギリギリの限界までおびき寄せる。
 一気に距離が縮まり、カテゴリーAはギャレンに襲い掛かった。

 この瞬間を狙っていた。
 ギャレンは攻撃を躱し懐に潜り込むと、腹部に向け威力の倍増した銃撃を何発も撃ち込んだ。


( \品/)『ウオオオォオオッ…!!』


 銃撃の衝撃で吹き飛ばされる。
 地面に叩き付けられた時を見計らい、ギャレンは更に三枚のカードを選択。
 蜘蛛によるくだらない遊戯、そして自分の力の証明の戦いに、終わりを告げようとしていた。


    《-♦5 DROP-》 《-♦6 FIRE-》 《-♦9 GEMINI-》


 三枚のカードの紋章が、ギャレンの背後に浮遊する。
 順に紋章を身体に宿し、三つの力をその身に宿した。


         《-♦BURNING DIVIDE-》


( OMO)「終わりだ!!」

.

4715話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:17:25 ID:o/sMbQ2Y0


 両脚を揃え、地面を蹴り跳躍。
 空中で身体を回転させるギャレンが二つに分身し、二人のギャレンの両脚に燃え盛る炎が纏い始めた。

 カテゴリーAが立ち上がった時には、もう遅い。
 二体のギャレン。どちらが本物か区別がつかず、右側のギャレンを蹴散らそうと蜘蛛の糸を放出した。
 蜘蛛の糸が接触した瞬間、右側のギャレンが消失。


( \品/)『!?』

( OMO)「でいやあああああっ!!!」


 左から迫るギャレンの両脚が、炎の残像を描きながらカテゴリーAに叩き込まれた。
 

( \品/)『グアアァアアアッ………!』


 歪な声をあげながら吹き飛び、カテゴリーAは吸い込まれるように地面に崩れ落ちた。
 爆発は起きないが、ギャレンの必殺技を受け立ち上がる様子はない。

 ギャレンはカードを一枚抜き、倒れたカテゴリーAに向け投擲。
 カードの角が身体に突き刺さると……みるみるカードに吸収され、封印されてしまった。
 封印を終えたカードがギャレンの掌中に戻り、そのカードを見つめる。


( OMO)「……ついにやった、俺は…俺の力だけでカテゴリーAを倒した…!」


 バックルのハンドルを引き、ギャレンの変身を解除する。
 封印したカテゴリーAのカードを見つめるその表情は、とても満足していて、嬉しそうだ。


( ・∀・)「やったぞ…これで、俺の強さは証明された!俺は戦える!!」

4815話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:17:53 ID:o/sMbQ2Y0


「終わったようだな…ご苦労だった、流石はギャレンだ。後で俺のもとへカードを渡しに来い」

( ・∀・)「ああ」


 府坂の声が脳に響く。モララーがカテゴリーAを封印した事を把握したようだ。
 落ち着いた声で一言返事を返すが、モララーの心は喜びに踊っていた。
 あれ程の強敵であったカテゴリーAを一人で封印した事が、絶対的な自信に繋がった事を。



 だが、その喜びは束の間のものとなる。
 モララーの頭に、ヒートの言葉が過ぎり始めた。


 ――――――――――

 ノパ⊿゚)「道端の花みたいにひっそりとでいい。そんな風に…君と生きていきたいんだ」

 ノパ⊿゚)「君と…二人で…!」

 ――――――――――


( ・∀・)「……違う。俺は、何で喜んでいるんだ…?こんな事をして……」


 ヒートの言葉を頭の中で繰り返しているうちに、突然、我に返り始める。
 カテゴリーAを倒し、嬉々としている自分が可笑しい事にようやく気付き始めた。
 それは間違いなくヒートの言葉のおかげであり、ヒートの力。
 シュルトケスナー藻によって、精神を支配され掛けていたモララーの心に、ヒートの声が届いていたのだ。


( ・∀・)「……ヒート」


 手に持っていたカテゴリーAのカードを、静かにポケットへしまう。

 モララーの中に、ヒートへの想いが突如溢れ出した。
 自分勝手だと分かっていながら、その気持ちを抑える事が出来ない。
 モララーはレッドランバスへと乗ると、衝動的に診療所へと向かって行った。 


.

4915話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:18:23 ID:o/sMbQ2Y0




 ―――――



.

5015話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:18:47 ID:o/sMbQ2Y0


 モララーと遭遇した後、ヒートは一人自身の診療所へと戻っていた。

 表情はとても暗く、既に疲れ切っている。
 ショルダーバッグをスタンドに掛け、白衣も着ずに椅子へと腰掛けた。


ノパ⊿゚)「……はぁ」


 深く吐いた溜息、声が部屋中に響く。
 すると、ヒートは立ち上がりスタンドに掛けたバッグの中を漁り始めた。何かを探している。
 探し物を手に掴むと、再び椅子へと座り手に掴んだものを見つめる。


ノパ⊿゚)「モララー……私は一度も君の事、忘れた事なんてない…」


 哀しげに見つめている物は、お守りだった。
 何の変哲もない、ただのお守りだが……


ノパ⊿゚)「大学を卒業した時に、君がプレゼントしてくれたもの…未だに持ってるなんて知られたら笑われるよな」


 そのお守りは、大学を共に卒業した時にモララーがヒートにプレゼントしたものだった。
 ヒートの成功、健康を願って……不器用ながらにプレゼントしてくれた事が、とても嬉しかった。
 特別なお守りなどでなくても、ヒートにとっては世界で一番特別なお守り。
 赤い布に包まれたお守りは、時が経ち紐が解けてしまった為にバッグの中に入れ、大切に持ち歩いていた。


ノパ⊿゚)「……モララー」


 





「そんなに奴に会いたいか?」

5115話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:19:23 ID:o/sMbQ2Y0


ノパ⊿゚)「!?!?」


 突如、自分以外誰もいないはずの部屋に男の声が響き渡る。
 驚いたヒートは、声のする方へと反射的に振り向いた。

 そこには……


ミ,,▼Д▼彡「…深沢ヒート、だな」

ノハ;゚⊿゚)「な……何なんだ、あなたは……どこから!?」

ミ,,▼Д▼彡「お前は、菱谷にとって邪魔になる」

ノハ;゚⊿゚)「何を―――ッッ!?!?!?」


 
 腹部、そして背中に感じる違和感。
 恐る恐る、視線を下に向ける。



ミ,,▼Д▼彡「悪いが……お前には消えてもらう」





 ヒートの腹部には――

 


ノハ;゚⊿゚)「はっ…あ、ぐ…あ……!」




 ――黒い剣が、深く、深く突き刺さっていた。

.

5215話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:20:44 ID:o/sMbQ2Y0


ミ,,▼Д▼彡「お前は触れてはならない所まで触れてしまった」

ノハ;゚⊿゚)「お前……が、ふさ…か……!」

ミ,,▼Д▼彡「挨拶が遅れたな。俺が、菱谷を救った張本人の……府坂だ」

ノハ;゚⊿゚)「そうか……お前が、…モララーを誑かしたのか……ッ!!」

ミ,,▼Д▼彡「言い方が悪いな、俺は奴を助けたというのに」

ノハ#゚⊿゚)「何が助けただ…!!お前は…モララーの、モララーの心を弄んだ……!
       

 腹部に刺さる黒い剣を、震える両手で掴む。
 怒りに震える声、激情に歪む顔。
 モララーを大切に思うが故、府坂に対し食って掛かった。


ノハ#゚⊿゚)「お前はただ、モララーを人形にしただけだ……ッささやかな笑顔すら、お前が奪った…!!
      お前だけは許さない……!私を消して……、全てが上手く行くと思うな…!!」

ミ,,▼Д▼彡「………」

ノハ;゚⊿゚)「お前は…ッ、必ず……ブーン君や……モララー、に……」

ミ,,#▼Д▼彡「黙れッ!!!」


 突き刺した黒い剣を、勢いよく引き抜いた。
 剣を掴んでいたヒートの掌は切り付けられ、腹部から血があたりに飛び散る。
 ヒートは力なく倒れ……モララーからもらったお守りも、目の前に落ちてしまった。
      

ノハ; ⊿ )「………」

ミ,,#▼Д▼彡「人間如きが……ましてやあんな雑魚共が俺を倒すだと?笑わせる!」

ミ,,#▼Д▼彡「…あの世で待っていろ。しばらくすれば、菱谷もすぐお前のもとへ逝くさ」


 手に握っていた黒い剣が消失。
 ヒートの言葉に怒りを露にし、血を流し倒れるヒートを見下している。
 捨て台詞を吐き捨てると、府坂はクジャクの羽に身体を包みその場から立ち去った。

5315話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:21:37 ID:o/sMbQ2Y0




ノハ; ⊿ )「…………」



 腹部から、どくどくと血が流れ続ける。

 この診療所には誰もいない。
 這って動く力も出ず、助けも求められない。


 悟ってしまった。



ノハ; ⊿ )「……はは、……だめだ、これは……」

ノハ; ⊿ )「せめて……この、お守りだけは……!」



 力を振り絞り、目の前のお守りに手を伸ばす。


 血で汚れた指先がお守りの端に掛かり、届く事が出来た。
 指先で引き寄せ、お守りをギュッと握り締める。


ノハ; ⊿ )「……モララー」


 
 遠のく意識の中――ヒートはそれでも、モララーの名を呼び続けた。


.

5415話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:22:05 ID:o/sMbQ2Y0




 ―――――



.

55 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:23:35 ID:o/sMbQ2Y0
15話途中ですが一旦投下やめます
今日中には続き投下します

56名無しさん:2017/10/29(日) 14:38:12 ID:WLFJvTJE0
おっニチアサ第2ラウンドきてるじゃあないか!

57名無しさん:2017/10/29(日) 16:04:36 ID:BBttmrSA0
なんでパースレにしたのか

58名無しさん:2017/10/29(日) 17:19:43 ID:7MswAUuY0
え?2スレ目だし別に問題なくね?
なんかあったっけそんなルール

59 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 19:25:07 ID:o/sMbQ2Y0
>>58の言う通り2スレ目って意味です
単純に分かりやすくしたかっただけなんで大した意味はないです

続き投下します

6015話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 19:25:52 ID:o/sMbQ2Y0


 その頃、クーが残ったでぃの家では晩御飯を作る為の作業が行われようとしていた。
 この家にはガスがない為、全て薪を焚いて火を起こしているようだ。


(#゚;;-゚)「モス、表から木を持ってきてくれる?」

『ハイ』


 木という言葉がまだ通じない為、木だと分かる為に手でジェスチャーをするでぃ。
 モスはそれを見ると、一言はっきりと返事を残し、戸を開け外へと出た。


川 ゚ -゚)「……随分君になついてるみたいだね」

(#゚;;-゚)「でしょ?私とモスは友達だもん。私の初めての友達!」

川 ゚ -゚)「初めて?」

(#゚;;-゚)「うん。私、お父さんの仕事の関係でいろんなところ引っ越してるから、友達いないの」

川 ゚ -゚)「……そうなのか」


 クーが作業する手を止め、でぃの隣に移動する。
 そして、でぃに向かって小指を差し出した。


川 ゚ -゚)「じゃあ…私とも、友達になろう」

(#゚;;-゚)「…いいの?」

川 ゚ -゚)「もちろんだよ、此処に居させてくれるんだから尚更だ」

(#゚;ー゚)「……へへ、約束!」

川 ゚ー゚)「ああ」


 でぃの笑みに釣られてか、クーの表情が笑顔になった。
 小指同士を結び、友達の約束を交わす。
 何故こんな事をしているのか、考えればきりは無いが…少なくとも、本能に従っている事だけは確かだった。

6115話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 19:26:43 ID:o/sMbQ2Y0


『………』


 でぃの頼みを受け、一人薪を集めているモス。
 その背後に、ゆっくりと近付く若い女の影。

 
「へぇ〜?アンデッドのくせに人間なんかと暮らしちゃって、やばいんじゃない??」

『!!!』


 声に反応し、モスは瞬時に振り向く。
 背後に忍び寄っていた若い女を目にした途端、モスの様子が変わった。
 手に持っていた薪を落とし、じりじりと後退りしている。 


(*゚∀゚)「何でそんな怯えてるわけ?アタシにこてんぱんにされたから?あはははッ!」

(*゚∀゚)「またずたずたにしてあげよーか??アンタ達下級なんか、カテゴリーQのあたしには敵わないだろうからさぁ…??」


 後退りするモスに、不敵な笑みを浮かべながら近付く若い女。
 自分の事を"カテゴリーQ"と称している事から、アンデッドである事が伺える。
 

(*゚∀゚)「なーんてね、アンタなんかやったってつまんないし……もっと面白い事思いついちゃったからさぁ」


 若い女が右手を伸ばし、モスの首に生えた羽毛を鷲掴んだ。
 見た目からは想像も出来ない程力強く、軽々とモスを強引に引き寄せる。

 そして、耳元で囁いた。



(*゚∀゚)「……あのガキを殺されたくなかったら、カリスを襲え。そしてカードを全部奪え」

『……!!』

(*゚∀゚)「出来ないなら…アタシがあの子供、美味しく調理しちゃおっかな〜??♪」

(*゚∀゚)「フフフ………アヒャヒャヒャヒャ!!」


.

6215話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 19:27:11 ID:o/sMbQ2Y0




 ―――――



.

6315話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 19:27:34 ID:o/sMbQ2Y0


 ――カテゴリーAとの戦いを終え、モララーは診療所へと辿り着いた。

 ヘルメットを脱ぎ、見慣れたこの診療所の外観を眺める。


( ・∀・)「……また久しぶりになったな、此処に来るのも」


 何度か来ない時期を作った挙句、ずっと来ると約束した直後裏切ってしまった。
 正直、気まずい部分もある。
 だがそれ以上に、ヒートに会いたい。会って、直接謝りたかった。

 そして……共に生きたいという答えを、改めて伝えたかった。



 レッドランバスから降り、いつものように診療所の扉を開ける。
 中には誰もいない。ヒートの車は表にあったから、いつものように診察室にいるのだろう。

 少し緊張もしてきた。
 あんな事を言ってしまって、今度こそ嫌われたかもしれない。
 でも、それをひっくるめて自業自得だという事も理解している。
 もし嫌われたのであれば…また、頑張るしかない。
  
 ヒートの事を次々に考えていると、穢れきった心が洗われるような気持ちになった。


 診察室の前に着き、ドアノブに手を掛ける。
 そして、いつものように少し古くなったドアを開けた――。


( ・∀・)「ヒート―――」






( ・∀・)「―――……え?」

6415話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 19:28:11 ID:o/sMbQ2Y0


 ドアを開けモララーの目に飛び込んできたのは……見慣れた景色じゃない。
 辺りに血が飛び散り、血溜まりの上に倒れているヒートの姿。

 想像を絶する光景に、声が思うように出なかった。


( ; ・∀・)「ヒート……ヒート!!」


 ヒートの名を呼びながら、うつ伏せに倒れているヒートの身体を支える。
 仰向けにすると、ヒートの腹部から大量の血が流れている事が分かった。
 服は血を吸い真っ赤に染まっていて……


ノハ;゚⊿゚)「………モラ、ラー……?」

( ; ・∀・)「どうしたんだよヒート!!何があったんだ!?ちょっと待って、今すぐ救急車――」


 ポケットに手を入れようとするモララーの手を掴み、阻止する。
 そして、ヒートはモララーに向け、満面の笑みを浮かべて見せた。


ノハ;゚ー゚)「はは……やっぱり、来て…くれたんだ……」

( ; ・∀・)「何言ってんだよ…!何があったんだよ!?」

ノハ;゚⊿゚)「……府坂が、私の事を邪魔だからと……消しに来た、ってわけさ……」

( ; ・∀・)「!!!!!」


 衝撃を受けた。
 あれ程、モララーと手を出さない約束をしていた府坂が――。

6515話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 19:28:53 ID:o/sMbQ2Y0


( ; ・∀・)「府坂が…やったのか……?」

ノハ;゚⊿゚)「モララー……最期の時間くらい、一緒に、居てくれるよな…?」

( ; ・∀・)「最期だなんて言うなよ!!諦めるな!!死ぬな、絶対死ぬな!!」


 だだを捏ねる子供のように、大声でヒートの言葉を否定した。
 モララーの感情が爆発し、自然と大粒の涙がボロボロと零れ始める。


( ;∀;)「俺…っ俺、ヒートにたくさん謝らなきゃならない事があるんだ!
       俺、本当バカだったよ!ヒートに一緒に生きたいって言われるまで気付かなかった!
       君の事がとても大事なはずなのに……俺は……ッ!!」

ノハ;゚⊿゚)「……もういいよ、謝らなくていい……それだけで、私は嬉しいから……」


 掌を開き、握っていたお守りをモララーに見せ付けた。
 赤い布が、ヒートの血を滲ませている。


ノハ;゚⊿゚)「これ…覚えてる、かな…君が、くれたお守りだ。……ずっと、持ち歩いてた……」

( ;∀;)「……っ何で、まだ持ってるんだよ…」

ノハ;゚⊿゚)「はは…やっぱり、笑う…?でも……凄く、嬉しかったんだ……私」

ノハ;ー;)「君と……もっと、いろんな思い出欲しかった、けど…ッ、これ見ると……君をたくさん、思い出させてくれる…」

( ;∀;)「……ううっ、ぐ……駄目だ、死ぬな…俺を置いていくなよ!!
      知ってるだろ?俺は、ヒートがいないと駄目だってことくらい!!」

6615話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 19:30:22 ID:o/sMbQ2Y0


 血に濡れたヒートの白い手が、モララーの涙が伝う頬に添えられる。


ノハ;⊿;)「モララー、泣かないで……笑って。私は君の笑顔が……好きだ」

( ;ー;)「……っ、こうかな……?」

ノハ^ー^)「……うん、それだ……はは」


 涙と血で濡れる顔で、最期の力を振り絞り精一杯の笑顔を作る。
 必死に話し続けてきたヒートだが……限界が、近付いてきた。
 段々、意識が遠くなっていく。

 でも、最期に本当のモララーの笑顔を見れたから――


ノハ ー )「モラ……ラー………」








「――ありがとう」


.

6715話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 19:32:12 ID:o/sMbQ2Y0





ノハ ー )




「………ヒート?」


「おい……ヒート、ヒート…目を覚ましてよ。目を開けてくれよ…!」



「………ッッッぐう……!!!」





「ヒートオオオオオオオオ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オオォォッ!!!!!!!!」




.

6815話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 19:37:42 ID:o/sMbQ2Y0





          【 第15話 〜摘まれた紅い花〜 】 終




.

6915話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 19:38:05 ID:o/sMbQ2Y0

 
==========

 【 次回予告 】


( ´_ゝ`)「まさか、本当に来るとはな……」

( ´∀`)「はは、物好きもいるもんだねぇ。面白いモナ」

从 ゚∀从「ふっ、確かに面白いな……お前達が共に行動をしているなんてな」

从 ゚∀从「カテゴリーK…各スート最強であるはずのお前達が共に行動をしなきゃならない程、仮面ライダーが怖いのか?」

( ´∀`)「怖い??僕に怖いものなんか無いモナ。強いて言うなら……君みたいな野蛮な戦馬鹿、かな??」

从#゚∀从「貴様……!」


 人間界に潜んでいる上級アンデッドが一同に会す。
 敵同士でもあるはずのアンデッド達、一体何を企もうとしているのか?

.

7015話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 19:38:44 ID:o/sMbQ2Y0


( <::V::>)『ッ……この鱗粉……』

(*゚∀゚)「アヒャヒャヒャヒャ!!さぁおいでよ、アタシのかわいいモス……!」

( <::V::>)『……お前、何故だ!?』

『………』
 
(*゚∀゚)「何故って?最初からアタシのかわいいモス、だけど??」

( <::V::>)『ふざけるな!貴様がコイツを襲ったカテゴリーQだという事くらい分かる』

(*゚∀゚)「ありゃ……バレてたかぁ」

( <::V::>)『貴様……脅したな。あの子をだしに使って…!』


 カテゴリーQと呼ばれる女が、とうとうモスを利用しカリスに襲い掛かった。
 このままカリスとモスは戦うしかないのか!?

7115話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 19:39:14 ID:o/sMbQ2Y0


( ^ω^)「モララーさん、自分の手で府坂を倒すって言ってた。
       自分の命を失ってでも、一人で倒すって……」
 _
( ゚∀゚)「………嘘だろどうせ、また嘘に決まってる!」

( ^ω^)「モララーさん、自分のやってきた事を凄く後悔してた。
       謝っても許されない事をしてきた、って…僕やツン達にも謝りたいって。
       そのケジメとして、一人で府坂を倒すって……」

ξ゚⊿゚)ξ「そんな……一番悲しいのは……」

( ^ω^)「モララーさん、死ぬ気だお……」

( ^ω^)「駄目だお、そんなの…モララーさんを一人で死なせるなんて…!」

.

7215話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 19:41:19 ID:o/sMbQ2Y0


( ・∀・)「………」

ミ,,゚王゚彡『………』


 そして、遂にモララーと府坂が対峙する。


( #・∀・)「府坂……貴様だけは……!」

( #・∀・)「貴様だけは俺の手で倒す!!」

ミ,,#゚王゚彡『貴様如きに俺がやられるかアァァ!!!』

o( #・∀・)「――変身ッ!!」


    【 -♦TURN UP- 】


( #・∀・)「行くぞ、府坂!!!」


 ヒートの仇を討つべく、府坂に勝負を挑むモララー。
 
 府坂に…そして、過去の自分に決着を着ける事は出来るのか!?



 次回、【 第16話 〜ダイヤの覚醒〜 】


 ――今、その力が全開する!

==========

.

73名無しさん:2017/10/29(日) 19:48:05 ID:qfjrJUvk0

ここでヒート死んじまうのか……

74名無しさん:2017/10/29(日) 19:51:46 ID:.ZZ.qnqg0
>>57
ここVIPじゃないぞ?混同してない?

75名無しさん:2017/10/29(日) 22:23:06 ID:2GiO0SvY0
来てた!乙
ヒートがかわいそすぎて泣ける

76名無しさん:2017/11/02(木) 15:44:46 ID:T4QlReJY0
クーは結局何者なんや

77名無しさん:2017/11/02(木) 19:18:08 ID:vdYPai2c0
知ってるけどニヤニヤして待機しとく

78名無しさん:2017/11/02(木) 20:01:33 ID:2bpgSKPI0
今ちょうど原作がYouTubeで公式配信されてるよね

79名無しさん:2017/11/02(木) 20:09:57 ID:HTbg/tYw0
うおマジだ知らなかった

80名無しさん:2017/11/05(日) 02:20:30 ID:wVr6tUlk0
今週はお休みか…

81名無しさん:2017/11/05(日) 02:26:36 ID:cGcEHFh.0
いつも第一ラウンドが始まってからじゃない?

82名無しさん:2017/11/05(日) 05:50:27 ID:8UfA8kVI0
第1ラウンドが今日はお休みだからな…
やらないかもしれない(偏見)

83 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 08:55:47 ID:9rIP2F5M0
今日は本家がお休みなので第1ラウンドを務めさせていただきます

8416話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 08:56:15 ID:9rIP2F5M0





          【 第16話 〜ダイヤの覚醒〜 】




.

8516話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 08:57:49 ID:9rIP2F5M0


 ――夜が更けた頃、とある広場に数人の人が集まっていた。

 一人は眼鏡を掛けた青年。
 一人は今時のちゃらちゃらした少年。
 一人は一見怖そうな女性。

 深夜に集まるにしては、皆が皆つるむ事のなさそうな者同士だ。
 
 最初に口を開いたのは、眼鏡を掛けた青年。


( ´_ゝ`)「まさか、本当に来るとはな……」

( ´∀`)「はは、物好きもいるもんだねぇ。面白いモナ」

从 ゚∀从「ふっ、確かに面白いな……お前達が共に行動をしているなんてな」


 一瞬にして、殺伐とした重苦しい空気が辺りに漂う。
 だが、誰一人として顔色を変える事はない。


从 ゚∀从「カテゴリーK…各スートの最強であるはずのお前達が共に行動をしなきゃならない程、仮面ライダーが怖いのか?」

( ´∀`)「怖い??僕に怖いものなんか無いモナ。強いて言うなら……君みたいな野蛮な戦バカ、かな??」

从#゚∀从「貴様……!」


 女が、少年の顔面に向かい拳を突き出した。  
 だが、その拳は少年の顔面どころか――近付く事も出来ていない。

 少年を守るようにして、女が突き出した拳には一枚の盾が発生している。

8616話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 08:59:04 ID:9rIP2F5M0


( ´∀`)「はいはいごめんなさい。あんたもこうなるの分かってるでしょ?止めたら?
      僕にはそう簡単に攻撃を当てられない。知ってるでしょ?」

从#゚∀从「ああ…だがどうかな?本気でやってやろうか!?」

( ´_ゝ`)「やめとけ。カテゴリーQの中でも最強……そのプライドが高いのはお前の悪い所だ」
 
从#゚∀从「何だと…!?」


「何の騒ぎだ、くだらない」


 ヒートアップしそうなその場所に、全身黒ずくめの男が現れた。
 他にも、派手な格好をした若い女。スーツを着た男や、肌を露出した妖艶な女性も。


( ´_ゝ`)「ほう、お前も来たのか」

ミ,,▼Д▼彡「俺はお前達のように暇じゃない、手短にしろ」

('、`*川「手短ねぇ……あんたのやってる事、もうお見通しよ?」

( ゚д゚ )「カテゴリーAを物にして、新しくライダーを作る…なんて事をしてるそうですね」
 
ミ,,▼Д▼彡「そうだ。俺の作ったライダーで、お前達を全員封印する為にな」


 少年が、堂々とした出で立ちの府坂の前に立ちはだかる。
 身長差のある二人。背の高い府坂をそばで見上げている。


( ´∀`)「面白そうじゃん。でも……それ本当に僕の事も封印出来るの??」

ミ,,▼Д▼彡「ああ。楽しみにしていてくれ」

( ´∀`)

ミ,,▼Д▼彡「………」

8716話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 08:59:56 ID:9rIP2F5M0


 どうやらこの集会は人間ではなく……上級アンデッド達による集会のようだ。
 皆、己の本当の姿を隠し人間に擬態している。


从 ゚∀从「ふん、くだらない…自分の力で戦う事の出来ない腰抜けが。戦士としての自覚は無いのか」

ミ,,▼Д▼彡「お前のように古い考えを持つ奴は、真っ先にやられるぞ」

从 ゚∀从「上等だ、やれるものならやってみろ!掛かってくる奴は全員この力で叩き潰すだけだ」


 怖そうな女性は、一足先に広場を後にする。
 それに続いて、府坂も立ち去ろうとした時だった。


(*゚∀゚)「……ねぇねぇアンタさぁ、操ってる人間の女殺したんだって〜?」

ミ,,▼Д▼彡「………」


 派手な格好をした女が、横切る府坂に絡み始めた。

 この集会で一際注目を浴びている府坂。
 それもそのはず、今のところ目立った動きをしているのは府坂のみ。
 その他の上級アンデッドは、府坂の情報を随時入手していた。


(*゚∀゚)「あんた頭良いと思ったけど、そうでもないんだね〜?」

ミ,,▼Д▼彡「…何が言いたい?」

(*゚∀゚)「アヒャヒャ、聞きたい聞きたい??じゃあ教えてあげる!」
 


(*゚∀゚)「―――あんた、終わったね」

.

8816話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:01:19 ID:9rIP2F5M0


 突如、ふざけるように話していた女の口調が変わった。
 緩み切った表情も締まり、冷酷さすら伺える。


(*゚∀゚)「あんたの欠点はね…人間を甘く見過ぎてる所だよ」

ミ,,▼Д▼彡「……奴等は下等生物だ。アンデッドに及ぶ存在じゃない」

(*゚∀゚)「ぷっ……アヒャヒャ、あんたこそ考え古いんじゃな〜〜い?
     古い考えを持つ奴は真っ先にやられる……じゃなかった??」

ミ,,▼Д▼彡「貴様……」

(*゚∀゚)「こわっ!あー怖い、あまり怒らせたらやられちゃうから退散すっかな〜。ま、せいぜい頑張って〜」


 あまりにも舐め切った態度だが、府坂を恐れていない様子も感じ取れる。
 先程の怖そうな女に続いて、若い女もその場から立ち去った。
 女の発言に気分を害したのか、府坂も何も言わず迎えの車に乗り、アジトへと戻って行った。


( ´_ゝ`)「だから言ったんだ、労力の無駄だと…」

( ´∀`)「そう?なんか面白かったけど」

( ゚д゚ )「どうやら、来てない方も多いみたいですね」

( ´_ゝ`)「これだけ揃えば十分だろう、後の奴等はクセが強過ぎる。特に……俺と同じカテゴリーKの、あの女…」


 上級アンデッドの集会だが、全員揃い踏みという訳ではない。
 未だ姿を現さない者もいれば…何処かでひっそりと己の企みの為に動いている者もいるだろう。
 少年の気まぐれで開かれたこの集会は、何の意味もないようにも見える。

 が、実際は皆が皆、お互いの腹の探り合いだ。
 アンデッド同士、手を取り合う者などいない。全員が敵のバトルロワイヤルだ。
 この集会はただの情報共有に終わったが……それぞれがそれぞれの目的にの為に、再び動き出すきっかけとなった。


.

8916話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:01:46 ID:9rIP2F5M0

  



 ――――― 




.

9016話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:02:25 ID:9rIP2F5M0


 ――ブーンの家。


 あれからブーンが駆けつけた時には、既にカテゴリーAはいなくなっていた。ギャレンが封印したからだ。

 ドクオは近場に身を潜めていて、幸い何一つケガをしていなかった。
 駆けつけたブーンと合流し、この日は一度互いの家に戻った。


 そして翌日、ブーンはドクオを家に呼び出し詳細を話す事に。


( ^ω^)「もう一人の仮面ライダーが封印したから、もう襲われる事はないお」

('A`)「そうか……ならよかった……はー!まったく生きた心地がしない日々だった……!」


 ここ最近、急にアンデッドに遭遇する事が多くなったドクオ。
 この状況を憂いていて、外出をするのも気が重かったくらいだ。
 そんな圧迫した状況から抜け出せた事を知り、心の底から安堵する。


( ^ω^)「それにしても…カテゴリーAをあんなに求めて、府坂は何が狙いなんだ?」


 カテゴリーA封印に向かっていたモララーへの追跡を、府坂が直々に妨害する程だ。
 何かを成し遂げたい、余程の何かがあると踏んでいた。 

 その言葉にいち早く反応したのはツン。
 カテゴリーAを封印し欲しがる、その理由に心当たりがあった。

9116話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:03:30 ID:9rIP2F5M0


ξ゚⊿゚)ξ「ライダーは、各スートのカテゴリーAの力を用いて変身するもの。
      あなたのブレイドもそうだし、モララーさんのギャレンも…クーさんのカリスだってそうよ」
 _
( ゚∀゚)「……それって、もしかして!」

ξ゚⊿゚)ξ「そう……府坂が、♣のカテゴリーAを用いた新しいライダーを開発してるかもしれない…」

( ^ω^)「新しい、ライダー……」

ξ゚⊿゚)ξ「だけど、ライダーシステムの開発資料やデータは全部BOARDの厳密な管理下…。
       アンデッドが独自で開発出来るものなんかじゃないわ」


 今は亡きBOARDが開発したライダーシステム。
 その情報も製造技術も、全てはBOARDのみが保有しているもの。
 ライダーシステムを作れる可能性があるとすれば…そのBOARDの誰かが関与している。としか考えようがない。

 _
( ゚∀゚)「もしかして…誰かが協力してるのか?」

( ^ω^)「何の為にそんな事を…府坂が作るライダーなんてどうせろくな事にならないお!」

ξ゚⊿゚)ξ「そうね……誰かしら」

ξ゚⊿゚)ξ「……姉さんじゃなければいいけど」


 組んだ腕を解き、口元に指を添え小さく囁く。
 小声で囁いたつもりだったが、隣に座っていたブーンには聞こえてしまったようだ。


( ^ω^)「お姉さん?」

ξ゚⊿゚)ξ「あ…そっか、話してなかったね。私、BOARDの同じ研究員として働いてた姉がいるの」

9216話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:04:06 ID:9rIP2F5M0


( ^ω^)「へえ、姉妹で同じ研究員って何かすごいお」

ξ ⊿ )ξ「でも、襲撃を受けてから連絡取れないの。今はどうなってるか、分からなくて……」


 ツンには年が少し離れた姉が居た。
 姉は先にBOARDの研究員となり、ライダーシステム開発にも携わっていた程だ。
 だが襲撃を受けBOARDが壊滅した後、姉とは音信不通。生きているかも分からない。
 その時に亡くなっている可能性も十分に有り得る話で。


( ^ω^)「そう、なのかお…」

('A`)「大丈夫だって!」

ξ゚⊿゚)ξ「え……?」


 落ち込むツンにドクオが声を掛ける。
 話の9割は理解していないはずだが、ツンが落ち込む様子を見ていたのか、すかさず席を立ち隣へと移動してきた。


('A`)「お姉さん、生きてるって。実の妹のツンさんが信じてあげないで誰が信じるんだ?」

ξ゚⊿゚)ξ「……うん、そう…だよね」


 軽いノリと言ってしまえばとても印象が悪くなってしまうが、ドクオの言動からはそれが感じられる。
 そんなドクオの気さくさに、少なくともツンはどこか救われる部分があった。


d('A`)「そうそう、だから落ち込むのはやめてさ。一緒にどこか飯でも行かない?」
 _
( -∀-) =3 「はぁ……お前ただツンと飯行きたいだけだろ?」

('∀`)「んーそうとも言う割合が半々かな〜」
 _
( ゚∀゚)「いやマックスだろ!隙間なくマックスだろ」

9316話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:05:25 ID:9rIP2F5M0


( ^ω^)「モララーさんがカテゴリーAを封印して……今頃、府坂の手に渡ってるのかお」

ξ゚⊿゚)ξ「府坂に命じられて動いてたのなら、そうかもしれないわね」

( ^ω^)「まずいお……そんな事になったら、ますます府坂の身が固まる事に……」


 ただでさえ上級アンデッドであるが故の力を持つ府坂。
 そこに、ギャレンと新しいライダーの力が加わってしまえば…最強にして最悪の敵になり得る。
 頭を抱え、危惧すべき状況がすぐそこまで迫っている事に不安を覚える。


ξ゚⊿゚)ξ「……ヒートさん、あんなにモララーさんの事気に掛けてるのに」
 _
( ゚∀゚)「もうやめろよ、あの人の話は。あの人は裏切ったんだ!それ以上も以下もねぇ」
 _
( ゚∀゚)「本当、ヒートさんが可哀想だよ…」

( ^ω^)「………」

('A`)「……えーと、今は静かにしたほうがよさそうだな」


 静まり返る空気に、事情を知らないドクオも飲み込まれてしまう。
 
 その静寂はすぐに破られる事になる。
 静まったリビングに、アンデッドサーチャーの反応がやかましく鳴り響いた。


Σ(;'A`)「うわっ!?なんだ!?」

9416話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:06:26 ID:9rIP2F5M0


ξ゚⊿゚)ξ「アンデッドよ!」


 ドクオを除いた三人が音に素早く反応し、一斉にPCの前へと群がる。
 ツンがサーチャーの反応を確認する為、反応結果を確認すると……


ξ゚⊿゚)ξ「ギャレンだわ、モララーさんが戦ってる!」


 サーチャーは、アンデッドと戦っているギャレンの反応をキャッチしている。
 だが、そのアンデッドの反応を見たツンは、戸惑いを見せ始めた。


ξ゚⊿゚)ξ「このアンデッドの反応……府坂だわ、それ以外の反応はない…」
 _
( ゚∀゚)「どういう事だ?……まさか!」

ξ゚⊿゚)ξ「モララーさんが戦ってるのって、もしかして…」

( ^ω^)「府坂…!?」


 三人の予想は一致した。
 サーチャーでの反応上、そうとしか断定が出来ない。
 

( ^ω^)「ちょっと行ってくるお!」

('A`)「えっ?お、おい!」


 自然と身体が動いていた。
 府坂と結託したはずのモララーが、その府坂と戦っている…"もしかして"の可能性に賭けたかったのかもしれない。 
 ツン達の返事を待たずに、モララーのもとへ向かう為ブーンは急いで家を出た。


.

9516話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:06:46 ID:9rIP2F5M0




 ―――――



.

9616話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:07:25 ID:9rIP2F5M0


 ――サーチャーの反応がある少し前に遡る。

 
 見慣れた街並みを颯爽と走る紅いバイク、レッドランバス。
 それに乗っているのは、もちろんモララーしかいない。

 だが、普段のモララーとは様子が違った。


 黒色の上下に、黒のネクタイ……。
 モララーは、喪服を着ながらレッドランバスを走らせていた。


 向かう先は、ただ一つ。







( ・∀・)「………」


 目的地に到着し、脱いだヘルメットをハンドルに掛ける。
 夏を終え、秋を迎えた冷たい風がモララーの髪を撫でた。

 レッドランバスから降りると、目の前に建つ建造物を見上げる。


 見上げながらモララーの頭に浮かぶのは――愛しき彼女の最期。

9716話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:08:18 ID:9rIP2F5M0




  ――――――――――


  ノハ;゚⊿゚)「これ…覚えてる、かな…君が、くれたお守りだ。……ずっと、持ち歩いてた……」

  ( ;∀;)「……っ何で、まだ持ってるんだよ…」

  ノハ;゚⊿゚)「はは…やっぱり、笑う…?でも……凄く、嬉しかったんだ……私」

  ノハ;ー;)「君と……もっと、いろんな思い出欲しかった、けど…ッ、これ見ると……君をたくさん、思い出させてくれる…」


  ――――――――――


.

9816話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:08:50 ID:9rIP2F5M0




  ――――――――――

  ノハ;⊿;)「モララー、泣かないで……笑って。私は君の笑顔が……好きだ」

  ( ;ー;)「……っ、こうかな……?」

  ノハ^ー^)「……うん、それだ……はは」

  ノハ ー )「モラ……ラー……」

  ノハ ー )「――ありがとう」

  ( ;∀;)「ヒートオオオオオオオオ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オオォォッ!!!!!!!!」

  ――――――――――



.

9916話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:13:14 ID:9rIP2F5M0


(  ∀ )「…………」


 俯き、零れそうになる涙をぐっと堪える。


 歯が砕けそうになる程噛み締め、血が滲みそうな程握り締める拳は――


(  ∀ )「ヒート………俺は、本当に愚かだ」

(  ∀ )「全部、俺の所為だ……俺の所為で、無関係だったはずの君を……。
       本当に情けないよ……消えてしまいたいよ」


 最愛の人を失ってしまった悲しみと―― 


(  ∀ )「でも………」

(  ∀ )「そんな情けない俺に……力を、貸してくれるかな?」


 ――天地を揺るがしてしまいそうな、激しい怒りを現していた。
 
 俯いていた顔を上げ、拳に握ったヒートの赤いお守りを見つめる。


(  ∀ )「せめて…君が安心して天に逝けるように……ッ!」




( #・∀・)「俺は府坂に……自分自身に打ち勝つ…!!」


.

10016話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:14:16 ID:9rIP2F5M0


 一点の曇りもない、真っ直ぐな目。
 モララーは、単身府坂のアジトの中へと入って行く。

 不気味な暗さを秘める室内。
 コツ、コツ…と足音だけが静かな廊下に反響する。
 いつものように府坂の居る部屋の扉を開けると…其処に、影は居た。


ミ,,▼Д▼彡「……来たか、菱谷」

( ・∀・)「………」

ミ,,▼Д▼彡「昨日はよくやった。カテゴリーAを見事封印し、お前の力は証明された。
         お前は、間違いなく最強の仮面ライダーだ」

ミ,,▼Д▼彡「さぁ、カテゴリーAを渡せ」


 モララーに向かい手を差し出す府坂。
 だが、モララーは口を開くことも、微動だにする事もない。


ミ,,▼Д▼彡「どうした?早くカテゴリーAを――」

( ・∀・)「ヒートを殺したのは……お前だな」


 口を開いた最初の言葉に、府坂の顔色が変わった。
 それまでと違う雰囲気、目付きをしたモララーに、府坂なりの違和感を覚える。


ミ,,▼Д▼彡「ふっ………そんな事か」

ミ,,▼Д▼彡「お前が強くなる事を止めようとしただろう。あの女はお前にとって邪魔な――」

10116話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:14:53 ID:9rIP2F5M0


 府坂の話を遮るように顔面に突きつけた、♦のカテゴリーAのカード。
 それが何を意味するのかを理解し、そして嘲笑って見せた。


ミ,,▼Д▼彡「……ククク、お前…俺をどうするつもりだ?」

( ・∀・)「倒す」

ミ,,▼Д▼彡「敵討ちか?くだらない。お前如きが俺に敵うとでも思うのか?」


 モララーの目は真っ直ぐ府坂を見て離さない。
 府坂の口が進むに反発するように、モララーは動き出す。
 静かにカードをバックルに装填し、ギャレンバックルを腰に装着。
 

( ・∀・)「変身!」


    【 -♦TURN UP- 】


 放たれたゲートを府坂が軽やかに躱す。
 眼前に展開したゲートに向かい、ゆっくりと歩きながら通過した。


ミ,,▼Д▼彡「ふん…いいのか?お前はこの溶液の力がないと戦えないんだぞ?」


 ガラス越しにある溶液を指差す。
 その指を追って、何度も浸かり手に入れた力の源である溶液に視線を向ける。

10216話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:16:08 ID:9rIP2F5M0


( OMO)「……そうだな、俺はこの…シュルトケスナー藻の力のおかげで戦ってきた」

ミ,,▼Д▼彡「…お前、どこでその名を」


 府坂の言葉をことごとく遮り続ける。
 聞き終える前に引き抜いたギャレンラウザー。

 そして、今まで力を得続けてきたシュルトケスナー藻の溶液に銃口を向け――引き金を引いた。


ミ,,▼Д▼彡「!?」


 銃弾がガラスを粉砕し、ガシャアンッ!と割れる音が響く。
 シュルトケスナー藻の溶液も破壊され、容器の支えを失った溶液は全て流れた。
 それと同時に、アジトの防犯システムが作動。サイレンが鳴り響いた。
 このギャレンの行動に、府坂は驚きを隠せない様子。


( OMO)「こんなものに頼ったから……俺はヒートを失ってしまった。
      自分の弱さに負け、お前のような奴に騙され……本当に大切なものを見失ってしまっていた!」

( OMO)「俺は今こそ変わらなければいけない……!それがヒートへの、俺が今出来る精一杯の手向けだ!!」

ミ,,▼Д▼彡「ッ!!」


 銃口を府坂に向け、的確にその眉間に銃弾を撃ち込んだ。
 反動で傾いた顔。サングラスが落ち、厳つい目がギャレンを鋭く睨み付けた。


ミ,,#゚Д゚彡「いいだろう…貴様如き、すぐにあの女のもとへ送ってやる!」


 府坂の身体が虹色のオーラに包まれ、アンデッドとしての姿を現した。

10316話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:17:04 ID:9rIP2F5M0


( OMO)「うおおおおおおッッ!!」

ミ,,゚王゚彡『くっ…!』


 アンデッドへと変身した府坂の腹部にタックルを決め、力ずくで押し込んだ。
 ギャレンの力は強く、抵抗を試みるもそのまま壁へと激突。
 壁が崩れ、アジトの外へと両者は放り投げ出された。

 互いに受け身を取りつつ立ち上がり、距離を置いて睨み合う。


( OMO)「行くぞ!!!」

ミ,,゚王゚彡『やれるものなら…やってみろ!』


 同時に駆け出し、距離はすぐに縮まった。
 面した両者は拳を突き出し、その胸に叩き込む。
 
 同じタイミングで繰り出した拳に押されたのは、府坂。
 ギャレンは僅かに後ろへ下がっただけで、効いているのかも怪しい。


( #OMO)「貴様だけは…ッ!貴様だけは許さない!!」


 激しい怒りを、熱く燃え盛らせるギャレン。
 怯んだ府坂に対して積極的に詰め寄り、両の拳を連続して叩き込む。
 受ける府坂は当然これを防いでいるが……防ぐ腕を素早く振り落とされ、顔面や胸部に幾度となく拳を受け続けた。


ミ,,;゚王゚彡『ぐう…ッ!こいつ……!』

( #OMO)「ヒートまでも手に掛けた貴様だけはァッ!!!」


.

10416話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:18:13 ID:9rIP2F5M0


 声を荒げながら放ち続ける打撃が、府坂を確実に追い込んでいる。
 溶液の力無しでは思うように戦えなかったギャレンが、確かな力を持つ府坂を、圧倒していた。


( OMO)「はああっ!」

ミ,,;゚王゚彡『ぐおお…っ!』


 ギャレンの放ったアッパーが、府坂の顎に直撃。
 思わず体勢を崩し、その場でよろけ始めた。


ミ,,;゚王゚彡『何だこいつ…!溶液の力を受けていないはずなのに、何故…!?』

( #OMO)「うあああ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ああッ!!!!!」

 
 ギャレンの目まぐるしい変貌振り、予想だにしない力に府坂は動揺している。
 驚く府坂をよそに、ギャレンは心の底から大声で叫ぶ。
 喉が擦り切れても、構わない。

 雄叫びをあげ、がむしゃらに府坂へと突っ込む。
 直前で飛び跳ね、加速の着いたパンチを顔正面に叩き込む。
 黒い仮面をした府坂の顔が、ギャレンのパンチを受けめり込んだ。

 続けて腹部に一発叩き込む重たい拳。
 腹部を押さえ怯む府坂に向け、左足によるサイドキックを見舞った。


ミ,,;゚王゚彡『グオオオオォッ…!!』


 蹴りを受けた府坂は吹き飛び、ついにその身体を地に着けた。
 地面を転がり終え体勢を立て直しながら、自分が圧されている状況を受け入れずにいる。
 

ミ,,;゚王゚彡『何故だ……!?この俺が、ギャレン如きに……!!』

10516話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:18:36 ID:9rIP2F5M0


ミ,,#゚王゚彡『ありえん…俺が貴様如きに負けるなど!あるものかアァッ!!』


 プライドを傷付けられ、激しく怒りを露にする府坂。
 普段の冷静さを失い、右手に黒い剣を召喚しギャレンへと突っ込み始めた。


 その間、ギャレンラウザーを引き、オープントレイを展開するギャレン。
 三枚のカードを選択し、府坂を見つめながらラウズした。


    《-♦3 UPPER-》 《-♦6 FIRE-》 《-♦9 GEMINI-》


 カードの力を得たギャレンの右手が、怒りの炎を纏い出す。
 徐々に近付く府坂の動きが、とても遅く見えている。


ミ,,#゚王゚彡『死ねええええッ!!!』
 

 ギャレンに接近した府坂が勢いに任せ黒い剣を振り下ろす。
 その懐に忍び込んだ瞬間、ギャレンが二人に分身。


ミ,,;゚王゚彡『何!?』

( #OMO)「はああああああああああああッッ!!!!!」


 二つの燃え盛る拳に全ての力を込め、がら空きとなった府坂の腹部に、強烈に、力強く叩き込まれた。
 

ミ,,;゚王゚彡『グアアアアアァッ……!!』


 両側からの拳撃の衝撃に圧され、高く宙を浮きながら吹き飛んだ。
 炎の拳を受けた府坂の身体には、火が燃え移っている。

10616話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:19:21 ID:9rIP2F5M0


ミ,,;゚王゚彡『ぐううぅッ……!』


 受けたダメージが凄まじく、地にうつ伏せに倒れたまますぐに起き上がる事が出来ない。
 顔を上げ、片膝を着き、目の前で銃口を向け迫っているギャレンを睨んだ。


( OMO)「覚悟しろ……貴様を封印する!」

ミ,,;゚王゚彡『チィッ…!俺は封印などされない……!』


 迫り来るギャレンに向け伸長した右手から、幾つもの炎球を放つ。
 反射的に防御の構えを取るギャレンを、大量の白い煙幕が覆った。
 

( OMO)「くっ、何の真似だ…!」


 周囲が煙幕に覆われ何も見えない。
 その時、吹いたわずかな風によって煙幕が流れ、ギャレンの視界を取り戻した。

 周囲を見渡すが……府坂の姿は、既にそこにはない。
 煙幕に視界を奪われている隙に、その場から逃走したのだ。


 完全に逃げた事を理解したと同時に、怒りの炎は更に強く勢いを増す。
 両手をギリギリと強く握り締め、仮面の下で歯を強く食いしばった。


( #OMO)「俺から……俺から逃げられると思うなよ……!!」





( #OMO)「府坂ああああああああああああああああああッッ!!!!!」

 
.

10716話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:19:59 ID:9rIP2F5M0


 ――――――
 ――――
 ――



 ギャレンと府坂の反応を辿り、ブーンは目的地へと到着した。


( ^ω^)「確かこの変だったはず……」 


 停めたブルースペイダーから降り真っ先に周囲を確認するが、ギャレンの姿も府坂の姿もない。
 建物の周囲を歩くと、壁が崩壊され内部が露出しているのを発見。

 
( ^ω^)「これ、もしかして戦いの傷跡かお…?」


 内部を見る為、薄暗い中を見ようと覗いた時。
 突如、暗闇の中から人影が現れた。
 日の光に照らされ、人の影の姿が鮮明になる。


( ; ^ω^)「うおっ!?」

( ・∀・)「…剣藤?」

( ^ω^)「モララー、さん…」


 中から出てきたのは、先刻まで府坂と戦っていたモララー。
 府坂の情報と成り得そうなものがないかと、一人でアジトの中を探索していた。
 モララーの姿を見たブーンは、敵意の有無に関わらず反射的に警戒心をむき出しにしてしまう。
 後退りし、わずかに距離を取った。

.

10816話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:20:31 ID:9rIP2F5M0


( ・∀・)「……そうだよな。俺の事なんて怪しんで当然だ」

( ^ω^)「あ……いや、そういう訳じゃ……」

( ・∀・)「いいんだ。そうさせているのも全部自業自得だ」

(  ∀ )「全部……何もかも、俺の所為で起きた事だ」

( ^ω^)「……モララーさん?」
 

 俯きながらそう答えるモララーの様子が、何処か可笑しい事には気付いた。
 何故喪服を着ているのか。それが一番気になっている。

 すると、ブーンを見遣る事なく俯いたまま足取り重く歩き出し、どこか哀愁の漂う背中を見せた。


( ・∀・)「………ヒートが、殺された」

( ^ω^)「え?」


 不意に放たれたモララーの言葉が、頭まで届かない。
 耳では聞こえたはずなのに、言葉の意味までも汲み取ろうとしなかった


( ・∀・)「誰がやったかは分かってる……府坂だ。
      奴は、俺が自分の思い通りに動かなくなる事を危惧して……ヒートを……」

( ^ω^)「え……本当、なんですか……?本当に、ヒートさんが……??」


 突然過ぎる出来事に、理解が思うように進まない。
 言葉を返す事はなく、モララーは無言で頷いた。

10916話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:21:10 ID:9rIP2F5M0


( ; ^ω^)「嘘でしょ……??本当に……??」

( ・∀・)「俺の責任だ……俺が弱くて、自分から逃げてたから……」

( ・∀・)「前に、君に言われたよな。いつまでも今の自分から逃げるなって。
       心配する人が、想ってくれる人がいる事を忘れたら駄目だ、……って」


 過去にブーンに言われた言葉が、今になって身に染みるのを強く感じる。
 建物の壁に凭れ掛かり、力なく項垂れた。


( ・∀・)「不思議だよな……あんなに恐怖心に怯えてたのにさ。
       ヒートを失った途端………恐れも何もかも、無くなったよ」

(  ∀ )「弱さに浸け込まれたとは言え、君やツン、ジョルジュ…ヒートの言葉も無視して…。
       挙句の果てには、君に許されない事までしてしまった」

(  ∀ )「ヒートまで、巻き込んで……ッ!俺本当に何やってんだ……!本っ当に情けないよ……」

( ´ω`)「……モララーさん……」


 背中を擦らせながらずり落ち、地面に尻餅を着く。
 頭を両手で覆い、己の醜態を恥じると同時に、あまりの情けなさに冷静さを失う。

 見ているには痛々しすぎる姿から目を逸らしたかったが、逸らす事が出来なかった。

11016話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:21:53 ID:9rIP2F5M0


 しばらくの沈黙の後、モララーはゆっくりと立ち上がる。
 そして、ブーンに向かい身体を直すと、深々と頭を下げた。


( ・∀・)「今まで、本当にすまなかった…!今更謝って許されるような事じゃないのは分かってる。
       でも……ひとつのケジメとして、ちゃんと謝らせてくれ」

( ^ω^)「ケジメ…?」

( ・∀・)「――俺は、府坂を倒す。俺の手で…俺だけで、必ず」

( ^ω^)「!!」


 宣言するモララーの表情は、どこか清々しくも見える。
 一人レッドランバスのもとへと戻るモララーの後を追い、行く手を阻んだ。
 

( ^ω^)「一人じゃ危険ですお!府坂はずる賢いけど、腕も立つし…もしもの事があったら!」

( ・∀・)「それでも俺はやらなければならない!刺し違え、例えこの命が果てようと……」


 ポケットから取り出した、赤いお守りを見つめる。 
 

( ・∀・)「ツン達にも謝っておいて欲しい。府坂の反応を見つけたら教えてくれ……頼むな」

( ^ω^)「そんな…待ってくださいお、モララーさん…!」


 行く手を阻むブーンを通り過ぎるとレッドランバスへと乗り、颯爽と走り去って行った。

 最愛の人を失い、正気に戻ったのか。少なくとも復讐に取り憑かれた様子はない。
 モララーの中に見えたのは……最愛の人を失った哀しみと、己への怒りだけだった。

11116話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:22:13 ID:9rIP2F5M0


  

 ―――――



.

11216話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:22:49 ID:9rIP2F5M0


 一方、山の中に存在するでぃの家では……。

 住み着く事になってから一日が経過したクー。
 モスとは違い、人の姿で人間の生活に溶け込んでいる彼女は、自らが働く為の職業を探していた。
 手には広告を持ち、なるべく今の状況で働けそうな場所を求めている。


(#゚;;-゚)「そんな事しなくても大丈夫なのに」

川 ゚ -゚)「そういう訳に行かないよ、ちゃんと働いてお金を稼がないと。そうすればもっと良い環境になれる」

(#゚;;-゚)「良い環境??モスのお部屋とか作れる?」

『??』


 クーの広告を揃って覗いているでぃとモス。
 モスを見ながら首を傾げるでぃに対して、モスも首を傾げてみせた。


川 ゚ -゚)「お金をちゃんと貯めればきっと作れるよ。でぃちゃんの欲しい物も買えるし」

(#゚;;-゚)「欲しい物か〜……」

川 ゚ -゚)「でぃちゃんの好きな物は?」


 でぃくらいの年齢の子供なら、欲しい物は?と聞かれれば大体すぐ答えが返ってくるもの。
 しかし、クーの質問に首を何度も傾け、中々答えようとしない。


(#゚;;-゚)「う〜ん………わかんない」

11316話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:23:28 ID:9rIP2F5M0


川 ゚ -゚)「分かんない?欲しい物、ないの?」

(#゚;;-゚)「うん、ないよ。私はモスと一緒に居るだけでいいや」

(#゚;;-゚)「ねーモス!」

『ハイ』


 五つは年上の渡辺ですら、あれが欲しいこれが欲しいと口ずさんでいるのに。
 まだ幼いのに欲しい物が無いと答えるでぃに、クーは違和感を覚えた。
 そして、アンデッドながらに、幼い彼女に足りない物を想像する。
 

川 ゚ -゚)(この現状が、幼い故のわがままも許してくれないか…)

川 ゚ -゚)(人間の愛情、この子にはまだ必要なはず。しかし……)

川 ゚ -゚)「……いや、何を考えているんだ私は。人じゃないのに」


 アンデッドの癖に、人の愛情の必要性を考えてしまう。
 矛盾だらけの行為が馬鹿馬鹿しくなり、鼻で笑ってしまった。


(#゚;;-゚)「どうしたの?」

川 ゚ -゚)「いや……何でもない。少し買い物でもしてくるよ、足りない物を適当に見繕ってくる」

『………』

 
 財布を持ち、誤魔化すように家を飛び出た。足らない物などきちんと把握してもいないのに。
 橋の上に置きっ放しだったバイクは昨日のうちに回収してきていて、家の前に停めてある。
 適当に山の中を走る為、乗ったバイクを揺らしながら走らせた。

11416話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:23:52 ID:9rIP2F5M0


 車通りの少ない、細い道を走る。
 少し離れた場所にあるコンビニへと向かい、少し木々に覆われた道に入った。

 一度路肩にバイクを停め、財布の中身を確認する。
 口座等は作ってはいたが、バーボンハウスにいた時は常に手渡しで給料を貰っていた為利用はしていなかった。


川 ゚ -゚)「……早く職を見つけなければな」


 一応、財布に入れておくにはそれなりの金額は入っていた。
 だが精々一ヶ月が限界だろう。
 
 仕事をしなければならない自覚を改めて持ち、手に持った財布をしまった。



「あれ〜?随分と人間の生活に馴染んじゃったみたいだなぁ??」

川 ゚ -゚)「??」


 その時、どこからか女性の声が聞こえてきた。
 声のする方へ視線を向けるが、向けた先は木の上。
 
 
(*゚∀゚)「アヒャヒャ、なーんでアンデッドが人間と働くんだい??」

川 ゚ -゚)「この気配……お前、カテゴリーQだな?」


 カテゴリーQの気配を察し、ようやくその正体に気付いた。
 派手な格好をした若い女が、木の上からクーを愉快そうに笑いながら見下ろしていた。

11516話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:24:42 ID:9rIP2F5M0


(*゚∀゚)「そーだけど、ねぇねぇアンタ何してんの??あのカテゴリー8なんかと絡んじゃってさぁ」

川 ゚ -゚)「貴様には関係ない」

(*゚∀゚)「いや冷たくない??てか関係ない事なくない?アタシとアンタ、同じなんだからさ。
     同じアンデッドなはずなのに、アンデッドが人間と暮らしてるって……意味分かんないんだケド」

川 ゚ -゚)「分かる必要もない…貴様を此処で眠らせてやる!」


 ヘルメットを取りバイクから降りたクーは、腰にカリスラウザーを召喚。
 木の上で挑発的な笑みを浮かべ続けるカテゴリーQを見つめながら、右手に持ったカードをラウズさせた。


川 ゚ -゚)「変身!」
   っロ

    【 -♥CHANGE- 】


 カリスへと変身してすぐに左手にはカリスアローを。
 木の上にいる人間の姿をしたカテゴリーQに向かい、カリスアローを構えた。射落とすつもりだ。
 すると、怯む様子無くカテゴリーQが赤く塗られた唇を開いた。


(*゚∀゚)「ねぇ、アンタどっちな訳??カリスなのか、カテゴリー2なのか」
 
( <::V::>)『……さっきから癪に障る奴だ、貴様には何一つ関係ない!』

                 
 構えたカリスアローから、数発の光の矢が放たれた。
 しかし、人の姿のまま宙を舞い軽やかに回避するカテゴリーQ。
 木の上から降り、同じ道路上に着地した。


(*゚∀゚)「イイね〜〜!!遠距離も近距離も隙が無くてさぁ」

(*゚∀゚)「でもそれ……アタシも一緒なんだよねぇ……!!」

11616話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:25:20 ID:9rIP2F5M0


(*゚ O゚)「スウウウウウウゥゥゥゥ……」


 突如、身体の動きをつけながら息を大きく吸い込み始める。
 吸い込むにつれ、上半身が合わせて反っていく。


((*゚□゚))「ハアアァッ!!!」

( <::V::>)『っ!?』


 息を限界まで吸い込んだ後、大きく開けた口から一直線に放たれた青い衝撃波。
 瞬時にカリスは衝撃波を躱し、カテゴリーQに突進を仕掛けた。


( <::V::>)『せやああっ!!』

(*゚∀゚)「おっと!」


 何処からともなくカテゴリーQの右手に出現した、三日月型のブーメランの刃。
 振り下ろされたカリスアローの刃をそれで防ぎ、突き出した左手から青色の炎を発生させた。

 身を翻し突き出された左手を避け、瞬時に右の足刀を振るうが、
 やはり人間離れした動きで軽々と回避した。


(*゚∀゚)「フォオオオオオオオオオオオオオウ!!!ワクワクしてきた〜〜!!」

( <::V::>)『………』


 甲高く叫んだ声が、山の中に木霊する。
 この状況を楽しんでいる事は、満面の笑みを見れば分かった。

11716話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:26:49 ID:9rIP2F5M0


(*゚∀゚)「でもねぇ、アタシもっと楽しいコト知ってるんだ〜」

( <::V::>)『貴様のくだらん余興に付き合うつもりはない!』

(*゚∀゚)「あらそう??でも悪いけど……付き合ってもらうよ」


 満面の笑みが静まり、妖しい笑みへと表情が変わった。
 そして、両の手をパンパン、と二度叩く。


( <::V::>)『……!?何だ…?』


 手を叩く合図の後、空から雪のようなものが降って来た。
 キラキラと輝き、ふわりと舞い落ちる。
 見惚れてしまいそうな程に美しい光景、よく見ればカリスの周囲にだけ降っている。
 身体に付着するソレを指で掬うと……、


( <::V::>)『鱗粉……?』


 空から降っているものは雪などではなく、鱗粉。
 だが、親指程の大きさからから見るに一般的な蝶や蛾から発生するようなものではない。
 
 
( <::V::>)『……まさか!?』

(*゚∀゚)「プレゼント〜♪」


 鱗粉の正体に気付き、身体に付着したわずかな鱗粉を払い落とす。
 しかし、気付くのが遅すぎた。

 全てを払い落とし切れず、カリスの身体に付着した光を放つ鱗粉が……爆竹のように火花を上げ始めた。


( <::V::>)『ぐあっ!?』

11816話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:27:21 ID:9rIP2F5M0


 パン!パンッ!と激しい音と共に、鱗粉の爆発がカリスの身体を覆う。
 一つ一つの爆発はとても小規模だが、塵も積もれば山となる。
 回避しようのない攻撃に晒され、思わず声をあげた。


( <::V::>)『ッ……この鱗粉……』

(*゚∀゚)「アヒャヒャヒャヒャ!!さぁおいでよ、アタシのかわいいモス……!」


 カリスの背後に、空からゆっくりと降りてくる存在。
 振り返る必要もない。
 背後から感じるその気配に、怒りを表すよりも先に、戸惑いが生まれてしまった。


( <::V::>)『……お前、何故だ!?』

『………』
 
(*゚∀゚)「何故って?最初からアタシのかわいいモス、だけど??」

( <::V::>)『ふざけるな!貴様がコイツを襲ったカテゴリーQだという事くらい分かる』

(*゚∀゚)「ありゃ……バレてたかぁ」


 アンデッド同士の戦いを忌まわしく思っているモスの言葉に嘘はない。
 根拠はないが、何故かそう信じているカリス。
 そう信じた上で、モスの行動の裏に何かが絡んでいる事を察した。


( <::V::>)『貴様……脅したな。あの子をだしに使って…!』

(*゚∀゚)「だったら何だっていうの?」

11916話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:28:14 ID:9rIP2F5M0


(*゚∀゚)「アンタら、アンデッドなんだよ??そもそも人間と仲良くしようってのが間違ってるっしょ??
     どちらにしろ、アンタらは人間に媚び売って平和に過ごそうとしてる腰抜けだよ」

(*゚∀゚)「アンデッドと居たら人間は平和じゃなくなる、その逆も然りよ。それを教えてやってんだよアタシが!」

(*゚∀゚)「アンデッドである事を捨てた……戦いを投げ出した、腑抜け共にな!!」

( #<::V::>)『黙れ!!』


 現実的に見れば正論である。
 事実、カリスことクーはそれを危惧してバーボンハウスから抜け出してきた。
 だが、今こうして自然に人間と暮らそうとしてしまっている。

 己の矛盾点を突かれたからか、挑発に乗ったからか、カリスの声に怒りが帯び始めた。
 カリスラウザーをカリスアローにセットし、カードを抜こうとした時。


(*゚∀゚)「やれ」

『………!』


 モスに向けてカテゴリーQが指示を出すが、カリスに攻撃する事を躊躇っている。


(*゚∀゚)「どうしたの??やらないとあの子死んじゃうよ??」

(*゚∀゚)「どうやっていたぶってあげようかなぁ……手足の指を一本ずつ折って、可愛らしい目を潰してやろうかなぁ…」

( #<::V::>)『貴様……!!』

12016話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:29:07 ID:9rIP2F5M0


(#゚∀゚)「……早くやれっつってんだろォ!!マジであのガキ殺すぞ!?!?!」

『……シイイィィッッ!!!』


 カテゴリーQの表情が、鬼の形相へと変わる。
 それまでのふざけた態度が一変し、怒りに狂う狂人のものへと変貌した。
 
 やるしかない。
 やらなければ、でぃが殺されてしまう。
 カリスへの感情を強引に押し殺し、ついにモスが襲い掛かった。


( #<::V::>)『貴様…ッ!必ず封印してやる……!!』


 モスの攻撃を避け、組み合いながらカテゴリーQへの怒りを露にする。
 鬼の形相を浮かべた顔が弛緩され、再び満面の笑みを浮かべ始めた。


(*゚∀゚)「アヒャヒャヒャ!!楽しみにしてるわぁ〜。んじゃねー!」

(*゚∀゚)「……あ、手を抜けばすぐにでもあのガキ殺しに行くから」


 モスへの言葉を残し、生い茂る木に一飛びで登ると木を伝いそのまま去って行った。

 
 残されたカリスとモス。
 カテゴリーQが去っても尚、モスの攻撃は緩まない。


( <::V::>)『お前……本当にこのままでいいのか!?』

『あの子の命の為だ……悪く思うな!』


 モスが両手を広げた途端、再び空から毒鱗粉が舞い落ちる。
 上空からの毒鱗粉を確認したカリスは回避するが、回避した先に向かいモスの伸びた口吻から毒矢を放つ。
 カリスアローで瞬時に毒矢を弾き落とし……

 誰もいない山の中で、両者は睨み合った。


.

12116話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:29:37 ID:9rIP2F5M0





 ―――――




.

12216話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:30:19 ID:9rIP2F5M0


ξ;゚⊿゚)ξ「ヒートさんが……!?」
 _
(;゚∀゚)「………マジ、かよ……」

( ^ω^)「………」


 自宅へと戻っていたブーンは、早速二人に全てを話している。
 信じられない程に突然過ぎるヒートの死……二人は顔を青ざめ、哀しむより先にショックを受けた様子だ。
 腰掛けるソファから身を乗り出し、あまりの衝撃に身体が固まっている。
 それを話すブーンも、未だに信じられないような話だった。


ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ、さっきのギャレンと府坂の反応は…本当にあの二人が戦ってたって事?」

( ^ω^)「僕が駆け付けた時にはもう終わってた。でも、府坂の拠点らしき建物の壁が崩壊してたお」

( ^ω^)「きっとあの二人が戦った時の…」
 _
( ゚∀゚)「そんなの信じられるかよ!!あの男は俺達を裏切ってホイホイあいつに着いて行ったんだぞ!?」

( ^ω^)「でもモララーさんは、自分の手で府坂を倒すって言ってた。
       自分の命を失ってでも、一人で倒すって……」
 _
( ゚∀゚)「………嘘だろどうせ、また嘘に決まってる!」


 モララーの過去の行いを振り返れば信用されないのも無理はなかった。
 ブーンの話を一切聞き入れようとせず、腕を組み顔を背けた。

12316話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:30:50 ID:9rIP2F5M0


( ^ω^)「モララーさん、自分のやってきた事を凄く後悔してた。
       謝っても許されない事をしてきた、って…僕やツン達にも謝りたいって。
       そのケジメとして、一人で府坂を倒すって……」

ξ゚⊿゚)ξ「モララーさん……一番悲しいのは、モララーさんよね……」

( ^ω^)「駄目だお、そんなの…モララーさんを一人で死なせるなんて…」
 _
( ゚∀゚)「でも……いいのかよ、また裏切られたらどうすんだ?」


 ブーンが答えようとしたその時、アンデッドサーチャーが反応アリの警告を鳴らし始めた。
 ツンがソファから腰を上げ、急いでPCの前へと着く。


ξ゚⊿゚)ξ「これは……」


 サーチャーの反応を確認するなり、表情が険しくなった。

 _
( ゚∀゚)「どうした?」

ξ゚⊿゚)ξ「……府坂よ」

( ^ω^)「……!」


 府坂特有の反応は頭で記憶していて、すぐに正体が分かった。
 ツンの反応を聞いたブーンが真っ先に思い浮かべたのは、モララーの事だった。

12416話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:31:39 ID:9rIP2F5M0


( ^ω^)「モララーさんに連絡頼むお」
 _
( ゚∀゚)「待てよ!」


 府坂の反応をキャッチした事を知ると、そう言い残し家を出ようとする。
 だが、ジョルジュの声でその動きは止められた。

 _
( ゚∀゚)「お前、府坂のところに行く気だろ?本当にそれでいいのか!?」

( ^ω^)「僕はモララーさんを信じる!いろいろあったけど……それでも」





( ^ω^)「僕にとってモララーさんは…仲間だから!!それがヒートさんの願いでもあるはずだから!」



 _
( ゚∀゚)「………」

ξ゚⊿゚)ξ「…早く行って!モララーさんには私から連絡するから!」

( ^ω^)「頼んだお!!」


 ヒートの願い…ツンは心を動かされ、足を止めるブーンを急かす。
 声高らかにひとつ返事を残し、ブーンは府坂のもとへと駆けた。

.

12516話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:32:48 ID:9rIP2F5M0

 ――――――
 ――――
 ――


「うわああああっ!!!」

「ば、化け物だあぁぁっ!!!」


 静かに波打つ海。
 海辺では、海水の冷えた温度が秋の冷たい風に乗り肌寒さをより際立たせている。
 
 サーファーの格好をした人々が、愛用のサーフボードを投げ捨て悲鳴を上げながら走り去る。
 "化け物"と叫ぶ人。だが此処には人間しかいない。
 武装したいくつもの人間と………黒いコートを着た人間しか。


ミ,,゚∀゚彡「ふっ……ふははははは!!」


 常に掛けていたサングラスは捨て、整った髪型は乱れ前髪が垂れている。
 アンデッドサーチャーが反応をキャッチしたその"化け物"が、此処に居た。
 
 
ミ,,゚Д゚彡「まだだ……まだ俺は封印されん……」

ミ,,゚Д゚彡「カテゴリーAを奴から奪い、最強のライダーを手に入れ……この戦いに勝つ……!」


 人々は府坂を見て逃げたが、人は殺していない。ただ暴れ回っただけだ。
 その理由は、自分の存在を気付かせる為。

 府坂が望むのは、ただ一人。 


ミ,,゚Д゚彡「洗脳が効かぬなら…貴様を殺して、カテゴリーAを俺のものにするまでだ…!」

ミ,,#゚Д゚彡「来い……菱谷ィィィ!!!」

.

12616話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:34:00 ID:9rIP2F5M0


( ・∀・)ロ 「分かった……今すぐ向かう」


 亡きヒートの診療所へと一人訪れ、ヒートがいつも腰掛けていた椅子に座っている。
 赤いお守りをデスクの上に置き、府坂出現の報をツンから受けていた。


[ 先にブーンが向かったわ]

( ・∀・)ロ 「剣藤が?」

[ ええ、モララーさんを一人で死なせないって言って… ]

( ・∀・)ロ 「……」

[ モララーさん……私達、仲間だから。色々あったけど、ヒートさんもモララーさんも大事な仲間だから!]

[ モララーさんには、みんながいるから!!]

[ ……あああもう!!おいあんた、もう一度戻って来いよ!俺達のとこに!]
 

 スマホ越しに聞こえるツンの声色に熱が帯びていく。
 その傍から不器用に声を掛けるジョルジュの声も聞こえた。

 デスクに置かれた赤いお守りを見ると……何となく、ヒートが頷いているように見えた。


(  ∀ )ロ 「……みんな……すまない……、ありがとう…!」


 スマホの電話を切り、椅子から立ち上がる。
 こみ上げる物を抑え赤いお守りを握り締め、馴染みの有る診察室を見渡す。
 大きく深呼吸をするモララーの目つきが変わった。


( ・∀・)(ヒート……見ていてくれ、今度こそ君の敵を討つ!)


 無言でこの診察室に別れを告げ、足早に診療所を後にした。

12716話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:34:32 ID:9rIP2F5M0


 ―――――
 ――――
 ――


 府坂の反応があった海岸に、ブーンは先に到着した。
 海辺にはサーフボードが数枚散乱し、あたりに人は誰もいない。

 府坂と、それを取り巻く数人の武装者。
 研究員達だろうか…停まっているトラックに乗っている、白衣を着た人間を除けば。


( ^ω^)「………」


 ブルースペイダーから降り、目の前の仇敵に目を向ける。
 言葉は発さない。ただ無言で睨み付けた。


ミ,,゚Д゚彡「ブレイド…貴様に用は無い」

( ^ω^)「そんな事は分かってるお、モララーさんを倒したいんだろ?」

ミ,,゚Д゚彡「倒す?その程度で済めばいいがな…ククク」

( ^ω^)「これ以上お前の思い通りにはさせないお!!」

ミ,,#゚Д゚彡「なら貴様から殺してやろうかァ!?」


 府坂の怒号と同時に、武装者が装備した銃をブーンに向け構え出した。
 もはや正々堂々や戦う上でのプライドは無い。
 ただ仮面ライダーを殺したい…アンデッドの秘める残虐さに府坂の持つ冷酷さが加わる事で、最悪な化学反応を起こしている。

.

12816話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:35:16 ID:9rIP2F5M0


 虹色のオーラに包まれた府坂が、アンデッドの姿へと変身。
 右手に黒い剣を召喚し、ゆっくりとブーンに向け歩み始めた。


ミ,,#゚王゚彡『殺してやる…貴様等ライダー全員、殺してやる…!!』


 何度も殺すと繰り返す府坂、既に狂人と化している。
 黒い剣を翳し、遂に走り出した。


( ^ω^)ψ「変身ッ!!」
    /

    【 -♠TURN UP- 】


 手に持っていたブレイバックルを腰に当て装着。
 放出したゲートに向かいブレイドへと変身。
 怒りに狂い、明確な殺意を持って襲い来る府坂を迎撃しようとした。


 その時。


 ブーンの背後から、バイクのけたたましい排気音が響く。
 音に気付いた時には既にそれは横切り、目の前へと姿を現していた。
 
 赤のバイク――レッドランバス。
 府坂は冷静さを失い、迫り来るレッドランバスを視認出来ずにいた。
 そのままブーンに迫る府坂に突撃し、府坂は軽く吹き飛んだ。




( ^ω^)「モララーさん!!」

12916話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:35:42 ID:9rIP2F5M0


( ・∀・)「………」

ミ,,゚王゚彡『菱谷ィ……!!』


 レッドランバスから降り、ブレイドを庇うようにして府坂の前に立ちはだかった。
 視界に捉えた府坂を、決して離さない。


( ・∀・)「俺に任せろ、君はあの操られた人達を頼む」

( OwO)「で、でも……」

( ・∀・)「行けッ!!!」

( OwO)「……はい!」


 モララーの鬼気迫った声に思わず驚くも、素直に指示に従った。
 変身したまま、武装する人達へと駆ける。


ミ,,゚王゚彡『やれ!!』


 府坂の指示が下り、武装者達が一斉にブレイドに向け発砲。
 しかし通常の銃弾では中々効かないのか、銃弾の雨を受け流しながらブレイドは突進を止めない。
 怯まないブレイド、そして止められない武装者達に怒りを覚え、振り返り様子を見ていた府坂は声を荒げた。


ミ,,゚王゚彡『何をしている……!!早くそいつを――』


 ――視線を戻した時、離れていたモララーがわずかに迫っていた。


.

13016話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:36:25 ID:9rIP2F5M0


 無言で睨み合う両者。
 府坂の黒い剣を握る右手が怒りで震える、が……

 モララーが握り締める両の拳は、それ以上の怒りで震えていた。


( #・∀・)「………」

ミ,,゚王゚彡『………』


 真っ直ぐ睨んで目を離さないモララーに、府坂は微かに気圧される。
 府坂に向け、モララーは口を開いた。


( #・∀・)「府坂……貴様だけは……」

( #・∀・)「貴様だけは俺の手で倒す!!」

ミ,,゚王゚彡『フッ……二度も同じように行くと思うなよ?』


 ギャレンバックルを取り出し、♦カテゴリーAのカードを装填。
 腰にあてがい、ベルト状に銀色のトランプが放出しバックルを装着する。

 静かだったはずの波が、徐々に荒れ始める。
 ゆっくりと右前に構える左手が、空に浮かぶ太陽に重なる。

 ブーンやツン、ジョルジュの想いに、自分自身にようやく向き合える事が出来た。
 ただひとつ……向き合う事が出来ないまま、失ってしまったヒートの為に。

 全ての想いを受け止め、構えた左手を力強くギュッと握り締め――その手に、太陽を掴んだ。


o( #・∀・)「――変身ッ!!」


    【 -♦TURN UP- 】

.

13116話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:36:58 ID:9rIP2F5M0


( #・∀・)「行くぞ……!府坂!!!」


 大きく振り下ろした右手でバックルのハンドルを引き、ゲートを放出。
 それに向かい駆け出すモララーに、府坂が伸長した右手から炎球を放った。


ミ,,#゚王゚彡『貴様如きに俺がやられるかアァァ!!!』


 府坂が放つ炎球は、今までブレイドやカリス、そしてギャレンをも苦しめた。
 だが……


( #OMO)「ああああああああああッッ!!!!」

ミ,,;゚王゚彡『何……!?』


 腕をクロスさせ、その炎球を防ぐ。
 それどころか、炎球に自ら突っ込みながら府坂へと迫るギャレン。
 

( OMO)「はあああっ!!」

ミ,,;゚王゚彡『クッ…小癪な!!』


 炎球を諸ともせず接近したギャレンが、府坂に飛び跳ねながらのパンチを突き出した。
 左手で払い除けられるが、高い打点で後ろに回した左足の踵が府坂の顔面を捉える。

 間を作らず、続いて胴体に向け二発の拳撃。
 もう一発を入れようと右拳を突き出した時、府坂に右腕を掴まれた。
 そして、隙の生じたギャレンの左頬に伸びた爪を叩き込まれる。

13216話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:37:23 ID:9rIP2F5M0


( OMO)「………」


 ギャレンは動かない。
 右腕を捕まれ顔面に打撃を受けながら、一切怯まない。


ミ,,;゚王゚彡『ッ……ギャレン如きが!とっとと!失せろ!!』


 罵声を浴びせながら、そのまま何度も顔面を叩いた。
 それでも尚怯む様子は無い。
 むしろ、顔面を殴られ続けながら前進し、府坂は後退している。

 攻撃は効いているはずなのに、それでも動じない。
 あの脆弱だったギャレンが……弱らないどころか、強くなっている。


ミ,,;゚王゚彡『何故だ…!何故怯まない!?弱いギャレンの分際でェ!!』


 何度も叩き続け、己の拳が痛んできた。
 もう一度叩き入れようとした時……ギャレンの左手が、府坂の拳をバシィッ!と受け止めた。


ミ,,;゚王゚彡『ッ!?』

( OMO)「そうだ……俺は弱い、弱くてどうしようもない人間だ」

( OMO)「自分に負けて、周りからも逃げて……だからお前に屈した……」

ミ,,;゚王゚彡『グッ!?アアア"ア"ア"アァッ!!』


 左手が震える程に力を入れ、府坂の右拳を握り潰さんとギリギリと締め付ける。
 圧迫され潰されそうになる右手の痛みから、府坂はモララーの腕を掴んだ左手を離す。


.

13316話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:38:19 ID:9rIP2F5M0


( OMO)「それでも今こうしてお前と戦う事が出来るのは……!」

( OMO)「俺に、本当に大切なものがあるからと気付いたからだ!!」


 開放された右手でギャレンラウザーを引き抜き、銃口を府坂の腹部に突きつける。
 左手で府坂を捕えたまま、ゼロ距離での銃撃を幾度も放った。


ミ,,;゚王゚彡『ウオオオォアアッ!?!?!』


 回避不可の執拗な銃撃を受け、苦痛に呻く。
 銃口を離し、右足で押し込むように蹴りを叩き込み府坂の身体を倒した。

 
ミ,,#゚王゚彡『グウウゥッ……ギャレエエエエエエエエンッッ!!!!』


 ゆっくりと身体を起こし、一度手放した黒い剣を左手に召喚。
 それまで発した事も無い大声でギャレンの名を叫び、黒い剣を掲げながらがむしゃらに突進した。
 
 接近したギャレンに黒い剣を振り下ろすが、ギャレンは身体を反り剣を回避。
 すぐに手の向きを変え剣を振り回し続けるも、府坂の動きを正確に見極め躱し続けた。


ミ,,#゚王゚彡『ちょこまかと鬱陶しい奴だ!!』

( OMO)「ッ!!」


 躱し続けていたギャレンだが、遂に肩に黒い剣の攻撃を受けてしまう。

 それでも、全く動じなかった。
 右足を大きく振り上げ、府坂の側頭部に鋭い足刀蹴りを叩き込む。


.

13416話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:38:45 ID:9rIP2F5M0


 戦いの最中……ギャレンとして戦っているモララーは、ヒートとの事を思い出していた。


 大学生活の中で知り合い、共に時間を過ごして行く中でモララーはヒートに惹かれた事。
 好意を寄せていたものの、自分から告白する事は出来なかった事。

 大学生活を終え、卒業した二人は別々の道を進んだ。
 けれど、ずっと自分の気持ちを言えないままズルズルと引き摺って来てしまった。


( OMO)(何で言えなかったんだろう、俺……)

 
 府坂の攻撃は止まないが、ギャレンも同じ。
 剣撃を躱し続け、隙を作るようになった府坂に容赦なく打撃を与え続ける。


( OMO)(ヒート……君との思い出は少ないけど、君を思い出させる物はたくさんある)

( OMO)(目に見える物全て、君の色に染まってしまっているんだ……)

ミ,,#゚王゚彡『ウオオオオオオッ!!』


 横に薙いだ黒い剣。
 右脇に命中したが、ギャレンは府坂の左腕を右腕で挟みしっかりと捕んだ。
 今度はギャレンが、握った左拳を府坂の右頬に何度も叩き込み始めた。

13516話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:39:24 ID:9rIP2F5M0


 ヒートに赤いお守りをプレゼントした時の事を思い出す。
 たかがお守りのプレゼントに、とても嬉しそうにしていたヒートの笑顔が強く浮かぶ。
 それに連動してか、以前食事に誘った時のヒートの笑顔も浮かんできた。


( OMO)(俺の笑顔が好きって言ってくれたよな…俺も、君の笑顔がとても好きだった)

ミ,,;゚王゚彡『ウグッ…!ガハァッ…!!』


 思い出に浸れば湧き出てくる後悔。
 思い出せば思い出す程、ヒートへの想いが強くなる。


( OMO)(遅いよな、今頃こんな事思うのも……)

( OMO)(俺は……俺は……!)



( OMO)「俺は君が好きだった!!君の事を心から愛していた!!!」


 顔面に拳を受け続けた府坂の左手から力が抜ける。
 瞬時に黒い剣を奪い……無意識に溢れ出る思いの丈を叫びながら、府坂を何度も斬りつけた。


( OMO)「だああああああぁっ!!」

ミ,,;゚王゚彡『ウオオオオォォッ……!!』


 剣撃を受けた身体をふらつかせながら後退りし、片膝を地面に着く。


ミ,,#゚王゚彡『ウ"ゥ"ゥ"……!死ねエエエエエッ!!』


 息を切らしながら、府坂は背後に羽根の投擲刃を展開。
 羽根の先をギャレンに向け、一斉に放射した。

13616話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:41:27 ID:9rIP2F5M0


( OMO)「ふんっ!」


 ギャレンが投げ付けた黒い剣が、府坂の顔面を掠った。
 後方に身体を回転させ飛ぶ事で飛距離を高め、飛びながら引き抜いたギャレンラウザーで迎撃。
 飛翔する投擲刃を全て撃ち落とし、身体が地面に落ちるまでそのまま府坂へ銃弾を浴びせた。


ミ,,;゚王゚彡『グオオォッ……グフッ…!』


 府坂が崩れ落ち、遂に両膝を着く。

 身体を地面に落としたギャレンはすかさず立ち上がり、ギャレンラウザーのオープントレイを展開。
 選んだ三枚のカードをラウズする度に流れる電子音声が波音に混じる。


    《-♦5 DROP-》 《-♦6 FIRE-》 《-♦9 GEMINI-》


 三枚のカードが紋章となり、ギャレンの背後に浮遊。
 一枚ずつギャレンの身体に吸収され、ギャレンラウザーをゆっくりとホルスターに収納。


           《-♦BURNING DIVIDE-》


 電子音声がコンボ名を告げると同時に、左拳を強く握り締めた。

 ――今こそ、今までの自分に決着を着ける。
 眩い太陽を背にし、喉が擦り切れる程の大きな声で…思いの全てを、彼女の名に乗せた。




( #OMO)「ヒートオオオオオオオオオオオオ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙ォォォォォッッッ!!!!!!!!!!」

13716話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:42:25 ID:9rIP2F5M0


 両足を揃え、思い切り地面を蹴り高々と跳躍。
 空中で身体を回転させるギャレンが二人に分身し、両脚に紅蓮の炎が纏い始める。


ミ,,;゚王゚彡『ヌウゥッ!?!?』


 ギャレンの怒りに呼応するように、熱く激しく燃え盛る炎。
 限界まで宙を飛んだギャレンが落下を開始。
 怒りの火炎が残像を描きながら、二人のギャレンの両足が、府坂目掛け振り下ろされた。


( #OMO)「でいやあああああああああああああああァァァァッッッ!!!!!!!」



ミ,,.;゚王゚彡『ウウ"ウ"ゥ"ア"ア"ア"ア"アアアアァァァッ……!!」


 四つの足が府坂の身体を抉り、燃え移った業火に焼かれる。
 緑の血を迸らせながら跪き――府坂の身体から、大きな爆発を引き起こした。

 府坂の爆発を背にギャレンは地面に着地。
 分身は消え、一人だけが残った。
 











( OMO)「………」


 立ち上がったギャレンは府坂を振り返る事もせず、波打つ海を見つめる。

13816話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:42:57 ID:9rIP2F5M0


ミ,,;゚王゚彡『……グウ、ウゥ……ッ』


 だが……ギャレンの必殺技を受けた府坂が再び立ち上がる。
 ゆっくりと、足元をふらつかせながら。
 立ち上がるにも、とても苦しそうな様子だった。
 身体から血を流し、至る所から火が燃え続けている。

 すると、人間の姿へと変身し……ギャレンに最期の言葉を言い放った。


ミ,,;゚Д゚彡「何故だ……、何が、貴様を……そこまで……ッ」

ミ,, 王 彡『グハ……ッ』
  

 人間態でいる事すら儘ならぬ程、余力は無い。
 すぐにアンデッドの姿へと戻ると、吸い込まれるように背後に倒れる。
 そして……腰の黄金色のバックルが、左右に開いた。

 海を見つめていたギャレンが振り返り、一枚のカードを取り出す。
 倒れた府坂に歩み寄り、足元に倒れた府坂に答えた。






( OMO)「……人を想う、力だ!」


 右手に持ったカードを離し、ひらひらと舞うカードは府坂の身体に落ちる。
 身体の上に落ちたカードがみるみると吸収をはじめ――、
 
 ――府坂は、ギャレンの手によって遂に封印された。

.

13916話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:44:23 ID:9rIP2F5M0


 府坂を封印したカードが、ギャレンの右手に帰還。
 カードには、"♦J FUSION"と記され、クジャクのような絵が描かれた。

 封印したカードを見る事もなく、ギャレンは変身を解除。
 ゲートが身体を覆い、モララーの姿へと戻った。


( ・∀・)「………」


 再び海を呆然と見つめる。
 府坂を封印してヒートの敵を取ったが、胸の内が晴れる事はない。

 府坂を倒しても、ヒートは戻らない。
 やり場の無い悲しみ、後悔……全てをこの広い水面に写していた。

 右手に持っていた♦Jのカードが手から離れ、地面に突き刺さる。
 左手でポケットにしまった赤いお守りを取り出し、それを強く握り締めた。


(  ∀ )「ヒート………俺、もう道を踏み間違えないよ」

(  ∀ )「俺には…剣藤や、ツンにジョルジュ……それに……」


 
( ;∀;)「君が……いつでも傍にいるから……!!」


 こみ上げてきたものを堪え切れず、大粒の涙をボロボロと流す。 
 最愛の人は、この赤いお守りに…そして彼の心の中に生き続けるだろう。
 
 己の弱い心に打ち勝てず、恐怖心に怯え、全てを恐れた。
 黒い影に弱い心を浸け込まれ、力に溺れてしまい、本当に大切な物を見失い…亡くしてしまった。
 この先、一生消えない傷跡として心に刻まれるであろう。
 今はただ悲しくても、いずれその悲しみを背負い……前を向いて歩けるはず。



 くすんでしまっていたダイヤは――今、真紅の輝きを取り戻した。

14016話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:44:46 ID:9rIP2F5M0





          【 第16話 〜ダイヤの覚醒〜 】 終




.

14116話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:45:42 ID:9rIP2F5M0


==========

 【 次回予告 】


 長く続いた仇敵・府坂を、遂に倒す事が出来たモララー。
 府坂を封印した事で、人々の洗脳は解けた。


( OwO)「そちらさんも大丈夫ですかお?」

(,,゚Д゚)「あ、ああ…………!?ブレイド!?」

( ФωФ)「ブレイド……!」

( OwO)「え………」

( ФωФ)「ブレイド…!まさか、我々がこのような状況になっている間に適合者が見つかっていたのか…!」

( OwO)「父………ちゃん………?」


 洗脳を解かれた人々を救助する中、ブレイドが"父ちゃん"と呼ぶ人物。
 家族を捨てたはずの父親の正体とは、一体何なのか!?

.

14216話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:46:15 ID:9rIP2F5M0


( ・∀・)「俺の所為です、俺が自分の事ばかりで…剣藤達の言葉も、彼女の言葉も聞き入れようとしなかった。
       弱くて、どうしようもない俺の所為で……」

( ^ω^)「そんなことないですお…!」

( ・∀・)「これ……お返しします」

( ФωФ)「何だ、これは……」


( ・∀・)「――仮面ライダーを、辞めさせてください」

( ^ω^)「モララーさん!?」


 府坂を封印し、謎の人物にギャレンバックルを渡すモララー。
 改心した途端、ライダーを辞めると言い出したモララーの真意とは…。

.

14316話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:47:03 ID:9rIP2F5M0


(# ;;- )「……いいよ、殺しても」

『!?』

(*゚∀゚)「……へーえ?」

川;゚ -゚)「何を言っているんだ!?」

(# ;;- )「お父さんとお母さんを奪われて……友達もいない私に、やっと出来た大切な友達…。
     ううん、友達よりももっと大事……モスと家族になったと思った」

(#;;;-;)「私の所為でせっかく出来た家族をまた奪われちゃうくらいだったら……」

(#;;;-;)「もう……生きてたくないよ!!死んだほうがマシだよ!!また独りになっちゃう!!」

川 ゚ -゚)「……でぃちゃん……」


 カテゴリーQに人質に取られてしまったでぃ。
 そして、でぃの前で再び対立するクーとモス。
 人とアンデッドという壁を越え、絆を深めたでぃとモス…二人はどうなってしまうのか?

.

14416話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:48:09 ID:9rIP2F5M0


( ; ^ω^)「ジョルジュやめろ!!変身したら駄目だお!!」
 _
( ゚∀゚)『変身!!』


 そして、遂に♣の新たなライダーが……。


( ; ^ω^)「はっ…!?」

( <::V::>)『とうとう姿を見せたな……府坂の怨霊、邪悪なライダーか』



( OHO)『俺は"仮面ライダーレンゲル"……最強の仮面ライダーだ……!』



 誕生してしまった、"レンゲル"と名乗る♣の仮面ライダー。
 ブーン達の味方と成り得るのか…それとも敵となってしまうのか!?


 次回、【 第17話 〜新たなる運命〜 】


 ――今、その力が全開する!


==========

145 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:50:25 ID:9rIP2F5M0
しおり

>>9 第15話
>>84 第16話


因みに来週は駅伝放送の為お休みです
雨天の場合は投稿します

146名無しさん:2017/11/05(日) 09:57:48 ID:2mwJ.fdM0
おつ!
やっぱギャレン覚醒のくだりはいいね
上級アンデッド達が出てきてグッと加速して参りました!

147名無しさん:2017/11/05(日) 12:05:41 ID:7oXPt6RY0
乙!
モララーかっけえ!
一気に汚名大返上してきたな

148名無しさん:2017/11/05(日) 16:30:22 ID:3xRWenAk0


149名無しさん:2017/11/05(日) 16:40:14 ID:bBaRz5Ao0
やっぱブレイドと言えばこの回だよなあ

150名無しさん:2017/11/06(月) 12:18:37 ID:WYxxjHAs0
いずれ来るけどこのシーン最高に好き
https://i.imgur.com/0IMZu4m.jpg

151名無しさん:2017/11/08(水) 15:50:31 ID:IXqS2nPE0
ヒーローものはええなぁ

15217話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 09:53:34 ID:/ejLF8tk0





     【 第17話 〜新たなる運命〜 】




.

15317話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 09:53:54 ID:/ejLF8tk0


 ギャレンが府坂を封印した一方で、ブレイドは府坂の洗脳により動いている武装者達の相手をしていた。
 相手をすると言っても片っ端から殴り倒す訳では無い。
 ライダーが人間を本気で殴れば、それこそ死に至らしめてしまう。

 
「撃て!もっと撃て!!」

「クソッ、全然効かない…!」

( OwO)「いい加減目を覚ませ!あなた達は操られているんだ!!」


 "♠7 METAL"の力を使い、銃弾から更に強く身を防御している。
 先程から身体に無数の銃弾が被弾しているが、痛くも痒くもない。
 そして、武装者のうち一人の銃を取り上げ、強引にへし折った。

 ブレイラウザーを引き抜き近寄っても、逃走しようとしない武装者。
 

( OwO)「ふんっ!」

「うわっ!?」


 銃身を雑に斬り落とし、強引に発砲不可な状態にする。
 しかし今度はナイフを取り出し、それでも尚立ち向かおうと構え出した。


( OwO)「何でだ…!?そんなに府坂の洗脳は深いのか!?」

15417話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 09:54:28 ID:/ejLF8tk0


 ナイフを構えブレイドに挑もうとする武装者達。
 だが、突然武装者達の身体がガクンッと跳ね、全員が戦う構えを解いた。


「はっ……」

「ああ…俺達は一体何を……!」

( OwO)「え…目が覚めたのかお??」


 我に返ったような台詞を口にする武装者達。
 持っていたナイフをその場に落とし、一目散に逃げて行った。


( OwO)「どういう事だお??まさか……モララーさんが府坂に勝った…!?」


 唐突な出来事に困惑するブレイドだが、その理由として一つ思い浮かぶ事はあった。
 府坂の洗脳が無くなったとするならば……洗脳者がいなくなった可能性が高い。
 すると、通信機能を通してツンの声が耳に届いた。


[ ブーン!やったわ!モララーさん府坂を倒した!!]

( OwO)「やっぱり…!てことはモララーさん…無事なんだ……!!」

[ そうよ!本当によかった……早くモララーさんのもとに行ってあげて!]

( OwO)「わかったお!」


 遂に、府坂が封印された。
 モララーが無事である事実に心の底から喜ぶと同時に、それまで張っていた気が一気に抜け脱力感に襲われた。
 洗脳された人達が気になるが、何処に行ったかも分からない。
 急いでモララーのもとへと向かおうとした時だった。

15517話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 09:54:55 ID:/ejLF8tk0


( OwO)「ん…?」


 奥に停車しているトラックから、白衣を着た数人の人が降りてくるのが見えた。
 

「私は何てことをしていたんだ……!」

「何処だここは…?」


 研究員達も府坂の洗脳が解け、我に返っている様子。
 迷っている人達を見捨てる事は出来ず、ブレイドは研究員たちのもとへ駆ける。


( OwO)「大丈夫ですか!?」

「おっ……そ、その姿は……!」

「ブレイド!?」

( OwO)「僕を知ってるんですかお??」


 研究員達は、ブレイドの姿を見ると口々にその名を紡ぐ。
 初めて見た反応とはまた違う。何故?といった疑問に近い反応。
 
 すると、遅れてもう二人がトラックから降りてきた。
 スーツを着た中年の男性と、30代前後に見える男性。

15617話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 09:55:20 ID:/ejLF8tk0


「そうか……私達は府坂に洗脳されていた……」

「どうやらそのようです…」


 中年の男性ともう一人の男性の会話からするに、知り合い同士のようだ。
 これで全員だろうか。府坂に操られ、悪事に加担させられていた人達は…。


( OwO)「そちらさんも大丈夫ですかお?」


 ブレイドの声に反応し、二人が振り返る。


(,,゚Д゚)「あ、ああ…………!?ブレイド!?」


 もう一人の男性が答えるが、この男性も研究員達と同じような反応を見せる。
 男性の言葉に反応し、中年の男性も素早くブレイドに振り向いた。

 だが……ブレイドは、この中年男性の顔を見て、絶句する事になる。



( ФωФ)「ブレイド……!」

( OwO)「え………」





( OwO)「父………ちゃん………?」


.

15717話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 09:55:51 ID:/ejLF8tk0


( ФωФ)「ブレイド…!まさか、我々がこのような状況になっている間に適合者が見つかっていたのか…!」

( ; OwO)「………」


 ブレイドに近寄り、驚いた様子の中年の男性。
 ブレイド……その中にいるブーンは、それ以上に驚いている。

 小さな声で"父ちゃん"と呼んだ人物――そう、この人物は…この人物こそ、
 ブーンが幼い頃、カーチャンとブーンを…家庭を捨てた、ブーンの実父……"内藤ロマネスク"だった。


(,,゚Д゚)「驚きました……一体、君は誰なんだ?」

( ФωФ)「安心してくれ、我々はそのライダーシステムを開発した者である。
        ギャレン…菱谷とは会ったか?解放されたアンデッドは封印出来てるのか!?」

( ; OwO)「ッ……!!!!」

( ; OwO)(父ちゃんが……ライダーシステムの、開発者……!?!?)


 気を休める暇も無く、突き付けられた衝撃の事実。
 家庭を顧みず、仕事を選んで自分達を捨てた父が……BOARDの人間だったとは。
 

(,,゚Д゚)「落ち着いて下さい所長、彼が戸惑ってしまいます」

( ФωФ)「ああ…そうだな、すまない。…頼む、君の正体を見せてくれないか?」

( OwO)「………分かったお」


 このまま逃げられる訳がない。
 意を決して、自分の正体を見せよう。
 実の父……ロマネスクから距離を取り、ハンドルを引く。
 放出したゲートがブレイドの身体を潜り…その正体を見せた。

15817話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 09:56:15 ID:/ejLF8tk0


( ; ФωФ)「―――ッ!!!」

(,,゚Д゚)「君は…?」


 ブーンの姿を見た瞬間、ロマネスクの顔色が変わった。
 目を見開き口を大きく開け、ひどく吃驚している。


( ^ω^)「剣藤……ホライゾン。この内藤ロマネスクの……息子です」

(,,;゚Д゚)「何…!?」

「所長の息子さん!?」


 研究員同士が顔を見合わせ、一同も驚いている様子だ。


( ; ФωФ)「何故、お前がブレイドに……!?」

( ^ω^)「こっちが聞きたいお、父ちゃん――いや、あなたがライダーシステムの開発者ってどういう事だお?」

( ; ФωФ)「………」

( ^ω^)「まさかこんな形で会わなきゃならないなんて……あなたが僕達家族を捨てた理由って、これかお!?」

( ; ФωФ)「……ホライゾン、聞け」

( #^ω^)「いいや……もう聞く事はないお。元々あんたと会いたいなんてこれっぽっちも思ってなかった!
       あんたが僕達を捨てた理由がBOARDにあったなんて……また偉い皮肉な話だお!!」


 ブレイバックルを見せ付け、自分達家族を捨てた憎き実父に激しい怒りを覚える。


( ФωФ)「聞けと言っているのである!!」

( #^ω^)「ツンやジョルジュ、モララーさんは信用出来る……けどあんたは信用出来ない!」

( ФωФ)「待て!廣瀬や白岡も無事なのか!?菱谷も生きているんだな!?」

15917話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 09:56:36 ID:/ejLF8tk0


( #^ω^)「生きてる、みんな必死に戦ってる!僕もモララーさんも戦いの日々だ!!
       本当に皮肉だ……僕はあんたが作ったコレに変身して、人間を守る為に戦ってるだなんて!!」

( #ФωФ)「いい加減にしろ、ホライゾン!!」

(,,゚Д゚)「落ち着いて!とにかく今は状況を整理する方が先決です!」


 ヒートアップする二人の間に割って入る男性。
 引き離されたブーンは全員に背を向け、立ち去ろうとする。


( ФωФ)「どこに行くんだ!」

( ^ω^)「モララーさんのとこだお!モララーさんは府坂と戦って、酷く悲しみ傷付いてる!早く行かなきゃ…」 

(,,゚Д゚)「菱谷が近くにいるのか!?」

( ^ω^)「いますお。でも僕一人で行きます!」

( ФωФ)「そういう訳には行かない!我々は府坂に操られ、これまでの状況を把握していないのである。
        これは人命にも関わる問題だ、お前が嫌でも我々は知る義務と権利がある!」

( ^ω^)「ぐぐ……なら着いて来いお…!」


 ロマネスクに諭され、それ以上の反発は出来ない。
 悔しいが、的を射ているからだ。

 ブーンはモララーのもとに向かい走り始める。
 ロマネスクと男性もブーンに続き、走り出した。

16017話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 09:57:27 ID:/ejLF8tk0


( っ∀・)「………ふぅ」


 一人海を見つめながら、ひとしきり涙を流した目を拭う。
 溢れ出した気持ちが一旦収まりが着き、涙も止まった。
 深く息を吐き、気持ちを切り替えようと試みる。 


「モララーさーん!!」

( ・∀・)「??剣藤……?」


 名を呼ぶ声のする方へ振り向くと、ブーンが走りながら此方に向かって来るのが見えた。
 一人武装者を相手にしたブーンが無事そうで、一安心する。

 モララーの視線は、ブーンの後ろに着いて来る人間へと向けられた。
 そして、その二人の存在に目を丸くする。


( ・∀・)「あれは…!!所長に、ギコさん…!?」


 モララーのもとに三人はすぐに着き、ブーンがまず笑顔を見せた。


( ^ω^)「モララーさん、やりましたね!!」

( ・∀・)「ああ……」

( ФωФ)「菱谷…!」

(,,゚Д゚)「生きていたか、菱谷!」
 
( ・∀・)「所長…無事だったんですか!?ギコさんも!」

16117話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 09:57:53 ID:/ejLF8tk0


 三人はモララーの前に立ち並び、モララーはそれぞれに視線を合わせ笑顔を見せた。
 

( ФωФ)「ああ…府坂に操られ、我々は動かされていたらしい……」

(,,゚Д゚)「俺達が今こうしてるって事は、奴を封印したのか?」

( ・∀・)「……はい、ここに」


 落としたカードを拾い上げ、府坂を封印した♦Jのカードを見せた。
 モララーがライダーとして不安要素を抱えていた事を知っていただけに、ロマネスクは嬉しげな顔だ。
 モララーの肩をポンと叩き、何度も頷く。


( ФωФ)「上級アンデッドを封印するまでに成長したか…よくやった、菱谷」

(,,゚Д゚)「ギャレンをお前に任せてよかった」

( ・∀・)「………」

( ^ω^)「やめてくださいお!モララーさんは今……」


 二人の褒め言葉を貰っても、モララーに笑顔はない。
 ブーンはその理由を知っている、だから止めた。

 モララーは、ロマネスクに向け重たげに口を開いた。


( ・∀・)「……所長、聞いてもいいですか?」

( ФωФ)「なんだ?」

( ・∀・)「何で、俺をギャレンに…仮面ライダーに任命したんですか?」

16217話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 09:58:42 ID:/ejLF8tk0


( ФωФ)「それはお前が一番理解しているはずである」

( ・∀・)「分かりません。俺のように弱い人間は、アンデッドの力を利用したライダーシステムを制御する事は出来ない。
       初期段階の融合係数が高くても……意志の強いギコさんであれば、俺みたいな無様な事にはならなかった……」

( ^ω^)「どういう事だお?この方が、って…」

( ・∀・)「ギコさん…久利生ギコさんは、ギャレンの最初の適合者だ」

( ^ω^)「えっ…!?てことは、ツンが話してたギャレンの前任者というのは……!!」


 ツン達と知り合って間もない頃、モララーの前にギャレンの適合者が居たという話を聞いた事がある。
 その人は行方不明となり、生死も分からないような状況だったと。


(,,゚Д゚)「よせ……過ぎた話だ」


 そう、ロマネスクと現れたこの男性――"久利生ギコ"こそ、ギャレンの最初の適合者。
 だが、その紹介を受けるギコは少し嫌そうだ。


(,,゚Д゚)「しかし、お前は上級アンデッドを封印する程にギャレンを使いこなしてる」

( ・∀・)「使いこなせてなんかいませんよ、俺は自分の恐怖心に負け…道を踏み外した」

( ・∀・)「……府坂に、大切な人の命を奪われたんです」

( ФωФ)「……!」

(,,゚Д゚)「もしかして……お前が言っていた、ヒートさん…か?」

( ・∀・)"


 言葉を返さず、無言でゆっくりと深く頷く。
 以前からヒートの話を聞いていた二人は、ヒートの訃報に驚いている様子だ。

16317話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 09:59:46 ID:/ejLF8tk0


( ・∀・)「俺の所為です、俺が自分の事ばかりで…剣藤達の言葉も、彼女の言葉も聞き入れようとしなかった。
       弱くて、どうしようもない俺の所為で……」

( ^ω^)「そんなことないですお…!」

( ・∀・)「彼女を失った怒りが、俺とギャレンの融合係数を高めただけです。だから俺は……」


 ギャレンバックルと、♦のカテゴリーAのカード、そして♣のカテゴリーAのカードを取り出す。
 三つのアイテムを両手で一纏めに持ち……ロマネスクに向け差し出す。
 ロマネスクが片手で受け取り、曇る表情のモララーを見た。


( ФωФ)「何だ、これは……」


 一歩下がり、ロマネスクに向け深々と頭を下げる。
 そして……、







( ・∀・)「――仮面ライダーを、辞めさせてください」



( ^ω^)「え……!?」

(,,゚Д゚)「菱谷!?」

16417話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:01:12 ID:/ejLF8tk0


( ФωФ)「……何故だ、菱谷」

( ・∀・)「俺は元々、自分はライダーに向いてないって思っていました。それを改めて感じたんです」

( ・∀・)「でもそれは、ライダーをやりたくないからではなくて……。
      己を制御出来ない者に、ライダーの資格は無い。そう思ったからです」

( ; ^ω^)「そんな……アンデッドはまだいっぱいいるんですお?これから力を合わせて――」

( ・∀・)「ごめん、だとしても時間が欲しいんだ。今はどうしても………」


 受け取ったギャレンバックルを持ったまま両手を後ろに組み、モララーの横を通り過ぎる。
 目の前に広がる海を見つめながら、モララーの質問に答えた。


( ФωФ)「……菱谷、吾輩がお前をギャレンに選んだ理由は、融合係数が高いだけではない」
 
( ・∀・)「え…?」

( ФωФ)「初めてライダーシステムをお前に披露した時、お前は力への欲望を見せなかった。
        力を前にしても、それに惹かれる事のない心……それが一番の理由である」

( ・∀・)「………」

( ФωФ)「だが…吾輩の判断の所為でお前をとても辛い目に合わせてしまった。
        ヒートさんを失う事になってしまったのも…吾輩の責任である」

( ФωФ)「すまない……」

( ・∀・)「……違います、頭を上げてください」


 モララーに向け頭を下げるロマネスク。
 その両肩に手を添え、下げた頭を上げさせた。

16517話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:02:21 ID:/ejLF8tk0


( ^ω^)「モララーさん……本当に駄目なんですか?考え直してはくれないんですかお…」

( ・∀・)「剣藤…君には、本当に沢山の苦労を掛けてしまった。謝り切れないよ。
      そんな俺を見捨てないでくれて……ありがとう」

( ^ω^)「……モララーさん」

( ・∀・)「ギコさん……お願いします。ギャレンを引き受けてくれませんか?」

(,,゚Д゚)「馬鹿な事を言うな…ギャレンの資格を持つ者は、この世でたった一人」

(,,゚Д゚)「それは、お前だ」

( ・∀・)「……ありがとうございます、ギコさん」


 全員に頭を下げ、モララーは一人立ち去ってしまう。
 波打ち際で足元を濡らしながら、着いた足跡は消えていく。

 小さくなってしまったように見える背中を見つめる三人。
 誰一人、モララーを止める言葉を掛けられなかった。


( ФωФ)「菱谷、吾輩は信じてる。お前が戻ってくれる事を……」


 モララーの背中を見つめながらギャレンバックルを握り締め、小さくつぶやいた。

16617話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:02:59 ID:/ejLF8tk0


( ^ω^)「……これからどうするんだお」


 無愛想に父であるロマネスクに声を掛ける。


( ФωФ)「お前達に伝えなければならない事がある。廣瀬達に会わせてくれないか?」

( ^ω^)「ツン達なら僕とカーチャンの家で一緒に暮らしてるお」

( ФωФ)「……来て欲しくないという事であるか」

( #^ω^)「当たり前だおッ!!今更土足でズカズカと上がられるなんて…たまったもんじゃないお!」

( #^ω^)「あんたの所為で僕達は…!カーチャンは大病を患って今も病気と闘ってるお!!」


 ロマネスクの胸倉を掴み怒りを露にする。
 自分達が捨てられ、それまで味わった苦労を考えると、どうしても許せなくなってしまうようだ。


(,,゚Д゚)「落ち着いてくれ!気持ちは分かる、だが今は…今だけは話を聞いて欲しいんだ。
     頼む、モララーがいない以上尚更重要な事だ…!」

( #^ω^)「……ッ!」

( ФωФ)「………」


 再び割って入るギコの制止に、渋々胸倉を掴む手を離した。
 それ以上ロマネスクと視線を合わせる事はなく、ギコとのみ目を合わせた。


( ^ω^)「分かりましたお……じゃあ、着いてきてください」



.

16717話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:03:39 ID:/ejLF8tk0





 ―――――




.

16817話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:04:05 ID:/ejLF8tk0


 ――ブーン達が府坂との因縁を終え、新たな展開へと進んでいる頃。

 
 カテゴリーQの脅迫を受け、カリスに襲い掛かったモス。
 睨み合っていた二人は、未だ不本意のまま対立をしていた。


『シイイイィイイィィッ!!』

( <::V::>)『やめろ!!お前とは…ッ戦うつもりはない!』

『――情けを掛けるな……!!』

( <::V::>)『お前を生かす為じゃない!あの子の為に戦わないだけだ!』

『……シュウゥウッ!』


 口吻から毒矢を吐き、腕に着いたヒレのような羽を振るい続ける。
 モスの攻撃を躱し、防ぎ、防戦一方のカリスだったが、反撃しようと思えばいくらでも出来る。

 しかし、頭に浮かぶでぃの顔がカリスの戦意を制御していた。
 モスを傷付ければ、でぃがひどく悲しむ。


( <::V::>)(このままでは埒が明かない……やむを得ないが、やるしかない!)

( <::V::>)『ふっ!』

『シュオオォッ…!?』


 片腕で攻撃を防ぎ、カリスアローの刃先でモスの胸部を突き刺した。
 すぐに後退し距離を取る。
 カリスアローの突きを受けたモスの胸部からは、緑色の血が流れた。

16917話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:04:37 ID:/ejLF8tk0


 カリスラウザーをカリスアローに装着。
 カードを一枚選択し、カリスラウザーにカードをラウズした。


    《-♥7 BIO-》


( <::V::>)『はっ!』
 

 伸ばした右手から、三本の太い蔓がモスに向け放出。
 全ての蔓がモスの身体を幾重にも巻き付け、完全に拘束した。
 

( <::V::>)『少しばかり大人しくしてもらうぞ!』


 右手で三本の蔓を操り、縛り上げたモスを浮遊させる。
 そして、地面に向かい力強く何度も叩き付け始めた。
 ドスン!ドスンッ!と、軽い地響きを起こし生え並ぶ木々の枝が揺れている。
 モスを叩き付けた地面は抉られ、修復が必要な程になってしまった。


『シュゴオオォオオッ…!!』


 カリスが行ったのは、手荒くはあるがモスを弱らせる作戦だ。
 致命傷は与えず、その場を凌ぐためのもの。
 カリスの攻撃を受けたモスは、最後に地面に放り投げられ道路を転がった。

 この場から立ち去るなら今しかない。

 カリスの脳波を受けたシャドーチェイサーが無人走行しカリスのもとへと移動。
 来着したシャドーチェイサーに飛び乗ると、倒れたモスをそのままに一人立ち去った。

.

17017話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:05:00 ID:/ejLF8tk0


 モスの襲撃を退け、急遽でぃの家へと戻る。
 
 カテゴリーQは、でぃを人質にモスを脅迫しカリスを襲わせた。
 まだ幼い子供を手を抜けばを殺すと言い放つような残虐性を持ち合わせている。
 
 あのような上級アンデッドが、一体いつ何をしているか分からない。
 もしかすれば、この間にでぃに接近している可能性も十分に考えられた。



 でぃの家に到着し、既にカリスの変身を解いていたクーは急いで家へと向かった。


川 ゚ -゚)「でぃちゃん!!」


 名前を呼びながら勢いよく戸を開け、家の中を確認する。
 
 そこには……

 



(#゚;;-゚)「おかえりなさい、どうしたの?」


 火を焚き、米を炊いていたでぃが居た。
 クーの慌てた様子にきょとんとしている。

17117話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:05:21 ID:/ejLF8tk0



川 ゚ -゚)「無事か?何もなかったか??」

(#゚;;-゚)「え??何もないよ、どうかしたの??」

川 ゚ -゚)「そうか……いや、何もないならいい」


 どうやら、カテゴリーQの魔の手は"まだ"でぃには伸びていないらしい。
 一安心し、家の中に入ると勢いよく開けてしまった戸をゆっくりと閉めた。


(#゚;;-゚)「ねぇ、そういえばモス見なかった?」

川 ゚ -゚)「……!」

(#゚;;-゚)「何か急に飛び出して行っちゃったの、早く戻りなよって言ったんだけど」


 先程クーに襲い掛かったモスの話を受け、言葉に詰まる。
 まさか、モスに襲われたとも言える訳なく…適当なその場凌ぎの言葉を頭の中で適当に作る。


川 ゚ -゚)「いや……見てない」
 
(#゚;;-゚)「そっかぁ、一人で大丈夫かなぁ」

川 ゚ -゚)「………」


 何が起きているかも知らないで、ただモスの心配をするでぃ。
 素直に言えばこの子が傷付き、モスも傷付く。
 そんな事を考えると、何故か胸の辺りがモヤモヤするような、痛むような感覚を覚えた。


川 ゚ -゚)(……これも、人らしさなんだろうか?)

.

17217話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:05:43 ID:/ejLF8tk0





 ―――――




.

17317話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:06:04 ID:/ejLF8tk0


 ――自宅に着き、ブルースペイダーから降りるブーン。
 ロマネスク達は、府坂の利用していた黒い車に乗りブーンに続いて家に到着した。

 黒い車から降りると、ロマネスクは久しぶりの家をじっくりと見つめる。


( ФωФ)「……久方振りであるな、この家も」

( ^ω^)「もう二度と来て欲しくなんてなかったお、本当は」

( ФωФ)「………」


 相変わらず、ロマネスクには冷たい対応だ。
 久方振りなどと口にされるだけで、ブーンは苛々していた。


 玄関の扉を開け家の中へと入り、ツン達が居るであろうリビングへと向かう。
 一方、リビングに居るツン達は複数の足音に気付き、現れる人物達を待つ。



( ^ω^)「ただいま…」

ξ゚⊿゚)ξ「おかえりなさい!モララーさん、どうだった??」

( ^ω^)「………」
 _
( ゚∀゚)「どうしたんだ??」


 ツンの質問に答えず、表情を曇らせる。
 ジョルジュがブーンの様子に気が付き声を掛けるが……。
 それもそのはず。二人に父親が来たなどと言い難くもあり、言いたくもなかった。

17417話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:06:24 ID:/ejLF8tk0

 _
( ゚∀゚)「誰か来てるんじゃないのか?」


 ジョルジュの言葉の後に、ブーンの後ろからロマネスクとギコがリビングへと入った。


ξ゚⊿゚)ξ「え……??所長!?!?」
 _
( ゚∀゚)「ギコさん…!?!?」


 二人を見るなり、ツンは口を抑えながら、ジョルジュは食い気味にとても驚いて見せた。


( ФωФ)「廣瀬……よかった、生きていたんだな…!」

(,,゚Д゚)「白岡、お前も無事でよかった」

ξ゚⊿゚)ξ「所長達こそご無事だったんですね…!!はぁ……よかった……」


 今まで、ロマネスクがBOARD襲撃時になくなったものとばかり思い込んでいた。
 無事を知り、こうして目の前にした事で安心してしまったのか、ツンは大きく溜息を吐きほっとしている。

 _
( ゚∀゚)「今まで何処に行ってたんですか!何で何の連絡もしてくれなかったんすか!?」

( ФωФ)「すまない、今はそんな事より君達に話さなければならない事がある」


 ツン達の心配を余所に、ロマネスクはソファへと腰掛ける。
 そして、懐から何かを取り出した。

17517話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:06:52 ID:/ejLF8tk0


( #^ω^)「おい!勝手に座ってんなお!!それはカーチャンが買ったソファだ!!」

( ФωФ)「悪いな、でも今だけは許してくれ」

( #^ω^)「チッ……とっとと話したら帰ってくれお」


 あまりにも横暴な態度を取るブーンに、関係を知らないツン達が割って入った。


ξ゚⊿゚)ξ「え……ちょ、ちょっとブーン!何言ってるのよ!」
 _
( ゚∀゚)「そうだぜお前!この人は――」

( ^ω^)「こいつが僕等を捨てた父親だった奴だお、だから気にしないでくれお」
 _
( ゚∀゚)「は……???」

ξ゚⊿゚)ξ「ええええっ!?!?!」

( ФωФ)「今はそれどころではないのである、話をするぞ」

ξ;゚⊿゚)ξ「え……あ……」
 _
(;゚∀゚)「いきなり忙しすぎて状況全部読みきれてねぇ…」


 唐突に突き付けられる事実を飲み込む間も無く、ツン達はソファへと腰掛けた。
 近くに居たくないのか、ブーンは一人食卓の方へと座った。

 ロマネスクは、懐から取り出したものをテーブルの上に置き、それを見せる。

17617話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:07:18 ID:/ejLF8tk0


ξ゚⊿゚)ξ「何ですか、これ?」


 置かれたものにツン達と、一人食卓に座るブーンの視線が釘付けになる。
 テーブルに置かれたのは……、


( ФωФ)「これは、新たに作られてしまったライダーのベルト――"レンゲル"である」

( ^ω^)「!!!」
 _
( ゚∀゚)「新しいライダー……レンゲル!?」

ξ゚⊿゚)ξ「……もしかして、府坂が作ったライダー?」


 ロマネスクがテーブルに置いたのは、新しいライダーのバックルだった。
 だが、形状はブレイドやギャレンのものとは大分異なる。
 バックルのハンドルを引く事でターンさせるものではなく……見たところ、バックルがゲートのように閉じている。

 金と黒が目立ち、ゲート部分は紫色で塗装されていた。


( ФωФ)「我々は府坂に操られ奴の言いなりとなり…断片的な記憶しかないが、このベルトを作らされていたようだ…」


 府坂が散々口にしていた"最強のライダーを作る"。
 開発には府坂が加わっていた事に間違いはないが、アンデッドにライダーシステムを開発する技術はない。

 そこで府坂は、ロマネスクや生き残りであるBOARDのライダーシステム開発に携わったBOARD研究員たちを利用し、
 新しいライダーのベルトを作成したという訳だ。


( ФωФ)「そして……菱谷が封印した、♣のカテゴリーA。どうやらこのカテゴリーAに合わせて作られたらしい」


 モララーから受け取った♣のカテゴリーAのカードを、新たなバックルの横へと置く。

 ♠のブレイド、♦のギャレン、♥のカリス……そして遂に、♣のレンゲルが誕生してしまった。
 ♣のレンゲルはアンデッドの意志の元で作られたライダーシステム。当然、これは歓迎出来るものではない。
 
.

17717話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:08:06 ID:/ejLF8tk0

 _
( ゚∀゚)「……これが、♣スートのライダー……」


 ジョルジュが伸ばした手でバックルを掴み、自分のもとへと引き寄せる。
 バックルを真剣な眼差しで見つめ、しばらくそのまま動かなかった。


( ФωФ)「菱谷が封印したスパイダーアンデッド…カテゴリーAの中でも凶暴性の高いアンデッドだ。
        府坂は、スパイダーアンデッドの邪悪な意志を色濃く反映される様にこのベルトを開発した。
        変身者はカテゴリーAの邪悪な力の影響を受けられるように出来ている」

( ФωФ)「そいつは……とても危険なベルトだ」

( ^ω^)「アンデッドが封印されて尚、生き続けられるように……?」

( ФωФ)「そういう事だ」

( ^ω^)「アンデッドによるアンデッドの為のライダーって事かお……」


 テーブルの上に置かれた、♣のカテゴリーAのカードに視線が集まる。
 封印された♣のカテゴリーAは、アンデッドではなくライダーとして生まれ変わるという事。
 詳しく説明をしなくとも、それが如何に危険かは容易に想像出来た。


ξ゚⊿゚)ξ「そんなの絶対駄目よ…このベルト、どうにか処分出来ないかしら…」

( ФωФ)「無駄である。ライダーシステムは特別な力が加わっている、人間の力ではどうにも出来ない」


 レンゲルのベルトをとても危険視する四人。
 そばに置いておく事すらおぞましく、とても不穏な空気が漂う。

 _
( ゚∀゚)「あの………」


 先程からレンゲルのベルトを見つめてばかりのジョルジュが口を開いた。
 


 _
( ゚∀゚)「……このベルト、俺に使わせてください」

17817話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:09:02 ID:/ejLF8tk0


ξ゚⊿゚)ξ「はぁ!?何言ってんのあんた!今の話聞いてたでしょ??」


 危険性を語られた上での言葉に思わず呆れてしまう。
 だが、事実を突き付けられる度にレンゲルのベルトを握る手の力は強くなる。
 ジョルジュは思わずソファから立ち上がり、全員に向け話し出した。
 
 _
( ゚∀゚)「ああ、聞いてたさ。でも俺はアンデッドの意志なんかには屈しねえ!」

( ФωФ)「白岡、それだけは許可出来ない。カテゴリーAの力はただでさえ強力である。
        下手をすれば、お前はカテゴリーAに操られ――」
 _
( ゚∀゚)「俺は操られませんよ!カテゴリーA…どれだけの意志かは知らねぇけど、俺が捻り潰して使いこなしてやる!」

ξ゚⊿゚)ξ「あんたねぇ、いい加減にしなさいよ…」
 _
( ゚∀゚)「俺はマジだ!!今回ばかりは全てを賭けてもいい!!」

ξ゚⊿゚)ξ「………」


 全てを賭ける……真剣なジョルジュの気迫に圧されてしまった。
 新しい力を前にして情熱を見せるジョルジュに……静観をしていたギコが、遂に口を開いた。


(,,゚Д゚)「白岡……お前ずっとライダーになりたがってたな」
 _
( ゚∀゚)「そうですよ、俺は今でもライダーになりたいって思ってる!」

(,,゚Д゚)「何故だ?何故そんなにライダーになりたい?」
 _
( ゚∀゚)「そんなの……決まってるじゃないっすか、全てのアンデッドを倒す為に――」

(,,#゚Д゚)「それだけでライダーになれるなら苦労はしない!!」

17917話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:09:27 ID:/ejLF8tk0

 _
(;゚∀゚)「ッ!!!」

( ^ω^)ξ゚⊿゚)ξ「!?」


 それまで穏やかそうだったギコが、怒気を含んだ声でジョルジュを怒鳴りつけた。
 ブーンやツンが吃驚したのか、思わずギコに視線を向ける。


(,,゚Д゚)「ライダーになって戦いたい、解放されてしまったアンデッドを倒したい……それはな、当時の俺と同じだ。
     お前のその気持ちが間違ってるとは俺は思わない」

(,,゚Д゚)「だがな…ライダーになりたい、ライダーへの憧れを抱いてしまった時点でお前はライダーになるべきじゃない」
 _
( ゚∀゚)「何でだよ!アンデッドを倒す為にライダーになりたいって思うのは当然だろ!?」

(,,゚Д゚)「分からないのか?ただアンデッドと戦う為にライダーになるのなら……。
     お前は力に溺れる、そしてカテゴリーAに支配される!」

(,,゚Д゚)「ホライゾン君や菱谷がライダーシステムを自分の物にしているのは、融合係数だけの問題じゃない。
     この意味が分からないなら、迂闊にレンゲルに…いや、ライダーになりたいなどと思うな!」



(,,゚Д゚)「――ギャレンにもブレイドにもなれなかった俺から、それだけは言っておいてやる」


 _
( ゚∀゚)「………分からねぇよ、俺には!」


 ギコの言葉に、返す言葉が見つからない。
 俯いてしまったジョルジュはレンゲルのベルトをテーブルの上に置き、捨て台詞を吐きリビングから去ってしまった。
 階段を上る足音が聞こえる事から、二階の自室へと向かったのだろう。

18017話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:11:09 ID:/ejLF8tk0


(,,゚Д゚)「……大声を出してすまないな」

( ^ω^)「いえ……大丈夫ですお」

( ФωФ)「久利生、お前……」

(,,゚Д゚)「気にしないで下さい、所長。今更後悔はありません」


 一度はギコをギャレンに任命したロマネスクだが、その後ギャレンから降ろしたのもロマネスク自身だ。
 ギコの話を聞いて思うところがあったのか、申し訳無さそうな表情をしている。

 一人食卓に座っていたブーンが立ち、ソファへと移動してきた。
 ジョルジュが置いたレンゲルのベルトを手に取り、それを軽く眺める。


( ^ω^)「これ、どうするつもりなんだお?」

( ФωФ)「保管しておくしかないであろうな。紛失など絶対にしてはいけない」

( ФωФ)「レンゲルは、誰にも扱えない……扱ってはいけない。
        これ以上、過酷な運命を背負わせる訳には…」

( ^ω^)「………」


 一通り話を聞き、ロマネスクが本当にライダーシステムに精通している事を実感する。
 レンゲルに変身してしまう事のリスク、それらを全て理解し、
 それによる被害者を出したくないという思いを聞き、今まで隔てていた父親との壁に、ほんの僅かだが穴が開いた。

18117話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:11:38 ID:/ejLF8tk0


( ^ω^)「……行く場所ないだろ。泊まってけお」

( ФωФ)「どうしたんだ、急に」

( ^ω^)「嫌なら今すぐ出てってくれて構わないお」


 ソファから立ち、収納家具の引き出しを開けレンゲルのベルトとカテゴリーAをしまった。 


( ^ω^)「このベルトはうちで預かるお。あんたが良い方法を思いつくまでは」
       それまでは……取り敢えず、うちで保管すればいいお」


 息子からの思いがけない言葉に、思わず表情が緩みそうになった。
 ロマネスクは、次いでモララーから預かったギャレンバックルをテーブルの上に置く。


( ФωФ)「我々は、残ったBOARDの研究員達と力を合わせ、
        アンデッドを封印する為により良い開発を再開するつもりだ」

ξ゚⊿゚)ξ「より良い開発…?」

( ФωФ)「うむ。もう誰にもこの技術を悪用させはしない……お前の気持ちは嬉しいが、我々は出て行くよ」

( ^ω^)「そうかお」

( ФωФ)「このギャレンバックルは、いつか菱谷が再び立ち上がった時に渡してやって欲しい」

( ФωФ)「頼むぞ、ホライゾン」

( ^ω^)「……言われなくてもそうするつもりだお」

( ФωФ)「何かあればすぐに連絡する。これからは、協力してアンデッドを封印しよう」


 やはり、ブーンの常に素気ない態度は変わらない様子。
 それでも、久し振りに再会を果たした恨みを持ち続ける父に対して、唯一気を許した所だけはあった事は確かだ。
 差し出されたギャレンバックルを預かると、ロマネスクとギコは二人に頭を下げリビングを出た。

18217話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:12:11 ID:/ejLF8tk0


 すると、何か思い出したかのようにロマネスクがリビングに戻りブーンに声を掛けた。 


( ФωФ)「……ホライゾン」

( ^ω^)「なんだよ」

( ФωФ)「その……母さんの容態はどうであるか?」

( #^ω^)「知る必要はないお」

( ФωФ)「でも、重い病気なんだろう?」
 

 実の息子に対し、不器用に話すロマネスク。
 母親の事に触れられるのを嫌に感じるのか、再びブーンは強い態度になってしまった。


( #^ω^)「どうせあんたには関係ないお。僕らがどうなろうと…」

( #^ω^)「間違ってもカーチャンに会おうだなんて思うなお、僕も絶対あんたを会わせたりしない!
       もう二度とカーチャンの事に触れるな。分かったら早く帰ってくれお!」

( ФωФ)「……すまない」


 それ以上言葉を返す事が出来ず、ブーンの言葉にただ落ち込んだ。
 一言謝罪を残し、ロマネスクは今度こそ家を出て行った。

 見かねたツンが、憤るブーンに声を掛ける。


ξ゚⊿゚)ξ「ブーン……何もそこまで言わなくても」

( ^ω^)「いいんだお、あいつの所為で僕らはたくさん苦労したんだ。
      この程度の事言ったって罰は当たらない……当たってたまるかお」

ξ゚⊿゚)ξ「………」

18317話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:12:44 ID:/ejLF8tk0





 ―――――




.

18417話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:13:07 ID:/ejLF8tk0


 モスを脅迫し、クーを襲わせたカテゴリーQ。
 いつカテゴリーQがこの場所に現れるかも分からない事を危険に思い、クーはアンデッドの事を軽く話す事にした。


川 ゚ -゚)「でぃちゃん……ちょっと聞いてくれ」

(#゚;;-゚)「なに?」


 でぃの前に立ち、しゃがみ込んで視線を合わせた。


川 ゚ -゚)「もしかしたらの話だよ?もしかしたら……モスみたいな格好をした人が現れるかもしれない。
     その時は、モスと同じように優しい子だと思っちゃ駄目だ」

(#゚;;-゚)「知ってるよ」

川 ゚ -゚)「え?」

(#゚;;-゚)「だって、モスは本当は化け物だもん。だからあのお兄さんはモスをやっつけようとしたんでしょ?」

(#゚;;-゚)「それに……」








(#゚;;-゚)「……本当は、モスと同じ化け物がお父さんとお母さんを殺したのも、知ってる」


.

18517話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:13:41 ID:/ejLF8tk0


川 ゚ -゚)「!!!」


 でぃの口から、両親の真実が語られる事に驚きを隠せない。
 無表情であるクーは目を見開き、一瞬口も開いたが、息を飲みすぐに口を閉ざした。


川 ゚ -゚)「……何で、それを……」

(#゚;;-゚)「だって、そうやって化け物が私に言いに来た事があるから」

川 ゚ -゚)「なに…!?」

 
 クーの予想を超えた衝撃の事実があった。
 両親を殺害したアンデッドがわざわざでぃに近付き、でぃの両親を殺害した事を自白していた。
 当然、罪悪感からなどではない。面白がっているのだろう。


川 ゚ -゚)「それって、どんな見た目してた!?」

(#゚;;-゚)「うーん…顔が三つあったよ。山羊みたいな角生えてて……」

川 ゚ -゚)(山羊……カテゴリーQだ……!)


 でぃが話してくれる特徴だけで、正体が分かった。
 モスを脅迫し、カリスを付け狙う若い女に擬態したアンデッド。カテゴリーQだ。

 その時、家の戸がガラガラと開く音がした。


 戸の方に視線を向けると………、



 
(*゚∀゚)「あらぁ、アタシの話してくれるなんてうれし〜♪」

18617話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:14:06 ID:/ejLF8tk0


川 ゚ -゚)「貴様ッ!!」


 ついに、魔の手がこの家まで迫ってしまった。
 盗み聞きをしていたのだろうか、自分の話をしている事を何故か嬉しそうにしている。

 カテゴリーQの登場にクーの警戒心は突如最大限に。
 でぃを庇うようにして立ち、鋭い目付きで威嚇した。


(#゚;;-゚)「今度は誰なの??」

川 ゚ -゚)「こいつだよ、その化け物は!こいつが君の両親を……」

(#゚;;-゚)「えっ…」

(*゚∀゚)「そんな丁寧に紹介してくれるの??優しいなぁ〜カリスは」

川#゚ -゚)「黙れ!!」


 平和でゆったりとしていた家の中に、殺伐とした空気が流れ始める。
 でぃは状況が読み込めず、戸惑っている様子だ。


(*゚∀゚)「ちょっと落ち着いてよ、アタシはあんたとやらないよ??」

(*゚∀゚)「あんたをやるのはアタシじゃなくて……コ・イ・ツ♪」


 家の外から何かを引っ張るカテゴリーQ。
 引っ張ったものを、家の中へと無造作に放り込んだ。

18717話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:14:46 ID:/ejLF8tk0


『シュウウゥッ……!』

(#゚;;-゚)「モス!?!?」


 放り込まれたのは、ボロボロになったモスだった。
 クーはモスに対して一時的に攻撃を行ったが……モスの身体は、明らかにその時以上に傷付いている。
 
 傷だらけになったモスを見るなり、でぃはクーの背後から出て倒れたモスへと近付いた。


(*゚∀゚)「なっさけないよねぇ、ちょっとやられたくらいでへばっちゃってさ〜」

川 ゚ -゚)「貴様がやったんだな、この傷…」

(*゚∀゚)「気を引き締めさせる為だって!気張らないとあんたを倒せそうにないし」


 モスの身体を気遣っていたでぃが立ち上がり、台所に置かれた大き目のすり棒を取った。
 そして、カテゴリーQの前に立ち、視線を上げ睨んだ。


(#゚;;-゚)「……私の大事なモスをいじめるな!!」

『……!!』

川;゚ -゚)「よせ!危ない!」 
 
(*゚∀゚)「ええ…?ちょっと、アタシの事殴るつもりなの??やだ怖ーい……!!」 

(;#>;;-<)「きゃあっ!?」


 すり棒を掲げたでぃの右手を掴み、軽々と引っ張り上げる。
 左腕のみででぃの身体を抱え……右手に持った三日月型の刃を、でぃの首元に押し付けた。


.

18817話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:15:26 ID:/ejLF8tk0


(;#゚;;-゚)「ひっ…!」

川;゚ -゚)「でぃちゃん!!」

(*゚∀゚)「アヒャヒャヒャヒャ!!!さァて、アタシの可愛いモスちゃん……言う事聞くしかなくなっちゃったねェ」

『………』

川 ゚ -゚)「待てッ!!」


 遂に強行策に出た。
 自分の手ででぃを人質に取り、屋外へと去るカテゴリーQ。
 どうしてもモスの手でクーを倒させたいらしい。

 カテゴリーQを追いクーも外へと出る。
 表には、相変わらずでぃの首に刃を突き付ける姿があった。


川#゚ -゚)「その子を離せ!!」
 
(*゚∀゚)「はい分かりました!って言わない事くらい分かってるっしょ??」

(*゚∀゚)「もう逃げられないよ、あんたもカテゴリー8も……此処で二人仲良くくたばるのさ!!」

川#゚ -゚)「ッ………!!」

(*゚∀゚)「あんたも下手に動いたら…このガキの首落としちゃうかもよ?」


 下卑た笑みを浮かべながら、でぃの命を盾にモスを、クーをも脅し始めた。
 下手に動けばでぃの命はない。
 憎き眼前のアンデッドへ手を出せない歯がゆさに怒りが募る。

18917話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:16:21 ID:/ejLF8tk0


(*゚∀゚)「さァ、早くコイツをやれ!!」

『シュゥウ……ウオォオオオオオッ!!』


 カテゴリーQの命令を受け、モスが動いた。
 でぃを気遣うクーに手を出したくはない。だが自分が逆らえば、でぃが殺される。
 葛藤に苦しむ心、それを振り切るように雄叫びを上げ空中を軽やかに飛んだ。

 クーに向け飛翔したモス。
 反動的に防御の構えを取ったクーに突進し、軽々と吹き飛ばした。


川 ゚ -゚)「ぐうっ…!」

(#゚;;-゚)「お姉さん……!!モス何してるの!?やめて!!」

『……ッ……!』


 でぃの制止を求める声が胸に突き刺さってとても痛い。
 何も知らずに止めようとするでぃに、悪魔が囁く。


(*゚∀゚)「あれがアタシ達の本当にやるべき事なんだよ?お嬢ちゃん。
     あんた達人間と、平和に仲良く暮らすだなんてあっちゃいけないの」

(*゚∀゚)「どう足掻いても戦いの運命にあるっつーのに……それから逃げて自分だけ平和に過ごそうってか?」

(#゚∀゚)「ふざけんじゃねぇよ……!!そうやってテメェ等は互いに傷付け、潰し合う事こそアンデッドの宿命なんだよ!!」

(#゚∀゚)「だからアタシはその宿命に従って勝ち残る!!どんな卑怯な事をしたってなァ!!!」

『ガアアッァアアァァッ!!』

川;゚ -゚)「うぐッ……!」


 悲痛とも取れるアンデッドの宿命を語る声に、怒気が帯びている。
 その声に呼応するように、モスの攻勢は徐々に激しさを増していく。
 カリスに変身する事が許されないクーは、ただモスの攻撃を受ける事しか出来なかった。


.

19017話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:18:06 ID:/ejLF8tk0
 ――――――
 ――――
 ――


 その頃、ブーンの家では、アンデッドサーチャーがモスの攻撃の反応をキャッチしていた。
 ツンがPCの前に座り、詳細を確認している。


ξ゚⊿゚)ξ「アンデッド出現!場所は…以前カテゴリーAの反応を捉えた山の中よ!」
 
( ^ω^)「山の中……もしかしてクーさんかお?」

ξ゚⊿゚)ξ「ブーン、急いで!」

( ^ω^)「了解!」


 カテゴリーAの反応を捉えた山の中と言えば、クーを介抱したでぃの家に近い場所だ。
 クーの怪我の具合がどうなったか分からないが、とにかく一人で相手をさせるのはまずい。
 ポーチを手に持ち、ツンの催促を受けブーンはリビングを出ようとした。

 が、一つの不安が脳内に過ぎる。


( ^ω^)「あっ、ツン!ジョルジュに絶対あのベルト触らせんなお!」

ξ゚⊿゚)ξ「もちろんそのつもりよ。だから心配しないで、早く行って!」

( ^ω^)「おう!!」


 レンゲルを使用する事を拒まれ、部屋に閉じこもったジョルジュの事だ。
 きっとこの騒ぎは部屋の中まで聞こえているに違いない。
 変な気を起こさせないようにツンに注意を促し、今度こそ家を出た。



ξ゚⊿゚)ξ「……カテゴリーA。一体どんな力を持ってるのかしら」


 手元に置いた♣のカテゴリーAのカードを一瞥し、再びPCに集中する。

19117話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:18:42 ID:/ejLF8tk0

 _
( ゚∀゚)「………」


 ブーンが家を出てから少し経った後、部屋に篭っていたジョルジュがリビングに戻ってきた。
 PCの前に座り状況を確認中のツンがリビングに入るジョルジュを目にすると、途端に警戒心を強めた。

 _
( ゚∀゚)「アンデッドだろ?俺も行って戦う、ベルトをよこせよ」

ξ゚⊿゚)ξ「駄目だって言ったでしょ、何が起こるか分からないのよ?」
 _
( ゚∀゚)「俺はアンデッドを封印する為に戦うんだ!」

ξ゚⊿゚)ξ「あんたの気持ちは分かるけど…もしそれで混乱を招いたらどうするのよ?」


 ツンの手元に置かれた♣のカテゴリーAのカードを手に取り、それを睨むジョルジュ。
 
 _
( ゚∀゚)「誰がアンデッドなんかに……俺はこんな奴に支配なんか――!!」


 突然、ジョルジュの言葉が途絶え勢いを失った。
 カードを睨む目は緩み、無言でカードを見続けている。


ξ゚⊿゚)ξ「何……どうしたの??」
 _
( ゚∀゚)「………」


 ツンの問いにも答えず、ジョルジュは収納家具前まで移動する。
 そして、知りもしないはずのベルトが収納された引き出しを開け……ベルトを取り出してしまった。


ξ゚⊿゚)ξ「な、何でそこにあるのが分かったの!?ちょっと、駄目…ッ!」
 _
( ゚∀゚)『退ケ……!』

ξ;>⊿<)ξ「きゃあっ!?」


 ベルトを奪おうとするツンを、容赦なく突き飛ばすジョルジュ。
 機械的に言葉を発するジョルジュは、ツンの事など気にも留めず家を出て行ってしまった。

19217話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:19:33 ID:/ejLF8tk0


 ――――――
 ――――
 ――


『シイイイイィィッ!!』

川;゚ -゚)「ううっ…!」


 モスに顔面を殴打され、地面に転がる。
 無抵抗のままひたすら攻撃を受け続け、蓄積された痛みに声が漏れてしまう。
 殴られ続けた頬は赤くなり、口の端からは緑色の血を流している。


(;#゚;;-゚)「もうやめて…!!そんなにしたら死んじゃうよぉ!!」

(*゚∀゚)「死にゃあしないさ、たくさん傷付いて弱る事はあっても……アンデッドは死なない」

(;#゚;;-゚)「私のモスはそんな事する子じゃないよ!!だって…だって……」






(#゚;;-゚)「化け物に襲われた私を一生懸命守ってくれたのは……モスでしょ!?」

(#゚;;-゚)「私全部知ってるよ!私をあの家に隠したお父さんとお母さんを殺した化け物から…私を守ってくれてたんでしょ!?」

『………!!』


 知らないとばかり思っていた真実が、でぃの口から語られる。
 クーを一方的に攻撃し続けた動きが止まり、ひどく動揺している。

19317話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:20:22 ID:/ejLF8tk0


(*゚∀゚)「ああー……あの時かぁ、そういえばそんな事あったねぇ」


 でぃの話に付け加えるように、カテゴリーQが当時の話をし始めた。


(*゚∀゚)「せっかくあんたをやれる機会だったのに……馬鹿な人間の家族が現れて水差してくれちゃったよねぇ。
     あの時すっっっごく腹立っちゃってさぁ…別にアタシは人間殺す事に興味は無いけど」

(*゚∀゚)「邪魔されてイライラしたから、殺したんだっけなぁ〜?
     そしたら、このガキを守ろうとして命辛々ボロ家に押しやってさ。親の愛ってやつ?泣けるわ〜」

(# ;;- )「………」

(*゚∀゚)「フッ…でも邪魔してくれた人間をまず殺そうと思ったらさぁ…コイツ、このガキ守ろうとしてアタシに挑んできたんだよ!
     アヒャヒャヒャ!!マジで滑稽だよ!だからガキ殺す代わりにコイツの事ズタボロにしてやったのさ!!」

(*゚∀゚)「そしたらコイツ、このガキと一緒に暮らし始めて………」

(#゚∀゚)「………マジで笑えない」


 右手に持つ刃を、でぃの首に更に押し付ける。
 鋭利な刃先が肌に食い込み、今にも突き破ってしまいそうだ。


『!!……ヤメ、ロ…!!』

(#゚∀゚)「あー……ムカついてきた。もうこのガキ殺しちまうか??」

川;゚ -゚)「やめろ!!約束が違うぞ!!私が狙いなんじゃないのか!?」



(# ;;- )「……いいよ、殺しても」

.

19417話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:21:17 ID:/ejLF8tk0


 首に押し付けられる刃に痛みを感じながらも、恐怖は無くなった。
 でぃが静かに口ずさんだ言葉に、でぃ以外の三人は啞然とする。


『!?』

(*゚∀゚)「……へーえ?」

川;゚ -゚)「何を言っているんだ!?」


 三人の反応を余所に、でぃは淡々と話し始める。
 だが、どこか肩が震えているようにも見える。


(# ;;- )「お父さんとお母さんを奪われて……友達もいない私に、やっと出来た大切な友達…。
     友達よりももっと大事……モスと家族になったと思った」

(# ;;- )「お姉さんも一緒になって、本当の家族みたいだって思ったの……」


 でぃを抱えるカテゴリーQの腕に、ポタポタと雫が落ちる。


(#;;;-;)「それなのに…私の所為でせっかく出来た家族をまた奪われちゃうくらいだったら……」

(#;;;-;)「もう……生きてたくないよ!!死んだほうがマシだよ!!また独りになっちゃう!!」

川 ゚ -゚)「……でぃちゃん……」


 頭を上げたでぃの顔は、とめどなく流れる涙でびしょびしょになっていた。
 子供らしく泣きじゃくりながら訴えるでぃの言葉に、心が締め付けられる。
 でぃの泣き顔を見ながら、モスも立ち尽くしてしまった。


 だが――幼い子の心の叫びなど、悪魔には響きもしない。




(*゚∀゚)「そうかぁ……じゃあ、死ぬか…!?!?」

19517話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:22:05 ID:/ejLF8tk0


 首に突きつけた刃を離し、大きく腕を振りかぶる。
 そして……振りかぶった腕を勢い良く、でぃの首目掛けて振り下ろそうとした――。


(*゚∀゚)「あの世で待ってる両親と会ってきなぁ!!」

(# ;;- )「お父さん、お母さん……やっと会えるね――」


 目を瞑り、己の死を覚悟するでぃ。
 だが、カテゴリーQの動きは、突如木霊した声によって止められた。



『ウアアアアアアアアアアアアアァァアッ!!!!』

(*゚∀゚)「!?」


 身動きが取れず立ち尽くしていたモスが、獣のように雄叫びを上げた。
 でぃを抱えたままのカテゴリーQに向け片手を伸ばし、鱗粉を発生させる。


(#゚;;-゚)「……?あれ、何か……眠い……」

(#-;; -)「………Zzz」


 鱗粉による何らかの異常は、カテゴリーQには見受けられない。
 効き目があるのは……鱗粉に塗れた途端に深い眠りに着いたでぃだけ。

 でぃが眠りに着いた事を確認すると、モスはクーに襲い掛かった。
 クーの胸倉を掴み、そのまま間近で睨み続ける。

19617話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:22:43 ID:/ejLF8tk0


 ♪カリス激情 - https://www.youtube.com/watch?v=n3jX-dEtcqQ


『ヴァアアアアアアァァァッ!!!』


 山の中に響く叫び声は、もはや理性を失ったただの野獣だ。
 前触れなく凶暴化するモス。
 その心の訴えは、クーにしっかりと届いていた。
 

川 ゚ -゚)「変身!!」
   っ□

    【 -♥CHANGE- 】

 
 構えたカードをカリスラウザーにラウズし、カリスへと変身。
 獲物を狩らなくてはいけない準備は出来た。
 背を低く構え、距離を作りながら互いに睨み合う。

 そして、両者同時に地面を蹴った。


(*゚∀゚)「……なーんだ、やる気あるんじゃん。最初からやってよね〜」


 モスの凶暴化を目の当たりにしたカテゴリーQが、でぃを殺めようとした腕の動きを止めた。

 二人を余所に、カリスとモスは真っ向から敵対を始める。
 今度は、以前のようにその場凌ぎのものではない。
 どちらかが倒れるまで、戦いは続く。

19717話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:24:12 ID:/ejLF8tk0
ひとつ抜かしちゃったんで>>195の続きから

19817話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:24:33 ID:/ejLF8tk0


『シイ"イ"イ"ィィッ……!!』

川 ゚ -゚)「ッ……!………お前………」

『オオオオオ"オ"オォッ!!』

川 ゚ -゚)「くっ!」


 ただの唸り声に聞こえるその声は、何かを訴えている。
 抵抗せずその声を聞くクーの表情が戸惑いの色に変わり、合わせていた視線を外し泳がせる。
 曖昧な反応をするクーを振り払うように、モスは上空へと投げ飛ばした。


 投げ飛ばされたクーは地面に華麗に着地。
 片膝を着いた身体をゆっくりと起こし、俯いたままの顔を上げる。


川 ゚ -゚)「……そうか」

『………』


 前方のモスを見つめ、一言呟く。
 その時、クーの腰にカリスラウザーが浮かび上がり、腰にベルトを装着させた。
 カテゴリーAのカードを取り出し、それを構える。


川 ゚ -゚) 「それがお前の願いだというなら……」
   っ□

19917話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:31:40 ID:/ejLF8tk0


 ♪カリス激情 - https://www.youtube.com/watch?v=n3jX-dEtcqQ


『ヴァアアアアアアァァァッ!!!』


 山の中に響く叫び声は、もはや理性を失ったただの野獣だ。
 前触れなく凶暴化するモス。
 その心の訴えは、クーにしっかりと届いていた。
 

川 ゚ -゚)「変身!!」
   っ□

    【 -♥CHANGE- 】

 
 構えたカードをカリスラウザーにラウズし、カリスへと変身。
 獲物を狩らなくてはいけない準備は出来た。
 背を低く構え、距離を作りながら互いに睨み合う。

 そして、両者同時に地面を蹴った。


(*゚∀゚)「……なーんだ、やる気あるんじゃん。最初からやってよね〜」


 モスの凶暴化を目の当たりにしたカテゴリーQが、でぃを殺めようとした腕の動きを止めた。

 二人を余所に、カリスとモスは真っ向から敵対を始める。
 今度は、以前のようにその場凌ぎのものではない。
 どちらかが倒れるまで、戦いは続く。

20017話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:32:00 ID:/ejLF8tk0


( <::V::>)『はあっ!』

『グシイイィッ!』


 カリスが突き出した拳で先手を打った。
 拳を打ち付けられ圧されるモスは、再びカリスに向け疾走。

 頭部を狙って大きく振った腕をカリスは頭を下げ躱し、カウンターのパンチを胴体に打撃。
 すぐに左拳を脇腹に入れ、反撃しようとするモスの腕を掴み、延髄切りをモスの側頭部に叩き込んだ。


『ウウゥッ……!』

(*゚∀゚)「おーい、しっかりしてよ〜!そんなんじゃ負けるよ〜??」

『ヴォオオオオオオォォッ!!』


 右手に召喚したカリスアローの照準をモスに合わせ、光の矢を放射。
 モスは両手を広げ、大量の毒鱗粉を発生させる。

 すると、モスに向け放射したはずの光の矢が、無数の毒鱗粉によって掻き消されてしまった。


( <::V::>)『矢が消えた!?』

『シイィッ!』


 口吻から鋭い毒矢をカリスに向け発射。
 カリスアローで弾き落としながら再び光の矢で応戦するが、やはり毒鱗粉が光の矢を掻き消してしまう。


( <::V::>)(あの鱗粉が攻撃を無効化しているのか……)

( <::V::>)(ならば接近戦に持ち込み、打撃を与えるしかない!)

20117話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:32:49 ID:/ejLF8tk0


 遠距離での攻撃が無効化されるのであれば、近付いて叩けばいい。
 そう考えたカリスは、モスの毒矢を躱しながらモスへと素早く接近。
 跳躍での勢いを付け、カリスアローを振り下ろした。

 直後、モスの全身が毒鱗粉に覆われた。
 すると、確実にモスへと振り下ろされたはずのカリスアローが、何かに弾かれた。


( <::V::>)『なに…!?』

『ヴォオオォオッ!!』

( <::V::>)『ぐうっ!』


 カリスアローの攻撃が通らず困惑するカリス。その胸部に、モスの右腕のヒレによる斬撃が入った。
 後方へと一飛びし、一度距離を取る。


( <::V::>)『そうか……その鱗粉は矛でもあり、お前自身を守る盾でもある』


 遠距離・近距離どちらも防がれた時に必ずあったのは、モスが放っている毒鱗粉。
 この毒鱗粉は、攻撃をする手段にもなり揺るがぬ防御にもなる。
 防ぐ対象が近距離攻撃であれ遠距離攻撃であれ、全てを防ぐ。

 だが、カリスはこの無敵とも思える毒鱗粉の決定的な欠点を既に見破っていた。


( <::V::>)(空間的に発生させる事は出来るが、それ故の弱点はある)
 
( <::V::>)(奴の口から発する毒矢…周囲を全て鱗粉で覆ってしまえば、毒矢の攻撃も私にまでは届かなくなる)




( <::V::>)『お前の弱点は――"口"だ!』

.

20217話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:33:14 ID:/ejLF8tk0



『シュウウウゥッ!』


 カリスに向け再び口吻より放った毒矢。
 毒矢を躱す前に、カリスアローの光の矢をモスに向け放った。

 毒矢の真横を横切り、直線を描いて進む光の矢。
 光の矢が一直線に向かうのは、毒鱗粉に覆われていないモスの"口吻"。

 毒矢を回避するカリスに対し、モスは光の矢の存在に気付くも毒鱗粉による防御を間に合わせる事が出来ない。
 モスの伸びた口吻に光の矢が直撃し……、


『ジュゥオオオォオオオッ……!?!?』


 奇声を上げながら、モスは力無く崩れ地に両膝を着いた。
 発生させていた毒鱗粉は全て消え、モスを守る物は何も無い。


(#-;; -)


 膝を着いたモスが真っ先に目を向けたのは……今も尚カテゴリーQの腕の中で眠り続けている、でぃ。
 そんなモスを横目に、カリスは武器にカリスラウザーを装着させ、カードを二枚引き抜いた。


( <::V::>)『………』


 引き抜いたカードをラウズしようとしたカリス。
 だが、モスがでぃに目を向けている事に気付き、その手を止めた。

20317話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:33:34 ID:/ejLF8tk0


(*゚∀゚)「おいおいどーした??何で急に止まっちゃうの??」

( <::V::>)『お前……』

『……ディ……チャン……』


 拙い人間の言葉で、でぃの名を紡ぐ。
 その姿が自分自身と渡辺に重なって見えてしまい、手が動かない。
 でぃの名を口にするモスの気持ちが、何となく分かる気がしていた。
 ……きっと、自分の最期を悟って、愛する者の事が恋しくなっているのだ、と。



『………』


 モスの頭の中に、でぃとの思い出が走馬灯のように走り出す。

 でぃと共に食べた、初めての人間の食事。
 おにぎりは米粒がボロボロしていて、食べにくかった。
 ジュースという飲み物。りんごジュースはとても甘く、やみつきになる味だった。

 まだ寒さが残っていた時期、夜は寄り添って寝た事もあった。
 
 言葉を話せない自分に、幼子ながら言葉を教えようとしてくれた。
 今では、挨拶や返事、いただきますも言える。でぃの名前を呼ぶ事も出来るようになった。

 持ちにくい筆で、文字を書く事も。


 でぃの言葉を理解出来るのに、最初は自分の意志を伝えられなかった。
 それなのに、でぃはでぃなりに自分の事を理解しようとしてくれて、
 今では言葉こそ交わせずともお互いを理解出来るようになっていた。

20417話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:34:04 ID:/ejLF8tk0


 アンデッドとして生まれた命、生き残りを賭け、ただ戦うだけの存在。
 それでも、争いを好まない自分は特殊なのかと思い続けてきた。
 
 そんな時、でぃと出会い……初めて平和な日々を送る事が出来た。
 全てが新鮮で、穏やかな日々で、楽しかった。

 何より――絶対相容れないと思っていた人間が、アンデッドである自分を受け入れてくれた事が嬉しかった。


『………ウアアア"ア"ア"ア"ア"ア"ァアアア!!』


 片足を着き、ゆっくりと立ち上がる。
 俯いたままの顔を上げ、再び雄々しく叫んだ。
 

( <::V::>)『――覚悟を決めろ』


 冷酷に言い放った言葉は、自分にも言い聞かせているのか。
 二枚のカードを握ったまま止まってしまっていた手を動かす。
 ラウズする度に発せられる電子音声が、無情に響き渡る。


    《-♥5 DRILL-》 《-♥6 TORNADE-》

       《-♥SPINING ATTACK-》
 

( <::V::>)『せめて、楽に終わらせてやる……!』


 両手を広げ構えたカリスの足元から風の渦が発生。
 地面に散らばる木の葉を巻き上げながら、全身を覆うようにして風の渦は竜巻となった。

20517話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:34:33 ID:/ejLF8tk0


 竜巻を全身に纏い駆け出した。
 カリスが前に進む度に、風に揺られた木々が頭上で踊る。
 
 地面を蹴り身体を宙に浮かせ、両足をモスへと向ける。
 竜巻の勢いを受けドリルのように身体を素早く回転させながら突進した。



『ググ……ディ、チャン……』


 目の前に迫る竜巻を前にして、地にしっかりと両足を着く。
 逃げる事も、抵抗する事もしない。
 ただ、最期まででぃの姿をその目に――。


( <::V::>)『はぁっ!!』


 モスの身体に、強烈な錐揉み回転蹴りが突き刺さった。
 カリスの必殺を受けた直後に、一枚の紙が投げ捨てられる。
 蹴りの衝撃で突き破られたモスの身体からは、緑色の血が大量に噴出。
 

『………』


 痛みに声を上げる事もなく、静かに最期の一撃を受けた。
 地面を転がりうつ伏せに倒れたが……最後の力を振り絞り、自ら仰向けになった。
 そして、モスの腰元にあるバックルが左右に開かれる。


( <::V::>)『………』


 着地したカリスは振り返り、倒れたモスを見る。
 何も言葉を発さず、カードを一枚取り出し投擲。

 血を流す身体に刺さったカードが吸収をはじめ……、


 モスは、カリスの手によって封印された。  

.

20617話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:35:11 ID:/ejLF8tk0


 モスを封印し、"♥8 REFLECT"と記され、毒蛾の絵が描かれたカード。
 手元に戻るが、改めて封印したカードを見る事はない。


( <::V::>)『……次は貴様だ』


 カリスが視線を向けたのは、既に飽きている表情のカテゴリーQ。
 

(*゚∀゚)「あーあ、やられてやんの……やっぱ下級ごときじゃあんたには勝てないよね〜。
     なーんか面白くなくなっちゃったなぁ、あーつまんな」

(*゚∀゚)「このガキももういいや、返すわ」


 苦渋の選択を選んだカリスに対し、軽い口調で挑発的な態度を取り続ける。
 あろうことか、未だ眠ったままのでぃを乱暴に放り投げてみせた。


( <::V::>)『でぃちゃん!!』


 落下するでぃを受け止めようとするが距離的に間に合わず、吸い込まれるように地面に落ちてしまった。
 地面に倒れながらも、でぃの眠りは未だ覚める事はない。
 落ちたでぃの頭を支え起こし、カテゴリーQを睨んだ。


(*゚∀゚)「だーかーら、何で人間ごときにそんな熱くなんの?あんたアンデッドでしょ?
     つーか、下級の雑魚封印するにも少し戸惑ったでしょ」

(*゚∀゚)「あんたは中途半端なんだよ。アンデッドである事を貫こうとしてる割には、人間に媚びたりアンデッド倒すのに戸惑ったり…」

(*゚∀゚)「あんたは全部が矛盾してんだよォ!!」

20717話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:35:51 ID:/ejLF8tk0


( #<::V::>)『黙れ!!貴様に何が分かる!?』

(*゚∀゚)「分からないし分かりたくもないんですけど〜、人間になりつつあるあんたの事なんかね……!!」

( #<::V::>)『言わせておけば…!!』


 でぃの頭をそっと地面に置き、カリスアローを構える。

 カテゴリーQの言葉に激しい怒りを見せるが、心の中では痛く刺さっていた。
 まさに自分に対して抱き続けている疑問そのものを代弁されてしまったからだ。


 そこに、一台のバイクの排気音が響き渡る。
 争う寸前のカリスとカテゴリーQ、その場に現れるブルースペイダーに二人の視線は寄せられた。
 アンデッドサーチャーの反応を確認したブーンが、ようやく到着した。

 ブルースペイダーから降り、目の前に展開する状況を見つめる。


( ^ω^)「クーさん!ここでアンデッドの反応が……」

(*゚∀゚)「あー!昨日の!えーっと確か……仮面ライダーブレイドって言ったっけ??」


 全てを言い終える前に遮ったカテゴリーQの言葉で、ブーンは状況を把握した。
 カリスに変身したクーが若い女に向け牙を向いている光景は、端的には常軌を逸しているが、
 この戦いに身を置いていれば、決して間違っていない光景だと理解出来る。


( ^ω^)「……こいつかお、反応があったアンデッドは!」


 ブレイバックルを取り出し、変身の準備をする。
 だが、カテゴリーQは"もう一人"の存在が接近している事に気付いた。

20817話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:36:25 ID:/ejLF8tk0


(*゚∀゚)「ん……?これ……」

( <::V::>)『……!!この気配は…!』


 それはカリスも同様。
 もう一人……いや、正確には人を介して動いている存在。
 カリスとカテゴリーQが、その気配の方へ同時に視線を向ける。


( ^ω^)「クーさんまでどうしたんだお!?」


 二人に釣られて、同じ方向に目を向ける。
 視線の先に現れた人物は……、






 _
( ゚∀゚)



 現れたのはジョルジュ。
 しかも、全く見覚えのないバイクに乗って此方に接近してきている。

 緑と金が目立つボディに、紫色のクラブを模したカウル。
 ブルースペイダーやレッドランバス、シャドーチェイサーと並び立っても遜色がない。
 まるで、ライダーが乗るようなバイクが……。

20917話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:56:57 ID:/ejLF8tk0


 特殊なバイクに乗ったジョルジュはあっという間にブーン達の前に到着。
 ヘルメットを外したジョルジュの顔を見て、ようやく誰なのか認識出来た。


( ^ω^)「ジョルジュ!?何で此処に…!」
 _
( ゚∀゚)「………」

( ^ω^)「ジョルジュ……?」


 ブーンの問いに答えようとしない。
 常に表情に色があったはずのジョルジュに、全く色がない。
 明らかに様子が違うジョルジュに、ブーンはすぐに気が付いた。


( <::V::>)『無駄だ、こいつは今自我を失っている』

( ^ω^)「えっ…」

(*゚∀゚)「あらら〜……その人間支配しちゃってんの?カテゴリーAさん」

( ^ω^)「カテゴリーAに支配…?……まさか!?」


 父であるロマネスクの話を思い出す。
 カテゴリーAの邪悪な意志……新たなライダーに変身すれば、操られる事も――。


( ; ^ω^)「……ジョルジュ、やめるお」


 嫌な予感がする。

21017話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:58:06 ID:/ejLF8tk0

 _
( ゚∀゚)『カリス……そして、カテゴリーQ……』


 機械的に話すジョルジュ。
 カリスとカテゴリーQにそれぞれ視線を向け、左手にある物を取り出した。


( ; ^ω^)「!!やめろジョルジュ!!」


 嫌な予感は的中した。
 ジョルジュの左手に握られたのは、新たなライダーのベルト。
 そして、右手にはカテゴリーAのカード。

 このまま変身させてはいけない。
 ベルトを強引にでも取り上げようと、ブーンはジョルジュに掴みかかった。

 _
( ゚∀゚)『邪魔をするな!』

( ; ^ω^)「うおっ!?」


 強引に振り払われ、地面に転倒する。

 ジョルジュは左手に持ったバックルからトレイを引き出し、カテゴリーAのカードを装填。
 トレイをカチャンッ!と押し戻しバックルを腰に当てた瞬間、紫色のカードがベルト状に展開。
 腰にベルトが装着され、歪みのある待機音が響く。


( ; ^ω^)「ジョルジュやめろ!!変身したら駄目だお!!」


 必死に呼び止める声は届かない。
 ブーンの制止も虚しく、ジョルジュは左手をバックルに添え……閉ざされたゲートを左にスライドさせた。



 _
( ゚∀゚)『変身!!』


    【 -♣OPEN UP- 】

.

21117話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:59:42 ID:/ejLF8tk0


 開いたゲートから覗く、♣のマーク。
 ブレイドやギャレンと同じように光り輝くゲートが射出するが、禍々しささえ感じる紫色に発光している。
 射出したゲートに向けジョルジュは動こうとしない。
 ブレイド達が変身を解除する時のように、ゲートからジョルジュの方へと向かっている。

 やがてゲートがジョルジュの身体を通過してしまい……


( ; ^ω^)「はっ…!?」

( <::V::>)『とうとう姿を見せたな、府坂の怨霊が……』


 そこに現れた姿は……、




( OHO) 


 グリーンのスーツに黄金色の装甲、胸部には♣のマークがあり、
 赤紫色の眼をした仮面は、蜘蛛が六本の脚を広げ張り付いたような多角形を構成している。
 スーツが作る身体のシルエットが、ジョルジュのものとは思えない程に筋肉が膨張。
 右腰にはカリスと同じくカードケースが着いており、腰の後ろには棍棒のような武器が下げられている。

 府坂が遺した、最新かつ邪悪なライダーシステム。
 とうとう、その姿を現した。
 
 その名は、仮面ライダー……


( ; ^ω^)「……レンゲル……!」

.

21217話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 11:00:14 ID:/ejLF8tk0


(*゚∀゚)「…お〜っと、これは流れが変わってきちゃったなぁ……っと!」


 レンゲルの姿に…カテゴリーAに威圧され、さりげなく逃亡を図った。
 ゆっくりと後退りし、両足で地面を蹴り宙に浮かんだ。


 その時、レンゲルがカテゴリーQに向け疾走。
 飛び跳ねたばかりのカテゴリーQの腹部に、重たい右拳を叩き込んだ。


( OHO)『ふんっ!』

(;*゚∀゚)「がふっ…!!」


 腹部に掛かる圧に押され、遠くへと吹き飛ばされるカテゴリーQ。
 地面にバウンドする事で勢いは緩和されるが、そびえ立つ木に背中から打ち付けられた。


(;*゚∀゚)「うああぁ……っへへ、何アイツ……やば……!」


 衝撃的な力に思わずこみ上げる笑い。
 腹部を押さえながら立ち上がるまでに時間は掛からなかったが、拳一発による威力に開いた口が塞がらない。
 
 吹き飛んだカテゴリーQを追う気配はない。
 この隙に逃亡せんと、前方を警戒しながら今度こそ飛び去って行った。




( ; ^ω^)「今のパワー、なんだお……」


 人間態だとしても、アンデッドをいとも容易く吹き飛ばすレンゲルの力に気圧されてしまっている。
 カテゴリーQを一蹴したレンゲルが次に目を向けたのは……。

21317話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 11:01:00 ID:/ejLF8tk0


( #<::V::>)『何だ……今は機嫌が良くないぞ…!!』


 カテゴリーQに煽られ好戦的な姿勢を示すカリスに、レンゲルが一瞬で迫った。
 顔面に向け放った正面からの蹴りを躱すカリスに対し、レンゲルは素早く裏拳を振り抜く。

 この攻撃は本能的に予測出来た。
 両手で防御の構えを取り、レンゲルの裏拳を防いだはずだった。
 だが、カリスの防御越しに、再びレンゲルの力が炸裂。
 両腕程度の防御など意味を成さず、裏拳の力のみでカリスが軽く吹き飛ばされた。


( ;<::V::>)『ぐっ……!!』

( ; ^ω^)「クーさん!!」

( OHO)『これが……ライダーの力か……!』


 己の両手を見つめ、漲る力を身体で感じる。力を得た事に何処か嬉々としている様子が伺えた。
 しかし、その声はジョルジュの声とは似ても似つかない声で。


( OHO)『そうだ……俺は何度でも貴様等の前に姿を現す。そして誰にも負けはしない』

( OHO)『――俺の名は仮面ライダーレンゲル。最強の仮面ライダーだ……!』

( ; ^ω^)「最強の……ライダー……」


 腰に着いた棍棒のような武器を手に取り、ブーンに向け突きつける。
 圧倒的な力を誇る新たなライダーを前に、思わず威圧されてしまった。

 遂にその姿を見せた仮面ライダーレンゲル。
 そして、新たな上級アンデッド達の存在。

 府坂が消えても、一時の休息が訪れる事などありはしない。
 
 休む間も無く迎えてしまった新たな運命は、今まで以上に過酷なものとなる――。

.

21417話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 11:01:27 ID:/ejLF8tk0





     【 第17話 〜新たなる運命〜 】 終

21517話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 11:01:50 ID:/ejLF8tk0


==========

 【 次回予告 】


 レンゲルに変身をしてしまったジョルジュ。
 カテゴリーAに操られ、見境のない敵意はブーンにも向けられる。


( OHO)『仮面ライダーブレイド、今此処で貴様を殺し―――!!!』

( ; ^ω^)「!?」

( ; OHO)「……ッ…」

( ; OHO)「うぅ……っ、ぐうう……!やめろおおぉ……!!」

( ^ω^)「ジョルジュ……!?」

( ; OHO)「やめてくれェ……!俺は……ッあ゙あ゙ぁ…!!」
 
( ^ω^)「ジョルジュ……!戻って来いお!目を覚ませ!!」

21617話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 11:04:25 ID:/ejLF8tk0


(;'A゚)「うわあぁあっ!!な、なんだ…??なんだ!?!?」

( \品/)『コノ時ヲ待ッテイタ……』

(;'A゚)「あ……あ……!お前は……ッ!!!」


 平穏の日々を取り戻したはずのドクオに、再びカテゴリーAの恐怖が襲いかかる。


(;'A゚)「な、な……何で!?封印されたんじゃなかったのか…!?」

( \品/)『俺ヲ真ニ封印スル事ナド、出来ハシナイ…!』

(;'A`)「助けてくれ……ぇ……!」

(; A )「ブーン……」

( \品/)『サァ……俺ヲ受ケ入レロ……!!』

21717話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 11:05:08 ID:/ejLF8tk0


『ビイイイィィィッ!!!』

(,,゚Д゚)「アンデッド……貴様等に生きてる資格は無い!」


 現れた新たなアンデッドの前に立ちはだかるギコ。
 その手にはギャレンバックルを持ち……。


(,,゚Д゚)「変身!」


    【 -♦TURN UP- 】


『!?』

( OMO)「……コイツを纏うのも久し振りだな」

( OMO)「これでもアンデッドとの戦いは初心者なんだ……お手柔らかにな!!」


 モララーではなく、ギコがギャレンへと変身を果たした。
 ギャレンの第一人者であったギコは、アンデッドと戦う事が出来るのか?

21817話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 11:06:31 ID:/ejLF8tk0


( OHO)『もっとだ…もっと戦いを求めろ!』


 そして、再びブレイド達の前に姿を現すレンゲル。


( ; OwO)「レンゲル!?何で…誰が変身してるんだ!?」

( ・∀・)「今度はジョルジュじゃない……一体誰が!?」

( ; OwO)「クソ…ッ!レンゲル……やらなきゃ駄目かお…!」


( OHO)『過去の仮面ライダー共……最強のライダーの前に散るがいい!』


 棍棒から杖状へと形を変えた武器――レンゲルラウザーを構え、ライダー達へと攻め込む。

 新たな脅威となってしまったレンゲル。ブレイド達の運命は…!?



 次回、【 第18話 〜張り巡らされた蜘蛛の巣〜 】

 
 ――今、その力が全開する!


==========

219 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 11:10:07 ID:/ejLF8tk0
しおり

>>9 第15話
>>84 第16話
>>152 第17話


年末に差し掛かってちょっと忙しくなって来たのでしばらくマイペースに書き溜め期間に入ります。
投稿できる時はするつもりなんでよろしくお願いします

220名無しさん:2017/11/12(日) 11:13:32 ID:8RnvdxZM0

逃亡しなきゃ私は一向に構わんッ!!

モスやん…(´;ω;`)

221名無しさん:2017/11/12(日) 11:25:09 ID:AG5k40OQ0
モス…
りんごジュース飲も…

222名無しさん:2017/11/12(日) 13:16:56 ID:PGwkKJ..0
乙!

223名無しさん:2017/11/12(日) 17:47:59 ID:YWVor.P60
今週も来てた!おつ!
原作なぞるだけじゃなく、オリジナル要素うまく入ってるのいいよね

224名無しさん:2017/11/12(日) 17:57:56 ID:fGrmb./c0
上級アンデッド達とのオリジナル絡み合いはいいっすね

225名無しさん:2017/11/12(日) 19:56:07 ID:Y.JhN1.Q0

モスやん切ねえ……

226名無しさん:2017/11/13(月) 12:32:25 ID:uUKBH91M0
悲しい別れが続くなぁ・・・

誰かこの支援を描く強者はおらんのか

227名無しさん:2017/11/13(月) 20:05:13 ID:HtgPnIBQ0
呟いたアイディアを現実にする力ないからなぁ

228名無しさん:2017/11/19(日) 16:21:47 ID:Wp2yoB3g0
今日は第2ラウンドないのね(´・ω・`)
いや通達はしてあったけどさ

229 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/05(火) 21:10:45 ID:N.EplV6c0
言い訳がましくなりますがクソ忙しくてクソムカつく毎日です。

書き溜めなんてろくに出来てませんが、10日の日曜に続き投下しますのでよろしくお願いします。

230名無しさん:2017/12/05(火) 21:26:28 ID:TFyJhQUA0
おっ
楽しみにしてます

231名無しさん:2017/12/05(火) 22:13:57 ID:LOhCzhBs0
ヤダもー楽しみ
https://i.imgur.com/1IAf968.jpg

232名無しさん:2017/12/05(火) 22:31:49 ID:zfWTpesE0
よっしゃ久々のニチアサだな

233名無しさん:2017/12/05(火) 22:42:04 ID:nyhiZth.0
ニチアサ第2ラウンド予告キタ━(゚∀゚)━!

23418話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:07:32 ID:koJKWyzA0





     【 第18話 〜張り巡らされた蜘蛛の巣〜 】




.

23518話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:08:09 ID:koJKWyzA0


 府坂の遺した新たなライダーのベルト――"レンゲル"は、とても危険なベルトだった。
 ♣のカテゴリーA、封印されても尚その力を強く影響させるように作られている。
 府坂に操られレンゲルを作らされたロマネスクから、決して使用してはならないと注意喚起を散々促された。

 ……だが、ライダーへの憧れを捨て切れずにいたジョルジュは、その危険な力を手にしてしまった。

 そして今、その力を身に纏い、ブーン達の前に姿を現している。


( OHO)『変身しろ……そして戦え』


 手に持った棍棒のような武器、三枚の環状の刃が重なった鋭利な先端を突きつけながら、
 ジョルジュの声とは思えない程に歪で、且とても威圧的な声でブーンに迫る。


( ; ^ω^)「何言ってんだジョルジュ…!?目を覚ませお!!」

( OHO)『俺以外のライダーは全て消す。そして最強たる所以を貴様等に教えてやる……!』

( ; ^ω^)「お前、本当にカテゴリーAに支配されてんのかお……!」


 これまでの脈絡なく戦いを求めるジョルジュの言葉が、カテゴリーAの支配によるものと察知する。
 すると、数歩程度の足音が聞こえた直後、跳躍したカリスがレンゲルの陰から姿を見せた。
 レンゲルに向け、カリスアローを勢いよく振り下ろす。

 レンゲルがカリスの接近に気付き背後へ振り向くと、手に持った武器でカリスアローの斬撃を受け止めた。


( #<::V::>)『まだこの程度では終わらんッ!』

( OHO)『まずはお前からだ、カリス!』

23618話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:08:49 ID:koJKWyzA0


 武器で受け止められたカリスアローが、力任せに振り払われる。
 レンゲルの加わった力を利用し、振り払われた方向へと身体を回転させると延髄切りを放った。


( #<::V::>)『せやああッ!!』

( OHO)『――フン』

( <::V::>)『ッ!?』


 側頭部を狙った延髄切り、それを押し返すようにしてレンゲルの片手に脚をガシィッ!と掴まれた。
 的確にカリスの脚を掴むだけでなく同時に延髄切りを防ぎ、鼻で笑う。
 握った武器を手から放し、両手でカリスの脚を掴むと、


( OHO)『ぬうゔぅあ゙あ゙あ゙あぁッッ!!』

 
 猛々しい雄叫びと共に、背面に向け強引にカリスを地面に叩き付けた。
 正確にはカリスの正体はアンデッドだが、まるでハンマーで地面を殴打するような勢いだ。


( ; <::V::>)『がは……ッ!?』


 身体の正面から地面に叩き付けられ、痛覚と息苦しさが全身に広がる。
 
 地に伏せられたカリスの胸部に軽く右足の爪先を入れ、勢い良く蹴り上げる。
 蹴りの衝撃で釣り糸に引かれるようにカリスの身体が浮上。


( OHO)『ッふん!!』


 浮いたところに、レンゲルの強烈かつ重厚な左足の足刀蹴りが叩き込まれた。

.

23718話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:09:27 ID:koJKWyzA0


( ;<::V::>)『ぐはああぁっ!!』


 蹴撃による衝撃凄まじく、吹き飛ばされた末に一本の木に背中から衝突。
 木にはカリスの衝突した部分から横目に亀裂が入り、ミシミシ…と音をたて、半分に折れていく。
 支柱を失った木の上半分は、バキバキ!と激しい音を放ちながらゆっくりと地面に倒れた。


( ; ^ω^)「クーさん……!」

( OHO)『どうしたカリス、この程度な訳がない…』


 落とした武器を拾い、折れた木に凭れぐったりと弱るカリスに近付こうとするレンゲル。
 ブーンは両手を広げレンゲルの前に立ちはだかり、行く手を阻んだ。


c( ^ω^)っ「ジョルジュもうやめろ!!目を覚ませ!!」

( OHO)『さっさと変身しろ、ブレイド』

c( ^ω^)っ「お前と戦うつもりはない……!早くジョルジュを解放しろ!」

( OHO)『ふん……ならば、戦わずして死ぬがいい!』

( ; ^ω^)「!?」


 要求聞き入れぬブーンに対し、レンゲルが武器をゆっくりと振り上げた。


( OHO)『仮面ライダーブレイド、今此処で貴様を殺し―――!!!』


 そして、掲げた武器をブーンに目掛け――

23818話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:09:48 ID:koJKWyzA0


( ; >ω<)「ッッ……!!」

 
 両目を閉じ、意味がないと分かりつつも反射的に両腕で眼前を覆った。
 振り下ろされる武器を防ごうとする為に。

 しばらくその構えのまま、レンゲルの攻撃が直撃してしまうのを待ってしまった。


( ; ^ω-)「……?」


 だが、いつまでもレンゲルの武器が直撃する様子はない。
 恐る恐る両腕の構えから顔を覗かせ、片目で目の前の様子を見た。

 すると……、




( ; OHO)「……ッ…」


 ブーンを攻撃するはずだったレンゲルの動きが、ぴたりと停止している。
 武器を掲げている右手はぷるぷると震え始め、左手で頭を抑え始めた。
 

( ; OHO)「うぅ……っ、ぐうう……!やめろおおぉ……!!」

( ^ω^)「ジョルジュ……!?」


 武器を手から落とし、両手で頭を抑えながら後退りするレンゲル。
 その声は、先程までの歪な声ではなく……何かに苦しむジョルジュの声になっていた。


( ; OHO)「やめてくれェ……!俺は……ッあ゙あ゙ぁ…!!」
 
( ^ω^)「ジョルジュ……!戻って来いお!目を覚ませ!!」

.

23918話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:10:24 ID:koJKWyzA0


( OHO)『……チッ、やはり駄目か。まぁいい…これで――』

( ; OHO)「うあああああぁあああッ!!!」


 一瞬だけ歪な声になり、何かを言いかけた。
 すぐにジョルジュの声に戻り、苦しみに悶える声を張り上げた。

 両手を広げながら叫ぶレンゲル。
 すると、バックルの開かれたゲートが誰の手も加えられずに閉ざされた。
 ♣のマークは再び閉ざされたゲートの下に隠れ、紫色のゲートがレンゲルの前に射出。
 ゲートからレンゲルへと迫り……レンゲルの変身は、強制的に解除された。

 _
(;゚∀゚)「うあああぁッ………!」


 変身を解かれたジョルジュは、ぐったりと膝から崩れ落ちる。
 腰に装着していたレンゲルのベルトは外され、地面に落下した。


( ^ω^)「ジョルジュ!!」
 _
(;゚∀゚)「はぁ……はぁ……、……ブーン……?」


 息を切らすジョルジュのもとに歩み寄り、ふらふらになった身体を支える。
 心配もあったが、それ以上にレンゲルを持ち出した事への怒りが勝っていた。
 

( ^ω^)「大丈夫かお!?」
 _
(;゚∀゚)「あ……ああ、大丈夫だ……」

( #^ω^)「お前なんでレンゲルのベルトを…!あれは危険だから使うなって散々言われただろ!?」

24018話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:11:07 ID:koJKWyzA0

 _
(;゚∀゚)「違うんだ、聞いてくれ…!」

( #^ω^)「何が違うんだお!!お前が持ち出したからこうやって変身したんだろうが!!
       カテゴリーAに操られて、僕にまで襲い掛かろうとしたんだぞ!?」
 _
(;゚∀゚)「それは……っすまねぇ……」

( ^ω^)「とにかくレンゲルのベルトはもう持つなお!このベルトは僕が――」


 ジョルジュの腰から落下したレンゲルのベルトは、ジョルジュの足元に転がっている。
 二度と持たせまいと厳しく𠮟咤し、落ちたベルトを拾い上げようと、足元へと視線を下げた。
 
 だが……、


( ^ω^)「……あれ?」


 足元には何もない。思わず自分の目を疑った。
 慌てて周囲を見渡し、自分の背後をも確認する。


( ; ^ω^)「無い……!レンゲルのベルトが無い!!」
 _
( ゚∀゚)「は…?」

( ; ^ω^)「お前まさか隠し持ってるのか!?」
 _
(;゚∀゚)「も、持ってねぇよ…!今変身が解けて落ちたままだったろ!?拾ってもなかっただろ!?」


 何度も確認するが、レンゲルのベルトの姿が見えない。
 立ち上がり何度も何度も見渡した。それでも、見つかることはなかった。
 確かに足元に転がったままだったはず。誰も手を付けてもいない。

 と、すれば…現実的にはおかしな話ではあるが、これしか考えられない。


( ; ^ω^)「……ベルトが、消えた……!?」

.

24118話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:11:46 ID:koJKWyzA0


( ;<::V::>)『うぐぅ……ッ!』


 レンゲルに変身したジョルジュによって吹き飛ばされ、木に凭れたままだったカリスが動き出した。
 地面を片手で叩いた力で瞬時に立ち上がる。
 カリスの発てた物音に、ブーンとジョルジュの視線が向けられた。


( ^ω^)「クーさん…大丈夫かお!?」

 
 そして、ブーンのもとで膝着くジョルジュに、カリスの怒りに満ちた赤い眼光が突き刺さった。
 途中で落としたカリスアローを拾い上げ、ゆっくりとジョルジュへと迫る。

 _
(;゚∀゚)「ッ……!!」

( #<::V::>)『どうした…まだ終わってない、カテゴリーAの力をもう一度使え』
 _
(;゚∀゚)「わ、わわわ悪かったって!!不可抗力だったんだよ!!」

( #<::V::>)『黙れッ!!!』
 _
(;゚∀゚)「ひっ…!」
 

 カテゴリーAの支配から解放されたジョルジュとは対照的に、カリスの本能である闘争心には火がついてしまっていた。
 鬼気迫るカリスに、普段から威勢の良いジョルジュも思わず尻込みしてしまう。


( ^ω^)「ちょ、ちょっと待ってクーさん!こいつには僕から厳しく注意しておくから……!
       それより今は、でぃちゃんを介抱する方が先だお!ここは僕に免じてさ…ね??」

( <::V::>)『………』


    《-♥2 SPIRIT-》


 ブーンの言葉に、疼いて仕方が無い本能は徐々に鎮められていく。
 しばらくジョルジュを睨み付けていたが、ようやく落ち着いたのか、カリスはカードを一枚バックルにラウズさせた。

.

24218話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:12:30 ID:koJKWyzA0


 カリスの変身が解かれクーの姿に戻った事によって、仮面の下の表情が露になった。
 既に痛いほどの視線を感じていたが、二つの目が露呈された事で、当然視線の痛さは更に倍増する。


川#゚ -゚)「……前から貴様の事は気に入らないと思ってた」
 _
(;゚∀゚)「……」

川#゚ -゚)「その程度の心構えで、次また私に手を出してみろ……二度と粋がれないように貴様の四肢をもぎ取るぞ!」
 _
(;゚∀゚)「わ……わかったよ……!」


 誤魔化しの効かない程に怯えたジョルジュの、精一杯の反抗心による返事。
 その返事すら気に障り、クーは地面を軽く蹴りジョルジュの顔面に土をかけた。

 _
(;゚∀゚)「うおっ!!ぺっぺっ!!」

川 ゚ -゚)「ふん」


 口の中に土が入ったのか、懸命に唾を飛ばしている。
 滑稽な姿を見ながら鼻を鳴らし、クーは背を向けでぃのもとへと走っていった。


( ^ω^)「ジョルジュ、取り敢えず家に帰るんだお。僕はまだ此処に用があるから。
       ……あと、ベルトは僕が探すから。もうレンゲルの事には関わっちゃ駄目だお」
 _
( ゚∀゚)「………」
 

 返事を待たずして、ブーンはクーの後を追いでぃのもとへと走る。

 _
( ∀ )「……俺は、ライダーに向いてないのか……」

 
 一人取り残されたジョルジュは、両膝を地面に着いたまましばらく呆然としていた。
 強く意志を持っていたはずが、容易にカテゴリーAに支配され己を制御出来ない始末。
 
 口の中に広がる土の味が、悔しさと不甲斐なさをより実感させた。

.

24318話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:13:11 ID:koJKWyzA0


 ブーンがでぃのもとへと着いた時には、クーが既にでぃを両腕で抱えていた。
 家へと向かい歩くクーの横に着き、未だ眠っているでぃの顔を覗く。


( ^ω^)「でぃちゃんは!?」

川 ゚ -゚)「まだ眠っている」

( ^ω^)「どうして寝てるんだお…?」 


 でぃが深い眠りに着いている理由をブーンは知らない。
 アンデッドサーチャーの反応を辿ってきたが、到着するまで此処であった争いを目にしていない。


川 ゚ -゚)「でぃちゃんに懐いていたアンデッドによるものだ」

( ^ω^)「え……そういえば、さっきからモスが見当たらないけど」

川 ゚ -゚)「……私が封印した」

( ^ω^)「は…?封印した!?なんで!?」


 冷静に答えるクーに、思わず声を荒げた。
 人間であるでぃに心を許し、争いを好まずクーとも意気投合したと思っていた。
 そんなモスが封印されたと知り、相手がアンデッドであるにも関わらず衝撃を受ける。


川 ゚ -゚)「さっきの女…カテゴリーQがでぃちゃんを人質に、私を襲えと奴を脅した」

川 ゚ -゚)「奴は自ら私に倒される事を望んだ。だから倒しただけだ」

( ^ω^)「そんな……クーさんと同じだと思ったのに……」

24418話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:14:13 ID:koJKWyzA0


 ブーンが発した言葉に、クーの足がぴたりと止まった。
 自分とモスが一緒……その言葉の意図が理解出来なかった。


川 ゚ -゚)「私と同じ、だと?」

( ^ω^)「……僕は、アンデッドが完全な悪だと思ってた。アンデッドは皆、人間を脅かすだけの脅威に過ぎないって」

( ^ω^)「でも、クーさんがあまねちゃん達を愛するように…モスもでぃちゃんを愛してたお。
      だから、アンデッドの中にも人間を襲わない良いアンデッドがいるのかもしれない。って…」

川 ゚ -゚)「アンデッドの善悪など考えるだけ無駄だ」

( ^ω^)「どうして!?現にクーさんは、そうやってでぃちゃんを助けてるじゃないかお!
      モスを封印したって凄く冷静に言うけど……本当は、モスの想いを背負ってるんじゃないのかお?」

川 ゚ -゚)「……お前がそう思い込みたいだけだろう」


 冷たくあしらい、再び家に向け歩き始める。

 認めたくはないが、あながち間違ってもいない憶測だった。

 だが、アンデッド同士、戦いの"運命"から逃れる事は出来ない。
 此度のように、どれだけ逃れようとしても戦い続ける運命にある。

 その渦の中にいるクーからすれば、ブーンの言葉はただの綺麗事に過ぎないとも思えた。


( ^ω^)(そうかもしれない……でも……!)


 都合の良い方に思い込みたいだけ…それだけでは済まない想いが、胸の中に芽生え始めている。

 アンデッドであるクーを、信じてみたいという想いが――。

24518話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:14:56 ID:koJKWyzA0


( ^ω^)「……ん?」
 

 ふと、地面の上に不自然に落ちている一枚の紙に目が留まった。
 落ちているゴミにしては随分と綺麗に折りたたまれている。

 それを拾い上げ、たたまれた紙を順番に広げていく。



 その紙は……モスがカリスの攻撃を受ける直前に投げ捨てた紙だった。


( ^ω^)「……!!これ……」

( ´ω`)「……ッ……」

 
 広げた紙には文字が書かれている。
 その文字を読み上げたブーンの表情が、瞬時に悲しみに満ちた表情へと変わる。
 
 紙を折り目のついている通り順番にたたみ、ポケットにしまう。
 
 既に家の中へと戻ったでぃとクーを追い、そう遠くない距離を走った。


.

24618話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:15:19 ID:koJKWyzA0





 ―――――




.

24718話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:15:48 ID:koJKWyzA0


「いらっしゃいませー」


 声を張り過ぎない適度な挨拶が耳に届き、安心感が生まれる。
 特に返事をする訳でもないが、やはり接客時の挨拶はとても重要だと感じる。


('A`)「ふぃ〜……」


 気の抜けた溜息を吐きながら、店内をうろつくドクオ。
 目的の品を探す為に、ドクオは単身スーパーに訪れていた。
 
 ドクオが訪れているスーパー……今は長期休暇中のブーンが働いている、スーパーマーケット『 VIP 』だ。


<ヽ`∀´>「いらっしゃいませ〜」

('A`)「声ちっさ」


 ドクオの横を通り過ぎた店長であるニダーの挨拶に、思わず本音が漏れてしまった。
 
 足を運んだのは、お酒売り場。
 棚に並べられた色とりどりのアルコールを、じっくりと眺めている。


('A`)「たまにはワインでも買うか〜……」


 ワインが並べられた棚の前に移動し、目に留まったワインのボトルに手を伸ばした。

24818話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:16:36 ID:koJKWyzA0


「いらっしゃいませ〜、ドクオさま」

('A`)「げ……」


 ボトルを掴もうとした時、背後から女の店員の声が名指しで声を掛けて来た。
 ドクオはこの声の主を知っている。
 気まずそうな声を漏らし、渋々後ろへと振り返った。


*(‘‘)*「あんた何してんの?」

('A`)「ヘリカル…何してんのって、客に言う言葉じゃないぞ」


 声を掛けていたのは、ブーンの同僚であるヘリカルだった。


*(‘‘)*「連絡してもほとんど返事しないくせにね〜、こういう機会でしか話せないでしょ?」

('A`)「あー……そうそう!スマホ壊れたんだよ!今新しいの買いたくてさぁ」

*(#‘‘)*っ< 「しょうもない嘘を付くなよお客様〜…?だったら普通その事恋人には言いますよねぇ??」
   ムギュウゥゥ

っ<;'A`)「あいででででっ!おい客だぞ客!?客にこんな事していいと思ってんのかよ!?」


 この二人、実は恋人関係である。
 互いの共通の知り合いであるブーンには秘密に……というよりは、言うタイミングを失ってしまっていた。
 
 ヘリカルとの連絡を控えているドクオ。
 その理由は、親のようにあれこれ𠮟咤されるのを嫌っての事だった。
 
 つまり、ドクオがブーン宅でツンに言った事は、実質浮気に相当していたのだ。

24918話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:17:10 ID:koJKWyzA0


*(‘‘)*「まぁいいわ……ねぇ、最近ブーンはどう?」

(;'A`)「ってて……ブーン?ああ、あいつ休暇取ってるんだってな」

*(‘‘)*「うん……休暇取る直前の彼、何かすごく思いつめてたようだったから心配で」

('A`)「………」


 思いつめてた理由は知っている。
 仮面ライダーとしてアンデッドと戦う日々で身体はボロボロになり、
 何らかの因果に巻き込まれ、心もボロボロになってしまっているブーンを、ドクオは知っている。
 
 だが……それを自分の口から伝えてしまう事への抵抗があった。


('A`)「ああ…まぁ、何とかな。確かに何か辛そうだったけど…あいつ何も話してくれないんだ」

*(‘‘)*「そうなの……今度様子見に行ってみようかなぁ」

(;'A`)「えっ!?いや、今はそっとしといてやろう……俺が行ってもあまり歓迎してくれなかったしさ?」

*(‘‘)*「本当に?」

(;'A`)「マジマジ!俺が嘘つくように見えるの??もうヘリちゃんもっと見てよこのキューティクルでトゥルーなアイを!」

25018話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:17:37 ID:koJKWyzA0



*(‘‘)* ジイイイイ


+('∀`) ホレホレ


*(‘‘)* ジイイイイイイイイイイイイイイ


('∀`) メチャクチャキュートダロ?シンジツカンジルダロ?


*( ‘ ‘ )* ジイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ


(;'∀`) ……







*(‘‘)*「見える」


(;'A`)「………」

.

25118話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:18:15 ID:koJKWyzA0


(;'A`)「と、とにかくマジだから!付き合い長い俺が言うんだからマジだって!」

*(‘‘)*「……まぁ、無理に行っても負担掛けるだけよね。そうする」

('A`)「流石ヘリカル、理解が早くて助かるわ〜……っつー訳でまたな!!」

*(‘‘)*「あっ、ちょっと待ちなさいよ…ッ!もう!!」


 買おうと思ったワインは諦め、すぐにこの場を離れたい。
 ヘリカルが気を緩めた瞬間を狙い、ドクオは颯爽と走った。



('A`)「んだよ、あいつ今日出勤日だったのかよ…!いないと思ったのに……」


 ぶつぶつと独り言を呟きながら、駆け足で自動ドアを潜り抜ける。


(-_-)「ありがとうござっした〜」


 店の外で品物を並べていたブーンの後輩・ヒッキーが、軽い口調で挨拶をした。
 いつものように、客を一瞥し首を突き出すように頭を下げる。


(-_-)「――……!!」


 だが、突如ドクオに再び目を向け直し、その背中を見つめた。




(-_-)「あいつ、まさか……!」

.

25218話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:18:42 ID:koJKWyzA0


('A`)「ふう〜……ん?」


 愛用のバイクのもとへと着いたドクオだが、明らかな違和感に気付く。
 
 バイクのシートの上に、何かが置かれているのだ。


('A`)「何だこれ…おもちゃか??」


 シートの上に置かれたものに手を伸ばし、それを掴む。
 目の前に引き寄せ、じっくりと見回す。


 ――金と黒、そして紫の三色塗装が目立つ固型。


 おもちゃにしても、用途の分からない物体を不思議そうに見つめる。 


('A`)「ったく俺のじゃねぇっつの、誰だよ置いた奴……」

('A`)「どうやって遊ぶんだこれ……お、何か引けるぞこれ」


 玩具の後ろに、トレイのようなものを発見した。
 困りながらも、見た事のない玩具に好奇心が生まれてしまっている。

 そして、そのトレイを迷わず引いてしまった。
 



('A`)「……あん?このカードって……」

(;゚A゚)「―――!!!」

.

25318話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:19:27 ID:koJKWyzA0


 トレイに収納されていたカード……それは、♣のカテゴリーA。
 蜘蛛のアンデッドが封印されているカード。

 カードを目にした瞬間、ドクオの目の前を"闇"が覆い始めた。
 広がる闇の中に見えるのは、縦横無尽に張られた蜘蛛の巣。
 たくさんの小さな蜘蛛の子が巣の上で蠢いている。

 そして、ドクオの前に、封印されたはずのカテゴリーAが姿を現した。


(;'A゚)「うわあぁあっ!!な、なんだ…??なんだ!?!?」

( \品/)『コノ時ヲ待ッテイタ……』


 ドクオの頭の中に、カテゴリーAの歪な声が響く。
 聞き覚えのある声に、悪夢が再び蘇る。


(;'A゚)「あ……あ……!お前は……ッ!!!」

(;'A゚)「な、な……何で!?封印されたんじゃなかったのか…!?」

( \品/)『俺ヲ真ニ封印スル事ナド、出来ハシナイ…!』


 カテゴリーAの発した無数の蜘蛛の糸が、ドクオの身体を縛り上げる。
 身動きの取れず、ただただ恐怖のみが募ると同時に……意識が遠のいていく。
   

(;'A`)「助けてくれ……ぇ……!」

(; A )「ブーン……」


( \品/)『サァ……俺ヲ受ケ入レロ……!!』


.

25418話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:19:50 ID:koJKWyzA0










( A )「………」


 ドクオの表情から色が消えた。

 愛用していたはずのバイクにも乗らず、導かれるように何処かへと歩き出す。





 ――右手に、レンゲルのベルトを握り締めながら。





.

25518話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:20:13 ID:koJKWyzA0





 ――――― 
 



.

25618話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:21:25 ID:koJKWyzA0


 一方、未だ眠ったままのでぃを介抱しているブーンとクー。
 でぃが目が覚める時を、ただただ待っていた。
 

( ^ω^)「………」

川 ゚ -゚)「………」


 お互いに言葉を発さず、重苦しい空気が家の中に漂う。
 一波乱あったせいもあり、余計にそう感じるのかもしれない。


川 ゚ -゚)「……おい」


 その沈黙は、意外な事にクーから破られた。


( ^ω^)「なに?」

川 ゚ -゚)「……この子を、頼む」

( ^ω^)「は……?」


 唐突過ぎる言葉に思わず拍子抜けしてしまった。
 クーは一言だけそう残すと、座敷から立ち上がり家を出ようとした。


( ^ω^)「ちょ、ちょっと待ってお!どこ行くんだお??」

川 ゚ -゚)「この子の元に私が居ては、迷惑が掛かる」

( ^ω^)「え……」

25718話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:21:56 ID:koJKWyzA0


川 ゚ -゚)「元はと言えば、私が此処に住もうとしたばかりに奴を封印する事になってしまった。
     理由はどうあれ……でぃちゃんにとって、奴は家族のような存在だった」

川 ゚ -゚)「やはり私は……人と共に居てはいけないらしい」


 バーボンハウスを出た理由と同じ事を言っている。
 クーなりに、モスの封印に至ってしまった事への罪悪感を感じているようだった。

 人に心を開いてしまえば、その人に迷惑を掛ける事になる。

 悲しいアンデッドの運命を、改めて実感していた。



(#っ ;;-)「んん……」


 クーが家を出ようとしたその時、でぃが深い眠りから覚めた。
 目を擦りながら、ゆっくりと上半身を起こす。


( ^ω^)「でぃちゃん!目が覚めたかお……!」

川 ゚ -゚)「………」

(#゚;;-゚)「あれ…お兄さん、いつから居たの?」

( ^ω^)「えっと…ついさっき来たばっかだお」


 先程の状況とは打って変わっているにも関わらず、目覚めたばかりのでぃはとても落ち着いているように見える。
 そして、次にでぃが発した言葉に、ブーンとクーは心を強く打たれる事になる。



(#゚;;-゚)「お姉さんも、どっか行っちゃうの??」

25818話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:22:26 ID:koJKWyzA0


川 ゚ -゚)「……!」

( ^ω^)「でぃちゃん…?」


 クーの無機質な表情が、露骨に変化を見せた。
 確信に迫ったような言葉に、どんな顔をすればいいか分からないといった表情だ。


(#゚;;-゚)「……モス、いなくなっちゃったんだね」

川 - )「でぃちゃん……モスは――」

(#゚;;-゚)「私が眠ってる時……モスの声が聞こえた気がしたの」



(#゚;;-゚)「もう、でぃとは一緒にいられないんだ……僕は遠いところに行かなきゃならなくなっちゃった。
    僕を助けてくれてありがとう、僕みたいな化け物を…愛してくれてありがとう。って」



( ´ω`)「………」

川  - )「……すまない、本当に……」


 胸がギュウッと締め付けられるように痛い。

 アンデッド同士の戦いのはずなのに、こんなに苦しいのは何故なのだろう。
 モスを封印してしまう時も、似たような気持ちになった。
 カテゴリーQが言っていたように、戸惑いがあったのかもしれない。

 本当の自分を見失っているのか。それとも、新しい自分へと生まれ変わろうとしているのか。
 
 複雑な思いが、クーの心の中で絡まっていた。

25918話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:23:09 ID:koJKWyzA0


( ´ω`)「……でぃちゃん、これ……」


 ポケットから、先程拾った紙を取り出しでぃに差し出す。
 紙を受け取ったでぃは、丁寧に紙を広げていき、紙に書かれた文字に目を通す。


(# ;;- )「……ッ……」

(#;;;-;)「ぐすっ……」


 紙には、お世辞にも綺麗とは言えない字が書かれていた。
 文字を書き始めた幼稚園児、それと同等な程に汚い字で一言。


 ――『でぃ だいすき』、と。



(#;;;-;)「うううぅ……っ、うええええええええええええん!!モス……モスぅ……!!」

( ^ω^)「モスは、でぃちゃんの心の中にちゃんといるお……」


 モスの遺した手紙を抱き締め、泣き崩れた。
 でぃの背中に手を添え、宥めるようにぽんぽんと優しく叩く。


( ^ω^)「そうだおね、クーさん」

川 ゚ -゚)「………ああ」


 モスが封印された♥8のカードを取り出し、カードとでぃを交互に見遣る。
 言い表しがたい感情に、クーの心は支配されていた。
 理由はどうあれ、この悲しい現状を生んでしまったのも自分なのだから、と。

26018話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:23:44 ID:koJKWyzA0


(# ;;- )「……ぐすっ、ちょっとだけ…一人にさせて」

( ^ω^)「…うん、分かったお」


 溢れる涙を拭いながら、涙声で訴える。
 今はそっとしておいてあげた方がいい…そう判断し、素直に聞き入れると大人しく家の外へと出た。

 外に出た二人は家から距離を取り、そびえ立つ木に凭れ掛かる。


( ^ω^)「これからどうするんだお…?」

川 ゚ -゚)「さぁな……ただ、私は私の戦いを続ける事に決めた」

( ^ω^)「……ねぇクーさん、僕達一緒に戦う事は出来ないのかお?」

川 ゚ -゚)「……」


 ブーンの問いに答えず、無言で向けた視線。
 その視線が何を意味しているかはすぐに理解出来た。
 

( ^ω^)「その目は……無理って目をしてるお」

川 ゚ -゚)「私は私の為の戦いをするだけだ。お前とも馴れ合いをするつもりはない……でも」

( ^ω^)「……でも?」

川 ゚ -゚)「君に助けられた事は……感謝する」
 

川 ゚ -゚)「……ありがとう」

26118話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:24:26 ID:koJKWyzA0


( ^ω^)「え…」

( *^ω^)「……ふふふ」


 思いがけないクーの感謝の言葉に、一瞬呆然としてしまったが、すぐに嬉しさや喜びは実感出来た。
 
 これまで、身近な存在でありながらクーとは敵対を余儀なくされていた。
 クーがアンデッドである事を知った時は激情に駆られた事もあったが、自分を信じてよかったとも思える一瞬だった。


( ^ω^)「でも…バーボンハウスに戻らないって言うなら、せめてでぃちゃんの傍に居てあげた方がいいお」

川 ゚ -゚)「それは……」

( ^ω^)「駄目だお!迷惑迷惑って、自分で居させてってお願いしたんだからその責任くらい果たせお」

川 ゚ -゚)「………」


 答えに迷うクーだが、内心は少しほっとしている。
 自分は、此処に居ていい。そう思えたからだ。


( ^ω^)「今日は僕も泊まるから…クーさんが夜に抜け出さないように監視するお」

川 ゚ -゚)「……お前にそんな事されなくても、私は抜け出したりしない」


 結局ちゃんとした答えは出さなかったが、ブーンへの返事こそが答えでもある。
 
 背を預けた木から離れ、クーは一人でぃの家へと戻って行った。

.

26218話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:24:57 ID:koJKWyzA0


 ――――――
 ――――
 ――


 ――その日の夜。

 暗闇に包まれた森の中で、一人の若い女が妖しく笑みを浮かべている。
 その女の前には、一体の歪な化け物。

 
(*゚∀゚)「アヒャヒャ……あの女も悪い事教えてくれるなぁ〜本当」

『ビェヤアアアアァ……!』

(*゚∀゚)「あ、戦う気はないよ〜?アンタにお願いしたい事があってさぁ……」

(*゚∀゚)「街中にね、カリスが大事に大事にしてる人間がいるのよ〜。
     そいつ等攫って、カリスを襲って欲しいんだよね〜」

(*゚∀゚)「あ、出来ないってのは無しね?もし逃げたりしたら――」


 一瞬だけ、カテゴリーQのシルエットが変わった。
 頭部に多数の角を持ち、三つ並ぶ顔が見え……。


(*゚∀゚)「――アンタをボコボコにして、ライダー達の前に放り投げてやるから」

『………!!』

(*゚∀゚)「フフフフ……アヒャヒャヒャヒャ!!!」


.

26318話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:25:28 ID:koJKWyzA0





 ―――――




.

26418話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:26:01 ID:koJKWyzA0


 ――翌日。

 家主のいない夜を過ごしたブーンの家には、モララーとギコが集まっていた。
 ソファに座っている二人の前には……ジョルジュが一人、床に座らされている。

 _
(;゚∀゚)「本当に……本当にすみませんでした!!」


 床に額を付け、土下座をする。
 モララーは落ち着いた様子だが、昨日ジョルジュに口を酸っぱくしていたギコは怒り心頭だ。
 

(,,゚Д゚)「何故レンゲルのベルトを使った?」
 _
(;゚∀゚)「……それは……」

(,,#゚Д゚)「お前……あれ程言ったのに何故分からない!?」

ξ゚⊿゚)ξ「!?」


 ソファから腰を上げ、土下座をするジョルジュの頭を強引に上げさせ胸倉を掴みかかった。


( ・∀・)「ギコさん、落ち着いてください!」

(,,#゚Д゚)「……ッ!」
 _
(;゚∀゚)「………」


 モララーの制止に従い、ギコはジョルジュの胸倉を離す。
 だが、その場に留まり依然として怒りを露にしたままだ。

26518話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:26:38 ID:koJKWyzA0

 _
( ゚∀゚)「……レンゲルのベルトを手にした時には、もう俺の意志じゃなかったんです」

(,,゚Д゚)「なに?」
 _
( ゚∀゚)「カテゴリーAのカードを見た時……目の前に、急に闇が広がったんです。
    そこには、すげぇ数の蜘蛛の巣があって……」
 _
( ゚∀゚)「何か、意識が蜘蛛の糸に絡め取られるっていうか……全然動けなくなって。
    だって俺、レンゲルのベルトが引き出しに入ってたなんて知らなかったっすから」
 _
( ゚∀゚)「変身してる時も、自分の意識はありました……でも身体が言う事を聞かなかった。
    何かこう、違うものに俺の意志を支配されてる感覚で……」


(,,゚Д゚)「……それこそが、カテゴリーAの支配だ」


 ジョルジュが語る内容、全部がカテゴリーAの手によるもの。
 ロマネスクが危惧していた事が、全て現実となっていたのだ。

 だが、話を聞いていたモララーには、一つだけどうしても分からない事があった。


( ・∀・)「ちょっと待ってください。ジョルジュお前、カードを見たらそうなったのか?」
 _
( ゚∀゚)「はい…」

( ・∀・)「……所長から聞いた話では、レンゲルに変身した時にカテゴリーAの邪悪な力が反映される。というものだった」

( ・∀・)「でも、カードを見た時点でお前はカテゴリーAの支配を受けた……。
      何故だ?アンデッドは封印されてしまえば、自ら外部へ力を発信出来ないはず」

ξ゚⊿゚)ξ「確かに、何か変だったわ。こいつカードを見てすぐにおかしくなったもの。
      私の事、お構いなしに突き飛ばして……」
 _
(;゚∀゚)「そ、それは…うん、すまねぇ。意識はあったけど、それも俺の意志じゃないんだ」

26618話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:27:41 ID:koJKWyzA0


( ・∀・)「……俺の封印に、不手際があったのか?」


 問題となっているカテゴリーAを封印したのは、モララーだ。
 感覚的には、それまで行ってきたアンデッド封印の方法とまったく一緒だった。
 不手際があったと自分の所為にする事は簡単だが……肝心な不手際に心当たりが無いまま。


( ・∀・)「だとしたら……俺の所為だ。俺が、自分の力でちゃんと封印していれば……」

ξ゚⊿゚)ξ「そんな事は……!」
 _
( ゚∀゚)「そうだよ、モララーさんは悪くねぇ!悪いのは俺だ。
    俺が、ライダーへの憧れを捨て切れてなかったから……」

(,,゚Д゚)「やめろ、罪の被り合いをしたところで何も解決しない。
    菱谷の話も気掛かりだが……レンゲルのベルトを見つける事が先決だ」

(,,゚Д゚)「だがジョルジュ、お前は関わるな。またカテゴリーAがお前を狙うかもしれないからな」
 _
( ゚∀゚)「……はい」

( ・∀・)「俺も協力します。レンゲルのベルト探しを…」


 ジョルジュの前から立ち上がったギコは、今度はモララーに詰め寄り始めた。
 

(,,゚Д゚)「…一日経ったが、まだお前の心は変わらないのか?」

( ・∀・)「何がですか?」

(,,゚Д゚)「とぼけるな。ギャレンに戻るつもりはないのかと聞いてるんだ」

26718話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:28:24 ID:koJKWyzA0


( ・∀・)「………」


 ライダーを辞めると告げてから一日が経ったが、モララーの心は変わっていなかった。
 ギコの問いに答えず、思わず目を背けてしまった。


(,,゚Д゚)「アンデッドはまだたくさん蔓延っている、レンゲルという脅威も生まれてしまったんだぞ。
     ブレイドだけでどうにかなると思うのか?」

( ・∀・)「……すみません、俺にライダーはやれません」

(,,゚Д゚)「……真面目過ぎるのはお前の悪いところだぞ、菱谷」

( ・∀・)「はい…すみません」

ξ゚⊿゚)ξ「モララーさん……」


 ――その時、アンデッドサーチャーの警報音が室内に鳴り響いた。
 緊迫感迫る警報音に、全員の視線が集められる。
 
 すかさずPCの前にツンが移動。キャッチした情報の詳細に目を通す。


ξ゚⊿゚)ξ「アンデッドの反応を確認!場所は街中……バーボンハウスが近い!?」
 _
( ゚∀゚)「バーボンハウスに!?」

ξ゚⊿゚)ξ「待って!何処かへと移動してるわ…私はブーンに連絡する!
       ジョルジュ、あんたはバーボンハウスに連絡して危険を報せて!」
 _
( ゚∀゚)「分かった!」

 
 ツンの後ろでアンデッドサーチャーの反応を見ていたギコは、引き出しからギャレンバックルを取り出し、
 ソファで佇むモララーに差し出した。

26818話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:28:46 ID:koJKWyzA0


(,,゚Д゚)「どうする?人が襲われているぞ、この期に及んでもまだライダーを拒むのか?」

( ・∀・)「………俺は……」
 

 ギコの言う通り、こうしている間にも人が襲われているかもしれない。
 だが、差し出されたギャレンバックルを受け取る事はせず、モララーは顔を伏せてしまった。


(,,゚Д゚)「……そうか」


 差し出したギャレンバックルを掴む右手を引き戻す。
 ギャレンに戻る事を拒んだモララーに対して、あっさりと退いたギコ。
 
 すると、ギャレンバックルを懐へとしまい……


(,,゚Д゚)「もういい、お前がどうしても拒むというのなら……」




(,,゚Д゚)「……俺が行く!」

.

26918話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:29:12 ID:koJKWyzA0


( ・∀・)「……!」

ξ゚⊿゚)ξ「えっ…!?」
 _
( ゚∀゚)「ギコさん!?」

(,,゚Д゚)「ギャレンのレッドランバスは俺が預かるぞ!」


 ギャレンバックルを持ったまま、ギコはブーンの家を出て行ってしまった。
 今までモララーが愛用していたレッドランバスに乗ったギコが、排気音を鳴らしながら走り去って行く。


ξ゚⊿゚)ξ「だ、大丈夫なの!?」
 _
( ゚∀゚)「大丈夫だろうけど……いいのかよ、モララーさん」

( ・∀・)「……ギコさんなら、ギャレンを使いこなせる。俺なんかよりもずっと頼りになる」

( ・∀・)「これでいいんだ。俺にはもう……ライダーの資格は無いよ」

ξ゚⊿゚)ξ「………」


 二人の目から逃れるようにして、窓の縁に立ち外の景色を眺めた。
 
 これでいい。
 そう言い切るモララーの目に、どこか強がりさえ感じられた。

 胸の内に潜む、本心を押し殺したような……。


.

27018話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:29:47 ID:koJKWyzA0


 アンデッドの反応を掴んでいたのは、ツン達だけではなかった。


川 ゚ -゚)「――!!」

( ^ω^)「どうしたお?」


 クーの脳内に、声が流れ始める。
 不気味さを感じる、アンデッドの歪な声が。


『――カリス……』

川 ゚ -゚)「アンデッド……!」

( ^ω^)「!?」


 己の存在を知らしめるべくクーを呼ぶ声。 
 アンデッドの声の後……クーの脳内に、ひとつの映像が送り込まれて来た。


川;゚ -゚)「!!!」


 カメラを通して映像が送られるかのように、アンデッドの目に映る光景が広がっている。
 
 薄暗い廃墟。その中に倒れた人間。
 大人の男性と、少女の二人組……。
 
 二人の姿が見えた途端、クーの顔は青ざめ狼狽え始めた。
 顔を見ずとも、目の前に倒れている人間が誰かを、クーが一番良く知っているからだ。



川;゚ -゚)「ショボンさん……あまねちゃん……!!」

.

27118話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:30:20 ID:koJKWyzA0


( ^ω^)「二人がどうしたんだお!?」

『――キサマ ノ 弱点 ハ コノ人間ドモ ダ……』

川;゚ -゚)「やめろ……その人達に手を出すな!!」

『――ナラバ 来イ… コノ人間 ノ 命ハ 無イゾ……!』

川;゚ -゚)「よせ!おい…?おい!!」


 ――ここでアンデッドの声は途絶えた。
 クーの声は聞こえているはずだが、それ以上の答えは返っては来ない。

  
川;゚ -゚)「くっ……!」


 向かわねば、ショボンと渡辺の命は無い。
 
 二人のものを離れ、縁を断ち切ろうとしたはずだった。
 しかし今、自分の所為でその二人に危険が迫っている。

 何より、二人の命を助けたい…その一心が、クーの冷静さを奪い熱く突き動かした。

 
( ^ω^)「クーさん!何があったのか教えてくれお!」

川;゚ -゚)「あまねちゃんとショボンさんが、アンデッドに攫われた……」

( ^ω^)「何だって!?」

27218話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:30:44 ID:koJKWyzA0


川;゚ -゚)「でぃちゃんを頼む……!」

( ^ω^)「えっ、ちょっと…!」


 ブーンの返事を待つ時間は無い。
 血相を変えたクーは、戸を乱暴に開けては慌ててでぃの家を出た。
 直後、外からはバイクの排気音がけたたましく聞こえる。

 何も言えずクーの背中をただ見送ってしまったブーンのスマホに、着信が入った。
 ツンからの電話だ。恐らく、クーが感じ取ったアンデッドの反応だろう。


( ^ω^)ロ 「ツン!アンデッドがショボンさんとあまねちゃんを攫ったかもしれないお!」

[ えっ、何でその事を…!?確かに今キャッチしたアンデッドは、バーボンハウス付近に出没したわ。
 その後、何処かに移動したのを確認出来た!]

[ 駄目だ、ショボンさん電話出ねぇよ!]


 電話の向こうから、焦り交じりのジョルジュの声が聞こえた。
 クーの言っていた事が本当なら、既に手遅れという事だ。


( ^ω^)ロ 「やっぱりそうなのかお……!」

[ 今、ギコさんがアンデッドのもとへと向かったわ。ブーンも行ってあげて!]

( ^ω^)ロ 「う……でも、今は……」





(#゚;;-゚)「お兄さん、行って」

27318話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:31:09 ID:koJKWyzA0


( ^ω^)ロ 「でぃちゃん…?」


 部屋の奥で一人落ち込んでいたでぃが、ブーンのもとへとやってきた。
 ブーン達の会話が、何を意味しているのか。
 モスとの事を体験したでぃには、多少なりとも理解出来ていたらしい。


(#゚;;-゚)「あのお姉さんの大事な人が、化け物に捕まっちゃったんでしょ?助けに行ってあげて、もう私は大丈夫だから」

(#゚;;-゚)「……もう、私とモスみたいな悲しいお別れが起きるのは…嫌だから」

( ^ω^)ロ 「………」

[ ブーン?どうしたの??]

( ^ω^)ロ 「ツン、今から僕も向かうお!」


 でぃの言葉で迷いは吹っ切れた。
 ツンに一言告げ一方的に電話を切ると、でぃに向かい合い頭を撫でる。


( ^ω^)「終わったらすぐ来るから、心配しないで?でぃちゃんはもう一人じゃないお!」

(#゚;;-゚)「………」


 特に反応も見せず、ただ撫でられる。
 そんなでぃに満面の笑みを向け、クーに次いででぃの家を出た。





(#゚;;-゚)「……これも、モスが遺してくれた事なんだよね」

(#゚;;-゚)「ありがとう……」

.

27418話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:31:38 ID:koJKWyzA0





 ―――――




.

27518話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:32:09 ID:koJKWyzA0


 ――所々穴の空いた天井から、薄暗い廃墟に光が差し込む。
 中はひどく朽ちていて、瓦礫は床に散らばっていて埃に塗れている。
 部屋を構築していたであろう壁は崩れ切っている為、全体が大きな空間と化していた。
 とても人が出入りするような場所ではない。
 
 そんな廃墟に、気を失い瓦礫の上で横たわるショボンと渡辺がいた。
 

(´-ω-`)「んん……」

(´・ω・`)「……なんだ此処、何処なんだ…?」


 目を覚ましたショボン。
 見覚えのない場所・光景が目に飛び込み、すぐに不安を覚えた。
 隣で眠る渡辺の身体を何度も揺さぶる。


(´・ω・`)「あまね、あまね!起きて!」

从- -从「ん……」

从'ー'从「ショボンさん…!さっきの化け物は!?」

(´・ω・`)「分からない…どうやら、連れて来られたみたいだね……」

::从;'ー'从::「や、やだ…怖いよぉ……!」


 アンデッドに襲われた記憶が最後だった。
 加えて、目が覚めたら全く知らない場所にいる。
 こんな時こそ冷静に……というショボンに対し、逆に混乱に陥ってしまった渡辺。
 身体を震わせながら、恐怖のあまり強くしがみ付いた。


(´・ω・`)「大丈夫だよ、あまね。僕がついてるから…!」

::从;'ー'从::「クーさん…!クーさん、助けて……!」

27618話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:32:30 ID:koJKWyzA0


『ビェエアアアアアアア……』

Σ从;'ー'从「ひっ…!」

Σ(;´・ω・`)「!?」


 突如、廃墟内にうるさく鳴り響く不快な羽音。
 自分達以外の、不気味な唸り声も聞こえてきている。

 そして、恐怖を煽る音を発している正体が、上空からショボン達の前に舞い降りた。
 その姿を見るなり、二人は恐れおののく。


 全身を覆う多数のトゲ。
 歯を剥き出しにしたような不気味なデザインの黒い仮面。
 襟元からは、背中にかけて蜻蛉のような薄い羽が生えている。

 不快な羽音は、この羽を羽ばたかせて飛行していた事によるものだった。


(;´・ω・`)「どうするつもりだ…こんな所に連れて来て!」

从 ー 从「――……」

(;´・ω・`)「あまね!?あまね!!」


 渡辺を抱きながら、近付く蜻蛉のアンデッドから後退りする。
 あまりの恐怖に、渡辺は再び気を失ってしまった。
 
 
『ビイイイイィ……、……!』


 言い表しがたい鳴き声を発しながら近付くアンデッドの足が止まった。
 そして、表から聞こえるバイクの排気音にいち早く気が付き、再び羽を羽ばたかせ浮遊しながら廃墟の外へと出た。

27718話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:33:28 ID:koJKWyzA0


 外に出た蜻蛉のアンデッドは、こちらに迫るバイク……そしてその正体を確認。
 地上に降り立ち、待ち望んでいた人物の到来に敵意を見せ始めた。


 蜻蛉のアンデッドの前にまず現れたのは、挑発を受けたクー。
 バイクから降りると、脱いだヘルメットを乱暴に投げ捨てた。
 二人を攫われ、自分を釣る為のエサにされた事で、怒りは頂点に達していた。


川#゚ -゚)「――貴様、死にたいらしいな」


 腰にはカリスラウザーを召喚。
 カードを右手で取り出し、鋭い目で睨み付けながら蜻蛉のアンデッドへと歩み寄る。


川#゚ -゚)「望み通りにしてやる…!変身!!」
   っ□


    【 -♥CHANGE- 】


 カリスへの完全な変身を待たず、過程のオーラを浴びながら駆け出した。

 変身を終えたカリスは、カリスアローの弓矢を前方に射出しながらアンデッドに接近。
 羽を羽ばたかせ宙に浮上する事で弓矢を回避するアンデッドだが、その回避行動は既に予測されていた。

 迅速にカリスラウザーを武器にセットし、一枚のカードをラウズする。

 
( <::V::>)『逃がさん!!』


    《-♥7 BIO-》


 カードの力を吸収した右手から、三本の太い蔓を放出。
 空中を飛ぶアンデッドの脚を捕獲し、力任せに己の方へと牽引した。

 自身の力以上に牽引する力が強く、為すがままに空中より引き摺り下ろされる。

27818話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:34:13 ID:koJKWyzA0


 降下の途中でもカリスの攻撃は絶えなかった。
 カリスアローを上空のアンデッドに構え、弓矢を絶え間なく射出。
 身動きが取れないアンデッドに、無数の弓矢が被弾した。


『ビイイイイィッ…!!』

( <::V::>)『はっ!!』


 矢の攻撃を浴びながら、アンデッドはすぐにカリスの眼前まで接近。
 激突寸前まで引っ張ると、カリスアローを横薙ぎに振り払い斬り付けた。

 斬撃を受けながらも、前転し受け身を取り転倒は免れた。
 だが、起き上がったばかりの隙をカリスが見逃す訳が無い。


( #<::V::>)『貴様は簡単に眠らせてはやらんぞ…!!』


 既に接近していたカリスは、カリスアローを思いのままに振るい始める。
 俊敏に躍動する両刃が、アンデッドの異形の身体を幾度となく刻む。
 
 刃が肉を切り裂く度に周囲に飛び散る緑色の血。
 カリス自身も返り血を浴び、顔面や胴体に飛沫を付着させながら、それでも華麗に舞い続けた。


 目にも留まらぬ執拗な連撃で、しばらくカリスの攻勢は続く。
 反撃の隙も無く攻撃に晒され続けるアンデッドは、早速片脚のバランスを失い始めた。


( <::V::>)『てやあぁッ!!』

『グギャアアアァァッ……!』


 カリスアローを斜め上に振り上げ、連撃の最後を飾る大振りな一撃がアンデッドを吹き飛ばした。
 力無く吹き飛び、アンデッドは受け身も取れず地面に転がる。

27918話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:34:46 ID:koJKWyzA0


 そこに、クーの後を追ってきたブーンが到着した。
 変身を済ませており、既に繰り広げられている戦闘を前にブレイドは剣を抜いた。

 此処に来るはずのないブレイドの存在に気付き、カリスは思わず振り向く。


( <::V::>)『お前、何故来た!?』

( OwO)「でぃちゃんに頼まれたんだお。これ以上、自分と同じ悲しい別れは見たくないって!」

( OwO)「僕もでぃちゃんと同じだお。クーさんとあまねちゃん達の別れは、見たくない!」

( <::V::>)『………』


 ブレイドの言葉を通して、でぃの声が聞こえた気がした。
 自分の手でモスを封印し、でぃを悲しみに突き落としてしまったたカリスには、その言葉は痛い程に突き刺さっている。

 今、二人が危険な目に合い自分が激情しているように、きっとでぃも同じ気持ちだったのだろうか……。


『……ッ!』

( OwO)「あっ!?」


 突如、不愉快な羽音がカリスの背後から喧しく聞こえ始める。
 ぐったりと倒れていた蜻蛉のアンデッドが宙に浮き、逃げ出してしまった。

 ぼんやりと考え込んでしまったカリスの隙を突き、衰弱した蜻蛉のアンデッドは逃亡を図ったのだ。
 

( <::V::>)『ちっ、まだ逃げれるだけの余力はあったか…!』

( OwO)「急いで追わないと!」

( <::V::>)『私が追う、お前はあまねちゃん達を頼む!』
 
( OwO)「えっ……分かったお!」


 でぃの善意を受け取ったのか、ブレイドに二人を任せカリスは単身アンデッドの追跡を開始。
 脳波で呼び寄せたシャドーチェイサーに飛び乗ると、疾風の如く速さで走って行った。

28018話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:35:16 ID:koJKWyzA0


 残されたブレイドは、ツン達に応援を依頼した後、二人が捕われている廃墟の中へと入った。
 邪魔な壁をぶち壊し、瓦礫を掻き分けて進む。
 やがて広々とした空間に出ると……そこに、不自然に佇む二人の人間を見つけた。


( OwO)「ショボンさん!!あまねちゃん!!」

(´・ω・`)「!?この声は、ブーン君…!?」


 ブーンの声がするな否や、ショボンは声のする方へと視線を向ける。
 だが、視線の先に居たのはブーンではなく、見た事の無い人の形をした何かだった。
 仮面ライダーの姿を見たことがないショボンにとっては恐怖でしかなく、近付いて来るブレイドに対し警戒する姿勢を見せた。


( OwO)「安心してください!僕です、剣藤ですお!」

(´・ω・`)「ブーン君……!?その姿はなんだい!?」

( OwO)「後で説明しますお、とにかく今は逃げましょう!立てますかお?」

(´・ω・`)「ああ、僕は大丈夫だ…それより、あまねが気を失ってしまっているんだ」

( OwO)「僕が背負いますお!」


 ブレイドは気を失ったままの渡辺をひょいと楽々背負い、二人が怪我をせぬよう慎重に廃墟の外を目指す。
 
 やがて廃墟の外へと出ると、応援を依頼したツン達が既に廃墟前に待機していた。
 中には、モララーの姿も見える。

28118話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:35:59 ID:koJKWyzA0


ξ゚⊿゚)ξ「ショボンさん!大丈夫ですか!?」

(´・ω・`)「ツンさん、ジョルジュ君も……助けに来てくれたのかい?」
 _
( ゚∀゚)「二人がアンデッドに攫われたと思って、ブーンの連絡受ける前にこっちに向かってました」

(´・ω・`)「すまない、ありがとう…本当に助かったよ」

( OwO)「あまねちゃんが気を失ってる、早く車に乗せてあげて!」
 _
( ゚∀゚)「おう!」


 モララーが後部座席の扉を開け、ツンとジョルジュの手を借りながらゆっくりとシートの上に寝かせた。
 

( ・∀・)「剣藤、アンデッドは?」

( OwO)「逃げました。さっきク……いや、カリスが追って行きましたお」

(´・ω・`)「そのアンデッドっていう化け物、最近ニュースでよく取り上げられてる奴かい?何でそんなのが僕達を狙ったんだ……」

( OwO)「………」


 理由は知っているが、言えるはずもない。
 困惑するショボンをひとまず車に乗せ、ツンとジョルジュは二人を安全な場所に避難させる為、先に出発した。

 残ったブレイドとモララーは、逃亡した蜻蛉のアンデッドを追う事に。


( ・∀・)「ギコさんが一人で向かったはずなんだ、まだ見てないか?」

( OwO)「ギコさんが?僕が来た時には、カリスがアンデッドと戦ってるだけでした」

( ・∀・)「そうか……俺達も急ごう」

( OwO)「はい!」

.

28218話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:36:26 ID:koJKWyzA0

 ――――――
 ――――
 ――


『ゼェ……ゼェ……』


 逃亡に成功したものの、身体のダメージは大きく逃げるにも負荷が掛かりすぎた。
 息を切らしながら壁に凭れ、わずかな休息を取る蜻蛉のアンデッド。
 身体の至る所から血は流れており、滴り落ちた血を辿ってカリスが来てしまうかもしれない不安があった。
 自然治癒にも、大幅に時間を掛けなければならない。

 もう少しばかり休みたいところだが、無理を推してでも離れなければ。

 痛む身体に鞭を叩き、再び逃亡を再開しようとした時だった。


『ビイイィッ…!』


 眼前から、バイクが向かってくるのが見える。
 カリスとは別の、赤いバイクに乗った生身の人間が。

 アンデッドの前に停車したバイクから、乗車している人間が降りる。

 そして、アンデッドの前に立ちはだかった。







(,,゚Д゚)「アンデッド……貴様等に生きてる資格は無い!」

28318話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:36:56 ID:koJKWyzA0


 懐より取り出したギャレンバックルとカード。
 カードを慣れた手付きでバックルに装填し、腰にギャレンバックルをあてがう。
 本来の持ち主ではないギコの腰に、ギャレンバックルは進んで装着を迎え入れた。

 待機音が鳴り響く中、ハンドルに右手を掛け、そして……。


(,,゚Д゚)「変身!」


    【 -♦TURN UP- 】


 ターンさせたバックルからゲートを射出。
 モララーやブーンとは違い、歩きながらゲートを潜り抜け――ギャレンへと変身を遂げた。


『!?』

( OMO)「……コイツを纏うのも久し振りだな」


 当時、ギャレンの適合者として最初に選ばれたギコ。
 あの時変身して以来の感触、忘れようとしても忘れられなかった。

 両手を見つめ、今自分が再びギャレンに変身している事を実感する。

 あの時と違うのは……ライダースーツを纏い、アンデッドとこうして対面している事くらいだ。


( OMO)「これでもアンデッドとの戦いは初心者なんだ……お手柔らかにな…!!」
 

 拳と掌を強く打ちつけ、首をボキボキと鳴らす仕草からは信用ならない言葉だった。
 足をゆっくりと交互に前へと出しながら、徐々にそのスピードを上げ、果敢にアンデッドへと立ち向かった。

28418話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:37:23 ID:koJKWyzA0


 ギャレンとアンデッドが戦いを繰り広げ始めた時、後を追い掛けて来たカリスが到着した。
 

( <::V::>)『あいつは……』


 ギャレンの姿を見た瞬間、クーの頭に敗北の記憶が蘇る。
 府坂の言いなりと化していたモララーが変身したギャレンに、ほぼ一方的に打ちのめされた記憶が。

 だが、ギャレンの動きにどこか違和感を感じていた。
 戦い方が、モララーのそれとは違っていたからだ。



( OMO)「ふっ!……はっ!」

『ビギイイィッ…!』


 蜻蛉のアンデッドが突き出す拳、それらを全て的確に防ぐ。
 カウンターで繰り出されるのは、一発一発繰り出す速さが素早く重たい拳。
 アンデッドの胸部に拳が叩き付けられる度に、重く鈍い音が響く。

 一突きの勢いで後退りしたアンデッドが、ここで再び逃亡を図った。 
 大量の蜻蛉がアンデッドの周囲に召喚され、一斉にギャレンへと飛び掛かる。

 蜻蛉を囮にし、その間に逃げようという魂胆らしい。


 だが、ギャレンは蜻蛉の群れの襲撃を前転し回避。
 回避中にホルスターより引き抜いたギャレンラウザーを両手で構え、片膝を着きながら、
 逃亡せんと飛び立ったばかりのアンデッドに向け銃撃。


『グギイィッ!?』

 
 一発の弾丸がアンデッドの羽を貫き、見事に撃ち落した。

28518話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:37:49 ID:koJKWyzA0


( OMO)「逃がさん!」


 地に落としたアンデッドに向かい走り出すギャレン。
 起き上がろうとするアンデッドの頭部に、接近したギャレンはボールを蹴るかのような容赦のない蹴りを見舞った。

 今度は後ろ首を掴み無理矢理起き上がらせ、腹部に膝を何発も叩き込む。


( OMO)「どうだ…ッ!貴様等が与えてきた全ての痛みを味合わせてやる!!」

『グギィッ!グギャアアァッ!!』


( <::V::>)


 ギャレンの非情とも言える戦い方を、カリスはただ眺めているだけ。
 中身がギコである事は知る由も無いが……ギコの戦い方から、ひとつ見出したものがあった。


「クーさん!!」


 すると、カリスの背後から、ブルースペイダーに乗ったブレイドとモララーが到着。
 二人はブルースペイダーから降り、カリスの横に並び立つ。

 そして、アンデッドと戦うギャレンに視線は釘付けになった。


( ・∀・)「ギコさん…!」

( OwO)「あれが、最初の適合者が変身したギャレン……」

28618話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:38:36 ID:koJKWyzA0


( <::V::>)『何故ギャレンに変身しているのが貴様ではない?』

( ・∀・)「それは……」


 モララーに気付いたカリス。今度こそギャレンに敗北を喫した記憶が一致した。
 ブーンの隣に並ぶモララーに、赤い眼の鋭い眼光が向けられてる。

 睨まれている事を直感的に感じたのか、カリスに対して気まずさもあるモララーは目を逸らした。


( <::V::>)『……どうやら、貴様程には使いこなせていないようだぞ』

( ・∀・)「何…?」

( OwO)「クーさん、どういう事だお?」

( <::V::>)『あの戦い方を見て何も感じないのか?』


 カリスの言葉の直後、二人はギャレンの繰り広げる戦い方に注目する。





( OMO)「はあッ!」

『グウウウゥ……!』

( OMO)「どうした!?この程度の事では貴様等の罪は消えんぞ!!」


 最早、自分の力で立ち上がるのがやっとな程に弱ったアンデッドを、何度も何度も強引に起き上がらせている。
 そして、同じ箇所をこれでもかと言わんばかりに殴り続けていた。

28718話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:39:12 ID:koJKWyzA0


( <::V::>)『奴の戦い方からは、アンデッドを倒す為という目的が感じられない。
      真にアンデッドを憎んでいるからではない。
      まるで水を得た魚……力を得て、戦える事に活き活きとしている』

( ; ・∀・)「………」


 認めたくないが、カリスの言う通りに見えてしまう自分がいた。
 アンデッドを倒すのであれば、ライダーとしての力の使い方というものがある。

 だが、既に弱体化したアンデッドにトドメも刺さず、執拗に殴り続けるその様は……。


( OwO)「ギャレンという力を得て、その力を楽しんでる……?」

( ; ・∀・)「そんな事は有り得ない!ギコさんは意志の強い人間だ、そんな事は…!」

( <::V::>)『貴様が扱った方がより良い物であったろうにな。それに……』

( <::V::>)『私は貴様に借りがある、さっさとアレを取り戻して私と戦え。今度はぶちのめしてやる!』

( ・∀・)「………」

( OwO)「ちょ、待ってくれおクーさん!モララーさんはもう前とは違って……」

( <::V::>)『お前には関係ない。そいつと私の問題だ』

( ・∀・)「大丈夫だよ。俺はもう無駄な戦いはしない…それに、俺はライダーじゃない」

( OwO)「んぐぐ……」

( <::V::>)『……そろそろ私の獲物を返してもらうぞ』


 シャドーチェイサーから降りると、二人をその場に残し高々と跳躍。
 ひと飛びでギャレンとアンデッドのもとまで辿り着き、自ら戦いの中に加わって行った。

.

28818話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:39:43 ID:koJKWyzA0


( <::V::>)『そいつは私の獲物だ!!』

( OMO)「!?ぐはあッ!!」


 カリスの存在に気付いた時には、もう遅い。
 アンデッドに攻撃を加え続けていたギャレンの横っ面に、カリスの回し蹴りが直撃。
 

( OMO)「何だお前は…!?」

( <::V::>)『そいつは挑発してまで私を誘き寄せた、だから私の獲物だ。貴様には渡さん!』

( OMO)「誰の獲物とか、そんな事は関係ない!
      アンデッドは全て害悪に過ぎん、誰の手であろうが駆除するのが我々の役目だ!」

( <::V::>)『ならば何故さっさとトドメを刺さない?もうコイツに戦える程の力は無い』

( OMO)「念には念を押しているだけだ、お前こそ邪魔をするな!」


 いがみ合う両者。距離を取りながら警戒する。
 互いに武器を持ち、ギャレンはギャレンラウザーの銃口を。カリスはカリスアローを向け合う。


『………ッ!』


 この隙を狙い、ふらふらな状態のアンデッドはおぼつかない足取りで逃亡を再開する。
 散々痛めつけられ、最早飛行移動をする事さえ出来なくなっていた。

28918話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:40:21 ID:koJKWyzA0


( OwO)「ああもう、結局そうなってるじゃねぇかお…!」

( ・∀・)「このままではアンデッドを逃してしまう…剣藤、行け!」

( OwO)「了解!」


 二人を見かねたブレイドは、代わりにアンデッドを封印する為に動いた。
 その場から助走を付け大きく跳躍し、アンデッドの前に立ちふさがろうとした。


( OwO)「逃がさないお!僕がお前を――」


 ――その時。

 空中を移動している途中のブレイドに、一台のバイクが空中を走行しながら接近。
 

( OwO)「なっ!?」

( ・∀・)「!?」


 バイクの存在に気付くも、避ける事など出来はしない。
 明らかに衝突するタイミングで近付くバイクは、ブレイドの側面に容赦なく激突をかました。


( ; OwO)「どぅわあっ!?」

( ・∀・)「剣藤!!」

( OMO)「何だ!?」

( <::V::>)『……来たか』


 激突を受け、アンデッドの前に着地する前に落下してしまう。
 前触れなく現れた存在に、ブレイドとモララー、いがみ合うギャレンとカリス、アンデッド…全員の視線は嫌でも集まった。

29018話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:40:45 ID:koJKWyzA0


 ブレイドに激突したバイクは、全員に背を向けるようにして着地。
 
 そのバイクには見覚えがあった。


( OwO)「……!!まさか……!」


 緑色と金色のボディ、カウルには紫のクラブ。
 ライダー達の乗るバイクと類似したそれは、ジョルジュが最初に乗り付けていたものだ。


( ・∀・)「あれは…!?」


 ボトルグリーンのスーツに、金色の装甲。
 広々とした背中を持ち、スーツ越しに浮かぶ肉体は逞しい。

 腰に下げた棍棒のような武器を手に持ち、ゆっくりとブレイド達へと振り向く。
 
 

 そこに現れたのは……






( OHO)


( ; OwO)「レンゲル!?何で…誰が変身してるんだ!?」

29118話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:41:18 ID:koJKWyzA0

 
 再び姿を現した、第四の仮面ライダー・レンゲル。
 
 レンゲルのベルトは、ジョルジュがカテゴリーAに操られ変身をして以来消えたままだった。
 そのはずなのに、今こうして誰かが変身をして、目の前に現れている。


( ・∀・)「今度はジョルジュじゃない……一体誰が!?」

( OHO)


 全員の注目など気にする素振りは無い。
 レンゲルはアンデッドの前に立ちふさがり、じっくりと歩み寄る。


『ビイィイ……!!』


 新たな障害が出現し、身の危険を感じたアンデッド。
 磁力が反発するように、後退りをしている。


 右手に持った棍棒の武器を左手に持ち替え、脇に尖端部を抱えながら逆さに持つ。
 空いた右手で、右腰のカードケースを開きカードを一枚取り出す。
 柄の後端に備わったラウザーと思わしき部分に、カードをラウズさせた。


    《-♣6 BLIZZARD-》


 カードの紋章を受けたレンゲルの身体に、湯気が発つように冷気が纏い始める。

29218話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:41:45 ID:koJKWyzA0


( OHO)『ふっ!』


 アンデッドに向けその右手を伸長した瞬間、全身に纏った冷気が放出。
 咄嗟の回避も出来ないアンデッドは、レンゲルより放たれる冷気を正面から受けた。


『ウウゥギャアァア……!?』


 すると、冷気を受けたアンデッドの身体は……一瞬にして凍結された。

 ほんの一瞬の出来事だった。
 レンゲルの放った冷気に包まれた瞬間、アンデッドは凍て付く氷の中に閉じ込められたのだ。


( OwO)「アンデッドが、氷漬けにされた…!」


 氷のオブジェと化したアンデッドの腰にあるバックルは、開かれた状態となっている。
 
 レンゲルは再びカードを一枚取り出すと、アンデッドに向けカードを投擲。
 氷に突き刺さり、氷越しに蜻蛉のアンデッドの封印を始めた。

 カードにみるみる吸収され、氷ごとアンデッドは消失。
 レンゲルの手の中に帰還したカードには、"♥4 FLOAT"と記され蜻蛉の絵が描かれた。
 


( OHO)『……さぁ、次はお前達だ』


 カードケースにカードを収納すると、レンゲルは目の前の全てのライダーに向け指を差す。

29318話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:42:20 ID:koJKWyzA0


( OwO)「君は誰なんだ!?」


 レンゲルの得体が知れず、警戒しながらも問い詰める。


( <::V::>)『無駄だ。そいつもまた、カテゴリーAの支配下だ』

( OwO)「またカテゴリーAかお…やっぱり、レンゲルに変身すれば支配されるだけなのか……!」

( <::V::>)『貴様にも借りがある。正体は知らないが…貴様を倒す事には変わり無いな、カテゴリーA!』

( OHO)『来い…!』


 果敢にもレンゲルへ積極的に挑むカリス。
 初見時に一方的に打ち負かされた事が、悔しさとして残っているようだ。

 カリスアローを持ち直し、カリスはレンゲルへと突進。
 距離を一気に詰めカリスアローを振り下ろすと、レンゲルは武器でこれを防御する。
 
 鍔迫り合いとなると、カリスは体重を前に掛け強引に押し込む。
 力に押されてか後退するレンゲルだが……、


( OHO)『……どうした、カリス』

( <::V::>)『!?』


 武器を器用に駆動させカリスアローを絡め取ると、三枚刃が重なった鋭利な尖端でカリスを斬り付けた。
 

( ;<::V::>)『くっ…!』

( OHO)『もっとだ…もっと戦いを求めろ!』


 手放してしまったカリスアロー。
 攻撃を防ごうとする前に、レンゲルの武器は幾度もカリスを斬り付ける。
 戦いを求めろ……そう口にしながら、何かカリスに向け訴えるかのように。

29418話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:42:51 ID:koJKWyzA0


( OHO)『フンッ!』

( ;<::V::>)『うぐあぁッ!?』


 腹部に押し込むような蹴りを受け、後方へと押しやられる。
 受け身を取り咄嗟に立ち上がるカリスの横に、ブレイドが並び立った。
 ブレイラウザーを引き抜き、カリスは左手にカリスアローを呼び戻す。


( <::V::>)『チィッ…!』

( OwO)「やるしかないかお…!!」


 ブレイラウザーのオープントレイを展開し、"♠4 TACKLE"のカードを引き抜いた。
 同時にレンゲルもカードを二枚引き抜き、ブレイドよりも先に一枚のカードをラウズした。


    《-♣10 REMOTE-》


 もう一枚…先程封印したばかりの"♥4 FLOAT"のカードを宙に放り投げるレンゲル。
 ブレイドがレンゲルに続き、カードをラウズしようとした……。

 その時だった。

 レンゲルがラウズした"♣10 REMOTE"のカードから、ブレイドのカード・宙に投げたカードに向け二本の光線が射出。


( OwO)「うわっ!何だ!?」

( <::V::>)『あのカードは…まさか!?』


 光線を受けたカードは意志を宿したかのように宙に浮上。
 紫色の紋章が浮上するカードを通過した途端、カードが緑色に発光。
 カードの中より漏れ出す緑色の光。徐々に光の量は増幅し、光は異形の形を成し始め、そして――。

29518話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:43:28 ID:koJKWyzA0


『ビイイイィィィッ!!』

『グオオオオオォオオオッッ!!』


 ブレイドとカリスの前に、歪なその姿を現した。
 先程封印されたばかりの蜻蛉のアンデッドの身体には傷一つ無い。
 そして、元々封印されていた"♠4 TACKLE"からは、イノシシのアンデッドが解放された。


( ; OwO)「なっ!?」

( ; ・∀・)「アンデッドの封印が……解放された!?」

( OHO)『行け…!』

 
 解放された二体のアンデッドは、レンゲルの命令を受けブレイドとカリスに襲い掛かる。


( ; OwO)「ぐっ…!何でアンデッドの封印が!?」

( <::V::>)『奴が使ったカードの能力だ!封印を解き、操る事が出来る…!』

( ; OwO)「アンデッドを操るだって…!?」


 レンゲルが使用した"♣10のREMOTE"…カードに封印されたアンデッドを解放し、意のままに操る事が出来る能力を持つ。
 使い道さえ誤らなければ、心強い力になり得る。
 が……その使い道を誤れば、極めて危険なカードだ。

 二体のアンデッドの襲撃を受け、二人はアンデッドの相手をせざるを得ない状況となってしまった。




 その傍らで、戦いに加わらず混戦を見つめるギャレン。
 だが、ギャレンが本当に見ているのは混戦ではない。


( OMO)「あれが、レンゲル……」


 混戦の向こう側に見えるレンゲル、その勇壮たる姿をただ呆然と見つめていた。

29618話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:45:53 ID:koJKWyzA0


 ライダーとアンデッドの混戦の中、レンゲルが動いた。
 棍棒のような武器を両手に持ち、右手を後端に添える。

 すると、両手を反対側に引き、シャフト部に収納された武器の柄を伸長。
 最大まで柄が伸びたと同時に、尖端の三枚刃が♣のような形状に展開。
 棍棒と思われていた武器は、杖状の武器へと変化した。


( OHO)『ぬうああああぁッ!!』


 錫杖の武器――レンゲルラウザーを右手に構え、アンデッドと交戦するライダーに向け駆け出す。


( ; ・∀・)「剣藤!後ろだ!!」


 イノシシのアンデッドの相手を担っているブレイド、その背中を三枚の刃で叩き付けた。
 刃が背中を斬り付けた瞬間、錫杖の遊環が弾き合うような、透き通った音が響く。


( ; OwO)「うあぁッ!?」


 アンデッドに気を取られ背面の警戒を怠っていた。
 レンゲルラウザーの殴打に体勢を崩し、ブレイドは地に倒れた。

 レンゲルが戦いに介入した途端、二体のアンデッドは戦いを譲るかのように後退りを始める。


( <::V::>)『どうした!?全員まとめてでも構わないぞ!』

( ; OwO)「クソ…ッ!レンゲル……一体誰なんだ!?」


 ブレイラウザーを地面に突き刺し、杖にしながら立ち上がる。
 ブレイドとカリス、二人のライダーがレンゲルに対し戦闘の構えを取った。


( OHO)『過去の仮面ライダー共……最強のライダーの前に散るがいい!』


 カテゴリーAを封印した事で、ひとつの大きな脅威は去ったかと思われた。
 だが……封印されて尚、ライダー達を蹂躙する。

 蜘蛛の巣の罠は、既に至るところへと張り巡らされていたようだ……。

.

29718話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:46:15 ID:koJKWyzA0





     【 第18話 〜張り巡らされた蜘蛛の巣〜 】 終




.

29818話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:46:39 ID:koJKWyzA0

==========

 【 次回予告 】


(*゚∀゚)「つーか…あのレンゲルって奴、ちょっとばかり鬱陶しいなァ。アタシの事あんな軽く飛ばしてくれちゃってさ……」

「そろそろ、私達が動きましょうか」

(*゚∀゚)「だーかーら、最初からそうしようっつってんじゃん?雑魚差し向けたってこうなんのがオチよ」

「あれはお手並み拝見よ。少なくとも私が動く為の事前収集にはなったわ」

(*゚∀゚)「はいはい…汚れ役は全部アタシだもんね。別にいーけど」

(*゚∀゚)「じゃ……そろそろ本格的に動くとしますかァ」


 遂に、カテゴリーQが動き出す。

29918話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:47:17 ID:koJKWyzA0


(;'A`)「何でこんなに蜘蛛が…!?どうなってんだよ俺…!?!?」


 ドクオの身体から溢れる、蜘蛛の子の大群。
 カテゴリーAの意志を宿したレンゲルバックルが、ドクオに迫った。


    『――俺ヲ受ケ入レロ……』

(;'A`)「ッ…何で俺なんだよ!!俺はライダーになんかなりたくないんだって!!

    『――受ケ入レロ…俺ノ、力ヲ…!』

(;'A`)「やめろ……やめてくれ!!!」

(;'A`)「ッ――!!!」

30018話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:47:44 ID:koJKWyzA0


( OwO)「お前…!何を企んでんだお!」

(*゚∀゚)「企んでなんかないよ?もうそういうのアタシはやらないって決めたからさぁ。面白くないし?」

(*゚∀゚)「本当に面白いモノ、知ってたけど我慢してたんだよねェ。だから……」

(*゚∀゚)「今日は、楽しみに来ちゃった……!!」

(*>∀<)「フォオオオオオオオオオオオオオウッ!!!!」

( ・∀・)「!?」

( OwO)「それが、お前の正体か…!」


 アンデッドとしての正体を見せたカテゴリーQが、ブレイド達の前に現れる。
 府坂に続く上級アンデッドの力とは…!?

  、、
@*゚皿゚)@『さァて……楽しませてくれよなァ!!』

30118話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:48:19 ID:koJKWyzA0


(,,゚Д゚)「変身……!」


    【 -♣OPEN UP- 】


 そして、レンゲルバックルを手にしたギコが、自らレンゲルに変身してしまう事態に。


( OwO)「はっ…!?」

(;'A`)「ッ…!!」

( ; ・∀・)「ギコさん……!?何で!?」


 自分の意志でレンゲルへと変身したギコの目的とは?
 
 ギコさえも、敵となってしまうのか!?


 次回、【 第19話 〜操られる心〜 】

 ――今、その力が全開する!


==========

302 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:50:46 ID:koJKWyzA0
しおり

>>9 第15話
>>84 第16話
>>152 第17話
>>234 第18話

来週も投下できればします。
けどゴルフ中継で休止する可能性高いです。

303名無しさん:2017/12/10(日) 16:00:23 ID:c8UhxzcM0
おっ来てた来てた
乙!

304名無しさん:2017/12/10(日) 19:34:40 ID:ot0cYMdk0
りんごジュース飲みながら読も

305名無しさん:2017/12/11(月) 01:07:00 ID:j8uSiatQ0
レンゲル跳梁跋扈

306名無しさん:2017/12/11(月) 08:23:40 ID:ePn7iwB20
さりげなく草加のセリフ混ぜるのやめてちょっと笑う
来週も来てくれたら嬉しい

307名無しさん:2017/12/11(月) 09:44:51 ID:Z3e00BIA0
クーがちょっと打ち解けてきてるの嬉しい

308 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:25:04 ID:Naxzm9FU0





     【 第19話 〜操られる心〜 】




.

30919話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:25:39 ID:Naxzm9FU0


( OHO)『おおおおおおおおおおッッ!!』


 レンゲルラウザーを軽々と振り回し、ブレイド達に攻撃を仕掛けるレンゲル。
 ヒュンヒュン、と風を切る音が鳴り、武器同士が打ち合う激しい音が響く。


( ; OwO)「ぐうッ…!迂闊に近付けないお!」

( <::V::>)『くっ…!』


 長柄武器特有のリーチを活かし、相手の動きを牽制し続けている。
 二対一…その上、相手には戦いの巧者であるカリスが居るにも関わらず、全く引けを取らない。
 
 最強のライダーと称するに恥じない腕と力を、存分に見せ付けていた。


( ・∀・)「強い……あの戦況の中で、カリスにあれだけ善戦するなんて……」


( OwO)「何とかして止めないと…!」

( OHO)『ふんッ!!』

( ; OwO)「うわああぁっ!!」


 柄でブレイラウザーを弾かれ、ブレイドの顔面にレンゲルラウザーの後端による突きが命中。
 続いて流れるように横薙ぐレンゲルラウザーの三枚刃が、胴体を斬り付けた。

31019話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:26:04 ID:Naxzm9FU0


 ブレイドを攻撃している隙に背後に迫ったカリス。
 無言で迫るカリスの気配に気付き、レンゲルは振り向きざまにレンゲルラウザーを大きく上へと振り上げた。


( ;<::V::>)『ぐああぁッ…!!』


 位置まで予期していたかのように的確に振り上げたレンゲルラウザーが、カリスの胴体を切り裂く。
 
 斬撃に怯んだ隙を突いたレンゲルが怒涛の追撃を開始。
 軽やかな身のこなし、華麗な槍捌きの如く長柄の武器を思うままに操りカリスを圧倒する。


( OwO)「クーさん…!やめろってんだおォ!!」
 
( OHO)『ふっ、カリスを庇おうというのか?愚かな…!』


 攻撃に晒されるカリスを突き飛ばし、自らが身代わりとなり立ちはだかった。
 レンゲルは嘲笑い、斬撃と殴打の嵐をブレイドに対して再開。
 繰り出される三枚刃と後端、そして蹴りが成す術なく身体に打ち付けられた。
 

( OHO)『弱過ぎる…これが貴様等の力なのか!?』

( ; OwO)「ううぅッ…!あああ゙あ゙ッ!!」

( ・∀・)「クソ、このままでは………!」
 

 レンゲル一人に、劣勢を強いられているこの状況。
 長引けば長引く程、本当に打ち倒されてしまうかもしれない危機感を、何も出来ず傍で見ていたモララーは抱いていた。

 そんな中、戦いに加わっていないギャレンにモララーの視線は向けられた。

31119話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:26:32 ID:Naxzm9FU0
 

( ・∀・)「ギコさん、ブーン達と協力してレンゲルを止めてください!」

( OMO)

( ・∀・)「ギコさん…?」


 先程から、ただ一人呆然と戦いを見つめているギャレン。
 モララーの呼びかけにも応じず、動きは未だ止まったままだ。

 見かねたモララーはギャレンのもとまで移動し、その肩を揺すった。


( ・∀・)「ギコさん!!どうしたんですか!?」

( OMO)「…あ、ああ。すまん、少し困惑してしまっていた…俺に任せろ」

( ・∀・)「……?」


 ようやく反応したかと思えば、思いついたかのように動き始めた。
 催促を受けたギャレンは、戦いの中へと駆け出す。

 らしからぬ様子を目の当たりにし、走る背中を不安そうな目で見つめた。

31219話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:27:04 ID:Naxzm9FU0


( OHO)『仮面ライダーブレイド…口ほどにも無い、貴様から倒してやる!』

( ; OwO)「うああああっ……!」


 ブレイラウザーでレンゲルラウザーの猛威を防ぎ止めたが、腹部に押し込むような蹴りが叩き込まれる。
 体勢を崩しそのまま倒れ込んでしまったブレイド。その顔面に、尖端が突き付けられた。
 
 頭上に翳したレンゲルラウザー、三枚刃の尖端が太陽の光を眩しく反射する。
 倒れたブレイド目掛けて振り下ろされようとした時。


( OMO)「そこまでだ!」

( OHO)『……?』


 こめかみ部分に突き付けられる銃口。

 レンゲルの横に辿り着き、ギャレンラウザーを構えるギャレンの姿があった。
 振り下ろそうと構えた体勢そのままに、レンゲルは銃の持ち主に視線を向ける。


( OMO)「これ以上の争いはさせん!」

( OHO)『お前は………』

( ; OHO)「―――ッッ!!」


 突如、レンゲルに異変が起きた。

 頭上に翳していたはずのレンゲルラウザーが地面に落ちる。
 両手はふるふると震え出し、自身の頭を抱え始めた。
 何かにもがき苦しむかのように、後退りしながら悶えている。

31319話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:27:36 ID:Naxzm9FU0


( OMO)「なんだ…?」

( ・∀・)「レンゲルの様子が…どうしたと言うんだ!?」

( ; OwO)「ぐ……ッ、もしかして……自我を戻し始めた……?」


 レンゲルの苦しみ様は、ブレイドが以前見た時と同じだった。
 唐突に戦意を失い苦しみ出したかと思いきや、操られていたジョルジュの意志が表れたのだ。
 その時と同じように、レンゲルに変身した者の意志がカテゴリーAの支配を潜り抜け、表れようとしていた。


( ; OHO)「ううううぅッ…!ブーン……俺を、止めてくれェ……!」

( OwO)「え………」


 助けを求める声は、ブレイドに変身しているブーンの名を紡いだ。
 その声に聞き覚えどころか馴染みすらあるブレイドは、レンゲルに変身している人物が誰なのか分かってしまった。


( OwO)「まさか……お前!?」


 痛む身体を起こし、助けを求めるレンゲルに手を差し出そうとした瞬間。


      《-♥SPINING WAVE-》


 響いた電子音声。
 風が吹き荒ぶ音が聞こえた瞬間、視界の横から風を纏ったカリスが現れた。
 

( ; OwO)「はっ…!クーさん待って!!」

( <::V::>)『はあああああッ!!!』

31419話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:28:10 ID:Naxzm9FU0


 レンゲルの正体など知りもしない、カリスにとっては興味すらないだろう。
 颯爽とレンゲルの前に再び姿を現し、風の力を帯びた鋭い手刀で悶え苦しむレンゲルを容赦なく斬り付けた。
 

( ; OHO)「うわあああああああぁぁっ!!」


 手刀を受け、足をばたつかせながら吹き飛んだ。
 壁に激突した瞬間、レンゲルバックルのゲートが強制的に閉じられる。
 射出された紫のゲートが、力無く倒れたレンゲルの身体を覆った。


 変身が解除され、遂に正体が現れる。
 ブレイドは既に把握している、その正体は……













(;'A`)「がはっ!うあ……痛ェ……ッ!」

( #OwO)「やっぱり……お前かお、ドクオ!!」

31519話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:28:50 ID:Naxzm9FU0


 倒れたドクオに詰め寄ったブレイドだが、身体を気遣う様子はない。
 寧ろ胸倉を掴み強引に上体を起き上がらせると、ドクオに激しい怒りを見せた。

 ブレイドの怒りの理由を知ってか、ドクオは早速許しを請おうと姿勢を低く見せている。


::(;'A`)::「ま、待ってくれ……!」

( #OwO)「待たねぇお!!なんでお前がレンゲルのベルト持ってんだ!!
       危うくみんなやられるところだったんだぞ!?!?」

::(;'A`)::「ち、違うんだよ!!俺はただバイクのシートに置かれてたのを手に取っただけで……」

( #OwO)「変身しといてそんな言い訳はないだろ!?何ですぐに僕達に届けようとしなかったんだお!!」

( ・∀・)「落ち着け剣藤!彼は悪くない、それに変身したのも彼の意志じゃない!」

( OwO)「え……?どういう事ですか?」


 二人の間に割って入ったモララーの言葉に意識が向き、胸倉を離した。
 身体中に走る痛みを受け入れる間も無く詰め寄られたドクオは、息を切らし地に伏せる。
 

(;'A`)「うぅっ…!はぁ…はぁ……」

( ・∀・)「このカテゴリーAはカードに封印されながら、自分の力を外部に発信しているんだ。
      ジョルジュもそうだ、カードを見た途端に支配され意のままに操られてしまった」

( ・∀・)「変身する以前に、カテゴリーA自身に操られてしまっているんだ」

( OwO)「何ですか、それ…!?封印されてるのに何で!?」

( ・∀・)「分からない……カテゴリーAを封印したのは俺だ。原因があるとすれば……俺にある」

( ・∀・)「俺が、力に溺れて正しく戦わなかった所為だ…」

( OwO)「モララーさん、別にそんな事は…」

31619話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:29:58 ID:Naxzm9FU0


( OMO)「おい待て!!」


 ギャレンの大きな声が、一斉に視線を寄せ集めた。 


『ッシャアアッ!!』

( <::V::>)『!?』

( OMO)「くっ、逃がしたか…!」

 
 蜻蛉のアンデッドが召喚した蜻蛉の大群が、カリスとギャレンの目を暗ました。
 その隙に、二体のアンデッドが逃亡。
 ドクオの変身が解けた事でアンデッド達は主を失い、意のままに動き出したのだ。


( #<::V::>)『チッ……!』


    《-♥2 SPIRIT-》


 クーの姿へと戻ると、全てを狂わせてくれた地に伏したままのドクオのもとへと歩み寄り、首を掴み強引に身体を起こした。


(;'A`)「ぐがッ…!?」

川 ゚ -゚)「単刀直入に聞く、私と戦う気はあるか?」

(;'A`)「へ、へえっ…!?」

( OwO)「クーさん!これには訳が…」

川#゚ -゚)「そんな事は私には関係無い、興味も無い!」


 アンデッドを取り逃がした事。自分の手で倒す事が出来なかった事。
 何より、渡辺達を餌に使われた事への不満・怒りが収まらない。

 当のドクオはこの状況に理解など追いつくはずもなく、混乱している様子。
 まさに、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしている。

31719話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:30:26 ID:Naxzm9FU0


 八つ当たりとも言える矛先を向けられ、ドクオは完全に怯えきっている。


川#゚ -゚)「戦う意志が無いのなら今すぐ消え失せろ!貴様と言いあの男と言い、何なんだ!?」

川#゚ -゚)「覚悟も無く本当にただの傀儡と化しているのなら、二度と関わるな!
     また現れようものなら、次は貴様の命もろともカテゴリーAを倒す!」

::(;'A`)::「ひっ…!」


 突き飛ばされたドクオはブレイドの腕の中に収まる。
 バーボンハウスに通い詰めていたドクオも、クーの事は前から知ってはいた。
 だが、ここまで露骨に表情を変えた彼女を見るのも、これ程までに怒る姿が怖いと感じるのも初めてだった。


( OwO)「クーさん落ち着いて!本当にごめん、僕がしっかりレンゲルを管理するから…。
      とにかくドクオ、一旦ウチまで来るんだお。いろいろ話を聞かなきゃならない」

(;'A`)「ッ……」

( ・∀・)「俺が預かるよ。行こう」

( OwO)「お願いしますお」


 どうする事も出来ないまま、ドクオはモララーへと引き渡された。
 地に落ちたレンゲルバックルを拾い、ギャレンの変身を解いたギコのもとへと移動する。

31819話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:30:46 ID:Naxzm9FU0


( ・∀・)「ギコさん、行きましょう。彼を剣藤の家まで送ってやってください」

(,,゚Д゚)「………」


 反応が無い。
 立ち尽くしたまま、一点をボーッと見つめている。


( ・∀・)「ギコさん?」

(,,゚Д゚)「…ん、ああ。分かった」


 二度目の声にようやく反応した。
 ドクオの肩を支えながら、レッドランバスのもとへと歩き始めた。


( ・∀・)「ギコさん、どうしたんだ…?さっきから何か変だ」


 レンゲルが介入してきた時から、ギコの様子が露骨におかしい。
 その理由が不明なだけに、常に冷静であったはずのギコに疑問を募らせていた。

31919話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:31:20 ID:Naxzm9FU0


 その一方で、ブレイドの変身を解いたブーンは自身のバイクのもとへと戻るクーを追いかけていた。


( ^ω^)「ねぇクーさん、さっきのアンデッドってもしかして……」

川 ゚ -゚)「そうだ、私を狙っていた」

( ^ω^)「やっぱり……」

川 ゚ -゚)「分かっただろう……私が居れば、迷惑が掛かるだけだ。私が不幸にしてしまうんだ……」


 先程まで怒りをその顔に表していたが、今では何処か切なげな表情をしていた。
 理由は一つ。
 助けに来たはずの渡辺やショボンの様子が気になりながらも、彼等に近付いてはいけないという葛藤。


川 ゚ -゚)「だから私は居てはいけない。でぃちゃんの傍にも……あの二人の傍にも――」

( ^ω^)「そうじゃないだろ!?」


 話を遮るブーンの声はとても強かった。
 背を向けて歩いていたクーも、思わず振り向いてしまう程に。


( ^ω^)「クーさんが離れてた間にあまねちゃん達は襲われただろ?クーさんが傍に居れば、少なくともこんな事にはならなかったはずだお」

( ^ω^)「あの二人がクーさんを必要としているように、クーさんだってあの二人の事が大切なんだろ?だったら君が守れ!
      君が遠ざかってもあまねちゃん達が襲われるなら……傍に居て守れよ!」

( ^ω^)「――守れよ、クーさんが!!」

川 ゚ -゚)「……!」


 真っ直ぐな眼差しと向けられる言葉に胸を打たれたのか、クーは言葉を返す事が出来ない。

 単なる優しさでは済まされない。
 アンデッドという相容れない化け物。その存在を否定する事無く、寧ろブーンはクーを信じている。
 そんなブーンに対し、今まで感じた事のない気持ちが芽生え始めていた。
 
 それ以上言葉を交わそうとはせず、クーはバイクに乗るとブーンを置き去りに一人走り去って行った。


.

32019話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:33:07 ID:Naxzm9FU0





 ―――――




.

32119話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:33:32 ID:Naxzm9FU0


 ――街中のとある小さな公園にて。

 夕方にも関わらず、既に日が暮れ始め辺りは薄暗くなって来た。

 それでも、元気に公園内を駆け回りながら楽しそうにはしゃぐ子供。
 片隅で、子の親達がしている世間話や、帰宅中の学生達の話し声でガヤガヤと騒がしい。

 そんな光景に不釣合い過ぎる派手な格好をした一人の若い女が、ブランコに座り揺さぶられながら遊ぶ子供達を見つめていた。


(*゚∀゚)「あーあ、失敗してやんの……マジクソよわ。つっかえないなぁ……」


 正体は人間などではない。カテゴリーQだ。
 脅しをかけた蜻蛉のアンデッドが、封印された上に再び解放された事を感じ取っていた。


(*゚∀゚)「つーか…あのレンゲルって奴、ちょっとばかり鬱陶しいなァ。アタシの事あんな軽く飛ばしてくれちゃってさ……」





「そろそろ、私達が動きましょうか」


 カテゴリーQの乗るブランコの後ろに、一人の女性が現れる。
 背中が女性に軽くぶつかり、前後に緩く揺れていたブランコが止まった。


(*゚∀゚)「だーかーら、最初からそうしようっつってんじゃん?雑魚差し向けたってこうなんのがオチよ」

「あれはお手並み拝見よ。少なくとも私が動く為の事前収集にはなったわ」

(*゚∀゚)「はいはい…汚れ役は全部アタシだもんね。別にいーけど」




(*゚∀゚)「じゃ……そろそろ本格的に動くとしますかァ」

.

32219話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:34:22 ID:Naxzm9FU0





 ―――――




.

32319話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:34:48 ID:Naxzm9FU0


 日が暮れて、外はすっかり真っ暗になってしまった。

 アンデッドに攫われた後、ブーン達の手によって助けられたショボンは、この日のバーボンハウスの営業を急遽休む事にした。
 理由も分からず化け物に襲われ、渡辺は精神的なショックを受けている。
 クーがいなくなってから元気のない渡辺には、よりダメージが大きい。

 客が誰一人いないカウンターに突っ伏す渡辺の隣に寄り添うように、ショボンが座っていた。


(´・ω・`)「大丈夫かい、あまね」

从' - '从「うん……」

(´・ω・`)「もし何かあっても、ブーン君達が助けてくれるから大丈夫だよ。僕も傍にいるから」

从' - '从「……クーさん、もしあんな化け物に襲われてたらどうしよう……」

(´・ω・`)「………」


 自分が襲われたにも関わらず、クーの心配ばかり。
 彼女がいなくなってからの数日間、どれだけ貴重な存在であったかを思い知らされていた。 
 警察に捜索届を提出しようともしたが、そもそもクーは最初から身元が分からない故に期待も出来なかった。


(´・ω・`)「ちょっと外の様子見てくるよ、此処に居てね」

从' - '从「ショボンさん!すぐ戻って来るよね!?」

(´・ω・`)「大丈夫だよ、安心しなさい。何処にも行ったりしないから」


 数時間前にあんな事があったばかりで、渡辺は一人になる事への恐怖を強く覚えてしまっている。
 立ち上がったショボンの腕を取る渡辺の頭を、宥めながら優しく撫でた。

32419話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:35:25 ID:Naxzm9FU0


 店の扉に手を掛ける。
 ベルの音を鳴らしながらゆっくりと扉を押し、外へ出ようとした。


(´・ω・`)「……!!!」


 だが、ショボンの足は動かない。
 扉を開けた瞬間、目に入ってきた姿に驚き、扉に手を掛けたまま固まってしまった。

 そこに居たのは……、



川 ゚ -゚)「……ショボンさん」

(#゚;;-゚)


 手紙だけを残し、突然行方を眩ましていたクーがそこ居た。
 クーの後ろには、見慣れぬ少女の姿も。


(´・ω・`)「クー…!!」

「えっ…!」


 店の奥から、ドタドタと走る足音が聞こえる。
 すぐに足音は近付き、ショボンの脇下を潜りその姿を見せた。


从' - '从「クーさん……!!!!」

川 ゚ -゚)「………あの、実は――」

32519話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:35:58 ID:Naxzm9FU0


 何かを話そうとしたが、突然抱き付いてきた渡辺によって遮られてしまう。
 一度背中に回した右手を戻し拳を作ると、クーの胸を何度も叩いた。

 胸に顔を埋めていて表情までは見えないが、鼻をすする音と震える声で、泣いているのが分かった。


从;ー;从「ばか!クーさんのばか!!心配掛けないでって約束したの忘れたの!?」

川 ゚ -゚)「うん……ごめん」

从;ー;从「戻って来てくれたんでしょ…??だったら、ただいまって言って!」

川 ゚ -゚)「………」

从;ー;从「言って!!」


 ぎゅう…と、クーの服を掴む力が強い。
 離すまいとする渡辺の想いが、自然と手に加わっていた。

 渡辺に言葉を促される度に、クーの心は揺れ動く。


川 ゚ -゚)「………ただいま」


 「ただいま」。……その言葉が言いたくて、つい口が動いてしまった。
 隠そうとしてきた本心が、制御出来ずにクーの心と身体を動かしていた。


从'ー'从「…ぐすっ、おかえり!」

(´・ω・`)「おかえり、クー」


 何も聞かず、クーの帰りを受け入れる二人。
 ショボンがクーと渡辺の肩を抱き、満足そうに笑みを浮かべた。

32619話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:36:34 ID:Naxzm9FU0


(#゚;;-゚)「………」


 その後ろで、でぃは三人の仲睦まじい姿を見つめていた。
 血の繋がりがなくとも、家族同然に想い合う、憧れたその姿を。


(´・ω・`)「…クー、この子は?」


 でぃの存在に気が付いたショボンが、でぃの目の前で屈み目線を合わせる。


川 ゚ -゚)「私がこの家を出ている間、この子にお世話になってました。でも、この子も身寄りが無くて…」

(´・ω・`)「そうなのか……お名前、言えるかな?」

(#゚;;-゚)「でぃだよ」

川 ゚ -゚)「それで……あの、二人にお願いがあって――」

从'ー'从「でぃちゃんかぁ、私はあまね!よろしくね?」

(´・ω・`)「僕はショボンっていうんだ、好きなように呼んでいいよ。これからよろしくね。とにかく、外は寒いから早く中に入ろう」

川 ゚ -゚)「えっ…あ、あの」


 クーの話も聞かず、二人は勝手に話を進めた。
 あまりにも流れるように進み出す事態に、好都合にも関わらずかえって困惑してしまうクー。


(´・ω・`)「言わなくても分かってるさ。新しい家族だろう?」

从'ー'从「クーさんがお世話になったんなら、今度は私達がお返ししなきゃ!」


 全てを聞かずとも、二人はクーの言いたい事などお見通しだった。
 だが、当のでぃは、二人の底抜けな優しさに戸惑ってしまっていた。

32719話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:38:06 ID:Naxzm9FU0


(#゚;;-゚)「本当に、いいの?」

(´・ω・`)「もちろん。僕達はね、血の繋がりなんかなくたって家族なんだ。でぃちゃんとも素敵な家族になれるはずだよ」

从'ー'从「そうそう〜、大事なのは心だから!だからでぃちゃんは、今日から私達と一緒にご飯食べて、一緒に寝るの!
     ちゃんとお風呂も入って、お話したりもするんだよ?」

(#゚;;-゚)「………」

川 ゚ -゚)「……でぃちゃん、此処は本当に温かい場所だよ。きっと気に入ってくれると思う」

(# ;;- )「………ありがとう」


 小さな唇をキュッと噛み締め、零れそうになる涙をこらえる。
 目に溜まった涙をゴシゴシと拭い顔を上げ、クー達に向け笑顔を見せた。


(#^;;ー^)「……うん、よろしく!」

从'ー'从「ふふ、何かお腹空いちゃったな〜!ショボンさんのご飯はねぇ美味しいんだよ〜?」

(#゚;;-゚)「そうなの?」

(´・ω・`)「はは、でぃちゃんの口に合えばね。今日は寒いしシチューでも作ろうか」

(#゚;;ー゚)「シチューかぁ、食べたい!」

从'ー'从「食べたいね〜!早く作ってよぉ早く早く〜〜」


 元気の無かった渡辺に、太陽のように眩しい笑顔が戻った。
 楽しそうに話しながら、店の中へと入って行く三人。
 クーはその後ろ姿を見つめながら、一枚のカードを取り出し……でぃの隣に寄り添わせるように翳した。


川 ゚ -゚)「――お前の願いは叶えたぞ、モス」


从'ー'从「クーさん何してるの〜?早く!」

川 ゚ー゚)「……ああ、今行くよ」

.

32819話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:38:46 ID:Naxzm9FU0

 ――――――
 ――――
 ――


 平穏が訪れたクー達とは逆に、ブーンの家では張り詰めた空気が漂っていた。
 クーを除いた先刻の面々が集結している。

 何も分からず、無抵抗のまま連れて来られたドクオを取り囲むようにソファに座る一同。
 

(;'A`)「………」

 
 重苦しく漂う空気。
 全ての目線がドクオに集められ、気まずさのあまりただ俯いていた。
 自分がしてしまった事の重大さには、何となくだが気付いている様子。


( ^ω^)「まず、このベルトを何処で見つけたのかをもう一度説明してくれお」

('A`)「あ、ああ……」

( ・∀・)「釘を刺すようで悪いけど、嘘はつかないでくれ」

ξ゚⊿゚)ξ「ちゃんと正直に答えてね、大事な事だから」

(;'A`)「わ、わかってます!でも、信じてもらえるか不安ですけど……」
 _
( ゚∀゚)「ちゃんと話せばいいんだ。お前の気持ちは分かるから、心配すんなよ」

(;'A`)「わかった……」

32919話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:39:23 ID:Naxzm9FU0


('A`)「えっと…今日、ブーンが働いてるスーパーに買い物に行ったんだ。まぁ特に何も買わなかったんだけどさ…。
   んで、帰ろうと思ってバイクのとこまで来たら……シートの上に置かれてたんだよ」

ξ゚⊿゚)ξ「シートの上に置かれてた??」
 _
( ゚∀゚)「お前…本当かよそれ?素直に拾ったって言えよ」

(;'A`)「本当だって!誰かが置いてった人陰があった訳じゃないし、誰の仕業かは知らないけど…戻ったら置いてあったんだよ!」

(;'A`)「大体、そんなとこに置かれちゃあ嫌でも手に取るだろ?」
 _
( ゚∀゚)「まぁ……」


 ブーンとジョルジュの前から姿を消し、行方不明となっていたレンゲルバックル。
 それがドクオのもとに届いていたとしたら、随分出来過ぎた話であり、信憑性に欠ける話であった。


( ^ω^)「あの時、レンゲルのベルトは確かに消えた……それが何でドクオのところに?」
 _
( ゚∀゚)「そうだよ。ベルトが自分の意志でドクオのとこに来たっていうのか?」

(;'A`)「そんなの知らないよ!俺が聞きたいくらいだし…」

('A`)「それで……おもちゃかと思って適当にいじってたら、何かトレイみたいなとこにカードが入ってて……」

( ・∀・)「カテゴリーAか……」

('A`)「こっからなんすよ!こっから信じられないような事が起きて……」

33019話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:40:09 ID:Naxzm9FU0


('A`)「カードを見た瞬間、辺りがこう……なんていうか、闇に包まれるというか……」
 _
( ゚∀゚)「――!!」

( ・∀・)「闇に包まれる…それで!?」

('A`)「え、えっと……見渡したら、たくさんの蜘蛛の巣が張られてて……身体が蜘蛛の糸に縛られて」

ξ゚⊿゚)ξ「ジョルジュと同じだわ……」
 _
( ゚∀゚)「だろ!?俺もそうなったんだよ!意識はあるのに身体が言う事聞かなくなっただろ!?」

('A`)「そう!それだよ!自分の意識があって…でも、ブーン達に攻撃してる自分を止められなくて……」

( ・∀・)「やはり、カテゴリーAの支配によるものだったか」

( ^ω^)「カードと目を合わせた瞬間、意識を支配されるっていうのかお……」

('A`)「よく分かんねぇけど……」


 それまで言葉を発さなかったギコが、テーブルの上に置かれたレンゲルバックルに手を伸ばす。
 手に取ったベルトを、ドクオから引き剥がすように、食卓の上へと置いた。


(,,゚Д゚)「……とにかく、君はもうこの事に関わらない方がいい。レンゲルは危険すぎる」

(;'A`)「も、もちろんです!そんなもの着けたくも持ってたくもない!」



('A`)「俺は、コイツみたいに戦う事なんか出来ないし……俺が仮面ライダーになったって、人助けなんて無理ですから……」

( ^ω^)「………」

33119話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:40:56 ID:Naxzm9FU0


( ・∀・)「一度意志を操られても、変身が解けてしまえば解放されるみたいだね。
      カテゴリーAにさえ接触しなければ大事にはならないという事か」

(,,゚Д゚)「そういう事になるな」

ξ゚⊿゚)ξ「だったら尚更隠しておかないと…これ以上被害を増やす訳には行かないわ」


 ツンが立ち上がったのと同時に、ギコはモララーの目の前にギャレンバックルを置きながらソファに座る。
 

(,,゚Д゚)「改めて聞くが、戻る気は無いんだな?」

( ・∀・)「……ギコさんがいれば、大丈夫です」

(,,゚Д゚)「…そうか。今此処でギャレンの戦力を失う訳には行かない、俺が引き続き受け持つ」
 _
( ゚∀゚)「モララーさん、本当にいいのかよ?」

( ・∀・)「いいんだ。俺もドクオ君と一緒さ、ライダーには向いてない」

('A`)「でも、俺と違ってすごく戦えるじゃないですか……」

( ・∀・)「君には理解出来ないかもしれないけど…戦える事だけが強さじゃないんだ」

( ^ω^)「モララーさん……」


 モララーの言葉に安堵すると同時に、複雑な思いを抱えていたブーン。
 頑なにライダーを拒む姿は、本当にライダーを諦め切れていないようにも見えていた。


ξ゚⊿゚)ξ「あれ…?無い…!?」
 

 しんみりとした空気が流れる中、ツンの声が部屋中に響き渡った。
 その声に、一斉に全員の視線が向けられる。


( ^ω^)「どうしたお?」




ξ゚⊿゚)ξ「無いの……レンゲルのベルトが無い!!」

33219話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:41:40 ID:Naxzm9FU0


( ^ω^)「ええ…!?」

(,,゚Д゚)「ついさっき俺がそこに置いたばかりだぞ?」

ξ゚⊿゚)ξ「だけど無いんです!さっきギコさんが置くのも見てたけど…どうして!?」


 食卓に置いた張本人であるギコ。
 すぐに立ち上がり移動すると、確かに置いたはずのテーブルの上を撫でる。

 だが、確かに無くなっていた。
 ついさっき、一分も経たぬ間に……レンゲルバックルは忽然と姿を消した。


(,,;゚Д゚)「何故だ…!?誰かが取った訳ではないよな!?」
 _
( ゚∀゚)「そ、そんな事しないっすよ!つか俺ずっと座ってたし!」

(;'A`)「おっ、俺も違いますよ??俺はもう見たくもないくらいなんですから…!」

( ^ω^)「……もしかして、ベルト自身に意志が宿っているのか?」

( ・∀・)「ベルト自身に??」


 二度もレンゲルバックルが消失した場面に直撃したブーン。
 これまでの話を踏まえた上で、不可解なこの現象に心当たりがあった。


( ^ω^)「ジョルジュが操られて変身した時も、レンゲルのベルトは勝手に消えましたお。
      カテゴリーAの力を反映するベルト…それはつまり、ベルトすらも自分の意志で動かしているんじゃ?」

( ^ω^)「どれだけ人の手の届かないところに隔離しても、自分の意志で動いてしまう……適合者を求め続けて」

( ・∀・)「確かに、今はそうとしか説明がつかない…だとすると、また誰かの手に渡ってしまう可能性がある!」

(,,゚Д゚)「話は後だ!とにかくベルトを探すぞ!」

ξ゚⊿゚)ξ「私も探します!」
 _
( ゚∀゚)「俺も!」


 消失したベルトを探す為、ツンとジョルジュは家の中を。ギコは外に出て探し始めた。

33319話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:42:22 ID:Naxzm9FU0


('A`)「あの……俺は」

( ^ω^)「お前は関わったら駄目だお。また操られる可能性がある」

('A`)「そ、そうか……じゃあもう、帰っていいか?」

( ・∀・)「もういいんじゃないかな、彼には散々忠告した訳だし」

( ^ω^)「…そうですね。見て分かるだろうけど、今立て込んでるから送ってはやれないお」

('A`)「気にすんなって!大丈夫大丈夫、歩いてバイク取りに行くって」

('A`)「色々迷惑掛けて悪かった……じゃあ、後頼むな」


 二人の顔色を伺いながらも、解放された途端足早に去って行くドクオ。
 一刻も早くこの状況から脱したいといった様子だ。

 
 ドクオが家を出るなり、モララーはソファに深く座り頭を抱え始めた。


( ・∀・)「俺のせいで、こんな事になってしまってる……全部俺のせいだ」

( ^ω^)「何もそうやって、全部自分で背負い込む事ないじゃないですか」

( ・∀・)「そうだな……俺は、弱い男だからな」

( ^ω^)「モララーさん、そんな事は……」

( ・∀・)「いや……俺はむざむざとギャレンを捨てておきながら、今もこうして君達の周りをうろついている。
      結局、一人になるのが怖いんだよ……俺にはもう、君達しかいないから……」

( ^ω^)「………」


 今までの行いが全て、裏目となって表れている。
 状況的にも、それはモララーの精神的にも言える事だった。
 
 自虐とも取れる言葉の連続に、それ以上の言葉を紡ぐ事が出来なかった。

33419話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:43:56 ID:Naxzm9FU0


( ^ω^)「モララーさん……正直に言いますお」


 モララーの隣に腰を掛け、神妙な面持ちで話し始めた。


( ^ω^)「僕は今でも、モララーさんにはギャレンとして一緒に戦って欲しい気持ちがあります」

( ^ω^)「頑なにギャレンを拒む理由は、モララーさんが感じてる責任感からじゃないですか?
      モララーさんが感じてる、今までしてきた事への後悔や、情けないっていう気持ち…」

( ・∀・)「………」

( ^ω^)「色々あったけど、モララーさんは本当の自分に気付けたじゃないですか。
      自分の事を弱いって言うのは素晴らしい事だと思いますお。だって、自分の弱さを知っているんだから。
      モララーさんは今、自分の弱さと向き合ってる。向き合う事が大事だと僕は思いますお」

( ^ω^)「弱さを知らない人間は、強くはなれませんお」

( ^ω^)「それに、モララーさんは一人じゃない。僕達が居ます!
      だからモララーさんも、僕達と一緒に居ればいいですお」


 暗い面持ちのモララーに向け笑顔を見せる。
 真っ直ぐ過ぎるブーンの心が、モララーの強張った表情を自然と弛緩させた。


( ・∀・)「……ありがとう」


 心の荷が少しだけ降りたような感覚。
 肩が軽くなり、ソファから立ち上がる動きも軽やかになった。
 

( ・∀・)「ギャレンの返答は、まだ直ぐには出来ない……でも」

( ・∀・)「今は一緒に探そう、レンゲルのベルトを!」

( ^ω^)「……はい!」

33519話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:44:30 ID:Naxzm9FU0

 ――――――
 ――――
 ――


 ブーン達が消失したレンゲルのベルトを探す一方。
 

('A`)「はぁ……とんでもない事に巻き込まれちゃったな……」


 ブーンの家から抜け出したドクオは、とぼとぼと歩きながらスーパーVIPに向かっていた。
 とんでもない事に首を突っ込んでしまった自覚はあるようで、ひどく落ち込んでいる。
 
 全てが現実味の無い出来事。本当に起こった事なのか疑ってしまう程に。
 だが、友人であるブーンを傷付けた感覚が、目に、頭に、両手に鮮明に残っている。


('A`)「何てことしちまったんだ、俺……本当に……」


 自分の意志で身体が動かない…あの戦いに身を置く者達によれば、封印された化け物によるコントロールによるものだと。
 それにしては随分と生々しく残った感覚に、身震いするばかりだった。
 

('A`)「絶対に関わらない…もう二度と関わりたくない…!」


 首を左右に振り、そう心に強く決める。

 化け物と戦うなど、絶対に出来ない。
 自分がライダーになったところで、足手まといになるだけ。誰一人助ける事も出来やしない。

 
('A`)「無理だ……俺にはそんな自信ない……」

33619話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:45:02 ID:Naxzm9FU0


 歩いてどれ程経っただろうか。
 日が落ちて、辺りはすっかり暗くなっている。
 時間も確認せずにひたすら歩き続け、ようやくスーパーVIPに辿り着いた。
 

('A`)「やっと着いた……」


 バイクでの移動手段が増えたせいで、30分程度歩いただけで足はパンパンだ。
 街灯や車の明かりを頼りに、自分が停めたバイクのもとへと向かう。

 すると、


「おい」

('A`)「??」


 背後から何者かの声が聞こえる。
 誰かを呼ぶような声に反射的に反応してしまい、ドクオは振り返った。


 そこに居たのは、エプロンを身に着けた青年の姿。




(-_-)「………」

33719話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:45:35 ID:Naxzm9FU0


(;'A`)「あっ……す、すみません!決してその、都合良く駐車をした訳じゃ……!」


 エプロン姿が、すぐにスーパーVIPの店員である事を知らせてくれた。
 怒られるかもしれないと悟ったドクオは、慌てて謝罪をする。
 駐車場を、ただの駐車スペースとして利用した……そう思われているに違いない、と。


(-_-)「そんな事はどうでもいい」

(;'A`)「へ……?」


 明かりに照らされ、影が差すヒッキーの表情は、とても睨んでいるように見えた。
 硬直するドクオに詰め寄る。そして……、
 

(-_-)「覚悟を決めろ」

('A`)「え……」

(-_-)「お前は完全に取り憑かれちまった。これは、お前自身の力で乗り越えなきゃならない」

('A`)「な…何を言ってるんだ?」

(-_-)「お前自身の戦いは、もう始まっている」






(-_-)「――カテゴリーAに、屈するなよ」


(;'A`)「!?!?」

33819話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:46:33 ID:Naxzm9FU0


 ドクオにそう言い残すと、ヒッキーは背を向けスーパーへと戻って行く。

 "カテゴリーA"のワードで、何を意味しているのかを悟ってしまったドクオをとてつもない恐怖感が襲う。
 両手はガクガクと小刻みに震え、防衛本能が無意識に引きつった笑顔を作っていた。


(;'∀`)「……は、はは……何だよアイツ、意味分かんねぇ……」


 笑顔で誤魔化し、心の中で自分に都合の良いように言い聞かせた。


(;'A`)「俺は関係ねぇ……関係なんかないんだから……」


 歩いた疲れを上回り、不安によって重くなった足取りでバイクのもとへと再び歩き出す。

 そして、ようやく辿り着いたバイクの前で、ドクオは突如立ち尽くした。


('A`)「………」

('A`)「何で……?」

(;'A`)「え……何で……!?」



 ドクオの目に映るバイク。

 そのシートの上にある………、




(;'A`)「何であるんだよ……!レンゲルのベルトが!?!?」

33919話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:47:55 ID:Naxzm9FU0


(;'A`)「はっ……はっ……」


 心臓の鼓動が高鳴り、息が苦しくなってくる。
 全身から血の気が引き、首を左右に何度も振り続ける。


(;'A`)「もうやめろ……本当にやめてくれよぉ!!!」


 大声で叫びながら、ドクオはバイクのもとへと駆け寄る。
 シートの上に置かれたレンゲルバックルを掴むと、持てる力全てを出し遠くへと投げた。

 車道へと放り投げられたレンゲルバックル。
 通り過ぎる車。いずれ、大型トラックやダンプカーに潰されるだろう。
 

(;'A`)「そのまま潰されちまえ…!もう俺に関わ……」


 背後のバイクから、気配を感じる。
 ドクオが恐る恐る振り返ったそこには……レンゲルバックルが、シートの上に置かれていた。


(;'A`)「………」


 もはや言葉も出ない。
 たった今、確かに投げ捨てたはずなのに、シートの上には同じようにレンゲルバックルが。

 あまりの恐怖に動きが固まり、歩く事も視線を移す事も出来ない。
 ただ静かに、ポケットのスマホへと手を伸ばし、ゆっくりと取り出す。

 そして、ブーンへと助けを求めた。


「どうしたお?」

(;'A`)ロ 「……助けてくれ……」

「何があったお!?」

(;'A`)ロ 「レンゲルのベルトが……俺の目の前に……!」

「なんだって!?消えたベルトが何でドクオのとこに!?」

(;'A`)ロ 「早く来てくれ…!俺もう、怖くて動け……ううッ!!」

34019話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:48:28 ID:Naxzm9FU0


 ドクオの身体に異変が起きた。
 身体中を、無数の何かが蠢いている。


(;'A`)「何だ…!何だこの感覚……ッ!!」


 地に伏せ、耳に当てたスマホを手から落とす。
 両手を地面に着くと、蠢く何かが腕を伝い服の裾へと近付いてきた。
 小さく細かい足が、肌を擽る。


(;'A`)「……何だ、これ…!?」


 裾からゆっくりと姿を現したのは、黄金色の小さな蜘蛛の子。
 一匹だけでなく、二匹、三匹、四匹、五匹…それ以上に、身体の中にまだ沢山居る。
 わらわらと、ドクオの身体から蜘蛛の子の群れが現れた。
 

(;'A`)「何でこんなに蜘蛛が…!?どうなってんだよ俺…!?!?」

    『――俺ヲ受ケ入レロ……』

(;'A`)「……!!!」


 レンゲルバックルから、声がする。
 とても歪で、邪悪な気すら感じれる声…カテゴリーAの声が。


(;'A`)「ッ…何で俺なんだよ!!俺はライダーになんかなりたくないんだって!!

    『――受ケ入レロ…俺ノ、力ヲ…!』

34119話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:49:41 ID:Naxzm9FU0
 レンゲルバックルが、カテゴリーAの意思を受け浮遊。
 紫色のオーラを纏い、宙に舞うバックルがドクオに向かい合った。


(;'A`)「やめろ……やめてくれ!!!」


 こっちに来る。
 ドクオの本能がそう告げていた。
 立ち上がり、バックルから逃げるように後退りをする。
 
 レンゲルバックルが背を向けた瞬間、ドクオの腹部に目掛け飛翔。


(;'A`)「ッ――!!!」


 思わず手をかざしたドクオの腹部に、レンゲルバックルが装着されてしまった。
 自らの意思とは関係なく……バックルのシャッターが、勝手に開かれた。


    【 -♣OPEN UP- 】


(;'A`)「嫌だ!やめろ!!離れろよ!!」


 ベルトを掴み、強引に引き剥がそうとするが、ベルトは微動だにしない。
 開かれたシャッターより射出された紫色のゲートがドクオの前面に展開。
 
 ゆっくりと接近するゲートに、心が蝕まれそうになる。


(;'A`)「やめろおおおおおぉッ!!!」


 抵抗も空しく、ドクオは紫色のゲートに覆われた。
 ゲートが通過したドクオの身体は……再び、レンゲルのスーツに身を包まれた。


( OHO)『……来い、グリンクローバー』


 闇夜に現れた、呪われしレンゲル。

 レンゲルから聞こえる声は、以前と同じようにドクオの声ではない。
 "グリンクローバー"……レンゲルがそう呟いた瞬間、遠方から人の乗っていない緑色のバイクが姿を見せた。
 
 瞬く間にレンゲルのもとへと到着したグリンクローバー。
 グリンクローバーに跨ったレンゲルは、そのまま何処かへと走り去って行った。

34219話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:51:07 ID:Naxzm9FU0
 ――――――
 ――――
 ――


( ; ^ω^)「……まずいお」

( ・∀・)「どうした??」


 電話の奥から聞こえていた一部始終。
 何が起きたかは容易に予測でき、危機感はすぐに駆り立てられた。


( ; ^ω^)「ドクオが…またレンゲルに変身しました…」

( ・∀・)「なに!?」

( ; ^ω^)「消えたベルトは、ドクオのもとに戻ってたんですお!!」

( ・∀・)「どういう事なんだ…!?」


 その時、アンデッドサーチャーの警告音が鳴り響いた。
 警告音と同時に、家中を探していたツンとジョルジュが二階から駆け下りてくる足音が激しく響く。
 一足先に、モララーがPCの前に着き反応を確認した。


( ・∀・)「アンデッドだ!場所はしたらば跨線橋……レンゲルが接近してる!」

( ; ^ω^)「ドクオ……」

( ・∀・)「行こう!」

ξ゚⊿゚)ξ「アンデッド!?気を付けて!!」


 ツン達がリビングに着く前に、二人は家を飛び出した。
 表でレンゲルバックルを探していたギコが、二人の慌て具合から事情を察知する。


(,,゚Д゚)「アンデッドか?」

( ・∀・)「はい、すぐに行きましょう!」

(,,゚Д゚)「分かった!」


 ブルースペイダー、レッドランバスに乗る二人。
 ブーンの後ろへとモララーが乗ると、急いでアンデッドの反応があった場所へと向かった。

34319話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:51:31 ID:Naxzm9FU0





 ―――――




.

34419話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:51:51 ID:Naxzm9FU0


 飛び出したブーン達は、したらば跨線橋へと到着。
 バイクから降り、目の前で繰り広げられている状況を確認する。
 
 既に争いの音が聞こえている場所には、レンゲルが解放した二体のアンデッドが。
 それと、自分自身が解放したはずのアンデッド達と戦う……レンゲルの姿があった。


( ^ω^)「ドクオ…!カテゴリーAに操られてるのかお!」

( ・∀・)「辛いだろうけど、もう力ずくで止めるしかない」

(,,゚Д゚)「今はアンデッドの封印が優先だ。やるぞ、ホライゾン君!」

( ^ω^)「ッ……はい」


 ブーンとギコが、それぞれバックルと取り出した時だった。
 後からもう一台のバイクが現れ、三人の背後に停まった。

 現れたのは、アンデッドの気配に駆け付けて来たクーだ。


( ^ω^)「クーさん!」

川 ゚ -゚)「…またあの男か」

( ^ω^)「クーさん、まずはアンデッドを先になんとかしないと…」

川 ゚ -゚)「お前に指図される筋合いはない」


 ブーンがバックルを装着する前に、クーの腰にはカリスラウザーが召喚される。
 それに続いて、二人もブレイバックルとギャレンバックルをそれぞれ装着。

 そして、三人同時にレンゲルとアンデッドのもとへと走り出した。


((( ^ω^)(((,,゚Д゚)「「変身!」」

((川 ゚ -゚)「変身!」
    っロ


    【 -♠TURN UP- 】 【 -♦TURN UP- 】 【 -♥CHANGE- 】

34519話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:52:37 ID:Naxzm9FU0


 一斉に変身したブレイド、カリス、ギャレン。
 並走する三人の中で、カリスが真っ先に戦いの中へと切り込んだ。

 最初の標的に定めたのは、渡辺達に危害を加えた蜻蛉のアンデッド。
 レンゲルに意識が集中し切っているせいか、カリスの接近には気付かない。


( <::V::>)『まずは貴様からだッ!!』


 一際大きく跳躍したカリスは、左手にカリスアローを召喚。
 蜻蛉のアンデッドの頭上を飛び、身体を回転させながらすれ違いざまに頭部を斬り付けた。


『ギエエエエェェェッ!!』


 斬撃に怯んだ蜻蛉のアンデッドが、耳を劈く悲鳴を上げながら倒れた。
 咄嗟に受け身を取り起き上がったが、カリスの怒涛の追撃が既に待ち構えていた。


( <::V::>)『記憶が消えても、貴様の罪は消えない!その命で償え!』

『グギャッ!ギエヤァアアアッ!!』


 縦横無尽に斬り付けるカリスアローの両刃が、蜻蛉のアンデッドの身体を食い破ろうとしている。
 軽快な身のこなし、洗練された武器捌きが、あっという間に追い詰めていく。




 その一方で、ブレイドとギャレンは二人掛かりでイノシシのアンデッドと交戦していた。


( OMO)「ぐうッ…!今だ、やれ…!」

( OwO)「うおおおぉッ!!」

 
 ギャレンが突進を受け止めている間に、ブレイドはその背中をブレイラウザーで攻撃。
 怯んだ隙に、ギャレンが豪快な打撃を繰り出し、着実に追い込む。


『グオオオオォォッ…!』

34619話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:55:03 ID:Naxzm9FU0
 人数で勝るライダー達は、二体のアンデッドに対し圧倒的有利に戦況を進める。
 ライダー達が協力してアンデッドと戦うという、かつてない光景には胸打たれるものがある。

 ……と、いう訳にもいかなかった。


( OHO)


 三人の参戦によって、レンゲルは一人ブレイド達の背後で立ち尽くしていた。
 戦いに加わろうともせず、じっと。
 アンデッドとの戦いに夢中で、ブレイド達はレンゲルを怪しむ様子はない。
 傍で戦いを見ていたモララーは、レンゲルの不可解な行動を見逃さなかった。


( ・∀・)「レンゲルに注意しろ!何をするか分からないぞ!」

( OwO)「えっ――」

( OHO)『ふんっ!!!』


 時すでに遅し。
 モララーの警告に気付いてすぐに、レンゲルはシャフトを伸ばしたレンゲルラウザーを、ブレイドの背中に叩き込んだ。


( ; OwO)「ああ゙ッ゙!!」 

( ; ・∀・)「剣藤!」


 レンゲルは、続いて交戦中のギャレンに襲い掛かった。
 接近に気付いたギャレンはアンデッドを一蹴し向かい合うが、レンゲルラウザーの三枚刃が先にギャレンの胸を突いた。


( ; OMO)「ぐふっ…!」

( OHO)『ヌウヴヴゥア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッ!!!』


 後端で頬を殴り、尖端で胸を切り裂く。
 リーチを活かされた攻撃に、ただ晒される事しか出来ないギャレン。
 腹部にレンゲルラウザーの後端を刺した後、レンゲルの豪腕が力任せにギャレンを放り投げた。


( ; OMO)「がはあっ!!」


 宙を舞い、背中から地面に叩き付けられるギャレン。
 ギャレンを蹴散らしたレンゲルが次に標的を定めたのは……、

34719話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:56:51 ID:Naxzm9FU0

( <::V::>)「ていやあぁッ!!」

『ビイイィィィッ…!』


 連撃の末に、大振りの一撃を受け蜻蛉のアンデッドは吹き飛ばされた。

 右手に持ったカリスアローを、ヒュンヒュンと回転させながら持ち手を変更。
 ラウザーをセットし、右腰のケースより引き抜いた二枚のカードをラウズした。 


    《-♥5 DRILL-》 《-♥6 TORNADE-》

        《-♥SPINING ATTACK-》


 刹那、カリスの足元から風が巻き上がる。
 勢いは徐々に増し、身体を覆いながら竜巻へと変わる。
 吹き荒ぶ竜巻を纏い、地面を蹴る。
 宙に浮いてすぐ両足を揃え真っ直ぐ伸ばし、竜巻の勢いを受け身体をドリルのように回転させるとアンデッドに向け突進。


( <::V::>)『ふッ!』

『ギャアアアアアアッ!!!』


 断末魔の叫び。
 蜻蛉のアンデッドの胴体に錐揉み回転蹴りが炸裂し、その胸を突き破った。
 内側のどす黒い肉が露呈され、胸から大量の緑血を噴出させながら、アンデッドは地に倒れた。
 仰向けに倒れたアンデッドの腰、バックルが左右に展開。中に刻まれたスートとカテゴリーが露見される。

 今度こそ、自らの手で封印を。 
 カリスがカードを一枚アンデッドに向け投擲し、歪な肉体に突き刺さったカードが封印を始めた。
 カードに吸収され、アンデッドは再び実態を失っていく。
 やがて完全に蜻蛉のアンデッドは封印され、カリスの手にカードは帰還した。


( <::V::>)『これで、ようやく――!?』


 すぐに別の気配を感じ取った。
 咄嗟に振り返り、気配のする上部…橋の下路アーチへと目を向ける。

 ――そこには、また新たな別の刺客が、ニヤリと妖しげな笑みを浮かべていた。



(*゚∀゚)「アヒャヒャヒャ!今日もやってるねェ〜♪」

34819話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:57:14 ID:Naxzm9FU0


( <::V::>)『貴様…!』

( ・∀・)「何だあの女は…?」

(*゚∀゚)「よいしょ、っと!」


 橋のアーチに腰掛け、両足をぷらぷらとさせているカテゴリーQの姿。
 一同の注目を浴びた事を確認すると、何の躊躇いも無くアーチより飛び降りた。
 人の身であれば、大怪我を負ってしまうかもしれない高さだ。


( ・∀・)「…アンデッドか、あの女」


 そんな高さを諸ともせず、華麗に着地してみせる様からすぐに正体は見抜けた。


(*゚∀゚)「さっきから見てたけど、そこのカテゴリーAしかアタシに気付かなくってさァ〜超寂しかったんだよ??」

( OHO)『………』

 
 ご機嫌そうに笑みを絶やさず、カリス達に近付く。
 ギャレンを一蹴したレンゲルが目を付けていたのは、既にこの場に居たというカテゴリーQだった。


( OwO)「お前…!何を企んでんだお!」

(*゚∀゚)「企んでなんかないよ?もうそういうのアタシはやらないって決めたからさぁ。面白くないし?」

(*゚∀゚)「本当に面白いモノ、知ってたけど我慢してたんだよねェ。だから……」


(*゚∀゚)「今日は、楽しみに来ちゃった……!!」

(*>∀<)「フォオオオオオオオオオオオオオウッ!!!!」


 奇声を上げながら片手を天に伸ばすカテゴリーQの身体に、別のシルエットが浮かび上がる。
 重なるシルエットに合わせ、カテゴリーQの人間の身体は歪に形を変えていく。

 そして、遂に本当の姿をブレイド達の前に現した。

34919話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:58:11 ID:Naxzm9FU0

( ・∀・)「!?」

( OwO)「それが、お前の正体か…!」
  、、
@*゚皿゚)@『アヒャヒャ、やっぱりこっちの姿の方が伸び伸び出来ていいわ〜』


 阿修羅のように、三つの顔がある頭部。
 左右の顔から一本ずつ捩れた角、正面の顔からは、反った角が二本。
 両肩にも角が生え、複雑に角が入り乱れた上部。

 身体の中心から左右非対称の白と黒の色。
 コートを羽織ったような出で立ちは、まるで府坂を彷彿とさせる。

 首回りや顎、腰には毛が伸びていて、その姿は山羊を連想させた。

  、、
@*゚皿゚)@『さァて……楽しませてくれよなァ!!』

( OwO)「!?」


 地面を蹴ったカテゴリーQ。
 既に、その場に姿はない。

 次の瞬間には、ブレイドの視界の上から姿を現していた。


( ; OwO)「なっ…!」
  、、
@*゚皿゚)@『アヒャヒャ!』


 動きが予測出来ておらず、咄嗟の対応に遅れが出た。
 カテゴリーQの右手に握り締められた三日月状の刃が、ブレイドの身体を切り裂いた。


( ; OwO)「あうッ…!!」
  、、
@*゚皿゚)@『ほいほい、どんどん行くからさァ!着いて来いよ仮面ライダーさんよォ!!』


 言って、三日月状の刃を宙に放り投げる。
 ブーメランの如く飛翔する刃は、カテゴリーQの念力を受け勢いを落とす事なく舞い続ける。

 素手となったカテゴリーQは、ブレイドに対し法則の無い打撃を素早く繰り出し始めた。
 両手に伸びた爪で引っ掻くような殴打から、氷上で踊るスケートの如く身体を回転させながらの蹴り。
 見た目からは想像し得ないトリッキーな動きが、ブレイドを翻弄する。

35019話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:58:52 ID:Naxzm9FU0


( ; OwO)「ぐうっ…!こいつ、何だこの訳分からない動きは…!?」
  、、
@*゚皿゚)@『どうしたんだよブレイドォ!もっとやれるんじゃないの〜!?』

( OwO)「クソッ…止まれ、この山羊女――」
  、、
@*゚皿゚)@『ふっ、バーカ』


 鼻で笑い、人差し指をくいっと引く。
 その時、宙を舞い続ける三日月状の刃が、ブレイドに向け躍動を始めた。

 ブレイラウザーを翳したブレイドの背中を、刃が斬り付ける。


( ; OwO)「うああぁッ!?」
  、、
@*゚皿゚)@『アヒャヒャヒャ!!やっぱ自分で手ェ出した方がおもしれェ…!!』


 三日月状の刃は、舞いながら執拗にブレイドを斬り続ける。
 ブレイラウザーで防ぐ場面もあるが、自在に飛び続ける刃の餌食となっていた。
 カテゴリーQは動きを止め、独特の笑い声を高らかと上げながらその様を眺めている。

  、、
@*゚皿゚)@『……ん〜?』


 左右に生えた捩れた角が青白く発光し始める。
 色濃くオーラを纏った角から、身体の向きを変えず背後に向け衝撃波を放った。


( OHO)『ふんっ!』


 その衝撃波を、レンゲルラウザーで全て振り払うレンゲル。
 カテゴリーQの背後には、静かにレンゲルの魔の手が迫っていた。

  、、
@*゚皿゚)@『カテゴリーA……この前は随分な事してくれたじゃん?アタシの事殴ってくれちゃってさァ』

( OHO)『メス山羊が、巣に磔にして食い散らかしてやる』
  、、
@*゚皿゚)@『……どうかな?まだ完全に制御出来ない癖して』

( OHO)『何だと……ぐっ!』

35119話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:59:39 ID:Naxzm9FU0


( ; OHO)「うッ……!ぐうううぅ……!」

( ・∀・)「レンゲルの様子が……まさか」

( ; OwO)「ドクオ!?」


 レンゲルに、再び変化が表れ始めた。
 レンゲルラウザーを片手に握り締めたまま、もう片方の手で頭を抑えながら、身体をふらふらとさせている。

 
( ; OHO)「うううううッ…!俺を、出せ…ッ!俺を勝手に……使うなぁ…!!」

( OHO)『ええい…!貴様、大人しく俺に身体を差し出せ!』

( ; OHO)「嫌だ…!俺は、俺だ……ッッ!!」

( OwO)「ドクオ、目を覚ませ!!ッく…邪魔だお!」


 翻弄する三日月状の刃をようやく捉え、ブレイラウザーで強引に叩き落した。
 
  、、
@*゚皿゚)@『おっと…?ちょっと見物に回りたい展開になってきたなぁ…アヒャヒャ』

( <::V::>)『待て!逃がすか!!』
  、、
@*゚皿゚)@『逃がさせてよ〜面白くなりそうなんだからさァ! ハアアアァッ!!』


 イノシシのアンデッドを蹴倒し、逃亡を図るカテゴリーQに向け走り出すカリス。
 だが、カテゴリーQは異常なまでの脚力で空高く跳躍しながら、近付くカリスに向け口から青白い炎を吐き出し動きを牽制。


( <::V::>)『ぐうッ!』
  、、
@*゚皿゚)@『アヒャヒャ!じゃあね〜♪』


 追い討ちに三日月状の刃をカリスに向け投擲し、アーチの上を飛び移りながら去って行った。
 すかさずカリスアローで弾き落とし、姿が遠くなるカテゴリーQを目で追っては舌打ちをした。

35219話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 11:00:04 ID:Naxzm9FU0


 分が悪いと判断してか、イノシシのアンデッドも目を付けられないうちに退散した。
 残ったのは、カテゴリーAのコントロールから逃れようともがき苦しむレンゲルのみ。


( OwO)「ドクオ、しっかりしろ!目を覚ませ!」


 カテゴリーQの攻撃から解放されたブレイドは、苦しむレンゲルに近付く為に駆け出した。
 もしもこのまま支配から逃れられなければ、その時は力ずくで止めるしかない。

 覚悟を決め、レンゲルに手を伸ばした。




 その時だった。



 レンゲルに投げ飛ばされ、倒れたままだったギャレンが突如、素早く起き上がった。
 
 与えられた攻撃のダメージなど端から皆無と言わんばかりに走り出す。
 向かう先は、レンゲル。
 右拳には、灼熱の炎が――。


( OMO)「ッはあ!!!」

( ; OHO)「うわあああああッ!!!」

( OwO)「!?」


 ブレイドが着く前に、レンゲルに近付いたギャレン。
 腹部に燃え盛る炎を纏う右拳を叩き込み、自我を取り戻そうとしているレンゲルを吹き飛ばした。

 
( ; OHO)「うぐぅぅ……ッ!」


 地に崩れ落ち、ドクオとしての意識が痛みに苦痛の声を上げながら縮こまる。

35319話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 11:00:35 ID:Naxzm9FU0


 すると、レンゲルバックルのシャッターが、またも勝手に閉ざされた。
 同時にバックルより紫色のゲートが射出され、うずくまるレンゲルの身体を覆いながら通過する。
 
 レンゲルは、強制的に変身を解除された。
 現れたドクオの腰から、レンゲルバックルが転げ落ちる。


(;'A`)「ぐあぁ…っ、がはっ…!」

( OwO)「ドクオ!!」


 これで二度目だ。
 親友が理不尽に巻き込まれ、痛め付けられる姿は見るに耐えないものがある。

 変身が解除された事で、ドクオはカテゴリーAの支配から解放された事は確かだ。
 急いで倒れたドクオに近付こうとするブレイド。


 その行く手を――ギャレンの銃撃が遮った。


( ; OwO)「うあああぁっ!?」

( ・∀・)「!?ギコさん!?!?」

( OMO)「………」


 銃撃に見舞われ、地に倒れるブレイド。
 何も言葉を発さず、ブレイドを見る事もなく、ギャレンはドクオへと歩み寄る。


( ・∀・)「ギコさん、何を…!?」

(;'A`)「うっ……や、やめてください……!」


 無言で近付くギャレンに気圧され、ドクオは腹部を抑えながら許しを請う。
 だが、何も言わない。モララーの言葉にも耳を貸さない。

 ドクオの前に着いたギャレンは、ゆっくりとドクオに向け手を伸ばした。
 反射的に両腕で頭を覆い、身構える。


(;'A`)「ひいいっ…!!」

35419話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 11:02:01 ID:Naxzm9FU0

(;'A`)「………?」


 何も起きない。
 恐る恐る顔を覆う両腕を退かし、ギャレンを見た。

 そこには、左手にレンゲルバックルを持ち、じっと見つめるギャレンが。


( ・∀・)「ギコさん……?」

( OMO)「………」


 すると、ギャレンはギャレンバックルに手を掛け、ハンドルを引いた。
 射出されたゲートに覆われ、変身を解除する。

 装着が解除されたギャレンバックルを右手で持つと――

 ギコは、それを雑に投げ捨てた。 


( ・∀・)「!?」

(,, Д )「………ククク」

(,,゚∀゚)「ハハハハハ!!」


 暗闇の中、街灯に照らされずはっきりと見えないギコの表情。
 そんな中で高らかに笑う姿は、狂気すら感じられた。


(,,゚Д゚)「菱谷…俺にギャレンを託してくれて、感謝する」

( ; ・∀・)「ッ………」

(,,゚Д゚)「……さぁ、本来の主のもとへ来い」

(;'A`)「―――ッ!!!」


 ドクオの服の裾から、大量の蜘蛛の子が姿を現した。
 群れを成した蜘蛛の子は、ギコの靴を登りスーツの中へと住処を移す。


( <::V::>)『……なるほど、そういう事か』

( ; OwO)「うぐっ…どういう、事だお…!?」

35519話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 11:02:50 ID:Naxzm9FU0


 左手に持ったレンゲルバックルを腰にあてるギコ。
 紫色のカードがベルト状に展開され、ガチャンッ!と音をたて装着された。

 ……歪な待機音が鳴り響く。

 ギコは、モララーを向きながらニヤリと笑みを浮かべる。
 そして――。


(,,゚∀゚)「変身……!」


    【 -♣OPEN UP- 】


 レンゲルバックルのシャッターを、自らの手で開いた。
 射出された紫色のゲートを、両手を広げ喜んで迎え入れる。

 ゲートに身体を覆われたギコは、レンゲルへと変身してしまった。


( OwO)「はっ…!?」

(;'A`)「ッ…!!」

( ; ・∀・)「ギコさん……!?何で!?」


 誰も予想しなかった…したくもなかった。
 レンゲルに変身したジョルジュを𠮟咤し、一番にその危険性を唱えていたギコが…今、レンゲルに変身している。

 衝撃は大きく、カリスを除いた全員は……特に、ギコに一番の信頼を置いていたモララーは一際大きく驚いていた。


( OHO)「菱谷……お前は特別だ。元後輩のお前には教えてやる」

( OHO)「俺は、最初からこれが目的だったのさ……!」

( ; ・∀・)「え……」


 ギコの声だ。カテゴリーAの歪んだ声ではなく、ギコ自身が言葉を発している。
 ドクオやジョルジュの時のように、支配に苦しむ様子もない。

35619話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 11:03:50 ID:Naxzm9FU0


( OHO)「お前もよく知ってるだろう?府坂って奴の事をな」

( ; ・∀・)「……!!」


 知らないはずもない。
 忘れる事も出来ないであろうその名は、聞くだけでギコの語りに絶望を添えてくれる。


( OHO)「俺は、奴に呼び出された。新しいライダーシステムの適合者として君を選びたい。とな」

( OHO)「BOARDの連中を手下にしていただけあって、どうやら俺の事も知っていたようでな……最初は耳を疑ったさ」

( OHO)「何せ俺は……ギャレンにもブレイドにもなれず、正義の燃えカスが残って腐りきっていたからな……!」

( ; ・∀・)「………」

( OHO)「だが、すぐに喜びに変わった」

( OHO)「俺はライダーになれる…しかも、最強のライダーの力を手にする事が出来る。ってな!
      どうだ!?ライダーになれなかった俺が、最強のライダーとなる…ギャレンもブレイドも凌駕する、レンゲルに!」

( ・∀・)「………」

( OHO)「……そう思った矢先、お前が府坂を封印した。
      それだけじゃない。あろうことか…洗脳の解けた所長がレンゲルのベルトを回収してしまった。
      お前達が邪魔して、奪う事もままならなかった」

( OHO)「だから俺は、お前達に協力するという形で潜み機を伺っていたのさ。
      そして今…その時が訪れた。俺は、レンゲルの力を手に入れる事が出来た…!」

( OHO)「今思えば、お前がライダーを辞めると言ってギャレンを俺に託したのは、予定外の好機だった。
      お前が俺を信頼してくれていたお陰で、俺は――」

(  ∀ )「ッッッ……!!」

( OwO)「やめろ!!!」

35719話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 11:05:47 ID:Naxzm9FU0

 ブレイドの怒号が、裏切りの言葉を遮った。


( OwO)「最初から、僕達の事を利用していたんですかお……」

( OwO)「ツンも、ジョルジュも、ドクオの事も……」

( #OwO)「――父ちゃんの事も…!モララーさんの事も!」


 こみ上げる怒りで、握る拳が震える。
 ブレイラウザーに手を掛け、仮面の下でレンゲルを睨む。


( OHO)「君のお父さんにはたくさん世話になった、感謝してるよ」

( OHO)「この俺を……ギャレンやブレイドなどではなく、レンゲルにまわしてくれた事をな!!」

( #OwO)「ッ―――!!!!」


 怒りが頂点に達した。
 仲間を傷付けられ、利用され…人の平和を守る為にライダーシステムを作った父親すら、自分の欲望の為に利用された。

 ブレイラウザーのトレイを展開し、三枚のカードを引き抜いた。
 ♠LIGHTNING SONICを発動させる為の、三枚のカードだ。

 それと同時に、レンゲルも一枚のカードを引き抜いた。
 ブレイドがカードをラウズする前に、そのカードをレンゲルラウザーの後端にラウズする。


    《-♣10 REMOTE-》


 "♣10のREMOTE"のカードが、ブレイドの手札三枚のカードに向け光線を射出。
 

( ; OwO)「しまった!」

( <::V::>)『来るぞ!』


 "♠5 KICK"、"♠6 THUNDER"、"♠9 MACH"。
 それぞれに封印されたアンデッドが、REMOTEの力を受け解放されてしまった。

 ブレイドが初めて封印したイナゴのアンデッド。
 続いて、シカのアンデッドと豹のアンデッドが、同時にブレイド達の前に姿を現した。

35819話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 11:06:53 ID:Naxzm9FU0

(;'A`)「うっ、うわああぁっ!!」
 
( ; ・∀・)「………」

( OHO)「貴様も来い…そして奴らを叩きのめせ!」

『シャアアアアアァッ!!!』

『グオオオオオオオオッ!』


 レンゲルの意思に従い、三体のアンデッドはブレイドとカリスに襲い掛かった。
 同時に、先刻退散したはずのイノシシのアンデッドがレンゲルの声に応え舞い戻り、三体のアンデッドに加勢。
 シカとイナゴのアンデッドがブレイドに、イノシシと豹のアンデッドがカリスを挟撃する。


( ; OwO)「くっ…!四体の相手はちょっとやばいお…!」

( <::V::>)『迂闊にカードを使うな!あのリモートの力に際限はないッ!』


 カテゴリーAの支配を受けずに、ギコ自らの意思でレンゲルを使いこなしている。
 アンデッドの挟撃に応戦する二人に向け、レンゲルラウザーを構えたレンゲルは戦いへと身を投じていった。


( ; OwO)「うあッ!?」


 交戦中のブレイドを殴打し、強引に戦いの中を突き進む。
 進んだ先に見えるは、同じく交戦中のカリスの姿。


( OHO)「ふんッ!!」

( <::V::>)『ッ!貴様……!』


 レンゲルラウザーの大振りな一撃をカリスアローで受け止め、互いに睨み合う。


( ; ・∀・)「ギコさん…何故だ、どうして……!」


 モララーの目にうつるレンゲル――ギコの姿は、過去の自分を見ているようだった。
 力に溺れ、振るえる事に喜びを感じている。そんな風に見えてならない。

 あれだけ意志の強いはずのギコが、何故……。
 戸惑いに揺れるモララーの心。ただ、ギコの変わり果てた姿を見ている事しか出来ずにいた……。

35919話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 11:07:16 ID:Naxzm9FU0




         【 第19話 〜操られる心〜 】 終




.

36019話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 11:07:41 ID:Naxzm9FU0

==========

 【 次回予告 】


( OHO)「ふんっ!ッはあ!」

( <::V::>)『チィ…ッ!こいつ、カテゴリーAの力と共存しているのか…!』

( OHO)「やはり……」

( <::V::>)『……?』

( OHO)『――やはり、貴様は弱くなっている!』

( ;<::V::>)『うあっ!?』


 レンゲルに変身したギコは、圧倒的な力でライダー達を次々と攻撃していく。


( OHO)『人間の臭いがするぞ、カリス…!アンデッドでありながら人間に魂を売り、腑抜けになったようだな!』

( ;<::V::>)『ぐっ!ううぅッ…!!』

( OHO)『強さを失った貴様などもはや俺の敵ではない!カテゴリーAの最強は、この俺だ!!』

.

36119話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 11:08:22 ID:Naxzm9FU0


(;A;)「ッ……??」

 『――モット強クナリタイダロウ…コンナ奴等、オ前自身ノ手デ踏ミニジリタクハナイカ?』


 ドクオの忌々しい過去。
 夢の中で、ドクオが心の奥底に閉ざしていた"闇"に、蜘蛛が接触してしまう。


(;A;)「………」

 『――オ前ハ正シイ……弱者ガイタブラレルノガ、世ノ常。ナラバオ前ガ、強者トナレ。
  ソシテ……コノ憎イ奴等、オ前ヲ蔑ム奴等、オ前ガ気ニ入ラナイ奴等全テヲ薙ギ倒セ!』

 『――俺ガ、オ前ノ助ケトナロウ』

(;A;)「……!」

(;A;)「ぼくは………いや、俺は……」

 『――ソウダ…俺ノ力ヲ受ケ入レロ!オ前ハ、最強ニナルノダ!』

(#'A`)「俺は……!俺を舐め切った、好き放題いたぶった貴様等を許さない……!!!」

36219話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 11:09:11 ID:Naxzm9FU0


( ・∀・)「……あなたの正義は、情熱はどうなったんですか!?」

( ・∀・)「あなたは頼もしい先輩として、俺達に厳しく…時に優しく指導してくれました。
      ギャレンとして俺が戦って来れたのも、ギコさんが居たからです!」

( ・∀・)「もしもの時、ライダーとして人を守れるのはお前達しかいないと……そう熱く教えてくれたのはギコさんじゃないですか!」

(,,゚Д゚)「そんなもの…最初からどうでもよかったのさ」

( ・∀・)「え……?」

(,, ー )「レンゲルの力をこの目で目の当たりにし、この手で力を感じた時……俺は気付いた。
     正義なんてな、力を振るう為の言い訳にしか過ぎないんだよ」

(  ∀ )「……やめてください」

(,,゚∀゚)「フッ…ククク、俺はただ……力を振るいたかっただけだったのさ!!」

( #・∀・)「やめてくれ!!!」

36319話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 11:10:51 ID:Naxzm9FU0


 レンゲルとなったギコが、再びブーンやモララーに襲い掛かる。


( OHO)「菱谷!お前が戦わなければコイツが倒されるだけだぞ!」

( OwO)「モララーさん!僕はモララーさんを信じてますッ!モララーさんなら戦えるって…!」

(  ∀ )「……俺は……」
 
( OwO)「モララーさんなら――出来る!!」

( #・∀・)「俺は―――戦う!!!」


 遂に、ギャレンとして戦う事を決めたモララー。
 暴走するレンゲル…ギコを止める為に、レンゲルの前に立ちはだかった!


( OMO)「あなたが託してくれた想いを胸に、俺は戦う!」

( OMO)「あなたをそうさせたのが俺だと言うのなら……俺の手で、あなたを止める!!」

( OHO)「そうだ、それでいい!ギャレンとして…俺と戦え菱谷!!」


 モララーは、ギコを救う事が出来るのか!?

 そして、主を求め彷徨うレンゲルの行末はどうなるのか!?


 次回、【 第20話 〜託された想い〜 】

 ――今、その力が全開する!


==========

364 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 11:13:53 ID:Naxzm9FU0
しおり

>>9 第15話
>>84 第16話
>>152 第17話
>>234 第18話
>>308 第19話


なんだかんだ投下できました
また次回よろしくお願いします

365名無しさん:2017/12/17(日) 11:24:11 ID:jQZ74PBE0


366名無しさん:2017/12/17(日) 12:36:51 ID:HPPlL2t20
あーギコ……乙
原作知らないから全然展開読めない

367名無しさん:2017/12/17(日) 14:03:25 ID:wI2HdQNQ0
モスの話マジで涙腺刺激してくるからやめてほしい…

368名無しさん:2017/12/18(月) 00:23:31 ID:kiQPc5eY0
おつおつ
毎回読み応えあって引き込まれる
ヒッキーのポジションが気になるな

369名無しさん:2017/12/18(月) 12:18:02 ID:tDy5f3Ok0
乙!
ギコはもうあかん
ヒッキー嶋さんポジか

370名無しさん:2017/12/19(火) 17:13:48 ID:OrSEP/GU0
新スレ探すの忘れてた…今更ながら乙

原典通りヒートは助からなかったのが残念だな
しかしバーニングザヨゴキックにレスが間に合わなかったのが悔やまれる…
バーニングヒートキック…
なんだろう、スゲーふつーの必殺技って感じ

ドクオの過去は…なんか原典と違いそうだな
近いうちに確変ギャレンがまた見れそうだし、来週からまた楽しめそうだ

371名無しさん:2017/12/19(火) 17:48:35 ID:jwy4lrXk0
原作追うだけじゃなくてキャラの設定とかエピソードとかオリジナル要素入れてくれてるの好き
モスやんの話とか良い話

原作劇中では使用されなかったカード使って戦うのは愛を感じる

372 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:23:00 ID:/vPk1WvQ0





         【 第20話 〜託された想い〜 】




.

37320話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:23:40 ID:/vPk1WvQ0


 カリスとレンゲルの交戦によって、カリスと対峙していた二体のアンデッドまでもがブレイドに襲い掛かり始めた。
 四体のアンデッドに囲まれるなんて事は、未だかつてない危機だ。
 場数を踏んできたとは言え、流石に気持ちの面で不安になってしまうであろう。


『グウオオオオォッ!』

( OwO)「ふっ!ぅおらァッ!!」

『シャアアアァアッ!?』


 シカのアンデッドの振るう角の剣を弾き、迫る豹のアンデッドを蹴り飛ばす。
 並走して迫っていたイナゴのアンデッドには斜めにブレイラウザーを振り下ろし、振り向き様に弾いたシカのアンデッドを横薙ぎに斬撃。
 

( OwO)「はあッ!!」

『グルルルルッ…!?』


 突進するイノシシのアンデッドを、後ろに回し蹴り見事蹴散らす。
 苦戦を強いられるかと思いきや、ブレイドは冷静に四体のアンデッドと渡り合っていた。

 四体のアンデッドを前にしても、決して引けを取らない実力。
 これまでの戦いの中で、誰に戦い方を教わる訳でもなかったが、経験を重ね着実に戦士としての成長を見せていた。

 

 その一方で、歴戦の猛者であるカリスは、レンゲル一人を相手に押されていた。

37420話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:24:04 ID:/vPk1WvQ0

 
 豪快に振られるレンゲルラウザーをカリスアローで弾く度、武器を持つ左腕に痺れに似た感覚が走る。
 力が強すぎて、その衝撃が腕にまで伝わっていたのだ。


( OHO)「ふんっ!ッはあ!」

( <::V::>)『チィ…ッ!こいつ、カテゴリーAの力と共存しているのか…!』

( OHO)「やはり……」

( <::V::>)『……?』

( OHO)『――やはり、貴様は弱くなっている!』


 レンゲルの意志が、カテゴリーAに代わるのを感じた。


( ;<::V::>)『うあっ!?』


 鍔迫り合いを力で強引に押し退けられ、カリスアローを弾かれた。
 水面を蹴られ体勢を崩したと同時に胸に叩き込まれたレンゲルラウザーの三枚刃が、カリスを地に叩き付ける。


( ;<::V::>)『ぐうっ…!!』


 胴体を片足で踏みつけられる。
 まるで、身体に重りがずっしりと乗っかったような感覚。身動きが取れない。
 レンゲルは、ラウザーの後端で動けないカリスの顔面を、何度も何度も顔面を殴り続ける。


( OHO)『人間の臭いがするぞ、カリス…!アンデッドでありながら人間に魂を売り、腑抜けになったようだな!』

( ;<::V::>)『ぐっ!ううぅッ…!!』

( OHO)『強さを失った貴様などもはや俺の敵ではない!カテゴリーAの最強は、この俺だ!!』


 釘を打つ金槌の如くひとしきり殴り続け、踏みつけた足でカリスの脇腹を蹴飛ばす。
 蹴られたボールのように地面を転がり、壁にぶつかる事でようやく止まる事が出来たが、カリスはぐったりと倒れたまま。

37520話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:29:33 ID:/vPk1WvQ0


( OwO)「クーさんッ!!」

( ・∀・)「やめろ!!!」


 モララーの制止を求める声に、レンゲルの動きが止まる。


( ・∀・)「ギコさん!!もうやめてください!!!」

( OHO)「ふん、俺を止めたいか?」

( ・∀・)「あなたは……あなたはそんな人じゃなかったはずです!」

( OHO)「……クッ、ハハハハハ!何を言い出すかと思えば……。俺を止めたければ、お前が俺を止めてみろ!」

( OHO)「お前が戦え。ギャレンとして……お前がな」

( ・∀・)「ッ……」

( OHO)「引き上げるぞ!」


 レンゲルの声と同時に、ブレイドを囲む四体のアンデッドは攻撃の手を止めた。
 

( OwO)「はっ……はっ……!?」


 鳴り響くバイクの排気音。
 階段を駆け上がり、橋の上までグリンクローバーが姿を現した。

 レンゲルは、無人で走行するグリンクローバーに飛び乗ると颯爽と走り去って行ってしまった。
 アンデッド達も、その後を追って撤退を開始。

 
 突然の退却に戸惑うブレイドと、怯えきったドクオ。
 レンゲルに打ちのめされたカリス、そして……消えたレンゲルの背を見つめるモララー。


( ・∀・)「………」

37620話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:30:06 ID:/vPk1WvQ0


( OwO)「クーさん!大丈夫かお!?」

( ;<::V::>)『うっ……ぐ、……私に触るな……ッ!』


 差し伸べばされた手を叩き落とし、助けを拒む。
 ふらふらながらも自力で起き上がり、カリスの姿のままシャドーチェイサーのもとへと必死に歩いて行く。


( ;<::V::>)『……私が、負けるだと……?あんな、奴に…ッうう……!』

( ;<::V::>)『ふざけるな……!!二度とあんな事は言わせない……ッ』


 レンゲルに言われた事が、心の奥底に根強く残っていた。
 カリスにとっては、すべてが侮辱に値する言葉。
 敗北を喫した悔しさと相まって、どうしようもない怒りだけがこみ上げて来る。


( OwO)「クーさん……」


 ブレイド達の心配を余所に、シャドーチェイサーに乗ったカリスは一人走り去ってしまった。
 
 
(;'A`)「………」

( ・∀・)「………」


 残された三人の間には、重苦しい空気だけが流れていた――。

37720話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:30:28 ID:/vPk1WvQ0





 ―――――




.

37820話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:30:54 ID:/vPk1WvQ0

 
 レンゲルの奪取に成功したギコは、夜の海を眺められる運河に足を運んでいた。

 
( OHO)「………」


 レンゲルバックルのシャッターを閉じ、レンゲルの変身を解く。
 右手に持ったバックルを見つめ、薄く笑みを浮かべた。
 

(,,゚Д゚)「遂に俺は手に入れた…レンゲルという最高の力を」


 変身を解いても、ジョルジュやドクオのように異常はない。
 自らの意志で変身し、自らの意志で変身を解いたギコは、カテゴリーAの力を受け入れているようだ。


(,,゚Д゚)「アンデッドもライダーも、皆俺の手で潰す…!」

(,,゚Д゚)「俺は、最強の仮面ライダーだ…!!」


 目の前に広がる、闇夜を映す海を眺める。

 ライダーになれなかった自分が、最強のライダーに――。
 最強の力を得て、心の底から湧き出る喜びを噛み締めるギコ。


 グリンクローバーに乗ると、ギコは一人闇夜の中へと消えていった。

37920話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:33:51 ID:/vPk1WvQ0





 ―――――




.

38020話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:34:27 ID:/vPk1WvQ0


ξ゚⊿゚)ξ「そんな……!じゃあ今、レンゲルのベルトは……」

( ・∀・)「ああ……レンゲルは今、ギコさんの手の中にある」
 _
( ゚∀゚)「………」

ξ゚⊿゚)ξ「……なんで、ギコさん……」


 ブーンの家へと戻っていた三人。
 跨線橋であった出来事を聞いたツンは、戸惑いを隠せない様子。
 ジョルジュに限っては、言葉を失ってしまっていた。


ξ゚⊿゚)ξ「……でも、もしかしたら」

( ^ω^)「もしかしたらって、何だお」

ξ゚⊿゚)ξ「もしかしたら……ギコさんなら、レンゲルを使いこなせるかもしれないんじゃ?」

( ・∀・)「………」

ξ゚⊿゚)ξ「自分の意志をしっかり持ってる人だから、カテゴリーAに打ち勝てるかも…だって現に自分の意志で戦ってたんでしょ?」

( ・∀・)「無駄だよ」

ξ゚⊿゚)ξ「どうして?」

( ・∀・)「……俺達の知ってるギコさんじゃなかった。正義に溢れた、熱い人間のギコさんはもう……。それだけだ」
 _
( ゚∀゚)「……許せねぇ」


 自身の膝を拳で叩き、怒りを露にする。

 _
( ゚∀゚)「俺にあれだけの事言っといて…あれも嘘だったってのか!?力に支配されてんのは自分じゃねぇか!
     俺はギコさんみたいな力の望み方はしてねぇんだよ……!!」

38120話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:34:52 ID:/vPk1WvQ0


 ジョルジュが怒るのも無理はない。
 レンゲルの使用を強く望んだジョルジュに、断固として認めなかったのがギコだ。

 もっともらしい事を言っていたくせに、ギコ自身がその力に飲みこまれていた。
 その事実に、腹を立てずにはいられなかった。


( ^ω^)「……モララーさん」

( ・∀・)「ん?」

( ^ω^)「明日、またギコさんに会ってみませんか?」

ξ゚⊿゚)ξ「何するつもりなの?」

( ^ω^)「説得するんだお、ベルトを返してくれって」
 _
( ゚∀゚)「返すわけねぇだろ、どうせ拒むに決まってる」

( ^ω^)「そうだとしても……このまま野放しするのは違うお」


( ^ω^)「それに、思うんですお。ギコさんを説得出来るのもモララーさんしかいないんじゃないかなって」

( ・∀・)「………」


 腕を組み、下を見たままのモララー。
 ブーンの提案には、素直に頷ける自信がなかった。

 こんな自分に、ギコを説得する事が出来るのか。
 
 そもそも……ギャレンの座を奪ってしまったばかりに、こんな事になってしまっているのではないか?


 考えれば考える程、自分への責任を強く感じてしまっていた。

38220話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:35:32 ID:/vPk1WvQ0


('A`)「……あの、俺はどうすれば?」

( ^ω^)「もう時間も遅いし、今日は泊まってけお」

( ^ω^)「それに、お前には色々注意しなきゃならなくなった訳だし……ここまで来ちゃった以上、もうお前も関係無いなんて言ってる場合じゃないお」

('A`)「………そう、だよな」

ξ゚⊿゚)ξ「可哀想だけど…誰かに危害が加わってからじゃ遅いから」

('A`)「うん、分かってる……でもこれだけははっきりさせたいから言わせてくれ」

('A`)「俺は、仮面ライダーには絶対になりたくない。俺なんかがなっても足手まといだし……そもそも向いてないから。
    何でカテゴリーAが俺を選んで追い掛け回してたのかは知らないけど……とにかく、俺は早くこの問題を解決したい」

('A`)「だから……それまでは、協力するよ」

( ^ω^)「うん、分かったお」

( ・∀・)「君を巻き込んでしまって……本当にすまない」

ξ゚⊿゚)ξ「……さ、みんな疲れたでしょ?今日はとりあえずご飯食べて休みましょ。
      今日は寒いから、豆乳鍋にでもしようかと思って!」
 

 重たい空気を断ち切るように立ち上がったツン。
 キッチンに向かい、既に食卓に用意された土鍋と器に盛られた野菜を見せた。


( ^ω^)「おー、いいね!寒い日は鍋に限るお」

('∀`)「……そうだな。かわい子ちゃんが用意してくれた鍋でも食って、とりあえず元気出すとするか!また明日考えるわ!」
 _
( ゚∀゚)「………」


 無理に気さくな態度を作り、ドクオは先に食卓に座った。
 本当は、食事など喉に通らない程追い詰められている。
 ジョルジュとモララーも、未だ暗い表情のままだ。
 
 五人はツンが用意した豆乳鍋をつつき、心が晴れないままその日の夜を過ごした。

38320話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:36:06 ID:/vPk1WvQ0


 ――――――
 ――――
 ――


 寒さが部屋の中に蔓延する深夜。
 全員が眠りに着いた頃――ドクオは一人、リビングのソファで眠っていた。

 
(-A-) Zzzz……


 全員が就寝する為に部屋に向かった後、すぐに眠りに着いてしまった。
 たった一日で、今までこんなに疲れた事がないと言っても過言ではない。
 それほど、肉体的にも精神的にも疲れていたのだ。

 いびきはしていないが、口をボーッと開きながら寝てしまっている。


(-A-)「………ん、んん……」

(;-A-)「……やめ、ろ……」


 深い眠りに着いているはずのドクオが、呻き始めた。
 眉間に皺を寄せ、苦しんだ様子を見せる。

 誰もいない深夜のリビングに、ドクオの小さな声が響く。




 ドクオは、夢に魘されていた。

38420話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:36:34 ID:/vPk1WvQ0


 ――ドクオが見ているのは、自分が小学生だった頃の夢。

 黒のランドセルを背負い、学校の帰り道を俯きながらとぼとぼと、一人歩いている。


「おいドクオ!」


 背後から、同級生らしき男の子達が駆け寄ってきた。
 ドクオの前に回り込み、行く手を塞ぐ。


「お前のせいで今日のサッカー負けたじゃねぇかよ!」

「そーだよ!お前がちゃんとパス出来てれば負けなかったのに!」

('A`)「……ごめん」

「てかお前いっつも足引っ張りやがってさ、邪魔なんだよ!」

「暗いしマジできもい。何で学校来てんの?」


 同級生達の悪意ある言葉が、幼いながらのドクオの心を酷く傷つける。


('A`)「………」

「なんとか言えよ!」 ドンッ

(;'A`)「うっ…!」


 目の前の一人に突き飛ばされ、地面に尻餅を着いてしまった。


 ドクオが見ているのは……小学生の頃、いじめられていた時の思い出。

38520話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:36:58 ID:/vPk1WvQ0


「お前友達いないだろ?友達いないやつは学校来んなよ!」

「お前みたいな奴絶対友達になりたくねー!」

「ほら、どうした?やり返してみろよ!」


 座り込んでしまったドクオを囲み、同級生達はそろって足で蹴る暴行を加える。
 幼い子供は痛みを知らない。
 故に蹴りは強く、ドクオの腕や腹部・背中を蹴り続けた。


(;A;)「やめてよぉ…!痛いよぉ!」

「はあ?こんくらいで痛いとかよっわ」

(;A;)「うううううぅ……ッ!」


 怖い、痛い、悔しい……憎い。
 すべての感情を抱いた時、目から溢れる涙。
 抵抗する事も、仕返しする事も出来ない。ただずっと、蹴られ続けるしかなかったあの頃。


(;A;)(……っ何で……)

(;A;)(何でいつもぼくばっかりなんだよぉ……!)


 心の中で強く叫んだ。
 
 何で、いつも自分ばかりいじめられるのか。
 どうして、自分はこんなにも無力なのか。
 
 強くなりたい。
 強くなって、こいつらに仕返ししたい。見返してやりたい。

 強さが欲しい。誰にも踏みにじられない、強い力が欲しい――




 『――ソウダ、力ヲ求メロ』

38620話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:37:32 ID:/vPk1WvQ0


 目を閉じて広がる闇の中から、声が聞こえる。


(;A;)「ッ……??」

 『――モット強クナリタイダロウ…コンナ奴等、オ前自身ノ手デ踏ミニジリタクハナイカ?』

(;A;)「………」

 『――オ前ハ正シイ……弱者ガイタブラレルノガ、世ノ常。ナラバオ前ガ、強者トナレ。
  ソシテ……コノ憎イ奴等、オ前ヲ蔑ム奴等、オ前ガ気ニ入ラナイ奴等全テヲ薙ギ倒セ!』

 『――俺ガ、オ前ノ助ケトナロウ』

(;A;)「……!」


 ――知らぬ間に右手で握っていた、レンゲルバックル。
 
 バックルから聞こえる声に、ドクオの心は奪われていく。

38720話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:38:11 ID:/vPk1WvQ0


(;A;)「ぼくは………いや、俺は……」

 『――ソウダ…俺ノ力ヲ受ケ入レロ!オ前ハ、最強ニナルノダ!』

(#'A`)「俺は……!俺を舐め切った、好き放題いたぶった貴様等を許さない……!!!」


 ドクオの腰に装着されるレンゲルバックル。
 蹴り続ける同級生達を振り払い立ち上がったドクオの姿は――今の大人の姿になっていた。


(#'A`)「変身…ッ!!!」


    【 -♣OPEN UP- 】


( OHO)「俺は…俺は強くなる!この力で、誰よりも強くなってやる!!」

「うわあああぁっ!?」
 

 怯えた同級生達に向け、レンゲルラウザーを大きく振りかざし、そして――


( #OHO)「うおおおおおああああああああアァァァァァッ!!!!!!!」



.

38820話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:38:40 ID:/vPk1WvQ0


(;'A`)「ッ―――!!!!」


 飛び起き、呼吸を乱す。
 寒さが際立つというのに、全身にはびっしょりと汗をかいている。


(;'A`)「はぁ…はぁ…、ったく……何だって今更こんな夢見てんだ……?」


 夢である事を知り、ほっと深く一息。
 
 記憶の片隅に押しやっていた、思い出したくもない過去。
 今の情けない自分があるのも、忌々しい過去の記憶のせいだ。
  
 今まで、過去の思い出が夢という形で現れた事なんて一度もなかった。
 
 夢の中に現れたカテゴリーAが、ドクオの芯に接触してきたように思えてならない。


('A`)「……俺は、強くなれるのか?変わる事が出来るかもしれないのか?」


 レンゲルの力を使い、自分をいじめていた奴等を倒した時…夢の中だが、確かな喜びを感じていた。
 
 自分のような非力でどうしようもない人間が、仮面ライダーとしての責務を果たす事は不可能。
 そんな責任を背負いたくも無かった。

 
 ――しかし、"仮面ライダー"という力を手にすれば……自分は、生まれ変われるのではないか。
 ましてや、レンゲルの圧倒的な強さを、この目で確かめている。


('A`)「………あの力さえ、あれば……」


 頑なに拒んでいたカテゴリーAの力。

 だが……ドクオが抱えている"闇"の部分に、とうとう触れてしまった。

38920話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:39:02 ID:/vPk1WvQ0





 ―――――




.

39020話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:39:24 ID:/vPk1WvQ0


 ――翌日。


 ブーンとモララーの二人は、NEO運河へと足を運んでいた。

 本来なら自宅に招いてもよかったが、どうなるか分からない。
 人陰のない場所で、もしもの事態に備える為に外に出た。

 ある人物と、話をする為に。


( ・∀・)「もし何かあったら、その時は……頼む」

( ^ω^)「……はい」


 そこに、丁度良く待ち合わせの約束をした人物が現れた。

 コンクリートの細い通路の前に停車する、グリンクローバー。
 それに乗った、白いスーツを着た男。

 ヘルメットを取り、ブーン達を遠くから見つめながら近付いて来る。


( ・∀・)「ギコさん……」


 現れたのは……モララー達を裏切り、レンゲルの力を奪ったギコだ。


(,,゚Д゚)「何の用だ、こんな朝早くから…」

( ・∀・)「あなたに話があります」

(,,゚Д゚)「話なんて俺にはない。そんな事より、俺と戦う気になったのか?」

( ・∀・)「何を言ってるんですか!?何で俺がギコさんと戦わなければならないんですか!」

( ・∀・)「単刀直入に言います。レンゲルのベルトを返してください」

(,,゚Д゚)「……何故?」

( ・∀・)「ギコさんだってレンゲルの危険性は知ってるでしょう…!そのベルトは危険過ぎます!」

39120話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:40:44 ID:/vPk1WvQ0


(,,゚Д゚)「………」

( ・∀・)「お願いですギコさん、ギャレンに戻ってください。そしてレンゲルのベルトを――」

(,,#゚Д゚)「ふざけるな!!!」

( ・∀・)「!?」

( ^ω^)「……!」


 ギコの怒号が、耳に聞こえる波音を掻き消す。
 迫力ある怒鳴り声に、思わず萎縮しそうになってしまった。


(,,゚Д゚)「ライダーになれなかった俺の……俺だけの為に作られた力だ!やっと手に入れた力だぞ!!」

(,,゚Д゚)「俺にジョルジュやドクオのような悩みも弱さもない。俺とカテゴリーAの意志は完全に一つだ!」

(,,゚Д゚)「昨日も言ったが、俺はアンデッドもライダーも全て倒す。
     そこにいるブレイドや、カリス……そしてお前もだモララー!それが、俺とお前が戦う理由だ!」


 もはや何も見えていない。
 自分自身でレンゲルの力を使う事が出来ても、結局は力に捕らわれ、傀儡と化してしまっている。
 
 モララーの表情も、段々と厳しくなってきていた。


( ・∀・)「……あなたの正義は、情熱はどうなったんですか!?」

( ・∀・)「あなたは頼もしい先輩として、俺達に厳しく…時に優しく指導してくれました。
      ギャレンとして俺が戦って来れたのも、ギコさんが居たからです!」

( ・∀・)「もしもの時、ライダーとして人を守れるのはお前達しかいないと……そう熱く教えてくれたのはギコさんじゃないですか!」

( ・∀・)「なのに……今のあなたは何ですか!?ギャレンの座を奪ってしまった俺を許せないからですか!?」

(,,゚Д゚)「………」

( ・∀・)「答えてください!!」

39220話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:42:46 ID:/vPk1WvQ0


(,,゚Д゚)「そんなもの…最初からどうでもよかったのさ」

( ・∀・)「え……?」


 不気味な笑みを浮かべるギコ。
 どこか、恍惚そうにも見えるその顔は…残酷さすら感じられた。


(,, ー )「レンゲルの力をこの目で目の当たりにし、この手で力を感じた時……俺は気付いた。
     正義なんてな、力を振るう為の言い訳にしか過ぎないんだよ」

(  ∀ )「……やめてください」

(,,゚∀゚)「フッ…ククク、俺はただ……力を振るいたかっただけだったのさ!!」

( #・∀・)「やめてくれ!!!」

(,,゚Д゚)「………」


 聞くに耐えれない。
 尊敬していた人の、人とも思えない言葉は、モララーの耳に通ることを拒んだ。


( ・∀・)「聞きたくない…そんな言葉、あなたからは聞きたくない!!」

(,,゚Д゚)「なら俺と戦え!!」

( ; ・∀・)「ッぐ!?」

( ^ω^)「!!」


 ギコに胸倉を掴まれ、強引に突き飛ばされた。
 尻餅を着くモララーに、傍で構えていたブーンが身構え始める。

 座り込みながら見上げるモララーの目を、真っ直ぐと見つめるギコ。


(,,゚Д゚)「戦え!ギャレンとして……戦え、モララー!」

(,,゚Д゚)「――お前なら、出来るはずだろう!」
 
( ・∀・)「………」

39320話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:44:54 ID:/vPk1WvQ0


(,,゚Д゚)「俺は、お前の答えを待っているぞ」


 言い残し、ギコは去って行った。
 立ち上がったモララーは暫く、姿が消えるまでギコの背を見つめた。

 完全に姿が見えなくなると、停めてあるレッドランバスに寄りかかった。
 説得出来なかったどころか、目の当たりにしたくなかったギコの今の姿を見てしまった。


( ^ω^)「モララーさん……」

( ・∀・)「……ごめん、やっぱり何も出来なかったよ」

( ^ω^)「違います……ギコさん、自分の意志でレンゲルを操ってなんかいませんお。
       あれは間違いなく、カテゴリーAに飲みこまれてる気がします……」

( ・∀・)「そう、だといいな……あんなギコさんは、見たくなかったから」

( ^ω^)「……やっぱり、ギコさんの事救えるのはモララーさんだけですお。
      ギコさんの本当の声が、最後の言葉に漏れてたように感じます」

( ・∀・)「本当の、声……?」

( ^ω^)「はい、お前なら出来るって言ったギコさんの言葉は……もしかしたら、閉ざされてしまったギコさんの本当の心かもしれません」

( ^ω^)「あれは、モララーさんに助けを求めてるようにも聞こえましたお」

( ・∀・)「………」


 ブーンの言葉に、可能性を見出しそうになる。

 だが……何も出来やしない。
 こんな自分に、ギャレンとして戦う資格なんてない。 

 未だに根強く持った思いが、可能性を塞ぎこんでしまう。


(・∀・ )「やめてくれ……俺には何も出来ないよ」

(・∀・ )「俺に、何が出来るっていうんだ……」

( ^ω^)「………」

39420話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:46:02 ID:/vPk1WvQ0





 ―――――




.

39520話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:46:27 ID:/vPk1WvQ0


 モララーがギコの説得に失敗してしまった頃。

 留守番組のツンとジョルジュ、そしてドクオはリビングに会していた。


ξ゚⊿゚)ξ「はぁ……説得出来るかしら、モララーさん」
 _
( ゚∀゚)「無理だよ。それだけ力に憧れてたんなら手放したくない気持ちも分かるっていうか……」

ξ゚⊿゚)ξ「ギコさんがレンゲルを使いこなして、私達と一緒に戦ってくれさえすればいいのよ」

('A`)「………」


 深夜に例の夢を見てから、ドクオの様子に異変が起きている。


('A`)(――レンゲル……レンゲル……)


 あれだけレンゲルを拒んでいたはずが、今ではレンゲルの名をずっと心の中で呟き続けている。

 恋にも似た心。

 レンゲルをこの手に持ちたい。
 レンゲルの力を、この手にしたい。


 ――カテゴリーAに、会いたい。

 _
( ゚∀゚)「お前、もう平気か?」

('A`)(レンゲル……レンゲル……レンゲル……)
 _
( ゚∀゚)「おい」

('A`)(レンゲル……レンゲル……レンゲル……レンゲル……)

ξ゚⊿゚)ξ「ドクオさん??」

('A`)(レンゲル……レンゲル……レンゲル……レンゲル……レンゲル……レンゲル……)

39620話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:46:53 ID:/vPk1WvQ0

 _
( ゚∀゚)「おい!聞いてんのかよ!?」

('A`)「――っへ?あ、ああ……今日も寒いなぁ」
 _
( ゚∀゚)「あ?平気かどうかって聞いてんだよ」

('A`)「え、あ…ああ!もう全然平気だよ。24時間で200キロ走れちゃいそうなくらい平気だよ」
 _
( ゚∀゚)「耳は難聴になっちまったっぽいけどな?」

('∀`)「いやぁ実は俺、耳の良さが失われた代わりに全部性格に良さが来てるからさ〜。英国の姫が俺に惚れちゃったくらいだぜ?」
 _
( ゚∀゚)=3 「はいはい、平気だな」

('∀`)「うっす」


 持ち前の軽いノリで、何とか誤魔化せた。
 呆れ返ったジョルジュは鼻を鳴らし、リビングを立ち去った。


ξ゚⊿゚)ξ「ふふふ、私洗濯物しちゃうから席離れるわね」

('A`)ノ「おう、頑張って〜」


 同じくツンも、日課となった家事を行う為にリビングから出て行く。
 ドクオは一人、取り残された。


 ――この時を、待っていたのだ。

39720話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:47:42 ID:/vPk1WvQ0


('A`)(今しかねぇ…!)


 誰もいない事を確認し、ソファから立ち上がる。
 周囲を警戒しながら、なるべく足音を立てずに、ドクオは収納家具の前に立った。


 そこは、レンゲルバックルを保管していた場所。

 他にも……モララーより預かった、ギャレンバックルが保管されていた。


('A`)(ここにあるはずだ…あのベルトが…!)


 引き出しに手を掛け、摩擦の音を最低限に抑えながら手前に引く。
 すると…保管されているギャレンバックルが、引き出しより姿を見せた。


('A`)(よし、あったぞ…こいつを持ってけば…!)


 あろうことか……ドクオはギャレンバックルに手を伸ばし、引き出しより取り出した。
 ゆっくりと引き出しを戻すと、早足にリビングを。

 靴を履き、玄関をそろりと開け……ブーンの家を抜け出した。


('A`)「よし…!急ぐぞ……」

('A`)「感じる……レンゲルのベルトの気配を……!!」


 自身のバイクに乗り、慌てたように走り出す。

 レンゲルに引き寄せられるように、ギコのもとへと……。


.

39820話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:48:03 ID:/vPk1WvQ0





 ―――――




.

39920話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:48:55 ID:/vPk1WvQ0


 街外れにある、廃れた施設の前に……異形の群れは居た。

 建造されて、然程年数は経っていないように見える施設。
 だが、捨てられて手入れも補強もされず、ただ時を過ごす廃墟と化した施設は、確実に傷み、老朽化が進んでいた。


『グルルルル……』

『シャアアアア……』


 幾重にも重なって聞こえる歪な呻き声。
 欲望のままに人を殺め、本来であれば互いに戦うべき敵であるアンデッド同士が、肩を並べて立っていた。

 すると、アンデッドの群れを掻き分け、廃墟と化した施設の前に立つ一人の男。


(,,゚Д゚)「………ここから、全ては始まった」


 モララー達の説得を拒み、明確な敵意を示したギコだ。
 レンゲルの変身を解いて尚、自身の手で解放したアンデッド達を僕として従えているようだ。


 目の前の廃墟を見上げながらそう呟くギコは、この施設の本当の姿――"BOARDの第一研究所"での思い出を遡っていた。

 
(,,゚Д゚)「所長が提唱したライダーシステムの第一号…ギャレンの適格者として、俺はBOARDにスカウトされ職員となった」

(,,゚Д゚)「長い鍛錬、修行を経て…俺はギャレンの最大限適合した人間として選定された……はずだった」

40020話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:49:48 ID:/vPk1WvQ0


 ……だが、当時研究員として働いていた後輩であるモララーに、融合係数が上回っているとしてギャレンの資格を剥奪された。
 
 その後、BOARDは協議の末、ギャレンだけでは最悪の事態に対処し切れぬと判断。
 現在ブーンが変身している、ライダーシステムの第二号・ブレイドが開発された。
 
 ギャレンに適合していただけあって、ブレイドの適合者としてのギコの期待は高かった。

 そして、適格者として、ブレイドの変身実験に臨んだギコだったが……、


(,,゚Д゚)「俺は……変身出来なかった。あの時の事故で、俺の左腕は……」


 スーツの裾をたくし上げ、左腕を露出させる。
 晒されたギコの左腕は……生身の人間のソレではなく、鋼の義手。
 
 ブレイドの変身実験中に、ライダーに変身する為に射出するゲート――オリハルコンエレメントに衝突した際、ギコは左腕を失ってしまっていたのだ。

 これにより、BOARDと当時所長だったロマネスクは、ギコをライダーシステムへ関与する事を一切禁じてしまった。
 
 ツンやジョルジュにも心配され…何より、後輩であったモララーが彼を一番気にかけていた。
 ギコはそんなモララーにも笑って見せ、自分の代わりにライダーとしての使命を背負って欲しいと、想いを託した。

 
(,,゚Д゚)「しかし……結局俺に残ったのは、ライダーへの捨て切れぬ憧れと…行き場の無い正義感だけだった…!」

(,,゚Д゚)「腕を失い、何も出来ず……惨めな俺は誰にも言わずにBOARDを去った」

40120話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:50:48 ID:/vPk1WvQ0


 懐に義手の左手を忍ばせ、レンゲルバックルを取り出す。


(,,゚Д゚)「だが……俺はコイツを手に入れた。俺の為に作られた、この最強の力を…!」

(,,゚Д゚)「腐り切った俺を、コイツが救ってくれたんだ…!コイツが俺に求めてくる…全ての者を倒せと。
     俺はその声に応える……そして、全てのライダーを倒す!」


 バックルよりトレイを引き、カテゴリーAのカードを装填。
 腰にベルトを装着し、BOARDの研究所だった廃墟に背を向けた。

 自分の中に残った正義の燃えカスを、この廃墟に託して――。


(,,゚Д゚)「変身!」


    【 -♣OPEN UP- 】


 スライドしたシャッターより現れた♣のマーク。
 バックルより射出する紫色に発光するゲート――スピリチアエレメント。
 対象のギコにゲート自らが接近し身体を覆うと……ギコを、レンゲルへと変身させた。


( OHO)「さぁ来い……菱谷」

( OHO)「お前の手で、俺を終わらせてみせろ…!」

『グオオオオオオオッ!!』


 レンゲルとなったギコの意志を受け、四体のアンデッドは躍動する。
 それまで肩を並べていたのに、突然、互いに争い始めた。

 まるで、自分の居場所を伝えるかのように――。

40220話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:51:15 ID:/vPk1WvQ0


 ――――――
 ――――
 ――


( ^ω^)ロ 「――分かった、すぐに向かうお!」


 サーチャーの反応を確認したツンより、アンデッド出現の報を既に受けていた。
 詳細を聞き電話を切ると、レッドランバスに凭れていたモララーがブーンに駆け寄る。


( ・∀・)「アンデッドか!?」

( ^ω^)「はい。あと、レンゲルの反応も……詳しい場所まで特定出来たみたいで、モララーさんなら分かるって言ってましたお」

( ・∀・)「何処だ?」

( ^ω^)「今は廃墟となってるはずの、BOARDの第一研究所だって」

( ・∀・)「BOARDの第一研究所?何でそんなところに……確かに場所は分かる。とにかく急ごう!」

( ^ω^)「はい!」


 それぞれのバイクに乗り、モララーを先頭にBOARDの第一研究所に向け走り出す。

 アンデッドの反応、そしてレンゲルの反応があるという事は、そこにギコが居る事になる。
 何故、今更そんな場所に居るのか。
 人もいない場所でのアンデッドの反応は、何を意味しているのか。

 ギコの思惑に疑問を抱きながら、モララーは急いだ。


 ――しかし、レンゲルのもとへ向かっていたのは、この二人だけではなかった。


.

40320話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:52:07 ID:/vPk1WvQ0


 ――――――
 ――――
 ――


( OHO)「……?」


 アンデッド同士が争い、打ち合う中に混じって聞こえるバイクの排気音
 この排気音が、モララーやブーンのものではない事をすぐに理解するレンゲル。

 視線を向けた先から近付いて来ていたのは……ギャレンのバックルを盗み出て行った、ドクオだった。


(;'A`)「ッ……」


 バイクを停めたドクオは、戦うアンデッド達にびくびくと怯えながらも、レンゲルに歩み寄る。

 その手に、ギャレンバックルを握り締めながら。


( OHO)「何の真似だ?」

(;'A`)「た……頼む、そのベルト……俺に返してくれ!」

( OHO)「何…?」

(;'A`)「代わりに、ほら!これやるからさ……な?頼むよ!」


 恐る恐る、ギャレンバックルをレンゲルに差し出す。
 差し出す手は、恐怖でぷるぷると震えている。

 だが、恐怖よりも、目の前にあるレンゲルのベルトが欲しい。

40420話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:53:32 ID:/vPk1WvQ0


( OHO)「ふん……そんなものはいらない。俺にはこの力が有ればそれでいい」

(;'A`)「何でだよ…!あんたはこれにも変身出来るしいいじゃないか!」

(;'A`)「俺は…俺は自分を変えたいんだよ!びくびくしてばっかで、自信が無くて前に進めない自分を変えたいんだ!!
    そのベルトがあれば……俺は強くなって、変われるんだ!」

(;'A`)「そうすれば……俺はもう、誰にも踏みにじられたりする事なんてなくなる!!」


 もう、溢れ出た欲望を抑える事が出来ない。
 心の中に潜む"闇"が、暴走して止まらない。

 自分の中の弱さが、邪悪な力を欲している。


( OHO)「くだらない、そんな事の為にライダーになりたいと言うのか!?
     いつまでも人のせいにして、立ち向かわずに逃げ回っているだけでは自分を変える事など出来やしない!」

( OHO)「それに……」


 突如、レンゲルの声が穏やかになった。


( OHO)「ギャレンの資格がある者は、この世でたった一人……それは、俺ではない」

(;'A`)「そんな…頼むよ!俺には必要なんだよレンゲルの力が……!」

( OHO)「失せろ!」

Σ(;'A`)「うゔっ!?」


 詰め寄ったドクオを、容赦なく突き飛ばした。
 ギャレンバックルが手から滑り落ち、遠くへ転がり落ちる。

 すると、先程まで争っていたはずのアンデッド達が、互いを傷つける手を止めた。
 そして……地面に倒れたドクオに、四体のアンデッドが迫る。


(;'A`)「ひっ…!や、やめろ……!!」

40520話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:54:20 ID:/vPk1WvQ0


 そこに、別のバイクの排気音が響いて来た。 
 その音に視線を向けたレンゲルは、今度こそ待ち望んでいた人物の到来を確信する。

 ブルースペイダーとレッドランバスがアンデッドの前に泊まり、二人はドクオを庇うようにして立ちはだかった。


( ^ω^)「何でお前がここにいるんだ!?」

(;'A`)「そ、それは…」

( OHO)「菱谷……!」

( ・∀・)「………」


 モララーの姿を見るなり、レンゲルは落ちたギャレンバックルを拾うと、モララーに投げ付けた。
 足早に歩み寄り始める。
 その行く手を、ブレイバックルを腰に装着したブーンが塞いだ。


( ^ω^)「ギコさん、今度こそあんたを止める!!」

( OHO)「いいだろう、まずはブレイド…お前から倒してやる!」

( ^ω^)ψ「変身!」
    /

    【 -♠TURN UP- 】


 バックルより射出するゲートで、レンゲルの動きを牽制する。
 ブーンは雄叫びを上げながらゲートに向け走り、ブレイドへと変身。

 走る勢いのまま、正面からレンゲルに右拳を突き出した。


( OwO)「うおおおおおおおおおおッ!!」

( OHO)「ふっ、良い拳だ…君も戦いの中で大きく成長をしたようだな!」


 ブレイドの正面からの突きを、容易く左手で受け止める。
 素早く懐に潜り込み背を向けると、ブレイドの二の腕辺りを右手で掴み、一本背負いのような形で地に投げ付けた。


( ; OwO)「うおっ!?」

.

40620話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:55:15 ID:/vPk1WvQ0


 反射的にすぐ立ち上がったところに、レンゲルがすかさず攻め寄る。
 ブレイドの空拳が繰り出す攻撃を完全に見切り、手で払い落とす。


( OHO)「ふんッ!はっ!」

( ; OwO)「モララーさん……ぐあッ!戦ってください!」


 両の手で交互に裏拳を叩き込み、身体を回転させた勢いでブレイドの頬に強烈な拳を見舞った。
 レンゲルと交戦しながら、ブレイドはただ黙って見守るモララーに、戦いを促す。


( ・∀・)「………」

( OHO)「菱谷!お前が戦わなければコイツが倒されるだけだぞ!」


 促されても尚、動こうとしないモララー。
 見せ付けるようにして、ブレイドを攻め続けるレンゲル。


( OwO)「モララーさん!僕はモララーさんを信じてますッ!モララーさんなら戦えるって…!」

( OHO)「うおおおああああっ!!」

( ; OwO)「ぐふうッ…!!」

40720話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:55:37 ID:/vPk1WvQ0


 大きく振り上げた回し蹴りが、ブレイドの側頭部に叩き込まれた。
 体勢を崩しふらついた身体に、レンゲルの打撃による追い討ちは止まらない。


( ; OwO)「大丈夫です…っ!モララーさんは…弱さを知った強さを、心の中に持ってるから!!」

(  ∀ )「………出来るのか、俺に……」


 俯き、足元に転がるギャレンバックルを見つめる。
 
 
( OwO)「モララーさんなら――出来る!!」

(  ∀ )「――!!」


 ブレイドの言葉に、ギコの言葉が重なる。
 
 ――その時、モララーの頭の中に、様々な過去と、声が流れ始めた。

40820話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:56:04 ID:/vPk1WvQ0


 ――それは、ギコがブレイドの変身に失敗し、入院していた時の事。



 ―――――――――― 


 (,,゚Д゚)「菱谷……お前に、聞いて欲しい頼みがある」

 ( ・∀・)「はい…?」

 (,,゚Д゚)「俺は、仮面ライダーにはなれないようだ……とても悔しいが、こうなっちゃあ仕方がない……」

 (  ∀ )「……ギコさん、すみません……俺のせいです」

 (,,゚Д゚)「馬鹿な事言うな、真面目過ぎるんだよお前は」

 (,,゚Д゚)「……もしも、アンデッドが世に放たれしまった時。人を助けられるのは、お前しかいない」

 (,,゚Д゚)「俺の想いをお前に託す。俺の代わりに……ライダーを背負ってくれ」

 ( ・∀・)「ギコさん……」

 (,,゚Д゚)「…お前なら、出来る!」

 ( ・∀・)「………はい」


 ――――――――――

.

40920話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:57:00 ID:/vPk1WvQ0

 
 ――――――――――


 ( ^ω^)「僕は今でも、モララーさんにはギャレンとして一緒に戦って欲しい気持ちがあります」

 ( ^ω^)「頑なにギャレンを拒む理由は、モララーさんが感じてる責任感からじゃないですか?
       モララーさんが感じてる、今までしてきた事への後悔や、情けないっていう気持ち…」

 ( ・∀・)「………」

 ( ^ω^)「色々あったけど、モララーさんは本当の自分に気付けたじゃないですか。
       自分の事を弱いって言うのは素晴らしい事だと思いますお。だって、自分の弱さを知っているんだから。
       モララーさんは今、自分の弱さと向き合ってる。向き合う事が大事だと僕は思いますお」

 ( ^ω^)「弱さを知らない人間は、強くはなれませんお」

 ( ^ω^)「それに、モララーさんは一人じゃない。僕達が居ます!だからモララーさんも、僕達と一緒に居ればいいですお」

 

 ( ^ω^)「――モララーさんなら、出来る!」


 ――――――――――

.

41020話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:58:11 ID:/vPk1WvQ0


 ――――――――――

 
 「――モララー」

 ( ・∀・)「!?ヒート……!?」


 ノパ⊿゚)「今度は何を迷ってるのかな?」

 ( ・∀・)「……俺に、ライダーになる資格……あるのかな?」

 ( ・∀・)「君を、守れなかった俺が……」

 ノパ⊿゚)「まったく、相変わらず真面目だなぁ君は。資格なんてもの、なくたっていいじゃないか」

 ノパ⊿゚)「今の君には、心強い仲間がいる。大切にしたい友がいる。守りたいものがあるはずだよ」

 ノパ⊿゚)「資格なんて見出そうとする前に、まずはその人達の為に戦って。
      そうすれば……君にも、その資格とやらが見つかるはず」

 ノパー゚)「それに私は、君が今大切なものの為に悩んでいる事が何より嬉しい……私はそれだけで十分だよ」

 ( ・∀・)「ヒート……」

 ノパ⊿゚)「……ほら、しっかりしろ!自分のためにも、みんなのためにも、戦えモララー!」

 ノパー゚)「君なら……出来る!」


 ――――――――――

41120話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:59:21 ID:/vPk1WvQ0



(  ∀ )「………」

( OHO)「やれ!」

『ガアアアアアアアアァァッ!!』

『グオオオオオォッ!!!』


 レンゲルの指示を受け、アンデッドが動き出した。
 アンデッド達が狙うのは……ギャレンバックルを前にし、立ち尽くしたモララー。


( ; OwO)「モララーさん!危ない!!」


 レンゲルの猛攻を受けながら危機を伝えるも、モララーは動かない。

41220話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:59:53 ID:/vPk1WvQ0



(  ∀ )「……俺は……」


 ポケットに入れた右手。
 その中で強く握っていたのは、ヒートの最期に譲り受けた、赤いお守り。

 
 今の自分には、大切にしたいものがある。

 けど、守れなかったものがあった……失ってしまったものがあった。
 その責任から、本当の想いを塞ぎこんでしまっていた。

 しかし、自分が大切にしたいと思っていた者達に、守られている事に気付いた。
 こんなな避けない自分の事を想い、守ってくれる仲間が――。

 だからこそ、今度こそ……この手で守りたい。



 何も無くなってしまった場所で、抱きしめた想い。
 その想いを、自分を、動き出していた時間の中で見失ってしまっていた。

 生まれ変わる度に強くなり、新しい強さで想いは蘇る。


 胸の内で熱く猛る想いが今――閉じこもっていた殻を、思い切り突き破った。






( #・∀・)「俺は―――戦う!!!」
 
.

41320話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 12:00:33 ID:/vPk1WvQ0

 ♪覚醒 - https://www.youtube.com/watch?v=ktrFxQEDJWc


『グガアアアアアアァァッ!!!』

( ・∀・)「ッ――!!」


 迫り来るアンデッドの攻撃を躱し、前転しながらギャレンバックルを拾い上げる。
 だが、モララーに迫ったアンデッドは一体だけではない。
 豹のアンデッドが、右手の鈎爪を光らせ、モララーに向け振り下ろした。


( ・∀・)「はあッ!!」

『ガアアァ!?』
 

 鈎爪が届く前に、モララーの足刀蹴りが豹のアンデッドの顎に炸裂。
 
 次に迫ったシカのアンデッドによる剣撃。
 瞬間的に、三日月を描くようにして宙を後転し、剣撃を回避した。

 着地したモララーは、ギャレンバックルにカテゴリーAを素早く装填。
 腰に押し当て、ベルトを装着した。


 一斉に迫るアンデッドの群れ。
 モララーは立ち上がり、群れに向けバックルのハンドルを引いた。


o( #・∀・)「変身!!」


    【 -♦TURN UP- 】


 バックルより射出したゲートで、迫り来るアンデッド達を迎撃。
 弾かれ分散したアンデッドの群れの中に展開するゲート。

 モララーは恐れる事なく、そのゲートに向け走り出した。

41420話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 12:01:55 ID:/vPk1WvQ0


 葛藤を経て、遂にギャレンに変身を果たしたモララー。
 ホルスターより引き抜いたギャレンラウザーで、四体のアンデッドに向け銃撃を見舞いながら駆け抜ける。


『グギャアアアッ!?』


 ギャレンが向かう先は、たった一つ。
 邪悪な力に溺れ、心を支配されたレンゲル――ギコのもとへ。


( OHO)「うおおおおっ!!」

( ; OwO)「くっ……!」


 ブレイドに向け、レンゲルラウザーが振り下ろされようとした時。 


( OwO)「……モララーさん!!」

( OMO)「これ以上、俺の仲間を傷つけさせない!!」

( OHO)「待っていたぞ……ギャレン!」


 レンゲルの眉間に銃口を向けながら、ブレイドを庇うように立ちはだかった。 
 

( OMO)「俺はもう…ライダーである事から逃げない。
      ヒートや剣藤、そして…あなたが託してくれた想いを胸に、俺は戦う!」

( OMO)「あなたをそうさせたのが俺だと言うのなら……俺の手で、あなたを止めてみせる!!」

( OHO)「そうだ、それでいい!ギャレンとして…俺と戦え菱谷!!」

41520話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 12:02:40 ID:/vPk1WvQ0


 瞬間、横に薙いだレンゲルラウザー。
 間一髪で躱したギャレンだが、レンゲルの後ろ回し蹴りが右手に直撃。
 ギャレンラウザーは、右手から弾き落とされてしまった。


( OHO)「この時を待ち侘びた!お前が戦ってくれる時をな!!」

( #OMO)「俺はあなたを助ける為に戦うんだ!力を求めて振るうだけの戦い、そんなものはこれで……これで終わりにする!」


 素手となったギャレンは、レンゲルの猛攻を流し、防ぎ続けた。
 自在に操るレンゲルラウザーの殴打は、防ぎながらもギャレンに着実なダメージが蓄積されていく。


( OMO)「くっ、コイツを防ぎ続けるのは厳しいな…!」

( OHO)「ふんッ!!」

( ; OMO)「ぐうっ!?」


 隙を突かれ、後端がギャレンの腹部に叩き込まれる。
 レンゲルの強靭な肉体から放たれるその力が、腹部への衝撃だけでギャレンを突き飛ばした。


( OwO)「モララーさん!」


 地面を転がるギャレンに駆け寄ったブレイドが、レンゲルに立ち向かおうとする。
 だが、伸ばした手でブレイド胸を押しやり行動を阻止。


( OMO)「手を出すな!このケリは俺の手でつける!!」


 途中でギャレンラウザーを拾い上げ、再びレンゲルに向かうギャレン。
 もう一度薙ぎ倒さんとするレンゲルが、レンゲルラウザーを振るい始めた。

41620話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 12:03:05 ID:/vPk1WvQ0


 先程とは打って変わって、読みきったかのように攻撃を躱し続ける。
 大振りに振られたレンゲルラウザーを頭を下げ回避した瞬間、ギャレンの右拳がレンゲルの頬を捉えた。


( OHO)「くっ…!」

 
 身を翻しながら、ギャレンラウザーを向け胴体に銃撃を数発ずつ、的確に撃ち込む。
 右手で攻撃を防ぎ、左拳を叩き込む。
 斜めに振り下ろされたレンゲルラウザーを後退して躱し、得意の足刀蹴りで顎を強烈に蹴り上げた。


( OMO)「はあぁッ!!」

( #OHO)「ぐうぅっ…!菱谷イィィッ!!」

( #OMO)「うおおおおおおおッ!!!」


 ギャレンに押し付けた後端で、力任せに上空に放り投げた。
 レンゲルの頭上を飛ぶギャレンは、投げられながらもギャレンラウザーの銃口を向け、背中から地面に落ちるまで銃弾を浴びせ続けた。


( ; OHO)「ぐああああぁぁあっ!?!?」


 レンゲルの黄金の鎧から、火花が激しく散り続ける。
 地面に落ちても、ギャレンの銃撃は止まらない。
 体勢を整えながらも、銃口はレンゲルを捉えたまま。

 止まない銃弾の雨に撃たれ、レンゲルの動きが完全に抑制される。
 何も出来ず、ただ撃たれる事しか出来ない。


( OMO)「ギコさん……許してください……!」


 大義はあれど、ギコを痛め付けている事に変わりはない。
 撃ち続けながら、ギャレンは胸を痛めた。

 
( ; OHO)「があっ…!っう…が、ぐはぁっ…!!」

41720話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 12:03:30 ID:/vPk1WvQ0


( OMO)「はぁ……はぁ……」


 ギャレンラウザーよりトレイを展開し、カードを三枚引き抜く。
 ラウズしようとした瞬間、レンゲルは右腰のケースに手を伸ばした。


( ; OHO)「ぐうっ…させるか…!」

 
 恐らく、"♣10 REMOTE"のカードを使い阻止しようという企みだ。
 だが、ギャレンはそれを予測していた。


( OMO)「ふっ!」

( ; OHO)「がああああ"あ"あ"あっ!?!?」


 伸ばした右手に、的確に被弾する銃弾。
 痛みに声を上げ、レンゲルラウザーを落とし右手を抑える。

 レンゲルの行動を制御し、今度こそ三枚のカードをラウズした。


    《-♦5 DROP-》 《-♦6 FIRE》 《-♦9 GEMINI-》

          《-♦BURNING DIVIDE-》


( OMO)「これで終わりだ……ギコさん!!」


 ギャレンラウザーをホルスターに収納し、両足を揃え高く跳躍。
 空中で身体を分身させ、両足に灼熱の炎が燃え盛り始める。 
 宙返りをしながら身体の向きを変え、炎の残像を描きながら、レンゲルに向け落下を始めた。


( #OMO)「でいやあああああああぁぁぁぁッッ!!!!!」

( ; OHO)「うああああああぁぁぁっ!!!」


 炎を纏った二人の両足が、レンゲルの肩から胴体を抉るように叩き込まれた。
 必殺技を正面から食らってしまったレンゲルは、断末魔の叫びを上げながら吹き飛ばされた。

41820話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 12:04:23 ID:/vPk1WvQ0



( OMO)「はっ…はっ……ギコさん!」


 着地したギャレンは、吹き飛ばされたレンゲルの方へと視線を向ける。
 

( ; OHO)「……っく……はあっ……!」

( OMO)「何……!?」


 吹き飛ばされこそしたが……レンゲルは、しっかりと二本の足で立っていた。
 必殺技を受けても、立っていられるレンゲルの強靭振り。

 だが、ギャレンが与えたダメージは凄まじく、立っているのがやっとだった。


( ; OHO)「ぐうっ……う……」

( OMO)「ギコさん!!」


 今にも転びそうな程にふらふらとした足取りで、レンゲルは廃墟の中へと必死に歩いて行く。
 後を追おうとするギャレンだが、


『グガアアアアアッ!!!』

( OMO)「クソッ…邪魔をするな!!」


 ブレイドと応戦していたアンデッドの内二体が、ギャレンに襲い掛かった。
 レンゲルが、アンデッド達に二人を妨害するよう指示を下していたのだ。


( OwO)「モララーさん!先にこいつらを封印しないと埒が明きません!」

( OMO)「仕方無い、やるぞ!」

41920話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 12:04:49 ID:/vPk1WvQ0


( OMO)「剣藤、こいつを使え!」


 ラウザーのトレイより引き抜いた一枚のカードを、ブレイドに投げ渡す。
 咄嗟にキャッチしたカードを見る。

 ギャレンから渡されたカードは、"♦6のFIRE"。
 ギャレンが軸にして使っている、炎の力を得るカードだ。


( OwO)「これは…!」

( OMO)「そいつを組み合わせて一気に仕留めるんだ!」

( OwO)「…そうか!」


 言葉に閃いた。
 今、ブレイドが必殺技を繰り出す為のアンデッドは全て目の前にいる。
 故に、雷の力を使う事も、キックを繰り出す事も出来ない。

 ブレイラウザーより、二枚のカードを選択。
 ギャレンより受け取ったカードと合わせ、計三枚のカードをラウズした。


    《-♦6 FIRE-》 《-♠2 SLASH-》 《-♠8 MAGNET-》


 ラウズしたブレイラウザーに、燃え盛る炎が纏い出す。
 そして、"♠8のMAGNET"で磁界を操る力を得たブレイドは、イナゴ・シカ・豹のアンデッドの動きを制御。


『ググッ!?』

( OwO)「うおおおおおおおおおおッッ!!!」

42020話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 12:05:18 ID:/vPk1WvQ0


 動きを制御したアンデッド達に向け疾走する。
 "♠2のSLASH"でブレイラウザーの斬撃の威力を高めた炎の剣で、三体のアンデッドを順に斬り捨てた。


( OwO)「ッはああっ!!」
 
『ギャアアアアアアァァッ!!!』


 バックルが左右に展開し、腹部から緑血を噴き上げながら身体を炎に包むアンデッド達。
 ブレイドはすかさず振り返り、三枚のカードを同時に投擲する事で、一度に三体同時に封印した。


『グウウウウウゥゥゥ……!』


 一度に三体のアンデッドを倒すブレイドの力に、恐れを抱くイノシシのアンデッド。

 一対ニでは、形勢不利だ。
 自分に分がないと悟ると、イノシシのアンデッドは一人逃走を図った。


( OwO)「待てッ!!!」


 追った瞬間には、もう遠くへとあっという間に走り去って行ってしまった。
 

( OwO)「くそっ、逃げたかお…!」

( OMO)「ギコさん…!」


 余韻に浸っている暇はない。
 封印したのを見届けると、ギャレンは急いで施設の中へと向かった。

42120話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 12:06:21 ID:/vPk1WvQ0


 ――――――
 ――――
 ――


( ; OHO)「はぁ…っ、はぁ……」


 施設内に入るなり、これ以上両足だけでは支え切れない身体を壁に凭れさせ、一時の休息を取る。
 全身に感じる痛み…全て、ギャレンによるものだ。

 モララーの予想を超えた強さには、ただ驚くばかり。
 レンゲルという最強の力を得ながら、圧倒されてしまったのだから。


( OHO)「ックソ……菱谷、強くなったな……」


 『――モウ貴様ニ用ハ無イ』


 突如、頭の中に響くカテゴリーAの声。
 

( OHO)「何…?うッ……!!」


 頭が痛い。こめかみを両側より押され、圧迫されるような痛み。
 耳からなのか、頭の中で響くのか分からない、キイイィィィン――と鳴る耳鳴り。
 

( ; OHO)「ううっ!貴様……俺を見限ると言うのかァ…ッ!」


 頭を抑えもがき苦しむレンゲル。

 すると――バックルのシャッターは、自分の意志とは関係無く閉ざされた。
 射出するゲート。迫り来るゲートを、ただ迎え入れる事しか出来ず……ギコは、レンゲルの変身を解かれた。

 バックルの装着が解除され、支えのないレンゲルバックルは床に転がり落ちる。

42220話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 12:06:43 ID:/vPk1WvQ0


(,,;゚Д゚)「はぁ……はぁ……」


 レンゲルバックルを拾う事もせず、ギコは壁で自身を支えながら廊下の奥へと進む。


(,,;゚Д゚)「……?」


 コツ、コツ……施設内に響く、床を叩く靴の音。
 息を切らし、壁に片手を着きながら、足音の方を見る。


('A`)


 歩いて来ているのは、ドクオだった。
 慌てふためいた先程とは打って変わって、ゆっくりと、落ち着いた様子で。

 ギコに近付く手前で、足は止まった。
 
 ――床に落ちたままの、レンゲルバックルの前で。


(,,゚Д゚)「……!」


 足元に落ちたレンゲルバックルに手を伸ばす。
 静かに顔を上げ……ギコを睨んだ。


('A`)「……来い」

(,,;゚Д゚)「ぐっ…!うぅ……!」


 呼びかけた声と同時に、ギコの足元の裾より蜘蛛の子の群れがわらわらと出現。
 大群は小さな足で床を伝い、住処を元の場所に戻す為に移動を始める。

 やがてドクオの足元まで辿り着くと、慣れ親しんだ場所のように次々とドクオの身体の中へと潜って行く。

42320話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 12:07:14 ID:/vPk1WvQ0


 手に取ったレンゲルバックルを腰に当てる。
 紫色のカードがベルト状に放出され、ドクオの腰にバックルが装着。


(,,;゚Д゚)「………」

('A`)「ああ……分かってる、俺はお前を受け入れるよ」


 今この場には、ギコとドクオしかいない。
 そのギコは何も話し掛けていないのに、ドクオは誰かに返事をしている。
 

(#'A`)「だから……お前の力、俺に預けろ!!」


 目の前のギコを鋭く睨みながら、ドクオの大声が響く。


 肘を屈折させ、同時にバッ、と前に両腕をL字のように構える。
 左手を腰元へ。頭より高く上げた右手をゆっくりと下げ、口元を隠すようにして右手を翳す。

 歪な待機音が、薄暗い廃墟の中に不気味に鳴り響く。




('A`/)「――変身!!」



    【 -♣OPEN UP- 】


 そう強く叫んだ瞬間、腕を顔の前でクロスさせ、勢い良く下げると同時に左手でバックルのシャッターを叩くようにスライド。
 開いたバックルから覗く、♣のマーク。

 バックルより紫色に発光するゲートが射出され、薄暗い施設の中を妖しく照らす。

 両手を腰元で構えながら、ゲートが自分の身体を覆うのを待つ。
 意志に応えるように、ゲートはゆっくりと接近。

 ドクオの身体をゲートが覆い通過し……ドクオは、自らの意志でレンゲルへと変身した。

42420話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 12:08:04 ID:/vPk1WvQ0


( OHO)「……レンゲルは返してもらった」

(,,;゚Д゚)「ッ……お前、その力を使う事が何を意味するのか分かってるのか!?」

( OHO)「あんたがレンゲルを奪ってた間、カテゴリーAが俺にこう言ったのさ。
      強くなって自分自身を変えろ…その手助けは俺がしてやる、ってな」

( OHO)「やっぱり、カテゴリーAが選んだのは俺だった……それだけの事だろ」


 背を向け、歩き出す。
 レンゲルの広い背中が、ドクオの弱き心を隠す。


(,,;゚Д゚)「ライダーになるだけで……本当に強くなれると思うのか?」

( OHO)「その答えは、これから自分で見つけるさ……レンゲルとしてな」


 自分の言葉で、自分の声で話す。
 言って、レンゲルは施設を後にした。
 
 カテゴリーAの思うままの傀儡と化し、自らの意志ではどうにもならなかったドクオ。
 邪悪な力を拒み、ライダーになる事を拒んだ。
 使命を背負うのも、責任を負うのも嫌だった。そんな自分が一番嫌いだった。

 しかし今、カテゴリーAの力を受け入れた事で、ドクオはその力を自分の意志で扱う事を可能としたのだ。


(,,;゚Д゚)「………」


 ――レンゲルの正式な適合者が、今ここに誕生してしまった。

42520話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 12:09:01 ID:/vPk1WvQ0


「フフフ……」

(,,゚Д゚)「誰だ!?」


 人が居るはずのない施設に、女の笑い声が響く。
 近付くと足音と共に、奥から人影が現れた。

 背丈は小さく、少女のような影。


(,,゚Д゚)「君は…?こんなところで何を――」

「ねぇ……私と、おともだちになってよ」

(,,゚Д゚)「………?」


 女の方から、何かが飛翔したのが見えた。


 突如、腹部に感じる違和感。

 恐る恐る、自分の腹部に視線を移した。



(,,;゚Д゚)「があッ……なにぃ……!?」

42620話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 12:09:25 ID:/vPk1WvQ0


 ――ギコの腹部に刺さる、真空の刃。
 背中をも突き破り、身体を貫通している。
 
 真空の刃は、空間に吸い込まれるように消滅。
 途端に、穴の空いた腹部よりとめどなく溢れる血。

 驚きと戸惑いを隠せぬまま、傷口を片手で抑えながら……ゆっくりと床に崩れ落ちた。


 近付く少女。
 無垢な笑顔を浮かべながら、倒れたギコを見下ろす。


o川* ー )o「あーあ、また――」


 少女の背丈以上のシルエットが浮かび上がり、一瞬にして可愛らしい少女の姿が変貌する。
 







、\ ノ
( ゚,皿,゚)『――おともだち、できなかった』

42720話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 12:10:03 ID:/vPk1WvQ0


 ――――――
 ――――
 ――


 アンデッドを封印し、施設に侵入したブーン達。
 ギコの行方を捜し、薄暗い施設の中を、スマホのライトで足元を照らしながら進んで行く。


( ・∀・)「そんなに奥の方には行ってないはず…!」

( ^ω^)「ギコさーん!!……ドクオの奴も何処かに行きやがって!」


 ギコの名を叫ぶ声が廊下の奥まで反響する。
 懸命に探す二人だったが、ギコの姿を見つけるのにそう時間は掛からなかった。


( ^ω^)「……!!モララーさん、あれ!!」


 何故なら……人のいないはずの施設の中に、血を流して倒れているのは、ギコ以外ありえなかったからだ。


( ・∀・)「ギコさん!?!?」


 倒れたギコのもとへ駆け寄り、うつ伏せに倒れたギコの身体を揺する。


( ; ・∀・)「ギコさん!?ギコさん!!」

(,,;゚Д゚)「……菱谷か……」

( ; ・∀・)「どうしたんですか…何があったんですか!?どうしてこんな傷を……」

(,,;゚Д゚)「やられてしまったよ……新しい、ごほっ……上級アンデッド、かもな……」

( ^ω^)「上級アンデッド…!?まだ此処に居るんですかお!?」

(,,;゚Д゚)「いや……、何処かへ行ったよ……」

42820話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 12:11:48 ID:/vPk1WvQ0


( ; ・∀・)「待ってください、すぐに救急車を――」

(,,;゚Д゚)「無駄だ……もう、俺は駄目だ……」

( ; ・∀・)「……!!」


 ヒートの最期が重なってしまった。
 あの時も、どうする事も出来ずに、こうやって……。


( ; ・∀・)「何を言ってるんですかギコさん…諦めたら駄目です!!」

(,,;゚Д゚)「そんな事より……気をつけろ」

(,,;゚Д゚)「ホライゾン君の友達……彼は、レンゲルのベルトを持って行ってしまった……」

( ; ^ω^)「なんだって…!?また操られてるのかお!?」

(,,;゚Д゚)「いや、あれは……完全に自分の意志――ゲホッ、ゲホッ!」


 咳き込んだ瞬間、口から血反吐を吐き散らす。


( ; ・∀・)「もう喋らないでください!」

(,,;-Д-)「……ふっ、情けない面しやがって……お前は、いつまでも気が弱い奴だ……」

(,,;゚Д゚)「菱谷……お前には、言いたい事がある……聞け」

( ; ・∀・)「………はい」

42920話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 12:13:27 ID:/vPk1WvQ0


(,,;゚Д゚)「俺はな……お前が、羨ましかったんだ……ギャレンとして、俺の代わりに選ばれたお前が……。
     妬ましくて、悔しくてな……俺の方が、きっと上手くやれるのにって……思ってたんだ」

(,,;゚Д゚)「左腕を失って、俺は自分を恨んだよ……。そして、お前達の前から去った俺に残った正義の燃えカスが、自分を腐らせてしまった……」

(,,;゚Д゚)「でもな、お前と戦って……気付いたよ……。俺は……ライダーの資格なんてなかったんだ。ってな……」

( ・∀・)「………」

(,,;゚Д゚)「これでよかったんだ……俺は、カテゴリーAに飲み込まれながらも……お前に助けを求めてた。
     お前は……俺を救ってくれた。感謝するよ……」

(  ∀ )「何を…何を言ってるんですかギコさん……!」


 ギコの声が、徐々に弱々しくなってきた。
 途切れそうになる意識を必死に繋いでまで、伝えたい言葉がある。


(,,;゚Д゚)「責任なんか、一人で抱えるな……お前には……立派な仲間が、いるじゃないか。
     変に悩む必要なんかないんだよ……」

(,,;゚Д゚)「もっと馬鹿になれ……真面目過ぎるんだよお前は……ッハハ」

( ;∀;)「……ッ……ぐすっ」

(,,;゚Д゚)「結局……お前には、敵わなかったってことさ……でも」


 モララーの手に、己の左手を重ね持てる力で弱々しく握り締める。
 


(,,; Д )「なりたかったな……俺も、お前と共に戦う……仮面ライダーに……」

(,,; ー )「………ライダー、に……―――」

(,, ー )


 ………握っていた手に、力が無くなった。

43020話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 12:15:31 ID:/vPk1WvQ0


(,, ー )

(  ω )「クソォ……ッッ!!!」

( ;∀;)「……ギコさん……ッ!」


 拳を握り締め、助けられなかった悔しさを床にぶつける。

 また守れなかった。
 守りたいものを守ると決めて、ギャレンに戻ったはずなのに……。

 やりきれない思いと悔しさが、また自分の心を苛もうとしている。


(  ω )「モララーさん……」

(  ∀ )「分かってる」


 悲しみに浸る間はない。
 頭を上げ、握り締めたギコの手を見つめる。


( ・∀・)「俺は逃げない……俺はこれからもギャレンとして戦い続ける。ギコさんが、俺に託してくれた想いがある。
      もう二度と、こんな悲しみを起こさせはしない……その為に……」

( ・∀・)「だから剣藤…もう一度、俺と一緒に戦ってくれ!」

( ^ω^)「……一緒に戦いましょう、モララーさん!ギコさんの想いと共に!」


 モララーは再び、アンデッドとの戦いに身を投じる決意を示す。
 今度こそ、二人の間に堅い結束が結ばれた。
 
 ギコの想いは、しっかりと後輩達の胸に届いていた――。

43120話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 12:20:13 ID:/vPk1WvQ0





     【 第20話 〜託された想い〜 】 終




.

43220話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 12:20:38 ID:/vPk1WvQ0


==========

 【 次回予告 】

 _
( *゚∀゚)「い、いやぁ…!その〜……ケガとかしてませんか?どこか痛いとことか……」

ミセ*゚ー゚)リ「私は大丈夫です、そちらは…?」
 _
( *゚∀゚)「俺っすか?お、俺は全然!生まれてこのかたケガなんてしたことないんで!本多忠勝の生まれ変わりなんで!!」

ミセ*゚ー゚)リ「???」
 _
( ; ゚∀゚)「あ…!ああ、分かりにくいよな!ごめんごめん、とにかく何もないならよかった!
     いやぁ本当すみません、酔っ払っちゃって……」

ミセ*゚ー゚)リ「みたいですね、とても顔が赤いから」
 _
( *゚∀゚)「あ〜……そうっすね」

ミセ*^ー^)リ「…ふふふ」
 _
( *゚∀゚)「あ……あははは」

43320話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 12:21:03 ID:/vPk1WvQ0


( ´_ゝ`)「お前もいつまでそうしていられるかな?」

(-_-)「……あ?」

( ´_ゝ`)「狙われるぞ?カテゴリーAに随分懐かれてるみたいだからなぁ、お前」

( ´∀`)「あー、そうだった!君がちゃんと相手にしてあげないから、構って欲しくてしょうがないんだよきっと」

(-_-)「知るかよ、俺は興味ないっつってんだ。誰が一番強いとか万能の力とか……そんなもの興味ない」

( ´∀`)「君って本当に珍しいよね、僕達と"同じ"なのにさ」

(-_-)「同じでも、生まれ持った性分はどうしようもない……もういいか?出来ればお前等の顔も見たくないんでね。
     俺は戦わない、このままひっそりと過ごさせてくれよ……頼むから」


 上級アンデッドであろう二人と接触するヒッキー。
 VIPで働くただの人間であるはずの彼に、冷酷な刃が向けられようとしていた!

43420話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 12:21:48 ID:/vPk1WvQ0


( ・∀・)「ッおい、やめろ!君は変身するな!」

('A`)「俺だって……俺だって戦う為にコイツを受け入れたんだ!!」

( ´_ゝ`)「ほう、早速レンゲルが現れてくれるのか?さて、新生レンゲルはどんな力なのかな」

('A`)「ッ……力を貸せよ、カテゴリーA!!」


 自らの意志でレンゲルに変身し、上級アンデッドに果敢に挑むドクオ。


( OHO)「………うおおおおおおおおおッッ!!!!」

( ´,_ゝ`)「じゃあ、早速挨拶と行こうか……!」

 (  。)
<メ、゚ M゚,>『俺はダイヤのカテゴリーキング。ダイヤスートを統べる王様、ってところだ…!』

43520話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 12:22:36 ID:/vPk1WvQ0


( ´∀`)「僕はスペードスートのカテゴリーキングだよ。キングモナーって呼んでよ」

( ^ω^)「カテゴリーキング…!?アンデッド!?!?」


 変身し立ち向かうも、一蹴されるブレイド。
 

( ´∀`)「しつこいなぁ、だから無駄だって言ってるだろ?」

( ; OwO)「何でだお…!?コイツどうなってんだ!?」

( ´∀`)「キングってどういう意味か分かる??」

( ; OwO)「何…?」

( ´∀`)「キングってのは王様って意味。要するに……僕が一番強いってことさ!」

( ; OwO)「うああああぁぁあぁッッ!?!?」


 遂に、アンデッドの中でも最強クラスであるカテゴリーキング達が動き出した!
 絶対的な力を前に、ライダー達はどうなってしまうのか!?
 そして今こそ、力を集結することが出来るのか!?



 次回、【 第21話 〜光なき闇〜 】


 ――今、その力が全開する!


==========

436 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 12:24:47 ID:/vPk1WvQ0
しおり

>>9 第15話
>>84 第16話
>>152 第17話
>>234 第18話
>>308 第19話
>>372 第20話

437 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 13:16:44 ID:/vPk1WvQ0
・ここまでの登場人物まとめ



――――――――――――【 仮面ライダー 】――――――――――――

( ^ω^) 剣藤ホライゾン / ( OwO) 仮面ライダーブレイド
 22歳。主人公。ブーンという呼び名で親しまれている。
 スーパーマーケット『 VIP 』の一社員としてこつこつ働いている青年。
 幼少期に両親が離婚し、女手一つで育ててくれた重い病を患った母親の為に日々働いている。
 また、自分達を見捨てた父親に激しい恨みを持つ。
 正義感が人一倍強く、率先して人助けや動物を助けたりしているが、その強い正義感が災いしてトラブルを生むこともしばしば。
 仮面ライダーブレイドに適合し変身出来たことから、仮面ライダーとして人を守る為にアンデッドとの戦いに身を投じることになる。


川 ゚ -゚) 愛川クー / ( <::V::>) 仮面ライダーカリス
 23歳。ブーンやドクオがよく通う飲み屋『バーボンハウス』で働く女性。
 常にクールで寡黙、何を考えているか分からないが情に熱いところがある。
 出生は謎に包まれているが、その正体はアンデッド。
 記憶を喪失しアンデッドである事も忘れていた時は、人間の自分とアンデッドの自分で意識が分かれていた。が、渡辺を強く想う心が記憶を戻らせた。
 渡辺とショボン、2人への愛情を抱きながら、その愛情と人間らしい感情を持つ自分に疑問を抱き続けている。
 アンデッドとしての本能・運命から戦いを求めてしまい、自分を制御出来ない一面もある。


( ・∀・) 菱谷モララー / ( OMO) 仮面ライダーギャレン
 25歳。BOARDの元研究員。
 BOARD壊滅後は、生き残りのツン達と共にアンデッドの封印を行っていた。
 真面目で純粋な性格だが、純粋さ故に利用されやすい。
 一般人でありながらブーン/ブレイドの活躍と潜在能力、そして自身の不調に焦りと嫉妬心を覚え、道を外してしまったことも。
 ヒートの死をきっかけに本当の自分を取り戻し、仮面ライダーとしてブーンとの共闘を誓った。
 本人曰く「自分は仮面ライダーに向いてない」とのこと。


('A`) 三葉ドクオ / ( OHO) 仮面ライダーレンゲル
 22歳。ブーンとは中学からの付き合い。フリーター。
 ブーンとは対照的で、普段からやる気が無くだらだらしている。
 内なる義心を持ちながら、自分に自信がなく普段から行動に移せないでいる。
 スパイダーアンデッドに魅入られてしまい、心に抱えた闇に浸け込まれレンゲルになってしまう。

438 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 13:19:02 ID:/vPk1WvQ0
――――――――――――【 BOARDメンバー 】――――――――――――

ξ゚⊿゚)ξ 廣瀬ツン
 21歳。
 モララーと同じく壊滅したBOARDの元研究員。
 崩壊したBOARDの施設から使える機材やブレイバックルを頂戴し、PCや端末を用いてアンデッドの探知を行いライダーをサポートする。。
 周りを気遣う事の出来る性格で、常に気を配っている優しいお姉さんタイプ。
 だが、芯を強く持った女性でもある。

 _
( ゚∀゚) 白岡ジョルジュ
 23歳。BOARDの元警備員。
 警備員時代からライダーになることへの憧れを抱いている。
 BOARD壊滅後、適合者のいないブレイドへの変身を試みるも適合出来なかった。
 ブーンに対して不信感や嫉妬心を持つも徐々に認め始め、自分の出来る事でライダー達の手助けをする。
 生意気な口調や態度が目立つが、仲間思いな一面がある。


(,,゚Д゚) 久利生ギコ
 29歳。元BOARD職員で、モララーの先輩。
 最初、ギャレンの適合者に選抜されるもモララーの融合係数の方が高く、ギャレンの資格者を降ろされる。
 ライダーシステム2号として開発されたブレイドの適合者であったが、不慮の事故により左腕を失い二度もライダーになれなかったショックから失踪。
 その後の消息を絶っていたが、ロマネスクと共にブーン達の前に現れひそかにレンゲルを狙っていた。
 最期は、スパイダーアンデッドに見限られた上に、アンデッドに殺害されてしまう。


( ФωФ) 内藤ロマネスク
 48歳。BOARD所長。
 表向きは科学者だが、裏の顔はライダーシステムの開発者。ブーンの実父。
 BOARD壊滅と同時に行方を暗ましていたが、府坂の洗脳を受けレンゲル開発に協力してしまっていた。
 洗脳が解けた後は、生き残りのBOARD研究員達と共にライダーの支援をすることに。

439 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 13:20:38 ID:/vPk1WvQ0
――――――――――――【 その他の関係者 】――――――――――――

(´・ω・`) 栗沢ショボン
 33歳。飲み屋『バーボンハウス』の店長。
 1階が店、2階は自分の家となっていて、渡辺とクーと共に暮らしている。
 みんなが心安らかに楽しくをモットーに経営している。やかましく騒ぐ連中や酔っ払いは徹底的に追い出すスタイル。
 ある日、大雨の嵐の中、山から転げ落ちてきたクーを介抱し、身寄りのないクーを自分の店に置くことに。


从'ー'从 渡辺あまね
 14歳。飲み屋『バーボンハウス』の看板娘。中学2年生。
 ショボンとクーと暮らしていて、中学校から帰ると何も無い限りはお店の手伝いをする。
 3歳の頃に母親を亡くし、父親には捨てられ、親戚の友人であったショボンが引き取ることに。
 クーに母親の面影を重ねていて、とてつもなく懐いている。


ノパ⊿゚) 深沢ヒート
 25歳。モララーの恋人。同じ大学院を卒業した同級生でもある。
 不安を抱えているモララーを気遣い、また大切に想っている。
 府坂に目をつけられ殺害されてしまうが、この事がきっかけでモララーは自我を取り戻す結果になる。


(-_-) 引田ヒッキー
 20歳。スーパーマーケット『 VIP 』のブーンの後輩。
 軽いノリが特徴で、常にブーンにちょっかいを出している。
 レンゲルに悩まされるドクオに意味深な言葉を投げ掛けた、謎多き人物。


(#゚;;-゚) でぃ
 10歳。山奥の廃れた家に一人で住んでいた少女。
 ギャレンに敗れ、山の中で気絶したクーを介抱する。
 両親をカテゴリーQに殺され、その後はモスと呼ぶ♥のカテゴリー8と共に住んでいた。
 後にクーに連れられ、バーボンハウスで暮らすことに。

440 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 13:21:03 ID:/vPk1WvQ0

J('ー`)し 剣藤カーチャン
 ブーンの母親。
 仕事ばかりで家庭を省みない夫のロマネスクに悩まされ、ブーンが小学4年生の頃に離婚を決意する。
 ブーンを女手一つで育ててきたが、ブーンが中学生に上がった時に重い病気を患ってしまう。
 それから入退院を繰り返し、現在では何十度目かの入院をしている。


*(‘‘)* 沢近ヘリカル
 23歳。スーパーマーケット『 VIP 』のブーンの同僚。ドクオの彼女。
 周囲を見れる頼れるお姉さん的存在。
 職場の中では一番にブーンを気遣い、その気遣いが結果的にブーンを仮面ライダーに集中させた。


(゜д゜@  新谷田おばさん
 スーパーマーケット『 VIP 』のパートのおばさん。
 店長であるニダーを本当に嫌っている。


<ヽ`∀´> 羽矛ニダー
 ブーンが働くスーパーマーケット『 VIP 』の店長。
 店長であるにも関わらず現場の社員・パートの声をほぼ聞かず本部の言いなりであるため、信頼はゼロ。

441 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 13:22:50 ID:/vPk1WvQ0

■カテゴリーA

( \品/) スパイダーアンデッド
 クラブスートのカテゴリーA。蜘蛛の祖。
 当初は自身の適合者を探し求め、蜘蛛の子を吐き出していた。
 上級アンデッド達とは違い人間に擬態は出来ないが、人間の言葉を流暢に話す程の高い頭脳を持つ。
 封印されて尚、自らの意志を外部に発信しており、ドクオを都合の良い媒体として目をつけ執拗に後を追い続けた。


■カテゴリーJ

ミ,,゚Д゚彡 府坂 / ミ,,゚王゚彡 ピーコックアンデッド
 外見30歳半ば。
 黒いレザーのロングコートが特徴的な全身黒ずくめの男。サングラスを常にしている。
 正体はダイヤスートのカテゴリージャックで、上級アンデッド。クジャクの祖。
 再び始まった古の戦いの真実にいち早く気付き、仮面ライダーを利用して有利に進めようと画策する。
 また、レンゲルの開発をした張本人。
 人間を下に見過ぎた事が災いし、モララーの激しい怒りを招き封印されるも、最期まで人の強さを理解する事はなかった。


■カテゴリーQ
             、、
(*゚∀゚) つー / @*゚皿゚)@ カプリコーンアンデッド
 外見10代後半。
 パンク系の派手な格好をした女に擬態している。
 正体はスペードスートのカテゴリークイーンで、山羊の祖。
 でぃの両親を殺害した張本人であり、ライダーを潰す為にでぃを人質にモスを脅迫するなど、手段を選ばない残忍さを持つ。
 

从 ゚∀从 ハインリッヒ
 外見20代後半。
 スート不明のカテゴリークイーン。
 カテゴリーQの中でも最強、と言われていた。

442 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 13:28:58 ID:/vPk1WvQ0
■カテゴリーK
            ( 。)
( ´_ゝ`) 兄者 / <メ、゚ M゚,> ギラファアンデッド
 外見20代半ば。
 メガネを掛け、落ち着きのあるクールな青年の姿に擬態する。
 ダイヤスートのカテゴリーキングで、ギラファノコギリクワガタの祖。
 自分自身は目立った行動をせず、何らかの目的の為に暗躍している。

 
( ´∀`) モナー
 外見10代後半。
 スペードスートのカテゴリーキング。
 兄者と共に行動しているが、その意図は不明。

              、\ ノ
o川*゚ー゚)o キュート / ( ゚,皿,゚) ???
 外見10代半ば。
 スート不明のカテゴリーキング。
 
 
■カテゴリー8

( ) モス / モスアンデッド
 ハートスートのカテゴリー8。毒蛾の祖。
 争いを好まない性格で、人間も襲わず自ら戦う事を嫌う心優しき下級アンデッド。
 つーに狙われ逃げていたところ、遭遇してしまったでぃの家族を巻き込んでしまう。
 残されたでぃを命辛々守り、その後は共に暮らしていたが、再びつーに狙われカリスを襲えと脅迫を受ける。
 最期は、でぃを救う為に凶暴化したように見せかけ、自らカリスに封印された。

443 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 13:31:54 ID:/vPk1WvQ0
次は少しネタというかギャグというか、割とまったりな回になります
また来週できれば投下しますのでよろしくお願いします

444名無しさん:2017/12/24(日) 13:34:11 ID:dqp3zE8M0
乙!
レンゲルや上級アンデッド出てきて渦巻いてるね
ギャグ回…たこ焼き名人…ウッ…頭が…!

445名無しさん:2017/12/24(日) 16:48:42 ID:zXQvJKNo0
乙乙

446名無しさん:2017/12/24(日) 19:05:51 ID:RAdSoUw20
わーいクリスマスプレゼントだー今から読むぞー
乙ー
悲しみが怒りになるー自分に限界があることー知らさせーてるー

447名無しさん:2017/12/25(月) 06:06:17 ID:SxPHDHJw0

またモララー株急上昇しやがって・・・

448名無しさん:2017/12/25(月) 08:31:24 ID:EiFtTdgU0
おつおつ!
この作品のおかげで原作よく知らないのに特撮板覗くようになったよ
次回はたい焼き回を期待していいのかな

449名無しさん:2017/12/25(月) 14:13:29 ID:YIe.q50Q0
スペードとダイヤのKもう出るのか、原作に比べてずいぶん早いな
上級アンデッドの出てくる順とか、原作にいない上級アンデッドとか、その辺結構変わってきたりするのかな?

あと、AAがモナーだとスペードよりも五年後に出てきたハートのKってイメージが浮かぶ…

450 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/25(月) 16:06:51 ID:SxPHDHJw0
いつも乙やご感想ありがとうございます

すみません、いつもよりはまったりした回になるよってことを言いたかっただけです
たいやきは予定してませんが書くとしてももうちょい先になりそう

カテゴリーKの早期出現については、特撮特有のボスキャラを演出したかったからです
スート不明と表記してるキャラに関しては、まだはっきりと登場するに至ってないので不明と表記してます
が、原作通りには間違いないので知ってる方は想像出来ると思います
想像するのは楽しい時間なんで、よければ楽しんでください

451名無しさん:2017/12/26(火) 09:31:01 ID:f7LjgkEA0
おつ!
これモララー主人公じゃね?

452名無しさん:2017/12/27(水) 12:22:17 ID:IW18i.fc0
まぁ主人公どうこうってのはこれからの怒涛の展開を待っとけって

次はまったり回か
コレクッテモイイカナ?
原作とオリジナルがいい塩梅で混ざってて予想するのも楽しい

453 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:01:24 ID:Vg4XVt6s0
吾輩はあしたも仕事なんで今日投稿します
今回の投稿が年内最後になります

454 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:01:48 ID:Vg4XVt6s0





     【 第21話 〜光なき闇〜 】




.

45521話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:02:39 ID:Vg4XVt6s0


(-_-)「お疲れ〜っす」

(゜д゜@ 「あらやだヒッキー君、お疲れ様!」


 休憩室に入るなり、おばさんのがっついた挨拶がヒッキーを出迎えた。


 世間は正月に向けての準備に追われて大忙しだ。
 
 スーパーVIPでもそう。
 年末に差し掛かれば差し掛かる程、忙しさには拍車が掛かってくる。
 今年、最後の山場だ。

 例年であればブーンが筆頭に動いてくれていた。
 けど今年は、その肝心な頼りになる張本人はいない。もう年内に復帰する見込みもない。
 
 この事態に率先して動いて出たのは、思いがけない人物のヒッキーだった。


 普段の彼と言えば、どこかチャラいイメージで無気力さを強く感じると言った印象が濃く、パートからの評判は良くなかった。 
 だからこそだろうか、自ら進んで働く姿を見せ始めた彼に、パートや社員からの目は大分変わっていた。

 小言を言う癖は相変わらずだが。


(-_-)「あ〜つっかれた……早く年明けてくんねぇかなぁ、もう無理だわ……」

*(‘‘)*「なーにぶつぶつ言ってんの」


 弱音を言いながらロッカーの前まで移動すると、財布とスマホを持ったヘリカルが居た。
 同じタイミングで休憩に入ったようだ。

45621話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:03:21 ID:Vg4XVt6s0


(-_-)「だってクソ疲れますもん……マジで俺だけじゃどうにもなんねぇ」

*(‘‘)*「まぁいつもだったらブーンが動いてくれてたから…でもあんたも今年入ったばかりの割には良くやってるわ」

(-_-)「あ、大丈夫っす。自分が一番それ分かってるんで」

*(‘‘)*「はあ?自分で言う??」


 自動販売機に並び、互いにホットドリンクを購入。
 ガタンッ!と受取口に落ちてきた、熱を帯びたボトルを取るとテーブルに向かい合って座った。


*(‘‘)*「にしても、もう正月かぁ……あんたいつも正月は何してんの?」

(-_-)「………いや、特に何も」

*(‘‘)*「何も??実家に帰るとか大晦日は彼女と過ごすとかさぁ、なかったの??」

(-_-)「え、ああ……まぁ……もう俺の話はいいんで。ヘリカルさんは?」

*(*‘‘)*「え……私?聞いちゃう?」

(-_-)「聞いちゃうってか言いたそうっすけどね」

*(*‘‘)*「しょーがないなぁー答えてあげる!今年の大晦日はぁ、私デートなんだぁ。
     しかもしかも!向こうから付き合って初めて誘ってくれたんだ〜!」

(-_-)「……あの、ヘリカルさんの彼氏って確かドクオって人ですよね」

*(‘‘)*「そうだよ、ブーンの友達でもあるけどね」

(-_-)「………」

*(‘‘)*「どうして?ドクオがどうかしたの??」

(-_-)「いや、別に何も……ちょっと買い物して来ますわ」

*(‘‘)*「はいよ」


 言って、ヒッキーは休憩室を出た。

45721話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:03:52 ID:Vg4XVt6s0

 
 本当は買い物などするつもりはない。
 ただ、何となく、あの時のように駐車場に向かいたくなった。

 ドクオ――数日前の夜、この店の駐車場で話した人物で間違いはない。
 あの時の様子が、鮮明に思い出される。

 カテゴリーAに翻弄され、苦悩と恐怖に苛まれ混乱するドクオの姿が。


(-_-)「………」


 風が僅かに吹いた。
 ヒッキーの前髪を撫で、冷たい風が肌を刺す。

 目を閉じ、風の吹く音に耳を澄ませる。


(-_-)「―――あいつ、とうとう手にしたか……さてどうなる事やら」


 遠くで起きた出来事が、風に乗り伝わってくる。
 ドクオが、とうとうレンゲルの力を手にした事が
 

「――何をしてるんだ?」

「君、こんなとこで毎日過ごしてるんだねぇ」

(-_-)「はぁ……何だよ」


 風の音を遮って、二人の男の声が聞こえた。
 その声や気配から、自分に話し掛けている事が分かると、ヒッキーは大きく溜息を着いた。




( ´_ゝ`)「俺達と話すのが嫌そうだな?」

( ´∀`)「連れないなぁ、せっかく来たっていうのに」

45821話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:04:19 ID:Vg4XVt6s0


(-_-)「別に来いって言った覚えはないけどな……」

( ´_ゝ`)「だが、俺達はいつか必ず相見えなければならない運命だ」

(-_-)「そうかな?いなくなっちまえばまず会う事はないだろ」

( ´∀`)「それって、要するにこの中の誰かが……"封印される"って事かな?誰が最初なんだろ?面白そう!」

(-_-)「悪いけど、俺には大分悪趣味に見えるよ」


 二人に背を向け、スーパーに戻ろうとする。
 その足は、青年の言葉によって止められた。
 

( ´_ゝ`)「お前もいつまでそうしていられるかな?」

(-_-)「……あ?」

( ´_ゝ`)「知ってるんだろう?クジャクの馬鹿野郎が残した新しいライダーの誕生を」

(-_-)「だから何だよ」

( ´_ゝ`)「狙われるぞ?カテゴリーAに随分懐かれてるみたいだからなぁ、お前」

( ´∀`)「あー、そうだった!君がちゃんと相手にしてあげないから、構って欲しくてしょうがないんだよきっと」

(-_-)「知るかよ、俺は興味ないっつってんだ。誰が一番強いとか万能の力とか……そんなもの興味ない」

( ´∀`)「君って本当に珍しいよね、僕達と"同じ"なのにさ」

(-_-)「同じでも、生まれ持った性分はどうしようもない……もういいか?出来ればお前等の顔も見たくないんでね。
     俺は戦わない、このままひっそりと過ごさせてくれよ……頼むから」


 今度こそ、スーパーに向かい歩き出した。着けられないように、足早に。
 

( ´_ゝ`)「ふっ、相変わらず戦いを忌み嫌っているな……信念を持たない出来損ないが」


 ヒッキーの背が見えなくなる前に、二人もこの場を後にした。

 運命の冷酷な刃は――すぐそこに迫っているのかもしれない。

45921話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:04:42 ID:Vg4XVt6s0





 ―――――




.

46021話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:05:06 ID:Vg4XVt6s0


 時を同じくして、ブーンの家では、モララーを含めた三人がPCの前に集まっていた。

 本来なら今、この家には家主であるブーンを含め四人いるのだが。
 ビデオ通話を通して、画面の向こうに映る人物と顔を合わせたくない為に、ブーン一人だけはソファ席に座って声だけを聞いていた。


|( ФωФ)|[久利生が……そうか……]

( ・∀・)「すみません、所長……俺のせいで……」

|( ФωФ)|[お前が謝る事じゃない、そればかりはどうにもならなかった……誰も悪くない]

|( ФωФ)|[最期に言いたい事も言えて、支配されかけた心をお前に救ってもらえたんだ。久利生も本望だったであろう……]

( ・∀・)「そう、だといいですが……」

|( ФωФ)|[それと…レンゲルの事に関してだが]

ξ゚⊿゚)ξ「その事なんですけど、今ドクオさんに家まで来てもらうように頼みました。もうすぐ来ると思います」

|( ФωФ)|[うむ、何とか説得して返却してもらうのである。……ホライゾン、頼むぞ」

( ^ω^)「言われなくても分かってるお」


 画面越しのはずなのに、すぐそこにいる気がして無性に腹が立つ。気まずい。
 聞こえるロマネスクの声に無愛想に返事をするブーンに、ツンやジョルジュは呆れ顔だ。


|( ФωФ)|[……君達にいくつか伝えたい事がある]

( ・∀・)「はい」

|( ФωФ)|[まず、君達にアンデッドサーチャーの小型端末を送った。サイズは、スマートフォンと同じくらいの大きさである。
           一個しかないが……無いよりはマシだろう。菱谷、君が使ってくれ。
           アンデッドとの戦いは、きっとこれからも激しさを増す。廣瀬のアンデッドサーチャーだけでは尻尾を掴めぬだろう」

( ・∀・)「分かりました」

|( ФωФ)|「それと、アンデッドサーチャーの改良版を廣瀬のPCに送る。
           今まではアンデッドの反応のみをキャッチしていたが、アンデッドのスートやカテゴリーをも特定出来るように改良した]

ξ゚⊿゚)ξ「本当ですか!?だとしたら、出現したアンデッドが何かすぐに判別出来る!助かります、所長!」

46121話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:06:05 ID:Vg4XVt6s0


|( ФωФ)|[最後にもうひとつ。これはまだ完成していないが……ライダーを強化させる新たなシステムを開発する」
 _
( ゚∀゚)「ライダーの強化??」

|( ФωФ)|[うむ、菱谷が封印した府坂のカードを調べたが……。
           上級アンデッドのカードは、下級アンデッドのカードように戦闘力を付与する能力を備えていない。
           ラウザーにラウズしても、ただラウザーのポイントをチャージするだけだ]

|( ФωФ)|[我々は、上級アンデッドのカードには更なる可能性を秘めていると見ている。
           その可能性を極限まで引き出し、ライダーのパワーアップに繋ぐ事が出来る新たなシステム――"ラウズアブゾーバー"を開発するのである]

( ・∀・)「ラウズアブゾーバー……」

ξ゚⊿゚)ξ「それを使えば、上級アンデッドの秘めた力を使う事が出来る…?」

|( ФωФ)|[その通りである]

|( ФωФ)|[アンデッドはまだまだ数多く潜んでいる。彼等の力はとても強大、苦戦を強いられる時があるかもしれない。
           その時、ラウズアブゾーバーで上級アンデッドの力を引き出し、更に強い力でアンデッドとの戦いに臨める]
 _
( ゚∀゚)「そんな事、可能なんですか?」

|( ФωФ)|[可能にするのである。一日でも早くアンデッドを全て封印し、人々を魔の手から守る。
           その為には、まず実現に向け動かなくてはならない。
           君達が命を懸けて戦っているように、我々も、我々が出来る事で君達と共に戦おう!]

( ・∀・)「……はい!」
 _
( ゚∀゚)「そうだな!俺達、力を合わせてアンデッドなんかさっさと倒しちまおうぜ!」

ξっー゚)ξ「……ぐすっ、……えへ」
 _
( ゚∀゚)「な、なんだよ…泣いてんのか?」

ξっー゚)ξ「何か……BOARDが戻ったみたいで、ちょっと嬉しくて……」

 
 意気込む男達の傍ら、唯一の女性であるツンがすすり泣く。
 モララーも加わり、ロマネスクや生き残りであるBOARDの開発部の人達との共同戦線。
 
 この戦いに直面するのが自分達だけでないという安心感。
 ようやく生まれた結束に、熱く心を打たれてしまった。

46221話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:07:26 ID:Vg4XVt6s0


( ・∀・)「BOARDはもうないが……俺達には、新しい仲間もいる」

ξ゚⊿゚)ξ「……うん」

( ^ω^)「ん?」
 _
( ゚∀゚)「そうだな」

( *^ω^)「……おっおっ、なんか照れちゃうお」


 一斉に、ブーンへと視線が向けられた。
 意味を知ってか、照れつつも素直に嬉しそうに笑ってみせた。


|( ФωФ)|[皆、どうか吾輩の……いや、ホライゾンをよろしく頼むである]

ξ゚⊿゚)ξ「よろしくされてるのは私達の方なんで、全然大丈夫ですよ!」

|( ФωФ)|[……ホライゾン]

( ^ω^)「なんだお」

|( ФωФ)|[本意ではないが、お前にブレイドを任せる。頼むぞ]

( ^ω^)「……はいお」

|( ФωФ)|[だが無理はするなよ。決して命を投げ捨てるような事だけはするな]

( ^ω^)「自分の命くらい自分で管理してるお」

|( ФωФ)|[ふむ……では、吾輩はしばらく開発に専念する。また何かあれば連絡してくれたまえ]


 ビデオ通話は、ロマネスクの方から切られた。
 画面からロマネスクの顔が消えたと同時に、偶然にも家のインターホンが鳴らされた。

 誰の来訪かはあらかた予想がつく。呼び出したドクオだろう。


( ^ω^)「僕が出てくるお」

46321話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:08:00 ID:Vg4XVt6s0


 言って向かったブーンが、玄関の扉を開ける。
 開いて現れたのは、いつもと変わらぬ様子のおちゃらけたドクオだ。


('∀`)「あっ、こんにちはNHKです〜集金に来たんですが〜」

( ^ω^)「テレビないのでお帰りください」

('A`)「本当ですか?ちょっと確認させてください」

( ^ω^)「契約してませんので」

(#'A`)「携帯にワンセグないか確認させろ!!契約結ばないと裁判起こすぞ!!」

( ^ω^)「警察呼びますよ??」

('∀`)「すみませんまた来ます」

( ^ω^)「入れお」

('A`)「うっす」

46421話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:08:26 ID:Vg4XVt6s0


('A`)ノ「やぁみなさん!ご機嫌いかがかな?」

ξ゚⊿゚)ξ「ドクオさん、こんにちは!」

('∀`)「ツンちゃん今日のお顔可愛いねぇ〜、その唇の形最高!あとその今日の顎のラインも!」

ξ;゚⊿゚)ξ「私レザーフェイスとかじゃないんだけど……」

( ・∀・)「……彼って普段あんな感じなの?」 ヒソヒソ
 _
( ゚∀゚)「そうっすね、今日は何か無駄に元気ですよ」 ヒソヒソ

( ・∀・)「へぇ……意外だな」


 家の中に招かれるなり、全員に向け一方的な挨拶を送る。
 相変わらずと言えば相変わらずの軽いノリと態度は、ある意味安心出来る事ではあった。
 
 レンゲルのベルトを持っていながら、自分らしく居るのだから。

 だが、ドクオの性格を知りつつもその事実を把握しているブーンからすれば、不安でいっぱいだった。


('A`)「んで、何か話があるとかないとかあるとか?」
 っロ

( ^ω^)「ああ……」


 ソファに座り、目の前に出されたコップを持ちまずはお茶を一口。
 

( ^ω^)「単刀直入に聞くお」

( ^ω^)「……ベルト、お前が持ってるんだろ?」

46521話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:09:18 ID:Vg4XVt6s0


('A`)「………」


 一瞬の間が空いた。
 ブーンの質問に、それまで調子づいたドクオの顔は固まったように素の表情を見せる。


('∀`)「……ベルト??もしかして、レンゲルのベルト?」


 ゆっくりとテーブルにコップを戻すと、早速とぼけてみせた。
 

( ^ω^)「とぼけても無駄だお。もうみんな知ってるんだ……お前が持ってるってことは」

('A`)「………」

( ^ω^)「……ついでに言うと、そのすぐ後にギコさんは……」

(;'A`)「え……嘘だろ!?!?」

( ^ω^)「………」

(;'A`)「アンデッドに、殺されたっていうのか…!?」

( ^ω^)「……なんで殺されたって分かるんだお?」

( ^ω^)「そもそも、僕が言った"すぐ後"って、どの時の事を思って反応したんだお?」

(;'A`)「あ……」


 まんまと誘導に掛かってしまった。
 確かに、ブーンは具体的にどの時かの説明をしていない。
 本当に知らなければ、アンデッドに殺されたという想像にも至らないはずだ。


( ^ω^)「当ててやろうか?ギコさんが変身解除した後、その場に現れたお前がレンゲルのベルトを取って去った後の事…そうだろ?」

(;'A`)「ッ………」

( ^ω^)「……お前は嘘が下手なんだから、誤魔化そうとするなお」


 ただただ、焦りの表情に変わっていく。
 視線は無駄に泳ぎ、動揺しているのが丸分かりだ。

46621話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:09:58 ID:Vg4XVt6s0


( ^ω^)「何で取ったんだお?お前散々カテゴリーAに操られて酷い目見たこと、忘れたわけじゃないおな?
       それに、ライダーになりたくないって頑なに拒んでたお前が、何でレンゲルのベルトを持ち出すんだ?」

('A`)「……それは……」
 _
( ゚∀゚)「それもそうだけど、お前それ持ってて平気なのかよ。今日の様子見る限りじゃ操られてるようには見えないし」

('A`)「………」


 もう誤魔化せない。そう悟ったのか、否定する事はしない。
 だが、その質問に対しては中々答えようとはしなかった。


( ^ω^)「答えたくないって顔してるけど、そういう訳にも行かないお。事情が事情なんだお」

('A`)「分かってる、分かってるよ……自分でも矛盾してんのは分かってんだ」

( ^ω^)「だったら何で……」

('A`)「変わりたかったんだ!」

ξ゚⊿゚)ξ「変わりたかった…?」

('A`)「ああ……」


 自分のバッグの中を、ごそごそと漁り始めた。
 そして――中から取り出されたレンゲルバックル。

 確信的かつ言い逃れようのない証拠が出てきた。


( ・∀・)「やっぱり君が……」

( ^ω^)「変わりたかったって、どういう事だお?」

('A`)「……お前なら分かるだろ、俺がどういう人間か。俺が、自分に自信無くて何をやるにも一歩出せないような奴だって事を」

('A`)「俺が、昔いじめられてたってことも……」

( ^ω^)「知ってるけど…それがどう関係あるってんだお」

46721話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:10:42 ID:Vg4XVt6s0


( A )「俺は……その記憶が今でも消えないんだよ。忌まわしくて、消したくて、思い出にすらしたくない過去……。
    そいつに今でも引っ張られ続けて、俺は自分がどうしようもない奴だって思い続けてる!」

('A`)「だから、俺みたいな何も出来ない人間がライダーなんかやったって誰も助けられないって……そう思った。けど……」

('A`)「何で俺のもとにこのベルトがやってきたかを考えた……カテゴリーAは、俺を選んだんじゃないかって。
    頑なに拒んでたから、俺はコイツに操られた。でも…コイツを受け入れた途端に、俺は操られるような事もなくなった!」

('A`)「俺は思ったんだ…今はまだ慣れてないけど、いつかは俺もこの力を使いこなせるようになるって!
    俺は、コイツのおかげで何も出来ない自分を変えれるかもしれないって――」

( #^ω^)「何言ってんだお前!?僕達に襲い掛かったのを忘れたのか!?」


 ドクオの自分勝手な理由に、思わず声を荒げてしまった。
 気持ちを汲みつつも、元々素人でありながらライダーの使命を胸に戦ってきたブーンからすれば、憤ってもおかしくはない。


( #^ω^)「カテゴリーAがお前を選んだのは、そんな事の為じゃない!ただ自分の思い通りに動く身体が欲しいだけなんだお!!」

(;'A`)「ッ……」

( ^ω^)「お前とは長い付き合いだから言うお。
      お前の苦悩は分かってるし、変えたいっていう気持ちも分かる。
      でも…仮面ライダーは自分の為にあるものじゃない、アンデッドから人を守る為にあるものなんだお!」

( ^ω^)「それを、自分を変えたいっていう理由だけで…しかもそんな危険なベルトを使わせるわけにはいかない!
      もしまた僕達を襲って、まだ慣れてないからしょうがないなんて言い訳を僕達の前で出来るのか??
      僕だけならまだいい。でも、モララーさんやクーさん、ツンやジョルジュにまで手を出したらどうするんだお!?」

(;'A`)「……そうかもしれない」

( ^ω^)「分かってるんなら返せお。お前の為でもあるんだから……お前だけでも元の生活に戻れお。
      ライダーになるっていうのは、今まで歩んできた自分を全部捨てる事にもなるんだから」


 ドクオに向け、片手を差し出した。
 段々、力みきった表情から力が抜けているのが分かる。
 
 右手に持ったレンゲルバックルを、差し出されたブーンの手に向けゆっくりと伸ばす。

46821話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:11:46 ID:Vg4XVt6s0


 ブーンの掌にバックルが届くまで、あと少し。
 だが……完全に預けるまでには、まだ至らない。

 そして――、


( A )「………………悪い、やっぱり出来ない!!」


 伸ばした手を引き戻し、隣に置いたバッグを無造作に掴む。
 ソファより立ち上がると、逃げるようにして家を出て行ってしまった。

 _
( ゚∀゚)「あっ、おい!」

( ^ω^)「ドクオ!!!」


 逃げる背を追おうとするブーンを、モララーが引き留めた。


( ・∀・)「待て!俺が行って、彼を説得してみるよ」

( ^ω^)「でも…!」

( ・∀・)「頼む。少し俺に任せてくれ」


 引き留めたブーンを追い越し、ドクオに続いてモララーが家を出た。


ξ゚⊿゚)ξ「ドクオさん、大丈夫かしら…」
 _
( ゚∀゚)「あいつ、絶対止めないとまずいな」
 _
( #゚∀゚)「つーかムカつくぜ……そんなんでライダーになろうとするなんてな……」

( ^ω^)「……何でだお、ドクオ!!」

 
 説得出来なかった悔しさ、理解してもらえなかった事への腹正しさが残る。
 ライダーとしての信念に反し、ましてや自分を変えようとする事を理由に、ライダーになろうとするドクオが許せなかった。

46921話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:12:09 ID:Vg4XVt6s0


 ――――――
 ――――
 ――


('A`)「はぁ………」

 ブーンの家から飛び出し、近くの河川敷まで逃げてきた。
 バイクから降り、河川敷の草原の上に腰を落とす。

 出来れば、バレずに過ごしたかった。
 いずれはバレてしまう事だろうが、せめてその時までに自分がライダーとして戦えるようにはなっていたかった。
 

('A`)「アイツと会いにくくなっちゃうな……しょうがない」

('A`)「俺がしっかりコイツになって、認めてもらうしか」


 バッグの中から出したレンゲルバックルを、悠々と流れる川を背に翳す。
 
 ドクオは考えた。

 戦うには一体何をしたらいいのか?
 正しいパンチやキックの型も知らないし、あんな激しい動きをする自信はない。
 がむしゃらに打てば何とかなるものなのか?

 
('A`)「……アイツ、よくライダーやってるな。スゲェわ」


 考えれば考える程、マイナス思考になっていく。
 その点、全くの初心者であるブーンの戦い振りには感心せざるを得ない。

 ……やっぱり、無理なんじゃないか?


('A`)「ッいやいやいや!違う、それじゃコイツを受け入れた意味がない!俺は戦うんだ…コイツの力で変わる為に……」 

( ・∀・)「おい」

('A`)「?」

47021話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:12:58 ID:Vg4XVt6s0


( ・∀・)「探したよ」

(;'A`)「やべッ……!!」


 声がしたと思えば、隣にはいつの間にかモララーが立っていた。
 よく見ると、レッドランバスが留まっている。
 考え事に夢中になっていて、バイクの音にすら意識が向かなかった。

 モララーを視認するなり、ドクオは慌てて逃げ出そうとする。
 が、その肩を掴まれてしまった。


( ・∀・)「待ってくれ!どうして逃げるんだ?」

(;'A`)「だ、だって……」

( ・∀・)「話を聞いてくれ、君から無理矢理奪おうとは思ってない。信じてくれ」

('A`)「………はい」


 渋々ではあるが、説得に応じ再び腰を下ろした。
 

( ・∀・)「君、さっきは自分を変える為にって言ってたね」

( ・∀・)「聞きたいんだけど……自分を変えて、どうしたい?
      その危険な力は、君が変わることにどう影響を与えてくれると思ってる?」

('A`)「……それは……」

( ・∀・)「君の気持ちは、少しは理解出来るよ。俺も似たような事があってね」

47121話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:13:21 ID:Vg4XVt6s0


( ・∀・)「俺は、最近まで剣藤と対立してた。ツンやジョルジュ達ともね」

( ・∀・)「ライダーシステムってさ、人の精神や心の弱さを反映するんだ。
      俺は最初はライダーになりたくなくて、ライダーとしての責任感の重圧に圧されて、ひどかったよ」

( ・∀・)「そんな自分を、力を得て戦うことで誤魔化そうとしてた。暴力的な力で自分を変えようとしたんだ」

( ・∀・)「でも……それが間違ってたことに気付いたのは、とても遅かった。
      その間に俺は………大切な人を失ってしまった」

('A`)「大切な人……」

( ・∀・)「力を望むことは簡単だ、手に入れた力をどう使うかはその人次第になる。
      だけど、踏み間違えれば取り返しのつかないことになる。今はまだよくても、いずれは必ずその時が来る」

( ・∀・)「……俺と同じ道を、君に歩ませたくないんだ」

('A`)「………」

( ・∀・)「もしまだ心の中に迷いがあるなら…返して欲しい。
      そのベルトを介すカテゴリーAは、人の闇に浸け込む邪悪な力を持つ。君自身を乗っ取ってしまうかもしれない」

('A`)「………」

( ・∀・)「頼む、返してくれ」


 言って、ドクオに向け伸ばす右手。

 自らの経験から、ドクオに対しどこか同じ境遇を感じた。
 だからこそ、進もうとしている道がとても危険な事を理解出来る。

 ブーンとは違い、内側から解すような形での説得を試みたモララー。


('A`)「……俺は……」



「やぁ、仮面ライダー諸君」

47221話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:14:07 ID:Vg4XVt6s0


 背後からの声に振り返る二人。

 そこに立っていたのは、一人の青年。


( ´_ゝ`)「こんなところで日向ぼっこかい?」

('A`)「……あの」

( ´_ゝ`)「そうそう、君達にお祝いの言葉があるんだ。聞いてくれ」

( ´_ゝ`)「――レンゲル誕生、おめでとう。心からおめでたく思うよ……憎たらしい程にな」

( ・∀・)「……お前、アンデッドか!?」


 男が放つ異様な雰囲気、確信を突くような言葉に気付いた。
 咄嗟に立ち上がり、ドクオの前に出るモララー。

 男はクスクスと笑い出し、無言で頷く。


( ・∀・)「ドクオ君……離れろ」

( ´_ゝ`)「そうだな……別に君達を倒そうなどとは思ってないから、まずは安心してくれ」

( ・∀・)「何を馬鹿なことを――」


 男に向かい合い、ギャレンバックルを取り出そうとした、その時。
 背後に匿っていたドクオが、モララーを退かしアンデッドの前に立ちはだかった。

 その手には――レンゲルバックルが握られている。
 

( ・∀・)「ッおい、やめろ!君は変身するな!」

('A`)「俺だって……俺だって戦う為にコイツを受け入れたんだ!!」

47321話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:14:42 ID:Vg4XVt6s0


( ´_ゝ`)「ほう、早速レンゲルが現れてくれるのか?さて、新生レンゲルはどんな力なのかな」

('A`)「ッ……力を貸せよ、カテゴリーA!!」


 レンゲルバックルより引き出したトレイに、カテゴリーAを装填。
 トレイを叩きバックルに押し戻し、腰にバックルを装着。

 ドクオの中に巣食う恐怖心。
 まだ、自分があの化け物と戦うことに恐れを抱いている。
 鳴り響く待機音が弱い心を刺激し、迷いを促した。


(;'A`)「……ッ……」

( ´_ゝ`)「どうしたんだ?怖くて戦うことが出来ないか?」

('A`)「ッ……う、うるせぇ!俺はやれる…俺にはコイツがいる!!」

('A`/)「変身!!」


    【 -♣OPEN UP- 】


 変身の構えを取った両手を展開させ、バックルのシャッターを叩き開く。
 現れた♣のマーク。紫色に発光するゲートを射出し、レンゲルへと変身した。


( OHO)「………うおおおおおおおおおッッ!!!!」


 両手で拳を作り、力を込め自らを奮い立たせる。
 目の前の未知なる恐怖に逃げ出してしまいそうになる自分を抑え込んで。

 レンゲルラウザーを手に取り、シャフトを伸ばし杖状に形状を変化させる。
 両手でしっかりと柄を握り締め、不器用に突っ走り始めた。


( ´_ゝ`)「……ふっ、なんて弱々しい気迫だ」


 言って、男は右手を己のこめかみ辺りに手をかざす。
 そして、驚かざるを得ない光景がレンゲルやモララーの目に飛び込んだ

47421話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:15:13 ID:Vg4XVt6s0


 男がかざしたこめかみ部分から、剣の柄が姿を見せた。 
 出てきた柄を右手で掴むと……一息にそれを引き抜く。


( ・∀・)「!?」


 こめかみより引き抜いたのは……クワガタの大アゴを模したかのような、ニ又の黄金に輝く剣。
 

( OHO)「ッ…!?」


 異様な光景に思わず、駆ける足を止めてしまった。
 頭部より剣を引き抜くという、狂人じみた行為が、男の凶暴さと残酷さを嫌でも物語らせた。
 

( ´,_ゝ`)「じゃあ、早速挨拶と行こうか……!」


 ニヤリと笑みを浮かべる男の身体が、オーラに包まれた。

 男の腹部から現れる金色の肌。
 侵食するように全身に広がり、人の形状から徐々に歪な形に変化していく。
 
 金色に輝く身体。
 もはや、装甲と言っても過言ではない程の強靭な肉体。
 歪な怪物ながら、見惚れてしまいそうになる造型。
 特に目についたのは……頭部に伸びた、クワガタのようなアゴの角。

 眉間には、紅く煌くダイヤが、埋め込まれるように存在していた。


( ; ・∀・)「その姿、そのダイヤ……お前は!?」
 (  。)
<メ、゚ M゚,>『そうだな…お前が持ってるカテゴリーAに強く関係しているかもしれないな』
 (  。)
<メ、゚ M゚,>『俺はダイヤのカテゴリーキング。ダイヤスートを統べる王様、ってところだ…!』

( ; ・∀・)「カテゴリーK……!!」


 カテゴリーK…各スートの王。
 それだけで、このアンデッドが秘める力は容易に想像出来る。
 いや、想像を遥かに超えた力を有しているかもしれない。

 出で立ちや、堂々とした姿。府坂やカテゴリーQに勝る何かを、本能が感じ取っている。

47521話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:16:02 ID:Vg4XVt6s0

 (  。)
<メ、゚ M゚,>『どうした?カテゴリーA。こんな雑魚にやらせないでお前が戦え』
 (  。)
<メ、゚ M゚,>『でないと…わざわざ足を運んで挨拶しに来た意味がないんでね』

( OHO)「な……な、何言ってんだ!俺は、カテゴリーAの力を完全に――ッッ!?」

( ; OHO)「ううっ…!!!」


 突如、レンゲルを襲う激しい頭痛。
 頭を押さえ、ひどく苦しみ出した。


( ・∀・)「ドクオ!?どうした!?」

( ; OHO)「うゔゔぅッ……ぐあああアァァァァアァァアッ!!」


 痛みにもがき苦しんだ末、レンゲルラウザーを構え再びカテゴリーKに向け走り出す。
 レンゲルをよく見ると……額にある♣状の宝石が紫色に強く輝いている。


( OHO)「うおおおおあああああッッ!!!」


 雄叫びをあげながら、構えたレンゲルラウザーをカテゴリーKの頭部目掛け振り下ろした。
 だが、片手の剣で攻撃は簡単に防がれてしまう。

 (  。)
<メ、゚ M゚,>『ふん、あくまでコイツを操ることに力を注ごうとするか…。 はァッ!』

( ; OHO)「うああぁっ!?」


 レンゲルラウザーを弾き、ニ又の剣でレンゲルの胸部に一太刀浴びせた。
 黄金色の装甲に、深い傷跡が形成される。

 たったの一太刀を受けただけで、レンゲルは吹き飛ばされてしまった。
 装着者が戦いの素人であるドクオだとしても、レンゲルとしての体重やスペックは変わらない。
 
 それをも凌駕する凄まじい力が、カテゴリーKにはあった。

47621話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:16:28 ID:Vg4XVt6s0


( ・∀・)「ドクオ!……変身!!」


    【 -♦TURN UP- 】


 このままレンゲルに戦わせれば、死に至らせてしまうのは目に見えていた。
 ギャレンバックルを装着したモララーは、カテゴリーKに向けゲートを射出。
 ギャレンに変身するため、ゲートに向け走り出した。

 だが……、

 (  。)
<メ、゚ M゚,>『お前が相手になった方が見せしめになるらしいな……そんなわけで』
 (  。)
<メ、゚ M゚,>『これが俺からの挨拶だ…!!』
 

 モララーに剣先を向けた二又の剣が、紅く光を放つ。
 高々と頭上に剣を掲げ、ゲートに向け振り下ろす。 
 
 (  。)
<メ、゚ M゚,>『セイヤア゙ア゙ァ゙ァッッ!!!』

( ・∀・)「うっ…!?」


 荒々しい声と共に、振り下ろされた剣から放たれる斬撃波。
 虚空を斬り裂き、足元の草を削りながら、ゲートに向け一直線に飛翔する。

 モララーは、本能的に足を止める。
 これが正しい選択となった。

 カテゴリーKが放った斬撃波は、モララーがバックルより放ったゲートを――粉々に粉砕した。


( ; ・∀・)「…ッ!?オリハルコンエレメントが、破壊された…!?!?」


 変身をする為に放つゲートは、防衛的な役割を果たす事も可能。
 その証拠に、アンデッドにぶつければ吹き飛ばす事が出来た前例もあり、攻撃を防ぐ手段として用いる事も出来る。
 大概の事では、ゲートが突き破られる事など有り得ないのだ。

 ……しかし、そのゲートが、目の前で砕け散った。

47721話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:17:01 ID:Vg4XVt6s0


( OHO)「うぅ……ッ!うおおおおおおおおッッ!!」


 無謀にも、がむしゃらに再び立ち向かった。
 構えたレンゲルラウザーを、今度こそカテゴリーKの肩に叩き込んだ。

 (  。)
<メ、゚ M゚,>『……くどい!』


 全く動じない。
 片手でレンゲルラウザーの柄を掴み、二又の剣で横薙ぎに斬りつける。
 いくらでも防ぎ様はあったが、敢えて受ける事でレンゲルを蹴散らした。


( ; OHO)「うぐうぅ…ッッ!?」

 
 草原の上に転がり、川辺の方へと落ちるレンゲル。
 
 すると、レンゲルバックルがカテゴリーAの意志を受け自我を持ち始めた。 
 バックルのシャッターは勝手に閉ざされ、紫色のゲートが出現。
 転がり続けるレンゲルの身体を無理矢理通過し、変身を解いてしまった。


(;'A`)「うううぅッ…!あ…ぐ……!」
 (  。)
<メ、゚ M゚,>『フン、どうやらレンゲルは大したことなさそうだ……当分の間はな』


 言って、カテゴリーKは人間態へと姿を戻す。
 転げ落ちるドクオなど見向きもしないが、モララーへの興味はあるようだった。


( ´_ゝ`)「お前達がライダーを続ける以上、いつかは戦う時が来るだろう。だが、今ではない」

( ´_ゝ`)「俺は、この戦いに隠された"真実"を探している。それが見つかるまで、お前達とは戦わない。
       血を流しても報われぬ戦いなど、する意味がないからな」

( ・∀・)「真実だと…?」

( ´_ゝ`)「それまでは、せいぜい雑魚共と血気盛んな奴等の相手でもするんだな。その方が俺も助かる」


( ´_ゝ`)「――お前とは、いずれ決着をつけることになりそうだな。ふっ……」

47821話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:17:47 ID:Vg4XVt6s0


 カテゴリーKの姿が、フッ…と消えて無くなった。

 気配は感じない。
 本来は追わなければならないが、姿が消えた事にどこか救われた気持ちを覚える。


( ・∀・)「あれがカテゴリーKの力……なんて力なんだ……」

(;'A`)「ッうう……クソ……!」

( ・∀・)「ドクオ!」


 川辺の方で苦しむドクオの声。
 下り坂を下りながら、起き上がろうとするドクオに駆け寄った。

 地に両手と両膝を立てながら、レンゲルバックルを見下ろしている。


(;'A`)「何でだよ…!何で、力を貸してくれなかったんだ…!?」

( ・∀・)「確かにレンゲルを受け入れたことで、君は心の中に凶暴な力を住み着かせたかもしれない。
      だが、力を自由に使いこなすこととはまた話が違うようだな」

(;'A`)「そんな……!」

( ・∀・)「今のうちに止めたほうがいい、そのベルトは危険過ぎる。また誰かを傷つけてしまうかもしれない」

('A`)「ッ……でも選ぶさ、カテゴリーAは絶対に俺を選ぶ!ただ……今はまだ気まぐれなだけで――」

( ・∀・)「気まぐれなんて話では済まない!カテゴリーAは君を弄んでいるだけだ!
       いつか自分自身まで失ってしまうかもしれないんだぞ!?」

(#'A`)「失ってもいい!こんな弱い自分なんかなくなればいい!俺は強くなりたい……強くなりたいんだよ!!」

( ・∀・)「ドクオ!!上辺だけの力を求めても、何も得るものはないぞ!!」


 モララーの説得を振り切るように、力強く張り上げた声。
 レンゲルバックルを両手に抱え、痛みに悲鳴をあげる身体を叩き起こし逃げるように走り去る。

 その背中に向け言葉を掛けるが……ドクオの気持ちは、どこか理解出来る部分がある。
 我を忘れる程に強さを求める姿勢。まるで、過去の自分を見ているようだった。

 
( ・∀・)「……強くなりたい、か」

.

47921話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:18:53 ID:Vg4XVt6s0


 ――――――
 ――――
 ――


 一方、モララーに任せながらもブーンもドクオの行方を捜しに出ていた。
 ひとまず先にドクオの自宅に来てみたものの、本人はまだ帰宅はしていない。


( ^ω^)「どこ行ったんだおドクオ……」

「こんにちは」

( ^ω^)「こんにちは〜」


 バイクに乗ろうとすると、後ろから一人の少年が歩いてきた。
 職業病とでも言うべきか、少年の挨拶には笑顔で応える。

 その少年は、ブーンの前に立ちはだかり、一切視線を外そうとせず見続けている。


( ^ω^)「……あの、なにか?」

( ´∀`)「ブレイドだね?」

( ^ω^)「え……?」

( ´∀`)「やっぱりそうだ!ブレイドだ!本物だ……すごい!一緒に写真撮らせてよ!」


 言うなり、ポケットからスマホを取り出しブーンの肩に手を組んできた。
 さすがのブーンも、見ず知らずの人から馴れ馴れしくされるのはあまり好ましくは思わなかった。


( ^ω^)「ちょ、ちょっと待ってくださいお。なんですか??」

( ´∀`)「ああ、ごめんごめん。自己紹介しなければいけないね」

( ´∀`)「僕はね、スペードスートのカテゴリーキングだよ。キングモナーって呼んでよ」

( ^ω^)「カテゴリーキング…!?アンデッド!?!?」

48021話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:19:13 ID:Vg4XVt6s0


 己の正体を軽々しく明かす、キングモナーと名乗る少年。
 アンデッドである事を素早く察知した途端、ブーンはキングモナーを突き飛ばしバイクから降りる。


( ´∀`)「あ、何すんのさ!僕は何もしてないのに!」

( #^ω^)「ふざけんな!アンデッドが僕に近付くってことはそういうことだろ!?」


 ポーチに手を掛け、ブレイバックルを取り出した。
 カードを装填したバックルを腰に装着し、迷い無くハンドルを引く。


( ^ω^)「変身!」


    【 -♠TURN UP- 】

 
( ´∀`)「よっ、と!ちょっと待ってくんない?戦うつもりなんかないんだけど」

( #^ω^)「そんな言葉信じられるか!!」


 射出したゲートをひらりと躱すキング。
 既に戦いに心が備わっているブーンは、言葉に耳を貸すことなくゲートに向け走りブレイドに変身。

 走る勢いそのままに、人間の姿をしたキングに右拳を突き出した。


( OwO)「おらあっ!!」


 しかし……、


( ; OwO)「なっ……!?」 

( ´∀`)「やめときなよ、通じないから」


 キングを守るようにして、ブレイドの突き出した拳に盾が発生する。
 当の本人は己を守ろうとする為に行動を起こしたのかと思いきや、何もしていない。
 ただ腕を組んで立っているだけだ。

48121話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:19:41 ID:Vg4XVt6s0


( OwO)「うおおおおおおっ!!」


 それでも殴り続けり。
 この盾が発生しない場所が、必ずあるはず。
 そう信じて、何度も何度も殴り続ける。


( ; OwO)「ックソ……これならどうだ!!」


 ブレイラウザーを抜き、キングの脳天目掛け真っ直ぐに振り下ろす。
 
 だが、盾はキングの頭上を守るように上向きに発生。
 ブレイラウザーの剣を、打ち合う鋭い音と共に防いだ。


( ´∀`)「しつこいなぁ、だから無駄だって言ってるだろ?」

( ; OwO)「何でだお…!?コイツどうなってんだ!?」

( ´∀`)「キングってどういう意味か分かる??」

( ; OwO)「何…?」

( ´∀`)「キングってのは王様って意味。要するに……僕が一番強いってことさ!」


 キングがブレイラウザーを片手で掴んだ瞬間、ブレイドの身体に異変が起きる。


( ; OwO)「うああああぁぁあぁッッ!?!?」


 掴んだ手からラウザーを伝い、ブレイドの身体に流れる衝撃。
 何が流れているかまでの特定は出来ない。
 
 だが、それは確実に、ブレイドの身体に何らかのダメージを与えていた。

48221話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:20:54 ID:Vg4XVt6s0


( ´∀`)「はい、おあいこ。君から先に手を出したんだから正当防衛だよ」

( ; OwO)「はあッ…!ぐう、ああ……!」


 パッ、と手を離したと同時に、ブレイドの身体に流れる衝撃は途絶えた。
 それでも身体の中に蓄積されたかのように、未だに痛みは身体を蝕み続けている。
 両足で立っていることが出来なくなり、ブレイドは地に崩れ落ちた。


( ´∀`)「話は聞くもんだよ、ちゃんとね」

( ; OwO)「ごほっごほっ!…だったら、お前の目的はなんなんだお……!?」

( ´∀`)「目的??んー、ただ挨拶をしたかっただけって感じかな??
      もう一人のカテゴリーKが、今君のお仲間に挨拶をしに行ってるとこだよ」

( ; OwO)「もう一人のカテゴリーKだと…!?僕達を同時に倒すのが目的かお!」

( ´∀`)「だからさ…戦うつもりないって言ってるだろ??
      アイツは考えがあって動いてるだろうけど、僕は別に何も考えちゃいないよ。
      ただ、この戦いを掻き乱して掻き乱して……滅茶苦茶にしてやりたいだけさ」

( ; OwO)「……ぐっ!」

( ´∀`)「でも勘違いしないで欲しい、少なくとも僕は人間を恨んだりとか敵に見たりとかしてないから。
      かと言って味方をするつもりもないんだけどね」

( ´∀`)「そう、全部全部狂わせてやりたいだけだ……僕達が戦っても意味がない戦い。
      だったら全部滅茶苦茶にして、面白くしてやるだけさ…!」


 あどけなさが残る表情に、残忍さが垣間見える。
 本能のままに破壊を求める心こそ、恐れるべきものはない。


( ´∀`)「……会えてよかったよ、ブレイド。君とはまた必ず会うはずだ」

( ´∀`)「その時は――よろしく」

( ; OwO)「………」


 姿が消えた。
 モララーと同様にブレイドも、今までのアンデッドとは格段に違う力を肌身で感じていた。
 
 カテゴリーK。各スートの王。
 ついに、王自らが動き出したのだった。

48321話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:21:56 ID:Vg4XVt6s0




 ―――――



.

48421話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:22:16 ID:Vg4XVt6s0


 ――この日の夜は、ブーン宅にたくさんの客足があった。
 バーボンハウスの一同や、後輩のヒッキーが遊びに来ていたのだ。

 テーブルには、腕を振るった豪勢な料理と飲み物が並んでいる。

 今日は大晦日。明日からは新しい年になる。
 今年は、特に夏場からの半年間は、皆が皆非常に濃い時間を過ごしただろう。

 決して良い事があった訳では無い、悲しいことや辛いことばかりだった。

 けれど、不幸中の幸いと言うべきか、人との縁を深める事にも繋がった。
 その形として、今年最後の夜を共に楽しもうと、たくさんの人が集まっていた。

48521話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:22:44 ID:Vg4XVt6s0


(´・ω・`)「みんな、この間は本当にありがとう。君達のおかげで何とか店も続けられてるよ」

ξ゚⊿゚)ξ「いえいえ、ショボンさん達が無事だったことが本当何よりですよ」

(´・ω・`)「しかしびっくりしたな、ブーン君が仮面ライダーだったなんて。こんな身近に正義のヒーローがいたとはね」

从'ー'从「本当だよ〜。ブーンさん頼りなさそうって思ってたけど、ちょっとカッコイイって思っちゃった!」

(#゚ -゚)「へえ〜、あれが仮面ライダーだったのかぁ……すごいんだねブーンのお兄ちゃん」

ξ゚⊿゚)ξ「すごいでしょ〜?悪いやつらをやっつけてるんだよ、ブーンは」

(#゚ -゚)「うん、モスのことはいじめないでくれたもん」

(´・ω・`)「モララーさんもありがとう、こんな近くに仮面ライダーが二人もいれば心強いよ」

( ・∀・)「いえ、元はと言えば我々の責任でもありますので……」

(´・ω・`)「我々の責任?」

( ・∀・)「あ、いや…何でもないです」

(-_-)「そっか……だから休んでたわけか」
 _
( ゚∀゚)「広めんなよ?ここにいるって事は少なからずアイツに信用されてるってことなんだからよ」

(-_-)「ジョルジュさん、口軽そうって言われません?俺は言われませんけど」
 _
( ゚∀゚)「否定するだけで随分嫌味な言い方しやがんなおめぇ」

48621話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:23:44 ID:Vg4XVt6s0

 _
( ゚∀゚)「そういやブーンのやつ、もうすぐ帰ってくるな」

ξ゚⊿゚)ξ「そうね、年末だからお母さん連れて帰って来るって言ってたけど」
 _
( ; ゚∀゚)「ああ……なんか緊張しちまうな、俺達居候だし……」

ξ;゚⊿゚)ξ「ま、まぁそうね……出てけなんて言われたらどうしよう」

(´・ω・`)「ブーン君がそろそろ来るんじゃ、もうからあげ作っていいかもね」

(´・ω・`)「クー、もう揚げちゃっていいよ」

川 ゚ -゚)「はい」


 バーボンハウスの一同には、もちろんクーもいた。
 指示を受けると、一人でキッチンに立ち下味をつけた鶏肉に衣をつけ始める。


ξ゚⊿゚)ξ「クーさん、何か手伝うことある?」

川 ゚ -゚)「大丈夫」
 _
( ゚∀゚)「へえ〜、料理するとこ見れるなんて斬新だなぁ」


( ・∀・)「あの人、料理するのか?人間が食べれるもの作るんだろうな?」 コソコソ
 _
( ゚∀゚)「どうなんすかね?アンデッドのから揚げだったりして」 コソコソ


川#゚ -゚)「聞こえてるぞ。貴様等に借りがあること忘れてないだろうな?」
 _
( ; ゚∀゚)「あっ……うっす」

( ; ・∀・)「無駄口は叩かないほうがいいね」

48721話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:24:31 ID:Vg4XVt6s0


 玄関の開く音と共に、ブーンの声が聞こえる。
 いつもならすぐに家の中に入って、玄関のドアも閉じられるのだが、今日は中々閉まる音がしない。
 

( ^ω^)「ただいまお〜」
 _
( ; ゚∀゚)「帰ってきた!おい帰ってきたぞ!」

ξ゚⊿゚)ξ「落ち着きなさいよ!私出るから!」
 _
( ; ゚∀゚)「いっいや、俺も出るって!」


 廊下に出て玄関に向かうと、ブーンの他に車椅子に乗った女性がいた。
 その女性こそ、入院していたブーンの実母だった。


J('ー`)し「あら、可愛らしい子に優しそうな子じゃない。こんな子達にお世話になってたなんてねぇ」
 _
( ; ゚∀゚)「あっ、お…お母様!は、はじめまして!わたし白岡ジョルジュと申しまして…」

( ^ω^)「慣れないかしこまり方すんなお」

ξ゚⊿゚)ξ「すみません、勝手に居候させていただいてまして……」

J('ー`)し「そんなかしこまらなくていいのよ、話はずっと聞いてたから知ってるわ」

J('ー`)し「むしろ、ウチの子の面倒を毎日見てくれてありがとうねぇ」

ξ゚⊿゚)ξ「そんな…!お世話になってるのは私達の方です、いきなり住まわせてもらっちゃって……」

( ^ω^)「もう挨拶はいいから早く中に入ろうお。腹ぺこぺこだお!」

( ^ω^) クンクン

( ^ω^)「この臭い……クーさんのから揚げのにおいだお!」

48821話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:24:53 ID:Vg4XVt6s0


( ^ω^)「ただいま〜!おーみんなそろってるお!」

从'ー'从「おかえりなさ〜い」

(#゚ -゚)「おかえり〜」

( ^ω^)「みんなに改めて紹介するお。ウチのカーチャンだお」

(´・ω・`)「お母さん、今日はありがとうございます。息子さんにはいつもお世話になってます」

J('ー`)し「こちらこそ、いつもご迷惑おかけしてます」

( ・∀・)「お身体は大丈夫ですか?」

J('ー`)し「ええ、楽しそうな息子の顔見てたら…なんだか元気出ちゃいましたよ」

J('ー`)し「そちらのお嫁さんも、いつもありがとね」

川 ゚ -゚)「……私が、嫁?」

( ; ^ω^)「ちょ、ちょっとカーチャン何言ってんだお!クーさんとは別にそんなんじゃ」

J('ー`)し「分かってるわよ、あんたにはもったいない美人さんだもんねぇ」

( ^ω^)「うぐぐ……」

48921話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:25:32 ID:Vg4XVt6s0


J('ー`)し「それにしても……まぁ」



  _
 ( ゚∀゚) ξ゚⊿゚)ξ (#゚ -゚) 川 ゚ -゚) (´・ω・`) 从'ー'从 (・∀・ ) (-_- )




J('ー`)し「こんなたくさんの人と繋がりが持てて……幸せ者のアンタを息子に持つカーチャンも幸せだよ」

( *^ω^)「そ、そうかお?……確かに」

( ^ω^)「辛いこともたくさんあったけど……今は今で幸せかもしれないお」

( ^ω^)「本当はドクオも呼びたかったんだけど……」

ξ゚⊿゚)ξ「うん……そうね」
 _
( ゚∀゚)「……つーわけで!今日は忘年会も兼ねてるわけだし、ブーンに始めの挨拶してもらおうぜ!」

( ^ω^)「おっおっ、いいのかお?」

(´・ω・`)「もちろん、この中心は君だからね」

( ・∀・)「そうだよ、剣藤がいなかったら…俺もきっとここにいなかった」

ξ゚⊿゚)ξ「私達、きっとバラバラになってたかもしれないわ」

( ^ω^)「……じゃあ僭越ながら、僕が挨拶を務めさせていただきますお」

49021話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:26:15 ID:Vg4XVt6s0


( ^ω^)「みんな、今年は大変お世話になりました」

( ^ω^)「今年は初めてのことばかりの年だった……僕としては、人生の中で一番濃い時間を過ごしてる」

( ^ω^)「戦って、傷付いて……ここにいる数人の人達とぶつかり合うこともあったお」

( ・∀・)「……」

川 ゚ -゚)

( ^ω^)「辛いこと、悲しいこと、出会いや別れ…この半年間で多くを経験したお。
      きっとこの辛さを忘れることなんて出来ない、残り続ける。これからもきっと、苦しいことは待ち受けてると思う」

(#゚ -゚)「…うん」

( ^ω^)「でも、今やってることに後悔はしてないお。苦しいことも悲しいことも全部受け入れて、前に進み続けたい。
      みんなと一緒に進んで行きたいって思ってるお」

( ^ω^)「みんなと一緒なら僕は大丈夫!これからも、人を守り続ける為に戦える!
      どんな"運命"が待ち構えようとも、僕はその"運命"と正面から戦いたい!」

( ^ω^)「だから、来年もみんなよろしく頼むお。
      そのためにも、今日はたくさん飲んで食って楽しんで!都合の良い嫌なことだけを忘れちまおう!」
 _
( ゚∀゚)「おう!ブーン大将!」

( ^ω^)「てわけで、みんなお疲れさまでした!乾杯!!」
  っロ



「「乾杯〜!!!」」

49121話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:26:59 ID:Vg4XVt6s0


 酒を飲みながら、ソファに座るいつもの四人はドクオの話題になった。
 

( ・∀・)「そういえば、ドクオのことだけど……」

( ^ω^)「分かってますお。アイツのことだから何となく、応じなかったんだろうなって思ってました」

ξ゚⊿゚)ξ「大丈夫なの?ドクオさん」

( ^ω^)「うーん……大丈夫ではないと思うお。これに懲りずに僕も説得してみます」

( ・∀・)「いや、思ったんだけど…レンゲルのベルトはカテゴリーAの意志を受けて、何度もドクオのもとに戻っただろ?
      もし無理矢理ベルトを奪ったところで、またドクオのもとに戻ってしまうんじゃないかな?」

( ・∀・)「カテゴリーAはきっと、自分の思うままに動くことが出来る媒体としてドクオを選んだ。
      引き剥がしたところで、何度でも彼のもとに戻る……そんな気がするんだ」
 _
( ゚∀゚)「じゃあ、レンゲルはアイツに渡したままにしとくしかないってのか…?」

ξ゚⊿゚)ξ「彼、またブーンやモララーさんに襲い掛かるかもしれないのよ?」

( ^ω^)「そうなったらもう力ずくで止めるしかないけど……どうしたらいいのかなぁ」

( ・∀・)「さっきもアンデッドと戦った時、最初は自分の意志でレンゲルとして動いてた。
      でも……すぐにカテゴリーAのマインドコントロールを受けそうになってた」

( ・∀・)「カテゴリーAの力を受け入れたことで、常に自我を保てるようにはなったのかもしれない。
      けどそれはカテゴリーAを押さえ込んだということではなくて、ただ自分の心の中に住まわせているだけに過ぎない」

( ^ω^)「だとしたら、尚更どうすれば……」


 八方塞がりのような状況。思考を巡らせど解決策が思いつかない。
 何をしたところで、レンゲルバックルはドクオのもとに戻り続ける。
 破壊さえ出来ればそんなことも無くなるが、簡単に破壊出来るのならとっくにしているであろう。

49221話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:27:47 ID:Vg4XVt6s0


 どうにか引き剥がすことだけを考える三人とは違い、モララーはひとつの案を思い浮かべていた。


( ・∀・)「剣藤、よかったら彼のこと俺に任せてくれないかな?」

( ^ω^)「任せるって…何か良い案でもあるんですか?」

( ・∀・)「彼は、弱い自分を変えたいって強く願っているんだ。そのためなら、本当の自分を失ってもいいとも言ってた。
      きっとレンゲルに希望を強く抱いてるんだと思う」

( ・∀・)「昔いじめられた経験から、彼は心に闇を抱えたまま大人になってしまったと考えるのが一番だろうね。
      普段はあんな感じでおちゃらけてても、心の中には誰にも見せない闇があるんだ。
      カテゴリーAは、その心の闇に触れたんだろう。そして意のままに動かそうとしている」

( ・∀・)「だったら、彼自身がカテゴリーAと戦うしかない。自分の心の闇と向き合って、邪悪な意志を制御するしか」
 _
( ゚∀゚)「それって……アイツにレンゲルとして戦わせるってことかよ!?」

( ・∀・)「元々彼はそれを望んでる、だから自分からレンゲルを受け入れた。そんな真似はさせたくないのは大前提の話だよ。
      でもこうするしかない。剣藤にとってはあまり良くない話かもしれないけど……」

( ^ω^)「………いや、そうしましょう」

ξ゚⊿゚)ξ「本当にいいの…?」

( ^ω^)「アイツもそこまで馬鹿じゃないお、ライダーになるってことがどういう事なのか少しくらいは分かってるはず。
      自分から変身をしたってことは、その覚悟の表れな気がするんだお」

( ^ω^)「もし中途半端なことを言い出したら、その時は僕がアイツを何発でもぶん殴ってやりますお」

( ・∀・)「ありがとう。なんとか彼の閉ざした心の扉を、開いてやれないかな……」

49321話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:28:26 ID:Vg4XVt6s0


从'ー'从「お待たせしました〜」

( ^ω^)「おっ、来た来た!」


 二枚の皿を両手に持った渡辺。
 からあげの盛り付けられた皿を、ブーンとツン、ジョルジュとモララーの前にそれぞれ配る。


( *^ω^)「お〜!待ってたおこれ」

从'ー'从「あ、そうそう〜。クーさんが言ってたけど、こっちはブーンさんとツンさんで食べてって言ってたよ。
      ジョルジュさんとモララーさんは絶対こっちのだけ食べろってさ〜」
 _
( ゚∀゚)「ん?まぁそのつもりだけどな」

( ^ω^)「早速いただくお」


 伸ばした箸でからあげ一個を掴み、添えられたマヨネーズを軽くディップ。
 一口で頬張り、じっくりと噛みほぐしていく。

 
( *´ω`)「おっおっ……これだおこれ」 モグモグ


 口の中に広がる香り。
 カラッと揚げられた衣の食感と、鶏肉のジューシーな味わい。
 そして、マヨネーズが奏でるまろやかなコクが美味しさに深みを与える。
 あまりの美味しさに、自然と口元が緩んでしまう。


ξ*゚〜゚)ξ「ん〜!なんか久しぶりに美味しいって思いながら食べてるかも」

49421話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:28:48 ID:Vg4XVt6s0

 _
( ゚∀゚)「んじゃ俺も一口……」 パクッ
 _
( ゚〜゚) モグモグ
 _
( ゚〜゚) 
 _
( ; ゚〜゚) 
 _
( ; ゚〜゚)「……おい」

ξ゚⊿゚)ξ「なに?」
 _
( ; ゚〜゚)「いや、その……」 ゴクン
 _
( ; ゚∀゚)「おい、お前らこれ……美味いか??」

( ^ω^)「は?何言ってんだお?めちゃくちゃ美味いお!」

ξ゚⊿゚)ξ「そうよ、美味しいけど?」
 _
( ; ゚∀゚)「いや、このから揚げ……めちゃくちゃ甘いんだけど??」

( ^ω^)「甘くないお、普通のから揚げだけど」
 _
( ; ゚∀゚)「いやいや、食ってみろってじゃあ!嘘ついてねぇって!」

( ^ω^)「何だお前、味覚が馬鹿になってんのかお?どれどれ……」 パクッ



( ^ω^) モグモグ

( ^ω^) 

( ; ^ω^)「……あれ?めっちゃ甘い??砂糖菓子食ってる??」
 _
( ゚∀゚)「だろ!?甘いだろ!?!?

49521話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:29:26 ID:Vg4XVt6s0


ξ゚⊿゚)ξ「本当に言ってんの?じゃあ私も……」 パクッ

ξ;゚∩゚)ξ「あ……これだめ……だめな奴だこれ」

( ; ^ω^)「ちょ、ちょっと…クーさん!?」

川 ゚ -゚)「……なんだ」

( ; ^ω^)「こちらのから揚げ、なんかこっちのと全然味違うんだけど……」

川 ゚ -゚)「君達は目の前のから揚げだけ食べればいい、隣に手を出すな」
 _
( ゚∀゚)「おい、ちょっとこれどうなって――」

川#゚ -゚)
 _
( ; ゚∀゚)「……いや、何もないっす」











川 ゚ -゚)(ふん……馬鹿め、お前達にはせめてもの復讐として、砂糖を大さじ20杯くらい味に加えてやったのさ)

川 ゚ -゚)(この程度で済むだけありがたいと思え)

49621話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:30:13 ID:Vg4XVt6s0

 _
( ゚∀゚)「モララーさんも食えって、絶対甘いから!」

( ・∀・)「じゃあ、いただきます……」 パクッ

( ・〜・) モグモグ

( ・〜・) モグモグ

( ・∀・) ゴクン
 _
( ゚∀゚)「な?甘いだろ??」

( ・∀・)



















( ・∀・)「普通に美味しいと思うけど」

 _
( ゚∀゚)「は……???」

( ; ^ω^)「えっ……」

ξ;゚⊿゚)ξ「嘘でしょ…??」

川 ;゚ -゚)(………何、だと……?)

49721話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:31:20 ID:Vg4XVt6s0


川 ;゚ -゚)(馬鹿な…アンデッドの私でさえ受け付けないぞ、この味は)

( *・∀・)「うん、美味い!剣藤の言う通りだ!」

( ; ^ω^)「い、いや違うよ、その味じゃないおモララーさん……」

川 ;゚ -゚)゙ 「おい……ちょっと来い」

( ^ω^)「何だお?」 スタスタ




川 ;゚ -゚)「アイツの味覚はどうなってるんだ…?頭がおかしいのか?」 ヒソヒソ

( ^ω^)「いやぁ、モララーさんと食事するようになったの最近だし好みが分からないけど……って」

( ^ω^)「やっぱりクーさん何かしたのかお!?」

川 ゚ -゚)「少し……砂糖を入れてやっただけだ」 ヒソヒソ

( ; ^ω^)「あのなぁ……」

川 ゚ -゚)「襲わないだけマシだろう、あいつ等は私に手を出したんだぞ?」

( ^ω^)「……っはは、まったく……」





( *・∀・)「食べないのか?じゃあこれ全部食っていいかな??」

ξ;゚⊿゚)ξ「本当においしいの!?」
 _
( ; ゚∀゚)「あんたおかしいよ……」

.

49821話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:31:55 ID:Vg4XVt6s0
.

(#゚ -゚)「クーおねえさんこっち来て!」

川 ゚ -゚)「ん、ああ」

从'ー'从「クーさんこれ食べて!私とでぃで、家で作ってきたの!」

川 ゚ -゚)「二人で作ったの?じゃあ食べてみようかな」

(#゚ -゚)「絶対うまいよ〜、すごい美味しく出来たもん」

川 ゚〜゚) モグモグ

川 ゚ -゚)「うん、美味しい」

(´・ω・`)「最近クーが思いつめた顔してるから、二人が何かして喜ばせようとしててね」

川 ゚ -゚)「私のために……?」

从'ー'从っ 「そうだよ〜、クーさんはクールな顔もいいけど〜……えいっ」
   ムニィ

川 ゚ -゚ >c 「うっ」

从'ー'从「笑った顔のほうが素敵なんだから〜」

川 ゚ -゚)「っはは、こういうの初めてでさ……でも」

川 ゚ー゚)「うん……なんだか暖かいって感じるよ」

从'ー'从「その顔その顔〜、笑顔が一番だよ〜」

49921話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:32:28 ID:Vg4XVt6s0


( ^ω^)「やってるかお?」

从'ー'从「やってるよ〜、クーさんが笑顔になるくらい楽しいよ!」

( ^ω^)「ほほう、クーさんが??」

川 ゚ -゚)「なんだ……見るな」

( ^ω^)「いいじゃんかお、こういう席くらい」

(#゚ -゚)「前から思ってたけど、二人ってどういう関係なの?仲良くなさそうで良さそうな感じ」

(´・ω・`)「確かに最近二人は接点あるね……もしかして」

( ^ω^)「え、ああー……いやその」

川 ゚ -゚)「そんなことないですよ、言うほどブーンさんとは関わりないですから」

从'ー'从「ほんと〜?ブーンさんより私のこともっと構ってよ〜」

川 ゚ -゚)「うん、もちろんそのつもりだよ」

( ^ω^)「なんだかさっきから僕に得がないような……」

50021話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:32:58 ID:Vg4XVt6s0
.

J('ー`)し「うちのホライゾンはしっかりやってましたか?」

(-_-)「はい、一番頑張ってますよ。みんなの先頭に立って動いてくれますし」

J('ー`)し「ならよかった、いつも話でしか聞かないからちょっと心配でねぇ…」

(-_-)「お母さんが心配することないですよ。先輩はああ見えてすごくしっかりしてますから
     うちの店長がまっったく使えなくて…本当に困ってるんすよ」

(-_-)「でも先輩が率先してみんなを率いてくれるんで、うまくやれてた感じですね。今は本当きついっす。
     きっとお母さんの教えが良かったから、あんな立派な人になったんですよ」

J('ー`)し「まぁ、そんなこと言ってくれるの?嬉しいけど……嬉しいわねぇ」

(-_-)「素直に喜んでください、褒めてますから」

( ^ω^)「なに生意気言ってんだお」 ゴツン
   っ

(-_- )ゞ 「いって!久しぶりなんだから手加減してくださいよ」

( ^ω^)「店は今どうなんだお?」

(-_-)「まぁ、俺の頑張りでなんとかって感じですかね」

( ^ω^)「ほー!お前が頑張ってるだなんて意外だお」

(-_-)「やらないだけでやればできるんで」

( ^ω^)「自分で言うかお?」

50121話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:33:43 ID:Vg4XVt6s0


 心休まる、楽しい時間。
 普段では絶対に無い、愉快な騒がしさがある。たくさんの笑顔がそこにあった。

 大人達の…特に騒がしそうな男達は、酒に酔い顔を赤らめ上機嫌だ。
 
 _
( *゚∀゚)「次飲むぞ〜!次〜!!」

ξ゚⊿゚)ξ「もうやめときなさいよ!それにお酒はあまり用意しなかったんだから」
 _
( *゚∀゚)「なにぃ???酒が飲めねぇで人生やってられっかよ!なぁモララーさんよぉ!!」

( *・∀・)「ジョルジュ…人生なんて何があるか分からないぞ。酒が無くても生きてれば良いことある、また酒も飲めるぞ!」

ξ゚⊿゚)ξ「もう、モララーさんまでやめてよ!」

J('ー`)し「若いうちは飲めるときは飲んだほうがいいわよ〜」
 _
( *゚∀゚)「そうですよね!飲まないと!酒がないなら自分で買ってくるわ!」

ξ゚⊿゚)ξ「そんなふらふらで大丈夫なの?道端で吐いたりしないでよね」
 _
( *゚∀゚)「大丈夫だって!布団におねしょするような歳でもないんだからよ」

ξ゚⊿゚)ξ「よくわかんないそれ」
 _
( *゚∀゚)「んじゃちょっくら近くのコンビニ行ってきますわ〜」


 上着を羽織り、酔いでおぼつかない足取りで家を出た。

50221話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:34:12 ID:Vg4XVt6s0

 ――――――
 ――――
 ――


「ありがとうございましたー」


 店員の挨拶を背に受けながら、コンビニの自動ドアを出る。
 購入した追加の酒が入ったコンビニ袋を手に提げ、ぶるぶると身体を震わせた。

  _
::( ゚∀゚)::「ううっ…!さみぃ〜!酔いも冷めちまう勢いだぜ…!」


 真冬の夜は極めて寒いもの。
 特に、酔っ払った状態での外の寒さと言ったら最高だ。 

 _
( ゚∀゚)「ふい〜、何時だ今……」


 上着のポケットに手を入れ、歩きながらスマホで時間を確認する。
 
 下を見ていて前を見ていない状態。
 しかも酔いが回っているせいで、正面から近付く存在に気が付くことが出来なかった。


   ドンッ
 
 _
( ゚∀゚)「うわっ!?」

「きゃっ!」

50321話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:34:44 ID:Vg4XVt6s0


 誰かとぶつかってしまった。
 声からするに、相手は若い女性。
 これにはさすがに、酔いも瞬間的に冷めてしまった。

 _
( ; ゚∀゚)「あっ、すんません!大丈夫ですか!?」

ミセ*゚ー゚)リ「ごめんなさい!こちらこそちゃんと前を見てなくて…」
 _
( ゚∀゚)「いえいえそんなことは――」
 _
( ゚∀゚)「っ……!!」
 _
( ゚∀゚)「………か………」
 _
( *゚∀゚)(かわいい…!!)


 思わず見惚れてしまった。
 その女性は、ジョルジュの好みど真ん中を突いた。

 黒髪で清楚な、可愛らしいながらもどこか大人な雰囲気を醸し出す容姿。
 見た感じ、大学生くらいだろうが。
 理想に限りなく…理想そのものと言っても過言ではない。
 
 _
( *゚∀゚)「しかもめちゃくちゃ良いにおい…」

ミセ*゚ー゚)リ「??あの……」
 _
( *゚∀゚)「……へ?あっ、ああいや、なんでもないです!べっべつに臭いを嗅いだとかじゃなくて!
     なんか良いにおいだなぁと思って…!」

ミセ*゚ー゚)リ「…ああ、香水ですかね?つけすぎちゃってくさいかなって気にしてて…」
 _
( *゚∀゚)「いや!全然ありっすよ!めっちゃいいっす!」

ミセ*゚ー゚)リ「え、そ…そうですか?あはは…」

50421話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:35:13 ID:Vg4XVt6s0

 _
( *゚∀゚)「い、いやぁ…!その〜……ケガとかしてませんか?どこか痛いとことか……」

ミセ*゚ー゚)リ「私は大丈夫です、そちらは…?」
 _
( *゚∀゚)「俺っすか?お、俺は全然!生まれてこのかたケガなんてしたことないんで!本多忠勝の生まれ変わりなんで!!」

ミセ*゚ー゚)リ「???」
 _
( ; ゚∀゚)「あ…!ああ、分かりにくいよな!ごめんごめん、とにかく何もないならよかった!
     いやぁ本当すみません、酔っ払っちゃって……」

ミセ*゚ー゚)リ「みたいですね、とても顔が赤いから」
 _
( *゚∀゚)「あ〜……そうっすね」

ミセ*^ー^)リ「…ふふふ」
 _
( *゚∀゚)「あ……あははは」




 _
( *゚∀゚)(……これ、いけるんじゃね??)

50521話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:35:41 ID:Vg4XVt6s0

 _
( *゚∀゚)「あ、あの〜……」 

ミセ*゚ー゚)リ「はい?」


 ♪テケテンテンッテンテンテンテンテンッ

 _
( ゚∀゚)「あ……」

ミセ*゚ー゚)リ「お電話鳴ってますよ?」
 _
( ゚∀゚)「あ、はい……」

ミセ*゚ー゚)リ「ケガがないのならよかったです……本当にごめんなさい。
      お電話の邪魔しちゃいけないので、失礼します」


 .....ミセ*゚ー゚)リ スタスタ

 _
( ゚∀゚)「………」
 _
( #゚∀゚)ロ 「んだよ!良いとこだったのに邪魔しやがってよ!!!」

ξ#゚⊿゚)ロ [ 何怒鳴ってんのよ!遅いから心配してたのに!もう知らない!勝手にのたれ死ねバカ!!]

 ブツッ
 _
( ゚∀゚)「あっ…なんだあいつ!切りやがった!」
 _
( ゚∀゚)「……今更コンビニ戻って声かけんのも不自然だよなぁ」
 _
( -∀-)=3 「はああぁ……帰るか……」

.

50621話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:36:22 ID:Vg4XVt6s0


 楽しい時間は過ぎて行く。
 こうやって、誰かと笑いながら過ごせる時間が今ではとても大切に思えた。
 
 戦いを忘れたわけではない。
 忘れていないからこそ、時にはこんな当たり前な時間も必要だ。
 人を守る彼等もまた、同じ人である。

 だから、今だけはこの楽しい時間に浸っていたい。
 ずっとこんな時間が続けばいいと、心の片隅に思ってすらいた。









 ――だが、魔の手は既に背後に迫っている。

50721話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:36:45 ID:Vg4XVt6s0


(*゚∀゚)「楽しそうだねぇ……人間とアンデッドが仲良く食事だなんてさァ」


 冷たい風吹く闇夜の中、電柱の上に一人の女の影。

 数多の家から光が漏れ、煌々と光る街並みを見下ろす。
 その中に存在するブーン宅を、ただ見つめていた。


(*゚∀゚)「ま、せいぜい今を楽しめばいいさァ……」

(*゚∀゚)「お前等には、すぐに地獄を見せてやるよ…!」

(*゚∀゚)「クククク……アヒャヒャヒャヒャヒャ!!!」


 甲高い不気味な高笑いが響き渡る。
 電柱の上に真っ直ぐに立つと、両手を広げ背中から後方へ、暗闇の中へ落ちていく。

 そして、カテゴリーQは姿を消した。

50821話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:37:09 ID:Vg4XVt6s0


 別の場所では、邪悪な力がその爪を研いでいた。

 一切の光が差さない、闇に満ちた部屋。
 電気も点けずに真っ暗な部屋の中で、ドクオはレンゲルバックルと向き合っている。
 

('A`)「……そうか、アイツがそうだったのか!」

('A`)「だから俺にあんな注意をしてきたって訳か……」


 蜘蛛の声が聞こえる。
 蜘蛛の声が、"あの男"の本当の姿を伝えてくる。


 レンゲルの力を手にしても、未だその力を制御する事が出来ない。
 人間の身体を手にしても、未だ思いのまま動かす事が出来ない。

 互いに制御出来ずにいる状況。それを打開する為の、唯一の方法。

 
('A`)「アイツを倒せば、俺はお前の力を操る事が出来る。そして……もっと強くなれるんだな?」


 蜘蛛の声が聞こえる。

 "――あの男を倒せ"、と。


('A`)「………倒す、アイツを倒す……そして俺は強くなる……!」


 心の中の闇は広がり、蜘蛛は増殖する。
 
 差し伸べられる光も手もない。
 差し伸べてくれるのは、一本の蜘蛛の糸だけ。

 ドクオは蜘蛛の糸を掴み、深く深く、闇の底に沈んで行く――。

50921話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:37:39 ID:Vg4XVt6s0





     【 第21話 〜光なき闇〜 】 終




.

51021話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 19:00:53 ID:Vg4XVt6s0
しおり

>>9 第15話
>>84 第16話
>>152 第17話
>>234 第18話
>>308 第19話
>>372 第20話
>>454 第21話

511 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 19:01:45 ID:Vg4XVt6s0


( ^ω^)「読んでくれているみんな!いつもありがとうだお!」

( ^ω^)「今年最後ということで、今日は挨拶するために次回予告はなしだお」
 _
( ゚∀゚)「次が用意出来てないだけだろ」

( ^ω^)「Shut up」


( ^ω^)「自分で思ってた以上に毎回乙や感想いただけて嬉しい限りだお!これはめちゃくちゃ励みになってるお」

( ´ω`)「自分の好きなもので書いてるから楽しくやれてるけど、やっぱりオーバーヒート気味なときもあるなって感じるお」

( ^ω^)「間隔空くときもあるだろうけど、書いてるときは楽しいしまだまだ自己満足でやり続けるお」

( ^ω^)「これからもよければ見てやってほしいお!オナシャス!」

( #・∀・)「でないと……俺の身体はボロボロだ!!」

川#゚ -゚)「読まないなんて言ってみろ……私は貴様をムッコロス!!」

('A`)「これが最強のライダーの脅し方だ」 キリッ

( ^ω^)「てわけで来年もよろしく!!」

ξ゚⊿゚)ξ「よいお年を〜」

512名無しさん:2017/12/30(土) 21:54:40 ID:BQY3A72Q0
乙津

513名無しさん:2017/12/31(日) 06:54:03 ID:nfPMKFGk0
気づいたら来てた!乙

コレクッテイイカナ?いただきましたー!
https://i.imgur.com/TLs90Tr.jpg

514名無しさん:2017/12/31(日) 08:06:13 ID:JKXcv88w0


515名無しさん:2017/12/31(日) 09:08:24 ID:rVopRs3U0
ディチャンゲンキソウナニヨリウレシイ

516名無しさん:2017/12/31(日) 15:42:27 ID:6Gvs7wsw0


先々週ようつべでの剣本編配信終わったけど、あの〆方はとても良かったね
こっちのラストはどうなんのかな?本編や、あるいは劇場版のようになるのか、はたまた違う終わり方するのか
まだまだ先になるだろうけど着地点に期待してます

517名無しさん:2017/12/31(日) 17:36:04 ID:.J86raKs0
故人的には本編がいいな
まぁこの作者なら別の終わりでも上手くやりそうだけど

518名無しさん:2017/12/31(日) 17:42:46 ID:JKXcv88w0
過去作品とかあれば知りたいなーなんちゃって

519 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/31(日) 20:36:46 ID:JKXcv88w0
過去じゃないけど、面倒だからご飯に乗っけるやつと今年の挨拶をシコりながらしました

520 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/31(日) 20:38:43 ID:JKXcv88w0
知ってほしくて自演してみました

521名無しさん:2017/12/31(日) 20:41:48 ID:.J86raKs0
何してんだw
疲れんのか?w

522名無しさん:2017/12/31(日) 22:20:07 ID:OI0J3VNI0
変態が本性だったか

523名無しさん:2018/01/01(月) 02:53:14 ID:VmOgSqps0
バイオテロお前かよ今年一番の驚きだよ
そういう意味ではこっちは安心して読めるから次回も楽しみにしてる

524名無しさん:2018/01/03(水) 16:06:44 ID:ch9uQ6uo0
>>519
仮面ライダー書きながらバイオテロで飲酒運転させんなよwwwww

5251/14(日) ◆7MnOV.oq7w:2018/01/12(金) 20:29:21 ID:9lqObZtA0
==========

 【 次回予告 】 https://www.youtube.com/watch?v=Yyh12l21WkA


(#゚ー゚)「すごーい!!すごいきれい!!」

( ^ω^)「おおー……」
 _
( ゚∀゚)「まぁ確かに綺麗だけど、男の俺にはやっぱ退屈だな…」

(#゚ -゚)「ねぇ温室見たい!温室行く!」
 _
( ゚∀゚)「あっ、おい!ちょっと待ってでぃちゃん!」

(#゚ -゚)「早くしてよ〜!」
 _
( ; ゚∀゚)「頼むよ!俺の命は君にかかってるんだからさ!!」

( ^ω^)「ちゃんと見てろお〜」


 入院を控えたカーチャンの為に、植物園に遊びに来たブーン達。
 ゆったりと流れる時間を、心安らかに楽しんでいた。

5261/14(日) ◆7MnOV.oq7w:2018/01/12(金) 20:29:54 ID:9lqObZtA0


(-_-)「うちの店は特徴ないけど、同じ商品でも安さが売りっすから是非また来てくださいよ」

川 ゚ -゚)「…どうも」


 スーパーVIPへ買い物に訪れたクー。
 ヒッキーと接触し、その本性を知ってしまう。


川 ゚ -゚)「―――!!!」

(-_-)「おっと、別に言う必要ないだろ」

川 ゚ -゚)「何者だ…少なくともお前の本当の姿は分かる」

川 ゚ -゚)「アンデッドだな、お前…!」

(-_-)「言うなっつってんのに……」

5271/14(日) ◆7MnOV.oq7w:2018/01/12(金) 20:30:40 ID:9lqObZtA0


 人を襲うアンデッドの前に、ギャレンとレンゲルが立ちふさがる。


( OMO)「ドクオ…カテゴリーAに操られているわけではないのか!?」

( OHO)(力を感じる…戦い方が分かる!)

( OHO)(カテゴリーAが、俺に戦い方を示してくれてるんだ…!)

( OHO)「戦える…俺は戦える!!」
 
( OHO)「貴様らを封印して俺の力にする!!」

『ゴオオォゥウッ…!?』

( OHO)「うおぉおらあぁッ!!」


 それまでとは違う様子を見せるレンゲル。
 自らの意志で動いているように見えるドクオに、何があったのか!?


( OMO)(いつの間にあんなに戦えるようになったんだ…?)

5281/14(日) ◆7MnOV.oq7w:2018/01/12(金) 20:31:48 ID:9lqObZtA0

  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『さぁブレイド、変身を解きなさい』
  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『さもないと…分かってるでしょう?あなたの大事なお友達が真っ先に殺されてしまうの。
       あなたなら必ずその剣を置くわ、それがあなたの優しさだから!』

( #OwO)「この卑怯者……!!」
 _
( ; ゚∀゚)「ッ……ブーン、俺のことは気にするな!二人のことだけを気にしろ!」


 植物園に現れた新たな上級アンデッド。
 ジョルジュやカーチャン、でぃ達を人質に取られ、手も足も出ないブレイド。
 指示に従い、変身を解いてしまうのだった。


( ^ω^)「これでいいだろ…!?」
 _
( ; ゚∀゚)「なっ…!なんでだよブーン!!俺のことなんか気にするなよ…!」
  、、
@*゚皿゚)@『おお〜?マジで変身解いちゃったよ……自分が死ぬだけなのにさァ!』

( ; ^ω^)「ぐふっ…!」


 上級アンデッド二体を前に、成す術ないブーン。
 果たして、起死回生の一手を手にすることが出来るのか!?


 次回、【 第22話 〜甘い花の罠〜 】

 ――今、その力が全開する!


==========

529名無しさん:2018/01/12(金) 20:37:09 ID:XWcBg.8Y0
おっし

53022話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 10:55:02 ID:QzhOKDJ.0





     【 第22話 〜甘い花の罠〜 】




.

53122話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 10:56:16 ID:QzhOKDJ.0


 年が明け、新たな年を迎えてから早くも数日が経った。
 この数日間、ブーン達の心情を察してくれたかのようにアンデッドの出現は報告されておらず、久しぶりにゆっくりした時間を過ごしていた。
 けれども、楽しい時間、穏やかな時間ほどあっという間に過ぎてしまうもので、年始の休みを終え世間は動き始めた。

 家に一時帰宅していたカーチャンも、明日には再び病院に戻らなければならない。


( ^ω^)「はぁ……もう休みも終わりかお、なんか休んでる気がしないお」

ξ゚⊿゚)ξ「まぁね、休みっていう定かな予定の中で動いてるわけじゃないし」

( ^ω^)「はああ……」


 ソファに寝転がり、深く溜息。

 決して休みが終わる世間を気にして憂鬱になっているわけではない。
 ただ、自分の母親がまた居なくなってしまうことに寂しさを感じていた。

 こう言えば、よく返ってくる心ない言葉は「マザコン」だの「良い歳して親離れできない」だの。
 自分を女手一つで苦労しながら育ててくれて、今は病気を患ってしまった母親を何より大切にするのは何ら間違ったことではない。
 むしろ誇りに思うべきなのだ。


J('ー`)し「ホライゾン、準備出来たよ」

( ^ω^)「はいお。あとはジョルジュがでぃちゃん連れて来るのを待つだけだお」

53222話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 10:56:51 ID:QzhOKDJ.0


 この日は、花を見たいという母親の希望で植物園に行く予定だ。
 バーボンハウスで暮らすでぃも同行したいとの願いがあって、ジョルジュが車で迎えにあがっている途中だった。

 外出する準備が出来たと同時に、窓からジョルジュが運転する車が停まるのが見えた。
 車のドアが開かれ、ジョルジュとでぃが降りる。


( ^ω^)「おっ、来たお。そんじゃ行ってくるお!」

ξ゚⊿゚)ξ「行ってらっしゃーい、気を付けてね」

J('ー`)し「二人とも、お留守番お願いしますね」

( ・∀・)「はい、安心して楽しんで来てください」


 母親の乗る車椅子を押しながら、二人に見送られながら玄関を出た。
 外では、車を降りたジョルジュ達がブーンとカーチャンを待機している。


(#゚ -゚)「こんにちは!」

J('ー`)し「こんにちは、でぃちゃん。今日はお洋服も髪型も可愛いねぇ」

( ^ω^)「でぃちゃん、今日はばっちり決めてきたおね」

(#゚ -゚)「うん、あまねお姉ちゃんと一緒に洋服見てもらったし、髪もセットしてくれたの」
 _
( ゚∀゚)「そりゃ可愛くなるわけだ!じゃあお母さん、俺も手伝うんで乗りましょうか」

J('ー`)し「苦労かけてごめんなさいねぇ、ほんとに…」
 _
( ゚∀゚)「なーに言ってんすか!そんなこと気にしなくていいですって!」


 ブーンやジョルジュの手を借りながら、車の助手席に乗る。
 手慣れた動きで車椅子をトランクに収納すると、ブーンは運転席に乗り、後部座席にはジョルジュとでぃが乗り込んだ。
 ハンドルに手を掛け、ドライブにギアをチェンジしサイドブレーキを外すと、植物園に向け車を出発させた。

53322話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 10:57:18 ID:QzhOKDJ.0


( ^ω^)「でぃちゃんはお花買うのかお?」
   っ回c

(#゚ -゚)「うん、買うよ」
 _
( ゚∀゚)「誰かにプレゼントするのか?」

(#゚ -゚)「モスにお供えするの」
 _
( ゚∀゚)「モス?」

( ^ω^)「ああ……友達だおね、でぃちゃんの」
   っ回c

(#゚ -゚)「うん、モスはお花大好きだったから。クーさんにそのこと話したら、これで買ってあげなってお金くれたの」

( ^ω^)「……ふ、やっぱり優しいとこあるじゃんお」
   っ回c

(#゚ -゚)「モスがいなくなっちゃってから何もあげれてなかったから、お花あげたいなって」

( ^ω^)「そっか……」
   っ回c

J('ー`)し「きっと喜んでくれるわよ、そのお友達も」

( ^ω^)「うん、そうだお。絶対喜んでくれるお!」
   っ回c

(#゚ -゚)「だといいなぁ……」

53422話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 10:57:56 ID:QzhOKDJ.0


 ――――――
 ――――
 ――


 車内で会話をしながら走り続けると、すぐに目的の植物園に到着した。
 車椅子用の駐車場に車を停車させ、車から降りトランクより車椅子を下ろす。
 助手席に乗った母親を支えながら、ゆっくりと車椅子に乗せ替えた。


( ^ω^)「ふー、着いたお」
 _
( ゚∀゚)「休み明けだから人がたくさんいるって感じでもねぇな」

( ^ω^)「そのほうが気楽でいいお。行こ、カーチャン」

J('ー`)し「うん、そうだね」
 _
( ゚∀゚)「でぃちゃん、見たかったら自由に動いていいけど俺から離れるなよ?」

(#゚ -゚)「はーい」
 _
( ゚∀゚)「じゃねぇと俺が後でひどい目に合わされちまうから……」 ポソ

( ^ω^)「何か言われたのかお?」
 _
( ゚∀゚)「直接何かを言われたわけじゃねーけど……」
 _
( ; ゚∀゚)「バーボンハウスの守り神様の目線が怖くてよ…あの目は間違いなく"何かあったら許さない"って訴えてきてた」

( ^ω^)「じゃあ尚更注意しないといけないおね」
 _
( ゚∀゚)「ああ、そうするよ」

53522話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 10:58:27 ID:QzhOKDJ.0


 園内に入ると、広々とした空間を色鮮やかに彩る植物達がブーン達を迎え入れた。
 それぞれの種類を楽しめる庭園がいくつも造られ、中にはカフェで美しい花々を眺めながらくつろぐ人もいる。
 寒い冬だからこそ人気な温室には人が出入りするのがよく見え、植物園はほどよく賑わっているようだった。


(#゚ー゚)「すごーい!!すごいきれい!!」

( ^ω^)「おおー……」
 _
( ゚∀゚)「まぁ確かに綺麗だけど、男の俺にはやっぱ退屈だな…」

(#゚ -゚)「ねぇ温室見たい!温室行く!」
 _
( ゚∀゚)「あっ、おい!ちょっと待ってでぃちゃん!」

(#゚ -゚)「早くしてよ〜!」
 _
( ; ゚∀゚)「頼むよ!俺の命は君にかかってるんだからさ!!」

( ^ω^)「ちゃんと見てろお〜」


 子供は元気だ。
 ジョルジュもまだまだ若いが、子供特有の底抜けな明るさや活発さには敵わない。
 温室に向け駆けるでぃを、困った表情で追いかけて行くジョルジュ。


J('ー`)し「クスクス、子供は元気ねぇ」

( ^ω^)「そうだな〜」

( ^ω^)「カーチャンは見たいとこあるかお?」

J('ー`)し「そうねぇ…とりあえずゆっくり観て歩きたいわ」

( ^ω^)「じゃあ僕達はゆっくり観て回るお」

53622話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 10:58:58 ID:QzhOKDJ.0

 ――――――
 ――――
 ――


( ^ω^)「うわぁすごいおこれ、花のアーチだお」

J('ー`)し「綺麗ねー……」

( ^ω^)「入院中に飾る花は買うのかお?」

J('ー`)し「そうねぇ、せっかくだし何か欲しいわ」

( ^ω^)「じゃあじっくり花見たら、買いに行くお」

J('ー`)し「……ホライゾン」

( ^ω^)「なんだお?」

J('ー`)し「あんた、何か隠してることないかい?」

( ^ω^)「え」

J('ー`)し「ないならいいんだけどね、何かすごく大事なことを隠してる気がしてねぇ」

J('ー`)し「カーチャンも馬鹿じゃないよ?あんたが何かと身体を張って戦ってることくらい何となく分かるよ」

( ; ^ω^)「……いやぁ、何もないお別に!ほら、世の中風当たり厳しいけどそういうのと戦おうって意味だお」

J('ー`)し「まぁそういうことにしとこうかしらね」

( ; ^ω^)「おっおっ………」

53722話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 10:59:21 ID:QzhOKDJ.0


 一方、温室に向かったジョルジュは、でぃの後をいそいそと追いかけていた。


(#゚ -゚)「すごーい……なんかおとぎ話の中にいるみたい」
 _
( ; ゚∀゚)「ちょっと、もうちょいゆっくり観ないか?ていうか観れてるか?」

(#゚ -゚)「観てるよ?あ!あっちもすごい!!」
 _
( ; ゚∀゚)「観てねぇだろ……」


 目に飛び込んでくる光景すべてが楽しくて仕方が無い。
 あちらこちら急いで見て回る楽しそうなでぃは、子供本来の姿だった。
 ジョルジュのことなどお構い無しに、次へ次へと向かってしまう。

 _
( ; ゚∀゚)「次に行くのが早すぎるんだよ……」

「……あれ?」
 _
( ゚∀゚)「ったく、元気な子供にはかなわねぇな〜」

「あの……すみません」
 _
( ゚∀゚)「はい?」


 背後から女性に声がする。
 声のする位置的にもかなり近く、自分に声が掛けられているのが分かった。
 
 振り返ると、そこには……。

 
 
ミセ*゚ー゚)リ「あの…以前お会いした方ですよね?」

53822話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 10:59:52 ID:QzhOKDJ.0


 声を掛けてきていたのは、大晦日の日にコンビニ前でぶつかってしまった時の女性だった。
 会いたいとは思っていたが、本当にまた会えるとは思わなかったのだろう。
 あまりの偶然と驚きと嬉しさに、一瞬声が喉で詰まった。
 
 _
( *゚∀゚)「あっ…!あ、あっ…!あのときの!」

ミセ*゚ー゚)リ「はい、その節は本当にすみませんでした…」
 _
( *゚∀゚)「いっいやいや!いいんですってそんなこと、全然気にしないでください!ていうかこんなところで会うなんて……」

ミセ*゚ー゚)リ「はい、すごい偶然ですね」
 _
( ゚∀゚)「あの〜……誰かと来てるんですか?」

ミセ*゚ー゚)リ「大学の友達と来てたんですけど、急用とかで帰っちゃって今は一人です」
 _
( ゚∀゚)「そ…そうなんですか!」



 _
( ゚∀゚)(これ……)
 _
( *゚∀゚)(これチャンスじゃね!?!?二度目のチャンス到来か!?!?!?)

53922話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:00:27 ID:QzhOKDJ.0

 _
( *゚∀゚)「あっあの!よ、よければ一緒に観て回りませんか??」

ミセ*゚ー゚)リ「いいんですか…?そちらこそ、どなたかと一緒じゃないんですか?」
 _
( ゚∀゚)「あ」


 すっかり忘れてしまった。
 観ることに夢中でどんどん先に進んでしまうでぃは、もう何処に行ったかも分からない。

 _
( ; ゚∀゚)「や、やべぇ……」

ミセ*゚ー゚)リ「どうしました?」
 _
( ; ゚∀゚)「いや……小学生の子に付き添ってたんですけど、どんどん行っちゃって……」

ミセ*゚ー゚)リ「あっ……ごめんなさい!私が変に声をかけたせいで…」
 _
( ; ゚∀゚)「違います違います!あなたは悪くないです!でも……まずいな」

ミセ*゚ー゚)リ「あの、探すの一緒に手伝います。どんな子ですか?」
 _
( ゚∀゚)「えーっとえーっと…小学四年生くらいの女の子で、白いジャケット着てる子です」

ミセ*゚ー゚)リ「じゃあこの温室をまた集合場所にしましょう、そう遠くには行ってないはずですし」
 _
( ゚∀゚)「すんません、マジで……五分後くらいにまた集まりましょう」

ミセ*゚ー゚)リ「はい!」
 _
( ゚∀゚)「あっ、あの!お名前聞いてもいいですか?俺は白岡ジョルジュっていいます」

ミセ*゚ー゚)リ「あっ…義永ミセリです、よろしくお願いします!」
 _
( ゚∀゚)「ミセリさんっすね、了解っす!じゃまた!」



 _
( *゚∀゚)(どさくさだけど名前聞けたぜ…!ラッキー!)
 _
( ゚∀゚)ロ 「あっそうだ、ブーンに電話しとかねぇと……」

54022話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:00:57 ID:QzhOKDJ.0


 ♪テケテンテンッテンテンテンテンテンッ


( ^ω^)「あ、ちょっと待ってお」 ゴソゴソ

J('ー`)し「うん」

( ^ω^)ロ 「どうした?」
 _
( ゚∀゚)ロ [わりぃ!でぃちゃん見失った!]

( ^ω^)ロ 「は!?お前注意しろって言っただろ!」
 _
( ; ゚∀゚)ロ [だ、だってよ!どんどん行っちゃってちょっと目を離したらいなくなっちまったんだよ!」

( ^ω^)ロ 「分かったお、こっちも探すから!お前もちゃんと探せお!」

( ^ω^)「はぁ……まったく」

J('ー`)し「どうかしたのかい?」

( ^ω^)「でぃちゃんを見失ったって電話だお」

J('ー`)し「あら、それは大変ねぇ…カーチャン大丈夫だから探しに行ってあげて」

( ^ω^)「いやぁ、でも…」

J('ー`)し「大丈夫だから、ほら早く」

( ^ω^)「………わかった、ちょっとここにいてくれお!もしくはどっかの店の中とかに!」

J('ー`)し「はいはい」


 車椅子から手を放し、見失ったでぃを探しにブーンは走り出す。

54122話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:01:30 ID:QzhOKDJ.0


J('ー`)し「カーチャンも一緒に探してあげられたらね……」


 一人その場に残ったカーチャン。
 自身の膝に手を乗せ、思うように動かない足を撫でる。


 ――そこに近付く、一人の人間の影。

 
(  )「………」


 気付かれないように、ゆっくりと背後から忍び寄る影。


J('ー`)し「入院、したくないわねぇ……」
 

 背後から忍び寄る影に気付かず、目の前に広がる景色をただ見つめている。
 
 やがて車椅子のすぐ後ろにまで近付き……その人影は、車椅子のハンドルを握った。


(  )「………」

J('ー`)し「??誰?」




.

54222話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:01:54 ID:QzhOKDJ.0


( ^ω^)「でぃちゃーん!どこだおー!」


 園内の中、でぃの名を叫びながら探し回るブーン。
 そこに、でぃを見失った張本人のジョルジュが慌しい様子で合流した。

 _
( ゚∀゚)「ブーン!」

( ^ω^)「お前…!」
 _
( ; ゚∀゚)「わりぃ…マジでちょっとだったんだ、ちょっと目を離したら……」

( ^ω^)「ちょっとってどんだけだお!本当に目を離しただけかお?」
 _
( ; ゚∀゚)「……じ、実は、大晦日の夜コンビニ行ったときに、肩ぶつかった女性と偶然出会っちゃって、それで……」

( #^ω^)「このアホ!何考えてんだおお前!?」
 _
( ; ゚∀゚)「で、でもその人にも手伝ってもらってんだ!五分後くらいに温室にまた集合しようって」

( ^ω^)「多方面に迷惑かけて何やってんだお!マジでクーさんに食らわされるぞお前は!」
 _
( ; ゚∀゚)「いっいや!それだけは頼む!勘弁してくれ…!」

( ^ω^)「とにかく探すお、散らばった方が見つけやすいし――」


 ひとしきりジョルジュを叱り、再びでぃを探すために動き出そうとした。
 その時だった。



「アヒャヒャ、こ〜んに〜ちは〜♪」

54322話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:02:14 ID:QzhOKDJ.0


(*゚∀゚)「やっほ〜、新年のご挨拶に来ましたぁ〜♪ってか?」

( ^ω^)「お前…!?」
 _
( ゚∀゚)「??」


 つー……またの名を、カテゴリーQであるカプリコーンアンデッドだ。
 特徴的な笑い方が聞こえた時点で、ブーンの本能が既に警戒を呼びかけていた。


(*゚∀゚)「さぁてブレイドちゃん、早速私とお遊びしましょ……?」

( ^ω^)「こんなところで…!?どれだけの人に被害が出ると思ってんだお!?」

(*゚∀゚)「アッヒャヒャヒャヒャ!そんなの……」


 つーのシルエットが、一瞬にして異形の者の姿へと切り替わる。

  、、
@*゚皿゚)@『アタシが気にするとお思いか〜??』

( ^ω^)「クソッ…!」
 _
( ゚∀゚)「!?アンデッドか…!!」

( ^ω^)「ジョルジュ、急いでみんなを避難させるお。カーチャンのことも頼む!急いで!」
 _
( ゚∀゚)「あっ、ああ!」


 ブーンの催促を受け、ジョルジュは足早に人影のある方へと走った。
 残されたブーンはバックルを取り出し、カードを装填し腰に装着。つーと睨み合いながら距離を取った。


( ^ω^)ψ「変身!」
    /

    【 -♠TURN UP- 】


( OwO)「被害を出さないためにも、お前をここで封印する!」
  、、
@*゚皿゚)@『フォオオオウ!!さァて、お遊びの時間だァ……!』

54422話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:02:45 ID:QzhOKDJ.0





 ―――――




.

54522話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:03:07 ID:QzhOKDJ.0


 場所は変わって、スーパーVIP。
 時間は、ブーン達がアンデッドとの戦いになる少し前に遡る。
 
 ここには、ショボンに買い物を頼まれたクーが一人で来店していた。 
 買い物カゴを片手に店内を歩き、簡単な調味料等を調達しに来ている。


川 ゚ -゚)(後足りないものは、確か……)

川 ゚ -゚)(ああ、そうだ…これだ)


 棚を眺め、詰め替え用の塩を一つ手に取ろうと掴むが、手から滑り落ち床に落ちてしまった。

 すぐにしゃがみ込み、それを拾おうと手を伸ばす。
 だが、自分の手で掴むより先に、誰かの手が落ちた塩を拾った。


川 ゚ -゚)「すみません」


 お礼を口にしながら見上げる。
 そこには、つい最近見たばかりの顔があった。


(-_-)「いえいえ」

川 ゚ -゚)「あ…」

(-_-)「この間はどうも」


 スーパーVIPに勤務するヒッキーだ。
 大晦日にブーンの家で忘年会を開いた時、互いに会話はなかったが顔くらいは覚えていたようだ。

54622話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:03:51 ID:QzhOKDJ.0



(-_-)「ここに買い物来るの初めてじゃないっすか?」

川 ゚ -゚)「まぁ……」

(-_-)「うちの店は特徴ないけど、同じ商品でも安さが売りっすから是非また来てくださいよ」

川 ゚ -゚)「…どうも」


 言って、拾った塩をクーに差し出した。
 
 無愛想に返事をしてしまうのは、決して悪気があるわけじゃない。
 本来、バーボンハウスに住むショボン達以外の人間には中々心を開こうとはしない。
 返事をしながら軽く頭を下げ、差し出された塩を手に取った。

 
川 ゚ -゚)「―――!!!」


 手に取った塩…正式には、ヒッキーが掴む物体を通して、クーは全身でそれを強過ぎる程に感じた。
 だが、クーを以ってしても一体それが何なのかを明確に感知することが出来ない。

 ただ、ひとつだけはっきりと分かることがある。
 

(-_-)「おっと、別に言う必要ないだろ」

川 ゚ -゚)「何者だ…少なくともお前の本当の姿は分かる」






川 ゚ -゚)「アンデッドだな、お前…!」

54722話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:04:32 ID:QzhOKDJ.0


(-_-)「言うなっつってんのに……」

川 ゚ -゚)「誰なんだ?ここまで自分の気配をうまく隠せるということは……ただの上級ではないな」

(-_-)「知ってどうするんだよ、俺を封印するってのかい?俺はこのスーパーに務めるただの店員さ」

川 ゚ -゚)「ふざけるな」


 アンデッドだと判明した途端、ヒッキーを見るクーの眼が鋭くなった。
 買い物カゴをゆっくりと床に置き、睨み付ける。


(-_-)「やめろよこんなとこで……大体俺は戦う気はない」

川 ゚ -゚)「何…?お前の目的は何だ?」

(-_-)「おいおい、自分のこと棚に上げてそんなこと聞くか?じゃあアンタは何の目的で人間と暮らしてんだ?」

(-_-)「人間の生活に溶け込んで、内側から滅ぼそうってか?」

川#゚ -゚)「何だと…?」

(-_-)「ほら、そういうことだよ。俺だって一緒なんだよ。
     別に俺は戦いなんか望んじゃいないんだ。それは今に始まったことじゃない、一万年前からそうだ」

(-_-)「だけど、どいつもこいつも俺に気付けば戦え戦えって……お前等と一緒にすんなってんだよ」


 ヒッキーからは、確かに敵意も戦意も感じられない。
 この言葉から、クーは過去に戦いを忌み嫌うアンデッドが居たか、記憶を巡らせる。

 ♥のカテゴリー8…モスではない。この男は、間違いなく上級アンデッドだ。
 そうなると、思い当たるのは一人……。


川 ゚ -゚)「お前、まさか……」

「よぉ、カテゴリーKさんよ」

54822話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:05:39 ID:QzhOKDJ.0


('A`)「まさか、あんたがカテゴリーKだったとはな」

(-_-)「……はぁ、面倒くせぇことになりそうだな」


 声の主はドクオだった。
 カテゴリーK…ヒッキーの正体を知っても尚、以前のように恐れる様子はない。
 しかし、どこか強がっているようにも見えなくはない。
  

('A`)「カテゴリーAが教えてくれたよ。あんたが♣のカテゴリーKだってことをな」

(-_-)「チッ……どういうつもりだ?」

('A`)「あんたを倒すつもりだよ」

(-_-)「俺の言ったこと忘れたのか?まんまとカテゴリーAに取り込まれたってわけか」

川 ゚ -゚)「そうか…お前が正式なレンゲルになったのか」

('A`)「クーさん、悪いけどこいつだけは譲れないな。
    こいつは俺が強くなる為に必要な、大切な獲物なんだよ…!」

川 ゚ -゚)「ほう……こいつを倒すことが、何故お前が強くなることに繋がる?」

('A`)「俺とカテゴリーAの意志は、今や完全にひとつだ。カテゴリーAとレンゲルの力があれば俺は誰にも負けない」

('A`)「……けど、互いに互いを制御出来ない状態なんだよ」

('A`)「だから、カテゴリーKを封印して互いを繋ぎ止めるための……」

川 ゚ -゚)「くだらないな」


 すべてを言い終える前に、クーの言葉が遮った。
 もはや聞くにも値しない言葉に耳を傾けるつもりはない。そう言ったような言葉だ。

54922話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:06:14 ID:QzhOKDJ.0


(-_-)「確かにくだらねぇ」

(#'A`)「なんだと…!?」

(-_-)「そんなものが本当の強さだと思ってることがくだらねぇっつってんだよ」

(-_-)「それって結局誰の強さだ?カテゴリーAやレンゲルの強さであって、お前の強さじゃないだろうが」

(#'A`)「ッ…うるせぇ!いいから俺と戦え!お前をここで封印してやる…!!」

(#-_-)「……てめぇいい加減にしやがれ!」

('A`)「ッ!?」


 喜怒哀楽の表現をあまり露にしないヒッキー。
 だが、そんなヒッキーが露骨に怒りを露にしている。
 ドクオの胸倉を掴み、睨み付けていた。


(#-_-)「今日は休みだからいねぇけど…ヘリカルさんだって働いてる場所なんだよ!
      仮にもここはてめぇの恋人が一生懸命働いてる場所じゃねぇのかよ、ああ!?」

(;'A`)「っ……」

<ヽ;`∀´>「ちょ、ちょっと引田君!何してるニダ!!」


 都合良く、通りすがった店長のニダーが揉め事に気付いた。
 とても驚いた表情で、ヒッキー達のもとに駆け寄ると胸倉を掴む手を強引に引き離した。


<ヽ;`∀´>「申し訳御座いませんニダ!うちの従業員が大変失礼を致しましたニダ!」

<ヽ#`∀´>「引田君!早く君も謝りなさいニダ!」

(-_-)「チッ…」

('A`)「………」

55022話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:07:03 ID:QzhOKDJ.0

 ――――――
 ――――
 ――


「うー寒い……」


 スーツに身を包んだ男性。
 仕事が始まってしまい、これから今年初の出勤だ。
 外の寒さに身を震わせながら、会社に向け重たい足を引き摺るようにして歩く。

 また、世間は仕事に追われる日々が始まる。


 ……その男性を獲物として睨むアンデッドが、すぐ近くに。


『グルルルルルル……』


 イノシシのアンデッドは、世に放たれたまま未だ潜伏していた。

 アンデッドは肉を好む。
 何の肉であろうと、食えればいい。

 腹を空かしたアンデッドは……血肉を求め、人間狩りを始める。


『ブオオオオオオオォォォォッ!!!!』

「えっ…!?!?うっ…!うわああああぁぁぁっ!!」


.

55122話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:07:38 ID:QzhOKDJ.0


川 ゚ -゚)「…!!」

(-_-)「アンデッド…!」

 
 アンデッドの気配に、二人はいち早く気が付く。
 たった今別の場所で人間を襲ったイノシシのアンデッドの気配だ。


川 ゚ -゚)「一体…いや」

(-_-)「二体だな」

('A`)「なんだと?」


 二人はもう一体の微かな気配も見逃さなかった。
 クーは買い物カゴをそのままに走り去って行く。向かう先はもちろん、アンデッドのいる場所へ。
 ドクオは後を追おうとするが、ヒッキーによって動きを止められた。


(-_-)「おい」

('A`)「何だよ」

(-_-)「俺はお前の中に、人のために戦いたいと思える心があると信じてる」

(-_-)「正義のために戦いたいと心のどこかで思ってるはずだろ。
     それでいいんだよ、その心をしっかり持とうとしろ。力に捉われるな」

('A`)「………」


 ヒッキーの言葉は届いているのか、それは分からない。
 ただ、少しだけ。少しだけドクオの表情が、戸惑いに揺れた気がした。

55222話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:08:02 ID:QzhOKDJ.0

 ――――――
 ――――
 ――


 男性のスーツは、無残に破り捨てられている。
 スーツの破れた破片を残し、そこにいたはずの男性の姿はない。
 あると表現するとすれば……今、イノシシのアンデッドの胃袋の中にいるだろう。


『ピチャ…ピチャ…』


 口のまわりに付着した血を舐め取り、美味くもない衣服を投げ捨てる。
 すると、近くに感じる気配。


川 ゚ -゚)「味を知らないとは可哀想なイノシシだ」

『!?』

 
 視線を向けた先に、アンデッドを睨みながらクーが立っていた。
 腰には、銀に輝くカリスラウザーを装着させながら。


川 ゚ -゚)「変身」
   っロ

    【 -♥CHANGE- 】

55322話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:08:30 ID:QzhOKDJ.0


『ブオオオオォォォオッッ!!』

( <::V::>)『以前は取り逃がしたが、今度は逃がさん!』


 左手に召喚するカリスアロー。
 両手を広げ、イノシシのアンデッドに向け一直線に突き進む。
 アンデッドによるアンデッド狩りが始まった。

 十分な加速の乗った状態で、カリスは前へと跳躍。
 敵のもとへ着地するのは計算済みで、着地間際にカリスアローで斬りつける。
 すかさず振り向きながら、素早い斬撃をもう一発。


『グウウゥゥッ…!』


 一度カリスの攻撃に嵌まれば、抜け出すことは容易ではない。
 カリスアローの隙のない連撃が、着実に命をすり減らしていく。


    《-♥3 CHOP-》


 後ろ回し蹴りを腹部に叩き込む。
 怯んだところに詰め寄り、ラウズしたカードの力を得た右手刀をアンデッドの腹部に叩き込んだ。


( <::V::>)『ふっ!』

『グオオォオッ!?』

55422話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:08:53 ID:QzhOKDJ.0


( <::V::>)『終わりだ』


 腰のケースよりカードを三枚引き抜く。
 勝敗はもう決した。
 これ以上の攻めを加えずとも、この一撃で倒せる自信がある。
 
 カリスアローに装着されたカリスラウザーに、カードをラウズしようとした時だった。


( <::V::>)『……もう一体来たか』


 手が止まった。
 目の前で倒れるイノシシのアンデッドとは別に、もう一体のアンデッドが近付いている。
 それは地上からでも、空中からでもない。

 足元からだ。
 両足をつけた地の下から、その気配は伝わってきた。

 足の裏に地響きのような振動を感じる。
 地震が起きているわけではない。
 ただ、足元から、何かが掘り進んできている。



 ………………。

 …………。





( <::V::>)『そこだッ!!』

55522話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:09:15 ID:QzhOKDJ.0


 背後から、地面が突き破られた。
 崩れる轟音鳴り響きながら、気配を感じ取っていたそのアンデッドが姿を見せる。

 カリスは振り返った瞬間、地面に向け構えたカリスアローから光の矢を射出。
 矢はアスファルトの地面を抉り現れたアンデッドに被弾し、出鼻を挫いた。


『ゴオオオォッ!?』


 地面より現れたアンデッドは、矢を受け地に放り出された。

 異常なまでに発達した右手の爪。左手には腕を覆うようにして装備された盾が。
 顔面には、両目と口に位置する三つのドリル。
 全身には鋼鉄の鎧を装備し、しっかりと身を守っている。

 一見、何の生物の祖かは判断出来ない外見だ。
 地面を潜り現れる……強いて言うなら、"モグラ"だろうか。


『グルルルルル……!』


 出鼻こそ挫いたが、イノシシのアンデッドとの間に挟まれ数的不利な状況となった。


( <::V::>)『二対一か……面白い!』

55622話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:09:37 ID:QzhOKDJ.0


 ここ数日間、血が滾るような戦いはなかった。
 何かと邪魔が入ったり、レンゲルの妨害を受けることもあった。

 レンゲルに完敗を喫してからというもの、自らの存在をアンデッドだと強く思い込むようになったカリス。
 あの時、カテゴリーAに浴びせられた屈辱的な言葉が忘れられない。
 その怒りや悔しさは、未だ晴れてはいない。
 全てを、戦いでぶつける。


( <::V::>)(二度とあんなことは言わせない…私はアンデッドとして全てを倒す!)

( <::V::>)『はああぁッッ!!』


 襲い来る二体のアンデッド。
 片方を飛び蹴りで迎撃しつつ、蹴りを入れたアンデッドを踏み台に背後のアンデッドを斬りつける。
 前後より繰り出されるアンデッド達の攻撃を、身体を翻しつつ次々と躱し、隙をついては斬撃を与え続けた。



 そこに、アンデッドの反応を辿り駆けつけたモララーが到着。
 同時にクーの後を追ってきたドクオも合流した。


( ・∀・)「二体のアンデッド…!」

('A`)「本当に二体いる…あの人何者なんだ!?」

( ・∀・)「ドクオ…?何故君がいるんだ!」

55722話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:10:06 ID:QzhOKDJ.0


( ・∀・)「変身!」


    【 -♦TURN UP- 】


 バイクから降り、戦いの中に向け走りながらの変身。
 前面に射出されるゲートを瞬時に纏い、ギャレンに変身した。

 カリスへの攻撃に夢中で気付かないイノシシのアンデッド。
 ギャレンラウザーを引き抜き、その背中に銃撃を見舞った。


『グギャアアァウッ!?!?』
 
( <::V::>)『ッ…!?邪魔をするな、こいつらは私の獲物だ!』

( OMO)「そんなこと言ってる場合か!?アンデッドを封印するのが俺の役目だ!」

( <::V::>)『なら貴様も相手にしてやろうか!?』

( OMO)「やめろ!俺は無駄な戦いを…ッ!するつもりはない!」


 数的には対等になった。
 だが、カリスの滾る闘志は敵味方の区別をつけようとはしない。
 迫り来る者すべてが敵。ギャレンに関しては、その意識が尚更強くなる。

 当のギャレンは、もはやそんな戦いには興味を持ってはいない。

 しかし、一触即発な状態。いつカリスがギャレンに襲い掛かってもおかしくはない。

55822話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:10:31 ID:QzhOKDJ.0


('A`)「………」


 戦いを見つめるドクオ。
 レンゲルバックルを手に握り締めたまま、動こうとしない。

 頭の中に響く声に耳を傾けていた。
 それはドクオに言い聞かせるように、歪な声は何度も何度も呼びかける。
 

 ――戦え、目の前のすべてを倒せ。お前はその力を持っている。


( A )「………」


 ――戦え。全てがお前の敵だ。


( A )「………」


 ――戦え…戦え!!

55922話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:11:03 ID:QzhOKDJ.0

 ♪勇壮たるレンゲル - https://www.youtube.com/watch?v=QqNaFe0UPpw


(# A )「………う」

(#'A`)「うああああああああああああ――」

(#'A`)『――あああああああぁぁぁッッ!!!!』

( OMO)「!?」


 途中、雄叫びをあげるドクオの声が、歪な声へと変貌したのを聞き逃さなかった。
 カードを装填したレンゲルバックルを腰に装着し、変身の構えを取る。


('A`/)「変身!!」

 
    【 -♣OPEN UP- 】


 開いたバックル部分より射出されるゲート。
 近付くゲートに身体を覆われ、レンゲルへの変身を果たした。


( OMO)「ドクオ…!」
 
( OHO)「……うおおおおおッ!!!」


 ゆらりと身体を動かし、徐々に走り出す。
 右手に握ったレンゲルラウザーを振るい両手に持ち直し、尖端でモグラのアンデッドの顔面を殴打した。


『グオオォウフッ…!』

56022話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:11:36 ID:QzhOKDJ.0


( #<::V::>)『どいつもこいつも、何度も邪魔をしてくれる……!!』


 ギャレンとレンゲルの乱入に、カリスの怒りは増幅するばかり。
 手に持った三枚のカードは本来アンデッドに向けて使用するつもり、だった。

 しかし、目の前にいる者全てが、今の自分にとっては敵だ。
 すべてに向けてこの攻撃を与えんと、カードを再びラウズしようとした時。



 「――…す……て……」

( <::V::>)『――はっ…!』


 声が聞こえる。
 その声に、カリスの手は止まった。
 ぼんやりと聞こえた声はやがて明確に聞こえ始め、その声の主も分かった。


 「――たす…けて…!」






( <::V::>)『でぃちゃん…!?』

( <::V::>)『……行かないと……!』

56122話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:12:12 ID:QzhOKDJ.0


 その声がでぃのものと判断した途端、カリスの怒りは突如収まり始める。
 そして、助けを求めるでぃに何が起きているかを感知することが出来た。

 目の前のアンデッド達より一際強い気配。
 間違いなく、上級アンデッド。
 でぃに…いや、ブーン達にも何かが起きている

 でぃちゃんが助けを求めている。
 でぃちゃんのもとへ行かねば。
 目の前の敵より、自分の怒りより、守ることを優先して。
 

( <::V::>)『ここは譲ってやる!』


 カリスの脳波を受け、無人走行するシャドーチェイサーが出現。
 すかさず飛び乗ると、進路を邪魔するレンゲルを側面から容赦なく跳ね飛ばした。


( <::V::>)『どけ!!』

( ; OHO)「ぐはあっ!?」

( OMO)「何だアイツ…どうしたんだ!?」


 自分の獲物だと言い張り敵意を見せていたにも関わらず、呆気なく去ってしまったカリスに戸惑いを覚えずにはいられない。
 だが、呑気に背中を見送っている状況ではない。
 目の前には二体のアンデッド。ここで封印しなければ、また人が襲われてしまう。


( OHO)「チィッ…!アンデッド、俺が残らず封印してやる!!」


 シャドーチェイサーの衝突を受け吹き飛ばされながらも、レンゲルはぴんぴんしていた。
 レンゲルラウザーを構え、モグラのアンデッドに向け突っ走り始める。

56222話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:12:36 ID:QzhOKDJ.0


( OMO)「ドクオ…カテゴリーAに操られているわけではないのか!?」


 イノシシのアンデッドを相手にしながら、ギャレンは横目でレンゲルを見た。
 レンゲルに変身前、確かにドクオの声が変化したのを耳にした。
 しかし、今のレンゲルはドクオ自身の意志で動いているように見える。

 
( OHO)「貴様らを封印して俺の力にする!!」


 一度伸長したシャフトを縮め、棍棒状態に戻したレンゲルラウザーを軽々と振るう。
 短くなった分身軽に扱え、アンデッドの大きな腕を振るった攻撃をラウザーで防ぎつつ、蹴りや一枚刃にまとまった尖端で斬りつける。


『ゴオオォゥウッ…!?』

( OHO)「うおぉおらあぁッ!!」


 アンデッドが怯んだ瞬間、ラウザーのシャフトを再び伸長。
 長柄特有のリーチを活かしながら三枚刃に展開された尖端・後端で攻め続ける。
 強引に押し込むような攻め。
 戦い方こそ粗さが目立つが、それでもアンデッドに善戦していた。


( OMO)(いつの間にあんなに戦えるようになったんだ…?)


 モグラのアンデッドに対して、まったくの素人であるはずのレンゲルが引けを取っていない。
 ブレイドになりたてのブーンの時より、まともに渡り合っている。

 もとある秘めた才能なのか、それとも自主的な鍛錬を積んだのか。
 何にせよ、思わず感心すらしてしまいそうなレンゲルの姿。

56322話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:13:23 ID:QzhOKDJ.0


( OHO)(力を感じる…戦い方が分かる!)

( OHO)(カテゴリーAが、俺に戦い方を示してくれてるんだ…!)

( OHO)「戦える…俺は戦える!!」


 漲る自信。自然と声にも力が入った。
 レンゲルラウザーを逆手に持ち、腰にあるカードケースを開く。
 一枚のカードを引き抜き、後端のラウザー部分にラウズした。


    《-♣2 STAB-》


 "♣2のSTAB"。このカードは、レンゲルラウザーの刺突・貫通力を強化するカード。
 ♠や♦の2と同じく、武器の威力を強化するカードだ。

 ラウザー全体に光が纏い始める。
 力を得たレンゲルラウザーを、持てる力全てでモグラのアンデッドに向け振り下ろした。
 
 
( OHO)「どりゃあああああッッ!!!」

『ゴオオオオッ!!』

( OHO)「なにっ!?」


 だが、レンゲルラウザーはただ虚空を斬っただけだった。

 振り下ろした先……確かにいたはずのモグラのアンデッドがいない。
 煙幕が発生している下に視線を向けると、そこには穴が形成されていた。

 アンデッドは、レンゲルの攻撃を地面に潜り身体を隠す事で回避したのだ。


( OHO)「クソッ…!出て来い!!」


 レンゲルの声は届かない。
 モグラのアンデッドは、地面に潜ったまま逃亡してしまった。
 当然、地面に潜った相手の追跡など出来もしない。

56422話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:13:51 ID:QzhOKDJ.0


 一方、イノシシのアンデッドと対峙していたギャレン。
 こちらも優勢に戦いを進め、ギャレンの勝利は目前。


( OMO)「はあッ!!」

『グゴ…ッ!!』


 得意の足刀蹴りがイノシシのアンデッドの顎を捉え、アンデッドはぐったりと倒れる。
 この隙にギャレンラウザーのトレイを展開し、必殺技を発生させるための三枚のカードを選択。


    《-♦5 DROP-》 《-♦6 FIRE-》 《-♦9 GEMINI-》


 ラウザーにカードを順にラウズし、ホルスターに収めた。
 両足を広げ、構えた左手でギュッと拳を握り締める。


      《-♦BURNING DIVIDE-》


 瞬時にそろえた両足。
 地面を蹴り、宙に高々と跳躍。
 空中で分身すると、両足に紅蓮の炎を纏った二人のギャレンが身体を翻し、アンデッドに向け落下。


( OMO)「でいやああぁッッ!!!」

『グオオオオオオオオオォォォォッ!!』


 炎が残像を描きながら、四つの蹴りがイノシシのアンデッドの身体を抉る。
 背を向けながら着地するギャレンの背後で、イノシシのアンデッドは炎に身体を焼きながら、抉れた部分から緑血を噴出。
 断末魔の叫びをあげながら、力無く地に倒れた。

56522話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:14:26 ID:QzhOKDJ.0


 倒れたアンデッドに対し、ギャレンは静かにカードを投擲。
 身体に突き刺さったカードがアンデッドの封印を終えると、ギャレンの掌中に帰還した。

 元々はブレイドが所持していたカード。♠3のTACKLE。
 レンゲルによって解放されてから、年が明けてようやく封印に至った。


( OMO)「……助けられなかったか、クソ…!」


 アンデッドによって捕食され、無残に捨てられた残骸である服を見つめる。
 人を助けられなかったことに、ギャレンはひどく胸を痛めた。

 変身を解こうとベルトに手を掛ける。

 ……だが、近付く足音でその手はすぐに離された。



( OHO)「うおおおおおおおッ!!」

( OMO)「!?」


 ギャレンに目掛け振り下ろされるレンゲルラウザー。
 瞬時に受け身を取る事で回避は出来たが、あまりにも唐突な襲撃に驚きは隠せない。


( OMO)「ッ…何の真似だ!?お前、自分の意志で動いてるんじゃないのか!?」

( #OHO)「そのアンデッドは俺の獲物だった、横取りしやがって…!」

( OMO)「お前まで何を言ってるんだ!?」

( #OHO)「そいつをよこせ…俺の力をよこせ!!」

( OMO)「なんだと……?正気か!?」

( #OHO)「うおおおああああああああッッ!!!」

56622話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:14:57 ID:QzhOKDJ.0





 ―――――




.

56722話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:15:22 ID:QzhOKDJ.0

 _
( ; ゚∀゚)「はっ…はっ…、クソッ!でぃちゃんもブーンのカーチャンもどこだ!?」


 ブーンに頼まれてから、必死で園内を走り回っているジョルジュ。
 しかし、探せど探せど何処にも見当たらない。
 もう園内隅々まで探したはずなのに、らしき影すら見れない。

 _
( ; ゚∀゚)「こんなことになっちまうなんて…やべぇよ、早く見つけないと!」

ミセ*゚ー゚)リ「ジョルジュさん!」
 _
( ゚∀゚)「ミセリさん!」


 二手に分かれて探していたミセリと、温室外で偶然遭遇した。
 ミセリも走り続けていたからだろうか、ジョルジュ同様呼吸を荒くしている。


ミセ;゚ー゚)リ「はぁ…はぁ…」
 _
( ; ゚∀゚)「ミセリさん、大変なんだ!今この園内に最近ニュースとかでやってる化け物がいる!」

ミセ;゚ー゚)リ「やっぱり、本当にいたんだ…!」
 _
( ; ゚∀゚)「えっ…どういうこと?」

ミセ;゚ー゚)リ「見つけました、でぃちゃんって子…その子が言ってたんです!」
 _
( ゚∀゚)「へっ??」

56822話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:16:06 ID:QzhOKDJ.0


ミセ;゚ー゚)リ「化け物が居て、怖いから隠れてたって…本当にいたら危ないから、まだ隠れてもらってます」
 _
( ゚∀゚)「そっそうか!いたか!よかった……案内してくれ!」

ミセ;゚ー゚)リ「はっ、はい!急ぎましょう!」


 息を切らしながらも、でぃが隠れているという場所へ二人は急いだ。
 ことは一刻を争う。
 もし化け物に見つかったりなどすれば……何をされるか分からない。

 _
( ; ゚∀゚)「ミセリさんがいなかったら今頃マジで危ないことになってました…!」

ミセ;゚ー゚)リ「いえ…っ、はっ…はっ…もとはと言えば私の責任ですから…!」
 _
( ; ゚∀゚)「もし化け物が襲い掛かってきたら、でぃちゃんを連れて逃げてください!」
 _
( ; ゚∀゚)「俺が囮になって二人を逃がしますから!」

ミセ;゚ー゚)リ「そんな…!そんなことできませんよ…!」
 _
( ; ゚∀゚)「万が一はそれしか手はねぇんだ!大丈夫だって、俺逃げ足は速いから!!」

ミセ;゚ー゚)リ「っ…そんなことにならないように、ちゃんと逃げます!一緒に!」
 _
( ゚∀゚)「……っへへ、よっしゃ!!」

56922話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:16:36 ID:QzhOKDJ.0

  、、
@*゚皿゚)@『よっ、とぉ!!』

( OwO)「チィッ!ちょこまかと鬱陶しいお…!」


 つーと対峙しているブレイドは、トリッキーな動きに翻弄されていた。
 軽快なステップで、ブレイドの攻撃を容易に躱すつー。
 
  、、
@*゚皿゚)@『アヒャヒャヒャ!当ててごら〜ん???』

( OwO)「このォ…ッ!!」


 ブレイドの蹴りを側転で避け、両足で着地した瞬間に地面を蹴り上げ跳躍。
 綺麗にそろえた両足を伸ばし、ブレイドの顔面に打点の高いドロップキックを叩き込んだ。

  、、
@*゚皿゚)@『フンッ!』

( ; OwO)「のわあぁっ!?」


 顔面を押し込まれ、地面に転がる。
 すぐさま起き上がりブレイラウザーを引き抜き、再び立ち向かった。


( OwO)「うおおおおっ!!」
  、、
@*゚皿゚)@『悪いけどさァ、そこらの雑魚と一緒にしてもらったら困るんだよねェ!』
  、、
@*゚皿゚)@『そんな攻撃アタシに当たるわけないでしょうよ!! ッはああぁ!!!』

( ; OwO)「ぐああぁっ!!」


 剣撃を躱しながら三日月を描くように高々と後転。
 後ろへ回転しながらも、つーは口より青白い衝撃波を吐き出す。
 衝撃波はブレイドに直撃し、吹き飛ばされた。

57022話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:17:02 ID:QzhOKDJ.0


( ; OwO)「ううっ…!」
  、、
@*゚皿゚)@『まだまだ終わらないよ〜??そォれッ!!』


 右手に召喚してブーメラン型の刃。
 それを宙に投げ捨てた途端、刃は水を得た魚のように空中を自由に泳ぎ始める。
 
  、、
@*゚皿゚)@『さぁさぁ、もっと遊ぼうよブレイド…!!』
  、、
@*゚皿゚)@『アヒャヒャヒャヒャヒャァ!!!!』

( ; OwO)「クソォ……!」


 この刃の攻撃は一度見たことがある。
 故に、思い立って行動に移すことが出来ない。

 きっと、つーにとって都合の悪い動きはあの刃によって妨害されるに違いない。
 だとすると、動こうとすれば自分が無駄なダメージを負うだけ。
 ゆっくりと身体を起こしながら、仮面の下でつーを睨み付ける。

  、、
@*゚皿゚)@『分かるよ〜…今アタシのこと睨んでるでしょ?いいねェその目!そそるわぁ…!』

( ; OwO)「こんなとこで、僕が負けるわけにはいかないんだお…!」
  、、
@*゚皿゚)@『一応聞いてみるけど、なんで〜?』

( ; OwO)「僕がお前を倒さない限り、ここにいる人たちに被害が――」
  、、
@*゚皿゚)@『はいお終い』

( ; OwO)「うああっ!?」


 答えている途中で、宙を舞う刃がブレイドの身体を斬りつけた。
 
  、、
@*゚皿゚)@『正義の勇者ごっこは見てて虫唾が走るんだよ…!』

( ; OwO)「ぐぐッ……!」

57122話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:17:52 ID:QzhOKDJ.0


ミセ*゚ー゚)リ「こっちです!もうすぐ!」
 _
( ゚∀゚)「ああ!」


 もうすぐ辿り着く。
 でぃを見つけた後は、すぐにブーンのカーチャンを探さなくてはならない。
 協力してくれるミセリも、早く安全な場所に避難させなければ。

 ジョルジュは、責任感と使命感を強く感じていた。
 
 本当なら、自分もライダーとしてアンデッドと戦いたい。
 戦って、人を守りたい。
 
 けど、自分はライダーになることは出来ない。

 今はそれを受け入れ、自分の出来る事で人を守りたいと思うようになった。
 その思いが今、一際強くなっている。



 ミセリの後を追っていて気付いた。

 _
( ゚∀゚)「ここ、ブーンのとこに戻ってきてねぇか…?」
 _
( ゚∀゚)「こんな近くにいたってのかよ…!早くしないとでぃちゃんが危ない!」

ミセ*゚ー゚)リ「はい、急ぎましょう!」

57222話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:18:17 ID:QzhOKDJ.0

 ――――――
 ――――
 ――


ミセ*゚ー゚)リ「着きました…!この辺です……!!」


 でぃが隠れているという場所に到着した二人。
 だが、二人がそこで目にしたのは……。


  、、
@*゚皿゚)@『アヒャヒャヒャァッ!!』

( ; OwO)「うわあああぁっ!!」


 つーと戦うブレイドの姿。
 ジョルジュの思った通り、最初の位置に戻って来ていたのだ。

 _
( ゚∀゚)「やっぱり戻って来てる…!」

ミセ;゚ー゚)リ「もしかして…あれが化け物ですか…!?」
 _
( ゚∀゚)「そうだ、あれがアンデッドだ…!」
 
ミセ;゚ー゚)リ「……あれは、仮面ライダー?」
 _
( ゚∀゚)「ああ、アンデッドを倒すことの出来る唯一の希望だ…早く探さないと!」

ミセ;゚ー゚)リ「………ッ」
 _
( ゚∀゚)「ミセリさんはここにいてくれ!」

57322話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:18:46 ID:QzhOKDJ.0


ミセ;゚ー゚)リ「……はい、ここにいます」

ミセ;゚ー゚)リ「でも……」
 _
( ゚∀゚)「俺は大丈夫だ!安心してくれ!」

ミセ;゚ー゚)リ「……ごめんなさい」
 _
( ゚∀゚)「へっ?」


 その時――ジョルジュの両足に、何かが巻きつかれた。

 _
( ゚∀゚)「っ!?なんだこれ!?」


 足元に視線を向ける。
 そこにあったのは……トゲの生えたツタ。
 ジョルジュの両足を巻きつくのは、トゲの生えたツタだった。


ミセ; - )リ「ごめんなさい、ジョルジュさん…」


 ただ謝りながら俯くミセリ。
 徐々に顔を上げるその顔に……一輪の笑顔。


ミセ* ー )リ「でも、私……」



ミセ*゚ ヮ゚)リ「あなたを騙したこと……後悔してないわ!!」

57422話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:19:29 ID:QzhOKDJ.0

 _
( ゚∀゚)「へっ……?」

ミセ*゚ー゚)リ「ウフフ……ジョルジュさんって素敵なのね、あなたが人間じゃなかったらきっと惚れてたわ…!」
 _
( ; ゚∀゚)「……ッ、どういうこと――うわあっ!?」


 再びツタが伸び、今度はジョルジュの首と胴体に巻きついた。
 きつく締め上げられ、痛みと苦しさが同時に襲いか掛かる。

 ジョルジュの声に反応し、ようやくブレイドは二人の存在に気付いた。


( OwO)「ジョルジュ…!?」
  、、
@*゚皿゚)@『あらら〜?余計なことしてくれちゃってェ…』

ミセ*゚ー゚)リ「あなたがモタモタしてるのが悪いわ」
 _
( ; ゚∀゚)「うぐううぅッ…!ミセリさん……これは……!?」

ミセ*゚ー゚)リ「ジョルジュさん、まだ分からないの…?あなたは私に利用されたのよ?」
 _
( ; ゚∀゚)「っ…!?!?」

ミセ*゚ー゚)リ「まだ信用しきれないみたいね……じゃあこれならどう!?」


 ミセリの身体が、無数の花びらに包まれる。
 花びらが作り上げるシルエットは、ミセリの人の形から膨張し、異形のものへと変化していく。
 やがて花びらは風に乗るかのように去っていき……ミセリは、その姿を露にした。

57522話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:20:03 ID:QzhOKDJ.0


( ; OwO)「なに…!?」
 _
( ; ゚∀゚)「………そんな………」


 女性らしい顔とシルエットを残す真っ赤な身体、その左肩や左腕に身につけている鋼の装甲。
 頭部には髪のように広がる花びら。後頭部には、白く塗られたもう一つの顔が存在している。
 花びらは右腕全体をも覆い、人並以上に腕の長さは発達。
 花びらから覗く爪の伸びた大きな右手は、化け物らしさを物語っている。
  
  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『これで分かったでしょう?私はカテゴリーQのアンデッド』
  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『あなたを利用して、最初からこうするのが目的だったのよ…!』
 _
( ; ゚∀゚)「うっ……ぐう……!」

( OwO)「やめろ!!」
  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『動くな!この男の命がなくなってもいいのかしら?』

( ; OwO)「ぐっ…!」
  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『それに、私が捕まえてるのはこの男だけじゃないのよ…!』

( ; OwO)「何…!?」


 人の手の形をした左手で、パチン!と指を鳴らす。
 すると……頭上から吊り下げられるようにして、二人の人間が姿を現す。
 その姿を見た瞬間、ブレイドとジョルジュの動きは完全に止まった。

 _
( ; ゚∀゚)「……!!!」

( ; OwO)「でぃちゃんに……カーチャン……!?」

57622話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:20:35 ID:QzhOKDJ.0


(#; - )「ううっ……」

J( ー )し


 ツタに吊り下げられたでぃからは、うめく声が小さく聞こえる。
 だが、カーチャンからは何の反応もない。気を失っているようだ。

 _
( ; ゚∀゚)「……最初から、あんたが二人を……?」
  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『そうよ?私がこの人間二人を捕まえたの。あなたが必死に探してたときにはもう……フフフフ』
  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『そして今、あなたもその一人になったの。ブレイドが動けないようにするための囮としてね!
        でも平気よね?あなた、囮になるってさっき言ったもの…!』
  、、
@*゚皿゚)@『アヒャヒャヒャヒャ!!ほんとーにこの女恐ろしいよなァ…!』
 _
( ; ゚∀゚)「………」

( OwO)「………」


 言葉が出ない。
 自分が一目惚れしてしまった相手が、アンデッドだった。
 そして……自分の甘さのせいで、でぃを、そしてブーンのカーチャンを危険な目に合わせてしまった。

 今まさに自分自身も危険な状態。
 だが、それ以上に責任を強く感じてしまっていた。

57722話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:21:02 ID:QzhOKDJ.0

  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『さぁブレイド、変身を解きなさい』
  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『さもないと…分かってるでしょう?あなたの大事なお友達が真っ先に殺されてしまうの。
       あなたなら必ずその剣を置くわ、それがあなたの優しさだから!』

( #OwO)「この卑怯者……!!」
 _
( ; ゚∀゚)「ッ……ブーン、俺のことは気にするな!二人のことだけを気にしろ!」
  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『黙れ!』
 _
( ; ゚∀゚)「ううううぅぅッ……!!」


 ジョルジュの身体に巻きつくツタが、更に強く締め付ける。
 胴体、首に深くツタがめり込み、ジョルジュの呼吸をより苦しくさせる。
 このままもっと締め付けられてしまえば……死に至るのはそう難しくはない。


( ; OwO)「ジョルジュ!!………分かった!」


 武器を捨てれば、間違いなく自分が狙われるだろう。
 抵抗することも同じだ。
 だが……仲間や、ましてや母親の命に代えることは、到底出来るはずもなかった。

 バックルに手を掛け、ハンドルを引きゲートを射出する。
 変身を解除し、バックルを地に投げ捨てると、両手をあげ無抵抗の意思を示した。


( ^ω^)「これでいいだろ…!?」
 _
( ; ゚∀゚)「なっ…!なんでだよブーン!!俺のことなんか気にするなよ…!」

57822話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:21:27 ID:QzhOKDJ.0

  、、
@*゚皿゚)@『おお〜?マジで変身解いちゃったよ……自分が死ぬだけなのにさァ!』

( ; ^ω^)「ぐふっ…!」


 腹部に強烈な拳が叩き込まれ、うずくまった背中を何度も何度も拳や肘で叩かれる。
 ライダーの装甲を纏っているならともかく、生身の姿で受けるアンデッドの打撃は倍の痛みを身体中に走らせた。
 すぐに立ち上がることも出来ず、痛みに身体を抑えることしか出来ない。


( ; ^ω^)「うううっ…!」
  、、
@*゚皿゚)@『健気だねぇ、仲間想いってヤツ?』
  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『いい人よねぇ、ブレイドって。でもその優しさが命取りになるのよね……お前もな!』
 _
( ; ゚∀゚)「ッ……ブーン……お前が死んじまう!!やめてくれよ!!」

( ; ^ω^)「がはっ……心配すんなお、僕は…ッ死なないお……」
  、、
@*゚皿゚)@『フォオオオウッ!!』

( ;メ ω )「があっ…!」
 _
( ; ゚∀゚)「ブーン…!!」


 後ろ首を掴まれ強引に上げられると、つーの鋭利な右手がブーンの顔面に直撃。
 頬に赤い切り傷が形成され、力無く地面に倒れた。

57922話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:21:57 ID:QzhOKDJ.0


( ;メ ω )「死んで……たまるかってんだお……僕は……こんな奴らに、負けてられない……!」

( ;メ ω )「それに……お前は、僕の大事な仲間だ…!仲間を引き換えになんて、僕には出来ない…!」

( ;メ ω )「でぃちゃんも、カーチャンも…お前も…ッ僕が守る……!!」


 口の中が切れ、唇の間から血が覗く。
 今まで何度も味わってきた痛みだが、これを受け続ければジョルジュの言う通り死んでしまうだろう。
 ミセリの目的が最初からこれだとすれば……本当に死を受け入れなければならないかもしれない。

 _
( ; ∀ )「……バカヤロウ…!!」
  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『まだ喋れる元気があるみたいよ?少し手を抜きすぎなんじゃないかしら?』
  、、
@*゚皿゚)@『はい?そもそもこんなの頼んでないんだケド?アタシの自由にやらせてよ』
  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『フン、まぁいいわ……安心しなさいブレイド。
       あなたを殺したあとに…このお友達も、あなたの母親も、すぐに送ってあげるから!』
  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『フフフフフ……アハハハハハハハ!!』

( ;メ ω )「ぐううッ……!!!!」 


 ミセリの残酷な高笑いが、園内に響く。
 身体中ボロボロで、立ち上がろうとするにもあちこちが痛みに悲鳴を上げる。
 ただ、ミセリの無慈悲な言葉だけが何も出来ないブーンの耳に届く。
 悔しさに歯を食いしばり、拳を強く握り締めた。

58022話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:22:36 ID:QzhOKDJ.0

  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『ちょっと…いつまで遊んでるつもり!?早く殺しなさいよ!』
  、、
@*゚皿゚)@『ッさいなぁ、もともとアタシの獲物なんだけど?』
  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『せっかく私が最高の舞台を用意したっていうのに……もういいわ、私が殺るから』
  、、
@*゚皿゚)@『……お前調子に乗るなよ?確かに勝ち残るために手を組むとは言ったよ。
       けどお前の指示に従うと言った覚えはないなァ…!』
  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『なんですって…?』
  、、
@*゚皿゚)@『大体アンタが最初から手を貸せば、こんなヤツらとっくの昔に全部殺してたのによ…!』
  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『このメス山羊が…!!』

( ;メ ω )「ッ……く、う……」


 今しかない。
 内輪揉めしている間に、投げ捨てたブレイバックルを拾うには。
 そうすれば、まだチャンスはある。

 地面を這いつくばりながら、目の前のブレイバックルに懸命に手を伸ばす。

  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『何をしてるの?人間如きが!!』

( ;メ ω )「ああ゙あ゙あ゙あ゙ぁ…ッ!!」


 気付かれてしまった。
 ミセリの足がブーンの伸ばす手を踏みつけ、グリグリと踏み潰すように体重をかけられる。

58122話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:23:24 ID:QzhOKDJ.0
 
 _
( ; ゚∀゚)「ブーン……!!」

(#;゚ -゚)「もうやめて……!死んじゃうよぉ!」
  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『あらでぃちゃん、死んじゃっていいのよ?だって……殺すんだから!」

( ;メ゚ω゚)「うあああああッ!!!」


 ブーンの背中を、全体重を乗せストンピングする。
 アンデッドの体重は人間の倍以上だ。
 それほど重たいものが思い切り圧し掛かれば、痛みも苦しさも凄まじい。

 _
( ; ∀ )「クソッ…!クソォ……!!」

(#; - )「なんでそんなことするの!?許さない……モスにひどいことしたお前も、ブーンさんを痛めつけるお前も許さない!!」
  、、
@*゚皿゚)@『アヒャヒャ…まだ根に持ってるのかぁ。そんなにあのアンデッドのところに逝きたいのかなァ」
  、、
@*゚皿゚)@『なら……逝かせてやるよ!!』

(#;゚ -゚)「ひゃあっ!?」


 宙を舞うブーメラン型の刃が、吊り下げられたでぃのツタを切り裂く。
 そのまま地面に落下し、受け身も取れずでぃは叩き付けられた。


(#;゚ -゚)「ううっ…!」
  、、
@*゚皿゚)@『じゃーな……でぃちゃん!!!』


 ブーメラン型の刃を持った右手が、でぃに向け振り上げられる。


(#; - )(助けて……クーさん)

(#; - )(助けて……!モス!!)

58222話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:24:07 ID:QzhOKDJ.0








    《-♥8 REFRECT-》

58322話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:24:30 ID:QzhOKDJ.0

  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『!?』


 どこからか響く音声。
 音声が響いた直後、でぃの周囲に発生する鱗粉。
 
 この鱗粉は、どこかで見たことがある。
 
  、、
@*゚皿゚)@『死ねやああァァッ!!』

(#;>-<)「ッ!!」


 子供に向け放つ言葉こそ、まさに区別もない残虐性を感じられる。
 つーが腕を思い切り振り下ろした。
 狙うは、幼いでぃの脳天一直線。

 だが……、

  、、
@*゚皿゚)@『うわっ!?なんだ!?』

(# >-゚)「ッ……??」
  、、
@*゚皿゚)@『跳ね返された…!?なんだコイツ!このッ!!』


 つーが確かに振り下ろしたはずの刃は、鱗粉によって明らかに跳ね返された。
 何度も何度も刃を振るも、鱗粉がでぃを守る鉄壁の盾となって、一切の攻撃を通すことを許さない。

  、、
@*゚皿゚)@『この鱗粉……まさか……!』

(#゚ -゚)「――モス……?」

58422話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:25:00 ID:QzhOKDJ.0


( <::V::>)『はあああああああぁッ!!!』
  *∧Λ*
∠*;゚`ー´)ゝ『なっ…うあぁっ!?』

  
 吹き荒ぶ竜巻を纏ったシャドーチェイサー。
 上空を飛翔しながら現れ、勢いのままミセリに突進。
 突然の出現に対応できず、ミセリは遠くへ吹き飛ばされた。

 着地し、アクセルターンさせながら停まる。
 シャドーチェイサーから降りたカリスは、召喚したカリスアローでつーに向け光の矢を射出。

  、、
@*゚皿゚)@『ちょいちょいちょい…ッ!』


 でぃから距離を取ったことを確認すると、今度は吊り下げられたツタに向け矢を放った。
 矢は、カーチャンが下げられたツタに的確に命中。
 ツタは切れ、支えを失ったカーチャンはそのまま下に落下を始める。


( <::V::>)『ふっ!』


 疾走するカリス。落下するカーチャンを両腕で受け止め、抱えこんだ。
 ゆっくりと地にカーチャンを寝かせると、今度はジョルジュを縛り上げるツタの根元すべてに向け矢を放つ。

 _
( ゚∀゚)「うおっ…!」


 カリス一人で、捕まったすべての人が救出された。
 うずくまるでぃのもとへ近付き、怯える肩にそっと手を添えた。

58522話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:25:30 ID:QzhOKDJ.0


( <::V::>)『ケガはない?』

(#゚ -゚)「クーさん…?」

( <::V::>)『もう安心して、大丈夫だから。走れるね?』

(#゚ -゚)「……うん」
 _
( ゚∀゚)「あ…あんた……」

( <::V::>)『突っ立ってる暇があるなら急いで二人を避難させろ!』
 _
( ; ゚∀゚)「はっ、はい!」


 催促を受け、我に返ったジョルジュは急いででぃとカーチャンのもとへ駆け寄る。


( <::V::>)『勘違いするな、別に貴様の命などどうでもよかった。二人の命を確保するのに貴様が必要だっただけだ』
 _
( ゚∀゚)「わ、分かってるよ…!」

( ;メ^ω^)「はは……よかった、みんな、無事で……」

( <::V::>)『立て』

( ;メ^ω^)「はいお……しかし、今のはさすがに、マジでやばかったお……!」


 倒れたままのブーンに手も貸さず、不器用に声を掛ける。
 身体中を蝕むひどい痛みに耐えながら、ブーンも懸命に起き上がった。
 足元はフラフラで、どこもかしこもボロボロだ。
 だが、ブーンはカリスを見ながら笑ってみせた。

58622話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:26:07 ID:QzhOKDJ.0

  、、
@*゚皿゚)@『アヒャヒャヒャ!アンタも来たのかァ、こりゃ面白くなりそうだ…!』
  *∧Λ*
∠*#゚`ー´)ゝ『クッ……カリス……!!!』

( <::V::>)『山羊は譲ってやる、お前が封印してみせろ』

( <::V::>)『貴様の相手は私がしてやる!』
  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『チッ……面倒なのが来たわね……!』


 カリスはミセリに向け矢を発射させながら接近。
 矢を右手で弾き落としながら、ミセリはどこかへ誘うように後退。
 恐れることなく、カリスは後を追って行った。

  、、
@*゚皿゚)@『あああ…!だから余計なことすんなっつったんだよ、あのバカ!!』
 _
( ゚∀゚)「ブーン!!」


 この隙に、ジョルジュは拾い上げたブレイバックルをブーンに向け投げ渡す。

 _
( ゚∀゚)「二人は俺に任せろ!そいつを頼むぜ!」

( メ^ω^)「そっちは頼んだ、こっちは任せろ!」
 _
( ゚∀゚)゙「おう!」

( メ^ω^)゙「おう!」


 ジョルジュがカーチャンを背中に背負い、でぃを連れて植物園の外へと避難していくのを見届ける。
 そして、目の前のつーと真正面から睨み合った。

58722話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:26:56 ID:QzhOKDJ.0

 ♪華麗なるブレイド - https://www.youtube.com/watch?v=3XSRSJjGU-0
 
  、、
@*゚皿゚)@『ハッ、まぁこれで邪魔がいなくなってせいせいしたわァ…!』

(#メ ω )「ああ…そうだな」
 

 身体中の痛みなど気にならないほどに、ブーンの中に激しい怒りが渦巻く。

 仲間を傷付けられ、幼い心を弄び、大事な母親を人質に取られた。
 沸々と湧き上がっていたブーンの怒りが、最頂点に達する。


(#メ^ω^)「覚悟しろ…!!アンデッド!!!」


 カードを装填したバックルを腰に装着。
 鋭い目で眼前の敵を捉えながら、ブーンは声を張り上げた。


(#メ^ω^)ψ「変身ッ!!!」
     /
    
     【 -♠TURN UP- 】


( #OwO)「うおおおおおおおおおおおッッ!!!」


 つーに向け駆けながら引き抜くブレイラウザー。
 最初の一太刀は躱されるが、避けた先に向け放った蹴りがつーに命中。
 怯んだところに、すかさずブレイラウザーを振り下ろした。


( OwO)「ッふん!はあッ!!」
  、、
@*;゚皿゚)@『うぐっ…!…へぇ、良い気迫してんじゃん…!!』

58822話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:27:28 ID:QzhOKDJ.0


 ミセリを追ったカリスは、広場に誘い込まれる。
 逃げ続けたミセリだが、この広場で遂にカリスに向き合った。


( <::V::>)『観念しろ、蘭女!』
  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『ええいっ…!あなたの相手は望んでないわ!』

( <::V::>)『黙れ!貴様の罪は深い!!』


 カリスアローを振るい、ミセリを着実に攻め込む。
 払い除けこそする一面もあるが、カリスの素早い動きにすべての行動が追いつかない。
 防ぐ腕には大量の切り傷が形成され、右腕の花びらは幾つも裂かれている。

  *∧Λ*
∠*;゚`ー´)ゝ『くうっ…!』


 怯むミセリを見て、カリスは武器にカリスラウザーを装着。
 一気に攻め込み、終わらせようという考えだ。
 かなりの強行手段だが、一撃で仕留めることは可能。
 腰のカードケースに手を伸ばした

  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『ふんっ、あなたの相手はここまでよ!』


 その時、ミセリの顔が反転し後頭部の顔と入れ替わった。
 次の瞬間、入れ替わった顔の口から大量の花びらが噴射。


( <::V::>)『くっ!逃げるのか…!』


 花びらはカリスを覆うようにして集まり、視界を遮る。
 その間に、ミセリ自身も身体を花びらに包み込んだ。
 そして、風に乗る花びらと一緒に、ミセリも忽然と姿を消した。

58922話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:28:54 ID:QzhOKDJ.0

 ♪Rebirth - https://www.youtube.com/watch?v=SgXC5Z4R3-c


( OwO)「うおおああああぁっ!!」
  、、
@*;゚皿゚)@『うあぁッ!?……チィッ!!』


 右腕にすべての力を込め、一撃一撃の重い剣撃を浴びせる。
 それまで不規則な動きで翻弄していたはずのつーを、思い通りに動かさない。
 避ける先が目に見えて分かる。そこに剣を振り、すべての攻撃を当て続けた。


( #OwO)「お前達を絶対に許さない…!」

( #OwO)「でぃちゃんの心を弄んで、ひどく傷つけた!モスの気持ちを踏みにじった!」
  、、
@*;゚皿゚)@『うぐっ…!うあぁっ!?』

( #OwO)「大切な仲間の…ジョルジュの気持ちを利用しやがって!!」

( #OwO)「カーチャンにすら手を出した貴様らを!!僕は絶対に許さない!!!」

( #OwO)「はあッ!!」
  、、
@*;゚皿゚)@『ッッ!!あぐぁッッ…!!』

 
 身体を回転させながら斬りつけ、剣先による刺突で胸を貫く。
 突き破られた背中から、剣先に押しやられるように緑血が噴き出る。
 突き刺したままブレイラウザーのトレイを展開し、一枚のカードを抜きラウズさせた。


    《-♠3 BEAT-》

59022話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:29:25 ID:QzhOKDJ.0


 "♠3のBEAT"。ライオンのアンデッドが封印されているカード。
 このカードの使用した者の腕力を強化する効果を持つ。
 ブレイドの右腕から拳にかけて、光が纏い始めた。

  、、
@*;゚皿゚)@『ぐうっ…図に乗りやがってェ!!』


 宙を舞うブーメラン型の刃を操り、ブレイドに向け飛翔させるつー。 
 だが、背後から迫り来る刃を、決して見逃さない。


( OwO)「ふっ!」
  、、
@*゚皿゚)@『ううッ…!』


 ラウザーを引き抜きつつ、回し蹴りで刃を迎撃。一寸の狂いなく足で刃を蹴り落とす。
 そして、回転の勢いそのままに強化された強烈な拳を、つーの顔面に叩き込んだ。
 

( OwO)「食らえッ!!」
  、、
@*;゚皿゚)@『うあああぁッッ!!!』


 角をも砕く拳が顔面にヒットした衝撃で吹き飛ばされ、地面を転がりやがて草花の中に埋もれる。

59122話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:29:48 ID:QzhOKDJ.0

  、
@*;゚皿゚)@『何だコイツ…!あれだけ傷付いたはずなのに、まだこんな力を残してたのか…!?』


 先刻とは打って変わった気迫、力を前に圧倒されてしまう。
 ブレイドに対して、ここまでの力も迫力も感じて来なかった。
 しかし、今感じているのは……レンゲルのそれをも上回るような――。


( OwO)「終わりだ!」


 もう一度トレイを展開し、今度は三枚のカードを選択。
 慄くつーを前にして、ブレイドはカードをラウズした。


    《-♠5 KICK-》 《-♠6 THUNDER-》 《-♠9 MACH-》

       《-♠LIGHTNING SONIC-》

  、
@*;゚皿゚)@『負けてたまるか…アタシは、この戦いを勝ち残るんだから…!』
  、
@*;゚皿゚)@『前は生き残れずに負けちゃったこの戦い…!今度こそ、どんな手を使っても勝つって決めたんだよ!!』

( #OwO)「そのために人を犠牲にしたお前達を、僕は倒すッ!!」


 突如、驚異的な速度で疾走するブレイド。
 一秒も経たぬ間に吹き飛ばしたつーのもとに接近し、片膝をついたつーを左足で上空に蹴りあげる。

  、
@*;゚皿゚)@『ぐぅッ…!?速い…!!』

( OwO)「はぁッ!!」

59222話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:31:12 ID:QzhOKDJ.0


 目にもとまらぬ速さで距離を取り、両足をそろえ高々と跳躍。
 空中で青白い雷を纏った右足を伸ばし、放たれる弓矢が如く速度で宙に浮くつーに向け接近。
 
  、
@*;゚皿゚)@『ひっ……!!』

( #OwO)「うぇえええええええええええいィッッ!!!」
  、
@*;゚皿゚)@『ギャアアアアアアアアアアァァァァッッッ!!!!』


 一瞬の閃光。
 つーの身体に強烈な蹴りが炸裂した瞬間、全身に感電する雷。
 必殺技の強大な威力に耐え切れず、蹴りの勢いに吹き飛び地面に叩きつけられる。
 そして、不愉快な悲鳴と共に、大きな爆発を引き起こした。


( OwO)「ッはぁ……はぁ……!」
  、
@*;゚皿゚)@『……う、あぁ……』


 上級アンデッドの黄金に輝くバックルが左右に展開し、"♠ Q"と彫られた文字が露呈される。
 着地したブレイド。すぐにカードを一枚取り、倒れたつーに向けカードを投擲。

 カードが身体に突き刺さり、つーは緑色に発光を始める。

  、
@*; 皿 )@『クソッ……許さない…仮面、ライダー……!』
  、
@*; 皿 )@『アタシ達の戦いを……邪魔しやがっ……てェ……―――』


 捨て台詞を残したつーは封印され、カードはブレイドの掌中に帰還。
 カードには二頭の山羊が対をなすように描かれ、"♠Q ABSORB"と記された。

59322話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:31:52 ID:QzhOKDJ.0


( OwO)「はぁ…はぁ…、上級アンデッド……倒した……!」


 遂に自らの手で上級アンデッドを倒せた。
 きっとジョルジュ達の存在なくしては倒せなかっただろう。
 仲間を想う気持ちが怒りとなり、ブレイドの力をより良く引き出すことが出来た。

 バックルに手を掛けハンドルを引き、変身を解除する。
 ブーンの姿へとなった途端に、全身の力がふっ、と抜けてしまった。

 _
( ゚∀゚)「ブーン!!」

( メ^ω^)「ジョルジュ……無事でよかった、ケガはないかお…?」
 _
( ゚∀゚)「……ったく、こんな時まで人の心配かよお前は。自分のこと心配しろ!」
 _
( ゚∀゚)「お前達のおかげで、俺達も生きてるよ…!」

( メ ω )「ならよかった……お」


 足元から崩れ落ち、ブーンの意識が途絶えた。
 力が抜けてしまい、必死に保ってた意識を自分から手放したのだろう。

 _
( ゚∀゚)「おい、おい?ブーン!どうしたんだよ!?おい!!」


 そこに、車椅子に乗ったカーチャンがクーに押され現れる。
 倒れたブーンを見つめ、どこか悟ったような表情を浮かべた。


J('ー`)し「……ホライゾン……あんた、こんなことしてたんだね……」

59422話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:33:43 ID:QzhOKDJ.0
 ――――――
 ――――
 ――


 植物園での戦いが終結を迎えた頃。
 カリスの手から逃れたミセリは、ある場所へ来ていた。


ミセ* ー )リ「……ふふ、封印されちゃったみたいね。あの山羊女」


 つーがブレイドに倒された事を、風の便りが報せてくれる。
 協力関係にあったものの、結局はアンデッド同士。もとは敵だ。
 つーが封印されたところで、微塵の悲しみも感じない。


「何の用ですか?」


 そこに、スーツ着た一人の男が現れる。
 耳にはピアスをし、腕には鷲のブレスレットを着け、更には指に輝く指輪も。
 身に着けたアクセサリーが多く見られる。
 

( ゚д゚ )「俺に何か話があると聞きましたが」


 現れたのは、以前上級アンデッドの集会に現れたうちの一人の男性。
 彼もまた、上級アンデッドであることが伺える。


ミセ*゚ー゚)リ「あなたに伝えたいことがあるの」

ミセ*゚ー゚)リ「……カリス、のことなんだけど」

( ゚д゚ )「!?カリスの…?カリスがどうかしたのか!?」

ミセ*゚ー゚)リ「それはね……フフフフ……」


 また一つ、他者を利用した新たな企みが生まれようとしている……。

59522話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:34:28 ID:QzhOKDJ.0





     【 第22話 〜甘い花の罠〜 】 終




.

59622話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:34:54 ID:QzhOKDJ.0

==========

 【 次回予告 】 https://www.youtube.com/watch?v=Yyh12l21WkA


( OHO)「ふうっ!!うおああぁッ!!!」

( OMO)「おい…ッ!ドクオやめろ!」

( #OHO)「俺の力だ!俺の力をよこせェッ!!」


 ギャレンの封印したアンデッドの力を求め、理性をなくし暴れ出すレンゲル。


( #OHO)「ぬぅおおおあァッ!!」

( ; OMO)「ぐあっ!?」

( ; OMO)「ッドクオ…!」

( #OHO)「さぁ、早く俺によこせ……そのアンデッドの力を!」

59722話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:35:17 ID:QzhOKDJ.0


( ゚д゚ )「俺のために酒を運んでくれる日が来るとは、夢にも思いませんでしたよ」

( ゚д゚ )「久しぶりですね、カリス。逢いたかった」

川 ゚ -゚)「……アンデッドか」


 また新たな上級アンデッドが動き始める。


( ゚д゚ )「…カリス、あの日交わした約束、今度こそ共に果たそう」

川 ゚ -゚)「約束……?」

( ゚д゚ )「ええ、一万年前の約束ですよ」


 クーとアンデッドとの間に交わされた約束とは一体?

59822話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:36:19 ID:QzhOKDJ.0

 *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『何!?』

( <::V::>)『……?』

( ^ω^)「なんだ…!?」
    。
ミミ/ ゚王゚)『おおおおおおおおッッッ!!』


 自らカリスに襲い掛かったミセリ。
 その手を阻み、カリスを守るようにして現れた新たな上級アンデッド。

    。
ミミ/ ゚王゚)『カリスに手を出すな!!』
  *∧Λ*
∠*;゚`ー´)ゝ『クッ、どういうつもり…!?』

( ^ω^)「どうなってんだお…?アンデッドがカリスを助けた!?」

59922話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:36:58 ID:QzhOKDJ.0


( OwO)「仮面ライダーとしての使命、お前にも背負えるようになったみたいだな!」

('A`)「どうかな……まだ俺にもわからない。でもこれだけは言える…!」

('A`)「俺は、仮面ライダーとしてみんなの笑顔を守りたい!!」


 そして、アンデッドとの戦いに自らの意志で身を投じようとするドクオ。
 その心に秘めた想いは、正義か、悪か。


('A`)「けど……今なら俺は自分の名を堂々と言える!」

('A`)「俺は、三葉ドクオ!そして……仮面ライダー……」

(#'A`)「仮面ライダー、レンゲルだ!!!」


    【 -♣OPEN UP- 】


( #OHO)「うおおおおおおおおおおおおッッ!!!」


 レンゲルに変身し、果敢に立ち向かうドクオ。
 果たして、正義のために戦うことが出来るのか!?


 次回、【 第23話 〜輝く勇気〜 】

 ――今、その力が全開する!


==========

600 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:39:46 ID:QzhOKDJ.0
しおり

>>9 第15話
>>84 第16話
>>152 第17話
>>234 第18話
>>308 第19話
>>372 第20話
>>454 第21話
>>530 第22話


またそのうち

601名無しさん:2018/01/14(日) 18:26:21 ID:LSdCCzbg0


602名無しさん:2018/01/14(日) 22:14:08 ID:eSZ.mNCs0
おお、ジョルジュもかっけぇ。騙されてたけど


603名無しさん:2018/01/16(火) 17:55:39 ID:POqxCq.U0
おぉ乙!
加速して入り乱れてきたねぇ
モスやんのカード使ってでぃちゃん守るの熱いわぁ

604名無しさん:2018/01/18(木) 12:19:06 ID:x8qsNRlI0

最近ブーンに味方が出来てきてなにより
序盤はモララーブレブレだわクーにゃんは襲ってくるわギコは裏切るわでろくなことなかったからなぁ…

60523話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:38:32 ID:iHA3g/GI0





     【 第23話 〜輝く勇気〜 】




.

60623話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:39:12 ID:iHA3g/GI0


( OHO)「ふうっ!!うおああぁッ!!!」

( OMO)「おい…ッ!ドクオやめろ!」

( #OHO)「俺の力だ!俺の力をよこせェッ!!」


 ギャレンが封印したアンデッドのカードを求め、暴徒と化すレンゲル。
 力への執着を露骨に見せ、相手が敵でもないギャレンであろうと構わず襲い掛かる。

 レンゲルラウザーによる攻撃を防ぎ、躱しながら制止の声を掛け続ける。
 しかし、その声は届かない。
 

( #OHO)「ぬぅおおおあァッ!!」

( ; OMO)「ぐあっ!?」


 "♣2のSTAB"の力を保有したままのラウザーの尖端が、とうとうギャレンの胸部を突いた。
 弾き飛ばされながらも、受け身を取りすぐに体勢を立て直す。


( ; OMO)「ッドクオ…!」

( #OHO)「さぁ、早く俺によこせ……そのアンデッドの力を!」


 尖端をギャレンに向けながら、ゆっくりと近付く。
 だが、すぐにレンゲルラウザーはギャレンから逸れた。
 こちらに近付く、一人の男の存在によって。

60723話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:39:44 ID:iHA3g/GI0


(-_-)「もういいだろ、その辺にしとけよ」

( OHO)「……ほう、あんた直々に来てくれるとは話が早いな」


 この状況を察して、ヒッキー自らが駆け付けて来た。
 正体をカテゴリーKだと見破り、その力を一番に欲するレンゲルは、当然その来着を喜んだ。
 レンゲルラウザーを構え、ギャレンを捨てヒッキーに向け走り出す。


( ; OMO)「おい…何をするつもりだドクオ!?彼は人間だぞ!?」

( #OHO)「お前の力が一番欲しいんだよ、俺もカテゴリーAもなァ!!」

( ; OMO)「よせ!!やめろドクオ!!」

( #OHO)「ああああああああああッッ!!!!」


 狂ったように声を張り上げながら、構えたレンゲルラウザーをヒッキーの脳天目掛け一気に振り下ろす。
 だが、眼前まで接近するレンゲルを見ても尚、ヒッキーは引き下がろうとしない。


(-_-)「……チッ、本意じゃないが仕方ねぇ」

(-_-)「わがまま坊やには少しお灸を据えてやらなきゃならないみたいだな…!」

( OHO)「なにッ!?」


 左腕を頭上に翳し、振り下ろされるレンゲルラウザーの尖端を受け止める。
 よく見ると、生身のヒッキーの左腕を覆うようにして風が纏っている。

 そして、攻撃を受け止めたままのヒッキーの姿が、一瞬にして異形の姿へと変貌を遂げた。

60823話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:40:45 ID:iHA3g/GI0


( ; OMO)「何だと……!?彼もアンデッドだったのか!?」

( OHO)「それがお前の本当の姿だな…!」
   。
< \゚皿゚/>『ああ、だが俺はお前と戦うつもりはない』

( ; OHO)「ぐふっ!」


 レンゲルラウザーを払い、異常なまでに発達した右腕から伸びる爪でレンゲルの顔を殴打する。

 遂にアンデッドとしての姿を露にしたヒッキー。
 スパイダーアンデッドを彷彿とさせるような、それに近い姿。
 紫色の身体に、橙色の左腕。
 スパイダーアンデッド同様、橙色のフードが顔を隠している。
 肩に生えた、蜘蛛の足を象った触角。その太さは、まるでタランチュラの如く。


( OHO)「この野郎…ッ!!」


 殴られた頬を抑え、もう一度襲い掛かる。
 ヒュンヒュン、と振るいレンゲルラウザーを構え直し、今度は跳躍しながらの攻撃。

   。
< \゚皿゚/>『はっ!』

( ; OHO)「うっ!?」


 宙に飛ぶレンゲルに向け伸長する左腕から、ヒッキーは蜘蛛の糸を射出。
 蜘蛛の糸が全身を絡め取るように拘束し、身動きが取れなくなったレンゲルはそのまま落下。

 ヒッキーが放った蜘蛛の糸は、拘束を目的としたただの粘着質な糸ではない。
 毒の成分を含み、これに触れた者の身体を麻痺させる効果を持つ。

60923話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:41:28 ID:iHA3g/GI0


( ; OHO)「ぐっ…!か…身体がァ…ッ!」
   。
< \゚皿゚/>『ちょっと苦しいかもしれないが、そのまま大人しくしてろ』


 倒れるレンゲルを見下ろしながら、ヒッキーは人間の姿へと戻る。
 レンゲルは身体が麻痺し、強引に糸をぶち破ろうにも力が入らない。

 苦しむレンゲルをそのままに、ヒッキーは呆然としたギャレンに近付く。
 アンデッドとしての姿を見た以上、ギャレンも警戒心は持ったようで、すぐに立ち上がりヒッキーとの距離を取った。


(-_-)「おいおいやめてくれよ、俺はそういうの嫌いなんだ」

( OMO)「どういうつもりだ、何故人間社会に潜んでいる?」

(-_-)「はぁ……俺は戦いとかしたくないから。争うのも嫌だし、アンデッド同士の戦いなんて昔っから御免なんだよ」

( OMO)「なんだと?」

(-_-)「俺みたいなのは、こうやって平和に過ごす方が性に合ってるってことだ」

( OMO)「……剣藤は知ってるのか?」

(-_-)「知るわけないっしょ。あんたにしろ他の連中にしろ、俺の正体知ったらどうせ警戒するくせに」

(-_-)「俺だってな、一応人との絆は大事にしたいんだよ。
     自分の姿が原因で、せっかく作った関係を崩すのは……嫌なんだよ」

( OMO)「………」


 今ここで全てを否定することが出来なかった。
 ヒッキーのように、人との生活に溶け込んでいるアンデッドを、もう一人知っているから。

61023話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:42:48 ID:iHA3g/GI0


(-_-)「まぁ…信じる信じないは任せる、アンデッドを全て倒すのがあんたらの役目だろうしな」

(-_-)「でもひとつだけ忠告だ」

( OMO)「…なんだ」

(-_-)「そこの坊やには注意しとけ、そいつはカテゴリーAの意志にまんまと乗せられてる。
     そいつがそれを乗り越えるには、そいつ自身の心を強くする必要がある」

(-_-)「そいつの心の闇に光を差してやれ。無理に闇を消す必要はない。
     両方抱えるってことを、あんたらが教えてやれよ」

( OMO)「……何故そこまでドクオを気にかける?」

(-_-)「決まってんだろ?こっちは平和に暮らしたいのに、そいつのせいでそれが脅かされてんだ。
     しっかり管理してくれないと俺が困るんだよ」

(-_-)「じゃ、俺そろそろ仕事戻るから」


 言って、ヒッキーは軽く手を振りながら店に戻って行った。
 ヒッキーの背中を見届けると、ギャレンは変身を解除。
 モララーの姿に戻り、倒れたままのレンゲルに近付く。


( ・∀・)「……ドクオ」

( OHO)「………こんなんじゃ、俺はライダーとしてやってけない」


 レンゲルの身体を拘束していた蜘蛛の糸は、溶けるように消滅。
 上体を起こし、バックルのシャッターを閉じレンゲルの変身を解除する。

61123話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:43:29 ID:iHA3g/GI0


 変身を解除したドクオの顔は、どこか思いつめた表情をしていた。


('A`)「俺は……確かにあいつの言う通り、どこかで正義のために…人を守るために戦いたいって思ってるところがある」

( A )「でも……今の俺は弱い、そのためには力が必要だろ!?
   カテゴリーAが戦い方を示してくれるけど、それだけじゃ駄目なのは俺だって分かるよ!」

( A )「俺にも良く分からないんだよ…!さっきみたいに、力を欲しがるあまり我を忘れるんだ!
   目の前が真っ暗になるみたいに何も見えなくなる!
   でも今は、それが我を忘れてたんだって理解出来る……」

( A )「俺は昔から、何度も人を助けようと思っても行動に移せなかった。自信がないんだ…。
   どうせ何か言われるとか、俺みたいなのに何が出来るんだとか思うと……」

( ・∀・)「……そうか」

('A`)「……けど、どこかでこうも思ってる自分がいる」

('A`)「過去に俺を寄って集って殴り、いたぶり、蔑んだ奴らを許せない…って。
   奴らを見つけ出して、俺が受けたいじめと同じことを…いや、それ以上の報復をしてやりたいって」

('A`)「もう過ぎたことだから…なんて済ませられる程、俺にとっては簡単なことじゃない。
   今目の前に現れて謝られても……許せない自信がある」

('A`)「そんな俺の心に抱えた闇の部分に、カテゴリーAが触れてくるんだ。
   そうすると、許せないって思いが強くなって、強くなり続けて……力を求めて動き出したくなる。
   自分を抑えられなくなって、無性に戦いたいって最近思うようになった……」

( ・∀・)「………」


 ドクオの口から語られる真実。
 カテゴリーAがドクオに及ぼす影響は、やはり悪い方向にしか進んでいないことは確かだ。
 モララーが想像していた以上に、ドクオの問題は深刻だ。

61223話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:45:04 ID:iHA3g/GI0


 だが、決心は着いた。
 これで、きちんとドクオと向き合えるかもしれない。


( ・∀・)「ドクオ」

('A`)「…はい」

( ・∀・)「正義のために、人の為に戦いたい……そう言った君が俺は嫌いじゃない」

( ・∀・)「けど、君はまずライダーとして強くなろうとする前に、人として強くなるべきだ。
      人を救いたいのなら、まず自分の抱える弱さに左右されない精神を持たなきゃならない。
      自分に迷いのある人間が、他の人を救うことなんて出来ないぞ」

( A )「……じゃあどうすればいいんだ!」

( ・∀・)「俺が君に戦い方を教えてやる」

('A`)「え……?」

( ・∀・)「剣藤にもこう言って、結局あいつには何も教えなかったな……。
      でも、あいつは戦いの中で自分の戦い方を身に着けた。君にも出来るはずだ」

( ・∀・)「自分が強くなれば、自分自身の迷いも打ち消せるはず。
      だからまずは君が強くなれ、ライダーの力云々ではない。君自身が強くなるんだ」

('A`)「……出来るのかな、俺に……」

( ・∀・)「やる前から弱音を吐くな!やりもしないで変わることなんて何もないぞ!」

('A`)「……!」

( ・∀・)「どうした、やるのかやらないのか。答えは待たない、今すぐ決めろ」

61323話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:45:45 ID:iHA3g/GI0


('A`)「………やります」

( ・∀・)「聞こえないぞ?」


 一筋の光を見出した。
 未だ身体は痺れるが、それでも強引に起き上がりモララーの前に立つ。
 その真剣な眼差しで、モララーを見つめた。


('A`)「ッ…やります、俺はやる!俺は変わりたい、強くなりたい!
    どんな辛いことにも耐える、耐えて耐えて…そして生まれ変わりたい!!」

('A`)「俺に、戦い方を教えてください!モララーさん!!」


 両手を腿につけ、指先を伸ばし頭を深々と下げる。
 それまでドクオを厳しい目付きで見ていたモララーだったが、ドクオの肩を叩きようやく笑顔を見せた。


( ・∀・)「……その言葉を待ってた」

( ・∀・)「焦らなくて良い、ゆっくりでいいんだ。君が強くなってカテゴリーAを押さえ込め」

('A`)「モタモタしてたらまた誰かがアンデッドに襲われる…ゆっくりなんてしてられません!」

( ・∀・)「……そうだな、君の言う通りだ。剣藤達と共に戦うライダーとして、一日でも早く成長しよう。
      俺も君と一緒に、もう一度鍛錬を積むつもりで臨もう!」

( ・∀・)「お前なら、出来る!」


 かつて、尊敬する先輩や頼もしい仲間、愛する者から言われた言葉。
 今度は、自分がこの言葉を託す番。


('A`)「はい、お願いします!」

61423話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:46:12 ID:iHA3g/GI0





 ―――――




.

61523話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:46:35 ID:iHA3g/GI0


 ――翌日。

 とうとう迎えた母親の再入院日。
 ツンとジョルジュを連れ、見慣れた病室へとやってきた。

 昨日の植物園は、再入院を控える母親との思い出作りにとって最悪な惨事となってしまった。
 もはやゆっくりと観覧することも出来ず、すぐに家に引き返しブーンはケガの治療に努めた。
 でぃは、あの後クーと一緒に別の花屋で、モスに手向ける花を買ったらしい。


J('ー`)し「みんな、荷物まで持たせちゃって悪いわねぇ」
 _
( ゚∀゚)「いいんですってば、まったくお母さんは気ィ遣いだなぁ」

ξ゚⊿゚)ξ「あっという間でしたけど、たくさんお話出来て楽しかったです。
      これからは私達もお見舞いに来ていいですか?」

J('ー`)し「もちろん、来てもらえるだけでありがたいわ」

ξ゚⊿゚)ξ「よかった!何か欲しいものとかあったら遠慮なく言ってくださいね?」

J('ー`)し「ありがとね、ツンちゃん。ジョルジュくん」

( ^ω^)「本当助かるお、僕も来れるときは来るつもりだけど…」

J('ー`)し「……ねぇ、ちょっと息子と二人で話してもいいかしら?」

ξ゚⊿゚)ξ「あっ、はい。じゃあ私達は表で待ってるね」

( ^ω^)「ん?おお」

61623話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:47:10 ID:iHA3g/GI0


 自分の息子が仮面ライダーであることを打ち明けない理由は知っている。
 心配を掛けまいと、あえて言わないのだ。
 自分が育ててきただけあって、考えてることが手に取るように分かる。

 だからこそ、こちらから解いてやるべきだと考えた。


J('ー`)し「ホライゾン」

( ^ω^)「なんだお?」

J('ー`)し「あんた、カーチャンに隠してあんな危ないことしてたんだね?」

( ; ^ω^)「え……何がだお?」


 昨日の戦いのあとでも、ブーンはあえてカーチャンに言わなかった。
 自分がライダーであることを。
 聞かれもしなかったからか、きっとバレてない。勝手にそう思い込んでいたようだ。


J('ー`)し「カーチャンを前にして嘘をつくのはやめな、あんたは嘘はつけないんだから」

( ; ^ω^)「………」

J('ー`)し「あんたが何で隠してたかは分かるさ、心配掛けたくなかったからだろう?
     でもね…あんたが心配なのはいつもの事だよ」

J('ー`)し「さぁ、全部カーチャンに話しなさい」

( ^ω^)「………実は」

61723話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:47:42 ID:iHA3g/GI0


 すべてを話した。
 仮面ライダーになったきっかけ、ツンやジョルジュ達との本当の関係。
 ニュース等で報道される化け物がアンデッドだということ。
 そして……父親であり、カーチャンの元夫であるロマネスクが、仮面ライダーの開発をしていたこと。


J('ー`)し「……そうなんだね、あの人が……」

( ^ω^)「父ちゃんの事もあったから余計言いにくかったんだお」

( ^ω^)「今まで黙っててごめんお…」

J('ー`)し「話してくれたんだから、いいんだよ」

( ^ω^)「……僕は今でも父ちゃんを許せないって思う。周りに止められたけど、きっと殴ってもおかしくなかった」

( ^ω^)「カーチャンは、父ちゃんのこと今はどう思ってるんだお…?」

J('ー`)し「そうねぇ……あの人が何かのために一生懸命になってるのは知ってたよ。
     でも、それと私達の両立が出来なかったのかもしれないね。
     あの人も器用な方ではないから……カーチャン達のことを想って出て行ってしまったのかもね」

J('ー`)し「カーチャンは、今ではなんとも思ってないよ」

( ^ω^)「そっか……」

J('ー`)し「今度はカーチャンが聞く番ね。
     あんたは、仮面ライダーっていうのやってて自分でどう感じてるんだい?」

61823話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:48:41 ID:iHA3g/GI0


( ^ω^)「僕は……仮面ライダーをやって、よかったって思ってるお」

J('ー`)し「……そんなにボロボロになってもかい?自分が死ぬかもしれないんだよ?」

( ^ω^)「大丈夫だお、僕は死なない。それに……」


( ^ω^)「仮面ライダーって、みんながみんななれる訳じゃないんだお。
      僕がその仮面ライダーになれたのは、偶然なんかじゃなくて"運命"だと思ってる」

( ^ω^)「最初はそりゃあ怖かったお……アンデッドだって怖かったし、剣を握るのだって怖かった」

( ^ω^)「でも怖がってる暇なんてなかった。僕が怖がってる間に、目の前の人が傷つき、殺されてしまう……。
      僕達が人間を守らないと、アンデッドによって次々と人が殺されてしまう。
      そんなのは、絶対に見過ごせないって思ったお」

( ^ω^)「だから、ライダーになった僕は人を守らなきゃならない。僕にはその使命があると思ってる。
      どれだけ傷付いても、苦しいこと悲しいことがあっても、全部乗り越えたい」

( ^ω^)「……けど、そんな自分に矛盾してることがあるんだお」

J('ー`)し「なんだい?」

( ^ω^)「カーチャンだから言うお。……クーさんって人、あの人は人間じゃないんだ」

J('ー`)し「え……?」

( ^ω^)「あの人はアンデッドなんだお。人間の姿を借りたアンデッド…僕達が倒さなきゃならない相手なんだお」

( ^ω^)「アンデッドは人間の敵なのに……僕は、クーさんがショボンさん達に抱いてる愛情を信じてしまってる。
      一度は信じることをやめようとして、衝突したこともあった。けど……無理だったお」

( ^ω^)「どうしたらいいのかな……僕は、クーさんを倒したくない。
      でも、アンデッドはいつか必ず倒さなきゃならない……全てのアンデッドを封印するのが僕達の仕事だから」

61923話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:49:15 ID:iHA3g/GI0


J('ー`)し「……まったく、そんなことかい?」

( ^ω^)「そんなこと、って……真面目に悩んでるんだお!」

J('ー`)し「要するに、クーさんはアンデッドでも人間になろうとしてるってことじゃないのかい?」

( ^ω^)「……!」

J('ー`)し「人間だってそうだろう?本当に大事に思ってるものっていうのは、どんな理由があろうと手放せないものだよ。
     アンデッドっていうのがどんなものか知らないけどねぇ…カーチャンは感じたよ」

J('ー`)し「クーさんは無口で自分の感情を表現するのが上手じゃないけど、本当は優しい心の持ち主だ。ってね」

J('ー`)し「仕事とか使命とか、そんなものを考えるから駄目なんじゃないか。
     あんたはクーさんをどうしたいんだい?その答えは、もうとっくに自分で見つけてるはずだよ」

( ^ω^)「………」

J('ー`)し「いいかい?自分が本当に信じたいものを信じなさい。
     形だけに捉われたら、本当に大事なものも見えないよ」

J('ー`)し「自分が本当に後悔しない道を選びなさい」

( ^ω^)「本当に大事なもの……後悔しない道……」


 仮面ライダーであることの使命、それに反する許されない想いに挟まれ、どうしていいか分からなかった。
 けれど、カーチャンの言葉でどこかふっ切れたような、そんな気持ちになった。
 曇っていた心が、晴れた気がする。

62023話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:49:44 ID:iHA3g/GI0


J('ー`)し「あんたがボロボロになりながら戦う姿、カーチャンは誇らしいよ。
     けどね、自分の子が痛い思いをするのはどんな親でも心配するものだよ」

J('ー`)し「だから……無茶だけはしないでおくれよ」

( ^ω^)「……うん、分かってる」

( ^ω^)「僕は一人じゃない。ツンやジョルジュ、モララーさんもいる。何より……僕にはカーチャンがいるお」

( ^ω^)「みんなを守るのが僕の仕事だお、だから…僕は絶対に死なない」

J('ー`)し「うん、ならいいよ」

( ^ω^)「……きっと、父ちゃんとも力を合わせることになると思う」

J('ー`)し「いいじゃないか。あんたももう、過去を引きずらないで前を向きなさい。
     いつまでもあの人に当たり強くしたってしょうがないことだよ」

( ^ω^)「……出来るかなぁ、そんなこと」

J('ー`)し「人を守るため、でしょう?」

( ^ω^)「うっ……痛いとこ突かれたお」

J('ー`)し「ふふふ」


 
 こうして、カーチャンは再び家を離れ、病院に戻った。
 ライダーとしての戦いに明け暮れ、まともに時間を作れなかったブーンにとって、とても充実した時間となった。
 抱えていた悩みも……これで全部ふっ切れた。
 
 また心を新たに、戦いに臨むことになるだろう。

62123話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:50:11 ID:iHA3g/GI0





 ―――――




.

62223話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:50:38 ID:iHA3g/GI0


 その日の夜。
 営業中のバーボンハウスは、いつものように静かに賑わっていた。
 誰も喧しく騒がず、皆が心地良く居られる空間。

 カウンターには、注文を受けた酒をグラスに注ぐショボンの姿が。
 渡辺は客席で注文を伺っている。
 姿の見当たらないクーは、でぃの買い物に付き添い外出中だった。

 ベルを鳴らしながらドアが開かれる。
 ちょうど、買い物に出ていたクー達が帰ってきた。


(#゚ -゚)「ただいま〜」

川 ゚ -゚)「戻りました」

(´・ω・`)「あっ、クーちょっと来て」

川 ゚ -゚)「はい」

(´・ω・`)「帰って来て早々悪いんだけど、あちらのお客様にこのお酒運んでもらっていいかな?」

川 ゚ -゚)「分かりました」


 ショボンの頼みを聞き入れ、用意されたトレーにグラスを置き、指示された客席のもとへと運ぶ。
 その客は、奥の方に一人で座っている。
 背中を向けていて分からないが、ぱっと見た印象では、スーツを着た男性のようだ。 


川 ゚ -゚)「お待たせ致しました」


 トレーの上のグラスを手に取り、客の前にそっと置く。


「ありがとうございます、カリス」

川 ゚ -゚)「……え?」

62323話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:52:32 ID:iHA3g/GI0


( ゚д゚ )「俺のために酒を運んでくれる日が来るとは、夢にも思いませんでしたよ」

( ゚д゚ )「久しぶりですね、カリス。逢いたかった」

川 ゚ -゚)「……アンデッドか」


 カリスの名を強調するこの男……。
 上級アンデッドの集会にも現れ、ミセリと話をしていた男だ。
 クーの顔を見つめると、少しだけ笑ってみせた。


( ゚д゚ )「もちろん、俺達は人間じゃない」

川 ゚ -゚)「私と戦いたいのなら姑息な真似はするな。いつでもやってやる」

( ゚д゚ )「まさか…俺はあの女のような卑怯な真似は嫌いだ。
    誰かを人質に取った平等ではない戦いなど恥ずべきもの。俺達は誇り高き戦士であるべきなのだから」

川 ゚ -゚)「分かっているならいい」

( ゚д゚ )「…カリス、俺があなたの前に現れたのは他でもない

( ゚д゚ )「あの日交わした約束、今度こそ共に果たそう」

川 ゚ -゚)「約束……?」

( ゚д゚ )「ええ、一万年前の約束ですよ」

川 ゚ -゚)「何のことだかさっぱり分からないな」

62423話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:53:41 ID:iHA3g/GI0


 そこに、渡し忘れたお通しを持ったショボンが近付く。


(´・ω・`)「クーごめん、お客様にお通し出すの忘れ――」

( ゚д゚ )「カリス……何を言っているんですか!?俺達は確かに一万年前、約束したはずだ!」

川 ゚ -゚)「知らないと言っている、私は一万年前に他のアンデッドと馴れた覚えは無い」

(´・ω・`)「っ……!」


 だが、ショボンは反射的に足を止める。
 そして、自分の存在がバレないように、物陰に隠れた。


(´・ω・`)(……何を話してるんだ?)


 話している内容が、普通の会話ではないことは理解出来た。
 言い争っているというよりは、何かについて話している。
 内容からしても、二人はお互いに顔見知りだと察する。


( ゚д゚ )「……忘れてしまったというのですか。
    俺達は友であり、互いに認め合う好敵手だったはず…思い出してください」

川 ゚ -゚)「お前の妄想に付き合うつもりはない。……相手ならいつでもしてやるが、また今度にしてくれ」

( ゚д゚ )「そうだ…あなたは何故人間などと暮らしているのですか?こんな下等生物共と…」

川 ゚ -゚)「酒を飲んだら帰れ」

62523話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:54:35 ID:iHA3g/GI0


 それ以上の言葉を無視して、クーは早足で立ち去った。
 男はクーの背中を見つめると、差し出された酒を一気に飲み干す。


( ゚д゚ )「……ふん、確かに美味い。人間の食い物、そして酒は……」

( ゚д゚ )「カリス…何故だ、何故あのように変わってしまった?
    人間など、この地球に生きとし生ける命を無駄にするろくでもない種族ではないか…!」

( ゚д゚ )「あの女の言葉など信用するつもりはないが……」

(´・ω・`)(どういうことだ……一万年前の約束?好敵手?)


 二人の会話は、ただ謎を深めるだけだった。
 だが、同時にクーへ隠し持っていた疑念が、更に増幅する。

 柱に隠れるのをやめ、改めてお通しを男の席へと運び出す。


(´・ω・`)「お客様、こちらお通しになります。遅くなってしまい大変申し訳ございません」

( ゚д゚ )「いえ、急用を思い出したので…私はこれで失礼します。お気遣いいただき感謝します」

(´・ω・`)「あ……いえ」


 男は席を立ち、会計へと向かう。
 あわよくばクーのことを聞こうと身構えたあまり、反応が遅れてしまった。

 疑問を抱きつつも、触れてはいけないと思っていたはずなのに。
 クーが何者なのか…その答えを、求めてしまいそうになる自分がいた。

62623話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:55:37 ID:iHA3g/GI0

 ――――――
 ――――
 ――


( ^ω^)「こんな時間から?」

( ・∀・)「うん、ドクオの希望だからね」


 戦い方を教える。ドクオとそう約束したモララーは、ジャージを着込み夜の訓練に出る準備をしていた。
 時刻は既に21時を回っていて、もちろん他の三人は心配した。


ξ゚⊿゚)ξ「大丈夫なの?」

( ・∀・)「大丈夫かどうかを考えるのは後にするよ、今は自分の出来ることに最善を尽くす。それしか考えてない」

( ^ω^)「ドクオのやつ、本当にやる気なのかお」

( ・∀・)「俺に強く願い出たあいつの心を、俺は信じたいと思ってるよ」
 _
( ゚∀゚)「んだよ、モララーさん急に立派になりやがって」

( ・∀・)「はは、だろ?甘えてばかりだった分、今度は俺が動かないとな」

( ^ω^)「無理しないでくださいお、夜は冷え込むし…アンデッドもいつ現れるか分からないし。
      モララーさんいないと僕一人じゃ大変なんですから」

( ・∀・)「分かってるって、心配するな。一応ベルトとサーチャーは持ってくけど、何かあったら連絡してくれ」

ξ゚⊿゚)ξ「気を付けてね!」


 荷物を纏め上着を羽織ると、言ってモララーは外に出て行った。

62723話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:56:26 ID:iHA3g/GI0

 _
( ゚∀゚)「本当に大丈夫か?ドクオの奴」

( ^ω^)「さぁ……でも、自分でやりたいって目標が見つかったんなら良いことだお」

ξ゚⊿゚)ξ「後はドクオさんの気持ちの問題ね、投げ出したりしなければいいけど」

( ^ω^)「まぁ、モララーさんに任せるお。僕は戦い方とか訓練とかそういうの教えられないし……」


 そう話しながら、ブーンは冷蔵庫の前に移動。
 扉を開け、中から白い箱を取り出すと自分の顔の前にかざし、にやけた。


( *^ω^)「モララーさんには悪いけど、僕はこの間にケーキ食っちゃうお」
 _
( ゚∀゚)「……そうだな」


 ブーンに乗り気になるわけでもなく、静かにそう呟く。


ξ゚⊿゚)ξ「あんた昨日から元気ないけど…まだアンデッドの女のこと引きずってるの?」
 _
( ゚∀゚)「そんなんじゃ……あるよ」

ξ゚⊿゚)ξ「あるんじゃん」
 _
( ゚∀゚)「だってよ…!一目惚れした女がアンデッドだったなんて、ショックだろ……」
 _
( ゚∀゚)「それに俺のせいで大事になっちまったんだ……」

62823話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:57:24 ID:iHA3g/GI0


( ^ω^)「あの女は僕も許せないお。弱みを握ろうとして人を騙して…山羊のアンデッドより残忍な奴だったお」

( ^ω^)「見つけ出したら必ず封印してやるから、ケーキでも食って元気出せお。ほら」


 白い箱からショートケーキを三枚の皿に一個ずつ乗せ、ツンとジョルジュの前に配る。
 椅子に座ると、ふんわりとしたケーキにフォークを通し、一足先に頬張る。

 _
( ゚∀゚)「はぁぁ……あれだけ俺を嫌ってたクーさんにも助けられるしよ、マジで立場がねぇよ……」

ξ゚⊿゚)ξ「はいはい、でもよかったじゃない」
 _
( ゚∀゚)「何がだよ」

ξ゚⊿゚)ξ「クーさん、何だかんだ言ったってあんたも助けてくれたんでしょ?言うほど嫌ってないのかもよ」
 _
( ゚∀゚)「俺を助けたほうが都合が良かったって言ってたぜ……」

ξ゚⊿゚)ξ「それはそれよ、助けられたのは事実でしょ」
 _
( ゚∀゚)「そうだけどよぉ……」

( ^ω^)「もういつまでもウジウジしてんなお、お前のケーキ食っちゃうお」
 _
( ゚∀゚)「ッふざけんな!これは俺のだろ!」

( ^ω^)「じゃあとっとと食って忘れるんだお、男らしくないぞ」
 _
( ゚∀゚)「………ああクソ!」


 自棄になりながらフォークを持ち、ケーキのど真ん中に突き刺す。
 大きな口を開けると、一口で無理矢理ケーキを押し込んだ。

62923話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:59:01 ID:iHA3g/GI0


 一方、ドクオとの特訓をするため待ち合わせ場所に向かったモララー。
 到着すると、そこには既にドクオが待機していた。


( ・∀・)「悪いな、待たせて」

('A`)「いえ、こんな時間なのにありがとうございます」

( ・∀・)「剣藤も言ってたよ、応援してるって」

('A`)「そうですか…よかった、俺のこと嫌いになったかと思ってたから」

( ・∀・)「みんなお前を応援してる。その気持ちにも応えてやらないとな」

('A`)「はい!」

( ・∀・)「さて、早速だけど行きたい場所がある。着いてきてくれ」


 何の変哲もない場所。
 特徴をあげるなら、目の前に何かしらの建物の裏口らしきドアがあるくらいだ。

 すると、モララーがそのドアの前に立つ。
 ポケットから何やらパスのようなものを取り出すと、ドア上部に張られた"立入り禁止"の張り紙にパスをかざした。
 パスを読み込んだのか、ピー、という機械音が鳴ると、鍵の開く音がした。

 ドアノブに手を掛け、その扉を開ける。


( ・∀・)「行くぞ」

('A`)「は……はい」

63023話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:59:33 ID:iHA3g/GI0


 中に入ると、まず目に飛び込んできたのはひとつのエレベーター。
 ドクオは戸惑いながらも、モララーに導かれるままにエレベーターに乗り込む。
 パネルには、一階と地下一階を指すボタンのみ。
 現在地は一階、地下に行くのだろう。


('A`)「あの……どこに行くんですか?」

( ・∀・)「今の君に全てを明かすことは出来ない。けど、君が鍛えるための場所ということだけは言える」


 より不安が募る。
 一体、何が待ち受けているのか。

 地下に到着し、エレベーターのドアが開く。
 落ち着かぬまま、ドクオは先にエレベーターから降りた。

 そして、目の前に広がる光景に驚愕することになる。


('A`)「うわ……なんだここ……!」


 灰色の壁に覆われた、広々とした地下施設。
 スポーツジムなどでよく備えられている、身体を鍛えるための器具が立ち並び、剣や槍を模した棒がいくつもある。
 マットや、バッティングセンターのような設備まであるこの空間。
 ドクオには、とても異端な光景に見えた。


( ・∀・)「ここは、俺が前にいた組織がつくった施設だ。鍛える場所でもあり、訓練を行う場所でもある。
      特別に使用許可をいただいた。君にはここで己を鍛えてもらう」

('A`)「すげぇ……」

( ・∀・)「厳しいものになるぞ、覚悟は決めたか?」

('A`)「…はい、やります!」

63123話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:00:29 ID:iHA3g/GI0

 ――――――
 ――――
 ――


 モララーがドクオを案内したのは、バッティングの設備。
 しかし、手にはグローブを着けている。


( ・∀・)「動体視力…俺がギャレンになるために積んだ基礎訓練のひとつだ」

('A`)「動体視力…?バッティングでですか?」

( ・∀・)「見てろ」


 球を投球する機械が稼動を始める。
 先端に球を乗せたアームがゆっくりと上昇し、一気に振りかぶった。
 豪速球の球が、モララーに向け猛突進していく。

 モララーは動かない。
 100km以上は必ず出ているであろう速度で迫る球。だが、彼にはとてもスローに見えている。


( ・∀・)「―――3!」


 言って、グローブで球をキャッチした。


('A`)「…??」


 何をしているのかさっぱり分からず、困惑すら覚える。
 しかし、モララーがキャッチした球をドクオに向けた瞬間、ドクオは絶句した。

63223話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:01:09 ID:iHA3g/GI0


(;'A`)「!?」

( ・∀・)「分かったか?」

(;'A`)「あんだけ速い球に書いてある数字を……読んだのか……!?」


 見せられている球には、確かに数字の"3"と書かれている。
 モララーが何をしたのかを理解し、驚きが隠せない。
 そして、今からこれを自分がやると考えた途端、諦めの心が生じてしまった。


( ・∀・)「150kmの速球だ。投げられる球に書かれた数字を読み取れ」

(;'A`)「……は、はい……」


 困惑しながらも、渋々手にグローブを装着。
 モララーの立っていた場所にドクオが立ち、今から投げられるであろう豪速球に怯えながら、その時を待つ。

 
 球が投げられた。
 向かい合うにはとても恐ろしい速度の球が、ドクオにあっという間に迫った。


(;'A`)「ごっ、5!!」

( ・∀・)「7!」

(;'A`)「うわっ!!」


 球をキャッチせず、恐怖に耐えかね避けてしまった。
 後ろのネットに跳ね転げ落ちた球をモララーが拾い、ドクオに見せ付けた。

63323話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:02:13 ID:iHA3g/GI0


( ・∀・)「でたらめを言うな。その目でちゃんと視認出来るまで答えるな」


 モララーは、ドクオの後ろで投げられた球の数字を答えていた。
 球に書かれた数字は……"7"。


(;'A`)「ちょ、ちょっと待ってください…!いきなりこれはさすがに無理ですよ!」

( ・∀・)「諦めるのか?出来ないことをすぐに無理と決め付け、簡単に諦めてしまう。それがお前の弱点だ」

(;'A`)「でも……!」

( ・∀・)「でも?だって?ちょっと?そんなことを言うために来たのか?その弱い心がカテゴリーAにつけ込まれるんだ!」

(;'A`)「っ………」

( ・∀・)「最初から出来ることなんて何もない、出来ないから出来るようにするんだ。
      一日も早く成長したいと望むのであれば、このくらいのことやり遂げてみせろ!」

( ・∀・)「でなければ、君はずっと辛い思いをしたままだぞ」

('A`)「………やります」

('A`)「俺は変わりたい……こんな弱い自分と、決別したい!」

( ・∀・)「そうだ、変わりたいという心を持ち続けろ。これは自分との戦いだ、自分の弱い心に抗い続けろ!」

('A`)「はい……!」

63423話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:02:58 ID:iHA3g/GI0


 その日から、ドクオは毎日毎日欠かさず懸命に特訓に励んだ。


( ・∀・)「終わりか?」

(;'A`)「ッ……まだだ!!」

( ・∀・)「ふっ!」 バシィッ!

(;'A`)「うあっ!」

( ・∀・)「立て、まだ棒は俺が持ってるぞ。奪ってみせろ」

(;'A`)「うっ……クソ……」

( ・∀・)「どうした、そんな弱腰で本当に自分の力でアンデッドと戦えると思うのか!?」

(;'A`)「ぐうううう……!!!」

( ・∀・)「行くぞ!」

(;'A`)「ううっ!ああっ…!」


 汗をかき、時には血を流し、悔しさや辛さで涙を流すこともあった。
 モララーの付き添いのもと、厳しい言葉を浴びせられながら。

 それでも、諦めてしまいそうになる心に鞭を打ち続けた。
 変わりたい……そう強く願い、己の心を鍛え続けた。

63523話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:03:39 ID:iHA3g/GI0


 ――――――
 ――――
 ――


 一週間以上が経ち、ドクオは自らバッティングに再び立つ。
 グローブを手に装着し、両足をしっかりと地に着け目の前を見据える。
 

('A`)(来い…!)


 豪速球を生むアームが、球を投げた。
 真っ直ぐドクオに接近する球。
 以前までは、この球にすら怯えて避けてしまっていた。
 しかし、ドクオに避ける様子はない。

 そして……


('A`)「8!」


 パシンッ!と音を放ちながら球をキャッチした。
 球を手に取り、書かれた数字を確認する
 

('A`)「………」

('∀`)「……よし!」


 球には確かに、"8"と書かれていた。
 当てずっぽうでも、感覚でもなんでもない。ドクオの目に、確かに"8"の字が見えた。

63623話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:04:16 ID:iHA3g/GI0


 今度は棒術の訓練。
 モララーが棒を持ち、再びドクオに襲い掛かる。

 以前までは、一方的に殴打されまったく歯が立たなかった。


( ・∀・)「はっ!」

('A`)「――ッ!」


 顔に向け突きつけられた棒先。
 ドクオには見える。モララーが振るう棒の動きが。

 首と身体を瞬時に傾け、突き攻撃を躱す。
 続いて振り下ろされる棒を軽々と避け続け、横薙いだ棒は頭を下げ回避。

 今度は胸部を狙った突き攻撃。
 ドクオはそれを避けつつ……その棒を掴んだ。


( ・∀・)「!!」

('A`)「ふっ!」


 掴んだ棒でモララーを振り払い、返しながら的確に頬を殴打した。


( ・∀・)「うっ…!」

('A`)「見えた……!確かに見えた!」

63723話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:04:50 ID:iHA3g/GI0


( ・∀・)「いいぞドクオ、一週間程度でそこまで身につけるのは素質があるよ」

('A`)「……そ、そうですかね?」

( ・∀・)「もっと素直に喜べ、やっぱり君はやれば出来るんだから。
      君は毎日、長い時間自ら進んで特訓に励んだ。その強い姿勢が…努力が実を結んだんだ」

('A`)「………」


 奪い取った棒を見つめる。
 ドクオには、この棒がレンゲルラウザーに重なって見えていた。
 

('A`)「俺、自分の力で戦えるかな……」

( ・∀・)「そのために今はひたすら努力をするんだ。そうすれば、必ず自分の意志で戦える」

( ・∀・)「だが、まだまだ特訓は終わらないぞ。特訓を続けて、その感覚を磨くんだ」

('A`)「はい!」

( ・∀・)「さて、次は―――」


 次の訓練に臨もうとした時、モララーの荷物から音が鳴り響く。
 ロマネスクより送られた、小型のアンデッドサーチャーだ。
 いち早く音に気付き、荷物の置かれた場所まで走り、サーチャーを確認。


( ・∀・)「アンデッド…!」

('A`)「アンデッド?現れたんですか!?」

63823話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:05:11 ID:iHA3g/GI0


( ・∀・)「ああ、ここからだと近い…君はここで待ってろ!」

('A`)「ッ…俺も行きます!」

( ・∀・)「まだ駄目だ!君は自分を鍛えるのが先だ!いいな!?」

('A`)「でも…!」


 逸るドクオを強引に押さえつけ、モララーは急いでエレベーターへと向かった。
 
 単身残されたドクオは、荷物よりレンゲルバックルを取り出す。
 手に持ったままの棒とバックルを交互に見つめ、唇を噛み締めた。


('A`)「……そうだな、焦るな。一日でも早く成長するために、今は自分を鍛えるんだ」


 アンデッドと戦いたい……不思議と心に湧き上がる戦意。
 それがカテゴリーAによる影響だと、理性を持って察することが出来ただけでも大きな成長だ。
 
 自分にそう言い聞かせ、戦いたい欲望を押さえ込む。
 ドクオは一人、並べられた器具のもとへと移動を始めた。

63923話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:05:33 ID:iHA3g/GI0





 ―――――




.

64023話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:06:42 ID:iHA3g/GI0


 モララーがキャッチした反応とは別の場所でも、アンデッドによる争いが展開されようとしていた。
 それは、クーがセルフガソリンスタンドにて、バイクにガソリンを給油している時に起きた。


川 ゚ -゚)「………」


 相変わらずの無表情だが、少しだけ不機嫌さが伝わる。
 ガソリン特有の不愉快な臭いが鼻につき、自然と眉間に皺を寄せていた。


「随分器用なのね、人間の暮らしにすっかり馴染んじゃって」

川 ゚ -゚)「……逃げた分際でおめおめと私の前に現れたのか」


 クーにかけられる女性の声。
 振り返らずとも、あえて発してきている気配で誰なのかは分かった。
 その瞬間、僅かに不機嫌そうだった顔が、露骨に不機嫌な表情へと変わる。


ミセ*゚ー゚)リ「そんな言い方しなくてもいいじゃない。今日はあなたと話がしたくて来たの」

川 ゚ -゚)「私にはお前とする話はない」

ミセ*゚ー゚)リ「ねぇ……私と手を組まない?」

川 ゚ -゚)「……答える価値も無いな」

ミセ*゚ー゚)リ「そうかしら。あなたと私が手を組めば…他のアンデッドなんて全員…人間だって簡単に滅ぼせるわ」

川 ゚ -゚)「断る」

64123話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:08:03 ID:iHA3g/GI0


 給油を終えキャップを閉じ、一度もミセリを見ることなくバイクに乗るクー。
 ハンドルにかけたヘルメットに手を伸ばした瞬間……、


ミセ*゚ー゚)リ「まったく強情ね……知ってたけど!」

川 ゚ -゚)「!!」


 植物による触手が、クーの手首に巻きついた。
 触手はバイクに乗ったクーを引き摺り下ろそうと力を込め、強引に牽引を始める。

 されるがままに引き摺り下ろされ、硬い地面に受け身を取りながら落下。
 すぐに腰にカリスラウザーを召喚し、バックルにカードをスライドさせた。


川 ゚ -゚)「変身!」
   っ□

    【 -♥CHANGE- 】


ミセ*゚ー゚)リ「やっぱりあなたとの交渉は無理みたいね……ならせめて――」

「――!?うわああぁっ!!」


 全身に花びらを纏い、アンデッドの姿に変化。
 周囲にいた人々がミセリの姿を目にした途端、悲鳴をあげながら一目散に退散。

  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『あなたの持つそのカードだけでもいただくわ…!』

( <::V::>)『話だけではないなら最初から言え……すぐにでも封印してやる!』

64223話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:08:40 ID:iHA3g/GI0


 そこに、サーチャーの反応を駆け付けたブーンが現れる。
 たまたま近くに居合わせ、すぐに到着することが出来たようだ。

 カリスと戦っているのは……植物園でジョルジュ達を人質に取ろうとした、ミセリ。


( ^ω^)「あの蘭アンデッド……!」


 目に入れただけで怒りが沸々と湧き上がってくる。
 バイクから降り、ポーチからバックルを取り出す。
 

  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『さぁ、お前の持つカードをよこせ!!」

( <::V::>)『っく…!』

( ^ω^)「クーさん…!今行くお!」


 ミセリの後頭部にある色白な不気味の顔と入れ替わり、口から無数の花びらを吐き出す。
 接近したタイミングで視界を眩ませられ、カリスは思わず顔を覆った。
 そして、ミセリはゆっくりと近付く。

 危機を感じたブーンは、カードを装填しながらカリスのもとへと駆け出した。


 ――だが、別の何かが、カリスへの障害を取り除いた。

64323話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:09:14 ID:iHA3g/GI0


 突如、上空より吹き荒ぶ風。
 ミセリが吐き出す花びらを容易に吹き返し、カリスを覆っていた花びらは瞬時に消え失せた。

  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『何!?』

( <::V::>)『……?』

( ^ω^)「なんだ…!?」


 上空を見上げる一同。

 そこに見えたのは、カリス達に向け飛翔する別の存在……アンデッドだ。
 骨と化した翼を広げ、猛スピードで接近している。

    。
ミミ/ ゚王゚)『おおおおおおおおッッッ!!』
  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『お前は……!ああっ!?!?』


 カリス達の頭上まで接近し、両手でミセリの肩を掴み持ち上げる。
 そのまま再び上空へ飛翔すると、地に向け一直線に落下を開始。
 隕石が如く急降下するアンデッドは、地上に衝突する寸前で手放し、脳天からミセリを突き刺した。

  *∧Λ*
∠*;゚`ー´)ゝ『ううっ……!!』
    。
ミミ/ ゚王゚)『カリスに手を出すな!!』
  *∧Λ*
∠*;゚`ー´)ゝ『クッ、うう……っどういうつもり…!?』
    。
ミミ/ ゚王゚)『やはりお前の言うことなど信用しなくてよかった、俺に隠れてカリスを襲おうとは…!』

( ^ω^)「どうなってんだお…?アンデッドがカリスを助けた!?」

64423話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:09:58 ID:iHA3g/GI0

  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『ふん、お前も使えない……!』


 伸ばした右手から、数本の触手を伸長。
 カリスを守ったアンデッドに、蠢く触手が襲い掛かる。

    。
ミミ/ ゚王゚)『フンッ!』


 だが、アンデッドは腕に装着した鋭く長い鈎爪にて迎撃。
 軽やかな身のこなしで、すべての触手を払い落とした。

  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『チッ……そう上手くいかないものね……』
  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『けど忘れないほうがいいわ、私の言った事は事実よ!』
    。
ミミ/ ゚王゚)『黙れ!お前は俺が必ず倒してやる!』


 アンデッドの背後に浮遊しながら現れるいくつもの羽根。
 府坂が得意とした羽根の投擲刃を彷彿とさせるその羽根。
 違う点と言えば、投擲刃というよりは手裏剣に近い大きさであること。
 羽根手裏剣が一斉に射出され、敵であるミセリに襲い掛かる。

 対するミセリは、身体を無数の花びらで覆うことで己の身を防御。
 羽根手裏剣が花びらの防御に当たり全て落ち、花びらが風に乗り飛んで行くと同時にミセリも姿を消した。



 姿が消えたことを確認したアンデッドは、呆然と見ていたカリスに近寄る。

    。
ミミ/ ゚王゚)『カリス……ようやくその姿に出逢えた』

64523話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:11:03 ID:iHA3g/GI0


 手や足の形、頭の形や嘴を象る仮面から、鳥であることが伺える。
 両腕に装備している長い鈎爪は、戦士として戦うべく作られたもの。
 骨と化した翼を背に広げ、鋭い目やその出で立ちから気高さを感じる。
 まるで、凛々しい鷲のようなアンデッドだ。

    。
ミミ/ ゚王゚)『思い出してください、一万年前の約束を。今度こそ果たす時が来たのです』

( <::V::>)『お前は、この間の……』
    。
ミミ/ ゚王゚)『俺はミルナという名でこの世界に潜り込んでいます。また何かあれば――』

( ^ω^)「おい!!」


 不可解な状況に、ブーンは思わず動いた。
 ミルナと名乗るそのアンデッドは、ブーンに気付くと上空に飛び立ち、カリスのもとから離れた。
  
    。
ミミ/ ゚王゚)『チッ…約束だぞ、カリス!また逢おう!』


 地上のカリスを見下ろしながら、交わしたという約束を強調する。
 身体を翻し、自在に宙を舞いながらどこかへと飛び去って行った。


( ^ω^)「今の上級アンデッドだよな?何でクーさんを守ったんだお?」

( <::V::>)『………』


    《-♥2 SPIRIT-》


川 ゚ -゚)「………」

( ^ω^)「……前々から思ってたけど、そのカードはなんだ?なんで人の姿に戻るのにカードが必要なんだお?」

64623話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:12:03 ID:iHA3g/GI0


( ^ω^)「それに…約束ってなんだお?あのアンデッドとどういう関係なんだお??」

川 ゚ -゚)「………」

川 ゚ -゚)(何なんだ、あのアンデッドと交わした約束とは……)


 何も語らず、クーはガソリンスタンドに置いたままのバイクへと向かう。
 約束という問いに関しては、本当に答えられなかった。
 ミルナの存在は把握していたにしても、一万年前にミルナと向き合った覚えはない。


( ^ω^)「はぁ……だんまりかお」


 相変わらずの無愛想を貫いた態度。
 分かりながらも、その背中を見つめながら溜息を吐いてしまった。
 
 ブルースペイダーのもとへと戻ろうとした時、ポケットのスマホが着信を報せる。
 

( ^ω^)ロ 「ツン、モララーさんの方はどうだお?」

ξ;゚⊿゚)ξロ [それが……]


 スマホ越しに聞こえるツンの声に、不安の色が帯びているのが分かる。
 

ξ;゚⊿゚)ξロ [ギャレンの反応がなくなったと同時に……アンデッドの反応も消えたの]

( ^ω^)ロ 「え……!?」

ξ;゚⊿゚)ξロ [倒したとしても、こんな反応の消え方はありえないわ……何かあったのかもしれない……!]

( ^ω^)ロ 「急いで行く!引き続き反応を確認してくれお!」

64723話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:12:36 ID:iHA3g/GI0


ξ;゚⊿゚)ξロ [それだけじゃないの!アンデッドが出現した場所、どうやらデパートの中みたいなの。
        さっきまでギャレンと通信してたけど、建物の中は崩壊したまま人の救助が出来てないみたい!]

( ^ω^)ロ 「なんだって…!?建物の中じゃ、アンデッドと戦いながらの救助は難しいお…!」

( ^ω^)ロ 「……分かったお、何とかする!」


 返事を待たずして電話を切った。

 デパートの中…崩壊状況は把握出来ぬものの、内部は決して広くはない。
 ましてや、崩壊したとするなら明かりもないだろう。
 
 そんな状況下で、アンデッドと戦いつつ人命救助は厳しい。
 消防隊を呼ぶ事態にはなるだろうが、来着するまでの救助が肝心。

 




 ツンとの電話を切り、すぐに他の人物に発信するブーン。

 彼は思いついた。
 ギャレンの消息が絶たれ、ブレイドしかいない今……レンゲルの手が必要だと。

64823話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:13:24 ID:iHA3g/GI0


 その発信は、己を鍛えている途中のドクオのスマホに入った。
 着信音に反応したドクオが、汗を拭いながら急いで荷物の置かれた場所まで走り、スマホを取る。

 発信者は、ブーン。
 あれからブーンとのコンタクトを取っていないドクオは、どこが気が重く感じていた。


('A`)ロ 「……よぉ、ブーン」

( ^ω^)ロ [ドクオ、今すぐモララーさんのところへ行け!]

('A`)ロ 「え…?」

( ^ω^)ロ [モララーさんが、ギャレンがアンデッドとどこかに消えたかもしれない!]

('A`)ロ 「なんだって!?」

( ^ω^)ロ [場所は創作デパート、中はアンデッドが暴れたせいで相当荒れてるらしい。
        脱出出来ずにいる人がたくさんいるかもしれないんだお!
        頼む……お前の手が必要だお!]

(;'A`)ロ 「お……俺に人助けをしろってのか!?無理だよ!それに俺はモララーさんに待機してろって言われてんだ」

(;'A`)ロ 「……だいいち、俺に人助けなんて……出来やしない」


 磨いたはずの心に、再び影が差した。
 一週間とは言え、自分の弱さを押し殺して鍛えることに臨んできた。
 先程のように、戦いたいという衝動を抑えることが出来るようになったのは確かだ。

 ドクオに足りないものは、経験。
 今こうして人助けを求めらたことで、経験の無さがドクオの不安を煽ってしまっていた。

 人のために戦いたいと、強く願ったはずなのに。


('A`)ロ 「俺は……どうせ誰も助けられない、人の命なんて救えない……」

('A`)ロ 「俺が助けようとしたって、その人達は――」

64923話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:14:05 ID:iHA3g/GI0


( #^ω^)ロ [いつまで甘ったれてんだお前!!!]

(;'A`)ロ 「ッ……!」

( ^ω^)ロ [お前は人のために戦いたかったんじゃないのか?そのために今自分を磨いてるんじゃないのかお!?]

( ^ω^)ロ [モララーさんはお前を信じた。誰よりも一番、お前が生まれ変われると信じた!
       そんなモララーさんの気持ちをお前は無駄にするのか!?]

( ^ω^)ロ [お前が背負っているのは、自分だけのことじゃないんだ!
       人の命、人の幸せや、人の想い……お前がなりたがってる仮面ライダーってのは、それを守るのが仕事だ!]

( ^ω^)ロ [目の前に救える命があるのに、お前はそれでいいのか!?今やらなくていつやるんだ!?いつ変わろうとするんだ!!]

('A`)ロ 「………」

( ^ω^)ロ [ドクオ、お前の本当の気持ちに正直になれ。お前なら出来る!モララーさんがお前を信じたように僕達も信じてる!]

( A )ロ 「………俺………」

( ^ω^)ロ [頼むドクオ!僕達に力を貸してくれ!]

( ^ω^)ロ [レンゲルの力じゃない……お前が胸に秘めたその想いの力を、僕達に貸してくれ!]

( A )ロ 「…………」


 モララーの想いに目覚めさせられ、ブーンの言葉に気付かされた。
 ドクオの中に渦巻く不安や恐怖は、すべて拭えたわけじゃない。

 しかし今、心の中に広がる闇に――光が差した。


('A`)ロ 「……行くよ、俺。モララーさんのところへ!」

65023話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:14:51 ID:iHA3g/GI0


( ^ω^)ロ [……その言葉待ってたお!]

('A`)ロ 「創作デパートって言ったよな?今すぐ行ってみる…!」

( ^ω^)ロ [僕も後から向かう!先に行ってみんなを助けるんだお!]

('A`)ロ 「分かった…!」


 覚悟を決めた。
 荷物の中から覗くレンゲルバックルを取り出し、カードを見つめた。

 蜘蛛の声が聞こえる。
 
 "――お前は戦うだけの存在であるべきだ。" と。


( A )「うるせぇ……!」

( A )「もうお前の邪悪な力は借りない……お前の指示にも従わない!」



(#'A`)「俺は、自分で変わらなきゃならないんだ!!」


 自分の意志で、心に語りかけてくるカテゴリーAの声を振り切った。
 バックルとカードを持つと、ドクオはエレベーターへと乗り込み、急いだ。
 
 自分の助けを必要としている人々のもとへ。

65123話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:15:46 ID:iHA3g/GI0





 ―――――




.

65223話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:16:45 ID:iHA3g/GI0


 訓練所を出て到着した創作デパート。

 建物自体を外から見る限りでは、何の問題もないように見える。
 だが、建物の中より逃げ出したと思わしき多くの人々が、デパートをただ見つめている光景は異常だった。

 人込みを掻き分け、ドクオは建物の前にグリンクローバーを停める。
 そこには、モララーが乗っていたであろうレッドランバスも停めてあった。


('A`)「モララーさん…!」


 ヘルメットを外し、人々の注目を余所に一人デパートの中に入っていく。


 風除室の時点で、既に電気は消えていた。
 その奥に見える店内も、当然真っ暗。
 何も見えないわけではないが、不安が煽られる暗さだ。
 
 ましてや、この中にアンデッドがいるかもしれない。


(;'A`)「ッ……どこにいるんだよ……!」

(;'A`)「モララーさん!モララーさん!!」


 暗闇の中、大声でモララーの名を叫ぶ。



「……クオ……!」

65323話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:17:10 ID:iHA3g/GI0


('A`)「モララーさん…?」

「ドクオ……!!下だ……!」


 はっきりと、モララーの声が聞こえた。
 その声は、崩れ落ち穴の空いた床を通して下の階から聞こえる。


('A`)「地下か…!」


 周囲を見渡し、頭上に光る緑色のランプを発見。
 瓦礫が落ち足場の悪くなった床を慎重に歩きながら、非常階段へと辿り着く。

 地下に繋がる階段をゆっくりと下り、一階より視界の悪い地下へと出た。


('A`)「モララーさん!!」

( ; ・∀・)「ドクオ…こっちだ……!」


 モララーがかざすスマホの光が、暗闇の中場所を示した。
 足元に注意を払いながらも駆け寄るドクオ。


「………」

「誰か来たぞ…!」


 その周囲に見える、逃げ遅れた人々の姿。
 ドクオの姿を見ると、救助隊ではないことにひどく落胆する人もいた。

65423話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:17:57 ID:iHA3g/GI0


( ; ・∀・)「何故来た、とは言わない。お前を待たせておきながら、みっともないな……うっ!」

('A`)「モララーさん、腕にケガを…!」


 アンデッドに負わされた怪我だろうか。
 服を裂かれ、左腕からは血を流していた。
 モララーの背後には、庇ったであろう母と小さい女の子の親子が動けぬまま座っていた。


( ; ・∀・)「俺の心配はするな……それより注意しろ」

( ; ・∀・)「まだどこかにいるかもしれない、また現れる前にこの人達を逃がせ!」

('A`)「………はい」

( ^ω^)「モララーさん!ドクオ!」


 そこに、後から駆け付けたブーンの声が響いた。
 すぐに非常階段から下りてきたブーンは、ドクオ達のもとへ駆けつけようとする。

 だが、足元より現れた存在によって足止めを余儀なくされてしまう。


『コオオオオオオオオォォォッッ!!』

( ^ω^)「ッ!?」

65523話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:18:22 ID:iHA3g/GI0


 床を突き破り現れたのは、以前取り逃がしてしまったモグラのアンデッドだった。
 
 そう、このデパートの崩壊はすべてこのアンデッドの手によるもの。
 デパートの内部を暴れ回り、多くの人々がいる中で存分に戦うことの出来ないギャレンをも追い詰めた張本人。

 そして今、再びその姿を現した。


( ^ω^)「アンデッド…!」

「きゃああああっ!!」

「ひいっ……!!」


 恐怖に怯える人々。
 ブーンはバックルを装着し、ゲートを射出しながらアンデッドへと突進した。


( ^ω^)「変身!」


    【 -♠TURN UP- 】


( OwO)「ドクオ!僕が抑えてる間に早く避難させるんだお!!」


 ブレイドに変身し、モグラのアンデッドを強引に押し出す。
 壁を崩壊させ、アンデッドが掘ったであろう空洞に突き抜けながら、人々の前よりその脅威を一時的に無くした。

65623話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:19:14 ID:iHA3g/GI0


( ; ・∀・)「今のうちだ、ドクオ……頼む!」

('A`)「は、はい!」


 恐る恐る、モララーが背後に匿っていた親子に手を差し伸ばす。


('A`)「こ、こっちです…!俺が地上まで案内します!」

「あ…ありがとうございます…!」

('A`)「よしよし……もう大丈夫だからな、お兄ちゃん達が助けてあげるから…」

「うん…!」


 女の子を抱え上げ足場の安定した場所に立たせ、母親の手を握り身体を支えるドクオ。
 スマホのライトで足元を照らすよう指示すると、また別の人物のもとへと手を伸ばす。


('A`)「歩けますか?」

「はい…!」

('A`)「こっちです、もう大丈夫ですよ!」

「ああ……ありがとう!本当にありがとう!」


 老いた男性からは、手を握られながら感謝を。
 ドクオに助けられた人々が皆、頭を下げながら感謝の言葉を述べていく。

65723話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:19:47 ID:iHA3g/GI0


 地下で動けない人々は、ドクオの手によって次々と助けられた。
 残るは、モララーを除き奥のほうに見える一人だけ。


('A`)「待たせてすみません!今から――」

「……ドクオ……!」

('A`)「………!!」


 ドクオの名を紡ぐのは、一人の男性。
 その顔がはっきりと見えた途端……ドクオの差し伸べたはずの手が、引き戻された。 
 

('A`)「お前は……」

( ;´ー`)「……そうだよ。お前を昔いじめてた、白根だよ」

(;'A`)「ッ……!」


 そこにいたのは、ドクオが苛まれ続けてきた忌々しい過去を作り出した張本人。
 白根と名乗るその人物は、小学や中学に渡って、いじめ集団のリーダー格として動いていた。

 ドクオの中に、トラウマが蘇り始める。


( ;´ー`)「ドクオ……俺のことなんて助けたくないだろ?だから助けなくていい」

(;'A`)「なに……?」

( ;´ー`)「そのかわり……聞いてくれ」

( ;´ー`)「ドクオ、本当に悪かった…!」

65823話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:20:21 ID:iHA3g/GI0


( ;´ー`)「俺、お前に散々ひどいことしたよ。今更謝ったって許されるとは思ってない」

( ー )「けど……俺、ずっとそのこと後悔しながら生きてきたんだ!
    お前に、謝りもしないでのうのうと過ごしてきたこの時間……お前のことを忘れたことはなかった!」

('A`)「………」

( ;ー;)「本当にごめんな…!俺がバカだった、愚かだったよ…!これは俺への天罰だと思ってる!
     今更お前にとっちゃムカつくよな……遅すぎるよな……」


 涙を見せながら、ひたすら謝り続ける。
 そんな白根を見つめるドクオは、拳を握り締め、歯を食いしばり……今までの怒りを露にした。


(# A )「ッ……当たり前だろ!!!」
     
( ;ー;)「ぐすっ……」

(# A )「俺は……俺はお前らのせいで、この長い時間ずっと苛まれ続けてきたんだ!!
    俺みたいな人間に価値なんかないって、俺みたいなのが頑張ったって……報われないって!」

(# A )「俺みたいな人間は、誰にも感謝されず……誰かを助けることが出来るような人間じゃないって……!
    そうやってずっっっと思い続けてきたんだよ!!お前らにその気持ちが…今更分かってたまるか!!」

(# A )「ッ……けどな……!!」



(#;A;)「ぐすっ…俺みたいな人間を、見捨てずに……向き合ってくれる人がいるんだよ!
     俺みたいな人間でも、やれば出来るって……お前が必要だって言ってくれる人がいるんだ!!」

( ; ・∀・)「……ドクオ……」

(#;A;)「……ここでお前を助けなきゃ、俺は変われない」


 言って、ドクオは引いた手を再び差し伸べる。

65923話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:20:54 ID:iHA3g/GI0


( ;ー;)「っう……本当に悪かった!ドクオ…許してくれ…!」


 泣きながら、白根はドクオの手を掴んだ。
 ゆっくりと立ち上がり、ポケットからなにやら取り出す。


('A`)「……早く行けよ」

( ´ー`)「待ってくれ……これ、受け取ってくれ」

('A`)「??」


 一枚の紙切れ。
 折りたたまれながらも、くしゃくしゃになった紙。
 めくると、そこには電話番号らしき数字が並んでいた。


( ´ー`)「いつかお前に逢った時の為にと思って、長い事持ち歩いてたんだ」

( ´ー`)「みんな俺と同じ気持ちなんだよ……だから、ちゃんと全員で謝らせてくれ!
    そして、やり直そう…!あの時を、ちゃんとやり直させてくれ!」

('A`)「………」


 今までずっしりと、重たいものが圧し掛かっていた心が、一気に軽くなった。
 心の中に差し込んでいた光は大きな光となり……あたたかい光が、広がっていた闇を包み込んだ。




('∀`)「……ああ!」


 無意識に湧き出る笑顔。
 互いに笑いながら、力強く握手をする。

66023話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:21:16 ID:iHA3g/GI0


 白根と共に地上に上がると、表にはたくさんの人々が拍手で二人を迎えた。
 先に逃げ出していた人や、ドクオに救助された人々。

 たくさんの人達の笑顔に、感謝に溢れていた。


「よかった…!本当によかった!」

「君、すごいよ!ありがとう!」

「助けてくれてありがとうございました…!」

('A`)「い、いえ……」


 誰かを助けて感謝される喜びを知らないドクオは、困惑すら覚えた。
 けれど、胸にあたたかく広がる嬉しさ、喜びは確かなものだった。
 
 最初に助けた親子の母がドクオに近付き、深々と頭を下げる。


「本当にありがとうございました…!あの、お名前は…?」

('∀`)「……無事でよかったです!」


 名を語らず、ドクオは再び建物の中に戻る。

 未だ地下で負傷したままのモララーのもとへ戻り、今度こそモララーを助けた。

66123話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:21:55 ID:iHA3g/GI0


('A`)「これで全員です!」

( ・∀・)「ドクオ……強くなったな」

('A`)「……いえ、俺一人だったらあいつに謝られてもきっと許せなかった」
 
('A`)「モララーさんや、ブーンが……俺に気付かせてくれたからです」

( ・∀・)「そうか……なら、何をすればいいか分かるな?」

('A`)「分かってます……俺は――」


 ポーチよりレンゲルバックルを取り出す。
 カードを装填し、バックルを腰に装着。

 曇りのない、真っ直ぐな瞳が、モララーを見つめる。


('A`)「俺は戦います!人を守る、仮面ライダーとして!」

( ・∀・)「そうだ……お前ならやれる!行け!」

('A`)「はい!!」


 大きく頷き、ドクオは走り出す。
 突き破れた壁の奥に広がる闇の中へ。
 けれど、怖くは無い。

 ドクオの頭の中に浮かぶ、人々の笑顔。感謝の言葉。
 みんなの笑顔が、眩しいくらいに輝いて見えた。


('A`)(俺は守りたい……あの笑顔を)

('A`)(みんなの笑顔を、光を守りたい…!!)

66223話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:22:43 ID:iHA3g/GI0

 ――――――
 ――――
 ――


( ; OwO)「ぬうううッ!!!」

『シュウウウゥゥッ…!』


 その奥では、モグラのアンデッドと戦うブレイドの姿が。
 アンデッドの顔面に備わったドリルの放射攻撃を受け、防ぎながらも押されていた。
 大きな右手で側面を殴打され、吹き飛ばされる。


( ; OwO)「うぐっ…!」


 そこに、己の戦う目的を見出した、新たな戦士が現れる。


('A`)「ブーン!!」

( OwO)「ドクオ…!」


 アンデッドを前にしても怯まぬ姿勢。
 腰に光る金色と紫のバックル。鳴り響く待機音が与えるのは、もう絶望ではない。希望だ。


( OwO)「仮面ライダーとしての使命、お前にも背負えるようになったみたいだな!」

('A`)「どうかな……まだ俺にもわからない。でも……!」





('A`)「俺は、仮面ライダーとしてみんなの笑顔を守りたい!!」

66323話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:24:22 ID:iHA3g/GI0


 ♪レンゲル、天地を揺るがし - https://www.youtube.com/watch?v=OsZlNyvhAjI


 両手をパッと前面に構える。
 右手をゆっくりと下げ、変身の構えを取った。


('A`/)「変身!!」



    【 -♣OPEN UP- 】


 強く叫び、両腕をクロスすると勢いよく下げた。
 開いたバックルより射出するゲート。紫色の光が辺りを照らす。
 
 接近するゲートを見つめるドクオの脳内に、一つの言葉が過ぎる。

 "あなたのお名前は?"

 その答えは、ドクオにとって単純なようで複雑。
 一体自分が何者なのか、それすら分かっていなかったことに気付いた。
 思い出に怯え、一歩を踏み出せず、自分などありもしないくせに、仮面ライダーになりたがっていた。
 


('A`)「けど……今なら、俺は自分の名を堂々と言える!」

('A`)「俺は三葉ドクオ!そして……仮面ライダー……」

(#'A`)「仮面ライダー、レンゲルだ!!!」

66423話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:24:44 ID:iHA3g/GI0


 ゲートがドクオの身体を包み込み、レンゲルへと変身させる。
 レンゲルのスーツを纏った両手を力強く握り締め、地を駆けた。


( #OHO)「うおおおおおおおおおおおおッッ!!!」


 腰に提げたレンゲルラウザーを掴み、シャフトを伸長。
 ブレイドに襲い掛かるアンデッドの後頭部を、すべての力を乗せ叩き込んだ。


『ゴギャアウゥッ!!』

( OHO)「大丈夫か!?」

( OwO)「へっ……お前に心配されなくても、僕の方が慣れてるお!」

( OHO)「……そうだったぜ、先輩!」


 差し伸べられた手を掴まず、意地を張り素早く起き上がった。

 拳をぶつけ合うブレイドとレンゲル。
 親友として過ごしてきた二人の関係は、レンゲルを通して崩れかけてしまっていたかのように思われた。
 しかし、無視をせず取り乱し、自分に辿り着いたことで、ブーンとの絆は再び堅く結ばれた。


( OwO)「行くぞ!」

( OHO)「おう!」


 アンデッドに立ち向かう二人。
 モグラのアンデッドは、ドリルを放射し二人の動きを牽制。
 すると、地面を掘り起こしまたも姿を隠してしまった。

66523話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:25:23 ID:iHA3g/GI0


( ; ・∀・)「……ドクオ、剣藤…!」 


 腕を抑えたままのモララーが、崩壊した壁を跨ぎ現れた。
 二人との距離を取り、戦いを眺めている。
 
 ギャレンへ変身しようと思えば出来た。
 だが、腕を負傷したまま戦ったところで足手まといになるだけ。
 二人を信じていればこそ、その決断が出来た。


( OwO)「ドクオ、足元も頭上も注意しろお!」

( OHO)「っ……」


 どこから襲い来るか分からない。
 周囲を隈なく警戒する二人。

 しかし、こちらから見えずとも、モグラのアンデッドは二人の存在を地中の中から察知出来る。
 背中を向けているつもりはなくても、アンデッドにとって背後を取ることは容易だった。


『コオオオオッッ!!』

( ; OHO)「うああっ!?」

( OwO)「ドクオ!!」


 背後を取られ、左手に装着した大きな盾で背中を斬りつけられた。
 モララーのもとへと吹き飛ばされ、地面を転がる。


( ・∀・)「ドクオ!大丈夫か!?」

( OHO)「大丈夫です…!こんな程度じゃやられねぇ!!」

66623話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:25:50 ID:iHA3g/GI0


 地面を叩き起き上がり、手放してしまったレンゲルラウザーを拾い上げる。
 強く握り締め、諦めずにアンデッドに立ち向かうレンゲル。


『フシュウウッ!』
 
( OHO)「ふッ!どりゃあっ!」


 再び放たれるドリル攻撃。
 目の前から接近するそのドリルが、スローで接近する野球の球に見える。
 放たれたドリル全てをレンゲルラウザーで払い落とし、怯むことなく突き進む。


( OHO)「うおおああァッ!!」


 振るいながらしっかりと持ち直し、距離が縮まったアンデッドを尖端の三枚刃で斬りあげた。
 

( OwO)「ふあッ!」

『ググウウゥッ!?』


 ブレイドとレンゲルの波状攻撃。
 レンゲルが大振りな一撃で斬りつけては、ブレイドが懐に入り細かな斬撃を繰り出す。
 アンデッドの背後に回ったレンゲルが背中を叩きつけては、ブレイドは剣を思うままに振り続ける。

 肩を並べる二人。目の前のアンデッドに向け、同時に蹴りを放った。


( OwO)「はあッ!!」

( OHO)「うおおりゃああッ!!」

『コシュウウウゥゥッ…!!』

66723話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:28:01 ID:iHA3g/GI0


 同時に蹴りを受け、アンデッドは尚強く吹き飛ばされる。
 二人の攻撃を受け、アンデッドは弱っている。
 トドメを刺すなら、まさに今が好機。


( OwO)「今だドクオ!」

( ・∀・)「やれ!!」

( OHO)「……よし!」


 ブレイドとモララーに促され、ドクオはカードケースから三枚のカードを引き抜いた。
 縮小したレンゲルラウザーを逆手に持ち、後端のラウザー部分にラウズする。


    《-♣4 RUSH-》 《-♣5 BITE-》 《-♣6 BLIZZARD-》

          《-♣BLIZZARD BREAK-》 


 ラウズしたカードが紋章となり、力となりてレンゲルの身体に宿る。


( OHO)「はっ!!」

『ググッ!?』


 伸ばした手から吹雪を繰り出し、アンデッドの身体を氷結させ動きを封じる。
 両足に冷気を纏いながら、駆け足でアンデッドに向け接近。
 高々と跳躍し、向ける両足から冷気を噴出。
 氷結状態のアンデッドを更に冷気で包み、生み出した氷解の中に閉じ込めた。


( #OHO)「ウオオオラアアアアアァァッッ!!!!」


 "♣4 RUSH"で強化された突進力と"♣5 BITE"で強化された脚力。
 ばたつかせるように動かす両足で、氷を強引に砕きながらアンデッドに強烈な二段蹴りを叩き込んだ。

66823話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:28:31 ID:iHA3g/GI0
 

『グコオオオオオォォッ!!』


 迫り来る蹴りをただ氷の中で見ることしか出来なかったアンデッド。
 ようやく動けた時には、既にレンゲルの必殺技を受け吹き飛んでいる最中。
 
 地面に叩きつけられ転がった後、モグラのアンデッドは起き上がらない。
 ぐったりと倒れたまま、アンデッドのバックルが左右に展開された。


( OHO)「はぁ……はぁ……倒した、のか……?」

( OwO)「そうだお!倒したんだ、お前の意志で!」

( OHO)「……やった……!」


 拳を突き出し、喜びを露にする。
 自分の意志で、自分の戦い方でアンデッドを倒した。その事実が、嬉しくてたまらなかった。


( ・∀・)「ドクオ!ライダーは、倒したアンデッドを封印するものだ」

( OHO)「……でも、俺……モララーさんからカードを奪おうとしたりして……」

( ・∀・)「何言ってんだ!お前が倒したアンデッドだ、お前の手で封印しろ」

( OwO)「ほら、早くやれお」

( OHO)「……分かった」

66923話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:29:41 ID:iHA3g/GI0


 二人に促され、ドクオは引き抜いたカードをモグラのアンデッドに向け投擲。
 倒れたアンデッドの身体に突き刺さったカードが、みるみる吸収を始め瞬く間に封印した。

 レンゲルの掌中に帰還したカードには、"♣3 SCREW"と記され、モグラの絵が描かれた。


( OHO)「ブーン、それにモララーさん……」

( OwO)「ん?」

( OHO)「……ありがとうございました!」


 二人を交互に見渡し、頭を下げる。
 そんなレンゲルに近付き、モララーは肩を叩いた。


( ・∀・)「浮かれるのは早いぞ」

( OwO)「そうだお。覚悟は決まったのか?」

( ・∀・)「お前にはこれから、アンデッドと戦う辛い日々が待ち受けている。それに臨む覚悟は出来たのか?」

( OHO)「はい、覚悟は出来てます」


 ブレイドとレンゲルの変身を解く二人。
 もとの姿に戻り、三人はそれぞれ向かい合った。

67023話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:30:59 ID:iHA3g/GI0


('A`)「俺も戦います。レンゲルとして、人を守るために!」

( ・∀・)「お前には仲間がいることを忘れるな。俺達が、共に戦う仲間だということを」

('A`)「……はい!」

( ^ω^)「じゃあ、三人でこれやっときますか?」


 笑顔を見せながら、ブーンは拳を突き出す。
 それを意味するものが分からず、ドクオとモララーは顔を見合わせた。


( ^ω^)「ライダーが三人揃ったんだから、結束のグータッチだお!」

( ・∀・)「……よし!」


 ブーンが突き出す拳に、モララーが拳を合わせた。


('A`)「ええ……?随分臭いことさせるな。……でも」

('∀`)「そういうの嫌いじゃないぜ!」


 言って突き出す拳。
 三人の拳が合わさり、それぞれ頷く一同。

 こうして、カテゴリーAの邪悪な力を乗り越え、ドクオはレンゲルを自分のものにする事が出来た。
 
 全てのライダーの力は揃った。
 世に蔓延るアンデッドを全て封印する……いつかその日が来るまで、ブーン達はこれからも戦い続ける。

67123話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:31:40 ID:iHA3g/GI0





     【 第23話 〜輝く勇気〜 】 終




.

67223話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:32:10 ID:iHA3g/GI0

=========

 【 次回予告 】 https://www.youtube.com/watch?v=Yyh12l21WkA


ミセ*゚ー゚)リ「私達は他のアンデッドの姿を借りる力なんて持ってないわ。それはカテゴリー2も同然」

ミセ*゚ー゚)リ「それなのに……何故かしらね??」

(; ゚д゚ )「姿は確かにカリスだった……俺が間違えるはずもない」


 ミルナと接触するミセリ。
 謀略のため、再び動き出す。


ミセ*゚ー゚)リ「人間どもが作ったライダーシステム、それと同じものだとしたら?もしくは――」

ミセ*゚ー゚)リ「――あいつの正体が、"ヤツ"だとすれば……?」

67323話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:33:31 ID:iHA3g/GI0


 人間をアンデッドへと変貌させてしまう上級アンデッドが出現。
 アンデッドと孤独に戦う、一人の男と出会う。


( ^ω^)「死んだ人をアンデッドに変化させる力…!?」

(,,^Д^)「そうだ。奴は何らかの力を殺害するときに送り込み、亡骸をアンデッドとして操っている」

(,,^Д^)「ここ最近動き出したアンデッドで間違いない。あんな力を持つアンデッドは他にいない」

('A`)「そんな……じゃあ、そのアンデッドを野放しにしとけば被害者がこれからもたくさん……」

(,,^Д^)「そういうことだ」

( ・∀・)「何故そんなことを君が知っているんだ?君は何者だ?」

(,,^Д^)「……人を守るのはお前達仮面ライダーに任せる。俺は一人で奴を追う」

67423話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:33:57 ID:iHA3g/GI0


 ミルナと対峙するクー。
 カテゴリーAのカードを奪われ、その真実が明るみになる。


(; ゚д゚ )「まさか……あの女の言っていたことは、本当だったのか……!?」

川 ゚ -゚)「貴様……」

(; ゚д゚ )「……お前は何者だ?怪しいとは思ったが、そもそもその姿もカテゴリー2のものだ!」

(; ゚д゚ )「カリスの姿を借り、カテゴリー2の姿をも借りたお前は何者だ!!
     他のアンデッドに変身出来る力……お前が……お前が本当に"ヤツ"なのか!?」

川 ゚ -゚)「………」

67523話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:35:46 ID:iHA3g/GI0


 そして、戦う力を失くしたクーを救うべくブーンが立ち上がる!

    。
ミミ/ ゚王゚)『フッ……人間がアンデッドを守り、またアンデッドも人間を守る。か……。
      まさかお前が人間に媚びを売り生き残ろうとするヤツだったとは、呆れたぞ!』

( ^ω^)「クーは……自分がアンデッドと知りながらも、家族のように接してくれるみんなを心から愛している!」

( ^ω^)「自分が守りたいと願ったものを命懸けで守ろうとしてる。その素晴らしさに、人間もアンデッドも関係ない!!」

( ^ω^)「アンデッドの使命に苦しみながらも、変わることが出来たクーを僕は守りたい!」

( #^ω^)「だから……そんなクーを蔑むようなことは、僕がさせない!!」

川 ゚ -゚)「………お前……」
    。
ミミ/ ゚王゚)『この戦いの中で愛など語るようなアンデッドに、勝たせるわけにはいきませんね!』
 

 人間とアンデッド……時には傷つけ合い、相容れなかったブーンとクー。

 今こそ、二人は力を合わせることが出来るのか!?



 次回、【 第24話 〜大切なもの〜 】


 ――今、その力が全開する!


==========

676 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:38:46 ID:iHA3g/GI0
しおり

>>9 第15話
>>84 第16話
>>152 第17話
>>234 第18話
>>308 第19話
>>372 第20話
>>454 第21話
>>530 第22話
>>605 第23話

677名無しさん:2018/01/28(日) 11:55:40 ID:YyYvT.WY0

ドクオかっけえよお

678名無しさん:2018/01/28(日) 19:48:40 ID:F.b.KnK.0
乙!

679名無しさん:2018/01/29(月) 01:38:00 ID:nQGUhrtM0
第2ラウンド来てたか!
おつ!今から読む

680名無しさん:2018/02/04(日) 11:16:20 ID:2qbBk9dg0
( OwO)…今日は来ない…?

681名無しさん:2018/02/05(月) 03:46:50 ID:rQ/S9e2k0
この文量を欠かさず毎週とはいかんか

682第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:08:19 ID:jvu.zAqQ0





     【 第24話 〜大切なもの〜 】




.

683第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:08:51 ID:jvu.zAqQ0


 夜の街、人で賑わう大きな交差点。
 青の信号の合図と同時に、歩道の人溜まりが一斉に道路へと歩き出す。
 交差点の中心にあっという間に出来る人込み。
 その中に、人の姿をした人ならざる者の姿もあった。


ミセ*゚ー゚)リ(さて、次はどんな手を打とうかしら……)

ミセ*゚ー゚)リ(……そういえば、あのアンデッドは今だ健在なのかしら。気配すら感じないけれど、一体どこに……)


 次なる策を考えている。
 自分の手を汚さず、他者を利用するやり方を。
 そのためなら、どんな面をすることも厭わない。

 ミセリが紛れ込む人込みの中には、"同じ"者がもう一人いた。
 そいつは、ミセリの対向側より歩いてくる。


( ゚д゚ )「――おい」

ミセ*゚ー゚)リ「……あら」


 流れる人込みの中、逆らうように動きが止まる。
 交差点の中心で、二人は向かい合った・

684第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:10:52 ID:jvu.zAqQ0


ミセ*゚ー゚)リ「この間はありがとう、邪魔してくれて」

( ゚д゚ )「偽りの話で俺を欺こうとした分際で、何を偉そうに」

ミセ*゚ー゚)リ「ふふ、私よりカリスを信用してるみたいね?」

( ゚д゚ )「お前などと比べるのも虫唾が走るくらいにな」

( ゚д゚ )「裏でこそこそと手を回し、汚いやり方で勝ち残ろうなどと……自分を恥ずかしいとは思わないのですか?」

ミセ*゚ー゚)リ「ごめんなさい、私はあなた達のように誇り高き戦士ではないの。
      カテゴリーQだからと言って虎女と一緒にされても困るもの」

ミセ*゚ー゚)リ「そんなことより……また新たな疑問が生まれたわ」

( ゚д゚ )「聞くつもりはありませんよ。次カリスに手を出せばお前を真っ先に付け狙う」


 ミセリの横を通り過ぎようとするミルナ。
 だが、不本意にもその足は止められることとなる。


ミセ*゚ー゚)リ「♥のカテゴリー2。あなたも知ってるわよね?」

( ゚д゚ )「……何?」

ミセ*゚ー゚)リ「あれはカリスじゃないと言った私の話を信じないのは勝手だわ」

ミセ*゚ー゚)リ「でも……」



ミセ*゚ー゚)リ「あの女の姿――カテゴリー2の姿から、何故カリスに変身出来るのかしら?」

( ゚д゚ )「――!!」

685第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:11:43 ID:jvu.zAqQ0


ミセ*゚ー゚)リ「私達は他のアンデッドの姿を借りる力なんて持ってないわ。それはカテゴリー2も同然」

ミセ*゚ー゚)リ「それなのに……何故かしらね??」

(; ゚д゚ )「姿は確かにカリスだった……俺が間違えるはずもない」

ミセ*゚ー゚)リ「カテゴリー2の説明はどうつけるつもり??」

(; ゚д゚ )「……何が言いたい?」

ミセ*゚ー゚)リ「人間どもが作ったライダーシステム、それと同じものだとしたら?もしくは――」

ミセ*゚ー゚)リ「――あいつの正体が、"ヤツ"だとすれば……?」

(; ゚д゚ )「ッ……!……まさか……ありえない……!」

ミセ*゚ー゚)リ「どうかしらね?ありえない話でもないと思うけれど」

(; ゚д゚ )「……俺がこの目で確かめる。手出しはしないでください」

「「!?」」


 冷静を保っていたミルナに、戸惑いの色が見え始める。
 背中に生える翼。
 骨と化した翼を羽ばたかせ、ミルナは空へと舞い上がった。


ミセ* ー )リ「………ふふ、もちろんよ」


 静かに不敵な笑みを浮かべ、無数の花びらに包まれる。
 僅かに吹く夜風に乗り、ミセリもまた交差点から姿を消した。

686第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:12:11 ID:jvu.zAqQ0


 同じ夜空の下、別の場所での事。
 

「ハハハハハ!お前それマジか!」

「マジだよ、やべえだろ!?」

「やべぇなそれ!」


 夜の街を歩く三人の若者。
 いかにも不良らしさを主張した服装、髪型、そして態度。
 向かいから人が歩いているにも関わらず、横一列に並び避けようともしない図々しさ。
 配慮のない大声での会話や笑い声は、周囲の人の視線を悪い意味で集め、避けられていた。

 人の目など気にもせず、我が物顔で立ち振る舞い続ける。
 ぶつかりそうになってもお構いなし。ぶつかれば、弱そうな相手を威嚇するだけ。
 
 そんな三人の前に、また一人近付いて来る。


「でよぉ、アイツが見たときには――」



 ドンッ!


 
「って……!」

687第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:12:39 ID:jvu.zAqQ0


「チッ、おい待てコラ!」

「おいおい何ぶつかってんだよてめぇ!」


 一人に対して三人がかりで責めかかる。
 まくし立てながら、ぶつかった相手の肩を掴み強引に振り返らせる若者。


(,,^Д^)「………」


 振り返った顔を見ると、どうやら相手も男のようだ。
 だが、若者たちの威嚇に臆する様子もなく、ただ静かに三人を見つめる。


「おい、ぶつかったんだから謝罪くらいさっさとしろやボケ!」

「怪我してたらどうすんだよ?ああ?金払えや金!!」

(,,^Д^)「………」

「何ダンマリ決め込んでんだ?なめてんのかてめぇ!!」

 
 男の胸倉を掴み、更に脅しをかける。
 それでも男は微動だにせず、見開いた若者たちの目を見続ける。

 そして、口を開いた。


(,,^Д^)「お前達」

「んだコラ?」

(,,^Д^)「気を付けろ、狙われてるぞ」

688第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:13:17 ID:jvu.zAqQ0


「はあ?何言ってんだてめぇ!」

(,,^Д^)「お前達が襲われないことを祈るよ」

「うおっ!?」


 胸倉を掴む手を強引に払い、男は走り去る。
 男が残した謎めいた言葉に、若者たちは怒りを忘れ困惑。


「何だあいつ?」

「頭おかしいんじゃね??」


 あっという間に姿を消した男の背を見ながら、小馬鹿にした言葉を漏らす若者たち。
 後を追う気も失い、再び正面を向き歩き始めようとした。

 だが、謎めいた男の言葉の意味を、すぐに思い知る事になる。



「おい、なんかいるぜ?」

「あ?」


 街灯が薄く照らす道路。
 その薄い明かりに照らされた何かが、目の前から迫ってくる。

 遠目からでも見て分かるのは……黒光りした身体と、全身を覆う爪のような飾り。
 微かに聞こえてくる、荒い呼吸。

 そして、腰に煌く金色のバックル。

689第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:13:51 ID:jvu.zAqQ0


彡,,   彡『フー……フー……』

「……おい、何かコスプレっぽくなくね?」

「だよな……声かけてみるか?」

「マジかよ!ちょっとやばくねぇか…?」

「大丈夫だろ!ちょい行ってみるわ」


 身の程を知らない人間が、異形の者に近付く。
 自分より背丈も身体も大きい相手に向かい、顔を覗き込みながら語りかける。


「おい、こんな時間に何そんなもん着てウロウロしてんの?迷惑考えろや!」

彡,,   彡『フウー……フウー……』

「聞いてんのかよコラァ!!」


 片手を伸ばし、その複雑な形をした胸板を突き飛ばす若者。
 しかし、突き飛ばした痛みを負ったのは相手ではなく、自分の手。


「いって!……は??」


 掌を見ると、突き飛ばした時に当たった装飾部分の形がくっきりと、切り傷として残った。
 血が滲み、血液が溢れ出す。

 そして、目の前の存在から感じる違和感。途端、感じたことのない恐怖に襲われる。


「………」


 ゆっくりと、恐る恐る顔を見上げる。

690第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:14:32 ID:jvu.zAqQ0

  (
彡,,メ皿゚彡『ガルアアアアアアアアアッ!!!』


 異形の咆哮。
 人ではないその声、その存在をようやく把握し、恐怖に陥る若者たち。


「うおおおぉぉっ!?」

「ばっ、化け物…!!」
  (
彡,,メ皿゚彡『哀れな人間共…!恐怖を知らぬ愚か者共め!!』


 目の前の若者の首を掴む。
 人外の力が喉をきつく締め付け、伸びた爪が肌を突き破りそうな程に食い込む。
 口を開き、狼が如く鋭い牙を見せ、露にした若者の喉元に食らいついた。


「ひっ……!た、たすけ……ぎゃあああああああッッ!!」

「ッッ……!!!」


 断末魔の叫び。
 肉が破れ、血が迸る生々しい音が薄暗い夜に響く。
 喉元を食い破られ、息絶えた若者は道路に投げ捨てられる。

  (
彡,,メ皿゚彡『だが……』

「うっ…うわああああああ!!!」

「はっ、はっ、はっ……死にたくない、死にたくない……!」
  (
彡,,メ皿゚彡『傀儡となる貴様等に、恐怖など知る必要はない!』

691第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:15:09 ID:jvu.zAqQ0


 仲間の残酷なる死を目の当たりにし、一目散に逃げ出す若者たち。
 先程までの勢いや傲慢さは無く、死を前にして生にしがみつき恐怖に震える愚か者へと変貌する。
 

「誰か助けてくれー!!」

「誰か!化け物が――」
  (
彡,,メ皿゚彡『ガアアッ!!』

「がっ――」


 走る若者の頭上を飛び越え、すれ違いさまに喉を掻っ切った。
 鋭い爪は、頚動脈など諸とも断ち切る程喉を深く斬り裂き、若者は血を噴出させながら倒れた。
 

「ああああああっ!いやだ、いやだいやだいやだ!!助けてくれええええッ!!」


 一人取り残され、パニックに似た衝動に駆られる。
 諦めかけている自分。それでも生きたいと願う自分を捨てきれず、涙で顔を濡らし失禁しながらも助けを請う。

  (
彡,,メ皿゚彡『死ね!そして俺のために蘇れ!!』


 しかし、無情にも若者の胸を貫く鋼鉄の右手。
 骨を砕かれ、内臓をも引きちぎられた。

 アンデッドに命乞いなど不毛なこと。
 今宵、一体のアンデッドによって三人の若者の人間としての生涯は、無惨な最期と共に閉ざされた。

692第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:15:45 ID:jvu.zAqQ0

 ――――――
 ――――
 ――


 アンデッドの反応を聞き付け、三人のライダーが現場に到着した。
 ブルースペイダー、レッドランバス、グリンクローバーが立ち並び、それぞれの運転者がバイクより降りる。

 だが、時すでに遅し。
 これまで人がアンデッドに襲われてきた中でも、悲惨な光景が薄明かりの下広がっていた。

 肉が散らばり、臓器が見え、血は飛び散っている。


( ; ^ω^)「ッ……ひどすぎる……!」

( ; ・∀・)「…………」


 アンデッドに襲われた人の姿は一番見てきたであろうモララーでさえも、思わず言葉を失ってしまう光景。
 耐え切れず、ドクオは口を抑え嘔吐しそうになる自分を抑えた。


(;'∩`)「うっ……おええっ!!」

( ・∀・)「目を逸らすな!これがアンデッドだ……その目で現実を見ろ」

(;'A`)「ッはぁ…はぁ……、はい……」


 ブーンとモララーは、静かに目を閉じそっと掌を合わせた。
 グロテスクな光景に思わずえずいてしまったドクオも、込み上げてくる吐き気を堪えながら掌を合わせる。

 
( ^ω^)「サーチャーが捉えた反応は、♥のカテゴリーJだった。一体どんな上級アンデッドなんだ……」

( ・∀・)「これまでの傾向だと、上級アンデッドは目的がない限り人を襲わないはず」

( ・∀・)「けど……この殺し方に目的があるようには見えない……」

693第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:16:30 ID:jvu.zAqQ0


(;'A`)「……そ、そろそろ、連絡すべきとこにしましょうよ。警察とか――」


 ドクオが言いかけたその時。


「うっ……」

( ・∀・)「!?」

(;'A`)「な、なんだ!?」


 突如、緑色に発光を始める目の前に転がる遺体達。
 同時に、死んだはずの遺体が意識を取り戻し、呻きに似た声を上げ始めた。


「うううううううう……ッ!!」

「ぐうう……ガ……ガルル……!」

( ; ^ω^)「!?!?」


 発光する遺体の身体が、生まれ変わったかのように瞬時に変化。
 人の色を保っていた肌は灰色にくすみ、服越しでも分かる程に筋肉が膨張。
 小さな口は裂かれたように大きくなり、開いた口から見える、生え並ぶ狼の如く牙。
 頭や腕は毛で覆われ、手には鋭い爪が伸びる。

 人ではなくなった三つの遺体は、新たな生を受け蘇る。
 ゆっくりと立ち上がり、赤黒く大きな瞳が不気味に蠢き目の前の獲物を睨んだ。
 
 まるで、狼人間のような姿。
 死んだ人間が、狼人間となり蘇ったのだ。


( ; ^ω^)「死んだ人が……アンデッドになったのか……!?」

694第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:16:50 ID:jvu.zAqQ0


「ウギャアアアアアッ!!!」

「アオオオオォォォォンッ!!!」


 疑問を余所に、アンデッドらしき化け物に変貌してしまった人間はブーン達に襲い掛かる。
 雄叫びを上げ、遠吠えのような声を張り上げ、三体は同時に動き出した。


('A`)「来る!!」

( ・∀・)「考えるのは後だ!迎え撃つぞ!」

( ^ω^)「どうなってんだお……!」


 揃ってバックルを取り出す三人。
 ありえないことが起きているが、今更ありえないと驚いてばかりでは詮無き事。
 戸惑いを抱きながらも、手に持ったバックルにカードを装填しようとした。


「ギェアアアッ!!」

「グギャアアッ…!」

('A`)「今度はなんだよ!?」


 しかし、三人に襲い掛かろうとした狼人間は、何者かの手によって動きを止められた。
 どこからか響く、銃声らしき音。
 狼人間に被弾したのか、撃たれたと思わしき箇所からは緑色の血を噴出させ、三体の狼人間は悲鳴をあげながら地面に倒れた。

 狼人間が倒れ見通しの良くなった目の前。
 そこに、拳銃らしきものを構えた人間が立っていた。

695第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:17:44 ID:jvu.zAqQ0


(,,^Д^)「大丈夫か?」

( ^ω^)「え……」

(,,^Д^)「さっきの奴ら……化け物の兵隊と化してしまったか」


 先刻、若者の集団に因縁をつけられていた男だ。
 銃を下ろし、狼人間となってしまった亡骸に歩み寄るとしゃがみ込みその身体を撫でた。


( ・∀・)「なんだ、君は」

(,,^Д^)「俺のことなんかより、怪我はないのか?」

( ^ω^)「は、はい……僕達は全然――」

( ・∀・)「君はなんなんだ?この状況の何を知っている?」


 ふと、ブーン達が手に持ったままのバックルに男の目はとまった。


(,,^Д^)「……!それは……仮面ライダーのベルト……!」

(,,^Д^)「そうか……お前達が仮面ライダーだったのか」

( ・∀・)「聞いているのか?俺の問いに答えろ」

(,,^Д^)「ああ…すまない、俺の名はタカラ。お前達が仮面ライダーなら話は早い。
      お前達に話さなければならないことがある」

696名無しさん:2018/02/25(日) 10:17:57 ID:p6SPU4NI0
おーおーおー!第2ラウンド来てるじゃんかよ!

697第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:18:37 ID:jvu.zAqQ0

 ―――――
 ―――

 
 警察が現場に到着し、辺りはたくさんの赤い明かりに照らされた。
 狼人間へと変わってしまった亡骸は発火し、服のみを残して消滅してしまった。
 モララーが仮面ライダーであることを警察に告げると、ブーン達は事なきを得たようだ。

 現場から少し離れた場所で、タカラと名乗る男の話に三人は耳を傾けていた。


( ^ω^)「死んだ人をアンデッドに変化させる力…!?」

(,,^Д^)「そうだ。奴は何らかの力を殺害するときに送り込み、亡骸をアンデッドとして操っている」

(,,^Д^)「ここ最近動き出したアンデッドで間違いない。あんな力を持つアンデッドは他にいない」

('A`)「そんな……じゃあ、そのアンデッドを野放しにしとけば被害者がこれからもたくさん……」

(,,^Д^)「そういうことだ」


 タカラの話に、真剣に耳を傾けるブーンとドクオ。
 だが、モララーだけは違った。


( ・∀・)「何故そんなことを君が知っているんだ?君は何者だ?」


 むしろ、アンデッドについて詳しいタカラの正体を怪しんだ。
 人間に擬態する能力を持つ上級アンデッド。
 目の前のこいつも、アンデッドの可能性は高い……そう睨んでいた。


(,,^Д^)「………」

( ・∀・)「答えられないのか、なら信用は出来ない」

698第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:20:05 ID:jvu.zAqQ0


 答えを出し惜しむタカラだったが、ついにその口を開いた。


(,,^Д^)「……俺の家族は、奴に殺された」

( ^ω^)「……!」

(,,^Д^)「そして、奴は俺の家族を俺の目の前で………あのアンデッドと同じ姿にした……!」
 
( ・∀・)「………」

(,,^Д^)「最近よく報じられる化け物の件は知っていた。だが、信じてなどいなかった。
      そんなものは、退屈な世の中に誰かが流し込んだ真っ平な嘘だと……」

(,, Д )「だが………嘘じゃなかった……!忘れもしない、九ヶ月程前……化け物は俺の前に現れ、両親や妹を殺した!」

(,, Д )「化け物になってしまった家族を撃ち殺す感覚が、光景が……脳裏に焼きついて離れない!」


 腰に提げた、特異な形状をした拳銃を手に取るタカラ。


(,,^Д^)「この銃は、BOARDに携わっていたある女から譲り受けた銃だ。
      普通の銃ではない。アンデッドを倒すことの出来る特殊な銃弾を扱った銃だ」

( ・∀・)「BOARDに携わっていた女……?」

(,,^Д^)「俺は復讐を決意した……この手で、俺の家族を殺したあのアンデッドを倒すと!」

(,,^Д^)「……人を守るのはお前達仮面ライダーに任せる。俺は一人で奴を追う」

699第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:21:16 ID:jvu.zAqQ0


( ^ω^)「待ってください」

(,,^Д^)「……?」

( ^ω^)「タカラさん……その決意を止めるような真似はするつもりはないですお。でも……」

( ^ω^)「僕達と共に、戦ってくれませんかお?」

( ・∀・)「剣藤!?」

('A`)「お前何言ってんだ!?生身でアンデッドと戦うなんて危険だろ!」

( ^ω^)「わかってる。だから僕達と一緒に戦うんだお」

(,,^Д^)「……どういうつもりだ?」

( ^ω^)「分かりますお。大切なものが奪われそうになった時の悲しみや怒り……。
      タカラさんはそれを奪われてしまった、それ以上に深い怒りも悲しみを抱えてるでしょう」

( ^ω^)「でも、もしその復讐を果たして……その先に待ってるものに、一人で耐え切れますかお?」

(,,^Д^)「そんなことどうでもいい!俺はただ、家族の仇を取れればそれで…!」

( ^ω^)「仇をとっても、タカラさんが元気で生きていなきゃご家族は浮かばれない!」

( ^ω^)「確かにライダーの力は、アンデッドに対向出来る大きな力です。でも一番重要なのはライダーの力じゃないんです!
      共に戦う仲間がいなければ……一人だけで戦い抜くことは出来ない!」

( ^ω^)「行動を共にしろとは言いませんお。けど、タカラさんの力になりたいんです。
      アンデッドに果敢に立ち向かうタカラさんの力も、僕達には必要だって感じてます」

(,,^Д^)「………何故、俺にそこまで肩入れしようとする?」

( ^ω^)「人間なら、当然のことですお」

700第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:21:49 ID:jvu.zAqQ0


( ・∀・)「………確かに、君一人でアンデッドに対峙させるのは危険だ。
      それにその銃、BOARDが関係していると言ったな?なら尚更見過ごすわけにはいかない」

(,,^Д^)「………」

('A`)「あの……意外といいもんですよ、こう言ってくれる人がいるってのは」


 それまで強張っていたタカラの表情が、一気に緩んだ。


(,,^Д^)「……ふっ、ライダーの力を持っていながら俺みたいな小さな力が欲しいのか。ライダーってのも、存外大したことないんだな」

( ^ω^)「そんなもんですお」

( ・∀・)「力が全てじゃない。戦いを通して学んだよ」

(,,^Д^)「いいだろう、そこまで言うなら手を貸してやる。
      だが俺は俺の行動をする、あのアンデッドも俺の手で倒す。それだけは忘れるな」

( ^ω^)「はい!」



(,,^Д^)「まったく……お人良しな奴らだ。その甘さが命取りになることだってあるぞ」

( ・∀・)「俺達はともかく、剣藤は人を信じている。どれだけ自分が馬鹿を見ても」

( ・∀・)「百回嘘をつくような人間より、百回騙されて馬鹿を見る人間の方が俺は好きだな」

(,,^Д^)「………」

701第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:22:09 ID:jvu.zAqQ0





 ―――――




.

702第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:22:37 ID:jvu.zAqQ0


 翌日。朝を迎えた栗沢家でのこと。

 
从'ー'从ノシ 「行ってきま〜す!」

(#゚ -゚)ノシ 「行ってきまーす」

川 ゚ -゚)「行ってらっしゃい」

(´・ω・`)「気を付けて行くんだよー」


 ショボン達に見送られながら学校へ向かう渡辺達。
 最近はでぃも小学校へ通うようになり、子供として失われていた時間を取り戻しつつあった。
 今では姉のような存在でもある渡辺と一緒に、毎日学校へ通うのが当たり前だ。


(´・ω・`)「ふう……」


 子供達を学校に向かわせ、今日も一息。


川 ゚ -゚)「食器洗ってきます」

(´・ω・`)「ああ……ありがとう」


 家の中に戻っていくクーに、ぎこちない返事。
 先日の一件から、クーとの距離を無意識に置いてしまっている。

703第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:23:24 ID:jvu.zAqQ0


 以前から、クーの謎めいた外出や行動には疑問を抱いていた。
 けれど、それは触れてはならないと自分に言い聞かせていた。
 正体など知らずとも、今が幸せだったからだ。

 しかし、アンデッドという化け物が世に存在することを知った今。
 クーの口から、アンデッドという言葉を聞いてしまった今。
 あの謎が深まる会話を聞いてしまった今では、クーの正体を知る必要がある。

 ショボンは、意を決していた。


(´・ω・`)「………」


 リビングに戻って見えるのは、食器を一枚一枚丁寧に洗うクーの姿。
 カウンターテーブルの前に立つショボンに、クーが気が付いた。


川 ゚ -゚)「……どうかしましたか?」

(´・ω・`)「……いや、その……」

川 ゚ -゚)「あの、今日の昼頃なんですが――」

(´・ω・`)「クー」

川 ゚ -゚)「?」

(´・ω・`)「答え難ければ答えなくていい。ただ、聞きたいことがある」

川 ゚ -゚)「はい」





(´・ω・`)「………君は、何者なんだ?」

704第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:24:35 ID:jvu.zAqQ0


(´・ω・`)「ごめん、この間聞いてしまったんだ。君がスーツを着たお客さんと話していること……」

川 ゚ -゚)「……!」


 食器を洗う手がピタリと止まった。
 目が露骨に泳ぎ出し、戸惑っているのが分かる。


(´・ω・`)「僕達も被害にあったけど、アンデッドって化け物が関係してるのかい?
      君はアンデッドについて何を知っているんだ?あの化け物と君は何の関係があるんだ?」

川 ゚ -゚)「………それは……」

(´・ω・`)「一万年前、って……どういうことなんだ?」

川;゚ -゚)「………」


 とうとう核心に迫られた。
 隠し続けてきた事実に触れられそうになって、はじめて焦りが生まれる。
 
 本当の姿を暴かれたら、居場所を失う。
 愛するこの家には、もう居られなくなる。
 

(´・ω・`)「答えられないのかい?」

川 ゚ -゚)「………買い出し行ってきます」


 質問を濁らせる行為ほど、疑惑を深めさせるものはない。
 しかし、今のクーにはこれが精一杯の避け方だった。

 食器とスポンジをシンクの上に置き、泡だらけの手をそのままにリビングを出た。

705第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:25:00 ID:jvu.zAqQ0


(´・ω・`)「待ってくれクー!」


 クーの後を追って外へと出る。
 それでも足を止めず無言を貫きバイクへと跨るクーの前に、ショボンが立ちはだかった。


(´・ω・`)「頼む、クー。僕はただ真実が知りたいだけなんだ!君が何者でも構わない!」

川 ゚ -゚)「………」

(´・ω・`)「僕は……いや、あまねやでぃだってそうだ。みんなクーを信用してる。
      クーは僕達の大事な家族だから!」

(´・ω・`)「だから頼むよ、せめて僕には本当のことを話してくれ!」

川 ゚ -゚)「………でも」


 本当のことを話せば、切り捨てられるのが目に見えている。
 自分がアンデッドであることを知れば、その事実を隠し通してまで大事にしてきたものが全て壊れてしまう。
 
 ショボンを信じたいけれど、怖い。怖くてたまらない。
 全てを失う恐怖から、クーは答えられずにいた。







「よしましょうよ、無理に答えを聞き出そうとするのは」

706第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:25:55 ID:jvu.zAqQ0


 割ってはいるように声が聞こえる。
 ショボン達が視線を向けた先に、その男はいた。


(´・ω・`)「あなたは……あの時の?」

( ゚д゚ )「彼女、答えたがっていないじゃないですか」

川 ゚ -゚)「貴様、何の用だ……!?」


 ミルナだ。
 眼鏡を一本の指で上げながら、ショボンに不敵な笑みを見せる。


(´・ω・`)「……すみません、今大事な話をしてますので――」

( ゚д゚ )「その必要はない。あなた達に知る義務はありません」


 眼鏡を外すミルナ。
 同時に、人に擬態する異形の正体をショボン達の前で露にした。 

    。
ミミ/ ゚王゚)『カリスの正体が何なのか……答えを知るのは俺だけでいい!』

(;´・ω・`)「ッ……アンデッド……!?」

川 ;゚ -゚)「貴様ッ……ぐうっ!」


 バイクから降り掴み掛かろうとしたクーを、鈎爪の背で殴打し弾き飛ばす。
 そして、驚いたまま身体を硬直させるショボンの後ろ首を掴み、鋭い眼光で睨み付けた。

    。
ミミ/ ゚王゚)『人間とは不思議な生き物ですね。共存すべき命と共に過ごそうとはせず……ふっ!』

(´ ω `)「うっ……!」

707第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:26:26 ID:jvu.zAqQ0


 ショボンの腹部に叩き込まれる膝。
 瞬時に気絶こそしないが、痛みにうずくまるショボンをミルナは軽々と肩に抱え上げる。


川 ;゚ -゚)「ショボンさん!!」
    。
ミミ/ ゚王゚)『カリス、俺を追ってください。あなたが来るのを待ってます』

川 ;゚ -゚)「待て!どこへ行く!?おい!!」


 翼を羽ばたかせ、宙に浮き空を飛翔する。
 見上げるクーに背を向け、そのまま何処かへと飛び去って行ってしまった。


川 ;゚ -゚)「チッ…!」


 再びバイクに乗り直し、アクセルを踏む。
 まるで追って来いと言わんばかりに放っているミルナの気配を、強く感じる。
 

川 ゚ -゚)(何の真似だ、あのアンデッド……!)

川 ゚ -゚)(カテゴリーA……約束を交わしたと言うカリスに関係があるのか?)

川 ゚ -゚)(いや、そんなことより今はショボンさんを……!)


 ヘルメットを被り、気配に導かれながらバイクを走らせる。
 
 自らがアンデッドでありながら、抱く感情の不可思議さに疑問を抱くこともない。
 たとえ罠であろうが何であろうが、ショボンを助ける。
 
 ただ、その想いだけがクーを動かした。

708第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:26:50 ID:jvu.zAqQ0

 ――――――
 ――――
 ――


 クー達が一悶着起こす少し前に時間は遡る。
 この日もブーン宅には、三人のライダーが集っていた。
 ブーンとドクオが隣合わせに座り、テーブルを挟んで向かいにはモララーが座っている。
 
 テーブルの上に並んでいるのは、トランプとラウズカード。
 中央に並べられたトランプのカテゴリーに合わせ、三人が持つラウズカードが並べられている。


( ・∀・)「まず、カテゴリーA。このカードの力でライダーに変身することが出来る」

('A`)「ふむふむ」

( ^ω^)「ふむふむ」

( ・∀・)「それ以外のカードは、ラウズすることで効果を発揮するものばかりだ。
      このカテゴリー2は武器の威力を強化し、カテゴリー3は腕力を強化する。カテゴリー4は自分の動きを強化するもの」


 カテゴリーを指差しながら、各カテゴリーごとの能力を説明しているようだ。


( ・∀・)「カテゴリー5は脚力、俺達がトドメとして愛用してるカードだな。
      カテゴリー6は属性をもたらす力を持つ。このカードを軸にして戦うことも多いだろう」

('A`)「ふむふむ」

( ^ω^)「ふむふむ」

( ・∀・)「カテゴリー7は、剣藤が前に使ったな。物質の特性を得ることが出来る。
      カテゴリー8は敵の動きを抑制する力を持ち、カテゴリー9は高速移動や分身と言った戦闘力の補助だ」

('A`)「ふむふむ」

( ^ω^)「ふむふむ」

( ・∀・)「……剣藤は聞かなくてもいいだろ?」

( ^ω^)「いやぁ何となくで使ってたから、改めて聞くとなるほどな〜って感じですお」

709第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:28:47 ID:jvu.zAqQ0


( ・∀・)「そしてカテゴリー10、超能力的な力を得ることが出来る」

( ^ω^)「カテゴリー10って使ったことない……ていうか持ってないお」

('A`)「………俺は持ってる」

( ・∀・)「そうだ。特にこの、♣のカテゴリー10」


 トランプのカテゴリー10に合わせて並べられた、"♣10のREMOTE"。
 封印されたアンデッドを解放し操ることが出来るという、危険過ぎる力を持つ。


( ・∀・)「このカードについては、もうお前達も理解してるよな?」

( ^ω^)「はい……もう散々でしたお」

(;'A`)「……すみません」

( ・∀・)「カテゴリーごとの能力はこんなものだ、使い方は追々覚えればいい。
      だがドクオ、お前は特に気を付けろ。このリモートの力だけは安易に使うな。いいな?」

(;'A`)「はい……あの、二人が封印した上級アンデッドの力は?」

( ^ω^)「ああ……これか」

( ・∀・)「ラウザーのポイントがチャージされるだけだ、今のところはそれ以外使い道はない」


 ブーンは♠のカテゴリーQを、モララーは♦のカテゴリーJを手に取る。

710第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:30:13 ID:jvu.zAqQ0


('A`)「そうなんですか……じゃあ、カテゴリーAは一体なんで俺に♣のカテゴリーKを封印させようとしたんだ?」

( ^ω^)「♣のカテゴリーK……!?また新しいカテゴリーKが現れたのかお!?」

('A`)「あ……いや、その」


 ブーンはまだ知らない。ヒッキーが♣のカテゴリーKであるという事実を。
 思わず口が滑ってしまい、しどろもどろになる。


( ・∀・)「……けど、戦いを忌み嫌う変わったアンデッドだったな。そういうアンデッドは、今は無理に構う必要はない」

(;'A`)「そ、そうですね!」

( ^ω^)「へえ……まるでモスみたいなアンデッドだな」


 モララーの機転が効いてか、話は何とか上手く収まった。
 ドクオは一息つき、胸を撫で下ろす。


('A`)「……俺にも上級アンデッド、倒せますかね?ブーンはまた新しい上級アンデッドに逢ったんだろ?」

( ^ω^)「逢ったけど……何だか良く分かんないお。クーさんと関係してるのか何なのか。
      人間を好んで襲うようなことはしないアンデッドというか……何かこう、紳士的なアンデッドだったような」

( ・∀・)「上級アンデッドは確かに強い、無理に戦いに挑んだところで危険だ。そう焦らなくていい」

('A`)「でも、倒せるようにならないと……じゃないと足手まといになっちゃうし、ブーンだけに任せるのは……」

( ・∀・)「大丈夫だ。剣藤は強い」

( ・∀・)「お前はカテゴリーAに操られ……俺は恐怖心に負け、ライダーシステムの弊害に呑み込まれた。
      けど剣藤は最初からライダーシステムを使いこなし、アンデッドとの融合係数も高い」

( ・∀・)「俺達にはない力が、剣藤にはあるんだろう」

( *^ω^)ヾ「フ……フヒヒwwそう言われると照れるお」

711第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:31:12 ID:jvu.zAqQ0


('A`)「はは、まったく頼りにしてるぜ」

( ^ω^)「お前も頼りにしてるお」

d('A`)「おう、任せとけ。こう見えて俺はヒーローの素質があるっておばあちゃんに言われながら育ってきたんだ」
 _
( ゚∀゚)「すぐ調子に乗るんじゃねーよバカ」

('A`)「おばあちゃんが言っていた…ってやつだよ!知ってるだろ?カブトムシのヒーロー!」

('∀`)/ 「俺もああなりてぇな〜、こう手をかざしてクールに決めてさぁ」

ξ゚⊿゚)ξ「そんなことしなくても、もうドクオはみんなのヒーローよ」

(*'A`)「えっ…?そうかい??お、俺がみんなのヒーローなのかい??」
 _
( ゚∀゚)「ヒーローなんだからもっとみんなのために頑張ってくれないとなぁ?」

( ^ω^)「そりゃそうだ、ヒーローはみんなのために頑張るもんだお」

(*'A`)「お、おう!任せておけよ!ツンちゃん身体凝ってないかい?ひ、ヒーローが揉んで差し上げるぜ??」

ξ#゚⊿゚)ξ「むり」



( ・∀・)「どうやって空飛びながら揉むんだ?」

(*'A`)

('A`)「は??」

( ・∀・)「ヒーローは空飛ぶものだろ?飛びながらマッサージじゃ相手が落ちちゃうだろ」

ξ;゚⊿゚)ξ「何言ってるの?」
 _
( ゚∀゚)「ヒーローが空飛ぶイメージを当たり前みたいに言わないでくださいよ」

712第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:32:00 ID:jvu.zAqQ0


 その時、和気藹々とした空気を切り裂く無情な音がリビングに響き渡る。
 全員の視線は一斉にPCに向けられ、ツンは直ぐにサーチャーの反応に目を通した。


ξ゚⊿゚)ξ「カテゴリーJの反応をキャッチ!場所は……バーボンハウスに近いわ!」

( ^ω^)「バーボンハウス!?」
 _
( ゚∀゚)「おいおいまたかよ!?」

ξ゚⊿゚)ξ「この間の蜻蛉アンデッドのときみたいに、バーボンハウスから離れてってる……まさか」
 _
( ゚∀゚)「また誰か攫われたか…!?」

( ^ω^)「カテゴリーJ……もしかして、あのアンデッドがそうなのか!?」


 カリスを守った鷲のアンデッドを思い出す。
 クーとの関係性に疑いが残る中、バーボンハウス付近に出没したとなれば可能性は高いと読んだ。


( ^ω^)「行ってくる!二人は待機しててくれお、また例のアンデッドが出たときのために!」

( ・∀・)「あっ、おい!」


 呼び止める声は届かず、既に玄関の扉が開かれた音が聞こえる。
 後を追うことはせず、窓からブルースペイダーを走らせるブーンを見送った。

713第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:32:20 ID:jvu.zAqQ0





 ―――――




.

714第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:32:54 ID:jvu.zAqQ0


 ミルナの気配を追ってクーが到着したのは、観光スポットとしても有名な吊り橋のある崖。
 見下ろすことで見ることが出来る、岩崖に打ち付けられる波はとても迫力がある。
 
 バイクから降り、足場の悪い岩を素早く踏み進んで行く。
 崖まで進むと、そこに奴はいた。


( ゚д゚ )「カリス、待っていました」


 だが、ショボンの姿が見当たらない。
 ミルナは確かにショボンを背負い、クーから逃げていたはず。


川 ゚ -゚)「貴様……ショボンさんは何処だ」

( ゚д゚ )「あの人間のことでしょうか……カリス、何故人間を庇おうとする?」

川 ゚ -゚)「貴様には関係ない。何の目的があってこんな事をする?」

( ゚д゚ )「あなたの正体を探っていたからですよ。邪魔だろう?そんな奴。
     人間如きが、俺達の神聖な戦いを汚している……許せなくはないか?」

川 ゚ -゚)「ショボンさんは何処にいる?」

( ゚д゚ )「カリス……目を覚ましてくれ、俺達はこの戦いに誇りを持っていたはずだ!」

川 ゚ -゚)「居場所を吐かぬのなら力ずくで聞き出してやる」


 腰にカリスラウザーを召喚。
 ミルナを睨み、取り出したカテゴリーAのカードを構えた。

715第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:33:50 ID:jvu.zAqQ0


( ゚д゚ )「……!ふっ!」

川 ゚ -゚)「ッ!?」


 ミルナが投げ飛ばした羽根手裏剣。
 構えたクーの右手に直撃し、カテゴリーAのカードを掴んだ羽根はミルナのもとへ帰還した。

 奪ったカードに目を通すミルナ。
 そして、大きな衝撃を受けることになる。


(; ゚д゚ )「……!!……これは、マンティスアンデッド……カリス!!」

(; ゚д゚ )「まさか……あの女の言っていたことは、本当だったのか……!?」

川 ゚ -゚)「貴様……」
 
(; ゚д゚ )「なんてことだ……!!カリス、あなたは……こいつに封印されてしまったというのか!?」


 カテゴリーAのカードを、"カリス"と呼び続けるミルナ。

 カリスとは、クーがカテゴリーAに変身した姿を指すものではなかった。
 ♥のカテゴリーA・マンティスアンデッド。カテゴリーAの中でも最強と謳われたアンデッドの、呼称に過ぎなかったのだ。

 カードを前に動揺を隠せず、悲しげにカマキリが描かれた絵柄を指の腹で撫で続ける。
 しばらくカードと向き合った後、ミルナはゆっくりとクーを睨み付けた。


(; ゚д゚ )「……お前は何者だ?怪しいとは思ったが、そもそもその姿もカテゴリー2のものだ!」

(; ゚д゚ )「カリスの姿を借り、カテゴリー2の姿をも借りたお前は何者だ!!
     他のアンデッドに変身出来る力……お前が……お前が本当に"ヤツ"なのか!?」

川 ゚ -゚)「………」

716第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:34:34 ID:jvu.zAqQ0


(#゚д゚ )「答えないのか……お前が"ヤツ"だろうと構わない。カリスを利用し、その名と力を騙った罪は重い!」

(#゚д゚ )「カリスの仇だ……!俺達の約束の邪魔をしたお前には――」
    。
ミミ/#゚王゚)『罰を受けてもらう!!』

川 ゚ -゚)「チッ……!」


 アンデッドの姿となり、背後に浮遊させた羽根手裏剣を一枚ずつ射出。
 クーは手裏剣による遠距離攻撃を瞬時に避け、岩場を器用に飛び移りながら後退。

    。
ミミ/#゚王゚)『お前だけは許さん…!』
 
川 ゚ -゚)「アンデッド同士に友情など抱く方が間違っている」
    。
ミミ/#゚王゚)『黙れ!ならば人間と仲良く過ごすお前は何だ!?アンデッドであるはずのお前が!!』

川 ゚ -゚)「ッ!!」


 ミルナ自身が飛翔し、空いた距離を一気に詰める。
 反射的に両腕を構え防御の姿勢を取るクーだが、頭上を通過しながら鈎爪を振るわれ腕を斬りつけられた。


川 ゚ -゚)「くっ……」
    。
ミミ/ ゚王゚)『どうした、何故あの姿にならない?戦うつもりはないのか!?』

川 ゚ -゚)「なるつもりはない」
    。
ミミ/ ゚王゚)『何……?」

川 ゚ -゚)「だが、相手はしてやる……別の力で」

717第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:35:18 ID:jvu.zAqQ0


 戦いの火蓋は切って落とされた。
 そこに、ミルナの反応を辿って急行したブーンが駆けつける。
 クーのバイクの横にブルースペイダーを停め、足場を慎重ながら急いで歩き渡る。


( ^ω^)「クーさん……あいつ、この間のアンデッド!」


 ミルナと向かい合うクーの姿が見える。
 腰に見えるカリスラウザーから、まさに今戦いが始まると察した。

 だが、カリスへ変身すると思われたクーに、異変が起きる。





川 ゚ -゚)「変身」
  っ□

    【 -♥REFLECT- 】


 カリスへ変身する時のように発生する透明のオーラ。
 飛沫となってはじけ飛ぶオーラの中から現れたのは……。


( ; ^ω^)「!?!?」
    。
ミミ/ ゚王゚)『貴様、どういうつもりだ!?』



( ; ^ω^)「どうなってんだお…!?モスに変身したっていうのか!?」

718第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:35:58 ID:jvu.zAqQ0


 クーが変身したのは、カリスではなく別のアンデッドの姿。
 "♥8のREFLECT"のカードをラウズしたことで、モスの姿へと変身した。
 腰にはアンデッドバックルではなく、カリスラウザーが巻かれている。


( ; ^ω^)「……んぐぐ、悩むのは後だお!変身!」


    【 -♠TURN UP- 】


 カリス以外の姿への変身を目の当たりにし、驚きを隠せないブーン。
 困惑を押し殺し、装着したブレイバックルのハンドルを引きブレイドへと変身した。

 ブレイドの存在に気付いたミルナは、羽根手裏剣でブレイドを牽制しつつクーを攻撃。


( OwO)「うおっ!?」
    。
ミミ/ ゚王゚)『仮面ライダーのおでましですか、アンデッドでありながら人間の助けを得ようとは!』

ノ( ゚ニ>)『チッ……カリスに比べれば、やはり力が劣る……』


 発生させた鱗粉でダメージを軽減しながら抵抗を試みるも、下級アンデッドであるモスの力ではミルナに太刀打ちは不可能。
 通す攻撃一発一発を当てたところで、ミルナは怯む様子はない。
 翼で起こす風で鱗粉を吹き飛ばされ、胸部を両腕の鈎爪で二度裂かれた。


ノ( ゚ニ>)『うぐっ…!』

( OwO)「クッソ…!鬱陶しいお!」


 ブレイラウザーを抜き、二枚のカードを選択。
 次々と迫る羽根手裏剣を突破する方法を思いついた。


    《-♠4 TACKLE-》 《-♠7 METAL-》

719第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:36:45 ID:jvu.zAqQ0


 身体を鋼の力で硬化させ、強化された突進力で羽根手裏剣を強引に押し退ける方法。
 日の光を受け身体を輝かせながら、ブレイドは岩場を駆け抜ける。


( OwO)「おおおおおおおおおおッ!!!」


 身体に当たる羽根手裏剣をもろともせず、ことごとく跳ね落とす。
 クーを攻めるミルナに接近すると、肩から体当たりを狙い全ての体重を乗せ突進した。

 しかし、ブレイドに気付いたミルナはクーを蹴り飛ばし素早く宙に浮遊。
 突進を容易に躱したまま、宙に浮いたままカリスのカードを二人に見せ付けた。


( ; OwO)「わああっ!」
    。
ミミ/ ゚王゚)『カリスは俺がもらう!必ず封印を解く手段を見つけてみせる……あの人間は返してやる、ついてこい!』

( OwO)「おい!待てお!」

ノ( ゚ニ>)『チッ……』


 ミルナはそのまま宙を移動し、崖の下へと飛び去った。
 モスは毒蛾。空を飛ぶことは可能だが、鷲であるミルナに到底追いつけるはずもない。

 ブレイドは、ミルナの背を見つめるクーのもとに近付き、モスである姿を怪訝な目で見つめる。


( OwO)「クーさん、どういうことだおこれ……」

ノ( ゚ニ>)『カテゴリーAを……いや、まずはショボンさんを助けなければ』

( OwO)「え……ショボンさんに何があったんだお!?」

ノ( ゚ニ>)『お前に構ってる暇はない!』


    【 -♥SPIRIT- 】

720第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:38:13 ID:jvu.zAqQ0


 ブーンを余所に、クーはバイクのもとへと走った。
 ブレイドの変身を解除し、バイクに跨るクーの前の行く手を阻むように立ち塞がる。


( ^ω^)「ちょっと待ってくれお!もしかしてまた攫われたのかお?」

川 ゚ -゚)「あのアンデッドは人質を取るような事はしない、きっとヤツのもとに居るはず。退け!」 

( ^ω^)「あのアンデッドとまた戦うことになるお!カリスの力がないと無理だ!」

川 ゚ -゚)「お前には関係ない」

( ^ω^)「クー!!」


 怒号が、急くクーを静まらせた。
 合わせようとしなかった目線を向け、ブーンの目を真っ直ぐに見つめる。


( ^ω^)「関係あるとかないとか、僕はそんなつまらないことで動いてるわけじゃない!!」

( ^ω^)「いいか?カテゴリーAは僕が取り返す、クーはショボンさんを助けるんだお」

川 ゚ -゚)「何故お前がカテゴリーAを取り返す?何のために?」

( ^ω^)「そうしなければ、クーが傷付いてしまうから」

川 ゚ -゚)「私が傷付くから……?私はアンデッドだ、人間の敵だ。何故アンデッドの心配などする?」

川 ゚ -゚)「人間の敵の心配などして、何の意味がある。私はただアンデッドであることを証明するために――」

( ^ω^)「そうやって自分に言い聞かせて、本当の心に嘘をついてるんだろ?」

川 ゚ -゚)「何…?」

721第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:39:20 ID:jvu.zAqQ0


( ^ω^)「アンデッドであることを証明するために戦うって言いたいんだろ?アンデッドなら、そんなことを考えながら戦ったりしないお」

川 ゚ -゚)「………」
 

 図星を突かれたことが、自分でも痛いほどに感じる。
 確かに、人間と共存する前までの自分は、アンデッドとしての証明のために戦ってなどいなかった。

 それほどまでに、人間に毒されてしまったのか。
 ブーンが言うように、本当の心に嘘をつこうとしているのか。
 アンデッドでありながら、誰にも言えぬ許されない思いを抱いてしまった己の心に。


川 ゚ -゚)「……いつまたお前達に襲い掛かるか分からないんだぞ?
     カテゴリーAを取り返して……アンデッドの手助けなどして、お前に何の得がある?」

( ^ω^)「人を愛する心に、平和を愛する心に人間もアンデッドもないお」

( ^ω^)「アンデッドはみんな敵だと思ってた、人間を襲う絶対的な悪だと……。
      でも、クーやモスと出会ってその概念に疑問を持ち始めたお」

( ^ω^)「僕は仮面ライダーとして人間を守る義務がある、だから戦い続けなきゃならない。
      けど、クーやモスのようなアンデッドと戦おうとは思わない。むしろ、守りたい!」

( ^ω^)「それに、ショボンさん達を想うからクーさんを信じるんじゃない。僕はクーさんを……いや、愛川クーを信じるんだ」

川 ゚ -゚)「……何故だ、何故そんなに私を信じようとする……?」

( ^ω^)「信じたいから信じる、それだけ。形に捉われてしまったら、本当に大事なものは見えてこないお」

川 ゚ -゚)「……!」


 真っ直ぐ過ぎるブーンが、眩しくも見えた。
 自分の心に素直になることが、どれ程心地良いものだろう。
 人間もアンデッドも関係ない……その言葉に胸を打たれてしまった自分がいることを、認めたくはなかった。

722第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:39:50 ID:jvu.zAqQ0


川 ゚ -゚)「……ヤツの気配を感じる。この崖を下った場所だ」

( ^ω^)「お?」

川 ゚ -゚)「ついてくるなら勝手にしろ、私は行く」

( ^ω^)「……おう!」


 アクセルを踏み道を遮るブーンを払い除ける。
 ヘルメットを被り、見られることを拒んだ己の表情を隠した。


川 ゚ -゚)「勘違いするな。別にお前と馴れるつもりはない」

川 ゚ -゚)「ただ……お前が私をアンデッドだと拒絶するつもりがないのなら、敵対もしないだろう」

川 ゚ -゚)「お前とはそれ以上も以下もない、それだけだ」

( ^ω^)「分かってるお、クー。……って、呼んでいいかお?」

川 ゚ -゚)「好きに呼べ」


 不器用に返答すると、ブーンを置き去りにバイクを走らせた。
 ミルナの気配がする崖の下へと向けて。


( ^ω^)「……よし」


 一人で大きく頷き、ブルースペイダーでクーの後を追い走り出す。

 クーの答えに希望と勇気が沸いてか、より一層前向きになった気分。
 ライダーとして戦っていた最初の頃の孤独感や迷いは、今のブーンには微塵も残っていなかった。

723第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:40:27 ID:jvu.zAqQ0

 ――――――
 ――――
 ――


 崖下の海に面した平らな陸地。
 その岩場には、連れ去られたショボンが気を失った状態で倒れていた。
 
 倒れたままのショボンに近付き、憎き心を押さえ込みながら見下ろすミルナ。

    。
ミミ/ ゚王゚)『……あなた方人間は憎き存在ですが、こんな卑怯な形で利用してしまったことは詫びましょう。
      己の信念を汚してまでも、確かめたい真実だったのです』

(´-ω-`)


 気を失ったショボンに言葉を掛けるが、当然反応はない。
 迫り来る二人の気配を感じると、ミルナは仁王立ちで自らが招いた客を待つ。

    。
ミミ/ ゚王゚)『もうすぐ帰しますので安心してください。敵だとしても、命は尊重されるべきですから』


 バイクの排気音は徐々に近くなり、明確になる。
 草が無造作に生え乱れた砂利道を通って、バイクに乗った二人は現れた。


( ^ω^)「ショボンさん!」


 並ぶように停めたバイクから降り、ヘルメットを外す。
 ミルナの背後で倒れたままのショボンが目に入ると、二人はミルナのもとへと走った。

724第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:40:59 ID:jvu.zAqQ0

    。
ミミ/ ゚王゚)『心配しなくても、この人間の命を取ろうなどとは思っていない』
    。
ミミ/ ゚王゚)『だが……お前達と共に元の生活に戻れるかと言われれば、そうとは限らない。
      お前達は、今ここで俺が倒す!』

( ^ω^)「そんなことはさせない!クーもショボンさんも僕が守る!」
    。
ミミ/ ゚王゚)『フッ……人間がアンデッドを守り、またアンデッドも人間を守る。か……。
      まさかお前が人間に媚びを売り生き残ろうとするヤツだったとは、呆れたぞ!』

川 ゚ -゚)「知ったことか」
    。
ミミ/ ゚王゚)『人間にアンデッドとしての魂を売り、腑抜けになったか!?』

川 ゚ -゚)「………」


 カテゴリーAの言葉が重なる。
 あの時もミルナと同じようなことを言われ、それを機に再び己を"アンデッド"だと強く思い込むようになった。
 まるで、己の存在を否定されたように感じたから――。

 ……だが、再び地に引きずり込もうとする言葉は全て、ブーンによって振り払われた。


( ^ω^)「違う!クーはそんな理由でショボンさん達と暮らしてるわけじゃない!」
    。
ミミ/ ゚王゚)『ふん、聞こうか』

725第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:42:03 ID:jvu.zAqQ0

 ♪大いなる力 - https://www.youtube.com/watch?v=d18HxqqREGk


( ^ω^)「クーは……自分がアンデッドと知りながらも、ショボンさんやあまねちゃん達との時間を大切に思い大事にしている。
      家族のように接してくれるみんなを、心から愛している」

( ^ω^)「そして、自分が守りたいと願ったみんなを命懸けで守ろうとしてる。全てを投げ出してまでも!
      その素晴らしさに、人間もアンデッドも関係ない!!」
    。
ミミ/ ゚王゚)『……ふん』

川 ゚ -゚)「………」


 クーがアンデッドと知り、激昂した過去を思い出す。
 あの頃は、アンデッドを憎み、アンデッド全てを倒すことだけを考えていた。


( ^ω^)「人間とアンデッド、全ての者が共存するのは……確かに無理かもしれない。
      お前のように人間を見下すアンデッドがいるように、人間もアンデッド全てを悪と見る人がいる。これは仕方のないことだ」

( ^ω^)「だから、これからも僕は野心を抱き、人間を襲うアンデッドと戦い続けるだろう」

( ^ω^)「けれど……中には争いを好まず、平和を愛す者がいる。
      人の愛を知ったアンデッドのように、アンデッドの愛を知った人間だっているんだ!」


 でぃとモスの互いに想い合う確かな愛に触れ、クーとショボン達の曇りなき愛に触れたことで、何が正しいのか…その答えを密かに求め続けていた。
 だが、答えはとうの昔から自分の心の中にあったのだ。
 人間とアンデッド……その形に捉われ、その答えが曇ってしまっていた。


( ^ω^)「自分が変われば世界は変わる!
      アンデッドの使命に苦しみながらも、それが出来たクーを僕は守りたい!」

( ^ω^)「だから……そんなクーを蔑むようなことは、僕がさせない!!」

川 ゚ -゚)「………お前……」

726第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:43:54 ID:jvu.zAqQ0

    。
ミミ/ ゚王゚)『……素晴らしい。愛を知った者同士が互いに現実から目を逸らし、傷を舐め合っているわけですね』
    。
ミミ/ ゚王゚)『悪いが、そんなものに興味はない……!俺は己が種族の繁栄のために戦っている。
      皆が万能の力を目指している。これは、その力に相応しい者を決めるための聖戦だ!』
    。
ミミ/ ゚王゚)『この戦いの中で愛など語るようなアンデッドに、勝たせるわけにはいきませんね!』


 両腕の鈎爪を研ぎ、臨戦態勢を取った。
 翼を広げたと同時に出現する羽根手裏剣が、翼の扇ぎを受けて一斉にブーン達のもとへ放たれる。


( #^ω^)「それがお前の限界だお…!変身!」

川 っ -゚)「ッ……!」


    【 -♠TURN UP- 】


 クーの前に立ち、庇いながら射出したゲートで羽根手裏剣を全て防御。
 落ちたことを確認すると、ブーンはゲートに向け走りブレイドへと変身した。


( OwO)「カテゴリーAを返せ!」
    。
ミミ/ ゚王゚)『無理な相談ですね、♣のカテゴリー10を持っているのは誰だ!?』

( ; OwO)「ううっ!!」


 再び宙を浮遊され、すれ違う瞬間に鈎爪で切り裂かれる。
 ブレイラウザーを抜き応戦するも、攻撃など届くわけもなくあっという間に防戦一方となった。

    。
ミミ/ ゚王゚)『あの力さえあればカリスの封印を解くことが出来るはず!お前か!?』

( ; OwO)「そんなこと言うわけないだろ…!うあっ!?」

727第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:45:09 ID:jvu.zAqQ0


 空中より羽根手裏剣を投擲され、防ぎ切れない羽根が身体を斬りつける。
 カードを使っても届かないどころか容易に躱されてしまうであろう空中を、どう対処すべきか。


( ; OwO)「クソッ!どうすればいいんだお……届かない!」

川 ゚ -゚)「これを使え!」
  っ□


 その時、クーが一枚のカードをブレイドに投げた。
 すかさずカードを掴み取り、カードを見る。
 渡されたカードは、"♥4のFLOAT"。蜻蛉のアンデッドのカードだ。


( OwO)「これは……」
  っ□

川 ゚ -゚)「その力で空を飛ぶことが出来るはずだ」

( OwO)「そいつは実にナイスだお!………閃いた!」


 受け取ったカード、それに加え展開したトレイから選んだ一枚のカード。
 二枚のカードを、ブレイラウザーにラウズする。
 

    《-♥4 FLOAT-》 《-♠9 MACH- 》


( ; OwO)「おおっ!?って……高いとこ怖ェお!!」
 

 カードをラウズした瞬間、ブレイドの身体が浮遊を始める。 
 原理は不明だが、自分が飛びたいと念じる方へ身体を浮かせることが出来ている。
 

( OwO)「ええい、駄目だ駄目だ…!こいつで一発逆転狙うんだお!」

728第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:45:38 ID:jvu.zAqQ0


 空を自在に飛び回るミルナの尻尾を追い、ブレイドも空を飛翔。
 自分を上回った速度で接近するブレイドに驚きを隠せず、思わずたじろいぐミルナ。

    。
ミミ/ ゚王゚)『なっ……!何故空を飛んでいる!?』

( OwO)「アンデッドの力を借りたのさ!はあっ!!」
    。
ミミ/;゚王゚)『ぐうっ…!』


 ミルナとの距離はすぐに縮まり、仕返しの斬撃を見舞った。
 鈎爪を払い、圧倒的な速度で何度も身体を切り刻み、とうとう空中での動きを制した。

 すると、ミルナの腰に備えられたカテゴリーAのカードを見つける。
 磁石のように羽根に密着しており、奪うのは簡単そうだった。

    。
ミミ/;゚王゚)『クッ……ちょこまかと!』

( OwO)「カードは返してもらうお!!」
    。
ミミ/;゚王゚)『なっ!?しまった……!!』


 空中での土俵から降ろすべく、背後に回ったブレイドは背に生えた翼を強引に両断。
 目に捉えられぬ速さからか、ミルナは対応出来ぬまま翼を切られ、支えを失い地上に向け落下。
 

( OwO)「もらったああああああ!!!」


 落下するミルナの腰に向け、ラウザーを振り下ろす。
 的確に腰に備わった羽根を斬りつけ、宙に舞ったカードを強引に掴み取った。


( OwO)「クー!!」


 そのままミルナの落下を見捨て、ブレイドは急いでクーのもとへと舞い戻る。
 そして、取り返したカテゴリーAと"♥4のFLOAT"のカードを差し出した。

729第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:46:12 ID:jvu.zAqQ0


( OwO)「ふう…!なかなか痺れたけど、これありがとうだお!」
   っ□

川 ゚ -゚)「………すまない」
   っ□
    。
ミミ/#゚王゚)『クッ…………おのれェ!!!』

( OwO)「さぁ、こっから形勢逆転だお!クーがいれば心強い!」


 カードを渡し、ブレイドは再び戦いへと戻る。
 地上に落下こそしたが、ミルナは未だ健在。むしろカテゴリーAを取り返され、怒り心頭の様子だ。

 クーは、カードを握り締めブレイドの背を黙ったまま見つめる。
 
 
川 ゚ -゚)(……何故だ)

川 ゚ -゚)(受け入れられるということが、こんなに嬉しいものなのか……)


 今まで、ただ拒んでいただけのブーンに対し心を開き始めている自覚がある。
 未だ素直になり切れないが、確かにクーの心は変わりつつあった。
 
 自分のこと、本当のことに向き合う度、心が騒ぎ出す。
 現実を忘れ、目覚めるほどに身体が熱くなる。


川 ゚ -゚)(この感情が何を意味しているのか……そんなことを考えるのは、もうやめていいかもしれない)

川 ゚ -゚)「疑問に縛られ不安になるくらいなら……心を求めて戦い続けるだけだ……!」
  っ□


 カテゴリーAのカードを構えたクーの腰に、カリスラウザーが召喚。
 目の前で起きる戦いを睨み、今度こそカリスへ変身しようとした。

730第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:46:39 ID:jvu.zAqQ0


(´-ω-`)「ん……ぐ……」

川 ゚ -゚)「……!!」


 その時、気絶していたショボンが唸り声を上げ始める。
 身体がゆっくりと動き出し、腹部を抑えながら上体を起こした。

 ショボンの意識が、戻ってしまった。


( ; OwO)「ふっ!……っぐうう!」
    。
ミミ/ ゚王゚)『どうした、アンデッドの力を借りなければその程度か!?』

(´・ω・`)「ッ……ブーン君!?」

( OwO)「ショボンさん…!?目が覚めたのか……ッ!」


 ショボンが目に入ったのは、ブレイドとミルナの争い。
 剣と鈎爪、殴り合う鈍い音と怒号が激しく繰り広げられ、見ている手に力が入った。

 ふと、違う視線を感じるショボン。
 視線を向け、そこにいるのは……今まさに変身しようとしたクー。


(´・ω・`)「クー…!?」

川 ;゚ -゚)「………」


 カテゴリーAをラウザーに当てた手が、止まってしまった。
 
 このまま変身してしまえば……今まで隠し通してきた事実が、全て明るみになってしまう。
 そう考えた途端、その後に待ち受けている事を想像するだけで、恐怖を感じた。

 クーの正体を怪しんでいたショボンも、この現場にいる事がクーに関連付いていると見ていた。
 腰に巻かれた謎のベルトと、手に持っているカード。クーに対する疑念は深まる一方だ。

731第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:47:11 ID:jvu.zAqQ0


( OwO)「ッ……クー!大丈夫だ!何も心配しなくていいんだ!」
    。
ミミ/ ゚王゚)『フン!ハアアアッ!』


 躊躇しているクーの姿が見えた。
 ブレイドは、ミルナの攻撃に晒されながらも躊躇いを抱くクーに言葉を掛け続ける。


( ; OwO)「うぐっ…!……誰も君のことを見捨てたりしない!僕達は仲間だ!」

川 ;゚ -゚)「………」

( OwO)「自分に自信を持て、誇りを持て!お前のすべてを今見せるんだお!!」

( OwO)「ショボンさんもあまねちゃんも、でぃちゃんも……お前が守るって決めたんだろ!!!」
    。
ミミ/ ゚王゚)『何をべらべらと話している!戦いの最中だぞ!』

( ; OwO)「がはっ…!」


 両の鈎爪の刺突攻撃が、ブレイドの胸部に直撃。
 胸を押さえながらブレイラウザーを振るうも、容易に弾かれ蹴り飛ばされてしまう。


川 ゚ -゚)「………私は……」

(´・ω・`)「クー、何をするつもりなんだ…?」


 ミルナに圧されるブレイドと、クーを見て離さないショボンを交互に見つめる。
 
 ショボンとの絆を取るか、ブーンの言葉を信じるか。
 二つの選択肢に迫られ、クーは深く悩みだす。

732第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:48:04 ID:jvu.zAqQ0


(´・ω・`)「君は、一体……」

川 ゚ -゚)「………」


 答えは決まった。

 ショボンに向けていた視線を外し、ブレイドと戦うミルナを睨み付ける。
 
 もしかしたら、これでショボン達との縁が切れてしまうかもしれない。
 その恐怖が、クーの心を強く締め付けてしまっていた。


 ……それでも構わない。
 ショボンさんやでぃちゃん……あまねちゃんが平和で笑顔に暮らせるなら、それで。

 傍に居れなくとも、みんなを守ることは出来る。
 みんなの幸せこそ……私の幸せなのだから。



 クーは選んだ。
 カリスとして、今ここで戦うことを。


川 ゚ -゚)「……変身!」
  っ□

    【 -♥CHANGE- 】


 ショボンの目の前で、カリスへと変身するクー。
 その一部始終は……しっかりと、ショボンの目に焼きつかれた。


(;´・ω・`)「……!!!」

(;´・ω・`)「クー……君は……!!」

733第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:48:31 ID:jvu.zAqQ0


( <::V::>)『ショボンさん』

(;´・ω・`)「ッ……!」

( <::V::>)『今まで嘘をついていてごめんなさい……これが私です』

(;´・ω・`)「………」


 ショボンに近付き、手を差し伸べる。

 だが、反射的に後退りしてしまうショボン。
 唖然としてしまい、言葉が出てこない。
 クーが恐ろしい姿へと変化してしまったことへの恐怖も、多少なりとも感じてしまっていた。


( <::V::>)『………ここは危険です、逃げてください。私が守ります』

(;´・ω・`)「君は……何者なんだ……?」

( <::V::>)『……私は、愛川クーです。言い訳はしません……けど、これが私なんです』

( <::V::>)『さぁ、早く逃げて!』

(;´・ω・`)「ッ……あ、ああ」


 脇下を掴まれ、強引に起こされるショボン。
 状況が読み込めず混乱したままだが、構わず背中を押し退避を促す。
 
 逃げ走るショボンの背を見届けると、左手にカリスアローを召喚。
 戦いの中へと目を向け、今度は自分がブレイドを助けるため、走った。

734第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:49:07 ID:jvu.zAqQ0

 ♪Rebirth - https://www.youtube.com/watch?v=SgXC5Z4R3-c

    。
ミミ/ ゚王゚)『デヤアアアッ!!』

( ; OwO)「くっ…!このォ!!」


 軽快な身のこなしで、ブレイドを蹂躙するミルナ。
 ブレイラウザーで左腕の鈎爪の一撃を弾き、ようやく腹部に蹴りを入れた。

    。
ミミ/ ゚王゚)『うっ…!ふん、甘い!』


 すかさず体勢を整え、再び羽根手裏剣を発生させる。
 だが、その構えは一瞬にして崩された。


( <::V::>)『ふっ!』

( OwO)「!?」
    。
ミミ/;゚王゚)『ぐふっ…!』


 ブレイドの頭上を回転しながら飛び越えたカリスが、着地すると同時にカリスアローでミルナを斬りつけた。
 斬りあげるようにして振り上げたカリスアローで胸部に斬撃を与え、素早く身体を左に回転させ右足による延髄切りを叩き込んだ。

    。
ミミ/;゚王゚)『ぐあっ!………!?』

( <::V::>)
    。
ミミ/;゚王゚)『か……カリス……!!』

735第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:50:07 ID:jvu.zAqQ0


 カリスの姿を見た途端、ミルナの動きが止まった。
 
 この瞬間を見逃さなかった。
 ブレイドは、ブレイラウザーのトレイを展開させ二枚のカードを選択。
 カリスも同様に三枚のカードを取り出し、それぞれ順番にラウズした。


( <::V::>)『行くぞ!』

( OwO)「オーケー!!」


    《-♠2 SLASH-》 《-♠6 THUNDER-》

    《-♥4 FLOAT-》 《-♥5 DRILL-》 《-♥6 TORNADO-》

    。
ミミ/;゚王゚)『いや、違う……!こいつはカリスじゃない!!』


 ふと我に返り、目の前のカリスが偽者であることを思い出す。
 ようやく動き出そうとするが、この窮地から逃れることは難しい。
 今まさに、両者によるトドメの一撃が放たれようとしていた。
 

     《-♠LIGHTNING SLASH-》 《-♥SPINING DANCE-》


 コンボ名を告げる電子音声。
 カリスは"♥4 FLOAT"の力で高々と宙に浮遊し、竜巻に包まれる。
 ブレイラウザーには青き雷光が纏い、ブレイドは両手でラウザーを構えた。

736第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:50:41 ID:jvu.zAqQ0


 カリスは空中移動を自在にすることで、竜巻の力を最大限に引き出せる。
 両足を揃え身体を高速で回転させ、地上に立つミルナに向け一気呵成に突進した。

    。
ミミ/;゚王゚)『クッ……なるほど、逃げ場はないというわけですか』
    。
ミミ/;゚王゚)『………認めたくはないが、負けですね』


 逃げようとはせず、その場に仁王立ちする。
 決してしまった勝敗を素直に受け入れ、自分にトドメが刺されるのを待つ。
 
 
( OwO)「はあああああああぁァァッ!!!」

( <::V::>)『ふんッ!!』


 雷と竜巻が共鳴し、竜巻に雷が帯び、雷に竜巻が纏った。
 上空より迫り来るカリスとタイミングを合わせ地を駆けるブレイド。
 強烈な錐揉み回転蹴りがミルナに直撃すると同時に、鋭い雷斬が一閃。
 ミルナの腹部は斬り裂かれ、カリスの一撃で大きな爆発が引き起こされた。
 
    。
ミミ/;゚王゚)『うあああああああァァァァッ……!!!』
 

 両者の必殺技を受け遠くへ吹き飛び、地を転がる。
 全身を感電させながら倒れ、アンデッドバックルは左右に展開された。
 バックルには、【♠ J】と彫刻されている。

737第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:51:10 ID:jvu.zAqQ0


 竜巻に身を包まれながら、ゆっくりと着地するカリス。
 ブレイドはブレイラウザーを振り雷を振り払い、トレイからカードを一枚取り出す。


( <::V::>)『お前の力だ、封印しろ』

( OwO)「クー……ありがとう」

( <::V::>)『………』

( OwO)「……へっ」


 視線を背ける。
 この行動が意味していることは、今でこそ分かる。
 だからこそ、背けられたことが妙に嬉しく感じた。


(; ゚д゚ )「ぐう………」


 だが、安心も束の間。
 二人の必殺技の前に倒れたはずのミルナが、人間の姿へとなりゆっくりと起き上がった。


( OwO)「!?まだ立てる力があるってのかお!?」

( <::V::>)『放っておけ、今だけだ』

(; ゚д゚ )「まったく……なんて、情けない負け方だ……一生消えぬ恥となるだろうな……」

(; ゚д゚ )「違うと分かっていたはずなのに……」

( <::V::>)

(; ゚д゚ )「カリスを見た瞬間、油断してしまった……」

738第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:51:50 ID:jvu.zAqQ0


( <::V::>)『聞く。お前とカリスの一万年前の約束とは何だ?』

(; ゚д゚ )「ッ……戦うことですよ、アンデッドにはそれしかないでしょう?
     俺とカリスは、あなた達のように友誼を結んでいた仲でした……」

(; ゚д゚ )「お互いに他のアンデッドを全て倒した後……最後に残ったアンデッドとして、雌雄を決しよう!
     最高の敵として、最後の舞台で戦おう!そう約束したんですよ……」

( <::V::>)『それが、カリスとの約束……最後に戦うのが約束だと?』

(; ゚д゚ )「ふっ……あなた達と同じですよ」


 不敵に笑みを見せるミルナ。
 意味深な言葉に、ブレイドは思わず反応を示す。


( OwO)「どういう意味だ!」

(; ゚д゚ )「人間とアンデッドが手を取り合う……そんなものが、いつまでも続くと思っているんですか?」

( OwO)「出来るさ、僕達が望みを捨てなければ!」

(; ゚∀゚ )「……フッ、フハハハハ!」

( OwO)「何がおかしい!?」

(; ゚д゚ )「無駄ですよ……あなた達人間も、再開されたこの戦いの"運命"に呑まれているに過ぎません」

( OwO)「何……?」

739第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:52:51 ID:jvu.zAqQ0


(; ゚д゚ )「人間とアンデッド、今は手を取り合っていても……俺達のようにいつかは戦う"運命"」

( OwO)「"運命"……?」

(; ゚д゚ )「ふっ、内心それを望んでいるのは……」

( <::V::>)

( OwO)

(; д )「あなた達かも……しれませんがね……―――」


 力尽き、吸い込まれるように地に倒れた。
 アンデッドの姿に戻り倒れるミルナを、二人は立ち尽くしたまま見つめる。

 ミルナが残した意味深な言葉が、深く突き刺さっている。
 先程までの喜びが、一瞬にして不穏なものへと変わってしまった。


( OwO)「………」

( <::V::>)『………』


 何も言わず、ミルナに背を向けるカリス。
 まるで言葉の意味を知っているかのように。

 ブレイドは静かにカードを投擲し、ミルナを封印。
 掌中に帰還したカードには、"♠J FUSION"と記され、鷲が大きな翼を広げる絵が描かれた。

740第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:53:43 ID:jvu.zAqQ0


 互いに変身を解除し、元の姿に戻る。
 打ち解けたと思われたはずの二人の間に、不穏な空気が流れる。


( ^ω^)「………」

川 ゚ -゚)「………」

( ^ω^)「……あんな奴の言うこと、気にする必要ないお。
      確かにちょっと紳士的な感じだったけど……苦し紛れの一言みたいなもんだお!あんなの!」

川 ゚ -゚)「………」

( ; ^ω^)「……あー、うん。先のことなんて今決め付けるもんじゃないしさ?」


 背を向けたままクーは反応せず。
 嫌な空気を払拭しようと必死に言葉を紡ぐが、全く効果がない。
 何より、ブーン本人が一番ミルナの言葉を気にしている。


( ^ω^)(………最後には戦う"運命"にある。だと……?)

( ^ω^)(考えもしなかった……アンデッド同士で行われるこの戦い。勝ち残った者は万能の力を手にする)

( ^ω^)(……その先には、何が待っているんだ?)

( ^ω^)   川 ゚ -゚)


 クーの背中を見つめる。
 アンデッドならば、その答えを知っているはず。
 だが、聞く勇気などなかった。


( ^ω^)(この戦いは、どこへ向かうんだ……?)

741第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:54:38 ID:jvu.zAqQ0


 沈黙が流れる中、クーに急かされ避難していたはずのショボンが姿を見せた。
 クーの名前すら呼ぼうとはせず、重たい足取りで近付いてくる。
 

(´・ω・`)「………」

( ^ω^)「ショボンさん!」


 ショボンに駆け寄り、その肩を支える。
 が、ブーンの肩をとんとんと叩き支えを拒んだ。

 ショボンを見たまま、近寄ろうとはしないクーへと自分の足で歩み寄る。


(´・ω・`)「……クー、君はずっと隠していたのか」

川 ゚ -゚)「……はい」

(´・ω・`)「僕達に内緒で、ずっとアンデッドと戦っていたのか」

川 ゚ -゚)「………はい」

(´・ω・`)「ブーン君、君は知っていたんだね?」

( ^ω^)「すみません……隠してたことは謝りますお」

(´・ω・`)「………」

川 ゚ -゚)「………ショボンさん、私は……」

川 ゚ -゚)「私は……私は人間じゃ――」

742第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:55:02 ID:jvu.zAqQ0


 言いかけたところで、優しく包まれた。
 ショボンは、クーが全てを話す前にそっと抱きしめたのだ。


川 ゚ -゚)「……!」

(´・ω・`)「僕達がいるのに、一人で頑張ってたのかい?アンデッドと戦って、何度も傷付いてたのかい?」

(´・ω・`)「そんなことをずっと隠しながら過ごして……辛かっただろう」

川 ゚ -゚)「………」


 あやすように、両手で優しく背中を叩く。
 ショボンの声はとても穏やかで、言葉が温かく心に染みる。


(´・ω・`)「初めて出会ったときから、何かあるとは思ってた。
      君が一体何者なのかを知りたがってた自分もいた」

(´・ω・`)「でも……改めて思ったよ」

(´・ω・`)「クーが何者でも、そんなことは関係ない。どうでもいいんだよ。
      一番大事なのは心なんだ。もう、僕達にとってクーは居なきゃいけない存在なんだよ」

(´・ω・`)「どんな姿をしても、クーはクー。愛川クーだよ。
      あまね達に知られたくないならそれでもいい、無理に打ち明ける必要はない」

(´・ω・`)「もう君は一人じゃない。君の居場所は、ここにあるんだから!」

川 ゚ -゚)「………ショボンさん」

(´・ω・`)「なんだい?」

川 ゚ -゚)「ありがとう………ありがとう、ショボンさん」


 目の奥が熱くなるのを感じる。今まで覚えたことのない感覚だ。
 

川 ゚ -゚)(これが、人間なのか……)

743第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:56:00 ID:jvu.zAqQ0


 クーを離し、肩に手を添える。
 真っ直ぐ目を見つめながら、口元に優しく笑みを浮かべた。


(´・ω・`)「一緒に家に帰ろう、クー」

川 ゚ -゚)「はい」

( ^ω^)「ショボンさん、よかったお……安心しました」

(´・ω・`)「ブーン君……君には、お世話になりっぱなしだな」

( ^ω^)「いやいや、僕は何も……クーもよかったな」

川 ゚ -゚)「……ああ」

( ^ω^)「ふっ」

(´・ω・`)「……ははは」


 クーを間に挟み、三人は肩を並べバイクのもとへと歩く。
 ミルナが残した意味深な言葉、その意味を考えることを後回しにする程に嬉しい気持ちに満たされる。
 この想いを持ち続ける限り、剣を交えることなどありえない。
 そう、強く思った。

744第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:56:22 ID:jvu.zAqQ0





 ―――――




.

745第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:56:49 ID:jvu.zAqQ0


 一方、モララーとドクオはアンデッド出現の報せを受け現場へと向かい到着していた。
 サーチャーが捉えた反応は、♥のカテゴリーJ。
 昨夜現れたそのの姿は誰も見ていないが、人間の死体をアンデッドと化す力を持つアンデッドということは既に把握済みだ。

 そして、その力がまた猛威を振るってしまった。

 到着した時には……既に、アンデッドと化してしまった何人もの人の姿が。
 両手を垂らしながら歩く姿は、まるで生きた屍。ゾンビそのものだ。


( OMO)「ふっ!」

「ギイイィエエエエエエェェッ!!」

( OHO)「ウオォラァッ!」

「グオオオォッ……」


 ギャレン、レンゲルへと変身していた二人は狼人間の掃討を開始。

 ギャレンが構えたギャレンラウザーが複数の敵を射撃しつつ、レンゲルラウザーを握ったレンゲルが次々と蹴散らしていく。
 狼人間の個々の力は下級アンデッドにも及ばぬ程のようで、倒すだけなら簡単だった。

 全滅を確認し、自分達の手で倒した転がる死体に目を向ける。


( OMO)「人を殺め、その亡骸を利用するとは……許せない」


 元は人間。致し方ない事とは言え、そう割り切ることの出来ない心が痛むギャレン。

 
( OHO)「封印できないアンデッドかぁ……倒すだけなら確かに楽だけど」

( OMO)「おい、口を謹め」

( OHO)「あっ……すみません」

746第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:57:19 ID:jvu.zAqQ0


 その背後で、倒したはずの死体が蠢く。
 ゆらりと起き上がり、ゆっくりと顔を上げ目の前の二人を睨む赤く充血した眼。


「ウウッ……ガアアアァァッ!!」

( OMO)「!?」

( OHO)「はっ…!」


 咆哮に気付き振り返ると、既に迫り来る死体の姿が。
 咄嗟に臨戦態勢に入る二人だったが、死体は二人に手を伸ばすことなく倒れた。


「ギャアウッ!」

( OHO)「え……?」

(,,^Д^)「油断するなよ」

( OMO)「お前は……」


 そこには、銃を構えたタカラの姿があった。
 ギャレン達に触れる前に、タカラが放った銃弾が死体の後頭部を撃ち抜いたようだ。


(,,^Д^)「アンデッドは見たのか?」

( OHO)「いや……見てません、来たときにはもう」

(,,^Д^)「そうか……」

( OMO)「何故此処が分かった?」

(,,^Д^)「奴についた家族の血の臭いは、今も消えることはない」

747第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:57:45 ID:jvu.zAqQ0


(,,^Д^)「気を付けろ、奴は至るところに現れる。いつでも動けるように心掛けておけ」


 言って、タカラは去って行く。
 変身を解いた二人。モララーは、タカラの背中を怪訝な目で見つめた。


( ・∀・)(……あいつ、やっぱり怪しいな)

('A`)「タカラさん、相当恨んでるんですね……本能的にアンデッドの気配感じてるってことでしょ?」

( ・∀・)「ドクオ」

('A`)「はい」

( ・∀・)「あいつに注意を払え」

('A`)「え……タカラさんに?」

( ・∀・)「確証は無いが……どうも気掛かりだ」

('A`)「どういうことですか?」

( ・∀・)「………」

748第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:58:18 ID:jvu.zAqQ0


 そして、その光景を遠くから見つめるミセリがいた。


ミセ*゚ー゚)リ「へぇ……面白いことしてるのね」


 背後に感じる、アンデッドの気配。
 突然現れた気配にも臆することなく、ミセリは背後の存在に語りかける。


ミセ*゚ー゚)リ「私と手を組めば、もっと面白くなると思うわ」

『断る』


 影が差し、その全貌が明らかにならない。
 荒い呼吸が聞こえ、今にもミセリに襲い掛かりそうな凶暴さすら感じ取れる。


ミセ*゚ー゚)リ「何故?」

『貴様等は所詮――』


 ミセリに歩み寄り、影に覆われる場所から抜け出た。
 日が当たり、全貌が明るみとなる。
 青い毛並みの身体を包む真っ黒な革、その上から装着した鋼鉄の武器による防具。
 縦横無尽に備えられたナイフが、不気味に光を放つ。



  (
彡,,メ皿゚彡『――俺の敵だからだ』


 次なる刺客は既に、ブーン達を待ち受けている。

749第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:58:48 ID:jvu.zAqQ0





     【 第24話 〜大切なもの〜 】 終




.

750第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:59:20 ID:jvu.zAqQ0

==========

 【 次回予告 】 https://www.youtube.com/watch?v=Yyh12l21WkA


( OwO)「うおおおおっ!!!」

「ガウウゥゥッ!!」


 増殖を続ける狼人間。
 根源であるアンデッドを捕まえることが出来ず、狼人間達との戦いに明け暮れるライダー達。


(,,^Д^)「一体ずつ相手をしようとするな、一気に倒せ!」

( OMO)「ドクオ、こいつらの動きを封じろ!」

( OHO)「はい!」

751第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 11:00:04 ID:jvu.zAqQ0


ミセ*゚ー゚)リ「はぁ、残念ね。乱暴なことはしたくなかったんだけど…」
  (
彡,,メ皿゚彡『望むところだ…!』


 一触即発となるミセリとカテゴリーJ。


「おいお前ら、人のテリトリーで勝手に騒ぎを起こして……」

「……特別に許可してやる。さぁ、戦ってくれ」

ミセ*゚ー゚)リ「お前は……!」
  (
彡,,メ皿゚彡『貴様……!?」

( ゚∋゚)「いいからいいから、どちらかが潰れるまで戦ってくれ」


 また新たなアンデッドが現れることに。
 屈強な肉体をした男。上級アンデッドとしてのその正体とは?

752第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 11:00:42 ID:jvu.zAqQ0


 三体のアンデッドが揃う中、ブーン達三人のライダーが集結!


ミセ*゚ー゚)リ「フフフ、一旦お預けね。三対三でどうかしら?」
  (
彡,,メ皿゚彡『仕方ない……仮面ライダーを葬るまたとない機会だ』

( ゚∋゚)「勝手にやってくれ」


( ・∀・)「上級アンデッドが三体……やれるか?」

('A`)「はい、せめて一体は封印してやる!」

( ^ω^)「やるしかないお…!」


 上級アンデッド三体という、かつてない脅威に立ちはだかるライダー達。
 はたして、ブーン達はアンデッドに打ち勝つことが出来るのか!?

753第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 11:01:25 ID:jvu.zAqQ0


(  w )「たくさんの人を手にかけ、尊い命をお前は一体いくつ奪った……?」
  (
彡,,メ皿゚彡『フン!さぁな、数など数えるわけないだろ?』

(  w )「それだけじゃない……亡骸を化け物に変えて、操って……」

(  w )「人の命を奪うだけに留まらず、その命を蹂躙し冒涜した……」 
  (
彡,,メ皿゚彡『なら、お前はどうする?』

(  w )「許さない……」



( #OwO)「――お前だけは……絶対に許さない!!!」


 遂にカテゴリーJの尻尾を掴んだブレイド達。
 激しい怒りと共に、ライダー達の逆襲が始まる!


 次回、【 第25話 〜血を呼ぶ嘘〜 】


 ――今、その力が全開する!


==========

754 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 11:03:53 ID:jvu.zAqQ0
しおり

>>9 第15話
>>84 第16話
>>152 第17話
>>234 第18話
>>308 第19話
>>372 第20話
>>454 第21話
>>530 第22話
>>605 第23話
>>682 第24話

細々と書いてますがなかなかまとまった時間が取れず・・・しばらく毎週は無理そう
申し訳ない

755名無しさん:2018/02/25(日) 11:59:31 ID:XPQUlbVo0
乙!いつも楽しませてもらってます
無理せずゆっくりどうぞ〜

756名無しさん:2018/02/25(日) 12:19:30 ID:8uUjVOAY0
乙です
毎週じゃなくても生きて投下してくれればそれでいいよ
最近じゃ一番の楽しみよ

757名無しさん:2018/02/25(日) 22:20:51 ID:dEr5JJPE0
乙津

758名無しさん:2018/02/25(日) 23:31:06 ID:4eaPjfsE0
待ってた!最近ブレイドの口調が荒い時多いね

759名無しさん:2018/02/26(月) 18:48:46 ID:SSuX3xU20
モララーの天然は原作準拠っぽいww
次回更新楽しみにしてる

760名無しさん:2018/02/26(月) 21:27:56 ID:CWnQ7qDA0
ミルナとの決着は思ったより早かったな

761名無しさん:2018/03/31(土) 00:49:05 ID:T.2NByG60
待ってるぜ

762名無しさん:2018/03/31(土) 12:40:33 ID:s2NU0MvQ0
そういやもう1ヶ月投下ないのか…

763名無しさん:2018/05/10(木) 00:38:59 ID:kpn2vQYE0
俺は待ってるんだぜ

764名無しさん:2018/05/12(土) 17:39:11 ID:L2m9Z4q20
俺も待ってる

765名無しさん:2018/06/03(日) 22:31:10 ID:2S8pjJ4I0
最近こねえな

766名無しさん:2018/06/07(木) 03:02:06 ID:p2kuEwck0
( OwO)待ってるウェイ!

767 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/06(金) 02:14:17 ID:YRrjfChQ0
( ^ω^)< 夏だお

( ^ω^)< 7/8(日)

768名無しさん:2018/07/06(金) 05:51:23 ID:wEg5hjNE0
投下予告!?
生きてたのか!久々のニチアサブーン系楽しみに待っとるぞ

769名無しさん:2018/07/06(金) 05:52:05 ID:Dg3J09N60
おっ!?

770名無しさん:2018/07/07(土) 11:41:32 ID:lyJ317AA0
待ってた!

771名無しさん:2018/07/08(日) 07:38:43 ID:QmaM35bM0
待ってたぞ!

77225話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:01:20 ID:wQXRKlTg0





     【 第25話 〜血を呼ぶ嘘〜 】




.

77325話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:01:55 ID:wQXRKlTg0


 ミルナを倒してから数日。
 上級アンデッドをまた一体封印したブーン達だったが、未だアンデッドの脅威は続く。
 ♥のカテゴリーJなる存在は、猛威を振るい続けていた。
 

( OwO)「うおおおおっ!!!」

「ガウウゥゥッ!!」


 次々と狼人間に成り果てる人間。
 アンデッドの反応をキャッチしても、共通点のない場所への出現は先読みをすることすら叶わない。
 反応を辿り到着すれば、既に変わり果てた人の姿しかなく、まさにトカゲの尻尾切りだった。


(,,^Д^)「一体ずつ相手をしようとするな、一気に倒せ!」

( OMO)「ドクオ、こいつらの動きを封じろ!」

( OHO)「はい!」


 ギャレンの指示を受け、レンゲルはカードを二枚レンゲルラウザーにラウズ。


    《-♣3 SCREW-》 《-♣9 SMOG-》


 "♣9のSMOG"。煙幕を発生させ、相手の動きを抑制する効果を持つ。
 それに合わせ、"♣3のSCREW"の力で右手をドリルのように回転させることで、煙幕を素早く広範囲に展開。
 狼人間達の視界を奪い、動きを封じた。

77425話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:02:34 ID:wQXRKlTg0


( OwO)「ナイスだドクオ!」

( OMO)「後は任せろ!」


    《-♠2 SLASH-》 《-♠9 MACH-》

    《-♦2 BULLET-》 《-♦9 GEMINI-》


 ブレイド、ギャレンはそれぞれ二枚のカードをラウズする。
 分身したギャレンは同時にギャレンラウザーを構え、強化された銃弾で煙幕に塗れた狼人間達を射撃。
 加速の力を身に着けたブレイドは、切れ味が倍増したブレイラウザーで光の如く速さで斬り捨てた。
 

「グギャアアアァッ!!」

「ギイイィッッ!!」


 狼人間から噴き上がる緑血。
 元々は人間だった彼等の血すら、アンデッドのものと化してしまった。

 ブレイド達の手によって、今のところ全ての狼人間は倒された。
 倒れた遺体は謎の発火を引き起こし、炎に包まれ焼失していった。


(,,^Д^)「さすがだな、仮面ライダー」

( OwO)「そんなこと言ってる場合じゃないですお……人を守るのが僕達の義務なのに!」

( OMO)「早く上級アンデッドの尻尾を掴まなければ、人類が皆アンデッドにさせられてしまう……」

( OHO)「………」

( OHO)(俺だって、こいつらくらいすぐに倒せるってのに……)

77525話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:03:12 ID:wQXRKlTg0


(,,^Д^)「そうだな……だが、奴の逃げ足が早いのも確かだ。全くイライラさせてくれる……!」

( OMO)「奴の行動パターンは分からないのか?」

(,,^Д^)「分かるものか、アンデッドのことなんか……奴は神出鬼没だ。それに一度現れた場所には現れない」

(,,^Д^)「せめて……俺にもお前達のようなバイクと、カードがあればな」


 ライダー達が乗るバイクへ目を向けるタカラ。
 通常のバイクとは比にならぬ性能を誇るライダー専用のバイクは、ラウズカードシステムを搭載。
 全てのカードの対応はしていないが、特定のカードの効果を得ることが出来る仕様となっている。

 それだけ言い残すと、タカラは背を向け静かに去って行った。

 変身を解除した三人。
 その中でも特に、モララーはタカラの背を見つめたままだった。


( ・∀・)(何故、ライダービークルの事を知っている……)

( ・∀・)(本当にただの人間か?一体、BOARDと何の関係が)

( ^ω^)「モララーさん、ずっとタカラさん見つめてどうしたんですかお?」

( ・∀・)「……いや、何でもないよ」


 ブーンの問いに首を横に振って答える。
 焼失した亡骸があった場所を向き、合掌するモララー。
 タカラへの疑いを心の中にしまいつつ、バイクのもとへと歩いた。

77625話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:04:42 ID:wQXRKlTg0

 ――――――
 ――――
 ――


 その日の夜。
 ブーン達五人は、バーボンハウスへと来ていた。
 今夜は酒を飲むためではなく、夕飯を食べに訪れている様子。
 ブーンとモララーの前にはカツカレー、ドクオの前にはオムライスがあり、ツンの前にはカルボナーラが。

 上級アンデッドの正体を掴めぬ中、お酒を飲んでは緊急時に向かうことが出来ない。
 そう考えると、自然と酒を飲みたい欲も無くなった。


川 ゚ -゚)「お待たせ致しました」


 注文を受けた料理をトレーに乗せ運んだ来たのはクー。
 トレーの上には、イカやエビ、ホタテが贅沢に使われた大盛りのピラフが乗っている。


川 ゚ -゚)「こちらシーフードピラフになります」
 _
( ゚∀゚)ノ 「はい……俺です」

川 ゚ -゚)「……どうぞ」
 _
( ゚∀゚)「……ども」


 気まずい雰囲気。
 二人が対面するのは、植物園の一件以来となる。
 ジョルジュは未だに根に持っていて、クーを見ると自分の不甲斐なさを思い出してしまうようだ。

77725話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:05:19 ID:wQXRKlTg0


( ^ω^)「お前まだ気にしてんのかお?」
 _
( ゚∀゚)「っせーな……散々俺のこと嫌ってる奴に助けられたんだ、しかも仮にも女に……男として立場がねぇよ……」

ξ゚⊿゚)ξ「あんたが今も元気にご飯食べれるのはクーさんのおかげなんだから、感謝してればいいの」
 _
( ゚∀゚)「へーい」


 ふてくされた態度を取り、スプーンをピラフの中に潜り込ませ、山盛り掬った米を口の中に頬張った。


ξ゚⊿゚)ξ「そういえば、例の上級アンデッドはどうなの?」

( ・∀・)「……どうしても正体が掴めずに終わってしまう」

('A`)「逃げ足が早いのか、俺達が遅いのか……どっちだろうな」

( ^ω^)「何にしても、このままだと誰一人守れずに次々と……」

ξ゚⊿゚)ξ「何か良い方法があるはず!みんなで考えて、必ず上級アンデッドを捕まえようよ!」

( ・∀・)「うん……そうだね」

('A`)「にしてもこう、次は俺がビシッと締めたいな!俺も成長したところ見せないと!」

( ^ω^)「お前は十分やってるお、協力して倒すことが一番の目的なんだから」

('A`)「まぁ、そうなんだけどさ……」


  ♪テケテンテンッテンテンテンテンテンッ


('A`)「あ、ちょっと待ってくれ」

( ^ω^)「はいお」

77825話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:05:57 ID:wQXRKlTg0


( ・∀・)「剣藤、タカラのことだけど……」

( ^ω^)「タカラさんがどうかしましたか?」

( ・∀・)「うーん……個人的にだけど、あまり信用出来ないんだ」

( ^ω^)「それは、どうして?」

( ・∀・)「変じゃないか?」

ξ゚⊿゚)ξ「何が?」

( ・∀・)「何で奴はいつも、的確にアンデッドが現れた場所に現れる?それも毎回、俺達が現れた後にだ。
      あれ以来、奴が現れなかったことがないし先に現れてたこともない」

( ・∀・)「尻尾を掴めない程に後を追えていないのに、何故場所が分かる?血の臭いを追っているなんて現実的じゃない」

ξ゚⊿゚)ξ「確かに……」

( ^ω^)「………でも、タカラさんは家族の仇を」

( ・∀・)「それが嘘だったら?」
 _
( ゚∀゚)「嘘って、何でそんな嘘つくんだ?」

( ^ω^)「……モララーさん、疑ってるんですかお?」

( ・∀・)「確証はないけどね……何だか、どうしても疑っちゃうんだよ。俺が疑うのも皮肉な話だけどね」

( ^ω^)「ふむ……」


 自虐を交えながらも、歯切れの悪い返答。
 サクサクの衣のカツにカレーを被せ、大きな口を開け一口。

 モララーの言葉に賛同し切れぬブーンは、浮かない顔で同じようにカレーを口に含んだ。

77925話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:06:28 ID:wQXRKlTg0


('A`)「悪い悪い」


 電話を終えたドクオが席に戻る。
 手を振りながら謝罪するが、その顔はどこか緩んでいるように見える。


( ^ω^)「何ニヤニヤしてんだお気持ち悪い」

('A`)「うるせぇロリコン、実はな……」

('A`)「この間助けた同級生からの電話でさ、同窓会やらないか?って」

( ^ω^)「おお、行くのかお?」

('A`)「うん、みんながちゃんと謝りたい場でもあるから……来てくれると嬉しいってさ」

ξ゚⊿゚)ξ「ドクオ、その人達のこと許せるようになったの?」

('A`)「どうだろうな……もうしばらく顔合わせてないし、顔見たらあの時の感情が蘇るかもしれない。
   でもさ、あの時助けたアイツの顔忘れられないんだよ。だから俺はいつまでも過去に引っ張られるのはもうやめた!」

('A`)「そろそろ前向いて、次のステップ踏まないとさ」

ξ゚⊿゚)ξ「……うん、そうだね」
 _
( ゚∀゚)「お前もしっかりしやがってよぉ……何か俺だけ取り残されたみてぇじゃん」

('A`)「自覚あるんだな?」
 _
( ゚∀゚)「あん??」

( ・∀・)「ドクオ、よかったな」

('A`)「モララーさん達のおかげですよ、これも」

78025話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:06:55 ID:wQXRKlTg0


( ^ω^)「なんだか嬉しいこと続きだな〜!やっと僕の苦労が報われてきたって感じだお」

ξ゚⊿゚)ξ「本当ね、最初はどうなるかと思ってた」

( ^ω^)「モララーさんとはちゃんとした関係が出来たし、ドクオは自分をしっかり持つことが出来たし……」


 そこに、再びクーがやってきた。
 今度は飲み物を運んできたようで、五つのグラスがトレーの上に並んでいる。


川 ゚ -゚)「お待たせ致しました」

( ^ω^)「クーとも、やっと打ち解けられた気がするし……」

川 ゚ -゚)「勝手なことを言うな」

( ^ω^)「はいはい」


 笑顔で見つめるブーンに対し、作らずとも出来ていたはずの冷たい表情を作るクー。
 素気ない返事にも慣れた様子で、それがまたクーの調子を狂わせた。
 

ξ゚⊿゚)ξ「あれ?クーって呼んでる……いつの間に?」

( ^ω^)「んー、ちょっと前から?」

(#'A`)「お前……いつの間に親交深めやがったんだよ!?おい!!お前ばっかり抜け駆けしやがってェ!!」

(#'A`)「俺も」

(*'A`)「クー♪」

(#'A`)「って呼びたい人生なんだよ!!」

( ^ω^)「呼んでみれば?」

78125話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:07:26 ID:wQXRKlTg0


(*'A`)「ク……」

川 ゚ -゚)

(*'A`)「ク……ク……」

川 ゚ -゚)「気安く私を呼ぶな」

(;'A`)「駄目だ……」

( ^ω^)「残念だったな」

(#'A`)「残念だったなじゃねぇよ」




( ・∀・)「まぁ、今があるのも剣藤のおかげだよ」

ξ゚⊿゚)ξ「うん。ブーンがブレイドじゃなかったら、きっと私達バラバラだった」

('A`)「……ムカつくけど、俺も立ち直れなかっただろうしな」
 _
( ゚∀゚)「ギャレンがモララーさんでよかったとも俺は思うぜ、レンゲルもな」

( ^ω^)「要するに、誰一人欠けちゃいけないってことだお」

( ^ω^)「今はみんなと一緒だって強く実感出来るし……幸せな気持ちの方が勝ってるお」



( ^ω^)「……このまま、何もなければいいんだけどなぁ」

78225話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:07:50 ID:wQXRKlTg0





 ―――――




.

78325話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:08:12 ID:wQXRKlTg0


 数日後。
 この日は、ドクオが招待された小学校同窓会の日。
 ドクオは自分の家で、その支度を行っていた。


('A`)「んー……こんなもんでいいか」

('A`)「あまり決めすぎると、また何か言われるかな……?」


 洗面台の鏡を見ながら、髪型をセットする。
 ワクワクした気持ちを抱きつつも、あの頃のトラウマが消えたわけではない。

 また、何かされるかもしれない。

 無意識にそう思ってしまう自分がいた。


('A`)「いや……大丈夫だろ。何か言われたら言い返す!それだけだ」


 緊張で高鳴る胸を撫で下ろし、深呼吸。
 胸をとんとんと叩き、鏡に映る自分に頷いた。

 部屋に戻り、軽く荷物を纏める。


('A`)「そろそろ出るか……」

('A`)「……俺がこうしてる間にまたアンデッドが出たら、どうするかな」

('A`)「あの二人だけでもどうにかなるだろうけど……放っとけないよな」


 ライダーとしての自覚が芽生えてか、ブーン達が心配になった。
 机の上に置かれたレンゲルバックルを取り、バッグの中にしまう。
 忘れ物がないことを確認し、バッグを背負いドクオは部屋を出た。

78425話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:08:37 ID:wQXRKlTg0

 ――――――
 ――――
 ――


 だが、皮肉にもドクオの心配は、まさにその時に的中していた。
 ドクオが同窓会に向かうため早めに家を出たと同じ頃、アンデッドサーチャーが一つの反応をキャッチ。
 キャッチしたのは、もちろん♥のカテゴリーJ。

 ブレイド達は再び、アンデッドサーチャーがキャッチした反応のもとへ急行していた。


ξ゚⊿゚)ξ[もうすぐよ、何体いるか分からないから気をつけて] 

( OMO)「了解!」

ξ゚⊿゚)ξ[今のところ、カテゴリーJの反応はまだそこにあるわ]

( OwO)「みたいだな……今度こそアンデッドをとっ捕まえてやるお!」


 更にバイクを加速させ、目的地へと突き進む。


「おい、あれ仮面ライダーじゃないか!?」

「すげぇ!本当にいたのか!」


 公道を走る仮面ライダーの姿を見ては、指を差しスマホのカメラを向ける者が横目で何人も確認できる。
 

( OwO)(早くアンデッドを封印しないと、この人達もいずれ……)

( OwO)(それだけは、絶対にさせないお!)

78525話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:09:08 ID:wQXRKlTg0


 バイクを走らせて数分後。
 目的地は着実に近付いている。目の前に示されている反応もとても近くなった。


( OwO)「もうすぐ着くお!」

ξ゚⊿゚)ξ[……ああ!まただわ……]

( OMO)「なんだ?」

ξ゚⊿゚)ξ[……やっぱりだめ、また消えた]

( OMO)「なに!?」

( #OwO)「クソッ!毎回毎回見計らったかのように消えやがって……!!」


 サーチャーの反応をいち早く確認することが出来るツンは、カテゴリーJの反応が途絶えたことを報告。
 ライダー達の眼前に見えているサーチャーからも、確かに反応が途絶えた。
 もう少しというところで毎回途絶えてしまう反応は、まるでブレイド達の来着を監視しているようだった。


 悔しさを噛み締めながら現場に到着する二人。
 そこにはやはり……狼人間の群れが跋扈していた。


「グルルルル……」

「ワオオォォォォォン!!」

( OMO)「チッ……やるぞ……!」

( OwO)「はい……」


 バイクから降り、二人はそれぞれの武器を手に取る。
 アンデッドを捕まえることの出来ない無力さに苛まれながら、また罪のない人間を裁く。

78625話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:09:28 ID:wQXRKlTg0


ξ゚⊿゚)ξ[ちょっと待って!]

( OMO)「今度はなんだ?」


 狼人間の群れに向かおうとした二人は、ツンの呼び止める声に気を引かれた。


ξ゚⊿゚)ξ[カテゴリーJの反応を確認!そこから更に遠く離れた場所……!]

( OwO)「このタイミングで別の場所に現れたってのかお!?」


 再びカテゴリーJの反応を確認するアンデッドサーチャー。
 二箇所目に出現するのは此度が初めての事。
 ましてや、まだ目の前の狼人間を倒せていない時に。


( OMO)「剣藤、ここは俺に任せてカテゴリーJを追え!」

( OwO)「えっ!?でも、モララーさん一人じゃ……」

( OMO)「これ以上被害を増やさないことの方が先決だ、いいから行け!!」

( OwO)「……分かりました!気をつけて!」


 ギャレンの命令を受け、ブルースペイダーに乗り遠く離れた場所に出現したカテゴリーJを追い始める。
 背中を見届けることはせず、ギャレンは狼人間達に向けギャレンラウザーを構えた。

 その時、ひとつの疑問が頭を過ぎる。


( OMO)(何故タカラは現れない?このことを予測して先回りしているのか?)

( OMO)(いや……何の情報も得られない普通の人間に、そんなことは出来ない……)

( OMO)「ツン、カテゴリーJが消えても場所が分かるように剣藤が向かった位置の特定をしてくれ」

ξ゚⊿゚)ξ[了解!]

78725話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:09:49 ID:wQXRKlTg0





 ―――――




.

78825話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:10:13 ID:wQXRKlTg0


 ギャレンに最初の場を任せ、単身カテゴリーJを追跡するブレイド。
 ブルースペイダーの性能を以ってしても、そこそこ時間が掛かってしまった。

 ブレイドが到着したのは、隣町の遊園地。
 だが、既にカテゴリーJの反応はまたも途切れてしまっていた。
 遊園地にも関わらず人一人の影はなく、スタッフの存在すら見受けられない。


( OwO)「もしかして……アンデッドが!?」


 最悪の展開を想像してしまう。
 全員がアンデッドにやられてしまっていたとすれば……遊園地なだけに、人数の規模も今までとは桁が違う。
 警戒しながらも、無人の入り口を突破し、遊園地の内部へと進む。

 
 たくさんの遊具や乗り物が立ち並ぶ内部。
 何度も周囲を見渡すが、やはり人がいるような気配はない。


( OwO)「どういうことだお……みんな逃げれたのかお?」

「ぐっ……!」

( OwO)「!?」


 突如、人の呻き声。
 すぐに反応し、背後から聞こえるその声に警戒する。


( OwO)「……!?あなたは!?」

78925話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:10:36 ID:wQXRKlTg0


(,,メ;^Д^)「くっ……ブレイドか……」

( OwO)「タカラさん!!」


 そこには、大きく裂かれた腕を押さえながら苦しそうに歩くタカラがいた。
 服はボロボロに引き裂かれ、見える素肌には引っ掻き傷がたくさん形成されている。
 ブレイドのもとへ辿り着く前に力が尽きたのか、タカラは膝から崩れ落ちた。


( OwO)「タカラさん!!どうしたんですかこの傷は!?」

(,,メ;^Д^)「奴だ……!奴を、見つけた……!」

( OwO)「例のアンデッドのことですかお!?」

(,,メ;^Д^)「そうだ……うぐっ!」

( OwO)「タカラさん、傷がひどいですお……!」

(,,メ;^Д^)「構うな!」

( OwO)「………」

(,,メ; Д )「クソッ…!なんて無様だ……一矢報いることも出来ずに、このやられ様か……」

(,,メ; Д )「こんなものを持ってても、何も出来ないのか俺は……!!」


 家族の仇を果たせぬどころか、一方的に打ちのめされたタカラ。
 銃を置き、悔しさに歯を食いしばる。そして、硬い地面を拳で殴りつけた。

79025話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:11:03 ID:wQXRKlTg0


(,,メ;^Д^)「あいにく、ここにいた人は全員逃げることが出来たようだ……俺の仕事じゃないというのに」


 タカラの言葉は、タカラ自身が命を懸けて人を守ったことを意味していた。
 その言葉に安心してか、ブレイドは変身を解除。地に跪くタカラに向け、手を差し出した。


( ^ω^)「……タカラさん、命があっただけでもよかったですお」

( ^ω^)「安全な場所まで肩を貸します。痛むかもしれないけど、立ってください」

(,,メ; Д )「………大丈夫だ、自分で歩ける」


 ブーンの手を借り立ち上がる。
 肩を借りることを拒んだタカラは俯いたまま動かない。


( ^ω^)「着いてきてくださいお」


 タカラの心中を察するブーンは、それ以上の言葉をかけない。
 一言だけ告げると、タカラを背に遊園地内の安全な場所へと向け歩き出した。


(,,メ; Д )「………」

(,,メ^Д^)


 顔をあげ、ブーンの背中を見つめるタカラ。

 




(,,メ ゚∀゚)


 ――その表情が、変わった。

79125話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:11:25 ID:wQXRKlTg0


(,,メ ゚皿゚)Ш 「………」
   
( ^ω^)「タカラさん、大丈夫ですお。そのアンデッドは必ず僕達が捕まえます」

(,,メ ゚皿゚)Ш「……ああ」


 人間のものとは思えぬ鋭利な爪が伸びた右手。
 むき出しにする歯はとても鋭く、肉を食いちぎるのはとても容易だろう。

 ――目の前の、ブーンの肉も。


( ^ω^)(許せないお……カテゴリーJ……!)


 人間を次々と殺め、自分の駒として戦わせる残虐なアンデッド。
 その憎しみは日を重ねるごとに募っていく。
 

 憎んでいる存在が、背後に居るとも知らず。


(,,メ ゚皿゚)Ш「………ウヴヴゥ゙ゥゥッ!!!」


 低い唸り声を喉から鳴らす。
 そして、ブーンの背中を貫くために、構えた右手を勢いよく伸ばした。
 

 だが、間一髪でその腕は掴まれた。


(,,メ ゚皿゚)「ウヴッ!?」

( ^ω^)「!?モララーさん!?」

79225話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:11:46 ID:wQXRKlTg0


( #・∀・)「正体を現したな、タカラ……いや。カテゴリーJ!」

( ^ω^)「モララーさん……それにドクオ!?」


 ブーンが振り返ったそこには、タカラの腕と首を掴み押さえ込むモララーの姿。
 そして、同窓会へ向かうはずのドクオの姿があった。
 

(,,# ゚皿゚)「グウッ…貴様ァ……!!」

(#'A`)「てめぇ、俺達を騙してたのか!!」

( ^ω^)「……?どういうこと……」

( ; ^ω^)「!?!?」


 モララーが掴むタカラの腕。その右手を見た途端、ブーンは言葉を失った。
 タカラの右手は、人の手とは思えぬ形状と化していた。


( #・∀・)「貴様はあたかも俺達の味方のようなフリをして、俺達の動向を確認しながら動いていた。
      人間のフリをして、俺達に近付いたんだろう!?」

( #・∀・)「通りで俺達が辿り着く前に、アンデッドが都合良く居なくなる訳だ」

( ; ^ω^)「……嘘でしょ?タカラさん…!?」

( #・∀・)「家族が殺されたなどというのもでっちあげた嘘だ、俺達を信用させるためのな!
      貴様は人間社会に潜り込み、俺達の監視から外れた場所で効率よくアンデッドを倒すため……!」

79325話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:12:08 ID:wQXRKlTg0


(,,# ゚皿゚)「ンウグゥアァッ!!」


 強引にモララーの拘束を振り払う。
 再び俯くタカラ。
 だが、俯いていても分かる。


 タカラは、笑っている。


(,,メ Д )「……フッ、クククク……」

(,,メ゚∀゚)「フッハハハハハハハ!!」

(#'A`)「何笑ってんだお前!?」

(,,メ^Д^)「少しだけお前の言うことを訂正してやろう」

(,,メ^Д^)「家族が殺されたのは嘘じゃない、あれは本当にあったことさ」

(,,メ゚∀゚)「そう……この姿をした男の前で、確かに俺は家族を殺した。そして……この男さえも殺した!!」


 人間の姿の自分を見せつけながら話すタカラ。
 タカラが擬態している人間の姿は……タカラ自身が殺した人間の姿だった。


(,,メ^Д^)「だがな、あれはただの実験に過ぎなかった。失敗したが、俺が人間どもを下僕に変えるための力を試しただけだ。
       あの女が俺に授けた力をな……」

( ・∀・)「BOARDの女性の話か?そんなものも嘘だろう!」


(,,メ^Д^)「――いや?それは本当さ」

79425話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:12:31 ID:wQXRKlTg0


( ・∀・)「何……?」

(,,メ^Д^)「奴は俺の正体を知っていて近付いて来た。そして……普通ではありえないこの力を俺に授けた」

(,,メ^Д^)「あの女が何を考えてそうしたかは知らないが、そんなものには興味ない!
       俺はこの力を使って、あることを考えたんだ……」

(,,メ^Д^)「クククク……フハハハハ……!」


 不気味な高笑い。
 三人は、タカラをただ怪訝な目で睨み続ける。


(,,メ^Д^)「お前達……俺を追い詰めて、正体を明かしてそれで全てが済むと思ってるんだろう?」

(,,メ^Д^)「ヒャハハハハ!!馬鹿な奴らだ、お前らは本物の間抜けだなァ!!」

( #・∀・)「………」

(,,メ^Д^)「おい……この訳の分からない物が建ち並ぶ広い場所に、本当に人間が一人もいなかったと思うのか?」

(,,メ^Д^)「俺が手を掛けた奴らが一体どんな姿になってきたかは知ってるだろう?
       奴らは俺の思うままに動く、下僕に過ぎない」

(,,メ^Д^)「ただ……下僕でも腹を空かせるからなぁ、餌を与えないといけないんだ」

('A`)「さっきから何が言いたいんだ!?」


 痺れを切らし怒鳴りつけるドクオを見ては、目を見開き満面の笑みを浮かべる。


( #・∀・)「貴様……全員を殺したのか!?」

(,,メ゚∀゚)「大当たりだ!!全員俺の下僕に変わり果てた!それで、ちょっとばかり餌を食わせに行ったのさ……」

(,,メ゚∀゚)「お前らが大事にしてる、"仲間"って奴の肉をなァ……!!」

79525話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:12:54 ID:wQXRKlTg0


( ; ・∀・)「………!!」

( ; ^ω^)「まさか……!!」


 ポケットのスマホを取り出し、急いでツンへと発信するブーン。
 モララーも同様に、ジョルジュへと発信。
 耳に当てたスマホから、相手を呼び出す音が流れる。


 …………。

 …………。


( ; ^ω^)「ツン……!」


 …………。

 …………。


( ; ^ω^)「………」

( ; ・∀・)「出ない……」
 

 ツンもジョルジュも、二人の着信を取ることはなかった。


(,,メ^Д^)「今頃どうしてるんだろうなぁ……?奴らに捕まって、今にも食われそうになってるかもしれないなぁ」

( #^ω^)「貴様………!!」

79625話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:13:16 ID:wQXRKlTg0


(,,メ^Д^)「ヒヒヒヒヒ……!!でもひとつだけ助かる方法はあるぞ。
       奴らは俺の意思で動く、俺が止めろと命令すれば奴らは止まる」

(,,メ^Д^)「そうだなぁ、俺の条件を飲めば……助けてやらんでもない」

( ; ・∀・)「……最初からそれが目的だったのか!?」

(,,メ^Д^)「ご名答だ!貴様らの命も人間の命もどうでもいい、俺の目的はただひとつ……」

(,,メ^Д^)「ライダーのバイクとカードを俺に寄越せ。特にブレイド……♠スートの力は俺と相性がぴったりでな。
       お前のカードを寄越せ!そうすればお仲間の命は助けてやるよ」

( ・∀・)「なんだと!?」

(,,メ^Д^)「他のアンデッドは全て俺の敵だ!貴様が言った事は間違いじゃない。
       だが、封印する術は今のところ貴様らしか持っていない」

(,,メ^Д^)「なら、カードの力を発揮できるバイク……そしてそのカードを手にすればいい!そして俺はアンデッドとして最強になる!
       アンデッドを俺の手で全員ぶっ倒して、俺の力とする!そして最後に勝ち残るのは……俺だ!!」


 全ては、ライダーの持つ力を狙ったタカラの計算通りだった。
 悲劇の人間を装いブーン達に近付き、ライダーの動きを監視する。
 自分への疑いを無くすことで、監視から外れたタカラは自由に動き回ることが出来た。
 狼人間を常にライダー達に与えながら、自分の存在を警戒させながらも自分を信用させる。

 そして、最後は自分の正体が明かされても問題の無いように、ツンやジョルジュを人質に仕組む。

 モララーの疑念は、間違ってはいなかった。
 だが、ブーンはタカラを強く信用してしまった。

79725話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:13:40 ID:wQXRKlTg0


( ^ω^)「………分かった」


 カードデッキを取り出し、タカラに差し出すブーン。
 

(,,メ^Д^)「フッ、それでいい。物分りが良くて助かる」


 鼻を鳴らし、カードデッキを奪い取る。
 カテゴリーAを含む全てのカードを確認すると、タカラは口角を吊り上げる。


( ^ω^)「それで……それでツン達を助けてくれるんだろうな?」

(,,メ^Д^)「ああ、もちろんさ。俺は嘘をつかない……」

(,,メ゚∀゚)「……というのは嘘だ!」

( ^ω^)「何……!?」

(,,メ゚∀゚)「ハハハハハハ!!どこまでも馬鹿な奴らだ!生かしておくわけないだろう!!
      アンデッドを倒そうとする連中も、カードが手に入った今みんな邪魔だ!!貴様らの命などどうでもいい……わけないだろ!?」

( # ω )「ッ………!!!!」

( #・∀・)「貴様……!!」

(,,メ^Д^)「クククク……!」


 思うままに騙される人間共に、滑稽過ぎて笑いが止まらない。
 ブーンとモララーの怒りに満ちる表情が、タカラの笑いをより誘った。


(,,メ゚皿゚)「……フーッ、フーッ…!ウウウヴヴヴヴゥッ!!」

( ; ^ω^)「うっ!?」

79825話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:14:04 ID:wQXRKlTg0


 再び歯をむき出しにし、突如息を荒げる。
 ブーンを突き飛ばしたタカラは、軽々と宙を回転しながら人としての姿を消した。
 着地して現れたのは、全身に鋭いナイフを纏った狂気すら感じる姿のアンデッド。
 狼にも似た風貌は、まさに狼人間の生みの親であることを証明していた。

 ブルースペイダーへと一直線に疾走するタカラは、華麗に飛び乗る。
 人の文化を知らないアンデッドとは思えぬ程、器用にバイクのエンジンをかけた。

  (
彡,,メ皿゚彡『コイツも今から俺の力だ!』

( ・∀・)「待て!!」


 呼び止める声など意味を成さない。
 タカラは、そのままブルースペイダーを走らせ何処かへと去って行ってしまう。


('A`)「ブーン、大丈夫か?」

(  ω )「………モララーさんの言う通りだった」

( ・∀・)「剣藤……?」


 ドクオに差し伸べられた手を掴まず、ブーンは地に倒れたまま小声で囁いた。


(  ω )「僕のせいだお……僕があいつを、何の警戒もせず信じてしまったから……」

(  ω )「ツンもジョルジュも……モララーさんやドクオも、こんなことに巻き込んでしまった……!」


 酷く責任を感じ、自分を責めるブーン。
 同時に、アンデッドに騙されたことの悔しさでギリギリと歯を食いしばる。


( ・∀・)「……剣藤、立て」

79925話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:15:23 ID:wQXRKlTg0

 ♪大いなる力 - https://www.youtube.com/watch?v=d18HxqqREGk


( ・∀・)「お前だけの責任じゃない……俺にも責任はある」

( ・∀・)「BOARDの女性……奴が言った言葉に、希望を感じてしまっていた部分があった。
      奴を通じてその女性に接触すれば……所長達と力を合わせ、BOARDの再建も有り得ると思ってしまった」

( ・∀・)「全部一人で責任を負おうとするな。俺達は痛みを分け合っていく仲だろ」

( ^ω^)「でも……僕は、ただただ何回も何回も騙されて……」

( ・∀・)「百回人を騙す奴より、百回騙されて馬鹿を見る奴の方が俺は好きだ」

( ・∀・)「それに……どんなことがあっても、最後までお前と共に戦うと覚悟を決めた本当の仲間なら、此処にいる」

( ・∀・)「俺が府坂に騙されていた時のように、今度は俺がお前を導く。それが仲間だと、お前が教えてくれたんだ」

( ^ω^)「モララーさん……」


 手を差し伸べるモララー。
 既に掴むべき手は差し出されているにも関わらず、ドクオも再び手を差し伸べた。 


('A`)「そうだよ!あんな奴、俺達が一丸になればぶっ倒せる!ツンのとこにはジョルジュがいるんだろ?簡単にやられやしないさ」

('A`)「まぁ、これは根拠のない自信だけど……さっきまでツンはサーチャーの反応を送ってくれてたんだろ?
   それに狼人間の群れが本当に向かってたとしたら、俺達は途中でその群れを見てるはずだ」

('A`)「でも、あいつがはったりかましてるとも思えないし……とにかく急いでなんとかしないと!」

80025話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:15:46 ID:wQXRKlTg0


( ・∀・)「奴を倒せば、狼人間の動きも制御出来るはず。すぐに奴を追おう、今度こそ俺達で奴を倒すんだ!」

('A`)「協力して倒すことが重要。だろ?お前が言ったんだぜ?」

( ^ω^)「……へっ、お前に元気付けられるなんてな」


 両手を伸ばし、差し出された二つの手を掴む。
 二人に引っ張られながら自分の足に力を入れ、深く深呼吸。


( ・∀・)「カテゴリーAは渡さなかったんだろう?」

( ^ω^)「もちろん、あいつは力になるカードしか欲しくないだろうと思って」

( ・∀・)「なら問題はないな。俺の小型サーチャーを渡すから、後ろに乗って道を案内してくれ」
   っ■

( ^ω^)「分かりましたお」

('A`)「じゃあさっさと行こうぜ、とっとと倒して俺も同窓会に行くんだ」

( ^ω^)「よし、行こう!」


 アンデッド打倒に向け、一つになった心が共鳴する。
 タカラを追うため、三人はバイクのもとへと走って行く。






 ――その背中を、高い位置で宙吊りになった観覧車の上から見つめる、一人の少女。


o川*゚ー゚)o「………」

o川*゚ー゚)o「……お友達、なれるかなぁ」

80125話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:16:11 ID:wQXRKlTg0





 ―――――




.

80225話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:16:35 ID:wQXRKlTg0


 逃走したタカラは、人一人いない広々としたプールへと侵入。
 盗んだブルースペイダーで柵を越え、プールサイドに華麗に着地する。

 そして、ブーンから騙し取った♠スートのカードを懐より取り出す。

  (
彡,,メ皿゚彡『フッフッフッ……コイツがあれば、アンデッドの力を俺のものに出来る!』


 自身の左手と、ブルースペイダーに搭載されたラウザーシステムを交互に見つめる。

  (
彡,,メ皿゚彡『このバイクに俺のアンデッドウィルスを注入すれば、更に俺に適したマシンになる…!』
  (
彡,,メ皿゚彡『俺は強力な力で全てのアンデッドを倒し、自分でアンデッドを封印することが出来る…!最高だ!!』


 カードにブルースペイダー……そして、BOARDの女性と言う者から得た力。
 他のアンデッドには持つことの出来ない力を手にし、喜びに満ち溢れる。
 力を全て駆使し、アンデッドを封印する姿を想像する。笑いが止まらない。

 だが、喜びに浸るのも束の間。
 余韻を邪魔する、一人の気配を感じた。

  (
彡,,メ皿゚彡『………貴様から試してやろうか?』


 気配のする方へ視線を向け、ブルースペイダーから降りる。
 すると、その声に応じるように視線の先から現れた。

80325話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:18:57 ID:wQXRKlTg0


ミセ*゚ー゚)リ「ふふ、やっぱり面白いことしてるじゃない」


 現れたのはミセリ。
 タカラの一連の行動を陰から監視し、機を伺っていたのだ。
 

ミセ*゚ー゚)リ「私の予想は当たったわ、きっとそれが目的だと思った」
  (
彡,,メ皿゚彡『フン、だったらどうする?俺から奪おうと言うのか?』

ミセ*゚ー゚)リ「私と手を組めばそんなことはしないわ」
  (
彡,,メ皿゚彡『馬鹿な…俺は誰とも手は組まないと言ったはずだ』


 片手のみで扇形に綺麗にカードを広げ、ミセリに見せ付ける。
 

ミセ*゚ー゚)リ「はぁ、残念ね。乱暴なことはしたくなかったんだけど…」

ミセ*゚ -゚)リ「……お前がその気なら、力ずくで奪うまでだ……!」
  (
彡,,メ皿゚彡『望むところだ…!』


 交渉は決裂し、互いに敵意を見せ始め一触即発な状態へと加熱していく。
 睨み合いながら距離を取る両者。
 まさに今、戦いの火蓋が切って落とされようとした。

 その時。

 手を叩くような乾いた音が、パン、パン!とプールに響き渡った。

80425話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:19:28 ID:wQXRKlTg0


ミセ*゚ー゚)リ「……?」


 音のする方へ、睨み合っていた二人の視線は向けられる。
 
 プールの中心。
 繋がった広いプールサイドとは隔離されたように点在する、小さい子供用のプールだろうか。 
 その脇にビーチパラソルを差し、白いビーチチェアに寝そべる一人の男がそこにはいた。

 深々と被った麦わら帽子を僅かに上げ、視界を広げる。


「……ああ、まったくうるさいな」


 気だるそうにゆっくりと立ち上がった男。
 エスニック系の白い緩めの服で覆っている身体は、服越しでも分かるとても強靭な肉体。
 背丈は高く、その見た目だけで人を威圧出来る。
 帽子に手を当て、対岸で対峙しているミセリとタカラを見つめる。


「おいお前ら、人のテリトリーで勝手に騒ぎを起こして……」


 直後、スパンの無い跳躍で軽々とプールを飛び越え、対岸へと渡る屈強な男。
 二人の前に立ちはだかり、ようやく顔がはっきりと露になる。
 そして、気だるそうな表情で言葉を続けた。


( ゚∋゚)「……特別に許可してやる。さぁ、戦ってくれ」

ミセ*゚ー゚)リ「お前は……!」
  (
彡,,メ皿゚彡『貴様……カテゴリーJか!?』

80525話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:19:48 ID:wQXRKlTg0


 男を見た瞬間、威勢の良かったミセリが微かに萎縮している。
 タカラによって正体が判明した。
 この男もアンデッドであり、上級アンデッド。タカラと同じカテゴリーJだ。

 ブーンとモララーがそれぞれ封印したカテゴリーJ。
 残るカテゴリーJは二体で、そのうちの一体は♥スートのタカラである。

 と、すれば……残るカテゴリーJは、♣スートのみ。


( ゚∋゚)「いいからいいから、どちらかが潰れるまで戦ってくれ」


 二人の意識が男に向けられているにも関わらず、男は二人の戦いを促す。
 

ミセ*゚ー゚)リ「……あら、ごめんなさい。あなたのテリトリーだとは知らなかったの。
      あなたを怒らせるのは得策じゃないから、やめておくわ」

( ゚∋゚)「気にするな、俺は何もしない」
  (
彡,,メ皿゚彡『ハッ!今の俺なら、お前も倒せるかもしれんな。無敵の力を手にしたこの俺なら!』

( ゚∋゚)「フム……」


 上級アンデッドによる三つ巴。
 殺気を見せず落ち着いている男の隠し持った力を知ってか、ミセリは一歩引いている。
 それに対して、タカラは好戦的な態度を示すも、男は興味のない素振りを見せた。


( ゚∋゚)「…ん?」


 突如、近付く気配を感知する男。
 やがて近くなるバイクの排気音にミセリ達も気付き、その正体が何かを感じ取った。

80625話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:20:14 ID:wQXRKlTg0

  (
彡,,メ皿゚彡『フン、来たか』


 二台のバイクが到着し、ブーン達三人が現れた。
 モララーの後ろに同乗していたブーンが真っ先に降り、手に持ったサーチャーをポケットにしまう。
 そして、並び立つ面々を一人ずつ確認する。


( ・∀・)「貴様……」


 ヘルメットを取るモララー。
 言わずとも目に入ったのはタカラ。奪われたブーンのカードを手に持っている。
 先に降りたブーンが最初に目に入ったのは、ジョルジュを騙し母とでぃを人質に取られた因縁を持つミセリ。


( ^ω^)「義永ミセリ……!お前もいたのかお!」

ミセ*゚ -゚)リ「お友達は元気かしら?」

( #^ω^)「ふざけんな!!お前だけは許さない!!」

ミセ*゚ -゚)リ「ふん」


 冷たく見下した目が、ブーンを睨み付ける。
 グリンクローバーから降りたドクオは、面識のないもう一人の男に気が付いた。


('A`)「お前もアンデッドなのか!?」

( ゚∋゚)「仮面ライダーか……倒すならコイツらにしてくれ、俺は戦いが嫌いなんだ」

('A`)「そんなこと信じられるか!」

80725話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:20:38 ID:wQXRKlTg0


ミセ*゚ー゚)リ「フフフ、一旦お預けね。三対三でどうかしら?」
  (
彡,,メ皿゚彡『仕方ない……仮面ライダーを葬るまたとない機会だ』

( ゚∋゚)「勝手にやってくれ」


 臨戦態勢を取るアンデッド達。
 男だけは乗り気ではなく、立ち尽くしたまま。


( ・∀・)「上級アンデッドが三体……やれるか?」

('A`)「はい、せめて一体は封印してやる!」

( ^ω^)「やるしかないお…!」


 ドクオを真ん中に肩を並べる三人。
 上級アンデッドが三体という、かつてない脅威に立ちはだかる。
 独特な緊張感が漂うも、ブーンだけはアンデッドへの怒りで滾っていた。

 ブーンはバックルを取り出し、モララーがカードを装填し、ドクオはバックルを装着。
 三人一斉に装着したバックルから、三つの待機音が重複して複雑な音を奏でる。
 アンデッドを真っ直ぐ視界に捉えながら、同時に変身の構えを取る。

80825話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:21:01 ID:wQXRKlTg0

 

( ^ω^)ψ
    /

('A`/)       「「「変身!」」」


o( ・∀・)
 \


    【 -♠TURN UP- 】 【 -♣OPEN UP- 】 【 -♦TURN UP- 】

80925話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:21:25 ID:wQXRKlTg0


 バックルを展開し、三つのゲートが射出される。
 接近するレンゲルのゲートに、変身者の通過を待つブレイドとギャレンのゲートが二つ。
 ドクオの両サイドに並んでいたブーンとモララーがゲートに向け走り出し、ドクオは構えたままゲートを待機。

 ブレイトとギャレンへ変身しアンデッドへと向かって行った二人に対し、変身を終えたレンゲルが遅れて動き出した。


( OwO)「うおおおおおッ!!!」

ミセ*゚ー゚)リ「ふふ、そんなに私が憎いか…!?」


 ブレイドが狙いを定めたのは、因縁深いミセリ。
 自身を狙う理由は察しがついている。
 故に不気味に笑ってみせると、ミセリはアンデッドへと姿を変身しブレイドに応戦。

  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『ふっ!』

( OwO)「お前のっ!その攻撃にはもう乗らないおっ!!」


 ミセリが伸ばした幾つかのツルを、咄嗟の判断で抜いたブレイラウザーで斬り落とす。
 障害のなくなった道を突き進み、右手に持った剣でミセリを斬りつけた。

   ∧Λ
∠*゚`ー´)ゝ『うっ…!ふふふ、少し甘く見てたわね…!』


 胸部より流れる緑血を指で掬い、妖艶な唇から覗かせた舌先で舐め取る。

81025話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:21:45 ID:wQXRKlTg0

 
( OMO)「これ以上貴様の思い通りにはさせない!」
  (
彡,,メ皿゚彡『ハハハ!止められるものなら……止めてみろ!!」


 ギャレンは、今回の元凶であるタカラを攻撃。
 騙された事への怒りと、危険に晒されているツンを救うための焦りが生じていた。

 両手の拳で繰り広げるパンチをことごとく躱され、遂には右腕を取られてしまう。
 すぐに蹴り上げた左足で腕を振り解こうとするも、タカラは頭を下げたと同時に掴んだの腕を離す。
 蹴りの勢いで右へ回転するギャレンの背中を、両手に伸びる鋭利な爪で二度切り裂いた。


( ; OMO)「ぐうっ…!」
  (
彡,,メ皿゚彡『早速力を試してやる、どけ!』


 ギャレンの背中を蹴り飛ばし、ひと飛びでブルースペイダーのもとへ移動。
 カードを一枚取り出し、ラウザーシステムにカードをスライドさせた。


    《-♠9 MACH-》


 カードをラウズしてすぐ、左手をラウザーシステムへと突っ込む。
 本来ならブルースペイダーにしか付与されない力を、物理的に強引に自らへと付与させたのだ。

  (
彡,,メ皿゚彡『感じる……これがアンデッドの力を使うということなのか……!!』


 "♠9のMACH"の力を得たことで、タカラに高速移動の力が宿った。
 再びギャレンのもとへと走るタカラ。
 その速度は、もはや視界に捉えることが難しいほど。
 元々素早い動きを得意とするタカラに、高速移動の力が加わった事によって、この上ない速度を生み出す。

81125話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:22:08 ID:wQXRKlTg0


 圧倒的な素早さ。
 全身に備わったナイフを活かし、高速の体当たりをギャレンに見舞った。


( ; OMO)「うああっ!くっ……速過ぎる!」


 まるで、疾風の刃の如く。
 四方から飛翔する刃に切り刻まれるような攻撃に、ギャレンは為す術なく蹂躙される。

  (
彡,,メ皿゚彡『ヒャハハハハ!!最高だァ!!こいつは気分が良いぜ!!!』

( ; OMO)「ううっ…!!」

( OHO)「モララーさん!!」


 男へと立ち向かうも相手にされずにいたレンゲルが、ギャレンの危機に気付いた。
 戦おうとはしない男をそのままに、レンゲルラウザーに一枚のカードをラウズ。


    《-♣9 SMOG-》


 カードの力を得たレンゲルラウザーを突き出し、大量の煙幕を発生させる。
 素早く移動を繰り返すタカラを包み込み、ようやく動きを制御させることが出来た。

  (
彡,,メ皿゚彡『チィ…ッ!何だこの煙幕は!?』

( OHO)「大丈夫ですか!?」

( OMO)「ドクオ、すまない…っ!」

81225話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:22:31 ID:wQXRKlTg0


 果敢にもタカラに再び挑むギャレン。
 アンデッドの力の効力が切れ、タカラの攻撃は一旦の落ち着きを見せる。


( OHO)「戦う気になったのか!?」


 ギャレンを救ったレンゲルは、もう一度男に向け殴りかかった。
 しかし、男はレンゲルの拳を片手で受け止める。
 

( OHO)「!?うッ……!」

( ゚∋゚)「面倒だ……何故俺に突っ掛かる?」


 体感したことのない力が、レンゲルの拳を握り潰さんとする勢いでギリギリと締め付ける。
 その強靭な肉体から繰り出される力は、説得力十二分と言ったところか。
 表情一つ変えずレンゲルを青い瞳で見つめ続け、掴んだ片手のみで軽々と投げ飛ばした。


( ; OHO)「うわぁっ!?」


 地に叩き付けられ、何が起きたかも分からず困惑すら覚えるレンゲル。
 それでも男は追撃しようとせず、先程からプールサイドに着いた両足は全く動いていない。


( ; OHO)「コイツ……やばい……!」

( ゚∋゚)「フム……全く、まだ新たな顔ぶれが来るのか」

( ; OHO)「なに言ってんだ!?」

81325話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:22:52 ID:wQXRKlTg0


 ライダーとアンデッド、三対三で展開される乱戦。
 もはや収拾がつかず、いつ誰が先に倒れるかが読めない状況だ。


( OMO)「ふうっ!」
  (
彡,,メ皿゚彡『ぐうっ!?』


 腕を取り、素早く懐に潜り込むと一本背負いでプールサイドにタカラを叩き付けるギャレン。
 地にタカラを押し付けながら、ギャレンは激しく捲くし立てた。


( OMO)「BOARDの女性とは誰のことだ!!言え!!」
  (
彡,,メ皿゚彡『さぁな、名前なんて興味がない』

( OMO)「嘘をつけ!!」
  (
彡,,メ皿゚彡『そんなことより、自分のお仲間の心配でもしたらどうだ?』


 ギャレンに取り押さえられながら、タカラは静かに笑い始めた。

  (
彡,,メ皿゚彡『クククク……』
  (
彡,,メ皿゚彡『お前達の仲間の女、今頃食われてるぜ』

( OMO)「!?」

81425話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:23:16 ID:wQXRKlTg0

  (
彡,,メ皿゚彡『グアアアァアッ!!』

( OMO)「くっ……!」


 ギャレンの一瞬の気の緩みを突き、強引に払い除ける。
 仰向けのまま腰と両足を宙に浮かせ、タカラは勢い良く飛び起きた。
 
  (
彡,,メ皿゚彡『残念だったなぁ!俺が向かわせた狼人間は、さっきの場所の奴らだけじゃないんだよ!!』

( OwO)「なに!?」

( OHO)「!?!?」


 ミセリと交戦中のブレイド、男に投げ飛ばされたレンゲルも、タカラの発言に気が向いてしまった。

  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『ふん!』

( ; OwO)「うああぁっ!!」


 顔が入れ替わったミセリの口から、無数の花びらが放たれた。
 ブレイドの身体に纏わりつき、爆竹のように小さな爆発が引き起こされる。
 小さな爆発が無数に重なり、爆発に包まれたブレイドは痛みに声をあげながら体勢を崩した。

  (
彡,,メ皿゚彡『ククク…!確かにさっきの場所から向かわせたのは事実だが、それ以前にもっと近い場所から向かわせておいたのさ!』
  (
彡,,メ皿゚彡『そう、お前が下僕を相手にしていた場所からな…!』

( ; OMO)「……!?」


 ギャレンを指差すタカラ。
 タカラの反応を辿って最初に着いた場所。ギャレンは、ブレイドを先に行かせ一人でその場を受け持っていた。
 全ての狼人間を倒したつもりだったが……既に、取り逃がしていた狼人間が何体もいたのだ。

81525話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:23:40 ID:wQXRKlTg0

  (
彡,,メ皿゚彡『お前達は本当に馬鹿でどうしようもないマヌケだ!騙され踊らされ……お前達がこうしてる間にも、仲間の女は……!』

( ; OwO)「ッ……嘘だ!どうせそれも嘘なんだろ!?」
  (
彡,,メ皿゚彡『なら……今から戻ったらどうだ?きっと残ってるのは、食い荒らされた女の肉だけだぜ…!!』

( ; OHO)「………そんな………」

( ; OMO)「………」


 沈黙する三人。嘘かもしれない可能性を疑い切れない。
 絶望に打ちひしがれているのか、地に倒れたまま身動きが取れず、呆然としてしまう。

  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『あらあら……可哀想ね』

( ゚∋゚)「ふ、くだらん」 


 捨て台詞のように吐き出した男は、そのまま静かに立ち去った。
 だが、誰も男を追おうとはしない。
 
  (
彡,,メ皿゚彡『どうした…?悲しすぎて立ち上がることも出来ないか?』

( # w )「………貴様……」


 怒りや悔しさ、悲しみが渦巻く。
 握り締める拳が震え、あまりの怒りにそう呟く声も小さい。

  (
彡,,メ皿゚彡『安心するんだな。今からお前達も……仲間のもとへ送ってやる!』

81625話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:24:04 ID:wQXRKlTg0


 再び跳躍し、ブルースペイダーのもとへと移動。
 今度はブルースペイダーに乗り、選んだカードを一枚ラウズした。


    《-♠6 THUNDER-》


 ラウズした直後、先程と同様に左手をラウザーシステムへと突っ込んだ。
 途端、ブルースペイダーとタカラの身体に電撃が走り始める。
 ハンドルに両手を掛け、地に両膝を着いたままのブレイドへとブルースペイダーの正面を向かせた。
 何度もアクセルを吹かす行為は、己の存在を知らしめるかのように。

 そして、ブルースペイダーのアクセルを全開に急発進。
 青い閃光を描きながら、短い距離に位置するブレイドに向け突進した。
 
  (
彡,,メ皿゚彡『自分の持っていた力に倒される極上の気分を、味わえ!!』

( ; OwO)「ッ……!」

( ; OMO)「剣藤!!させるか――」
 
 
 右腰のギャレンラウザーを引き抜き、疾走するタカラに構える。

  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『邪魔をするな!』


 しかし、ミセリの花びらによる攻撃が視界を遮り、同じように小さな無数の爆発に巻き込まれた。
 

( ; OMO)「ぐああぁっ!!」

( ; OHO)「ううっ!!」
  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『ブレイドを倒すまたと無い機会、逃がしはしないわ!』

81725話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:24:28 ID:wQXRKlTg0


( ; OwO)「うぐ……っ!」
  (
彡,,メ皿゚彡『死ねェ!仮面ライダー!!』


 殺意に満ちた狂気の声が、轟くバイクの音を掻き消す。
 ゆらりと身体を起こすブレイドだが、タカラの操るブルースペイダーは既に眼前へと到達。
 

( ;  w )「がはっ――!!!」
 

 正面からの衝突、更には電撃の力が加わり、ブレイドは身体を痺れさせながら吹き飛ばされる。
 激突したフェンスや壁を壊しながら、崩壊して生まれた瓦礫の上に崩れ落ちた。

  (
彡,,メ皿゚彡『終わりだ……!!』

( ;  w )「……ッぐ……」
 

 倒れたブレイドに向け、再びアクセルを全開にしたタカラ。
 用済みとなった、ただただ邪魔な仮面ライダーにトドメを刺せることに心が躍る。
 アンデッド討伐のために開発された正義のマシンは、アンデッドが操る殺戮マシンと化した。

  (
彡,,メ皿゚彡『アンデッドと戦う"運命"にあった己が生を憎むがいい!』
  (
彡,,メ皿゚彡『貴様ら全ての仮面ライダーを、俺の手で殺してやる!!!』

81825話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:24:48 ID:wQXRKlTg0


 瞬く間に接近するブルースペイダー。
 荒ぶる雷は排気音と共鳴し、轟音を鳴り響かせる。

 もはや、ブレイドに逃げる時間はなかった。
 

( ;  w )「………ッ!」


 間に合わない。
 そう確信せざるを得なかったブレイドは、反射的に両目を瞑る。
 両腕を顔の前に翳し、微塵の意味も成さない守りの構えを取りながら。




 ――だが、目を瞑り視界の途絶えた目の前で突如、タイヤが地面を急激に擦る音が響いた。
 

( ; OwO)「……?」


 音が鳴った途端、衝突は免れぬであろうと思われていたはずのブルースペイダーも、衝突する気配はない。
 気のせいでなければ、ブルースペイダーはブレイドに突進する前に、急ブレーキをかけている。

 そう思ってか、翳した両腕をゆっくりと下ろし、瞑った目を開く。
  
 開いた視界にまず映ったのは……ブルースペイダーに乗ったタカラの姿ではなかった。
 ブレイドに対し背を向け立つ女性。
 そこに居たのは……。

  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『チッ、厄介なのが来たわね…』
  (
彡,,メ皿゚彡『貴様……!何のつもりだ!?』

81925話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:25:09 ID:wQXRKlTg0


( OwO)「クー……!」

川 ゚ -゚)


 タカラによる突進から、ブレイドを守るようにして立ちはだかるクー。
 クーの介入は予想していなかったのか、タカラは特に驚いた反応を見せた。

  (
彡,,メ皿゚彡『退け!』

川 ゚ -゚)「退かぬと言ったら?」
  (
彡,,メ皿゚彡『何だと?何故貴様がこいつらを助ける!?』

川 ゚ -゚)「そう見えるならそれでも構わない。私はただ、お前達を倒すことにしか興味がない」


 クーの腰に、カリスラウザーが浮かび上がる。
 カテゴリーAのカードをコートのポケットより取り出し、タカラにそれを見せ付けた。

  (
彡,,メ皿゚彡『貴様……!』

川 ゚ -゚)「どうした?戦う準備なら出来ている。さっき狼の群れを狩り尽くして、腕を温めたばかりだ」
  (
彡,,;メ皿゚彡『!?!?』

( OwO)「クー、それ……まさか」

川 ゚ -゚)「……この間は私が助けられた。借りが出来たままなのが嫌なだけだ」

川 ゚ -゚)「安心しろ。ツンも、あの男も無事だ」

82025話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:25:29 ID:wQXRKlTg0


 サーチャーでは捉えられぬ狼人間の反応。
 だが、アンデッドであればその気配を感じ取ることが出来る。
 大勢の狼人間がツン達に迫っていたことを、クーは感知。
 そして、本人達の知らぬところで、すべての狼人間を排除していた。

 
( OwO)「……よかった……」
  (
彡,,#メ皿゚彡『貴様余計なことをォ……!!』


 想定外の邪魔者。それだけでなく、企みまで阻止される始末。
 タカラの怒りはすぐに爆発し、クーを睨みながら鋭い八重歯を光らせる。


川 ゚ -゚)「ふん、怒ったか?策士を気取った荒削りな企みなど、容易に打ち破れる。
     身を潜めてこいつらの動向を探っていたくせに、私に注意を払わなかった時点でお前の負けだ」
  (
彡,,#メ皿゚彡『グウウウウウ……!!!』

川 ゚ -゚)「くだらない余興はここまでだ。嘘をつき過ぎれば、誰ももうお前の言葉を信用しなくなる」

川 ゚ -゚)「変身」
  っ□


    【 -♥CHANGE- 】


 カリスへと変身した直後に召喚したカリスアロー。
 眼前のタカラへと構え、光の矢を数発射出。

  (
彡,,メ皿゚彡『クッ…!』


 矢を回避する為、咄嗟にブルースペイダーから降りたタカラ。
 受け身を取りながらプールサイド上で身を構えたところに、カリスは急接近する。

82125話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:26:01 ID:wQXRKlTg0

 
 軽く地面を蹴り上げ、宙に浮いた身体を勢いよく前に回転させながらタカラに斬りかかるカリス。
 タカラも咄嗟にこれを躱し、右足による回し蹴りを脳天目掛け放った。

 だが、カリスはタカラの右足を敢えて腕で防ぎ、右腕でタカラの脚をしっかりと掴んだ。


( <::V::>)『今だ!カードを奪え!』 
  (
彡,,メ皿゚彡『なっ…貴様…!』

( OMO)「ッ……!」


 カリスの声に真っ先に動いたのは、ギャレン。
 地面を拳で叩いて立ち上がり、カリスに掴まれたタカラに向け走り出す。
 カードを奪われまいと、タカラは何度も何度もカリスを殴打して抵抗するが、カリスは脚を掴んで離さない。

  (
彡,,メ皿゚彡『クソッ!離せ!離せェッ!!』

( OMO)「カードは返してもらうぞ!!」


 通りすがりに、タカラの腰に提げた巾着袋に手を伸ばし、強引に引きちぎる。
 カードを奪ったことを確認したカリスは、タカラの顔面に何度も肘を叩き込み、身体を翻し左足の踵を脳天目掛け叩き込んだ。

  (
彡,,;メ皿゚彡『ウグウゥッ…!』


 その隙に、ギャレンはブレイドへと袋を渡す。
 受け取ったブレイドは、袋の中からカードを出し全てのカードが揃っていることを確認する。


( OwO)「……大丈夫、全部ありますお」

( OMO)「そうか、ならよかった」

82225話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:26:27 ID:wQXRKlTg0


  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『これは……逃げたほうが良さそうね。ここはあなたに任せるわ!』

( <::V::>)『させるか!』


 状況不利と判断しては、タカラを残し逃走を図ろうとするミセリ。
 だが、そう何度も逃げることはカリスが許さなかった。

 目の前のタカラを蹴飛ばし、両足を揃え跳躍。
 空中で身体を回転させながらミセリの前へ着地し、振り返りながらカリスアローを斜め上に斬りあげる。

  *∧Λ*
∠*;゚`ー´)ゝ『ぐうぅッ…!』

( <::V::>)『貴様に借りは無いが、個人的な恨みはある。今度は私が貴様を追い回す番だ!』
  *∧Λ*
∠*;゚`ー´)ゝ『お前ェ……!!』

( <::V::>)『その狼はお前達にくれてやる、煮るなり焼くなり好きにしろ!』


 ミセリの背後に回り込み、首に掴み掛かったままそう言い放つ。
 ミセリは、カリスを振り払うことをしないまま、姿を消すための花びらを自身の周囲に発生させる。
 カリスもろとも花びらに包まれると、二人はその場から姿を消した。
 吹いていないはずの風に乗ったいくつかの花びらが、プールの水面の上に落ちる。


 優勢だったはずのタカラは、カリスたった一人の手によってあっという間に戦況を覆された。

 屈強そうな男はどこかへと去り、そのカリスもまたミセリと共に姿を消した。



 残されたのは、仮面ライダー三人に……アンデッドが一体。

82325話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:26:52 ID:wQXRKlTg0

  (
彡,,#メ皿゚彡『クウッ……カリスウウゥゥ!余計な真似をしやがってェ……!!』


 既に消えたカリスに向かい、怒りを爆発させる。
 全てが自分の思い通りに、順調に進んでいた計画が……たった一人の気まぐれで全て台無しにされた。
 そう思うと、腹の底が煮え滾ってどうしようもなくなった。

 しかし、この場にいない者への怒りを見せている余裕など、本来タカラにはない。

  (
彡,,メ皿゚彡『……!!!』


 怒りに捉われ、まったく気が付かなかった。
 振り返ったそこに……三人のライダーが立ち並んでいたことなんて。



( OMO)「……好きにしていいそうだ、どうする?」


 首を回し、掌で拳を包みながら指をポキポキと鳴らすギャレン。


( OHO)「どうするって……なぁ?」


 レンゲルラウザーを右手に持ち、シャフトを伸長するレンゲル。

 答えは既に定まっている。
 六つの眼が、タカラを睨んで離さない。
 それは、ブレイドも同じこと。

 だが、ブレイドは二人の問いかけには答えない。

82425話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:27:14 ID:wQXRKlTg0


(  w )「たくさんの人を手にかけ、尊い命をお前は一体いくつ奪った……?」
  (
彡,,メ皿゚彡『フン!さぁな、数など数えるわけないだろ?』

(  w )「それだけじゃない……亡骸を化け物に変えて、操って……」


 一度腰に収めたブレイラウザーを左手で逆手に持ち、引き抜いて右手に持ち変える。
 肩を並べていた二人から突き抜け、ゆっくりとタカラに近付く。


(  w )「人の命を奪うだけに留まらず、その命を蹂躙し冒涜した……」
  (
彡,,;メ皿゚彡『ッ………』


 僅かに俯きながら、声色静かに淡々と話すブレイド。
 その話し方や様子から、タカラ以上に燃え盛る怒りが垣間見えた。

 タカラの戦いに身を置く者としての本能が感じ取る、ブレイドが発するオーラ。雰囲気。
 そして、計り知れない怒りと、殺気。
 誤魔化し切ることの出来ない畏怖した心が、近付くブレイドに対して後退りする形で表れていた。
 
  (
彡,,;メ皿゚彡『……な、なんだ……お前は……!?』

(  w )「許さない……」



( #OwO)「――お前だけは……絶対に許さない!!!」

82525話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:27:35 ID:wQXRKlTg0


 顔を上げ、声を張り上げた瞬間、地面を蹴り走り出す。
 一向に縮まらない距離を一気に詰め、右手で逆手に持ったブレイラウザーを左へと横薙ぎに振り払う。

 タカラはこの攻撃を、背後へステップすることで躱す。

 回避行動を取られたブレイドは、それに応じた動きを見せた。 
 回避された直後に生じた距離を咄嗟に踏み出した右足で埋め、左足による後ろ回し蹴りを腹部に叩き込んだ。

  (
彡,,;メ皿゚彡『ぐふっ……!』


 重たい蹴りが直撃し、腹部を抑えるタカラ。
 その隙に、ブレイラウザーを再び横薙ぎに。手首をスナップさせ往復して振り払う。
 タカラの胸部に装備されたナイフの装飾もろとも斬り落としながら、その奥に潜む肉体を斬り刻んだ。


( #OwO)「うおらああぁッ!!」
  (
彡,,;メ皿゚彡『グウッ…!ウアアァッ…!!』


 緑血が迸り、ブレイラウザーの剣先から跳ねた血が赤いプールサイドの上に零れる。
 
  (
彡,,メ皿゚彡『クッ……この――』


 後方へと怯みながら後退りし、胸を抑え身体に作られた傷口を見遣る。
 反撃に転じんとするタカラだったが、ブレイドによるものではない違う攻撃が、タカラの身体に見舞われた。

  (
彡,,;メ皿゚彡『ウウゥッ!!』

 
 ブレイドの背後より、肉眼では捉えることの出来ない紅い銃弾が、真っ直ぐ弾道を描きながらいくつも撃ち放たれる。
 タカラへと的確に命中する銃撃は、黒い衣装を纏った身体から火花を散りばめた。

82625話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:27:55 ID:wQXRKlTg0


( OMO)「ドクオ!行け!」

( OHO)「よっしゃ!」


 ギャレンラウザーによる銃撃でタカラを牽制する中、ギャレンはレンゲルに攻撃指示を出す。

 両足で地面を押し飛んだと同時に、レンゲルラウザーの後端を思い切り地面に叩き付けるレンゲル。
 その力を利用して更に高く浮き上がり、ブレイドの頭上を飛び越える。


( OHO)「これ以上てめぇの思い通りにさせねぇっつったろ!!!」
  (
彡,,;メ皿゚彡『グフッ……!!』


 落下しながら右腕を目いっぱい延ばし、着地する寸前でレンゲルラウザーの尖端でタカラの腹部を貫いた。
 

( #OHO)「でええあありゃああアァァァァッ!!」


 突き刺したままのラウザーの柄を両手で握り締め、持てる力全てを出し強引にタカラを吊り上げる。
 そして、思い切り遠くへと放り投げた。

  (
彡,,;メ皿゚彡『ガアアァアッッ!?!?!』


 プールと外とを遮断する柵を飛び越え、タカラは施設外へと投げ出された。
 

( OHO)「やべっ!やりすぎたか!?」

( OMO)「追うぞ!」


 タカラが投げ飛ばされた方向へと走り、三人はそれぞれのマシンに乗ると、柵を飛び越え駐車場へと出た。

82725話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:28:46 ID:wQXRKlTg0


 誰一人いないどころか、車も多くは停まっていない駐車場。
 不運にも、駐車されていた車の上に、レンゲルに投げ飛ばされたタカラが落下。
 車のガラスは粉々に砕け散り、ルーフやボンネットは岩でも落とされたかのように大きくへこんでしまった。

 落ちた車の上から転げ落ち、負った傷に身体を痛めながらゆっくりと立ち上がる。

  (
彡,,#メ皿゚彡『グフッ……馬鹿な!俺が……俺が貴様らになど……ッ!』


 予想だにしなかった現状に、悔しさや怒りがこみ上げる。
 
 しかし、ライダーによる追撃はまだ終わらない。
 柵を飛び越え現れたブレイド達は、駐車場に着地しタカラの姿を確認すると、タカラに向け一直線に走り出した。


( OHO)「観念しろ!アンデッド!!」

( OMO)「もう貴様に逃げ場はない!」


 ギャレンによる銃撃を受け身動きの取れない状況の中、ブレイドとレンゲルが接近。
 
 ブレイラウザーで、タカラを横ぎりながら傷を負った胸部を斬り付けるブレイド。
 レンゲルラウザーを両手で振り回し、同じように横ぎりつつ殴打するレンゲル。
 タカラの背後に回った二人は、同時に武器の尖端をタカラの背に向け突き付けた。

  (
彡,,メ皿゚彡『グウウッ…!ま、待て!貴様ら…俺は別の下僕を放っている!俺を倒せばそいつらを止められないぞ!』

( #OwO)「……もうお前の言葉なんて、聞く価値もないお!!」

82825話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:29:12 ID:wQXRKlTg0


 見苦しくも、最後の悪あがきに出たタカラ。
 しかし……嘘に嘘を重ねたタカラの言葉に耳を貸す者は、もういない。
 この期に及んで未だ欺こうとする下劣な性根をしたタカラの言葉は、寧ろブレイドの怒りに油を注ぐだけだった。


( #OwO)「はぁっ!!」
  (
彡,,;メ皿゚彡『ヴウウゥッ……!!』


 幾重にも重なるブレイラウザーの太刀筋が、タカラを執拗に斬り刻んでいく。
 身体中に備えたナイフは全て斬り落とされ、黒の衣装はズタズタに引き裂かれた。
 肉が見え、身体の至るところより緑血を流している。


( #OwO)「命を命とも見ない、心無いアンデッド!僕はそんなお前達を絶対に許さない!」

( #OwO)「お前達がどれだけ謀略を巡らせようと、どれだけ力を誇示しようと!
      一丸となった僕達の前に、倒せない者はいない!!」
  (
彡,,;メ皿゚彡『ヌウウウウゥゥゥッ……!!黙れ!!俺はこの戦いを……"バトルファイト"を勝ち抜くために――』

( #OwO)「そんなことのために……!誰かのささやかな幸せを踏みにじりやがって……!!」



( #OwO)「お前は、今ここで必ず封印する!!」

82925話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:29:32 ID:wQXRKlTg0

 ♪Rebirth - https://www.youtube.com/watch?v=SgXC5Z4R3-c
 

( OwO)「モララーさん!ドクオ!」

( OMO)「ああ!」

( OHO)「おう!」


 ブレイドの掛け声と共に、三人は三角形の点線を描くように展開しタカラを取り囲む。
 そして、同時にラウザーを構えた。
 ブレイドとレンゲルは、オープントレイを展開。レンゲルは短縮したラウザーを脇に抱え、カードケースを開く。
 それぞれ二枚のカードを選び抜き、ラウザーへとカードをラウズした。


    《-♠5 KICK-》 《-♠6 THUNDER-》

    《-♦5 DROP-》 《-♦6 FIRE-》

    《-♣5 BITE-》 《-♣6 BLIZZARD-》

 
 一度に六つの電子音声が重なって流れる。
 三人の背後に紋章となったカードが浮遊し、計六つのカードがライダー達の身体に吸収され、力を与える。
 複雑な音を奏でた後、三人のコンボを告げる音声は、今度は重なることなく順番に流れた。


    《-♠LIGHTNING BLAST-》 《-♦BURNING SMASH-》 《-♣BLIZZARD CRASH-》


( OwO)「終わりだ!!」
  (
彡,,#メ皿゚彡『………ッッッ!!!ウガアアアアアァァァアァッッ!!!』


 自暴自棄とも取れる咆哮。
 両腕を広げ、天を仰ぎながら、やり場の無い感情を叫び声に乗せる。

 もう、逃げ場はない。

83025話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:29:55 ID:wQXRKlTg0


( OwO)「はっ!」


 両足を揃え、バネを伸ばすように地面を押しながら高々と跳躍する三人。
 
 ブレイドの右足に、タカラを断罪する為の青い閃光走らせる稲妻が。
 ギャレンの両足には、罪深きタカラを焼き尽くす地獄の業火が纏い始め、
 レンゲルの両足からは、タカラを磔にするための冷気が発生。

 身体を縮めた後、右足を伸ばすブレイド。
 宙で身体を反転させるギャレン。
 レンゲルの両足から放たれる凍て付く吹雪がタカラを覆い、氷の中へと閉じ込める。

  (
彡,,;メ皿゚彡『アッ……!ガ……!』


 身動きの出来なくなったタカラに、三人は落下を始める。
 雷が、炎が、冷気が。三つの相容れることのない属性が、空中で交差する。
 そして、三人の燃える闘志が遂に重なり――。



( #OwO)「うぇえええええええええいぃッ!!!」

( OHO)「ウオオオォアラアアァッ!!」

( OMO)「はあァッ!!」

  (
彡,,;メ皿゚彡『ウアアアアアァ"ァ"ァ"ッッ!?ガハアアアァッ!!!』
 

 突き刺すようなブレイドの蹴り。叩き割るようなギャレンの爪先。強引に砕くようなレンゲルの二段蹴り。
 三方から繰り出される強烈な蹴りが、同時にタカラに叩き込まれた。

83125話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:30:17 ID:wQXRKlTg0


 氷は砕け散り、逃げ場のない挟撃はより深いダメージを与える。
 タカラの身体に雷が感電し、炎が燃え移り、更に氷による凍傷。
 吹き飛ぶことも許されず、タカラは三方の蹴りを受け、その場に力無く崩れることしか出来なかった。

  (
彡,,;メ皿 彡『ガッ………ハ………』


 地面に大の字になるタカラ。
 三人による必殺技を同時に受けてしまえば、立ち上がることなど出来はしない。
 握りこぶしを作ることすら敵わず、そのままぐったりと倒れた。

 もう、起き上がることはないだろう。
 腹部のアンデッドバックルが左右に展開されたことが、何よりそれを証明した。


 着地したブレイドは、倒れたタカラに向け一枚のカードを投擲。
 ♥スートのアンデッドであるタカラは、♠スートのカードでは封印出来ない。
 代わりに、どのスートにも属さない所謂フリーのカードを用いれば封印出来る。

 タカラに突き刺さったカードが封印を終え、ブレイドの掌中に帰還。
 正体は♥のカテゴリーJで間違いないが、スートフリーのカードに封印されたタカラは♥スートとしての役割を果たしていない。
 その証拠として、"♥J FUSION"と記され狼の絵柄こそ描かれたものの、背後の風景は真っ黒のままだった。


( OwO)「もう二度と目を覚ますなお……!」


 封印したタカラを尚、ブレイドは睨んだ。

83225話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:36:43 ID:wQXRKlTg0


 タカラを倒した三人は、変身を解除。
 決して喜ぶことの出来ない勝利に、三人は後味の悪さを噛み締める。


( ・∀・)「これで、やっと人間が化け物にならなくて済むな……」


 ふぅ……、と深く溜息を吐く。
 アンデッドとの戦いはまだまだ続くが、ひとまずの収束を迎え安堵する。


('A`)「でも、大勢の人を守れなかった……」

( ・∀・)「………守れなかった言い訳をするつもりはないけど、あまりにも多くの人を犠牲にしてしまった」

( ^ω^)「痛みに変えるしかないお……辛いこと、悲しいこと全部バネにして生きていくしかない。それも、仮面ライダーの役目だお」


 気持ちはただただ沈む一方。
 全てを守ると豪語しておきながら、犠牲者が出るのを止められない。
 しかし、これもアンデッドと戦う者としての業である。受け入れ、進み続けるしかない。

 だが、ドクオはこれに異を唱えてしまう。
 


('A`)「……すべての人を守ることなんて、本当に出来るのかな」

83325話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:37:46 ID:wQXRKlTg0


( ^ω^)「出来る出来ないの話じゃない、やらなきゃ駄目なんだお」

('A`)「だって……今回のことは、はっきり言って俺達のせいでもあるんだぞ?
    一体何人犠牲にしてしまったんだ?正直、考えるのも怖いくらいだ」

('A`)「なんてったって、俺達はその犠牲者をこの手で倒したんだから……」


 自分の両手を見つめるドクオ。
 その表情は、悲痛の色に満ちている。
 化け物と言えど、元は人間だったはずの者を倒す。
 今こうして冷静になって考えれば、どれだけおぞましい事か……それを、強く実感している。


( ^ω^)「……それでも、立ち止まって良い理由にはならないお。
      誰かがやらなきゃならない、それを僕達が背負う以上どんなことがあっても」

( ^ω^)「すべての人を守る、確かに現実的じゃないかもしれない。けど、その想いを失くしたらいけないお」

('A`)「想いだけじゃ人は救えないだろ!?」

( ^ω^)「まず人を突き動かすのは、想いの力だお!」


 熱くなる二人。
 向き合い、互いの主張をぶつけ合う。
 今にも胸倉を掴み出しそうな雰囲気の二人の間に、モララーが割って入った。


( ・∀・)「よせ、二人とも!」

83425話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:38:07 ID:wQXRKlTg0


( ・∀・)「ドクオ、お前の言いたいことも分かる。確かに今回の件は間違いなく過去最大に酷い被害だ。
      しかもアンデッドに騙され……本当にすべてを守ることが出来るのか不安になってしまう。そうだろ?」

('A`)「……はい」

( ・∀・)「剣藤の言うことも分かる。現実的でなくとも、その気持ちが無ければ
      人一人の命のために戦うことなんて出来ない。そう言いたいんだよな?」

( ^ω^)「そうですお」

( ・∀・)「どちらの言い分も分かる。でも、ぶつけ合うことじゃない。
      過ぎてしまったことはどうにもならない……だからこそ、口だけにならないように今回のことを教訓にしなければならない。
      その上で、人間を守るために戦うという想いを強く抱けばいい。違うか?」

('A`)「……そう、だな」

( ^ω^)「うん……そう、それですお」

( ・∀・)「なら、揉めるのはもうやめろ。ほら握手して」


 互いの主張は、決して間違っているわけではない。偏ってしまった意見が衝突したに過ぎない。
 第三者の冷静な観点によって二人は落ち着いた。
 モララーは二人の手を取り、強引に握手という形に持ち込む。


( ^ω^)「悪かったお、ちょっと熱くなっちまった」

('A`)「いや、俺の方こそ……」


 無理矢理繋がれた手だが、素直に謝りながら互いに手を握り締める。
 その様子に、モララーは一人笑みを浮かべ満足そうだ。

83525話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:38:29 ID:wQXRKlTg0


 手を離し握手を終えたと同時に、ブーンのスマホに一件の着信が入った。
 着信を知らせるバイブレーションが震動している。

 ポケットの中に手を入れスマホを取り出し画面を確認する。
 画面には、『廣瀬ツン』と表示されている。
 電話をかけてきているのは、ツンだった。


( ^ω^)「ツンからだ!やっぱり無事だったんだお!」

( ・∀・)「そうか、よかった……」

 
( ^ω^)ロ 「ツン!大丈夫かお!?」

ξロ゚⊿゚)ξ 《え?》

( ^ω^)ロ 「アンデッドがそっちに向かったのを、クーが助けてくれたんだお!」

ξロ゚⊿゚)ξ 《……何の話?着信入ってたから掛けただけよ。
       あ、途中でサーチャーの反応送信出来なくてごめんね。なんか停電しちゃって……》

( ^ω^)ロ







( ^ω^)ロ 「……は?」

83625話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:38:52 ID:wQXRKlTg0


ξロ゚⊿゚)ξ 《スマホもどこに置いたか忘れちゃってすぐに掛け直せなかったの。それよりアンデッドは!?》

( ^ω^)ロ 「…………」

( ^ω^)「停電しただけだって……」

('A`)「は……??」

( ^ω^)「狼人間が向かってたことすら知らないってお……」

(;'A`)「んだよそれえええええええええええ!!!もおおお………」

( ・∀・)「はは……安心したよ、その程度のことでよかった」

ξロ゚⊿゚)ξ 《もしもし?何騒いでるの??》

( ^ω^)ロ 「あっ、いやなんでもないお。アンデッドならとっ捕まえて倒したお!」



('A`)「まぁ……一安心するとこはしていいみたいだな。クーさんに感謝だ」

( ・∀・)「うん。もう仲間を失うのはごめんだ……本当によかった」

('A`)「……じゃあ俺、今度こそ同窓会向かいます」

( ・∀・)「ああ、呼びかけに応じてくれてありがとな」

('A`)「いえ、また何かあったら呼んでください!すぐ駆け付けますよ」


 ブーンとモララーを残し、ドクオはグリンクローバーのもとへと駆け足で向かう。
 今度こそ、楽しくなると信じてやまない同窓会へと行くために。

83725話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:39:12 ID:wQXRKlTg0





 ―――――




.

83825話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:39:32 ID:wQXRKlTg0


 夕方になり日は沈み始めた。
 特殊なデザインをしたグリンクローバーを走らせるドクオは、人々の注目を一際多く浴びていた。
 ライダー専用のマシンを愛用車にしてから、それは常日頃感じていたことだ。


「ねぇちょっと見て、あのバイクやばくね?」 

「金と深緑って派手だなー」

('A`)「………」


 この後の同窓会でも、きっとこのくらい注目を浴びるんだろう。
 何せ、過去のことをみんなで謝りたいと言っていたくらいだから。

 そう思うと、楽しみにしていたはずの心が、緊張で震えてきた。
 元々注目されることには慣れてない。
 人目の届かないような端っこをずっと選んできたような人間だ。


(;'A`)(あーやべぇ……めちゃくちゃ緊張してきた)

(;'A`)(だ、大丈夫だ!落ち着けよ……ファーストコンタクトが肝心なんだ、最初さえ上手く行けば大丈夫だ)


 ざわつく心を落ち着かせようとすればする程、余計に緊張感を煽っている。

83925話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:39:54 ID:wQXRKlTg0


 頭の中で独り言を並べながら、あっという間にその時は来た。
 待ち合わせ場所に指定した、通っていた小学校。

 校門の前でグリンクローバーを停め、久しぶりの母校の姿をじっくりと眺める。
 あの頃の懐かしい記憶に想いを馳せ、ノスタルジックな気持ちになる。


('A`)「なつかしいな……少し建物増えたか?」


 外装は色褪せ年を取った校舎に対し、まだ出来て間もないであろう校舎が見えた。
 

('A`)「………さて、行くか」


 緊張が高まり、心臓の鼓動がドクン、ドクンと高鳴る。
 胸を撫で下ろしながら深呼吸。
 意を決して、まるで招いているかのように開かれた校門を、グリンクローバーで潜った。

 敷地内に入ると、あの頃と変わらない校庭のグラウンドが広がる。
 そして、校庭全体を見渡すかのようにポツンと存在する朝礼台。

 その朝礼台の前に……あの頃の面々はそろっていた。

84025話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:40:17 ID:wQXRKlTg0


( ´ー`)「ドクオー!」


 白根がドクオを呼ぶ。
 ドクオを呼ぶその声に、他の同級生の目も一斉にドクオへと向けられた。


(;'A`)「………」

「早くこっち来いよー」

(;'A`)「あ……うん」


 鼓動はより一層高鳴る。
 自分を呼ぶ声に返事をするも、ヘルメットの中にのみその声は響いた。

 緊張隠せぬまま、グリンクローバーでグラウンドを跨ぎ、五人の同級生達の前に停まった。
 そして、ゆっくりとヘルメットを外し、久しぶりに顔を合わせる。


「そのバイクどうしたの?特注?」

('A`)「え、あ……えっと、うん……そんな感じ」

「すげぇなドクオ、金持ちにでもなったの?」

('A`)「いやぁ、そんなんじゃないよ……うん」


 気さくに話し掛けて来る同級生達に対し、ぎこちない返事。
 彼らは緊張などしちゃいないかもしれないが、ドクオからすれば……過去に自分をいじめていた人間達だ。
 そう簡単に埋まる距離ではない。

84125話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:40:39 ID:wQXRKlTg0


「……ドクオ、もう白根から聞いてると思うけど」


 そのうちの一人の女性が、楽しそうな雰囲気の中ドクオに切り込んだ。
 

( ´ー`)「ドクオ……まず、来てくれてありがとうな。お前のおかげで、俺こうやって生きてるよ」

('A`)「いいよ……もうそのことは」

( ´ー`)「みんなこう見えて緊張してんだぜ」

「ドクオ……俺達、ずっとこの日のことを考えてたんだよ」

「俺達、本当に馬鹿だったよ。マジでどうしようもなかったよ……」

('A`)「………」

「あたし達が今更こんなこと言っても、すぐに許せるわけないと思う……でも」

「この場を借りて、ちゃんと謝らせてくれ!」


 全員が横並びになり、ドクオを真っ直ぐ見つめる。
 誰を見ていいか分からず、ドクオの目は泳ぎ落ち着かない様子。

84225話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:41:02 ID:wQXRKlTg0


( ´ー`)「本当に……本当に、すみませんでした!」

「「すみませんでした!!」」


 一斉に頭を下げ、ドクオへの謝罪の言葉を発する。


('A`)「………顔あげろよ」


 グリンクローバーから降り、頭を下げる白根の肩を叩く。
 約十年の時を経て、自分が腐ってしまった忌々しい過去に、ようやく光が差した。
 もう、苛まれなくて済む……そう確信したのだ。
 

('A`)「もう、いいよ」

(  ー )「……でも」

('A`)「言っただろ、俺。許すことが出来ないと自分を変えられないって」

('A`)「だからもう、過去にすがるのはやめるんだ。……信じていいんだよな?その言葉。だから信じるよ」


 未だ頭を下げたままの全員に対し、笑顔で答える。
 緊張感や抵抗感はない。
 これでいいんだ。と、言い聞かせることもしない。


('A`)「俺が言うのもアレだけどさ……あの頃をやり直そうよ、みんなで」


 これが、自分の答えだから。

84325話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:41:33 ID:wQXRKlTg0



(  ー )「………ありがとう、ドクオ」

('A`)「いいって」

「やり直そう、みんなで…」

「うん、みんなでやり直そうぜ」














「あの頃みたいに、みんなでやり直そう」

84425話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:41:55 ID:wQXRKlTg0


('A`)「……?」



「ああ……あの頃の続きを、みんなでやり直そう」




('A`)「……あの頃の、続き……?」









(  ー )「ああ、あの頃の続きをやり直すんだ。俺達と…………お前とで」



('A`)「………!!!」


( ´゚ー゚`)「大人になっても、馬鹿でどうしようもねぇお前とでよぉ!!!」

84525話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:42:21 ID:wQXRKlTg0


('A`)「………え………」

( ´ー`)「ブッハハハハハ!!おいおい!まさか……俺達が本当に謝りたくて呼んだと思うのかぁ!?」

( ´ー`)「なんで俺がお前みたいなゴミクズのために謝らなきゃならねぇんだよ!?なめてんのかぁ!?!?」

(;'A`)「ッ―――!!」


 突如、白根の態度が急変する。
 ドクオを罵り始め、髪の毛を乱暴に掴んだ。
 至近距離で見下すようにドクオを見つめる目は……あの頃と、いや……あの頃以上に残酷な目をしている。


「ハハハハ!おい聞いたか!?過去にすがるのはやめるんだってさ!俺達のこと許してくれるってよ!」

「聞いた聞いた〜、てことは過去のことは全部水に流してまた新しく始めていいってことだよな〜?」


 白根に続いて、他の同級生達もドクオに対し威圧的な態度を取り始める。
 ドクオを取り囲む五人。
 まるで、あの頃を思い出させるように。


(;'A`)「ッ……ど、どういうことだよ……?」

「あはは!あんたマジで馬鹿すぎない?考える頭ないわけ〜??」

( ´ー`)「全部お前を誘き寄せるための演技に決まってんだろうが、バーカ!!」


(;'A`)「……!!」

84625話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:42:44 ID:wQXRKlTg0


( ´ー`)「いやぁ、俺達大人になってさぁ、社会人として働いてるとどうしてもストレス溜まるわけよ」

( ´ー`)「だからみんなで話してたんだよ。いつかまたお前を見つけて、あん時みてぇにやっちまうか?ってな!」

(;'A`)「………そんな………」


 白根の言葉が、ドクオの心を抉るように痛め付ける。


( ´ー`)「しかしあん時は焦ったぜ、化けモンが暴れまわって俺まで巻き込まれるとはなぁ」

( ´ー`)「でも……あれは本当に運命だと感じたよ!まさかお前が助けにくるだなんてな!
     こんな絶好な機会は二度とないと思ったね!
     だから俺は、わざとあの状況でお前に謝りたいって嘘をついたんだよ!!」

(;'A`)「………」

「ったくよぉ、何調子こいてこんなバイク乗ってんだ?おい!」


 一人がグリンクローバーを蹴飛ばし、転倒させた。
 まくし立てながら倒れたグリンクローバーを、何度も何度も踏みつける。


(;'A`)「やっ、やめろ……!」

「うっせぇなコラ!!」

(;'A`)「ううっ…!!」


 別の一人が、ドクオの腹部に拳を叩き込んだ。
 髪の毛を掴まれたままのドクオは身動きが取れず、両手で腹部を押さえるだけ。

84725話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:43:06 ID:wQXRKlTg0


( ´ー`)「……おい、てめぇ逃げられると思うなよ?」

(;'A`)「ッ………」

( ´ー`)「お前の番号も、住所も全部特定したからよ。何かあったらいつでもお前んとこ行くぜ?」

「楽しみだなぁ、またあの頃みたいにお前をいじめれるなんてなぁ」

「あはは!あの頃みたいにわーわーまた泣くんじゃない?男のくせに、だっさ」

('A`)「………」


 髪の毛から手が離されたと思えば、その場に跪かせられる。
 ドクオを囲む同級生達は、一人一人罵声を浴びせ続けた。
 痛んで痛んで、ズタズタに裂かれたドクオの心など、お構いなしに。
 

( ´ー`)「ッは!じゃあ俺達さ、お前と再会を記念して飲みに行くからよ。とりあえず金出せや。
     10万くらいは欲しいなー、やっぱめでたい日にはパーッと金使わないとな?」

「いいねー、今日は飲みまくれるじゃん!」

( A )「…………」

84825話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:43:41 ID:wQXRKlTg0


 あの時……白根を助けた時。
 白根の言葉で、過去に苛まれ続けた自分を変えれると思った。
 
 みんなでやり直そう。あの言葉があったから、前を向けた。
 カテゴリーAの邪悪な力に惑わされず、仮面ライダーとしての戦いに向き合えるようにもなった。

 もちろん、ブーンやモララー達の後押しのおかげでもある。

 でも、何より一番のきっかけとなったのは………過去をやり直そうと言ってくれた、白根の言葉だった。



( A )(………なんで……)
 
(;A;)(なんでなんだよぉ……!!)



 無意識にこぼれる涙。
 両の拳を握り締め、悲しみがドクオの心を支配する。

 信じたのに。
 信じたそばから、裏切られた。
 変われると思ったのに……結局、俺は過去を振り切れないのか。
 また、苛まれ続けなければならないのか。





 ……どうして、こいつらは俺に固執するんだ?

84925話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:44:07 ID:wQXRKlTg0


 何故だ。

 何故、そうまでして俺をいたぶりたい?

 傷を負わせたい?

 痛めつけたい?

 悲しませたい?

 

 なんで。


 なんで……






(# A )(何で……俺を怒らせる……!?)


 ボロボロに傷付いた心に、暗闇が立ち込め始める。
 悲しみを越え、怒りと憎しみだけが心の中……ドクオの身体中に充満する。

 闇に満たされた時――"蜘蛛の声"は、再びドクオの心の闇に問い掛けるのだ。

85025話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:44:36 ID:wQXRKlTg0


 『――俺の声を聞け』


( A )「………」


 『――お前は、こんな奴らを守りたかったのか?汚くて、卑怯で、下劣で、生きる価値すらないこんな人間を』


( A )「………違う」


 『――馬鹿馬鹿しい!情けなくはないか?力がないあまりに、お前はこんなみじめな思いをしている。
    力がない故に、お前はこんな屈辱を受けている!』


 『――力無き者は、悪だ!力が無ければ、こうして踏みにじられるだけだ!
    力こそ全て。力さえあれば、お前は何者にも臆する事はなくなる!上級アンデッドでさえ、お前の手で倒すことが出来る!』


 『――こんな薄汚い奴らなど、すぐに打ちのめす力を持っているではないか。
    それはレンゲルだけの力ではない……この俺の力だ』


( A )「………」


 『――さぁ、もう一度俺を受け入れろ。俺の力はお前のものだ。
    お前の思うままに、俺とレンゲルの力を使え。そうすれば……お前は最強になれる!』


.

85125話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:45:16 ID:wQXRKlTg0





( A )「………俺は………」



 『――さぁ、受け入れろ』



( A )「俺は………!!」



 『――受け入れろ、俺の力を!!』




.

85225話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:45:43 ID:wQXRKlTg0













.

85325話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:46:08 ID:wQXRKlTg0


 ………日が沈み、辺りは闇に包まれた。
 

 校庭に、ドクオの姿はない。

 足蹴にされたグリンクローバーの姿もない。










 そこにいたのは、








 


 血を流し、校庭のど真ん中に積み重ねられた白根達だけだった。


.

85425話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:46:31 ID:wQXRKlTg0





     【 第25話 〜血を呼ぶ嘘〜 】 終




.

85525話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:47:04 ID:wQXRKlTg0

==========

 【 次回予告 】


 謎に包まれる少女が動き出す。


o川*゚ー゚)o「おともだちが欲しいの」

川 ゚ -゚)「アンデッドと馴れるつもりはない」

o川*゚ー゚)o「どうして?人間と仲良くするのはいいの?わたしたちはアンデッドなのに」

川 ゚ -゚)「何が目的だ?ここの人達に手を出すつもりなら、私はお前を許さない」

o川*゚ー゚)o「そんなことしないよ」

o川*゚ー゚)o「それに……人間に手を出すのは、わたしじゃないよ」

o川*゚ー゚)o「どちらかというと、人間に……いや、あなたが大切にしてる人たちに手を出すのは――」

o川*゚ー゚)o「―――あなただよ」

85625話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:47:37 ID:wQXRKlTg0


 プールサイドでの戦いの際に遭遇した、もう一人の上級アンデッド。
 ドクオは単身、アンデッドのもとへと乗り込むことに。


('A`)「あんた、♣のカテゴリーJだよな?」

( ゚∋゚)「だったらなんだ、人間。……いや、臭うな」

('A`)「何?」

( ゚∋゚)「昨日はそこまで気にならなかったが、今のお前からキツイ程臭うぞ」

( ゚∋゚)「――毒蜘蛛の臭いがな」

( ゚∋゚)「だが残念だったな。あいにく俺は戦うのは好きじゃない」

('A`)「だったら――」

( ゚∋゚)「と言えば、こちらから行くぞ。などと言い出すんだろうな。まったく面倒くせぇ……」

('A`)「俺の言うこと全部分かってんだったら、これからすることも分かってんだろ!?」

( ゚∋゚)「……ふん、見えるぞ。お前の背を這う蜘蛛の姿が」


 そして、遂にその正体が露になる!

85725話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:48:03 ID:wQXRKlTg0


бし゚益゚し『ただ試したかっただけなんだが……もしかして、今お前達を潰せるのかもな』

( ; OMO)「くっ……」

бし゚益゚し『俺は得体の知れない奴と真っ向勝負するのは嫌いでな。
       相手の力量が知れるまでは戦わない主義なんだ』

бし゚益゚し『ライダーとかいう奴らがアンデッドを次々と封印していると風の便りで知ったから警戒はしていたが…』

бし゚益゚し『さっきのガキといいお前達といい、思ってたより大したことはないのかもしれないな……?』

( ; OMO)「やはり、お前は俺達を試していたのか……!」

85825話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:48:50 ID:wQXRKlTg0


бし゚益゚し『お前がどれだけのアンデッドを相手にしてきたかは知らんが、他のカテゴリーJと一緒にされると困るなぁ』

бし゚益゚し『特に、昨日の狼野郎のような奴と一緒にされると……腹が立つんだよ!!』

бし゚益゚し『まずはお前達の力を測らせてくれた感謝の気持ちだ、受け取れ!』


 驚異的な力を誇るカテゴリーJの前に苦戦するライダー達……。


( #OHO)「ふざけやがってェ……!!」

( ; OwO)「うわああぁッ!!」

( ; OMO)「くうぅ……ッ!!!」

бし゚益゚し『俺の手によって死ね、仮面ライダー共!!』


 ブレイド達は、この苦境を乗り切ることができるのか!?
 そして、ドクオに何が起きたのか!?


 【 次回、第26話 〜完全なる敗北〜 】


 ――今、その強さが全開する!


==========

859 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:52:18 ID:wQXRKlTg0
しおり

>>9 第15話
>>84 第16話
>>152 第17話
>>234 第18話
>>308 第19話
>>372 第20話
>>454 第21話
>>530 第22話
>>605 第23話
>>682 第24話
>>772 第25話

860名無しさん:2018/07/08(日) 12:20:35 ID:I1PoxkUo0
乙!久しぶりー!

861名無しさん:2018/07/08(日) 14:10:46 ID:iinRX1lk0
乙!!ずっと待ってたぞー!!
つべのライダー配信もいつの間にか響鬼が終わってカブトになったからか、剣がやたら懐かしく感じる

862名無しさん:2018/07/08(日) 15:18:26 ID:chiB0Now0

そういやこの作品みて原作に手を出していつの間にか原作見終わってたわ

863名無しさん:2018/07/08(日) 21:46:58 ID:hzM94CsM0


864名無しさん:2018/07/25(水) 18:41:04 ID:j4athSg20
今更投下に気づいた

ドクオ…これは闇堕ちやむなしか

865名無しさん:2018/09/02(日) 17:40:43 ID:BNz/ys.I0
待ってるよ��

866名無しさん:2018/09/02(日) 17:41:09 ID:BNz/ys.I0
ありゃ文字化け

867名無しさん:2018/09/09(日) 02:27:14 ID:zR6B7vWM0
待ってる

868名無しさん:2018/10/13(土) 06:10:45 ID:oNWB5iM20
待ってるよ( OwO)

869名無しさん:2018/11/28(水) 01:25:05 ID:sHIzfnwM0
待ってるからね

870名無しさん:2019/01/27(日) 15:18:19 ID:FqIGyy4E0
CSMブレイバックル発売決定したぞ
続きはよ

871名無しさん:2019/01/27(日) 19:56:09 ID:Lm.mg6sc0
今でも俺は待ってるよ

872名無しさん:2019/04/05(金) 12:31:28 ID:vE.PkwIU0
今ジオウで剣回やってるぞ!復活せよ!


してください

873 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 01:39:50 ID:dVuufZLM0
( ^ω^)


( ^ω^)< 1/9(日) 迄に

874名無しさん:2022/01/08(土) 01:41:58 ID:EsF4TPA20
うおっえ

87526話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:01:46 ID:dVuufZLM0





     【 第26話 〜新たなる力〜 】




.

87626話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:02:45 ID:dVuufZLM0


川 ゚ -゚)


 日差しが心地良い休日の昼下がり。
 バーボンハウスの前にあるプランターを手入れするクーの姿。
 隣に寄り添う渡辺が、クーに手入れの仕方を指導している。


从'ー'从「寄せ植えするときは、奥と手前で高低差をつけた方がいいんだよ〜」

从'ー'从「これを、こうやって……高いのを奥に植えて、低いのを手前にって感じで」

川 ゚ -゚)「うん」

从'ー'从「はい!やって?」

川 ゚ -゚)「分かった」


 見様見真似で、背の高い花をプランターに植えていく。


川 ゚ -゚)「ん……なんか違う気がする」


 自分でやりながら、本能で感じた違和感に気が付いた。
 高低差に意識を集中し過ぎるあまり、配色に悪いムラが出てしまっていることに。
 人間が持つ感性のように研ぎ澄まされてはいないが、色合いが悪いことは、アンデッドである自分でも理解出来たようだ。


从'ー'从「うーん、ちょっと色がね〜……こうしたらどうかな?」

川 ゚ -゚)「……うん、こっちの方が良い。綺麗」

从'ー'从「ふふふ、でしょ〜?」

87726話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:03:25 ID:dVuufZLM0
从'ー'从「そういえば、もうすぐクーさんと出逢って一年になるね〜」

川 ゚ -゚)「一年……もうそんなに経つ?」

从'ー'从「うん、あの時は本当驚いたなぁ〜。あんな雷雨の中で人が道路に出てくるんだもん」

川 ゚ -゚)「………」

川 ゚ -゚)(あれから、もう一年か……)


 長い年数を経て、自らがこの世に再び解き放たれた時を思い出す。
 
 約一万年前とは、別世界となってしまったこの星。
 人間という種族が主となった世界。
 アンデッドである自分達が、まるで御伽噺の世界の住人のような扱いを受けている。

 そんな現世で、今、人として生きようとしている。
 あの頃の自分では、今の自分の有り様などとても想像も出来るものではなかった。


川 ゚ -゚)「"生きる"ということは……何があるか分からないな」


 無意識に、小さく声に出して呟く。


从'ー'从「ん?なぁに?」

川 ゚ -゚)「ん……いや、なんでもないよ」

87826話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:03:50 ID:dVuufZLM0
(#゚ -゚)「二人ともー、お昼ご飯出来たよ!」


 店のドアが開かれ、でぃの小柄な顔が覗いた。
 美味しそうな臭いが漂ってきているなと思えば、ショボンが昼飯を作っていたからのようだ。
 

从'ー'从「はーい!今行く〜!」

川 ゚ -゚)「先行ってていいよ、後は私がやってみるから」

从'ー'从「そう〜?じゃあ……お言葉に甘えちゃおっかなぁ。お腹空いちゃったし……」

川 ゚ー゚)「早く食べておいで」


 恥ずかしそうに空腹を訴える渡辺の背中を、土で汚れた手袋を外した両手で軽く押す。
 渡辺とでぃが店の中に戻るのを見届け、足元に投げた手袋に手を伸ばす。
 

川 ゚ -゚)「………?」


 手袋を掴んだ瞬間。
 それまでいなかったはずの存在の気配に、背中がざわつくのを感じる。
 
 気配の出どころは、背後から。
 決して気付かなかっただけ、ではない。
 ついさっきまで、其処には誰もいなかったはずなのに。

87926話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:04:12 ID:dVuufZLM0
川 ゚ -゚)(何だ、このざわめきは……)


 本能が、警戒心に強く呼びかけている。
 自分の持つ"何か"に、共鳴しているようにも感じる。
 
 恐る恐る、ゆっくりと、背後へと振り向いた。


川 ゚ -゚)「………」




















.

88026話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:04:32 ID:dVuufZLM0

























o川*゚ー゚)o「ひさしぶり」

88126話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:04:58 ID:dVuufZLM0
川 ゚ -゚)「………!!」

川 ゚ -゚)「お前は……」

o川*゚ー゚)o


 振り向いた視線の先に、少女の姿はあった。
 愛らしいはずの笑顔。しかし、どこか冷たさを帯びていて……。
 目だ。目に光がなく、笑っていない。

 少女の放つ異様な気配に、クーは警戒心を強める。


o川*゚ー゚)o「ねぇ、そんなに怖い顔しないでよ」

o川*゚ー゚)o「せっかく会えたんだもん、嬉しい顔してよ」

川 ゚ -゚)「何を馬鹿な……」


 悪寒すら感じさせる気配。
 親しげに接してくる少女とは対照的に、鋭い目付きで睨み続けた。


o川*゚ー゚)o「ねぇ、いまはその子の力を使ってるんだね。カリスの力を」

川 ゚ -゚)「……そうだな、お前はすぐに気付くだろうな」


 クーの正体を知っているかのような言葉。
 クーもまた、少女の正体を把握しているような、思わせぶりな言葉を返す。

88226話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:05:27 ID:dVuufZLM0
o川*゚ー゚)o「ねぇ、人間の子と仲良く暮らしてるの?」

川 ゚ -゚)「………」

o川*゚ー゚)o「ねぇ……わたしとも、仲良くしてほしいな」


 作られた笑顔が崩れることなく、ゆっくりと近付く少女。
 少しの変化も無い表情が、言い表しがたい不気味さを放っていた。


o川*゚ー゚)o「おともだちが欲しいの」

川 ゚ -゚)「アンデッドと馴れるつもりはない」

o川*゚ー゚)o「どうして?人間と仲良くするのはいいの?」

o川*゚ー゚)o「わたしたちはアンデッドなのに」

川 ゚ -゚)「何が目的だ?ここの人達に手を出すつもりなら、私はお前を許さない」

o川*゚ー゚)o「そんなことしないよ」

o川*゚ー゚)o「それに……人間に手を出すのは、わたしじゃないよ」

o川*゚ー゚)o「どちらかというと、人間に……いや、あなたが大切にしてる人たちに手を出すのは――」









o川*゚ー゚)o「―――あなただよ」

88326話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:05:50 ID:dVuufZLM0
川 ゚ -゚)「………」

o川*゚ー゚)o「ふふふ」

「クーさん!ご飯冷めちゃうよ〜!」


 二階の窓から顔を覗かせる渡辺の呼ぶ声が木霊する。
 

川 ゚ -゚)「今行くから!」

「はやく〜!」


 鋭くなった目付きを和らげ振り返り、にこやかな表情で答える。
 二階より見下ろしているはずの渡辺は、見えているはずの少女に触れようとはしない。

 顔が引っ込むと同時に、クーの視線も戻った。


 だが、そこに居たはずの少女の姿がない。
 思わず咄嗟に周囲に目を配るが、後ろ姿も見当たらなければ、気配も感じない。

 渡辺が少女について触れなかったことを考えると、閃光の如く一瞬の出来事だ。

 
川 ゚ -゚)「………」


 兎も角、近くに居ないことだけは分かった。

 結局、少女の行動の意図は読めず、何が目的だったのかも分からぬまま。
 分かったのは、後味の悪さだけ。
 胸の内に明確な不気味さを残したまま、手袋をプランターの上に投げ置き、店の中へと戻った。

88426話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:06:29 ID:dVuufZLM0





 ―――――




.

88526話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:06:49 ID:dVuufZLM0


 時を同じくして、ブーン宅でも昼食の時間を迎えようとしていた。

 _
( ゚∀゚)「おーい腹減ったぜ〜まだかよ〜」

( ^ω^)「もう完成するから後少し我慢しろお」


 キッチンに立ちご飯を作っているのは、家主であるブーン。
 作っているのは、味には自信があるらしい炒飯と卵スープ。
 ソファで横になっているジョルジュの催促を聞き流しながら、強火で熱されているフライパンを器用に振り、パラパラな炒飯を舞わせる。
 最後にまわすように入れた醤油の香ばしいかおりが部屋中に広がる。
 美味そうなにおいに、口の中には唾液が溢れ出した。

 用意しておいた四つの皿に炒飯を均等に分け、ツンがスープを注いでいく。
 

( ・∀・)「俺持っていくよ」

( ^ω^)「お願いしますお」


 出来上がった昼飯をトレーに乗せるモララー。
 スープを注ぎ終えたツンは、エプロンを外しながらソファに寝そべるジョルジュのもとへと歩いた。

        _
ξ#゚⊿゚)ξ ( ゚∀゚)
   u彡 パシンッ!
 _
( ; ゚∀゚)「ってー!!」

ξ#゚⊿゚)ξ「手伝え」

88626話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:07:30 ID:dVuufZLM0


ξ゚⊿゚)ξ「いっつも何もしないんだから!皿くらい洗わないとあんたの分のご飯作らないから!」

ξ゚⊿゚)ξ「一応居候の身だっていうのに、あんたはくつろぎすぎ!」
 _
( ゚∀゚)「チッ……へいへい分かりましたよ」

( ・∀・)「じゃあこれから皿洗いはジョルジュ担当だな」


 テーブルの上、4つの椅子の前に料理を配りそれぞれ着席。
 スプーンを持ち湯気立つ炒飯を掬い、口に頬張る。
 各自自分のペースで食事を進めていると、ブーンが手の動きを止め口を開いた。


( ^ω^)「今日、久しぶりに職場に顔出しに行こうかと思ってるお」

ξ゚⊿゚)ξ「ん…そっか、結構お休みさせてもらってるのよね」

( ^ω^)「うん、もう働いてた感覚すら忘れちゃったくらい。快く休暇を許してくれてるし、せめて挨拶くらいはしないと」
 _
( ゚∀゚)「ほんっと律儀な奴だよな。俺なら休めてラッキー!くらいに思って絶対行かないけどな」

ξ゚⊿゚)ξ「アンタがドクズなだけよ」
 _
( ゚∀゚)「いやいや、俺はいつだって自分に正直なだけだぜ?」

( ^ω^)「まぁ気持ちは分かるけど、そう思えるような理由で休みもらってるわけじゃないからなぁ…久しぶりにヘリカル達にも直接挨拶したいし」

( ^ω^)「これ食ったらちょこっと行ってくるお。何かついでに買ってきてほしいものあれば買ってくるお?」

ξ゚⊿゚)ξ「ほんと?そうね…じゃあ牛乳と卵2パックと、あと食器洗剤お願いしようかな」
 _
( ゚∀゚)「俺コーラな、でかいやつで」

( ^ω^)「分かったお。モララーさんは何かありますかお?」

( ・∀・)「ん、俺か。そうだな…じゃあ」

88726話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:08:30 ID:dVuufZLM0






( ・∀・)「ひまわりの種がいいな」

( ^ω^)「え…種?」

ξ゚⊿゚)ξ「何に使うの?」

( ・∀・)「使うというか…食べてみたいからかな、ハムスターも食べるだろ?
      いつ見ても美味しそうなんだよね」
 _
(;゚∀゚)「またこの人の天然炸裂かよ」

(;^ω^)「モララーさん、前から薄々感じてたけど…ちょっと変なとこあるお」

88826話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:10:39 ID:dVuufZLM0
 ――――――
 ――――
 ――

 
 食事を終えたブーンは早々に家を出て、早速VIPへと辿り着いた。
 

( ^ω^)「いやぁ、久しぶりだお…VIP」


 仮面ライダーとなってから、半年以上振りに来た。
 働いていた時は毎日のように、何の意識もなく目に入っていたこの景観。雰囲気。
 一度離れてから目にすると、何とも懐かしいような、胸の辺りがそわそわするような感覚を覚える。
 メットを外しバイクから降車、VIPに向け足を動かす。
 妙な緊張を抱いたまま、入り口の自動ドアを潜り風除室を抜けると、スーパー特有の有線が耳に入り、より懐かしい気持ちを膨らませる。


(゜д゜@「いらっしゃいませ……あらやだ!?」

( ^ω^)「あ、新谷田さん!お久しぶりですお」

(゜д゜@「ブーン君じゃない!あらやだ、久しぶりねぇ!元気してたの??」

( ^ω^)「あ、いや……まぁそこそこですお」

(゜д゜@「あらそう、でも元気そうで何よりだわぁ。今日ヒッキー君やヘリカルちゃんもいるのよ。挨拶はした?」

( ^ω^)「これから挨拶しようと思ってますお」

88926話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:11:00 ID:dVuufZLM0


 久しぶりの従業員との再会。
 新谷田おばさん以外にも、目に入る従業員は皆ブーンを見ては会釈をしたり手を振ったり、近付いてきたりした。
 一人一人丁寧に挨拶に回っていると、特に気心知れているヘリカルに遭遇した。


( ^ω^)「ヘリカル!」

*(‘‘)*「ん……え、え!?ブーン!?」


 品出し中の手を止め声のする方へと振り向くと、予想外の来客に目を丸くした。
 駆け足気味に歩み寄り、久々に見た同僚の姿にヘリカルは笑みを見せる。


*(‘‘)*「もう、今まで何してたの!?LINEしてもろくに返事もしないんだから!」

( ^ω^)「ごめんお、返すようにはしてたんだけど中々そんな時間がなくて…。元気かお?」

*(‘‘)*「私は元気、この職場は相変わらずだけど何とかやれてるわ」

*(‘‘)*「……ほら、ブーンが来たのを嗅ぎ付けてやってきたわよ」

89026話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:11:25 ID:dVuufZLM0


( ^ω^)「?」


 ヘリカルが顎をくいっとさせ、ブーンの背後を知らせる。
 振り向くと、顔馴染みである後輩が近付いてくるのが見えた。


( ^ω^)「おお、お疲れだお」

(-_-)「あれ?ニート満喫中のブーン先輩じゃないっすか。いよいよ辞表持ってきました?」

(;^ω^)「気まずくなる冗談を言うんじゃないお」
 
*(‘‘)*「えっ…そういうことなの?」

(;^ω^)「いやいや、そんなわけないお!騙されるなお」 


 半年以上振りの三人でのやりとりは、空白の期間を埋めるかのようにテンポ良く繰り出される。
 

*(‘‘)*「あ、丁度ウチら休憩入るところなんだけど、ブーンも時間あったらどう?」

( ^ω^)「おっおっ、そしたら先に店長に挨拶してくるお。後から合流するお」

(-_-)「先輩、先に言っときます。今まで本当にお世話になりました…」

(;^ω^)「まだ言う?お前がそんな弄りしてくるから絶対辞めてやらんお」


 他愛もない言葉を交わし、ブーンは一人でスーパーのバックヤードへと向かった。

89126話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:11:46 ID:dVuufZLM0


 店長への挨拶を済ませたブーンは、スーパーの外にあるベンチに座るヘリカルらと合流。
 昼食は既に終えていたため、お茶を片手にヘリカルとヒッキーの間に肩を並べて座る。
 話題は、ここ最近定期的に各媒体で報道される化け物の件――アンデッドの話になった。


*(‘‘)*「しかし最近物騒よね…見たことがないから本当にいるのかも分からないけど」

*(‘‘)*「仮面ライダーってのも見たことないのよねぇ、VIPの人はみんなないみたいだけど。ブーンはある?」

( ; ^ω^)「え……うーん、いやぁないお」

*(‘‘)*「やっぱないんだ。何か、マスコミに踊らされてる気がしちゃうよね。そんな戦隊ヒーローみたいなことあると思う??」

( ;^ω^)「ははは…本当だお」

(-_-)「いるかもしんないっすよ、意外と近くにね」

*(‘‘)*「え?」

(;^ω^)「おっ、おい!お前何言ってんだお…!」 ボソボソ

(-_-)「分かんないじゃないっすか、てか居たらカッコよくないですか?」


 ブーンの焦りの制止を気にすることなく、ヒッキーは真顔で話し続ける。


(-_-)「だってもしそれが本当にあることだとして、俺たちにその活躍を公にすることなく戦ってるんでしょ?
    そんなの滅茶苦茶にカッコいいでしょ。体張って、命懸けて俺らの為に戦ってくれてるんだから」

( ^ω^)「……」

*(‘‘)*「まぁ、本当にあることだとしたらね?本当にいるなら感謝もするし応援もしたいけど…」

(-_-)「ですよね。だから俺は誇りに思いますね、そんな人がいる素晴らしい世界で生きてるってことを」

( ^ω^)「ヒッキーお前…」


 ヒッキーの言葉に、思わず胸が熱くなってしまう。
 普段おちゃらけている彼の口から出る言葉だからこそ、尚のこと感動してしまった。

89226話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:12:10 ID:dVuufZLM0
*(‘‘)*「もう、まるで目の当たりにしたことがあるみたいな口ぶりじゃない?」

(-_-)「いや?ないですよ、あったら写真撮ってSNSに上げてるし」

*(;‘‘)*「さっきまで真剣に語ってた人が取る行動とは思えないわね」

( ^ω^)「ははは…」


 胸を撫で下ろし、下手くそな愛想笑いを漏らす。
 すると、ヒッキーがヘリカルに思いがけない話を切り出した。


(-_-)「ヘリカルさん、そういえばドクオさんとはどうなんですか?」

( ^ω^)「ドクオ?」

*(‘‘)*「え?……なんで?」

(-_-)「だってほら、年末は一緒に過ごすって言って喜んでたじゃないですか。
     あれからその話してこないなぁと思って」

( ^ω^)「え、そうだったのかお?アイツそんなこと一言も…」


 ヒッキーが間接的にドクオの現状を探ろうとする。
 ドクオが何をしているのか、何故ヘリカルが話をしてこないかの理由は大まかに把握はしていた。
 理由はただひとつ――レンゲルの"運命"を背負ってしまったから。
 
 ヒッキーがその話を掘り返すと、ヘリカルの表情はたちまち暗くなった。
 

*(‘‘)*「………結局行かなかったわ」

(-_-)「そうなんですか…何か連絡とかは?」

*(‘‘)*「ない、結局あとになってLINEが来て、謝ってきたけど…何か、最近様子が変というか…」
 
(-_-)「変?」

89326話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:13:22 ID:dVuufZLM0


*(‘‘)*「ちょっと前までは全然返事来なくて、ある時突然元気になったような感じになったかと思えば…。
     また暗くなったりとか、LINEの既読もつかないみたいな感じになったりして」

( ^ω^)「……」


 これの理由はブーンも何となく理解している。
 レンゲルになってからの苦しみや葛藤と戦った日々の間の事だろう、と予測できる。
 

*(‘‘)*「それに昨日も、同窓会行って夜には帰ってくるからまた連絡するって言ったっきり返事もないの」

( ^ω^)「え?そういや、確かに今日になっても何の連絡もないお…」

*(‘‘)*「ていうか、今朝のニュース見た?ドクオの出身の学校で、人が山積みになって倒れてたって…」

( ^ω^)「何だおそれ?どういうことだ…?」


 同窓会に行くと言っていたドクオ。相手は過去にドクオをいじめていた人達。
 今までのパターンでは、ドクオからの連絡がない時は、何かがあった時。

 ……嫌な予感がする。
 悪い予想を頭の中で巡らすブーン。
 言葉を発さないヒッキーは、何処か深刻そうな表情。


 ――そこに、足音が近付く。


( ^ω^)「……!」


 何気なく足跡の方へと視線を向けたブーン。
 悪い予想は、当たってしまった。

89426話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:13:50 ID:dVuufZLM0


( A )

( ^ω^)「ドクオ…!」

*(‘‘)*「え?……ドクオ!」


 全員の視線がドクオに向けられる。
 ヘリカルは思わず席を立ち、ドクオを見つめた。
 

*(‘‘)*「ドクオ、何してたの!?すっごい心配したんだから!」

( A )

( ^ω^)「……ドクオ?」

( A )


 立ち尽くしたまま、反応がない。
 昨日までの活き活きとした様子はなく、頭の重さに逆らわず首をだらんと下げ、どこか一点をボーッと見つめている。
 表情がよく見えないドクオの視線を、目で追うブーン。
 その先には……表情を合わせようとしない、ヒッキーがいた。


( A )「おい」

(-_-)「……俺ですか?」

( A )「来い、話がある」

*(‘‘)*「え、ちょ…ちょっとドクオ?ヒッキーに何か用があるの?」

89526話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:14:16 ID:dVuufZLM0


 状況が呑み込めない、ブーンとヘリカル。
 ヘリカルがドクオに積極的に言葉をかけるが、ドクオには一切聞こえていないかのよう。
 ドクオはヒッキーに近付き、片腕を掴み強引に引っ張り上げる。


( A )「来い」

( ^ω^)「お、おい!ちょっと待てお!」

*(‘‘)*「ちょっと、何やってんの!?」


 ドクオの乱暴な姿を見て、止めに入るヘリカル。
 ヒッキーを引っ張るドクオの腕を解こうと割って入った。


( A )「――せぇ……」

*(‘‘)*「…?」




(#'A`)「――うるせぇんだよ、クソが…!!」

*(;‘‘)*「……え……、きゃっ!?」


 ヘリカルを引きはがし、突き飛ばす。
 思わぬ行動に動揺し、突き飛ばされるがまま地面に尻餅を着いてしまう。


( ^ω^)「ヘリカル!?」

(-_-)「ヘリカルさん!?」


 倒れたヘリカルの体を咄嗟に支えるブーン。
 あまりにも暴力的かつ理不尽なドクオに、ブーンは怒りを見せる。


( #^ω^)「おい…お前何考えてんだお!?」

89626話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:14:40 ID:dVuufZLM0


 ドクオに問い詰めようとしたブーン。
 その前に、ドクオに突っかかられたヒッキーが立ち上がり彼の胸倉を掴んだ。


('A`)「ッ…!?」

(#-_-)「そうかそうか……お前はそうなっちまったんだな?
      闇を選んだ…いや、闇を選ばざるを得なかったというべきか」

(#-_-)「自己責任っちゃ自己責任だが、お前を焚きつけるクソ野郎共が居たってことだな…。
      こうなっちまったら、もう取り返しがつかないな」

( ^ω^)「ヒッキー…?」


 胸倉を離し、ドクオを突き飛ばす。
 何の話をしているのか訳が分からず、二人を交互に見つめるブーン。


(-_-)「ヘリカルさん、ちょっと此処で待っててください。
     俺、ドクオさんとどうしても大事な話があるの忘れてて…すぐ戻りますから」

*(‘‘)*「へ……ヒッキー……?」

(-_-)「…来いよ」

('A`)「ふん、やっとその気になったか」

( ^ω^)「おっ、おい二人とも!?」


 ヒッキーがドクオを連れ、どこかへと向かってしまう。
 何が起こったのか、何故暴力を振るわれたのか、何故あんなに豹変していたのか…。
 状況が飲み込めず、ただ呆然とするヘリカル。


*(‘‘)*「………」

( ^ω^)「ヘリカル、先に中に入ってるんだお。僕が二人を何も起こらないように見張っとくから!
       大丈夫だお、ドクオのことは僕に任せて!」


 ヘリカルの両肩を撫でながら、慰めの言葉を掛けるブーン。
 起き上がらせてベンチに座らせると、ブーンは二人の後を追った。

89726話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:15:12 ID:dVuufZLM0
――――――
 ――――
 ――


 VIPから少し離れた場所、路地裏に辿り着く二人。
 二人は距離を置き、互いを睨み合う。
 ドクオの目は、昨日までとは違い――とても、憎しみや怒りを抱いていた。


(-_-)「どうやら、俺が願った通りにはならなかったみたいだな」

('A`)「そうかもしれないな。だが、俺はこれでよかったのかもしれない」

(-_-)「何?」

('A`)「気付いたんだよ。弱さは罪だってな」


 ドクオの両の拳が、ギリギリと強く握られている。
 怒りからか、強く強く握りしめるせいで、手がプルプルと震えている。


(#'A`)「何が過去との決別だ…何が俺自身が変わるだ?
    俺が変わったからって、奴らは変わらない…俺が弱いことも変わってない…!」

(#'A`)「過去の俺に酷い仕打ちをした奴らをな、俺は助けた。
    あいつらは自分が死にそうな状況になった途端、この俺に助けを求めたんだ!無様だよなァ!?」

(#'A`)「俺にあんな仕打ちをしておいて…だけどそんな奴らを助けてやったんだ。
    そしたらどうだ!?アイツらはその恩も忘れ、また昔と同じことを、喜びながら俺に……ッッ!!」


 近くに積まれているビールケースを思い切り蹴り飛ばし、呼吸を乱す。
 

(#'A`)「フーッ…フーッ……!」

(-_-)「だから、その力を使ったのか?」

(#'A`)「ああ、これか!?」


 レンゲルのベルトを取り出し、口端を吊り上げ不敵に笑みを浮かべる。
 
 ――そこに、二人の後を追ってきたブーンが到着した。
 既に一悶着あったかのような現場の状況、更にはドクオの手に握られるレンゲルのベルトーー。

89826話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:15:41 ID:dVuufZLM0


( ^ω^)「おい、お前本当に何しようとしてんだお!?」

(#'A`)「黙れ!!」

( ;^ω^)「うおっ!?」


 制止しようとするブーンを振り切り、ベルトを腰に装着するドクオ。
 もう一度止めようとドクオを抑え込むが、遠慮のない力がもう一度ブーンを跳ね返した。


(#'A`)「そうだよ、俺はコイツを使ったさ。コイツだけじゃない…カテゴリーAの力も受け入れた」

( ^ω^)「えっ…!?」

(-_-)「……」

(#'A`)「俺に教えてくれたよ。お前はこんな汚い奴を助けたかったのか?ってな。
    お前が弱いからこんなことになる…力さえあれば、お前はこんな惨めな思いをしなくていいってな」

(#'A`)「――その通りだな、って思ったぜ…!変身ッ!!」


    【 -♣OPEN UP- 】


 バックルより射出されたスピリチアルエレメントが、薄暗い辺りを紫光で照らす。
 構えも取らずに、ドクオは接近するゲートを潜り抜け、レンゲルの装甲を身に纏った。


( ; ^ω^)「ちょっ…!!おい、お前何を…ッ!?」

( #OHO)「俺に触るなッ!!」

( ; ^ω^)「がふっ…!」


 もう一度掴みかかってくるブーンを、壁に向かい投げ飛ばすレンゲル。
 人間の姿であるブーンは容易に投げ飛ばされ、背中を壁に強打した。

89926話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:16:13 ID:dVuufZLM0


(-_-)「先輩、下がっててください」

( ; ^ω^)「なっ…何言ってんだおっ!ドクオやめるお!」


 痛む体で声を出し絞る。
 ヒッキーの言葉など届くわけもなく、まだレンゲルを制止しようとする。

 ――だが、次の光景を見て、ブーンは言葉を失う。


(-_-)「先輩…俺、先輩のこと嫌いじゃなかったですよ。
     俺のこの姿を見たら、さっきまでのような仲では居られなくなると思うけど…これが俺なんで」

(-_-)「ちょっとばかり、コイツの為に人肌脱ぎますよ…!」


 刹那、ヒッキーの体から別のシルエットが浮かび上がる。
 アンデッドとしての、禍々しく歪な姿が。ヒッキーの本来の姿が、ブーンの前で露になった。


( ; ^ω^)「ッッ!?!?ヒッキー……!?」

( #OHO)「そうだよ、その姿を待ってたんだよ…カテゴリーK!!」
    。
< \゚皿゚/>『レンゲルーーいや、ドクオ。お前を止めてやる』

 
 後退りをするブーン。
 ヒッキーが、アンデッドの姿に――次から次へと襲い掛かる理解不能な状況に、何をしたらいいか分からない。


( ^ω^)ロ[……ツン、今カテゴリーKの反応が出ても、誰にも何も指示しないでほしいお。頼むお]


 ブーンの困惑を他所に、レンゲルはレンゲルラウザーを装備し、ヒッキーに襲い掛かる。

90026話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:16:39 ID:dVuufZLM0


( #OHO)「ウォラアアァッ!!」


 振りかぶるレンゲルラウザー。
 身を翻しながら冷静に躱すヒッキーに対し、縦横無尽に、乱暴に振るい続ける。
 
    。
< \゚皿゚/>『どうした、そんなもんか?
      ――おい、カテゴリーA!聞こえてるんだろ?構ってやるから来いよ!』

( #OHO)「こんの、クソがアアァァッ!!」


 横薙ぎに払われた斬撃を、後方にステップし躱す。
 
 突如、レンゲルの額にある宝石が紫に強く光りだす。
 すると、力み切っていたレンゲルの体から、フッと力が抜けたのが見て分かった。
 ゆらり…と動き始め、ラウザーを握り締めたのち、的確にヒッキーを狙い振るい始める。

    。
< \゚皿゚/>『ようやくお出ましか、何で勿体ぶったんだ?コイツに期待してるのか?』

( OHO)『フン、相変わらず口が減らない奴だ。いつまでその余裕が続くかな?』

( ; ^ω^)「この声……カテゴリーA!?何で…!」


 レンゲルの声が、ドクオのものではないのが分かる……カテゴリーAに操られたあの時のように。
 
 ヒッキーはレンゲルに向け口から蜘蛛の糸の弾丸を射出。
 レンゲルはそのすべてをラウザーで払い落し、カードを2枚引き抜きラウズ。


    《-♣2 STAB-》 《-♣4 RUSH-》


( OHO)「ウオオオオッ!!」


 "♣2 STAB"の力で武器の攻撃力を上げ、"♣4 RUSH"の力で突進力を強化。
 ラウザーの矛先をヒッキーに向けるように構え、地を蹴り突撃。

90126話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:17:04 ID:dVuufZLM0

    。
< \゚皿゚/>『そんな戦い方じゃ、俺は倒せないぞ』


 眼前に右手を翳し、大きな蜘蛛の巣を展開。
 盾のように作った蜘蛛の巣はレンゲルの攻撃を防ぎ、且つラウザーに絡み付いて捕らえた。

 右手を握り締め拳を翻すと、大きな蜘蛛の巣がレンゲルをガバッ!と覆い出す。
 まるで巨大な怪物が獲物を捕食するかの如く、レンゲルのそのまま飲み込んだ。


( ; OHO)「ぐっ!?クソ…ッ!うああぁぁッ!」


 捕らえられた蜘蛛の巣の中で、無数の火花が散り始める。
 巣の中で、何かがレンゲルを蝕んでいるように見える。レンゲルは痛みに悶え、悲鳴を上げた。


    。
< \゚皿゚/>『フンッ!!』

( ; OHO)「ぐはあぁっ!」


 体の自由が利かない状態のまま、ヒッキーの異常に発達した左手がレンゲルを殴打。
 後方に吹き飛ばされ、ブーンの目の前に転がる。
 

( ; OHO)「んぐ……クソォ…ッ!カテゴリーK…お前の力を得れば、俺は絶対的な強さを得られるんだ…!」

( ; ^ω^)「カテゴリーK……前に話してた♣スートのカテゴリーKが、ヒッキーだっていうのかお…!」
    。
< \゚皿゚/>『俺を倒すだと…?その程度で往なされる程、俺はやわじゃねぇ』

90226話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:17:35 ID:dVuufZLM0


( ^ω^)「………ドクオ」

( ; OHO)「クッ……絶対、絶対にお前を封印してやる!覚えておけ…!!」


 ブーンを一瞥するレンゲル。
 地を乱暴に叩き付け、痛む体を起こす。
 これ以上の戦いは無駄だと判断したのか、レンゲルはフラフラとしながらブーン達を残し去っていった。

 残された二人の間に、沈黙が流れる。
 ブーンは立ち上がり、ヒッキーに怪訝な視線を向ける。


( ^ω^)「ヒッキー……説明しろお。何でお前がアンデッドなんだお!?」
    。
< \゚皿゚/>『…ま、そうなっても仕方ない』


 人間態に戻り、ヒッキーは事の顛末を話す。
 
 自分がカテゴリーKであること。再び生を受け、再開されたアンデッド同士の戦いから逃れる為に人間に化けていたこと。
 争う気は更々ないことなど、全て。

 始めはヒッキーを警戒していたが、話に耳を傾けている内に自然とヒッキーの存在を受け入れられていた。


( ^ω^)「そうかお……信じていいんだな?お前を」

(-_-)「信じてもらえるなら」

( ^ω^)「なら信じるお。アンデッドの中にも戦いを望まない者もいる、僕はそれを知ってるお」

(-_-)「……いいんですか?俺はカテゴリーKですよ」

( ^ω^)「だから何だお、お前が人を襲うような奴だったらとっくに襲ってるだろ?
       それに…まだ期間は短いけど、VIPで一生懸命働いてるお前を知ってるから」

(-_-)「……はは、流石ですね。やっぱ人間はすごいわ」


 ブーンの言葉に安堵したのか、ヒッキーは自然と笑みがこぼれた。

90326話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:18:00 ID:dVuufZLM0


(-_-)「それはそうと、ドクオのことです。あいつについて話しておきたいことがあります」

( ^ω^)「ああ、そうだお…ドクオについて何か知ってるのかお?」

(-_-)「実は――」


 ヒッキーは、ドクオに何があったかの一部始終を話した。
 白根達に裏切られたこと。♣スートのカテゴリーKから見た、カテゴリーAの影響力。
 ドクオとカテゴリーAは互いに適合出来ている為にジョルジュのような洗脳を受けないが、かつてのギコのように
 心の闇に漬け込み、凶暴さを増幅させていることを。


( ^ω^)「ドクオ、そんなことが……確かに、そうしたくなる気持ちも分かるけど……」

(-_-)「思ってる以上に状況は悪い。ゆくゆくはカテゴリーAによって人格を形成され、それがドクオを蝕んでしまうかもしれない」

( ^ω^)「そんな……!何か手はないのかお!?」


 ヒッキーの表情がより真剣さを帯び、険しさを増した。
 そして、真っ直ぐな眼差しでブーンを見つめる。


(-_-)「……先輩、ドクオをどうしたいですか?助けたいですか?」

( ^ω^)「当たり前だお!あいつは僕の親友だお、こんなことになって…何とか救ってやりたいお!」

(-_-)「ですよね。なら、ドクオを救い切るまで、諦めないことを誓えますか?」

( ^ω^)「ああ、誓うお。僕はあいつを、本当のあいつを取り戻すまで何があっても諦めないお!」

(-_-)「……分かりました。取り敢えず――ッ!」

( ^ω^)「どうしたお!?」


 ヒッキーが何かを察知する。
 路地裏を吹き抜ける風が、彼に遠くで起きている事を伝えている。

90426話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:18:28 ID:dVuufZLM0


(-_-)「先輩、♣のカテゴリーJ…ドクオがそいつのもとに向かってます。
     ガタイの良い、屈強な大男に擬態してます」

( ^ω^)「ガタイの良い大男…?まさか、あの時の…!」


 ヒッキーが紡ぐヒントには心当たりがある。
 ミセリとタカラ達と対峙した、あのプールにいたもう一人の男。


(-_-)「コイツはかなりの暴れん坊です、勝てるかどうか…」

( ^ω^)「僕が助けに行くお!反応出ればきっと知らせてくれるから…!」


 急いでブルースペイダーのあるVIPに戻ろうとするブーン。
 路地裏から出て姿の見えなくなったブーンが、まだヒッキーのいる路地裏を再度覗き込む。


( ^ω^)「ヒッキー、ありがとうだお!これからも頼むお!」

(-_-)「うっす」


 ぶっきらぼうな返事を見届けると、ブーンは今度こそVIPに向けて駆け出した。


(-_-)「……やっぱ、人間は守らなきゃいけないな。こんな俺を受け入れてくれたんだから」

(-_-)「――さて、腹括るか」

90526話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:18:52 ID:dVuufZLM0





 ―――――




.

90626話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:19:50 ID:dVuufZLM0


 ブーン達の騒動の裏では、別のアンデッドが"また"動き始めていた。
 そのアンデッドは今、人になりすまし、お昼に営業中の飲み屋の前に立っている。


ミセ* ー )リ「フフフ……」


 そう、バーボンハウスの前に――。

 ドアが開き、カランカランと鈴が鳴り響く。
 普段であれば、誰かが来客を迎え入れようとするところ。

 だが、そうはいかなかった。


川 ゚ -゚)「出ろ、貴様如きが踏み入っていい場所じゃない」

ミセ*゚ー゚)リ「あら、やっぱりいたのね」


 ドアを開けてすぐ。そこには、クーが既に立ちミセリの来訪を待ち構えていた。
 後退るミセリ、クーはじりじりとミセリとの距離を詰めていく。


川 ゚ -゚)「死に損ないが、今度こそ貴様を封印してやる」

ミセ*゚ー゚)リ「それはどうかしら?フフフ」


 突如、アンデッド態へと姿を変えるミセリ。
 右手に伸びるツタを振るい、クーへと襲い掛かった。
 咄嗟に頭を下げ躱すクーだが、ミセリの先制攻撃によって完全に火が付いた。

  *∧Λ*
∠* ゚`-´)ゝ『さぁ、私の後を追ってきなさい!』

川#゚ -゚)「ふざけた真似を…!」


    【 -♥CHANGE- 】


 カリスへと変身し、シャドーチェイサーを呼び寄せミセリを追跡。
 分かりやすい挑発、誘導行為ではあるが、散々機会を逃してきたミセリにケリをつけたい思いも強くあった。

90726話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:20:17 ID:dVuufZLM0


 ミセリを追跡した果てに辿り着いたのは、例のプール。
 ここまで連れてこられた時点で、カリスは何となく察しが着いた。

 ――敵は、一人ではない。と。


「いやいや、全く…またお前か」


 麦わら帽子を顔面に乗せ、顔を隠す大男が一人。
 離れのプールサイドにて横になりながら、カリスの来訪に溜息を吐いた。


( <::V::>)『貴様か、私を此処に呼び寄せたのは』

「何の話だ?」


 大きな片手で麦わら帽子を取り、上体を起こす。
 ゆっくりと気怠そうに立ち上がり、カリスを見た。


( ゚∋゚)「俺は戦う気はないぞ」

( <::V::>)『馬鹿を言うな、こんな所までおびき寄せておいて…。
      隠れているんだろう?繭女。2対1でも構わないぞ?』

( ゚∋゚)「ほう……なるほど、そういうことか」


 大男――クックルに、若干の苛立ちが見えた。
 そこに、カリスを此処まで誘引したミセリが背後より現れる。

  *∧Λ*
∠* ゚`-´)ゝ『――フッ!』

 ツタを伸ばし、カリスの体を拘束しようとした。
 カリスはシャドーチェイサーから跳躍して回避。
 ミセリの背後に着地し背を取ると、カリスアローで一太刀浴びせる。

90826話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:20:43 ID:dVuufZLM0

  *∧Λ*
∠* ゚`-´)ゝ『ぐうっ…!?すばしっこい奴…!』

( <::V::>)『一人では戦えないか、まぁいい…同時に相手をしてやる。来い』


 二体の上級アンデッドを目の前にし、構えを取る。
 臆しないカリスの姿勢を見て、ミセリは高らかに笑った。

  *∧Λ*
∠* ゚`-´)ゝ『アハハハハ!この状況で随分と威勢が良いわねぇ』
  *∧Λ*
∠* ゚`-´)ゝ『彼を前にして、本当に私を倒せる余裕があるのかしら?』
  *∧Λ*
∠* ゚`-´)ゝ『ねえ?カテゴリーJ――』
  *∧Λ*
∠*;゚`-´)ゝ『ッッ!?』


 背後のクックルを振り向いた瞬間、ミセリの胸部に被爆する爆弾。
 硝煙がミセリの胸元から沸き立ち、爆発の威力で転倒。

 そこには、大男の姿はない。
 立っていたのは、とても巨大なーー。


бし゚益゚し


 黒い装甲に覆われる緑色の地肌。3本指の手足。
 右腕の装備にはモーニングスターが数本吊るされており、その手にはハンマーが握られている。
 右肩から背中を伝い、左脚にまで垂れ下がる長いホース状のものは、まるで"象"の鼻にも似ている。

90926話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:21:10 ID:dVuufZLM0


бし゚益゚し『貴様か、この俺を無駄に争いに巻き込もうとした大馬鹿者は』
  *∧Λ*
∠*;゚`-´)ゝ『クッ…何を…!?共にコイツを潰せる良い機会でしょ!?』

бし゚益゚し『そうやって貴様は、他の連中を焚き付けて利用してきたんだろう。
      あいにく俺は、貴様の思い通りにはならない…フンッ!』
  *∧Λ*
∠*;゚`-´)ゝ『うあッ……!!』


 右腕のモーニングスターを飛翔させ、ミセリに追撃。
 鉄球がミセリの頭部に直撃すると、その重さからミセリは吸い込まれるように地に倒れ、転がりながらカリスの足元へ。

 一部始終を静観していたカリスだが、足元に転がってきたミセリの首を雑に掴み、強引に立ち上がらせる。
 そして、容赦のない斬撃を見舞った。


( <::V::>)『ふっ、予定外…といったような顔をしているな?』
  *∧Λ*
∠*;゚`-´)ゝ『ううッ…、こんなはずじゃ…!』

( <::V::>)『残念だったな、恨むなら己の所業を恨むことだ!』


    《-♥6 TORNADE-》 《-♥7 BIO-》


 二枚のカードをラウズ。
 突き出した右手から伸びる触手がミセリを捕らえ、動きを封じる。
 右手を引きミセリを強引に引き寄せると、風の力を纏ったカリスアローの両刃で斬り付けた。

  *∧Λ*
∠*;゚`-´)ゝ『うあぁァッ!!…ッ、ガハッ……』

бし゚益゚し『ふん』
 

 全身を風の刃で刻まれ、至る所から緑の血を流す。
 血反吐を吐きながら、ふらふらと立ち上がるミセリ。
 クックルはその様子を眺めながら、自業自得の末路を鼻で笑ってみせた。

91026話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:21:30 ID:dVuufZLM0

  *∧Λ*
∠*;゚`-´)ゝ『まだよ…まだ、終われないの…ッ!』


 顔面の表裏が入れ替わり、周囲に大量の花吹雪を撒き散らす。
 全身の力を振り絞って、ミセリはこの窮地からの離脱を図った。

 カリスとクックルが顔面を覆い、視界を眩まされる。その隙にミセリは逃走。
 フッ、と花弁が消失した時には、ミセリの姿がなかった。


( <::V::>)『この機は逃さない…確実に奴を仕留める。
      貴様の相手は後だ、それまで此処で余生を楽しめ』

бし゚益゚し『そうか、ならお言葉に甘えよう』


 カリスは、ミセリの消え切らない気配を辿りその場を後にした。
 


 人間態になり、一息吐くクックル。
 邪魔者がいなくなり、再び休息に入ろうとした……その時だった。


( ゚∋゚)「…今度は別の奴か」

91126話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:21:53 ID:dVuufZLM0


 近付いてくる気配を感じる。
 人間?アンデッド?どちらも感じ取れる気配。
 それは、プールと外を遮る塀を超えてすぐに現れた。

 緑と黄金に輝くバイクーーグリンクローバー。
 それを器用に乗りこなす、ドクオの姿が。

 バイクから降車し、足取りが覚束ないままクックルを鋭い目で睨みつける。


('A`)「あんた、♣のカテゴリーJだよな?」

( ゚∋゚)「だったらなんだ人間……いや、臭うな」

('A`)「何?」

( ゚∋゚)「昨日はそこまで気にならなかったが、今のお前からキツイ程臭うぞ――毒蜘蛛の臭いがな」

( ゚∋゚)「だが残念だったな、あいにく俺は戦うのは好きじゃない」

('A`)「だったら――」

( ゚∋゚)「と言えば、こちらから行くぞ。などと言い出すんだろうな…全く面倒くせぇなぁ…」

(#'A`)「俺の言うこと全部分かってんだったら、これからすることも分かってんだろ!?」

( ゚∋゚)「……ふん、見えるぞ。お前の背を這う蜘蛛の姿が」


 息を乱しながら、レンゲルバックルを装着する。
 先刻のヒッキーとの対峙で、体力・肉体的にかなり消耗しているが…今のドクオには関係ない。
 
 力が欲しい。上級アンデッドを倒し、強くなりたい。
 ただ、それだけ。

 ーーそう思い込むように、カテゴリーAがドクオに内側から呼び掛けていることにも気付かず。

91226話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:22:14 ID:dVuufZLM0


(#'A`)「変身…ッ!」

    
    【 -♣OPEN UP- 】


 レンゲルへの変身を果たした直後、クックルに向け駆け出す。
 ひと飛びで離れたプールサイドを飛び越えると、勢いそのままに右手で握り締めた拳をクックルに突き出した。


( #OHO)「オラアアァッ!!」


 胸部に確かにヒットしたが、クックルは微動だにせず。
 一瞬、レンゲルに怯んだ様子が垣間見えたが、何度も胸に向かい拳を叩き込む。

 だが、


( ゚∋゚)「お前、昨日より力が落ちているな。体が限界なんじゃないか?」

( #OHO)「クッ、黙れ!俺はお前を封印する!」

( ゚∋゚)「おお、そうか…。大人しく言うことも聞いてくれないみたいだなぁ。なら――」

бし゚益゚し『少し灸を据えてやろう』

( ; OHO)「!?ぐふっっ……!!」


 拳を掌で受け止めるクックル。
 左足の重たい一撃が、レンゲルの腹部に見舞われる。
 何かが吐き出そうな程の衝撃がレンゲルを襲い、思わず蹲る。

 クックルは追撃を止めない。
 右手のハンマーを高々と振り上げ、蹲るレンゲルの背中に勢いよく振り下ろした。

91326話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:22:41 ID:dVuufZLM0


( ; OHO)「がはぁっ!!」


 背中にとてつもない重力と衝撃が圧し掛かる。
 逆らえない重力に、レンゲルはそのまま地に伏せられた。


бし゚益゚し『他愛もない…フン!』

( ; OHO)「うああぁっ…!!うぐっ…!」


 脇腹を蹴り上げ、レンゲルの重たい体を蹴り飛ばす。
 まるでボールを蹴り飛ばすかのように。
 プールサイドには届かず、体を打ち付けプールに落下。大きな水飛沫が吹き上がり、辺りを水で濡らした。

 
бし゚益゚し『何だ、大したことないな…こんなものなのか?』

бし゚益゚し『しかし、ここの場所も大分知られてしまったな…そろそろ住処を変えるとするか』


 プールの中で沈むレンゲルなど気にも掛けず、この場を去ろうとする。
 戦い続きで、辺りの崩壊が目立って来た。狙われていては落ち着いて過ごすことも出来ない。
 
 しかし、それすらも遮ろうとする存在が、再び接近している事に気付く。
 

бし゚益゚し『ああ、面倒くせぇ…!』

91426話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:23:11 ID:dVuufZLM0


 次に現れたのは、ブレイドとギャレンだった。
 ヒッキーからの情報を得た通りにカテゴリーJの反応をキャッチ。
 この場所は覚えていたため、比較的早く到着できた。


( OwO)「やっぱりお前だったかお…!」

( OMO)「こいつ、この間の大男か?」

бし゚益゚し『何だって今日はこんなに客が多いんだ?』

( OwO)「ドクオ!」


 プールの底で沈むレンゲルを発見する。
 ブレイドが急いでプールに飛び込み、水圧に苦戦しながらもレンゲルを救い上げた。
 

бし゚益゚し『そろそろ静かにさせてもらおうか。
      俺は得体の知れない奴と真っ向勝負するのは嫌いでな。
      相手の力量が知れるまでは戦わない主義なんだ』

( OMO)「何だと?逃がさないぞ、アンデッド!」


 ギャレンラウザーを引き抜き、クックルに向け銃撃を見舞う。
 クックルの体に被弾し火花が散るが、効いている様子はない。


бし゚益゚し『全く、馬鹿な連中だ…!』

91526話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:23:35 ID:dVuufZLM0


 クックルが動いた。 
 重そうな体から繰り出したとは思えない跳躍。
 ブレイドらがいる対岸に着地すると、両足が着いた部分から地響きが起き、周囲に地割れが伝染。
 
 左手にハンマーを持ち替え、右腕の鉄球を振るいギャレンを雑にぶん殴る。


( ; OMO)「ぐあっ!…何て力だ…!?」

( OwO)「モララーさん!うおおおお!」


 ブレイラウザーを抜き、クックルに立ち向かう。
 接近し胴体を斜めに斬り付けるが、これもまた効いていない。


бし゚益゚し『んん?どうした、こんなものなのか?ライダーってのは』

( ; OwO)「何!?うわあぁっ!!」


 左手に持ち替えたハンマーで、下から打ち上げるように脇腹を殴打。
 更に振り上げ、ブレイドの顔面めがけ振り下ろした。


бし゚益゚し『フンッ!!』

( ; OwO)「ッ…!」

( ; OMO)「剣藤!!」

91626話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:23:58 ID:dVuufZLM0


 ハンマーがブレイドの顔面に直撃。
 その瞬間……ブレイドの顔面を覆う仮面が砕かれ、辺りに破片が飛散。
 中身が露呈されたブーンの顔には、頭部から出血した血が流れていた。


( ;|^/wO)「くっ……」

( ; OMO)「オリハルコンブレストが、破壊されただと…!?」


 120tの衝撃をも吸収するライダーの装甲。
 アンデッドの攻撃をも防ぎ切ってきたこの完全無欠の装甲が……遂に破壊された。
 この事実は、クックルがとてつもない力を誇るアンデッドであることを知らしめた。

 攻撃も通じず、一発一発の重みが桁違い。更にはアーマーを突き破る程の力。

 
( ;|^/wO)「ッ、まだまだだお…!」

( ; OMO)「よせ剣藤!このアンデッドは…今までの奴らとは違う!」


 顔面を割られても尚、立ち向かおうとするブレイドを阻止した。
 ギャレンは本能的に察した。
 こいつは、やばい。


бし゚益゚し『ライダーとかいう奴らがアンデッドを次々と封印していると風の便りで知ったから警戒はしていたが…。
      さっきのガキといいお前達といい、思ってたより大したことはないのかもしれないな…?』

( ; OMO)「やはり、お前は俺達を試していたのか……!」


 これ程の実力があっても自ら進んで戦おうとしない、その矛盾に違和感を抱いていた。
 先程の発言からしても、まだ本腰を入れて戦ってはないとも解釈できる。
 考えただけでも、自然と恐ろしさが沸き上がってしまった。

91726話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:24:19 ID:dVuufZLM0


( OMO)「クッ…剣藤、ここは撤退しよう。これ以上は危険だ!」

( ;|^/wO)「でも…!」

( OMO)「命を無駄にするな!今の俺たちでは…勝てない!」

( ;|^/wO)「……クソッ!」


 ギャレンの言葉を否定したいが、認めざるを得ない。
 現に、力の差を見せつけられてる。クックルに対抗できる手段が思いつかない。
 悔しさを滲ませながら、ブレイドは変身を解いたドクオを抱え、クックルの前から退散…。
 ギャレンは銃口を向けながら、撤退の殿を務める。

 しかし、クックルは追おうとはせず逃げる様を見ている。


бし゚益゚し『腰抜けめ、自分から仕掛けておいて逃げるか』


 自身の手を見つめ、クックルは感触を掴んだ。
 ライダーとの邂逅。実戦を交えたことで、明確になった。


бし゚益゚し『……これなら、奴らに勝てる!』


 不動を貫いてきた象が、己が名を上げる為に重い腰を上げ始めた。

91826話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:24:42 ID:dVuufZLM0





 ―――――




.

91926話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:27:27 ID:dVuufZLM0


 _
( ゚∀゚)「ふふふ〜ん」


 車道を一人、車で走るジョルジュ。
 ブーン宅で昼食を済ませた後、ジョルジュも単身外に出ていた。気分転換のドライブも兼ねて。
 車の窓を開けて、風を感じながら鼻歌を歌う。

 _
( ゚∀゚)「最近嫌なことばっかだったし、たまにはこういう気晴らしも必要だよな」


 賑やかな街並みを避け、自然溢れる静かな車道を走る。
 ドライブをする自分に言い聞かせるように、独り言を呟く。

 _
( ゚∀゚)「……しかし、どうやってアンデッドに向き合ったらいいか分かんなくなってきたな…」


 ぼそっ、と呟く。普段であれば口にしないであろう本音が漏れた。
 アンデッドは敵――それが当たり前だと思っていた。その概念を持って今までやってきた。
 だが、クーのような、モスのような例外もあるアンデッドの存在を知った。
 知ったことで、ジョルジュの中で複雑になっていた。

 しばらく車を走らせていると、前方に何かを確認。

 _
( ゚∀゚)「ん?何だあれ」


 減速し、ゆっくりとその前を通り過ぎようとする。
 徐々にはっきりとしてくる。そこにあるのは……うつ伏せに倒れている人だった。

 _
( ゚∀゚)「おっ、おい!大丈夫ですか!?」


 路肩に車を止め、倒れている人に近付く。
 よく見ると、倒れている人は女性だった。
 肩を揺さぶってみても反応がない。

 ジョルジュは、半ば無理矢理に体勢を仰向けに入れ替える。

 _
( ;゚∀゚)「ッーー!!」

92026話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:27:50 ID:dVuufZLM0


 顔がハッキリとした途端、ジョルジュがパッと手を放しその場から立ち上がる。
 ジョルジュが助けようとした女性、それは――


ミセ* ー )リ
 _
( ;゚∀゚)「義永…ミセリ…」


 アンデッドであるミセリだった。
 先の戦いで深くダメージを追い、ここで意識が途切れてしまった様子。
 ジョルジュはスマホを急いで手に取り、ブーン達に連絡しようとした。
 ……が、その手は止まった。

 _
( ;゚∀゚)「………」


 人間にしか見えない、綺麗な横顔。
 アンデッドであること、危険な目に合わされたことを覚えている。
 覚えているはずなのに…何故か、躊躇いを感じている。

 _
( ;゚∀゚)「……どうしたら……」


 迷いが生まれている。
 スマホとミセリを何度も何度も交互に見つめる。

 しかし、次の瞬間――急に体が勝手に動いた。

 _
( ゚∀゚)「ああもう…!知らねぇ!なるようになれだ!」


 スマホをしまい、ミセリを抱え上げるジョルジュ。
 車の中に乗せると、ジョルジュは人気のない場所へと車を走らせた。

92126話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:28:12 ID:dVuufZLM0

 ――――――
 ――――
 ――

 
 人気のない場所に車を止め、ジョルジュはハンドルに蹲る。

 _
( ゚∀゚)「ハァァ……、何やってんだ俺……」


 仮にもアンデッドを助けてしまった行動を今になって後悔。
 それと同時に、衝動的な自分を制御出来ない事に情けなく感じている。
 
 _
( ゚∀゚)「そりゃレンゲルにだってなれねぇし、ライダーには向いてないよな…」


 自虐に浸る。
 だが同時に、この行動を取ってしまったことを悔いていない自分もいる。
 どこか、不思議な感覚だ。


ミセ*゚ -゚)リ「何故私を助けた?」
 _
( ;゚∀゚)「うわああああっ!?」


 何の気配も音もなく、ミセリが突然口を開いた。
 驚いたジョルジュは跳ね上がり、ミセリから距離を取った。


ミセ*゚ -゚)リ「何のつもりだ、お前」
 _
( ;゚∀゚)「い、いや……それは、その……」

92226話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:28:38 ID:dVuufZLM0


ミセ*゚ -゚)リ「私はアンデッドだぞ?お前のことも殺めようとした」
 _
( ;゚∀゚)「そ……そんなことは分かってる!」


 ミセリの冷たい表情。繰り返し詰め寄られるジョルジュが、半ば自棄気味に返事をする。

 _
( ゚∀゚)「分かってるよ、そんなことくらい…あんたが俺に何したかなんてことくらい。
     アンデッドだってことも分かってんだよ!」
 _
( ゚∀゚)「でも……あんた、倒れてただろ?そんな姿見たら、何か…体が勝手に動いてたんだ!」

ミセ*゚ -゚)リ「今この瞬間、殺されると分かっていても?」
 _
( ゚∀゚)「ッ……ああ、そうだよ。分かってても動いちまったもんはしょうがねぇだろ!?」


 ミセリの言葉に身構え、恐怖を覚えるジョルジュ。
 しかし、強気な姿勢は崩さない。

 _
( ゚∀゚)「あんたは目的があって俺らに手を出したんだろ?
     もちろん許せることじゃねぇよ、でも…目的がなけりゃ人のことも襲わないってことだろ?」

ミセ*゚ -゚)リ「……何が言いたい?」
 _
( ゚∀゚)「アンデッドってのは自分の目的の為に戦ってるんだろ?中でもあんたらみたいな上級の連中はさ。
     要するに、身を削ってるってことだろ?」

ミセ*゚ -゚)リ「……」
 _
( ゚∀゚)「ずっと考えてたんだよ、俺…あんたらアンデッドは許せねぇよ、そんな戦いに俺たちを巻き込みやがってさ。
     でも、戦いを強いられて苦しんでるんじゃないかって…どっかでそう思うようになってた」
 _
( ゚∀゚)「アンデッドでも、人と暮らしてる奴がいるからな…」

92326話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:29:00 ID:dVuufZLM0


ミセ*゚ -゚)リ「フッ…まさか人間如きに憐れまれるとはな。
     だからと言って何故それが私を助ける理由になる?」
 _
( ゚∀゚)「分かんねぇよ、分かんねぇ!ただ…そう思ったら、あんたを助けたくなった!それだけだ!」


 逆ギレのように言葉を返す。
 ジョルジュに向けていた目線を、ミセリは逸らした。

 _
( ゚∀゚)「殺すなら殺せよ、あんたを助けた時点で分かってた展開だよ。
     こんな密室で、逃げられる訳がねぇ…」

ミセ*゚ -゚)リ「いいのか?そんなことを言って」
 _
( ゚∀゚)「ああ、いいよ!しょうがねぇだろ、自業自得だ…」

ミセ*゚ -゚)リ「…そうか。恨むなら自分を恨め」


 正面を見つめるジョルジュ。
 ミセリは両手を、ゆっくりとジョルジュの首元に向け伸ばす。
 きつく締め上げようとしたミセリだったが……。

 _
( ;゚∀゚)「ッ……」

ミセ*゚ -゚)リ「………」
 _
( ;゚∀゚)「へ……?」


 ミセリの手が止まった。
 呆然とするジョルジュを他所に、ミセリは車を降りる。

92426話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:29:33 ID:dVuufZLM0


 そして――自分を追ってきたであろう、狩人を見つける。
 

ミセ*゚ -゚)リ

( <::V::>)


 言葉を発さない両者。
 バックミラー越しにカリスの姿を視認すると、ジョルジュも急いで車を降りた。

 _
( ゚∀゚)「ク、クーさん……!」

( <::V::>)『この女を介抱したのか』
 _
( ;゚∀゚)「ま、待ってくれ。これには訳があるんだ…」

( <::V::>)『散々な目に合わされたくせに、よくも助けたな。
      やはり貴様とは分かり合えない』
 _
( #゚∀゚)「ッ……何が分かるんだよ、あんたに!!」


 カリスの言葉に、ジョルジュが声を荒げる。
 いつもはクーに対してどこか怯えて劣等感を感じていたが、そんなことを忘れさせるくらい、大きな声で。

 _
( #゚∀゚)「分かったような口ぶりで好き勝手に…そもそもあんたのせいだろ!?」

( <::V::>)『私が何かしたとでも言うのか』
 _
( #゚∀゚)「ああ、してるね。あんたはアンデッドなのにショボンさん達と仲睦まじく暮らしてるじゃねぇか!
     アンデッドなんて好きでも何でもねぇよ、でも……あんたみたいな奴もいるんだってことを知っちまった!」
 _
( #゚∀゚)「だから俺は、アンデッドはただの殺戮マシーンじゃないかもしれないって可能性を考えるようになっちまったんだよ!
     そんな俺の気持ちがあんたには分かるか!?分かんねぇだろうな!いつも人のこと浅く見て好き勝手言いやがって!」

( <::V::>)『………』


 ジョルジュの言葉が何故か、嫌というほど刺さる。
 いつもなら適当に躱す言葉を返せるが、この時ばかりは返す言葉が見つからなかった。

92526話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:30:18 ID:dVuufZLM0

 _
( #゚∀゚)「そんなわけでな、義永ミセリも本当は好きでこんなことやってるんじゃないって思っちまうんだよ。
     だから介抱した、これで殺されても自業自得だ。俺は誰も攻めやしねぇよ!文句あんのか!?」

( <::V::>)『……その覚悟があるなら好きにしろ。私はその女を封印しに来ただけだ』

ミセ*゚ -゚)リ「………」


 ミセリを指差すカリス。
 そのミセリは、隣でジョルジュの言葉を聞きながら…自然と、ジョルジュのことを見てしまっていた。

 感じたことのない感情が芽生える。
 
 これまで、戦いの中でしか生きてこなかったアンデッド達。ミセリも然りだ。
 己に課せられた"運命"、宿命であり、勝つことが全てだった世界。
 どんな卑怯な手でも使って、生き残ってやる。どんな手段を用いてでも、勝ち抜いてやる。
 そんな世界の中では、決して芽生えることのない感情。


ミセ* - )リ(ああ……これが……)


 ミセリの中で、何かが動いていた――。


ミセ*゚ -゚)リ「ジョルジュさん」
 _
( ゚∀゚)「……え?」

ミセ*゚ -゚)リ






ミセ*゚ー゚)リ「ありがとう」

92626話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:30:40 ID:dVuufZLM0

 
 ジョルジュの首に向けツタを伸ばし、首を絞める。
 ふっ、と口から吹いた花弁がジョルジュを包み

 _
( ゚∀゚)「へっ…!?……ミセ……リ……」
 _
(  ∀ )「さ―――」


 その意識を、遠ざけた。
 首に巻くツタを緩めると、力なく、だらんと地面に倒れるジョルジュ。


( <::V::>)

ミセ*゚ -゚)リ「……さぁカリス」


 自分を迎えに来た、目の前の死神を見つめる。
 ミセリは両手を広げ、その姿を歪なものへと変化させる。

  *∧Λ*
∠* ゚`-´)ゝ『これで終わりにしましょう…!』


 カリスは言葉を発さない。
 カリスアローにラウザーを装着し、カードを引き抜く。

 ミセリは、横目で倒れているジョルジュを見る。
 最期に、自分のことを初めて分かってくれようとした存在を目に焼き付ける為に――。

92726話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:31:09 ID:dVuufZLM0


    《-♥4 FLOAT-》 《-♥5 DRILL-》 《-♥6 TORNADO-》


  *∧Λ*
∠*#゚`-´)ゝ『……ウアアアアアアアアアアッッ!!』


         《-♥SPINING DANCE-》


 カリスの体が、宙に浮遊を始める。
 足先から発生する竜巻の威力はみるみると増幅し、やがて周囲の枯葉を巻き込みながら暴風へと変化。
 幾重にも回転する体を、カリスは足先からミセリに向かって突進。

 ダッシュでカリスに挑むミセリ。
 カリスは容赦なくその体に足を突き刺し、ミセリの体を貫通させるかのようにドリル状の攻撃を浴びせ続ける。


 やがてカリスは、ミセリの体を突き破り、そして――。















.

92826話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:31:40 ID:dVuufZLM0

 



 ―――――




.

92926話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:32:01 ID:dVuufZLM0


 命辛々逃げることに成功したブーン達は、自宅へと戻っていた。
 クックルに負わされた怪我を、ツンによって手当されている。
 頭部を狙われたブーンは頭に包帯を巻いていた。


ξ゚⊿゚)ξ「ブーンとモララーさんが二人掛かりでも勝てないアンデッドだなんて…」

( ・∀・)「アイツは今までのアンデッドとは違う。
      同じカテゴリーJの府坂やタカラとはタイプが違うにしても…元々のパワーが桁違いすぎる」

( ^ω^)「まさか、ライダースーツが破壊されるだなんて思いもしませんでしたお…」

ξ゚⊿゚)ξ「これからどうやって戦うつもりなの?」

( ・∀・)「そうだな…真っ向勝負では歯が立たないのは一目瞭然だ。
      何か、奴の弱点を得られれば――」

「そんなもんは奴にはない」

( ・∀・)「?」

ξ゚⊿゚)ξ「誰!?」


 突如、廊下の方からいないはずの誰かの声がした。
 声のする方へ視線を向ける3人。モララーとツンは、その声に警戒する。
 しかし、家主であるブーンだけはこの声に驚きはしなかった。
 
 声の主が、廊下からリビングに現れる。
 そこには、ブーンの後輩…カテゴリーKでもある、ヒッキーがいた。

93026話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:32:21 ID:dVuufZLM0


(-_-)「あの象の野郎に弱点なんかない。あの力、あの図体…そのまんまの力を持ったのが奴だ」

( ・∀・)「君は…」

( ^ω^)「ヒッキー?お前…勝手に入ってくんなお」

(-_-)「ああ、すんません。でも一大事だと思って駆けつけましたよ」

( ^ω^)「そうか…助かるお」

ξ゚⊿゚)ξ「え…ちょっと待って、どういうこと?」


 ブーンとモララーは、ヒッキーがアンデッドであることを既に認知済みである。
 此処にいる中で、唯一ツンだけがヒッキーの存在を詳しく知らない。


(-_-)「ああ、俺実は――」
    。
< \゚皿゚/>『これなんすわ』

ξ;゚⊿゚)ξ「ッッーー!?!?」


 驚き、息をのむツン。
 これ程至近距離で突然アンデッドを見たのは初めてで、思わず腰が抜けてしまった。


( ^ω^)「心配しなくていいお、ツン。コイツは僕らの味方だお」

( ・∀・)「剣藤、お前知ってたのか?彼がアンデッドだって…」

( ^ω^)「今日知ったばっかですお。モララーさん…知ってたんですかお?」

( ・∀・)「…ああ、実は…」

ξ゚⊿゚)ξ「……知らなかったの、私だけ?」

93126話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:32:42 ID:dVuufZLM0


(-_-)「とにかく、どんな力を持ってしても並大抵のものではアイツは倒せない」

( ^ω^)「かもしれない…だからお願いがあるお。お前の力を貸してくれないかお?」

( ・∀・)「そうだ、君はカテゴリーKだろう?レンゲル相手に一切臆しなかった」

(-_-)「うーん……そうじゃねぇんだよなぁ」


 二人の協力要請を、腕を組み首を傾げ拒むヒッキー。


(-_-)「並大抵の力では勝てないとは言ったけど…一つ、大事なことをしっかり持てば勝てるかもしれない」

( ^ω^)「もう、勿体ぶんなお!それってなんだお!?」

(-_-)「それは――」


 焦れる様子のブーン。
 ヒッキーが答えようとした矢先、インターホンが鳴り響く。
 

( ^ω^)「こんな時に誰だお…!」

ξ゚⊿゚)ξ「私が出るわ」


 苛立ちを見せるブーンを抑え、ツンは一人玄関へと向かう。
 玄関のドアを開けると、そこには



ξ゚⊿゚)ξ「所長…!」

93226話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:33:06 ID:dVuufZLM0


 そこに立っていたのは、ブーンの実父であり元BOARD所長・ロマネスク。
 その手には、一つ箱が。


( ФωФ)「廣瀬、ついに完成したのである」

ξ゚⊿゚)ξ「完成?とにかく、上がってください」


 ツンに招き入れられ、家の中へと入るロマネスク。
 リビングには既に役者は揃っていた。
 また、来客がまさかのロマネスクであったことを受け、ブーンは突如反抗的な態度を示し始める。


( ^ω^)「お前…!何しに来たお」

( ФωФ)「廣瀬、菱谷、ホライゾン。遂に完成したのである。
       ライダーの力を更に増強させる、新たなシステムーー」

( ФωФ)「"ラウズアブゾーバー"が…!」


 テーブルに置いた箱から取り出した装着型の機械のようなもの、
 "ラウズアブゾーバー"……そう呼ばれるものを、ロマネスクは手に取った。


ξ゚⊿゚)ξ「これって、この前言ってた上級アンデッドの力を引き出せるシステムですよね?」 

( ・∀・)「それが、遂に完成したんですか…!」

( ФωФ)「うむ。これを用いることで上級アンデッドの力を引き出し、更に強力な戦闘力を有すことが出来る」


 ロマネスクが以前、提唱していた新たなシステム。ラウズアブゾーバー。
 カテゴリーJからの上級アンデッドのカードに秘められた強大な力を、最大限に引き出すというもの。
 ブーン達が封印してきた上級アンデッド達の力を、このシステムを使えば引き出せるということだ。

93326話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:33:26 ID:dVuufZLM0


( ^ω^)「てことは…これを使えば、あのカテゴリーJも倒せるんじゃ…!」

( ФωФ)「恐らく。他のカードのようにラウズして力を得るのではなく、このラウズアブゾーバーは
       使用者自身に強力な力を付与されるように作られている。
       更なる強敵にも叶うように開発されたのが、このシステムである」

( ^ω^)「これ、早速使わせてくれお!どうしても倒したいアンデッドがいるんだお!」


 大きな可能性を秘めた物を前にして、希望を見出すブーン達。
 ロマネスクに懇願するブーンだったが…。

 ソファに腰掛け、一部始終を黙認して聞いていたヒッキーが、鼻で笑った。


(-_-)「フッ……新しいシステムねぇ、上級アンデッドの力を引き出すだって?」

(-_-)「要するに、それは誰の力なんだい??」


 ソファから立ち、ブーン達の輪に入る。
 そして、彼ら人間の顔を一人一人見渡した。


( ^ω^)「ヒッキー、どういうことだお?」

(-_-)「上級アンデッドの力を引き出して戦おうってんでしょ。だから、それって結果的に誰の力なのかって聞いてるんです」

( ^ω^)「それは……上級アンデッドの力だお」

(-_-)「でしょ?てことは、先輩達の力じゃないってことじゃないですか」


 謎にブーン達に突っかかるヒッキー。
 何を言っているんだ?と、ヒッキーを見る一同の目はそう物語っている。

93426話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:33:47 ID:dVuufZLM0


( ^ω^)「そうだお。僕達の力では及ばなかった、だからこの力を使って――」

(-_-)「――それって、ドクオとやってることはどう違うんですかね??」

( ^ω^)「……!」


 ヒッキーの核心をついたかのような言葉に、思わず言葉を詰まらせる。
 アンデッドの力を欲し、人間を捨てたかのように暴れ回っているドクオ。
 強くなりたい一心のそんなドクオを、ブーン達は心配していた。
 

ξ゚⊿゚)ξ「でも、ドクオさんとブーンは意味が違うわ!
      ブーンは、ただアンデッドを倒すという目的の為に――」

(-_-)「そうなんですか?先輩。先輩は何で仮面ライダーやってるんですか?」

( ^ω^)「それは…アンデッドを倒すため、人間を守るのが僕のライダーとしての使命だからだお!」

(-_-)「本当にそれだけですか?他に、先輩を動かすもっと大事なことは?」

( ^ω^)「ヒッキー、こんな間違い探しみたいなことしてる場合じゃないんだお!
       僕達はあのカテゴリーJを倒さないといけないんだお!」

(-_-)「先輩……俺も遊びでこんなこと言ってるわけじゃあない。腹括った上で首突っ込んでるんだよ」


 これ以上何と答えたらいいか分からない。
 ヒッキーの真剣な表情と声色に、ブーンは一瞬、言葉を失った。


(-_-)「今のところ残念っすね…先輩。見損ないましたよ。
     先輩達はアンデッドを倒すことに意識が行き過ぎて、もっと根本的なことを忘れてるんじゃないですか?」

(-_-)「とりあえず…コイツは俺がもらっとく」


 テーブルの上に置かれたラウズアブゾーバーを、ヒッキーは奪い取る。

93526話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:34:09 ID:dVuufZLM0


( ФωФ)「おい、君!何をしているのだ!?」

( ^ω^)「おっ、おいヒッキー!何してんだお、それを渡せお!」

(-_-)「こんなもの持ってても、次また倒せなくなったアンデッドが出た時におんなじこと言い出すだろ?
     新しい力を引き出してー、ってな。だから持ってたって何の為にもならないさ」

( #^ω^)「ヒッキー、お前いい加減に…!」


 苛立ちを覚え始めるブーン。
 何かと因縁づけるような口ぶりのヒッキーに対し、少々威圧的な態度になった。

 ――すると、そんな険悪な空気を切り裂くように鳴り響くアンデッドサーチャー。
 ツンが咄嗟にパソコンの前に立ち反応をキャッチ。アンデッドの正体を確認した。


ξ゚⊿゚)ξ「アンデッド出現!♣のカテゴリーJ、他の反応はない…街中で暴れているわ!」

(-_-)「ほら、暴れてますよあのアンデッドが。行かなくていいんですか?」

( ^ω^)「…言われなくても、僕はアンデッドを倒しに行くお!」

( ・∀・)「待て剣藤、俺も行く!」

( ФωФ)「ホライゾン、菱谷。気を付けるのである」

( ^ω^)「言われなくても分かってるお」

(-_-)「……じゃ、行きますか」


 ブーン達は、反応をキャッチした場所に向かい始める。
 ヒッキーの言葉に払拭しきれない何かを抱きながら、カテゴリーJの元へと急いだ。

93626話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:34:34 ID:dVuufZLM0


 同じ時、ブーンに助け出され一人家に戻っていたドクオにも、その知らせが入る。
 カテゴリーAを通して。


 『―――奴だ、奴が現れた』

('A`)「…そうか」

 『今度こそ奴を倒せ!でなければ、お前はこの地獄から抜け出せはしないぞ…!』

('A`)「うるせぇ…黙って俺に力を貸せ!」


 クックルの気配を感じる。
 彼に徹底的に打ちのめされたことを、もう覚えていないのか。
 ドクオは起き上がると、カテゴリーAが知らせてくる場所に向かうため、家を出た。





.

93726話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:35:04 ID:dVuufZLM0





 ―――――




.

93826話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:35:28 ID:dVuufZLM0


 ――ここは、したらばスタジアム。
 今日はサッカーの試合がこのスタジアムで開催され、席には両サポーター達がユニフォームを着て観戦に来ていた…はずだった。

 しかし、スタジアムの中でサッカーをしている者は誰一人としていない。
 中に響く声は、熱の籠った応援の声ではなく……阿鼻叫喚の声。


「きゃあああああっ!」

「うわあああぁぁっっ!?!?」

бし゚益゚し『オオオオオォォォッ!』


 クックルが、観客席で椅子や壁を破壊し尽している。
 巨大な怪物が暴れているのを目の当たりにし、人々はパニックになりながら逃げ惑う。


бし゚益゚し『さぁ来い、仮面ライダー共…!』

「うわああっ!!!………」


 後方に振りかぶったハンマーが、背後のコンクリートを粉々に粉砕。
 コンクリートの壁にひっそり隠れていた男の姿が露わになる。
 悲鳴を上げる男だが、次の瞬間――失禁をしながら、気を失い倒れた。

 そこに、接近する気配を感じ取り始めるクックル。
 待ち詫びた存在の到着に、胸を躍らせる。


бし゚益゚し『ふう…やっとお出ましか、待ちくたびれたぞ』

93926話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:36:06 ID:dVuufZLM0


 まず到着したのは、ブーンとモララー。
 その後すぐにドクオが合流。三人はそれぞれバイクを降り、クックルを睨んだ。


( ^ω^)「ドクオ!」

('A`)「アイツは俺の獲物だ、邪魔するな!」

( ・∀・)「ドクオお前…またカテゴリーAに操られてるのか!?」

бし゚益゚し『何をブツブツと喋ってる?とっとと俺と戦え!』


 三人はベルトを装着し、クックルに向かい合う。


    【 -♠TURN UP- 】 【 -♦TURN UP- 】 【 -♣OPEN UP- 】


 それぞれバックルを展開させゲートを射出すると、ライダーへと変身。
 まずはギャレンとレンゲルがクックルに勝負を挑む。

 
( OHO)「うおおおおおっ!」

( OMO)「今度こそ貴様を封印する!」


 ギャレンラウザーの銃撃を受けながら、接近し距離を詰めてきたレンゲルのレンゲルラウザーをも胴体で受け止める。
 だが、やはりどちらも効果が無い。

 ギャレン、レンゲルは交互に肉弾戦を挑む。
 クックルは一人、二人のライダーからの攻撃を受け切りつつも、しっかりと防御もしている。

 ここまではクックルのイメージ通りだった。
 ライダーとの戦いを元に、"仮面ライダーの倒し方"をイメージしていたクックル。
 そして次の行動に移ることも、イメージ通りだ。


бし゚益゚し『やはり、弱い…!』

94026話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:36:32 ID:dVuufZLM0


 レンゲルの攻撃を片腕で払い除け、右腕を振りかぶり鉄球でレンゲルの顔面を殴打。


( ; OHO)「ぐうっ!?」


 更にギャレンを右足で押し込むような蹴りを腹部に与え、左手に構えたハンマーを横薙ぎに振るい打ち飛ばした。


( ; OMO)「ぐはっ!!……ッ、クソ、やはりこいつ…!」


 胸を押さえながら徐々に立ち上がろうとするも、蓄積ダメージが大きくすぐに立ち上がれないギャレン。
 レンゲルもまた然りだった。
 顔面を殴打されたことで、脳震盪のような感覚が頭を襲い、しっかりと体勢を保つことができない。


( #OwO)「貴様アァァッ!!」

бし゚益゚し『何度来ても同じだ、お前達では俺には到底敵わない!』


 ブレイドがラウザー片手に突進。
 "♠6 THUNDER"と"♠8 MAGNET"のカードをラウズし力を放出。
 クックルを磁力の力で押さえつけ、雷の力を纏った剣で攻撃しようという算段だ。
 ――だが、


бし゚益゚し『ほう、俺を止めれるとでも思ったのか……フゥ"ン"ッ!!』

( ; OwO)「なっ…!?」


 クックルは、カードの力を強引に振り解き拘束を抜け出した。
 そして、向かい来るブレイドに向かって右手を翳すと、ぶら下がる鉄球から光弾を発射。


( ; OwO)「うああああッ!!」


 ブレイドに被弾した途端、多数の爆発を引き起こす。

94126話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:36:59 ID:dVuufZLM0


 シュウウ…と、音を立てながら装甲から吹き上がる煙幕。
 爆撃を受けてブレイドはその場に背中から倒れこんでしまう。


( ; OMO)「剣藤…ッ!」

( ; OwO)「こいつ、やっぱり他のカテゴリーJよりレベルが違うお…」


 ブレイドの言葉を耳にした途端、クックルの様子が変わった。
 今までは静かに闘う意志を燃やし、冷静にライダー達と戦っていたが…。
 クックルの鼻息が、どことなく荒くなった。


бし゚益゚し『お前がどれだけのアンデッドを相手にしてきたかは知らんが、他のカテゴリーJと一緒にされると困るなぁ。
      特に……昨日の狼野郎のような奴と一緒にされると……腹が立つんだよ!!』


 ハンマーを高々と振り上げ、全身の力を込めて、そのまま一直線に地に向かって振り下ろす。
 振り下ろされた地面からコンクリートで出来た辺り一面に、バキバキッ!と地割れが起きる。
 ゴゴゴゴゴ…と地鳴りのような不穏な音が響き渡ると、突然――、


( ; OwO)「おわぁあっ!!」

( ; OMO)「なっ…!!」


 地面は砕かれ、割れた部分からブレイド達は下の階へと落下する。
 叩き付けられ、更にクックルの追撃を受けスタジアム中央の広場へと放り投げ出される。


( ; OHO)「んぐっ…!このでかい会場を、崩落させただと…!?」


 ハンマーの一振りで、スタジアムの一部を崩壊して見せたクックル。
 とてつもなく強大な力を前にし、レンゲルは自然と心が恐怖に染まってしまっていた。

94226話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:37:20 ID:dVuufZLM0


 一方、この戦いを傍らで観戦している者がいる。


(-_-)


 ヒッキーだ。
 崩壊を免れた客席にて、椅子に腰掛け足を組みながらライダー達の戦いを見ている。

 その隣の席には、ロマネスク達が開発したラウズアブゾーバーが。


(-_-)「ん…?」


 戦いを見ていたはずのヒッキーだが、いち早く何かに気付いた。
 遠くからぼんやりと見える。物陰に隠れ、動けないでいる何かが。
 よく見ると……そこには、まだ10歳にも満たないであろう女の子が、恐怖で震えていたのだ。

 ヒッキーはこれに気付いたが、動こうとはしない。
 あくまで、傍観を決め込んでいる。


(-_-)「さて、どうなるかな…」



.

94326話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:37:42 ID:dVuufZLM0


( ; OwO)「くっ……こんなとこで、倒れるわけにいかないんだお…!」

бし゚益゚し『そうか。だが残念だったな、お前達は此処で終わりだ』


 拳を突き立て、立ち上がろうとするブレイド。
 クックルは見せしめにと言わんばかりに、片手でギャレンとレンゲルの首を掴み、軽々と持ち上げた。


( ; OMO)「ぐう…」

бし゚益゚し『これはお前達の力を測らせてくれた感謝の気持ちだ、受け取れ!』

( ; OHO)「ふざけやがってェ…!」


 鉄球から光弾を発生させ、吊り上げたギャレンとレンゲルに至近距離で発射。
 無数の火花が激しく散り、爆発が二人を巻き込んだ。
 

( ; OwO)「モララーさん!ドクオ!!」


 立ち込める煙幕の中から、二人の体が投げ出される。
 地面に落下した後、二人の変身はダメージを受けすぎたが故に強制的に変身を解除される。


( ; ・∀・)「かはっ…!」

(;'A`)「ううぅ…」

( ; OwO)「こんのォ……!!」


 痛む体を叩き起こし、二人を庇うようにクックルに立ち向かう。
 しかし、クックルのハンマーによる殴打によりいとも容易く吹き飛ばされてしまう。

94426話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:38:18 ID:dVuufZLM0


( ; OwO)「うぐ…っ!」

「きゃあああっ!!」


 壁にぶつかり崩れ落ちるブレイド。
 その壁の向こう側で、何か悲鳴のような声が聞こえた。


( ; OwO)「え…?」

「ぐすっ…!うううぅぅ…!」


 女の子の泣き声。
 ブレイドは壁に手を掛けながらゆっくり起き上がり、向こう側を覗いた。
 そこには、うずくまって震えている女の子が一人で隠れていた。


( ; OwO)「まだ、逃げきれてない人がいたのかお…」

бし゚益゚し『何だ、別の人間の声がするな。まだいたのか』


 クックルが、背を向けるブレイドの方へとゆっくり歩み寄る。
 すると、女の子がいると分かりながら、鉄球から光弾を発射。


( ; OwO)「ッ!?危ない!!」


 それに気付いたブレイドは、咄嗟に庇うように立ち上がり背中で光弾を受け止めた。


( ; OwO)「ッッぐぅっ…!!」

94526話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:39:20 ID:dVuufZLM0


 背中を襲う痛みに、歯が欠けそうな程に食いしばって踏ん張る。
 既に体はボロボロ、両脚もおぼつくが、ブレイドは倒れない。
 むしろ…涙を流す女の子に向けて、サムズアップしてみせた。


( ; OwO)「ッ……大丈夫、安心するんだお…!お兄ちゃんが守るから!
     今のうちにほら、お母さんのとこに逃げるんだお…!行けるね?」

「……うん」

( ; OwO)「よしよし、偉いお。さぁ、走って行くんだお!」


 女の子は、ブレイドの顔を見つめながら問いかけに頷いた。
 彼の言葉に安心したのか、女の子は立ち上がってすぐに出口の方へと駆けていく。
 その姿を見届けたブレイドは、ふと……気が付いたことがあった。
 いや、正確には…忘れていたこと。かもしれない。


( ; OwO)「そうか……」


 ヒッキーに言われたことが、頭を過る。

 ――先輩は何で仮面ライダーやってるんですか?
 ――先輩を動かすもっと大事なことは?
 ――先輩達はアンデッドを倒すことに意識が行き過ぎて、もっと根本的なことを忘れてるんじゃないですか?


( OwO)「……そうだ、分かったおヒッキー」

(-_-)「……」


 遠くから見守っていたヒッキーは、ブレイドの変化に気付き、僅かに身を乗り出す。

94626話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:40:15 ID:dVuufZLM0


( OwO)「僕の体を動かすのは、義務とか使命なんかじゃない…。
     そこにいる人を守りたいという思い、助けたいという思いが、僕の体を動かしているんだ…!」

( OwO)「アンデッドを倒す事だけじゃない、人を守るために戦う……僕は人間を愛しているから戦っているんだお!」

(-_-)「そうだよ…それが聞きたかったんだよ、先輩…!」


 柵に足を掛け、高々と跳躍するヒッキー。
 蜘蛛の糸をブレイドの元へ伸ばし、糸を伝い瞬時に移動。


бし゚益゚し『ん?お前は…』

(-_-)「やっと気付いてくれましたね、先輩」

( OwO)「ヒッキー、お前の言う通り…僕はアンデッドと戦うことばかりに意識が集中してたお。
     大事なことを忘れかけてた」

(-_-)「そう、その想いが力になる。アンデッドの力だけでは本当の強さは手に入らない。
    それは、先輩が今までの戦いを通してみんなに教えてくれたことじゃないですか」

(-_-)「俺も、先輩からの教えを先輩に叩き入れ直しただけですよ」

( OwO)「ヒッキー……」

бし゚益゚し『何をゴチャゴチャと喋っているんだ…カテゴリーK、お前も人間とつるむようになったのか?』

(-_-)「黙れ、デカブツ。残念だがお前の計画はここで終わりだ」

бし゚益゚し『ほう、それはどういうことかな?』

94726話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:40:38 ID:dVuufZLM0


 ヒッキーが、ラウズアブゾーバーをブレイドに差し出す。
 ブレイドがそれを受け取ると、ヒッキーは後退りしてその場を離れる。
 

( OwO)「これが、ラウズアブゾーバー……よし!」

( ФωФ)[ 聞こえるか、ホライゾン ]

( OwO)「ああ、聞こえるお」

( ФωФ) [ そいつを左腕に装着するのである。そしてカテゴリーQのカードを装填させ、カテゴリーJをラウズするのである! ]


 ロマネスクの指示通り、ブレイドはラウズアブゾーバーを左腕に装着。
 ブレイラウザーを引き抜き、オープントレイを展開させ、♠Jと♠Qのカードを選択。
 そして、ラウズアブゾーバーの中央部に、♠Qのカードを装填。


    〘-♠ ABSORB QUEEN-〙

 
 神々しい待機音が鳴り響く。
 そして、もう一枚の♠Jのカードを、ラウズアブゾーバーにラウズした。


    〖 -♠ FUSION JACK- 〗



( OwO)「!?」

94826話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:41:04 ID:dVuufZLM0

 ♪rebirth - https://www.youtube.com/watch?v=SgXC5Z4R3-c


 突如、♠Qのカードが黄金の光を放ち始め、辺りから羽根がひらひらと舞い落ちる。
 翼を広げた黄金の鷲が現れ、ブレイドの銀色の装甲を覆うように吸収。
 鷲を纏ったブレイド。黄金の光が消えた後に現した姿は――、


( ; ・∀・)「はっ……!」

(;'A`)「あ、あれは……?」


  ∧
( OwO)


 仮面のスペードシールド、胴体の装甲のオリハルコンブレストが、黄金に輝いている。
 胸部のスペードマークの中には、イーグル――鷲が紋章として浮かび上がり、背中には銀と紅の翼がマント状に装着されている。
 更に、ブレイラウザーの剣先には新たな刃が形成され、刃の長さが伸長。

 光り輝くその姿は、上級アンデッドの力を引き出した新たな力――ジャックフォーム。


бし゚益゚し『何だ、その力は…!?』


 無敵と言わんばかりにライダーを圧倒してきたクックル。
 ジャックフォームと化したブレイド、その姿から感じる力の脈動に…どこか困惑を隠せない様子。


( ; ・∀・)「あれが、新しい力なのか…!?」

94926話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:41:27 ID:dVuufZLM0

  ∧
( OwO)「何だこの力…感じるお、奥底から湧き上がる力を…」


 先程までボロボロになっていたのに、今はその苦痛も薄い。
 呼吸を整え、ブレイラウザーを構える。
 最大の敵であるクックルを前に、冷静さを取り戻した。


бし;゚益゚し『何なんだ、こいつは…!!』
  ∧
( OwO)「覚悟するお、カテゴリーJ…!」


 クックルに向かって駆け出すブレイド。
 翼を靡かせながら、瞬く間に距離を詰める。

  ∧
( OwO)「貴様を、倒す!!」


 そして、ブレイラウザーを――勇気の剣を、振り下ろした。

 新たなる力を得たブレイドの反撃が、今、始まる。

95026話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:41:48 ID:dVuufZLM0




 
     【 第26話 〜新たなる力〜 】 終




.

951 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:49:52 ID:dVuufZLM0
しおり

>>9 第15話
>>84 第16話
>>152 第17話
>>234 第18話
>>308 第19話
>>372 第20話
>>454 第21話
>>530 第22話
>>605 第23話
>>682 第24話
>>772 第25話
>>875 第26話


( ^ω^)< またそのうち

( ^ω^)< 中途半端だから多分次スレかも

952名無しさん:2022/01/08(土) 17:10:27 ID:GlcYoc5A0
乙ッッッ

953名無しさん:2022/01/08(土) 22:57:38 ID:7qO65VCA0
乙!
お帰り!!!


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板