[
板情報
|
カテゴリランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
|
1-
101-
201-
301-
401-
501-
601-
701-
801-
この機能を使うにはJavaScriptを有効にしてください
|
(‘_L’)は命令が欲しいようです
202
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 05:14:02 ID:3gBm1G8g0
高層ビルは側面に強く、内側に弱い。耐震性を重視した結果、そのような作りになった。
地震にだけは防衛でしか対策できなく、揺れる力を逃がすためにゆらぎのある土台。
その芯さえ折れてしまえばいい。
('、`*川「建築だけなら簡単よ。年数を考えて建てられたものじゃないんだから。」
きらびやかなハリボテ。
栄華の象徴。
特攻する数人なら十分可能な行為。
生殺しの状態でそこまでの決意を持った者がいなかった。
('、`*川「100か0か。生きてるか、」
死んでるか
.
203
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 05:14:44 ID:3gBm1G8g0
同時刻、
.
204
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 05:17:31 ID:3gBm1G8g0
( ´_ゝ`)「あったあった。全部死んじゃってるけど、これいいの?」
足下の腕を蹴る。
まだ暖かさを失っていない。
数人の死体を一瞥する。
争ったような形跡もなく、自決した様子の死体は綺麗だった。
無意識に数えて、その必要がないのだと視線をそらす。
( ´_ゝ`)「もったいなくねぇ?一体いくらすんだよこれ。無駄遣い反対!」
.
205
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 05:18:28 ID:3gBm1G8g0
( ^ν^)「必要経費だ。状況に対応できない兵士など要らん」
( ´_ゝ`)「そういう風に教育したんじゃ仕方ないじゃん」
( ^ν^)「それではいつまでもそのままだ。我々が欲しているのは言うことを聞くだけの人形ではない」
( ´_ゝ`)「結果テロリスト引き入れてんじゃ損害でかくない?あれたぶん破壊行為が目的だと思うぜ」
( ^ν^)「かまわん。貿易取引は制限している。どうせ手に入れたものも微々たるものだろう。そちらのビルひとつ狙われたくらいで、何も変わらんさ」
( ´_ゝ`)「お客さま避難させなくていいの?大事な社員とか」
( ^ν^)「倫理と道徳でも勉強したのか。必要ないから消せ。いま連絡を入れても誘導にも時間がかかりずぎる。重要人物だけ選りすぐっているから損失はない」
( ´_ゝ`)「広報は?夜会に起きた惨劇!テロによる爆破事件ーなんて」
( ^ν^)「起こってしまえば一斉射撃の法案も通るだろう。」
( ´_ゝ`)「なんだ。見通してんのか、つまんな」
.
206
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 05:19:10 ID:3gBm1G8g0
エレベーターの点灯ランプをみる。
50階まで上昇していた。
( ´_ゝ`)「俺は?」
( ^ν^)「待機。どのような結果になるかわからんうちは動くな」
( ´_ゝ`)「ふーん」
( ´_ゝ`)「あのさ、なんでこんなややこしいことしてんの」
純粋な疑問であり、自分が存在する理由を尋ねる。
本来ならレンタル式の傭兵として貸し出されるはずの自分。
兄弟シリーズの試作品としてプラグラムが作られた。
それが現在教育された認識をどれほど自由に解釈し、行動にうつれるかというテストの経過途中。
軽口はデモンストレーション。
207
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 05:19:53 ID:3gBm1G8g0
最も万人に好評のタイプの性格をトレースし、実行する。
メンタルと身体は密接に繋がっているという診断通り、この性格にしてから質問という会話を引き出すことが増えた。
それは交流関係の作用にも関係しているようで、叱責はあるものの咎められたことはまだない。
だからモデルにした性格なら抱くであろう疑問を想定し、投げかける。
現在行われている傍観テストはあまりにも実用性がなさすぎる。
矛先が少しずれれば累計シリーズの信頼性に影を落とすだろう。
グラフのように目で見えるものでもない。
それなのに不確かなシリーズへの問題行動の結果を知るためだけにしては、事が大きすぎる。
.
208
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 05:20:43 ID:3gBm1G8g0
( ´_ゝ`)「せっかく刷り込みして優秀に作ったのに、なんで壊すみたいなことしてんの?これから起こることってそんなに重要なこと?」
理解でいえば矛盾している。さっさと回収すれば費用も損害もかからなかったはずだ。
( ^ν^)「……銃の存在はこれまで人の戦争を激変させた。力の強い者、足が早いもの、徒党を組んでの戦い、すべてが過去のものになった。」
( ^ν^)「人が皆銃を持てるということは、戦い方が変わったということだ。
核兵器は威力がありすぎて、抑止力にしかならない。手軽で防衛も攻撃にもなるのは銃だ。だが皆がそれを持てる社会では、先手など取れない。」
( ^ν^)「銃の存在で誰もに、登録しただけで使用できる主体性のない武器など、何の役にもたたん」
( ^ν^)「欲しいのは合理的考えと冷静な判断力、能力を併せ持った兵士だ。普段は一兵卒のように擬態でき、主人を変えない、自分の意志でのみ利己的かつ従う者を認識できる」
( ^ν^)「……それが支配者の望む最高の武器だ」
.
209
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 05:22:01 ID:3gBm1G8g0
( ´_ゝ`)「ふうん」
( ´_ゝ`)「ああ、だから」
人間性にこだわったのか。
.
210
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 05:22:43 ID:3gBm1G8g0
(‘_L’)
フィレンクトは口元に指をたて、喋るなと合図する。
離れたところでジョルジュはライフルを抱えて、廊下の隅からそれを確認した。
つまりこの階からは、会話が盗聴される。
建築材をどのように活用したのか分からないが、上階はある一定の高さを越えれば壁がアクリル製のプラスチック材になっている。
これは水圧と透明度の利点で使われる水族館と同じで耐久と防弾に効果があり、なおかつ透けるので目視が可能だ。
.
211
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 05:23:44 ID:3gBm1G8g0
_
( ゚∀゚)
反射が人並みなジョルジュは待機、フィレンクトはそのまま廊下を進んでいく。
100階から上はエレベーターがない。ゆるやかに作られた階段を上っていく仕様になっている。
その入り口を固めるのがフィレンクトと同じ兵器として教育された者たちだった。
ジョルジュは遠目からだがその姿を確認する。男性5人となぜか、幼い少女が三人。デリバリーの娼婦だろうか。
警備隊にしては存在が謎だ。
品がよい服を着ているのが遠くからでもわかる。
フィレンクトが彼らに近づいていく。
ここまで、何の障害もなく進んできたがさすがに心臓がいたい。
ジョルジュは同じ部族、出身の者たちは感覚でわかる。その地域独特のスラングや訛りなどで検討をつけるのだ。
だから彼らがフィレンクトに違和感を持たれると感づかれる。
外からの回線を切った状態はもう終わっていて、修復作業が行われている頃合い。
.
212
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 05:24:40 ID:3gBm1G8g0
彼らに話し合いは無意味だ。
下での連絡がいけば即座に殺しにくる。
あのフィレンクトと同じ能力を持ったものが五人も居るというのは、絶望に近い恐怖だった。
それに、フィレンクトはここを突破する方法を言わなかった。
じんわりとまさかの考えが忍び寄る。
フィレンクトはすでに反旗を翻している。ここに至るまえに招待客、警備員を殺している。
だがもしそれが罠で、おびき出すための布石だったら。
ばかばかしい考えだ。
けれどペニサスの懇願するような言葉はジョルジュを不安にさせた。
フィレンクトが考えを改めるとどうなるだろうか。もともと彼はここに雇われていた。
.
213
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 05:25:24 ID:3gBm1G8g0
そもそも彼がジョルジュに従うのに何の契約も同意も、報酬すらない。
命令がないからという理由で自分の頭を打ち抜いた純粋さはもしかしたら鞍変える理由になりうる。
どっどっと心臓が早鐘をうつ。
_
( ゚∀゚)
ジョルジュにはやるべきことがある。
死んでいった者たちへの弔い。
まぶたを閉じれば今でも顔が思い浮かぶ。男、女、子供、家族、
ジョルジュがここに居ることはフィレンクトへの細い信頼で成り立っていた。
はやく、はやく終われ。
フィレンクトが何をするのか知らないが。
早く俺を連れて行け。
顔をあげると靴音が聞こえて、銃を構える。それが見慣れた男のものだということに気がついた。
(‘_L’)「行きましょう」
.
214
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 05:26:24 ID:3gBm1G8g0
トランプでいえばキングの立場だった。
数字の一番うえ、独立した命令系統を持たされ、脳に移植された装置からの受信するシグナルで動く。
彼らを動かすのは上位命令、彼らの主人だけだった。
それゆえ混線した連絡網は届かない。
下の階でどのような騒ぎがあっても。
彼らが従うのは部屋の主だけで、彼らが守るのは主人だけだ。
フィレンクトが現れたとき彼らは警戒を持たず、また解いてもいない。
命令の種類によって殺し合うこともあった。だが普段であるなら同じシリーズ、主人の面目のため協力体制をとることがおおい。
別のシリーズ、見慣れない顔であるということは連絡がなされていない。
.
215
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 05:27:50 ID:3gBm1G8g0
近い男がフィレンクトに階への用件か、主人への用事かを問おうと口を開く。
だがそれより早くフィレンクトが言った。
(‘_L’)「Dコードが発令されました。すみやかに従ってください」
( ゚∋゚)「受けておりませんが」
(‘_L’)「まもなく連絡が入ります」
フィレンクトの言葉から数秒遅れて受信する。鼓膜近くに入った無線式のチップ。
これは一方からの通信しかできない。
主人からの命令を受けるためだけに使用される。
クリアな通信、低い声で命令される。
その内容を認識し、その場に居た者たちは一斉に銃器を取り出す。
.
216
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 05:28:45 ID:3gBm1G8g0
「あなたは」
(‘_L’)「わたしは片づけを任されています」
その答えに安心したように、警備主任五人が組み合うようにしてお互いに銃を向けた。
少女タイプのアンドロイド機は初期設定を行う。目にともす電源が落ちて、まもなく機能を停止させた。
タイミングを図るようにして彼らは引き金を引いた。
目標に当てる訓練は充分だったようで、即死する場所を狙って穴をあける。
五人のシリーズは命令を認識し、Deleteコードを全うした。
従って彼らは五人ともが互いの頭を撃ち、自決をやり遂げた。
.
217
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 05:29:41 ID:3gBm1G8g0
_
( ゚∀゚)「…………」
ジョルジュは呆然とする。彼らの価値観をわかっているつもりだった。
最大級の利便性、追求すればなるほど、チェスの駒のように切り捨てられることを前提とした存在のはずだ。
わかってるつもりだった。
だからフィレンクトに抱いたのは怒りだけでなく、同情だけでもない。人の形をしているからなおさら悪い。
どこかに機械的な部位があれば、青い血が流れてさえいれば、同じ人間であると思えなかったのに。
.
218
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 05:30:25 ID:3gBm1G8g0
_
( ゚∀゚)「どうやった?」
(‘_L’)「あの男の声紋を複製し、作成した言語を無線に流しました。私たちでしか使用されないコードがあるので」
マスターはナンバーごとに区別されているだろうが、肉体情報はほぼ同じだろう。
まったく同じではなかったはずだが、特別な無線番号、主人からしかかかってこないはずという先入観を彼らは信じた。
.
219
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 05:31:07 ID:3gBm1G8g0
_
( ゚∀゚)「……自殺する用意もあったのか」
納得する。
だからあんなに躊躇もなく行動できた。ジョルジュはフィレンクトを見る。
生存本能さえ失ったものを、人間と呼べるのか。
フィレンクトはジョルジュの視線を受け止め、変わらぬ表情でそこに居る。無感動な目だった。周囲状況をレンズのように見張っていながら、何も映していない。
.
220
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 05:31:49 ID:3gBm1G8g0
異常なほどに命令されることを享受する態度さえなければ有能な秘書にしか見えない。
使い勝手のよい人形。ペニサスの言葉が蘇る。
こんな奴らが幾人も居るなか、ここまで来られたのは奇跡かもしれない。
_
( ゚∀゚)「もう喋ってもいいのか?」
(‘_L’)「かまいません、すぐ着きます」
長い廊下、透明アクリルはトンネルを連想させる。外の夜景が反射してまるで星空を歩いているようだった。
.
221
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 05:32:35 ID:3gBm1G8g0
隣の男を奇妙に思う。
これほど役にたつのに、心が冷えるような戸惑いを覚えるのはなぜだろうか。
立場が違っていて、命令されたのがフィレンクトでもきっと同じように自死するだろう。
その気持ち悪さかもしれない。
ふと気がついた。
フィレンクトには未来がない。こ
れからを自分で決められないし望まないのだ。
ジョルジュが蔑んでも哀れみを抱いても、どんな風に扱おうが命令さえもらえれば満足なのに違いない。
やはり機械的思考に矯正は効かない。
すべてを終えたら彼を処分しなければいけない。
警備員たちの死に方はジョルジュに決意をさせた。規則の穴を抜けるようなやり方で彼らを殺した。
いまは味方でも、敵に回ってしまえばどうなるかーー
.
222
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 05:33:20 ID:3gBm1G8g0
フィレンクトがドアのセキュリティロックにいつのまにか手に入れたキーを打ち込む。
ジョルジュが切望し何もかも犠牲にしてまで求めたドアはあっけなく開かれた。
.
223
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 05:34:02 ID:3gBm1G8g0
ミセ*゚ー゚)リ
.
224
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 05:34:49 ID:3gBm1G8g0
_
( ゚∀゚)「嘘だろ……」
息が止まるかと思った。
部屋の住人は緩慢に振り返る。
武器は持っていない。
ただワンピースだけのシンプルな服だけで椅子に座っていた。
_
( ゚∀゚)「なんで……死んだはずだ……」
女は立ち上がり、しずしずと歩み寄る。
それから事務的な口調で対応した。
ミセ*゚ー゚)リ「お客様がいらっしゃるという連絡は受けておりません。お名前と所属番号を口頭ください。身分を証明できない場合は退去してもらいます」
.
225
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 05:35:34 ID:3gBm1G8g0
*鼹鼹* _
( ゚∀゚)「ミセリ……」
手を伸ばす、ふるえる指先で彼女の頬に触れた。無表情、しかしその肌は血が通っていて柔らかい。
人造だとしても、かまわなかった。
ミセ*゚ー゚)リ「身分の証明を求めます。所属が証明されない場合は強制退去の措置を取らせていただきます」
「!っやめろ!!
ジョルジュが振り向き、銃を奪おうと走る。だが反応は遅かった。フィレンクトは当然の行動をしただけだ。
.
226
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 05:36:16 ID:3gBm1G8g0
目の前にいるのはDNAレベルで形成された、ただの人形で、主人の留守を預かっている。
存在を通報されないための、最もよい方法。
ぱん
乾いた小さな破裂音。
真っ白な服の胸元が血に染まる。
衝撃で女が崩れる。
ジョルジュのためを思って心臓を狙った。
結果一撃でといえず、続けて撃つことになった。
ぱん ぱん
血だまり、完全なる死体ができあがる。
フィレンクトは部屋の隅、カメラや侵入経路に目を向けた。
入り口は一つだけでないはず。この部屋は当然記録されているから、爆薬を仕掛けたあとすぐに撤退しなければ間に合わない。
時間を計算してジョルジュに目を向ける。
彼が動いてくれれば何も問題はない。
.
227
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 05:37:15 ID:3gBm1G8g0
_
( ゚∀゚)「…………」
呆然としている。フィレンクトは待機した。
これから激高されるとしても、彼は優秀だからすぐに自分を取り戻すはずだ。
冷静さを失わせないために余計なことを口にしない方がいい。
フィレンクトは観察する。
ジョルジュは同じ事を経験した。
妹の死。妹に似た女の死。
一般的な感覚を持ったものなら深い感情にこれから襲われる。
_
( ゚∀゚)「……」
彼の表情は珍しく色がない。
そのまま考え込んだように動かない。
ロスする時間が気になる。
感情的になるのなら今でないと時間の遅れは取り戻せない。
そう思っているとジョルジュが携帯しているハンドガンのシリンダーを引いた。
ゆっくりと持ち上がる腕。
まっすぐな視線はフィレンクトを突き刺した。
フィレンクトは動かない。
.
228
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 05:38:02 ID:3gBm1G8g0
ジョルジュの行動であればそれでいい。
銃口は狙いを定める。
ジョルジュの肩よりも少しうえにあがり、フィレンクトの額に照準をさだめた。
(‘_L’)「設置はひとりでも可能ですが、時間を取られているのでお早めに」
_
( ゚∀゚)「……ああ」
爆薬のセットを一人で行うのは大変だろう。だがジョルジュが決めたのであればそれに従うだけだ。
フィレンクトは瞬間にこれまでの流れに不備がないかを思い返し、彼への忠告がないかを探した。
特に思いつくものはなく、しいてあげるならこの先のジョルジュの逃亡が気にかかるくらいだった。
.
229
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 05:38:56 ID:3gBm1G8g0
会話、記憶を思い返す。
そして目を閉じた。
視線を合わせたままではジョルジュが撃ちにくいだろうと考慮する。
息を飲む気配がした。
フィレンクトは想像できる。
彼の指先が意志をもって引き金を引く瞬間をーー
じゅうっと焼ける匂い。
違和感を感じて目をあけるとともに、ジョルジュが倒れ込むのが視界に入った。
230
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 05:39:38 ID:3gBm1G8g0
.
231
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 05:40:26 ID:3gBm1G8g0
その瞬間フィレンクトの呼吸は一度止まった。
ジョルジュが倒れるシーンが連続したコマ送りのように頭のなかで流れる。
予想していなかった危険性に対処できず、すべての機能が停止する。
奇妙なことにフィレンクトは動けなかった。
正しい行動は怪我の重傷さを見、すぐさま応急処置をとらなければいけないのに。
凍り付いたように足が動かない。
数秒間、フィレンクトは自己を消失した。
.
232
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 05:41:11 ID:3gBm1G8g0
ジョルジュの胸を貫いたレーザーは高温で臓器を焼き切っている。
彼を運んで、処置室に移動するに必要な時間はこのビルを降りるまで間に合わない。
間に合ったとしても病院IDを偽造する合間も、移植に必要な臓器をそろえる時間もない。
そんなことを頭のすみで理解しているから、身体は硬直し動くことができない。
ジョルジュがいなければフィレンクトの行動理由がなくなってしまう。
「驚いたよ。どうして一般人なんかにつられていったのか不思議でならなかったが、なるほどよく似ている。シェーカーに入ったのによく覚えているものだ。
やはりお前は優秀だった。どこか欠陥があったのかずいぶん心配した」
厚い絨毯が敷き詰められた床、靴音をさせずに近づいてくる気配。
フィレンクトは動けない。主人と確定した男が倒れている。
出血量は少ないが、内蔵を焼かれて死に至るのは間違いない。
.
233
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 05:42:03 ID:3gBm1G8g0
「兄弟かと思ったがそうではなかった。
本当によく似ている。お前が惹かれたのも頷ける。そっくりじゃないか。ーーアヒャに」
思考は冷静にその言葉を分析する。
現在ジョルジュに役立つ情報であるかないか。
彼が動けない今、彼の意をくむことができるか。
逃避した考えだがそれなら手足が動けそうに思えた。
だが男が語るものはどうやらフィレンクトのことらしい。
なぜジョルジュが撃たれたのか。
視線をさまよわせる。
部屋に備わった侵入者撃退用の砲。
未だ認可されていないはずだがここで法律の有無は意味がない。
なぜジョルジュが撃たれたのか。
それを男が語ってくれそうだった。
視線を向ける。いまフィレンクトがすべきことはジョルジュの命乞い。
情報と引き替えに取引しようと持ちかけるべきだ。
だが男の顔をみた瞬間またフィレンクトは機能を停止させた。
.
234
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 05:42:56 ID:3gBm1G8g0
彼の顔は見覚えがある。
造形とは違う感覚、同じ顔でも違う中身。
フィレンクトは最初の研修にそれを教え込まれた。
( ^ν^)「お前は一度主人を撃った。
それで不安定になった。だが廃棄しないで正解だったよ。ここまで来れたのはお前の考えか?一般人に侵入計画は立てられない。
内部をよく知っている者がいないと。同じシリーズを削除した手間もよかった。
やはり一度、価値観を一遍させるべきだ。頭が柔らかくなる」
起動と再生。
どれを選ぶべきか無意識にフィレンクトは迷う。最初の男だった。
はじめの主人。
フィレンクトの思考のすべてが始まった人間。
人相照合、これまでの主人を思い浮かべる。エラー。エラー。
機械であればバグと認識されるだろう記憶のもや。フィレンクトは思いだそうとする。
この場ですべき最良の方法。
.
235
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 05:43:47 ID:3gBm1G8g0
冷や汗をだす気分だった。
実際流れていないが、男の存在は動こうとするフィレンクトに大きな負荷をかける。
ジョルジュの消失、数分の死。
新たな主人の再認識。
この場における最適な行動はなにか。
フィレンクトは考える。
考えた結果、男の足下にひざまずいた。
それから新たな命令を待とうとした。
( ^ν^)「……だめだ。少しは自分で考えろ。ここまで来たときの気骨を見せろ。お前は知らなければならない」
フィレンクトは動かない。
語りは耳に入っているのに、思考として結びつかない。
そう教育を受けている。
その型を破るにはまだ自己が定まっていない。
( ^ν^)「……質問しろ。お前が知りたいことに答えてやる」
.
236
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 05:44:31 ID:3gBm1G8g0
促されて顔をあげる。
フィレンクトが求めない理由を、自ら教えようとする。
主人の意図がわからない。
いままで知らないままでいられたのに、突然世界の仕組みを突きつけられた気分だった。
フィレンクトは思考する。
いま男がフィレンクトに求める態度。
知らなければならない。
主人はそれを教えたがっている。
だから最初のはじまりから投げかけた。
なぜ、フィレンクトがいまここに居ることになったのか。
男は満足そうに笑んで、語り始める。
フィレンクトの選択は正解だったようだ。
興味がないなりに、拝聴せねばいけない。
.
237
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 05:45:18 ID:3gBm1G8g0
( ^ν^)「リスクマネジメント、最初はこれが原因だった。シリーズの評判は実にいい。機械では判断できないこともスムーズに行えるし、人として忠実で裏切る要素がない。
権力を持ち始めた人間が最初に欲するのは何より裏切りのない身内だ。保身を脅かすことのないような。
人間を所有するのはありふれた支配欲を満たしてくれるが、慣れるとどうしても愛玩物の癖に人権を主張する者が出始めてね。
愛人のワガママは可愛いものだがそれが諸刃になって跳ね返ることがある。だから傭兵としても使える人形を作成したんだが、それにも問題が出てきた。
重要な局面で判断を下せるものがいないのだ。ワンマン社長に育てられた社員がろくな人物に育たないように、意志がないというのは気概もない。
いつのまにか上位に立つ者たちの争いに巻き込まれ、主人を代えれば簡単に言うことを聞く。
せっかく人として育てられた利点がない。
これでは人工知能を搭載したアンドロイドとなにも変わらないではないか。
演技ができないのも、嘘がつけないのも致命的だ。誰もが使えるのであれば、お前たちが居ても意味がない。
実践の戦争では役に立つが生きようとする意志がないから簡単に全滅する。
.
238
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 05:46:00 ID:3gBm1G8g0
損害を出しても生き残ったほうが勝つ場合のこともあるのだ。
そこでひとつの計画をたてた。
万人にひとりの可能性だが、教育された倫理を打ち破り自己のアイデンティティを持った兵士を育成することはできないだろうか。
つまり局面に強く、自己を犠牲にすることなくなおかつ先を見据えた判断力を持てるような、そう我々はスーパーマンを作ろうとしていたのだよ。
フィクションのような完全な者をね」
.
239
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 05:46:42 ID:3gBm1G8g0
(‘_L’)
フィレンクトは動かない。
男はフィレンクトの反応を伺っている。
けれど彼を喜ばせる態度を取ることができない。命令がないからだ。
彼の発言通りに振る舞うべきだろうが、それのイメージが作れなかった。
ふさわしいと思える者が一人浮かんだが、その人物はいま床に倒れている。
.
240
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 05:47:27 ID:3gBm1G8g0
( ^ν^)「……お前は予想をはるかに越えてすばらしい行動をした。多少奔放なところがあってもよかったが……それが性格なら仕方ない。規律を破るところもよかった。
この男のためにルールを犯したのは驚かされた。それにしても偶然というのはすごいな。フォックスが居なくなったのは予定外だったが、そこにアヒャに似た男が現れる確率もすごい。必然と呼んでもいいかもしれないな」
.
241
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 05:48:15 ID:3gBm1G8g0
急に脳裏になにかが再生した。
記憶の断片。
引きちぎられたわずかな記憶でしかなかった。
アヒャ。ジョルジュとかぶさる。
誰か。同じ主人だと誤認識する。
ーーーーだからフィレンクトは彼に従おうとした。
最初の主人殺し。契約の切れた男。
再登録したさいにフィレンクトを取り戻そうとして、彼に撃たれた。
リバース。戻される印象。
これは何か。
記憶の再生はうまくいかない。無意識だが脳は思い出すことを拒んでいる。
初期設定。なにもかもを破棄。
すべて忘れること。命令されていないが、それが自己を守る防御となる。
フィレンクトは呆けたように聞いていた。それで次は、何をすべきか。
男の命令を待っている。待っている。
何か命令がほしい。
考えることがないように。
.
242
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 05:49:05 ID:3gBm1G8g0
( ^ν^)「ほかに聞きたいことはないのか?」
声に不機嫌さがにじむ。それほど興味はなかったが、室内に居た女のことを訪ねる。
ジョルジュの妹、だが美人すぎるということもなく秀でたところがあるわけでもない。
( ^ν^)「ああ、身内の失態の原因だ。ただ彼はナンバーが二桁の者でな、とりわけ劣るわけではなかった。
そんな彼がミスを誘発する女ならきっと遺伝子に我々が好む因子があるのだろうと思ったのだ。まあ私にはあまり魅力的ではなかったが」
(‘_L’)
謎は解けた。だがフィレンクトは戸惑っている。
男に視線をあわせたが彼は観察するばかりでフィレンクトの望む命令をだしてくれない。
焦りに近い衝動に駆られていた。
それがなぜかわからない。
.
243
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 05:49:58 ID:3gBm1G8g0
わからないなりに、フィレンクトは初めて不安におびえる。
このまま生殺しのように待機させられるのは、不快だ。
( ^ν^)「……最初からすべてを望むのは早急すぎたな。まあいい。状況とこれまでの経験からどのような結果が出せるのかパターンを記録できた。
主人を殺したことが記憶に傷をつけた。
それが原因での成長と思えば欠陥も紙一重。多大なストレスは生き物を疲弊させるが同時に成長もさせる。
……いい機会だ。フィレンクト、あれを撃ちなさい」
.
244
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 05:50:43 ID:3gBm1G8g0
身体のどこかに亀裂が入ったようだった。
それで思い知る。
フィレンクトの予測していた最大の警戒。
こうなることをどこかで感じていたのかもしれない。
なぜなら男はフィレンクトのアキレスを切ることで、新たな内面をさぐろうとしている。
いまここで記憶の奔流と不具合が発生すればいい。
だがフィレンクトの脳に求めた命令が浸透する。
一方通行の指示。これまで従ってきたもの。
フィレンクトは顔をあげた。
それから立ち上がり、携帯していた銃を持ち直す。
男は面倒くさそうに見ている。一応の確認といった定だった。
.
245
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 05:51:26 ID:3gBm1G8g0
フィレンクトは逆らえない。
命令は受信するものだ。
それこそが存在する意義。
だが登録も記憶の消去もされていないので、やはり拒否反応がでる。
さっきまで主人と認識していた。
急に認識を覆すのは、強い負荷がかかる。
( ^ν^)「何かを乗り越えるとき、一皮むけるようになる。おまえは新らしい概念の戦士になるだろう。撃ちなさい」
主人が二度めを口にするのはほとんどない。
フィレンクトは自分の伸ばした腕がふるえているのに気がつき、その感覚を知った。
.
246
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 05:52:09 ID:3gBm1G8g0
(‘_L’)
自己の本能を切り離したフィレンクトの経験する、最初の恐怖だった。
構える。
銃口を倒れているジョルジュに向けて狙いを定めた。
引き金をひこうと指に力を入れた瞬間、彼の口がうごいて何かをかたどるのを見た。
銃声
.
247
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 05:52:51 ID:3gBm1G8g0
フィレンクトは
.
248
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 05:54:04 ID:3gBm1G8g0
続きは近日中に投下します。
こんな厨二たっぷりの見てくださってありがとうございます。
.
249
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 12:01:33 ID:8hehoBsU0
気になるところで次回か 乙!
250
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 12:36:36 ID:nat9CrUk0
おぉおぉつぅうぅう〜気になる〜
251
:
名も無きAAのようです
:2014/12/02(火) 15:25:32 ID:ty1TtH/U0
乙
252
:
名も無きAAのようです
:2014/12/03(水) 10:13:22 ID:bz1PF1oU0
おつ
253
:
名も無きAAのようです
:2014/12/04(木) 01:35:14 ID:DLSugi7Y0
いつも楽しく読ませてもらってます。乙!
擬人化注意 _
ミセ*゚ー゚)リ ( ゚∀゚)(‘_L’) ('、`*川
http://i.imgur.com/MMCbj07.jpg
254
:
名も無きAAのようです
:2014/12/04(木) 02:10:19 ID:vP8FZzDU0
>>253
かっこよすぎィ!
255
:
名も無きAAのようです
:2015/01/27(火) 23:21:50 ID:SZcazevc0
気になる所で…
256
:
名も無きAAのようです
:2015/02/09(月) 21:06:12 ID:xhe2u8TU0
待ってるよー
257
:
名も無きAAのようです
:2015/02/18(水) 03:49:10 ID:Tmojq0r20
続きみたい…
258
:
名も無きAAのようです
:2015/02/24(火) 04:02:00 ID:PpHh.7g.0
いまの僕には 理解できない
『アンインストール』
.
259
:
名も無きAAのようです
:2015/02/24(火) 04:02:50 ID:PpHh.7g.0
一発目は殺害目的。
二発目は確認。
三発目はほとんどない。
打ち損ねることが滅多にあり得ないから。
標的はマス目のように計算できる。
空気の抵抗、遮蔽物の有無。
垂直から放射物状にえがかれた弾のゆくえ。
一度目は殺意。
二度目は予備。
三度目はーーー
.
260
:
名も無きAAのようです
:2015/02/24(火) 04:03:49 ID:PpHh.7g.0
「銃の話をしよう。クラッシクなマスケットからスコープの付いたライフルまで。共通しているのは薬効を押し出して目標物に当てる行為。狭い筒管のなかで爆発物を一カ所に集中して飛ばす。
圧力によって鉄が逃げだし、すさまじい早さで威力に変換される。筒が長ければ長いほど安定するスナイパーライフル。ばらまくようにして発射するもっとも殺傷能力が高いショットガン。
サイレンサーもいい。威力が小さくなるのが玉のキズだけど、最新式のものは他の銃と弾丸が変わらないよう改良されたのもある。オートマッチクが主流とはいえ僕は回転式がやっぱり一番すきだな。シリンダーをスライドさせて薬莢を抜くことがなんだか雰囲気がある。
それに万が一でも弾詰まりがないしね。オートマの怖いところは滅多になくなったとはいえ、いざという時にジャムる危険性。自動で排出や装填してくれるのはいいけど、一対一とか重要な局面の場合数万の確率で整備不良があったらジ・エンドってイメージ。
もちろんイメージだけだよ。なんたって自分で使うことはほとんどないもの」
.
261
:
名も無きAAのようです
:2015/02/24(火) 04:04:34 ID:PpHh.7g.0
「娯楽映像での銃はバンバン撃ちまくってるけど実際はそんなことないんだよね。どう見てもその壁のなかで撃ったら跳弾するでしょって場面もあるし。
威嚇にしても自分の位置を教えるような撃ち方はしないのに。やっぱ映像だと派手さを求められるからね。実際身近に銃がない人たちが作るとそうなるみたい。当然だよね。何百発って撃ったらもうだいたいの人たち死んでるし。そうなったら盛り上がらないか。物語の起承転結がうまくいかないからフィクションとして仕方ないかな」
.
262
:
名も無きAAのようです
:2015/02/24(火) 04:05:17 ID:PpHh.7g.0
「本当なら規正ラッシュで銃器も対象なんだろうけど銃に変わる経済の流通が新しく見つからないかぎり規正されることはまずないだろうね。でも防衛として持っててもうまく使えるとは限らない。
何も持たずに撃たれるよりはって意識かな。取り扱いを知ってれば防衛にはなるかもしれない。でも不思議だけどね、銃って握ったら撃ちたくなる。水鉄砲を大人に持たせたって同じ結果になると思う。
だから撃たないひとは銃を嫌悪してるかトラウマがある人くらいかな。銃撃戦に巻き込まれないかぎりそうはならないから、やっぱり流通を止めるのは難しいだろうね」
.
263
:
名も無きAAのようです
:2015/02/24(火) 04:05:59 ID:PpHh.7g.0
「先進国で開発される兵器のひとつに、倫理感を判別する機能のAIがついた銃ってのがあるんだって。
つまり身を守るために使われるけど、殺すためにはNGって奴。銃がどうやって見分けるのか知らないけど本当ならすごいよね。それさえ世界に蔓延すれば、銃による犯罪はとことん無くなるに決まってる」
.
264
:
名も無きAAのようです
:2015/02/24(火) 04:06:40 ID:PpHh.7g.0
「きみも だよ。使われるんじゃない。選ばなければいけない。自分で考えて、使う人間を、選別できるように」
「そのときまで、頑張って自分を作らなきゃ。個性を持てというんじゃないよ。ただ選択する自由を、自分から取りにいかなきゃいけない」
.
265
:
名も無きAAのようです
:2015/02/24(火) 04:07:23 ID:PpHh.7g.0
( ゚∀゚)「フィレンクト、きみはーー」
ぱん
.
266
:
名も無きAAのようです
:2015/02/24(火) 04:08:14 ID:PpHh.7g.0
.
267
:
名も無きAAのようです
:2015/02/24(火) 04:09:09 ID:PpHh.7g.0
数秒に満たないわずかな時間、様々な記憶と予感が駆けめぐる。
考える。考える。
現在おこなえる適正な行動。
許可される行為。
フィレンクトは横たわる死体を見る。
その指先、わずかに呼吸しようとした口。
生存を確認した瞬間に、一つの指針が欲求に並んだ。
それはフィレンクトの命令主体に位置する。
忠実な命令のひとつで、何よりも守らねばいけないことだ。
理解するとなぜそれに思い至らなかったのか、不思議なほどだった。
.
268
:
名も無きAAのようです
:2015/02/24(火) 04:10:19 ID:PpHh.7g.0
照準を合わせ、倒れた身体に撃ち込む。
二発。
衝撃で肉体はわずかに跳ねて、そのまま動かない。
命令遂行行動をとって、振り返る。
男の元に、従順を見せるために。
(‘_L’)
.
269
:
名も無きAAのようです
:2015/02/24(火) 04:11:09 ID:PpHh.7g.0
人形として教育されたシリーズの廃棄は基本的に脳の消去を行って、うまくいかない場合のみ肉体ごと処分する。
そのさい彼らは大人しく火葬場に向かう。
生理的反応を抑えるために酸欠で脳の機能を停止させ、死を受け入れる。
本来なら銃を使って死ぬことは弾の消費と掃除で非常に手間だ。
それなのに自死するように言いつけられることは少なくない。
ブレイン・シェイカーで脳の情報を探られたり、廃棄されたつもりがどこかに移動されて使用されたりといったことを防ぐ意味と、確実に処分したという実感のためだ。
ハードディスクを再生不可のため壊すのに似ている。
支配と権力欲を満たすために、主人たちはそれを命令する。
だからフィレンクトに命じたそれも同じような意味合いがあった。
.
270
:
名も無きAAのようです
:2015/02/24(火) 04:11:51 ID:PpHh.7g.0
( ^ν^)「……嫌がると思ったが素直だな」
男はフィレンクトの微表情に違和感がないかを観察し、そう言った。
フィレンクトは常のまま、狙撃して再び男の真横に立つ 。そして待機姿勢をとる。
( ^ν^)「これからどこか行きたい場所はあるか?経緯を発表すればお前を欲しがる者は多いだろう。皆融通が効かない人形ばかりでうんざりしている。
この国で少し暴れすぎたし、現地民との接触もありお前の顔は有名になりすぎたな。
顔を変えてもいいが、中身を交換したと思われるのもしゃくだ。」
男はもう死体に目を向けることはない。
フィレンクトは沈黙している。
ひたすら置物のようにあろうとしている。
それから待った。
.
271
:
名も無きAAのようです
:2015/02/24(火) 04:12:38 ID:PpHh.7g.0
( ^ν^)「……雑談を楽しめるような性格であればもっと価値があるんだが……主人のために行動制限を広げただけでも成果だな。今度は、」
フィレンクトは待機する。
男の意識が空に浮き、室内のレーザーを忘れる一瞬のあいだ。
それを待っている。
( ^ν^)「トレースした性格でも植え付けようか。見た目そのものが人のように振る舞うことができたら完璧だ。
ただのシリーズだと思わせることができれば情報戦にも先手を取れる。」
フィレンクトは待っている。
男の言葉は表面だけ頭のなかを撫でていき、すぐに霧散した。
意見を求められる内容ではない。
( ^ν^)「それにしても多少のあいだとはいえ主人を殺すのは外聞が悪いな。個人登録の補強をしっかりしなければ。
お前の判断と主張で選ぶことが望ましいが、世の主人たちはそれを好まないだろう。我々だけの所有で居られればいいが、“彼ら”がお前をどう扱うか」
.
272
:
名も無きAAのようです
:2015/02/24(火) 04:13:20 ID:PpHh.7g.0
待機状態。身体は動かさず、しかし警戒は最大限。いつでも動けるように。
飛び出せるように。
フィレンクトは待っている。
男は話ながらもフィレンクトをしっかりと観察している。
行動を見極めようとしている。
その視線がとぎれる瞬間を、ただ待っている。
.
273
:
名も無きAAのようです
:2015/02/24(火) 04:14:02 ID:PpHh.7g.0
某時刻
.
274
:
名も無きAAのようです
:2015/02/24(火) 04:14:44 ID:PpHh.7g.0
( ´_ゝ`)「予想外?想定外?」
( ^ν^)「想定の範囲内だ。」
( ´_ゝ`)「そう?なんかつまんなそうに見えるけど」
( ^ν^)「確かにもう少し動きがあってもよかった。」
( ´_ゝ`)「ワッガママー。いいじゃんいいじゃん。そんな裏切りとか求められても可愛そうじゃん。裏切ったとこでフリーズするだけだし」
( ^ν^)「突発的な事故からここまで来れたのだと考えれば貴重さもある。だからイレギュラーな反応が欲しい」
( ´_ゝ`)「つうても行動のパターンは予測してるでしょ」
( ^ν^)「当然だ」
.
275
:
名も無きAAのようです
:2015/02/24(火) 04:15:28 ID:PpHh.7g.0
( ´_ゝ`)「なにその反抗期まえの娘がもう少し態度悪ければいいのにって願望」
( ^ν^)「お前どこからその表現拾ってくるんだ」
( ´_ゝ`)「秘密ーねね、でもよくやってる方じゃん?もうゴールさせてもいいと思うな」
( ^ν^)「…………」
( ´_ゝ`)「なんかさ、見てるとやっぱないものねだりだなあと思うよ」
( ^ν^)「どういう意味だ」
( ´_ゝ`)「だってアンタ作り出す側じゃん。俺ら受ける立場で、アンタ命令する側。」
( ^ν^)「それが何だ」
.
276
:
名も無きAAのようです
:2015/02/24(火) 04:16:14 ID:PpHh.7g.0
( ´_ゝ`)「俺は自己を形成しなきゃいけなかったから客観的な目っていうのを養わなきゃいけなかった。
それには第三者ってたち位置が重要なんだって。
人は評価されると不快らしいから先に言っとくけど処分しないでね。
俺らとは違う、つまり普通の人間は自己意識をもってて、自分に足りないものを補おうとする本能がある。
アンタらは普通じゃないけどそれって生まれだけじゃん?
中身はけっこうただの人っぽいとこあるよね。
あいつあんな偉っそうな態度してるくせにロリコンでなおかつ機械フェチとか、好みも超違うし。」
( ^ν^)「続けろ」
( ´_ゝ`)「自己投影だよ。自分に足りないものを求めてる。だからあいつに期待してるんじゃない?
それ以上の、予想外なことを」
( ^ν^)「面白い意見だ。人並みに感情でも湧いたか」
( ´_ゝ`)「どうだろ。下克上でもしたら満足?」
( ^ν^)「できるものならな」
( ´_ゝ`)「報酬欲求がないから無理だなー。俺どっちでもいいもん。
やっぱプライドって大事だわ。
それがあるから争うようになるんだろ」
277
:
名も無きAAのようです
:2015/02/24(火) 04:17:08 ID:PpHh.7g.0
( ^ν^)「酒と女に狂えたら男として一人前だ。やってみるか」
( ´_ゝ`)「抱けるけど面白くないと思うよ。ベッドマナーは教わったけど全部奉仕の一環だったし。
アルコールは少量ならいいけど多すぎると中枢神経麻痺させるから好めない。なんでみんな飲むの?効率悪すぎない?」
( ^ν^)「無駄を消費できるようになればわかる」
( ´_ゝ`)「それが一番難しいのに……」
( ´_ゝ`)「でもやっぱわかんないなあ」
( ´_ゝ`)「なんだってそんなもの欲しがるわけ?」
( ^ν^)「何が」
( ´_ゝ`)「だからさ、」
支配からの逸脱ってやつ
.
278
:
名も無きAAのようです
:2015/02/24(火) 04:17:54 ID:PpHh.7g.0
刷り込み認識ーー主人への忠誠と絶対の服従。依存により安心を得られる。
命令に従うことで自己を認識し、生物の欲求だと肯定する。
であるから、対象主人と認識したものを消失すると決定権を選べなくなり行動を停止する。
それは次に主人と認定されるまで続く。
本来シリーズを作成した時点で刷り込みは強烈なものだった。
主人に逆らうことは呼吸の仕方を忘れるような歪さがある。
支配されることを当然とし、また何よりも主人を守りぬくこと。
女王アリを生かすために犠牲を当然とする兵隊アリをモデルケースにされた。
無意識の献身。
どれほど理不尽でも非論理でも、すべて主人のためだけに彼らは尽くす。
保身を考えることはまずない。
現在だけを考える。何が主人にとって最適であるか。
.
279
:
名も無きAAのようです
:2015/02/24(火) 04:18:38 ID:PpHh.7g.0
模倣された時間だった。
主人の死という点だけにおけば、似ているかもしれない。
倒れた死体。ジョルジュと、フォックス。
そこに立ち尽くしているフィレンクト。
現れた第三の男。
.
280
:
名も無きAAのようです
:2015/02/24(火) 04:19:21 ID:PpHh.7g.0
命令を探す。
フォックスの時はできることが何もなかった。
彼は報復の見せ物として殺されたあと首を切られた。
フィレンクトは男に視線をやった。
彼はつらつらと話していたがフィレンクトの反応がないのに興味を失ったようだった。
部屋の死体を片づけろと指示をだし、そのままくつろぐために部屋を出ようと考えていた。
フィレンクトは待機姿勢を崩さなかった。
部屋のあらゆる隅にカメラがあり、その映像を男は通信されて見ている。
レーザーを使ったことでそれがわかった。
脳の思考で、瞬時にそれを使うことができる。フィレンクトは隙間を探した。
常に見張っているわけではない。プログラムなら穴は見つからないが、男は通常の人間と同じIQと能力の持ち主のはずだ
.
281
:
名も無きAAのようです
:2015/02/24(火) 04:20:43 ID:PpHh.7g.0
男は部屋から出ようとする。フィレンクトの沈黙と微動だにしない様子を認めて、そのまま意識から切り離した。
演技といった可能性は思いもよらないだろう。
フィレンクトはこれまで、嘘をついたことがない。
足を動かす。
床を歩き、ドアをくぐろうとする。
死角が生まれるその瞬間を、フィレンクトは待った。
男の身体が横向きになり、完全にフィレンクトを視界から外した。
距離は遠くない。
フィレンクトは流れるような動作で銃を構えた。その動きを室内のカメラは感知し、すぐさま情報を男の脳に送る。
男が振り向くのと、フィレンクトが引き金をひくのは同時だった。
男の脳に埋められた受信と送信の指示機を狙って発砲する。
チャンスは一度だけだった。
.
282
:
名も無きAAのようです
:2015/02/24(火) 04:23:13 ID:PpHh.7g.0
フィレンクトの反撃にとっさの反射でレーザーが発射されるが、それより弾が頭蓋と肉を砕く方が早かった。
目標の照準はずれて、青冷レーザーはフィレンクトの右肘を焼いた。
じゅっと肉が焼ける音。
神経系統への痛みの伝達。
感覚を遮断。生存本能が低いから、それは日頃から可能だ。
焦げた関節から先が、重りのように揺れて千切れる。
男の方はぐらついた重心を保てず、そのまま足から崩れた。
骨の堅い部位を撃ったため、出血量は少なく意識もはっきりしている。
( ^ν^)「なぜだ……」
( ^ν^)「判断力が低下したのか……」
目眩と感覚の不良。
揺らされた脳が視界を正常に映さない。
身体を司る場所を損傷したためまともに起きあがることも難しいだろう。
.
283
:
名も無きAAのようです
:2015/02/24(火) 04:23:56 ID:PpHh.7g.0
( ^ν^)「なぜだ。理由を云え。これは明らかに、」
フィレンクトは残っている腕で落ちた手から銃をとる。
それから男の首の動脈を圧迫し、呼吸を困難にした。
もう弾が残っていなく、補充するよりかその方が簡単だった。
男は口を開いて何かを言い掛けたが、軌道をふさがれて顔を蒸気させたあと強く締めたので男はすぐに絶命した。
流れ作業のような行程で死んだ。
.
284
:
名も無きAAのようです
:2015/02/24(火) 04:24:39 ID:PpHh.7g.0
呼吸の停止を確かめる。
それからはた、とこれは反逆になるのだろうかと考えた。
だが考えただけで終わった。
この男は主人ではなかった。
あの時とただ違うひとつの事柄。
(‘_L’)「彼が、まだ生きている」
冷たくなった男の質問に答え、ようやくフィレンクトはジョルジュの元に駆け寄ることができた。
.
285
:
名も無きAAのようです
:2015/02/24(火) 04:25:30 ID:PpHh.7g.0
フィレンクトは撃ったときに、防弾ベストを身につけたジョルジュの防御性の高い場所を狙った。
すでに致命的な怪我を負っているため頭といった危険性の高い部位でなくとも疑われることはなかった。
だが布面積で止まったとはいえ衝撃は大きい。
ジョルジュは呼吸をしていた。
小さくけれど必死に。
焼けた肉は傷口が焦げ付いていて血は止まっている。フィレンクトは心臓部位に手をあてる。わずかに心音がした。
.
286
:
名も無きAAのようです
:2015/02/24(火) 04:26:20 ID:PpHh.7g.0
急に地面への感触が強くなった。
踏みしめる感覚が戻ったのだと知る。
さきほどの男を撃ったときは感覚がなかった。ただ考えをなぞるような行動だった。
それもジョルジュが生存しているから、躊躇することはなかったのだ。
彼が死んでいたらいつまでも置物でいただろう。
.
287
:
名も無きAAのようです
:2015/02/24(火) 04:27:01 ID:PpHh.7g.0
身体を横たえるとジョルジュは苦しそうに呻いた。傷の具合を見る。
ゆっくりと血は流れていた。焦げた傷口だが、中身の臓器からとめどめなく溢れている。
ネクタイを外し、ジョルジュの胸に巻いて止血を試みた。
抗生物質の紙パックをジョルジュの背負っていた袋からとりだし、注射する。
ここまでひどい怪我は想定していなかった。なかに人が待ち受けているのを知らなかったように。
少しだけ苦しそうな表情が和らぐ。
脳内からドーパミンが出ている。
それで傷の痛みを押さえているのだ。
フィレンクトは考えた。
このまま彼を背負って逃げることはたやすい。
爆薬をこの部屋で爆破させ、大騒ぎになれば負傷者に紛れることができる。
そう考え、実行しようとする。
だが立ち上がりかけて、残った腕を掴まれた。
.
288
:
名も無きAAのようです
:2015/02/24(火) 04:27:47 ID:PpHh.7g.0
(‘_L’)「……なにか」
ジョルジュは息をはいて、言葉を発しようとしている。
だが肺と心臓は失う血液と損傷した臓器を補おうと活発しているため、なかなか声帯にまで機能が働かない。
見かねたフィレンクトが彼の背中に手をあて、発生の手助けをした。
_
( ゚∀゚)「……どうなった」
記憶が多少混濁している。貫かれたうえに弾丸の衝撃を受けたので無理もない。
.
289
:
名も無きAAのようです
:2015/02/24(火) 04:28:29 ID:PpHh.7g.0
(‘_L’)「襲ってきたので、撃ち返しました」
事実だけを述べる。
詳しく説明するにはジョルジュの状態は悪すぎた。
いまこうしているだけでも身体は血を流している。
フィレンクトは医者でない。
銃創を受けたときの応急処置と、監禁された場合の栄養補助に関する知識しか持ち得ていない。
だからジョルジュの口を止めるにふさわしい助言を出すことができなかった。
彼は語りだす。
フィレンクトのこれから想定する脱出劇に、加われないことを理解しているようだった。
.
290
:
名も無きAAのようです
:2015/02/24(火) 04:29:41 ID:PpHh.7g.0
_
( ゚∀゚)「ここ、爆破できるのか?」
(‘_L’)「問題ありません」
_
( ゚∀゚)「そうか……ひとりでも可能、だった、け」
(‘_L’)「ひとりでは」
_
( ゚∀゚)「ひとりだ。こればっか、はしょうがない」
フィレンクトは押し黙る。
これ以上なにを言えばいいのかわからない。選択できない場面には彼はいつも沈黙していた。
それがなぜか今は不快なものに思える。
フィレンクト以外の誰かだったら、現在のジョルジュにかけるのにふさわしい言葉を選ぶことができたはずだ。
.
291
:
名も無きAAのようです
:2015/02/24(火) 04:30:32 ID:PpHh.7g.0
_
( ゚∀゚)「おまえ、腕どうした、」
(‘_L’)「焼けました」
_
( ゚∀゚)「ぶっ、」
ははは、乾いた、空気をふるわせるだけの小さな笑いだった。
_
( ゚∀゚)「……こんな時も、その顔で、その口調っていうのは、笑えるな」
エンドルフィン過多。意識の異常。
彼はこんな時に楽観になる人物でない。
フィレンクトは肩と腰に手をいれて、ジョルジュを持ち上げようとした。
そのとき初めて失った腕の存在を思い出して愕然とする。
.
292
:
名も無きAAのようです
:2015/02/24(火) 04:31:23 ID:PpHh.7g.0
_
( ゚∀゚)「どっちかひとつだ。」
ジョルジュが眼を細めてそう吐いた。
彼の短縮した言葉の表現にいつも面食らったフィレンクトだが、その時はすぐさま理解する。
片腕でも設置は可能。
しかし時間はだいぶかかるだろう。
ジョルジュをかついで逃げる時間はない。
_
( ゚∀゚)「俺は置いてけ。弛緩してるし、もう感覚がないんだ。」
嘘だ。
だが指先は冷えている。血はいまだ少量ずつだが、止まっていない。
フィレンクトは立ち尽くした。
いままさに、ジョルジュが死にかけている。それを救う手だてが自分にはない。
何でもできるはずだった。
ジョルジュが居ればなんでも。
だから引き金を弾けたのに。
.
293
:
名も無きAAのようです
:2015/02/24(火) 04:32:06 ID:PpHh.7g.0
_
( ゚∀゚)「おい、」
呆然と彼を見下ろす。
本来ならこの後のことを聞かなければならない。
その計画を完遂させるために。
_
( ゚∀゚)「お前、死ぬなよ」
ジョルジュがそう命令する。
それで思考が現実に引き戻された。
命令形。
フィレンクトが従うべきもの。
フィレンクトは動かない。
ジョルジュが具体的な命令を出していないからだ。
連れていけないと遠回しに言われたが、何かをしろ、早くいけなどと言われたわけじゃない。
それを口にされることを恐れた。
.
294
:
名も無きAAのようです
:2015/02/24(火) 04:32:48 ID:PpHh.7g.0
緊張の面差しで、ジョルジュの顔を眺める。
もう血の気もない。
_
( ゚∀゚)「俺が殺すまで、絶対に死ぬなよ」
はい、と答えることができただろうか。
なにもかもが遠くに思える。
たとえばジョルジュの長引く間隔の呼吸とか。
絨毯に確かに量を増やして染みていく血とか。
_
( ゚∀゚)「ああ、くそ」
「ぜんぶ、壊してくれ」
壊してくれ。
.
295
:
名も無きAAのようです
:2015/02/24(火) 04:33:30 ID:PpHh.7g.0
悔しそうに彼が顔をゆがめる。
その一瞬は生に溢れるように見えた。
ペニサスに悪態をつく普段の顔とまったく同じに見えた。
ちくしょうと口のなかで呟くとフィレンクトに眼だけで頷かれる。
この後を頼むと伝えたようだった。
彼は最後に小さく発音すると眠りに落ちる間際のように眼をつぶる。
最後の言葉は小さすぎて聞き取れなかった。
女の名のようだったが誰なのかを特定するのは難しかったし、フィレンクトにその気はなかった。
生きている方とも限らない。
.
296
:
名も無きAAのようです
:2015/02/24(火) 04:34:16 ID:PpHh.7g.0
(‘_L’)「はい」
.
297
:
名も無きAAのようです
:2015/02/24(火) 04:34:58 ID:PpHh.7g.0
.
298
:
名も無きAAのようです
:2015/02/24(火) 04:36:23 ID:PpHh.7g.0
( ´_ゝ`)「wwwwwwww」
( ^ν^)「やかましい」
( ´_ゝ`)「なにもwwww言ってないのにwwww」
( ^ν^)「……」
( ´_ゝ`)「ゴメンゴメン。でもよかったじゃん。ああなって欲しかったんだろ?」
( ^ν^)「あそこまで極端なものを求めたわけではない。忠義心があるわけでもないし、すぐに死ぬ相手に操をたてるのは論理的でない」
( ´_ゝ`)「なにそれwwwちょう理不尽www」
( ^ν^)「やめろ不快だ」
( ´_ゝ`)「はーい」
( ´_ゝ`)「でもさーかっこよくない?」
( ^ν^)「事実は小説より奇なり。あれが従うかわからんが好むのは多いだろうな。だが管理は難しいだろう」
.
299
:
名も無きAAのようです
:2015/02/24(火) 04:37:32 ID:PpHh.7g.0
( ´_ゝ`)「なんで?」
( ^ν^)「死ぬと理解していながらそちらを選んだんだ。戻ると思うか」
( ´_ゝ`)「居なくなったんなら戻ってくるんじゃない?新しい主人欲しくてさ」
( ^ν^)「今まで主人の遺言を聞かされた者など居ない。切り替えのよものなら忘れることもできそうだがアレはもう限界だろう。次にシェーカーを使えばどうなるかわからん」
( ´_ゝ`)「処分するの?」
( ^ν^)「貴重なデータは取れた。
欲を言えばもっと頭を使ってほしかったな。駆け引きにたけるような」
( ´_ゝ`)「そいつは無理な要求だ」
.
300
:
名も無きAAのようです
:2015/02/24(火) 04:38:27 ID:PpHh.7g.0
( ^ν^)「なぜ。主人を守るためにボーイの真似事だってしている。あの男が花を使って侵入するのを思いつけたはずがない。
そこまで柔らかな思考ができるならもっとうまく動けるはずだ」
( ´_ゝ`)「大事なこと忘れてない?
あの場面であいつの主人はもう死にかけてた」
( ^ν^)「だからだ。主人の次を見据える行動を取れなければいけなかった。
心中されては何のために監視していたのか意味がなくなる」
( ´_ゝ`)「うーん」
( ´_ゝ`)「あいつけっこうすごいとこあるよ?」
( ^ν^)「評価できる点はもうない。
変わり種ということなら面白いが」
( ´_ゝ`)「いや、そうじゃなくてさ。……なにか聞こえない?」
( ^ν^)「なにも」
.
301
:
名も無きAAのようです
:2015/02/24(火) 04:39:31 ID:PpHh.7g.0
関節さきの焼けた腕、肉と骨が切断され露出している。応急手当をしてからしばらく考えこんだ。
ジョルジュからの最後の命令。
それを考えることだけがフィレンクトのすべてだった。
爆発物を設置して。結果はどうだろうか。
上階の一部分を崩すだけでは足りないように思えた。彼はぜんぶと言った。
すべて。
この世のすべて。
フィレンクトは考える。何もかも終わったら自分の世界も終了してしまう予感に襲われた。
まだその時ではない。
恐ろしい予感を先送りにして、どのように箇所を決めるか悩んだ。
ジョルジュの希望を叶えようとすると、この階では不十分。必要な知識を探り出す。
見取り図、耐震設計、加重の要点。
軍にいたことはないから爆発作業は初めてだ。それでもこれは成功させなければいけない。何としても。
.
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板