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(‘_L’)は命令が欲しいようです
602
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 21:27:46 ID:yXXE1w160
.
603
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 21:28:36 ID:yXXE1w160
('A`)
さっとパネルに指を滑らせると、経路案内の画面がでる。
路線の色合いを確認し、無線で暗号化したデータを飛ばす。使用しているのはほとんどがきちんとしたまともな製品だ。
違法改造さえしなければ誰でも使える。登録した持ち主はすでに変わっているが。
喉がかわいたのでボトルの首を割って、コップに注いだ。
打ち付け、ガラスの割れた音が静かな部屋のなかに響いたが、誰も反応することはない。
色褪せたソファやシーツのないスプリングベッドの上には死体のような女たちが転がっている。
.
604
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 21:29:29 ID:yXXE1w160
ξ ⊿ )ξ
川 д 川
|゚ノ ∀ )
彼女たちはみな恍惚に眠り込んでいる。
客をとるために起きている時よりも、幸せな夢のなかにいる時間のほうが長い。
男たちもそれに慣れ、反応のないまま犯すこともあった。
つまらなくとも、早く済む。
('A`)「陽動に気づかれてるか…」
ひとり呟く。
管制の司令官はそれなりにキレるらしい。しかし拠点までバレているわけではない。そのまま続行する。
傭兵団の役割のまま、あくまでもレジスタンスを貫く。この国の人間でなくとも。
.
605
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 21:30:11 ID:yXXE1w160
('A`)「鼻が聞かないタイプねぇ…欲をいえばセオリー通りで居てほしいんだが、どんなんだろうな」
('A`)「お帰り」
('A`)「楽しかったかい?」
彼は背後の存在に声をかけた。
気配なく、いつ立たれたのかもわからないが、そこにいるだろうという予測があった。
.
606
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 21:30:51 ID:yXXE1w160
薄暗い電球の下、闇の深い場所から影が形になり、体躯のよいなにかが現れる。
それは一部の隙間なく、プロテクト・スーツに覆われていた。顔もわからない。
しかしわからなくともいい。人間の記号を、この男は持っていない。
('A`)「なにか飯でも食うか?女ならそこにいるし、酒も腐るほどあるが、おや?」
ドクオは男が脇に抱えたものに気がついた。
最低限の衣食住しか欲しないこの男が、なにやら訳のありそうな人間を持っている。
('A`)「なにか新しい情報でも手に入ったのか?」
しかし男は黙ったまま、持ち物を渡すこともなかった。自分のたちへの手土産ではなさそうだ。
.
607
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 21:31:48 ID:yXXE1w160
('A`)「……部屋を用意させようか?」
男はしっかりと意思表示した。
首を降って。NOの意味。
つまりはこれは男の獲物であり所有するということだ。
ドクオは乾いた笑みを浮かべる。
狂人の頭のなかなど理解不能だ。
女ならばまだ分かりやすいものを。
抱えられている人間は、特別美しいというものではない。見るからに凡庸だった。
しかしこの男が望むのなら、叶えてやらないと。
獣を飼うのは、飴だけが必要だ。
手に負えない相手に鞭は振るえない。
.
608
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 21:32:46 ID:yXXE1w160
('A`)「じゃあ早く連れてってやんな」
しかし男は動かない。
プロテクターのアイサイトレンズから、ドクオをじっと見ている。
なにか訴えたいことがあるのだ。
それを探るのはいつもならば、手間だったが、この時は簡単だった。
('A`)「心配しなくとも、取りゃしないよ。傷つけたりもしないさ」
おまえがいる限りな
男が仲間でいる間なら、そのためにいくらでも機嫌をとる。いま意識のない手土産が、たとえ拒絶したとしても。
言うことを聞かせる薬ならあった。
.
609
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 21:33:29 ID:yXXE1w160
ドクオの言質を取ると、男は再び重さの感じられない足取りですっと闇に消えた。
跳んだのだ。音をたてず、俊敏に。
窓から野外にでて、屋根をいくつも経由した離れにと帰った。
たどり着くまでに、人では時間がかかる。梯子もなにもないので、ひとりでは降りられない。
連れられた人間は、目を覚ましても逃げることはできないはずだ。
一段落ついて、ドクオはようやく緊張をといた。
表情にも仕草にも出さないようにしていたが、銃の効かない相手というのは身構える。殺す手立てがないのは絶望だった。
仲間にできて、本当によかった。
.
610
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 21:34:21 ID:yXXE1w160
('A`)「おっかねぇ」
('A`)「あの人間、食うのかな」
離れが汚れてしまえば、掃除屋が必要になる。
いまのうちに予約をとっておくか、とのんきにwebサービスを開いた。
血や内臓が腐れば、内装が使い物にならなくなる。
.
611
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 21:52:12 ID:yXXE1w160
「月は男神にも女神にもたとえられる。国によってはさまざまだがな。
しかし、だからこそふさわしい名だと思ったのだよ」
「おもしろいのは、多くの国々では、太陽は男なんだ。荒々しく照りつける。日照りに乾き、古くから、日射は恵みと同時に飢えを招きよせた。
それが雄々しい男神のように思えたの
だろう。月はやさしく夜をひっそりと照らす。そこに女人をみたのだ。アポロンやアルテミスがメジャーなのも、そういうことだろう。」
.
612
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 21:53:08 ID:yXXE1w160
「ただアジアの島国だけは異なる。
長らく鎖国状態だったからか、そっくり反対なのだ。アマテラス大神とツクヨミのミコト。このふたりは兄弟だが、太陽神が姉だ。女人であっても、太陽であるから男よりも格が高い。」
「どちらでもあるおまえにふさわしいものはなんだろうか。ただの連番を区別のために呼ぶのも味気ないだろう。これほど生き物として最適に進化する種の、初代なのだからな。おまえは母であり、父である。」
「アルテミスであり、アポロンなのだ。」
「ゆえに美を象徴する女神から名をもらい、月を意味する言葉にした」
「うつくしいだろう?××××」
.
613
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 21:53:57 ID:yXXE1w160
悲鳴のような声をあげかけて、目をさました。
心臓が早鐘を打っている。どくどくとうるさく、それで夢のなかのできごとを払拭する。
(#゚;;-゚)「は、は、……」
今しがたまで、支配する声がそばにあった。おきが上がり、そんなものはないのだと確認する。
誰もいないはずだ。
でぃはひたすら、自由のはずだった。そばに伸びる手がないのに安心する。
落ち着きかけて、現状に気がついた。
ここは、どこだ。
.
614
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 21:54:57 ID:yXXE1w160
散らかった室内。
布ばかりが積み重なっている。電灯もなく、あばら家といった風情だった。
人が生活する様式がまったくない。
板を張られたようなせまい壁が四方にあり、中心にでぃは寝ていた。
積まれた布を被り、子供が布団をかぶるように。
(#゚;;-゚)「ワタナベ……は?」
なにがあったのか、直前までの記憶は抜け落ちている。
襲われた直後、でぃは全体を知るまえに意識をなくした。
その後を知らない
恐る恐る、小屋から出ようと試みる。
取ってのあるドアのおかげで、閉じ込められているとは思わなかった。隔離部屋は、内側からは開かない。
ドア事態は簡単にひらいた。
.
615
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 21:55:39 ID:yXXE1w160
(#゚;;-゚)「え、……」
しかし一歩踏み出すことはできない。
床がなかった。
天上の楼閣のように、その部屋は下界から上にある。
見下ろせば、高いところの風が顔に吹き、髪を乱した。
人差し指で摘まめそうなほど、下にある家々はちいさかった。車なんておもちゃのようだ。
足がすくんでしまい、でぃはへたりこんだ。
高いところは嫌いだ。もうドアを開ける勇気もない。
.
616
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 22:01:41 ID:yXXE1w160
(A^ν^)「それで、結局どうするんですか?」
( ´_ゝ`)「そうさなー、とりあえず集合させて、そこを叩く。」
(A^ν^)「じゃあ向かうんですね」
( ´_ゝ`)「いんや。積み荷やらなにやら狙いつけられてるんのがわかってるんだからさ、馬鹿正直にそこに行く必要ないっしょ」
( ´_ゝ`)「かといって向こうから来るわけもないし。空は押さえてるから、逃げるんなら海だな」
(A^ν^)「幾人か向かわせますか?でもそのぶん、ここの警備が薄くなってしまいますが…」
( ´_ゝ`)「向かわせるっちゃ向かわせるけど、別に俺らじゃねーよ」
(A^ν^)「へ?」
( ´_ゝ`)「いるじゃん。こんなときに、都合のいいのが。そのためにお金払ってるんだし」
(A^ν^)「……!ああ」
.
617
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 22:02:45 ID:yXXE1w160
一時停止。
まとめ終わったらまたきます
618
:
名も無きAAのようです
:2015/11/02(月) 20:14:03 ID:5nTiP99M0
おつ
619
:
名も無きAAのようです
:2015/11/02(月) 21:03:59 ID:dnzKaTuw0
やったああああ!待ってたら来てた!
これから読んでくる!
620
:
名も無きAAのようです
:2015/11/06(金) 23:00:48 ID:Iajk2B0I0
ロマネスコ・アレクセーレフはこの国で傭兵団を率いている。
おおよそ治安の一定しない国特有の、力が法であり、秩序だった。
彼はロシアとメキシコのハーフであり、外見と同じように内部にも凍えた粛清を持っていた。傭兵団といえば聞こえはいいが、実際犯罪者の集団だ。
ただ金稼ぎと利権のためにとある会社と契約することもある。
.
621
:
名も無きAAのようです
:2015/11/06(金) 23:01:33 ID:Iajk2B0I0
生きていくためには金が必要だ。
そしてこの国ではユダヤのように、商人はまともに生きていけない。
傭兵と手を組み、互いに協定を結ぶことが前提になる。契約してさえいれば、襲われることはない。
それは観光客も含まれる。ツアー客でさえ、大手のパックに入っていないと、行方知らずは当然だった。
そのための自警団。
仕事を得るためには、仕事を作り出さないといけない。
.
622
:
名も無きAAのようです
:2015/11/06(金) 23:02:21 ID:Iajk2B0I0
そして彼らはもっとも実入りのいい仕事をつい最近見つけた。ビルが倒壊するほどの、大惨事。
被害はたいへんに大きかったが、この国の人間が受けた傷ではない。
みな冷静に、どれほどの儲けが出るかを考えた。株式は下がったはずだが、周辺地域の経済は活性化した。
混乱のさなか、めずらしく後手に回った企業の応対。傭兵団という兼業は、強盗に様変わりする。
たとえ登録されていない商品だろうと、分解して売却すれば金にはなる。
需要があり供給がある。
.
623
:
名も無きAAのようです
:2015/11/06(金) 23:03:02 ID:Iajk2B0I0
日常的に、そのような嗅覚が発達している者たち。束ねるためにも、ロマネスコは強面であり、タフガイであり、信頼されている。
彼らの傘下にいる限り、食いっぱぐれることはない。区域にもよるが、簡素な作りの銃も振る舞った。
銃を持てない者これに殺到した。
しかし、犯罪数が増えることはない。ある程度管理する社会のほうが、もめ事は少なかった。警察が機能していない以上、取り締まるのは彼らでもあるのだ。
.
624
:
名も無きAAのようです
:2015/11/06(金) 23:04:16 ID:Iajk2B0I0
この国は政治に混乱はないが、重要な役職をある一族に牛耳られている。
そのため国民が外貨を得るには、こういう事でなくば方法がない。正しくないと非難されるであろう行為だが、正しさだけでいえば企業が正義となる。
抑圧された国民たちは反乱を起こしてもよいはずだ。しかし国の多くが企業の技術に依存している現状。誰もが企業の顔色を伺うことに疑問を持たない。
撤退され不便になるのは、自分たちであるから。誰も難民にはなりたくはない。
国民は上手に飼い殺しにされていた。
飼われたくないのが、傭兵団だ。
立場上、自警団と呼んでもいい。
外資系に侵略されないがための。
.
625
:
名も無きAAのようです
:2015/11/06(金) 23:05:04 ID:Iajk2B0I0
そのためには法律が間違いであり、反抗することが正義だった。
そも、法とは強者のための、強者が制定したものである。
だからいつまでたっても、改正されない。
.
626
:
名も無きAAのようです
:2015/11/06(金) 23:14:44 ID:Iajk2B0I0
( ФωФ)「依頼かね」
( ´_ゝ`)「そーいうこと」
( ФωФ)「残党がまだ多い。我々がここを離れてしまうと、責めいる手数が増えるぞ。」
( ´_ゝ`)「べつにいいよ。突破されるわけじゃないし」
ロマネスコは傷のついた両眼で男を睨んだ。
( ФωФ)(……頭が悪そうなわけではないのに、このゆるさはなんだ)
.
627
:
名も無きAAのようです
:2015/11/06(金) 23:15:26 ID:Iajk2B0I0
ロマネスコは不機嫌な様子を隠さない。
彼にとってこの男は理解の範囲外にあった。
( ФωФ)「ならば早々に移動しよう。敵の予測の裏をかけば、襲撃もうまくいくだろう」
( ´_ゝ`)「ああ。でもべつに、強硬しなくてもいいからさ。威嚇行動になってればそれで」
( ФωФ)「叩かないのか?」
( ´_ゝ`)「だって一ヶ所に集めてからじゃないと漏らすし。面倒くさいじゃんちまちま削るの。」
( ФωФ)「そんな弱腰のうちでは侮られるぞ」
.
628
:
名も無きAAのようです
:2015/11/06(金) 23:17:13 ID:Iajk2B0I0
奇妙な胸騒ぎと、まるで見透かされているような態度。
どこか気味が悪い。この男の言葉には真あがない。どれも正しく、間違っているような気がする。
しかし言葉だけでみれば、ただの不精者。富にあぐらをかいただけの、企業の坊主。
しかし、先ほどから、契約途中の話し合いのさなか、この男がよい位置に来ることは一度もなかった。
ふらふらと、適当に部屋のなかに入り、ソファーに座り。だされた酒を飲む。
その間スナイパーは男の急所に狙いをつけることができない。
身体を揺らしたり、首を傾げたり、ソファーの背中に座ったりと、自由に動き回っている。
.
629
:
名も無きAAのようです
:2015/11/06(金) 23:18:15 ID:Iajk2B0I0
ロマネスコは部下に窓のひさしを閉じさせた。
これを偶然と考えるほどおめでたくはない。頭のゆるそうな男だが、隙というものがなかった。
しかし意識しているわりに、こちらからの出したものに口をつけるのも不気味だ。
本当に警戒しているのか、わからない。それが気味が悪い。
承知のうえで行っているのか。ただただ。運のよいだけの男か。
いいや、そんなものが、司令官であるはずがない。ロマネスコは己の認識を改めた。なにかある。
あるからこそ、これほど自分たちにとって都合のいい展開になるはずがない。
.
630
:
名も無きAAのようです
:2015/11/06(金) 23:18:56 ID:Iajk2B0I0
( ФωФ)「作戦概要があれば伝えてくれ。仲間を消耗させたくはない」
( ´_ゝ`)「これといったことはないなー。でもスーツ着た奴は無駄に追いかけなくていいぜ」
( ФωФ)「なぜだ。あれが一番、目障りではないか」
( ´_ゝ`)「行動が読みやすい。近場にいるなら、問題が起きてるのは遠くのほうだ。」
( ФωФ)「というと」
( ´_ゝ`)「そのまんまだよ」
( ФωФ)「……」
.
631
:
名も無きAAのようです
:2015/11/06(金) 23:19:41 ID:Iajk2B0I0
ロマネスコは黙る。
男もそれ以上口にしなかった。
パワーゲームを真似るつもりはなかったが、あれこれ口にすれば無知のようにも見られ、また相手に疑問を持たれる。
所有権を渡したまま素直に承諾したほうが疑いは少ない。
どれほど気がついているのか、さぐりを入れたかったが、それ以上は難しい。
駆け引きなのか、そうでないのか。
見分けるのが困難な時は乗ってはいけない。
632
:
名も無きAAのようです
:2015/11/06(金) 23:20:23 ID:Iajk2B0I0
( ФωФ)「それだけか」
( ´_ゝ`)「うん」
( ФωФ)「では我々は仕事をしよう」
( ´_ゝ`)「……うん?」
( ФωФ)「我々が居なくなったぶん、負担が増えるだろうが、それで潰されるお前たちではないだろう。」
( ФωФ)「せいぜい足止めを踏ん張るのだな。勝手に死ぬのではないぞ。契約中なのだ。金がもらえん」
( ´_ゝ`)「あー、うん、まぁ」
.
633
:
名も無きAAのようです
:2015/11/06(金) 23:22:55 ID:Iajk2B0I0
協力体制。裏切りと罠。ロマネスコは腹芸が得意というわけでなく。
嘘を言わない代わりに真実も言わない。味方のふりをしているだけだ。
ただあまりに厳しい対応では、見限られるし信用されない。
実直で真面目な見方をされれば幸いだった。
( ФωФ)「少し警備のために残していくか?」
( ´_ゝ`)「いや、べつに……」
残念だ。警護と称して見張りをつけられたのに。
案じているふりをして、手を休めるようにと警告をする。
あわよくば、そのまま逃げ切れるかもしれない。
.
634
:
名も無きAAのようです
:2015/11/06(金) 23:23:54 ID:Iajk2B0I0
( ФωФ)「同じことを繰り返すが、撃退せよとは言わん。ただいまの現状で追撃するのは控えるんだな。
破れかぶれになった奴が特攻すれば、どんなに厳重でも死なない保証などない。ここの人間ほど、テロをやり慣れているものなどいないのだ」
( ´_ゝ`)「お、おう」
( ФωФ)「我々はいずれ革命軍となる。お前たちと連携しなくばならんのだ。その時まで生きていてとらわんと困るのでな」
あやふやな将来だが、目的は間違っていない。利権さえ得られれば、それで安泰。
ロマネスコが治める一体が、豊かであれさえすればよかった。
裏切りの裏切り。ドクオとの共闘が終われば、次はまた敵になるかもしれない。
そのときに背後を守る存在が必要だった。
.
635
:
名も無きAAのようです
:2015/11/06(金) 23:24:49 ID:Iajk2B0I0
ある程度まで信頼させる。
傭兵団の使い勝手のよさ。社会の裏の秩序を保っているのは、ロマネスコたちだという自信がある。
ロマネスコ・アレクセーレフはそういう男だ。
東西冷戦の時代のように。同盟と嘘と裏切りは、使い分けるためにある。
( ´_ゝ`)「……」
( ´_ゝ`)「え?フラグ?……」
.
636
:
名も無きAAのようです
:2015/11/06(金) 23:26:29 ID:Iajk2B0I0
.
637
:
名も無きAAのようです
:2015/11/06(金) 23:27:12 ID:Iajk2B0I0
('A`)「それでビビって逃げ帰ってきたわけかよ」
( ФωФ)「恐れてなどいない。ただ気味が悪かっただけだ」
('A`)「なにがだよ。飄々としたような奴なんだろ?扱い易そうじゃないか」
2台のトラックを、擦れ違うようにして挟む。二人は別の車両に乗って、窓から会話していた。
交通量の少ない、視界も限れる道路の脇に寄せる。通信手段は、この国では覗かれても文句は言えない。
厳重にカギをかけたとしても、製造元の管理は現在の敵だ。
うかつに受信されてはならない内容。確実な密談はいまだにアナログが有効だった。
.
638
:
名も無きAAのようです
:2015/11/06(金) 23:28:06 ID:Iajk2B0I0
( ФωФ)「あれは扱いやすいわけではないぞ。対面しなければ、あの気持ち悪さはわからん」
('A`)「どうだか。そっちはただの人間だろう?」
('A`)「こっちのほうが得体がしれねぇぜ」
( ФωФ)「しかし、扱いのほうは難しくなさそうだな」
('A`)「わからねぇよ。キレさせた時のこと考えるとな。爆発物なみの慎重さで対応してるが」
( ФωФ)「そうか。こちらの方は一応、手出しは控えるようにと苦言を刺しておいた」
('A`)「素直に聞いたか?」
( ФωФ)「恐らくは。ただ気づかれているのか、いないのかの判断がつかない。どれほど特攻しても、まるで被害がないというような顔をしている」
.
639
:
名も無きAAのようです
:2015/11/06(金) 23:28:48 ID:Iajk2B0I0
('A`)「なるほど。そいつはたしかに気味が悪い。どっちかわからないんだな?」
( ФωФ)「ああ。軍なら除隊じゃすまさない」
( ФωФ)「どちらでもいいとは、そういうことだろう」
('A`)「やつら、なにか企ててるんじゃないのか」
( ФωФ)「その様子も見られないから、気味が悪いのだ。ゲリラ戦に対して、防衛はするものの迎撃にこない」
( ФωФ)「俺が言うまえから、そのようなスタンスだった」
('A`)「ふぅん。そりゃ、おかしな話だ」
( ФωФ)「……」
('A`)「なんだよ?」
( ФωФ)「あの子どもたち、どうなった?」
.
640
:
名も無きAAのようです
:2015/11/06(金) 23:29:41 ID:Iajk2B0I0
ロマネスコが尋ねたのは、スラムから拾われてきた少年兵たちのことだ。
彼らの多くは仕事を得るために銃を持たされる。そして教育された。
ロマネスコは少年兵の存在を憂いたわけではない。
ただ彼らは、この国の人間である。
ロマネスコが収める地域での、将来は一員であったかもしれない存在だった。
('A`)「……生きてるのも、いる」
( ФωФ)「……見せしめか」
('A`)「冗談やめろ、って思わず笑っちまったぜ」
('A`)「まさか躊躇なく撃って来るたぁな思いもしなかった」
.
641
:
名も無きAAのようです
:2015/11/06(金) 23:30:37 ID:Iajk2B0I0
ドクオが乾いた笑みを浮かべる。
どこか自嘲めいていて、ロマネスコはそれでこの男を信用に足りると判断した。
何を惜しむかの価値観は似ていなければ協力はとれない。背中を預けることもできない。
そしてひとつのことに気がつく。
( ФωФ)「そこだ」
( ФωФ)「奴らには慈悲がない。容赦さえもない。我々を人だと、思ってすらないのだ。この国はもう我らの国ではない」
( ФωФ)「武器を持たされた子供を、衆人の目のまえで残酷に射殺した」
( ФωФ)「なのにこちらがわからの攻撃に、焦りが見られない。余裕がないからこそ、あそこまで配慮なくやれたのではないのか?事実、いまは誰もが我々を支持している。それもあの一斉射撃があってこそだ」
巨大な勢力と反乱。
弱者を踏みにじる様子は誰もの怒りと反発を招く。
大使館は沈黙しているが、表だっていないだけで、このやり方に賛成というわけではないはずだ。
.
642
:
名も無きAAのようです
:2015/11/06(金) 23:32:39 ID:Iajk2B0I0
( ФωФ)「矛盾している。なにか、なにがある。いまここで、我々を殲滅しないだけのなにかが」
口に出せばその考えはかちりとはまった。
不気味に沈黙し始めた、敵の様子にしっくりと来る。
ただそのなにか、が分からない。
('A`)「……潮時だな。最後のコンテナを運べたら、俺は引き上げる。この国からな」
('A`)「おまえも考えたほうがいい。まともな奴は、こんなところで生きられない」
( ФωФ)「……」
ロマネスコはしばし沈黙した。この男から愁傷な言葉を聞くことになるとは。
( ФωФ)「それは惜しまれていると、考えてもいいのか」
('A`)「そうだ」
('A`)「ここにゃなんたって、あるべきものがない」
.
643
:
名も無きAAのようです
:2015/11/06(金) 23:33:31 ID:Iajk2B0I0
('A`)「先進国のふりをしているのに、法律が機能してない」
( ФωФ)「ああ……独占禁止法、消費者法……」
('A`)「それだけじゃないさ」
ドクオはそこで初めて哀れみを見せた。諸外国から来た男の、偽りない同情。
この国の生まれでは、持ち得ない世界観。
生まれた時から、管理された肥溜めに生きる気分はどうだ?
('A`)「たぶん倫理観。豊かなのに、餓えることなんてないのに」
品物はある。作物も。輸入も頻繁で、国は、国だけは豊かだった。
ただ、下位のものが、それを入手する手だてがない。
奪うことでしか。
ドクオは当たり前のことを口にした。
.
644
:
名も無きAAのようです
:2015/11/06(金) 23:34:12 ID:Iajk2B0I0
('A`)「人が死ぬことが日課になっている」
( ФωФ)「外は違うのか」
('A`)「……少なくとも、意識はある」
( ФωФ)「意識?」
('A`)「犯罪という、意識がな」
('A`)「ここにはそれがない。」
('A`)「意識がないから、問題にさえならないだろう」
( ФωФ)「よくわからんな」
('A`)「まぁな。本当はどこかの、えらい学者さんが言うべきなんだろう」
('A`)「俺みたいなのがそう思うくらいに、この国は歪んでるんだ」
.
645
:
名も無きAAのようです
:2015/11/06(金) 23:35:05 ID:Iajk2B0I0
( ФωФ)「だから我々は戦っている。いずれ国を取り返すさ」
('A`)「……そうじゃないんだよなぁ。なんてーかさ、」
('A`)「救われたいとか、思ってないのが問題なんだよ
」
.
646
:
名も無きAAのようです
:2015/11/06(金) 23:38:04 ID:Iajk2B0I0
.
647
:
名も無きAAのようです
:2015/11/06(金) 23:39:48 ID:Iajk2B0I0
( ´_ゝ`)「そんで?」
( ´∀`)「なにがだ」
( ´_ゝ`)「話の続き。まだあるだろ。その重大なプロジェクトは、なぜ未完のまま放置されてたんだ?」
( ´∀`)「……なに、簡単なことさ。」
( ´∀`)「時間が足りなかったんだよ」
( ´_ゝ`)「そういや年数たつのを待ってたって言ってたな。なんでだ?」
( ´_ゝ`)「いくらでも、好きなように育てられただろうに」
.
648
:
名も無きAAのようです
:2015/11/06(金) 23:40:38 ID:Iajk2B0I0
試験管のなかのホムンクルス(人工生命)
生まれたての成人
設定され、カスタムされる身体。
年数を待つことなどない。ただ老化を促進させ、望みの姿で止めればいい。
命を弄ることに抵抗もなく。技術がありながらなぜ、行わなかったのか。
純粋な疑問を兄者が尋ねる。
( ´∀`)「まあ意識の違いだ。できるだけ自然に育つことを待っていたのだ。弄ればいろいろと噛み合わないこともある」
( ´∀`)「脳の作用や筋肉の発達、神経系の影響、成長ホルモンの過剰分泌。
メンテナンスが難しく、完全にコントロールできないのならば、やはり時間をかけてでも穏やかに進めたほうがいい」
( ´∀`)「なにせ、失敗はできないからな」
( ´_ゝ`)「なんで?」
間違えたのなら、やりなおせばいいのでは?
.
649
:
名も無きAAのようです
:2015/11/06(金) 23:41:24 ID:Iajk2B0I0
( ´∀`)「突然変異とは、進化だと思うか?」
( ´_ゝ`)「また講義?学説では、枝のように別れた可能性の一つ。ただ、それが大多数ではないかぎりに、一代のみの変種であることが前提だったような」
( ´∀`)「さすがに、よく知っている。ヒトノゲムを解析した遺伝子実験の果てに、わたしはたどり着いたのだ。」
( ´∀`)「種の起源とも言えるべきものにね」
( ´_ゝ`)「大袈裟な」
( ´∀`)「なにを言う。真面目に主張するさ。有性生殖を繰り返して進化してきた歴史を真っ向からひっくり返すほどの衝撃なのだぞ」
.
650
:
名も無きAAのようです
:2015/11/06(金) 23:42:11 ID:Iajk2B0I0
( ´∀`)「そも、
子を生むのが片方だけというのはじつに効率が悪いとは思わんかね?」
( ´_ゝ`)「男が妊娠する世界のほうが狂喜だろうがよ」
( ´∀`)「否定はしない。わたしもそう思う」
( ´∀`)「ただ少し考えてみてくれ。両性を持つ者がいたら、どうなのかと」
( ´_ゝ`)「両性具有、半陰陽?」
( ´∀`)「none、それは染色体に原因があるから母体のホルモンが影響する場合だ。
」
( ´∀`)「わたしのは違う」
( ´∀`)「哺乳類動物、ヒト科の、完全なる両性体だ」
.
651
:
名も無きAAのようです
:2015/11/06(金) 23:43:17 ID:Iajk2B0I0
( ´_ゝ`)「……逆に聞きたいんだけどさ」
( ´_ゝ`)「なんでそれがうまくいくと思ったの?」
( ´∀`)「固定概念を捨てることだ。むしろ。あらゆることに対して、うまくいく」
( ´_ゝ`)「生理的嫌悪は理性で抑えることはできないよ」
( ´_ゝ`)「第三の性別みたいなもんだろそれ」
( ´∀`)「いや、それの問題は克服ずみでもある」
( ´∀`)「ヒトに好かれる、というのは特別な才能でな。ごくまれに反発する者が居たとしても、大多数に受け入れられたならば、問題はないのだ」
( ´∀`)「悪魔的に、あれはそういうことが上手だった」
.
652
:
名も無きAAのようです
:2015/11/06(金) 23:44:34 ID:Iajk2B0I0
( ´_ゝ`)「ふぅん。そういや捜索すんのに具体的なこと聞いてなかったな」
( ´_ゝ`)「どんな奴なんだ?その成功例って」
( ´∀`)「外見ならばデータに残っているはずだ。サルベージできる。必要なのは特性か?」
( ´_ゝ`)「そうだな。メンタルと習性を教えてくれれば、それで範囲の特定ができるし」
( ´∀`)「ふむ……」
( ´∀`)「自らは動かずに、他人の手を使って行動する。好まれると言ったろう。そういうことに長けている」
( ´_ゝ`)「珍しいな。命令主体型じゃないのか」
( ´∀`)「蝶よ花よと育てあげたらな、いつの間にか人を利用することを覚えよった。逃げたのも、たらしこんだからだ」
.
653
:
名も無きAAのようです
:2015/11/06(金) 23:45:24 ID:Iajk2B0I0
( ´_ゝ`)「ああ。じゃあ潜伏先もすぐわかる。ここで居場所のない奴を匿うなんて、限られるしな」
( ´∀`)「いや。恐らく見つけるのは難しいな。たぶん庇われているはずだ」
( ´_ゝ`)「?愛人とかなら、新顔を検索することもできるけど」
( ´∀`)「そうではない。先も言ったが、あれは好かれるだけではないのだ。本人の特性ゆえか、そういう風に生まれたのか」
( ´∀`)「ひたすらに、ただ愛されるのだ」
( ´∀`)「愛しかたに、違いはあれどな」
( ´_ゝ`)「コミュニケーションレベルが高く、他人の支配がうまいってこと?」
( ´∀`)「そうだ。そしてそれは無自覚な献身に変わる」
.
654
:
名も無きAAのようです
:2015/11/06(金) 23:46:05 ID:Iajk2B0I0
( ´∀`)「身代わりになってでも、庇ってやろうとする。あれを救うために」
( ´_ゝ`)「なんか精神病質者みたいだな。嘘がうまく、人に頼るのが得意で、自己中心的にしかものを考えられない」
( ´∀`)「それも、生き残るためだけにだ」
( ´∀`)「あれのために40年費やした。簡単に死なれては困る。」
( ´_ゝ`)「確かに、争いあってもその輪から外れていれば危険は少ない」
( ´_ゝ`)「しかし不思議だな。庇護される生き物に、自分からなったってこと?」
( ´∀`)「それも無意識に。そのように育ったのだ。どれほどわたしが歓喜したか、わかるだろう?」
( ´∀`)「この世で生物の頂点は人間だ。そのために、人間を攻略することとなった。これもまた進化なのだよ」
.
655
:
名も無きAAのようです
:2015/11/06(金) 23:46:56 ID:Iajk2B0I0
( ´_ゝ`)「外見的特徴に、特別なものは?平均的美格数値とか」
( ´∀`)「特にない。強いて言えば美形ということだが、そんなものありふれている」
( ´_ゝ`)「たしかに」
シリーズ、ナンバーズ、その他の人工的生命体。共通しているのは、平均的な造形があるということ。個性的な面というものは、あまりない。量産される人形たち。
( ´∀`)「昔は羽根を背中につけた愛玩生物が人気だったんだが、すぐに生産は中止になった。」
( ´∀`)「人気がいまひとつでな。鳥の習性をそっくり真似るうえに、感情表現が豊かではなかった。天使を眺めるのはいいが、懐かないということで廃棄になったんだ」
( ´∀`)「しかし耳としっぽをつけた別のシリーズを売り出したらこれが売れに売れた。やはり、犬や猫は歴史が長いぶん、人に懐きやすい」
.
656
:
名も無きAAのようです
:2015/11/06(金) 23:48:17 ID:Iajk2B0I0
( ´_ゝ`)「そいつに耳やしっぽがあるのか?」
( ´∀`)「いいや」
( ´_ゝ`)「それなのに、好まれる」
( ´∀`)「そう。なぜか。独占もしくは支配、束縛、それから従順」
( ´∀`)「だれもが愛と呼ぶべきかもしれないことのように、ただ好まれるのだ」
( ´_ゝ`)「ふーん。じゃあさ、過去のケースを教えてくれよ。そこまで具体的ならなにかあるだろ?」
( ´_ゝ`)「うちんとこってさ、ギャングとマフィアの抗争とか多いんだけど、おかしな事件なんかは起こんないから探しやすいんだ」
死体と、犯人。
被害者と殺人者。犯人がいない、該当に値しない人物が犯人であることは滅多になく。
人が密集している地帯だからこそ、監視は多い。
人々は、事件を起こした犯人を知っている。知りながら生活している。
そこからたどれば、逃げた個体を探すのも容易だろう。
民衆に溶け込んだ手先は、いくらでもいる。
.
657
:
名も無きAAのようです
:2015/11/06(金) 23:49:16 ID:Iajk2B0I0
( ´∀`)「……ふむ。しかしそこまで特殊なケースというものでもないが。参考になるかわからん」
( ´∀`)「研究員が一人死んでな」
( ´∀`)「調べた結果、他の個体に指示して殺させたことがわかった」
( ´∀`)「それだけだよ」
.
658
:
名も無きAAのようです
:2015/11/06(金) 23:57:31 ID:Iajk2B0I0
.
659
:
名も無きAAのようです
:2015/11/07(土) 00:01:09 ID:4CVnIR9g0
(A^ν^)「……」
(A^ν^)「一止めが囮」
(A^ν^)「二度めも囮……」
(A^ν^)「じゃあ三度めは……?」
(A^ν^)「囮を使うなら、本命はどこなんだ……?」
(A^ν^)「あの人を足止めするのに、なぜわざわざ交通網を麻痺させる必要がある……」
(A^ν^)「考えなきゃ」
(A^ν^)「役に経たないと、意味がない」
(A^ν^)「生きている意味がないと、」
処分される
.
660
:
名も無きAAのようです
:2015/11/07(土) 02:19:40 ID:J6HhtrFk0
支援
661
:
名も無きAAのようです
:2015/11/07(土) 14:32:24 ID:8X1zjZjc0
④
662
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 18:37:05 ID:vvnmNgMYO
もののわかったスピーディーな会話好き
663
:
名も無きAAのようです
:2015/11/19(木) 03:28:03 ID:r3dbzxrw0
支援
めたくそ面白い
664
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 10:40:41 ID:tnyXgnDM0
主は来ませり
road is come
主は来ませり
road is come
主は
road is��
.
665
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 10:41:52 ID:tnyXgnDM0
川*゚ー゚)
草木のなかで、彼女が笑っている。
背の高い鋭い先端の葉が生い茂り、彼女と自分の姿を隠す。
緑が青々と濃い。草の匂いが強い。
それは決して嫌いなものではなかった。
ひたすらに高い天井からはさんに
さんと太陽の光が降って、緑色がきらきらと輝く。
遺伝子操作によって景観のために育てられた大樹の下、体いっぱいに日光を受けるために彼女が手を広げた。
.
666
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 10:42:37 ID:tnyXgnDM0
川*^ー^)
青い、碧い肌いっぱいに光を浴び、それは輪郭に沿って瞬いた。
鱗状のきめ細かな肌が美しい。
感嘆したつぶやきがこぼれる。
.
667
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 10:43:30 ID:tnyXgnDM0
「ねぇ、エヴァ……」
川*゚ー゚)「?それ、なあに」
「きみの名前」
川*゚ー゚)「あたし68だよ?」
「それは生体番号。正式ならthd068だよ。これはね、それとは別の名前」
「ぼくがでぃ、であるみたいに」
川*゚ー゚)「××××みたいな?」
「それは違う」
川*゚ー゚)「なんで?」
「きみはエヴァ。ちゃんと理由もある。ぼくみたいに変なのじゃない」
.
668
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 10:44:14 ID:tnyXgnDM0
川*゚ー゚)「えば?」
「エヴァ」
川*゚ー゚)「あたし、エヴァ?」
「そう。エヴァ、エヴァ。エヴァ」
川*゚ー゚)「なあに」
「とこしえの緑なんだって。きみにぴったりなのは、それしかないんだって思ったんだ」
Ever green
だからその色が一番好き。
.
669
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 10:45:06 ID:tnyXgnDM0
.
670
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 10:46:22 ID:tnyXgnDM0
“キャラバン”は停滞している。
銃器や食料、毛布や衣服。生活雑貨、歯ブラシと石鹸はどこに行っても需要がある。
それらをトラックの荷台に、人と同じように積めるだけ詰め込む。
それが現在の反抗勢力のアジト。
かつての遊牧民のように、移動をしながらその日を過ごす。
定住の地はない。
彼らはここで生まれ、どこにも行けなく、争うために生きている。
671
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 10:47:19 ID:tnyXgnDM0
国を離れたわけでないから、難民でもない。
与えられた土地を行き来していることが前提なので、国連の人為的差別の範囲にも入らない。
生まれながらのジプシー。
配給されるわずかな物品を待ち、しかしそれだけでは到底足りない。
ゆえに彼らは生きるため盗賊になる。ある側面で見ればテロリスト。
政府からは反抗勢力。国民たちからは愛すべき労働破綻者たち。
しかし彼らは、自分たちが何者であるかというこだわりがない。
ドクオにとって、それが最も奇妙であり、不気味で不可解なことだった。
迫害されている者たちは自己の潔白な主張をするものだ。
('A`)「倫理なく道徳もなく、しかし教育だけは浸透している。……バカなほうが管理しやすいだろうに……」
.
672
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 10:48:11 ID:tnyXgnDM0
('A`)「先進国ゆえの怠慢か……いや、きっとそうじゃない」
('A`)「そのほうが都合がいいんだろう」
無知は染まる。簡単に。
しかし初めから色がついてさえいれば、後から上澄みを塗られても最初の染めが残っている。
苦々しい気分だ。
行こうと思えばどこにでもいけるはずなのに。それはドクオの信条でもあった。人が縛る自己意識というものは、人が作り上げた鎖である。
繋がれた意識もないままに。
('A`)「Joy to the world, the Lord is come!��
Let earth receive her King♪
Let every heart prepare Him room,��
And heaven and nature sing,��
And heaven and nature sing,��♪
And heaven, and heaven, and nature sing.
」
('A`)「road is come♪……まさかもろびとこぞりてを知らない国があったとはね」
.
673
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 10:49:06 ID:tnyXgnDM0
世界で一番知られているはずの讃美歌、また書物。宗教は贅沢品だった。
信じてさえいれば救われる
たとえ地獄に落とされても。
けれどその事さえ
('A`)「……誰も知らない」
祈りの概念がのない世界
nobody knows
.
674
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 10:50:07 ID:tnyXgnDM0
トラックがいくつも渋滞し、扉を解放させて品物を運ぶ。
路駐すると、そのまま店構えとなった。
物品の少ない街では物売りが直接人々に売りにくる。その商品を補給するのがドクオたちだ。
だから顔役でもあり、どこに行くにも不便はない。
顔馴染みが警備と警戒を兼ねている。気軽にドクオはストリートに出た。
似たような人々が、列を作って買い物に励んでいる。
隙間を縫うようにしてそこを通る。
警備の一人に小柄な影をみつけ、その姿に思わず声をかけた。
.
675
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 10:51:13 ID:tnyXgnDM0
('A`)「おい」
��(´・ω・`)��「あ、」
少年はぺこりと頭を下げた。
血に濡れた包帯は代えられてなく茶色い。
左肘から先がなかった。
反対の手でショルダーホルスターを持ち直し、ドクオに向かないように気をつけた。
張りつめるような雰囲気はないが、誤解があってはならない。
('A`)「……それ化膿してないか?」
��(´・ω・`)��「ううん。そんなことないよ。もう血も止まったんだ」
('A`)「だからって……もしかして止血した時のままかよ。それ」
��(´・ω・`)��「?」
('A`)「おま、ちょっとまってろ」
.
676
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 10:52:43 ID:tnyXgnDM0
人混みをかきわけるように進み、列の最初に並ぶ。
売り子に詰まれた箱を開けさせ、中からミネラルウォーターを取り出させた。
受けとると、少年の怪訝そうな顔に困惑が混じる。
ふたをあけ、子供の腕に注ごうとすると彼は慌てた。
(´・ω・`)「!そんな、勿体ないよ、水がこぼれちゃう!」
('A`)「当たり前だろ。こぼれるもんなんだよ水ってのは」
(´・ω・`)「でも、あっ!」
掴みあげ、千切れかけた包帯をほどいてから患部に注いで固まった血の塊にかけてやる。
細い腕の先端は、切断面から盛り上がり、むき出しの皮膚が赤くテラテラと光る。
薬によって麻痺させているから、痛みを感じていないだけだ。
この分だと神経も取り除かれているだろう。
わめくこともないが、しかしそれでは義手を操ることもできない。
おざなりに処置された結果だ
むっつりした顔で、ドクオは一本まるまる注ぎきり、ボトルを降る。
��.
677
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 10:54:10 ID:tnyXgnDM0
(´・ω・`)「……怒ってる?」
('A`)「なにが」
(´・ω・`)「怒ってる顔してる……」
('A`)「おまえにじゃない」
(´・ω・`)「ごめんなさい」
('A`)「だからおまえにじゃないって」
(´・ω・`)「でも、お水……」
('A`)「医療セット使うより安い。それとも注射がいいか?」
(:´・ω・`)イヤイヤ
('A`)「じゃぁ黙ってろ」
.
678
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 10:55:26 ID:tnyXgnDM0
新品のガーゼをポケットから取りだし慣れた手つきで巻いていく。
血の巡りを止めない程度のきつさで巻くと、洗いたての感触が気持ちいいのか、少年はない腕を動かしながら礼を言った。
(´・ω・`)「あのね……ちょっとすっきりした。ありがとう」
('A`)「……ああ。おまえいつ来たんだ?」
��(´・ω・`)「朝からいるよ」
('A`)「じゃあちょっと来い。俺んとこにいまおまえの姉さんいるから」
(´・ω・`)「ほんと!行く!ちょっと待ってて」
��いうと、飛び跳ねるようにして駆け出す。すぐ近くに駐屯している部隊長に許可をもらうためだ。
ドクオの名をだせば却下されるということはまずない。
彼は嬉しいそうに戻ってきた。
��(´・ω・`)「いいって!」
.
679
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 10:56:41 ID:tnyXgnDM0
この場所で女たちの仕事はひとつに限られる。
銃を持つのは男の仕事。
それを慰めるのは女の仕事。
かといって冷遇されるわけではない。むしろその優遇されていた。
守られ、貢がれ、あやされる。
逆に娼婦にさえなれない女たちは負け組だ。不器量と未発達な身体。
しかしそんな片鱗があるものは、生まれてすぐに棄てられる。
(´・ω・`)「お姉ちゃん!」
|゚ノ ^∀^)
.
680
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 10:58:18 ID:tnyXgnDM0
ベッドに横たわった女。
ドクオの住みかに専属契約している娼婦だ。いまは薬でバッドドリップ中。
1日の大半を夢を見ながら過ごしている。だからとても機嫌がいい。
売り上げの少なさに弟に当たり散らすことも減った。
(´・ω・`)「なんだかちっちゃくなった?」
('A`)「飯食わねぇんだよ」
その分薬を欲しがる。
合成麻薬を血中に流し込んだからか、顔色は青白く、肌は荒れ美貌はゆっくりと衰えていく。
もう街中に立つこともできない。
それでも彼女は幸せだろう。
口元は笑んでいる。
薄く開いた目は弟を映さない。
なにか別の、なにかを見て、幸せそうに笑っている。
少年も笑った。
(´・ω・`)「お姉ちゃん、機嫌いいみたい。大人しいけどずっとこんなだったらいいな」
力の入らない、くったりとした姉の手を持ち上げ、少年は彼女の膝に頭を乗せた。
かれが甘えることができるのは、もうこの家族しか残っていない。
.
681
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 10:59:51 ID:tnyXgnDM0
��('A`)「……おまえさ、姉ちゃんいなくなったらどうすんだ?」
(´・ω・`)「……いなくなるの?」
('A`)「もしだ。いなくなったら、どうする」
(´・ω・`)「……どうしよう。一緒に行く」
('A`)「どこに」
(´・ω・`)「うーん。わかんない。でもおんなじとこ」
少年は一応の戦闘訓練は受けており、銃の扱いも知っている。
生きていくための知恵はある。
それでもやはり、彼にとって姉の存在は絶対立った。
薬を買うために、少年兵として売り渡されたとしても。
.
682
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 11:00:58 ID:tnyXgnDM0
('A`)「違うとこ行ってみるか?腕なかったらやりにくいだろう」
(´・ω・`)「うん。でも足じゃなかったからよかった。走れなくなるとこだったもん」
��(´・ω・`)「違うところって?」
('A`)「例えば外とか」
(´・ω・`)「外?」
('A`)「この国の外。外国だ」
��(´・ω・`)「外ってなにがあるの?」
('A`)「戦争があるけど、ここよりゃましだな。内乱のほうが救えねぇ。ただ死ぬのが減る」
('A`)「EU連合の境界線にまでいけば、少なくとも人権は保証される」
(´・ω・`)「じんけん……?」
('A`)「銃で撃たれる確率が少なくなるってことだ」
(´・ω・`)「ほんと?」
('A`)「ああ。」
(´・ω・`)「うーん」
.
683
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 11:01:58 ID:tnyXgnDM0
(´・ω・`)「お姉ちゃんは?」
('A`)「姉さんも一緒だ」
(´・ω・`)「……」
(´・ω・`)「うーん……でも、いいや」
('A`)「……なんでだ?」
(´・ω・`)「だって外って銃持っちゃいけないんでしょ?」
('A`)「規定はうるさいが、所持は認められてる。ただ審査は必要だな」
��(´・ω・`)「しんさにはお金がかかるよね?」
('A`)「出してやるぞ、そんくらい」
��(´・ω・`)「でも撃つのに理由が必要なんだよ」
('A`)「そうだな」
.
684
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 11:03:25 ID:tnyXgnDM0
(´・ω・`)「なんだか窮屈だし。やっぱりいいや」
('A`)「銃は離せないか」
��(´・ω・`)「うん。これないとなんにもできないもん」
('A`)「……そうか」
��(´・ω・`)「でもさ、外の人たちってどうしてるの?」
('A`)「なにがだ」
��(´・ω・`)��「銃をあんまり使えないのって不便じゃないのかな」
('A`)「じゃないんだろ」
��(´・ω・`)「どうやって殺すの?ナイフ?それってとっても面倒なのにね」
('A`)「…………」
('A`)「殺さないんだよ」
口にした言葉はとても白々く聞こえた。
.
685
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 11:05:25 ID:tnyXgnDM0
.
686
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 11:06:12 ID:tnyXgnDM0
(゚、゚トソン「アレクセイ」
女が体を寄せて密着した。甘えるような仕草だったが、恋人にやるよりも家族のそれに近い。
出会ってまだ三年に満たないが心のほうは互いに熟成していた。
(゚、゚トソン「いつになったら、あたしたちは家に住めるのかしら」
( ФωФ)「もうじきだ」
傭兵の生活に定住はない。
呼ばれると移動する。追いかけると、また敵は逃げる。
常に一ヶ所に留まることが難しい。
住む場所は時に貧相で、時に豪勢だが女の望むものにはかけ離れていた。
(゚、゚トソン「毎日、同じところで寝起きしたいわ」
(゚、゚トソン「ホテルなんかいいから」
( ФωФ)「仕事があらかた片付いてからだな」
.
687
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 11:07:07 ID:tnyXgnDM0
( ФωФ)「でなければ落ち着くこともできん。提携がうまくいけば、じきに土地を取り戻せる」
太くささくれた肌の指が、柔らかいものに触れるようにして女の顔を包んだ。
暖かみに女が目を細くする。
けれども不安げな表情は浮かない。
(゚、゚トソン「……協力ってあの男でしょ。信用できるの?外の人間じゃない」
(゚、゚トソン「うす気味わるい顔してる」
( ФωФ)「……たしかに信用は難しいが、信頼にはおける」
(゚、゚トソン「なあにそれ」
.
688
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 11:08:15 ID:tnyXgnDM0
( ФωФ)「奴の性根がどのようかなんてのは知らんがな、奴の能力だけは買っているんだ」
女の長い髪をかき分け耳に口を寄せるとロマネスコは囁いた。
( ФωФ)「あの男は棺桶乗りだ」
( ФωФ)「それも重度の」
(゚、゚トソン「……なんなのそれ」
( ФωФ)「知らなくてもいい。だがそれが、あの男と組むに決めたひとつでもあった」
( ФωФ)「空を行く奴らというのは、たいがいみんなまともじゃない」
(゚、゚トソン「……なんだかよくわからないけど、役に立つんならそれでもいいわ」
(゚、゚トソン「取った場所は、私たちで使ってもいいのよね?」
( ФωФ)「ああ。一瞬の隙間を狙って入り込み、そこからバリケードを立てていく」
( ФωФ)「そうすればおいそれと手は出せん。この数を相手に、狙撃で片付けられるとは思わんからな」
( ФωФ)「……そして最初の非人道的行為の非難を避けるためにも、和解案を持ち込んでくるだろう。」
( ФωФ)「うまく流れに乗せるつもりだが、つかみようがないのだけが気がかりだ」
(゚、゚トソン「そう、きっとうまくいくわ。これまでもそうだったんだもの」
( ФωФ)「ああ。」
.
689
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 11:11:34 ID:tnyXgnDM0
(゚、゚トソン「……そういえばアレクセイ」
(゚、゚トソン「近頃町中で変な工事が行われているの」
(゚、゚トソン「それも計画のうち?」
( ФωФ)「工事………?」
( ФωФ)「それは一体どのような」
(゚、゚トソン「壁よ」
(゚、゚トソン「生活している周辺を囲むようにして大きな壁があるの」
(゚、゚トソン「なんのためかは、わからないけ
ど」
.
690
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 11:16:04 ID:2h5EJ0zM0
.
691
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 11:17:16 ID:2h5EJ0zM0
バラバラと、鼓膜に響く轟音が聞こえる。
蜘蛛の子を散らすように、スラムの住民たちが姿を消した。
売り手たちは慌てて品物わ荷台に投げ込み避難しようと車内に戻る。
ドクオも空を仰いで警戒した。
偵察用のヘリでも、機関銃は備わっている。
撃ってきたらヘリに向かって走るつもりだった。
風圧の被弾する計算状、ヘリからの連射は遠くであるほど当たりやすい。
しかし真下は狙いがつけにくい。
人ほどの大きさならざ十分に見逃す。一つに固まって逃げる群衆と離れた遠い的。
生物的には孤立した獲物こそ狙われやすいが、この場合においては逆だった。
一度で、出来うる限り多くの獲物を。
それが人間の心理。
.
692
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 11:18:06 ID:2h5EJ0zM0
('A`)「もう巡回してやがる」
('A`)「あー、いい。それは置いてけ」
('A`)「同じのはもういくつか集めたからな」
指示に従い、売り子たちは緩和板に仕舞われた荷を持ってかけだす。
本当に大事なものだけを。身ひとつでというわけにはいかない。
命と同じだけの価値がある。
いまここで狙撃されても、抱えた荷物を落とすわけにはいかない。
ドクオは反転し、立ち止まった。
頭上のヘリに敵意は感じられない。
狙いを定められている、ということも感じられない。
.
693
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 11:19:00 ID:2h5EJ0zM0
('A`)(部品は集めた。あとは精製している燃料の質をあげるだけだ)
ヘリは攻撃の気配がない。
しかし警戒を解くことはなく、下位の10人たちは一様に息をひそめ、遮蔽物に隠れた。
ドクオだけが、撃たないと確証を持って顔を出し様子をうかがう。
やがて一つのヘリの後ろから、いくつもの運搬機がやってくるのが見えた。
それにあたりをつける。
最初の偵察はこれのためだろう。
('A`)「……なんだってんだ、ありゃ」
プロペラの音が空に響きわたる。
背後にはいくつものコンテナと、剥き出しの鉄板のようなものを運ぶ飛行機が連なっている。
手を出せば、偵察用から攻撃が来ることは明白だった。
('A`)「………」
.
694
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 11:19:49 ID:2h5EJ0zM0
ここに来て、反抗勢力に挑発するような運航。
しかしこれはそのためのものではない。金属のような物体は、どこまでも黒く日光を受けても反射さえしない。
物を作るには理由があり、製品を使うのには目的がある。
('A`)「……なにをしでかしやがる気だ」
低い声でうなる
ロマネスコの言った嫌な予感が胸に湧いた。
戦争において新しい情報というのはみなすべからく、不幸である。
.
695
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 11:20:32 ID:2h5EJ0zM0
.
696
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 11:21:25 ID:2h5EJ0zM0
(A^ν^)「……少ない」
(A^ν^)「やっぱりだ。強奪にあったコンテナのほとんどは回収できてる」
(A^ν^)「ぶちこんで、かき回したような惨状なのに、七割以上盗まれていない…」
(A^ν^)「どうしてだ。そして一体何のために、奴らはちょっかいかけてくるんだろう」
(A^ν^)「あんなにも死人をだしてるのに……」
.
697
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 11:25:26 ID:2h5EJ0zM0
兄者は死傷者数をとるに足らないものと見ているが、それは彼が彼であり、製造元の立場だから言えることだ。
ピラミッドの上からの考えでしかない
しかし見上げるものたちからすれば、信頼のできない指導者など、首を代えればいいだけのこと。
数こそが力であり暴力。
誰も死にたくない。
統率はあれど、管理されているわけではない。生きることに貪欲でそのために幼くから銃を持たされている。
そんな彼らが、死人を出してまで襲撃を続けることが解せない。
(A^ν^)「あるはずだ、目的が。
ちゃんとしたメリットが」
(A^ν^)「それを見つけなきゃ終わらない」
(A^ν^)「一網打尽になんてできない」
(A^ν^)「子供まで使ったのに、虐殺という名目があるのに、世論に訴えかけることも最低限しかしかないんだ。話題が大きくなれば、やりにくいことでもあるんだろうか……?」
.
698
:
名も無きAAのようです
:2015/11/23(月) 00:52:01 ID:AX413/eo0
この説明の少なさの心地よさですよ
699
:
名も無きAAのようです
:2015/11/23(月) 07:26:36 ID:6RBqH8P60
いつの間にこんなに進んでたのだ
700
:
名も無きAAのようです
:2015/12/24(木) 19:24:15 ID:G.aD6vsc0
面白すぎる
どんどん読ませてほしい
701
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:13:28 ID:om3Yvxs60
ミ,, Д 彡
川*゚ー゚)
「ああ、エヴァ、エヴァ、なんてこと!」
川*゚ー゚)
「どうして、こんなこと……」
川*゚ー゚)「だめだった?」
「どうして?エヴァ」
川*゚ー゚)「だって触るんだもん」
「検査?少しじっとしていればすぐに終わるのに」
川*゚ー゚)「痛かったんだもん」
.
702
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:14:10 ID:om3Yvxs60
「でも、エヴァ。だからってこれはダメだ。これじゃ、怒られる」
川*゚ー゚)「だって……」
「これじゃ、君が、ああエヴァなんてことを!」
川*゚ー゚)「痛いの嫌だったんだもん」
「触られるのが?」
川*゚ー゚)「うん。なんかね、足のほうに入れてくるから、すっごく痛いの」
川*゚ー゚)「嫌って言ったのにやめないの」
川*゚ー゚)「女だから、しょうがないならじっとしてなさいって」
.
703
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:15:05 ID:om3Yvxs60
川*゚ー゚)「ほんとはでぃがやることだったんだよって」
川*゚ー゚)「でもでぃは“お役目”があるからできないんだって」
川*゚ー゚)「女を作ったのは男だから、なんだって」
川*゚ー゚)「痛いのや」
川*゚ー゚)「だめなの?」
川*゚ー゚)「お又痛いの、とっても痛かったの」
「エヴァ……」
なんてこと。なんてこと。
それなら、
僕がやらなきゃいけなかった
.
704
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:15:48 ID:om3Yvxs60
.
705
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:16:30 ID:om3Yvxs60
从'ー'从「ねえ」
声をかけられた。
振り向くとめずらしい相手が居る。
とっさに体が強ばる。
なにか危害を加えられるのかと怪しんだが、彼女にその気はないようだった。
しかし慎重に様子を伺う。
(`∠´)「どうした?乱交の受付でもするか?」
軽い口調で挑発したが、ワタナベは微笑んだままだ。
.
706
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:17:12 ID:om3Yvxs60
うすく、愛想よく、品がいい。彼女の笑みには媚びがない。
だからそれなりに格を知っている顔役たちから好かれている。
見栄えのいい、上質な娼婦というものはどこからも重宝される。
こんなイかれた女でも、商売できた。
そんなワタナベが、自分に愛想を振る舞っている!面倒な事しか思い当たらなかった。
本来なら、お願いのまえに脅迫が来るはずだ。
.
707
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:17:54 ID:om3Yvxs60
(`∠´)「おいおい。このあいだとはえらい差があるな。俺になにか用なのか?」
从'ー'从「そう。頼みがあるの」
(`∠´)「無駄働きはしないし、前払いが条件だ」
从'ー'从「オッケーじゃあいま支払うね」
鞄に手を入れて、ワタナベがなにかを取り出す。
それを警戒しながら待った。
なにか。おかしい。
取り決めの交渉がない。
怪訝にワタナベをみるも、目があい、にっこりと笑う。
.
708
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:18:42 ID:om3Yvxs60
从'ー'从「はい。」
差し出されたのを受け取ろうと手を伸ばしかけて、固まった。視線はワタナベの手元から離せない。一気に心臓が冷えた。
狂った女だとは思っていたが、まさかここまでとは!
(`∠´)「おまえ……」
从'ー'从「ほら。前払いなんでしょ?さっさと取れよ」
彼女の手にあるのは、手のひらに乗っているのは信管の外れた手榴弾。
通称パイナップル。
爆発すればこの至近距離だ。
間違いなく即死する。
銃社会に慣れた者らしく、頭を覆って走りだすべきだった。
しかし相手がこの女では、それは意味がない。
背中に投げつけられる。もしくは追いかけてきて、この女と一緒に……
ぞっとする。
.
709
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:19:27 ID:om3Yvxs60
(`∠´)「どういうつもりだよ……」
威勢がいい声はでなかった。
ただ恐ろしい気分でワタナベを見返す。この女の気に入る返事をしようにも、まだなにも具合を聞いていないのだ。
取り扱いの簡単な女だった。いままでは。
从'ー'从「これ使ったことある?すごいよ。頭がきれいに半分吹き飛ぶの。爆弾ってさ、ちゃんと造ったらすごく上手に千切れるんだよね。こんなにちっちゃくっても」
(`∠´)「だから……、なんのっつもりだって!」��
从'ー'从「だまれ」
ぴたりと口を閉じた。手榴弾を持った手が、上下し、己の目前まで近づいたからだ。
.
710
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:20:15 ID:om3Yvxs60
ひっと後ずさりしそうになった。が、ワタナベは許さない。��
彼女はじつに娼婦らしく、自然に腕を絡めた。
はためにはどう見えているのか、想像してぞっとした。
客と娼婦の交渉途中。
誰も危険になど気づかない。
从'ー'从「なあほしいんだろ。これが支払いだ。受け取れよ」
(`∠´)「かんべんしろって…マジに…、俺にどうしてほしいんだよ……」
一縷の望みをかけて、そう聞いた。
殺すつもりならこんなやりとりなんてしないはずだ。
きっと。そうであってくれと強く願う。
从'ー'从「仕事をしてくれればいい。おまえの仕事だ。簡単だろ?」
(`∠´)「なにを……?」
从'ー'从「あの人がさらわれた」
(`∠´)「あの人って、あ、あの時の男か?」
.
711
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:21:00 ID:om3Yvxs60
ワタナベはうなずく。整った顔立ちが無機質になる。
その目の異様に澄んだ様子に、彼女の本気を見た。
NOはだめだ。適当なふりもだめだ。
使えないとわかった瞬間に、手元のこれが降ってくる。
距離を取らないと、安全な距離まで、離れないといけない。
面道ごとに巻き込まれるのも、信用されずに殺されるのもごめんだ。
.
712
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:21:45 ID:om3Yvxs60
(`∠´)「…わかった。調べてみるって。ただ時間が必要だからさ、少しまって」
从'ー'从「はやく」
(`∠´)「ああ。わかってるよ。でもこれって待つのが仕事だったりするからさ、連絡入ればすぐにこっちから伝えるし」
从'ー'从「はやく、はやく。あの人が壊されないうちに。汚されないうちに。手えだされないうちに。欠けないうちに、取り戻さないといけないの。」
(`∠´)「……な、わかってっからさ。とりあえず詳細おしえてくれよ。そんでいろいろ調べてさ、わかったらすぐおまえに」
.
713
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:22:27 ID:om3Yvxs60
爪のながい指先が、首の肉を掴む。
手榴弾ごと首を締められて、一瞬で恐怖に陥った。
鉄とプラスチックの堅い感触。
なお悪いことに、こいつは粗悪品だった。見た目だけのシロモノ。
いつ爆発するか、本人にもわからない。爆弾の利点は痛みを感じるまえに天国へいくことだ。それが本当かは、誰も知らない。
いままさに、死にそうな恐怖に直面している。
手榴弾もこわいが、いつ爆発させるかわからない女のほうがこわいに決まっている。
.
714
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:23:28 ID:om3Yvxs60
从'ー'从「ねえ、あたしなんでもいいの。あの人が戻ってくるんならなんでもいいし、あの人が戻らなかったら、おまえでもいいの。
だっておまえが見つけられなかったってことだもんね」
从'ー'从「いいのよ。戻ってさえすればいいの。でも戻らなかったら。
あたしのあたしのあの人がもど、もどらなかったら、壊すのはおまえでも、いいの」
.
715
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:24:12 ID:om3Yvxs60
絶叫したかった。
しかし喉からはかすれたような呼吸音しかでなかった。
あしらうのは絶対に無理だ。
この女から逃げるにはこの国から離れないといけない。
でなければ蛇よりも執念深い、
狂った思考のこの女の怒りが、一心に自分に向くことになるのだろう。
そう悟った。
.
716
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:25:01 ID:om3Yvxs60
.
717
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:25:48 ID:om3Yvxs60
円卓を囲むのは かわいそうな駒鳥で
【Who killed u n owen】
.
718
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:26:29 ID:om3Yvxs60
布地の厚い毛布、片隅に散らばるのはミネラルウォーターと包装された携帯食。
見慣れない印字された包みをこわごわと開く、すると焼き菓子に似ているようなクッキー生地の食べ物が出てきた。一口かじってみる。
甘みがわずかにあり、味は菓子のようだ。悪くない。
ただ、やたらと口のなかが乾く。
そのための水なのかもしれない。
(#゚;;-゚)「……」
.
719
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:27:23 ID:om3Yvxs60
部屋のなかはうす暗い。
電気がいっさいなく、窓から差し込む光だけが朝を知らせてくれる。
わずかに開ける硝子戸からのぞき込むと、真下の風景がちらりと見える。
おもちゃ箱のような景色。つまめそうなほどの、建物の群。
どうしようもなく、でぃは高所に居るのだった。
わけのわからない誰かに、わけのわからない場所に閉じ込められている。
でぃは拉致した者の顔を見ていない。予想しようにも鎧のような装備に包まれている。
.
720
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:28:06 ID:om3Yvxs60
わけのわからないなにか、は日をあけてたびたび高所の部屋に来た。
しかしたいてい、でぃが気配に気づくとすっといなくなる。
出入り口のない部屋で、外壁をつたって上り下りしているのだ。尋常でない能力だ。��
まともな人間には思えない。
(#゚;;-゚)「きみは、誰?」
夕暮れの明るさがきえていく時間帯。
電気のない室内はすぐに暗闇に染まる。
影のようにして、その時間にこっそりと伺いにくるのももうなれた。
相変わらず得たいのしれない者に対する警戒はあったが、いっこうに近寄ってこないので、それも薄くなりつつある。
.
721
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:28:56 ID:om3Yvxs60
食事を運ばれ、衣類を渡される。
この部屋は小さいながら、浴室も備わっていた。
与えられるものに不足はしていない。
ただどうして、という悩みだけが尽きない。
(#゚;;-゚)「……つれもどしに来たんじゃないの?」��
研究所の手のものではないのか。
そんな意味の言葉、あっさりと無視された。影は答えない。
ただじっと、うす暗がりに佇んでいる。��
姿を確認すると即座に部屋から逃げていたのに、ここのところ、でぃが話しかけるととどまってくれるようにはなった。
ただ正体も、目的も、なにもかもが不明すぎて、でぃは戸惑う。
要求がない。
それではなにを求められているのか、でぃにはわからない。
.
722
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:29:39 ID:om3Yvxs60
(#゚;;-゚)「……ワタナベが心配だ。彼女のところにもどりたい」
でぃがいない今、なにをするのかわからないから。
自暴自棄になって、危険なことに首を突っ込んでいないか気になる。
それにせっかく得た協力者を失いたくなかった。
柔らかく、帰せと訴えるも、影は微動だにしない。
硬質なスーツのまま、顔の位置にあるカメラレンズがじっとでぃに向いていた。
(#゚;;-゚)「……なにか言ってよ」
ぽつり、そう不満をこぼす。
この侵入者が訪れるまで、娯楽らしいものもなく、ずっとひとりきり。
.
723
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:30:25 ID:om3Yvxs60
退屈は緊張をむしばむ。
怪力で、不気味で、物言わぬ不審者でも、ひとり狭い部屋に取り残されているよりはいい。
でぃが言うと、スーツの頭部がゆれた。
シュー……
(#゚;;-゚)「……え?」
.
724
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:31:11 ID:om3Yvxs60
呼吸音だった。肺を絞ったような。
かすれたような、息をするときの。
吸った息が、漏れたような音。��
は虫類独特の。
そんな呼吸をするのは1人しか知らなかった。
(#゚;;-゚)「…………エヴァ?」
.
725
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:31:53 ID:om3Yvxs60
.
726
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:32:53 ID:om3Yvxs60
.
727
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:33:35 ID:om3Yvxs60
(A^ν^)「ちょっといいですか?」
( ´_ゝ`)「んー?」
(A^ν^)「…なにをしようとしてるんです?」
(A^ν^)「截断まえの金属板ばかり、前線に送ってるようですけど」
( ´_ゝ`)「ああ、場所の特定がむずくってさ、どっちがメインかわかんないからとりあえずバンバン持ってったんだよ」
( ´_ゝ`)「数キロ県内にたくさんあれば、移動もやすいし」
.
728
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:34:35 ID:om3Yvxs60
(A^ν^)「はぁ……えと、それはなんのために?」
( ´_ゝ`)「制圧のためでしょ」
(A^ν^)「???」
(A^ν^)「えーっと…」
(A^ν^)「不特定多数の人海戦術をやられるから、そのために多くの物量で攻める、ってことでいいんですか?」
( ´_ゝ`)「うん」
(A^ν^)「しかしなんだってあんな物を?」
(A^ν^)「硬くて燃えなくて、貫通しなくて電気を通さなくて、それだけじゃないですか」
( ´_ゝ`)「うん」
(A^ν^)「たしかに構造状、うちの技術でしか分解できないシロモノですが、そんな物が役に?」
( ´_ゝ`)「うん」
.
729
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:35:22 ID:om3Yvxs60
(A^ν^)「」
( ´_ゝ`)「想像つかない?」
(A^ν^)「いいえ!つきます。たぶんついてます」
(A^ν^)「ただ……規模が大きすぎて…」
(A^ν^)「範囲、すごく広いじゃないですか」
( ´_ゝ`)「そう?」
( ´_ゝ`)「でもま、しょーがないね」
( ´_ゝ`)「あんまし減らしたくなかったんだけどさ。いいかげん終わらしたいし」
(A^ν^)「都合よくいきますかね」
( ´_ゝ`)「たぶん」
.
730
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:36:04 ID:om3Yvxs60
( ´_ゝ`)「うまくいかなくても、まあいいよ」
(A^ν^)「……いつも思うんですけど、どうしてそうなげやりなんですか?」
( ´_ゝ`)「ん?」
( ´_ゝ`)「……え、俺?」
(A^ν^)コクコク
( ´_ゝ`)「投げやりってやる気ないってことだろ。俺めっちゃやってるじゃん」
(A^ν^)「なんか熱心じゃないですよね。そういう時に使うんですよ、投げやりって」
( ´_ゝ`)「えー……」
( ´_ゝ`)「俺ちゃんとしてるけどなぁ」
( ´_ゝ`)「逆に熱心てなによ?」
(A^ν^)「それは……もっとこう、確実に、とか執念をもったかんじの……」
.
731
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:37:05 ID:om3Yvxs60
( ´_ゝ`)「だから確実性えらんでるじゃん」
( ´_ゝ`)「囲いあったら、逃げらんないでしょ?」
(A^ν^)「そうなんですけど、そうなんですけど……なんか違うというか……」
( ´_ゝ`)「えーなによ?」
( ´_ゝ`)「気になるわー」
(A^ν^)「……んー、たぶんですけど。あれですね」
ああそっか。興味がないだけなんだ。
( ´_ゝ`)「?」
(A^ν^)「……地図みてきます。次どこからあらわれるのかわからないので」
( ´_ゝ`)「港でしょ」
.
732
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:38:19 ID:om3Yvxs60
(A^ν^)「それを、絶対だって言えるように確かめてみます」
( ´_ゝ`)「オッケーグーグル!」
(A^ν^)「…………」
(A^ν^)「では……」
( ´_ゝ`)「失望してんの?」
(A^ν^)「……いいえ」
頑張りには意味がない。
熱意も、わずかな情も意味がない。
(A^ν^)「わたしにはあとどれくらい時間が残されていますか?」
( ´_ゝ`)「こんどのこれ、解決するまで」
(A^ν^)「それはよかった」
なにもかも執着のなさそうな人相手に、思い悩んでは時間がもったいない。
(A^ν^)「どっちかっていうと、」
(A^ν^)「絶望ですかね」
結果しか、意味がない。
.
733
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:39:07 ID:om3Yvxs60
絶望に至る病
.
734
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:40:01 ID:om3Yvxs60
施設の壁はぶ厚い。
柱は最上階から地下まで貫通しており、少しの地震程度で壁や骨組みはびくともしない。
火災があっても消火剤がまかれ、すぐに鎮火する。
そのさい、空気の供給も止まる仕様になっている。
中の生き物への配慮ではもちろんなく、施設内の重要な記録を守るためだけの設計だった。
職員用の個室もそうだ。
壁は厚く、防音で冷たい。
逃げだそうとするすべての個体たちをふせぐように。
.
735
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:40:43 ID:om3Yvxs60
響く足音も、誰かの悲鳴も聞こえない。大型の機材を使うときだけ地面が振動する。
それらはたいてい冷たくなった個体を処分する時に使われた。
火葬はきちんと焼くと時間がかかる。燃料もかかる。
だから大型の機材でプレスされた。
そんな場所だったから、職員のプライベートはもちろん、仕事のためにも防音管理はきちんとされていた。
施設内は清潔で、掃除が行き届き、快適だ。
残酷な光景も、工場のような作業で行われているとそう思えなくなる。
家畜の解体をできるだけクリーンに行えるように。
そんなマニュアルもあっただろう。
死はひとしく、実験対には平等だった。当たり前すぎて、なにが起こっているのか理解しないうちに済まされる。
実験対の知性は低い。
彼らにそれは必要がないものだった。
.
736
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:41:26 ID:om3Yvxs60
でぃは幸運だった。
ひとつのプロジェクトのために作られた。��
それは長期で、確実性で、結果をなにより期待されるものだった。��
だからそれまで生きるために、人並みの知性があった。��
“母胎があまりに愚鈍では、子にもそれが遺伝してしまうからな”
正確な意味は理解していないが、そう言った職員のことを覚えている。
他の個体とは違う。
しかし違うからといって、恵まれていることにはならない。
.
737
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:42:17 ID:om3Yvxs60
そのときでぃは、人に会わずに施設内を移動していた。
成長するに従って、職員たちの態度があからさまになってくることに辟易していた。
でぃは他の個体とはべつに、検証中の個体のために愛玩物だった。
気が向けば可愛がる程度の、無責任な愛情。
そして��自分がどの立場にいるのかも知らない。
ならば都合よく暮らすためには、気に入られるしかない。��
道ばたですり寄ってくる猫のような愛想のよさ。��
無機質で媚びることがない、敵意に満ちた個体たちよりも好まれるのは当然だろう。
.
738
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:43:03 ID:om3Yvxs60
そのなかででぃは呼吸し、顔色を伺い、なにも知らない、無知な子のようにふるまった。
女には腕のなかで甘え、男にはひざのうえに乗った。
そうすれば内緒だよ、と多少の融通をきかせてくれる。
ほんのわずかな特権。
余った菓子を振る舞われたり、就寝する寝室を居心地のよい部屋に変えてくれたり。
なかでもでぃがもっとも重要視したのは情報だった。
記録媒体には載っていない、職員の人間性。
それから処分されやすい個体の特徴。研究の余地があれば、まだ生かされる。
雑用のためだけに生きている実験対だっている。
手に入れた情報の鮮度は短い。
くだらないものでも、すぐに身近なものと共有するべきだ
.
739
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:43:57 ID:om3Yvxs60
でないとすれ違いに悲劇が起きる。
伝えたところで、遅すぎたりする。
職員のプライベートな個室と、実験室や大広間。
そんなところを覗けば、施設はいくつも自由に行き来する場所がある。
でぃは友人のところに向かっていた。
��
日光浴を楽しむ、青い肌の少女。
木々のそばであれば嬉しそうにする。
だからいつも通り植物のところにいると思ったのに中央の植物園に姿はなかった。
高いところが好きだから、木に上っているのかも思ったが、見上げても木漏れ日のなかにはいない。
.
740
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:48:43 ID:om3Yvxs60
でぃは首をかしげ、また思いつくところに移動する。��
水場にはいなかった。
砂場にも、草木が繁茂するべつの植木にもいなかった。
同じ場所に縄張りをつくるエヴァは基本、居心地のいい場所を変えない。
いやな予感がした。
それはたいてい、取り返しがつかないものだ。
「エヴァ……?」
走り、探しまわる。
怯えながら処分場にも顔を出したが、使われた跡はなく、それに安堵する。
しかし見つからない。
どこに行ったのか。
歩き続ければどれほど広い場所でも終わりがくる。
でぃが考えに考え、最後についたのはひとりの男の部屋だった。
.
741
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:49:50 ID:om3Yvxs60
「……」
近づきたくはない。
けれど個体数の管理はこの男がしている。でぃには冷たくとも。
仕事ならばきちんと対応してくれるはずだ。
そう、思いこもうとした。
大丈夫、なぜならここの廊下にはカメラがつけられている。
なにかあれば、そこまで逃げればいい。
いくら危ない男でも、カメラのまででぃになにかすることはないはずだ。
ーーーはずだ。
それとも。それともあの男がエヴァを連れ込んでいたならどうしよう。
エヴァは知性がひくい。
いやなことでも、納得すると我慢してしまう。
成長し、肉つきのよくなったでぃをみるようにして、体はしっかりと成熟しているエヴァに、欲望をたぎらせていたらーーー?
.
742
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:50:37 ID:om3Yvxs60
そっと指で、ドアに触れた。冷たい金属のひやりとした感触。
体温を感知して、扉は両開きにあいた。
部屋にはふたりがいた。
備え付けのベッドのうえ。
壁にくっついている机のかげから、上半身が見える。
川*゚ー゚)
そして彼女がいた。
しかし男もいた。
.
743
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:53:28 ID:om3Yvxs60
虐げられている、という恐ろしい予想は裏切られた。��
エヴァはこちらをむくと、「でぃ!」無邪気に笑んだ。
それから汚れた顔を袖でぬぐう。
「なにしてるの……?」
ひかりの加減だろうか。
廊下によくある青みのある光でなく、部屋の灯りはオレンジに近い。
赤黒い、色がもっと黒く見える。
エヴァは濡れていた。
大量に、湿ったわけなく被ったようにして濡れている。嗅いだことのある臭い。
乾くと、茶色く変色したりする、赤。
男の首はネジ切れていて、皮一枚でかろうじてつながっている。
だらん、とベッドの下にぶら下がってきいる。
虐待したのは彼女だった。
.
744
:
名も無きAAのようです
:2016/01/02(土) 01:02:59 ID:EfL14mGQ0
乙!
745
:
名も無きAAのようです
:2016/01/04(月) 23:25:19 ID:nzkftehI0
おつ
746
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 01:49:34 ID:DincLnGo0
( ´∀`)「ずっと思っていたことだよ。
どうして人類は管理されてはいけないのか」
( ´∀`)「およそこの地上にて、誰のものでもない場所が存在するかね?
国、土地、空、地下、水、空気、はたわ宗教という概念。民族間の価値観。これほどまでに共有しているというのに。
絶滅動物は美しく尊いものでなければ保護されない。
草木を守るために共存する醜い虫たちは見向きもされない。人類が興味がないからだ」
.
747
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 01:50:23 ID:DincLnGo0
( ´∀`)「生物には優劣がある。
当然のことだ。しかし最上位に人間が立ち、下位はそれ以外。
なるべく減ることがないようにという、最低限の意識しかない。
まるでリサイクルマークのようではないか。
あればそれなりに分別にだすが、なければ行動にうつすことなどまずやらない。そうした危機感もなく、いまどこでどのような動植物が死に耐えているのか、知ることもない。
知ろうとも思わない。」
( ´∀`)「当然だ。人間には人間の営みがある。他の生物だって自分たちの生存が第一なのだ。
いったいどうして自分たちのことをないがしろにしてまで他を気にしなければならないのだね。」
.
748
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 01:51:12 ID:DincLnGo0
( ´∀`)「本能に忠実になれればじつにしあわせだ。人は人らしく生きている。このうえなく正常な世界の理。
ただそこに科学はない。
傲慢な繁殖だけがある。
増えすぎたゆえの、淘汰が必要になるくらいの」
( ´∀`)「人間が発展し、この星の支配者となることが人類観点からみてこのうえない功績だとして、それらを管理、支配することは」
( ´∀`)「さらなる偉大さにつながるのではないか?」
( ´∀`)「管理できないからこそ争うのだ。秩序がないから殺しあうのだ。
互いにゆずりあう精神が培われないから、自己中心な損を嫌い、奪うことでしか幸福を信じられないのだ」
( ´∀`)「人が少なければ、そのぶん敬うことが増える」
.
749
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 01:51:54 ID:DincLnGo0
( ´∀`)「実際にクローズド・サークルを行ってみればわかる。
食物の心配さえなければ、人が減るのは恐怖でしかない。
そんな状態で誰が殺し合いなどしたいものか。乱すもの、脅かすものこそ一番最初に排除されるだろう」
( ´∀`)「倫理があり、教育があり、思想を共有し、豊かさを分かち合う。奪い合うからこそ、争うのだ。しかし分かち合うには、いまの人は多すぎる。」
(A^ν^)「だからプロジェクトを?」
.
750
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 01:52:35 ID:DincLnGo0
( ´∀`)「ああ。教育ない人間など人ではないよ。ただの獣だ。知性ある獣など、害獣いがいのなにものでもない。環境を破壊し、貴重な生物の循環を止める。絶滅寸前の動植物などめずらしくもない。
そしてその危機に気づきもしない。
不足になってからでは、意味がないのだ。
足下が割れそうなときには身動きなどできないだろう?」
(A^ν^)「なるほど」
( ´∀`)「人類の歴史など、殺戮の繰り返しだ。それは人も動物もかわらん。
生態系に破壊を促すだけ、人類のほうがよほど害悪ではあるがな」
(A^ν^)「あなたは原理主義者ですか?」
( ´∀`)「そうだ。極論を言っていると自分でも判っている。」
( ´∀`)「しかし長年の考えをまとめると、どうしてもこうなるのだ。」
.
751
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 01:53:24 ID:DincLnGo0
( ´∀`)「わたしは人類を愛している」
「だから破滅するまえに、どうにかしてやりたいと思ってる」
.
752
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 01:54:16 ID:DincLnGo0
(A^ν^)「破滅?せいぜいが殺し合い程度では?」
( ´∀`)「戦争だよ」
( ´∀`)「近いうちに必ず起きる」
( ´∀`)「そしてそれだけはどうしても回避できない」
( ´∀`)「歴史的に、国が大量虐殺を繰り返すのはどうしてだと思う?」
(A^ν^)「粛清ですね」
(A^ν^)「権力を握るための」
( ´∀`)「その通りだ。それは邪魔なものを排除するために。自分たちが、生き残るために。」
( ´∀`)「邪悪であれば、あるほどに生存が増す」
.
753
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 01:54:59 ID:DincLnGo0
( ´∀`)「生き残る確立が高くなる。
人を蹴落とすのは本能なのだ。
しかし当然、それだけではいけない」
( ´∀`)「わたしはね、性善説を信じてもいるんだ」
( ´∀`)「誰かを思いやるのは美しい。暖かい。喜ばしい。」
( ´∀`)「家族や身内を愛するのが種を残すことの本能かもしれない。だが全くの他人を、なにの思惑ないままに愛するのは違うだろう?」
(A^ν^)「そうですね」
.
754
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 01:55:42 ID:DincLnGo0
( ´∀`)「今の時代、愛するのにも理由が必要なのだ。男女、結婚相手、愛玩物。自分に有効なものか、そうでないものか」
( ´∀`)「その枠を取り払うためには、やはり現人類は多すぎる」
( ´∀`)「生きる数が限られてしまえば、人は争わざるを得ないのだ」
(A^ν^)「理由はそれだけでしょうか」
( ´∀`)「なに?」
(A^ν^)「この都市は恵まれています。電気も水もない農村よりもはるかに。教育も、最低限行き届いている。」
(A^ν^)「それなのに、まだ抵抗するのはなぜでしょう」
.
755
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 01:56:25 ID:DincLnGo0
( ´∀`)「利権ほしさだろう。元は彼らの土地と考えているのさ。もう取り上げられているのに」
(A^ν^)「ええ。でもそれならそれで、おこぼれをもらっていればいい」
(A^ν^)「こちらだって援助はしている。微量ですが。」
(A^ν^)「命をかけてまで、抵抗する意味がわからない」
( ´∀`)「聖戦と考えているなかもしれんな」
( ´∀`)「大義があれば、人はなんだってできるものだ」
(A^ν^)「そんな戦士のようにも思えません。やる事といったら子供を盾にして時間を稼ぐような奴等です」
.
756
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 01:57:07 ID:DincLnGo0
( ´∀`)「ふむ。ならば、もっと単純なものかもしれない」
( ´∀`)「争いなど、いつの世も原因はひとつだ」
(A^ν^)
( ´∀`)「足りないから、奪うのだ」
( ´∀`)「彼らの求めるものとは、そもそもなんなのだ?」
.
757
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 02:01:31 ID:DincLnGo0
.
758
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 02:02:16 ID:DincLnGo0
壁は順調に組み立てられている。
黒色の金属板はしっとりと輝くこともなく、ただ暗い暗い墨のように黒い。
30キロほど間隔をあけ、貧民区域を囲うようにして、高く長い。
まるで巨人がいまにも顔をだすようではないか、と誰かが言った。
それほど異様な高さだった。
遠くの山を見るようにして壁が景色のなかにある。
道路や家々を遮断しながら。
距離を詰め、丸く全体を囲っていく。
人々はその工事の目的を知らない。
邪魔でありながらも、隙間から通行できるからだ。それに文句をつけても、止めさせることなどできない。
.
759
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 02:03:20 ID:DincLnGo0
(`∠´)「やばいな」
ビル屋上からその景色を眺める。
20階数ほどある建物だが、壁の高さにはかなわない。
雲に届くのでは、そう錯覚するほどだった。
(`∠´)「まじで…やばい」
企業がこれほど大がかりなことをするなんて、しかし予想はつく。しびれを切らして手っ取り早く片付ける魂胆だろう。
倫理も道徳もなく。
.
760
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 02:04:05 ID:DincLnGo0
(`∠´)「あの男、こんなかから探さないと行けないのかよ……」
砂のなかに落ちた一粒を、掻き分けろというようなものだ。その一粒は金色の。
埋もれているから、見つからない。
逃げたい。逃げようか。優秀な脳みそがそう訴えかける。関係ないものに巻き込まれるのなど、クソ食らえ。
渡辺から逃げればいいだけの話。
もしくは殺されなければいい話。
(`∠´)「駄目だ……」
もしも、捕まったら。
渡辺のやり方は、よく知っている。
日頃彼女を怒らせても被害に合わなかったのは、渡辺がそこまで自分のに興味がなかったからだ。しかし今は違う。
.
761
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 02:04:49 ID:DincLnGo0
ある意味で、とても頼りにされている。それを裏切るのは、自殺と同じ。それも酷い死にかたをするだけだ。
性器を切り落とされ、数時間ほど生かされていた男の末路を思い返す。
渡辺はそういう女だ。
どうすれば死なずにできるだけ苦しむのか、やり方を知っている。
自己流で。
(`∠´)「ちくしょー……」
せいぜい壁が、できあがるまえに。
あの男を見つけなくてはいけない。
.
762
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 02:05:44 ID:DincLnGo0
.
763
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 02:06:34 ID:DincLnGo0
男の体が、ベッドから半分ずり落ちている。
奇妙にねじれた頭が床について、顔は真後ろを向いている。
目が合わないことだけが救いだった。
エヴァは上手に首を締めたのだろう。
器用に、窒息させてから首をちぎった。
点々と、果実をつぶした時のように。
圧迫された瞬間、水が吹き出たようにして、血が跳ねたのだった
横たわった体。物体になりさがる、元人間。
となりにはエヴァが笑っている。��
いやなことから解放されて、嬉しそうに。
.
764
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 02:07:29 ID:DincLnGo0
「どうして?」
川*゚ー゚)「だって、痛いことするんだもん」
実験だったら、検査だったら。��
エヴァはこんなことをしなかった。
男を殺さなかったはずだ。
聞き分けの悪い子は、いつもお仕置きされる。反抗するも、それに怯え、渋りながらも言うことを聞いていた。
職員たちの威圧感にも負けて。��
けれどここは密室で、男とふたりきりだった。
男以外の目がない。
大勢の職員から、たったひとりの男と対立するだけになる。
.
765
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 02:08:17 ID:DincLnGo0
だからエヴァは反抗した。
聞き分けなかった。男に怒った。
ひとりよりも、大勢のほうが怖いに決まっている。
エヴァには保身がない。
それからを思考することができない。空間把握能力も低く、概念がどういう意味なのか、考えることができない。
知識が高ければ高いほど、実験動物は危険なものになるからだ。
単純でおとなしく、聞き分けることができる。��
飼育が簡単で、手間もかからない。��
でも、だからこそ。
そのあとを想像することができない。
.
766
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 02:09:06 ID:DincLnGo0
「痛いことをされたの?」��
川*゚ー゚)「うん」��
「足をひらけって……言われたの?」��
川*゚ー゚)「掴まれたの」
息が、つまる思いで聞いた。
「……痛いのを、××られたの?」��
川*゚ー゚)「うん」
でぃはベッドに乗り上げると、男のずり落ち掛けている体を蹴った。
死体はだらん、とはずみに床に転がる。��
表情ない顔で、それを見下ろした。
.
767
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 02:09:57 ID:DincLnGo0
「じゃあ、ぼくのせいだね」
川*゚ー゚)「なんで?」
「こいつはぼくとしたがってた」
だから代わりが必要になった。
求めるからこそ、嫌悪となってより執着された。
手をだしてはいけないジレンマと、職員の権限にストレスを感じていたはずだ。代替え品にてすませようとする。
危機を感じていた。
だからでぃは逃げていたのに。
.
768
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 02:10:40 ID:DincLnGo0
川*゚ー゚)「だめ、あれ痛いの。でぃ柔らかいから、だめ」
「……エヴァも痛かったでしょ」
川*゚ー゚)「うん」
「だからね、ぼくも痛い」
川*゚ー゚)「されたの?」
「ううん。そうじゃないんだ……」
「でも、痛い」
まっすぐな、澄んだ目が見つめてくる。
ひどい、気持ちが悪くなることをされたのに、彼女はどこまでも清らかだった。
こうなってもまだ、でぃのことを心配してくれる。
身代わりにされたというのに。
男に刺されたのに。
.
769
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 02:11:22 ID:DincLnGo0
「痛いんだ」
呟くと、彼女が腕を延ばし、でぃをつかむと引き寄せた。
握力の強い手は、金属の手すりを簡単に折り曲げる。骨ごと肉を引きちぎる。��
けれど警戒も、危険も感じられない。
ひやりと変温動物のように冷たい肌をしていた。優しい力で抱きしめられる。
この手がでぃを傷つけるはずがない。
.
770
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 02:12:04 ID:DincLnGo0
川*゚ー゚)「まだ痛い?」
ゆらゆら、抱かれながら揺れる。
子供をあやすようにして。
座りながら、一定のリズムで穏やかに横に揺れる。寝付きの悪い子に眠りを誘うような仕草。
慰める動作というものを、エヴァはこれ以外に知らない。
数えもしないほどまえに、泣く彼女はこうやって誰かに慰められた。
それを教えたのは誰だっただろう。
でぃかもしれない。
もういない優しかった個体かもしれない。
川*゚ー゚)「ねえ痛い?」
.
771
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 02:13:02 ID:DincLnGo0
心臓の音が、耳に入る。
ゆったりと、穏やかで等間隔の音が。
すぐそばに死体があるのに。
殺してしまったのに。
エヴァがかわいそうなのに。
弾力のある肌の下、鼓動を聞くのは気持ちよかった。
「うん。痛い」
そっと目を閉じた。彼女の背中に腕を回し、離れがたく抱きしめる。
肩にあごを乗せて、呟く。
「だから、もう少し。こうしていて」
.
772
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 02:13:45 ID:DincLnGo0
考えなければいけない。��
人を傷つけた実験対が生きられる理由を。��見つけなければいけない。
エヴァが処分されない道を。
人間に危害を加えた個体は処分される。それは規則だった。
いちど支配から逃れそうになると、彼らは学習するからだ。
大きな体、獣の力。鉄の柵を食い破るほどの剛力や、顎の力。
一トンを越える体重を持つものも居た。
人型が人に害したのは、でぃが知るかぎり初めてだ。
.
773
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 02:14:39 ID:DincLnGo0
理由をこじつけなければ、そう考えるも、都合のよい言い訳が思い浮かばない。��
エヴァは被害にあっただけ。
そんなことが通るほど、施設は優しくない。
それよりも彼女の反抗心が問題になるのは間違いない。
どうにかして、切り離さなければ。
この死体、この男とエヴァとの関係を。
考えろ考えろ。どうすればいい。
どうすればエヴァを守ることがきる?
どうすれば、男を殺したことを知られないようにできる?
死体の隠蔽はできない。エヴァを隠すこともできない。なにか、なにか工作はできないだろうか。��
しかし考えは堂々巡りにしかならない。
管理されている身として、できることが限られすぎている。
.
774
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 02:15:21 ID:DincLnGo0
犯人探しは必ず行われる。
そのときに嘘がうまくないエヴァは、言わないことしかできない。
誰か。誰かが必要だった。エヴァのために、でぃに強力してくれるだれかが。
しばらくうずくまって考える。
思い立つと、でぃは立ち上がり、眠っているエヴァにシーツをかけて部屋を出た。
.
775
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 02:16:03 ID:DincLnGo0
うまくいかないかもしれない。��
すべてバレてしまうかもしれない。��
それでも、考えられる一番いい方法がほかにない。
でぃの知るかぎり、もっとも確実な方法。
廊下をなんども曲がり、生活形態の違うブースにたどり着く。
夜行性の生き物たちが住まう場所。
檻に囲まれた、職員たちが手を焼くも、使い勝手の良さと耐久性の高さから重宝されている生き物。
.
776
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 02:16:48 ID:DincLnGo0
目の前に。ぱっくり開いた大きな口が。生ぬるい空気が頬に触れる。
吐息がかかったのだ。
でぃは顔をあげた。願いを込めて。
その黒い目を見つめる。
言葉が通じるのはわかっていた。
その目に知性が宿っていることも。
だから懇願した。
「お願いだ」
.
777
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 02:17:38 ID:DincLnGo0
(*゚ー゚)「たすけて」
.
778
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 15:42:46 ID:UTBKDTmE0
支援
779
:
名も無きAAのようです
:2016/10/07(金) 05:04:01 ID:h6i.vu.o0
まつまつ
780
:
名も無きAAのようです
:2016/11/17(木) 13:06:27 ID:/z5WvXAw0
“誰だったかしら。兄さま。
究極の愛はカニバリズムだと言ったのは。エドガー・アラン・ポー?”
“違うよ。姉さま。
彼はネクロフィリアだったんだ”
【ブラックラグーン】
.
781
:
名も無きAAのようです
:2016/11/17(木) 13:07:08 ID:/z5WvXAw0
かさついた紙袋を破ると固い生地のビスケットがみっしりと入っている。
つまむと一口かじった。
(#゚;;-゚)「ビスケット…好き」
(#゚;;-゚)「パンも。クッキーも。パスタも。好き」
(#゚;;-゚)「お肉はきらい」
「だいっきらい…」
.
782
:
名も無きAAのようです
:2016/11/17(木) 13:09:34 ID:/z5WvXAw0
��������
.
783
:
名も無きAAのようです
:2016/11/17(木) 13:10:45 ID:/z5WvXAw0
( ´_ゝ`)「あ」
(A^ν^)「なんです?」
( ´_ゝ`)「こいつこいつ」
('A`)
( ´_ゝ`)「調べたらさ身元でてきた。すげーぞこいつの履歴書。」
(A^ν^)(誰だこいつ…?)
( ´_ゝ`)「大尉だって大尉。」
(A^ν^)「軍属ですか?」
( ´_ゝ`)「そ。いまはそんなもんなくなっちまったけど」
( ´_ゝ`)「へぇパイロットか。ならいい職にもつけただろうに。なんだってこんなとこにいるんだろうな」
(A^ν^)「職業軍人なんて…もうなかったはずですよね。そもそも軍隊なんて二十年まえに廃止されてるのに」
( ´_ゝ`)「ナンセンスな奴っているんだなあ。何が目的なんだろ」
( ´_ゝ`)「ジャーナリストだったら困る。めんどくさい」
(A^ν^)「…なにしに来たんでしょうね。」
.
784
:
名も無きAAのようです
:2016/11/17(木) 13:11:38 ID:/z5WvXAw0
( ´∀`)「飛びたいんじゃないのか」
( ´_ゝ`)「あ、いたの」
( ´∀`)「いつの間にか、個人での飛行どころか国内でも飛行機の操縦は限られたものになったからなぁ。」
( ´_ゝ`)「嬉しそうだな」
( ´∀`)「おう。パイロットなんて久々に聞いたとも。私が子供のころは空港に行けさえすればたくさんの飛行機や戦闘機の本物が見れたものだ。懐かしい」
( ´_ゝ`)「すっごい非効率かつ非合理で廃止された職業だっけ?」
( ´∀`)「嘆かわしいことだ。彼らは英雄だのに」
( ´_ゝ`)「いまじゃ遠隔で操作できるのに。手動でしか飛ばせなかった頃のはなしだろ」
( ´_ゝ`)「中身入りミサイルにならないだけましじゃん」
( ´∀`)「いつの時代も人は空に憧れるものだ。ああ羨ましい。この男は戦闘機に乗ったのだろうなぁ」
.
785
:
名も無きAAのようです
:2016/11/17(木) 13:12:21 ID:/z5WvXAw0
( ´_ゝ`)「え、無理でしょ。」
( ´_ゝ`)「戦闘機なんて何十年も前からもうただのラジコンだし」
( ´_ゝ`)「人間が運転する機械なんてよく乗れるよね」
( ´_ゝ`)「こわいじゃん」
(A^ν^)(怖いって感覚あるんだ…)
( ´∀`)「そうかな。わたしは逆にすべて機械任せのほうが恐ろしいよ。世代のせいかもしれんな」
( ´_ゝ`)
(A^ν^)
( ´_ゝ`)「んー」
(A^ν^)「そうですかね」
(A^ν^)「機械仕掛けのほうがなにより安全で確実だと思いますけど」
.
786
:
名も無きAAのようです
:2016/11/17(木) 13:13:03 ID:/z5WvXAw0
( ´∀`)「以外とそうでもない。なにより緊急に対応できない、というデメリットがあるだろう。このあいだなんてひどかった」
( ´∀`)「そもそもの始まりは食糧難からだ。それさえなければ施設破壊も逃げられることもなかったのだ…」
( ´_ゝ`)「ふぅん?」
( ´_ゝ`)「なんかあったっけ」
( ´∀`)「タワー倒壊のことだよ。それのお陰で交通事情が麻痺し、たいへんな目にあった。首都であり中心部であるここはまだましだったろうが」
( ´∀`)「わたしたちの研究施設なんて地方みたいなものだからね。身体で言えば指先のようなものだ。血液の供給が追い付かなくなれば真っ先に崩れ落ちる」
( ´_ゝ`)「回りくどい」
( ´∀`)「……つまり、食うに困ったのさ。弱小施設とはいえ職員は50人以上いたし、研究対象なんてその倍だ。」
( ´∀`)「災害といえば身ひとつで逃げるよう教えられているし、備蓄などなかった。配給を待たなければいけない」
(A^ν^)「…………」
.
787
:
名も無きAAのようです
:2016/11/17(木) 13:13:48 ID:/z5WvXAw0
( ´∀`)「しかし対処は遅かった。遅すぎるほどだ。すでに近隣の店は何もかも買い占められていた後だったし。水道が使えることだけが救いだったな」
( ´_ゝ`)「まじかー。やっぱ後手後手だったんだなー」
( ´∀`)「危機にすかさず対応できる者がいないのは仕方ない。その地位の人間が不足していたのだろう」
( ´_ゝ`)「おかげ様で。俺がいまんとこトップだしね」
( ´∀`)「しかしこの時代にこの都市で飢餓というのは笑えんぞ。水とクラッカーだけで何日も過ごすのはずいぶん苦しかったしな」
( ´_ゝ`)「防衛システムは稼働してたけど、たしかに流通に関しては遅かっただろうな。あれ判断に時間かかるし」
( ´∀`)「そこらへん改訂したほうが絶対にいい」
( ´∀`)「さて、議題の続きがまだある」
( ´∀`)「できればなにか食べながらしたいものだが」
(A^ν^)「でしたら席を変えましょう。なにか運ばせますので。フレンチはお好みですか?」
( ´∀`)「もちろん」
.
788
:
名も無きAAのようです
:2016/11/17(木) 13:17:48 ID:/z5WvXAw0
��
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789
:
名も無きAAのようです
:2016/11/17(木) 13:19:23 ID:/z5WvXAw0
食事が足りなかった。
それが第一の悲劇。
職員も実験動物たちも、みな飢餓を経験したことがなかった。
マニュアルの生活したしたことがなかった彼らは避難についてもマニュアルでしかなかった。災害時に身ひとつで逃げることを訓練されている。
災害時の支援はすみやかに行われるため、荷物を持つ必要がない。
だがそこは限られた都市の、限られた範囲だったために、流通がままならなかった。
食品を保存する仕組みはなかった。巨大な冷蔵庫の中身は消費期限の近いものから順に自動的に廃棄される。
職員たちはみな、その日の日付を食べたことがない。要領を圧迫することなく新鮮な食事を取るための仕組みである。
.
790
:
名も無きAAのようです
:2016/11/17(木) 13:20:17 ID:/z5WvXAw0
( ´∀`)「さて」
( ´∀`)「われわれが目指したのは真性半陰陽、つまり完全なる両性具有者だ」
銀色のナイフが、霜ふりの赤い肉を切り落とす。ほとんど力を入れていないに関わらず、指先だけで肉が裂けた。
( ´∀`)「産むこと、孕ませることに特化させた生殖のための生物」
( ´∀`)「ただ膣の育ちが遅れていてね、さすがにデリケートな器官だから、時間を待たなくてはいけなかったのだ」
( ´_ゝ`)「クラインフェルターみたいに、XXY型ってこと?」
( ´∀`)「ちがう。それではただの染色体異常だ。これは根本からして異なる」
( ´∀`)「ほ乳類に、魚の性質を持った性別転換だと考えてくれればいい。卵巣も精巣も、機能している」
( ´∀`)「本来両性具有は繁殖に向かない。どちらかの生殖器に分かれなくては2つとも駄目になるうえ、もともとが歪なため奇形のかたちで生まれてくることが多い」
( ´_ゝ`)「アンタの想像が確かなら、そいつは精子と卵子を両方持っていることになる」
( ´_ゝ`)「そんな存在なんて、可能なのか?」
.
791
:
名も無きAAのようです
:2016/11/17(木) 13:20:59 ID:/z5WvXAw0
( ´∀`)「可能なのだ。そして、生み出した。1000/1の確率的で卵が授精した瞬間に、このプロジェクトは始まった」
( ´∀`)「単純に生殖するだけなら、単体生物のほうが優れているのは当然だ。しかし人は有性生殖によって遺伝子を取り入れることを選んだ。その結果がこの大繁殖。安定した繁栄に繋がるのなら、病気に強い種としての存続」
( ´∀`)「そこで考えられたのだ。産むこと、孕ませることのできる第三の性があればいい、人はなにもかも、クローンに代用させてきた。妊娠もまた、同じようにすればいい」
( ´∀`)「ただどうしても試験管のなかで育成する子供では支持を得られなかった。あくまでも自然妊娠に拘られてね。試行錯誤した結果思いついたわけだよ」
( ´∀`)「男、女、両方を相手に、子供を作れるような存在を」
.
792
:
名も無きAAのようです
:2016/11/17(木) 13:21:44 ID:/z5WvXAw0
( ´_ゝ`)「精子と卵子を両方備えるといずれどちらも駄目になるんじゃないか?」
( ´∀`)「本来ならば、そうだ。」
( ´∀`)「しかし両方を同時に備える必要はない。使い分ければいいのだから。魚のように」
( ´_ゝ`)「時期ごとに性別を代えるのか?」
( ´∀`)「少しちがう。男女差はないが、内蔵の中身が変わる」
( ´∀`)「それにより、両性を持つことが可能だ」
.
793
:
名も無きAAのようです
:2016/11/17(木) 13:22:25 ID:/z5WvXAw0
��
.
794
:
名も無きAAのようです
:2016/11/17(木) 13:23:05 ID:/z5WvXAw0
ルーティン化されたはずの日常が少しずつ変わる。
職員たちの分を除けば大型の実験体への供給が最優先だった。
本能のまま生きている彼らが管理可能なのは習性をきちんと把握しているからだ。
そしてその分のしわ寄せはある程度safeと判断された者たちに来る。
二日に一度あった食事がなくなった頃には
水と点滴に使う栄養液だけが配給された。
最低限の糖分は保証される。
しかしだからと言って空腹がなくなるわけではない。
胃袋を満タンにしないかぎり
知性のない獣は餓えに苦しむ
それはsafe(安全)の扱いを受けた者たちも同じだった。
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795
:
名も無きAAのようです
:2016/11/17(木) 13:24:01 ID:/z5WvXAw0
( ´_ゝ`)「“人が想像しうることは人は実現できる”」
( ´_ゝ`)「ジュール・ヴェルヌの世界だな」
( ´∀`)「だがまだ全て終わっていない」
( ´∀`)「このプロジェクトで人類を抑制するためには、経過中の実験体が必要だ。」
( ´_ゝ`)「死んでなかったの?」
( ´∀`)「檻のなかにはいなかったのか?」
( ´∀`)「あれは頭がいい」
( ´∀`)「そうなるように教育したからな」
( ´_ゝ`)「人類が減少するか否か、その実験体にかかってるわけだ」
( ´∀`)「なんとしても、見つけなければいけない」
( ´∀`)「でなくば、すべてが無駄に終わってしまう」
.
796
:
名も無きAAのようです
:2016/11/17(木) 13:24:42 ID:/z5WvXAw0
ごはんが無いと、うるさかった。
もうなにも食べてない。食べないあいだが長くて長い。最初からそうだったみたいに。
ごはんの時間があったのも忘れちゃったかもしれない。
お腹のすかせたうるさい子は檻の棒を噛む。
そんなことをしたらビリビリするのが飛ぶのにうるさい子たちはやめなかった。
そのうちビリビリが弱くなってただのパチパチになってもまだかじかじしてる。
ビリビリが痛くないんじゃない。
お腹が空いてるだけなの。
わたしは大丈夫
だってなんでも食べれるもの。
堅くても柔らかくてもどろどろしてても
酸っぱくても苦くてもえぐくても辛くても
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797
:
名も無きAAのようです
:2016/11/17(木) 13:25:31 ID:/z5WvXAw0
わたしはなんでも食べれるの。
でもあの子は違うから。
粉っぽい板きれみたいなのしか食べなかった。
だから小さくて弱くて柔らかすぎる。
歯をたてるとすぐに破れるくらい。
どんなものでも飲み込めるわたしなのに
あのこはあんなものしか口に入れないから心配。弱くて小さいから心配。
ぶつかっても叩かれても引っ張られても
ちっちゃく丸くなるしかできないからかわいそう。
わたしは大丈夫。あのこには平気だけど。
うるさい子や他の子たちは平気じゃないかもしれない。
他の子たちがあのこをごはんにしちゃったらたいへん。
柔らかいからすぐになくなっちゃう。
そのまえにわたしがごはんにしてあげなきゃ。ごはんにされる前にわたしがごはんにしてあげなきゃとっても しんぱい
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798
:
名も無きAAのようです
:2016/11/17(木) 13:26:15 ID:/z5WvXAw0
( ´_ゝ`)「フィッシングはどう?」
( ´∀`)「釣りはしたことないな」
( ´_ゝ`)「じゃなくて、フィッシング(囮)適当な情報ばらまいて食いつくの待てばいい。地味だけど効果あるよ」
( ´_ゝ`)「ただそれなりに食いつくエサが必要だけど。」
( ´∀`)「ふむ」
( ´_ゝ`)「だってさ、こんだけ探しても見つからないってことはめんどくさいことになってるか、完璧に隠れてるかのどっちかだぜ」
( ´_ゝ`)「スラムに潜まれたら向こうからやってこない限り辿るのは無理だし」
( ´∀`)「意外だな。てっきりこの都市のすべては管理されているものと思っていたが。やはり手の届かないところもあるのかね」
( ´_ゝ`)「映画の見すぎ。ごみ貯めをなんのために調べるのさ。」
( ´_ゝ`)「あそこらへんは無法地帯。中身を知る意味もない」
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799
:
名も無きAAのようです
:2016/11/17(木) 13:27:10 ID:/z5WvXAw0
( ´∀`)「なるほど」
( ´_ゝ`)「アンタ動き出すような情報持ってないの?アンタが詳しいんだろ?早くしないと回収できなくなるぜ」
( ´∀`)「そう言われてもなぁ……臆病なアレが何を考えているのかさっぱりわからん」
( ´∀`)「そもそもなぜ逃げたのかもよくわからんのだ。充分すぎるくらい、待遇はよかったのに」
( ´_ゝ`)「そういやそうだな」
( ´_ゝ`)「逃げることについて、教えたのか?教えないと逃げないはずだろう」
( ´_ゝ`)「逃亡する発想なんて普通思い付かないだろ」
( ´∀`)「アレは頭がよかった」
( ´_ゝ`)「それでもだ。外に出したことなかったんだろ?」
( ´_ゝ`)「だったら逃げるなんてこと、思い付かないはずだ。自分では」
( ´∀`)「たしかに。君の言う通りだ。恐らく職員から何らかの影響を受けていたのだろう。多少の触れあいは認めていたからな」
( ´∀`)「しかしこんなことになるのなら、隔離すべきだった。教育が仇になった」
.
800
:
名も無きAAのようです
:2016/11/17(木) 13:28:02 ID:/z5WvXAw0
( ´_ゝ`)「必要あるのか?ただの研究体だろうに」
( ´∀`)「当然だ。教育とはすべての知的生命体に平等に与えられるものだ。人は生まれながらに人なのではない。教育によって人になるのだ」
( ´∀`)「支配が楽だからといって、無知のままにしておくのは許しがたい。放っておけば無知ゆえの取り返しがつかないことをしでかすこともあるのだ。最低限の思考は持ってないと」
( ´_ゝ`)「でもやらかしたんだろ?」
( ´∀`)「ああ。残念なことだ。あれは倫理を知らなければいけない。命というものがどれほど尊く尊重されるものかを学ばなければならんのだ」
( ´∀`)「でなくば母にはなれない」
( ´_ゝ`)「ふーん」
( ´_ゝ`)「倫理ねぇ……ただの実験動物にしてはずいぶんたいそうな」
( ´∀`)「人に愛された分、人になつくのが理想ではないか」
( ´∀`)「そのために教育したし躾もした。心を鬼にして」
( ´∀`)「大切なことを教えたのだ。命を殺すことがどれほど罪深いか」
.
801
:
名も無きAAのようです
:2016/11/17(木) 13:28:57 ID:/z5WvXAw0
生きるために食べる
食べるために殺す
殺すために 生きる
生きるために
.
802
:
名も無きAAのようです
:2016/11/17(木) 13:29:44 ID:/z5WvXAw0
大丈夫だよエヴァ
守ってあげる
きみは絶対に守ってあげる
「おいどうなっている。乾燥肉じゃどうやっても足りなかったぞ。せめて骨のついた奴じゃないと」
「無茶を言うな。穀物だってもう残り少ないんだぞ。そんなもの奴等に出せるもんか」
「我慢させておくしかないだろう」
「自然では何日も飲まず食わずって場合もあるんだ一週間くらいどうってことない」
「それもそうだな。多少暴れるのも仕方ないだろう」
「まだ記録の取れてない奴だけ隔離してお
け」
「はは、見ろよあいつら。まるで獣だな」
「……共食いしてやがる」
.
803
:
名も無きAAのようです
:2016/11/17(木) 13:31:47 ID:/z5WvXAw0
('A`)「壁が完成する前だ」
( ФωФ)「早急すぎやしないか?」
恐らく最後になるであろう密談。
ふたりの意見は真っ向から割れた。
('A`)「嫌なタイプなんだよあれは。ああいう大がかりな工事をするってことは大がかりな目的があるってことだ」
( ФωФ)「……ただの壁だろう。俺たちを押しきるだけの。かのベルリンと同じものさ
('A`)「博識だな。しかしこの国が、この都市がそんな穏やかだと思えるのか」
( ФωФ)「この国は停滞している」
( ФωФ)「民主制の顔をした企業による独裁制だ。益のないことに金はかけんよ」
.
804
:
名も無きAAのようです
:2016/11/17(木) 13:32:43 ID:/z5WvXAw0
( ФωФ)「我々がようく知っている」
('A`)「…………それならいい。」
('A`)「しかし、お前アレを見て何も思わないのか?」
( ФωФ)「ダムみたいだなとは思うが……正直お前がそこまでなにを警戒してるのかわからんよ」
('A`)「そうかい。他のやつらもお前と同意見か?」
( ФωФ)「ああ」
('A`)「……あれが処刑を連想させられるのは俺だけか」
('A`)「お前たちが慣れきっちまってるのか」
どちらもだろうな。
.
805
:
名も無きAAのようです
:2016/11/17(木) 13:34:01 ID:/z5WvXAw0
��
.
806
:
名も無きAAのようです
:2016/11/17(木) 13:34:51 ID:/z5WvXAw0
(A^ν^)「どうした?」
( )「これは……!申し訳ありません。騒ぎになってしまいましたか」
(A^ν^)「なにがあった?」
( )「お手を煩わせるほどのことでは」
(A^ν^)「いいから、なにがあった?」
( )「…………不審な男がどうしても責任者に会わせろと、」
(A^ν^)「……なぜそれで騒ぎになった?」
本来ならばゲート前の不審者などすぐに排除される。騒ぎになるほどの時間もなく。
( )「…………申し訳ありません。相手は情報屋でして」
(A^ν^)「……」
末端の職員と情報を生業にしている者は切っても切れない縁にある。どこぞの職員が小飼の情報屋と揉めたのだろう。
(A^ν^)「それで、その情報屋がなんと?責任者をだせと?」
( )「はい……」
呆れた。愚かな職員はどうしようもない者を相手にしたようだった。
.
807
:
名も無きAAのようです
:2016/11/17(木) 13:35:54 ID:/z5WvXAw0
(A^ν^)「ちなみに責任者とは、誰を指しているんだ?」
( )「さぁ……ただ責任者としか。ただえらく必死らしくて、いまもまだ暴れているようなんです。」
(A^ν^)(……)
(A^ν^)「どんな奴だ?上級市民ではまずないだろう?」
( )「はい。中間市民でもありません。しかし下層市民でもありません。」
(A^ν^)「どこにも属してない、情報屋らしいな」
(A^ν^)「なにか情報でも売りに来たのかな」
( )「どうでしょうか。ただ、取引をしたいと申し出でてますね。私たちは相手にしなかったので、暴れました」
(A^ν^)「……会ってみるか」
( )「え、」
(A^ν^)「彼らの価値観が知りたいな」
(A^ν^)「たとえばどんな時に命を懸けるのか、とか」
.
808
:
名も無きAAのようです
:2016/11/17(木) 13:36:52 ID:/z5WvXAw0
(`∠´)「……」
貧相な小男だった。
目だけが油断なくあたりを見回している。
彼の姿を目にすると、男は飛び付くようそわそわとし始めた。
(`∠´)「……ええと。あんたが今回の責任者?」
(A^ν^)「責任者という言葉をどういう意味で使ってるのかわからないが、ここを預っている一人で間違いないとも」
(A^ν^)「もっとも私の上にはもっと多くの者がいるがね」
下位の者と話すには自然と口調が改まる。
そのように教育を受けている。彼には意識もなかった。
(`∠´)「………」
.
809
:
名も無きAAのようです
:2016/11/17(木) 13:37:35 ID:/z5WvXAw0
通常ならば自分のような存在、瓦解したとはいえ一族‘’ナンバーズ‘’がこの男と会話することなどない。処理を適当に任せ、本来の政務に励んでいる。
しかし焦っていた。
反抵抗勢力の読めない攻撃、短いリミット。
部隊の集める情報量だけでは解決の糸口にもならない。
だから何らかの、少しのヒントでもいいから欲しかった。ほとんどきまぐれと興味本意である。
(A^ν^)「それで?何の用でここに来たのだ?」
(`∠´)「……」
(`∠´)「……売りに来たんだ。」
(`∠´)「リスト……買ってくれよ。たぶんあんたたちの知りたいやつらのこと、たくさん載ってると思うぜ」
男はそういって手帳を取り出した。
それはこの情報屋が人探しのためにとある娼婦から譲り受けたものだった。
.
810
:
名も無きAAのようです
:2016/11/17(木) 13:38:20 ID:/z5WvXAw0
��
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811
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名も無きAAのようです
:2016/11/17(木) 13:39:08 ID:/z5WvXAw0
( ´_ゝ`)「褒めろ」
(A^ν^)「ええ……」
( ´_ゝ`)「ドクオ・ハーレイのことがわかったのは収穫だろ。表に出てないだけで裏に要るのはそいつだろうし」
(A^ν^)「でしたら私の手柄なのでは……?」
( ´_ゝ`)「おまえ一人でこの膨大な名前のなかから('A`)だけを特定して( ФωФ)との関連性を見つけられたか?」
(A^ν^)「………………いいえ」
( ´_ゝ`)「( ФωФ)の使用してる施設と('A`)の彷徨いてる場所はお な じ
また娼婦たちを連絡係に使ってるのは明白だ」
( ´_ゝ`)「ただの顧客リストのなかの名前の欄からこいつらの繋がりをおまえは見つけられたか?」
(A^ν^)「いいえ。逆にどうやったんですか……素晴らしいですね」
.
812
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名も無きAAのようです
:2016/11/17(木) 13:39:55 ID:/z5WvXAw0
( ´_ゝ`)「偽名の使い方を確認しただけだ。毎回名前のを変えるやつ、第二の名を常に持ってるやつ。こいつは後者だったからな」
( ´_ゝ`)「なにを考えてるのか知らんが、恐らくこいつが参謀だろう。これで狙いをつけることができる」
( ´_ゝ`)「リードできるな」
(A^ν^)「…………リード」
( ´_ゝ`)「不満か」
(A^ν^)「いいえ。ただ、」
(A^ν^)「まだ考えてるんです。彼らの目的を」
.
813
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名も無きAAのようです
:2016/11/17(木) 13:40:55 ID:/z5WvXAw0
��
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814
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名も無きAAのようです
:2016/11/17(木) 13:42:49 ID:/z5WvXAw0
甲高い音が鳴り響く。
それは人生のかなり最初のほうで聞いたことのある音だ。もっぱら最近はアラーム起こされるばかりなので、彼はこの音の主を認識するのに時間がかかった。
りりりりりり。りりりりりりり。
奇襲ではない。緊急でもない。
しかしこの割れんばかりの頭のいたくなる音はなんだ?寝起きにこの音で起こされるのはちょっとした拷問である。
彼は手探りで音の元を探した。
歩き回るほどに意識ははっきりしてくる。
やがて彼は気がついた。
この部屋に電話線と呼べるものがあっただろうか。
.
815
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名も無きAAのようです
:2016/11/17(木) 13:43:29 ID:/z5WvXAw0
りりりりりり。りりりりりりり。
部屋の前に固形物が落ちている。それは懐かしい形をしていた。黒電話の受話器部分。
それだけが落ちていて、わめいている。
デリバリーサービスのメッセージ。
すぐに目が覚めた。携帯の電波すら限られるこの国の、この場所で。遠慮なく張り巡らされた電波を受信できるなど。
手に取る。見た目に反し、受話器は軽かった。これひとつで、ケーブルなしでどこまでも繋がる電話になる。無線機のようなものだ。
警戒しながらボタンを押した。爆発物だと思えなかったのは、あまりの軽さゆえだ。
('A`)「…………だれだ」
繋がった瞬間的、数秒の間があいて、声が聞こえた。
かすかに笑っているような気配がした。
「パンケーキの焼き方を知ってるか?」
.
816
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名も無きAAのようです
:2016/11/19(土) 07:44:45 ID:qkaGEcqY0
きてたかおつ
817
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名も無きAAのようです
:2018/08/25(土) 23:34:26 ID:mwZIYLLI0
やべぇ2年かよもう
818
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名も無きAAのようです
:2018/09/05(水) 11:35:41 ID:gib7J9Rc0
はやいな
819
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名も無きAAのようです
:2018/10/01(月) 02:16:29 ID:nO7Fs2NQ0
ずっと待ってるからな
820
:
名も無きAAのようです
:2021/06/30(水) 21:09:59 ID:qAnLsSBc0
実は待ってる
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