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【ぼく勉】 文乃 「今週末、天体観測に行くんだよ」
574
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/01/02(木) 20:20:45 ID:cJVSX9MM
烏丸 「お、緒方さん……?」
理珠 「? どうかしましたか?」
烏丸 (す、すごい変化だわァ! 進歩というべきかしらァ!?)
ドキドキドキドキドキドキドキドキ……
烏丸 (それにしても、とんでもなくストレートに感情を表す子ね……)
烏丸 (不覚だわァ。この私がこんなにドキドキさせられるなんて)
理珠 「……あの、烏丸さん。だから、お願いしたんです」
理珠 「烏丸さんにお任せします。私を、可愛く、綺麗に、魅力的に、してください」
理珠 「私はもう……」
―――― 『私は すこぶる ゲームに弱いのですね』
―――― 『好きになれました いいえ たぶん……』
―――― 『大好き です』
理珠 (……私はもう、気づいてしまいましたから)
575
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/01/02(木) 20:21:20 ID:cJVSX9MM
理珠 「文乃も、うるかさんも、とても綺麗な人です。そんなふたりと一緒だからこそ……」
理珠 「私を、あのふたりと同じくらい……いえ、あのふたりより綺麗にしてください」
烏丸 「緒方さん……」
理珠 「……そんなことが不可能なのは分かっています。でも、私は……」
―――― 『ああ そうか』
―――― 『この人は 私のなりたい私だ』
―――― 『私の…… なれない私だ』
理珠「……好きになってほしい相手がいます。その人に振り向いてほしいから」
理珠 「私の好きな人に、私を好きになってもらいたいから」
理珠 「だから……」
烏丸 「……あなた、変わったわね。以前とは大違いだわ」
烏丸 「良い恋ね。本当に素敵な恋をしているのね」
烏丸 「……いいわァ、緒方さん。燃えてきたわよォ……!!」
576
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/01/02(木) 20:21:52 ID:cJVSX9MM
烏丸 「全力でいくわ。いいえ、全力を超えていくつもりで……」
理珠 「……烏丸さん」
―――― 『はァ……』
―――― 『フゥ…… やる気が出ないわァ 牧上さん……』
烏丸 (やる気が出ず、無為に時間を過ごしていた私をたたき起こしてくれたこの子のために……)
烏丸 (……そして、この子なら)
烏丸 (いいえ、この子だからこそ、私ももっと高みを目指せる気がするわァ……!)
烏丸 「あなたというダイヤを、ピッカピカに磨き上げてあげるわァ!!」
烏丸 「そしてあなたの恋を、きっと成就させてみせるわァ!!!」
カッ!!!!!!
理珠 「は……はいっ!」
理珠 「よろしくお願いします!!」
577
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/01/02(木) 20:23:04 ID:cJVSX9MM
………………
文乃 「いっえーい!」 パシャッ
うるか 「えへへ、なんか振り袖で自撮りって照れちゃうね。自分じゃないみたいだよ」
文乃 「あはは、でもうるかちゃんとっても似合ってるよ。可愛いよ」
うるか 「えへへ、ありがと、文乃っち。文乃っちもめっちゃ似合ってるよ」
うるか 「こーいうのなんて言うんだっけ? イタについてる、って感じ?」
文乃 「……ほう? 誰のどこが板だって?」 ズイッ
うるか 「ど、どしたん、文乃っち。なんか怖いよ」 アセアセ
うるか 「それにしても、リズりん遅いね。どうかしたのかな」
文乃 「そういえば、わたしたちより時間かかってるね。大丈夫かな」
うるか 「リズりんのおっぱいが収まる振り袖がないとかかなー? なんて……――」
文乃 「――ひょっとしてわたしに喧嘩を売るのが目的かな?」
うるか 「だからなんで怒ってるの文乃っち!?」
スッ……
牧上 「お待たせしました。緒方さんも着付けが終わりました」
578
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/01/02(木) 20:23:52 ID:cJVSX9MM
うるか 「あ、文乃っち、終わったみたいだよ……って」
文乃 「うるかちゃん? ねぇ、同じことをわたしの胸を見ながらでも言えるの……って」
理珠 「あ、文乃、うるかさん。お待たせしてしまってすみません」
キラキラキラ……!!!!
うるか 「り、リズりん……?」
文乃 「りっちゃん……?」
理珠 「! ふたりとも、振り袖がよくお似合いですね! とても綺麗です!」
うるか 「へ? あ、う、うん。ありがと」
文乃 「ありがとう、りっちゃん……」
理珠 「? ふたりとも、どうしたのですか? 何か様子が変ですが……」
理珠 「……はっ!? ひ、ひょっとして、私何か変ですか!? 似合っていないですか!?」
理珠 「や、やはり、髪型をいじってもらうべきではなかったのでしょうか……」
うるか 「!? ち、違うよ? なんていうか、その……」
文乃 「似合ってないなんてことないよ! とっても綺麗だよ、りっちゃん! ただ……」
理珠 「!? その、なんですか、うるかさん! ただ、なんですか、文乃!」
579
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/01/02(木) 20:24:49 ID:cJVSX9MM
うるか 「……キレイになりすぎじゃない、リズりん」
理珠 「……へ?」
文乃 「うん。なんていうか、雰囲気が大人っぽくなったっていうか……」
理珠 「き、綺麗……。大人……」
カァアアアア……
理珠 「お、お世辞でも嬉しいです。ありがとうございます」
うるか 「お世辞なんかじゃないよ! リズりんめっちゃキレーだよー!」
文乃 「うんうん! ほんと、雰囲気が変わっちゃって一瞬誰だか分からなかったくらいだよ!」
理珠 「ふ、ふたりとも褒めすぎです……///」
理珠 (……でも、良かった。私は、少しでもふたりに近づけたでしょうか)
理珠 (成幸さんも……)
カァアアアア……
理珠 (……キレイと言ってくれるでしょうか)
文乃 「………………」 クスッ (……りっちゃん、本当に変わったな)
580
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/01/02(木) 20:25:41 ID:cJVSX9MM
文乃 (……ねぇ、りっちゃん)
―――― 『好きになりたかったはずの自分が どんどん嫌いになる』
―――― 『私は文乃 ずっとあなたのようになりたかった けれど昔以上に 今はそれが遠く感じる』
文乃 (泣きそうな顔であんなことを言っていたりっちゃんは、もういないんだね)
―――― 『好きになれました いいえ たぶん……』
―――― 『大好き です』
文乃 (りっちゃん、がんばってね。うるかちゃんは強敵だよ)
文乃 (……ふふ、成幸くんったら、こんな美少女ふたりに好意を寄せられて、幸せ者だね)
ズキッ
文乃 (っ……)
文乃 (……痛くない。苦しくない。何も、ない)
文乃 (だってわたしは、りっちゃんとうるかちゃんの、友達なんだから……)
おわり
581
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/01/02(木) 20:26:16 ID:cJVSX9MM
………………幕間1 「裏で」
智波 「ってことで、うるかに頼まれたんだけど、陽真くん、唯我くんのこと初詣に連れ出せる?」
陽真 「それくらいならお安いご用だよ。成ちゃんにも息抜きが必要だし」
智波 「でも、ごめんね、陽真くん。ふたりきりで初詣できなくなっちゃって……」
陽真 「気にしなくていいよ。俺は、友達を大事にする智波ちゃんが大好きだよ」
智波 「陽真くん……」
ギュッ
智波 「わたしも、そんな陽真くんが大好き……///」
あゆ子 「……うん、色々言いたいことはあるが、」
奏 「とりあえず俺らがいないみたいな空気で話を進めるのはヤメロ」
582
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/01/02(木) 20:26:53 ID:cJVSX9MM
………………幕間2 「採算」
牧上 「でも店長、うちの店、振り袖三着セットもあったんですね。私見たことないですけど」
烏丸 「当然よォ。だって、緒方さんに三人分の着付けとレンタルをお願いされてから買ったんだもの」
牧上 「へ……?」
烏丸 「京都から取り寄せた最高級の振り袖よォ。ふふふ、それをしっかりと着こなすあの三人の行く末が怖いわァ……!」
牧上 「………………」
烏丸 「……? 牧上さん?」
牧上 「店長……」
クワッ
牧上 「久々のお客さんなのに、完全に赤字じゃないですかーーーーー!!」
牧上 「ただでさえ閑古鳥が鳴いてるのにーーー!! どうやって年を越すんですかもぉおおおおおおお!!!!」
おわり
583
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/01/02(木) 20:29:00 ID:cJVSX9MM
>>1
です。読んでくださった方ありがとうございました。
年末に間に合えばよかったのですが無理でした。
今年も読んでもらえると嬉しいです。
また投下します。
584
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/01/02(木) 21:22:26 ID:M8JcjeDk
乙です、次も期待しています
585
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/01/02(木) 22:49:40 ID:8j7WrGb.
おつぞ
586
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/01/03(金) 00:18:36 ID:0mZtDmLA
おつ
587
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/01/13(月) 00:20:22 ID:i657rC06
>>1
です。投下します。
>>474
さんリク書きました。
【ぼく勉】 蝶野 「あなたが感謝してくれたから」
588
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/01/13(月) 00:20:58 ID:i657rC06
………………三学期 蝶野家 朝
蝶野 「………………」
パチッ
蝶野 「………………」
リリリリリリリリリリ……!!!!
……カチャッ
蝶野 「………………」
蝶野 (……三学期、三年生は自由登校)
蝶野 (いつものくせで、目覚ましをかけてたみたいっスね)
蝶野 (目覚ましがなかったところで、結局その前に目が覚めてるんだから、習慣ってすごいっス……)
蝶野 「………………」
蝶野 (受験生としては、さっさと起きて勉強をするべきっスけど……)
蝶野 (……とりあえず、SNSでも見て、と……って、うわっ)
589
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/01/13(月) 00:21:28 ID:i657rC06
………………タイムライン
「バタフライフィールドの占いが更新されなくなって早数日……」
「バタフライフィールドの占いがないと不安で会社に行くのが怖いです」
「お願いだから早く復活して!」
………………
蝶野 「あー……」
蝶野 「………………」
蝶野 (……見なかったことにして、ネットニュースでも、っと……わっ)
………………ネットニュース
【速報】バタフライフィールドのブログコメ欄、オーバーフロー
【悲報】テレビ局も困り果てた!? バタフライフィールドはどこへ!?
………………
蝶野 「………………」
蝶野 (……冬休みに入ったから更新お休みしてたらすごい騒ぎになってるっスね)
蝶野 (テキトーにやってるだけなのになぁ)
590
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/01/13(月) 00:24:10 ID:i657rC06
蝶野 「………………」
ポチポチポチポチ……ピッ
蝶野 「……まぁ、これで文句はないっスかね……――」
――――ピロンピロンピロンピロンピロン!!!!!
蝶野 (こ、コメントがすごい勢いで増えているっス……)
蝶野 (こんなことで感謝感激されるとは、なんともはや……)
蝶野 「………………」
蝶野 (……まぁべつに、悪い気はしないっスけど)
蝶野 「………………」
蝶野 (目、覚めちゃったし……)
蝶野 (久しぶりに学校にでも行ってみるっスかね……)
591
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/01/13(月) 00:26:00 ID:i657rC06
………………
一年生の、晩秋の頃のことだっただろうか。
『おはよ、蝶野さん』
『おはようっス、古橋さん』
その人は、百人中百人が認めるであろう、美しい女性だった。
同級生で同性の自分すら――いや、きっとクラスメイト全員が見惚れるくらい、美しい女性だった。
『今日も冷えるね。冷え性だから困っちゃうよ』
『午後から雨みたいっスよ。だからもっと寒くなるかもしれないっスね』
『ええっ!? 雨なの!? 天気予報で言ってなかったから傘持ってきてないや……』
『あー……』
いらないことを言ったと思った。
私は、天気予報なんて見てはいない。なんとなく、分かるから言っただけだ。
私にはなんとなく分かる。見える。午後、雨が降ることが。
自分でも気味が悪いことだが、分かるのだ。
自分でも気味悪く思えることを、どうして言ってしまったのだろう。
592
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/01/13(月) 00:26:40 ID:i657rC06
『雨、降るのかぁ……』
『あ、いや、天気予報で降らないって言ってたなら、降らないかも……――』
『――よしっ! いまのうちに職員室で傘を借りてこよう! 降り出してからじゃみんな殺到するもんね!』
『へ……? いや、でも、天気予報では降らないって……』
『信じるなら、天気予報なんかより友達の言葉でしょ』
その人は、あっけらかんとそう言った。
『じゃ、職員室行ってくるね、蝶野さん』
『あ、は、はいっス……』
その人は、職員室に向かう素振りを見せたかと思えば、パタリと立ち止まり。
『あ、言い忘れることだった。
その美しい顔で、咲った。
『雨のこと教えてくれてありがとね、蝶野さん』
その笑顔を、きっと、私は一生忘れないだろう。
本当に本当に美しかったのだ。
593
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/01/13(月) 00:27:27 ID:i657rC06
………………通学路
蝶野 「………………」
蝶野 (……二年以上も前のことっスね)
蝶野 (それから、かしまんといのぽんとも意気投合して、いばらの会を作ったんスよね)
蝶野 (あの人の笑顔を曇らせたくないから。あの人を、近くで見守るために)
蝶野 (でも、あの人は……)
蝶野 「………………」
蝶野 (……段々と、笑わなくなっていった)
594
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/01/13(月) 00:28:15 ID:i657rC06
………………
『おはよう、蝶野さん』
『あ、おはよっス、古橋さん』
それは表面的には何も変わらず訪れた、些細な変化だ。
疲れるような、辛いような、苦しいような。
そのどれとも違うような、複雑な何かが見えた。
私には、猪森さんのように、超常的な何かを見る力はない。
けれど、なんとなく、行く末が見える。
なんとなく、雨が降る、だとか。なんとなく、よくないことが起こる、だとか。
目の前に相対した人の、少し先が、漠然と見える。
『……大丈夫っスか、古橋さん』
『へ? 何が?』
その人は、出会った頃と変わらない笑顔で、あっけらかんと言った。
『大丈夫だよ。元気も私の取り柄の一つだからね!』
595
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/01/13(月) 00:29:13 ID:i657rC06
『っ……』
その瞬間、見えた。
見えてしまった。
その人が――美しいその人が、苦悶の表情を浮かべ、涙する姿が。
その人の将来に、良くないことが――とても良くないことが起こる、その未来が。
『そ、そうっスか。なら、良かったっス……』
けれど、私はそれ以上何も言えなかった。
何を言っても、力になれないと思ったから。
そのときから、そう。
私は、ずっと。
((助けて))
待ち続けていたのだろう。
((誰か、この美しい人を、助けて))
彼女に手を差し伸べてくれる、王子様のような人が、現れるのを。
596
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/01/13(月) 00:30:14 ID:i657rC06
………………通学路
蝶野 「………………」
蝶野 (……で、また、なんというか、タイミングが良いというか悪いというか……)
成幸 「……ん? あ、えっと、蝶野……で合ってるか?」
蝶野 「おはようっス。合ってるっスよ。古橋さんのクラスメイトの蝶野っス」
成幸 「おう、おはよ。自由登校なのに朝早くに登校とは感心だな」
蝶野 「そっちも同じじゃないっスか」
成幸 「せっかくだし学校まで一緒していいか?」
蝶野 「それはまぁ、構わないっスけど……」
蝶野 「大丈夫っスかね? 唯我ファンに刺されたりしないっスか?」
成幸 「ははっ、なんだそりゃ。俺のファンなんか俺の弟妹くらいだから安心していいぞ」
蝶野 (半分冗談半分本気だったっスけど、本当に無自覚っスね、この人……)
蝶野 (あなたの周りの女子、ほとんどあなたのファンっスよ)
蝶野 (……って言っても、信じないっスよね)
蝶野 (うちの姫も含めて、みんなあなたのファンっスよ。まったく……)
597
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/01/13(月) 00:31:14 ID:i657rC06
………………
三年生に上がってすぐのときだ。
その人は、とある男子生徒と出会った。
その人にかかっていた、暗い暗い何かが、少し晴れて見えた。
少しずつ、本当に少しずつだけれど、暗い何かが減っていくのが分かった。
それと同時に、その人の未来が、少しずつ変わっていくのが分かった。
相変わらず暗い未来だったけれど、明確に変わった。
その人が、ひとりきりではなくなった。
どんなに苦しいことや辛いことがあっても、誰かが一緒にいてくれるような、そんな未来。
そして、数ヶ月が経ったある日。
それは、劇的に変化した。
ピカピカと光り輝いて見えた。
元々美しかったその人が、なお一層輝いて美しく見えた。
598
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/01/13(月) 00:32:43 ID:i657rC06
『何かいいことでもあったっスか?』
私は、思わずそう聞いていた。
『えっ? い、いいことって、べつに……』
その人は、逡巡した後、こっそりと教えてくれた。
『……実は、お父さんと仲直り……ってわけじゃないけど、なんていうか……』
『少し、腹を割ってお話できたんだ。進路も認めてくれるって言ってくれて……』
『あとは、成幸くんが……』
『……って、これは絶対言っちゃダメな奴だ! 今のなし! なしだからね、蝶野さん!』
ああ、もう結果なんてわざわざ言うまでもないだろうけれど。
その人の未来は、決定的に変わっていた。
私には、たしかな未来は見えない。はっきりとした何かは見て取れない。
占いのようなものだ。不定形の、もやのようなカタチでしか分からない。
けれど、その人の未来が、美しく切り替わったのだけは、分かった。
きっと夢を叶え、多くの人に囲まれて、幸せに生きているであろう未来が、見えたのだ。
599
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/01/13(月) 00:33:27 ID:i657rC06
………………通学路
蝶野 「唯我さんは、今日はどうして登校するんスか?」
成幸 「ん、ああ、今日は古橋と約束があるんだよ。センター前の最終確認だな」
成幸 「センターまで十余日。あんまり猶予はないけど、最後までできることはしてやりたいからな」
蝶野 「………………」 クスッ 「……まじめっスねぇ」
成幸 「悪かったな。俺はどうせ、ガリ勉しか能がないつまらない男だよ」
蝶野 「そんなこと言ってないっスよ」
ニコッ
蝶野 「唯我さんはカッコ良くて、頼りになるって思ってるっスよ。本当に」
成幸 「っ……」
成幸 「そ、そうかよ……」 プイッ
成幸 (お世辞でも同級生にカッコいいとか言われると、照れるな……)
蝶野 「………………」
蝶野 (……そう、本当に)
蝶野 (本当にそう思ってるっスよ、唯我さん)
600
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/01/13(月) 00:34:35 ID:i657rC06
………………
―――― 『雨のこと教えてくれてありがとね、蝶野さん』
あの日、あなたの笑顔が嬉しかったから、占いも始めた。
ブログで発信したら、たくさんの人が喜んでくれて、良かったと思った。
私にたくさんのものをくれたあなたのために、恩返しがしたいと思った。
あなたが好きな――きっとあなたを救ってくれたのであろう、彼と。
末長く結ばれてほしいと思った。
でも、残念。
私には、はっきりとした未来は見えない。
だから、あなたの好きな彼の未来を占っても、やはり幸せそうな姿しか、見えない。
その隣に立っている、誰かの正体までは、分からない。
けれど、ああ、願わくは。
彼の隣で立っている誰かが――彼の手を取る誰かが、あなたであることを。
あなたが彼の隣で、幸せになることを。
おわり
601
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/01/13(月) 00:35:17 ID:i657rC06
………………幕間 「似た者父娘」
文乃 「………………」
ドキドキドキドキドキドキドキドキ……
文乃 「……!? バタフライフィールドのブログが更新された!?」
零侍 「何!? それは本当か、文乃!?」
文乃 「よ、良かったよぅ。最近これを見ないと少し不安だったから……」
零侍 「ああ、本当に良かった。私もこれがないと不安でな……」
父娘そろってすっかりバタフライフィールドにハマってました。
おわり
602
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/01/13(月) 00:39:35 ID:i657rC06
>>1
です。
完全な妄想です。私の脳内で補完した内容が大変多いです。
不快に思われた方がいたら申し訳ないことだと思います。
3-Aの生徒ほぼ全員が古橋姫の見た目の美しさだけに心酔しているとは思えないので、
きっと皆何かしら古橋姫の内面の美しさに触れる機会があったのだろうなと思っています。
かしまんもいのぽんも、きっとそうだと思っています。
あとすみません、今回のSSと関係ないですが、ひとつ前の理珠さんの話ですが、
皆さんお分かりと思いますが原作123話の直前のつもりです。
理珠さんのイメチェンには、絶対に烏丸さんが関わってるだろうと踏んだ私の妄想です。
また投下します。
603
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/01/13(月) 00:55:23 ID:bSUr.7/U
おつ
604
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/01/13(月) 03:18:12 ID:70dsccVA
おつです
605
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/01/13(月) 10:59:55 ID:mnBZANRY
ええな
606
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/01/14(火) 02:06:38 ID:ot7Jjn3M
蝶野さんにこんな裏設定があってもいいよね
607
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/02/27(木) 18:51:33 ID:89TR1vm2
前々スレから全部読ませて頂きました、最高です
水希ちゃんをこんなにも天使に描いてくれて本当にありがとうございます
608
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/10(火) 00:11:49 ID:HnGnPGK6
今週の成幸の告白凄く良かった
マルチエンドには関城さんや美春も含まれてて欲しいな
609
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/10(火) 14:43:44 ID:4grvA.BE
乙
610
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/10(火) 16:30:52 ID:HFd6/XeA
イッチの美春さん長編ほんとすこ
よくできた映画一本観たくらいの充実感ある
611
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/11(水) 01:33:09 ID:jh6ojSss
本編パラレルええな
612
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/09(木) 23:04:35 ID:7Jz2yKsQ
>>1
です。投下します。
数ある世界線の中でアニメ時空に一番近い世界線と思っていただければ幸いです。
【ぼく勉】 あすみ 「誕生日をあなたと」
613
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/09(木) 23:05:49 ID:7Jz2yKsQ
>>1
です。投下します。
数ある世界線の中でアニメ時空に一番近い世界線と思っていただければ幸いです。
【ぼく勉】 あすみ 「誕生日をあなたと」
614
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/09(木) 23:06:55 ID:7Jz2yKsQ
………………大学 ガイダンス
『――……えー、つまり、皆さんはまだ学生ではありますが、もう医者としての一歩を踏み出しているのです』
『生半可な学生気分は己を殺します。そして、その先には患者を殺してしまう未来があります』
『気を抜くことなく勉学に励みなさい。そうでないと、本当に将来患者を殺すことになりますよ』
あすみ 「………………」
あすみ (……さすが、国立医学部。言うことが厳しいな)
あすみ (教員だけじゃない。周りの新入生も皆まじめに話を聞いている)
あすみ (予備校とは全然雰囲気が違うな……)
あすみ 「………………」
あすみ (……アタシも頑張らねーとな)
615
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/09(木) 23:07:54 ID:7Jz2yKsQ
………………帰り道
あすみ 「……はぁ」
あすみ (高いとは聞いてはいたけどな)
あすみ (まさかあんなにかかるとは。教科書代……)
あすみ (がんばって貯めたバイト代がかなり吹き飛んだな)
あすみ (……んー、勉強がんばるのは当然としても、)
あすみ (バイトも今まで以上にやらないと、こりゃ後期の学費と教科書代が怪しいぞ)
あすみ (受験なんか比じゃないくらい忙しくなりそうだな……)
あすみ 「………………」
―――― 『受験が終わったら……』
あすみ (……あんな風に言ってたのが遠い昔のことみてーだ)
あすみ (いかんいかん。せっかくやりたいことができるようになったんだ)
あすみ (勉強が忙しかろうと、バイトが忙しかろうと、アタシが望んだことなんだから)
あすみ (アタシががんばらねーとダメだろ)
616
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/09(木) 23:08:35 ID:7Jz2yKsQ
あすみ (今日は、後輩が家に来る日)
あすみ (……たぶん、最後になるであろう後輩との時間)
あすみ (いつまでも後輩を頼りにするわけにはいかないし、)
あすみ (後輩に彼氏のフリをしてもらう必要も、もうない)
あすみ (……もう、ない)
あすみ 「………………」
あすみ 「……べつに、だから何だってわけじゃないけどさ」
あすみ 「……早く帰ろ」
617
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/09(木) 23:10:47 ID:7Jz2yKsQ
………………小美浪家
かすみ 「はーい、唯我君。あーん」
成幸 「いや、あの、自分で食べられるんで……」
かすみ 「もーっ。彼女の母親にそんなに照れちゃって。可愛いなぁ」
かすみ 「そんなんじゃまたあすみちゃんにからかわれちゃうぞ〜?」
かすみ 「ってことで、はい、あーん……」
成幸 「いや、だから……って」 ハッ
あすみ 「………………」
成幸 「せ、先輩!?」
かすみ 「あら、あすみちゃん。おかえりなさーい!」
かすみ 「いま、唯我君と母子水入らずのスキンシップ中だったの」
かすみ 「あすみちゃんも混ざる?」
あすみ 「……混ざる? じゃねー! 何やってんだババアー!」
かすみ 「きゃーっ。あすみちゃんが怒った〜」
618
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/09(木) 23:11:21 ID:7Jz2yKsQ
………………
あすみ 「……ったく、あのバカ親」 ブツブツブツ
成幸 「あ、あの、先輩……」
あすみ 「お前もお前だよ、まったく」 ブツブツブツブツ
あすみ 「人の母親にデレデレしやがって……」
成幸 「すみません。いや、デレデレしてるつもりはなかったんですが……」
あすみ 「………………」 ジロリ
成幸 「……人のお母さんにデレデレしてすみませんでした」 ドゲザー
あすみ 「……ふん」
あすみ 「………………」 (……これじゃダメだ。せっかく、最後なのに)
あすみ 「……そんなことより、お前、家に来るの随分早かったな」
あすみ 「約束の時間はまだだろ」
619
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/09(木) 23:12:03 ID:7Jz2yKsQ
成幸 「……はい。ちょっと早めに来る必要があったので」
あすみ 「?」
成幸 「すみません、先輩。今日はガイダンス後の勉強計画立て……の予定でしたけど」
成幸 「実は少しウソついてました」
あすみ 「……ウソ?」
成幸 「すみません、先輩。とりあえず、何も聞かずについてきてもらえませんか?」
あすみ 「……?」
620
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/09(木) 23:12:46 ID:7Jz2yKsQ
………………High Stage入り口
成幸 「………………」
あすみ 「お、おい、後輩。何も聞くなとは言うけどな……」
あすみ 「何でハイステージに来たんだ? 今日はバイト入ってねーだろ」
あすみ 「っていうか、今日は休店日だって店長が言ってたし……」
成幸 「……まぁ、休店日というよりは、貸し切りが正しいですかね」
あすみ 「後輩……?」
成幸 「じゃ、皆さん、入りますよー!」
ガチャッ
成幸 「……さ、どうぞ、先輩」
あすみ 「どうぞって、お前、一体……」
パン……パンパンパン!!!!
『お誕生日おめでとーーーーー!!!!』
あすみ 「……!?」
621
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/09(木) 23:13:31 ID:7Jz2yKsQ
あすみ 「へ? へ? へ?」
マチコ 「あしゅみー戸惑ってる。可愛いー!」
ヒムラ 「意外と想定外のことに弱いよね、あしゅみーって」
ミクニ 「ほら、あしゅみーこっち向いてこっち向いて」
パシャリ
ミクニ 「はい、あしゅみーの戸惑い顔チェキもらいましたー」
あすみ 「お、お前ら、何で……? って……」
――――あしゅみー誕生日おめでとう!!――――
あすみ 「何だあの横断幕ー!?」
あすみ 「……ん? 誕生日?」
あすみ 「………………」
ハッ
あすみ 「……そ、そうか。そういやアタシ、今日誕生日か。だから誕生日会か」
マチコ 「今さらー!?」
622
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/09(木) 23:14:05 ID:7Jz2yKsQ
店員 「さ、さ、あしゅみーのアネゴ。こっちです」
店長 「お誕生日席はこっちだ、あしゅみー。唯我君、同伴ご苦労だったな。ありがとう」
成幸 「いえいえ。俺も先輩にはお世話になってますから」
あすみ 「お、おい、後輩。これ、どういうことだよ」
成幸 「すみません、先輩。サプライズだったので、結果的に嘘つくことになっちゃいましたけど」
成幸 「ハイステージの皆さんが、先輩を驚かせたいとがんばっていたので、協力しちゃいました」
理珠 「私たちもいますけどね」
文乃 「そうだよー、成幸くん! わたしたちも飾り付けとかお料理とか手伝ったよー!」
うるか 「文乃っちは早々にキッチン出禁になってたけどね」
あすみ 「のわっ!? お前らまで!?」
文乃 「成幸くんから先輩のサプライズ誕生日パーティをするって聞いたので」
うるか 「ならあたしたちも混ぜてもらわないとだよねー! って」
理珠 「はい。私たちも、先輩にたくさんお世話になりましたから」
あすみ 「お前ら……」
あすみ 「……ん?」
623
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/09(木) 23:14:54 ID:7Jz2yKsQ
真冬 「………………」 コソコソコソ
あすみ 「……先生?」
真冬 「っ……」 ビクッ
あすみ 「何してるんですか、そんな隅っこで……」
あすみ 「……っていうか、何でメイド服着てるんですか」
真冬 「ふっ、不可! その質問は不許可よ、小美浪さん」
マチコ 「真冬ちゃんはねー、ふふふ〜♪」
マチコ 「たまたま店の前を通りかかったところを捕まえちゃいましたっ」
あすみ 「捕まえちゃいましたっ、じゃねーよ。えげつないことしやがって……」
あすみ 「すみません、先生。アタシの誕生日会になんかに巻き込んで……」
真冬 「……べつに、巻き込まれたとは思っていないわ」 プイッ
真冬 「……お誕生日おめでとう、小美浪さん」
あすみ 「あっ……」 クスッ 「ありがとうございます、真冬ちゃん」
真冬 「なっ……」 カァアアアア…… 「そ、その呼び方はやめなさいと何度も……!!」
624
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/09(木) 23:16:03 ID:7Jz2yKsQ
マチコ 「さささー、それじゃこの辺で本日のメインイベント、いってみよー!」
ドーーーーン!!!!
ヒムラ 「みんなでがんばってこしらえて誕生日ケーキのろうそくに火をつけてー」 シュボボボ!!!
ミクニ 「電気を消してー!」 パチパチパチッ
あすみ 「ろうそくが二十本……。そっか、アタシももう二十歳か……」
〜♪
『ハッピーバースデー♪ トゥ、あしゅみー♪』
あすみ 「ん……」
フゥ……
『おめでとー!!!』
パチパチパチパチパチパチパチパチ……!!!!!
………………………………
………………
625
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/09(木) 23:18:07 ID:7Jz2yKsQ
………………
マチコ 「はい、あしゅみー。これ、わたしたちからのプレゼント」
ミクニ 「図書カードだよ。これから色々入り用になるでしょ」
ヒムラ 「がんばって立派な女医になって、ハイステージに本物の女医として君臨してくれ」
あすみ 「はは……。ハイステで女医やれるかはわかんねーけど、ありがとな」
店長 「これは我々からだ」
あすみ 「……? これ、メイド服?」
店長 「新作だ。唯我君にも手伝ってもらってデザインした」
あすみ 「お、おぅ……」
店長 「これから勉強で忙しくなるとは思うが、たまにでいいから店に出てくれると助かる」
あすみ 「……はい、店長。アタシも、金は必要なんで、ぜひ」
626
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/09(木) 23:18:46 ID:7Jz2yKsQ
うるか 「先輩、これはあたしからー!」
理珠 「私は、これを」
文乃 「お誕生日おめでとうございます、先輩」
あすみ 「お前らまで……。なんか悪いな。ありがとう」
真冬 「……私からも、つまらないものだけど」
あすみ 「先生まで!? ありがとうございます。今日の今日でよく準備できましたね……」
ワイワイワイ……
あすみ (……ったく。わざわざ誕生会なんて。アタシのガラじゃねーっての)
あすみ (みんな誕プレまで用意してくれて、なんか……)
クスッ
あすみ (……ちくしょう。嬉しいじゃねーか)
成幸 「……先輩」
あすみ 「ん? おう、後輩」
あすみ 「……ったく、何がサプライズだよ。騙しやがって」
成幸 「あはは、それはすみません。でも、嬉しかったみたいで良かったです」
627
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/09(木) 23:19:22 ID:7Jz2yKsQ
あすみ 「なっ……」 カァアアアア……
あすみ 「……そりゃまぁ、こんな風に祝ってもらえりゃ嬉しいに決まってるだろ」
成幸 「まぁ、そうですよね」
―――― ((……たぶん、最後になるであろう後輩との時間))
―――― ((いつまでも後輩を頼りにするわけにはいかないし、))
―――― ((後輩に彼氏のフリをしてもらう必要も、もうない))
あすみ (……まぁ、残念でもあったけどな、なんて言えるわけもないよな)
成幸 「先輩、お誕生日おめでとうございます。これ、俺からのプレゼントです」
あすみ 「お前まで用意してくれたのか。悪いな……」
あすみ 「………………」
あすみ 「……開けてもいいか?」
成幸 「どうぞ」
あすみ 「ん……」
あすみ 「ノート……?」
628
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/09(木) 23:20:05 ID:7Jz2yKsQ
成幸 「はい。先輩が苦手な部分をまとめました」
成幸 「センターで間違えたところとか、二次試験で間違えたところとか」
成幸 「さすがに医学部の範囲は俺には分からないので、これが限界ですけど」
成幸 「大学の授業が始まる前に、一度目を通してもらうといいかなと思って」
成幸 「……たぶん、俺がもう先輩に教えられるようなことはないので、これが最後だと思いますけど」
あすみ 「っ……」
あすみ (最後、か……)
あすみ 「……ああ、そうだな。ありがとよ」
成幸 「あ、それと……」
スッ
成幸 「これはタダでもらったものですから、プレゼントとは言えないでしょうけど、どうぞ」
あすみ 「へ? これって……チケット……?」
629
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/09(木) 23:20:42 ID:7Jz2yKsQ
あすみ 「あっ……ど、ドハっちゃんランドのチケット!?」
あすみ 「あのときの……?」
―――― 『お…… 大当たりぃぃ!!!』
―――― 『一等の…… ドハっちゃんランド御招待券プレゼントー!!』
―――― 『先輩が使ってください 有効期限半年ありますし 受験が終わってからでも行けますから』
成幸 「結局あのとき渡せてなかったので」 クスッ 「ぜひ行ってください」
あすみ 「あ、ああ、ありがとう」
あすみ 「………………」
―――― 『……たぶん、俺がもう先輩に教えられるようなことはないので、これが最後だと思いますけど』
あすみ (最後……)
あすみ (……は、嫌、だな)
ギュッ……
成幸 「……? 先輩?」
630
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/09(木) 23:21:20 ID:7Jz2yKsQ
あすみ 「……な、なぁ、後輩」
成幸 「はい?」
あすみ 「たしかにお前は教育学部で、アタシは医学部で、全然違うし……」
あすみ 「アタシも、これ以上色々なことでお前に迷惑をかけるのは忍びないと思うし……」
あすみ 「……だから、勉強に関しては、このノートがきっと最後、なんだと思う」
成幸 「……?」
あすみ 「……でも、アタシは、」
あすみ (アタシは……)
―――― 『今度こそチューしとくか?』
―――― 『な? 冗談冗談♪』
あすみ (……アタシは)
あすみ 「……アタシは、お前と最後なのは、嫌だ」
631
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/09(木) 23:22:13 ID:7Jz2yKsQ
成幸 「先輩……?」
あすみ 「……だから、このチケットはいらない。お前が使えよ」
成幸 「へ? で、でも、先輩……――」
あすみ 「――……でも、ひとりで行くなよ。絶対……」
あすみ 「……絶対、アタシも誘えよ。一緒に、行くから……」
成幸 「あっ……」 カァアアアア…… 「は、はい。分かりました」
あすみ 「っ……」
カァアアアア……
あすみ (顔が、熱い。絶対真っ赤になってる。ああ、ちくしょう……)
―――― 『……アタシは、お前と最後なのは、嫌だ』
あすみ (な、何を恥ずかしい事を言ってんだ、アタシは……)
632
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/09(木) 23:22:45 ID:7Jz2yKsQ
あすみ (……でも)
クスッ
あすみ (後輩に勉強を教えてもらうことが、これで最後でも……)
あすみ (後輩との時間が最後じゃないって、それだけで……)
あすみ 「……ああ、そうそう。ちなみに、後輩」
成幸 「? なんです?」
あすみ 「バカ親父は未だにアタシとお前の事ラブラブカップルだと思い込んでるからな」
成幸 「!? ま、まだ説明してなかったんですか!?」
あすみ 「えー? だってパパに説明して怒られるの怖いしー」 キャルーン
成幸 「あんたそんなキャラじゃないでしょ!?」
あすみ 「ま、ともあれ、だ」
ニコッ
あすみ 「だから、これからも恋人役、よろしくな、こーはい♪」
おわり
633
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/09(木) 23:24:07 ID:7Jz2yKsQ
………………幕間 『バカ親父』
宗二朗 「!?」 キュピーンン
患者 「せ、先生!? どうかしましたか!?」
患者 「私のレントゲン写真、そんなに悪いですか!?」
宗二朗 「成幸君とあすみがイチャイチャしている波動を感じる!?」
患者 「へ……?」
かすみ 「はーい、宗二朗ちゃーん。今は診療中だからしっかりしましょうねー」
おわり
634
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/09(木) 23:26:07 ID:7Jz2yKsQ
>>1
です。
読んでくださった方ありがとうございました。
4月9日はあすみさんの誕生日なので、一応の完結を見たところで書きたいと思っていました。
ただ、冒頭で申し上げた通り、世界線はアニメが一番近いと思います。
うるかさんもしっかり日本にいます。
また投下します。
635
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/09(木) 23:52:38 ID:K/dvYsUQ
おつ
636
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/11(土) 01:36:21 ID:yzip6BFw
いつも応援しています!楽しみで仕方ありません!
がんばってください!
637
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/20(月) 22:31:15 ID:tZaPmrsM
>>1
です。投下します。
【ぼく勉】 文乃 「いつか君にお返しを」
638
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/20(月) 22:39:13 ID:tZaPmrsM
………………古橋家
ガサガサガサ……
文乃 「……ふー」
文乃 「なんかまだまだ出てくる感じだね、お父さん」
零侍 「ああ。しばらく大掃除なんてしていなかったからな」
文乃 「家の収納に甘えてきたけど、そろそろ物が収まらなくなってきたし」
文乃 「せっかく今年は一緒に大掃除できるんだから、徹底的にいらないもの捨てちゃおうね、お父さん」
零侍 「……ん、ああ」
―――― 『……――だねっ、零侍くんっ』
零侍 「………………」 フッ 「……そうだな」
639
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/20(月) 22:39:45 ID:tZaPmrsM
文乃 「それにしても……」
グチャァ……
文乃 「一度も見た事ないようなものまで出てくるのはなんなの……」
零侍 「ああ、その箱は昔私が買ってきたおもちゃだな」
文乃 「おもちゃ? じゃあ、これ私の……?」
零侍 「いや……」
パカッ
零侍 「……私は玩具に疎かったものでな。全部男児用だ」
零侍 「懐かしいな。静流にも呆れられたものだ……」
文乃 「……まぁ、旦那が一人娘のために買ってきたおもちゃがこれじゃ、ねぇ」
文乃 「これはロボット? こっちは戦隊物? これは……御面ライダー……?」
文乃 「まったくもう、お父さんはそそっかしいんだから……」
―――― 『まったくもう。零侍くんったらそそっかしいんだから』
零侍 「……ああ」
640
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/20(月) 22:40:59 ID:tZaPmrsM
文乃 「……ふふ、でも」
零侍 「?」
文乃 「昔のわたしのために買ってきてくれたんだよね。ありがとう、お父さん」
零侍 「ん……あ、ああ……」
零侍 「……呆れ方からお礼の言い方まで、どんどん似ていくものだ」
文乃 「? なんか言った?」
零侍 「いや、なんでもない。作業に戻ろう」
零侍 「この収納から出てくるものはほとんどゴミでよさそうだな」
零侍 「む……。これは古着か。お前のものだな」
文乃 「わー、懐かしいー! これお気に入りだったワンピースだ!」
文乃 「えへへ。これ、お母さんと一緒に買ったやつだよ。お母さんとおそろいなの!」
文乃 「お母さんの方もある! 懐かしいな……」
零侍 「………………」
641
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/20(月) 22:41:48 ID:tZaPmrsM
零侍 「……もうサイズ的に着られる服はなさそうだが、どうする?」
文乃 「? どうするって?」
零侍 「静流との思い出が残っているのだろう? 残しておくか?」
文乃 「………………」
フルフル
文乃 「……ううん。もう着られないものを残しておいても仕方ないよ」
文乃 「思い出は、頭の中に残ってるよ。だから、これはもういらないんだ」
零侍 「……ああ。そうだな」
文乃 「でも、まだきれいで着られるよね。捨てちゃうのももったいない気がするなぁ」
零侍 「む……。そうだな。知り合いに譲れるのなら、そうした方がいいかもしれんな」
零侍 「とはいえ、これくらいの子供がいる家庭に知り合いは……」
文乃 「うーん……」 ハッ 「あっ……」
クスッ
文乃 「……もらってくれる人、いるかも」
零侍 「……?」
642
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/20(月) 22:42:23 ID:tZaPmrsM
………………唯我家
葉月 「きゃーーーーーー!!!」
葉月 「可愛いお洋服がたくさんーーーー!!!」
花枝 「なんか申し訳ないわねぇ、文ちゃん」
花枝 「本当にこんなにたくさんもらってしまっていいの?」
文乃 「はい! さすがにわたしはもう着られませんし、葉月ちゃんが着てくれるなら嬉しいですから」
葉月 「きゃー! お姫様みたいなお洋服も!」
葉月 「こっちはフルピュアみたい! かわいい!」
成幸 「良かったな、葉月。ほら、喜ぶのはいいけど、その前に何かしなくちゃな」
葉月 「!」 ピョコッ 「文ねーちゃん、ありがとう!」
文乃 「いえいえ、どういたしまして」 ニコッ
文乃 (ふふふ。葉月ちゃん、喜んでくれてよかった)
文乃 (でも……)
水希 「………………」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!
文乃 (問題はあっちだよね……)
643
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/20(月) 22:43:00 ID:tZaPmrsM
水希 「ふ、古橋さん! 葉月とお母さんは籠絡できても、私はそうはいきませんからね!」
水希 「葉月に取り入ってお兄ちゃんと近づこうって魂胆でしょうけど、そうはいきませんから!」
水希 「……でも葉月のためにわざわざお洋服を持ってきてくれてありがとうございます!」
文乃 「ど、どういたしまして……」
文乃 (ちゃんとお礼を言ってくれるあたり、根は本当に良い子なんだよね……)
和樹 「ふーん、だ」 ツーン
成幸 「ん? 和樹まで水希みたいになってどうした?」
和樹 「葉月はいいけど、俺のお洋服はないし」 ツーン
成幸 「いや、仕方ないだろ。古橋は女の子なんだから……」
文乃 「あ、そうそう。和樹くんにも色々持ってきたんだ」
ドサッ
和樹 「……!? おもちゃ!?」
文乃 「昔お父さんが私のために買ってきたおもちゃなんだって」
成幸 「お、親父さん、娘にこんな男の子が喜びそうなものを……?」
644
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/20(月) 22:43:40 ID:tZaPmrsM
文乃 「お父さんったら、娘のわたしのために男の子用のおもちゃを買ってきちゃったみたいなの」
文乃 「そそっかしいよね」 クスクス
成幸 「ん、そうだな」
成幸 (……古橋がすごく楽しそうに親父さんの話をしてる)
―――― 『今日はお父さんが家にいるから…… あんまり 帰りたくなくて』
成幸 (なんか……) クスッ (俺も、嬉しくなってくるな)
和樹 「文ねーちゃん! これ、もらっていいの!?」 キラキラキラ……!!!!
文乃 「うん。ちょっと古いおもちゃだけど、まだまだ遊べると思うよ」
和樹 「やったー! ありがとー、文ねーちゃん!!」
成幸 「……ったく。現金な奴だな」
葉月 「きゃー! かわいい〜!」 和樹 「おー! この剣光るー!」 キャッキャ
成幸 「悪いな、古橋。おもちゃまで……」
文乃 「ううん。ほとんど使ってないおもちゃだから、使ってくれた方が嬉しいよ」
645
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/20(月) 22:44:40 ID:tZaPmrsM
成幸 「で……」
水希 「ぐぬぬぬぬ……」 ギリリ 「葉月のみならず和樹までたぶらかして……」
水希 「でも和樹のおもちゃまですみません」 ペコリ 「本当にありがとうございます、古橋さん」
水希 「それはそれとしてぐぬぬぬ……」
成幸 「お前はまだそんな隅っこで……」
文乃 「あはは……」
文乃 「あ、そうそう。水希ちゃんにも持ってきたんだ」
水希 「!? へ、へー! 古橋さんのお古のお洋服でしょうか」
水希 「で、でも残念だなー! たぶんちょっとサイズが合わないんじゃないかなー!」
水希 「どこがとは言いませんけど、ちょっとサイズがなー!」
文乃 「……はは、うん。そうだね」
ズーーーーーン
文乃 「……だと思ったから、はい、これ。たぶん私には少し大きいから。どことは言わないけど」
水希 「へ……? これ、ワンピースですか……?」
646
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/20(月) 22:45:13 ID:tZaPmrsM
文乃 「うん。これね、お母さんが着てた服なんだ」
水希 「!? 古橋さんのお母さんの……?」
文乃 「……って言っても、たぶん一回くらいしか着られてないんじゃないかな」
文乃 「葉月ちゃん。ちょっとこっち来て」
葉月 「? はーい」 トコトコトコ
文乃 「えっとね……あったあった。このワンピース」
文乃 「これとおそろいなんだ。昔、お母さんと一緒に買ったんだ」
葉月 「わー! じゃあこれふたりで着ると、水希ねーちゃんとペアルック!」
文乃 「うん。きっとかわいいと思うよ」
水希 「い、いいんですか? これ、いただいてしまって……」
文乃 「うん! ぜひもらってよ!」 ニコッ
文乃 「葉月ちゃんと水希ちゃんみたいな、仲良しの姉妹に着てもらえれば、きっとそのお洋服も嬉しいと思うから」
水希 「ん……」 カァアアアア……
水希 「あ、ありがとうございます、古橋さん。大切にします」
文乃 「うん! どういたしまして」
647
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/20(月) 22:46:14 ID:tZaPmrsM
………………帰り道
文乃 「はー、今日はみっちり勉強できたねー、成幸くん」
成幸 「ああ、そうだな。テストの結果も良好だし、調子いいじゃないか」
文乃 「えへへ。成幸くんのおかげだよ。ありがと」
成幸 「俺は大したことはしてないよ。お前のがんばりが結果に出てるだけだろ」
文乃 「そう? じゃあ、そういうことにしておこうかな」
文乃 (……なんて、全部君のおかげで間違いないんだけどね)
文乃 「でもごめんね。晩ご飯までいただいて、遅くなったからって送ってもらっちゃって」
成幸 「気にすんなよ。適度な運動はこの後の集中にいいしさ」
成幸 (送ってかないと母さんがうるさいし……)
成幸 「それに水希も、ほら。お礼のつもりだったんだろ」
成幸 「今日の晩飯、いつもの倍以上は豪華だったぞ」
文乃 「へ? お礼……?」
成幸 「葉月と和樹がいろいろなものいただいたし、自分もワンピースをもらったからな」
648
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/20(月) 22:46:52 ID:tZaPmrsM
文乃 「そんなの、気にしなくていいのに。わたしこそ、いつも成幸くんにお世話になってるんだから」
成幸 「そうか? それを言うなら、俺もいつもお前にお世話になってるけどな」
成幸 「色々相談したり、とかさ」
文乃 「そんなの大したことじゃないよ。君がわたしにしてくれたことに比べたら、さ」
―――― 『お前らのこと幸せにしてみせるから 俺を信じてつきあってくれ!!』
―――― 『かっこいいよなぁ 古橋は』
―――― 『お前が本当にやりたいこと 俺が 全力で応援してるからな』
文乃 (……本当の、本当に。君が私に、してくれたことに比べたら)
ドキドキドキドキドキドキドキドキ……
文乃 「……私はきっと、たくさんお返しをしなくちゃいけないんだよ、君に」
649
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/20(月) 22:47:31 ID:tZaPmrsM
成幸 「ん……」 ドキッ 「あ、あはは。そう言われるとなんか照れるな」
成幸 「じ、じゃあ古橋、いつか俺にお返ししてくれよな」
テヘッ
成幸 「なーんて、冗談……――」
文乃 「――――うん。するよ」
成幸 「へ……?」
文乃 「するよ。いつか、絶対。受験が終わった後に。君に、お返し」
―――― 『お前らのこと幸せにしてみせるから』
文乃 (……君が、わたしのことを幸せにしてくれた、その後に)
文乃 (それが、どういう形のお返しになるか、今はまだ分からないけれど)
文乃 (だから……)
文乃 「……だから、期待しててね。成幸くんっ」
おわり
650
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/20(月) 22:48:11 ID:tZaPmrsM
………………幕間1 『やはり敵』
水希 「………………」 ショボーン
水希 (……この前は、せっかく色々と持ってきてくれた古橋さんに心ない言葉を浴びせてしまった)
水希 (古橋さんは私たちに対して厚意100%で持ってきてくれたっていうのに……)
水希 (きっと古橋さんはお兄ちゃんに邪なことを考えたりはしないんだ。いい人だもん)
水希 「……と、いうことで今日はお詫びもかねてケーキを焼きました!」
水希 「古橋さん、お勉強の休憩にケーキでもいかが!?」
文乃 「ふぇっ!? 水希ちゃん!?」 ササッ
水希 「………………」
文乃 「えっ、け、ケーキ? やったー! 嬉しいなー!」
水希 「……古橋さん。今慌てて隠した携帯電話……」
文乃 「ふぇっ……?」 ギクッ
水希 「待ち受け、ねこを抱いたお兄ちゃんでしたね……?」
文乃 「ふぇっ!?」 ギクギクッ
水希 (や、やはり……) ギリリッ (この人は敵!)
651
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/20(月) 22:48:58 ID:tZaPmrsM
………………幕間2 『見栄』
文乃 「………………」
文乃 (……私の記憶の中のお母さんとも、動画のお母さんとも合致しない)
文乃 (お母さん、今のわたしと同じくらいだもんね……)
文乃 (どこがとは言わないけど……)
文乃 (………………)
文乃 「……お母さん、絶対このワンピース、見栄張ったよね……?」
おわり
652
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/20(月) 22:49:43 ID:tZaPmrsM
>>1
です。
読んでくださった方ありがとうございました。
また投下します。
653
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/21(火) 01:31:25 ID:9py1LuAk
おつ
静流母もシックスパッドしてたのかなww
654
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/21(火) 06:58:52 ID:5TvDjXzU
水希ちゃんラスボスかわいい
655
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/22(水) 04:26:36 ID:nk/erQyU
おつんこ!
656
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/22(水) 12:12:12 ID:.NKmdXU6
やっぱ小姑水希ちゃんがさいかわだよね?
657
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/23(木) 22:41:33 ID:8/XR1gKQ
>>1
です。投下します。
【ぼく勉】 真冬 「自分の気持ちに素直にね」
658
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/23(木) 22:42:16 ID:8/XR1gKQ
………………結果発表直後 一ノ瀬学園 生徒指導室
真冬 「………………」
---- 『--……そう』
---- 『……なら…… もう…… いいのかしら……』
---- 『もう…… 我慢しなくて いいのかしら……』
---- 『おめでとう えらいわね 今までよく頑張ったわね』
---- 『3人ともすごいわ 先生自慢の生徒よ』
真冬 「っ……」 グスッ
真冬 (いけないわ。思い出したらまた涙が……)
真冬 (情けない。教師として、こんなことじゃいけないのに……)
真冬 (でも……)
---- 『合格しました 3人とも』
真冬 (……本当に、よかった)
659
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/23(木) 22:54:28 ID:8/XR1gKQ
真冬 (さて、今日合否報告の予定者、あとは……一人だけね)
真冬 「ん……?」
真冬 「関城紗和子さん……? この子って、たしか……--」
紗和子 「--……はい。関城紗和子です」 ズーーーン
真冬 「!?」 (き、恐怖! ドアの隙間から死んだ魚のような目が……!)
真冬 「……って、そんなところで何をしているの?」
紗和子 「すみません。何か涙ぐんでいたようだったので、入りにくくて……」 キィ……
真冬 「!? な、涙ぐんでなんかいません! 少し……花粉症なだけよ!」
紗和子 「はぁ……。まぁいいですけど。合否の報告に来ました。関城紗和子です」 ズーン
---- 『ええ まったくもって遺憾です……』
---- 『まったく…… 関城さんたらプンプンです!』
真冬 「ああ、あなたが……」
紗和子 「第一志望の弓弦羽大学、合格しました……」 ズーン
660
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/23(木) 22:55:00 ID:8/XR1gKQ
真冬 「あ……そ、そうなのね。おめでとう! よかったわね!」
紗和子 「はい。ありがとうございます……」 ズーン
真冬 「……え、えっと」
真冬 「どうかしたの? せっかく第一志望に合格したというのに、その表情は……」
紗和子 「……いえ、べつに」
紗和子 「何も……」
真冬 「………………」
フゥ
真冬 「……ほら、座りなさい」 ニコッ
紗和子 「え……?」
真冬 「せっかく第一志望に合格したのに、そんな表情をしていたらもったいないわ」
真冬 「何かあったんでしょう? 解決できるかはわからないけれど、私でよかったら話を聞くわ」
661
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/23(木) 22:57:13 ID:8/XR1gKQ
紗和子 「へ……? で、でも……」
真冬 「私は教師よ。そんな“しょぼくれた”顔をしている生徒、放っておけないわ」
---- 『桐須じゃねえか! 何しょぼくれてんだこんなトコで?』
真冬 (……そう。もし、この子が何かに悩んでいるのなら)
真冬 (“先生”のように、私も、この子に寄り添ってあげたい)
真冬 (だから……)
真冬 「……お話、聞かせてくれるとうれしいわ。関城さん」
紗和子 「………………」
コクリ
紗和子 「……はい」
662
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/23(木) 22:58:06 ID:8/XR1gKQ
………………数十分後
真冬 「………………」
紗和子 「……それでですね! 緒方理珠ったらひどいんですよ!」
真冬 「え、ええ……」
紗和子 「たしかに私が悪かったですけど、でも、私緒方理珠のことを想って言ったんですよ! 合格よって!」
---- 『合格よッッッ!!!』
---- 『2人とも見事に合格してたわ緒方理珠ッッ!!!』
---- 『これで春から晴れて同じキャンパスライフよ緒方理珠ッ!!!』
---- 『ちょっと聞いてる? 我が親友緒方理珠〜!!』
真冬 「そ、そうね……」
真冬 「………………」
真冬 (長い……話が長いわ、この子……!)
663
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/23(木) 22:59:13 ID:8/XR1gKQ
紗和子 「それで、緒方理珠ったらすごく怒ってしまって……」
---- 『あ゙ーーーーっ!! 何故言うのですかーーーーッ!!!』
---- 『自分で見たかったのに 自分で見たかったのに!!!』
---- 『ひいっ!!! 堪忍よ緒方理珠ーッ!!!』
紗和子 「うぅ……って、先生、話聞いてますか!?」
真冬 「!? と、当然。きちんと聞いているわ」
真冬 (……先生。今改めて思いますが、生徒の相手は大変です)
紗和子 「……分かってます。私が悪いんだって」
シューーーン
紗和子 「……きっと緒方理珠に嫌われてしまったわ」
真冬 「……?」
紗和子 「緒方理珠“にも”、空気が読めないとか思われてしまったわ……」 ズーーーン
真冬 「………………」
664
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/23(木) 22:59:57 ID:8/XR1gKQ
真冬 (……でも、大変でもなんでも、私は、)
真冬 「……そんなことないと思うわよ。緒方さんはそんなこと思わないわ」
真冬 「それに、緒方さんは、あなたがきちんと謝れば許してくれるわ」
紗和子 「そうでしょうか。私、いつもこうやって相手に嫌な思いをさせてしまう……」
―――― 『またガリ勉関城が平均点上げてるよ』
―――― 『平均点以下の奴補習だってさ』
―――― 『もっと空気読んでくれよー』
紗和子 「だからきっと、緒方理珠にも……」
真冬 「……そう。あなたはそう思うのね」
スッ
真冬 「あら、ちょうど退勤時間だわ。この後予定は? 関城さん」
紗和子 「へ……? あ、空いてますけど……」
真冬 「じゃあ、一緒に行きましょう」
紗和子 「行く……? って、どこに……?」
665
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/23(木) 23:00:52 ID:8/XR1gKQ
真冬 「そんなの、決まってるでしょう?」
真冬 (……大変でもなんでも、私は、“こうなりたい”と願って、今ここにいるのだから)
---- 『私が教師を目指すことは…… 間違いだと思いますか!?』
---- 『間違いだったかどうかなんて 本当に終わっちまうまでわかんねーもんさ』
---- 『自分の気持ちに素直にな』
真冬 「あなたの大切なお友達のところに、よ」
クスッ
真冬 「自分の気持ちに素直にね、関城さん」
666
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/23(木) 23:01:27 ID:8/XR1gKQ
………………緒方うどん
理珠 「〜♪」
親父さん 「………………」 (……リズたま、ご機嫌だな。鼻歌なんてめずらしいぜ)
親父さん (……ずっと、心理学勉強してえって言ってたもんな) グスッ 「……っと。歳食うと涙もろくなっていけねぇや」
……ガラッ
親父さん 「おぅ、いらっしゃい! ……って」
紗和子 「あ……こ、こんにちは……」
真冬 「こんにちは。緒方さんのお父様」
親父さん 「さ、紗和子ちゃんと先生じゃねーか! いらっしゃい!」
理珠 「……? 関城さん? それに桐須先生まで? 一体どうしたんですか?」
真冬 「べつに大した用事じゃないわ」 クスッ 「とりあえず、大葉天うどん、いただけるかしら?」
真冬 「……あなたは? 関城さん」
紗和子 「あっ……わ、私は……きつねうどんを」
親父さん 「まいど! 大葉天うどんときつねうどんだな! 大急ぎで作るから座って待っててくれ」
親父さん 「リズたまも、せっかく先生と紗和子ちゃんが来てくれたんだから、一緒にうどん食べたらいいや! 席に案内しといてな!」
667
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/23(木) 23:02:11 ID:8/XR1gKQ
………………
理珠 「……?」
紗和子 「………………」 ヒシッ
真冬 「……あの、関城さん」
真冬 「そうくっつかれると、食べにくいのだけど……」
紗和子 「………………」 ギュッ
真冬 「……まったく」 (まるで隠れるように、縮こまって余計に私にくっついて)
理珠 「意外です。関城さんと桐須先生って、あまり関わりがなかったと思いましたが」
理珠 「仲良しさんだったのですね」
真冬 「生徒と仲良しになった憶えはないわ」
ズルズルズル……
真冬 「相変わらず美味しいわね、あなたのところのうどんは」
理珠 「ありがとうございます」 ジッ 「……あの、関城さん」
紗和子 「!?」
理珠 「何をやっているのか分かりませんが、早く食べないと伸びてしまいますよ?」
668
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/23(木) 23:03:02 ID:8/XR1gKQ
紗和子 「あ……そ、そうね」
紗和子 「いただきます」
ズルズルズル……
紗和子 「……美味しい」
理珠 「そうですか。このうどん、私の受験合格を聞いた父が張り切って打ったらしいです」
ズルズルズル……
理珠 「……うん。美味しいですね」
紗和子 「………………」
ズルズルズル……
理珠 「……それで? 一体今日はどうしたんですか?」
理珠 「おふたりがそろっていらっしゃるなんて、大した用事がないようには思えないのですが」
真冬 「そうね。大したことかどうかは、見る人によって変わるものね」
スッ
真冬 「ほら、関城さん。いつまでも私にしがみついてないで。自分がどうしたらいいか、分かるでしょう?」
紗和子 「……ん」
669
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/23(木) 23:03:33 ID:8/XR1gKQ
理珠 「……? 関城さん?」
紗和子 「……あの、緒方理珠。あのね、」
紗和子 「今日、その……合格発表、あなたが見る前に……その……」
紗和子 「……先に、言ってしまって……ごめんなさいっ」
理珠 「へ……?」
理珠 「………………」
理珠 「……えっと」
理珠 「……ああ、そういえば、そんなこともありましたね」
理珠 「そんな大げさに謝らなくてもいいですよ。これから気をつけてくださいね」
紗和子 「え……?」
紗和子 「え、えっと、許してくれるの? 緒方理珠」
理珠 「許すも何も、今の今まで忘れてましたよ」
クスッ
理珠 「妙に大人しくて変な関城さんだと思ったら、そういうことだったんですね」
670
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/23(木) 23:04:45 ID:8/XR1gKQ
紗和子 「……じ、じゃあ、私のこと、怒ってない?」
理珠 「さすがにあのときは怒りましたけど、今は特には……」
紗和子 「私のこと、空気が読めないとか思ってない?」
理珠 「は? 空気を読むという言葉の意味が未だによく分からない私にそれを聞きますか」
紗和子 「んっ……」
紗和子 「……そ、そうね。あなたはそうよね。ずっと……」
―――― 『空気を読むとはどういうことですか? できたのにできないフリをしろということですか?』
―――― 『どうなのですか?』
紗和子 (……あなたは、ずっと変わらない。私の恩人で、憧れの人)
真冬 「………………」
クスッ
真冬 「……さて、うどんもいただいたことだし、私はそろそろおいとまするわね」
真冬 「うどんごちそうさま。お勘定よろしく、緒方さん」
671
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/23(木) 23:05:30 ID:8/XR1gKQ
理珠 「あ、は、はい……――」
親父さん 「――……ち、ちょっと待ったー!」 ズザザザザッッ!!!!
理珠 「……お父さん。店内で走らないでください。ホコリが立ちます」
理珠 「一体どうしたんですか?」
親父さん 「いや、それがさ、今日さ、パパさ、リズたまの合格で舞い上がってうどん打ってね」
理珠 「はい」
親父さん 「ちょっと打ち過ぎちゃってね……まだまだ残ってるんだよね」
理珠 「……はい?」
親父さん 「夕食のお客だけじゃ絶対に捌ききれないくらい残ってるんだよ」
親父さん 「こんなことバレたらママに怒られちゃうし……」
親父さん 「……と、いうことで」
ドンッ!!!!
親父さん 「今日は俺のオゴリだ! 先生、紗和子ちゃん、たんとうどん食ってってくれ!」
真冬 「!? い、いや、この量はさすがに……」
672
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/23(木) 23:07:40 ID:8/XR1gKQ
紗和子 「………………」
クスッ
紗和子 「……じゃあ、お言葉に甘えて、いただきます」
ズルズルズル……
真冬 「関城さん……」
紗和子 「……せっかくですし、桐須先生。ごちそうになって行きませんか?」
真冬 「………………」
真冬 「……承知。仕方ないわね。美味しいうどんがこんなにあるのだから、遠慮するのも野暮かしらね」
親父さん 「あっ……そういや紗和子ちゃん! 大学合格おめでとうな!」
紗和子 「へ……? あ、ありがとうございます!」
紗和子 「……あれ? 私、合格したこと言いましたっけ?」
673
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/23(木) 23:08:16 ID:8/XR1gKQ
理珠 「……!?」 ハッ 「ちょっ、待ってください! お父さん……――」
親父さん 「――いやいや、リズたまから聞いてるんだよ。リズたまったら嬉しそうにさー」
―――― 理珠 『そうそう。関城さんも合格したんですよ。同じ大学です!』
―――― 理珠 『友人がひとりもいないかもと不安でしたが……』
―――― 理珠 『関城さんがいてくれて良かったです。春からが本当に楽しみです!』
親父さん 「なんて言っててさ……」 シミジミ
理珠 「っ……///」
紗和子 「お、緒方理珠が、そんなことを……///」
親父さん 「いや、ほんと、リズたまの友達でいてくれてありがとうな、紗和子ちゃん」
親父さん 「これからもリズたまのことをよろしくな」
紗和子 「は、はい! 任されました! 緒方理珠のキャンパスライフは私が守ります!」
親父さん 「うんうん。これで俺も安心だ」
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