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雪女「うらめしや」

1以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/02(月) 01:54:28 ID:UmIcJ0Uk
男「……寒いから早く戸閉めてくれない?」

雪女「せっかく来てあげたっていうのに何よその態度」

男「お前が来たことで俺の中で燃え盛る熱い思いが冷めたってのに、更に部屋まで冷やされちゃ敵わん。早く閉めろ」

雪女「もうっ、分かったわよ」

男「それと、そこにあるミカン取ってくれると嬉しい」

雪女「はぁ、私をそんな風に扱うの貴方だけよ。これでもこの辺りでは結構名の知れた雪女だって言うのに……よいしょっと」

男「その有名な雪女が炬燵なんかに入って大丈夫なのか? あとお前の足冷たいから伸ばすな」

雪女「うるさいわね、これくらい我慢してちょうだい」

2以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/02(月) 01:56:02 ID:UmIcJ0Uk
男「俺は平気さ。心配なのは炬燵のなかで丸まってるタマのほう」

タマ「ニャー」

雪女「あら、出てきたわよ? それに元気そうじゃない」

男「寒くてたまらんだとよ」

雪女「へぇ、私の膝の上で頭を撫でられて気持ち良さそうにしているこの姿を見てもそう言える?」

男「タマは誰にでも懐っこいから、そこんところ勘違いしないでもらえる?」

雪女「意味の分からない事で張り合ってくるのやめてくれる?」

3以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/02(月) 01:56:42 ID:UmIcJ0Uk
男「腹へったなぁ」

雪女「あっ、そうだ……はい、これ」

男「野菜とキノコか、いつも助かる」

雪女「趣味で作ってるだけし」

男「料理は下手くそなのにな」

雪女「う、うるさいわね……」

男「お前は何か食べたのか?」

雪女「分かってるでしょ?」

男「食べなくても死にはしない事か? 俺が聞きたいのはそういう事じゃないんだけど」

雪女「っ……こ、これで何か美味しいものを作ってください」

男「おう、了解」

4以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/02(月) 01:57:36 ID:UmIcJ0Uk
男「さて、料理が壊滅的な雪女の為に何か作ってやるか」

雪女「な、何よ! 早く作りなさいよ!」

男「こわいこわい、これは炬燵でぬくぬくしてる場合じゃない」

雪女「は や く! 行きなさい!」

男「分かったから蹴るな蹴るな……よっと」

雪女「ふんっ」

男「何を作ろうか、タマも少し手伝ってくれ」

タマ「今日は鍋の気分にゃ」

雪女「わっ! 急に大きくなったらビックリするじゃない」

タマ「にゃあ」

5以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/02(月) 01:58:58 ID:UmIcJ0Uk
男「俺は魚を捌くからタマは野菜を切ってくれ」

タマ「分かったにゃ」

男「鍋、鍋はどこだ……」

タマ「その棚の奥にゃ」

男「助かる」

タマ「にゃぁ……水がちべたい、炬燵に戻りたくなってきたにゃ」

男「そんな事したら雪女と一緒に晩御飯作っちゃうぞ」

タマ「それはいかんにゃあ……」

雪女「ちょっと、聞こえてるんですけど」

タマ「にゃ……」

男「タマ、炬燵で食べる鍋を想像してみろ……どうだ、幸せじゃないか? 今の寒さも耐えられそうじゃないか?」

タマ「頑張るにゃ」

雪女「男、カセットコンロはどこかしら?」

男「いま出すから待っててくれ」

6以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/02(月) 02:00:57 ID:UmIcJ0Uk
「「「ごちそうさまでした」」」

男「あぁー、食った食った」

雪女「食べて直ぐ横になると牛になるわよ?」

男「迷信だし、それにここから炬燵で眠るまでが最高の流れなんだ」

雪女「ふーん、じゃああなたも"アイツ"と同じ道を辿っていくのね……」

男「あいつ? 同じ道ってなんだよ」

雪女「気にしなくていいわ」

男「お前、まさか牛になった奴を見たことがあるのか? え、これって迷信だろ?」

雪女「……そうね」

男「そういう反応をするのはやめてくれ、怖くなってきた」

雪女「本当に気にしなくていいわ。えぇ、本当に……あら、急に起き上がってどうしたの?」

男「ミカンを食べようと思ってな」

タマ「ニャー」

男「うるさいぞタマ」

7以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/02(月) 02:02:47 ID:UmIcJ0Uk
男「あ、あのさ」

雪女「なに?」

男「さっき言ってた"アイツ"って……どんな奴だったんだ?」

雪女「どんな奴って?」

男「お前と、その……どういう関係だったのか気になって」

雪女「あー……」

男「言えないとかだったら流していいからな。お前は長生きしてて、俺の知らないような事だって何回も経験しているだろうし」

雪女「別にいいわよ? だって嘘だし」

男「嘘? 何が?」

雪女「アイツ云々、あれは寝転がっているあなたを起こすためについた嘘」

男「……」

雪女「あら、また寝ちゃうの? ふふっ、牛になってもいいのかしら」

男「もう、いっそ俺のことを牛にしてくれ」

8以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/02(月) 02:04:14 ID:UmIcJ0Uk
雪女「そろそろ帰るわね」

男「泊まってもいいんだぞ?」

雪女「あなたに襲われるなんて御免よ」

男「雪女なんか襲わねぇよ。それに俺は純粋な気持ちでお前を心配してるんだけど」

雪女「私は妖怪、何かに出会い襲われたとしても相手の方が勝手に怯えて逃げ出すわ。それに……」

男「それに?」

雪女「いいえ、何でもない」

男「……そうかい、気を付けて帰れよ」

雪女「えぇ、また」

9以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/02(月) 02:05:44 ID:UmIcJ0Uk
雪女「はぁ……」

雪女「人と妖怪。そして、私は雪女」

雪女「彼の温かさと私の冷たさは互いの体を蝕んでいくかもしれない。なのに、それなのに……どうして私は、彼を好きになってしまったのかしら」

雪女「はぁ……ヒトが羨ましい」



「自分が恨めしい」

10以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/04(水) 07:44:52 ID:sBRu0UTw
続きはよ

11以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/05(木) 04:21:06 ID:E6QQjCAk
男「うーん」

タマ「ニャー」

男「タマか、どうした?」

タマ「ニャー」

男「あぁ、あまり筆が進まなくてなぁ……」

タマ「……」

男「編集担当が書いたものを早めに送れと急かして来てな、あと山から降りてこいと……いくら腐れ縁だとしても酷いよな」

タマ「ニャー」

男「もう少し頑張ってみて駄目な様なら気分転換に散歩しに出るさ。タマも来るか?」

タマ「ニャー」

男「あれ、どっか行っちゃうの? 外行くときは気を付けて、あと早めに帰ってくるんだぞ」

12以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/05(木) 04:21:43 ID:E6QQjCAk
雪女「〜♪」

雪女「ん?」

タマ「ニャー」

雪女「あら、あなたが家に来るなんて珍しいわね。今ちょうどお茶を淹れていたのだけど……飲む?」

タマ「それは大丈夫なモノなのかにゃ?」

雪女「来て早々失礼な事を言ってくれるじゃない。大丈夫、今回はちゃんと飲めるものよ」

タマ「ならいただくにゃ」

雪女「はい、どうぞ」

タマ「美味しい……」

雪女「来るなら来ると言ってくれれば予め部屋を暖めておくんだけどね……よし、火が付いた」

タマ「ごめんにゃ」

雪女「まったく」

13以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/05(木) 04:22:29 ID:E6QQjCAk
雪女「それで、何を悩んでいるのかしら?」

タマ「にゃっ、なんで分かったにゃ」

雪女「あなた結構分かりやすいわよ?」

タマ「にゃ……」

雪女「毛玉を上手に吐けないとか?」

タマ「そんな事を相談しに来た訳じゃないにゃ」

雪女「なら早く言いなさいよ」

タマ「そ、その……男がこの山に来たことを後悔しているんじゃないかと思って」

雪女「……それ私にどうしろって言うのよ。それに彼の事ならあなたの方がよく知っている筈よ?」

タマ「そうだけど……」

14以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/05(木) 04:23:06 ID:E6QQjCAk
タマ「小さくて狭い部屋に居た頃の男はいつも忙しそうで、たまに帰ってこない時もあったにゃ。そしていつも疲れた顔をしていたにゃ」

雪女「男が家に居ない時のご飯はどうしてたの?」

タマ「変な箱からご飯が出てきたにゃ」

雪女「何それ、気になるわ」

タマ「そこはどうでもいいにゃ」

雪女「ごめんなさい、続けて?」

タマ「タマが急に姿を変えられるようになって、それが原因で山に移り住まないといけなくなったと思うと……にゃぁ」

雪女「男にそのまま聞いたらいいじゃない」

タマ「む、無理にゃ……勇気がないにゃ」

雪女「はぁ、分かった。次あなた達の家にお邪魔する時に聞いてあげるわ」

タマ「本当?」

雪女「でもあまり期待はしないでね? あなたが欲しい答えが貰えるとは限らないから」

タマ「ありがとうにゃ」

15以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/05(木) 04:24:43 ID:E6QQjCAk
タマ「ニャー」

男「お帰りタマ、散歩は楽しかった?」

タマ「ニャー」

男「そうかそうか、楽しめたようで何より。 それじゃあお風呂に入ろうか」

タマ「……ニャ、ニャー」

男「だめ、行くよー」

タマ「ニ゛ャ゛ー」

16以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/05(木) 04:25:21 ID:E6QQjCAk
雪女「お命ちょうだい」

男「……寒いんだけど」

雪女「はぁ、あなたって本当に面白くないわ」

男「お前は毎度飽きずによくやるよ」

雪女「最初はあんなに驚いて……くれなかったわね」

男「嬉しさ極まって叫んだけど?」

雪女「そうだけども」

17以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/05(木) 04:26:08 ID:E6QQjCAk
雪女「よいしょっと」

男「いつも思うけどそんなに炬燵が好きなのか?」

雪女「これで緩和してるのよ」

男「緩和するって何をだよ?」

雪女「色々よ。はい、これ」

男「いつも助かる」

タマ「ニャー」

雪女「こんばんは」

18以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/05(木) 04:27:03 ID:E6QQjCAk
タマ「ニャー」

雪女「あ、あぁ……そうだったわね」

男「?」

雪女「ねぇ、あなたはどうしてこの山に来たんだっけ」

男「前に言わなかった?」

雪女「えぇ」

男「そんな面白い話でもないけど……簡単に言えば疲れたから」

雪女「疲れた?」

男「仕事であーだこーだ言われ、"流行りを掴め"やら"このジャンルが人気"と好きでもない物を書かされて」

男「すれ違いなんだろうけど……辛かったなぁ」

19以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/05(木) 04:28:33 ID:E6QQjCAk
雪女「何も言わなかったの?」

男「あぁ、ずっと溜め込んでた」

雪女「情けないわね」

男「言うな、傷付くだろ」

雪女「事実じゃない」

男「まぁ、それで俺は逃げ出したわけよ」

雪女「逃げたって……どこへ?」

男「……最終的にはこの山に辿り着いたな」

雪女「もしかして……」

男「あぁ、そのまま雪山で遭難して死にかけていた俺をお前が助けてくれたわけだ」

20以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/05(木) 04:29:27 ID:E6QQjCAk
雪女「馬鹿じゃないの?」

男「あの時は死んでもいいやと思ってたから」

雪女「随分と追い込まれていたのね」

男「それなりに」

雪女「人って大変だわ」

男「でもお前のお陰で今俺は元気に生きてる」

雪女「山を降りた後はどうしたの」

男「家に帰ってから色々あって仕事を辞めた」

男「それで落ち込みながら街をふらついていたら古い友人に出会ってな、そいつに無職だと伝えるとスカウトされて好きなものを書けるようになった」

雪女「何者なの……」

21以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/05(木) 04:30:46 ID:E6QQjCAk
男「そして身の回りが落ち着いてきた頃かな、目の前でじゃれていたタマが突然消えたと思ったら猫耳の少女が俺の腕にしがみついててさ」

雪女「あー、それは聞いたわ。驚いたでしょうね」

男「あぁ、けどお互い受け入れるのは早かった。それから一人と一匹が住んでいた部屋が少し狭く感じるようになって」

雪女「こっちに来たのね」

男「住める家を調べている途中で見つけたのがこの家、部屋の整理も兼ねて勢いそのまま引っ越してやったぜ」

22以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/05(木) 04:31:57 ID:E6QQjCAk
男「なんか人も寄り付かない噂があるとかで安かったんだよなぁ」

雪女「噂? どんな噂よ」

男「さぁ? けど近くに人は居ない、それならタマも自由に姿を変えられるだろうし気楽に過ごせるんじゃないかとね」

男「それに……」

雪女「それに?」

男「ここならお前に会えるかも知れないと考えた」

雪女「……へっ?」

23以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/05(木) 04:34:04 ID:E6QQjCAk
男「ここは遭難した時の山、そして俺を助けてくれたお前が居るであろう山だ。そして、俺はお前にもう一度会って直接『ありがとう』と伝えたかった」

雪女「だからあんな場所に手紙を……」

男「あんな場所? 山奥の大きな木の下に手紙を入れた瓶を置いただけなんだけど……あそこって目立つの?」

雪女「どんなに恥ずかしい思いをしたか……手紙を読んだとき日付と場所が指定されていたけど、私が来なかったらどうしてたの?」

男「新しい手紙を書いて別の場所に置くつもりだった」

雪女「……」

タマ「ニャー」

男「おっ、どうしたタマ?」

24以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/05(木) 04:35:45 ID:E6QQjCAk
タマ「ニャー」

男「お腹が空いたのか? よし、ご飯作るか」

タマ「ニャー」

男「よっと、今日は何を食べようか」

タマ「……にゃ」

雪女「ん?」

タマ「ありがとうにゃ」

雪女「何か分かった?」

タマ「気にしすぎは体によくないことがよーくわかったにゃ」

雪女「そう、よかったわね」

男「タマー、手伝ってくれー」

タマ「にゃあ」

25以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/05(木) 04:43:04 ID:E6QQjCAk
タマ(ここに来た理由は全てタマのせいだと思い込んでいたにゃ……けど、男はタマの事を考えてこの山を選んでくれたのにゃ)

タマ(タマは考え過ぎて頭ぐるぐるだったけど男はいつもの男だにゃ。むしろ今の方が元気だにゃ)

タマ「男はいい奴にゃ」

男「照れるじゃないか、急にどうした?」

タマ「何だか言いたくなったにゃ、気にするにゃ」

男「そうか……もう一回言ってくんね」

タマ「ニャー」

男「ズルじゃん……」

26以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/05(木) 04:44:56 ID:E6QQjCAk
タマ(全部がタマの為じゃないのは分かってるにゃ、それでも男はいい奴にゃ)

タマ「ニャー!」

男「人の姿で言ってくれ……!」

27以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/10(火) 00:46:31 ID:23IOUPzM
雪女「ねぇ」

男「あ?」

雪女「足を避けてくれないかしら」

男「あぁ……」

雪女「あぁ、じゃないわよ! あなたが足を私の足の上に乗せ続けているせいで痺れ消えないの! だから早く避けなさい!」

男「すまん、お前の足がひんやりしてて……」

雪女「──っ! ごめんなさい、今すぐ炬燵から出るわ……あぅっ、痺れが……」

28以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/10(火) 00:48:00 ID:23IOUPzM
男「気持ちいい……」

雪女「あ、あなたって死に際でさえ気持ち悪い事を言うのね」

男「死に際って何だよ……まぁ、例えるなら冬の露天風呂、炬燵でアイス、そんな気持ちよさが炬燵の中で広がっている」

雪女「ほ、本当に大丈夫……? 足の感覚が無いとか意識が遠のいていく感じはしない?」

男「強いて言うなら眠気が……」

雪女「そ、そう……よかった」

男「……なにがよかったんだ?」

雪女「な、何でもないわ」

男「よく分からないけど、よかったな……」

29以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/10(火) 00:50:18 ID:23IOUPzM
タマ「相変わらず寝るのが速いにゃ」

雪女「タマ……」

タマ「気にしすぎは体に悪いにゃ」

雪女「あなたが言うと説得力があるわね」

タマ「やめて欲しいにゃ」

雪女「はぁ、少し気を抜いていたわ」

タマ「男はこんな事で精気を失ったりしないにゃ、無駄に頑丈だから気軽に引っ付いてみたりすればいいにゃ」

雪女「……無理」

タマ「にゃあ」

30以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/10(火) 00:51:46 ID:23IOUPzM
雪女「タマだって抱き付けないでしょ」

タマ「タマ男と一緒に寝たりしてるにゃ、平気にゃ」

雪女「私は傍に居たい気持ちを我慢しているというのにこの猫は本当に……羨ましい」

タマ「特に男のお腹は落ち着くにゃ」

雪女「お腹って……ん? もしかして猫の姿で一緒に寝てるのかしら?」

タマ「当たり前にゃ」

雪女「その姿で男にスリスリしたりお腹見せたりはしないわよね……なんで?」

タマ「そ、それはその……にゃあ」

雪女「あぁ、恥ずかしいのね」

タマ「に゛ゃ゛、違うにゃ!」

31以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/10(火) 00:53:41 ID:23IOUPzM
雪女「タマも私と同じく恥ずかしいと」

タマ「な、何を言うにゃ、一緒に寝てるタマがそんなはず無いにゃ。よ、余裕だにゃ!」

雪女「姿が違うだけなのに一体何が駄目なんでしょうね」

タマ「そ、そんなの知らないにゃ。あと全然駄目とかじゃないにゃ」

雪女「へぇ……」

タマ「……男を指差してどうしたのにゃ」

雪女「男、寝てるわよ?」

男「すぅ……」

タマ「にゃあ……」

32以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/10(火) 00:56:04 ID:23IOUPzM
雪女「ほら、どうぞ」

タマ「どうぞ、じゃないにゃ! 何を言っているにゃ!」

雪女「最初はあなたが羨ましくて嫉妬で凍らせてしまおうと思っていたけど、今は何故か微笑ましいの」

タマ「やってやるにゃ!よ、よ、余裕だにゃ!」

雪女「頑張れ、大丈夫、私が応援するわ」

タマ「う、う、うにゃ……」

雪女「そうよ、後は男に近付いて横に寝転がるだけ」

33以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/10(火) 00:57:04 ID:23IOUPzM
タマ「にゃ、にゃにゃ、にゃ……ニャー!」

男「んぁ? タマか……一緒に温まろう、か……」

雪女「ふふっ、猫に戻るなんて可愛いわね」

タマ「ニャー」

雪女「ふふっ、怒らないで」

雪女「彼に近付けるだけ凄いことなんだから、はぁ……本当に羨ましいわ」

34以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/13(金) 02:10:06 ID:85Z.LjIw
なんかこの雰囲気落ち着く

35以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/13(金) 23:22:43 ID:nG8NRRio
男「……」

雪女「何してるの?」

男「うわっ! 急に驚かせないでくれ!」

雪女「あら、私は声を掛けただけよ? どう、釣れてる?」

男「……ぼちぼち」

雪女「何が釣れたか見てもいい?」

男「うぐっ……だ、駄目」

36以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/13(金) 23:23:56 ID:nG8NRRio
雪女「あー、もしかしてボウズってやつ?」

男「……違う」

雪女「ふーん」

男「お前は何しに来たんだよ」

雪女「野菜を洗うついでに山から山菜を少しいただこうかなって」

男「そっか、料理の練習は順調か?」

雪女「順調よ、それはもう順調よ」

男「一人でやっても上達しないだろ」

雪女「……そうね」

37以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/13(金) 23:25:04 ID:nG8NRRio
男「今度一緒に何か作るか」

雪女「えっ、でも……その、いいの?」

男「前回の失敗を活かして俺の言うこと聞いて作りさえすれば大丈夫だろ」

雪女「……難しいことを言うわね」

男「お前は馬鹿なのか?」

雪女「前回は指示する人が悪かったのよ」

男「へーへー、次はいつ来るんだ?」

雪女「明後日にでもお邪魔しようかなって」

男「そうか……」

38以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/13(金) 23:26:22 ID:nG8NRRio
雪女「どうしたの?」

男「いや、準備しておかないとなって」

雪女「迷惑掛けるわね」

男「料理が出来るだけで生活の質が少しだけ上がるからな、それだけだ」

雪女「ありがと……それ掛かってない?」

男「ん? 本当だっ! ちょ、急に引っ張られると……!」

雪女「ちょ、ちょ、なに足を滑らせてるのよ!」

男「しょうがないだろ! 俺は繊細だから何事にも心の準備ってものが──」

雪女「あっ、馬鹿っ」

39以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/13(金) 23:27:28 ID:nG8NRRio
タマ「ニャ……大丈夫かにゃ?」

男「タオルを持ってきてくれ……」

タマ「すぐ取ってくるにゃ、お風呂も沸かすかにゃ?」

男「頼む」

雪女「ここまで来れば大丈夫でしょう、私は帰るわ」

男「なんだ、寄ってかないのか?」

雪女「流石に私がこれ以上近くに居るとあなたの体が冷えきってしまうわ」

男「別に大丈夫だろ」

雪女「ダメ、おとなしく暖をとりなさい」

40以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/13(金) 23:28:20 ID:nG8NRRio
タマ「タオル持ってきたにゃ」

雪女「タマ、後は頼むわね」

タマ「にゃあ」

男「お、おい」

雪女「言うこと聞かないと野菜持ってきてあげないわよ? つまり、明後日はここに来ないってこと……いいの?」

男「……」

タマ「雪女の言う通りだにゃ、風邪を引く前に服を脱いでお風呂に入るにゃ」

41以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/13(金) 23:29:30 ID:nG8NRRio
男「分かった、着替えて風呂に入るよ」

雪女「よろしい、じゃあ帰るわね」

男「雪女」

雪女「なに?」

男「明後日、待ってるからな」

雪女「楽しみにしておくわ」

42以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/13(金) 23:30:20 ID:nG8NRRio
男「炬燵は最強……」

タマ「ところで魚は釣れたのかにゃ?」

男「ほい」

タマ「これは?」

男「綺麗な石」

タマ「にゃあ……」

43以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/18(水) 00:51:59 ID:usIGnLI.
男「ゴホ、ゴホッ」

タマ「にゃ……」

男「大丈夫だって、ありがとな」

タマ「じゃ、じゃあ一緒にご飯食べるにゃ」

男「タマに移すと悪いから俺は仕事部屋で食べるよ」

タマ「にゃ、にゃあ……」

男「心配するなって、薬飲んで寝ればすぐ治る。じゃあ、何かあったら呼んで……ゲホッ、ゴホッ」

44以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/18(水) 00:52:40 ID:usIGnLI.
タマ「辛そうだにゃあ」

タマ「風邪の治しかたとか調べたいけどまだ読めない字が多くてにゃあ」

タマ「辛そうな男を見ているとなんだか胸がキュッとして、こっちまで落ち込んでしまうにゃ」

タマ「……そうにゃ! 雪女なら何か知っているはずにゃ!」

タマ「男に会ってから外に行きたいけど迷惑かもしれないしこっそり窓から家を出るにゃ」

タマ「男は大丈夫、大丈夫にゃ」

45以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/18(水) 00:53:34 ID:usIGnLI.
タマ「に゛ゃ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛」

雪女「わっ、どうしたの!?」

タマ「に゛ゃ゛あ゛、に゛ゃ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!」

雪女「泣いてちゃ何を言いたいのか分からないわよ!」

タマ「お、男が風邪を引いちゃって……ぐすっ」

雪女「えっ、風邪?」

タマ「ずっとゲホゲホしてて、辛そうで……色々考えてたら何故かタマが泣きそうになってきて……それで、それで」

雪女「男はちゃんと安静にしてる?」

タマ「多分……」

46以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/18(水) 00:55:03 ID:usIGnLI.
雪女「……風邪なら動く気力もあまり無いから大丈夫でしょう。それで、何故あなたはそんなご主人様をほっぽってうちに来たの?」

タマ「雪女なら風邪の治しかたを知っていると思って……」

雪女「あぁ……そうよね、人の姿をしていても猫だものね。きっと、何も分からなくて不安だったのよね?」

タマ「にゃ、にゃあ……」

雪女「よしよし、泣かない泣かない。風邪に関する本があった気がするから読んであげるわ」

タマ「ほんとう……?」

雪女「本当よ」

47以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/18(水) 00:55:48 ID:usIGnLI.
タマ「ありがとうにゃ」

雪女「その前に部屋を暖めてお茶を淹れるから少し待ってね」

タマ「タマがやるから雪女はその本を持ってきてにゃ!」

雪女「駄目よ、気付いてないかも知れないけどあなたの身体すごく冷たいわよ? 私の着物を貸すから羽織っていなさい」

タマ「にゃあ……」

48以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/18(水) 00:57:15 ID:usIGnLI.
雪女「大体はこんな感じ」

タマ「もう少し待って欲しいにゃ」

雪女「漢字は分かる? メモに絵でも付け足して分かりやすくする?」

タマ「大丈夫にゃ」

雪女「そう」

タマ「それにしても、このお粥というのはあまり美味しくなさそうだにゃ」

雪女「溶いた卵を入れると幸せになれるわ」

タマ「そうなのかにゃ?」

雪女「えぇ、きっと男も喜ぶこと間違いなし」

タマ「やってみるにゃ!」

49以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/18(水) 00:58:09 ID:usIGnLI.
タマ「色々ありがとにゃ」

雪女「どういたしまして」

タマ「雪女は来ないのかにゃ?」

雪女「私が行ったら危ないでしょう」

タマ「そんな事は無いと思うけど……にゃあ」

雪女「まぁ、もし男の熱が下がらなかったら私を呼びなさい」

タマ「危ないと言っておきながら呼んでとは不思議なことを言うのにゃ」

雪女「色々あるのよ」

タマ「難しい事を言わないで欲しい、困るにゃ」

雪女「ふふっ、ごめんなさい。ほら、早く帰ってお粥を作ってあげなさい」

タマ「にゃあ」

50以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/18(水) 00:59:22 ID:usIGnLI.

男「んぁ? 寝てた……外はもう夜か」

男「お腹が空いたな。タマのご飯も用意しないといけないし起きて作ってあげなきゃ……」

タマ「おとこー」

男「タマ? 入っていいぞ……あっ、駄目だ。移るといけない」

タマ「入るにゃ」

男「お、おい、言うことを聞いてくれ、ご飯は好きなのを選んで食べていいから……ん?」

タマ「食べるにゃ」

男「これは、お粥か?」

タマ「そうにゃ」

51以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/18(水) 01:00:09 ID:usIGnLI.
男「つ、作ってくれたのか? 文字はもう読めるようになったのか?」

タマ「まだ読めないにゃ、これは雪女に教えてもらった料理にゃ」

男「雪女が……?」

タマ「そうにゃ……んっ!」

男「いや、自分で食べられるけど」

タマ「これをしてあげると男が喜ぶって雪女が言ってたにゃ! 早く食べるにゃ!」

男「あいつ……」

タマ「どうにゃ?」

男「美味しいよ、ありがとな」

タマ「いいのにゃ、早く元気になってまた一緒にご飯を食べるにゃ」

52以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/18(水) 01:01:31 ID:usIGnLI.
男「お粥か……」

男「そう言えば俺が遭難した時に雪女が出してくれた食べ物もお粥……というよりは雑炊か?」

男「あいつが唯一作れる料理なのかもしれないな」

タマ「ニャー」

男「タマ?」

タマ「ニャー」

男「あぁ、作ってくれたお粥のお陰で熱も下がってきたよ」

タマ「ニャー」

男「明日には治ってるだろうよ。そしたら釣りにでも行って魚を釣って……美味しいご飯を皆で食べような」

タマ「ニャー」

男「あぁ、おやすみ……」


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