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(‘_L’)は命令が欲しいようです
503
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 02:23:08 ID:f3g1KVM20
(A^ν^)「あのー」
( ´_ゝ`)「いま忙しい」
(A^ν^)「お客様なんですが……」
兄者はプロテクトの実験結果をまとめて見ている。
操縦するための戦闘用アンドロイドはあたりを破壊するだけなら充分だが、小回りには向いていない。
いっせいに取り囲まれて受信機能を壊されてしまえば役にもたたない。
動かなくなった機械は分解されてさまざまな用途に作られ、もしくは売られてしまう。
こちらはそこまで痛くもない損害だが、向こう側にとってみれば美味しいことしかない。
敵も勢いづくし、取られた部品でさらに襲ってくるからアンドロイドはなるべく使いたくないのだが、増員予定のない状況は仕方がなかった。
.
504
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 02:24:10 ID:f3g1KVM20
( ´_ゝ`)「シリーズは暗殺と警護にしか向いてないしなあ。指揮官役殺してもまとまりがなくなるだけだし。
好きにしてもいいって、焼き払うしかないじゃん。最終手段すぎるし、つまんないし」
(A^ν^)「あのー……」
( ´_ゝ`)「目的も好みも違う連中まとめるって大変なことだったんだな。あの男もったいねーな。スカウトすりゃよかった。でもスパイ殺されたからどっちみち無駄か」
(A^ν^)「兄者さまー……」
( ´_ゝ`)「うえっ」
連絡が入る。��
最低限の警備区域、バリケードを張って企業側の兵士が戦う場所に、またパワードスーツが現れたらしい。
兄者は撤退を優先した。人員がいなければ、よけいなことはできない。
( ´_ゝ`)「なんか人事とか中間管理職の気分。一番たいへんなのは真ん中だね、まったく」
口元のマイクに話す。
現場へとつないだ。
( ´_ゝ`)「いったん、爆撃してもいいから避難と、これ以上入ってこさせないで。
.
505
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 02:25:01 ID:f3g1KVM20
( ´_ゝ`)「うん。準備が入ったら、ミサイルうつから」
(A^ν^)「兄者さま……」
( ´_ゝ`)「なんだって。忙しいのに」
(A^ν^)「たぶんこちらが優先かと」
(A^ν^)「お客さまです。全壊した施設の前責任者で、プロジェクトの重要人物みたいで……」
( ´_ゝ`)「んん?」
視線をそらす。兄者はAのすぐ後ろにいた男を見た。
( ´∀`)
.
506
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 02:26:01 ID:f3g1KVM20
( ´_ゝ`)「終わってるプロジェクトの責任者がなんだってここに?」ヒソヒソ
(A^ν^)「逃げた実験動物のことじゃないですか。というか本人から来たんですよ。こっちは知らせてないんですけど」ヒソヒソ
( ´∀`)「……終わった?プロジェクトはまだ未完だが」
(A^ν^)「え」キコエテタ
( ´_ゝ`)「え」
( ´_ゝ`)「くわしく聞こうか」
仕方ない。
オートに切り替えて、防衛システムを作動させる。
軍事はもう、ゲームと同じようなものだ。
一気に壊滅させるのを諦めると、兄者は席をたち、別室に男を連れ立った。
.
507
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 02:27:15 ID:f3g1KVM20
( ´∀`)「ああ。その前に頼みがある」
( ´_ゝ`)「俺権限そんなにないぜ。いまテロリストと戦ってる最中だし」
( ´∀`)「簡単だ。わたしを保護してほしいだけだからな」
( ´_ゝ`)「へえ、なにやらかしたんだ」
( ´∀`)「なに。少し命を狙われているだけさ」
( ´_ゝ`)「ふうん。ホントに珍しくないね」
( ´∀`)「わたしの子供たちからね」
.
508
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 02:28:10 ID:f3g1KVM20
( ´_ゝ`)「えーっと駆除?簡潔だな。掃除でもすんの?」
兄者は男の差し出した情報端末から経歴と、行ってきた実験の内容を読み込む。
( ´∀`)「似たようなものだ。しかし内容を把握していないところを見るときみはそこまで重要ではないのかな?だとしたらそれなりの階級の方に話したいのだが」
( ´_ゝ`)「いんや。いま現在タワーの修復と治安維持、国内からの出国なんかは最終的に俺のサインがなければOKできませーん。というわけでどうぞお話ください」
( ´∀`)「ふむ。話というほどではないのだが、私の研究内容は知ってるな?
施設に関して」
( ´_ゝ`)「ああ。でもあれ資料全部紛失しちゃったんだけど」
.
509
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 02:28:57 ID:f3g1KVM20
( ´∀`)「問題はない。結果報告をまとめたものだけだ。しかし無くなったのはどういうものだ?」
( ´_ゝ`)「材料はそろってたんだけどさ、内容と種類がわかんなくて。脱走されたのもまだ特定できてないんだ」
( ´∀`)「ひとつはわかる。わたしを襲ってきたものだから。だが問題なのはもうひとつの方なのだ。生きている検体は捕獲しているものだけなのだね?」
( ´_ゝ`)「うん檻のなかにいるので全部」
( ´∀`)「死んだものも把握できていると」
( ´_ゝ`)「ちゃんとそろえてる。確認する?」
.
510
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 02:29:52 ID:f3g1KVM20
( ´∀`)「いや。もう見てきた。
しかし困ったな。個体のひとつはまだ可能性が残っていて、実験中であるのだ。個体が年数をたつのを待っていたのだが、まさか逃げられるとは思ってなくてね」
( ´_ゝ`)「プロジェクトはまだ続いてるって言ったけど、それどこ情報よ?そもそもあんなの、ただの趣味じゃねーの?いまどきキメラなんて流行らないぜ」
( ´∀`)「環境に適応した生物の進化が目標だった。人間はいま文明から切り離されたら生きていけないからな」
( ´_ゝ`)「それにしたって使い道がないじゃん。人よりちょっと丈夫でも、戦車に勝てるってほどでもないんだろ?」
( ´∀`)「何を言ってる?生物の耐久のことか?」
( ´∀`)「そんなもの、実験中の副産物だ」
.
511
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 02:49:46 ID:f3g1KVM20
ひつじたちの沈黙
.
512
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 02:51:18 ID:f3g1KVM20
( ´∀`)「羊は集団自殺をする。
崖からひとつの個体が飛び降りると、つられて列にならんでいるように他の個体も飛び降りて死ぬ。」
( ´∀`)「この危険察知能力は鳥とよく似ている。
鳥は最初の一羽が飛ぶとそれに釣られて全体が動き出す習性を持っている。
ひつじたちは危機を感じ、逃れようと崖から飛びだすのだ。
そして死ぬ。
学説では危機察知を間違えたひつじに釣られてしまったとの見方が支持されているが、わたしはそうは思わない。ひつじたちは危機を感じていたのだ」
.
513
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 02:52:47 ID:f3g1KVM20
( ´∀`)「増えすぎる、という危機をね」
( ´∀`)「生物には増えすぎた個を淘汰する本能が備わっている。
どれほど時代を越えても、種としての遺伝子に刻み込まれたものが」
( ´∀`)「しかし人間は進化しすぎた。本能に支配された者はもう、ほとんどいない。
不快であるという理由だけで絶滅させられた生物のリストはひたすら長いというのに」
( ´∀`)「細菌、寄生虫はもちろん、作物を荒らす害獣、増えすぎたクラゲやヒトデなど」
.
514
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 02:55:27 ID:f3g1KVM20
( ´∀`)「しかし当然ながら弊害はある」
( ´∀`)「それらがいなくなったせいで、人の長寿も増えた。病気や事故が減り、自然的な死人がほとんどでなくなったのだ」
( ´_ゝ`)「うん、なんとなく予測ついてきたわ」
.
515
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 02:56:30 ID:f3g1KVM20
( ´∀`)「蚊の絶滅を知ってるか」��
( ´_ゝ`)「また古代な昆虫がきたね。とうの昔になくなった害虫だろ」��
( ´∀`)「そうだ。人類の歴史と寄り添うように蚊は人に寄生してきた。
本来は植物の樹液をすすって生きていたものが、ある時動物の体液を吸い、効率のよいエネルギー摂取を知った。そして蚊は進化した。
そのためだけに、針のような口を伸ばし、身体は薄く小さくなり、自らの体液を血にまぜることで凝固をふせがす。
これほど不快な寄生生物は他にはおらん」��
( ´_ゝ`)「いまはもう居ないだろう」
.
516
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 02:58:28 ID:f3g1KVM20
( ´∀`)「いなくなったのではない。
自然的には絶対にな。
人が繁栄すればするほど、蚊は繁殖した。
ときに病気を媒介する害虫となって。しかしいまはもう自然公園の図鑑目録でしか見られない希少種だ。それがなぜかわかるか」
( ´_ゝ`)「さあ。先人さまの、偉大なる努力かな」
( ´∀`)「まさにそのとおり」
( ´_ゝ`)「あたってんのか」
.
517
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 03:00:31 ID:f3g1KVM20
( ´∀`)「人はこのやっかいな同居人を駆逐することに成功した。長い年月をかかて。彼らが繁殖すればするほど、数を減らすように」
( ´_ゝ`)「人為的に絶滅させたのか」
( ´∀`)「そう。繁殖の能力のない雄を作りだし、雌と掛け合わす。
その卵は孵らない。そうやってながく根気強く、次世代につなげる鎖を切ったことによって子の生まれなくなった蚊はやがて死ぬ。そして断絶した」
( ´_ゝ`)「ああ、なるほど」
( ´_ゝ`)「あんたはそれを、人間にもしようとしたんだな」
( ´∀`)「of course!」(言うまでもなく)
.
518
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 03:01:37 ID:f3g1KVM20
( ´∀`)「地球という箱庭で生物が増えすぎないように、管理するのは征服した者の義務だ。
人類もそれに当てはまる。
だが本能を抑えて、理性があるうちは誰が死にたがる?だから種族衰退の遺伝子を組み替える。大量に、人が死ぬように」��
( ´_ゝ`)「傲慢だね。自分たちは生き残ると思ってる?」��
( ´∀`)「結果だけは予測はできるが絶対ではない。わたしは殺されないかぎり死なないように」
( ´∀`)「しかし国別に、人種別にそれぞれ異なる人間は1000人いればいい。70億は、多すぎるのだ」
.
519
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 03:03:08 ID:f3g1KVM20
兄者は一通り説明を聞いた。
講義するように長かったが、理解させるのを学者らしく上手で、主要な研究内容の目的と結果をわかりやすくまとめた。
これまでの国の方針、経営価値の観点から見た、企業側の不可解な行動を理解する。
シリーズ制作の秘話や、選ばれた管理者の存在理由。
なかなか壮大で、しかし不都合が多すぎるように思える。
.
520
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 03:04:21 ID:f3g1KVM20
( ´_ゝ`)「だから反抗しない人間が必要だったのか」
( ´∀`)「そうとも。殺し合うにも人数が必要だ。だが少数のなかで争いあっていては、絶滅してしまう。支配する側にとって統治はながく続いたほうがいい。」
( ´_ゝ`)「殺してもいい。というか、殺さなきゃならない。自滅はだめなの?」
( ´∀`)「それを待ってるあいだにどんどん増えるぞ。暗黙の了解とはいえ、みなが皆それを了解するわけではない」��
( ´_ゝ`)「でも決定されたんだろ?なら堂々とやればいいじゃないか」
.
521
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 03:06:26 ID:f3g1KVM20
( ´∀`)「わかっとらんな。生き残るからこそ、下手なリスクを負えないのだ。その後のことを計画せねばいけん。
現在だけでなく未来を考えると、大虐殺なんて黒歴史だぞ。
必要なことといえどな。教科書から消されるだろうが」��
( ´_ゝ`)「わかんねーな。なんだってそう大がかりな事すんのか。殺し合いなんてここじゃなくてもどこだってやってるじゃないか。
一発のロケットで方がつくのに、なんでそう長期な計画なわけ?」
( ´∀`)「長い目で見ているからだ。核なんて使えない。汚染は除去するのに時間がかかる。地球の浄化を待ってたらそれこそ本末転倒だ。救うのは地球ではない。」��
( ´∀`)「人だ」
.
522
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 03:07:27 ID:f3g1KVM20
( ´_ゝ`)「種族衰退なんてもう始まってると思うんだけど」��
( ´∀`)「お前、デザイナー生まれじゃないのか」
遺伝子配合列、デザイナーベビーは当然のように行われている。
優秀な子、美しい容姿、運動能力、どれも平均以上に仕上がるように。
組み替えられた遺伝子で受精させられる。
一定の地位と収入があれば、誰でもサービスを利用できた。
( ´_ゝ`)「ちょっと違うけど、まあ間違ってないな」��
( ´∀`)「ならわからんな。人工じゃなく、自然受精は本能だ。
どこにでも人間は適応する。こちらが禿げ山に移植した緑を、若芽が出るたびに貪るシカと同じだ。」��
.
523
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 03:08:29 ID:f3g1KVM20
( ´_ゝ`)「全体通して徹底すればいいじゃん。いまだって多少モメてるけどだいたい力で征服できてるのに」��
( ´∀`)「遠い未来より目のまえの利益に群がるのが本能だ。いま死にそうなら全力で生きるチャンスを探し、抵抗する。文明と一緒だ。
この利便さをもう人類は捨てることができない。どこか遠くで誰かが死んでも、電気やガス、水道を利用することが重要。それを捨てれば誰かが助かると知っていてもな」
( ´∀`)「人の原罪だ」��
( ´_ゝ`)「科学者なのに神を信じてんの?」��
( ´∀`)「信仰と技術は関連がない。神に祈っても、絶滅する動物が減るわけでもないし、プランクトンが増えるわけでもない」��
( ´∀`)「使いすぎた資源は再生せねばならん。そのためにはいまの人類数は多すぎるのだ」
.
524
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 03:09:24 ID:f3g1KVM20
「人間は繁栄しすぎた。もはや70億は管理できない。」
「間引きが必要なのだよ。それもゆるやかに、誰にも気づかれることないように」
.
525
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 04:07:54 ID:f3g1KVM20
ブーン系に愛を叫んでくれた人ありがとう
そしてシナリオライターに敬意を。
妄想するのと創造するのはだいぶちがうことがわかります
fateとかほんとにすごいなぁ
待っててくれた人たちに感謝
あなたたちのレスでやる気が起きました
526
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 13:14:37 ID:yksYnmh.0
乙
527
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 18:08:08 ID:f3g1KVM20
('、`*川「ここから出たら、どこへ行きたい?」
砂漠がいいな。
青い月のある砂の海。
施設の白い壁に張られた絵は、アラビアンナイトの世界を描いていた。
ラクダに乗った布のたっぷりとした装束の男が、もうひとり女の手を引いている。ひたすら遠く、どこまでも続くようなだらかな地面。
でこぼこした丘さえ、すべてが砂で作られていた。
.
528
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 18:09:14 ID:f3g1KVM20
('、`*川「アンタに似合うかもね。どっちを着たい?男の服と、女の服。」
……男がいい。いまの名もいやだ
('、`*川「気に入らない?女神の名なんて、とても贅沢じゃない」
だからこそ。
勝手にこちらを神聖視されても困る。
('、`*川「じゃあでぃ、ってのはどう?元とそんなにもじりを変えてないし、男女両方で使えるでしょ」
でぃ。意味はあるの?
('、`*川「……day.日々って意味。いつまでも続けばいいわね」
.
529
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 18:09:56 ID:f3g1KVM20
日々続けばいい。
研究所ではそのささやかな願いすら、適わないことだと知っている。
ふっと懐かしい夢が途絶える。��
唯一でぃの身体に興味を示さなかった人間。��
彼女がかまわないからこそ、でぃは懐いていた。
そして様々な知恵を与えてくれた。
拒否してはいけない。
曖昧に、何かを濁すようにすること。
与えられることに対して、次に繋がるように活用すること。
自分の不利になりそうなことは、研究員の誰かに任せることによって選択権を得ること。��
……愛玩物は、哀れであるからこそ、愛されるのだということ。
.
530
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 18:10:51 ID:f3g1KVM20
从'ー'从「……泣いてたの?」
揺さぶられて。
起こされた。ワタナベが眠そうに目をこする。
彼女の髪先が、あごに当たる。
胸にワタナベの顔があり、心臓に寄せるようにして彼女が寄り添っている。
ただふれ合うだけの、体温をわけ合うということは懐かしい。
「泣いていないよ」
从'ー'从「誰を思い出してたの?男?女?」
ときどき妙にするどい。
ごまかすことなく、女と答えた。
どこに居るのかもわからない。
でぃにありったけの知識を与えてくれたあと、姿を消した。会えたらいい。でもその確率はきっと少ない。
.
531
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 18:11:33 ID:f3g1KVM20
从'ー'从「……男じゃないなら、いい」
ワタナベは再びでぃの胸に頭を乗せて、眠りに落ちる。
出会ったばかりではあるが、でぃはもう彼女がなにを求めているのかを察知した。
それは檻のなかで仲間たちがみなで共有しているものだ。
暖かく、ゆるやかな温度。
ワタナベはでぃに役割を求めてない。
それはとてもすてきなことだ。��
でぃがでぃのままで居られるというのは、これまでになかったから。
.
532
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 18:12:48 ID:f3g1KVM20
男であり 女であり 父であり 子であり
伴侶となり 妻であり 夫であり
またそれらすべての母でもある
.
533
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 18:13:42 ID:f3g1KVM20
怖い。
許可されていない行動はいけない。
入ってはいけない場所。
聞いてはいけない単語。
見てはならないもの。
無意識にそれらを避けてしまう。
長年の教育は、わかっているのに選択肢を制限するようだ。
从'ー'从「どうする?」
ワタナベにうなずく。
大丈夫。ここは施設じゃないし、でぃはもう管理された個体じゃない。
逆らうことは痛みに繋がらない。
なによりワタナベは強いから。それにかなり、励まされる。
.
534
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 18:15:30 ID:f3g1KVM20
想像していたよりずっと質素だった。
もっと厳重な、警備がたくさんあって、すぐにでも誰かに連絡が行くような場所だと思っていた。
制作者の住所はパートエリア。ゴールデン地区に近いがそこまでの高級街でない。
だから襲撃するのも、難しくなかった。��
通りをいくつか点検し、人のいない道から入る。
誰かを襲うのに都合のいい時間帯は昼間だ。
人の多いところへ逃げればいい。
最近は物騒で、誰が撃たれてもみな知らないふりで忙しい。人の群れは防御の代わりにもなる。��
でぃは呼吸する。
全身の強ばりを解くように。支配者を殺したら、何もかもから自由になれるだろうか。
ワタナベにもらった銃身を握る。
黒くて冷たい。これが発射したときに一瞬で熱くなる。まだ撃たれたことはない。��
.
535
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 18:16:39 ID:f3g1KVM20
だから銃の本質を知らない。
だが知らなくても、人を殺せる。
ワタナベが小型の重機カッターで、ドアの鍵を壊す。
本当に彼女はなにもかも、役にたつ。
でも恐ろしい。
まだ何も起きていないのに、なぜか怯えている。
虐げられた記憶がでぃの警戒心を刺激している。��
从'ー'从「入るよ」
しぃっと合図をして、彼女はドアの隙間に入る。でぃも続いた。
大丈夫、いまはまだ。ワタナベが隣に居るかぎりは。
ドアがひっそりと開いた。
.
536
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 18:17:44 ID:f3g1KVM20
室内は荒れていた。
それほど広くもない、せいぜい4Lの広さ。
当時の研究職員の家としては慎ましいほどだ。
ワタナベが無造作になかにはいり、歩く。
歩くたびに紙を踏んだ。英字を印刷された書類が、床の隙間を埋めるようにして散らばっている。
家主はいなかった。
この荒れようからみて、人が住めるような部屋ではない。
でぃは拍子抜けした。
それからなにが起こったのか、推察しようと部屋を調べる。��
壁に設置されている棚はまっぷたつに割れていた。
本が無造作に散らばっていて、家主は逃げることしかできなかったのではと思うような有様だった。
金庫は見つからない。
貴重なデータは必ずこの家にあるはずだった。
しかし情報を納めるような場所はどこを探してもない。
コンピュータが机にあったが、それはすでに破壊されていた。
.
537
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 18:19:56 ID:f3g1KVM20
从'ー'从「ね、なにを探したらいい?」
ワタナベの問いに答えられない。
関連するデータひとつを見つけるのに、時間がかかりそうだ。
もしかしたら床に散乱する紙ひとつひとつを調べなくてはいけないのかもしれない。
げんなりしかけて、いいや、と考えなおす。��
情報室で持ち帰ったデータを読み解くことはできなかったが、でぃの関わった結果はきっと貴重なもののはずだ。
でなければあのように保管されているはずがなく、無造作にばらまかれているわけがない。
だが、本棚にも、机にも、書斎にも、見あたらなかった。
そんなはずがない。��
しかし、ここがなぜ荒れているのだろうか。
この家は一番上の男の家だ。
責任者、すべてを決めるもの。
でぃたちにとって絶対の存在だった。
.
538
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 18:20:58 ID:f3g1KVM20
(#゚;;-゚)「まさか……」
でぃは思い直す。そもそも、荒れた家になにがあったのか?��
(#゚;;-゚)「ワタナベ、出よう。もうとっくに、持ち出されたんだ」
罠の可能性が頭をよぎる。
散乱された部屋の様子を見た瞬間、逃げるべきだった。
そのことに思い立ち、ワタナベに声をかける。
(#゚;;-゚)「ワタナベ……?」
.
539
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 18:22:03 ID:f3g1KVM20
さっきまですぐ隣に居た気配がない。書斎には誰もいなかった。
倒れた棚の影をのぞきこんでも、彼女の姿がない。
(#゚;;-゚)「ワタナベ」
心臓がいやな音をたてる。
どうして。いったいどうして、でぃは彼女を万能だと思っていたのだろう。
警戒し、一度確かめた奥の室内を伺いながら、進む。
自分のたてる音しか聞こえないというのは、不気味で恐ろしいことだった。
身を潜めようとしたが、進むたびに足はくずを踏むことになり、どのみち隠れることは難しい。
そもそもでぃは戦闘訓練を受けたことがない。
.
540
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 18:22:50 ID:f3g1KVM20
音をたてないようにしてさきほどまでワタナベが調べていた部屋に入る。
室内灯のあかりがなく、目はこらしても奥は見えない。
(#゚;;-゚)「ワタナベ……?」
こもるような声が聞こえた。
うなるような、低い声。��
それが口元をふさがれて、おびき寄せるために拘束されていたワタナベと気がつくまえに、でぃは影に襲われた。
.
541
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 18:25:01 ID:f3g1KVM20
.
542
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 18:25:55 ID:f3g1KVM20
川*゚ー゚)「やだやだー!」
「どうした。お前は知能には問題がない。分別がついているはずだろう」
川*;ー;)「でも、やなの!せっかくお絵かきしてる時間だったのに!」
「なんだ単なるわがままか。早く処置室にいけ。でないと強制するぞ」
川*;ー;)「やだもん!」
「火傷がつくとサーモグラフィーが誤作動をおこすから使いたくないんだ。いい加減しろ」
川*;ー;)「い、やあああー!!」
.
543
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 18:26:58 ID:f3g1KVM20
手を引いてあげればいい。
背中をなでて、優しくなだめてあげればいい。
けれどここの人間に、それができる人はいなかった。
でぃは古参だ。もう八年以上、同じところに居る。
職員たちの求めていた結果であり、代えがきかない。
だからこそ、長らく学ぶことも多かった。
そして、目のまえの彼女は数字だけつけられ、名前がない。
入れ替えの比較新しい個体だった。
彼女の肌は青い。
皮膚を形成する細胞には虫類のものを混ぜて創られた。
水に濡れると美しい緑色に変化する。
つぶつぶと盛り上がった鱗に水がたまり、はじかれて流れていく。
それをでぃは美しいと思ったが、職員の大半は異形の姿を好んでいない。
人に近い姿でなければ、同情も沸かずただのサンプルだった。
.
544
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 18:27:51 ID:f3g1KVM20
「ねぇ。あとで絵本読んであげるよ。それと飴をもらってきてあげる。一緒にいこうよ」
感情だけは職員にコントロールできるものではなかった。
それ以外のすべては管理されているものの、感情だけは誰にも管理できない。
サンプルの彼女は年数もたっておらず、心は人の子と同じように幼かった。
他の大半のサンプル体も同様だ。
ただ外見は成熟した大人の姿そのものだから、ぐずる彼らに職員たちは苛立って、安易な叱りかたをする。
.
545
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 18:28:43 ID:f3g1KVM20
「いい子だな、××××。そのまま連れてってくれ」
頷くと、彼女の手をひいて歩き出す。
まだかなり渋っていたが、職員がセーバーをかざす様子を見せると従った。
スタンガンを使いやすいように棒状にしたもので、どれほどの巨体でもいうことを聞くようになる。��
しゃくりあげる彼女の頭をなでて、慰める。
たまにもらえる自由時間を奪われたのだから、彼女の怒りは正当なものだ。
けれどその訴えは届くはずがない。
水槽のなかの魚の怒りだった。
.
546
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 18:29:35 ID:f3g1KVM20
川*゚ー゚)「……行きたくないのに」
「仕方ないよ。痛いのはいやだろう?」
川*゚ー゚)「好きじゃないけど、べつにいいって思う。やればいいって」
「それはだめだよ。」
川*゚ー゚)「なんで?」
「危ないから。」
川*゚ー゚)「痛いのあたしだもん」
「でも危ないんだ」
.
547
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 18:30:22 ID:f3g1KVM20
息をすることさえ、管理されている生活で、彼らの機嫌を損ねることの恐ろしさ。
それをどう伝えようか迷う。
しかし彼女はまだ子供で、検査が多いということは十分、研究の余地があるということだった。
ここで聞き分けのいい子になってしまえば、また別の危険がある。
でぃは迷って、たしなめるだけにした。
「せっかくきれいな肌なのに、傷がつくのはもったいないよ。さっきの人間もそう言ってただろ?」
川*゚ー゚)「きれい?」
「うん」
川*゚ー゚)「きれいってなに?」
彼女は、まだ、その概念を持っていなかった。
.
548
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 18:31:07 ID:f3g1KVM20
施設のなかは防音に設計されている。どれほど叫ぼうと、その声が部屋に漏れることはない。
けれど処置室のなかに入ると、経過を確認するためガラスが薄くなり、実験最中の“音”がよく聞こえる。
削られる音。
炙られる音。
切断する音。
耳がいい個体は耐えられなく、早めに意識を落とす。
彼女は怯えなかった。
まだ音の正体を知らないのだ。
泣かれることがなかったのでほっとした。
.
549
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 18:32:15 ID:f3g1KVM20
ぐううううううう
低いひくいうなりが聞こえる。
ふたりとも身体をこわばらせた。
本能だった。
獣のような声。
威嚇のようだが、これが痛みに耐えているときの声だと知っている。
ガラスのなかで、一匹の異形がいた。
全身鱗に覆われ、切れ目のような黒い眼球がこちらを見ている。
衝撃の音がして、壁が揺れる。
異形が壁にたたきつけられた音だった。
抵抗し、ガラスのなかの物を壊すためにまた暴れる。
川*゚ー゚)「あたしあいつ嫌い」
「どうして」
川*゚ー゚)「こわいし、うるさいんだもん」
「……好きでそうやっているんじゃないんだよ」��
呟く。
見咎められたような視線を感じて、振り返った。��
ガラスのなかの異形と、目あったような気がした。
.
550
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 18:36:01 ID:f3g1KVM20
.
551
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 18:37:01 ID:f3g1KVM20
( ´_ゝ`)「……」
( ´_ゝ`)「いつだっけかな」
( ´_ゝ`)「むかしむかし、石油がなくなったら次世代エネルギーがどうのこうのってあったよな」
( ´∀`)「ほう、おまえ見かけによらず年がうえなのか」
( ´_ゝ`)「ちがう。新聞でみたんだ。社会の流れを知るのに、それが一番いいから」
.
552
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 18:38:22 ID:f3g1KVM20
( ´_ゝ`)「学者とか政治家とかが、真面目な話てて、やっぱあれだね。バカは怖いよね」
( ´_ゝ`)「石油枯渇なんていまじゃ誰も信じてないのに」
( ´_ゝ`)「でも当時はそれが最先端のニュースだったんだぜ」
( ´_ゝ`)「国民向けには」
( ´∀`)「そうさな。」
( ´∀`)「いくらなんでも、調査報告を受けてないはずがない」
( ´∀`)「数人は知ってたはずだ。そしてそれが、原発を推進することになった」
.
553
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 18:39:17 ID:f3g1KVM20
( ´_ゝ`)「それだよ」
( ´_ゝ`)「資源再生なんて、なんて当たり前のことをいまさら言うんだ?」
( ´_ゝ`)「エネルギーも、なにもかも、取り尽くしたら別のもので代用できるじゃねぇか」
( ´_ゝ`)「なあ、いまさら国民向けの演説なんていらない」
( ´_ゝ`)「人類は確かに多いけど、それって建前だろ?」
( ´_ゝ`)「いいじゃん。殺し合いで」
( ´_ゝ`)「どの時代でも必ず人は死ぬんだからさ」
( ´_ゝ`)「わざわざ、そーいう事で守らなくても」
.
554
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 18:40:13 ID:f3g1KVM20
( ´∀`)「……」
( ´_ゝ`)「人類を救うんじゃなくて、自分のモノにしたいんだろ。とんだ世界征服だわ。規模がでかすぎる」
( ´_ゝ`)「で、あんたは多分人が減るよりもそれを人間で試したかったんだろ」
( ´_ゝ`)「いいね、いいね。そしてウチのオヤジが計画をすすめたってことだ」
( ´∀`)「……オヤジ?」
( ´_ゝ`)「製作者にはその責任があるじゃん?俺を作ったナンバーズのことさ」
.
555
:
名も無きAAのようです
:2015/06/20(土) 18:41:11 ID:f3g1KVM20
( ´_ゝ`)「てかさ、この実験やばくない?下手に感染爆発みたいなこと起こったらそれこそ人類絶滅じゃん」
( ´_ゝ`)「そーいうことも、考えなかったの?」
( ´∀`)「むろん、対策はある」
( ´∀`)「管理できなくなるなど、悪夢だ。バイオハザードなど、決して想像上のものではないからな。」
( ´∀`)「繁殖によって人が減らせるのなら、繁殖によって増やす」
( ´_ゝ`)「?試験管で生産でもするのか」
( ´∀`)「ちがう。人はいつの時代も、人口授精に憧れる。自然でないものには排他的だ。」
( ´∀`)「だからこそのプロジェクトなのだ」
( ´∀`)「ただの実験ならば、経過だけを観察すれば良い」
.
556
:
名も無きAAのようです
:2015/06/22(月) 00:55:08 ID:vh1IwXQk0
しえん
557
:
名も無きAAのようです
:2015/07/01(水) 08:12:13 ID:ByrLZ9HI0
面白いよー
おつ
558
:
名も無きAAのようです
:2015/10/23(金) 12:51:54 ID:iAVjbgPE0
待ってる
559
:
名も無きAAのようです
:2015/10/31(土) 22:54:08 ID:gSUaJlqw0
よくわかる登場aa紹介
( ´_ゝ`)
黒幕をボスに持つ悪役
顔のでない上司に使われてて大変。
でもわりと気楽にやってる
というよりも心配とかべつにない
生まれの理由によりサイコパス
(A^ν^)
ナンバーズとかいう地位そこそこのクローンに生まれたのによりにもよって ( ´_ゝ`)の部下に
生体的に機能は普通の人間なので戦えません。下っぱ中の下っぱ。
たくさんの( ^ν^)が出てきたらいつの間にか殺されてるモブくらいのたち位置
出世して生き延びたい
( ´∀`)
謎謎マッドサイエンティスト
誰もが考えるけど実際にやったらこれはひどい中二だよね!を実際に、やっちゃった人。クリスチャン。
右の頬を打たれたら諭すために左を差し出すような奴。
善人が幸せについて本気で考えた結果
560
:
名も無きAAのようです
:2015/10/31(土) 23:05:19 ID:gSUaJlqw0
从'ー'从
かわいいは正義
かわいいから男を食い物にしてもいいよね(※物理的に)
だって男もみんなやってるじゃん?
でもでぃだけは特別。むしろ貢いじゃう勢いで執心してる
男でも女でもでぃに近づく奴は排除するつもり。サイコパス
(#゚;;-゚)
いまのところ性別不明にして置きたかったのに作者の力量不足でそうはいかなかった模様。叙述トリックとか、やってみたい人生でした
虐げられた経験から他人の感情の機微にものすごく敏感。
だから 从'ー'从のことは好きだし信頼してる。愛が重すぎて疲れるというのはない。むしろ重すぎる愛しか知らない
川*゚ー゚)
あの子
誰かの回想に出てきた。
青い肌の頭が弱い子らしい
実はこいつもサイコパス
561
:
名も無きAAのようです
:2015/10/31(土) 23:18:44 ID:gSUaJlqw0
('A`)
抵抗勢力の中心人物のひとり
目的は不明
たぶん遊ぶ金欲しさ
頭がいろいろ回るので、悪巧み役
酒と女と金と、殺しくらいしか娯楽を知らない。少年には優しい。(意味深)
後天的環境からのサイコパス
※(生きていくうえで全く役に立たない知識)
ここでのサイコパスの意味合いはまともな人ではない、躊躇なく人を殺せるという意味合いです。シリアルキラーは人を弄くりたい、殺したいという欲求がメインなので、サイコパス≠シリアルキラーです。覚えておきましょう
( ФωФ)
ダンディかつ渋めの男前。aaでさえこの貫禄。猫のようには全くもって見えない。ヒーローにしようかかませ役にしようか本格的に悩んだ。
でもよく考えたらどのたち位置にいるかで生きる立場は変わるので、意味がないことに気づく。
ヒーローであると同時にどうしようもないチンピラ。
それなりに善人であり、生きていくためには悪人。つまりは普通の人
でもサイコパス
※サイコパスとは自己中心的であり、目的のためなら躊躇なくそれを排除できる資質の人ということです
しかし資質だけであり、それは本能的にはセーフです。得をしたい。利益を得たい。ほらね、普通の人でしょ?
562
:
名も無きAAのようです
:2015/10/31(土) 23:28:20 ID:gSUaJlqw0
(`∠´)
aaの名前を忘れた。こいつなんて言ったっけ?ググってもでてきませんでした。
素敵で無敵じゃないほうの情報屋。
収入源は主に人の噂話。
なので从'ー'从からは嫌われてる
人間性は好きじゃらないけど、そこそこ役に立つからまぁいいかって対応ばかりされる。
胡散臭いから仕方ない
※重大なネタバレ※
実は人情に弱い。
でもサイコパス
たぶん死ぬ
563
:
名も無きAAのようです
:2015/10/31(土) 23:29:09 ID:gSUaJlqw0
近いうちに投下します。
待っててくれた人LOVE!
期待に添えるよう頑張ります
564
:
名も無きAAのようです
:2015/10/31(土) 23:38:37 ID:gSUaJlqw0
ラスト
( )
謎の男
(#゚;;-゚)と从'ー'从を襲撃した
顔も姿もわからない。けど男。あとごつい。
notサイコパス
565
:
名も無きAAのようです
:2015/10/31(土) 23:52:42 ID:WzmgPZnY0
ベル……
566
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 10:38:00 ID:tyu52b0w0
待ってました
567
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 20:52:36 ID:yXXE1w160
ワタナベは油断したわけではない。
ただ暴漢者が強すぎた。銃を向けるまえにそれはたたき落とされ、腰のナイフを取る時間もなく頭を鷲掴みにされる。
声をあげようとした口は乾いた手のひらでふさがれ、喉を強く押されるとうめくことも苦しい。
.
568
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 20:53:19 ID:yXXE1w160
ワタナベを捕まえた腕は強く、彼女が全身で抵抗しても微動だにしない。
まるで柱のようだ。しかしワタナベには危険に怯える本能がすっかりすり減っている。
恐怖よりも、怒りのほうが強い。
でぃになんとか知らせようとするのだが、闇に潜む暴漢はそれをさえぎるようにワタナベの身体を圧迫した。
肋骨がきしみ、声が出せない。
.
569
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 20:54:11 ID:yXXE1w160
(#゚;;-゚)「ワタナベ……?」
警戒するでぃの声が聞こえると、足音がした。
来てはいけない。
もがいて暴れようにも、身じろぎするたびに強く、握られた。
解放は一瞬だった。目の前にでぃがあらわれた瞬間、暴漢は襲いかかり、でぃを抱き込む。用なしになったワタナベは放り投げられた。勢いつけて壁にぶつかり、しかし痛がっている時間はなく。
.
570
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 20:55:00 ID:yXXE1w160
身体が自由になるとすぐに解体用のナイフを腰から引き抜き、でぃに掴みかかる男の背中に突き立てた。
肉を切り分ける刃物は十分に研いであり、切れ味はするどい。
しかし簡単に振り払われ、衝撃にワタナベの方が吹き飛ぶ。
突き立てたはずのナイフの刃先はぱきりと折れた。
从'ー'从「うそ……」
.
571
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 20:55:52 ID:yXXE1w160
从'ー'从「やだ、!かえして!」
身体をおこし、再び男に立ち向かっていく。
覆面をした男が横わきに抱えているのは、ぐったりと意識をなくしたーーーーーでぃ。
从#'ー'从「かえせ!!」
落ちた銃を拾い、男に向けるとすぐさま引き金をひいた。
連射機能はついていないので、慎重に男の顔面だけをねらう。
荷物のある男はそのまま撃たれ、頭に穴をあけてくずれ落ちるはずだった。��
しかし男は片腕で顔を防御する。
異常なことに、どれだけ撃っても、弾ははじかれるだけだ。
苛立ち、ワタナベは沸騰した。
.
572
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 20:56:43 ID:yXXE1w160
从#'ー'从「ふざけるな!ふざけんなよ!かえせ!!」
从#'ー'从「それは!あたしのだ!!!」
ワタナベは苛立って、金属の切断に使ったカッターを取り出し、振り回した。スイッチを入れると刃先がぐるぐるまわり、側にあった椅子やテーブルにぶつかり、それらを削る。カスが散った。
.
573
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 20:57:25 ID:yXXE1w160
从#'ー'从「かえせ!!!」
銃弾をふせいだ腕に振りかぶり、カッターで切りつけた。
ごりごりと削れる音がすると、ばちっとなにか細かなものが粉砕し、舞った。��
男の衣服が破れて、奇妙な肌が露わになる。顔を近づければうろこ状だとわかっただろう。��
しかしワタナベの視線はずっとでぃにあり、それを気にすることなくもういちど、切りつけようと振りかぶった。
.
574
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 20:58:28 ID:yXXE1w160
从#'ー'从「切断してやる!」
しかしカッターを振りかざす動作の隙をねらい、男の拳が振ってくる。
刃物を飛ばす勢いでワタナベは殴られた。身体はふっとび、机にぶつかると割れていた板がさらに砕ける。
壁に頭を打ったようで数秒ほど意識をとばした。
気がついたときにはもう、男も、でぃも居なくなっていた。
从#'ー'#从「ああああああああああああああああああああ��あああああ」
.
575
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 21:00:16 ID:yXXE1w160
クリスチーヌ! クリスチーヌ!
ああ降りていきたい!
降りていきたい!
降りていきたい!
すべての出口が閉ざされている、闇の井戸のなかへ!
『オペラ座の怪人』
.
576
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 21:01:16 ID:yXXE1w160
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577
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 21:02:21 ID:yXXE1w160
(A^ν^)「すいません。お話中たいへん申し訳ないんですが…」
( ´_ゝ`)「なんか進展あった?」
(A^ν^)「はい。スーツがめっさ暴れてまくってます。どうしましょうか」
( ´_ゝ`)「んー。なんかいまの話きいちゃったらからなー」
( ´_ゝ`)「いまいちやる気にならねーわ。ちなみに被害どんくらい?」
(A^ν^)「撤退したからシェルター止まりにはなってるんですけど、最低限の交戦しかやってないので破られそうです」
( ´_ゝ`)「威嚇射撃2、3発くらい打っとけ」
(A^ν^)「スーツはいいんですか?」
( ´_ゝ`)「あんな嫌がらせみたいなのまじで捕まえようとしたら時間かかってしょうがないじゃん」
( ´_ゝ`)「向こうもわかってっから撹乱しかしないんだよ」
.
578
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 21:03:12 ID:yXXE1w160
(A^ν^)「了解しました。ミサイルはどうしましょうか?」
( ´_ゝ`)「あー…」
( ´_ゝ`)「うーーーーーーーん…とね」
( ´_ゝ`)「どうする?」
( ´∀`)「わたしに聞くのかね?司令官はきみだろうに」
( ´_ゝ`)「だってサンプルはたくさんあったほうがいいんだろ?」
( ´_ゝ`)「いまここで死んだら都市部と地方で結果異なるよ?」
( ´∀`)「ふむ。状況はそれほど逼迫してはいないのか」
( ´_ゝ`)「うん。だってここ囮だし」
.
579
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 21:04:05 ID:yXXE1w160
(A^ν^)「え?」
( ´∀`)「……なるほど。交通量の高い場所を抑えて制限をかけたのか。どうやらお相手はボードゲームが好きなようだね」
( ´_ゝ`)「そらそうよ。俺らとガチでやりあって、得することなんかねーじゃん」
(A^ν^)「え囮?」
( ´_ゝ`)「あれ言ってなかったけ?」
(A^ν^)「でも、だって、あの。少年兵とかばんばん死んでるんですけど」
( ´_ゝ`)「戦争だもの」
(A^ν^)「市民とか、流れ弾受けて」
( ´_ゝ`)「富裕層はいないからへーきへーき」
(A^ν^)「傭兵の3割くらい負傷してますけど」
( ´_ゝ`)「金払うのバカらしくなるよねーでも本人たち納得して契約してるからいいんでないの」
.
580
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 21:04:54 ID:yXXE1w160
(A^ν^)「いや、そんなつもりじゃないんですけど、」
(A^ν^)「だって…こんなに死人出てるのに、被害でかいのに、本当に囮なんですか?」
( ´_ゝ`)「うーん。そっかお前したっぱだもんなぁ」
(A^ν^)「な、なんですか?なんかだめでした?」
( ´_ゝ`)「だめっていうかー。いやだめだなこりゃ。御愁傷様。出世できないわお前」
(A^ν^)「こ、こんなに真面目なのに?」
( ´_ゝ`)「真面目ってか、普通っていうか平凡っていうか平均値っていうか」
(A^ν^)「」
.
581
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 21:06:18 ID:yXXE1w160
( ´_ゝ`)「だってさー、俺らや向こうってべつに死傷者って数えてないしー」
( ´_ゝ`)「被害のでかさ加減からいってもせいぜい金しかないぜ?それも爆発してる車両は強奪したもんだし、武器はメンテナンス不要の粗悪品。たまに自分の頭撃ち抜く用。そして人件費なんてタダ同然」
( ´_ゝ`)「ここでいう機会費用ってなにか、おまえわかるか?」
(A^ν^)「はぁ…しなかったことに対するもしもの費用ですよね?ええと、この場合もし迎え撃たなかったら、その間何をしているか、ですか」
※詳しくはググろうね
( ´_ゝ`)「そう。そもそも作戦なんてないに等しいようなもんだろ。ごり押しのテロなんてやらかすからには、必ず目的がある。前線で戦ってるやつらは知らされてないけど、奥に中心人物なんて絶対いない。」
( ´_ゝ`)「意味がないから。これだけ大量に人も武器も反乱も備えてるのに?」
.
582
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 21:07:08 ID:yXXE1w160
( ´_ゝ`)「だから向こうがやりたがってるのは、俺らが援軍を送るための道路を使えなくすること、それから最高司令官の足止め」
( ´_ゝ`)「つまり俺の足止めってこと」
( ´_ゝ`)「あー俺って優しいー。敬ってもいいよ」
(A^ν^)「ありがとうございます」
( ´_ゝ`)「だからおまえつまんねぇんだわ」
(A^ν^)「」
( ´∀`)「しかし、いいのかね?それだけわかっていながら、なぜ対処をとらない」
( ´_ゝ`)「だってべつに、本気になるようなことじゃないし」
(A^ν^)「いやいや、武器取られちゃったら不味いですよ。うちの製品ただでさえ国際的に非難浴びてるんですから、」
( ´_ゝ`)「また作ればいいし。」
( ´∀`)「反乱は必ず鎮圧できるという自信かね?いずれ足元を掬われるぞ。どれほど会社が優れていても、少数は不利ではないか」
.
583
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 21:07:56 ID:yXXE1w160
( ´_ゝ`)「いやだってさ。いったじゃん。出国と入国は俺が管理してるって」
( ´_ゝ`)「そもそも、誰もここから出す気なんてないよ」
( ´_ゝ`)「人間は減らさなきゃってさっき言ってたやん」
( ´_ゝ`)「おんなじ意見なんだよね。うちのとこもさ」
( ´∀`)「余裕があるということか」
( ´_ゝ`)「生きてここから出さないってこと」
( ´_ゝ`)「そいつがなんであれ、絶対ね」
.
584
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 21:09:42 ID:yXXE1w160
.
585
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 21:10:27 ID:yXXE1w160
食事の時間が好きじゃなかった。
それは食事ではなく、ただの補給だったから。
個体によって栄養素も取り入れる薬も違う。病院食ですらない。
経口摂取さえできなく、直接チューブで点滴を流し込まれる者もいた。
そんな彼らにとって補給は憂鬱な時間だった。しかしごくわずかに、鈍くとも味覚を形成された者たちがいる。
甘みに苦み。それだけしか感じ取られないが、食べることの楽しみを得ることはできた。
.
586
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 21:11:19 ID:yXXE1w160
「……おいしい?」
川*゚ー゚)「うん!」
ただ用意されるのは最低限の固形。
言い換えれば残飯。
職員の廃棄される分を、適当に混ぜ込んだもの。
人の食事のように配慮されていないのは当然。
いくつもの種類がひとつの鍋に捨てられた自分には口にすることができないほど、悪臭が強い。酸っぱい匂いが鼻につく。
しかし味覚や嗅覚が発達していない個体には、それでも十分味がするご飯なのだ。
無臭の流動食や、味のしない錠剤よりもましな。
.
587
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 21:12:08 ID:yXXE1w160
「……お皿がほしいね」
川*゚ー゚)「?なんで」
「スプーンをもらってこれば、汚れないですむから」
川*゚ー゚)「へんなの!あとで洗えるよ」
明るく、屈託ない顔で彼女は笑う。
どろどろに混ざった、元がなにか判別ができないモノで顔や手を汚している。手づかみで水っぽさのある“食事”を取っている。
食べずらくなれば、直接鍋に顔をつっこんだ。異常ではない。
ここではこれが当たり前の風景だった。ただ職員と食事をともにする自分しか、本当のことを知らない。
伝えることも難しい。
皿があってもスプーンがあっても、
きっとみな使わないだろう。
必要に迫られることがないから。
.
588
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 21:12:51 ID:yXXE1w160
「ごめんね。タオルがあればよかったんだけど」
川*゚ー゚)「べつにいいもん」
「そしたら拭いてあげられたのに」
川*゚ー゚)「どうして拭くの?」
それが人だから。
.
589
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 21:13:40 ID:yXXE1w160
けれど言葉はでなかった。��
彼女たちは、そのカテゴリに属していない。
.
590
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 21:14:28 ID:yXXE1w160
「おいで××××。いいものをみせてあげようか」
いくつもある使用されていない部屋のひとつに、こっそりと引き込まれる。
素直に従った。
まわりに誰も居なかった。
この場合の意味の誰も、に仲間は含まれない。
男を止めてくれるような施設の職員は誰もいなかった。
毎回自分だけが連れていかれる。仲間たちには妬まれたり、うらやましがられた。
彼らは本当に楽しい思いをしているのだと信じているのだった。
だから相談もむずかしい。
なにをされ慣れているのか、いまだ深くはわかっていない
.
591
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 21:15:13 ID:yXXE1w160
撫でられるような声で、囁かれるのは危険信号だ。
支配者からの、機嫌をとるような態度は不振しかない。
けれど気づいていないふりをして、頷いた。
慕っているようにこちらが示せば、危害は加えられない。
その代わりにひどいことをされる。
「おまえは綺麗だ、美しい。神がつくりたもうた、最上の生き物だ。」
研究員はひざまずいて、つま先に唇を落とす。��
恍惚に近い顔でうっとりと見つめられた。彼の場合はまだいい。
じっとしていればじきに解放される。少なくとも、肉体的な損傷はなかった。
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592
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 21:16:03 ID:yXXE1w160
「大人になる日が待ち遠しいね。おまえは世界で一番、幸せな××になるんだろう」
ひもで閉じるだけの簡易な服。室内の温度は一定にたもたれているから、それだけで不安はない。
それなのに、いつも過ごしている衣服なのに、心もとない気分にさせられる。なぜだろう。男の手が入ってくるからだ。
豊かで、脂肪あふれた太い指が、でぃの足をのぼってくる。
ただ撫でているだけなのに、走り出したくなるのはなぜだろう。
打たれるわけでも、つねられるわけでもなく、ただねっとりと肌に触れる。
男の手が汗ばんでいるからだ。
だからこんなにも気持ちが悪い。
湿った手が、乾いた皮膚を濡らしていくから。
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593
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 21:16:48 ID:yXXE1w160
「なにをみせてくれるの?」
押しとどめるようにして聞いた。
声はふるえていないだろうか。
動揺をみせてはいけない。
隙があれば、そこを突かれてしまう。撫でていた手が動きをとめ、なり惜しそうに足から離れていく。
ものすごく、安堵した。
理由は知らないが、彼らは中身にまで触れてはいけなかった。
他の個体は服を剥がされて、臓器のなかまで覗かれるから、それは破格の扱いだ。自分でも理解している。
優しく。穏やかに。いやがらない。
嬉しそうに。懐いているように。
そうやって振る舞わなければいけない。��
でないと扱いがひどくなる。
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594
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 21:17:32 ID:yXXE1w160
「ああ……ほら。ずいぶんまえに、寝物語をみんなで聞いただろう。あれを見せてやろうと思ってね」
言い訳の言葉。ついでの説明だ。
そんなものは挿し絵でさんざん見たし、スクリーンに現れるような画像はもう見飽きている。
それでも笑顔をつくって、喜んだふりをした。
「ほんと?みたい」
でないと続きが行われる。
無邪気にそう促す。
「ああいいよ。記録的なニュースにもにもなったから、めずらしいと思ってね。ほんとは外の出来事を流しちゃいけないんだけど、おまえは誰かに言ったりしないだろう」
男はどこか自慢げに、こちらを伺うように言った。どこかさげすみの感情をもって知性をひけらした。
彼はなにも知らないままの無垢だと思っている。
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595
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 21:18:14 ID:yXXE1w160
こちらは職員のアカウントをいくつも記憶しているのに。
手元の打ち込みを盗み見た。
指紋認証とユーザーとパスコード。
自在に使えれば、どこの部屋にもいける。外につながるドアにもくぐれる。思惑を押し隠し、はやくとねだる。
急かされて男はまんざらでもないように、映像を取得する。
そしてそれは映し出された。
しかし予想外の映写で、期待していなかっただけに、息がつまる。
食い入るように、目を見開いた。
「……これなに?」
「千年にいちど、あるかないかの風景だそうだ。美しいだろう?」
「うん……」
「そうだろう。雨の降らない砂漠に、こんな奇跡があるんだ。世界はまだまだ、驚きに満ちているよ。まるでおまえのようじゃないか」
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596
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 21:19:05 ID:yXXE1w160
崇拝するように拝まれることもある。
しかし逆に、わわけもわからず毛嫌いされることもあった。
ふたつにどんな違いがあるのかわからない。思考の違い。
人間の違い。男女の区別。わかっているのは、両方ともこちらを特別とみなしていることだ。善くも、悪くとも。
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597
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 21:20:19 ID:yXXE1w160
ミ,゚Д゚彡「おい」
「……っ」
腕を捕まれ、強く握られる。そこには気遣いなどない。
殴られないのは単純に手を痛めることと、実験最中の個体への配慮のためだ。
期間が終了すればなにをされるかわからない。低い恫喝に、いつも本気で怯える。
彼らの悪意は怖かった。
嫌いを越えて、いつも憎まれている。
理由を知らないから、なおさらに。
研究員と部屋から出たのを見られてしまった。詰め寄られる。
明確な悪さなどしていないのに。
この男はいつも、自分ばかり責め立てる。
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598
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名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 21:21:22 ID:yXXE1w160
ミ,゚Д゚彡
二人きりで部屋にいったな。なにをしてたんだ?」
答えそうになって、口をつぐんだ。
映像のことは黙っている約束だ。
ばれたら二人とも不幸になる。
しかしその様子は、この男にある疑いを抱かせた。
そして発想は簡単に飛躍する。
ミ,,゚Д゚彡「言わないつもりか。言えないような何かをしていたんだな?汚わらしい!!だからおまえはだめなんだ、人を堕落させる!」
「だらく?」
ミ,゚Д゚彡「そうだ。正常ではない。歪だ。この世の正常ではないから、おまえのせいで道を間違えるやつがでてくるんだ。なんて恐ろしい」
「やだ……はなして!」
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599
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 21:22:11 ID:yXXE1w160
ミ,゚Д゚彡「なにをされた?話すんだ。でないと仕置きだぞ。
なんのためにみながおまえを待っているんだと思うんだ!まともじゃない子宮を使ってまで、世界に貢献しないといけないんだぞ!」
「わからないよ。なにを言ってるの」
ミ,゚Д゚彡「歪んだ生まれだがおまえ自身が汚れてしまえば元も子もない。さあ、ちゃんとされたことを話すんだ。あの男は処分される。もうおまえに近づくこともない。だから言え。×××を握ったか?足を開いたのか?」
ミ,゚Д゚彡「それともおまえから誘ったのか?この悪魔め!」
恐怖に襲われ、抵抗した。すねを蹴って、逃げ出す。
他の個体と違って獣相がなくとも、運動もトレーニングもない研究職の男に比べれば筋肉はついている。
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600
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名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 21:22:54 ID:yXXE1w160
反抗に驚いた隙に手を振り払って全力で走った。
仲間の誰よりも人間に近くとも、人よりも体は優れているはずだ。
いつもそのように言われている。
長く。ひたすら長く続く廊下を許されている範囲内で走りまわる。
追いかけてはこないようだった。
それでもまだ不安で、観察用の植物園にと向かう。
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601
:
名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 21:23:40 ID:yXXE1w160
天井がガラス張りで、夜でも日射がある。
葉の大きい植物や木々がいくつも繁茂していて、イグアナ種の個体たちの楽園場所だった。
隠れ場所に向いている。
他の部屋に比べて、少なくとも探す時間くらいは稼げる。
背丈のながい草にうずまり、震えながら身を隠した。
悪意は怖い。好意はどこかそら恐ろしい。
学んだことは、回避の方法だけ。
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602
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名も無きAAのようです
:2015/11/01(日) 21:27:46 ID:yXXE1w160
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