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【ぼく勉】 文乃 「今週末、天体観測に行くんだよ」

1以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/03(金) 23:07:13 ID:9nEg0gUI
理珠 「ほう。天体観測ですか。どこかの天文台へ行くのですか?」

文乃 「ううん。バスツアーなんだけどね、車で二時間くらいの高原に行くんだよ」

文乃 「結構コアなツアーでね。参加者全員望遠鏡を自分で持って行って、思い思いにレンズを覗くんだ」 ワクワク

文乃 「深夜に駅を出て、数時間天体観測をしたら、早朝に駅に戻ってくるって感じのツアーだよ!」

うるか 「ほへー。そんなのがあるんだねぇ」

成幸 (……それはツアーで行く意味があるのか? とかそういうことは置いておくとして)

成幸 (受験も近いのに大層な余裕だな、というツッコミも置いておくとして)

成幸 「……お父さんと一緒に行くのか?」

文乃 「うんっ! お父さんがね、誘ってくれて……」

文乃 「“一緒に行かないか” って。えへへ……」

成幸 「そうか」 クスッ 「よかったな、古橋」

文乃 「うん! ありがと、成幸くん! 道中のバスではちゃんと勉強するから安心してね!」

成幸 (この寝ぼすけ眠り姫が深夜と明け方のバスで勉強するとは思えないが……)

成幸 (まぁ、たまの息抜きぐらい、問題ないだろうし、何より……)

成幸 (古橋とお父さんの関係が、少しずつ改善しているのが、嬉しい)

783以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/13(木) 21:42:22 ID:PHnQenq6
文乃 「あっ……ごめんごめん」

文乃 「つい興奮しちゃったよ。水希ちゃんからプレゼントがもらえるなんて思ってなかったから……」

文乃 「……すごく、嬉しくって」 ニコッ

水希 「っ……///」

水希 「……バイトしてますから、お金はお気になさらずに。大丈夫です」

水希 「あと、普通の包丁は、あんまり利き手は関係ないですけど……」

水希 「古橋さんが欲しがってた出刃は、片刃なので……」

水希 「左利き用じゃないと多分、切りにくいと思います」

文乃 「はぇ〜、そうなんだ。危ない危ない。普通の買うとこだったよ……」

水希 「あと、古橋さんが包丁を欲しがっているのは、兄から聞いていたので……」

文乃 「そうなのかぁ。なんか、成幸くん経由でねだっちゃったみたいになっちゃったなぁ……」

文乃 「でも、本当にありがとう。すごく嬉しいよ、水希ちゃん。えへへ」

水希 「ん……どういたしまして、です」

784以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/13(木) 21:43:02 ID:PHnQenq6
文乃 「……っていうことは、ひょっとして、水希ちゃんが今日暗かったのは、」

文乃 「包丁のプレゼントはあまり縁起が良くないってことを知って、悩んでたから……?」

水希 「ん……」

水希 「……ごめんなさい」

文乃 「なんで謝るの? わたしはすごく嬉しいから何の問題もないよ」

水希 「でも……」

文乃 「………………」 クスッ 「……水希ちゃんは優しいね」

水希 「……?」

文乃 「包丁のプレゼントが縁起が悪くて、そのせいでわたしと成幸くんがどうにかなったら嫌だ、ってこと?」

文乃 「そうだね。たしかに、わたしと成幸くんに万が一何かがあって、それで水希ちゃんが気に病むのはわたしも嫌だなぁ」

文乃 「……ってことで、こうしましょう」 ゴソゴソ……

水希 「……?」 (お財布……?)

文乃 「おっ、よかったよかった。あった」

文乃 「水希ちゃん、包丁ありがとう。大切に使うね」 スッ 「その代わり、はい、この五円玉を差し上げます」

785以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/13(木) 21:45:44 ID:PHnQenq6
水希 「五円玉……? なんで……?」

文乃 「ふふふ、わたしはこれでも “文学の森の眠り姫” なんてあだ名で呼ばれていたこともあってね」

文乃 「おまじないやしきたりにも詳しかったりするんだよ」

文乃 「刃物をプレゼントされたら、五円玉を相手に渡すんだ」

文乃 「そうすると、縁起の悪い “切った” 御縁を結び直すことができるんだ」

文乃 「これでわたしたちは今まで以上に強固な関係で結ばれたよ!」

文乃 「だから、大丈夫。これで何も縁起が悪いことはなくなったよ。新しい縁を結んだからね」

文乃 「ありがとう、水希ちゃん。この包丁、大切に使わせてもらうね!」

水希 「……古橋さん」

水希 (この人は、ああ、本当に……)

水希 (すごい人だ)

水希 「……はいっ!! 古橋さん!」

786以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/13(木) 21:46:21 ID:PHnQenq6
………………

文乃 「……えっと、こう、かな」

ガッ……

文乃 「うぅ、また骨に引っかかった……」

水希 「お魚はもっと、こう……」

ググッ……ゴッ……

水希 「……です」

文乃 「む、難しいんだよ……」

文乃 「……でもせっかく水希ちゃんがプレゼントしてくれた包丁だし、がんばるね!」

ググ……ゴッ……

文乃 「……!? できたー!」

水希 「……やれやれ。頭を落としただけでそんなに喜んじゃって」

水希 「いつまでもメシマズのままじゃ、兄に愛想尽かされちゃいますよー?」 プークスクス

文乃 「最近はちゃんと口内出血しないもの作ってるもん!!!」

水希 「そんなの当たり前なんですよ!!!」

787以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/13(木) 21:46:52 ID:PHnQenq6
文乃 「……ま、まったく、水希ちゃんは本当に口が減らないんだから」

水希 「古橋さんこそ、いつまで兄の彼女面してるつもりですか」

文乃 「だから本当に彼女なんだってばー!」

水希 「………………」


―――― 『刃物をプレゼントされたら、五円玉を相手に渡すんだ』

―――― 『そうすると、縁起の悪い “切った” 御縁を結び直すことができるんだ』

―――― 『これでわたしたちは今まで以上に強固な関係で結ばれたよ!』

―――― 『だから、大丈夫。これで何も縁起が悪いことはなくなったよ。新しい縁を結んだからね』


水希 (“新しい縁” “今まで以上の関係” かぁ……)

水希 「そ、そうですか。彼女ですか。じゃあ、早く魚くらいさばけるようにならないとですね」

水希 「ふっ……」

カァアアアア……

水希 「……文乃、お姉ちゃん」

文乃 「!?」

788以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/13(木) 21:47:39 ID:PHnQenq6
………………

成幸 「ただいまー」 (……ふー。遠くのスーパーじゃないと買えないようなものばっかりだったから大変だったな)

ドタドタドタドタ!!!!

成幸 「ん……?」

文乃 「お帰り成幸くん!! ねぇ聞いて聞いて聞いて成幸くん聞いて!!!」

成幸 「のわっ!? いきなりどうした、文乃」

文乃 「あのね!!! 水希ちゃんがね!!! わたしのこと、お姉ちゃんって……!!!」

水希 「だああああああ!!! 何でお兄ちゃんに言うんですかバカー!!」

水希 「文乃お姉ちゃんのバカーーーー!!!」

文乃 「また言ったーー!! ねぇねぇすごくない!? すごいよね成幸くん!!」

水希 「もういいです!! これからもそう呼ぶって決めましたから恥ずかしくないです!!」

水希 「その代わり、私が姉と呼ぶんですから、兄と別れたりしたら承知しませんからね!!」

成幸 「あーー……」 (一体俺は何を見せられているんだろうか……)

成幸 (でも、まぁ……水希も文乃も嬉しそうだし、いいか……)

おわり

789以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/13(木) 21:48:14 ID:PHnQenq6
………………幕間 『それは』

文乃 「ん? ひょっとして今までわたしがお料理ベタだったのは、包丁が合っていなかったからなのでは?」

水希 「いえ、それは関係ないと思います」

成幸 「そういうレベルの料理ベタじゃなかったしな」

文乃 「冗談だよ!! そんな兄妹そろってバッサリ切ることないでしょーー!!」

おわり

790以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/13(木) 21:51:20 ID:PHnQenq6
>>1です。
今日が左利きの日だと知り、書きました。
読んでくださった方ありがとうございました。

また投下します。

791以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/13(木) 22:58:30 ID:LSj4gG8g
左利きの日初めて知った

おつ

792以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/14(金) 00:51:33 ID:EUDJ4FCo
おつんこ!!!
この組み合わせほんと好き

793以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/14(金) 12:28:55 ID:KaScJ.CI
新作ありです!
前にも書いたけど、やはり水文はイイ…

794以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/16(日) 01:25:33 ID:lhHct9mI
ええな
右利きの日ssも待ってるで

795以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/31(月) 01:58:07 ID:BTv1ZgZ.
乙乙

796以下、名無しが深夜にお送りします:2020/09/17(木) 04:31:14 ID:kclaCEMM
文系の姉ムーブほんとすこ

797以下、名無しが深夜にお送りします:2020/09/19(土) 13:50:51 ID:ExCQ8DXo
おつおつ
水希ちゃん可愛くて幸せ

798以下、名無しが深夜にお送りします:2020/10/02(金) 18:15:47 ID:D7rB3x7M
19巻の発売日やな

799以下、名無しが深夜にお送りします:2020/10/24(土) 02:07:16 ID:u9vjyso.
わたしと
お兄さんは
絶対そんな関係にはならないから
…ゴゴゴゴ

800以下、名無しが深夜にお送りします:2020/10/27(火) 04:44:43 ID:cy8SENR6
1つ目のスレから見返して思ったがやっぱ完成度高いわ

801以下、名無しが深夜にお送りします:2022/02/10(木) 16:58:48 ID:xZHZuzMo
久しぶりに読み返したけどやっぱり良いなぁ

802以下、名無しが深夜にお送りします:2025/04/28(月) 20:41:23 ID:OM4v9M6U
>>1です。ご無沙汰しております。
本当に久々ですが、投下します。

【ぼく勉】 陽真 「今週末、久しぶりにうちに泊まりに来ない?」

803以下、名無しが深夜にお送りします:2025/04/28(月) 20:45:05 ID:OM4v9M6U
成幸 「泊まり?」

陽真 「うん。週末、親いないからさ。久々に泊まりにおいでよ」

成幸 「ん、まぁ、そりゃ構わないけどな……」

ニヤニヤ

成幸 「……せっかくなら、海原でも誘ったらいいのに」

陽真 「へ? 智波ちゃん?」

陽真 「な、何言ってんのさ成ちゃん。そんなの……」

陽真 「まだ高校生だよ、俺たち。まだ早いよ……///」

成幸 「お前ってチャラい見た目してて言動も軽いくせに、変なところまじめだよな」

陽真 「俺としては、成ちゃんからそんな話題が出たことに驚きだけどね……」

成幸 「? そうか?」

成幸 「ま、いいや。じゃ、週末お邪魔するわ。久々にお前の勉強も見てやるよ」

陽真 「あはは……。そういうときも勉強か。さすが受験生だね」

成幸 「お前もそうだろうが。まったく……」

804以下、名無しが深夜にお送りします:2025/04/28(月) 20:46:54 ID:OM4v9M6U
成幸 「あ、そうだ、せっかくだし、昼間はお前ん家で勉強会してもいいか?」

成幸 「元々、土曜は夜まで勉強会の予定だったんだよ」

陽真 「勉強会……。ああ、お姫様たちと?」 クスッ

成幸 「その呼び方はどうかと思うけどな。うるかと古橋と緒方と……」

成幸 「あと、文化祭のときにお前も一回会ってたかな。知り合いのOGもいるけど、いいか?」

陽真 「うん、いいよ。成ちゃんだけならいざ知らず、女子も来るなら部屋きっちり掃除しとかないと」

成幸 「悪いな。じゃあ、あいつらにも伝えとくわ」

陽真 「うん、よろしく〜」

陽真 「………………」


―――― 『……せっかくなら海原でも誘ったらいいのに』


陽真 (……なんか、不思議だな。成ちゃんからそういう系の話が出るって)

陽真 (ひょっとして、成ちゃん……)

陽真 (恋愛とかに、少しは興味が出てきたってことなのかな)

805以下、名無しが深夜にお送りします:2025/04/28(月) 20:52:12 ID:OM4v9M6U
………………週末

うるか 「おっじゃましまーっす!」

理珠 「うるかさん、余所のお宅ですよ。静かにしましょう。お邪魔します」

文乃 「お邪魔します。なんか男の子の家って緊張するね」

あすみ 「……おじゃまします。って、アタシは本当に来て良かったのか?」

陽真 「いらっしゃい。どうぞ上がってください」

陽真 「成ちゃん、俺お茶とか持ってくるから、部屋にご案内して」

成幸 「俺も客なんだけどな……。まぁ、いいけど」

806以下、名無しが深夜にお送りします:2025/04/28(月) 20:52:53 ID:OM4v9M6U
陽真 「………………」 (それにしても……)

うるか 「こばやん家来ちゃったよー。海っちに怒られないかな」

理珠 「海っち?」

文乃 「小林くんの彼女さんらしいよ」

あすみ 「はー、高校生で彼氏彼女かぁ。進んでんなぁ」

うるか 「? 先輩もカレシいたんですよね?」

あすみ 「は? そ、そりゃ、いたに決まってるだろ。いまくりだったわ」

うるか 「ほへー、さっすが先輩!」

成幸 「早く来ないと置いてきますよー?」

陽真 (……こうして見ると、成ちゃんって、本当に、可愛い子に囲まれてるんだなぁ)

807以下、名無しが深夜にお送りします:2025/04/28(月) 20:53:50 ID:OM4v9M6U
………………

陽真 「お待たせ。お茶とお菓子持ってきたよ」

成幸 「ああ、悪いな小林。ありがとう」

うるか 「あたしもお菓子持ってきたよ! 食べよ食べよ!」

文乃 「わたしもたくさん持ってきたよ! 勉強会には糖分補給が大事だよね!」

あすみ 「ああ、一応アタシも持ってきたぞ。お邪魔するのにお土産なしってわけにもいかんしな」

理珠 「私はうどんを持ってきています! お昼に皆さんで食べましょう!」

ドサッ……ドサッドサッ……

成幸 「……あそびにきたわけじゃないんだけどなぁ。なんだよこの食べ物の山……」

陽真 「ははは、まぁいいじゃない、成ちゃん。お菓子つまみながら勉強しようよ」

成幸 「……まぁ、それくらいならいいか」

ドサッ

成幸 「ちなみに俺も、小林の家に行くって言ったら水希がたくさんお菓子を作ってくれたから持ってきた」

あすみ 「……お前も人のこと言えねーじゃねーかよ、後輩」

ハハハハハ……

808以下、名無しが深夜にお送りします:2025/04/28(月) 20:57:30 ID:OM4v9M6U
………………

うるか 「……ね、成幸。この和訳これで合ってる?」

成幸 「ん……ああ、いいと思う。だいぶ精度が上がってきたな」

うるか 「うん! よーし、がんばるよー!」

理珠 「成幸さん、すみません、ここはどう考えたらいいのでしょうか……」

成幸 「ああ、そこは “それ” が示す部分を探すべきだな。筆者の意見を述べる根幹が述べられているのはどこだ?」

理珠 「……あっ。わかりそうです。ありがとうございます」

文乃 「ごめん、成幸くん。これ、加法定理に当てはめてもよく分からなくて……」

成幸 「ああ、式立てが複雑になりすぎだな。これじゃ解きにくいだろ」

成幸 「まず加法定理に当てはめる前に、加法定理をいじって分かりやすく作り替えたほうがいいな」

成幸 「ちょっとヒントをやろうか。これを……こうすると、項がまとめられるだろ?」

文乃 「……ん、じゃあこれも同じように……。うん、ちょっとやってみるよ!」

あすみ 「悪い、後輩。これってどうやって解くんだ。まったく分からないんだが……」

成幸 「ああ……このスリットと虚像の問題、ちょっと難しいですね。一緒に解いてみましょうか」

陽真 「………………」 (……へぇ)

809以下、名無しが深夜にお送りします:2025/04/28(月) 20:58:05 ID:OM4v9M6U
陽真 (時々見たことはあるけど、こんな間近でまじまじと見るのは初めてだなぁ)

陽真 (成ちゃん、こんな風に教えてるんだね)

成幸 「……? なんだ、小林。お前も教えてほしいところがあるのか?」

陽真 「へ? ああ、ごめんごめん。なんでもないよ」

成幸 「?」

陽真 (それにしても……)


 『成幸』 『成幸さん』 『成幸くん』 『後輩』


陽真 (……成ちゃんは慕われてるねぇ)

クスッ

陽真 (慕われてるだけならいいけど、そうじゃないなら……)

陽真 (……ちょっと試してみようかな)

810以下、名無しが深夜にお送りします:2025/04/28(月) 21:02:05 ID:OM4v9M6U
………………お昼

陽真 「ん、このうどんめっちゃ美味しいね」

理珠 「ありがとうございます。うち自慢のうどんです!」

陽真 「いや、ほんと美味しいよ。大森が通い詰めるのも分かる気がする……」

陽真 「成ちゃんは毎日こんな美味しいうどんを食べてるのか。うらやましいな」

成幸 「毎日じゃねーよ。緒方の家で勉強会するときくらいだよ。あとはバイトのときのまかないか」

陽真 「ああ、そういえば成ちゃんって緒方さんの家でバイトしてるんだよね」

陽真 「じゃあ、そのまま将来成ちゃんが婿入りしてお店を継ぐ感じ?」

成幸 「へ……?」 カァアアアア…… 「なっ、小林、おまっ……何言ってんだ……」

理珠 「む、婿入り。成幸さんが、我が家に……」

成幸 「ほら、緒方だって困ってるだろ。そもそも俺、長男だし……って、いや、そういうことじゃなくて……」

陽真 「へぇ〜」 ニヤニヤニヤ (……あー、うん。まぁ察しはついてたけど、)

理珠 「……成幸さんが、婿入り……」 ボソッ 「“緒方成幸” ……わ、悪くないですね……」

陽真 (……まぁ、そうだよね)

811以下、名無しが深夜にお送りします:2025/04/28(月) 21:02:38 ID:OM4v9M6U
文乃 「もう、小林くん。冗談でもちょっとタチ悪いよ」 ジトッ

陽真 「ああ、ごめんごめん。そうだよね。古橋さん、成ちゃんと付き合ってるんだもんね」

文乃 「へっ……?」

カァアアアア……

文乃 「つっ、付き合ってなんかないよ。全然、これっぽっちも……」

陽真 「ああ、そうなんだ。一学期でそんな噂が流れてたから、てっきりそうなんだと思ってたけど」

陽真 「……学校の告白スポットで、壁ドンならぬ幹ドンしたらしいじゃない?」

文乃 「あ、あれは、その……そ、そういうのじゃ、ないから……///」

陽真 「ふーん。告白スポットで成ちゃんに迫ったのは否定しないんだ」

文乃 「あっ……ち、違うよ!? そうじゃなくて……///」

成幸 「お、おい、小林。あれはそういうのじゃないぞ。単純に古橋に恋心のモガッ!?」

文乃 (だ、ダメだよ唯我くん! それをみんなに言ったら!) コソッ

成幸 (そ、そうなのか。すまん、古橋) コソッ

陽真 「へぇぇ……」 ニヤァ 「なんかコソコソ話しちゃって、怪しいなぁ?」

文乃 「そ、そういうのじゃないんだってばー!!」

812以下、名無しが深夜にお送りします:2025/04/28(月) 21:23:48 ID:OM4v9M6U
あすみ 「………………」 ジロッ 「……なんだか知らんが、少しタチ悪いぞ、後輩の友達」

あすみ 「違うって言ってるんだから、違うんだろ。人の色恋沙汰なんか探るのが野暮ってもんだ」

陽真 「ああ、ごめんなさい。さすが先輩は大人ですね」

陽真 「……そういえば先輩って、成ちゃんと予備校で知り合ったんですよね」

あすみ 「あん? そうだけど、それがどうかしたかよ」

陽真 「いや、成ちゃんって、初対面の女の子に話しかけるような性格してないから、」

陽真 「……どうやって仲良くなったのかなぁ、って気になって」

あすみ 「う゛ぇっ……」 アセアセ 「い、いや、それは、まぁ、なぁ……後輩?」

813以下、名無しが深夜にお送りします:2025/04/28(月) 21:24:42 ID:OM4v9M6U
成幸 「へっ? そこで俺に振りますか!?」

成幸 (彼氏のフリすることになったのは内緒だろうし……)

成幸 「えっと……」

陽真 「あっ、もしかして、先輩が成ちゃんのこと気に入っちゃった、とかですか?」

あすみ 「ち、ちげーよ! アタシが……」

あすみ 「……予備校でアタシが腹を空かしてたときに、おにぎりを分けてくれたんだよ」

あすみ 「それだけだ。他意はねぇよ」

陽真 「そうですか。すみません、変なこと聞いて」

814以下、名無しが深夜にお送りします:2025/04/28(月) 21:25:38 ID:OM4v9M6U
うるか 「……? なんか今日のこばやん、元気だね。楽しそうっていうか」

陽真 「そう見える? ……うん、そうかも。楽しいよ」

陽真 「こんなに可愛い女の子が自分の部屋にいたら、そりゃ、ねぇ? 成ちゃん?」

成幸 「お、俺に話を振るなよ!」

陽真 「成ちゃんはいつもこんな感じなんでしょ? いいねぇ」

成幸 「へ、ヘンな言い方するなよ!」 アセアセ

成幸 「小林、ちょっとトイレ借りるぞ!」

815以下、名無しが深夜にお送りします:2025/04/28(月) 21:26:08 ID:OM4v9M6U
陽真 「あらら、逃げちゃった」

あすみ 「……お前、後輩とはえらい違いだな。チャラいっつーか、なんつーか」

陽真 「すみません。ちょっとテンションが上がっちゃって」

陽真 「失礼なことを言っちゃいました。ごめんなさい」

あすみ 「いや、べつに失礼とは思ってねーけど……」

陽真 「緒方さんと古橋さんも、ごめんね」

理珠 「私は謝られるようなこととは思っていませんが」

文乃 「うん。私も、特に……」 (事実しか言われてないしね……)

陽真 「みんな優しいな。じゃあ、お詫び代わりにいいものを見せてあげようかな」

うるか 「? いいもの?」

816以下、名無しが深夜にお送りします:2025/04/28(月) 21:27:13 ID:OM4v9M6U
………………

文乃 「わ……わぁ〜〜〜〜〜〜!!!!」

理珠 「わ、わわわ……か、かわっ……」

あすみ 「へ、へぇ。これがいいもの、ねぇ……? へ〜〜?」

うるか 「いいものって……こばやん、これ中学の卒アルじゃん」

陽真 「うん。いいでしょ。約三年前の成ちゃんの写真」

文乃 「若いっていうか、幼いっていうか……か、可愛いね」

文乃 「……って、もちろん一般論としての可愛いだけどね!?」

理珠 「はい、成幸さん、背も小さくて、目元も柔らかくて、可愛いです」

あすみ 「……ま、まぁ、今よりは可愛げはあるけどな」

817以下、名無しが深夜にお送りします:2025/04/28(月) 21:27:50 ID:OM4v9M6U
陽真 「あと、このページに勉強してる成ちゃん」

陽真 「このページはレアだよ。お弁当を食べてる成ちゃん」

文乃&理珠&あすみ 「「「………………」」」

陽真 (……いつの間にかめっちゃ無言で見てるよ)

陽真 「……? 武元は見なくていいの?」

うるか 「分かってて言ってるでしょ、こばやん」

うるか 「あたしも同チューだから、アルバムの成幸の写真なんてすり切れるくらい見てるし……」

うるか 「……あ、違くて! 友達の写真、何度も見てるから、べつに、今さら……」

陽真 (これで誤魔化せてるつもりなのがすごいよなぁ……)

818以下、名無しが深夜にお送りします:2025/04/28(月) 21:30:05 ID:OM4v9M6U
陽真 「……ふーん、じゃ、こういうのはどう?」

サッ

うるか 「!? そ、それは……!?」

陽真 「そう。小学校の卒アルだよ」

うるか 「小学校の成幸!? み、見たい見たい!」

文乃 「小学生の成幸くん!?」

理珠 「……ま、まぁ、見たくないと言えば嘘になるので見ますけど」

あすみ 「おう。見てやらんでもない」

うるか 「か、かわっ……!?」

文乃 「可愛いねぇ……」

理珠 「……可愛いです。成幸さん」

あすみ 「……ふーん。へぇー。ほー」 ニヘラ

陽真 「………………」 クスッ (この子たち、分かりやすいよなぁ)

陽真 (ほんと、成ちゃんが鈍くて良かった……って言うべきなのかな)

ガチャッ

819以下、名無しが深夜にお送りします:2025/04/28(月) 21:30:40 ID:OM4v9M6U
成幸 「ただいまー……って、何やってるんだ?」

成幸 「!? そ、それ、卒アル!? 小学校も中学校もある!?」

陽真 「成ちゃん、おかえり。いやぁ、みんな見たがるかなーって思ったら、見事に食いついたよね」

成幸 「べつにいいけどさ……。少し恥ずかしいな」

理珠&文乃&うるか&あすみ 「「「「………………」」」」

成幸 「っていうか真剣に見過ぎだろ!?」

成幸 「人の卒アルをそんな無言で見つめ続けることある!?」

成幸 「ほら、もうお昼休み終わり! 勉強に戻るぞ!」

理珠&文乃&うるか&あすみ 「「「「………………」」」」

成幸 「そんなに綺麗に無視されることある!?」

820以下、名無しが深夜にお送りします:2025/04/28(月) 21:31:15 ID:OM4v9M6U
………………

陽真 「………………」

カリカリカリ……

陽真 (……結局、あの後はみんなまじめにずっと勉強してる)

陽真 (みんなすごい集中力だ。あの武元もずっとマジメにやってるもんな)

成幸 「………………」

陽真 (改めて、やっぱり)

陽真 (……成ちゃんはすごいなぁ)

陽真 「ん……」 (もうお茶がなくなっちゃったかな)

陽真 「……成ちゃん、お茶のお代わりいれてくるね」 コソッ

成幸 「……ん? ああ、悪いな」

陽真 「いいよ、気にしないで。……武元」

うるか 「ん?」

陽真 「ちょっと手伝ってもらってもいい?」

うるか 「? うん。いいけど……」

821以下、名無しが深夜にお送りします:2025/04/28(月) 21:32:19 ID:OM4v9M6U
………………キッチン

陽真 「悪いな、武元。勉強中断させちゃって」

うるか 「ううん。全然。ちょうど動きたかったところだし」

うるか 「それより、こばやん、わざわざ温かいお茶をいれてくれてありがとね」

陽真 「もう肌寒い季節だしね。女の子は体を冷やさない方がいいでしょ」

うるか 「さすが、こばやんは細やかなハイリョができるイケメンだね」

陽真 「……はは。イケメンではないと思うけど、ありがと」

うるか 「……ね、こばやん。……本当にありがとね」

陽真 「うん?」

うるか 「……小学校のアルバム、見せてくれて」

陽真 「ああ、アルバムか」 クスッ 「言ってくれれば、いつでも見せるよ」

822以下、名無しが深夜にお送りします:2025/04/28(月) 21:33:15 ID:OM4v9M6U
うるか 「小学校の頃の成幸、あんなに明るい顔をしてたんだね」

陽真 「……ああ。そうだね。あの頃の成ちゃんは、うん」

うるか 「卒業式の集合写真は、やっぱりちょっと暗かったけど……」

陽真 (その頃は、そう……)

陽真 (成ちゃんのお父さんの体調がかなり悪くなってたから……)

うるか 「あたしが成幸と出会った頃は、結構暗かったから」

うるか 「昔の成幸って、結構新鮮だなー、って」

うるか 「……まぁ、中学校でも、成幸はいつの間にか今みたくなってたけど」

823以下、名無しが深夜にお送りします:2025/04/28(月) 21:33:50 ID:OM4v9M6U
陽真 「………………」

陽真 「……いつの間にか、じゃないよ」

うるか 「……?」

陽真 (……俺は、だって、ずっと小さい頃から成ちゃんのことを見てたから)

陽真 (ずっと。だから、知ってる)

陽真 (武元、お前が……)

陽真 (お前が、水希ちゃんを救って、成ちゃんを救ってくれたことを)

陽真 (成ちゃんに笑顔を取り戻させてくれたことを)

陽真 (俺にできなかったことを、お前がやってくれたことを)

824以下、名無しが深夜にお送りします:2025/04/28(月) 21:34:24 ID:OM4v9M6U
うるか 「……こばやん?」

陽真 (これを言ってやったら、何か変わるかな)

陽真 (智波ちゃんもきっと喜ぶだろうな)

陽真 (……でも、違う)

陽真 (俺は成ちゃんが幸せなら何でもいい。でも、成ちゃんが選んだ幸せが、一番いいに決まってる)

陽真 (……だから、俺は)

陽真 「……何でもない。お茶も入ったし、戻ろっか」

うるか 「う、うん……」

陽真 (……そう。俺は、成ちゃんの気持ちを代弁したりしない)

陽真 (武元の背中を押すようなこともしない)

陽真 (だから……)

陽真 「……なぁ、武元」

うるか 「? 何?」

825以下、名無しが深夜にお送りします:2025/04/28(月) 21:35:27 ID:OM4v9M6U
陽真 「さっき、緒方さんたちには色々聞いちゃったけどさ」

陽真 「俺は、成ちゃんが幸せなら、何でもいいんだ」

うるか 「……?」

陽真 「成ちゃんが誰かとお付き合いしても、結婚しても、幸せならそれでいい」

陽真 「何だったら、ずっと独身のままでもいいと思う。それで成ちゃんが幸せなら」

陽真 (俺は、智波ちゃんたちみたいに誰かを応援したりはしない)

陽真 (けど……)

陽真 「それでも、俺はやっぱり、思うんだよ」



陽真 「武元と一緒にいる成ちゃんが一番幸せだろうな、って」

826以下、名無しが深夜にお送りします:2025/04/28(月) 21:36:08 ID:OM4v9M6U
うるか 「へぇ……?」 ボンッ 「へ、へぇぇえ!?///」

うるか 「こ、こばやん、それって、どういう意味……?」

陽真 「……そのままの意味だよ。じゃ、戻ろうか」 ニコッ

うるか 「ちょっ、こ、こばやん〜〜〜!!」

陽真 (……俺が思うことを、そのまま伝えただけ)

陽真 (これくらいは、いいよね。成ちゃん)

827以下、名無しが深夜にお送りします:2025/04/28(月) 21:37:16 ID:OM4v9M6U
………………夜

陽真 「成ちゃん、布団一枚で大丈夫? 毛布使う?」

成幸 「いや、大丈夫だ。全然暖かいよ」

成幸 「それより、悪いな。結構遅くまで勉強しちゃって」

陽真 「お泊まり誘ったのは俺だし、それくらいは覚悟してたよ」

陽真 「……お姫様たちと先輩もちゃんと勉強できたかな?」

成幸 「いつもより進みが良いくらいだったよ。後半もだれることなくやってたしな」

陽真 「小中学生成ちゃんのパワー、恐るべし……」 ボソッ

成幸 「? なんか言ったか?」

陽真 「ううん。なんでもない」

クスッ

陽真 「それにしても、あんな美人ぞろいで誰とも何ともなってないって、成ちゃんは本当にすごいよね」

成幸 「……お前、それ褒めてないだろ」

成幸 「いいんだよ、俺は。そういうのはよく分からないし」

828以下、名無しが深夜にお送りします:2025/04/28(月) 21:38:08 ID:OM4v9M6U
陽真 「……いや、褒めてるよ」

成幸 「はぁ?」

陽真 「……ねぇ、成ちゃん」

成幸 「ん?」

陽真 「本当にまだ、“そういうのはよく分からない”?」

成幸 「ん……」

成幸 「………………」

成幸 「……分からない、と思う」

陽真 「思うって?」

成幸 「……女子にドキッとさせられることは増えた……気がする」

成幸 「でも、恋愛とかそういうのは、全くイメージは湧かないしな……」

成幸 「やっぱり、俺には難しいよ」

陽真 「……うん。そっか」

829以下、名無しが深夜にお送りします:2025/04/28(月) 21:38:48 ID:OM4v9M6U
陽真 「……ま、成ちゃんは勉強で忙しいもんね」

成幸 「おい、お前もだろ、受験生」

陽真 「ははは。そうだったね」

成幸 「そうだったね、って。お前な……」

成幸 「………………」

陽真 「………………」

陽真 「……成ちゃん」

成幸 「………………」

陽真 「……寝ちゃったか。ま、いいや」

陽真 「ね、成ちゃん」

陽真 「誰を好きになってもいいし、誰と付き合ってもいいし、誰と結婚してもいいからさ、」

陽真 「……絶対、幸せになってよね」

おわり

830以下、名無しが深夜にお送りします:2025/04/28(月) 21:39:37 ID:OM4v9M6U
………………幕間1 「川瀬あゆ子」

智波 「ねぇ陽真くん」

陽真 「なぁに、智波ちゃん」

智波 「うるかから聞いたよ? 家にお姫様たち呼んで一緒に勉強会したんだって?」

陽真 「え……? あ、うん。したけど……」

ハッ

陽真 「ち、違うよ!? それは、その、そういう意味合いのものじゃなくて!」

陽真 「成ちゃんを呼んだら、ついてきちゃっただけで……」

智波 「………………」 クスッ 「ふふ、分かってるよ。陽真くん、慌てちゃってかわいいなぁ」

陽真 「や、やめてよ……。びっくりしたよ。でも、たしかに彼女に聞く前に女の子を家に呼んだのは、ごめんね」

智波 「えぇ? それくらいいいよぅ」 ニコニコ 「陽真くんはまじめだなぁ。でもそういうところも、好き」

陽真 「俺も智波ちゃんのそういうお茶目なところ好きだなぁ」

イチャイチャイチャイチャ

あゆ子 「なぁ、お前ら」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!! 「どうでもいいんだけどな、私の前でイチャつくのはヤメロ」

831以下、名無しが深夜にお送りします:2025/04/28(月) 21:40:17 ID:OM4v9M6U
………………幕間2 「川瀬あゆ子2」

智波 「でも、私より先に唯我くんがお泊まりするって、唯我くんに妬いちゃうなぁ」

陽真 「へ? いや、でも、そういうのは、その……」

智波 「……ところで、陽真くん」

陽真 「?」

智波 「……今日、家に親いないんだけど、うち、来ない?」

陽真 「え……」

カァアアアア……

陽真 「あっ、えっと……///」

智波 「……///」

あゆ子 「だからさぁ、お前らさぁ」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

あゆ子 「何で私がいるところでそれやるの? わざと?」

おわり

832以下、名無しが深夜にお送りします:2025/04/28(月) 21:43:13 ID:OM4v9M6U
>>1です。
本当にご無沙汰しております。
小林くんに関しては、以前も似たようなお話を投下しましたが、
彼の成幸くんとうるかさんに対する想いは並々ならぬものだと勝手に思っております。
できればまた彼のお話が書きたいです。
読んでくださった方、ありがとうございました。


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