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( ^ω^)達はアインクラッドを生きるようです。
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どーも作者です。
新しく作らせてもらいました。
設定だけ作っておいて最初の二話で終わる予定だったこの話がこれだけ続くことになろうとは。
半分くらいは終わっている予定なので、もう少しお付き合いいただければ幸いです。
話の投下の前に、各人の見た目データと大まかな設定を載せておきます。
この話は
川原礫著
『ソードアート・オンライン』シリーズのアインクラッド編を基に書かせていただいています。
基本的に設定を順守しているつもりですが、拡大解釈とまだ書かれていない設定に関しては想像で書いているので、その旨ご容赦の上、お楽しみいただけますようお願い申し上げます。
まとめ
ブーン芸VIP様
http://boonsoldier.web.fc2.com/
大変お世話になっております。
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ソードアート・オンライン≪SAO≫
ナーブギアという機械を使用してデジタルの世界にフルダイブすることにより、全百層からなる浮遊城『アインクラッド』をクリアしていくゲームのタイトル。
2022年11月6日正式稼働。その当日、メイン製作者の手によりプレイヤーはアインクラッドに閉じ込められ、現実の世界に戻ること≪ログアウト≫が出来なくなってしまった。
現実世界に戻るには各層にいるボスモンスターをすべて倒し、百層すべてを攻略するしかない。
現在(2024年2月)半分ほどが攻略されている。
また、アインクラッドで死ぬと現実世界でも死ぬよう、ナーブギアに仕組みがされている。
攻略組
迷宮を攻略し、ボスの部屋を探し、ボスを倒し続けているプレイヤー達を指す。
アインクラッドに囚われたプレイヤーの数パーセントしかいない。
現在は『血盟騎士団』『聖竜連合』の二大ギルドと幾つかの中小ギルド、ソロプレイヤーがそう呼ばれる。
剣技≪ソードスキル≫
魔法のないアインクラッドでは、各武器の種類ごとに設定された剣技を使用して戦闘を行うことが出来る。
発動させた場合各種補正が行われ、通常の攻撃より強力な攻撃を敵に与えることが出来るたり、防御を行うことが出来る。
一度発動すれば意識をしなくても体が動くが、敵に当てるにはタイミング等それなりに修練が必要。
技の終わりには硬直時間が設定され、その瞬間は完全に無防備な状態となるため使用には注意が必要。また、途中でキャンセルした(された)場合にも硬直は発生する。硬直時間は各技ごとに違う。
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各人データ
2024年2月時点
(年齢は、2022年11月時点の年齢)
名前-身長-体型-年齢-肌色-瞳色-髪色-髪型-備考
肌色は「白-肌-小麦」の順に色黒に。
年齢はちゃんと決めてありますが、あえてぼかしました。
男の体型は全体イメージ。
女性の体型はスリーサイズをそれぞれSMLで表記。
身長を含めた体型・顔の造形は、全員現実世界の容姿と同じです。
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ギルドVIP
ショボン-172-中肉-十代-白-黒-黒-ショート-ギルドV.I.P.ギルドマスター・料理人「バーボンハウス二号店」マスター
クー-165-LSM-十代-白-黒-黒-ストレートの長い髪-ギルドV.I.P.ギルドサブマスター・薬剤師
ブーン-174-ぽちゃ-十代-肌-黒-黒-短髪-道具屋「道具屋Booon」店長
ツン-159-SSS-十代-白-薄い茶-金-ツインテールの巻き髪-裁縫師
ドクオ-163-ガリ-十代-白-黒-黒-長めショート(前髪は目が隠れるくらいある)-昔片目だけ赤にしたことがある。
ジョルジュ-182-ガッチリ-二十代-小麦-黒-黒-ソフモヒ
兄者-175-中肉-十代-白-黒-黒-長めショート-鍛冶屋(武器)「流石武具店」副店長流石兄弟の兄
弟者-175-中肉-十代-肌-茶-焦げ茶-短めショート-鍛冶屋(防具)「流石武具店」店長流石兄弟の弟
フサギコ-170-細-十代-小麦-黒-茶色-ウルフカット-調理人「バーボンハウス一号店」店長
モナー-188-ガッチリ-二十代-肌-黒-黒-短めショート-育成師「V.I.P.牧場」牧場主
クックル-186-細-二十代-小麦-茶-茶-短めショート-栽培師「V.I.P.農場」農場主
モララー-174-中肉-十代-小麦-黒-焦げ茶-長めショート-細工師・工芸師「モララー細工工房」店長
ギコ-173-中肉-十代-小麦-黒-黒-短めショート
しぃ-155-MSM-十代-肌-茶-茶-ショート-調理人兼裁縫師
ギルドNS
シャキン-178-中肉-二十代-肌-黒-黒-ショート-ギルドNSギルドマスター
ミルナ-180-ガッチリ-二十代-肌-焦げ茶-黒-短めショート-ギルドNSギルドサブマスター
デミタス-175-中肉-二十代-白-黒-焦げ茶-長めのウエーブ
ハイン-171-SSS-二十代-白-薄い茶-薄い茶-肩までのストレートワンレングスちょっと外はね
エクスト-173-細-十代-肌-黒-茶-ショート
トソン-160-MSS-二十代-肌-黒-黒-肩にかかる黒髪
ギルドANGLER
ロマネスク-174-中肉-三十代-肌-黒-焦げ茶-短めショート-ギルドANGLERギルドマスター
ヒッキー-160-ガリ-十代-白-黒-黒-短めショート
ぃょぅ-168-細-十代-肌-茶色-焦げ茶-長めショート-ソロの何でも屋
ヘリカル-150-SSS-十代-肌-黒-薄い茶-ツインテール-ぃょぅの妹
プギャー-174-中肉-二十代-小麦-黒-黒-ソフモヒ-ソロプレイヤー
シラネーヨ-178-中肉-二十代-肌-茶色-茶色-短髪-ソロプレイヤー
ブーム-169-細-十代-肌-黒-茶色-短めショート-ソロプレイヤー
その他のキャラクターは作成中。
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番外
アルゴ-原作登場キャラクター。情報屋。金褐色の巻き毛と頬に書いた三本髭のメイクが特徴の小柄な女性。通称≪鼠のアルゴ≫
上記登場人物の中で一番を決めると、
ワイルド系イケメン−ジョルジュ
美形系イケメン−モララー
知的イケメン−デミタス
和風美人−クー
洋風美人−ツン
可愛い系−しぃ
中性美形−ハイン
残念フェイス−言わずと知れた彼
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年表
2022年
≪11月6日SAO(ソードアートオンライン)サービス開始≫
11月
12月
2023年
01月
02月ジョルジュ「五話 ここでも雨は冷たいから」
03月
04月フサギコ「九話 君への手紙」
05月モナー・ビーグル「三話 それから」
06月クックル「四話 緑の手」
07月
08月
09月
10月
11月
12月ギコ・しぃ「一話 ギルド「V.I.P.」へようこそ」「二話 聖なる夜のキャロル」
2024年
01月「六話・七話 数え歌がきこえる」
02月「八話 それぞれのチカラ」
03月
−−−続く−−−
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第九話 君への手紙
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0変わらない日々
2024年3月頭
『バーボンハウス』1号店のドアが開かれると、元気な、けれど優しい声が出迎えてくれる。
ミ,,゚Д゚彡「いらっしゃいませ!」
この店のマスター、ギルド『V.I.P.』の侍、フサギコである。
同じギルドメンバーのしぃやクー、あるいはNPC(ノンプレイヤーキャラクター)に任せて不在となることがたまにあるが、基本的にはいつも彼がカウンターの中にいる。
(´・ω・`)「お疲れ」
ミ,,゚Д゚彡「ショボン!」
そして扉を開けたのは、この店の初代マスターであるショボン。そして彼はフサギコの所属するギルドのギルドマスターでもある。
(´・ω・`)「お昼も過ぎて、落ち着いたみたいだね」
店の中には一組の男女。
奥で楽しそうに会話をしている。
(´・ω・`)「いいお客さんだね。窓際に座っていてくれるから、一見さんが入りやすくなる」
カウンターを出ようとするフサギコを、軽く手をあげて制しながらカウンターに備え付けられた高めの椅子に腰かけるショボン。
ミ,,゚Д゚彡「突然どうしたのだから」
座ると同時に湯気の立ち上るカップを差し出すフサギコ。
ショボンは礼を言いながら一口啜り、にっこり微笑んで不安そうにこちらを見るフサギコに美味しかったことを伝えた後、二つの紙を実体化させた。
(´・ω・`)「はい、これ。ギコと兄者から。そろそろOK出してあげたら?」
ミ,,゚Д゚彡「!」
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差し出された二組の感想文を受け取るフサギコ。
(´・ω・`)「二人と泣きそうだったよ。というか兄者は泣いてたけど」
ミ,,゚Д゚彡「二人ともしょうがないから」
(´・ω・`)「ま、これくらいで勘弁してあげなよ。他の皆の分があるから、それで十分じゃない?それに、常連さんからも感想貰ってるんでしょ」
ミ,,゚Д゚彡「!!し、しょ、しょぼん、知ってたの……」
(´・ω・`)「うん。だって両方に来てくれているお客さんいるからね。話してたよ。感想文を渡したら、デザートサービスしてくれたって」
ミ;,,゚Д゚彡「ご、ごめんだから!」
(;´・ω・`)「いや、別に謝ることはないよ。こっちの店のやり方はふさに任せているんだし。僕も飲み物のサービスは良くするしね」
ミ,,゚Д゚彡「よかったから…」
慌てふためいたフサギコをみて、慌ててしまうショボン。
しかしショボンの言葉であからさまにほっとした顔をしたフサギコを見て、思わず吹き出してしまう。
ミ,,゚Д゚彡「ど、どうしたから」
(´・ω・`)「いや、そんなに気にしなくていいのにって思ってさ」
ミ,,゚Д゚彡「ショボンから受け継いだ大事な店だから!」
胸を張ってきりっとした顔を見せたフサギコを見て、今度は困ったような笑顔を見せるショボン。
(´・ω・`)「この店作った時に一緒にメニュー決めたりしたんだから、マスターは僕だったけどふさの物でもあったのに」
ミ,,゚Д゚彡「違うから。やっぱりショボンの店だから」
(´・ω・`)「屋台の頃から一緒に店をやってたのに」
ミ,,゚Д゚彡「それとこれとは別の話だから」
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(´・ω・`)「強情だなあ」
呆れたように、けれど少しだけ笑顔でカップに口をつける。
(´・ω・`)「そういえばさ」
ミ,,゚Д゚彡「ん?なにだから」
(´・ω・`)「感想文は、やっぱりあれが発端?」
ミ,,゚Д゚彡「もちろんだから!」
(´・ω・`)「やっぱりそうなんだ…」
ミ,,゚Д゚彡?
(´・ω・`)「……それ、みんなには言わないでね」
ミ,,゚Д゚彡「え?」
(´・ω・`)「知られたら、また兄者にどんな恨み言を言われるか…」
肩を落とし、深いため息を着いたショボンだった。
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1変わる毎日
2023年4月
早朝。
最前線フロア、転移門を眺めることのが出来る主街区の公園に、ショボンは屋台を出していた。
この電脳世界『アインクラッド』に閉じ込められて五カ月、ショボン達は自分にできることとやれることを模索し、生きていた。
(´・ω・`)「今日も稼ぐぞ〜」
木で出来た移動式の屋台には『バーボンハウス』と書かれた札が取り付けられ、花壇を背に出店の準備を始める。
目の前には噴水。
その向こう側に転移門が見え、周囲にはベンチもあるため人の流れが期待できる。
(a)「お、今日も来てるね」
(b)「あとで来るからおれのお気に入りを残しておいてくれ!」
【最前線フロアの主街区の転移門そばの公園】に出店を続けるうちに常連もでき、安定した売り上げは確保できるようになっていた。
とは言ってもショボン自身の戦闘スキル上げもあって毎日出店できるわけでもなく、また安定はしているが用意した材料が全てなくなるような売り上げを上げることもなく、その停滞した状況にショボンは打開策を模索している状態だった。
(´・ω・`)「頑張って稼ぐよ!」
(´・ω・`)「バグル肉とカーブ豆のピタサンドだね!了解!気を付けて行ってらっしゃい!」
それでも軽口を叩く常連たちに挨拶をし、そして昨日と変わらない今日を過ごす準備をしていた。
その視界の隅に映る一人の男。
いや、少年だろうか。
ショボンは、そこに違和感を感じた。
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(´・ω・`)「ん……なんだろう。……あ、そうか」
街から街への移動は、転移門がある街同士ならば、街の名前さえわかれば戦闘エリアを通らずに移動することが出来る。
つまりレベル1であったとしても、攻略最前線の街の名前が分かれば行くことが出来る。
だがそれは本当に「行くことが出来る」だけであり、それ以上でもなければ以下でもない。
例えばレベル1の状態でゲームのスタート地点である≪始まりの街≫からで移動して、色々な街を見ることは出来るが、移動によりコル(アインクラッドでの貨幣は円などではなくコルという。1コルは10円くらいと考えるのが目安であろう)が増えることはないし、移動してもレベル1の強さで高層階の街の外を回るのは自殺行為だ。
つまり、レベルの低い者が上の層にやってきても、街の外を回れるわけではない。
確かに街そのものを楽しむことは出来るが、10層を超えた頃からはレベルの低い者、フィールドで戦闘を行っていない者はほとんどやってこなくなってきていた。
(´・ω・`)「(あの足の防具って多分初期装備だよね)」
ショボンが感じた違和感。
それは視界の隅にいる彼が見るからに低レベルだと思われる姿をしていたことに由来していた。
(´・ω・`)「(よほどレベルが高ければこの層でもあの装備で生き残れるだろうけど、それなら攻略に出てるだろうし、それならあの装備をしている意味がない。別に来ること自体は悪いことじゃないけど、珍しいよね)」
頭の中で考えつつも開店の準備を続けるショボン。
すると客が一人やってきた。
( ・∀・)「もう大丈夫か?」
(´・ω・`)「いらっしゃいませ。バーボンハウスへようこそ」
( ・∀・)「この屋台はサンプルを見てから買えるって聞いたんでけどさ」
(´・ω・`)「今から作りますよ。何か気になるメニューありますか?といっても今日はピタパン3種類に飲み物4種類しかないですけど」
( ・∀・)「全部見てから決める」
(´・ω・`)「かしこまりました。それでは少々お待ちください」
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調理を始めるショボン。
そしてその後やってきた客を捌くことに注意を払い続けるうちに、朝違和感を感じた少年のことを気にする余裕はなくなっていった。
(b)「残しておいてくれてサンキュー!おれ、これ好きなんだよ」
(´・ω・`)「ありがとうございます。ピタパン65コル、クラルルジュース8コル、セット割引で70コルです」
(b)「もうちょっと安くなると最高なんだけどね」
(´・ω・`)「材料が安くなれば値段も落とせるんですけどね。皆さんが頑張っていろいろ開拓してくれれば安くできるようになるかもですよ。はい、ありがとうございます」
ウインドウ経由でコルを受け取り、品物を渡す。
美味しそうに食べながら歩く戦士と、別の物を買った仲間の戦士が羨ましそうにそれを覗き込む。
(c)「売り切れとはな〜」
(b)「これ、あの店の一番人気なんだよ」
(d)「今度は絶対おれも買う!」
(b)「がんばれ」
笑いながら去っていく三人を見つつ、ショボンが目を細めた。
(´・ω・`)「さて、お昼はこれでひと段落かな」
人の波が落ち着いたのを感じ、材料のチェックをしつつ売り上げを確認するショボン。
売れたといっても予想よりも数割程度売れた程度で、ほとんどの材料は無くなったわけではない。
しかし午後もこの調子で売ることが出来れば足らなくなるのは確実なのと、今日一番人気であった『バグル肉』が無くなってしまったので、補充したいところだった。
(´・ω・`)「(まさか売り切れるとは。ドロップしにくいから街の店で買ってるけど、それだとどうしても高くなっちゃうからいつもあんまり売れないのに。良い狩場でも見つかったのかな)」
メッセージを仲間に送るもやはりドロップしておらず、手持ちにはないらしい。
ついでに情報屋に新規狩場の情報があるかどうかのメッセージを入れた。
(´・ω・`)「(買いに行くにしても屋台をこのままにするのはな…。この世界では持ち主以外は手出しできないはずだけど、心情的に嫌なんだよね。かといって誰かに買ってきてもらうのも悪いしな。今日は迷宮潜ってるはずだから、時間もかかるし、こんなことにクリスタル使いたくないし。諦めて、屋台を設置したまま買いに行くか、一回片付けて屋台ごと持っていくか。でも一回さげちゃうとお客の波が変わるからな…。さてどうしよう)」
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それは、ほんとうにほんの気まぐれだった。
普段のショボンならやらないかもしれない。
本当に、ただの、きまぐれ。
何の意味もなく、ふと視線を右方向に向けた時、街路樹の下、簡単に声が届く場所に座り込んでいた彼と目があっただけ。
ショボンは何故か、話しかけた。
(´・ω・`)「いま、暇?」
ミ,,゚Д゚彡?!
これが、二人の出会いだった。
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ミ,,゚Д゚彡「あ、あの…」
(´・ω・`)「急にごめんね。実はお願いがあって。暇だったら、ちょっとこの屋台を見ていてくれないかな」
ミ,,゚Д゚彡「あ、いや……」
(´・ω・`)「食材を買い足しに行くちょっとの間で良いから」
ミ,,゚Д゚彡「え、でも、ふさ!…あ、…おれ」
(´・ω・`)「?ごめん、ほんとにちょっとの時間だからさ。二つ右の通りの商店に行くだけだから、すぐ戻るんで」
ミ,,゚Д゚彡「そ、その、」
座り込んでいたフサギコの横に立ち、両手を合わせて拝みながらお願いをしているショボン。
通り過ぎる歩行者がチラチラとみているが、ショボンは全く気にしていない。
(´・ω・`)「バイト代はそんなに出せないけど」
ミ,,゚Д゚彡「そ、そんなのいいから!あ、……いらないです…けど……」
(´・ω・`)「?いや、そうもいかないけど。労働には対価が必要だよ。あ、そうだ」
屋台に駆け戻り、サンプルで作ったピタパンを持ってくる。
(´・ω・`)「これ、『バグル肉とカーブ豆のピタサンド』っていうんだけどさ、良ければ食べてくれないかな」
ミ,,゚Д゚彡「そ、そんな高い物!だめだか…!だめ、です!」
(´・ω・`)「?あ、さっきの値段きこえてた?これ朝作ってサンプルで置いておいた奴だからさ。いつもは自分の昼ご飯にしちゃうけど、よかったらこれをバイト代にしてくれないかな。もうすぐ耐久値も切れるだろうから早めに食べてね。あ、あともし食べられたら屋台の上に乗ってる二つも食べてくれないかな。誰でもとれるように設定しておくから」
慌てるフサギコにむりやりピタパンを渡し、ウインドウを出すショボン。
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(´・ω・`)「…フサギコさん…でいいのかな。もし変なやつがやってきても、メールくれるだけで良いからさ。これに返信してくれるかな。すぐ戻るから大丈夫だと思うけど、じゃ、よろしくね」
目の前にいるプレイヤーにメッセージを出し、そのまま路地に走っていくショボン。
あっけにとられてピタパンを両手で持ったまま立ち尽くすフサギコだったが、意を決したように屋台に近付く。
そして両手に持たされたピタパンを見つめる。
ミ,,゚Д゚彡「……すごくおいしそうだから」
そして、一分ほどじっと見つめた後に勢いよく噛り付いた。
時間にして10分とちょっとだろうか。
食材を購入後戻る道すがらに情報屋から返答が来たため、更に返答していたら思っていたよりも時間がかかってしまい、ショボンは慌てて屋台を設置した場所に戻ってきた。
(´・ω・`)「ごめん!ちょっと遅くなっ……た…?」
ミ,,゚Д゚彡「あ!戻ってきたか…戻ってきました」
そこには変わらず屋台があり、こちらを見て安堵の表情を見せるフサギコがいた。
それは予想の範囲だったが、何故か屋台の前には十数人のプレイヤーが並んでいた。
(´・ω・`)「え?なにこれ」
ミ,,゚Д゚彡「お客さんだか…です!はやく作ってあげてだか…ください!」
(e)「待ってたよ!」
(f)「その兄ちゃんがすごくうまそうに食べてたんだよ!」
(g)「早く作ってくれよ!」
( ´∀`)「モナも食べたいもな!」
▼・ェ・▼「きゃん!」
(´・ω・`)「え、あ、は、はい」
まったく状況が分からないまでも慌てて屋台に立ち、とりあえずサンプルを作るショボン。
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三種のピタパンが屋台にならぶと並んでいた人たちから歓声が上がり、それが聞こえた周囲の人たちも寄ってきて、更に列が長くなる。
(´・ω・`)「あ、はい、『バグル肉とカーブ豆』を二つと、『トルメトの実とカープ豆』を一つですね。ありがとうございます。あ、はいトルメトの方はラル菜を抜きですか。じゃあカープ豆を多めにしておきますね」
注文を一人で捌いていくショボン。
いつしかフサギコは列整備を始めていた。
ミ,,゚Д゚彡「仲間同士は一緒に注文だから!二列で並ぶと良いから!最後尾はここだから!横入りはダメだから!」
(´・ω・`)「はい、『トルメトの実とラル菜』を一つと、『バグル肉とカープ豆』を一つ、バグル肉の方はカープ豆少なめですね。ラル菜の方を多くしておきますね」
ミ,,゚Д゚彡「列は落ち着いてきたから…きました」
(´・ω・`)「あ、フサギコさん。ごめん、お使い頼んでいいかな?」
調理をしつつウインドウを出し、メッセージを打つ。
(´・ω・`)「ここにいって書いたものを買ってきてほしいんだ。おかねはこれで」
ミ,,゚Д゚彡「わかったから!」
(´・ω・`)「ごめん、急ぎでね」
ミ,,゚Д゚彡「すぐ買ってくるから!」
メッセージを確認し、添付された地図マーカーを頼りに走り出すフサギコ。
(´・ω・`)「はい!ありがとうございます!」
こころなしか、列がさらに延びた。
ミ;,,゚Д゚彡「お、お疲れさまだから…」
(;´・ω・`)「お疲れ様でした」
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それから二時間近く混雑したのち、やっと列が無くなった。
(;´・ω・`)「ごめんね…結局三回も買い物頼んじゃって。しかもバグル肉が店から無くなったから違う街まで行ってもらっちゃったし」
ミ,,゚Д゚彡「別に良いから!なんか楽しかったから!」
(´・ω・`)「そう?なら良かった」
顔を見合わせて、笑う二人。
ショボンが売り物の飲み物を二つ作り、フサギコを近くのベンチに誘う。
(´・ω・`)「ちょっと休憩しようか」
当たり前のように促されてベンチに座るフサギコ。
途端に楽しそうにしていた表情が一変して緊張した面持ちになった。
それは差し出されたストローの付いたカップを受け取っても同じだった。
ミ,,゚Д゚彡「あ、ありがとうだ…ございます」
(´・ω・`)「こちらこそ、本当にありがとう。最初のお客さんもフサギコさんのおかげだったみたいだし、その後は列の整理とか買い出しとか頼んじゃって。でも、何があったのか教えてもらえるかな?」
ミ,,゚Д゚彡「…ショボンさんが買い物に出た後、屋台のそばに行って、貰ったパンを食べたら、……すごく、すごくおいしくて、……おもわず、…残りの二つも食べてたら、いつの間にか人がいて、『そんなにおいしいの?』ってきかれたから、…おいしかった話をしていたらいつの間にかいっぱいいたか……いました」
(´・ω・`)「…それだけ?」
ミ,,゚Д゚彡「それだけだか…です」
(´・ω・`)「よっぽど美味しそうに食べてくれたのかな」
ミ,,゚Д゚彡「ものすごくおいしかったから!あんなに美味しいの、ここに来て初めてだから!あ!…です」
(*´・ω・`)「そんなに褒めてもらえると嬉しいな」
本気で嬉しがっているショボンを見てフサギコもテンションが上がったのか、矢継ぎ早にどれだけおいしかったのかを話しはじめた。
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それぞれの素材のすばらしさ、ピタパンに差し込まれたグザイのバランスの良さ、それぞれの味をまとめる調味料の良さ、それを包み込んで調和を保ちつつも歯ごたえとボリュームをあたえるピタパンの良さを、一つ一つを熱く、細かく、情感豊かに熱弁する。
(*´・ω・`)
自分の作った物の事なのに、その熱の入った語り口調は思わずよだれが出てしまいそうになるショボン。
(*´・ω・`)「(ああ…これを聞かされたらならぶよ。内容も表現豊かでおいしそうだけど、何より熱意が違う)」
ミ*,,゚Д゚彡ノノ
嬉しそうなショボンの表情を見て更にフサギコの語りには熱がこもり、時には身振り手振りを加えながら話す。
(*´・ω・`)「ありがとう、ものすごくうれしいよ」
ひとしきり話した後、高揚した顔のまま貰ったジュースに口をつけたフサギコ。
その隙に心からのお礼を言うショボン。
ミ,,゚Д゚彡「お礼を言いたいのはこっちだから!…!で、です」
(´・ω・`)「…?…。でも、今日の予定は大丈夫だった?狩りとか。…そういえば、あそこで何してたの?」
ミ,,゚Д゚彡!
(´・ω・`)「あ、ごめん。ちょっと気になっただけだから、言わなくても」
ミ,,゚Д゚彡「……あれが落ちるのを、待ってたから」
(´・ω・`)「あれ?」
ミ,,゚Д゚彡「…」
黙って自分の座っていた場所に視線を向けるフサギコ。
そこには細い街路樹があり、赤い果実が生っている。
(´・ω・`)「え…もしかして…」
果実とフサギコの顔を交互に見るショボン。
フサギコが黙って頷く。
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(;´・ω・`)「え!?あれ!?あれって落ちるの!?オブジェじゃなくて!?」
ミ,,゚Д゚彡「一日に一回か二回、おちるから。それを食べたり、売ったり」
(´・ω・`)「そうなんだ。知らなかった。高く売れるの?」
ミ,,゚Д゚彡「5コルで売れるから!」
(;´・ω・`)「5コル!?一日待ってそれだけ!?≪はじまりの街≫近くのモンスター倒しても、一時間でもっと稼げるでしょ」
ミ,,゚Д゚彡「……」
(;´・ω・`)「ご、ごめん。でも、足はともかく上の装備は初期装備じゃないから、狩りはしているんじゃないのかなと思ったから」
ミ,,゚Д゚彡「昔は…してた…」
(´・ω・`)「昔?」
ミ,,゚Д゚彡「今は…してない。一人は…こわいから…」
(´・ω・`)「仲間は?まだ下の層で仲間の募集しているところとか、ギルドとかも」
ミ,,゚Д゚彡「…………笑われる」
(´・ω・`)「?」
ミ,,゚Д゚彡「最初の仲間は…ふさ…ぼくのしゃべり方がイラつくからモンスターを倒せないって…」
(´・ω・`)「なにそれ」
ミ,,゚Д゚彡「パーティー募集とか、ギルドの審査とか、いつも……良いときは気にしないけど、状況が悪くなったりすると、怒られたり笑われたり馬鹿にされたり…」
(#´・ω・`)「なにそれ」
ミ,,゚Д゚彡「一人で戦ってると、このまま消えてしまいそうで…怖いから…。あんまり外に出ない…」
(´・ω・`)「消えてしまう?」
ミ,,゚Д゚彡「……一人で戦って、一人で死んだら、それは、この世界にいなかったも一緒だから……」
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(´・ω・`)!
ミ,,゚Д゚彡「…こんなに喋ったの、久しぶり…。ありがとう」
お辞儀をし、立ち上がろうとするフサギコの腕をとっさに掴むショボン。
ミ,,゚Д゚彡「?」
(´・ω・`)「わすれもの」
ミ,,゚Д゚彡「え、な、なにも」
怪訝な顔をするフサギコの前でウインドウを出すショボン。
するとフサギコの前にウインドウが現れる。
『shobonさんからフレンド登録の申請があります。』
『 YES or NO 』
ミ;,,゚Д゚彡「え?」
(´・ω・`)「お願いできないかな」
ミ;,,゚Д゚彡「え、あ、で、でも」
(´・ω・`)「今日短い間だけど一緒にお店をやれて、楽しかった。だから僕はまたこんな一日を過ごしたいんだけど、フサギコはどうだった?」
ミ,,゚Д゚彡「あ…あ…」
(´・ω・`)「喋り方も、気にならない。っていうか、気にする方がどうかしてるよ。まあ周囲に特徴的な喋り方をする奴がいるってのもあるかもしれないけど」
ミ,,゚Д゚彡「で、でも」
(´・ω・`)「またお店、手伝ってよ。他にもメニューはあるから感想聞きたいし、新メニューを作ったら評価してほしい。っていうか、フサギコも料理スキルあげて一緒に作らない?」
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ミ,,゚Д゚彡「…ふ、ふ…」
(´・ω・`)「なに?」
ミ,,゚Д゚彡「ふ、ふさは…じ、じぶんのこと……ふさって呼ぶから…。どんくさいから…。片手剣も、槍も、うまく使えないから…。列並べるのも下手だったから………。喋り方が……変だから……」
(´・ω・`)「戦いがうまいから、列を整理するのがうまいから友達になりたいわけじゃない。話をして、一緒に働いて楽しかったから友達になりたい。喋り方なんて、まったくきにならない。というか、個性だから良いんじゃないかな。今まで変なやつに会いすぎたんだよ。フサギコは」
ミ,,゚Д゚彡「しょ、ショボンさん…」
(´・ω・`)「呼び捨てで良いよ」
ミ,,゚Д゚彡「ショボン…」
(´・ω・`)「なに?ふさ」
ミ,,゚Д゚彡「…ありがとうだから」
『YES』がクリックされ、二人のフレンドリストに互いの名前が登録された。
自分のフレンドリストを確認し、思わずにやけてしまうフサギコ。
(;´・ω・`)「で、さっそくで悪いんだけどさ」
ミ,,゚Д゚彡?
立ち上がりながらためらいがちに声をかけるショボン。
(;´・ω・`)「この後も手伝ってもらっていいかな?」
屋台を指さしながら向かってくる数人をみて、慌てて飲み物を飲み干すショボン。
ミ;,,゚Д゚彡「わ、わかったから!」
二人が急いで屋台に戻ると、夕方一人目の客がオーダーを始めた。
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2楽しさと戸惑いの日々
フサギコが馴染むのは早かった。
_
( ゚∀゚)「おう!よろしくな!今度一緒に狩りに行こうぜ!」
川 ゚ -゚)「ふさがバーボンハウスの手伝いをしてくれるから助かるよ。私は薬作りに専念できる。あ、でも他に気になることが出来たら言えよ。ショボンに流されるなよ。あいつはそういうのがうまいから」
( ^ω^)「お?僕の顔に何かついてるかお?喋り方?気にしたことないお。ふさはなにか気にすることがあるのかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「ま、この喋り方じゃなきゃブーンじゃないしね。あんたも一緒よ。ふさ。気にするだけ無駄。気にして離れる奴なんかほっときなさい」
( ´_ゝ`)「片手剣も槍も苦手?だが打撃系っぽくもないしな…。投擲なんて選ぶのはうちのギルマスくらいだろうし。曲刀とか使ってみるか?とりあえずこれ持ってけ」
(´<_` )「その装備じゃ心もとないな。とりあえずこれとこれとこれもってけ。服はツンが用意してたから、ちゃんと着替えろよ。余ってたやつだから気にするな。あー、じゃあ、今度素材集めの探索付き合ってくれ」
('A`)「遠慮とかしたら殴られるから気をつけろよ。嫌ならイヤ、嬉しいならうれしい。はっきりしとけ。ちゃんと言えば無理強いはしないから……多分」
ミ,,゚Д゚彡「ありがとうだから!」
(´・ω・`)「ギルドに入らない?」
ミ,,゚Д゚彡「ふさにはもったいないから!」
.
-
毎日のようにショボンとフサギコは一緒に屋台で働き、時には仲間達とパーティーを組んでクエストやフィールドダンジョンを探索した。
他の武器よりは相性が良かった曲刀にフサギコも慣れ、他のメンバーよりも少しレベルは低いものの同じように戦うことが出来るようになっていった。
持って生まれた特性か全員と呼吸を合わせることもでき、それぞれの職業スキルに合わせた素材集めや戦闘訓練などにも付き合ううちに全員にとってかけがえのない仲間となりつつあった。
だがしかし、ギルドの誘いだけは断っていた。
.
-
_
( ゚∀゚)「はいれよギルド〜。もっといっしょに遊ぼうぜ」
川 ゚ -゚)「バーボンハウスの方は、いまでもコルはもらってないのか?食事だけ?まったく…ギルドの事といい、何を意地になってるんだ」
( ^ω^)「ふさもギルドに入ったらもっと楽しくなるお!なんではいらないんだお?ときどき隠れてため息をついているのと関係あるのかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「資格がない?うちのギルドにはいる資格なんてないわよ。重要なのは、私たちとどれくらい合うかってことくらい。こんだけ一緒に戦ってるんだから、もう入っちゃいなさいよ」
( ´_ゝ`)「金?いらんいらん。どうしても払いたかったらギルドに入ってからにしろ。そしたらうけとってやるよ。ま、その金でもっといい武器を作っておまえにプレゼントするだけだけどな」
(´<_` )「ほい、新しい防具。どうした?さっさと受け取れよ。金?いらないっていってるだろ。友達にプレゼントだよ。アーアーキコエナーイ。ギルドに入ったら受け取ってやるよ」
('A`)「ギルドとか仲間とか、めんどくさいと思うやつもいるだろうけど、ふさは違うだろ?いい加減入ったらどうだ?」
ミ,,゚Д゚彡「このギルドは、ふさにはもったいないから。ふさなんかが入っちゃだめだから」
(´・ω・`)「……どうしたもんかなぁ」
全員からの誘いに断り続けるフサギコをみて、眉間にしわを寄せて悩むショボン。
そのあまりにも意固地な物言いに、メンバーの中でもほんの少しだけイライラする者も現れていたのも、悩みの種だった。
心なしか、ギルドの雰囲気もピリピリと緊張感が漂っていた。
これは別の話だが、モナーと知り合ったのがこの頃である。
.
-
('A`)「ショボンも人使いが荒いよな」
ミ,,゚Д゚彡「安く手に入るのはいいことだから!」
その日は、バーボンハウスでいつも多量に使っている「ラル菜」を通常の店よりかなり安く売っている店があるという情報をもとに、探索に来ていた。
( ^ω^)「この街に初めて来たときは『一般的に役に立つ素材』くらいしかチェックしなかったおね」
('A`)「だな。この街は転移門もないし。近くに率の良い狩場とか、面白いクエストもないからほとんどほぼ素通りだっただろ」
ミ,,゚Д゚彡「ふさは初めてきたから」
( ^ω^)「おっおっ。じゃあいろいろ見てくると良いお」
('A`)「それほど見るものもないけどな。ま、どちらにしろ探すなら別れた方が都合良いだろうから、手分けするか。それほど大きくない街だからそれですぐ終わらせようぜ」
ミ,,゚Д゚彡「見つかったら連絡するから!」
( ^ω^)「来る途中で話した薬草も見ておいてほしいお」
ミ,,゚Д゚彡「わかったから」
('A`)「んー」
( ^ω^)「誰も見つけることが出来なかったら、とりあえず中央の公園に集合だお」
地図を見ながら指示を出すブーンに手を振ってそれぞれに歩きはじめる二人。
今回のメンバーはドクオとブーンとフサギコの三人。低層階でありフサギコのレベルでも充分であったため当初はドクオとフサギコの二人の予定だったが、掘り出し物があるかもと道具屋として必要なスキルをあげつつあったブーンも同行していた。
ミ,,゚Д゚彡「こんにちはだから!」
中央通りを歩くフサギコは、目につく店舗や露天商を一つ一つ覗いていった
しかし目当てのラル菜はもちろんブーンに頼まれた薬草もとくに安くは販売してなかった。
.
-
アインクラッドにある街の多くには、公園が設置されている。
転移門のある街ならそこに転移門が設置されているわけだが、転移門のないこの街にも公園はあった。
中央に噴水が置かれ、ベンチの置かれた歩道があり、花壇がある。
基本形とも言えるその公園には街路樹もあった。
そして、その街路樹の下に、うずくまる少年と少女がいた。
街路樹をよく見ると、上には赤い果実が生っている。
おそらくはその二人も以前のフサギコのようにその実が落ちるのを待っているのであろう。
自分よりどうみても年上のプレイヤーが同じことをしているのを見たことがあったフサギコであったが、自分よりどうみても年下、しかも女の子がしているのを見るのは初めてだった。
ミ,,゚Д゚彡「!」
思わずチラチラと見ながら横を通り過ぎようとすると、少年と目があった。
ミ,,゚Д゚彡!!
きつい瞳。
人を誰も寄せ付けない、野生の獣のような瞳。
けれど瞳の奥にはどこかすがる様なものをかんじ、思わず立ち止まってじっと見つめるが、少年が目を伏せたため逃げるように再び歩き始めた。
ミ;,,゚Д゚彡「…」
公園を通り過ぎ、続きの店を覗く。
しかし目的の店は見つからず、とぼとぼと公園まで戻った。
通り過ぎてから、それほど時間は経っていない。
公園に戻ってみると、少年と少女はまだそこにいた。
果実はまだ木に生っている。
少年たちとは反対側に位置する公園の入り口付近で、立ちすくんで二人を見るフサギコ。
ミ,,゚Д゚彡「……」
( ^ω^)「あの子たちは何をやっているんだお?」
.
-
後ろから突然ブーンに話しかけられ、驚いて振り向くフサギコ。
そこにはブーンとドクオが不思議そうに立っていた。
('A`)「どうした?ふさ」
ミ,,゚Д゚彡「あ、その…」
( ^ω^)「あの二人は知り合いなのかお?」
ブーンの問いかけに頭を横に振り、もう一度木の下に座る二人を見る。
ミ,,゚Д゚彡「知らない二人だから…。でも、彼らの姿は昔のふさで、ショボンに会わなかったらふさはきっと今も同じことをしてたから」
( ^ω^)「?」
('A`)「ああ、果物か…。前に話してくれたよな」
( ^ω^)「果物?あ、ああ。……あの木に生ってる赤いリンゴみたいなやつがそうなのかお?」
ミ,,゚Д゚彡「一日に一回か二回、あれが落ちるから。落ちたのは食べられるし、売れば5コルくらいで買ってもらえるから」
( ^ω^)「おいしいのかお?」
ミ,,゚Д゚彡「ショボンの作ってくれたご飯とは、比べ物にならないから……。ただ、空腹を満たすためだけだから…」
( ^ω^)「……この街に来れるくらいの実力があるなら、外に出て戦った方が効率が良くないかお?」
('A`)「自分でやってきたのならいいけどな」
( ^ω^)「お?どういうことだお?」
('A`)「あー」
口ごもったドクオ。
しかし、ドクオが考えた答えをフサギコが口にした。
ミ,,゚Д゚彡「MPK…」
.
-
('A`)「ふさ、知ってるのか?」
一回顔を伏せ、少しだけ悲しそうにため息を吐いてから、また顔をあげて話しはじめる。
ミ,,゚Д゚彡「モンスターピーケー。自分で攻撃して相手を殺すPKと違って、わざとモンスターをけしかけて相手を殺す技……だから」
(#^ω^)「なんだお、それ」
('A`)「…ふさ、SAO以外にもオンラインゲームやってたのか?」
ミ,,゚Д゚彡「……ふさも昔、……ここで、引っかかりそうになったことがあるから」
('A`)!
(#^ω^)!
二人の顔を見ることが出来ないフサギコ。
ただ悲しげに、すこし遠い場所で座っている少年と少女を見る。
ミ,,゚Д゚彡「その時は相手がちょっと失敗したのと、逃げた先の街に転移門があったから、戻ることが出来たから」
('A`)「そう……か……」
(#^ω^)「許せないお!」
('A`)「落ち着けブーン。…ふさ、そいつらは」
ミ,,゚Д゚彡「レベル上げメインで探索メンバーを募集していて、ふさはバラバラに集まった最後の一人だったから」
('A`)「本当は、五人がグルで、ふさを陥れようとしたんだろうな」
(#^ω^)「そんなことして意味があるのかお!」
('A`)「そいつらにしてみたら意味があるんだろうよ。基本的には死んだ後に散らばるコルやアイテムを拾うためだけど、中にはただ純粋に、『殺すのが楽しい』っていうだけのやつも……いる」
(#^ω^)「ゆ、許せないお!ふさ!そいつらは!?」
ミ,,゚Д゚彡「あれ以来見てないから…」
.
-
(#^ω^)「なんか覚えてないのかお!?」
('A`)「落ち着けって」
ミ,,゚Д゚彡「…メインの一人はβテスターで、みんなのレベルを安全にあげるために良い狩場に連れて行ってくれるって話だったから」
('A`)!
( ^ω^)!
ミ,,゚Д゚彡「あの頃はβテスターへの風当たりが強くなってたから、ほんとかどうかは分からないから…」
( ^ω^)「そう…かお……」
顔を隠すように公園の外に視線を向けるドクオ。
それをちらっと見て口を開くが何も言わないブーン。
フサギコは少年たちをじっと見ている。
('A`)「で、どうしたいんだ?」
ミ,,゚Д゚彡?
幾ばくかの沈黙ののち、口を開いたドクオ。
('A`)「あの二人、声をかけないのか?」
ミ,,゚Д゚彡「……ふさじゃ…なにも出来ないから」
('A`)「そんなこともないだろ」
ミ,,゚Д゚彡「それに、ショボンに頼まれた買い物もあるから」
( ^ω^)「それなら終わってるお。お店が見つかったからとりあえず買い物しちゃったお。ぼくの探していた薬草も安くあったお」
ミ,,゚Д゚彡「!れ、連絡欲しかったから」
('A`)「ブーンからのメッセージ、来てるはずだぞ」
呆れたような口調のドクオに言われれば、視界の隅に光るメッセージアイコンがあった。
.
-
ミ,,゚Д゚彡「あっ」
('A`)「あの二人の事で頭がいっぱいだったんだろ」
何も言えず、口をパクパクと動かす。
( ^ω^)「話しかけたらどうかお?」
ミ,,゚Д゚彡「ふ、ふさじゃ…」
('A`)「一緒にいるのがおれ達じゃ、頼りないか?ま、頼りないか」
( ^ω^)「ここにはショボンがいないからだおね。きっと」
ミ;,,゚Д゚彡「そ、そんなことないから!ドクオもブーンも大事な友達で、ふさより何倍も何百倍も頼りになるから!で、でも……だから…」
わざとすねたようなふりを見せるドクオとブーンに慌てるフサギコ。
その慌てぶりをみて、少しだけ笑顔を見せる二人。
( ^ω^)「迷惑をかけたくないとか考えてるのかお?」
ミ,,゚Д゚彡!
('A`)「ま、そんなとこだろうな。どうせギルドに入らないのもレベルとかスキルの熟練度とかがおれ達より少しだけ下なのを気にしてだろ。自分が入っておれ達に迷惑を駆けたくないって」
( ^ω^)「なんどもパーティー組んで出かけているんだから、そんなの気にしなくていいんだお」
ミ,,゚Д゚彡「あ、あ、」
('A`)「ま、それに関しては今度ゆっくり全員で話すとして」
ミ;,,゚Д゚彡「みんなで囲むのは許してほしいから」
( ^ω^)「とりあえず、あの二人と話してみたらどうかお?気になるんならそれが良いお」
ミ,,゚Д゚彡「で、でも」
('A`)「遠慮するなって言ったろ。とりあえず、命にかかわらないことはやってみるんだよ。やらなきゃ何も始まらない」
( ^ω^)「出来る範囲でちゃんとバックアップするから安心していいお」
('A`)「無理な相談まで乗るほど物好きじゃないから安心しとけ」
ミ,,゚Д゚彡「あ、ありがとうだから!」
.
-
笑顔で話すブーン。
呆れたように話すドクオ。
表情は違えど自分に対する優しさと強さを感じ、感謝を告げるフサギコ。
そして、一回大きく深呼吸をしてから少年たちに向かって歩き始めた。
ミ,,゚Д゚彡「お、おふたりさん」
ぎこちなく二人の前に立ち、更にぎこちなく喋りかけるフサギコ。
そのぎこちなさは離れて見ているドクオとブーンにもわかるほどだった。
('A`;)「だいじょうぶか、おい」
(;^ω^)「右手と右足、一緒に前にで出たおね」
ミ,,゚Д゚彡「も、もっと美味しい物を食べると良いから」
ドクオとブーンの心配などよそに、落ちてきた果実を持って嬉しそうにしている二人に話しかけるフサギコ。
しかしその言葉は少年と少女の怒りを買うだけだった。
(#=゚ω゚)「ふざけるなよう!」
*(#‘‘)*「ふざけたことをぬかしてるんじゃないですよ!」
ミ;,,゚Д゚彡「ふ、ふざけてないんかないから!」
(;^ω^)「なんか、怒ってないかお」
('A`;)「確実に怒ってるな」
立ち上がる少年。
少女も立ち上がるが、喋り口調とは裏腹に、少年の背後に回った。
(#=゚ω゚)「食べれるもんなら食べてるよう!」
*(#‘‘)*「食べたくても食べられないことくらい!見れば分かるですよ!」
.
-
ミ;,,゚Д゚彡「で、でもこの街にいるくらいのレベルがあるなら」
(#=゚ω゚)「レベル上げに付き合ってくれるって言うから来たんだよう!」
*(#‘‘)*「モンスターに追いかけられて怖かったですよ!」
(#=゚ω゚)「切りつけても切りつけても倒せないモンスターとどう戦えばよかったんだよう!」
*(#‘‘)*「怖かった……怖かった……ものすごく…怖かったんですよ!あんたに…そんな立派な武器と防具を持ったあんたなんかに…分からないですよう……」
(=゚ω゚)「ヘリカル……」
*(#;;)*「怖くて怖くて…もう死んじゃうんじゃないかって…」
(=゚ω゚)「…ごめんだよう……ぃょぅがもっと強ければ…」
*(#;;)*「お兄ちゃんは悪くないですよ…転んだ私を助けて、ここまで連れてきてくれたんですよ」
(=゚ω゚)「……転移門のないこの街で、外にいるモンスターを倒すことなんかできなくて、ここにいることしかできないぃょぅ達の事なんて、あんたに分かるわけないよう」
泣き崩れた妹を抱きかかえるように再び座る少年。
(=;ω;)「もう、どっかいけよう…」
妹を抱きしめ、うずくまる。
('A`;)「お、おい」
(;^ω^)「大丈夫かお」
フサギコが怒鳴られているのを見て慌てて近寄った二人だったが、泣き崩れる二人を見てその場で立ちすくんでしまった。
ミ,,゚Д゚彡「はじまりの街では、十二か所の街路樹からそれが落ちるのを待つことが出来るから」
.
-
フサギコの呟き。
それを聞き、少年が見上げる。
(=゚ω゚)「……え……?」
ミ,,゚Д゚彡「教会になら無料で泊まれるけど、雑魚寝で、周りに人がいっぱいいて、逆に安心できないから」
じっと少年を見ながら話しはじめる。
ミ,,゚Д゚彡「無人の建物はいっぱいあるから一人になれるけど、人の足音がモンスターの足音みたいに聞こえて、ゆっくり休むことなんてできないから。それを5コルで売ってもまともな食べ物なんて買えなくて、心が苦しくなるだけだから。それを食べても美味しくなくて、苦しくて…でもお腹はすくから食べないといけなくて…。街の外に一人で出る勇気なんてないからパーティーを組んで出ようとするけど、今はじまりの街にいるのは戦いを放棄した人か、残っている人たちを食い物にしようとする人がほとんどだから、だれも信用できなくなるから…。でも、さみしくて、一人でいるのも怖くて、信じようとして、裏切られて、モンスターに殺されそうになって…。辛かったから…」
(=゚ω゚)「あ、あんたもなのかよう。で、でも」
ミ,,;Д;彡「フサが今こんな装備でこんな服を着てここにいられるのは、奇跡の集まりだから。あの日、あの時、ショボンに、あえたのは奇跡だから。ショボンが話しかけてくれたのは、奇跡だから。ここにいるドクオやブーンにあえたのは、奇跡だから。いまのふさがこの世界でちゃんと生きているように見えるのは、奇跡だから!でも、ショボンは、みんなは言ってくれたから。ふさを、何の取り得もなくてどんくさくてどうしようもないふさを、友達だって。そのうえ、ギルドに入らないかって、……みんなの仲間にしてくれるって。うれしくて、うれしくて、でも、同じくらい怖くて…」
(=゚ω゚)「なんでだよう!」
ミ,,;Д;彡「ギルドに入って、冒険して、ふさのミスで誰かが死んだらどうするんだから!!」
(=゚ω゚)「!」
ミ,,;Д;彡「でも…ふさに奇跡があったように、きっと君にも奇跡は起きるから」
(=゚ω゚)「……ぃょぅには来ないよう」
ミ,,゚Д゚彡「きっと来るから!ふさに来たくらいだから来るから!でも、待ってるだけじゃだめだから。自分から、ほんの少しで良いから頑張ってみなきゃだから!」
.
-
*(‘‘)*「何をがんばるっていうんですよ」
(=゚ω゚)「ヘリカル…」
うつむいていた少女が顔を上げる。
涙は止まっているが、こちらを見るその瞳は疑心に満ちているのが分かる。
ミ,,゚Д゚彡「人を信じることだから」
(=゚ω゚)!
*(‘‘)*!
( ^ω^)!
('A`)!
驚いたようにフサギコの顔を見る四人。
ミ,,゚Д゚彡「騙されて、死にそうになって、もう誰も信じられなくなっても、信じるしかなかったから」
(=゚ω゚)「で、できないよう…」
ミ,,゚Д゚彡「ふさは、一人だったから」
*(‘‘)*!
ミ,,゚Д゚彡「二人は、互いがいるから、一人じゃないから他の誰かを信じなくても自分以外の人がいるから。でも、ふさは一人だったから、一人のさみしさは辛いから、殺されそうになっても、人を信じていたかったから。けど、信じ続けたおかげで、そのおかげで、奇跡に出会えたから」
にっこりほほ笑んだフサギコ。
そして後方で心配そうに立っていた二人をみる。
( ^ω^)「ふさ…」
('A`)「ふさ…」
そして二人には満面の笑みを見せ、再び座り込む少年達を見た。
.
-
ミ,,゚Д゚彡「もちろん誰もかれも信用することは出来ないけど、まずは話してみないとだから。自分のことを知ってもらって、相手のことを知って。そうすれば、きっと、奇跡に出会えるから」
(=゚ω゚)「で、でも…だよう…」
*(‘‘)*「お兄ちゃん…」
(=゚ω゚)「ヘリカル?」
*(‘‘)*「私は、まだよくわかんないですよ。でも、お兄ちゃんと一緒になら、出来るような気がするですよ」
(=゚ω゚)「!」
ミ,,゚Д゚彡「もしまた苦しいことがあっても、二人が二人でいるなら、二人で頑張れば、きっとできるから」
(=゚ω゚)「できるか…よう……」
立ち上がる少年。
それにならって少女も立ち上がる。
今度は後ろに隠れず、まっすぐにフサギコを見る。
そしてお互いの顔を見て、頷きあう二人。
ミ,,゚Д゚彡?
そして二人は真剣な瞳でフサギコを見る。
(=゚ω゚)「まずは、あなたを信じてみることにするよう」
ミ,,゚Д゚彡!
(=゚ω゚)「僕の名前はぃょぅだよう」
*(‘‘)*「私の名前はヘリカルですよ」
(=゚ω゚)「ヘリカルは大事な妹だよう。絶対に死なせたくないよう」
*(‘‘)*「お兄ちゃんは私が守るですよ!」
(=゚ω゚)「でも、ここにいたら何もできないよう。力を、貸してほしいよう。今は何もお礼は出来ないけど、きっといつか何かで返すよう!」
*(‘‘)*「ヘリカルも頑張るですよ!」
ミ,,゚Д゚彡「お、お礼なんていらないから!」
('A`)「じゃあ、その果物で良いぜ」
.
-
ミ,,゚Д゚彡!?
横から口を挟むドクオ。
珍しく口元に笑みを浮かべ、出来るだけ不審人物にならないように努力しているのが伺える。
( ^ω^)「その笑みは逆効果だと思うお」
('A`)「え、マジで」
ミ,,゚Д゚彡「ドクオ、ブーン」
( ^ω^)「ブーンだお。こっちで必死に不審人物に見えないように頑張っているのがドクオで、二人の前にいるのがフサギコ。ギルド『V.I.P.』、その依頼正式に受け取ったお。二人を近くの転移門のある街まで護衛するお」
('A`)「報酬はそのリンゴみたいなやつってことで」
(;=゚ω゚)「え。あ、え?」
戸惑いながら二人の顔を見るぃょぅとヘリカル。
ミ,,゚Д゚彡「信用して欲しいから。まずは依頼者としてでいいから、ふさたちを信用してほしいから。そのあとはその後だから」
*(‘‘)*「おにいちゃん、私は信じてもいいですよ」
自分の服を掴みながら、ほんの少し震えながら、けれど気丈にふるまう妹を感じる。
その手を握り、強く、けれど優しく包み込み、フサギコ達三人を見る。
(=゚ω゚)「お願いするよう」
ミ,,゚Д゚彡「わかったから!」
('A`)「ま、このフロアくらいのレベルなら楽勝だけど」
( ^ω^)「念には念を入れたほうが良いおね」
いきなりウインドウを出し、タップを繰り返す二人。
ミ,,゚Д゚彡?
.
-
('A`)「足防具あるか?」
( ^ω^)「了解だお」
ぃょぅとヘリカルの前に浮かぶトレードウインドウ。
次々とアイテムの名前が並ぶ。
('A`)「とりあえず、それ着とけ」
( ^ω^)「武器は片手剣と槍になっちゃうけど、とりあえずそれで我慢してくれお」
(=゚ω゚)!
*(‘‘)*!
('A`)「さ、ほらほら」
( ^ω^)「早く出発しないと日が暮れちゃうお」
(;=゚ω゚)「あ、は、はいだよう。ヘリカルも、信じるんですよう」
*(;‘‘)*「わ、わかったですよ」
5分後。
装備を整えた二人を中心にして街を出発する五人の姿があった。
.
-
3決意の日
穏やかな、優しい風。
アインクラッドの気候は基本的には日本を模しているため、ほとんどのフロア(層)には季節がある。
説明書によると氷雪のエリアや一年中真夏のエリアなどもあるようだが、低層階は基本的に緩やかに季節の移り変わりを見せていた。
また1層はほとんど暑い寒いが無かったが、上の層になってくると気温の違いがあり、それは月の移り変わりはもちろんのこと、毎日の気候、雨の日や曇りの日、風の強い日なども出てきていた。
そんな季節の会話をしながらやってきたのは屋台を引いたショボンとフサギコ。
既に最前線フロアではなかったが、久しぶりに出会った街の公園に来ていた。
(´・ω・`)「でもどうしたの?この街が良いなんて」
ミ,,゚Д゚彡「今日は、記念の日だから」
(´・ω・`)「そっか。今日はふさが考案したメニューのデビュー日だからね」
噴水のそば。
花壇を背に屋台を設置するショボン。
フサギコはのぼりを設置してからショボンと共に料理の準備にはいる。
(´・ω・`)「でももったいないな。こんなに美味しいのに。明日は最前線の街に行こうね」
ミ,,゚Д゚彡「よろしくだから!」
(´・ω・`)「でも、ここもまだ結構栄えてるね」
早朝ではあるがちらほらと転移門を使ったり、そのまま街を出ていくプレイヤーの姿が見えた。
(´・ω・`)「今日も頑張ろうね」
ミ,,゚Д゚彡「う、うんだから」
もじもじとしているフサギコを見て首をひねりながらも準備を続けるショボン。
.
-
ミ,,゚Д゚彡「あ、そ、その、しょ、」
(´・ω・`)「そうだった!」
喋りかけようとしたフサギコに気付かずに慌ててウインドウを出すショボン。
そして一通の封筒を実体化させた。
ミ,,゚Д゚彡?
(´・ω・`)「はい、これ」
そして、笑顔でフサギコに差し出す。
ミ,,゚Д゚彡?
受け取るフサギコ。
この世界では何かを伝えたいときはメッセージで直接送るのがほとんどのため、実体化された紙、というより手紙をみるのは初めてだった。
ミ,,゚Д゚彡「なに?だから」
(´・ω・`)「この前ふさの料理を食べさせてもらって、その感想」
ミ,,゚Д゚彡!
(´・ω・`)「本当はふさがぼくにしてくれたみたいに直接話したかったんだけどね。なんか照れくさくなってちゃんと伝えられないような気がしたから。手紙にしてみた。ものすごくおいしかったから、その感動と一緒に」
ミ,,゚Д゚彡「あ…あ…あ…」
(´・ω・`)「ふさ?」
ミ,,;Д;彡「ありがとうだから…」
(´・ω・`)「な、泣かないでよ」
ミ,,;Д゚彡「うれしすぎて、止まらないから」
目をこするフサギコにショボンも困ったように、けれど少しだけ嬉しそうに笑いかける。
.
-
(´・ω・`)「もう、お客さん来ちゃうよ」
ミ,,゚Д;彡「ショボン…」
(´・ω・`)「なに?」
ミ,,;Д;彡「おね…がいが……あるから」
(´・ω・`)「え!?なに!?めずらしいね。ふさがお願い事なんて。なになに?」
瞳を輝かせて詰め寄ってくるショボンを、涙を拭いてからじっと見る。
(´・ω・`)?
ミ,,゚Д゚彡「ふさを、ギルドに入れてほしいから」
(´・ω・`)!
ミ,,゚Д゚彡「何度も誘ってくれたのに、ずっと断っていてごめんなさいだから。やっと、勇気が出来たから。ショボンと、ギルドの皆と、頑張りたいから。戦いは力になれるか分からないけど、バーボンハウスを盛り立てたいから!!だから、まだ良ければ、入れてほしいから」
(´・ω・`)「ふーーーーーー」
大きなため息を吐くショボン。
ミ,,゚Д゚彡「しょ、ショボン」
(´-ω-`)「遅いよまったく」
ショボンが手を振るとウインドウが現れ、迷うことなく操作をしていく。
そして、フサギコの前にウインドウが現れた。
(´・ω・`)「はい」
.
-
『shobonさんにギルド『V.I.P.』に誘われました。』
『 YES or NO 』
ミ,,゚Д゚彡「よろしくだから!」
『 YES 』をタップするフサギコ。
ニッコリとほほ笑むショボン。
(´・ω・`)「さて、それじゃあギルマスとしてギルメンに命令しようかな」
ミ,,゚Д゚彡「……え?」
笑顔のままウインドウを操作し始めるショボン。
(´・ω・`)「知ってると思うけど、格闘スキルはギルメン必須スキルだから、また修得に向けてのスケジュール立てようね。これは、戦闘に参加してもしなくてもとりあえず。ああでもレベルをもうちょっとあげてからの方がいいかな。でもまあその前に…」
ミ,,゚Д゚彡「え?あ?ショボン?」
(´・ω・`)「はい、これ」
フサギコの前に現れるトレードウインドウ。
そこには五桁のコルが表示されていた。
ミ,,゚Д゚彡「これは?」
(´・ω・`)「今までのバイト代。ギルメンなら、こういうのはちゃんとしないとね」
ミ,,゚Д゚彡「で、でも」
(´・ω・`)「でもは無し!コルはあるにこしたことないんだから、ちゃんともらって」
ミ,,゚Д゚彡「…」
(´・ω・`)「それに、サポートしたいんでしょ。兄妹のこと」
ミ,,゚Д゚彡「!」
思いもかけないショボンの言葉に驚くフサギコ。
.
-
(´・ω・`)「コルは持っていたほうが良い。何を買うにもね。ぼくたちも力は貸すけど、二人を笑顔にしてあげるのは、ふさがやらないとね」
ミ,,゚Д゚彡「ショボン…」
開いていた手を握りしめこぶしにし、胸に当てるフサギコ。
そして今までにない強い瞳でショボンを見る。
ミ,,゚Д゚彡「正直、ふさに出来ることなんてたかが知れているから。でも、ふさがショボンに会えて毎日が楽しくなったみたいに、二人にも、この世界での楽しさを知ってほしいから。救うことなんてできないと思うけど、ショボンがしてくれたみたいに、一緒に考えたり、笑ったり、出来たら楽しいと思うから」
(´・ω・`)「ふさならきっとできるよ」
ミ,,゚Д゚彡「ありがとう、ショボン。がんばるから!」
(´・ω・`)「ギルドの方もね」
ミ,,゚Д゚彡「もちろんだから!」
素直にコルを受け取ったフサギコ。
(´・ω・`)「さ、今日も稼ぐよ!」
ミ,,゚Д゚彡「うんだから!」
準備の続きを始める二人。
優しい風が、二人を包んだ。
.
-
4積み重ねた毎日。
ミ,,゚Д゚彡「あれはふさの宝物だから」
(´・ω・`)「!まだ持ってるの!?」
ミ,,゚Д゚彡「もちろんだから!」
バーボンハウス一号店。
夕方前のひと時、喋っているのは今のマスターである侍フサギコと、前のマスター、ギルマスであるショボンである。
店の奥ではまだ一組のカップルが談笑している。
(´・ω・`)「もう、捨ててくれていいのに」
ミ,,゚Д゚彡「そんなことできないから!」
(´・ω・`)「もう……」
照れくさそうに笑いながら、懐から封筒を出すショボン。
それは、あの日見た、今もフサギコのストレージ内に大事に眠る封筒と、同じもの。
ミ,,゚Д゚彡!
(´・ω・`)「なんとなく、また書いてみたんだ。はい、これ。中身はこの前の夕食の感想と、まあ業務連絡みたいな感じで」
照れくさそうに差し出された封筒を、大事そうに両手で受け取るフサギコ。
ミ,,゚Д゚彡「…また……宝物が増えたから」
(´・ω・`)「ストレージはちゃんとあけて、クエストの時とかはちゃんとしなよ」
ミ,,゚Д゚彡「それはもちろんだから!」
顔を見合わせて、笑いあう二人。
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(´・ω・`)「さて、そろそろ戻ろうかな」
席を立つショボン。
すると談笑していた二人も奥から歩いてきた。
(‘_L’)「ごちそうさま」
ミセ*゚ー゚)リ「おいしかったです!特にケーキ!」
ミ,,゚Д゚彡「ありがとうだから!」
コルを支払い、出ていく男女。
(´・ω・`)「じゃあ、僕も戻るね。あとでしぃをこっちによこすから、一回は休憩取るように」
ミ,,゚Д゚彡「はいだから!」
(´・ω・`)「それじゃ、お互い頑張ろう」
こぶしをぶつけ合う挨拶をしてから店を出ていくショボン。
フサギコはそれを見送ってから手紙を読もうとするが、思い直して自分のストレージにしまった。
そして、本当に楽しそうな顔をして、午後の店の準備を始める。
店の中。
風など拭いていないはずなのに、フサギコは自分の身体が優しい風に包まれたような気がした。
終
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以上、第九話でした。
ではではまた。
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saoは肌に合わなくて一話で挫折したのにこれは読めるんだよなぁ…
ふさー!好きだー!乙!
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乙
体術の習得ってやっぱあの修行なのかなって思ってちょっとニヤニヤしちゃったよ
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凄くよかったほのぼのした
ツンのSSSが可哀想
ジョルジュの外見が完全にウホッな外見なんだろうな
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面白かった。乙
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