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(  ω )千年の夢のようです

125 ◆3sLRFBYImM:2016/07/20(水) 20:00:26 ID:RYml97060

あれはクマーの娘が10歳の誕生日を迎え、国からの健康診断を受けた夜のことだった。


『レモナさんの内臓を写したレントゲンです…黒い影が見えますか?
しばらく前に大陸で流行った病いがあるのですが、それに酷似していて──』


発覚したこの病気は、いつか娘の命を奪うだろうと医師は冷徹に言い放った。
挙げ句、莫大な医療費をクマーに請求する。


『それでも治るかどうかは五分五分ですがね』


…断れば費用は当然かからない。
だが、生き永らえる可能性にすがりたければ、二年間、治療薬を投与し続ける必要があった。

ウォール高原は資源に乏しく、支払う能力も足りなければ物資も限られている。
経済すらまともに回りきらないのだ。
運よく薬が供給されるとしても、清算するためには誰しも国の仕事に従事するしか道の無い、奴隷の扉が大口を開けていた。


『公安の一部署は常に人手不足だと聞きます。 そこでよければ紹介することもできますが』


……法がすべてのウォール高原において、国のために働くとはつまり一切の自由を奪われることと相違ない。


それでも娘を助けたい…。
妻のためにも…。

クマーを突き動かすのは、その一心。
娘の治療が始まると、彼は守るべき家族と離れ離れになった。



……言わばある種の義務感だったのかもしれない。
それでもクマーは、自分なりに親としての責任を果たすべくして道を選んだつもりだ。

そうして交渉の末に彼を待ち構えていたのは、家族との面会謝絶と、刑務執行官としての任務だった。


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