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少女「私を忘れないで」
1
:
◆WRZsdTgWUI
:2018/02/17(土) 23:13:03 ID:SLrOQBwc
(プロローグ)
〜体育館裏・少女さん〜
男子「少女さん、わざわざ来てくれてありがとう!」
少女「……」
男子「えっと、その……明日から冬休みだね」
少女「そうですね」
男子「それでその……クリスマスの日は予定が開いてますか」
少女「クリスマスの予定?」
男子「は、はいっ!」
少女「ひとつ聞きたいのですけど、あなたと私は今日はじめて会いましたよねえ。それなのに、どうして教えないといけないんですか」
男子「それは少女さんのことが好きだからっ!」
少女「……?!」
男子「文化祭のときに笑っている少女さんを見て可愛いなって思って、それで一緒に話が出来たらいいなってずっと思っていたんです。だから、僕と付き合ってくれませんか!」
303
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/26(木) 00:10:36 ID:APcIQ..6
俺たちは入院患者病棟を出て、近くにあったベンチに腰を下ろした。
そしてややあって、友香さんが申し訳なさそうな顔で話しかけてきた。
友香「男くん、本当にごめんなさい。せっかく来てくれたのに――」
男「ICUは家族だけしか面会出来ない場所だし、仕方ないよ。それにしても、20日に亡くなったというのはどういうことなんだろう」
双妹「まったく意味が分からないよね」
双妹の言う通りだ。
まったく意味が分からない。
もし本当に少女さんが20日に亡くなっていたとするならば、昨日はすでに死亡している患者を治療し続けていたことになる。
しかし、病院がそんなことをするはずがないので、昨日の時点では少女さんが生きていたことになる。
つまり、受付の女性の言葉を信じると辻褄が合わなくなってしまうのだ。
304
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/26(木) 00:26:05 ID:JPgtyCJk
友香「私、少女の家に行って話を聞いて来ます。そのほうが確実みたいだし」
双妹「私も気になるし、一緒に行ってもいいですか?」
友香「別に良いですけど、おばさんがいなかったら帰ってくるまで待つことになりますよ」
双妹「それは大丈夫。男も気になっているはずだし」
男「双妹、悪いな」
双妹「いいって、いいって」
友香「じゃあ、念のために連絡先を交換しませんか?」
男「ああ、そうだね」
友「俺も交換していいかな」
友香「ええっ、あなたも?」
友香さんは少し嫌そうな表情になり、しぶしぶ友と連絡先を交換した。
そして俺と連絡先を交換し、双妹と友香さんは少女さんの自宅に向かった。
305
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/26(木) 00:40:17 ID:JPgtyCJk
男「少女さんの家には浮遊霊がたくさんいるんだろ。大丈夫かなあ」
友「双妹ちゃんが見えるのは少女さんだけだし、御守りがあるから何の心配も要らないよ」
男「それなら良いんだけど……」
友「あっ、おかえり」
話をしていると、ふいに友が挨拶をした。
俺は少女さんが帰ってきたのだと思い、視線を追う。
すると、何か違和感を感じて少女さんの姿が見えるようになった。
男「……少女さん、おかえり」
少女「ただいま」
その声に覇気はなく、表情が重く沈んでいる。
つまり、望むような結果を得られなかったということだろう。
306
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/26(木) 00:42:23 ID:BmjYnMBo
男「それで、その……どうだった?」
少女「私が入院していた病室には誰もいませんでした」
男「じゃあ、少女さんの身体は一体どこに……」
少女「分かりません。全部の病室を覗いてみたけど、どこにも私の身体はありませんでした。やっぱり、私はもう――」
少女さんは悲痛な表情で、言葉を飲み込んだ。
そんな彼女に、俺は何と声を掛ければいいのだろう。
少女さんが生きていると知っていれば、もっと早く病院に行っていたのに……。
友「いや、まだ答えを急ぐ必要はない」
男「そうか。友には何か考えがあるんだよな!」
少女「そ……そうなんですか?!」
307
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/26(木) 00:50:49 ID:JPgtyCJk
友「俺が想定していた中でも最悪のパターンだから、あまり期待はしないで欲しいんだけど――」
友はそう言いつつ、通学鞄から何かの組み立てキットを取り出した。
そして、パーツを組み上げていく。
男「友、それは?」
友「平たく言えば、幽霊探知機だ。これをスマホにつなげば、地図アプリと連携して浮遊霊の居場所を探すことが出来るんだ」
少女「スマホのアプリで探すって、すごく説得力がありますね!」
男「何だか、不思議な感じだな」
友「まあ、そうだろうな。昔は式神を使役して霊的存在を探していたんだけど、広域探索の現場ではアプリで探す時代になったんだ」
そう説明してくれている間に、幽霊探知機が完成した。
何だかパラボラアンテナみたいな見た目で、友いわく、霊的な波動を効率良くキャッチすることが出来るらしい。
今回は少女さんの肉体に残されている幽体を探すので、霊的残留物質ではなくて少女さんの霊力を登録することになった。
よく分からないけど、そういうものらしい。
308
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/26(木) 00:51:43 ID:JPgtyCJk
今日はここまでにします
レスありがとうございました
309
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/26(木) 07:29:30 ID:xw9mPBD.
おつ
310
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/26(木) 19:45:24 ID:APcIQ..6
友「それじゃあ、アプリを起動するぞ」
その言葉と同時、パラボラアンテナが上下に首を振りながら時計回りに動き始めた。
そのゆったりした動きが緊張感を高めていく。
少女「いよいよですね」
友「……これが少女さんの幽体だ」
男「もう見付かったのか?! 俺にも見せてくれ!」
俺と少女さんは友のスマホを覗き込んだ。
それには周辺地図が表示されていて、俺たちが今いる場所に赤い点が表示されていた。
どうやら、これが少女さんの幽体反応らしい。
男「すげえな!」
少女「本当ですよね! すごいです!」
友「いや、ちょっとまずいかもしれない」
311
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/26(木) 19:53:36 ID:JPgtyCJk
男「まずいって、どういうことだよ」
友「少女さんの身体に幽体が残されているならば、赤い点が2つ表示されるはずだろ。それなのに、ここにいる少女さんの幽体しか表示されていないじゃないか」
男「確かに……」
友「もしかすると少女さんは本当に20日に亡くなっていて、もう幽体が消えてしまったのかもしれない」
男「幽体って消えるのか?!」
友「男の家で、幽体は肉体と霊魂を繋ぎとめる役割があるって説明しただろ。だけど少女さんはその繋がりを自分で切断してしまったから、肉体に残されていた幽体は離脱をするとそのまま消失してしまうんだ」
少女「友くん、ちょっと待ってください。地図が広域になりましたよ!」
友「ええっ?! どういうことだよ、これっ!」
男「どうかしたのか?」
もう一度、友のスマホを覗き込む。
すると周辺地図だったものが県内地図に変わり、南南西の方向に約70キロ。
彩川市の中心街にもうひとつの赤い点が表示されていた。
312
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/26(木) 19:56:41 ID:itTQYZ4c
男「どうして、こんなに離れた場所に少女さんの反応があるんだろ」
友「いや、よく見てくれ」
友はそう言うと、何かのアイコンをタップした。
すると県内地図がさらに広域になり、日本地図に切り替わった。
それを見て、俺たちは唖然とさせられた。
少女さんの幽体を示す赤い点。
それが北は北海道から南は九州に至るまで、全国各地に表示されていたからだ。
それらを数えると、なんと全部で10個も表示されていた。
少女「これって、どういうことなんですか?!」
友「俺にも分からない」
男「とりあえず、これを信じると少女さんの身体がバラバラになっていることになるよな」
少女「わ……私の身体がバラバラに?!」
男「もしかしたら、これを全部集めないといけないのかもしれない」
313
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/26(木) 20:46:19 ID:JPgtyCJk
少女「こんな時にいい加減なことを言わないでくださいよっ!」
男「ごめん。そういうホラー小説を読んだことがあって、それで可能性としてあり得るかなと思ったから……」
友「確かにホラーだとありそうな展開だけど、入院中の患者をバラバラにしたら殺人事件どころか社会問題になるだろ。もう少し常識で考えてから発言しろよ」
男「それじゃあ、専門家的にはどうなんだよ。幽霊のことについては、俺たちよりも友のほうが詳しいはずだろ」
友「可能性としては分霊が考えられる」
少女「それって、どういうことをするんですか?」
友「神道では神様を無限に分けることが出来て、その分霊した神様にも同じ力が宿るとされているんだ。それを新しい神社に迎え入れて祀ることによって、大元の神社と同じご利益を授かることが出来るようになる。これが全国各地に同じ名前の神社がある理由なんだけど、もしかすると少女さんの幽体にも同じことをしたのかもしれない」
314
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/26(木) 23:07:21 ID:APcIQ..6
少女「分霊かあ。共通点がたくさんあるし、バラバラにされたと考えるよりはありそうかも」
友「ただ、病院が分霊をするなんて考えられないし、まあ何と言うか――」
友は言い淀み、パラボラアンテナに目を向けた。
友「その……少し言いにくいんだけど、少女さんの霊力が強すぎてオーバーフローを起こしてしまったのかもしれない」
少女「それってつまり、私がそのアンテナを壊しちゃったってことですか?」
友「この異常な反応を見る限り、そう考えるのが自然だと思う」
男「だったら、これ以外の方法はないのか?」
友「俺としては、これが最後の手段だと思っていたんだ。ここに身体がないなら魂を戻す交霊術も使えないし、手の打ちようがない」
少女「そんな……」
友「少女さん、期待させてごめん――」
315
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/26(木) 23:31:47 ID:BmjYnMBo
男「こうなれば、双妹と友香さんだけが頼りだな」
少女「そういえば、二人の姿がありませんね」
男「ああ、何だか訳が分からないことばっかりだし、少女さんの家に行って事情を聞いてみることになったんだ」
少女「そうなんだ。やっぱり、お母さんに聞くのが一番確実かもしれないですね」
男「じゃあ、家に帰って双妹を待つことにする?」
少女「そうですね。そうします……」
一度家に帰ることになり、北倉駅に向かうバスの中。
俺は不安そうに俯いている少女さんに、そっと手を差し出した。
すると少女さんの手が触れて、俺の手をぎゅっと握り締めてきた。
その力強さが、生き返りたいという彼女の思いを表しているかのようだった。
316
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/26(木) 23:33:40 ID:itTQYZ4c
今日はここまでにします
レスありがとうございました
317
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/27(金) 09:27:54 ID:ROWIAir.
臓器移植か
318
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/27(金) 15:07:16 ID:GbT9WBAM
八大将軍を倒しチャクラを取り戻すのじゃ
319
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/01(火) 09:14:58 ID:AtqP3t.s
〜自宅・部屋〜
友は自転車通学なので一度学校に戻ることになり、俺たちは最寄り駅で別れることにした。
何かが分かったときは、すぐに友に連絡することになっている。
そして2時間半が過ぎた頃、双妹が帰ってきた。
双妹「……ただいま」
男「おかえり。どうだった?」
双妹「会うには会えたんだけど、あまり話は聞けなかった」
男「そうなのか」
双妹「私たちが行ったときには家に誰もいなくて、しばらく待っていたらおばさんたちが帰ってきたの。それでその……葬儀会社の人も一緒で、少女さんの部屋に身体が運ばれて――」
少女「それって、私の遺体が病院から帰ってきたってことですか」
双妹「……うん。今夜がお通夜で、明日がお葬式なんだって。でも家族だけでしたいから、私たちが行くのは遠慮して欲しいみたい」
320
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/01(火) 09:36:30 ID:AtqP3t.s
男「お葬式をするってことは、少女さんは……」
少女「そんな……私は間に合わなかったんだ。もう死んでしまったんだ」
少女「死にたくないっ、死にたくないよお!」
少女「ううっ……うわあああぁぁん!!」
今までどんなにつらい記憶を思い出しても、少女さんは気丈に振舞っていた。
それなのに、今は涙を見せて泣き崩れている。
悲痛な表情で声を上げて泣いている。
その悲しみは俺のせいだ。
俺が奇跡が起きると信じさせて、期待させてしまったからだ。
俺が彼女を苦しめてしまったのだ――。
321
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/01(火) 09:44:46 ID:uqfV3iqQ
双妹「……私、部屋に戻ってる。男は少女さんの傍に居てあげて」
双妹はそう言うと、きびすを返した。
そしてその後ろ姿を見やり、俺ははっとさせられた。
少女さんのことで、自分を責めている暇はない。
彼氏の俺が、少女さんを支えてあげなければならないのだ。
男「少女さん、俺が傍にいるから」
俺はそう言うと、むせび泣く少女さんを優しく抱き締めた。
すると、少女さんの温もりを感じた。
322
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/01(火) 10:17:24 ID:KVU65PgA
それからどれほどの時間が過ぎたのだろうか。
少女さんの温もりがふっと消えて、彼女は俺の腕をすり抜けた。
少女「……男くん…………」
男「気持ち、落ち着いた?」
少女「……うん。昨日も話したけど、私、分かっていたんです」
男「……」
少女「首吊り自殺をして助かるわけがないって。意識が戻っても、以前の生活を取り戻すことは出来ないって――」
少女「そう、分かっていたんです」
男「ごめん、俺が期待させたから……」
少女「ううん、男くんは悪くないよ。みんなが私の命を諦めていなくて、だから私も生きていたいと思ったの。奇跡を信じてみようかなって思ったの」
少女「自殺をした私がそう思えたことは、とても素敵なことだと思う。だから、ありがとう。私に生きていたいと思わせてくれて――」
少女さんは涙を拭くと、頬を緩めて微笑んだ。
それはまるで、憑き物が落ちたかのような表情だった。
そして、そのことが逆に俺の心を不安にさせた。
323
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/01(火) 10:19:54 ID:ob3ScTmA
今日はここまでにします
レスありがとうございました
324
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/01(火) 20:09:17 ID:uqcbZGKQ
どうなるんだ
325
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/02(水) 20:23:37 ID:c5GSlkpo
男「少女さん、何を考えているの」
少女「ちょうど良い機会ですし、今から家に帰ろうかと思っています」
男「家に帰る? でも、今まですごく嫌がっていたじゃないか」
少女「そうなんですけど、そこには私の身体があるので――」
男「あっ……ああ、そうか。生き返ることが出来るか試すってことだな」
少女「いえ、違います」
少女「今日、男くんから離れることが出来ましたよね。つまり、私の未練はもう叶っているのだと思います。だから私が死を受け入れるとしたら、今しかないのかもしれません」
男「死を受け入れる?!」
少女「はい、男くんが一緒なら帰れるような気がするんです。だからその、一緒に来てくれませんか」
少女さんはそう言うと、力強く俺を見詰めてきた。
326
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/02(水) 20:30:44 ID:0HV.Bc1A
男「ちょっと待ってくれよ! 俺たちは昨日、付き合い始めたばかりだろ。それって、成仏するってこと?」
少女「……そうなるかもしれません」
男「でも4月1日までまだ日があるし、もっと恋人らしいことをしてからでも遅くないんじゃないかな」
少女「恋人らしいこと……」
男「そう、俺たちはまだ一度もデートをしていないだろ」
少女「男くんが告白してくれたとき、私のことをつらいことがあっても前向きに頑張っていける人だと言ってくれましたよね」
男「ああ、言ったけど」
少女「だったら、私を支えて欲しいです。家に帰る勇気を出せるように――」
男「……」
男「……分かったよ。少女さんを家まで送り届けてあげるよ」
少女「男くん、ありがとう」
男「でも家に帰ることが出来るようになったら、待ち合わせをしてデートをしよう。約束だからな」
少女「うんっ、約束だね」
327
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/02(水) 20:32:52 ID:93NwKctc
双妹「どこに行くの?」
俺たちが部屋を出ると、双妹が自分の部屋から出てきた。
男「今から少女さんの家に行って来る」
双妹「そうなんだ。少女さんが身体に戻れるか試しに行くの?」
男「いや、家まで送ってあげるんだ」
双妹「……」
双妹「だったら、私も行く」
男「大丈夫だって。少女さんがいるから場所は分かるし」
双妹「そうじゃなくて、男は少女さんのお母さんと面識がないでしょ。私がいれば、少女さんの家に入れるかもしれないわよ」
328
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/02(水) 20:57:12 ID:c5GSlkpo
少女「家に入れるなら、双妹さんにも来てもらいませんか」
男「そうだな」
もし少女さんの家族の誰かの手が空いていれば、いろいろと話を聞けるかもしれない。
それに少女さんの魂が身体に戻れるか試してみるべきだ。
そう考えると、双妹の提案を断る理由はない。
男「それじゃあ、双妹も一緒に来てくれるかな」
双妹「うんっ」
男「じゃあ、少女さん。事情が変わったから、友に連絡してみる」
少女「友くんに?」
男「やっぱり、自分の身体に戻れるか試してみるべきだと思うんだ。それに、ぬいぐるみを調べることが出来るかもしれないだろ」
少女「……そうですね」
329
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/02(水) 21:22:20 ID:c5GSlkpo
PiPoPa...
男「もしもし」
友『もしもし。何か分かったのか?』
男「ああ。少女さんの身体なんだけど、どうやら家に帰っているみたいなんだ」
友『家に?! それって、まさか――』
男「双妹の話では、お葬式の準備をしているらしい」
友『そう……なのか』
男「それで今から少女さんの家に行くんだけど、生き返ることが出来るか試しておきたいんだ。友も一緒に来てくれないかな」
友『……すまん。俺は今、そっちに行くことが出来ないんだ』
330
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/02(水) 22:05:59 ID:0HV.Bc1A
男「行けないって、何か用事でもあるのか?」
友『いや。そうじゃなくて、彩川医科大学附属病院に来ているんだ。ここからだと2時間半は掛かると思う』
男「どうして、友が大学病院に?」
友『少女さんの幽体反応で、ひとつだけ行けそうな場所のやつがあっただろ。それで、そこに行ってみたんだ』
彩川医科大学附属病院は、俺と双妹が2ヶ月毎に精密検査を受けている病院だ。
そしてその検査結果と問診表の回答を実質的に有償で提供し、同じ遺伝子を持つ異性一卵性双生児の成長や性的発達の記録、遺伝子の発現などの研究を行うことに協力している。
つまり、彩川医科大学附属病院は最先端医療や医学の研究を行っている病院なのだ。
そんな場所に、どうして少女さんの幽体があるのだろう。
男「それで、友のほうは何か分かったのか?」
友『いや、来てはみたものの手詰まりだ。ちょっと異常過ぎて訳が分からないし、本格的に壊れてしまったんだろうな』
男「……そうか」
友『これがないと困るし、家に帰ったら修理に出しておくよ』
331
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/02(水) 22:18:11 ID:IPFNPkJ.
男「ところで、少女さんを身体に戻すにはどうしたらいい?」
友『少女さんは幽体の状態を変えることが出来るし、霊的な力も強いだろ。だから戻れる状態にあるならば、自分の身体に憑依して霊子線を繋げば戻れると思う』
男「自分の身体に憑依すれば戻れるんだな」
友『あくまでも、戻れる状態にあるならば……だけどな。もしそれで駄目なら、俺も行くから交霊術を試してみよう』
男「分かった。じゃあ、俺たちは先に行ってるから」
友『ああ、最寄り駅に着いたら連絡する』
男「じゃあ、また後で」
俺はそう言って、通話を切った。
そして双妹と一緒に、少女さんを家まで送ることにした。
332
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/02(水) 22:19:23 ID:0HV.Bc1A
今日はここまでにします
レスありがとうございました
333
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/05(土) 21:53:12 ID:CS2tfL8w
戻れたらいいな
334
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/07(月) 20:04:41 ID:GLYzdbCc
〜最寄り駅〜
少女さんの家は最寄り駅から歩いて10分ほどの場所にあるらしく、俺たちは歩いて行くことにした。
どうやら俺が南側の出入り口を利用しているのに対して、少女さんは北側の出入り口を利用しているという、それだけの違いしかなかったようだ。
俺と少女さんは小学校が別々で中学校が同じなのだから、そんなものなのかもしれない。
ちなみに外はにわか雨が降っていて、少女さんはレインコート姿になっている。
雨粒が全部すり抜けているみたいだけど、着替えた意味はあるのだろうか。
少女「なんだか緊張してきた」
男「緊張してきたって言うけど、自分の家だろ」
少女「そうですけど、もう一週間以上帰っていないから」
男「ああ、そうか。これが初めてのプチ家出だね」
少女「やっぱり、これって家出ですよねえ。私の家に浮遊霊が集まっているらしいし、もしかして怒られたりするのかなあ」
男「それはあり得るかも」
そんなことを話しつつ、駅舎の中を通り抜ける。
そして、北側の出入り口から外に出た。
335
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/07(月) 20:08:59 ID:GLYzdbCc
男「少女さんの家はここから……はぐぅうっ!!」
双妹「どうしたの?」
男「えっ、いや……ええっ?!」
双妹「雨が降ってるんだし、早く行きましょ」
男「なあ、双妹。ここって、何もないよなあ」
双妹「何もないわよ。ほらっ……」
そう言って、双妹が俺の手を取る。
そして「何言ってるの?」といった表情で、俺を見た。
男「じゃあ、俺だけか。ここに見えない壁があるのは」
双妹「見えない壁?」
男「ああ。自分でも信じられないんだけど、ここに何かがあるんだ」
俺だけが通ることの出来ない壁。
その壁の向こう側に、少女さんの家がある。
そう思ったと同時、双妹の視線が俺の後ろに向かった。
336
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/07(月) 20:12:23 ID:SdtKMrIo
少女「……ごめんなさい」
少女「私、やっぱり帰りたくない」
双妹「家に浮遊霊が集まっているから?」
少女「ううん、そうじゃなくて怖いんです。きっと良くないことが起きると思う」
双妹「それでも、家に帰るって決めたんでしょ。自分の身体に戻れるかもしれないし、頑張って帰りましょうよ」
少女「それは分かっているけど、どうしても近付きたくないんです」
少女さんの行動を制限する、約1.5メートルの行動範囲。
今までは俺がその行動範囲から出ようとすると、少女さんの身体が強制的に引っ張られていた。
行動を制限されているのは、いつも少女さんのほうだった。
それなのに、今は俺のほうが制限を受けている。
そこまでして、家に帰りたくはないということなのか?
少女さんの首吊り自殺の偶発性。
それが、彼女をこんなにも苦しめているのだ。
337
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/07(月) 20:13:03 ID:gEIPDZcM
今日はここまでにします
レスありがとうございました
338
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/08(火) 19:40:59 ID:zxSHqpmM
――「あれっ? 男くんと双妹ちゃんじゃないか!」
不意に名前を呼ばれて、俺と双妹は振り返った。
するとそこには、スーツを着た男性の姿があった。
男「えっと、記者さん?」
記者「ああ、こんにちは」
男・双妹「こんにちは、お久しぶりです」
記者「二人とも、大きくなったねえ。もう高校生くらいかな」
男「はい、今は1年です」
記者「そっか、早いなあ」
双妹「記者さんは取材でこちらに?」
記者「そのつもりだったんだけど、さすがに先方の都合が会わなくてね。それで休憩がてら喫茶店を探していたら、君たちを見かけたって訳だ」
双妹「そうなんですね」
339
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/08(火) 19:44:18 ID:eRVsnR.o
少女「あのっ、この方はお知り合いなんですか?」
男「この前見せた双子の特集記事を書いてくれた人だよ。2分の1成人式の撮影にも顔を出してくれたり、親父が懇意にしている人なんだ」
少女「へえ、あれを書いた人なんだ。でもそれって、あの出版社の人ってことですよね」
男「まあ、そういうことになるかな」
少女「そっか、そうなんだ――」
少女さんはそう言うと、記者さんを見据えた。
その視線には、明らかに敵意が込められている。
それに気付いた双妹が、小さな声でささやいた。
双妹「少女さんって、記者さんと何かあったの?」
男「例の男子生徒の件で、記者さんが勤めている出版社と険悪な関係になっているんだ」
双妹「……ふうん」
340
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/08(火) 20:00:15 ID:dykGAbsE
男「記者さん。雑誌記事のことで、いくつか聞いてもいいですか」
記者「別にいいけど、この後も仕事で17時には戻らないといけないんだ。だから手短に頼むよ」
男「分かりました。冬休みに北倉高校で男子生徒が自殺したんですけど、それを記事にしたのは記者さんですか」
記者「……なるほど」
記者「話が長くなりそうだから、そこの喫茶店に入ろうか」
男「そうですね」
双妹「えっ、いいんですか?」
記者「雨の中で立ち話をするのもあれだし、もともと休憩するつもりだったからね」
双妹「そうなんだ。ありがとうございます♪」
341
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/09(水) 06:30:12 ID:Tem4vPCQ
おつ
342
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/10(木) 20:32:39 ID:rWXNQSeY
〜喫茶店〜
駅前の喫茶店に入り、俺たちは記者さんと向かい合わせに座った。
少女さんは俺の隣に立ち、記者さんをじっと見据えている。
それも無理はない。
記者さんは、少女さんを盗撮して精神的に追い詰めた出版社に勤めているからだ。
俺は彼氏として、その辺りのことを聞き出さなければならない。
そして謝罪させなければならない。
そう考えていると、ウエイトレスさんがやってきた。
とりあえず、俺と双妹はミルクティーとホットココアを注文した。
343
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/10(木) 21:10:58 ID:YidckxYw
記者「さっきの質問に答える前に聞きたいんだけど、男くんは自殺をした男子生徒と友達だったのかい?」
男「いえ。俺が聞きたいのは、男子生徒のことではなくて少女さんのことです」
記者「少女さん?」
男「はい。少女さんが男子生徒を自殺に追い込んだかのように書いたせいで、少女さんはずっと苦しみ続けているんです」
少女「そうです!」
男「あの記事を書いたのは記者さんですか」
記者「あれを書いたのは俺じゃあない。知っているだろうけど、俺は健康や医療に関するテーマの記事を担当しているんだ」
男「だったら、誰が書いたのか教えてください」
記者「それは出来ないけど、あの記事に関する質問なら聞いてあげるよ」
344
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/10(木) 21:33:23 ID:rWXNQSeY
少女「ねえ、男くん。この人も同じ出版社に勤めているんだから、まずはこの人から謝罪の言葉を聞きたいです!」
少女さんは強い口調で言った。
どうやら、質問よりも先に謝罪の言葉を聞きたいらしい。
男「それなら、まずは謝罪の言葉を聞きたいです。あの記事のせいで、少女さんが傷付けられたから」
記者「謝罪……ねえ。それは俺ではなくて、編集長や担当者がするべき仕事だろ。しかも、家族ですらない男くんに対して、なぜ謝罪しなければならないんだい?」
男「家族ではないかもしれないけど、少女さんは俺の彼女だからです」
345
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/10(木) 22:01:25 ID:rWXNQSeY
記者「そう……だったのか」
記者「しかし、男くんが彼女の彼氏だったとしても安易に謝罪することは出来ないよ」
男「どうしてですか!」
記者「ただ単に謝罪の言葉を聞きたいだけなのかもしれないけど、それはとても大変なことなんだ。もし俺が謝罪をすると、『男子生徒が自殺をした事件を扱った記事で女子生徒の名誉が毀損されたこと』について、事実とは反することを認めてしまうことになるじゃないか。担当ではない俺に、そんな権限があると思うかい?」
少女「何、それっ! 開き直らないでください!」
男「つまり、出版社は少女さんに謝罪するつもりはないって事ですか」
記者「謝罪するつもりも何も、係争問題に発展することなく解決しているんだから謝罪する必要はないんじゃないかな」
少女「……ええっ?!」
346
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/10(木) 23:53:02 ID:rWXNQSeY
男「ちょっと待ってください。俺は出版社からの謝罪が一度もないと聞いているんだけど」
記者「ご家族の方の誤解が解けて、それで解決している案件だからだよ。それはそうと、男くんは記事を読んだ上で謝罪をするべきだと言っているのかい?」
男「……いえ、読んでいないです」
記者「それだと話にならないね。彼女の期待に応えたいという気持ちは分かる。だけど自分でよく考えることをせずに、ただ単に同調するだけではお互いのためにはならないよ」
記者「彼女が正しければ、一緒に共感する。彼女がもし間違っていれば、それを正してあげる。それも大切なことなんじゃないかな」
そう言われ、俺は何も言えずに俯いた。
少女さんに話を聞いたとき、一度は記事を探して読むべきだとは思ったけれど、結局、俺は探すことすらしなかった。
それなのに聞きたいことがあるとか、出来るはずがない。
男「記者さん、すみませんでした。家に帰ったら、記事を読んでみることにします」
少女「……むぅっ、何だか納得いかないです」
347
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/10(木) 23:53:37 ID:.G4aVNCQ
今日はここまでにします
レスありがとうございました
348
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/12(土) 23:55:21 ID:O8uuMgPc
話が一息つくと、注文した飲み物がタイミングよく運ばれてきた。
俺はミルクティーを口に含み、冷えた身体を温める。
双妹はホットココアを飲みながら、サービスの麩菓子を摘まんで口に運ぶ。
俺も食べてみると、フレンチトースト風でカリカリの焼け具合がとても香ばしかった。
男「意外と美味しいな」
双妹「そうだよね。すごく素朴なんだけど、甘くて美味しい//」
記者「とりあえず、聞きたいことはもういいのかな」
記者さんはコーヒーカップを置いて、話の続きを促してきた。
その言葉を受けて、少女さんはストーカー行為のことを口にした。
自殺の偶発性に関わる問題なだけに、この話題は絶対に聞かなければならない。
俺はティーカップを置き、記者さんを見据えた。
男「いえ、まだ聞きたいことが他にもあります」
男「少女さんがマスコミにストーカー行為をされていると言っているんですけど、彼女の部屋を盗撮しているなんて事はないですよねえ!」
349
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/12(土) 23:57:29 ID:O8uuMgPc
記者「そのマスコミって、うちのことなのかい?」
少女「もちのろんですっ!」
男「彼女はそう思っているようです」
記者「うちがそんな犯罪まがいの取材をする訳がないじゃないか。今からでも遅くないから、警察に相談したほうがいい。ご家族の方はそのことを知っているのかい?」
この反応は想定外だった。
確かにストーカー行為をされているのならば、すぐに警察に相談するべきだ。
少女さんは警察に相談したのだろうか。
男「そこまでは聞いてないです」
記者「そうか。それで、そのストーカー行為がいつからあったのか聞いているかな」
男「今月の12日に気が付いたと聞いてますけど」
記者「じゃあ、彼女がそれ以外に悩んでいたことは?」
男「えっ、それ以外に悩んでいたこと?」
記者「何でもいいから、心当たりがあれば教えてくれないかな」
350
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/13(日) 00:15:28 ID:FmZ2BYsQ
双妹「あのー、質問をしているのは私たちですよ」
男「……そういえば!」
少女「これがマスコミのやり口なんですよね。油断をすれば、いつの間にか情報を引き出されているんです」
記者「そういうつもりはなかったんだが、気に障ったのならごめんね」
双妹「それで、何を聞きだそうとしていたんですか。ここには少女さんのことで取材に来ていたんですよねえ」
少女「ええっ! この人が私のことを調べている?!」
記者「双妹ちゃん、取材の相手と内容は答えられないよ。先方との信頼関係が壊れることになるからね」
双妹「それはそうかもしれないけど、これは偶然なのかなあ――」
351
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/13(日) 00:58:52 ID:FmZ2BYsQ
記者「……この話は終わりにしよう。男くんは他に聞きたいことがあるかな」
男「北倉高校の件は解決しているし、ストーカー行為もしていないんですよね」
記者「そうだよ」
男「だったら、どうしようか」
少女「とりあえず、今日はもういいです」
男「それじゃあ、聞きたいことはもうないです。ありがとうございました」
記者「そうか、納得することが出来たのなら良かったよ。ところで、お父さんはもう行ったのかな」
男「行きましたよ。一昨日の土曜日に飛行機で――」
親父の話を皮切りに、俺たちは記者さんの思い出話に付き合うことになった。
それからしばらくして、記者さんのスマホが鳴った。
記者「どうやら、編集長がお呼びのようだ。久しぶりに二人に会えて、とても楽しかったよ。ここの御代は払っておくから、ゆっくりしていってくれ」
男・双妹「……はい、ごちそうさまでした」
記者「もしつらいことがあったら、兄妹で支えあって頑張るんだぞ。それじゃあ、お母さんにもよろしくね」
352
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/13(日) 21:32:12 ID:5yx2ZcdY
おつ
353
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/15(火) 23:30:33 ID:ZA6AV5vo
男「これからどうしようか」
少女「とりあえず、友くんを待ちませんか?」
男「そうだな。友がいれば、何とかしてくれるかもしれないし」
双妹「そんなことより、私に言わないといけないことがあるんじゃないの」
男「双妹に言わないといけないこと?」
それは一体何のことだろう。
そう考えていると、双妹が不機嫌そうに口を開いた。
双妹「二人は付き合っているんでしょ。それって、どこまで本当なの?」
男「あ……ああ、そのことか。双妹には話していなかったけど、昨日、少女さんに告白して付き合い始めたんだ」
354
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/15(火) 23:58:19 ID:xNNiEQJw
双妹「ねえ、どうして一言も相談してくれなかったのよ」
男「少女さんに取り憑かれたことは、双妹に相談しただろ。でも、信じてくれなかったじゃないか」
双妹「それは――」
男「だから、双妹に少女さんのことを話すのを止めたんだ」
双妹「そうだったんだ……。私はどんなことでも分かり合えると思ってた。どんなことでも話をしたいと思ってた。それなのに、ごめんなさい」
男「いや、俺のほうこそごめん。昨日の内に、少女さんのことを説明しておけば良かったと思うし」
双妹「昔は、気持ちがすれ違うことなんてなかったよね……」
双妹「だから、私たちはもっと話し合わないといけないんだと思う。今まで以上に、お互いのことを知ろうとしないといけないんだと思う」
男「それは大切なことかもしれないけど、双妹はもう少女さんのことを信じてくれているんだろ」
双妹「うん、そのことはもう信じてる。だから、言わせて欲しい」
双妹「私は二人が付き合うことは、絶対に反対だから」
355
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/16(水) 00:05:09 ID:PQ0KpgWg
男「この前は応援しているって言ってくれただろ」
双妹「そのときは少女さんの状況を知らなかったから、応援しているって言ったの。でも今は――」
少女「私が幽霊だから認められないってことですか?」
双妹「そうだよ」
男「それがどうしたって言うんだよ! 人が人を好きになるっていうのは、理屈じゃないだろ」
双妹「そんなこと、私も分かってる。分かっているけど、好きになってはいけない相手もいるんだよ!」
男「じゃあさあ、少女さんが自分の身体に戻れれば応援してくれるのか」
双妹「それは分からないけど、本気なの?」
男「当たり前だろ」
双妹「……はあ、仕方ないわね」
双妹は呆れたように言うと、ホットココアを一気に飲み干した。
そして軽くお腹をさすり、バッグの中からサニタリーポーチを取り出した。
356
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/16(水) 00:13:10 ID:QEh1f9Bw
双妹「ちょっと、お手洗いに行ってくる」
双妹はそう言うと、少女さんを一瞥して席を立った。
わざとらしく生理中であることをアピールしていくあたり、少女さんに対する牽制が始まっているのだろう。
少女「双妹さんには認めてもらえませんでしたね」
男「そうかもしれないけど、少女さんのことで協力をしてくれているし、今は機嫌が悪いだけじゃないかな」
少女「そうなんですかねえ」
男「とりあえず、今は家に帰ることだけを考えよう。双妹のことは、その後でも遅くないだろ」
少女「……そうですね」
少女さんはそう言うと、お手洗いを見据えた。
俺はそんな彼女を見やり、ミルクティーを手に取る。
そして口に含むと、それはすでに冷たくなっていた。
357
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/16(水) 00:15:24 ID:PQ0KpgWg
今日はここまでにします
レスありがとうございました
358
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/16(水) 20:14:38 ID:tKzJAiIc
〜最寄り駅〜
1時間半が過ぎた頃、友から電話が掛かってきた。
そして状況を説明し、俺たちは最寄り駅で合流した。
友「男、待たせたな」
男「いや、大丈夫だ。思っていたより早かったくらいだよ」
友「それで、少女さんが家に帰れないんだっけ」
男「ああ。不思議な力が働いて、まったく近付けないんだ」
双妹「そうそう。押しても引いても駄目なんだよね」
友が来る30分ほど前に雨が止んだので、俺たちは少女さんを家に帰らせることが出来ないか何度も挑戦してみた。
しかしその度に見えない壁に阻まれ、まったく近付くことが出来なかった。
少女さんの家に帰りたいという気持ちは、自殺の偶発性よりも弱いということなのだろう。
359
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/16(水) 20:18:33 ID:L/Y9xDkI
友「依り代の行動を制限するとか、さすがに憑依霊としての力も強力だな」
少女「友くん。どうすれば、私は家に帰れるんでしょうか」
友「少女さんを捕縛して連行する方法もあるけど、探知機を壊すほどの霊力を持った浮遊霊だからなあ。俺の力だと拘束具のほうが持たないだろうし、その方法は使えないだろうな」
男「じゃあ、他に方法はないのか?」
友「親父に依頼すれば、本格的な霊具を使って対処することが出来るはずだ。だけど、俺は気持ちの問題なんじゃないかと思ってる」
男「気持ちの問題?」
友「事故死霊が自分が死んだ現場に戻ることが出来ないのは、一種の心的外傷後ストレス障害に囚われているからなんだ。帰りたいという気持ちがあるなら、少しずつ克服していくしかないだろうな」
少女「結局、私の心が弱いから帰れないってことなんですね」
友「少女さんが悪いわけじゃないよ」
少女「ありがとう……」
360
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/16(水) 20:25:39 ID:L/Y9xDkI
男「少女さんが家に帰れないと、自分の身体に戻れるか試せないよな」
少女「男くん、ごめんなさい」
男「いや、俺の方こそごめん。少女さんを家まで送ってあげるつもりだったのに……」
双妹「ねえ、男。もう6時を過ぎてるし、今日は諦めたほうがいいんじゃない?」
男「俺はもう少し頑張ってみたいんだけど」
少女「そのことなんだけど、少し気持ちの整理をさせてください。生き返るチャンスを失ってしまうけど、もともと死を受け入れるつもりだったし、やっぱり家に帰るのは嫌なんです――」
男「そっか、少女さんの気持ちが優先……だよな」
少女「……」
双妹「じゃあ、みんなで帰りましょうか」
俺は小さくため息をつき、しぐれ模様の空を見上げた。
そして、仕方なく家に帰ることにした。
361
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/16(水) 22:20:11 ID:ETea936Y
うーん
難しくなったな
362
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/19(土) 13:03:31 ID:laoqVIZc
〜自宅・親父の書斎〜
自宅に着くと、俺と双妹は親父の書斎に向かった。
北倉高校の男子生徒が自殺した一件について、週刊誌の記事を読むためだ。
男「少女さんが読んだのは、この記事だよな」
少女「……うん」
双妹「とりあえず、読んでみましょ」
男「そうだな」
363
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/19(土) 16:47:05 ID:iBGRNsUg
――SNSの闇! 失恋の報復で首吊り自殺
I県の県立高校の男子生徒が同県内の自宅で首を吊って自殺していたことが1月8日、明らかになった。
県警の調べによると、男子生徒が自殺したのは昨年12月25日ごろ。
男子生徒の家族が自室で首を吊っているのを発見し、男子生徒が書いたとみられる遺書が彼のブログに投稿されていた。
近年、青少年の自殺が社会問題になっているが、なぜ彼は自ら命を絶つ選択をしなければならなかったのだろうか。
その理由は、すべて彼のブログに残されていた。
この数ヶ月、彼のブログには女子生徒への想いを書いた記事が多く投稿されており、彼女との恋愛に期待を膨らませていた様子が窺える。
しかし、自殺をする数日前に投稿された記事には女子生徒に告白して失恋したことが記されており、最後の記事には彼女への怒りや『想い』などが書き殴られていた。
そして恋人たちが花開く聖夜に自殺をすることで、女子生徒に復讐を果たそうとしていたのだ。
しかし、何が彼をここまで駆り立てたのか。
それには、10代の青少年を取り巻く生活環境の変化が関係しているのではないかと専門家は指摘している。
364
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/19(土) 17:05:35 ID:iBGRNsUg
その変化のひとつが、スマートフォンの普及だ。
青少年の間で急速に浸透している、SNSやオンラインゲーム。
彼らはSNSを通じてネット上で友人と交流し、不特定多数の他人に個人情報を発信している。
さらには、ネット上の世界で従来にはなかった形の人間関係を構築しているのだ。
それによって、人々はコミュニケーション欲求を充足することが出来るようになった。
SNSは人が持つ心理的な欲求を満たすために発達し、広く普及したと言っても過言ではないだろう。
誰かと繋がっていたい。
誰かに必要とされていたい――。
しかし、ネット上の交流でそれが真に満たされるはずがない。
だから急速に変質していく。
友達が今、どこで何をしているのか。
友達が今、どんなことを話しているのか。
それを知るためにSNSにアクセスし、友達の行動や発言をチェックせずにはいられなくなるのだ。
365
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/19(土) 17:17:23 ID:rgjIal92
それらが行き過ぎると、SNSの監視や依存が始まる。
そして、青少年の健全な人格形成に悪影響を及ぼすことになってしまう。
近年増加しているデートDV。
これは特に恋愛関係における恋人同士の支配・被支配関係、虐待状況、主体性の侵害のことであり、内閣府の調べで中高生からも相談が寄せられるようになっていることが分かっている。
しかも、小学生からの相談もあるというから驚きだ。
デートDVが増加している背景は恋愛経験の低年齢化に伴うものだが、その被害内容に従来の家庭内暴力や配偶者間DVでは見られなかったものが報告されている。
それがSNSによる暴力である。
366
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/19(土) 17:22:36 ID:iBGRNsUg
恋人の行動や発言を監視し、交流の制限やコメントの返信を強要する精神的な暴力。
恋人の自画撮り写真を無断で公開したり、失恋の腹いせにわいせつな画像を公開するリベンジポルノなどの性的かつ社会的な暴力。
このようなSNSによるデートDVは、SNSが日常生活に深く浸透しているためDVだと自覚しにくいことが特徴だ。
さらにSNS上の会話や画像は、不特定多数の閲覧者によって保存され拡散される恐れがある。
それによって、被害者は消えることのない暴力に苦しめられることになるのだ。
自殺をした男子生徒も遺書をブログに公開することで注目を浴び、女子生徒への悪意を残し続けようとしていたことが分かっている。
ネット上で形成された人格異常は、現実世界の男女交際に影を落とす。
そして歪んだ承認欲求はコミュニケーションツールであるSNSを通じて、消えることのない暴力を拡散させていく。
我々はSNSによるデートDVの被害を受けている女性、そして青少年たちの未来が奪われることのないよう、早急にこの問題の解決に取り組まねばならない。
367
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/19(土) 17:26:10 ID:laoqVIZc
今日はここまでにします
レスありがとうございました
368
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/19(土) 20:52:00 ID:2f.aTyFM
乙だよ
369
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/21(月) 21:53:49 ID:Qu5DXIR6
・・・
・・・・・・
双妹「何これ、本っ当に最低なオトコじゃん!」
男「そうだよな。こんなことをして許されると思っているのかよ!」
俺と双妹は記事を読み終わり、声を荒らげた。
男子生徒が遺書を遺していた事は知っていたけど、まさかブログで公開していたとは思わなかった。
双妹「私、デートDVなんてものがあるなんて知らなかった。すごく怖いんだけど、少女さんはその……大丈夫だったの?」
少女「ブログは削除されているんだけど、私の名前や学校名を検索すると拡散された遺書がヒットするんです。たくさんの人が私のことを知っているのかと思うとつらいけど、友香ちゃんやクラスのみんながたくさん励ましてくれました」
少女「だから、私は大丈夫です」
370
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/21(月) 21:55:25 ID:tLMZMIDU
男「大丈夫って言うけど、こんなことをされて平気なはずがないだろ!」
双妹「……そうだよね。私たちもネット上に色んな情報や動画が拡散されているけど、それとはまったく意味が違うもんね」
少女「もういいんです。少年くんの遺族の人と話をしてたくさん謝罪をしてくださったし、もう解決したことですから」
男「そんなの強がっているだけだと思う」
少女「心配してくれてありがとう」
少女さんはそう言うと、笑顔を浮かべた。
その表情はどことなく冷めていて、やんわりと拒絶の意思を感じられた。
男「もしつらいことがあったら、いつでも話を聞くから」
少女「……うん」
371
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/21(月) 23:14:08 ID:JgnfAE6s
少女「ところで、出版社の人の話を聞いてからこの記事を読んで印象が変わりましたよ」
男「それって、どういう風に?」
少女「最初に読んだときは、私が少年くんを自殺に追い込んだかのように書いている記事だと思っていたのだけど、本当は私のことを守ろうとしてくれている記事だったんですよね」
男「ああ、それは俺もそう思った」
この記事の主題は少女さんに対する名誉毀損ではなくて、SNS上のデートDVによる被害者である少女さんの救済と問題提起だった。
恐らく、当事者意識による思い込みが誤解を招いてしまったのだと思う。
俺は少女さんの言葉を真に受けるのではなくて、あのときに読んでおくべきだったのだ。
少女「こんな記事を書いてくれる出版社が、私のことをストーカーするはずがありません。何だか申し訳ない気持ちでいっぱいです」
372
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/21(月) 23:19:29 ID:tLMZMIDU
男「とりあえず、誤解が解けたみたいだね」
少女「はい。双子の特集記事も素敵だったし、ちょっと好きな雑誌になりそうです」
双妹「まあ、えっちな記事とかヌード写真も多いけどね」
少女「そ……そういうところは、あまり好きになれないかも//」
双妹「あはは、私もあまり好きじゃないかな。でも、男はそういうのが好きみたいだよ。スマホでもよく動画を見ているみたいだし」
少女「ええっ?! そ、そうなんだ//」
男「おい、少女さんに余計なことを言うなよ」アセアセ
双妹「余計なことじゃなくて、大切なことだよ。少女さんは男に取り憑いているから、24時間ずっと一緒にいるんでしょ」
男「まあ、トイレ以外はずっと一緒だな」
双妹「それってさあ、少女さんが成仏するまで続くんだよねえ」
男「多分、そうだと思う」
双妹「そんなの、どう考えても普通じゃないんじゃないかなあ」
373
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/22(火) 00:56:33 ID:BIvA0KnA
男「そうかもしれないけど、離れることが出来ないんだから仕方ないだろ」
双妹「それは少女さんの都合でしょ。この世に未練があるのかもしれないけど、だからと言って、男のプライバシーを侵害してもいい理由にはならないと思うの」
少女「それじゃあ、私が取り憑くのをやめれば良いってことですか?」
双妹「それが出来るのなら、私と男だけで少女さんの家に行くことが出来たはずですよね」
少女「それはそうなんですけど――」
双妹「つまり、少女さんは男のプライバシーを確保する方法を考えないといけないんです」
男「プライバシーの確保って言うけど、今のままでも大丈夫なんじゃないかな。トイレに行くときは外で待ってくれているし、着替えるときも後ろを向いてくれてるから」
少女「そうですよね。私なりに気を使っているつもりです」
双妹「あのさあ、男にとって、プライバシーはそれだけじゃないでしょ」
双妹は不機嫌そうに言うと、週刊誌を手に取った。
そして、カラーページを開く。
するとそのページには、巨乳アイドルの扇情的なヌードグラビアが掲載されていた。
374
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/22(火) 01:00:50 ID:1aBv8a9M
今日はここまでにします
レスありがとうございました
375
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/22(火) 08:08:14 ID:XcqNThas
確かにオッパイは好きだn…
376
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/22(火) 21:37:23 ID:BIvA0KnA
双妹「男は少女さんが一緒にいても、こういう画像とかアダルトサイトを見たりしているの?」
男「いや、双妹じゃないんだから、そういうサイトを一緒に見たりするとか出来るわけがないだろ」
双妹「金曜日の夜、『したいけどそんな時間がない』って言ってたよねえ。少女さんがいるせいでえっちなことを我慢するしかないのなら、性的なプライバシーが確保されていないことになるんじゃないの?」
男「まあ、そう言われるとそうかもしれないけど――」
双妹「それって、デートDVの被害に遭っていることになるんじゃないのかなあ」
少女「私が男くんにデートDV?!」
双妹「そうだよ。少女さんのせいでオナニーをしたくても出来ないんだから、そういうことになると思う」
少女「そ、それって、一人でするアレのこと……ですよねえ//」
双妹「そう。男はいつも週に4、5回くらいしているんだよ。それなのに夢精するまで10日以上も我慢させるとか、私だったら絶対に有り得ない!」
377
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/22(火) 21:46:30 ID:uu59lhR.
少女「ごめんなさい。私、兄弟がいないから、男子のそういう欲求がよく分かっていなくて……」
男「別に謝るようなことじゃないし、少女さんは何も気にしなくていいから」
少女「でもその……男くんは、ひとりでえっちなことをする時間が欲しいんですよねえ」
男「それはそうだけど、でもなんて言うか、しばらく俺が我慢すればいいだけの話だろ」
双妹「そんな状態で、少女さんと付き合っているとか言うつもり?」
男「特殊な状況だし仕方ないじゃないか」
双妹「そんなのおかしいよ。少女さんが一方的なデートDVをしているのに、男がそれを我慢し続けるなんて間違っていると思う」
少女「それじゃあ、私はどうすればいいんですか」
双妹「さっきも言ったけど、男のプライバシーを確保する方法を考えればいいと思う。離れることが出来ないのなら、とりあえず一緒に現状を改善する方法を探しませんか」
少女「一緒に?」
双妹「みんなで考えれば、きっといい方法が見つかるだろうし」
少女「そう……ですね」
378
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/22(火) 23:10:39 ID:BIvA0KnA
男「それで、双妹には何か考えがあるのか?」
双妹「ううん、まだ考えているところ」
少女「あの……ふと思ったんですけど、双妹さんはどうしていたんですか。双妹さんの部屋に二段ベッドがあるってことは、最近まで男くんも同じ部屋で寝ていたってことですよねえ」
双妹「そうだけど、あまり参考にならないかも」
少女「そうなんですか」
双妹「うん。私たちにはプライバシーが必要なかったから」
少女「えっ?」
双妹「だって、男はもう一人の私なんだよ。そういうことが恥ずかしいなんて思ったことがないし、一時期、お互いに暗黙のルールがあったくらいじゃないかなあ」
少女「それって、普通……なんですか」
双妹「どうなんだろ。私は普通だと思うけど――」
双妹がそう言うと、少女さんが困惑の眼差しを向けてきた。
男子生徒の自殺の記事を読みに来ただけのはずなのに、どうしてこんなことになっているんだよ。
勘弁して欲しい。
379
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/23(水) 05:10:00 ID:SC.Vzo8g
おつ
380
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/24(木) 00:04:43 ID:lni0Qiq2
男「あのさあ、よくよく考えてみれば、俺がトイレですればいいだけだろ」
双妹「それって、不衛生なんじゃないの?」
少女「そ……そうですよね。あまり好ましいとは思えません」
男「それじゃあ、少女さんが双妹の部屋に行けば良いんじゃないかな」
双妹「……えっ、私の部屋に?!」
男「双妹なら女同士だし、それですべて解決だろ」
双妹「ちょっと待ってよ。私にもそういうプライバシーがあるんだから、少女さんがずっと部屋に居るのは困るんだけど」
男「それは分かっているけど、他に良い方法がないだろ」
双妹「だったら、男が私の部屋に戻って来てよ。それで少女さんにずっと隣の部屋に居てもらえば、私たちもアレだし一番良いんじゃないかなあ」
男「確かにそういう方法もあるけど、さすがにちょっとアレだよな」
双妹「ん〜、まあ、少女さんがいるし……ねえ」
少女「あのっ! 私は時間を決めれば良いと思います。例えば11時まで男くんの部屋で過ごして、その後は朝まで双妹さんの部屋で過ごすとか――」
381
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/24(木) 00:32:38 ID:fmmtgMBI
男「なるほど。それが一番いいのかもしれないな。時間が決まっていれば、双妹に迷惑を掛けることもないだろうし」
双妹「まあ、少女さんが時間を守ってくれるなら別に良いけど、もう少しルールを決めて欲しいかな。急に壁をすり抜けて入って来られたら、びっくりするし」
少女「それもそうですね」
そんな訳で、少女さんは双妹の部屋の洋服ダンスを通って中に入ることが決まった。
そこならば、部屋に入る前に声を掛けることが出来るからだ。
そして、夜は以前まで俺が使っていた二段ベッドの上段で寝ることになった。
男「結局、俺が最初の日に提案したことに落ち着いたな」
双妹「ふうん、そうなんだ」
少女「……ごめんなさい」
双妹「ちなみに、今日から毎日、私も男と一緒にお風呂に入るからね」
男「ああ、分かった」
少女「ええっ?! それはきっぱり断ってくださいよ!」
双妹「ふふっ♪ それじゃあ、話が纏まったみたいだし、私は晩ご飯の準備を手伝ってくるわね」
382
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/24(木) 00:48:24 ID:l881Q5QE
少女「……はあっ。男くんと双妹さんって、本当にツイコンだよね」
男「ツイコンって何だよ」
少女「兄妹とは思えないくらい仲が良いと言うか、そういう事です」
少女さんは呆れたように言うと、ぷいっとそっぽを向いた。
とりあえず、双妹が一緒にお風呂に入ると言うのなら、それを利用してこちらから歩み寄っていくしかないだろう。
上手く行けば、少女さんのことを認めてくれるかもしれない。
男「何だかんだ言って、双妹も少女さんのことを知ろうとしているみたいだな」
少女「そうなんですかねえ」
男「そうでもなければ、少女さんと一緒にお風呂に入るなんて言わないだろ」
少女「私たちを二人きりにしたくないだけなんだろうけど……まあ、そういうことにしておきます」
383
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/24(木) 00:49:06 ID:fmmtgMBI
今日はここまでにします
レスありがとうございました
384
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/25(金) 00:08:37 ID:esHAmjSo
少女「ところでその、今夜は一人でえっちなことをするんですよねえ?」
少女さんは一転して、好奇の眼差しを向けてきた。
俺たちの前には、週刊誌のヌードグラビアが広げっぱなしで置かれている。
双妹もそうだけど、どうしてこういうことを聞きたがるのだろう。
男「そういうことって、普通は女子に話すようなことじゃないと思うんだけど」
少女「そ……そうだよね。それじゃあ、男くんはどの女優さんが好みなんですか」
男「それなら、ぱっと見た感じはこの人が好みかも」
少女「ふうん、そうなんだ。私と違って胸が大きいし、すごく可愛いですよね」
男「まあ、グラビアアイドルってそんな人ばっかりだし」
少女「やっぱり、男子は双妹さんみたいに胸が大きい女性のほうが良いのかなあ」
男「それは人それぞれだと思うし、俺は控えめな女性も好きだよ」
少女「……それは言わないほうがよかったかも。どうせ、私は胸がないもん」プイッ
385
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/25(金) 00:16:54 ID:smggGsC6
〜部屋・夜〜
晩ご飯を食べた後、双妹の部屋で洋服ダンスや二段ベッドの位置を確認し、3人でお風呂に入った。
そのときに双妹が生理中でちょっとしたアクシデントがあったけれど、やがて夜も遅くなり、少女さんが双妹の部屋に行く時間が迫ってきた。
男「そろそろ時間だな」
少女「そうですね」
男「……」
少女「……」
すぐに会話が途切れてしまった。
今日はいろいろな事がありすぎて、お互いに疲れている。
少女さんは自殺後、しばらく意識不明の状態で入院していた。
つまり浮遊霊ではなくて、生霊だった。
しかし、死亡が確定してしまった。
いまだに家に帰ることが出来ず、自分の身体と対面することも叶わない。
俺がそんな少女さんにしてあげられることは、一体何なのだろう。
386
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/25(金) 00:26:43 ID:smggGsC6
少女「あの、双妹さんの部屋に行ってきます」
男「そっか」
少女「それじゃあ、今夜はその……頑張ってくださいね//」
男「頑張るって、何をだよっ」
少女「何をって言われても、お……おな――」
少女「うぅっ、おなすみなさいっ!」
少女さんは顔を赤らめると、ふわりと浮かんで壁をすり抜けた。
恥ずかしいなら言わなければいいのにとは思うけれど、えっちな単語を言おうとする姿はすごく可愛かった。
俺はそう思いつつ、スマホを片手にベッドの上で横になる。
それからしばらくして、壁の向こう側から双妹と少女さんの話し声が聞こえてきた。
俺と少女さんが離れることが出来るのは、およそ1.5メートル。
壁を一枚挟んでいるだけとはいえ、今夜は一人で過ごす久しぶりの夜だ――。
387
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/25(金) 20:18:52 ID:Mbowj.3Y
自主トレタイムか
388
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/28(月) 20:21:07 ID:04auKy..
(2月13日)sat
〜病院・少女さん〜
辺りが暗くなってきた頃、ようやく頭とつながっていた銀色の紐を引き千切ることが出来た。
そしてそれと同時、人工呼吸器のアラームが鳴り始めた。
看護師さん数人が慌てて駆け込んできて、私の身体を取り囲む。
何が起きているのか分からないけど、どうやら自発呼吸が停止したらしい。
そんな中、私は心が冷めていくのを感じていた。
看護師さんの手際を見ていても、私が看護師になる夢は叶わない。
どんなに努力をしても、私では患者さんに笑顔を届けてあげることが出来ない。
だって、もう死んでいるんだから――。
いつまでもここにいないで、早く男くんに会いに行こう。
私はそう思い、ふわりと浮かんで自分の身体を見下ろした。
そして、そのまま病室を抜け出した。
389
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/28(月) 20:24:56 ID:lVvpRG/U
無事に病室を出ることが出来て、ふわふわと通路を歩いていく。
その道すがら男性医師とすれ違い、病院の職員さんとすれ違う。
しかし、誰も私の姿には気が付かない。
まるで透明人間になったかのようだ。
だけど透明人間は光が網膜を透過してしまうから、目が見えなくなってしまうんだよね。
そう考えると、今の私はすごく不思議な存在だ。
ふわふわ浮いているし、壁だってすり抜けられる。
雨が降っていても濡れることがないから、傘を差す必要もない。
それなのに人の声が聞こえるし、バスと電車にも普通に乗れてしまう。
もしかすると物理的な現象よりも、『私はここに存在している』という認知機能が関係しているのかもしれない。
しかしそれは、私が幽霊であることを強く認識させた。
390
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/28(月) 20:29:53 ID:lVvpRG/U
やがて最寄り駅に着き、私は違和感を感じた。
家に帰りたくない。
家に近づいてはならない。
心の奥底から、そんな感情が沸き起こってくる。
でも、どうしてなんだろう。
その理由はまったく分からない。
それなのに、何となく良くないことが起きるような気がする。
だけど家に帰らなければ、男くんにチョコを渡すことが出来ない。
14日に告白すると決めたのに、気持ちを伝えることが出来ない。
それでも、家には帰りたくない。
よくよく考えてみれば、私の姿は誰にも見えないんだよね。
もはや、告白する以前の問題だ。
少女「……はあっ」
私は小さくため息を吐き、家に帰ることを止めることにした。
391
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/28(月) 20:42:55 ID:zXr1.SQE
それからしばらく考えて、私は学校に行くことにした。
明日はうちの学校で柔道部の練習試合があるので、その試合に男くんが出場するはずだ。
告白を出来ないのならば、せめて陰ながら応援をしてあげたい。
そう思ったのだけど――。
なぜか気分が乗ってくれない。
学校にも近づいてはならないような気がする。
こうなったら、男くんの家に行くしかないっ!
だけど、私は彼の家を知らない。
じゃあ、男くんの学校で待つことにしよう。
私はそう決めて、電車に乗り込んだ。
392
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/28(月) 20:45:22 ID:zXr1.SQE
今日はここまでにします
レスありがとうございました
393
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/28(月) 22:36:10 ID:QdlhNbe6
乙
394
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/29(火) 21:54:39 ID:tzJNo6uM
(2月14日)sun
〜校門前・少女さん〜
今日は待ちに待ったバレンタインデー。
それなのに、私は男くんの学校の前で立ち尽くしている。
今日の試合、男くんは勝てたのかなあ。
学校に行って、応援したかったな。
それなのに、どうしてこんなことになってしまったんだろう。
激しい雨の中、私はただ立ち尽くす。
ぼんやりと、ただ時間だけが過ぎていく。
395
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/29(火) 21:57:12 ID:NawV7Wcg
(2月15日)mon
〜校門前・少女さん〜
激しい雨が降っているにもかかわらず、音が何も聞こえない寂しい夜。
なぜ音が聞こえないのか疑問に思いつつ、男くんが登校してくるのを待ち続ける。
やがて日付が変わり、朝が近付くにつれて雨が重たい雪に変わっていった。
幹線道路は消雪装置が起動し、歩道には少しずつ雪が積もり始めている。
それからしばらくして、車や電車を利用する人々が通るようになり喧騒が戻ってきた。
なぜ音が聞こえるようになったのか、それは分からない。
そんなことよりも、誰も私に気が付いてくれないことが悲しかった。
学校に登校してきた生徒たちも、私に気が付くことなく校舎の中に入って行く。
やっぱり、私の姿は見えないんだ……。
それでも、男くんに会いたい。
そのために、ここで待っているんだから――。
396
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/29(火) 21:58:30 ID:MvORlNJY
私は気を取り直し、駅がある方向を見た。
歩道の雪はすでに踏み固められていて、その上を多くの生徒が列をなして歩いている。
人も増えてきたし、そろそろ男くんが登校してくるだろう。
そう思っていると、歩道の脇に溜まっていたシャーベット状の雪を車が踏みつけた。
そのせいで、歩いていた男女に氷水が撥ねる。
しかし、間一髪のところで男子生徒が傘を倒して防ぎ、難を逃れることが出来たようだ。
そして、走り去った車を見据える男女。
その二人は、男くんと彼女と思しき女子だった。
397
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/29(火) 22:00:08 ID:MvORlNJY
男「双妹、浴びてないか?」
女子「大丈夫だよ。ありがとう」
男「融雪道路に出てきた途端、これだもんな。勘弁して欲しいよ」
どういうこと……。
二人は一緒に登校するくらい仲がいいの?!
以前、友香ちゃんは彼女のことを妹かもしれないと言っていた。
しかしそれが正しいとすると、彼女は男くんと同い年だということになってしまう。
普通に考えて、そんなことがあるはずがない。
やっぱり、男くんは彼女と付き合っているんだ――。
そう思うと、心がちくりと痛んだ。
でも、これで良かったのかもしれない。
私は自分にそう言い聞かせ、男くんを見送った。
398
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/29(火) 22:02:27 ID:NawV7Wcg
今日はここまでにします
レスありがとうございました
399
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/30(水) 07:54:00 ID:A2qqw8wY
乙
400
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/31(木) 23:22:02 ID:WN7doU.w
それからしばらく立ち尽くしていると、ふいに背後から視線を感じた。
私は慌てて振り返り、周囲を見渡す。
すると男子生徒が自転車に跨ったまま、じっとこちらを見ていることに気が付いた。
お互いに目が合い、彼がしまったという顔で目を逸らす。
その顔には見覚えがあった。
中学生のときに同じクラスだった友くんだ。
少女「もしかして、私のことが見えているんですか?」
友「……そうだけど」
少女「すごいっ! 私のことが見えているんだ!!」
友「俺は今、浮遊霊なんかに構っている暇はないんだけど」
少女「あっ、ああ……ですよね」
友「じゃあな」
401
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/31(木) 23:23:35 ID:WN7doU.w
友くんはそれだけを言うと、私を一瞥して校舎裏に向かって自転車を漕ぎ出した。
その後ろ姿を見つつ、私はふと疑問に思った。
友くんには、どうして私の姿が見えていたのだろう。
そもそも、見えるとは何だろうか。
私は生物の授業で勉強したことを思い出す。
目の働きと視覚情報の伝達経路。
ものが見えるのは、網膜に映った像が視神経を通じて大脳に伝達されるからだ。
大脳に伝達される?
……あっ!
分かったかもしれない。
402
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/31(木) 23:25:07 ID:4f0YciQ6
友くんに私の姿が見えていた理由は、依然として分からない。
だけど、最終的に情報を処理するのは大脳だ。
つまり大脳に直接情報を与えることが出来れば、普通に会話が出来るようになるはずだ。
会話をする方法があるなら、せめて最期に男くんと話をしたい。
男くんの恋を応援してあげたい。
でも、どうすればそんなことが出来るのかな。
私は幽霊なんだし、男くんに取り憑いてみるとか?
ぴったりくっついて、手をつないだりとかしちゃったりして――。
いやいやいや。
男くんには彼女がいるんだし駄目だよ、そんなことは!
私は妄想を振り払い、お昼休みに男くんの教室に行ってみることにした。
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