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【エルデンリング】黄金律最終報告リマスター版:投稿者【同人拓也】

337名前なんか必要ねぇんだよ!:2023/02/18(土) 12:16:22 ID:phDNMTVc

愚痴ばかり連ねてしまったな。
ついでだが、私が旅で見たものの一部を記そう。私がかつて穢した、ケイリッドについてだ。

兄様と眺めたケイリッドの腐敗は、先にも書いた通りその大半が引き、あるいは土へと混ざり、今や生命のサイクルを抱く大地のひとつとなっている。貴公にも見せてやりたかった。白く美しい毛並みに覆われた大犬が、真新しい首輪を付けられて、騎士を背に乗せて緑の野を駆ける景色を。岩場に生えるキノコと菌糸が、人々を害すことのない森を。おそらく貴公には想像すら出来ぬだろう。あのケイリッドにも青空が広がり、家々が立ち並び始め、かつての民が息づいているのだ。焼き潰された騎士達の紋章は蘇り、彼らは遂に故郷に帰ったのだ。

私は未だ臆病で、彼らから向けられるであろう眼を恐れてしまい、物陰に隠れて遠くより眺めることしか出来なかった。兄様が見繕ったフードに、束ねた赤髪を隠し、ローブで義手と義足を隠した。遥か遠くに見えるラダーンに視線を合わせられ、静かにうなずかれた時、私は廃屋に飛び込んで隠れたほどだ。しかし私が隠れた廃屋は、建て直し始めた家々のひとつであり、そこに住む歩兵のひとりに、私はあの茹で蟹を勧められた。

ただそれだけでも、私は救われたのだ。
「土地に腐敗は無く、戦も終わり、皆の命が戻ったのなら、なぜお前を恨まねばならぬのか」と、兵の語るその言葉に私は慰められた。あの時ほど「蟹好きには良い奴しかいねえ」という茹で蟹屋の言葉が骨身に染みた時はない。小屋から出てきた折には兄様に笑われてしまったが、兄様は私を抱き寄せると、朱き腐敗を受け入れた理に私と共に祈り、貴公のために祈ってくれた。

近々、私は再びケイリッドに赴こうと思う。あるいは捕らえられ、罰せられるかもしれないが、それでも私の過ちにより失われた命が戻ってきてくれたことに、そして貴公が成したことに、感謝せずにはいられないのだ。
ラダーンと友になることは無い。例え何者が望もうが望むまいが、私にそのような資格はない。
ただ、もしも許されるのなら、一度だけでも、かの英雄と話がしたい。
いつしか貴公にも語れるような、穏やかな話を。


ところで、貴公とマネージャーが狭間の地においてなんと呼ばれているか、貴公は知らぬだろう。
マネージャーが書き表したところによると、貴公は創世者(ビルダー)拓也と呼ばれているのだ。
他にもビルダー・クラウド(雲のように捉えどころの無い創世者)タクティクス(奇策に優れた戦術家)
ウルトラマン拉致(黄金律にさらわれた超人)などと、なんとも珍妙ではあるが、不思議と貴公に馴染む二つ名がつけられている。マネージャーも同様に導きのマネージャー、拓也を支配する者、円卓を指揮する者と語られているが、貴公の二つ名に比べると大人しく、それもマネージャーらしいと言えばそうなのだが、貴公の二つ名は兎にも角にも異様なのだ。

ネフェリ王が即位した折に、戴冠の儀式にて民に語ったことが、その二つ名の元となっている。
『その身を犠牲に、変わらぬ理を世に広め、皆々を蘇らせし者、シンジュクの地の拓也に祈りを捧げる』
この一文の後に語られた、ほんの一部の逸話と共に、貴公の言葉が世に広まったのだ。
その言葉を以下に記す。


『僕は子供の頃から同性愛者であることを自覚して生きてきました。
人と少し違うだけでいじめられたり、困難な道を歩かされるかもしれません。
しかし、その道を歩いているのは一人ではなく、多くの同じ悩みを抱えてる方々がたくさんいます。
実際は下ばかり向いて、周りを見る余裕はないかもしれません。
でも、そんな時こそやっぱり顔を上げて、近くで悩んでいる人と励まし合いながら、自分が傷つかないで生活できる小さな世界であっても、気楽に生きて欲しいと思います』


上記の言葉は、マネージャーが探し出した貴公の言葉であるらしいが、貴公の言葉は貴公の理と同じように、民の心をも変えたのだ。孤独の中で困難な道を行くとしても、弱さを受け入れて互いに支え合う小さな世界を、貴公は我ら皆のために押し広げたのだ。もはや弱き者が、律のもとで虐げられることはない。民は一度蘇り、二度と同じ形で蘇ることが無い己の身を知り、今は平穏を尊んでいる。この平穏がいつまで続くかとマネージャーに聞いたことがあるが、彼らが望む限りに、だそうだ。
だが貴公の言葉が世にある限り、民は、我々は、平穏を守るだろうと私は信じている。
かつて黄金律があった時、律の前には皆等しく弱く、そして孤独だったのだから。


そしてこれが、ある意味では最も厄介なことなのだが、貴公の活躍をどこまで書き表し、どこまで形に残すかで、今も議場が荒れに荒れているのだ。なにせ貴公の活躍は英雄的なものから酷く醜いものまであり、そうでありながら行いの多くが重大な何事かに繋がっているのだから、皆頭を抱えているのだ。おかげで貴公と共に理に溶け、そして律の壊れによって復活した金仮面卿の偉業も未だ世に出せないでいる。何かとあるとすぐに吐精し、糞便を垂れ流し、種別関わらず他者を強姦し、忌み薬も平気で用い、それによって世を救った貴公の物語など、どのように伝えればいいのだ?金仮面卿が功に頓着せぬことに、我らは今も助けられている有り様だ。

ブライヴなどはふざけていて、あるがままを広めればよいと言うが、それでは多様となった民の人心が荒むかもしれぬだろうし、かといって清い逸話のみを残せば、何を成した者かも不明瞭となり、あらぬ盲信を世に招くかもしれぬ。ゆえに皆が受け入れやすいように全体を手ぬるい形に書き換えてはどうかという、ラニの意見が注目されていたが、これには母様からの涙ぐましい反発があり、どうにも突き通せなかったのだ。

そこで今は、いっそ解読が困難な、難解な言葉を用いて伝承を作ってはどうかという意見が持ち上がっている。葦の地から渡ってきたノムラという吟遊詩人を王都に招き、一応の手として話を進めているそうだ。ラニは今この時も、全体を手ぬるく書き換えるべきだと語っているし、私も兄様も同じ考えだ。幸いネフェリ王は迷っている。一度母様とは直接話し合う必要があるだろう。

黄金律時代の最後の物語、ファイナルファンタジーの編纂には、まだしばらく掛かるのだろうな。


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