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ロゼッタ「マリオカートに参戦…ですね、是非!」

1Mii:2019/03/31(日) 10:37:38 ID:iLEqj1bw
このスレは

 ロゼッタ「マリオカートに参戦…ですか?」

を前スレとする続編となります。
前スレをご覧になられていない方はそちらを先にどうぞ。

遅い進行のスレですが引き続き頑張っていきたいと思います。
よろしくお願いします。





パルテナ「そのほか、いくつか注意点があります。

     ・スレ主のスマブラfor経験は、CPU(Lv.9)とのタイマンで
      勝ち越せない程度の実力しかありません。
      戦闘描写に過度な期待をすると酷いことになります。
      むしろ、『うわあ、この描写ニワカだな』と粗探しするくらいの気持ちで
      読むようにしてください(最重要)。

     ・前スレ同様、いろいろとパロデイ、メタ発言が散りばめられています。
      キャラが自分たちの背景情報を活用する…みたいなご都合主義は
      白ける方もいらっしゃると思います。そんな時は…
      別のスレに移って、このスレのことは忘れましょう。
      
     パルテナお姉さんとのお約束ですよ♪うふふふふ」

570Mii:2020/02/08(土) 04:23:19 ID:uMdP2yZs
デイジー「やばっ、泣きそう――
     よし、じゃあ、私は朝食摂ったら、明日まで会わないでおこうかな。
     その方が、作戦会議も存分にできるでしょ?私、空気読める子!」

ロゼッタ「そこまで気を遣わなくても…でも、ありがたくその提案、受け入れます。
     明日を、楽しみにしておいて、くださいな!」



拳と拳を、軽く、ぶつける。

…なんだか、熱血と青春の香りがします。この際、年齢は気にしません。



ヒルダ「あ、待ってください!私も!」タタタ

ゼルダ「やれやれですね」



左からヒルダ姫が、右からはゼルダ姫が。
2人分の拳は4人分の拳となって、正々堂々、全身全霊の誓いを立てました。

571Mii:2020/02/08(土) 04:25:07 ID:uMdP2yZs
デイジー姫が、どばっと食料担いで、去った後。

ゼルダ姫と、ヒルダ姫と、私は、時間が経つのもすっかり忘れて。
作戦会議のまっさかり。次々と、線が紙に書き込まれて行きます。

…………冷静沈着に、でもしっかり意見は言い合って。
修正、修正、また修正。

見直すべき動き、手順、プロットはてんこ盛り。
珍しく体もほとんど動かさず、完全な頭脳モード。

体を動かしたときを敢えて挙げるなら…コンビネーション技の特訓、くらいでしょうか。
デイジー姫には悪いですが、退出していただいたこの機会。最大限に利用します。



ゼルダ「はい、では――このあたりにしておきましょうか」パチン

ヒルダ「そう、ですね……あれ、すごくお腹がすいています」

手を打ち合わせるゼルダ姫の合図で、お開き。うーんと背筋を伸ばします。
そういえば昼食すら、食べていませんでした。それくらい熱中していたのです。



夕食を摂って、お風呂に入って、寝間着に着替えて。
寝具に滑り込んで、しばらくぼーっとします。

天井が、妙に近い気がする。…何か、大きなことができそうな、気がします。

572Mii:2020/02/08(土) 04:27:59 ID:uMdP2yZs
チコ「片づけ、まかせてー!」セッセ

チコ「明日に向けて、すぐに寝ること―!」フヨフヨ

……いろいろ、お片づけを任せちゃいました。



ヒルダ「…ロゼッタ、起きていますか?」

ロゼッタ「起きていますよ。明日は頑張りましょうね」

ヒルダ「…デイジーにお礼を述べたことですし、ロゼッタにも。

    私、ロゼッタと友達になれて、本当によかったです。
    ありがとうございます」

ロゼッタ「…何をいまさら。私こそ、ありがとうございます。
     これまでも、これからも。きっと、ずっと、友達です」

ヒルダ「そうですよね、ふふ…」



もう、暗い表情のヒルダ姫なんて、どこにもいないのです。
それは、とてもとても、喜ばしいことだと、思いました。

573Mii:2020/02/08(土) 04:31:21 ID:uMdP2yZs
ゼルダ「……何を2人とも駄弁っているのです?
    明日に備えて、さっさと寝てください。

    それに、あえて苦言を言わせて頂きますが。
    結局負ける可能性だって…十分にあるのですよ?
    浮かれすぎず、その先、さらに先を考えておく癖をつけてはどうですか?」

ヒルダ「…………」クスッ

ロゼッタ「…………」クスッ



その言葉は、むしろ笑わせる効果しかありません。



ロゼッタ「ゼルダ姫?快進撃ストップ宣言をしでかした張本人が、
     そんなことでは駄目ではないですか。心にも思っていないでしょう?
     …勝つんですよ、絶対に」

ゼルダ「…はあ。私もヤキが回りましたか。ロゼッタにバレては形無しですね。
    私のこと、中々分かってきたのではないですか?」クスクス



寝過ごしなんて、まっぴら御免ですが。
もう少しだけ、この余韻に浸っていたいと思ってしまうのは、贅沢でしょうか。

…さて、真の強さを手に入れた3人で、打倒デイジー姫と参りましょう!

574Mii:2020/02/08(土) 04:33:38 ID:uMdP2yZs
〜翌日〜



ロゼッタ「いよいよですね!」ワクワク

ゼルダ「ロゼッタははしゃぎ過ぎですよ。
    今頃、大きく出過ぎたかと冷や汗たらたらの状態なのかもしれませんよ?」

ヒルダ「あは、それはちょっと見てみたいです…」



会話をしながら軽く身支度をして、さあ仮眠室を出よう…というところで。



がちゃり。



扉がぎいい、と開けられます。



デイジー姫が、妙に静かに――唐突に、部屋にやってきました。

575Mii:2020/02/08(土) 04:36:37 ID:uMdP2yZs
ロゼッタ「おはようございます、デイジー姫!
      えっと、まずは朝食にしましょうか――――」





デイジー「フィールドに、全員、集合。…………以上」ニヤッ












ゼルダ「――――望むところです」フッ

ヒルダ「が、頑張ります!」グッ

ロゼッタ「為さねば成らぬ、何事も…ですよね!」

576Mii:2020/02/08(土) 04:40:15 ID:uMdP2yZs
フィールドに向かってみると、既に到着しているデイジー姫。

――目を閉じ、腕を組み、柱の一つに背中を預けて、もたれ掛かっています。
――これぞ、デイジー姫の振る舞いだなあ、と一瞬思って……。







デイジー「では、耳にタコができるかもしれないが、改めて。

     …これより。
     私ことデイジーと、ゼルダ、ヒルダ、ロゼッタの3名1グループによる、
     模擬戦、第15戦を始める。位置に着くように」







流れるように、三者三様…いえ四者四様に、既定の位置まで歩を進めます。



ぴりぴりと張り詰めるこの雰囲気が、たまりません。

577Mii:2020/02/08(土) 04:45:07 ID:uMdP2yZs
デイジー「初期残機数は、デイジーが『1』、他の3名は『3』とする。
     どちらかの陣営の全ての残機数が『0』となったなら、
     その時点で残機を残した側を勝利とし、試合終了とする。
     また、特殊ルールとして、デイジーについては
     『初期配置の床・地面に対して、背を継続して3秒接地』
     が満たされた時点で敗北条件が満たされたものとする。

     デイジー側の陣営について。
     相手陣営の残機を奪う場合は、一方的な瞬殺を抑止するため…
     直前の残機削りから10秒以上の間隔を空けること。
     また、直前の残機削り対象者とは異なる選手を狙える状況であるかぎり、
     同一の相手から連続で残機を奪わないこと。
     これらに違反した場合、該当する分の残機削りについてはカウント無効とする。

     ゼルダ、ヒルダ、ロゼッタ側の陣営について。
     形式的に残機0となった者は、復活したとしても速やかに戦線から離脱し、フィールド外へ移動。
     試合への不干渉を遵守できる状態に移行しなければならない。
     ただし、既にその者によってフィールド上に仕掛けられた、
     行使が間に合って発動中ないし発動待機中の魔法等については、
     外野からの操作でもしない限り、改めて除去する必要はないものとする。
     外野からの助言等は禁止。単なる応援はこの限りでない。



     ――――不明点のある者は、前へ」



デイジー姫も分かっている通り、何度も何度も聞いた文言です。
私たち3人の反応は、神妙に「問題無し」と微動だにしないことのみ。

578Mii:2020/02/08(土) 04:50:15 ID:uMdP2yZs
デイジー「…では、ロゼッタ。いつもの開始合図、頼んだぞ」

ロゼッタ「はい!」

皆さん構えたところで、私だけ、違うポーズ。
右手の手のひらの少し上に赤々と作り出したるは、
私だけの炎魔法、パイロキネシス。



…間違えました。私だけの「空間魔法」、パイロキネシス。



見かけも効果もモロに炎属性ですが、物理法則で作った火種にFPを撒いているだけなので、
極端な例を挙げるなら「炎属性禁止スキル」を持った敵が現れたとしてもどこ吹く風で使えます。
逆に、空間魔法を禁止されたとしたら置物になるので、偽物の私には注意しなければ。



さてさて、これをどうするかと言いますと。



ロゼッタ「…そぉれっ!」ブンッ!

ほんのちょっとだけ前方の、はるか頭上目掛けて、ぶん投げます。
隔壁のバネの力で飛ばすのは、頃合いを見計らって止めにしています。
自分の腕を酷使して飛ばした方が、威力も精度も高いみたいです。

579Mii:2020/02/08(土) 04:53:11 ID:uMdP2yZs
ここで特訓する間にも…私の基礎体力、とてつもなく、伸びました。デイジー姫のおかげです。

ぐんぐんと伸びていき――やがてようやく上昇を止め――重力に従い、落ちてきます。
それが、ちょうど…私たちと、デイジー姫との中間あたりの位置の地面目掛けて――



ボンッ!!



――――ひょうきんな衝突音とともに、試合、開始ですっ!
――――こちらの、第一手は。







ロゼッタ「――――」

ヒルダ「ファントム・ヨガ、召喚――――っ!」

デイジー「相変わらず凝りもせず――何っ!?」



今までとは違う。
フィールド全体を覆い尽くさんとする、巨大な召喚獣の出現で、幕を上げました。

580Mii:2020/02/08(土) 17:05:25 ID:uMdP2yZs
<前レス訂正 ファントム・ヨガ → ファントム・ユガ>






――――でかい。



ぱっと見た感想が、それ。
これまでの召喚獣はせいぜい体長5メートルといったところだったが、今回は20メートルはありそうだ。
フィールドの足場の一番高い所まで、揺らめく頭が届いている。
もちろん3人の姿など、完全に隠れてしまった。
――そういえば、目くらましになる、とはいつぞや言わせてもらったか。



だが、その分、密度が小さくなって強度としては落ちたのか。
向こう側が透けて見えるとまでは行かなかったが、
いつもならすぐに魔法の杖やらを振り下ろしてくるところなのに、
今さらになってようやくアイスロッドを振り上げ始めた。その動きはあまりに鈍い。

それをわざわざ待ってやる私でもない。
召喚獣の体を突き破る心持で、突進。拳がうなりを上げる。

581Mii:2020/02/08(土) 17:09:57 ID:uMdP2yZs



ロゼッタ「…要塞法衣っ!」



防御力が高まっていくことを示す、ロゼッタの声がする。
ピキピキピキ、と特徴的すぎる金属音。

…ざっと、防御力4倍。ステータス補助としては破格の効果のように思う。
使えるなら使っておくのは当然な性能だ。それだけ頭に入れておき、なおも私は突進する。



キラッ!

ゼルダ「はああああああああああああ――――っ!!」ドンッ!!



――まさか、そちらから魔物の腹を突き破って突撃してくるとは思わなかった。
無茶をさせ、ゆらりとよろめく召喚獣。ただ、消え失せるほどではない様子。

魔物を貫いた副産物の、身を纏う靄と煙。
神々しい冠を光らせ、ゼルダが中々の…いや、中々すぎる速さでミサイルのように迫り来る。

魔物の体にぽっかりと空いた、大きな穴。
その向こうに、一瞬だけキラリと光る空間を、私は見逃さない。
鼻血を出して、ふらつきながら構えているロゼッタが、映っている。

582Mii:2020/02/08(土) 17:13:39 ID:uMdP2yZs
…なるほど。ゼルダの体そのものを、即席で…隔壁の空気砲で吹っ飛ばしたのか。
今の魔法レベルで、思い切ったことをする。相当酷使したみたいだがな。

種明かしが済んだところで、作戦に特段の変更、なし。
飛んでくるゼルダに、重い拳を炸裂させて――



しかし妙なことに。低空飛行するゼルダが、顔の前で腕を交差させ。
なりふり構わず突っ込む体勢だと?



ガッキイイイイイィィン!!



デイジー「――――そういう、ことかっ!」ビリッ

ゼルダ「――――ぐっ、これでも結構痛みますが…無問題、ですっ!」

ゼルダの 上半身の 攻撃力が  15%アップしている!
ゼルダの 上半身の 防御力が 300%アップしている!
ゼルダの 上半身の 素早さが  50%ダウンしている!▼

デイジー(…まさか、他人に行使できるように改良していたとはな、ロゼッタめ!)ジィィン

583Mii:2020/02/08(土) 17:20:04 ID:uMdP2yZs
なるほど、無謀に見えた突進は、ロゼッタの魔法を信頼してこそか。
つい迎撃で殴ってしまった右手を恨めし気に見る。
ゼルダの素の防御力と合わせると、馬鹿にできない耐久性。多少の痺れがある。

ロゼッタ「――まだまだっ!要塞法衣、ばら撒きますよっ!
     積み技の 重要性を 教えて差し上げますっ!」パアアアアアアアアッ

今度は様子がはっきりと伺えた。ヒルダの背に手を当てて、立て続けに術式発動。
ヒルダの体の見た目が、不可思議な屈折率を生み出している。

なるほど、流石に他人の体を遠隔で隔壁で覆うことはできないか。
さっきはそれで、ゼルダを私の視界から隠しておいたのだな。



ヒルダの 上半身の 攻撃力が  15%アップ!
ヒルダの 上半身の 防御力が 300%アップ!
ヒルダの 上半身の 素早さが  50%ダウン!▼



ヒルダ「ありがとうございます、ロゼッタ!」シュイィィン―― !

ロゼッタ「うっ…ははは、どういたしまして。さて、次は私自身が――」スッ

デイジー(これは、うざいな)ヒクッ

サポートキャラとしては壊れもいいところだ。
ヒルダの攻撃スタイルとしては直接の素早さダウンは有ってないような物。

584Mii:2020/02/08(土) 17:24:52 ID:uMdP2yZs
呆れて一瞬目を離した隙に、ゼルダは勢いそのままに、至近距離で魔法の構え。



ゼルダ「光の――――」パアアアアアッ!

――馬鹿か。チャージに時間が掛かり過ぎる。
――ロゼッタの魔法の副作用で腕の敏捷性が落ちているせいで、ますます遅い。
――5秒、10秒レベルで無防備。こんな距離から矢を番え始めて、間に合わせる訳、無いだろう!

怒涛の反撃体勢。
要は、堅固となっている胴部ではなく、下半身か頭部を撃ち据えてやればいい。

ヒルダ「ファントム・ユガ――ハンマーっ!!」サッ

ゼルダへの支援が飛んでくるのは読めている。
そうしておいて光の弓矢を撃つ機会を作るという方針なのだろう。
だが、この攻撃も、飽きるほど目にしてきた。

闇色に染まる、大きな具現化ハンマー。召喚獣が撃ち付けてくる、怒涛のモグラたたき。

ヒルダ「それっ、それっ、それ――っ!」

FP供給を必死に頑張り、何かを堪えている感じのヒルダ。
1発目は、手刀で斬って捨てる。2発目は、横にはたいて吹き飛ばす。3発目は蹴り上げる。

そう。ヒルダには悪いが、あいかわらず避けるほどでもない攻撃なのだ。
美しくかわすのも趣があるが、今は調子に乗ったゼルダを懲らしめることを優先。
時間稼ぎに付き合うつもりはない。最短距離でゼルダに向かう。

585Mii:2020/02/08(土) 17:30:46 ID:uMdP2yZs
――まだまだ、甘いっ!

光の弓矢の魔力充填を今さらやめるわけにもいかず。
ちょっとバックステップして身を翻し私から逃れようとするゼルダの悪あがき。
そんなゼルダの胸倉を、超加速で飛び込んで掴み上げる。
にぃっと笑う私に、目を見開くゼルダ。その隙まさに、命取り。

逃走を防ぐまでが、ワンアクション。鎧のない顔面に、体重の篭った、無慈悲かつ怒涛の肘突き――っ!



ゼルダ「が、はっ……あああああああっ!!」ゴボッ

血反吐を吐きながら吹き飛ばされながらも、ゼルダが吠えつつ、意地で、充填の終わった光の弓矢を解き放つ。
投げやりの叫びではなく、諦めない鋼の心。よく耐えた、と称賛してやりたいところだ。
ただ、狙いなど付けられず放たれたそれは、ゼルダの想いをバッサリ裏切って、
てんで方向違いのところに向かって飛んで行く。

残機のおかげで復活しても、体力と異なり、魔力/FPは回復しない。
つまり、完全に撃ち損。大量の魔力の無駄使い――





ロゼッタ「――――Tactics-Hold《留保戦術》っ!!」ギュッ!



――とはならないのが、最近のゼルダ・ロゼッタコンビの厄介な所なのだよな、全く。

586Mii:2020/02/08(土) 17:34:38 ID:uMdP2yZs
私の横を通り過ぎ、天を目指す光の弓矢が、霧散する前に…。

ロゼッタの腕が素早く的確にすぅっと向けられ、ぎゅっと握り拳を作られてみれば。
豪速の光の弓矢は、ギュイィンと激しく光ったかと思えば、シュパッと消えていく。
なんというか、あれだ。某忍者漫画の「カム○」みたいな奴だ。
…言っておくがDLCのFE勢の方ではない。



ロゼッタ「――ハァッ…T-ホールド、成功っ!ぐぐぐ…」ガシッ!

デイジー「チッ…」

血を指の隙間から垂れ流しつつ、握り締めた状態で固まっている、ロゼッタの右手。
それが、何を意味するか。最近の私は、知っている。

握り拳をほどくと、ほどなくロゼッタの手の甲が光り出す。
まるで英雄の紋章のように、弓矢らしき、光る絵が刻まれた。
トライフォース模様を光らせることがあるゼルダやヒルダとお揃いだな。

これで、ロゼッタが、何ができるようになったかと言うと。



発動を念じて、腕を振りかぶる、それだけで。
1発だけ、光の弓矢をポンと出現させ、もとの勢いのままぶちかませる。
つまり「『光の弓矢』ストック状態」、以上。

…さすがの私も、初めて見た時は開いた口が塞がらなかった。

587Mii:2020/02/08(土) 17:38:35 ID:uMdP2yZs
そりゃ、「魔法の奪い取り」が非常に便利だろうとは助言したが。
マスターする早さも、完成度も、異常な次元だろう…!



一度にストックできるのは魔法1つのみ。

コントラクト(魔術契約)を取り交わした味方の魔法しか回収できない。
魔法のことはまるでわからないが、以前、契約の為に魔法陣をサラサラ描いていた。
まるで魔法使いだ。…………忘れていた、大魔法使いだったな。
今の所、契約しているのは当然、ゼルダとヒルダのみ。

ストックから取り出した魔法を、再度回収することはできない。

更に、ストック状態では、取り込んだ魔法のランクと自分の実力との差に応じて
スリップダメージを強いられ続ける。



…とまあ、雁字搦めの制約があるらしいが。
これでロゼッタは、攻撃の幅が「ほぼ0」だった昔から恐ろしく拡がったことになる。

なんせ、外れて無駄になるはずの味方の魔法を見つけたら、
ギュッと握り締めて回収するだけで再利用。「はずれがでたのでもう1回」だ。
エコにも程がある。笑えて来る、と言ってもいい。

588Mii:2020/02/08(土) 17:45:01 ID:uMdP2yZs
将来のことを考えると、更に胸が躍る。

マリオやピーチなら諸手を挙げて、ロゼッタに協力してくれるだろう。
味方が必殺技を持っていれば、それだけ自分も強くなる。
光の弓矢をあっさり刈り取った…いや切り取ったことから分かる通り、
繊細な集中と視認追跡さえできていれば、魔法の規模、速度は今のところ制約なしだ。

…しかし。
  





  
       え?超高難易度じゃないかって?
       でもですね、『自軍識別』と『魔法エネルギー保存』を『空間転移』に組み合わせるだけですよ?
       一番難しい『魔法エネルギー保存』は自分のHP消費を対価としてBランクに落とし込んでいますし。
       『自軍識別』なんて、あらかじめの魔法陣で別工程タスクにしているおかげで行使中はCランクにもなりません。

      うーん、現に今の私が何とか使えていることからして、全体でB+ランクってところでしょう。
      実分身とかゲイルアタックとか亜空切断とかに比べれば遊戯みたいなものですよ?





……とりあえず、ムカついて残機を奪った当時の私は、絶対に悪くない。

589Mii:2020/02/08(土) 17:47:51 ID:uMdP2yZs
〜昨日〜

作戦会議も半ば、とあるタイミングで。



ロゼッタ「ぶっちゃけていいですか?」

ゼルダ姫と、ヒルダ姫が、振り向きます。



ロゼッタ「心の底ではデイジー姫に教えを乞うて満足していた今までと、
     打倒デイジー姫、大々前提で動く明日とでは、私たちの作戦は…
     大きく変えなければ、なりません。

     ぶっちゃけた話。
     勝つためのポイントは、突き詰めれば、至極単純。



     ――どれだけ、光の弓矢をデイジー姫に放ち、当てられるかです」

ゼルダ「……えっ」

ゼルダ姫が、目を白黒させています。
もっと己の魔法に自信を持ってくださいよ。

590Mii:2020/02/08(土) 17:51:28 ID:uMdP2yZs
ヒルダ「……やっぱり、そうですよね…
    他の魔法や物理攻撃に比べて――光の弓矢だけ、威力が段違い。
    …5倍か10倍くらい上回っていますから。やはり芸術的にまで完成された大魔法ですよね!

    他の魔法を100回かすらせるくらいなら、
    光の弓矢を1回クリンヒットさせた方がよほど効果があるのではないでしょうか」

ロゼッタ「同じ認識を持っていただいていて、嬉しいです」

ゼルダ「えっ…えっ、そのようなことは――」カアァ

ロゼッタ「続けますねー。
     そして、デイジー姫としての認識もそうなっているはずです。
     光の弓矢だけは、割と本気で対策・対処しようとするでしょう。

     そのほかの魔法は逆に、強引に突っ込まれる可能性がありすぎます。
     足止めできたと思い込んでいたら直進で斬り込まれることをうっかりしていた、
     っていうのが一番やってはいけない過ちですね。

     ……今まで嫌というほど犯してきた過ちですけど、ええ」

591Mii:2020/02/08(土) 17:54:55 ID:uMdP2yZs
ヒルダ「では、その……ゼルダ姫を徹底的にガードして温存して、
    その間にできるだけ光の弓矢を撃ってもらう、と」

ゼルダ「……………………それは、したくありません」

ロゼッタ「私も、それはしたくありません。全然、三位一体じゃありません。
     …というより、それだと勝てません、絶対。

     私たちがデイジー姫に散々鍛えられてきたのと同じく、
     光の弓矢を放つゼルダ姫を十二分に攻略できるだけの経験を、
     私たちはデイジー姫に与えてしまいましたから」

ヒルダ「では、どうしますか?その顔…無策ではないでしょう?
    声が弾んで聞こえますよ。話してみてください」



そう。悲しむのではなく、途方に暮れるのでもなく。
解決策を是が非でも探し出す原動力にしなければなりません。

592Mii:2020/02/08(土) 17:59:49 ID:uMdP2yZs
ロゼッタ「大事なことは、3つ。

     まず、やっぱり、ゼルダ姫に光の弓矢を撃ち続けてもらうこと。これが、ひとつ目。

     ただし、そのゼルダ姫には敢えて前線に出てもらい、
     一層侮られがちとなった他の魔法で意表を突いたダメージを与えること。これが、ふたつ目」

ヒルダ「確かに、一番の脅威となるはずの撃ち方のゼルダ姫が前に出れば、
    デイジーはそれを咎めるべく、他の魔法を多少強引に蹴散らしてでも
    最短の道筋で接近戦を仕掛けるべく動くでしょうね」 
 
ロゼッタ「そして3つ目は――――」







ゼルダ「――――すこし、待ってください」



ロゼッタ「…え?」

私の秘策を提示しようとしたところに、まさかの横槍。
不快では全くありません。ただただ驚いて、思わず、固まってしまいます。

593Mii:2020/02/08(土) 18:04:46 ID:uMdP2yZs
ゼルダ「――――ロゼッタの考えていること、分かっているつもりです。
    でも、それだと、まだデイジーの想定から抜け出せていない気がしてなりません。
    
    というわけで、私からの提案は、更なる役割の変更です」

ロゼッタ「…………なんと」

これは、思いがけない申し出です。



ヒルダ「…えっと。ロゼッタの考えとは、一体、なんだったのですか?」

ゼルダ「要するに、ロゼッタと私、2人の話を統合するとですね。





     『最後の切り札』は、ヒルダ姫。貴方になるということですよ」

ヒルダ「…………!!ま、まだ、理解が十分でないのですが…
    それで、よいのですか!?納得して頂けるのですか!?」



ゼルダ「ええ、もちろんですよ?」

ロゼッタ「…ゼルダ姫がそうおっしゃるのなら、私も反対することなどありません!
     して、ゼルダ姫の修正案とは、どのような――!?」

594Mii:2020/02/15(土) 15:11:58 ID:UXSYQ7yA
〜再び、戦いの最中〜

手に光る仮初の紋章。ぐさり、ぐさりと体を蝕んできます。
…痛い、痛いですねっ!やっぱり今の私にとっては光の弓矢のランクが高すぎますっ!



ロゼッタ「…あっ!ゼルダ姫、すぐに回復してさしあげ――」

ロゼッタは 留保戦術の副作用で ダメージを受けている!▼



頭から血を流しながら、デイジー姫を睨み、ゼルダ姫が小声で私を諫めてきます。

ゼルダ「…いい、大丈夫、です。FP温存に、努めておきなさい。
    貴方の魔法はただでさえ燃費がよろしくないのですから。
    作戦の大元が破綻するくらいなら、私の残機の方がよほど安上がりです」ドクドク

顔の右半分が血濡れで、心配でしょうがないのですが――
そうですか、気遣って頂きありがとうございます。私も心を鬼にします。

ヒルダ「ユガ、急ぎ修復しますからねっ!」パアア

ファントム・ユガ「GRUUUUUU・・・・」ピカーッ!

ファントム・ユガが、シュルシュルと縮んでいきます。
そうしてやらないと、修復の魔力も馬鹿になりません。

595Mii:2020/02/15(土) 15:17:48 ID:UXSYQ7yA
デイジー「強化タイムは終了か。折角の隠れ蓑を捨てていいのか?」

ヒルダ「……十分役目は果たしましたのでっ!」

捨て身のギミックとしても使った召喚獣。わざわざ修復するのは骨です。

かといって完全に消滅させてしまっては…まずいことになります。
存在が希薄になり、消滅までの時間も迫るので、一旦ヒルダ姫がメンテナンスに。

ロゼッタ「その間の支援はお任せくださいっ!」ボウッ!

フッと火の玉を浮き上がらせる私。…割と、超能力者っぽいサマになってきました。

ゼルダ「…ゴホッ…まだまだ、射て、さしあげます、よ――」パアアアア



デイジー「その、『2人いれば無防備な3人目を私相手に守り切れる』という浅はかな考え――

      気に、食わないなっ!」

ロゼッタ「――ふぇっ!?」



デイジー姫が大地を震わせて、駆ける。
い、いけない!反応し損ねましたっ!かろうじてゼルダ姫が対応に移ります!

一拍遅れて動作に入るも…余りに速くて、私のパイロキネシスごときは、
誰もいない空間を間抜けに通過していくのみ……!

596Mii:2020/02/15(土) 15:20:09 ID:UXSYQ7yA
口では「射貫く」と言っていても、流石に無謀と察したか、ゼルダ姫が身構えて格闘応戦。

ただし、攻撃してもダメ―ジなど碌に通らず、意味がありません。
後ろ向きではありますが、底上げされた防御力を少しでも活かし、時間稼ぎに徹せねば。



――そう考えていた、私たち。
――その考え、恐ろしく甘い見積もりでした。



デイジー姫は、ゼルダ姫の直前まで来ると、急停止し、ふっと笑って――





デイジー「右から来るぞ、気を付けろ」





ゼルダ「な、何を―――――――」



――――――――

597Mii:2020/02/15(土) 15:23:03 ID:UXSYQ7yA



ゼルダ「――――っ!」





ゼルダ姫が、反応できたのは、奇跡だったかもしれません。

ゼルダ姫は、咄嗟に、反射的に、自分の顔までの軌跡を両腕で遮ろうとし――
あろうことか、「咄嗟に顔の守りを捨てて」、下方向に急旋回。
鳩尾を、死に物狂いで、死守しました。

バリイイイィィン、と、耳をつんざくような爆音がこだます。
なにかが霧散していく、光の欠片と共に。



ゼルダ「……フーッ…フーッ…!!」ガクガク



デイジー姫の拳は、言葉面だけならゼルダ姫の「期待通り」、
限界を超えて突っ張って見せたゼルダ姫の手によって、バシィッ!!と取り押さえられました。

デイジー姫の拳から初めて流れた、何筋かの赤い血。
受け止めたゼルダ姫の手首からは、夥しい量の出血が。

598Mii:2020/02/15(土) 15:27:47 ID:UXSYQ7yA



ゼルダ「――――フーッ――――フーッ…!!」バクバク



…傍から見ていても分かるくらいの動揺、脂汗。血走った眼。定まらない呼吸。
ただ、ゼルダ姫は決して、激痛のせいで、あんなことになっているわけではありません。



一瞬見せた、デイジー姫の、本気の本気。
私の仕込んだ要塞法衣は…たった一発のパンチで、腕の周り…
そしてその後ろに控える腹部のものまで、絶望的に大きな風穴があき、もはや使い物になりません。

もしも、「どうせ顔に飛んでくるんだろう」と決めつけてガードしていたのなら、
減速させること叶わず腹部の鎧を貫き通して、絶命させていたこと、請け合いです。



デイジー姫はデイジー姫で、目を見開いています。

デイジー「…驚いたな、心の底から驚いた。
     まさか反応してくるとは、更には腕の制約があるというのに、
     それを跳ね除けて間一髪、間に合わせてみせるとは…っ!
     基礎体力レベルにして、Lv. 50の大台には乗ったんじゃないか?

     私は『胸が張り裂けるほど』嬉しい。敬意を以て――――――――」スッ

599Mii:2020/02/15(土) 15:33:39 ID:UXSYQ7yA
ゼルダ「ヒルダ姫っ!!自分に集中してっ!早く――っ!」

「ナニカ」を悟り、ゼルダ姫が絶叫します。



デイジー「――――――――――――全力で叩き潰そう」

ドゴオオオオオオオオオオオォォォッ!!



ゼルダ「――――――――なん、ども、いいま、すが。
    ほん、とうに、しゅ……み、わるい、で、す………………………ね」

ゼルダ姫が、ぐるんと1回転、したので、しょうか。
速過ぎて、よくわかりませんでした。……見ているだけしか、できませんでした。

…多分、なのですが、こう…一瞬のうちに、デイジー姫の手が再び自由の身となって。
しなやかに長い腕を差し込まれて。背負い投げをされたのだと、思います。
…クレーターを作りながら、背中から叩きつけられている最終状態を鑑みるに、そうとしか思えない、ので。はい。

…要塞法衣に敢えてちょっかいを出すのは、こちらの戦意を下げることを狙っているのでしょうか――

ゼルダ「――」ガクッ



ゼルダ残機・・・残り『2』
ゼルダを包む要塞法衣が 完全に 解けた!▼

600Mii:2020/02/15(土) 15:37:00 ID:UXSYQ7yA
光り輝くとともに、ゼルダ姫、復活。

ケガ完治、パチッと目を開け、手で口を押さえて…吐き気をグッと、堪えています。
ちなみに、ゼルダ姫もヒルダ姫も、それなりにショックには強くなってはきましたが…
復活後に吐き気が一切ないのは――私だけです。嬉しいような、悲しいような。

さて、ここからが。お互い、ますます重要になってきます。
連続した残機削りが禁止というルール上、ヒルダ姫か私が残機を減らすまで、
ゼルダ姫の残機が奪われることはありません。
もちろん無力化に専念して動かれる可能性は残っていますが、
ゼルダ姫の光の弓矢はなんだかんだ言って充填しやすくなるでしょう。

ただしこれは、デイジー姫がヒルダ姫と私の速やかな殺戮に躍起になる、
積極的になるということでも…当然あるのですから。



ヒルダ「アイス、ロッドッ!」バッ

少なくないFPを注ぎ込み、なんとか復活した召喚獣。いわゆる「いつもの大きさ」で。
デイジー姫を休ませまいと、なるべく時間を空けず、ヒルダ姫が動きます。
10秒は倒されないから…なんて悠長にしていると、たちまち取り返しが付かなくなってもおかしくありません。

601Mii:2020/02/15(土) 15:39:17 ID:UXSYQ7yA
彼女の魔法も、決して貧弱ではありません。威力も速度も、見事なもの。
術式の素早い切換えにより、持たせる武器も様変わり。
地力、そしてこれまでの努力の結晶により…そこいらの敵相手ならば、粉砕もたやすい。
乱れ飛ぶ激しい冷気の塊たちが、デイジー姫に襲い掛かります。



デイジー「…おっと。それにしても、ヒルダ、お前だけは中々火力が上がっていかないな。
     ロゼッタは割と、私に警鐘を鳴らせるようになったっていうのに」



…しかし、デイジー姫の基準からすると、なかなか及第点を貰えない。
飛ばす氷は、上体を逸らすだけで躱され、身を翻すだけで空振りし、
悉く無効化されて行きます。

ヒルダ「人が、気にしている、事を――っ!」

ヒルダ姫が悔しさをにじませていますが、
すでにデイジー姫は、視線をゼルダ姫に向けています。

ゼルダ姫が、光の弓矢を…デイジー姫からすれば「性懲りもなく」溜め始めます。
要塞法衣は消え去っているのが本当に気懸り。
もちろん、全員がこの衣に覆われ続けること、残機を削られるたびに張り直せること…
これらが達成されれば非常に心強くはありますが、時間的にもFP的にも余裕などありません。

…仮に余裕があったところで、デイジー姫にとって突破できないこともないというのが更に私を億劫にさせる、
という新たな懸念事項とエンカウントしましたが。

602Mii:2020/02/15(土) 15:42:40 ID:UXSYQ7yA
ヒルダ「アイスロッドッ!」



デイジー姫が、ヒルダ姫を半ば無視し――



ゼルダ「光の――――」パアアアア



ゼルダ姫が溜めるソレには、流石に目を光らせて――



デイジー「ゼルd――――――――――」ダダダダダ



――ぴくっ。





デイジー「――――――っとぉ!!!!」ズサァ―ッ!

デイジー姫が、何を思ったのか、突然自らバランスを崩す。
身を捩らせて、進路から大きく外れゴロゴロ転がって、最後は背中を地に滑らせる。

603Mii:2020/02/15(土) 15:45:23 ID:UXSYQ7yA
ロゼッタ「――――え、えええーっ!?」シュンッ!!  ザンッ!!

ヒルダ「そんな……!」

野生の勘、というものか。

進路通りに進んでいれば――斜め45度後方からデイジー姫目掛けて迷うことなく走る、
「私の」光の弓矢が、背中を背中を射止めていた、はずでした。
突如現れた私の腕の先から、これまた突如として現れた、一筋の閃光。
…狙撃対象を見失って、フィールドの遠くまで……むなしく飛んで、消えて行きました。

う、そ。今のが、読まれ、たのですか!?
とっておきの、初お披露目の、「ワープ即撃ち」光の弓矢だったのですが…!
腕を振り下ろした状態のまま、硬直を食らいつつ、心まで固まってしまいます。



デイジー「おっと、これで3秒取られるとかはギャグにもなら――」

ゼルダ「…ハッ!!!」バシュッ!

デイジー「――――っ!」



で、ですが。まだ、デイジー姫は安心できない。
時をほぼ同じくして、ゼルダ姫の光の弓矢も準備完了。デイジー姫をロックオン。
体勢が崩れているありさまで、この2射目を――切り抜けられますかっ!?

604Mii:2020/02/15(土) 15:48:45 ID:UXSYQ7yA



デイジー「ずああああああああぁぁぁっ!!」ズシャアッ!




ぽたり、ぽたり。



デイジー「……………………少々、無茶をしたかな」ポタポタ

私もヒルダ姫も――そして何より、ゼルダ姫が、唖然とする。
夢でも見ている気分です。

ゼルダ「――――ま、まさか。
    腕の一振りで、光の弓矢を――引き裂いた、ですって?」

デイジー「いや、そんなに簡単なことじゃなかったぞ?
     見ろ、今のだけで――右腕が、結構、外出血を起こしているようだ。
     ぽつぽつと赤く染まっているだろう?マリオやリンクなら、こんな症状すら起きていないと思うが。
     所詮、私の力などこれっぽっちということか。

     …そうだな、ここまでの時点で、これまでの14回の試合を差し置いて
     ベストスコアは叩き出せているだろう」スクッ

…そんなしょっぱい結果を求めて光の弓矢を撃ち続けたわけではないのですが。
ゆらりと立ち上がったデイジー姫が、まさに「越えられない壁」に見えてきます。

605Mii:2020/02/15(土) 15:51:32 ID:UXSYQ7yA
デイジー「…今のは、かなり良かった、掛け値なしに。
      ワープ後の動作に硬直ロスもほとんどなく、抜群のタイミング…
      すっかり技術を、物にしたんだな――!

      いや、ロゼッタだけではないぞ。ゼルダ、お前も。
      致命傷一つ狙いではなく、迂闊に起き上がれない位置関係を狙って
      敢えて照準をずらした、一瞬の判断で――だろう?
      あれがなく、欲張って仕留めようとしていれば、躱しきれていたというのに」



最近のデイジー姫は、吹っ切れた影響が徐々に好い方向に出ているのか、「裏の顔」でも…
褒めたいと思えば言葉でしっかり称え、冗談などにも即激怒はせず一旦流してくれる、といった変化が出ています。
このように褒めて頂けると、くすぐったい。

ですが、状況としては非常にまずいことになりました。
腕で無理やり払う選択をしたということは、もし胴体に到達していればよりダメージを与えられていた、
というのは間違いなさそうではありますが。

ここまで武勇を示されては、果たして有効ダメージを与えるのが、何時になることやら…!
もっともっと、致命的なスキを、好機を用意してやらなければならないようです。

606Mii:2020/02/15(土) 15:54:56 ID:UXSYQ7yA
私の手の甲の弓矢のマークは、ストックを失ったことで、今は跡形もありません。
ストックし直さなければ何も始まらないのですが、今のでゼルダ姫の心が折れていなければよいのですが――



ゼルダ「…………」ブルブル

ゼルダ「……………………」ハーッ

ゼルダ「…………その笑いを崩すのが、ますます楽しみに、なってきました、ね…!
    やってやろうでは、ありませんか!お覚悟をっ!」



――杞憂だったみたいです。武者震いでしたか。
――今のゼルダ姫、いえ私たち3人の心を折るのは、そう簡単ではないですよね。



むしろ問題は私です。
肩で息をしています。汗もびっしょり、腕には鈍痛。
光の弓矢の維持で、デイジー姫以上に痛手を負ってしまいました。

ロゼッタ「――――つ、強い」

デイジー「弱い姿など、見せた事ないだろう?」

ロゼッタ「わかっています、言葉の綾というか、再認識というか…そんなところ、です」

607Mii:2020/02/15(土) 15:58:31 ID:UXSYQ7yA
くつくつと笑ったあと――

デイジー「何だ?ボーっとしているのなら…こちらから行くぞ!」ダンッ!

ロゼッタ「―――っ!?」シュンッ!

地を蹴り、颯爽と、私に迫る。…まずい、予想はしていましたが、狙われました。

ヒルダ姫のもとへ、慌ててワープ。
なんということでしょう、無理が祟って、体がフラ付きます…!
読まれていたのか、デイジー姫は既に方向転換、またもや距離を縮めます。
私=ターゲット、の等式が成立してしまっているようです。

デイジー「ふんっ!」ブンッ!

ロゼッタ「ひやっ!?」ズルッ!

速度を緩められないまま、何かを投擲されました。
…砕けた足場の破片!?拾ったタイミングすらわかりません。

1投目のストレートを、ぎょっとしながらも大きく横に反ってヒヤヒヤと躱し、

2投目のフォーク…もとい上に浮く足場の裏側に跳ね返らせた荒れ球を、
思わず目を瞑りながらの交差する両腕で防ぐ。

…ものすっごい威力です。
ただの5cm程度の破片なのに、私に着弾すると同時に爆発し、もうもうと土煙。
あんなのを見せられると、私のジャイロファイアなんて、まだまだ序の口ですね。

それでもとりあえず、なんとか――

608Mii:2020/02/15(土) 16:01:22 ID:UXSYQ7yA



ヒルダ「うぁっ――――」ズルッ・・・



――なんて、考えていたのが、馬鹿でした。
――激痛の呻きが、傍のヒルダ姫から聴こえてくる。
――狙ったのか、はたまた偶然か。…きっと、狙ったのでしょう。



デイジー姫の3投目は、ヒルダ姫のドレスごと、ヒルダ姫の右太ももあたりを、
グサッとザクッと、あっさり貫いていきました。



それでも、流石はヒルダ姫。流れる血など、なんのその。
一度、もんどりうって地に伏せたものの、涙目で、歯を食いしばって耐え…
息を整えつつ、立ち上がろうと、しています。

私は、ヒルダ姫を信じます。――だから、駆け寄ることなんていたしません。
だから私は、デイジー姫をしっかり見据えたままで――





――――あ、れ?デイジー姫が消え、ました!?

609Mii:2020/02/15(土) 16:04:47 ID:UXSYQ7yA
ヒルダ「ロゼッタっ!上…というか後ろですっ!」

痛みを堪えつつ、ヒルダ姫が警告を発する。
目を切った瞬間に、身を舞わせて浮遊足場に移動――!?
振り向いてみれば…なんか、背後から殴り込んできました――っ!?

ヒルダ姫を庇おうと、決死のダッシュ。
私の作った鎧だけではあまりにも心もとない。



ビシィッ! ビシィッ! ビシィッ・・・!

ヒルダ姫と私の目の前に、改めて隔壁を急ごしらえっ!



デイジー「こんなもの、回り込めば――」

ロゼッタ「せい、やぁ―――――っ!」

ブウウウゥゥンッ!

隔壁との接続を切らないでいて、よかった。両腕を前に突き出し、
力を集めつつ、腕のスイングと共に隔壁をスライドッ!
厚い厚い壁を、再度作るより、こちらの方が多分早くて低コスト!

勢い余ったデイジー姫の拳を、どうにかこうにか食い止め――ますっ!
叩いてみるまで、そこにあるとは中々気付かれにくい、透明度の高い壁。
とりあえず食いついてくれました!

610Mii:2020/02/15(土) 16:06:56 ID:UXSYQ7yA
デイジー「……!付いて、来られるか――だが」

ロゼッタ「――――けほっ」

代償も、小さくない。じわじわと体を蝕まれ、数えるのも億劫になった吐血。
それでも、なんとか…自らを奮い立たせ踏ん張って、デイジー姫を見据えますっ!

デイジー「意気込みすぎているのはいいが、ロゼッタ。
     お前、フルパワーすぎて、いつも以上にスタミナ切れが早いぞ?
     ペース配分の重要性を…忘れたのか?」

ロゼッタ「……ゴホッ、ゴホッ…は、はは。不真面目な動きには、見えない、でしょう?
     そうだ。ちょっとくらい、手加減しても、バチは当たりませんよ?」



とはいえ、デイジー姫は一層拳に力を込めて、ぐぐぐっと全力前進。
1枚、また1枚、またまた1枚……!
衝撃に晒された隔壁は、ちょっとデイジー姫を減速させるくらいで、
外側から順に次々とかち割られ、その役目を失っていきます。

611Mii:2020/02/15(土) 16:09:36 ID:UXSYQ7yA
補強、補強、補強――――っ!

ヒルダ姫が攻撃態勢を整えるまで、私がカバーして差し上げなければっ!
…ですが、損傷速度の方が、どうにも、大きい…!



デイジー「ふ、は、はははは――――っ!!」ゴオオオオオォォ!!

ロゼッタ「ぐ、ぎ、ぎぎぎ……………勘弁、してくださいよ…っ」

それでも、高エネルギーの衝突に耐え、少しでもデイジー姫の到着を遅らせます。
あ、隔壁動かせるとはいえ、あんまりフェイントで側面から攻撃とか、ヤメテクダサイね!
神経ますます磨り減るんで!もうちょっと、意地張っててくださいね!

あ、視界が…ちょっと、赤い、気がします。
いえ、投げ出したりは、しませんっ!

ロゼッタ(…予想以上に、負担が大きいん、ですけど、ねぇ!)

ですが――デイジー姫に悟らせては、いけません。





あとで…怒られる気はしますが、はい。
…泣かれたら、嫌ですね。

612Mii:2020/02/15(土) 16:13:40 ID:UXSYQ7yA
ヒルダ「……ハァッ…もう、大丈夫、ですっ!――――――――ハンマーっ!」



そうこうしているうちに、ようやくヒルダ姫が、戦闘態勢を整えました。
右脚をできるだけ庇いつつ、フラフラとではありますが立ち上がって、
ファントム・ユガに命令を下せる段階です。

復活した、凛としたその声で、魔物が炎の杖を振り回す。
ヒルダ姫の足元に流れる血が痛々しいですが、いまは少しでも粘って…
ゼルダ姫の自由行動時間を伸ばすべき。

ファントム・ユガ「GUOOOOOOOOO!」

ヒルダ姫の後押しも加わって、なんとかデイジー姫を押し戻そうとします。

デイジー「…一つ覚え、懲りない奴だ」

ヒルダ「――――ハンマー!――――ハンマー!――――まだ、まだぁっ!!」



――1発、2発、3発。

しかし、もはや、ヒルダ姫の攻撃は脅威と見なされなくなっています。

ヒルダ姫が、じりじりと、後ずさる。
怯えたように、私の後ろに隠れて、私と付かず離れずの距離になりました。

613Mii:2020/02/15(土) 16:17:44 ID:UXSYQ7yA
私は、隔壁の制御を左手で任せて。
空いた右手で、ヒルダ姫の左手を握ってあげます。
…負けていられませんよ、頑張って。

強く強く、神経を集中し、握り締めます。
もちろん、この一連の挙動は、デイジー姫からすると――

デイジー「なるほど、ファイアロッドにみせかけてハンマーを繰り出す…
      その程度の引っかけが、お前の戦略だというのだな。
      久しぶりに…臆病風が、吹いたかぁ――!」ギュンッ!






――――――――かかった!!




ヒルダ「――――――――」スッ・・・

ヒルダ姫の怯えた「ふり」が、終わりの時を告げます!
治療中のFP制御の経験から閃いた、私の魔法の発動と共に!

召喚獣が、炎の杖を、ハンマーにしっかり、切り替える。
…妙に、そのハンマー、大きいんですよ。ええ!

614Mii:2020/02/15(土) 16:24:35 ID:UXSYQ7yA

ロゼッタ(――――Double Slot《相互演算》)カチッ!



相互演算の 効果で 魔法回路が 接続されている!
ロゼッタは 術式演算の 一部を 肩代わりした!
ヒルダの 術式ランクの 限界が 高まった!▼



ヒルダ「―――――――ナイス、ハンマァァァァ――――ッ!!」ビシィッ!

ファントム・ユガ「YEAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAH!!」ブンッ!!



カッ!! ――ドッズウウウウウウウゥゥゥン!!

デイジー「…………ぐっ…………!?」ブワッ!



いつものハンマーに比べ、倍以上に丸々と肥え太った巨大なハンマーが、
速度すら増してデイジー姫に、しかと振り翳されます!
いつものごとく無視可能、蹴散らし容易とばかり思い込んで突っ込んできたデイジー姫を、
したたかに打ち付けて、向こうに吹き飛ばして見せました!

ヒルダ「――――これが、私の…奥の手、ですっ!!」

615Mii:2020/02/15(土) 16:28:02 ID:UXSYQ7yA
デイジー「……っ、ロゼッタ、お前…なにかやったな?」

ロゼッタ「…………人を疑うのは良くないと思いますよ」

片膝姿勢でズサァッと5mほど滑り、止まってからも立ち上がろうとしないデイジー姫。
ダメージがきつい、というよりは、呆れているっていうニュアンスが伝わってきます。

ロゼッタ「…まあ、私のせいではありますが。ふふん、ネタ晴らしは試合終了までしませ――」



デイジー「大方、手を握ったことで2人の魔法回路を接続させて――
     疑似的に魔法回路の容量を増やすことで
     ヒルダに実力以上の魔法を繰り出させたのだろう?
     ヒルダも、中々の演技振りだったということか、迂闊。

     だが、言い換えれば、その間のロゼッタはサポートに掛かり切りで腑抜け状態。
     碌に行動手段を持たなくなる、という認識で間違いないか?
     そのくらいの対価は当然あるよな?魔法使い殿?」

ロゼッタ「――――どどどどうでしょうかねえ」



うわぁい、完全にばれています。
…まあ、時間とともにばれるのは覚悟していました。
それが、ちょーっとだけ早まったということにしておきましょう。

616Mii:2020/02/15(土) 16:32:06 ID:UXSYQ7yA
私の失態をなかったことにしてやろうと、ヒルダ姫が、熱気を帯びて動きます。
力いっぱい、手を振りかぶって。



ヒルダ「ナイスハンマー、連撃!叩きつけて…差し上げなさいっ!!」ゴオオオ

ヒルダの 攻撃は まだ続いている!▼



デイジー姫、迫り来るハンマーを二度、三度受けて、感触を確かめていましたが…。

さしものデイジー姫といえど、潰されないためには、しっかり足を止めて構えて、
受け止め、静止させ、力任せに目一杯押しのけ、跳ね返す…という動作が必要が出てきました。
…あ、あの表情。思いっきり苦虫を噛み潰したような状態です。



ふっふっふ。
それだけ、私の魔法回路がヒルダ姫の底上げを行えるスペックを持つということです。
劣化状態の今の私ですら、ヒルダ姫の負担を半分…いえ3分の1にはできていることでしょう。



…というわけで、私の頑張りに免じて、ちょっとばかり気遣ってくれませんか、ヒルダ姫。
既に血の気が引いて来ているのですが。助けてください。

617Mii:2020/02/15(土) 16:35:13 ID:UXSYQ7yA
ほどなく、この魔法も「しっかり避けるべき」対象と見なしたご様子。
左右に振って、浮遊する足場を駆使して、掻い潜りつつ接近するスタイルに移りました。

ヒルダ姫に、デイジー姫の動きを追い切る洞察力、動体視力はとてもありません。
…ですが。



ヒルダ「…ようは、隙間なく打ち続ければいいだけのことでしょう――――!
    ははははは――!」



ヒルダ姫が、トランス状態?…邪悪な?高笑いまで始めて、ノリに乗っています。
そして、有言実行。ドカドカドカドカと、地面が叩かれ、轟音と爆音の嵐。

…そういえば。昨日の練習のときも、そうでしたよね。
一気に限界突破した魔法を行使できるのが本当に嬉しいのか、
ゼルダ姫がたしなめるまで延々と、魔法の繰り出しに付き合わされました。
提案した側の私が、半泣き状態になるほどまで。



既に立っている状態なのに、立ち眩み。あ、本格的に、まずそうです。
な、何が、彼女をそうさせるのでしょう、か…?

618Mii:2020/02/15(土) 16:41:25 ID:UXSYQ7yA
〜選手控室〜

リンク「そういや、ロウラルに冒険に向かった時さぁ。
    ヒルダの奴が、『Heyリンク、実は私が黒幕でした』って衝撃告白して、
    そのまま動けないゼルダから知恵のトライフォース奪って、
    ユガをドババーンって呼び出したんだよ」

マリオ「いきなり前提知識なしに語り出すなよ。ユガってなんだよ、召喚物か?
    つまり、もともとヒルダは悪役だったんだな。…だが、なんで唐突にそんな話を?」

リンク「いや、その時のヒルダの豹変ぶりが中々面白くてさ。
   3人のことを心配してたら、ちょうど思い出しちゃったんだ。
   たぶん、初めてトライフォースの力を得たことで実力が一気に底上げされたのが
   本当に嬉しかったのか、抑圧からの解放か、高笑いまでし出してさ。

   それまでは、落ち着いた天の声色で俺を手助けしてくれる、
   穏やかで奥ゆかしいお姫様とばかり思っていたのに。ゼルダ姫とは違って」

マリオ「お、おう。……意味がない質問をさせてもらうが…苦戦したのか?」

リンク「いや、全く。自慢じゃないが、流石に俺と比べるのは可哀想だろ…。

    ヒルダが唯一得意とする魔法分野ですら、なんとか俺の勝ち。
    基本体力なんて、当時のヒルダだったら10メートル離れて俺が回転切りするだけで
    風圧で壁に叩きつけられて死ぬんじゃないか?」

マリオ「優しさの欠片もない評価だな」

リンク「客観的な評価と言ってくれ」

619Mii:2020/02/15(土) 16:48:12 ID:UXSYQ7yA
リンク「そして、頼みの綱として縋ったトライフォースの数ですら俺の方が多いっていう。

    なんだったらあれだよ?トライフォース6つ使って、正六角形に綺麗に並べて
    『壁々のヘキサフォース!』とかやっちゃうよ?

    結局は召喚したユガにまで裏切られて、ほんと可哀想な役回りだったなあ…」

マリオ「『かべかべ』って言いにくいな…。だが、トライフォースは幾つあってもトライフォースだろ?
    よく『聖三角』って呼んでるじゃないか。三角形だからトライフォースなんだろ?」

リンク「…………え、力と知恵と勇気、3つの力でトライフォースじゃないの?
    (本来は)3個に分かれてるからトライフォースじゃないの?」

マリオ「その理論だったら、お前が正六角形に並べたところで
    『勇気のモノフォース!』じゃね?」

リンク「予想以上にダサいな!?
    …でもそうだな、ゲットするたびに1個1個『○○のトライフォース』って言ってきたし。
    じゃあマリオの方が正しいのか。

    …待てよ、ちいさな欠片を『フォース』とだけ呼んでたこともあった気が。
 
    …いや、もしかすると、勇気のトライフォースにも力と知恵の成分が5%くらいつつ添加されていたりするのか…?

    …じゃあ俺が持っているのは『ほぼ勇気のトライフォース』…?あれ、頭が混乱してきたぞ…?」グルグルグルグル

マリオ「やめとけ」

620Mii:2020/02/15(土) 16:52:55 ID:UXSYQ7yA
〜閉ざされたフィールド〜

ヒルダ(…………なんだか無性に心が切なくなってました)ガクーン

ロゼッタ「――あ、の。そ、そこまで連続行動、されると。
     ちょっと私の負担が、お、おおきい、かなって…ヒル、ダ、姫」ガタガタガタガタ

デイジー「……」ジーッ

ヒルダ「さあさあ、まだまだっ!相手の動きが鈍ってきています、
    どんどんデイジーを追い込みますよぉっ!」バッ

ロゼッタ(聴いちゃいない!)



仁王立ちして、口をできるだけ閉じて、痛みに涙堪えてプルプル震えているのですが。

デイジー姫が、やや引き気味に…それはもう、物理的および精神的に引き気味に行動しつつ、
半ば「私の自滅待ち」をし始めているような錯覚がしてきたのですが!錯覚ですよね!?
まずいです、ヒルダ姫の抑制の練習まではしていませんでしたっ!



――ここは、やはり。
――ちらっと見れば、時間を作った甲斐あって、準備万端ゼルダ姫!
――貴方に頼るしか、なさそうです!

621以下、名無しが深夜にお送りします:2020/02/23(日) 05:25:19 ID:1UjKuxiM
ゼルダ(――随分と、時間を与えてくれたではないですか)

まるで、こちらの警戒をしていない。千載一遇のチャンス到来です。
柱の陰を上手く利用して、光り輝く弓矢をできる限り隠し通したのが功を奏しているよう。
しなる弦、飛び立つのを今か今かと待ち望む矢。



このまま矢を解き放つか、接近して確実性を上げるか――



…………。



私の動きを視界に入れてしまう危険性のほうが、
どうやらよっぽど高いようですね。
私も、ここの生活で、デイジーと比べた際の身体能力の低さは…
冷静に判断できるようになってきたつもりです。

でも、光の弓矢の速度に対する誇りと自信も、付いてきたのですよ?

622Mii:2020/02/23(日) 05:29:20 ID:1UjKuxiM
…決めました。
あとは、できるだけヒルダ姫の行動を読み――
デイジーの反応を遅らせるベストなタイミングで、魔法を発動させるのみ。

非常に頼もしいことに、万が一外してしまっても、
ロゼッタの回収能力があれば、全部が全部、無駄にはなりませんし。
それこそ、先ほどのように、2本の光の弓矢で狙い撃ち、なんてことも出来ます。
…繰り返します。非常に頼もしいですよ、本当に。

伊達に、3人の連携を、これまで取ってきていません。
ある程度の動きなら、癖なら、お互い把握できる。分かり合える。
ステップ。ひと呼吸。ガード。身構え。
まるで、照らし合わせた台本のように。

一見して調子に乗り過ぎて、我を忘れて仕掛け続けているようにも見えるヒルダ姫が。
振り返るまでもなく、ちらっと斜め下を向き、カツンと踵を鳴らします。



――もう、言葉は、要らない。



私は一転してパッと柱の横に飛び出て、
ヒルダ姫を射貫くかの如く、魔法を発動させ、あとは――



ヒルダ「それを待って――」

623Mii:2020/02/23(日) 05:37:31 ID:1UjKuxiM





デイジー「そいつを待ってたんだよ、なあっ!!」グワン!






――――なっ!?


そのとき、信じられないことが、起こりました。

デイジーが激しく地を蹴る。…今度は本当に、「地面を蹴った」のです。
もともと散らばっていた瓦礫、さらにその下の土まで薙ぎ払う蹴り。
もうもうと砂の幕が張られ、皆の姿がかき消されます。
…それでも、矢を放とうと動作に入ってしまった私の手は、止まることができません。



――何か、非常に、よろしくないことが…!



それでも、手は、止まらない。

624Mii:2020/02/23(日) 05:42:55 ID:1UjKuxiM
バチィ―――ッ!!



ロゼッタ「――――ひゃっ!?」

ヒルダ「――きゃあっ!!」



煙幕の中で、何かが、弾けた、音が、する。そう、思ったのが、0.5秒後。

弾けた?何がですか?
ヒルダ姫とロゼッタの、繋いでいた手が、強引に引き裂かれた?
なんの、ために?なんの、意図を以て?



ゼルダ「――――――――っ!?」

私は、最悪な状況を想像してしまいました。

どうか、外れていて――
その想いは、無情にも裏切られます。





煙幕から、ぬるっと、銀色の冠が――見えました。

625Mii:2020/02/23(日) 05:49:35 ID:1UjKuxiM
もぎ取られる感じで、強引に手の繋ぎを引き裂かれていたヒルダ姫。
おかげで指を血が滴っている有様ですが、本人は気にも留めません。



ヒルダ「ロゼッタアアァァァ――――!?」

彼女の叫びが、ただただフィールドに木霊します。



デイジー「時間稼ぎさせれば、お前らは必ず、ほくそ笑みつつ、光の弓矢でチャンスを伺ってくる。
     飛んできたソレを躱したとしても、ロゼッタに回収されちゃ…なあ?
     いまいちお前らの戦力消耗になってない。私のリスクを高めるばかりだ。



     ――なら、話は簡単だ。

     ロゼッタが回収する余裕もないように誘導できる、弓の撃たせ方をさせればいいのさ。
     たとえば、今みたいに――





     光の弓矢目掛けて、真正面からロゼッタを一思いに投げつける、とかな」

626Mii:2020/02/23(日) 05:56:19 ID:1UjKuxiM
ロゼッタ「――――――――――――」

デイジー「私に駆け引きで勝つのは、そう簡単なことじゃないぞ?」



チッチッチ、と指を振って嘲る素振りのデイジー姫。
まだまだ舐め腐られている。私は――ただ、ワナワナと震える、ばかりなり。

デイジーはこちらを向いており、もはや目で追ってはいませんが――
光の弓矢が、フィールドの遠くへ一直線に飛んで行く。

デイジーは、多少は無理をして掻い潜ってみせたのか、ドレスと顔に、幾重にも切り傷。
さきほどより、血の滲む箇所は更に増えました。
そして、一方。手には、紋章など浮き上がらず――――



ロゼッタ「――――――――――――――――」フラッ・・・



勢いよく放り投げられ、状況を察せないまま背中から、無慈悲にも――
心の臓を光の弓矢に貫かれ、絶命して。糸の切れた人形のように
横倒しになるロゼッタが、いたのです。



ロゼッタの残機が、ひとつ、確かに、減りました。

627Mii:2020/02/23(日) 06:14:50 ID:1UjKuxiM
ロゼッタ「――――――――ゴホッ!ゴホッ!――――――――っ!!
     …ハァッ!…ハァッ!…ハァッ!…ハァっ!…ハァッ!
     い、い、い、いまのは、さ、さ、さす、がに、効きました、よっ!?
     
     デイジー、姫。貴方、お、おにです、か」ピカーーッ!


ふ、ふっかつ、してます、よねっ!?…ああ、よかった。
復活したのはよかったですが、今更ながらの遅すぎる、怒涛の冷や汗。

なんて、恐怖体験。体がここまで震えるなんて、久しぶり、ですっ!
心臓もバクバク言っていて、本当に煩いくらいです。

いや、もちろん単なる破壊力だけなら、デイジー姫の渾身の連弾を食らう方がきついのかもしれませんがっ!
なんか、一瞬で自分が無に帰るんじゃないかっていうくらいの一撃でしたよっ、今の!
やっぱり光の弓矢という魔法は神が与えし代物ですね…!!

あ、あしが、わらっていて、うまく、立てません。
し、しかしっ!予定外の残機損失を、して、しまったのですから!
立て直さなければ、勝ちの目がだいぶ薄くなってしまい、ます!



ゼルダ「――――ご、ごめんなさい、ロゼッタ――――!」ジワッ

ヒルダ「――――――――っ!
    ロゼッタ、ロゼッタッ!大丈夫、です、かっ!?わ、私が調子に、のる、から…!」ダダッ!

ゼルダ姫は珍しく狼狽し、ヒルダ姫が泣きじゃくりながら駆け寄ってきます。
そのお気持ちは本当に嬉しい、のですが…!

628Mii:2020/02/23(日) 06:30:13 ID:1UjKuxiM
ロゼッタ「お二人ともっ!まだ…試合は継続、中、ですよっ!
     油断しては、いけませんっ!私なら、大丈夫、ですっ!」

心配を掛けないよう、なんとか気合で虚勢を張って見せます。
早く、迎え撃つ態勢に戻って!デイジー姫の次の狙いは貴方たちなのですよ!



ヒルダ「で、でもっ!でも、ロゼッタ!今、思いっきりグサッ…て!
    血がっ!ドバァって!あんなのっ!見た、らっ!」ポロポロ



動転状態からいつまでも戻ってこない、ヒルダ姫。
よほどショッキングな光景だった、模様です。我ながら。
止め処なく、涙が溢れて来ていて、終わりを知りません。

ロゼッタ「気にしていませんから、はやくシャキッとしてください!」

ヒルダ「そ、そんな、ロゼッタぁ――」





――覚悟を決めなければ、ならないようです。

629Mii:2020/02/23(日) 07:11:08 ID:1UjKuxiM
――――パチィン!



ヒルダ「ぶっ――――――――」

ゼルダ姫と、デイジー姫が、目を見開く。



私は――ありったけのスウィングで、抱き着かんとするヒルダ姫の頬を張りました。



赤く腫れた頬を抑え、横に流しやられた顔をぎこちなく、ぎこちなく戻しながら、
ヒルダ姫が信じられなものを見るように私を見つめます。

ロゼッタ「でも、も。何、も。ありませんっ!この私が、気にしていないと言いました!
     私も、ゼルダ姫も、むざむざ負けたくなどないですよ!
     貴方は、そうではないのですか!?誓いは――嘘だったのですか!?

     そんなことでは、体たらくでは――最後の最後まで逃げて怯えて――
     デイジー姫に1対1で相まみえる絶望の未来しか見えてきませんが、よろしいのですかっ!」

ヒルダ「―――――――――――――――――――――っ!!」

630Mii:2020/02/23(日) 07:14:32 ID:1UjKuxiM
ゼルダ「―――――――――――――――――――――――」

ヒルダ姫が、徐々に目を見開き。ゼルダ姫が、驚愕の眼差しでこちらを見て。



ヒルダ「い、嫌――い、いや、です――――――そ、そんなの――」ガタガタ

数歩後ずさりながら、うわ言のように、繰り返す。

ロゼッタ「ヒルダ姫っ!」

ゼルダ「ヒルダ姫、気をしっかり持ってください!」





デイジー「いつまで、やってるんだ?」ゴウッ

ヒルダ「――――っ!?」



――とっくに、10秒、経っている。

そんなに暴走した後ろめたさがあるのなら。ついでに引導、渡してやろうか。
…そんなデイジー姫の声が、聞こえてくるようです。

631Mii:2020/02/23(日) 07:16:31 ID:1UjKuxiM
首根っこ掴んで、デイジー姫にしてみれば、軽い頭突き。
たちまちヒルダ姫の額は割れ、血を噴き出しながら激痛に苛まれる。
間髪入れず、ヒルダ姫の体をぶわぁっと放り投げ、自分も鳥の如く舞い上がる。



ヒルダ「あ――」



虚ろな表情のヒルダ姫の眼前に、迫り来る足。
いたずらに首に引っ掛けられた、下向きのベクトル甚だしい、踵落とし。
怒涛の一撃が、襲い掛かる。



ゼルダ「――くっ。…………光の…」パアァァ

ゼルダ姫は「諦めて」、せめて時間を無駄にしまいとフィールドの反対側に駆けつつ、
光の弓矢の充填に入ります――!

反射的に助けようとする私の手の、はるか向こうをすり抜けて。
フィールド外に向かって飛ばされて行きました。



ヒルダ残機・・・残り『2』
ヒルダを包む要塞法衣が 完全に 解けた!▼

632Mii:2020/02/23(日) 07:21:41 ID:1UjKuxiM
…ヒルダの残機が、減った。



ファントム・ユガ「…………」ユラァ



通常ならば、ヒルダが残機を失った瞬間に、召喚物の類は消え失せる。
それが、召喚者との接続の切られた物の定め。

…しかし、今回に限っては、それは当てはまらないらしい。
杖を持ちこちらを睨む召喚獣は、姿を残したまま。



ロゼッタ「消えちゃうのは、勿体ないですからねっ!」ポワン ポワン

ヒルダとの接続が消えているちょっとの間、ロゼッタが急ぎ駆けつけFPを供給することで
消滅を防いだようだ。10秒縛りがなければ、ロゼッタを伸しておいたのだが。
…というかロゼッタ、器用だな。お前にはFPの輸送法…教えた覚え、ないのだが。

一方のゼルダは、間もなく充填完了の構え。…やれやれ。
やや赤くなった腕を少し見る。距離をもって撃たれる分には、まだ…耐えられるだろう。
今の所、全員の残機を1ずつ削って、片腕をそこそこ消費。
もっと楽勝のつもりだったが、勝ち負けでいうなら、割と余裕の流れ。

633Mii:2020/02/23(日) 07:26:00 ID:1UjKuxiM
さあ、ここからどう動いてくれるか、楽しませてもらおう。
さっきのロゼッタぶん投げのこともあるし、向こうも流石に警戒はしている――
ここぞ、という相当な近距離からしか撃とうとはしてこないに違いない。

光と共にシュタっと現れたヒルダが、顔を真っ青にしている。
おびえ苦しむ様子ながらも、それでもなんとか、詰まりながら魔術を行使し、魔物にバクダンを構え直させる。
ヒルダと魔物との再接続を見て取ったロゼッタは、ヒルダの後衛として撤退。
ルール的に、ヒルダは一旦狙われなくなったからこその判断だろう。

しかし、ヒルダの心の傷はそう簡単に癒えるものではない。ぐさりと、楔は刺さっている。
ゼルダについては復調したが、ヒルダは…しばらく使い物にならなそうだ。

ロゼッタの叱咤激励が、ものの見事に逆効果。
いつぞやのトラウマを引き起こして、動揺、挙動不審に意気消沈。
ゼルダとロゼッタの顔色をやたら確認し、精彩を大きく欠いている。



ヒルダ「――――ハァ――――ハァ――」ガタガタガタガタ

ロゼッタ「――要塞、法衣っ」パアアァァ

どうせヒルダが狙われないならいっそのこと、と。
ロゼッタが、自身を優先させて強化する。それはそれで、ヒルダが孤立するぞ?

そして、私は…発動の瞬間に、体がふらついたのを見逃さない。
確実に、ロゼッタの魔法行使が悲鳴を上げるようになっている。

634Mii:2020/02/23(日) 07:31:27 ID:1UjKuxiM
ゼルダ「それでも――
    私たちには、これしか、ないんです、よっ!!」キュイィーン!!



距離を特に詰めない?…だから、それ、それほど効かないんだが。
他にやることはないのか?縋りたくなる気持ちは分からなくもないが。



デイジー「しつこい――」バッ

目の前のヒルダは無視し…いや、せっかくだからと腹に重い拳をめり込ませて、
勢いそのままにその奥のロゼッタ目指してひた走る。
間もなくの弓矢の飛来からも距離を取れて一石二鳥…いや一石三鳥。

吹っ飛ぶヒルダ。
ルール違反にならないよう、手加減はした、つもりだ。

特段、柱とか、足場の出っ張った角とかにヒットしてお陀仏にならない程度に…
腹を拳が貫通しない程度に、そう。たかだか地面を転がり滑る、程度に。
今のヒルダなら、出血大サービスの血みどろでも多分、生き永らえているだろう。

635Mii:2020/02/23(日) 07:42:29 ID:1UjKuxiM
ヒルダ「――――――――っ!!――――っ!」モガキ



ちらっとヒルダの方を見て、一瞬暗い顔をしたかに見えたロゼッタ。

だが、私の拳が届く一拍前に、口を一文字にし、意を決して小ジャンプ。
体の下の空いた空間に手のひらを向けて、光る「何か」を作り出す。
そして、私の拳が達する一瞬前に――



砂の柱によって掻き消える。



デイジー「…サンド、ロッド?」クルッ

転がった先で、ヒルダが言葉にならない呻きで仰向けに倒れて…
それでも尚、瓦礫に埋もれながらも、尚。ほんの僅かだけ首を傾けてこちらを見据え、手を伸ばしている。
…ぎりぎり、ファントム・ユガへの命令が間に合ったのか。

ロゼッタ「この足場、下から貫通できるんですよ!!上出来ですっ!
     ――そ、ぉれ!!」ブワッ!

ヒルダのなんとか正気を保ってのアシストで、ロゼッタがぐんぐんと急上昇。
緊急回避をやってのけた。即興で作ったらしきバディブロックと共に、上へ上へと舞い上がる…!

636Mii:2020/02/23(日) 08:02:16 ID:1UjKuxiM
私からすると、バディブロックは光の反射・屈折具合でしか確認できない代物。
ただ、低姿勢にジッと構えたロゼッタと砂の柱との間にぽっかりと空白があるのだから、
疑いの余地はない。さしずめ、透明な高速エレベーター。

エレベーターはエレベーターでも、安全装置も加速制御もない、怒涛の片道上昇だ。
砂の柱が上限一杯になって止まってからも、ロゼッタは透明な箱に乗り、上昇を続ける。
あっという間に最上部まで……!

しかし、ロゼッタは無事でいられるのか。
あんな押上げを食らっては、足腰が破壊されてもおかしくない。



――つまり、さっきの要塞法衣…そういうことか。





ロゼッタの 「全身の」 攻撃力が  15%アップしている!
ロゼッタの 「全身の」 防御力が 300%アップしている!
ロゼッタの 「全身の」 素早さが  50%ダウンしている!▼

637Mii:2020/02/23(日) 08:05:09 ID:1UjKuxiM
ハナから固定砲台の役割を持たせると割り切った作戦。
水平方向に比べれば、垂直方向の私の追撃は多少は時間が掛かる。
それを見越して、最上部から見下ろして安全に回収する算段に切り替えたか。
光加減をよく確かめておけば、気付けたかな。



ゼルダ「――行って、くださいっ!!」シュパッ



ゴウウウウウゥゥッ!!

光の弓矢が、勢いよく、撃ち出される。
下手にロゼッタに回収されると、また不意打ち至近距離で万が一、ということもあり得る。
軽いダメージで確実に消し飛ばせるのなら、多少は目を瞑って……。





デイジー「……!?」

お、おい。これは――――!

638Mii:2020/02/23(日) 09:17:35 ID:1UjKuxiM
ゼルダ「受け止められるなら――受け止めて、みなさいっ!!」クルッ!



光の弓矢が、ただ走る。

――何もない、空間へと、一直線に。



デイジー「――――無茶、言うなっ!」

私と90°もずらした方向に撃った光の弓矢など、触れられるかっ!!


こいつ、かんっぜんに回収前提で光の弓矢を放つとは。
光の弓矢使いが荒いなっ!ハイラル王国の先祖たちが泣くぞ!



ゼルダ「さあロゼッタ!今度こそ、しっかり――光の弓矢を回収してしまうのです!!」

腰を落として、ガッツポーズまでしてくれる。

639Mii:2020/02/23(日) 09:22:32 ID:1UjKuxiM
そちらがそこまで割り切るのならば、こちらもさっさと割り切ろう。

光の弓矢をとにかく打ち止めにしてしまうために、ゼルダの残機をさっさと0にする。
ゼルダ→ ロゼッタorヒルダ → ゼルダ、これでルールには抵触しない。

ヒルダが風前の灯なので、ヒルダ狙いが賢い…と言いたいとこだが、
ここはロゼッタを狙っておきたい。というのも、残機が減れば自動的に、ストック分の魔法が消滅するからだ。
いつまでも寝首を掻かれ得る状況は御免被りたい。







そう、思ったところで――

何かが、上から、降ってきた。



ゼルダ「ロ、ロゼッタッ!?」





――ロゼッタ?…本当だ。
――どういう訳か、上の方からドシャァと落ちてくる。

640Mii:2020/02/23(日) 09:25:45 ID:1UjKuxiM
ダアァァン!!



ロゼッタ「――――ぐぅっ…………ふ、不覚っ……!」ヨロッ

ド派手に叩きつけられ、空気を吐き――よろよろと立ち上がるロゼッタ。
腕が、やたら血塗れている。さっきまでとは比べるべくもない。
せっかくの美しい蒼いドレスが台無しだ。

要塞法衣のおかげで、なんとか致命傷を免れたものの。
一気に、黄色ゲージあたりまで体力を持って行かれたらしい。



――光の弓矢は、どこかへ消えて行ったというのに。
――赤く染まるその手の甲には、何も光ってはいなかった。



ハッと青ざめ、手を袖に隠そうとするが、あまりに遅いぞ、ロゼッタ。
だいいち、その行動自体が、語るに落ちている。
それが意味するのは、唯一つ。大勢が決した、残酷な事実。



――ロゼッタの魔法行使が負荷目一杯、閉店ガラガラさようなら、ということだ。

641Mii:2020/02/23(日) 14:59:29 ID:1UjKuxiM
苦労と工夫を積み重ねて、大きな犠牲を払って、魔法の回収が不発に終わった。
これは3人にとっては、痛手も痛手、ゲームセットのようなものだろう。その無念さは容易に想像できる。



ロゼッタ「……あはは、大変な、ことに、なっちゃいました、ねえ」ドクドク


作戦は完全に瓦解。光の弓矢の使用者が完全にゼルダのみとなった。
ポンポンと魔法を使い続け、FPも消費し続けるから、そういうことになる。
ならば、作戦は変えなくてよいだろう。より効果が期待できる。

――ゼルダから潰すのが最適というわけ。



両腕を広げてヤレヤレと呟いて、一瞬目を閉じて。
目を開けたなら、ゼルダに向かって猛突進。



ロゼッタ「――ヒルダ、姫っ!
     ゼルダ、姫を、守って、あげてくださいっ!!」

ヒルダ「――そ、そんなっ……!」ブルブル

これから起ころうとすることに目を背けてしまったのか、
ヒルダは却って硬直するばかり。本当に――どうしようもない。
…いや、あそこまで激しいダメージで、それをやれと言うロゼッタの方が酷いか。
まだヒルダ、起き上がることもできていないんだぞ?

642Mii:2020/02/23(日) 15:17:45 ID:1UjKuxiM
勢いを大いに削がれたゼルダは、抵抗が完全に遅れた。
形だけのガードを見てから、まあ折角だから付き合ってやろうということで
正面突破は勘弁してやり、横薙ぎに蹴りつける。

一撃目。必死の形相で、身をよじったゼルダが蹴りを躱す。

右脚を振り切ってバランスを崩し隙を晒す…ようにみせかけて、
地面を手に取り上下反転。ゼルダが息を呑むのが分かる。
既に持っていた慣性力と手の捻りを最大限に活用し、カポエイラの要領で…
遠心力を味方につけた追撃の左脚がゼルダに向かって飛んでいく。

二撃目。更に容赦なくパーソナルスペースに突進してきた脚を防ぐこと叶わず、
顎を打ち砕かれ斜め後ろに吹き飛ぶゼルダ。

三撃目。伸び切った脚の勢いを糧に、ダンッと足の裏を確かに地面に叩きつけ、
再び起き上がった私は――頭蓋骨を砕かんばかりに、フルスロットルの踵落としを――



……するのは、最近の私としては「幸いにして」かなり抵抗があるので、
腹部に留めておいた。これで多少はマシな死に方をするだろう。

643Mii:2020/02/23(日) 15:20:22 ID:1UjKuxiM
ヒルダ「ファ、ファイアロッドッ!」

ファントム・ユガ「GAAAAAAAAAAA!」ブンッ





全て片付いてしまってから、まるで間に合っていないヒルダの援護射撃が、
いまさら私に降ってくる。集中できておらず、碌に威力がこもっていない。

平然と炎の雨の中を歩いて抜けて、うぅんと背伸び1回。





ゼルダ「――――――――――う、あ゙」





ほどなくして、ゼルダが、瞳孔を硬直させたまま、ぴくりともしなくなる。
そろそろ、終劇が近いようだ。



ゼルダ残機・・・残り『1』

644Mii:2020/02/23(日) 15:22:29 ID:1UjKuxiM
ロゼッタ「…………………………………………」



たらり、と嫌な汗。
現状、まったくもって安心できません。
…というより、絶賛不利な状態です。うわぁい。



ゼルダ姫もヒルダ姫も余裕なんてなく、私だってこの通り魔法行使の限界が近い。
私の予定外の残機消費が本当に響いていますっ…!!

えっと。作戦を元の軌道に修正するには――



最後に倒されたのが、ゼルダ姫で…。

ゼルダ姫が残機1、ヒルダ姫が実質残機1同然といえど残機2なので…。

デイジー姫にばれないように細心の注意を払うことを想定し――

ゼルダ姫に、なんとしてでもあと1発、光の弓矢を撃ってもらうには――!

645Mii:2020/02/23(日) 15:24:53 ID:1UjKuxiM





ロゼッタ(……あ。勝算や成功率はともかく、むしろ、計算はしやすく、なった?)





…ならば、その解答を目指して、突き進むだけの事。ふらつく足を叱咤激励。
私たち4人を駒とした、詰将棋の始まりです!

…あれ、ショウギってなんでしょう。チェスなら知っているのですが。
キノコ城でピーチ姫やデイジー姫とすこし嗜んだ経験があります。

さすが頭脳明晰、ピーチ姫には歯が立ちませんでした。
デイジー姫は、基本私より上手なのですが…
肝心なところでポカミスをして私が勝ちを拾うというか、なんというか。
あ、でも今のデイジー姫は、きっとお強いんでしょうね。



――話がそれました。忘れましょう。

646Mii:2020/02/23(日) 15:27:31 ID:1UjKuxiM
ロゼッタ「ゼルダ姫っ!私かヒルダ姫が残機を犠牲にしてでも時間を稼ぎますっ!
     ワンパターンと言われようと、もう一度――もう一度、光の弓矢をっ!
     勝つためにはなんだってやりますよ!」

ゼルダ「――――――――」ユラリ

ゼルダ姫が、光と共に起き上がります。
顔は青ざめていますし、すぐに口に手をやりましたが、まだ…
闘志は消えていません。その意気です!

デイジー「…ん?今、なんだってやる、と言ったか?
     その、なんだってやるための代償と、光の弓矢回収の期待値、
     そして…運よく賭けに勝って回収できたとして、その有効性。
     ますます魔法の幅は狭まり、体力は限界を早める。
     天秤が釣り合っているのか、今一度考えてみたらどうだ?」

ロゼッタ「考えた結果が、それなんですよーだ!」

想像の中だけでもアッカンべーをしてみて、気を紛らわせます。
もちろん実際にはやりません。デイジー姫を逆なでしたくない…というよりは、
純粋に体力の問題です。これ以上、余計な体力はびた一文払いたくありません!

私が虚勢を張る間に。ゼルダ姫が、ふらついて、ふらついて、それでも。
…光の弓矢を、撃つ態勢に入ります。
ゼルダ姫自身の精神力も、FPも、限界に近付いてきているのは確かでしょう。
無駄撃ちになんて…させません!

647Mii:2020/02/23(日) 17:59:47 ID:1UjKuxiM
突然に、迷うことなく、デイジー姫が私目がけて走ります。



…私も、目がかすんできました。
あと数分も、持たないでしょう。



ぎりぎりまで引きつけて、ワープ。
行き先は、倒れている同然で、柱にもたれ掛かるところまではなんとか持ち直したヒルダ姫の横。

デイジー姫が、それ見た事かと、すぐさま反転し迫り来る。
彼女からしてみれば、私だろうとヒルダ姫だろうと、どちらかの残機を削れば
プラスになります。そんな2人が、同じ方向に居てくれる。
彼女にとって、こんなに好都合なことはありません。



デイジー「どうしたゼルダ?撃ちたかったら、いつでも撃ってこいっ!」ダダダッ

ゼルダ「……………………舐めて、くれます、ねっ!!
    後悔、することに、なるんです、からっ!!」キュイィ―ン!!

一瞬だけ後ろを振り返って挑発をぶつけるデイジー姫に怒りながらも、なんとか平静を保ち――
光り輝き始める、ゼルダ姫の懐。これで、何度目でしょうか。

648Mii:2020/02/24(月) 23:05:47 ID:dj8ZNMfA
ヒルダ姫を、ちらりと見ます。
怯えた表情は、残ったまま。震えて、こちらを見返します。

ロゼッタ「ヒルダ姫、手を――――」

ヒルダ「…ううん、駄目です!今の、私じゃ、魔法は、まともに――」ブンブン

大きく、情けなさそうに首を振るヒルダ姫。





ロゼッタ「――――ごめんなさい」





ヒルダ姫の手を、それでも掴んだ私は、「相互演算」を使ってヒルダ姫のサポートを――
…するのではなく。これでもかというくらい、引き寄せて。





突進してくるデイジー姫の拳目掛けて、非情にも突き出して、
狙われていた私の、身代わりにしたのでした。

649Mii:2020/02/24(月) 23:20:52 ID:dj8ZNMfA
時が、止まる。



ヒルダ「――――――――ど、うして――――」ポタポタ

ポタポタと散る鮮血。小刻みに震える、ヒルダ姫の唇。
あえて心を狂鬼にして、ヒルダ姫に諭します。



ロゼッタ「このくらいは、さっきの失態の罪滅ぼしでしょう?今の状況、ヒルダ姫の残機が減る方が――
    私の残機が減るよりも被害が小さいのは…火を見るよりも明らかですよ?
    さあ、尽きかけていた命で、10秒稼ぐことができました。ユガさんは私が責任をもってお助けしておきます」

固まる2人を尻目に、なけなしのFPを送ってファントム・ユガさんの消滅を防ぎましょう。
打算主義でスタコラサッサです。



デイジー「――――そこまで、するか。
     勝ちたいとはいえ――あって無いような勝算のために、ここまで豹変するとは。私のことを笑えんぞ」

くたりと頭を垂れ、命を細らせていくヒルダ姫を前に…デイジー姫が唖然としています。
拳を振りほどいてみれば、体の内側からズタズタに破壊され限界の叫びが来たのか、
血の海にそのまま沈むヒルダ姫の姿がありました。



ヒルダ残機・・・残り『1』

650以下、名無しが深夜にお送りします:2020/02/24(月) 23:34:46 ID:PeTrKoUA
miiさん
新しいファイター考えていますか?

651以下、名無しが深夜にお送りします:2020/02/24(月) 23:34:55 ID:PeTrKoUA
miiさん
新しいファイター考えていますか?

652Mii:2020/02/25(火) 00:33:32 ID:cwPyF3J.
ゼルダ姫が、着々と、光の弓矢を、溜めて、溜めて――!

ゼルダ「ヒルダ姫の、仇、絶対に取らせて頂きますからね――」グズッ



……それ、デイジー姫に対して言ったんですよね?ね?
私に言ったりしていませんよね!?自業自得な面は確かにありますけどっ!

ヒルダ姫が、2度目の復活。
しかし、うつ伏せのまま、なにかうわ言を耳に届かせるばかりで、
起き上がる様子がありません。

所在なさげに、召喚された魔物が佇みます。






ロゼッタ「――――本当に、ごめんなさい」



物言わぬ状態になったヒルダ姫が、一瞬、ぶるっと震えた、気がしました。

653Mii:2020/02/25(火) 00:49:49 ID:cwPyF3J.
…これまで築きあげてきた友情、親愛…ぶち壊しにしかねない策略。
ロゼッタの異常な思考に唖然としつつ、一方で戦局判断は確か。

――何か、こちらが策に嵌っている…なんてことが、あるのか?

…いや、何度考えても、ないだろう。
すこしでも全体としての生存時間を伸ばす、というやり方は、
私が身を以て伝え鍛えてきたことだから、間違っちゃいない。

単に、それに律儀に従い続けているだけ、なのか?



あと残っているのは、残機最後のゼルダヒルダに、魔法が底を尽きかけたロゼッタ。
おそらく、次の光の弓矢をロゼッタが回収しそこねたら、完全に「詰み」だ。



ゼルダ「光の―――――――」パアアアアアァァァァ

ゼルダの一縋りの想いがこもり、ひときわ強く輝いた気がする、光の弓矢。

さあ、撃ちたければ撃ってこい。
変にタイミングをずらしても、ヒルダがもたらした猶予時間を浪費するだけだろう?



一瞬目を瞑ってから…ゼルダが、最後の、弓矢を放つ――

654Mii:2020/02/25(火) 01:13:05 ID:cwPyF3J.
デイジー「――――は」



――得体の知れない緊迫感に気付けたのは、偶然か。天空が、キラリと、光った。
――なにかが、衝撃波を纏い、凄まじい勢いで、落下してくる…!?





ロゼッタ「――――――――――――――――――――――――



     ―――Chiko Meteor《 キ ラ キ ラ 落 と し 》、最・大・出・力ぅ――――っ!!!」パアアアァァァッ!



チコ「「「「「「「「わああああああああぁぁぁぁ――――!!!!!!」」」」」」」」



ロゼッタ「私の残りのFP、ぜーんぶ、持っていきなさい、みんなっ!!」パアアアアァァ

デイジー「…!?」

655Mii:2020/02/25(火) 01:41:16 ID:cwPyF3J.
可愛い顔したチコたちが、いつの間に、フィールドの上空に待機していたのか。
全部で、たしか、8人。…数え方は「人」でいいんだよな?

だが、爆炎を上げながらのその速度、尋常でない。とても、あんな速度でチコたちが動けるとは思えない。
というより、ロゼッタは「最大出力」と言ったな?…原動力は、ロゼッタ?



――――まさか、選択的な、一種の…重力制御っ!



ロゼッタ「光の弓矢ほどじゃないですけど、当たると痛いですよーっ!
     チコの頑丈さは、折り紙付きですからねーっ!!」グググググッ!

デイジー「…がっ!?」ズギャンッ!

おそらく、動転していなければなんとか避けられていたであろう先陣の1発目が、脳天に、直撃。



チュドオオオオオォォォォォ―――ン!!



その、威力。かなりの痛みをもたらした後、逸れて行って、フィールドの地面に深々と突き刺さる。
その瞬間、ズゴォッと割れる地面、半径10メートルのクレーター。
当たり判定こそごく小さいが、ヒルダのナイスハンマーに勝るの威力じゃないかっ!
これを最初からどうして使わなかった…!?

656Mii:2020/02/25(火) 07:02:54 ID:cwPyF3J.

ロゼッタの 特攻が がくっと 下がった!▼


デイジー「…ん?」

ロゼッタ「どんどん、行って――っ!」ハァッ!


チュドオオオォォォ――ン!

デイジー「…………あれ?」ヒラリッ

ロゼッタの 特攻が がくっと 下がった!▼


ロゼッタ「ど、どん、どん、おねが、い……」ゼェゼェ

チュドオォ―ン!

デイジー「…………」ヒラリッ

ロゼッタの 特攻が がくっと 下がった!▼


デイジー「…………威力、下がってないか。
     いや、ぶっちゃけると技名が間違ってないか」

ロゼッタ「ままま、まっさかぁー?」アタフタ

657Mii:2020/02/25(火) 07:25:35 ID:cwPyF3J.
ゴオオオオオオオオオオオオォォォォォォッ――――!



デイジー「――――っ!!!!」


――ぬかった。
――思わずツッコミを入れてしまったところに、忘れ物。
――ここまで計算していたというのなら、ロゼッタも相当な策士だ。

――――絡繰りもハッタリも、なにもない。
――――忘れたころに、今度は普通に私を狙う、素朴で素直な、一射。

――――光の弓矢、颯爽と迫り来る。



ゼルダ「――――終わり、ですっ!!」

ゼルダの最後の雄叫びが耳障り。だが……。

――――ここまで来てこの集中力、惚れ惚れする。
――――挟撃に見事に嵌って…これは、よけられ、ない。

――――だが、急所を庇えないほどではない。
――――諦めて、腕の貫通くらいは覚悟しようと割り切って、ずいっと腕を動かす。

658Mii:2020/02/25(火) 19:51:48 ID:cwPyF3J.







が…幸いなことに。

私には、届かなかった。













3人の最後の希望を乗せて迫り来るその矢は、私の3メートルばかり手前で、
力の限界を迎えて――フッと、消えてしまったのだから。

659Mii:2020/02/25(火) 20:00:35 ID:cwPyF3J.
ゼルダ「――――そ、そん、な」ガクッ



この世の終わり、と叫びたい感じのゼルダが、唖然として、力なく、崩れ落ちる。
俯き膝を付いて、動けない。…なるほど、これで、ゼルダもFP切れ…いや、魔力切れ、ということか。

デイジー「――――終わったな」

ゼルダ「……」ピクッ

ゼルダ「……ま、だです」グッ



…おや。



ゼルダ「――――やあああああああああああああ―――っ!!!」ダッ!



私のつぶやきに激昂したのか――途端に、完全な、やけっぱち。
満身創痍のまま一心不乱に、無謀すぎる接近戦を挑んでくる。

渾身のゼルダのパンチも、カッターも、私はぞんざいな手の振りでパシパシと。
目の前に拳を突き出して――――

660Mii:2020/02/25(火) 20:02:07 ID:cwPyF3J.





ゼルダ「――――あ」





一瞬達観したかにみえたのは、気のせいか。





よくやった、と心の中では褒めながら。
ラストの一撃で、フィールドの彼方まで、殴り飛ばしてみせた。





デイジー「…悪いが、スマブラには…顔面セーフとか、ないんでな」


ゼルダ残機・・・残り『0』
ゼルダは 戦線離脱と なった!▼

661Mii:2020/02/25(火) 20:07:20 ID:cwPyF3J.
ヒルダ「ひっ……さ、サンドロッドっ!サンド、ロッドっ!!
    サンドロッドっ!サンドロッドっ!!サンドロッドっ!!
    ―――――――――――サンド、ロッドォ――――!!!」ガクガクブルブル



次は、自分か。絶望の直感が、ヒルダに襲い来る。
恐怖心で出鱈目に、ヒルダがサンドロッドを指示。
あちこちに砂柱が立つが、障害にもならない出鱈目な位置に、出ては崩れることを繰り返す。



もはやロゼッタもヒルダも脅威ではないが、まだ魔法のストックがあるヒルダから先に片付けるか。
その後、ロゼッタを二連続で倒す。これで行こう。



さあ、猶予のカウントダウンを、始めよう。



ゼルダが、起き上がって…ため息付いて。いそいそと、フィールドの外に出て行く。
思う存分、最期を観戦してやるといい。



チコ「…ねえねえ、ママたち、勝てるかなあ?」

ゼルダ「もうすぐ、わかるわ。…大丈夫よ、きっと。あの2人…いえ、私たち3人なら」

662Mii:2020/02/25(火) 20:11:39 ID:cwPyF3J.
――9、8、7。


ヒルダ「サンド、ロッド!」グズッ



回避にしても食らうにしても、まだまだ余裕。


―――6、5、4。


ヒルダ「サンド、ロッドッ!」グズッ!


―――3、2、1。


ヒルダ「サンド、ロッドォ――――ッ!」グズッ!!





デイジー「…ゼロ、だぁ―――っ!!」

私の、怒涛の、進撃。最早、止める物など、何もない。

663Mii:2020/02/25(火) 20:15:44 ID:cwPyF3J.



ロゼッタ「――――お返し、です」ザクッ!!





デイジー「――――――――」

ヒルダ「ロゼ、ッタ?」

ヒルダの、涙声がする。



ロゼッタ「――は、はは。
     私ごときに間に入られるだなんて、デイジー姫も、抜けています、ね」ドクドク

デイジー「…今度は、自分から、身代わりに、か――徹底的な打算、貫き通しているのだな」



ぬっと、割って入られた。…そう、ロゼッタに。
…いや、私も好きでロゼッタの心臓を貫いているわけじゃ、ないんだが。
正確には、今更勢いが止められないタイミングで、自分からワープで身代わりに入られた。
これは流石に、どうしようもない。ドンピシャな防御策…なのか、な?

664Mii:2020/02/25(火) 20:19:13 ID:cwPyF3J.
ロゼッタが、心臓を貫かれたまま、苦しそうにしながらも、微笑んでいる。
…へんなスイッチが入っていたりしないよな?全く。



デイジー「…なけなしと言っておきながら、最後の最後のために…FP、残しておいたのか」

ロゼッタ「は、はい。――デイジー姫を、引っ掛ける、ことができて――
     私も、満足、ですっ――ご、ほっ」ガハッ!

口の中を真っ赤にしながらも、満足気。
目を閉じて、そのまま四肢をだらんとさせる。

これで、ロゼッタもヒルダも、残機1だ。
自動的に、ヒルダ、ロゼッタの順で倒すことになる。




ロゼッタが――光に包まれ、息を、吹き返す。


ロゼッタ「…では」スクッ

…さあ、最後のあがきを、見せてもらおうじゃないか。

665Mii:2020/02/25(火) 20:23:52 ID:cwPyF3J.
まずは、体に付いた汚れをパン、と払い。サササッと…私から、離れていく。

ロゼッタ「あがっ……い、いたぃ、です、ね…!!
     しばらくは体、まともに、動きません、よぉ…!しくしく…」



そして。



ゼルダ「お疲れさまです、ロゼッタ」

ロゼッタ「はい、やっぱり中々…上手く、行きませんね。デイジー姫、強すぎます。
     眩暈も吐き気も、酷い、です、し。助けて、ください、よ」

ゼルダ「そんな余裕、私にあるわけないでしょう。どれだけ光の弓矢を乱発したと」



デイジー「――――おい、ロゼッタ」

ロゼッタ「――は、い?ど、どうしましたか、デイジー、姫」ゼェゼェ



思わず、プッと笑ってしまう。完全にグロッキー状態だ。
ここまで、精根尽き果てるまで戦っていた、というのは嬉しい限りだが。

666Mii:2020/02/25(火) 20:27:14 ID:cwPyF3J.
デイジー「どうしたもこうしたもないだろうが。

     お前、残機をよくカウントしてみろ。まだ1機残ってるぞ。
     とっととフィールドに戻ってこい」

ロゼッタ「――――え――――――――」



ロゼッタが目を白黒させる。

デイジー「そんな事にも気付かないとは、お間抜けだな。
     私としては、遮二無二の本気度が伺えて最高に嬉しいが。
     どんな時も冷静沈着で在れ。なあ、ロゼッタ」ニヤッ

ロゼッタ「――――あっ―――――――――――――――――
     うっかりしていました、も、申し訳、ございま、せん……」



ロゼッタが、再び向こうを向いてしまう。
まあ、ショックなのは分からなくもない。恥ずかしいよな。

デイジー「いい、構わん。待ってやるから、とっとと降りてこい――」



するとロゼッタが、首だけこちらに向けてきた。
折角復活したのに、地べたならぬ「血べた」に倒れていたせいで、
ところどころ赤くなっている背中、そして顔。

667Mii:2020/02/25(火) 20:29:40 ID:cwPyF3J.
だが、その顔は――――
















ロゼッタ「うっかり、伝えそびれていました。



     ――――私の残機…確かにさっき、『0』になりましたよ?」フフッ



――――身の毛もよだつほどの、「してやったり」の顔だった。

668Mii:2020/02/25(火) 20:32:19 ID:cwPyF3J.
頭が一気に冷たくなる。



残機が、尽きた?いつ?そんな馬鹿な。



…いや。今は、それは後回しにしなければおかしい。



得てして、作戦のネタ晴らしをするタイミングというのは。



ひとつ。調子に乗った、傲慢になった者が口を滑らせる場合。



そうでなければ、もうひとつ…相手に知られても最早ひっくり返ることのない状態を
己の手の内に呼び込んだ後の、勝利の余韻の場合なのだから。



だが、そうは言っても…後ろに控えているのは、生気を失った、戦力には程遠いヒルダのみで―――

669Mii:2020/02/25(火) 20:45:04 ID:cwPyF3J.
後ろを、振り返り、始めた。



ロゼッタ(デイジー姫。あなたの敗因は、大きく分けて…えーっと、4つ、ですか。割とありますね。
      どれか一つでも気付けていれば、私たちの負けでした。

      ひとつは、『相互演算』がその言葉通り、『私が2人のチカラを借り受けることもできる』という
      事実を知らなかったこと。…まあ、言っていませんしね。
      ゼルダ姫に手伝ってもらって、私の処理限界をAランクにまで上げました)

     

ヒルダ「――――――――――」

出鱈目に立ち上っていた砂の柱が、視界に入ってくる。
その中に、不自然に崩れている柱が、ある。
多分、横からの衝撃で、崩されたのだろう。そう、思えた。


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