したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

もしもだーさくこと石田亜佑美と小田さくらが賞金稼ぎコンビだったら

31名無し募集中。。。:2018/02/12(月) 14:46:58
夜が明けようとしていた。
朝日が差しこみ、通りに立ちこめている霧とともに広がっていく。
いま、聞こえるのは足音だけだ。

大きな音が古びた建物のあいだでこだまする。
佐藤優樹が履く支給品の戦闘ブーツが舗道を叩く。
空気は冷たいが優樹の皮膚からは汗が噴き出していた。
脚が折れそうだ。筋肉という筋肉が痙攣する寸前だった。
歯がギシギシ鳴り、心臓はスネアドラムのごとく大きく脈動している。

優樹は工藤遥の身体を米俵のように肩に担いでいた。
一見すると楽そうに見えるが実際はそうではない。
肩は焼けるように熱い。遥の重みで背骨が尾骨にめりこみそうだ。
遥の脚をつかんでしっかり胸に押しつけているので腕がブルブル震える。

遥はすでに死んでいるかもしれない。身体はまったく動いていない。
短距離走のようなスピードで駆け抜けていくのに合わせて、遥の頭が優樹の腰の後ろにコツコツとあたる。
脚を伝い落ちてブーツに溜まる液体が、遥の血なのか自分の汗なのかも分からない。

遥はもう無理だろう。こんな怪我をして生きていられるはずがない。
銃撃は予測していない方角からだった。

優樹はよろめきながら走った。アドレナリンと恐怖心だけが優樹を支えていた。
遥の頭が破裂した。その光景を思い出すのに記憶を探る必要はない。
目に焼きついていて、まばたきするたびによみがえる。

優樹は遥を見ていた。そして大音響に鼓膜が震えた。
同時に遥の顔の片側が熟れた果実のように赤く歪んで崩れるのを見た。
そして自分の顔に降り注いだ飛沫が遥の血や骨や肉の断片だと分かった。

膝がアスファルトをかすめ、靭帯が切れそうになったとき、前方に明るい看板が見えてきた。
白地に赤い十字。
優樹は泣きたかった。負荷はいっこうに軽くならない。
むしろ、遥はさっきより重くなっていた。

優樹はガラスのドアに寄りかかった。
ドアは大きく開き、優樹の膝がガクリと折れる。

頭から救急待合室に倒れこんだ優樹を少なくとも20組の目が見つめた。
誰も何も言わない。治療エリアの奥では電話が鳴っている。
待合室の人々はふたりを見つめていた。ふたりの下から流れ出て広がる血を。

優樹は片方の手を遥の顔にあてていた。
崩れた側でなく――まだ遥らしく見えるほうの側を。
「大丈夫」優樹は声を絞り出したものの、大丈夫でないことは分かっていた。「大丈夫」

遥が咳きこんだ。優樹はびっくりして息が止まった。
死んだと思いこんでいたのだ。「誰か!助けを呼んで!誰か!!」
まわりの人々に叫んだつもりだったが、出たのはささやき声だった。

32名無し募集中。。。:2018/02/13(火) 07:32:38
どぅー…

33名無し募集中。。。:2018/02/23(金) 13:28:49
え…なんだか凄い急展開…どぅーはまりでぃーとは別の第三者に頭吹っ飛ばされたの?

34名無し募集中。。。:2018/02/24(土) 09:14:33
真莉愛と楓は、ナイロン製の折りたたみ式ジム・バッグにせっせと札束を詰めこんだ。
床にはずたずたになった死体が転がり、コルダイト爆薬の匂いが重く漂っている。

5分後、ふたりが裏口から外へ飛び出すと、赤と青のライトが近所の木々や家屋の壁を照らしているのが見えた。
「まずい」楓が言った。
「こっち」真莉愛はバッグを塀の外へ放り投げてから、塀を跳び越えた。
楓もそれに続く。積み上げられている古いタイヤや屋根板を乗り越えながら走った。

パトロールのターボクルーザーが街路を行き来しているのが民家のあいだから見える。
道路封鎖にかかっていることがすぐに明らかになってきた。
「無害な住民に見せかけるようにした方がよくない?」真莉愛が言う。
「だね」と楓。

ふたりは現金を詰めたバッグを倒壊したガレージの土台の下へ隠した。
バッグが見つからないように軽量ブロックの破片を隙間に押しこんでから、裏道を駆け抜ける。
治安の悪化で住民が激減している地区の奥へと走っていった。

裏道の突き当たりをサーチライトが照らし、大きな声が呼びかけてきた。「止まれ!」
真莉愛と楓はそろってその場に凍りつき、次に聞こえるのは機関銃の発射音だろうと予想した。
他の音が聞こえるようなら自分たちは運がいいのだ。

カービンをしっかり肩づけした迷彩服の兵士が姿を現す。
「武器を捨てろ!」そのひとりが叫んだ。「今すぐにだ!」

「落ち着いて」兵士たちに目を留めながら楓は言い、真莉愛にささやきかけた。「話はわたしに任せて」
「その方がいいよね」真莉愛がつぶやき、ライフルを捨てた。
半秒ほど遅れて楓もライフルを路面に投げ捨てた。

「撃たないで」冷静な声で楓は言った。
「わたしたちとあなた方は同じ側にいる」さりげなく両手を上げたが、肩より高くは上げずにおく。
「オールド・センダイ所属の加賀楓です」

真莉愛が思わず苦笑いの声を漏らしたせいで、楓は危うく警察機構の職員としての態度を崩してしまいそうになった。

35名無し募集中。。。:2018/02/24(土) 10:06:02
真莉愛と楓が両手を上げて立ち、兵士たちに戦闘ハーネスやボディアーマーを剥がされている。
すると後方から背の高い女がひとり、ふたりを蔑むように見やったあと、ぎょっとしたように真莉愛と楓を見直した。

「か、かえでぃー?…まりあ?」背の高い女が言った。
「いったいここで何してるの?」
楓がにやっと笑った。「久しぶり。調子はどう、佐々木?」

兵士たちのカービンの銃口がわずかに下がる。
「こいつらと知り合いなのか、佐々木巡査?」

「はい」と佐々木莉佳子。「オールド・センダイ署のハンターで、何度も表彰されてます」
ボディアーマーを剥いでいた兵士が後退り、その場にいる兵士全員が好奇心を募らせた目でふたりを眺めやった。

「IDは?」兵士のひとりが、この状況の処理にいくぶん自信を失ったような口調で問いかけた。
「秘密任務に従事する場合は持たないようにするのが通常ですよ。そうでしょ?」

主導権を奪えたと思った楓は両手を下ろし、真莉愛にも同じようにしろと指示した。
“身分保証人”になってくれた莉佳子に感謝だ。
「任務の詳細を明かすことは許されていないんです」

「しかしなぜ、オールド・ケセンヌマに?管轄下ではない以上、確認を取る必要――」
兵士を遮って楓が言う。
「作戦行動の妨害をされたと報告しますよ。こっちはここでぐずぐずしている暇はないんで」

そわそわと足を踏み換えている兵士を見て、真莉愛は楓の大ぼらが功を奏したと察した。
そこで真莉愛は袖口をまくり腕時計を露出させ、これ見よがしに時刻を確認する。
スケジュールに遅れが出ていると楓にささやきかけた。

上官らしき男が莉佳子に目をやって顎をしゃくり、暗がりへ連れていく。
「間違いないのか、佐々木巡査?」
「あのふたりは有能なハンターです。まさしく、“秘密任務”に投入される類いの」

「諸君!」楓が大声で呼びかける。「我々は時間を無駄にしている!」
「作戦行動を妨害したなんて報告されたら厄介ですよ。解放しましょう」
莉佳子の言葉に、上官らしき男は少し考えてからうなずいた。

36名無し募集中。。。:2018/02/24(土) 10:51:34
ライトを光らせながら交差点を回りこんできたパトロールカーが急ブレーキをかけ停止した。
助手席のドアが開き、見るからに激怒している警官が降りてくる。

「どういうことだ、これは!?」警官が詰め寄ってきて太い指で真莉愛と楓を指差した。
「そのふたりを逮捕しろ!ついさっき、そいつらのクルーザーの後部で半死半生の男が発見された」

警官がなおも怒鳴る。
「そのふたり組は、オールド・ケセンヌマのありとあらゆるゴロツキの根城を襲ってカネを強奪したやつらだぞ!」
莉佳子が真莉愛と楓を見やる。
「なんの話をしてるの?」

「クルーザーにいたのは重要な情報屋のひとりですよ」楓は言った。
「極秘の任務をぶち壊しにする気ですか!?」
警官が眉をひそめて不信感をあらわにする。
「なんの話だ?」声が裏返り、金切り声のようになった。「おまえらは何者なんだ!?」

莉佳子がふたりをわきへ連れていき、他の者に話が聞こえないところへ遠ざかった。
「かえでぃー…まりあ…。ほんとうに秘密任務に従事してるの?それとも強盗してまわってるのか、どっち?」

殺気立つにらみ合いになる。
「オールド・センダイ署に話の真偽を確認しなきゃならない」莉佳子が言う。
「これ以上死者を出さないうちに」

1分後、真莉愛と楓は装甲されたパトロールカーの後部シートに乗せられ、ドアがバシッと閉じられた。
「いまだかつて聞いたことのない、よくできた大ぼら吹いたね」真莉愛が言う。
「あとちょっとで成功だった――あとちょっとでね」ため息を吐いた。

楓はブーツを履いた両脚を助手席の背もたれに乗せて組んだ。
「まあ、まだ手錠はかけられてないから、機会が訪れたらすぐに動こう」
楓は続けた。「脱走するには何人か倒さなきゃならないけど」

真莉愛が忍び笑いを漏らす。
「“秘密任務”…“作戦行動”…大ぼらもいいところだね」
楓もつられて笑った。「他に言いようがないでしょ?」


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板