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勇者「お前は王都を汚すゴミだ! 僕が掃除してやる!」
102
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/05/04(水) 00:25:53 ID:BIHgA/7Y
おお来たか
103
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/05/04(水) 00:27:25 ID:hXCleu9g
姫「分かりました。 行きましょう、勇者様」
勇者「姫様も来られるのですか……?」
姫「もちろんです」
勇者「その……少し休まれた方が……」
姫「お気遣いありがとうございます」
姫「しかしこのことは私からお父様に話さねばなりません」
姫「精鋭兵」
精鋭兵「はっ」
姫「大臣を決して部屋から出さぬように」
姫「お父様が直々に処分を言い渡すでしょう」
精鋭兵「は……ははっ!」
104
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/05/04(水) 00:30:50 ID:hXCleu9g
タッ…タッ…
勇者(国王様のいる部屋にまた行くのか……やっぱり緊張するな……)
貴族B「姫様、もう歩いてよろしいのですか?」
姫「ええ、心配いりませんよ」
貴族D「さきほど姫様の声が聞こえた気がしますが……」
姫「お父様との会談が終わり次第説明します」
勇者(姫様……あれだけ声を荒げていたのにもう落ち着いてる……?)
勇者(……)
ギィイイイ…
105
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/05/04(水) 00:33:36 ID:hXCleu9g
国王「おお勇者殿、待っておったぞ」
勇者「は、はい!」
国王「それでどうだ? 体調の方は変わりないか?」
勇者「ええと……もう万全です」
国王「うむ。 なによりだ」
姫「お父様? やけにご機嫌がよろしいようですが……」
国王「ああ。 昨夜は久々によく眠れたのでな」
国王「体の調子がすこぶる良いのだ」
姫「まぁ……」
106
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/05/04(水) 00:37:00 ID:duLzjlaw
来たか
107
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/05/04(水) 00:37:06 ID:hXCleu9g
姫「勇者様、私の要件は後で構いませんので」
勇者「そんな……いいんですか?」
姫「はい。 お父様は勇者様を待っていたのですから」
勇者「……分かりました」
勇者「では国王様。 これを」
国王「うむ」
姫「それが……勇者様の"許可証"ですか?」
国王「ああそうだ。 特別な紙で出来ていてな……」
国王「ここに我々王族の刻印をつけることで授与が完了する」
姫「授与……?」
国王「では……勇者よ」
勇者「はっ」
国王「そなたを27代目の浄化の者としてここに認めよう」
108
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/05/04(水) 00:42:14 ID:hXCleu9g
姫「27代……浄化……とは一体……?」
勇者「あの……僕にもよく分からないのですが」
国王「……やはりそうであったか」
国王「浄化の力を持つ者は身を隠さなければならぬ」
国王「ここに記されている者のうち、印が押されているのはお主を合わせて3人だけなのだ」
姫「3人……? ではこの27人のうち24人は……」
国王「我々に会うこと無く使命を全うしたということだな」
国王「だから勇者殿、そなたが自分が何者なのかを知らなくても不思議なことではない」
勇者「僕が……何者なのか……」
国王「うむ、よかろう」
国王「お主は知る権利がある。 姫にもいつか話すことだ」
国王「王都の歴史の話をしよう」
109
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/05/04(水) 00:45:17 ID:hXCleu9g
―王都の教会―
神父「おや、来られていたのですか」
「ええ。やっぱりここが一番安全みたい」
神父「城下町の人々はまだ浮かれていますが……」
神父「何人かローブを着ていない魔導師の方々を見かけました」
神父「見つかってはいないでしょうな」
「もちろん」
吸血鬼「緊張した鼓動は分かりやすいもの。 それを避けて歩くのは簡単よ」
110
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/05/04(水) 00:50:42 ID:hXCleu9g
神父「ほお……それは私からも?」
吸血鬼「ふふ……もっと近づけば分かるかしら」
神父「おやめなさい。 魔導師たちに見つかりますよ」
吸血鬼「あら、そんなつもりはないわ。 それより霊安室の鍵をもらえるかしら」
神父「ええどうぞ。 あのお方に御用で?」
吸血鬼「リーダーに聞きたいことがあるの」
111
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/05/04(水) 00:52:23 ID:hXCleu9g
?「おお。 待ってたぜ」
吸血鬼「……お見通しってことね。 待ち合わせならもっと綺麗な場所が良かったわ」
?「ははは、バンパイアといえば棺桶だろう」
吸血鬼「私は趣味じゃないのよね」
吸血鬼「空気がこもるしカビ臭いし……なにより音が反響して分かりにくいもの」
?「寝こみをハンターに襲われるのは怖いか?」
吸血鬼「そうね。 その魔物ハンターの話からしてもらおうかしら」
?「吟遊詩人か」
吸血鬼「ダンピールって苦手なのよねぇ」
?「あいつは特に聖人と魔族のハイブリッドだからな」
?「バンパイアからすればかなり厄介な相手だ。 魔法ばかりに目を取られるが……」
吸血鬼「能力よりも彼のルーツを教えてもらえるかしら」
112
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/05/04(水) 00:54:30 ID:hXCleu9g
?「んんっ? お前はバット上がりだと思っていたが」
吸血鬼「そうよ。 だから昔のバンパイア社会なんて関係ないわ」
?「じゃあなんで……」
吸血鬼「単純に興味があるの」
?「そうか。 まあせっかく来てくれたんだ」
?「王都の歴史からゆっくり話してやるよ」
113
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/05/04(水) 02:00:44 ID:duLzjlaw
おつ
114
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/05/04(水) 07:11:58 ID:Fq.sgXt2
生きてるとは思わなかった
115
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/05/04(水) 13:40:56 ID:a3PYLGjA
乙!
116
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/05/05(木) 03:15:51 ID:hLlclxP6
まってた!
117
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/05/05(木) 23:27:19 ID:qHWAUudU
なんと
118
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/05/06(金) 00:20:14 ID:fBKoXpO2
奇遇な!
119
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/05/06(金) 09:37:10 ID:IhZxBN1U
霊安室…
乙
120
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/09/07(水) 23:46:51 ID:5xTHvGN6
保守ん
121
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/10/10(月) 13:09:18 ID:CU5U6k5I
――
勇者(王都の歴史……)
勇者(それが僕に関係している……)
姫「……」
国王「かつてこの場所は国境だった」
国王「世界一険しい山がそびえ立っており、3国の境界線であるにもかかわらず人の通りは全く無かった」
国王「貿易の際には大きく迂回せねばならず、国同士の交流自体がわずかなものだったのだ」
国王「それゆえか、豊かではないが平和な時代であったと記されている」
国王「……だが500年前、異常な大雨が降った」
国王「山が崩れ、谷が埋まり、馬車の通る道となり……人の往来は急激に増えた」
国王「そして一年と経たず戦争は起こった」
122
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/10/10(月) 13:11:44 ID:CU5U6k5I
国王「思想の違い……川の問題……密入国……争いの火種様々だが」
国王「『攻めこむことができる』『攻めこまれるかもしれない』、この事実が国民に最も影響を与えたという」
国王「3つの国の感情は条約を結ぶ暇も与えないほど早く膨れ上がり」
国王「4つの軍隊による大戦争を引き起こした」
勇者「3つの国と4つの軍隊……ですか?」
国王「魔物の軍勢だ」
123
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/10/10(月) 13:18:15 ID:CU5U6k5I
国王「戦争が始まれば、必ず魔物が生まれる」
国王「死とは最も人の感情を揺り動かすもの。一つの死が多くの魔物を生むこともあるのだ」
国王「三つ巴の大きな戦争は……魔物を指揮する魔王を生んでしまった」
勇者「魔王……魔族を束ねる者……」
国王「バラバラに人を襲う存在だった魔物が統率されたのだ」
国王「この恐ろしい軍勢は瞬く間に戦場を支配していった」
124
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/10/10(月) 13:20:33 ID:CU5U6k5I
――
?「500年前、魔王を創りだそうをという話があった」
?「魔族ってのはどいつもこいつも自分が一番だと思ってるからな」
?「自分より上位の存在を欲しがるのはかなり珍しい」
吸血鬼「魔王……私も名前を聞いたことはあるのだけど、詳しくは知らないわ」
?「なんだ、結構若いんだな」
吸血鬼「失礼ね。 まだ人間より少し長生きし始めたところよ」
?「……」
?「それならまず魔王の定義からだな」
125
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/10/10(月) 13:22:40 ID:CU5U6k5I
?「魔王とは世界を恐怖に陥れた魔族へ送られる後天的な称号だ」
?「魔王という種族がいるわけではない」
?「歴史上一番新しい魔王は丁度バンパイアだな」
?「吸血鬼貴族"バンパイアロード"なんて呼ばれていたらしい」
吸血鬼「……あまり惹かれないわ」
?「ははは、だろうな。 生まれは色々あるが元をたどればコウモリの種族だ」
?「派手な感情は核になりにくい」
?「そいつも仕方なく魔王になったんだろう」
吸血鬼「なんだか魔王って後ろ向きなのね」
?「計算違いがあったんだ」
126
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/10/10(月) 13:25:11 ID:CU5U6k5I
?「元々は一から……つまり新しく魔物を作ってそいつを魔王にする計画だった」
?「それには圧倒的な魔力が必要だ」
?「つまり人間達の爆発的な感情だな」
吸血鬼「……それが500年前の戦争?」
?「そうだ。 人の心を最も大きく動かすものは人の死だからな」
?「当時あった三国にそれぞれ魔族が入り込んで戦争を引き起こした」
?「正確には元々高官の立場にいたバンパイアが喧嘩をふっかけて」
?「残りの二国がそれを買ったんだ。穏健派を魅了してな」
127
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/10/10(月) 13:27:16 ID:CU5U6k5I
?「戦争を起こしてしまえばあとはトントン拍子さ」
?「勝手にそこら中で魔物がばんばん生まれる」
?「魔物の近くには人間が大勢いる」
吸血鬼「魔物が人間を殺して……魔族になる」
?「そういうことだ」
?「魔族が大勢いるんだ。 当然抜きん出た実力を持つやつもいる」
?「そいつが勝手に評価されて魔王になる。 そのころにはとんずら……って計画だったのさ」
吸血鬼「適当な計画ねぇ。何の魔族を魔王にするつもりだったの?」
?「なんでもよかった」
吸血鬼「あらあら」
128
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/10/10(月) 13:29:09 ID:CU5U6k5I
?「どのタイミングで何が生まれるかは分からないからな」
?「それにさっきも言ったが、魔族は自分を一番だと思っている」
?「逆に言えばどの種族もそう思えるだけの能力を持っているんだ」
?「だから誰でも魔王になれる。 ある意味平等だな」
?「核となる感情についても予測はつかないが……」
?「戦争は一番分かりやすい人殺しだから問題ないと考えたんだろう」
吸血鬼「……」
129
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/10/10(月) 13:34:56 ID:CU5U6k5I
?「しかし戦争中に生まれた魔物はどれも圧倒的な力は持っておらず」
?「結局バンパイアのリーダーが魔王となった」
?「世界中の魔族たちの間で噂になってしまったんだな」
?「大雨の魔法できっかけを作り、3国を操って戦争を起こしたやつがいると」
吸血鬼「すごい人だったのね」
?「そうだな。バンパイアのグループでも一目置かれていたよ」
吸血鬼「……」
?「計画は失敗。グループは解散。魔王はこの地に一人残って」
?「生まれたての魔族たちを率いて仕方なく戦場を支配した」
吸血鬼「そんなことができるのに魔王を作り出す必要があったの?」
?「ああ。 それはな……」
?「魔王になれば英雄と戦わなければならないからさ」
130
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/10/10(月) 13:40:08 ID:CU5U6k5I
――
国王「戦場を支配した魔王はこの場所に砦を築き上げた」
国王「疲弊した人間にこれを攻略する術は残されていなかった」
国王「魔物たちだけが3国へ攻め込むことができる状況となり」
国王「世界が恐怖に包まれたとき……ゴホッゴホッ」
姫「お父様、少し休憩されては……」
国王「いいや、ここが大事なところだ」
国王「このとき一人の……そうたった一人の人間が魔王軍を壊滅させたのだ」
姫「……おとぎ話の英雄譚ですね」
勇者(英雄譚……?)
131
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/10/10(月) 13:41:53 ID:CU5U6k5I
国王「今でこそ架空の話だが、これは実際にあった王都の歴史なのだ」
国王「英雄は本当にすごい人物だった」
国王「高い身体能力、魔法技術、そして……」
国王「神の能力を二つ持っていたという」
勇者「神……ですか?」
国王「唯一無二の特別な魔法……」
国王「一目見ただけで誰もが神の存在を信じたと記されている」
国王「人々は彼の戦いぶりを見て、神の生まれ変わりだと崇めた」
国王「戦いの後、英雄は三国から離れた土地に身をおいたが……多くの人がそれを追いかけ」
国王「英雄を王……いや、神として中心に置いた国を作った」
国王「それが聖地だ」
勇者「え……」
132
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/10/10(月) 13:43:52 ID:CU5U6k5I
勇者「で、では王都は……?」
国王「二度と同じ愚を犯さぬよう三国が合併してできたのが王都だ」
国王「一つの国になってしまえば戦争は起こらない」
国王「力を合わせて残党を狩り、この地を開拓し大きな城を建てた」
国王「強い力を示すことで国民を安心させ、魔物を抑えようとしたのだ」
勇者「しかしそれでは……人が集まり過ぎてしまいます」
国王「うむ。人がいる限り魔物は必ず生まれる」
国王「そこで英雄は王都に子供を残した」
国王「無事生まれた英雄の子孫は、神の力の一つである"浄化"を持っていた……」
勇者「"浄化"の力……」
勇者「それが僕の聖火の魔法ということでしょうか」
国王「いかにも」
国王「英雄は魔王を誕生させないために力を遺伝させたのだ」
133
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/10/10(月) 13:47:17 ID:CU5U6k5I
姫「それでは……王都の平和な500年の歴史は……」
姫「勇者様の一族がずっと守ってきてくれたものなんですね」
国王「そう。我々と同じく、王都にとって必要不可欠な人物ということだ」
姫「……」
姫「お父様、その力を沢山の人間に与えることはできないのですか?」
国王「どういうわけかこの世に一人しか持てない力なのだ」
国王「加えて親から子へとしか遺伝しないとされている」
姫「そんな……それじゃあ……」
勇者「僕の身にもしものことがあれば、浄化の血は途絶えてしまう……」
勇者(そうか……それで……)
勇者(それで戦士さんは僕を戦わせまいとしたのか……)
134
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/10/10(月) 13:49:25 ID:CU5U6k5I
国王「浄化の力なくては王都は維持できない」
国王「だから我々はその存在を隠すことで守ってきた」
勇者「……申し訳ございません」
国王「?」
勇者「一族の使命も知らず……僕は目立ちすぎてしまいました」
国王「なにを」
姫「何をおっしゃいますか!!」
勇者「!?」ビクッ
姫「勇者様が行動を起こさなければ王都は未だドラゴンの恐怖の中!」
姫「私も塔の中で震えていましたわ!」
勇者「姫様……」
135
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/10/10(月) 13:53:03 ID:CU5U6k5I
国王「姫の言うとおりだ。誇りこそすれ悔やむ必要はあるまい」
国王「それに目立つのは悪いことばかりでもない」
勇者「……?」
国王「ときに勇者殿、欲しい褒美は決まったかな?」
勇者「いえ……それがまだ……」
国王「ならば姫をもらってやってくれないか」
勇者「えぇっ?」
国王「王族となってしまえば護衛をつけることも自然だろう」
姫「お父様……? それは少し無理がありますわ」
国王「竜を倒した英雄が王となる。 無理な話ではあるまい」
国王「姫もえらく気に入っておったではないか」
勇者「いえ……その……」
勇者「僕、女なんです……」
国王「……なんと……!?」
136
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/10/10(月) 13:58:32 ID:CU5U6k5I
国王「そ、それは本当か!?」
姫「はい。 そういえばお話しておりませんでしたわ」
国王「なん……なんということだ……!」
姫「……」
姫「うふふふ……」
国王「姫! 笑い事ではないぞ!」
姫「ふふ、すみません。 なんだかおかしくって……」
姫「お父様のそんなに驚いた声、初めて聞きましたわ」
勇者(姫様……本当に楽しそうに笑っている?)
勇者(なんだか王都に戻ってから喜怒哀楽が激しすぎるような……)
姫「勇者様、改めてお礼を言わせてくださいな」
姫「私たちを……王都を救ってくれて、本当にありがとうございます」
勇者「えと……ど、どういたしまして……?」
姫「うふふ」
137
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/10/10(月) 14:04:43 ID:CU5U6k5I
国王「しかし状況は芳しくないぞ」
国王「おそらく敵は浄化持ちが女ということを知っていたから動き出したのだろう」
勇者「はい。 戦士さん……ハンターの人もそう言っていました」
国王「敵の狙いが勇者殿であるならここを動かぬ方が良いのではないか?」
勇者「いえ、人狼を放っておくわけにはいきません」
勇者「対処が遅れると王都が半人狼だらけになってしまいます」
勇者「それにドラゴンと違って聖火が効く相手です」
勇者「王都で発生する魔物……倒すのは元々僕の仕事です!」
姫「勇者様……」
138
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/10/10(月) 14:07:28 ID:CU5U6k5I
――
吸血鬼「英雄を倒すこと」
吸血鬼「それが魔王を作る目的なのね」
?「そういうことだ」
?「自分より上位の存在を作ってでも倒したい相手……英雄の一族」
?「まあ当時は英雄になる前だったんだが、それでも一定の知名度があった」
?「やつに魔王をぶつけて共倒れにするのが理想」
?「勝っても構わないし、負けてもまあしょうがない」
吸血鬼「……?」
?「ははは。 お前でもこれは分かんねえか」
?「魔王でも英雄には勝てないんだ」
139
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/10/10(月) 14:15:03 ID:CU5U6k5I
吸血鬼「勝ち目が薄いのにそんな大掛かりなことをしたの?」
?「目的は英雄を倒すことってので間違っちゃいねんだが」
?「それは最終目的なんだ。 最後の最後で倒せばいい」
?「まずは相手を囲むんだ」
吸血鬼「……」
?「英雄は神の生まれ変わりと称えられた」
?「当時細々していた宗教はすべて、奴を中心とした『教会』へ統一された」
?「さらには英雄が住む地を信者が取り囲んだ。聖地だな」
?「あそこを攻めるのは一苦労だが、向こうから直接やってくることはまずない」
?「そして、信者以外の人間はこの王都に住んだ」
?「英雄の子は監視しきれない人間を守るために神の能力を1つ遺伝し」
?「能力を隠して王都に住み着いた」
?「これが浄化持ちで……魔王を創りだした目的でもある」
140
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/10/10(月) 14:25:14 ID:CU5U6k5I
吸血鬼「つまりリーダー……英雄の能力を分散するためだけに魔王を作ったの?」
?「リーダーはやめてくれよ」
?「オレは上に立つ器じゃない」
吸血鬼「そこまで知ってるのに?」
?「知ってるだけじゃ案外何もできないのさ」
?「さて、魔王を創りだした理由はそれで合ってる」
?「全ては浄化の能力を孤立させるため……王都もそのために作り出した」
?「この国は英雄の子孫を囲う檻であり……枷なんだよ」
141
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/10/10(月) 14:27:28 ID:CU5U6k5I
吸血鬼「でもね? リーダー」
?「うん?」
吸血鬼「私が聞いたのは王都ではなく吟遊詩人のルーツなのだけど……」
?「ははは、そうだったな」
?「まあこんだけ話せば想像はつくだろ」
?「あいつは当時の戦争を企てたバンパイア連中の子孫なんだよ」
?「同時に戦争を収めた英雄の子孫でもある」
?「まあその子孫たち……聖人連中は知らなかったろうがな」
吸血鬼「バンパイア達は知っていたの?」
?「おそらくな」
?「……おっと」ピクッ
?「思ったより早いな」
吸血鬼「? なにも聞こえないわよ?」
?「聴覚に頼り過ぎると痛い目みるぞ。 またな」
142
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/10/10(月) 14:28:51 ID:CU5U6k5I
――
城兵「国王様!」
国王「何だ騒々しい」
城兵「王宮魔導師より人狼を発見したとの報告が!」
勇者「! 分かりました!」
姫「行かれるのですか?」
国王「気をつけるのだぞ」
勇者「はい! おまかせください!」
143
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/10/10(月) 15:28:48 ID:i3USm2OI
乙!
144
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/10/10(月) 22:55:31 ID:x5pMOiFQ
更新遅すぎたよ内容忘れたから最初からまた全部読んだやないか
乙
145
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/10/10(月) 23:21:06 ID:1WrLNGKI
乙
146
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/10/11(火) 10:06:10 ID:78HSAyRU
おお久しぶり!
乙
147
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/10/16(日) 20:07:36 ID:VvmfwfZ.
一気に語られたな
敵に比べて勇者が頼りなく感じていたが
そうなるように仕向けられてたんだな
148
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/07/23(日) 00:41:01 ID:PAdXhIlA
―城下町―
タッタッタ・・・
魔導師C「勇者様!」
勇者「おまたせしました。 それで……」
見回り兵B「……」
勇者「……あの人ですか?」
魔導師C「はい。魔力が異常にゆらいでいて……あんな人は初めて見ます」
勇者「わかりました。行ってきます」
魔導師C「可能なら人気のない場所に誘導してから始末してください」
149
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/07/23(日) 00:43:24 ID:PAdXhIlA
勇者「すみません、少しいいですか?」
見回り兵B「……? はい、なんでしょう?」
勇者「最近この辺りで……」
見回り兵B「あ、あなたは勇者さん!?」
勇者「えっ?」
勇者(……ハズレか)
勇者「はい、そうですけど……」
見回り兵B「ぜひ話がしたいと思ってました!」
勇者「ええと……歩きながらでいいですか?」
150
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/07/23(日) 00:46:38 ID:PAdXhIlA
スタスタ…
勇者(まずは場所を変えないと……)
見回り兵B「それで聞きたいこととは?」
勇者「はい。最近この辺りでなにかおかしなことはありませんでしたか?」
見回り兵B「おかしなこと……ですか」
見回り兵B「城下町一体がドラゴンの話ばかりだったので」
見回り兵B「それ以外のことはあまり……」
勇者(なにも無いはずはない。 この人は多分……)
151
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/07/23(日) 00:48:14 ID:PAdXhIlA
勇者「ほんの小さな違和感でもいいんです。例えば夜に不審な人影を見たとか」
見回り兵B「夜ですか……そう言えば昨日の話なんですが」
見回り兵B「その日は酒を飲んでいたので足元がふらついていて」
見回り兵B「何かにぶつかって転んでしまいました」
勇者「何かとは?」
見回り兵B「分かりません……人のような気がしたのですが、周辺を見ても誰もいなかったんです」
見回り兵B「とはいえ酔っ払っていたので壁にでもぶつかったんでしょう」
勇者「そうですか……」
勇者(この人は多分……昨日人狼に襲われている)
勇者(既に感染もしているはずだ)
152
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/07/23(日) 00:50:13 ID:PAdXhIlA
見回り兵B「ところで勇者さん。その背の大剣はもしかして……」
勇者「……」
勇者「はい、ドラゴンと戦うときに使ったものです」
見回り兵B「そんなものを軽々と背負うなんてさすが! あのドラゴンを倒せるわけです!」
勇者「……」チラッ
魔導師C「……」コクリ
勇者(よし、人気のないところまで誘導できたな)
勇者「実はこの剣には秘密があるんです」
見回り兵B「秘密?」
153
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/07/23(日) 00:53:41 ID:PAdXhIlA
勇者「今この剣は重さがほぼなくなっています」
勇者「だからこのように僕の力でも背負うことができ……」
勇者「そして剣を抜くと、一瞬間を置いてから重くなるんです」
見回り兵B「ほんとうですか!? それはすごい……」
勇者「よかったら見てみますか?」
見回り兵B「いいんですか?」
勇者「いいですよ。減るものじゃないですし」
勇者(魔力は減るけど……ここは聖火を使っておきたい)
154
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/07/23(日) 00:54:27 ID:PAdXhIlA
勇者(半人狼となる直前の人……その人に向かって聖火を使えばどうなるか)
勇者(なにも効果はないのか……襲い掛かってくるのか……)
勇者(それとも……)
勇者「ではいきます。剣を鞘から抜くと……」シュッ
見回り兵B「おお、思ったより無骨な……」
ズシッ…
勇者「っとと……このように重くなるんです。そして……」
勇者「聖火の魔法」
シュボッ
見回り兵B「!!」
155
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/07/23(日) 00:57:45 ID:PAdXhIlA
見回り兵B→半人狼B「ウ、ウァアアアアア!!」バッ
勇者(変身した! やっぱり聖火に反応するんだ!)
半人狼B「ウゥウウ……」
勇者(距離を取られた……警戒されてる……)
勇者(そしてすごい表情だ……僕への殺意がビリビリと伝わってきてる気がする……)
勇者(僕から逃げるためじゃなく……殺すために隙を伺ってるんだ……)
勇者「……」チラッ
半人狼B「ガァ!」ダッ
勇者(よし、目線を外したら飛びかかってきた!)
勇者(この大振りかわして掌底を……)
156
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/07/23(日) 00:59:51 ID:PAdXhIlA
勇者(いや、ダメだ!)サッ
半人狼B「ガッ!?」
バターンッ!
勇者(ふぅ、危ない……)
勇者(相手は鎧をつけているんだ……僕の腕力で迎え撃ったら骨が折れてしまう……!)
勇者(ここはうまく遠距離から……ん?)
半人狼B「ガ……ヴヴ……」バタバタ
勇者(転倒してる……自分の重心を分かってないのか……)
勇者「聖火の魔法を……箒に!」シュボッ
勇者(相手のリーチの外から……顔を狙う!)
バシッ
157
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/07/23(日) 01:01:38 ID:PAdXhIlA
半人狼B「アアアァアア…」
ボォオオオ…
勇者「よし、浄化完了だ」
兵士「おーい!大丈夫かー!」
勇者「あ、兵士さん」
兵士「こいつは……!」
勇者「半人狼だったけど……問題なく倒せたよ」
勇者「もうすぐ燃え尽きる」
兵士「……」
158
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/07/23(日) 01:04:11 ID:PAdXhIlA
魔導師C「勇者様、そちらは……」
勇者「大丈夫、友達ですよ」
兵士「ああ、友達だ……」
勇者「兵士さんも人狼捜索を?」
兵士「そうだ。 それで勇者、すぐに来てほしいんだが」
勇者「! 人狼が見つかったの!?」
兵士「いや……見つかったと言えばそうなんだが……」
兵士「生け捕りにできたんだ」
勇者「なんだって!?」
兵士「とにかくきて欲しい」
勇者「う、うん、分かったよ」
魔導師C「……」
勇者「大丈夫ですよ。行きましょう」
159
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/07/23(日) 01:11:01 ID:PAdXhIlA
―牢屋―
兵士「ついたぞ」
勇者(ここは……あの剣士が入っている牢屋……)
勇者(そしてこのあたりは……女性の受刑者の部屋みたいだ)
勇者(人狼は男だと聞いていたけど……?)
メイド「うぅ……ぐすっ……」
勇者「め、メイドさん!?」
メイド「あ……勇者さぁん……」
勇者「一体どうしたの……その――」
メイド「わたし……わたしっ……」
勇者「耳! しっぽ! 後ろ足!」
メイド「人狼にされちゃいましたぁ〜〜!」
160
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/07/23(日) 17:08:39 ID:HLRMz9C6
生きとったんか!
乙
161
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/07/24(月) 04:31:35 ID:Y2Crc5kI
お、久しぶり乙
メイドちゃん前スレ振りじゃないか?
話の流れを忘れてしまった…
162
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/07/25(火) 00:29:03 ID:LFgFFn/Y
地味な話だったが漸く花が添えられたか
163
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/10/09(月) 00:34:15 ID:ekOb8.Jo
メイド「うぅぅ……」
勇者「な、なんで……どうして……?」
メイド「わかりません……朝起きたら体中がすごく熱くなって……」
メイド「あわてて薬を飲んだら気を失って……気づいたらこの姿に……」
勇者「薬?」
メイド「えっと……その……」
メイド「吸血鬼に渡された薬です……」
勇者「な!」
勇者「なんで言わなかったんだ!!」
メイド「ひっ……だってその……」
メイド「勇者さん……みんなに囲まれて……忙しそうだったから……」
勇者「……」
164
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/10/09(月) 00:36:10 ID:ekOb8.Jo
勇者(どういうことだ……?)
勇者(耳や尻尾は会話に合わせて動いてる……作り物じゃない)
勇者(メイドさんは明らかに半人狼になっている)
勇者(それなのに自我があって話が通じるのは何故なんだ? 今までと半人狼と違う……)
勇者「メイドさん、姿が変わってしまって……それからどうしたの?」
メイド「えっと……女僧侶さんといっしょにお城へ行こうとしたら……」
メイド「兵隊の人に見つかってここまで連れてこられました……」
勇者「女僧侶さん? たしか今屋敷でいっしょに暮らしてる……」
女僧侶「私ならここにいますよ」
勇者「な、なんで……牢屋の中に?」
勇者「まさか……」
女僧侶「心外ですね。 私は人間です」
165
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/10/09(月) 00:38:12 ID:ekOb8.Jo
勇者「女僧侶さん、メイドさんの話は本当ですか?」
メイド「……」
女僧侶「はい、今朝私が彼女の部屋に行ったときには既にこの姿で気を失っていました」
女僧侶「王宮魔導師や勇者様の考えを聞くべきと思い、彼女に布をかぶせ王宮へむかったところ」
女僧侶「声をかけられて私まで牢屋の中に……」
女僧侶「勇者様、ここから出してください」
メイド「わ、わたしも……」
勇者「……」
兵士「勇者、どうするんだ?」
166
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/10/09(月) 00:41:38 ID:ekOb8.Jo
勇者「兵士さん……?」
兵士「お前がさっき倒していた半人狼、オレの友達なんだ」
勇者「!」
兵士「っつっても1回話しただけだしよ、そう思ってたのはオレだけかもしれないが」
兵士「……ドラゴンから逃げ帰ってきた翌日。 徴集されたのは7人中オレとあいつだけだった」
兵士「5人は体か心をやられたから兵隊を続けられなくなったんだ」
兵士「2人して笑っちまったよ。……あんなことがあったのに続けるオレたちは馬鹿だってな」
兵士「その1回だ」
勇者「……半人狼と化したら人間には戻れない」
勇者「ああするしかなかったんだ」
兵士「ああ、わかってる。 お前は正しい判断をしたんだよな」
兵士「でもよ……でもよぉ……」
167
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/10/09(月) 00:44:21 ID:ekOb8.Jo
メイド「あ、あぅ……」
兵士「なぁ勇者、どうするんだ」
兵士「人狼は王都にとっちゃまずい種族なんだろ」
兵士「ここで判断を間違えたらシャレにならないんじゃないか」
勇者「それは……」
ドゴォオオ……!!
勇者「!!」
兵士「!!」
看守「た、大変だー!」
看守「上の牢屋にスライムが出た! 助けてくれ!」
兵士「っ……どうするんだ!勇者!」
勇者「……」
168
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/10/09(月) 08:47:15 ID:7q2EZ0pA
ガタッ
169
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/10/09(月) 13:40:52 ID:uW6Sgv/k
シビアやのう…
170
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/11/11(日) 00:42:10 ID:g7zwHoZc
勇者「……」フゥー
勇者「聖火の魔法!」シュボッ
メイド「ひっ!!」ビクッ
勇者「兵士さん、この松明を」
兵士「……オレが持つのか?」
勇者「スライムが相手なら僕が行くべきだ。一番早く片付けられる」
勇者「でもこのタイミングで魔物が出てきたのは……多分偶然じゃない」
勇者「ここに敵がくると思うんだ。メイドさんと接触するために」
勇者「だからこの松明でそれを阻止して欲しい。頼めるかな?」
兵士「……」
兵士「ああ!わかったぜ!」
勇者「ありがとう。じゃあ行ってくるよ」
171
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/11/11(日) 00:44:22 ID:g7zwHoZc
タッタッタ…
看守「この階段を上がったらすぐだ!気をつけろよ!」
勇者「はい!後は僕に任せて!」
看守「頼んだぞ!」
勇者(ここか!)
囚人A「どいてくれぇえええ!」
勇者「う、うわっ! なんだ!?」
ダッダッダッダ…
勇者(すごい速さで駆け抜けて行ったぞ……?)
狼A「ガルルッ!」
勇者「!」
172
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/11/11(日) 00:47:25 ID:g7zwHoZc
勇者「聖火の掌底!」
バシッ
狼A「キャイン!」
ジタバタ…
勇者(心臓部に当てたのに体が燃え尽きない……?)
勇者(そうか、魔物じゃなくて普通の狼か)
勇者「でもなんでこんなところに……」
ゴゴゴ…
勇者「!!?」ハッ
173
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/11/11(日) 00:48:27 ID:g7zwHoZc
ゴーレム「オォオオオ……」
囚人B「ひぃっ!こっちにきた!」
囚人C「た、助けてくれっ!」
狼B「グル……」
狼C「……」
勇者(な、なんだこの状況は!?)
174
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/11/11(日) 00:49:50 ID:g7zwHoZc
勇者(檻が壊されている……それで囚人たちが外に出ているのか)
勇者(でも狼がいるから牢屋の外には出られてないみたいだ……)
勇者(この狼達はどこから来たんだ? もしかして人狼がこの場にいるのか……?)
勇者(それに……)
ゴーレム「オォーッ!」
囚人B「うわぁ!」
勇者「危ない!」バッ
ズゥウウン…
囚人B「あ、あんたは……?」
勇者「とにかく僕の後ろに!」
ゴーレム「……」
勇者(石の大男……? 初めて見る魔物だ……)
175
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/11/11(日) 00:52:17 ID:g7zwHoZc
ゴーレム「オー!」ブンッ
勇者(腕の振りは速い、でも初動が大きいから避けられる……)サッ
ゴーレム「ク……」
ゴーレム「クルナ……ヨルナ……!」
勇者(衝動的な言葉……)
勇者(こいつは今生まれたばかりの魔物なのか……?)
囚人C(へへっなんか知らねえがあいつが化けもんの相手をしてくれてるみたいだな……)
囚人C(脱獄のチャンスってわけだ……)
狼C「バゥ!」
囚人C「っ!」ビクッ
ゴーレム「!」
ゴーレム「オオォ…!」
勇者(まずい!)
176
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/11/11(日) 00:53:52 ID:g7zwHoZc
ダッ…
勇者(魔物を挟んで反対側に人がいる! 間に合わない!)
勇者(でも僕に背を向けた……攻撃するチャンスだ!)
勇者(心臓部なら……一撃で決めれば助かるかもしれない!)
勇者「聖火の掌底!」バシッ
勇者「っ!」
ゴーレム「オオ!」ブン
グチャッ
177
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/11/11(日) 00:55:54 ID:g7zwHoZc
勇者(ダ……ダメだった……)
勇者(たぶん衝撃が内部まで届いてない……なんでだ?)
勇者(……体格差か!)
勇者(この掌底は上へ向けて打っても効果が薄い。 きっと力を伝える別の型があるんだ)
勇者(僕の技は武闘家さんの見よう見まねだから、応用の仕方が分からない)
勇者(早くこいつを仕留めないと犠牲者が増えてしまうのに……!)
狼B「ウォウ!」
ゴーレム「…!」
勇者(!)
勇者(なにかに反応した……奥にもう一人いる……?)
178
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/11/11(日) 00:57:34 ID:g7zwHoZc
勇者(今度は助けてみせる……だから聖剣を使う!)
勇者(投げると魔物を突き抜けて巻き込んでしまうかもしれない……接近するしかない!)
勇者「行くぞっ! 聖剣抜刀!」バッ
勇者(心臓部を狙って……突く!)
ゴーレム「オッ!」グルッ
ザクッ!
勇者(っ! 狙いがそれた!)
179
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/11/11(日) 01:00:01 ID:g7zwHoZc
ゴーレム「クルナー!」ブンッ
勇者「くっ……」
勇者(攻撃は相変わらず大ぶり。問題なくかわせる……けど)
勇者(ここからどうする……?)
勇者(脇腹に聖剣が刺さってしまった……ドラゴンの時と同じだ……)
勇者(でもドラゴンと違ってこの魔物は"にぶい"……蹴りを入れても怯まないだろう)
勇者(隙を見て聖剣を引き抜くか……でも石の体内にガッチリ入ってしまってるぞ)
勇者(ならいっそ聖剣を足場にするか? あそこからなら掌底でまっすぐ心臓部を狙える)
勇者(よし――)
ズバッ!
勇者「!!」
「――――重いな」
剣士「こんな大剣、お前には過ぎた得物に見えるが」
勇者「あなたは……いや、お前は剣士!」
180
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/11/27(火) 10:29:35 ID:FzfTJ4/w
ああ、牢に入ってたんだっけ
前スレまで遡らんと分からんな……
181
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/19(土) 00:37:15 ID:TxV6yx1Y
ゴーレム「コナイ……デ……クレ……」
ズズーンッ
勇者(倒れた……致命傷か)
剣士「お前とは言ってくれるな」
勇者「その聖剣は僕の5倍の重量がある」
勇者「石に埋まった状態で斬り上げるのは、人間の筋力じゃ無理だ」
剣士「……」
勇者「お前はもう……魔族となっているんだ!」
剣士「ほう……」
182
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/19(土) 00:38:12 ID:TxV6yx1Y
剣士「ならどうする?俺を浄化するのか」
勇者「そうだ!聖火の魔法!」シュボッ
剣士「!」ピクッ
勇者「バンパイアに魅了された人間がバンパイアになる条件は……」
勇者「魔物が魔族になる条件と同じ!!」
勇者「人を殺し続けることだ!許すことはできない!」
剣士「……いいだろう。その勝負受けて立つ」ブン
ズゥゥウウウン…
勇者「!」
剣士「お前の剣なのだろう?早く拾って構えろ」
183
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/19(土) 00:42:20 ID:TxV6yx1Y
勇者「いいのか? 敵に武器を渡してしまって」
剣士「館での負けは完全な形で返す」
勇者(聖火のついた箒を……まずは岩の魔物に)ボォオ…
勇者(炎の色が変わった……浄化完了か。このまま聖剣も軽くして拾おう)
剣士「どうした。早くしろ」チャキ
勇者(黒くて短い……ナイフ……?)
勇者(どうやってこの牢屋で用意したんだ……?)ボォ
ヒョイ カシャン
剣士「!?」
勇者(聖剣はとりあえず背負ったままにしておこう……)
勇者(相手が人型なら聖火をつけた箒のほうが取り回しがいい)
剣士「ま、待て。今のはなんだ」
勇者「……聖剣の特性だよ」
剣士「…………。 二言はない!かかってこい」
勇者(どうにもやりづらい……)
184
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/19(土) 00:43:20 ID:TxV6yx1Y
勇者(いや、相手が人間だなんて思うな……もっと集中するんだ……)フゥー
勇者(相手のほうが動きは速い、リーチで勝っていても潜りこまれたら終わりなんだぞ)
勇者「よし……いくぞ!」ダッ
―――ズバッ
勇者(!?)バッ
剣士「……」チャキ
勇者(な、なんだ……?)
勇者(いったいなにがおこった……?)
185
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/19(土) 00:45:58 ID:TxV6yx1Y
勇者「ハァ……はぁ……」
勇者(剣士の腕がいつの間にか上がっている……攻撃の動作にすら気づけなかった……)
勇者(とりあえず僕に怪我は無い……無意識のうちに躱せていたみたいだ……)
勇者(おそらく僕は箒を振る動きを途中で止めて後ろに下がった……?)
勇者(動きが見えないほど速い相手と勘だけで戦ってる……これじゃまるで……)
勇者(……)
勇者(クロスボウ!)ドシュ
キンッ
剣士「いまさらこんな玩具が効くか」
勇者(矢の先に刃の腹を合わせて流された……)
勇者(接近戦も飛び道具もダメ……これじゃまるでドラゴンと戦ってるみたいだ……!)
186
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/19(土) 00:46:44 ID:TxV6yx1Y
勇者(ここまでレベルに差のある相手だったのか……)
剣士「どうした? 消極的だな」
勇者「そっちこそ……!」
勇者(勝つには聖剣を使うしか無い……でも警戒されている……)
剣士「……」
剣士「おい」
勇者「!」
剣士「勝負を中止しなくていいのか?」
187
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/19(土) 00:48:01 ID:TxV6yx1Y
勇者「……どういう意味だ?」
剣士「人が襲われているぞ」
勇者「な、なんだって?」
剣士「こっちだ。ついてこい」
勇者「あ!ちょっと……」
タッタッタッ…
勇者(追うしか無いか……)
188
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/19(土) 00:49:39 ID:TxV6yx1Y
――
メイド「……」
女僧侶「……」
兵士「……」
メイド「あの……」
ボォ…
メイド「ひっ……いえ、なんでもないです……」
兵士「ちっ……」
兵士「なんだよ、言いたいことがあるなら言ったらどうだ」
メイド「いえ……」
兵士「それとも魔物だから会話もできねえってのか」
メイド「……」
189
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/19(土) 00:50:40 ID:TxV6yx1Y
メイド「……えっと」
メイド「私が初めてお屋敷に行ったときに、従業員の選別を手伝っていた人ですよね」
兵士「……」
兵士「そうだよ。それで?」
メイド「えっ! い、いえ……それだけです……」
兵士「……っ」
兵士「なんで……」
メイド「えっ?」
兵士「なんでお前だけ……なんであいつや先輩はよぉ……」
メイド「……」
190
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/19(土) 00:51:21 ID:TxV6yx1Y
――
タッタッタッ…
剣士「……」
勇者(こっちはあの大きな音がしたあたり……)
勇者(つまり誰かがスライムに襲われているのか……?)
半人狼E「ガァアアアア!!」
魔導師C「ひぃっ!」
勇者「!」
勇者(囚人服を着た半人狼!)
191
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/19(土) 00:52:30 ID:TxV6yx1Y
剣士「またこいつか」
ズバッ!!
半人狼E「グゥッ…!」
ドサッ
勇者(あの黒いナイフで胴を真っ二つに!?)
勇者(いや、あれは……ナイフじゃない)
勇者(半人狼の指か!)
192
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/19(土) 00:53:28 ID:TxV6yx1Y
魔導師C「あ、ありがとうございます……」
剣士「……」
勇者(剣士と魔導師Cさんの間に入らないと……)タッ
剣士「ハァ……ハァ……見くびるなよ……」
勇者(なんだ?様子が……)
剣士「人質など使うと思うか……?」ギロリ
勇者(!! 赤い瞳……!)
バッ
勇者「あ、どこへ行くんだ!」
193
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/19(土) 00:54:25 ID:TxV6yx1Y
勇者(すぐに剣士を追わないと……でもまずはこっちだ)
勇者「怪我はありませんか?」
魔導師C「はい。なんとか……」
勇者「このあたりにスライムがいたはずです。どこに行ったか分かりますか?」
魔導師C「スライム……?魔物のスライムのことですか?」
勇者「えっ……見てないんですか? でも確かに魔物が発生する時の大きな音が……」
魔導師C「大きな音は……この壁が原因です」
勇者「壁?……この大穴のことですか?」
魔導師C「はい。看守に壁の奥から音がすると言われて」
魔導師C「魔眼で見るとわずかに魔力反応があったので、みなさんを呼ぼうと思ったんですが……」
魔導師C「そのとき壁から魔物が……いえ、壁が魔物となって暴れ始めたのです」
勇者(大きな音は……あの岩の大男の……魔物の発生音と壁の破裂音だった……)
勇者「やられた…………!」
194
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/19(土) 00:55:38 ID:TxV6yx1Y
――
メイド「あっ」
兵士「今度はなんだよ」
メイド「だ、誰かきます……」
兵士「!!」
兵士(確かに足音が……!)
看守「おーい!オレだオレだ!」
兵士「ああなんだ、あんたか」
195
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/20(日) 11:53:26 ID:XK5sCXXY
ジリジリするなぁ
196
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/11(月) 11:28:28 ID:WWJ6NMtI
看守「上はもう魔物だらけだぜ。ひどいもんだ」
兵士「なんだって?」ボゥ…
看守「おっと、あんまり火を近づけるなよ。松明のマナーだぜ」
兵士「ん?ああすまん……」
看守「お前も加勢した方がいいんじゃないか?」
兵士「いや、オレはこのメイドを見張ってろと勇者に頼まれてるからな。ここにいる」
看守「ならもう少し警戒しろよマヌケ」
兵士「……あん?」
ゴッ!ガンッ!
兵士「ッ…!?」ドサッ
看守「さてと」
197
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/11(月) 11:30:47 ID:WWJ6NMtI
メイド「ひ、ひぃっ……」
看守「怯えることは何もないぞ」
メイド「ひ、人殺し……」
看守「頭をぶつけて気絶してるだけだ、あれぐらいじゃ人は死なねえよ。それよりも……」
看守「まずはおめでとう」パチパチパチ
メイド「……?」
看守「お前はこの世でもっとも自由に生きる権利を手に入れたんだ」
看守「もっと喜んでもいいんだぞ?」
メイド「なにも……嬉しくないです」
198
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/11(月) 11:31:57 ID:WWJ6NMtI
メイド「こんな姿じゃもうメイドのお仕事もできないし……」
メイド「お友達も作れない……勇者さんにも嫌われちゃった……」
女僧侶「……」
看守「できるさ。なにも不可能なんてない」
看守「お前は何も失っちゃいないんだ。人間と仲良くなってメイドの仕事だってできるし……」
看守「城の舞踏会で踊ることもできるだろう」
メイド「なっ……!」
女僧侶「さっきから聞いていれば意味不明なことばかり……」
女僧侶「あなたは何者なんですか。ここの看守ではありませんね?」
看守「この体は正真正銘看守のものだぜ?」
看守「ただ……」
ゴゴゴゴゴ…
199
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/11(月) 11:34:44 ID:WWJ6NMtI
バキッ ミシミシ…
看守「ぼちぼちこの牢屋は崩れるな」
メイド「ひっ……!」
看守「大丈夫。お前ならすぐ地上へ脱出できる」
メイド「う、腕が……」
看守「腕?あー……本当だ。さっきの聖火の熱で体が崩れてきてるな」
女僧侶「死体を操っていた……なんと罰当たりな……」
看守「そのとおり。この体を――から――てるんだ」
200
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/11(月) 11:35:24 ID:WWJ6NMtI
看守「あーいかんな――が切れ――――だけは言わ――」
看守「メイド」
メイド「!」
看守「まずはお前自身を信じることだ。例えば」
看守「その――子に――ない」
ドサッ ゴロゴロゴロ…
メイド「ひぃっ!」ビクッ
女僧侶「首が……」
201
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/11(月) 11:37:24 ID:WWJ6NMtI
グラグラグラ…
女僧侶「まずいですね」
女僧侶「どうやらここが崩れるのは本当のようです」
女僧侶「それまでに誰かが助けに来てくれればいいのですが……」
メイド「……」
パキンッ
ギィー…
女僧侶「えっ……?あなた今なにを……」
メイド「えっ? だって……最後に言っていたから……」
メイド「"その鉄格子にカギはかかってない"って……」
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