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海のひつじを忘れないようです

203名無しさん:2017/08/20(日) 22:12:39 ID:sRmmAC9s0
まだこどものままであったそいつが震える手で、その刃をつかむ。
こわごわと、両手で握りしめてもなおやまぬ震えを抑えつけながら。
そして、そばへと寄る。四肢を縛り付けられ、台へと寝かされたその女性の前へ。
その決心を待っていたかのように、怪物の一体が、女性の顔にかけられた布を、剥がした。


やめろ。


そいつが息を呑むその瞬間と、“完全に”同調していた。
手の震えが止まらない。そいつのものも、俺のものも、ひどく震えて、動かせない。
手だけではない。肩も、足も、震えて、震えて、動かせない。
動かせなかった。動かすことが、できなかった。

怪物の一体が、そいつの腕を、つかんだ。
そいつの腕をつかんで、その行先を、誘導する。
縛り付けられた女性の、その指先へと、そいつの手が近づく。
その手に持つ刃が、その先端が、触れる。

怪物は、誘導し、支える以上のことはしてこなかった。
ただ、無言で圧を、課せられた義務のその重石を、幼い背中に背負わせた。
これが、お前の儀式だと。お前が呑み込む、生そのものなのだと。
震え、目を閉じていたそいつが――まぶたを、開いた。


やめてくれ。


台の上で、抑えた吐息が、漏れた。


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