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元勇者「本物の勇者が現れてから一年経った」
1
:
◆RvUAp8KrlM
:2014/12/09(火) 06:10:49 ID:IyhGY/1M
巨竜は 咆哮を あげた! ▼
勇者「皆いったん退くぞ! おい、聞いてるのか!?」
勇者(くそっ、雷雨で声が――)
巨竜の こうげき!! ▼
勇者「うわああああぁぁ!! うぅ……」
勇者「!? 武道家!? おい、大丈夫か! おい!!」
勇者「僧侶、武道家を頼む! 手当てを急げ!!」
勇者「魔法使いも俺の近くに! ルーラの詠唱を――」
巨竜の こうげき!! ▼
勇者「ぐああああッ!!」
勇者(くそっ、どうすれば!)
勇者(このままじゃ全員……――)
152
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/01/10(土) 04:40:47 ID:h0bTK8sU
【大聖堂・入り口】
剣士「……さて。しばらくだんまりになるぜ。後は頼んだ」
賢者「楽なものね」
僧兵「どなたでしょうか」
賢者「旅の道士。先日こちらに訪れたばかりよ」
僧兵「当聖堂に何のご用でしょう」
賢者「ここの礼拝堂にて祈りを捧げるよう、知人に勧められたわ」
僧兵「なるほど、記念礼拝ですね。どうぞお通り下さい」
賢者「ありがとう」
僧兵「そちらの方は? お顔を伏せられているようですが」
剣士「……」
賢者「この者は私の……護衛よ。ただの護衛。何か問題かしら」
僧兵「失礼ながら、ここから先は前科者かどうか確認するため、お顔を晒して頂きます」
僧兵「教会に異端分子が紛れるのを防ぐため、規定は厳守です。ご協力下さい」
153
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/01/10(土) 04:42:02 ID:h0bTK8sU
賢者「……」
剣士(……やむを得ないな。俺は抜けよう。さっきの広場近辺で待ってる)
賢者(勝手ね)
剣士(一人じゃ不安か?)
賢者(一人の方がいいくらいよ)
剣士(その意気だ。じゃあな) スタスタスタ…
賢者「失礼したわ。私一人で入るわね」
僧兵「お連れの方は?」
賢者「顔の傷を治してから出直すことになったわ。気にしないで頂戴」
僧兵「はあ」
賢者「礼拝堂はどちら。あまり時間もないのだけれど」
僧兵「し、失礼しました。まず聖堂に入ってすぐの通路を、真っ直ぐ行って――」
賢者「……」 チラ
賢者( すぐいなくなるのね。本当、勝手)
154
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/01/10(土) 04:42:59 ID:h0bTK8sU
【大聖堂内】
賢者(……さて。僧侶の行方ね)
賢者(誰に聞けば、すぐに分かりそうかしら)
賢者(そこそこ偉そうな人なら、誰でも良さそうだけれど――)
「あら。こんなところまで足を運ぶなんて」
賢者「!」
「いよいよ懺悔も佳境ってことかしら?」
賢者「お姉様」
次女「近々婚礼があると聞いていたけど、その様子じゃ破談したみたいね」
次女「まぁ妥当な顛末でしょうね。ニセ勇者の側女なんて、不名誉の塊だもの」
作曲家「ハニー、ここにいたのか。おや、その子は誰だい?」
次女「あっダーリン! 紹介するわ、我が公爵家未曾有の汚点、妹の三女よ!」
賢者「お姉様」
賢者「ちょうど良かったわ。聞きたいことがあるの」
155
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/01/10(土) 04:44:09 ID:h0bTK8sU
ここまで。これからぽつぽつ更新していきます
156
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/01/10(土) 04:59:53 ID:Jm0TXMyY
乙
157
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/01/10(土) 06:44:17 ID:FuzynUYI
おつかれさま!
158
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/01/10(土) 07:05:36 ID:TSwLnD.U
乙
159
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/01/10(土) 09:01:07 ID:XW40QWF.
乙
160
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/01/16(金) 03:38:50 ID:XFYqUKHE
楽しみに待ってるぞー
161
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/01/19(月) 20:25:41 ID:5Ue4PqkU
>>77
密かに楽しみにしてるから、長いと嬉しい。
まだかなぁ。
162
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/01/24(土) 18:58:40 ID:xAdsWgZk
帰ってきてくれー
163
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/01/29(木) 00:45:03 ID:y/SVKyts
まだか
164
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/02/01(日) 21:46:16 ID:C5QuDbOI
待ってるんだけどなー
165
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/02/08(日) 13:30:48 ID:vMrWwHDQ
はよ
166
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/02/11(水) 19:31:34 ID:WK2.P73w
婆さん続きはまだかのぅ…
167
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/02/14(土) 23:54:21 ID:9Ympi0E2
最近の勇者系SSは途中で消えてばっかだなあ・・・
168
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/02/14(土) 23:58:57 ID:.ShvU8RM
魔王倒したら今度は人から追われるから失踪も仕方ないね
169
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/02/19(木) 17:04:35 ID:3xMnVW8g
再開しなさそう
170
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/03/01(日) 00:52:42 ID:hh/4GwqA
age
171
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/03/16(月) 23:17:26 ID:xoHhWWT2
トリ合ってるかな
もうちょっと待ってて下さい
172
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/03/16(月) 23:34:49 ID:maowLYRI
待ってるよ〜乙
173
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/03/17(火) 00:44:04 ID:6QojeXgE
よっしゃ
174
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/03/20(金) 20:39:58 ID:2Ri9ZX.2
乙!
面白い
続き待ってる
175
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/03/27(金) 12:51:37 ID:asxzQkDg
2ヶ月ぶりに投下
>>154
〜
176
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/03/27(金) 12:52:19 ID:asxzQkDg
次女「まあまあ。あなたが私に頼み事なんて、よっぽど追い詰められてるのかしら」
次女「何を聞きたいのか、当てて見せましょうか? どうせ行く場所に困って、わざわざここを訪ねたんでしょ」
次女「そうねえ、本命は『私たちの楽団に入りたい』といったところかしら?」
作曲家「彼女は、なにか音楽はできるのかい?」
次女「さっぱりよ! 見たことないもの!!」
作曲家「う〜んそれはナンセンス。我が楽団は入団希望者で溢れてる、余裕はないねぇ」
次女「らしいわよ! ふふっ、残念だったわね!」
賢者「僧侶はどこに行ったの」
次女「え? 何、なんですって?」
賢者「この教会から追放された、僧侶はどこに行ったの」
作曲家「? 僧侶……?」
次女「……」
次女「あんた――昔から気に入らないのよ」
次女「僧侶は、どこに行ったの、ですって?」
177
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/03/27(金) 12:53:35 ID:asxzQkDg
次女「いつもいつもいつも私のことなんて眼中にないような態度を取って!!」
次女「稽古だってろくにやらなかったくせに、いつも平然とすました顔して!!」
作曲家「お……おい、ハニー……」
次女「呪文なんて訳の分からないものにのめりこんだくせに、皆にチヤホヤされて!!」
次女「魔王退治に出るあんたを笑顔で町から送りだすとき、頭がどうにかなりそうだったわ!!」
次女「今でこそ言うけど、とっとと魔王に殺されてしまえばいいと呪ったものよ!!」
作曲家「ハニー、落ち着いて……」
次女「ハァ……ハァ……」
賢者「……」
次女「ハァ……ハァ…… ふ ふふふ」
次女「でもね」
次女「許してあげる」
次女「そんなみじめな末路を迎えたんですもの。やっぱりあなた、何もかも間違っていたのよ」
次女「そして私は正しかった。それが証明されたから、あなたのすべてを許してあげるわ」
次女「跪いて懇願なさい? 姉妹のよしみで、楽団の雑用としてこき使ってあげる」
178
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/03/27(金) 12:54:17 ID:asxzQkDg
作曲家「ハニー、そんな勝手に……」
賢者「……」
スッ
ペコリ
次女「何? それ。メイドの真似事じゃなくて、跪きなさいと言ったのよ」
賢者「そちらの殿方」
作曲家「!? ぼ、ぼくかい?」
賢者「こちらの教会に以前いらしていた、ニセ勇者一行の一人」
賢者「僧侶の行方をご存知ないでしょうか?」
作曲家「さ、さあ……北の方へ逃げたとしか……」
賢者「十分です。ありがとうございます」ペコリ
作曲家「い、いや……」
次女「あんた」
次女「許さない。絶対に……許さないわ」フルフル
179
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/03/27(金) 12:55:58 ID:asxzQkDg
次女「 」スー
次女「みんな来――」
賢者は メラを となえた!
メラは 次女の めのまえを とおりすぎた!! ▼
次女「来ゃふっ!?」ズテン
作曲家「ハニー!? 大丈夫か!?」
賢者「――例えばの話よ。お姉様」
賢者「お姉さまの美しい歌声と、私の『呪詛(ザキ)』……『勝負したら』どちらが勝つかしら」
次女「!? あ……あんた……」
賢者「何の勝負かは決めてないけれど、多分、どんな勝負だったとしても、お姉様の息の根は止まるわ」
賢者「そうなると、勝ち負け以前の問題になってくるでしょう。だから、争い事は成立しないの」
賢者「相手が今のお姉様一人である以上、争いなんて成立し得ないの」
賢者「少しは言いたいこと、伝わったかしら」
賢者「じゃあ、さようなら」 スタ スタ スタ
180
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/03/27(金) 12:57:03 ID:asxzQkDg
――
信者A「――僧侶? ああ、あの大罪人なら、追放された日にここから消えてそれっきりさ」
信者B「――知るものか。奴が一時ここにいたと考えるだけでも身の毛がよだつ」
信者C「――存じません。僧侶などという方はここにはいません」
信者D「――ああ、あんたもあいつを探してるのか? やっぱり直々に極刑を下さないとな」
信者E「――知らないが、それよりあんた、どこかで見たような……」
――
賢者(……)
賢者(こんなところかしら。そろそろ怪しまれてきたし、切り上げ時ね)
賢者(できれば司祭級の立場の人に会って、詳しい話を聞いてみたかったのだけれど)
賢者(……奥の間は、外来の信者は立入禁止みたい。それに堅守な備えに、武装を隠した僧兵達)
賢者(分かりやすい伏魔殿ね。水面下でどんな悪巧みがのさばってるのかしら)
信者「 」ヒソヒソ
信者「 」ヒソヒソ
賢者(……長居は禁物ね) スタスタスタ…
181
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/03/27(金) 12:58:36 ID:asxzQkDg
――
【城下町・広場】
剣士「悪い、遅くなった」
賢者「本当に。遅かったわね」
剣士「悪いが、急いでここを出よう。怒るのは後にしてくれ」
賢者「何」
剣士「ルーラを使うのは目立つから、ほら、行くぞ」 ギュッ ザッザッザッ
賢者「あ。ちょ っと」 ザザッ ザザッ
剣士「走らなくていい。人ごみにうまく紛れこむ」
賢者「何があったの。もしかしてばれたの」
剣士「いや。下手うって勘付かれた」
賢者「何をやらかしたの」
剣士「隙間だ。急ぐぞ」
賢者「ちょっと」
182
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/03/27(金) 12:59:38 ID:asxzQkDg
――
【フィールド・王都周辺】
剣士「つまりだな」
剣士「俺なりの清算をしてたんだ」
賢者「具体的にかつ簡潔に説明して」
剣士「いやぁ。勇者やってた頃にだな」
剣士「あっちこっちの民家から、タンスや壺や宝箱を漁ってたじゃないか」
賢者「ええ」
剣士「その清算」
賢者「返していたの」
剣士「ああ」
賢者「私が大聖堂で情報収集してる間に、一軒一軒回ってアイテム置いていったというの」
剣士「そうだ。郵便受けやらドアの前やらにな」
賢者「それで結局勘付かれちゃったというの。そんな馬鹿げたことのために、私の手首がつかまれたの」
剣士「そこを根にもつのか」
183
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/03/27(金) 13:01:05 ID:asxzQkDg
剣士「まぁ、何とか全軒回れたから良かったけどな」
賢者「全軒ですって」
剣士「物覚えには自信がある。確かに城下町の民家は全軒だ」
剣士「さすがに城は無理だったが、あっこは元々金持ちだからどうってことないだろ」
剣士「たかが964ゴールドと、毒消し草、ちからの種とすばやさの種だ」
賢者「一年前の話よ。適当にしか聞こえないわ」
剣士「すごいもんだろう」
賢者「誰も証明できない。お城の人でも無理でしょうね」
剣士「賢者のかしこさってのは、記憶力とは無縁なのか?」
賢者「私は盗んでないもの。賊はあなた一人よ」
剣士「否定はしないさ。あの頃は勇者って権力を盾になんでもやってたからな」
賢者「なんでもやってるという言い方なら、今も変わらないけど」
剣士「ああ。権力がないぶん、かえってやりたい放題だ」
賢者「どこまででたらめなの」
剣士「とりあえずは、仲間が集まるまでだな。――で、僧侶はどうだった?」
184
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/03/27(金) 13:01:36 ID:asxzQkDg
ぶつ切りで申し訳ない
とりあえずここまで
185
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/03/27(金) 13:05:16 ID:xnM0YLqo
乙乙!
186
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/03/27(金) 13:30:47 ID:vhcX1Qv6
乙
187
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/03/27(金) 14:08:38 ID:U5.V9eRw
待ってた乙乙
188
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/03/27(金) 18:45:35 ID:6pn7Gb8Q
待ってたよ、帰ってきてくれてありがとう
189
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/03/28(土) 12:20:28 ID:UWj4aUi2
待ってた
この二人の距離感が好きだからまだまだ続けてくれ
190
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/03/29(日) 09:02:03 ID:3ifZBLTY
支援ありがとう。少し投下します
191
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/03/29(日) 09:02:58 ID:3ifZBLTY
賢者「僧侶は追放されて、北の方へ逃げたらしいわ」
剣士「ふんふん、北のどこだ?」
賢者「さ。どこかしら」
剣士「えっ、終わり?」
賢者「そうよ」
剣士「終わり……」
賢者「何」
剣士「いや。ちなみに、何人くらいに尋ねた?」
賢者「10人程度かしら」
剣士「10人も? それだけ聞いてそれだけの情報てことはつまり」
賢者「相当嫌われていたわ。誰しも興味ないか、忘れたがってるみたい」
剣士「なるほど。言われてみりゃそりゃそうか」
賢者「そういえば何人か、探し出して極刑にしたいなんて仰る信者様もいらしたわ」
剣士「カルト教団も甚だしいな。人が人を襲ってどうするんだよ」
剣士「子供でも分かるのにな? 勇者が何を目的に戦っているのかなんて」
192
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/03/29(日) 09:03:50 ID:3ifZBLTY
賢者「僧侶は、例の件で一気に異端者に格下げ」
賢者「そのまま追放処分になって、その日のうちに雲隠れしたそうよ」
剣士「だろうな。そのまま町に留まっていたら危険だったはずだ」
剣士「問題は、どこに逃げたのか……」
賢者「僧侶の出身は聞いてないの」
剣士「さあな。あの教会が出身だと言い張っていたからな」
賢者「教会の孤児ってことかしら」
剣士「その可能性もあるし、別に郷里がある可能性もある」
賢者「いずれにしろ、当ては分からないということね」
剣士「それどころか、生きてるかどうかさえ、な」
賢者「埒が明かないわね。結局どうするの」
剣士「そうだな」
剣士「消息が分からないんじゃ仕方がない。後回しにするか」
賢者「後回しって」
剣士「先に武道家に会いに行こう」
193
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/03/29(日) 09:07:05 ID:3ifZBLTY
剣士「という訳で、ルーラを頼む。行き先は――」
賢者「一撃の山。だったかしら」
剣士「そうだ、よく覚えていたな。確か現地の言葉で『ゲキザン』だったかな」
賢者「きっかけに乗じて、知ってることをとりあえずひけらかす人っているわよね」
剣士「はいはいそうだな。で、ルーラで行けそうか?」
賢者「待って」スッ
剣士「頼む」
賢者「静かに」
剣士「……」
賢者「そうね」
賢者「行けるわ」
剣士「やっぱり瞑想のイメージって大切なんだな」
賢者「別に。さっきの間は特に意味はないわ」
賢者「ただ一旦、あなたを黙らせたかっただけ」
剣士「そういう嫌がらせじみたことはやめろよ!」
194
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/03/29(日) 09:07:59 ID:3ifZBLTY
賢者「ただ、あの山に行く前に断っておくけど」
剣士「武道家のことか」
賢者「ええ」
剣士「大丈夫だ。ちゃんと考えてるさ」
剣士「最後にあんな状態で別れたからな。加入を無理強いはしない」
賢者「ならいいけど」
剣士「それに、ニセ勇者騒動の煽りを食らった一人だ」
剣士「俺たちがその気でも、あっちの方から拒絶するかもしれない」
賢者「それでもいくの」
剣士「ああ」
剣士「俺は前のメンバーで旅をしたいからな。出来るなら」
剣士「頼むよ。ルーラ」
賢者「そう。 いいわ」
賢者は ルーラを となえた! ▼
195
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/03/29(日) 09:08:56 ID:3ifZBLTY
【一撃の山】
トンッ タッ
賢者「着いたわ」
剣士「ふもとだな」
賢者「そうね」
剣士「できれば、山頂の道場に直接飛んでいって欲しかったんだが」
賢者「そうね」
賢者「運任せになるけど、バシルーラという呪文があるの」
剣士「分かった。悪かった。歩いていこう。行くぞ」 ザッ ザッ ザッ
賢者「無能扱いされた気がして不愉快ね」ザッ ザッ
剣士「誰もそんなこと言ってないだろう」
賢者「誰かが言った言ってないなんてどうでもいいの。私が不愉快なの」
剣士「! ……不愉快なのはお前だけじゃないみたいだぞ」
賢者「そう。ご勝手に」
剣士「違う、魔物だ!!」
196
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/03/29(日) 09:10:05 ID:3ifZBLTY
ごうけつぐまが あらわれた!
ガルーダが あらわれた! ▼
ごうけつぐま『グオオォォン!!』
ガルーダ『ゲェー! ゲェー!』
賢者「挟まれてるわね」
剣士「前門のクマ、後門の怪鳥か」
賢者「どうするの」
剣士「後ろのガルーダを任せるが、大丈夫か? 久々の戦いなんだろう」
賢者「何なら前も任せてもらっても結構よ」
剣士「頼もしいな。だがそれには及ばない」
ごうけつぐま『グオオオオオッ!!』
剣士「すぐ終わる」
剣士は ブロンズナイフを ぬきはなった! ▼
197
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/03/29(日) 09:10:54 ID:3ifZBLTY
ごうけつぐま『グアアアアッ!!』
ごうけつぐまの こうげき!
剣士は ひらりと みをかわした! ▼
剣士「ふっ」
剣士は からだを バネのようにしならせた!
剣士は しっぷうづきを はなった!
ブロンズナイフは ごうけつぐまの 急所を つらぬいた! ▼
ごうけつぐま『グオオッ……! オ……オオン……』
ズ ズ ー ン
剣士「……うまく山に還れよ」 ヒュヒュッ スッ
ごうけつぐまを たおした! ▼
剣士「さて、うちの姫さんはどうかな」
198
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/03/29(日) 09:13:21 ID:3ifZBLTY
ガルーダ『ゲエエ! ゲエエ!』 バッサ バッサ
賢者(不思議ね)
賢者(こうして戦いの際に立つと、屋敷にこもっていた頃の方が夢みたい)
賢者(敵。この緊張感。杖の感触。敵。湧き出る魔力。呪文のイメージ。敵)
ガルーダ『ゲエエーッ!!』ビュウウウウゥゥ
ガルーダは きゅうこうかした! ▼
賢者(一年ぶりだなんて冗談、まるで前の旅と今日とを繋ぎ合わせたよう)
ガルーダの こうげき! ▼
賢者「あとは役者が務まっていれば、完全に勘が戻っていたわね」
賢者は メラゾーマを となえた!
ガルーダに 分厚いひばしらが ちょくげきした!▼
ガルーダ『グエエエエエェェェェッ!!』 バササッ バササササ バサ…
賢者「おやすみなさい」
ガルーダを たおした! ▼
199
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/03/29(日) 09:15:14 ID:3ifZBLTY
剣士「終わったな。ケガも無いか」
賢者「した方がちょうど良かったくらいよ」
剣士「何よりだ。俺たち、ちょっと強くなりすぎたな」 ザッ ザッ ザッ
賢者「実感はないわね」 ザッ ザッ ザッ
剣士「初めてここに来たときは、死闘の連続だったもんだ」
賢者「記憶にないわね」
剣士「お前も、まだメラミを覚えたばかりだった」
賢者「下らないことは覚えているのね」
剣士「あの時はそりゃあ、楽しそうに乱発してたからな」
賢者「記憶にないわね」
剣士「今も楽しそうだけどな」
賢者「記憶にないわね」
剣士「照れるなって」
賢者「誰も照れてなん」
剣士「シッ! 魔物だ。さっきより多いぞ、気をつけろ――!」 ダッ
200
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/03/29(日) 09:15:46 ID:3ifZBLTY
いったんここまで
201
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/03/29(日) 09:22:10 ID:xLqMFUAM
乙
202
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/03/29(日) 09:26:51 ID:xKXq9NQs
賢者可愛い
203
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/03/29(日) 16:58:05 ID:20f43VuU
続き待ってるぜー
204
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/03/30(月) 02:37:26 ID:8rsHK5tU
おつん
205
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/03/31(火) 08:01:44 ID:tQy8djjA
回想でもいいから一度目の旅のときの雰囲気を見てみたいな
メラミ乱発してはしゃぐ賢者見てみたい
206
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/04/10(金) 12:56:43 ID:/c/whufc
まだどうなるか分かりませんが、回想自体はちょくちょく挟んでいこうと思ってます
投下します
>>199
〜
207
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/04/10(金) 12:57:19 ID:/c/whufc
――――――――――
剣士たちは まもののむれを たおした! ▼
剣士「……ふう。これで10戦目を超えた訳だが、さすがに疲れてきたか?」
賢者「疲れるとしたら、あなたの執拗な気遣いね」
剣士「いやしかし、とても1年ぶりとは思えないぞ。全戦無傷じゃないか」
賢者「それが、私が疲れてると思う根拠なの」
剣士「無理してるなら言えってこと。高等呪文を連発してるのは分かってるぞ」
賢者「あなた」
賢者「『賢者』の号を持つ意味が、いまひとつ分かってないようね」
剣士「そりゃ、からきしだからな。あんだけ豪勢に使いまくっても平気なもんなのか?」
剣士「以前はメラゾーマだけに魔力使っても、50発ぐらいが限度だったろ?」
賢者「今の私なら、余裕で100は数えられるわ」
剣士「なっ」
賢者「精神修養を欠かしたことはないの。甘くみないで」
208
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/04/10(金) 12:58:05 ID:/c/whufc
剣士「お前が平気なのは分かった。それで、戦いの勘は取り戻せたか?」
賢者「大体ね」
剣士「それなら、トヘロスを頼む」
賢者「なんですって」
剣士「トヘロス。一定時間、自分より格下の魔物が出てこなくなる呪文」
賢者「あなたより知ってるわ。私が言いたいのは、今さらその呪文を使う意味よ」
賢者「まさか私の戦いの勘を取り戻すためだけに、無駄な戦闘を繰り返させたというの」
剣士「ああ。だが、もう確かめた。大丈夫だ。トヘロスだ」
賢者「不愉快ね。要は使い物になるかどうか、上から見定められたんだわ」
剣士「仕方ないだろ。一応命がかかってるんだ」
剣士「でも杞憂だったな。1年前と同じ、いや呪文を見るに当時よりキレがあるくらいだ」
賢者「もし私が使い物にならなかったら、どうするつもりだったの」
剣士「そんときゃ……まあ、俺が結成するパーティーの一人だからな」
剣士「守るさ。俺が」ザッ ザッ ザッ
賢者「 不愉快ね、それは。不愉快極まりないわ」 ザッ ザッ
209
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/04/10(金) 12:58:43 ID:/c/whufc
――――
ザッ ザッ ザザッ ザッ ザッ
ザッ
【一撃の山・道場・門】
剣士「着いた」
賢者「見れば分かるわ」
剣士「トヘロス使えばすぐだったな。基本的に一本道だもんな」
剣士「一応、山頂近くまで歩いてきた訳だが、足は疲れてないか?」
賢者「平気」
剣士「体力まで鍛えているのか」
賢者「平気なものは平気としか言えないわ」
剣士「やせ我慢だけはするなよ」
見張り「おい、お前ら何者だ!?」
剣士「ん?」
210
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/04/10(金) 13:00:29 ID:/c/whufc
見張り「そこの二人、この道場に何の用だ?」
剣士「ああ、用があって来たんだ。早いトコこのでかい門を開けてくれよ」
見張り「怪しいなりだな。入門希望者か?」
剣士「じゃなかったらどうする?」
見張り「そうだな。お前なら賊と見立て、こらしめてやる」
賢者「名答ね」
剣士「愚答だ」
剣士「じゃあ、入門希望者でいいや。とにかく中に通してくれ」
見張り「ならば、入門に足るかどうか、実力を確かめる」
剣士「んん? 待てよ、この道場は、来る者は拒まない信条じゃなかったのか?」
剣士「武者修行がてらだろうが、孤児だろうが、どんな厄介者も受け入れたはずだろう?」
見張り「そんな考えはもう古い。より強い者をより強く育むのが、今の流派の考え方だ」
剣士「流派? 流派が……変わった?」
見張り「おい、そっちの女! お前はどうするんだ?」
賢者「無作法ね。メラミで十分かしら」 剣士「えっやめろよ」
211
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/04/10(金) 13:01:17 ID:/c/whufc
見張り「女、顔を上げろ。お前は何者だ?」
賢者「 」ツーン
剣士「ああ、こいつは賢者様だよ。ただの俺の連れだ」
見張り「賢者? ああ、道士様か」
見張り「我が道場ではケガ人も多い。是非客人として迎えたいが」
剣士「だってさ」
賢者「何。聞いてなかったわ」
剣士「だってさ!」
見張り「道士様なら、無条件で中に入れてもいいと言っている!」
剣士「こっちの方が賊だったらどうするんだよ」
見張り「無論、お帰り願う。無傷で済むかどうかは別にしてな」
剣士「だってよ」
賢者「イオナズン10発程度で済むかしら」
剣士「聞こえてんじゃねーか」
見張り「おい、結局どうするんだ!?」
212
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/04/10(金) 13:02:18 ID:/c/whufc
剣士「分かった分かった。さっさと『実力を確かめる』とやらを済ませてくれ」
剣士「こっちもそんなに暇じゃないんだ」
賢者「嘘。稀代の暇人のくせに」
剣士「そうだっけ」
見張り「よし、行け! 門下生A、B、C!」
剣士「ん?」
「チョワーッ!」 バッ
「イヤーッ!」 ビュンッ
「ハーッ!」 ザザザッ
門下生A・B・C があらわれた! ▼
見張り「その3人の中から、一人を指名しろ」
見張り「そいつから1本取れたら、入門を認めてやる」
見張り「それぞれが拳、蹴、柔術の使い手だ。自分が得意だと思う相手を選ぶんだな」
剣士「……」
剣士「賢者、変わってみるか?」
賢者「嫌。戯れ事はあなたが付き合って」
213
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/04/10(金) 13:03:18 ID:/c/whufc
門下生A「さっさと選べ。俺なら文字通りすぐに門前払いにしてやる」
門下生B「お前はまだ門下ではないから、持ってる武器を使っても構わんぞ」
門下生C「道士様、あなたが望むなら、この輩を付き人扱いで中に通せますが」
剣士「待て。分かった。決めた」
剣士「まず、あんたら3人まとめて相手するのは前提として……」 ザッ ザッ
門下生A「何ィ?」
門下生B「おい、逃げるのか?」
門下生C「……ん? 剣を抜いて何をするつもりだ?」
剣士「よっ」 ヒュヒュッ スパパッ
剣士は 近くの木のえだを 切りとった! ▼
剣士「賢者」ザッ ザッ
賢者「何」
剣士「こいつの両端を、メラで軽くあぶってくれ」
門下生「??」
見張り「??」
214
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/04/10(金) 13:04:59 ID:/c/whufc
剣士「――うん、上等だ」
剣士は ひのきのぼうを そうびした! ▼
剣士「見ての通り、俺は剣士だ。武道も多少かじってるが、得意ではない」
剣士「だからこうしよう。俺はこの『剣』を使わせてもらう代わりに」
剣士「もしこの『剣』が折られたら、即座に負けを認めて帰ろう」
剣士「もちろんあんたら3人同時に相手して、だ。これでどうだ?」
門下生「「「……」」」
見張り「……はぁ」
見張り「おい、門下生A。この調子に乗ったお上りさんを帰らせてやれ」
門下生A「押忍」 ザッ
剣士「おっ、一人か? お前、でかくていい身体してるな」
門下生A「俺たちはふざけて修行に励んでるんじゃねえ」
門下生A「魔王軍に対抗すべく、命を賭して身体を鍛えている」
剣士「ああ。いい事だ。本当にな」
賢者「 」フアァ…
215
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/04/10(金) 13:06:09 ID:/c/whufc
門下生A「だからお前みたいな半端な男を見ると――」
門下生Aは せいけんづきを はなった! ▼
門下生A「無性に腹が立ってくる!」 ブオォッ
剣士「半端か」
剣士は ひらりと みをかわした! ▼
剣士「そうかもな」
門下生A「ぜええぇい!!」
門下生Aは せいけんづきを はなった! ▼
剣士は 上体を そらした ▼
門下生Aの ばくれつけんを はなった!! ▼
剣士は ひらりと みをかわした!
剣士は ひらりと みをかわした!
剣士は ひらりと みをかわした!
剣士は ひらりと みをかわした! ▼
門下生A「な……ニィ?」
剣士「おいおい、仮にも入門希望者に出す技じゃないだろ、それ」
216
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/04/10(金) 13:07:12 ID:/c/whufc
剣士「ほら。俺の『剣』はここだぞ」フワフワ
門下生A「うおおおっ!」
門下生Aは しっぷうづきを はなった! ▼
剣士は 胸もとを そらした ▼
剣士「ほりゃ」
剣士は 門下生Aの わきばらを かるく突いた ▼
門下生Aは バランスを くずし たおれこんだ! ▼
門下生A「がはぁ!」 ドシャッ
見張り「ど、どうなっている……?」
門下生B「あ、あいつタダモンじゃないぞ!」
門下生C「そりゃそうだ……思い出した」
門下生C「どこかで見たことがあると思ったらあいつ、ニセ勇者だ! 1年前の!」
剣士「おっ、憶えてる奴がいたか」
賢者「いつ聞いても不名誉な称号ね」
剣士「否定も拒絶もしないさ」
217
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/04/10(金) 13:07:57 ID:/c/whufc
見張り「お前たち、全員でかかれ! そやつは我らが流派の敵だ!」
見張り「『痛恨流』にかかれば、紛い物の勇者など大したことはない!」
剣士「『痛恨流』……?」
門下生B「確かに、あの出来損ないと通じていたなら、我々の敵だな」
門下生C「ニセ勇者か……道場での噂通りの軟弱者か、確かめてやろう」
門下生A「こいつ、ぶっ潰してやる!!」
剣士(武道家は『会心流』だったはず……)
門下生A・B・Cは 同時に とびかかった!
門下生Aは せいけんづきを はなった!
門下生Bは あしばらいを はなった!
門下生Cは ともえなげを しかけた! ▼
剣士(この1年で何があったんだ?)
剣士は ひらりと みをかわし ひのきのぼうを くりだした!
剣士は ひらりと とびあがり ひのきのぼうを くりだした!
剣士は ひらりと 身体をひねり ひのきのぼうを くりだした! ▼
門下生「ぐわあああ!」「ぎょえーっ!」「ぬわーっ!!」ザザザーッ
剣士「ま、いいか。よーしどんどん来い!」 ヒュホッ!
218
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/04/10(金) 13:09:00 ID:/c/whufc
――――
門下生A「ハァ……ハァ……」
門下生B「ぜぇ……ぜぇ……」
門下生C「ひゅー……ひゅー……」
見張り「そ……そんな……」
剣士「もう全員立てないみたいだな」
剣士「なら俺の勝ちだ。1本取ったらいいんだろ? もう100本は取ったぞ」
見張り「くっ……」
剣士「早く開けてくれ。開けないなら勝手に入るぞ」
見張り「馬鹿な……ニセ勇者は魔王討伐に敗走した小物ではなかったのか」
剣士「ニセ勇者ってのは、騙ってた訳じゃない。勘違いしてたんだ」 トンッ トンッ
剣士は 一気に見張り台まで とびあがった! ▼
見張り「!? は、速――」
剣士は きゅうしょづきを はなった!
見張りは きをうしなった! ▼
剣士「偽物だから弱いとでも思ったか? 高いところから見下ろしてんなよ」 コンッ
219
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/04/10(金) 13:10:31 ID:/c/whufc
賢者「終わったの」
剣士「ああ。待ってくれ、すぐ内側から開ける」
賢者「必要ないわ」
賢者は アバカムを となえた!
とびらは 低い音を たてはじめた! ▼
剣士「おっ、そんな呪文もあったか」
ズズズズズズズズズズズズズ
ズゥーンン……
賢者「茶番を無視して始めからこうしても良かったのだけれど」 スタスタ
剣士「ややこしくなりそうだからやめてくれ」 ヒュー スタッ
賢者「なんですぐ終わらせなかったの。自分の力を誇示したいの」
剣士「あいつらがどの程度の実力かを知ろうと思ってさ。あと肩慣らし」
賢者「何か収穫はあったの」
剣士「即席ひのきのぼう」
賢者「暇人ね」
220
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/04/10(金) 13:12:12 ID:/c/whufc
【一撃の山・道場・境内】
剣士「懐かしいな、この雰囲気」スタスタ
賢者「私も嫌いじゃないわ」スタスタ
剣士「……道場内から気合いが響くな。あの中に武道家もいるんだろうか」
賢者「あの子、新しい流派とやらに改めたのかしら」
剣士「さあな。まずは中に入って――」
剣士「!」
トタタタタタタ…
賢者「! ねえ。あそこで雑巾がけしてる子って」
剣士「おい、武道家!」
武道家「!!」ピタッ
武道家「あ! 勇者さん! 魔法使いさん!」
武道家「お、お久しぶりです!! どうしてまた、こちらに?」
剣士「武道家。お前。1年経ったのに」
剣士「片目片腕のままなのか」
221
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/04/10(金) 13:13:11 ID:/c/whufc
ここまで
222
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/04/10(金) 13:25:53 ID:HF1JV3R2
乙
223
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/04/10(金) 14:00:32 ID:YSxM6/ig
乙
224
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/04/10(金) 21:10:45 ID:s.uSFaIs
乙
乙
225
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/04/10(金) 21:31:49 ID:.KydA0OI
乙!
226
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/04/10(金) 22:58:34 ID:QyiG4qBo
ここの住民はスルー力を鍛えるべき
227
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/04/10(金) 22:59:16 ID:QyiG4qBo
誤爆でした
228
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/04/10(金) 23:47:44 ID:s.uSFaIs
特定した
229
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/04/11(土) 11:07:06 ID:Kt5Gr8Xc
片目片腕って武闘家ボロボロじゃねえか
230
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/04/11(土) 15:03:52 ID:mUvhQETM
せな報われてほしい乙
231
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/04/11(土) 17:46:49 ID:sRKJZj0M
修行で封印してるとかそういうのかと思った
232
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/04/14(火) 12:49:23 ID:MEUD3F.g
投下します
作中の固有名詞は、基本的に原作準拠の方針ですが
「武闘家」に関しては、筆者の小さいこだわりで「武道家」表記にしてます
233
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/04/14(火) 12:50:29 ID:MEUD3F.g
武道家「はい! 大丈夫です、自分はもう慣れました!」
剣士「慣れたって……簡単な義肢も用意してもらえなかったのか?」
剣士「目だって、すぐに教会に通い続ければ……」
賢者「ちょっと。その眼帯、取ってもらえる?」
武道家「え? ええっと……は、はい」
武道家は 眼帯を はずした ▼
武道家の 左のひとみは 白くにごっている…… ▼
賢者「……」
剣士「こいつは、回復呪文もマスターしたらしいんだ」
武道家「えっ!? そ、そうなんですか! すごいです!」
賢者「じっとしてて」
武道家「は、はい、すみません」
賢者「……」
剣士「……どうなんだ?」
賢者「ちょっと黙ってて」 剣士「へい」
234
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/04/14(火) 12:51:20 ID:MEUD3F.g
賢者「……難しいわね」
賢者「視力を失った状態が、完全に定着してしまっているわ」
賢者「無闇に回復呪文を集中させたら、かえって悪化するかもしれない」
剣士「なんとかならないのか」
賢者「分からない。なるかもしれないけれど、恐らく分の悪い賭けになるわ」
剣士「そうか……」
剣士「武道家、改めてすまない。俺があの時、至らなかったばかりに――」
武道家「いえいえそんな、とんでもないです! いいんです!」
武道家「自分はこうしてまた、この道場に戻れただけで満足なんです!」
剣士「でもお前。かつては『武姫』と謳われた会心流筆頭だぞ」
剣士「なんだって小間使いみたいなことさせられてるんだ」
武道家「そ、それは……」
ダンダンダン ダ ン ! 門下生「おい!」
武道家「!」
門下生「いつまでダラダラ廊下やってるんだ! こっちも手伝え!」
235
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/04/14(火) 12:52:30 ID:MEUD3F.g
武道家「は、はい! 申し訳ありません、ただ今!!」スッ
賢者「ちょっと」
門下生「ん? なんだ客人か?」
賢者「この子、左腕が無いのよ」
賢者「なんでこんな無茶なことをさせるの」
門下生「はあ?」
剣士「よせ」
武道家「あ、あの、魔法使いさん」
賢者「あなただったらどうなの。片腕がなくなっても、廊下がけなんてできるの」
武道家「いいんですッ!!」
賢者「!」
武道家「あ、あの、自分のことは本当に、大丈夫ですから」
武道家「あの、申し訳ありません! いとまの分は、必ず埋め合わせますので!」ペコッ
門下生「……ちっ。さっさと来いよ」 ダン ダン ダン…
武道家「そ、そういう訳なので、お二人とも、また!」 トタタタタタ…
236
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/04/14(火) 12:53:48 ID:MEUD3F.g
剣士「……」
賢者「ねえ。さっきはなんで止めたの」
剣士「ん? 俺か?」
賢者「『よせ』って言ったわ。あの子はあのままでいいということなの」
剣士「俺だって気持ちは同じだ。だが、あそこは出しゃばるべきじゃない」
剣士「俺たちは事情を知らないが、武道家はすでにあの立場が長いようだ」
剣士「面倒事を起こせば、不利になるのは当人だろう。まずは様子見だ」
賢者「悠長ね。あなたはあの子をみて何とも思わないの」
剣士「もちろん、一刻も早く引き取るつもりさ」
剣士「だがその前に、会って話をすべき人物がいる」
賢者「誰」
剣士「そこの木陰のご老人だ」
賢者「!」
老師「……ほほっ。流石は勇者殿と呼ばせてもらってもよろしいかな」
剣士「ええ。お久しぶりです、師範」スッ
237
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/04/14(火) 12:55:15 ID:MEUD3F.g
老師「『勇者』が変わったと聞き気がかりじゃったが、達者であったか」
賢者「ご無沙汰です師範様。ごきげんよう」 スッ
老師「ほほっ、よいよい。今のわしは、ただの厄介者の隠居じじいじゃ」
老師「わしを師範と呼ぶものは、この道場にはもう一人もおらんよ」
剣士「そのようで。流派改新の件、先刻耳にしたばかりです」
老師「ふむ……左様か」
賢者「師範様。以前我々と旅を共にした、あの武道家についてですが」
老師「うむ、分かっておる。おぬしらは、あの子を引き取りに来たんじゃろう」
剣士「それは可能で?」
老師「……その前に」
老師「おぬしらは、あの子の生い立ちをどこまで知っておる?」
剣士「……孤児だとしか。細かいことは」
賢者「ただあの子は、義理の兄がいると言ってたわね」
老師「……もう夕暮れ時じゃ」
老師「積もる話は、わしの庵で語ろう――」
238
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/04/14(火) 12:57:06 ID:MEUD3F.g
【一撃の山・老師の庵】
パチパチパチパチ…
賢者「前から思ってたけど、不思議な暖炉。部屋の中央で火を焚くのね」
剣士「確かイロリって言うんだ。このカギに鍋を吊るして、汁物を煮込んだりできる」
老師「大したもてなしも出来んで済まんな」スタスタ
剣士「おお、鍋だ!」
老師「どっこいしょっと」 ガコン ジュウゥゥゥ…
賢者「師範様、お炊事でしたら手伝いましたのに」
老師「構わんよ、さほど凝ったもんでもない」
老師「とはいえ、多少は客人向けに贅沢はしとるがの。ふぉっふぉっ」
剣士「かたじけない」
賢者「お気遣い、痛み入ります」
老師「ほほ。おぬしらからは、根っこから謙虚さが伝わってくる」
老師「まるであの子と語らっとる気分じゃ」
239
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/04/14(火) 12:58:34 ID:MEUD3F.g
賢者「あの子……武道家のことですか?」
老師「うむ。何から話そうかの」
剣士「では、先刻おっしゃっていた生い立ちから」
老師「ああ、そうじゃの」
老師「まぁ、別に珍しい話じゃありゃせんよ」
老師「ある時期から魔物が活発になって以降、日々の生活に苦しむ村が出始めての」
老師「主に遠くの村から、ここまで連れて来られる子が増えてきたんじゃ」
老師「それである時、二人の子供が届けられた。6つの女子と8つの坊主じゃ」
賢者「その女の子が、武道家なのですね」
老師「うむ。二人に血縁は無かったが、同郷出身ということもあり、まるで兄妹のように仲が良かった」
剣士「その義理の兄は、今?」
老師「そこの道場で、『痛恨流』の師範代をやっておる」
剣士「! 新流派の師範代……」
賢者「それなら、なんであの子が雑用なんかさせられているの」
老師「ふむ……順を追って話そう」
240
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/04/14(火) 13:00:08 ID:MEUD3F.g
老師「連れて来られた二人に、並外れたような武術の才は無かった」
老師「ただ女子の方は、当時わしが師範を務めていた流派、『会心流』の理解が早かった」
老師「積極進取を信条に道場内を奔走し、一刻千金とばかりに時を修行に費やした」
老師「素直でひたむきなこともあいまって、その技量は天井知らずに上達した」
老師「ひいては、王都の勅命であった魔王討伐召集に推薦できるほどにな」
剣士「……『ゲキザンの武姫』」
老師「その二つ名は、元々その義理の兄がつけたものじゃ」
賢者「どうしてそんな」
剣士「多分、開き直ったんだろう。もう追いつけないと知って」
賢者「えっ」
剣士「兄の方は、妹の上達についていけなかった。違いますか?」
老師「……そも、『会心流』は他と優劣を競う流派ではない」
老師「兄はそれを理解できず、目先で膨らんでいく妹の影に焦る一方じゃった」
老師「しかし後に、流派に関わる一大事が起きた。同時に、それは兄の転機でもあった」
剣士「……『ニセ勇者発覚』、か」
241
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/04/14(火) 13:02:48 ID:MEUD3F.g
ここまで
242
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/04/14(火) 13:09:34 ID:H2gQxlvY
乙!
243
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/04/14(火) 14:18:59 ID:8uF/hlC.
乙
244
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/04/14(火) 16:58:46 ID:GJp5K2aQ
けっこう楽しみにしてる!
245
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/04/14(火) 17:25:21 ID:kbReIwq2
読み返したら、2014年中終わらせるつもりと書いてあるぞwww
楽しく読ませてもらってます。
乙。
246
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/04/22(水) 23:15:31 ID:UWmn3Jys
まだかなーー
247
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/05/02(土) 10:10:02 ID:1Gk6gJmk
保守
248
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/05/24(日) 23:10:41 ID:Ivp9ihZY
保守あげ
249
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/05/26(火) 09:35:08 ID:/vKe/miY
1か月以上続き無しか…
大丈夫か?
250
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/06/04(木) 12:25:05 ID:1Flk/wVA
かなり遅れて申し訳ない
>>240
〜 から続き投下
251
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/06/04(木) 12:26:10 ID:1Flk/wVA
老師「そう――魔王討伐に赴いたおぬしらは、とある戦いで敗れた」
老師「代わって現れた者が、のちに正式な勇者と定められた」
老師「よってぬしらは国をたばかった贋物とされ、余儀なく旅を断ち、各地へ散った」
剣士「……」
老師「じゃがのう。話を聞くに、ぬしらは何ひとつ誤ってはいない」
老師「非力な人々に代わり、世の危難に立ち向かい、命を賭して戦った」
老師「どこにそしり咎めを受ける謂れがある。かけられるべきは、感謝と労いではないのか」
剣士「……師範は」
剣士「俺たちが命を賭けて戦ったなんてこと、信じますかぃ?」
剣士「旅をするふりをしながら、あちこちで勇者を騙って盗みをはたらいた、なんて話もありますがね」
賢者「それはある意味間違っていないけれど」
老師「ぬしらを信じる由縁……それはのう。ここに帰ってきたあの子の眼じゃ」
剣士「武道家の?」
老師「うむ。隻眼にこそなれど、そのまなこは純真を保ち、なお前を向いていた」
老師「未だ、嘘をつくことも知らぬ眼のままじゃった」
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