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('A`)は撃鉄のようです
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__ ,、
く_;:::ハ /::ヘ
(_厂 ヒコ
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半分の力も出さず、二人はしばらく小競り合いを続けた。
それは、互いに相手の癖を観察する為だった。
自覚のない癖を相手に見つけてもらい、それを後で確認し合うのはとても良いと思う。
衣服が汗を吸い、冷たさを覚えるようになった頃合で、二人は一旦動きを止めた。
(;'A`)「どうだった?」
( ゚д゚ )「とりあえず……左腕に意識を割きすぎだな。
動きが強張って攻撃を読み易くなってる」
(;'A`)「……マジか。4月末だと思ったら6月だった時くらい驚いたぜ」
( ゚д゚ )「全体のキレは良いが、なんだろうな……。
簡単に言ってしまえば、超能力に慣れてないんだろうな」
(;'A`)「……だよなぁ」
ドクオは苦笑いを浮かべ、肩を落とした。
(;'A`)「これ、装甲の分だけ重くなるんだよなぁ。
使用者は重さを感じない的なのを期待してたんだけど……」
( ゚д゚ )「そう都合良くは出来てない。
だが重さについては対策がある。一回能力解いて、少しずつ光を吸収してみろ」
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言われた通り、ドクオはゆっくりと超能力を発動しなおした。
( ゚д゚ )「俺の場合、装甲の厚さ重さは発動時の集中力次第だ。
お前の場合なら、きっと取り込んだ光の量でそれが決まるはずだ」
( ゚д゚ )「能力を使う時は光の量を考えろ。丁度良い加減を探っていけ」
('A`)「なるほど。分かった」
( ゚д゚ )「まずは拳だけで具現化してみろ。
適当なグローブを想像すれば上手くいくだろう」
(;'A`)「素人相手に無理言うなよ……」
じわじわと光を吸収しながら、拳だけに意識を集中する。
拳に淡い光が灯り、やや遅れて装甲が具現化し始める。
(;'A`)「……けっこう辛いな……」
( ゚д゚ )「わざと呼吸を止めてるようなもんだからな。慣れるまでは仕方ない」
しばらくして拳が装甲に覆われきったところで、ドクオは光の吸収を打ち切った。
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(;'A`)「まぁ……こんなもん……?」
ドクオは拳を凝視し、装甲がしっかり具現化できているかを確かめた。
指の一本一本を動かした時には不自由もなく、重量もかなり削減出来ていた。
(;゚д゚ )「一発かよ。ふざけんな、もっと苦労しろ」
ミルナは4月末から6月にタイムスリップした時くらい驚いた。
(;'A`)「……いや、これ強度がまったく駄目だ」
しかしドクオは言い返し、地面に向かって左拳を打ちつけた。
拳の装甲は、たったそれだけの衝撃で砕けてボロボロになってしまった。
軽量化には十分成功していたが、これではとても武器防具にはなりえない。
(;'A`)「……まだまだ」
( ゚д゚ )「……これはもう体で覚えるしかない。
加減も、お前なりの落とし所を見つけるんだな」
ミルナは体裁を整え、先輩面して言った。
(;'A`)「あいよ……他に直すとこあったか?」
( ゚д゚ )「ない」
ミルナは断言した。
( ゚д゚ )「俺はお前みたいに修行とかした訳じゃないからな。
諸々の動きはお前の方が完成度高いぞ。だから言える事はない」
(;'A`)「……まぁ、そりゃそうだ」
( ゚д゚ )「俺だって素人だ。アドバイスにも限界がある」
(;'A`)「……じゃあ相談。まず撃鉄の使い方、教えてくれよ」
ドクオはマグナムブロウを再発動し、装甲と撃鉄を肉体に具現化した。
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( ゚д゚ )「コイツの使い方ねぇ……」
ミルナは腕を組み、自身の背中にある撃鉄を一瞥した。
( ゚д゚ )「おい、今までどんな風に使ってきた?」」
('A`)「爆発ッ! って感じで撃鉄落として、なんか凄いパワー出てる」
(;゚д゚ )「アホっぽい扱い! ……とりあえず手本をやってやる」
ミルナは近場の岩を指差し、ドクオと一緒に岩に近づいた。
( ゚д゚ )「今のお前は、燃料が切れるまでエンジンを掛け続けるような使い方をしてる筈だ。
確かにそれなら見栄えは良いが、肝心な時に燃料切れになる事もある」
(;'A`)「……肝心な時にな……」
( ゚д゚ )「いいか、マグナムブロウはその名のとおり銃をモチーフにしている。
扱いも銃と同じようにすれば、ある程度は節約が効く」
('A`)「……?」
( ゚д゚ )「……こうやるんだ。見てろ」
いまいち理解出来ずにいたドクオを一歩下がらせ、ミルナは岩に右手の平を当てた。
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('A`)ノ 「じゃあ次の質問」
そう言って踵を返し、ミルナに背中を向ける。
ドクオは先日現れた二つ目の撃鉄を見ながら言った。
('A`)「こないだ新しいのが出てきた。コレがなんか変なんだよ」
( ゚д゚ )「……何が変なんだ?」
('A`)「なんか、しっくりき過ぎてて、逆に変……って感じ」
ドクオはたどたどしく、曖昧な答えを返した。
しかし返答としてはそれで十分だったらしく、ミルナはドクオのクソみたいな返事に文句を言わなかった。
( ゚д゚ )「……こいつは……」
ミルナは大きく息を吐き、腰に手を当てて深慮した。
今、彼の心中には 『tanasinn』 という言葉が色濃く浮かび上がっていた。
( ゚д゚ )「……お前自身、それをどう思ってる?」
('A`)「一回使った切りだから、あんま何も思ってないけど……」
( ゚д゚ )「……分かった。なら、もう二度と使わない方が良い」
ミルナは一瞬口ごもってから、俯いてその理由を口にした。
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( ゚д゚ )「微弱にだがtanasinnを感じる。俺のが影響しちまったな……」
('A`)「……使うなって、なんか不都合あるのか?
お前はバカみたいに使ってるけど」
( ゚д゚ )「普通の人間に耐え切れるとは思えないんだ。
特にお前、精神脆いだろ? tanasinnに全部支配されるぞ」
( ゚д゚ )「つーか今バカって言った?」
(;'A`)「そんな事より具体的に話してくれよ」
一瞬前に具体性皆無のクソみたいな返事をした男はそう言った。
( ゚д゚ )「……最終的に俺と同じなるか、存在そのものがtanasinnに呑み込まれる。
強過ぎる力を扱うなら、それを制するだけの精神が必要なんだよ」
( ゚д゚ )「少しずつ慣らして使うなら問題ないだろうが、一個目の撃鉄と同じような使い方は絶対にするな。
もしそんな使い方をすれば、tanasinnはお前の全てを燃料にして暴れ回るぞ」
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('A`)「……そっか。分かった、使わないようにする」
( ゚д゚ )「……」
ドクオはやけに素直に頷いた。
その様子から彼の本心を察したミルナは、はっきりと言葉にして釘を刺した。
( ゚д゚ )「出来れば取り除きたいんだが……お前嫌がるだろ」
('A`)「うん。弱くなって堪るかよ」
( ゚д゚ )「……だがまぁ、お前がヤバくなったら問答無用で取り上げる。
それを使うならタイミングは選んでくれ。せめて、俺が居る時だ」
('A`)「……分かってる」
ドクオは体を構え直し、ミルナを煽るように拳を振った。
('A`)「時間が惜しい。さっさと続きやろうぜ」
( ゚д゚ )「……お望みどおりに」
再開の合図として拳を突き合わせると、二人は拳を飛ばし合った。
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≪2≫
('A`)「――で、そろそろ聞かせてくれよ」
酒場に戻って一杯酌み交わそうと準備している二人。
何を聞かれているかは想像出来たが、ミルナは一度とぼけて見せた。
( ゚д゚ )「何をだ?」
('A`)「なんで目が見えるようになったんだよ。ま〜た例のヤツか?」
( ゚д゚ )
(;゚д゚ )「……そっちか。荒巻の話だと思ったぞ」
(;'A`)「……やっぱそれで」
(;゚д゚ )「聞きたがって癖に忘れてたのか……」
ミルナは呆れて半笑いを浮かべ、席に着いた。
ふと、脳裏で「上手く誤魔化せた」と考える。
( ゚д゚ )「まあ話すのは別にいいが、とりあえず飲み物とツマミだ。
長話になる。多めに頼むぞ」
('A`)「あいよっ」
気前の良い返事をした後、ドクオは注文の品を腕一杯に抱えてテーブルに戻ってきた。
これで、長々と駄弁る準備は整った。
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( ゚д゚ )「……そうだな。じゃあ、まずはこないだの続きから」
(;'A`)「その辺は全部要約してくれ!」
ドクオは咄嗟に片手を突き出してミルナを止めた。
また同じように意味不明な事を話されては話が進まない。
(;'A`)「まず、確認」
ゆっくり、はっきりと言い、ドクオは一つずつミルナに質問を投げかけた。
(;'A`)「まず、別世界があるんだな?
その世界で、お前はクーと知り合いだったと」
( ゚д゚ )「より正確に言うなら仕事仲間だった。
そんで別世界は確かにあるが、俺が生きた世界はもう無い」
(;'A`)「……え、無いの?」
( ゚д゚ )「無い。まだあるかも知れないが、小数点の遥か先にある可能性だ。
その可能性でさえも裏付けは無い。だからほぼ『無』だ」
(;'A`)「……帰れないじゃん」
( ゚д゚ )「……そうでもない。可能性は、確かに残ってるんだ」
ミルナはジュースの入ったジョッキを覗き込んだ。
( ゚д゚ )「まぁ、可能性として見るには余りにも希薄だがな……」
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( ゚д゚ )「……決めたんだ。俺は元の世界に帰る。
あの監獄を出た時にはまだ迷っていたが、もう決めた」
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('A`)「……でもよ、実際できんの?」
ドクオは椅子にふんぞり返って言った。
(;゚д゚ )「お前ムカつくなぁ……」
('A`)「なんだっけ。あれだ、tanasinn。要はあれだろ?」
(;゚д゚ )「適当に言いやがって……けど、その通りだよ」
( ゚д゚ )「あれを倒すなり何なりすれば、とりあえず道は開けるそうだ。
俺もよくは分からんが、全部あれを倒してからだと思ってる」
('A`)「ふぅーん……」
(;-д- )「……分かったよ他人事だろ、さっさと何でも聞きやがれ」
世が世なら確実に友達0人であろうドクオの反応をスルーし、ミルナはテーブルの菓子に手を伸ばした。
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('A`)「それで、荒巻はなんでアイツを連れてったんだ?」
姿勢を正し、次の質問を口にする。
それは荒巻と素直クール、ミルナの三人の関係を知る第一歩となる質問だった。
( ゚д゚ )「そうだな……求める結果は違うが、俺と荒巻の目的は同じだ」
('A`)「……たなしん?」
( ゚д゚ )「そうだ。荒巻もあれと戦いたがってる」
('A`)「じゃあ、戦う為にクーが必要なのか?」
その一言は、事の核心に触れていた。
( ゚д゚ )「……あいつが鍵になってる」
('A`)「……カギ」
( ゚д゚ )「……」
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('A`)「……荒巻もお前も、あいつを殺すのか?」
ミルナは、真実を察したドクオから大きく目をそらした。
( ゚д゚ )「……tanasinnが目覚める条件は三つ。
偶発的に起きるか、鍵の意思で起こされるか、鍵となる人物が死ぬか」
( ゚д゚ )「あいつの死は確かに引き金にはなる。
だが、俺も荒巻もそれはしないだろう」
('A`)「……」
視線を戻すとドクオを目が合った。
ミルナはまた目を逸らし、無言で聞き返してきたドクオに返事をする。
( ゚д゚ )「tanasinnと戦いたがってるヤツがもう一人居るんだ。
現状、荒巻だけじゃそいつを抑え込めない。少なくとも、俺と組まない限りは……」
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('A`)「そいつが居る限り、荒巻はクーに手を出さないのか?」
( ゚д゚ )「……荒巻の事だ。今もあいつから力を奪い続けていると思う。
じゃなきゃ 『もう一人』 にも対抗出来ないし、tanasinnにも歯が立たない」
('A`)「……奪い切ったらどうなる」
( ゚д゚ )「準備完了だ。『もう一人』よりも強くなって、俺も不要になる。
邪魔者を排除して、tanasinnとの戦いに全力を注ぐだろう」
('A`)「……時間は、あとどれぐらい残ってる」
( ゚д゚ )「……あいつが荒巻の所に行ってからしばらく経つだろう。
この先一年は無いと思う」
重苦しい沈黙が二人の肩にのしかかった。
しかし、残された時間の短さにドクオは大して驚いていなかった。
以前の彼なら即座に荒巻を倒しに行こうとしていたが、今の彼は冷静さを保ったままだった。
俺が冷たくなったのか、あるいは大人になったのか……。
ドクオはふと考えたが、明確な答えを出さないまま、やがて口を開いた。
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('A`)「荒巻もお前も、tanasinnを倒したい。
倒して元の世界に帰りたい。その為にはあいつの意思か、死が必要」
淡々と、挙げられた事柄だけを羅列する。
('A`)「そんで、 『もう一人』 には荒巻もお前も勝てない。
俺がクーを助けたいなら、そいつに頼るしか無いわけだ……」
( ゚д゚ )「――駄目だ」
素直クールを無事に救い出す方法として言ったそれを、ミルナはすぐに否定した。
( ゚д゚ )「……そいつは昔の仲間なんだ。俺がこの問題に巻き込んじまった。
あいつの命は俺が絶つ。絶対に、俺が殺さなきゃならない」
( ゚д゚ )「……俺はお前まで殺したくない。あっちにつくのはやめてくれ」
('A`)「……知らねぇ」
ドクオは吐き捨てるように言って俯いた。
('A`)「俺はクーを助けたいだけなんだ。
本当にもう、俺はそれだけで生きてる……」
('A`)「あいつが死ぬなら、そこから先、俺の存在に意味は無いんだ。
死ぬ理由ばっかりが頭を埋め尽くして、いつか呆気なく死んで終わりだ……」
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( ゚д゚ )「……」
('A`)「……」
(;゚д゚ )「……ったく、分かったよ!」
重い空気に耐え切れなくなったミルナが、その空気を壊すような大声を張り上げた。
ドクオは若干引いた。なんだこいつと思った。
('A`)「……なにが?」
(;゚д゚ )「クールを助けるのに手ぇ貸してやる。
一緒に荒巻を倒せばいんだろ? だから暗いのはよしてくれ」
( ゚д゚ )「ただしだ。俺が『もう一人』とやりあう時にはお前が手を貸せ」
( ゚д゚ )「だからさっさと俺ぐらい強くなってくれ。
でないと荒巻とも『もう一人』とも戦ってられん。足手纏いは要らんぞ」
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('A`)「……俺とお前で出来んの?」
( ゚д゚ )「出来なきゃ素直クールは助けられん。
お前が『もう一人』の仲間になるのも嫌だし、最善の折半案だと思うが」
ドクオは少し逡巡してから、ジュースと菓子をそれぞれ口に運んで答えた。
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('A`)「……俺もお前とは敵対したくない。そうするのが一番だな、うん」
( ゚д゚ )「だろ? お互い、リハビリと特訓を頑張ろうな」
(;'A`)「……つーか、やっぱり時間ねえわ」
特訓にかける時間と、素直クールに残された時間。
それらを考えた時、ドクオの胸中に焦燥が湧き上がった。
ドクオは立ち上がり、壁際にまとめておいた荷物の方へと歩いていった。
ミルナもその行動の意図を察し、席を立つ。
( ゚д゚ )「もう出発か? 次はどこに行くんだ」
('A`)「クソワロタっていう街だ。ここで一番デカイ、中心の街。
待ち合わせにはちょっと早いけど行く。先に行って、やれる事をやるんだ」
('A`)「立ち止まって色々考えるのは今じゃなくていい。
悪い癖だ。つい時間を無駄にしちまった……」
バッグを背負い、酒場をぐるりと一望する。
('A`)「あの大男には悪いけど、店の車を借りて武器を運ぼう。
今日中にクソワロタに行くぞ。荷物運び手伝ってくれ」
( ゚д゚ )「……」
ドクオがそう言って振り返った時、ミルナは自身の右腕を見つめていた。
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('A`)「……どした?」
( ゚д゚ )「……いや、何でもない。さっさと準備しよう」
ドクオを追い越し、ミルナは地下の武器庫に降りていく。
('A`)「……」
その時、ドクオは、彼の背中がやけに遠くにあるような錯覚を覚えていた。
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俺も驚いた
支援
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≪3≫
メシウマ側に最近出来た観光名所。
全長1000メートルという頭が悪そうな規模の建物、ステーション・タワー。
その最上階に設けられた素晴らしい絶景の眺めの光景の景色の展望室フロア空間。
超能力者だけで構成された二つの集団、カンパニーと特課の一同は今、そこに集まっていた。
/ ,' 3 「――――」
全員の視線は荒巻スカルチノフに向けられていた。
tanasinn、ミルナ、素直クール、『もう一人』。
それぞれの思惑と目的、関係性を、彼はミルナよりも冷静に皆に伝えていた。
ミルナが話していない事も含めて、tanasinnにまつわる全てを、包み隠さずに。
/ ,' 3 「……まあ、とにかく」
荒巻は大体を話し終えると、気の抜けた一言で説明を区切った。
/ ,' 3 「正直なところ、今回は完全に私の戦いだ。
君らには戦う理由が無い。参加すれば然るべき報酬を出すが、降りた所で咎めはせん」
/ ,' 3 「説明の中で出てきた『もう一人』。
この戦いは、その人物とミルナを接触させない為の戦いなのだ」
最後に投げやりに「まあ、好きにしたまえ」と言って、荒巻は口を噤んで皆に背を向けた。
カンパニーと特課の面々は、事の大きさに唖然としたまま、展望室を後にした。
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皆はデミタスの提案で適当な休憩室に入り、荒巻の話について意見を交わす事にした。
ツンとモナーがお茶を沸かしている間に、皆は意見交換を始めた。
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( ゚∀゚)「ダメださっぱり意味が分からなかった」
(´・_ゝ・`)「……俺とシャキンは少し前からこの話を知ってた。
素直クールをここの地下に入れたのは俺達だ。ある程度、信用していい」
カンパニーのバカ筆頭・ジョルジュ長岡を完全無視し、デミタスはそれぞれに視線を送った。
( ´_ゝ`)「俺は乗るぞ。信じるとかは置いといてだ」
壁際で一人、深刻そうな表情で佇んでいた流石兄者がはっきりと告げる。
普段は常に余裕たっぷりな自分を演出している彼が、今は明らかに余裕を無くしていた。
目付きも鋭く、殺気に近い気配を発している。
( ´_ゝ`)「横堀には俺が伝えておく。あいつまだメンテ中だからな」
そう言い残し、彼は一番に休憩室を出て行った。
結論が出たからというよりは、早く一人になりたいが為の行動だった。
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ξ゚⊿゚)ξ「私も乗るわ」
彼女は一人一人にお茶を配ってから、けだるそうに席にかけた。
ξ゚⊿゚)ξ「あの荒巻さんが人の為に戦おうとしてるんだから、手助けするわよ」
*(;‘‘)*「私もやります。ミルナっていう人と、『もう一人』が接触したら大変ですもんね……」
ツンの意見に賛同し、ヘリカル沢近が不安そうに呟く。
ヘリカルはゆっくりとお茶をすすった。しかし熱くて舌を火傷した。ちゃんと冷めてから飲もう。
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( ゚∀゚)「えっ大変なの?」
( ´∀`)「荒巻さん、『もう一人』がミルナと組んだら大変だって言ってたモナ。
tanasinnがどうこうの前に、人類皆殺しだって」
(´・_ゝ・`)「ああ、モナーさんの言うとおりだ」
モナーの言葉を後押しするため、デミタスがすかさず開口した。
(´・_ゝ・`)「もしもミルナが 『元の世界に帰りたい』 と願うなら」
(´・_ゝ・`)「それはつまり、他人を殺して自分の力に変換するっていう事だ」
(´・_ゝ・`)「だから絶対に阻止しなきゃいけないんだよ。
あの男にそう思わせちまう人間は、誰一人として近付けちゃならん」
(´・_ゝ・`)「……言い方は悪いが、ミルナには諦め続けてもらうしかない。
俺達の世界が平穏無事にあり続ける為に、元の世界には帰れねえってな」
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( ゚∀゚)「な、なんてこった……」
バカは満場一致で完全無視されていた。
.
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((( )))
( ´Д`)「しかし、ですよ」
1さんは飲める温度になったお茶を一口飲んでから言った。
ヘリカルは彼を見習い、そっと湯のみに口をつけてまた火傷した。
((( )))
( ´Д`)「敵は荒巻さん以上で、しかも相当の実力者を味方にしていると言いました。
それを現状、この面子で打倒するのは難しいかと……」
(´・_ゝ・`)「……で?」
((( )))
( ´Д`)「……八頭身の奴がもうじき来ます。
戦力の補強になるかと思い、念のため呼んでおきました」
(´・_ゝ・`)「……やってくれた。ありがとう」
八頭身は1さんの古い知り合いの剣士で、カンパニーきっての隠し玉である。
それを最高のタイミングで呼んでくれた1さんに、デミタスは後で飴をあげる事にした(とても美味しい)
.
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(`・ω・´)「これで一応、全員が戦闘に加わる事になったか」
全員が意向を示すまで黙っていたシャキンが、改めてそう言って皆の意思を確かめた。
しかし最早聞くまでも無く、全員確かな戦意を目の奥に秘めていた。
ξ゚⊿゚)ξ「……とりあえず実家に電話してくる。必要でしょ?」
(´・_ゝ・`)「頼む。1さんは八頭身を迎えに行ってくれ」
((( )))
( ´Д`)「分かりました。ついでにカーチャンさんの様子も見てきます」
(´・_ゝ・`)「カーチャンにも一応今日の事を話して、返事を聞いといてくれ。
彼女が居ると居ないじゃ空気が違う」
デミタスの言いつけを聞き入れた1さんは、足早に休憩室を出て行った。
_
( ゚∀゚)「……やるぜ、俺は」
(´・_ゝ・`)「黙れ。お前なにも理解してないだろ」
_
( ゚∀゚)「ああ、マジでさっぱりだ……お前ら何者だよ……」
(´・_ゝ・`)「とにかくお前はいつも通りでいい。
自由だ。好きにしろ」
_
( ゚∀゚)
_
( ゚∀゚)「よし、わかった」
この話題において、彼は初めて何かを分かる事ができた。
.
-
デミタスは振り返り、モナーに話し掛けた。
(´・_ゝ・`)「特課の動きは横堀に一任しておきます。
用があれば言ってください。善処します」
デミタスは私用の連絡先を書いたメモをテーブルに置き、1さんに続いて部屋を出ようとした。
( ´∀`)「どちらへ?」
(´・_ゝ・`)「俺は荒巻の土下座巡りについていきます。
モナーさんが現状の最大戦力だ。留守を頼みます」
(; ´∀`)(……土下座巡り?)
デミタスが部屋を出る寸前、モナーは「分かったモナ」と言って彼を見送った。
お茶を飲み干し、モナーはヘリカルと一緒に席を立った。
ヘリカルはお茶に恐怖していたのでお茶を残した。情けない。
( ´∀`)「それじゃあ特課に帰るモナ。
アサピーに言って、色々準備するモナ」
*(;‘‘)*「そうでづね……」
特課、カンパニーを含むメンバーで最年少のヘリカル沢近。
舌を火傷したこと以外、彼女に気後れした様子は無い。
(`・ω・´)(無駄な心配だったな)
彼女を心配していたシャキンも、舌の火傷以外に心配する事は無いと察して彼女を認めた。
お茶で火傷する猫舌ではあるが、彼女も列記とした荒巻の部下なのだ。
(`・ω・´)「俺の連絡先も後で送ります。何かあれば」
( ´∀`)「モナ。感謝するモナ」
モナーとヘリカルが一礼し、部屋を出て行く。
丁度その時、ツンの電話が終わった。
.
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ξ゚⊿゚)ξ「――うん。じゃあ妹を言いくるめておいて」
ツンはそれを最後に通話を切った。
携帯電話をしまい、溜め息を一つ。
(`・ω・´)「……駄目だったか?」
ξ;-⊿-)ξ「いえ、久し振りにパパと話したから疲れただけ。
基本様子見だけど、いざとなったら力を貸すってさ」
(`・ω・´)「あの人が来てくれるなら大分心強い。
たしか荒巻の土下座リストにも名前があったしな」
ξ;゚⊿゚)ξ「あの人に土下座なんて、私なら死んでも嫌だわ……」
ぐてぇ〜とテーブルに崩れてから、ツンは呆然と呟いた。
ξ゚⊿゚)ξ「……ドクオとかいう奴、今はミルナと一緒なんでしょ?」
(`・ω・´)「デミタスからそう聞いたが。それがどうした?」
ξ゚⊿゚)ξ「……別に。なんか、敵になりそうだなぁ〜って思っただけ」
.
-
(`・ω・´)「それはまた、別の問題だ」
シャキンの一言がツンの杞憂を一蹴する。
彼は立ち上がって窓辺に歩み寄り、外を一望した。
(`・ω・´)「今は明確な敵である『もう一人』の進行を止めるのが先だろう。
ドクオもミルナも、まだ敵になると決まった訳じゃないんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「……だといいんけどね。ドクオとかいう人、かなり危ないから」
(`・ω・´)「……根拠は?」
振り返って尋ねると、ツンは悪ぶれず答えた。
ξ゚⊿゚)ξ「雰囲気が犯罪者っぽいから」
(;`・ω・´)「……」
否定も肯定も出来ないまま、シャキンは彼女の答えを聞き流した。
_
( ゚∀゚)「……うし、帰って寝るか!」
ジョルジュは帰って寝た。
.
-
≪4≫
/ ,' 3 「皆、案外乗り気になるものだな」
デミタスを連れてステーション・タワーを出発し、街を歩く荒巻。
行き交う人々の間をすいすいと進みながら、二人は街の図書館に向かっていた。
(´・_ゝ・`)「何がです?」
/ ,' 3 「tanasinnがどうこうの話だ。
正直、痴呆を疑われて終わりだと思っておった」
/ ,' 3 「長い人生だが、この事を初めて他人に喋った。
久し振りに緊張したわ……」
(´・_ゝ・`)「……聞きますけど、本当に彼らを戦わせるんですか」
/ ,' 3 「当然だ。……敬語は好かん、適当にしろ」
(´・_ゝ・`)「……1さん、八頭身、モナーは及第点だが他は駄目だ。
無駄死にするだけだぞ」
デミタスは普段通りの口調に切り替えた。
/ ,' 3 「なぁ〜にが及第点じゃ。お前だって使い物にならんわ、たわけ」
.
-
/ ,' 3 「……所詮、特課もカンパニーも前座の露払いに過ぎん。
向こうもそれを分かっておる。虐殺は起こらん」
/ ,' 3 「誰も死なせはせんよ。それだけは約束する」
“守る”という約束――。
荒巻がそんな事を口走ったのを、デミタスは一瞬信じられなかった。
(´・_ゝ・`)「……なあ」
(´・_ゝ・`)「あんた、なんで戦うんだ。何の為に……」
これまで人間味というものを微塵も見せてこなかった荒巻が、今は少しだけ人間らしく見える。
不意に口に出した一言は、ようやく人間味を見せた彼への率直な疑問だった。
/ ,' 3 「……ワシの余生を脅かすものを排除する。ただそれだけだ」
/ ,' 3 「ワシは、それ以外の理由で力を揮ったことはない」
(´・_ゝ・`)「……好戦家だと思ってたぞ。
素直クールを奪取したのも、tanasinnと確実に戦う為かと……」
/ ,' 3 「あれを閉じ込めたのは確実に 『もう一人』 と戦う為だ。
tanasinnは……なんかもういい。アレはマジでつまらんぞ」
荒巻は振り返って言い、げんなりした表情をデミタスに見せた。
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/ ,' 3 「何度か戦ったが、なんというか……何も無いのだ。
空気相手に腕を振るような、得る物も失う物もない、無意味な戦いだった」
(´・_ゝ・`)「なんでまた、そんなのと何度も」
/ ,' 3 「そりゃあ……義務感とかあるだろう?
一時はアレを倒して元の世界に〜などと考えておったな……義務感で」
/ ,' 3 「ま、戦う理由が義務感しかないと気付いてからは全くだ。
普通に生きて、世界が変われば次の世界を生きて、楽しくやっておる」
あっけらかんに言い、荒巻は軽快に笑った。
(´・_ゝ・`)「……元の世界に執着とか無いのか?」
デミタスが更に問い掛けると、荒巻はまた振り返ってきょとんとした顔で答えた。
/ ,' 3 「ないない。そもそも、元の世界での孤独死が拗れてこんな身体になったのだ。
今更戻っても良い事なんか何も無いわい」
(;´・_ゝ・`)「どんな拗れ方だよ……」
/ ,' 3 「これも一つの人生だ。ワシの命に終わりは無いが、それもまた良かろうて」
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二人は人混みを抜け、図書館に続く小さな並木道に入った。
人通りが大きく減ったことで、デミタスはようやく荒巻の横に並ぶ事が出来た。
(´・_ゝ・`)「なぁ、なんで俺らや特課のメンバーを集めた?
あんたならもっと凄い味方を揃えられたはずだ」
そう問い掛けた時、荒巻は空を見上げていた。
周囲の木々の青葉が風になびき、日差しを受けて光り輝く。
/ ,' 3 「特別であることに意味を見出さなくなった。それだけだ」
/ ,' 3 「唯一無二も、絶対無敵も、なにも要らん。
自由に動けるだけの地位は獲得するが、ワシはな、ただ生きていたいのだ」
(´・_ゝ・`)「……憧れてるのか? 普通とか、当然に」
/ ,' 3 「……憧れ?」
荒巻は4月末が6月になっていた時のように驚き、デミタスの言葉を繰り返した。
/ ,' 3 「……まあ、そう言うのならそうなのだろう」
/ ,' 3 「自分の人生に自分以外の誰かが居る。
たったそれだけの願望を満たす為に、ワシは今も生きておるのかも知れん」
-
並木道の終わりが見えてきた。
デミタスはこの会話の締め括りに、荒巻にこんな事を訊ねた。
(´・_ゝ・`)「あんたの人生には、今でも誰も居ないのか?」
荒巻は、この並木道に風が吹き抜けると同時に口を開いた。
多くのしわを刻んだその顔に、ささやかな陰りを見せながら。
/ ,' 3 「誰もが先に行ってしまう。不老不死はそこが厄介だ」
/ ,' 3 「負け惜しみを込めて答えるならば、今は誰も居ない……という所かの」
それは、永遠にも等しい孤独を享受した男の、精一杯の弱音だった。
/ ,' 3 「――さて、ここが土下座巡りの第一弾だ。気張ってゆくぞ」
(´・_ゝ・`)「俺はあんたの土下座写真を撮るだけ。絶対しないからな」
/ ,' 3 「その余裕、最後まで保ってくれよ」
都内最大の国立図書館を前に一言交わした二人は、
軽く目配せしてから図書館の玄関を押し開けた。
.
-
≪5≫
ドクオ達、レムナントの面々。
荒巻達、メシウマ側の面々。
レムナント制圧作戦のもと、間もなく激突するかに思われていた二つの勢力。
しかし荒巻達の敵はレムナントの人間ではなく、『もう一人』と呼称された第三者であった。
結果的に三つになった勢力を、とても分かりやすい図にすると以下のようになる。
攻撃!
→→→ 迎撃!
(?) (荒巻)←←←(ドクオ)
←←←
迎撃!
瞬間、この分かりやすい図のおかげで誰もが現状を把握した。
.
-
荒巻がでっち上げた架空の制圧作戦の目的。
それは、レムナント側の人間にも戦う準備をしてもらう為だった。
もし自分達が倒され、壁を突破された場合、頼れるのは内側に居る人間だけだ。
先日崩壊したレムナント監獄も、実はその場合を想定して用意された施設だったのだ。
あそこが死ぬほど甘ったれた好待遇だったのも、
壁の内側に強力な超能力者を多数留めておく為の作戦だった。
しかし荒巻にとって監獄の崩壊は大した問題ではなかった。
むしろあの一件は作戦の存在を広める良い起爆剤になり、好都合だったと言える。
戦いの準備も着々とぬるぽ進んでいるようだし、その点について荒巻に不安はなかった。
問題は、ミルナが再び超能力を発動した事だった。
彼は最近まで監獄の奥深くで引きこもりニートをやっていた。
それが再起した今、ミルナには一つの選択をしてもらう必要があった。
自分につくか、『もう一人』につくか。
シャキンが受け取った伝言では時間をくれという事だったが、そう長くは待っていられない。
『もう一人』はすぐにでもミルナを勧誘しに来るし、実際もうミセリが勧誘に来ている。
ミルナは荒巻と同じくtanasinnの片鱗を手にした男である。
二人に大した実力差はなく、ミルナの意向次第では戦況が大きく傾く。
荒巻にとって一番良い展開はミルナがどちらにもつかず、傍観者で居てくれる事だった。
今はまだ、しかしそう遠くない内に、ミルナは結論を出して動き始めるだろう。
そして荒巻は、彼がどのような結論を出しても対応出来るだけの戦力を集めようとしていた――
.
-
――メシウマ、国立図書館。
荒巻とデミタスが吹き抜け三階建てのメインホールに立ち入った瞬間、
文字通りそのままの意味で、時間が止まった。
/ ,' 3 「……いやあ、手厚い出迎えだのう」
荒巻は立ち止まり、館内を一望した。
(;´・_ゝ・`)「……」
時間の停止と同時に周囲の人間はピタリと動かなくなり、じっと観察していても、彼らは微動だにしなかった。
この現象を受け止めるのに多少の時間を要したデミタスは、駆け足で荒巻の傍に戻って言った。
.
-
(;´・_ゝ・`)「時間が止まったのか?」
/ ,' 3 「その通りだ。理解が遅いな」
誰だって脈絡なく時間が止まれば驚く。
(;´・_ゝ・`)「いや、でも、せいぜい数秒じゃないのか?」
/ ,' 3 「まあな。ワシはせいぜい三日が限界だが、ここに居る彼なら際限無く止められると思うぞ」
/ ,' 3 「それより、余り離れるなよ。お前の時間も止まってしまうからの」
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ・`)「……よし、分かった」
デミタスは思考停止することで平静を取り戻した。
荒巻の後ろに付き添い、図書館の奥へと進んでいく。
-
「――何の用だ? 荒巻スカルチノフ」
その時、二人の頭上に声が現れた。
デミタスは咄嗟に顔を上げ、二階、三階、天井までもを一気に見回した。
ふと、荒巻がデミタスの方を振り返った。
デミタスは意味が分からず、じっと荒巻を見返す。
/ ,' 3 「……」
(´・_ゝ・`)「……?」
/ ,' 3 「……それはウチの部下だ。イタズラせんでくれ」
荒巻が、デミタスの背後を見ながら溜め息を漏らす。
デミタスは察して振り返ったが、そこに人の姿は無い。
(;´・_ゝ・`)「……なんだ、誰か居るのか?」
.
-
( ・∀・)「――お前、ずいぶん貧弱なのを連れてきたな。
伊達酔狂も程々にしておけ。いつか身を滅ぼすぞ?」
視線を前に戻した時、その男は荒巻の隣に立っていた。
男は荒巻に対してかなり不遜な物言いをしていたが、荒巻にそれを咎めるつもりは無さそうだった。
男は荒巻の肩をポンと叩き、不敵に笑んだ。
( ・∀・)「もう一度聞いてやろう。何の用だ?」
男は、こちらの目的を分かった上であえて質問していた。
彼の口振りからそれを悟ったデミタスは、荒巻共々悪趣味な奴らだなと二人を貶した。
/ ,' 3 「前にも話した事があるだろう。『顔付き』、あの連中が来る」
図書館に住まう男・モララー。彼を皮切りに、荒巻の土下座巡りが始まった。
この荒巻土下座探訪録は、今後の番外編で書かれる可能性が少なからずあるのだった――
.
-
――以上で、説明回は幕を閉じるのだった。終わり――
.
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1〜15話 >>2
第十六話 仲間を求めて >>6-24
第十七話 Waste Land >>33-71
第十八話 限りある世界 >>89-134
第十九話 ドクオは泥を見た。ミルナは星を見た >>149-173
第二十話 説明をする回 >>194-233
番外編として処理する予定だったのを、急遽無理矢理一話分にしました
今回の内容が役に立つことはあんまり無いなので、今回よりも過去話を読んでもらえるとハッピー('A`)
書き溜めが24話まであるので、5月は週一で投下しようと思います
次回は来週末くらい(^ω^)よろしくNE(^ω^)
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おつおかえり
タイトルが直球過ぎて笑う
ようやく全貌が見えてきたってところかね
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乙乙ー。荒巻の印象が変わる回だったな
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乙!説明回と言えど安定の面白さ
6月早いなぁ
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>>199と>>200の間抜けてない?
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乙!
さすがの実力
楽しみだわ
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( ゚д゚ )「俺の場合、撃鉄一個を節約して使い、大体六発に分ける」
(;'A`)「え、分けるとか出来たの……」
( ゚д゚ )「お前は全力で戦おうとしすぎなんだ。
同じ事を言うが、加減と節約を覚えて損は無いぞ」
その時、ミルナの背の撃鉄が落ちた。
撃鉄から生み出された光は花火のように弾け、瞬発的な破壊力を彼の右腕に送り込む。
すると、彼の右手は簡単に岩にめり込んだ。
(;'A`)「……え、で、撃鉄また起こせるのか?」
( ゚д゚ )「ああ」
ミルナが腕を引くと同時に、撃鉄は再び起き上がった。
( ゚д゚ )「当面は超能力に慣れる事と、燃費の向上を目標にするんだな」
(;'A`)「能力ありきの戦い方を考えるのは後か……」
( ゚д゚ )「お前には十分な基礎体力がある。大体何とかなる。分からんが」
.
-
第二十話 >>194-199 >>240 >>200-233
たまにはこういうこともあるNE(^ω^)
抜けを教えてくれてありがとう('A`)
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乙!
ふざけた発言したらホントに投下がきたときぐらい驚いたぜ
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毎回楽しく読んでます
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>>228
ガッ
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忙しいので来月末まで延期します
個人的6月では世間的5月には勝てませんでした('A`)
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了解
今日何とはなしに読み返したけど面白かったわ
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≪1≫
【一年前、なおるよの実家】
【以下、レムナント監獄に入っていたなおるよ】
ハ_ハ
('(゚∀゚∩ 「みんな〜」
ヽ 〈
ヽヽ_)
【以下、なおるよの弟妹6人】
\ワイワイ/
ハ,,ハ ハ_ハ \ドッ/
ハ_ハ('(゚∀゚∩∩゚∀゚)'ハ,,ハ
(^( ゚∀) ハ_ハ Y ハ,,ハ('(゚∀゚∩
) (^( )^) )^) 〈
(_ノ_ノ ) /´ `ヽ ( ヽヽ_)
(_ノ_ノ ヽ_ヽ_)
-
('(゚∀゚∩「にーちゃん!」(六男)
('(゚∀゚∩「兄ちゃん!」 (五男)
('(゚∀゚∩「兄ちゃんだ!」 (四男)
('(゚∀゚∩「おみやげだ!」 (三男)
('(゚∀゚∩「みんな手を洗ってから食べるんだぜ!」 (次男)
('(゚ー゚*∩「兄ちゃんおかえり!」 (長女)
('(゚∀゚∩「ただいまだよ! なおるね(五男)は元気だった?」
('(゚∀゚∩「今日は隣のおばさんにオヤツ貰ったよ!」 (五男)
('(゚∀゚∩「おおっ! それは良かったんだよ〜!」
('(゚∀゚∩「……なおるかな(長女)、あっちで御土産広げてくるといいんだよ!」
('(゚ー゚*∩「……分かった! みんな、あっち行くよ!」 (長女)
('(゚∀゚∩「一番乗りなんだよ!」 (三男)
('(゚∀゚∩「ぼく一番大きいの食べる!」 (六男)
('(゚∀゚;∩「ずるい!」 (五男)
('(゚∀゚;∩「みんな手を洗ってからだよ〜」 (四男)
.
-
('(゚∀゚∩「……兄ちゃん」 (次男)
('(゚∀゚∩「ん? どうしたんだよ?」
('(゚∀゚∩「……やっぱ俺も働きに……」 (次男)
('(゚∀゚∩「それはダメだよ! みんなの面倒を見られるの、なおるぜ(次男)だけなんだよ」
('(゚∀゚;∩「でもっ! 兄ちゃんが体壊したらみんな悲しむぜ!?」 (次男)
('(゚∀゚∩「……ごめんね」
('(゚∀゚∩「……今度、ちょっと長い出稼ぎにいってくるよ。
いつ帰れるか分かんないけど、いっぱいお金貰って帰ってくるよ」
('(゚∀゚;∩「……危ない橋は渡らないでほしいぜ」 (次男)
('(゚∀゚∩「その橋を渡れるのは僕だけなんだよ、分かってほしいんだよ。
大丈夫、絶対に帰ってくるよ――」
.
-
――なおるよは、唸るようなエンジン音で目を覚ました。
('(゚∀゚∩(……良い夢を見たんだよ)
.
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第二十一話 「不治のくらやみ その1」
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ドクオとミルナはその日の内に酒場・バーボンを出発する事にした。
逸早く目的地に行き、今出来ることをやる為に。
('A`)「よっし。大体オッケーだ」
店の軽トラックを無断拝借して車の荷台に銃器を積み終えると、ドクオはすぐさま運転席に乗り込んだ。
ミルナは先んじて助手席に座り、アホ面で荒野を眺めていた。
( ゚д゚ )「……」
('A`)「なんだよ、まだ気分悪いのか? 昨日も変だったし」
( ゚д゚ )「これが俺のデフォだ。覚えとくんだな」
(;'A`)「そんなツラで偉そうに……車、揺れるからな。吐くなよ」
ドクオはキーを回し、レバーやハンドルをガチャガチャして車を発進させた。
次なる目的地はレムナントの中心街・クソワロタだ。
( ゚д゚ )「……」
気の抜けた様子のミルナ。
しかし彼は、周囲に隠れ潜んでいる なおるよ の気配を鋭敏に察知していた。
( ゚д゚ )(普通の感知能力なら見逃すんだろうが、tanasinnの感知能力に弱点は無い。
お前が何をしたいかは知らんが、場合によっては……)
場合によっては、殺すつもりだった。
人を殺すということに対して、今の彼には迷いも戸惑いもなかった。
.
-
('(゚∀゚;∩(……ああ、行っちゃった)
なおるよは岩場の陰に身を潜め、望遠鏡を構えてドクオ達を見ていた。
('(゚∀゚∩(予定より早いけど、ドクオを追って街に入らなきゃ)
('(゚∀゚;∩(また長距離移動……がんばろう……)
車が土煙を上げて走っていくのを確認してから、彼もリュックを背負って歩き出した。
彼が今こうしているのは、監獄で棺桶死オサムと交わした約束があるからだった。
.
-
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
棺桶死オサムが行動を起こしたのは、ドクオがレムナント監獄を出発した直後だった。
なおるよを故郷に送り返すという名目で二人きりになった時、オサムはなおるよに、ある頼みを持ちかけた。
【+ 】ゞ゚)「お前に、ミルナという男を追って欲しい」
('(゚∀゚∩「……なんで?」
なおるよは首をかしげて聞き返した。
【+ 】ゞ゚)「向こうに感知能力があった場合、俺では確実に気付かれる。
だが、お前の無効化があれば気付かれずに追跡出来るはずだ」
('(゚∀゚∩「……オサムも恩人だよ。
だから受けた恩は返すけど、頼み事があるならちゃんと話さないとダメだよ」
【+ 】ゞ゚;)(……子供に正論を語られた……)
彼の正論を受け入れ、オサムは大人ぶるのを止めた。
.
-
【+ 】ゞ゚)「なんと言うかな……ちょっと気になっててな。
こないだの戦いで、向こう側の奴が俺に言ったんだ」
オサムは脳裏にシャキンの顔を思い浮かべて言った。
【+ 】ゞ゚)「――『ミルナに気をつけろ』。
たったそれだけ、本当に一言なんだが、気になっている」
('(゚∀゚∩「……良い意味で? 悪い意味で?」
【+ 】ゞ゚)「後者だ。ドクオとは仲が良いらしいが、信用ならん。
仲間として受け入れるかどうか、その判断材料が欲しい」
('(゚∀゚∩「……要は、ミルナがどんな人か見てくればいいの?」
【+ 】ゞ゚)「気付かれずに、だ」
オサムは、はっきりとした口調で念を押した。
【+ 】ゞ゚)「相手は監獄の最奥に幽閉されてた危険人物だ。
もし引き受けるなら、本当に気をつけてくれ」
【+ 】ゞ゚)「……俺だって人殺しだが、もしもミルナが危険な奴なら、迷わずに逃げろ」
オサムの忠告を聞いた上で、なおるよは胸を叩いてしたり顔を作った。
.
-
('(゚∀゚∩「これでも危機管理は出来る方なんだよ!
でないと、こんな所まで出稼ぎには来れないよ!」
('(゚∀゚∩「……それに、オサムも結構その人を信用してるでしょ?
僕に行かせるくらいだし、そこまで脅さなくてもいいんだよ!」
なおるよの言った通り、これはオサムにとっても杞憂と言える行動だった。
もしも、万が一、仮に――そういう言葉を並べた末に思いついた、なおるよという保険。
この時の棺桶死オサムは、まだその程度の危機感しか覚えていなかったのだ。
【+ 】ゞ゚)「……まあ、ドクオと仲が良いからな。
ある程度なら信用出来ると、思っている」
('(゚∀゚∩「……まぁ追っかけるのは正直面倒だけど、恩返しって大抵面倒だからね」
【+ 】ゞ゚;)「その年で何を言ってるんだお前は……」
('(゚∀゚∩「オサムの頼み、引き受けるんだよ」
その後、オサムから事細かに注意を言い渡されたなおるよは、
リュックを背負ってレムナントの荒野を歩き出した。
.
-
――なおるよが監獄を出発して数分後。
(。人。)
('(゚∀゚∩
('(゚∀゚;∩(オッパイが落ちてる……)
('(゚∀゚;∩(あの垂れ具合からして、多分看守長のオッパイなんだよ……)
ハ_ハ (とりあえず埋めておこう……)
∩;゚∀゚)')
〉 /
.(_/ 丿 :;""'':';⌒"゛゛;:
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~^'"\(。ノ""'':,√~^ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
地面 . \,( ゚ )/
-
――さらに数時間後、ドクオを追って入った森にて。
('(゚∀゚;∩「道に迷ったよ!」
_,,, チュン
_/::o・ァ
∈ミ;;;ノ,ノ
('(゚∀゚∩「スズメだ! こっちで初めて見た!」
_,,, チュン _,,, チュン
_/::o・ァ _/::o・ァ
∈ミ;;;ノ,ノ ∈ミ;;;ノ,ノ
('(゚∀゚*∩「増えた! かわいいんだよ!」
_,,, チュン _,,, チュン _,,, チュン
_/::o・ァ _/::o・ァ _/::o・ァ
∈ミ;;;ノ,ノ ∈ミ;;;ノ,ノ ∈ミ;;;ノ,ノ
。
('(゚∀゚*∩「エサあげたら懐くかな〜……」
.
-
\KILL/ \YOU/
_,,, _,,, _,,,
_/::o・ア _/::o・ア _/::o・ア <エサ置いてけ
∈ミ;;;ノ,ノ ∈ミ;;;ノ,ノ ∈ミ;;;ノ,ノ
。
('(゚∀゚∩
('(゚∀゚∩`。 ポロッ
※このあと食料の大半を渡して和解、道案内をしてもらった。
-
――森の出口、すごい崖のところ。
ヒュオオオ〜……
('(゚∀゚;∩「こんなのどうやって渡ればいいの!?」
ノノノノ
(゚∈゚__) 「向こうまで、食べ物で送っていく」
/⌒ )
ミイ //
| ( ( 【ドクオとの接触により、等価交換を学習したクックル】
| ) )
| //
| ノノ
|ノノ
彡ヽ`
('(゚∀゚;∩「もう食料が全然残ってないんだよ……」
( ゚∋゚)「……森の食べ物でいい」
('(゚∀゚∩「本当に!? 優しいんだよ! 取ってくる!」
※このあと三匹スズメに再会。残りの食料を取られ、身包みをはがされる。
.
-
――ドクオの故郷。から少し離れた岩陰。
('(゚∀゚∩「あれがドクオの育った場所……」
('(゚∀゚;∩「……うちと良い勝負だよ、ドクオとは仲良く出来そう」
<_プー゚)フ「じゃあ俺、町の方に行って来ます」
(´・_ゝ・`)「おう。気をつけてな」
(;´・_ゝ・`)「……んで、なんだアイツ」
('(゚∀゚ |岩| コッソリ
(;´-_ゝ-`)「……誰かアレを捕まえて車に突っ込んどけ。邪魔だ」
('(゚∀゚∩「……えっ? まさか向こう側の……」
('(゚∀゚;∩「ギャー!」
※このあと普通に補導され、車両に突っ込まれる。
※ミルナが隊員を倒してる最中に頑張って逃げ出した。とても頑張った。
.
-
――深夜。酒場・バーボン付近の岩陰。
('(゚∀゚;∩「なんか酷い目にあってばっかりだよ……」
('(゚∀゚;∩「恩返しって本当に面倒臭いよ……早く帰りたいよ……」
( ゚д゚ )「――悪いな、夜中に呼び出して」
「まったくだ。俺は明日も早いんだぞ?」
('(゚∀゚∩(ミルナと……でっかい人だよ。なんか話してる?)
「そんで話って何だよ? 悪いが金の掛かる事はッ――」
( ゚д゚ )「……」
「――……てめえッ……!」
('(゚∀゚∩(……えっ)
.
-
≪2≫
('(゚∀゚;∩(あー疲れた……)
なおるよはドクオ達に続いてレムナントの中心街・クソワロタに入った。
既に日は落ちており、街は夜の活気に満ちていた。
なおるよは夜の商店街を歩きつつ、適当なホテルを探した。
('(゚∀゚∩(……あのホテルとか、ドクオが選びそうだよ)
路地に破格の安ホテルを発見し、足を止める。
なおるよは即断してそこに入り、風呂とトイレが別になっている部屋を取った。
.
-
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
なおるよはリュックをベッドに放り投げた。
('(゚∀゚;∩(やっと休める……)
壁際にあった椅子に腰掛け、電気も点けずに窓を覗く。
路地のホテルなので壁しか見えなかったが、彼は構わずに思案し始めた。
('(゚∀゚∩「……」
('(゚∀゚∩「……殺したのかな……」
ミルナがした事を思い返し、自分自身に問い掛けるように言う。
('(゚∀゚∩(ダディ達がここに来るまであと四日、どうしようかな……)
('(゚∀゚∩(見張りを続行する? でも、もし本当に殺してたなら危険だよ)
('(゚∀゚∩(……殺したかどうかで考えるなら、見た限り、ミルナは大男を殺した)
('(゚∀゚∩(僕個人の判断では、ここで見張りは終わり。
殺しの事実だけをオサムに伝えて身を引くべき……)
('(゚∀゚∩(……でも、その危険に一番近づけるのも僕なんだよ)
('(゚∀゚∩(オサムが僕に声を掛けたのも、僕が超能力を打ち消す力を持ってるから)
('(゚∀゚∩(能力者相手の生存確率は僕が一番高い。逃げるだけなら一番上手いだろうし。
危険を冒して行動できるのが僕だけなら、確証を得るまで続けるべきかな……)
.
-
('(゚∀゚∩(――うん、見張りは続行する。
明日改めてミルナ達を見つけて、追うんだよ)
なおるよが決意を新たにした、その時。
彼は眼下の路地裏に、二人の男を見つけた。
( '`_ノ´')
かたや見知らぬ男。切れ目で、目尻には謎の刺青がある。
彼の風体は猛々しく、なおるよの目にも彼が強者だと見て取れた。
( ゚д゚ )
そしてもう一人の男は、件のミルナだった。
.
-
('(゚∀゚;∩(なんでここにッ!?)バッ!
なおるよは咄嗟に窓から離れた。
ミルナの顔を見てビクンと跳ねた心臓に手を当て、息を殺す。
('(゚∀゚;∩(やっぱりこの辺のホテルに泊まってたんだよ……!)
('(゚∀゚;∩(……感知能力を発動される前に、こっちも能力を発動して……)
なおるよはゴクリと音を立てて生唾を飲み込み、今さっきの決意を強く念じた。
('(゚∀゚;∩(……ミルナを追いかけるんだよ……!)
.
-
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
人気のない場所に到着して間もなく、男は振り返ってミルナと向き合った。
両手を後ろに組み、鋭い視線をミルナに投げかける。
( '`_ノ´')「アナタ、何者カ?」
( ゚д゚ )「……見ての通りだが」
( '`_ノ´')「……ナラ、喧嘩屋?」
( ゚д゚ )「そう見えるなら」
( '`_ノ´')「……コノ街、意外と喧嘩屋は少ナイ。
見ての通りの喧嘩屋にしてハ、アナタ、目が優しい」
( '`_ノ´')「……なのに気配ハ邪悪ソノモノ。共存しないハズのモノが、アル」
( ゚д゚ )「人間色々居るんだ。その一人さ」
( '`_ノ´')「……マ、売られた喧嘩は買ウのが常ネ。さっさとやるヨ」
男は組んでいた両手をするりと解き、大きく開いて身構えた。
周囲の電灯から光を吸収し、能力を発動して――
.
-
(; '゚_ノ´')「ハァ……ハァ……」 ボタッ・・・ボタッ・・・
――ものの数分で、男は両腕をちぎられていた。
( ゚д゚ )「……どうした、威勢が衰えたな」
(; '゚_ノ´')「……理解不能……」 ボタッ・・・ボタッ・・・
ミルナの背後でうごめく黒煙を睨みつけ、男は声を絞り出した。
黒煙は巨大な手をかたどっており、その手中には男の両腕を握っていた。
( ゚д゚ )「……」
(; '゚_ノ´')「……ココに来てカラ初めて思ったよ、マジでヤバイ……!」
( ゚д゚ )「……命までは取らん。腕は貰っていくが、逃げたきゃ逃げろ」
(; '゚,_ノ´')「フン。屈辱に甘んじて生きてくほど、自分の命に執着は無い……!」
男は両腕の切断面から多くの血を流しながら、なおも戦意を失っていなかった。
血に染まった狂的な笑み。ミルナはそれを見て、男を最後まで殺しきる決心をした。
(; '゚_ノ´')(弟子を育てきる前に死ぬのは未練だけど、許すネ……)
数瞬後、男はミルナに肉薄し、最後の一撃を仕掛けた――
.
-
≪3≫
――夜が明けていく。
路地裏のホテルにも多少の日差しが入り込み、なおるよの部屋をほのかに照らし出す。
('(゚∀゚;∩ モゾモゾ
埃っぽい布団から顔を出し、朝日を一瞥。
なおるよが街に到着してから今日で四日目。
今日はいよいよダディクール達との集合の日。今日でなおるよの仕事は終わりだ。
('(゚∀゚;∩「……」
集合時間は午前十二時、場所は近くの噴水広場。
徒歩10分で着けるその場所に、今日なおるよは一つの報告をしに行かねばならない。
.
-
('(゚∀゚;∩(今日までの四日間で完全に理解した……。
ミルナはほぼ毎晩、誰かを殺してる……)
('(゚∀゚;∩(全部見ちゃった…………)
黒い煙。
ミルナが使っていたそれの禍々しさは、なおるよの短い人生では到底表しきれるものではなかった。
しかも、その煙は日を追うごとに進化していった。
大男を殺した時は腕にまとわりつく単なる煙。
その後、この街で最初の犠牲者になった男の時には、手の形。
更に翌日には腕一本。昨晩には、黒煙は遂にあらゆる形状に変化出来るようになっていた。
('(゚∀゚;∩(あの能力はたぶん、人間をエサに進化してる)
('(゚∀゚;∩(……人を食べて進化する能力なんて、聞いた事ない……)
.
-
('(゚∀゚;∩(今日はオサムと合流して、見たものを全部話すんだよ)
('(゚∀゚;∩(……でも、ミルナにも理由があるかも知れないから、ちゃんと話を……)
('(゚∀゚;∩「……」
('(゚∀゚;∩(人を殺した理由を聞いて、『そうなんだ』って言えるのかな……。
もしかしたら僕達だってエサなのかも知れないのに……)
――こんこん。
部屋のドアがノックされた。
駆け巡る思考を止め、ドアに目を向ける。
('(゚∀゚∩(ルームサービス?)
一瞬、そんな呑気なことを思う。
それも束の間、弾けるような悪寒が彼の体を駆け巡った。
('(゚∀゚;∩(いやっ――これは――!)
.
-
言葉に出来なかったあの禍々しい気配、その一端がドアの向こうに確かにあった。
次いでオサムの言葉が脳裏を過ぎる。
『もしもミルナが危険な奴なら、迷わずに逃げろ』
('(゚∀゚;∩(――逃げなきゃ!)ガタッ!
なおるよはベッドを飛び起き、財布だけ持って窓枠に足をかけた。
だがその時にはドアは開けられ、素早い足音が背後に迫ってきていた。
('(゚∀゚;∩(飛ぶッ! 迷ってる暇はッ――)
.
-
(;'A`)「――お前ッ! なにやってんだよッッ!!」ガッ
('(゚∀゚;∩「――おおおおッ!? ドクオッ!?」
そう言ってなおるよの肩を掴んだのは、ミルナではなくドクオだった。
('(゚∀゚;∩「な、なんでドクオ……?」
(;'A`)「っていうか先に戻れっ! 落ちるぞ!」グイッ
ドクオに力強く引き戻され、なおるよは床に尻餅をついた。
('(゚∀゚;∩(なんでっ、なんでドクオが来たんだよ!?)
('A`;)「あッぶねえな……。おい、お前の言うとおりだったぞ!」
ドクオは呆れた様子で振り返り、廊下に佇む男に言った。
('(゚∀゚;∩「……」
なおるよの予感は当たっていたのだ。
しかし、ミルナがドクオを連れて来る事までは想像が及ばなかった。
.
-
( ゚д゚ )「……だから言ったろ」
('(゚∀゚;∩「……」
なおるよは目を丸くし、しかし平静を装いながら、彼が部屋に入ってくるのを見守った。
( ゚д゚ )「何があっても、誰であろうと、絶対に見つけ出せるってな」
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( 'A`)σ「あんまり危ないことしちゃダメだぞ、分かったな」
('(゚∀゚;∩「わ、わかってるんだよ……。
向こう側の人かと思って慌てたんだよ、もうしないよ……」
( ゚д゚ )「お前のが死にたがりだろ、何偉そうに言ってんだよ」
('A`;)「うるせぇ!」
('(゚∀゚;∩「……アハハ……」
三人は部屋で談笑しつつ、集合時間が来るのをゆったりと待っていた。
ただし、なおるよの内心は激しい焦燥に駆られていた。
('(゚∀゚;∩(確実にバレてる。この場所が分かったんだから、僕の見張りは絶対バレてる)
('(゚∀゚;∩(ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ……)
('(゚∀゚;∩(……ドクオを連れて来たのは僕を逃がさないため?
でも正直、居場所がバレた状態でこの人から逃げ切るのは無理……)
( ゚д゚ )「――だがまぁ、怖くて逃げ出すって感じはよく分かる」
( ゚д゚ )「だから、いつでも逃げ出していいんだからな」
('(゚∀゚;∩「……えへへ。考えておくんだよ……」
.
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( 'A`)「そうだ、なおるよ」
('(゚∀゚;∩「なに?」
('A`)「お前、この先一緒に行動するのか?
俺らを追ってきた理由、それぐらいしか浮かばないんだが」
( ゚д゚ )
('(゚∀゚;∩「……一応、そのつもりだよ」
(;'A`)「……大丈夫かよ。声震えてんぞ。
つーかお前、たしか故郷に帰るとか言ってなかったっけ?」
('(゚∀゚;∩「……そうだね、帰らなくちゃいけないよ。家族が待ってるから」
('A`)「……だったら帰れよ。帰る場所があるんだから」
なおるよはミルナを一瞥してから言った。
一瞬の目の動きだったが、ミルナはしっかりとそれを把握していた。
('(゚∀゚;∩「でも、せめて、みんなに会ってから帰りたいんだよ。
ドクオが起きた後、すぐ出発でちゃんと話せてないから……」
( ゚д゚ )「――誰かに伝言があるなら、聞くが」
ミルナは静かに提案し、なおるよに冷たい視線を送った。
('(゚∀゚;∩「……いやっ、別に……、急いで帰る必要は、ないし……」
( ゚д゚ )「大事な話でもあるのか? ただの囚人仲間相手に」
前のめりになり、じっとなおるよを見つめる。
ミルナが言葉の裏に隠した真意は、明確になおるよに伝わっていた。
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('(゚∀゚;∩「……」
('(゚∀゚;∩
('(゚∀゚;∩「帰る」
('A`)「……そうしとけ。みんなには俺から言っとくよ。
悪いな、無駄金を使わせちまって」
('(゚∀゚∩「……ううん。僕が一人で勝手に来ただけだから。
ドクオ、僕を監獄から出してくれてありがとうなんだよ」
('∀`)「気ぃにすんなって。俺も勝手にやっただけだ」
( ゚д゚ )「慣れない先輩面なんかするなよ、似合ってないぞ」
ゞ('A`;)「うるせっ」 シッシッ
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('(゚∀゚∩「……それじゃッ!」
なおるよは元気に言って立ち上がった。
('(゚∀゚∩「早いし越した事はないし、さっさと帰るんだよ!
みんなに『頑張れ、ありがとう、またね』って言っといてね!」
('A`)ノ 「おう。今回は短い付き合いだったけど、またな」
('(゚∀゚∩「……うん! いつか改めて、ちゃんとお礼をしに来るよ!」
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なおるよはテキパキとホテルのチェックアウトを済ませ、外に出た。
表通りに行き、ドクオとミルナに見送られながら帰路を行く。
ドクオは自分より年下のなおるよの背中を、じっと見送った。
('(゚∀゚∩「またね〜〜〜」
('A`)ノ 「おー」
最後に大きく手を振ってから、なおるよは軽快な駆け足でどんどん離れていった。
('A`)「……なんか、良いヤツだったな」
( ゚д゚ )「……そうだな」
('A`)「ダディがアイツを助けた理由が分かったよ。
優しいけど向こう見ずって感じ、ちょっと話しただけで分かったぜ」
ドクオは踵を返し、ダディクールとの待ち合わせ場所へと歩き出した。
しかしミルナはドクオが歩き出してからもしばらく、なおるよの背中を見続けていた。
( ゚д゚ )
やがてなおるよが角を曲がり、姿が見えなくなったところで、
ミルナもようやくドクオの後についていった。
.
-
≪4≫
なおるよは、クソワロタ周辺の荒野をとぼとぼ歩いていた。
('(゚∀゚;∩「……」
出来るだけゆっくり、それでいて、しっかり歩いているように見せかける。
そんな小細工で時間を稼ぎながら、なおるよは一つの可能性に身を委ねていた。
その可能性とは、クソワロタに来ている筈の棺桶死オサムが自分を見つけるというものだった。
棺桶死オサムにも十分な性能の感知能力がある。
彼がそれを発動してなおるよを感知すれば、必ずなおるよを迎えに来るはずだ。
しかし、なおるよが時間稼ぎを始めて一時間、現在午前十時。
最早その可能性は完全に途絶え、なおるよは次の事を考えていた。
こうなればもう一度、自分から会いに行くしかない。
.
-
('(゚∀゚;∩(生きて帰る。故郷に帰る。
それだけが目的なら、このまま歩いて行けばいい……)
('(゚∀゚;∩(……家族をずっと待たせてるし……)
('(゚∀゚;∩(それに、僕じゃ絶対にミルナに捕まって終わっちゃうよ。
オサムだってミルナが危ないって疑ってたし、たぶん何も起きないはず……)
('(゚∀゚;∩「……」 ピタッ
なおるよは一通りの言い訳を並べ終えてから、足を止めた。
('(゚∀゚;∩「……」
('( ∀ ;∩「……〜〜〜〜〜〜ッ!!」 ググッ・・・
.
-
('(゚∀゚;∩(……ああっ! もうっ!!)
('(゚∀゚;∩(恩は勝手に返すもの!
だからこれは恩返し! 全員分合わせてこれが最後!)
('(゚∀゚;∩(終わったら帰る! 何が何でも!) ザッ!
なおるよは威勢よく踵を返し、クソワロタに向かって踏み出した。
('(゚∀゚;∩(僕だけがミルナのやった事を知ってる!
真実であれ杞憂であれ、この事を誰にも伝えないのはダメだ!)
('(゚∀゚;∩(しかもミルナが人殺しなら一番危ないのはドクオじゃん!
一番恩返ししなきゃならない人を見殺しなんて、気分悪い!)
なおるよは足元の石ころをコツンと蹴り飛ばした。
('(゚∀゚;∩(クッソォ〜〜帰ったらみんなに自慢してやるんだよ!)
('(゚∀゚;∩(にいちゃんは良い事をしたんだ、悪い人を出し抜いたんだって!
みんなに自慢して褒めちぎられないと割りに合わない!)
('(゚∀゚#∩(牛歩で稼いだ一時間時間、クソワロタには人も車も入っていかなかった!
ってことは、オサム達はとっくに街に入ってるんだよ!)
('(゚∀゚#∩(じゃあ集合場所まで行ければ何とかなる!
ミルナが何だって言うんだよ! チクショウ!)
('(゚∀゚#∩「……恩返しは大抵面倒。その通りなんだよ、まったく……」
ささやかな愚痴を最後に腹を括り、そこから先、なおるよは無駄口を叩かなかった。
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【クソワロタ中央・噴水広場】
噴水とは水が上に向かってドバーとしているモニュメントである。
この噴水広場はクソワロタでは待ち合わせ場所として有名で、
昼前の時間帯でも多くの人がここに集っていた。
(゚д゚;);'A`)「人多すぎだろ!」 ギュウギュウ
時刻は午前十時。
ダディクール達との待ち合わせまで、まだ二時間も残っている。
人混みの中で待つのは辛いので、ドクオとミルナはひとまず噴水を離れた。
(;'A`)「あー都会こえー……噴水にこんな集まるってバカかよ……」
(;゚д゚ )「なんだ、都会は初めてか?」
(;'A`)「こんなん初めてだよ。なんか気分悪くなってきた……」
(; д )「俺も人混みは苦手だ。は、腹が……」
(;'A`)「前から思ってたけど腹弱いの? ださくね……」
(; д )「それ酷くないか……?」
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(;゚д゚ )「……あーダメだ、出してくる」
(;'A`)「おう、分かった」
(;゚д゚ ) ギュルルル〜
(;゚д゚ )「しばらく出してくる」
(;'A`)「どういう表現だよ。分かったから、この辺に居るから」
(;゚д゚ )「悪いな、行ってくる……」
ウンコマンはそう言って弱々しい足取りで歩き出し、人混みに紛れてどこかに消えた。
ドクオはそれを見届け、近くにあったベンチによろよろと腰を下ろした。
(;'A`)(あー気持ちわる……)
(; A )(ていうか、もう昼寝するっきゃねえ……) ガクッ
ドクオは深々と俯き、眠った。
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人気を離れ、静かなところで立ち止まる。
ミルナは両手をポケットにしまい、やさぐれた様子で青空を見上げた。
( ゚д゚ )(……警告はした)
ミルナの感知能力は既になおるよを捉えていた。
なおるよの進行方向からして、彼が噴水広場に向かって来ているのは明白だった。
( ゚д゚ )(警告を無視するなら俺も容赦はしない。
見られたからには、それを秘密にできないなら、子供だろうと……)
ミルナはそこから先を考えなかった。
( ゚д゚ )「……」
沈黙の最中、ミルナの体から黒煙が立ち上り始める。
ミルナが念じると、黒煙は彼の足元に集中した。
軽く膝を曲げ、跳躍。
直後、彼はその場から消えた。
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1〜15話 >>2
第十六話 仲間を求めて >>6-24
第十七話 Waste Land >>33-71
第十八話 限りある世界 >>89-134
第十九話 ドクオは泥を見た。ミルナは星を見た >>149-173
第二十話 説明をする回>>194-199 >>240 >>200-233
第二十一話 不治のくらやみ その1 >>247-285
次回は明後日
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おつ
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乙
黒い煙も撃鉄なのかなあ
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乙
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おつ!!!!!
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≪1≫
「……おい、ドクオ。おいってば」ユサユサ
('A`)「んあっ」
ドクオは誰かに肩を揺すられ、気持ち悪い顔で目覚めた。
(;,,゚Д゚)「ったく、お前こんなとこで寝んなよ。スられても知らねぇぞ」
('A`)「おあ……お前、ザコじゃん……」
(#,,゚Д゚)「ギコだ。殴るぞバカ」
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('( ∀ ;∩「――――ッ!!」
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('A`)「……いま何時?」
(,,゚Д゚)「十二時ちょい過ぎだ。もうみんな居るぞ」
('A`)「どこに?」
(,,゚Д゚)「近くのメシ屋。決起記念、ダディクールの奢りだってよ」
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ドクオは大きく体を伸ばして立ち上がった。
噴水広場にあった人混みは、寝る前に比べれば大分マシになっていた。
ドクオとギコは僅かに残った人の往来を背景に、立ち話を続けた。
('A`)「……あれ、ミルナは?」
(,,゚Д゚)「あいつ来てんのか?
その辺に居ないから途中で別れたんだと思ったぞ」
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('( ∀ ;∩(クソッ……!)
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('A`)「あいつウンコしに行ってるんだ」
(;,,゚Д゚)「……そ、そうか。クソか」
('A`)「ま、後で迎えに来りゃいいだろ。それよりメシだ」
(,,゚Д゚)「そうだメシだ。男のウンコ待ちなんかしたくねぇよオレ」
('A`)「俺も。行こうぜ」
二人は肩を並べて歩き出した。
どこかで戦う一人の少年の事など、ほんの少しも知らないまま――
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この大地において一番の人口と大きさを誇る街・クソワロタ。
そこは未だ発展途上であり、その過程では放棄された区画がいくつかある。
('( ∀ ;∩(何かッ……何か考えなくちゃッ……!)
なおるよは今、その放棄区画の中で戦っていた。
人気は一切無く、たまに浮浪者がそこら辺を歩いているだけの空間。
ほぼ孤独、完成された孤立無援。
そんな状況下に置かれながら、なおるよは懸命に戦い続けていた。
( ゚д゚ )
――無表情な顔が一つ、なおるよを追い続けていた。
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支援
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≪2≫
クソワロタに戻る途中で、なおるよは幾つかの方針を決定していた。
('(゚∀゚∩(一つ。放棄区画から入って、広場まで一気に突っ走る。
人混みに足止めされてる余裕は無い。これが最善ルートだよ)
('(゚∀゚;∩(二つ。見つかるのは時間の問題だから、絶対に立ち止まらないこと。
ミルナに見つかる前にオサムに会えなければ、もう殆どダメだよ。考えたくないけど)
('(゚∀゚∩(三つ。話が出来そうならする。
その上で和解が出来るなら和解する)
('(゚∀゚∩(……四つ)
なおるよは紙切れとペンを持ち、そこに自分が死んだ場合の事を書き記した。
('(゚∀゚∩(……これを書き終わったら、自分が殺される想像は二度としない)
以上四つの方針を胸に、なおるよはクソワロタの街に再度足を踏み入れた。
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