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( ^ω^)達は今が楽しければなんでもいいようです
1
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2016/09/23(金) 23:19:53 ID:tPVEEtDg0
前スレ
( ^ω^)達は今が楽しければなんでもいいようです
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/13029/1438259918/
支援曲 Answer(すーぱーもぐりん氏より)
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/lite/link.cgi?url=https%3A%2F%2Fyoutu.be%2F-c3XqxQ_j2A
ゆっくりまったりと。2スレ目でもよろしく。
170
:
名無しさん
:2017/07/25(火) 00:20:11 ID:Pkyj08Vc0
うひょー支援
171
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/25(火) 00:40:00 ID:dL5XzqK.0
('、`*川「セントジョーンズ、現存する魔術師の中で最古にして最強の血統。これはあたしの経験則だけど、ああいうイロモノは単純に力で抑え込もうとしたって手痛い反撃を食らうわけですよ。勝ち負けはともかく、そのリスクを進んで背負う必要はないでしょ?」
( <●><●>)「そこまで言うんなら、何かしら妙案があるんだろうな」
('、`*川「まあねえ。いずれこんな日がくるだろうと思って、下調べには余念がなかったですから」
( <●><●>)「……ふん」
少しだけ、ワカッテマスの表情が歪んだのを、ペニサスは見逃さなかった。
('、`*川(ほんと可愛いやつだわね)
ペニサスは彼の所作を、十代半ばの少年の健全な見栄と捉え、口角を上げて微笑んだ。
ワカッテマスに意固地に背を向ける自分の、機械らしからぬ思考すら自覚しつつ、彼女は恋慕の念とは似て非なる感情の芽生えに困惑していた。
('、`*川(誰かにお熱になる自分ってのも、ぞっとしないのよねえ。まあしゃーなしか)
思考を意識的に雲散させ、普段と同じ蓮っ葉のような表情を作り、振り返る。
('、`*川「ねえ」
( <●><●>)「なんだ」
('、`*川「好き」
172
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/25(火) 00:41:04 ID:dL5XzqK.0
疲れた、寝る
多分明日にでも続き書く
気合を出したい
173
:
名無しさん
:2017/07/25(火) 00:44:33 ID:VEiFq7so0
くそ、こんなところで止めやがって
174
:
名無しさん
:2017/07/25(火) 00:52:49 ID:NWxdpmV60
ペニサスうううう!
乙、明日が待ち遠しい
175
:
名無しさん
:2017/07/25(火) 01:06:02 ID:gdYmdPaI0
寸止めかいいいい
176
:
名無しさん
:2017/07/25(火) 02:56:18 ID:NWxdpmV60
http://iup.2ch-library.com/i/i1833265-1500918789.png
擬人化注意 ( ^Д^)
電撃はロマン
177
:
名無しさん
:2017/07/25(火) 06:44:04 ID:ilGiBty60
so good
178
:
名無しさん
:2017/07/25(火) 19:48:39 ID:SkEM5GRI0
プギャーさんまさかのキャラ被り
しかしジョルジュはモララー相手でも死んでないのか
179
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/25(火) 23:16:33 ID:dL5XzqK.0
はい
180
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/25(火) 23:42:07 ID:dL5XzqK.0
ワカッテマスは、何も答えなかった。
ペニサスも、無反応という反応が返ってくることは分かっていたし、それでいいとすら思っていた。
唐突に上空に出現した火龍ファフニール。
それはまさに、不干渉を決め込むモララーを除き、ジョルジュの監視下に置かれたVIP学園の被支配の象徴。
各々が被支配を良しとしないこの場所で、早々に反乱の芽が芽吹くことは、ごく自然の道理。
その反逆の火蓋となるのが、ワカッテマスとペニサスであったということについては、王位の誰もが予想できなかっただろう。
('、`*川「ちょうど、このあたりだわね。うん。ねえ、この地盤をふっ飛ばしてくれる? 出来るだけ目立たないように」
( <●><●>)「難しい注文だな」
ワカッテマスはしゃがみ込み、手のひらをコンクリートに押し当てた。
次の瞬間、ペニサスの背中に槍で貫いたような鋭い衝撃。
凡百の放つ闘気とは一線を画す龍王気。高密度の覇気が刹那のうちに収束する際の感覚だった。
次に雪崩れ込む衝撃はまさに直下型地震のそれで、彼らを中心に、直径凡そ百メートルのクレーターが出来上がった。
抉れると同時に破砕されるコンクリート。彼らの足元に、剥き出しの配線が広がる。
181
:
名無しさん
:2017/07/25(火) 23:45:14 ID:W3XTXLGI0
来た来た支援
182
:
名無しさん
:2017/07/26(水) 00:09:13 ID:Su.S0p4c0
よっしゃ!待ってたで!
183
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/26(水) 00:12:04 ID:6DYm.WdU0
( <●><●>)「これは……電力供給用のケーブルか?」
('、`*川「惜しいけど不正解。動力を供給してるのは合ってるけど、流れてるのは電気じゃなくて……」
徐ろにケーブルの中の一本を引き上げ、引きちぎる。
ワカッテマスはそれの断面から溢れ出る不可視の気を感じ取り、眉を顰めた。
('、`*川「気づいたでしょう。あたしらの足元には闘気が流れてる」
( <●><●>)「俺たちがあれだけ調査に躍起になっていた力は、既に自在に流用出来るところまで解析されていたということか」
('、`*川「あたしは最初から全部知ってましたけど?」
( <●><●>)「……」
('、`*川「……嘘だって。分かったのは最近のこと」
184
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/26(水) 01:02:59 ID:6DYm.WdU0
('、`*川「結局あたしらは大人の掌の上で踊らされてるに過ぎないってことよね」
( <●><●>)「その現状を打破するための闘いだ」
('、`*川「そゆこと」
その返事を待っていたと言わんばかりに、ペニサスは満足げに微笑んだ。
彼女の腰から背中にかけて、ブレザーが破れ、銀翼が突き出る。
それはデレと対峙した際の翼の倍以上の大きさで、背後のワカッテマスから彼女の体躯は見えなかった。
肘の関節部分から指先にかけて、人工皮膚の継ぎ目から配線が露出する。
ちょうど引きちぎったケーブルを体内に取り込むような形で、ペニサスと、学園地下の動力源が接続された。
('、`*川「あの七面倒な火龍はあたしが引き受ける。王位の中で一番闘い方が悪目立ちするのはジョルジュ。それに次いであたしだろうしね」
( <●><●>)「関係あるのかそんなこと」
('、`*川「大アリよ。打ち上げる花火は大きければ大きい方がいいじゃない」
('、`*川(派手にドンパチやらかして応援待ちっていうのは内緒でいいか、うん)
185
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/26(水) 01:14:07 ID:6DYm.WdU0
('、`*川「あんたは確かに強いけど、その強さを遺憾なく発揮出来る持続力は所詮人間の域止まり。その瞬発力は本命とぶち当たった時にとっときなさいな」
( <●><●>)「……」
ワカッテマスはペニサスがやろうとしていることを即座に理解した。
そしてそれが彼女にとってこの上ない危険を伴うことも。
生唾を飲み込むまでの間に過ぎった様々な感情を飲み下して、ワカッテマスはペニサスの隣に並ぶ。
( <●><●>)「半日……いや、三時間でかたをつける」
('、`*川「頼りにしてるわよん、あなた」
口を閉ざしたまま、ワカッテマスはペニサスの長髪を手の甲で撫でた。
その感触が、人間のそれと何一つ変わらないことに何を思ったか。その表情から窺い知ることは出来ない。
( <●><●>)「お前が火龍を止めている間に俺が奴を探し出して討つ。これでいいな?」
('、`*川「オールオッケーよ」
( <●><●>)「野蛮で単純なプランだ」
ワカッテマスはこの夜、初めて笑った。
186
:
名無しさん
:2017/07/26(水) 01:31:30 ID:nD2T7WHs0
うおお更新きてる
187
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/26(水) 02:06:41 ID:6DYm.WdU0
ジョルジュが何処にいるか、ワカッテマスには凡その見当がついていた。
好戦的、野蛮、それでいて豪奢を好む。高いところに上りたがる馬鹿の典型だと、ワカッテマスは内心毒づく。
( <●><●>)(学園長室で間違いないだろう。アテが外れようと、ああいう手合の考えることだ。詰めるのは造作も無い)
やや前のめりに、ペニサスに背を向けた上体。
適度な脱力。それでいて、普段は闇を映す虚ろな双眸に、今は一筋力強い光。
それは前向きな感情ゆえの光ではなく、薄暗く、限りなく黒に近い感情で塗り固めた衝動。
人間の原初とも言える狩猟本能。
王位という他者が決めた序列の上で自分を上回っている相手に対して、ワカッテマスは捕食者としての衝動を滾らせていた。
('、`*川「火龍は無視。あんたは何も気にせず真っ直ぐあちらさんの懐に飛び込みなさい」
( <●><●>)「ああ」
剥き出しになった配線の山を踏みしめて、中腰の姿勢。そして、足に力を込める。
( <●><●>)「信用している」
('、`*川「うん」
ワカッテマスが、地を駆る。
188
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/26(水) 02:28:02 ID:6DYm.WdU0
矢の如く駆るワカッテマス。時間にして、三秒にも満たない間に、火龍ファフニールは自身の主を脅かす存在を捉えた。
自律駆動する龍に自我があるのか否か、危機を察知する力があるのか否か。
それは主であるジョルジュにしか分からない。
だがこの時火龍は実に生物的に、咄嗟に大口を開けた。
収束する炎。周囲の酸素を巻き込み、その口の中で燃え上がる炎は一層大きな膨らみを見せた。
( <●><●>)「……」
ワカッテマスはそれを視界の端で捉えてなお直進する。
彼の脳内の警鐘は喧しく鳴り響いていた。
それを無視して一息、深く息を吸い込む所作は、自身の防衛本能のリミッターを切るには充分だった。
常に平静である彼が、このように”腹を決める”のは生涯で初めてのことだったが、この時彼にそれを自覚する術は無い。
火龍の口内の炎の膨らみが、ピークを迎えた。
189
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/26(水) 02:55:16 ID:6DYm.WdU0
('、`*川「さあ、セント・ジョーンズの系譜と現代の人間の技術。魔術と科学の根比べを始めましょうか」
.
190
:
名無しさん
:2017/07/26(水) 07:06:50 ID:lBbq.MmU0
いいとこで切るな
続きが読みたい!!
191
:
名無しさん
:2017/07/26(水) 08:38:31 ID:8eJaZfnw0
乙はよ
192
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/26(水) 09:31:40 ID:BBPNDufo0
すまん、寝落ちしてた
流石にこの量で投下しましたは笑えないので今日もやる
193
:
名無しさん
:2017/07/26(水) 09:52:50 ID:8F/2xFtw0
字下げの使い方が変わったな
期待してる
194
:
名無しさん
:2017/07/26(水) 13:05:31 ID:NErLEk3Q0
いいところで切るな
195
:
名無しさん
:2017/07/26(水) 19:14:15 ID:vTSNQFHU0
ワカ達には生き残ってほしいな
196
:
名無しさん
:2017/07/26(水) 23:26:35 ID:x89gl00.0
でもジョルジュに死んでほしくないなぁ
197
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/26(水) 23:43:00 ID:6DYm.WdU0
はい
198
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/26(水) 23:53:44 ID:6DYm.WdU0
学園の動力ケーブルと接続されたペニサスの腕は真っ直ぐ火龍に向かって伸びる。
手首の部分の人工皮膚を突き破り、物々しい銃口が露出する。
('、`*川「どれだけ再生しようと、それが永遠に続くなんてあたしは認めませんわよ」
ちょうど火龍の口内に収束した炎と対をなすように、右手の銃口に光が集う。
燃え、薄れゆく夜闇を更に照らすように、そしてその光は、明確な殺傷能力を孕んだ闘気の渦を纏う。
('、`*川「不可思議ファンタジーと言えど、一都市を賄う動力を相手にするのは骨が折れるでしょ?」
その言葉は、火龍ではなく主に向けて放ったもの。
ペニサスは確信していた。
自分とワカッテマスだけでは、この叛逆には少し足りない。
欠けているパーツはほんの小さなもの。だがそのままで王位逆転は成らない。
それでも、この叛逆の最後に立ち、第二王位を継承するのはワカッテマスだと。
199
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/27(木) 00:05:26 ID:LDMHml0U0
射出。光弾は嘶き、元職員居住寮の外壁を軽々と打ち破る。
真っ直ぐ空を駆るそれは、寸分違わず龍の口に向かう。
火龍の首はワカッテマスに向かっており、自身を脅かすもう一つの脅威の接近に気づかぬまま被弾した。
('、`*川「一発目は当たり。さてさてここからよね」
噴煙立ち込める上空。
ペニサスは火龍ファフニールが実体と非実体の二形態を取ることが出来るのを知っていた。
被弾した形跡を残す上空の煙から、今の形態が実体であることを瞬時に察知。
再び収束する銃口の光。一度目よりその収束速度は高かった。
射出された光は先のような光弾ではなく、火龍目前で拡散し、無数の光の弾丸と化す。
次々と射抜かれてゆく火龍の胴。貫く弾丸はその遥か上空へと昇る。
200
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/27(木) 00:16:20 ID:LDMHml0U0
('、`*川(非実体……あちらさん、こっちにも気付いたみたいね)
闘気を補填し続け、固定砲台として火龍と対峙するにしても、地盤を焼き尽くされることは避けたい。
ゆえに、ペニサスが次に取った行動は、敢えて火龍の眼前に躍り出ることだった。
('、`*川「第二陣、いってみましょー」
銀翼が開き、内部のブースターが露出する。
動力化された闘気は満ちている。甲高い音を立て、ブースターは光を噴出する。
一瞬で火龍と同じ高度まで持ち上げられたペニサスの身体は風を帯び、各関節付近から金属パーツがせり上がって露出する。
彼女は無意識的にこの形態を避けていた。
未だ残る人間としての本能が、自身を熱持たぬ機械へと貶めることを避けていたのか。
この時点で彼女は、それを自覚していない。
201
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/27(木) 00:31:23 ID:LDMHml0U0
('、`*川「あんたも難儀なもんよね。火龍? あんな野蛮な男が主じゃあやってらんないでしょ。たまに思わない? 好き放題こき使ってくれやがってって」
火龍の頭はペニサスに向いていた。
ペニサスは火龍に問いかけつつ、視界の端で地上を駆るワカッテマスの背を捉える。
まずは第一段階クリア、と、ペニサスは内心胸を撫で下ろした。
('、`*川「そもそもあんたに自我ってやつはあるんかね。どこから来たの? それとも元々存在しなかった? ジョルジュに作られた存在なのかしらね」
物言わぬ火龍に対して、そのような問いは何の意味も持たないことを、ペニサスは知っている。
自我があると仮定して、少しでも自分へ意識を向けることが出来ればという、気休めのような小細工だ。
それでも火龍の自我の有無自体には興味があった。
自身をサイボーグに改造する過程で、彼女は似たような人造人間を多く作ってきた。
それらは全て所詮意志を持たぬ人形でしかなく、戦闘における緻密な処理に適していなかったので、廃棄した。
それらが残した研究成果の甲斐あって、ペニサスは今こうして人成らざる力を有して闘いの場に立っている、
そのような経歴ゆえ、物言わぬジョルジュの傀儡と、自身が以前廃棄した人形の、無表情を貼り付けた顔が、ペニサスには重なって見えた。
202
:
名無しさん
:2017/07/27(木) 00:35:13 ID:p839ofj60
来てた!!!! 支援
203
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/27(木) 00:47:15 ID:LDMHml0U0
更に上空に飛翔。
ペニサスは火龍を煽り立てるように旋回する。
再び火龍は大口を開けて、炎を吐き出す。
('、`*川「いくよヴァルキリー」
背部より四つのユニットが飛び出し、ペニサスの眼前で止まる。
炎はそれらに結ばれる形で発生した不可視の壁に遮られ、雲散した。
楕円状に広がる炎を突き破り、四発の光弾。それにやや遅れて、先程の拡散する無数の光弾。
火龍は瞬く間に龍としての形態を維持出来ぬまで貫かれ、学園上空は炎に覆われる。
炎は踊り狂い、ペニサスを囲い込む。
咄嗟にその場を離脱しようとした彼女だが、既に脱出する道は残されていなかった。
('、`*川「あら」
自身を中心に、三百六十度覆う炎の壁、ぐるりと小さく旋回しながら、逃げ場がないことを悟った彼女は、銀翼を変形させ、分離させた。
204
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/27(木) 01:25:16 ID:LDMHml0U0
足部から露出したブースターで滞空し、変形させた銀翼を手に取る。
それは大剣の柄の形をしていた。両手で握り、頭上に掲げる。
次の瞬間、柄から光の刃が伸び頭上を覆う炎を突き破った。
('、`*川「ヴァルキリーシステム殲滅ユニット003、魔剣グラム。とくと味わいなさいな」
真っ直ぐ振り下ろす光の刃。
それは目にも留まらぬ速度で伸び、振り切った時点で、地上に届いていた。
魔剣の柄を手放すと、光の刃は粒子となって散り、ペニサスの手から離れた柄は銀翼に変形し、ペニサスの背中に収まった。
真っ二つになった炎の壁の裂け目に向かって直進。
ペニサスが脱出した直後に炎は球状に収束した。
205
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/27(木) 02:33:14 ID:LDMHml0U0
炎は再び龍の形を形成してゆく。
それを悠長に待つわけもなく、ペニサスは四機のユニットから光弾を一斉掃射する。
が、炎の形成はそれを上回る速度で進み、散らされる以前よりも更に大きな龍と化していた。
('、`*川「ふむ……」
一度や二度で殲滅出来るとは、ペニサスも思ってはいなかった。
もしそうなら、初めからワカッテマスと二人で突破していた。
しかし想定はしていても手を拱いてしまうことには変わりなく、深い溜息を吐く。
('、`*川「一体どういう仕組みなのやら」
彼女の中で大雑把に考えられるのは二つ。
一つ、主であるジョルジュからの、闘気に似た何かしらの動力供給が尽きぬ限り再生し続ける。
二つ、ジョルジュが供給しているのはあくまで火龍という怪物を形成するシステムのみで、それ自体は何かしらの媒体(例えば空気中の酸素)がある限り永遠に再生を続ける。
どちらにしても火龍ファフニールが顕現するという結果は変わらないが、その二択のどちらかによって、ペニサスは自身の立ち回りを大きく変えなければならない。
206
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/27(木) 03:12:29 ID:LDMHml0U0
('、`*川(前者ならこうやってうだうだやってるだけでいいんだけどねえ。後者だと)
何かを媒体にしているならば、酸素という線は濃厚だろう。
そして同時に、最も厄介な展開でもある。
('、`*川「どうしたもんかね」
都合よく、こういう厄介な相手を殲滅出来る手段を持ち合わせているわけではない。
そこを埋め合わせる可能性を拓く為に、このように敢えて目立つ形で火龍と対峙しているのだが、ペニサスの心中は煮詰まっていた。
('、`*川「モララーは、絶対来ない。流石兄弟、荷が重い。シャキンはうん、ここに来るほど馬鹿ではない。ギコ、あいつは殴るしか脳が無い……」
上空を巡回する火龍を疎ましく思わない王位は、あれが脅威とならないモララーを除いて一人もいないはず。
ペニサスはそう見立てていた。この場に、王位のうちの誰かが確実に現れる。
その確信を抱きつつも、今挙げた者を除いて残った王位の顔を思い浮かべて肩を竦める。
('、`*川「デレと人形。そして真祖サマかあ……」
自分で、出来るところまでやろうと、ペニサスは腹を決めた。
207
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/27(木) 03:47:16 ID:LDMHml0U0
从 ゚∀从
ζ(゚ー゚*ζ
デレは論外。
あれは狡猾に見えて考えなしの馬鹿だ。
ペニサスはデレがこの場に現れた際のシミュレーションをすぐに止めた。
真祖ハインリッヒ・アルカード
デレと比較して一見すると更に馬鹿に見えるが、そうでもない。
むしろあの冷ややかな瞳の奥に、自分の推測すらも凌駕する野心を孕んでいるようにすら見える。
以前は人物というより、吸血鬼という事象として害意を振りまく厄災でしかなかったが、転機があるとすれば、内藤ホライゾンとの邂逅だろう。
それ以降彼女は良い意味でも悪い意味でも、人間的になった。
そしてその過程を踏んで今、内藤ホライゾンと行動を共にしなくなった彼女は、厄災とも人間ともとれない、得体の知れない何かとなった。
それがペニサスの見解。
元々吸血鬼の特性は、一対一で相手取るには厄介過ぎるものだった。
それに加えて思考の推測すら困難とくれば、ペニサスが眉を顰めるのも当然だ。
('、`*川「…………」
頭の端の方から霞んでいくような不吉な予感を、ペニサスは確かに感じ取っていた。
208
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/27(木) 03:47:57 ID:LDMHml0U0
ねむいっす
明日もやるんでゆるしてくださいおやすみ
209
:
名無しさん
:2017/07/27(木) 03:54:14 ID:4GRUS7kQ0
うれしい
210
:
名無しさん
:2017/07/27(木) 04:34:04 ID:Je3Di/2Y0
おつおつ
211
:
名無しさん
:2017/07/27(木) 04:35:36 ID:yMKPLcLA0
おつおつ。
212
:
名無しさん
:2017/07/27(木) 08:57:13 ID:aRyV3RUE0
乙
待ってるぞ
213
:
名無しさん
:2017/07/27(木) 18:22:11 ID:LRjbVH6I0
サイボーグペニ△
214
:
名無しさん
:2017/07/27(木) 23:10:41 ID:fSCG./NE0
やっぱ楽しいわ
ジョルジュがんばってー
215
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/27(木) 23:16:25 ID:LDMHml0U0
既に眠たいがやれるだけやる
216
:
名無しさん
:2017/07/27(木) 23:21:45 ID:Dbo.VHfw0
待ってました
217
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/27(木) 23:40:54 ID:LDMHml0U0
火龍は身を震わせる。
それが何かの前兆であることを察知したペニサスは、大きく後退した。
右手の銃口を向けたまま、龍がどのような動きを見せても即時対応出来るよう、銀翼のブースターを待機状態にする。
そして左目を閉じる。彼女の目に搭載された汎用センサーを起動する所作だ。
熱センサーとしての役割も持つそれで見る火龍は、みるみるうちにその色を濃くしてゆく。
('、`*川(火龍の熱が上がってる……?)
ファフニールを取り巻く待機の歪みは大きくなり、まるで空間そのものが歪んでいるような錯覚を、見る者に与える。
だがそれは変化の序章に過ぎなかった。
次の瞬間、火龍の頭部の、ちょうど目に当たる部分が不自然に窪み、赤い宝石のような瞳が現れた。
不気味な質感の半球でしかなかったそれは瞬く間に、炎の中で艶を纏い、眼球の形を成した。
次の変化は口内だった。
燃え盛る大顎から生えた牙は硬質を纏い、火龍は猛獣のような生々しい殺意を纏う。
変化を見届けたペニサスは龍の初動を許さない。
再び、拡散する光弾が火龍に襲いかかる。
218
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/28(金) 00:03:29 ID:Fj9fIdt60
火龍をすり抜けた光弾が遥か彼方へ直進する。
('、`*川(非実体)
そのわりにこの悪寒の正体は――と考えたところで、ペニサスはローリングした。
元いた場所に向かって伸びた龍の顎は勢い良く閉じ、鋼鉄を打ち鳴らしたような甲高い音が鳴り響く。
('、`*川(実体)
('、`*川「……って区別すること自体ナンセンスだわねこりゃ」
ヴァルキリー自体に補填されていた闘気が少ないことを確認すると、ペニサスは火龍に背を向けてブースターを起動した。
甲高い音と一筋の光を残し、一瞬で離脱したペニサス。
取り残された火龍は自身が取り残されたことを認識すると、実に動物的な咆哮を上げた。
硬いもので硬いものをすり潰すような、耳障りな爆音が学園上空に鳴り響く。
火龍は胴を丸め、自身の首を光の残滓に向け、弾丸のような速度で直進した。
219
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/28(金) 00:25:10 ID:Fj9fIdt60
('、`*川「おっほーーーーー。お速いこと。これでも全開で飛ばしてるんだけ……っど!」
追いかけてくる火龍を視界の端で捉え、追尾する四機のユニットから光線を射出する。
火龍の咆哮が止み、首を中心に文様で形成された炎の光輪が現れる。
次に、先程とは打って変わって低く響き渡る唸り声。
光輪から矢のような炎が無数に発生し、直進する。
光弾と炎の矢は衝突し、学園上空の空が爆ぜる。
煙幕を突き破り、火龍はなおもペニサスの背を追う。
追われるペニサス、進行方向は変えぬまま身を反転させ、右手の銃口に闘気を収束させる。
('、`*川「さっさと堕ちなデカブツ。空中戦ではロックオンされた方が死ぬのがお約束なのよさ」
一際大きな光弾を射出。
ペニサスと火龍との間にある隔たりは縮まっており、その一撃は、避けられる筈もなかった。
220
:
名無しさん
:2017/07/28(金) 00:30:12 ID:tAFq5SC.0
ヒットアンドアウェイな戦い方に切り替えてるのカッコイイ
221
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/28(金) 00:42:37 ID:Fj9fIdt60
光弾と正面衝突した火龍。
それでも直進する速度は落ちない。
再生能力ゆえに手こずることは想定していても、この耐久力は彼女の知るところではなかった。
一際大きな煙幕の向こう側から炎が伸びるのを察知して、それを回避する動作が遅れた。
('、`;川「あっっぶね!」
左手の手首から先が巻き込まれかけ、ペニサスは降り掛かった火の粉を旋回して振り払う。
飛行する高度を下げ、建造物の間に潜り込むが、火龍は自身の体躯がそれを巻き込むことも厭わず突き進む。
その間両者の間で飛び交う光弾と炎の矢は四方八方に悲惨し、各所で爆発を起こす。
この時ペニサスに知る術は無いが、第三ブロックでの火龍と王位の戦闘は、既に学園中に原因不明の騒ぎとして知れ渡っていた。
222
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/28(金) 00:57:57 ID:Fj9fIdt60
ペニサスが真っ直ぐ向かうのは最初に火龍を狙撃した地点。
そこまで辿り着くのに十秒とかからなかった。
剥き出しの配線の山を見つけるなり、ペニサスは更に加速し、火龍との距離を開く。
更に高度を下げ、地面すれすれのところで手を伸ばし、千切れたケーブルに手を伸ばす。
('、`*川「頭冷やしな」
瞬時に闘気の補填。更にケーブルを通じて、学園の動力系に呼びかけ、各種装置を起動する。
学園は閉鎖空間ゆえ、天災、人災時の為のスプリンクラー等の性能は世界各国の最高レベルのものと比較しても遜色ない。
周辺ビルのスプリンクラー、および遠方の放水ポンプ等が一斉に起動し、龍の起動目掛けて放水が始まる。
瞬く間に空は水の壁で覆われ、大海嘯が如き水流が降り注ぐ。
刹那、アーチ状になった水をくぐり抜け、ペニサスは高度を上げながら直進する。
ヴァルキリーの闘気残量の確認に入ると、彼女の背後で水の壁が大地を叩く轟音が鳴り響いた。
223
:
名無しさん
:2017/07/28(金) 01:11:49 ID:9u6/8dpU0
支援
224
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/28(金) 01:55:40 ID:Fj9fIdt60
文字通り大海嘯となって、水は第三ブロックを飲み込む。
各所で警報が鳴り響き、赤いランプが夜を照らす。
ちょうど第三ブロックと隣接ブロックの境に当たる地点から壁がせり上がる。
流れを得て膨大な運動エネルギーを孕んだ水が壁と激突し、轟音を上げる。
('、`*川「こりゃ会長さんが戻ってきた時に大目玉食らいそうね」
火龍がいた地点では靄が立ち込め、建造物は次々に倒壊してゆく。
その様を上空から見下ろしながら、ペニサスは深い溜息を吐く。
そのようにして、一瞬安堵しかけた。ゆえに彼女は――
自身の周囲の温度が急激に上昇していることに気づくのに、遅れてしまった。
('、`;川「っ!?」
彼女からすれば、唐突に自分の目の前が真っ赤に染まったようなもの。
生身の脳が混乱から状況処理に切り替わる。間に合わない。ユニット展開。あるいは――
225
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/28(金) 02:02:48 ID:Fj9fIdt60
その全てが間に合わないことを悟った彼女の身体は、打開策の残滓を脳に残したまま来たる熱量、衝撃に備える。
ペニサスはそれでも、目を閉じなかった。
その行為に意味が無いからではない。
必ず生き残ると決めているからこそ、思考停止に繋がる所作を忌避したのだ。
それは機械的な状況処理能力からくるものではなく、紛れもなく彼女の中の、人間である部分の生存本能。
.
226
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/28(金) 02:07:39 ID:Fj9fIdt60
だからこそ彼女は、突如吹いた突風に揺られた炎の裂け目から、脱出することが出来た。
.
227
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/28(金) 02:14:10 ID:Fj9fIdt60
('、`*川「……あんた」
ブースターの限界速度から急停止をかけた為、ペニサスの身体は空中でよろめく。
目の前で"片翼の翼で不自然に対空する異形の者”を視認し、息を飲んだ。
自分の想定の中でも最上位の希望的シチュエーション。
それでいて、彼女の中で最も計り知れない者との邂逅。
そうして飛行を止めたのは、その一瞬のみ。
ペニサスは危機から完全に離脱するため再び遥か上空に飛び、眼科に銃口を向ける。
('、`*川「何しに来たのかしら」
一呼吸置き、生唾を飲み下す。
('、`*川「吸血鬼」
228
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/28(金) 02:21:40 ID:Fj9fIdt60
从 ゚∀从
('、`*川
飛散した炎はペニサスではなく、漆黒の翼で滞空するハインの周囲をうねり、瞬く間に龍の形を成す。
从 ゚∀从「決まってんだろうが」
頭上に翳した腕。
その腕はどす黒く染まり、彼女の身の丈以上の大きさに肥大する。
獣の腕だ――と、ペニサスは猛る獅子のそれを思い浮かべた。
しかし実際にハインの腕は獅子の腕よりも禍々しく、鋭利に伸びたその爪は、この世のどの生物のものにも当てはまらなかった。
未知数ゆえに悍ましい。
ペニサスの心境を知ってか知らずか、ハインは微笑んだ。
氷のようで、それでいて壊れた人形のような、温もりの余韻が後引く寂しさを孕んだ笑み。
从 ゚∀从「俺は人間が闘う全ての理由を、壊しに来た」
吹き荒ぶ風。
銀髪が舞い、露わになった金色の瞳が輝く。
229
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/28(金) 02:23:29 ID:Fj9fIdt60
二十四話おわり。
死ぬほど甘やかして褒めちぎってくれ。そして感想をくれ。
おやすみ。
230
:
名無しさん
:2017/07/28(金) 02:28:32 ID:WcNY9/Ok0
おつかれ、おやすみ。
ペニサス退場フラグかと思ったら生存フラグで、でもやっぱり死にそうだからハラハラしてる。
今のハインには勝てる気がしない。
231
:
名無しさん
:2017/07/28(金) 02:28:38 ID:rwCtJjdM0
ハイーーん
232
:
名無しさん
:2017/07/28(金) 02:35:36 ID:tAFq5SC.0
すげぇわやっぱ
乙
233
:
名無しさん
:2017/07/28(金) 06:16:56 ID:bXj5SAzU0
ハインかわいい
234
:
名無しさん
:2017/07/28(金) 09:02:45 ID:CrJJVeVE0
おつおつー!
ペニサスが色っぺぇ美しい
235
:
名無しさん
:2017/07/28(金) 10:24:13 ID:KHs2gzfI0
来てたのか!!!乙!
引きが素晴らしい
236
:
名無しさん
:2017/07/28(金) 18:11:53 ID:8qn2N/1o0
もう血流してないのか
コントロールできてんのかな
237
:
名無しさん
:2017/07/28(金) 20:37:13 ID:296gDseI0
ハインはどこに向かっていくのか……
乙
238
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/28(金) 20:43:01 ID:Fj9fIdt60
色々考えた結果、まぁ紅白のデモンストレーションということで、期間中体調悪い日と用事がある日以外は毎日投下していこうと思う。
というわけで今夜も手が空き次第投下。
よろしく。
239
:
名無しさん
:2017/07/28(金) 20:46:01 ID:tAFq5SC.0
うおおおおまじか、アツいな楽しみ
240
:
名無しさん
:2017/07/28(金) 21:00:00 ID:Y9EEYCNM0
マジか!!!
ありがとう。紅白自体よりもそっちのが楽しみ。
241
:
名無しさん
:2017/07/28(金) 21:28:45 ID:9WVQfHTM0
俺はもう紅白の開催者に全力で感謝してるよ
もちろん作者にも
242
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/28(金) 21:30:30 ID:Fj9fIdt60
第二十五話「野に咲く花のように」
.
243
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/28(金) 21:43:10 ID:Fj9fIdt60
学園上空の空に浮かぶ銀翼と黒翼。
そして、火龍ファフニール。
一堂に会する彼女らが視線を交えたのはほんの一瞬だった。
夜闇に覆われる空は曇天。やがて、雨が降り注ぐ。
地上の混乱など、三者にとってはどうでもよい。
最初に動いたのはペニサスだった。
旋回しながら高度を上げ、四機のユニットから光弾を射出し続ける。
その狙いはでたらめで、火龍にもファフニールにも掠らず、地上に降り注ぐ。
从 ゚∀从「そうカリカリしなさんな。何も取って食おうってんじゃないんだからよ」
目にも留まらぬ速度で飛行する銀翼を見上げ、ハインは呆れたような溜息を漏らす。
火龍が嘶き、直進する。標的はハイン。
その破壊衝動の矛先がペニサスからハインに変わったのは、火龍の意志故か。
あるいは、ジョルジュの術式が定めた攻撃優先度が切り替わったか。
どちらにしても、ハインは歯牙にもかけなかった。
244
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/28(金) 22:14:46 ID:Fj9fIdt60
('、`*川「時代の忌み子には御誂え向きな挨拶でしょう?」
光弾が地上に降り注ぐ。
着弾箇所はランダムと思いきや、第三ブロックに限定されている。
その分被害地点である第三ブロックは大波に飲まれた上、高エネルギー体に爆撃され、未曾有の大損害に見舞われていた。
从 ゚∀从「時代の忌み子か……そんな呼称もあったな。本当に好き勝手呼んでくれやがるぜ」
それは吸血鬼の習性、力の継承に明るい一部の人間の間での、真祖を指す言葉。
真祖はどの時代にも一人しか存在しない。
数十億ものいる人類の中でたった一人、先代の真祖に見初められてしまった彼、彼女らの不運を憂いて、吸血鬼を知る人間はそう呼ぶ。
同情か、畏怖か。
その呼称に込められる念はその時々によって異なるが、今は、そのどちらでもなかった。
245
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/28(金) 22:27:45 ID:Fj9fIdt60
――――
――
「なんでだよオサム……あんただったら人間なんかに殺されるようなヘタは打たねえはずだろ!」
「……かもな」
「かもなって……お前……」
「なぁハイン」
「……んだよ」
「俺はさ、自分が人間に殺されたとは思ってないんだ」
「自分の状況考えてからもの言えよ。あんたをそんなにしたのは……」
「宿命だよ、これは」
「……宿命?」
「運命に殺された、とでも言おうか。いや、違うな。そんなちゃちなものじゃない。こう言い換えることも出来る」
――――
――
246
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/28(金) 22:28:42 ID:Fj9fIdt60
「―――――」
.
247
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/28(金) 23:07:23 ID:Fj9fIdt60
火龍の胴がハインを巻き込み、燃え盛る。
避ける所作を微塵も見せなかった彼女に不信感を抱くことなど出来ない火龍は、ただ動物的な咆哮を上げる。
从 ∀从『第一魔法セント・ジョーンズ。お前が喧嘩を売ったのはこの私だ』
業火の中、焼失と再生を繰り返す彼女は、ここには居ない、いや――この世界にはいない魔術師に向けて、言霊を吐き棄てる。
それは世界という小さな箱庭の中で、何百、何千年と同じことを繰り返してきた魂達の体現者としての言葉。
あるいは、彼らへの手向け。
从 ゚∀从『まずはそれを解らせる』
可視化された黒色の波動が上空に広がる。
火龍の胴は飛散し、火の粉が地上に降り注ぐ。
从 ゚∀从『火龍の残滓如きで私を抑えられると思うなよセント・ジョーンズ。これは子供の戯れ合いではない』
ハインを知る者ならば、彼女の喉から発せられていることを即座に疑う、低く棘々しい声。
248
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/28(金) 23:27:51 ID:Fj9fIdt60
('、`*川「……」
ペニサスはハインに自身の戦慄を気取られぬよう、更に高度を上げる。
雲にも届かんと空を昇る銀翼は、黒の衝撃の余波を逃れ、滞空する。
('、`*川「タチの悪いジョーカーが紛れ込んだもんよね、この学園。いや……」
ペニサスは先程のハインの声、黒の波動に、幼い頃無邪気に覗き込んだ闇と同じものを見た。
('、`*川「この世界、か」
委員会によって完璧に統治され、その上で彼らの思惑の中で踊らされる世界。
その中に紛れ込んだ闇は、イレギュラー。
世界そのものから存在を否定され、それでいて完全な世界の病巣として巣食い続ける癌。
('、`*川「あんたと真祖サマが惹かれ合ったのは、宿命ってやつだったのかもね。ブーン」
急降下するペニサスの目的はただ一つ。
地上で、ジョルジュの元に向かうワカッテマスを捕捉すること。
249
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/29(土) 00:14:37 ID:MJ.Sf8WE0
从 ゚∀从『嘆きのストリガ』
黒く肥大したハインの腕を中心に魔法陣が浮かび上がる。
陣は先の黒の波動のように広がり、青い炎に包まれた骨の群衆が咆哮を上げながら顕現する。
散り、地上に降り注いだ火の粉は逆再生のように再び上空に集う。
龍の形を成しながら、骨の軍勢が纏う青い炎と衝突し、空が歪む。
火龍の咆哮と、悍ましい軍勢の嘆きが空から地上に降り注ぎ、小規模な爆発が四方八方で巻き起こる。
从 ゚∀从『意固地な奴だ。どうあっても私の言葉は聞かんと。そういうことだな?」
邪気を含んだ笑みを湛え、ハインは空に翳した異形の手を握る。
骨の軍勢は瞬く間に、空を覆い尽くした。
雷が、曇天の隙間で輝いた。
250
:
名無しさん
:2017/07/29(土) 00:23:37 ID:hHyicgVs0
リアタイ遭遇!
支援!!
251
:
名無しさん
:2017/07/29(土) 00:53:13 ID:4u0BgJUc0
楽しみにしてるぞ、シエンタ
252
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/29(土) 01:18:58 ID:MJ.Sf8WE0
(;´_ゝ`)「こっちだ! 自力で逃げられるやつは第八ブロックに迎え! 腕力に自信があるやつは負傷者をトラックの荷台に積んでくれ!」
学園第一ブロックにて、兄者の声が響き渡る。
上空から降り注ぐ火の粉。鈍器のような運動エネルギーを孕んで落ちてくる骨。
そして第三ブロックから漏れ出した水流によってなぎ倒される建造物。
突如学園に襲いかかる大災害に際して、誰よりも速く混乱を諌めようと乗り出したのは流石兄弟だった。
( ´_ゝ`)「間違っても向こうで流された奴を助けようなんておもうんじゃねぇぞ! まずはてめぇらが生きることを考えろ!」
(´<_` )「兄者! もう積めない! どうする!?」
( ´_ゝ`)「第五ブロックなら飛ばして十五分で戻って来られるだろ! あのデカいテーマパークが避難所として開放されてる筈だ!」
(´<_` )「あそこは水が来るまでそう時間が無いだろ! 人数は少ないがせめてこいつらだけでも……」
( ´_ゝ`)「治療専門のスタッフが残ってる筈だ! そいつらに水の状況を伝えて、救命班と輸送班に別れるよう指示してくれ! アシがあったらあるだけ一緒に持ってこい!」
(´<_` )「分かった! 十分で戻る!」
253
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/29(土) 01:31:35 ID:MJ.Sf8WE0
しんどい、ちと休憩するわ
寝たらごめん
254
:
名無しさん
:2017/07/29(土) 02:07:29 ID:E4SnhWlE0
おk
255
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/29(土) 02:58:10 ID:MJ.Sf8WE0
ハソ;゚-゚リ「話してよ! ネーノがまだ第三ブロックいろのよ!」
トラックを走らせる兄者の背後で、女の悲鳴にも似た甲高い声が響く。
兄者のMCとしての活動のプロップスの男たちが、暴れる少女を取り押さえている。
(=゚д゚)「おい兄者! こいつどうにかしてくれよ! 水に飲まれた彼氏のとこに行くってきかねぇんだ!」
( ´_ゝ`)「……」
振り返った兄者は神妙な面持ちで歩み寄り、暴れる少女の目をじっと見据える。
ハソ;゚-゚リ「ふざけんな! 助けてくれなんて頼んでない! 離せ! 離せよ!」
少女の顔は真っ赤だった。
その異様な興奮は今の混乱だけのせいではない。
吐く息は荒く、アルコールの臭いが散る。
女は、酒気を帯びていた。
256
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/29(土) 03:10:04 ID:MJ.Sf8WE0
( ´_ゝ`)「第三ブロックはもうダメだ。ネーノとやらが第三ブロックにいたのが確実なら、もう……」
ハソ;゚-゚リ「そんなの行ってみないと分からないだろ! 何の権限があってこんな真似すんだよ!」
( ´_ゝ`)「自分が助けられるやつを助けるのに権限なんているかよ。ガキの駄々っ子に付き合ってる暇はないんだ。頼むから安全な場所に避難してくれ」
ハソ;゚-゚リ「助けられる? ふざけんなよ、ここVIPだぞ分かってんのか!? お前だって気に入らないやつぶっ殺して王位とやらになったんだろ! それを今更レスキューの真似事? 笑わせんじゃねーよ! ネーノを見捨てて逃げるくらいなら死んだほうがマシだ!」
( ´_ゝ`)「……ネーノってのは、恋人か?」
ハソ;゚-゚リ「ああそうだよ!」
( ´_ゝ`)「どうしてそいつは第三ブロックなんかに……」
257
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/29(土) 03:46:43 ID:MJ.Sf8WE0
第二王位ジョルジュが制圧してから、第三ブロックはある意味学園の中で最も危険なブロックとなった。
元々職員の居住区ではあったものの、今ではその場を乗っ取ったジョルジュの城となっていた。
王位の面子を公開する声明もあった。
それはつまり、自身の首も下克上を目論む者たちの殺意の元に晒すということであり、同時に、自身の居城として構えたこの場所に不用意に立ち寄るのであれば、それなりの対応も辞さないということ。
がらんどうなだけで、ただ立ち入るだけでそんな危険を孕んだブロックにわざわざ自分から立ち入る理由として最も考えられるのは――
ハソ;゚-゚リ「今の第三ブロックはもぬけの殻だから、職員が持ってた金目のものを盗むチャンスだって……こんな場所で、今更盗みは悪いことだなんて説教すんじゃねーぞ! ああ、大したことじゃないって、私も呑気にさっきまで酒飲んでたさ! それで、それがどうしたんだよ!」
少女は明らかに狼狽えていた。
倫理観などとうに崩壊しているこの学園で、恋人が盗みを働くことに後ろめたさを感じていなかったのは事実だ。
だがそのような堕落しきった環境は皮肉にも、件の大災害の中、第十王位という大きな存在の統率によって外部のそれと似た環境と化していた。
少女は酒気を帯びていながらもそれを肌で感じ、兄者に見据えられることによって、今どうあるべきかを突きつけられているような気持ちになった。
( ´_ゝ`)「…………」
いっそ咎めた方が、彼女にとっては逆上するという逃避手段を得ることとなり、気が楽だっただろう。
だが兄者は何も言わず、深く頷くだけだった。
258
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/29(土) 04:16:31 ID:MJ.Sf8WE0
ハソ;゚-゚リ「……ウリやってたんだよ私。私もネーノも、頭が回る方じゃない。かと言って腕っ節が強いわけでもないから」
( ´_ゝ`)「よく聞く話だ」
この熾烈な環境下で金を稼ぐには、狡猾さや腕っ節、あるいはその他の突出した何かが必要だ。
そのどれも持ち合わせていないのならば、後は身体を売るしかない。
力の無い男が、同じような女と同居するに当たって、女が売春を稼業とするケースは少なくなかった。
強姦を自身の美徳に反する行為として忌避し、なおかつ金銭という対価を支払い、売女を抱くことに抵抗の無い人間は一定数いる。
この少女も、この環境で生き抜く為に娼婦となった者の一人だ。
ハソ;゚-゚リ「職員は身なりがいいからきっと金目のものがたんまりあるって……そしたら、もうお前にウリをさせずに済むって……」
言葉を重ねるごとに、威勢が悪くなってゆく少女。
兄者にはこの二人の関係、そしてそこに確かに存在する愛情を認識するだけの理解があったが、共感は出来なかった。
( ´_ゝ`)「……」
259
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/29(土) 04:31:01 ID:MJ.Sf8WE0
周囲を見渡し、生徒の避難が滞っていないことを確認しながら、だが口を閉じたままだった兄者が重々しく口を開く。
( ´_ゝ`)「……わかったよ」
ハソ;゚-゚リ「……」
( ´_ゝ`)「俺が探してくる。お前より俺が行った方が見つけられる確率は高い。だから頼む、お前も避難してくれ」
兄者は目を伏せ、少女の足元を見つめながら避難を促す。
だが少女の足は一向に動かない。
ハソ;゚-゚リ「……うそだ」
( ´_ゝ`)「…………」
ハソ;゚-゚リ「うそだ! そんなこと言ってお前はネーノを見捨てる気なんだ! そうやってこの騒ぎが収まった頃には英雄気取り! そうに決まってる!私は騙されないからな!」
(;´_ゝ`)「違う!」
ハソ;゚-゚リ「いいや、違わないね! 私が非力だからって何にでも縋ると思うなよクソッタレ!」
自身とネーノの関係を吐露している最中とは打ってかわって、少女は再び男の腕の中で暴れだした。
260
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/29(土) 04:55:19 ID:MJ.Sf8WE0
見かねた兄者は少女の肩を掴み、鬼のような形相を貼り付けたまま顔を寄せた。
(///_ゝ゜)「誓う。絶対にお前の恋人を助ける。誰も死なせない。それが出来なかったら、お前に殺されてやるよだから……」
ハソ;゚-゚リ「……」
( ´_ゝ`)「頼む」
ハソ;゚-゚リ「…………」
ハソ;-;リ「……この通りだ」
( _ゝ )「…………」
ハソ;-;リ「お前にとっちゃ助けるべきたくさんの人間の中の一人かもしれないけど、私にとってはたったひとりなんだ」
( _ゝ )「……ああ」
ハソ;-;リ「お前、他の誰よりも優先してネーノを助けろ。そんな義理なくても、頼む。お願いだ……お前の命に替えてでも……」
261
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/29(土) 05:03:57 ID:MJ.Sf8WE0
「ああ」
涙で滲む少女の視界、彼女はもう、兄者の表情を見ることが出来なかった。
「任せとけ」
その中で確かに聞こえた力強い声。
極度の緊張状態からようやく解放された少女はそのまま意識を手放し、男の腕の中で崩れ落ちた。
.
262
:
名無しさん
:2017/07/29(土) 05:10:23 ID:rTH936sg0
かっこいい、でも不穏……
263
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/29(土) 05:11:49 ID:MJ.Sf8WE0
(=゚д゚)「この女、気ぃ失いやがった……」
( ´_ゝ`)「悪い、少し離れたところで寝かしといてやってくれ。弟者が戻って来たら第五ブロックに一緒に運んでもらうよ」
(=゚д゚)「あ、ああ……」
男は少女を運ぼうと数歩歩いたところで足を止めて、振り返った。
(=゚д゚)「なぁ、本当に行くのか? いくらあんたと言えど、確実に命は無いぜ。それにネーノとかいうのも……」
( ´_ゝ`)「行かないよ。行くわけがない」
(=゚д゚)「えっ」
( ´_ゝ`)「俺がここを離れたら誰が避難を扇動するんだ。それこそ助かる筈の命も助からなくなっちまう」
(=゚д゚)「…………」
( ´_ゝ`)「さっさと行ってくれ。俺は向こうの寮を見てくる」
264
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/29(土) 05:20:16 ID:MJ.Sf8WE0
足早にその場を離れた兄者は、行き交う人の群れの中、誰にも自身の顔を見られぬよう顔を伏せた。
( _ゝ )「……くそ、くそ!」
誰にも気づかれぬよう小さく吐き捨てる言葉。悪態。
固く結んだ口の端から、握りしめた拳の中から、血が垂れる。
なぁ王位の連中、と、兄者は胸の中で、誰にも届かない声で呼びかける。
俺はお前らにただ一言、一言言いたいことがある。
そこまで過ぎった頭の中の言葉を一旦堰き止めて、兄者は大きく息を吸った。
(# ´_ゝ`)「こっちだ! 自力で動けるやつは第八ブロックまで急げ!」
――クソッタレ!
.
265
:
ゆゆ
◆AdHxxvnvM.
:2017/07/29(土) 05:21:37 ID:MJ.Sf8WE0
寝る
褒めといてくれ
おやすみ
266
:
名無しさん
:2017/07/29(土) 05:27:34 ID:rTH936sg0
あーーーすごいよかった
怪獣の足元的な風景クッソツボ 乙
267
:
名無しさん
:2017/07/29(土) 07:35:20 ID:h4wB6FC60
兄者はほんと常識人のいい奴だな
登場キャラ全員の中で一番まともだわ
268
:
名無しさん
:2017/07/29(土) 08:58:30 ID:/7S91NOY0
>>267
ほんとにな性人だぜ
269
:
名無しさん
:2017/07/29(土) 13:45:33 ID:EcDpYfrA0
性人ワロタけど同意
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