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復刻版・もぎたて桃子のキャンパスライフ
303
:
名無し募集中。。。
:2015/09/01(火) 17:47:01
桃子似と結ばれる時を楽しみに待っていた数年前の気持ちを思い出してきた
304
:
名無し募集中。。。
:2015/09/01(火) 20:11:42
>>277
親切w
あー、吉澤センバイっていたよなー
五クり
305
:
1
:2015/09/02(水) 03:25:06
以前もそうだったけど
狼でスレ続けると結局ああいう雰囲気になってくるんだよな
そろそろ狼は引き払ってこっちで続けようかと真剣に考えちゃう
306
:
1
:2015/09/02(水) 03:28:11
復刻版の方は2部を読み返してみたら結構な分量があったけど
話が全部3部への前フリだから3部以降を書くことを前提にしないと載せる意味がないような気もする
問題は3部の途切れたところから先を再び書く気力があるかどうか
もうちょっと考えさせてください
新たに書くとすれば本作と並行はちょっときつい
307
:
名無し募集中。。。
:2015/09/03(木) 09:24:52
気長にまっとるでー
308
:
名無し募集中。。。
:2015/09/03(木) 18:25:28
「カメラにある謎」ってのがそそるね
ビブリオ古書堂みたいな感じで古物をめぐる冒険譚って好きだな
309
:
名無し募集中。。。
:2015/09/04(金) 05:12:17
おぱょ
310
:
名無し募集中。。。
:2015/09/04(金) 20:11:36
こんばっきゅん
311
:
1
:2015/09/04(金) 23:07:19
そう言ってもらえるとうれしいやね
とりあえず今手元にあるところまでは載せることにしようかな
今日はムリだけど近日中に
312
:
名無し募集中。。。
:2015/09/05(土) 06:04:05
そいつは楽しみですよ
ぼちぼちと頼みます 保全は任せろw
313
:
名無し募集中。。。
:2015/09/05(土) 17:35:04
ほ!
314
:
1
:2015/09/06(日) 02:49:28
ありがとうございます。
まあ、でも、新狼は保全とかしなくても大丈夫じゃないかと思います。
315
:
1
:2015/09/06(日) 02:57:22
そんな真野ちゃん(仮名)との不思議なデート?があってから、一週間が過ぎた。
オレと桃子(仮名)との間は…、桃子(仮名)のバイトが再び忙しくなってしまい、
すれ違うことが、また多くなってきてしまっていた。
「おい、新しいバイト、入ったんじゃなかったのかよ」と、オレは憤慨したけれど、
「いやー、新しい子は高校生だから…、
試験時期とか、あんまりバイトに入れないみたいでね…」と、
その子(桃子似)は言い訳したけれど…、オレはもう、
その子(桃子似)を抱きたくて抱きたくて、たまらなくなってきていた。
ところで…
話は全然変わるけれど、うちのサークルには年に一度、
現役とOBが一緒に酒を飲む、「OB総会」という名の懇親会があるのだが…、
今年はOB会長の寺田さんの意向で、例年より早く実施することになっていた。
学生側の幹事は、本来二年生がやるべきなのだけど、昨年に引き続き、
どういう訳か、またオレが押し付けられてしまった。
(注・過去スレにそういう話が出てきていたのです)
寺田さんたちOBとの、「打ち合わせ」と称する事前の飲み会は、
正直億劫だったけど、まあ、タダで飲み食いができると思えば、悪くもなかった。
というのも、OB総会は多人数となるため、
毎年ホテルの宴会場を借りてやってるけれど、事前の「打ち合わせ」の時は、
下見という名目で、ホテル側がタダでメシを食わせてくれたりするからだ。
まあ、そんな役得でもなければ正直やっていられない仕事だ。
316
:
1
:2015/09/06(日) 02:59:20
「打ち合わせ」には、OB側から寺田さん(仮名)とまことさん(仮名)が出席する予定で、
現役側からも、オレのほかに誰かもう1人、という話だった。
しかし…。
寺田さん(仮名)たちが敬遠されているのか、それともオレの人望がないのか、
サークルのみんなに声をかけても、参加したいという人は現れなかった。
オレは桃子(仮名)にも声をかけたのだが…。
「いやー、その日はバイトもあるし…、仮にバイトをずらせたとしてもさ…、
私たち2人でタダでご馳走になったりしたら、ちょっと公私混同っぽいんじゃないかな…」と、
ごもっともな指摘をされて、オレは仕方なく諦めたのだった。
どうも現役側はオレ1人での参加となりそうで、気が重くなってきた。
317
:
1
:2015/09/06(日) 03:03:34
「打ち合わせ」の当日の夕方近く、
待ち合わせ場所の部室にいくと、桃子(仮名)が1人で椅子に座っていて、
これからバイトにでも行くという感じで支度をしていた。
「あっ、センパイどうしたの? 珍しくスーツなんか着て…。
あっ、そうか。今日はホテルで、寺田さん(仮名)たちと会食の日かぁ」と、
その子(桃子似)はオレを見かけると、ニコニコと話しかけてきた。
その子(桃子似)と会うのは数日ぶりだった。
オレは会った瞬間、その子(桃子似)を抱きたい気持ちが高ぶってきて、
無言でその子(桃子似)を抱き寄せた。
「あっ、ちょっと…!」
慌てたように逃げようとするその子(桃子似)を、
オレは、「もぉ(仮名)…、会いたかったよ…」と、力を入れて抱きしめた。
「ちょっ…、ダメ…! 今はダメ…!」と、その子(桃子似)が押し殺したような声で、
囁いて逃げようとしたので、オレはますます興奮しながら、
「何がダメなんだよ…。いいから…、ちょっと髪の匂い嗅がせろ…」とか言いながら、
その子(桃子似)の頭に顔を埋めた。
「ダメ…。今…、中に、人が…」そう言って逃げようとするその子(桃子似)に、
「中? 中って何だよ?」と聞き返した時、ガタンと音がして、暗室の中から人が出てきた。
呆れたような顔をした道重さん(仮名)と、顔を赤くした真野ちゃん(仮名)だった。
318
:
1
:2015/09/06(日) 03:09:36
「あっ、道重さん(仮名)…」
オレが慌ててその子(桃子似)から離れると、
道重さん(仮名)はしばらく無言でオレたちをみつめてから、
「呆れた…」と、冷ややかな声で言った。
「あんたたち、お盛んなのは結構だけど、少し場所とか考えてからイチャイチャしなさいよ」
「は…、はあ」とオレが答えると、その子(桃子似)が慌てたように、
「ごめんなさい! ごめんなさい!」と、道重さん(仮名)に謝り始めた。
真野ちゃん(仮名)は、顔を真っ赤にしたまま無言だった。
「ところで道重さん(仮名)…、何で暗室なんかにいたんですか?」
と、オレが聞くと、道重さん(仮名)は、
真野ちゃん(仮名)がさゆみ(仮名)の写真撮ってくれたから、
現像するのを一緒に見てたのよ。悪い?」と、ご機嫌斜めのままで答えてきた。
「そうですか…」と言って、オレは真野ちゃん(仮名)を見た。
あのカメラを手に入れた日から、真野ちゃん(仮名)はほとんどいつも欠かさず、
カメラを持ち歩いては、いろんなものを撮りまくっているようだった。
「ちょっと見せてください」と言って、オレは道重さん(仮名)の手から、
印画紙の束を奪い取るようにして、写真を見た。
教室の前の廊下で、斜光線を浴びながら微笑む道重さん(仮名)の姿が、
柔らかいトーンで写されていて、
『真野ちゃん(仮名)、腕を上げたな…』と、オレが思っていると、
横から覗き込んできた桃子(仮名)が、「わあ…、かわいい」と、声を上げた。
その声に機嫌を直した道重さんが、「やっぱりモデルがいいからかしらね。
真野ちゃん(仮名)もうまくなったわよね」と、微笑んだ。
真野ちゃん(仮名)が、「は…、はい」と、困ったように愛想笑いを浮かべた。
319
:
1
:2015/09/06(日) 03:13:08
俺は、保田さんとの約束を思い出した。
かくいうオレも、あれからいつも例のFE2改を持ち歩いて、
いろんなものを撮っていたけれど、未だ決定的な自信作は撮れないままでいたのだった。
真野ちゃん(仮名)の方も、既に例の団地で結構いい写真を撮っていたようだったけれど、
満足のいくまでいろんなものを撮ろうということなのだろう、とオレは思った。
「ところで、○○クン(オレ)は何でスーツなんか着てるの? もう就活?」
と、道重さん(仮名)が聞いてきた。
オレは慌てて、「いや 寺田さん(仮名)たちとの飲み会ですよ」と、答えながら、
「そうだ。もし2人ともこの後空いていたら、一緒にいきませんか?」と、誘ってみた。
桃子(仮名)がチラリと、オレを睨んだような気がした。
「私はこのあと用事がありますから…」と、真野ちゃん(仮名)が言った。
オレが道重さん(仮名)の方を見ると、道重さん(仮名)は、
「さゆみ(仮名)は別に用事ないけど…。えーっ…? 寺田さん(仮名)たちと…?
遠慮しとくわー」と、素っ気無い感じで答えてきた。
何故だか桃子(仮名)がホッとしたような顔でオレを見てから、
「じゃあ、もぉ(仮名)はそろそろバイト行ってくる」と言って、
道重さん(仮名)たちに挨拶してから、部室を出て行った。
320
:
1
:2015/09/06(日) 03:16:22
真野ちゃん(仮名)は暗室に戻って、現像液などを片付け出した。
ジャージャーと水の流れる音が暗室から響きだした。
道重さん(仮名)は椅子にどっかりと座り込んで、
「それで、今日はどこにご飯食べに行くの?」と、オレに聞いてきた。
「はぁ…。○○ホテルですけど…」と、新宿の高級ホテルの名を挙げてから、
「道重さん(仮名)、やっぱり一緒に行きませんか? 在校生オレ1人なんですよ」と、
オレはもう一度問いかけてみた。
「フレンチですよフレンチ」
「そうねえ…」
道重さん(仮名)がじらすようにオレの眼を覗き込んできた時、
部室のドアがいきなりガチャリと開いた。
寺田さん(仮名)?
と思いきや、部室に入ってきたのは、
オレが一年生の時に四年生だった、吉澤先輩(仮名)だった。
「よっ」と、やる気のない感じの声を上げながら部室に入ってきた吉澤さん(仮名)に、
「あーっ、吉澤さん(仮名)! お久しぶりですー!」と、
道重さん(仮名)が、いつもより1オクターブ高い声を出して応じた。
321
:
1
:2015/09/06(日) 03:19:33
「シゲさん(仮名)じゃんー。元気だったー?」と、
吉澤さん(仮名)が笑顔で応じた。
「吉澤さん(仮名)、こんにちはお久しぶりです」と、オレが挨拶すると、
吉澤さん(仮名)は、初めてオレに気づいたようにこっちを見ながら、
「あっ、○○クン(オレ)。元気だった?」と、微笑んだ。
「あの…、ひょっとしてOB会の下見の…?」と、オレが聞くと、
「いやー。今日のお昼に寺田さん(仮名)からいきなり電話かかってきてさー…、
『オレたち行けなくなったから代わりに行ってくれ』って。去年もそうだったけど」
と、吉澤さん(仮名)は説明してから、心なしか頬を少し赤らめたような気がした。
そういえば…、去年の下見の時…。
オレと吉澤さん(仮名)は酔った勢いも手伝って…、
吉澤さん(仮名)の部屋で体を交えあったのだった。
(注・過去のシリーズにそういう話があったのです)
その時のことを思い出すと、オレは急に自分の顔が赤くなっているんじゃないかと、
気になりだして黙り込んだ。
吉澤さん(仮名)もオレと同じ気持ちになったのか、一瞬黙り込んだ。
そんなオレたちを道重さん(仮名)が不思議そうにキョロキョロと見回した。
322
:
1
:2015/09/06(日) 03:19:56
祝・よっすぃー婚約
323
:
名無し募集中。。。
:2015/09/06(日) 19:01:43
おめでたいね
324
:
名無し募集中。。。
:2015/09/06(日) 22:51:49
とは言っても保全的に何かを書いてもいいかな
狼の全寮制スレ落ちてた…
325
:
1
:2015/09/07(月) 03:59:38
会社帰りだからか、黒いスーツ姿の吉澤さん(仮名)は、また一段と綺麗だった。
心なしか、去年よりまたちょっと痩せたんじゃないかと思いながら、
オレは一瞬、見とれてしまった。
「それで…、在校生側は○○クン(オレ)だけ?」
という吉澤さん(仮名)の問いかけに、オレはハッと我にかえった。
「は…、はあ…」と答えようとした時、道重さん(仮名)が、
「さゆみ(仮名)もです! さゆみ(仮名)も行きます!」と、大きな声を上げた。
その時、暗室から真野ちゃん(仮名)が戻ってきた。
「えっと…、この子は?」と聞く吉澤さん(仮名)に、
「新しく入った2年生の真野ちゃん(仮名)です!」と、道重さん(仮名)が答えると、
真野ちゃん(仮名)が、「真野恵里菜(仮名)です。よろしくお願いします」と、
丁寧にお辞儀をした。
「真野ちゃん(仮名)って言うの? よかったらあなたも来ない?
4人で予約してあるから、1人分席が余るんだ」と、吉澤さん(仮名)が問いかけると、
真野ちゃん(仮名)は、「ハイ!ぜひ!」と笑顔で応じた。
「あれっ? 真野ちゃん(仮名)用事あったんじゃ…?」と、オレが聞くと、
「だってさっきは…、センパイ(オレ)と2人っきりじゃ、
嗣永さん(仮名)に悪いと思って、遠慮したんです…」と、
真野ちゃん(仮名)が困ったような顔で答えた。
326
:
1
:2015/09/07(月) 04:06:56
学校の裏のバス停からバスに乗って、4人でぞろぞろと新宿西口のホテルに向かった。
チュニックにジーンズという、ラフな格好の道重さん(仮名)は、
「吉澤さん(仮名)や○○クン(オレ)はスーツ着てるのに、
さゆみ(仮名)、こんな格好でいいのかしら」と、しきりに気にし出し、
ポロシャツにミニスカート姿の真野ちゃん(仮名)も、「私もですう…」と、
困ったように言ったけれど、吉澤さん(仮名)は、「別にいいんじゃん、そんなの」
と、全く意に介さないように答えた。
ホテルの宴会場の受付に行き、係の人とOB総会当日の打ち合わせを済ませた後、
レストランに案内された。
木目の壁の雰囲気がオーセンティックな感じの、メインダイニングだった。
「私、こういうとこくるの初めてです」と、真野ちゃん(仮名)が小声で緊張気味に囁いた。
4人掛けの大きなテーブルに、オレとその横に真野ちゃん(仮名)。
向かい側に、吉澤さん(仮名)道重さん(仮名)が並んで座った。
3人の顔を見回して、オレはハタと気づいた。
ここにいる女の子たちは…、
去年激しく体を求め合った先輩と、
ついこの間、アロマオイルにまみれながら、先っぽまで入れた先輩…、
それに、最近、間違って手マンまでしてしまった後輩…。
ひょっとして、またしても地雷を踏もうとしているんじゃないのかオレ…。
「どうしたの○○クン(オレ)? 顔色悪いよ」と道重さん(仮名)が言った
327
:
1
:2015/09/07(月) 04:10:08
ワインで乾杯して、食事が始まった。
吉澤さん(仮名)が、「ところでさっき、真野ちゃん(仮名)は暗室に入ってたけど、
フィルム現像なんかしてるの?」と、ナイフとフォークを動かしながら話しだした。
「ハイ!そうなんです!」と、元気よく答える真野ちゃん(仮名)。
「へえ…。どんな写真撮ってるの?」と、吉澤さん(仮名)が重ねて聞くと、
「さゆみ(仮名)の写真撮ってもらったんです!」と、道重さん(仮名)が、
横から答えて、鞄の中をごそごそと探り、さっきの六つ切りのポートレートを取り出して、
吉澤さん(仮名)に見せた。
「へえ…。なかなか上手じゃん…」と、少し嬉しそうな吉澤さん(仮名)と、
照れ笑いを浮かべる真野ちゃん(仮名)。
『そういえば、女子でフィルム写真の現像までやってたのは、
吉澤さん(仮名)が卒業した後は、誰もいなかったっけ…』と、オレは思い出した。
「ところで○○クン(オレ)はどんな写真撮ってるの?
相変わらず、お寺とかばっかり?」と、吉澤さん(仮名)はオレを少しからかうように聞いてきた。
「は…、はあ」とオレが愛想笑いをしようとした時、道重さん(仮名)がいきなり、
「○○クン(オレ)、最近結構女の子の写真とか撮ってるんですよ。
さゆみ(仮名)もこの間撮ってもらいました」と言い出して、鞄の中をごそごそと探り出した。
「あっ、ちょっと!」と、オレが制止するより早く、道重さん(仮名)が臆面もなく、
この間のオレが撮った写真を取り出して、テーブルの上に置いてしまった。
328
:
1
:2015/09/07(月) 04:14:58
「どれどれ…」と、言いながら覗きこんだ吉澤さん(仮名)と真野ちゃん(仮名)は、
テーブルの上の写真を見て、そのまま固まった。
2、3秒してから、真野ちゃん(仮名)が、「うわぁ…、すごく綺麗…」と、
ため息をつきながら言った。
「センパイ(オレ)、やっぱり私なんかより写真ずっと上手い…」と、
真野ちゃん(仮名)は、ちょっとボーッと上気した顔をして、オレを見上げて言った。
『真野ちゃん(仮名)…、これがどんな写真か全然気づいてないな…』と、
オレは一瞬ホッとしかけたけど、吉澤さん(仮名)の冷ややかな視線に遭って、
すぐにたじろいだ。
「あのさあ…」
一瞬頬を赤くさせた吉澤さん(仮名)が、何か言いかけたけど、
「いや…、よくやるね…。 ○○クン(オレ)もシゲさん(仮名)も…」と、
呆れたような冷ややかな口調で話を接いだ。
真野ちゃん(仮名)は「?」という顔でオレを見て、
道重さん(仮名)もキョトンとした顔をして、オレと吉澤さん(仮名)の顔を交互に見てきた。
『真野ちゃん(仮名)はともかく、道重さん(仮名)もやっぱり処女だ…。
何も分かっちゃいねえ…』と、オレは心の中で嘆息した。
道重さん(仮名)は単純に、綺麗に撮ってもらったた写真を、
吉澤さん(仮名)に見て欲しかっただけなのかもしれないけど、こんな写真、
大人の女の吉澤さん(仮名)の眼からは、どう見ても、
「セックスの最中」としか思えない一枚だったろう。
329
:
1
:2015/09/07(月) 04:17:09
一瞬、しらけた空気がその場に漂った。
吉澤さん(仮名)は、「いや…、でもシゲさん(仮名)、やっぱ美人だわ」と、
その場を取り繕うように言ってくれたので、道重さん(仮名)もホッとしたように、
「吉澤さん(仮名)にそういってもらえると嬉しいです!」と、笑顔を浮かべた。
オレも一瞬ホッとしかけて吉澤さん(仮名)を見たけど…、
吉澤さん(仮名)は、丸っきり軽蔑したような眼でオレを見つめ返してきた。
針の筵にいるようだった。
その時、そんな空気にはまったく気づいていない様子の真野ちゃん(仮名)が、
「この間、○○センパイ(仮名)とカメラを買いに行って、これを見つけたんです!
正確に言うと、まだ私のものにはなっていないんですけど…」と、例のカメラ…、
エクサ1Cを取り出して、テーブルの上に置こうとした。
「えっ! ちょっと! このカメラは!?」
それを見た吉澤さん(仮名)が突然叫んで、真野ちゃん(仮名)の手から、
半ば奪い取るようにして確かめた後、言った。
「やっぱりそうだ…。間違いない…」
「?」
オレと真野ちゃん(仮名)は思わず眼を見合わせた。
330
:
1
:2015/09/07(月) 04:18:53
「このカメラ…、どこで手に入れたの?」
詰問するような口調で吉澤さん(仮名)が聞いてきた。
「は…、はあ…。前に吉澤さん(仮名)に教えてもらった、
保田さん(仮名)の店ですけど…」と、オレが答えると、
吉澤さん(仮名)は、「やっぱりそうか…。圭ちゃん(仮名)め…」と、
呆れたような顔をしていった。
「このカメラに何かあるんですか?」と、道重さん(仮名)が聞いた。
吉澤さん(仮名)は、2秒くらい言い澱んだ後、口を開いていった。
「このカメラは…、不幸のカメラなのよ…」
331
:
名無し募集中。。。
:2015/09/07(月) 18:57:16
“針の筵”が結構いい気味だわ
俺君ちょっと良い目に合い過ぎだからねw
332
:
名無し募集中。。。
:2015/09/08(火) 00:14:13
センパイヤりまくりやなあ
333
:
1
:2015/09/08(火) 03:33:04
「不幸のカメラ!?」
オレと真野ちゃん(仮名)は、びっくりして顔を見合わせた。
「それって…、持ってると死んじゃうとかですか!?」
何故かすごく嬉しそうに、道重さん(仮名)が吉澤さん(仮名)に聞いた。
「いや…、全然そういうのじゃないから、安心していいんだけど…。
そのカメラを持った人はみんなね…」と、言いながら、吉澤さん(仮名)がオレたちを見回した。
五クりと生唾を飲み込む真野ちゃん(仮名)。
「そのカメラを持った人は…、みんな男運がすごく悪くなる…」
冗談とも本気ともつかない顔で、吉澤さん(仮名)が言った。
334
:
1
:2015/09/08(火) 03:35:34
「最初にそのカメラを買ったのは…、先輩の安倍さん(仮名)なのよ。
確か、故郷の室蘭に帰ったときに、フリーマーケットかなんかで見つけて買ってきたの。
安倍さん(仮名)のことは、みんなも知ってるでしょ?」と、吉澤さん(仮名)は言った。
「もちろんです!」と、道重さん(仮名)。
「安倍さん(仮名)っていう方に…、何があったんですか?」と、
真野ちゃん(仮名)が脅えた表情を浮かべながら聞いた。
吉澤さん(仮名)は辺りを見回してから、
「ロクでもない男に引っかかってね…。本人は『プレステしてただけ』って言ってたけど…。
その男はクスリ絡みで人を死なせちゃって… 確か今は刑務所に入ってるわ…」
と、少し声を落として言った。
真野ちゃん(仮名)は、ドン引き、といった感じの表情を浮かべて、
吉澤さん(仮名)を見つめていた。
「それで…、安倍さん(仮名)が手放したそのカメラを、
次に手にしたのは、やぐっつぁん(仮名)…」
335
:
1
:2015/09/08(火) 03:38:32
「ええっ!? 矢口さん(仮名)が!?」
信じられない、といった口調で、道重さん(仮名)が聞いた。
「まあ…、やぐっつぁん(仮名)の場合はね…、単なる自業自得って言えないこともないけど…」
と、吉澤さん(仮名)は言った。
「次は…?」
恐る恐るといった感じで道重さん(仮名)が聞いた。
「次はごっちん(仮名)。その次が加護(仮名)…。
実は私も持ってたことがあるんだけど…。確かその後、高橋(仮名)もちょっと持ってたのかな…」
オレたちは無言で吉澤さん(仮名)を見つめた。
「まあそれで…、あんまりひどいもんだから、圭ちゃん(仮名)に処分を頼んだんだけど…。
まさか私の後輩に売りつけようとしていたとは…」
と、呆れたような口調で吉澤さん(仮名)が言った。
336
:
1
:2015/09/08(火) 03:41:47
「真野ちゃん(仮名)! ヤバイよそのカメラ! 手放したほうがいいよ!」
と、道重さん(仮名)が言った。
どことなく、道重さん(仮名)が面白がっているように見えるのは、
オレの気のせいだろうか…。
「でも…! でも…!」と、真野ちゃん(仮名)が必死に反論した。
「このカメラで撮ると、何だか自分が、
すっごく写真うまくなったような気がするんです…!」
「そうなのよねえ…」と、吉澤さん(仮名)が頷いた。
「だからみんな、ついつい手放せなくなっちゃったり、譲り受けたりしちゃったのよね…。
実際、安倍さん(仮名)もやぐっつぁん(仮名)も、ごっちん(仮名)も私も、
そのカメラで撮った写真で、コンクールで賞とったりしたし、
何か不思議な力のあるカメラって気は、確かにするんだわ…。
また、そのレンズ…、テッサーもすごくいい描写するし」
「あれ…? レンズはもともとドミプランだったんじゃ?」と、オレが口を挟むと、
「ドミプラン? いや最初から、そのテッサーだったよ」と、
吉澤さん(仮名)は不思議そうに答えた。
『そうか。保田さん(仮名)が、あわよくば安物レンズと組み合わせて、
売ろうとしてただけだったんだな…。道理で気前よく交換してくれた訳だ』
と、オレは納得した。
337
:
1
:2015/09/08(火) 04:48:37
食事を終えたオレたちはホテルを出た。
真野ちゃん(仮名)はまだ納得のいかない表情で、
「でも私はこのカメラ…、手放したくありません」と言った。
吉澤さん(仮名)は少し考え込んだ後、
「まあ…、それもいいんじゃないの? 男運が悪くなるって言っても、
別にとって食われる訳でもないし」と、サバサバした口調で言った。
真野ちゃん(仮名)は一瞬ホッとしたような顔を浮かべてから、
「あの…、吉澤さん(仮名)…、このカメラで写真撮らせてくれませんか?」
と、言い出した。
「えーっ? モデルになれってこと? 今から?」
と、吉澤さん(仮名)は少し驚いたような顔をしたけど、
「まあ…、かわいい後輩に頼まれたらイヤとは言えないけど」
と言って、微笑んだ。
オレたちはホテルの裏手の中央公園の方に歩いていった。
公園の薄暗い街灯の下で即席の撮影会が始まった。
338
:
1
:2015/09/08(火) 04:50:51
「そう…、そこでニッコリ…、ちょっと肩越しに振り返って…、そう!そうです!」
吉澤さん(仮名)に堂々とポーズの指示をしながら、
真野ちゃん(仮名)がパシャパシャと写真を撮り始めた。
それに、あの吉澤さん(仮名)が、また何のためらいもなく、
真野ちゃん(仮名)に言われたとおりの表情をしてみせるのにも、正直言って驚いた。
これがさっき吉澤さん(仮名)が言っていた、このカメラの不思議な力なのだろうか…。
「ちょっとオレにも撮らせてください…」と言って、
オレは自分の鞄から例のFE2改を取り出して構えたけど、
吉澤さん(仮名)は露骨にイヤな顔をして、
「えーっ…、○○クン(オレ)に撮られるのはヤダ…」と、冷たいことを言った。
オレがしょんぼりしていると、助け舟を出してくれたつもりなのか、
「さゆみ(仮名)は撮ってもいいよ」
と、頼んでもいないのに道重さん(仮名)が、オレの前でポーズをつけだしたので、
オレは仕方なくカメラを道重さん(仮名)に向けて、何回かシャッターを切った。
339
:
1
:2015/09/08(火) 04:53:20
即席の「撮影会」が終わり、オレたちはぞろぞろとみんなで新宿駅まで歩いていった。
真野ちゃん(仮名)は小田急線の方へ、道重さん(仮名)は地下鉄の駅の方へ、
それぞれ分かれて帰っていき、オレと吉澤さん(仮名)が残された。
「んじゃ、私たちも帰ろうか」と、吉澤さん(仮名)が言いながら、
JRの乗り場の方へと歩き出した。
「ちょっと待って…」と、オレは言った。
「何?」と怪訝そうな吉澤さん(仮名)。
「あの…、もうちょっと飲みませんか?」とオレ。
吉澤さん(仮名)は二秒くらい冷たい表情のまま、無言でオレを見つめてから、
「まあ…、飲むくらいはいいけど…」とつぶやいた。
340
:
1
:2015/09/08(火) 04:55:17
オレたちは、もう一度駅を出てからブラブラと歩き、手近なバーに入った。
薄暗いカウンターの席に座り、吉澤さん(仮名)がジントニックを注文した。
オレが同じ物を注文すると、吉澤さん(仮名)は『マネすんなよ』と言わんばかりに、
軽く舌打ちをした。
ジントニックがやってくると、吉澤さん(仮名)はオレと乾杯もしようとせぬまま、
ぐいっと一口飲み込んでから、オレに向かって言った。
「○○クン(オレ)さあ…、女なら誰でもいいわけ?」
「はあっ?」
唐突な問いかけにオレが呆気にとられていると、
「さっきの写真だけどさあ…、シゲさん(仮名)と寝たんでしょ」
と、吉澤さん(仮名)はズバリと核心に切り込む問いかけをしてきた。
341
:
名無し募集中。。。
:2015/09/08(火) 09:34:07
女なら誰でもいい疑惑がw
342
:
1
:2015/09/09(水) 03:07:13
オレが答えに窮していると、吉澤さん(仮名)は、
「大体さあ…、○○クン(オレ)って、桃子(仮名)と付き合ってたんじゃないの?
もう別れたの? それともシゲさん(仮名)と二股かけてるってこと?
それともシゲさん(仮名)とはただの遊びってこと?」と、矢継ぎ早に問いかけてきた。
「いや…、それは…」
オレが答えを探そうとすると、吉澤さん(仮名)は遮るように、
「遊びたい盛りなのは分かるけどさ…、桃子(仮名)にバレたらどうする気なの?
同じサークルの中で、やっていいことと悪いことがあるくらい、
三年生にもなったら分かるでしょ」
と、最初は冷たかった口調が、しまいには姉が弟を諭すような調子になって話してきた。
343
:
1
:2015/09/09(水) 03:08:45
『困ったな…』と、オレは思ったけど…、
ここのところの経緯を、道重さん(仮名)がオレのロッカーを勝手に覗いていて、
オレが道重さん(仮名)のポートレートを撮らなくてはならなくなったあたりから、
順序だてて説明していった。
吉澤さん(仮名)は、
「何それ…!? マジ? アロマオイルとか…」
と言って、頬を赤くした。
「そういうわけで…、道重さん(仮名)とはエッチしてないんですよ」
と、オレは説明したけれど、
「いや…、その状況でしてないとか、ありえないでしょ…」
と、吉澤さん(仮名)は、てんで信じてないようだった。
344
:
1
:2015/09/09(水) 03:12:12
しばらく沈黙が流れた後、
「それで…、桃子(仮名)とはうまくいってるの?」
と、吉澤さん(仮名)は二杯目のジントニックを注文してから、
オレに向き直って聞いてきた。
心なしか目の縁が赤く見えるのは、オレの気のせいだろうか…。
オレは自分のジントニックを飲み干し、今度はジンリッキーを注文してから、
吉澤さん(仮名)に向き直った。
「うまくいってる…、といえるのかどうか…」
オレはここ半年くらいの桃子(仮名)とオレの付き合いの成り行きを、
吉澤さん(仮名)に打ち明けた。
「えーっ! 何それ! そんなにつきあってて、まだエッチしてないってこと?」
と、吉澤さん(仮名)は呆れたようにオレの目を覗き込んできた。
「○○クン(オレ)、あんなに元気だったのに、インポになっちゃったの?」
「ちょ! 吉澤さん(仮名)! 品がないですよ!」
と、答えながら、オレは去年の夏に吉澤さん(仮名)と激しく体を求め合った時のことを、
思い出さずにはいられなくなってきた。
吉澤さん(仮名)も自分で言ってから、言葉の意味に気づいたのか、
「あっ…、いや…」と下を向いた。
345
:
1
:2015/09/09(水) 03:12:35
注文した酒をバーテンダーが差し出してきた。
吉澤さん(仮名)は自分のジントニックを一口飲んだ後、
「ちょっと頂き」と言って、オレのジンリッキーに手を伸ばして一口飲むと、
「あー、こっちの方がキリッとしておいしいわ。チェンジしてよ」と言って、
勝手にオレのグラスを奪い、自分のジントニックをオレの方に差し出してきた。
吉澤さん(仮名)の唇の跡がうっすらついたグラスに口をつけて、
オレはジントニックを一口飲んだ。
346
:
1
:2015/09/09(水) 03:15:27
「それはそうと…、吉澤さん(仮名)の方は、彼氏とうまくいってるんですか?」
と、オレは聞いた。
吉澤さん(仮名)は一瞬戸惑ったような表情を浮かべてから、
「ん? ああ…。半年くらい前に別れた…」と、さらりと言って、
ジンリッキーのグラスに口をつけた。
「あの…、それじゃ、この半年間フリーなんですか?」と、オレが重ねて聞くと、
「ん? ああ…。まあね」と、吉澤さん(仮名)は簡単に答えた。
「それじゃ…、半年くらいエッチとかしてないってことですか?」
酔った勢いもあったとはいえ、我ながら失礼なことを聞いた、とすぐに後悔しかけたけど、
「いや…、そんなこともないけど…」という、吉澤さん(仮名)の答えに、
オレは一瞬、カッと体が熱くなった。
「それは…、彼氏以外の男としたってことですか?」
と、オレが思わず身を乗り出して聞くと、
「いや…、いいじゃんそんな話」と、吉澤さん(仮名)は困ったような顔をした。
オレは自分の心の中に、激しい嫉妬の炎が燃え上がるのを感じながら、
「いや…、よくないです。どんな男と…?」と、重ねて聞きかけると、
「もー…。しつこい男って嫌われるぞ…」と、吉澤さん(仮名)は、
ちょっと辟易したような顔で答えてから、ジンリッキーのグラスをまた傾けた。
347
:
名無し募集中。。。
:2015/09/09(水) 04:31:07
桃子と付き合ってんのはバレてんのか
348
:
名無し募集中。。。
:2015/09/09(水) 23:28:49
桃子大切にしろよ
怒るぞ
349
:
1
:2015/09/10(木) 04:29:15
『確かにしつこい…』
と、オレは酔った頭で考えた。
しかし、目の前のこのかわいい人が、彼氏でもない行きずりの男に抱かれた…、
という告白は、オレを異様に興奮させてやまなかった。
会社の不倫上司に抱かれて、「アンアン」と少女のようなあえぎ声を洩らす吉澤さん(仮名)…。
街角でナンパしてきた男について行って、バックから激しく突かれまくる吉澤さん(仮名)…。
そんな妄想がオレの頭の中で、とまらなくなってきた。
オレはジントニックをぐいっと一口飲み込んでから、
「どんな男に抱かれたんですか? 会社のハゲオヤジですか?
それともチャラいアンチャンですか…?」と、吉澤さん(仮名)を見据えて言った。
吉澤さん(仮名)は二秒くらい真顔でオレを見つめてから、
「あのさあ…、いい加減にしないと怒るよ」と言った。
350
:
1
:2015/09/10(木) 04:32:04
オレはカウンターの上にあった吉澤さん(仮名)の手をギュッと握って言った。
「だって…、吉澤さん(仮名)がほかの男に抱かれたなんて…、我慢できません…」
我ながらいやらしい迫り方だ…。
と、酔った頭でもはっきりと自覚できた。
「ねえ…、吉澤さん(仮名)…。朝まで一緒にいたい…」
オレは吉澤さん(仮名)の手の甲を、ゆっくりとまさぐった。
ちょっと呆れたような困ったような顔をして、吉澤さん(仮名)が無言で、
オレを見上げてきた。
351
:
1
:2015/09/10(木) 04:34:54
吉澤さん(仮名)は、
「いやー…、それはさあ…、さすがにマズいんじゃないのかなあ…」と言って、オレの顔を見た。
バーテンダーが離れていくのを見計らって、オレは吉澤さん(仮名)の耳に口を寄せながら、
「何で?」と聞いた。
吉澤さん(仮名)は、「ちょっとくすぐったい…」と言って、体をひねるようにしてから、
「正直言うとさ…、寺田さん(仮名)に今日、『俺の代わりに行ってくれ』って言われた時、
○○クン(オレ)とエッチすることになるんじゃないかって…、考えなかった訳じゃないけどさ…。
やっぱ、そういうのよくないと思う」と言って、真面目な顔をしてオレを見上げてきた。
352
:
1
:2015/09/10(木) 04:36:09
きっぱりと拒絶された形になって、オレは狼狽したけれど、
引っ込みのつかないままに、吉澤さん(仮名)の手の甲をオレはまさぐりつづけていた。
また、吉澤さん(仮名)がその手を敢えて払ったりしないことも、
ますますオレの未練心に火を注いでいた。
「ひーちゃん(仮名)…」と、オレが尚も言いかけたとき、
「マスターそろそろお勘定してください」と、吉澤さん(仮名)が言った。
353
:
1
:2015/09/10(木) 04:39:43
吉澤さん(仮名)はさっさと会計をすませると、
「ほら…、行くよ」と、オレに微笑みかけてきた。
「あっ、オレもお金出します…」と、オレがいいかけると、
「寺田さんにもらってるから大丈夫」といいながら、吉澤さん(仮名)が席を立ったので、
オレも慌てて後を追った。
店を出て、エレベーターホールの前まできた。
吉澤さん(仮名)が下のボタンを押すと、エレベーターはたまたまそこに停まっていたのか、
すぐにドアが開いた。
2人でエレベーターに乗り込み、ドアが閉まると同時に、
オレは後ろから吉澤さん(仮名)を抱きすくめた。
「吉澤さん(仮名)…!」
「ちょっと…!」
吉澤さん(仮名)…、去年よりまた痩せたな…と、オレは思った。
背後から吉澤さん(仮名)の胸をゆっくりとまさぐると、
心なしか、胸も去年より小さくなっているような気がした。
「あっ、こらっ…!」
と言って、振り向きかけた吉澤さん(仮名)のかわいい唇に、オレは唇を重ねた。
354
:
1
:2015/09/10(木) 04:43:05
絡まりあう舌と舌。
やっぱり吉澤さん(仮名)だって、満更でもないのだ、と俺は思った。
「んぐっ…、んぐっ…」と、吉澤さん(仮名)の喉が鳴った。
オレは硬直した一物を吉澤さん(仮名)のタイトスカートのお尻に擦りつけながら、
吉澤さん(仮名)の胸を少し強めに絞り上げるように揉んだ。
その時、ポーンと電子音がして、途中の階でエレベーターが止まった。
オレたちが慌てて離れたのと同時にドアが開いて、OLさんの一団が、
ドヤドヤと乗り込んできた。
ぎゅうぎゅう詰めに近いほど人が乗ったエレベーターの中で、
「ねえ次どうする?」 「カラオケ行こカラオケ」と、
OLさんたちが酔った感じで声を上げていた。
オレは無言のまま吉澤さん(仮名)の手を握ろうとしたけど、
吉澤さん(仮名)はどういうわけか、その手をスルリと交わしてしまった。
355
:
1
:2015/09/10(木) 04:46:58
満員のエレベーターが1階に着くまでの間が、やけに長く感じられた。
オレはその間、無言のままで吉澤さん(仮名)の手を握ろうとしたけれど避けられ、
その次にお尻を触ろうとして手をつねられた。
エレベーターが1階に着き、OLさんたちがぞろぞろと降りていった。
一番最後にオレたちが降りて、OLさんたちの後についてビルを出た。
『どこか静かなところで、吉澤さん(仮名)をもう一度無理矢理にでも抱きしめれば、
きっと吉澤さん(仮名)も勢いに流されて、今晩一緒にいることを拒めなくなるはず』
と、オレは姑息に計算したけれど、街は賑やかで、通りはどこまでも人で溢れていた。
吉澤さん(仮名)はそんなオレの気持ちを知ってか知らずか、
駅に向かってまっすぐに歩いていった。
駅の近くまで来て、吉澤さん(仮名)が、「じゃあ今日は…」と、言いかけたとき、
オレは辛抱たまらなくなって、「やだ。離したくない」と言って、
人ごみの中だけど構わずに、吉澤さん(仮名)を無理矢理に抱きしめた。
356
:
1
:2015/09/10(木) 04:49:44
「ちょっと…! こんなところで…、ヤダ!」
吉澤さん(仮名)が激しく体を捻って抵抗しようとしたけれど、
オレは構わずに、もっと強く吉澤さん(仮名)の細い体を抱きしめた。
「ダメだってば…!」
荒くなっていく吉澤さん(仮名)の吐息に、オレは我を失いかけたけど、
次の瞬間、パンッ、と高い音とともに、オレは吉澤さん(仮名)に、
頬をしたたかに平手打ちされた。
一瞬、何が起きたか分からず途方にくれていたオレに、
吉澤さん(仮名)は不意に優しい口調で、
「ね…。桃子(仮名)のところに帰りなさい」と囁くと、
くるりとオレに背を向けて、駅の人ごみの中へと消えていった。
357
:
1
:2015/09/10(木) 04:52:15
オレはしばらく、その場に呆然と立ち尽くしていたけど、
やがて駅とは反対方向に歩き出した。
このまま帰る気にはなれなかった。
何でもいいから安い酒でも飲んで、酔いつぶれたい気持ちだった。
そんな気持ちとは裏腹に、歩いているうちにオレは、
少しずつ酔いが醒めていくのを感じていた。
さっきの吉澤さん(仮名)への迫り方は、いくらなんでもやり過ぎだった。
あれじゃただ、性のはけ口を求めていた、といわれても仕方ない。
オレはだんだん、恥ずかしさと済まなさで、いたたまれない気持ちになってきた。
そんなことを考えながら歩いていると、大きなデパートの前までやってきた。
「こんな時間にまだデパートやってるのか?」と思いながら腕時計に目をやると、
時間がまだ8時をちょっと回ったばかりなことを知って、二度驚いた。
そういえば、今日は最初の食事のスタート時間が早かったのだ。
オレは何とはなしに、ふらふらとデパートの中に入った。
358
:
1
:2015/09/10(木) 04:55:13
デパートに入ると、入り口のすぐ横にカウンターがあって、
案内嬢のきれいなお姉さんが、微笑みながら頭を下げかけたけど、
何故だかそのあと、こちらをガン見しているような気配に気づいて、
思わずオレも見つめ返した。
『あれっ…、この人、どこかで見たことあるような…』
そう思っていると、案内嬢のお姉さんは小首を傾げながら、
「○○さん(オレ)…、ですか?」と、オレの目を覗き込むようにして聞いてきた。
「えっ…? は…、はい。そうですけど?」と、オレが聞き返すと、
「やっぱりそうだ! お久しぶりです!」と、その子は弾けるような笑顔を見せた。
「えっ…、えーと…」
オレが戸惑っているとその子は、
「分からないんですか?」と、一瞬スネたような顔をして見せてから、
「佐紀(仮名)ですよ。清水佐紀(仮名)です」と、上目遣いにオレを見つめた。
「えっ、キャプテン!? うわー!久しぶり! あんまり綺麗に…、いや…、
大人っぽくなったから、気づかなかったよ…」と、オレがドギマギしながら答えると、
「そんなお世辞言って、桃子(仮名)に聞かれたら怒られますよ」と、
佐紀ちゃん(仮名)は悪戯っぽく笑った。
359
:
1
:2015/09/10(木) 04:59:33
オレは思わず、あらためてまじまじと佐紀ちゃん(仮名)を見つめてしまった。
去年一緒にアルバイトをした時にはまだ幼い印象があった佐紀ちゃん(仮名)なのに…。
(注・過去のシリーズにそういう話があったのです)
今オレの目の前にいるデパガ(死語)の制服を着た佐紀ちゃん(仮名)は、
すごく大人っぽくなっていて、オレよりも年下なのに、
「きれいなお姉さん」という言葉がぴったりくるような、美人さんになっていたのだ。
「イヤだ…。そんなにジロジロみないでくださいよ…」
と、佐紀ちゃん(仮名)は少し頬を赤らめて言った後、
「○○さん(オレ)は、これからどこか行くんですか?」と尋ねてきた。
「いや…。ブラブラ歩いてただけで…。
ちょっと1人で飲みに行こうかとか思っていたんだけど…」
と、オレがドギマギしながら答えると、佐紀ちゃん(仮名)は、
「いいなあ…。私もあとちょっとで仕事終わるんだけどなぁ…。
久しぶりに、○○さん(オレ)とお話したいなぁ…」と、
上目遣いにオレを見つめて聞いてきた。
360
:
名無し募集中。。。
:2015/09/10(木) 10:08:43
wktk
361
:
1
:2015/09/11(金) 01:34:52
「お待たせー!」
と、小走りに近寄ってきながら、佐紀ちゃん(仮名)が手を振ってきた。
さっきデパートで見た制服姿とは打って変わって、
私服の佐紀ちゃん(仮名)はすごく子供っぽく見えて、オレは一瞬ドキドキした。
佐紀ちゃん(仮名)の仕事が終わるのを待って、
オレたちは新宿駅の前で待ち合わせをしたのだった。
「あー、すごくお腹減っちゃった。何か食べたいです」
と、佐紀ちゃん(仮名)がオレを上目遣いに見ながら微笑んできた。
「何を食べたいの?」と、オレが聞くと、
「うーん…、何でもいいけど…」と、佐紀ちゃん(仮名)は小首を傾げてから、
「結構お腹すいてるんで、がっつり食べたいです。餃子とか野菜炒めとか…」
と、言って笑った。
オレはちょっと困りながら考えて、
「だったらションベン横丁でも行ってみるか?」と言うと、
佐紀ちゃん(仮名)はすごくムッとした顔をしながら、
「何横丁?」と、聞き返してきたので、
オレは慌てて、「思い出横丁」と言い直した。
「何ですかー、それ? 行ってみたいですー」
と、佐紀ちゃん(仮名)が微笑みながら、オレの腕に触れてきた。
362
:
1
:2015/09/11(金) 01:37:32
佐紀ちゃん(仮名)と寄り添うように歩きながら、思い出横丁までやってきた。
立ち飲み屋が軒を並べる光景を見ながら、
「えーっ! 新宿にこんなとこあったんですかー?」と、
佐紀ちゃん(仮名)は驚いたようにオレを見上げてきた。
「こういうとこ、イヤだった?」とオレが聞き返すと、
「ううん! 全然!」と佐紀ちゃん(仮名)が、にっこりと微笑んできた。
オレと佐紀ちゃん(仮名)は、中華料理屋の丸椅子に腰を下ろすと、
店の兄ちゃんが、「イラシャイマセー」と、怪しげな日本語で挨拶をしてきた。
「とりあえずビール。それと野菜炒めと餃子と水餃子」と、オレは注文した。
363
:
1
:2015/09/11(金) 01:39:34
周りの客のオッサンたちは、好奇の目で佐紀ちゃん(仮名)を見つめていた。
オレはその視線に気づかないふりをしながら、
佐紀ちゃん(仮名)のコップにラガービールを注いだ。
「あっ、私もお注ぎします」と、
佐紀ちゃん(仮名)がオレから瓶を奪うようにして、
オレのコップにビールを注いだ。
「じゃあ乾杯」
カチンとコップを合わせてから、二人でぬるいビールを飲んだ。
ひと口飲んだ後、「うふふふ」と、佐紀ちゃん(仮名)が含み笑いをした。
「何がおかしいの?」と、オレが聞くと、
「なんか佐紀(仮名)、こういうところきたの初めてだから、嬉しくて」
と、佐紀ちゃん(仮名)が言いながら、上目遣いにオレを見つめてきた。
364
:
名無し募集中。。。
:2015/09/12(土) 10:24:34
佐紀ちゃんの佐紀ちゃんはおぱょしちゃうのかな
365
:
名無し募集中。。。
:2015/09/13(日) 05:42:44
おぱょ
366
:
1
:2015/09/14(月) 02:51:17
その佐紀ちゃん(仮名)の上目遣いに、内心クラクラきながらオレは言った。
「佐紀ちゃん(仮名)って、なんか感じ変わったよね」
「えっ、そうですか?」
「何ていうか…、すごく色っぽくなったっていうか」
「いやいやいや(笑)」
ほんのりと頬を赤くした佐紀ちゃん(仮名)が、照れ隠しをするように、
クイッとビールを空けた。
オレは佐紀ちゃん(仮名)のコップに、無言でビールを注ぎ足した。
367
:
1
:2015/09/14(月) 02:54:34
「初めて会った日のこと覚えてる?」
「?」
「冷蔵倉庫に2人で閉じ込められて…(過去スレ参照)」
「あー(笑)。はいはい!」
「あの時の佐紀ちゃん(仮名)は、すごく子供っぽかったけど」
「えー!?そうですかー!?」
「さっきデパートで見たときは…」
「?」
「何かすごく、きれいなお姉さんみたいで、すぐには気づかなかった」
「そんなこと言われると照れちゃいますよー」
368
:
1
:2015/09/14(月) 02:56:39
「でも本当に佐紀ちゃん(仮名)…、色っぽくなった」
コップのラガービールをぐいっと飲み干しながら、またオレが言うと、
「もう…。そんなことないってばー」と、佐紀ちゃん(仮名)は耳まで真っ赤にしながら、
オレのコップにまたビールを注いできた。
「みんなにも言われるでしょ?」とオレ。
「えー!? それは…、言われないこともないけど…」と、はにかむ佐紀ちゃん(仮名)。
「何かあったんでしょ?」
「もう、ヤダー。○○さん(オレ)ってば(笑)。そりゃ佐紀(仮名)もハタチだから…、何もないこともないけど…」
上目遣いにオレを見る佐紀ちゃん(仮名)の視線に、下半身がダイレクトに反応してくるのを感じながら、
オレはまたコップのビールを空けた。
369
:
1
:2015/09/14(月) 02:58:58
「ヤサイイタメト、ギョーザオマチー」
怪しげな日本語の店員がそういいながらオレたちの前に料理を並べた。
「わー、おいしそー」と、佐紀ちゃん(仮名)が微笑んだ。
「○○さん(オレ)、取ってあげる」と言いながら、
佐紀ちゃん(仮名)が、小皿に野菜炒めを取り分け始めた。
腕を動かす佐紀ちゃん(仮名)の方から、何ともいえぬいい匂いが漂ってきた。
桃子(仮名)からは、いや…、道重さん(仮名)からも感じたことのない、
大人っぽいタイプの香水の匂いに、オレは少しドキリとした。
モヤシばかり目立つ野菜炒めを、佐紀ちゃん(仮名)は「おいしいね!」と、
目を細めながら食べ始めた。
その時、店に4〜5人連れのサラリーマン風の客たちが入ってきた。
「スミマセン、チョトツメテモラエマスカ」
店員の求めに、佐紀ちゃん(仮名)が「あっ、はいはい」と応じながら、
丸椅子を体ごとオレの方に寄せてきた。
半そでのシャツから出た、佐紀ちゃん(仮名)の白い腕が、オレの腕に一瞬触れた。
佐紀ちゃん(仮名)の少し汗ばんだ腕が、ぺたっとオレの腕に張り付く感触が、
たまらなく心地よかった。
370
:
1
:2015/09/14(月) 03:06:26
佐紀ちゃん(仮名)の腕が触れてくる感触に、オレはドキドキしていたけど、
佐紀ちゃん(仮名)の方は全然意に介してない様子だった。
「ところで佐紀ちゃん(仮名)…、いつデパートに就職したの?」とオレが聞くと、
「うん。春から契約社員になったんだ。ほら、お歳暮のバイトしてた時(過去スレ参照)、
いろいろ世話してくれた、社員の宮地チーフが誘ってくれたの」
と、佐紀ちゃん(仮名)は、何故かちょっと顔を赤らめながら答えた。
「宮地チーフって…、えーっと…、ボサボサ頭の?」と俺が思い出しながら聞くと、
「それは織田澤さん…。てゆーかチーフじゃないし」と、佐紀ちゃんは一瞬ムッとした口調になった。
「そっかー。でも、いい就職決まって良かったね。制服ホントに似合ってて、大人っぽかったよ」
とオレがいうと、
「もう…。またからかって…」と、佐紀ちゃん(仮名)は言葉では困ったふりをしたけれど、
その表情は意外に堂々としていて、自分に自信を持って振る舞っている大人の女、というようにも見えた。
『佐紀ちゃん(仮名)、やっぱり前と全然感じ変わったわ…。こりゃ本当に女になったかな…』と、オレは思いながら、
「佐紀ちゃん(仮名)は、まだ梨沙男クン(過去スレ参照)と付き合ってるの?」と、聞いてみた。
「梨沙男クン?」と、佐紀ちゃん(仮名)は一瞬誰のことかわからない、といったような怪訝な表情を浮かべた後、
「ああ、梨沙男クンね(笑) やだあ(笑) とっくに別れましたよ、あの子とは…」と言って、蓮っ葉な笑みを見せた。
「別れ話の時に、『離れたくない』とかって泣かれたけど(笑) あの子、全然子供なんだもん」
「じゃあ、今付き合ってる人いないの?」
「それは、もちろんいるけど(笑)…」
冷蔵倉庫の一件の時に、佐紀ちゃん(仮名)の身を案じてオレに殴り掛かってきた熱い梨沙男クンを思い出して、
なぜだか分からないけど、オレはちょっぴり切ない気分になってきた。
371
:
1
:2015/09/14(月) 03:10:55
野菜炒めと餃子を食べ終えて、オレと佐紀ちゃん(仮名)は思い出横丁を出て、新宿の街をブラブラと歩き出した。
「佐紀ちゃん(仮名)の今の彼氏って、どんな人なの?」と、オレは聞いてみた。
「うーん…」と、佐紀ちゃん(仮名)はもったいをつけるように、唇に指を当てて考えるような仕草をした。
「年上? 年下?」
「…年上だよ」
「いくつぐらいの人」
「えーと…、40歳くらい…」
『そんなオッサンと…!』
オレはカッと胸が熱くなってくるのを感じながら、重ねて問いかけた。
「それって…、もしかして…、不倫…、とかじゃないよね?」
少し間を置いて佐紀ちゃん(仮名)が、「えー…? 知らない(笑) 桃(仮名)には内緒にして下さいよー…」
と、甘ったるい声を出した。
『マジかよ…、佐紀ちゃん(仮名)…』
オレは胸の中で叫んだ。
372
:
1
:2015/09/14(月) 03:12:44
『この、小っちゃい佐紀ちゃん(仮名)の体を、思うさま弄んでるオッサンがいる…』
そう考えただけで、オレはまるで発狂しそうなほどの嫉妬にかられた。
『今日はこんな気持ちになってばかりだ…』と、オレは思った。
そういえば、さっき吉澤さん(仮名)と喧嘩別れをしたのも、吉澤さん(仮名)の男関係への嫉妬心が原因だったのだ。
オレは自分が破滅に向かって一直線に突き進んでいるのを予感しながら、
今夜無理やりにでも、目の前の佐紀ちゃん(仮名)を、自分のモノにしたい気持ちでいっぱいになってきた。
「佐紀ちゃん(仮名)…」
そう呼びかけながら、オレは佐紀ちゃん(仮名)の小さな手をギュッと握った。
「えっ? なに…、いきなり?」
ひどく困惑したような目で、佐紀ちゃん(仮名)がオレを見上げてきた。
373
:
1
:2015/09/14(月) 03:14:31
沈黙が流れた。
上目遣いの佐紀ちゃん(仮名)の瞳を見た途端、オレは『好きだ』とも『抱きたい』とも、
言葉が出てこなくなってしまった。
『何やってんだ…、オレ…』
オレは激しく焦りながらも、佐紀ちゃん(仮名)の手を握ったまま離せずにいた。
「あの…」
何か佐紀ちゃん(仮名)が言いかけた時、いきなり佐紀ちゃん(仮名)の携帯電話が鳴りだした。
佐紀ちゃん(仮名)は明らかに、『これ幸い』とでもいうような、ホッとした表情を一瞬見せた後。
「ちょっとゴメンね」と言って、オレの手をふりほどいて電話に出た。
「もしもし…。佐紀(仮名)です…。あっチーフ? いま友達と…、えっ?これから? うん。大丈夫…」
374
:
1
:2015/09/14(月) 03:16:13
電話を終えた佐紀ちゃん(仮名)は、オレに向き直ると、
「○○さん(オレ)、ゴメンね。佐紀(仮名)、ちょっと用事できちゃった」
と、パッと華やいだような、嬉しそうな表情を隠そうともせずに言った。
これからその彼氏と会うのだろうか…。
「ところでいま、何か私に話でもあったの?」と、佐紀ちゃん(仮名)が聞いてきた。
「いや…。別に」と、オレはいったん答えかけたけど、
「これから会うのは彼氏? それってもしかして、デパートのチーフ?」と尋ねてみた。
少し間を置いてから、佐紀ちゃん(仮名)が不愉快そうな目の色を見せて言った。
「いいじゃん。誰でも…」
375
:
1
:2015/09/14(月) 03:18:35
佐紀ちゃん(仮名)と別れてから、どれくらい安酒を飲んだのだろう…。
オレは寂しい気持ちを抱えながら泥酔して、フラフラと自宅の前までたどり着いた。
『もしかして…、ももち(仮名)が家に来てないか?』
そんなムシのいいことを願ったものの、オレの部屋の窓は真っ暗だった。
部屋に入って、ベッドの上に大の字になった。
無性に人肌が恋しい気分だった。
無意識のうちに、桃子(仮名)に電話をかけていた。
10回ほどの呼び出し音の後に、今まで寝ていたような声で桃子(仮名)が出た。
「はい…。もしもし…」
「もぉ(仮名)、オレだよオレ」
「センパイ…? 酔ってるの?」
「もぉ(仮名)、会いたいよ…」
「…もぉ(仮名)、寝てたんだけど…」
「今すぐ会いたいよ、もぉ(仮名)…」
「あのさあ…、もぉ(仮名)明日一限から授業なんだ…。それじゃね、お休み」
切れた電話を握って、再びかけた。
「もぉ(仮名)…、会いたい」
「もー! センパイ! し・つ・こ・い!!」
再び電話が切れた。
376
:
1
:2015/09/14(月) 03:20:28
通話の切れた携帯を握ったまま、オレはしばし呆然とベッドの上に佇んでいた。
今日一日の出来事を反芻すると、情けないことに、ムラムラと性欲が湧いてきて、自分自身であきれ返った。
酔った頭で桃子(仮名)のことを考えながら、自分自身をしごき出すオレ。
しかし、さらに情けないことに、桃子(仮名)のことを考えようとすればするほど、
行きずりの男に抱かれる吉澤さん(仮名)とか、
デパートのおっさんチーフに激しく攻められて嗚咽を漏らす佐紀ちゃん(仮名)の姿がまぶたに浮かんできて、
とまらなくなってしまった。
「くそっ!」
力ずくでしごいて放出しようとした瞬間、唐突にカメラ店の保田さん(仮名)の顔が脳裏に浮かんできた。
「アッー」
377
:
1
:2015/09/14(月) 04:26:59
本スレの方は
どうすれば満足するの?
って感じ
378
:
名無し募集中。。。
:2015/09/14(月) 04:52:37
おつおつ
今回もおもしろかった
いろいろ難しいだろうけど、ストレス溜めないようにね
379
:
名無し募集中。。。
:2015/09/14(月) 11:24:43
乙です
サキタムお持ち帰りはならなかったかw
あんな雰囲気じゃ書きづらいよね
ただ待ってる人も多いと思うよ
380
:
名無し募集中。。。
:2015/09/14(月) 23:25:59
全員を満足は無理だけど
1さんの思うように書いて満足する人達はたくさんいると思うよ
自分は1さんの文章とか発想がすきだから楽しみに読んでる
381
:
1
:2015/09/15(火) 02:32:46
ありがとう
打たれ弱いから優しくされるとウルっとくるわ(笑)
382
:
1
:2015/09/15(火) 02:39:45
次の日…。
昼ごろになってようやく眠りから覚めたオレは、まだ酒の抜けてない体を引きずって、
のろのろと学校へ向かった。
授業に出る気力は全くなかったけれど、昨日撮ったフィルムを現像しておきたいと思ったからだ。
部室に行って準備をしていたら、ガチャガチャとドアが開いて、真野ちゃん(仮名)が入ってきた。
「あっセンパイ。おはようございます! センパイも現像ですか?」
と、真野ちゃん(仮名)の弾んだ声が、二日酔いのオレの頭に少し響いた。
「うん…」と、生返事をするオレに、
「よかったら、私が二連タンク使って、私の分とまとめて現像しましょうか?」と、
すっかり頼もしいことを言いだす真野ちゃん(仮名)。
「えっ、いいの?」と、一瞬お言葉に甘えようとしたオレだったけど、
昨日の夜の暗い撮影状況を思い出して、
「ちょっと(露出が)アンダーだったから、『押し気味』にしたいんだよな…。やっぱ自分でやるわ」
と、返事をした。
「『押し気味』って、なんですか?」
「撮影した時の光が足りなかった時とか、少し長めに現像して感度を上げてやることだよ」
「へえ…。私もそれやってみたいから、今度やり方教えてください!」
全く…。
吸収が早いというか、教え甲斐のある子だ。
桃子(仮名)とも、こうやって写真の話ができれば楽しいのに…、とオレはまた思った。
383
:
1
:2015/09/15(火) 02:44:35
真野ちゃん(仮名)と二人並んで現像をして、フィルム乾燥まで終わると、今度は引き伸ばしにとりかかった。
赤いセーフライトの下、現像液の中から浮かび上がるモノクロの画像…。
オレが昨日撮った、道重さん(仮名)の写真だった。
ざっと画像を点検してみて、「うむ…。悪くない」と、オレは思った。
手前味噌ながら、ちょっと酔った感じの道重さん(仮名)の、淫靡な表情がよく出ていると思ったし、
画像自体も、あの暗い所で、ほとんど絞り開放で撮った写真にしては、割合シャープに見えたからだ。
「やっぱりあのニッコール、いいレンズだな…」と、オレは満足した。
そう思って印画紙を定着液に移すと、今度は真野ちゃん(仮名)が、自分のネガを引き伸ばし機にかけ始めた。
「どれどれ…。あっ!」
現像液から浮かび上がる吉澤さん(仮名)の画像を一目見て、オレは驚いた。
吉澤さん(仮名)の艶やかな表情もさることながら、画質自体も、オレの撮った写真よりも明らかに芯のある、
一段上のレベルのシャープな画像がそこに映っているように見えたからだ。
『そんなバカな…』と、オレは焦った。
いくら真野ちゃん(仮名)のテッサーが、歴史的名レンズといっても、
それは戦前からせいぜい1960年代初頭までの、クラシカルなレベルの話。
コンピューター設計が当たり前になり、加工技術も進歩した現代のレンズが、
画質で負けるはずがないではないか。
「焼きミスでもしたかな…」
オレはそう言いながら、もう一度引き伸ばし機に自分のネガをセットして、さっきの画像を焼き直してみた。
何度焼き直しても、結果は同じだった。
384
:
1
:2015/09/15(火) 02:47:37
引き伸ばしが終わり、暗室を出たオレは、真野ちゃん(仮名)の印画紙とネガを奪うように受け取ると、
ルーペを使って、自分の撮ったものと比較してみた。
明るいところで細部を拡大すると…。
暗室で思ったのとは異なり、やっぱりオレの写真の方が粒子が荒くなく、
画質がシャープなように見えた。だが、離れた位置から全体像を眺めると印象が一変する。
これは要するに、真野ちゃん(仮名)の写真の方がコントラストが高いのだ。
明暗がくっきりと画像に出ているので、パッと見だと、全体のシャープさでも勝っているような錯覚を受ける…。
「やっぱすげえわ、あのテッサー…」と、オレは素直に脱帽せずにはいられなかった。
真野ちゃん(仮名)はちょっと誇らしげな、照れくさそうな顔をしてオレを見ながら、
鞄の中から、件のテッサーが付いたEXA 1Cを大事そうに取り出して言った。
「やっぱり、このカメラにして良かった…」
385
:
1
:2015/09/15(火) 02:49:47
あらためてこの不思議なカメラを見つめると、
吉澤さん(仮名)の言ってた、「不幸のカメラ」との言葉が頭に浮かんできた。
『男運がどうとか、あのクールな吉澤さん(仮名)が大真面目に言ってたけど…』
オレが考え込んでいると、「ところでセンパイは昨日、あの後まっすぐ帰ったんですか?」
と、真野ちゃん(仮名)が笑顔で尋ねてきた。
オレは一瞬、吉澤さん(仮名)との出来事とか、佐紀ちゃん(仮名)との出来事を思い出して凹みそうになったけど、
「ん…、あ…、いや…。ちょっと飲んでから帰った」と、言葉を濁した。
「真野ちゃん(仮名)はまっすぐ家に帰ったの?」
「それが私…、駅前で知らない男の人にナンパされて…」
まあ、真野ちゃん(仮名)くらい可愛い子なら、そんなことだってあるだろう。
「へえ…。まさかついて行ったりはしなかったんでしょ?」
「それが…。自分でもすごく不思議なんですけど、ついて行っちゃったんです、私…」
オレは一瞬びっくりして、カメラを落としそうになった。
386
:
1
:2015/09/15(火) 02:54:02
「『ついて行った』って…、どこに?」
驚いてオレが聞き返すと、
「最初に『カラオケでも行こう』って誘われて。カラオケ行ったら今度は『ホテル行こう』って言われて…」
と、屈託のない笑顔で答える真野ちゃん(仮名)。
「…」
言葉の出ないオレに、
「さすがにそこまでは行きませんでしたけど(笑)」と、てへぺろ顔で笑う真野ちゃん(仮名)。
オレが呆れて真野ちゃん(仮名)をまじまじと見つめると、真野ちゃん(仮名)はそんなオレの表情にも気づかずに、
「エッチな人で、すぐお尻や胸触ってきたり、キスしたりしてきて…。『イヤです』って言ったらやめてくれたんですけど」
オレは思わず首を大きく振った。
行きずりのナンパ男について行って、激しく犯される真野ちゃん(仮名)の姿が頭に浮かんで、止まらなくなったからだ。
「センパイ…、どうしたんですか?」
不思議そうにオレの顔を覗き込んできた真野ちゃん(仮名)を見つめ返して、
オレは思わず大声で怒鳴った。
「何やってんだ真野ちゃん(仮名)! バカじゃねえの!?」
387
:
1
:2015/09/15(火) 02:56:01
沈黙が流れた。
一瞬真顔でオレを見つめ返してきた真野ちゃん(仮名)の両目が、しだいに赤く潤んできた。
「あっ…、いや…」
オレは慌てて何か言おうとしたけど、もう遅かった。
真野ちゃん(仮名)の両目から、涙が一しずく、二しずくと頬に流れた。
「自分でも、どうしてかわからないんだもん…」
そう言うと、真野ちゃん(仮名)は辺りもはばからずに、子供のように声を上げて泣き出してしまった。
オレはうろたえて周囲を見回した。
もしいま、誰か部室に入ってきたら、どんな誤解を受けるとも限らないではないか。
それこそ、もしも桃子(仮名)が入ってきたりしたら…。
「真野ちゃん(仮名)、怒鳴ったりしてオレが悪かった! これ! この通り!」と、オレは土下座する勢いで謝った。
「真野ちゃん(仮名)のせいじゃない。やっぱりこのカメラに何かあるんだよ! ちょっと見せてみて!」
オレがそういうと、真野ちゃん(仮名)はまだ嗚咽を上げながら、例のEXA 1Cをオレに手渡してきた。
388
:
1
:2015/09/15(火) 02:57:45
「このカメラに…、一体どんな因縁があるというんだ…」
オレはあらためてカメラを見回して、あちこちいじってみたけれど、
そんなことで何が分かる訳もなかった。
ようやく泣くのをやめた真野ちゃん(仮名)が、真っ赤に腫れた目でオレを見つめてきた。
「くそっ!」
オレは思わず、乱暴にレバーを巻き上げながら、何度も空シャッターを切ってみた。
その時、突然「ガリッ!」と、カメラから異音がして、巻き上げレバーがビクとも動かなくなってしまった。
「あっ!」と、慌てるオレ。
「ちょっとセンパイ! どうしたんですか!」と、悲鳴を上げる真野ちゃん(仮名)。
「どうしたんですか!? 私のカメラ!?」
「スマン…。壊したかも…」
「いやあっ!」
重ね重ねの失態に、オレは動揺した。
力ずくでレバーを回そうとするオレを見て、真野ちゃん(仮名)が慌てて叫んだ。
「やめてください! いいから保田さん(仮名)に見てもらいましょう!」
389
:
1
:2015/09/15(火) 02:59:54
確かに、それが一番の解決法だった。
取るものも取り合えず部室を出たオレたちは、電車に乗って五反田の保田さん(仮名)の店に向かった。
店に着いてドアを開けると、奥のカウンターには先客の背中が見えた。
オレたちが入ってきたのに気付いた保田さん(仮名)は、
「あら…。今ちょうど、あなたたちのこと話してたところよ…」と、笑った。
保田さん(仮名)と話をしていた先客も、こちらを振り向いた。
誰あろう、それは吉澤さん(仮名)だった。
「あっ…、昨日はどうも…」と、緊張するオレを見て、吉澤さん(仮名)は、
「例の不幸のカメラについて、圭ちゃん(仮名)を問い詰めてたところ」と、苦笑いした。
昨夜のことは水に流してくれているのか…、いつものクールな吉澤さん(仮名)の口調にオレは少しホッとした。
390
:
1
:2015/09/15(火) 03:02:47
「そのカメラのことなんですが!」
と、慌てて真野ちゃん(仮名)がしゃべろうとするのにもとり合わず、保田さん(仮名)は、
「何? もういい写真撮れたの? 見せてごらんなさい」と、有無を言わさぬ口調で言った。
オレと真野ちゃん(仮名)は一瞬目を見合わせた。
そんなことより、カメラを見てほしいのだが…。
しかし、この人に逆らうと、余計話が面倒になるような気がしたオレは、真野ちゃん(仮名)に目配せをした。
真野ちゃん(仮名)もその意味に気付いたように、さっき引き伸ばしたばかりの印画紙を、
鞄の中から取り出して、保田さんに手渡した。
「あら。モデルはよっすぃー(仮名)じゃないの」と、プリントを一瞥した保田さん(仮名)は微笑を浮かべた。
「おー。照れるねどうも」と、大して照れてなさそうな表情で覗き込む吉澤さん(仮名)。
「あの…」と、話しかけようとした真野ちゃん(仮名)を、
「ちょっと黙って!」と、制した保田さん(仮名)は、印画紙を手にとって、あらためてまじまじと見つめなおした。
「ふーん…」と、したり顔の保田さん(仮名)。
緊張した表情の真野ちゃん(仮名)。
「アンタ、なかなかやるじゃないの…。カメラの性能だけではこういう表情は撮れないわ…。
それに焼き方もまずまずね…。これなら合格点を上げてもいいわ」と、保田さん(仮名)は言った。
「やったーっ!」
真野ちゃん(仮名)が興奮して、オレの手を握り締めてきた。
391
:
1
:2015/09/15(火) 03:05:27
真野ちゃん(仮名)の柔らかい手の感触に、一瞬オレがボーッとしていると、
「ところでアンタの方はどうなんだい?」と、保田さん(仮名)がオレに顎をしゃくってきた。
「へ?」と、オレ。
「アンタの撮った写真だよ」と、保田さん(仮名)。
オレは慌てて、自分の鞄から自分の印画紙を取り出した。
印画紙に写ってる道重さん(仮名)を一瞥した保田さん(仮名)は、「これ誰?」と首を傾げた。
「うちらの後輩のシゲさん(仮名)。圭ちゃん(仮名)も会ったことあるよ」と、吉澤さん(仮名)が言った。
しばらく印画紙を凝視していた保田さん(仮名)は、いきなり顔を上げてオレを見ると、
「45点…。やり直し」と、不機嫌そうな表情で言い放った。
がっくりとうなだれるオレに、保田さん(仮名)は、
「『モデルの違い』とか、『レンズの違い』とかって程度にアンタは思ってるかも知れないけど…、
そういう以前の問題として、アンタはこのモデルの子に飲まれちゃってるんだわ」
と、耳の痛いことを指摘した。
『全く同感』と言いたげに、吉澤さん(仮名)がうんうんと頷くのが見えた。
392
:
1
:2015/09/15(火) 03:06:51
「ところで、このカメラなんですが…」
話が途切れたのを待っていたように、真野ちゃん(仮名)が話し出した。
「いや…、オレがいじっていて、壊しちゃって…」と、オレが話を継ぐと、
「どれ…。見せてごらん」と、さして驚く風でもなく、保田さん(仮名)が言った。
さすがにプロらしい、頼もしい口調だった。
カメラ用の精密ドライバーを使って、慣れた手つきで保田さん(仮名)は、カメラの底蓋を外しはじめた。
「中のギアに何かが噛んでるみたい…」と、保田さん(仮名)は早速アタリをつけたようだった。
393
:
1
:2015/09/15(火) 03:08:50
それから数分。
「直った」と、保田さん(仮名)のあっさりした声に、
「ホントですか!」と、真野ちゃん(仮名)が歓声を上げた。
喜んでカメラを手に取る真野ちゃん(仮名)を尻目に、保田さん(仮名)はオレや吉澤さん(仮名)に向き直ると、
「ギアの間にこんなものが絡まってたんだけど…」と、
長さ1センチ弱、直径1ミリほどの細い棒のようなものを示した。
「なんだろう? ゴミかな…」と、オレが訝ってると、
「ちょっと貸して」と言って、吉澤さん(仮名)がその棒のようなものを取り上げて弄りだした。
「紙だわ…。蝋で固めてある…」と言いながら、吉澤さん(仮名)は長い爪でその蝋を削り取った。
すると…。
棒のように見えていたのは、小さく固く巻かれた紙の切れ端だった。
吉澤さん(仮名)は、その紙を丁寧に広げ出した。
「何か書いてある…。外国の文字と…、地図みたい…。なんだろうこれ?」
オレたち4人は、いっせいにその小さな紙切れを覗き込んだ。
394
:
1
:2015/09/15(火) 03:13:37
「これ…、ドイツ語だと思います。äとかöとか出てくるし…」
紙切れに書かれていた、細々とした文字と地図を見つめて、真野ちゃん(仮名)が言った。
「真野ちゃん(仮名)、ドイツ語なんか分かるの?」と、吉澤さん(仮名)。
「はい…、いえ…。 一般教養の第二外国語で習ってる程度なんですけど…」と、真野ちゃん(仮名)。
「何て書いてあるの?」と、興味津々な保田さん(仮名)に、
「そこまでは…。何か単語の羅列みたいで、文章になっていないような…」
と、困った様子で真野ちゃん(仮名)が答えた。
少し沈黙が続いた後、
「単語の羅列って…、暗号か何かかしらね?」と、保田さんは自問するように言った。
「あるかもよ。このEXAって昔の東ドイツ製でしょ? 東西冷戦の時に、スパイが軍事機密を伝えるために、
隠した文書かも…。地図の場所には軍資金が隠されていたりして…! それとも死体とか?」
珍しく芝居がかった口調で、吉澤さん(仮名)が言った。
「いや…、話の腰を折って悪いですけど…、この手紙が不幸のカメラの呪いの原因だったとしたら…、
そんなものとは違うんじゃないですかね? 男運が悪くなるとか、スパイにしてはずいぶんショボい呪いですよ」
と、オレは疑問を口にしてみた。
「何だろう…? あーん!とにかくすごく気になります!」と、真野ちゃん(仮名)が叫んだ。
395
:
1
:2015/09/15(火) 03:13:56
とりあえず今日はここまで
396
:
名無し募集中。。。
:2015/09/15(火) 06:46:16
乙でしたー
397
:
1
:2015/09/16(水) 00:40:44
「何かはわからないけど…、とにかくこのカメラを使って、
誰かが秘密の文書をやりとりしてたってことよね…」
と吉澤さん(仮名)が言った。
こんなに興味津津な感じの吉澤さん(仮名)を見るのも、オレは意外な気がした。
「んー、そこなんだけどさ…」と、保田さん(仮名)がクールな表情のままで口を挟んだ。
「何? 圭ちゃん?」
「『やりとり』って感じが、今イチしないのよねぇ…」
「何で?」
「このカメラのネジとか中身とか、キレイすぎるんだわ…。素人が何度も底を開けたり閉じたりしたカメラって、
私らプロから見れば大体検討つくんだけどさ…。このカメラにはそんな気配が全然ないのよねぇ」
二人の会話をオレと真野ちゃん(仮名)は、黙って聞いていた。
398
:
1
:2015/09/16(水) 00:41:15
「でもさ圭ちゃん(仮名)、スパイがカメラの素人とは限らないじゃん」
吉澤さん(仮名)の頭の中では、すでに文書の主はスパイと決まっているらしい。
「カメラの修理屋同士が、わざわざカメラに暗号隠してやりとりすんの? 何のために?」
「そりゃわからないけど…」
そこまで言い合うと、二人は腕を組んで黙り込んだ。
「あの…」
と、真野ちゃん(仮名)が声を出した。
「とにかく何て書いてるのか、私明日、フロイライン・エリカに聞いてきます」
「『フロイライン・エリカ』って誰?」と、オレ。
「あっ、私のクラスのドイツ語の先生で、エリカ先生って言うんです」
エリカ先生…。
ドイツ風色白美人教師の姿を、勝手にオレは想像した。
「じゃ…、じゃあ、オレも一緒に聞きに行くよ」と慌てて言うオレ。
「んじゃ、私はこのカメラを最初に買った安倍さん(仮名)に、当時の状況をもっと詳しく聞いとくわ。
明日の夕方、学校の部室で落ち合おう」と、吉澤さん(仮名)もどこまでもノリノリであった。
399
:
1
:2015/09/16(水) 00:43:21
家に帰ってからも、オレは謎の文書のことが気になってしかたなかった。
「誰が、いつ、何のためにカメラに入れたんだ? 呪いとのかかわりは?」
そんなことを考え始めると、ベッドに入ってからも目が冴えて寝付かれなくなった。
突然、桃子(仮名)のことが頭をよぎった。そういえば、今日はお互い電話もしていない。
オレはベッドから身を起こすと、部屋の灯りをつけ、携帯電話を握って桃子(仮名)にかけようとした。
『でも…、今日はもう時間が遅いか…。昨日も酔って変な時間に電話して怒られたんだよな』
オレは考え直して電話を置くと、部屋の電気を消して再び眠ろうとした。
そうすると、また謎のカメラについての妄想がとめどなくはじまるのであった。
400
:
1
:2015/09/16(水) 00:45:10
その翌朝…。
完全に寝坊したオレは、真野ちゃん(仮名)との約束時間に遅れそうになって、慌てて家を飛び出した。
駅から走って、ようやく学校の前まで来たところで、携帯電話が鳴った。
桃子(仮名)からだった。
「センパイ(オレ)、おはよー」
「ん? お…、おお」
「ねえ、今日お昼とか、会えるかな?」
「あっ…、ちょっと今日、用事があってな…」
例のカメラのことやら、謎の文書のことやら、話したいことはいっぱいあったのだが、
今は説明する時間が惜しかった。
「じゃあ…、夕方は?」
「んー…、ちょっとまだわからん。ごめん、もぉ(仮名)、今オレ急いでて…」
「そう…。それじゃあとで連絡してよ」
「わかった」
電話を切って部室の前まで走って、ギリギリ約束の時間に間に合った。
ドアを開けると、すでに真野ちゃん(仮名)は支度を整え、オレを待っていた。
「あっ、センパイ(仮名)来た! さっそく先生のところ行きましょう!」
真野ちゃん(仮名)も気合十分だった。
401
:
1
:2015/09/16(水) 00:49:43
『フロイライン・エリカ』の講師室は、古びた研究棟の奥にあるとのことだった。
薄暗い廊下を真野ちゃん(仮名)と二人で進んでいくと、
「あっ、ありました。ここです!」と、真野ちゃん(仮名)が指をさした。
『現代ドイツ文学・梅田えりか講師(仮名)』と、ドアのプレートに書いてあった。
「えっ…『エリカ』じゃなくて、『えりか』なの? しかも『梅田(仮名)』って…。
ひょっとして日本人?」
妙齢のドイツ人女教師を勝手に妄想していたオレは、拍子抜けしながら真野ちゃん(仮名)に聞いた。
「そうですけど…。ドイツ人なんていいましたっけ私?」と、怪訝な表情の真野ちゃん(仮名)。
「なんだ…、オレはてっきりドイツ美人の先生が出てくると思ったのに」と、オレが軽口を叩くと、
真野ちゃん(仮名)は、一瞬呆れた表情を見せたけれど、
「日本人だけど…、でも、美人には違いないですよ」と、
オレの耳元に小声でささやいてから。ドアを2回ノックした。
402
:
1
:2015/09/16(水) 00:51:49
真野ちゃん(仮名)の話はウソではなかった。
ノックの後、「はぁい♪」と、思ったより高い声の返事がしてドアが開くと、
そこに現れた「えりか先生(仮名)」は、まるでモデルさんのようにプロポーション抜群で、
年齢不詳な感じの、少しバタ臭い顔をした、まごうことなき美人であった。
えりか先生(仮名)から漂ってくる、今まで嗅いだことのない、外国風の香水の匂いに、
オレがボーッとなっていると、真野ちゃん(仮名)が、「ゴホン」と、
一つわざとらしい咳払いをして、オレを睨み付けた。
「なぁに? あーた達、私に何か御用かしら?」
と、えりか先生(仮名)は、オレと真野ちゃん(仮名)を等分に見ながら首を傾げた。
「お忙しいところスミマセン。実は教えていただきたいことがありまして…」と、真野ちゃん(仮名)。
「まあ?何かしら? とりあえず中にお入りなさい」と、えりか先生(仮名)がほほ笑んだ。
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