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( ^ω^)運命と戦う仮面ライダーのようです part2

453 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:01:24 ID:Vg4XVt6s0
吾輩はあしたも仕事なんで今日投稿します
今回の投稿が年内最後になります

454 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:01:48 ID:Vg4XVt6s0





     【 第21話 〜光なき闇〜 】




.

45521話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:02:39 ID:Vg4XVt6s0


(-_-)「お疲れ〜っす」

(゜д゜@ 「あらやだヒッキー君、お疲れ様!」


 休憩室に入るなり、おばさんのがっついた挨拶がヒッキーを出迎えた。


 世間は正月に向けての準備に追われて大忙しだ。
 
 スーパーVIPでもそう。
 年末に差し掛かれば差し掛かる程、忙しさには拍車が掛かってくる。
 今年、最後の山場だ。

 例年であればブーンが筆頭に動いてくれていた。
 けど今年は、その肝心な頼りになる張本人はいない。もう年内に復帰する見込みもない。
 
 この事態に率先して動いて出たのは、思いがけない人物のヒッキーだった。


 普段の彼と言えば、どこかチャラいイメージで無気力さを強く感じると言った印象が濃く、パートからの評判は良くなかった。 
 だからこそだろうか、自ら進んで働く姿を見せ始めた彼に、パートや社員からの目は大分変わっていた。

 小言を言う癖は相変わらずだが。


(-_-)「あ〜つっかれた……早く年明けてくんねぇかなぁ、もう無理だわ……」

*(‘‘)*「なーにぶつぶつ言ってんの」


 弱音を言いながらロッカーの前まで移動すると、財布とスマホを持ったヘリカルが居た。
 同じタイミングで休憩に入ったようだ。

45621話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:03:21 ID:Vg4XVt6s0


(-_-)「だってクソ疲れますもん……マジで俺だけじゃどうにもなんねぇ」

*(‘‘)*「まぁいつもだったらブーンが動いてくれてたから…でもあんたも今年入ったばかりの割には良くやってるわ」

(-_-)「あ、大丈夫っす。自分が一番それ分かってるんで」

*(‘‘)*「はあ?自分で言う??」


 自動販売機に並び、互いにホットドリンクを購入。
 ガタンッ!と受取口に落ちてきた、熱を帯びたボトルを取るとテーブルに向かい合って座った。


*(‘‘)*「にしても、もう正月かぁ……あんたいつも正月は何してんの?」

(-_-)「………いや、特に何も」

*(‘‘)*「何も??実家に帰るとか大晦日は彼女と過ごすとかさぁ、なかったの??」

(-_-)「え、ああ……まぁ……もう俺の話はいいんで。ヘリカルさんは?」

*(*‘‘)*「え……私?聞いちゃう?」

(-_-)「聞いちゃうってか言いたそうっすけどね」

*(*‘‘)*「しょーがないなぁー答えてあげる!今年の大晦日はぁ、私デートなんだぁ。
     しかもしかも!向こうから付き合って初めて誘ってくれたんだ〜!」

(-_-)「……あの、ヘリカルさんの彼氏って確かドクオって人ですよね」

*(‘‘)*「そうだよ、ブーンの友達でもあるけどね」

(-_-)「………」

*(‘‘)*「どうして?ドクオがどうかしたの??」

(-_-)「いや、別に何も……ちょっと買い物して来ますわ」

*(‘‘)*「はいよ」


 言って、ヒッキーは休憩室を出た。

45721話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:03:52 ID:Vg4XVt6s0

 
 本当は買い物などするつもりはない。
 ただ、何となく、あの時のように駐車場に向かいたくなった。

 ドクオ――数日前の夜、この店の駐車場で話した人物で間違いはない。
 あの時の様子が、鮮明に思い出される。

 カテゴリーAに翻弄され、苦悩と恐怖に苛まれ混乱するドクオの姿が。


(-_-)「………」


 風が僅かに吹いた。
 ヒッキーの前髪を撫で、冷たい風が肌を刺す。

 目を閉じ、風の吹く音に耳を澄ませる。


(-_-)「―――あいつ、とうとう手にしたか……さてどうなる事やら」


 遠くで起きた出来事が、風に乗り伝わってくる。
 ドクオが、とうとうレンゲルの力を手にした事が
 

「――何をしてるんだ?」

「君、こんなとこで毎日過ごしてるんだねぇ」

(-_-)「はぁ……何だよ」


 風の音を遮って、二人の男の声が聞こえた。
 その声や気配から、自分に話し掛けている事が分かると、ヒッキーは大きく溜息を着いた。




( ´_ゝ`)「俺達と話すのが嫌そうだな?」

( ´∀`)「連れないなぁ、せっかく来たっていうのに」

45821話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:04:19 ID:Vg4XVt6s0


(-_-)「別に来いって言った覚えはないけどな……」

( ´_ゝ`)「だが、俺達はいつか必ず相見えなければならない運命だ」

(-_-)「そうかな?いなくなっちまえばまず会う事はないだろ」

( ´∀`)「それって、要するにこの中の誰かが……"封印される"って事かな?誰が最初なんだろ?面白そう!」

(-_-)「悪いけど、俺には大分悪趣味に見えるよ」


 二人に背を向け、スーパーに戻ろうとする。
 その足は、青年の言葉によって止められた。
 

( ´_ゝ`)「お前もいつまでそうしていられるかな?」

(-_-)「……あ?」

( ´_ゝ`)「知ってるんだろう?クジャクの馬鹿野郎が残した新しいライダーの誕生を」

(-_-)「だから何だよ」

( ´_ゝ`)「狙われるぞ?カテゴリーAに随分懐かれてるみたいだからなぁ、お前」

( ´∀`)「あー、そうだった!君がちゃんと相手にしてあげないから、構って欲しくてしょうがないんだよきっと」

(-_-)「知るかよ、俺は興味ないっつってんだ。誰が一番強いとか万能の力とか……そんなもの興味ない」

( ´∀`)「君って本当に珍しいよね、僕達と"同じ"なのにさ」

(-_-)「同じでも、生まれ持った性分はどうしようもない……もういいか?出来ればお前等の顔も見たくないんでね。
     俺は戦わない、このままひっそりと過ごさせてくれよ……頼むから」


 今度こそ、スーパーに向かい歩き出した。着けられないように、足早に。
 

( ´_ゝ`)「ふっ、相変わらず戦いを忌み嫌っているな……信念を持たない出来損ないが」


 ヒッキーの背が見えなくなる前に、二人もこの場を後にした。

 運命の冷酷な刃は――すぐそこに迫っているのかもしれない。

45921話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:04:42 ID:Vg4XVt6s0





 ―――――




.

46021話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:05:06 ID:Vg4XVt6s0


 時を同じくして、ブーンの家では、モララーを含めた三人がPCの前に集まっていた。

 本来なら今、この家には家主であるブーンを含め四人いるのだが。
 ビデオ通話を通して、画面の向こうに映る人物と顔を合わせたくない為に、ブーン一人だけはソファ席に座って声だけを聞いていた。


|( ФωФ)|[久利生が……そうか……]

( ・∀・)「すみません、所長……俺のせいで……」

|( ФωФ)|[お前が謝る事じゃない、そればかりはどうにもならなかった……誰も悪くない]

|( ФωФ)|[最期に言いたい事も言えて、支配されかけた心をお前に救ってもらえたんだ。久利生も本望だったであろう……]

( ・∀・)「そう、だといいですが……」

|( ФωФ)|[それと…レンゲルの事に関してだが]

ξ゚⊿゚)ξ「その事なんですけど、今ドクオさんに家まで来てもらうように頼みました。もうすぐ来ると思います」

|( ФωФ)|[うむ、何とか説得して返却してもらうのである。……ホライゾン、頼むぞ」

( ^ω^)「言われなくても分かってるお」


 画面越しのはずなのに、すぐそこにいる気がして無性に腹が立つ。気まずい。
 聞こえるロマネスクの声に無愛想に返事をするブーンに、ツンやジョルジュは呆れ顔だ。


|( ФωФ)|[……君達にいくつか伝えたい事がある]

( ・∀・)「はい」

|( ФωФ)|[まず、君達にアンデッドサーチャーの小型端末を送った。サイズは、スマートフォンと同じくらいの大きさである。
           一個しかないが……無いよりはマシだろう。菱谷、君が使ってくれ。
           アンデッドとの戦いは、きっとこれからも激しさを増す。廣瀬のアンデッドサーチャーだけでは尻尾を掴めぬだろう」

( ・∀・)「分かりました」

|( ФωФ)|「それと、アンデッドサーチャーの改良版を廣瀬のPCに送る。
           今まではアンデッドの反応のみをキャッチしていたが、アンデッドのスートやカテゴリーをも特定出来るように改良した]

ξ゚⊿゚)ξ「本当ですか!?だとしたら、出現したアンデッドが何かすぐに判別出来る!助かります、所長!」

46121話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:06:05 ID:Vg4XVt6s0


|( ФωФ)|[最後にもうひとつ。これはまだ完成していないが……ライダーを強化させる新たなシステムを開発する」
 _
( ゚∀゚)「ライダーの強化??」

|( ФωФ)|[うむ、菱谷が封印した府坂のカードを調べたが……。
           上級アンデッドのカードは、下級アンデッドのカードように戦闘力を付与する能力を備えていない。
           ラウザーにラウズしても、ただラウザーのポイントをチャージするだけだ]

|( ФωФ)|[我々は、上級アンデッドのカードには更なる可能性を秘めていると見ている。
           その可能性を極限まで引き出し、ライダーのパワーアップに繋ぐ事が出来る新たなシステム――"ラウズアブゾーバー"を開発するのである]

( ・∀・)「ラウズアブゾーバー……」

ξ゚⊿゚)ξ「それを使えば、上級アンデッドの秘めた力を使う事が出来る…?」

|( ФωФ)|[その通りである]

|( ФωФ)|[アンデッドはまだまだ数多く潜んでいる。彼等の力はとても強大、苦戦を強いられる時があるかもしれない。
           その時、ラウズアブゾーバーで上級アンデッドの力を引き出し、更に強い力でアンデッドとの戦いに臨める]
 _
( ゚∀゚)「そんな事、可能なんですか?」

|( ФωФ)|[可能にするのである。一日でも早くアンデッドを全て封印し、人々を魔の手から守る。
           その為には、まず実現に向け動かなくてはならない。
           君達が命を懸けて戦っているように、我々も、我々が出来る事で君達と共に戦おう!]

( ・∀・)「……はい!」
 _
( ゚∀゚)「そうだな!俺達、力を合わせてアンデッドなんかさっさと倒しちまおうぜ!」

ξっー゚)ξ「……ぐすっ、……えへ」
 _
( ゚∀゚)「な、なんだよ…泣いてんのか?」

ξっー゚)ξ「何か……BOARDが戻ったみたいで、ちょっと嬉しくて……」

 
 意気込む男達の傍ら、唯一の女性であるツンがすすり泣く。
 モララーも加わり、ロマネスクや生き残りであるBOARDの開発部の人達との共同戦線。
 
 この戦いに直面するのが自分達だけでないという安心感。
 ようやく生まれた結束に、熱く心を打たれてしまった。

46221話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:07:26 ID:Vg4XVt6s0


( ・∀・)「BOARDはもうないが……俺達には、新しい仲間もいる」

ξ゚⊿゚)ξ「……うん」

( ^ω^)「ん?」
 _
( ゚∀゚)「そうだな」

( *^ω^)「……おっおっ、なんか照れちゃうお」


 一斉に、ブーンへと視線が向けられた。
 意味を知ってか、照れつつも素直に嬉しそうに笑ってみせた。


|( ФωФ)|[皆、どうか吾輩の……いや、ホライゾンをよろしく頼むである]

ξ゚⊿゚)ξ「よろしくされてるのは私達の方なんで、全然大丈夫ですよ!」

|( ФωФ)|[……ホライゾン]

( ^ω^)「なんだお」

|( ФωФ)|[本意ではないが、お前にブレイドを任せる。頼むぞ]

( ^ω^)「……はいお」

|( ФωФ)|[だが無理はするなよ。決して命を投げ捨てるような事だけはするな]

( ^ω^)「自分の命くらい自分で管理してるお」

|( ФωФ)|[ふむ……では、吾輩はしばらく開発に専念する。また何かあれば連絡してくれたまえ]


 ビデオ通話は、ロマネスクの方から切られた。
 画面からロマネスクの顔が消えたと同時に、偶然にも家のインターホンが鳴らされた。

 誰の来訪かはあらかた予想がつく。呼び出したドクオだろう。


( ^ω^)「僕が出てくるお」

46321話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:08:00 ID:Vg4XVt6s0


 言って向かったブーンが、玄関の扉を開ける。
 開いて現れたのは、いつもと変わらぬ様子のおちゃらけたドクオだ。


('∀`)「あっ、こんにちはNHKです〜集金に来たんですが〜」

( ^ω^)「テレビないのでお帰りください」

('A`)「本当ですか?ちょっと確認させてください」

( ^ω^)「契約してませんので」

(#'A`)「携帯にワンセグないか確認させろ!!契約結ばないと裁判起こすぞ!!」

( ^ω^)「警察呼びますよ??」

('∀`)「すみませんまた来ます」

( ^ω^)「入れお」

('A`)「うっす」

46421話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:08:26 ID:Vg4XVt6s0


('A`)ノ「やぁみなさん!ご機嫌いかがかな?」

ξ゚⊿゚)ξ「ドクオさん、こんにちは!」

('∀`)「ツンちゃん今日のお顔可愛いねぇ〜、その唇の形最高!あとその今日の顎のラインも!」

ξ;゚⊿゚)ξ「私レザーフェイスとかじゃないんだけど……」

( ・∀・)「……彼って普段あんな感じなの?」 ヒソヒソ
 _
( ゚∀゚)「そうっすね、今日は何か無駄に元気ですよ」 ヒソヒソ

( ・∀・)「へぇ……意外だな」


 家の中に招かれるなり、全員に向け一方的な挨拶を送る。
 相変わらずと言えば相変わらずの軽いノリと態度は、ある意味安心出来る事ではあった。
 
 レンゲルのベルトを持っていながら、自分らしく居るのだから。

 だが、ドクオの性格を知りつつもその事実を把握しているブーンからすれば、不安でいっぱいだった。


('A`)「んで、何か話があるとかないとかあるとか?」
 っロ

( ^ω^)「ああ……」


 ソファに座り、目の前に出されたコップを持ちまずはお茶を一口。
 

( ^ω^)「単刀直入に聞くお」

( ^ω^)「……ベルト、お前が持ってるんだろ?」

46521話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:09:18 ID:Vg4XVt6s0


('A`)「………」


 一瞬の間が空いた。
 ブーンの質問に、それまで調子づいたドクオの顔は固まったように素の表情を見せる。


('∀`)「……ベルト??もしかして、レンゲルのベルト?」


 ゆっくりとテーブルにコップを戻すと、早速とぼけてみせた。
 

( ^ω^)「とぼけても無駄だお。もうみんな知ってるんだ……お前が持ってるってことは」

('A`)「………」

( ^ω^)「……ついでに言うと、そのすぐ後にギコさんは……」

(;'A`)「え……嘘だろ!?!?」

( ^ω^)「………」

(;'A`)「アンデッドに、殺されたっていうのか…!?」

( ^ω^)「……なんで殺されたって分かるんだお?」

( ^ω^)「そもそも、僕が言った"すぐ後"って、どの時の事を思って反応したんだお?」

(;'A`)「あ……」


 まんまと誘導に掛かってしまった。
 確かに、ブーンは具体的にどの時かの説明をしていない。
 本当に知らなければ、アンデッドに殺されたという想像にも至らないはずだ。


( ^ω^)「当ててやろうか?ギコさんが変身解除した後、その場に現れたお前がレンゲルのベルトを取って去った後の事…そうだろ?」

(;'A`)「ッ………」

( ^ω^)「……お前は嘘が下手なんだから、誤魔化そうとするなお」


 ただただ、焦りの表情に変わっていく。
 視線は無駄に泳ぎ、動揺しているのが丸分かりだ。

46621話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:09:58 ID:Vg4XVt6s0


( ^ω^)「何で取ったんだお?お前散々カテゴリーAに操られて酷い目見たこと、忘れたわけじゃないおな?
       それに、ライダーになりたくないって頑なに拒んでたお前が、何でレンゲルのベルトを持ち出すんだ?」

('A`)「……それは……」
 _
( ゚∀゚)「それもそうだけど、お前それ持ってて平気なのかよ。今日の様子見る限りじゃ操られてるようには見えないし」

('A`)「………」


 もう誤魔化せない。そう悟ったのか、否定する事はしない。
 だが、その質問に対しては中々答えようとはしなかった。


( ^ω^)「答えたくないって顔してるけど、そういう訳にも行かないお。事情が事情なんだお」

('A`)「分かってる、分かってるよ……自分でも矛盾してんのは分かってんだ」

( ^ω^)「だったら何で……」

('A`)「変わりたかったんだ!」

ξ゚⊿゚)ξ「変わりたかった…?」

('A`)「ああ……」


 自分のバッグの中を、ごそごそと漁り始めた。
 そして――中から取り出されたレンゲルバックル。

 確信的かつ言い逃れようのない証拠が出てきた。


( ・∀・)「やっぱり君が……」

( ^ω^)「変わりたかったって、どういう事だお?」

('A`)「……お前なら分かるだろ、俺がどういう人間か。俺が、自分に自信無くて何をやるにも一歩出せないような奴だって事を」

('A`)「俺が、昔いじめられてたってことも……」

( ^ω^)「知ってるけど…それがどう関係あるってんだお」

46721話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:10:42 ID:Vg4XVt6s0


( A )「俺は……その記憶が今でも消えないんだよ。忌まわしくて、消したくて、思い出にすらしたくない過去……。
    そいつに今でも引っ張られ続けて、俺は自分がどうしようもない奴だって思い続けてる!」

('A`)「だから、俺みたいな何も出来ない人間がライダーなんかやったって誰も助けられないって……そう思った。けど……」

('A`)「何で俺のもとにこのベルトがやってきたかを考えた……カテゴリーAは、俺を選んだんじゃないかって。
    頑なに拒んでたから、俺はコイツに操られた。でも…コイツを受け入れた途端に、俺は操られるような事もなくなった!」

('A`)「俺は思ったんだ…今はまだ慣れてないけど、いつかは俺もこの力を使いこなせるようになるって!
    俺は、コイツのおかげで何も出来ない自分を変えれるかもしれないって――」

( #^ω^)「何言ってんだお前!?僕達に襲い掛かったのを忘れたのか!?」


 ドクオの自分勝手な理由に、思わず声を荒げてしまった。
 気持ちを汲みつつも、元々素人でありながらライダーの使命を胸に戦ってきたブーンからすれば、憤ってもおかしくはない。


( #^ω^)「カテゴリーAがお前を選んだのは、そんな事の為じゃない!ただ自分の思い通りに動く身体が欲しいだけなんだお!!」

(;'A`)「ッ……」

( ^ω^)「お前とは長い付き合いだから言うお。
      お前の苦悩は分かってるし、変えたいっていう気持ちも分かる。
      でも…仮面ライダーは自分の為にあるものじゃない、アンデッドから人を守る為にあるものなんだお!」

( ^ω^)「それを、自分を変えたいっていう理由だけで…しかもそんな危険なベルトを使わせるわけにはいかない!
      もしまた僕達を襲って、まだ慣れてないからしょうがないなんて言い訳を僕達の前で出来るのか??
      僕だけならまだいい。でも、モララーさんやクーさん、ツンやジョルジュにまで手を出したらどうするんだお!?」

(;'A`)「……そうかもしれない」

( ^ω^)「分かってるんなら返せお。お前の為でもあるんだから……お前だけでも元の生活に戻れお。
      ライダーになるっていうのは、今まで歩んできた自分を全部捨てる事にもなるんだから」


 ドクオに向け、片手を差し出した。
 段々、力みきった表情から力が抜けているのが分かる。
 
 右手に持ったレンゲルバックルを、差し出されたブーンの手に向けゆっくりと伸ばす。

46821話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:11:46 ID:Vg4XVt6s0


 ブーンの掌にバックルが届くまで、あと少し。
 だが……完全に預けるまでには、まだ至らない。

 そして――、


( A )「………………悪い、やっぱり出来ない!!」


 伸ばした手を引き戻し、隣に置いたバッグを無造作に掴む。
 ソファより立ち上がると、逃げるようにして家を出て行ってしまった。

 _
( ゚∀゚)「あっ、おい!」

( ^ω^)「ドクオ!!!」


 逃げる背を追おうとするブーンを、モララーが引き留めた。


( ・∀・)「待て!俺が行って、彼を説得してみるよ」

( ^ω^)「でも…!」

( ・∀・)「頼む。少し俺に任せてくれ」


 引き留めたブーンを追い越し、ドクオに続いてモララーが家を出た。


ξ゚⊿゚)ξ「ドクオさん、大丈夫かしら…」
 _
( ゚∀゚)「あいつ、絶対止めないとまずいな」
 _
( #゚∀゚)「つーかムカつくぜ……そんなんでライダーになろうとするなんてな……」

( ^ω^)「……何でだお、ドクオ!!」

 
 説得出来なかった悔しさ、理解してもらえなかった事への腹正しさが残る。
 ライダーとしての信念に反し、ましてや自分を変えようとする事を理由に、ライダーになろうとするドクオが許せなかった。

46921話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:12:09 ID:Vg4XVt6s0


 ――――――
 ――――
 ――


('A`)「はぁ………」

 ブーンの家から飛び出し、近くの河川敷まで逃げてきた。
 バイクから降り、河川敷の草原の上に腰を落とす。

 出来れば、バレずに過ごしたかった。
 いずれはバレてしまう事だろうが、せめてその時までに自分がライダーとして戦えるようにはなっていたかった。
 

('A`)「アイツと会いにくくなっちゃうな……しょうがない」

('A`)「俺がしっかりコイツになって、認めてもらうしか」


 バッグの中から出したレンゲルバックルを、悠々と流れる川を背に翳す。
 
 ドクオは考えた。

 戦うには一体何をしたらいいのか?
 正しいパンチやキックの型も知らないし、あんな激しい動きをする自信はない。
 がむしゃらに打てば何とかなるものなのか?

 
('A`)「……アイツ、よくライダーやってるな。スゲェわ」


 考えれば考える程、マイナス思考になっていく。
 その点、全くの初心者であるブーンの戦い振りには感心せざるを得ない。

 ……やっぱり、無理なんじゃないか?


('A`)「ッいやいやいや!違う、それじゃコイツを受け入れた意味がない!俺は戦うんだ…コイツの力で変わる為に……」 

( ・∀・)「おい」

('A`)「?」

47021話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:12:58 ID:Vg4XVt6s0


( ・∀・)「探したよ」

(;'A`)「やべッ……!!」


 声がしたと思えば、隣にはいつの間にかモララーが立っていた。
 よく見ると、レッドランバスが留まっている。
 考え事に夢中になっていて、バイクの音にすら意識が向かなかった。

 モララーを視認するなり、ドクオは慌てて逃げ出そうとする。
 が、その肩を掴まれてしまった。


( ・∀・)「待ってくれ!どうして逃げるんだ?」

(;'A`)「だ、だって……」

( ・∀・)「話を聞いてくれ、君から無理矢理奪おうとは思ってない。信じてくれ」

('A`)「………はい」


 渋々ではあるが、説得に応じ再び腰を下ろした。
 

( ・∀・)「君、さっきは自分を変える為にって言ってたね」

( ・∀・)「聞きたいんだけど……自分を変えて、どうしたい?
      その危険な力は、君が変わることにどう影響を与えてくれると思ってる?」

('A`)「……それは……」

( ・∀・)「君の気持ちは、少しは理解出来るよ。俺も似たような事があってね」

47121話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:13:21 ID:Vg4XVt6s0


( ・∀・)「俺は、最近まで剣藤と対立してた。ツンやジョルジュ達ともね」

( ・∀・)「ライダーシステムってさ、人の精神や心の弱さを反映するんだ。
      俺は最初はライダーになりたくなくて、ライダーとしての責任感の重圧に圧されて、ひどかったよ」

( ・∀・)「そんな自分を、力を得て戦うことで誤魔化そうとしてた。暴力的な力で自分を変えようとしたんだ」

( ・∀・)「でも……それが間違ってたことに気付いたのは、とても遅かった。
      その間に俺は………大切な人を失ってしまった」

('A`)「大切な人……」

( ・∀・)「力を望むことは簡単だ、手に入れた力をどう使うかはその人次第になる。
      だけど、踏み間違えれば取り返しのつかないことになる。今はまだよくても、いずれは必ずその時が来る」

( ・∀・)「……俺と同じ道を、君に歩ませたくないんだ」

('A`)「………」

( ・∀・)「もしまだ心の中に迷いがあるなら…返して欲しい。
      そのベルトを介すカテゴリーAは、人の闇に浸け込む邪悪な力を持つ。君自身を乗っ取ってしまうかもしれない」

('A`)「………」

( ・∀・)「頼む、返してくれ」


 言って、ドクオに向け伸ばす右手。

 自らの経験から、ドクオに対しどこか同じ境遇を感じた。
 だからこそ、進もうとしている道がとても危険な事を理解出来る。

 ブーンとは違い、内側から解すような形での説得を試みたモララー。


('A`)「……俺は……」



「やぁ、仮面ライダー諸君」

47221話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:14:07 ID:Vg4XVt6s0


 背後からの声に振り返る二人。

 そこに立っていたのは、一人の青年。


( ´_ゝ`)「こんなところで日向ぼっこかい?」

('A`)「……あの」

( ´_ゝ`)「そうそう、君達にお祝いの言葉があるんだ。聞いてくれ」

( ´_ゝ`)「――レンゲル誕生、おめでとう。心からおめでたく思うよ……憎たらしい程にな」

( ・∀・)「……お前、アンデッドか!?」


 男が放つ異様な雰囲気、確信を突くような言葉に気付いた。
 咄嗟に立ち上がり、ドクオの前に出るモララー。

 男はクスクスと笑い出し、無言で頷く。


( ・∀・)「ドクオ君……離れろ」

( ´_ゝ`)「そうだな……別に君達を倒そうなどとは思ってないから、まずは安心してくれ」

( ・∀・)「何を馬鹿なことを――」


 男に向かい合い、ギャレンバックルを取り出そうとした、その時。
 背後に匿っていたドクオが、モララーを退かしアンデッドの前に立ちはだかった。

 その手には――レンゲルバックルが握られている。
 

( ・∀・)「ッおい、やめろ!君は変身するな!」

('A`)「俺だって……俺だって戦う為にコイツを受け入れたんだ!!」

47321話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:14:42 ID:Vg4XVt6s0


( ´_ゝ`)「ほう、早速レンゲルが現れてくれるのか?さて、新生レンゲルはどんな力なのかな」

('A`)「ッ……力を貸せよ、カテゴリーA!!」


 レンゲルバックルより引き出したトレイに、カテゴリーAを装填。
 トレイを叩きバックルに押し戻し、腰にバックルを装着。

 ドクオの中に巣食う恐怖心。
 まだ、自分があの化け物と戦うことに恐れを抱いている。
 鳴り響く待機音が弱い心を刺激し、迷いを促した。


(;'A`)「……ッ……」

( ´_ゝ`)「どうしたんだ?怖くて戦うことが出来ないか?」

('A`)「ッ……う、うるせぇ!俺はやれる…俺にはコイツがいる!!」

('A`/)「変身!!」


    【 -♣OPEN UP- 】


 変身の構えを取った両手を展開させ、バックルのシャッターを叩き開く。
 現れた♣のマーク。紫色に発光するゲートを射出し、レンゲルへと変身した。


( OHO)「………うおおおおおおおおおッッ!!!!」


 両手で拳を作り、力を込め自らを奮い立たせる。
 目の前の未知なる恐怖に逃げ出してしまいそうになる自分を抑え込んで。

 レンゲルラウザーを手に取り、シャフトを伸ばし杖状に形状を変化させる。
 両手でしっかりと柄を握り締め、不器用に突っ走り始めた。


( ´_ゝ`)「……ふっ、なんて弱々しい気迫だ」


 言って、男は右手を己のこめかみ辺りに手をかざす。
 そして、驚かざるを得ない光景がレンゲルやモララーの目に飛び込んだ

47421話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:15:13 ID:Vg4XVt6s0


 男がかざしたこめかみ部分から、剣の柄が姿を見せた。 
 出てきた柄を右手で掴むと……一息にそれを引き抜く。


( ・∀・)「!?」


 こめかみより引き抜いたのは……クワガタの大アゴを模したかのような、ニ又の黄金に輝く剣。
 

( OHO)「ッ…!?」


 異様な光景に思わず、駆ける足を止めてしまった。
 頭部より剣を引き抜くという、狂人じみた行為が、男の凶暴さと残酷さを嫌でも物語らせた。
 

( ´,_ゝ`)「じゃあ、早速挨拶と行こうか……!」


 ニヤリと笑みを浮かべる男の身体が、オーラに包まれた。

 男の腹部から現れる金色の肌。
 侵食するように全身に広がり、人の形状から徐々に歪な形に変化していく。
 
 金色に輝く身体。
 もはや、装甲と言っても過言ではない程の強靭な肉体。
 歪な怪物ながら、見惚れてしまいそうになる造型。
 特に目についたのは……頭部に伸びた、クワガタのようなアゴの角。

 眉間には、紅く煌くダイヤが、埋め込まれるように存在していた。


( ; ・∀・)「その姿、そのダイヤ……お前は!?」
 (  。)
<メ、゚ M゚,>『そうだな…お前が持ってるカテゴリーAに強く関係しているかもしれないな』
 (  。)
<メ、゚ M゚,>『俺はダイヤのカテゴリーキング。ダイヤスートを統べる王様、ってところだ…!』

( ; ・∀・)「カテゴリーK……!!」


 カテゴリーK…各スートの王。
 それだけで、このアンデッドが秘める力は容易に想像出来る。
 いや、想像を遥かに超えた力を有しているかもしれない。

 出で立ちや、堂々とした姿。府坂やカテゴリーQに勝る何かを、本能が感じ取っている。

47521話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:16:02 ID:Vg4XVt6s0

 (  。)
<メ、゚ M゚,>『どうした?カテゴリーA。こんな雑魚にやらせないでお前が戦え』
 (  。)
<メ、゚ M゚,>『でないと…わざわざ足を運んで挨拶しに来た意味がないんでね』

( OHO)「な……な、何言ってんだ!俺は、カテゴリーAの力を完全に――ッッ!?」

( ; OHO)「ううっ…!!!」


 突如、レンゲルを襲う激しい頭痛。
 頭を押さえ、ひどく苦しみ出した。


( ・∀・)「ドクオ!?どうした!?」

( ; OHO)「うゔゔぅッ……ぐあああアァァァァアァァアッ!!」


 痛みにもがき苦しんだ末、レンゲルラウザーを構え再びカテゴリーKに向け走り出す。
 レンゲルをよく見ると……額にある♣状の宝石が紫色に強く輝いている。


( OHO)「うおおおおあああああッッ!!!」


 雄叫びをあげながら、構えたレンゲルラウザーをカテゴリーKの頭部目掛け振り下ろした。
 だが、片手の剣で攻撃は簡単に防がれてしまう。

 (  。)
<メ、゚ M゚,>『ふん、あくまでコイツを操ることに力を注ごうとするか…。 はァッ!』

( ; OHO)「うああぁっ!?」


 レンゲルラウザーを弾き、ニ又の剣でレンゲルの胸部に一太刀浴びせた。
 黄金色の装甲に、深い傷跡が形成される。

 たったの一太刀を受けただけで、レンゲルは吹き飛ばされてしまった。
 装着者が戦いの素人であるドクオだとしても、レンゲルとしての体重やスペックは変わらない。
 
 それをも凌駕する凄まじい力が、カテゴリーKにはあった。

47621話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:16:28 ID:Vg4XVt6s0


( ・∀・)「ドクオ!……変身!!」


    【 -♦TURN UP- 】


 このままレンゲルに戦わせれば、死に至らせてしまうのは目に見えていた。
 ギャレンバックルを装着したモララーは、カテゴリーKに向けゲートを射出。
 ギャレンに変身するため、ゲートに向け走り出した。

 だが……、

 (  。)
<メ、゚ M゚,>『お前が相手になった方が見せしめになるらしいな……そんなわけで』
 (  。)
<メ、゚ M゚,>『これが俺からの挨拶だ…!!』
 

 モララーに剣先を向けた二又の剣が、紅く光を放つ。
 高々と頭上に剣を掲げ、ゲートに向け振り下ろす。 
 
 (  。)
<メ、゚ M゚,>『セイヤア゙ア゙ァ゙ァッッ!!!』

( ・∀・)「うっ…!?」


 荒々しい声と共に、振り下ろされた剣から放たれる斬撃波。
 虚空を斬り裂き、足元の草を削りながら、ゲートに向け一直線に飛翔する。

 モララーは、本能的に足を止める。
 これが正しい選択となった。

 カテゴリーKが放った斬撃波は、モララーがバックルより放ったゲートを――粉々に粉砕した。


( ; ・∀・)「…ッ!?オリハルコンエレメントが、破壊された…!?!?」


 変身をする為に放つゲートは、防衛的な役割を果たす事も可能。
 その証拠に、アンデッドにぶつければ吹き飛ばす事が出来た前例もあり、攻撃を防ぐ手段として用いる事も出来る。
 大概の事では、ゲートが突き破られる事など有り得ないのだ。

 ……しかし、そのゲートが、目の前で砕け散った。

47721話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:17:01 ID:Vg4XVt6s0


( OHO)「うぅ……ッ!うおおおおおおおおッッ!!」


 無謀にも、がむしゃらに再び立ち向かった。
 構えたレンゲルラウザーを、今度こそカテゴリーKの肩に叩き込んだ。

 (  。)
<メ、゚ M゚,>『……くどい!』


 全く動じない。
 片手でレンゲルラウザーの柄を掴み、二又の剣で横薙ぎに斬りつける。
 いくらでも防ぎ様はあったが、敢えて受ける事でレンゲルを蹴散らした。


( ; OHO)「うぐうぅ…ッッ!?」

 
 草原の上に転がり、川辺の方へと落ちるレンゲル。
 
 すると、レンゲルバックルがカテゴリーAの意志を受け自我を持ち始めた。 
 バックルのシャッターは勝手に閉ざされ、紫色のゲートが出現。
 転がり続けるレンゲルの身体を無理矢理通過し、変身を解いてしまった。


(;'A`)「うううぅッ…!あ…ぐ……!」
 (  。)
<メ、゚ M゚,>『フン、どうやらレンゲルは大したことなさそうだ……当分の間はな』


 言って、カテゴリーKは人間態へと姿を戻す。
 転げ落ちるドクオなど見向きもしないが、モララーへの興味はあるようだった。


( ´_ゝ`)「お前達がライダーを続ける以上、いつかは戦う時が来るだろう。だが、今ではない」

( ´_ゝ`)「俺は、この戦いに隠された"真実"を探している。それが見つかるまで、お前達とは戦わない。
       血を流しても報われぬ戦いなど、する意味がないからな」

( ・∀・)「真実だと…?」

( ´_ゝ`)「それまでは、せいぜい雑魚共と血気盛んな奴等の相手でもするんだな。その方が俺も助かる」


( ´_ゝ`)「――お前とは、いずれ決着をつけることになりそうだな。ふっ……」

47821話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:17:47 ID:Vg4XVt6s0


 カテゴリーKの姿が、フッ…と消えて無くなった。

 気配は感じない。
 本来は追わなければならないが、姿が消えた事にどこか救われた気持ちを覚える。


( ・∀・)「あれがカテゴリーKの力……なんて力なんだ……」

(;'A`)「ッうう……クソ……!」

( ・∀・)「ドクオ!」


 川辺の方で苦しむドクオの声。
 下り坂を下りながら、起き上がろうとするドクオに駆け寄った。

 地に両手と両膝を立てながら、レンゲルバックルを見下ろしている。


(;'A`)「何でだよ…!何で、力を貸してくれなかったんだ…!?」

( ・∀・)「確かにレンゲルを受け入れたことで、君は心の中に凶暴な力を住み着かせたかもしれない。
      だが、力を自由に使いこなすこととはまた話が違うようだな」

(;'A`)「そんな……!」

( ・∀・)「今のうちに止めたほうがいい、そのベルトは危険過ぎる。また誰かを傷つけてしまうかもしれない」

('A`)「ッ……でも選ぶさ、カテゴリーAは絶対に俺を選ぶ!ただ……今はまだ気まぐれなだけで――」

( ・∀・)「気まぐれなんて話では済まない!カテゴリーAは君を弄んでいるだけだ!
       いつか自分自身まで失ってしまうかもしれないんだぞ!?」

(#'A`)「失ってもいい!こんな弱い自分なんかなくなればいい!俺は強くなりたい……強くなりたいんだよ!!」

( ・∀・)「ドクオ!!上辺だけの力を求めても、何も得るものはないぞ!!」


 モララーの説得を振り切るように、力強く張り上げた声。
 レンゲルバックルを両手に抱え、痛みに悲鳴をあげる身体を叩き起こし逃げるように走り去る。

 その背中に向け言葉を掛けるが……ドクオの気持ちは、どこか理解出来る部分がある。
 我を忘れる程に強さを求める姿勢。まるで、過去の自分を見ているようだった。

 
( ・∀・)「……強くなりたい、か」

.

47921話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:18:53 ID:Vg4XVt6s0


 ――――――
 ――――
 ――


 一方、モララーに任せながらもブーンもドクオの行方を捜しに出ていた。
 ひとまず先にドクオの自宅に来てみたものの、本人はまだ帰宅はしていない。


( ^ω^)「どこ行ったんだおドクオ……」

「こんにちは」

( ^ω^)「こんにちは〜」


 バイクに乗ろうとすると、後ろから一人の少年が歩いてきた。
 職業病とでも言うべきか、少年の挨拶には笑顔で応える。

 その少年は、ブーンの前に立ちはだかり、一切視線を外そうとせず見続けている。


( ^ω^)「……あの、なにか?」

( ´∀`)「ブレイドだね?」

( ^ω^)「え……?」

( ´∀`)「やっぱりそうだ!ブレイドだ!本物だ……すごい!一緒に写真撮らせてよ!」


 言うなり、ポケットからスマホを取り出しブーンの肩に手を組んできた。
 さすがのブーンも、見ず知らずの人から馴れ馴れしくされるのはあまり好ましくは思わなかった。


( ^ω^)「ちょ、ちょっと待ってくださいお。なんですか??」

( ´∀`)「ああ、ごめんごめん。自己紹介しなければいけないね」

( ´∀`)「僕はね、スペードスートのカテゴリーキングだよ。キングモナーって呼んでよ」

( ^ω^)「カテゴリーキング…!?アンデッド!?!?」

48021話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:19:13 ID:Vg4XVt6s0


 己の正体を軽々しく明かす、キングモナーと名乗る少年。
 アンデッドである事を素早く察知した途端、ブーンはキングモナーを突き飛ばしバイクから降りる。


( ´∀`)「あ、何すんのさ!僕は何もしてないのに!」

( #^ω^)「ふざけんな!アンデッドが僕に近付くってことはそういうことだろ!?」


 ポーチに手を掛け、ブレイバックルを取り出した。
 カードを装填したバックルを腰に装着し、迷い無くハンドルを引く。


( ^ω^)「変身!」


    【 -♠TURN UP- 】

 
( ´∀`)「よっ、と!ちょっと待ってくんない?戦うつもりなんかないんだけど」

( #^ω^)「そんな言葉信じられるか!!」


 射出したゲートをひらりと躱すキング。
 既に戦いに心が備わっているブーンは、言葉に耳を貸すことなくゲートに向け走りブレイドに変身。

 走る勢いそのままに、人間の姿をしたキングに右拳を突き出した。


( OwO)「おらあっ!!」


 しかし……、


( ; OwO)「なっ……!?」 

( ´∀`)「やめときなよ、通じないから」


 キングを守るようにして、ブレイドの突き出した拳に盾が発生する。
 当の本人は己を守ろうとする為に行動を起こしたのかと思いきや、何もしていない。
 ただ腕を組んで立っているだけだ。

48121話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:19:41 ID:Vg4XVt6s0


( OwO)「うおおおおおおっ!!」


 それでも殴り続けり。
 この盾が発生しない場所が、必ずあるはず。
 そう信じて、何度も何度も殴り続ける。


( ; OwO)「ックソ……これならどうだ!!」


 ブレイラウザーを抜き、キングの脳天目掛け真っ直ぐに振り下ろす。
 
 だが、盾はキングの頭上を守るように上向きに発生。
 ブレイラウザーの剣を、打ち合う鋭い音と共に防いだ。


( ´∀`)「しつこいなぁ、だから無駄だって言ってるだろ?」

( ; OwO)「何でだお…!?コイツどうなってんだ!?」

( ´∀`)「キングってどういう意味か分かる??」

( ; OwO)「何…?」

( ´∀`)「キングってのは王様って意味。要するに……僕が一番強いってことさ!」


 キングがブレイラウザーを片手で掴んだ瞬間、ブレイドの身体に異変が起きる。


( ; OwO)「うああああぁぁあぁッッ!?!?」


 掴んだ手からラウザーを伝い、ブレイドの身体に流れる衝撃。
 何が流れているかまでの特定は出来ない。
 
 だが、それは確実に、ブレイドの身体に何らかのダメージを与えていた。

48221話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:20:54 ID:Vg4XVt6s0


( ´∀`)「はい、おあいこ。君から先に手を出したんだから正当防衛だよ」

( ; OwO)「はあッ…!ぐう、ああ……!」


 パッ、と手を離したと同時に、ブレイドの身体に流れる衝撃は途絶えた。
 それでも身体の中に蓄積されたかのように、未だに痛みは身体を蝕み続けている。
 両足で立っていることが出来なくなり、ブレイドは地に崩れ落ちた。


( ´∀`)「話は聞くもんだよ、ちゃんとね」

( ; OwO)「ごほっごほっ!…だったら、お前の目的はなんなんだお……!?」

( ´∀`)「目的??んー、ただ挨拶をしたかっただけって感じかな??
      もう一人のカテゴリーKが、今君のお仲間に挨拶をしに行ってるとこだよ」

( ; OwO)「もう一人のカテゴリーKだと…!?僕達を同時に倒すのが目的かお!」

( ´∀`)「だからさ…戦うつもりないって言ってるだろ??
      アイツは考えがあって動いてるだろうけど、僕は別に何も考えちゃいないよ。
      ただ、この戦いを掻き乱して掻き乱して……滅茶苦茶にしてやりたいだけさ」

( ; OwO)「……ぐっ!」

( ´∀`)「でも勘違いしないで欲しい、少なくとも僕は人間を恨んだりとか敵に見たりとかしてないから。
      かと言って味方をするつもりもないんだけどね」

( ´∀`)「そう、全部全部狂わせてやりたいだけだ……僕達が戦っても意味がない戦い。
      だったら全部滅茶苦茶にして、面白くしてやるだけさ…!」


 あどけなさが残る表情に、残忍さが垣間見える。
 本能のままに破壊を求める心こそ、恐れるべきものはない。


( ´∀`)「……会えてよかったよ、ブレイド。君とはまた必ず会うはずだ」

( ´∀`)「その時は――よろしく」

( ; OwO)「………」


 姿が消えた。
 モララーと同様にブレイドも、今までのアンデッドとは格段に違う力を肌身で感じていた。
 
 カテゴリーK。各スートの王。
 ついに、王自らが動き出したのだった。

48321話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:21:56 ID:Vg4XVt6s0




 ―――――



.

48421話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:22:16 ID:Vg4XVt6s0


 ――この日の夜は、ブーン宅にたくさんの客足があった。
 バーボンハウスの一同や、後輩のヒッキーが遊びに来ていたのだ。

 テーブルには、腕を振るった豪勢な料理と飲み物が並んでいる。

 今日は大晦日。明日からは新しい年になる。
 今年は、特に夏場からの半年間は、皆が皆非常に濃い時間を過ごしただろう。

 決して良い事があった訳では無い、悲しいことや辛いことばかりだった。

 けれど、不幸中の幸いと言うべきか、人との縁を深める事にも繋がった。
 その形として、今年最後の夜を共に楽しもうと、たくさんの人が集まっていた。

48521話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:22:44 ID:Vg4XVt6s0


(´・ω・`)「みんな、この間は本当にありがとう。君達のおかげで何とか店も続けられてるよ」

ξ゚⊿゚)ξ「いえいえ、ショボンさん達が無事だったことが本当何よりですよ」

(´・ω・`)「しかしびっくりしたな、ブーン君が仮面ライダーだったなんて。こんな身近に正義のヒーローがいたとはね」

从'ー'从「本当だよ〜。ブーンさん頼りなさそうって思ってたけど、ちょっとカッコイイって思っちゃった!」

(#゚ -゚)「へえ〜、あれが仮面ライダーだったのかぁ……すごいんだねブーンのお兄ちゃん」

ξ゚⊿゚)ξ「すごいでしょ〜?悪いやつらをやっつけてるんだよ、ブーンは」

(#゚ -゚)「うん、モスのことはいじめないでくれたもん」

(´・ω・`)「モララーさんもありがとう、こんな近くに仮面ライダーが二人もいれば心強いよ」

( ・∀・)「いえ、元はと言えば我々の責任でもありますので……」

(´・ω・`)「我々の責任?」

( ・∀・)「あ、いや…何でもないです」

(-_-)「そっか……だから休んでたわけか」
 _
( ゚∀゚)「広めんなよ?ここにいるって事は少なからずアイツに信用されてるってことなんだからよ」

(-_-)「ジョルジュさん、口軽そうって言われません?俺は言われませんけど」
 _
( ゚∀゚)「否定するだけで随分嫌味な言い方しやがんなおめぇ」

48621話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:23:44 ID:Vg4XVt6s0

 _
( ゚∀゚)「そういやブーンのやつ、もうすぐ帰ってくるな」

ξ゚⊿゚)ξ「そうね、年末だからお母さん連れて帰って来るって言ってたけど」
 _
( ; ゚∀゚)「ああ……なんか緊張しちまうな、俺達居候だし……」

ξ;゚⊿゚)ξ「ま、まぁそうね……出てけなんて言われたらどうしよう」

(´・ω・`)「ブーン君がそろそろ来るんじゃ、もうからあげ作っていいかもね」

(´・ω・`)「クー、もう揚げちゃっていいよ」

川 ゚ -゚)「はい」


 バーボンハウスの一同には、もちろんクーもいた。
 指示を受けると、一人でキッチンに立ち下味をつけた鶏肉に衣をつけ始める。


ξ゚⊿゚)ξ「クーさん、何か手伝うことある?」

川 ゚ -゚)「大丈夫」
 _
( ゚∀゚)「へえ〜、料理するとこ見れるなんて斬新だなぁ」


( ・∀・)「あの人、料理するのか?人間が食べれるもの作るんだろうな?」 コソコソ
 _
( ゚∀゚)「どうなんすかね?アンデッドのから揚げだったりして」 コソコソ


川#゚ -゚)「聞こえてるぞ。貴様等に借りがあること忘れてないだろうな?」
 _
( ; ゚∀゚)「あっ……うっす」

( ; ・∀・)「無駄口は叩かないほうがいいね」

48721話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:24:31 ID:Vg4XVt6s0


 玄関の開く音と共に、ブーンの声が聞こえる。
 いつもならすぐに家の中に入って、玄関のドアも閉じられるのだが、今日は中々閉まる音がしない。
 

( ^ω^)「ただいまお〜」
 _
( ; ゚∀゚)「帰ってきた!おい帰ってきたぞ!」

ξ゚⊿゚)ξ「落ち着きなさいよ!私出るから!」
 _
( ; ゚∀゚)「いっいや、俺も出るって!」


 廊下に出て玄関に向かうと、ブーンの他に車椅子に乗った女性がいた。
 その女性こそ、入院していたブーンの実母だった。


J('ー`)し「あら、可愛らしい子に優しそうな子じゃない。こんな子達にお世話になってたなんてねぇ」
 _
( ; ゚∀゚)「あっ、お…お母様!は、はじめまして!わたし白岡ジョルジュと申しまして…」

( ^ω^)「慣れないかしこまり方すんなお」

ξ゚⊿゚)ξ「すみません、勝手に居候させていただいてまして……」

J('ー`)し「そんなかしこまらなくていいのよ、話はずっと聞いてたから知ってるわ」

J('ー`)し「むしろ、ウチの子の面倒を毎日見てくれてありがとうねぇ」

ξ゚⊿゚)ξ「そんな…!お世話になってるのは私達の方です、いきなり住まわせてもらっちゃって……」

( ^ω^)「もう挨拶はいいから早く中に入ろうお。腹ぺこぺこだお!」

( ^ω^) クンクン

( ^ω^)「この臭い……クーさんのから揚げのにおいだお!」

48821話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:24:53 ID:Vg4XVt6s0


( ^ω^)「ただいま〜!おーみんなそろってるお!」

从'ー'从「おかえりなさ〜い」

(#゚ -゚)「おかえり〜」

( ^ω^)「みんなに改めて紹介するお。ウチのカーチャンだお」

(´・ω・`)「お母さん、今日はありがとうございます。息子さんにはいつもお世話になってます」

J('ー`)し「こちらこそ、いつもご迷惑おかけしてます」

( ・∀・)「お身体は大丈夫ですか?」

J('ー`)し「ええ、楽しそうな息子の顔見てたら…なんだか元気出ちゃいましたよ」

J('ー`)し「そちらのお嫁さんも、いつもありがとね」

川 ゚ -゚)「……私が、嫁?」

( ; ^ω^)「ちょ、ちょっとカーチャン何言ってんだお!クーさんとは別にそんなんじゃ」

J('ー`)し「分かってるわよ、あんたにはもったいない美人さんだもんねぇ」

( ^ω^)「うぐぐ……」

48921話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:25:32 ID:Vg4XVt6s0


J('ー`)し「それにしても……まぁ」



  _
 ( ゚∀゚) ξ゚⊿゚)ξ (#゚ -゚) 川 ゚ -゚) (´・ω・`) 从'ー'从 (・∀・ ) (-_- )




J('ー`)し「こんなたくさんの人と繋がりが持てて……幸せ者のアンタを息子に持つカーチャンも幸せだよ」

( *^ω^)「そ、そうかお?……確かに」

( ^ω^)「辛いこともたくさんあったけど……今は今で幸せかもしれないお」

( ^ω^)「本当はドクオも呼びたかったんだけど……」

ξ゚⊿゚)ξ「うん……そうね」
 _
( ゚∀゚)「……つーわけで!今日は忘年会も兼ねてるわけだし、ブーンに始めの挨拶してもらおうぜ!」

( ^ω^)「おっおっ、いいのかお?」

(´・ω・`)「もちろん、この中心は君だからね」

( ・∀・)「そうだよ、剣藤がいなかったら…俺もきっとここにいなかった」

ξ゚⊿゚)ξ「私達、きっとバラバラになってたかもしれないわ」

( ^ω^)「……じゃあ僭越ながら、僕が挨拶を務めさせていただきますお」

49021話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:26:15 ID:Vg4XVt6s0


( ^ω^)「みんな、今年は大変お世話になりました」

( ^ω^)「今年は初めてのことばかりの年だった……僕としては、人生の中で一番濃い時間を過ごしてる」

( ^ω^)「戦って、傷付いて……ここにいる数人の人達とぶつかり合うこともあったお」

( ・∀・)「……」

川 ゚ -゚)

( ^ω^)「辛いこと、悲しいこと、出会いや別れ…この半年間で多くを経験したお。
      きっとこの辛さを忘れることなんて出来ない、残り続ける。これからもきっと、苦しいことは待ち受けてると思う」

(#゚ -゚)「…うん」

( ^ω^)「でも、今やってることに後悔はしてないお。苦しいことも悲しいことも全部受け入れて、前に進み続けたい。
      みんなと一緒に進んで行きたいって思ってるお」

( ^ω^)「みんなと一緒なら僕は大丈夫!これからも、人を守り続ける為に戦える!
      どんな"運命"が待ち構えようとも、僕はその"運命"と正面から戦いたい!」

( ^ω^)「だから、来年もみんなよろしく頼むお。
      そのためにも、今日はたくさん飲んで食って楽しんで!都合の良い嫌なことだけを忘れちまおう!」
 _
( ゚∀゚)「おう!ブーン大将!」

( ^ω^)「てわけで、みんなお疲れさまでした!乾杯!!」
  っロ



「「乾杯〜!!!」」

49121話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:26:59 ID:Vg4XVt6s0


 酒を飲みながら、ソファに座るいつもの四人はドクオの話題になった。
 

( ・∀・)「そういえば、ドクオのことだけど……」

( ^ω^)「分かってますお。アイツのことだから何となく、応じなかったんだろうなって思ってました」

ξ゚⊿゚)ξ「大丈夫なの?ドクオさん」

( ^ω^)「うーん……大丈夫ではないと思うお。これに懲りずに僕も説得してみます」

( ・∀・)「いや、思ったんだけど…レンゲルのベルトはカテゴリーAの意志を受けて、何度もドクオのもとに戻っただろ?
      もし無理矢理ベルトを奪ったところで、またドクオのもとに戻ってしまうんじゃないかな?」

( ・∀・)「カテゴリーAはきっと、自分の思うままに動くことが出来る媒体としてドクオを選んだ。
      引き剥がしたところで、何度でも彼のもとに戻る……そんな気がするんだ」
 _
( ゚∀゚)「じゃあ、レンゲルはアイツに渡したままにしとくしかないってのか…?」

ξ゚⊿゚)ξ「彼、またブーンやモララーさんに襲い掛かるかもしれないのよ?」

( ^ω^)「そうなったらもう力ずくで止めるしかないけど……どうしたらいいのかなぁ」

( ・∀・)「さっきもアンデッドと戦った時、最初は自分の意志でレンゲルとして動いてた。
      でも……すぐにカテゴリーAのマインドコントロールを受けそうになってた」

( ・∀・)「カテゴリーAの力を受け入れたことで、常に自我を保てるようにはなったのかもしれない。
      けどそれはカテゴリーAを押さえ込んだということではなくて、ただ自分の心の中に住まわせているだけに過ぎない」

( ^ω^)「だとしたら、尚更どうすれば……」


 八方塞がりのような状況。思考を巡らせど解決策が思いつかない。
 何をしたところで、レンゲルバックルはドクオのもとに戻り続ける。
 破壊さえ出来ればそんなことも無くなるが、簡単に破壊出来るのならとっくにしているであろう。

49221話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:27:47 ID:Vg4XVt6s0


 どうにか引き剥がすことだけを考える三人とは違い、モララーはひとつの案を思い浮かべていた。


( ・∀・)「剣藤、よかったら彼のこと俺に任せてくれないかな?」

( ^ω^)「任せるって…何か良い案でもあるんですか?」

( ・∀・)「彼は、弱い自分を変えたいって強く願っているんだ。そのためなら、本当の自分を失ってもいいとも言ってた。
      きっとレンゲルに希望を強く抱いてるんだと思う」

( ・∀・)「昔いじめられた経験から、彼は心に闇を抱えたまま大人になってしまったと考えるのが一番だろうね。
      普段はあんな感じでおちゃらけてても、心の中には誰にも見せない闇があるんだ。
      カテゴリーAは、その心の闇に触れたんだろう。そして意のままに動かそうとしている」

( ・∀・)「だったら、彼自身がカテゴリーAと戦うしかない。自分の心の闇と向き合って、邪悪な意志を制御するしか」
 _
( ゚∀゚)「それって……アイツにレンゲルとして戦わせるってことかよ!?」

( ・∀・)「元々彼はそれを望んでる、だから自分からレンゲルを受け入れた。そんな真似はさせたくないのは大前提の話だよ。
      でもこうするしかない。剣藤にとってはあまり良くない話かもしれないけど……」

( ^ω^)「………いや、そうしましょう」

ξ゚⊿゚)ξ「本当にいいの…?」

( ^ω^)「アイツもそこまで馬鹿じゃないお、ライダーになるってことがどういう事なのか少しくらいは分かってるはず。
      自分から変身をしたってことは、その覚悟の表れな気がするんだお」

( ^ω^)「もし中途半端なことを言い出したら、その時は僕がアイツを何発でもぶん殴ってやりますお」

( ・∀・)「ありがとう。なんとか彼の閉ざした心の扉を、開いてやれないかな……」

49321話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:28:26 ID:Vg4XVt6s0


从'ー'从「お待たせしました〜」

( ^ω^)「おっ、来た来た!」


 二枚の皿を両手に持った渡辺。
 からあげの盛り付けられた皿を、ブーンとツン、ジョルジュとモララーの前にそれぞれ配る。


( *^ω^)「お〜!待ってたおこれ」

从'ー'从「あ、そうそう〜。クーさんが言ってたけど、こっちはブーンさんとツンさんで食べてって言ってたよ。
      ジョルジュさんとモララーさんは絶対こっちのだけ食べろってさ〜」
 _
( ゚∀゚)「ん?まぁそのつもりだけどな」

( ^ω^)「早速いただくお」


 伸ばした箸でからあげ一個を掴み、添えられたマヨネーズを軽くディップ。
 一口で頬張り、じっくりと噛みほぐしていく。

 
( *´ω`)「おっおっ……これだおこれ」 モグモグ


 口の中に広がる香り。
 カラッと揚げられた衣の食感と、鶏肉のジューシーな味わい。
 そして、マヨネーズが奏でるまろやかなコクが美味しさに深みを与える。
 あまりの美味しさに、自然と口元が緩んでしまう。


ξ*゚〜゚)ξ「ん〜!なんか久しぶりに美味しいって思いながら食べてるかも」

49421話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:28:48 ID:Vg4XVt6s0

 _
( ゚∀゚)「んじゃ俺も一口……」 パクッ
 _
( ゚〜゚) モグモグ
 _
( ゚〜゚) 
 _
( ; ゚〜゚) 
 _
( ; ゚〜゚)「……おい」

ξ゚⊿゚)ξ「なに?」
 _
( ; ゚〜゚)「いや、その……」 ゴクン
 _
( ; ゚∀゚)「おい、お前らこれ……美味いか??」

( ^ω^)「は?何言ってんだお?めちゃくちゃ美味いお!」

ξ゚⊿゚)ξ「そうよ、美味しいけど?」
 _
( ; ゚∀゚)「いや、このから揚げ……めちゃくちゃ甘いんだけど??」

( ^ω^)「甘くないお、普通のから揚げだけど」
 _
( ; ゚∀゚)「いやいや、食ってみろってじゃあ!嘘ついてねぇって!」

( ^ω^)「何だお前、味覚が馬鹿になってんのかお?どれどれ……」 パクッ



( ^ω^) モグモグ

( ^ω^) 

( ; ^ω^)「……あれ?めっちゃ甘い??砂糖菓子食ってる??」
 _
( ゚∀゚)「だろ!?甘いだろ!?!?

49521話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:29:26 ID:Vg4XVt6s0


ξ゚⊿゚)ξ「本当に言ってんの?じゃあ私も……」 パクッ

ξ;゚∩゚)ξ「あ……これだめ……だめな奴だこれ」

( ; ^ω^)「ちょ、ちょっと…クーさん!?」

川 ゚ -゚)「……なんだ」

( ; ^ω^)「こちらのから揚げ、なんかこっちのと全然味違うんだけど……」

川 ゚ -゚)「君達は目の前のから揚げだけ食べればいい、隣に手を出すな」
 _
( ゚∀゚)「おい、ちょっとこれどうなって――」

川#゚ -゚)
 _
( ; ゚∀゚)「……いや、何もないっす」











川 ゚ -゚)(ふん……馬鹿め、お前達にはせめてもの復讐として、砂糖を大さじ20杯くらい味に加えてやったのさ)

川 ゚ -゚)(この程度で済むだけありがたいと思え)

49621話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:30:13 ID:Vg4XVt6s0

 _
( ゚∀゚)「モララーさんも食えって、絶対甘いから!」

( ・∀・)「じゃあ、いただきます……」 パクッ

( ・〜・) モグモグ

( ・〜・) モグモグ

( ・∀・) ゴクン
 _
( ゚∀゚)「な?甘いだろ??」

( ・∀・)



















( ・∀・)「普通に美味しいと思うけど」

 _
( ゚∀゚)「は……???」

( ; ^ω^)「えっ……」

ξ;゚⊿゚)ξ「嘘でしょ…??」

川 ;゚ -゚)(………何、だと……?)

49721話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:31:20 ID:Vg4XVt6s0


川 ;゚ -゚)(馬鹿な…アンデッドの私でさえ受け付けないぞ、この味は)

( *・∀・)「うん、美味い!剣藤の言う通りだ!」

( ; ^ω^)「い、いや違うよ、その味じゃないおモララーさん……」

川 ;゚ -゚)゙ 「おい……ちょっと来い」

( ^ω^)「何だお?」 スタスタ




川 ;゚ -゚)「アイツの味覚はどうなってるんだ…?頭がおかしいのか?」 ヒソヒソ

( ^ω^)「いやぁ、モララーさんと食事するようになったの最近だし好みが分からないけど……って」

( ^ω^)「やっぱりクーさん何かしたのかお!?」

川 ゚ -゚)「少し……砂糖を入れてやっただけだ」 ヒソヒソ

( ; ^ω^)「あのなぁ……」

川 ゚ -゚)「襲わないだけマシだろう、あいつ等は私に手を出したんだぞ?」

( ^ω^)「……っはは、まったく……」





( *・∀・)「食べないのか?じゃあこれ全部食っていいかな??」

ξ;゚⊿゚)ξ「本当においしいの!?」
 _
( ; ゚∀゚)「あんたおかしいよ……」

.

49821話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:31:55 ID:Vg4XVt6s0
.

(#゚ -゚)「クーおねえさんこっち来て!」

川 ゚ -゚)「ん、ああ」

从'ー'从「クーさんこれ食べて!私とでぃで、家で作ってきたの!」

川 ゚ -゚)「二人で作ったの?じゃあ食べてみようかな」

(#゚ -゚)「絶対うまいよ〜、すごい美味しく出来たもん」

川 ゚〜゚) モグモグ

川 ゚ -゚)「うん、美味しい」

(´・ω・`)「最近クーが思いつめた顔してるから、二人が何かして喜ばせようとしててね」

川 ゚ -゚)「私のために……?」

从'ー'从っ 「そうだよ〜、クーさんはクールな顔もいいけど〜……えいっ」
   ムニィ

川 ゚ -゚ >c 「うっ」

从'ー'从「笑った顔のほうが素敵なんだから〜」

川 ゚ -゚)「っはは、こういうの初めてでさ……でも」

川 ゚ー゚)「うん……なんだか暖かいって感じるよ」

从'ー'从「その顔その顔〜、笑顔が一番だよ〜」

49921話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:32:28 ID:Vg4XVt6s0


( ^ω^)「やってるかお?」

从'ー'从「やってるよ〜、クーさんが笑顔になるくらい楽しいよ!」

( ^ω^)「ほほう、クーさんが??」

川 ゚ -゚)「なんだ……見るな」

( ^ω^)「いいじゃんかお、こういう席くらい」

(#゚ -゚)「前から思ってたけど、二人ってどういう関係なの?仲良くなさそうで良さそうな感じ」

(´・ω・`)「確かに最近二人は接点あるね……もしかして」

( ^ω^)「え、ああー……いやその」

川 ゚ -゚)「そんなことないですよ、言うほどブーンさんとは関わりないですから」

从'ー'从「ほんと〜?ブーンさんより私のこともっと構ってよ〜」

川 ゚ -゚)「うん、もちろんそのつもりだよ」

( ^ω^)「なんだかさっきから僕に得がないような……」

50021話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:32:58 ID:Vg4XVt6s0
.

J('ー`)し「うちのホライゾンはしっかりやってましたか?」

(-_-)「はい、一番頑張ってますよ。みんなの先頭に立って動いてくれますし」

J('ー`)し「ならよかった、いつも話でしか聞かないからちょっと心配でねぇ…」

(-_-)「お母さんが心配することないですよ。先輩はああ見えてすごくしっかりしてますから
     うちの店長がまっったく使えなくて…本当に困ってるんすよ」

(-_-)「でも先輩が率先してみんなを率いてくれるんで、うまくやれてた感じですね。今は本当きついっす。
     きっとお母さんの教えが良かったから、あんな立派な人になったんですよ」

J('ー`)し「まぁ、そんなこと言ってくれるの?嬉しいけど……嬉しいわねぇ」

(-_-)「素直に喜んでください、褒めてますから」

( ^ω^)「なに生意気言ってんだお」 ゴツン
   っ

(-_- )ゞ 「いって!久しぶりなんだから手加減してくださいよ」

( ^ω^)「店は今どうなんだお?」

(-_-)「まぁ、俺の頑張りでなんとかって感じですかね」

( ^ω^)「ほー!お前が頑張ってるだなんて意外だお」

(-_-)「やらないだけでやればできるんで」

( ^ω^)「自分で言うかお?」

50121話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:33:43 ID:Vg4XVt6s0


 心休まる、楽しい時間。
 普段では絶対に無い、愉快な騒がしさがある。たくさんの笑顔がそこにあった。

 大人達の…特に騒がしそうな男達は、酒に酔い顔を赤らめ上機嫌だ。
 
 _
( *゚∀゚)「次飲むぞ〜!次〜!!」

ξ゚⊿゚)ξ「もうやめときなさいよ!それにお酒はあまり用意しなかったんだから」
 _
( *゚∀゚)「なにぃ???酒が飲めねぇで人生やってられっかよ!なぁモララーさんよぉ!!」

( *・∀・)「ジョルジュ…人生なんて何があるか分からないぞ。酒が無くても生きてれば良いことある、また酒も飲めるぞ!」

ξ゚⊿゚)ξ「もう、モララーさんまでやめてよ!」

J('ー`)し「若いうちは飲めるときは飲んだほうがいいわよ〜」
 _
( *゚∀゚)「そうですよね!飲まないと!酒がないなら自分で買ってくるわ!」

ξ゚⊿゚)ξ「そんなふらふらで大丈夫なの?道端で吐いたりしないでよね」
 _
( *゚∀゚)「大丈夫だって!布団におねしょするような歳でもないんだからよ」

ξ゚⊿゚)ξ「よくわかんないそれ」
 _
( *゚∀゚)「んじゃちょっくら近くのコンビニ行ってきますわ〜」


 上着を羽織り、酔いでおぼつかない足取りで家を出た。

50221話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:34:12 ID:Vg4XVt6s0

 ――――――
 ――――
 ――


「ありがとうございましたー」


 店員の挨拶を背に受けながら、コンビニの自動ドアを出る。
 購入した追加の酒が入ったコンビニ袋を手に提げ、ぶるぶると身体を震わせた。

  _
::( ゚∀゚)::「ううっ…!さみぃ〜!酔いも冷めちまう勢いだぜ…!」


 真冬の夜は極めて寒いもの。
 特に、酔っ払った状態での外の寒さと言ったら最高だ。 

 _
( ゚∀゚)「ふい〜、何時だ今……」


 上着のポケットに手を入れ、歩きながらスマホで時間を確認する。
 
 下を見ていて前を見ていない状態。
 しかも酔いが回っているせいで、正面から近付く存在に気が付くことが出来なかった。


   ドンッ
 
 _
( ゚∀゚)「うわっ!?」

「きゃっ!」

50321話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:34:44 ID:Vg4XVt6s0


 誰かとぶつかってしまった。
 声からするに、相手は若い女性。
 これにはさすがに、酔いも瞬間的に冷めてしまった。

 _
( ; ゚∀゚)「あっ、すんません!大丈夫ですか!?」

ミセ*゚ー゚)リ「ごめんなさい!こちらこそちゃんと前を見てなくて…」
 _
( ゚∀゚)「いえいえそんなことは――」
 _
( ゚∀゚)「っ……!!」
 _
( ゚∀゚)「………か………」
 _
( *゚∀゚)(かわいい…!!)


 思わず見惚れてしまった。
 その女性は、ジョルジュの好みど真ん中を突いた。

 黒髪で清楚な、可愛らしいながらもどこか大人な雰囲気を醸し出す容姿。
 見た感じ、大学生くらいだろうが。
 理想に限りなく…理想そのものと言っても過言ではない。
 
 _
( *゚∀゚)「しかもめちゃくちゃ良いにおい…」

ミセ*゚ー゚)リ「??あの……」
 _
( *゚∀゚)「……へ?あっ、ああいや、なんでもないです!べっべつに臭いを嗅いだとかじゃなくて!
     なんか良いにおいだなぁと思って…!」

ミセ*゚ー゚)リ「…ああ、香水ですかね?つけすぎちゃってくさいかなって気にしてて…」
 _
( *゚∀゚)「いや!全然ありっすよ!めっちゃいいっす!」

ミセ*゚ー゚)リ「え、そ…そうですか?あはは…」

50421話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:35:13 ID:Vg4XVt6s0

 _
( *゚∀゚)「い、いやぁ…!その〜……ケガとかしてませんか?どこか痛いとことか……」

ミセ*゚ー゚)リ「私は大丈夫です、そちらは…?」
 _
( *゚∀゚)「俺っすか?お、俺は全然!生まれてこのかたケガなんてしたことないんで!本多忠勝の生まれ変わりなんで!!」

ミセ*゚ー゚)リ「???」
 _
( ; ゚∀゚)「あ…!ああ、分かりにくいよな!ごめんごめん、とにかく何もないならよかった!
     いやぁ本当すみません、酔っ払っちゃって……」

ミセ*゚ー゚)リ「みたいですね、とても顔が赤いから」
 _
( *゚∀゚)「あ〜……そうっすね」

ミセ*^ー^)リ「…ふふふ」
 _
( *゚∀゚)「あ……あははは」




 _
( *゚∀゚)(……これ、いけるんじゃね??)

50521話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:35:41 ID:Vg4XVt6s0

 _
( *゚∀゚)「あ、あの〜……」 

ミセ*゚ー゚)リ「はい?」


 ♪テケテンテンッテンテンテンテンテンッ

 _
( ゚∀゚)「あ……」

ミセ*゚ー゚)リ「お電話鳴ってますよ?」
 _
( ゚∀゚)「あ、はい……」

ミセ*゚ー゚)リ「ケガがないのならよかったです……本当にごめんなさい。
      お電話の邪魔しちゃいけないので、失礼します」


 .....ミセ*゚ー゚)リ スタスタ

 _
( ゚∀゚)「………」
 _
( #゚∀゚)ロ 「んだよ!良いとこだったのに邪魔しやがってよ!!!」

ξ#゚⊿゚)ロ [ 何怒鳴ってんのよ!遅いから心配してたのに!もう知らない!勝手にのたれ死ねバカ!!]

 ブツッ
 _
( ゚∀゚)「あっ…なんだあいつ!切りやがった!」
 _
( ゚∀゚)「……今更コンビニ戻って声かけんのも不自然だよなぁ」
 _
( -∀-)=3 「はああぁ……帰るか……」

.

50621話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:36:22 ID:Vg4XVt6s0


 楽しい時間は過ぎて行く。
 こうやって、誰かと笑いながら過ごせる時間が今ではとても大切に思えた。
 
 戦いを忘れたわけではない。
 忘れていないからこそ、時にはこんな当たり前な時間も必要だ。
 人を守る彼等もまた、同じ人である。

 だから、今だけはこの楽しい時間に浸っていたい。
 ずっとこんな時間が続けばいいと、心の片隅に思ってすらいた。









 ――だが、魔の手は既に背後に迫っている。

50721話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:36:45 ID:Vg4XVt6s0


(*゚∀゚)「楽しそうだねぇ……人間とアンデッドが仲良く食事だなんてさァ」


 冷たい風吹く闇夜の中、電柱の上に一人の女の影。

 数多の家から光が漏れ、煌々と光る街並みを見下ろす。
 その中に存在するブーン宅を、ただ見つめていた。


(*゚∀゚)「ま、せいぜい今を楽しめばいいさァ……」

(*゚∀゚)「お前等には、すぐに地獄を見せてやるよ…!」

(*゚∀゚)「クククク……アヒャヒャヒャヒャヒャ!!!」


 甲高い不気味な高笑いが響き渡る。
 電柱の上に真っ直ぐに立つと、両手を広げ背中から後方へ、暗闇の中へ落ちていく。

 そして、カテゴリーQは姿を消した。

50821話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:37:09 ID:Vg4XVt6s0


 別の場所では、邪悪な力がその爪を研いでいた。

 一切の光が差さない、闇に満ちた部屋。
 電気も点けずに真っ暗な部屋の中で、ドクオはレンゲルバックルと向き合っている。
 

('A`)「……そうか、アイツがそうだったのか!」

('A`)「だから俺にあんな注意をしてきたって訳か……」


 蜘蛛の声が聞こえる。
 蜘蛛の声が、"あの男"の本当の姿を伝えてくる。


 レンゲルの力を手にしても、未だその力を制御する事が出来ない。
 人間の身体を手にしても、未だ思いのまま動かす事が出来ない。

 互いに制御出来ずにいる状況。それを打開する為の、唯一の方法。

 
('A`)「アイツを倒せば、俺はお前の力を操る事が出来る。そして……もっと強くなれるんだな?」


 蜘蛛の声が聞こえる。

 "――あの男を倒せ"、と。


('A`)「………倒す、アイツを倒す……そして俺は強くなる……!」


 心の中の闇は広がり、蜘蛛は増殖する。
 
 差し伸べられる光も手もない。
 差し伸べてくれるのは、一本の蜘蛛の糸だけ。

 ドクオは蜘蛛の糸を掴み、深く深く、闇の底に沈んで行く――。

50921話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:37:39 ID:Vg4XVt6s0





     【 第21話 〜光なき闇〜 】 終




.

51021話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 19:00:53 ID:Vg4XVt6s0
しおり

>>9 第15話
>>84 第16話
>>152 第17話
>>234 第18話
>>308 第19話
>>372 第20話
>>454 第21話

511 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 19:01:45 ID:Vg4XVt6s0


( ^ω^)「読んでくれているみんな!いつもありがとうだお!」

( ^ω^)「今年最後ということで、今日は挨拶するために次回予告はなしだお」
 _
( ゚∀゚)「次が用意出来てないだけだろ」

( ^ω^)「Shut up」


( ^ω^)「自分で思ってた以上に毎回乙や感想いただけて嬉しい限りだお!これはめちゃくちゃ励みになってるお」

( ´ω`)「自分の好きなもので書いてるから楽しくやれてるけど、やっぱりオーバーヒート気味なときもあるなって感じるお」

( ^ω^)「間隔空くときもあるだろうけど、書いてるときは楽しいしまだまだ自己満足でやり続けるお」

( ^ω^)「これからもよければ見てやってほしいお!オナシャス!」

( #・∀・)「でないと……俺の身体はボロボロだ!!」

川#゚ -゚)「読まないなんて言ってみろ……私は貴様をムッコロス!!」

('A`)「これが最強のライダーの脅し方だ」 キリッ

( ^ω^)「てわけで来年もよろしく!!」

ξ゚⊿゚)ξ「よいお年を〜」

512名無しさん:2017/12/30(土) 21:54:40 ID:BQY3A72Q0
乙津

513名無しさん:2017/12/31(日) 06:54:03 ID:nfPMKFGk0
気づいたら来てた!乙

コレクッテイイカナ?いただきましたー!
https://i.imgur.com/TLs90Tr.jpg

514名無しさん:2017/12/31(日) 08:06:13 ID:JKXcv88w0


515名無しさん:2017/12/31(日) 09:08:24 ID:rVopRs3U0
ディチャンゲンキソウナニヨリウレシイ

516名無しさん:2017/12/31(日) 15:42:27 ID:6Gvs7wsw0


先々週ようつべでの剣本編配信終わったけど、あの〆方はとても良かったね
こっちのラストはどうなんのかな?本編や、あるいは劇場版のようになるのか、はたまた違う終わり方するのか
まだまだ先になるだろうけど着地点に期待してます

517名無しさん:2017/12/31(日) 17:36:04 ID:.J86raKs0
故人的には本編がいいな
まぁこの作者なら別の終わりでも上手くやりそうだけど

518名無しさん:2017/12/31(日) 17:42:46 ID:JKXcv88w0
過去作品とかあれば知りたいなーなんちゃって

519 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/31(日) 20:36:46 ID:JKXcv88w0
過去じゃないけど、面倒だからご飯に乗っけるやつと今年の挨拶をシコりながらしました

520 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/31(日) 20:38:43 ID:JKXcv88w0
知ってほしくて自演してみました

521名無しさん:2017/12/31(日) 20:41:48 ID:.J86raKs0
何してんだw
疲れんのか?w

522名無しさん:2017/12/31(日) 22:20:07 ID:OI0J3VNI0
変態が本性だったか

523名無しさん:2018/01/01(月) 02:53:14 ID:VmOgSqps0
バイオテロお前かよ今年一番の驚きだよ
そういう意味ではこっちは安心して読めるから次回も楽しみにしてる

524名無しさん:2018/01/03(水) 16:06:44 ID:ch9uQ6uo0
>>519
仮面ライダー書きながらバイオテロで飲酒運転させんなよwwwww

5251/14(日) ◆7MnOV.oq7w:2018/01/12(金) 20:29:21 ID:9lqObZtA0
==========

 【 次回予告 】 https://www.youtube.com/watch?v=Yyh12l21WkA


(#゚ー゚)「すごーい!!すごいきれい!!」

( ^ω^)「おおー……」
 _
( ゚∀゚)「まぁ確かに綺麗だけど、男の俺にはやっぱ退屈だな…」

(#゚ -゚)「ねぇ温室見たい!温室行く!」
 _
( ゚∀゚)「あっ、おい!ちょっと待ってでぃちゃん!」

(#゚ -゚)「早くしてよ〜!」
 _
( ; ゚∀゚)「頼むよ!俺の命は君にかかってるんだからさ!!」

( ^ω^)「ちゃんと見てろお〜」


 入院を控えたカーチャンの為に、植物園に遊びに来たブーン達。
 ゆったりと流れる時間を、心安らかに楽しんでいた。

5261/14(日) ◆7MnOV.oq7w:2018/01/12(金) 20:29:54 ID:9lqObZtA0


(-_-)「うちの店は特徴ないけど、同じ商品でも安さが売りっすから是非また来てくださいよ」

川 ゚ -゚)「…どうも」


 スーパーVIPへ買い物に訪れたクー。
 ヒッキーと接触し、その本性を知ってしまう。


川 ゚ -゚)「―――!!!」

(-_-)「おっと、別に言う必要ないだろ」

川 ゚ -゚)「何者だ…少なくともお前の本当の姿は分かる」

川 ゚ -゚)「アンデッドだな、お前…!」

(-_-)「言うなっつってんのに……」

5271/14(日) ◆7MnOV.oq7w:2018/01/12(金) 20:30:40 ID:9lqObZtA0


 人を襲うアンデッドの前に、ギャレンとレンゲルが立ちふさがる。


( OMO)「ドクオ…カテゴリーAに操られているわけではないのか!?」

( OHO)(力を感じる…戦い方が分かる!)

( OHO)(カテゴリーAが、俺に戦い方を示してくれてるんだ…!)

( OHO)「戦える…俺は戦える!!」
 
( OHO)「貴様らを封印して俺の力にする!!」

『ゴオオォゥウッ…!?』

( OHO)「うおぉおらあぁッ!!」


 それまでとは違う様子を見せるレンゲル。
 自らの意志で動いているように見えるドクオに、何があったのか!?


( OMO)(いつの間にあんなに戦えるようになったんだ…?)

5281/14(日) ◆7MnOV.oq7w:2018/01/12(金) 20:31:48 ID:9lqObZtA0

  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『さぁブレイド、変身を解きなさい』
  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『さもないと…分かってるでしょう?あなたの大事なお友達が真っ先に殺されてしまうの。
       あなたなら必ずその剣を置くわ、それがあなたの優しさだから!』

( #OwO)「この卑怯者……!!」
 _
( ; ゚∀゚)「ッ……ブーン、俺のことは気にするな!二人のことだけを気にしろ!」


 植物園に現れた新たな上級アンデッド。
 ジョルジュやカーチャン、でぃ達を人質に取られ、手も足も出ないブレイド。
 指示に従い、変身を解いてしまうのだった。


( ^ω^)「これでいいだろ…!?」
 _
( ; ゚∀゚)「なっ…!なんでだよブーン!!俺のことなんか気にするなよ…!」
  、、
@*゚皿゚)@『おお〜?マジで変身解いちゃったよ……自分が死ぬだけなのにさァ!』

( ; ^ω^)「ぐふっ…!」


 上級アンデッド二体を前に、成す術ないブーン。
 果たして、起死回生の一手を手にすることが出来るのか!?


 次回、【 第22話 〜甘い花の罠〜 】

 ――今、その力が全開する!


==========

529名無しさん:2018/01/12(金) 20:37:09 ID:XWcBg.8Y0
おっし

53022話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 10:55:02 ID:QzhOKDJ.0





     【 第22話 〜甘い花の罠〜 】




.

53122話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 10:56:16 ID:QzhOKDJ.0


 年が明け、新たな年を迎えてから早くも数日が経った。
 この数日間、ブーン達の心情を察してくれたかのようにアンデッドの出現は報告されておらず、久しぶりにゆっくりした時間を過ごしていた。
 けれども、楽しい時間、穏やかな時間ほどあっという間に過ぎてしまうもので、年始の休みを終え世間は動き始めた。

 家に一時帰宅していたカーチャンも、明日には再び病院に戻らなければならない。


( ^ω^)「はぁ……もう休みも終わりかお、なんか休んでる気がしないお」

ξ゚⊿゚)ξ「まぁね、休みっていう定かな予定の中で動いてるわけじゃないし」

( ^ω^)「はああ……」


 ソファに寝転がり、深く溜息。

 決して休みが終わる世間を気にして憂鬱になっているわけではない。
 ただ、自分の母親がまた居なくなってしまうことに寂しさを感じていた。

 こう言えば、よく返ってくる心ない言葉は「マザコン」だの「良い歳して親離れできない」だの。
 自分を女手一つで苦労しながら育ててくれて、今は病気を患ってしまった母親を何より大切にするのは何ら間違ったことではない。
 むしろ誇りに思うべきなのだ。


J('ー`)し「ホライゾン、準備出来たよ」

( ^ω^)「はいお。あとはジョルジュがでぃちゃん連れて来るのを待つだけだお」

53222話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 10:56:51 ID:QzhOKDJ.0


 この日は、花を見たいという母親の希望で植物園に行く予定だ。
 バーボンハウスで暮らすでぃも同行したいとの願いがあって、ジョルジュが車で迎えにあがっている途中だった。

 外出する準備が出来たと同時に、窓からジョルジュが運転する車が停まるのが見えた。
 車のドアが開かれ、ジョルジュとでぃが降りる。


( ^ω^)「おっ、来たお。そんじゃ行ってくるお!」

ξ゚⊿゚)ξ「行ってらっしゃーい、気を付けてね」

J('ー`)し「二人とも、お留守番お願いしますね」

( ・∀・)「はい、安心して楽しんで来てください」


 母親の乗る車椅子を押しながら、二人に見送られながら玄関を出た。
 外では、車を降りたジョルジュ達がブーンとカーチャンを待機している。


(#゚ -゚)「こんにちは!」

J('ー`)し「こんにちは、でぃちゃん。今日はお洋服も髪型も可愛いねぇ」

( ^ω^)「でぃちゃん、今日はばっちり決めてきたおね」

(#゚ -゚)「うん、あまねお姉ちゃんと一緒に洋服見てもらったし、髪もセットしてくれたの」
 _
( ゚∀゚)「そりゃ可愛くなるわけだ!じゃあお母さん、俺も手伝うんで乗りましょうか」

J('ー`)し「苦労かけてごめんなさいねぇ、ほんとに…」
 _
( ゚∀゚)「なーに言ってんすか!そんなこと気にしなくていいですって!」


 ブーンやジョルジュの手を借りながら、車の助手席に乗る。
 手慣れた動きで車椅子をトランクに収納すると、ブーンは運転席に乗り、後部座席にはジョルジュとでぃが乗り込んだ。
 ハンドルに手を掛け、ドライブにギアをチェンジしサイドブレーキを外すと、植物園に向け車を出発させた。

53322話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 10:57:18 ID:QzhOKDJ.0


( ^ω^)「でぃちゃんはお花買うのかお?」
   っ回c

(#゚ -゚)「うん、買うよ」
 _
( ゚∀゚)「誰かにプレゼントするのか?」

(#゚ -゚)「モスにお供えするの」
 _
( ゚∀゚)「モス?」

( ^ω^)「ああ……友達だおね、でぃちゃんの」
   っ回c

(#゚ -゚)「うん、モスはお花大好きだったから。クーさんにそのこと話したら、これで買ってあげなってお金くれたの」

( ^ω^)「……ふ、やっぱり優しいとこあるじゃんお」
   っ回c

(#゚ -゚)「モスがいなくなっちゃってから何もあげれてなかったから、お花あげたいなって」

( ^ω^)「そっか……」
   っ回c

J('ー`)し「きっと喜んでくれるわよ、そのお友達も」

( ^ω^)「うん、そうだお。絶対喜んでくれるお!」
   っ回c

(#゚ -゚)「だといいなぁ……」

53422話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 10:57:56 ID:QzhOKDJ.0


 ――――――
 ――――
 ――


 車内で会話をしながら走り続けると、すぐに目的の植物園に到着した。
 車椅子用の駐車場に車を停車させ、車から降りトランクより車椅子を下ろす。
 助手席に乗った母親を支えながら、ゆっくりと車椅子に乗せ替えた。


( ^ω^)「ふー、着いたお」
 _
( ゚∀゚)「休み明けだから人がたくさんいるって感じでもねぇな」

( ^ω^)「そのほうが気楽でいいお。行こ、カーチャン」

J('ー`)し「うん、そうだね」
 _
( ゚∀゚)「でぃちゃん、見たかったら自由に動いていいけど俺から離れるなよ?」

(#゚ -゚)「はーい」
 _
( ゚∀゚)「じゃねぇと俺が後でひどい目に合わされちまうから……」 ポソ

( ^ω^)「何か言われたのかお?」
 _
( ゚∀゚)「直接何かを言われたわけじゃねーけど……」
 _
( ; ゚∀゚)「バーボンハウスの守り神様の目線が怖くてよ…あの目は間違いなく"何かあったら許さない"って訴えてきてた」

( ^ω^)「じゃあ尚更注意しないといけないおね」
 _
( ゚∀゚)「ああ、そうするよ」

53522話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 10:58:27 ID:QzhOKDJ.0


 園内に入ると、広々とした空間を色鮮やかに彩る植物達がブーン達を迎え入れた。
 それぞれの種類を楽しめる庭園がいくつも造られ、中にはカフェで美しい花々を眺めながらくつろぐ人もいる。
 寒い冬だからこそ人気な温室には人が出入りするのがよく見え、植物園はほどよく賑わっているようだった。


(#゚ー゚)「すごーい!!すごいきれい!!」

( ^ω^)「おおー……」
 _
( ゚∀゚)「まぁ確かに綺麗だけど、男の俺にはやっぱ退屈だな…」

(#゚ -゚)「ねぇ温室見たい!温室行く!」
 _
( ゚∀゚)「あっ、おい!ちょっと待ってでぃちゃん!」

(#゚ -゚)「早くしてよ〜!」
 _
( ; ゚∀゚)「頼むよ!俺の命は君にかかってるんだからさ!!」

( ^ω^)「ちゃんと見てろお〜」


 子供は元気だ。
 ジョルジュもまだまだ若いが、子供特有の底抜けな明るさや活発さには敵わない。
 温室に向け駆けるでぃを、困った表情で追いかけて行くジョルジュ。


J('ー`)し「クスクス、子供は元気ねぇ」

( ^ω^)「そうだな〜」

( ^ω^)「カーチャンは見たいとこあるかお?」

J('ー`)し「そうねぇ…とりあえずゆっくり観て歩きたいわ」

( ^ω^)「じゃあ僕達はゆっくり観て回るお」

53622話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 10:58:58 ID:QzhOKDJ.0

 ――――――
 ――――
 ――


( ^ω^)「うわぁすごいおこれ、花のアーチだお」

J('ー`)し「綺麗ねー……」

( ^ω^)「入院中に飾る花は買うのかお?」

J('ー`)し「そうねぇ、せっかくだし何か欲しいわ」

( ^ω^)「じゃあじっくり花見たら、買いに行くお」

J('ー`)し「……ホライゾン」

( ^ω^)「なんだお?」

J('ー`)し「あんた、何か隠してることないかい?」

( ^ω^)「え」

J('ー`)し「ないならいいんだけどね、何かすごく大事なことを隠してる気がしてねぇ」

J('ー`)し「カーチャンも馬鹿じゃないよ?あんたが何かと身体を張って戦ってることくらい何となく分かるよ」

( ; ^ω^)「……いやぁ、何もないお別に!ほら、世の中風当たり厳しいけどそういうのと戦おうって意味だお」

J('ー`)し「まぁそういうことにしとこうかしらね」

( ; ^ω^)「おっおっ………」

53722話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 10:59:21 ID:QzhOKDJ.0


 一方、温室に向かったジョルジュは、でぃの後をいそいそと追いかけていた。


(#゚ -゚)「すごーい……なんかおとぎ話の中にいるみたい」
 _
( ; ゚∀゚)「ちょっと、もうちょいゆっくり観ないか?ていうか観れてるか?」

(#゚ -゚)「観てるよ?あ!あっちもすごい!!」
 _
( ; ゚∀゚)「観てねぇだろ……」


 目に飛び込んでくる光景すべてが楽しくて仕方が無い。
 あちらこちら急いで見て回る楽しそうなでぃは、子供本来の姿だった。
 ジョルジュのことなどお構い無しに、次へ次へと向かってしまう。

 _
( ; ゚∀゚)「次に行くのが早すぎるんだよ……」

「……あれ?」
 _
( ゚∀゚)「ったく、元気な子供にはかなわねぇな〜」

「あの……すみません」
 _
( ゚∀゚)「はい?」


 背後から女性に声がする。
 声のする位置的にもかなり近く、自分に声が掛けられているのが分かった。
 
 振り返ると、そこには……。

 
 
ミセ*゚ー゚)リ「あの…以前お会いした方ですよね?」

53822話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 10:59:52 ID:QzhOKDJ.0


 声を掛けてきていたのは、大晦日の日にコンビニ前でぶつかってしまった時の女性だった。
 会いたいとは思っていたが、本当にまた会えるとは思わなかったのだろう。
 あまりの偶然と驚きと嬉しさに、一瞬声が喉で詰まった。
 
 _
( *゚∀゚)「あっ…!あ、あっ…!あのときの!」

ミセ*゚ー゚)リ「はい、その節は本当にすみませんでした…」
 _
( *゚∀゚)「いっいやいや!いいんですってそんなこと、全然気にしないでください!ていうかこんなところで会うなんて……」

ミセ*゚ー゚)リ「はい、すごい偶然ですね」
 _
( ゚∀゚)「あの〜……誰かと来てるんですか?」

ミセ*゚ー゚)リ「大学の友達と来てたんですけど、急用とかで帰っちゃって今は一人です」
 _
( ゚∀゚)「そ…そうなんですか!」



 _
( ゚∀゚)(これ……)
 _
( *゚∀゚)(これチャンスじゃね!?!?二度目のチャンス到来か!?!?!?)

53922話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:00:27 ID:QzhOKDJ.0

 _
( *゚∀゚)「あっあの!よ、よければ一緒に観て回りませんか??」

ミセ*゚ー゚)リ「いいんですか…?そちらこそ、どなたかと一緒じゃないんですか?」
 _
( ゚∀゚)「あ」


 すっかり忘れてしまった。
 観ることに夢中でどんどん先に進んでしまうでぃは、もう何処に行ったかも分からない。

 _
( ; ゚∀゚)「や、やべぇ……」

ミセ*゚ー゚)リ「どうしました?」
 _
( ; ゚∀゚)「いや……小学生の子に付き添ってたんですけど、どんどん行っちゃって……」

ミセ*゚ー゚)リ「あっ……ごめんなさい!私が変に声をかけたせいで…」
 _
( ; ゚∀゚)「違います違います!あなたは悪くないです!でも……まずいな」

ミセ*゚ー゚)リ「あの、探すの一緒に手伝います。どんな子ですか?」
 _
( ゚∀゚)「えーっとえーっと…小学四年生くらいの女の子で、白いジャケット着てる子です」

ミセ*゚ー゚)リ「じゃあこの温室をまた集合場所にしましょう、そう遠くには行ってないはずですし」
 _
( ゚∀゚)「すんません、マジで……五分後くらいにまた集まりましょう」

ミセ*゚ー゚)リ「はい!」
 _
( ゚∀゚)「あっ、あの!お名前聞いてもいいですか?俺は白岡ジョルジュっていいます」

ミセ*゚ー゚)リ「あっ…義永ミセリです、よろしくお願いします!」
 _
( ゚∀゚)「ミセリさんっすね、了解っす!じゃまた!」



 _
( *゚∀゚)(どさくさだけど名前聞けたぜ…!ラッキー!)
 _
( ゚∀゚)ロ 「あっそうだ、ブーンに電話しとかねぇと……」

54022話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:00:57 ID:QzhOKDJ.0


 ♪テケテンテンッテンテンテンテンテンッ


( ^ω^)「あ、ちょっと待ってお」 ゴソゴソ

J('ー`)し「うん」

( ^ω^)ロ 「どうした?」
 _
( ゚∀゚)ロ [わりぃ!でぃちゃん見失った!]

( ^ω^)ロ 「は!?お前注意しろって言っただろ!」
 _
( ; ゚∀゚)ロ [だ、だってよ!どんどん行っちゃってちょっと目を離したらいなくなっちまったんだよ!」

( ^ω^)ロ 「分かったお、こっちも探すから!お前もちゃんと探せお!」

( ^ω^)「はぁ……まったく」

J('ー`)し「どうかしたのかい?」

( ^ω^)「でぃちゃんを見失ったって電話だお」

J('ー`)し「あら、それは大変ねぇ…カーチャン大丈夫だから探しに行ってあげて」

( ^ω^)「いやぁ、でも…」

J('ー`)し「大丈夫だから、ほら早く」

( ^ω^)「………わかった、ちょっとここにいてくれお!もしくはどっかの店の中とかに!」

J('ー`)し「はいはい」


 車椅子から手を放し、見失ったでぃを探しにブーンは走り出す。

54122話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:01:30 ID:QzhOKDJ.0


J('ー`)し「カーチャンも一緒に探してあげられたらね……」


 一人その場に残ったカーチャン。
 自身の膝に手を乗せ、思うように動かない足を撫でる。


 ――そこに近付く、一人の人間の影。

 
(  )「………」


 気付かれないように、ゆっくりと背後から忍び寄る影。


J('ー`)し「入院、したくないわねぇ……」
 

 背後から忍び寄る影に気付かず、目の前に広がる景色をただ見つめている。
 
 やがて車椅子のすぐ後ろにまで近付き……その人影は、車椅子のハンドルを握った。


(  )「………」

J('ー`)し「??誰?」




.

54222話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:01:54 ID:QzhOKDJ.0


( ^ω^)「でぃちゃーん!どこだおー!」


 園内の中、でぃの名を叫びながら探し回るブーン。
 そこに、でぃを見失った張本人のジョルジュが慌しい様子で合流した。

 _
( ゚∀゚)「ブーン!」

( ^ω^)「お前…!」
 _
( ; ゚∀゚)「わりぃ…マジでちょっとだったんだ、ちょっと目を離したら……」

( ^ω^)「ちょっとってどんだけだお!本当に目を離しただけかお?」
 _
( ; ゚∀゚)「……じ、実は、大晦日の夜コンビニ行ったときに、肩ぶつかった女性と偶然出会っちゃって、それで……」

( #^ω^)「このアホ!何考えてんだおお前!?」
 _
( ; ゚∀゚)「で、でもその人にも手伝ってもらってんだ!五分後くらいに温室にまた集合しようって」

( ^ω^)「多方面に迷惑かけて何やってんだお!マジでクーさんに食らわされるぞお前は!」
 _
( ; ゚∀゚)「いっいや!それだけは頼む!勘弁してくれ…!」

( ^ω^)「とにかく探すお、散らばった方が見つけやすいし――」


 ひとしきりジョルジュを叱り、再びでぃを探すために動き出そうとした。
 その時だった。



「アヒャヒャ、こ〜んに〜ちは〜♪」

54322話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:02:14 ID:QzhOKDJ.0


(*゚∀゚)「やっほ〜、新年のご挨拶に来ましたぁ〜♪ってか?」

( ^ω^)「お前…!?」
 _
( ゚∀゚)「??」


 つー……またの名を、カテゴリーQであるカプリコーンアンデッドだ。
 特徴的な笑い方が聞こえた時点で、ブーンの本能が既に警戒を呼びかけていた。


(*゚∀゚)「さぁてブレイドちゃん、早速私とお遊びしましょ……?」

( ^ω^)「こんなところで…!?どれだけの人に被害が出ると思ってんだお!?」

(*゚∀゚)「アッヒャヒャヒャヒャ!そんなの……」


 つーのシルエットが、一瞬にして異形の者の姿へと切り替わる。

  、、
@*゚皿゚)@『アタシが気にするとお思いか〜??』

( ^ω^)「クソッ…!」
 _
( ゚∀゚)「!?アンデッドか…!!」

( ^ω^)「ジョルジュ、急いでみんなを避難させるお。カーチャンのことも頼む!急いで!」
 _
( ゚∀゚)「あっ、ああ!」


 ブーンの催促を受け、ジョルジュは足早に人影のある方へと走った。
 残されたブーンはバックルを取り出し、カードを装填し腰に装着。つーと睨み合いながら距離を取った。


( ^ω^)ψ「変身!」
    /

    【 -♠TURN UP- 】


( OwO)「被害を出さないためにも、お前をここで封印する!」
  、、
@*゚皿゚)@『フォオオオウ!!さァて、お遊びの時間だァ……!』

54422話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:02:45 ID:QzhOKDJ.0





 ―――――




.

54522話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:03:07 ID:QzhOKDJ.0


 場所は変わって、スーパーVIP。
 時間は、ブーン達がアンデッドとの戦いになる少し前に遡る。
 
 ここには、ショボンに買い物を頼まれたクーが一人で来店していた。 
 買い物カゴを片手に店内を歩き、簡単な調味料等を調達しに来ている。


川 ゚ -゚)(後足りないものは、確か……)

川 ゚ -゚)(ああ、そうだ…これだ)


 棚を眺め、詰め替え用の塩を一つ手に取ろうと掴むが、手から滑り落ち床に落ちてしまった。

 すぐにしゃがみ込み、それを拾おうと手を伸ばす。
 だが、自分の手で掴むより先に、誰かの手が落ちた塩を拾った。


川 ゚ -゚)「すみません」


 お礼を口にしながら見上げる。
 そこには、つい最近見たばかりの顔があった。


(-_-)「いえいえ」

川 ゚ -゚)「あ…」

(-_-)「この間はどうも」


 スーパーVIPに勤務するヒッキーだ。
 大晦日にブーンの家で忘年会を開いた時、互いに会話はなかったが顔くらいは覚えていたようだ。

54622話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:03:51 ID:QzhOKDJ.0



(-_-)「ここに買い物来るの初めてじゃないっすか?」

川 ゚ -゚)「まぁ……」

(-_-)「うちの店は特徴ないけど、同じ商品でも安さが売りっすから是非また来てくださいよ」

川 ゚ -゚)「…どうも」


 言って、拾った塩をクーに差し出した。
 
 無愛想に返事をしてしまうのは、決して悪気があるわけじゃない。
 本来、バーボンハウスに住むショボン達以外の人間には中々心を開こうとはしない。
 返事をしながら軽く頭を下げ、差し出された塩を手に取った。

 
川 ゚ -゚)「―――!!!」


 手に取った塩…正式には、ヒッキーが掴む物体を通して、クーは全身でそれを強過ぎる程に感じた。
 だが、クーを以ってしても一体それが何なのかを明確に感知することが出来ない。

 ただ、ひとつだけはっきりと分かることがある。
 

(-_-)「おっと、別に言う必要ないだろ」

川 ゚ -゚)「何者だ…少なくともお前の本当の姿は分かる」






川 ゚ -゚)「アンデッドだな、お前…!」

54722話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:04:32 ID:QzhOKDJ.0


(-_-)「言うなっつってんのに……」

川 ゚ -゚)「誰なんだ?ここまで自分の気配をうまく隠せるということは……ただの上級ではないな」

(-_-)「知ってどうするんだよ、俺を封印するってのかい?俺はこのスーパーに務めるただの店員さ」

川 ゚ -゚)「ふざけるな」


 アンデッドだと判明した途端、ヒッキーを見るクーの眼が鋭くなった。
 買い物カゴをゆっくりと床に置き、睨み付ける。


(-_-)「やめろよこんなとこで……大体俺は戦う気はない」

川 ゚ -゚)「何…?お前の目的は何だ?」

(-_-)「おいおい、自分のこと棚に上げてそんなこと聞くか?じゃあアンタは何の目的で人間と暮らしてんだ?」

(-_-)「人間の生活に溶け込んで、内側から滅ぼそうってか?」

川#゚ -゚)「何だと…?」

(-_-)「ほら、そういうことだよ。俺だって一緒なんだよ。
     別に俺は戦いなんか望んじゃいないんだ。それは今に始まったことじゃない、一万年前からそうだ」

(-_-)「だけど、どいつもこいつも俺に気付けば戦え戦えって……お前等と一緒にすんなってんだよ」


 ヒッキーからは、確かに敵意も戦意も感じられない。
 この言葉から、クーは過去に戦いを忌み嫌うアンデッドが居たか、記憶を巡らせる。

 ♥のカテゴリー8…モスではない。この男は、間違いなく上級アンデッドだ。
 そうなると、思い当たるのは一人……。


川 ゚ -゚)「お前、まさか……」

「よぉ、カテゴリーKさんよ」

54822話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:05:39 ID:QzhOKDJ.0


('A`)「まさか、あんたがカテゴリーKだったとはな」

(-_-)「……はぁ、面倒くせぇことになりそうだな」


 声の主はドクオだった。
 カテゴリーK…ヒッキーの正体を知っても尚、以前のように恐れる様子はない。
 しかし、どこか強がっているようにも見えなくはない。
  

('A`)「カテゴリーAが教えてくれたよ。あんたが♣のカテゴリーKだってことをな」

(-_-)「チッ……どういうつもりだ?」

('A`)「あんたを倒すつもりだよ」

(-_-)「俺の言ったこと忘れたのか?まんまとカテゴリーAに取り込まれたってわけか」

川 ゚ -゚)「そうか…お前が正式なレンゲルになったのか」

('A`)「クーさん、悪いけどこいつだけは譲れないな。
    こいつは俺が強くなる為に必要な、大切な獲物なんだよ…!」

川 ゚ -゚)「ほう……こいつを倒すことが、何故お前が強くなることに繋がる?」

('A`)「俺とカテゴリーAの意志は、今や完全にひとつだ。カテゴリーAとレンゲルの力があれば俺は誰にも負けない」

('A`)「……けど、互いに互いを制御出来ない状態なんだよ」

('A`)「だから、カテゴリーKを封印して互いを繋ぎ止めるための……」

川 ゚ -゚)「くだらないな」


 すべてを言い終える前に、クーの言葉が遮った。
 もはや聞くにも値しない言葉に耳を傾けるつもりはない。そう言ったような言葉だ。

54922話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:06:14 ID:QzhOKDJ.0


(-_-)「確かにくだらねぇ」

(#'A`)「なんだと…!?」

(-_-)「そんなものが本当の強さだと思ってることがくだらねぇっつってんだよ」

(-_-)「それって結局誰の強さだ?カテゴリーAやレンゲルの強さであって、お前の強さじゃないだろうが」

(#'A`)「ッ…うるせぇ!いいから俺と戦え!お前をここで封印してやる…!!」

(#-_-)「……てめぇいい加減にしやがれ!」

('A`)「ッ!?」


 喜怒哀楽の表現をあまり露にしないヒッキー。
 だが、そんなヒッキーが露骨に怒りを露にしている。
 ドクオの胸倉を掴み、睨み付けていた。


(#-_-)「今日は休みだからいねぇけど…ヘリカルさんだって働いてる場所なんだよ!
      仮にもここはてめぇの恋人が一生懸命働いてる場所じゃねぇのかよ、ああ!?」

(;'A`)「っ……」

<ヽ;`∀´>「ちょ、ちょっと引田君!何してるニダ!!」


 都合良く、通りすがった店長のニダーが揉め事に気付いた。
 とても驚いた表情で、ヒッキー達のもとに駆け寄ると胸倉を掴む手を強引に引き離した。


<ヽ;`∀´>「申し訳御座いませんニダ!うちの従業員が大変失礼を致しましたニダ!」

<ヽ#`∀´>「引田君!早く君も謝りなさいニダ!」

(-_-)「チッ…」

('A`)「………」

55022話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:07:03 ID:QzhOKDJ.0

 ――――――
 ――――
 ――


「うー寒い……」


 スーツに身を包んだ男性。
 仕事が始まってしまい、これから今年初の出勤だ。
 外の寒さに身を震わせながら、会社に向け重たい足を引き摺るようにして歩く。

 また、世間は仕事に追われる日々が始まる。


 ……その男性を獲物として睨むアンデッドが、すぐ近くに。


『グルルルルルル……』


 イノシシのアンデッドは、世に放たれたまま未だ潜伏していた。

 アンデッドは肉を好む。
 何の肉であろうと、食えればいい。

 腹を空かしたアンデッドは……血肉を求め、人間狩りを始める。


『ブオオオオオオオォォォォッ!!!!』

「えっ…!?!?うっ…!うわああああぁぁぁっ!!」


.

55122話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:07:38 ID:QzhOKDJ.0


川 ゚ -゚)「…!!」

(-_-)「アンデッド…!」

 
 アンデッドの気配に、二人はいち早く気が付く。
 たった今別の場所で人間を襲ったイノシシのアンデッドの気配だ。


川 ゚ -゚)「一体…いや」

(-_-)「二体だな」

('A`)「なんだと?」


 二人はもう一体の微かな気配も見逃さなかった。
 クーは買い物カゴをそのままに走り去って行く。向かう先はもちろん、アンデッドのいる場所へ。
 ドクオは後を追おうとするが、ヒッキーによって動きを止められた。


(-_-)「おい」

('A`)「何だよ」

(-_-)「俺はお前の中に、人のために戦いたいと思える心があると信じてる」

(-_-)「正義のために戦いたいと心のどこかで思ってるはずだろ。
     それでいいんだよ、その心をしっかり持とうとしろ。力に捉われるな」

('A`)「………」


 ヒッキーの言葉は届いているのか、それは分からない。
 ただ、少しだけ。少しだけドクオの表情が、戸惑いに揺れた気がした。

55222話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:08:02 ID:QzhOKDJ.0

 ――――――
 ――――
 ――


 男性のスーツは、無残に破り捨てられている。
 スーツの破れた破片を残し、そこにいたはずの男性の姿はない。
 あると表現するとすれば……今、イノシシのアンデッドの胃袋の中にいるだろう。


『ピチャ…ピチャ…』


 口のまわりに付着した血を舐め取り、美味くもない衣服を投げ捨てる。
 すると、近くに感じる気配。


川 ゚ -゚)「味を知らないとは可哀想なイノシシだ」

『!?』

 
 視線を向けた先に、アンデッドを睨みながらクーが立っていた。
 腰には、銀に輝くカリスラウザーを装着させながら。


川 ゚ -゚)「変身」
   っロ

    【 -♥CHANGE- 】


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