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艦娘がいない鎮守府のようです
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:
◆L6OaR8HKlk
:2019/07/14(日) 23:48:30 ID:swN5lEdo0
『そいつは長々と今まで訪ねて来なかった言い訳を天気の話でもするかのように述べていたが、内容は一切頭に入ってこなかった』
『何より、傍らの叢雲が気がかりだったからだ。突っかかるわけでもなく、軽蔑の視線を向けるでもなく、かと言って出会った頃のように諦念に囚われるわけでもなく』
『震えていた。深海棲艦よりも脆く、艦娘よりも貧弱で、小銃ほどの脅威も無さそうな、たった一人の老人に怯えていたのだ』
『茂名も彼女の状況に気付いたのか、自分の孫にでも語り掛けるかのような優しい声色へと変わり、叢雲に手を差し伸べた』
『「お勤め、ご苦労様でした。実は、務めていらした鎮守府の司令官が謝罪をしたいと申し上げていましてね。今の処遇を取り消すので、また力を貸して欲しいと」』
『「悪い話では無いでしょう。彼も深く反省しているようですし、貴女も息の詰まりから解放される。過去の事は水に流して、再び我が国の為に――――」』
『聞いちゃいられなかった。つまりは「首輪を外して貰いたきゃ言う事を聞け」と暗に脅しかけているだけだ。最初から叢雲に拒否権は無いとでも思っているのだろう』
『傲慢だ。我慢ならなかった。叢雲にとっても不本意だろうが、一つだけ異を唱える方法があった。俺はたった今、「鎮守府」に置いて「艦娘」を使役し、敵艦隊を撃破した』
『叢雲は、「現提督」である俺の管理下にあると主張したのだ』
『茂名はわざとらしく「はて?」と首を傾げ、「貴方にその権限はない筈ですが?」と白々しく応えた。一歩踏み出した俺に、小銃を構える兵士たちもまた一歩詰め寄った』
『舐めた口を利く野郎だ。だったら奴らには俺の顔を丸焦げにして、女の子の首に爆弾を巻く権限があるとでも言うのだろうか。マスクを剥がした時、動揺が広がった』
『当の茂名でさえ、緩やかな曲線を描く口の端が僅かに歪んだ。奴はすぐさま気づいた事だろう。付け入る隙を与えてしまったテメーの失態に』
『権限は無い。確かにそうだろう。だが、そんなもの今すぐ作り出せば良い。よほど俺らを甘く見ていたのか知らんが、交渉材料は幾らでも転がっていた。その最たるものが俺の命だ』
『俺の存在が連中にとって不都合なのは確かだろう。だがサッサと始末せず、監視役を付けてまで呪われた鎮守府に置いておいたのは何かしらの「利用価値」が残っていたからだ』
『万が一くたばったとしてもそれだけの価値だったと割り切れる。もしも期待以上の成果を上げたなら、諸手を上げて活用が出来る。だからこそ、タイミングよく「迎えに来た」』
『言わば、ここでの生活は観察実験だったのだろう。後は銃でも突きつけて甘い言葉で回収すれば、めでたく「運用」へと駒を進められただろうが、そうは問屋が卸さない』
『奴らはいくつかのミスを犯していた。一つは、監視役に「叢雲」を付けた事。哀れな出生を持つ彼女を側に置いておけば、そう簡単には逃げ出せないと踏んだのだろうが、それが「偽り」では無かった』
『「敵を騙すならまず味方から」という言葉がある。ひょっとしたら叢雲の提督だった男は、上からの指示で不本意に彼女を島送りにしたのかもしれない。もしそうなら名役者だと賞賛を贈りたいものだ』
『彼女は立派に枷としての役割を果たしたが、同時に実験を滞らせる「障害」にも成った。信頼を裏切ってリアリティを重視した顛末がこれだ』
『二つ目は、成果が「想像以上」だった事。茂名が連れてきた部隊に艦娘も加わっているのは、勿論護衛の意味もあるだろうが、ほどほどの所で介入して助け舟を出す気でいたからだろう』
『だが俺達は敵艦隊を「殲滅」してしまった。そんな存在に対して、なんと奴らは朗らかに会話できるほどの距離まで近づいている』
『今の戦力差は気合と根性だけでは決して覆らない。だが、勝てずとも「誰か」と刺し違えれば計画はご破算だ。老い先短いであろう老人一人と心中するなど此方としても不本意ではあるが』
『そして三つ目は、ありがたい事にわざわざこんな説明をさせて貰える時間を「頂けた」事だ。恭しく一礼をすると、胡散臭い爺さんは小さく、ほんの小さく舌打ちをした。俺は構わず大きく吹き出した』
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