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( ^ω^)達はアインクラッドを生きるようです。

1 ◆dKWWLKB7io:2013/10/28(月) 22:13:10 ID:6CCOWjXw0

どーも作者です。

新しく作らせてもらいました。
設定だけ作っておいて最初の二話で終わる予定だったこの話がこれだけ続くことになろうとは。

半分くらいは終わっている予定なので、もう少しお付き合いいただければ幸いです。


話の投下の前に、各人の見た目データと大まかな設定を載せておきます。


この話は
川原礫著
『ソードアート・オンライン』シリーズのアインクラッド編を基に書かせていただいています。
基本的に設定を順守しているつもりですが、拡大解釈とまだ書かれていない設定に関しては想像で書いているので、その旨ご容赦の上、お楽しみいただけますようお願い申し上げます。


まとめ

ブーン芸VIP様
http://boonsoldier.web.fc2.com/

大変お世話になっております。

.

717 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:48:12 ID:Am.mXpzk0

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

.

718 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:49:00 ID:Am.mXpzk0

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

.

719 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:50:41 ID:Am.mXpzk0

(´・ω・`)「えっと……」

(`・ω・´)「慰めはいらない」

(´・ω・`)「はい」

(`;ω;´)「おれ、もっとがんばる」

(´・ω・`)「シャキンは今のままでいいと思うけどね。
もともと今のシャキンを知ってからギルドになったわけだし。
うちとはギルドが出来た経緯が違うんだからさ」

(`・ω・´)「そうか?そうだよな。うん、そうだ」

(´・ω・`)(このパターンも短い間に何回もやられると飽きるよね)

(`・ω・´)「しかし血縁と言えば、しぃちゃんに会った時は驚いたな」

(;´・ω・`)「いきなり話題を持ってくるよね。確かにあれは驚いたけど」

(`・ω・´)「いきなり『兄弟ですか?』だからな」

(´・ω・`)「ふつうこういうゲームの中では、
リアルの世界関連の事柄は言わぬが花ってところがあると思うんだけど。
思わずギルド外の人に言われた時用の『他人』『友達』ってのを強調しちゃったから、
あのあとこっそり血縁だってことを話して、注意はしておいたよ」

.

720 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:51:48 ID:Am.mXpzk0

(`・ω・´)「知られてまずいことはないが、
どんな弊害が出るかは分からないからな」

(´・ω・`)「そういう割にはミルナ達に紹介してくれる時に最初っから血縁だって話してくれたよね」

(;`・ω・´)「あ、あれだな、あれ」

(´・ω・`)「あれ?」

(`・ω・´)「あの子の中では、この世界ももう現実世界と同じなんだろ」

(´・ω・`)「そう…だね」

(`・ω・´)「ああ」

(´・ω・`)「でも冷静にこの世界と現実世界を見つめているところもあるんだよ」

(`・ω・´)「そうなのか?」

(´・ω・`)「うん。実はさ…」




.

721 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:53:43 ID:Am.mXpzk0

6.現実と事実と



2024年4月

ギルドVIP執務室。
ショボンが一人机に向かっている。

目の前にはいくつかのウインドウが開いているが、
どちらかと言う机の上の書類を中心に見ていた。

すると、ドアがノックされた。

(´・ω・`)「はい」

(*゚ー゚)「しぃです。今大丈夫ですか?」

(´・ω・`)「大丈夫だよ」

(*゚ー゚)「お邪魔します。あ、すぐすみますからそのままで」

ドアが開かれる。
目の前のウインドウを消しつつ執務机の前から移動しようとしたショボンを止めるしぃ。
しぃの後ろにはギコも居た。

(,,゚Д゚)「お邪魔します」

(´・ω・`)「二人ともお疲れ様。しぃ、今日はお店の方はどうだった?」

(*゚ー゚)「順調です。今日から出してるメニューも好評でしたよ」

(´・ω・`)「それは良かった」

(*゚ー゚)「データは夜の分とまとめますね。今日のランチも持ってきました」

(´・ω・`)「!ありがとう。食べるの忘れてたよ」

しぃが籐で出来たようなバスケットを胸の位置で掲げるのを見て、嬉しそうにお礼を言うショボン。
そして書類を机の端に寄せた。

.

722 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:55:54 ID:Am.mXpzk0

机の上に置かれるバスケット。

(*゚ー゚)「どうぞ」

(´・ω・`)「うん。話の後でいただくよ。で?二人でどうしたの?」

(*゚ー゚)「あ、やっぱり話があるって分かります?」

(´・ω・`)「わざわざ二人で来られればねー。悪い話で無いのを祈るばかりだよ」

(*゚ー゚)「ちょっとめんどくさい話です」

(´・ω・`)「しぃがそう言うってことは本当になかなか手をこまねく内容なんだろうね。
聞くのが怖いなー」

(*゚ー゚)「ショボンさんなら大丈夫ですよ」

(;´・ω・`)「ほんとに怖いんだけど」

おびえるように眉をひそめたショボンを見て笑顔を見せるしぃ。
ギコはその後ろで挙動不審に目線を部屋のあちこちに飛ばしている。

(´・ω・`)「じゃ、なんだろう。身構えて聞こうかな」

(*゚ー゚)「はい、お願いします」

しぃがウインドウを開き操作すると、ショボンの視界の隅にメッセージ到着シグナルが現れた。

(´・ω・`)「ん?」

(*゚ー゚)「開けてください」

(;´・ω・`)「えっと…本気で怖いな」

ウインドウを出すショボン。そしてメッセージを開く。

(´・ω・`)「!え、これって…え?」

.

723 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:57:12 ID:Am.mXpzk0

(,,゚Д゚)「お、おれとしぃの本名と住んでるところだゴルァ」

(´・ω・`)「う、うん。二人の名前と、それぞれの住所が書いてある。…ね。
ど、どういうこと?」

(,,゚Д゚)「しぃと話し合ったんだゴルァ。
リアルに戻ってから、また会いたいからショボンに二人のデータを教えておこうって」

(´・ω・`)「ギコ……しぃ……」

(*゚ー゚)「重荷だと思いますが、よろしくお願いします」

(,,゚Д゚)「頼むぞゴルァ」

(´・ω・`)「頼むって言われても…」

真剣な顔のギコ。
柔和な笑顔を見せるしぃ。
そんな二人を交互に見ながら、珍しく本当に情けない顔を見せるショボン。
その表情は困惑と喜びから来たものだった。

(*゚ー゚)「ギルマスとして、リアルでもちゃんと呼んでくださいね」

(,,゚Д゚)「頼んだぞゴルァ」

(*゚ー゚)「ショボンさんから連絡が来る前に私達が先にショボンさん達に連絡できたら、
ペナルティですよ」

(,,゚Д゚)「そうだぞゴルァ」

(´・ω・`)「ぼくの本名も渡しておこうかな」

(*゚ー゚)「いえ、それは大丈夫です」

(;´・ω・`)「え?ここで拒絶!?」

(*゚ー゚)「だって教えてもらってたら、私達から連絡出来ちゃうじゃないですか。
ギルマスとして、探してきてください。逃げたりしませんから」

(,,゚Д゚)「でもこちらも探す努力はするから、おれらが先に見付けることが出来たら罰ゲームだぞ」

(´・ω・`)「……ひどいな。二人とも」

.

724 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:58:11 ID:Am.mXpzk0

(*゚ー゚)「私達をこのギルドに入れた以上、これくらいしてもらわないと」

(,,゚Д゚)「そうだぞゴルァ」

(*゚ー゚)「後悔しました?」

(´・ω・`)「する分け無いよ。二人と仲間になれて良かった。
二人を誘った僕の目は間違ってなかったって、改めて思うよ」

(*゚ー゚)「物凄い自画自賛ですね。さすがショボンさんです」

(,,゚Д゚)「おれ達もこのギルドに入れて嬉しいぞゴラァ」

三人が、三様の笑顔を見せた。





.

725 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:00:02 ID:Am.mXpzk0

7.見せかけと真意と



(`・ω・´)「それは……」

(´・ω・`)「すごいよね。二人とも。まさかそういった行動に出るとは思わなかったよ」

(`・ω・´)「すごいな、彼女は」

(´・ω・`)「で、二人がそれをしたのが広まって、
次の日のうちに全員から本名と所在地が送られてきた」

(`・ω・´)「ハハハハッハハ」

(´・ω・`)「しかも全員『ショボンの名前とかいらないから。ヨロシク』だって」

(`・ω・´)「さすがVIP、統制が取れてるな!」

(´・ω・`)「嬉しいけど大変だよまったく」

ため息を吐くショボン。
しかしその表情はどこか嬉しげで、けれどどこか寂しそうだった

(`・ω・´)「…ショボン?なにか引っかかってるのか?」

(´・ω・`)「うん…。しぃの、多分真意がね」

(`・ω・´)「ん?」

(´・ω・`)「彼女は、かなり聡明だよ。
多分ぼく達五人が…僕にはシャキンが、それに兄者と弟者もリアルで繋がっていることを知って、
自分が独りだってことを改めて感じたんだと思う」

(`・ω・´)「独り?いや、ギコも居るしお前達だって」

.

726 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:01:30 ID:Am.mXpzk0

(´・ω・`)「うん。アインクラッドで彼女は一人じゃない。
でも、リアルの世界とのつながりは無いんだよ。
独りなんだ。
生きて帰れればいいけど、もしも死んでしまったら、それで終わり。
自分がこの世界で生きてきたことを、生き抜いたことを、リアルの誰にも知らせることは出来ない」

(`・ω・´)!

(´・ω・`)「もし僕が死んでもドクオやブーンが生き残ってくれれば、
その生きた証を父さんたちに伝えてくれると思う。
多分、彼女はそれを考えている。だから僕に依頼したんじゃないかな。
多分……だけどね」

(`・ω・´)「聡い子だな」

(´・ω・`)「うん。
おそらくだけど、モナーやクックル、モララーあたりはしぃの真意に気付いているだろうね。
そして自分達の事も教えてきたんだと思う」

(`・ω・´)「…おまえが、
自分の命に代えても自分達を守ろうとしてくれていることを、
分かっているんだな」

(´・ω・`)「………そんな良いもんじゃないけどね。
僕も、自分のエゴのために頑張っているだけだし。
それにそんな重いことはしたくないから、
絶対にみんなが生き残ることが出来るようにする。
ギルドの全員が生き残れるように。
僕はその為なら何でもやる。
…………そう。なんでもね。
その為なら泥水もすする。
僕一人なら手も染める。
………誰に後ろ指を指されても気にはしない」

(`・ω・´)「ショボン……」

(´・ω・`)「きっと、シャキンだって僕と同じ気持ちだと思うよ!
だから、シャキンの事を宜しく頼むね!」

.

727 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:03:10 ID:Am.mXpzk0

「……わかった」

「ん……」

どこから聞こえる二つの男の声。
そしてほんの少しだけずれていたドアが動き、カチャリと閉まる音がした。

(`・ω・´)「外で聞いてるやつがいるのにどこまで何を話すつもりなのかと思ったが、そういうことか」

(´・ω・`)「さっき入ってきたとき少し違和感を感じたんだ。
で、出て行ったあとドアがほんの少しだけ閉まっていなかった。
この部屋はうちと同じで完全防音仕様だけど、ドアが少しでも開いていたら外から聞けるからね」

(`・ω・´)「しかしなんだって盗み聞きなんてことをあいつらは…」

(´・ω・`)「珍しく長くぼくが居るから、心配だったのかな。
シャキンが独りで何かを抱え込むんじゃないかって」

(`・ω・´)「おれ、そんなに信用ないのか?」

(´・ω・`)「逆だよ。自分達を守るために一人で何かを抱え込んだりしてしまうんじゃないかって
思ったんじゃないかな」

(`・ω・´)「……」

(´・ω・`)「心配だったんだよ。シャキンの事が」

(`・ω・´)「だが、おまえを」

(´・ω・`)「ぼくの事も心配だったと思う。
……ぼくがシャキンにこんな話をしていることを知っているのは、二人だけだからね。
だから、シャキンが独走しないように、ぼくが迷走しないように、
知ろうとしてくれてるんじゃないかな」

(`・ω・´)「そうなら良いが…」

(´・ω・`)「あの二人とモナーとクックルは仲良いしね。
多分それなりに互いのギルドの情報交換はしていると思うよ」

(`・ω・´)「それは知ってるが」

.

728 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:04:32 ID:Am.mXpzk0

(´・ω・`)「あと、気付いているでしょ?クックルの事」

(`・ω・´)「実はちゃんと喋れるってことか?」

(´・ω・`)「うん」

(`・ω・´)「ま、そりゃ。気付くさ」

(´・ω・`)「でも、知らないふりをしていてくれる。
と言うよりも、彼を心配し、彼が声を出せないことを周囲に分かる様にしてくれている」

(`・ω・´)「お前が何か企んでるってことは分かるからな」

(´・ω・`)「あの二人もそうしてくれている。
頭が下がる思いだよ。
僕もあの二人をあの二人が思っている以上に信用し信頼しているけど、
いつかちゃんとお礼を言わなきゃだね」

(`・ω・´)「あの二人が照れながら慌てる姿が見られるってことだな」

笑う二人。
無邪気な笑顔はこの二人は本当によく似ていた。

(´・ω・`)「さて、そろそろ帰ろうかな」

ひとしきり笑った後、ショボンが大きく伸びをした。

(`・ω・´)「なんだ、もう帰るのか?夕飯作って行けよ」

(´・ω・`)「そこ、ふつう『夕飯食べて行けよ』じゃないの」

(`・ω・´)「だってお前が作った方がうまいし」

(´・ω・`)「まったく。だいたいこのギルドホームの台所って使ってるの?」

(`・ω・´)「たまにトソンが」

(´・ω・`)「トソンが入る前は」

(`・ω・´)「……」

.

729 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:07:34 ID:Am.mXpzk0

(´・ω・`)「まったく」

(`・ω・´)「うちのギルドは生産系じゃないから良いんだよ」

(´・ω・`)「攻略組の中にも料理スキルを上げている人がいるって噂があるけどね」

(`・ω・´)「噂だろ、噂」

(´・ω・`)「まったくもう」

(`・ω・´)「作ってけよー。食材は買ってくるからさー」

(´・ω・`)「食べに来ればいいでしょ」

(`・ω・´)「えーー。だってさーー」

(´・ω・`)「食材は用意してくるようにね。
あと、店の方じゃなくてリビングの方で。
ついでに朝霧の洞窟の話もしよう」

(`・ω・´)「わかった。奴らに連絡しておく」

ウインドウを出してメッセージを打つシャキン。
ショボンはその姿をじっと見ている。

(`・ω・´)「ん?どうした?」

(´・ω・`)「なんでもない」

(`・ω・´)「変なやつだな…。よし、これでよしと。さて、夕食までまだ間があるから、まだいるだろ?」

(´・ω・`)「良いけど…なんか話でもあるの?」

ウインドウを消して真っすぐにショボンの目を見るシャキン。

(`・ω・´)「実はな、今日呼んだのはこれが本題と言っても良い」

真剣な顔でショボンを見るシャキン。
怪訝に思いショボンが口を開こうとしたその瞬間、
シャキンが言葉をつづけた。
.

730 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:09:18 ID:Am.mXpzk0




(`・ω・´)「おまえは、いつまで殺人ギルドであるラフコフのやつらと接触しているつもりなんだ?」





.

731 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:13:59 ID:Am.mXpzk0



(´・ω・`)



.

732 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:15:57 ID:Am.mXpzk0

ストレートなシャキンの物言いに、思わず返答できないでいるショボン。
それは彼にとっては珍しいことだった。

(`・ω・´)「いつからかは聞かん。いつまでつながっているつもりだ?」

(´・ω・`)「何を…言っているの…と言いたいところだけど、無駄なんだろうね」

(`・ω・´)「何故かの見当はついている。だが、それにしても…」

(´・ω・`)「情報のソースはアルゴさんかな?でも、何故繋がっているかまで突き止めていたとは」

(`・ω・´)「彼女から聞いたのはお前がPoH達三人と接触していたことぐらいだ。
あとは経験からくる想像だが、間違っているとは思わん」

(´・ω・`)「間違っているかもよ?」

(`・ω・´)「報酬はギルドVIPとN−Sのメンバーの命。及び他のレッドギルドの情報ってところか。
対価は…ツンとブーンとクー。あとは兄者と弟者ってところか?」

(´・ω・`)「……すごいね」

(`・ω・´)「ラフコフには一度、4人で狩りに行った際に遭遇したことがある。
おそらくは首領のPoHとその他7人。
後から調べたら、その時近くのフィールドダンジョンで大量虐殺があったらしいから、
その流れだろうな」

(´・ω・`)「……効率の良い限定クエストの噂に騙された人達を殺しまくった…」

(`・ω・´)「ああ、それだ。
その時に居たのはハインまでの四人。
ちょうどハインがドクオに惚れた少し後の頃だな」

その事件を思い出し、顔を曇らせたショボン。

.

733 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:17:54 ID:Am.mXpzk0

(`・ω・´)「おれ達を見て奴らは笑いながら武器を構えた。
おれは何とかして三人を逃がすことを考えた時、
奥にいたフードを被った奴が合図を出して、
そいつらは森の中に消えた。
あのフードが、首領のPoHだったんだろうな。
命が助かったことに、心底ホッとした。
三人も、身体がこわばっていた。
『人』から与えられる殺意がこれほどまでにキツイとは、思わなかった。
逃げるように街に戻り、近くの宿屋に入って、やっと落ち着いた。
そこで、思った。何故逃がしてもらえたのか。
その答えが、ついこの前、やっとわかったわけだ」

(´・ω・`)

(`・ω・´)「何故、ラフィン・コフィン、殺人ギルドと手を組んだ?」

(#´・ω・`)「手を組んでなどいない!」

(#`・ω・´)「だがそう思われても仕方ない状態じゃないのか!?」

(´・ω・`)「手なんか…組んでない…人を殺す手伝いなんて…していない…」

(`・ω・´)「人はそうは思わない。
…ラフコフの補給線。
なんだろ?」

(´ ω `)「……食事と、装備と服、POT関係。それらを時々渡しているだけだよ」

(`・ω・´)「…それを、手を組んでいると」

(#´・ω・`)「違う!僕たちの命を守るためだ!それしかなかったんだ!」

(`・ω・´)「おれはそれを信じられる。それが真実なんだろう。
おまえはおれに嘘は言わないから。
隠し事はあっても。
だが、他の者がそれを信じると思うのか?」

(´ ω `)「……さっき、…言ったよね。
何でもするって。
誰に後ろ指を指されても気にしないって」

(`・ω・´)「……ミルナやデミタス、ハインにも?」

(;´ ω `)!

.

734 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:19:33 ID:Am.mXpzk0

膝の上で手を強く握って身体を固めていたショボン。
しかしシャキンの言葉に動揺して身体を震わせた。

(`・ω・´)「ギコやしぃは知っているのか?」

(´ ω `)「……話してはいない」

(`・ω・´)「モナー、クックル、モララー、フサギコ…」

(´ ω `)「話してはいないけど、多分知ってる…」

(`・ω・´)「良いのか?」

(´ ω `)「彼らが、みんなが生きていてくれるなら、僕はそれでいい。
その先で何が待ち受けていても、みんなが生きて、笑っていてくれるなら」

(`・ω・´)「ショボン……」

(´ ω `)「軽蔑…する?」

(`・ω・´)「いいや。しない。
でも、心から思うよ。
やっぱりお前がうちの会社を継ぐべきだって」

(´ ω `)「なにこんな時にそんなこと」

(`・ω・´)「祥大、気付いてないのか?
今のお前のが言っているのは、じいちゃんそっくりだって。
自分の手の中にいる者は命に代えても守るって、あれに」

(´ ω `)「似てなんかないよ」

(`・ω・´)「頑固なところもそっくりだ」

(´ ω `)「…ばかだな…」

.

735 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:20:23 ID:Am.mXpzk0

(`・ω・´)「で、話してみろ。なぜこうなったのかを」

(´・ω・`)「え?」

(`・ω・´)「話してみろ。いくらなんでもお前が自分からあいつらに関わったとは思えない」

(´・ω・`)「……志也兄さん……」

(`・ω・´)「話せ」

(´・ω・`)「!!」

(`・ω・´)「は、な、せ。」

(´・ω・`)「…………………あれは」





.

736 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:21:41 ID:Am.mXpzk0

8.死への誘いと生への渇望と



2023年7月

フィールドダンジョン『常夜の森』
鬱蒼と茂る木々。
空(実際は次のフロアの底なのだが、ほとんどの者は『空』と呼んだ)を隠す程に高くそびえ立ち、
横に広く葉を生い茂る木々。
鬱蒼と茂る草花は人の背の高さを超え、視界を邪魔している。

昼の時間さえ闇が支配するその森に、彼らはいた。

( ´_ゝ`)「弟者、逃げろ」

今流石兄弟は、オレンジプレーヤーを含む7人のプレーヤーに囲まれ、
その場を動けずにいた。

(´<_`;)「出来るわけないだろう!」

( ´_ゝ`)「何とかしておれが隙を作る。その間を縫え」

(´<_`;)「だから出来る訳がないと言っているだろう!
大体この状況でどうやって!」

( ´_ゝ`)「この前覚えたあの技を使う」

(´<_`;)「ば、馬鹿野郎!
あの技は確かに全方位に有効だが、
その後の硬直を考えれば今この場で使える訳が」

( ´_ゝ`)「だが、やらねば二人とも死ぬ。
おまえだけでも生き抜くんだ」

(´<_`;)「兄者…」

小声で周囲に聞こえない様に話す二人。

.

737 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:23:06 ID:Am.mXpzk0

兄者の声は緊張に満ち、表情は厳しい。
弟者は兄者の言葉に反発しつつも理性的な反論をすることが出来ず、
ただ感情的に言葉を荒げるだけだった。

(´<_`;)「みんなを待とう。それまで二人で戦えば」

( ´_ゝ`)「もうすでにおれ達のHPはイエローだ。
POTを飲む隙も与えてもらえない今、反撃しても結果は目に見ている。
おまえだってわかっているだろう?」

(XX)「なにを 話して、いる」

(JB)「同じ顔した二人。片方だけでも生かしてやる?」

(XX)「二人の 殺しあいを、みせてもらう か」

( ´_ゝ`)「ふっ。どうせその後で残った方を殺すんだろ」

(XX)「   ばれて るか」

(JB)「ね、ヘッド。もうやっていい?」

髑髏のマスクをつけた赤目の男と黒いマスクを被った男に詰め寄られ、
武器を構えながらも後ずさりする兄者と弟者。

しかし周囲を数人のマスクを被った男に囲われており、
それほど後ろには下がれない。

(XX)「もう、良い だろ?」

(  )

骸骨マスクと黒マスクが意識を向けた先にいる、フードの男。
大きなフードを深くかぶっているため顔は分からない。
おそらくは顔を隠すためにマスクも被っていると思われるが、
そんなことを考える余裕などなく、兄者と弟者は更に体を強張らせ、
それでも必死に武器を構えている。

.

738名も無きAAのようです:2014/11/09(日) 21:24:33 ID:Am.mXpzk0

(JB)「ヘッド、何考えてるの?」

集団の中では上位にいると思われる髑髏のマスクと黒いマスクの男。
その二人がさらに指示を仰ごうとするフードの男。

兄者と弟者の力量ならば、この輪を瞬間的に破ることはおそらくできる。
前に髑髏と黒マスクとフードの男の三人、
左右に一人ずつ、後ろに二人。
これくらいの人数ならば、隙間を作り逃げることが。
そしてそれは先ほど兄者が提案したような自らを犠牲にするようなやり方ではなく、
二人で逃げることを、生き続けることを選んだとしても。

だが二人はその行動を選ぶ気にはなれなかった。
髑髏のマスク、黒マスク、この二人は確かに強いと思われる。
でも本気で逃げようとすれば、戦えば隙を作ることは可能な様に思える。

しかしその後ろのフードの男。

こいつの手からは逃げられない。

そんな気がしてしまっていた。

特に兄者は初対面のはずのこの男の恐ろしさを、何故か知っているような気がした。

感じる圧力、前の二人や周囲から浴びせられる殺気とはまた違う、
恐ろしいほどのプレッシャー。
いつか、似たような何かを感じたことがあるような気がしていた。

弟者よりも冷静にこの場を観察できたのは、
弟者を守るという決意とともに、その経験によってなのかもしれない。

兄者自身はそこまで冷静に状況分析をしているわけではなかったが。

(´<_`;)「あ、兄者…」

( ´_ゝ`)「おれの言うとおりにしろ、弟者。
それに、死ぬと決まったわけじゃない。
あいつらがすぐ来るかもしれないしな」

前の三人を見据えたまま自嘲気味に笑う兄者。
口の端を少しだけ上げただけだったが、
弟者にはそれが『笑い』であると理解できた。

.

739 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:25:57 ID:Am.mXpzk0

自らの言葉がおそらくは実現しないであろうという嘲り。
そして弟者は分かってしまう。
自分の兄が、自分を守るために自分の命を捨てる覚悟をしたことを。
そして弟者は知っていた。
自分の兄が、一度決めたことをそう簡単に覆そうとはしないことを。

(´<_` )「兄者……」

おそらくは、自分が何をしても兄者はあの技を繰り出す。
自分を中心に衝撃波を生む剣技を。
その衝撃波によってできた隙を縫って、自分は外に飛び出す。
そして……。

(´<_` )「わかった」

( ´_ゝ`)「…おまえは、生きろ」

弟者の決意を感じ、構えを取る兄者。

剣技の発動には、所定の構えを取る必要がある。
何度も練習し、何度も実践に使えば技の発動までの時間を短縮することは出来るが、
覚えたばかりの技ではそうはいかない。

(XX)「技の 発動」

(JB)「ハンマー系は覚えてないや」

両手持ちのハンマーを頭上に掲げた兄者。
最初は淡い青色に発光しだしたが、すぐに濃い青に変わる。

(#´_ゝ`)「うりゃあああああああああ!!!!!」

それはまさに渾身の一撃。

叫びながら跳躍し、振りかざしたハンマーを落下の勢いのままに振り下ろす。

本来ならば敵に当ててHPを削りつつ周囲の敵に衝撃波を与える技だが、
今回は前にいる三人を狙うふりをしながら地面を叩きつけた。

それは剣技による相殺を避け、確実に衝撃波を相手に与えるための策。

.

740 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:27:17 ID:Am.mXpzk0

だから視線はあくまでも敵に、今回はこの一団のボスであろう、フードの男に視線を向けて。

兄者の放った技はハンマー系武器の固有剣技。
個別の攻撃と共に周囲に衝撃波を放つことが出来る技である。
威力は高く、衝撃波を受けた敵は硬直を起こすため、
使い方次第では戦況を変えることの出来る重要な技であった。

だがその威力・能力の分剣技後の硬直も長めに設定されていた。
特に覚えたばかりで技の熟練度も低い今は硬直時間が最大であった。

それでも技をしっかりと当てることが出来れば敵に与えた硬直と相殺できる設定ではある。

そう、敵に当てることが出来れば。

(:´_ゝ`)「行け弟者!!!!」

地面を叩きつける数瞬前、兄者の視界から三人は消えていた。
それはこの技を予期していた証拠。
自分の企みが、すべて見抜かれていた証拠。
自分の技が見抜かれたこと、フードの男を狙っていないこと。
地面に当たった瞬間に輪の様に広がる衝撃波から逃れるための行動。
身体能力を高めている高位プレイヤーだからできる行動。
おそらくほんの少しの予備動作で、衝撃波の届かない空高く飛びあがっているであろう三人。

己の死を覚悟しつつ、今は術の発動と共に同じようにジャンプして逃げた最愛の弟を思う。

しかし耳に届いた唸り声に、深い悲しみを覚えた。

(´<_`#)「うりゃあああああああああ!!!!!」

困惑しつつ硬直時間でも動かせる首から上を最大限に動かして声のした方向を見る。

逃げたはずの弟が、斧を構えていた。

上空に飛んでいるフードの男と黒マスクの男を見ながら、斧を構える弟者。
斜め右下から左上に一撃目を放つ剣技を使い、飛んだ二人を一度に切るつもりなのだろう。

そう、「二人」を。

.

741 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:28:29 ID:Am.mXpzk0

(XX)「残念」

七人のうち、雑魚の四人は衝撃波で飛ばした。
フードと黒マスクの二人はジャンプして避けた。
最後の一人、骸骨マスクは後方に飛んだあとに繰り出した剣技によって衝撃波を防御していた。

そしておそらくは防御後に一撃繰り出すことの出来るであろう剣技に沿って、
その細い剣を、細剣とはまた違う幅を狭くした細く薄い剣によって、
無防備な弟者の脇腹を突き刺していた。

(´<_`;)「っ!!」

技をキャンセルさせられた場合も硬直は起きる。
無防備な状態の弟者を更に追撃することなど、容易なはずだった。

しかし骸骨マスクはそうはしなかった。

(XX)「今のは 仕方ない。剣技の 流れ だから。それに まだ 殺してない」

攻撃を許可しなかったフードの男に言い訳じみたことを言っている。
しかしフードの男は返答しなかった。
それを許されたと判断した骸骨マスクの男。

そして三人が兄者と弟者の前にさっきと同じように立つ。

衝撃波を受けて倒れていた四人も復活し、苛立ちと殺気を隠そうともせず武器を構えている。

ただ一つ変わったのは、弟者のHP。
赤く変わったそれを、兄者は凝視した後弟者を見た。

(´<_`;)「逃げられるわけ、無いじゃないか」

弟者の狙いは分かった。
兄者の企みがうまくいった場合は、三人を通常の武器による追撃によってさらに大きな隙を作り、
兄者を抱えてでも逃げるつもりだったのであろう。
考えられた最悪の状況により三人が上空に逃げた場合は自分の剣技によって三人を追撃し、
できた小さな隙によって、けれど硬直から回復しているであろう兄者を連れて逃げるつもりだった。

だが実際は更に最悪な状況だった。
剣技による衝撃波の相殺と追撃による自身の負傷。

それは弟者の読みの浅さが招いた結果と言うには酷ではあるが、
そうとしか見えないのも事実であった。

.

742 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:29:42 ID:Am.mXpzk0

(´<_`;)「……すまない…兄者…」

( ´_ゝ`)「おれも想定外だった…」

とうとう八方塞を感じた兄者にとって、そうとしか言えない状況だった。

必死で逃げる方法を考えるが、暗闇の中だった。

唯一の光明は、何故かまだ自分達が生きていること。
本来ならばもう殺されていてもおかしくないのに、なぜか生きている。

光明ではあるが、理由が分からない以上すがることは出来ない。

兄者は、最近は仲間に、ギルマスに任せてしまっていることに、一歩踏み出した。

( ´_ゝ`)「で、何が目的なんだ?」

(XX)「殺したい だけ」

(JB)「もっと楽しみたいけど、これくらいで終わりかな」

( ´_ゝ`)「おまえらはそうでも、そいつは違うだろ」

『生きるために情報を引き出す』

自分よりも達者な者がいるならばそのものに任せてしまうという
兄者の悪い癖が出て最近はすべてショボンに任せているが、
兄者自身はこの作業は嫌いではなかった。
画面上、短いセンテンスの受け答えと相手の取った行動でその真意を測る。
MMORPGのプレイヤーとして行ってきたこと。
兄者はそれが苦手ではなかった。
得意であるとは言わないが、大きく外れたことは無かった。
ショボンの様に相手の顔色や仕草から読み取ることは苦手だが、
今の相手はマスクを着けていて顔が分からないから、画面と同じ。
そう思うことにより、口を開く。

( ´_ゝ`)「殺人ギルド、『Laughing Coffin』。
何が狙いだ」

兄者は変人だが、馬鹿ではない。

.

743 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:31:10 ID:Am.mXpzk0

変態だが、考えることを放棄したりしない。

思考と観察力だけならば、ギルドでもトップクラスである。

ギルドの中でその事に正しく気付いているのは実の弟とギルドマスターだけだとしても。

( ´_ゝ`)「ギルドマスターの『PoH』!!
何とか言え!」

フードの男が笑ったような気がした。

( ´_ゝ`)?

(´<_` )?

そして弟者は兄には劣るものの思考能力を持ち、
更にそれを埋めて余りある誠実さと思慮深さ、
正しい方向への行動力を持っていた。

兄者が思いついたことに対する瞬発力だとすれば、
弟者は考え抜いたことに対する持久力。

兄者の言葉から何を考えているのかを見抜き、
おそらくは兄が見逃してしまうような全体の雰囲気に気を配っていた。

それにより、弟者は斧を再び振り上げた。

(´<_`#)「おりゃああああああああ!!!」

それは絶叫。
斧を振り上げたまま空間を震わせるような雄叫びをあげる。

(;´_ゝ`)「弟者!?」

隣にいる仲間の狼狽した声に触発され、
思わず全員が弟者を見た瞬間、青い突風が吹いた。

.

744 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:32:31 ID:Am.mXpzk0

(  )

(XX)!

(JB)!

反応できた三人は流石だろう。

トップスピードで突撃してきたブーンの片手剣を、PoHは極端に少ない動作で避け、
髑髏とマスクはその場で自分の武器を使ってはじいた。

もともとブーンには三人を傷付けるつもりはなかったため、そのまま兄弟の周囲を駆ける。

周囲にいた者を牽制するブーンの片手剣。
三人以外は後方に数歩避けた。

そして周囲の視線をブーンが引き寄せた時、髑髏と黒マスクにドクオの片手剣が襲い掛かる。
死角から放たれたその攻撃すらも二人は自らの武器で防御したが、
流石に今度は後方に飛んだ。

そしてそれを見逃すことなく、できた隙間に向かって走り出す兄者と弟者。
その後ろをブーンが追い、髑髏とマスクを動かすことに成功したドクオの横に立って武器を構えた。
兄者と弟者もその後ろで武器を構える。

( ^ω^)「間に合ってよかったお」

( ´_ゝ`)「すまない。二人とも」

(´<_` )「助かった」

('A`)「安心するのはこの場から離れた後だな」

ドクオの言葉に気を引き締める三人。

そのまま逃げることも出来たように思えるが、
背中を見せないほうが良いという指示により、
四体七での対峙という図式が出来上がった。

.

745 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:35:18 ID:Am.mXpzk0

(JB)「……よくもやってくれたね」

(XX)「二人がかりの 奇襲とは いえ 俺達を だしぬいた」

自分達の後ろに悠然と構えているPoHを感じつつ、
余裕を持ったふりをしながら武器を構える。

その前にブーンの威嚇で簡単に動いてしまっていた四人が立つ。

(XX)「邪魔。退け」

しかしすぐに髑髏マスクの男が左右に追い払った。

情報よりも強くしたたかだった同じ顔の二人。
情報以上に強いと思われる追加の二人。
確実に殺すためには、快楽を得るためには四人は邪魔だと考えていた。

もう一人、黒マスクの男は同じことを思いつつも、違うことに考えを向けていた。

(JB)「まだ、いるよね」

先に集めた情報から、突進してきた男が素早いことは理解している。
そしてもう一人の黒ずくめの男が、戦闘では飛びぬけている事も分かっている。
だが、もう一つのピースが、欠けていた。

(  )

それに他にも仲間はこの場にくるだろうと思い口にした言葉だったが、
それを聞いた、自分が崇拝する、
心酔していると言ってもよい男が、
笑ったように感じた。

(JB)?

その真意がつかめず、
振り返りたいが目の前の標的から目を離すことも出来ず、
ただ武器を構える黒マスクの男。

しかしその対峙は長く続かなかった。

醜態を見せてしまった四人が、
耐え切れずに剣を振り上げて突進した。

.

746 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:39:24 ID:Am.mXpzk0

(;^ω^)!

('A`;)!

(;´_ゝ`)!

(´<_`;)!

それはブーン達四人にとっても意外な行動であり、
反射的に武器を向ける。

(XX)

(JB)

そしてそれは骸骨と黒マスクの二人にとっては好機。
自分が彼らの意識から外れたのが分かった二人は、
武器を構えて一歩踏み出そうとした。

しかしそれは出来なかった。

いつの間にか視界の隅に映る右手。
それは自分達の支配者の手。
その手は自分達が動くことを望んでいないことが、
今までの経験から分かったから。

(XX)!

(JB)!

そして目の前に起きた出来事に、驚きを隠せなくなる。

獲物であるブーン達に向かって襲い掛かった四人の手下が突然倒れたのだ。

視線だけで状況を確認する骸骨と黒マスクの男。
その目には、四人の首に刺ささるナイフが映った。

.

747 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:40:26 ID:Am.mXpzk0

麻痺属性の毒を付加させてあったようで、
四人の黄色に変わったHPバーの上には黄色い稲妻のようなマークが点滅している。

獲物であるはずの四人は再び自分達に向かって武器を向けている。
前の二人が苦しそうな顔をしているように見えた。

(XX)「………何が 起きた」

(JB)「投擲?」

情報で読んだ投擲使いの存在。
今ここにに欠けていたそれを思い出し、黒マスクが呟く。

(´・ω・`)「これ以上、戦う意味は無いと思うけど。
今ならだれも死なないで済む」

四人の後ろから、頭の上に浮かぶカーソルをオレンジにしたショボンが現れた。

( ^ω^)「」

('A`)「」

( ´_ゝ`)「」

(´<_`;)「」

(´・ω・`)「僕達は、ここにいる誰一人として死ぬことは望まない」

そのまま仲間達の前に立つショボン。
倒れた四人を気にすることも無く、前にいる三人、
いや、フードの男をじっと見る。

再びフードの男が笑った気がした。

(JB)「ヘッド?」

(XX)?

フードと男がウインドウを出すが、数度操作をするとすぐに消し、踵を返す。

.

748 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:41:53 ID:Am.mXpzk0

(JB)「ヘッド!?」

(XX)「殺らないのか!?」

立ち去ろうとするフードの男を追いかけるように振り返る二人。

その視線の先で男は立ち止まり、右手の親指だけを折り、指を振った。
指先は、地面に向けて。

(XX)「…チッ」

(JB)「分かった」

三人が視線を外したその数瞬の間に、ショボンの指示により四人は後ずさっていた。
しかし、ショボンはその位置を動かない。

再び振り返る髑髏と黒マスクの男。
その手の武器が、あやしく光ったような気がした。

(´・ω・`)「………」

髑髏の男がまず動く。

(;^ω^)「ショ!」

しかし髑髏の男の武器は地に倒れた仲間の身体を貫いた。

「!!!!」

麻痺状態は、意識がなくなるわけではない。
自分の身に何が起きたのかを認識し、
視界の隅の自分のヒットポイントバーの光が減るさまをただ見つめる。

一人の男が、薄いガラスが砕ける様な音と共にポリゴンと化した。

(´<_`;)「な!なにを!」

(;^ω^)「仲間を!?」

ショボンの周りを髑髏の男が更に走り、剣で地に倒れた男たちを切り刻む。

(´・ω・`)「……こいつらに、そんな意識があるもんか」

.

749 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:43:33 ID:Am.mXpzk0

聞こえないほど小さな声で呟いたショボン。

そしてその言葉通りに、髑髏の男が三人を、黒マスクの男が一人をポリゴンと変えた。

( ´_ゝ`)「…………」

('A`)

(´<_`;)「……」

(#^ω^)「ひどいお…」

一歩踏み出そうとするブーンを止めるドクオと兄者の手。
怒りに我を忘れそうになったその思考を、ギリギリのところで踏み止まらせた。

('A`)「落ち着け」

( ´_ゝ`)「あいつの覚悟を無駄にするな」

拳を握る二人の震える手。
ブーンの前にはいつの間にか弟者が立ち、その手の斧は大地を突き刺していた。

(´<_`#)

震える肩が、その思いを物語るようだ

( ^ω^)「みんな…」

(XX)「…チッ」

(JB)「よく訓練されてる。六人も殺れるかと思ったのにな」

動かない五人をつまらなそうに一瞥してから後ろを向く二人。
そしてまるで散歩をするかのような軽い足取りで去って行った。

.

750 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:45:07 ID:Am.mXpzk0

(´・ω・`)

('A`)

( ´_ゝ`)

(´<_`#)

(#^ω^)

黙ってその後ろ姿を見送っていた五人。
そして三人の姿が消え、頭上のカーソルも消えた。

すると茂みからクーが現れた。

川 ゚ -゚)「みんな、…大丈夫か?」

(´・ω・`)「うん。大丈夫だよ」

クーにしては珍しく。
といっても彼女をよく知っていなければわからない程度だが、
どこか怯えた様に声をかける。
それにショボンが返すと、四人の緊張も少しだけ緩くなった。

('A`)「クーが来てたんだな」

川 ゚ -゚)「ああ。ツンが追いかけようとしたがショボンが止めた。
それで私が来た。ツンはジョルジュ達と少し前の安全エリアにいるはずだ。
……来なくて正解だった。
ツンならあの瞬間飛び出していただろう」

武器を持たない左手で、自分の身体を抱くようなしぐさを見せるクー。
少し震えていた。

ここにいる六人は、見たことが無かったわけではない。

人が、ポリゴンに変わる瞬間を。

けれどそれはモンスターとの戦闘でのことで、
今見たような人同士の殺し合い、いや、虐殺ではなかった。

.

751 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:46:06 ID:Am.mXpzk0

クーが飛び出さなかったのはツンより正義感が劣るわけではない。
ただその瞬間を見た衝撃により、身体の前に心が凍ってしまっただけだった。

そして、彼女よりはショボンの背中を長く見ていたからだった。

川 ゚ -゚)「大丈夫か?ショボン」

(´・ω・`)「僕は、大丈夫」

いつもと変わらないその表情に、逆に違和感を感じつつ、口を開くのを止めてただ頷いた。

四人もそのやり取りを見て、自分の心を落ち着かせようとする。

(´・ω・`)「とりあえずみんなと合流しよう。
はぐれないように気を付けて進むよ。
ブーン、ドクオ、先頭を宜しく。
クーはその後ろで地図を開いて道案内を。待ってる皆には僕が連絡を入れておくよ。
続いて兄者と弟者。
しんがりは僕が務めるよ。
ドクオ、ブーン、あとでアライアンス回復用のクエスト、手伝って」

ショボンに頼まれ、ドクオとブーンが快諾する。
兄者と弟者もやると言い出し、
当たり前の様にクーがこの後の予定に自分を含めて組み込んだ。

いつも通りのショボンに安心しつつ、言われた通りの陣形で進み始める五人。

一歩遅れて歩き始めたショボンは、ツン達にメッセージを送りながら、
ついさっき届いたメッセージに目を通した。




.

752 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:48:17 ID:Am.mXpzk0




二日後。
深夜。

真夜中でも、プレイヤーがいなくはならない。

同じ場所でも時間の経過で現れるモンスターが変わるため狩りに出るプレイヤーは多く、
またそのプレイヤー目当ての生産系職業を選択したプレイヤーも数多く活動している。

しかし最前線でもなく低層でもないフロアの特色の少ない街などには、
やはりプレイヤーの数は少なく、夜ともなれば静けさが街を包み込む。

(´・ω・`)

ホームでもないその街の公園に、ショボンはいた。

大きくも小さくも無く特徴も無い噴水を見ながら、
背凭れのあるベンチに座っている。

そして二つのタンブラーを取り出すと、一つを自分の右横に置き、手に持った一つに口を付けた。

三人は余裕をもって座れるベンチの中央に座っているショボン。

そしてもう一口啜ってから、横に置いたタンブラーと今持っていたタンブラーを交換した。

そして今手に持っているタンブラーに、口をつけた。

(  )「うまい」

それは闇から浮かび上がった人影。

ショボンの右斜め後方、背凭れに背を向けて、少しだけ寄りかかるように立っている。

その手には、いつの間にかベンチに置かれたタンブラーが持たれていた。

(´・ω・`)「……ありがとう」

褒められたことに対して形だけの謝辞を伝える。

.

753 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:49:23 ID:Am.mXpzk0

(  )「自分で淹れたのか?」

(´・ω・`)「もちろん」

たわいもない会話。

こんな夜中にわざわざ待ち合わせてする必要もない他愛もない会話。

一見緊張感も無いだらだらとした会話。

そしてその空気を一変させたのは、ショボンだった。

(´・ω・`)「で、何の用?」

その一言で、空気が変わる。

(  )「わかっているだろう?」

二人とも口調は変わらない。
けれど空気は変わった。

(´・ω・`)「分かる訳が無い」

ショボンの言葉は、氷のように冷たい。

(´・ω・`)「だいたい、僕を目の前に引きずり出すためだけに、
メッセージを送るためだけにあんなことをする。
更に仲間を四人も簡単に殺すような奴の考えることなんて、
分かる訳がない。
…………分かりたくもない」

(  )「『ギルドV.I.P』のギルマスはモンスターの動きを読むと聞いた。
そして戦略家で、中小ギルドのギルマスでいさせるのは惜しいという噂だ」

そんな冷たさを全く意に反さず、軽く返したフードの男の声は重く響く。

(´・ω・`)「自分の事をモンスターと同列に扱うのは勝手だけど、
あいにくと僕の目は節穴らしくてね、プレイヤーにしか見えないよ。
少なくとも見た目は」

そしてショボンもその重さを受け流し、何とか自分のペースに持っていくための言葉を紡ぐ。

.

754 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:50:50 ID:Am.mXpzk0

(  )「お前の姿が人に見えている以上、俺の姿が人に見えるのは当然だな」

どこか面白そうに言葉を返すフードの男。

二人は視線を合わさない。
互いに百八十度逆側を見ている。

しかし意識はお互いと周囲に向けられていた。

(´・ω・`)「申し訳ないけど、僕は明日も早いんだ。
用があるのなら、さっさと言ってもらいたい」

まるで痺れを切らしたかのように、言葉早に話題を変えて返答を促すショボン。

(  )「切り替えの早さも想像以上だ」

(´・ω・`)「……早く言ったら」

(  )「ふっ…」

吐息のように一息吐き出すフードとの男。
それは笑ったようにも聞こえ、ほんの少しだがショボンの心に波を起こす。

(  )「おまえは、俺と同じ。こちら側の人間だ」

そして唐突に放たれた言葉。
それは先ほどほんの少しだけ揺らめいたショボンの心の水面を、
大きく波立たせた。

(  )「仲間を壁にしてナイフを敵に突き刺す冷酷さ。
剣を囮にして相手の油断を誘い、投擲のナイフを急所に突き立てる度胸と技能。
目の前で人が消えても表情一つ変えないその胆力。
自分が手を汚すことに躊躇しない豪胆さ。
すべてが物語っている」

(´ ω `)「………」

(  )「おまえは、守る側じゃない。殺す側だ」

フードの男の声はショボンに重く響く。
けして押し付けるような重さではなく、包み込むようなバリトンの音。
声は音と化し、ショボンを包む。

.

755 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:52:44 ID:Am.mXpzk0

(  )「こちら側に来い。
おまえの本質は、そんな場所よりもこちらの方が活かされる」

それは悪魔の誘い。
言葉だけを理解し反応するのであれば一笑に付すことの出来る様な内容。

だがフードの男の声はそれを許さない。

心の奥を揺さぶり、思考の隙間を縫うように染み渡る。

自分でも感じていた自分の冷酷さ。
『敵』に対して、たとえ仲間を守るためとはいえどこまでも残酷になる自分。
『仲間』以外の『敵』が目の前でポリゴンに変わった時、
仲間が息を飲むのを背後で感じながらもまったく動じなかった自分の心への恐怖。

それらすべてをフードの男は知っていて、分かっていて、自分を認めてくれているという錯覚。

それは心を揺れ動かすには充分な錯覚だった。

しかしショボンはそこで踏み止まった。

.

756 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:53:38 ID:Am.mXpzk0




(´・ω・`)「僕は友達を守る」





.

757 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:54:44 ID:Am.mXpzk0

ブーンの顔が、
ドクオの顔が、
ツンとクーの顔が、
流石兄弟の顔が、
ジョルジュ、フサギコ、モナー、ビーグル、クックルの顔が、
心に浮かんでは消え、
自分の心を支えてくれるのが分かる。

(´・ω・`)「今の僕は、そのために生き、その為に考え、動いている」

心の中で澱んだフードの男の声を、洗い流す様に。

(´・ω・`)「『敵』を殺すために生きているんじゃない。
『人』を殺すことに喜びも感じていない」

ゆっくりと、確実に、自分を取り戻す。

(´・ω・`)「彼らと共に生きたい。ただ、それだけ。
確かにその為にならどんなこともするけれど、
その為以外の事で、誰かを殺すことなんてしたくない。
殺さずに済むのなら、殺さないで済ませたい」

立ち上がり、振り返るショボン。
鋭い視線で、フードの男の後ろ姿を見る。

(´・ω・`)「だから僕は、そっちにはいかない」




.

758 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:56:42 ID:Am.mXpzk0




フードとの男が動いたのは、どれくらい経ってからだろう。

ショボンの視線に射抜かれていることを感じつつ、
動かないでいた男。

数秒のような、数分のような、数十分の様な沈黙と止まった空気。

そして男は肩を震わせた。

(´・ω・`)?

(  )

声を立てずに笑う男。

それは傍から見て笑っていることが分かるように意識した肩と身体の揺れ。

その芝居がかった動きに一瞬心奪われるが、すぐに手の中に隠れるナイフを装備するショボン。

(  )「あの男ほどではないが、おまえも面白い」

身体の演技はそのままに、乾いた声で呟く男。

(  )「圏内で武器を構えても仕方ないだろう?」

(´・ω・`)

答えずに、ただナイフをいつでも投げられるようにする。

(  )「食料と、POT。あと武器と防具、装備もだ」

(´・ω・`)?

(  )「必要なものは、追って連絡させる」

(´・ω・`)「何を言って…」

(  )「断るのなら、おまえのギルドのメンバーを一人ずつ殺す」

.

759 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:59:02 ID:Am.mXpzk0

(´・ω・`)!

(  )「対価として、お前達ギルドは狙わない。殺さない。
だが断るのなら、一人ずつ殺していく。
おまえは殺さない」

(´・ω・`)「……対価はギルド『V.I.P』、およびギルド『N−S』全メンバーを狙わないという保証。
それはお前たちが手に入れた、他のレッドプレイヤーの情報も含まれる」

(  )!

(´・ω・`)「メンバーの誰かがプレイヤーに殺された時、
僕は君たちを疑う。
それは君にとっても本意ではないはず」

(  )

男の肩が揺れる。
それは先ほどの様な演技ではなかった。

(  )「本当に、おまえは面白い」

腕を振った男の前に現れたウインドウ。
そして数回操作をして、消した。

(  )「うまかった」

振り返ることなくタンブラーをベンチの上に戻し、歩き出す男。

ショボンは目の前に現れたウインドウに、軽く舌打ちした。

.

760 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 22:00:13 ID:Am.mXpzk0



【「PoH」さんからフレンド申請が来ています】

【YES】 【NO】



.

761 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 22:02:23 ID:Am.mXpzk0

忌々しげにYESを触るショボン。

フードの男。
殺人ギルド『Laughing Coffin』ギルドマスター。
アインクラッド最強最悪のレッドプレイヤー。
『PoH』

その後ろ姿が、闇に溶けて消えた。









.

762 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 22:05:40 ID:Am.mXpzk0

すみません。30分ほど席を外します。

763名も無きAAのようです:2014/11/09(日) 22:10:02 ID:2L2DNo0g0
支援
久々に更新連打して待つくらい楽しんだわ…
と思ったらまだ更新あるんですか!やったー!

764 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 22:57:30 ID:Am.mXpzk0
支援ありがとうございます。

それでは、再開します。





焼肉食べたい。

765 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 23:01:22 ID:Am.mXpzk0

7.君とボクと



2024年5月

ギルドV.I.P.のホームで開かれた食事会は、二時間ほど前に終了していた。
二ギルド合同で行うことが決定した『朝霧の洞窟』の探索は、
パーティーを三つに分けて最終的にゲットしたアイテムの数とレア度で優劣を競うイベントとなり、
久し振りのお祭りイベントの決定に、メンバーも楽しげだった。

そしてここは人気のない公園。

40層のホームから転移門を使用して移動してきた彼は、
三人掛けのベンチに座った。

ストレージからタンブラーを二つ取り出すと、
一つを右横に置き、もう一つに口を付けた。

公園の暗がり。
街灯の陰から現れる一つの影。

フードを被って顔を隠したその影がベンチに近寄り、タンブラーを手に取る。

そしてそのままタンブラーの有った場所に座った。

.

766 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 23:02:33 ID:Am.mXpzk0

('A`)「おせえよ。自分で指定しておいて」

(´・ω・`)「…時間通りだよね?」

('A`)「お前の事だから早く来ると思って、二十分も待っちまった」

(´・ω・`)「ちゃんと時間書いたのに」

( ^ω^)「おっおっお!ぎりぎりセーフだお!」

('A`)「アウトだボケ」

( ^ω^)「すまんこ、すまんこ。道に迷っちゃったんだお」

(´・ω・`)「転移門のある公園からまっすぐ一直線なのに」

( ^ω^)「おっおっお」

風のように駆けてきたブーンが逆側に座り、にこやかに話す。
彼が来ただけで場の空気が和むのは、昔からだった。

自然とドクオとショボンの顔も柔らかくなる。

ショボンから差し出されたタンブラーを手にするブーン。

口を付け、ニッコリと微笑んだ。

( ^ω^)「今日のも美味しいお」

(´・ω・`)「ありがと」

('A`)「まったくこいつは」

( ^ω^)「三人で話すのも久しぶりだおね」

('A`)「…そういや、そうか?ん?」

(´・ω・`)「そうだね。三人だけってのは久し振りかも」

ブーンの言葉に考え込む二人。

.

767 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 23:04:31 ID:Am.mXpzk0

('A`)「……へたすりゃ、一年以上前か?」

(´・ω・`)「そうだね。ここ一年は必ず他の人がいたかも」

( ^ω^)「学校帰りはいつも三人だったのに、懐かしいお」

(´・ω・`)「うん」

('A`)「だなー。よくバーボンハウスに寄ったよな。
シャキンさんが謎のお菓子出してくれて」

( ^ω^)「今やバーボンハウスと言えばショボンやフサの店ってイメージだから、
すごく不思議な気分だお」

('A`)「店の名前をバーボンハウスにしたのは、
シャキンさんと会えるかもってことだったしな」

(´・ω・`)「うん。ギルド名は学校名。
店は兄さんの店の名前にして、
耳に入った時に、目にした時に近くに寄ってきてもらうためだから」

('A`)「学校の方は結局おれ達だけだったけど、
バーボンハウスの方は狙いが当たったな」

( ^ω^)「会えて良かったお」

(´・ω・`)「うん」

言葉少なげな友の顔を両サイドから訝しげに見るドクオとブーン。

その視線を感じつつ、ショボンが口を開く。

(´・ω・`)「今日さ、N−Sのホームで、兄さんに怒られちゃった」

('A`)「あー」

( ^ω^)「おー」

ショボンの言葉に、納得する二人。

.

768 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 23:05:40 ID:Am.mXpzk0

( ^ω^)「ショボンは昔からシャキンさんには弱かったおね」

('A`)「っていうかショボンをちゃんと叱れたのって、
小父さん小母さん以外だとシャキンさんくらいだったよな」

( ^ω^)「中学の時の真鍋先生」

('A`)「いたなー。重箱の隅をつつこうとして返り討ちにあったバカ。
新卒だったのにすぐ辞めちゃった」

( ^ω^)「小学校の音楽の…」

('A`)「雪下のババア!いたいた!」

( ^ω^)「ショボンにやり込められたのを見た時は胸がすっとしたお」

('A`)「あの腹黒ババアにはみんな辟易してたからな」

( ^ω^)「コンビニの店長とか」

('A`)「マルエイスーパーのクソおやじも」

( ^ω^)「ゲーセンで絡んできた大学生」

('A`)「最終的には涙目になってたな」

( ^ω^)「スクランブル交差点の角の駐在」

('A`)「映画見に行くときにのったバスの運転手」

( ^ω^)「駅前で話しかけてきた宗教の人」

('A`)「市営体育館の受付のじじい」

(;´・ω・`)「ちょ、ちょっと二人とも」

('A`)「ん?」

( ^ω^)「なんだお?」

(;´・ω・`)「僕、そんなになんかした?」

.

769 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 23:06:58 ID:Am.mXpzk0

('A`)「自覚無いとか」

( ^ω^)「大丈夫だお。だいたい理不尽なことを言い出した人に言い返していただけだお」

('A`)「ああ、そんな感じだな」

( ^ω^)「だいたい」

('A`)「だいたい」

(´・ω・`)「なんか釈然としない」

一瞬の沈黙の後、噴き出して笑いあう三人。

大声ではないが少し声を上げて、楽しそうな笑顔を見せる。

('A`)「というか、だいたいおれとかブーンが目を付けられてなんか言われて、
それに対してショボンが怒るって図式だな」

( ^ω^)「嬉しかったお」

('A`)「だいたいだけどな」

( ^ω^)「だいたいだお」

(´・ω・`)「だいたい『だいたい』って言いすぎだよ二人ともだいたい」

笑顔のまま、それでも少し困った様に眉を下げて止めようとするショボン。
それでまた笑う二人。

そして笑顔のままドクオが疑問を口にした

('A`)「で、なんで叱られたんだ?」

(´・ω・`)「…ラフコフの事がばれた」

/

770 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 23:08:06 ID:Am.mXpzk0

空気が止まり、慌てて周囲を見回すドクオとブーン。

(´・ω・`)「大丈夫だよ。周囲に人はいないから。二人だって、とも来る時に見てきたでしょ?」

('A`)「念には念をだ」

(;^ω^)「……」

ため息を吐くドクオ。
ブーンは緊張した面持ちでショボンの顔を見る。

(;^ω^)「ショボン…」

(´・ω・`)「うん。アルゴさん経由だって」

(;^ω^)「おー。僕のせいだおね」

(´・ω・`)「アルゴさんへのリークは僕がギルマスとして決めたことだよ。
少し早い気もするけど、シャキンに知られてしまうのも想定内だし」

(;^ω^)「おー。でも…」

('A`)「でもでも言っても仕方ない。
で、どうするんだ?」

(´・ω・`)「どうするって?」

('A`)「シャキンに叱られて、切るのか?」

(´・ω・`)「そんなことをしたら、全員を守る自信は無いよ」

('A`)「だが、俺達は強くなったぞ。仲間も増えた」

(´・ω・`)「僕達全員が生き残れる確信。
彼ら全員を殺すか牢獄へ送る自信。
そんなものが無い限り、そんなことはすべきではない。
そしてそんな確信も自身も僕は持てないよ」

('A`)「……」

( ^ω^)「じゃあ…」

(´・ω・`)「うん。とりあえずこのままでいこう」

.

771 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 23:09:40 ID:Am.mXpzk0

('A`)「アルゴはどうする?
これ以上このことを外に触れ回るようでは…」

(´・ω・`)「アルゴさんにはこれまで通り僕達を疑い、見張ってもらう。
あと、別に情報を誰これ構わず売っているわけではないよ。彼女は。
シャキンに流したのは、おそらくシャキンが最初に何かを掴んで…なんだと思う」

('A`)「そっか…。
うん。そうだな。それが良いか。
あいつなら攻略組へのパイプも太いし、もしもの時には…」

( ^ω^)「エギルさんとは仲良くさせてもらってるお」

('A`)「ああ、斧使いで雑貨屋の。店やりながら攻略組、しかもタンクってすごいよな」

( ^ω^)「その上私財を使って中層プレーヤーの育成もしてるお」

(´・ω・`)「そうだね。僕達もそのお手伝いをさせてもらってるわけだし」

( ^ω^)「お、そうだったお。
ショボン、エギルさんが一回ゆっくり話したいって言ってたお」

(´・ω・`)「そうなの?じゃあ今度店に行ってみようかな」

( ^ω^)「昨日メッセージが来てて。
僕とは道具屋つながりで何度も会ってるけど、ショボンとも一度ちゃんと話をしてみたいって」

(´・ω・`)「そうだね。
ちゃんと話したのは育成の概略を決めた時で、それ以降は実務レベルの話ばかりだし。
っていうか、フレンド登録はしてるんだからメッセージで直接言ってくれればいいのに」

( ^ω^)「………」

('A`)「………」

(´・ω・`)「え?なにその沈黙」

( ^ω^)「………」

('A`)「………」

(´・ω・`)「ちょ、ちょっと?」

.

772 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 23:10:42 ID:Am.mXpzk0

( ^ω^)「………」

('A`)「………」

(´・ω・`)「ふたりとも?」

( ^ω^)「………」

('A`)「………」

(´・ω・`)「どうしたの?」

( ^ω^)「………そりゃあ」

('A`)「………やっぱり」

(´・ω・`)「ん?」

( ^ω^)「………稀代の」

('A`)「………戦略家様だし」

( ^ω^)「敷居が…」ブフォッ

('A`)「高いんじゃ」グフッ

(;´・ω・`)「ここでそのネタ引っ張る!?
そして笑うなら言わないで!」

笑い出す二人。
そしてショボンも笑顔になり、三人を柔らかい空気が包んだ。





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773 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 23:13:25 ID:Am.mXpzk0

8.キミと僕と



2023年7月

PoHが去った公園に、一人佇むショボン。

近くの木陰で、影が揺らめいた。

(´・ω・`)「追わなくて正解だよ。
君は『VIP』でも『N−S』でもないから、殺されていた」

ベンチの上のタンブラーをしまいつつショボンが呟く。

「そうみたいね。居ることには気付いていたみたいだし」

どこからか聞こえる声。

「でも、よかったの?」

(´・ω・`)「とりあえずは、あいつの口車に乗るよ。
実際僕は『脅された』わけだしね」

「いや、そうじゃなくて、これを見てたのがあたしだけだってこと」

(´・ω・`)「きみに、見ておいてほしかったんだ。
多分、この世界で、僕をよく知りつつ赤の他人である君にね。
何事にもとらわれない、客観的な立場で」

「赤の他人とか、酷いなー」

(´・ω・`)「実際そうでしょ。あの時から、あんなに引き留めたのに、独りで動いているんだから」

「それを言われると痛いけどねー」

(´・ω・`)「……皆とは、会ってる?」

「ブーンの店に買い物には行くよ。その時ツンとかクーとかには時々会うかな。
他人のふり、知らないふりをお互いしてるけど。
あ、アルルッカバー君にも時々会うよ」

.

774 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 23:16:37 ID:Am.mXpzk0

(´・ω・`)「そうなんだ。顔をみて元気そうなのが分かればみんなも嬉しいよ」

「ショボン君も?」

(´・ω・`)「もちろん」

「うれしいなー」

(´・ω・`)「はいはい。……気を付けてね。
君が集めてきてくれる情報にはいつも助かっているけど、心配だよ」

「……ありがとう」

(´・ω・`)「まだ、ギルドに入る気にはなれない?」

「…………」

(´・ω・`)「また誘うよ」

「…………また、連絡するね」

独り言のような会話はそこで途切れ、ショボンは悲しげに周囲を見回した後、その場を去った。








第15話   終












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775 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 23:17:51 ID:Am.mXpzk0
以上、本日の投下終了です。

いつもありがとうございます。

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776 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 23:22:25 ID:Am.mXpzk0
以下、年表です。

2022年
≪11月6日SAO(ソードアートオンライン)サービス開始≫
12月
2023年
01月
02月ジョルジュ加入「五話 ここでも雨は冷たいから」
03月流石兄弟加入「十四話 双頭の鷹の旗の下で」
04月フサギコ加入「九話 君への手紙」
05月モナー・ビーグル加入「三話 それから」  
06月クックル加入「四話 緑の手」 
07月ショボン、ラフコフ(PoH)から勧誘される。
   →断るが、脅されてギルドとしての関わりを余儀なくされる
08月
09月モララー加入「十三話 ダイヤモンドだね」
   ギルドN−Sにハインが加入。(下旬 ハインがドクオに惚れる)
10月
11月
12月ギコ・しぃ加入「一話 ギルド「V.I.P.」へようこそ」「二話 聖なる夜のキャロル」
2024年
01月「六話・七話 数え歌がきこえる」
02月「八話 それぞれのチカラ」
03月
04月「十話 迷走」「十一話 疾走」「十二話 錯走」
05月「十五話  表とウラと」

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777名も無きAAのようです:2014/11/09(日) 23:26:39 ID:TVUP7IzY0
乙!

つまりドクオは「俺、このゲームクリアしたらハインの気持ちに答えるんだ…」という死亡フラグが建ってるって事だな

778名も無きAAのようです:2014/11/09(日) 23:44:10 ID:g8/7tZPIO
待ちまくってました!
今から読む!!

779名も無きAAのようです:2014/11/09(日) 23:58:04 ID:FCMGHQBk0
乙乙
面白かったです

780名も無きAAのようです:2014/11/09(日) 23:59:00 ID:.8BC25XA0
おつ!
ひとつ胸のつかえが取れた。刺さりっぱではあるが……

781名も無きAAのようです:2014/11/10(月) 00:19:57 ID:bFBe/kfk0
乙です。
不安が1つ解消されて、ホットしてます。
ショボンを疑ってしまってた自分が恥ずかしい。

782名も無きAAのようです:2014/11/10(月) 00:36:28 ID:qvyZVGY.O
ω・)乙。初期メンバーは知ってたんだな。しぃ、ギコが暴走していらんことしそう

783名も無きAAのようです:2014/11/10(月) 00:46:06 ID:.umvIYQY0
来てた!


784名も無きAAのようです:2014/11/10(月) 00:55:36 ID:75sOPTL.0
乙 今回もじっくり楽しませてもらった
仕方ないとはいえきつい選択だな

78512312:2014/11/10(月) 11:46:56 ID:mgEzbA9g0
こんにちは
http://1su.net/dGQ8

http://1su.net/dGQA
http://1su.net/dGQC
http://1su.net/dGQF

786名も無きAAのようです:2014/11/11(火) 15:21:38 ID:Vhs3FMzk0
おつ。
クーがアルゴに詰め寄られた時、クーはしらを切ってたってことか。
ラフコフの件をクーが知らないわけは無いだろうし…

787名も無きAAのようです:2014/11/16(日) 21:10:38 ID:4Px/ALsI0

相変わらず雰囲気が好きだぜ

788名も無きAAのようです:2014/11/17(月) 21:59:45 ID:xRG/rO3YO
話忘れてたから久しぶりに1話から読んだけどやっぱ面白いな
後1回ぐらい年内投下あったら嬉しいね

789名も無きAAのようです:2014/11/17(月) 22:21:56 ID:wo7KxYmgO

しかしこんなに風呂敷広げてしまって無事に畳めるのか読者ながら心配になってくるな

790名も無きAAのようです:2014/11/18(火) 00:10:56 ID:I2asFtkw0
キリト達がクリアすれば終わりだからいくら広げても時系列合わせれば速攻で回収出来るんやで

791名も無きAAのようです:2014/11/19(水) 11:06:20 ID:u9mUuf3U0
ショボンをよく知りつつ赤の他人である人って誰の事だろうか?

792名も無きAAのようです:2014/11/21(金) 10:51:24 ID:ZeMtWnSM0
舞台は同じでもアナザーストーリーって手もあるからキリトクリアルートとは限らないかもよー?
何にせよ作者の思うように書いてほしい本当楽しい、楽しみにしてるよ

793名も無きAAのようです:2014/11/22(土) 13:02:38 ID:NMi5oEdk0
ずっと待ってた!相変わらず面白い

795名も無きAAのようです:2014/12/22(月) 12:34:31 ID:boaKq3no0
攻略組でギルメンを誰一人死なせてないのはクラインか
作戦の立案も出来るしショボンはあんな感じになりたいのな

796 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 13:50:45 ID:CsIsRGwE0
それでは、今年最後の投下を始めます。

よろしくお願いします。

797 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:04:01 ID:CsIsRGwE0




第十六話 思いと決意





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798 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:04:45 ID:CsIsRGwE0





0.見えたものと見えないモノ





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799名も無きAAのようです:2014/12/31(水) 14:05:47 ID:81x0MGrgO
きた!大晦日に来てくれるとは支援!

800 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:06:17 ID:CsIsRGwE0

西暦2024年6月下旬。
第52層 フィールドダンジョン 【ミクミエル草原】

【ミクミエル】と言う名の街を中心に置いたその草原は、
ミクミエルへはもちろん、周囲三つの街に行くにも必ず通らなければならない。
通常そういった『通行』を主な目的としたフィールドにはそれほど敵(質・量共に)は出ないのだが、
この草原は『フィールドダンジョン』扱いとなり、相応の数のモンスターがポップする。
しかし草原エリアということで視界が開けているのと、
一つ一つのエリアが広い為戦いやすいこともあり、
プレイヤーは特に気にかけてはいなかった。

だが戦いやすいと言ってもここは既に52層であり、
モンスターのレベルは相応である。

(*゚ー゚)「ギコ君!」

(,,゚Д゚)「ゴルァ!」

狼男Aの顔面を踏んで空へ飛んだしぃがギコの名を呼ぶ。
呼ばれたギコは左手に持った盾で狼男Bが振り下ろした曲刀を受け流す。

二人の距離は5メートルほど。

ギコはしぃを見ることなく叫びながら狼男Bの脇腹に片手剣を一閃させ、そのHPを黄色に変えた。

(*゚ー゚)「ロク!」

狼男Aの真上で短刀を水色に輝かせるしぃ。
そしてそのまま落下のスピードに剣技の加速を乗せ、
顔を踏まれたことによりバランスを崩していた狼男Aを縦に一閃、切り裂いた。

既にHPを赤くしていた狼男AのHPは光を無くす。

しぃは地面にぶつかる寸前に短刀を持たない左手で大地を叩き、
まるでトランポリンの上にいるかのように跳ねる。
そして体重を感じさせない身のこなしで着地してすぐさま駆け出す。

その間にギコは狼男Bに追撃を二発与えて距離を取っていた。

自分の後方にしぃが駆け寄ってくるのを感じる。

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801 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:07:55 ID:CsIsRGwE0

雄叫びをあげ、曲刀を振り上げた狼男B。

曲刀が、赤く光る。

(,,゚Д゚)「しぃ!」

(*゚ー゚)「ギコ君!」

振り下ろされた曲刀を受け止めるギコの盾。
剣技であるその一撃は相当の威力があったが、
ギコは難無く受け止めた。
そしてそのまま盾を水色に輝かせて曲刀を押し返す。

(,,゚Д゚)
 「スイッチ!」
(*゚ー゚)

しぃが叫んでからきっかり六秒後、二人の声が重なった。




二匹の狼男を難無く倒した後に、二つのエリアで戦闘を重ねた二人は安全エリアに辿り着いた。

(*゚ー゚)「この次の次のエリアで採取できたら、依頼された内容は終了だよ」

(,,゚Д゚)「分かったぞゴルァ」

そしてそのまま進もうとするギコの上着をしぃが掴む。

(,,゚Д゚)「どうした?」

(*゚ー゚)「休憩も大事。
思ったよりハイペースで来れたから、休憩しよ」

(,,゚Д゚)「ゴルァ」

ニッコリと微笑んだしぃ。
ギコの服を掴んでいる逆の手には、既に地面に広げるための絨毯が持たれていた。




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802名も無きAAのようです:2014/12/31(水) 14:09:06 ID:8zrksYqw0
初遭遇だ支援

803 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:09:20 ID:CsIsRGwE0

畳二つ分の大きさを持ったその絨毯は、かなり座り心地が良い。
ゴザでもシートでもなく、『絨毯』と呼んでいるのはそのためである。

しかもその機能の割にかなり容量も軽いため、
持ち運ぶことによってストレージを圧迫することがほとんど無いという代物だった。

ツンとモララーが共同で作り上げたというそれの座り心地を噛み締めながら、
ギコは目の前に座っているしぃをみる。

もともと可愛かったが、最近更に可愛くなったと思う。

この世界には今のところ身体において【成長】も【老化】もない。
この世界に閉じ込めた男の拘りからか、
見た目の変化は髪型や瞳の色と言ったような、
ごく一部への自身の選択による変更のみだった。

けれど、可愛くなったと思う。

それはきっと、今の生活を楽しむことが出来ているから。

はにかんだ様な、どこか寂しげだったり泣くのをこらえるような笑顔じゃなく、
心の底からの笑顔をいつも見せてくれるようになったから。

それが自分の力だけで導けたのではないのが少しだけ悔しいけれど、
そんなことよりも、今の彼女の笑顔が嬉しい。

あの日、たまたま真横にいた彼女。
ゲームの世界に閉じ込められたことを知って泣き叫んだ彼女。
呆然としていて、実感がわかなくて、
なんとなく介抱して以来ずっと一緒にいる。
実感がうまれた時、もしそばに彼女が居なかったら、自分は今頃どうしていただろう。
考えたくない『もし』。
きっと自分は、彼女がいたから生きてこられた。

そんな彼女を、今が一番かわいく、心からいとおしいと思う。

そしてそんな思いは今よりも一秒後。
今日よりも明日。
明日よりも明後日。
少しずつ増えていくと感じていた。

(*゚ー゚)「どうしたの?じっと見て」

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804 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:10:44 ID:CsIsRGwE0

少しだけ頬を染めたしぃが、ギコの前にカップを差し出した。

このティーセットもモララー製で、
外に出る時はパーティーの誰かが必ず持っていると言っても過言ではない。
飲むとHPが少しだけ回復するお茶はクーとクックルの共同制作。
食べるとたまに幸運度判定ボーナスが付加されるクッキーやカップケーキは、
ショボンだったりふさだったり。

(,,゚Д゚)「ありがとうだゴルァ」

心を休ませつつ、POTを飲むには躊躇する程度のHPを回復させ、
ついでにうまくすれば自身にプラスとなる効果を付ける休憩。

初めてVIPの一員としてダンジョン探索に出た時はこの『休憩』に驚いたが、
今はその重要性を何度も実感していた。

回復のお茶やお菓子を作れるようになる前から『休憩』はしているらしいけれど。

(*゚ー゚)「それで、どうしたの?ボーっとして」

(,,゚Д゚)「何でもないぞゴルァ」

まさか今まで考えていたことなど言えるわけがなく、
笑顔で流そうとするギコ。

いつものしぃならばもう一回は踏み込んできそうだが、
今日は違った。

(*゚ー゚)「そっか…。
わたしはね。ちょっとあるんだ」

(,,゚Д゚)?

口ごもるしぃ。

そのまま周囲を伺ってから、ギコを見た。

(*゚ー゚)「部屋で話そうかと思ってたんだけど、ここなら良いかな。
隠れるところないから近くにはいないだろうし」

隠蔽スキルを持つ者は、自らの身体を周囲に隠すことが出来る。
しかしそれは隠すことが出来るオブジェクトがあるからできる行為であり、
草原エリアなどで木や背の高い植物などのオブジェクトが無い場所では、
隠れて忍び寄ることは不可能だった。

.

805 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:12:20 ID:CsIsRGwE0

もちろん相応のアイテムを付ければ地面に隠れることも可能であろうが、
隠れたままエリア移動し来るのは不可能であろう。

(*゚ー゚)「……50層以上を二人で探索するの、初めてでしょ」

(,,゚Д゚)「ゴルァ」

(*゚ー゚)「確かに許されてるのは草原エリアだけだし、
内容も採取だけだし、
クエストとかはまだやらせてもらえないけどさ」

(,,゚Д゚)「ゴラァ」

(*゚ー゚)「うん。そうだよね。
それでもショボンさん達に認めてもらえたってことだし、
戦力に成れて嬉しい」

(,,゚Д゚)「ゴラァ」

(*゚ー゚)「本当、そうだよね。
やっと、一人前になれたのかなって、思うんだ」

(,,゚Д゚)「ゴラァ」

(*゚ー゚)「本当に、嬉しかった。
それで、昨日ツンさんの部屋に行って、
クーさんも来て、三人で喋ってたんだけど……」

喋るのを止めるしぃ。
口を開くのをためらっているように見える。

視線はギコから外され、手に持ったカップをじっと見ていた。

(,,゚Д゚)「……ゴルァ」

(*゚ー゚)「うん…」

ギコに促され、ふせていた視線を再びギコに向ける。

(*゚ー゚)「手袋がね、あったの。
濃い灰色の、男物くらいのサイズ」

.

806 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:14:33 ID:CsIsRGwE0

(,,゚Д゚)「ゴラァ」

(*゚ー゚)「ブーンさんのか、他の誰かのか、
でも普段から手袋をつけてる人いないから、誰のかなって思ってちょっとじっと見てたら……」

(,,゚Д゚)「ゴルァ」

(*゚ー゚)「ギコ君、ラフィンコフィンって知ってるよね」

(,,゚Д゚)「ゴルァ!」

(*゚ー゚)「このギルドに入った時に、座学で教えてもらった。
ラフィンコフィンのマーク。
全員が付けてる、棺桶の図……」

(,,゚Д゚)「ゴ……ゴルァ…」

(*゚ー゚)「手袋に、その図が……描いてあったの」

(,,゚Д゚)!!!!「ゴルァ!!」

(*゚ー゚)「もちろん、VIPの皆が殺人ギルドだなんて、思わない。
でも、ツンさんがそれを持ってた…。
ツンさんが作ったのか、
誰かが置き忘れたのか、
何かのサンプルなのか……。
私、わかんなくなっちゃって」

(,,゚Д゚)「……ゴルァ……」

(*゚ー゚)「ギコ君……」

見詰め合う二人。

(*゚ー゚)「ギコ君、」

(,,゚Д゚)「ゴルァ」

(*゚ー゚)「いくら私相手でもゴルァとゴラァだけで会話するのは止めよう」

(;,,゚Д゚)「す、すまなかったゴルァ…」

はっとしてお茶をすすったギコを見て、
しぃの表情にも笑みが戻った。

.

807 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:15:52 ID:CsIsRGwE0

(,,゚Д゚)「実はおれも、ブーンの店の倉庫で見たんだ」

(*゚ー゚)「!手袋を!?」

(,,゚Д゚)「ああ。数十個のPOTと一緒に保管してあった」

(*゚ー゚)「そんな……」

(,,゚Д゚)(けれど、なんとなく違和感を感じた。
わざと見せられたような…)

(*゚ー゚)「……やっぱり、そうなのかな…。
でも、みんなに限ってそんなこと。
でも、関係者で無ければそんなものが…」

(,,゚Д゚)「まずは採取だぞ、ゴルァ」

(*゚ー゚)「え?」

(,,゚Д゚)「そんなことよりも、まずはやるべきことをやるんだゴルァ」

立ち上がったギコ。
そして武器と装備を再確認し始める。
視線の先はしぃではなく、エリアの向こう。

(*゚ー゚)「ギコ君……」

そんなギコを見上げていたしぃだったが、ニッコリと微笑んで立ち上がった。

(*゚ー゚)「うん、そうだね!行こう!」

出していた休憩道具を片付けるしぃ。
そして装備を確認し、ギコにうなずく。

(,,゚Д゚)「行くぞゴルァ!」

歩き始めるギコ。
その背中はしぃが見続けていた彼との生活の中で、一番頼もしく感じた。

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808 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:16:53 ID:CsIsRGwE0

(*゚ー゚)「ギコ君!」

(,,゚Д゚)「それで、終わったら聞きに行くぞゴルァ!」

(*゚ー゚)「ギコ君!」

(,,゚Д゚)「まずは採取だゴルァ!」

(*゚ー゚)「ギコ君!」

(,,゚Д゚)「どうしたしぃ!行くぞゴルァ!」

(*゚ー゚)「次のエリア、そっちじゃなくてこっちだよ」

ギコが進もうとした出口とは別の方向を向いているしぃ。

(,,゚Д゚)「……ゴルァ」

振り向いて正しい道に向かって歩き始めたギコの背中は、
少しだけ昔に戻っていた。






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809 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:18:29 ID:CsIsRGwE0



1.突きつけられた現実




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810 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:19:52 ID:CsIsRGwE0

流石武具店
質の良い武器と防具をそろえ、
オーダーにも十分に対応できる武器・防具店として人気の店である。

この『武器と防具』と言うのが人気店の秘密でもある。
武器を作るスキルと防具を作るスキルは別であるため、
通常プレイヤーの営業する一つの店ですべてをそろえることは難しい。
しかしこの店では一度にすべてを揃えることが出来る。

低層のプレイヤーはそこまで意識することは出来ないが、
上層になると武器防具の能力は勿論その見た目にこだわる者も少なくないため、
全てを同時に試着できるこの店は、
能力値だけでなく見た目にこだわるプレイヤーにも好まれていた。

また武器や防具への装飾もすることが出来るため、
一部では「コルがいくらあっても足りない武具屋」などとも言われている。

しかし攻略組の和風装備や装飾した剣なども手掛けている事実からも、
その実力は折り紙つきであった。

難があるとすれば店を営む兄弟の片方が変人だということくらいだった。

( ´_ゝ`)「………めんどくさいなー」

思わず呟いてしまった兄者の首元に突きつけられる細剣の先。

ξ゚⊿゚)ξ「ん?」

( ´_ゝ`)「……いえ、なんでもございません」

(´<_` )「あきらめろ兄者」

( ´_ゝ`)「むーーーー」

武具店の奥。
所謂『工房』と呼ばれる部屋には兄者とツンがおり、
弟者が部屋のドアを開けたところだった。

ξ゚⊿゚)ξ「あら弟者。店は大丈夫なの?」

突きつけた細剣を外しながら、
部屋に入ってきた弟者に声をかける。

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811 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:21:12 ID:CsIsRGwE0

(´<_` )「ひと段落したから『マリアンナ』に任せてきた。
折角だから、それを見たいからな」

弟者の視線の先は、兄者の目の前の作業台の上。

ξ゚⊿゚)ξ「これ、そんなに珍しいの?」

(´<_` )「いや、何度か使ってオーダーの盾を作ったことがあるし、
兄者がブーンの剣を作っているのは何度も見てる」

ξ゚⊿゚)ξ「?」

(´<_` )「でも、そんなにいっぱい並んでいるのは見たことない。
良く手に入れたな」

台の上には十数個の原石素材が無造作に置かれている。

ξ゚⊿゚)ξ「ふさの作ったフォーチュンクッキー食べまくったわよ」

ツンの呟きに噴き出した弟者。
特にそれをとがめることも無く、ツンが疲れた様に首を振る。
腰に手を当ててしたその姿は非常に絵になった。

(´<_` )「こんど素材の発掘に行くときにはおれも持っていくかな」

ξ゚⊿゚)ξ「そうしたほうが良いわよ。
あの効果、結構効くから。
もんだいは大きさよね…。味も私にはちょっと甘すぎるし」

(´<_` )「でかいんだよな。あれ」

苦笑いの浮かべて会話する二人。
そのてもと、作業台の上では横にある炉から洩れる明かりを反射させて鉱石が輝いている。
基本的には赤や青に光っているが、中には紫やピンク色の物もあった。

(´<_` )「色だけ見れば、質もよさそうだな」

ξ゚⊿゚)ξ「だと良いんだけどね」

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812 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:22:23 ID:CsIsRGwE0

鉱石の名は『コランダムオール』
色は違うが、すべて同じ種類である。

当初はその大きさと美しさとアイテムの説明文から装飾用と思われていたが、
高いスキルレベルを持った酔狂な武器鍛冶屋が武器への添加素材に使用してみたところ、
ランダムではあるがさまざまな効果を武器に追加することが出来た。
そして攻略が45層を超えた頃、各層の採取ポイントから大きな鉱石も発見されるようになった。
アイテムをクリックしたときに現れる説明文は同じであるため大きく注目はされなかったが、
再び前述の酔狂な武器鍛冶屋が試してみたところ、
一定のサイズ以上のコランダムオール単体からの武器精製が可能なことを発見した。

( ´_ゝ`)「めんどくさいんだよな」

ξ゚⊿゚)ξ「ブーンの方はもう全部終わらせてるから」

( ´_ゝ`)「はぁ…」

通常武器に精製できる鉱石は、スピードタイプやパワータイプ、
あるいは標準タイプといったように種類ごとにタイプが分かれている。
そしてスピードタイプの鉱石から出来上がる剣は軽く切れ味が鋭いが脆かったり、
パワータイプの鉱石から出来上がる剣は威力があり耐久値も高いが重すぎたり、
といったように出来上がる武器の特性に絡んでくる。

しかしこのコランダムオールは出来上がるまでどんな武器が出来るのか分からないため、
自分に必要な武器をよく理解しているプレイヤーは、
コランダムオールから武器を作ることはほとんどしない。
鉱石を自分で持ち込んだとしても作るのが鍛冶屋である以上、
それなりの金額を取られるのだから当然と言えば当然だろう。

( ´_ゝ`)「……やるか」

ため息を吐きつつ、一番近い鉱石を手に取る兄者。
そしてクリックをして鉱石のウインドウを出し、説明文を確認する。

いつの間にか出したのか、空いた片方にはボードが持たれていた。

( ´_ゝ`)「これは……多分スピードAタイプだな…。使えるっと…」

アイテムの説明文とボードに書かれた文章を交互に見ながら呟く。

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813 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:23:48 ID:CsIsRGwE0

そして鉱石の説明文をコピーし、台の上に山積みにした紙束の一番上の紙に写す。
その紙を鉱石に貼ると、鉱石を台の隅に置いた。

( ´_ゝ`)「めんどくさいーーーーー。いや、うん、ちゃんとやるぞ」

首に刺さった細剣の感触を感じつつ、次の鉱石を手に取る兄者。

( ´_ゝ`)「なんで圏内なのに刺さるんだよ……。HPは減らないとはいえ」

ぼやきながらも作業をすすめる。

切っ掛けは偶然だった。

アイテム鑑定スキルレベルの高い道具屋が試しにコランダムオールを鑑定したところ、
通常とは違う説明文を読むことが出来た。
今までスキルレベルに伴いアイテム鑑定の是非や、
知ることの出来る情報量の違いは確認できていたので特に驚きは無かったが、
問題はその後だった。

道具屋が鑑定した後の鉱石を鍛冶屋が鑑定したところ、
最初に鍛冶屋が見た文章と微妙に異なる部分があったのである。

ただそれは改行の位置や句読点の位置などであったため、
鍛冶屋が気付いたのは見事だが、ただそれだけだと思われた。

しかし鍛冶屋と道具屋が所属するギルドのギルマスが、
そこに注目した。

『現実世界ならいざ知らず、ここデジタルの世界では、
基本的に偶然ってのはあり得ないと思うんだよね。
出現はランダムでも、何かしらの法則はあると思うんだ。
その文章の違いは、もしかするとその法則の尻尾なのかもしれない』

そんな思いつきですべての鉱石をまず道具屋が鑑定し、
その後鍛冶屋が鑑定した後武器を精製し、
そしてどんな武器が出来たのかをギルマスが整理をした。

その数は200を超える。

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814名も無きAAのようです:2014/12/31(水) 14:24:59 ID:qlnrKJKM0
初リアルタイム遭遇だ!!!
支援

815 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:25:09 ID:CsIsRGwE0

『多分こんな感じだと思うよ。
これを基に基本鉱石にするか添加材に使うか装飾品に回すか決めてみて。
あ、もちろん装飾品にする場合はそっちでもまずは鑑定して説明文をコピーしてね。
あと、精度を上げていくためにもサンプルはもっと必要だから、
これからコランダムオールを使って武器を造る時は毎回作業宜しく』

データを整理して作成した細かいチェックリスト。
それでも分かりやすくチャート図にして判別できるようにしたそのリストを鍛冶屋に渡しながら、
ギルマスが笑顔で言った。
それを聞いた鍛冶屋は今までの作業を思い出して心の底から疲れを感じたという。

それでもそのリストを作るのが、
自分の行う作業よりもよっぽど大変であることは鍛冶屋にも分かっていたため、
言いつけ通りコランダムオールを使って武器を造る際は先の様な作業をこなしていた。

そしてギルマスは言う。

『まだもれとかありそうだよね。これ。
アルゴさんに情報を流すのは更にサンプルをいっぱい使って精度を上げてからかな。
……それまで必要な量の武器やコランダムオールを集めるのはしょうがないってことで。
今はほら、何が出来るか分からないから市場でも安いし。
装飾品を作る細工工房があるうちのギルドが集めていても不思議がられないし。
うん。そういう事で、みんなよろしく』

鍛冶屋と道具屋とギルマスが誰かと言うのは、
…まあ、そういう事である。

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816 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:26:28 ID:CsIsRGwE0

( ´_ゝ`)「…これはパワーのBか」

ξ゚⊿゚)ξ「基本的にはブーンの剣に、使えないのはあげるから好きに使っちゃって」

( ´_ゝ`)「んー」

黙々と作業を続ける兄者。
文句は言うが、作業を始めると速くて正確なのは弟者もツンもよく知っていた。

ξ゚⊿゚)ξ「弟者には、これをあげる」

作業する兄者を邪魔しない様に弟者の横に移動するツン。
そして封筒を一通、弟者に差し出した。

(´<_` )「ん?なんだ?」

ξ゚⊿゚)ξ「クーから。例の件よ」

(´<_` )「ああ、ギコとしぃに…か……」

ξ゚⊿゚)ξ「そ。全てはサブマスターであるクーの独断であるっていう証拠。
なにかあった場合はそれを出して責任の所在を明らかにしろだって。
まったく……」

(´<_` )「心配することは無いと思うがな」

ξ゚⊿゚)ξ「私もそう思う。
でも、クーの気持ちも分かるから。
……あいつは一人で背負い過ぎるから、周りは大変よね。ほんと」

(´<_` )「んー。それはおれも同感だ。
あいつのそんなところに救われたおれが言うのもなんだが。
ま、これはとりあえず受け取っておくよ」

ξ゚⊿゚)ξ「よろしく」

小声で二人が会話していると、弟者が視線を左上に向けた。

(´<_` )「あ、悪い。呼んでるから店の方に行ってくる」

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