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もしもだーさくこと石田亜佑美と小田さくらが賞金稼ぎコンビだったら
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:
名無し募集中。。。
:2018/02/12(月) 14:46:58
夜が明けようとしていた。
朝日が差しこみ、通りに立ちこめている霧とともに広がっていく。
いま、聞こえるのは足音だけだ。
大きな音が古びた建物のあいだでこだまする。
佐藤優樹が履く支給品の戦闘ブーツが舗道を叩く。
空気は冷たいが優樹の皮膚からは汗が噴き出していた。
脚が折れそうだ。筋肉という筋肉が痙攣する寸前だった。
歯がギシギシ鳴り、心臓はスネアドラムのごとく大きく脈動している。
優樹は工藤遥の身体を米俵のように肩に担いでいた。
一見すると楽そうに見えるが実際はそうではない。
肩は焼けるように熱い。遥の重みで背骨が尾骨にめりこみそうだ。
遥の脚をつかんでしっかり胸に押しつけているので腕がブルブル震える。
遥はすでに死んでいるかもしれない。身体はまったく動いていない。
短距離走のようなスピードで駆け抜けていくのに合わせて、遥の頭が優樹の腰の後ろにコツコツとあたる。
脚を伝い落ちてブーツに溜まる液体が、遥の血なのか自分の汗なのかも分からない。
遥はもう無理だろう。こんな怪我をして生きていられるはずがない。
銃撃は予測していない方角からだった。
優樹はよろめきながら走った。アドレナリンと恐怖心だけが優樹を支えていた。
遥の頭が破裂した。その光景を思い出すのに記憶を探る必要はない。
目に焼きついていて、まばたきするたびによみがえる。
優樹は遥を見ていた。そして大音響に鼓膜が震えた。
同時に遥の顔の片側が熟れた果実のように赤く歪んで崩れるのを見た。
そして自分の顔に降り注いだ飛沫が遥の血や骨や肉の断片だと分かった。
膝がアスファルトをかすめ、靭帯が切れそうになったとき、前方に明るい看板が見えてきた。
白地に赤い十字。
優樹は泣きたかった。負荷はいっこうに軽くならない。
むしろ、遥はさっきより重くなっていた。
優樹はガラスのドアに寄りかかった。
ドアは大きく開き、優樹の膝がガクリと折れる。
頭から救急待合室に倒れこんだ優樹を少なくとも20組の目が見つめた。
誰も何も言わない。治療エリアの奥では電話が鳴っている。
待合室の人々はふたりを見つめていた。ふたりの下から流れ出て広がる血を。
優樹は片方の手を遥の顔にあてていた。
崩れた側でなく――まだ遥らしく見えるほうの側を。
「大丈夫」優樹は声を絞り出したものの、大丈夫でないことは分かっていた。「大丈夫」
遥が咳きこんだ。優樹はびっくりして息が止まった。
死んだと思いこんでいたのだ。「誰か!助けを呼んで!誰か!!」
まわりの人々に叫んだつもりだったが、出たのはささやき声だった。
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