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雪女「うらめしや」
1
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/02(月) 01:54:28 ID:UmIcJ0Uk
男「……寒いから早く戸閉めてくれない?」
雪女「せっかく来てあげたっていうのに何よその態度」
男「お前が来たことで俺の中で燃え盛る熱い思いが冷めたってのに、更に部屋まで冷やされちゃ敵わん。早く閉めろ」
雪女「もうっ、分かったわよ」
男「それと、そこにあるミカン取ってくれると嬉しい」
雪女「はぁ、私をそんな風に扱うの貴方だけよ。これでもこの辺りでは結構名の知れた雪女だって言うのに……よいしょっと」
男「その有名な雪女が炬燵なんかに入って大丈夫なのか? あとお前の足冷たいから伸ばすな」
雪女「うるさいわね、これくらい我慢してちょうだい」
2
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/02(月) 01:56:02 ID:UmIcJ0Uk
男「俺は平気さ。心配なのは炬燵のなかで丸まってるタマのほう」
タマ「ニャー」
雪女「あら、出てきたわよ? それに元気そうじゃない」
男「寒くてたまらんだとよ」
雪女「へぇ、私の膝の上で頭を撫でられて気持ち良さそうにしているこの姿を見てもそう言える?」
男「タマは誰にでも懐っこいから、そこんところ勘違いしないでもらえる?」
雪女「意味の分からない事で張り合ってくるのやめてくれる?」
3
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/02(月) 01:56:42 ID:UmIcJ0Uk
男「腹へったなぁ」
雪女「あっ、そうだ……はい、これ」
男「野菜とキノコか、いつも助かる」
雪女「趣味で作ってるだけし」
男「料理は下手くそなのにな」
雪女「う、うるさいわね……」
男「お前は何か食べたのか?」
雪女「分かってるでしょ?」
男「食べなくても死にはしない事か? 俺が聞きたいのはそういう事じゃないんだけど」
雪女「っ……こ、これで何か美味しいものを作ってください」
男「おう、了解」
4
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/02(月) 01:57:36 ID:UmIcJ0Uk
男「さて、料理が壊滅的な雪女の為に何か作ってやるか」
雪女「な、何よ! 早く作りなさいよ!」
男「こわいこわい、これは炬燵でぬくぬくしてる場合じゃない」
雪女「は や く! 行きなさい!」
男「分かったから蹴るな蹴るな……よっと」
雪女「ふんっ」
男「何を作ろうか、タマも少し手伝ってくれ」
タマ「今日は鍋の気分にゃ」
雪女「わっ! 急に大きくなったらビックリするじゃない」
タマ「にゃあ」
5
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/02(月) 01:58:58 ID:UmIcJ0Uk
男「俺は魚を捌くからタマは野菜を切ってくれ」
タマ「分かったにゃ」
男「鍋、鍋はどこだ……」
タマ「その棚の奥にゃ」
男「助かる」
タマ「にゃぁ……水がちべたい、炬燵に戻りたくなってきたにゃ」
男「そんな事したら雪女と一緒に晩御飯作っちゃうぞ」
タマ「それはいかんにゃあ……」
雪女「ちょっと、聞こえてるんですけど」
タマ「にゃ……」
男「タマ、炬燵で食べる鍋を想像してみろ……どうだ、幸せじゃないか? 今の寒さも耐えられそうじゃないか?」
タマ「頑張るにゃ」
雪女「男、カセットコンロはどこかしら?」
男「いま出すから待っててくれ」
6
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/02(月) 02:00:57 ID:UmIcJ0Uk
「「「ごちそうさまでした」」」
男「あぁー、食った食った」
雪女「食べて直ぐ横になると牛になるわよ?」
男「迷信だし、それにここから炬燵で眠るまでが最高の流れなんだ」
雪女「ふーん、じゃああなたも"アイツ"と同じ道を辿っていくのね……」
男「あいつ? 同じ道ってなんだよ」
雪女「気にしなくていいわ」
男「お前、まさか牛になった奴を見たことがあるのか? え、これって迷信だろ?」
雪女「……そうね」
男「そういう反応をするのはやめてくれ、怖くなってきた」
雪女「本当に気にしなくていいわ。えぇ、本当に……あら、急に起き上がってどうしたの?」
男「ミカンを食べようと思ってな」
タマ「ニャー」
男「うるさいぞタマ」
7
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/02(月) 02:02:47 ID:UmIcJ0Uk
男「あ、あのさ」
雪女「なに?」
男「さっき言ってた"アイツ"って……どんな奴だったんだ?」
雪女「どんな奴って?」
男「お前と、その……どういう関係だったのか気になって」
雪女「あー……」
男「言えないとかだったら流していいからな。お前は長生きしてて、俺の知らないような事だって何回も経験しているだろうし」
雪女「別にいいわよ? だって嘘だし」
男「嘘? 何が?」
雪女「アイツ云々、あれは寝転がっているあなたを起こすためについた嘘」
男「……」
雪女「あら、また寝ちゃうの? ふふっ、牛になってもいいのかしら」
男「もう、いっそ俺のことを牛にしてくれ」
8
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/02(月) 02:04:14 ID:UmIcJ0Uk
雪女「そろそろ帰るわね」
男「泊まってもいいんだぞ?」
雪女「あなたに襲われるなんて御免よ」
男「雪女なんか襲わねぇよ。それに俺は純粋な気持ちでお前を心配してるんだけど」
雪女「私は妖怪、何かに出会い襲われたとしても相手の方が勝手に怯えて逃げ出すわ。それに……」
男「それに?」
雪女「いいえ、何でもない」
男「……そうかい、気を付けて帰れよ」
雪女「えぇ、また」
9
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/02(月) 02:05:44 ID:UmIcJ0Uk
雪女「はぁ……」
雪女「人と妖怪。そして、私は雪女」
雪女「彼の温かさと私の冷たさは互いの体を蝕んでいくかもしれない。なのに、それなのに……どうして私は、彼を好きになってしまったのかしら」
雪女「はぁ……ヒトが羨ましい」
「自分が恨めしい」
10
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/04(水) 07:44:52 ID:sBRu0UTw
続きはよ
11
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/05(木) 04:21:06 ID:E6QQjCAk
男「うーん」
タマ「ニャー」
男「タマか、どうした?」
タマ「ニャー」
男「あぁ、あまり筆が進まなくてなぁ……」
タマ「……」
男「編集担当が書いたものを早めに送れと急かして来てな、あと山から降りてこいと……いくら腐れ縁だとしても酷いよな」
タマ「ニャー」
男「もう少し頑張ってみて駄目な様なら気分転換に散歩しに出るさ。タマも来るか?」
タマ「ニャー」
男「あれ、どっか行っちゃうの? 外行くときは気を付けて、あと早めに帰ってくるんだぞ」
12
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/05(木) 04:21:43 ID:E6QQjCAk
雪女「〜♪」
雪女「ん?」
タマ「ニャー」
雪女「あら、あなたが家に来るなんて珍しいわね。今ちょうどお茶を淹れていたのだけど……飲む?」
タマ「それは大丈夫なモノなのかにゃ?」
雪女「来て早々失礼な事を言ってくれるじゃない。大丈夫、今回はちゃんと飲めるものよ」
タマ「ならいただくにゃ」
雪女「はい、どうぞ」
タマ「美味しい……」
雪女「来るなら来ると言ってくれれば予め部屋を暖めておくんだけどね……よし、火が付いた」
タマ「ごめんにゃ」
雪女「まったく」
13
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/05(木) 04:22:29 ID:E6QQjCAk
雪女「それで、何を悩んでいるのかしら?」
タマ「にゃっ、なんで分かったにゃ」
雪女「あなた結構分かりやすいわよ?」
タマ「にゃ……」
雪女「毛玉を上手に吐けないとか?」
タマ「そんな事を相談しに来た訳じゃないにゃ」
雪女「なら早く言いなさいよ」
タマ「そ、その……男がこの山に来たことを後悔しているんじゃないかと思って」
雪女「……それ私にどうしろって言うのよ。それに彼の事ならあなたの方がよく知っている筈よ?」
タマ「そうだけど……」
14
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/05(木) 04:23:06 ID:E6QQjCAk
タマ「小さくて狭い部屋に居た頃の男はいつも忙しそうで、たまに帰ってこない時もあったにゃ。そしていつも疲れた顔をしていたにゃ」
雪女「男が家に居ない時のご飯はどうしてたの?」
タマ「変な箱からご飯が出てきたにゃ」
雪女「何それ、気になるわ」
タマ「そこはどうでもいいにゃ」
雪女「ごめんなさい、続けて?」
タマ「タマが急に姿を変えられるようになって、それが原因で山に移り住まないといけなくなったと思うと……にゃぁ」
雪女「男にそのまま聞いたらいいじゃない」
タマ「む、無理にゃ……勇気がないにゃ」
雪女「はぁ、分かった。次あなた達の家にお邪魔する時に聞いてあげるわ」
タマ「本当?」
雪女「でもあまり期待はしないでね? あなたが欲しい答えが貰えるとは限らないから」
タマ「ありがとうにゃ」
15
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/05(木) 04:24:43 ID:E6QQjCAk
タマ「ニャー」
男「お帰りタマ、散歩は楽しかった?」
タマ「ニャー」
男「そうかそうか、楽しめたようで何より。 それじゃあお風呂に入ろうか」
タマ「……ニャ、ニャー」
男「だめ、行くよー」
タマ「ニ゛ャ゛ー」
16
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/05(木) 04:25:21 ID:E6QQjCAk
雪女「お命ちょうだい」
男「……寒いんだけど」
雪女「はぁ、あなたって本当に面白くないわ」
男「お前は毎度飽きずによくやるよ」
雪女「最初はあんなに驚いて……くれなかったわね」
男「嬉しさ極まって叫んだけど?」
雪女「そうだけども」
17
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/05(木) 04:26:08 ID:E6QQjCAk
雪女「よいしょっと」
男「いつも思うけどそんなに炬燵が好きなのか?」
雪女「これで緩和してるのよ」
男「緩和するって何をだよ?」
雪女「色々よ。はい、これ」
男「いつも助かる」
タマ「ニャー」
雪女「こんばんは」
18
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/05(木) 04:27:03 ID:E6QQjCAk
タマ「ニャー」
雪女「あ、あぁ……そうだったわね」
男「?」
雪女「ねぇ、あなたはどうしてこの山に来たんだっけ」
男「前に言わなかった?」
雪女「えぇ」
男「そんな面白い話でもないけど……簡単に言えば疲れたから」
雪女「疲れた?」
男「仕事であーだこーだ言われ、"流行りを掴め"やら"このジャンルが人気"と好きでもない物を書かされて」
男「すれ違いなんだろうけど……辛かったなぁ」
19
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/05(木) 04:28:33 ID:E6QQjCAk
雪女「何も言わなかったの?」
男「あぁ、ずっと溜め込んでた」
雪女「情けないわね」
男「言うな、傷付くだろ」
雪女「事実じゃない」
男「まぁ、それで俺は逃げ出したわけよ」
雪女「逃げたって……どこへ?」
男「……最終的にはこの山に辿り着いたな」
雪女「もしかして……」
男「あぁ、そのまま雪山で遭難して死にかけていた俺をお前が助けてくれたわけだ」
20
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/05(木) 04:29:27 ID:E6QQjCAk
雪女「馬鹿じゃないの?」
男「あの時は死んでもいいやと思ってたから」
雪女「随分と追い込まれていたのね」
男「それなりに」
雪女「人って大変だわ」
男「でもお前のお陰で今俺は元気に生きてる」
雪女「山を降りた後はどうしたの」
男「家に帰ってから色々あって仕事を辞めた」
男「それで落ち込みながら街をふらついていたら古い友人に出会ってな、そいつに無職だと伝えるとスカウトされて好きなものを書けるようになった」
雪女「何者なの……」
21
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/05(木) 04:30:46 ID:E6QQjCAk
男「そして身の回りが落ち着いてきた頃かな、目の前でじゃれていたタマが突然消えたと思ったら猫耳の少女が俺の腕にしがみついててさ」
雪女「あー、それは聞いたわ。驚いたでしょうね」
男「あぁ、けどお互い受け入れるのは早かった。それから一人と一匹が住んでいた部屋が少し狭く感じるようになって」
雪女「こっちに来たのね」
男「住める家を調べている途中で見つけたのがこの家、部屋の整理も兼ねて勢いそのまま引っ越してやったぜ」
22
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/05(木) 04:31:57 ID:E6QQjCAk
男「なんか人も寄り付かない噂があるとかで安かったんだよなぁ」
雪女「噂? どんな噂よ」
男「さぁ? けど近くに人は居ない、それならタマも自由に姿を変えられるだろうし気楽に過ごせるんじゃないかとね」
男「それに……」
雪女「それに?」
男「ここならお前に会えるかも知れないと考えた」
雪女「……へっ?」
23
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/05(木) 04:34:04 ID:E6QQjCAk
男「ここは遭難した時の山、そして俺を助けてくれたお前が居るであろう山だ。そして、俺はお前にもう一度会って直接『ありがとう』と伝えたかった」
雪女「だからあんな場所に手紙を……」
男「あんな場所? 山奥の大きな木の下に手紙を入れた瓶を置いただけなんだけど……あそこって目立つの?」
雪女「どんなに恥ずかしい思いをしたか……手紙を読んだとき日付と場所が指定されていたけど、私が来なかったらどうしてたの?」
男「新しい手紙を書いて別の場所に置くつもりだった」
雪女「……」
タマ「ニャー」
男「おっ、どうしたタマ?」
24
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/05(木) 04:35:45 ID:E6QQjCAk
タマ「ニャー」
男「お腹が空いたのか? よし、ご飯作るか」
タマ「ニャー」
男「よっと、今日は何を食べようか」
タマ「……にゃ」
雪女「ん?」
タマ「ありがとうにゃ」
雪女「何か分かった?」
タマ「気にしすぎは体によくないことがよーくわかったにゃ」
雪女「そう、よかったわね」
男「タマー、手伝ってくれー」
タマ「にゃあ」
25
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/05(木) 04:43:04 ID:E6QQjCAk
タマ(ここに来た理由は全てタマのせいだと思い込んでいたにゃ……けど、男はタマの事を考えてこの山を選んでくれたのにゃ)
タマ(タマは考え過ぎて頭ぐるぐるだったけど男はいつもの男だにゃ。むしろ今の方が元気だにゃ)
タマ「男はいい奴にゃ」
男「照れるじゃないか、急にどうした?」
タマ「何だか言いたくなったにゃ、気にするにゃ」
男「そうか……もう一回言ってくんね」
タマ「ニャー」
男「ズルじゃん……」
26
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/05(木) 04:44:56 ID:E6QQjCAk
タマ(全部がタマの為じゃないのは分かってるにゃ、それでも男はいい奴にゃ)
タマ「ニャー!」
男「人の姿で言ってくれ……!」
27
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/10(火) 00:46:31 ID:23IOUPzM
雪女「ねぇ」
男「あ?」
雪女「足を避けてくれないかしら」
男「あぁ……」
雪女「あぁ、じゃないわよ! あなたが足を私の足の上に乗せ続けているせいで痺れ消えないの! だから早く避けなさい!」
男「すまん、お前の足がひんやりしてて……」
雪女「──っ! ごめんなさい、今すぐ炬燵から出るわ……あぅっ、痺れが……」
28
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/10(火) 00:48:00 ID:23IOUPzM
男「気持ちいい……」
雪女「あ、あなたって死に際でさえ気持ち悪い事を言うのね」
男「死に際って何だよ……まぁ、例えるなら冬の露天風呂、炬燵でアイス、そんな気持ちよさが炬燵の中で広がっている」
雪女「ほ、本当に大丈夫……? 足の感覚が無いとか意識が遠のいていく感じはしない?」
男「強いて言うなら眠気が……」
雪女「そ、そう……よかった」
男「……なにがよかったんだ?」
雪女「な、何でもないわ」
男「よく分からないけど、よかったな……」
29
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/10(火) 00:50:18 ID:23IOUPzM
タマ「相変わらず寝るのが速いにゃ」
雪女「タマ……」
タマ「気にしすぎは体に悪いにゃ」
雪女「あなたが言うと説得力があるわね」
タマ「やめて欲しいにゃ」
雪女「はぁ、少し気を抜いていたわ」
タマ「男はこんな事で精気を失ったりしないにゃ、無駄に頑丈だから気軽に引っ付いてみたりすればいいにゃ」
雪女「……無理」
タマ「にゃあ」
30
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/10(火) 00:51:46 ID:23IOUPzM
雪女「タマだって抱き付けないでしょ」
タマ「タマ男と一緒に寝たりしてるにゃ、平気にゃ」
雪女「私は傍に居たい気持ちを我慢しているというのにこの猫は本当に……羨ましい」
タマ「特に男のお腹は落ち着くにゃ」
雪女「お腹って……ん? もしかして猫の姿で一緒に寝てるのかしら?」
タマ「当たり前にゃ」
雪女「その姿で男にスリスリしたりお腹見せたりはしないわよね……なんで?」
タマ「そ、それはその……にゃあ」
雪女「あぁ、恥ずかしいのね」
タマ「に゛ゃ゛、違うにゃ!」
31
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/10(火) 00:53:41 ID:23IOUPzM
雪女「タマも私と同じく恥ずかしいと」
タマ「な、何を言うにゃ、一緒に寝てるタマがそんなはず無いにゃ。よ、余裕だにゃ!」
雪女「姿が違うだけなのに一体何が駄目なんでしょうね」
タマ「そ、そんなの知らないにゃ。あと全然駄目とかじゃないにゃ」
雪女「へぇ……」
タマ「……男を指差してどうしたのにゃ」
雪女「男、寝てるわよ?」
男「すぅ……」
タマ「にゃあ……」
32
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/10(火) 00:56:04 ID:23IOUPzM
雪女「ほら、どうぞ」
タマ「どうぞ、じゃないにゃ! 何を言っているにゃ!」
雪女「最初はあなたが羨ましくて嫉妬で凍らせてしまおうと思っていたけど、今は何故か微笑ましいの」
タマ「やってやるにゃ!よ、よ、余裕だにゃ!」
雪女「頑張れ、大丈夫、私が応援するわ」
タマ「う、う、うにゃ……」
雪女「そうよ、後は男に近付いて横に寝転がるだけ」
33
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/10(火) 00:57:04 ID:23IOUPzM
タマ「にゃ、にゃにゃ、にゃ……ニャー!」
男「んぁ? タマか……一緒に温まろう、か……」
雪女「ふふっ、猫に戻るなんて可愛いわね」
タマ「ニャー」
雪女「ふふっ、怒らないで」
雪女「彼に近付けるだけ凄いことなんだから、はぁ……本当に羨ましいわ」
34
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/13(金) 02:10:06 ID:85Z.LjIw
なんかこの雰囲気落ち着く
35
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/13(金) 23:22:43 ID:nG8NRRio
男「……」
雪女「何してるの?」
男「うわっ! 急に驚かせないでくれ!」
雪女「あら、私は声を掛けただけよ? どう、釣れてる?」
男「……ぼちぼち」
雪女「何が釣れたか見てもいい?」
男「うぐっ……だ、駄目」
36
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/13(金) 23:23:56 ID:nG8NRRio
雪女「あー、もしかしてボウズってやつ?」
男「……違う」
雪女「ふーん」
男「お前は何しに来たんだよ」
雪女「野菜を洗うついでに山から山菜を少しいただこうかなって」
男「そっか、料理の練習は順調か?」
雪女「順調よ、それはもう順調よ」
男「一人でやっても上達しないだろ」
雪女「……そうね」
37
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/13(金) 23:25:04 ID:nG8NRRio
男「今度一緒に何か作るか」
雪女「えっ、でも……その、いいの?」
男「前回の失敗を活かして俺の言うこと聞いて作りさえすれば大丈夫だろ」
雪女「……難しいことを言うわね」
男「お前は馬鹿なのか?」
雪女「前回は指示する人が悪かったのよ」
男「へーへー、次はいつ来るんだ?」
雪女「明後日にでもお邪魔しようかなって」
男「そうか……」
38
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/13(金) 23:26:22 ID:nG8NRRio
雪女「どうしたの?」
男「いや、準備しておかないとなって」
雪女「迷惑掛けるわね」
男「料理が出来るだけで生活の質が少しだけ上がるからな、それだけだ」
雪女「ありがと……それ掛かってない?」
男「ん? 本当だっ! ちょ、急に引っ張られると……!」
雪女「ちょ、ちょ、なに足を滑らせてるのよ!」
男「しょうがないだろ! 俺は繊細だから何事にも心の準備ってものが──」
雪女「あっ、馬鹿っ」
39
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/13(金) 23:27:28 ID:nG8NRRio
タマ「ニャ……大丈夫かにゃ?」
男「タオルを持ってきてくれ……」
タマ「すぐ取ってくるにゃ、お風呂も沸かすかにゃ?」
男「頼む」
雪女「ここまで来れば大丈夫でしょう、私は帰るわ」
男「なんだ、寄ってかないのか?」
雪女「流石に私がこれ以上近くに居るとあなたの体が冷えきってしまうわ」
男「別に大丈夫だろ」
雪女「ダメ、おとなしく暖をとりなさい」
40
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/13(金) 23:28:20 ID:nG8NRRio
タマ「タオル持ってきたにゃ」
雪女「タマ、後は頼むわね」
タマ「にゃあ」
男「お、おい」
雪女「言うこと聞かないと野菜持ってきてあげないわよ? つまり、明後日はここに来ないってこと……いいの?」
男「……」
タマ「雪女の言う通りだにゃ、風邪を引く前に服を脱いでお風呂に入るにゃ」
41
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/13(金) 23:29:30 ID:nG8NRRio
男「分かった、着替えて風呂に入るよ」
雪女「よろしい、じゃあ帰るわね」
男「雪女」
雪女「なに?」
男「明後日、待ってるからな」
雪女「楽しみにしておくわ」
42
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/13(金) 23:30:20 ID:nG8NRRio
男「炬燵は最強……」
タマ「ところで魚は釣れたのかにゃ?」
男「ほい」
タマ「これは?」
男「綺麗な石」
タマ「にゃあ……」
43
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/18(水) 00:51:59 ID:usIGnLI.
男「ゴホ、ゴホッ」
タマ「にゃ……」
男「大丈夫だって、ありがとな」
タマ「じゃ、じゃあ一緒にご飯食べるにゃ」
男「タマに移すと悪いから俺は仕事部屋で食べるよ」
タマ「にゃ、にゃあ……」
男「心配するなって、薬飲んで寝ればすぐ治る。じゃあ、何かあったら呼んで……ゲホッ、ゴホッ」
44
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/18(水) 00:52:40 ID:usIGnLI.
タマ「辛そうだにゃあ」
タマ「風邪の治しかたとか調べたいけどまだ読めない字が多くてにゃあ」
タマ「辛そうな男を見ているとなんだか胸がキュッとして、こっちまで落ち込んでしまうにゃ」
タマ「……そうにゃ! 雪女なら何か知っているはずにゃ!」
タマ「男に会ってから外に行きたいけど迷惑かもしれないしこっそり窓から家を出るにゃ」
タマ「男は大丈夫、大丈夫にゃ」
45
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/18(水) 00:53:34 ID:usIGnLI.
タマ「に゛ゃ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛」
雪女「わっ、どうしたの!?」
タマ「に゛ゃ゛あ゛、に゛ゃ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!」
雪女「泣いてちゃ何を言いたいのか分からないわよ!」
タマ「お、男が風邪を引いちゃって……ぐすっ」
雪女「えっ、風邪?」
タマ「ずっとゲホゲホしてて、辛そうで……色々考えてたら何故かタマが泣きそうになってきて……それで、それで」
雪女「男はちゃんと安静にしてる?」
タマ「多分……」
46
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/18(水) 00:55:03 ID:usIGnLI.
雪女「……風邪なら動く気力もあまり無いから大丈夫でしょう。それで、何故あなたはそんなご主人様をほっぽってうちに来たの?」
タマ「雪女なら風邪の治しかたを知っていると思って……」
雪女「あぁ……そうよね、人の姿をしていても猫だものね。きっと、何も分からなくて不安だったのよね?」
タマ「にゃ、にゃあ……」
雪女「よしよし、泣かない泣かない。風邪に関する本があった気がするから読んであげるわ」
タマ「ほんとう……?」
雪女「本当よ」
47
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/18(水) 00:55:48 ID:usIGnLI.
タマ「ありがとうにゃ」
雪女「その前に部屋を暖めてお茶を淹れるから少し待ってね」
タマ「タマがやるから雪女はその本を持ってきてにゃ!」
雪女「駄目よ、気付いてないかも知れないけどあなたの身体すごく冷たいわよ? 私の着物を貸すから羽織っていなさい」
タマ「にゃあ……」
48
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/18(水) 00:57:15 ID:usIGnLI.
雪女「大体はこんな感じ」
タマ「もう少し待って欲しいにゃ」
雪女「漢字は分かる? メモに絵でも付け足して分かりやすくする?」
タマ「大丈夫にゃ」
雪女「そう」
タマ「それにしても、このお粥というのはあまり美味しくなさそうだにゃ」
雪女「溶いた卵を入れると幸せになれるわ」
タマ「そうなのかにゃ?」
雪女「えぇ、きっと男も喜ぶこと間違いなし」
タマ「やってみるにゃ!」
49
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/18(水) 00:58:09 ID:usIGnLI.
タマ「色々ありがとにゃ」
雪女「どういたしまして」
タマ「雪女は来ないのかにゃ?」
雪女「私が行ったら危ないでしょう」
タマ「そんな事は無いと思うけど……にゃあ」
雪女「まぁ、もし男の熱が下がらなかったら私を呼びなさい」
タマ「危ないと言っておきながら呼んでとは不思議なことを言うのにゃ」
雪女「色々あるのよ」
タマ「難しい事を言わないで欲しい、困るにゃ」
雪女「ふふっ、ごめんなさい。ほら、早く帰ってお粥を作ってあげなさい」
タマ「にゃあ」
50
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/18(水) 00:59:22 ID:usIGnLI.
男「んぁ? 寝てた……外はもう夜か」
男「お腹が空いたな。タマのご飯も用意しないといけないし起きて作ってあげなきゃ……」
タマ「おとこー」
男「タマ? 入っていいぞ……あっ、駄目だ。移るといけない」
タマ「入るにゃ」
男「お、おい、言うことを聞いてくれ、ご飯は好きなのを選んで食べていいから……ん?」
タマ「食べるにゃ」
男「これは、お粥か?」
タマ「そうにゃ」
51
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/18(水) 01:00:09 ID:usIGnLI.
男「つ、作ってくれたのか? 文字はもう読めるようになったのか?」
タマ「まだ読めないにゃ、これは雪女に教えてもらった料理にゃ」
男「雪女が……?」
タマ「そうにゃ……んっ!」
男「いや、自分で食べられるけど」
タマ「これをしてあげると男が喜ぶって雪女が言ってたにゃ! 早く食べるにゃ!」
男「あいつ……」
タマ「どうにゃ?」
男「美味しいよ、ありがとな」
タマ「いいのにゃ、早く元気になってまた一緒にご飯を食べるにゃ」
52
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/18(水) 01:01:31 ID:usIGnLI.
男「お粥か……」
男「そう言えば俺が遭難した時に雪女が出してくれた食べ物もお粥……というよりは雑炊か?」
男「あいつが唯一作れる料理なのかもしれないな」
タマ「ニャー」
男「タマ?」
タマ「ニャー」
男「あぁ、作ってくれたお粥のお陰で熱も下がってきたよ」
タマ「ニャー」
男「明日には治ってるだろうよ。そしたら釣りにでも行って魚を釣って……美味しいご飯を皆で食べような」
タマ「ニャー」
男「あぁ、おやすみ……」
53
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/21(土) 23:25:13 ID:0kQWjxoY
男「さ、寒い……」
雪女「あら、早いわね」
男「あ、あぁ……お前はこんなクソ寒い外で何してるんだ?」
雪女「病み上がりなあなたの為に雪かきでもしてあげようかと思って、駄目だったかしら?」
男「駄目じゃないけども……」
雪女「体の具合はどう? 熱は?」
男「タマのお陰で元気だよ」
雪女「よかった」
男「お粥の作り方を教えてくれたらしいじゃないか、ありがとな」
雪女「気にしないで」
54
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/21(土) 23:27:09 ID:0kQWjxoY
男「雪かき──」
雪女「駄目よ」
男「何でだ、それにまだ何も言ってない」
雪女「あなたは病み上がりなんだから休んでて、またタマが泣いてもいいの?」
男「タマは鳴くけど泣かないぞ……冷たっ! 雪を投げるな!」
雪女「炬燵の中で風邪引けばいいのに」
男「分かった、戻るから……お茶淹れて待ってるぞ」
雪女「うん」
55
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/21(土) 23:28:58 ID:0kQWjxoY
雪女「ふぅ、疲れたわ」
男「お疲れ様、お茶でもどうぞ」
雪女「ありがとう、あぁー熱い」
男(む、胸元が……雪女の白い肌で全てが眩しいっ)
雪女「ん? どうかした?」
男「い、いや、何でもない!」
雪女「そう、それにしても暑いわねぇ……溶けてしまいそう」
男「お、おう」
雪女「炬燵に入るとついだらけてしまうわ……」
男「……っ」
56
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/21(土) 23:30:46 ID:0kQWjxoY
雪女「私もいつの間にか年を取っていたのね……あぁ、腰が……」
男「あ、朝ご飯は食べてきたのか?」
雪女「何回も言ってるでしょ、私は食べなくても平気なのよ。だけど約束通り野菜は持ってきたわ、外に置いたままだけど……」
男「な、なら3人分の朝食を用意するから待っててくれ!」
雪女「それなら置きっぱなしの野菜を取ってくるわね……っと」
男「い、いや! 俺が取ってくるからそのまま炬燵でだらけてていいぞ! 雪かき頑張ったからな!」
雪女「ちょっと……行っちゃった」
57
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/21(土) 23:32:46 ID:0kQWjxoY
タマ「おはようにゃ……」
雪女「おはようタマ」
タマ「おはよう……だらけすぎにゃ」
雪女「頑張って雪かきをしたせいか腰が痛くて……今は動く気力さえ無いの」
タマ「ならせめて胸元をきっちり閉めて欲しいにゃ、嫉妬で狂いそうにゃ」
雪女「これくらい別にいいじゃない、あなたに見られたって私は何も──」
タマ「本当に真っ白な肌だにゃ、ぐらまー?で羨ましいにゃ」
雪女「もしかして、さっき男が落ち着かない様子で部屋を出ていったのって……」
タマ「……雪女も酷い事をするにゃ」
雪女「ち、違う! わざとじゃないわ!」
タマ「無意識なら余計厄介にゃ」
雪女「っ……整えるわ」
58
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/21(土) 23:34:04 ID:0kQWjxoY
タマ「それがいいにゃ」
男「おーい、鍋敷き置きたいからテーブルの上を少し片付けてもいいか?」
雪女「え、えぇ」
タマ「男、おはようにゃ」
男「おはよう」
雪女「……」
男「よし、じゃあ魚焼いてくるからもう少し待っててくれ」
タマ「にゃ」
雪女「……」
タマ「顔真っ赤にゃ」
雪女「し、仕方ないじゃない……あぁ、恥ずかしい」
タマ「見てて楽しいにゃー」
雪女「うぅ……もう、私の馬鹿っ」
59
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/26(木) 00:47:39 ID:T0mF5.OM
雪女「……」
男「そわそわしてるけど何かあった?」
雪女「ち、違うの! その、あれはもしかして……」
男「あぁ、見ての通り梅酒だよ」
雪女「やっぱり!」
男「そろそろ飲もうかなと思って屋根裏から引っ張り出してきたんだ」
雪女「美味しそう……」
男「10年以上前のものだから美味しいはず。夜、一緒にどうだ?」
雪女「……いいの?」
男「当たり前だろ」
雪女「嬉しいわ」
60
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/26(木) 00:48:16 ID:T0mF5.OM
男「こういう物は誰かと一緒に飲んで楽しむのが一番いいんだ」
雪女「ありがとう」
男「あぁ」
雪女「そう言えばあなたがお酒を飲んでいる姿を見た事が無いのだけれど、お酒はあまり飲まないの?」
男「飲もうと思わない限りは飲まない」
雪女「お酒弱い?」
男「普通」
雪女「そう……ふふっ、じゃあ夜が楽しみだわ」
男「じゃあってなんだ、じゃあって」
61
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/26(木) 00:48:56 ID:T0mF5.OM
男「あぁー、ふわふわして気持ちいい」
雪女「飲み過ぎよ」
男「今日はなんでかいっぱい飲んじまった……あぁー」
雪女「ゆらゆらしちゃって可愛いわね……ふぅ、本当に美味しい」
男「酒は他にもあるぞ。もっと飲みたかったら屋根裏から持ってくるけど……持ってくるか?」
雪女「いえ、今日はもう止めましょう」
男「そうか……」
62
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/26(木) 00:49:40 ID:T0mF5.OM
雪女「眠い?」
男「……なぁ、雪女」
雪女「何かしら、酔っぱらいさん」
男「俺、お前のことが好きなんだ」
雪女「っ……げほっ、げほっ、急に何をっ!」
男「でもなぁ、こういうのは順序が大切で俺は悩んだわけさぁ。だから先ず、春になったら一緒に桜でも見になぁ……」
雪女「……春、私にはあまり似合わない季節ね」
男「そんな事はない! それに、一緒に桜を見ながら美味しい物を食べて、美味しいお酒を飲む……これって、凄く素敵なことじゃないか?」
雪女「とても、素敵だわ」
63
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/26(木) 00:53:37 ID:T0mF5.OM
男「そのまま一緒の時間を過ごしてさ、雪女が気を許してくれるのであれば俺はお前に……だから、春になったら一緒に、桜を……」
雪女「……っ」
男「すぅ……すぅ……」
雪女「……もうっ///」
雪女「言うだけ言って寝ちゃうなんて、ズルいわよ……///」
雪女「はぁ、顔が熱い……」
雪女「けど私は雪女で、あなたは人間」
雪女「私の冷気があなたの体、そして心の熱まで蝕んでしまったら……」
男「すぅ……すぅ……」
雪女「男、私もね……気持ちだけならあなたと同じ」
雪女「でも、私はあなたに触れることは出来ない」
雪女「私には、何が正しいのか分からないのっ……」
64
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/26(木) 00:54:37 ID:T0mF5.OM
タマ「おとこ」
男「んぁっ? タマか、おはよう……っ」
タマ「?」
男「い、いや、何でもない! 朝ご飯な、待っててくれすぐに準備する……あれ、雪女は?」
タマ「朝早くに出てったにゃ」
男「そっか、ありがとな」
タマ「昨日二人ともいっぱいお酒を飲んでいたのにゃ」
男「あぁ、あいつ結構な酒好きらしい……屋根裏から色々と出しておかないと」
タマ「タマもお酒飲みたいにゃ」
男「体によくないから駄目」
タマ「にゃあ……」
男「炭酸ジュース買ってくるから許してくれ」
タマ「にゃあ」
65
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/30(月) 21:42:41 ID:dLfxD.bo
男「あいつ、今日も来ないのかな」
タマ「あいつって誰にゃ」
男「雪女」
タマ「ちょっと前に来てたのにゃ」
男「……」
タマ「数日来ないだけでそんなになるなんて、男は面倒くさいにゃ」
男「だけどさ、もう一週間になるぞ?」
タマ「寂しがり屋だにゃ、タマと一緒にゃ」
男「……ごめん」
タマ「今はずっと一緒に居れるから平気にゃ」
66
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/30(月) 21:43:15 ID:dLfxD.bo
男「はぁ、どうしよう……やっぱり原因は酔った勢いで変なことを言ったあの時だよな」
タマ「何があったのか知らないけど謝るのは大切なことだとタマは思うにゃ」
男「そうだな……よし、ちょっと謝りに行ってくる」
タマ「今日は雪が酷いってテレビでやってたから明日かにゃ? なら明日の為に準備するにゃ」
男「いや、今日行く」
タマ「さ、流石に危ないにゃ!」
男「心配するなタマ、ちゃんとした防寒着は着て行くし雪女の家の場所もちゃんと覚えてる」
67
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/30(月) 21:43:51 ID:dLfxD.bo
タマ「駄目にゃ、お願いだにゃ」
男「ごめんなタマ」
タマ「な、ならタマも一緒に……」
男「いや、タマは家でお留守番しててくれ」
タマ「ひとりぼっちは、嫌にゃ」
男「落ち着け、俺がタマを置いていった時があったか?」
タマ「いっぱいあったにゃ……いっぱい、ひとりぼっちだったにゃ。でも、ひとりぼっちでも男は必ず帰って来てたのにゃ……」
男「……」
タマ「……頑固な男は嫌いにゃ、さっさと行けばいいにゃ」
男「本当にごめんな、帰ったらいっぱい遊んでやるから……留守番頼む」
タマ「にゃぁ……」
68
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/30(月) 21:44:31 ID:dLfxD.bo
雪女「〜♪」
男「おーい雪女」コンコン
雪女「えっ、男?」
男「頼む、そろそろヤバいから開けてくれ……」
雪女「ばっ、今開けるわ!」
男「あ、あぁ……すまん」
雪女「ちょ、すぐに火を……あと寒くない様にしなきゃ! えっと、あなたはそこで少し待ってなさい、お湯も沸かすから!」
男「この前は、本当にごめ……」
雪女「訳の分からない事を言っている暇があったらここに座りなさい! 馬鹿!」
69
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/30(月) 21:45:05 ID:dLfxD.bo
雪女「それで、あなたはどうしてこんな吹雪のなかを歩いてまで私の家に来たのかしら」
男「お前の謝ろうと……」
雪女「……何かされたっけ?」
男「いや、この前酔った勢いでお前に……」
雪女「あっ、それは別に……気にしてないわ」
男「そっか、ごめん」
雪女「大丈夫」
男「しばらく家に来なかったからお前を怒らせたのかと思ってな……よかった」
雪女「あなたって結構寂しがり屋なのね、タマと一緒だわ」
男「ぐっ……」
70
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/30(月) 21:45:39 ID:dLfxD.bo
雪女「ふふっ、私が居なくて寂しかったんだ?」
男「あぁそうだよ! もういじめないでくれ」
雪女「あははっ、んふふふ……ふふっ、可愛い所もあるじゃない」
男「うるさい……はっくしゅっ!」
雪女「……外はまだ吹雪いてるわ、服も乾かないでしょうから今日は泊まっていきなさい」
男「助かる……」
雪女「私は薪を集めてくるからここに居なさい」
男「薪って……外吹雪いてるけど大丈夫か?」
雪女「あなた私が雪女ってことを忘れてない? とにかく今は体を温めておきなさい」
71
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/30(月) 21:46:17 ID:dLfxD.bo
雪女「私が来なかった理由?」
男「すまん、どうしても気になって」
雪女「別にいけど、笑わないでよ?」
男「笑えるような事なのか?」
雪女「この前あなたが面白そうな野菜の種を渡してきたでしょ? それを植えるための場所を確保しようと畑を耕していたらつい楽しくなってきちゃって、その……ずっと畑に居たのよ」
男「……」
雪女「な、何か言いなさいよ」
男「い、いや……力が抜けて」
72
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/30(月) 21:48:56 ID:dLfxD.bo
雪女「そんなに?」
男「……ニヤニヤするな」
雪女「ふふっ、ごめんなさい」
男「こっちこそ、迷惑を掛けた……ごめん」
雪女「なら明日は畑仕事でも手伝ってもらおうかしら。もう少しで終わりそうなのよ」
男「任せてくれ」
雪女「なら今日は早めに寝て明日に備えましょうか」
男「あぁ」
73
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/03(金) 23:13:55 ID:3rK832Pc
雪女「はっ! ほっ!」
タマ「……」
雪女「ぐっ……ふっ!」
タマ「何してるにゃ」
雪女「冷気をより抑える……特訓よ!」
タマ「息んでる様にしか見えないにゃ……」
雪女「初めてだから色々と試してるの! ふんっ!」
タマ「今すぐ止めて欲しいにゃ……何でそんな事をしてるのにゃ」
雪女「そ、それは春に備えて……」
74
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/03(金) 23:15:01 ID:3rK832Pc
タマ「春に何かあるのかにゃ?」
雪女「そう、よ!」
タマ「にゃぁ、はやく止めてくれにゃ」
雪女「しょうがないわね……」
タマ「その特訓は男と遊ぶためかにゃ?」
雪女「……彼に『春になったら桜を見に行かないか』って言われたのよ」
タマ「なるほどにゃ」
雪女「でも冷気を全く出さないようにするのは難しくて……」
タマ「雪女にとって当たり前だった事を変えるのは大変にゃ、しょうがにゃい……あっ」
雪女「それは何の『あっ』?」
タマ「良いことを思い付いたの『あっ』にゃ。今度来るときを楽しみにしてるにゃ」
75
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/03(金) 23:15:52 ID:3rK832Pc
タマ「これあげるにゃ」
雪女「これは?」
タマ「温度計にゃ」
雪女「温度計?」
タマ「これはこの場所の温度を目で見ることができるにゃ。今は……15°にゃ、普通に寒いにゃ」
雪女「これで何をすればいいの?」
タマ「この針が下がらないように、または上がるようにするのが目的にゃ。少しだけ冷気を出せるかにゃ?」
雪女「わ、分かった」
タマ「にゃぁ……ほ、ほら、針が下がってきたにゃ」
雪女「ぐんぐん下がっていくわ、凄い……」
タマ「温めた部屋でもこれだけ下がるなんて凄いにゃ……」
76
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/03(金) 23:17:55 ID:3rK832Pc
雪女「私はこの温めた部屋でこの針を下がらないようにすればいいのね?」
タマ「そうにゃ、大体この辺りを目指せばいいにゃ……」
雪女「さっき指していた目盛より高いわね。でもやらなきゃ私に春は来ない!」
タマ「そうにゃ。あとは雪女次第、男のために冷気を抑えて過ごしている雪女ならきっと完全に抑えることも可能なはずにゃ」
雪女「簡単に言ってくれるじゃない」
タマ「タマは猫だからしょうがないにゃ」
77
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/03(金) 23:18:49 ID:3rK832Pc
雪女「……うん、頑張ってみる!」
タマ「応援するにゃ」
雪女「ところでお茶は飲まないの?」
タマ「……苦くて飲めないにゃ、無理にゃ」
雪女「私は美味しいと思うのだけど……」
タマ「……これからはそのお茶を作るの禁止にゃ、これ以上舌が馬鹿になったら男が悲しむにゃ」
雪女「そ、そんな……美味しいのに」
タマ「にゃあ」
78
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/03(金) 23:19:25 ID:3rK832Pc
男「あー、もしもし」
『あ? 誰だお前』
男「男だよ、お前は知らない奴からの電話に出るのか?」
『出る』
男「はぁ……それで、用事ってなんだ」
『あー、今度飲みに行こうぜ』
男「お前と飲んでも楽しくないから行かない」
『行くか、よしよし……いつにする?』
男「ついに耳がイカれたか? 俺は行かないと言ってるんだけど」
79
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/03(金) 23:20:13 ID:3rK832Pc
『やっぱ今度お前の家に行くわ。美味しいお酒持っていくから楽しみにしとけよ』
男「はぁ……了解」
『そのついでに原稿取りに行くからよろしく頼む』
男「分かった」
『じゃあまたな』
男「おう、また――って、切れてる……」
男「いつ来るのか分からないけど買い物に行っとくか……」
80
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/03(金) 23:20:53 ID:3rK832Pc
タマ「ニャー」
男「タマ? おかえり」
タマ「ニャー」
男「雪女が凄いことをしてる? へぇ……あいつの酒より何倍も楽しみだ」
タマ「ニャー」
男「こーら、そっちに行く前に体を洗おうねー」
タマ「ニャー!」
81
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/09(木) 05:01:13 ID:2ak13W2c
雪女「何を作っているの?」
男「ケーキ」
雪女「けーき?」
男「甘いお菓子だ」
雪女「ふーん、それは美味しいの?」
男「あぁ、美味しすぎてほっぺが落ちる」
雪女「ふぁぁ……楽しみだわ」
男「お疲れか?」
雪女「少し……」
82
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/09(木) 05:02:12 ID:2ak13W2c
男「寝ててもいいぞ、ケーキも完成まではまだまだ時間掛かるし」
雪女「流石に寝たりは……」
タマ「ニャー」
雪女「乗らないでタマ、重い」
タマ「……」
男「退かす気力さえ無いのか」
雪女「うるさい、うぅ……」
タマ「ニャー」
雪女「どいてぇ……」
83
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/09(木) 05:02:48 ID:2ak13W2c
『雪女さん! 今日も綺麗ですね!』
『此処に来てはいけないと何回も言ったでしょ』
『でも、雪女さんに会いたくて……』
『うっ……その悲しそうな顔やめなさい』
『ごめんなさい……ゲホッ、ゴホッ……はっくしゅ!』
『はぁ……上がりなさい』
『うん、ありがとう!』
84
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/09(木) 05:03:57 ID:2ak13W2c
『相変わらず雪女さんの家は寒い』
『だって火をつける必要が無いんだもの』
『じゃあその火は何のため?』
『あなたが来たからでしょうが!』
『ひぃ、ごめんなさい』
『少しは自分が人間であることを自覚しなさい!』
『すみません』
『少しは妖怪の身にもなって欲しいものだわ』
『本当、そうだよねー』
『……殴るわよ?』
『……はい、気を付けます』
85
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/09(木) 05:04:35 ID:2ak13W2c
『雪女さーん』
『はぁ……』
『僕の顔を見てそうそう溜め息とは酷いです! けどその顔も綺麗で――』
『……』
『はい、すみません』
『そう思うならもう来ないで欲しいのだけれど』
『それは出来ません!』
『じゃあ今日はそこで凍えてなさい』
『お邪魔します! ゲホッ……っくしゅ!』
『……』
86
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/09(木) 05:05:20 ID:2ak13W2c
『ははっ、なんだかんだ家に入れてくれる雪女さん、やっぱり優しいですよね。噂とは大違いだ』
『噂? 私は人間と関わらないように生きているのに、どうやったら噂なんかが立つというのよ』
『吹雪の中で人を襲う白い女がこの山に居るとかなんとか。なにか心当たりとかある?』
『……困っていたから助けようと近付いたら逃げられた事は何回か』
『じゃあそれだ』
『私、何も悪くないわよね』
『人間ってのはそういうものだから』
『迷惑な話』
『僕は違うよ! なんせ雪女さんに首丈!』
『……迷惑な話ね。本当に』
87
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/09(木) 05:06:33 ID:2ak13W2c
『やぁ、雪女さん』
『もう来ないでって言ってるでしょ……なんか、いつもより顔色悪いわね』
『あぁ、ちょっとね……』
『体調が悪いなら来ないでちょうだい』
『どうしても雪女さんに会いたくて』
『……あなたを村まで送るから今日は大人しく帰りなさい』
『僕の命は、もう残り少ないんだ』
『な、何を言っているの? 取り敢えず村に向かうわよ』
『僕は幼い頃から体が弱くてね、自分の体は自分がよく分かっている……多分、もうすぐなんだ』
『こんな雪山に来るからでしょうが!』
88
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/09(木) 05:07:08 ID:2ak13W2c
『僕はね、雪女さんに会えて変わることが出来たんだ。外に出ることも出来ないほど病弱だった僕がここまで歩いて来れるようになった』
『なら、そのまま元気な姿で居て! 散々迷惑掛けておきながら勝手に死ぬなんて、私許さないわ!』
『雪女さん』
『話している暇があったら、歩く努力をしなさい!』
『ありがとう。本当に、ありがとう。楽しかった……凄く楽しく生きることが出来た。これは、雪女のお陰なんだ』
『……嫌、嫌よ。何も聞きたくないわ』
『これは僕の我が儘で、雪女さんにはとても迷惑な話だと思うんだけど』
『っ……もう、黙って歩きなさい』
89
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/09(木) 05:07:45 ID:2ak13W2c
『雪女さんの腕の中で死ねたら、僕は最高に幸せなんだ……気持ち悪くてごめんね』
『……えぇ、最高に気持ち悪いわ』
『でもね、だからこそ、僕をこのまま……』
『いい加減に――っ!』
『頼む、このまま僕の精気を……吸い付くしてくれ』
『なんで、どうして……さっきより顔色が、肌の色が……!』
『……雪女、さん』
『これは、私が……やったの? 私があなたの命を吸っていたの……?』
90
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/09(木) 05:09:23 ID:2ak13W2c
『きっと、僕の死を悲しんでくれるのは雪女さん、貴女だけなんだ……だから』
『だからって、こんな……』
『ごめん、ね』
『早く村へ、でも私が近くに居たら……っ、私にどうしろと……!』
『……』
『あっ、駄目よ! 寝ちゃ駄目! 起きなさい! お願いだから目を開けて!』
『……』
『何で、私なのよ。何で私にこんな事をさせるのよ……』
『こんな迷惑な、話っ……酷い、わよ……』
91
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/09(木) 05:10:30 ID:2ak13W2c
雪女「……っ」
男「……悲しい夢でも見てたのか?」
雪女「えぇ、少し……ね」
男「そうか」
雪女「……動けないわ」
男「タマ、気持ちよさそうだな」
雪女「……ねぇ、ちょっといい?」
男「ん?」
92
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/09(木) 05:11:07 ID:2ak13W2c
雪女「私、頑張ったの」
男「何をだよ。寝ぼけてんのか?」
雪女「違うわ、手を……出してみて」
男「手? いいけど……!」
雪女「……どう、冷たい?」
男「……温かいよ」
雪女「本当?」
男「あぁ、本当だ」
雪女「そう……ふふっ、さっきも言ったけど私ね、頑張ったの」
男「そうみたいだな」
93
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/09(木) 05:11:44 ID:2ak13W2c
雪女「あなたのお陰で頑張れたの」
男「俺は何もしてないけどな」
雪女「ううん、沢山の事をしてくれたわ……あの日、貴方に出会ってから私は変わった。怖かったけど、変われたの」
男「……」
雪女「勇気をくれて、ありがと」
男「……どういたしまして」
雪女「お花見、楽しみね」
男「!」
94
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/09(木) 05:12:48 ID:2ak13W2c
雪女「……いい香りがするわ」
男「あっ、ちょっと見てくる!」
雪女「行ってらっしゃい」
男「雪女」
雪女「何?」
男「ありがとう」
雪女「ふふっ、どういたしまして」
95
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/12(日) 15:17:51 ID:t5.d14T.
これすこ
96
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/14(火) 23:45:39 ID:NhjfEDRI
男「タマ、少し退いてくれ」
タマ「……」
男「そこに乗られると仕事が出来ないんだよ」
タマ「……」
男「困ったな」
タマ「ニャー」
男「何かあった?」
タマ「……」
男「はぁ、昼ご飯作るか……ほら、台所行くぞ」
タマ「ニャー」
97
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/14(火) 23:46:14 ID:NhjfEDRI
男「何食べる?」
タマ「……」
男「スリスリされても分かんないんだけど」
タマ「……」
男「そういう気分なの?」
タマ「ニャー」
男「分かった、分かったからもう少し離れてくれ。危なくて料理出来ない……それか炬燵で待っててもいいぞ」
タマ「……」
男「珍しく言うことを聞いてくれないな……落ちたものは食べるなよ?」
タマ「ニャー」
98
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/14(火) 23:47:00 ID:NhjfEDRI
雪女「凍える夜は好きかしら?」
男「5秒以内に戸を閉めろ。でないとお前にタマを押し付ける」
雪女「よいしょっと……それで、タマを押し付けるって何よ?」
男「それはだな……タマ、雪女が来たぞ」
タマ「……」
雪女「膝の上で気持ちよさそうに丸まってるわね。いつもと変わらないじゃない」
男「何か変なんだよなぁ」
雪女「私にはよく分からないけど……おいでー」
タマ「……」
雪女「むっ」
99
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/14(火) 23:47:42 ID:NhjfEDRI
男「タマ、雪女が呼んでるぞ?」
タマ「ニャー」
男「今日は俺の上がいいんだと」
雪女「何故か悔しい気持ちでいっぱいだわ……」
男「ごめんな、今日は少し我が儘みたいなんだ」
雪女「我が儘?」
男「そう、我が儘。姿を変えてから甘える事が減っていた気がするし、多分これは甘えたいけどうまく伝えられないからこうやって……痛っ!」
タマ「フシャー!」
男「久々に引っ掻かれた……」
雪女「ふふっ、どうやら図星だったみたいね」
タマ「ニャー!」
100
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/14(火) 23:48:28 ID:NhjfEDRI
男「はぁ……うちの猫めっちゃ可愛い」
雪女「ちょっと不器用な所はきっとあなたに似たんでしょうね」
男「……」
雪女「んふふっ」
タマ「ニャー」
雪女「あははっ、ごめんなさい……ふふっ、ふー……んふっ」
タマ「うにゃー! 笑うにゃ!」
男「おわっ、急に大きくなるなって……顔赤いな」
タマ「にゃあ!」
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