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从 ゚∀从二人暮らしのようです(-_-)
1
:
名も無きAAのようです
:2016/05/07(土) 10:11:46 ID:KbZp5als0
※ハートフル同棲ものですが少しエロがあります
262
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 23:08:26 ID:bLfC7y560
平日という事もあり境内はそれほど混んでいなかった。三が日などには初詣客でごった返すのだという。
五月の大型連休も終わりここからは休日の一つもない退屈な日々だ。更に梅雨も控えている。
本殿に着いてトソンに硬貨を渡して一緒に放る。手を合わせて静かな時間が訪れる。
祀られているのは菅原道真で、学問の神として全国的に有名だ。
トソンは一体何を祈ったのだろうか。大学進学についてだろうか。
今こうしてぼくと生活を共にしている間、トソンは学校を休んでいる。
トソンは家を出た直後からずっと携帯電話の電源を切ったままだ。
勿論無断欠席という訳ではなく家の者が何か理由をつけて学校に連絡をしているだろう。
こうしてぼくといわば駆け落ちのような状態が続いている以上は学校という日常にも戻らない。
それでもトソンはその日常に戻った先での大学進学という至極まっとうな目標を祈っているのだろうか。
別にぼくとの関係の継続をトソンにも祈って欲しいだとか、そういう押し付けがましい高校生じみた希望がある訳ではない。
ただ純粋に気になるのだ。そもそもこの逃避行はおそらくは永続する事のないものだ。それはぼくもトソンも心のどこかでは冷静に理解している。
ぼくはトソンを助けたかった。トソンはあの男から逃げたかった。ぼくはトソンを愛していた。トソンもぼくを愛していた。
二人で誰も知らない場所へ行きたかった。しかしそれは永遠に続く事はないだろう。トソンの家の者は捜索願を出しているだろう。
ぼくの行為は拉致だ。略取・誘拐罪として検挙されるだろう。いつかぼくとトソンの繋がりがどこかから調べ上げられてたどり着かれるかもしれない。
職場には体調不良だと言い続けているがそろそろ限界だろう。昨日から着信が多くなり電源を切ってしまった。
緊急連絡先として住所を職場に提出しているのでそのうち上司がやって来るはずだ。そこにはぼくも車もない。
上司はようやく異変に気づく。ぼくも捜索願を出されるかもしれない。そう考え始めるとぼくとトソンの時間は極めて有限である気がする。
少しでも長くトソンといられるように。ぼくは願う。きっといつかトソンはあの邸宅に連れ戻される。あの男の元へ戻される。
トソンの望まない環境に戻される。どういう形になるかは分からないけれど。せめて少しでも長くこうしていたい。
263
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 23:10:21 ID:bLfC7y560
幼稚な考えだと分かっていた。トソンを助けたいという気持ちだけでここまで来た。誰もがぼく達の知らない場所へ。
しかし将来的な展望などはそこにない。行き当たりばったりの逃避行だ。果てまでたどり着いてその先にどうするのか。
どうやって生活していくのか。いずれ貯金は尽きる。会社から解雇通知が来る。頭でそんな当然の未来は理解しているのだ。
それでももう後戻りは出来ないとトソンを邸宅から連れ出して横浜ベイブリッジを渡った時に覚悟したのだ。
(´・_ゝ・`)「行こうか」
(゚、゚トソン「はい」
ぼくは結局トソンが何をお願いしたのか訊かなかったしトソンもぼくに訊かなかった。
九州自動車道に戻って南下を続ける。熊本インターチェンジで降りて市街地へ向かう。
駐車場に車を停めてトソンが見てみたいと言っていた熊本城に行く。
それから繁華街を歩いてみた。熊本もJRの駅と中心地は離れているようだった。
新幹線もある熊本駅からは路面電車が繁華街の方へ続いている。
古い単行の列車もあれば黒塗りの豪華絢爛といった列車も走っている。
散策をしているともう遅い時間となったので熊本で泊まる事にする。
繁華街にある三井ガーデンホテルに予約をして駐車場に車を入れた。
もう熊本なのだ。もう一つ南下すると鹿児島に入る。果ての地、長崎鼻まで間もなくだ。
そこでいったんぼく達の旅は終わる。果てに着いてしまえばその先はない。
それからの事も考えていなかった。トソンを助け出し、一緒に逃げ、果てに着く。
そうしてどうするのか。明確なビジョンなんて持っていなかった。
しかし必ずその先というのは存在するのだ。どういう形であれ存在する。待ち構えている。
ホテルでぼくはトソンとセックスをする。一日の運転の疲れを癒やすようにトソンは労る。
こんな日々がずっと続いていけばいいと思っていた。果てに着いてしまうのならばまた一周すればいいと思った。
二人で日本一周でもしようかとすら思った。しかしそれは違うのだ。時間の引き伸ばしにしかならないのだ。
ぼくはトソンを助けたかった。助け出した。しかしそれは一時的なものに過ぎない。本質的なものは解決されない。
現実からトソンを隠匿しているだけだ。いずれ終焉が来るものだ。分かっているのだ。
264
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 23:12:50 ID:bLfC7y560
(´・_ゝ・`)「ねぇトソン」
(゚、゚トソン「はい」
(´・_ゝ・`)「明日にはきっと長崎鼻に着くよ。 九州最南端に」
(゚、゚トソン「なんだか旅の終わりみたいですね」
(´・_ゝ・`)「あぁ、本当だ」
ぼくの腕に絡まるトソンの頭を撫でる。この時が永久に続けば。しかし永遠なんて存在しない。
そのうちトソンは眠ってしまったようだった。小さく寝息をたて始めた。
ぼくはトソンを助けたかったし、守りたいのだ。しかしこの状況は最善ではない。
ようやく決心をする。トソンのより良い未来のために。輝かしい未来のために。
せめて今日ばかりはこうしてトソンとのゆったりとした時間を楽しみたいと思った。
翌日、熊本から九州自動車道に乗る。南下して県境を越え霧島山を横目に最後の鹿児島県に入る。
海に突き当たり鹿児島湾に寄り添うように九州自動車道はやんわりとカーブする。
鹿児島インターチェンジで九州自動車道の終点を迎える。
吹田から続く中国自動車道から関門橋より託された道路もここで終わりだ。
道路はそのまま指宿スカイラインとしてもう少し続く。
途中からそれまでの高速道路とは異なり一般的な有料道路らしい形態になる。
ETCにすら対応していない終点の料金所を越えるといよいよ道路も終わる。
夜明け前の谷津船橋インターチェンジから。東名高速道路の起点東京インターチェンジから。
随分と走ってきたものだ。長い旅だった気がする。何度も給油が必要であったし時間もかかった。
後は地の果てまで一般道路を走るだけだ。途中の大きな湖が見られる駐車場で停まった。
トイレに行くと言ってトソンを車に残してぼくは携帯電話の電源を数日ぶりに入れる。
そしてどの着信履歴とも違う番号に連絡をする。そして車に戻って最後の地を目指した。
長崎鼻入口という分かりやすい交差点で曲がる。もう夕方となっていた。
奥には綺麗な形をした開聞岳が見える。半島の先端に近づくにつれ左右が狭くなる。
やがて道路は一本だけになった。そして道路が終わり脇にあった駐車場に車を停めた。
まさしく終着地だ。地の果て。旅のゴール地点。遂にここまで来てしまった。
車を降りて歩いてその先を目指した。先には白い灯台が建っていた。
更にその先にごつごつとした岩が海に張り出していた。その先へ岩に注意しながら歩く。
そして遂に赤い岩の先端にたどり着いた。もうこの先には何もない。
夕陽に照らされて海が輝いている。奥で形の綺麗な開聞岳が佇んでいる。
地の果て。これ以上はもうどこにも行けない。ゴール。行き止まり。
265
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 23:14:35 ID:bLfC7y560
(゚、゚トソン「ここまで来ましたね」
(´・_ゝ・`)「ここまで来たな」
(゚、゚トソン「なんだか感慨深いです」
(´・_ゝ・`)「あぁ。 トソン、ぼくは君に会えて良かったよ。 出会えて良かった。
ずっと女子高生と援助交際をしているような男がようやく一人の女性を愛したいと思った」
(゚、゚トソン「私もデミタスさんに出会えて良かったです。 自暴自棄になって掲示板に書き込んで、ここまで来るとは思いませんでした」
(´・_ゝ・`)「ある意味では運命的だ。 ぼくは新たな援助交際のパートナーを探していて、君は自棄になり当てつけで掲示板に書き込んだ」
(゚、゚トソン「それでもデミタスさんが一番誠実そうな方だと思ったからです。 援助交際で誠実そうかどうかで判断するなんて変な話ですが」
(´・_ゝ・`)「本当に考えれば考えるほどよく出会えたものだ。 まぁ男女の出会いなんてどれも運命的でロマンチックなものなんだろうけど」
(゚、゚トソン「たとえ援助交際だとしても」
(´・_ゝ・`)「全くだよ。 もしも違う出会い方をしていれば、とぼくは今でも思う」
(゚、゚トソン「違う出会い方」
トソンが繰り返す。
(´・_ゝ・`)「あぁ、違う出会い方。 たとえばぼくは普通の青年で君は女子高生でなく普通の大人の女性だったならば」
(゚、゚トソン「だったならば?」
(´・_ゝ・`)「きっと普通の男女の関係になれたのかもしれない」
266
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 23:16:45 ID:bLfC7y560
あくまで仮定の話だ。違う出会い方をしていれば、抱えている問題も環境も違ったかもしれない。
このような結末をたどる事もなかったのかもしれない。
けれどぼくが好きなのは女子高生で、その仮定はやはり仮定の域を出ない。
(´・_ゝ・`)「でも実際は女子高生しか愛せなかった男と未成年の女の子だ」
だから。そこで区切る。きっとお互い分かっていた事だ。
(´・_ゝ・`)「この関係は永続するものではない」
トソンは何も言わずに海を見ていた。この海の先にあるのは屋久島に種子島、奄美大島に沖縄の南西諸島だ。
道路はここで終わりこの先に行けなくとも土地も生活もまだ続いている。二人で行く機会があればきっと楽しいだろう。
(´・_ゝ・`)「間もなくこの逃避行という非日常は終わる。 君はこれから日常に帰る。
また普通に高校に通い、大学へ進学して、希望の進路へと進む」
(゚、゚トソン「私は、デミタスさんと一緒に」
(´・_ゝ・`)「いいや、君には未来がある。 今の生活を続けていくのはその未来を閉ざす事になる。 君の将来を思うこそなんだ」
(゚、゚トソン「どうして」
(´・_ゝ・`)「分かるんだ、ぼくみたいに十年近く援助交際を続けて何人もの女子高生と接していると分かる。 君のような年齢の判断能力はとても低い。
君は同じ年齢の子と比べるとしっかりしているし大人びているけれど、それでも長期的なビジョンを見据えた時の判断能力は低いんだ。
それを食い物にしてきたぼくが言うのもおこがましい事なんだが、ぼく達大人がそれを正して補助しなくてはならない」
(゚、゚トソン「そんな…」
(´・_ゝ・`)「今日までの日々が間違いだったとは言わない。 ぼくは後悔していないし、楽しかった。
だけど君は元の日常に戻らないといけない」
(゚、゚トソン「でも今になって」
267
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 23:18:34 ID:bLfC7y560
(´・_ゝ・`)「大丈夫だ、ぼくは誘拐犯で君は連れ回された。 そういう構図になる。 君は被害者だ」
(゚、゚トソン「デミタスさんを犠牲にするも同然ではありませんか」
(´・_ゝ・`)「実際に罰せられるのはぼくだよ。 援助交際に未成年の誘拐と連れ回し。 紛れも無く犯罪だ」
トソンは守られる。奇異の目で見られるかもしれないが、守られるのだ。
(´・_ゝ・`)「ぼくは君があの邸宅で受けていた仕打ちを話す。 この誘拐がその仕打ちから救い出すべく行われたものだと話すよ。
そして君も正直に全て話すんだ」
(゚、゚トソン「私も、話す」
(´・_ゝ・`)「そうだ。 君をあの邸宅から攫った事で風穴ぐらいは開けられただろう。 そして、そうして警察に話す事でこの逃避行は完遂するんだ」
それでも揉み消されるかもしれない。抹殺されてしまうのかもしれない。
もっと確固たる証拠を掴んで突きつけてやるとか、そういう根本的な解決が出来たら良かった。
しかしセキュリティが強固で閉鎖的な邸宅でそれは叶わない。
(゚、゚トソン「デミタスさん、私は離れたくないんです」
(´・_ゝ・`)「そう言ってくれるのは本当に嬉しい」
ぼくは本当に嬉しい。十年近く援助交際を続けてきて、ここまで心を通わせた子はいなかった。
そもそもいずれ大人になってしまう女子高生には恋愛感情を抱かないようにしてきたせいでもある。
だから今になってこれほどに誰かの事を思う時が来るとは思わなかった。我ながら驚くばかりだ。
トソンの未来のためならばぼくは進んで犠牲になる。それは傲慢ながらこれまでの贖罪にも繋がるだろう。
十年あまり援助交際を続けて己の欲求を満たしながらもどこかでいつかは手を打たなければならないと思っていた。
まさに今がその時なのだと思う。これまでの自分の行いが清浄化される訳ではない。それでも構わない。
トソンが救えるのなら。トソンの未来を少しでも良いものに変えられるのなら。
何せトソンはまだ十代の女子高生だ。未来はどの方向にも繋がっている。
268
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 23:22:27 ID:bLfC7y560
(´・_ゝ・`)「ありがとう、トソン。 どうか幸せに」
(゚、゚トソン「どうして、今生の別れみたいではないですか」
(´・_ゝ・`)「それに等しいものさ」
ぼくは振り返って両手を挙げる。
(´・_ゝ・`)「投降します」
長崎鼻の灯台の前に何人もの警察官が構えていた。大きな湖が見られる駐車場でぼくが携帯電話で通報した警察だ。
背後に忍び寄る存在に気がついていなかったトソンは驚いて周囲を見渡した。
最南端の地の果て、海に囲まれた岩場の先端。完全に警察官に包囲されている。
(´・_ゝ・`)「これでぼくは誘拐犯、君は攫われた被害者だ」
(゚、゚トソン「そんな、デミタスさん、これでは」
(´・_ゝ・`)「いいんだ」
トソンが女性警察官に保護される。ぼくには男性警察官がやって来て、手を取る。
/ ゚、。 /「先程電話で通報したデミタスさんでよろしいですか?」
(´・_ゝ・`)「はい。 ぼくがデミタスです。 彼女はトソン。 ぼくが誘拐しました」
/ ゚、。 /「分かりました。 ではデミタス容疑者、略取・誘拐罪で十七時四分、現行犯逮捕します」
手錠がかけられる。テレビ・ドラマなどでよく見る銀色のものでなく黒い手錠だった。
トソンの方を見る。女性警察官に保護されたトソンは泣きそうな顔をしていた。
そんな弱々しい表情を初めて見た。胸を締め付けられる。きっとこれが最後に見る彼女の顔だ。
269
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 23:26:16 ID:bLfC7y560
(´・_ゝ・`)「さようなら、トソン」
警察官に手を引かれながらぼくは言う。
(´・_ゝ・`)「君は幸せになるんだ」
それが最後だった。泣き出したトソンはもう何も言葉に出来なかった。
ぼくは取り調べで全てを話した。トソンの家庭状況も、この十年あまり援助交際を続けていた事も洗いざらい話した。
新聞の社会面で報道され会社も懲戒解雇となった。担当弁護士から聞かされた話ではトソンはぼくが悪くないのだと庇っているそうだった。
ぼくとしてはいっそ悪者にしてもらって構わなかった。それでトソンが元の生活に復帰出来るのならばそれで構わない。
逃避行の間は家の者が仮病で通しただろうし、公開捜査に踏み切られていないうえ未成年なのでメディア媒体に名前も出ていない。
気がかりなのはあのロマネスクという男との関係性がどうなったかであった。トソンの望む方へ進んでいればと願うばかりだった。
ぼくには実刑判決が下った。求刑は懲役四年で言い渡された判決は懲役三年だ。ぼくは控訴せず受け入れ一審判決が確定した。
そしてどうやらあの横浜山手の邸宅で働いていた従者の一人がロマネスクとトソンの身体的関係を週刊誌にリークしたようだった。
週刊誌は三週に渡って大々的に特集を組み、ワイドショーでは昼夜問わず連日騒がれた。国会でも厳しい追求が行われた。
野党第二位の党首を務める大物国会議員が引き取った未成年の少女を夜な夜な抱いていたというスキャンダルは世間を騒がした。
彼は失脚して表舞台から姿を消した。そしてトソンは新たな環境に身を置く事となった。ここまでが担当弁護士に聞かされた事実だ。
270
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 23:28:24 ID:bLfC7y560
当然ながらぼくは出所後もトソンとの接触を禁じられている。もうトソンに会う事もないだろう。どこかで幸せに暮らしているのならそれで良いのだ。
取り調べにおいても裁判においてもぼくは反省しているのだと語った。しかし後悔はやはり全く感じていない。
これで良かった。ぼくは確信を持ってそう言える。未練や後悔など微塵もない。
トソンを助けたかった。本当に愛した。良い未来にしてあげたいと思った。
それにきっとどこかでこれまでの贖罪を求めていた。
援助交際を続ける現状をどこかで終わらせなければならないと気づいていた。
全てを失ったが、それはこれまでの代償にも思えた。そしてトソンを救えたのだという事実でぼくはやはり満足をする。
出所をしてからぼくは鹿児島へ住まいを移した。もう会社は解雇されているし元同僚や友人に合わせる顔もない。
元々両親はとっくに他界していて遠い親戚がちらほらいたぐらいだし、津田沼は出身地でもなく思い入れのある土地でもない。
あれほど通った首都高湾岸線を走る事はもうないだろう。あの欲望渦巻く大都会東京に戻る事もきっとない。
それに、誰も知らない場所に行きたかったのだ。ぼくが援助交際を十年近く続けて、女子高生を誘拐したとは誰も知らない場所へ。
ぼくが逮捕された鹿児島では小さな記事程度にしかならなかっただろうし、もう三年も経っていれば誰も覚えていない。
全くの新しい土地でゼロからのスタートを切る。これまでとは違う人生を歩み始める。誰もぼくを知らない場所で。
住み込みで働ける建設現場の仕事に就いてなんとか一応は安定した生活に入る。
ぼくのような流れ者が多い職場で人種も様々だ。同じ前科者が全体の二割を占めるほどだ。
これまで鹿児島には縁がなかったが、面白い街だと思う。テレビで降灰予報を流している。
駅ビルの屋上には何故か観覧車がある。蛇のような連接の路面電車が市街地を走っている。
もう長年乗ってきたスバル・レガシィに乗る事は出来ないけれど、ようやく安い中古の軽自動車を買える。
たまに安い中古の軽自動車で長崎鼻に行く事がある。その行為に意味はないけれどどうしても行ってしまう。
駐車場に車を停めて歩いて灯台まで行き、その先の赤いごつごつとした岩を眺める。
地の果て。最後の場所。トソンとの時間はそこで終わった。何もその痕跡はない。
駆けつけてきた警察官も赤色灯を回転させた鹿児島県警のパトカーもいない。
勿論トソンもそこにはいない。
271
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 23:32:52 ID:bLfC7y560
トソンの事を忘れた事はなかった。忘れた日はなかった。元気にしているか、無事に日常に戻れたか、望む進路に決まっただろうか。
三年が経った今、トソンはもう女子高生ではない。お嬢様学校を卒業し、神奈川か東京の大学に進み、成人を迎えているはずだ。
制服を脱いで大人になったトソンを時折想像する。元々大人びた彼女なので劇的に変わる事もないだろう。
ぼくからの接触は禁じられている。それにこっそり会いに行ったり姿だけ見に行ったりしようとも考えなかった。
この日本のどこかでトソンが良い未来に進み幸せに暮らしていればそれで良いのだ。
そう思っているがぼくはこうしてあの最後の地の果てを訪れてしまう。恐らく彼女の面影を求めている。
やはり、きっと会いたいのだ。夢の中でもいいから一目見たいのだ。
そうして成長して大人になったトソンの姿を確認して良かったなぁと心から安堵したいのだ。
しかしそれは叶わない。叶う事はない。ぼくは東京から遠く離れた地の果てで彼女を想う。それだけだ。
さて、ぼくの話はこれでお終いだ。異常性癖を持った男の哀れな末路だと言われてもぼくは否定する事が出来ない。
もっと違う道があっただとか、それではただの自己満足だとか罵られてもぼくはそれを黙って受け入れるほかない。
それでもぼくは後悔していないのだ。これで良かった。願わくば、いつか会う事が許されるのならば。
ぼくは目を閉じる。聞こえるのは海のさざなみだけだ。緩やかに、激しく、それは打ちつける。満ちては引いていく。
初めて会った日の事を思い出す。四月九日、土曜日。横浜駅西口。ヨドバシカメラマルチメディア横浜のベンチ。
今でも鮮明に思い出せる。果たして彼女は本当に来るだろうかと不安に思いながら腕時計を見ると声をかけられる。
―――さん」
忘れもしない彼女の声。きっと永遠に忘れる事のない、
「デミタスさん」
透き通るような凛とした声がぼくの名前を呼ぶ。
ぼくはゆっくりと声のした方を振り返る。
(゚、゚トソン「久しぶり、ですね」
(´・_ゝ・`)「久しぶり、だな」
(´・_ゝ・`)また出会うようです(゚、゚トソン
272
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 23:33:51 ID:bLfC7y560
投下終了です。
読んでいただいた方ありがとうございました。
273
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 23:35:48 ID:LKSIJcuI0
いいねえ
部屋と男女の関係が毎回凄く面白かった
乙
274
:
名も無きAAのようです
:2016/06/04(土) 23:42:27 ID:bLfC7y560
余談です。
今回の同棲もの+物件情報は新潮NEX『この部屋で君と』の真似です。
あと紅白で投下した人間オナホールは元々このスレに投下するものでした。
別に書いていたものが全く間に合わなかったので紅白の方に回しました。
あと無名ちゃんめちゃシコ
275
:
名も無きAAのようです
:2016/06/05(日) 00:16:48 ID:PVtQUY0.0
オナホもこれもすげー面白かった
>>1
に盛大に乙
あと抜いた
276
:
名も無きAAのようです
:2016/06/05(日) 10:50:39 ID:YFUPYrhM0
乙! とても良かったです
277
:
名も無きAAのようです
:2016/06/05(日) 11:18:28 ID:lJtXTmMU0
人間オナホールあんただったのか
あれもすごく好きだったよ
278
:
名も無きAAのようです
:2016/06/05(日) 14:36:15 ID:jqTRXESg0
乙!すごくよかった。人間オナホの人だったのか、あれも面白かったなあ。
出てくる登場人物が大体自分の異常な部分とか最低な部分を認めてるのが好きだな。
特にデミタスなんかは、未成年買春に変わりは無いんだけどその上で最善の行動をした感じだ。
279
:
名も無きAAのようです
:2016/06/05(日) 15:59:23 ID:OOg4SPg60
濃厚な鹿児島描写で懐かしい気持ちにさせられた
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