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元勇者「本物の勇者が現れてから一年経った」
1
:
◆RvUAp8KrlM
:2014/12/09(火) 06:10:49 ID:IyhGY/1M
巨竜は 咆哮を あげた! ▼
勇者「皆いったん退くぞ! おい、聞いてるのか!?」
勇者(くそっ、雷雨で声が――)
巨竜の こうげき!! ▼
勇者「うわああああぁぁ!! うぅ……」
勇者「!? 武道家!? おい、大丈夫か! おい!!」
勇者「僧侶、武道家を頼む! 手当てを急げ!!」
勇者「魔法使いも俺の近くに! ルーラの詠唱を――」
巨竜の こうげき!! ▼
勇者「ぐああああッ!!」
勇者(くそっ、どうすれば!)
勇者(このままじゃ全員……――)
109
:
◆RvUAp8KrlM
:2014/12/24(水) 11:44:23 ID:lu5/Tctw
三女「執事? さっきは下にいたのに、相変わらず神出鬼没ね」
剣士「あの人はタダもんじゃないからな」
三女「当然よ。私の執事なのよ」
剣士「まぁそれに関しても詳しく聞きたいが、今は出発が先だ」
三女「今から出るつもりなの」
剣士「ああ。わくわくしてきただろ」
三女「たまには子供っぽいことも言うのね」
剣士「俺はニセ勇者になる以前から、現役の冒険者だ」
三女「そう」 スタ スタ カチャ ギィィ…
三女は ふくろを てにいれた!
三女は けんじゃのつえを そうびした!
三女は てんしのローブを そうびした! ▼
剣士「なんだ。クローゼットに旅の支度分、そろえてあったのか」
三女「護身用に忍ばせてあるだけよ」 ゴソゴソ
剣士(結局、最初から断る気なかった訳ね)
三女「何よニヤついて。不愉快ね。とても不愉快だわ」
110
:
◆RvUAp8KrlM
:2014/12/24(水) 11:46:21 ID:lu5/Tctw
コン コン
三女/勇者「!!」
執事『お嬢様、申し訳ございません』
執事『旦那様がお呼びとのことです。お急ぎ下さい』
勇者「あちゃー、夜明けまでってのは本当に冗談だったのか」ボソ
三女「何の話」ボソ
勇者「それより、急がないとまずいんじゃないか」
三女「ノックの間隔が長かったわ。わずかでも時間を稼ぐって合図ね」
勇者「なるほど。じゃあその配慮に応えるぞ」
ガチャ キイイィ
剣士「さ、行こうぜ」 スッ
三女「 本当に、なってないわね」
三女「レディに手を差し出すときは、手のひらを上に向けるのよ」 …ギュ
賢者が 仲間になった! ▼
111
:
◆RvUAp8KrlM
:2014/12/24(水) 11:47:16 ID:lu5/Tctw
【屋敷・屋根】
剣士「窓は開けっ放しでいいな」
賢者「何故」
剣士「その方が賊が攫ったようにみえるだろ」
賢者「そう。それもそうね」
剣士「で。さっそく悪いんだけど、ルーラを頼む」
賢者「何ですって」
剣士「ルーラを頼む」
賢者「あなたね。攫った相手に移動呪文を頼むなんて、どういう了見なの」
剣士「無意味なリスクを負うこともないだろ。それともあれか」
剣士「お姫様だっこかなんかで、逃避劇のマネ事でも期待してたのか」
賢者「次にその手の冗談を口走ったら、メラゾーマを見舞うわ」
剣士「悪かったよ。……悪かったって! 杖を下ろせ!」
賢者「どこに行けばいいの。早くして」
剣士「お、王都だ。次は僧侶に会いに行く。頼んだぜ」
112
:
◆RvUAp8KrlM
:2014/12/24(水) 11:48:36 ID:lu5/Tctw
賢者「王都ね。待って。イメージするから」
賢者「……」
剣士「……」
賢者「……」 チラ…
剣士「……」
剣士(前と違って、見送ってくれる者は一人もいない)
剣士(仕方ないとはいえ、辛い出立になってしまったな)
剣士(旅に区切りがついたら、必ずこいつをここに帰してやらなきゃな)
賢者「……いいわ。ルーラの準備は」
剣士「もういいのか」
賢者「ええ。行きましょう」
賢者は 杖をふりあげた!
賢者は ルーラをとなえた! ▼
賢者「新しい旅路へ――」
113
:
◆RvUAp8KrlM
:2014/12/24(水) 11:50:26 ID:lu5/Tctw
――
【屋敷】
執事「だ、旦那様! 大変でございます!」
公爵「どうした。お前が取り乱すとは珍しい」
夫人「あの子はどうしたの?」
執事「お嬢様が、お嬢様が賊に攫われました!!」
公爵「な……何だと!?」
夫人「何ですって!? き、きっと何かの間違いよ」
執事「部屋の窓が開け放たれておりました! 壁を登った痕跡もあります!」
執事「厩舎からは馬も盗まれております! おそらく、この日を狙われていたのでしょう」
公爵「すぐに探し出せ! 絶対に連れ戻すんだ!」
執事「すでに手配しております。私めも捜索の許可を」
公爵「もちろんだ、行け!」
執事「はっ」
夫人「ああ神様……あの子が無事でありますように……」
114
:
◆RvUAp8KrlM
:2014/12/24(水) 11:54:29 ID:lu5/Tctw
――――――――――――
執事「――残念ながら少なくとも、もう町にはいらっしゃらないようです」
執事「ただ町の者の情報によると、昨日、あのニセ勇者がこの町を訪ねていたとか」
公爵「ニセ勇者だと!?」
執事「お嬢様と同時に姿を消していることから、実行犯の疑いが濃厚」
執事「町民からは彼を非難する声も多く、捜索に協力的です」
公爵「今でもあの若造の顔は覚えている! あの低俗な野盗めが!!」
執事「申し訳ございません。私めがついておきながら何たる失態……」
公爵「詫びを入れる前にもう一度探し出せ!」
執事「はっ」 スッ
執事(勇者様――私めも身を切る思いですが、あなたにははっきり汚名を被って頂く)
執事(犯人像を明確にすることで、お嬢様の家出がより迷彩される。元より覚悟は出来ていたはずです)
執事(その上で恥を忍んで改めて申し上げたい。お嬢様のことを、何卒お願い致します)
執事(お嬢様――爺めができることはここまでです)
執事(どうか御心に深く刻み込まれるような、悔いなき良き旅路を――)
115
:
◆RvUAp8KrlM
:2014/12/24(水) 12:00:00 ID:lu5/Tctw
ここまで。 クリスマスか…
116
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/12/24(水) 12:21:18 ID:DqZlvEeI
面白かった
次も期待
117
:
◆RvUAp8KrlM
:2014/12/24(水) 12:26:00 ID:lu5/Tctw
>>115
で、全く意識してなかったのに凄いキリ番タイム取ってしまった!
そんなことより、今さらながら皆さんレスつけてくれてありがとう。励みになってます
118
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/12/24(水) 12:29:29 ID:lu5/Tctw
ごめんなさいコンマと勘違いしてました見なかったことに
119
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/12/24(水) 12:29:30 ID:DqZlvEeI
>>117
ここでもダブルオー
120
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/12/24(水) 12:30:50 ID:Qnar7QJw
二回連続はすげぇ
そして乙
121
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/12/24(水) 12:50:08 ID:7jtNCRa2
乙
122
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/12/24(水) 12:59:36 ID:t9HgLatU
乙乙
123
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/12/24(水) 14:56:59 ID:3kVff7DQ
>>118
クリスマスだからって鳥肉食いすぎw
124
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/12/24(水) 18:14:23 ID:l15NaNOA
乙
ワクワクする
125
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/12/24(水) 19:02:55 ID:a4P5bQBM
おつります
126
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/12/25(木) 01:22:56 ID:PwOwU2I.
わくわくしますなー
おつ
127
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/12/25(木) 05:36:03 ID:hqKnjhhQ
良いぞ良いぞ
128
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/12/28(日) 14:32:21 ID:NyqQ1JLI
更新されるたびに期待感が高まっていく
久々に良いSSに出会えたかもしれない
129
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/12/29(月) 12:41:51 ID:BpeG6qfc
<夜>
【王都・入口】
スタッ スタッ
剣士「なんか久しぶりだな。ルーラの感覚」
賢者「そう」
剣士「一発で成功したのは流石だな。あ、さては度々屋敷から抜け出してたな」
賢者「そこまで転婆になる余裕は無かったわ。あなたと一緒にしないで頂戴」
剣士「俺だって好きで根無し草やってた訳じゃないさ。どこ行ったって大抵は嫌われ者だ」
賢者「ここだと特にそうかしら」
剣士「かもな。さすがに素顔でうろつくのは騒がれるから――」
剣士は バンダナを そうびした!
剣士は あかのえりまきを そうびした! ▼
剣士「簡単に変装」
賢者「ただでさえ賊なのに、余計不審になったわね」
130
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/12/29(月) 12:44:23 ID:BpeG6qfc
賢者「それで。これからどうするの」 スタスタ
剣士「もうこんな時間だ、まずは宿屋で一泊しよう」 スタスタ
賢者「外泊なんて久しぶりね」
剣士「大丈夫なのか、オジョーサマ」
賢者「こう見えて覚悟は決めてきたの。何だったら野宿でも結構よ」
剣士「強がるのはいいが、無理なことは無理ってちゃんと言えよ」
賢者「あなたに気遣われると、感謝どころか逆に心配になってくるわね」
剣士「お前、前にも増してツンツンするようになったな」
剣士「おまけに高飛車っぷりと能面っぷりにも磨きがかかってるしさ」
賢者「あなたこそ、多分に毒気が混じったわね。前の方が紳士的ではあったわ」
剣士「垢抜けたって言えよ。何度も言うが、これが素の俺なんだ」
賢者「なら私だってこれが素よ」
剣士「ああ、分かってるよ」
賢者「あなたのその、何でも見透かしたような言い方は気に食わないわね」
剣士「遠慮する必要が無くなっただけさ」
131
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/12/29(月) 12:45:32 ID:BpeG6qfc
【王都・宿屋】
主人「旅人の宿にようこそ。こんな夜更けまでお疲れ様でした」
剣士「…………」
賢者「……?」
主人「お一人様ひと晩100ゴールドですが、お泊りになりますか?」
賢者「え。ええ。泊まるわ」
主人「ただ今混んでおりまして、お二人様でご一緒のお部屋でよろしいですか?」
賢者「えっ。出来たら別々の個室がいいのだけれど」
主人「申し訳ございませんが……」
賢者「ならやめるわ」
剣士「おいっ」ボソッ
賢者「世の中には、死んでも嫌なことがいくらでもあるの」
剣士「さっき『覚悟はしてきた』って言ったばっかりじゃねえか!」ボソッ
賢者「ええ、だから野宿でもいいと言ってるでしょう」
主人「ええっと、あのう……」
132
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/12/29(月) 12:47:59 ID:BpeG6qfc
――
【王都>宿屋・2F相部屋】
賢者「いい?」
賢者「ここから先に入ったら、本気であなたを屠るから」
剣士「どれだけ占領してんだよ。俺動けねえよ」
賢者「そうね。いっそ朝まで動かないでいて」
剣士「結婚前夜だったご令嬢をいきなり襲うほど下衆じゃねえよ、俺は」
賢者「口に出して不安を煽らないでくれる。耳にするだけでおぞましいわ」
剣士「大体、二人で寝るんなら野宿でも同じことだろうが」
賢者「分からないの。ベッド付きの個室に閉じ込められるのって状況が嫌なの」
賢者「外なら、いざとなったら周囲を火の海にしてルーラで逃げられるでしょう」
剣士「ルーラ使うなら火の海にする必要ないだろ!」
剣士「まったく、前途多難だぜ……」 ギシッ スタスタ
賢者は ベギラマを となえ
剣士「ちょっとちょっと待て! 風呂に行くだけだって!!」
133
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/12/29(月) 12:50:16 ID:BpeG6qfc
【宿屋・1F】
――
剣士(ふう。風呂の気持ちよさは、勇者だった頃と変わらねぇな)
剣士(……ん? 話し声)
剣士(主人一家の控え部屋か)
主人「……ああ、ニセ勇者だ。どこかで聞いたような声と思ったんだ」ヒソヒソ
奥さん「まさか。わざわざ王都に戻ってくる理由がないじゃない」ヒソヒソ
主人「俺は1年前、勇者が泊まりに来たってんで舞い上がってたからよく覚えてる」
主人「あの顔を隠した男は、おそらく本物のニセ勇者だ。なあ、どうだろう」
主人「引っ捕らえて教会に突き出したら、恩賞が貰えそうじゃないか」
奥さん「およしよ。仮にもお客さんなんだし、それにあれはきっと、あのお嬢さんの従者よ」
奥さん「きっとお嬢さんを守るために、顔中にひどい傷を負ったんだわ」
主人「いや、そのお嬢さんてのも、前のニセ勇者パーティーで見た顔なんだが……」
主人「でも髪型や雰囲気が違う気がするし……あんな装備じゃなかったし……う〜ん……」
134
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/12/29(月) 12:52:16 ID:BpeG6qfc
剣士(ふーん。思ったよりこの町に居続けるのは危険みたいだな) スッ スススッ
剣士(教会に突き出して恩賞、ね。『勇者教』の過激派絡みだろうな)
剣士(勇者を神格化するあまり、勇者に関するものを少しでも否定・侮辱したりすると)
剣士(すぐさま厳罰を下しがる狂った集団。騙りなんてもっての他だろう)
剣士(こういう可能性があるから、あまり主人の前で声を聞かせたくなかったんだが)
剣士(まさか賢者があそこまで嫌がるとはな)
剣士(っと。入る前にノックだったか)
コン コン
賢者「誰」
剣士(だから声は出したくないんだって)
剣士(どうしようか。執事さんのマネで伝わるか?)
コン コン
賢者「……」
賢者「入って」
135
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/12/29(月) 12:53:50 ID:BpeG6qfc
【宿屋・2F相部屋】
パタン
賢者「何かあったの」
剣士「その前に自分のベッドまで行ってもいいか」
賢者「どうぞ。何かあったの」
剣士「さっき下で、主人たちの話を盗み聞きしたんだ」
剣士「ニセ勇者を教会に突き出せば儲かるかも、だってさ。声色で勘付かれた」
賢者「そう」
賢者「逃げた方がいいのかしら」
剣士「大丈夫、まだ完全にそうだとバレちゃいない様子だった」 ドサッ
剣士「逃げるのは襲ってきたからでも間に合うさ。今日はゆっくり寝よう」
賢者「そう」
剣士「あっ、お前はもっと大丈夫だから、安心して風呂に入れるぞ」
賢者「屋敷で済ませたわ。それにあなたの残り湯の浴場なんて死んでも嫌ね」
剣士「そうかよ。この旅であと何回『死んでも嫌なこと』が数えられるんだろうな」
136
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/12/29(月) 12:55:03 ID:BpeG6qfc
賢者「明日はどうするの」
剣士「明日は、すまないがお前が主体で立ち回ってくれ」
剣士「教会に立ち寄って、僧侶の行き先を聞いてくるだけでいい」
剣士「それが済んだら、なるべく早くこの王都からオサラバだ」
賢者「僧侶の行き先ってどういうこと」
剣士「裕福な町の酒場で聞いたんだ。あいつは教会を追放されたらしい」
賢者「そうなの」
剣士「『勇者教』が台頭してから、俺たちへの風当たりも相当強くなったからな」
剣士「本物の勇者を『神』と称える以上は、ニセ勇者一行の一人なんて置いておけないだろう」
剣士「まぁ命が助かってるだけでも儲けもんだと思って、旅の途中で拾ってやろう」
賢者「勇者教ね。私の町でも流行ってるけど、さっぱり理解できないわ」
賢者「要は言い伝えに沿った魔王討伐隊員を、勝手に現人神にしてるだけでしょう」
剣士「まぁ俺たちが勇者やってた頃より、魔物も活発になってるらしいからな」
剣士「弱い人ってのは、どこかに救いを求めて、それに責任を押し付けたがるんだろう」
賢者「身を守る力が弱いだけならまだしも、心まで弱かったらいよいよ救いがないわね」
137
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/12/29(月) 12:56:42 ID:BpeG6qfc
剣士「――さて、そろそろ俺は寝るぞ」
賢者「寝れば」
剣士「お前もちゃんと寝ろよ」
賢者「髪の手入れが必要ない人は気楽でいいわね」
剣士「伸ばすのも手間ヒマかかって大変だな」
賢者「切ってしまえばいいとは言わないのね」
剣士「せっかく伸ばしたんなら、切るのは勿体ないだろ」
賢者「そうよ」
剣士「ついでに『似合ってる』とか『綺麗』とか言ってやろうか」
賢者「なら私も、あなたのことを『格好いい』とか『素敵』とか言ってあげるわ」
剣士「あっそ。じゃ、ちゃんと寝ろよ。おやすみ」 バサッ
賢者「………………」
賢者「 おやす」
剣士「Zzz――」
賢者「 何よ。もう」
138
:
◆RvUAp8KrlM
:2014/12/29(月) 12:57:12 ID:BpeG6qfc
ここまで
139
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/12/29(月) 13:00:06 ID:umg/DG/U
ツンケン賢者ちゃん可愛いペロペロ
140
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/12/29(月) 14:15:49 ID:GlvJUvjY
乙
141
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/12/29(月) 18:41:41 ID:f5uXWTVU
乙
142
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2014/12/30(火) 23:21:25 ID:tXlzWFJU
まるで老夫婦のような会話のよさ
乙!
143
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/01/01(木) 17:11:36 ID:3NfViTGg
まーだかなー
144
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/01/02(金) 17:37:48 ID:PhT4r4cM
僧侶がいらないような気がしてくる
145
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/01/05(月) 04:39:05 ID:bpNpvHIE
おもしろーい。期待。
146
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/01/07(水) 08:15:44 ID:i6jlCShA
続きが気になる
147
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/01/10(土) 04:33:02 ID:h0bTK8sU
<翌朝>
ゴソ ゴソ ゴソ
剣士(はがねのつるぎ1本)
剣士(ブロンズナイフ2本)
剣士(ひのきのぼう1本)
剣士(防具はバンダナ、あかのえりまき、たびびとのふく)
剣士(これで全部か、元勇者の武装は。モノだけ見ると落ちぶれたもんだ)
剣士(ただ、装備ありきで戦士って訳じゃない。こいつらはあくまで道具)
剣士(可能性を引き出すのは俺たち戦士。いつだって最初は戦士ありきだ)
賢者「……ん……」
剣士「おっ。おはようさん」
賢者「……。 !? 」
剣士「分かりやすい反応だな。じいやは居ないぞ」
148
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/01/10(土) 04:33:50 ID:h0bTK8sU
【王都>宿屋・受付】
主人「おはようございます」
賢者「もう行ってもいいのかしら」
主人「はい結構です。あとはこちらで手続きしておきますので」
主人「ただ、その……もしよろしければ……」
主人「そちらのお客様の、お顔を拝見させて頂いてもよろしいでしょうか?」
剣士「……」
主人「最近、物騒な事件も起こっておりますので、念のために……」
賢者「物騒な事件が起こっていると、なぜ顔を晒さなければならないの」
主人「え、えぇ、例えば、指名手配されている罪人を泊めたとなれば、当宿屋の風評などにも影響が……」
賢者「そう。保身のために、支払いを済ませた客を疑うというのね。結構なことね」
剣士「いい。晒そう」
剣士は バンダナと えりまきを とりはらった! ▼
キズだらけの みにくい顔が むきだしになった! ▼
主人「ひぇっ!? も、申し訳ございませんでした!!」
149
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/01/10(土) 04:35:53 ID:h0bTK8sU
【城下町・大通り】
スタスタ スタスタ
剣士「――簡単な落書きだ。塗料は木屑や葉っぱ、それに本物の血も少し」
賢者「呆れたわ。暇さ加減はもちろん、よくそんな不潔な顔で平然としていられるわね」
剣士「洗えばすぐ落ちるし、こうやって隠してるなら素顔でも同じだ」
賢者「かつての扱いを思うと不遇なものね。素顔で出歩くこともままならないなんて」
剣士「言っとくが後ろめたくてこうしてるんじゃないぞ。ここ以外じゃ堂々としてるさ」
剣士「ただ、王都で俺が無遠慮なのはまずい。なんたって勇者教の中枢だ」
剣士「下手に騒ぎを起こしたら、最悪、連れのお前も屋敷に帰れるか分からないぞ」
賢者「脅してるつもり? その時はあなたを差し出して、赤の他人を装えばいいだけよ」
剣士「お前なら本当にやりかねないな……」
剣士「おっと、ここで曲がれ。そっちに行くと城だ。教会はあっち」
賢者「あら。お城に用は無かったかしら」
剣士「あるわけないし、入れるわけないだろ。素直に間違いを認めろ」
剣士(……まぁ一年前は、王都に寄ったらまず王様に謁見してたからな……)
150
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/01/10(土) 04:37:21 ID:h0bTK8sU
【城下町・広場】
剣士「見ろ。広場に勇者がいるぞ」
賢者「真ん中にある黄金の像のことを言ってるのかしら」
剣士「ああ。あんな高いところで金キラキンになって剣を掲げてる」
剣士「大した財力だな。勇者教も相当でかくなったもんだ」
賢者「あの景気の良さそうな方は、残念ながらあなたではないようね」
剣士「残念ながら俺ではないな。あれは正真正銘の現勇者様だ」
賢者「凛々しいわね。きっと世を救う勇者というのは、あんな顔つきの殿方であるべきなのね」
剣士「俺には女にも見えるけどな」
賢者「あの抜き放った剣先は、どこに向けられているのかしら」
剣士「この世界のド真ん中にある、険しい山岳地帯に囲まれた邪悪なる城郭だろうな」
賢者「そういえば魔王の城の方角ね」
剣士「結局俺たちは行きそびれたけどな」
賢者「誰かさんが勝手にパーティーを解散したおかげでね」
剣士(……打倒魔王のシンボル、か……)
151
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/01/10(土) 04:38:44 ID:h0bTK8sU
【王都・大聖堂前】
剣士「――うおっ。ここまで大きくなってたか」
賢者「国教だもの。王族との癒着も強くなってるわ」
剣士「とはいっても、たった一年足らずでこんな規模になるか?」
神父「――迷える子羊たちよ。勇者様へ祈りを捧げなさい」
神父「魔を討ち、世に安寧をもたらすその御身に、我らの加護を届けるのです」
神父「怯えることは何もありません。勇者様はあまねく人々を残らず救って下さいます」
神父「救世がなされる歴史に生まれたことを、誇りなさい――」
剣士「……聖堂の前なのに、あちこちで人が集まって説教を受けてるな」
賢者「一体何を考えているのかしら。ここにいる人たち全員」
剣士「俺も入るのか」
賢者「筆頭よ」
剣士「何を考えてるかって? こんだけ数がいれば、軽く中隊ぐらい作れそうってことさ」
賢者「ほらみなさい、やっぱり何を考えてるのか理解できないわ」
152
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/01/10(土) 04:40:47 ID:h0bTK8sU
【大聖堂・入り口】
剣士「……さて。しばらくだんまりになるぜ。後は頼んだ」
賢者「楽なものね」
僧兵「どなたでしょうか」
賢者「旅の道士。先日こちらに訪れたばかりよ」
僧兵「当聖堂に何のご用でしょう」
賢者「ここの礼拝堂にて祈りを捧げるよう、知人に勧められたわ」
僧兵「なるほど、記念礼拝ですね。どうぞお通り下さい」
賢者「ありがとう」
僧兵「そちらの方は? お顔を伏せられているようですが」
剣士「……」
賢者「この者は私の……護衛よ。ただの護衛。何か問題かしら」
僧兵「失礼ながら、ここから先は前科者かどうか確認するため、お顔を晒して頂きます」
僧兵「教会に異端分子が紛れるのを防ぐため、規定は厳守です。ご協力下さい」
153
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/01/10(土) 04:42:02 ID:h0bTK8sU
賢者「……」
剣士(……やむを得ないな。俺は抜けよう。さっきの広場近辺で待ってる)
賢者(勝手ね)
剣士(一人じゃ不安か?)
賢者(一人の方がいいくらいよ)
剣士(その意気だ。じゃあな) スタスタスタ…
賢者「失礼したわ。私一人で入るわね」
僧兵「お連れの方は?」
賢者「顔の傷を治してから出直すことになったわ。気にしないで頂戴」
僧兵「はあ」
賢者「礼拝堂はどちら。あまり時間もないのだけれど」
僧兵「し、失礼しました。まず聖堂に入ってすぐの通路を、真っ直ぐ行って――」
賢者「……」 チラ
賢者( すぐいなくなるのね。本当、勝手)
154
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/01/10(土) 04:42:59 ID:h0bTK8sU
【大聖堂内】
賢者(……さて。僧侶の行方ね)
賢者(誰に聞けば、すぐに分かりそうかしら)
賢者(そこそこ偉そうな人なら、誰でも良さそうだけれど――)
「あら。こんなところまで足を運ぶなんて」
賢者「!」
「いよいよ懺悔も佳境ってことかしら?」
賢者「お姉様」
次女「近々婚礼があると聞いていたけど、その様子じゃ破談したみたいね」
次女「まぁ妥当な顛末でしょうね。ニセ勇者の側女なんて、不名誉の塊だもの」
作曲家「ハニー、ここにいたのか。おや、その子は誰だい?」
次女「あっダーリン! 紹介するわ、我が公爵家未曾有の汚点、妹の三女よ!」
賢者「お姉様」
賢者「ちょうど良かったわ。聞きたいことがあるの」
155
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/01/10(土) 04:44:09 ID:h0bTK8sU
ここまで。これからぽつぽつ更新していきます
156
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/01/10(土) 04:59:53 ID:Jm0TXMyY
乙
157
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/01/10(土) 06:44:17 ID:FuzynUYI
おつかれさま!
158
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/01/10(土) 07:05:36 ID:TSwLnD.U
乙
159
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/01/10(土) 09:01:07 ID:XW40QWF.
乙
160
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/01/16(金) 03:38:50 ID:XFYqUKHE
楽しみに待ってるぞー
161
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/01/19(月) 20:25:41 ID:5Ue4PqkU
>>77
密かに楽しみにしてるから、長いと嬉しい。
まだかなぁ。
162
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/01/24(土) 18:58:40 ID:xAdsWgZk
帰ってきてくれー
163
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/01/29(木) 00:45:03 ID:y/SVKyts
まだか
164
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/02/01(日) 21:46:16 ID:C5QuDbOI
待ってるんだけどなー
165
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/02/08(日) 13:30:48 ID:vMrWwHDQ
はよ
166
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/02/11(水) 19:31:34 ID:WK2.P73w
婆さん続きはまだかのぅ…
167
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/02/14(土) 23:54:21 ID:9Ympi0E2
最近の勇者系SSは途中で消えてばっかだなあ・・・
168
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/02/14(土) 23:58:57 ID:.ShvU8RM
魔王倒したら今度は人から追われるから失踪も仕方ないね
169
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/02/19(木) 17:04:35 ID:3xMnVW8g
再開しなさそう
170
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/03/01(日) 00:52:42 ID:hh/4GwqA
age
171
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/03/16(月) 23:17:26 ID:xoHhWWT2
トリ合ってるかな
もうちょっと待ってて下さい
172
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/03/16(月) 23:34:49 ID:maowLYRI
待ってるよ〜乙
173
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/03/17(火) 00:44:04 ID:6QojeXgE
よっしゃ
174
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/03/20(金) 20:39:58 ID:2Ri9ZX.2
乙!
面白い
続き待ってる
175
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/03/27(金) 12:51:37 ID:asxzQkDg
2ヶ月ぶりに投下
>>154
〜
176
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/03/27(金) 12:52:19 ID:asxzQkDg
次女「まあまあ。あなたが私に頼み事なんて、よっぽど追い詰められてるのかしら」
次女「何を聞きたいのか、当てて見せましょうか? どうせ行く場所に困って、わざわざここを訪ねたんでしょ」
次女「そうねえ、本命は『私たちの楽団に入りたい』といったところかしら?」
作曲家「彼女は、なにか音楽はできるのかい?」
次女「さっぱりよ! 見たことないもの!!」
作曲家「う〜んそれはナンセンス。我が楽団は入団希望者で溢れてる、余裕はないねぇ」
次女「らしいわよ! ふふっ、残念だったわね!」
賢者「僧侶はどこに行ったの」
次女「え? 何、なんですって?」
賢者「この教会から追放された、僧侶はどこに行ったの」
作曲家「? 僧侶……?」
次女「……」
次女「あんた――昔から気に入らないのよ」
次女「僧侶は、どこに行ったの、ですって?」
177
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/03/27(金) 12:53:35 ID:asxzQkDg
次女「いつもいつもいつも私のことなんて眼中にないような態度を取って!!」
次女「稽古だってろくにやらなかったくせに、いつも平然とすました顔して!!」
作曲家「お……おい、ハニー……」
次女「呪文なんて訳の分からないものにのめりこんだくせに、皆にチヤホヤされて!!」
次女「魔王退治に出るあんたを笑顔で町から送りだすとき、頭がどうにかなりそうだったわ!!」
次女「今でこそ言うけど、とっとと魔王に殺されてしまえばいいと呪ったものよ!!」
作曲家「ハニー、落ち着いて……」
次女「ハァ……ハァ……」
賢者「……」
次女「ハァ……ハァ…… ふ ふふふ」
次女「でもね」
次女「許してあげる」
次女「そんなみじめな末路を迎えたんですもの。やっぱりあなた、何もかも間違っていたのよ」
次女「そして私は正しかった。それが証明されたから、あなたのすべてを許してあげるわ」
次女「跪いて懇願なさい? 姉妹のよしみで、楽団の雑用としてこき使ってあげる」
178
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/03/27(金) 12:54:17 ID:asxzQkDg
作曲家「ハニー、そんな勝手に……」
賢者「……」
スッ
ペコリ
次女「何? それ。メイドの真似事じゃなくて、跪きなさいと言ったのよ」
賢者「そちらの殿方」
作曲家「!? ぼ、ぼくかい?」
賢者「こちらの教会に以前いらしていた、ニセ勇者一行の一人」
賢者「僧侶の行方をご存知ないでしょうか?」
作曲家「さ、さあ……北の方へ逃げたとしか……」
賢者「十分です。ありがとうございます」ペコリ
作曲家「い、いや……」
次女「あんた」
次女「許さない。絶対に……許さないわ」フルフル
179
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/03/27(金) 12:55:58 ID:asxzQkDg
次女「 」スー
次女「みんな来――」
賢者は メラを となえた!
メラは 次女の めのまえを とおりすぎた!! ▼
次女「来ゃふっ!?」ズテン
作曲家「ハニー!? 大丈夫か!?」
賢者「――例えばの話よ。お姉様」
賢者「お姉さまの美しい歌声と、私の『呪詛(ザキ)』……『勝負したら』どちらが勝つかしら」
次女「!? あ……あんた……」
賢者「何の勝負かは決めてないけれど、多分、どんな勝負だったとしても、お姉様の息の根は止まるわ」
賢者「そうなると、勝ち負け以前の問題になってくるでしょう。だから、争い事は成立しないの」
賢者「相手が今のお姉様一人である以上、争いなんて成立し得ないの」
賢者「少しは言いたいこと、伝わったかしら」
賢者「じゃあ、さようなら」 スタ スタ スタ
180
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/03/27(金) 12:57:03 ID:asxzQkDg
――
信者A「――僧侶? ああ、あの大罪人なら、追放された日にここから消えてそれっきりさ」
信者B「――知るものか。奴が一時ここにいたと考えるだけでも身の毛がよだつ」
信者C「――存じません。僧侶などという方はここにはいません」
信者D「――ああ、あんたもあいつを探してるのか? やっぱり直々に極刑を下さないとな」
信者E「――知らないが、それよりあんた、どこかで見たような……」
――
賢者(……)
賢者(こんなところかしら。そろそろ怪しまれてきたし、切り上げ時ね)
賢者(できれば司祭級の立場の人に会って、詳しい話を聞いてみたかったのだけれど)
賢者(……奥の間は、外来の信者は立入禁止みたい。それに堅守な備えに、武装を隠した僧兵達)
賢者(分かりやすい伏魔殿ね。水面下でどんな悪巧みがのさばってるのかしら)
信者「 」ヒソヒソ
信者「 」ヒソヒソ
賢者(……長居は禁物ね) スタスタスタ…
181
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/03/27(金) 12:58:36 ID:asxzQkDg
――
【城下町・広場】
剣士「悪い、遅くなった」
賢者「本当に。遅かったわね」
剣士「悪いが、急いでここを出よう。怒るのは後にしてくれ」
賢者「何」
剣士「ルーラを使うのは目立つから、ほら、行くぞ」 ギュッ ザッザッザッ
賢者「あ。ちょ っと」 ザザッ ザザッ
剣士「走らなくていい。人ごみにうまく紛れこむ」
賢者「何があったの。もしかしてばれたの」
剣士「いや。下手うって勘付かれた」
賢者「何をやらかしたの」
剣士「隙間だ。急ぐぞ」
賢者「ちょっと」
182
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/03/27(金) 12:59:38 ID:asxzQkDg
――
【フィールド・王都周辺】
剣士「つまりだな」
剣士「俺なりの清算をしてたんだ」
賢者「具体的にかつ簡潔に説明して」
剣士「いやぁ。勇者やってた頃にだな」
剣士「あっちこっちの民家から、タンスや壺や宝箱を漁ってたじゃないか」
賢者「ええ」
剣士「その清算」
賢者「返していたの」
剣士「ああ」
賢者「私が大聖堂で情報収集してる間に、一軒一軒回ってアイテム置いていったというの」
剣士「そうだ。郵便受けやらドアの前やらにな」
賢者「それで結局勘付かれちゃったというの。そんな馬鹿げたことのために、私の手首がつかまれたの」
剣士「そこを根にもつのか」
183
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/03/27(金) 13:01:05 ID:asxzQkDg
剣士「まぁ、何とか全軒回れたから良かったけどな」
賢者「全軒ですって」
剣士「物覚えには自信がある。確かに城下町の民家は全軒だ」
剣士「さすがに城は無理だったが、あっこは元々金持ちだからどうってことないだろ」
剣士「たかが964ゴールドと、毒消し草、ちからの種とすばやさの種だ」
賢者「一年前の話よ。適当にしか聞こえないわ」
剣士「すごいもんだろう」
賢者「誰も証明できない。お城の人でも無理でしょうね」
剣士「賢者のかしこさってのは、記憶力とは無縁なのか?」
賢者「私は盗んでないもの。賊はあなた一人よ」
剣士「否定はしないさ。あの頃は勇者って権力を盾になんでもやってたからな」
賢者「なんでもやってるという言い方なら、今も変わらないけど」
剣士「ああ。権力がないぶん、かえってやりたい放題だ」
賢者「どこまででたらめなの」
剣士「とりあえずは、仲間が集まるまでだな。――で、僧侶はどうだった?」
184
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/03/27(金) 13:01:36 ID:asxzQkDg
ぶつ切りで申し訳ない
とりあえずここまで
185
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/03/27(金) 13:05:16 ID:xnM0YLqo
乙乙!
186
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/03/27(金) 13:30:47 ID:vhcX1Qv6
乙
187
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/03/27(金) 14:08:38 ID:U5.V9eRw
待ってた乙乙
188
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/03/27(金) 18:45:35 ID:6pn7Gb8Q
待ってたよ、帰ってきてくれてありがとう
189
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/03/28(土) 12:20:28 ID:UWj4aUi2
待ってた
この二人の距離感が好きだからまだまだ続けてくれ
190
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/03/29(日) 09:02:03 ID:3ifZBLTY
支援ありがとう。少し投下します
191
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/03/29(日) 09:02:58 ID:3ifZBLTY
賢者「僧侶は追放されて、北の方へ逃げたらしいわ」
剣士「ふんふん、北のどこだ?」
賢者「さ。どこかしら」
剣士「えっ、終わり?」
賢者「そうよ」
剣士「終わり……」
賢者「何」
剣士「いや。ちなみに、何人くらいに尋ねた?」
賢者「10人程度かしら」
剣士「10人も? それだけ聞いてそれだけの情報てことはつまり」
賢者「相当嫌われていたわ。誰しも興味ないか、忘れたがってるみたい」
剣士「なるほど。言われてみりゃそりゃそうか」
賢者「そういえば何人か、探し出して極刑にしたいなんて仰る信者様もいらしたわ」
剣士「カルト教団も甚だしいな。人が人を襲ってどうするんだよ」
剣士「子供でも分かるのにな? 勇者が何を目的に戦っているのかなんて」
192
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/03/29(日) 09:03:50 ID:3ifZBLTY
賢者「僧侶は、例の件で一気に異端者に格下げ」
賢者「そのまま追放処分になって、その日のうちに雲隠れしたそうよ」
剣士「だろうな。そのまま町に留まっていたら危険だったはずだ」
剣士「問題は、どこに逃げたのか……」
賢者「僧侶の出身は聞いてないの」
剣士「さあな。あの教会が出身だと言い張っていたからな」
賢者「教会の孤児ってことかしら」
剣士「その可能性もあるし、別に郷里がある可能性もある」
賢者「いずれにしろ、当ては分からないということね」
剣士「それどころか、生きてるかどうかさえ、な」
賢者「埒が明かないわね。結局どうするの」
剣士「そうだな」
剣士「消息が分からないんじゃ仕方がない。後回しにするか」
賢者「後回しって」
剣士「先に武道家に会いに行こう」
193
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/03/29(日) 09:07:05 ID:3ifZBLTY
剣士「という訳で、ルーラを頼む。行き先は――」
賢者「一撃の山。だったかしら」
剣士「そうだ、よく覚えていたな。確か現地の言葉で『ゲキザン』だったかな」
賢者「きっかけに乗じて、知ってることをとりあえずひけらかす人っているわよね」
剣士「はいはいそうだな。で、ルーラで行けそうか?」
賢者「待って」スッ
剣士「頼む」
賢者「静かに」
剣士「……」
賢者「そうね」
賢者「行けるわ」
剣士「やっぱり瞑想のイメージって大切なんだな」
賢者「別に。さっきの間は特に意味はないわ」
賢者「ただ一旦、あなたを黙らせたかっただけ」
剣士「そういう嫌がらせじみたことはやめろよ!」
194
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/03/29(日) 09:07:59 ID:3ifZBLTY
賢者「ただ、あの山に行く前に断っておくけど」
剣士「武道家のことか」
賢者「ええ」
剣士「大丈夫だ。ちゃんと考えてるさ」
剣士「最後にあんな状態で別れたからな。加入を無理強いはしない」
賢者「ならいいけど」
剣士「それに、ニセ勇者騒動の煽りを食らった一人だ」
剣士「俺たちがその気でも、あっちの方から拒絶するかもしれない」
賢者「それでもいくの」
剣士「ああ」
剣士「俺は前のメンバーで旅をしたいからな。出来るなら」
剣士「頼むよ。ルーラ」
賢者「そう。 いいわ」
賢者は ルーラを となえた! ▼
195
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/03/29(日) 09:08:56 ID:3ifZBLTY
【一撃の山】
トンッ タッ
賢者「着いたわ」
剣士「ふもとだな」
賢者「そうね」
剣士「できれば、山頂の道場に直接飛んでいって欲しかったんだが」
賢者「そうね」
賢者「運任せになるけど、バシルーラという呪文があるの」
剣士「分かった。悪かった。歩いていこう。行くぞ」 ザッ ザッ ザッ
賢者「無能扱いされた気がして不愉快ね」ザッ ザッ
剣士「誰もそんなこと言ってないだろう」
賢者「誰かが言った言ってないなんてどうでもいいの。私が不愉快なの」
剣士「! ……不愉快なのはお前だけじゃないみたいだぞ」
賢者「そう。ご勝手に」
剣士「違う、魔物だ!!」
196
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/03/29(日) 09:10:05 ID:3ifZBLTY
ごうけつぐまが あらわれた!
ガルーダが あらわれた! ▼
ごうけつぐま『グオオォォン!!』
ガルーダ『ゲェー! ゲェー!』
賢者「挟まれてるわね」
剣士「前門のクマ、後門の怪鳥か」
賢者「どうするの」
剣士「後ろのガルーダを任せるが、大丈夫か? 久々の戦いなんだろう」
賢者「何なら前も任せてもらっても結構よ」
剣士「頼もしいな。だがそれには及ばない」
ごうけつぐま『グオオオオオッ!!』
剣士「すぐ終わる」
剣士は ブロンズナイフを ぬきはなった! ▼
197
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/03/29(日) 09:10:54 ID:3ifZBLTY
ごうけつぐま『グアアアアッ!!』
ごうけつぐまの こうげき!
剣士は ひらりと みをかわした! ▼
剣士「ふっ」
剣士は からだを バネのようにしならせた!
剣士は しっぷうづきを はなった!
ブロンズナイフは ごうけつぐまの 急所を つらぬいた! ▼
ごうけつぐま『グオオッ……! オ……オオン……』
ズ ズ ー ン
剣士「……うまく山に還れよ」 ヒュヒュッ スッ
ごうけつぐまを たおした! ▼
剣士「さて、うちの姫さんはどうかな」
198
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/03/29(日) 09:13:21 ID:3ifZBLTY
ガルーダ『ゲエエ! ゲエエ!』 バッサ バッサ
賢者(不思議ね)
賢者(こうして戦いの際に立つと、屋敷にこもっていた頃の方が夢みたい)
賢者(敵。この緊張感。杖の感触。敵。湧き出る魔力。呪文のイメージ。敵)
ガルーダ『ゲエエーッ!!』ビュウウウウゥゥ
ガルーダは きゅうこうかした! ▼
賢者(一年ぶりだなんて冗談、まるで前の旅と今日とを繋ぎ合わせたよう)
ガルーダの こうげき! ▼
賢者「あとは役者が務まっていれば、完全に勘が戻っていたわね」
賢者は メラゾーマを となえた!
ガルーダに 分厚いひばしらが ちょくげきした!▼
ガルーダ『グエエエエエェェェェッ!!』 バササッ バササササ バサ…
賢者「おやすみなさい」
ガルーダを たおした! ▼
199
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/03/29(日) 09:15:14 ID:3ifZBLTY
剣士「終わったな。ケガも無いか」
賢者「した方がちょうど良かったくらいよ」
剣士「何よりだ。俺たち、ちょっと強くなりすぎたな」 ザッ ザッ ザッ
賢者「実感はないわね」 ザッ ザッ ザッ
剣士「初めてここに来たときは、死闘の連続だったもんだ」
賢者「記憶にないわね」
剣士「お前も、まだメラミを覚えたばかりだった」
賢者「下らないことは覚えているのね」
剣士「あの時はそりゃあ、楽しそうに乱発してたからな」
賢者「記憶にないわね」
剣士「今も楽しそうだけどな」
賢者「記憶にないわね」
剣士「照れるなって」
賢者「誰も照れてなん」
剣士「シッ! 魔物だ。さっきより多いぞ、気をつけろ――!」 ダッ
200
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/03/29(日) 09:15:46 ID:3ifZBLTY
いったんここまで
201
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/03/29(日) 09:22:10 ID:xLqMFUAM
乙
202
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/03/29(日) 09:26:51 ID:xKXq9NQs
賢者可愛い
203
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/03/29(日) 16:58:05 ID:20f43VuU
続き待ってるぜー
204
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/03/30(月) 02:37:26 ID:8rsHK5tU
おつん
205
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2015/03/31(火) 08:01:44 ID:tQy8djjA
回想でもいいから一度目の旅のときの雰囲気を見てみたいな
メラミ乱発してはしゃぐ賢者見てみたい
206
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/04/10(金) 12:56:43 ID:/c/whufc
まだどうなるか分かりませんが、回想自体はちょくちょく挟んでいこうと思ってます
投下します
>>199
〜
207
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/04/10(金) 12:57:19 ID:/c/whufc
――――――――――
剣士たちは まもののむれを たおした! ▼
剣士「……ふう。これで10戦目を超えた訳だが、さすがに疲れてきたか?」
賢者「疲れるとしたら、あなたの執拗な気遣いね」
剣士「いやしかし、とても1年ぶりとは思えないぞ。全戦無傷じゃないか」
賢者「それが、私が疲れてると思う根拠なの」
剣士「無理してるなら言えってこと。高等呪文を連発してるのは分かってるぞ」
賢者「あなた」
賢者「『賢者』の号を持つ意味が、いまひとつ分かってないようね」
剣士「そりゃ、からきしだからな。あんだけ豪勢に使いまくっても平気なもんなのか?」
剣士「以前はメラゾーマだけに魔力使っても、50発ぐらいが限度だったろ?」
賢者「今の私なら、余裕で100は数えられるわ」
剣士「なっ」
賢者「精神修養を欠かしたことはないの。甘くみないで」
208
:
◆RvUAp8KrlM
:2015/04/10(金) 12:58:05 ID:/c/whufc
剣士「お前が平気なのは分かった。それで、戦いの勘は取り戻せたか?」
賢者「大体ね」
剣士「それなら、トヘロスを頼む」
賢者「なんですって」
剣士「トヘロス。一定時間、自分より格下の魔物が出てこなくなる呪文」
賢者「あなたより知ってるわ。私が言いたいのは、今さらその呪文を使う意味よ」
賢者「まさか私の戦いの勘を取り戻すためだけに、無駄な戦闘を繰り返させたというの」
剣士「ああ。だが、もう確かめた。大丈夫だ。トヘロスだ」
賢者「不愉快ね。要は使い物になるかどうか、上から見定められたんだわ」
剣士「仕方ないだろ。一応命がかかってるんだ」
剣士「でも杞憂だったな。1年前と同じ、いや呪文を見るに当時よりキレがあるくらいだ」
賢者「もし私が使い物にならなかったら、どうするつもりだったの」
剣士「そんときゃ……まあ、俺が結成するパーティーの一人だからな」
剣士「守るさ。俺が」ザッ ザッ ザッ
賢者「 不愉快ね、それは。不愉快極まりないわ」 ザッ ザッ
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