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ξ゚⊿゚)ξは夢を見るようです
188
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 14:51:05 ID:.uv9GCZI0
今度こそこっそり12話
189
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 14:54:30 ID:.uv9GCZI0
◆第12話◆
XX24年 S月
次の日はお互い仕事が休みだったので、仕事終わりは久しぶりに外で食事したいとジョルジュに提案された。
ツンは一瞬ブーンの店を思い出したが、なんとなく避けて黙ってジョルジュについていった。
食事も一段落して、たわいもない話を酒の肴にする。
なんてことない、いつも通りの光景だ。
何度もボツくらったラフがやっと仕上がった、今度の企画はどのイラストレーターさんだ、など
ツンとは違って、過程を経て結果に繋がる仕事は、常に何かしらの刺激がありそうだ。
190
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 14:55:58 ID:.uv9GCZI0
かくいうツンも昔は、広告関係の職務に携わっていた。
その時ジョルジュと一緒に仕事をして、ぶつかり合いながら絆を深めたのだが
その仕事に必要とされるスキルに、ツンは秀でてなかった。
そのくせ言いたいことはすぐ口に出す性格も災いして、これ以上彼女をこの部所で使うことが負担になってしまったのだ。
本人は至極真面目だったし、失敗したと気づけば反省も学習もしてたのだが
早い話、的を得てなかった。
.
191
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 14:58:42 ID:.uv9GCZI0
ただでさえ流行ってもいない美術館だ。
企画や宣伝に殊更力を入れなきゃいけない時に、イレギュラーを残して話をややこしくするぐらいだったらと、足切りの第一候補は明白だった。
それでも、興味を持って真面目に取り組んでる勤務態度は買われて館内のスタッフとして残るに留まったのは唯一の救いである。
できることなら、そのままなんとなくジョルジュと疎遠にでもなってればまだ割り切れたのかもしれないが、ツンが館内スタッフに回された時は既に二人は付き合い始めてた頃だったので
一番やりたかった仕事の、その現場に立つ人間のリアルな話を延々聞かされなきゃいけないのは、しんどくないと言えば嘘になる。
それでジョルジュへの気持ちが変わるわけでは、少なくとも今のところないのだから何も言わないが。
192
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 15:00:01 ID:.uv9GCZI0
かといって、ツンの方は取り立てて話したいほどのことはない。
落ち込むほどうまくいかないことも滅多になければ、達成感を得られるほどのことも、あまりない。
来る日も来る日も同じ平穏な空間を眺めてるだけ。
もちろんそれらに関心はあるが、あえて話題にするほどのことでもない。
こと前述通りの性格のツンのこと、言いたければとっくに言ってるのだ。
そんなわけで、最近は専ら聞き役に回るのだった。
.
193
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 15:01:47 ID:.uv9GCZI0
( ゚∀゚)「…ツン、なんか考え事でもしてる?」
ξ゚⊿゚)ξ「え?」
確かにしてたかもしれない。
でも、ジョルジュの話を聞いてないつもりでもなかった。
( ゚∀゚)「なんか上の空っぽいけど。疲れてるだけか?」
ξ゚⊿゚)ξ「…まぁ、週の終わりだしね」
.
194
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 15:03:21 ID:.uv9GCZI0
仕事に加えて最近たまに見る夢のせいか、疲れてるのは事実だが、ふて腐れたように『ふぅん』と軽く相槌を打つその態度は、本当にツンの疲れに気づいて気遣っているのだろうか?
それすら疑わしく見えるほど、今日のジョルジュは不穏で棘のある雰囲気を隠し切れずにいた。
( ゚∀゚)「…そういえばこの間さ、知り合いでも来てたの?」
ξ゚⊿゚)ξ「……あぁ」
ブーンのことか。とツンはすぐに思い出した。
.
195
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 15:05:50 ID:.uv9GCZI0
ξ゚⊿゚)ξ「キュートの友達でね、昔ハインとかその子の友達とか集まって飲み会したことがあって」
( ゚∀゚)「…ふん、べつにそこまで聞いてないけど」
実は昔というほど昔でもなくむしろつい最近の話なのだが、なんとなくそれを悟られたくない心理が先に働いて、聞かれてもいないことを勝手に喋ったのが逆にジョルジュの機嫌を損ねたようだ。
ξ゚⊿゚)ξ「何それ。っていうか見てたなら言ってくれればよかったのに」
思わず口を尖らせてしまうが、これ以上ジョルジュの機嫌を損ねないように、多少神経使ったつもりだった。
.
196
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 15:07:26 ID:.uv9GCZI0
( ゚∀゚)「なんか…邪魔しちゃ悪いと思ってさ」
その一言で、ツンは気づいた。
同時に、物凄く腹が立った。
ジョルジュはおそらく、そのこと自体が面白くないのだ。
.
197
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 15:09:47 ID:.uv9GCZI0
それだけでなく、ジョルジュからしてみれば何の気無しにツンの口から『この間知り合いが来てバッタリ遭遇しちゃったんだ』なんて話があえて出て来なかったのも、何故だかわからなかった。
しかもその現場にいたジョルジュが見たツンの笑顔。
確かに二人きりの時でも仕事の話ばかりだし、それさえも最近は職務が違うから噛み合わないことも多少はある。
前みたいに、喧嘩するほど会話がなくなってきてたことは薄々気にしてはいた。
あまつさえ相変わらず色気もない。
だけど、飾り気のないのがツンで
ものぐさでちょっとズボラなくらいが、自分が愛したツンだと思ってた。
だから
.
198
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 15:11:30 ID:.uv9GCZI0
ξ*゚ー゚)ξ
(* ^ω^)
そんな彼女に、あんな笑顔を向けてもらったのは、いつのことだっただろうか。
それがきっかけで、名も知らぬあの男より、自分は格下なのではないかとジョルジュは疑い始めていた。
もちろん、そこまではツンも気づくことはない。
.
199
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 15:13:31 ID:.uv9GCZI0
ξ゚⊿゚)ξ「…あっきれた。気になるなら最初に聞けばいいじゃない。それとも何?男と会話したら逐一報告しなきゃいけないわけ?」
なまじ弁が立つので心刔られるが、確かにツンの主張は正論だ。
何も悪いことなど、してないのだ。
( ゚∀゚)「いや、そうじゃねぇけど…」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあどうしろって言うの?」
そう言われてしまうと、勝手に嫉妬した自分の暴走だったと、気づかざるを得ない。
少し考えた素振りを見せた後、ジョルジュは観念した。
200
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 15:18:58 ID:.uv9GCZI0
( ゚∀゚)「…悪かったよ。勝手に嫉妬して、ちょっとピリピリしちまった」
ξ゚⊿゚)ξ「………」
しばらく睨むように見つめてたが、気が済むと手元のロックグラスに残ってたラフロイグをくいっと飲み干した。
ξ゚⊿゚)ξ「あー久々に腹立った。でもわかってくれたならよし」
( ゚∀゚)(久々…)
すっきりしたような表情のツンが発する一言にまた引っ掛かるものを感じたが、今度は努めて顔に出さないように意識した。
201
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 15:21:17 ID:.uv9GCZI0
蝉の声。
墓石。
供えられた花や酒。
まただ…
今度はいつなのだろう?
そう思って、霞む視界をなんとか凝らそうとする。
.
202
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 15:23:27 ID:.uv9GCZI0
………あれ?
それ以外のものが、何も見えない。
それどころか、蝉の声は聞こえるが陽射しや暑さも何も感じない。
最近たまに見る夢に倣うなら、ツンがそうしたければ目の前にある風景を360度見渡すことなどたやすいはずだが、今日はそれができない。
いわゆる『普通の夢』だ。
こういう夢も、たまには見る。
しかし。
.
203
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 15:24:35 ID:.uv9GCZI0
ξ⊿)ξ『―――ザザッザザザッ―――――ザザザッ』
自分の声なのだろうが、音声が全く聞こえずたまに雑音まで入る。
もちろんそれを自分の意志で発してるわけではなく、夢に現れた自分が勝手に喋ってるのをただ見せられてる。
本来ならそれが、普通の夢しかる夢のあるべき姿のはずなのだが…
何故かこの世界でも、あの不思議な夢で見た記憶を踏襲してる気がする。
.
204
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 15:27:00 ID:.uv9GCZI0
( )『―――!?』
自分以外の人物が現れた。
声も聞こえないし、顔もよく見えない。
ξ⊿)ξ『―――ザザッ――――?』
( )『ザザッ――なんで――――に――ザザザッ―――!?』
なんだか緊迫した雰囲気だけは伝わる。
でも、それを何故か
.
205
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 15:28:22 ID:.uv9GCZI0
ξ⊿)ξ『―――!!――ザザッ―――ザザッ――――!!』
見たくない、見ちゃいけないと、誰かが強く拒絶してるようだった。
206
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 15:30:09 ID:.uv9GCZI0
( )『だって―――すザザザッザザザザザザッッ――!!!』
.
207
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 16:04:40 ID:uyLnk5Ys0
「ツン?ツン、大丈夫か?」
ぼんやりと目を開けると、心配そうに覗き込むジョルジュがいた。
.
208
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 16:06:23 ID:uyLnk5Ys0
先ほど食事しながら少々諍いがあり、許し合って終わったはずだがなんだか気まずい雰囲気が払拭できず、ツンはベッドで、ジョルジュはその下の床で眠りについたままだった。
(; ゚∀゚)「うなされてたけど大丈夫かよ?体調でも悪いのか?」
ξ;゚⊿゚)ξ「……大丈夫。ありがとう」
なんとか呼吸を落ち着かせながら、ジョルジュから受け取った水を煽った。
209
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 16:07:25 ID:uyLnk5Ys0
不思議な夢に体力奪われることはままあったが、こうしてうなされたのは初めてだ。
何が原因で何が起きたかはわからないが、今は何も考えたくなかった。
( ゚∀゚)「……そっち行っても、いいか?」
ξ゚⊿゚)ξ「……うん」
とりあえず、何も考えずに安心できる人の傍で眠ろうと思った。
もう、見たくない夢を見なくて済むように。
210
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 16:09:44 ID:uyLnk5Ys0
おわりです。
211
:
名も無きAAのようです
:2013/08/17(土) 18:04:42 ID:5MKaBJV.O
一発目のレスからこっそりじゃないじゃないかよ、まあ乙
212
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 18:29:42 ID:iCS14UEM0
すまんまたやった…
無遠慮に13話
213
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 18:31:51 ID:iCS14UEM0
◆第13話◆
XXXX年 P月
ミ"ーーーーンミンミンミンミ"ーーーー!!!!
( )「………」
蝉の声が煩い。
( )「………」
陽射しも強い。
薄着とはいえ、今度こそ暑い。
.
214
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 18:33:49 ID:iCS14UEM0
( )「………」
( )「……どうして…」
ξ゚⊿゚)ξ「………」
その絞り出すような声を、ツンは確かに聞いた。
.
215
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 18:35:03 ID:iCS14UEM0
ξ゚⊿゚)ξ「それはこっちのセリフなんだけど」
( )「………」
ξ゚⊿゚)ξ「…どうしてなの…?」
.
216
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 18:36:14 ID:iCS14UEM0
ξ゚⊿゚)ξ「どうして、あなたとこんなところで会うのかしら」
ξ゚⊿゚)ξ「ブーン」
( ^ω^)「………」
.
217
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 18:37:58 ID:iCS14UEM0
まるで人の陰気を浄化してしまいそうな、穏やかで柔和なその顔つきは、間違いなくブーンだった。
でも改めてちゃんと見えたその顔は、なんだか逞しくなったようだ。
ツンが知ってるあの広い肩幅はそのままに、ふっくらしてた体つきもやや絞まっている。
それでいてなんだか元気はなく、どこか神妙な面持ちなのは、この茹だるような暑さのせいだけではないだろう。
.
218
:
名も無きAAのようです
:2013/08/17(土) 18:38:43 ID:s4ZwokiY0
これはアカンやつや……支援
219
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 18:39:43 ID:iCS14UEM0
( ^ω^)「……ツン」
( ^ω^)「出会った頃のままだお」
ξ゚⊿゚)ξ「………」
ξ゚⊿゚)ξ「…今は、いつなの?」
( ^ω^)「…僕らが初めて出会った頃から、ちょうど10年経ったお」
それゆえの貫禄か。とツンは密かに納得した。
.
220
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 18:41:16 ID:iCS14UEM0
ξ゚⊿゚)ξ「…あんまり驚かないんだね」
この不思議な夢の世界において、自分自身以外の人物に出会ったのは初めてだった。
今度こそ、自分の存在を説明する必要がありそうだが、他人ともなると納得してもらえる説明ができる自信がない。
しかし、今目の前にいるブーンは、まるで動揺した素振りを見せない。
221
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 18:43:02 ID:iCS14UEM0
( ^ω^)「君はツンだお」
( ^ω^)「それだけは確かだって、わかるからいいお」
( ^ω^)「それに…」
ξ゚⊿゚)ξ「……」
( ^ω^)「初めてのことでもないお」
.
222
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 18:44:40 ID:iCS14UEM0
ツンは静かに目を閉じた。
ツンに心当たりがあるとしたら、いつか見た、嫌な印象の夢。
うなされたことしか覚えてないが、見ないように、触れないように必死で逃げてた気がする。
( ^ω^)「…覚えてないかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「…あんまり…何も見えなかったし、ほとんど何も聞こえなかったから……でも」
ξ゚⊿゚)ξ「とてつもなく嫌な印象だった」
静かに、でもはっきりとツンは言った。
223
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 18:47:11 ID:iCS14UEM0
ξ゚⊿゚)ξ「その時いたのも、ブーンだったの?」
( ^ω^)「……うん」
ξ゚⊿゚)ξ「……見当がつかないなぁ」
ツンは痺れを切らしたように言った。
ξ゚⊿゚)ξ「確かに、あの夢は見聞きすることを拒んでるみたいだった。それもたぶん、あたしの意識の中で」
ξ゚⊿゚)ξ「でもこうして、今度ははっきりと見せようとする」
ξ゚⊿゚)ξ「未来に来たのなんか初めてだから、どうしたらいいかわかんないんだけど…早速いろいろ気になることはあるわ」
( ^ω^)「………」
224
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 18:48:58 ID:iCS14UEM0
ξ゚⊿゚)ξ「散々、本人にとって都合の良い補正ばかりされてきたはずのこの夢の中で」
ξ゚⊿゚)ξ「どうしてあたし本人に会う前にあなたに会うの?」
ξ゚⊿゚)ξ「10年後のあたしは、どうなってるの?」
( ^ω^)「………」
.
225
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 18:50:09 ID:iCS14UEM0
気になることを一気にぶつけられたブーンは、あまり表情の変化がない。
動揺を隠してるのか、案の定と思ってるのか、単に10年という年月で身についたどっしりとした貫禄が彼を余裕そうに見せてるのか、ツンには伝わらなかった。
.
226
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 18:51:16 ID:iCS14UEM0
( ^ω^)「……実は、僕が今の君に初めて会ったのは、昨日のことだったお」
( ^ω^)「あの時びっくりして、思わず口を滑らせちゃって」
( ^ω^)「それを聞いた君もひどく驚いて、今にも取り乱しそうだったお」
ξ゚⊿゚)ξ「………」
.
227
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 18:52:53 ID:iCS14UEM0
( ^ω^)「昨日の今日でまたこうして出会ってしまったのも、さっき君の言った通り、昨日ちゃんと言えなかったことを、また改めて言わせようとしてるような…そんな機会な気もするお」
( ^ω^)「今君が覚えてなくても、これはおそらく時間の問題だお」
ξ゚⊿゚)ξ「…そうね」
同じことを、なんとなくツンも感じてた。
あの時ジョルジュが起こしてくれたから逃れられたものの、ダメならまた日を改めて見せられるなら
ツンが知るべきことを知るまで、このループは続くのだろう。そう思っていた。
( ^ω^)「だから、改めて言うけど…」
ξ゚⊿゚)ξ「…うん」
.
228
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 18:54:29 ID:iCS14UEM0
( ^ω^)「……僕が昨日あの場所にいたのは、ある人の、お墓参りだったお」
( ^ω^)「…場所が場所だっただけに、僕も一瞬誤解しちゃって」
( ω )「……あぁ、やっぱり帰ってきて、くれたんだって…思ったお……」
.
229
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 18:56:06 ID:iCS14UEM0
ξ゚⊿゚)ξ「………!それって…」
嫌な予感がした。
真夏のこの時期。
お墓で会った、過去の姿のその人。
それを、何と『誤解した』というのか。
.
230
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 18:58:37 ID:iCS14UEM0
( ^ω^)「……ツン。君のお墓参りだったんだお」
( ^ω^)「…だから、君が一瞬帰ってきてくれたのかと思った」
( ω )「……お盆、だったからね……」
嫌な予感が、的中した。
.
231
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 19:00:25 ID:iCS14UEM0
ξ゚⊿゚)ξ「………うそ…」
( ^ω^)「………」
ξ゚⊿゚)ξ「…10年後には、あたし、もう死んでるってこと……?」
( ^ω^)「………ツン……」
突然の死の宣告に狼狽するツンに、宣告をした本人がかけてあげられる言葉は見つからない。
ツンがどこまで想定してたかはわからないが、その選択肢の中でも最悪のものだったに違いない。
或いは、想定外の結末だったかもしれないのだ。
.
232
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 19:02:06 ID:iCS14UEM0
ξ⊿)ξ「…そんな……どうして………!!」
( ^ω^)「ツン……ごめんだお」
ξ⊿)ξ「…………」
ξ⊿)ξ「……なんでブーンが謝るの」
心なしか、ツンの声の震えが治まった気がした。
233
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 19:03:20 ID:iCS14UEM0
( ^ω^)「…それは……」
ξ゚⊿゚)ξ「……あたしが、無理矢理聞き出したことなんだから。いちいち謝らないで」
( ^ω^)「………」
.
234
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 19:05:01 ID:iCS14UEM0
掴み掛かられるかと思った。
殴られても仕方ないと思った。
なのに、彼女は涙ひとつ流さずに……
ξ゚⊿゚)ξ
そんなに、気丈でなくてよかったのに。
.
235
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 19:06:59 ID:iCS14UEM0
( ω )「……確かに、ああやって詰問し出したら、はぐらかすだけ無駄だったお」
( ω )「そんなので納得するわけがない。それがツンだお」
ξ゚⊿゚)ξ「………」
( ω )「でも、僕は残酷なことを言ってしまったお」
( ω )「まだ若いツンが、今すぐ知るべきではなかったことを、あっさり言ってしまったお」
( ω )「……だから…」
.
236
:
名も無きAAのようです
:2013/08/17(土) 19:08:28 ID:5MKaBJV.O
( ^ω^)とξ゚⊿゚)ξの関係がどうなったか気になる
支援
237
:
名も無きAAのようです
:2013/08/17(土) 19:08:44 ID:5MKaBJV.O
( ^ω^)とξ゚⊿゚)ξの関係がどうなったか気になる
支援
238
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 19:09:58 ID:iCS14UEM0
(#;ω;)「もっと泣けお!!もっと僕を責めろお!!!お前はっ……いっつもそうやって…」
(#;ω;)「僕にバレないように、我慢して!!!」
(#;ω;)「……生きてる時からずっと……そうやって………」
(#;ω;)「ああぁぁあぁぁあぁぁぁ―――――ッッッ!!!!!!」
ブーンは、赤子のように泣き崩れた。
もう、彼の叫びは声になってなかった。
.
239
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 19:12:00 ID:iCS14UEM0
ξ゚⊿゚)ξ「………」
延々と、彼の嗚咽だけが響く。
ξ゚⊿゚)ξ「………ブーン」
ツンが、ブーンの背中に手を当てながら優しく呼びかける。
そこまで近づいて初めて、泣きじゃくるブーンの左手の、薬指に光る指輪に気づいた。
.
240
:
名も無きAAのようです
:2013/08/17(土) 19:12:00 ID:6U5PX.PU0
嫌な予感しかしない
241
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 19:13:17 ID:iCS14UEM0
ξ゚⊿゚)ξ「……ブーン、あなたまさか」
そうだお、と返事をしてから、軽く咳ばらいをして一呼吸置いた。
( ;ω;)「……ツンは、ブーンのお嫁さんだったんだお」
.
242
:
名も無きAAのようです
:2013/08/17(土) 19:14:49 ID:s4ZwokiY0
いったい何が……
243
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 19:15:24 ID:iCS14UEM0
13話おわりだお!
言い訳は最後にたっぷりします。
支援ありがとうございました。
244
:
名も無きAAのようです
:2013/08/17(土) 19:16:27 ID:s4ZwokiY0
乙乙
245
:
名も無きAAのようです
:2013/08/17(土) 19:22:16 ID:6U5PX.PU0
乙
10年の間に何があったんだ
246
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/18(日) 17:32:17 ID:CBudCD2k0
第14話
いきますお
247
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/18(日) 17:33:39 ID:CBudCD2k0
◆第14話◆
XX34年 P月
嫌な予感が的中した。
10年後には、自分はこの世にいないらしい。
自分の墓まで見せられたら、実感が湧かないとも言ってられないが
何故かその場では泣けなかった。
10年前の自分にそれを見せて、今を生きる自分には一体何をどうしてほしいんだろう。
-
248
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/18(日) 17:35:19 ID:CBudCD2k0
更に、自分は将来、ブーンと結婚する?
それは、理性をなくしたブーンがまた口を滑らせて知らされただけのことかもしれない。
でも、今それを知らされても、そればっかりはどう気持ちを処理すればいいかわからなかった。
.
249
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/18(日) 17:36:57 ID:CBudCD2k0
普段のツンのように言いたいことをぶちまけて、ようやく落ち着いたブーンの提案で二人は場所を移した。
ブーンの家だ。
ということは、自分がその一生を終える時に過ごしてた家とも言える。
マンションの8皆。
郊外だが見晴らしは良かった。
家具一つ一つ、シンプルなようでどこか高級感のあるものばかりで、それなりに不自由のなさそうな生活が窺い知れた。
もちろん、一人、二人で住む仕様の広さじゃない。
結婚したというなら、子どもができる体でのこの間取りなのだろう。
自分が死ぬ前に、授かったかどうかはわからないが、今この家にはいないようだ。
.
250
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/18(日) 17:38:24 ID:CBudCD2k0
ξ゚⊿゚)ξ「まだ、料理の仕事してるの?」
ツンが知ってるブーンは、しがない雇われの料理人だった。
と言っても、22歳でシェフになれれば群を抜いて有能である。
しかし、当時のブーンのその実力を知らないツンにはわからないことだった。
( ^ω^)「独立したんだお。今は、自分で経営してる」
なるほどそれゆえの甲斐性か。
( ^ω^)「だから、こうやってまとまった時間が作れるのは、今ぐらいなんだお」
そういえば、この世界のこの時期はお盆だった。
個人経営の飲食店なら、確かにオフシーズンだとツンも納得した。
251
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/18(日) 17:39:51 ID:CBudCD2k0
( ^ω^)「なんか飲むかお?」
そう言ってブーンはキッチンに向かって行った。
( ^ω^)「っていうかお腹空いてないかお?夢の中でお腹空くかどうかはわかんないけど」
道中で、ツンは自分がいかにしてこの世界に降り立ったのかを簡単に説明していた。
その時のブーンは、理解したのかしてないのかよくわからない鈍い反応だったが、お盆シーズンに見かけた自分を幽霊と勘違いしたくらいだ。
そんな不思議な現象を聞いても、特に異を唱えることもなかった。
252
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/18(日) 17:42:05 ID:CBudCD2k0
そう言いながら戻ってきたブーンの手には、ツンが好きなスコッチウィスキーと、氷が入ったロックグラスが二つ。
その、比較的安価で手に入りやすい平べったいボトルのバランタインは、外で飲む贅沢なシングルモルトよりも、ツンにとっては馴染みの味だった。
生前の彼女のコレクションの一つだろうか、既に何杯か飲まれた形跡がある。
( ^ω^)「勝手に手をつけると怒られるから、本人と一緒でないと開けられないんだおw」
なるほど確かにそうだろうな。
少量でも自分の記憶よりも減ってると思うと、目敏く見つけては『ブーン!飲んだでしょー!!』と青すじ立てる自分の姿が手に取るように思い浮かぶ。
大概それは酔っ払った自分の記憶違いであり、濡れ衣を着せられたブーンが冷や汗垂らして『違うお!僕じゃないお!!』と、必死に、でもどこか逃げ腰な様子で抗戦する。
そんな夫婦だったんだろうな。
と、ツンは記憶にもないはずの二人の夫婦像に、素直に納得した。
253
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/18(日) 17:44:04 ID:CBudCD2k0
( ^ω^)「やっぱり僕、なんかつまみ作ってくるお」
場所を変えて一息ついたものの、特に核心を突く話をするわけではなかった。
でも、そうでなければ改めて話す場所を設けた意味がない。
わかっちゃいるが、こうも改まるとどう話を切り出していいかわからない。
しかも、ツン本人とはいえ10個も年下の女の子の前で大泣きした後だ。
できればツンからいろいろ質問をしてくれた方が話しやすいのだが、そんな時に限って彼女は当たり障りのない質問しかしない。
そして今は、それすらも途絶えて口を噤んだまま何か考え込んでるようで、こちらから話し掛けてもいまいち反応が鈍い。
致し方ない。
一応気丈に振る舞って見せてはいたが、あまりにもショッキングな話を聞かされ、心の平静を失った後なのだ。
ただこの気まずさを払拭したいだけの自分なんかよりも、よほどやるせない思いをしてるはずだ。
254
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/18(日) 17:46:20 ID:CBudCD2k0
ξ゚⊿゚)ξ「あ、あたしがやる」
キッチンに向かおうとしたブーンを制止して、ツンが立ち上がった。
現実世界においてまだ『ブーンのオススメ』を食べたことがないツンは、そのブーンの腕を今は知らないままでいたかった。
幸い、ツンも人並みに料理はできる。
10年という年月を経て、特に結婚してからは腕を上げたかもしれないし、それ以前の料理でプロを持て成すというのも若干抵抗はあるが、お酒のつまみ程度なら許してくれるだろう。
それに何故か、この状況においては自分がキッチンに立ったほうがブーンのためにも良いような、そんな気がした。
255
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/18(日) 17:47:53 ID:CBudCD2k0
( ^ω^)「…そうかお。食材は好きに使ってくれていいから。ありがとうお」
軽く目で頷いて、ツンはキッチンへ向かう。
と言ってもブーンがいる居間から離れてはおらず、彼の視線を背中でキャッチできる距離なので、何かあればいつでも言い付けられる。
ブーンも、ツンの料理の腕はある程度知っている。
それが10年前の姿であっても何を危惧するわけでもないが、キッチンに立つツンの背中から目が反らせなかった。
256
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/18(日) 17:51:40 ID:CBudCD2k0
料理しながら、手の届くところにウィスキーの入ったグラスを忍ばせておくことを忘れない。
そんな癖も、ブーンが知ってるあの頃のままで
手が空いた隙に一口、また一口とウィスキーを舐め、グラスが空くとさりげなく注ぎに行く。
これも、いつものブーンの役目だった。
そして
ξ゚ー゚)ξ「ありがと」
そんな笑顔も、自分の妻であった頃のツンそのままの笑顔だった。
.
257
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/18(日) 17:53:24 ID:CBudCD2k0
(*^ω^)「おっおっ!いい匂いだお!」
出来た料理を目の前にして、ブーンのテンションが目に見えてに上がった。
小鉢に盛られた、サラミとパプリカを使ったサラダ。
リンゴ酢やハチミツ、オリーブオイルを合わせてマリネ風な仕立てになっている。
もう一品は、スモークサーモンと茸のちゃんちゃんホイル焼き。
味噌とウィスキーの意外な相性の良さが、ツンの好みだった。
どちらもわりとスモーキーな食材だったが、冷菜と温菜の二種類を用意してくれる凝った仕上がり様と、ちょっと華奢にも見えるボトルのウィスキーが、テーブルを華やかにしてくれた。
258
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/18(日) 17:55:43 ID:CBudCD2k0
ξ゚⊿゚)ξ「さすがコックの家だけあって食材とか調味料は充実してるのね。まさかサーモンがスモークしてあるなんて思わなかったわ」
( ^ω^)「おっ。実は店の余り食材だお。早めに使ってくれてよかったお」
ツンが料理してる間にも、ウィスキーは順調に減ってゆき、もともと詮が空いてたこともあったせいか出来上がる前にボトルが空になってしまったので、ブーンはキッチンの奥から持ってきたラガヴーリンを開けようとしていた。
259
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/18(日) 17:57:18 ID:CBudCD2k0
ξ゚⊿゚)ξ「え、大丈夫なの?それ開けて」
比較的高価なそのウィスキーを、取るに足らんと言わんばかりに自然に開けようとするその姿に、さすがのツンも少々面食らったようだ。
( ^ω^)「いいんだお。どのみちツンのために用意したお酒だお」
本人が味わえるならそれが一番だお、と躊躇うことなく詮を開け、グラスに注いで再び乾杯をした。
.
260
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/18(日) 17:59:24 ID:CBudCD2k0
ツンの料理は、どちらも文句なく旨かった。
ただそこにあった食材を使って仕上げただけじゃなく、ちゃんとウィスキーのつまみであることが加味された出来栄えに、プロであるブーンも感嘆した。
( ^ω^)「ごちそうさまだお」
ξ゚⊿゚)ξ「おそまつさま」
そう言って空になった皿を流し台に戻そうと、ツンは立ち上がった。
.
261
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/18(日) 18:01:10 ID:CBudCD2k0
そうやって、洗い物をしてるツンの背中を眺めるのもいつ以来だっただろうか。
それが当たり前だった頃の日常が、擬似的なものとはいえ今目の前にあるというのに、あくまで非日常。
目の前にいるのは確かに、正真正銘生身のツンなのに。
.
262
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/18(日) 18:02:36 ID:CBudCD2k0
( ^ω^)「………ツン」
その小さな背中に、ブーンは呼び掛けた。
( ^ω^)「君は、ここにいられる時間は、限られてるのかお?」
広義的に言えば、それは確かだ。
いつまでもここで、こんな姿で過ごしていられるわけじゃない。
でもブーンが聞きたいことにはもっと別のニュアンスが含まれていることに、ツンは気づいた。
263
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/18(日) 18:03:55 ID:CBudCD2k0
ξ゚⊿゚)ξ「…わからないわ。たぶん、現実で目を覚ます時に突然消えてしまうかも」
そのタイミングまでは…と言いかけて振り向いた時、既にブーンが自分のすぐ後ろに立ってることに気づいたツンは言葉を詰まらせ、じゃあ、とブーンに遮られた。
.
264
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/18(日) 18:05:04 ID:CBudCD2k0
( ^ω^)「…もし今のツンが嫌じゃなければ、君が目を覚ますまで、一緒にいてくれないかお?」
いつの間にか、そっと握られた左手からは、ブーンの言葉にできない哀切が、粛々と伝わってきた。
.
265
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/18(日) 18:06:53 ID:CBudCD2k0
14話おわりです。
266
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/18(日) 22:59:46 ID:CBudCD2k0
◆第15話◆
XX34年 P月
( ^ω^)
ξ゚⊿゚)ξ
ブーンのその、今にも泣き出してしまいそうな表情に、ツンは何も厭うことができなかった。
267
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/18(日) 23:01:31 ID:CBudCD2k0
一緒にいる。それは構わない。
他に方法がないのも確かだけど、同情が理由というわけじゃないし、ジョルジュへの背徳感もここでは関係ない。
ただその気持ちが、自分にとって何なのかわからないのだ。
愛情。慈しみ。敬慕。寵愛。
しかも現実世界においては、友情の域を出ない関係だ。
それらの均衡の取れない感情を、馬鹿正直に持ち合わせたまま一緒にいると、かえって傷つけるんじゃないか。
そんな困惑が、ツンの中にはあった。
でも
.
268
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/18(日) 23:03:17 ID:CBudCD2k0
ξ゚⊿゚)ξ「…もちろんそのつもりよ。だから…安心して」
はっきりと、そう言いながら握られた手に力を込めた。
.
269
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/18(日) 23:05:35 ID:CBudCD2k0
外は暗くなりつつあった。
日の入り独特の憂鬱さ加減も相俟って、二人ともソファに腰を沈めながらただ無言だ。
たまに響く、グラスの中の氷の音をきっかけに、話を切り出そうとしてる雰囲気だけは伝わるのだが、いざとなると言葉にできない。
ツンがいつまでこうしていられるのかもわからないのに、二人の間に流れる空気はただ穏やかで、どこか物寂しかった。
270
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/18(日) 23:07:04 ID:CBudCD2k0
自分が死ぬ。
いや、この世界においては事後の話だ。
それを聞いて、しかも残された人になんて言ってあげるのが正解なんだろう。
ツンはそればかり考えてた。
ξ゚⊿゚)ξ「…ブーン」
先に沈黙を破ったのは、ツンだった。
271
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/18(日) 23:10:01 ID:CBudCD2k0
ξ゚⊿゚)ξ「あたしは、なんで死んだの?」
直球な聞き方だった。
しかしそれさえわかれば、現実世界においてやりようがあるかもしれない。
以前高校生だった自分も、おそらく似たような心情で聞いたのだろう。
その時『結果は何も変わらなかった』ときっぱり否定したのは自分だが、現実から見て未来の話なら、もしかしたら…と期待せずにはいられない。
.
272
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/18(日) 23:12:31 ID:CBudCD2k0
そんなツンの思惑に気づいてか、ブーンは観念したように言った。
( ^ω^)「病気だった、とだけ言っておくお。本当に、突然だった…」
正直なところ多くは語りたくなかったが、少なくとも回避できるものではなかった。
それだけは伝わるように、ブーンは慎重にかい摘まんだ。
ξ゚⊿゚)ξ「そっか……」
重たげな口調ではあるが、思ったほど落胆してるようにも見えない。
自分の死を知らされてるというのに、アジテーションも過ぎるとかえって無感覚になってしまうのだろうか。
273
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/18(日) 23:14:42 ID:CBudCD2k0
そんな状態のツンだから、どこに眼目を置いてるのかもよくわからない。
いつ結婚したのか。
子どもはいるのか。
何がきっかけで、友達から恋人になったのか。など
もっと根掘り葉掘り聞かれると思ってた。
.
274
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/18(日) 23:17:34 ID:CBudCD2k0
( ^ω^)「…やっぱり、辛いかお?」
ツンの素直な気持ちが聞きたかった。
何も我慢してない、ただ正直な気持ちが。
ξ゚⊿゚)ξ「…よくわからない」
それがたぶん、ツンの精一杯の正直な気持ちだった。
.
275
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/18(日) 23:18:54 ID:CBudCD2k0
ξ゚⊿゚)ξ「今から気をつければ、防げる病気でもないんでしょ?」
まるですべてを諦めたような、でも努めていつも通りでいようと僅かに気を張ってるような、複雑な声色だった。
.
276
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/18(日) 23:20:30 ID:CBudCD2k0
( ω )「……あまりにも突然すぎて、何を最後に喋ったかも思い出せないぐらい」
( ω )「数分前まであった日常が、急になくなってしまったんだお」
( ω )「ツンは我慢してたのに、僕が鈍臭すぎて気づいてやれなかったのか、ツン自身も自覚がないままだったのか」
( ω )「それすらも、わからないんだお」
.
277
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/18(日) 23:22:21 ID:CBudCD2k0
( ω )「ツン、苦しんだかな。一人で最期を迎えて寂しくなかったかな」
( ω )「それとも、寂しがる余裕もないままに、亡くなったなら…苦しまなかったにしても」
( ω )「あっちで…悔やんでも悔やみきれないんじゃないかって」
( ω )「いずれにしても…僕は何もしれやれなかったお。そしてこれからも…」
ξ゚⊿゚)ξ「…何言ってんのよ」
ξ゚⊿゚)ξ「ああやってお盆になったら会いに行って、死んだ後もそこまで思ってくれてるなら…」
.
278
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/18(日) 23:23:53 ID:CBudCD2k0
ξ⊿)ξ「責めたくても……責められないじゃない」
( ^ω^)「……ツン?」
遺された人間の、思いの丈というリアリティが、自分の死を受け入れあぐねていたツンの精神に、波及し少しずつ染み渡っていく。
それがついに、無感覚ではいられないレベルに達した。
.
279
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/18(日) 23:26:02 ID:CBudCD2k0
ξ⊿)ξ「ねぇブーン。あたしどうしたらいいの?」
ξ⊿)ξ「死んだけど不幸じゃなかった。そう言われれば納得できるものなの?」
ξ⊿)ξ「いろいろ…うまくいかないことばっかりで、胸張れることなんか一つもないけど」
ξ⊿)ξ「ちょっと器用なだけじゃ、ちっぽけすぎてなんの役にも立たなかったけど」
ξ⊿)ξ「また、病気になるの?そんなに、急に?」
( ^ω^)「………」
.
280
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/18(日) 23:27:25 ID:CBudCD2k0
ξ;⊿;)ξ「どうして!?なんであたしが!?嫌だよ!死にたくない!!!」
.
281
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/18(日) 23:29:15 ID:CBudCD2k0
ξ;⊿;)ξ「あと10年も生きられないって、そんなこと…信じられる!?」
ξ;⊿;)ξ「どうして……どうしてあたし、いつも志半ばで、頓挫して…」
ξ;⊿;)ξ「ブーンみたいに料理の腕もなければ、ジョルジュみたいに仕事もできなくて、ハインみたいに優しくなれなくて、キュートみたいに愛想もなくて!!!」
ξ;⊿;)ξ「…あたしの人生って…なんなのよ……」
.
282
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/18(日) 23:30:41 ID:CBudCD2k0
ツンは、自分の死を知らされてから初めて、取り乱した。
ショックで気持ちが麻痺したのかと思ってたが、そうではなく
あまりにもキャパオーバーなその事実を飲み込むのに、時間がかかっただけなのだ。
( ^ω^)「ツン………」
呼吸を荒げて泣きじゃくるツンを、ソファの上でブーンは優しく抱き寄せた。
.
283
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/18(日) 23:32:15 ID:CBudCD2k0
( ^ω^)「ツン…落ち着いて聞けるかお?」
ξ;⊿;)ξ「………」
( ^ω^)「ツン、忘れるなお。これは夢だお」
まだ啜り泣きしながらも、ツンが自分の胸でおとなしくしてることを確認し、ゆっくりと、優しく語りかけた。
284
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/18(日) 23:33:53 ID:CBudCD2k0
( ^ω^)「ツンはまだ、22歳だお。それが現実だお」
( ^ω^)「だったらまだ、やりようはあるんだお」
ξ;⊿;)ξ「………え?」
( ^ω^)「僕が生きてる現実とは違う生き方を、これからしてみるといいお」
( ^ω^)「もしかしたら気休めかもしれないけど…わかってる未来に向かって歩いてくよりよっぽど可能性はあると思うお」
( ^ω^)「わかってるからこそ…それを回避するために少しくらい抗ってみてもいいと思うんだお」
.
285
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/18(日) 23:35:38 ID:CBudCD2k0
( ^ω^)「……だから」
( ^ω^)「もし、君が抗った結果、僕と結婚する未来がなくなったとしても」
( ^ω^)「今こうしていられるだけで、僕は幸せだお」
.
286
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/18(日) 23:38:16 ID:CBudCD2k0
そう言ってブーンは、ツンを抱き寄せる腕に力を込めた。
( ^ω^)「…あんまり、自分を卑下するなお」
( ^ω^)「いつも人に提供する仕事だから、帰ったらツンと美味しいご飯が待ってるのは、嬉しかったお。そのためなら頑張れたお」
( ^ω^)「仕事だって、僕が知らないことをいろいろ教えてくれたお。おかげで僕の趣味にも深みが加わったんだお。立派にこなしてたじゃないかお」
( ^ω^)「ツンは優しい子だお。サバサバしてるけど、裏表がなくて、たまに見せてくれる笑顔がたまらなく可愛いと思ったから」
( ^ω^)「ずっとそれを、傍で見てたいと思ったんだお」
.
287
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/18(日) 23:39:57 ID:CBudCD2k0
ξ;⊿;)ξ「………」
ツンは意識が薄れていくのを感じた。
目が覚める瞬間を自覚したのは初めてのことだった。
でも
( ^ω^)「…ツン。僕は……」
.
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