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【艦これ】潜水艦泊地の一年戦争
544
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/07/21(日) 12:52:00 ID:Cs8kk5rk
「あのときの生物の正体がわかった。我々海軍は、現在、あいつらと戦う準備を進めている。とはいえ誰でもいいというわけではない。適性と、なにより覚悟を持った人間の助力を求めている。
もし少しでも気になるというのなら、この名刺に電話をくれたまえ」
差し出された名刺には、「田中 幸太郎」と書かれていた。わたしはそれを無造作にポケットにしまって、ドリンクバーをおかわりしにいく。
ふりをして、店の外へ出た。
お目当てのものはすぐに見つかった。十数メートル先、横断歩道を渡ったところ、タバコ屋の角にそれはある。
公衆電話。
わたしは名刺をポケットから取り出して、電話をかける。
「もしもし」
「……驚いたな」
田中は本当に驚いているようだった。
「今からテーブルに戻るから、さっきの話、もっと詳しく聞かせてよ」
545
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/07/21(日) 12:52:34 ID:Cs8kk5rk
わたしの人生には二つの目標がある。
ひとつは、お母さんの復讐。お母さんの命を奪った化け物が、本当にこの世に存在するのなら、それを始末するのはわたしの役目だと思った。一匹殺せばひとつぶん、二匹殺せばふたつぶん、お母さんの魂の救済になると思った。
もうひとつは、お父さんへの復讐だ。どうしてお父さんがわたしを捨てたのかは定かではない。已むに已まれぬ事情があったのかもしれない。だけどそんなことはわたしにはどうだっていい。
深海棲艦は全員殺す。
お前らさえいなければ、わたしにも、休日の公園で笑いあう未来があったはずなのに。
父親みたいにはならない。
家族を捨てたりはしない。いつか、誰かと、仲睦まじく生きていくのだ。
そんな決別を持って生きていこうと誓った。
心の暗闇の中、でんと構える泥濘のために、わたしは生きていこうと思った。
きっとそれは間違いだった。
そもそもが、後ろ暗い感情を燃やし続けて生きていくことが、人間には向いていないのだ。生きることは命を燃やすことでもある。それは、煌々と明るく光で、これからの人生を照らす行い。
邪な気持ちはその過程で溶けてなくなる。
546
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/07/21(日) 12:53:11 ID:Cs8kk5rk
なんて素晴らしいことだろう。汚泥に塗れた濁った心でさえも、生きてさえいれば、泣いたり笑ったりしていれば、誰かを愛してさえいれば、いずれはどうにかなるのだ。
わたしの心の泥濘も、いつの間にやらさっぱり消えて。
……わからない。どうなんだろう。本当に消えてしまったのか、それともただ単に、わたしが愛や友情といった眩しさに目が眩んで、それを見失ってしまっただけなのかも。
どちらにしたって効果は覿面。復讐という暗い感情のためにこの身を捧げていたはずのわたしの心は、いつの間にか人並みの明るさを取り戻して、だからこそ夜道を彷徨する旅人になってしまっている。
なんて皮肉。
提督を利用することに躊躇はなかった。それでしか願いが成就できないのならなりふり構わずそうするべきだし、そうすることで僅かでも期待値があがるなら、やはり構わずそうするべきだろう。
だから、そう、結局はしっぺ返しが来ただけのお話なのだ。どこまでいっても寓話的な、いじわるじいさんが不幸な目にあっただけにすぎない。
彼の笑顔や、声や、体温、それら全てが懐かしい。
547
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/07/21(日) 12:54:05 ID:Cs8kk5rk
「……」
全てを明らかにして、謝罪すれば、彼は許してくれるだろうか。またわたしに優しくしてくれるだろうか。許されるのが目的ではなく、誠心誠意に謝ることが目的なのだと、わかってはいるのだけど。
「こうなるだろうな」と「こうなった」の間には信じられないほどの乖離がある。彼に嫌われるであろうことは、彼に嫌われることとは、全く別種の重みをもつ。
臆病者のわたしには、とにかくそれが恐ろしい。
それでも。
「うん。うん……わかってるよ。わかってるんだ。しなくちゃ、だよね。しなくちゃ。だめだ」
ハチの手が、イクの視線が、イムヤの無言が、なにより柔らかい。
優しい。
無目的となってしまったわたしにも、寄り添ってくれる友人がいるという事実だけで、なんとか歩いていけそうだった。
車が止まる。ゆっくりと、ハチの肩に手をやりながら、重たい体を動かす。大地を踏みしめるように、前後不覚になっても平気なように、確かめながら地に降りる。
548
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/07/21(日) 12:54:41 ID:Cs8kk5rk
「あぁ、やっぱり健臣はいないんだ?」
黒髪、おさげ。赤ヶ崎泊地の筆頭秘書艦である北上がやってきて、へらへらと笑いながら、わたしたちへと近づいてくる。
その表情には敵意こそないけど……なんだろう。なんて言うのだろう、不穏な、剣呑な、思わず身構えてしまうなにかがある。
「提督は、どうも最近忙しいみたいなのねー」
イクがあしらう。もう赤ヶ崎の泊地内は知り尽くしている。今更迷うはずなんてないのに、どうして北上がここにいるのか。
牽制も届いていないようだった――あるいは、無視しているのか、北上は砂利を踏みしめながらさらに距離を縮めてくる。
「ふぅん。あいつが、ねぇ。まぁいいけど。……健臣は元気?」
「元気なの。いや、仕事で疲れてるのかな?
ね、そろそろイクたち、酒井提督にご挨拶しにいきたいんだけど……退いてくれない?」
「あは」
北上は笑う。笑った。どうしてか。
549
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/07/21(日) 12:55:16 ID:Cs8kk5rk
「演習しにきたんだっけ。そうだよね。ごめんごめん、忘れてたよ。あんまり弱かったからさぁ」
「ぁん?」
「イムヤ。
……そういう挑発には、イクたちは乗らないことにしてるのね。どういう意味があるのかは知らないけど」
「どっちが先なの?」
「どっちが? どっちって、なに。あんまり時間を喰わせるんだったら、無視したっていいの」
「だぁ、かぁ、らぁ」
わたしは初めて、人間はここまでいやな顔ができるんだということを、北上の表情を見て知った。
この世の悪意を全部丸めて投げつけてきたみたいな、ただただ、わたしたちを困らせてやろうと言うだけの、表情。
「見捨てられたから弱くなったのか、弱いから見捨てられたのかってこと」
「その口利けなくしてあげようか?」
「イムヤッ!」
「大丈夫。だけどあたしは、自分とこの上官馬鹿にされて、へらへら笑ってられるほどいい子ちゃんじゃない」
550
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/07/21(日) 12:56:34 ID:Cs8kk5rk
「あはっ。その反応、ホントっぽいね。うはぁ。やっぱり。だろうと思ったよ。いつかそうなるだろうさとはね」
「なんなんですか。なんであなたは、なんのために、わざわざ、こんな」
「ハチちゃん、いいことを教えてあげよう。おねーさんはきみたちよりちょっとだけ、艦娘を長くやってるからね。うまくやっていくコツってのをさぁ、親切心でさぁ」
息が、苦しい。目の前の、この北上という艦娘が、得体のしれない……深海棲艦なんかよりも、ずっと歪な存在に見えて、しょうがない。
やめてほしかった。もう、これ以上苦しめないでほしかった。わたしたちと提督の間にあるものをかき乱さないでほしかった。
決意が、揺らぐ。
ぐらぐら、ぐらり。
軋む音がする。
551
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/07/21(日) 12:57:08 ID:Cs8kk5rk
「期待しちゃだめなんだよ。上の人間なんかに期待しちゃだめなんだ。だってあたしらは艦娘なんだから。艦娘ってことは兵器ってことさ。つまり、人間じゃない。一山いくらの銃弾にすぎない。代わりなんていくらでもどうにかなる。
先週あたりからだっけ? 随分とまぁ、四人とも傷心したみたいで……おねーさんは涙ちょちょ切れですよ」
「随分と知ったふうなことを言うじゃんか」
「そりゃあね。あたしはあんたたちよりも、艦娘のことは当然知ってるし、健臣のことだって知ってる。だから、知ったふうなことも言うよ。
あのね、あの男はあんたたちを利用しようとしているだけなんだ。そうじゃないと説明がつかない。あの水泳馬鹿が、今更軍隊に入って護国への熱意に燃えるだなんてことありゃしないんだからさ」
「利用?」
「そっ。あいつには、ほんと、水泳しかなかったからね。あいつの脚を見たっしょ? 泳げなくなったってのは、聞いてたけど……復讐かな? それとも、治療費が嵩んでるのかな?
行動には目的ってのが必ず先立つものなんだよ、お嬢ちゃんたち。無目的には大事は成せない。わかるでしょ? わかんないかなぁ」
552
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/07/21(日) 12:58:49 ID:Cs8kk5rk
わかる。痛いほど、そのことはよくわかっている。
寧ろその事実がわたしをいま痛めつけているんだから。
「あんたたちは、大人の食い物にされたんだ」
「……」
北上の言葉はあまりにも唐突で、だけどわたしたちはみんな、そんなこともあるだろうな、とは思っていた。
それは提督がどうというわけではなくて、田中三佐がそうであるように、そしてわたしたち自身がそうであるように、結局はみんな自分の都合で動いているのだ。そのそれぞれの「都合」のかたちが違うだけなのだ。
だから、提督も、あの人も、彼も、自分の「都合」で動いているのは自明だった。あにかの理由があって、提督になって、わたしたちを教えて、鍛えて、計画を成功に導こうと努力している。
それは、もしかしたら北上が言うように、脚のためなのかもしれない。将来。未来。そして復讐。なんとも実感できる話ではある。
そりゃあそうだよね、というところ。
553
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/07/21(日) 12:59:58 ID:Cs8kk5rk
だから、北上には申し訳ないけれど、本人は衝撃の事実、不本意に満ちたこの世界の真実を伝えたつもりなのかもしれないけれど、大した重さもなくわたしたちの体を素通りするだけだった。
ただひとつの予感を残して。
「だからさぁ……」
苛立ち極まりない様子で、北上がこちらを睨みつけてくる。
「どうしてそんな顔ができるのさっ! 前を向いて歩くんじゃない! 騙されたんだ、利用されたんだ、ひどいめにあわされたんだっ! 笑うな! 泣け! もっと絶望しろよ! 結局、どこまでいってもどうしようもないって、なんで思わないんだ!
なんで、なんでだよっ! なんでっ!」
わたしはそのとき、目の錯覚に違いないのだろうけど、北上の胸中に泥濘を見た。真っ赤な炎に包まれて、燃えているそれを見た。
途端に理解する。
「あんたらがそんなだと困るんだ! 困るんだよっ! あたしが! あたしがさぁっ!」
北上は子供のように喚き散らかしている。
そんな光景を、ぼんやりと眺めていた。
「あたしがみじめになるじゃんかっ!」
554
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/07/21(日) 13:00:59 ID:Cs8kk5rk
景色が色を失っていく。耳と、頬が、じんわり熱を帯びている。
提督もそうだったのだろうか? もし、北上の言った内容が十割とはいかずとも、半分、いや三割でもいい、的を得ていたとして、それならば提督も、わたしたちを利用した罪悪感に苦しんでいたのだろうか?
苦しんでくれていたらいいなぁ、悩んで、眠れない夜があってほしいなぁ、なんてのは、人間性がひどすぎるだろうか?
わたしは、自分がこれまで復讐のために生きてきたと思っていたけれど、それはどうやら間違いだった。善悪ではなく、正誤の領域で。
復讐のために生きてきたんじゃない。復讐心を燃やすために生きてきた。もっと言えば、燃やし尽くすために。黒い汚濁では、生き続けることはできないと、どこかで認識していたから。
555
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/07/21(日) 13:02:14 ID:Cs8kk5rk
空っぽになったんじゃない。健全になっただけなのだ。
代わりのものを心にしまう時が訪れたというだけなのだ。
心臓が跳ねる。
恋の音がした。
これからわたしは、誰かのためになら――彼のためになら、生きていけると、確信できる。
ハチを見る。イムヤを見る。イクを見る。
全員と目があって、頷く。
「提督が、失くした脚のために提督になったっていうんなら」
うん。そうだね。そうだよ。
そうなんだ。
「わたしたちが代わりになるでち」
556
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/07/21(日) 13:03:51 ID:Cs8kk5rk
――――――――――――
ここまで
書きたかったところは書くのが早い。
待て、次回。
557
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/07/21(日) 13:35:05 ID:L8Ek358.
乙。
連日の投稿、とっても嬉しいのね
558
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/07/22(月) 07:27:38 ID:0aRhaSQM
乙乙
更新が楽しみで仕方ないぞ
559
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/07/23(火) 21:22:26 ID:k36TZte6
「……それで?」
俺は尋ねた。
北上は、特殊強化ガラス越しに、薄く笑う。
「それで? だからだよ」
「だからっ!」
ガラスを力いっぱいに叩きつける。青葉がそっと俺の肩に手を置いた。
「あんまり騒がしくすると、刑務官が来てしまいます。無理やり席を外してもらってるんでしょう」
「……」
視界が明滅していた。赤くなったり、暗くなったりしていた。怒りや、悲しみや、驚きや、嬉しさや、今まで俺の中の片隅で埃をかぶっていた感情までもが、溢れ出て止まらないのだ。
拘留中の北上とこうして話ができるのは、田丸の口添えがあったおかげだ。取り調べに対して彼女が完全黙秘を貫き続けているというのもある。俺になら話す、そう言ったらしい。
そうして彼女の口から零れてきたエピソードは……なんといったらいいのか。少なくとも俺の平静をかき乱すには十分だった。
560
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/07/23(火) 21:23:28 ID:k36TZte6
「俺、は」
唾を呑みこむ。
「どうして、お前が、あいつらに対してそう言ったのか。そして、あいつらがそう答えて、お前が、そうしようとしたのか。それを聞いているんだ。『北上』」
「依子」
北上は――俺の幼馴染は、寂しそうに笑う。
「そう呼んでよ。あたしだけが健臣って呼ぶのは、不公平じゃん?」
「……依子」
「うん」
満足そうな顔。ガラスの向こうでなければ、さぞかし輝いていたろうに。
「依子、頼む。俺に真実を話してくれ。俺を信頼してくれ、というのは難しいかもしれないが、お前がまだ俺のことを健臣と、親しみを込めて呼んでくれるのなら、それも可能じゃないのか?」
「あはっ。そう言われると弱いなぁ。
……あたしは、健臣、死刑になるかな?」
「……ならんだろう。酒井は一命を取り留めたそうだ。いくらお前が明確な殺意のもとに酒井を撃ったとしても、殺人未遂じゃ死刑にはならない」
561
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/07/23(火) 21:24:22 ID:k36TZte6
「罪にはなる?」
「……それは、まぁ、……そうだな」
「本当に?」
「依子?」
「罪を憎んで人を憎まず、って言うじゃんか。あたしは最近ね、やっとその意味が、ちょっとでもわかりかけてきたんだ。
ねぇ、健臣。艦娘って人かな? 兵器かな? 個人を尊重してもらえているのかな? それとも大人にとって都合のいい道具なのかな?」
歌うように諳んじる依子の視線の先にはなにが見えているのだろうか。ガラスでも、透過した先のコンクリ壁でも、ないように感じられた。
「もしもあたしが人間なら、あたしの罪はあたしが償うべきだ。当然だよね。でも、もしあたしが兵器だって言うなら……人間じゃないって言うなら、あたしの罪は持ち主が償うべきだ。そうじゃない? 違う?
監督責任。使用者の責任。人には、銃は裁けないよ」
……依子の言葉の意味はわかる。極めて筋道だった話ではある。しかし、それと、彼女の意図が理解できるかどうかはまるで別の話だ。
俺はこの話の着地地点がわからない。霧で見えない道を、手を引かれて歩いているような、そんな錯覚に陥る。
562
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/07/23(火) 21:25:35 ID:k36TZte6
人間は結局のところ自分の都合でしか動けない生き物なのだ。俺はそのことを、この数年間で嫌というほど思い知った。一生分も味わった。
巡り巡って、ゴーヤたちのために生きることができるんじゃないかと至ったのは、つい最近のことだ。それだって本当かわからない。またいつか、どこかで、ああすればよかったんじゃないか、こうしておけばよかったんじゃないかと後悔する日が来るとも知れない。
「早く裁かれたい。あたしが殺人未遂で懲役を喰らえば、それは、それって、とっても嬉しいことだと思わない? だって国が、この日本がだよ? あたしが人間だってことを保障してくれてるってことじゃんか!
不思議な気分。おかしな話だよね。でも、おかしいのはあたしだって、あたしは思えないんだ」
「……お前は、なにに、そんな……酒井に人間扱いされなかっていうのか? だからあいつを撃ったのか?」
尋ねつつも、俺は心当たりがあった。そうであってほしくないという思いが、直接口に出すのを躊躇わせた、悍ましい単語。
性的虐待。
563
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/07/23(火) 21:29:21 ID:k36TZte6
「ん……違わないよ。違わないけど……だからさぁ、言ったじゃん。あのコたちだよ。あのコたちがいなければ、あたしはそんなことしなかった」
「あいつらが何をしたんだ。すまん、依子。俺は本当にわからないんだ」
「幸せってのは相対的なもんだからさぁ」
頬杖をついて、呟いた。
その瞳は澱みきっている。濁りきっている。前を向いているのに、下を見ている。後ろを振り返っている。
そこでようやく、自らのあまりの愚かさを呪いたくなるほどに、依子が深い深い絶望に囚われていることを理解した。
本当の絶望は今にはない。闇は未来にあるのだ。否、未来が闇に呑まれている――覆われている、ではなく――ことに疲れてしまったからこその。
564
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/07/23(火) 21:30:48 ID:k36TZte6
あのコたちは。違う。みんなそうだったんだ。大人に騙されて、食い物にされるだけの、道具。そうだったはずなんだ。行き場のない人間を集めたタコ部屋なんだから。
だけど、あのコたちったらずるいんだぁ……。あんな、前向いちゃってさぁ。
健臣、あのコたちとなんかあったっしょ? それを気に病んでて、でもどうやったらあんたに許してもらえるか、なぁんて……考えちゃって……考えやがって」
ここでどんな言葉を口にしたとして、全てが傲慢になってしまうようにも思えた。それでも、しかし、発言権は俺にしかない。動かずして依子を救いだすことはできない。
誰も傷つけず、自らも傷つかずに、偉業を成せるひとかどの人物になれればどれだけいいだろう。生憎俺はそんな人間ではなかった。茨の道をもがきながら進んでいくのが国村健臣という人間だった。
565
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/07/23(火) 21:32:06 ID:k36TZte6
「それの、なにが悪い? 誰だって間違える。過つことはある。確かに善悪で言えば、そりゃあ悪だろうよ。間違えるよりは間違えないほうがいいに決まってる」
それでも。
俺だから言えることを。
「でもそれはあくまで理想だ。人間にはまねのできない生き方だ。反省して、許してもらおうとすることのどこが悪い?
確かにあいつらは俺を騙していたのかもしれねぇ。でも、俺だってあいつらを利用していた。そんなことに一生囚われて生きるのは、俺はごめんだ」
そんなふうには、あいつらにだって生きて欲しくなかった。
「それがムカつくんだよね」
「……そんなの、ただの」
八つ当たりじゃないか。
こちらの表情で何かを察したのか――なんといっても幼馴染なのだ――依子は泣きそうな顔をした。そんなひどいことを言わなくてもいいじゃんか、という顔だった。
ひどいこと。きっと、内容ではない。そもそも正論を言うな、ということだ。
正しくは在れないのなら、正論になんてさしたる意味もない。
566
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/07/23(火) 21:34:05 ID:k36TZte6
「そうだよ。だから、眩しくって、見てらんなかった。あたしにはそんなことはできないのに。ずるいなって。どうしてあたしはこんなんなんだろ、って。
……どうして、あたしのそばには健臣がいてくれないんだろうって」
そんなことは誰かにわかることではない。強いて言うなら、神様とやらか。
俺と依子の距離は、こんなに近くにいるというのに、ガラス一枚がなによりも遠い。
「それまで満足できてたことが満足できなくなっちゃったんだぁ」
なっちゃったんだなぁ。
他人事のような口調。本当に他人事ならばどれだけよかったろう。いや、それは不幸を押し付けているだけで、本質的な解決にはなっていない。
テレビの向こうの悲惨な光景を見て、戦争や飢餓、環境破壊を見て、この国は平和だなぁとぼやいているのに過ぎない。
反吐が出る。
頼む。頼むから、そんな諦念に満ちた顔をしないでくれ。お願いだ。
567
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/07/23(火) 21:35:45 ID:k36TZte6
「……あたしね、酒井のおもちゃだったの。別にそれでいいと思ってた。あいつ、趣味は気持ち悪かったけど、まぁ慣れたら慣れたでたまにはね、気持ちいいときもあったし。……大井っちのためなら、平気だったから」
「大井?」
「大井っちってさ、過去に色々あったわけ。艦娘になる前から男運が悪くて、それで男がだめになっちゃって、いろんなところで問題起こして……艦娘やるしかなくなっちゃった。でも、なんとか酒井には慣れてたんだよ。復調の兆しがあった。
酒井はクソやろうだったけど、それが大井っちに知られたら、きっとあのコは立ち直れなくなる。社会では生きていけない人間になる。この世の半分は男なんだからね。だから、なんてーの? あたしが一肌脱いでどうにかなるなら、一件落着でしょ」
568
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/07/23(火) 21:36:28 ID:k36TZte6
性的虐待の事実は衝撃的で、けれど予想の内でもあった。同時に自らの無能を恥じる。俺がもう少しなんとかできていたら、依子はここまで追い込まれなかったのではないかという自責が、さきほどから止まないのだ。
どうして周囲に悟られなかったのか、あるいは依子が助けを求めなかったのか……きっと道具だったのだ。何かで縛られていた。それぞれの都合を盾に、あるいは人質にされて。
二人が結託して隠しているのだから、ばれるはずもない。
「誰かのためなら頑張れるって信じてた。……でも、限界があった。
あのコたちのせいだよ。どうしてあたしの提督が健臣じゃないんだろうって、健臣の下であのコたちは楽しくやってるのに、あたしは酒井の下で奴隷になってんだろうって。考え出したらキリがなくってさぁ……」
無性に、無性に、腹が立ってさぁ。
気づいたら、撃ってた。
と、依子は舌をぺろりと出す。まったく悪びれてない様子で。
569
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/07/23(火) 21:37:36 ID:k36TZte6
話を聞く限り、依子には十分、いや十二分に情状酌量の余地がある。心神耗弱状態だったと言い換えてもいい。どう考えても悪いのは酒井であって、それこそ酒井は自らの銃の暴発に見舞われたのだ。
しかし問題は、恐らく依子は、情状酌量など微塵も望んでいないということだろう。寧ろ厳罰を求めているようにさえ見える。
俺はなにかを言わねばならないと思い、音を立てて椅子から立ち上がるけれど、依子のどこまでも暗く落ちていきそうな瞳を見て、言おうとしていた言葉全ての無意味さを瞬時に理解してしまった。
これがこいつの望んだ結末なのだ。こうなるように行動して、こうなった。だから文句はない。あるはずもない。
そんなのでいいのか? 本当に?
こんなことが許されるのか?
ゴーヤたちのことを想った。青葉のことを想った。田丸のことを想い、俺自身のことを想った。
こんな思いをしているのが、依子だけだとは俺には思えなかった。
570
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/07/23(火) 21:46:26 ID:k36TZte6
目頭が熱い。思わずガラスに手を衝く。込み上げてくる嗚咽を、必死になって飲み下す。
誰かを助けることは、他の誰かを助けられない可能性を孕んでいる。潜水艦たちとの関係性を築き上げる裏側で、依子や、もしかしたら俺の知らない誰か、俺を必要としている誰かとの関係性の構築に失敗しているのかもしれない。
考えるだけ無益なことだ。わかっている。それでも、俺は、俺は。
「健臣、いま喋ったこと、誰に話してもいいけどさ……大井っちにだけは、内緒にしてね。絶対。絶対だよ。絶対だかんね。
あたしは大井っちのためなら、頑張れるんだから」
それは、こいつが、大井から、自らの提督を撃った女として認識されるとしても?
いつか、嘗ての祭りの日、依子が別れ際に不意打ちしてきた口づけの感触が甦る。褪色した記憶の美しさを伴って。
大事なものが失われる苦しみを俺は知っているはずだった。脚。俺の脚。将来。輝かしい未来。水泳。表彰台のてっぺん。もう二度と、絶対に、一つたりとも離してたまるものかとさえ覚悟していたはずなのに。
共に過ごした幼馴染は失われた。膝から下と同様に。
571
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/07/23(火) 21:47:22 ID:k36TZte6
俺はまた、ゴーヤたちのことを想った。
不特定多数の、俺にとっては大事ではないけれど、他の誰かにとって大事な誰かを想った。
存在しなかった、存在したかもしれない、依子との暖かい家庭を想った。
ありとあらゆる感情が錯綜し、最早とうに許容値を超えてしまっていた。心は暴れ回るそれらに切り裂かれてずたずただ。
「話したいことは全部話したよ。聞きたいことなんて、もう、ないでしょ」
そんなことはない。そんなことはないんだ。
お前のことを一瞬たりとも忘れたことはない、なんて、そんなおためごかしをするつもりはない。けれど、このままでは、こんなことが、お前が、俺は、お前を、依子!
お前を助けることのできなかった俺がしゃしゃり出る幕はないのかもしれない。それでも、依子、俺は、お前を、せめて、お前を助けることはできなかったけれど、このままでは、あぁ、このままでは、決して、決して、終わらせない。
終わらせることなんてできない!
572
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/07/23(火) 21:56:14 ID:k36TZte6
「早く帰ってあげなよ」
依子はそして、初めて笑った。満面の笑みだった。
全身から力が抜ける。堪えて堪えて、堪え続けた涙が、その勢いで一気に頬を伝う。口からは夜の森のような音だけが零れる。頭の嵐はその勢力を増したままに移動を続けている。
膝を力任せに掴んだ。義足は俺の握力ではびくともしない。
わたしたちが提督の脚になる。
あいつらは、そう言ってくれたらしい。
大事なものを取り戻すことはできなかったけれど、代わりになるものを、俺は確かに手に入れることができた。それは、あるいは、大事なものよりもよほど価値のあるもののようにも感じられた。
「司令官」
青葉が、ここでようやく口を開いた。顔を真っ赤にしている。涙と洟を我慢しているのだ。
「帰りましょう」
あぁ。
「みなさんが、待っています」
あぁ。
泊地へ帰ろう。
俺たちの戦争は、まだ終わってはいないのだ。
573
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/07/23(火) 21:56:50 ID:k36TZte6
――――――――
ここまで
北上は好きな艦娘のひとりです。
待て、次回。
574
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/07/23(火) 22:39:52 ID:nuHRxRy6
乙した
うん、変態性欲者オスが男性恐怖症メスを認識したら、まぁ最高の玩具だよね
575
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/07/24(水) 01:23:48 ID:FHjPo3h2
最近更新多くて嬉しい
待つぞ
576
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/07/25(木) 01:32:11 ID:FKRT.qHg
おつ
主は大井が嫁艦かな?
577
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/07/28(日) 01:58:56 ID:6dHNmbXA
依子は俺だった。俺たちだった。
ガラス越しに会話をして、俺はそこに自分自身を見た。鏡写しの自分だった。左右が反転した、ほんの少しだけ、けれど決定的に異なる自分。
俺はいまが人生の絶頂だとは思わなかったが、それでも上向きになりつつあるのを感じていた。その理由の大部分が、ゴーヤたちと出会ったことだというのは、異論を待たないだろう。俺だって異を唱えるつもりはない。
だから先ほど依子が涙したように、どうして? と尋ねられても、実のところ参ってしまうのだ。率直に言えば運の良しあしという一言に尽きる。尽きるのだが……それは助けを求める手を払いのける行いに等しいだろう。
もしゴーヤたちがおらず、そして彼女と恋仲になっておらず、歪な関係でも少しずつ前進できていなかったのなら――悔しいことに田丸がいなかったのなら――ガラスの向こうにいるのは俺だったのかもしれない。依子ではなく。
あるいは、ゴーヤたちか。
578
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/07/28(日) 02:00:42 ID:6dHNmbXA
そんなことはさせない。させるものかよ。
仮定の話だとしても、到底許せる話ではない。
俺にはゴーヤたちがいて。
自意識過剰かもしれないが、ゴーヤたちには俺がいて。
彼女には、それがいなかった。
いや、いなかったと決めつけるのは早計だろう。なにより大井に失礼だ。依子は大井のためにその身を擲ち、手に入れるべきものはきちんと手に入れて……自分自身を零れ落としてしまった。
どんな集団にだって悪人はいる。俺だって、自らが悪人でない、などとは勿論言えない。それでも、だから悪人であったとしてもいいやなんて開き直りもできない。
どうして誰もあいつを助けてやれなかったんだ! そんな責任転嫁じみた怒りがふつふつと混みあがってくる。
579
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/07/28(日) 02:02:49 ID:6dHNmbXA
俺はなんとなくだが理解していた。あいつは、依子は、社会の犠牲になってしまったのだと。
社会保障やら、政府の在り方やら、主義思想やら、そんなことは興味がなかった。ただ、どんな集団にでも悪人はいるように、どんな社会にだって落伍者は生まれる。ゼロを志向するのはゼロにできなどしないから。
必要性のある犠牲ではない。ただ、必然的に生まれる犠牲。
涙を拭う。
ゼロになどできない。きっとどこかで軋轢が生まれて、その狭間で苦しむ誰かは生まれるだろう。
それでも、無策で挑むのは、違う気がした。
田丸のことがほんの少しだけわかった気がした。
やつはいたずらに誰かを使い潰したりはしない。きちんと計算して、生贄に捧げる。手駒として扱う。それがどんなに非人道的であろうとも、倫理に悖るとしても、トータルでの被害者を減らせるならば躊躇わないだろう。
そうに違いないはずだ。
だから。
580
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/07/28(日) 02:05:34 ID:6dHNmbXA
「青葉、運転できるか」
「え? ……できますけど、どうしました」
「用事ができた」
田丸、お前は俺の命令を、拒むことはできない。
青葉の返事を待たずにバーチャル・ディスプレイを立ち上げた。メーラーを起動。いくつかのファイルを雑多に、とりあえず一つのフォルダへまとめ、圧縮して添付、送信。同時に秘匿通信をぶちこむ。
ひたすらに長く感じるコール音。実際はそうではないのに、五分も十分も待たされているような、焦燥感が首筋を焼く。
後部座席に乗り込む。
青葉がハンドルを握る。ため息とともに。
「どうしたんだい?」
永遠にも感じられる時間を超えて、田丸はいつもどおりの声音で応対した。俺とゴーヤたちの現状、演習のデータ、依子に――北上に会いに来たこと、全てを知っているだろうに。
俺はそんなやつの声を聴くにつけ、ずっと手のひらで踊らされているような感覚に苛まれる。思わず舌打ちをしてしまいそうな苛立ちが、額の中心を痺れさせている。
「過労死に興味はあるか」
581
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/07/28(日) 02:10:15 ID:6dHNmbXA
「……くくっ」
笑いをかみ殺す田丸。どうやら本当に愉快であるようだ。初めて聞くかもしれない声音。
「ないと言えば、ノーかな?」
「それなら話が早い」
これまでの四人の演習データ、そして暇な時間を存分に使って収集した海図、海底地形図、予測される海流、風向き、彼我の戦力差、田丸に届けたものと同一のそれらを次々ポップアップさせる。
「現在攻略中の第五海域――5の5にあいつらをぶちこめ」
「……」
電話越しの沈黙は、これも初めてだが、田丸の絶句だった。
582
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/07/28(日) 02:12:53 ID:6dHNmbXA
「潜水艦ルートを開拓する」
583
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/07/28(日) 02:13:33 ID:6dHNmbXA
「……話を聞こうか」
話が早い。助かる。
いつぞや、やつは自分が俺と似ているというようなことを口走った。かたや膝から先を失くした人間、かたや手首から先を失くした人間。そのときはただそれだけだと思っていたのだが。
「最新海域の攻略に難儀していると聞いた。その理由は大まかにわけて二つだ。まず一つ、敵の新戦力が強力であること。そしてもう一つが、風と海流による航行の困難さだ」
「なるほどね」
そういうことかい、と田丸は言った。その理解力に俺は恐ろしささえ感じられる。
「あぁ、そうだ。
風と海流の影響が大きいのなら、水面下を行けばいい」
そのための潜水艦だろう。
584
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/07/28(日) 02:16:43 ID:6dHNmbXA
「データは全て漁った! 洗った! 全てだ、文字通り、過去の制圧任務十四回分、全て俺は詳細に読み込んだ! それらを基に推測した流速、距離、到達時間! 必要な燃料、深度、航行速度! 俺の手元に、いま、ある!」
時間はいくらでもあった。四人が俺の傍から居なくなって、俺は抜け殻のようだった。
しかし抜け殻に用はない。
俺たちの戦争は終わっていない!
俺にはまだやることがたんまりと残っている!
「敵戦力に太刀打ちできていないのは、確かに敵が強いってこともあるが、それ以上に詳細が不明だからだ! 装甲も火力も行動適性もわかっていない、圧倒的な情報アドバンテージの不足! 敵の出没、及び到達の不確実性と相まって、それが一番のネックになっていると俺は判断した!
田丸! 俺の部隊に任せろ! 任させろ! 戦うだけが戦いじゃねぇ、戦うだけが戦争じゃねぇ! あいつらの練度はまだまだ足りん、会敵してからの撃破には程遠いだろう!」
585
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/07/28(日) 02:17:36 ID:6dHNmbXA
唇を湿らせる。唾液を飲み込んで喉を潤す。
「だが! だが、田丸! 軸はそこじゃねぇ。俺たちの勝利条件はそこじゃあねぇ!」
大事なことは。俺たちの目的は。
「潜水艦隊を設立させることだ! つまり、必要性を提示することだ、認めさせることだ!
あいつらには十分な利用価値があると信じさせることができるなら! たとえあいつらが新米だろうとも! 戦闘力が劣っていても!」
上層部は俺たちを切ることができなくなる!
やつらは艦娘の存在を公にしてしまった。深海棲艦という脅威を公言してしまった。悪手だ。それははっきり言って、悪手に他ならない。
同時に俺たちにとっては神の一手が如き。
これから日本は戦争の渦中に巻き込まれていくだろう。人間は未知を恐れざるを得ない。備えはいくらあってもありがたいものだ。もしもの時にのために、海上では戦えない時のために。
強い弱いはここまで来てしまえば殆ど関係はなかった。ゴーヤたちの有用性は、最早問題にはならない。焦点はもっと遠く、巨大だ。
586
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/07/28(日) 02:19:36 ID:6dHNmbXA
個人はいずれ磨滅するけれど、役割は決して摩滅しない。代替が現れるだけであり、その期間はよほど長い。有用性とは個人に付するものではない。
「今後、どこかでまた、強大な脅威と遭遇するときがあるだろうよ! そのときに、あいつらの――潜水艦の存在は、絶対に必要となる! 首を縦に振らせりゃあ俺たちの勝ちだ、一年戦争はそこで終結する!」
そして、その幕を下ろすには、残念ながら俺では力不足なのだ。
「田丸! お前がやるんだ! お前にしかできないことなんだ!
データは全部くれてやる! わからねぇところがあったら即座に直す! だから、だから、田丸! 俺たちのために動け! 働け! 俺たちがお前を豪華な椅子に座らせてやる!」
政治的手腕や繋がりがものを言う世界において、俺はやつの足元にも及ばない。俺ではだめだ。だめなのだ。
587
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/07/28(日) 02:20:08 ID:6dHNmbXA
それは半分本心ではあったけれど、もう半分は怒りでもあった。俺たちを随分と引っ掻き回してくれやがってという。そのぶん俺たちは身を粉にしてきたのだから、心を砕いてきたのだから、お前だって俺たちのために、たまには働け。
喉がひりひりする。乾燥で、口蓋と舌がくっつく。
言いたいことは言い切った。実力的に先遣隊へ割って入ることが難しい現状、残された道は邪道――それこそ、波濤をものともしない水面下を往くしかない。
田丸もそれはわかっているはずだ。わかっていてくれ。お前がわからないはずはないだろう。
頼む。
俺を、まだ提督でいさせてくれ。
あいつらと一緒に生きさせてくれ。
「ふむ」
と、田丸は呟く。珍しくわざとらしくない感情の籠った声で。
「データは受け取ったよ。確認は今日の夜になる。……なるほどね。なるほど」
電話越しにコンソールを弄る音。
「わかった。ご苦労だった。……この線でいってみよう」
そのときの俺の喜ばしさといったら!
588
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/07/28(日) 02:21:43 ID:6dHNmbXA
資料も怒声も、田丸のその一言を引きだすがためのようなものだった。俺ごときの頭では、やつの脳内に描かれているであろう絵図の全貌を理解することは難しいだろうが、それでも食らいつかなければならないときは必ず来る。
いまがそうだ。
何としてでも、全てをこのままにするわけにはいかないから。
「あと、田丸。別件で、ひとつ、頼みがある」
「珍しいね。殊勝な態度なんて」
「……俺に政治を教えてくれ。政治のやり方を、教えてくれ」
「……」
「俺は、わかった。わかっちまったんだ。この世はクソだ。誰もかれもが自分の都合で動いて、平気なツラして他人を傷つける。俺だってそうだ。責めることはできない」
「それと政治と、関係があるのかい?」
「ある」
限りなく強い言葉で、俺は応えた。
「俺はそれを許容できそうにない」
589
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/07/28(日) 02:24:34 ID:6dHNmbXA
世の中全てを掬い上げる人間にはなれない。かといって、シニカルな態度で全てを傍観する愚かさもない。
俺に救える誰かがいるのなら、その誰かを救うことに躊躇をしないつもりだった。
救うことのできなかった誰かに詰られ、罵られ、後ろ指を指されようとも。
「田丸。俺は、提督になるよ」
「……きみがそうしたいのなら、おれとしては助かるさ」
なにかを安心したようにそう口にし、田丸との通話が切れる。思わずため息が零れた。ほぅ、とバーチャル・ウィンドウをぼんやり見ながら、意識がふらついているのをもとに戻そうと試みる。
「首尾よくいきそうですか?」
青葉は前方から目を離さずに言う。
「お手伝いしますよ。ジャーナリストは決して正義の味方ではないですが、自らの正義に殉じる覚悟を持った者をこそ、ジャーナリストと呼ぶのです」
「それ以前に艦娘だろう?」
「艦娘以前にジャーナリストなんですよ」
そうか。そうだったな。
590
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/07/28(日) 02:25:11 ID:6dHNmbXA
彼女は依然として真っ直ぐに前を見据えているが、その視界に捉えているのが前方車両のナンバーなのか、それとも刺客に追われた自らの過去なのか、はたまた先ほどの依子の笑顔なのかは、俺には判断がつきかねた。
恐らく険しい道のりだろう。ある者はそれを自殺行為とすら呼ぶかもしれない。だが、俺はやはり胸を張って生きたいと思っていたし、ハチに倣って過去への過度な執着に意味がないとも思い始めている。
なにより、ゴーヤたちのことを考えた瞬間から、心臓のトルクが一段上昇するのだ。どくんと跳ねて、どるんと動く。
つきましたよ、と青葉は笑った。
591
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/07/28(日) 02:28:21 ID:6dHNmbXA
飛び出すようにして車の扉を開け放つ。ざく、ざく、と砂利が足元で鳴る。意識と身体が噛みあっていないのか、二歩目で前へとつんのめった。気合で耐える。早く、一歩でも前へ、一秒でも先へ。
草木についた朝露はまだかすかに残っていて、視界の下方で煌めいている。宝石の中を歩いているような錯覚。浮足立つ。息が上がる。大した距離を歩いていないのに、緊張で、息継ぎに失敗した。
空は青いだけでなく、水平線のあたりに大きな雲の塊が見えた。積雲か、積乱雲か。もしかしたら俺の運命を暗示しているようにも思えて、だがそれがどうしたというのだ。いま晴れている、それだけで快い気分になれる。
大地を踏みしめている脚が、まるで自分のものではないようだった。義足。確かにそうだ。その通りだ。それを自分のものにしようと足掻いてきて、その過程で誰かの思惑に乗ったり、嵌ったり……誰かを利用したり、傷つけたり。
不思議なことだった。俺はいま、明確に目的に近づいているはずなのに、義足だけが身体の同一性から外れていく。代わりになにが穴埋めしてくれているのだろうか。
考えるまでもないことではあるが。
592
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/07/28(日) 02:29:29 ID:6dHNmbXA
泊地が目の前にある。入り口。扉。
立って、生きるのに、必ずしも脚が必要ではないことを知った。
扉へと手をかける。
引く。
力を入れずとも扉は開いた。
「おかえりなさいっ!」
出迎えは四人分の体重。
「あぁ、ただいま」
こいつらのために頑張ろう。
こいつらのために頑張れる。
それぞれの熱を感じながら、俺はやはり、そう思った。
593
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/07/28(日) 02:31:54 ID:6dHNmbXA
――――――――――――
ここまで
事実上の完結……?
明日の夜か、明後日の夜に「一文だけ」投稿します。
その後、一回投稿して、(恐らく)おしまいです。
最後までお付き合いくださいませ。
待て、次回。
594
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/07/28(日) 03:46:31 ID:ocXnl2LE
待ってる次回
May God bless i58
595
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/07/28(日) 09:18:47 ID:ChbHEN1E
乙!待つぞ!
596
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/07/28(日) 10:05:41 ID:SErQgcf2
乙なのね! 最終回、楽しみです!
597
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/07/28(日) 11:40:38 ID:KdV0MN9M
乙乙ん
クライマックスですなぁ……完結の気配が喜ばしくもあり、名残惜しくもある
598
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/08/13(火) 17:33:44 ID:CAgJ3EhE
「……あー」
百に近い視線を浴びせられて、聊か緊張しているきらいはあった。インタビューは慣れているが、ひとり前に立って何かを喋るというのは、少しばかり趣が違う。
赤ヶ崎泊地の艦娘は、総勢で四十二。そして俺の横、距離を置いた位置に、潜水艦たちが四人直立不動の姿勢で立っている。
「本日付でこの泊地を預かることになった、国村健臣という」
前方に動揺はない。こうなることへの予期がそこにはあった。ただし、それは決して俺が認められたこととイコールではない。
酒井提督の退任については、赤ヶ崎泊地の艦娘たちには、北上との間でトラブルがあったことに起因する更迭と説明されていた。その説明はおおむね間違っていない。しかし、詳しい事情は勿論教えられないし、それゆえに勘繰りや不信を抱かれるのも仕方がないとは思っている。
それでも、隠すことは必要だ。海軍にとってもそうだろうし、北上――依子、あいつの気持ちを俺が汲まずしてどうする。
599
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/08/13(火) 17:34:20 ID:CAgJ3EhE
こいつは一体どういうやつなのだろう。酒井提督はどうして任を解かれたのか。そんな思いをひしひしとぶつけられている感覚。
それに負けないように、僅かに声を張った。
「気になることは多々あると思う。不満も、不安も、あるだろう。俺は……着任一発目にこんなことを言うのもなんだが、それら全てに応えることはできない。口を噤まなければならんことは少なくない。
だが、だからこそ、知っていて欲しい。そういうこともある。そして俺は、そういうことがないようにするために、ここにいる」
「……」
伝わったかどうかはわからない。値踏みする視線と、ひそひそ声。
ぱち。ぱち、ぱち。まばらな拍手が聞こえてくる。
見れば球磨や神通が神妙に手を打っていた。思うところもあるだろうに、そうしてくれるだけの大人の態度が、随分と心へ染みた。
600
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/08/13(火) 17:35:12 ID:CAgJ3EhE
たったいまの宣言は嘘ではない。欺瞞は欠片もなかった。俺は、こいつらもあいつらも、そして自分自身をも、誤魔化しながら生きていく道には戻れなかった。
きっとよくあることなのだろう。どこにだってあるに違いない。世の中に疎い子女を手籠めにしたり、食い物にしたり……あるいはトカゲの尻尾きりで、部下に責任を押し付けたり、甘い汁を吸うことに躍起になっていたり。
残念ながら、この世の悪を滅したり、全てを正しく矯正させようと思えるほどには、俺は青くはなれない。けれどそれは、許容とは決定的に異なっている。
正義のヒーローなどではなかったし、気取るつもりもない。それでも自分の手の届く範囲を救ってやりたいと思うのは、傲慢とは言うまい。
一通りの着任の挨拶を済ませてから、疲弊した体を引きずって、新しい執務室の椅子へと腰を下ろす。おおよそ酒井のものは証拠品として押収されてしまっていた。執務室はがらんとしている。
601
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/08/13(火) 17:36:33 ID:CAgJ3EhE
小耳に挟んだ話ではあるが、余罪がぼろぼろと出るだろうという特捜部の目論見は、随分とあてが外れたらしかった。横領であるとか、他の艦娘も脅迫していただとか、そのような証拠は一切見つからかったという。
それが、酒井の巧妙な証拠隠匿なのか、はたまた本当に依子に熱を上げていただけなのか、俺にはわからない。知る由もない。
ただ、きっとなにかを、どこかで、間違えてしまったんだろう。心に傷を負った少女たちを受け入れる、嘗て聞いた酒井の人物像と、ガラス越しの依子の笑顔を回想するたびに心が痛む。
俺たちがそうならなかった保証はどこにもない。
と、ノック。
「入るクマ」
「おう」
水兵さながらの格好をして、球磨がのんびりと入ってくる。
602
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/08/13(火) 17:38:56 ID:CAgJ3EhE
「とりあえず、着任お疲れ様って感じかな?」
「ひとまずは、な。これからやらなきゃならんことが大量に控えてる」
当分の間、俺に球磨があてがわれたのは幸運だった。殆どが初対面のこの泊地のなかで、彼女や神通、初雪などは、潜水艦たちの相手でそれなりに知った仲だ。
「そこは仕方がないクマ。球磨たちはあんたの仕事を手伝うことはできても、肩代わりすることはできないかんね」
「わかってるさ。俺の仕事は俺のもんだ」
「そして、球磨たちの仕事は球磨のもん?」
「まぁな」
「ステイタスだとか、演習の映像だとか……あぁ、あとは航行記録と海底地形図、海流計のログも? 多分そっちにもいってると思うけど、気になるのがあったらどんどん言って欲しいクマ。いろいろ、なにかと物騒だから」
球磨の口ぶりは神妙だった。物騒。北上の一件を揶揄しているわけではないと思いたかったが。
603
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/08/13(火) 17:41:13 ID:CAgJ3EhE
「一応駆逐と軽巡に関しては、球磨たちもケアに回ってる。重巡……軽空母もかな。そのあたり以上は、年齢層も高いから、それなりに理性的。ただ、まぁ、焦らずに長い目で見てよ。内心穏やかじゃないコも、きっと、多い」
わかっているつもりではあるが、釘を刺されると身も引き締まる。功を急くことはない。足元を疎かにしてはならない。
気苦労をかけてすまないな。そう言うと、球磨ははにかむように笑う。照れの入りまじった、真正面から受け止めていいのか不安がっているようにも見える、子供のような笑み。
「謝礼は言葉よりも現物でお願いするクマ。こっちのことはこっちでなんとかするから、あんたはあっちをきっちり、かっちり、まとめないと」
こっちとあっち。
海上艦と、潜水艦。
田丸の尽力もあって、潜水艦娘計画については、おおよそ本決まりになるとのことであった。
俺たちが赤ヶ崎泊地へ移籍してきたのには、そのあたりの運用についての事情もある。酒井の後任としてであると同時に、潜水艦を泊地規模で運用するにあたり、これまで何度もの演習を繰り返してきた赤ヶ崎に所属させるべきだという判断が下ったのだ。
604
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/08/13(火) 17:42:54 ID:CAgJ3EhE
ようやく一息つける結果にはなったが、かといって安穏としていられるかと問われれば、否となるだろう。反田丸派は依然として健在だし、これからは潜水艦だけではなく赤ヶ崎の艦娘たちともうまくやっていかなければならない。
課題は山積み。しかし辟易とはしない。あいつらがいるから……といってしまうのは、少々くさすぎるか。
「そんじゃ、球磨はさっさとお暇するね」
「ん、忙しいところ悪い」
「別に球磨がどーこーってことじゃなくて……」
球磨はため息をひとつついて、親指で自らの背後を指した。
「おら、てめーら、そんなとこでこそこそしてんじゃねークマ」
そのまま何かをむんずと掴んで、ぽいぽいぽいぽい、四つの人影を執務室の中へと次々放り込んでいく。
変な笑いがこみあげてきて、上がる口角を隠そうと、顔の半分を手で覆う。まったく着任初日から忙しないやつらだ。
605
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/08/13(火) 17:46:22 ID:CAgJ3EhE
「あはは……」
イムヤが頬を掻く。
「お疲れ様、でち」
「仲好きことは素晴らしきことかな、なぁんて昔の人は言ったけど、規律を乱すようなことは慎むクマ」
あっけらかんと笑いながら球磨は部屋を出ていった。俺はわずかにぎくりとしたが、なんとか平静を装う。まるで冗談になっていない。
「なにやってんだ、お前ら」
「なにって……」
四人が顔を見合わせる。
「ありがとうと、おめでとうを、その……」
「言おうと思ったのねー」
天を仰ぐ。埃の溜まった蛍光灯の傘が見えた。
「こっちの台詞だ」
言いたいことは多々あった。しかし膨大な言葉は喉を通って行かないし、逐一選んでいては日が暮れる。端的に自分のこころを伝えることのなんと難しいことか。
とはいえこれで終わりではない。ここがゴールではない。深海棲艦との戦いは熾烈を極めていくだろうし、伴って艦娘の数は増えるだろう。こいつらは最初の潜水艦として周囲の手本とならなければいけない。
606
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/08/13(火) 17:49:09 ID:CAgJ3EhE
ただ、それはそれとして、たとえ一時の安寧だとしても、それに身を委ねることの幸福が確かにあった。
ゴーヤが俺の胸元に飛び込んでくる。桃のような甘いかおりが鼻孔一杯に広がる。そのまま勢い余って、椅子ごと俺たちは後ろへと倒れこんだ。
衝撃に息が詰まるも、なぜだか笑いがこみあげてきて、眼の端に涙すら滲むものだから、俺はまったくどうしていいかわからなくなってしまった。こんなことは初めてだった。
正体不明の感覚にやり場がなくなった腕で、とりあえずゴーヤの体を抱きしめる。手首から先がお留守だったので、そのままわしゃわしゃと、無造作に洗髪でもするかのようにかき乱す。
ゴーヤはやめてやめてと言いながらも笑っていた。眼の端に涙すら滲ませていた。彼女自身、まったくどうしていいかわからないようだった。
俺はなぜだかそれが楽しくて楽しくて仕方がない。
607
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/08/13(火) 17:50:16 ID:CAgJ3EhE
大丈夫ですかと駆け寄ってきたハチすらも、巻き添えにしようと俺は首根っこを掴んで引き寄せてやった。ゴーヤと二人まとめて抱きしめてやる。二人は頬をくっつけながら、俺のシャツの裾を、襟を、それぞれ力いっぱいに握り締める。
ハチが俺の胸板に頬を寄せながら、好きです、好きですと繰り返すので、ゴーヤの眉が見る見るうちに吊り上る。イムヤとイクも呆れ顔だ。返事に困ったものの、誤解怖れることなく再度言ってやる。「こっちの台詞だ」。
なにやってんのよ。そう呟きながらイムヤが手を差し出してくる。握手を求められているのだと察して、当然それに応じる――芽生えた悪戯心のままに、イムヤも一気に引き倒す。
ゴーヤとハチも愉快そうにイムヤをもみくちゃにした。あんたらお酒でも飲んだんじゃないの、なんて叫ぶイムヤだが、その動作に抵抗の様子は見えない。
608
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/08/13(火) 17:51:14 ID:CAgJ3EhE
「ほらっ! イクも来るでち!」
叫んだゴーヤにあわせて、イクが跳んだ。……跳んだ?
どすんと衝撃。少女特有の柔らかさが、腕やら脚やら、腹やら胸やら、なんなら顔にまで押し付けられて、窒息死寸前。ただでさえ幸せで胸が詰まっているというのに、これ以上は胸がはちきれてしまいそうだ。
嘗て俺の人生は水泳とともにあり、そして失われた脚とともにあった。
けれど、こいつらは言った。言ってくれた。自分たちが俺の脚の代わりになるのだと。それが果たしてどれほどの効果を齎したのか、こいつらは知っているのだろうか? どれだけその言葉で救われたのか、理解しているのだろうか?
義足の感覚と、四人分の重みを、俺は交互に意識する。
これからの人生は、こいつらとともにあるのだろう。
脚の痛みは、既にない。
609
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/08/13(火) 17:53:14 ID:CAgJ3EhE
田丸が倒れたと聞いたのは、その四日後であった。
610
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/08/13(火) 17:58:04 ID:CAgJ3EhE
――――――――――
ここまで。
いろいろと嘘をつきました。
大人は嘘をつく生き物なので…
次回でおしまいです。
待て、次回。
611
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/13(火) 20:22:35 ID:cw3xnzFs
乙なのね
田丸=サン、カロウシか
612
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/13(火) 21:32:31 ID:Vu52aOWw
お疲れ様です
613
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/13(火) 23:36:42 ID:66qUk08Y
乙んつん
大団円(仮)と思わせてからの……待つ次回
614
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/08/14(水) 23:14:29 ID:ot2jFbd.
「過労死とは言ったが、本当に倒れるとは思ってなかったぞ」
病院の特等個室には面会謝絶の札が掲げられていた。そんなものはまるきり無視して部屋へと入れば、広々とした病室の窓際に上質そうなベッド、その上に田丸が横になっている。
とはいっても寝たきりという感じではなく、背中や腰、足元まで角度の調節が効くベッドで、楽な姿勢になって読書をしていた。
大きなサイズの薄型テレビが壁にかけられているが、主電源が切られている。室内はほぼ無音に近く、換気扇の回る音だけが僅かに響いていた。
「クーラーもつけてないのかよ」
直射日光のせいだろうか、部屋の温度は随分と高い。
田丸はそこでようやく俺の姿を確認すると、こちらを見ているのか見ていないのか極めて曖昧な、目的を悟らせない顔をした。
付き添いの部下やら秘書やらがいたはずだが、一体どこへいったのか。俺の訪問を予期して下がらせた? まさか――と言い切れないだけのなにかがこいつにはある。
読んでいた本を畳み、僅かに口角を上げながら、「もうそういうのもわからなくなっていてね」と田丸。
615
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/08/14(水) 23:15:29 ID:ot2jFbd.
心の芯が震えた気がした。大地に深く打ち込まれているはずのそれを、田丸の一言は容易く揺らす。
「そういうの、って」
「肌の感覚とか、味覚とか……目と耳は、最期まで残るらしくてね。それだけは幸いなんだが」
「癌とかか」
「ん……まぁ、似たようなものさ」
「治らねぇのか」
そんなはずはないだろう、と半ば決めてかかっていた。そうであってくれとさえ。
俺の知っている田丸剛二という男はそういう男だった。権力の椅子の虜で、他人の心を操ることに長け、良心の呵責など欠片もない。そんなやつが静かに一人で、病床に伏せるだなんてことはありはしないのだ。
「治すチャンスはいくらでもあったけどね」
「どうして」
そんなのは緩やかな自殺じゃないか。
616
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/08/14(水) 23:16:37 ID:ot2jFbd.
「おれが死ぬと喜ぶやつも多いからなぁ、好機と見てなにをされるかわかったものじゃない。特に、潜水艦計画の手柄を奪いたいやつだとか……あとは、そうだな、重病だと知られると、求心力が落ちると言うのもある」
「じゃあ、なにか。潜水艦計画が決着するまで、お前はひた隠しにし続けていたってか」
「そうだね」
「俺にも」
「ははっ」
バカにされたようで気分が悪い。
「そんな特別な関係じゃあないだろう、おれたちは。ただの、単なる、似た者同士さ」
手首から先を失った男と、膝から下を失った男。
どちらも深海棲艦への復讐に燃えていて。
「どうして」
「どうして?」
「治療を遅らせてまで、どうして」
「……」
田丸はここで初めて口を噤んだ。言うべきか言わざるべきかを迷っているのではなかった。「言う」という行為は既に決めていて、なんと言葉にすればいいのかを探している。
それはこの男にとっては珍しいように見えた。少なくとも、俺が表情から意図や思考を察することができたのは、記憶にあるのはこれが最初だ。
617
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/08/14(水) 23:17:40 ID:ot2jFbd.
「前にも言ったと思うけれど……」
そこで言葉を切る。
「……いや、やめよう。おれにも矜持というものはある。露悪趣味ではないものでね」
「……?」
言っている意味が解らない。いや、こいつの言葉の深奥を、俺が捉えられたことなどいまだ嘗て存在しなかったのかもしれなかったけれど。
「そんなことはいいんだ。おれのことよりも、きみのことさ。そのために呼びつけたんだ。
国村提督、きみに政治を教えてあげよう。俺の後を継いでくれ。潜水艦隊と、自分の立場は、そうやってでしか守れない」
「でないと、食い物になる?」
依子のように?
「いまはまだ、そうだね。青葉くんのように。北上くんのように。きみの知らない沢山のコたちのように」
「……死期を悟って、ようやく善人に鞍替えか? 地獄が怖くなったか」
皮肉交じりにそう言うと、田丸は心底愉快そうに笑った。
「あはっ、あはは、ははっ! まさか! そんなはずがないだろう? 悪人だとか善人だとか、興味はないよ。目的のために手段を選べるほど、できた人間じゃあない」
その目的さえも、ようやくわかったところなのに。そう呟いたのがはっきりと聞こえた。
* * *
618
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/08/14(水) 23:18:23 ID:ot2jFbd.
* * *
田丸は、それから半年後に死んだ。ゴールデンウィークも終わり、そろそろ梅雨にさしかかろうという頃合いだった。
寂しくも悲しくもなかった。本当だ。ただ、何らかの感情は確かに残った。その名前を俺はまだ知らないだけなのだろう。
赤ヶ崎泊地は、なんとか前線基地としての体は保てていた。役目も果たせていた。俺の手柄なんて殆どなく、球磨や神通などの面々が半ば管理職として折衝にあたってくれたからだし、負けじと潜水艦たちも必死に戦果を挙げたからだ。
青葉は依然として艦娘通信を発行し、色々なところへと取材に駆け回っている。潜水艦の名前も売れた。今度、海軍のお偉方が、直々に視察に来るらしい。
噂ではどこか別の鎮首府に第二の潜水艦隊を設立するのだとか。それは非常によい報せだった。規模が拡大され根を降ろせば、最早誰かの一存でお取り潰しになることはないはずだ。
619
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/08/14(水) 23:20:01 ID:ot2jFbd.
俺は喪服に着替え、電車の時刻表を改めて確認した。うん、まだ余裕がある。
本来ならばゴーヤたちも田丸の直属だったのだから、葬式に顔を出すべきなのだろうが、生憎深海棲艦はこちらの事情なぞ汲んではくれない。俺ひとりが代表として顔をだし、四人は連名にしておくことにした。
そのような理由とは別に、彼女たちを大人の薄汚い世界に触れさせることに抵抗があったのも確かではあるが。
「おう、ゴーヤ」
「なんでちか?」
「名前教えろ。香典に記名するから」
俺の知っているこいつらの経歴は、変わらず改竄されたもののままだ。今更差し替えるわけにもいかず、手も加えられないでいる。つまり俺はこいつらの本名を未だ知らないことになるわけである。
なんとも不思議な話だ。
「えぇ……伊58じゃだめ?」
だめに決まってんだろうが。
額をぺしんと叩いてやると、ゴーヤは困った顔をした。
620
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/08/14(水) 23:21:26 ID:ot2jFbd.
「あんまりいい思い出ないから、ヤなんだけど……」
そこで、はっと気づいたように、
「ね、ねっ! 提督と結婚したら名字変わるよね、ねっ!?」
「いずれな」
反射的に言ってから、しまったと思った。しかし時間は戻らない。時すでに遅し、ゴーヤは満面の笑みを浮かべて俺へと抱きついてきている。
「絶対でち! 絶対だかんね!」
そのつもりは、俺にもあった。しかしもっと、こう、なんというのだろう、ムードあるときにこちらから言いだす予定だったのだが。
照れ隠しでゴーヤを抱きしめ返そうとも思ったのだが、さすがに真昼間の泊地でそんなことはできない。公私混同はまずい。
「とりあえず今回は諦めろ。俺の顔を立ててくれ」
「んー……」
621
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/08/14(水) 23:22:22 ID:ot2jFbd.
ゴーヤは逡巡して、
田丸ひより、
と名乗った。
622
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/08/14(水) 23:23:44 ID:ot2jFbd.
「……」
俺は、あぁ、と声が漏れたのを理解した。それだけしか喉を通らなかったと言い換えてもよかった。
目頭が熱い。
「ど、どうしたの、提督!? そんなに嬉しかったでちか!?」
あぁ、あぁ、と頷くことしかできない。
どうして潜水艦計画を成功に導きたかったのか。
どうして艦娘が食い物にされることを嫌悪していたのか。
いつか、嘗て、奴が電話口で漏らした言葉を思い出す。
「おれはね、きみ、『誰かのためになら頑張れる』と、そう信じているんだよ。きみは信じてくれないかもしれないがね。いや、事実おれも信じられなかったんだが、どうやら、そうらしい」
あぁ、田丸よ。きっとそうなのだろう。そうなのだろうさ。自分のこれまでと、お前の振る舞いを見て、あぁ、田丸よ、聞こえているか、お前は何一つ間違ってはいなかった。
胸が熱い。苦しい。
居ても立ってもいられない。
623
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/08/14(水) 23:24:45 ID:ot2jFbd.
こんなにも、これほどまでに、必死になれる理由があるだろうか!
ゴーヤの手を握った。彼女はいまだに事態を飲み込めていないようで、大きな瞳をぱちくりとさせていたが、距離が近づいたことでその柔らかそうな頬を赤らめる。
この手の中にある暖かな存在を、俺はもう二度と手放すつもりはない。
生きる理由が、またひとつ。
<了>
624
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/08/14(水) 23:28:03 ID:ot2jFbd.
――――――――――
おしまい
途中更新滞ったり、構成にも心残りはありますが、ゴーヤといちゃいちゃさせられたので問題なし。
おつきあいくださりありがとうございました。
次はどうしようかなー。冬コミ受かったらそっち書かねばだし、そろそろバトルも書きたくもあり。
よろしければpixivでもフォローしてやってください。
またどこかでお会いしましょう。
待て、次作。
625
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/14(水) 23:28:13 ID:kU3ZLl.Y
乙、夏が始まるんやなって……
626
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/15(木) 04:35:44 ID:fPNlzhb6
乙でした。
なんと、義父公認!?
627
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/15(木) 07:31:04 ID:fPNlzhb6
あ、連レスになったら御免でち
軍人は「喪服」は使わないというか、公式に喪服として制服を使うのが規則だよ
オレも、オヤジの法事に制服で参列した
628
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/15(木) 07:33:21 ID:POPVRj3s
そうかい?
自衛隊の親戚は普通に喪服着てたが
629
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/15(木) 10:13:53 ID:ufxktTwc
名前を偽ってたのはそういう事だったか……でも孫(多分)を引き取って育てるでもなく鉄火場の最前線に立つ事になる艦娘への道を用意したって事になるのか
他の艦娘達の人選やら新規立ち上げの潜水艦部隊への編成やら田丸の立場やら娘(息子)夫婦との間に有ったかもな確執やらを思うと何とも複雑やなぁ……
乙乙ん!またどこかで会えるのを楽しみにしてるっす
願わくば他の潜水艦娘と四人の掛け合いなんかも見れたらなと
630
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/15(木) 10:17:27 ID:ufxktTwc
あ、ゴーヤは両親の顔覚えてないんだったか……じゃあ順当にいって……
連レス失礼、もう一度通しで読み返してくるっす
631
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/15(木) 13:25:47 ID:dVVVL9s.
いつも良いものを書きなさる
次も楽しみにしてる
632
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/15(木) 21:17:17 ID:FjXBsgB2
すごい良かった
でもこれ潜水艦みんな田丸姓だったら笑う
633
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/08/15(木) 23:34:19 ID:xI4jaI9I
>>627
情報提供ありがとうございます。
軽く調べてもわからなかったので、とりあえず喪服、としました。
広義の礼服、いわゆるフォーマルな制服(=普段着のシャツやスラックスとは別物)とでも読み替えていただけると幸いです。
田丸関連は……やはりわかりづらかったでしょうか。
オリキャラの描写に割くのは読者諸兄抵抗あるかなと思いましたが、本末転倒ですね。
説明や33.5話は蛇足になるのだろうか?
634
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/15(木) 23:55:57 ID:ufxktTwc
単純に間が開いた事による情報の抜けだから通しで読む分には分かりづらさとかはなかったっす
裏設定やら解説、説明、幕間がある分には個人的には喜ぶ、とても
他の三人が背景を語られた事で一人だけ背景を語られてない誰かさんへのある種の疑惑の答えなんかがあると更に喜ばしい
635
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/16(金) 05:52:11 ID:5Ga4gxlE
>>633
ウェブ検索結果:自衛官服装規則 - 防衛省 情報検索サービス
ttp://www.clearing.mod.go.jp/kunrei_data/a_fd/1956/ax19570206_00004_000.pdf
> 第8条 自衛官は、次の各号に掲げる場合には、甲武装又は特殊服装をする場合を除き、第1種礼装、第2種礼装又は通常礼装(以下「礼装」という。)をするものとする。
> (1)(略)
> (2)公の儀式に参列し、又は公の招宴に出席する場合
> (中略)
> 4 自衛官は、冠婚葬祭等私の儀式又は招宴にあたり、必要がある場合には、第3項の規定にかかわらず、礼装をすることができる。
この辺を引用して、上官の葬儀であれば公式の部隊葬・普通の民間葬儀を問わず、制服の中でも礼装を着用します
オレがオヤジの葬儀で制服を着用したのも、ちょうど第8条の4を引用した行動ですね
こういうことは条文を検索しても微妙にイメージしにくいですし、結婚式と違って葬儀の情報は積極的に
ネット公開しない傾向があることですし、別にクレームを入れる意図はありません
単に、こういう知識があることと何時か次に創作なさる際にチラリとでも意識頂ければ、望外の喜びです
636
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/08/16(金) 23:08:23 ID:PUEFHwLo
>>635
なるほど、学生の詰襟などと同じ扱いということになるのかな?
情報提供ありがとうございます。この情報検索サービスも含めて、今後の作品作りに活かしていきたいと思います。
そして、蛇足&馴れ合いという批判を覚悟の上で、設定開示などを
田丸について
田丸は58の実父です。ただし58自身は両親の顔を覚えていないので、彼が父親とは気づいていません。
また、田丸は58が自分の実子であるという事実を知っていますが、それは58が潜水艦計画のメンバーとして選ばれてからのことです。
彼は自分と妻の乗っていた船が深海棲艦に襲われ、妻と、自らの手首から先を失いました。あまりの怒りと絶望の中で、自らの娘すらも捨て、深海棲艦への復讐のために生きてきました。
潜水艦計画を立ち上げたのも、国村提督が推測した通り、海軍において自らの地盤を強固にするためでした。当初は。
様々な艦娘が大人に利用され、ボロ雑巾のように使い捨てられていくさまを、そういうものだと一顧だにしてこなかった田丸。彼自身そうやって人を使い捨ててきた部分もあります。
しかし、潜水艦計画に自分の娘が応募し、適合し、候補者となったとき、思ったのです。「こんな海軍に入れるわけにはいかない」「誰かの食い物にされるわけにはいかない」と。
勿論それは欺瞞に他なりません。甚だ憤るほどの矛盾です。他人はどうだっていいけれど、身内は、しかも一度捨てたはずの娘をなんとしても守りたいというのは。
それでも、彼は強い人間でした。倫理や道徳を打ち棄ててでも強く慣れる人間でした。
自分の復讐のために生きていた彼は、初めて「誰かのためならば頑張れる」ことを知ったのです。あるいはそれまでも妻の無念を晴らすために邁進していたのかもしれません。
637
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/08/16(金) 23:17:10 ID:PUEFHwLo
そうして探しました。自分の眼鏡に叶う人物を。自らの娘を任せてもいいと思える、正しく導いてくれると信じられる人物を。
それが国村健臣そのひとです。
赤ヶ崎の性的虐待について調べさせたのも、国村提督に義憤の念を抱かせるとともに、58が毒牙にかからないようにする意味もありました。
田丸にとって潜水艦計画は絶対に成功させなければならない計画となりました。
国村提督と親密になるように言いつけたのも、一度既成事実を――肉体関係の範疇にとどまらず――作ってしまえば、
決して悪いようにはしないだろうと当て込んでのことです。その目論見は正しく、そもそもそう言う人間を彼は初めから選んでいました。
病床に伏してなお、彼の心は満ち足りていました。彼は善人でなく、悪人とさえ呼ばれるべき人間です。
自分がこんな気持ちのまま逝っていいのだろうか。病室を訪ねてきた国村提督の表情と、そして潜水艦たちのことを想いながら、
彼はそのまま意識を失いました。
638
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/08/16(金) 23:27:22 ID:PUEFHwLo
伊19について。
伊19は阿片窟の生まれです。
両親は反社会組織の末端として大麻を自宅で栽培し、自身らも大麻の常習者でした。
生後間もないころから阿片の煙を吸っていた彼女は、重度の離脱症状を患うまでになり、
それ自体は関係機関の尽力により恢復したものの、彼女に天才とも白痴とも呼べる能力を授けました。
単純な学力もそうですが、彼女は超能力という精度で他人の思惑を理解できます。その上で、ありとあらゆる人間関係に飽き、倦んでいます。
自分の知らない、ちからの及ばない「異常な世界」や「ひととひととの関係性」を求めて、戦争へと身を投じることに決めました。
639
:
◆yufVJNsZ3s
:2019/08/16(金) 23:30:59 ID:PUEFHwLo
設定開陳はこんなもんです。
本文で表現しろ? ごもっともです、申し訳ありません。
あまりオリキャラを出しゃばらせたくなかったという点、一回の投下である程度の区切りをつけなければいけないという点、
以上の二点で田丸や19は構成からはみ出してしまいました。完全に実力不足です。
酷い蛇足におつきあいくださいまして、誠にありがとうございました。
リクエストがあればそのキャラで短編書きます。
それか、また漣か大井に回帰します。
待て、次作。
640
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/16(金) 23:59:48 ID:.886vx.2
不幸な山城と不幸を共にしたい話を
641
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/17(土) 01:27:18 ID:YADidieE
乙です
潜水艦娘4人と主人公の幸せでえっちな絡みが見たい
642
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/18(日) 00:38:16 ID:D2eXv6m2
乙です
良いものを読ませてもらった…いつか機会があれば続編もお願いします
リクとしてはあなたの比叡や瑞鶴とのいちゃいちゃが見てみたいなぁ
643
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/18(日) 15:47:07 ID:hIvLDZ3o
乙乙乙
しまった、設定開示は次回作でって言うべきであったか……
それはそれとしてこの話の続編として新天地でのアレコレとか後輩としてやってきた新潜水艦娘達や大鯨とのお話とか海外への遠征話とかオリョクルとか読みたい話が沢山あって絞れない……
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