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【ぼく勉】小美浪先輩「この前は本当に悪かった」成幸「はい?」

1以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/10(月) 23:23:54 ID:w/7Zs4bc
………………海での一件から数日後 予備校

成幸 「なんです、藪から棒に」

小美浪先輩 「いや、メールでも謝ったけど、これだよ。ほれ」

成幸 (紙袋? 中身は……)

成幸 「あっ……ああ。これ、海で貸したシャツですね」

小美浪先輩 「いや、ほんと悪かったな。返すの忘れて先に帰って」

小美浪先輩 「メールでは大丈夫だったって言ってたけど、本当に大丈夫だったのか?」

成幸 「えっ、あー……」

成幸 (……帰りに乗せてもらった桐須先生の車の運転は、正直全然大丈夫ではなかったけど、)

小美浪先輩 「? 後輩?」

成幸 (それをこの愉快的な先輩に話したら、また桐須先生をからかうネタにしかねないし)

成幸 (わざわざ言うことではないな。よし)

小美浪先輩 「おーい、こうはーい。どうしたー?」

成幸 「……すみません。大丈夫でしたよ。海の家ですぐに新しいシャツを買えましたし」

小美浪先輩 「そ、そうか……」 ホッ

811以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:23:45 ID:REbudaZM
タタタタタ……

葉月 「クマさん、こんにちは!」

和樹 「こんにちは!」

クマ 『こんにちは!』

クマ 『ふたりとも挨拶できて偉いね〜!』

クマ 『お父さんとお母さんはいるのかな?』

和樹 「うん! いまこっちにくるよ!」

クマ 『そっかぁ……』

キラン

クマ 『実はね、おうちの中に、美味しいジュースとお菓子があるんだけど、』

クマ 『食べに来ないかな?』

葉月 「お菓子!? ジュース!?」  和樹 「いいの!?」

812以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:24:30 ID:REbudaZM
成幸 「……? お、おいおい、なんか展示住宅の中に入っちゃったぞ!?」

うるか 「誘拐!?」

ドタドタドタドタ……

スタッフ 「こんにちは。先ほどのお子様の、お父様とお母様ですか?」

成幸 「え、ええ。そうですけど、葉月と和樹は……」

スタッフ 「中にご案内しております」

ニコッ

スタッフ 「温かいお茶のご用意もありますので、旦那様、奥様もどうぞ」

成幸 「えっ、い、いや、でも……俺たち、その、お金もないし……」

スタッフ 「ご予算のご相談でしたらお受け致しますし、低金利のローンもご用意できます」

スタッフ 「ぜひ、お話だけでも聞いていただければと思います」

成幸 「えっ、あっ……えっと……」

813以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:25:00 ID:REbudaZM
………………展示住宅内

葉月 「きゃー!」

和樹 「広いなー! きれいだなー! うちの何倍あるかなー!」

ドタバタドタバタ……

成幸 「こ、こら! 余所様のお宅なんだから、静かにしなさい!」

スタッフ 「大丈夫ですよ、お客様。弊社の住宅の一番のウリは頑丈さですから」

スタッフ 「他のスタッフがお子様の遊び相手を務めておりますので、ご心配なく」

成幸 (ど、どうしよう、うるか。仕方なく入っちゃったけど、高校生ってバレたら怒られるかな……) コソッ

うるか (バレないってばー。大丈夫だよ。どんと構えてようよ) コソッ

成幸 (こういうとき、お前の脳天気さが頼もしいよ……) コソッ

スタッフ 「では、お客様。家の中をご案内いたしますね」

814以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:25:36 ID:REbudaZM
………………

成幸 「………………」

成幸 (すごい……!!)

成幸 (鉄筋コンクリート製の家は外だけじゃなく中も立派だ)

成幸 (トイレも風呂もキッチンも非の打ち所のない美しさと機能を兼ね備えている!!)

成幸 (収納も多いし部屋数も豊富だ。いつか葉月と和樹が大きくなったとき、それぞれに部屋を与えることもできるだろう……)

成幸 (ただし!)

スタッフ 「えー、ただいま見ていただいたこの家ですと、大体ピー千万円からになります」

スタッフ 「弊社でご用意させていただく土地をご購入いただければ、土地自体は格安ですし、オプションをおつけすることもできます」

成幸 「ち、ちょっと、そのお値段は手が届かないかな、と……」

スタッフ 「そうですか。もっとお安い間取りもございますので、こちらのモデルプランをぜひお持ちください」

スタッフ 「低金利のローンのご用意もございますので、ぜひご検討いただければと思います」

成幸 (うぅ……。たしかに魅力的な家だが、さすがにまったく検討もつかない金額だから何も考えられんな)

うるか 「ふむふむ……なるほどなるほど……」

成幸 (頼みの綱のうるかは向こうで別のスタッフさんと何か喋ってるしー!)

815以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:26:22 ID:REbudaZM
うるか 「……!? ほんとですか!?」

うるか 「ねえねえ成幸! すごいこと聞いちゃったよ!」

成幸 「……?」

うるか 「たとえばあたしが仕事なりパートなりをして、月々の生活費を捻出できれば、」

うるか 「成幸の給料から葉月ちゃんと和樹くんの教育ローンと家のローンも組めるって! しかも貯金もできる!」

うるか 「ボーナスをローン返済に回せば、三十年ローンを組んだとして、十五年で完済できるかもって!」

成幸 「お、おう……。お前の口から難しい言葉が出てくるとなんか違和感あるな……」

成幸 「……っていうかその試算、お前が働くって前提だろ? 俺の給料だってまだ不確定だし……」

うるか 「大丈夫! 成幸のお給料で足りない分は、あたしががんばって稼ぐし! 家事だってがんばるし!」

うるか 「成幸の夢、叶えるためだったらいくらでもがんばるよ!」

成幸 「お、おう……///」 (お、奥さんのフリ、具体的にやりすぎだろ……さすがに照れるぞ……)

スタッフ 「……良い奥様ですね」 コソッ

成幸 「へっ……!?」 カァアアアア……

うるか 「?」

成幸 「………………」 コクッ 「……そう、思います。本当に」

816以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:27:26 ID:REbudaZM
………………帰路

葉月&和樹 「「………………」」 zzz……

成幸 「ったく、散々遊び回って、疲れたら寝ちまうんだからなぁ……」

うるか 「子どもらしくていいじゃん。ふたりとも幸せそうだし」

成幸 「悪いな。葉月おんぶさせちゃって」

うるか 「ううん。寝てる子どもの体温、湯たんぽみたいで気持ちいいよ。得した気分」

成幸 「……お前のその前向きさ、ほんと見習いたいよ」

うるか 「そう? えへへ、褒められちったー」

ルンルン♪

成幸 「………………」

クスッ

成幸 「……お前はほんと、“良いお嫁さん” になりそうだな」

うるか 「……はぇ!?」

カァアアア……

うるか 「き、急になに、成幸……」

817以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:27:58 ID:REbudaZM
成幸 「いや、そう思ったから言っただけだよ。料理も美味いし、前向きだし、体力もあるし、元気だし……」

成幸 「……って、変なこと言ったな。悪い」

うるか 「………………」

うるか (まったく、成幸ったら……人の気も知らないで……)

うるか (でも、そっか……。成幸がそう思ってくれてるんだ)

うるか (あたしのこと、“良いお嫁さん” になるって思ってくれるんだ)

グッ

うるか 「……うん。なるよ」

成幸 「ん?」

うるか 「なるよ。“良いお嫁さん”」

成幸 「あ、ああ。そうか。そうだよな」 ニコッ 「本当に、なると思うよ。“良いお嫁さん”」

うるか (いつか、成幸の、“良いお嫁さんに”)

ニコッ

うるか 「うん! いつか、絶対。なってみせるから」

おわり

818以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:28:41 ID:REbudaZM
………………幕間1 夜 唯我家 「敵」

水希 「今日は本当にありがとうございました、武元さん」

うるか 「へ……? あたしなんかしたっけ?」

水希 「葉月と和樹から聞きました。フルピュアショーが本当に楽しかったって」

水希 「あのふたりがニコニコ嬉しそうにわたしに言うんです。だから、本当に楽しかったんだろうな、って……」

うるか 「いやいや、あたしが勝手についていっただけだから、気にしなくていいよ」

うるか 「あたしも楽しかったしね!」

水希 (この人は本当に、葉月と和樹のために色々してくれたらしい……。武元さんには気を許してもいいかな……――)

葉月 「――あっ、うるかママー! ……じゃなかった、うるかお姉ちゃーん」

水希 「………………」 ガシッ 「……待って、葉月。ママって何?」

葉月 「? ちょっとね? 誤魔化さなくちゃいけなかったから? うるかお姉ちゃんがママ役で、兄ちゃんがパパ役をやっただけよ?」

水希 「……ふーん、そう」 ギリッ (お兄ちゃんがパパで、武元さんがママ……へー、ふーん、そうかぁ……)

うるか 「? 水希ちゃん? どうかした?」

水希 「いえ……」 (やはり……)

水希 (やはり、この人も……敵!!)

819以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:29:21 ID:REbudaZM
………………幕間2 「ツーショット」

海原 「なんか唯我くんと進展あったんだって、うるか?」

川瀬 「教えろよー。何があったんだ、一体」

うるか 「えへへ……実は、ツーショット写真、撮っちゃったんだ」

川瀬 「な、何ぃー!? 奥手なあんたが!?」

海原 「よくがんばった! よくやったよ、うるか!」

川瀬 「して、その写真は?」

うるか 「は、恥ずかしいけど……見てもらおうかな。ほら」

海原 「……?」 (フルピュアの着ぐるみに抱きつくうるかとその隣の恥ずかしそうな唯我くん……)

川瀬 (これはツーショットと言えるのか……?)

うるか 「えへへー。ツーショット〜。これ、宝物にするんだ〜」

海原 (……まぁ)

川瀬 (うるかが嬉しそうだし)

海原&川瀬 ((ツーショットってことでいいか……))

おわり

820以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/24(水) 01:32:22 ID:REbudaZM
>>1です。
見てくださった方、ありがとうございます。
感想や乙をくれる方、ありがとうございます。
励みになりますので、いただけると本当に嬉しいです。

まだまだ書きたい話がありますので、このスレが埋まったら恐縮ですがまた新しいスレを立てようかと思います。
まだ先の話ではありますが。

もし万が一何か書いてほしい話・キャラ等がありましたらレスください。
実現できそうだったら書きます。

また折を見て投下します。

821以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/25(木) 00:09:13 ID:Tg00Lxe6
>>1です。
投下します。


【ぼく勉】文乃 「この場所で、また君と」

822以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/25(木) 00:11:34 ID:Tg00Lxe6
………………朝 一ノ瀬学園

文乃 「………………」

ハァー

文乃 (あ、息、少し白いや)

文乃 (朝方は空気が冷えるようになってきたなぁ)

文乃 (今年は秋が短い気がする。ついこの前まで暑かったはずなのにな)

文乃 (……もう、冬なんだね)

文乃 「………………」

文乃 (もう受験、なんだよね……)

文乃 (春からこっち、長かったような、短かったような……)

文乃 (本当に色んなことがあったな)

クスッ

文乃 (そのほぼすべてに、“彼” が関わっているんだよね)

文乃 (今だって、来るか来ないかもわからない彼を待っているわけだし)

823以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/25(木) 00:14:09 ID:Tg00Lxe6
文乃 (……いつ頃からだっけ。こうやって、ここで彼を待ったり、待たせたりするようになったのは)

文乃 (最初はりっちゃんとうるかちゃんの成績ががた落ちしたときだったよね)

文乃 (鈍い彼は、どうしてふたりの成績が落ちたのか分からなくて、苦労してたなぁ)

文乃 (彼の相談や愚痴、他愛もない話を聞いているうちに、いつの間にかここに来るのが習慣になって……)

文乃 (最初の頃はメールで約束したりもしていたけれど……)

文乃 (いつからか、こうやってなんとなくここに来るようになって……)

文乃 (……わたし、本当に、最近は毎日ここに来てるな)

文乃 (今日は彼は来ないみたいだ。待ちぼうけだね)

クスッ

文乃 (……まぁ、わたしが勝手に待っているだけなんだけどね)

文乃 (時間ももったいないし、数学の公式でも覚えようかな)

文乃 (成幸くんお手製のフラッシュカード……。本当だったら自分で作るべきなんだろうけど)

文乃 (“教材は俺が作るから、そんな暇あったら勉強してろ” だもんなぁ……)

文乃 (わたしはいつも、彼に甘えてばかりだ。でも、だからこそ……)

文乃 (……その彼の頑張りに報いるためにも) グッ 「……がんばるぞ、わたし!」

824以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/25(木) 00:15:40 ID:Tg00Lxe6
………………???

文乃 「ん……?」

パチッ

文乃 (あれ、ひょっとして、わたし寝てた……?)

文乃 (こんなに寒いところで寝てたら、また風邪引いちゃうよ……)

文乃 (……あれ? でも、なんか……)

文乃 (寒くない?)

?? 「文乃? 起きたの?」

クスクス

文乃 「はぇ……?」 (あれ、わたし、目線が低い……?)

文乃 (ここは、どこ? 目の前で笑っている、この人は……)

文乃 「お母さん……?」

825以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/25(木) 00:16:13 ID:Tg00Lxe6
………………???

文乃 「あ、あれ……?」

カーン……カーン……カーン……

文乃 (今度は何? 広場 ?工場……? いや、ここは……)

文乃 (ロケット!? えっ!? じゃあ、発射場!?)

文乃 (っていうか、わたし、なんで白衣なんて着てるの……?)

?? 「博士、イオンエンジンのマイナーチェンジ案、完ぺきですね」

文乃 「へ……?」

?? 「博士の提案された設計をいま出力しています。完成し次第、イオン反応テストを行いますが、」

?? 「博士の理論通りの推力が期待できます。従来型から36%もの推力アップです」

?? 「これなら、惑星間航行の定期便化も夢じゃありませんよ」

文乃 (博士……? わたしが……?)

826以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/25(木) 00:16:44 ID:Tg00Lxe6
………………???

パシャッ……パシャッ

文乃 「あ、あれ……?」

文乃 (今度は、何……? 大量のカメラ。フラッシュ……)

文乃 (記者会見場のような……)

?? 「古橋博士! こちらへ目線お願いします!!」

?? 「こっちにもお願いします……」

?? 「博士が理論を提唱したイオンエンジンについて、簡単にご説明願います!!」

?? 「惑星間航行の大幅なコストダウンに貢献されたことについて、コメントを!!」

?? 「火星の定期便第一号に博士が搭乗されるとのことですが、それに向けて一言お願いします!」

文乃 「へ……? へ? へ?」

?? 「ちょっと待ちなさい! まだ写真撮影ですよ! 質問は控えてください!」

?? 「質疑応答の時間は後で取りますから! マナーを守れないようならご退出いただきますよ!」

827以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/25(木) 00:17:28 ID:Tg00Lxe6
………………???

『さて、火星間の定期便第一号が出発します、ギアナ宇宙センターからリポートしております』

『皆様、ご覧ください。あの雄々しいながらもスマートなロケットを』

『あのロケットには、人類史に残る発明――イオンエンジンの理論提唱者である古橋博士が搭乗しています』

『若い女性でありながらロケットエンジンの第一人者として頭角を現し、』

『今や世界最高レベルのエンジニアでもある古橋博士。彼女は日本の宝であります』

『イオンエンジンの、化学エンジンとは比べものにならない推力、そしてとてつもないコストダウンにより、』

『今や宇宙へ旅立つことは人類にとってそう難しくないことになりつつあります』

『日本……いえ、地球が誇る稀代のエンジニア、古橋文乃博士の旅立ちを、世界中の人が見守っています!』

『古橋博士! どうか良い宇宙の旅を!』

828以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/25(木) 00:18:05 ID:Tg00Lxe6
………………???

文乃 「……ん、あれ、今度は……」

成幸 「ああ、起きたか。文乃」

文乃 「へ……?」

文乃 「成幸くん……? なんか、背伸びた? っていうか、なんか大人っぽいような……」

成幸 「はぁ? ここ最近はお互いずっと一緒にいるだろ? いきなり何言ってんだ?」

成幸 「寝ぼけてるのか? この寝ぼすけ眠り姫め」

ギュッ

文乃 「へ……? へぇ!?」

文乃 「い、いきなり何をするのかな、成幸くん!? せ、セクハラだよ!?」

成幸 「お、おいおい。さすがにそれは傷つくぞ? 抱きしめるくらいは許してくれよ」

成幸 「約束通り、結婚するまではキスもしてないんだからさ」

文乃 「はぇ……? け、結婚、って……」

キラッ

文乃 (わたしの薬指、これ……婚約指輪……?)

829以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/25(木) 00:18:48 ID:Tg00Lxe6
文乃 「わたし、結婚するの!?」

成幸 「お前、大丈夫か? 変な夢でも見てたのか……?」

成幸 「それとも、やっぱり……俺と結婚するの、嫌なのか?」

ズーン

成幸 「それなら、まぁ……仕方ないと思って、あきらめるけどさ……」

文乃 「しかもきみと!?」

成幸 「そこも把握してなかったのか!?」

文乃 「わ、わたしと、きみが、結婚……?」

カァアアア……

文乃 「……わたしなんかと結婚して、いいの?」

成幸 「はぁ? 何を言ってるんだ、一体」

成幸 「お前と結婚したいんだよ、俺は。お前以外の誰と結婚しろって言うんだよ」

成幸 「イオンエンジンの理論提唱者にして、世界最高のエンジニア、古橋博士」

成幸 「……お前と結婚したい男なんて1億人は下らんぞ」

成幸 「まぁ、俺はそういう肩書きなんかどうでもよくて、ただ古橋文乃が好きなだけだけどな」

830以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/25(木) 00:19:44 ID:Tg00Lxe6
文乃 「はうっ……////」

文乃 (で、でも、だって……きみには、りっちゃんとうるかちゃんが……)

成幸 「あ、そうだ。理珠とうるか、あすみ先輩も真冬先生も式に来られるってさ」

成幸 「いい男捕まえるって息巻いてたぜ。エンジニア仲間でも紹介してやれよ」

文乃 (……そっか)

文乃 (わたし、きみと幸せになっても、いいんだね……)

成幸 「……? 文乃?」

文乃 「……よろしくね。成幸くん」

文乃 「わたしのこと、幸せにしてね」

成幸 「………………」

ニコッ

成幸 「当たり前だろ。任せとけ」

831以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/25(木) 00:20:19 ID:Tg00Lxe6
………………???

文乃 (ん……? ここは……教会……?)

文乃 (純白の衣装……こんなの、考えなくたって、分かる……)

文乃 (ウエディングドレス、着てるんだ、わたし)

文乃 (結婚、するんだね。わたし、成幸くんと……)

成幸 「………………」 ドキドキドキ……

文乃 (ふふっ、緊張した顔しちゃって……)

うるか 「文乃っちー、きれいだよー!」

理珠 「おめでとうございます、文乃。本当にきれいです」

あすみ 「まさかお前と後輩がなぁ。人生どうなるかわからないもんだな。ま、おめでとさん!」

真冬 「おめでとう、古橋さん。……いえ、もう唯我さん、ね」

文乃 (えへへ……)

文乃 「みんな、ありがとー!」

832以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/25(木) 00:21:35 ID:Tg00Lxe6
………………???

文乃 (ん……?)

文乃 (あれ? わたし、結婚式で、みんなに祝福されて……)

文乃 (ここは……?)

?? 「あなたに理系受験は無理よ」

?? 「よしんば受かったとして、大学の理系授業について行けると思うの?」

文乃 「!? い、いきなりなんですか? そんなの、やってみないと、わからないじゃないですか!」

?? 「文乃。ひどいです」

?? 「文乃は、私が成幸さんのことを好きと知っていて、その上で……」

?? 「私から成幸さんを奪い取ったんですね」

文乃 「ち、違うよ!? わたしは、ただ……」

?? 「違わないよ! 文乃っち、ひどいよ!」

?? 「あたしが成幸のこと好きって知ってたんでしょ!? 心の中で笑ってたんでしょ!?」

?? 「最後に勝つのは自分だって、笑ってたんでしょ!!」

文乃 「違うよ! わたしはそんなこと考えてないよ!」

833以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/25(木) 00:23:01 ID:Tg00Lxe6
?? 「……文乃」

文乃 「へ……?」

?? 「………………」

文乃 「おとう、さん……?」

?? 「………………」

文乃 (……いやだ。怖い。なんで。どうして)

文乃 (どうして、こんな……)

……ギュッ

文乃 「えっ……?」 (ひんやりして、心地良い、この手は……)

文乃 「成幸、くん……?」

成幸 「……行くぞ、古橋」

ニコッ

成幸 「一緒に行こう。一緒なら、大丈夫だ」

文乃 「成幸くん……」 (ああ、そうか、きみは……きみだけは、わたしを……)

文乃 「……うん!!」

834以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/25(木) 00:24:16 ID:Tg00Lxe6
………………

文乃 「……ん」 パチッ

文乃 「あれ……? わたし……」

  「起きたか?」

文乃 「へ……?」

文乃 「成幸くん……?」

成幸 「おう。なんだ? 寝ぼけてるのか?」

文乃 「……んー、そう、かも? ちょっと、怖い夢を見て……。えっと、結婚式は?」

成幸 「はぁ? 結婚式? 誰の?」

文乃 「誰って……きみとわたしの結婚式に決まってるでしょ」

成幸 「………………」

成幸 「は、はぁ……?」 カァアアアア……

文乃 「へっ……? あっ……」 (成幸くん、制服……?)

ハッ

文乃 (夢!? そうだ、わたし、夢を見てたんだ! 全部夢だったんだ!)

835以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/25(木) 00:25:02 ID:Tg00Lxe6
文乃 (わ、わたし……成幸くんにもたれかかって……寝て……)

文乃 (エンジニアになって、成幸くんと……結婚する、夢……)

文乃 「ご、ごめん。変な夢見ちゃったみたい。忘れてっ」

成幸 「あ、ああ。まったく、朝から寝ぼすけだな……」

文乃 「でも、成幸くん、どうしてここに……?」

成幸 「ああ。古橋がいるかなと思って来たら、フラッシュカード持ったまま居眠りしてるお前がいたから……」

成幸 「悪い。気持ち良さそうに寝てたからさ。起こすのも気が引けて隣で勉強してたんだが、」

成幸 「途中で俺にもたれかかってきて……。すまん」

文乃 「そ、そっか……。こちらこそごめんね、成幸くん」

文乃 「ん……?」

パサッ……

文乃 「……あれ、これ……成幸くんの、ブレザー……?」

836以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/25(木) 00:25:47 ID:Tg00Lxe6
文乃 「寝てるわたしに、かけてくれたの……?」

成幸 「……さすがにこんな寒い中、制服だけで寝てたら風邪引くだろ」

成幸 「へくしっ……」

文乃 「成幸くんが風邪引いちゃうよ! ごめんね。返すよ」

成幸 「俺は大丈夫だよ。でも、どこでも寝ちまうお前には困ったもんだな」

成幸 「こんなところで寝るくらいなら、教室で寝ろよ」

文乃 「それは、まぁ、その通りなんだけど……」

文乃 (……きみを待っていたら、いつの間にか居眠りしちゃったなんて、言えないし)

文乃 (きみの夢を見てたなんて、もっと言えないし……)

カァアアアア……

文乃 (きみと結婚する夢を見ていたなんて、絶対言えないよね)

837以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/25(木) 00:26:19 ID:Tg00Lxe6
成幸 「ん……もうこんな時間か」

成幸 「そろそろ教室行くか」

文乃 「……そうだね。行こうか」

文乃 (……手の隙間から、砂がこぼれ落ちていくように、夢の中での出来事が、頭の中から少しずつ消えていく……)

文乃 「………………」

文乃 「……ねぇ、成幸くん。数学の公式、結構覚えたから、また問題出してね」

成幸 「おう。とりあえず今日の放課後だな。あとは……」

成幸 「明日の朝、ここでもやるか」

文乃 「……うん!」

838以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/25(木) 00:26:56 ID:Tg00Lxe6
文乃 (夢は夢で、わたしはきみとどうなったわけでもない)

文乃 (わたしが、何を思って、あんな夢を見たのかなんて、きっとわからない)

文乃 (ただ、ひとつ分かること。確実なこと……)

文乃 「……また明日だね、成幸くん」

成幸 「? 今日の放課後も一緒に勉強するだろ?」

文乃 「ふふ、そうだね……」

文乃 (鈍い君はきっと気づかない。気づかなくていい。気づかれちゃ、きっとダメ)

文乃 (だから、そっと、心の中だけで、なぞる)

文乃 「………………」

ニコッ

文乃 (この場所で、また君と)



おわり

839以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/25(木) 00:27:33 ID:Tg00Lxe6
………………幕間 「出歯亀の会」

鹿島 「!? 居眠りした古橋姫の隣に唯我成幸さんが座りましたね〜!」

蝶野 「!? おお!? 唯我さん、古橋姫に自分のブレザーを羽織らせたっスよ!」

猪森 「!? なんだと!? 古橋姫が唯我くんにもたれかかったぞ!?」

鹿島 「これは……」

蝶野 「なんとも……」

猪森 「とてつもなく……」

鹿島&蝶野&猪森 「「「尊い……!!」」」



おわり

840以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/25(木) 00:29:40 ID:Tg00Lxe6
>>1です。
読んでくださった方、ありがとうございました。

非常に短い話です。
ほとんど夢の中の出来事という二次創作的には禁じ手に近いようなものを書いてしまいました。
本編で文乃さんの過去や家庭の事情が明らかになるのが今から楽しみで仕方ありません。

また折を見て投下します。よろしくお願いします。

841以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/25(木) 06:06:09 ID:MQC3KiDY
いいっすねえ…

842以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/25(木) 22:41:57 ID:y7iV49tw
ド定番に王様ゲームとか...

843以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 00:06:25 ID:MtoRC5vY
突然だがぼく勉って先輩キャラはいるのに後輩キャラがいないな

844以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:05:05 ID:aVLVUSo6
>>1です。投下します。


【ぼく勉】理珠 「王様ゲーム?」

845以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:05:40 ID:aVLVUSo6
……………… “愛してるゲーム” 後 緒方家

理珠 「………………」


―――― 『あ……あいしししししししししししししししし』

―――― 『緒方さんがバグった!!』

―――― 『今度はまた別のイミで壊れたレコーダーに!!』


理珠 (まったく、不可解です……)

理珠 (なぜ私はあんな単純なゲームで後れを取ったのでしょうか)

理珠 (せっかく、成幸さんにゲームで勝利するチャンスだったというのに……)

理珠 (成幸さんのお友達相手ならいくらでも言えることが、どうして成幸さんには言えなかったのでしょうか)

理珠 (なぜ……)

理珠 「“愛してる” ……」 ボソッ

理珠 「……っ」 カァアアア……

846以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:07:12 ID:aVLVUSo6
理珠 (い、いけません。なんだかわかりませんが、これはきっと、ダメです)

理珠 (しかし、ずっと負けっぱなしというのもなんとも情けない話です)

理珠 (なんとか、成幸さんにゲームで勝つことはできないでしょうか……)

理珠 「………………」

ハッ

理珠 (……逆説的に考えれば、勝てるゲームを探せばいい……!?)

理珠 (なんということでしょう。私は天才ですか。成幸さんに勝てるゲームで勝負をすればいいんです)

理珠 (そうと決まれば、インターネットで少し調べてみましょうか)

理珠 「……えっと、そうですね……。“男子に勝てる ゲーム” あたりで調べてみましょうか」

理珠 「………………」

理珠 「……? 合コン必勝法……? 王様ゲームで優位に立つ……?」

理珠 「王様ゲーム?」

理珠 「……!?」 (す、すごい情報です……! 王様ゲームに持ち込めば、女子は絶対男子に勝てる!?)

理珠 (王様ゲームというゲームなら、成幸さんに勝てるのですね……!)

847以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:08:19 ID:aVLVUSo6
………………翌日 一ノ瀬学園 3-B教室

理珠 「……と、いうことで、今日の放課後、四人で王様ゲームをしましょう」

成幸 「………………」

成幸 「うん。とりあえず、何が 『と、いうことで』 なのか分からんが……」

成幸 「今日の放課後も勉強だよ! 何考えてるんだお前は!」

理珠 「そ、そんな! せっかくクジも用意してきたんですよ!?」

成幸 「何に情熱燃やしてんだお前は!? どんだけ王様ゲームやりたいんだ!?」

文乃 「ま、まぁまぁ。成幸くんもおさえておさえて……」

文乃 「りっちゃん、どうしていきなり王様ゲームなんて言い出したの?」

理珠 「む……それは……」


―――― ((す、すごい情報です……! 王様ゲームに持ち込めば、女子は絶対男子に勝てる!?))


理珠 (妙なことを言って成幸さんに警戒されるわけにはいきませんね……)

理珠 「わ、わたしがやりたいと思ったからです。面白そうなゲームだから……」

文乃 「面白そう!? 王様ゲームが!?」

848以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:08:56 ID:aVLVUSo6
うるか 「でも、リズりんいいの? 成幸もいるんだよ?」

うるか 「成幸にエッチな命令とかされちゃったらどうする〜?」

理珠 「え、エッチな命令!?」

ジトーーーーッ

理珠 「な、成幸さん、不潔です! 最低です!」

成幸 「俺何も言ってないんだけどな!?」

ハァ

成幸 「まぁ、やる気がなくなったならちょうどいいや。やめておこう。な?」

理珠 「そ、そんなことは言ってません!」

理珠 「お願いします。そんなに時間は取りません。少しだけでも、やってみたいんです……」

成幸 (どんだけ王様ゲームがやりたいんだ、こいつは……。とはいえ……)

文乃 (王様ゲームって、合コンとかでやるいやらしいゲームってイメージだから……)

文乃 (桐須先生あたりにバレたらめちゃくちゃ怒られると思うんだけど……)

成幸 (古橋は乗り気じゃなさそうだし、うるかは……)

849以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:10:07 ID:aVLVUSo6
うるか 「………………」

うるか (……王様ゲームって、よく考えたら、あたしが王様になったら成幸に命令できるってことだよね)

ポワンポワンポワン……

 『成幸、あたしの肩を揉んで』

 『はい。うるか女王』

 『成幸、今度は足をマッサージして』

 『はい。うるか女王』

 『成幸、今度は優しく抱きしめなさい』

 『はい。うるか女王……いや、かわいい俺のうるか姫』

 『あっ……こらっ。どこ触って……』

 『いいだろ? ほら、女王様? それじゃかわいい顔が見せませんよ?』

……ポワンポワンポワン

うるか 「………………」 ニヤァ

成幸 「……!?」 ゾワッ (な、なんだ、あのだらけきった顔は……)

うるか 「はいはいはーい! あたしもリズりんにさんせーい! ちょっと気晴らしにやろーよ!」

850以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:11:02 ID:aVLVUSo6
成幸 「ん……うるかもやりたいのか、王様ゲーム」

成幸 「……どうする、古橋。俺もまぁ、気晴らしになるならいいかなと思うけど」

文乃 「………………」

ジーーーッ

成幸 「な、なんだよ、その目は」

文乃 「成幸くん、わたしたちにいやらしい命令、しない?」

成幸 「!? しねーよ! 信用ないな俺!」

文乃 「冗談だよ。成幸くんがそんなことしないって知ってるよ」

クスッ

文乃 「しょうがないなぁ。少しだけだよ、りっちゃん」

理珠 「やってくれますか。ありがとうございます! 嬉しいです」

ニヤリ

理珠 (ここまでは計画通りです。あとは、いかに効率的に命令を下し……)

理珠 (成幸さんに勝利するか、それだけです!!)

851以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:11:56 ID:aVLVUSo6
………………放課後 空き教室

理珠 「では、ルールを説明します」

理珠 「ここにクジがあります。1〜3の番号が振られたものが一本ずつと、王様と書かれたものが一本です」

理珠 「クジを引く際は、番号が自分以外の人に見えないようにだけ注意をしてください」

理珠 「順番にクジを引いてもらい、王様を引いた人が番号をコールして命令を出します」

理珠 「ただしその際、絶対に実行不可能な命令や、常識の範囲を外れた命令は無効となります」

理珠 「その判定は全員で行いましょう」

文乃 (ふむ……。りっちゃんのことだからとんでもないことを言い出すんじゃないかと身構えたけど、)

文乃 (常識という言葉も盛り込まれたし、あまり心配はなさそうかな……)

理珠 「そして、常識的かつ実行可能な命令を遂行できなかった者が、負けになります」

文乃 (……そもそも王様ゲームって勝ち負けを決めるようなゲームじゃないと思うんだけど)

理珠 「……他、細かいルールは実際にやりながら確認していきましょう。では、はじめます」

理珠 (ふふふ……王様ゲームの必勝法はリサーチ済みです)

理珠 (絶対に負けません! 王様を取ったら、絶対に勝ちます! 成幸さんに!)

成幸 (……なぜそんな熱い視線を俺に向けるんだ、緒方。怖いんだけど)

852以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:12:50 ID:aVLVUSo6
………………一回目

文乃 (……うおう)

『王様だーれだ!』

文乃 「はい、わたしです……」

理珠 (……まぁ、仕方ありません。最初から王様をとれるとは思っていません)

文乃 (うーん。どうしようかなぁ……。まぁ、最初は無難に……)

文乃 「……えっと、じゃあ、3番に肩を揉んでもらおうかな」

成幸 「げっ……」 ピラッ 「3番、俺だ……」

文乃 「へっ……」

文乃 (な、成幸くん!? しまったぁああああ、だよ! 成幸くんのことを忘れてた!)

文乃 「や、やっぱ今のナシで――」

理珠 「ダメです。王様の命令は、たとえ王様であっても取り消しはできません」

文乃 (なんですとー!?)

853以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:13:45 ID:aVLVUSo6
成幸 「いや、でもさすがにさ、俺が女子の肩に触れるっていうのは、いくらなんでも……」

文乃 「……ううん。いいよ。軽率だったわたしが悪いし」

文乃 「来て、成幸くん! 肩揉んでください!」

理珠 「ほら、成幸さん。王様の命令は絶対ですよ」

成幸 「……あー、わかったよ」

スッ

成幸 「悪い。古橋。行くぞ?」

文乃 「う、うん……」 ドキドキドキドキ……

グッ……グイッ……ググッ……グイッ

文乃 「んっ……」 (へぇ……? な、なにこれ……?)

文乃 (とてつもない快感が……)

文乃 「ふへぇ〜〜〜ふにゃぁ〜〜〜〜〜〜」

うるか 「成幸!? 文乃っちに何してるの!? 文乃っちが壊れちゃったよ!?」

成幸 「何って、肩揉んでるだけだけど……」

うるか (いいなぁ、文乃っち。あたしも成幸に肩揉まれたいよぅ……)

854以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:14:31 ID:aVLVUSo6
成幸 「もういいか? 古橋?」

文乃 「ふにゃぁ……」

成幸 「よさそうだな」 パッ

文乃 「……ふぅ。す、すごかったよぅ……」

文乃 「肩を全方位からくすぐられているような、それでいて心地よい圧力をかけられているような……」

文乃 「今まで味わったことのない感触だったよ……」

文乃 「しかも肩も軽くなった気がする! ありがとう、成幸くん」

成幸 「そりゃ良かった。でも、古橋、あんまり肩凝ってるように感じなかったぞ」

成幸 「俺の見立てでは、緒方とうるかの方が肩凝りがひどそうだな」

文乃 「………………」

ギロリ

文乃 「……見立て、って、一体どこを見て言っているのかな? 成幸くん?」

成幸 「!? ち、違うぞ!? そういう意味じゃなくて、単純に肩だけを見てだな!」

文乃 「そういう意味ってどういう意味なのかな? ねぇ、教えてほしいなぁ?」

成幸 「つ、次行こう! 次! 早くクジの準備をしよう、緒方!」

855以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:15:49 ID:aVLVUSo6
………………二回目

文乃 (どういうことなのかな、これは……)

『王様だーれだ!』

文乃 「……ごめんなさい。またわたしです」

理珠 (ぐぬぬっ……いえ、まだまだ二回目。チャンスはまだまだあります)

うるか (ぬー、うらやましいよ文乃っちー!)

文乃 (胃が痛いなぁ……) キリキリキリ (被害が少なくて、なおかつ成幸くんでも問題ないような命令……)

文乃 「えっと、じゃあ……2番の人、ゲームが終わるまでポニーテールにしてください」

理珠 「む……2番はわたしです」

文乃 「ん、じゃあ髪ゴム貸してあげるから、やってあげるね」

スッ……キュッ……

文乃 「できた……けど……」 (やっぱり髪が短いから、ちょんまげみたいになっちゃったなぁ……)

理珠 「ど、どんな感じになっていますか? 怖いです……」

うるか 「ほら、手鏡。こんな感じだよー」

理珠 「っ……く、屈辱です……!」

856以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:16:51 ID:aVLVUSo6
うるか 「えーっ、似合ってると思うよー」 (赤ちゃんみたいでかわいいし)

文乃 「う、うん! 似合ってるよりっちゃん!」 (赤ちゃんみたいで!)

理珠 「……ふたりとも目が泳いでいますよ?」

うるか&文乃 「「うっ……」」 ギクッ

成幸 「………………」 ジーーーッ

理珠 「!? あ、あまり見ないでください!」

成幸 「あ、いや、すまん。かわいいと思ってさ」

理珠 「……!? か、かわいい、ですか……?」

成幸 「うん。まぁ、普段の緒方の方がいいとは思うけど、かわいいぞ」

理珠 「そ、そうですか……///」

成幸 (……子連れ狼の大五郎みたいで)

成幸 (とは、言わない方がいいだろうな……)

857以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:17:50 ID:aVLVUSo6
………………三回目

文乃 (……もしかしてりっちゃん、何か仕組んでる?)

『王様だーれだ!』

文乃 「またまたわたくしめでございます……」

理珠 (ぬー! どうして文乃ばかりー!) ハッ (い、いけません。冷静に、冷静に……)

うるか (あたしも早く成幸に命令したいー!)

文乃 「えっと、じゃあ……どうしようかな……1番の人、逆立ち、とかどうかな?」

うるか 「あっ、1番あたしだ」

うるか 「ふふふん、逆立ちなんか朝飯前だよー」

文乃 「あっ、今日体育あったから、ハーフパンツあるから、貸すよ」

うるか 「心配ごむよーだよ、文乃っち。じゃあ行くよー」

成幸 「!? ち、ちょっと待て! そのまま逆立ちしたら、スカートが……!」

うるか 「いきまーす!」

ヒョイッ……タン

文乃 「わひゃっ!? 成幸くん、見ちゃダメ!」 ガバッ

858以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:18:28 ID:aVLVUSo6
成幸 「うお!? 視界が!」 (っていうか俺の目を隠しているつもりなんだろうけど、古橋!)

成幸 (勢いつけすぎて俺に抱きついてるみたいになってるぞ!?)

理珠 「………………」 ジーーーッ 「……近いですよ、文乃」

うるか 「あははっ、ってゆーか大丈夫だって! ほら!」

うるか 「あたし、今日は夜練あるから、もう水着に着替えちゃってるし!」

うるか 「パンツじゃなくて水着だから、見られても全然平気だもんねー」

理珠 「……えっと、でも、うるかさん?」

文乃 「そうは言っても……正直……」

うるか 「うん?」

文乃 「……スカートがめくれ上がって、真っ白な水着の下だけ見えてるって……」

文乃 「……その、大変言いにくいんだけど、パンツよりいやらしいと思う」

うるか 「……!? わっ……わわわ……」

スタッ

うるか 「な、成幸見た!? 見てないよね!?」

成幸 「み、見てねーよ!」

859以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:19:03 ID:aVLVUSo6
………………四回目

文乃 (うそでしょ……)

『王様だーれだ!』

文乃 「……はい」

理珠 (なぜ!? どんな強運の持ち主ですか文乃!)

うるか (あーん! ずるいよ文乃っちー!)

文乃 (あー、なんかもう、純粋にゲームを楽しんだ方が楽な気がしてきた)

文乃 (……どうせだし、一石を投じてみようかな。その結果として胃が痛くなるかもだけど、もう知らないよ)

文乃 「じゃあ、2番の人、何かひとつ、恥ずかしい秘密を暴露してください」

成幸 「げっ……。2番、俺だよ……」

文乃 「!?」 (ふたりに一石を投じるつもりが一番投げちゃいけない方向に爆弾を投げてしまったー!)

成幸 (秘密……秘密ねぇ……)

860以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:19:42 ID:aVLVUSo6
成幸 (うーん、今ぱっと思いつくのは、やっぱりこの三人との間の秘密かなぁ)

成幸 (緒方は……)


―――― 『あ あの 昨日のアレは…… 物理現象としてはアレ……かもしれませんが……違いますから……』

―――― 『ただの接触事故…… ですからね』


成幸 (言えるかーーーー!! 接触事故があったなんて言えるかーーーー!!)

成幸 (これは却下だ。ダメだ。絶対言っちゃダメなやつだ)

成幸 (あとは、うるか……)


―――― 『お前の好きな奴って…… 俺……?』


成幸 (言えるかぁあああああ!! 言えるわけねえだろ!!)

成幸 (俺が何日間布団の中で恥ずかしくて悶え苦しんだかわかってんのか!?)

成幸 (しかも古橋には友達の話って体で相談してるし!)

成幸 (それを今さら実は自分のことでしたー、なんて言えるかぁああああああ!!)

861以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:21:29 ID:aVLVUSo6
成幸 (あとは古橋……は……)


―――― 『大丈夫です』

―――― 『姉弟ですから!!!』


成幸 (……まぁ、これは緊急避難的な意味合いもあったから、言っても大丈夫とは思うが)

成幸 (前、言おうとしたら古橋に止められたし、言わない方がいいんだろうなぁ)

成幸 (しょうがない。俺単独の秘密を思い出すか。うーん……)

成幸 「……あっ、そうだ。少し恥ずかしいけど、話せる秘密があるな」

うるか 「な、なになに? どんな秘密?」 ズイッ

理珠 「どんな秘密ですか」 ズイズイッ

文乃 (うるかちゃんもりっちゃんも食いつきすぎだよ……)

文乃 (でもまぁ、わたしも気にならないと言えば、うそになるけど……)

成幸 「大して面白い話じゃないぞ? 俺と妹の話だよ」

成幸 「俺さ、小学生の頃ずっと、水希と結婚するもんだと思い込んでたんだよな」

文乃 「……へ?」 うるか 「えっ」 理珠 「………………」

862以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:22:08 ID:aVLVUSo6
文乃 (本人は軽いノリで話し始めたみたいだけど、こっちは結構ドン引きだよ!?)

成幸 「小さい頃から水希に、兄妹は結婚するものだよ、って言われ続けてな」

成幸 「そういう神話とか物語とかもたくさん読み聞かせられて、」

成幸 「そのせいで俺もそういうものなんだと思い込んでてさ」

成幸 「葉月と和樹が生まれるとき、双子のきょうだいだって知って、」

成幸 「母さんに 『生まれてくる子たちはふたりで結婚できるな!』 って言っちゃって」

テヘッ

成幸 「そこでようやく姉弟や兄妹が結婚するってありえないことなんだって知ったんだよ」

成幸 「いやー、こんな話を改めてすると恥ずかしいな。ま、子どもの頃の話だしな!」

うるか 「う、うん、そうだね……」 プイッ

理珠 「そうですね。次、いきましょうか」 プイッ

成幸 「!? なぜ目を逸らす!? 恥ずかしいからせめて笑ってくれるとありがたいんだけど!?」

文乃 (笑えるかーーーー!! 唯我家の闇を見た気持ちだよ!?)

文乃 (っていうか、水希ちゃんは一体なぜそんなことをしたんだろう……)

文乃 (……やめよう。考えたらいけない気がしてきたよ)

863以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:23:36 ID:aVLVUSo6
………………五回目

うるか 「やったー!! あたし! あたし王様だよ!」

理珠 「王様だれだ、の前に言わないでください! 次やったら反則ですよ!」

理珠 (悔しいです……まだ一度も王様になれていないなんて)

うるか 「えへへ、ごめんごめん。嬉しくてつい、ね」

うるか 「さてさて、じゃあ何をしてもらおうかな〜」

うるか (なんてね! 実はもうしてもらうことなんて決まってるんだよ!)

うるか (しかも、偶然ちらっと、成幸の引いたくじの番号が見えちゃったし……)

うるか (少し反則かもしれないけど! ごめんね、みんな!)

うるか 「じ、じゃあねー、えへっ……2番の人に、『愛してる』 って言ってもらおうかな、なんて……」

うるか (成幸の番号は2番だったはず! これなら……――)

文乃 「……2番、わたしだよ?」

うるか 「えっ!?」

成幸 「なんつー危ない命令を出すんだ、うるか。俺が2番だったらどうするつもりだったんだよ!」

うるか (成幸3番だー! 先端で2だと勘違いしちゃったの!?)

864以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:24:19 ID:aVLVUSo6
理珠 「……まぁ、常識的な範囲ではあると思いますので、実行してください、文乃」

文乃 「まぁ、べつにいいけど……」 チラッ

うるか (うぅ……2番じゃなくて3番かぁ……) シクシクシク

文乃 (成幸くんに言ってもらうつもりだったんだろうなぁ……)

文乃 (ま、いいや。パパッと済ませちゃおう)

文乃 「はい、うるかちゃん。こっち向いて」

うるか 「……うん」

ドキッ

うるか (わっ……改めて真正面から見ると、文乃っち、本当に美少女だなぁ……)

文乃 (わぁ、うるかちゃんって目が大きくて可愛いなぁ……)

文乃 「……う、うるかちゃん。いくよ?」

うるか 「う、うん」

文乃 「……うるかちゃん、愛してるよ」

うるか 「はわっ……////」

文乃 「うぅ……///」

865以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:25:01 ID:aVLVUSo6
成幸 「………………」 (……なんか、その、なんていうか)

成幸 (……淫靡だ) ドキドキドキ……

うるか (め、めっちゃドキドキした〜! 変な気分だよ〜〜〜〜!!)

文乃 (何かに目覚めちゃいそう……)

理珠 「はい、ではクリアということで、次行きましょう」

文乃 「わたし結構がんばったのにドライすぎないりっちゃん!?」

成幸 「っていうか、そろそろやめにしないか? 勉強もあるし……」

成幸 (なんかとんでもないことになりそうな気がするし……)

理珠 「……勝ち逃げするつもりですか、成幸さん?」

ギロリ

成幸 (何で怒ってるの緒方さん!? っていうか俺も一回も王様になってないんですけどー!?)

成幸 (お、おい、古橋) コソッ (緒方の奴、自分が王様になるまでやめるつもりないみたいだぞ)

文乃 (みたいだね。仕方ない。どうにかしてりっちゃんに王様を引かせてあげようか) コソッ

成幸 (そうは言ってもな……。緒方がクジを握っている以上、逆不正もできないし……)

866以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:25:36 ID:aVLVUSo6
………………十数回目

理珠 (……ふふ、苦節十数回。ようやくです)

『王様だーれだ!』

理珠 「私です」

文乃 (や、やっとだよ……)

成幸 (や、やっとか……)

理珠 「では、いきますよ。ふふ、ふふふふ……」


―――― 『2番の人に、『愛してる』 って言ってもらおうかな、なんて……』


理珠 (緒方さんもいい線いっていましたが、完全に勝利するにはもう一押しでしたね!)

理珠 「命令します。1番、2番、3番、全員、わたしに 『愛してる』 と言ってください」

成幸 「!?」

867以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:26:24 ID:aVLVUSo6
すみません。>>866訂正です。


………………十数回目

理珠 (……ふふ、苦節十数回。ようやくです)

『王様だーれだ!』

理珠 「私です」

文乃 (や、やっとだよ……)

成幸 (や、やっとか……)

理珠 「では、いきますよ。ふふ、ふふふふ……」


―――― 『2番の人に、『愛してる』 って言ってもらおうかな、なんて……』


理珠 (うるかさんもいい線いっていましたが、完全に勝利するにはもう一押しでしたね!)

理珠 「命令します。1番、2番、3番、全員、わたしに 『愛してる』 と言ってください」

成幸 「!?」

868以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:27:13 ID:aVLVUSo6
成幸 「ち、ちょっと待て、全員か!?」

理珠 「ええ、全員です」 ムフー

文乃 (りっちゃん、すごいドヤ顔してる……)

うるか 「そ、その手があったかーーー!!!」

ガクッ

うるか 「うぅ、そうしていれば……」 (成幸に確実に愛してるって言ってもらえたのにー!)

理珠 「ふふ、そうですよ、うるかさん」 (これなら確実に成幸さんに勝てるんです!)

文乃 (絶対すれ違ってるよねこのふたり)

文乃 「……ま、いいや。王様の命令は絶対だもんね。じゃあ、わたしから」

文乃 「愛してるよ、りっちゃん」

理珠 「……?」

うるか 「じゃあつぎあたしー! リズりん、愛してるよっ!」

理珠 「?」

869以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:28:06 ID:aVLVUSo6
理珠 「……あの、なんか、さっきと比べてふたりとも軽くないですか?」

文乃 「へ……? そ、そんなことないと、思うけどな……?」

文乃 (しまった……)

うるか 「うん。ぜんっぜん、そんなことないと思うけどなぁ〜」

うるか (ただでさえ幼いリズりんがちょんまげヘアだから……)

文乃&うるか ((子どもを相手にしてるような気持ちで軽く言っちゃった……))

理珠 「………………」 ジトッ

理珠 「……まぁ、いいです。さぁ、成幸さんの番ですよ?」

成幸 「ほ、ほんとに俺も言うのか……?」


―――― 『あ……ッ あ う…… あ…… ぁぃし…………』


理珠 「当然です。王様の命令は絶対ですから」

理珠 (ふふ、“愛してるゲーム” でリサーチ済み。成幸さんは絶対に言えないはずです)

理珠 (この勝負、私の勝ちです!)

成幸 (……うぅ、本当に言うのかよ)

870以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:28:44 ID:aVLVUSo6
理珠 (ふふ。言えないはずです。私の勝ちです) ムフー

成幸 (……ん?)

成幸 (でも、なんかただでさえ小動物っぽい緒方が、ご満悦顔で……)

成幸 (しかも今はちょんまげヘアの大五郎スタイル……)

成幸 「………………」

成幸 「……愛してるぞ、緒方」 サラッ

理珠 「……!?」

文乃 (言えちゃうの!?)

うるか (あーん!! リズりん羨ましいよーーーー!!)

理珠 (言われた……? あ、あれ……?)

カァアアアア……


―――― 『……愛してるぞ、緒方』


理珠 「ふぁ、ふぁ……////」

成幸 (い、言えたは言えたが……さ、さすがに恥ずかしいな……)

871以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:29:57 ID:aVLVUSo6
文乃 「あっ、も、もうこんな時間かー。さすがにそろそろ勉強始めないとだね。そろそろ終わりにしようか」

理珠 「ほわぁ……」

文乃 (りっちゃんがポーッとしてる今がチャンスだよ! なんとかこの不毛な勝負を終わりに……――)

うるか 「――ええっ!? ちょっと待ってよ文乃っち! あたしまだやりたいよー!」

文乃 「えっ!?」 (りっちゃんがおとなしくなったと思ったら今度はうるかちゃん!?)

うるか (あたしも成幸に愛してるって言ってもらいたいよー!)

成幸 「さ、さすがに勉強の時間が取れないからダメだ! ほら、終わりだ終わり」

うるか 「うぅ……はーい。分かったよ……」

文乃 (やっと終わったよ……)

文乃 (本当に不毛の極みだったよ。りっちゃんは結局何がしたかったのかな?)

理珠 (うぅ……不可解です。なぜこんなに、ドキドキするのでしょうか……)

理珠 (今日も成幸さんに勝てませんでした。悔しいです……)

理珠 「………………」 (『愛してる』 ですか……////)

文乃 (……でもまぁ) クスッ (りっちゃん、すごく嬉しそうだから、いいか)

おわり

872以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:30:33 ID:aVLVUSo6
………………幕間1 夜 「グッジョブ」

成幸 「今日は学校で王様ゲームをやってさ」

水希 「は?」

成幸 「ん? 王様ゲームをやったんだけどさ」

水希 「は? 何ゲーム?」

成幸 「いや、だから、王様……」

水希 「……王様ゲーム? 緒方さんたちと?」

成幸 「そうだけど……」

水希 「……うん。そっか。へぇ」 ゴゴゴゴゴ……!!!

成幸 「それで昔、俺とお前が結婚すると思い込んでたことを話したら、みんな少し引いてたんだよ」

水希 「グッジョブ」

成幸 「へ?」

水希 「お兄ちゃん、グッジョブ」

873以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:31:05 ID:aVLVUSo6
………………幕間2 翌日 「王様ゲームのプロ」

大森 「唯我ー! お姫様たちー! 今日は王様ゲームをやろうぜ!」

大森 「何を隠そう俺は王様ゲームのプロだぜ!」

成幸 (昨日の今日でまた厄介な奴が……!)

理珠 「!? 王様ゲームですか!? 受けて立ちますよ!」

理珠 (今日こそ成幸さんに勝って見せます!!)

うるか 「あたしもやりたーい! やろうやろう!!」

うるか (今日こそ成幸にあんなことやこんなことしてもらうんだ!!)

大森 「よっしゃー! 初めて女子とやれるー!」

文乃 「……!?」 (……女子以外の誰とやってプロに……?)

成幸 「悪い、大森。昨日の遅れを取り戻さなきゃだからやれないよ」

理珠 「あっ、成幸さんが不参加なら私もパスで」 うるか 「あたしもー」

大森 「なぜ!? ちくしょー! 唯我このヤロー!」

成幸 「なぜ俺に怒る!? っていうか勉強してるんだよ邪魔すんな大森!!」

おわり

874以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 01:33:31 ID:aVLVUSo6
>>1です。
読んでくださった方、ありがとうございました。


>>842さんがくださったアイディアを元に書きました。ありがとうございます。
コメディとしてはそれなりのものが書けたと思います。ありがたいことです。

また何かアイディアやネタがありましたら、実現できるかわかりませんがいただけると嬉しいです。
また投下します。

875以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 07:25:19 ID:QnxM3vkk
人の挙げたお題にもこの投稿速度とかすごごご

876以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 11:40:25 ID:3PK38R16
投稿は速いのにクオリティは高いしで本当にこのスレお気に入り

877以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 18:33:51 ID:aVLVUSo6
>>1です。投下します。



【ぼく勉】文乃 「ひょっとして、わたしって」

878以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 18:34:45 ID:aVLVUSo6
………………昼休み 3-A教室

蝶野 「ぶっちゃけた話っスけど、」

蝶野 「実際、唯我さんとふたりでお泊まりはしたんスよね?」

文乃 「………………」

文乃 (……青天の霹靂とはまさにこのことなんだよ)

文乃 「……憩いの時間であるはずの昼休みにいきなり何を言い出すのかな、蝶野さん」

蝶野 「いや、そのままの意味っスけど」

文乃 「……しましたけど、何か」

蝶野 「それで古橋さんに何もしないって、唯我さんって本当に男なんスかね」

文乃 「………………」 ムッ

文乃 「……男の子だよ。紳士だよ。女の子と同衾したからって、妙なことを考えるような下劣な男じゃないだけだよ?」

ゴゴゴゴゴゴ…………

蝶野 「あー……気を悪くしたなら訂正して謝るっス。言葉を選び間違えたっス」

文乃 「あっ……。べ、べつにわたしは、気を悪くしたりしてないけど……」

879以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 18:36:43 ID:aVLVUSo6
鹿島 「古橋さんは〜、本当に唯我さんのことを信頼されているんですね〜」

ニコニコ

鹿島 「少なくとも、やむにやまれぬ状況とはいえ、同じ部屋で夜を明かすことができるくらいには」

文乃 「鹿島さん、何を考えてるか知らないけど、あなたが考えているようなことはないからね」

鹿島 「分かっておりますとも〜。おふたりは強い信頼関係で結ばれているのですよね〜」

文乃 (ぜってぇわかってねぇ、だよ……)

文乃 (これでもし、同じ部屋どころか、同じ布団で寝てしまったことまでバレてしまったら……)


―――― ((少しひんやしして…… でも心地良く包み込んでくれる ああ……これはお母さんの 手の……))


文乃 (思いっきり抱きしめられて、わたしはわたしで身体を預けて寝てたなんてバレたら……) カァアアア……

文乃 (絶対ろくでもないことになる!!)

文乃 「わたし、そろそろ勉強の時間だから、もう行くね」

文乃 「絶対ついてきたりしないでよ」

鹿島 「ご心配なく〜。いってらっしゃいませ、古橋さん」

文乃 (……信用ならないんだよなぁ)

880以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 18:37:17 ID:aVLVUSo6
鹿島 「………………」

鹿島 「……さて、古橋姫が王子様のところへ向かわれたところで」

鹿島 「いばらの会、幹部会議を始めましょう〜」

鹿島 「蝶野さん、軽い“ジャブ打ち”、ご苦労様でした〜。損な役回りをさせてしまいましたね」

蝶野 「……古橋姫、めっちゃ怖かったっス」 ズーン

鹿島 「しかし、おかげで、古橋姫の唯我成幸さんに対する並々ならぬ信頼を改めて確認することができました〜」

猪森 「古橋姫は見た目通りの大和撫子だからな。奥ゆかしいのだ。仕方ない」

猪森 「しかし、あまり積極性に欠けると、親指姫や人魚姫に遅れを取ることになりかねない」

猪森 「本来であれば、唯我の方から古橋姫に迫るくらいであってほしいけどな」

鹿島 「あまり積極的すぎる殿方は、古橋姫の王子様としては不適格ですよ〜」

鹿島 「それが故のアンビバレントなのですけどね〜」

鹿島 「さてさて、どうしたものでしょうかね〜」

881以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 18:37:58 ID:aVLVUSo6
………………3-B

文乃 (まったくもう、鹿島さんたちは……) プンプン

理珠 「……?」

理珠 (文乃、どうしたのでしょう?) コソッ

うるか (なんか不機嫌だよね〜。何かあったのかな?) コソッ

成幸 「……? お前ら、なにこそこそやってんだ。集中しろよ」

理珠 「す、すみません……」

うるか 「わかってるよー。成幸のけちんぼー」

成幸 「ったく……ん?」

文乃 (まったくもう、本当に……)

文乃 (唯我くんはわたしの先生で弟なんだから、わたしに変な気持ちなんてあるはずないんだよ)

文乃 (それに唯我くんは付き合ってもない女の子とどうこうっていう軽い男の子じゃないし)

成幸 「……古橋? どうしたんだ、手が止まってるぞ?」

文乃 「へっ……?」

882以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 18:38:54 ID:aVLVUSo6
文乃 「わっ……ご、ごめんなさい。少し考え事してて……」

成幸 「おいおい、古橋もか。文化祭も終わってここからスパートって時期なんだから、集中してくれよ……」

成幸 「二学期の中間テストも近いんだからな?」

文乃 「うぅ……返す言葉もございません……」

文乃 (……成幸くんの言うとおりだよ。気を抜いてる暇なんかないんだから)

文乃 (わたしばっかり色々考えちゃって、恥ずかしいや)

文乃 「………………」

文乃 (……わたしばっかり、かぁ)

成幸 「……緒方。そこの心情描写大事だからな。全編に渡っての主人公の気持ちが丁寧に描かれてる場面だ」

文乃 (なんでもない顔をしているきみは、やっぱり、わたしみたいに色々考えたりしないのかな)

文乃 (……わたしは、あのとき手を握ってくれたきみのことを思い出して、)

文乃 (ひとりで勝手に、温かい気持ちになっていたりするんだけど)

文乃 (きみは……)

文乃 (……いけない。また考え事してる。切り替えないと)

文乃 (勉強、がんばろ……)

883以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 18:39:57 ID:aVLVUSo6
理珠 「では、成幸さん。この部分は……」

ズイッ……ブルンッ

成幸 「うおっ……そ、そう勢いよく近づくなよ……」

成幸 「そこは……ああ。心情描写にも強がりがあるだろ? だから……」

文乃 「………………」

文乃 (んんんん……?)

うるか 「成幸ーっ、ここの和訳なんだけどさー」

ズイッ……タユッ

成幸 「うおうっ……! お、お前も急に近づくなよ」

うるか 「? どしたん、成幸?」

成幸 「な、なんでもない。そこはかなり口語訳されてるから、まず正しい文法に訳し直してから……」

文乃 (んんんんんんんん……???)

884以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 18:40:38 ID:aVLVUSo6
文乃 (ち、ちょっと待ってよ、成幸くん)

イライライライラ……

文乃 (きみ、わたしに集中しろって言ってたよね?)

文乃 (それが何かな? どういうことなのかな?)

文乃 (りっちゃんとうるかちゃんのお胸の圧力にあてられて、顔がまっかだよ?)

文乃 (うんうん。どういうことかなこの野郎)

文乃 「………………」

ペターン

文乃 (……もしかして)


―――― 『それで古橋さんに何もしないって、唯我さんって本当に男なんスかね』


文乃 (唯我くんが紳士だからとか、そういう理由ももちろんあるだろうけど)

文乃 (ひょっとして、わたしって……)

文乃 (女としての魅力に欠けている……?)

885以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 18:41:14 ID:aVLVUSo6
………………帰路

理珠 「今日も勉強が捗りました」 キラキラ

理珠 「どうですか? この後、うちでうどんでも食べていきませんか?」

うるか 「おっ、いいねー! 行く行く!」

文乃 「………………」

ズーン

文乃 (昼休みからずっと、放課後も使って考えたけど……)

文乃 (そうだよ。よくよく考えてみれば当たり前の話だよ)

理珠 「文乃? どうかしましたか?」 ブルンッ

うるか 「なんか元気ないね? だいじょーぶ?」 タユッ

文乃 (このふたりと毎日毎日比べられてるんだから……) ペターン

文乃 「ううん、なんでもないよ。ちょっと色々考えちゃってさ……」

文乃 「今日はわたしはうどんは遠慮しておくよ。まっすぐ帰って勉強するね」

理珠 (文乃、どうかしたのでしょうか……)

うるか (何か悩みでもあるのかな……)

886以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 18:41:48 ID:aVLVUSo6
………………唯我家

成幸 「……で、心配になって、いてもたってもいられず俺のところに来た、と」

理珠 「そういうことです。すみません、急にお邪魔しちゃって……」

成幸 「まぁ、べつに構わないけど……」

うるか 「成幸、何か心当たりない? 文乃っちが悩むようなこと」

成幸 「お前たちに心当たりがないなら、俺にあるわけないだろ?」

成幸 「受験前が近づいてきてナーバスになってるだけじゃないか?」

うるか 「むー! 成幸冷たいよ!」

理珠 「文乃のことが心配ではないのですか?」

成幸 (んー、そう言われてもな……)


―――― 『わっ……ご、ごめんなさい。少し考え事してて……』


成幸 (……まぁ、たしかに古橋の様子は変ではあったが)

理珠 「……今日、私たちが聞いても何も教えてくれませんでした。“なんでもない” の一点張りです」

うるか 「でも、ひょっとしたら成幸にだったら話してくれるかもしれないよね」

887以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 18:42:46 ID:aVLVUSo6
理珠 「………………」

うるか 「………………」

ジーーーーッ

成幸 「……はぁ。わかったよ。明日聞いてみるよ」

理珠 「本当ですか!?」

うるか 「さっすが成幸! ありがと!」

成幸 「今日も勉強に集中できないみたいだったしな。『教育係』 としては放っておけないよな」

成幸 「ただ、あんまり期待すんなよ? うまく聞き出せるかも分からないし……」

成幸 (それに……)


―――― 『今日はお父さんが家にいるから…… あんまり 帰りたくなくて』


成幸 (……家庭の問題だったりしたら、俺がヘタに聞くのも迷惑だろうし)

成幸 (よくよく考えてみれば、俺って……)

成幸 (古橋のこと、全然知らないんだよな)

888以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 18:43:38 ID:aVLVUSo6
………………翌朝 一ノ瀬学園 いつのも場所

文乃 「あっ……おはよ、成幸くん」

成幸 「おう、おはよう、古橋」

文乃 「メールで呼び出したりして、どうしたの? また何か相談事?」

成幸 「いや……」

成幸 (古橋の奴、いつも通りの、なんでもないような顔をして……)

成幸 「……なぁ、古橋。担当直入に聞くが」

文乃 「うん?」

成幸 「お前、何か悩み事とかないか?」

文乃 「へ?」

アセアセ

文乃 「な、悩みなんて、べつに……何もないよ?」

成幸 (……あからさまに目を泳がせやがって。絶対うそじゃないか)

文乃 (何でわかったの!? しかもニブチンの成幸くんが!?)

文乃 (りっちゃんやうるかちゃんの気持ちには全然気づかないくせに、どうして……)

889以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 18:44:22 ID:aVLVUSo6
成幸 「……なぁ、ムリして話せとは言わないよ。もし話せるようだったら教えてほしい」

成幸 「俺はお前の 『教育係』 だ。勉強に集中できないことが続くなら、それを解決してやりたい」

成幸 「俺にできることは少ないかもしれないけど、もしお前の力になれるなら、なりたいんだ」

文乃 「成幸くん……」

ドキッ……

文乃 (……りっちゃんやうるかちゃんには、絶対、こんな悩み話せないけど)

文乃 (きみになら話してもいいのかな……)

文乃 (他でもない、きみに……)


―――― 『かっこいいよなぁ 古橋は』


文乃 (あのとき、何を考えていたのか、聞いてもいいのかな……)

文乃 「……あ、あのね、実は……友達が、」

成幸 「友達?」

文乃 「う、うん。あくまで、友達の話なんだけど、その友達が悩んでて、それでわたしも悩んじゃってるっていうか……」

890以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 18:45:29 ID:aVLVUSo6
文乃 (きみとうるかちゃんの常套句だけど、使わせてもらうよ)


―――― 『あ うん 俺の友達と…… そいつの中学校からの友人の女子の話なんだけどな……』

―――― 『あっ! あくまで友達話だかんね 友達のっ!』


文乃 (どうせ鈍いきみは、気づかないだろうし……)

文乃 「その友達がね、ある日、中の良い男友達と、とあるハプニングから同じ部屋で一夜を明かすことになったの」

成幸 「ぶっ……」 アセアセ 「そ、そうか……。それは、なんというか……///」

文乃 (照れるなーっ! こっちだって恥ずかしいんだよー!)

文乃 「そ、それでね……その友達は、その男の子のことを信用していたし、実際、その男の子とは何もなかったんだ」

成幸 「ふむふむ」

文乃 「でもね、その子が、女友達から、“それは変だ” って言われちゃって……」

成幸 「変……?」

文乃 「何もなかったなんて変だって。その男の子は、本当に男なのか、って……」

文乃 「でもね、その子は、それを違う風にとらえちゃったんだ」

文乃 「“男の子が何もしなかったのは、自分に魅力がないからじゃないか” って……」

891以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 18:46:55 ID:aVLVUSo6
文乃 「……その子はそれで悩んじゃってね。特に、その子とその男の子の周りには、可愛い女の子がたくさんいるから」

文乃 「その男の子は、他の女の子の胸元を見て顔を赤くしたりするくせに、同じ部屋で一泊したときには何もしてこなかった」

文乃 「……その子たちと比べて、自分は女としての魅力が劣っているんじゃないか、って」

文乃 「もちろん、その子は男の子に何もされなくて、それで良かったと思ってるんだよ?」

文乃 「男の子はすごく紳士で、良い子で、女の子も彼のことを信頼していたから」

文乃 「……でもね、成幸くん、女の子って面倒くさい生き物なんだ」

文乃 「何もされなくて嬉しかった。でも、何もされないってことは、自分を女として見てくれていないのかな、とか……」

文乃 「考えても仕方ないことを考えちゃうんだよ」

成幸 「………………」

文乃 「……あっ、ご、ごめん。いつものノリで女心の授業みたいなこと言っちゃったね」

文乃 「わたしの話はおしまいだよ。ごめんね。聞いてくれてありがとう」

成幸 「……いや、逆に話してくれてありがとう。それで昨日も勉強に身が入らなかったのか」

文乃 「うん。ごめんね。でも、今日からは大丈夫だよ。ちゃんと勉強するから」

成幸 「ああ……」

892以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 18:48:10 ID:aVLVUSo6
成幸 「………………」

成幸 「……なぁ、お前はこんな言葉を求めてないかもしれないし、何の解決にもならないかもしれないけどさ、」

文乃 「?」

成幸 「……俺は、その女の子の思い過ごしだと思うぞ」

文乃 「え……?」

成幸 「そもそも、ただの友達なんだろ? 何もなくて当然だと俺も思うしさ」

成幸 「それに、俺は古橋の友達を知らないからなんとも言えないけど、」

成幸 「その男子、他の女友達には、まぁ、多少下劣な視線を向けても、その子には何もしなかったってことは……」


成幸 「その男子は、その子のことを特別に思ってるんじゃないかな」


文乃 「へっ……?」

成幸 「まぁ、あくまで俺の予想だけどさ。俺だったらきっとそうだから」

成幸 「決して、魅力がないとかではないと思うな」

成幸 「……ひょっとしたら、その男子、その友達のこと好きなのかもな」 クスッ

文乃 「ふぇっ……!?」 (な、何を、成幸くん……きみは……)

893以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 18:48:48 ID:aVLVUSo6
成幸 「……? どうかしたか、古橋? 顔真っ赤だぞ?」

文乃 「な、なんでもないっ!」 プイッ

成幸 「?」

文乃 (き、気づかないって分かってたけど……それでも……)

文乃 (少しくらいは察してよ。まったく、どこまでニブチンなのさ、きみは……)

文乃 (成幸くん、それってつまり、きみがわたしのことを特別に思ってくれてるってことなんだよ?)

文乃 「………………」

文乃 (……わかってる。成幸くんにそんな意図はない。あくまで、一般論として言っているだけ)

文乃 (わかってる、そんなの……――)

成幸 「――それにしても、青春してるんだなー、お前の友達」

文乃 「……?」

成幸 「話を聞いただけでわかるぜ、古橋」 グッ 「その友達、その男子のこと好きだろ?」

文乃 「へっ!?」 カァアアアア…… 「そ、そんなわけないじゃん! 何言ってんの、成幸くん!?」

成幸 「えぇ? そんなにムキになって否定することか?」

文乃 (っていうかきみは自分の鈍さを棚に上げてよくドヤ顔でそんなこと言えるね!?)

894以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 18:49:33 ID:aVLVUSo6
成幸 「俺の見立てだとまず間違いないな。男子の方もその子に脈があると見た」

文乃 「……きみは、まったくもう」

成幸 「ん?」

文乃 「……つまり、きみは、私の友達と、その男の子は、両想いだって言うんだね?」

成幸 「ああ、まぁ、そういうことになるのか」

文乃 「……それ、あくまで参考意見として、その友達に伝えてもいい?」

成幸 「? まぁ、それは構わないけど……」

成幸 「それでその友達の悩みが解決したらすごいな。俺ってカウンセラーの素質があるかも……?」

文乃 (調子に乗ってるなこの野郎……)

クスッ

文乃 (……でも、たしかに、悩みは解決しちゃったかも)

文乃 (そっか。きみは……)

文乃 (きみ自身が意識してそう思っているわけではないかもしれないけれど……)

文乃 (わたしのこと、特別に思ってくれてるのかな……)

文乃 「……話、聞いてくれてありがと。きみの話をしてあげたら、たぶん友達も元気になると思うよ」

895以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 18:50:18 ID:aVLVUSo6
成幸 「本当か? それならよかった」

文乃 「そろそろHR始まっちゃうね。教室行こうか」

成幸 「……ん、もうそんな時間か」

文乃 「ねぇ、今日した話、りっちゃんとうるかちゃんには内緒だよ?」

成幸 「ああ、人のことベラベラ喋ったりはしないよ」

成幸 「……でも、もし古橋が良かったら、その女の子と男子の話、これからも聞かせてくれよ」

文乃 「? どうして?」

成幸 「だって、もしそいつらがうまくいったりしたら、俺も晴れて “女心” の単位修得だろ?」

文乃 「………………」 クスッ 「……そうだね。わかったよ」

文乃 「もしも、その女の子と男の子が……その、つ、付き合ったりしたら……」

文乃 「……きみにも教えてあげる。誰より先にね」

文乃 (……そう。誰よりも、先に)

ニコッ

文乃 (きみにぜんぶ、教えてあげる)

おわり

896以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 18:51:18 ID:aVLVUSo6
………………幕間 「寸胴」

文乃 「ってことで今日はラーメン屋さんに来たよー! 何食べよっかなー」

うるか (リズりん、文乃っち元気になったみたいだね。よかったよかった) コソッ

理珠 (ええ。さすがは成幸さんです) コソッ

文乃 「うーん、どうしようかな。チャーシュー麺大盛りチャーシューマシマシとライス大盛りいっちゃおうかなー」

理珠 「さ、さすがに食べ過ぎではないですか……?」

文乃 「大丈夫だいじょーぶ! いまご機嫌でおなかもペコペコだから!」

文乃 「あとチャーハンも食べちゃおっかなっ!」 ルンルン

ムシャムシャムシャモグモグモグ

文乃 「はぁ〜〜〜美味しかった〜〜〜〜。幸せだよ……」

文乃 「……ん?」

ハッ

文乃 (ひ、ひょっとして、今のわたし……)

文乃 (胸よりお腹の方が出てる!?) ガーン

おわり

897以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 18:52:37 ID:aVLVUSo6
>>1です。
読んでくださった方ありがとうございます。

感想・乙、励みになります。ありがとうございます。
特に理由がなければ、投下時以外あまり目立ちたくもないので、sageていただけると助かります。

それではまた、折を見て投下します。

898以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 23:32:23 ID:aVLVUSo6
>>1です。
こんなに連続で投下するつもりはなかったのですが、書き上がってしまったので投下します。



【ぼく勉】成幸 「武元うるかの好きな人」

899以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 23:33:15 ID:aVLVUSo6
………………一ノ瀬学園 図書室

うるか 「む……ええっと、これは……」

うるか 「…… “私はトムのことをよく知りませんが、エミは彼のことをよく知っています” かな?」

成幸 「おお、正解だぞうるか。すごいな。基本的な引っかけ問題には引っかからなくなってきたな」

成幸 「前までのお前だったら、後半を “エミのことなら知っています” って訳してただろうからな」

うるか 「うん! 前に教えてもらった、主語に○をつける訓練を繰り返したらわかるようになったんだ!」

成幸 「すごいぞ、うるか。ちゃんと勉強してる証拠だな。偉い偉い」

うるか 「えへへ〜」

うるか 「……あっ、そろそろ水泳部の練習だ! じゃあ成幸、あたし行くね!」

成幸 「おう。今日出した宿題、次までにやってこいよ。水泳の方もがんばれよー!」

うるか 「まっかせなさーい!」

タタタタ……

900以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 23:33:57 ID:aVLVUSo6
文乃 「うるかちゃん元気だねぇ。苦手な勉強をしながら、部活までがんばって……」

理珠 「あの元気は分けてもらいたいです。一体どこから湧き上がってくるのでしょうか」

成幸 「さて、なんだろうな」

成幸 (ひょっとしたら、例の “好きな人” がいるからなのかな、なんて……)

成幸 (ガラにもないこと考えちまったな。恥ずかしい)

成幸 「さ、お前たちも残りの問題がんばれよ。今日は大量に用意しておいたからな」

文乃&理珠 「「はーい……」」

成幸 「……ん? これは、筆箱……? うるかのか」

成幸 「ったく、うるかの奴、忘れていきやがったな。仕方ない……」

成幸 「ふたりで問題やっててくれ。俺はうるかに筆箱届けてくるから」

901以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 23:34:51 ID:aVLVUSo6
………………

成幸 (まったく。うるかの奴……)

成幸 (色々やることがあって注意力散漫になってるんだろうな)

成幸 「まぁ、仕方ないよな……――」


  「――どうせ、仕方ないとか思ってるんでしょ。もー」


成幸 「ん……? 海原と川瀬、と、うるか……?」

うるか 「だって仕方ないんだもーん! 何やったって気づかないしさー!」

海原 「そりゃー、言わなきゃ気づかないって」

川瀬 「いい加減さ、向こうが気づいてくれるって幻想を捨てなよ」

うるか 「むぅ……。そんなの分かってるけどさぁ……」

成幸 (何の話をしてるんだか分からんが、話しかけづらいな……)

うるか 「好きだって言えるなら、苦労はないよ……」

成幸 「!?」 (こ、これは……)

成幸 (恋バナ!?)

902以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 23:35:45 ID:aVLVUSo6
成幸 (ま、まずい……さすがにこれを盗み聞きしてたら、最低すぎる。さっさと退散しないと……)

海原 「でもいつまでも片思いしてたら辛いでしょーに」

うるか 「そうだけど……でも、向こうにも迷惑だろうし……」

川瀬 「もっと自分に自信持ちなよ。あんた、可愛いんだからさ」

海原 「陽真くんにタイプとか聞いてもらおっか? 陽真くんカレと仲いいし……」

成幸 (な、なんだって!? うるかの好きな人は、小林と仲が良いのか……)

成幸 (ひょっとして、俺も知ってる奴か……?)


―――― 『あたしの好きな人……とある情報によるといつもおっぱいばっかり見てるらしくて……』

―――― 『だからその……大きく見せられるセクシー系がいいのかなーとかなんとか……』


成幸 (いや、待て! そんな最低男、俺の友達にはいな――)

川瀬 「――っていうか、もう直接唯我に聞いてしまえば話は早いんだけどな」

成幸 「!?」

うるか 「もー! だから何度も言ってるけど、それができたら苦労はないんだってばー!」

成幸 (ま、まさか……!!)

903以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 23:37:05 ID:aVLVUSo6
成幸 (俺の名前が出るくらい、俺と仲が良い奴!)

成幸 (なおかつ、小林とも仲が良い奴……!!)

成幸 (そして、胸ばっかり見るような最低な奴……!!!)

成幸 (そんな奴、ひとりしかいないじゃないか……!)

タタタタタタ……

川瀬 「ん……?」

うるか 「どしたん、川っち?」

川瀬 「いや、いまその角に誰かいるような気がしたんだが……」

うるか 「へ!? 今の話誰かに聞かれたの!?」

海原 「うーん、いや、誰もいないよ?」

川瀬 「……だな。気のせいだったみたいだ」

海原 「まぁ、今さらうるかのこと誰かに聞かれたところで、みんな知ってるだろうけどね」

うるか 「あたしが成幸のこと好きってそんなに有名なの!?」

川瀬 「……恋愛まったく興味ない奴以外、見てりゃ気づくっての」

904以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 23:38:18 ID:aVLVUSo6
………………

成幸 「………………」

ドキドキドキ……

成幸 (と、とんでもないことを聞いてしまった……)

成幸 (まさか、うるかの好きな人が、あいつだったなんて……)


―――― 『陽真くんにタイプとか聞いてもらおっか? 陽真くんカレと仲いいし……』

―――― 『っていうか、もう直接唯我に聞いてしまえば話は早いんだけどな』


成幸 (俺と小林の名前が出てたってことは、俺たちふたりとと仲が良い奴……)

成幸 (そして、胸に興味津々のスケベな男……。そんなの、あいつしかいないじゃないか……)



成幸 「大森……ッ」 ギリッ



成幸 (……盗み聞きをしてしまったようなものだから、これは胸の中にしまっておかないと)

905以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 23:41:31 ID:aVLVUSo6
成幸 「………………」

成幸 (……いや、しかし。うるかの好きな人だぞ。つまり……)


―――― 『あたしの好きな人…… とある情報によるといつもおっぱいばっかり見てるらしくて……』

―――― ((最低男じゃないか!!!))


成幸 (……うん)

成幸 (『教育係』 として、このままにしておいていいのか?)

成幸 (もし大森とのことで、うるかが受験を失敗したりしたら大変だ)

成幸 (俺はうるかの 『教育係』 だから。あくまで、『教育係』 として)

成幸 (……あいつがうるかに相応しいのか、しっかりと見極める!!)

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

成幸 (……っと、その前に、師匠に相談しておくか)

成幸 (師匠になら、うるかのことを話しても大丈夫だろ)

906以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 23:42:23 ID:aVLVUSo6
………………立ち食いそば屋

文乃 「えっ……? うるかちゃんの好きな人がわかった?」

文乃 (……勉強会が終わった後、話があると言われて来てみれば……またとんでもないことを言い出したよ)

成幸 「そうなんだよ。人の話だから、あまりペラペラ喋りたくはないんだが、お前にだけは相談に乗ってもらいたくてさ」

文乃 (……すごい) ドキドキ (成幸くん、とうとううるかちゃんの気持ちに気づいて……――)

成幸 「――それが、相手がどうやら、うちのクラスの大森みたいなんだ」

文乃 「……は?」

成幸 「だろ!? 俺も聞いたときはそんな反応だったよ! なんであいつなんだ?」

文乃 (……いや、むしろきみに “は?” なんだけど) キリキリキリ……

文乃 (どうしてそんなわけのわからない勘違いをするんだろう。胃が痛いなぁ……)

成幸 「お前も知ってのとおり、あいつはノリで生きてるし、人に迷惑をかけることもしばしばだ」

成幸 「しかも、人の盗み撮りを勝手にSNSにアップするような奴だ」

成幸 「……いや、わかってる。俺だって友達のことを悪く言ったりしたくはない」

成幸 「大森にいいところがあることも知ってる。あいつは決して悪い奴じゃない」

成幸 「……けど、不安なんだ。うるかは騙されてるんじゃないかって。何か勘違いをしてるんじゃないかって」

907以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 23:44:24 ID:aVLVUSo6
文乃 (もう完全にパパ目線だよ、成幸くん……。うるかちゃんはきみの娘さんかな?)

文乃 (わたしやりっちゃんのことも同じように娘みたいに思ってるのかな……?)

ズキッ

文乃 (……じゃなくて、えっと、この勘違いをどうしたらいいか、だよね)

成幸 「それでな、俺は、大森がうるかに相応しいのかこの目で確かめようと思うんだ」

文乃 「へ……?」

成幸 「お節介なのは分かってる。うるかにとってはありがた迷惑な話だろう。それでも……」

成幸 「うるかのことが心配で心配で……」

文乃 (だからきみはうるかちゃんのお父さんかな?)

文乃 「……っていうか、うるかちゃんが大森くんのことを好きっていうのは本当なの?」

成幸 「確実だ。俺はたしかに、海原と川瀬が話しているのを聞いたんだからな」

文乃 (絶対きみが勘違いしてるだけだよ、なんて言うわけにもいかないしなぁ……)

文乃 (もう意志は決まってるみたいだ。今さらわたしが何を言ったところで変わらないだろう)

文乃 (だったらわざわざわたしに相談に来ないでほしいんだよなぁ……)

成幸 「それで、明日、大森の行動を見極めてみようと思うんだ」

908以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 23:45:34 ID:aVLVUSo6
文乃 「へ? 見極める?」

成幸 「もちろん、うるかが誰のことを好きになるかは自由だ」

成幸 「でも、もしうるかが確実に不幸になると分かっていたら、俺は恨まれてもいい。全力で止める」

成幸 「明日は、その見極めをしようと思う。一日、大森を行動を注視しようと思うんだ」

文乃 「はぁ」

成幸 「幸い俺はあいつの友達だし、クラスも一緒だ。授業が別になるとき以外は監視できる」

文乃 (監視しなきゃいけないような間柄は果たして友達と言えるのかな……)

成幸 「明日、古橋にも協力してもらうことがあるかもしれない。そのときはお願いできるか?」

文乃 「うーん……まぁ、それは構わないけど、そもそもわたしは……」

文乃 「……うるかちゃん、別の男の子のことが好きなんじゃないかなー、なんて思うんだけど」

成幸 「……? なんでそう思うんだ? うるかの好きな人を知ってるのか?」

文乃 (知ってるよ! っていうかきみだよ!!) ハァ (……なんて、言えたら苦労しないよね)

文乃 「ううん。知らないよ。なんとなくそう思っただけ。明日は協力してあげるから、何かあったら言ってね」

成幸 「本当か!? 助かるよ、古橋!」

文乃 (……うーん。さて、一体どうしたものかなぁ)

909以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 23:46:20 ID:aVLVUSo6
………………翌日 朝

成幸 (……さぁ、はりきって大森の行動を監視するぞ!)

成幸 (あいつが悪い奴じゃないのは俺もよく分かってる。でも、うるかの恋人に相応しいかどうかは、また別の話だ)

ジーーーーーッ

大森 「……? どうかしたか、唯我? 俺の顔になんかついてる?」

成幸 「何もない。気にするな」

ジーーーーーッ

大森 「いや、気にするなって言われてもな……」

大森 「まぁいいや。そういや唯我、この前サンドイッチで買ってもらったHな本すごく良かったぜ!」

大森 「今度お前にも貸してやるよ」

成幸 「いらんわ! お前は本当にろくでもないことしか言わないのな!?」

大森 「えーっ、なんだよ。せっかくあの幸せを共有してやろうと思ったのに……」

成幸 (やっぱりこいつがうるかに相応しいとは到底思えないぞ!!)

小林 (……成ちゃん、今日は一体何をやってるんだろう)

910以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 23:47:12 ID:aVLVUSo6
………………昼休み

大森 「おー! 今日も唯我の弁当うまそうだな」

成幸 「毎度言ってる気がするが、やらんからな」

大森 「いいじゃねぇかよー、少しくらいよー。可愛い妹ちゃんが作った弁当っていう幸せを少しは俺に分けてくれよ」

成幸 (そしてこれだ。人の弁当をかすめ取ろうとする食い意地の悪さと、人の妹を引け目なく “可愛い” などという軽薄さ」

成幸 (……まぁ、もちろん、俺が弁当がない日にオカズを分けてくれたりもする良い奴ではあるが)

成幸 (俺の友達として相応しいかじゃない。うるかの想い人として相応しいかだ。厳しくいくぞ)


………………物陰

文乃 (……うーん、成幸くんが心配で来てみたけど、本当に大森くんをじろじろ見てるよ)

文乃 (どうやって勘違いだって気づかせてあげたらいいんだろ……)

キリキリキリ……

文乃 (……胃が痛いなぁ)

  「あれ? 文乃っち、教室の前でどしたん?」

文乃 「わひゃっ!? う、うるかちゃん!?」

うるか 「そ、そんな驚かなくても……」




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