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('A`)は異世界で戦うようです
1
:
名も無きAAのようです
:2014/05/25(日) 20:21:36 ID:gOpuSR2Q0
鬱田ドクオとは、一言で言えば弱い人間だ。
過去を振り替えれば後悔しなかった出来事はないし、ましてや努力なんて言葉とは無縁の存在である。
テストは赤点ギリギリ、運動能力は一般人より少し劣る程度、体つきは貧相なもので米俵一俵持つのが精一杯。かといってそれらを補うための努力をしたいなぁとは思っても、けして実行することはなかった。
そんなわけだからドクオは自分という存在が嫌いだった。変わりたいと願っても、変えようとすること自体がめんどくさくなってしまう。
大学を卒業し、なんとか内定をもらった会社も周囲の環境に溶け飲むことが出来ず、やめてしまったことも自己嫌悪の一つの原因である。
よって、ドクオにとっての自分とは、あってもなくても変わらない路傍の石のような存在で、そんな自分が世界に与える影響など皆無だと信じ込んでいた。
*鼹類燭辰榛*、この瞬間までは。
2
:
名も無きAAのようです
:2014/05/25(日) 20:23:14 ID:gOpuSR2Q0
(゚A゚)「おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!」
ドクオは目の前の現実を変えるために、走り出す。
ほんの数メートル、それが自分でも変えられるかもしれない距離。
誰かが自分の名を叫んでいた。それでもドクオは止まらない。
ここで何もしなかったら、自分は後悔する。今までのような小さなものではなく、自分の一生について回るほどの大きなものだ。そんなものを抱え生きていけるほどドクオは強くない。
エゴだということは分かっている。もしかしたら勝手なことをするなと恨まれるかもしれない。自分のことを思って涙する人も、いるかもしれない。
そんな人がいればいいな、とドクオが心中で呟いたと同時、強烈な衝撃が身体を貫いた。
肋骨が折れ、内蔵を傷つける。
肺の空気が一気に吐き出され、呼吸もままならない。
視界はちかちかと瞬き、上下左右も認識できなくなる。
壁に叩きつけられ、ようやく勢いが止まった瞬間、ドクオは自分に死が訪れようとしていることを知った。
音も聞こえず、薄れていく意識の中、走馬灯のように流れる記憶がドクオを駆け巡っていき、彼はその日ーー
命を落とした。
3
:
名も無きAAのようです
:2014/05/25(日) 20:24:52 ID:gOpuSR2Q0
('A`)「はぁ……」
大きなため息を吐くと、ドクオは手に持っていた紙を床に投げ出した。
先日とある会社に送った履歴書に対しての返信があったのだ。社交辞令である長ったらしい口上を得て、最終的に書いてあることは『採用を見送らせていただきます』だった。要するに、不採用。
確かに今回の会社は落ちるだろうなぁとはドクオも思っていた。この周辺の企業としては五本の指に入るほど大きな会社だし、倍率もかなり高いだろうと某職業安定所のお姉さんも言っていた。
が、大学を卒業して半年も経っていない自分ならもしかして、という希望的観測があったのだが*鼹*
結果は書類選考すら通らず。
これではため息も吐きたくなるというものだった。
やはり前の会社を辞めなければよかった、と今更後悔の念が押し寄せる。待遇もそこそこよかったし、上司の理不尽さも仕事のない現状に比べればましに思える。
なにせこの不採用通知で指を折ることちょうど十。とうとう二桁の大台に乗ってしまったのだ。
('A`)「このままじゃヤバイよなー」
4
:
名も無きAAのようです
:2014/05/25(日) 20:26:39 ID:gOpuSR2Q0
床に大の字になりながらこれからどうしようかと思案を巡らせるが、浮かぶのはどれくらいまでならニート生活を満喫できるのだろうか、そして現在の貯金をどうやって切り詰めるかということだけである。
現実逃避にも程があるが、さすがに一ヶ月足らずの間にこれだけやって面接にこぎ着けないとなると凹むのは当然だろう。よって思考が働かなくて済む方法を模索し始めるのも仕方がないというものだ。
もちろん働かなくて済む方法などどこにもないことなど分かっている。
働かざる者食うべからず。
まさにその通りで、働いていないドクオは現在食料飢饉に陥っていた。
のそのそとテーブルに置いてある預金通帳を開けば書いてある数字がこれでもかというほど目に飛び込んでくる。その数たったの一万円。つまり諭吉さん一人。
('A`)「一ヶ月を乗りきるのも難しい状況かよ」
幸い住んでいるアパートの家賃やら光熱費やらはすでに支払ってあるので一ヶ月の猶予がある。あるのだが、自分の体力と精神を維持できるのか心配になる金額だった。
ドクオには実家に帰るという選択肢がない。両親はすでに他界しており、親戚の家に預けられて育ったドクオは、快く迎えられはしなかった。どこで聞いたのか定かではないが、彼の両親は周囲の反対を押し切り駆け落ち同然で家を出たのが原因らしい。
この話がどこまで本当かは分からないが、その子供であるドクオの待遇は劣悪なものだった。食事は一日一回、団欒には入れず一人廊下でとったし、自室なんてもっての他、まるで駒使いのように家事をやらされ、それが終われば親戚の子供達と遊びという名のいじめが始まる。一日がいつ終わるのかと幼いながらに震えて過ごすような毎日だった。そういった事情もあり、ドクオは大学進学と共に逃げるように家を去った。
とはいえ、一応ドクオも大学に進学させてもらえた以上特に恨んだりはしていない。本音を言えば何故自分がこんな目に合わなくちゃならないんだろうと思った時期もある。しかしそれらは全て過去の話で、自分から関わろうとさえしなければ何の問題もないのだ。
そんなわけでドクオは孤立無援、支援物資は期待できないという状況でどうすべきかをもう一度考える。食料と現在の手持ち、さまざまな条件を考慮して計算し、逆転の一手を導きだそうとして……。
('A`)「無理だな。うん不可能」
という解を出した。
5
:
名も無きAAのようです
:2014/05/25(日) 20:27:58 ID:gOpuSR2Q0
('A`)「つーか無理だろこんなん。一万円で何ができんだよこれ」
せめてもう少し金があればギャンブルという選択肢があったのに、とドクオは一人ごちてみる。もちろんそれが最適解だとは思わないが。
とにもかくにもドクオには今金がなく、時間だけが余っている。やはり金が許す限り履歴書を書くしか方法はなさそうだ。
ドクオは体を起こしてめぼしい求人はないだろうかとボロボロになったノートパソコンを開く。いい加減寿命を迎えそうだが、大学入学と同時に購入した頼もしい戦友だ。辛いときも苦しいときもこいつがあったからやってこれた。用途は主にピンク色の画像や動画の収集と再生だったが。
マウスを動かし様々な求人サイトを漁っていく。いくつか希望条件を満たした求人をリストアップし、募集要項を流し読みしていく。
('A`)「……ん?」
と、そのなかに一つ気になるものがあった。
企業名『黒の魔術団』
求人サイトに掲載される会社というのは半数が人をやる気にするような甘い言葉が書いてあるが、その実ブラックであることが多い。何せ募集をかけてしばらくみかけなくなったなと思った頃にはまた募集されているのだ。それが指す意味を考えればすぐにわかることなのだが、これはその中でも異色を放っていた。
一つが名前である。まともな企業であればこんな厨二病をこじらせた名前などつけないだろう。
次に給料の額が記載されていないこと。これはあり得ないことだ。どのような企業であっても大まかな給料額は記されている。歩合制であっても最低賃金くらいは書いてあるはずなのだ。
最後に、募集要項。
『我々の掲げる思想のもとに魔法の実験台になってくれる方を募集。成功した暁には異なる世界の一部を差し上げます』
('A`)「……なんだこりゃ」
6
:
名も無きAAのようです
:2014/05/25(日) 20:29:44 ID:gOpuSR2Q0
頭がおかしいとしか思えなかった。こんなものを載せるサイトもサイトだが。
異なる世界とか、魔法だとか、夢物語を謳う企業なんて聞いたことがない。ましてやここは現代日本、世界に認められるオタク文化は確かに素晴らしいとは思うが、こんなところに堂々と記載するのはさすがに狂っている。
念のため世界的検索エンジンて企業名を調べてみるが、ヒットするのは漫画やアニメの話ばかりで会社のかの字も見当たらない。
('A`)「うさんくさすぎだろ」
しかし、妙に引かれるものがあるのも事実だ。訳のわからない文面や目的、そして報酬。どんな仕事なのかも興味がある。
もしかしたら麻薬の密売という線もあるが、そんな裏社会の求人を堂々と人目には触れさせないだろう。そのためのサイトでもあるのだから。
きっかり十分ほどあれこれと考えた結果、ドクオはマウスを動かしキーボードで必要事項を入力していく。
('A`)「ま、まともな返事は返ってこないだろうが、とりあえずな」
完全に冷やかし感覚だったがどうせ書類選考の段階で落ちるのが当たり前になっていたドクオの思考は投げやりになっていた。
そして全ての情報を入力し、応募と書かれたボタンを押した瞬間ーー
('A`)「は?」
モニターから溢れんばかりの光が発した。それは段々と大きくなり、やがて目を開けることすら出来なくなる。
(>A<)「ちょ、え? 何が、どうなっ……」
ドクオの言葉は最後まで発せられることはなく、深い闇に落ちていくように、意識が途切れた。
7
:
名も無きAAのようです
:2014/05/25(日) 20:31:20 ID:gOpuSR2Q0
第一話「妄想の世界へ」
その日は快晴だった。雲一つない晴天とはまさにこのことだろう。青々とした空は小鳥が陽気に羽ばたいており、遥か遠くに見える海も宝石を散りばめたように輝いている。
これならば干してきた布団もふかふかになっているだろう。渡辺は箒に跨がりゆっくりと空を飛びながら、夜に布団に入る心地よさを考えていた。
渡辺が向かっているのは王立魔法学校であり、彼女はそこに所属する魔法使い見習いである。時間はすでにお昼を迎えようとしているが、本日は急ぎで済ませなければならない課題がないため、久々に遅い登校となった。つい先日まではクラス昇格試験の準備でてんてこ舞いだったが、それらもなんとか終わりようやく平穏な毎日がやってきたのだ。もちろん昇格試験までの小休止ではあるのだが。
暖かい日差しを浴びなからしばらく進むと宙に浮いた大きな城のような建物が見えてくる。彼女の他に登校する生徒はおらず、どうやら渡辺が最後の生徒のようだ。
とはいっても、この学校は通常の学校とは違い、自分で弟子入りする先生を選び、スケジュールを調整しながら受ける授業を組み合わせるという方針なので、お昼を過ぎてから顔を出す生徒もいるだろう。割りと自由な校風なのである。
从'ー'从「ふんふふ〜ん♪」
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