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( ^ω^)千年の夢のようです
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9/24(水) 夕方より投下します
よろしくお願いします
前スレ
>( ^ω^)千年の夢のようです
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/13029/1401648478/
まとめサイト様(以下敬称略)
>ブンツンドー
http://buntsundo.web.fc2.com/long/sennen_yume/top.html
>グレーゾーン
http://boonzone.web.fc2.com/dream_of_1000_years.htm
作品フィールドマップ(簡易)
http://imefix.info/20140922/321215/rare.jpeg
http://imefix.info/20140922/321216/rare.jpeg
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国からの依頼が徐々に増えたのは、大陸戦争のはじまる数ヵ月前。
…日に日に増える生産量。
出来上がり次第、納品しては入れかわり舞い込む依頼。
きつねは国からの使者として、モナーの元をたびたび訪ねていた。
普段ならお茶のひとつでも淹れるのだが、その日はきつねの方から謝辞された。
疑問符を浮かべるモナーにゆっくりと彼女は話し始める。
イ从,,゚ ー゚ノi、 『貴方が製造した品々が悪用されているの…。
それを伝えたくて』
-
『えっ…??』
イ从,,゚ ー゚ノi、 『それとまもなく、城からの官がここを訪ねてくるでしょう』
イ从,,゚ ー゚ノi、 『貴方を、戦場へと連れに』
"悪用" …… "戦場" ……。
どちらもすぐには脳に染み込まない単語。
呆けるモナーを前にしたきつねはうつむき、少し咳き込んで、すぐに顔を上げた。
イ从,,゚ ー゚ノi、 『見てしまったの。
貴方の製造品を手にした騎士たちが、魔導師の集う訓練所で実験していたところを……』
イ从,,゚ ー゚ノi、 『でも、それは――』
魔導力を回復させるマナカプセル。
そして凡庸武器の依頼も含まれてはいたが、その程度の依頼ならば日常茶飯の範疇に過ぎない。
大陸には野生のモンスターが生息し、
その生活テリトリーを破る際には誰しも必要とするものだ。
問題は、他の品の扱い方なのだと彼女は言う。
彼女を通じて城から注文されたのは、
…容器内の水体積を減らすケロロンポーチ。
兵糧の一部を手軽に運ぶための生活雑貨。
…弱魔導力を乱反射するライトレンズ。
耐久性にまだまだ改良点はあるが、使い捨ての夜光補助アイテム。
イ从,,゚ ー゚ノi、 『私も先日まで気付けなかった。
ひとえに王を信用していたから。
もし、アイテムをあのように扱うつもりであるなどと最初から知っていれば…』
イ从,,゚ ー゚ノi、 『貴方が庶民の生活に貢献してきたこと…しもじもの者たちほど、よく理解してる。
そして私もその一人でありながら、
故郷と家族かわいさに、上役に逆らうことができなかったの』
イ从,, ー ノi、 『……止められるかもしれない可能性を見捨てていたの』
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重力に逆らわず、両手両膝…額まで床に擦り付ける彼女は、幾度も謝罪を口にした。
イ从,, ー ノi、 『ごめんね…モナーさん…。
本当に…面目ない……』
年老いた彼女にも家族があり生活があることくらい、独り身のモナーにも理解はできる。
…しかしなぜこの老女が謝らなければならないのだろう。
頭の片隅で違和感を覚えたが――すぐにかき消した。
よほど職務に忠実なのだと思うことにした。
彼女の態度から多大なる罪悪感が伝わってきたのだから。
そうとも。
きつねは右から左へと、言伝と製品を運んでいたに過ぎない。
職務上やるべきことをしただけだ。
イ从,,゚ ー゚ノi、 『いいのよ。
しがない国の下僕とはいえ、私も無関係ではないから。
それに…この戦争はきっともっと大きくなるわ』
庇う言葉をかけるモナーにも、彼女は首をたてには振らなかった。
――それどころか前髪に隠れて伏し目がちな瞳が、まるで東方の刀のように鋭く映る。
緩やかに歪曲し、しかし美しさを兼ね備える刃。
しかしそれも一瞬のこと。
袖口からチラリと見えた数珠がカラ…と哭いた時、そこにはいつものきつねが映っていた。
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きつねはモナーの知るどんな女性よりも不思議な人だった。
老女ではあるが、年月によって刻まれるべきシミやたるみはほとんど見当たらない。
首元のシワを見てはじめて、年齢を推測する材料のひとつに数えられる程に若々しい。
他の人々とは一線を画す雰囲気も特徴的だった。
老いて凛々しく柔らかなその物腰は、自然とモナーの口を緩ませる。
イ从,,゚ ー゚ノi、 『孫は何人も…ええ、おかげさまで。
みんな良く出来た子達でねぇ、こんなお婆になっても元気を分けてもらえるんですから』
『孫かぁ…自分は子供すらできるかわからないモナ』
イ从,,゚ ー゚ノi、 『子供を作るのは女の役目。
貴方みたいな人はどーんと構えて過ごしていればいいんですよ』
『でも…毎日仕事しているだけモナよ?』
イ从,,゚ ー゚ノi、 『いいじゃないですか。
男なら人として、出来るだけ大きな証を遺してみせれば。
生来、女より出来ることがひとつ少ないのだからそれくらい頑張らないといけません』
イ从,,゚ ー゚ノi、 『手の届くことだけでいい…
それだけで、自然と貴方の思い出は形を変えて、次の世代に必ず引き継がれるわ』
『だったらなるだけ長生きしないと。
モナには細工師の道を極める夢があるモナ!』
イ从,,゚ ー゚ノi、 『そうね。
短く儚い命でも、たくさんの人たちに勇気を慈しみを与えたお話しだって世の中にはあるわ。
いつか死んでしまうからこそ、人は頑張れる。
それでいいの。 …それがいいのよ』
仕事中は誰とも時間を作らないモナーだが、彼女とならば不思議と世間話に花を咲かせた。
祖父母や両親が他界してからというもの、久しく無かった小言も心地好い。
だからこそ――何故、他人のために?
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モナーの職人としての憤りは胸中に秘められつつ、確かに権力者へと向けられる。
すなわち己から汗をかかず、欲と利権のみを貪る肥えた豚。
心を痛めるのはいつも仕える者たち…利用される側だ。
イ从,,゚ ー゚ノi、 『私は戦争がはじまる前に里に戻るつもり。
…もはやあの王を止められる者は、この国にいないでしょうから』
イ从,,゚ ー゚ノi、 『だからせめて。
乱心の片棒を担いだ "責任" を、老いた私なりに取らせていただこうと思うの』
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組織に属した者の世界は、ヒエラルキーによって支配される。
信仰だろうと、
職業だろうと、
血の繋がりであろうと。
たとえ偽りにまみれようと、
天から下される命令を民意と称され、否が応にも従わなければならない。
臆面なくマイノリティという黒羊の皮を被って、人々の心に忍び寄り添ってくる偽善。
気付けば無垢すら色に染まるだろう…背向くものには容赦なく、そして無寛容だ。
きつねをそうしたように。
『きつね? …申し訳ない。
私は本日付けで製品の受け渡しを担当することになった、フサグという者だ。
…まだこちらに来たばかりでね、前任のことは特に知らされていないんだ』
翌日から老女の代わりに来た男は若かった。
礼儀正しく、決められた時間もよく守る。
大陸東の出身で、故郷の山には色とりどりの花が咲き乱れるのが自慢らしい。
…だが彼を知るため交わした会話はそれだけ。
その後、ショボンがモナーを迎えにくるまで、フサグが無駄口を叩くことはなかった。
きつねのように、
フサグとモナーが笑いかけ合うこともなかった。
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「……ぁ…」
遠ざかっていた意識を戻すと、もうすぐ夜が来ようとしている。
モナーはゆっくりと身体を起こし、大きなため息をついた。
大陸で生活を嗜み、感じてきたことを思い羅列する。
霊長類どころか、指先ほどの虫たちと変わりない管理社会。
共感を強いては個を認めない。
かと思えば一部の例外者の成功だけを模倣し、いつのまにやら我が物顔で共有を語りだす…。
もしも虫呼ばわりが無礼ならば。
獲物を無理矢理にでも地に組伏せるその様は、かの肉を喰い千切る獣と何が違うのだろうか。
『さようならモナーさん。 イ从,, ー ノi、
どうか貴方は自分に精一杯、忠実に生きて……』
……以来、きつねがモナーの元に現れることはなかったが、
彼女のことは今でも印象深く、モナーの確かな記憶に刻まれている。
だからこそ、あの日のきつねと先のショボンに、似た影が差していたことを気にかけた。
立ち上がり、乾きつつある泥も払わず、モナーはもう一度叫んだ。
「人がいるなら、早くこの森を出るモナよー!」
…喉の奥が痛んだ。
胸中は不自然なまでにざわついている。
「……誰か、誰でも、いい…。 もう、…」
-
それきり暫し動くこともできないまま、
改めて自分が今、なにをしていたのかを俯瞰し、とうとう自覚してしまう。
「……最低モナ」
モナーが本当に捜していたのはショボンではない。
―― "森の民を連れて帰る" 。
そんな大義名分だ。
このまま独りおめおめと戻れば、
混乱に乗じて軍を離れた臆病者の称号とともに、
戸の立てられぬ噂の的になるのではないか…。
軍師として大陸戦争に貢献していたショボンとは違い、たかだか一介の細工師。
戦闘の実績もなく、提供した製造品も己の意の通りに使われた試しがない。
頭のなかではシルエットの群れがモナーを囲み、こぞって指をさしていた。
「自分以外を利用して…」
身震いする。
かつてのきつねの言葉が心を苛んでいく。
記憶を写した羊皮紙が虫喰われ、不規則な穴をあけるように。
-
嘲笑は恐くない。
だが…祖父から受け継ぐ一族の信頼を、自分の代で失うことを彼は最も畏れた。
生きた証を遺すため、自身に忠実に行動した結果が "誰かを利用する" ことになろうとは。
……果たして、そんなモナーが遭遇する。
「だれか、いるの?」
「!! 子供の声…どこにいるモナか?!」
「……ここ」
跳び跳ねる心音を抑えつつ、消えそうな声を頼りに近寄るのは
焼け残った樹木、木炭、廃材の数々が崩れ重なったバリケードのような殻。
モナーには知り得ない、人為的に造られた天岩戸。
中からは出られないのだろうか。
モナーが瓦礫を取り崩す音だけが響く…軽く触れただけで、ガラガラと。
「あとすこし…っ、待ってるモナよ!」
(推奨BGMおわり)
-
廃瓦礫の隙間から姿を見せたのは、
軍員には含まれるはずもない、まだ小さな男の子だった。
「君は…ひょっとして森の子、モナね?」
「……」
子は答えなかった…しかしそうなのだろう。
怯えているのか、眼球が落ち着きなく揺れている。
モナーは膝を抱えて震える子の手をとり立たせると、
少しでも安心させるように目線を同じくした。
全身煤だらけではあるが、穏和そうな顔つきの男の子だ。
「怪我はしてないモナか? 痛いところとか…」
「……」
「大丈夫、なにもしないから。
とはいえ森はこんな状況モナ…」
「…」
「またなにが起こるか分からない。
次に炎に囲まれたら、モナーだって逃げられるか判らない…だから――」
「もう……いやだよぉ」
「…ぁ」
みるみる表情が崩れていたかと思うと、子は膝を折って座り込んでしまった。
隠しもしない嗚咽が、モナーの耳に嫌でもこびりつく。
「ぅわあぁぁああん……あぁぁん………」
「モナ…」
-
しばらく立ち尽くすも、泣き止まぬ幼な声は時間だけを食し続ける。
困り果てたモナーはやがて意を決するようにもう一度、子の腕を握りしめた。
「泣いてたって、なんにもならないモナよ」
「ぐすっ…ぐすん……」
「モナは人を追い掛けてたんだけど…
でももうここを出た方が絶対にいい。
君の親も、もしかしたら森の外で待ってるかもしれないモナよ?」
「……」
沈黙、
「 …嘘だ」
拒絶。
「モナ?」
「おとうさんも、おかあさんも……ぼくの目の前で殺された」
「――!!」
子の目付きが鋭くなる。
黒く、深く…。
まだ小さく未発達な瞳の奥で、
眉をひそめるモナーを映した瞳孔だけが明らかに大きくなった。
-
「……その首輪、おんなじだ。
おしさんたちが……お前たちが…!
お前たちが!! おとうさんとおかあさんを!!」
「…ちょっ…ちょっと落ち着くモナよ!
モナはただ――」
「ゆるさない…!」
立ち上がり、我を忘れ、怒りを "増幅" させられた、
生き残りである呪術師の子が右腕を大きく振りかぶる。
「 赦 さ な い ! 」
-
森に蔓延していたのは蟻の炎だけではない。
紅蓮を失してなお、この時点においては
"人の心を先走らせるなにか" が充満していた。
呪術師の子には "恐怖" と "恨み" 。
モナーには "焦燥" と "諦観" 。
「「 うわあああ!! 」」
重なる叫喚。
危害を加えるべく降ろされ、それを防ぐべく振り上げられた…大きさの異なる手と手の狭間。
赤子の頭を潰すかの如く、ひしゃげた人形が嗤い歪んだ。
それは呪術師が造りあげた、子供たちへの儀式のための人形。
泥を詰め、髪を添え、生まれた使命を果すために……
練り込められた魔導力――【ドレイン】。
-
生起せし呪術のトルネイド。
二人の目に映る景色は闇に染まり、血に埋まった。
赤黒い魔導力が煙となって蒙蒙と噴きあがる。
最後にモナーが知覚出来たのは、食い込んだ指先に当たる泥の感触。
「ぐああぁぁああ…ッッ!!」
「うわぁあーーー!!」
異なるオクターブによって彩られる悲鳴。
発動した【ドレイン】から逃れようにも、指が人形から離れない。
二人の身体を行き来する魔導力が、二色の勾玉となって巡り廻る。
ぐるぐる…ぐるぐるぐるぐる…と。
息をするように吸い込まれ、頭を垂れては吐き出される輪転の波動。
二人の身体が意思とは裏腹に、ゆらりがくりと揺れ動く。
吐血するモナー。
「モナ…ァあが…が…――」
…呪術師の人形。
天の恵みである雨水。
赤い森で採れる恵みの土。
それが混ざった時に出来る "泥" ……。
その泥に練り込まれる呪術【カース】と、
人形の穴を塞ぐ際に使われる、髪と糸に編み込まれた呪術【プーラ】によって、
はじめて儀式のための準備が出来るのだ。
皮膚を突き破らんと盛り上がる管。
行き場を失いかけた血が、
ここぞと爪先から噴き出し始める。
( まさか…このまま死ぬ……モナか…?? )
-
呪術師の血をひかないモナーには
禍害にしかならぬ、赤黒い魔導力。
【プーラ】とは身代わりの呪術。
一族を想う気持ちが強ければ強いほど、その効力も大きくなる。
護られる対象は、一定量のダメージならノーリスクでやり過ごすことができる。
「痛いよぉ…おと…さん、おかあ、さ……」
( 死にた…くない……モナ、… )
モナーの腕がだらりと下がり、
そのいかり肩を、子におぶした。
魔導力が往来の速度を増す。
-
【ドレイン】の波動は群を抜いて異質だ。
【プーラ】に護られているはずの子供たちですら、例外なく哭き叫び、気を失う。
宿す魔導力をかき回され、精魂尽き果ててしまうのだ。
…モナーを巻き添えにし、意図せず儀式を開始したこの子も同じく。
いまは歯を食いしばって目の前の仇に意識を向けるので精一杯だった。
呪術師たちはなぜ儀式に人形を使うのか?
それは【ドレイン】の循環によって失われる生気を少しでも還元するためだ。
命なき人形が得られないエネルギーは、元あった子供の身体へと帰還する。
( …――ぁ う )
それなのに、今はモナーという存在が加わっている。
【ドレイン】によって二つの魂は、悪戯に混ざろうとしていた。
適正もなく、身代わりの呪術もないモナーでは、そもそも【ドレイン】に堪えられない。
…弱っていた彼の魂が、やがて呪術師の子へと片寄り始める。
( ――たく…ない、死にたくな――…ま、だ、やりたい こと …が )
-
モナーの記憶から、
《工房》…
《祖父》…
《故郷( ルーツ )》…
-
消えていく、
《(´・ω・`)》…
《隕鉄の刀》…
-
流れ出ていく、
《イ从,,゚ ー゚ノi、》
生きた証。
-
-
…やがて。
赤い森の片隅で、静寂はその力を取り戻す。
赤黒い渦は粒子となりて、
闇中をか弱く羽ばたく蛍のように空に散った。
細かな魔導力が飛び立ったであろう大地。
そこには独りぼっちの生命が、所在なさげに膝をついていた。
傍らでは植物の画が施された黒い首輪をはめる青年が静かに横たわる。
青年が伸ばした腕…その先で、なにかを掴まんとする掌はもう動かない。
彼の魂は途上ながらにして
もうひとつの可能性に満ちた男子に献上された。
記憶…そして存在意義も。
【ドレイン】
人生はしばしば川の流れに例えられる。
大海に出る路もあれば、いつかは尽きる路もあるだろう。
モナーという人間はこの日、この赤い森で、その路をたしかに閉じた。
-
( ´∀`)
モナーの死を眺めるのは、
同世代である仲間たちの儀式を横目に脅え、なにもできなかった小さな独り。
人形ではなくモナーという青年を通して、今しがた【ドレイン】の儀式を終えた男子。
呪術師の一族として後継されし真実なる生き残り…
その彼に、生きた証の総てを託してモナーは絶息した。
( ´∀`)
『死にたくない』――。
渇望してなお、願いは叶わなかった。
しかしまだ呆けている生命の中で、モナーという路が新奇に創られようとしている。
( ´∀`)「……この人のこと、頭に流れ込んできた…」
( ∀ )
-
( ;∀;)「ごめ、ごめんな…さい」
屍に向けてはじめて口にしたのは、贖罪の言霊。
( ;∀;)「この人は…もっと生きたかったって…。
ぼくと、おんなじ……もな」
( ;∀;)「…?… 一族を大切にして、でも、こわくて、お母さんがぼくを隠してくれて」
"結魂" した記憶はまだ結合しきらない。
しかし、それも時間の問題だ。
( ;∀;)「ごめんなさい、ごめんモナ、ごめんなさいモナ…――」
モナーという青年の抱いていた夢と願望に惑わされながら、
自らの名もまもなく思い出せなくなる呪術師の一族。
やがて慟哭止まぬまま歩きだす。
「…うぅ〜〜…――」::( つ∀ )::
「ぅぁあァあん……っ――!」 ::( ;∀ )::
その足は無意識に森の出口を目指す。
小さな後ろ姿。
一度…二度、大きく深く呼吸して、
彼は地平線の彼方へと消えていった…。
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ξ゚⊿゚)ξ
HP / G
strength / A
vitality / C
agility / D
MP / B
magic power / C
magic speed / C
magic registence / H
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今日はここまでです
ショボンの長い夢ですから、ゆっくり読んでいただければ幸いです
続きはまた後日に
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乙
-
乙
良かった
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面白い!!
おつ
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乙!呪術使えるモナーはこのモナーとは別人だったんか…
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長そうだからずっと敬遠してたけど読んでみたらかなり面白いわ。乙
ふつうに本格ファンタジーじゃねえか
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普通に本格
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乙乙
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(推奨BGM:)
https://www.youtube.com/watch?v=GmR3AALCPzo
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( 熱が…ない? )
その身へと、徐々に五感が戻る感触を得た。 狭い痛みを確かめながら目を開く。
視界の端…いや、近すぎてぼやけているのだろう、
白く優しい光に包まれたショボンの身体に降り注ぐ【ヒーラ】の魔法。
背後にいるであろうツンに感謝し、まずは状況の把握に努めんとした。
眼球を右へ、左へ…上にも巡らせる。
灰色の夕暮れが、鉄色となった大地に抗っている。
(´・ω::) 「なるほど」
脳への情報は少ない方が整理しやすい。
ショボンを渦巻いていた炎は一切の動きを止めている。
ξ;゚⊿゚)ξつ 「……消えた、けど――」
(´・ω:: ) 「…?」
獄炎を演出していたはずの広場は音を無くし、元凶すらも姿を失っている。
見渡せば月明かりも届かぬ冥い大地…。
人と蟻――と化した騎士――の屍床。
炎壁が遮っていた向こう側も、たった一点を除いて同じ光景があった。
-
「…あなたたち、何者?」
まだ人であることを証明するかのように、明確な発音が届く。
その女性の長髪、そして長袖の紅い礼服に身を包んでいるおかげで呪術師を推測させたが、
距離が離れているため、ショボンにはその表情まで読み取れない。
ツンから見るに母親なのだろう…頭部だけになった血塗れの子を大切そうに抱えていた。
:::д/:川
「いえ、それよりも…――
ξ;゚⊿゚)ξ 「…」
その子から…離れて…っ!」
女呪術師が指をさす。
その方角には――
「……ナナシ?」 (;´・ω::)
-
ミ,,●皿●彡
(;´・ω::) 「ナナシ…!」
彼が無造作にぶら下げる騎兵槍は蒸気を噴き、煮えたぎるよう赤く染まっている。
…碧色の死者をその尖端に深々と突き刺して。
自らの意志で人を刺したことのなかったナナシの腕から洩れ放たれる、明確な殺意。
(;´・ω::) 「ツン、何が起きたんだ?」
ξ;゚⊿゚)ξ 「彼が薙いだ瞬間、その槍が "吸い込んだ" のよ、辺りの炎を全部」
「…感染したんだわ、
この兵士たちのように」
ナナシのとる姿勢は、人間たる骨格を差し置きまるで四つ足獣を体現する。
赤熱の騎兵槍と相まって、見る者の恐怖心を煽った。
関節の可動限度を超えた首がグルンと逆さに捻れ、二人の不死者をその瞳で貫く。
――眼はまるで呪術師の瞳孔。
――覗かせる牙は蟻を連想させる。
ミ●皿●,,彡
怪するナナシを挟んだ反対側、女は抱いた娘の額に軽くくちづけた。
別れも惜しまず、礼服の胸元へと小さなそれをしまう。
「……あなたたち二人は "まだ人間" なのね?!
逃げて! どうせもう私たち一族は助からない」
「空の王、そして軍師ショボン!
その二人が滅ぼしたわ、怪物を使って!
それを伝えて欲しいの!」
-
森の民らはショボンの姿を知らない。
目の前に偽られし仇がいるとは思わず、呪いを託す。
(;´・ω・) 「…」
ξ;゚⊿゚)ξ 「諦めちゃダメよ!
私がそっちに行くから、待――」
「逃げてーーー!」
 ̄ ̄ミ,,●皿●彡
遺言代わりの懇願が木霊する。
ナナシの身体…いや、 "騎兵槍が女の元へと低く滑る" 。
煙を噴き上げ、淡い軌跡を直線に伸ばさんと触手の残像をなびかせながら。
…恐らく、過去争いなく過ごしてきた平和な森の民に、それはどう映っただろう。
祈り捧ぐ天国への閃光か。
無慈悲な地獄の終着点か。
――《グしゅリ》…。
再び人間を貫く騎兵槍の醜い音は、身体に穴を開けた者の耳にだけ届いたに違いない。
-
「あ…あ…」
わなわなと、ふるえる唇。
「あなた…――」
ミ,,●皿●彡 「……」
苦虫を噛み潰す表情のショボン。
ツンは詠唱していた回復魔法を放たず、手中に保留している。
そして女は小さく口を開け、背中から生えたその赤い翼をただただ見つめていた。
(;´-ω・`) 「――……」
騎兵槍が喰い破ったのはショボンのわき腹。
女に辿り着く前、神速を以てその身を庇っていた。
-
ミ,,●皿●彡
(;´-ω・`) 「…ナナシ、目を覚ますん――
::(;´ ω ):: ――グ…おぉお お お ッ!!」
発火量を増幅させる騎兵槍。
ショボンを内部から焼き付くさんと、更なる魔導力を放出する。
ξ;゚⊿゚)ξつ 「【ヒーラス】!」
【ヒール】、そして【ヒーラ】を超える最上位回復魔法【ヒーラス】を発動させるツン。
素早く、そして大きな光がショボンに染み込みはじめた。
…しかしこのままでは盛り続ける騎兵槍からのダメージによって、
癒しの魔導力もすぐに相殺されてしまう。
――それでもショボンは。
「…三日月島の時から、」
(;;`・ω メ 三 ( ズリュ…ッ ) ミ●皿●,,彡
その僅かな無痛の瞬間を利用し、騎兵槍ごとナナシを突き飛ばす。
槍という外装で不死の血を舌なめずりし、名残惜しそうに騎兵槍がケタケタと嗤った。
(;;`・ωメ) 「思っていたけれど、よくぞここまで気が利くものだねツンは。
…でもまたこうして助かった、礼を言う」
ξ゚⊿゚)ξ 「ショ――…うがないでしょう。
でも、どうしてナナシは……」
-
思わずショボンの名を呼びかけそうになるツンだったが
呪術師の手前、寸で止めた。
ヘタな誤魔化ししかできなかったのは、言い換えて彼女の誠実さにも繋がっている。
(;;`・ωメ) 「…」
ショボンの脳裏には、時を遡り集束していくひとつの答えが導かれつつあった。
炎の壁に挑むナナシの姿…騎兵槍…。
形状は異なるはずが、
石突きとなる柄頭に刻印された金糸を確かに視た。
それは三日月島で末者がしたためた槍とまったく同じ印。
「…貴様、あのときの小僧か」 ミ●皿●,,彡
Σ (;`・ωメ) 「――!?!!」
「久しいが…
忌まわしき不死め」 ミ●皿●,,彡
-
――赤い森の惨劇よりも、
ξ;゚⊿゚)ξ 「…」
――呪術師たちの怨みの矛先になるよりも、
「あの日以来、永く意識を失いはしたが
時を経ても貴様に逢えたということは…
これが相剋というものか」 ミ●皿●,,彡
――ショボンの心を蝕む邂逅。
(;`・ωメ) 「…人語を、理解しているのか」
「魔導力さえ喰えれば、
他は貴様らとなんら違いない」 ミ●皿●,,彡
-
…かつて末者が黒い棒として加工した隕鉄は、いわばアサウルスの卵だった。
しかも、魔導力の空っぽな生きた屍。
それが別個体のアサウルスの太陽と接触した際、
ごく僅かな魔導力を得たことにより、生物としての反射行動を起こした。
「あの日、邪魔さえ入らなければ
貴様を媒体に降りたものを…」 ミ●皿●,,彡
結果、アサウルスの本能は最も身近にあった物体を餌に喰らおうとする。
…それが単なる騎兵槍であったことが、このアサウルスの不幸。
(;#`・ωメ) 「邪魔……だって?」
ショボンは悟る。
目の前にいるのが幼き自分に飛来した、あの黒い槍であることを。
…兄者の仇は、この固体こそなのだと。
「可能性をいくら持てども、人間のままでは駄目なのだ。
蟻を生む排泄物にしかならぬ」 ミ●皿●,,彡
ξ゚⊿゚)ξ 「……」
(;#`・ωメ) 「…兄者さんのことか?
兄者さんは僕の恩人だ、お前の餌なんかじゃ――」
だが飢えはアサウルスを殺さない、殺せない。
意識なき100年余りの刻は天災に幸をももたらす。
「我は、貴様だ」 ミ●皿●,,彡
-
ξ-⊿゚)ξ 「…」
「あなたたち、なんの話をしているの?」
女呪術師はただならぬ雰囲気を感じつつも想像には至らない。
先とは異なり、今度はツンが黙しつつも密かに【ヒール】を放出した。
呪術師の傷が柔らかく癒えていく。
(;#`・ωメ) 「……なんだって?」
「貴様が産まれ、我も産まれた。
我々は純粋にエネルギーを欲し、不死たる
貴様らに惹かれているだけ…」 ミ●皿●,,彡
(;#`・ωメ) 「…」
「長く生を得れば知識も増える。
永く命を保てば理も身に付く」 ミ●皿●,,彡
(;#`・ωメ) 「不死者の数だけお前たちが生まれるのか?
だったら…ナナシから離れろ」
「この人間なぞ媒介に過ぎない。
我が身は未だ封じられている」 ミ●皿●,,彡
ナナシの口で語るアサウルス。
かざし示す騎兵槍は尚も炎熱し、蒸気を炊いた。
内包する忌々しさを代弁するかのように。
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「…が、我を一介の獲物扱いなど癪にさわる。
このまま生きるも一興か」 ミ●皿●,,彡
(;`・ωメ) 「恐らくナナシはなにも知らず、その騎兵槍を使っている」
(;`・ωメ) 「…お前にも理があると言ったな?
彼には彼の人生がある。
用があるなら代わりに僕の身体を直接使えばいい」
ξ;゚⊿゚)ξ 「ちょっと…!」
「……そうして内に秘めた我を殺すか?
あの日、この身を利用してまで我が
同胞を葬ったように」 ミ●皿●,,彡
「ならばこの者もしかり葬る」 ミ●皿●,,彡
(;#`・ωメ) 「彼を巻き込む必要はない!
お前達の目的は僕だろうっ!」
「その通り。
我らアサウルスにとって、人間は路傍の石にも足りえぬ。
欲するは不死の生命のみ」 ミ●皿●,,彡
「我らは各々、不死と同一…相剋の存在。
――だがしかし」 ミ●皿●,,彡
ナナシの躯の構えが変わる。
腕を引き、腰を落とした半身の態勢…。
-
「貴様はひとつ、運命を反故した。
故に我も禁を犯そう」 ミ●皿●,,彡
(::`・ωメ) 「…運命の反故、だって?」
「すなわち相剋の黙殺。
我々アサウルスは定められし天敵のみと争うべきなのだ。
弱肉強食…
魔導の理を貴様が失した」 ミ●皿●,,彡
騎兵槍からたぎる炎が更に強大に膨れ上がった。
…一変する空気。
静まったばかりの広場も再び赤く染まると、
既に刀に手をかけていたショボンの姿も照らされる。
その時既に、両者の射程圏内。
 ̄ ̄`・ωメ) ( …ナナシ、頼む! )
「貴様に関わるものすべて我らの大敵と知れ」
ミ●皿●,, ̄ ̄ ̄
-
アサウルスが操るナナシのランスチャージ。
纏うは咆哮の業火球…
それも見上げんばかりに強大な灼熱のメルト模様がナナシの姿を覆い隠す。
対する【切断】。
蟻の炎の壁すら届かなかったこの技術では相性が悪いことをショボンも自覚している。
…ブーンの【破壊】であれば、この火球を打ち崩せたかもしれない。
しかし居ない者にすがることは出来ない。
なにより、これはショボンの闘いなのだ。
 ̄ ̄`・ωメ) ミ●皿●,, ̄ ̄
ショボンは立ち向かう。
自らの落とし前をつけるべく。
天敵を滅ぼすべく。
仇をとるべく。
衝突間際。
【切断】を、相手の精神に作用させた。
-
ミ●皿●
-
●Д゚,,彡 「――!!」
-
魂を乗っ取っていた共有意識が【切断】された時間は瞬きの間にも満たない。
しかしその一瞬がナナシ本体の抵抗を生んだ。
ランスチャージはガクンと勢いを失うと、身体をわずかに宙へと浮かせる。
Д゚,,彡 ( ショボンを… )
ナナシの目的はしぃのため。
幼馴染みの願いを叶えるためだけに、ショボンにすら斬られる覚悟も厭わない。
アサウルスはまさしく路傍の石につまづいたのだ。
そして――
 ̄ ̄ ̄ ̄`・ωメ)
未だ業火球は健在。
これこそツンの【アクアデス】に加えてショボンの【切断】にも耐えた、
あの分厚い炎の壁を【リフレクト】している。
ξ#゚⊿゚)ξ
つ∴o キュゥゥ
ならば同じことを繰り返したところで往々にして無駄となる。
それでも、ツンは詠唱を止めていなかった。
-
ξ#゚⊿゚)ξつ サッ
…ツンもそれは重々承知している。
自身の魔導力では足りないのだ、最大級の魔法をもってしても。
不死であろうと至らぬものは認めなくてはならない。
・・・
だから、唱えるのはこっちだ。
ξ#゚⊿゚)ξつ 「【ライブラ】!」
-
攻撃力をもたぬ補助魔法…。
掌から生命感知の波動が放たれると、元は一つだった光の塊が枝分かれに分離した。
緩くも速く着弾し、同時に発光。
呪術師の女、
ツン、
ショボン、
ナナシ、
――騎兵槍。
( そこか…ッ! )  ̄ ̄ ̄ ̄`・ωメ)
業火球と槍の中に身を隠すアサウルスの生命が、その在りかを輝き示した。
…それだけでいい、総てを斬る必要はないのだから。
・・・・・・・・・・・・・
アサウルスだけを斬ればいいのだから。
いまのショボンに事足りる、どんな攻撃魔法より強力で頼もしい最大のサポート。
-
,゜..
"`\\
\\
\\
-
\\
\\
\\
(`・ω:メ)
∪
|
-
ξ;゚⊿゚)ξ
ミ●皿●,,彡
「…手応えは、」 (・`ωメ´::)
-
ゴフッ ;`, (゚ωメ´::)
ξ;゚⊿゚)ξ 「!!」
ショボンにも手応えはあった。
――それでも。
喉を迸るのは、抗えない五臓の悲鳴。
色を失くした呪術師の森に赤い色を返り咲かせる。
ミ,,●皿●彡 「狙いは良かったのだろう。
だが伝えたはずだ…
"我々は天敵のみと争う" べきだ、と。」
ミ,,●皿●彡 「我は貴様にとっての相剋だ」
ナナシを包んでいた、散り散りに火の粉舞う魔導力…。
再び意識を共有化したアサウルスが騎兵槍を肩に担ぎ、ショボンへと向き直った。
-
「…な、何が起こったの? 彼はどうして…」
ξ;゚⊿゚)ξ ( ……【切断】は風の魔導力、でも―― )
魔導力には属性が帯びられる。
火は水に、水は土に、土は風に、風は火に…それぞれ相剋の関係によって喰われてしまう。
照らし合わせるならば、
そもそも炎の壁が【アクアデス】に耐えた違和感に、ツンも気が付いた。
ξ;゚⊿゚)ξ ( 【リフレクト】にしても理に適っていない。
アサウルスがキズを負った形跡も、反射ののタイムラグもない )
ショボンへのダメージは更に不可解だった。
アサウルスはショボンに対して攻撃をヒットさせたように見えなかった。
先の接触は【切断】の一方的なアタックではなかったか…?
ショボンの手から隕鉄の刀が滑り落ちると、同時にその肘から先も共に沈む。
千切れた片腕からドロ
ッ…
と、血溜まりが大地に円を描いた。
::(-ωメ´:;;)::
ハア ハア
ミ,,●皿●彡 「利き腕がなければ、もはや得意気に剣技も繰り出せまい。
…最も、あろうとなかろうと同じ愚行を繰り返すだけだが」
「…」 ::(゚ωメ´::)::
ミ,,●皿●彡 「不死とて死は一時訪れる。
だから我は死を与え続けよう……
貴様に、命脈刻む暇すら与えぬ矛盾の命を」
-
アサウルスの意思の元、ナナシの身体が一歩前に出る。
( これは違う…。
【切断】のダメージじゃあない ) ::(゚ωメ´::)::
騎兵槍の尖端が届くとき、
ショボンの心臓なり脳天は貫かれるだろう。
彡
( ダメージだけ切り取って具現したような…
反射ならこの感触は有り得ない ) ::(゚ωメ´::)::
波動感知に長けるショボンにとって、自身の魔導力と特性を見誤ることは考えにくい。
かといって、アサウルスだけが無傷のカラクリも判らない。
,●皿●彡
現実は容赦なく迫ってくる。
もはや避ける体力など残っていない。
近づく死に抵抗すべく、視界は緩慢な時の流れを映し出した。
( 相剋…… 天敵…… ) ::(゚ωメ´::)::
-
ショボンは思考を走らせ続けた。
違和感をヒントに、目の前の危機にギリギリまで抗う。
…アサウルスの歩調が変わる。
ミ,,●皿●彡
( 存在… 不死と、アサウルス ) ::(゚ωメ´::)::
ξ;゚⊿゚)ξつ 「【ウィンダラー】!」
逃げられないショボンを救うべく動くのはツン。
【ウィンダラー】…広範囲に巻き起こる魔突風とカマイタチ。
アサウルスを中心に添え、溶け残る鎧の隙間、肉を切り刻んでゆく。
::ミ,,●皿●彡::
ξ;゚⊿゚)ξつ 「くっ…」
…しかしその歩みを阻害するには至らない。
ギチギチ軋む音をたてつつも、発生した慣性に逆らい前進するアサウルス。
顔を歪ませ、握り直した騎兵槍を――
ミ,,●皿●彡 「!」
――正面に突き出して…虚空に触れた。
そこにあったはずのショボンの姿が無い。
(;´-ωメ:) 「……ぅ…」
静かに首を振った先、
【ウィンダラー】の余波に吹き飛ばされた不死の青年を改めて捉える。
-
アサウルスはゆったりとした動作で振り向いた…。
焦る様子はない。
背負う月と濁った星光…
そして宵雲に潜む二つの太陽がなおも健在している。
「……娘…小賢しい真似をするな」 ミ●皿●,,彡
ξ゚⊿゚)ξ 「…」
「貴様も我の因果に含まれたいか?
余計な手を出さず、望みさえすれば
まだ長生きさせてやるが…」 ミ●皿●,,彡
ξ゚⊿゚)ξ 「…?」
ξ゚⊿゚)ξ 「そうね、お願いしたいわ」
交わす言葉とは裏腹にぶつかる視線、退かぬ不死。
蚊帳の外にいる女呪術師だけが後ずさりした。
【ウィンダラー】の狙いはアサウルスへの攻撃でなく、ショボンの緊急回避。
ダメージを伴いはしても、まだ死にはしないと踏んでのこと。
…そしてそれは思わぬ副産物をツンに与えたらしい。
表情から焦りが消える。
睫毛をはじかせ、勝ち気な眉をますますつり上がらせた。
ξ゚⊿゚)ξ 「他にも試してみる?」
⊂ξ゚⊿゚)ξ 「…【リジェネ】」
挑発する仕草でそのしなやかな腕をユラユラと揺らしたかと思えば、
流れる動作で魔法を発動する。
(;´-ωメ:)
-
光の魔導力がショボンを包む。
――反応はそれだけだった。
「……」 ミ●皿●,,彡
「ククッ、知恵は回れど実力が追い付かぬか。
弱々しき癒しの波動よ」 ミ●皿●,,彡
ξ゚⊿゚)ξ 「逃げて。
森や皆は残念だけど…貴女だけでも生きるのよ」
-
「……えっ」
認識には一呼吸分の時間がかかった。
女呪術師が、場にそぐわぬ声をあげる。
ξ゚⊿゚)ξ 「大丈夫。
せっかくアサウルス様が長生きさせてくれるっていうんですもの」
ξ゚⊿゚)ξ 「ねえ?」
「……」 ミ●皿●,,彡
ξ゚⊿゚)ξ 「ほーら、認めてるわよ」
「……」
そのやり取りに、
心中を困惑させながらも女呪術師は、一歩…また一歩と下がっていく。
視線はそれぞれに泳ぎ、やがて無防備な背中を晒しながらこの場を離れる。
自身の娘に向けていた別れの口づけとは対照的に、名残惜しそうに振り返っていた。
ツンに向けては申し訳なさそうに…。
アサウルスに向けては怒りの矛先として…。
ミ●皿●,,彡
アサウルスは静かにそれを見送るだけだった。
騎士道精神では決してないだろう…。
とはいえ、意識を朧気とさせるショボンの薄目に入るアサウルスがとても人間臭く映った。
-
ξ゚⊿゚)ξ 「… さて、と」
女呪術師が居なくなるのを見届けると、
ツンは逆手に指を絡ませ、リラックスするかのように伸びをする。
《カチャリ…》。
騎兵槍から突撃準備の鐘鳴。
「不死にすら敵わぬ我に、人間が
随分と余裕を見せるものだな」 ミ●皿●,,彡
ξ゚⊿゚)ξ" 「あら、アサウルス様?
ご存じ無いのね……」
ξ゚⊿゚)ξ 「【コンフュ】!」
伸びをしたまま――指先から放たれるは、神経回路の混濁魔法。
「?!」 ::ミ●皿●,,彡::
ドクンッ
色彩なき横倒しの刃が騎兵槍を貫通する。
直後、アサウルスがよろけ始めた。
ξ゚⊿゚)ξ
つ∴o 「貴方はショボンのことしか眼中にないのかしら?」
-
続けて詠唱したのは【フォース】。
ひたすらに物理的でしかない衝撃がアサウルス本体に襲いかかる。
吹き飛ぶ騎兵槍…
だが、ナナシの手がグリップを離さない。
重量に引きずられた身体が僅かに浮いた。
「グゥっ…小癪――
三ξ゚⊿゚)ξ !!」 ミ●皿●,,彡
その眼前に距離を詰めていたツン。
【コンフュ】から解放されたアサウルスの元へと駆け出し、
ξ`゚⊿゚)ξ 「っハァ!」
⊂彡
・・・・・・・・・
ショボンの隕鉄の刀を振り降ろす。
-
《ギチィ ―ィン!》
-
灰色の空に木霊する金属音…。
ξ゚⊿゚)ξ 「…」
ミ,,●皿●彡 「…」
重なりあう、刀と槍。
ミ,,●皿●彡 「…なんのつもりだ」
ξ゚⊿゚)ξ 「今度は反射しないのね。
意図して? それとも…アタシにはできないのかしら」
ミ,,●皿●彡 「なるほどやはり小賢しい」
鍔迫り合いする互いの武器。
…ツンはナナシの胴をすり抜け、騎兵槍を直接叩いた。
疑念を払拭するためだけに。
グッグッ…と、また嗤い声がした。
ミ,,●皿●彡 「だがこうも近付いたのは、やはり貴様の力不足というものだったな」
(;´-ωメ:) 「 ぅ…」
(;´・ωメ:) 「……はあ、はあ…」
(;´゚ωメ:) 「!!」
-
ド
::ξ;゚⊿゚)ξ:: 「――…ッッ!」
ス
ッ
…ツンの身体が跳ねた。 何度も、ガタガタと。
極短の縄で繋がれた家畜のように、決められた空間だけで痙攣を赦される。
ξ;;゚⊿-)ξ,゚、 「が――ふっ…」
徐々に上がっていく高度。
足が大地を離れ、小さなブーツを伝ってボタボタボタボタと血を垂れ流す。
…騎兵槍がツンを貫いていた。
何が起こったか、当人は把握することもままならず。
ミ,,●皿●彡 「この躯はとても良い。
身の丈を越える得物をここまで自在に操れるか」
::ξ;; ⊿ )ξ:: ビクッビクンッ
(;´゚ωメ) 「――くそ…、ツンーーー!!」
-
ショボンの身体は少しずつ動くようになっていた。
不死者といえど、自然に回復するわけではない。
これは【リジェネ】の段階的治癒の発動によるものだ。
即効性のある【ヒール】と違い、
本来ならば毒のような継続ダメージを受け続ける環境下で本領を発揮する。
消費魔導力の少なさから、非戦争地帯での治療にも役立てられる。
ツンはアサウルスの注意を引き付けるため…
そしてあえてショボンがすぐに動かないよう活用した。
やがて…ツンの痙攣が止む。
ミ,,●皿●彡 「ふむ…」
刀の扱い方を盗めなかったツン…。
瞬時に繰り出された旋風槍に対処できず、その刃を弾かれ、返り討ちにあってしまった。
ミ,,●皿●彡 「どこかでこんな死体を見たな」
結末は――百舌鳥のはやにえの如く。
槍に貫かれたその姿は、ショボンの記憶からかつての兄者をフラッシュバックさせる。
(;#´゚ω゚) 「アサウルス!!」
ミ●皿●,,彡 「邂逅…そうか。
これはいつかのお前でもあった」
-
グッグッ、グッグッ、
…嗤いが止まらない。
そうだ、このまま
女を投げつけてやろう。
…アサウルスはそんな風に考えていたのかもしれない。
ショボンから顔をそらさず、
騎兵槍を振りかぶろうとして……その意識は完全に余所見をしていた。
「…やっぱりね、
ショボンのことしか
見えてない」
Σ ミ●皿●,,彡
-
「アタシも不死者なの。⊿゚)ξ
…貴方は知らなかったみたいだけどね」
ミ;,,●皿●彡 「!!!」
(;´・ω・) 「ツン!!」
「【リベンジ】!!」⊿゚#)ξ
アサウルスの狼狽――同時、爆散する闇色の太陽光。
::《ゴ ア ァ ア ァ ァ ッ ッ》::
獣の断末が
哭き響く。
-
( 推奨BGM:Distorted Space )
https://www.youtube.com/watch?v=2wOonO74Y2M
-
シュゥウゥ……
.
: :: ,
ミ,,○皿○彡
(;´・ω・) 「…や、ったの……か?」
ξ ⊿ )ξ
(;´・ω・) 「ツン?」
膝をつくアサウルス…地に伏すツン。
どちらも立ち上がる気配は無い。
【リベンジ】…その身に受けた傷をそっくりそのまま放つ。
ダメージではなく概念であるため、
被爆した対象は痛みそのものや瀕死といった、発動者の状態をトレースする。
…かろうじて息があるのだろう。
ツンの身体は極々わずかだが、呼吸による上下運動が見られた。
貫かれた箇所は長く綺麗な後ろ髪に隠れて目視できない。
どのみち彼女も不死の者…。
生きてさえいるならば、その怪我の度合いよりも確認しなくてはならないことがある。
(´・ω・`) 「…アサウルスは」
`
: :: ,
ミ,,○皿○彡
-
ショボンは警戒しつつもアサウルスへと近よった。
しかし何も起こらない。
(´・ω・`) 「アサウルス、死んでいるのか?
いやしかし……」
空を見上げる。
夜空の彼方……雲の切れ間に、太陽は無い。
三日月島に出現したアサウルスは二つの太陽を破壊しても石化したまま、
島の海にその身を晒している。
いつの間にか現れた謎の物体として、
世間的認知が広がっているのをのちのち小耳に挟んだことがある。
生きているとは考えにくいが、消滅していないのも確かだ。
-
《 ( A ) 》
ならば東方のアサウルスはどうだろうか。
あの日あの空間でブーンが助けた男。
ハインの言葉を訊くに、彼がどうにかしたという。
-
だが、東方のアサウルスらしき発見談などこれまでに聞いたことがなかった…。
人の多くはひとつの場所に定住するが、遊牧する民もいる。
訳あって大陸から東方に旅立つものもいるだろう。
よって東方の生き残りがいようがいまいが。
何かしら形跡が残っているならば、人々は伝え、いずれはショボンの元に情報が入る。
アサウルスと蟻の痕跡を追い続けた彼に。
(;´-ω・`) 「――ぃづッ!」
ツンから取り戻した隕鉄の刀で騎兵槍をつつくと、
感触が痛みとなってショボンに跳ね返った。
そこで今度は素手で優しくさわってみる。
…やはり、さわさわと身体をまさぐられる感触。
(´・ω・`) 「相剋…か」
ツンがショボンを残して【リベンジ】…自爆したのは、
このアサウルスが彼女でしか有効なダメージを与えられないことを悟ってのことだろう。
倒せる確信があったのかは彼女にしか判らないが。
ならばショボンが期待されているのはトドメではなく、
(´・ω・`) 「恐らくは――」
-
ショボンはアサウルス本体である騎兵槍へと意識を向け、集中する。
やがて不可視の腕…その輪郭が伸び、宙を漂い始めた。
自身の腕ではない。
彼は両足のスタンスを自然にとり、両手は下がったままだ。
魔法の使えない彼だが、代わりに独自の概念を編みだし応用していた。
ふわり、ふわりと。
ショボンによく似た形の腕が魔導力によって具現されている。
(`-ω-´) 「…」
騎兵槍――そこから魔導力の波動は感じられない。
生きとし生けるものには総じて魔導力が備わっている。
アンデッド、無機物の魔導生命体…
アサウルスも例外ではなく、灰蟻にすら纏われているもの。
それが魔導力。
-
【ライブラ】が死んでいるものを生命感知出来ないように、
この不可視の腕もまた、魔導力のないものは感知出来ない。
これまでの経験と法則に則るならばアサウルスは死んでいるといえる。
――なのに、ショボンに対する相剋の特性は消えていなかった。
(`-ω-´) 「…」
もともと魔法を使えない人間からはパルス状の波動が流れているため、
ショボンの感知範疇にはもうひとつの存在が同様に捉えられる…ナナシもまだ無事のようだ。
アサウルスとの共有意識から完全に【切断】すべく、
自らの掌をナナシの顔に触れた。
直接魔導力を送り込めば、より強く意識を切り離すことが出来るだろう。
ミ,, Д ⊂(・ω・´ ) 「いま助けるぞ、ナナシ…」
騎兵槍たるアサウルスの処分はそれからだ。
そう思い、ショボンが【切断】を発した――
-
ミ,, Д⊂(;`・ω・) 「!!」 ――その時。
感知内にもうひとつの魔導力。
かつて感じたことのない、破裂寸前の膨脹波動。
背後へと振り向く。
ξ ⊿ )ξ
ツンではない。
(・ω・´;)
(;`・ω・)
他に、居る。
(推奨BGMおわり)
-
------------
〜now roading〜
ミ,,●皿●彡
HP / B
strength / B
vitality / B
agility / C
MP / C
magic power / B
magic speed / D
magic registence / H
------------
-
次投下でこの回は終わりです。
よろしくお願いします。
-
乙
-
ハラハラする
面白かった!乙
-
おつ!!
続きが気になる
-
おつ!ツンかっけえっす
-
----------
それは過去に無い感覚だった。
魔導力の波動……
ある日を境に世界で充満し始めたエネルギーをショボンが感じとる際、
様々なイメージをキャッチしている。
【火】が息苦しくなるならば、
【水】は重い。
【土】に締め付けられ、
【風】は感覚が薄くなってゆくかのように。
癒しを司る【光】の魔導力はむず痒さを覚えた。
(;`・ω・) 「……」
アサウルスの波動のような、チクチクとした刺々しさともまた違う。
未知に抱くは畏れもあり…。
しかしそれ以上に、彼がその場から逃げ出さないのは
心を埋め尽くすような赤黒い正体を掴みたいという好奇心が大きい。
立ち向かう精神はいつでも持ち合わせているつもりだ。
(・`ω・´;) 「……」
手は無意識に、いつでも抜刀できるよう腰に当てていた。
がっしりとした首を振るよりも忙しなく瞳を動かす。
廃巨木の奥、焼けて黒ずんだ岩の蔭、
それとも死体に擬装してはいないか…彼は意識を光らせた。
-
「……終わったの?」
だがその心配も杞憂に終わる。
ショボンの前に姿を見せたのは…ツンが逃がしたはずの女呪術師。
(`・ω・) 「まだ居たのか…どうして戻ってきた?」
問い掛けて、思わず息をのむ。
女の様子がおかしい。
敵意のベクトルをひしひしと感じさせる。
…波動の発生源すら一致させて。
「考えたの…私一人で逃げても仕方ないって。
誰もいなくなって、私はなにを支えに生きるというの?
独りで、どうしたらいいの?」
(`・ω・) 「命が惜しくなかったのか?
せっかく助かったんだ、せめてみんなの分まで――」
「声が聴こえたわ…
貴方が、ショボンだったのね」
(;`・ω・) 「!」
-
彼女は脇に何かを抱えていた…。
ショボンは目を凝らす。
それは彼女が懐へとしまいこんだはずの我が子の首。
カタカタと腕を震わせているのは、隠しきれぬ感情によるものだった。
「不死…って言ってたわね?
本当に死なないの?」
その表情は氷のように、冷たい。
その瞳孔は闇よりも、黒い。
-
(;`・ω・) 「…」
「……返事してよ、でないと」
(;`・ω・) 「…」
『理由がある、これは僕の仕業ではない』
…などという言葉は出てこない。
ショボンは葛藤していた。
三日月島の半壊滅、
赤い森の消滅、
森の民のジェノサイド……
言葉巧みに弁明すれば、もしかすると彼女からの罪は免れよう。
いずれもショボンが関わった事件だ。
しかし、彼自身が引き起こしたものではない。
ましてや望んだこともない。
アサウルスはショボンの意志とは無関係に、やがて現れただろう。
赤い森も、大陸戦争における国家間の諍いによる火の粉が降りかかったにすぎない。
ジェノサイドすら、その両方が同時に発生した不幸の結果論。
「この怒りをどこにぶつけたらいいのか、分からないの…」
だが、しわ寄せはなんの罪もない人にこうして襲い掛かる。
それをどうして己が為だけに否定することができようか。
-
さらにショボンが観察すると、女呪術師の瞳孔が大きく開かれていることに気が付いた。
子の生首の瞳すら見開き、こちらに向けられている。
(;`・ω・) 「…」
(;`・ω・) 「……僕だ」
それでも…
(;`・ω・) 「僕のせいで、君たちをこんな末路に導いてしまったのかもしれない」
「!!!」
(;`・ω・) 「不死も本当だ。
僕は死なない…何をされても、きっとまた甦るだろう」
「どう、して…」
(;`・ω・) 「…」
-
望む望まないに拘わらず、他者の評価が自己を作り出す。
映る姿は真実には相違ない。
加害者の言い訳がどれほど求められようか。
被害者の言い分がどれだけ受け止められようか。
女呪術の瞳から、一筋の涙が流れ落ちた。
「私の瞳が見えるでしょう…?
この瞳孔は、一度開いたら元には戻らない。
怨んでしまえばそれが晴れるまで求め続けてしまうのよ」
…彼女にも分かっていた。
目の前で一番にアサウルスと戦ったのもショボンであり、真に一族の仇ではないことを。
《パキッ》
「……どうして、貴方みたいな人がいるの?
なんのため?
私たちを巻き込むため?」
(;`・ω・) 「巻き込みたくはなかった…。
それでも、事実は変わらない」
「貴方が居なければ、この森も無くならなかった?
貴方が居なければ、私達一族ももしかしたら逃げることができた?」
「――止まらないの、止められないの。
聴かなければ良かった、あのまま逃げれば良かった。
貴方が…ショボンが身を呈してまで私を庇ってくれた恩すら、
この頭の中から消えていく……」
《パキッ》
-
混沌とした意識を維持できない《パキッ》のか、女呪術師の身体が更に振動し始める。
その背から、後光射す闇の波動が吹き出した。
…まるで、アサウルスの太陽コロナと同等の転輪を画いて。
《パキパキ…ッ》
(;`・ω< ) 「!!」
「これは私達への呪い。
制御不能な…魔導力……【ウラミド】の、 呪縛……」
「逃げ、て……貴方が、
私達に、囚われるべき人、で…なぃ の な ら 《パキパキッ》、 」
突如、
その手に掲げた子供の首がゴウッ――と、瞬時に燃えて発光し、散った。
-
(;`>ω⊂) 「――ぐっ!?!」
ショボンが目を奪われたその隙、女呪術師の足元からは冷え冷えとした風がそよぐ。
宙に泳ぐ鮮血の粒子。
《パキパキパキパキ――ッッ》
瞳孔から天を衝く闇柱。
蟻の顋を擁してあんぐりと開けた口から、零下の霜煙が吐き散らかされた。
(;`>ω⊂;:"`
―― 闇のブリザード。
(`>::"`
―― 一直線に彼のもとへ。
( ;::゙`
ショボンの身体を
正気に戻ったナナシが
力任せに押し流した。
それがショボンの
赤い森の記憶――。
-
《 http://imepic.jp/20150716/776760 》
-
-
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
-
「 」
-
「 ――?」
-
……目覚めよと、呼ぶ声がする。
-
早く起きろと、叱る声がする。
-
( …うるさいなぁ )
眼が開くよりも先に、意識が覚醒した。
「 か?」
微睡む肉体に力は入らず、
しかし心地好い浮遊感が起き上がる義務感を結束させてはくれない。
「仕 な 。
れてたん だか 」
少しずつ聴こえ始めた音に嫌でも耳を傾けると、何者かの会話であることがわかる。
やれやれ…と。
まだ気だるげな四肢に無理やり電気信号を送り、身体を動かそうと試みた。
しかし長い時間を同じ姿勢で過ごしていたせいか、
命令を脳がキャッチするまで間があることに内心苦笑してしまった。
存外、不死の身体でも仕組みは人の枠を外れないらしい。
目蓋はなかなか開いてくれなかった。
-
《バシッ!》
頭に衝撃が走る。
誰かがショボンの頭をはたいたのだ。
从 ゚∀从 「ったく、何度揺り動かしても起きやしねえ」
『すまないな、こいつは根っからの寝坊助でね』
从 ゚∀从 「そうやって甘やかすからだよ。
あんまり長居はさせたくないんだがなー」
『なるほど一理ある』
話し声はハインと、もうひとりは男のようだ。
……いや、男が二人で計三人だと、なんとなく思った。
それよりも何故ハインに叩かれなくてはならないのか…
ショボンなりに考え始めるが、果たして納得がいかない。
从 ゚∀从 「もっぱついくか?」
『ショボンは我輩たちからみればいつまでも子供なのである。
優しくしてやってくれ』
( ――!?! )
今度こそ、ショボンの瞼が開かれる。
四人の声は明らかに異質で……
-
从 ゚∀从 「よう、おかえり」
(´・ω・`)
(´・ω・`) 「……な、なんで」
(推奨BGM:Parting Forever)
http://www.youtube.com/watch?v=e10cxFIPeKE
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