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ロゼッタ「マリオカートに参戦…ですか、今度こそ」

1Mii:2020/12/13(日) 04:46:59 ID:9GX1QhWw
このスレは

 ロゼッタ「マリオカートに参戦…ですか?」 【前々スレ】

 ロゼッタ「マリオカートに参戦…ですね、是非!」【前スレ】

に引き続く続編となります。前々スレ、前スレをご覧になられていない方はそちらを先にどうぞ。
過去作を読まれていないと把握困難な設定、独自解釈が多々あります。

遅い進行のうえに寄り道万歳のスレですが、引き続き頑張っていきたいと思います。
よろしくお願いします。

ラナ「たったーん♪たかたかた〜ん♪
  そのほか、いくつか注意点をお知らせするよー。

     ・スレ主の、基礎体力面での戦闘能力解釈は、ざっくり言うと…
      キャラとしての登場時期の早さと、登場回数の多さで大方決まるからね!

      マリオ、クッパ、リンクを『3強』と表現してるけど、たとえばクッパVSガノンドロフだと、
      クッパが欠伸しながらパンチを繰り出すだけでガノンドロフを一撃粉砕できるくらいの力量差があるよ!
      パーティゲームに参加しないから仕方ないってことで、うん。敵があっさりやられても嘆かないで…。
      リンクとの差が付いた理由は、前々スレを読めばわかる、のかなあ…?

     ・前々スレ・前スレ同様、いろんなパロディ、メタ発言が散りばめられてるよ!
      キャラが自分たちの背景情報を活用する…みたいなご都合主義が白けるなら
      急がず慌てず別のスレに移って、このスレのことは忘れよう!
      
     ・ようやくスマブラ編が完結して…マリオカート編にちょっとずつ戻っていくんだって!よかったよかった!」

シア(…………ちょっとずつ?)

208Mii:2021/06/20(日) 18:28:10 ID:D5kkqxG.
ロゼッタ「…………………………仕方、ありませんね」スゥ・・・

サヤカ「ううん、わかってくれたなら別にいいの!
   私はただ、ママに悔いを残してほしくないだけだから――――」








ロゼッタ「――――――――――――――――サヤカ。

    命令します。私の経験値、返しなさい」ガッ

サヤカ「…がふっ!?」








最終手段。こんなことはしたくありませんでしたが…

いたいけな少女を、首根っこ掴んで――――そのまま地面に押し倒しました…!

209Mii:2021/06/20(日) 18:31:00 ID:D5kkqxG.
サヤカ「…え?ええ!?ちょ、や、やめてよ!?何の真似!?怖いよママっ!」ジタバタ



絵面的にはなんとも美しくない光景。それでも背に腹は代えられない。



ロゼッタ「先ほど自分で言いましたよね。
    この空間の管理者の貴方は…私至上主義だと。
    それは感情論とかではなく、おそらくはこの空間における…絶対的なルール。

    究極的には…私の本心からの命令には絶対服従、ということですよね?」パアアアアア

サヤカ「し、知らない!は、離して!」ジタバタ



あえて非情になり、押し付ける力を強めて行きます。



ロゼッタ「返しなさい」パアアアア

サヤカ「ぐ……………がが」ブルブル

ロゼッタ「返しなさい!」パアアアア

サヤカ「…や……………………め、て…………」ブルブル

210Mii:2021/06/20(日) 18:33:28 ID:D5kkqxG.
何かを感じる。サヤカの体から、何かが抜け出てくる。
見つめ合う私とサヤカの中ほどに現れた、1cmにも満たない、小さな小さな輝き。
ブゥーンと高周波音を微かに放つそれは、きっと――――思い描いている通りの物。



サヤカ「ぜ…ぜった、い、こうかい、す、るか、ら――――」ポロポロ

ロゼッタ「少しくらい信用してくれても、バチは当たりませんよ」

サヤカ「ママ、が、ママじゃ、なく、なることを、しんじざるを、えない、のぉっ!」ポロオポロ



――――それでも、やらなければならないことは、あると思います。
――――多少のリスクは、背負っても!



サヤカの制止を少しは気に留めつつも。後ろ向きにはならず。
一呼吸おいて、気合い入れ直して。

突如現れたその輝きを、そっと、労わるように、慈しむように。





両手でふわりと、包み込みました。
たちまち、輝きが強くなって――――――――――――

211Mii:2021/06/26(土) 19:48:11 ID:NzWQi0XQ
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



――――ごとり。

『…このあたりに仕掛けておきますか』

周りに、後頭部を打たれ失神した、出血甚だしい酔いどれ客たち。

『任務中にノコノコ近付いてきた、貴方がたが悪いなんですよ?』

まるで気にもせず、むしろ足蹴にし、不可視の爆弾を目ぼしい場所に仕掛けていく。

『ふむ…どのみち後で死ぬことになるのですから、むしろ今は…
下手に戒厳令出されないためにも、酔っ払い同士のちょっとした殴り合い、程度に
見せかけておきますか』

慈悲の心なんてなしに、単に作戦上有用だからと、気持ち程度回復させる。
そのあたりに転がっていた拳大のレンガの破片を、
あるいは適当に近くのゴミ捨て場から拝借した金属棒を。
空間魔法でふわりと動かし、転がる大怪我人の拳に滑り込ませる。

指紋なんて一切残さない、完全犯罪の達成。

『じきに、誰かが見つけてくれるでしょう。…運がよければ、ね』



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

212Mii:2021/06/26(土) 19:50:40 ID:NzWQi0XQ
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



――――ぽた、ぽた、ぽた。



『…………ふふ』

――――タブー様から、潤沢に無尽蔵に与えられるFPを。
――――少し細工して、タブー様の闇の力も練り込んで。

――――城下のあらゆる生活圏に、特に市民の生活の糧となる賑やかな市場の各地に。
――――ニコニコと歩きながらも、僅かに漂う瘴気として、ばら撒いて、ばら撒いて。



――――古来より、都市陥落の第一歩といえば、遅効性の毒を徐々に拡散させること。
――――何気ない仕草に違和感を感じ、やがて動きが鈍り、眩暈、吐き気、痺れを訴える。
――――いよいよ人々が病院に殺到することには……全て、手遅れ。



『まあ、キノコ王国の浄化性能とやら、せいぜいお手並み拝見といったところですかねぇ』

213Mii:2021/06/26(土) 19:52:31 ID:NzWQi0XQ
はしゃいで走り回っていた子供が、周りをよく見ていなかったのかぶつかってくる。

『いったぁ……っ!……あ!ご、ごめんなさいっ!』

『…あらあら、私は大丈夫ですよ。次からは気を付けましょうね』

子供の方も転んでしまっていたので、とりあえず手を差し伸べて引っ張り――――



『…!?い、痛いっ!』

…おや、思わず憎しみで強く握り過ぎましたか。ひとまず手を緩めます。

『あ、ごめんなさい。痛かったですか?』ニコッ

ちょっと涙目の子供が、掴まれて赤みを帯びた自分の腕と、私の顔を交互に見やり…

『…………だ、だい、じょうぶ、です。あ、ありがとう、ございまし、たっ!』

こわばった子供が、焦りつつもぺこりと頭を下げ、去っていく。
…すこし失敗しましたね、思わぬ『攻撃』に――――――――



『ロゼッタ』らしからぬ、睨み方をしてしまったかもしれません。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

214Mii:2021/06/26(土) 19:55:14 ID:NzWQi0XQ
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



『ええい!もう情報は回ってきてる!ネタバレは済んでるぞ!
アンタ、本物のロゼッタさんじゃないなっ!失礼過ぎるぞ、この屑ヤロー!』

『ちょっと待ってください!私、ロゼッタ本人ですよ!何処からどう見ても!』

『騙されるか!目つきからして全然違うだろ!
本物はそんな昏い眼差しはぶつけてこないはずだ!根っからのお人よしらしいからな!』



『……ああ、そうですか。それならば、仕方ありませんね。
…………どうしてばれてしまったのでしょうか、嫌ですねえ』



『…………っ!やっぱりそうじゃないか!
じきに正義のファイターたちがアンタなんか懲らしめに――――』

相手は、ごく普通の一般人。
こちらは、最弱クラスのファイター。

…力の差は、歴然。

杖を一振りしてみれば、咄嗟に割り込ませた両腕ごと、胴体の一部が吹き飛ぶ。
ディメーンの真似っこです。空間切断って便利ですね。癖になりそう。

215Mii:2021/06/26(土) 19:58:00 ID:NzWQi0XQ
『――――――――ああああああああ!?』ドクドク

一瞬、状況把握ができず、零れ落ちた部位を呆然と見やって、その後は絶叫。
血だまりの中で悶え苦しむしかできない愚鈍な相手。
傍で震えていた、奥様でしょうか。同じく絶叫して、荷物あらかたひっくり返して、
ボロボロと無様に泣いて、死を待つ夫に縋りつき始める。

『――――つまり、演技をする必要もないということですね。色々と面倒なので――――

――――――――――――――――ここで死んでください』

『この人が何をしたっていうのっ!!誰かっ!誰かぁっ!!』ポロポロ

そんな非難には耳を傾ける余地もなし。ニタリと嘲り笑い、もう一度杖を振りかぶって魔法の構え。
夫婦まとめてあの世行きにしてやりましょう。私って優しいですね。



『やめろおおおおぉぉぉぉ――――!!』

『ロゼッタさんの名誉のためにも、そんなことさせないぞー!
青キノピオ隊、不届きな偽者に決死の突撃ぃー!!』

『『『『おおおおーーーー!!!!』』』』

――――チッ、邪魔が入りましたか。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

216Mii:2021/06/26(土) 20:00:18 ID:NzWQi0XQ
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



『――――――――おお』

なんて、壮観。

『――――――――素晴らしい』

あたり一面、石化したままの住人が何百人といる区画。

実質、命を失ったも同然。
タブー様の作戦が、紆余曲折あれど順調に功を奏していく…!
これに感動せずして、何が生き甲斐というのでしょう。

『――――はは、はははははははははは……………♪』

ちょこまかと抵抗はされていますが、この程度。
キノコ王国の転覆は、間もなくです。本当に、あっけない。





『本物の私は、一体、どういう反応をしてくれるでしょうかねぇ』



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

217Mii:2021/06/26(土) 20:02:28 ID:NzWQi0XQ
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



みんなみんな、邪魔。

ここにあるもの全て、タブー様にとって目障りな物。
タブー様の手によって、完膚なきまでに破壊し尽くされればいい。逆らったことを後悔するといい。



希望は全て、絶望へ。

輝いて見える夢は全て、耐え難い現実へ。

喜びは全て、悲しみへ。

笑い声は全て、慟哭へ。





『みんなみんな、死んでしまえばいいのに』

その先に、求める物があるのだから。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

218Mii:2021/06/26(土) 20:05:18 ID:NzWQi0XQ

サヤカ「ママ譲り、のぉ――――――――――――――――――――――――――――
   
    ――――――――Starlit Wish《星に願いを》――――ッ!!」パアアアァァァァ!!!



ママ譲りの大回復魔法を、惜しげもなくママ1人に使用する。
FPが勿体ない?そんなこと、今は議論する価値もないよっ!





サヤカ「あのさあっ!!どうしてっ!どうしてそこまで安請け合いしておいてっ!!



   かんったんっに!舌を噛み切ろうとするかなあ――――――――っ!!」



ロゼッタ「――――」ピロリーン

ロゼッタ「――――」



ママが――――受け身も取らず、前にドタンと倒れ伏したまま。ピクリとも動かない。
よりにもよって、あらぬ行為に踏み出す余力だけは残っているみたいだけれど…!

219Mii:2021/06/26(土) 20:08:16 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「じょーだんじゃないよっ!後悔するって言ったよね!
   『万が一』のことを考えて、すぐさま切り替えて魔法の準備をしておいて、
   本当に…………ほんっっっとうっに、良かったっ!!やめてよね、もう…!」



ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」



ロゼッタ「――――」ゴボッ

サヤカ「――――――――て ん ど ん っ!?」パアアアアアァァァァ!!

……ああもうっ!休む暇なんかない!Starlit Wish《星に願いを》、もう一回っ!



ロゼッタ「――――」ピロリーン

ロゼッタ「――――」



サヤカ「やめてって言ってるでしょ!足掻いてよっ!
   大博打をやったからには勝率ほぼ0%でも頑張ってよ!私も無理だと思うけどっ!
   ママが諦めるっていうんなら私が諦めず頑張るよっ!
   ……あれ?何言ってるのかな、わたしっ!?訳わかんない!」

220Mii:2021/06/26(土) 20:11:16 ID:NzWQi0XQ
ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」

サヤカ「…落ち着いた、か、なあ………?」





ザンッ・・・・・・・・




サヤカ「…………あれ?」



サヤカ「どうして、お腹から、そんなに、ドクドクと血を流してる、の?」マッサオ



サヤカ「――――――――――――――――――――――――」ゾワッ



ロゼ ッタ「――――」

サヤカ「きゃあああっ!!空間切断で自傷した――――――――っ!?」パアアアアァァァァ!!

221Mii:2021/06/26(土) 20:13:18 ID:NzWQi0XQ
ロゼッタ「――――」ピロリーン

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」ドクドク

サヤカ「…こんのぉ…!!!」パアアアアアアアァァァァ!!!

ロゼッタ「――――」ピロリーン

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」ドクドクドク

サヤカ「…しつこいのぉっ!!!」パアアアアアアアァァァァ!!!



ロゼッタ「――――」ピロリーン

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」ドクドクドクドク

222Mii:2021/06/26(土) 20:15:20 ID:NzWQi0XQ
…駄目っ!これじゃあ、いつか頭部にでも致命傷食らって取り返しが付かなくなるっ!!
体ズタズタになってから後手の回復じゃ、話にならないっ!

サヤカ「集中力の差を利用して――術式インターセプト、連発ぅ…!
   持ってよね、私の魔法回路…!!せーのぉっ!!」パアアアアアアアアアァァァ!!!





――――あまりにも空しくて、不毛な駆け引きが始まった。





倒れ込んだまま一切動こうとせず、四肢は沈黙し、痙攣し、顔は地面とごっつんこ。
顔色が全く伺えない、ママ。一言も発しない、人形のような状態になった、ママ。
ただ、ひとついえるのは…………

とにかく、いますぐにでも、命を絶ちたい、らしい。



サヤカ「…………っ!」パアアアアァァァァ!!

言わんこっちゃない。
でも……そんなこと、この私が、許すと思う?

223Mii:2021/06/26(土) 20:17:36 ID:NzWQi0XQ
集中力が乱れに乱れているママに対してだからこそ、なんとか術式妨害が間に合う。
あろうことか、気が触れたのか…気が触れているのか、うん。
自身に向けて放とうとする空間魔法を、発動前に横槍、ことごとく無効化…っ!



…ごめん、嘘。10回に1回は間に合ってない。

そのたびに、空間魔法が発動し、ママの体のどこかを、ゴッソリバッサリ消し飛ばす。
痛ましさに目を背け、そのたびに、急ぎStarlit Wish《星に願いを》で強引に回復処理。



何この、不毛すぎるイタチごっこ。



ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」

血が流れていようといまいと、うめき声一つ上げない状態なのが逆に恐ろしい。





サヤカ「…………精神、壊れ、ちゃった…?」

というより、壊れたと、私でも思う。前々から当たり前のように思ってた。

224Mii:2021/06/26(土) 20:20:02 ID:NzWQi0XQ
ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」



サヤカ「結局は娘の私に投げっぱなしっ!?
   …むう。いいよ、それで。それが娘としての役割らしいからっ!
   私、諦めないっ!ぜったいに、諦めないからっ!!

   私、こんな姿形だけど…小さな女の子だけど…
   おあいにく様!任天堂の知識のおかげで、CERO:Zまでの耐性あるもんねー!
   流血表現なんて捨てて、掛かってこーい!」パアアアアァァァ!!





傷ついて、回復して、また傷ついて、回復して。

血だまり広げつつ、2人の体力をガリガリと削りつつ、



空しすぎる、無意味な作業が延々と続いていく――――――――――――

225Mii:2021/06/26(土) 20:22:12 ID:NzWQi0XQ
〜8時間後 (現実世界2.88秒経過  残り猶予51200秒)〜



ロゼッタ「――――」



何時間も経った、けれど。ママは、ピクリとも動かない。
魔法を行使し続けてきた以上、ホントに気絶しているわけじゃないけれど。
まだ気絶していてくれた方がずっとずっとマシだった。



サヤカ「はぁっ…はぁっ…はぁっ…はぁっ…うぷっ…………
   と、り、あえず、こんど、こそ、おちつい、た、かなあ、はぁっ…はぁっ…」ゼェゼェ

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――――――――――――――――――ぅして」

サヤカ「――――――――!!」ピクッ

ロゼッタ「――――――――――――――――どう、して?」

サヤカ「ママ…!なんとかなったん――――――――」

226Mii:2021/06/26(土) 20:24:46 ID:NzWQi0XQ

ロゼッタ「――――――――どう、して。どうして、こんなことになったの?

     ―――――――――――ねえ、どうして?」



くぐもった涙声。



サヤカ「…………!?」

ロゼッタ「そんなに、いい子じゃ、なかった、かも、しれない。
    陰で、誰かを、迷惑がらせる行動を、していた、かも、しれない」ポロポロ

サヤカ「あ、あのっ!」

ロゼッタ「でも…こんな目に遭うまで、私、碌でもない人間、だった…?」ポロポロ

サヤカ「そんなわけないよ!悪いのはあくまで悪の親玉っ!
   ママはこれっぽっちも罪悪感感じなくていいからさ!」

ロゼッタ「――――あくの、おや、だま」

サヤカ「そうそう!全てはタブーが悪い!満場一致で!」

ロゼッタ「…………タブー」

サヤカ「そう、タブー!あの気味が悪い生命体の!」

227Mii:2021/06/26(土) 20:31:09 ID:NzWQi0XQ




ロゼッタ「――――――――タブー、消さなきゃ」

サヤカ「…ほへ?」



ロゼッタ「タブー、消す。消さなきゃ。消シテヤル」ユラァ

サヤカ「…あの、ちょっと?」

のそっと、ママが、起き上がる。
それ自体は喜ばしいことだけれど、ちょっと…いやとんでもなく、様子がヘン。





ロゼッタ「タブーガ憎イ。憎イ。憎イ。憎イ。憎イ。憎イ。憎イ。
    殺ス。殺ス。殺ス。殺ス。殺ス。殺ス。殺ス。殺ス。
    引キ裂イテ 八ツ裂キニシテ 消シ炭ニシテ 完膚無キマデニ滅シテヤル――――」ブツブツ

サヤカ「」



――――不気味な靄を纏って…………ママが、狂った。

228Mii:2021/06/26(土) 20:35:01 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「…………ちょちょちょ、ちょっと!…って、なにごとっ!?」



ママのまわりに、おぞましい赤い、膨大なFP渦が。

いわゆる魔力開放…いやFP解放――!
確かに、ママは大量のFPを獲得した時…一時的にFP解放して、
実体化して溢れだすFPに幾重にも包まれることがある。
…でも、それは――――青色。自称「おたすけウィッチ」状態。
体質が最高に「空間魔法向き」になっている、能動的な状態。

…今目の前に広がる景色は、真っ赤な真っ赤な、凄まじい量のFP。
ごうごうと、激しい音を伴って、ぐるんぐるんと渦を巻く。まるで竜巻、いや台風…!



ロゼッタ「――――グゥ――――ガガ――――――――」



のたうち回りながらも歩き出し、獰猛な獣のような、唸り声。
煽られ舞い上がる、頭髪。それすら鬱陶しそうに、雑に頭を掻き毟る。



焦点が合っていない、その「両目」。
特に「右目」が、昏い赤色に染まってFP暴走を引き起こす動力に…!?
なまじ魔法レベルが高いばっかりに、とんでもない現象を引き起こしてる…っ!

229Mii:2021/06/26(土) 20:38:10 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「…………なに、これ。…ええっと。検索、検索。

    任天堂の知識を、ちょっとばかり引っ張ってくるとするなら…
    九尾が暴走した人柱力状態、かなあ、HAHAHA」





サヤカ「…………笑ってる場合じゃないっ!?えらいこっちゃ!」

直感。急いで止めてあげないと、ママが大変なことになるっ!!

声を掛ける。必死に掛ける。
…全く聞こえてない。あるいは取り合ってもらえない。

余りのFPの集積、奔流に…ママの足元の地面まで耐えきれなくなって、
ぴしりぴしりとあちこちに亀裂が走っていく始末…………うわぁっ!?

ある程度の距離にも関わらず、私まで、かなりの圧を受けるけれど、
なんとかしてFP暴走の源を――おそらく憎しみを――絶ってあげないと…!!
ひとまず駄目元で、もう一度Starlit Wish《星に願いを》をドーンと…………!





その魔法行使の予備動作が、どうやら、敵性認識されたみたいで。
殺意とともに、空間魔法、とんできて。え、うそ…!

230Mii:2021/06/26(土) 20:40:28 ID:NzWQi0XQ



サヤカ「び、がががが―――!」ドクンッ



脳天に、あ、たった。

食らっちゃいけない、類の、威力…ぅ。



しょ、せん、わたしは、情報生命体。

でも、ごっそり、とてつもない生命エネルギーを、持ってかれる。

血はながれないけれど、重要な構成情報、いくばくか抜けていく。





サヤカ「――――――――――――――――」





意識が、ぼやける。

231Mii:2021/06/26(土) 20:44:27 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「ピ――――――――――――――――――!
   フセイナ ソウサヲ 行ナッタタメ ぷろぐらむヲ サイキドウシマス



   ……しすてむでーたガ 見ツカリマセン
   でぃすくノ B面ヲ せっとシテクダサイ

   でぃすくガ 見ツカリマセン
   どらいぶノ フタガ ヒライテイナイカ
   カクニンシテクダサイ



   あくせすえらー!
   サイテキナ ぷろぐらむヲ サガシテイマス
   めもりーかーどヲ ヌキサシシテ クダサイ

   ぷろぐらむカラ オウトウガ アリマセン
   しすてむガ びじージョウタイカ
   あるてぃめっとでいじーニ ナッテイマス



   あぷりけーしょんえらーガ 発生シマシタ
   しすてむヲ サイキドウシマス

   ふぁいるノ せーぶニ シッパイシマシタ
   でーたガ ウシナワレタ カノウセイガ アリマス」

232Mii:2021/06/26(土) 20:46:38 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「…こーでっくヲ ケンサク シテイマス
    
    ケンサクノ ケッカ
    『404 ぺーじ のっと ふぁうんど』ガ
    1ケン 見ツカリマシタ

    …………でふこん1 発動
    ソウイン スミヤカニ タイヒシテクダサイ」



サヤカ「――――」ドサッ

わたしは ちからつきた。



ロゼッタ「――――」

紅い台風を纏って、夢遊病のようにヨタヨタと歩く、ママ。



サヤカ「――――」

サヤカ「――――」



サヤカ「――――――――――――――――アキラメタク、ナイ」ボソッ

233Mii:2021/06/26(土) 20:50:17 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「しるばーばれっとヲ ケンサク シテイマス

    ケンサクノ ケッカ
    『404 ぺーじ のっと ふぁうんど』ガ
    1ケン 見ツカリマシタ」



サヤカ「しるばーばれっとヲ サイケンサク シテイマス

    ケンサクノ ケッカ
    『404 ぺーじ のっと ふぁうんど』ガ
    1ケン 見ツカリマシタ」



サヤカ「しるばーばれっとヲ サイサイケンサク シテイマス

    ケンサクノ ケッカ
    『404 ぺーじ のっと ふぁうんど』ガ
    1ケン 見ツカリマシタ」



サヤカ「…………」




サヤカ「ママノ…『ロゼッタ』ノ めもりーヲ 深層スキャン シテイマス」

234Mii:2021/06/26(土) 20:52:29 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「しるばーばれっとヲ サイサイサイケンサク シテイマス





















    ケンサクノ ケッカ
    『でいじーめそっど』ガ
    1ケン 見ツカリマシタ

    成功リツ スイテイ 20パーセント
    タダチニ たすくふらぐヲ オンニシテ
    ジッコウニ ウツリマス――」

235Mii:2021/06/26(土) 20:56:41 ID:NzWQi0XQ
ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――――――――――――――ううっ」



何時の間にか、気絶していました。
さきほどまで、何を、していたのでしょうか。記憶が混濁しています。



両腕に、温かい、感覚。…そっと、握られている感じ。



「あア、まマ、気ガつイた?」

ロゼッタ「は、はい…………っ!?」




ほっぺたやら、手首やら。胴部やら。
体のあちこち、見るも無残な、抉られた跡。

傷跡から、血は、流れない。かわりに、0と1の、電子情報のカケラ…といったらいいのか。
サラサラと光の粒と共にナニカが散っていく…そんな様相。
ノイズが走り、姿が小刻みにブレて、明らかに――異常事態っ!

236Mii:2021/06/26(土) 20:59:29 ID:NzWQi0XQ
ロゼッタ「な、いったい、なに、がっ!?」

サヤカ「まマは、悪ク、なイよ。
   暴走状態ノまマに、なンとシてモ、助カっテ、欲シくテさ。
   可能性ヲ探ッた挙句、『でいじーめそっど』ニ行キつイて」



デイジー、メソッド。サヤカは確かにそう言った。
一体、何のことを指しているので――――



握られていた、両腕。
先ほどまで、そう、とんでもない失意と絶望のどん底にいた、
それがどうしたことか、今は…思わず口を手で押さえて――――
止め処ない悲しみと、激しい頭痛と、猛烈な嘔吐感「だけ」で済んでいる。
そんな私の事情、考えれば――――






サヤカ「暴走スるマまに、ぎューッて 抱キ着イて。
   ソのマま、身ヲ焼カれツつモ 腕掴ンで――――

   まマの 抱エ込ンでタ 真ッ黒ナ もヤもヤ、半分コに しテみタ、だケだカら」

ロゼッタ「――――――――っ!?」

237Mii:2021/06/26(土) 21:24:16 ID:NzWQi0XQ
半分、なんてものでは、ないっ!?
デイジー姫の「FP制御法」を参考にしたみたいなことを言ってくれていますが…



サヤカ「FPゴと、私ノ体ヲ媒体ニしテ、憎シみ、濾シ取ッて……ネ」



あれほど取り乱して生きることを拒絶していた私が。
――――ここまでケロッとしている、その意味。

ほとんど、サヤカが――――自己犠牲で、貰い受けて、引き受けて、くれた…!?



サヤカ「…ごホっ、ごホっ、ごホっ!」

激しい咳とともに、胃液、ではなく…またもや、情報、抜けていく…?
サヤカの、存在が、心なしか、おぼろげになっていく…!?

サヤカ「…………でモ、ごメん、まマ。私、謝ラなキゃ。
   私自身モ気ガ触レたラ駄目ダかラ、汚染サれタ構成要素、
   …………どンどン放棄スる事ニなッてサ。

   ちョっト、捨テ過ギた、かナぁト、思ッてタり」

ロゼッタ「―――――――――」

しゃべるのも億劫なほど、サヤカが、疲弊の色を強めている。

238Mii:2021/06/26(土) 21:26:08 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「……………………………管理者トしテの最低限ノ力、足リなクなッちャっタ。

   先ホど公言シてタ、8万秒ハ…ごホっ…持タせテ、見セるケど。
 
   そッかラ先ハ、無理ッぽイ。……………………………御免ナさイ。

   最後ノ『すッぽカしテ此処ニ留マる作戦』ハ…今更頼ミ込マれテも…使エなイや」



みるみるうちに、涙、溢れてくる。
フラフラとしているサヤカを抱きしめて、子供のように――――泣きじゃくりました。





ロゼッタ「サヤカぁ…ごめんなさいっ!ごめんなさいっ!私の…せいで――――っ!」









――――じきに、この空間は、なくなります。

239Mii:2021/06/26(土) 21:28:29 ID:NzWQi0XQ
一体、どれだけ、泣いていたのでしょうか。
なんて醜い姿を見せてしまったのでしょうか。…消えてしまいたい、くらい。

――だと、いうのに。
サヤカが、突然わたしに対して儚く笑いかけて、なけなしの空元気。



サヤカ「ねエ、まマ」

ロゼッタ「…………………………は、い」

サヤカ「そンな顔、しナいで。心配シてクれテ、本当ニ、嬉シい。
   だカら、最後ノ最後ノ、恩返シ」

ロゼッタ「…………お、んがえし…?」
   
サヤカ「一ツ、閃イた、最終手段。
   取得経験値ハ1万分ノ1デも。凄イ、凄イ、効果覿面ナ近道ルーとガ、
   『万ガ一』…うウん、『億ガ一』ニでモ、見ツかレば…!もシかシたラ…!!
   どウか、私ヲ信ジて――――私ニ命運委ネて――――



   『一発逆転』、狙ッて、みナい?」



実際のサヤカの様子は、居た堪れないほど悲惨な物、なのに。
なんだか、何故だか、不思議なほどの意気込みと希望を、感じることができました。

240Mii:2021/06/26(土) 21:31:05 ID:NzWQi0XQ
ロゼッタ「……………………」スッ・・



サヤカに言われるがまま、正座して、目を瞑る。
なんだか懐かしい、この感じ。
いつぞやも、行き詰った時…こんなことをやってみましたっけ。

まだまだ吐き気は続くけれど。サヤカの苦痛に比べれば…いいえ。
比べることすら烏滸がましい。物理的にも精神的にも飲みこみます。



ロゼッタ「……………………」



サヤカ「はーイ。そレじャ、始メるネー。

   私ノ言葉ニ素直ニ従ッて行動シてネぇ。そウ!まイんドこンとローる!
   …何ダか犯罪臭ガすルけド、あル意味『自己暗示』ッて事デ、気ニしナい!
   
   私ガ手ヲ規則的ニ叩クたビに、心ヲどンどン鎮メて行ッてネ!さンはイ!」



――ぱちん。

サヤカが手をひとつ叩く。決して穏やかとはいえない荒れた心を、ワンステップ、深層へ鎮める。
なぜこんなことを?なんて考える必要なんてない。サヤカが求めるのなら、従う、ただそれだけ。

241Mii:2021/06/26(土) 21:34:13 ID:NzWQi0XQ
――ぱちん。

サヤカが手をひとつ叩く。更にワンステップ、心を深層へ。
イメージするのは、水面に水滴ひとつ垂らして、波紋が拡がっては弱まり消えていく…
そんな情景。格好付けて言えば…明鏡止水。



――ぱちん。

――ぱちん。

――ぱちん。



サヤカの手拍子は止まらない。どんどん、心が鎮まっていく。静まっていく。
気持ちの悪さ、不安、焦りは棚上げにして、ひとまず苦痛から解放されていく。
…でも、所詮は棚上げ。この儀式が終われば、また――――

サヤカの手拍子が、ひたすら、ただひたすらに続き。
もう、回数も分からなくなってきたところで――――――――



サヤカ「――――――――心、底ノ底マで、鎮マり切ッたネ?そレじャあ―――――――――――――」

目を瞑っていても、わかる。サヤカが、すぅっと深呼吸して――――
何かを発しようと準備していることが。

242Mii:2021/06/26(土) 21:37:40 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「―――――――――――――――――――――――――――――
   まマの身ニ起キた…全テのッ!あラゆルっ!
   障害ニっ!不条理ニっ!理不尽ニっ!災イにッ!不幸ニっ!悲シみニっ!因縁ニっ!横暴ニっ!

   りミっターなシに、感情、爆発サせチゃッて――――!!!」



ロゼッタ「――――――――がぁっ―――――――――――」

どす黒い物に突き動かされ、染み入るように。体が動く。
サヤカの言葉が浸透するままに、リミッターなんてぶっ壊して、
本能から、本心から、沸々と湧き上がるソレを――――――――――――



――――        大   爆   発 っ !!!!!!!!!!



ロゼッタ「がああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

どうして、私が、こんな目にっ!
運命を、恨むっ!恨んでやるっ!!
もう何も、信じられないっ!!

ゴオオオオオオオオオオオオォォォォォォォッ!!

荒れ狂う、FPの嵐。さっきもあったことの、二の、舞――――――――
再びどす黒い物が、どこからともなく私の心を染め上げて――――

243Mii:2021/06/26(土) 21:40:22 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「そコで、すトおオおオおオぉォぉォ――――――っプ!!!」ビシィッ!

ロゼッタ「―――――――――ぎぃいいぃぃっ!!」グググッ・・・

――――私は、なにを、考えていた…!?
サヤカが声掛けしてくれた、おかげ、で。間一髪、踏みとどまったっ!
噛み過ぎた口端が切れて血を滲ませますが、安い物っ!!
サヤカに従い、再び心を落ち着けてFPを収めて――――



サヤカ「違ウ、違ウっ!!落チ着イちャ絶対駄目ッ!!!」

ロゼッタ「――――――――――――――――ぎっ!?」ドクンッ

サヤカ「収メるンじャなクて、『留メる』ノっ!!そシて、そノまマ――――――尖ラせテっ!!」

ロゼッタ「――――――――――――――――っ!?」

い、き、なり、何、を……!!



サヤカ「今ノ、まマに、必要ナ、こト。そレは、言ウまデもナい、ちカら…!
   唯ノ癇癪、地団駄、駄々捏ネ…そンな状態デ暴レ回ル狂気ノえネるギーを…
   絶望ニ打チ勝ツ為ノ、『闘争心』ニ、変換シてシまウ、こト!

   お願イ、まマ! 全力デ―――――  怒(いか)レ!!」

ロゼッタ「――――――――――――!!」

244Mii:2021/06/26(土) 21:42:33 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「さッきノ、まマの暴走見テ、わカっタノッ!!
   引ッ込ミ思案ナまマニも…燃エたギる熱イ心ハ、しッかリ根付イてル!
   そレを、たダ、正シい方向ニ切レ味鋭ク尖ラせテ、解キ放ッてアげレば、いイのッ!」



ロゼッタ「――――――――――――――――――――」



サヤカ「『こコまデやッたラ上出来』トまリお達ニ引キ継イで貰ッて満足スるンじャなクて、
   『こイつハ私自ラ、責任もッて、ぶッ潰ス』ト奮起スる、勇気ッ!

   『私ノ仇ヲ、誰カ、どウか取ッて下サい』ト託スよリも先ニ、
   『こンな輩ニ負ケを認メる訳ニ行クもノか馬鹿』ト殴リ掛カれル、度胸ッ!

   悪ヲ挫クのニ、遠慮ハ要ラなイかラっ!全力デ、怒レっ!!!」



ロゼッタ「――――――――――――――――――――」

ロゼッタ「――――――――――――――――――――」



言うは易し、行い難し。
いきなり、そんなこと、言われ、てもっ……………!!

理屈はっ!理屈はっ!飲みこめて、いるというのにっ!!

245Mii:2021/06/26(土) 21:44:22 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「何ヤっテるノ!今マで、何ヲ、見テ来タの!?幸セ者ノ、貴方ニは…………



   打ッてツけノ、参考トなル、人物ガ、いル、でシょウっ!!」



――――あ。



――――脳裏に浮かぶは…………
    
――――いざとなったら、怒髪天になったら、
――――たちまち道理を捻じ伏せる、いつもは気ままな…お嬢様。





――――デイジー姫。その勇姿、少しばかり――――お借りしますっ!





怒(いか)る。あるいは、キレる、という表現の方が得てして分かりやすいでしょうか。
単に、周りに喚き散らすんじゃない。八つ当たりを繰り返すんじゃない。
明確な対象を設定し、敵愾心を育て、溢れる全エネルギーを注ぎ込む――――

246Mii:2021/06/26(土) 21:46:26 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「何ヤっテるノ、馬鹿ッ!まタFPガ暴走シかケてル!
   最初ッかラやリ直シっ!!」

サヤカ「違ウっ!そレは何モ考エてイなイだケ!
   心ノ暴走カら逃ゲてルだケ、全然違ウっ!!」

サヤカ「怒ルこトは恥デも下品デもナいヨっ!
   躊躇スる事コそガ、そノ昂リに対スる最大級ノ…侮辱ッ!
   溜メに溜メて、うンざリすル位ニ溜メまクっテ、
   あリっタけノ想イと共ニ、敵ニ…がツんト、ぶツけチゃエっ!!」



何度も、何度も、何度だって。
サヤカにダメ出しを食らって、やり直して、やり直して、やり直して。

ロゼッタ「うぷっ…」ウズクマリ

喉元まで幾度となく襲い来るのは、胃液か、嘔吐物か、はたまた血塊か。
…汚らしい想像はやめましょう。…無心に、なれっ!それでいて、強欲に、なれ!

私の精神は、ただひたすらに急上昇と急降下を繰り返す。
辛い。辛い。辛い。辛い。辛い。辛い。辛い。辛い。
悶絶躄地。艱難辛苦。窮途末路。七転八倒。

私も、あおりを受けたサヤカも、どんどん傷跡増していく。



――それでも。

247Mii:2021/06/26(土) 21:48:16 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「そノ調子ッ!今、ちョっト制御ガ効イた気ガすルっ!」



サヤカ「いイ感ジっ!総量ソのマま、踏ミとドまッて!こコが正念場ッ!!」



サヤカ「自分ノ心ニ飲ミ込マれナいデっ!逆ニばッちリ操ッて、物ニしチゃエ!



   ――――――――そレが、まマの、頼モしスぎル、武器ニなルかラっ!!」



ロゼッタ「――ガ、ガ――――こ、んな、も、の――――――――――
    はああああああああああぁぁぁぁぁ――――――――っ!!!!!」



視界も意識もチカチカするなか、一心不乱に。
私が持っているという、怒りのチカラというものを――――いざ――――!



・・・・
・・・・
・・・・
・・・・

248Mii:2021/06/26(土) 21:50:33 ID:NzWQi0XQ
〜20時間後 (現実世界7.20秒経過  残り猶予8000秒)〜



ロゼッタ「―――――――っ、がはっ…は、はぁっ――――――――」

肩で息をする、なんてものではない。
這いつくばって、ただ空気求めて荒く荒く息を吸って、吐く。
見栄えなんて、行儀なんて知ったことことではありません。

散漫な視線を、サヤカに向ける。

不思議と、いつの間にか、嘔吐感は立ち消えている。

残った物は、凄まじい量の疲労と、汗と。





ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォ・・・・・・・・・・・

サヤカ「――――ごー!!」バッ

ロゼッタ「―――――――――――――」ザッ!

紅い奔流を纏いつつ、精神、穏やか。

これで最後とばかりに歯を食いしばって立ち上がり、
両腕拡げて、向かい入れる態勢、取ってみれば――――

249Mii:2021/06/26(土) 21:53:05 ID:NzWQi0XQ
ロゼッタ「――――お願いっ…!!」



それらを体が拒否するのではなく、「受け入れて」。
どんどん、どんどん、吸い込んでいって!





ロゼッタ「――――――――ハッ!!」





全て、無事に、収めきったっ!!



5秒、10秒、20秒…30秒。
爆発を、暴走を危惧すれど…………取り越し苦労。



負の感情を ついに 制御し切った!
ロゼッタの 精神力が ぐぐーんと 上がった!▼

サヤカ「――――――――――――――――やッた――――ァ!!」

250Mii:2021/06/26(土) 21:55:58 ID:NzWQi0XQ
思わず泣いて、拳を振り上げるサヤカ。
私は、今更ながら、まじまじと、両手の…手の掌を見やる。



――――体が、ちりちり、火照っている。
――――むずむず、うずうず、している。



乱暴な言い方をするなら、喧嘩腰。
言葉をちゃんと選ぶなら――そう。燃え滾る闘志、勝ち気。

なんでも、自分で解決できそう…いえ。解決しなくっちゃ!という、
強い想いが――――体中を駆け回っていますっ!!

ロゼッタ「――――こ、これが…私、ですか?」

俄かには、信じられない。この、逆境に対する、言いようのない高揚感。

サヤカ「新生ロぜッた、誕生、だネ!! 」ニヘラ

ロゼッタ「……っ!サヤカ―――――!!」

胸に飛び込んでくる我が娘が、本当に愛おしく思えました。



これで―――――
これで、現実世界に戻ってから、精神攻撃に――――耐えきれる、かも、しれない。

251Mii:2021/06/26(土) 22:01:05 ID:NzWQi0XQ
ロゼッタ「…………」ソワソワ

ロゼッタ「…………」ソワソワ



サヤカ「…あ、うン。気持チが昂リ過ギてルのハわカるケど。落チ着イて。
    さア、作戦終了…うウん、作戦完遂ニ向ケた、最終準備ヲ!
    もウ、遺言ヲ考エる時間ナんテ、要ラなイね!」

ロゼッタ「…!!はいっ!…とは言いましても。何をすれば、いいのですかね。

    ……あ、あれ!?そういえばっ!?
    ここでの経験効率って現実世界の1万分の1なんですよね!?
    現実世界に送り返された私って、しっかり絶望に抗えるんですか!?」

サヤカ「さア?」

ロゼッタ「『さあ?』…って、駄目じゃないですかっ!?」

サヤカ「冗談、冗談。さッき言ッた通リ、『無茶苦茶習得シにクい』ッて意味ダかラ…
   習得シちャっタ物ヲ、ぽカんと忘レるコとハ、無イよ」

ロゼッタ「良かったあ…!」

サヤカ「やッた成果ガ無駄ニなラなイだケで…
   そモそモ絶望ニ耐エるニは足リてナいッて可能性ハ無茶苦茶有ルんダよ、
   そコんトこロは、分カっテる?」

252Mii:2021/06/26(土) 22:04:12 ID:NzWQi0XQ
ジーンと、感動。そのあと、静寂。

ロゼッタ「…これでも、まだ、分の悪すぎる賭けであることには、変わりないんですよね」

サヤカがコクリと頷きます。
…そう、精々勝率を0.1%にできたくらい。
できれば、もう一声。1%くらいはくれないでしょうか…?

サヤカ「…まアでモ、きッと、大丈夫!!もウ、まマは、負ケなイよ!」

ロゼッタ「――――その、心は?」

サヤカ「唯ノ勘、ダけド」

ロゼッタ「――――最高の信頼要素ですね、ふふ」

疲れ果てながら、2人で小さく笑い合いました。





サヤカ「…………」

ロゼッタ「…………」

サヤカ「…泣イてモ、笑ッてモ、後、2時間位ダよ。やリ残シた事、何カ無イ?今ノ内ニ…」

ロゼッタ「…………やり残した事――――――――」

253Mii:2021/06/26(土) 22:07:15 ID:NzWQi0XQ



…………そうだ。



ロゼッタ「…あります。最後の機会かもしれませんし――
    自己を奮い立たせるために、やれることはやっておきたい。
    サヤカなら、分かってくれるでしょう?」

まだ汗だくですが、疲れを吹っ飛ばす気持ちで、軽くウインク。



サヤカ「…………………………ま、マさカ!?あレを!?
   い、いイの!?増々自分ヲ追イ込ム事ニ、なルんダよ!?」

ロゼッタ「…………切羽詰まった時に、何をやっているのかと、自分でも思いますが。
    ――――覚悟は、できています。試したいんです」

サヤカ「……そッかァ。…うン、なラ、私ハ――何モ、言ウこトは、なイよ。せメて、手伝ワせテ、くレる?」

嬉しい、申し出。断る道理など、これっぽっちもありません。

ロゼッタ「それでは、短い時間ですが、やっていきましょうか――!!」バッ

サヤカ「おーーー!!」パアアアアア

さっそく、魔法を繰り出すべく、新たな自分の体中に、力を籠めて――――!!

254Mii:2021/06/26(土) 22:13:03 ID:NzWQi0XQ
ロゼッタ「――――――――――――――――」ピタッ



サヤカ「えイ、えイ、そレー!!…まマ、こノ位ノ濃サで、いイかナ!!!」パアアアアア!!

ロゼッタ「…あの。さっきから、私になんの魔法を掛けているのですか?」

サヤカ「何ッて……もザいク?」

ロゼッタ「…………?」



サヤカ「流石ニ『CERO:D』的ナあラれモなイ映像ヲそノまマ流スのハ……ちョっト…怒ラれルし」

ロゼッタ「!?!?!?!?」

サヤカ「にンげン、死ノ間際ニ性欲ガ刺激サれルっテ言ウし!
   折角清ラかナまマの晩節ヲ汚スかモと否定的ニなッたケど、乙女ノ自由ダもンね!

   …あ、私空気読メてナかッたネ。『実分身』ヲ応用シた『逆ハーれムの術』デ
   任天堂選リすグりの美形男性陣ヲかキ集メて――――――――



   ……ぐハっ…痛ァ――――――――っ!!
   今殴ッた!娘ヲ、ふルすイんグで殴ッたネ!?暴力大反対ッ!!」

ロゼッタ「キノピオでも助走してピーチ姫に殴り掛かるレベル!」カアアァァ

255Mii:2021/06/26(土) 22:19:07 ID:NzWQi0XQ
ロゼッタ「はぁっ!はぁっ!…そ、そんなふしだらな娘に育てた覚えはありません!!」

サヤカ「…こンな姿デも、任天堂ノせイで、まマよリ耳年増ナんだヨね…
   もシかシて、私ノ、ちョっトしタ勘違イ?」

ロゼッタ「180度ずれたあとで虚数空間にぶっ飛んで行きましたよ、もうっ!!
    そうではなくてですねぇっ!!」

かわいく「てへっ」っと笑っても、あんまり見逃してあげませんからね!



ぜぇ、はぁ。爆弾発言に顔が真っ赤!こればかりは耐性がないし耐性付きたくもないっ!
こうなったら、無理やりにでも!サヤカなりの緊張ほぐし作戦と解釈しますからっ!
うわあサヤカったらここまで自分を投げ打ってくれるだなんて!嬉しいなぁ!ふふふ!



ロゼッタ「…最後に。考案中の『魔法応用』について!
    洗いざらい、試し撃ち、しておいたいんですよ!ぜひとも!」

サヤカ「…流石ニ今カら新シい応用ヲ閃クのハ無理ジゃナいカな…?」



ロゼッタ「…それでも。
    撃てるかどうか把握しておくことは、大事でしょう?
    心構えが、結構変わってくると思うのですよ」

サヤカ「…………あア!そウいウ事ネ!!」ポンッ!

256Mii:2021/06/26(土) 22:23:03 ID:NzWQi0XQ
〜22時間後 (現実世界7.92秒経過  残り猶予800秒)〜

サヤカがどうしてもと言うので。
サヤカが最後の生命力を振り絞って、一瞬だけ…見かけ上は、もとの体調を取り戻す。

サヤカ「……ふう。体ガタガタっていうのは辛いね。やっぱり健康が一番!

   …残された時間は、もうちょっとだけ。
   …ほんとのほんとに、やり残したことは、ない?」

ロゼッタ「…………最後に、ぎゅって、抱きしめさせてください」

サヤカ「ふふ、お安い御用かな」



ぎゅーっと。
無理をしているためか、ますます苦しさをやせ我慢中のサヤカを抱きしめる。



ロゼッタ「…………もう、大丈夫」

大事な物、たくさんもらいました。大勝負に勝っても負けても、後悔は、ない。
もちろん、勝って終わりたい所では、あるけれど。

サヤカ「大丈夫?伝えそびれた事、質問しそびれた事もない?」

ロゼッタ「大丈夫ですよ、そんなものはもはや何も残って――――」

257Mii:2021/06/26(土) 22:25:34 ID:NzWQi0XQ



ロゼッタ「…………………」



ロゼッタ「…………あれ?そういえば…………」

ふらりと、自分の体をみやる。

…うん、確かに。精神面で、何回りも強くなった感じ。それは率直に嬉しい。
でも、ひょっとすると…………。この感じは…!





ロゼッタ「…………経験値、結局返ってきてないっ!?い、いやでも…!?」





あれ?あれれ!?
偽者の私たちの記憶は戻った、知り得ないはずの情報が頭に叩き込まれた。

…だとしたら、経験値はやっぱり取得している?どういうこと!?
そのわりに、身体面の変化が――――!

258Mii:2021/06/26(土) 22:27:56 ID:NzWQi0XQ
ロゼッタ「こんなに経験値を還元したのに、なんだか――やっぱり、強くなっていない…!?」

サヤカ「あせっちゃだめだよー」

ロゼッタ「で、でもサヤカ…」

そうは言っても、これでは、苦労した意義の一部が無駄に…っ!
もちろん贅沢を言い過ぎたりはしたくありませんが…!



サヤカ「むむむ?」ビビッ



そのとき。
サヤカが、変な電波(?)を、受信してしまいました。



サヤカ「…………うっげー…ああ、そっかー。そういうこと、ね。
   オールスターのお祭り大会の上に、転生の扉なんてもので空間同士の繋がりが
   しっちゃかめっちゃかになって、へんな化学反応起こしたのかぁ…
   任天堂さん、しっかりしてよ…」ボソッ

ロゼッタ「…………?」



サヤカが呆れたようにため息吐いて、改まって私の方を振り向いて――――

259Mii:2021/06/26(土) 22:30:56 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「ママ、まさか――――――――――――――――

   経験値を能力にかえてないんじゃないの?」

ロゼッタ「えっ?」

サヤカ「このゲームでは、練習するだけじゃ能力は上がらないの」

ロゼッタ「…この『ゲーム』?」



…というより、練習って何ですか?



サヤカ「『練習』などのコマンドに並んで『能力を上げる』という名前のコマンドがあるよ。
   それを選んで、経験値を使って能力を上げるの」



…………サヤカは何を言っているのですか?



サヤカ「あ、それとは別の話だけど、Yボタンを押すと、少し前の文章も見られるよ!
   そしてその後十字ボタンの上を押すともっと前の文章も見られるの!」

ロゼッタ「落ち着いて!お願いだから落ち着いてサヤカっ!?何がゲームだと言うのですか!」ユサユサ

260Mii:2021/06/26(土) 22:36:25 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「上見て、上」チョイチョイ

ロゼッタ「上、って…」チラッ











    『ロゼッタ 両投右打 オーバースロー
    球速 280km  コントロール A255  スタミナ C 88
    オリジナル変化球 ジャイロファイア 【スピード+30% 炎属性】

    経験点:999(MAX)
    球速      280 ⇒ 281 必要経験点900
    コントロール    取得済
    スタミナ      88 ⇒ 89   必要経験点 10            』





サヤカ「なるほど、むしろ表サクセスというよりは俺ペナ仕様かあ。うわ、経験点頭打ちだ。勿体ない」

ロゼッタ「ななな何ですかこれぇ――――――――!?」ビクゥッ!!

261Mii:2021/06/26(土) 22:42:24 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「何かの手違いで、偽ママたちの経験値だけ…別系統の処理になってたみたい。
   よーし、さっさと経験値…いや経験点を能力に変換しよう!時間がないよ急いで!
   このまま選手登録する気!?」

ロゼッタ「ちょっと待って処理が全然追いつかない!」

え?え?ええ?球速?コントロール?スタミナ?
まるで野球ゲームではないですか。



サヤカ「…………ああ、もう!時間切れぇー!!
   これ以上延ばされると、現実世界に上手く戻れなくなるよっ!

   …………と!いうわけでっ!独断と偏見でっ!
   私が勝手に、役に立ちそうなのをっ!選んじゃいますぅっ!
   異論は認めませーん!」バタバタ

ロゼッタ「!?」ピロリーン

ロゼッタは ■■■を 手に入れた!▼



サヤカ「あ、炎属性のボールを投げるんだし…せっかくだから、とっておきのも!
   原作仕様、原作仕様!そぉれ!……よおぉーし、大成功っ!」

ロゼッタ「原作って何!?」ピロリーン

ロゼッタは ■■を 手に入れた!▼

262Mii:2021/06/26(土) 22:45:32 ID:NzWQi0XQ
ロゼッタ「だから、お願いだから説明をしてくれませんか…って。
    ほ、本当に残り時間が…1分切ってる!?考え込み過ぎました!!」



ああもう!この際、経験値うんぬんは諦めましょう!当てにしないっ!



サヤカ「ママ、頑張って。
   …タブーの精神攻撃なんかに、絶対っ!ぜーーーーったい!!
   負けちゃ、駄目なんだからねっ!!」グズッ

ロゼッタ「もはや遺言も忘れてしまいましたからねっ!
    負けるわけには行かなくなりました!残念ながら!
    勝ってきますよ、こうなったら!」

サヤカ「…それ、じゃあ。送り届けるよ――」パアアアアアア!!

ロゼッタ「…………ええ」

サヤカ「――――――――またね!結果はいつか、聴かせて!
   …そう、夢の中ででもっ!!」

――――ええ、「またね」。
――――涙腺緩みながらも、「さよなら」だなんて嫌だから――!



景色がおぼろげになり、涙目で笑うサヤカの顔が、どんどん遠くに――――

263Mii:2021/06/26(土) 22:47:28 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「…………ほっ」ヘタリ



ママを送り届けて、私は力尽きた。

体力の限界が来たということもあるし、そもそも管理者の役割が終わったわけだし。



サヤカ「…あー、世界が、くずれて、きた、なあ」



サヤカ「…………まあ、『私』は『貴方』だから、悲しくなんてないよ、うん」





サヤカ「最後のプレゼント、喜んでくれるといいなあ。
   うふふ。…きっと、今のママなら…使いこなしてくれる、だろう、から――」サラサラ・・・



サヤカ「――――――――――――――――」・・・・・・



シュン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

264Mii:2021/06/30(水) 05:49:00 ID:bzZ4v6Ks
〜スマブラ試合会場〜



ニンテン「そりゃあああ!石化なんてどうってことないぜ!」パアアアアアァァァ!!

アナ「……で、でもなんだか、他の人と様子が違うようなっ!
  気、気のせい!?無駄に頑丈に固まってる!ちょっと慎重に解いた方がいいかも!」パアアアアアァァァ!!

ニンテン「そーゆーことは後で考えるっ!」パアアアアアァァァ!!

アナ「それじゃ意味ないでしょ!」パアアアアァァ!



マリオ「ロゼッタッ!」

ルイージ「ロゼッタッ!」

デイジー「ロゼッタァ!!」

リンク「ロゼッタッ!」



パリイィィィ―――――――ン!



ロゼッタの 石化が 解かれた!▼

265Mii:2021/06/30(水) 05:51:27 ID:bzZ4v6Ks
…………現実世界に舞い戻った途端、闇の衝撃に脳を揺さぶられる。



ロゼッタ「――――――――」



なすすべもなく。



ロゼッタ「――――――うぁ――――」



もとより、魔法陣を繰り出すことすら、無理――――だった。
2秒あれば十分だとか、笑わせてくれる。



恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖
絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望
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266Mii:2021/06/30(水) 05:52:50 ID:bzZ4v6Ks
涙こぼれ、口を開けたまま、瞳孔開いたまま、微動だに出来ぬまま。



そのまま前に倒れ込み――――



20cm、

10cm、

 5cm、

 1cm、







ロゼッタ「――――――――――――――――」ガシィッ!!





――――でも。今なら、どうかは、わからない。

267Mii:2021/06/30(水) 05:55:28 ID:bzZ4v6Ks
ロゼッタ「――――――――」

俯いた表情のまま、間一髪手を突いて顔面衝突は免れる。
…なんだか、「幽玄の間」に飛ばされたときと、似ている。
誰にもばれないよう、小さく息を吸って、吐いて。



ロゼッタ「――――――――」



心、真っ黒に塗り潰されてしまったか?
何も考えられなくなってしまったか?
生きることを諦めてしまったか?



全て、終わってしまったか?



――否。まだ、抵抗の想い、胸の奥にハッキリと秘めている。
キリキリ締め付けようとする圧力を、押しのけ跳ね返すだけの、熱い心が。
黒い闇、まとわりつくのを、気合い一発、取っ払って。

ロゼッタ「――――――――」

脚に力を加える。周囲が見つめ見守る中、私は――――
確かに、しゃんと、立ち上がる。

268Mii:2021/06/30(水) 05:57:43 ID:bzZ4v6Ks
目線の先は、騒動に乗じてまんまと距離を取ってほくそ笑んでいたものの――
私の、心が、ぺしゃんこにならなかったことに驚愕している、タブー。



――――――――ば、馬鹿な!耐えられるはずが、ない!



ああ、いま私、顔を上げた。

タブーを見ているうち、どす黒かった――――いえ、今は違う。
真っ赤な、真っ赤な。暴走しているわけでもない、強い、強い――



――――――――怒りの、感情っ!!!



ロゼッタ「――――――はあああああああああああああぁぁぁぁっ!!」カッ!



咆哮して。声滾らせて。
FPとともに、思う存分、解き放て!

リンク「ういっ!?」

デイジー「…ロ、ロゼッタ!?」

269Mii:2021/06/30(水) 06:01:52 ID:bzZ4v6Ks
私の突然の変わりように、驚かれるけれど、気にも留めない。
紅蓮の台風、身に纏い――――嘆き悲しむのではなく、使命感にただただ燃えて!



ロゼッタ「――――この、下郎が――――」グワッ

――――――――――――!?



今の私の眼光、タブーも思わず怯むほど。



実況「ロゼッタ選手っ!!――――相手を、威圧しています!」

特殊能力 「威圧感」が 発動した!
タブーの 攻撃力が 下がった!▼





ロゼッタ「――――――――覚悟しなさい。過ちを地獄で悔いなさい。
    私は、貴方を―――――――――決して、絶対に、許さないっ!!」ゴオオオオォォォッ!



周りの激しい奔流が、タブーを倒すべく、ますます唸りを上げ出した…!!

270Mii:2021/06/30(水) 06:04:29 ID:bzZ4v6Ks
マリオ「なんかよくわからんが、ロゼッタが無事に復活して、よかった!本当によかった!
   よし!あとは俺たちに任せておけ!ゆっくり休んで―――」

ロゼッタ「…いえ。私が、この手で最後まで、けりをつけます。
    …行けるところまでは、せめて、どうか」

デイジー「ちょ、ちょっと!無理はしないで――――」

マリオ「……!そっか。よしわかった。最小限のサポートに留めておく。

    ――――ロゼッタ、やっちまえ」



マリオの言葉に甘え、ただ1人、前に出る。



デイジー「ななな、何言ってるのさマリオ!タブーを甘く見てない!?
    いくらなんでも、ロゼッタには受け流しが精一杯で、倒すのは荷が重いよ!
    おまけに全然本調子じゃないはずなのに!乗せられてないで――――」

マリオ「なぁに――――負けねぇよ、今のロゼッタは」



最早、訳の分からないまま、思い通りにならないことに逆上して、
タブーが最後のあがきを見せる――――

そんなタブーに引導を渡すために、私は空を駆けていく――――

271Mii:2021/06/30(水) 06:06:23 ID:bzZ4v6Ks
カービィ「ぽよ!!」ダッ

ヨッシー「怪し気な不意打ちの処理なら任せてください!」ダダッ

リトル・マック「よーし!目に物見せてやれ、ロゼッタ!」ダダッ

マルス「彼女にここまでの度胸があるとはね…僕の眼もまだまだ節穴だな」スッ

サムス「…ふふ。好敵手出現と言ったところ、だなっ!対戦が楽しみだ!」ダダッ

むらびと「いっけー!タブーをやっつけちゃえ!」タタタッ

ピット「いよいよ終わりの時が近付いてまいりました!…フラグとか言わないでね!」フワッ

ピカチュウ「ピッカァ!」ダダッ







マリオ「…そんじゃ、まあ。俺達も行きますか」ダダダッ

リンク「…おうっ!!」ダダダッ

272Mii:2021/06/30(水) 06:10:16 ID:bzZ4v6Ks
くるくるくるくる…シュタッ!






駆けつけるのも速い。撮るのも速い。天才写真家でーす。
思い出の写真を撮りますからねー。



さあ こっち向いて 撮りますよーっ チーズ サンドイッチ!
…って、流石にこっちは 向いてくれませんよね、皆様がた。



おー いい写真が撮れた。
この写真は きっと 最高の 思い出になりますよ。



ではまた、いつか――――






くるくるくるくる……………………。

273Mii:2021/06/30(水) 06:14:04 ID:bzZ4v6Ks
リンク「闇雲に走っちゃ駄目だ、ロゼッタ!お前の走力じゃ、敵の攻撃を避けきれないぞ!」

私が前面に出ているせいで、私に飛んでくる触手の対処までは、
結果的に…間に合わない。食らえば、大減速に大ダメージ、請け合い。
また心を汚染されないとも限らない。

私の移動能力の低さ。速度の足りなさ。それは、十分分かりきったつもり。
だから、少々小狡い手を…裏技を使います。



ぽんっ!!



ロゼッタ(分身)「行きますよ――――」パアアアアァァァァ

1人だけでいいので、分身体を作って。私の背中に、手を置いてもらって…処置開始。
背中の後は、その手は両脚の踵に向かう。…よし、OK。
終わった後は――――他の方のところに待機してもらって。



ロゼッタ(分身)「さあ、任せました――――」

ロゼッタ「ふっ――――――――」ダンッ!!



踵、そして背中に、小細工。あとは…疾駆するだけ!

274Mii:2021/06/30(水) 06:19:01 ID:bzZ4v6Ks
デイジー「…!?」

敵の触手をひとつ、またひとつと掻い潜り、
どんどん近づいて近付いて――――!!

デイジー「嘘っ!ロゼッタ、はやーい!?」

リンク「うおっ、ロゼッタの奴、なっかなか速いじゃんか!
   あれ、並の奴のLv.60くらいには相当するぞ!?」



絡繰りは、駆動箇所と背面に計3つ、発動させている、魔法陣!
その輝きが――――勝利へと誘う道しるべ!

速度が足らないなら、「隔壁ピストンを利用した加速」が有用。皆さんとの特訓の成果。
でも、戦いの最中、咄嗟にそんな制御をし続けるのは、あまりにも荷が重すぎる。

…………だったら!魔法陣で隔壁生成を自動化して!さらに体の各部に固定化してっ!
いつでもターボを…加速できる体制を整てておけばいい、それだけのことっ!!









ロゼッタ「――――――――加速円環《ダッシュリング》――――っ!!」

275Mii:2021/06/30(水) 06:24:21 ID:bzZ4v6Ks
意のままに――急加速!
意のままに――――大跳躍!!
意のままに――――――――切り返し、方向転換っ!!!

3つのリングが、私の体を自由自在に舞わせる!

それでも目の前に立ちはだかる触手たち。
避けてばかりではいられない、直接触れると闇の力に汚染されそう。

第2の策、「要塞法衣」の――――パンチンググローブ化っ!!
かつての12層には拘らない。部位を限定する代わりに……
百にも届かんとする、隔壁バリアを凝縮に凝縮を重ねた超多層構造!

余りにも重ね掛け過ぎて、硬化し金属質を帯びて、メタリックに輝く――――!
お灸を据えるべく、これでもかと振りかぶり――――



ロゼッタ「――――――――フンッ!」ドゴォッ!!!

襲い掛かってくる触手、数本纏めてやすやすと一撃粉砕っ!



ルカリオ「――――!お、おい!今の…!ロゼッタっ!そのパンチ!
    あと、もう少しだけ、拳の更なる鋼化と速度増、果たせるかっ!?」

後ろから、ルカリオの助言が聴こえる。――――そんなこと、造作もない。
速やかに、術式を追加、編集、再構築!

276Mii:2021/06/30(水) 06:29:25 ID:bzZ4v6Ks
デイジー「ど、どうしたのっ!」

ルカリオ「今の一発で分かった!ロゼッタには――先制技の素質があるぞ!」

デイジー「なんだってー!…そ、そういや、ゲイルアタックとやらも――――!!」



更なる重ね掛けで強化をされた拳。相当な衝撃力を内包して。
ダッシュリングで体全体も弾けるように速度を高め、拳が風を纏い唸るっ!!
どんどん、触手がはじけ飛ぶ威力、増していく!



ルカリオ「予想した通りだ――――あれはまさしく!
   
    弾丸の一撃―――――『バレットパンチ』!
    
    やったな!パンチング特訓の集大成じゃないか!」

デイジー「うおおおぉぉ!マジで!?ルカリオが太鼓判押すなら確実だね!」





――――――――線で駄目なら、面ならばどうだっ!!

投擲網のように、傘状に暗黒物質を次々と放り投げられる。
最初の1回だけは思わず後退、でも、次は――――

277Mii:2021/06/30(水) 06:32:53 ID:bzZ4v6Ks
懐に手を指し込んで――――

ファイアロゼッタ「――――ファイアフラワー、使用っ!!」ポンッ!

そのまま、敵の魔の手を気にせず、真正面から突撃!!

クッパ「ロゼッタ!流石にそれは無茶だっ!引けっ!後戻りできなくなるぞっ!」

心配には、及ばない。

「ダッシュリング」と同じ考え。
ファイアボール装填に時間を食っていた、いままでの私。
だったら、そう。ファイアフラワーそのものの効力に、「パイロキネシス」の発動を乗せて。

燃え盛る火球をどんどん作ることを、パイロキネシスで。
大きな威力を付与して矢継ぎ早に投げることを、ファイアロゼッタとしての能力で。
効率よく、役割分担すればいい――――っ!!



ボンッ! ボンッ! ボンッ!

ファイアロゼッタ「――――――――Fire Satellite《火球衛星》!」

――――――――な、に!?



マリオカートで見かけた――――トリプル緑甲羅にトリプル赤甲羅。
甲羅にできることなら、どうしてファイアボールができない、なんてことがあろうか…!

278Mii:2021/06/30(水) 06:37:00 ID:bzZ4v6Ks
私を包み絡めとろうとする悪意を、己の周囲を巡らせる3つのファイアボールで!
…焼き切って、打ち消してみせる!ガーディアンのように、自動制御で動いてくれるから!
数度の飛弾は気にせず、そのまま体当たりしてタブーに肉薄!

攻撃を受けるたび、残念ながら消えていく火球も。
ありあまるFPを、燃え盛る怒りに載せてっ!即座に再充填!余念はない!

タブーの本体に――ついに、届いた、拳!!

ズンッ・・・・・・っと、鈍い音を立てて、正拳がタブーのどてっ腹にめりこみます!
たまらず、腹を抱えて苦しそうに蹲るタブーを尻目に、一旦距離を取り――――

燃え盛る炎を、力に、力に、集め切って――振りかぶって――
振りかぶる腕に膨大な「怒り」のFPが絡みつき、灼熱の炎となって。
いつもの何倍も大きい、50cmはあろうかという大火球を、一気呵成で――!



ファイアロゼッタ「ジャイロ、ファイアアアアアアアァァァァ――――――――!!」

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!!



超特殊能力 「鉄腕」が 発動しています!全球種、球速+3%!
ジャイロファイア補正!球速+30%!

最終球速 ――――372km/h!▼

――――――――ヌ、ガアアアアアアアァァ!!?

279Mii:2021/06/30(水) 06:40:52 ID:bzZ4v6Ks
申し訳程度に漂う触手、全部貫いて。
空中で身動き取れないタブーの、心臓部を。たちまちあっさり貫通して、勝負あり――!

所詮私のレベルでは即絶命とは行かないにしても…みるからに、演技の訳もなく。
最早タブーは、逃げることすらできないで苦しそうにもがいている!



ここにきて、少し…バーニング状態が途切れます。気持ちの昂ぶりがひと段落。
もう、溜飲は下げた。流石に、もう、他の方に任せてもよいのではないのか。
…そう、冷静になって、周りを見渡そうとした、まさにその時――――



リンク「よっしゃあロゼッタッ!フィナーレだ!


   ――――メテオでトドメをさせ!!」



私の身勝手な面子を優先させ、露払いに専念してくれていた、他の方々。
その中から、リンクが鶴の一声を。



ファイアロゼッタ「――――――――!!」ドクン

喉がゴクリと鳴って、緊張の瞬間。
自信までちょっとしぼんでいく。…まだ、OFF波動の悪影響は完全には解けて…いない。

280Mii:2021/06/30(水) 06:43:37 ID:bzZ4v6Ks
ファイアロゼッタ「…わ、私には、そんなこと、や、やったこと、なくて…
         おまけに疲れ切っていて…とても、できません!!」

リンク「頑張れ頑張れできるできる絶対できる!頑張れもっとやれるって!
   やれる!気持ちの問題だ頑張れ頑張れ!そこだ!そこだ諦めんな!
   絶対に頑張れ積極的にポジティブに頑張れ頑張れ!」



ファイアロゼッタ「――――!!」



リンク「諦めんなよ!諦めんなよお前!どうしてそこでやめるんだそこで!
   もう少し頑張ってみろよ!ダメダメダメダメ、諦めたら!
   周りのこと思えよ!応援してる人たちのこと思ってみろって!
   あともうちょっとのところなんだから!

   絶対やってみろ!必ず目標、達成できる!だからこそ――Never Give Up!! 」



ほろり、涙がこぼれる。

ファイアロゼッタ「――――ど、どうして、こんなことをしでかした私を、
         そこまで…信用して、くれるの、です、か…?」

その呟きは、決して大きい物ではなかったのに。
拾い上げてくれた人たちが、いた。

281Mii:2021/06/30(水) 06:46:06 ID:bzZ4v6Ks
ファルコ「…ああ、なんだ。ちょっと時間は遡るが。皮肉なことにな。
    偽者のお前に、マリオやピーチですら騙され続けた。それが理由ってやつかな」

ファイアロゼッタ「――――えっ」



ファルコ「…だから、だな。うまいこと騙されたこと自体は癪に障るが。
    要するに、お前の本質は、偽者たちが演じていた通りの――――
    気苦労絶えない、優しさの塊みたいな奴だってことには、間違いねぇんだろう?
    …ちっ、二度と言わせるんじゃねえぞ、柄じゃねえ」

むらびと「そういうこと、そういうこと。
    ファイター達も、観客たちも…ロゼッタさんの偽者を恨むことは有っても。
    ロゼッタさん本人を恨むことなんて、絶対にできないもん!
    こーんなに、優しいお姉さんなんだから!!
    きっと、本物のロゼッタさんが窃盗騒動のときにいたとして、
    あの時以上に僕のことを庇ってくれたんだろうなぁって心の底から思えるんだ!

    さあ、最後はガツンと大勢の観客の目の前で――――
    本物と偽者の違いをしっかり示して、冤罪なんかとはおさらばだよ!」

ファイアロゼッタ「――――――――あ――――――――う――――――――」



涙が、止まらない。

見捨てられても、おかしくないとばかり、悲観していたというのに。
…………嬉しい。嬉しい。戻って来られて、本当に、よかった。

282Mii:2021/06/30(水) 06:49:29 ID:bzZ4v6Ks
ファイアロゼッタ「――――わかり、ましたっ!」

――――やる気、全開。この命に代えても、最後の最後まで、私の意志で…………!!

思い切って、高く、高く、飛び上がります――――!!



ピーチ「…………はぁっ、はぁっ!や、やっと戻って来られた…!!
   制御室の位置、再考の余地があるわね…!非常時には不便だわ…!
   …って!ロゼッタ1人に任せて、何をやってるの!!」

マリオ「何って、最後のツメをロゼッタ本人にやって貰ってるところだ。
   大丈夫、もう危ない橋は何もない」

クッパ「そうとも!身体的にも精神的にもあれほど成長して…ワガハイは嬉しいぞ!」

リンク「あはははは、なんでクッパが偉そうにするのさー」

ピーチ「あんまり油断しないようにねっ!3強さんたちっ!」


ルイージ「…………それにしてもロゼッタ、妙にたかぁく飛び上がるなあ……
    というより、厳密には浮かび上がってるのか、魔法で。

    …あれ?両手を天に掲げた。何する気だろ」

ヨッシー「言われてみれば…」

デイジー「…………」

283Mii:2021/06/30(水) 06:52:56 ID:bzZ4v6Ks







デイジー「…………あっれぇ?







    ――――そもそも私、『メテオ』って単語の説明、ロゼッタにしたっけ…?

    ヒルダ、覚えてる?」クルッ

ヒルダ「Chiko Meteor《キラキラ落とし》は使っていました、けど。
   今はチコたちもいない、で、す、し――――――――」

デイジー「いや、そもそもメテオって別に流星系の技を意味する訳でもないし… 
    空中にいる状態の敵を奈落に叩き落とす攻撃のことでだね…

    …………ヒルダ?どうかしたの?急に呆然として」

ヒルダ「」

デイジー「ロゼッタがどうかし――――――――」

284Mii:2021/06/30(水) 06:56:21 ID:bzZ4v6Ks
…………本当は、最悪、太陽のヒトカケラでも、よかった。
その場合、投げ飛ばす威力が、ちょっと心もとなかった。
でも、おあつらえ向きなものを、奇跡的に、見つけられた。



一瞬で、FPが枯渇。



事を為したとき、激痛と共に、ナニカが終わった。



ロゼッタ「――――ひ、ふ――――――――」ビリッ



全身がマヒし、魔法回路が沸騰し、思考が止まってしまいそうな感覚。
HPと、FPと、もしかしたら生命力、と。沢山のものを、削り落とされた。

視界は急激に狭く。そして、喪失感。
右目が「あった」ところから、滝のような出血。
ああ、もう、頬を伝って…心地悪い、なあ。



全てを投げ打った代償で――――右目が、完全に、お役目を果たし終えました。
これは、もう。二度と、復活してくれないん、でしょう。
相変わらず激痛には慣れないけれど――――後悔は、ない。

285Mii:2021/06/30(水) 07:00:05 ID:bzZ4v6Ks
デイジー「…………元気玉?」

マリオ「…………デッカクドッカン?」

クッパ「…………大王星?」

リンク「…………月落とし?」



それは、遥か、遥か、遥か先を通りかかった、宇宙からの贈り物。
届け、届けと全てのFPを右目に注ぎ込み、見つけて、選んで、切り取った。



やや低空に浮かぶタブーを、FPの赤い衣をつい先ほどまで纏い、
血涙流しながら斜め上から見下ろす、私。





そして、天に掲げる私の掌、その少し上空に――――現れたるは。





突然の召喚に、外周の有機物や金属の化学反応が引き起こされたか、
地獄の業火のごとく激しく外周から火を噴く、大きな、大きな球体――――名付けて、そう。

286Mii:2021/06/30(水) 07:02:54 ID:bzZ4v6Ks



ファイアロゼッタ「――――――――――――――――――――――――









        ――――Trans-Meteor《 転 移 彗 星 》――――――――!!」パアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァ



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!





マリオ「」

クッパ「」

リンク「」

デイジー「モノホンの彗星繰り出しちゃったんですけどぉ――――!?」

287Mii:2021/06/30(水) 07:05:38 ID:bzZ4v6Ks
マリオ「……あれ、ヤバくね?直径30…いや50メートルはあるんじゃね?」

クッパ「ま、まあ彗星にしては小さい方だろ、たぶん」

リンク「」

デイジー「って、ロゼッタったら右目から大量出血してるんだけど!?
    あれ、やばくない!?すっごく無茶苦茶やばくない!!?
    おまけになんか、禁断症状が出たみたいに不気味に笑ってるんだけど!

    リンク、アンタが簡単にそそのかすからこんなことにぃ――――!!?」

リンク「」

ピーチ「ま、まさかあれを、えいって投げ下ろす、つもり…………!?」



ファイアロゼッタ「…………」

ファイアロゼッタ「…………」

ロゼッタ「……………………」ティウン ティウン ティウン

ロゼッタ「」フラァ



「「「「「「「「落ちたぁ――――――――!?」」」」」」」」

288Mii:2021/06/30(水) 07:09:04 ID:bzZ4v6Ks





デイジー「――――――――ロゼッタァ――――――――ッ!」ダダダダッ!





思わず、体が、動いてた。
周りのみんなが、マリオですら、ビックリするあまり咄嗟に動けずに。
リンクも、ショット系のアイテム、とっとと使ってくれたらよかったのに。

ドデカい彗星…いや隕石見て、全員既に、真下から避難済。
逆に言うと、ロゼッタを受け止められる人がいない。
このままじゃロゼッタが…奈落に、落ちる。

残機制度が、働いていない、まま。すなわち、死ぬ。

――――そんなの、絶対、駄目!!



…ただ失敗したのが、私が飛び出したタイミングも、ぶっちゃけ…遅すぎた。
ロゼッタを抱え込むようにして飛びついたまではよかったけれど、
残念、既にフィールドの最下層よりも下にいる。運動方向も下向き。

ぎゅっと抱きしめ、空を仰いだ。上空には、フィールド全体を覆わんとする、天体が、控えてる。

289Mii:2021/06/30(水) 07:11:16 ID:bzZ4v6Ks
…………仕方ない、か。



――――気絶している…ロゼッタだけでも、助けよう。
――――大事な、大事な、親友なんだもの。
――――思いっきり上に向かってぶん投げれば、大丈夫。
――――反動で、私は死んじゃうけど。…まあ、まだマシだよね。



――――さよなら。



デイジー「いっ、せー、のー…………」

もう悟りを開いて、投げようとしているときに。



ゼルダ「せい、やあああああああぁぁ――――――――っ!!」ブンッ!!

ゼルダが、私たちめがけて…何か、下に投げ下ろしてきたっ!?





…………いつぞやの、額縁っ!!

290Mii:2021/06/30(水) 07:14:58 ID:bzZ4v6Ks
勢いよく投げ出されたそれは、たちまち、落下する私たちを追い越して…!



ロゼッタ(分身)「まに、あいまし、たっ!!」ポンッ!!

デイジー「…………うぇっ――――」

ロゼッタ(分身)「デイジー姫。

        本体のこと、頼みましたよっ!!」

デイジー「…え、その腕、『T―ホールド』…ま、まさか――――!」



ロゼッタ(分身)「――――――――――――――――

         フロルの、風ぇ――――――――っ!!!!」パアアアアアアア!!

ブオオオオオオオオオオォォォォォォォォ!!

デイジー「う、わぁ――――――――」ブワッ

覚悟を決めていた私ごと、ロゼッタ本人は、一転してグングン上昇し――――

デイジー「あぁっ――――――――」

分身体のロゼッタが、代わりに、奈落に吸い込まれて行った。

291Mii:2021/06/30(水) 07:18:40 ID:bzZ4v6Ks
悲しむ間もなく飛ばされた先は、フィールドの隅っこ。
受け身を取れなかったけれど、大した痛みじゃあない。
…あ。というより、誰も彼もファイターたちは中央から離脱してる。

中央に存在するのは、未だ満足に動き出せないタブー、
そして上空に浮いたままのでっかい彗星。

…彗星は、ロゼッタが魔法発動を失敗(?)して、それからどうこうするわけでもなく、
依然、同じ場所に留まり続けている。どうなってるんだろう。



ロゼッタ「――――――――で、い、じーひ、め」



顔をむくりと上げることもなく。単に、口を小さく動かすだけだけど。
片目は酷いありさま、もう片目も閉じたままだけど。
ロゼッタが、かすれる声で、生きている証を示してくれた。

デイジー「…ロ、ロゼッタ!大丈夫!?よくやったよ!
    すぐに病院に連れて行って…いや、ピーチに回復して――――」

ロゼッタ「――――――――た、ぶー、の。ま、わり、に。
    だ、れも。ふぁい、たー、いま、せん…………か?」

デイジー「…い、いない、けど?みんな、ロゼッタの最終兵器にビビッて
    離脱しちゃってるよ。そ、それがどうかした?」

ロゼッタ「……………………ありがとう、ござい、ます」フッ

292Mii:2021/06/30(水) 07:21:00 ID:bzZ4v6Ks
デイジー「…………ちょ、そういう穏やかな笑みは不吉だからやめてほしいんだけどっ!切実にっ!
    お願いだからさぁっ――――――――死なないでよロゼッタ――」アセアセ

ロゼッタ「…………」スゥ・・・

























ロゼッタ「―――――――― り す た ー と 」ボソッ

293Mii:2021/06/30(水) 07:22:07 ID:bzZ4v6Ks
マリオ「え――――」

ドンキーコング「うほ――――」

リンク「な――――」

サムス「あ――――」

ヨッシー「へ――――」

カービィ「ぽ――――」

フォックス「は――――」

ピカチュウ「チュ――――」

ルイージ「う――――」

ファルコン「む――――」

ピーチ「や――――」

クッパ「げ――――」

ゼルダ「ひ――――」

マルス「ぐ――――」

メタナイト「ば――――」

294Mii:2021/06/30(水) 07:23:10 ID:bzZ4v6Ks
ピット「うぇ――――」

アイク「ぬ――――」

リザードン「グォ――――」

ディディーコング「キ――――」

デデデ「ぎ――――」

オリマー「ん――――」

ルカリオ「が――――」

トゥーンリンク「ひょ――――」

トゥーンゼルダ「ひゃ――――」

むらびと「にゃ――――」

Wii Fit トレーナー「と――――」

リトル・マック「ぶ――――」

ゲッコウガ「フ――――」

パルテナ「ふぇ――――」

ルフレ「わ――――」

295Mii:2021/06/30(水) 07:25:13 ID:bzZ4v6Ks
ルキナ「く――――」

シュルク「の――――」

ソニック「ぜ――――」

ロックマン「て――――」

パックマン「ざ――――」

ファルコ「ちょ――――」

ワリオ「び――――」

ブラックピット「で――――」

ロボット「W――――」

クッパJr.「り――――」

Mr.ゲーム&ウォッチ「ヲ――――」

ダックハント「ガル――――」

プリン「ぷ――――」




――――――――――――――カッ!!!!!!!!!!!!!!

296Mii:2021/06/30(水) 07:27:57 ID:bzZ4v6Ks

















――――K.O.!!!!!



《ロゼッタ、タブーを撃破! タブー完全消滅! タブー軍、著しくやる気低下!!》





ラナ「」

シア「」

297Mii:2021/06/30(水) 07:31:45 ID:bzZ4v6Ks
〜王国第一ラジオ塔〜

ネス「イテテテ…ダレダ姫に休んどけとは言われたけど。
  みんな中央に集まってるだろうに、自分たちだけ呑気に休んでるなんて。
  なんだかストレスたまるなあ…。

  …よしっ!やっぱり助太刀しに行こう!リュカたちは休ませておくけどね、とーぜん!
  1人でもファイターは多い方がいいでしょ!
  もう、終戦迎えているかもしれないけど、それはそれでいいことだし!よし行くぞー!!」



ズギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァ―――――――――ン!!!!



ネス「ひぃっ!ごめんなさいごめんなさい!調子こきました!!じっとしてますっ!
   …って、そうじゃなくて。何事だあ――――――――っ!?」

ネス「…………」キョロ キョロ





ネス「……………………あれ、中央会場の方、だよね」

ネス「…………」

ネス「試合会場らしき箇所にでっかい火柱立ってるぅ!?」

298Mii:2021/06/30(水) 07:35:17 ID:bzZ4v6Ks
ピーチ「…………」

ピーチ「…………うーん」パチッ



なにやら、大きく吹き飛ばされて、観客席にまで叩きつけられていた、みたい。
あら嫌だ、観客のみなさんに囲まれて。こんな気絶姿晒して、恥ずかしい。

…………あれ?
絶対に注目の的になると思ったのに、観客たちが見つめる先が、私じゃない。
フィールドを、こわばった表情で見つめている。
一体どうしたというのかしら。そ、そういえばタブーはどうなって――――
というか、なんだか無性に暑いんだけ、ど――――



ピーチ「」



炎、炎、炎。
一面、炎。太陽の表面を観察してるみたい。



ピーチ「」

――――フィールドが、影も形も無い!?
――――代わりに、灼熱のマグマで埋め尽くされてるっ!?

299Mii:2021/06/30(水) 07:38:46 ID:bzZ4v6Ks
キノピオ「ひひひひひひひひひひひひひひひひひひ姫様ぁっ!!
    タブーの消滅を残機記録よりおおよそ確実視できましたっ!
    でも、今はそんなことよりっ!

    フィールドからの火炎地獄だけで観客席のバリアが壊れ出していますっ!
    避難させようにも、大混乱させそうで二の足を踏んでおりまして…!
    我々だけではどうすることもっ!お願いします姫様、指揮を願いますっ!!」ダダダダッ!

ピーチ「わかった!わかったわよっ!もう!最後のひと踏ん張りねっ!!」



デイジー「ロゼッタッ!ロゼッタッ!目を覚ましてっ!」

ロゼッタ「――――は、い」パチッ

デイジー「ロゼッタァ・・・・・」ボロボロ

ロゼッタ「たぶー、は。たおすことが、でき、ました、か?」

デイジー「もちろん!さすがロゼッタ!凄かったよ!
    あんまり何が起きたか分かってないけどっ!目が覚めたら火の海だったからっ!」

ロゼッタ「ああ、よか―――った――――」ガクッ

デイジー「――――ロゼッタ?」

デイジー「――――ロゼッタ?ね、え。じょうだん、でしょ?」

デイジー「ロゼッタアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァ!!」

300Mii:2021/06/30(水) 07:40:28 ID:bzZ4v6Ks
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

〜翌日 AM 5:00〜



Dr.マリオ「…………」

デイジー「…………たすかる、よね?もちろん、たすかった、よね?」

Dr.マリオ「…………」

デイジー「なんとか言ってよ、マリオ!」

Dr.マリオ「…………手は、尽くした」

デイジー「な、なら――――」

Dr.マリオ「…だが。医学でも、1UPキノコでも、回復魔法でも。
     限界と言うものは、あるんだ。わかってくれ」

デイジー「……………………っ!!!!」

Dr.マリオ「――――ロゼッタは、もう――――」

301Mii:2021/06/30(水) 07:43:06 ID:bzZ4v6Ks
デイジー「そんな、嘘!でたらめ!何とかしなさいよ!医者でしょ!」

ピーチ「デイジー…無茶を言わないで頂戴。
   マリオは、寝る間も惜しんで――――必死に、全力尽くして頑張ってくれたわ」ポンッ

デイジー「そん、な、あ――――」ボロボロボロボロ

ピーチ「そういうわけで――――残念だけど―――――――――

















   ロゼッタ、貴方は早めに義眼手術受けてね。手配しとくから」

ロゼッタ「はい…………」ションボリ

デイジー「生きとんのかああぁぁぁ―――――――――い!!!!」

302Mii:2021/06/30(水) 07:48:11 ID:bzZ4v6Ks
Dr.マリオ「当たり前だろ。医者なめんな」

ピーチ「ロゼッタほどじゃないけど、回復魔法なめないで」

ロゼッタ「おかげで右目以外はピンピンしてます…」



一応、ベッドの上で安静にはしていますが…。念のため、というやつで。



デイジー「ありがとうね2人とも!なんかムカつくけどっ!!」

パルテナ「まったくもう!酷使にもほどがありますっ!
    せっかく奇跡のチカラを授けてあげたのに、さっそく駄目にするなんて!」クドクド

パルテナさんが大層おかんむり。
それはそうでしょう、彼女の多大なるご厚意をふいにしてしまったのですから。
軽率な行動をとった私は怒られて然るべきです。

ロゼッタ「大変申し訳ございません…
    あ、あの。もう一度、奇跡を掛けてくれるわけには、いきませんか…?」

パルテナ「はぁ!?奇跡を舐めているのですか!奇跡というのはですね!
    2度は起こらないから奇跡と呼ぶのですよ!!

    残念ながら、あなたの右目の復活は、もはや私にも…不可能です!」

ピット(…初耳です)

303Mii:2021/06/30(水) 07:52:32 ID:bzZ4v6Ks
ロゼッタ「ひっ…ごめんなさいごめんなさい…!
    で、でも、このままでは…ほうき星に襲い来る隕石を防ぐことすら…!
    ほうき星の管理主として、どうにか、しないと…………!!
    
    あれ?そういえば、右目を失ったにしては、FP暴走が起きていない、ような」



前の時は、呼吸をするのも辛いというありさまだったのに。



パルテナ「ピーチ姫から、貴方の魔法使いとしての素質、重要性は散々説かれましたから。
    仕方がないので―――――――――







    代わりに別の奇跡で、左目を魔法回路の心臓部にしておきました」

ロゼッタ「わぁい!」



デイジー「ご都合主義バンザイ」

ピット「まるで奇跡のバーゲンセール」

304Mii:2021/06/30(水) 07:55:35 ID:bzZ4v6Ks
パルテナさんから、魔法回路の心臓部が切り替わったことによる弊害――――

適応まである程度の期間を要すること、
日常生活を義眼でこなす気がないのならば左目の負担が大きくなってしまうこと、
義眼と魔眼とのバランスは少々取りにくいことなどを懇切丁寧に説明されました。

…これから大変そうですが、そのくらいの困難、へっちゃらです!



ピーチ「落ち着いたところで、念のため聞いておくけど。
   …ロゼッタ、結局あなたはタブーをどうやって倒したの?
   時間差であの彗星がタブーに飛んで行くように術式を仕込んでいたのかしら?」

デイジー「すっごい魔法だったよね。
    タブーを倒すところ、全く見えなかったもん。
    どれだけ魔法を重ね掛けしてたのさ」







ロゼッタ「…え?」

ピーチ「…え?」

デイジー「…え?」

305Mii:2021/06/30(水) 08:01:11 ID:bzZ4v6Ks
ロゼッタ「…えっと。勘違いされているようですが。
    私、最後の最後で、魔法を発動させたわけじゃありませんよ?

    最後の最後で『魔法を破棄した』んです」



…なるほど。傍から見ると、確かに。
魔法を使って一気に彗星を動かして、どうにかしたように見えた訳ですね。



デイジー「魔法を…破棄した?」

ロゼッタ「はい。まわりに誰もいなくなったタイミングを見計らって。

    別にあれは、彗星を具現化する魔法ではありません。
    もちろん、彗星を勢いよく放出する魔法でもありません。
    単に、離れたところの彗星を持ってくるだけの魔法です。

    すごーく遠くの彗星を持ってくるためだけに、ほぼ全ての、大量のFPが消費されました」

ピーチ「…………じゃ、じゃあ。彗星は、単に魔法の束縛から解かれて自由落下しただけってこと?
   それにしては、方向もまるで違うし、威力がとんでもなかったような――」

ロゼッタ「私からタブーへの向きに、進行方向が被る彗星がちょうど見つかったもので」



ピーチ「…進行方向?」

306Mii:2021/06/30(水) 08:05:02 ID:bzZ4v6Ks
ロゼッタ「はい。そんなわけで、あの彗星――――――――





     地球から見た相対速度で、秒速50〜100kmほど出ていたと思います」

Dr.マリオ「」

ピーチ「」

パルテナ「」

ピット「」

ロゼッタ「タブーを叩き潰しつつ、残機を失う『特異面』に衝突した時、大爆発して…
    それはそれは膨大なエネルギーを放出したかと」

デイジー「ソレデ フィールドゴト ブットンダノカー」

ピーチ「…………頭いたい」フラッ

ロゼッタ「え?だ、大丈夫ですか?」

ピーチ「貴方のせいよ!!」

お見舞いの(用意が早い)フルーツ籠をポイッと投げつけられました。
おっとと、我ながらナイスキャッチ。
病人(ということになっている)に対して酷いですよ、まったく。

307Mii:2021/06/30(水) 08:10:28 ID:bzZ4v6Ks
あれから、どうなったのかというと。ピーチ姫談。



タブーを倒し切り、正直な所、消化試合になったそうで。
ファイターたちは取って返して城下の完全制圧に向かいました。
統率が乱れに乱れた敵さんたちは、簡単に撃破され、
ものの2時間程度で1体たりとも生き延びなかったそうです。

そのあたりでようやく、試合会場観客席の情報統制解除。
危険と隣り合わせであったことに愚痴をこぼす声、罵る声が皆無とはいいませんが、
大多数の方は嘘も方便と賛同してくれたとのことで。皆さんおおらかです。



…ただ、とにかく。物的被害は甚大。
城下の8割が、何らかの被害を被ったとまで推測されるとか。
人的被害も凄まじく、各病院はひっきりなしの対応に追われました。
骨折くらいなら軽いほうで、生死を彷徨った方や、石化の後遺症が残り掛けた方。

とにかくピーチ姫が深夜病棟の数々を巡り、孤軍奮闘して、
疲労のあまり失神したほどの状況だったとのこと。
今もなお無理をしている真っ最中だったりします。目にクマができています。

それでも、命を失った者がゼロであったことは不幸中の幸いです。
…私も。不謹慎ながら、肩の荷が下りました。

誰か一人でも亡くなっていたら…と思うと。
やっぱり立ち直れなかった気がします。
…こんなことを考えるなんて心が狭いですね、私…。


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