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雪女「うらめしや」

91以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/09(木) 05:10:30 ID:2ak13W2c
雪女「……っ」

男「……悲しい夢でも見てたのか?」

雪女「えぇ、少し……ね」

男「そうか」

雪女「……動けないわ」

男「タマ、気持ちよさそうだな」

雪女「……ねぇ、ちょっといい?」

男「ん?」

92以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/09(木) 05:11:07 ID:2ak13W2c
雪女「私、頑張ったの」

男「何をだよ。寝ぼけてんのか?」

雪女「違うわ、手を……出してみて」

男「手? いいけど……!」

雪女「……どう、冷たい?」

男「……温かいよ」

雪女「本当?」

男「あぁ、本当だ」

雪女「そう……ふふっ、さっきも言ったけど私ね、頑張ったの」

男「そうみたいだな」

93以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/09(木) 05:11:44 ID:2ak13W2c
雪女「あなたのお陰で頑張れたの」

男「俺は何もしてないけどな」

雪女「ううん、沢山の事をしてくれたわ……あの日、貴方に出会ってから私は変わった。怖かったけど、変われたの」

男「……」

雪女「勇気をくれて、ありがと」

男「……どういたしまして」

雪女「お花見、楽しみね」

男「!」

94以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/09(木) 05:12:48 ID:2ak13W2c
雪女「……いい香りがするわ」

男「あっ、ちょっと見てくる!」

雪女「行ってらっしゃい」

男「雪女」

雪女「何?」

男「ありがとう」

雪女「ふふっ、どういたしまして」

95以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/12(日) 15:17:51 ID:t5.d14T.
これすこ

96以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/14(火) 23:45:39 ID:NhjfEDRI
男「タマ、少し退いてくれ」

タマ「……」

男「そこに乗られると仕事が出来ないんだよ」

タマ「……」

男「困ったな」

タマ「ニャー」

男「何かあった?」

タマ「……」

男「はぁ、昼ご飯作るか……ほら、台所行くぞ」

タマ「ニャー」

97以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/14(火) 23:46:14 ID:NhjfEDRI
男「何食べる?」

タマ「……」

男「スリスリされても分かんないんだけど」

タマ「……」

男「そういう気分なの?」

タマ「ニャー」

男「分かった、分かったからもう少し離れてくれ。危なくて料理出来ない……それか炬燵で待っててもいいぞ」

タマ「……」

男「珍しく言うことを聞いてくれないな……落ちたものは食べるなよ?」

タマ「ニャー」

98以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/14(火) 23:47:00 ID:NhjfEDRI
雪女「凍える夜は好きかしら?」

男「5秒以内に戸を閉めろ。でないとお前にタマを押し付ける」

雪女「よいしょっと……それで、タマを押し付けるって何よ?」

男「それはだな……タマ、雪女が来たぞ」

タマ「……」

雪女「膝の上で気持ちよさそうに丸まってるわね。いつもと変わらないじゃない」

男「何か変なんだよなぁ」

雪女「私にはよく分からないけど……おいでー」

タマ「……」

雪女「むっ」

99以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/14(火) 23:47:42 ID:NhjfEDRI
男「タマ、雪女が呼んでるぞ?」

タマ「ニャー」

男「今日は俺の上がいいんだと」

雪女「何故か悔しい気持ちでいっぱいだわ……」

男「ごめんな、今日は少し我が儘みたいなんだ」

雪女「我が儘?」

男「そう、我が儘。姿を変えてから甘える事が減っていた気がするし、多分これは甘えたいけどうまく伝えられないからこうやって……痛っ!」

タマ「フシャー!」

男「久々に引っ掻かれた……」

雪女「ふふっ、どうやら図星だったみたいね」

タマ「ニャー!」

100以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/14(火) 23:48:28 ID:NhjfEDRI
男「はぁ……うちの猫めっちゃ可愛い」

雪女「ちょっと不器用な所はきっとあなたに似たんでしょうね」

男「……」

雪女「んふふっ」

タマ「ニャー」

雪女「あははっ、ごめんなさい……ふふっ、ふー……んふっ」

タマ「うにゃー! 笑うにゃ!」

男「おわっ、急に大きくなるなって……顔赤いな」

タマ「にゃあ!」

101以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/14(火) 23:49:12 ID:NhjfEDRI
雪女「ほら男、甘やかしてあげなさい」

男「そうだな」

タマ「に゛ゃ゛っ」

男「よしよし」

タマ「……にゃぁ」

雪女「……」

タマ「ニヤニヤするにゃ!」

雪女「いいもの見れたし今日は私が夕飯を作ろうかしら」

「「駄目」」

雪女「……」

102以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/18(土) 19:00:37 ID:0q0AoJE6
猫かわよ〜( ´∀`)

103以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/21(火) 23:33:23 ID:rA.Wu2yo
タマ「……」

男「どうした?」

タマ「誰か来るにゃ」

男「雪女か?」

タマ「多分違うにゃ。けど、これは」

??「おーい、来たぞー……あれ、玄関が開いてる」

タマ「ニャー」

??「よっ!」

男「何が『よっ』だ。不法侵入だぞ」

??「開けっ放しのお前も悪い。美味しい酒持ってきたから何か作ってくれ、あと原稿寄越せ」

男「……分かったよ。そこで待ってろ、友」

友「頼んだ、男」

104以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/21(火) 23:33:58 ID:rA.Wu2yo
男「来るときは連絡しろっていつも言ってるだろ」

友「あははは、忘れてたわ」

男「冷蔵庫に何も入ってなかったらどうするんだ」

友「相変わらず心配する所がおかしい」

男「……今日は泊まっていくのか?」

友「吹雪で視界が悪い上に灯り一つ無いこの山道を今から下りろと? 数日後に転落した車の中で遺体発見のニュースが流れたりしたらどうするよ」

男「悲しむ」

友「だろう?」

105以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/21(火) 23:34:32 ID:rA.Wu2yo
男「けど担当がお前じゃなくなるのなら、それもまた……」

友「おいおいおい、俺ほど有能でうるさくない担当者を捨てるなんて酷い事言うなよ。逆にお前を捨ててやるぞ?」

男「洒落にならん脅しはやめろ。ならこっちは遭難してやる」

友「その時はまた拾ってやるさ」

男「お前本当に面倒くさいな」

友「ストレス溜まってんだよー! 毎日毎日ハゲがうるさいんだよー! 構えよー!」

男「気持ち悪い」

友「タマ、男が俺をいじめる」

タマ「……」

友「ひとりぼっち、でも元気」

106以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/21(火) 23:35:09 ID:rA.Wu2yo
友「お前の飯は相変わらずうめぇなぁ」

男「……前の俺より酷い生活でもしてるのか?」

友「いや、生活は良い方だ。お前のお陰で仕事も順調だし、何も言うことはない。ただ最近仕事とは別の件で忙しい」

男「別の件……?」

友「あぁ、夜も眠れない」

男「そう」

友「……」

男「……」

友「少し離れた町でとある出来事が起きた」

男「話すんかい」

友「聞いて欲しいオーラ出してんだから察せよ」

男「面倒くさいなぁ」

107以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/21(火) 23:35:48 ID:rA.Wu2yo
友「……内容は『夜、私がジョギングをしていると目の前に"白い着物"を着た"白い髪の女性"が一人歩いていた。しかしその女性が歩いた後の道はとても不思議で近くに生える植物や塀が物凄い速さで冷たく凍っている。強い違和感と恐怖を感じた私は逃げ出すようにその場から走り去った』というもの」

友「最初はこの件に関してあまり興味が無かったんだ、離れた町だし。それに犠牲者も出ていない……だが、少し気になって調べることにした」

友「そうしたら、その町に居たのは"雪女"であることが判明」

男「!」

友「お前と全く関係無いという訳じゃないから一応話に来た」

男「あ、あぁ」

友「……取り敢えず玄関の鍵は閉めろ、いいな?」

男「分かった」

友「タマ、真面目な話だ」

タマ「にゃあ」

友「その雪女がここに来るとは限らない……が、もし来てしまった場合はタマだけが頼りだ。男を護る為に警戒しておいてくれ」

タマ「分かったにゃ」

友「いい子だ。ついでに新しいお洋服を作ってきたんだが後で着てみないか?」

タマ「嫌にゃ」

108以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/21(火) 23:36:40 ID:rA.Wu2yo
友「男、俺明日早いから起こしてくれると助かる」

男「いつもの時間で大丈夫か?」

友「いや、明日は帰る前にここら一帯に結界を張るつもりだからもう一時間くらい早くかな」

男「結界? なんでさ」

友「馬鹿、例の雪女がここに来たら危ないからに決まってるだろ」

男「なるほど」

友「それと……ほい、これ」

男「こけしのストラップ?」

友「俺お手製の御守り、これを持っていれば結界も難なく通り抜けられるようになる。予備もあるからタマにも渡しておくといい」

男「助かる」

友「気にするな」

109以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/21(火) 23:37:57 ID:rA.Wu2yo
友「付き合わせてごめんな」

タマ「男は朝ご飯作ってるから仕方無くだにゃ」

友「……あいつは、まだ例の女性を探しているのか?」

タマ「……」

友「見つかったか?」

タマ「……」

友「何か言ってくれよ……俺的にはさっさと見付けて山から下りて欲しいんだけど」

タマ「……」

友「はぁ……これやる」

タマ「追加の御守りかにゃ?」

友「この紙を破ればその事が俺に伝わる御守り。問題が起こったら破れ、時間は掛かるが急いでここに来てやる」

タマ「にゃ」

友「友人に危険が迫ってるかもしれないんだ、頼んだぞ」

タマ「……任せてにゃ」

110以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/21(火) 23:38:31 ID:rA.Wu2yo
友「結界は張り終わってるから後はいつも通りにに過ごしてくれ、こけしは携帯にでも付けておくといい」

男「あぁ、無くさないよう気を付ける」

友「……不安だ、俺用の御守りだったがこれもやる。絶対に無くすなよ?」

男「俺はそこまで抜けてない」

友「言っとけ」

男「気を付けて帰れよ」

友「あぁ、朝飯美味かった」

111以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/21(火) 23:39:11 ID:rA.Wu2yo
男「次来るときは連絡してから来い」

友「善処する、タマもまたな」

タマ「ニャー」

友「俺の前だと全然人の姿にならないな、寂しい」

男「お前が無理やり色んな服を着せようとしたからだろ」

友「そんな事もあったな……じゃあ」

男「あぁ、またな」

友「おう」

112以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/29(水) 01:28:10 ID:XCf75jEE
男「頭が痛い……」

タマ「風邪かにゃ?」

男「分かんない、一応くすり飲んでおくか」

タマ「にゃ」

男「昼に買い物行くけどタマも行く?」

タマ「行くにゃ、でも頭が痛いなら無理せず休んでのんびりするにゃ。家に何もなくたって1日くらい平気にゃ」

男「あぁ、そうだな」

タマ「にゃあ」

113以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/29(水) 01:29:07 ID:XCf75jEE
タマ「いっぱい買ったにゃ」

男「いつもより少し多いくらいだよ」

タマ「タマにとってはこれも多く感じるにゃ」

男「……」

タマ「頭、痛い?」

男「あぁ、痛い……」

タマ「だからタマは止めたのにゃ」

男「でも冷蔵庫の中が少ないと落ち着かないし……」

114以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/29(水) 01:29:56 ID:XCf75jEE
タマ「小さくて狭い部屋に住んでいた時はよくあったにゃ」

男「流石に今の家だと出来ないなぁ……前はコンビニが近くにあったからよかったけどここには何もない」

タマ「でも静かでいいところにゃ」

男「俺もそう思うよ……なぁ、タマ」

タマ「にゃ」

男「ちょっと車止めて休憩してもいい?」

タマ「だ、だから無理をするなと言ったのにゃ!」

男「本当に頭痛い……」

タマ「飲み物を探すから待っててにゃ! あと、少しだけ空気を入れ換えて……」

男「あ゛ぁ゛ぁ゛……寒い」

115以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/29(水) 01:30:50 ID:XCf75jEE
タマ「我慢して、これお茶にゃ……あと少しで家だから頑張るにゃ」

男「助かる……」

タマ「にゃあ」

男「……よし、少しだけ元気でたから行くか」

タマ「にゃあ」

男「その前にトランクにある買い物袋から飴取ってくるから待ってて」

タマ「それならタマが……」

男「大丈夫、結構楽になったから……よいしょっと」

タマ「……」

男「ただいま、じゃあ帰るか」

116以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/29(水) 01:32:15 ID:XCf75jEE
男「よし、じゃあ買ってきた物を仕舞おう」

タマ「タマがやっておくから男は寝てろにゃ」

男「そうか?」

タマ「男はそろそろ無理をしてまで動こうとする癖を直した方がいいにゃ、いつか死んじゃうにゃ」

男「体だけは丈夫だから気にしなくていいよ」

タマ「本当に死んじゃったらどうるにゃ……」

男「急に俯いてどうした?」

タマ「うるさいにゃ、さっさと寝て頭痛いの治すにゃ」

男「わ、分かったよ。じゃあ後よろしくな」

タマ「にゃあ」

117以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/29(水) 01:35:33 ID:XCf75jEE
??「あら、これは結界かしら? もうっ、あの娘に会うまでどれほど迷えばいいのよ!」

??「……この結界は難しくはないし通れはするけど、少し面倒だわ」

??「どうしましょう……ん?」

??「小さなこけしが落ちてる、こんな山道で忘れられて可哀想に……だけど、何か変ね」

??「あら、あらら?」

??「明らかに術が掛けられてる。こんなこと出来る人間がまだ残っているなんて、命の営みも尊いものねぇ」

??「よいしょっ……と、思った通り、結界を通り抜けられたわ」

??「さてと、これを仕込んだ人間はこの山に住んでいるのかしら?」

??「どんな人間なのか気になるし、会えたら会ってみたいわねぇ」

118以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/07(木) 01:00:48 ID:uBPup.Kg
男「今日の雪は積もりそうだね」

タマ「ニャー」

男「明日雪女に御守りを渡しに行こうと思っていたんだけど、積もり方によっては後日になりそうだ」

タマ「……」

男「……無理せず休めって?」

タマ「ニャ」

男「でも雪女がこっちに来れないのはちょっと……痛っ、分かった休む、休むから!」

タマ「ニャー」

男「はぁ、暴力に訴えるのはよくないと思う」

119以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/07(木) 01:01:38 ID:uBPup.Kg
タマ「……!」

男「ん? なんか、急に寒くなってきたな……」

「ごめんくださーい」

男「はーい!」

タマ「ニャー!」

男「あっ、ごめん。つい返しちゃった」

タマ「フシャー!」

男「まぁ、大丈夫だって。アイツの言う雪女が堂々と人の家に乗り込んでくる訳ないよ。それに結界もあるし……」

「あの、すいませーん」

男「はーい、今行きまーす。取り敢えずタマはその姿のままで、何も無いと思うけどもし噂の雪女だったら隙を見て車まで逃げよう」

タマ「ニャ」

120以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/07(木) 01:02:12 ID:uBPup.Kg
男「はーい」

美女「あっ、こんばんは」

男「こんばんは、寒いのでどうぞ中へ……何かありました?」

美女「えぇ、ここ辺りの村に住む知り合いに会おうと山を登って来たのだけど、日が沈んでしまって……どうしようかと悩んでいたところ灯りのある家が見えたので助けてもらおうと伺った次第です」

男「あぁ、なるほど」

美女「どうか1日泊めてはいただけませんか?」

121以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/07(木) 01:02:52 ID:uBPup.Kg
男「はい、いいですよ」

美女「あら、そんなあっさり?」

タマ「フシャー!」

美女「猫を飼っているのですね、可愛い」

男「名前はタマです」

美女「タマちゃん、こんばんは」

タマ「……」

男「あはは、あまり人に懐かないので」

美女「ふふっ、大丈夫です」

男「空き部屋があるので寝るときはそこを使ってください」

美女「結構立派な家ですが……貴方は一人暮らし?」

男「えぇ、まぁ……」

美女「へぇ……」

122以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/07(木) 01:03:27 ID:uBPup.Kg
男「夜ご飯は食べました?」

美女「実は……」

男「簡単な物でしたら作りますよ」

美女「いいのですか?」

男「はい、少し待っていて下さい」

美女「有り難うございます」

男「いえいえ、タマ」

タマ「ニャー」

男「ん? あ、あぁ……タマのご飯も用意するから待っててな」

タマ「ニャー」

美女「タマちゃーん」

タマ「……」

美女「うーん、可愛いっ」

123以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/07(木) 01:04:22 ID:uBPup.Kg
美女「今更ですが自己紹介をしますね」

男「あっ、忘れてました。男と言います」

美女「私は女と言います。今日は泊めていただき本当に有り難うございます」

男「そんな畏まらないで下さい。俺は困っている人を助けたまでで……」

美女「危うく遭難してしまう所でした……男さんには感謝してもしきれません」

男「えっと……よかったです」

タマ「……」

124以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/07(木) 01:04:58 ID:uBPup.Kg
美女「それでは、おやすみなさい」

男「はい、おやすみなさい」

美女「タマちゃんもおやすみ」

タマ「……」

男「……普通にいい人っぽくて助かった」

タマ「ニャー」

男「でも女さんは黒髪だし、服装も流行りものっぽいから雪女ではないと思うんだよ」

タマ「……ニャ」

男「大丈夫だって、じゃあ俺達も寝るか」

タマ「ニャー」

125以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/07(木) 01:05:31 ID:uBPup.Kg
男「すぅ……すぅ……」

「うふふっ、可愛い寝顔。精気溢れる若い男はとても美味しいんでしょうねぇ……」

「貴方は術士じゃない、貴方からはその気配が無いわ……でも、誰かに護られている」

男「……」

「あぁ、もう我慢できないわ。精気、吸わせてもらうわね……っ」

男「……っ!?」

「んっ……ふっ、んぅ!」

男「っ!」

「……っぷは、こんばんは」

男「お、女さん、何を……っ!? 髪が……!?」

「騙してごめんなさいね、これも生きるためなのよ」

126以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/07(木) 01:06:27 ID:uBPup.Kg
男「や、やめ……か、体が動かない……」

「普通なら人間の精気を吸い尽くすのは一瞬なのだけど、私はねちっこいのが好きでね……」

男「くそ、動け……っ!」

「……っ、ぷはっ……ゆっくりと、じっくりと体の熱を奪われる感覚、堪らないでしょう?」

男「くっ……」

「さぁ、楽しみましょう」

127以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/08(金) 00:15:55 ID:dDrRjyeM
フェ◯チオで精気吸いとってるのかな

128以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/14(木) 21:30:14 ID:iygTu.rE
タマ「……」

タマ(不安にゃ)

タマ(あの女、確かに雪女と違って髪の毛は黒いし服装もテレビでよく見る姿、なのに違和感が消えないにゃ)

タマ「やっぱり駄目、せめて男の側であの女を警戒するにゃ」

タマ「男の部屋に行くにゃ」

129以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/14(木) 21:31:36 ID:iygTu.rE
タマ「……?」

「うふふっ、いい……とてもいいわ」

「っぁ……」

タマ「にゃ、お、男! おまえ、男から離れろにゃ!」

「わっ、ビックリした……あなた、いつ家に入ってきたの?」

タマ「大丈夫かにゃ!?」

男「タ、マ……」

タマ「体が凄く冷たい……男に何をしたのにゃ!」

「私の質問は無視? まぁいいわ、答えてあげる」

美女「私は雪女。さっきまでこの男から精気を吸って、吸って、吸って……体から熱が無くなるまで食べてたの」

タマ「男を元に戻せにゃ!」

130以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/14(木) 21:34:00 ID:iygTu.rE
美女「ふふふっ、どうしようかしら」

タマ「ふざけるな!」

美女「ふざけてないわ、こっちも命が掛かってる訳だし」

タマ「っ!」

美女「痛っ! あなた、あの猫だったのね……あれ、どこに隠れたの?」

バタンッ!

美女「外……案外すばしっこい。でも外へ逃げるなんてお馬鹿な化け猫さん」

美女「雪山で男一人抱えながらの逃走なんて限界が知れてるわ。凍えて動けなくなっているところを捕まえて、あの娘へのお土産にしちゃいましょう」

美女「ふぁ……疲れちゃった。ベッド使わせてもらうわねぇー……って、もう居ないか」

131以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/14(木) 21:34:54 ID:iygTu.rE
雪女「やったわ! 温度計の針がいつもより2度も高い!」

雪女「これなら周りの物を凍らせる事なく男と一緒に過ごせるしお花見にも行ける……よね?」

雪女「タマに感謝しなくちゃ」

「……、き……にゃ、……」

雪女「……?」

「……ゃ、にゃ……ぁ……」

雪女「誰か外にいるの?」

132以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/14(木) 21:35:47 ID:iygTu.rE
「雪女……開けてにゃ……」

雪女「タマ? すぐ開けるから待ってて……ちょ、そんな薄着で何が……え、担いでいるのは男?」

男「……」

タマ「ごめんにゃ、もう寒くて……ゃぁ」

雪女「だ、ダメ! こんな所で寝たら危険よ!部屋を温めてお湯を沸かして、取り敢えずそれまで耐えて!」

タマ「男を、頼むにゃ」

雪女「タマ!? タマ、返事をしなさい! タマ!」

133以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/14(木) 21:38:41 ID:iygTu.rE
雪女「ふぅ、二人を無事に部屋まで運べてよかった。前の私だったら、触れることすら出来なかったでのしょうね」

タマ「助かるにゃ……」

雪女「何があったのかは後で聞く事にするから今は休んでなさい」

タマ「それは、駄目……男が危ないのにゃ」

雪女「大丈夫よ、ふ……服は着替えさせたし、温かい部屋でお布団の中に入っていれば冷えた体も元に戻るわ」

タマ「違うにゃ、そうじゃないにゃ」

雪女「どういうこと?」

タマ「男は、家に来た雪女に何かをされて体がとても冷たいのにゃ」

雪女「私は今日ずっと家に居たわよ?」

タマ「別の雪女が家に来たのにゃ……」

雪女「……」

134以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/14(木) 21:40:56 ID:iygTu.rE
タマ「タマが気付いた時にはもう襲われてて、すぐ引き剥がしたけど男の体は凄く冷たくて……けど、どうすればいいのか分からなくて……」

雪女「男を担いでここまで来た……と」

タマ「雪女、男を助けて……タマには何も出来ないにゃ……」

雪女「少し、男に触れるわね」

タマ「にゃあ」

男「……」

雪女「成る程、精気を吸い取られてる。しかも結構な量を……わずかに熱を感じるけど危険な状況だわ」

タマ「にゃ、にゃあ……」

135以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/14(木) 21:41:31 ID:iygTu.rE
雪女「でも、何とかなるかもしれない」

タマ「本当かにゃ!?」

雪女「えぇ、準備をしてくるからそこで待ってて」

タマ「手伝うにゃ!」

雪女「私としては休んでいて欲しいのけど……」

タマ「嫌、手伝うにゃ!」

雪女「……そうね、じゃあ少しだけ手伝ってもらってもいい?」

タマ「任せてにゃ!」

136以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/14(木) 21:42:26 ID:iygTu.rE
タマ「雪女……」

雪女「なに?」

タマ「このお茶は飲んでも大丈夫なお茶? 色がすごいにゃ……」

雪女「冷えた体を温める薬の入ったお茶よ。はい、飲んで」

タマ「そっか、勘違いしてたにゃ……の、飲むにゃ」

雪女「うん、味わって……っと、えい」

タマ「!? な、何をやってるにゃ! 火の中に手を突っ込んじゃ駄目にゃ! 火傷するにゃ!」

137以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/14(木) 21:44:02 ID:iygTu.rE
雪女「っ……いいのよ、気にしないで……っ」

タマ「雪女は今すごい事をしているのにゃ! はやく手を引っ込めるにゃ!」

雪女「でも、これしか方法が無いのよ」

タマ「説明が欲しいにゃ! は、肌の赤みが広がって……」

雪女「これはね、手の先から熱が私の体に流れ込んでてね……っ」

タマ「腕も真っ赤に……も、もうやめて、怖いにゃ」

雪女「ふふっ、大丈夫……大丈夫だから、ね?」

タマ「にゃあ……」

138以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/14(木) 21:45:42 ID:iygTu.rE
雪女「もういいかな」

タマ「赤い肌の雪女にゃ、本当に真っ赤にゃ……」

雪女「は、恥ずかしいからあまり見ないで……」

タマ「手は大丈夫? 一応火傷の薬を取って……」

雪女「そろそろ効いてきたかしら?」

タマ「何か、眠気が……にゃっ、駄目……にゃ」

雪女「ごめんね。さっき飲ませたお茶、実は普通のお茶じゃなかったの」

タマ「にゃ、にゃあ……」

雪女「タマは十分頑張った。だからゆっくり休みなさい、起きた頃には男も元通り……な筈よ」

タマ「タマも、手伝う……にゃ……」

雪女「お休み、タマ」

タマ「……」

139以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/14(木) 21:48:47 ID:iygTu.rE
雪女「よし……っ、流石にこれだけの熱を溜めると立つのも一苦労ね」

雪女「私、赤鬼みたい」

雪女「男がこの姿を見たらどう思うのかしら、嫌いになっちゃうのかな?」

男「……」

雪女「ねぇ、男。今からあなたに触れて、私の中にある熱をあなたの中に流し込んで……あなたの心に、私の精気を分け与えるの」

男「……」

雪女「これでも命を懸けて助けてるんだから、ちゃんと感謝しなさいよ?」

男「……」

雪女「お花見、行くんでしょう?」

雪女「お願い、生きて……男」

140以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/15(金) 08:03:34 ID:A3y1T4po
股間の精気だけは元気100倍になったよ!

141以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/21(木) 21:17:06 ID:nuDGyAxM
男「んっ、ここは……」

タマ「おとこ! 起きたにゃ!」

男「ぐっ……重い」

タマ「よかった、よかったにゃ!」

男「タマ……そっか、俺は襲われて……」

タマ「危ないと思ってタマが雪女の家まで連れてきたのにゃ」

男「雪女の家……迷惑かけたな、タマ」

タマ「気にしなくていいにゃ! 男が生きているだけでタマは嬉しいにゃ!」

男「ありがと、ところで雪女はどこだ?」

タマ「にゃ、にゃあ……雪女は、その……」

男「?」

タマ「ちょっと待っててにゃ」

142以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/21(木) 21:17:42 ID:nuDGyAxM
タマ「お待たせにゃ」

男「おかえり、雪女は何で隠れてるんだ?」

雪女「だ、だって……」

タマ「ほら、隠れてないで」

雪女「でも、嫌われたりしたら私泣いちゃう……」

タマ「男は雪女のことが好きだから大丈夫にゃ」

男「た、タマ!」

タマ「嫌いかにゃ?」

男「……好きだけど」

雪女「っ……急に恥ずかしいこと言わないでよ!」

143以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/21(木) 21:18:16 ID:nuDGyAxM
タマ「にゃあ……えいっ」

雪女「ひゃっ、タマ!」

タマ「いいから出てくるにゃ」

雪女「や、やめ……っ」

男「!?」

雪女「お、おはよう……」

男「雪女……なのか?」

雪女「……うん」

男「随分と、その……小さくなったな、色々と」

雪女「これには理由があって……!」

144以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/21(木) 21:19:14 ID:nuDGyAxM
タマ「男のせいにゃ……多分」

男「俺のせい?」

タマ「タマも眠らされちゃったから詳しくは分からないけど」

雪女「うぅ……ごめんね」

タマ「気にしてないにゃ」

タマ「多分、襲われてて衰弱しきった男を助けたからこんな姿になったのにゃ」

雪女「う、うん」

男「そうだったのか……」

雪女「あなたの姿も結構変わってるのよ? はい、手鏡」

男「……めっちゃ痩せてる」

145以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/21(木) 21:20:08 ID:nuDGyAxM
タマ「タマが見つけた時はもっと酷かったにゃ、肌の青い骨だったにゃ」

男「骨……」

雪女「本当はもう少し精気を分けてあげたかったんだけど、頭まで幼くなりそうで……」

男「……」

雪女「何考えてるのよ」

タマ「変態」

男「ち、違うって!」

146以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/21(木) 21:20:47 ID:nuDGyAxM
雪女「これからどうするの?」

男「家に戻れたら戻りたいけど……危ない?」

タマ「当たり前にゃ」

雪女「それに今のあなたは立つことさえ辛いハズよ?」

男「そうなのか? よっと……っ!」

雪女「ばっ!」

タマ「にゃ!」

男「あぐっ……ご、ごめん……」

雪女「ほんと、気を付けてよね……」

タマ「にゃあ……」

147以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/21(木) 21:23:26 ID:nuDGyAxM
タマ「でも本当にどうするにゃ? 家に帰れないのは困るにゃ」

男「そうだよなぁ……」

雪女「実はその雪女に関してなんだけど」

男「?」

雪女「少し心当たりがあって……今どこに居るか分かる?」

タマ「タマたちの家かその近くに居るかも知れないけどにゃあ」

雪女「そう、だったら今から――」

「雪女ちゃーん! いるー?」

「「!?」」

雪女「あぁ、この声はやっぱり……」

男「ど、どどどどうしよう!」

タマ「あの女が来やがったにゃ!? か、隠れるにゃ!」

雪女「そんなに慌てないで」

148以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/21(木) 21:24:20 ID:nuDGyAxM
男「襲われ……ん? さっき雪女の名前を呼んでいたな」

タマ「にゃあ」

雪女「心当たりがあるって言ったでしょ?」

「おーい!」

雪女「あなた達を襲った雪女はね……」

美女「雪女ちゃん、居留守するなんて酷いじゃない……あれ、何か小さくない? それに探していた獲物がここに居るのはなんで?」

男「ひっ……」

タマ「にゃ、にゃあ……」

雪女「はぁ……取り敢えず部屋が冷えるから外に出てってもらえるかしら?」

雪女「姉さん」

149以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/21(木) 21:25:02 ID:nuDGyAxM
美女「あ、あの……何で私だけ外に?」

雪女「まずは自己紹介から、でしょ?」

雪女姉「あ、はい。改めまして、雪女の姉です。雪女姉と呼んでください……で、私が外に立たされている理由は……?」

雪女「男、大丈夫? 寒かったら言ってね」

男「あぁ、湯たんぽのお陰で温かいよ」

雪女「そう、タマも平気?」

タマ「温くて気持ちいいにゃぁ……」

雪女「ふふっ、よかった」

150以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/21(木) 21:27:38 ID:nuDGyAxM
雪女姉「えっと……」

雪女「姉さん」

雪女姉「は、はい!」

雪女「随分と吸ってくれたみたいね」

雪女姉「な、何をでしょうか……」

雪女「男の精気」

雪女姉「そ、そのですね」

雪女「んー?」

雪女姉「美味しかったです……」

雪女「……」

雪女姉「お、怒んないでよ! だって、生きるためだし? 仕方がないと言いますか……まぁ、別に精気を吸わなくても生きていけるけど……」

151以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/21(木) 21:29:00 ID:nuDGyAxM
雪女「今後一切、私に関わらないでちょうだい」

雪女姉「え、ちょっと!?」

雪女「話し掛けてこないで。あなたとはたった今から他人として生きていきます」

男「待て待て!」

タマ「そ、そうだにゃ! 一回落ち着くにゃ!」

雪女「……」

雪女姉「姿が小さくなったと思ったら中身まで幼くなっているなんて……」

雪女「誰のせいでこんな姿になったと!」

男「落ち着いてくれぇー!」

タマ「ニャー」

男「待ってくれタマ、俺を一人にしないで! タマ!」

タマ「ニャー」

152以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/29(金) 22:45:10 ID:h7tFzLzg
雪女「それで姉さんはどうしてここへ?」

雪女姉「それはもう愛しの雪女ちゃんに会うためよ」

雪女「嘘」

雪女姉「正解」

タマ「にゃあ……」

雪女「どうせ何か面倒事が起きて逃げ出したに違いないわ」

雪女姉「酷いわ雪女ちゃん」

雪女「違うの?」

雪女姉「大体合ってる」

男「えぇ……」

153以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/29(金) 22:46:02 ID:h7tFzLzg
雪女姉「でもこれに関しては私悪くないのよ」

雪女「ふーん」

雪女姉「説明もしたいからそろそろ家の中に入ってもいい?」

雪女「……冷気を出さないなら」

雪女姉「それだけでいいの?」

雪女「……いいよ、ちゃんと玄関から入ってきてね」

雪女姉「ありがと」

154以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/29(金) 22:46:49 ID:h7tFzLzg
雪女「あと雪はちゃんと払って……」

雪女姉「ねぇねぇ、雪女ちゃん」

雪女「何かしら?」

雪女姉「そこまで寒さを気にするなんて、相当入れ込んでるのね!」

雪女「なっ!?」

男「?」

雪女姉「ふふっ、可愛い!」

雪女「姉さん!」

155以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/29(金) 22:47:23 ID:h7tFzLzg
雪女姉「――という事で、住んでいた山が無くなっちゃうらしいのよ」

雪女「それはまぁ……仕方無いわね」

雪女姉「でしょう? だから雪女ちゃんの家に住もうと思ってここまで歩いてきたの。でもお腹が空いて……その、ね?」

男「えっと……」

タマ「にゃあ……」

雪女姉「反省しているわ! この通り!」

男「ま、まぁ……今は生きてるので」

雪女「死にかけてたけどね」

タマ「にゃあ」

雪女姉「本当にごめんなさい」

156以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/29(金) 22:48:30 ID:h7tFzLzg
雪女「……はぁ、ごめんなさい男。どうか姉さんを許してあげて欲しいの」

雪女姉「雪女ちゃん……!」

雪女「こんな姉でも大切な家族なの」

男「元々怒ってないから大丈夫だよ。それに俺が死にかけたのは俺が悪いし」

タマ「結界があるのにも関わらず一人で歩いて来た怪しい女を家に入れた男も悪いからにゃあ」

男「うっ……ごめん」

雪女「結界……?」

雪女姉「そう言えばあの結界を作ったのは誰? 私壊しちゃったんだけど」

男「俺の友人が雪女姉さん対策に作ったものだから気にしないでくれ」

157以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/29(金) 22:49:07 ID:h7tFzLzg
雪女「ちょ、ちょっと待って、結界って何? というか男にはそんな事が出来る友人がいたの?」

男「あぁ、妖怪の知識もある古い友人だ」

雪女「知らなかったわ……」

男「アイツに雪女の事を言ったら何をするか分からないし、俺は雪女と一緒に居たかったから……その、なんだ……」

雪女「そ、そう……すごく、嬉しい……」

男「……」

雪女「……」

雪女姉「あぁん、可愛らしくも少し焦れったい関係ね。ねぇ、タマちゃん」

タマ「タマに近寄るなにゃ。男と雪女はいつもこんなものにゃ」

158以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/29(金) 22:49:50 ID:h7tFzLzg
雪女姉「ところでタマちゃんは化け猫なの?」

タマ「違うの……と思うにゃ」

男「家に帰ったら人の姿に変わってたんだ」

雪女姉「ふーん」

雪女「姉さん、何か分かったりする?」

雪女姉「まぁ、神様のいたずらでしょう。きっと」

雪女「期待した私が馬鹿だったわ」

雪女姉「あら、これでも真面目に答えたつもりよ?」

タマ「?」

159以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/29(金) 22:50:38 ID:h7tFzLzg
雪女姉「タマちゃんは男のことは好き?」

タマ「にゃ、にゃにを急に」

雪女姉「好き?」

タマ「す、好き……にゃ」

雪女姉「そういう事よ」

男「……どういう事だ?」

雪女姉「そのまんま、タマちゃんは男の事が大好きで想っている内に神様が想いに答えて人の姿になれるようしてくれたのよ」

タマ「にゃ、にゃ……」

男「そんな事があるのか?」

雪女「まぁ……あり得ない話ではないわね。実際、私達の存在もそんなものだし」

雪女姉「そう、この国には数えきれない程の神様が居るわ。案外おかしくない話なのよ」

男「なるほど」

160以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/29(金) 22:51:23 ID:h7tFzLzg
タマ「にゃ……」

雪女「タマ?」

タマ「は、恥ずかしいから……やめて、欲しいにゃ……」

男「……っ」

雪女「……っ」

雪女姉「……っ」

((可愛い))

タマ「にゃ……?」

161以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/29(金) 22:53:28 ID:h7tFzLzg
男「そ、そろそろ家に帰るか?」

雪女「ま、まだ居てくれても……って、あなたの体の方が心配だし、ここに居続ける方が危険かしら?」

雪女姉「でも様子を見るに歩けないんじゃない? それに雪女ちゃんは体も小さいし冷気も出てないから大丈夫だと思うけど」

雪女「それでもよ。男の家の方が暖かいでしょうし、それにここより安全だわ」

男「俺、こんな状態だけど帰れるのかな……」

雪女「大丈夫、姉さんが担いでいくから」

雪女姉「へっ?」

162以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/29(金) 22:54:56 ID:h7tFzLzg
雪女「もちろん、目一杯着込んだ男を担いでもらうつもりよ」

雪女姉「そ、そんな!?」

雪女「沢山精気を吸ったんでしょう?」

雪女姉「うっ……や、やってやるわよ!」

雪女「うん、よろしい」

男「た、助かります」

タマ「タマも乗せて欲しいにゃ」

雪女「だってよ?」

雪女姉「ぐっ……やってやるわよ! 家まで運んであげるわよ!」

163以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/31(日) 06:56:34 ID:r5vzsfcE
にゃんこかわよ(* ´ ▽ ` *)

164以下、名無しが深夜にお送りします:2020/06/06(土) 01:19:49 ID:1rDs8f.2
雪女姉「もうっ……む、り……」

男「だ、大丈夫ですか?」

雪女「そこの大きな腰掛けまで運んで」

雪女姉「はぃ……ぐっ」

男「あ、ありがとうございます」

雪女「自業自得よ」

雪女姉「でも雪女ちゃんがやれって……」

雪女「そろそろ殴るわよ?」

雪女姉「私が悪いんです……ごめんなさい」

165以下、名無しが深夜にお送りします:2020/06/06(土) 01:20:23 ID:1rDs8f.2
雪女「男、タマ、炬燵つけてもいい?」

男「あぁ」

タマ「なら皆で炬燵に入るにゃ」

雪女「お茶を淹れてくるわ。姉さんは……」

雪女姉「……」

男「くたっとしてるみたい」

雪女「……まぁ、休んでていいわよ」

雪女姉「はい! 休みます!」

タマ「にゃ、ビックリしたにゃあ」

男「あはは……」

雪女「はぁ、まったく……ん? あれっ……よっ、ほっ……んー!」

男「雪女?」

タマ「タマが見てくるから男は座ってていいにゃ」

男「あぁ、ありがと」

166以下、名無しが深夜にお送りします:2020/06/06(土) 01:21:01 ID:1rDs8f.2
タマ「雪女、変な声を出してどうしたのにゃ」

雪女「とどかない……」

タマ「にゃ?」

雪女「棚が高くて、茶葉のある棚までとどかないの……」

タマ「か、可愛いのにゃあ……」

雪女「タマ?」

タマ「にゃ、タマが代わりに取ってあげるから待っててにゃ」

雪女「ごめんね」

タマ「いいにゃ、今の雪女はタマより小さいから取れないのも仕方が無いのにゃ」

雪女「ありがとう」

タマ「タマも手伝うにゃ」

167以下、名無しが深夜にお送りします:2020/06/06(土) 01:21:47 ID:1rDs8f.2
雪女姉「ねぇ」

男「何ですか?」

雪女姉「雪女ちゃんとはどこまで進んでるの?」

男「……」

雪女姉「怖い顔しないで。それにこっちはあの娘の姉よ?」

男「雪女の姉であったとしても教えません」

雪女姉「ふーん、そんな事言うんだ」

男「どうせ後で雪女をからかうつもりでしょ」

雪女姉「……バレた?」

男「なんとなく」

168以下、名無しが深夜にお送りします:2020/06/06(土) 01:22:36 ID:1rDs8f.2
雪女姉「つまんない! お姉さんにちょっとくらい教えてくれたっていいじゃないのよー!」

男「嫌ですよ!」

雪女姉「……吸うわよ」

男「……っ」

雪女姉「ちょ、冗談だから! そんなに怯えないで!」

男「は、はい……っ」

雪女「男?」

雪女姉「ひっ、ち、違うの! 私は何もしてなくて!」

169以下、名無しが深夜にお送りします:2020/06/06(土) 01:23:11 ID:1rDs8f.2
雪女「姉さん」

雪女姉「はいっ」

雪女「次は無いから」

タマ「こわいにゃあ……男、大丈夫?」

男「あぁ……平気」

タマ「お茶でも飲むにゃ」

男「ありがとう」

タマ「今日は朝からいっぱい感謝されていい気分にゃ」

170以下、名無しが深夜にお送りします:2020/06/06(土) 01:24:10 ID:1rDs8f.2
雪女「ん? これは……」

タマ「にゃ、それは友から貰った御札にゃ」

雪女「友?」

男「結界を作った奴」

雪女「あぁ、ね?」

雪女姉「力はあまり感じないけど……恐らく破ったら何かしらの術が起きるみたい」

タマ「確か、これを破いたら友が急いでこっちに来るとかだった気がするにゃ」

雪女「へぇ……まぁタマに返すわ」

雪女姉「えいっ」

雪女「姉さん!?」

雪女姉「これを破いたら術士がここに来るのよね?」

タマ「多分来るにゃ」

雪女姉「どんな人間なのか、じっくり見せてもらおうかしらねぇ」

171以下、名無しが深夜にお送りします:2020/06/06(土) 01:24:44 ID:1rDs8f.2
タマ「……!」

雪女「どうしたの?」

タマ「友が来たにゃ」

男「本当に来たな」

「男、無事か!?」

男「タマ、玄関へ迎えに行ってくれるか?」

タマ「にゃあ」

172以下、名無しが深夜にお送りします:2020/06/06(土) 01:26:09 ID:1rDs8f.2
「いらっしゃいにゃ」

「タマ!何があった!? 男は!?」

「お、落ち着いて欲しいにゃ」

「おい、男!」

「にゃ、待ってにゃ!」

友「男!」

男「戸は優しく開けて欲しいなって……」

雪女姉「あんなに勢いよく開けられると却って耳障りよね」

雪女「まぁ、そうね」

友「なんで妖怪がここに!?」

雪女「私達が妖怪だとすぐ判る辺り、結構ちゃんとした術士なのね」

雪女姉「肝心の術は未熟みたいだけどねぇ」

173以下、名無しが深夜にお送りします:2020/06/06(土) 01:26:49 ID:1rDs8f.2
友「っ、男、これはどういう事だ!」

男「色々と、その……な?」

友「……おまえ、よく見たら凄くやつれてるじゃないか」

雪女姉「美味しかったです」

友「お前、男に何をした!?」

雪女「……」

雪女姉「いっ、ごめんなさい……」

友「な、何してるんだ」

男「取り敢えず座ってくれ」

友「……わかった」

174以下、名無しが深夜にお送りします:2020/06/06(土) 01:28:07 ID:1rDs8f.2
男「――と言う事があった」

友「……」

タマ「にゃあ……顔が怖いにゃ」

友「つまり、この幼い雪女がお前の命を救ったあの雪女で、ずっと前から交流があったと」

男「あぁ」

友「そして、こっちの雪女に襲われて死にかけたと」

男「そう」

友「馬鹿か!? 何で俺に言わなかった!」

男「それは……」

雪女「?」

友「雪女に会えたのに、此所に居る理由はなんだ?」

男「……」

175以下、名無しが深夜にお送りします:2020/06/06(土) 01:29:10 ID:1rDs8f.2
友「此所に移り住んだ理由を聞いても雪女に会いたいからとしか言わなかった。それなのに、こんな……」

友「男が前の職場でどれ程辛い目に遭ったかも理解している。だけど此処よりも、もっと住みやすい街で、俺と仕事をしていれば襲われる事なんて無かった!」

タマ「にゃ、にゃあ……」

雪女「男……私、その……迷惑なら……」

176以下、名無しが深夜にお送りします:2020/06/06(土) 01:30:11 ID:1rDs8f.2
男「友」

友「なんだ」

男「俺は、雪女が好きなんだ」

雪女「……っ」

友「正気か……?」

男「あぁ、それに本気だ」

友「妖怪だぞ? お前を襲った妖怪なんだぞ!」

男「雪女は俺を助けてくれた。命を懸けて、助けてくれた」

友「……」

男「雪女は、優しいんだ。自分で言うと少しアレだけど……多分、誰よりも俺の事を想ってくれている」

雪女「……」

177以下、名無しが深夜にお送りします:2020/06/06(土) 01:32:42 ID:1rDs8f.2
男「……最初の雪女は、一緒に居るだけで心も体も凍えそうなくらい冷たかったんだよ」

男「けど、雪女と時を重ねるにつれて、温かくなっていったんだ。心も、体も」

タマ「にゃ、雪女は男と一緒に居るために頑張っていたのにゃ」

友「……」

男「友、俺がここに居たい理由はな」

男「雪女と一緒に生きていたいからなんだ」

雪女「っ!!!」

178以下、名無しが深夜にお送りします:2020/06/06(土) 01:33:33 ID:1rDs8f.2
友「でも、妖怪だ……っ!」

男「いいんだよ」

友「何が……っ、好きにしろ!」

男「あぁ、好きにするよ」

友「……帰る」

男「友」

友「なんだ」

男「暫く原稿は無理かもしれない、ごめんな」

友「……いいよ、男をちゃんと見ていなかった俺の責任だ」

男「そうだな、お前が悪い」

友「なっ……!」

179以下、名無しが深夜にお送りします:2020/06/06(土) 01:34:17 ID:1rDs8f.2
男「ははっ、気を付けて帰れよ」

友「……次」

男「?」

友「次来るときは、クソ不味い酒持ってきてやるから覚悟しとけ」

男「ドンと来い」

友「はぁ……じゃあ帰るわ。タマもまたな」

タマ「にゃあ」

友「えっと、雪女さんでしたっけ?」

雪女「はい」

友「男を頼みます」

雪女「!」

友「じゃあな」

男「またな」

友「おう」

180以下、名無しが深夜にお送りします:2020/06/06(土) 01:35:36 ID:1rDs8f.2
雪女「……」

男「……」

雪女「男」

男「ん?」

雪女「……ううん、何でもないわ」

タマ「ニャー」

雪女「タマ……」

男「先に言いたい事があるんだけど、いいか?」

雪女「いいわよ」

男「好きです」

雪女「……ふふっ、知ってた」

男「バレバレだった?」

雪女「えぇ、もっと上手に隠した方がいいくらい」

男「あはは、次からはそうする」

181以下、名無しが深夜にお送りします:2020/06/06(土) 01:36:51 ID:1rDs8f.2
雪女「なら私からも1つ」

男「あぁ」

雪女「大好きよ。溶けてしまっても構わないくらい」

男「あ、あぁ……でも、溶けられたら困るな」

雪女「照れてるの?」

男「余裕がないんだ。察してくれ」

雪女「いつか余裕を持てるようになるといいわね」

182以下、名無しが深夜にお送りします:2020/06/06(土) 01:37:58 ID:1rDs8f.2
男「雪女は料理が上手になるといいな」

雪女「あら、それでやり返したつもり? なら今日の夕飯は私が作ってあげようかしら」

男「いや、タマにお願いしよう」

雪女「これでもちゃんと上達しているのよ」

男「本当か? 度胸試しで夕飯作ってもらおうかな」

雪女「ぎゃふんと言わせてあげる」

男「ぎゃふんと倒れないことを祈っとく」

雪女「ふふっ……ねぇ」

男「ん?」

雪女「幸せにしてね」

男「あぁ、任せろ」

183以下、名無しが深夜にお送りします:2020/06/06(土) 01:38:48 ID:1rDs8f.2
雪女「ところで姉さんは何処に行ったのかしら?」

男「いつの間にか居なくなってたな」

雪女「まぁ何処にいても生きていけるでしょうし、気にしなくていいわ」

男「違いない」

184以下、名無しが深夜にお送りします:2020/06/06(土) 01:39:40 ID:1rDs8f.2
友「はぁ……」

友「……」

友「はぁ……」

雪女姉「ため息ばかりしていると幸せが逃げるわよ?」

友「うるさい……ん?」

雪女姉「あともう少し安全な運転をしてくれると嬉しいかな」

友「っ!?」

雪女姉「あ、危ないから前を見て! 前!」

185以下、名無しが深夜にお送りします:2020/06/06(土) 01:40:19 ID:1rDs8f.2
友「どうしてここに居る!?」

雪女姉「ちょっと聞いてよー、雪女ちゃんったら知らない間に男を作っちゃってねー?」

友「そんな事はどうでもいい!」

雪女姉「短期は損気よ? まぁ、簡単に言えば現代の術士が気になって付いて来ちゃった」

友「来ちゃった……じゃあねぇよ!」

雪女姉「ほらほら、ケンケンしてないで運転しなさい」

友「っ……クソッ」

186以下、名無しが深夜にお送りします:2020/06/06(土) 01:40:58 ID:1rDs8f.2
―――――
―――



男「おぉー!」

タマ「綺麗にゃ!」

雪女「満開ね」

男「雪女、こっちこっち!」

雪女「本当に大丈夫かしら……」

タマ「大丈夫にゃ、自信を持つにゃ」

雪女「でも、私の姿や妖気は元に戻ったし……」

男「卑屈な時はとことん卑屈よな」

雪女「だって……」

タマ「えいっ、にゃ」

雪女「た、タマ」

187以下、名無しが深夜にお送りします:2020/06/06(土) 01:42:59 ID:1rDs8f.2
男「触ってみた桜はどうだ?」

雪女「……生きているわ。それに、とても綺麗」

タマ「にゃあ、雪女が近くに居ても枯れないにゃ」

男「平気だろ?」

雪女「うん、なんだか……嬉しい」

男「……よし、花見するか!」

タマ「にゃー!」

雪女「……ふふっ」

188以下、名無しが深夜にお送りします:2020/06/06(土) 01:43:34 ID:1rDs8f.2
男「雪女」

雪女「?」

タマ「早くいい場所を見付けてお弁当食べるにゃ!」

雪女「うんっ……ねぇ、二人とも」

男「ん?」

タマ「にゃ?」

雪女「これからもよろしくね」

男「末永く、な」

タマ「にゃあ」

189以下、名無しが深夜にお送りします:2020/06/06(土) 01:44:25 ID:1rDs8f.2
雪女姉「ねぇ、この本の続きはー?」

友「……」

雪女姉「お腹も空いたなー」

友「……」

雪女姉「無視? 酷くなーい?」

友「……なぁ」

雪女姉「んー?」

友「頼むから帰ってくれ……」

190以下、名無しが深夜にお送りします:2020/06/06(土) 02:33:12 ID:1rDs8f.2
これで区切ります
続けるかはわかりますん


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