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海のひつじを忘れないようです

15名無しさん:2017/08/19(土) 22:05:40 ID:rN6ohdMg0
「俺は……」

「あなたなら、大丈夫。あなただから、大丈夫。
 あなたはやさしい人だから。あなたは、何があってもあなただから。
 それにね――」

俺の不安を先回りして否定したトソンは、
言葉を区切ったまま俺の瞳を見つめてきた。
やはり傷ついた胸から染み出した血液が、
白い衣服を濡らし、朱に染めていくことも構わずに。

トソンはついぞ見せたことのない表情をして、ゆっくりと、口を開いた。

「私だってほんとは、他の誰にも見られたくなんかないんですよ」

俺はトソンを見上げていた。目を離すことができずにいた。
トソンはずっと、俺の従者だった。上下の関係にあるのが当然で、
あくまでも一定の線を引かれたこちらとあちらの関係にあった。

彼女はいま、そのラインを越えてきた。

俺にはそう、感じられた。

そう感じたから、彼女の言葉に
どんな意味が含まれていたのか、考える余裕を持てなかった。

それに、そんな暇もなかった。


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