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海のひつじを忘れないようです
68
:
名無しさん
:2017/08/19(土) 22:31:21 ID:rN6ohdMg0
「待て」
小旦那様が再度、双子を止めた。
二人は律儀に立ち止まり、先ほどと同じ動きを
リピートするように揃って振り向いた。
小旦那様は、そんな二人のことを見てはいなかった。
ジョルジュのことも見てはいなかった。その視線は虚空、何もない上空へと向けられ、
眉間にはびっしりと寄せ集まった皺が、顔全体はとんでもない渋面を象っていた。
そのどこを見ているのか、何を考えているのかよくわからない表情のまま、
小旦那様はへの字に曲げた口をわずかに開いた。
「……ジョルジュ、お前はよく案内してくれたと思うぞ。……あー、まあ、いい子、だったんじゃないか?」
「ほんと?」
ジョルジュの顔がぱっと輝く。
対する小旦那様はさらに顔を歪めて、頭をぐしゃぐしゃと掻き始めていた。
「そうだな。本当だ、本当だよ。誓ってもいい」
「ママに?」
「ママにだ。……もういいだろ。さっさと行け」
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